説明

CGRP拮抗薬の経口投与のための液体医薬製剤

化合物1−[1−({[(3R,6S)−6−(2,3−ジフルオロフェニル)−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)アゼパン−3−イル]アミノ}カルボニル)ピペリジン−4−イル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロイミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イド液体製剤を含む、ポリエチレングリコール、Tween(ポリソルベート80)、Cremophor(登録商標)EL(ポリオキシル35ヒマシ油)、プロピレングリコールおよび任意選択により水を含んで、生物学的利用度および安定性が驚異的に改善され、片頭痛および群発頭痛を含む状態の治療に有用な軟または硬ゼラチンカプセルの中に充填することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
製薬産業は、増えつつある低い水溶性および/または腸管上皮透過性を有する活性分子に対する製剤の開発の挑戦に直面している。CGRP受容体拮抗薬1−[1−({[(3R,6S)−6−(2,3−ジフルオロフェニル)−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)アゼパン−3−イル]アミノ}カルボニル)ピペリジン−4−イル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロイミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イド(化合物I)の場合のように、いくつかの場合、従来の錠剤またはカプセル製剤によって許容できる生物学的利用度は容易に達成され得ない。従って、曝露を最大化し、曝露のより速い開始を提供する化合物Iの安定した経口製剤を開発する必要性が残されている。カプセルあたりの用量を大きく提示できる製剤もまた、望ましい結果であり得る。本発明は、化合物Iの経口投与可能な液体溶液である医薬組成物を提供する。該活性溶液は、例えば、液体が充填され密封された硬ゼラチンカプセルまたは軟ゼラチンカプセルなどの充填したカプセルに入れられた剤型として投与され得る。化合物Iの場合と同様に水溶性に乏しい化合物を経口剤として送達するために、粒子径の低減、非晶性製剤(熱溶融押出しまたは噴霧乾燥)などの一般に用いられる他の技術が通常研究されている。しかし、物理化学的制限により、これらの代替製剤の試みは実施できないことが分かった。
【0002】
(発明の概要)
化合物I−[1−({[(3R,6S)−6−(2,3−ジフルオロフェニル)−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)アゼパン−3−イル]アミノ}カルボニル)ピペリジン−4−イル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロイミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イド(化合物I)は、CGRP受容体拮抗薬である。
【0003】
【化1】

【0004】
化合物I、その遊離塩基形ならびに様々な塩および溶媒和形が2007年4月6日出願の国際特許出願番号PCT/US07/008703および2004年10月28日付け公開国際特許出願WO04/092166に記載されている。
【0005】
本発明は、特に硬ゼラチンカプセルまたは軟ゼラチンカプセルを含むカプセルに入れられた製剤と関連した、動物、特にヒトに使用するための化合物I(その塩、ならびに溶媒和形および塩基形)の液体製剤に関する。化合物Iの1つの塩の形は、カリウムエタノラート塩である。
【0006】
これらの液体製剤は、吸収および従ってより高い生物学的利用度のために、化合物Iおよびその塩の増加した溶解性を提供する。化合物Iおよびその塩の製剤を含む本発明の組成物は、片頭痛および群発頭痛を含む、CGRP受容体の拮抗作用によって介在される疾患の治療に有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際特許出願番号第PCT/US07/008703号
【特許文献2】国際公開第04/092166号
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施例6に記載された実験において得られた化合物Iの経時的平均血漿濃度のグラフである(ここで、18から45才の健常男性が、液体充填ゼラチンカプセルおよび複数の異なった担体の製剤中の化合物Iの400mg用量を経口投与された。)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、低水溶性(<0.05mg/mL)の化合物である、1−[1−({[(3R,6S)−6−(2,3−ジフルオロフェニル)−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)アゼパン−3−イル]アミノ}カルボニル)ピペリジン−4−イル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロイミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イド(化合物I)またはその塩の経口投与のための医薬組成物に関する。本発明は、化合物Iの製剤中の化学的完全性を長期貯蔵時に維持しながら、上昇した薬物血漿濃度で示される経口生物学的利用度を増加する製剤である。
