説明

CIPが可能なコーティング装置中での多層複合体の製造方法及びそれによって製造された多層複合体の経皮アプリケーション又は体腔におけるアプリケーションのための使用

本発明は、幾つかの工程を含む単層化合物、又は多層化合物の製造方法に関し、ここで最初に、液体成分を用いるコーティングによって、一つ又は幾つかの層が搬送材料に適用され、次いで本多層化合物が乾燥され、そして乾燥された単層化合物、又は多層化合物が次いで巻き取られ、ここで最終工程において装置が洗浄される。コーティングされた多層化合物の乾燥中に、空気供給を新しくするために、乾燥オーブン(5)中の空気循環が全体に設定され、そして乾燥オーブンの内部チャンバーが、制御された状態で洗浄することができるように構築される。その結果、そこで製造される製品と接触することができる乾燥オーブン(5)の全ての部品が、GMP適合洗浄の目的のために除去される必要がないが、洗浄することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層複合体の製造方法に関し、ここで最初に、液体成分を用いるコーティングによって、一つ又はそれ以上の層が基材に塗布され、コーティングされた多層複合体がその後に乾燥され、そして乾燥された多層複合体がその後に巻き上げられる。本方法の最終工程は装置の洗浄であり、それは、本発明に従えば、CIPシステムを用いて、つまり、装置内に一体化されている「CIP洗浄」を可能とするシステムを用いて実行される。本発明はまた、薬学的活性成分の塗布するための、及び例えば化粧品活性成分、医薬活性成分、食品サプリメント、又は医薬品を体腔中において適用するための経皮システムとして、本発明に記載の方法に従って製造される多層複合体を使用に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤、カプセル、糖衣錠剤、滴剤、注射又は直腸形態のアプリケーション等の医薬のためのアプリケーションの公知の形体に加えて、経皮システム又はオブラートを用いる投与形体もある。経皮システム又はオブラートは、ウェブ形状材料の製造は、コーティング、乾燥及びローラー上への巻き取り等の複数の連続的工程を含む状態で、ウェブ形状の材料から製造される。例として、それらは特許文献1において述べられている。運転中の最終作業としての装置の洗浄は、通常、製造の実際の手順の次にくる。これは、別の、新しい処方の製造のために、非経済的な停止時間を避けるべく、できるだけ迅速に装置が利用可能になるべきであるからである。更に、洗浄方法を信頼することができるように検証することが可能であるべきである。
【0003】
コーティングの工程中に、一つ又はそれ以上の液体成分が、コーティング装置を用いて基材に適用される。しかしながら、この後でそのコーティングが完了する多層複合体は、まだ比較的に高い割合の液体を含有しており、それは通常、次の連続的製造工程における熱によって除去される。
【0004】
従って、コーティングが完了した多層複合体は、乾燥のために乾燥オーブン内に供給され、後者は好ましくは連続で運転されている。乾燥オーブンは一つ又はそれ以上の乾燥領域を含むことができる。個々の乾燥領域は、その各々で異なる温度及び空気量の点で異なる。追加的に、各乾燥領域はそれ自身の空気制御を有するべきであり、通常、その中にフィルター及び加熱要素も一体化される。コーティングされた多層複合体上への乾燥オーブン中の熱の作用によって、コーティングされた多層複合体から空気流内へと湿気が逃げることが可能になる。空気流における湿度を安定に保持するために、乾燥した新鮮な空気が供給されなければならず、そしてそれが、使用しきった湿った空気を置換するために使用される。新鮮な空気供給の湿度における変動は、乾燥の効率に対して直接的な影響を有し、そして、湿り過ぎても、乾燥し過ぎてもいけない完成品の品質に対して間接的な影響を有する。
【0005】
乾燥オーブンから出てくる乾燥された多層複合体は直ちにローラー上に巻き取られる。
【0006】
乾燥が終了して巻き取られた多層複合体は、場合により、一時保存されるか又は遠くに輸送される一方で、操作の次の工程は、できる限り迅速に実施されるべきであるが、同時に、「相互汚染」、つまり、前の製造サイクルにおいて装置中で製造された痕跡量の材料が、装置中のそれに続く製造サイクルにおいて製造される材料へと伝わること、が確実に排除することができるように、徹底的に実施されるべきである、装置の完全な洗浄である。この特に徹底的な洗浄方法が、当業界用語におけるGMP指針に合致するものとしても知られている(インターネットでの無料百科事典であるWikipediaを参照)。それと組み合わせて、装置の特に非経済的な休止時間は可能な限り最短時間に短縮されるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 03/61635
