説明

CLK−1およびUBIF活性のモジュレーターを同定する方法

本発明は、2-ポリプレニル-3-メチル-6-メトキシ-1,4-ベンゾキノン (DMQ) ヒドロキシル化活性のモジュレーター、前記活性のインヒビターおよびアクチベーターをスクリーニングする方法、並びに係る化合物を用いた方法を提供する。より具体的には、本発明は、UbiF および CLK-1 酵素活性のモジュレーターに及び同じものを同定する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本出願は、35 U.S.C. § 119(e)に基づく優先権を、2003年5月8日に出願された仮出願第60/468,707号に関して主張する出願であり、この出願は本明細書中にその全体が援用される。
【0002】
1.緒論
本発明は、2-ポリプレニル-3-メチル-6-メトキシ-1,4-ベンゾキノン (DMQ) ヒドロキシル化活性のモジュレーター(modulators)に及び同じものを同定する方法に関する。より具体的には、本発明は、UbiF および CLK-1 酵素活性のモジュレーターに及び同じものを同定する方法に関する。また、本発明は、係る方法を用いて同定された新規の化合物に関する。
【0003】
2.発明の背景
2.1 ユビキノン
ユビキノン(補酵素 Q, または Q)は、プレニル化ベンゾキノンであり、これはミトコンドリア呼吸鎖における必須のコファクターである(その機能は詳しく特性が調べられている)。Qは、細胞中の他の場所、例えば、リソソームおよびゴルジ膜、同様に核および形質膜にも見出される。Qは膜成分であり、その頭部(head group)は電子を受容(accepting)し、供与(donating)する能力を有し、その脂肪性(lipidic)の側鎖は様々な数のイソプレンサブユニットから構成される。異常な細胞のレドックス状態が関与するコンディションを治療するための食事性の抗酸化剤としての、Qの可能な役割が、動物実験、同様にヒト臨床試験で詳しく研究されている。また、Qは、加齢および加齢関連疾患(age-associated diseases)に対処するための栄養サプリメントとして広範に使用されている。
【0004】
9つの酵素が、E. coliにおけるQの生合成に関与しているとして非常に詳細に記載されている(図1)。可溶性のコリスミ酸リアーゼ(chorismate lyase)である第1の酵素(ubiC)を除いて、それらは全て膜結合型である。この経路における次の酵素はプレニルトランスフェラーゼ ubiA であり、これはイソプレノイド側鎖をキノン環に付着させる(E. coliにおいて8サブユニット)。他の酵素は3つのカテゴリーにグループ化される、それは即ち:デカルボキシラーゼ(ubiD および ubiX)、モノオキシゲナーゼ(ubiB, ubiH, ubiF)、およびメチルトランスフェラーゼ(ubiG, ubiE)である。
【0005】
Qは、細胞中で多数の機能を有している。Qは、内側のミトコンドリア膜、形質膜、リソソームの膜における電子伝達に関与している。また、Qは、幾つかの細胞酵素(例えば、ジヒドロオロテートデヒドロゲナーゼであり、これは核酸生合成に必要である)および他のタンパク質および複合体〔例えば、ミトコンドリアの脱共役タンパク質(UCP)であり、これらは代謝熱産生を制御する、また、ミトコンドリアの膜透過性遷移孔(MPTP)であり、これはプログラム細胞死を制御する〕のコファクターである。そのうえ、Qは、膜および他の細胞成分を、酸化的なダメージから防御することができる抗酸化剤でもある。Q イソプレノイド側鎖の長さは、酵素 ポリプレニル ジホスフェート シンターゼにより、種特異的な様式でコントロールされる。線形動物の線虫(C. elegans)は Q9 (下付き文字は鎖長を示す)を産生する、大腸菌(E. coli)は Q8 を産生する、そして酵母( S. cerevisiae)は Q6である。哺乳類において、 Q9 および Q10 双方が見出されている:Q9 はラットおよびマウスにおいて優勢であり、 Q10 はヒトにおいて優勢である(Dallner and Sindelar, 2000 Regulation of ubiquinone metabolism. Free Radic Biol Med, 29, 285-294)。
【0006】
2.2 CLK-1機能
clk-1は酵素CLK-1をコードし、これはQ生合成の最終段階の1つに関与し、DMQヒドロキシル化を担う(細菌における ubiF と類似する、図1を参照されたい)。真核生物のclk-1および大抵の原核生物のubiFは、DMQヒドロキシル化を担う酵素をコードする。この事項と一致して、C. elegans CLK-1変異体、すなわち qm30, qm51, および e2519のキノン含有量のHPLC分析は、彼らがDMQを蓄積することを示した(図 2)。これらの突然変異体において、DMQレベルは、野生型において見出されたQレベルに匹敵する。clk-1 ホモログがノックアウトされている、マウス胚およびマウス胚性幹細胞も、DMQを蓄積する。DMQは電子を輸送することができるキノンであるが、Qより効率性が低い。これはミトコンドリアの呼吸鎖において(特に、複合体 I および III において)機能することができ、呼吸を相対的に高率で維持することができる。実際、CLK-1変異体からの精製されたミトコンドリアの機能, およびミトコンドリア酵素は、野生型と比較して殆どインタクト(intact)であると思われる。さらにまた、合成のDMQ2 (下付き文字は鎖長を示す)は、複合体Iからの電子伝達のコファクターとして機能することができるが、複合体IIからでは貧弱である。大腸菌において、DMQ8 は、単離された膜における呼吸を維持するが、Q8.よりも低率(lower rate)である。同様に、DMQ9 は、真核生物のミトコンドリアにおいて電子伝達を維持することができる。DMQ が、Qを前記細胞のどの場所においても機能的に置換することができないことが以前より示されている。実際に、CLK-1変異体は、細菌性の食物における外来性のQの存在に依存する。しかしながら、食事性の Q は、キノン供給源として十分ではなく、内在性の Q または DMQ を欠いているC. elegans変異体(coq-3 変異体)は、外来性のQの存在下でさえも発生することができない(Hihi et al., 2002 Ubiquinone is necessary for Caenorhabditis elegans development at mitochondrial and non-mitochondrial sites
. J Biol Chem, 277, 2202-2206; Miyadera et al., 2001 Altered quinone biosynthesis in the long-lived clk-1 mutants of Caenorhabditis elegans. J Biol Chem, 276, 7713-7716)。2.1 clk-1およびClk表現型
【0007】
線形動物Caenorhabditis elegansのCLK-1変異体は、Clk 表現型を示した。この表現型は、胚性の及び後期胚性(post-embryonic)の発生の、同様に、排便および咽頭ポンピングサイクル(pharyngeal pumping cycles)などの成体のリズム行動(rhythmic behaviours)の、制御解除(deregulation)および延長(lengthening)により特徴付けられる。また、Clk 表現型によって寿命が伸び、CLK-1変異体は野生型の虫より長生きする;clk-1 は、 187 アミノ酸タンパク質(CLK-1)をコードし、これはミトコンドリアに局在し、また、これは酵母タンパク質 Coq7p と相同である;これはユビキノン(補酵素 Q, または Q) 生合成に必要とされることが示されている(Ewbank et al., 1997 Structural and functional conservation of the Caenorhabditis elegans timing gene clk-1. Science, 275, 980-983)。CLK-1の欠損(線虫およびマウス胚性幹細胞において観察されたような)は、活性酸素種(ROS)産生の減少およびQレベルの変調(modulation)に至る(WO 03/014383)。スーパーオキシドジスムターゼおよびカタラーゼのような生理的なスカベンジング酵素の模倣物(mimetics)を用いた最近の研究は、次の事項を示した;その事項とは、ROSレベルの減少が治療上の利益を生じさせ得ることである。臨床研究に使用されている他の薬剤は、通常体内に見いだされる抗酸化剤(ユビキノンまたはビタミンE)である。しかしながら、それらの薬理学的なプロフィールは、理想には遠いものである。というのも、それら薬剤は、少ない観察される利益のために、非常に大量に投与される必要があるからである。
【0008】
ユビキノンの様々な生物学的活性における中心的役割を考慮すると、原核生物および真核生物におけるDMQ ヒドロキシル化酵素のインヒビターおよびアクチベーターは、薬学的研究における多くの多大なる関心事である。本発明は、DMQ ヒドロキシル化酵素を変調(modulate)する化合物を同定するための方法を、および係る化合物を用いる方法を提供する。
【0009】
3. 発明の概要
本発明は、デメトキシユビキノンのヒドロキシル化を行う酵素の活性を変調する化合物のスクリーニングに関する。
【0010】
一側面において、本願発明者は創薬(drug discovery)アッセイを開発した;このアッセイは、原核細胞系において、真核生物の対応物により原核生物のDMQ ヒドロキシラーゼの欠乏(deficiency)を補足(complementation)することに基づくアッセイである。特定の条件下で、DMQ ヒドロキシラーゼは、原核生物の及び特に細菌の通常の成長および増殖に必須である。別の側面において、原核生物及び真核生物のDMQヒドロキシラーゼは、明らかに非常に僅かな構造上の類似度を共有している。本発明の発明者は次の事項を認識している;その事項とは、細菌および真核生物のDMQヒドロキシラーゼの間の差と、病原体における細菌のDMQヒドロキシラーゼの遍在性および保存された性質とから、細菌のDMQ ヒドロキシラーゼが抗生物質開発の魅力的なターゲットであるということである。
【0011】
多様な態様において、本発明は、DMQ ヒドロキシラーゼの最初の選抜のための一次スクリーニングアッセイを、及びこれらのアッセイで陽性に評価(scored)された化合物を特徴づける二次アッセイを提供する。本発明のアッセイは、ハイスループットなスクリーニングである。
【0012】
一態様において、本発明のスクリーニングアッセイは、真核生物のタンパク質を標的にする;該タンパク質は、DMQ ヒドロキシラーゼ活性を呈し、一般に本明細書中でCLK-1タンパク質と称されるものであり、これはミトコンドリアの呼吸に関与するものである。原核生物の検査細胞は、標的の真核生物 DMQ ヒドロキシラーゼをコード化している、発現可能な遺伝的配列(genetic sequence)を備えた標的遺伝子構築物を具備する。前記アッセイは、次の化合物を同定することができる;その化合物とは、CLK-1タンパク質の活性(そのDMQ ヒドロキシラーゼ活性を含むが、該活性に限定されない)を変調し、その機能(Q 生合成の機能を含む)に影響するものである。任意の真核生物のCLK-1ホモログを、スクリーニングアッセイに使用できる。線虫 CLK-1, マウス CLK-1 および ヒト CLK-1が、本発明の方法に好適に使用される。DMQ ヒドロキシル化活性を欠乏(deficient)する大腸菌細胞が、前記方法に好適に使用される。
【0013】
別の態様において、本発明のスクリーニングアッセイは、本明細書中でUbiFタンパク質と称される、原核生物のDMQヒドロキシラーゼを標的とし、これは原核生物にユニークで、特定の条件下で成長に必須である。それゆえ、原核生物の検査細胞は、標的の原核生物 DMQ ヒドロキシラーゼをコード化している発現可能な遺伝的配列を備えた、標的遺伝子構築物を具備する。前記アッセイは、次の化合物を同定することができる;その化合物とは、UbiFタンパク質の酵素活性を変調し、Q 生合成における、その機能に影響するものである。任意の原核生物のUbiFタンパク質を、前記スクリーニングアッセイに使用できる。一般に、細菌のUbiFタンパク質が、好適である。また、UbiF活性を欠乏する大腸菌細胞を、本発明のこれらの方法に使用できる。
【0014】
二次アッセイ(Secondary assays)により、一次アッセイ(primary assays)においてヒットしたものが評価される。係るアッセイを使用して、毒性が決定され、そして次の事項が確認される;その事項とは、一次アッセイで同定されたインヒビターが、1つのタイプのDMQヒドロキシラーゼに対して特異的に作用するか又は広範囲の生物のDMQヒドロキシラーゼに対して作用するかということである。検査種(test species)の成長阻害に基づく一次アッセイで同定された化合物を、他の細菌性の病原体に対する有効性に関して検査することができ、これによって陽性化合物(positive compounds)が広範囲の微生物に対して効果的であるということが確認される。ハイスループットスクリーニング系アッセイは、DMQヒドロキシル化機能に干渉する化合物を同定するための効果的な方法である。
【0015】
本発明の方法は、幾つかの理由から、有用な薬物を高い確率で同定する。第一に、前記スクリーニング系は、細菌界(bacterial kingdom)を通じてユビキタスで保存された必須な因子を標的にする。前記標的は高度に選択的である、というのも哺乳類の対応物は、細菌の酵素に対し、非常に低いアミノ酸類似性を示しているからである。本発明のハイスループット一次選抜により、陽性ヒットの簡易で視覚的な同定が認容される。この全細胞成長アッセイにおいて、陽性と試験される化合物は、細胞の透過性の障壁を通過し、細胞内環境において機能的である。
【0016】
本発明の一態様において、2-ポリプレニル-3-メチル-6-メトキシ-1,4-ベンゾキノン(DMQ)ヒドロキシル化を実行する能力を有するタンパク質の酵素活性を変調する化合物を同定する方法が提供され、該方法は、前記化合物の非存在下でのDMQヒドロキシル化活性の第1レベルを決定することと;および前記化合物の存在下でのDMQヒドロキシル化活性の第2レベルを決定することとを含み、ここでDMQヒドロキシル化活性の前記第1レベルと前記第2レベルとの間の差が、DMQヒドロキシル化を実行する能力を有する酵素の活性のモジュレーターである化合物の指標(indicative)である。
【0017】
本発明の好適な方法において、前記酵素は、CLK-1、CLK-1のホモログ、CLK-1の機能的な変異体(functional mutant)、CLK-1の酵素的に機能的な断片(enzymatically functional fragment)、CLK-1のホモログの酵素的に機能的な断片、CLK-1の機能的変異体の酵素的に機能的な断片、UbiF、UbiF1のホモログ、UbiFの機能的な変異体、UbiFの酵素的に機能的な断片、UbiF1のホモログの酵素的に機能的な断片、およびUbiFの機能的な変異体の酵素的に機能的な断片からなる群から選択される。
【0018】
本発明の別の態様において、CLK-1特異的なモジュレーターである化合物を同定する方法が提供され、該方法は、前記化合物の非存在下でのCLK-1活性の第1レベルと前記化合物の存在下でのCLK-1活性の第2レベルとの間の差を決定することと、および前記化合物の存在下での前記CLK-1のアナログの活性の第1レベルと前記化合物の非存在下での前記CLK-1のアナログの活性の第2レベルとの間の差を決定することとを含み、ここでCLK-1活性の前記第1レベルおよび前記第2レベルの間の差と前記アナログの前記第1レベルおよび前記第2レベルの間の差の欠損(lack)とが、CLK-1特異的なモジュレーターである化合物の指標である。
【0019】
本発明の別の態様において、UbiF特異的なモジュレーターである化合物を同定する方法が提供され、該方法は、前記化合物の非存在下でのUbiF活性の第1レベルと前記化合物の存在下でのUbiF活性の第2レベルとの間の差を決定することと、および前記化合物の存在下での前記UbiFのアナログの活性の第1レベルと前記化合物の非存在下での前記UbiFのアナログの活性の第2レベルとの間の差を決定することとを含み、ここでUbiF活性の前記第1レベルおよび前記第2レベルの間の差と前記アナログの前記第1レベルおよび前記第2レベルの間の差の欠損とが、UbiF特異的なモジュレーターである化合物の指標である。
【0020】
本発明の別の態様において、UbiF特異的なモジュレーターである化合物を同定する方法が提供され、該方法は、前記化合物の非存在下でのUbiF活性の第1レベルと前記化合物の存在下でのUbiF活性の第2レベルとの間の差を決定することと、および前記化合物の存在下での前記UbiFのアナログの活性の第1レベルと前記化合物の非存在下での前記UbiFのアナログの活性の第2レベルとの間の差を決定することとを含み、ここでUbiF活性の前記第1レベルおよび前記第2レベルの間の差と前記アナログの前記第1レベルおよび前記第2レベルの間の差の欠損とが、UbiF特異的なモジュレーターである化合物の指標である。
【0021】
本発明の別の態様において、DMQヒドロキシル化を実行する能力を有する酵素の活性を変調する化合物を同定するためのキットが提供される。例えば、前記キットは、UbiF機能を損なう変異を含有している大腸菌株、真核生物のCLK-1をコード化しているDNA配列、および/またはUbiFをコード化しているDNA配列を含み得る。
【0022】
5. 発明の詳細な記載
本発明は化合物のスクリーニングに関し、該化合物は酵素の活性を変調するものであり、該酵素は真核生物および原核生物でのユビキノン生合成に関与する酵素であり、特にデメトキシユビキノンのヒドロキシル化を行う酵素である。本発明の方法を使用して、様々な疾患およびコンディション(代謝疾患および感染症が含まれる)の治療に有用な治療化合物が同定される。
【0023】
本明細書中に使用される、「Q」の用語はユビキノンを意味し、これはコエンザイムQとしても知られている。この用語には、ユビキノンの任意のポリプレニル側鎖長が含まれる。典型的には、前記側鎖長は、6 〜 10 イソプレノイド基の範囲である。特定の長さのポリプレニル側鎖を有しているユビキノンを指定するために、下付き文字が使用され、例えば、Q9 は 9つのイソプレノイド基の側鎖を有しているユビキノンを意味し、これは線虫およびヒトに見出される; Q8 は8つのイソプレノイド基の側鎖を有し、大腸菌に見出される。
【0024】
本明細書中に使用される、「DMQ」の用語は、2-ポリプレニル-3-メチル-6-メトキシ-1,4-ベンゾキノン(これはデメトキシユビキノンとしても知られる)を意味し、任意のポリプレニル側鎖長のデメトキシユビキノンが含まれる。典型的には、前記側鎖長は、6 〜 10 イソプレノイド基の範囲である。ユビキノンに対する命名法と類似して、特定の長さのポリプレニル側鎖を有しているDMQは、下付き文字で指定され、例えば、DMQ9 は 9つのイソプレノイド基の側鎖を有しているDMQを意味し、これはヒトおよび線虫に見出される; DMQ8 は8つのイソプレノイド基の側鎖を有し、大腸菌に見出される。
【0025】
本明細書中に使用される、「DMQヒドロキシラーゼ(DMQ hydroxylase)」の用語は、DMQ を 2-ポリプレニル-3-メチル-5-ヒドロキシ-1,4-ベンゾキノン( 3-ヒドロキシユビキノン または3-ヒドロキシQとしても知られる)へと転換する酵素を意味する。この酵素は、ヒドロキシ(-OH)基をベンゾキノンの 5’ ポジションに付加する。
【0026】
一側面において、前記発明者は次の事項を見出した;その事項とは、真核生物のDMQヒドロキシラーゼが、原核生物の DMQ ヒドロキシラーゼ活性(これは原核細胞の通常の成長および増殖に必須であることは明らかである)における欠乏を補足できることである。この所見に基づいて、スクリーニングアッセイがデザインされる;これは原核生物の検査細胞の成長特性および表現型を、DMQ ヒドロキシラーゼ活性を呈する真核生物のタンパク質の活性の指標として使用する。これらのアッセイは、相対的に安価で、産業上のハイスループットスクリーニング系フォーマットに有利に適用可能である。従って、本発明は、便利でハイスループットな細胞に基づくアッセイを提供し、このアッセイは真核生物の DMQ ヒドロキシラーゼを薬物標的(drug target)として具備する、原核生物の検査細胞を用いる。真核細胞における直接のDMQまたはQの測定値は、原核細胞に基づくアッセイにより同定された化合物の活性の確認において、引き続いて使用することができる。これらのアッセイによって同定されたリード化合物は、酸化ストレス(oxidative stress)に関連する特定範囲の病気およびコンディションの、治療のための薬物の開発に使用される。
【0027】
別の側面において、本発明は、原核生物の DMQ ヒドロキシラーゼの薬物標的としての使用を提供する。真核生物において、DMQ ヒドロキシル化の工程は、clk-1 ホモログ(多くの細菌においては、ubiF ホモログにより)によりコード化される酵素により実行される。しかしながら、多様な種からのCLK-1およびUbiFタンパク質のタンパク質の配列比較は、これらの2つの酵素が高度に分岐(divergent)していることを示している(表 1)。例えば、hCLK-1および大腸菌K-12からのUbiFの間には僅か 3% アミノ酸同一性しかなく、この同一性は、腸管出血性の大腸菌O157:H7株と比較した場合には2%に落ち、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)と比較した場合には1.5%に落ちる。細胞の代謝の基礎的な機構およびコンポーネントの幾つかは進化を通じて高度に保存されてきているが、この過程において重要な適応的な変化は細菌および真核生物で独立的に生じてきた。デメトキシユビキノンのヒドロキシル化に必要とされる酵素は、この多岐にわたる進化の結果生じたものであると思われる。
【0028】
【表1】

【0029】