【0010】
該化合物は、賦形剤と乾燥混合物中のピン式粉砕機で粉砕された結晶性固体として投与した場合、イヌにおいて生物学的利用度は乏しいことが分かった。該化合物が液体賦形剤の一定の組み合わせにおける溶液中にある液体剤型(下表参照)を用いることによって生物学的利用度が劇的に増加することが見出された:
【0011】
【表1】

【0012】
しかし、低水溶解性化合物の製剤中に通常用いられる賦形剤の圧倒的多数における化合物Iの低溶解性および/または化学的不安定性は、本明細書に開示する驚異的な発明に到達するために広範な研究および創意を必要とした。
【0013】
本発明の製剤は、増加した生物学的利用度、優れた安定性、単位用量当たりの増加した効力、良好な安全性および忍容性および加工の容易性の利点を有する。
【0014】
従って、本発明の1つの実施形態において、化合物Iまたはその薬学的に許容できるいずれかの塩もしくは溶媒和物、界面活性成分、溶媒成分および溶媒水などの他の任意に存在する成分を含む液体製剤が提供されている。この実施形態において、該界面活性剤成分は、1つ以上の界面活性剤を含み得る。同様に、該溶媒成分は、1つ以上の溶媒を含み得る。
【0015】
本発明において用いられる、適した界面活性剤は、ポリエトキシ化ヒマシ油(Cremophor(登録商標)EL(ポリオキシル35ヒマシ油など)、Cremophor(登録商標)RH60、Cremophor(登録商標)RH40);ポリソルベート(Tween−80、Tween−20など);ポリエチレングリコールエステルグリセリド(Labrasol(登録商標)、Labrifil(登録商標)1944など);ソルビタンモノオレエート(Span(登録商標)−80、Span(登録商標)−20など);ビタミンE−TPGS(ビタミンEd−アルファ−トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸エステル);飽和ポリグリコール化グリセリド(Gelucire(登録商標)44/14およびGelucire(登録商標)50/13など);ポリプロポキシル化ステアリルアルコール(Acconon(登録商標)MC−8、Acconon(登録商標)CC−6など)を含む。本発明において用いられる好適な界面活性剤は、Cremophor(登録商標)EL、Tween−80、Tween−20およびLabrasol(登録商標)を含む。本発明において用いられる最も好適な界面活性剤は、Tween80(ポリソルベート80)およびCremophor(登録商標)EL(ポリオキシ35ヒマシ油)を含む。該界面活性剤は単独で用いてもまたは組み合わせて用いてもよい。最も好適には、Tween80およびCremophor(登録商標)ELが互いに組み合わせて用いられる。
【0016】
本発明において用いられる、適した溶媒は、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール(PEG200、PEG400、PEG600、PEG900およびPEG1000など)、DMSO、エトキシジグリコール(Transcutol(登録商標))、ジエチレングリコール、ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(Polaxamerなど)および水を含む。本発明において用いられる好適な溶媒は、エタノールおよびプロピレングリコール(PEG400およびPEG600)を含む。本発明において用いられる最も好適な溶媒は、ポリエチレングリコール400(PEG−400)およびプロピレングリコール(PG)を含む。該溶媒は単独で用いてもまたは組み合わせて用いてもよい。最も好適には、PEG−400およびPGが互いに組み合わせて用いられる。
【0017】
本発明の第一の実施形態内で、液体製剤が以下の量において化合物I、PEG−400、ポリソルベート80、Cremophor(登録商標)EL、PGおよび場合により水を含む属がある:
【0018】
【表2】

【0019】
この属内に、液体製剤が以下の量において化合物I、PEG−400、ポリソルベート80、Cremophor(登録商標)EL、PGおよび場合により水を含む亜属がある:
【0020】
【表3】

【0021】
この亜属内に、液体製剤が以下の量において化合物I、PEG−400、ポリソルベート80、Cremophor(登録商標)EL、PGおよび水を含む更なる亜属がある:
【0022】
【表4】

【0023】
本発明は、上述の液体製剤を含む経口医薬組成物に関する。
【0024】