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、大規模で経済的に実行することができる、コーティング装置における乾燥オーブンのための、簡単だが同時に信頼することができると保証される洗浄方法を特定することである。同時に、これは最適な状態における経皮システム又はオブラートの要求に関して、コーティングされた多層複合体の乾燥の設定を可能ならしめるべきである:これは、制御可能な空気供給を用いる複数の乾燥領域を有する乾燥オーブンを含み、ここで湿度の正確かつ個別の制御が、個々の乾燥領域において常時、確保されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、当初に述べられたタイプの方法によって達成され、その特徴的様相は、乾燥オーブン中のコーティングされた多層複合体の乾燥中に、空気供給を新しくするために空気循環が全体に設定されているもの、及び乾燥オーブンの内部が制御された状態で洗浄されることができているものと考えられるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
紙ウェブ又は、天然繊維又は合成繊維でできた布又は不織布の形をした織物ウェブ等のウェブ形状の材料が多層複合体のための基材として適切であるが、場合により孔も備えることができるプラスチックフィルムも利用されてよい。
【0011】
水及び/又は有機溶媒との混合物における有機原材料は、本発明に記載の方法における、基材をコーティングするための液体成分として実質的に問題となる。水溶性であり又は水に懸濁することができる有機原材料の混合物も特によく適している。そのような有機原材料の例は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、アルギン酸塩、キサントゲン酸塩、ゼラチン等の高分子、及び当業者に公知の他のおおむね水溶性の高分子である。所望ならば、液体成分はまた、マンニトール、ラクトース、リン酸カルシウム、グルコース又はソルビン酸誘導体等の充填剤を、更に、含んでもよい。医薬品、香味料、メントール、グルタミン酸塩などの活性物質の添加剤、及び一部揮発性タイプの他の添加剤もまた、好適である。
【0012】
本発明によると、従来の適用技術に従って、基材は一つ又はそれ以上の液体成分でコーティングされる。例として、液体成分が基材上に注入できて、ローラー又は当業者に公知の他の関連する方法を用いて適用することができる。
【0013】
コーティング装置を洗浄するために、基材及び/又は一つ又は複数の液体成分と接触するようになる全ての装置部分が、CIP洗浄(CIP)技術を用いて徹底的に洗浄される。更に、特にもし、コーティング材料が最少量であっても、コーティングプロセス中に基材からはがれていれば、及び/又はもしコーティングプロセス中にコーティング材料の内容物が蒸発してコーティング装置中に沈積されるのであれば、残りの装置部分が洗浄される必要がある。
【0014】
本発明に記載の方法に対して利用される乾燥オーブンは、空気供給を新しくするために、その中で空気循環が完全に設定される、好ましくは少なくとも二つの、特に好ましくは14個までの乾燥領域を含む。ここで、各乾燥領域において、調節された新鮮な空気流によって、各乾燥領域中の塗布された多層複合体の全表面の均一な風当てをそれらが可能ならしめるように、導入ノズルが具体化(embodied)される。乾燥オーブン中の個々の乾燥領域の各々は、他の全ての乾燥領域から独立して制御することができる、供給された新鮮な空気流の調節を有する。これによって、空気量、空気温度及び空気の湿度を介して、各乾燥領域において最適乾燥条件が正確に設定できることが確保される。
【0015】
本発明に記載の方法に対して使用される乾燥オーブンは、好ましくは、その内部全体が制御された状態で洗浄でき、そして容易に近づくことができるように構築されている。より具体的には、これは、そこで製造される製品と接触することになり得る乾燥オーブンの全ての部品が、洗浄の目的のために分解される必要がないが、乾燥オーブン内に一体化されたシステムを用いてCIP技術を用いて洗浄できることを意味する。そうすることによって、乾燥オーブンの上下部分に対する簡単なアクセスを確保するために、乾燥オーブンの上部が上方に持ち上げることができるように、乾燥オーブンの外側のハウジングが具体化される。これはCIP技術の洗浄の成功をモニターするために使用される。洗浄のために分解が必要でないように、乾燥オーブン内部の全ての取り付け具(fixture)が具体化される。更に、乾燥オーブンの内部がデッドスペースを持たないように具体化される。これは、可能性のある汚染物が沈積し易い全てのコーナー及び隅が、適切な設計技術によって排除されるか、又はもしそれらが生じた際に、適切なカバー要素によって汚染物がその中に進入することから仕切られることを意味する。
