説明

CLEC14A阻害剤

個体における腫瘍血管新生を阻害する方法であって、CLEC14Aの阻害剤を個体に投与するステップを含む、方法に関する。阻害剤は、抗体、siRNA分子、アンチセンス分子、またはリボザイムであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、腫瘍内皮特異的遺伝子およびポリペプチド、腫瘍血管系をイメージングし標的化するための、これらのポリペプチドに結合する抗体の使用、ならびに、固形腫瘍における血管新生を阻害するための、これらの腫瘍内皮特異的遺伝子/ポリペプチドの阻害剤の使用、に関する。特に、本発明は、CLEC14A、腫瘍血管新生をイメージングし標的化するための、CLEC14Aに結合する抗体の使用、ならびに、固形腫瘍における血管新生を阻害するための、CLEC14Aの阻害剤の使用、に関する。
【背景技術】
【0002】
内皮は、多数の生理的かつ病理学的プロセスにおいて中心的役割を果たし、またそれは非常に活性の高い転写部位であることが知られている。約1,000の異なる遺伝子が内皮細胞内で発現されるが、それらの多くは、内皮細胞に特異的なものではない。それに対し、赤血球は、8つの血小板22および平滑筋127の別々の遺伝子を発現することが見出されている(Adamsら(1995年) Nature 377(6547 Suppl):3−174頁)。既知の内皮特異的遺伝子は、基礎研究および臨床コミュニティの双方から多大な注目を集めている。例えば、内皮に特異的なチロシンキナーゼTie、TIE2/TEK、KDR、およびflt1は、血管の完全性、内皮媒介性の炎症性プロセスおよび血管新生の調節における重要な担い手(player)である。
【0003】
発明者は、過去に、コンピュータ上のデータベースによるスクリーニングアプローチを用いて内皮特異的遺伝子を同定しており、4つの新たな内皮特異的候補遺伝子を同定したが、その中のいずれもCLEC14Aではなかった(HuminieckiおよびBicknell(2000年) 「In silico cloning of novel endothelial−specific genes.」 Genome Res.10:1796−1806頁)。
【0004】
Hoらは、データマイニングおよびマイクロアレイ発現分析を用い、内皮特異的遺伝子を同定し、内皮細胞に特異的であるかまたは内皮細胞内で少なくとも3倍優先的に発現される64の遺伝子を同定したが、その中のいずれもCLEC14Aではなかった(Hoら(2003年) 「Identification of endothelial cell genes by combined database mining and microarray analysis.」 Physiol Genomics.13:249−262頁)。
【0005】
Wallgardらは、公的に利用可能なマイクロアレイ発現データを分析し、微小血管系における広範な内皮特異的発現を伴う58の遺伝子のコアセットを同定した。このセットは、最も有名でかつ現在使用されている内皮マーカー、ならびに過去に内皮機能と関連性がなかった遺伝子を含むが、その中のいずれもCLEC14Aではなかった(Wallgardら(2008年) 「Identification of a core set of 58 gene transcripts with broad and specific expression in the microvasculature.」 Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.28:1469−1476頁)。
【0006】
内皮細胞は、すべての血管沿いに並びかつ血流と周囲組織との間での交換を調節する単細胞層を形成する。新しい血管が、血管新生と称されるプロセスにおける内皮細胞の増殖により、既存の小管の壁から発生する。内皮細胞は、培養液中に単離される場合であっても、空洞の毛細管の形成能を有する。一旦、血管系が十分に発達すると、血管の内皮細胞は通常、休止状態を維持し、自然な創傷治癒における新しい血管の形成以外での新たな管形成は全くない。
【0007】
しかし、一部の腫瘍は、近隣の内皮細胞を刺激し、新しい毛細血管芽を作る因子を分泌することにより、新しい血液供給を促進する。血管新生は、固形腫瘍の進行における主要な役割を果たし、固形腫瘍の成長における律速プロセスとして広く認識されている。血液供給を促進できない腫瘍は、その成長が著しく制限される。したがって、不適切であるかまたは望ましくない血管新生に対する阻害能は、固形腫瘍の処置において有用でありうる。
【0008】
新しい血管の発生は、局所的な腫瘍進行と遠隔転移の発生の双方にとって不可欠である。確かに、腫瘍の成長および生存は、その血液供給を得る能力に依存し、腫瘍内皮上に受ける損傷は、腫瘍を有効に根絶することが示されている(Burrowsら(1993年) 「Eradication of large solid tumors in mice with an immunotoxin directed against tumor vasculature.」 Proc Natl Acad Sci USA、90(19):8996−9000頁)。腫瘍血管新生は、活性化組織または循環内皮前駆体による基底膜の分解、内皮細胞の増殖および移動、細胞外マトリックスとの相互作用、形態学的分化、細胞接着および血管脈管形成(vascular tube formation)を含む。したがって、腫瘍血管新生の阻害は、抗腫瘍療法における標的であり、ここでは血管新生阻害剤が単独でまたは標準的癌治療と組み合わせて利用される。しかし、抗腫瘍剤を血管新生の部位に標的化することは、腫瘍血管新生の特異的マーカーの同定に依存する。いまでは、固形腫瘍の成長が、それが血液供給を得る能力に依存し、またこのプロセスを破壊する抗血管新生剤の開発に多大な努力が向けられていることは理解されている。また、確立された腫瘍血管系の標的化された破壊が治療機会を促すための別の手段であり、また広範に発現される腫瘍内皮マーカーの発見が多大な臨床的利益を約束することが明らかになっている(NeriおよびBicknell(2005年) 「Tumour vascular targeting」、Nat Rev Cancer 5(6):436−446頁)。
【0009】
これらの治療的アプローチは、特異的な腫瘍内皮マーカー(TEM)の同定に依存する。抗血管新生腫瘍療法における候補でありうる腫瘍特異的な内皮マーカーについてのスクリーニングでは、St Croixら(2000年)は、腫瘍内皮由来の内皮細胞と正常な結腸粘膜との間に特異的に発現された79の遺伝子を同定し、そのいずれもがCLEC14Aでなかった(St Croixら(2000年) 「Genes expressed in human tumor endothelium.」 Science 289:1197−202頁)。33のこれらの遺伝子(11の既知の遺伝子および14の現時点で(as−then)特徴づけられていない遺伝子を含む)の発現が、腫瘍内皮細胞内で少なくとも10倍高まった。組織試料に対するインサイチュハイブリダイゼーションによると、徹底的に試験された9つの特徴づけられていない遺伝子のうちの8つの発現が、腫瘍内皮細胞に特異的であることが確認された。さらに、これらの遺伝子はまた、肺および脳腫瘍を含む他の腫瘍の内皮細胞上で発現された。これらの遺伝子はまた、1つの遺伝子を除き、創傷治癒などの他の血管新生状態において高レベルに発現された。
【0010】
Khodarevら(2003年)は、U87ヒトグリオーマ細胞とヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)とを共培養することによる腫瘍/内皮−細胞相互作用をモデル化した。U87細胞は、増殖、移動および網状形成の増大を含む、HUVEC内で「活性化された」表現型を誘発した。活性化は、細胞が直接接触または物理的分離のいずれかの状態にある場合の共培養物中で認められ、これは、認められた表現型および遺伝子型の変化における可溶性因子にとっての重要な役割を示唆した。腫瘍が活性化された内皮細胞の発現プロファイリングが、cDNAアレイを用いて評価され、定量PCRによって確認された。TGFβRIIとTGFβ3、FGFRII、およびシステインリッチ線維芽細胞成長因子受容体(CRF−1)とFGF7、およびFGF12、CCR1、CCR3、CCR5とRANTES、およびカルシトニン受容体様遺伝子(CALCRL)とアドレノメデュリンを含む、受容体/リガンドの一致ペアが、協調的に発現されることが見出された。CLEC14Aは、同定されなかった(Khodarevら(2003年) 「Tumour−endothelium interactions in co−culture:coordinated changes of gene expression profiles and phenotypic properties of endothelial cells」,Journal of Cell Science 116:1013−1022頁)。
【0011】
Seamanら(2007年)は、8つの正常な静止組織、5つの腫瘍、および再生肝の血管に由来する内皮細胞の遺伝子発現パターンを比較した。Seamanらは、器官特異的な内皮遺伝子、ならびに正常な内皮に対して腫瘍において過剰発現された25の転写産物を同定した(そのうちの13は、再生肝の血管新生内皮において見出されなかった)。CLEC14Aは同定されなかった。共有される血管新生遺伝子の大部分が、細胞周期制御における役割を有することが想定されたが、腫瘍内皮に特異的なものは、主に不特定の機能を有する細胞表面分子であった(Seamanら(2007年) 「Genes that distinguish physiological and pathological angiogenesis」,Cancer Cell.11(6):539−54頁)。
【0012】
発明者は、先行的に、公的なcDNAおよびSAGEライブラリのデータマイニングにより、459の予測される内皮遺伝子(そのうちの1つはCLEC14Aである)を同定した。発明者は、これらの459から、発現が腫瘍内皮に対して高度に特異的である27の遺伝子/ポリペプチド(CLEC14Aを含まない)を同定した(Herbertら(2008年) 「A novel method of differential gene expression analysis using multiple cDNA libraries applied to the identification of tumour endothelial genes」 BMC Genomics 9:153(doi:10.1186/1471−2164−9−153))。このように、これらの遺伝子/ポリペプチドは、血液供給を介して直接的に標的化されうるような特に優れた抗癌剤標的である、新規の腫瘍内皮マーカーとして同定された。
【0013】
にもかかわらず、当該技術分野では、さらなる腫瘍内皮マーカー(TEM)に対する需要がある。
【0014】
発明者は、いまでは、さらなる遺伝子/ポリペプチドとして、高度な腫瘍内皮特異性を有するCLEC14Aを同定している。発明者は、CLEC14Aが、ヒト内皮細胞内でまたゼブラフィッシュモデルにおける発生の間に血管新生組織内で特異的に発現されることを示している。発明者はまた、siRNA技術を用いたCLEC14Aの下方制御および抗CLEC14A抗体を用いたCLEC14Aの阻害により、血管新生の本質的成分である内皮細胞移動が低下することを示している。さらに、発明者は、CLEC14Aの発現が、血管新生促進遺伝子の下方制御に関連することが多いせん断応力に応答して下方制御されることを示している。発明者はまた、免疫蛍光により、CLEC14Aが、正常な成体組織内で発現されないが、結腸癌、直腸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、前立腺癌、乳癌、腎臓癌、膵臓癌、胃癌、食道癌、肺癌および甲状腺癌を含む癌の新生血管(neo−angiogenic vessels)において発現されることを示している。
【0015】
したがって、発明者は、CLEC14Aが本質的にTEMをコードすることを結論づけている。したがって、発明者は、いまでは、CLEC14A遺伝子/ポリペプチドが腫瘍内皮のマーカーとして重要になり、CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する抗体を使用し、腫瘍血管新生を画像化し、標的化することが可能であり、また、CLEC14A遺伝子/ポリペプチドの阻害剤であれば、固形腫瘍における腫瘍血管新生の阻害において臨床的に有用になる、と考えている。
【0016】
発明者の知りうる限りにおいて、CLEC14Aの阻害剤が血管新生の阻害剤であることが示唆されたことはかつて全くない。
【0017】
国際公開第02/079492号パンフレット(Eos Biotechnology,Inc)は、発現が血管新生組織内で経時的に変化すると言われた数百ものESTを列挙している。これらのESTの1つが、166のCLEC14Aの残基断片をコードするEST(その中でPkey105729、登録番号Hs46612、Unigene番号Hs293815、Unigene名称HSPC285として称される)であった。しかし、国際公開第02/079492号パンフレットは、血管新生の間でのこのESTの発現に対するデータの提示が全くなく、発現が増大または低下していることへの考察あるいは発現が腫瘍内皮細胞に限られたか否かについてさえ記載がない。
【0018】
Herbertら(2008年)においては、発明者は、cDNAおよびSAGEライブラリデータを組み合わせることによって得られた、459のコンピュータで予測された包括的な内皮遺伝子セットについて記載した。発明者は、CLEC14Aを内皮細胞内で選択的に発現されるものとして同定したが(追加ファイル13)、それは上位104の最も内皮に特異的な遺伝子に含まれなかった。この前報では、発明者は、CLEC14Aを、腫瘍内皮に特異的であるかまたは血管新生に関与するものとして同定しなかった。確かに、CLEC14Aにおける機能として、既知であるかまたは提示されたものは全くなく、さらなる実証実験が行われたことは全くなかった。
【0019】
Genentech,Inc.は、PRO269(クローンDNA38260−1180)がCLEC14Aに相当するという、「PRO」遺伝子およびポリペプチドに関する多数の公開された特許および特許出願を有している。これらの特許および特許出願においては、複数の潜在的な役割がPRO269に帰するものとしている。例えば、米国特許第2003/0186358号明細書および米国特許第6,894,148号明細書の双方において、PRO269は、そのトロンボモジュリンとの相同性から抗血栓剤としての用途を有すると言われており、また、リンパ球増殖を刺激し、皮質ニューロンにおけるc−fosを誘発し、またグルコース取り込みに作用する能力を有すると言われている。より適切には、PRO269は、8つの肺腫瘍試料および細胞系(n=20)のゲノムDNAにおいて2〜4倍の間で増幅されるが、結腸(n=19)、睾丸(n=2)もしくは腎臓(n=1)の腫瘍試料または細胞系に由来するゲノムDNAにおいて増幅されないことが見出された。同様に、米国特許出願公開第2003/0175900号明細書では、PRO269は、同じ8つの肺腫瘍試料および細胞系(n=50)のゲノムDNAにおいて2〜4倍の間で増幅されるが、結腸(n=45)、乳房(n=18)、リンパ節(n=3)、腎臓(n=2)、副甲状腺(n=2)、直腸(n=2)または睾丸(n=2)の腫瘍試料および細胞系に由来するゲノムDNAにおいて増幅されないことが見出された。
【0020】
米国特許出願公開第2003/0194775号明細書(Genentech,Inc.)では、PRO269は、肝臓、腎臓、および肺組織を含む、上皮由来の非癌性ヒト組織をプールすることによって調製された「ユニバーサルな(universal)」上皮対照試料に比べて、肺および直腸腫瘍において過剰発現されるが、乳房、結腸、頸部、前立腺または肝臓腫瘍において過剰発現されないと言われた。
【0021】
それに対し、国際公開第03/101283号パンフレット(Incyte Genomics,Inc)は、発現が肺腫瘍において特異的に調節されることが見出された170の転写産物について記載している。これらのうち、CLEC14Aに相当する転写産物(その中でIncyte ID 2264002CB1、Genbank登録番号g15209752と称される)は、39のうち21の異なる肺腫瘍試料中で4〜16倍の間で下方制御されることが見出された。これは、米国特許出願公開第2003/0194775号明細書中での肺腫瘍におけるCLEC14Aの発現に関する実験結果に矛盾するように思われる。
【0022】
Incyte Genomics,Incはまた、CLEC14Aが、他の既知のアテローム性動脈硬化症遺伝子との同時発現から、34のヒトアテローム性動脈硬化症関連遺伝子の1つであることを示唆している(国際公開第01/04264号パンフレット)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、本発明に至るまで、CLEC14Aの考えられる機能および使用について多くの示唆があるにもかかわらず、腫瘍内皮マーカーとしてのその役割、またはCLEC14Aの阻害剤が腫瘍血管新生の阻害剤でありうることについて示唆するものは全くなかった。
【課題を解決するための手段】
【0024】
したがって、本発明の第1の態様は、腫瘍血管新生を、阻害を必要とする個体において阻害する方法であって、CLEC14Aの阻害剤を個体に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0025】
本発明のこの態様は、個体における腫瘍血管新生を阻害するための薬剤の調製におけるCLEC14Aの阻害剤の使用を含む。本発明は、個体における腫瘍血管新生を阻害することにおいて使用されるCLEC14Aの阻害剤をさらに含む。
【0026】
典型的には、個体は、固形腫瘍を有し、それは腫瘍血管新生を阻害することによって処置可能である、すなわち、固形腫瘍は、新たな血管産生に関連している。用語「腫瘍」は、限定はされないが、乳房、卵巣、肝臓、膀胱、前立腺、腎臓、膵臓、胃、食道、肺および甲状腺の腫瘍を含む、腫瘍性細胞成長のすべての形態を参照するものとして理解されるべきである。
【0027】
典型的には、腫瘍は、望ましくない血管新生形成に関連しており、CLEC14Aの阻害剤は、これを有効な範囲まで低減する。望ましくない血管新生形成の低減は、腫瘍の進行を停止させ、腫瘍サイズおよび成長の臨床的に有効な低減をもたらしうる。したがって、腫瘍血管新生の阻害を用いることで、腫瘍を処置し、例えば、腫瘍の(さらなる)成長を阻止するか、腫瘍の浸潤(転移)を阻止するか、または腫瘍のサイズを低減することが可能である。
【0028】
発明者は、CLEC14Aが、結腸、直腸、卵巣、肝臓、膀胱、前立腺、乳房、腎臓、膵臓、胃、食道、肺および甲状腺の腫瘍を含む、ある範囲の固形腫瘍の血管内皮において特異的に発現されることを示している。したがって、好ましい実施形態では、個体は、結腸、直腸、卵巣、肝臓、膀胱、前立腺、乳房、腎臓、膵臓、胃、食道、肺および甲状腺腫瘍から選択される固形腫瘍を含む。
【0029】
特定の実施形態では、個体は、肺癌および/または直腸癌以外の固形腫瘍を有する。
【0030】
好ましくは、本発明の方法および薬剤は、ヒトを処置するために使用され、その場合、CLEC14Aの阻害剤は、ヒトCLEC14Aの阻害剤である。しかし、本発明の方法および薬剤が非ヒト哺乳類の処置を目的とする場合、阻害剤が他種由来のCLEC14A遺伝子/ポリペプチドに特異的である場合に好ましいことが理解されている。
【0031】
CLEC14A
遺伝子CLEC14A(C型レクチンドメインファミリー14、メンバーA)は、14q21.1に位置し、以前はC14orf27、CEG1およびEGFR5として知られていた。CLEC14Aは、51kDaの予測分子量を有する490アミノ酸残基ポリペプチドをコードする。CLEC14Aポリペプチドには、ヒトCLEC14Aの遺伝子産物(その天然変異体を含む)の意味が含まれる。ヒトCLEC14Aポリペプチドは、Genbank登録番号NP_778230中に見出されるアミノ酸配列およびその天然変異体を含む。NP_778230由来のCLEC14Aポリペプチド配列は、図1中に示される(配列番号1)。
【0032】
ヒトCLEC14A mRNAに対応するcDNA配列は、Genbank登録番号NM_175060中に見出され、図1中に示される(配列番号2)。NM_175060由来のこのcDNAのコード領域は、ヌクレオチド348〜ヌクレオチド1820であり、これもまた、図1中に示される(配列番号3)。
【0033】
CLEC14Aは、残基1〜21にシグナルペプチドを有するI型膜貫通タンパク質である。成熟ヒトポリペプチドは、469アミノ酸長(アミノ酸残基22〜490)であり、375残基の細胞外領域(残基22〜396)、膜貫通領域(残基397〜425)、および細胞質領域(残基426〜490)を有する。細胞外領域は、C型レクチン様ドメイン(残基32〜175)およびEGF様領域(残基245〜287)を有する。
【0034】
CLEC14Aの阻害剤
CLEC14Aの阻害剤には、CLEC14Aポリペプチドの阻害剤およびCLEC14A遺伝子/cDNAの阻害剤の双方が含まれる。
【0035】
好適なCLEC14Aの阻害剤は、CLEC14Aに選択的に結合する抗体を含む。他の好適なCLEC14Aの阻害剤は、siRNA、アンチセンスポリヌクレオチドおよびリボザイム分子を含み、それらはCLEC14Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに特異的であり、その発現を阻止する。
【0036】
ポリヌクレオチドCLEC14Aの阻害剤が、直接投与可能であるか、または阻害剤をコードするポリヌクレオチドの形態で投与可能であることは理解されている。したがって、ポリヌクレオチドであるCLEC14Aの阻害剤を個体に投与することとは、本明細書で使用される場合、文脈上特に断りがない限り、阻害剤を直接投与する、または阻害剤をコードするポリヌクレオチドを典型的にはベクターの形態で投与するという意味が含まれる。同様に、ポリヌクレオチドであるCLEC14Aの阻害剤を含む薬剤または組成物には、本明細書で使用される場合、文脈上特に要求されない限り、薬剤または組成物が、阻害剤自体を含むか、または阻害剤をコードするポリヌクレオチドを含むという意味が含まれる。