本発明の第二の実施形態において、第一の実施形態の液体製剤を含むカプセルが提供され、ここで、該カプセルは、第一の発明の実施形態の液体製剤50から1200mgおよび好適には333から1050mgで充填されている。充填量は、100から300mgの活性薬剤化合物Iまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物、81.6から245mgのPEG−400、47.5から190mgのポリソルベート80、47.5から190mgのCremophor(登録商標)EL、25から75mgのプロピレングリコールおよび50mgまでの水;ならびに好適には300mgの活性薬剤化合物I、245mgのPEG−400、190mgのポリソルベート80、190mgのCremophor(登録商標)EL、75mgのプロピレングリコールおよび50mg水;または150mgの活性薬剤化合物I、122.5mgのPEG−400、95mgのポリソルベート80、95mgのCremophor(登録商標)EL、37.5mgのプロピレングリコールおよび25mgの水の存在に対応する。
【0025】
本発明の第二の実施形態内で、該カプセルが軟ゼラチンカプセルおよび硬ゼラチンカプセルから選ばれる属がある。
【0026】
本発明の第二の実施形態内で、化合物Iを含む液体充填カプセルを含む経口医薬組成物である属がある。
【0027】
本発明の第三の実施形態において、第一の実施形態の液体製剤を作る方法および本発明の第二の実施形態の液体充填カプセルを作る方法が提供され、ここで該液体製剤を作る該方法は、化合物Iの薬学的有効量を1つ以上の溶媒および1つ以上の界面活性剤と混合する段階を含み、該液体充填カプセルを作る該方法が、更にカプセルを液体製剤で充填することおよび該カプセルを密封することを含む。この実施形態の好適な態様において、化合物Iエタノール、プロピレングリコール、グリセリン、PEG200、PEG400、PEG600、PEG900、PEG1000、DMSO、Transcutol(登録商標)、ジエチレングリコール、Polaxamer、水から選ばれる1つ以上の溶媒およびCremophor(登録商標)EL、Tween−80、Tween−20、Labrasol(登録商標)、Labrifil(登録商標)1944、Cremophor(登録商標)RH60、Cremophor(登録商標)RH40、Span(登録商標)−80、ビタミンE−TPGS、Geluicire44/14、Acconon(登録商標)MC−8、Span(登録商標)−20、Acconon(登録商標)CC−6、Gelucire(登録商標)50/13から選ばれる1つ以上の界面活性剤と混合され、得られる液体製剤が、軟いゲルに充填され密閉される。より好適な態様において、化合物Iは、界面活性剤Cremophor(登録商標)ELおよびポリソルベート80ならびに溶媒PEG400およびプロピレングリコールおよび場合により水と組み合わされ、得られた液体製剤は軟らかいゲルに充填され密封される。
【0028】
本発明の第4の実施形態において、片頭痛および群発頭痛から選ばれる1つ以上の状態を、本発明の充填カプセル(化合物Iを含む。)を含む本発明の第二の実施形態のカプセルで治療または予防する方法が提供されている。該方法は、それを必要とする患者に1つ以上のカプセルを投与し、片頭痛もしくは群発頭痛または両方を治療するもしくは予防することを含む。
【0029】
ここで「ソフトゲル」が軟ゼラチンカプセルの省略である軟ゼラチンカプセルについて言及する。用語「ソフトゲル」単独について言及する場合、本発明は、硬さ、柔らかさなどにかかわらずゼラチン型および非ゼラチン型のすべての型に等しく適用されることが理解されるものとする。本発明の1つの実施形態において、該軟ゼラチンカプセルは、グリセリンおよびソルビトールなどの可塑剤を含む。カプセルに詰める前に該ゲル混合物に着色剤を加え、所望の色相の軟ゼラチンカプセルを製造し得る。
【0030】
本明細書で考察される特定の界面活性剤について言及する場合、用語Cremophor(登録商標)ELポリオキシル35ヒマシ油は、相互に交換可能で用いられる。同様に、本文書で用いられるように用語Tween−80およびポリソルベート80は、相互に交換可能である。
【0031】
本明細書で考察される特定の溶媒にについて言及する場合、用語ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール400およびPEG400は、相互に交換可能で用いられる。同様に、プロピレングリコールはPGと云う場合がある。
【0032】
特別な指示がなければ、「活性成分」もしくは「化合物I」の特別な重量または百分率への言及は存在するいずれかの対イオンまたは溶媒和がない遊離塩基に基づく。例えば、「1mgの1−[1−({[(3R,6S)−6−(2,3−ジフルオロフェニル)−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)アゼパン−3−イル]アミノ}カルボニル)ピペリジン−4−イル]−2−オキソ−1,2ジヒドロイミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イド」または「1mgの化合物I」と云う句は、選ばれる化合物の量が溶媒和中に存在する溶媒の重量がない化合物Iの遊離塩基の1mgに基づいていることを意味する。
【0033】