CLK-1は、UbiFと明らかな構造上の特性を共有しない。CLK-1タンパク質は、コンセンサス(consensus)モノオキシゲナーゼ ドメインを欠損しており、サイズが小さく(46 kDaの代わりに21 kDa)、そして若干の共有のアミノ酸が前記配列内に分散しており、クラスター化されていない。加えて、CLK-1は、タンパク質の第二鉄カルボキシレート ファミリ(the di-iron carboxylate family of proteins)のメンバーである。これは推定上の鉄結合共通配列(<n> は、隣接するアミノ酸が他のアミノ酸で分離されることを示す)を有する、即ち:E<n>EXXH<n>E<n>EXXHである。この配列は、幾つかのモノオキシゲナーゼおよびヒドロキシラーゼに見出される。しかしながら、UbiFの配列には非存在である。明らかに、UbiFは、構造的にその真核生物の対応物とは構造上類似していない、Q 生合成に関与する唯一の遺伝子である。細菌のQ 生合成における全ての他の酵素(他の ubi 遺伝子によってコード化される)は、真核生物の酵素と高い程度の構造上の類似性を共有している。
【0030】
本発明は、真核生物および原核生物におけるDMQヒドロキシラーゼのアミノ酸配列におけるこの分岐度(divergence)を、真核生物clk-1遺伝子またはCLK-1タンパク質を標的とする、或いは逆に原核生物のubiF遺伝子またはUbiFタンパク質に選択的に作用する、薬物の発見に活用することを意図している。細菌(これには病原体が含まれる)に特異的に作用する化合物は、新しいクラスの抗生物質に相当(represent)する。UbiFは、細菌界を通じて、広く見出され保存されている。従って、1つの細菌種のUbiFの阻害に効果的である任意の化合物は、関連する種における(及び、おそらくは細菌の広範囲のスペクトルにおける)UbiF又はその機能的な均等物に阻害効果を有すると思われる。UbiFは真核細胞において構造的な均等物を有していないので、本発明のスクリーニングアッセイにより同定される抗生物質化合物(antibiotic compounds)に対する標的は、対象の細胞に存在していない。結果的に、前記化合物の潜在的な毒性は、低いと思われる。本発明の方法により同定された化合物は、原核生物の病原体に高度に選択的であり、係る病原体の広い範囲に対して好適に効果的であると思われる。UbiF活性を阻害する化合物は、動物または植物における細菌に起因する感染症の治療のための抗生物質、細菌で汚染された物体(objects)および物質(materials)の滅菌のための殺菌剤、または細菌の伝播を予防(prevent)する静菌剤として有用である。
【0031】
本明細書中に使用される、「CLK-1」の用語は、DMQ ヒドロキシラーゼ活性を具備しているタンパク質であって、配列番号11で表される線虫CLK-1の、配列番号13で表されるヒトCLK-1の、配列番号15で表されるマウスCLK-1の、または第二鉄カルボキシレート ファミリのタンパク質と構造上の特性を共有する、真核生物における他のDMQ ヒドロキシラーゼのアミノ酸配列と配列ホモロジーを共有するタンパク質を包括的に意味する。係る特性の1つは、推定上の鉄結合共通配列であり、即ち:E<n>EXXH<n>E<n>EXXH (<n> は、隣接するアミノ酸が他のアミノ酸で分離されることを示す)である。好ましくは、本発明のCLK-1タンパク質は、少なくとも 25%, 40%, 50%, 60%, 70%, 80%, 90%, 95%, 99% アミノ酸配列同一性を、線虫、ヒト、またはマウスCLK-1と共有する。「clk-1」の用語は、CLK-1タンパク質をコード化する任意のポリヌクレオチドを意味し、これにはゲノム DNA、cDNA、同様にRNAが含まれる。
【0032】
本明細書中に使用される、「UbiF」の用語は、配列番号3で表される大腸菌UbiFの、および細菌のタンパク質と構造上の特性(例えば、モノオキシゲナーゼ モチーフの存在)を共有する、原核生物における他のDMQ ヒドロキシラーゼの、アミノ酸配列と配列ホモロジーを共有するDMQ ヒドロキシラーゼを包括的に意味する。好ましくは、本発明のUbiFタンパク質は、少なくとも 25%, 40%, 50%, 60%, 70%, 80%, 90%, 95%, 99% アミノ酸配列同一性を、大腸菌, 大腸菌O157:H7, S. typhimurium または Y. pestis UbiFsの何れか1つと共有する。「ubiF」の用語は、ubiFをコード化する任意の核酸を意味し、これにはゲノム DNA, cDNA, 同様に RNAが含まれる。本発明に有用な標的遺伝子配列(target gene sequences)は、セクション5.1に詳細に記載されている。
【0033】
「標的DMQヒドロキシラーゼ(target DMQ hydroxylase)」の用語は、DMQ ヒドロキシラーゼ活性を呈しているタンパク質を意味し、これは前記タンパク質の活性のモジュレーター同定するために本発明のアッセイにおいて検査され、前記アッセイの特性に依存して、CLK-1またはUbiFタンパク質の何れかを包含する。標的DMQヒドロキシラーゼは、ユビキノン生合成に必ずしも関連しない付加的な活性を有し得ることが意図される。従って、本明細書中に使用される用語は、単にDMQ ヒドロキシラーゼ活性を呈するタンパク質に限定されない。標的DMQヒドロキシラーゼは、脊椎動物、哺乳類、霊長類、またはヒトからのものであってもよい。
【0034】
本明細書中に使用される、「標的DMQヒドロキシラーゼ遺伝子発現(target DMQ hydroxylase gene expression)」の用語は、clk-1 または ubiF 遺伝子の転写(この転写によって clk-1 または ubiF プレ-mRNA, clk-1 または ubiF mRNAが産生される)を、および/またはCLK-1またはUbiFタンパク質を産生する、clk-1 または ubiF mRNAの翻訳を意味する。「clk-1 遺伝子発現」または「ubiF 遺伝子発現」の用語は、それぞれの遺伝子の転写(この転写により、それぞれのプレ-mRNA, それぞれのmRNAが産生される)を、および/または、CLK-1またはUbiFタンパク質を産生するための、それぞれのmRNAの翻訳を意味する。標的DMQヒドロキシラーゼ遺伝子発現を可能にする遺伝子構築物及び標的DMQヒドロキシラーゼを具備している検査細胞は、セクション5.2 および 5.3に詳細に記載されている。
【0035】
従って、本発明は、化合物を同定するための一次アッセイを提供する;該化合物は、DMQ ヒドロキシラーゼ活性を具備している標的蛋白質の活性を増加または減少させる;該標的蛋白質は、DMQ ヒドロキシラーゼを欠乏する検査細胞において発現される;また、これによりは、前記標的蛋白質の活性を評価するための手段が提供される。標的DMQヒドロキシラーゼは、前記検査細胞の欠乏を補足し、前記細胞を比較的高い割合で成長させる。従って、好適な態様において、本発明はCLK-1タンパク質の活性を変調する検査化合物のためのスクリーニング方法を提供し、該方法は、検査細胞を検査化合物と、前記検査化合物が前記検査細胞におけるCLK-1タンパク質の活性を変調することを認容するのに十分な時間接触させることと(ここで、前記検査細胞は、内在性のDMQヒドロキシラーゼ活性を欠乏し、前記CLK-1タンパク質をコード化している発現可能なポリヌクレオチドを具備する);およびDMQヒドロキシラーゼ活性における変化を検出することと(ここで、前記検査化合物と接触させない前記検査細胞におけるDMQヒドロキシラーゼ活性と比較した、前記検査化合物と接触させた前記検査細胞のDMQヒドロキシラーゼ活性の増加または減少は、前記検査化合物が前記CLK-1タンパク質の活性を変調することを示す)を含む。
【0036】
別の好適な態様において、本発明は標的DMQヒドロキシラーゼ活性を阻害する検査化合物のスクリーニング方法を提供し、該方法は、検査細胞を検査化合物と、前記検査化合物が前記検査細胞におけるDMQヒドロキシラーゼ活性を変調することを認容するのに十分な時間接触させることと(ここで、前記検査細胞は、内在性のDMQヒドロキシラーゼ活性を欠乏し、標的DMQヒドロキシラーゼをコード化している発現可能なポリヌクレオチドを具備する);および前記検査細胞の成長速度(growth rate)を選択的な条件下で決定することと(ここで、同じ選択的な条件下の且つ前記検査化合物と接触させない検査細胞と比較した、前記検査細胞の成長速度の減少は、前記検査化合物が前記標的DMQヒドロキシラーゼを阻害することを示す)を含む。
【0037】
更に別の好適な態様において、本発明は標的DMQヒドロキシラーゼ活性を増強する検査化合物のスクリーニング方法を提供し、該方法は、検査細胞を検査化合物と、前記検査化合物が前記検査細胞におけるDMQヒドロキシラーゼ活性を変調することを認容するのに十分な時間接触させることと(ここで、前記検査細胞は、内在性のDMQヒドロキシラーゼ活性を欠乏し、標的DMQヒドロキシラーゼをコード化している発現可能なポリヌクレオチドを具備する);および前記検査細胞の成長速度(growth rate)を選択的な条件下で決定することと(ここで、同じ選択的な条件下の且つ前記検査化合物と接触させない検査細胞と比較した、前記検査細胞の成長速度の増加は、前記検査化合物が前記標的DMQヒドロキシラーゼを阻害することを示す)を含む。一次アッセイの工程の詳細な記載は、セクション 5.5に提供される。標的DMQヒドロキシラーゼの活性を変調する検査化合物をスクリーニングするためのキットは、セクション 5.7に記載される。
【0038】
本発明のスクリーニングアッセイにおいて陽性と評価された検査化合物は、標的蛋白質のDMQヒドロキシラーゼ活性および/または標的蛋白質の他の活性を阻害する推定上の因子であり、また、それ自体(as such)、代謝性の又は感染症を治療するための有用な治療薬剤を開発するためのリード化合物として有用であろう。係るリード化合物に基づく抗感染薬(Anti-infective drugs)は、広範囲の細菌の成長をコントロールするのに効果的であり、治療した被験者への副作用は最低限であると思われる。
【0039】
更に本発明は二次アッセイを提供する、これを使用して検査化合物が更に特徴づけられる;該検査化合物は、本発明の一次スクリーニングアッセイにおいて陽性の結果を呈したものである。係るアッセイは、セクション 5.6に記載されている。本発明の陽性化合物の評価および更なる開発のためのリードの選択の間の、2つの主な考慮事項は生物活性および化学構造である。更なる開発のために考慮すべきことは、化合物は、標的蛋白質に対して特異的に作用すべきということである。例えば、UbiF 活性を阻害する抗生物質化合物は、好ましくはCLK-1に阻害効果がないか又は若干の阻害効果を有するべきである。化学構造は、好ましくは次の事項を受け入れるものであるべきである;その事項とは、アナログ(analogs)および誘導体(derivatives)を、構造活性相関および他の前臨床研究(例えば、毒物学、薬物動態、および薬物代謝)に関して、合成および分析することができるような、更なる化学的な修飾である。
【0040】
更に本発明は、本発明の方法で同定された化合物の使用の方法を提供する(例えば、被験者における疾患または医学的なコンディションを治療する又は予防することであるが、この事項に限定されない)。多様な係る方法において、被験者は、効果的な量の、CLK-1活性を阻害する化合物を投与される;ここで前記疾患または医学的なコンディションは、アテローム性動脈硬化症、虚血、糖尿病の脈管性合併症(vascular complication)、癌、または肥満である。
【0041】
他の態様において、本発明は、被験者における疾患または医学的なコンディションを治療する又は予防する方法を提供し、該方法は、被験者に効果的な量のCLK-1活性を増強する化合物を投与することを備える(ここで、前記疾患または医学的なコンディションはパーキンソン病またはフリートライヒ失調症である)。
【0042】
他の態様において、本発明は、被験者における細菌により生じた感染症を治療する方法を提供し、該方法は、前記被験者に、治療上効果的な量の、前記細菌のUbiF活性を阻害する化合物を投与することを備える。
【0043】
好ましくは前記化合物を受ける被験者は、ヒト、コンパニオンアニマル(companion animal)、または家畜動物(livestock animal)である。
【0044】
更なる態様において、本発明は、細菌で汚染された物体または物質を滅菌するための方法を提供し、該方法は、細菌で汚染された物体または物質を、細菌におけるUbiF活性を阻害する化合物と接触させることを含む。
【0045】
5.1 DMQヒドロキシラーゼをコード化しているポリヌクレオチド
DMQヒドロキシラーゼをコード化しているポリヌクレオチド(即ち、本発明のCLK-1sおよびUbiFs)は、当該技術分野において既知の任意の方法により取得することができる。ポリヌクレオチドには、DNA分子(例えば、cDNA、ゲノムDNA)、RNA分子(例えば、hnRNA、プレ-mRNA、mRNA)、およびヌクレオチド アナログを用いて作出されたDNAまたはRNAアナログが含まれる。前記ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であってもよい。単離されたポリヌクレオチドは、前記ポリヌクレオチドの天然の供給源に存在する、他のポリヌクレオチドから区別(distinguished)されるものを含む。
【0046】
とりわけヒト、マウス、酵母、および線虫に関する、CLK-1のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、公共のデータベース(例えば、Genbank)において利用可能である。ヒト CLK-1、マウス CLK-1、および線虫 CLK-1に関する、アミノ酸配列は、それれぞれ配列番号13、15、および11に記載されている。ヒト CLK-1、マウス CLK-1、および線虫 CLK-1をコード化しているclk-1 ポリヌクレオチドの使用が、好適である。また、本発明は、少なくとも 25%, 40%, 50%, 60%, 70%, 80%, 90%, 95%, 99% アミノ酸配列同一性を、ヒト、またはマウスのCLK-1の何れかと共有する、および第二鉄カルボキシレートタンパク質ファミリーの構造上の特徴を共有する、他のCLK-1タンパク質をコード化しているclk-1ポリヌクレオチドの使用を提供する。CLK-1 ホモログの配列の例、及びそれらの公共のデータベースのアクセッション番号は、表2に提供されている。任意の、それらのCLK-1タンパク質及びそれらのコード配列が、本発明の方法に使用することが可能であることが意図される。
【0047】
【表2】

【0048】
同様に本発明の方法において使用されるものは、CLK-1のバリアントをコード化するclk-1ポリヌクレオチドであり、その例はセクション 7.2に示される。幾つかのバリアントに関して、配列バリエーションは、前記酵素の部分的な活性または不活性化を生じさせる。係る機能的に障害されたバリアントは、clk-1変異体またはCLK-1変異体と称される。
【0049】
UbiFをコード化している核酸は、当該技術分野において既知の任意の方法により取得できる。とりわけ大腸菌K-12、大腸菌O157:H7、S. typhimurium、Y. pestisに関する、UbiFアミノ酸およびヌクレオチド配列は、公共のデーターベースにおいて利用可能である。野生型 大腸菌 UbiFに関するアミノ酸およびヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号3および2に示される。好ましくは、本発明は、少なくとも 25%, 40%, 50%, 60%, 70%, 80%, 90%, 95%, 99% アミノ酸配列同一性を、大腸菌, 大腸菌O157:H7, S. typhimurium, S. aureus, M. tuberculosis, または Y. pestis UbiFタンパク質の何れか1つと共有する、他のUbiFタンパク質をコード化しているubiFポリヌクレオチドの使用を提供する。
【0050】
様々な態様において、本発明は、様々な原核生物のUbiF ホモログをコード化しているubiFポリヌクレオチドを使用することを意図しており、これは好ましくは動物または植物の病原体、より好ましくは細菌、および最も好ましくはヒトの疾患に起因する細菌性の病原体のものである。標的DMQヒドロキシラーゼとして使用されるUbiFsの限定されない例は、グラム陽性の球菌、例えば、Staphylococci (例えば、 S. aureus), Streptococci (例えば、 S. pneumoniae, S. pyrogens, S. faecalis, S. viridans); グラム陽性の桿菌, 例えば、 Bacillus (例えば、 B. anthracis), Corynebacterium (例えば、 C. diphtheriae), Listeria (例えば、 L.monocytogenes); グラム陰性の球菌, 例えば、 Neisseria (例えば、 N.gonorrhoeae, N.meningitidis); グラム陰性の桿菌, 例えば、 Haemophilus (例えば、 H. influenzae), Pasteurella (例えば、 P. multocida), Proteus (例えば、 P.mirabilis), Salmonella (例えば、 S.typhimurium), Shigella (例えば、 Shigella flexneri), Escherichia (例えば、 E. coli, およびE. coli O157:H7), Klebsiella (例えば、 K.pneumoniae), Serratia (例えば、 S.marcescens), Yersinia (例えば、 Y.pestis), Providencia species, Enterobacter species, Bacteroides (例えば、 fragilis), Acinetobacter species, Campylobacter (例えば、 C.jejuni), Pseudomonas (例えば、 P.aeruginosa), Bordetella (例えば、 B.pertussis), Brucella species, Fracisella (例えば、 F.tularensis), Clostridia (例えば、 C.perfriugens), Helicobacter (例えば、 H.pylori), Vibrio (例えば、 V.cholerae), Mycoplasma (例えば、 M.pneumoniae), Legionella (例えば、 L.pneumophila), Spirochetes (例えば、 Treponema, Leptospira and Borrelia), Mycobacteria (例えば、 M.tuberculosis), Nocardia (例えば、 N.asteroides), およびChlamydia (例えば、 C.trachomatis)を含む細菌の様々なグループから由来するものであってもよいが、これらに限定されない。
【0051】
UbiF ホモログをコードするubiF ポリヌクレオチドの例、及びそれらの公共のデータベースのアクセッション番号は、表3に提供されている。これらのubiF ポリヌクレオチドおよびUbiF タンパク質は、前記標的が由来する生物体に対する、抗生物質化合物を同定するための任意の薬物スクリーニングに、如何なる限定もなく、薬物標的として使用できることが意図される。好ましくは、これらの薬物標的は、本発明の一次および二次アッセイに使用される。また、前記ubiF ポリヌクレオチドは、生物体のUbiFをコード化している本来(native)の遺伝子を、その特定の生物体のUbiF欠乏宿主細胞を作出するような当該技術分野で既知の技術により、変異させる又は削除するために使用できることが意図される。係る宿主細胞を使用して、本発明の方法に有用な検査細胞を開発することができる。
【0052】
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【0053】
また、本発明は、clk-1 または ubiF アンチセンス ポリヌクレオチドの使用を包含する;即ち、DMQ ヒドロキシラーゼをコード化しているセンス核酸に相補的な分子である(例えば、二重鎖 cDNA分子のコーディング鎖に相補的な又はmRNA配列に相補的なもの)。例えば、ubiF アンチセンス ポリヌクレオチドを使用して、細胞におけるUbiFの発現を変調する又は阻害することができる。アンチセンス核酸は、全体のコード鎖と又はその部分のみと相補的なものであってもよく、例えば、全ての又は一部のタンパク質コード領域(またはオープンリーディングフレーム)である。アンチセンス ポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコード化しているヌクレオチド配列のコード鎖の非コード領域の全体又は一部である。非コード領域は、コード領域に隣接する5’ および 3’ 配列であり、典型的にはアミノ酸に翻訳されない。本発明のアンチセンス オリゴヌクレオチドは、DNA または RNA 又はそのキメラの混合物、誘導体、またはバリアントである。前記オリゴヌクレオチドを、塩基部分(base moiety)、糖部分(sugar moiety)、またはリン酸バックボーン(phosphate backbone)で修飾できる;これにより、例えば、標的mRNAに対する、オリゴヌクレオチドの薬物動態を改善する、および/または、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに影響を与えることが可能である。アンチセンス オリゴヌクレオチドは、例えば, 約 8, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45 または 50 ヌクレオチド以上の長さであってもよい。一態様において、前記アンチセンス オリゴヌクレオチドは、5’ 非翻訳領域または3’ 非翻訳領域に相補的な配列を具備する。本発明のアンチセンス核酸は、化学合成および酵素的なライゲーション反応を用いて、当該技術分野において既知の処置を用いて、構築することができる。
【0054】