【0037】
抗体
CLEC14Aまたはその特異的部分に結合する好適な抗体は、当業者により、当該技術分野で長期にわたって確立された技術を用いて作製可能である。モノクローナル抗体および抗体断片を調製する方法は、当該技術分野で周知であり、ハイブリドーマ技術(KohlerおよびMilstein(1975年) 「Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity.」Nature256:495−497頁);抗体ファージディスプレイ(Winterら(1994年) 「Making antibodies by phage display technology.」Annu.Rev.Immunol.12:433−455頁);リボソームディスプレイ(Schaffitzelら(1999年) 「Ribosome display:an in vitro method for selection and evolution of antibodies from libraries.」 J.Immunol.Methods 231:119−135頁);および反復コロニーフィルタスクリーニング(Giovannoniら(2001年) 「Isolation of anti−angiogenesis antibodies from a large combinatorial repertoire by colony filter screening.」 Nucleic Acids Res.29:E27)を含む。さらに、本発明における使用に適した抗体および抗体断片は、例えば、次の出版物、すなわち、「Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Application」,Hurrell(CRC Press、1982年);「Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques」,H.Zola,CRC Press、1987年、ISBN:0−84936−476−0;「Antibodies:A Laboratory Manual」、第1版、HarlowおよびLane編、Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York、1988年、ISBN 0−87969−314−2;「Using Antibodies:A Laboratory Manual」、第2版、HarlowおよびLane編、Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York、1999年、ISBN0−87969−543−9;および「Handbook of Therapeutic Antibodies」 Stefan Duebel編、第1版、−Wiley−VCH、Weinheim、2007年、ISBN:3−527−31453−9において記載されている。
【0038】
腫瘍血管新生を阻害するときに特に活性が高い抗体は、抗癌治療剤として好ましく、それらは、下記の当該技術分野で周知の方法を用い、この活性について選択することが可能である。
【0039】
CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する抗体については、抗体分子が、CLEC14Aに、無関係のポリペプチド、例えばヒト血清アルブミン(HSA)に対するよりも高い親和性で結合することを意味する。好ましくは、抗体は、CLEC14Aに、無関係のポリペプチドに対するよりも、少なくとも5倍、または少なくとも10倍または少なくとも50倍高い親和性で結合する。より好ましくは、抗体分子は、CLEC14Aに、無関係のポリペプチドに対するよりも、少なくとも100倍、または少なくとも1,000倍、または少なくとも10,000倍高い親和性で結合する。かかる結合は、当該技術分野で周知の方法、例えばBiacore(登録商標)システムの1つにより、判定可能である。
【0040】
CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する抗体が、関連ポリペプチド、例えばトロンボモジュリンに結合しないか、または、抗体分子が、CLEC14Aに、関連ポリペプチド、例えばトロンボモジュリンに対するよりも高い親和性で結合することが好ましい。好ましくは、抗体は、CLEC14Aに、関連ポリペプチドに対するよりも、少なくとも5倍、または少なくとも10倍または少なくとも50倍高い親和性で結合する。より好ましくは、抗体分子は、CLEC14Aに、関連ポリペプチドに対するよりも、少なくとも100倍、または少なくとも1,000倍、または少なくとも10,000倍高い親和性で結合する。かかる結合は、当該技術分野で周知の方法、例えばBiacore(登録商標)システムの1つにより、判定可能である。
【0041】
抗体が、CLEC14Aに対して少なくとも10−7Mおよびより好ましくは10−8Mの親和性を有する場合が好ましいが、より高い親和性、例えば10−9M以上の値を有する抗体がさらにより好ましい場合がある。
【0042】
典型的には、CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する抗体は、成熟ペプチド(残基22〜490)に結合し、シグナルペプチド(残基1〜21)に結合しない。好ましい実施形態では、CLEC14Aに選択的に結合する抗体は、CLEC14Aの細胞外領域(残基22〜396)に結合する。抗体は、C型レクチン様ドメイン(残基32〜175)に結合するか、またはEGF様領域(残基245〜287)に結合する可能性がある。
【0043】
CLEC14Aの特異的部分に選択的に結合する抗体については、抗体が、上記の標的に選択的に結合するだけでなく、抗体分子が、CLEC14Aの特異的部分に、その任意の他の部分に対するよりも高い親和性で結合することを意味する。好ましくは、抗体は、特異的部分に、CLEC14A上の任意の他のエピトープに対するよりも、少なくとも2倍、または少なくとも5倍、または少なくとも10倍または少なくとも50倍高い親和性で結合する。より好ましくは、抗体分子は、特異的部分に、CLEC14A上の任意の他のエピトープに対するよりも、少なくとも100倍、または少なくとも1,000倍、または少なくとも10,000倍高い親和性で結合する。かかる結合は、当該技術分野で周知の方法、例えばBiacore(登録商標)システムの1つにより、判定可能である。抗体が、CLEC14A上のその標的エピトープに対して少なくとも10−7Mおよびより好ましくは10−8Mの親和性を有する場合が好ましいが、より高い親和性、例えば10−9M以上の値を有する抗体がさらにより好ましい場合がある。好ましくは、抗体は、CLEC14A内部の特定の特異的エピトープに選択的に結合し、その内部の任意の他のエピトープに結合しない。
【0044】
好ましくは、抗体が個体に投与される場合、抗体は、標的CLEC14Aまたはその特異的部分に、個体内の任意の他の分子に対するよりも高い親和性で結合する。好ましくは、抗体は、CLEC14A(の特異的部分)に、個体内の任意の他の分子に対するよりも、少なくとも2倍、または少なくとも5倍、または少なくとも10倍または少なくとも50倍高い親和性で結合する。より好ましくは、作用剤は、CLEC14Aに(特異的ドメインに)、個体内の任意の他の分子に対するよりも、少なくとも100倍、または少なくとも1,000倍、または少なくとも10,000倍高い親和性で結合する。好ましくは、抗体分子は、CLEC14Aに選択的に結合し、身体内の他のポリペプチドに有意に結合することがない。
【0045】
用語「抗体」または「抗体分子」は、本明細書で使用される場合、限定はされないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fab断片およびFab発現ライブラリによって生成される断片を含む。かかる断片は、標的物質に対する結合活性を保持する全抗体の断片、Fv、F(ab')およびF(ab')2断片、ならびに一本鎖抗体(scFv)、融合タンパク質および抗体の抗原結合部位を含む他の合成タンパク質、を含む。同用語はまた、特異的ポリペプチドまたはその特定の領域に結合する分子に対するファージディスプレイ技術または他のランダム選択技術を用いて生成可能な抗体様分子を含む。したがって、抗体という用語は、天然抗体の認識部位の一部(すなわちエピトープまたは抗原に結合するかまたはそれと結合する抗体の一部)である構造、好ましくはペプチド構造を有するすべての分子を含む。さらに、抗体およびその断片は、ヒト化抗体であってもよく、それは今では当該技術分野で周知である。
【0046】
「ScFv分子」については、VおよびVパートナードメインが柔軟なオリゴペプチドを介して結合された分子を意味する。改変抗体、例えばScFv抗体は、当該技術分野で長く知られている技術およびアプローチを用いて作製可能である。全抗体でなく抗体断片を使用する利点は、数倍に相当する。断片のサイズがより小さいことにより、改善された薬理学的特性、例えば標的部位へのより優れた浸透性が得られうる。全抗体のエフェクター機能、例えば補体結合が除外される。Fab、Fv、ScFvおよびdAb抗体断片はすべて、大腸菌(E.coli)において発現され、またそれから分泌され、それにより、大量の断片の容易な生成が可能になる。全抗体およびF(ab')断片は、「二価」である。「二価」とは、抗体およびF(ab')断片が2つの抗原結合部位を有することを意味する。それに対し、Fab、Fv、ScFvおよびdAb断片は、一価であり、抗原結合部位を1つだけ有する。
【0047】
CLEC14Aが糖タンパク質でありうることは理解されている。したがって、CLEC14Aに結合する抗体は、CLEC14Aのタンパク質または炭水化物成分の任意の組み合わせに結合しうる。
【0048】
抗体は、標準的技術により、例えば適切な(糖)ポリペプチドまたはその一部で免疫することにより、またはファージディスプレイライブラリを使用することにより、産生されうる。
【0049】
ポリクローナル抗体が所望される場合、選択された哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマなど)は、所望されるエピトープを担持する、場合によって別のポリペプチドにハプテン結合された(haptenised)免疫原性ポリペプチドで免疫される。宿主種に依存するが、様々なアジュバントを使用し、免疫応答を増強することが可能である。かかるアジュバントは、限定はされないが、フロイント、水酸化アルミニウムなどの天然ゲル、ならびに、リゾレシチン、プルロニック・ポリオール(pluronic polyol)、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、スカシ貝ヘモシアニン、およびジニトロフェニルなどの界面活性物質を含む。免疫動物由来の血清は、既知の手順に従い、回収され、処理される。所望されるエピトープに対するポリクローナル抗体を有する血清が、他の抗原に対する抗体を有する場合、ポリクローナル抗体は、免疫親和性クロマトグラフィーによって精製されうる。ポリクローナル抗血清を産生し、処理するための技術は、当該技術分野で周知である。
【0050】
抗CLEC14Aポリクローナル抗体は、例えばSigma−Aldrich(カタログ番号SAB1400831)、R&D Systems(カタログ番号AF4968およびBAF4968)、Abcam(製品コードab73087)およびNovus Biologicals(カタログ番号H00161198−B01)から市販されている。
【0051】
全ポリペプチドまたはその特定のエピトープに特異的なモノクローナル抗体はまた、当業者によって容易に産生されうる。ハイブリドーマによってモノクローナル抗体を作製するための一般的方法は、周知である。不死抗体産生細胞系は、細胞融合に加え、Bリンパ球と発癌性DNAとの直接形質転換またはエプスタイン−バーウイルスの形質移入などの他の技術により、作製可能である。上掲のポリペプチドに対して産生されるモノクローナル抗体群は、様々な特性、すなわちアイソタイプおよびエピトープ親和性についてスクリーニング可能である。モノクローナル抗体は、培養液中の連続細胞系によって抗体分子の産生をもたらす周知の技術のいずれかを用いて調製してもよい。
【0052】
抗体がモノクローナル抗体である場合が好ましい。いくつかの環境下では、特に抗体がヒト患者に反復投与されるべき場合、モノクローナル抗体がヒトモノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体である場合が好ましく、それらは、ヒトへの投与に適し、投与される免疫グロブリンに対するヒトによる免疫応答を生じさせることがない。好適に調製された非ヒト抗体は、既知の方法において、例えばマウス抗体のCDR領域をヒト抗体のフレームワークに挿入することにより、「ヒト化」されうる。ヒト化抗体は、Verhoeyenら(1988年) Science,239、1534−1536頁およびKettleboroughら、(1991年) Protein Engineering,l4(7)、773−783頁において記載の技術およびアプローチを用いて作製されうる。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域の全部もしくは大部分が、非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応する場合の可変ドメインと、実質的または完全にヒト免疫グロブリン共通配列のそれらであるフレームワーク領域とを有することになる。
【0053】
完全ヒト抗体は、組換え技術を用いて産生されうる。典型的には、数十億の異なる抗体を含む大型ライブラリが使用される。例えばマウス抗体のキメラ化またはヒト化を用いる先行技術に対し、この技術は、特異抗体を産生するための動物の免疫に依存することがない。代わりに、組換えライブラリは、膨大な数の既製抗体変異体を含み、ここでライブラリは、任意の抗原に特異的な少なくとも1つの抗体を有することになる可能性が高い。したがって、かかるライブラリを使用し、所望される結合特性を有する既存の抗体を同定することが可能である。ライブラリ中で良好な結合剤を効率的な方法で見出すため、表現型、すなわち抗体または抗体断片が、その遺伝子型、すなわちコード遺伝子に結合される場合の様々な系が考案されている。最も一般的に使用されるかかる系は、抗体断片が、繊維状ファージ粒子の表面上でのファージコートタンパク質との融合体として、発現され、提示される一方、それと同時に、提示された分子をコードする遺伝子情報を有する、いわゆるファージディスプレイ系である(McCaffertyら、1990年、Nature 348:552−554頁)。特定の抗原に特異的な抗体断片に対するファージディスプレイは、問題の抗原への結合を通じて選択されうる。次いで、単離されたファージは増幅され、選択された抗体の可変ドメインをコードする遺伝子は、場合により、他の抗体フォーマット、例えば完全長免疫グロブリンなどに移され、当該技術分野で周知の適切なベクターおよび宿主細胞を使用し、大量に発現されうる。あるいは、「ヒト」抗体は、本質的にヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスを免疫することによって作製されうる(Vaughanら(1998年) Nature Biotechnol.16、535−539頁)。
【0054】
抗体が非ヒト個体への投与を目的とする場合、抗体が意図されるレシピエント種に特化して設計/産生されている可能性があることは理解されている。
【0055】
ファージ粒子上に提示される抗体特異性のフォーマットは、異なる場合がある。最も一般的に使用されるフォーマットは、Fab(Griffithsら、1994年、EMBO J.13:3245−3260頁)および一本鎖(scFv)(Hoogenboomら、1992年、J Mol Biol.227:381−388頁)であり、双方は抗体の可変抗原結合ドメインを含む。一本鎖フォーマットは、可変軽鎖ドメイン(V)に柔軟なリンカーを介して連結された可変重鎖ドメイン(V)から構成される(米国特許第4,946,778号明細書)。抗体は、治療剤として使用する前、可溶性フォーマット、例えばFabまたはscFvに移し、それ自体分析することが可能である。後のステップにおいて、望ましい特性を有するものとして同定された抗体断片は、完全長抗体などのさらに他のフォーマットに移されうる。
【0056】
国際公開第98/32845号パンフレットおよびSoderlindら(2000年) Nature BioTechnol.18:852−856頁は、抗体ライブラリにおける可変性を生成するための技術について記載している。このライブラリに由来する抗体断片はすべて、同じフレームワーク領域を有し、かつそれらのCDR内で異なるにすぎない。フレームワーク領域が生殖細胞系配列であることから、ライブラリ、または同じ技術を用いて生成された類似のライブラリに由来する抗体の免疫原性は、特に低いものと想定される(Soderlindら、2000年)。この特性は、治療抗体にとって非常に貴重であり、患者が投与された抗体に対する抗体を形成するリスクを低減し、それにより、アレルギー反応、ブロッキング抗体の発生に対するリスクを低減し、抗体の長い血漿半減期を可能にする。したがって、ヒトにおいて使用されるべき治療抗体を開発する場合、ここでは現行の組換えライブラリ技術(Soderlindら、2001年、Comb.Chem.& High Throughput Screen.4:409−416頁)が、より初期のハイブリドーマ技術に優先して用いられる。
【0057】
また抗体には、構造的にラクダ科(Camelidae)抗体に由来する重鎖抗体、例えばNanobodies(登録商標)(Ablynx)が含まれる。これらは、天然重鎖抗体の構造的および機能的特性を有する、抗体由来の治療タンパク質である。Nanobody(登録商標)技術は、ラクダ科(ラクダおよびリャマ)が、軽鎖が欠如した完全機能抗体を有するという発見後に開発された。これらの重鎖抗体は、単一の可変ドメイン(VHH)および2つの定常ドメイン(C2およびC3)を有する。クローン化された単離VHHドメインは、元の重鎖抗体の完全な抗原結合能を有する完全に安定なポリペプチドである。これらのVHHドメイン(それら独自の構造的および機能的特性を有する)は、Nanobodies(登録商標)の基盤を形成する。それらは、従来の抗体の利点(高い標的特異性、高い標的親和性および低い固有毒性)と、小分子薬剤の重要な特徴(酵素を阻害しかつ受容体間隙(cleft)に接近する能力)とを組み合わせている。さらに、それらは、安定であり、注射以外の手段によって投与される可能性を有し、作製がより容易であり、ヒト化することが可能である(例えば、米国特許第5,840,526号明細書;米国特許第5,874,541号明細書;米国特許第6,005,079号明細書、米国特許第6.765,087号明細書;欧州特許第1589107号明細書;国際公開第97/34103号パンフレット;国際公開第97/49805号パンフレット;米国特許第5,800,988号明細書;米国特許第5,874,541号明細書および米国特許第6,015,695号明細書を参照)。
【0058】
siRNA
小さい干渉RNAは、Hannonら、Nature,418(6894):244−51頁(2002年);Brummelkampら、Science 21、21頁(2002年);およびSuiら、Proc.Natl Acad.Sci.USA99、5515−5520頁(2002年)において記載されている。RNA干渉(RNAi)は、配列がサイレント遺伝子(silenced gene)に相同な二本鎖(dsRNA)によって開始される、動物における配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングのプロセスである。配列特異的なmRNA分解のメディエーターは、典型的には、インビボでより長いdsRNAからのリボヌクレアーゼIIIの切断によって生成可能な、21および22ヌクレオチドの小さい干渉RNA(siRNA)である。21ヌクレオチドsiRNA二本鎖は、内因性および異種遺伝子の双方の発現を特異的に抑制することが示されている(Elbashirら(2001年) Nature411:494−498頁)。哺乳類細胞においては、siRNAは、より長い二本鎖(ds)RNAがPKR(dsRNA依存性タンパク質キナーゼ)を活性化し、かつタンパク質合成全体を阻害することから、下記の2つの相補的な21mersからなる必要があると考えられる。
【0059】
CLEC14Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対して選択的な二本鎖siRNA分子は、そのcDNA配列を参照することにより、容易に設計することが可能である。例えば、それらは、図1中に列挙される、Genbank登録番号NM_175060中のCLEC14A cDNA配列を参照することにより、設計可能である。
【0060】
典型的には、イニシエーターメチオニンコドンから下流の少なくとも120のヌクレオチドであるAAジヌクレオチドから開始する最初の21−mer配列が選択される。これに完全に相補的なRNA配列は、最初のRNAオリゴヌクレオチドになる。2番目のRNA配列は、最初のRNA配列の最初の19残基に対して完全に相補的であるとともに、その3’末端に追加的なUUジヌクレオチドを有する必要がある。合成RNA分子は、一旦設計されると、当該技術分野で周知の方法を用いて合成することが可能である。
【0061】
好適な抗CLEC14A siRNAの配列は、下記に与えられる。さらに、抗CLEC14A siRNAは、例えばApplied Biosystems(siRNA ID番号:s46248、s46249、s46250、129879、129880、129881)およびInvitrogen(オリゴID番号:HSS136238、HSS175925およびHSS175926)から市販されている。
【0062】
siRNAは、任意の好適な方法、例えば本明細書中に記載の方法を用いて患者内の細胞に導入してもよい。典型的には、RNAは、例えば好適な担体中または媒体中に封入されることにより、細胞外環境から保護される。リポソーム媒介性移入、例えばオリゴフェクタミン(oligofectamine)法を用いてもよい。