本明細書において、用語「治療」または「治療すること」は本発明の化合物のいずれかの投与を意味し、(1)その疾患の病理学もしくは徴候学を経験しているかまたは表している動物における該疾患を阻害すること(即ち、病理学および/または徴候学の更なる発展を抑えることまたは(2)その疾患の病理学もしくは徴候学を経験しているかまたは表している動物における該疾患を改善すること(即ち、病理学および/または徴候学を逆にすること)を含む。用語「管理すること」は、管理されている状態の重症度を妨げること、治療すること、根絶すること、改善することまたはさもなければ低減することを含む。
【0034】
本発明の液体製剤は、化合物I、1つ以上の溶媒および任意選択による1つ以上の界面活性剤の溶液である。「溶液」は、該溶媒によって与えられる液体の環境中に、薬物が分子レベルで分散し、明らかな固体粒子なしに溶解している透明な液体の状態を意味する。
【0035】
本発明は、作用の特別な作用機構に限定されない。しかし、胃腸液に放出されると、該製剤の界面活性剤は化合物Iを界面活性剤なしにその溶解度の限度以上に溶解できるミセルの集合体およびマイクロエマルジョンを形成し得ると考えられている。可溶化された薬物は、腸管膜を通して吸収され得、したがってインビボで全身に曝露される。界面活性剤がない時は、該薬物は、胃液から析出し、難溶性の薬物は利用できない。
【0036】
該組成物は、適切なゼラチン組成のゼラチンカプセル中にカプセル化された充填物、適切なシールを有する硬ゼラチンカプセル、ヒドロキシメチルセルロースなどの非ゼラチンカプセルまたは経口液体かたは乳化液として、本分野で通常用いられる方法により製剤化され得る。本発明の1つの実施形態において、該充填物は、シールされた硬ゼラチンカプセルまたはグリセリンおよびソルビトールなどの可塑剤を含む軟ゼラチンカプセルにカプセル化される。この実施形態の1種において、該硬ゼラチンカプセルは、ゼラチンリボンまたはLEMS(即ち、塩酸溶液を噴霧して、ゼラチンカプセルのピースを局所的に熔かしシールする。)を用いるバンドシーリングによってシールされる。該充填物は、賦形剤および化合物Iを混合し、必要であれば、加熱して調製される。
【0037】
先述した主な軟ゼラチンカプセル成分に加えて、ソフトゲル製剤の分野で通常知られている、抗酸化剤(BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール))、BHT(t−ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、プロピルガレートなど)などの他の安定化添加剤およびベンジルアルコールまたはパラベンなどの他の保存剤が必要に応じて、通常比較的少量、該充填物に導入され得る。好適には、該抗酸化剤または保存剤は、0.01%から0.1%の重量%の範囲で存在する。該組成物は、軟ゼラチンカプセルにカプセル化された充填物、適切なシールを有する硬ゼラチンカプセル、ヒドロキシメチルセルロースカプセルなどの非ゼラチンカプセルまたは経口液体もしくは乳化液として本分野で通常用いられる方法により製剤化され得る。
【0038】
化合物Iの経口送達は、その水溶性が、通常5ug/mL未満と極度に低いために特に困難である。薬物の実際の量の経口投与により血中の治療薬物濃度を達成するには、胃腸液中の薬物濃度の大きな増強およびその結果である生物学的利用度の大きな増強を要する。本発明の製剤は、化合物Iの有効量が患者に投与されるような量で投与され得る。化合物Iの量は一般に既知であるか、または担当医師によって決定され得る。従って、投与された用量の量または容量は、処方されたおよび/またはさもなければ、投与量として所望された化合物Iの量ならびに製剤中の化合物Iの溶解性によって決定され得る。一般に、化合物Iの有効用量は、単回または分割用量で1日あたり100mgから約1000mg;好適には1日あたり約200mgから約800mg、より好適には1日あたり約100mgから約600mg、さらにより好適には単回または分割用量で1日あたり約150または300mgである。経口投与については、治療されるべき患者に対する投与量の症状による調整のために、該組成物は、(2以上の液体充填カプセルが投与される場合、合計で)100から1000mg、好適には100、200、300、400、500、600、700、800、900および1000、最も好適には200、300、400、500および600ミリグラムを含む1つ以上の液体充填カプセルの形で好適に提供される。
【0039】
本発明の液体製剤は、軟または硬ゼラチンカプセル中の一般に経口投与される事前濃縮物であり、ゼラチンカプセル化技術は医薬分野で周知である。
【0040】
本発明の液体製剤は、以下の状態または疾患の治療、予防、改善、抑制または1つ以上の危険性の低減に有用である:頭痛;片頭痛;群発頭痛;慢性緊張性頭痛;疼痛;慢性疼痛;神経性炎症および炎症性疼痛;神経因性疼痛;眼痛;歯痛;糖尿病;インスリン非依存性糖尿病;血管障害;炎症;関節炎;気管支過敏症、喘息;ショック;敗血症;アヘン禁断症状;モルヒネ耐性;男性および女性におけるほてり;アレルギー性皮膚炎;脳炎;頭部外傷;てんかん;神経変性疾患;皮膚疾患;神経因性皮膚発赤、皮膚しゅさおよび紅班;耳鳴り;炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、膀胱炎;およびCGRP受容体の拮抗作用により治療または予防され得る他の状態。片頭痛および群発頭痛を含む頭痛の急性または予防治療が特に重要である。