【0016】
コーティングされた多層複合体が乾燥オーブン及び種々の乾燥領域を通して、それを用いて動かされる全ての輸送ローラーは、好ましくは、中空シャフトとして具体化され、そして噴霧ノズルを備える。もしそれらが高圧ポンプに結合されると、これらの輸送ローラーの内部から外への非常に速い洗浄が可能になり、そして同時に、乾燥オーブン内のそれらの直接的な近辺の洗浄も、乾燥オーブンのこれらの部品を分解する必要なしで可能になる。本発明に従えば、CIP技術を用いて乾燥オーブンの内部の全ての領域に届き、そうすることで制御された状態で洗浄することができるように、噴霧ノズルが配置される。輸送ローラーは好ましくは、洗浄プロセスの間ずっとゆっくりと回転する、そしてこのことによって、乾燥オーブンの内部全体における洗浄効果が最適化される。洗浄に必要な洗浄流体は、乾燥オーブンのベース中に集まり、このベースは底に向かって円錐状の設計を有し、そしてそこから高圧ポンプに再供給することができるか、又は簡単に排出することができるか、又はポンプを用いて除去することができる。このように、洗浄方法が明確に特徴付けられそして検証することができる。
【0017】
本発明に記載の方法に従って製造された多層複合体は、医薬品又は化粧品を適用するための、又は体腔中に適用するための経皮システムとしての使用に対して特に適切である。
【0018】
ここで、本発明を例示的に当業者に説明し、そして、図1及び図2のように添付図面を用いて更により明確に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】多段プロセスにおいて本発明に従って如何にして多層複合体が製造されるかを模式的に示す。
【図2】本発明に記載の本方法に適する乾燥オーブンのセグメントを通した、横方向に見た垂直断面の模式的描写を示す。
【0020】
参照符号を用いて、図1は基材2の巻き戻し1を説明する。基材2は続くコーティング場所3において一つ又はそれ以上の液体成分でコーティングされる。コーティングされた基材4は次いで、図1に記載の実施態様において、複数の乾燥領域T1、T2、T3、Tx−1及びTxを含む乾燥オーブン5に供給される。空気供給6は、乾燥オーブン5の上部上に描かれており、一方、排出空気7は乾燥オーブン5の下部に集められ、そして横方向に排出される。乾燥領域Txで乾燥オーブン5を出ていく乾燥された多層複合体8は、偏向ローラー9を介して巻き取り場所10に供給され、そしてそこで巻き取られる。
【0021】
図2において、同じ参照符号は図1と同じ意味を有する。本発明に記載の方法に適する乾燥オーブン5の個々のオーブン・セグメントTnが描かれている。オーブン・セグメントTnは、矢印の方向に上下に動くことができる上部ハウジング部11を有し、そして底に向かって円錐状に傾いた設計を有する下部ハウジング部12は流出部15を有する。オーブン・セグメントTnにおいて乾燥される多層複合体14は、上部ハウジング部11及び下部ハウジング部12の間を、矢印の方向に左から右に正確に動く。空気供給6はオーブン・セグメントTnの上部において確認でき、一方、排出空気7は底に向かって横方向に逃げる。噴霧ノズル(図示されていない)を備える誘導ローラー17が、該多層複合体をオーブン・セグメントTnを通して矢印の方向に左から右に正確に動かすために使用される状態で、空気供給6を通して入る空気は、合わされた加熱ノズルシステム16を介して乾燥される多層複合体14に適用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層複合体の製造方法であって、最初に、液体成分を用いるコーティングによって、一つ又はそれ以上の層が基材に適用され、コーティングされた多層複合体がその後に乾燥され、そして乾燥された多層複合体がその後に巻き上げられ、最終工程として装置が洗浄され、ここで乾燥オーブン(5)中のコーティングされた多層複合体の乾燥中に、空気供給を新しくするために空気循環が全体に設定され、そしてここで、乾燥オーブンの内部が、それが制御された状態で洗浄することができるように具体化される、多層複合体の製造方法。
【請求項2】