【0063】
アンチセンスポリヌクレオチド
CLEC14Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにとって選択的なアンチセンス核酸分子は、当該技術分野で既知のように、そのcDNAまたは遺伝子配列を参照することにより、容易に設計することが可能である。アンチセンス核酸、例えばオリゴヌクレオチドは、一本鎖核酸であり、それは相補的核酸配列に特異的に結合しうる。適切な標的配列に結合することにより、RNA−RNA、DNA−DNA、またはRNA−DNA二本鎖が形成される。これらの核酸は、遺伝子のセンスまたはコード鎖に対して相補的であることから、「アンチセンス」と称されることが多い。最近、三重らせんの形成は、オリゴヌクレオチドがDNA二本鎖に結合される場合には可能であることが判明している。オリゴヌクレオチドがDNA二重らせんの主溝内の配列を認識しうることが見出された。三重らせんは、それによって形成された。これは、二本鎖DNAに主溝の水素結合部位の認識を介して特異的に結合する配列特異的な分子を合成することが可能であることを示唆する。上記オリゴヌクレオチドは、標的核酸に結合することにより、標的核酸の機能を阻害しうる。これは、例えば、転写、プロセシング、ポリ(A)付加、複製、翻訳を遮断するか、または細胞の阻害機序を促進する、例えばRNA分解を促進する結果でありうる。
【0064】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、実験室において調製され、次いで、例えばマイクロインジェクションまたは細胞培地から細胞への取り込みによって細胞に導入されるか、あるいはそれらは、アンチセンス遺伝子を有するプラスミドまたはレトロウイルスまたは他のベクターでの形質移入後、細胞内で発現される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、まず、ラウス肉腫ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、シミアンウイルスおよびインフルエンザウイルスにおける細胞培養液中で、ウイルス複製または発現を阻害することが発見された。それ以来、アンチセンスオリゴヌクレオチドによるmRNA翻訳の阻害は、ウサギ網状赤血球溶解物および小麦胚芽抽出物を含む無細胞系において幅広く試験されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドによるウイルス性機能の阻害は、AIDS HIVレトロウイルスRNAに対して相補的であったオリゴヌクレオチドを使用し、生体外で実証されている(Goodchild J.1988年 「Inhibition of Human Immunodeficiency Virus Replication by Antivirus Oligodeoxynucleotides」,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)85(15):5507−11頁)。Goodchild試験によると、最も有効であるオリゴヌクレオチドが、ポリ(A)シグナルに対して相補的であり、また有効であるものが、RNAの5’末端、特にキャップおよび5N未翻訳領域(プライマー結合部位に隣接する)、およびプライマー結合部位で標的化されるものであることが示された。キャップ、5’未翻訳領域、およびポリ(A)シグナルは、レトロウイルスRNAの末端(R領域)で反復される配列内に位置し、またこれらに相補的なオリゴヌクレオチドは、RNAに2回結合しうる。
【0065】
典型的には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、15〜35塩基長である。例えば、20−merオリゴヌクレオチドは、表皮成長因子受容体mRNAの発現を阻害することが示されており(Wittersら、Breast Cancer Res Treat 53:41−50頁(1999年))、また25−merオリゴヌクレオチドは、副腎皮質刺激ホルモンの発現を90%超低下させることが示されている(Frankelら、J Neurosurg 91:261−7頁(1999年))。しかし、この範囲外の長さ、例えば10、11、12、13、もしくは14塩基、または36、37、38、39もしくは40塩基を有するオリゴヌクレオチドを使用することが望ましい場合があることは理解されている。
【0066】
アンチセンスポリヌクレオチドは、全身投与してもよい。あるいは、また好ましくは、塩基対合の特徴を示すポリヌクレオチドに固有の結合特異性は、ポリヌクレオチドのその意図される遺伝子座に対するインビボでの利用可能性を制限し、より少ない用量の使用を許容し、また全身性効果を最小にすることによって促進される。したがって、ポリヌクレオチドは、固形腫瘍に局所的に適用し、所望される効果を得てもよい。所望される遺伝子座でのポリヌクレオチドの濃度は、ポリヌクレオチドが全身投与された場合よりはるかに高く、また治療効果は、有意により少ない総量を用いて得られうる。局所的な高濃度のポリヌクレオチドは、標的化細胞の透過性を促進し、標的核酸配列の翻訳を有効に遮断する。
【0067】
アンチセンス剤はまた、CLEC14Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(mRNAまたは遺伝子)に結合するより大きい分子を含み、かつタンパク質の発現を実質的に阻止しうることは理解されるであろう。したがって、各mRNAに対して実質的に相補的なアンチセンス分子についても予想される。
【0068】
同分子は、任意の好適な遺伝子コンストラクトから発現させ、患者に送達してもよい。典型的には、アンチセンス分子を発現する遺伝子コンストラクトは、細胞内でアンチセンス分子を発現しうる、プロモーターに作動可能に連結されたCLEC14A cDNAまたは遺伝子の少なくとも一部を含む。好ましくは、遺伝子コンストラクトは、ヒト細胞への送達に適している。
【0069】
リボザイム
リボザイムは、部位特異的な方法で核酸が切断された、RNAまたはRNA−タンパク質複合体である。リボザイムは、エンドヌクレアーゼ活性を有する特異的な触媒ドメインを有する。例えば、多数のリボザイムは、高い特異度でリン酸エステル転移反応を加速し、オリゴヌクレオチド基質中のいくつかのリン酸エステルのうちの1つのみを切断することが多い。この特異性は、基質が、化学反応前に、リボザイムの内部ガイド配列(internal guide sequence)(「IGS」)と特異的な塩基対合相互作用を介して結合する必要性に起因している。
【0070】
リボザイム触媒作用は、主に核酸を含む配列特異的な切断/ライゲーション反応の一部として認められている。例えば、米国特許第5,354,855号明細書は、特定のリボザイムが、既知のリボヌクレアーゼの場合より大きい(DNA制限酵素の場合に近い)配列特異性を有するエンドヌクレアーゼとして作用しうることを報じている。したがって、遺伝子発現の配列特異的なリボザイム媒介性阻害は、治療用途に特に適する可能性があり、またCLEC14Aポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに特異的なリボザイムは、Genbank登録番号NM_175060中に列挙されかつ図1中に列挙されるcDNA配列を参照することにより、設計可能である。
【0071】
ポリヌクレオチド阻害剤、例えばsiRNA分子、アンチセンス分子およびリボザイムを患者に投与する方法および経路は、下記により詳述される。
【0072】
また、上掲のポリペプチドのいずれかをコードする遺伝子の転写を阻害するさらなる作用剤は、例えば、Isalanら(Nat Biotechnol,19(7):656−60頁(2001年))およびUrnov(Biochem Pharmacol,64(5−6):919頁(2002年))に記載の改変された転写リプレッサーを用いて設計してもよい。さらに、それらは、例えば本発明の後述する態様において記載のスクリーニング方法を用いて選択してもよい。
【0073】
調合物および投与経路
CLEC14Aの阻害剤が、典型的には、医薬組成物として、すなわち医薬的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤を伴い、個体に投与することを意図して調合されることになることは理解されている。
【0074】
「医薬的に許容できる」には、製剤が滅菌されかつ発熱性物質が除去されていることが含まれる。好適な医薬担体、希釈剤および賦形剤は、薬学の当該技術分野で周知である。担体は、阻害剤に適合可能でありかつそのレシピエントに対して有害でないという意味で、「許容できる」必要がある。典型的には、担体は、滅菌されかつ発熱性物質が除去される、水または生理食塩水となるが、他の許容できる担体を使用してもよい。
【0075】
一実施形態では、本発明の医薬組成物または調合物は、非経口投与、より詳細には静脈内投与を意図している。好ましい実施形態では、医薬組成物は、例えば注射による患者への静脈内投与に適している。
【0076】
非経口投与に適した調合物は、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤および調合物に対して意図されるレシピエントの血液で等張性を与える溶質を含有しうる水性および非水性滅菌注射溶液;ならびに、懸濁化剤および増粘剤を含有しうる水性および非水性滅菌懸濁液を含む。
【0077】
他の好ましい実施形態では、医薬組成物は、患者への局所投与に適している。
【0078】
好ましくは、調合物は、活性成分の、日常用量または単位、日常副用量またはその適切な画分を含有する単位用量である。
【0079】
阻害剤は、経口的にまたは任意の非経口経路により、活性成分を含有する医薬調合物の形態で、場合により、医薬的に許容できる剤形で、非毒性の有機もしくは無機の酸または塩基、付加塩の形態で投与してもよい。処置されるべき疾患および患者ならびに投与経路に依存し、組成物は、異なる用量で投与してもよい。
【0080】
ヒト治療においては、阻害剤は、一般に、意図される投与経路および標準の薬務との関連で選択される好適な医薬賦形剤、希釈剤または担体と混合して投与されることになる。
【0081】
例えば、阻害剤は、錠剤、カプセル、オビュール(ovule)、エリキシル、溶液または懸濁液の形態で、経口的、口腔的または舌下的に投与してもよく、即時、遅延または制御放出用途として、香料または着色剤を含有してもよい。阻害剤はまた、陰茎海綿体内注射を介して投与してもよい。
【0082】
好適な錠剤は、微結晶セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウムおよびグリシンなどの賦形剤、デンプン(好ましくは、トウモロコシ、ポテトまたはタピオカデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウムおよび特定の複雑珪酸塩などの崩壊剤、ならびに、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチンおよびアカシアなどの顆粒結合剤を含んでもよい。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、グリセリルベヘナートおよびタルクなどの潤滑剤を含めてもよい。
【0083】
類似タイプの固体組成物はまた、ゼラチンカプセル中の充填剤として使用してもよい。これに関連する好ましい賦形剤は、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールを含む。水性懸濁液および/またはエリキシルにおいては、本発明の化合物は、様々な甘味剤または香料、着色物質または染料、乳化剤および/または懸濁化剤、ならびに、水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリンなどの希釈剤、ならびにそれらの組み合わせと結合させてもよい。
【0084】
阻害剤はまた、非経口、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内または皮下に投与してもよく、あるいは、それらは、注入技術によって投与してもよい。それらは、無菌水溶液(他の物質、例えば血液とともに等張溶液を作製するのに十分な塩またはグルコースを含有しうる)の形態で使用するのが最適である。水溶液は、必要があれば、好適に緩衝化される必要がある(好ましくは3〜9のpH)。無菌条件下での好適な非経口調合物の調製は、当業者に周知の標準的な製薬技術によって容易に行われる。
【0085】
調合物は、単回投与または複数回投与容器、例えば密封されたアンプルおよびバイアルで提示してもよく、また、使用直前に、無菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とする凍結乾燥条件下で保存してもよい。即時注射溶液および懸濁液は、上述した種類の無菌粉末、顆粒および錠剤から調製してもよい。
【0086】
ヒト患者への経口および非経口投与においては、阻害剤の日常用量レベルは通常、成人1名あたり1〜1,000mg(すなわち約0.015〜15mg/kg)であり、単回または分割用量で投与されることになる。
【0087】
したがって、例えば、阻害剤の錠剤またはカプセルは、必要に応じて、一度に1回または2回以上の投与に対し、1mg〜1,000mgの活性剤を含有してもよい。医師は、いずれの場合でも、任意の個別の患者に最適となる実用量を決定することになり、またそれは特定の患者の年齢、体重および応答に応じて変化することになる。上記用量は、平均的症例に典型的なものである。当然のことながら、用量範囲の拡大または縮小に値する個別例があってもよく、それらは本発明の範囲内に含まれる。
【0088】
阻害剤はまた、鼻腔内にまたは吸入により、投与してもよく、また、好適な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヒドロフルオロアルカン、例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134A3または1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA227EA3)、二酸化炭素または他の好適な気体の使用とともに、圧力容器、ポンプ、スプレーまたは噴霧器から、乾燥粉末吸入剤またはエアロゾルスプレー提示の形態で便益的に送達される。加圧エアロゾルの場合、用量単位は、計られた量を送達するための弁を提供することによって決定してもよい。圧力容器、ポンプ、スプレーまたは噴霧器は、例えば溶媒としてエタノールと推進剤の混合物を使用し、活性化合物の溶液または懸濁液を含有してもよく、それはさらに、潤滑剤、例えばソルビタントリオレエートを含有してもよい。吸入剤または吸入器における用途としてのカプセルおよびカートリッジ(例えばゼラチン製)は、抗体とラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含有するように調合してもよい。かかる調合物は、例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胸膜肺芽腫またはカルシノイド腫瘍などの肺の固形腫瘍を処置するのに特に有用でありうる。
【0089】
エアロゾルまたは乾燥粉末調合物は、好ましくは、計られた各用量または「パフ(puff)」が患者への送達用に少なくとも1mgの阻害剤を含有するように準備される。エアロゾルを伴う全日常用量が、患者間で変化することになり、単回用量、またはより通常には、1日を通して分割用量で投与可能であることは理解されるであろう。
【0090】
あるいは、阻害剤は、特に、結腸、直腸または前立腺腫瘍を処置または標的化するため、坐剤またはペッサリーの形態で投与してもよい。
【0091】
阻害剤はまた、眼内経路によって投与してもよい。眼科使用においては、阻害剤は、場合により、塩化ベンジルアルコニウム(benzylalkonium chloride)などの防腐剤と組み合わせて、例えば、等張、pH調整、無菌の生理食塩水中の微粒化(micronised)懸濁液として、または、好ましくは、等張、pH調整、無菌の生理食塩水中の溶液として調合してもよい。あるいは、それは、ワセリンなどの軟膏で調合してもよい。かかる調合物は、眼の固形腫瘍、例えば、網膜芽腫、髄様上皮腫、ブドウ膜メラノーマ、横紋筋肉腫、眼内悪性リンパ腫、または眼窩リンパ腫を処置するのに特に有用でありうる。
【0092】
阻害剤は、ローション、溶液、クリーム、軟膏または散布剤の形態で、局所に適用してもよく、または、例えば皮膚パッチの使用により、経皮的に投与してもよい。皮膚への局所適用においては、阻害剤は、例えば、次のもの、すなわち、鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水、のうちの1つもしくは複数との混合物中に懸濁または溶解された活性化合物を含有する好適な軟膏として調合してもよい。あるいは、それは、例えば、次のもの、すなわち、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、液体パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水、のうちの1つもしくは複数との混合物中に懸濁または溶解された好適なローションまたはクリームとして調合してもよい。かかる調合物は、例えば、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌またはメラノーマなどの皮膚の固形腫瘍を処置するのに特に有用でありうる。
【0093】
皮膚癌に対しては、阻害剤はまた、エレクトロインコーポレーション(electroincorporation)(EI)によって送達してもよい。EIは、皮膚の表面上の直径が最大30ミクロンの小さい粒子が、エレクトロポレーションにおいて使用される場合と同一または類似の電気パルスを受ける場合に行われる。EIでは、これらの粒子は、角質層を貫通するように、また皮膚のより深い層に向けて駆動される。粒子は、阻害剤で負荷またはコートされるか、または単に、阻害剤が侵入しうる皮膚内に孔を作る「銃弾」として作用しうる。
【0094】
口腔内への局所投与に適した調合物は、風味付けした基剤(flavoured basis)、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカントの中に活性成分を含むロゼンジ;不活性基剤、例えばゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアの中に活性成分を含むトローチ(pastille);ならびに、好適な液体担体中に活性成分を含むマウスウォッシュ、を含む。かかる調合物は、口腔および咽頭の固形腫瘍を処置するのに特に有用でありうる。
【0095】
一実施形態では、阻害剤がポリペプチド、例えば抗CLEC14A抗体である場合、それは注射可能な徐放薬剤送達システムを使用して送達してもよい。これらは、注射の頻度を低減することに特化して設計される。かかるシステムの例として、組換えヒト成長ホルモン放出ホルモン(rhGH)を分解性ミクロスフェアの中にカプセル化するNutropin Depotが挙げられ、それは、一旦注射されると、rhGHを持続時間にわたって徐放する。
【0096】
抗体は、薬剤を必要とされる部位、例えば眼に直接放出し、眼内腫瘍を処置する、外科的移植装置(surgically implanted device)によって投与してもよい。疾患の部位へのかかる直接適用により、有意な全身性副作用を伴わない有効な治療がなされる。
【0097】
ポリペプチド阻害剤、例えば抗体を送達するための他の方法が、感熱性のReGel注射可能システムである。ReGelは、体温未満では、注射可能な液体である一方、体温では、徐々に浸食され、既知の安全な生分解性ポリマーに溶解するゲルリザーバ(gel reservoir)を直ちに形成する。活性薬剤は、生体高分子が溶解するにつれて、徐々に送達される。
【0098】
抗体などのポリペプチド薬剤はまた、経口的に送達してもよい。同プロセスは、タンパク質およびペプチドを同時送達する、体内へのビタミンB12の経口摂取における天然プロセスを利用する。タンパク質またはペプチドは、ビタミンB12摂取系に乗ることにより、腸壁を通過しうる。複合体は、ビタミンB12類似体と薬剤との間で合成され、それにより、複合体のビタミンB12部分における内因性因子(IF)に対する有意な親和性と複合体の薬剤部分の有意な生物活性との双方が保持される。
【0099】
ポリヌクレオチドは、任意の有効な方法、例えば、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内)あるいは経口、経鼻またはポリヌクレオチドが患者の血流に接近し、その中を循環することを可能にする他の手段により、投与してもよい。全身投与されるポリヌクレオチドは、好ましくは、局所投与されるポリヌクレオチドに加えて与えられるが、局所投与の不在下でも有用性を有する。ヒト成人に対する1回の投与あたり約0.1〜約10gの範囲内の用量は、一般に、この目的にとって有効となる。
【0100】
ポリヌクレオチドは、それが発現される場合、患者に、下記のような好適な遺伝子コンストラクトとして投与し、送達してもよい。典型的には、遺伝子コンストラクト内のポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されることで、細胞内で化合物が発現されうる。本発明の遺伝子コンストラクトは、例えばSambrookら(2001年)における当該技術分野で周知の方法を用いて調製してもよい。
【0101】
ポリヌクレオチドの送達用の遺伝子コンストラクトは、DNAまたはRNAでありうるが、それらがDNAである場合が好ましい。
【0102】
好ましくは、遺伝子コンストラクトは、ヒト細胞への送達に適合する。
【0103】