【0041】
表題の化合物は、更に本明細書に記載されている疾患、障害および状態の予防、治療、抑制、改善または危険性の低減のための方法において有用である。表題の化合物は更に、他の薬剤と組み合わせて先述の疾患、障害および状態の予防、治療、抑制、改善または危険性の低減のための方法において有用である。
【0042】
用語化合物「の投与」および/または化合物を「投与すること」は本発明の組成物を治療を必要としている個体に提供することを意味すると理解されるべきである。
【0043】
治療の本方法を実施するための本発明の組成物の投与は、構造式1の化合物の有効量を、このような治療または予防を必要としている患者に投与することによって行われる。本発明の方法による予防的投与の必要性は、周知の危険因子の使用により決定される。それぞれの化合物の有効量は、最後の分析において、担当医師によって決定されるが、治療されるべき確かな疾患、該疾患の重症度および患者が罹っている他の疾患または状態、投与の選択された経路ならびに患者が同時に必要とする他の薬剤および治療および医師の判断における他の因子などの因子に依存する。
【0044】
代表的な実験手順を以下に示す。これらは単に典型例であり、本発明の新規組成物および方法の制限であるとして解釈されるべきでない。
【実施例1】
【0045】
液体製剤
【0046】
【表5】

【0047】
水浴を35℃(5℃変動)に予め加熱した。液体PEG400、プロピレングリコール、Cremophor(登録商標)ELおよびポリソルベート80をステンレススチール容器(直径が51/4インチ)に直接分注し、2インチの混合羽根を用いて600RPMで攪拌した。化合物I(粉末)を渦の中に加えた。化合物Iの添加後、内容物を600rpmで約2時間混合し、その間温度を35℃(5℃変動)に維持した。該製剤が混合された時に、不溶解粒子について定期的に目視検査した。混合2時間後、空気泡のみが存在し(これは、高い濃度の界面活性剤のためであった)、化合物Iは完全に溶解した。該溶液を真空下で約2.5時間脱気し、40℃(5℃変動)に一晩置き、ついで再び更に1.1時間真空下に置き、脱気を終了した。該製剤のカプセル化の準備ができた。
【実施例2】
【0048】
液体製剤
【0049】
【表6】

【0050】
液体PEG400、プロピレングリコール、CremophorEL、ポリソルベート80および水を51/4インチ直径の容器に入れ、600RPMで2インチ羽根で混合した。化合物Iを該混合物に加え、25℃±5℃で更に2.5時間攪拌を続けた。該混合物を1時間に一度サンプリングし、顕微鏡下で目視エンドポイント(固体粒子がないこと。)を測定した。該溶液を更に1時間混合した。該溶液を100ミクロンまでのフィルターを通して濾過し、泡および気泡のない黄色の透明な溶液が得られるまで脱気した。
【実施例3】
【0051】
軟ゼラチンカプセル充填物
実施例2で得られた充填溶液(1050mg)およびBanner Pharmacapsにより供給されたゼラチン成分をカプセル化機械に供給した。充填溶液をカプセル化するために、ゼラチン製剤を2つの冷ローラー上でシートにキャスティングした。これらのシートを一連のロールを通し、そこで食品グレードの滑剤を適用した。このシートを回転ダイスロールを通して送り、そこでソフトゲルを形成した。該ソフトゲルの下端が形成された時、往復ポンプが充填溶液の1050mgをソフトゲルの中心に注入し、その後にダイスの上端が一緒になり該ソフトゲルをシールした。新しく形成されたソフトゲルを該シートから取り外し、空気圧で回転乾燥器に運び、ここで45−60分間留めた。乾燥器を出た時に、該ソフトゲルをトレイ上に広げ、乾燥トンネル(低湿度室)に置き、乾燥した。乾燥工程を終了した時に、欠陥について該ソフトゲルを目視で検査した。次いで、大きすぎるカプセルおよび小さすぎるカプセルを取り除くためにカプセルの大きさを整え、磨いた。得られた充填されたソフトゲルカプセルのそれぞれは化合物Iを300mgを含んだ。
【実施例4】
【0052】
硬ゼラチンカプセル充填物
蠕動ポンプを用いて、実施例1の溶液をカプセル化のためのホッパーにポンプで注入した。該液体製剤をサイズ1の白色の不透明な、硬ゼラチンカプセル(ゼラチンおよび二酸化チタンを含むCAPSUGEL)中に667mgの目標充填重量まで分注入した。充填したカプセルをLEMS30カプセルシーラーに移し、水:エタノール(脱水、190プルーフ)溶液の1:1(重量:重量)の混合物をスプレーしてシールした。スプレー後、カプセルを約45℃に緩やかに加熱して乾燥した。シールしたカプセルをトレイ紙を並べたトレイ上に置き、減圧室(ZANASI4OE真空トラップ)に置いた。真空サイクルの完了後、目視で漏れについてカプセルを目視検査した。許容できるカプセルをZANASIカプセル選別機を通し、空カプセルを取り除いた。ついで、完成したカプセルを適切な入れ物に包装した。得られた充填カプセルはそれぞれ200mgの化合物Iを含んだ。
【実施例5】
【0053】
安定性
【0054】
【表7】

【0055】