clk-1 または ubiF ポリヌクレオチドは、当該技術分野において既知の標準の方法によって、クローン化DNA(例えば、DNA「ライブラリ」)から、化学合成により、cDNAクローニングにより、または所望の細胞から精製された、ゲノムDNA又はその断片のクローニングにより、取得し得る(例えば, Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York; Glover, D.M. (ed.), 1985, DNA Cloning: A Practical Approach, MRL Press, Ltd., Oxford, U.K. Vol. I, II.を参照されたい)。真核生物のゲノムDNAに由来するクローンは、コード領域に加えて、制御およびイントロンのDNA領域を有し得る;cDNA由来のクローンは、エキソン配列のみを含有する。原核生物のゲノムに由来するクローンは、複数のコントロールエレメント(control elements)および多シストロン性のユニットに配置された遺伝子を含有してもよい。供給源がなんであれ、前記遺伝子は、検査細胞中での前記遺伝子の増殖および発現のために、適切なベクターへと分子的にクローン化されるべきである。
【0055】
clk-1 または ubiF 遺伝子を分離するための好適な方法は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によるものであり、これを使用することによりゲノムまたはcDNAライブラリにおける所望の配列を増幅することができる。保存された配列に基づく合成オリゴヌクレオチドを、プライマーとして使用して、供給源(RNA または DNA)、好ましくはcDNAライブラリを増幅し得る。PCR反応に使用するための、幾つかの異なるディジェネレートプライマー(degenerate primers)を選択して合成することができる。PCR反応をプライミングに使用されるハイブリダイゼーション条件の厳密性を変動させて、既知のヌクレオチド配列と分離されたclk-1 または ubiFの核酸との間のヌクレオチド配列類似性のより大きい又はより小さい程度を許容させることも可能である。異種間のハイブリダイゼーションに関して、低い厳密性条件が好適である。同種間のハイブリダイゼーションに関して、中等度の厳密性条件が好適である。clk-1 または ubiFのセグメントの増幅後、分子的にクローン化し、シークエンスし、そして完全cDNA(complete cDNA)またはゲノムクローンを分離するためのプローブとして利用し得る。これにより(順番に)、遺伝子の完全なヌクレオチド配列の決定および分離が許容される。
【0056】
加えて、clk-1 または ubiF 遺伝子の部分又はその特異的なRNA、又はその断片を、精製または合成する、および標識することができる;産生されたDNA断片は、標識プローブに対する核酸ハイブリダイゼーションで選抜し得る(Benton, W. and Davis, R., 1977, Science 196:180; Grunstein, M. And Hogness, D., 1975, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 72:3961)。プローブに対して実質的なホモロジーを有する、それらのDNA断片が、ハイブリダイズする。また、clk-1 または ubiF 核酸を、発現クローニング(例えば、抗-clk-1 または抗-ubiF抗体を選択に用いる)により同定および分離することができる。
【0057】
clk-1 または ubiF DNAをクローニングまたは増幅で取得することの代替法には、遺伝子配列自身を、既知のclk-1 または ubiF 配列から化学的に合成すること又はCLK-1またはUbiFタンパク質をコード化するmRNAに対するcDNAを作出することが含まれるが、これらに限定されない。他の方法は、可能であり、そして本発明の範囲内である。
【0058】
clk-1 または ubiF 核酸(例えば、配列番号12または2の配列を有する)とハイブリダイズ可能な核酸は、核酸ハイブリダイゼーションを低い、高い、または中等度の厳密性で実施することによって分離できる。低い厳密性の係る条件を用いた処置は、以下に限定されない例により示される( Shilo and Weinberg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:6789 6792をも参照されたい):DNAを含んでいるフィルターは、6 h、40°Cで溶液〔35% ホルムアミド, 5X SSC, 50 mM Tris HCl (pH 7.5), 5 mM EDTA, 0.1% PVP, 0.1% フィコール, 1% BSA, および 500 μg/ml 変性させたサケ精子DNAを含有する〕で前処理される。ハイブリダイゼーションは、次の修正を伴う同じ溶液で実行される、その修正とは即ち:0.02% PVP, 0.02% フィコール, 0.2% BSA, 100 μg/ml サケ精子DNA, 10% (wt/vol)デキストラン硫酸, および 5 20 X 106 cpm 32P 標識プローブが使用されることである。フィルターは、ハイブリダイゼーション混合物で18 20 h 、40°Cでインキュベーションされ、それから1.5 h 55°Cで溶液〔2X SSC, 25 mM Tris HCl (pH 7.4), 5 mM EDTA, および 0.1% SDSを含有している〕中で洗浄される。洗浄溶液は、新鮮な溶液で置換され、そして付加的に 1.5 h、60°Cでインキュベーションされる。フィルターは、ブロットされ、乾燥され、オートラジオグラフィーに暴露される。必要ならば、フィルターは、三回目の洗浄を65 〜 68°Cで行い、フィルムに再暴露させる。使用し得る、他の条件の低い厳密性は、当該技術分野において周知である(例えば、異種間ハイブリダイゼーションに使用されるような)。
【0059】
高い厳密性の係る条件を用いた処置は、以下に限定されない例により示される( Shilo and Weinberg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:6789 6792をも参照されたい):DNAを含んでいるフィルターのプレハイブリダイゼーションは、8 h から一晩65°Cで、6X SSC, 50 mM Tris HCl (pH 7.5), 1 mM EDTA, 0.02% PVP, 0.02%フィコール, 0.02% BSA, および 500 μg/ml 変性サケ精子DNAから構成される緩衝液中で実行された。フィルターは、48 h、65°Cでプレハイブリダイゼーション混合物(100 μg/ml変性サケ精子DNAを含有している)中でハイブリダイズされる。フィルターの洗浄は、37°C、1 hで溶液(2X SSC, 0.01% PVP, 0.01% フィコール, および 0.01% BSAを含有している)中で行った。これは次に、オートラジオグラフィー前に、0.1X SSC中で50°Cで45 min洗浄される。使用し得る高い厳密性の他の条件は、当該技術において周知である。
【0060】
例えば、限定されない中等度の厳密性の係る条件は、以下の通りである、即ち:DNAを含んでいるフィルターは、6 h、55°Cで溶液(6X SSC, 5X Denhart’s 溶液剤, 0.5% SDS および 100 μg/ml 変性サケ精子DNAを含有している)中で前処理される。ハイブリダイゼーションは、同じ溶液中で実行される。フィルターは、ハイブリダイゼーション混合物で18〜20 h、55°Cでインキュベーションされ、それから30分間60°Cで溶液〔1X SSCおよび0.1% SDSを含有している〕中で2回洗浄される。フィルターは、ブロットされ、乾燥され、オートラジオグラフィーに暴露される。使用し得る中等度の厳密性の他の条件は、当該技術において周知である。フィルターの洗浄は、37°C、1 hで溶液(2X SSC, 0.1% SDSを含有している)中で行った。
【0061】
代わりに、データベースを検索して、任意のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列が、特定のレベルのホモロジーまたは配列同一性を、前記酵素遺伝子または酵素に関して示すかどうかを決定し得る。種々のこのようなデータベースは、当業者に利用可能である(GenBankおよび GenSeqが含まれる)。様々な態様において、データベースを選別して、少なくとも97%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、又は少なくとも40%ヌクレオチド配列同一性を、酵素遺伝子配列、又はその部分に対して有する核酸が同定される。他の態様において、データベースを選別して、少なくとも99%、少なくとも 95%、少なくとも 90%、少なくとも 85%、少なくとも 80%、少なくとも 75%、少なくとも 70%、少なくとも 65%、少なくとも 60%、少なくとも 55%、少なくとも 50%、少なくとも 40% 又は少なくとも 25%アミノ酸同一性または類似性を、本発明の酵素遺伝子によりコード化されるポリペプチドに対して有しているポリペプチドが同定される。
【0062】
2つの配列間のパーセント同一性(percent identity)の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。2つの配列間の比較に利用される数学的アルゴリズムの好適で限定されることのない例は、Karlin および Altschulのアルゴリズム(1990, Proc Natl Acad Sci. 87:2264-2268)、Karlin および Altschulとして修正されたもの (1993, Proc Natl Acad Sci. 90:5873-5877)である。係るアルゴリズムは、AltschulらのNBLASTおよびXBLASTプログラムに導入されている(1990, J. Mol. Biol. 215:403-410)。BLASTヌクレオチドサーチを、NBLASTプログラム(スコア=100、ワード長=12)で実施して、本発明のポリヌクレオチドに相同なヌクレオチド配列を取得することが可能である。BLAST蛋白質サーチを、XBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)で実施して、本発明の蛋白分子に相同なアミノ酸配列を取得することが可能である。比較目的でギャップアライメント(gapped alignments)を取得するために、Gapped BLASTを文献(Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402)に記載のように利用できる。或いは、PSI-Blastを使用して分子間の遠縁の類縁関係(distant relationships)を検出する反復サーチ(iterated search)を実施できる。BLAST、Gapped BLAST、およびPSI-Blastプログラムを利用する際、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)の初期設定パラメータを使用することができる。全米バイオテクノロジー情報センター(United States National Center for Biotechnology Information)のウェブサイトのホームページを参照されたい。
【0063】
配列比較に利用される数学的アルゴリズムの別の好適な限定されない例は、Myers & Miller, (1988, CABIOS 4:11-17)のアルゴリズムである。係るアルゴリズムは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に導入され、これはGCG配列アライメントソフトウェアパッケージの一部である。ALIGN プログラムをアミノ酸配列の比較に使用する場合、PAM120重み残基表(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティー(gap length penalty)、および4のギャップペナルティー(gap penalty)を使用できる。配列分析のための他のアルゴリズムは、当該技術分野において既知であり、TorellisおよびRobotti(1994, Comput. Appl. Biosci. 10:3-5)に記載のADVANCEおよびADAM;およびPearsonおよびLipman(1988, Proc Natl Acad Sci. 85:2444-2448)に記載のFASTAが含まれる。FASTA内のktupは、コントロールオプションであり、サーチの感度と速度とを設定する。ktup=2の場合、比較される2つの配列において類似する領域は、整列された残基のペアに注目することで見出される;ktup=1の場合、単一(single)の整列されたアミノ酸が検査される。ktupは、タンパク質配列に関して2または1に、或いはDNA配列に関して1〜6に設定できる。ktupが特定されない場合、初期設定は、タンパク質に関して2およびDNAに関して6である。2つの配列間のパーセント同一性は、上記のものと類似する技術を用いて決定できる(ギャップの許容の有り無しで)。パーセント同一性を計算することにおいて、完全一致(exact matches)のみが計数される。
【0064】
加えて、本発明は、CLK-1およびUbiFタンパク質の機能的な均等物をコード化しているポリヌクレオチドをも包含する。本明細書中に使用される「機能的な均等物(Functional equivalent)」の用語は、次のポリペプチドを意味する;そのポリペプチドとは、野生型のCLK-1またはUbiFがDMQと相互作用する様式と実質的に類似する様式でDMQと相互作用する能力を有する、および好ましくは、DMQを3-ヒドロキシQに転換する活性を少なくとも最低の検出レベルで呈する、ポリペプチドである。
【0065】
係る機能的に均等な遺伝子産物には、配列番号3 または 13で表されるアミノ酸配列を有しているポリペプチドの天然または遺伝的に改変されたバリアントが含まれるが、これらに限定されない。係る均等な遺伝子産物は、例えば、上記の酵素遺伝子配列によりコード化されるアミノ酸配列内のアミノ酸残基の欠失、付加、もしくは置換を含んでもよいが、しかし、これによりサイレント変化に至るものであり、結果的に機能的な均等物が産生される。アミノ酸置換は、関与する残基の、極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性の性質における類似性に基づいて作出することができる。例えば、非極性(即ち、疎水性)のアミノ酸残基には、アラニン (Ala または A), ロイシン (ロイシン または L), イソロイシン (Ile または I), バリン (Val または V), プロリン (Pro または P), フェニルアラニン (Phe または F), トリプトファン (Trp または W)およびメチオニン (Met または M)が含まれ得る;極性中性(polar neutral)のアミノ酸残基には、グリシン (Gly または G), セリン (Ser または S), スレオニン (Thr または T), システイン (Cys または C), チロシン (Tyr または Y), アスパラギン (Asn または N)およびグルタミン (Gln または Q)が含まれ得る;正荷電(即ち、塩基性)のアミノ酸残基には、アルギニン (Arg または R), リジン (Lys または K) およびヒスチジン (His または H)が含まれ得る;および負荷電(即ち、酸性)のアミノ酸残基には、アスパラギン酸(Asp または D)およびグルタミン酸(Glu または E)が含まれ得る。前記分子の機能に重要な領域の外側に置換を作成し、なおも活性なポリペプチドを生じさせることが可能なことは当業者には明らかであろう。線虫CLK-1の、機能的に均等なバリアントおよび機能的に障害された変異体の例は、セクション 7.2に記載される。
【0066】
酵素遺伝子産物の1以上のドメインに対応するポリペプチド(例えば、シグナル配列、活性部位、または基質結合ドメイン)、短縮型(truncated)または欠失型(deleted)の酵素(例えば、前記酵素の1以上のドメインが欠失しているポリペプチド)、および融合タンパク質(例えば、完全長または短縮型または欠失型の酵素、または酵素の1以上のドメインに対応するペプチドまたはポリペプチドが非関連のタンパク質に融合されている、タンパク質)をコード化しているclk-1 または ubiF ポリヌクレオチドも、また本発明の範囲内である。融合タンパク質をコード化しているポリヌクレオチドは、所望のアミノ酸配列をコード化している適切な核酸配列を互いに、当該技術分野において既知の方法で、適切なコーディングフレームで連結させることにより作出できる。典型的な融合タンパク質には、発光タンパク質が含まれるが、これらに限定されない;この発光タンパク質は、例えば、緑色蛍光タンパク質であり、これによりマーカー機能を提供することができる。また、好ましくは、係る融合タンパク質は、CLK-1またはUbiFタンパク質の機能的な均等物である。
【0067】
5.2 組換え型遺伝子構築物
本発明において、標的DMQヒドロキシラーゼ遺伝子配列をベクターへと挿入して、細胞中で標的DMQヒドロキシラーゼの発現を得る。従って、本発明の側面は、ベクター、好ましくは発現ベクターに関し、該ベクターは、clk-1またはubiFポリヌクレオチド、CLK-1またはUbiFポリペプチドをコード化している核酸配列、その機能的な均等物又はその変異体を具備する。
【0068】
「標的遺伝子構築物(target gene constructs)」の用語は、標的遺伝子配列の挿入または取り込みを操作する当該技術において既知のベクターを意味する。本明細書中に使用される、「ベクター」の用語は、それがリンクされた別の核酸を輸送する能力を有するポリヌクレオチドを意味する。例えば、1つのタイプのベクターはプラスミドである;これはその中に付加的なDNAセグメントを導入することができる、環状の二重鎖のDNAループを意味する。別のタイプのベクターは、付加的なDNAセグメントをウイルス性のゲノムへと導入することができる、ウイルス性のベクターである。
【0069】
本発明の係る標的遺伝子構築物は、好ましくはプラスミドであり、該プラスミドは、挿入される標的遺伝子配列と動作可能に会合するプロモーター配列を含有する。それは、典型的には、複製開始点と、同様に、形質転換された細胞の表現型選択を許容する特異的な遺伝子とを含有する。「動作可能に会合される(operably-associated)」または「動作可能に連結される(operably-linked)」の用語は、プロモーターおよび標的遺伝子配列が転写を許容するような様式で結合され及び配置された、会合(association)を意味する。2以上の配列(例えば、プロモーターおよび任意の他の核酸配列)は、次の場合に動作可能に会合されている;その場合とは、前記プロモーターにおいて開始される転写が、動作可能に会合する配列のRNA転写物を産生する場合である。
【0070】
本発明に有用な標的遺伝子構築物は、標的遺伝子構築物DNAを含有する組換え型の細胞を、最初に分離し、同定し、または追跡(tracking)するための、選択可能な又は選抜可能(screenable)なマーカー遺伝子を含有してもよい。レポーター遺伝子は、次の様式で構築物に挿入してもよい;その様式とは、標的遺伝子構築物を含有している細胞の成長特性(growth characteristics)が、異なる手段でアッセイできる様式である。
【0071】
特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自立複製する能力を有する(例えば、細菌性の複製開始点を有している細菌性のベクターおよびエピソームの哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性の哺乳類ベクター)は、宿主細胞のゲノムへと、宿主細胞に導入することによって統合され、それによって宿主ゲノムと共に複製される。一般的には、組換えDNA技術に利用する発現ベクターは、頻繁にプラスミドの形態で利用される。しかしながら、本発明は、例えば、ウイルス性のベクター(例えば、複製に欠陥のあるレトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ関連ウイルス)などの発現ベクターの他の形態を含むことを意図している。
【0072】
「制御配列(regulatory sequence)」の用語は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現コントロールエレメント(例えば、ターミネーターおよびポリアデニル化シグナル)を含むことを意図している。係る制御配列は、例えばGoeddelの文献( Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology, (1990) Academic Press, San Diego, CA, p. 185.)に記載されている。制御配列には、次のようなものが含まる;それは即ち、多くのタイプの宿主細胞において、ヌクレオチド配列の直接的で構成的な発現を支配するもの、及び特定の宿主細胞のみに存在するヌクレオチド配列の発現を支配するもの(例えば、組織特異的な制御配列)である。当業者は、発現ベクターのデザインが、形質転換されるべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどの要素に依存され得ることを理解する。本発明の組換え型発現ベクターは、原核生物(例えば、大腸菌)または真核細胞(例えば、線形動物細胞、酵母細胞、または哺乳類細胞)における、本発明のポリペプチドの発現に関して設計され得る。
【0073】
原核生物でのタンパク質の発現は、殆どは大腸菌と、融合または非融合タンパク質の発現を支配する構成的な又は誘導可能な(inducible)プロモーターを具備するベクターとで実施される。融合ベクターは、いくつかのアミノ酸を、それにコードされるタンパク質に付加する(通常は、組換えタンパク質のアミノ末端へと付加する)。例には、pBR322, pASI, pUC7-19, pKK (223-3, 233-2, 177-3, 240-11), pTrc99A-C, pDR540, pDR720, pPL-ラムダ, pKC30, pSK(+/-), Pin-iii, pCZ198, pTTQ8,9,18,19 および 181, pGEMEX-1および2, pET1 から pET16 シリーズ, pT7-3-7 などが含まれるが、これらに限定されない。典型的な誘導可能な非融合大腸菌発現ベクターの詳細は、Amann(pTrc; 1988, Gene 69:301-315) および Studier (pET 11d; 1990, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, California p. 60-89)の記載中に認められる。pTrc ベクターの標的遺伝子発現は、ハイブリッド trp-lac 融合プロモーターからの、宿主のRNAポリメラーゼ転写に依存する。pET 11dベクターの標的遺伝子発現は、共発現されるウイルス性のRNAポリメラーゼ(T7 gn1)により媒介される、T7 gn10-lac融合プロモーターからの転写に依存する。このウイルス性のポリメラーゼは、宿主株 BL21(DE3) または HMS174(DE3) より、lacUV 5 プロモーターの転写調節下でT7 gn1 遺伝子を保持している常在性の λ プロファージから供給される。