遺伝子コンストラクトを動物体内の細胞に導入する手段および方法は、当該技術分野で既知である。例えば、本発明のコンストラクトは、任意の便益的な方法、例えばレトロウイルスを含む方法により、コンストラクトが細胞のゲノムに挿入されるように、細胞に導入してもよい。例えば、Kuriyamaら(1991年、Cell Struc.And Func.16、503−510頁)においては、精製レトロウイルスが投与される。上記のポリヌクレオチドを含むレトロウイルスDNAコンストラクトは、当該技術分野で周知の方法を用いて作成してもよい。かかるコンストラクトから活性レトロウイルスを生成するため、10%ウシ胎仔血清(FCS)を含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で成長されたエコトロピック性のpsi2パッケージング細胞系を使用することが一般的である。細胞系の形質移入は、便益的にリン酸カルシウム共沈によって行われ、かつ安定な形質転換体は、G418を最終濃度が1mg/mlになるまで添加することによって(レトロウイルスコンストラクトがneo遺伝子を有することを仮定)選択される。独立コロニーは、単離され、展開され、培養上清が除去され、孔サイズが0.45μmのフィルタを通して濾過され、−70℃で保存される。例えば、レトロウイルスの腫瘍細胞への導入においては、10μg/mlのPolybreneが添加されているレトロウイルス上清を直接注射することが便益的である。直径が10mmを超える腫瘍においては、0.1ml〜1mlの間、好ましくは0.5mlのレトロウイルス上清を注射することが適切である。
【0104】
あるいは、Culverら(1992年、Science 256、1550−1552頁)に記載のように、レトロウイルスを生成する細胞に注射してもよい。そのように導入されたレトロウイルス生成細胞を改変することで、レトロウイルスベクター粒子が活発に生成され、それにより、ベクターの連続的生成が原位置で腫瘤内部で行われる。
【0105】
標的化されるレトロウイルスはまた、本発明における使用において利用可能であり、例えば、特異的結合親和性を与える配列は、既存のウイルスenv遺伝子に改変してもよい(遺伝子治療用のこの標的化ベクターと他の標的化ベクターのレビューについては、MillerおよびVile(1995年) Faseb J.9、190−199頁を参照)。
【0106】
他の方法は、限定された期間か、または、ゲノムへの組込み後にはより長期間の、コンストラクトの細胞へのその中での発現のための単純な送達を含む。後者のアプローチの例として、リポソームが挙げられる(Naessanderら(1992年) Cancer Res.52、646−653頁)。
【0107】
他の送達方法は、抗体−ポリリシン架橋を介して外部DNAを有するアデノウイルス(Curiel(1993年) Prog.Med.Virol.40、1−18頁を参照)および担体としてのトランスフェリン−ポリカチオン複合体(Wagnerら(1990年) Proc.Natl.Acad.Sci.USA87、3410−3414頁)を含む。これらの方法の前者では、ポリカチオン−抗体複合体は、本発明のDNAコンストラクトまたは他の遺伝子コンストラクトとともに形成され、ここで抗体は、抗体に結合する新しいエピトープが導入されている野生型アデノウイルスまたは変異体アデノウイルスのいずれかに特異的である。ポリカチオン部分は、リン酸塩骨格との静電相互作用を介してDNAに結合する。アデノウイルスは、改変されていない線維およびペントンタンパク質を有することから、細胞に内在化され、細胞内にそれとともに本発明のDNAコンストラクトを運ぶ。ポリカチオンがポリリシンである場合が好ましい。
【0108】
他の方法では、受容体媒介性エンドサイトーシスを利用し、DNA高分子を細胞に運ぶ高効率核酸送達システムが用いられる。これは、鉄輸送タンパク質トランスフェリンを核酸に結合するポリカチオンに複合することによって行われる。ヒトトランスフェリン、またはニワトリの相同体コンアルブミン、またはそれらの組み合わせは、小さいDNA結合タンパク質のプロタミンまたは様々なサイズのポリリシンとジスルフィド結合を介して共有結合される。これらの修飾トランスフェリン分子は、それらの同種受容体に結合し、細胞への効率的な鉄輸送を媒介するそれらの能力を維持する。トランスフェリン−ポリカチオン分子は、核酸サイズと独立に、本発明のDNAコンストラクトまたは他の遺伝子コンストラクトと電気泳動的に安定な複合体を形成する(短いオリゴヌクレオチドから21キロ塩基対のDNAまで)。トランスフェリン−ポリカチオンと本発明のDNAコンストラクトまたは他の遺伝子コンストラクトとの複合体は、腫瘍細胞に供給され、細胞内でのコンストラクトからの高レベルの発現が予想される。
【0109】
また、Cottenら(1992年) Proc.Natl.Acad.Sci.USA89、6094−6098頁の方法によって生成される、欠陥があるかまたは化学的に不活性化されたアデノウイルス粒子のエンドソーム破壊活性を用いる、本発明のDNAコンストラクトまたは他の遺伝子コンストラクトの高効率受容体媒介性送達を使用してもよい。このアプローチは、アデノウイルスが、それらのDNAがリソソームを通過することなく、また例えば本発明のDNAコンストラクトまたは他の遺伝子コンストラクトに連結されたトランスフェリンの存在下でエンドソームから放出できるように適合され、コンストラクトが、アデノウイルス粒子と同じ経路により、細胞によって取り込まれるという事実に依存するように見られる。このアプローチは、複合体レトロウイルスコンストラクトを使用する必要がなく、レトロウイルス感染の場合に生じるようなゲノムの永続的修飾が全く生じることなく、また、標的化発現システムを標的化送達システムと共役させることで、他の細胞種に対する毒性が低下する、という利点を有する。
【0110】
「裸DNA」ならびにカチオンおよび中性脂質と複合体が形成されたDNAもまた、本発明のDNAを、処置されるべき個体の細胞に導入する上で有用でありうることは理解されるであろう。遺伝子治療に対する非ウイルスアプローチは、Ledley(1995年、Human Gene Therapy 6、1129−1144頁)中に記載されている。
【0111】
特定の組織の固形腫瘍において、ポリヌクレオチド阻害剤をコードするベクター内で組織特異的プロモーターを使用することは有用でありうるが、これは本質的ではない。これは、標的化遺伝子が、腫瘍内皮において、単に発現されるか、または選択的に発現されるためである。したがって、siRNA、アンチセンス分子およびリボザイムなど、CLEC14Aに特異的な阻害剤の、身体内の固形腫瘍以外の位置での発現であれば、CLEC14Aが発現されないかまたは比較的低いレベルで発現されることから、全く効果を有しないことが想定されることになる。さらに、標的ポリペプチドを低いレベルで発現しうる細胞内での、これらの阻害剤の不適切な発現のリスクは、固形腫瘍を患う患者に対する治療効果に比べて極めて少ない。
【0112】
また、標的化送達システム、例えば、典型的には、国際公開第94/10323号パンフレット中に記載の、DNAがアデノウイルスまたはアデノウイルス様粒子内部に運ばれる、修飾されたアデノウイルス系は既知である。Michaelら(1995年) Gene Therapy 2:660−668頁では、細胞の選択部分を線維タンパク質に加えるというアデノウイルスの修飾についての記載がある。例えば、Bischoffら(1996年) Science 274:373−376頁において記載の、p53欠損ヒト腫瘍細胞内で選択的に複製する突然変異体アデノウイルスはまた、遺伝子コンストラクトを細胞に送達するのに有用である。他の好適なウイルス、ウイルスベクターまたはウイルス様粒子は、レンチウイルスおよびレンチウイルスベクター、HSV、アデノ随伴ウイルス(AAV)およびAAVに基づくベクター、ワクチニアおよびパルボウイルス、を含む。
【0113】
ポリヌクレオチドを患者に送達する方法は、当業者に周知であり、免疫リポゾーム、ウイルスベクター(ワクチニア、修飾ワクチニア、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター)の使用や、例えば遺伝子銃およびエレクトロポレーションを使用する、DNAの直接送達によるものを含む。さらに、処置のため、ポリヌクレオチドを患者の標的組織に送達する方法はまた、当該技術分野で周知である。
【0114】
治療剤を標的化し、それを身体の特異的領域に直接送達する方法は、当業者に周知である。
【0115】
例えば、米国特許第6,503,242号明細書は、治療剤を海馬に直接送達するための植込み型(implanted)カテーテル装置について記載している。作用剤を標的化し、それを脳に送達する方法は、脳の固形腫瘍の処置において使用してもよい。一実施形態では、ベクターを含む治療剤は、脳脊髄液への注射、例えば腰椎穿刺により、CNSの広範な領域全体に分布させてもよい(例えば、Kapadiaら(1996年) Neurosurg 10:585−587頁を参照)。あるいは、治療剤の脳の特異的部位への正確な送達は、定位マイクロインジェクション技術を用いて行ってもよい。例えば、処置されている対象は、定位フレームベース(MRI互換性)内に置いて、次いで高分解能MRIを使用して画像化し、処置されるべき特異的領域の三次元位置を判定することが可能である。次いで、MRI画像は、適切な定位ソフトウェアを有するコンピュータに移してもよく、多数の画像を使用し、治療剤のマイクロインジェクションにおける標的部位および軌跡が判定される。ソフトウェアは、軌道を、定位フレームとして正確に登録された三次元座標に翻訳する。頭蓋内送達の場合、頭蓋骨が露出され、穿頭孔が挿入部位上にドリル穿孔され、定位装置を使用し、針が位置決めされ、所定の深さでの注入が確認されることになる。治療剤は、CNSの領域、例えば、海馬、脊髄の細胞、脳幹、(髄質、橋、および中脳)、小脳、間脳(視床、視床下部)、終脳(線条体、大脳皮質、または皮質内部、後頭部、側頭部、頭頂部または前頭葉)、またはそれらの組み合わせに送達してもよい。別の実施形態では、治療剤は、局所的送達、例えば血液脳関門の局所的透過に適した他の送達方法を用いて送達される。米国特許出願公開第2005/0025746号明細書は、治療剤をコードするアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)ベクターの脳の特異的領域への局所的送達のための送達システムについて記載している。
【0116】
例えば、脳の固形腫瘍の処置用の治療剤がポリヌクレオチドによってコードされる場合、その発現が好適な組織特異的プロモーターの制御下にあることが好ましい場合がある。中枢神経系(CNS)に特異的なプロモーター、例えば、ニューロン特異的プロモーター(例えばニューロフィラメントプロモーター(ByrneおよびRuddle(1989年) Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:5473−5477頁)およびグリア特異的プロモーター(Moriiら(1991年) Biochem.Biophys Res.Commun.175:185−191頁)は、好ましくは、ポリヌクレオチドの発現を優先的にCNSの細胞内で駆動するために使用される。好ましくは、プロモーターは、組織特異的であり、かつ中枢神経系外部では本質的に活性を示さないか、あるいはプロモーターの活性は、中枢神経系においては、他の細胞または組織内より高い。例えば、プロモーターは、脊髄、脳幹、(髄質、橋、および中脳)、小脳、間脳(視床、視床下部)、終脳(線条体、大脳皮質、または皮質内部、後頭部、側頭部、頭頂部または前頭葉)、またはそれらの組み合わせに対して特異的でありうる。プロモーターは、特定の細胞種、例えばCNSにおけるニューロンまたはグリア細胞に対して特異的でありうる。それがグリア細胞内で活性を示す場合、それは、星状細胞、オリゴデンドロサイト、上衣細胞、シュワン細胞、またはミクログリアに対して特異的でありうる。それがニューロン内で活性を示す場合、それは、ニューロンの特定種、例えば、運動ニューロン、感覚ニューロン、または介在ニューロンに対して特異的でありうる。プロモーターは、脳の特定の領域、例えば、皮質、線条体(stratium)、黒質および海馬における細胞に対して特異的でありうる。
【0117】
好適なニューロン特異的プロモーターは、限定はされないが、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE;Oliviaら(1991年) Genomics 10:157−165頁);GenBank登録番号:X51956)、およびヒトニューロフィラメント軽鎖プロモーター(NEFL;Rogaevら(1992年) Hum.Mol.Genet.1:781頁);GenBank登録番号:L04147)を含む。グリア特異的プロモーターは、限定はされないが、グリア繊維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーター(Moriiら(1991年);GenBank登録番号:M65210)、S100プロモーター(Moriiら(1991年);GenBank登録番号:M65210)およびグルタミンシンターゼプロモーター(Van denら(1991年) Biochem.Biophys.Acta.2:249−251頁);GenBank登録番号:X59834)を含む。好ましい実施形態では、遺伝子は、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーターにより、上流(すなわち5'側)に隣接される。別の好ましい実施形態では、目的の遺伝子は、伸長因子1α(EF)プロモーターにより、上流(すなわち5'側)に隣接される。使用可能と思われる海馬特異的プロモーターは、海馬特異的グルココルチコイド受容体(GR)遺伝子プロモーターである。
【0118】
あるいは、心臓の固形腫瘍の処置においては、Svenssonら(1999年)が、組換え遺伝子の心筋細胞への、心臓作用性(cardiotropic)ベクター、例えば組換えアデノ随伴ウイルスベクターの心筋内注射または冠動脈内注入による送達により、インビボでのマウス心筋細胞内でのトランス遺伝子の発現をもたらすことについて記載している(Svenssonら(1999年) 「Efficient and stable transduction of cardiomyocytes after intramyocardial injection or intracoronary perfusion with recombinant adeno−associated virus vectors.」 Circulation.99:201−5頁)。Meloらは、心疾患に対する遺伝子および細胞に基づく治療についてレビューしている(Meloら(2004年) 「Gene and cell−based therapies for heart disease.」 FASEB J.18(6):648−63頁)。他の好ましい投与経路は、カテーテルまたはステントを介するものである。ステントは、持続的な遺伝子溶出および反対側の動脈壁での効率的な形質導入におけるプラットフォームを提供することから、局所的遺伝子送達における魅力的な選択肢を表す。この遺伝子送達方法は、ウイルスベクターの全身浸潤を低下させる可能性、ひいては低下した宿主免疫応答を有する。合成および天然ステントコーティングの双方は、持続的な遺伝子溶出を可能にし、それに伴う有害反応が全く有意でないという可能性を示している(Sharifら(2004年) 「Current status of catheter−and stent−based gene therapy.」 Cardiovasc Res.64(2):208−16頁)。
【0119】
細胞内でのポリヌクレオチド阻害剤の発現を一時的に調節できることが望ましい場合があるが、これは上で与えられる理由として本質的なことではない。したがって、ポリヌクレオチドの発現が、直接的または間接的に(下記参照)、例えば患者に投与可能な小分子の濃度によって調節可能なプロモーターの制御下にあることが望ましい場合があり、その場合、ポリヌクレオチドからの抗体の発現を(小分子が前記プロモーターの活性化または抑制を有効にするか否かに依存して)活性化するどころか抑制することが所望される。これは、発現コンストラクトが、安定である、すなわち、少なくとも1週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、8か月または1年以上の期間、細胞内での(任意の必要な調節分子の存在下で)阻害剤の発現能を有する場合、特に有益でありうる。したがって、ポリヌクレオチドは、調節可能なプロモーターに作動可能に連結してもよい。調節可能なプロモーターの例として、次の論文、すなわち、Riveraら(1999年) Proc Natl Acad Sci USA96(15)、8657−62頁(2つの別々のアデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(一方は誘導性ヒト成長ホルモン放出ホルモン(hGH)標的遺伝子をコードし、他方は二分されたラパマイシン調節転写因子をコードする)を使用する、経口的に生物が利用可能な薬剤のラパマイシンによる制御);Magariら(1997年) J Clin Invest 100(11)、2865−72頁(ラパマイシンによる制御);Bueler(1999年) Biol Chem 380(6)、613−22頁(アデノ随伴ウイルスベクターに関するレビュー);Bohlら(1998年) Blood 92(5)、1512−7頁(アデノ随伴ベクター内のドキシサイクリンによる制御);Abruzzeseら(1996年) J Mol Med74(7)、379−92頁(誘導因子、例えば、ホルモン、成長因子、サイトカイン、細胞増殖抑制剤、放射線照射、熱ショックおよび関連の応答因子に関するレビュー)において言及されたものが挙げられる。
【0120】
獣医学用途においては、阻害剤は、典型的には、通常の獣医学臨床に従う好適に許容できる調合物として投与され、獣医は、特定の動物にとって最適なものとなる投与計画および投与経路を決定することになる。
【0121】
併用療法
National Cancer Institute Press Release(2005年4月14日付、2005年6月16日更新)(「Bevacizumab Combined With Chemotherapy Improves Progression−Free Survival for Patients With Advanced Breast Cancer」)によると、血管新生阻害剤の抗VEGFモノクローナル抗体ベバシズマブは、標準の化学療法と併用して投与される場合、多数の固形腫瘍における臨床転帰を改善する。用いられている併用は、ベバシズマブとイリノテカン、フルオロウラシル、およびロイコボリンとの併用;ベバシズマブとFOLFOX4(オキサリプラチン、5−フルオロウラシルおよびロイコボリンのレジメン)との併用;ベバシズマブとパクリタキセルとの併用;ならびにベバシズマブとパクリタキセルおよびカルボプラチンとの併用、を含む。
【0122】
したがって、上記のCLEC14Aの阻害剤は、任意の他の抗癌化合物の不在下で臨床的に有効でありうるが、これらの阻害剤をさらなる抗癌剤と並行投与することが有利でありうることは理解されている。
【0123】
したがって、一実施形態では、本方法はまた、少なくとも1つのさらなる抗癌剤を個体に投与するステップを含んでもよい。本方法は、CLEC14Aの阻害剤およびさらなる抗癌剤を含有する医薬組成物を個体に投与するステップを含んでもよい。しかし、CLEC14Aの阻害剤およびさらなる抗癌剤が、別々に、例えば別々の投与経路によって投与可能であることは理解されている。したがって、CLEC14Aの阻害剤および少なくとも1つのさらなる抗癌剤が、連続的または(実質的に)同時に投与可能であることは理解されている。それらは同じ医薬製剤または薬剤の中で投与してもよく、あるいはそれらは別々に調合し、投与してもよい。
【0124】
医学用途の一実施形態では、CLEC14Aの阻害剤を含有する薬剤はまた、少なくとも1つのさらなる抗癌剤を含んでもよい。
【0125】
医学用途の別の実施形態では、処置されるべき個体は、少なくとも1つのさらなる抗癌剤が投与される個体であってもよい。個体は、さらなる抗癌剤を、CLEC14Aの阻害剤を含有する薬剤と同時に投与されうるが、個体は、さらなる抗癌剤を、CLEC14Aの阻害剤を含有する薬剤を受ける前(または受けた後)に投与されている場合がある(または投与されることになる)ことは理解されている。
【0126】
さらなる抗癌剤は、アルキル化剤、例えば、窒素マスタード、例えば、メクロレタミン(HN)、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L−サルコリシン)およびクロラムブシル;エチレンイミンおよびメチルメラミン(methylmelamines)、例えばヘキサメチルメラミン(hexamethylmelamine)、チオテパ;アルキルスルホン酸塩、例えばブスルファン;ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル−CCNU)およびストレプトゾシン(ストレプトゾトシン);およびトリアゼン、例えばデカルバジン(decarbazine)(DTIC;ジメチルトリアゼノイミダゾール−カルボキサミド);代謝拮抗剤、メトトレキサート(アメトプテリン)などの葉酸類似体を含む;ピリミジン類似体、例えば、フルオロウラシル(5−フルオロウラシル;5−FU)、フロキシウリジン(フルオロデオキシウリジン;FUdR)およびシタラビン(シトシンアラビノシド);ならびにプリン類似体および関連阻害剤、例えば、メルカプトプリン(6−メルカプトプリン;6−MP)、チオグアニン(6−チオグアニン;TG)およびペントスタチン(2’−デオキシコホルマイシン);ビンブラスチン(VLB)およびビンクリスチンなどのビンカアルカロイドを含む天然生成物;エトポシドおよびテニポシドなどのエピポドフィロトキシン;抗生物質、例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン;ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびマイトマイシン(マイトマイシンC);L−アスパラギナーゼなどの酵素;およびインターフェロンアルフェノーム(alphenomes)などの生物学的応答調節物質;シスプラチン(シス−DDP)およびカルボプラチンなどの白金配位複合体を含む種々雑多な製剤(miscellaneous agent);ミトキサントロンおよびアントラサイクリンなどのアントラセンジオン;ヒドロキシ尿素などの置換尿素;プロカルバジン(N−メチルヒドラジン、MIH)などのメチルヒドラジン誘導体;ならびにミトタン(o,p’−DDD)およびアミノグルテチミドなどの副腎皮質抑制剤(adrenocortical suppressant);タクソールおよび類似体/誘導体;細胞周期阻害剤;Bortezomib(Velcade(登録商標))などのプロテアソーム阻害剤;シグナルトランスダクターゼ(signal transductase)(例えばチロシンキナーゼ)阻害剤、例えば、Imatinib(Glivec(登録商標))、COX−2阻害剤、ならびにホルモン作動薬/拮抗薬、例えばフルタミドおよびタモキシフェン、から選択してもよい。