化合物Iの液体製剤を含む200mgの硬ゼラチンカプセル(実施例1および4に記載したのと類似の手順により調製されたカプセルおよび液体充填物)を製造し、周囲湿度で5℃および60%相対湿度で25℃の条件下で貯蔵した。
14週および39週での組成物分析結果は良好な安定性を示す。
【実施例6】
【0056】
生物学的利用度
【0057】
【表8】

【0058】
非盲検、無作為化、5期交差試験において、化合物Iの5つの異なったカプセル製剤(上記の表を参照)を18から45の間の年齢の20名の健常男性に400mgの単回用量で経口投与した。それぞれの時期に、被験者は一晩絶食後、240mLの水1カップで5つの製剤の1つを単回経口用量で投与し、ついで最低72時間休薬した。抗凝固剤としてのヘパリンナトリウムの存在下で、投与前および投与後、20、40分、1、1.5、2、3、4、6、8、12、16、24、48時間に採血した。血漿を遠心分離により分離し、LC−MS/MSによる分析まで−70℃で凍結保存した。
【0059】
ヒト血漿中の化合物Iの濃度を測定するための液体クロマトグラフィー/直列質量分析と連結した急速溶出モード下のCohesive high−turbulence liquid chromatography(HTLC)を用いるオンライン抽出分析を開発し、検証した。安定な同位元素標識D5−化合物Iを内部標準として用いた。血漿試料をPackard MultiPROBEII液体取り扱いシステム上で調製し、付着TX1またはTX2Flux2300システム上に直接注入した(このTX2システムは、抽出および分析の2つのセットの平行操作を可能にし、試料の処理能力が増加する。)。検体およびその内部標準は、10:90アセトニトリル:0.1%ギ酸を用い、付着C1Rカラム(0.5x50mm、6Ou)によりオンライン抽出し、50:50アセトニトリル:0.1%ギ酸で逆溶出し、50:50から70:30のアセトニトリル:0.1%ギ酸の傾斜勾配を用いて、Thermo−Keystone FluophaseRP カラム(100x2.lmm、5u)上で分析した。検出をターボイオンスプレイインターフェースによる陽イオン化を用いてMRM(multiple−reaction monitoring)モードでSciex API4000質量分析上で遂行した。これらの条件下で、ジアステレオマーは、化合物Iから良く分離され、化合物Iまたは内部標準に対して、ヒト血漿の内因性成分からの干渉は認められなかった。この分析は、ヒト血漿の0.05−mLアリコートに基づく5nMの定量限界下限を有した。標準曲線の範囲は、5から5000nMであった。分析時間は、TX1システム上で試料あたり10.0分であった。
【実施例7】
【0060】
溶解性
カプセル製剤の作成において通常使用される各種の液体成分および混合物中の化合物Iのエタノラートナトリウム塩の溶解度を下に示す。単位は、遊離酸の当量(非イオン化薬物)で表し、値は光学顕微鏡による目視検査により確認した。これらの個々の賦形剤において最高の溶解度が見出されたので、この組み合わせを試験した。
【0061】
【表9】

【実施例8】
【0062】
相安定性
PEG400およびポリソルベート80などの界面活性剤の混合物は、あらゆる割合で混ざらないので、有効な界面活性剤/溶媒系を開発するためにかなりの創意が要求された。相分離は、2つの液体溶媒が混じり合わず、且該混合物が濁る点についての共通の用語である。完全に混じり合ったPEG400/ポリソルベート80混合物を得るためには、該界面活性剤は40重量%より多くなければならない。しかし、界面活性剤のこのレベルは、ヒトの患者への投与の許容限度を超える。したがって、PEGおよび界面活性剤の適正なバランスを可能にするために、製剤においてもう1つの界面活性剤が要求された。単一の液体相を維持することに基づいて、可能性のある多数の成分をポリソルベート80の約1/2に対する代替として試験した。相分離に関して好適な成分には、エタノール、ポリソルベート20、Labrasol(登録商標)、Cremophor(登録商標)ELおよびCarpryol(登録商標)90が含まれる。
【0063】
【表10】

【0064】
本発明をその一定の特別な実施形態を参照して記載し、説明したが、当業者は、その中で、本発明の精神および範囲を逸脱せずに多様な変更、改善および置き換えがなされ得ることを理解するであろう。従って、本発明は、次の請求項の範囲によって定義されることおよびこのような請求項は合理的であり得る限り広く解釈されるべきことが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)1−[1−({[(3R,6S)−6−(2,3−ジフルオロフェニル)−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)アゼパン−3−イル]アミノ}カルボニル)ピペリジン−4−イル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロイミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イドまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物、