【0074】
最も一般的に使用され、本発明における使用に一般的に好適なものは、trp, lac (またはlac UV5 tac および trc プロモーターなどのもののハイブリッド), λPL, 同様に、他の大腸菌ウイルス(例えば、T7 または T3)の遺伝子において認められるプロモーターである。tac プロモーターも、特に有益であることが証明されている。また、細菌に適合性のリボソーム結合部位の使用は、特に真核生物のclk-1ポリヌクレオチドが細菌で発現される際に意図される。一般に次の事項が信じられている;その事項とは、最も知られたリボソーム結合部位、及びそれらに関連するスペーサー領域が、本発明に有利に使用し得ることである。多数の係るリボソーム結合部位が、知られている(Gren, 1984, Biochimie, 66:1-29, 1984)。
【0075】
細菌性の転写ターミネーターの使用も、望ましい。一般的に、実質的に任意の細菌性のターミネーター配列を使用し得ると信じられている。一般的にいって、単純な細菌性のターミネーターは前記遺伝子の3’末端での一連のチミジン残基により特徴付けられ、これは前記DNAにおいて二分子対称(dyad symmetry)のGCリッチ領域により先行される。幾つかのターミネーターは、ウリジン コード領域に対する対称性の対応物を明らかに提供し得る、一続きのアデニン(a run of adenines)を有しており、そのため両方の方向に機能すべきである。この事項は、rho非依存性ターミネーターに関して及びrrnBオペロンに関して実証されている。ターミネーターは、強いプロモーターを保有しているプラスミドの安定性に重要であると思われる。発現ベクターに最も頻繁に使用されるターミネーターは、 trp またはリボソームのターミネーター rrnB である。T7 ファージからのターミネーター配列も、発現ベクターに頻繁に使用される。というのも該配列が、大腸菌中でのそれらのメッセージの分解を明らかに遅らせる、mRNAsの3’端でのステムループ構造が残される、RNase III切断部位を含有するからである。
【0076】
本発明は線虫 clk-1 遺伝子の使用を介して例証されるが、他方で次の事項が信じられている;その事項とは、本明細書中に開示される技術が、類似する構造上の及び機能的な特性を有する、ヒト clk-1 および全ての他の真核生物の clk-1 ポリヌクレオチドに一般的に適用可能であることである。更に、本発明は大腸菌の細菌性の宿主に関して例証されるが、他のタイプの細菌も大腸菌の代わりに使用できる。もちろん、真核生物の clk-1 配列の細菌での発現を改善させるために、適切なリボソーム結合部位および効果的なプロモーター以外に、イントロンおよび他の非翻訳配列の除去をも考慮して、真核生物の clk-1 ポリヌクレオチドおよび発現ベクターを修飾することが必要であろう。
【0077】
別の態様において、前記発現ベクターは、酵母の発現ベクターである。酵母(S.cerevisiae)での発現のためのベクターの例には、pYepSec1 (Baldari et al., 1987, EMBO J. 6:229-234), pMFa (Kurjan and Herskowitz, 1982, Cell 30:933-943), pJRY88 (Schultz et al., 1987, Gene 54:113-123), pYES2 (Invitrogen Corp., San Diego, CA), および pPicZ (Invitrogen Corp., San Diego, CA)が含まれる。
【0078】
なお別の態様において、本発明の clk-1 または ubiF 核酸は、哺乳類発現ベクターを用いて、哺乳類細胞中で発現される。哺乳類発現ベクターの例には、pCDM8 (Seed, 1987, “An LFA-3 cDNA encodes a phospholipid-linked membrane protein homologous to its receptor CD2", Nature. 840-842) および pMT2PC (Kaufman et al., 1987, “Translational efficiency of polycistronic mRNAs and their utilization to express heterologous genes in mammalian cells”, EMBO J. 6:187-193)が含まれる。哺乳類細胞に使用される場合、発現ベクターのコントロール機能は、しばしばウイルス性の制御因子によって供給される。例えば、一般に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス 2、サイトメガロウイルス、およびシミアンウイルス40(Simian Virus 40)に由来するものである。
【0079】
別の態様において、前記哺乳類発現ベクターは、 clk-1 または ubiF 核酸の発現を、特定の細胞タイプにおいて優先的に方向付ける能力を有している(例えば、組織特異的制御因子を使用して、前記核酸を発現させる)。組織特異的な制御因子は、当該技術分野において既知である。適切な組織特異的なプロモーターの非限定的な例には、アルブミンプロモーター(肝臓特異的; Pinkert et al., 1987, Genes Dev. 1:268-277)、リンパ球(lymphoid)特異的プロモーター(Calame and Eaton, 1988, Adv. Immunol. 43:235-275)、特にT細胞レセプターのプロモーター(Winoto and Baltimore, 1989, EMBO J. 8:729-733) および免疫グロブリン(Banerji et al., 1983, Cell 33:729-740; Queen and Baltimore, 1983, Cell 33:741-748)、ニューロン特異的プロモーター(例えば、神経フィラメントプロモーター; Byrne and Ruddle, 1989, Proc Natl Acad Sci. 86:5473-5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlund et al., 1985, Science 230:912-916)、および乳腺特異的プロモーター(例えば、ミルク乳清プロモーター; 米国特許第4,873,316号および欧州特許出願公開第264,166号)が含まれる。また、発生的に制御されるプロモーターには、例えば、マウスの hox プロモーター (Kessel and Gruss, 1990, Science 249:374-379) およびα-フェトプロテイン プロモーター(Campes and Tilghman, 1989, Genes Dev. 3:537-546)が包含される。
【0080】
更に、本発明は組換え型発現ベクターを提供する;該ベクターは、アンチセンス配向(antisense orientation)で前記発現ベクターにクローン化される、本発明のポリヌクレオチドを具備する。即ち、前記DNA分子は、制御配列に次の様式で動作可能に連結される;その様式とは、本発明のポリペプチドをコード化しているmRNAに対してアンチセンスであるRNA分子の発現(DNA分子の転写による)を許容する様式である。アンチセンス配向でクローン化された核酸に動作可能に連結される制御配列を選択することができ、これにより様々な細胞タイプにおけるアンチセンスRNA分子の連続的な発現を方向付けられる(例えば、ウイルスのプロモーターおよび/またはエンハンサー);或いは、制御配列を選択することができ、これにより構成的、組織特異的、又は細胞タイプ特異的なアンチセンスRNAの発現を方向付けられる。アンチセンス発現ベクターは、組換え型プラスミド、ファージミド、または弱毒ウイルスの形態であってもよい;これらにおいてアンチセンス核酸は、高効率の制御領域のコントロール下で産生される;その活性は、前記ベクターが導入される細胞タイプによって決定され得る。
【0081】
ベクターDNAは、従来の形質転換または形質移入技術を介して、原核又は真核細胞へと導入することができる。本明細書中に使用される「形質転換(transformation)」および「形質移入(transfection)」の用語は、外来の核酸を宿主細胞へと導入するための、様々な当該技術において既知の技術(art-recognized techniques)を意味し、この技術には、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン媒介性の形質移入、リポフェクション、または電気穿孔法が含まれる。宿主細胞を形質転換する又は形質移入する適切な方法は、研究マニュアル中から見つけることができる。
【0082】
哺乳類細胞の安定な形質移入に関して、次の事項が知られている;その事項とは、使用される発現ベクターおよび形質移入技術に依存して、細胞の僅かに少数のフラクションが、外来DNAをそれらのゲノムへと統合し得ることである。これらの統合体(integrants)を同定する及び選択するために、一般的に、選択可能なマーカー(例えば、抗生物質耐性に関する)をコードする遺伝子が、所望の遺伝子と共に宿主細胞へと導入される。好適な選択可能なマーカーには、薬物(例えば、G418、ハイグロマイシン、およびメトトレキセート)に対する耐性を与えるものが含まれる。導入した核酸で安定に形質移入される細胞は、薬物選択(例えば、選択可能なマーカーを導入されている細胞は、生存するが、他方で他の細胞は死亡する)により同定することができる。
【0083】
5.3 本発明の検査細胞
本発明において、標的DMQヒドロキシラーゼは、潜在的な薬物候補を検査するために、細胞中で産生される。従って、本発明の別の側面は、本発明のアッセイに使用する検査細胞を提供することに関する。
【0084】
本明細書中に使用される「宿主細胞(host cells)」の用語は、DMQを3-ヒドロキシQに転換する本来の酵素の活性が欠乏した又は減少した、原核または真核細胞を意味する。好ましくは、宿主細胞は、検出可能なレベルの前記酵素活性を有さない。無視できる(negligible)又は減少した酵素活性によって、係る宿主細胞は、特定の栄養又は環境条件下で正常に成長することが不能(inability)となる。或いは、無視できる又は減少した酵素活性によって、特徴的な観察可能な表現型が前記宿主細胞に生じる。前記宿主細胞は、彼らが野生型細胞よりも低い酵素活性を有している場合に、DMQヒドロキシラーゼ活性を欠乏する、例えば、前記宿主細胞が、DMQヒドロキシラーゼ活性の野生型レベルの70%, 60%, 50%, 40%, 30%, 20%, 10%, 5%, 2%, 1%, または0.1%未満を呈する場合である。
【0085】
「検査細胞(test cells)」、「検査原核細胞(test prokaryotic cells)」、および「検査真核細胞(test eukaryotic cells)」の用語は、標的DMQヒドロキシラーゼ(例えば、異種性のCLK-1またはUbiFタンパク質、又はその機能的な均等物)を具備する、アッセイに使用される原核および/または真核細胞を意味するために本明細書中に使用される。前記標的DMQヒドロキシラーゼの活性は、前記検査細胞における、本来の/内在性のDMQヒドロキシラーゼの欠乏を次のように補足する;つまり、前記検査細胞が、特定の栄養及び環境条件において、成長する及び増殖することができるように補足する。標的DMQヒドロキシラーゼ活性の存在によって、前記欠乏が補足され、検査細胞が係る条件下で野生型細胞の約 10%, 20% 30% 40%, 50%, 60%, 70%, 80%, 90%, 100%, 110%, 120%, 150%, 200%, または 250%の成長速度を呈することを認容する。前記検査細胞における標的DMQヒドロキシラーゼの活性が減少した場合(例えば、標的酵素のインヒビターの存在下で)、前記検査細胞の成長特性が特定の栄養又は環境条件下で影響され、標的DMQヒドロキシラーゼの活性の指標として寄与し得る。係る検査細胞の表現型は、DMQ ヒドロキシラーゼを欠乏する宿主細胞のものと似たものだろう。特定のアッセイにおいて、前記検査細胞は、標的遺伝子構築物に内在性のDMQヒドロキシラーゼ遺伝子配列のコピーを具備する。他のアッセイにおいて、前記検査細胞は、標的DMQヒドロキシラーゼ又は変異体DMQヒドロキシラーゼのバリアントをコード化している発現可能なポリヌクレオチドを具備する。他のアッセイにおいて(例えば、コントロール実験において)、前記検査細胞は、標的遺伝子構築物の作出に使用されるベクター配列のみを具備する。
【0086】
係る用語は、特定の対象細胞のみでなく、係る細胞の子孫又は潜在的な子孫をも意味することが理解される。宿主細胞または検査細胞は、任意の原核細胞(例えば、大腸菌)または真核細胞(例えば、線形動物細胞、酵母細胞、哺乳類細胞、マウス細胞、またはヒト細胞)であってもよく、これにはトランスジェニック哺乳類細胞、および胚性幹細胞、および動物(例えば、線形動物 線虫)の細胞が含まれる。
【0087】
一態様において、本発明は、ubiF遺伝子座又はその均等物において欠乏である宿主細胞(即ち、低またはゼロのバックグランドのDMQ ヒドロキシラーゼ活性を有する細胞)の使用に関する。係る宿主細胞または株の幾つか(「宿主株(host strains)」とも称される)は、当該技術分野において既知である。大腸菌株JF496 (ubiF411 asnB50::Tn5)は、好適な宿主株である。これらの細胞は、DMQ ヒドロキシラーゼ活性(該活性は、 Q 生合成に必要とされる)を欠損するか又は低い該活性を産する。結果として、Qの不十分な量が前記細胞中に存在することによって、前記細胞が、特定の生理学的条件下(例えば、唯一の炭素源としてスクシナートまたはグルコースを用いること)で正常に成長および増殖することを認容する。それらの細胞におけるubiF遺伝子座又はその均等物は、遺伝子産物が産生または機能しない程度にまで、欠失または変異されてもよい。UbiF陰性(UbiF-)細菌株を作出するために、野生型細菌のubiF遺伝子又はその均等物を、遺伝的方法または組換えDNA技術で突然変異誘発又は欠失させてもよい、或いは当該技術において周知のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAi技術でブロックしてもよい。
【0088】
関連する態様において、前記宿主株は、有益な特性を本発明のアッセイに提供する、付加的な変異を具備できる。前記宿主株は、ポリプレニル―ジホスフェートシンターゼ(polyprenyl-diphosphate synthase)に変異を(前記酵素はDMQのポリプレニル側鎖長をコントロールする)、および異なる長さのポリプレニル側鎖を産生する酵素を具備するレスキュー遺伝子構築物(a rescuing gene construct)を有してもよい。例えば、大腸菌(ここでは前記側鎖に8 イソプレン基が存在する)において、前記酵素(オクタプレニル―ジホスフェートシンターゼ)はispB遺伝子座にコード化される。紅色細菌(Rhodobacter capsulatus)において、前記酵素〔ソラネシル(solanesyl)―ジホスフェートシンターゼ〕は、sdsA遺伝子座にコード化される。係る操作によって、標的DMQヒドロキシラーゼに特有(particular for)の特定の鎖長のDMQが宿主細胞中で合成される(ここで前記標的酵素が検査される)。
【0089】
本発明の検査細胞を作出するために、標的遺伝子構築物が宿主細胞へと導入される。従って、別の態様において、本発明は、検査細胞または検査細胞株を提供し、これらはUbiF活性を欠乏するが、標的DMQヒドロキシラーゼをコード化している、発現可能な遺伝的配列を具備するものである。
【0090】
特定の態様において、前記検査細胞は原核細胞であり、この細胞には細菌細胞(好ましくは、大腸菌細胞、および最も好ましくは、標的遺伝子構築物を具備している大腸菌 JP496 細胞)が含まれるが、これらに限定されない。より具体的な態様において、これらの原核細胞の検査細胞において、前記標的遺伝子構築物は、セクション 5.1 および 5.2に記載されるような、clk-1ポリヌクレオチド、CLK-1をコード化しているポリヌクレオチド、その機能的な均等物、又はその変異体を具備する。好ましくは、原核生物の検査細胞中で発現されるCLK-1は、真核生物のCLK-1であり、これには線形動物CLK-1、脊椎動物 CLK-1、哺乳類CLK-1、げっ歯類CLK-1、マウスCLK-1、霊長類 CLK-1、またはヒト CLK-1が含まれるが、これらに限定されない。好適な例には、pET16-clk-1 (線虫 clk-1)を具備する大腸菌 JP496 細胞、pET16-mclk-1 (マウス clk-1)を具備する大腸菌 JP496 細胞、およびpET16-hclk-1 (ヒト clk-1)を具備する大腸菌 JP496 細胞が含まれる。
【0091】
別のより具体的な態様において、これらの原核細胞の検査細胞において、前記標的遺伝子構築物は、セクション 5.1 および 5.2に記載されるような、ubiFポリヌクレオチド、UbiFタンパク質をコード化しているポリヌクレオチド、その機能的な均等物、又はその変異体を具備する。好ましくは、前記原核細胞の検査細胞において発現されるUbiFは、病原体によって産生されるタンパク質である、好ましくは、植物および/または動物に感染する細菌性の病原体である、より好ましくは、脊椎動物、哺乳類、げっ歯類、マウス、または霊長類に感染する細菌性の病原体である、並びに最も好ましくは、ヒトに感染する細菌性の病原体である。
【0092】
なお別の態様において、前記検査細胞は真核細胞であり、この細胞には線形動物細胞、脊椎動物細胞、哺乳類細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、霊長類細胞、またはヒト細胞が含まれるが、これらに限定されない。これらの真核細胞の検査細胞において、前記標的遺伝子構築物は、セクション 5.1 および 5.2に記載されるような、ubiFポリヌクレオチド、UbiFタンパク質をコード化しているポリヌクレオチド、その機能的な均等物、又はその変異体を具備する。好ましくは、前記原核細胞の検査細胞において発現されるUbiFは、病原体に存在するタンパク質である、好ましくは、植物および/または動物に感染する細菌性の病原体である、より好ましくは、脊椎動物、哺乳類、げっ歯類、マウス、または霊長類に感染する細菌性の病原体である、並びに最も好ましくは、ヒトに感染する細菌性の病原体である。
【0093】
なお別の態様において、前記検査細胞は真核細胞であり、この細胞には線形動物細胞、脊椎動物細胞、哺乳類細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、霊長類細胞、またはヒト細胞が含まれるが、これらに限定されない。これらの真核細胞の検査細胞において、前記標的遺伝子構築物は、セクション 5.1 および 5.2に記載されるような、clk-1ポリヌクレオチド、CLK-1をコード化しているポリヌクレオチド、その機能的な均等物、又はその変異体を具備する。好ましくは、原核生物の検査細胞中で発現されるCLK-1は、真核生物のCLK-1であり、これには線形動物CLK-1、脊椎動物 CLK-1、哺乳類CLK-1、げっ歯類CLK-1、マウスCLK-1、霊長類 CLK-1、またはヒト CLK-1が含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
なお別の態様において、前記検査細胞は、標的DMQヒドロキシラーゼをコード化している遺伝的配列を具備している標的遺伝子構築物を具備する;ここで、前記遺伝的配列は、誘導可能な又は抑制可能な(repressible)プロモーターに動作可能に連結される。係るプロモーターの転写活性は、前記検査細胞における特定の化学物質(chemicals)の存在またはレベルによって、ポジティブに又はネガティブに制御できる。
【0095】
様々な態様において、本発明の標的遺伝子構築物には、任意の付加的な遺伝的配列、好ましくは検出可能な遺伝子産物(即ち、ペプチドまたはポリペプチド)をコードするDNA配列が含まれ得る。検出可能なレポーター遺伝子をコード化している遺伝的配列は、当該技術分野の当業者に周知である。レポーター遺伝子配列は、必ずしも検出可能なペプチドまたはポリペプチドをコード化しない、というのもレポーター遺伝子のメッセンジャー RNAsを検出する及び定量することができるからである。
【0096】
様々な原核または真核生物からのDMQヒドロキシラーゼをコード化しているポリヌクレオチドは、宿主細胞株中にクローン化され、発現されて、宿主細胞のCLK-1 または UbiF 欠乏の補足を示す。宿主細胞株をこのように使用して、異なるDMQヒドロキシラーゼでの実験のための複数の検査株を作出することができる。標的 DMQ ヒドロキシル化を発現できる任意のUbiF- 細菌細胞を使用することによって、本発明の検査細胞を作出し得る。細菌性の宿主細胞は、私立の研究寄託機関、公立のカルチャーコレクション(例えば、American Type Culture Collection)から、又は商業的な供給者から入手し得る。例えば、大腸菌を、多くの病原性細菌のモデルとして使用できる。様々な病原性種の標的 DMQヒドロキシラーゼをコード化している遺伝的配列を大腸菌宿主細胞株に発現させることによって、宿主細胞のUbiF 欠乏の補足を示すことができる。大腸菌 検査細胞における標的DMQヒドロキシラーゼの活性を特異的に阻害する検査化合物は、病原性の細菌種中の標的DMQヒドロキシラーゼに対して、類似する阻害効果を有することが期待される。薬物スクリーニング法に関して開発されてきた細菌を使用することが望ましく、彼らの成長、維持、および操作に関する条件は知られている。他の好適な細菌種には、枯草菌(Bacillus subtilis)およびPseudomonas aeuroginosaが含まれるが、これらに限定されない。