【0127】
臨床的に使用される抗癌剤は、典型的には、作用機序によって分類され、アルキル化剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、RNA/DNA代謝拮抗剤、DNA代謝拮抗剤および抗有糸分裂剤が挙げられる。米国NIH/National Cancer Instituteウェブサイトは、122の化合物を挙げており(http://dtp.nci.nih.gov/docs/cancer/searches/standard_mechanism.html)、それら全部を、CLEC14Aの阻害剤と併用してもよい。それらは、アルキル化剤、例えば、アサリー(Asaley)、AZQ、BCNU、ブスルファン、カルボキシフタラート白金(carboxyphthalatoplatinum)、CBDCA、CCNU、CHIP、クロラムブシル、クロロゾトシン、シス−白金、クロメソン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、シクロジソン、ジアンヒドロガラクチトール、フルオロドーパ、ヘプスルファム、ヒカントン、メルファラン、メチルCCNU、マイトマイシンC、ミトゾラミド(mitozolamide)、窒素マスタード、PCNU、ピペラジン、ピペラジンジオン、ピポプロマン、ポルフィロマイシン、スピロヒダントインマスタード、テロキシロン、テトラプラチン、ピコプラチン(SP−4−3)(シス−アミンジクロロ(2−メチルピリジン)Pt(II))、チオテパ、トリエチレンメラミン、ウラシル窒素マスタード、ヨシ(Yoshi)−864;抗有糸分裂剤(anitmitotic)、例えば、アロコルヒチン、ハリコンドリンB、コルヒチン、コルヒチン誘導体、ドラスタチン10、メイタンシン、リゾキシン、タクソール、タクソール誘導体、チオコルヒチン、トリチルシステイン、ビンブラスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩;トポイソメラーゼI阻害剤、例えば、カンプトテシン、カンプトテシン、Na塩、アミノカンプトテシン、20のカンプトテシン誘導体、モルホリノドキソルビシン;トポイソメラーゼII阻害剤、例えば、ドキソルビシン、アモナファイド、m−AMSA、アントラピラゾール誘導体、ピラゾロアクリジン、ビサントレンHCL、ダウノルビシン、デオキシドキソルビシン、ミトキサントロン、メノガリル、N,N−ジベンジルダウノマイシン、オキサントラゾール(oxanthrazole)、ルビダゾン、VM−26、VP−16;RNA/DNA代謝拮抗剤、例えば、L−アラノシン、5−アザシチジン、5−フルオロウラシル、アシビシン、3つのアミノプテリン誘導体、アンチフォル(antifol)、可溶性ベーカーズアンチフォル(Baker's soluble antifol)、ジクロロアリルローソン(dichlorallyl lawsone)、ブレキナル、フトラフル(プロドラッグ)、5,6−ジヒドロ−5−アザシチジン、メトトレキサート、メトトレキサート誘導体、N−(ホスホノアセチル)−L−アスパルテート(PALA)、ピラゾフリン、トリメトレキサート;DNA代謝拮抗剤、例えば、3−HP、2'−デオキシ−5−フルオロウリジン、5−HP、α−TGDR、アフィジコリングリシナート、アラ−C、5−アザ−2'−デオキシシチジン、β−TGDR、シクロシチジン、グアナゾール、ヒドロキシ尿素、イノシングリコジアルデヒド、マクベシンII、ピラゾロイミダゾール、チオグアニンおよびチオプリン、を含む。
【0128】
しかし、少なくとも1つのさらなる抗癌剤が、シスプラチン;カルボプラチン;ピコプラチン;5−フルオロウラシル;パクリタキセル;マイトマイシンC;ドキソルビシン;ゲムシタビン;トミュデックス(tomudex);ペメトレキセド;メトトレキサート;イリノテカン、フルオロウラシルおよびロイコボリン;オキサリプラチン、5−フルオロウラシルおよびロイコボリン;ならびにパクリタキセルおよびカルボプラチンから選択されることは好ましい。
【0129】
さらなる抗癌剤が、特定の腫瘍タイプに対して特に有効であることが示されている場合、CLEC14Aの阻害剤をそのさらなる抗癌剤と併用し、特定の腫瘍タイプを処置することが好ましい場合がある。
【0130】
細胞毒性剤の標的化送達
より選択的な、ひいてはより優れた抗癌剤の開発に向けた手段の一つは、生物活性分子の、腫瘍内皮マーカーに特異的な分子(例えばヒト抗体)に結合することによる、腫瘍環境への標的化送達である。それらの利用可能性およびそれらが可能にする治療オプション(例えば腔内血液凝固または免疫細胞の動員)に起因し、腫瘍血管上に選択的に発現される血管マーカーは、理想的にはリガンドに基づく腫瘍標的化方法に適合し、腫瘍血管新生のイメージングおよび腫瘍血管新生に対する細胞毒性剤の標的化が可能になる。
【0131】
したがって、本発明の第2の態様は、細胞毒性剤を個体の身体における腫瘍血管新生に標的化する方法であって、(i)CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する抗体、および(ii)細胞毒性部分、を含む化合物を個体に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0132】
本発明のこの態様はまた、(i)CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する抗体と、(ii)細胞毒性剤を個体の身体における腫瘍血管新生に標的化するための、薬剤の調製における細胞毒性部分と、を含む化合物の使用を提供する。この態様は、細胞毒性剤を個体の身体における腫瘍血管新生に標的化する上での使用を意図したかかる化合物をさらに提供する。
【0133】
典型的には、細胞毒性部分は、直接的な細胞毒性化学療法剤、直接的な細胞毒性ポリペプチド、プロドラッグを細胞毒性薬に変換可能な部分、放射線増感剤、直接的な細胞毒性核酸、直接的または間接的な細胞毒性ポリペプチドをコードする核酸分子、あるいは放射性原子、から選択される。かかる細胞毒性部分、ならびに抗体および細胞毒性部分を含む複合体を作製する方法の例は、出願人らが以前に公表した国際公開第02/36771号パンフレットおよび国際公開第2004/046191号パンフレット(参照により本明細書中に援用される)において提供されている。
【0134】
細胞毒性部分は、新生血管における細胞あるいは新生血管に極めて接近し、それに関連する細胞に対して直接的または間接的に毒性を示しうる。「直接的に細胞毒性を示す」には、同部分がそれ自体で細胞毒性を示す部分であるという意味が含まれる。「間接的な細胞毒性」には、同部分が、それ自体で細胞毒性を示さないが、例えばさらなる分子に対するその活性によるかまたはそれに対するさらなる活性により、細胞毒性を誘発しうる部分であるという意味が含まれる。
【0135】
一実施形態では、細胞毒性部分は、細胞毒性化学療法剤である。細胞毒性化学療法剤は、当該技術分野で周知である。細胞毒性化学療法剤、例えば抗癌剤は、本明細書中に列挙されるものを含む。
【0136】
様々なこれらの細胞毒性部分、例えば細胞毒性化学療法剤は、予め抗体および他の標的化剤に結合されており、それにより、これらの作用剤を含む本発明の化合物は、当業者によって容易に作製可能である。例えば、カルボジイミド複合(BaumingerおよびWilchek(1980年) Methods Enzymol.70、151−159頁)を用い、ドキソルビシンを含む種々の作用剤を抗体に複合してもよい。また、細胞毒性部分を抗体に複合するための他の方法を用いてもよい。例えば、グルタルアルデヒド架橋が使用可能であるように、過ヨウ素酸ナトリウムによる酸化とその後の適切な反応物の還元的アルキル化を用いてもよい。ポリペプチドを架橋する方法は、当該技術分野で既知であり、国際公開第2004/046191号パンフレット中に記載されている。しかし、それとは無関係に、本発明の化合物を生成する方法が選択され、抗体がその標的化能を維持し、かつ結合部分がその関連機能を維持しているという判定がなされる必要があることが理解されている。
【0137】
本発明のさらなる実施形態では、細胞毒性部分は、細胞死をもたらす任意の部分が含まれる細胞毒性ペプチドまたはポリペプチド部分であってもよい。細胞毒性ペプチドおよびポリペプチド部分は、当該技術分野で周知であり、例えば、リシン、アブリン、緑膿菌外毒素、組織因子などを含む。それらを抗体などの標的化部分に結合するための方法はまた、当該技術分野で既知である。細胞毒性剤としてのリシンの使用は、BurrowsおよびThorpe(1993年) Proc.Natl.Acad.Sci.USA90、8996−9000頁において記載されており、また、局所的血液凝固および腫瘍の梗塞をもたらす組織因子の使用は、Ranら(1998年) Cancer Res.58、4646−4653頁およびHuangら(1997年) Science 275、547−550頁によって記載されている。Tsaiら(1995年) Dis.Colon Rectum 38、1067−1074頁は、モノクローナル抗体に複合されたアブリンA鎖について記載している。タンパク質を不活性化する他のリボソームは、細胞毒性剤として、国際公開第96/06641号パンフレット中に記載されている。緑膿菌外毒素はまた、細胞毒性ポリペプチド部分として使用可能である(Aielloら(1995年) Proc.Natl.Acad.Sci.USA92、10457−10461頁)。
【0138】
特定のサイトカイン、例えばTNFα、INFγおよびIL−2もまた、細胞毒性剤として有用でありうる。
【0139】
特定の放射性原子もまた、十分な用量で送達される場合、細胞毒性を示しうる。したがって、細胞毒性部分は、使用時に、細胞毒性を示すように十分な量の放射能を標的部位に送達する放射性原子を含んでもよい。好適な放射性原子は、リン−32、ヨウ素−125、ヨウ素−131、インジウム−111、レニウム−186、レニウム−188またはイットリウム−90、または、十分なエネルギーを放射し、近隣の細胞、オルガネラまたは核酸を破壊する任意の他の同位体、を含む。好ましくは、本発明の化合物中の放射性原子の同位体および密度は、4000cGyより大きい(好ましくは少なくとも6000、8000もしくは10000cGy)放射線量が、標的部位、好ましくは標的部位の細胞およびそのオルガネラ、特に核に送達される程度である。
【0140】
放射性原子は、既知の方法で抗体に結合してもよい。例えば、EDTAまたは別のキレート剤は、抗体に結合させ、またそれを使用し、111Inまたは90Yに結合させてもよい。チロシン残基は、125Iまたは131Iで標識してもよい。
【0141】
細胞毒性部分は、放射線増感剤であってもよい。放射線増感剤は、フロロピリミジン、チミジン類似体、ヒドロキシ尿素、ゲムシタビン、フルダラビン、ニコチンアミド、ハロゲン化ピリミジン、3−アミノベンズアミド、3−アミノベンゾジアミド(aminobenzodiamide)、エタニクサドール(etanixadole)、ピモニダゾールおよびミソニダゾール、を含む(例えば、McGinnら(1996年)J.Natl.Cancer Inst.88、1193−11203頁;ShewachおよびLawrence(1996年) Invest.New Drugs 14、257−263頁;Horsman(1995年) Acta Oncol.34、571−587頁;ShenoyおよびSingh(1992年) Clin.Invest.10、533−551頁;Mitchellら(1989年) Int.J.Radiat.Biol.56、827−836頁;IliakisおよびKurtzman(1989年) Int.J.Radiat.Oncol.Biol.Phys.16、1235−1241頁;Brown(1989年) Int.J.Radiat.Oncol.Biol.Phys.16、987−993頁;Brown(1985年) Cancer 55、2222−2228頁を参照)。
【0142】
細胞毒性部分は、凝血促進因子、例えば組織因子の細胞外ドメインであってもよい(Rippmannら(2000年) 「Fusion of the tissue factor extracellular domain to a tumour stroma specific single−chain fragment variable antibody results in an antigen−specific coagulation−promoting molecule.」 Biochem J.349:805−12頁;Huangら(1997年) 「Tumor infarction in mice by antibody−directed targeting of tissue factor to tumor vasculature.」 Science.275(5299頁):547−550頁)。
【0143】
細胞毒性部分は、間接的な細胞毒性ポリペプチドであってもよい。特に好ましい実施形態では、間接的な細胞毒性ポリペプチドは、酵素活性を有し、比較的非毒性のプロドラッグを細胞毒性薬に変換可能なポリペプチドである。標的化部分が抗体である場合、この種の系は、ADEPT(抗体指向性酵素プロドラッグ療法)と称されることが多い。同系は、標的化部分が酵素部分を患者の身体内の所望される部位(例えば腫瘍に関連した新しい血管組織の部位)に位置づけ、酵素が同部位に局在化されるだけの時間が経過後、酵素に対する基質であるプロドラッグを投与し、触媒作用の最終産物が細胞毒性化合物であることを必要とする。同アプローチの目的は、所望される部位での薬剤の濃度を最大化し、正常組織内での薬剤の濃度を最小化することであり(Senterら(1988年) 「Anti−tumor effects of antibody−alkaline phosphatase conjugates in combination with etoposide phosphate」 Proc.Natl.Acad.Sci.USA85、4842−4846頁;Bagshawe(1987年) Br.J.Cancer 56、531−2頁;およびBagshaweら(1988年) 「A cytotoxic agent can be generated selectively at cancer sites」 Br.J.Cancer.58、700−703頁)、また、Bagshawe(1995年) Drug Dev.Res.34、220−230頁および国際公開第2004/046191号パンフレットは、本発明との関連で好適でありうる様々な酵素/プロドラッグの併用について記載している。
【0144】
典型的には、プロドラッグは、細胞毒性薬に比べて、比較的非毒性である。典型的には、それは、好適なインビトロ細胞毒性試験における測定によると、10%未満の毒性、好ましくは1%未満の毒性を有する。
【0145】
プロドラッグを細胞毒性薬に変換可能な同部分は、化合物の残りから単離される際、活性を示す可能性が高いが、あくまで、(a)それが化合物の残りと組み合わされ、かつ(b)化合物が標的細胞に結合され、近接され、その中に内在化される場合にそれが活性を示すことが必要である。
【0146】
さらなる部分は、放射線照射時、細胞毒性を示すようになるかまたは細胞毒性部分を放出するものであってもよい。例えば、ホウ素−10同位体は、適切に照射される場合、細胞毒性を示すα粒子を放出する(米国特許第4,348,376号明細書;Primusら(1996年) Bioconjug.Chem.7:532−535頁)。
【0147】
同様に、細胞毒性部分は、フォトフリンなど、光線力学的療法において有用なものであってもよい(例えば、Doughertyら(1998年) J.Natl.Cancer Inst.90、889−905頁を参照)。
【0148】
処置されるべき個体、固形腫瘍のタイプ、投与経路、抗体などに対する選好は、本発明の第1の態様に関連し、上で規定される通りである。
【0149】
細胞毒性剤の腫瘍血管新生への標的化が、腫瘍血管新生を阻害するように作用することになることは理解されている。したがって、本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様に関連し、上で規定されるように、個体における腫瘍血管新生を阻害する方法であって、(i)CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する抗体、および(ii)細胞毒性部分、を含む化合物を個体に投与するステップを含む、方法を提供する。この第3の態様はまた、個体における腫瘍血管新生を阻害するための薬剤の調製における、(i)CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する抗体、および(ii)細胞毒性部分、を含む化合物の使用を提供する。この態様は、個体における腫瘍血管新生を阻害する上での使用を意図したかかる化合物をさらに提供する。処置されるべき個体、固形腫瘍のタイプ、投与経路、抗体などに対する選好は、本発明の第1の態様に関連し、上で規定される通りである。
【0150】
また、本発明の第2および第3の態様に記載のように、細胞毒性部分を腫瘍血管新生に対して標的化し、腫瘍血管新生を阻害することが、任意の他の抗癌化合物の不在下で臨床的に有効でありうるが、化合物をさらなる抗癌剤と並行投与することが有利でありうることは理解されている。したがって、本発明の第2および第3の態様の一実施形態では、本方法は、個体にさらなる抗癌剤を投与するステップを含んでもよい。投与されるべきさらなる抗癌剤に対する選好は、上記の通りである。(i)CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する抗体、および(ii)細胞毒性部分、を含む化合物とさらなる抗癌剤とは、これらの両成分を含有する医薬組成物の形態で投与してもよい。しかし、化合物およびさらなる抗癌剤が、例えば別々の投与経路により、別々に投与可能であることは理解されている。したがって、化合物および少なくとも1つのさらなる抗癌剤が、別々にまたは(実質的に)同時に投与可能であることは理解されている。それらは、同じ医薬製剤または薬剤の中で投与してもよく、あるいはそれらは別々に調合し、投与してもよい。
【0151】
腫瘍のイメージング、検出および診断
CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する抗体は、検出可能な部分に結合される場合、イメージング、例えば腫瘍の血管イメージングにおいて有用でありうる。腫瘍の血管イメージングにおいて有用な方法および化合物は、出願人らが以前に公表した国際公開第02/36771号パンフレット(参照により本明細書中に援用される)において記載されている。
【0152】
上で規定された抗CLEC14A抗体および検出可能な部分を含む化合物は、適切な検出方法と併用し、個体における化合物の位置を検出し、それによって個体における腫瘍血管新生の部位および範囲を同定してもよい。
【0153】
したがって、本発明の第4の態様は、個体の身体における腫瘍血管新生をイメージングする方法であって、(i)CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する抗体、および(ii)検出可能な部分、を含む化合物を個体に投与するステップと、身体における検出可能な部分をイメージングするステップと、を含む、方法を提供する。
【0154】
一実施形態では、本方法は、個体における化合物の位置を検出するステップをさらに含んでもよい。
【0155】
「検出可能な部分」には、同部分が、本発明の化合物の患者への投与後に標的部位に位置づけられる場合、典型的には身体および位置づけられた標的の部位の外部から非侵襲的に検出されうるものであるという意味が含まれる。したがって、本発明のこの態様の化合物は、イメージングおよび診断、特に固形腫瘍の血管新生のイメージングおよび診断において有用である。
【0156】
典型的には、検出可能な部分は、磁気ナノ粒子、放射性核種またはフルオロフォアであるかまたはそれらを含む。
【0157】
したがって、一実施形態では、検出可能な部分は、イメージングにおいて有用な放射性原子であってもよい。好適な放射性原子は、シンチグラフィー試験におけるテクネチウム−99mまたはヨウ素−123を含む。他の容易に検出可能な部分は、例えば、磁気共鳴イメージング(MRI)におけるスピン標識、例えば、ヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガンまたは鉄を含む。明らかに、本発明の化合物は、分子が検出可能であるように、十分な適切な原子同位体を有する必要がある。
【0158】
放射線標識または他の標識は、既知の方法で化合物に取り込んでもよい。例えば、抗体が、例えば水素の代わりにフッ素−19を含む好適なアミノ酸前駆体を使用する化学的アミノ酸合成により、生合成または合成できる場合である。99mTc、123I、186Rh、188Rhおよび111Inなどの標識は、例えば、抗体におけるシステイン残基を介して結合させてもよい。イットリウム−90は、リジン残基を介して結合させてもよい。IODOGEN法(Frakerら(1978年) Biochem.Biophys.Res.Comm.80、49−57頁)を使用し、ヨウ素−123を取り込んでもよい。参考文献(「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」,J.F.Chatal,CRC Press、1989年)は、他の方法について詳述している。
【0159】