紙ウェブ又は、天然繊維又は合成繊維でできた布又は不織布の形をした織物ウェブのようなウェブ形状の材料が基材(2)として利用されるが、場合により孔も備えることができるプラスチックフィルムも利用されてよい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基材(2)のコーティングのための液体成分として、水との混合物における有機原材料が、より特別には、水溶性であり又は水に懸濁することができるポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、アルギン酸塩、キサントゲン酸塩、ゼラチン、及び他の水溶性高分子のような有機原材料の混合物が実質的に使用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
基材(2)をコーティングするための液体成分が、更にマンニトール、ラクトース、リン酸カルシウム、グルコース又はソルビン酸誘導体のような充填剤を追加的に含有し、そしてここで、それが、活性成分、香味料、メントール、グルタミン酸塩等の活性物質の添加物、及び一部揮発性タイプの他の添加剤も追加的に含有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
基材(2)が、液体成分が基材上に注入され、又はローラーを用いて適用される、従来の適用技術に従って、一つ又はそれ以上の液体成分でコーティングされる、請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
本方法のための乾燥オーブン(5)が、その内部全体が制御された状態で洗浄できて、そして乾燥オーブン(5)内に一体化されたシステムを用いてCIP技術を用いて洗浄することができるように構築される、請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
乾燥オーブン(5)の上部(11)が上方に持ち上げられることができて、そしてここで、洗浄のために取り外しが必要でないように、乾燥オーブン(5)内部の全ての取り付け具が具体化されるように、乾燥オーブンの外側のハウジングが具体化される、請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
乾燥オーブン(5)の内部がデッドスペースを持たず、ここで、可能性のある汚染物が沈積し易い全てのコーナー及び隅が、適切な設計技術によって排除されるか、又は適切なカバー要素によって汚染物がその中に進入することから仕切られる、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
コーティングされた多層複合体(14)が、乾燥オーブン(5)及び個々の乾燥領域(T1からTx)を通して、それを用いて動かされる全ての輸送ローラー(17)が中空シャフトとして具体化され、そして噴霧ノズルを備える、請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
中空シャフトとして具体化され、そして噴霧ノズルを備える輸送ローラー(17)が高圧ポンプに結合され、これが、輸送ローラーを通して、そして輸送ローラー内に一体化された噴霧ノズル内へと、洗浄流体をポンプで吸い上げる、請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
輸送ローラー(17)が洗浄プロセスの間に回転する、請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
洗浄流体が、乾燥オーブン(5)の下方ハウジング部分(12)中を連続して流れ、この下方ハウジング部分が、該洗浄流体が流出部(15)を介してそこから排出され、又はポンプを用いて高圧ポンプに戻る、又は除去される、底に向かって円錐状に傾いた設計を有する、請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
活性成分又は化粧品を適用するための、又は活性成分又は化粧品を体腔内に適用するための経皮システムとしての、又はオブラートとしての、請求項1〜12の何れか1項に記載の方法において製造される多層複合体の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−528613(P2011−528613A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519071(P2011−519071)
【出願日】平成21年7月20日(2009.7.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005239
【国際公開番号】WO2010/009848
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】