【0097】
原核細胞への標的遺伝子構築物の導入は、形質転換、抱合(conjugation)、および形質導入(transduction)などの当業者に周知の従来技術により実施し得る。例えば、宿主が大腸菌である場合、DNA取込の能力を有するコンピテント細胞は、指数的な増殖後に収穫され、当該技術分野において周知の処置を用いるCaCl2 法で引続いて処理された細胞から調製することができる。代わりに、MgCl2 または RbClを使用し得る。
【0098】
形質転換の従来の化学的な方法に加えて、本発明の標的遺伝子構築物を、物理的な手段(例えば、電気穿孔法又はマイクロインジェクションによる)によって検査細胞へと導入し得る。電気穿孔法は、高い電位の電気的インパルスによって標的遺伝子構築物の伝達を可能とする;これは、宿主の形質膜に穿孔を形成するものであり、当該技術分野において周知の方法にしたがって実施される。加えて、標的遺伝子構築物は、宿主細胞へと、当該技術分野において周知の方法を用いる、プロトプラスト融合(protoplast fusion)により導入することができる。
【0099】
標的遺伝子配列を含有し、標的DMQヒドロキシラーゼを発現する検査細胞は、少なくとも4つの一般的なアプローチにより同定し得る;
(a) DNA-DNAまたはDNA-RNA ハイブリダイゼーション;
(b)レポーター遺伝子機能(例えば、抗生物質耐性)の存在または非存在;
(c)検査細胞における標的DMQヒドロキシラーゼ mRNA転写物の発現により測定されるような転写のレベルを評価すること;および
(d)標的DMQヒドロキシラーゼの検出であって、免疫アッセイにより、その生物学的活性により、又は基質および産物のレベルの変化を検出することにより測定される、標的DMQヒドロキシラーゼの検出。
【0100】
検査細胞は、温度、インキュベーション時間、光学濃度、プレーティング密度、および前記細菌の栄養学的および生理学的な要求に対応する培地組成物の標準的な条件下で培養され得る。しかしながら、検査細胞の維持および成長のための条件は、本発明のスクリーニング方法における候補の検査化合物をアッセイするためのものと異なっていてもよい。当該技術分野において既知の任意の技術を適用して、成長のための又はアッセイするための最適な条件を樹立し得る。
【0101】
スクリーニングアッセイに関する上記の方法により産生された、検査細胞株、細胞培養物、細胞株は、増殖させられ、保存され、検査細胞に適切である当該技術分野において既知の任意の技術により回収(retrieved)される。例えば、本発明の検査細胞は、穿刺培養、平板培養により、又はグリセリン懸濁に保存され得る、またフリーザー(-20°C 〜 -100°Cで)中に又は液体窒素(-176°C 〜 -196°C)下で低温保存(cryopreserved)される。
【0102】
本明細書中に使用される「レポーター遺伝子」の用語は、検査細胞に存在する他の遺伝的配列から、検出可能な及び識別可能な、任意の遺伝的配列を意味する。好ましくは、前記レポーター遺伝子配列は、その存在により、又は検出可能なシグナルの産生に至るその活性により、容易に検出可能であるタンパク質をコード化する。レポーター遺伝子を本発明に使用することによって、DMQヒドロキシラーゼ活性または検査細胞における活性のマーカーを、モニターする及びレポートすることができる。
【0103】
レポーター遺伝子は、検出可能なシグナルを直接的に又は間接的に産生する能力を有するレポーター分子をコード化する。一般に、必ずしも必然的ではないが、前記レポーター遺伝子は、検査細胞により産生されるものと異なったものではないRNAおよび検出可能なタンパク質(RNA and detectable protein that are not otherwise produced by the test cells)をコード化する。多くのレポーター遺伝子が記載されており、幾つかは遺伝子制御の研究のために市販されている。例えば、文献( Alam and Cook, 1990, Anal. Biochem. 188:245-254)を参照されたい、該文献は、本明細書中に参照によって援用される。
【0104】
抗体によって検出できる、任意の抗原性のペプチドまたはタンパク質を、レポーターとして使用できる〔例えば、成長ホルモン (Selden et al., Mol. Cell Biol., 6:3173)〕。免疫アッセイの抗体結合による検出を促進するために、検査細胞表面に分泌される又は付着する抗原性のレポーター分子が好適である。便宜性および効率性に関して、酵素性のレポーターおよび光放射(light-emitting)レポーターが、本発明のスクリーニングアッセイに好適である。本発明には、組織化学性、比色性(colorimetric)、および蛍光定量性(fluorometric)のアッセイが包含される。種々の酵素をレポーターとして使用し得る、これにはβ-ガラクトシダーゼ (Nolan et al. 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2603-2607)、クロラムフェニコール アセチルトランスフェラーゼ(CAT; Gorman et al., 1982, Mol Cell Biol, 2:1044; Prost et al., 1986, Gene 45:107-111)、β-ラクタマーゼ、β-グルクロニダーゼ、およびアルカリホスファターゼ(Berger et al., 1988, Gene 66:1-10; Cullen et al., 1992, Methods Enzymol; 216:362-368)が含まれるが、これらに限定されない。レポーター遺伝子の転写は、検査細胞において前記酵素の産生を生じる。存在する酵素の量は、検出可能な反応産物の形成を生じる、基質におけるその酵素作用を介して測定できる。本発明の方法は、反応産物の量を決定する手段を提供する(ここで、産生される反応産物の量または基質の残量は、酵素活性の量に関係する)。幾つかの酵素(例えば、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、およびβ-ラクタマーゼ)に関して、蛍光原基質(fluorogenic substrates)が利用可能である、このことによって係る基質を検出可能な蛍光産物へと転換することを前記酵素に許容させる(例えば、米国特許第5,070,012号およびWO 96/30540を参照されたい)。
【0105】
一般に使用されるレポーター遺伝子は、大腸菌β-ガラクトシダーゼをコード化しているLacZ遺伝子である。前記酵素は、異なる色素生産性または蛍光原基質の使用を許容するような、非常に安定で、広い特異性を有するものである;このような基質には、例えば、ラクトース 2,3,5-トリフェニル-2H-テトラゾリウム(ラクトース-テトラゾリウム)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトシド(X-gal)、およびフルオレッセイン ガラクトピラノシド(Molecular Probes, Orgeon)が含まれるが、これらに限定されない。文献(Nolan et al. 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2603-2607)を参照されたい。別の一般に使用されるレポーター遺伝子は、大腸菌β-グルクロニダーゼ遺伝子(GUS; Gallagher, 1992, in "GUS protocols", Academic Press)であり、これは様々な組織化学的および蛍光原基質(例えば、X-グルクロニド、および4-メチルウンベリフェリル グルクロニド)と共に使用できる。また、種々の生物発光性の、化学発光性の、及び蛍光性のタンパク質を、本発明における光放射レポーターとして使用できる。1つのタイプの係るレポーター(酵素および光の放射に必要なコファクター)には、Vibrio harveyiの細菌性ルシフェラーゼ(luxAB 遺伝子産物)(Karp, 1989, Biochim. Biophys. Acta 1007:84-90; Stewart et al. 1992, J Gen Microbiol, 138:1289-1300)、およびホタル(Photinus pyralis)のルシフェラーゼ(De Wet et al. 1987, Mol. Cell. Biol. 7:725-737)が含まれるが、これらに限定されない。別のタイプの光放射レポーター(これは基質またはコファクターを要求しない)には、Victoria aequoria の野生型緑色蛍光タンパク質(GFP)(Chalfie et al. 1994, Science 263:802-805)、修飾型GFPs(Heim et al. 1995, Nature 373:663-4; PCT 国際公開 WO 96/23810)が含まれるが、これらに限定されない。このタイプのレポーター遺伝子の転写および翻訳によって、検査細胞における蛍光タンパク質の蓄積を生じる;このタンパク質は蛍光計(fluorimeter)またはフローサイトメーターなどの装置によって測定できる。蛍光物質でアッセイを実施するための方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、文献( Lackowicz, J.R., 1983, Principles of Fluorescence Spectroscopy, New York:Plenum Press)に記載されている。
【0106】
スクリーニング技術およびレポーター遺伝子発現をアッセイするために使用されるシグナルの性質に依存して、レポーター措置(a reporter regimen)を使用することによって、レポーター分子による検出可能なシグナルの産生を直接的に又は間接的に援助することができる。レポーター措置には、前記レポーターによるシグナル産生を可能とし、維持する組成物が含まれる;例えば、酵素であるレポーター分子に関する基質およびコファクターである(例えば、ラクトーステトラゾリウム培地)。係る組成物は、当該技術分野において周知である。レポーター措置の成分は、スクリーニングアッセイの任意の工程の間に、検査細胞に供給し得る。
【0107】
5.4 トランスジェニック動物
また、clk-1またはubiFポリヌクレオチドを使用して、非ヒト トランスジェニック動物を産生することができる。多くの非ヒト動物に関して、CLK-1またはUbiFポリペプチドをコード化している配列が導入されている、受精卵母細胞または胚性幹細胞を使用して、トランスジェニック動物を作出することができる。係る動物は、異種性のCLK-1またはUbiFポリペプチドの機能および/または活性を研究するために、また酵素活性のモジュレーターを同定および/または評価するために有用である。特定の遺伝子発現および/またはポリペプチド発現の表現型に加えて、本発明のトランスジェニック動物は、当該技術分野において既知である、多くの表現型〔例えば、プロセス(processes)、障害徴候(disorder symptoms)および/または障害(disorders)〕を呈することができる。本明細書中に使用される「トランスジェニック動物」は、非ヒト動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)であって、前記動物の1以上の細胞が導入遺伝子(transgene)を含む動物である。トランスジェニック動物の他の例には、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、両生類、線形動物(例えば、線虫)などが含まれる。導入遺伝子は、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノムに統合され、成熟した動物のゲノムに残存する外来性のDNAであり、これによって前記トランスジェニック動物の1以上の細胞タイプまたは組織におけるコード化遺伝子産物(an encoded gene product)の発現が方向付けられる。例えば、トランスジェニック線虫は、文献〔 Jin Y. (1999) Transformation. In C. elegans, A practical approach. (Edited by Oxford University Press) p. 69-95〕の記載にしたがって構築することができる(該文献は、その全体が参照によって本明細書中に援用される)。
【0108】
本発明のトランスジェニック動物は、本発明のCLK-1またはUbiFポリペプチドをコード化している核酸(またはその機能的な均等物)を、受精した卵母細胞の雄性前核へと、例えば、マイクロインジェクション、レトロウイルス感染により導入すること、および偽妊娠雌仮親動物(a pseudopregnant female foster animal)中で前記卵母細胞を発生させることによって作出できる。また、イントロンの配列およびポリアデニル化シグナルを、前記導入遺伝子に含めることにより、前記導入遺伝子の発現効率を増加させることができる。組織特異的な制御配列(s)は、前記導入遺伝子に動作可能に連結されることにより、特定の細胞での本発明のポリペプチドの発現を支配することができる。胚操作およびマイクロインジェクションを介したトランスジェニック動物(特にマウスなどの動物)を産生するための方法は、当該技術において通常の技術となっている(例えば、米国特許第号4,736,866号; 4,870,009号; 4,873,191号; Hogan, 1986, Manipulating the Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; Wakayama et al., 1999, Proc Natl Acad Sci. 96:14984-14989を参照されたい)。類似する方法が、他のトランスジェニック動物の作出に使用される。トランスジェニック始祖動物(A transgenic founder animal)は、そのゲノムにおける導入遺伝子の存在および/または前記動物の組織または細胞において導入遺伝子をコード化しているmRNAの発現に基づいて同定することができる。トランスジェニック始祖動物を使用して、導入遺伝子を保持する動物をさらに繁殖させることができる。そのうえ、導入遺伝子を保持しているトランスジェニック動物を、他の導入遺伝子を保持している他のトランスジェニック動物と更に交雑させることが可能である。
【0109】
相同組換え型の動物を作出するために、ベクターが調製される;このベクターは、欠失、付加、または置換が導入された本発明のポリペプチドをコード化している遺伝子の少なくとも一部を具備し、それによって遺伝子を変化させる(例えば、機能的に破壊する)。好適な態様において、前記ベクターは、相同的組換えに際して、内在性遺伝子(endogenous gene)が機能的に破壊されるように設計される(即ち、もはや機能的なタンパク質をコードしない;「ノックアウト」ベクターとも称される)。或いは、前記ベクターは、次の様式で設計できる;その様式とは、相同的組換えに際して、内在性遺伝子が変異するか又は変更(altered)されるが、なおも機能的なタンパクをコードするような様式である(例えば、上流の制御領域が変更され、それによって内在性タンパク質の発現を変更させることが可能である)。相同的組換えベクターにおいて、遺伝子の変更された部分は、前記遺伝子の付加的な核酸がその5’および3’端に隣接して、相同的組換えが前記ベクターによって維持される外来性遺伝子(exogenous gene)と胚性幹細胞中の内在性遺伝子との間で生じることを認容させる。付加的に隣接するポリヌクレオチドは、内在性遺伝子との良好な相同的組換えのために十分な長さのものである。典型的には、数キロベースの隣接するDNA(5’および3’端の両方で)が、前記ベクターに含められる(相同的組換えベクターの記載に関して、例えば、 Thomas and Capecchi, 1987, Cell 51:503 を参照されたい)。前記ベクターは、胚性幹細胞系統に導入される(例えば、電気穿孔法により)。そして、導入された遺伝子と内在性遺伝子とが相同的に組換えを起こした細胞が選択される(例えば、 Li et al., 1992, Cell 69:915を参照されたい)。選択された細胞は、次に動物(例えば、マウス)の胚盤胞に注射されて、凝集キメラ(aggregation chimeras)を形成する(例えば、 Bradley in Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, Robertson, ed. (IRL, Oxford, 1987) pp. 113-152を参照されたい)。キメラ胚を、次に適切な偽妊娠雌仮親動物へと移植できる、そして前記胚は期間を過ごす(brought to term)。相同組換えされたDNAを生殖細胞に保持している子孫を使用することにより、前記動物の全ての細胞が、導入遺伝子の生殖系列への伝達により相同組換えされたDNAを含有する動物を繁殖させることが可能である。相同組換えベクターおよび相同組換え動物を構築する方法は、Bradley(1991, Current Opinion in BioTechnology 2:823-829)およびPCT国際公開WO 90/11354, WO 91/01140, WO 92/0968 および WO 93/04169にさらに記載される。
【0110】
別の態様において、トランスジェニック非ヒト動物を作出することができる;これは導入遺伝子の制御された発現を認容する、選択システムを備える。係るシステムの1例は、バクテリオファージP1のcre/loxPリコンビナーゼ システムである(例えば、 Lakso et al., 1992, Proc Natl Acad Sci. 89:6232-6236を参照されたい)。リコンビナーゼ システムの別の例は、Saccharomyces cerevisiae のFLP リコンビナーゼシステムである(O’Gorman et al., 1991, Science 251:1351-1355 )。cre/loxP リコンビナーゼ システムを使用して、導入遺伝子の発現を制御する場合、Cre リコンビナーゼ及び選択されたタンパク質の双方をコード化している導入遺伝子を具備している動物が必要とされる。係る動物は、「二重の(double)」トランスジェニック動物の構築により提供することができ、例えば、2つのトランスジェニック動物(一方は選択されたタンパク質をコード化している導入遺伝子を具備し、他方はリコンビナーゼをコード化している導入遺伝子を具備する)を交配することにより提供することができる。
【0111】
また、本明細書中に記載される非ヒトトランスジェニック動物のクローンは、例えば、文献(Wilmut et al., 1997, Nature 385:810-813 およびPCT国際公開第WO 97/07668 およびWO 97/07669)に記載の方法にしたがって作出することができる。
【0112】
5.5 一次アッセイ
本発明の一次アッセイを使用して、最初に検査細胞におけるCLK-1タンパク質またはUbiFタンパク質の活性を阻害する又は活性化する化合物を選抜(screen)する。一般的に、スクリーニングアッセイは、検査化合物を検査細胞と、前記検査化合物が標的タンパク質の阻害または活性化を生じることを認容するために十分な時間で接触させることと、および前記検査細胞における効果を決定することとを含む。
【0113】
一態様において、前記一次アッセイは、原核生物の宿主細胞を使用して、真核生物の標的DMQヒドロキシラーゼ(例えば、CLK-1)の活性を変調する化合物を選抜する。別の態様において、前記一次アッセイは、原核生物の宿主細胞を使用して、原核生物の標的DMQヒドロキシラーゼ(例えば、UbiF)の活性を変調する化合物を選抜する。検査細胞の詳細な記述は、上記のセクション 5.3に提供されている。
【0114】
検査細胞は、DMQヒドロキシラーゼを有することで特徴付けられる標的蛋白質の供給源、並びに正常よりも低い又は無視できるレベルの内在性の/バックグランドのDMQヒドロキシラーゼ活性を有する細胞環境を提供する。検査細胞を作出するために使用される原核生物の宿主細胞は、内在性の DMQ ヒドロキシラーゼ活性を欠乏しており、この内在性の酵素は特定の選択的な栄養および/または環境条件下で、細胞代謝に必須であるので、前記宿主細胞は係る条件下で成長できない又は緩徐に若しくは不十分(poorly)に成長する。前記検査細胞において、DMQ ヒドロキシラーゼを有している標的蛋白質(CLK-1タンパク質または異種性のUbiFタンパク質)の存在は、選択的な条件下で培養した場合に、欠乏を補足し、そして前記検査細胞を成長させること又は彼等の通常の速度で若しくはそれに近い速度で成長させることを認容する。それ故、前記検査細胞の成長特性を、前記検査細胞中の標的タンパク質の活性レベルの指標として使用することができる。検査化合物は、DMQ ヒドロキシル化とは区別される標的蛋白質の活性を変調しえるが、次の事項を意図している;その事項とは、検査化合物および標的蛋白質の相互作用が、標的蛋白質のDMQ ヒドロキシラーゼ活性に、本発明の方法により検出できる程度まで影響できることである。
【0115】
CLK-1またはUbiF活性を阻害する検査化合物の存在下で、CLK-1またはUbiFの、検査細胞のDMQヒドロキシラーゼ欠乏を補足する能力が障害される。結果として、DMQの蓄積またはレベルの増加、および/または、Qの枯渇またはレベルの減少が、前記細胞において観察される又は期待される。従って、本発明は、標的蛋白質(例えば、CLK-1またはUbiF)の活性を変調する検査化合物をスクリーニングする方法を提供し、該方法は以下を含む、即ち:
(a)検査細胞を検査化合物と、前記検査化合物が前記検査細胞におけるCLK-1 または UbiF活性を変調することを認容するのに十分な時間接触させることと(ここで、前記検査細胞は、前記検査細胞中で発現可能な、プロモーターに動作可能に連結されたCLK-1またはUbiFをコード化しているポリヌクレオチドを具備し、また前記検査細胞は、DMQヒドロキシラーゼ活性を欠乏する);および