多くの好適なフルオロフォアおよび検出方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、Stefan Andersson−Engelsら(1997年) 「In vivo fluorescence imaging for tissue diagnostics.」 Phys.Med.Biol.42:815−824頁;Altinogluら(2008年) 「Near−Infrared Emitting Fluorophore−Doped Calcium Phosphate Nanoparticles for In vivo Imaging of Human Breast Cancer」 ACS Nano 2(10):2075−84頁;およびChinら(2009年) 「In−vivo optical detection of cancer using chlorin e6−polyvinylpyrrolidone induced fluorescence imaging and spectroscopy」 BMC Medical Imaging 9:1(doi:10.1186/1471−2342−9−1)により、記載されている。
【0160】
典型的には、個体は、固形腫瘍、好ましくは本発明の第1の態様に関連する上記のものなどを有し、固形腫瘍の血管新生は画像化される。したがって、身体における特定の器官での抗体の局在化は、個体が、その器官に固形腫瘍を有するかまたは発生させている可能性があることを示す。この方法は、例えば、過去に診断された固形腫瘍のサイズを判定するか、固形腫瘍に対する治療の有効性を判定するか、または腫瘍の転移の範囲を判定する上で有用でありうる。身体における検出可能な部分を画像化するための方法は、当該技術分野で周知であり、PET(ポジトロンエミッショントモグラフィー)を含む。
【0161】
したがって、本発明のこの態様は、個体における固形腫瘍を検出、診断または予測する方法であって、
(i)ポリペプチドCLEC14Aに選択的に結合する抗体、および(ii)検出可能な部分、を含む化合物を個体に投与するステップと、
身体における検出可能な部分の存在および/または位置を検出するステップと、
を含む、方法を提供する。
【0162】
抗体、化合物および検出可能な部分に対する選好は、上記の通りである。
【0163】
他の血管新生条件
出願人らの知る限りにおいては、CLEC14Aの阻害剤が血管新生の阻害剤であることがかつて示唆されたことはない。また、血管新生の阻害が、腫瘍以外の血管新生疾患または症状を処置する上で有用でありうることは理解されるであろう。したがって、本発明の第5の態様に従い、処置を必要とする個体における血管新生を阻害する方法であって、CLEC14Aの阻害剤を個体に投与するステップを含む、方法が提供される。
【0164】
腫瘍以外では、血管新生の阻害はまた、不要な、望ましくないまたは不適切な血管新生を含む任意の疾患または症状と闘う上で有用でありうる。かかる症状は、乾癬、月経過多、子宮内膜症、関節炎(炎症性およびリウマチ様の双方)、黄斑変性、ページェット病、網膜症およびその血管合併症(例えば、増殖性および未熟児、および糖尿病性網膜症)、良性血管増殖、線維症(fibroses)、肥満、ならびに炎症、を含む。したがって、本発明のこの態様は、CLEC14Aの阻害剤を、それを必要とする個体に投与することによる、これらの疾患または症状を処置する方法を含む。本発明はまた、これらの疾患または症状を処置するための、薬剤の調製におけるCLEC14Aの阻害剤の使用を提供する。これらの疾患および症状は、望ましくない血管新生形成に関連し、典型的には、CLEC14Aの阻害剤は、これを有効な範囲まで低減する。
【0165】
「血管新生を阻害する」には、血管新生の速度またはレベルを低下させるという意味が含まれる。低下は、血管新生の速度またはレベルの約10%、もしくは約20%、もしくは約30%、もしくは約40%といった低レベルの低下であってもよい。好ましくは、低下は、血管新生の速度またはレベルの約50%、もしくは約60%、もしくは約70%、もしくは約80%の低下といった中間レベルの低下である。より好ましくは、低下は、血管新生の速度またはレベルの約90%、もしくは約95%、もしくは約99%、もしくは約99.9%、もしくは約99.99%といった高レベルの低下である。最も好ましくは、阻害はまた、血管新生の除去または検出不能なレベルまでのその低下を含んでもよい。血管新生の速度またはレベルを測定する、ひいてはCLEC14Aの阻害剤が血管新生を阻害するか否かとその範囲の程度を判定するための方法およびアッセイは、当該技術分野で既知であり、本明細書中に記載される。
【0166】
療法(治療)は、ヒトまたは動物が対象であってもよい。好ましくは、本発明の方法を使用することで、ヒトが処置される。
【0167】
CLEC14Aの阻害剤、調合物および投与経路などに対する選好は、上で規定される通りである。
【0168】
生体外方法
本発明の第6の態様は、血管新生を阻害する生体外方法であって、生体外でCLEC14Aの阻害剤を組織または細胞に投与するステップを含む、方法を提供する。典型的には、血管新生を阻害するこの生体外方法は、血管新生アッセイとの関連でまたは腫瘍血管新生のモデルにおいて、例えば下記のように実施される。したがって、細胞は、個体から取り出されている腫瘍細胞系または腫瘍細胞で確立してもよい。組織または細胞は、好ましくは哺乳類組織または細胞、および最も好ましくはヒト組織または細胞である。好ましくは、組織または細胞は、腫瘍内皮を含むか、または腫瘍内皮のモデルである。CLEC14Aの阻害剤に対する選好は、本発明の第1の態様に関連し、上記の通りである。
【0169】
好適な血管新生アッセイは、内皮細胞の増殖、移動および浸潤に対するアッセイを含み、また、BD Biosciences(Bedford,MA,USA)製のカタログ番号354141および354142として利用可能なBD BioCoat(商標)Angiogenesis System for Endothelial Cell Invasionを含む。腫瘍血管新生の好適なモデルは、腫瘍内皮細胞の移動、例えば腫瘍内皮細胞のbFGFおよびVEGF誘発性の移動、増殖、および腫瘍内皮細胞の浸潤に対するアッセイ、ならびに大動脈輪アッセイを含む。
【0170】
スクリーニング
本発明の第7の態様は、固形腫瘍の処置において有用でありうる作用剤、または固形腫瘍の処置において有用でありうる作用剤を同定するためのリード化合物を同定する方法であって、
ポリペプチドCLEC14Aまたはその断片に結合する候補化合物を提供するステップと、
候補化合物を血管新生アッセイにおいて試験するステップと、
を含み、ここで、アッセイにおける血管新生を阻害する候補化合物は、固形腫瘍の処置において有用な作用剤であるか、または固形腫瘍の処置において有用な作用剤を同定するためのリード化合物であってもよい、方法を提供する。
【0171】
一実施形態では、本方法は、候補化合物がCLEC14Aポリペプチドまたはその断片に選択的に結合するか否かを判定する、先行するステップをさらに含む。
【0172】
これらの方法を用い、抗癌剤でありうる抗血管新生因子を同定することが可能であることは理解されている。
【0173】
CLEC14Aポリペプチドには、図1中に列挙される配列(配列番号1)を有するポリペプチドおよびその天然変異体が含まれる。結合アッセイにおいては、図1中に列挙されるCLEC14Aポリペプチド配列に対して100%の配列同一性を有するポリペプチドを使用する必要がない(完全長ポリペプチドまたはその断片の全体にわたるか否かにかかわらず)ことは理解されている。したがって、本発明のこの態様では、図1中に列挙されるCLEC14A配列と、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、もしくは少なくとも96%、もしくは少なくとも97%、もしくは少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドを使用することは可能である(完全長ポリペプチドまたはその断片にわたるか否かにかかわらず)。変異体ポリペプチドが、図1中に列挙されるCLEC14Aポリペプチドの配列の、少なくとも20アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも50残基の連続領域を有する場合が好ましい。かかる変異体は、例えば、当該技術分野で周知の、組換えDNA技術、タンパク質工学および部位特異的突然変異誘発の方法を用いて作製してもよい。
【0174】
2つのポリペプチド間のパーセント配列同一性は、好適なコンピュータプログラム、例えばUniversity of Wisconsin Genetic Computing GroupのGAPプログラムを使用して決定してもよく、パーセント同一性が、配列が最適に整列されているポリペプチドに関連して計算されることは理解されるであろう。アラインメントは、あるいは、Clustal Wプログラム(Thompsonら、(1994年) Nucleic Acids Res 22、4673−80頁)を使用して実行してもよい。使用されるパラメータは、以下の通りである。すなわち、Fastペアワイズアラインメントパラメータ:K−タプル(ワード)サイズ;1、ウィンドウサイズ;5、ギャップペナルティ;3、上方対角線の数;5、スコアリング法:xパーセント。多重アラインメントパラメータ:ギャップオープンペナルティ;10、ギャップ伸長ペナルティ;0.05。スコアリングマトリックス:BLOSUM。
【0175】
また、候補化合物が特異的ポリペプチドに結合するか否かを判定するのに、結合アッセイにおいて必ずしも完全長ポリペプチド全体を使用する必要がなく、かつポリペプチドの断片を有効に使用することが可能であることは理解されている。好ましくは、断片は、少なくとも20アミノ酸残基長であり、20〜50の間の残基長または50〜100の間の残基長または100〜150の間の残基長または150〜200の間の残基長、またはそれ以上であってもよい。断片が成熟CLEC14Aポリペプチドの細胞外ドメインの断片であるか、または断片がそれを有することが好ましい。
【0176】
一実施形態では、候補化合物は、CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する抗体またはその断片であってもよい。好適な抗体は、上記のものである。
【0177】
別の実施形態では、候補化合物は、ペプチドであってもよい。CLEC14Aポリペプチドまたはその断片に結合する好適なペプチドは、ペプチドライブラリのファージディスプレイ(ScottおよびSmith(1990年) 「Searching for peptide ligands with an epitope library.」 Science 249:386−390頁;Feliciら(1995年) 「Peptide and protein display on the surface of filamentous bacteriophage.」 Biotechnol.Annu.Rev.1:149−183頁);およびCollinsら(2001年) 「Cosmix−plexing:a novel recombinatorial approach for evolutionary selection from combinatorial libraries.」 J.Biotechnol.74:317−338頁);例えばインビボパニング(Pasqualiniら(1997年) 「αv integrins as receptors for tumor targeting by circulating ligands.」 Nature Biotechnol.15:542−546頁)、および固相パラレル合成(Frank(2002年) 「The SPOT−synthesis technique. Synthetic peptide arrays on membrane supports−principles and applications.」 J.Immunol.Methods 267:13−26頁;ならびにPinillaら(2003年) 「Advances in the use of synthetic combinatorial chemistry:mixture−based libraries.」 Nature Med.9:118−122頁)などの方法によって同定してもよい。ペプチドの解離定数は、典型的にはマイクロモルの範囲内にあるが、親和性は、多量体化によって改善されうる(Terskikhら(1997年) 「“Peptabody”:a new type of high avidity binding protein. Proc.Natl Acad.Sci.USA94、1663−1668頁;およびWrightonら(1997年) 「Increased potency of an erythropoietin peptide mimetic through covalent dimerization.」 Nature Biotechnol.15、1261−1265頁)。
【0178】
C型レクチンの一次リガンドは、たとえ他のタンパク質、脂質または無機化合物への結合が示されていても、炭水化物である。したがって、別の実施形態では、候補化合物は、炭水化物、または糖タンパク質もしくは糖脂質などの炭水化物部分を有する分子であってもよい。C型レクチンによる炭水化物の認識および結合がカルシウム依存性であることは理解されている。したがって、この実施形態では、本方法は、カルシウムイオンの存在下で実施される。
【0179】
さらに別の実施形態では、候補化合物は、アプタマー、すなわち特異的リガンド結合構造に折りたたまれた一本鎖DNA分子であってもよい。CLEC14Aポリペプチドまたはその断片に結合する好適なアプタマーは、インビトロ選択および増幅などの方法によって同定してもよい(EllingtonおよびSzostak(1992年) 「Selection in vitro of single stranded DNA molecules that fold into specific ligand binding structures.」 Nature 355:850−852頁;およびDanielsら(2003年) 「A tenascin−C aptamer identified by tumor cell SELEX:systematic evolution of ligands by exponential enrichment.」 Proc.Natl Acad.Sci.USA100、15416−15421頁)。アプタマーは、ヌクレアーゼ安定性を示す「シュピーゲルマー」であってもよい(Helmlingら(2004年) 「Inhibition of ghrelin action in vitro and in vivo by an RNA−Spiegelmer.」 Proc.Natl Acad.Sci.USA101:13174−13179頁)。アプタマーは、典型的には、マイクロモルからサブナノモルの範囲内にある解離定数を有する。
【0180】
さらに別の実施形態では、候補化合物は、小さい有機分子であってもよい。CLEC14Aポリペプチドまたはその断片に結合する好適な小分子は、化合物の大ライブラリのスクリーニング(Beck−SickingerおよびWeber(2001年) 「Combinational Strategies in Biology and Chemistry」(John Wiley & Sons,Chichester,Sussex);核磁気共鳴による構造−活性関係による(Shukerら(1996年) 「Discovering high−affinity ligands for proteins:SAR by NMR.」 Science 274:1531−1534頁);コード化された自己集合の化学ライブラリMelkkoら(2004年) 「Encoded self−assembling chemical libraries.」 Nature Biotechnol.22:568−574頁);DNA鋳型化学(Gartnerら(2004年) 「DNA−templated organic synthesis and selection of a library of macrocycles.」 Science 305:1601−1605頁);動的コンビナトリアル化学(RamstromおよびLehn(2002年) 「Drug discovery by dynamic combinatorial libraries.」 Nature Rev.Drug Discov.1:26−36頁);連結(ArkinおよびWells(2004年) 「Small−molecule inhibitors of protein−protein interactions:progressing towards the dream.」 Nature Rev.Drug Discov.3:301−317頁);ならびにスピードスクリーン(speed screen)(Muckenschnabelら(2004年) 「SpeedScreen:label−free liquid chromatography−mass spectrometry−based high−throughput screening for the discovery of orphan protein ligands.」 Anal.Biochem.324:241−249頁)などの方法によって同定してもよい。典型的には、小さい有機分子は、ナノモル範囲内のポリペプチドに対する、特に空洞(cavity)を有する抗原に対する解離定数を有することになる。最小の有機分子結合剤の利点として、それらの作製しやすさ、免疫原性の欠如、組織分布特性、化学修飾方法および経口バイオアベイラビリティが挙げられる。
【0181】
候補化合物が、CLEC14Aポリペプチドまたはその断片と結合または相互作用する能力は、下でさらに考察されるように、タンパク質/タンパク質相互作用または他の化合物/タンパク質相互作用を検出/測定する任意の方法によって測定してもよい。好適な方法は、例えば、酵母ツーハイブリッド相互作用、同時精製、ELISA、共免疫沈降および表面プラスモン共鳴法などの方法を含む。したがって、候補化合物とポリペプチドまたはその断片との間の相互作用が、ELISA、共免疫沈降または表面プラスモン共鳴法、あるいは酵母ツーハイブリッド相互作用または同時精製方法によって検出可能である場合、候補化合物は、ポリペプチドまたはその断片に結合する能力があると考えることができる。同相互作用が表面プラスモン共鳴法を用いて検出できることは好ましい。表面プラスモン共鳴法は、当業者に周知である。例えば、技術は、O'Shannessy D.J.(1994年) 「Determination of kinetic rate and equilibrium binding constants for macromolecular interactions:a critique of the surface plasmon resonance literature」 Curr Opin Biotechnol.5(1):65−71頁;Fivashら(1998年) 「BIAcore for macromolecular interaction.」 Curr Opin Biotechnol.9(1):97−101頁;Malmqvist(1999年) 「BIACORE:an affinity biosensor system for characterization of biomolecular interactions.」 Biochem Soc Trans.27(2):335−40頁において記載されている。
【0182】
高スループット処理が可能なスクリーニングアッセイが特に好ましいことは理解されている。例として、細胞に基づくアッセイおよびタンパク質−タンパク質結合アッセイを含んでもよい。SPAに基づく(Scintillation Proximity Assay;Amersham International)システムを使用してもよい。例えば、タンパク質キナーゼの活性を調節可能な化合物を同定するためのアッセイは、次のように実施してもよい。シンチラント(scintillant)を含むビーズおよびリン酸化可能な基質ポリペプチドは、調製可能である。ビーズは、タンパク質キナーゼおよび32P−ATPまたは33P−ATPを含む試料と、また試験化合物と混合してもよい。便宜上、これは、マルチウェル(例えば、96または384)フォーマットで行われる。次いで、プレートは、32Pまたは33P SPAアッセイにおける既知のパラメータを用いる好適なシンチレーションカウンタを使用し、計数される。シンチラントに接近している32Pまたは33Pのみ、すなわちポリペプチドに結合されたそれのみが検出される。また、例えば、ポリペプチドがシンチラントビーズ上に抗体または抗体断片への結合を介して固定される場合、かかるアッセイの変異体を使用してもよい。
【0183】
ポリペプチド/ポリペプチド相互作用を検出する他の方法は、限界濾過とともにイオンスプレー質量分析/HPLC法または他の物理的分析法を含む。例えば、当業者に周知の蛍光エネルギー共鳴移動(Fluorescence Energy Resonance Transfer)(FRET)法を使用してもよく、ここでは、2つの蛍光標識された実体の結合が、互いに近接している場合に蛍光標識の相互作用を測定することによって測定可能である。
【0184】
CLEC14Aポリペプチドまたはその断片に結合可能な化合物を同定するさらなる方法が、ポリペプチドが化合物に暴露され、かつ化合物の前記ポリペプチドへの任意の結合が検出され、および/または測定される場合の方法である。化合物のCLEC14Aポリペプチドへの結合における結合定数が測定されうる。化合物のポリペプチドへの結合を検出し、および/または測定(定量)するための好適な方法は、当業者に周知であり、例えば、高スループット処理が可能な方法、例えばチップに基づく方法を用いて実施してもよい。VLSIPS(商標)と称される技術により、数十万以上の異なる分子プローブを有する極小チップの生成が可能になっている。これらの生物学的チップまたはアレイは、アレイ内に配列されたプローブを有し、各プローブは特定の位置に割り当てられる。生物学的チップは、各位置が例えば10ミクロンの規模を有するように生成されている。チップを使用し、標的分子がチップ上のプローブのいずれかと相互作用するか否かを判定することが可能である。アレイを選択された試験条件下で標的分子に暴露した後、走査デバイスにより、アレイ内の各位置を検査し、標的分子がその位置でのプローブと相互作用しているか否かを判定することができる。
【0185】