(2)1つ以上の界面活性剤、
(3)1つ以上の溶媒および
(4)任意選択による水
を含む液体製剤であり、前記1つ以上の界面活性剤のそれぞれは、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリソルベート、ポリエチレングリコールエステルグリセリド、ソルビタンモノオレエート、飽和ポリグリコール化グリセリドおよびポリプロポキシル化ステアリルアルコールからなる群から選ばれ、ならびに前記1つ以上の溶媒のそれぞれは、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、DMSO、エトキシジグリコール、ジエチレングリコールおよびポリオキシプロピレンブロックコポリマーからなる群から選ばれる、液体製剤。
【請求項2】
前記1つ以上の界面活性剤のそれぞれがCremophor(登録商標)EL、Tween−80、Tween−20、Labrasol(登録商標)、Labrifil(登録商標)1944、Cremophor(登録商標)RH60、Creacmophor(登録商標)RH40、Span(登録商標)−80、ビタミンE−TPGS、Gelucire(登録商標)44/14、Acconon(登録商標)MC−8、Span(登録商標)−20、Acconon(登録商標)CC−6およびGelucire(登録商標)50/13からなる群から選ばれる、請求項1の液体製剤。
【請求項3】
前記1つ以上の界面活性剤のそれぞれがCremophor(登録商標)EL、Tween−80、Tween−20およびLabrasol(登録商標)から選ばれ、ならびに前記1つ以上の前記溶媒のそれぞれがエタノール、プロピレングリコール、PEG400およびPEG600から選ばれる、請求項1の液体製剤。
【請求項4】
1−[1−({[(3R,6S)−6−(2,3−ジフルオロフェニル)−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)アゼパン−3−イル]アミノ}カルボニル)ピペリジン−4−イル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロイミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イドまたはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物、Cremophor(登録商標)EL、ポリソルベート80、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコールおよび水を含む、請求項1に記載の液体製剤。
【請求項5】
(a)5%から40%の1−[1−({[(3R,6S)−6−(2,3−ジフルオロフェニル)−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)アゼパン−3−イル]アミノ}カルボニル)ピペリジン−4−イル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロイミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イド;
(b)0%から95%のポリエチレングリコール400;
(c)0%から95%のポリソルベート80;
(d)0%から95%のCremophor(登録商標)EL;
(e)0%から95%のプロピレングリコールおよび任意選択により
(f)0%から20%の水
を含む、
請求項3に記載の液体製剤。
【請求項6】
(a)20%から35%の1−[1−({[(3R,6S)−6−(2,3−ジフルオロフェニル)−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)アゼパン−3−イル]アミノ}カルボニル)ピペリジン−4−イル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロイミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イド;
(b)0%から50%のポリエチレングリコール400;
(c)0%から50%のポリソルベート80;
(d)0%から50%のCremophor(登録商標)EL;
(e)0%から50%のプロピレングリコールおよび任意選択により
(f)0%から10%の水
を含む、
請求項3に記載の液体製剤。
【請求項7】
(a)28.5%の1−[1−({[(3R,6S)−6−(2,3−ジフルオロフェニル)−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)アゼパン−3−イル]アミノ}カルボニル)ピペリジン−4−イル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロイミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イド;
(b)23.3%のポリエチレングリコール400;
(c)18.1%のポリソルベート80;
(d)18.1%のCremophor(登録商標)EL;