(b)CLK-1 または UbiF活性における変化を検出することと(ここで、前記検査化合物と接触させない前記検査細胞におけるCLK-1またはUbiF活性と比較した、前記検査化合物と接触させた前記検査細胞のCLK-1またはUbiF活性の増加または減少は、前記検査化合物が前記検査細胞中のCLK-1またはUbiF活性を変調することを示す)を含む。
CLK-1またはUbiF活性の変化を検出することに関する、当該技術において既知の任意の方法が、本発明に適用可能であり、これにはユビキノン生合成の中間体レベルの測定(異なるイソプレノイド側鎖の中間体を含む、DMQ、Q、および3-ヒドロキシユビキノンなどが含まれるが、これらに限定されない)が含まれるが、これらに限定されない。例えば、細胞抽出物を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供試し得る(セクション 8を参照されたい)。
【0116】
検査化合物が標的蛋白質に阻害または活性化の効果を有するかどうかに依存して、検査化合物は、ユビキノンレベルを、前記化合物と接触させていない検査細胞のレベルの約 1%, 2%, 5%, 10%, 20% 30% 40%, 50%, 60%, 70%, 80%, 90%, 95%, 105%, 110%, 120%, 125%, 130%, 140%, 150%, 175%, 200%, 250%, 300%, 400%, または 500%に変調し得る;また、様々な態様において、検査化合物は、DMQレベルを、前記化合物と接触させていない検査細胞のレベルの約 1%, 2%, 5%, 10%, 20% 30% 40%, 50%, 60%, 70%, 80%, 90%, 95%, 105%, 110%, 120%, 125%, 130%, 140%, 150%, 175%, 200%, 250%, 300%, 400%, または 500%に変調し得る。
【0117】
如何なる理論に拘束されることなく(Without being bound by any theory)、Q 生合成経路における中間体レベルの変化は、前記検査細胞に複数の表現型変化を生じる。標的蛋白質の活性を決定するための最も簡便な表現型の1つは、そのDMQヒドロキシラーゼ活性であり、これは選択的な栄養および/または環境条件下で検査細胞の成長特性に影響する。従って、検査化合物がCLK-1またはUbiF活性を変調するかどうかは、検査細胞を前記検査化合物と接触させた後の、前記検査細胞の成長特性における、或いは、検査化合物の存在下における変化により検出できる。従って、本発明は、標的蛋白質(例えば、CLK-1またはUbiF)を変調する検査化合物をスクリーニングする方法を提供し、該方法は以下を具備する、即ち:
(a)検査細胞を検査化合物と、前記検査化合物が前記検査細胞におけるCLK-1 または UbiF活性を変調することを認容するのに十分な時間接触させることと(ここで、前記検査細胞は、前記検査細胞中で発現可能な、プロモーターに動作可能に連結されたCLK-1またはUbiFをコード化しているポリヌクレオチドを具備し、また前記検査細胞は、DMQヒドロキシラーゼ活性を欠乏する);および
(b)特定期間(a period of time)にわたり検査細胞の数の変化を又は検査細胞の成長特性の変化を、選択的な栄養および/または環境条件下で検出することと、
(i)ここで、検査細胞の数の減少または静止(stasis)は、或いは前記検査化合物と接触させた前記検査細胞の、同じ選択的な栄養および/または環境条件下で前記検査化合物と接触させない検査細胞と比較した、成長速度の減少は、前記検査化合物が前記検査細胞中のCLK-1またはUbiF活性を阻害することを示すか;或いは
(ii)ここで、検査細胞の数の増加は、或いは前記検査化合物と接触させた前記検査細胞の、同じ選択的な栄養および/または環境条件下で前記検査化合物と接触させない検査細胞と比較した、成長速度の増加は、前記検査化合物が前記検査細胞中のCLK-1またはUbiF活性を活性化することを示す。
特定の態様において、検査細胞中の標的DMQヒドロキシラーゼ遺伝子は、前記検査細胞が適切な選択条件下で成長させられる場合、前記検査細胞の生存に必要な選択マーカーとして作用する。様々な態様において、検査化合物は、成長速度を、前記化合物と接触させていない検査細胞の成長速度の約 0%, 5%, 10%, 20% 30% 40%, 50%, 60%, 70%, 80%, 90%, または 95%に減少させ得る。様々な態様において、検査化合物は、成長速度を、前記検査化合物と接触させていない検査細胞の成長速度の約 105%, 110%, 120%, 125%, 130%, 140%, 150%, 175%, 200%, 250%, 300%, 400%, または 500%に増加させ得る。
【0118】
細胞の数または細胞の成長特性を評価(assess)する当該技術分野において既知の、任意の技術または技術の組み合わせを、本発明の方法に適用できる。従って、さらに本発明は、検査細胞の数または成長速度が、コロニー計数、液体培養の光学濃度または光散乱の測定、細胞の乾燥重量もしくは湿重量、細胞の呼吸速度などにより決定されることを規定する。或いは、検査細胞の数または成長特性を、レポーター分子に又はレポーター分子が産生するシグナルに基づく測定で評価できる。
【0119】
使用し得る選択栄養条件(Selection nutritional conditions)には、最少培養培地中の単一炭素源の有効性が含まれるが、限定されない。限定されない、係る培地の例には、グルコースまたはスクシナートを最少塩培地(a minimal salt medium)中の唯一の炭素源として含有している培地が含まれる。例えば、係る炭素源の濃度は、0.05% 〜 5%、好ましくは 0.1% 〜 1%、および最も好ましくは約 0.5%の範囲であってもよい。酵素活性の増加または減少は少ないであろうから、一次アッセイは、CLK-1またはUbiF活性レベルの変化が小さくとも十分検出される感度であるよう設計される。アッセイの感受性は、選択的な環境条件(例えば、酸化ストレスの存在)を含めることにより増強されえる。酸化ストレスの例示的な供給源は、過酸化水素、および硫酸銅(例えば、5mM CuSO4)であり、文献( Soballe, B and Poole, R (2000). Microbiology 146: 787-796)に記載されている。酸化ストレスの存在下での細菌の生存は、抗酸化剤である、Qのさらなる要求性を生み出す。ストレスが作用して、障害されたDMQヒドロキシラーゼ活性を有するだろう細胞間の表現型の差異が増強される。例えば、限定されることなく、約 0.01 mM, 0.1mM, 0.2 mM, 0.5 mM, 1 mM, 2 mM, 5mM, または 10mM 過酸化水素を、アッセイの培養培地中に使用し得る。所望濃度の唯一の炭素源または酸化ストレスは、前記検査細胞の成長を、様々な成長条件下で、炭素源または酸化ストレスの希釈に対して滴定すること(titrating)により経験的に決定することができる。或いは、唯一の炭素源または酸化ストレスの濃度の特定範囲(例えば、希釈系列または濃度勾配)を、前記アッセイに使用し得る。
【0120】
様々な態様において、検査化合物および細胞を接触させることは、任意のビヒクルにおいて、標準のプロトコールを用いる任意の手段によって達成し得る(例えば、段階希釈、およびウェル、または検査化合物の溶液もしくは懸濁液を浸透させたディスクの使用)。検査細胞における標的DMQヒドロキシラーゼ活性を変調するために、検査化合物に認容される時間量は、経験的に決定し得る(例えば、タイムコースを実行すること、及び時間の関数として、標的DMQヒドロキシラーゼ活性の変化の効果をモニターすることにより)。例えば、検査細胞は、特定のフェーズまたは光学濃度に達するまで培養中で成長させてもよく、次に検査細胞は検査化合物に暴露される;又は代わりに、検査細胞は検査化合物の存在下で連続的に成長させてもよい。検査細胞の培養物は、検査化合物と接触させる直前または直後まで、通常の又はリッチメディウム中で成長させてもよい;又は前記培養物は、選択的な栄養および/または環境条件下でアッセイの全期間を成長させられる。
【0121】
好適な態様において、本発明は、CLK-1 活性を阻害する検査化合物をスクリーニングする方法を提供し、該方法は以下を含む、即ち:
(a)UbiF活性が欠乏し、CLK-1をコード化している発現可能なポリヌクレオチド又はその機能的な均等物を具備する、大腸菌検査細胞を提供することと;
(b)前記大腸菌検査細胞を検査化合物と、前記検査化合物が前記検査細胞におけるCLK-1活性を阻害することを認容するのに十分な時間接触させることと;および
(c)上記の選択条件下で前記検査細胞の成長を検出することと(ここで、前記検査化合物と接触させた前記検査細胞の、前記検査化合物と接触させない検査細胞の成長と比較した、成長における特定の減少は、前記検査化合物が前記検査細胞中のCLK-1活性を阻害することを示す)である。より好適な態様において、大腸菌検査細胞中で発現されるCLK-1タンパク質は、線形動物CLK-1、例えば、線虫 CLK-1、脊椎動物 CLK-1、哺乳類 CLK-1、げっ歯類 CLK-1、例えば、マウス CLK-1、霊長類 CLK-1、もしくはヒト CLK-1、又はその機能的な均等物である。
【0122】
別の好適な態様において、本発明は、CLK-1 活性を活性化する又は増強する検査化合物をスクリーニングする方法を提供し、該方法は以下を含む、即ち:
(a)UbiF活性が欠乏し、CLK-1をコード化している発現可能なポリヌクレオチド又はその機能的な均等物を具備する、大腸菌検査細胞を提供することと;
(b)前記大腸菌検査細胞を検査化合物と、前記検査化合物が前記検査細胞におけるCLK-1活性を活性化する又は増強することを認容するのに十分な時間接触させることと;および
(c)上記の選択条件下で前記検査細胞の成長を検出することと(ここで、前記検査化合物と接触させた前記検査細胞の、前記検査化合物と接触させない検査細胞の成長と比較した、成長における増加は、前記検査化合物が前記検査細胞中のCLK-1活性を活性化する又は増強することを示す)である。大腸菌検査細胞中で発現されるCLK-1タンパク質は、線形動物CLK-1、例えば、線虫 CLK-1、脊椎動物 CLK-1、哺乳類 CLK-1、げっ歯類 CLK-1、例えば、マウス CLK-1、霊長類 CLK-1、もしくはヒト CLK-1、又はその機能的な均等物であってもよい。様々な態様において、検査細胞中で発現されるCLK-1タンパク質は、野生型 CLK-1よりも低い活性のバリアント(例えば、セクション 7.2に提供される、CDB725などであるが、限定されない)であってもよい。
【0123】
更に別の好適な態様において、本発明は、病原体のUbiF活性を阻害する抗生物質または抗感染性の化合物をスクリーニングする方法を提供し、該方法は、以下を具備する、即ち:
(a)大腸菌UbiF活性が欠乏し、病原体のUbiFタンパク質をコード化している発現可能なポリヌクレオチド又はその機能的な均等物を具備する、大腸菌検査細胞を提供することと;
(b)前記大腸菌検査細胞を検査化合物と、前記検査化合物が前記検査細胞におけるUbiF活性を阻害することを認容するのに十分な時間接触させることと;および
(c)上記の選択条件下で前記検査細胞の成長を検出することと(ここで、前記検査化合物と接触させた前記検査細胞の、前記検査化合物と接触させない検査細胞の成長と比較した、成長における特定の減少は、前記検査化合物が前記検査細胞中のUbiF活性を阻害することを示す)である。より好適な態様において、大腸菌検査細胞中で発現されるUbiFタンパク質は、細菌性のUbiFである。
【0124】
別の態様において、前記一次アッセイは、真核生物の宿主細胞を使用して、真核生物の標的DMQヒドロキシラーゼ(例えば、異種性のCLK-1)の活性を変調する化合物を検査する。更に別の態様において、前記一次アッセイは、真核生物の宿主細胞を使用して、原核生物の標的DMQヒドロキシラーゼ(例えば、UbiF)の活性を変調する化合物を検査する。検査細胞の詳細な記述は、上記のセクション 5.3に提供されている。
【0125】
本発明の真核生物の検査細胞は、標的DMQヒドロキシラーゼの供給源を、並びに好ましくは、正常よりも低い又は無視できるレベルの内在性の/バックグランドのDMQヒドロキシラーゼ活性を有する細胞環境を提供する。上記のとおり、Qは、抗酸化剤であり、細胞代謝の重要なコファクターである。それ故、酸化ストレスレベルの変化に感受性の多くの細胞表現型および検査細胞の成長特性を、検査細胞中のDMQヒドロキシラーゼ活性のレベルの指標として使用できる。好ましくは、検査細胞は、DMQヒドロキシラーゼ活性を欠乏している。
【0126】
CLK-1 または UbiF 活性を変調する検査化合物の存在下において、DMQの蓄積またはレベルの増加、および/または、Qの枯渇またはレベルの減少は、真核生物の検査細胞において生じる。従って、本発明は、標的DMQヒドロキシラーゼ(例えば、CLK-1またはUbiF)を変調する検査化合物をスクリーニングする方法を提供し、該方法は以下を具備する、即ち:
(a)真核細胞の検査細胞を検査化合物と、前記検査化合物が前記検査細胞におけるCLK-1 または UbiF活性を変調することを認容するのに十分な時間接触させることと(ここで、前記検査細胞は、前記真核検査細胞中で発現可能な、プロモーターに動作可能に連結されたCLK-1またはUbiFをコード化しているポリヌクレオチドを具備する);および
(b)CLK-1 または UbiF活性における変化を検出することと(ここで、前記検査化合物と接触させない前記検査細胞におけるCLK-1またはUbiF活性と比較した、前記検査化合物と接触させた前記検査細胞のCLK-1またはUbiF活性の増加または減少は、前記検査化合物が前記検査細胞中のCLK-1またはUbiF活性を変調することを示す)を含む。
CLK-1またはUbiF活性の変化を検出することに関する、当該技術において既知の任意の方法が、本発明に適用可能であり、これにはユビキノン生合成の中間体レベルの測定(DMQ、Q、および3-ヒドロキシユビキノンなどが含まれるが、これらに限定されない)が含まれるが、これらに限定されない。
【0127】
好適な態様において、本発明は、病原体のUbiF活性を阻害する抗生物質または抗感染性の化合物を検査する方法を提供し、該方法は、以下を具備する、即ち:
(a)正常よりも低い又は無視できるDMQヒドロキシラーゼ活性を有し、病原体のUbiFタンパク質をコード化している発現可能なポリヌクレオチド又はその機能的な均等物を具備する、哺乳類検査細胞を提供することと;
(b)前記検査細胞を検査化合物と、前記検査化合物が前記検査細胞におけるUbiF活性を阻害することを認容するのに十分な時間接触させることと;および
(c)前記検査細胞の生存または成長を検出することと(ここで、前記検査化合物と接触させた前記検査細胞の数の又は前記検査細胞の成長の、前記検査化合物と接触させない検査細胞の成長と比較した減少は、前記検査化合物が前記検査細胞中のUbiF活性を阻害することを示す)。様々な態様において、前記哺乳類検査細胞を、選択的な条件下(例えば、酸化ストレスの存在)で培養できる。より具体的な態様において、生存または成長速度の変化を検出することの代わりに、DMQ ヒドロキシラーゼ活性を反映する細胞表現型を観察できる。様々な態様において、前記検査細胞中で発現されるUbiFタンパク質は、細菌性のUbiFである。
【0128】
議論を明らかにするため、本発明は、大腸菌の例を以下の例のセクションに記載する。しかしながら、原理は、CLK-1 または UbiFと機能的に均等なタンパク質を欠乏している、他の原核生物の又は真核生物の検査細胞に適用し得る。
【0129】
5.6 二次アッセイ
別の態様において、本発明は二次アッセイを提供し、これを好適に使用して、一次アッセイにおいて同定される陽性化合物が更に特徴付けられる。以下のセクションに記載される二次アッセイは、互いに組み合わせて使用することができる、また、細胞数、細胞密度、代謝活性、レポーター分子の存在および/または量、レポーター分子により産生されるシグナル、およびユビキノン生合成の中間体のレベルを決定するための、上記の任意の技術を使用することができる。本発明の本態様は、CLK-1発現構築物を具備している、UbiF-欠乏性の大腸菌細胞の例として以下に記載される。しかしながら、原理は、他の原核生物の又は真核生物の検査細胞に又は他の標的CLK-1 または UbiFに適用し得る。
【0130】
一態様において、本発明は次のアッセイを提供する;このアッセイによって、インヒビターに関する一次アッセイにおいて陽性と評価される検査化合物が、標的DMQヒドロキシラーゼに特異的に作用するかどうかが決定される。前記アッセイは、DMQヒドロキシラーゼ活性を欠乏し、ブランクの発現ベクター又は不活性の標的DMQヒドロキシラーゼをコード化しているポリヌクレプチド(polynucleptide)を含む標的遺伝子構築物の何れかを具備する検査細胞を使用する。
前記方法は、
(a)検査細胞を検査化合物と、前記検査化合物が前記検査細胞に侵入(enter)することを認容するのに十分な時間接触させることと;
(b)ユビキノンまたは合成ミミック(synthetic mimic)(例えば、Q1)を前記細胞に添加することと;および
(c)特定期間にわたり検査細胞の数の変化を又は検査細胞の成長特性の変化を、選択的な栄養および/または環境条件下で検出することとを含み、
(i)ここで、特定期間にわたる検査細胞の数の増加または静止は、或いは前記検査化合物と接触させた前記検査細胞の、同じ選択的な栄養および/または環境条件下で前記検査化合物と接触させない検査細胞と比較した、成長速度の増加は、前記検査化合物が前記検査細胞において潜在的なCLK-1またはUbiFインヒビターであることを示す;或いは
(ii)ここで、検査細胞の数の減少は、或いは前記検査化合物と接触させた前記検査細胞の、同じ選択的な栄養および/または環境条件下で前記検査化合物と接触させない検査細胞と比較した、成長速度の減少は、前記検査化合物が標的DMQヒドロキシラーゼに作用しない又は非特異的に作用する又は前記検査細胞に一般的に毒性があることを示す。
好適な態様において、前記検査細胞は、UbiF活性が欠乏する大腸菌細胞であり、挿入されたポリヌクレオチドを有さない発現ベクターを具備する(例えば、JF496+pET16);そして選択条件は、M9-LB培地(過酸化水素なし)である。
【0131】
別の態様において、本発明は次のアッセイを提供する;このアッセイによって、インヒビターに関する一次アッセイにおいて陽性と評価される検査化合物が、特異的な標的DMQヒドロキシラーゼに作用するかどうかが決定される。前記アッセイは、DMQヒドロキシラーゼ活性を欠乏し、代替の標的DMQヒドロキシラーゼをコード化しているポリヌクレプチドを含む標的遺伝子構築物を具備する検査細胞を使用する。
前記方法は、
(a)検査細胞を検査化合物と、前記検査化合物が前記検査細胞に侵入することを認容するのに十分な時間接触させることと;および
(b)特定期間にわたり検査細胞の数の変化を又は検査細胞の成長特性の変化を、選択的な栄養および/または環境条件下で検出することと、
を含み、
(i)ここで、特定期間にわたる検査細胞の数の増加または静止は、或いは前記検査化合物と接触させた前記検査細胞の、同じ選択的な栄養および/または環境条件下で前記検査化合物と接触させない検査細胞と比較した、成長速度の増加は、前記検査化合物が前記検査細胞において標的DMQヒドロキシラーゼに特異的なインヒビターであることを示す;或いは
(ii)ここで、検査細胞の数の減少は、或いは前記検査化合物と接触させた前記検査細胞の、同じ選択的な栄養および/または環境条件下で前記検査化合物と接触させない検査細胞と比較した、成長速度の減少は;前記検査化合物が、標的DMQヒドロキシラーゼに特異的に作用しないこと、および標的DMQヒドロキシラーゼおよび代替のDMQヒドロキシラーゼの双方に共通の機構をターゲティングすると思われることを示す。
好適な態様において、前記検査細胞は、UbiF活性を欠乏する大腸菌細胞であり、大腸菌UbiFをコード化しているポリヌクレオチドを含有している発現ベクターを具備する(例えば、JF496+pET16)。
【0132】
なお別の態様において、本発明は、一次アッセイにおいて陽性と評価される検査化合物と標的DMQヒドロキシラーゼとの相互作用の特性を示すアッセイを提供する。前記アッセイは、DMQヒドロキシラーゼ活性を欠乏し、標的DMQヒドロキシラーゼの機能的な断片またはバリアントをコード化しているポリヌクレプチドを含む標的遺伝子構築物を具備する検査細胞を使用する。
前記方法は、
(a)検査細胞を検査化合物と、前記検査化合物が前記検査細胞に侵入することを認容するのに十分な時間接触させることと;および
(b)特定期間にわたり検査細胞の数の変化を又は検査細胞の成長特性の変化を、選択的な栄養および/または環境条件下で検出することと、
を含み、
(i)ここで、特定期間にわたる検査細胞の数の増加または静止は、或いは前記検査化合物と接触させた前記検査細胞の、同じ選択的な栄養および/または環境条件下で前記検査化合物と接触させない検査細胞と比較した、成長速度の増加は;前記相互作用に、前記検査細胞に存在しない標的DMQヒドロキシラーゼの部分的な又は特定のアミノ酸残基が関与することを示す;或いは
(ii)ここで、検査細胞の数の減少は、或いは前記検査化合物と接触させた前記検査細胞の、同じ選択的な栄養および/または環境条件下で前記検査化合物と接触させない検査細胞と比較した、成長速度の減少は;前記検査化合物が前記検査細胞中の標的DMQヒドロキシラーゼの断片と又はバリアントと相互作用することを示す。
好適な態様において、前記検査細胞は、UbiF活性を欠乏する大腸菌細胞であり、前記細胞におけるDMQヒドロキシラーゼ欠乏を補足する線虫CLK-1の機能的なバリアントをコード化しているポリヌクレオチドを含有している発現ベクターを具備する。係るバリアントの例は、セクション 7.2に記載される。
【0133】
なお別の態様において、特定病原体(a given pathogen)のubiF遺伝子発現またはUbiF酵素活性のインヒビターを、ubiF(他の病原体に由来し、UbiF酵素活性を示す)で形質転換されたJF496細菌で検査することができる。成長阻害は、スクシナートまたはグルコースを炭素源として含有している最少培地(minimal medium)で検査される。この交差阻害(cross-inhibition)研究は、特定病原体に真に特異的である、ubiF遺伝子発現インヒビターおよびUbiF酵素活性インヒビターを、2以上のubiF遺伝子産物を標的とすることができる(従って、潜在的な広範囲スペクトルの抗生物質を示す)ubiF遺伝子発現インヒビターおよびUbiF酵素活性インヒビターから区別する。また、特定病原体のubiF遺伝子発現またはUbiF酵素活性の各インヒビターは、ubiF遺伝子が取得された対応している細菌性の病原体で検査される(前記インヒビターを、前記病原体の成長を緩徐にする能力にしたがって順位をつけるために)。