CLEC14Aポリペプチドまたはその断片に結合する候補化合物の同定が、薬剤スクリーニング経路における最初のステップでありえ、また同定された化合物は、例えば血管新生に対する阻害能についてさらに選別されうることは理解されている。
【0186】
「血管新生を阻害する」には、血管新生の速度またはレベルを低下させるという意味が含まれる。低下は、血管新生の速度またはレベルの約10%、もしくは約20%、もしくは約30%、もしくは約40%といった低レベルの低下であってもよい。好ましくは、低下は、血管新生の速度またはレベルの約50%、もしくは約60%、もしくは約70%、もしくは約80%の低下といった中間レベルの低下である。より好ましくは、低下は、血管新生の速度またはレベルの約90%、もしくは約95%、もしくは約99%、もしくは約99.9%、もしくは約99.99%といった高レベルの低下である。最も好ましくは、阻害はまた、血管新生の除去または検出不能なレベルまでのその低下を含んでもよい。
【0187】
血管新生の速度またはレベルを測定する、ひいては試験化合物が血管新生を阻害するか否かとその範囲の程度を判定するための方法およびアッセイは、当該技術分野で既知である。例えば、米国特許第6,225,118号明細書(参照により本明細書中に援用される)は、血管新生の複合的(combined)ステージ、すなわち細胞発生の増殖、移動および分化ステージをモデル化するための多細胞生体外アッセイ(multicellular ex vivo assay)について記載している。TCS CellWorks Ltd.(Buckingham MK18 2LR,UK)によるAngioKit(カタログ番号ZHA−1000)は、化合物の抗血管新生特性を分析するためのヒト血管新生の好適なモデルである。血管新生の速度またはレベルはまた、当該技術分野で周知の大動脈輪アッセイおよびスポンジ血管新生アッセイを用いて測定してもよい。
【0188】
また、内皮細胞の増殖、移動および浸潤についてのアッセイは、血管新生アッセイとして有用である。内皮細胞の増殖および移動に適したアッセイは、当業者に既知であり、本明細書中に記載される。内皮細胞の浸潤に適したアッセイもまた、当業者に既知であり、BD BioCoat(商標)Angiogenesis System for Endothelial Cell Invasion(BD Biosciences(Bedford,MA,USA)製、カタログ番号354141および354142として利用可能)を含む。
【0189】
発明者はまた、CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する候補化合物が、腫瘍内皮細胞の移動、例えばbFGFおよびVEGF誘発性の移動を阻害し、阻害する腫瘍内皮細胞の増殖、あるいは腫瘍内皮細胞の浸潤を阻害しうることについて考察している。したがって、HUVEC移動アッセイにおいて阻害活性を示すか、または抗増殖活性を示すか、または、BD BioCoat(商標)Angiogenesis System for Endothelial Cell Invasion(BD Biosciences(Bedford,MA,USA))などのアッセイにおいて抗浸潤活性を示す候補化合物は、固形腫瘍と闘う上で治療的に有用でありえ、ここで腫瘍内皮細胞の移動、増殖または浸潤は、新血管系の血管新生ひいては固形腫瘍の病理学に寄与する。
【0190】
これらの方法が、当業者に周知の用語である薬剤スクリーニング方法であってもよく、候補化合物が、薬様化合物または薬様化合物の開発のためのリード化合物であってもよいことは理解されている。
【0191】
用語「薬様化合物」は、当業者に周知であり、薬剤用途として、例えば薬剤中の活性成分として適合させる特性を有する化合物の意味を含んでもよい。したがって、例えば、薬様化合物は、有機化学の技術、優先度は下がるが分子生物学または生化学の技術によって合成可能な分子であってもよく、好ましくは小分子であり、それは、5000ダルトン未満であってもよく、また水溶性であってもよい。さらに、薬様化合物は、特定の1つもしくは複数のタンパク質との選択的相互作用に加え、バイオアベイラビリティが高く、および/または、標的細胞膜または血液脳関門を貫通できるという特徴を示しうるが、これらの特徴が本質的なものでないことは理解されるであろう。
【0192】
用語「リード化合物」は、同様に当業者に周知であり、化合物が、それ自体で薬剤としての使用に適しない(例えば、それは、その意図される標的に対する効力が弱いか、その活性において非選択的であるか、不安定であるか、溶解性が低いか、合成が困難であるか、または低いバイオアベイラビリティを有するに過ぎない)一方、より望ましい特性を有しうる他の化合物を設計するための出発点を提供しうるという意味を含んでもよい。
【0193】
一実施形態では、同定された化合物は、修飾され、また修飾された化合物は、血管新生に対する阻害能について試験される。血管新生の阻害に適したアッセイは、上記のものである。
【0194】
本スクリーニング方法を使用し、固形腫瘍と闘う上で有用でありうる作用剤を同定できることは理解されている。したがって、本スクリーニング方法はまた、好ましくは、同定された化合物または修飾された化合物を、癌、特に固形腫瘍の動物モデルにおける有効性について試験するさらなるステップを含む。好適なモデルは、当該技術分野で既知であり、マウスにおけるLewis肺癌皮下移植(Black57マウスにおける同種移植)またはヌードマウスにおけるHT29異種移植片の皮下移植を含む。
【0195】
本発明は、同定された化合物または修飾された化合物を合成および/または(an/or)精製するさらなるステップを含んでもよい。本発明は、化合物を医薬的に許容できる組成物に調合するステップをさらに含んでもよい。
【0196】
化合物はまた、当業者に周知のように、他の試験、例えば毒物または代謝試験を受けてもよい。
【0197】
したがって、本発明は、固形腫瘍の処置において有用でありうる抗癌剤を調製するための方法であって、化合物を上記のスクリーニング方法を用いて同定するステップと、同定された化合物を合成し、精製し、および/または、調合するステップと、を含む方法を含む。
【0198】
本発明はまた、医薬組成物を作製する方法であって、同定された化合物を、上記の方法を用い、医薬的に許容できる担体と混合するステップを含む、方法を含む。
【0199】
本明細書で言及されるすべての文書は、それら全体が参照により本明細書中に援用される。
【0200】
本明細書中の明らかに先行的に公表された文書に関する列挙または考察は、必ずしも、文書が最先端技術の一部であるかまたは共通の一般的知識であることの確認として解釈されるべきではない。
【0201】
ここで、本発明は、以下の実施例および図面を参照することにより、より詳述されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1A】Genbank登録番号NP_778230由来のヒトCLEC14Aのポリペプチド配列(配列番号1)
【図1B】Genbank登録番号NM_175060由来のヒトCLEC14AのcDNA(配列番号2)
【図1C】NM_175060の位置348〜1820由来のヒトCLEC14A cDNAのコード領域(配列番号3)
【図2】HUVECおよび他の一次細胞におけるCLEC14Aの相対的発現を示すグラフ。CLEC14Aは、内皮細胞(HUVEC)において特異的に発現され、ヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC)、ヒト肺線維芽細胞(MRC5)、ヒト気管支上皮細胞(HBE)、肝細胞、または末梢血単核球(PBMC)において特異的に発現されなかった。
【図3】ゼブラフィッシュ胚の受精後24時間以内のCLEC14Aオルソログのインサイチュハイブリダイゼーション。ゼブラフィッシュCLEC14Aオルソログは、背部大動脈、主静脈、および体節間血管(inter−somitic vessel)において発現される。
【図4】CHO細胞内での完全長CLEC14A−GFP融合体のライブ蛍光イメージング。CLEC14A−GFP融合体は、細胞膜に局在化し、糸状仮足および微小突起に集結し、同じパターンがHUVEC内に認められる。
【図5】コンフルエントなHUVEC内でのCLEC14Aの発現およびVE−カドヘリンとの共局在化の共焦点イメージング。CLEC14Aは、細胞間結合部で発現され、VE−カドヘリンと共局在化する。
【図6】HUVEC内でのCLEC14A siRNAノックダウンのウエスタンブロット。二本鎖1は、配列GAACAAGACAATTCAGTAA(配列番号4)を有し、二本鎖2は、配列CAATCAGGGTCGACGAGAA(配列番号5)を有する。「スクランブルされた(scrambled)」オリゴヌクレオチドは、Eurogentechから入手し、配列が示されない非標的化siRNAから構成される。未グリコシル化ポリペプチドは約60kDa、また成熟グリコシル化タンパク質は約100kDaで認められる。
【図7】HUVEC内でのCLEC14A siRNAノックダウンの共焦点イメージングであり、VE−カドヘリンの発現に対して全く効果を有しない。
【図8A】siRNAノックダウンを伴うHUVECスクラッチ創傷治癒アッセイの結果の光学顕微鏡画像であり、2つのSiRNA二本鎖によるCLEC14Aのノックダウン後における傷口閉鎖(wound closure)の遅延を示す。
【図8B】(A)からの結果のグラフ表示。
【図9A】抗CLEC14Aポリクローナル抗体を伴うHUVECスクラッチ創傷治癒アッセイの結果の光学顕微鏡画像であり、やはり傷口閉鎖の遅延を示す。
【図9B】(A)からの結果のグラフ表示。
【図10】せん断応力および静的条件下でのHUVECのリアルタイムPCR。ROBO4およびCLEC14A mRNAの双方は、層流せん断応力(2Pa)下で下方制御される。
【図11】ヒト卵巣、膀胱、肝臓および乳房腫瘍組織におけるCLEC14Aの発現の免疫蛍光分析。CLEC14Aの発現は、分析された全腫瘍組織における内皮に限局された。
【図12】ヒト結腸、直腸および膀胱(2通りの)腫瘍組織におけるCLEC14Aの発現の免疫蛍光分析。CLEC14Aの発現は、分析された全腫瘍組織における内皮に限局された。
【図13】ヒト食道、腎臓および肺腫瘍組織におけるCLEC14Aの発現の免疫蛍光分析。CLEC14Aの発現は、分析された全腫瘍組織における内皮に限局された。
【図14】ヒト前立腺、胃、膵臓および甲状腺腫瘍組織におけるCLEC14Aの発現の免疫蛍光分析。CLEC14Aの発現は、分析された全腫瘍組織における内皮に限局された。
【図15】正常なヒトの脳、心臓および腎組織におけるCLEC14Aの発現の免疫蛍光分析。CLEC14Aの発現は、分析された正常な組織のいずれにおいても検出されなかった。
【図16A】抗CLEC14Aモノクローナル抗体CRT−3を伴うHUVECスクラッチ創傷治癒アッセイの結果の光学顕微鏡画像であり、傷口閉鎖の遅延を示す。
【図16B】(A)からの結果のグラフ表示。
【図17A】抗CLEC14Aモノクローナル抗体CRT−2を伴うSENDスクラッチ創傷治癒アッセイの結果の光学顕微鏡画像であり、傷口閉鎖の遅延を示す。
【図17B】(A)からの結果のグラフ表示。
【実施例】
【0203】
実施例1:CLEC14Aに対する実験的研究
目的
発明者は、CLEC14Aの発現および機能を特徴づけるための多くの実験を行った。
【0204】
材料および方法
HUVECの調製および培養
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を、ドナーのインフォームドコンセントを得た後にUK National Health Serviceによって提供されたへその緒から単離した。へその緒を胎盤から切除し、静脈を無菌PBSで洗浄し、血液を除去した。M199培地(Sigma)で希釈した1mg/mlのコラゲナーゼを、静脈に注射し、次いで37℃で20分間インキュベートし、内皮細胞を分離した。HUVECを、10%FCS、10%大血管内皮細胞成長添加物(large vessel endothelial cell growth supplement)(TCS Cell Works)、および4mM L−グルタミンを含有するM199完全培地での洗浄によって採取し、ブタ皮膚(Sigma)でコートされたディッシュ由来の0.1%タイプ1ゼラチン上にプレーティングした。
【0205】
一次細胞の供給源
ヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC)およびヒト気管支上皮細胞(HBE)を、TCS Cell Worksから購入した。ヒト肺線維芽細胞(MRC5)を、Cancer Research UK Central Servicesから得た。ヒト末梢血単核球(PBMC)を、University of BirminghamのInstitute of Cancer Researchから得た。肝細胞は、Professor David Adams(School of Immunity and Infection,University of Birmingham)から贈呈された。
【0206】
RNA抽出およびリアルタイムPCR
全RNAを、TRI試薬(Sigma)使用し、培養液中の一次細胞から単離した後、提供されたランダムプライマーを有するHigh−Capacity cDNA Archiveキット(Applied Biosystems)を使用し、cDNA合成を行った。ProbeLibrary リアルタイム PCRアッセイ系(Exiqon)を、CLEC14Aの発現の一次細胞スクリーニングにおいて使用した。フロチリン2をハウスキーピング遺伝子として選択し、それに対し、CLEC14Aの発現を正規化した。CLEC14Aおよびフロチリン2に対するプライマーおよびプローブセットを、ProbeFinderソフトウェア(Roche)によって設計した。CLEC14Aに対するプライマーおよびプローブセットは、
5’−CTGGGACCGAGGTGAGTG−3’(配列番号6)、および
5’−CGCGATGCAAGTAACTGAGA−3’(配列番号7)(プローブ番号24を伴う)
であった。
【0207】
フロチリン2に対するプライマーおよびプローブセットは、
5’−TGTTGTGGTTCCGACTATAAACAG−3’(配列番号8)、および
5’−GGGCTGCAACGTCATAATCT−3’(配列番号9)(プローブ番号28を伴う)
であった。
【0208】
定量PCR反応を、Rotor−Gene RG3000サーマルサイクラー(Corbett Research)上で行った。反応混合物を、各一次細胞種に対して3通りに調製し、5ngのcDNAを各反応に適用した。倍率変化を、ΔΔCt法を用いて計算した。
【0209】
ゼブラフィッシュのインサイチュハイブリダイゼーションおよびRT−PCR
ヒトCLEC14A(NM_199786.1、zgc:66439)cDNAのゼブラフィッシュオルソログを、zClec14Aプライマー:
フォワード:5’−GGAGAAAAAGCAGACAATATCATTTTA−3’(配列番号10)、および
リバース:5’−AGTCTCTCTCACTTAGGTTTCCTCTTT−3’(配列番号11)
を使用し、受精後24時間(hpf)のcDNA調製物から増幅した。
【0210】
これらのプライマーによって生成した1172bpのPCR断片を、pCR−Blunt II−TOPO(Invitrogen)に、製造業者のプロトコルに従い、クローン化した。zClec14Aクローンを配列決定し、その同一性を検証した。インサイチュハイブリダイゼーション用のジゴキシゲニンで標識したセンスおよびアンチセンスRNAプローブを、RNA標識キット(Roche)を使用し、インビトロ転写によって生成した。センスプローブを生成するため、プラスミドをKpnIで線状化し、T7で転写した。プラスミドをXhoIで線状化し、SP6で転写することにより、アンチセンスプローブが生成された。インサイチュハイブリダイゼーションを、ThisseおよびThisse(2008年) 「High−resolution in situ hybridisation to whole−mount zebrafish embryos.」 Nat.Protoc.3:59−69頁の方法に従って行った。
【0211】
zCLEC14Aの発現の一時的パターンを分析するため、ゼブラフィッシュ発生の様々なステージから得られるRNAを、Trizol試薬(Invitrogen)を使用して調製した。cDNAをSuperscript III逆転写酵素(Invitrogen)およびランダムヘキサマー(Fermentas)を使用して調製した。ZClec14Aを、次の条件(T55℃、26サイクル)およびzClec14Aプライマー:
フォワード:5’−AAACCTAAGTGAGAGAGACTGTGC−3’(配列番号12)、および
リバース:5’−ACAGAGTACGCTATTTTCATCCATC−3’(配列番号13)
を使用して増幅した。
【0212】
伸長因子−1α(EF1α)を負荷対照として使用し、次のEF1αプライマー(ThisseおよびThisse(2008年)):
フォワード:5’−CACCCTGGGAGTGAAACA−3’(配列番号14)、および
リバース:5’−ACTTGCAGGCGATGTGAGC−3’(配列番号15)
を使用して増幅した。
【0213】
HUVEC免疫蛍光
HUVECを、氷冷メタノール中に固定したガラス製マイクロウェルチャンバー(Nunc)内で成長させ、PBST中10%FCS3%BSAでブロッキングしたPBSTで洗浄した。次いで、細胞を、パラフィン包埋切片用に使用されるのと同じプロトコルに従い、CLEC14A抗体で染色するか、または、親切にもProfessor Maria Grazia Lampugnani(Firc Institute for Molecular Oncology,Milan)により贈呈された、ヒトVE−カドヘリンに対する5μg/mlのマウスモノクローナルIgG抗体で同時染色した。切片染色を、510レーザー走査共焦点顕微鏡(Carl Zeiss)で分析した。
【0214】
CLEC14A−GFP融合およびCHO細胞の形質移入
PCMV−sport6ベクター内の完全長CLEC14Aを、MGCから購入した。配列を、TOPOベクター(Invitrogen)に、次いでpEGFP−N1ベクター(Invitrogen)にサブクローン化した。10個のCHO細胞を、10%FCSおよび4mMグルタミンを含有するDMEM(Invitrogen)にプレーティングし、培養した。播種の48時間後、サブコンフルエントな(sub−confluent)細胞を、6:1の比で、Fugene6(ROCHE)を使用し、完全長CLEC14Aを有するpEGFP−N1で形質移入した。形質移入混合物を、細胞培養物に24時間かけて添加し、次いで無血清DMEMと交換した。細胞を、形質移入の72時間後、Axioscope 2 Plusライブ蛍光顕微鏡システム(Zeiss)を使用して分析し、画像を、Axiocomカラーカメラ(Zeiss)で取得した。
【0215】
CLEC14A siRNAの設計およびHUVEC内でのCLEC14Aサイレンシング
2.5×10個のHUVECを、形質移入の前日、6つのウェルプレートに播種した。CLEC14Aに対する2つの異なるsiRNA二本鎖、GAACAAGACAATTCAGTAA(二本鎖1、配列番号4)およびCAATCAGGGTCGACGAGAA(二本鎖2、配列番号5)(Eurogentech)を使用し、また陰性対照二本鎖と並行して使用した。形質移入を、0.3%リポフェクタミンRNAiMax(Invitrogen)およびoptiMEM(Invitrogen)中の10nM二本鎖を使用して行った。正常なM199完全培地と交換する前、形質移入混合物を、細胞とともに4時間インキュベートした。細胞を形質移入の48時間後に使用し、タンパク質発現のノックダウンをウエスタンブロッティングによって評価した。タンパク質を、NP40溶解緩衝液を使用して単離し、BioRad Dcタンパク質アッセイを用い、製造業者の使用説明書(BioRad)に従って定量した。各レーンにおいて等量のタンパク質を負荷し、SDS PAGEを介して分離した。タンパク質を、ニトロセルロース膜上に移し、0.2ng/mlのヒツジCLEC14A IgG抗ヒトポリクローナル抗体(R&D System)および0.2μg/mlのHRP複合化ウサギポリクローナル抗ヒツジ二次抗体(Abcam)を使用してプローブした。同じブロットを、1ng/mlのマウスモノクローナル抗チューブリン一次抗体および1μg/mlのヤギポリクローナル抗マウスHRP複合二次抗体でプローブした。
【0216】
siRNAを用いるスクラッチ創傷治癒アッセイ
2.5×10個のHUVECを、形質移入の前日、6つのウェルプレートに播種した。形質移入の48時間後、20μlのピペットチップでスクラッチした。HUVECの化学運動性移動(chemokinetic migration)を、Leica DM1000光学顕微鏡およびUSB2.0 2M Xliカメラで、0、4、8、12および24時間での傷口閉鎖の画像を取得することによって評価した。開口傷領域を、セル(cell)IQアナライザソフトウェアを用いて強調し、計算した。
【0217】
CLEC14A抗血清を用いるスクラッチ創傷治癒アッセイ
コンフルエントなHUVECに対し、20μlのピペットチップでスクラッチした。5、10および20μg/mlのCLEC14A抗血清を含有する新しい培地を交換した。HUVECの化学運動性移動を、Leica DM1000光学顕微鏡およびUSB2.0 2M Xliカメラで、0、4、8、12および24時間での傷口閉鎖の画像を取得することによって評価した。開口傷領域を、セルIQアナライザソフトウェアを用いて強調し、計算した。
【0218】
CLEC14Aモノクローナル抗体を用いるスクラッチ創傷治癒アッセイ
コンフルエントなHUVECまたはマウス内皮細胞系SENDの細胞に対し、10μlのピペットチップでスクラッチした。マウスにおいてCLEC14Aの細胞外ドメインに対して産生された1μg/mlまたは10μg/mlのモノクローナルCLEC14A抗体を含有する新しい培地を適用した。HUVECまたはSEND細胞の化学運動性移動を、Leica DM1000光学顕微鏡およびUSB2.0 2M Xliカメラで、0、4、6、12時間での傷口閉鎖の画像を取得することによって評価した。開口傷領域を、Image Jソフトウェアを用いて定量した。
【0219】
フローアッセイ