(e)7%のプロピレングリコールおよび任意選択により
(f)5%の水
を大凡含む、
請求項3に記載の液体製剤。
【請求項8】
(a)28.5%の1−[1−({[(3R,6S)−6−(2,3−ジフルオロフェニル)−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)アゼパン−3−イル]アミノ}カルボニル)ピペリジン−4−イル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロイミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イド;
(b)23.3%のポリエチレングリコール400;
(c)18.1%のポリソルベート80;
(d)18.1%のCremophor(登録商標)EL;
(e)7%のプロピレングリコールおよび任意選択により
(f)5%の水を含む、
請求項3に記載の液体製剤。
【請求項9】
(a)28.5%の1−[1−({[(3R,6S)−6−(2,3−ジフルオロフェニル)−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)アゼパン−3−イル]アミノ}カルボニル)ピペリジン−4−イル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロイミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イド;
(b)23.3%のポリエチレングリコール400;
(c)18.1%のポリソルベート80;
(d)18.1%のCremophor(登録商標)EL;
(e)7%のプロピレングリコールおよび
(f)5%の水
を含む、
請求項3に記載の液体製剤。
【請求項10】
請求項7に記載の液体製剤を含むカプセルであり、1−[1−({[(3R,6S)−6−(2,3−ジフルオロフェニル)−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)アゼパン−3−イル]アミノ}カルボニル)ピペリジン−4−イル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロイミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イド100mgから300mgを含む、カプセル。
【請求項11】
1−[1−({[(3R,6S)−6−(2,3−ジフルオロフェニル)−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)アゼパン−3−イル]アミノ}カルボニル)ピペリジン−4−イル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロイミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イドの量が100mg、150mg、200mg、250mgおよび300mgから選ばれる、請求項7に記載の液体製剤を含むカプセル。
【請求項12】
請求項7に記載の液体製剤を含むカプセルであり、液体製剤が150または300mgの活性剤カリウム1−[1−({[(3R,6S)−6−(2,3−ジフルオロフェニル)−2−オキソ−1−(2,2,2−トリフルオロエチル)アゼパン−3−イル]アミノ}カルボニル)ピペリジン−4−イル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロイミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イドを含む、カプセル。
【請求項13】
請求項7の液体製剤を、治療を必要とする患者に投与する段階を含む、頭痛の治療法。
【請求項14】
請求項8の液体製剤を、治療を必要とする患者に投与する段階を含む、頭痛の治療法。
【請求項15】
請求項7の液体製剤を、治療を必要とする患者に投与する段階を含む、偏頭痛、群発頭痛または両方の治療法。
【請求項16】
請求項8の液体製剤を、治療を必要とする患者に投与する段階を含む、偏頭痛、群発頭痛または両方の治療法。
【請求項17】
1つ以上の請求項11の液体充填カプセルを、治療を必要とする患者に投与する段階を含む、頭痛の治療法。
【請求項18】
請求項7の液体製剤を水性系に導入することにより形成される、マイクロエマルジョン系およびミセル系または両方を含む再構成組成物。
【請求項19】
前記水性系がヒトの消化管である請求項18の組成物。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2010−502710(P2010−502710A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527409(P2009−527409)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/019461
【国際公開番号】WO2008/030524
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】