【0134】
なお別の態様において、選択されたヒトの細菌性の病原体からの、複数のubiF遺伝子が、線虫トランスジェニック系統で発現される。ミトコンドリアのターゲティング配列をコード化しているDNA配列は、ミトコンドリアへの適切なターゲティングのために、ubiF遺伝子にインフレームでクローン化される(clk-1プロモーターのコントロール下)。例えば、CLK-1 ミトコンドリアインポート配列はJiang等( Jiang et al. 2001, J Biol Chem 276, pp. 29218−25)で議論されている、また一般的な機構はVoos等( Voos et al., 1999, Biochim Biophys Acta, 1422:235-54.)で議論されている。多くのミトコンドリアインポート配列(mitochondrial import sequences)が既知である。ソフトウェアプログラムを使用することにより、哺乳類のタンパク質中の係る配列が同定されている:文献〔MitoProt, Claros et al., Eur. J. Biochem. 241, 779-786 (1996) および Psort II (Horton and Nakai, Intellig. Syst. Mol. Biol. 5, 147-152 (1997)〕を参照されたい。
【0135】
最初に、clk-1(qm30)におけるubiFバリアントの活性が、評価される。Q欠乏細菌で成長させている際の、clk-1(qm30)によって示される表現型〔例えば、緩徐な成長、緩徐な成体行動(adult behaviours)、および不稔性〕におけるubiFの効果が、測定される。次に、ubiFで形質転換され且つUbiF酵素活性を示している虫における、特定のubiF遺伝子発現インヒビターまたはUbiF酵素活性インヒビターの効果が、評価され、clk-1(qm30)変異体と比較される。ubiF遺伝子を発現する虫のみに影響するが、非トランスジェニックのものには影響しない化合物(即ち、非トランスジェニック虫に有害な効果がない)が、選択される。
【0136】
線形動物の線虫(C. elegans)をモデル生物体として用いる、インビボアッセイを実施するための一般的な技術および方法は、例えば、文献〔Rand and Johnson, Chapter 8, Vol. 84 “Caenorhabditis elegans: Modern Biological Analysis of An Organism”, Ed. Epstein and Shakes, Academic Press, 1995, WO 98/51351, W099/37770, WO 00/34438, WO/00/01846, WO 00/63427, WO 00/63425, WO 00/63426, WO 01/88532, および WO 01/94627〕に記載されているが、これらに限定されない(これらの文献の各々は、本明細書中にその全体が参照によって援用される)。これらの出願に記載されたように、線虫の使用が関与するアッセイの主な利点の1つは次の点;つまり、係るアッセイは、マルチウェルプレートのフォーマット(通常、各ウェルには1および100線形動物の間のサンプルが含有されている)で実施できることである。
【0137】
一般に、以下に記載されるアッセイにおいて、線形動物は、適切な容器(vessel)またはコンパートメント(例えば、マルチウェルプレートのウェル)中で、適切な媒体(これは固形、半固形、粘稠性の又は液体の培地であってもよい)に、マルチウェルプレートのフォーマット中でのアッセイに通常好適である液体および粘稠性の培地を有するものでインキュベーションされる。また、前記培地には、線形動物の食餌として供される細菌が播種される。前記線形動物が1以上の検査化合物と接触されるアッセイにおいて、前記化合物を、線形動物が成長する媒体(その上で又は中で)に添加することができる、又は前記線形動物を、前記化合物を含有している溶液に様々な時間間隔で浸漬できる。適切なインキュベーション時間後(即ち、もしあれば、前記化合物に関して、前記線形動物にその効果を与えるのに十分な)、前記線形動物は、次に視覚的な検閲(inspection)による又は所望の表現型に適切な1以上の技術による検出又は測定に供試される。前記線形動物は前記媒体中で移動できるので、前記線形動物を自由選択で分析前に殺傷または麻酔してもよい;この付加的な工程を使用することによって、コンパートメント中の線形動物の分布を維持し得る又はシグナル検出を良好に均一にし得る。検査化合物と接触させないコントロールと比較した表現型における変化は、前記化合物の線形動物への影響の指標である。多くの操作は、当該技術において既知の適切なロボット工学およびハイスループットアッセイ技術を用いることなどによって自動化できる。好ましくは、自動化されたアッセイにおいて、非視覚的な検出方法(例えば、蛍光または核酸ハイブリダイゼーションの測定)を使用できる。
【0138】
なお別の態様において、選択されたヒトの細菌性の病原体からの、複数のubiF遺伝子が、野生型またはclk-1 -/- バックグランドのトランスジェニックマウスで発現される。ミトコンドリアのターゲティング配列をコード化しているDNA配列は、ubiF遺伝子に(ミトコンドリアにおける適切なターゲティングのために)インフレームでクローン化される(任意の適切なプロモーターのコントロール下)。最初に、マウスにおけるubiFバリアントの活性が、評価される。次に、ubiFを発現しているマウスにおける、特定のubiF遺伝子発現インヒビターまたはUbiF酵素活性インヒビターの効果が、評価され、非トランスジェニック動物と比較される。ubiF遺伝子を発現するマウスのみに影響し、非トランスジェニックのものには影響しない化合物(即ち、非トランスジェニックマウスに有害な効果がない)が、選択される。
【0139】
なお別の態様において、異種性のclk-1遺伝子(hclk-1を含む)は、clk-1プロモーターまたは任意の他の適切なプロモーターのコントロール下で、線虫トランスジェニック系統において発現される。最初に、clk-1(qm30)におけるhclk-1を含む、clk-1バリアントの活性が、評価される。Q欠乏細菌で成長させている際の、clk-1(qm30)によって示される表現型〔例えば、緩徐な成長、緩徐な成体行動(adult behaviours)、および不稔性〕におけるclk-1の効果が、測定される。次に、clk-1を発現している虫における、特定のubiF遺伝子発現インヒビターまたはUbiF酵素活性インヒビターの効果が、評価され、clk-1(qm30)変異体と比較される。clk-1遺伝子を発現する虫のみに影響し、他に虫には毒性を有さない化合物(即ち、虫に有害な効果がない)が、選択される。
【0140】
なお別の態様において、異種性のclk-1遺伝子(hclk-1を含む)は、適切なプロモーターのコントロール下で、トランスジェニックマウスにおいて発現される。トランスジェニックマウスは、野生型およびclk-1 -/- バックグランドにおいて作出される。最初に、マウスにおける、hclk-1を含む、clk-1バリアントの活性が、評価される。次に、clk-1を発現しているトランスジェニックマウスにおける、特定のclk-1遺伝子発現インヒビターまたはCLK-1酵素活性インヒビターの効果が、評価され、非トランスジェニック動物と比較される。clk-1遺伝子を発現するマウスのみに影響し、非トランスジェニックのものには影響しなく、他にマウスに毒性を有さない化合物(即ち、非トランスジェニックマウスに有害な効果がない)が、選択される。
【0141】
様々な態様において、一次選抜で見出されるclk-1およびCLK-1インヒビターは、関連するインビボ疾患モデルでアッセイすることができる;このモデルは、酸化ストレスおよびフリーラジカルダメージによる疾患のモデルなどであり、癌、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、パーキンソン病、虚血のモデル、およびフリーラジカル解毒酵素が非機能なモデルが含まれるが、これらに限定されない。前記アッセイには、疾患の開始および進展の遅延を試験することが含まれる。関連する細胞モデルにおける、clk-1遺伝子発現インヒビターおよびCLK-1酵素活性インヒビターの効果も、アッセイすることができる(これらのclk-1およびCLK-1インヒビターの、腫瘍に由来する細胞の増殖への効果を評価することによるものが含まれる)。
【0142】
一次および二次アッセイの双方で陽性と評価される検査化合物は、さらなる開発のためのリード化合物であり得る。毒性は、標的とされる微生物の成長阻害に関連するような作用と同じ機構から生じるとは限らないことは周知なので、標的の選択性は、上記の二次アッセイの結果の基礎にのみ基づいて評価すべきではない。細胞毒性は、当該技術において既知の方法により測定することができる。1つの係る方法は、検査化合物の存在下で哺乳類細胞の成長を評価することに基づくものである。前記アッセイは、生細胞による代謝性の還元を、無色のXTTテトラゾリウムからオレンジXTTホルマザンを産出させることで測定する、これは従来の比色法(Weislow et al. 1989, J. Natl. Cancer Inst., 81:577-586;この文献は、参照によってその全体が援用される)で測定可能である。
【0143】
なお別の態様において、抗生物質候補に関して、細菌の生体に対する最小発育阻止濃度(MIC;minimum inhibitory concentration)が、一次アッセイおよび二次アッセイの双方で陽性である各化合物に関して決定される。当該技術において既知の方法を使用し得る、例えば、各検査化合物の特定範囲の濃度を用いる、ブロス微量希釈試験(broth microdilution testing)である(1993, National Committee for Clinical Laboratory Standards, Methods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests For Bacteria That Grow Aerobically - Third Edition: Approved Standard, M7-A3, この文献はその全体が参照によって本明細書に援用される)。種々の病原体に対するMICは、同じ方法を用いて決定される。検査される病原性種には、一般的に次の病原性種が含まれるが、これらに限定されない、即ち:大腸菌、腸球菌(Enterococcus faecium)、腸球菌(Enterococcus faecalis)、肺炎連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、緑膿菌、ブドウ球菌(Staphylococcus epidermis)、赤痢菌(Shigella flexneri)、およびネズミチフス菌である。
【0144】
5.7 キット
別の態様において、DMQヒドロキシル化を実行する能力を有する酵素の活性を変調する化合物をスクリーニングするためのキットが提供される。前記キットには、1以上のアリコートの検査細胞を具備してもよい(これらは、内在性のDMQヒドロキシル化が欠乏しており、標的DMQヒドロキシラーゼを具備している)。好ましくは、前記標的DMQヒドロキシラーゼは、内在性のDMQヒドロキシラーゼの活性を補足する。前記キットは、UbiF機能を障害する変異および真核生物のCLK-1をコード化しているDNA配列を具備する大腸菌株の;またはUbiF機能を障害する変異および病原体のUbiFをコード化しているDNA配列を具備する大腸菌株の、1以上のアリコートを具備する。
【0145】
自由選択で、前記キットは、スクリーニング方法に前記検査細胞を用いることに関する説明書を備える。自由選択で、前記キットは次のものを具備する;つまり、標的DMQヒドロキシラーゼを欠損する宿主細胞、clk-1ポリヌクレオチド、ubiFポリヌクレオチド、または標的DMQヒドロキシラーゼをコード化しているポリヌクレオチドを具備している遺伝子発現構築物、陽性コントロール化合物、例えば、抗CLK-1抗体、または抗UbiF抗体などであるが、これらに限定されない。また、自由選択で、前記キットは、細胞成長培地、選択条件をセットするための因子(例えば、過酸化水素)、試薬(例えば、ユビキノン アナログ)、および細胞成長、呼吸速度を測定するための装置;およびレポーター分子またはレポーター分子によって産生されるシグナルを検出するための試薬および装置を具備する。
【0146】
5.8 本発明の方法で同定される化合物
別の側面において、本発明の方法の実施によって、新規の治療化合物が発見される。一次スクリーニングアッセイを使用することによって、ハイスループットで化学物質ライブラリーを選抜することができる。係るライブラリーは、単一化合物、既知の構造を有する化合物の混合物、および天然産物の抽出物を含有する。化合物の混合物から選択されて(deconvoluted)、活性化合物を同定することができる。前記アッセイにおいて検査で陽性である天然物抽出物中の活性コンポーネントを、分離および同定することができる。
【0147】
一態様において、真核生物のDMQヒドロキシラーゼ(例えば、ヒトCLK-1)を阻害する化合物は、酸化ストレスおよび/またはフリーラジカルダメージにより部分的に生じる又は悪化する、疾患および臨床状態を治療することに有用であり得る;これには、例えば、癌、心血管疾患(アテローム性動脈硬化症、再灌流虚血)、糖尿病性合併症、肥満、および異脂肪血症であるが、これらに限定されない。別の態様において、真核生物のDMQヒドロキシラーゼ(例えば、ヒトCLK-1)を活性化する化合物は、低いユビキノンレベルに関連する疾患および臨床状態(例えば、フリートライヒ失調症、パーキンソン病であるが、これらに限定されない)を治療することに有用であり得る。なお別の態様において、原核生物のDMQヒドロキシラーゼ(例えば、病原体におけるUbiF又はその均等物)を阻害する化合物は、感染症を治療するために有用であり得る。
【0148】
選抜に使用される化合物は、膜の電子伝達又は酸化ストレスの変調に関与する任意の化合物の誘導体であり得る。前記化合物は、ランダムまたは集中(focused)コンビナトリアルライブラリー、または化学的修飾により産生されるQおよび/またはDMQアナログから取得できる。前記化合物は、CLK-1またはUbiFに対する抗体及びその誘導体;又はポリヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAi分子であるが、これらに限定されない)であり得る。マウスのCLK-1および線虫CLK-1に対する抗体は、それぞれ文献〔Jiang et al. (2001) J. Biol Chem 276: 29218-29225, および Hihi et al. (2003 J. Biol Chem 278: 41013-41018〕に記載されている;また、線虫CLK-1に対する抗体は、Santa Cruz Biotechnology (cat# sc-9255 および sc-9256, Santa Cruz, California)から市販されている。前記化合物は、天然物に由来し得る。前記選抜において見出されるヒットは、化学アプローチにおけるリードとして寄与して、より良いインヒビターまたはアクチベーターが産生される(以前に言及したのと同じ基準を用いて)。
【0149】
「効果的な量(effective amount)」は、被験者の疾患またはコンディションの1以上の徴候を(ある程度にまで)軽減する化合物の量を意味する。加えて、「効果的な量」は、疾患またはコンディションに関連する、又は、の原因となる生理学的な又は生化学的なパラメーターを正常(部分的または完全に)に回復させる量を意味する。
【0150】
5.8.1 CLK-1のインヒビター
本発明は、活性酸素種(ROS)の産生を減少させる方法を包含する。前記インヒビターは、過剰なROSが、疾患を惹起することにおける及び疾患の進行における原因因子である疾患において有用であり得る。係る疾患または臨床コンディションの例には、アテローム性動脈硬化症、虚血、糖尿病の脈管性合併症、癌、および肥満が含まれるが、これらに限定されない。
【0151】
一態様において、CLK-1のインヒビター(例えば、本発明の方法により同定された化合物)は、アテローム性動脈硬化症、虚血、糖尿病の脈管性合併症、癌、および肥満の治療に使用できる。関連する態様において、本発明は、アテローム性動脈硬化症、虚血、糖尿病の脈管性合併症(vascular complications of diabetes)、癌、および肥満の予防および/または患者の自己管理のための、CLK-1インヒビターの使用に関する。
【0152】
CLK-1インヒビターを使用することによって、アテローム性動脈硬化症を治療する及び予防する、およびアテローム性動脈硬化症の傷害の発症および進行を変調することができる。酸化ストレスは、脈管壁の炎症に、同様に、泡沫細胞の形成を惹起する酸化型低密度リポタンパク質の合成に重要な役割を担うことが示されている。ROSが原因因子として関係するアテローム性動脈硬化症の機構の詳細な説明は、Lusis (2000, Nature, 407:233-241)およびSteinberg (2002, Nat Med 8:1211-7)に提供され、該文献は本明細書中に参照によってその全体が援用される。
【0153】
また、CLK-1インヒビターを使用することによって、虚血を治療すること、および特に細胞および組織に対する低酸素症再酸素負荷傷害(hypoxia-reoxygenation injuries)を緩和(mitigate)または予防することができる。ROSにより部分的に媒介されることが知られている、多くの係る傷害は、循環性ショック(circulatory shock)、心筋虚血、肝臓虚血、腸虚血、大脳虚血、腎臓虚血、発作、または器官の移植の間に又は後に生じる。ROS-媒介性の再酸素負荷傷害の詳細な説明は、Li(2002, Am J Physiol Cell Ohysiol 282:C227-41)中に見出される。
【0154】
また、CLK-1インヒビターを使用することによって、糖尿病の脈管性合併症を治療および/または予防することができる。ROSは、高血糖誘導性ダメージ(hyperglycaemia-induced damage)に導く4つの経路に関与する、それらは即ち:ポリオール経路流動の増加、高度なグリケーション最終産物形成の増加、プロテインキナーゼCの活性化、およびヘキソサミン経路の増加である。CLK-1インヒビターを使用することによって、これらの4つの経路の任意の活性化を同時に予防することができる。
【0155】
癌において、複数の変異が存在することは、それらが単一のイベントにより突然発生したものではなく、腫瘍の進展の間の早期に発生し、連続的に蓄積したものであることを示唆する。内在性の細胞プロセスは、DNAを傷害し、変異の供給源として寄与し得る;この変異は、腫瘍形成を開始し、腫瘍進行の間に複数の変異を産生する(特に、減少したDNA修復の存在下で)。
【0156】
環境的な化学物質によるDNAダメージのケースにおけるように、内因性のプロセスによるダメージは、DNA修復に関する細胞の許容性を超える十分に高い頻度で発生することが必要とされるだろう。集団におけるバリエーションに基づいて、ヒトの癌による死亡の約50%は、環境因子(主に喫煙)と関連することが示されている。しかしながら、幾つかの主な散発性のヒト癌に関して、年齢特異的な発生率(incidence)は、異なる集団中で広範には変動しなく、それゆえ正常な内因性の細胞プロセスの結果であろう。これらの癌のなかでも(Amongst these cancers)、膵臓、卵巣および結腸の癌腫(carcinomas)である。
【0157】
幾つかのヒトの癌は、長引いた炎症の病歴から発生する;事実、慢性の炎症性疾患は、全ての癌の3分の1までの発生における主要な要素であろう。炎症反応を惹起する慢性感染は、ROSの強力な発生要因(generators)である。好中球は、スーパーオキシドラジカルおよび過酸化水素の酸素バースト(oxygen bursts)を発生し、これによってハーバー‐ワイス反応を介して引き続いて相互作用して、強力なヒドロキシル・ラジカルを形成することができる。食細胞は、慢性感染の部位に移動して、反応性のオキシダント(例えば、一酸化窒素および次亜塩素酸)を大量に産生して細菌を不活性化する。しかしながら、これらの反応性のオキシダントは、ダメージを宿主細胞およびDNA同様に侵入している細菌に与えることができ、そしてこの慢性のダメージは腫瘍の発生に寄与し得る。
【0158】
また、ROSは、ウイルスの感染に重要な役割を担う。ウイルス感染は、食細胞を活性化することによって、ROSおよびプロオキシダントサイトカイン(pro-oxidant cytokines)を放出させるだろう、そして宿主細胞におけるプロオキシダント/抗酸化剤バランスに影響し得る(抗酸化酵素、例えば、スーパーオキシドジスムターゼの阻害が含まれる)。最終的に、ROSは、宿主細胞の核転写制御因子Bを抑制性のIk-Bタンパク質からの放出を媒介し得る、そしてウイルス複製の増加を生じる。胃炎、慢性肝炎、潰瘍性大腸炎、および膵炎は、慢性の炎症および関連する悪性化の高発生率と関連するコンディションの一部である。
【0159】
従って、CLK-1インヒビターを使用して、癌を治療、予防、および/または管理することができる。特に、CLK-1インヒビターを使用して、前癌性細胞(pre-cancerous cells)の発生および増殖を変調することができる。癌は、健常細胞が異常細胞へと形質転換する疾患状態であり、次にこれらの異常細胞による近接組織の侵入が生じ、次にこれらの異常細胞の局所リンパ節(regional lymph nodes)および/または遠位部位へのリンパまたは血液伝播が生じ得る(即ち、転移)。異常細胞制御により、腫瘍成長へと導かれえる;つまり、組織塊が、急速な細胞分裂および/または低速の細胞死の結果として多くの細胞数に増加する。本発明は、次の目的でCLK-1インヒビターの使用を意図している;その目的とは、細胞中のDNAに対するROS媒介性ダメージの発生率を減少させること、細胞のDNA中の変異の蓄積を停止させること、前癌性細胞および癌細胞の成長および伝播を阻害すること、正常または前癌性細胞の悪性への形質転換を遅らせること、転移の伝播を遅らせること、身体内の前癌性細胞および/または癌細胞の数を少なくする(lessen)または減少させること、又は癌の徴候を寛解(ameliorate)または緩和(alleviate)させることである。