HUVECの一次培養物を、トリプシン/EDTA(Sigma)で解離し、予めコラーゲン/ゼラチンでコートした長方形のガラス毛細管(マイクロスライド;内部幅3mm、深さ0.3mm)に播種した。播種は、24時間以内にコンフルエントな単層を生成する密度であった。播種後、マイクロスライドを、特別に設けられたガラス皿に置いて、予め壁に融合されたガラス管に取り付けた。シリコンゴム管(Tygon R1000;Fisher,Loughborough,UK)を、各外部アームに接続した。ディッシュは培地を有し、それを加湿COインキュベーター(Nuaire DH;Triple Red,Thame,Oxfordshire,UK)内に置いた。チューブは、インキュベーター壁内のポートを通した。2つの隣接するアーム(マイクロスライドに取り付けたものと空のもの)からのチューブを、接続し、マルチチャンネルの8ローラーポンプ(モデル502S;Watson Marlow Ltd.)に入れ、連続流ループを形成した。ポンプチューブの内径およびポンプ速度を選択し、流速(7.76ml/分)を送り、マイクロスライドにおいて2.0Pa(=20dyn/cm)の壁せん断応力が得られた。ポンプおよび外部チューブをパースペクスボックス内に入れ、サーモスタットで37℃に制御した。各ディッシュ内の別々のマイクロスライドからのチューブを、別々のポンプに接続した。これにより、マイクロスライドを通して少量の培地を1時間に1回、30秒間ポンピングし、「静的」条件下での持続的な成長を可能にした。HUVECを、静的条件下で24時間培養し、次いで2.0Paのせん断応力に24時間さらした。各ディッシュ内の静的条件下およびフロー条件下のマイクロスライドのペアを、同一の再循環培地に同時間さらした。
【0220】
パラフィン包埋組織に対する免疫蛍光
免疫蛍光を、Cancer Research UKの組織学サービス(histology service)から得たパラフィン包埋された正常および癌ヒト組織コレクション、ならびに癌および正常組織アレイ(Superbiochips)に対して行った。胃癌、食道癌、肺癌、結腸/直腸癌、甲状腺癌および腎臓癌の各々からの、10のコアを含むヒトの一般的な癌1(MA2)、ならびに、乳癌、肝癌、膀胱癌、卵巣癌、膵臓癌および前立腺癌の各々からの、10のコアを含む一般的な癌2(MB3)を使用した。隣接する正常な組織に一致する2つの追加的な対照アレイについても分析した。パラフィンの除去後、抗原回復のため、組織を、再水和し、クエン酸塩緩衝液(pH6)中、中間出力で3分間マイクロ波処理した。切片を、10%FCSおよび3%BSAを含有するPBSTでブロッキングした。切片を、ヒトCLEC14Aの細胞外ドメインに対する10μg/mlのヒツジIgG一次ポリクローナル抗体(R&D SYSTEM)および15μg/mlのFITC複合ウサギIgG二次抗ヒツジポリクローナル抗体(Zymax)でプローブした。管内皮細胞を、ローダミンと複合した20μg/mlのUlex europeaus凝集素I(UEAI)(Vector labs)で染色した。スライドに、DAPIを有するプロロングゴールド(prolong gold)退色防止剤(Invitrogen)を常に載せ、細胞核を対比染色した。染色切片を、510レーザー走査共焦点顕微鏡(Carl Zeiss)を使用して分析した。
【0221】
モノクローナル抗体の調製
モノクローナル抗体の調製に使用される抗原は、場合によってアジュバントタンパク質(AP)と複合されたマウスCLEC14A−Fc(CM)およびヒトCLEC14A−Fc(CH)であった。次のプロトコルを用い、これらの4つの抗原(CM、CH、CM−AP、CH−AP)を、マウス免疫に対して使用した。
日 処理
0 予備免疫試料を完全フロイントアジュバント中の100μgの抗原での免疫(足蹠)から採取
14 不完全フロイントアジュバント中の100μgの抗原での免疫(足蹠)
17 出血を試験
18 融合のため、膝窩リンパ節を採取
【0222】
血清を、3つの抗原、CM、CHおよびFcに対し、ELISAによって試験した。非免疫血清を、陰性対照として採取した。
【0223】
融合プロトコルは次の通りであった。
(1)膝窩リンパ節を免疫マウスから採取し、均質化した。
(2)細胞を温かいDMEMで洗浄した。
(3)細胞をsp2/0骨髄腫細胞と混合した。
(4)混合物を遠心分離した(1000g)。
(5)ペレットを50%PEG1500に懸濁し、1分間インキュベートした。
(6)懸濁液を温かいDMEMで徐々に希釈した。
(7)懸濁液を遠心分離した(1000g)。
(8)細胞を、腹膜マクロファージを有するプレートに播種した。
(9)細胞を37℃および5%COで培養した。
【0224】
各マウスに由来する500超のHAT耐性ハイブリドーマクローンを得た。クローン上清の全部を、3つの吸収された抗原(CM、CHおよびFc)に対し、ELISAにより、4日間隔で2回試験した。試験によると、CMおよびCHの双方と反応するが、Fcと反応しない5つのクローン(全部がサブクラスIgG1)が得られた。すべての陽性は、限界希釈法により、2〜4回クローン化し、培養フラスク内で増幅させ、腹水症のマウスに注射した。3つのクローンが、CLEC14aヒト(CH)で免疫した結果として得られ、1つのクローン(CRT−3)は、CLEC14aヒト−AP(CH−AP)で免疫した結果であり、1つのクローン(CRT−2)は、CLEC14aマウス−AP(CM−AP)で免疫した結果であった。
【0225】
結果
図2は、HUVECおよび他の一次細胞におけるCLEC14Aの相対的発現を示すグラフである。CLEC14Aは、内皮細胞内で特異的に発現された。これから、CLEC14Aが内皮特異的であるという出願人らの先行的な実験結果(Herbertら、2008年)が確認される。
【0226】
図3は、ゼブラフィッシュ胚の受精後24時間以内の、CLEC14Aオルソログのインサイチュハイブリダイゼーションの結果を図示する。ゼブラフィッシュCLEC14Aオルソログは、ゼブラフィッシュとヒトとの間で保存され、背部大動脈および体節間血管において発現され、これは、CLEC14Aが、ゼブラフィッシュ胚モデルにおける脈管形成および血管新生の部位に限って発現されることを示す。
【0227】
図4は、(通常CLEC14Aを発現することがない)CHO細胞内の完全長CLEC14A−GFP融合体のライブ蛍光イメージングを示す。CLEC14A−GFP融合体は、糸状仮足および微小突起における膜に局在化し、同じパターンがHUVEC内で認められる。図5は、コンフルエントなHUVEC内でのCLEC14Aの発現およびVE−カドヘリンとの共局在化の共焦点イメージングを示す。CLEC14Aは、突出する微小突起および糸状仮足において、細胞間接触時に、細胞接着部位で発現され、VE−カドヘリンと共局在化する。これらの結果は、CLEC14Aが、細胞表面に発現されるタンパク質であり、それが標的化にとって理想的な分子になることを明示している。
【0228】
HUVEC内でのCLEC14Aの内因性発現および局在化を、ウエスタンブロッティングおよび免疫蛍光によって分析した。図6は、HUVEC内でのCLEC14A siRNAのノックダウンのウエスタンブロットである。CLEC14Aは、HUVEC内で非常に高レベルで発現され、それらは2つのバンド、すなわち1つは約60kDa(おそらくはCLEC14Aの非グリコシル化形態)であり、1つは約100kDa(おそらくはグリコシル化形態)である、を示す。CLEC14Aに特異的な10nM siRNA二本鎖のHUVECへの形質移入により、両バンドの強度が約80%低下したが、それは両バンドがCLEC14Aに特異的であることを示す。図7は、HUVEC内でのCLEC14A siRNAノックダウンの共焦点イメージングを示す。これらの結果は、CLEC14A阻害剤のsiRNA分子が、実際、CLEC14Aの発現を確かにノックダウンすることを示す。
【0229】
CLEC14A阻害剤の血管新生に対する阻害能を試験した。図8Aは、CLEC14AのsiRNAノックダウンがHUVECスクラッチ創傷治癒アッセイにおける内皮細胞移動を阻害することを示す光学顕微鏡画像である。図9Aは、抗CLEC14Aポリクローナル抗体がHUVECスクラッチ創傷治癒アッセイにおける内皮細胞移動を阻害することを示す光学顕微鏡画像である。図8Bおよび9Bは、それぞれ8Aおよび9Aからの結果のグラフ表示である。同様の結果が、モノクローナル抗体を使用するスクラッチ創傷治癒アッセイにおいて得られた。図16AおよびBに示されるように、HUVECを10μg/mlのモノクローナル抗体CRT−3で処理した時、12時間後、対照における13%に比べて、創傷部の25%が開口状態であった。図17AおよびBに示されるように、SEND細胞を10μg/mlのモノクローナル抗体CRT−2で処理した時、12時間後、対照における9%に比べて、創傷部の17%が開口状態であった。これらの結果は、CLEC14A阻害剤、例えばsiRNAおよび抗体が、内皮細胞移動に対する阻害効果を有することを示す。内皮細胞移動は、血管新生の本質的特徴である。したがって、これらのアッセイは、2つの異なるCLEC14Aの分子阻害剤、siRNAおよび抗体が血管新生を阻害するという証拠を提供する。
【0230】
図10は、せん断応力および静的条件下でのHUVECのリアルタイムPCRから得られる結果を図示する。ROBO4は、内皮細胞に対して高度に特異的な、既知の腫瘍内皮マーカーであり、その阻害により、血管新生が阻害される。ROBO4およびCLEC14A mRNAの双方は、せん断応力(2Pa)下で有意に下方制御され、またせん断応力下での下方制御は、血管新生促進遺伝子に関連した現象である。
【0231】
固形腫瘍および正常組織の切片におけるCLEC14Aの発現を、CLEC14Aに特異的なプローブを使用して試験した。図11〜14は、ヒト卵巣、膀胱、肝臓、乳房、結腸、直腸、食道、腎臓、肺、前立腺、胃、膵臓および甲状腺腫瘍組織内でのCLEC14Aの発現の免疫蛍光画像である。CLEC14Aの発現の内皮特異性を、内皮細胞上の特異的なフコース残基に結合するUlex europeaus凝集素I(UEAI)との共局在化によって確認した。CLEC14Aの発現は、分析したすべての腫瘍組織内の血管内で認められた。卵巣、膀胱、肝臓、乳房、腎臓および前立腺腫瘍は、CLEC14Aの発現に対して強い陽性を示した一方、胃、食道、肺、結腸、直腸、膵臓および甲状腺腫瘍組織は、より低レベルのCLEC14Aの特異的発現を示した。CLEC14Aの発現は、対応する正常な対照(非腫瘍)組織のいずれにおいても検出されなかった。正常なヒトの脳、心臓および腎組織内でCLEC14Aが発現されなかったことを示す免疫蛍光画像の代表例を、図15に示す。したがって、出願人らは、CLEC14Aが腫瘍血管系において特異的に発現されることを示している。
【0232】
結論
まとめると、この試験の結果は、膜貫通タンパク質CLEC14Aが過去に認識されなかった腫瘍内皮マーカーであることを示す。
【0233】
実施例2:動物モデルにおける固形腫瘍の処置
固形腫瘍のマウスモデル(例えば、Black 57マウスにおけるLewis肺癌皮下同種移植片移植またはヌードマウスにおけるHT29皮下異種移植片移植のいずれか)は、CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する抗体を含む医薬組成物の生理食塩溶液の静脈内注入によって処置する。注入物は、2〜4か月の期間、週1回投与する。腫瘍は、動物モデルにおいて、対照に比べて退行する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における腫瘍血管新生を阻害する方法であって、CLEC14Aの阻害剤を前記個体に投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
個体における腫瘍血管新生を阻害するための薬剤の調製におけるCLEC14Aの阻害剤の使用。
【請求項3】
前記阻害剤は、前記CLEC14Aポリペプチドに特異的に結合する抗体である、請求項1に記載の方法または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記抗体は、成熟CLEC14Aポリペプチドの細胞外ドメインに特異的に結合する、請求項3に記載の方法または使用。
【請求項5】
前記抗体は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体または一本鎖抗体である、請求項3または4に記載の方法または使用。
【請求項6】
前記阻害剤は、前記CLEC14Aポリヌクレオチドに特異的なsiRNA分子、アンチセンス分子、もしくはリボザイム、または、前記siRNA分子、アンチセンス分子、またはリボザイムをコードするポリヌクレオチドまたはベクターである、請求項1に記載の方法または請求項2に記載の使用。
【請求項7】
細胞毒性剤を個体の身体における腫瘍血管新生に対して標的化する方法であって、
(i)前記CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する抗体、および(ii)細胞毒性部分、を含む化合物を前記個体に投与するステップ
を含む、方法。
【請求項8】
前記細胞毒性剤を個体の身体における腫瘍血管新生に対して標的化するための薬剤の調製における、(i)前記CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する抗体、および(ii)細胞毒性部分、を含む化合物の使用。
【請求項9】
個体における腫瘍血管新生を阻害する方法であって、
(i)前記CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する抗体、および(ii)細胞毒性部分、を含む化合物を前記個体に投与するステップ
を含む、方法。
【請求項10】
個体における腫瘍血管新生を阻害するための薬剤の調製における、(i)前記CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する抗体、および(ii)細胞毒性部分、を含む化合物の使用。
【請求項11】
前記細胞毒性部分は、直接的な細胞毒性化学療法剤、直接的な細胞毒性ポリペプチド、プロドラッグを細胞毒性薬に変換可能な部分、放射線増感剤、直接的な細胞毒性核酸(cytotoxic nucleic acid)、直接的または間接的な細胞毒性ポリペプチドをコードする核酸分子、あるいは放射性原子から選択される、請求項7もしくは9に記載の方法、または請求項8もしくは10に記載の使用。
【請求項12】
前記放射性原子は、リン−32、ヨウ素−125、ヨウ素−131、インジウム−111、レニウム−186、レニウム−188、またはイットリウム−90である、請求項11に記載の方法または使用。
【請求項13】
少なくとも1つのさらなる抗癌剤を前記個体に投与するステップも含む、請求項1、3〜7、9、11、または12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記薬剤はまた、少なくとも1つのさらなる抗癌剤を含む、請求項2〜6、8、または10〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記個体は、少なくとも1つのさらなる抗癌剤が投与される個体である、請求項2〜6、8、または10〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記少なくとも1つのさらなる抗癌剤は、シスプラチン;カルボプラチン;5−フルオロウラシル;パクリタキセル;マイトマイシンC;ドキソルビシン;ゲムシタビン;トミュデックス(tomudex);ペメトレキセド;メトトレキサート;イリノテカン、フルオロウラシルおよびロイコボリン;オキサリプラチン、5−フルオロウラシルおよびロイコボリン;ならびにパクリタキセルおよびカルボプラチン、から選択される、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項17】
個体の身体における腫瘍血管新生をイメージングする方法であって、
(i)前記CLEC14Aポリペプチドに選択的に結合する抗体、および(ii)検出可能な部分、を含む化合物を前記個体に投与するステップと、
前記身体における前記検出可能な部分をイメージングするステップと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記個体における前記化合物の位置を検出するステップをさらに含む、請求項17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記検出可能な部分は、ヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、テクネチウム−99m、ガドリニウム、マンガンまたは鉄を含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記個体は、ヒトである、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項21】
前記個体は、固形腫瘍を有する、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項22】
前記固形腫瘍は、結腸、直腸、卵巣、肝臓、膀胱、前立腺、乳房、腎臓、膵臓、胃、食道、肺または甲状腺の腫瘍である、請求項21に記載の方法または使用。
【請求項23】
前記固形腫瘍は、肺腫瘍ではない、請求項21に記載の方法または使用。
【請求項24】
前記固形腫瘍は、直腸腫瘍ではない、請求項21または23に記載の方法または使用。
【請求項25】
乾癬、月経過多、子宮内膜症、関節炎(炎症性およびリウマチ様の双方)、黄斑変性、ページェット病、網膜症およびその血管合併症(例えば、増殖性および未熟児、および糖尿病性網膜症)、良性血管増殖、線維症(fibroses)、肥満、ならびに炎症、から選択される疾患または症状を処置する方法であって、CLEC14Aの阻害剤を、それを必要とする個体に投与するステップを含む、方法。
【請求項26】
乾癬、月経過多、子宮内膜症、関節炎(炎症性およびリウマチ様の双方)、黄斑変性、ページェット病、網膜症およびその血管合併症(例えば、増殖性および未熟児、および糖尿病性網膜症)、良性血管増殖、線維症(fibroses)、肥満、ならびに炎症、から選択される疾患または症状を処置するための薬剤の調製におけるCLEC14Aの阻害剤の使用。
【請求項27】
生体外での血管新生を阻害する方法であって、CLEC14Aの阻害剤を内皮細胞または血管新生モデルに生体外で投与するステップを含む、方法。
【請求項28】
CLEC14Aの前記阻害剤は、請求項3〜6のいずれか一項において規定されるものである、請求項25もしくは27に記載の方法または請求項26に記載の使用。
【請求項29】
固形腫瘍の処置において有用でありうる作用剤または固形腫瘍の処置において有用でありうる作用剤を同定するためのリード化合物を同定する方法であって、
CLEC14Aポリペプチドまたはその断片に結合する候補化合物を提供するステップと、
血管新生アッセイにおいて前記候補化合物を試験するステップと、
を含み、ここで、前記アッセイにおいて血管新生を阻害する候補化合物は、固形腫瘍の処置において有用な作用剤でありうるか、または固形腫瘍の処置において有用な作用剤を同定するためのリード化合物でありうる、方法。
【請求項30】
前記候補化合物が前記CLEC14Aポリペプチドまたはその断片に選択的に結合するか否かを判定する先行するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記候補化合物は、抗体、ペプチド、アプタマーまたは小さい有機分子である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記血管新生アッセイは、大動脈輪アッセイ、スポンジ血管新生アッセイ、内皮細胞増殖のアッセイ、内皮細胞移動のアッセイ、および/または内皮細胞浸潤のアッセイ、である、請求項29〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記同定された化合物は、修飾され、かつ、前記修飾された化合物は、血管新生に対する阻害能について試験される、請求項29〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記同定された化合物または前記修飾された化合物は、固形腫瘍の動物モデルにおける有効性について試験される、請求項29〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記同定された化合物または前記修飾された化合物を合成、精製、および/または調合するステップをさらに含む、請求項29〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
固形腫瘍の処置において有用でありうる抗癌剤を調製するための方法であって、請求項29〜34のいずれか一項に記載の方法を用いて化合物を同定するステップと、前記同定された化合物を合成、精製、および/または調合するステップと、を含む、方法。
【請求項37】
医薬組成物を作製する方法であって、請求項29〜34のいずれか一項に記載の方法を用いて同定された前記化合物を、医薬的に許容できる担体、賦形剤または希釈剤と混合するステップを含む、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【公表番号】特表2013−503842(P2013−503842A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527386(P2012−527386)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001689
【国際公開番号】WO2011/027132
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(505401654)キャンサー リサーチ テクノロジー リミテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】CANCER RESEARCH TECHNOLOGY LTD.
【住所又は居所原語表記】Sardinia House,Sardinia Street,WC2A 3NL,United Kingdom
【Fターム(参考)】