【0160】
また、CLK-1インヒビターを使用して、肥満を治療すること、および肥満に関連する代謝合併症を治療または予防することができる。脂肪蓄積は、被験者のエネルギーバランスにおいて多面発現効果(pleiotropic effects)を有する。過剰脂肪による医学的な合併症には、異脂肪血症(血清中の高脂質濃度)、インスリン抵抗性、高血糖、および高血圧症が含まれる。全体的に、肥満患者におけるこれらの障害の出現は、代謝性症候群またはX症候群としても知られており、Desvergne, Michalik および Wahli(April 15 2004, Molecular Endocrinology, “Be fit or be sick: PPARs are down the road”)により論評されている。
【0161】
Urakawa等(2003, J Clin Endocrinol Metab, 88:4673-4676)により実施された医学研究は、酸化ストレスと肥満およびインスリン耐性の類縁関係を調査した。PGF2α(酸化ストレスの指標)が、肥満患者において測定され、そしてインスリン抵抗性との関連で非肥満の個体と比較された。結果は次の事項を示した;その事項とは、肥満が酸化ストレスに寄与すること、および酸化ストレスがインスリン抵抗性の発生を誘発することである。CLK-1インヒビターを使用することによって、酸化ストレスを減少させることができる、そして高い酸化的な状態および肥満とリンクする合併症の発病(onset)を緩和することができる。
【0162】
神経変性疾患〔例えば、アルツハイマー病(AD)、および筋萎縮性側索硬化症 (ALS)が含まれるが、これらに限定されない〕は、特異的なニューロン細胞集団の進行性の欠損により特徴付けられ、タンパク質凝集物と関連する。これらの疾患の共通の特性は、酸化ストレスの多くの証拠であり、これは疾患の病因に寄与する神経細胞の機能不全または細胞死の原因となるだろう。文献( Barnham et al., 2004, Nature Reviews Drug Discovery, 3: 205-14)による論評を参照されたい。明らかに、高い酸素消費、相対的に低い抗酸化剤レベル、および低い修復能力は、酸化的ダメージに感受性の脳組織を生じる。次の事項が意図される;その事項とは、CLK-1インヒビターを使用して、脳のROS産生を減少させて、それによって神経の細胞および組織の変性を予防する又は遅くすることができることである。
【0163】
本発明の関連する態様において、CLK-1のインヒビター(例えば、小さい有機化合物、天然物、抗-CLK-1抗体又はその誘導体、アンチセンスポリヌクレオチドであるが、これらに限定されない)は、アテローム性動脈硬化症、異脂肪血症、虚血、発作、糖尿病、異常な細胞増殖、癌、および肥満の徴候を有する被験者に、又はこれらの疾患または医学的なコンディションと診断された被験者に投与される。CLK-1インヒビターを、臓器移植または手術を、ちょうど経験した又は経験してきた被験者に投与することができる。また、通常の遺伝的因子および/または環境的因子(例えば、癌原性物質、放射線、ROSまたはフリーラジカルの供給源への暴露;高カロリーまたは脂肪摂取;および喫煙であるが、これらに限定されない)の結果として、これらの疾患又は医学的コンディションを被る傾向がある又は素因がある被験者に、CLK-1インヒビターを投与することができる。また、本発明は、薬学的に許容される製剤(formulations)に製剤化された上記の発見された化合物を具備する、新規の薬学的組成物を含む。また、前記化合物を、これらの疾患または医学的コンディションの治療および/または予防に使用される、他の治療薬剤に補助的(adjunctively)に投薬することができる。
【0164】
5.8.2 CLK-1のアクチベーター
CLK-1の活性を活性化する又は増強する、本発明の方法により同定された化合物は、被験者において高次のユビキノン合成を生じる能力を有する。これらの因子は、ユビキノン補充が治療として使用される疾患に使用することができる;この疾患は、例えば、被験者は合成ユビキノン(イデベノン)で治療される、フリートライヒ運動失調(Rustin et al. (1999) Lancet 354: 477-479)である。また、これらの因子は、被験者のユビキノンレベルが低く、補充が有益である疾患において有用である〔例えば、パーキンソン病( Shults et al. (2002) Arch Neurol. 59: 1541-1550を参照されたい〕。
【0165】
パーキンソン病(PD)は、55歳を超えた集団の1%に影響し、約80%の黒質が変性された場合、運動性徴候〔例えば、振戦、強剛性、および運動緩徐(移動の緩慢)〕を生じる。ルイス体、糸状体(filamentous)、主なタンパク質成分としてアルファーシヌクレイン(alpha-synuclein)を有する細胞質封入体(cytoplasmic inclusions)の出現する以外に、酸化ストレスおよびミトコンドリア機能不全がPD病因と強く関連している。従って、PD患者の脳は、酸化ストレス関連の変化(例えば、DNA、脂質、およびタンパク質へのダメージ)を示す。加えて、チロシン水酸化酵素およびモノアミンオキシダーゼは、ROSを、ドーパミン代謝における彼らの活動中の副産物として産生する。これらのイベントは、Betarbetら(2002, Bioassays 24:308-318)によって包括的に論評されている。
【0166】
パーキンソン病に関する8モデルのうち6は、メタンフェタミン, 6-ヒドロキシドパミン, 1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(tetrahydropryridine), パラコート, ロテノン, および3-ニトロチロシンへの暴露による酸化ストレスの誘導に基づく。PDの誘導(反応性のグリオーシスに関連する、線条体のドーパミン作用性末端の実質的な変性により特徴付けられる)は、2 hr毎に3回注射されるメタンフェタミンの5 mg/kg, i.p.で5日処理後すぐに生じえる。CLK-1アクチベーターを、PD徴候の緩和に関するモデルで検査できる。
【0167】
関連する態様において、本発明は、パーキンソン病またはパーキンソン病の徴候を有する被験者を、前記被験者に効果的な量のユビキノンレベルを増加させる化合物を投与することにより、治療する方法を記載する。好ましくは、te 化合物は、CLK-1の活性を活性化すること又は増加することにより作用する。また、本発明は、薬学的に許容される製剤に製剤化された上記の発見された治療薬を具備する、新規の薬学的組成物を含む。また、治療薬は、ユビキノン又はその合成的な均等物と共に補助的に投与できる。
【0168】
5.8.3 抗生物質
本発明の方法によって同定される抗生物質化合物は、病原体中でDMQヒドロキシラーゼ阻害を生じる能力を有し、これによってその成長を減少させる又は阻害する。好ましくは、これらの化合物は、様々な種の細菌(感染性の病原性細菌を含む)に対する効果的な因子であることが期待される。また、本発明は、薬学的に許容される製剤に製剤化された上記の発見された抗生物質化合物を具備する、新規の薬学的組成物を含む。
【0169】
関連する態様において、本発明は、感染性因子(infectious agent)に感染した被験者を、DMQヒドロキシラーゼ阻害〔好ましくは、本発明のアッセイにより決定されるような、前記感染性因子における特定阻害(specific inhibition)〕を生じさせる治療上効果的な量の抗生物質化合物を前記被験者に投与することにより、治療する方法を記載する。係る投与は、当業者に既知の任意の方法(例えば、局所適用による又は全身適用による)により可能である。感染の方法により同定される抗生物質化合物を使用することによって、動物の感染症を治療することが可能であり、該動物には、ヒト、コンパニオン・アニマル(例えば、イヌおよびネコ)、家畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、およびウマ)、研究動物(例えば、マウス、ラット、およびウサギ)、および捕獲または野生動物が含まれる。
【0170】
具体的には、細菌によって生じる感染症〔該細菌には、グラム陽性の球菌、例えば、 Staphylococci (例えば、 S. aureus), Streptococci (例えば、 S. pneumoniae, S. pyrogens, S. faecalis, S. viridans); gram positive bacilli, 例えば、Bacillus (例えば、 B. anthracis), Corynebacterium (例えば、 C. diphtheriae), Listeria (例えば、 L.monocytogenes); gram negative cocci, 例えば、Neisseria (例えば、 N. gonorrhoeae, N. Meningitidis); gram negative bacilli, 例えば、 Haemophilus (例えば、 H. influenzae), Pasteurella (例えば、 P. multocida), Proteus (例えば、 P.mirabilis), Salmonella (例えば、 S. typhi murium), Shigella (例えば、 Shigella flexneri), Escherichia (例えば、 E. coli O157:H7), Klebsiella (例えば、 K.pneumoniae), Serratia (例えば、S.marcescens), Yersinia (例えば、 Y. pestis), Providencia species, Enterobacter species, Bacteroides (例えば、 fragilis), Acinetobacter species, Campylobacter (例えば、 C. jejuni), Pseudomonas (例えば、 P.aeruginosa), Bordetella (例えば、 B. pertussis), Brucella species, Fracisella (例えば、 F. tularensis), Clostridia (例えば、 C. perfriugens), Helicobacter (例えば、 H. pylori), Vibrio (例えば、 V. cholerae)
, Mycoplasma (例えば、 M. pneumoniae), Legionella (例えば、 L. pneumophila), Spirochetes (例えば、 Treponema, Leptospira and Borrelia), Mycobacteria (例えば、 M.tuberculosis), Nocardia (例えば、 N. asteroides), Chlamydia (例えば、 C. trachomatis), およびRickettsia speciesが含まれるが、これらに限定されない〕は、本発明により発見された抗生物質で治療できる。
【0171】
なお別の態様において、本発明の抗生物質化合物を使用することによって、汚染されたアイテム(例えば、穀物、木、金属、またはプラスチックなど)を、その因子を汚染されたアイテムにスプレーすること又は散布すること(dusting)などの方法(これらの方法に限定されない)によって処理することができる。
【0172】
5.8.4 製剤および投与
本発明の方法で同定された化合物を、種々の感染症の治療のために、被験者へと投与される薬学的な調製物(preparations)へと製剤化し得る。従って、前記化合物及びその生理学的に許容される溶剤は、吸入またはガス注入(口または鼻部を介した)または経口、頬(buccal)、非経口、局所、経皮、膣、直腸の投与および薬物送達装置(例えば、多孔性または粘稠性の物質、例えば、lipofoam)による投与のために製剤化し得る。
【0173】
経口投与に対する調製物は、適切に製剤化されて、活性化合物のコントロールされた放出が得られる。頬適用に関して、前記組成物は、通常の様式で製剤化される錠剤またはロゼンジの形態をとり得る。前記化合物は、注射(例えば、迅速投与または連続的輸液)での非経口投与のために製剤化され得る。注射のための製剤は、単位用量形態(unit dosage form)〔例えば、アンプルに又はマルチ用量コンテナ(multi-dose containers)に〕に、保存剤を添加して、調製される。前記組成物は、懸濁剤、溶液剤、または油性もしくは水性ビヒクル中でエマルジョンの形態をとり得る;また、製剤化因子(例えば、懸濁、安定、および/または分散剤)を含有してもよい。或いは、活性成分は、使用前に適切なビヒクル(例えば、滅菌のパイロジェン フリー水)と構成させるために、粉状形態であってもよい。
【0174】
本発明の薬学的組成物は、活性成分として治療化合物、またはその薬学的に許容される塩を具備する;また、薬学的に許容される担体、および自由選択で他の治療成分を含有し得る。「薬学的に許容される塩(pharmaceutically acceptable salts)」の用語は、薬学的に許容される非毒性の酸および塩基(無機および有機の酸および塩基が含まれる)から調製される塩を意味する。
【0175】
被験者への投与に関して、本発明のアッセイを用いることによって発見される化合物は、薬学的に許容される組成物に製剤化される。前記組成物を、単独で又は互いに組み合わせて、又は他の治療もしくは診断剤と組み合わせて使用することができる。これらの組成物を、インビボ、通常は哺乳類に、好ましくはヒトに、またはインビトロで利用することができる。それらをインビボで使用することにおいて、前記組成物を、哺乳類に様々な様式で投与することができ、これには非経口、静脈内、皮下(subcutaneously)、筋肉内、結腸内、直腸内、腟内、鼻内、経口、経皮(transdermally)、局所、眼内(ocularly)、腹腔内が含まれる。
【0176】
当業者に容易に明らかであるように、疾患の急性期または慢性期の管理における、化合物の治療用量の規模は、治療される状態の重症度、使用される特定の組成物、および投与経路により変動する。また、用量及びおそらく用量頻度(dose frequency)は、動物の種、年齢、体重、コンディション、および個々の被験者の反応に応じて変動する。効果的な服用量(dosage)レベル(これは所望の結果を達成するために必要な服用量レベルである)の決定は、当業者の範囲内である。
【0177】
自由選択で、感染症の治療のために、第2の抗細菌性化合物を、本発明の方法によって同定された抗生物質化合物と組み合わせて使用し得る。第2の抗細菌性化合物(antibacterial compound)は、天然の又は合成のものであってもよい。適切な天然の抗菌性化合物には、アミノグリコシド(ジヒドロストレプトマイシン, ゲンタマイシン, カナマイシン, ネオマイシン, パロマイシンおよびストレプトマイシンが含まれるが、これらに限定されない); アンフェニコール(amphenicols)(クロラムフェニコールが含まれるが、これらに限定されない); アンサマイシン(リファマイシンが含まれるが、これらに限定されない); b-ラクタム、例えば、carbapems(イミペネムが含まれるが、これらに限定されない), セファロスポリン(cefazedone およびセフロキサジンが含まれるが、これらに限定されない), セファマイシン(セフブペラゾンが含まれるが、これらに限定されない); モノバクタム(アズトレオナムが含まれるが、これらに限定されない), オキサセフェム(フロモキセフが含まれるが、これらに限定されない)または ペニシリン(アンピシリン, carbencillin, メチシリン, ペニシリンN, ペニシリンO および ペニシリンVが含まれるが、これらに限定されない); リンコサミド(クリンダマイシンおよびリンコマイシンが含まれるが、これらに限定されない); マクロライド(カルボマイシンおよびエリスロマイシンが含まれるが、これらに限定されない); ポリペプチド(グラミシジン S およびバンコマイシンが含まれるが、これらに限定されない); テトラサイクリン(apicycline, メタサイクリンおよびテトラサイクリンが含まれるが、これらに限定されない); 並びに他のもの(例えば、サイクロセリン, ムピロシンおよびツベリン)が含まれるが、これらに限定されない。適切な合成の抗菌性化合物には、2,4-ジアミノピリミジン(トリメトプリムが含まれるが、これらに限定されない); ニトロフラン(nifuradeneが含まれるが、これらに限定されない); キノロンおよび キノロン アナログ(エノキサシン, ロメフロキサシン, ナリジクス酸およびオフロキサシンが含まれるが、これらに限定されない); スルホンアミド(スルファモキソールおよびスルファニルアミドが含まれるが、これらに限定されない); スルホン(ジアチモスルホンが含まれるが、これらに限定されない); オキサゾリジノン(リネゾリドが含まれるが、これらに限定されない);並びに他のもの(例えば、glycylcycines, clofoctol, hexedine, メテナミン, および ニトロキソリン)が含まれる。潜在的な組合せは、ユビキノン欠乏細菌が耐性である抗生物質(例えば、フレオマイシンを含むアミノグリコシド)との組合せであろう、この事項は文献( Collis and Grigg (1989) J Bacteriol. 171: 4792-4798 )に記載されている(細菌をフレオマイシンに暴露することが、我々の検査cpdsに耐性を誘導するかどうかの検査)
【0178】
本発明の方法により同定された化合物および第2化合物の「補助投与(adjunct administration)」は、2つが混合物として又は順次に投与されることを意味する。順次に投与された場合、前記化合物は、前記第2化合物の前または後に投与し得る(最初に投与した化合物が、なお所望の治療活性を提供している限り)。上記の投与モードの任意を、組合せて使用して、前記化合物および前記第2化合物を送達することができる。本発明の方法で同定された化合物および第2化合物が混合物として補助的に投与される場合、好ましくは、それらは双方の因子を具備している薬学的組成物の形態で与えられる。従って、本発明の更なる態様において、本発明の方法で同定された化合物および第2化合物を、薬学的に許容される担体と共に含んでいる薬学的組成物が提供される。
【0179】
6. 例:JF496系
本発明は、以下の例の記載からよりよく理解される、本発明はこれらの例に限定されない。
【0180】
JF496は、真核生物のclk-1を用いた補足アッセイに有用である。全ての他のubi変異体のように、JF496は液体培養において成長が弱く、また唯一の炭素源としてコハク酸を利用できない。これらの特性を使用して、機能獲得アッセイを開発した。このアッセイで、JF496 を、真核生物の clk-1 (ここではC. elegansからの)で形質転換し、次に野生型の成長を認定した。トランスジェニック大腸菌ubiF(Kwon et al., 2000 FEMS Microbiol Lett, 186, 157-161), およびプロテオバクテリアからのclk-1(Stenmark et al., 2001 J Biol Chem, 276, 33297-33300)をJF496で試験した。
【0181】
大腸菌 ubiF 変異体, JF496 (ubiF411)のUbiF411 (配列番号1, 図3)のシークエンシングにより次の事項が示される;その事項とは、ubiF411 対立遺伝子が、点変異をヌクレオチド 488 に有しており、これは野生型ubiF(配列番号2, 図4)と比較して、GGT コドンから GAT コドンへと変化しており、その結果モノオキシゲナーゼドメイン中でUbiFのアミノ酸置換が生じた G163D(図5中で括弧で表す、それぞれ配列番号:3 および 配列番号:4)。この変異は、UbiFタンパク質の酵素活性を変化させる。
【0182】
6.1 材料および方法
細菌株JF496 (ubiF411)は、Yale大学の大腸菌貯蔵物センターより提供され; BL21(DE3)はNovagen(San Diego, CA)から入手される。
【0183】
部位特異的突然変異誘発 − 線虫 clk-1を含むpET-16b ベクター(Novagen)を使用して、点変異体が作出された。突然変異誘発は、「Quickchange(登録商標) 部位特異的突然変異誘発キット」(ストラタジーン(登録商標))で実施された。本明細書中に記載されるE147A/E148A変異を導入するために使用されるプライマー(BioCorp Inc.)は、SHP2224 (CACAAGATTA CGTGATGCGG CGCTTCATCA TCATGATAC, 配列番号5), および SHP2225 (GTATCATGAT GATGAAGCTC CTCATCACGT AATCTTGTG 配列番号6)である。TOP10 大腸菌 (インビトロゲン)は、形質転換に使用される。プラスミド DNAの精製は、「Qiaprep(登録商標) spin miniprep kit」(Qiagen)で行った。突然変異誘発は、シークエンシングで検証された(Mobix Lab)。プライマー SHP1511 (GGCATATGTT CCGTGTAATA ACCCGTGGAG C, 配列番号7), SHP1513 (GGCATATGGG AAAAGAAGGT GCAATGGC, 配列番号8) および SHP1514 (GGGGATCCTC AAATTTTCTC AGCAATCGCA ATAGC, 配列番号9)を使用することによって、クローンの妥当性が確認された(試験の際、3 クローンのうち少なくとも 2 つが陽性であった)。
【0184】
成長コンディション − 補足アッセイに関して、プラスミドは、電気穿孔法で新たに大腸菌 JF496 ubiF-(DE3)に形質転換され、 一晩 37°Cで 5 mL LB に 50 μg/mL アンピシリンを有するもので成長させた。その培養物は、1/10に希釈され、そしてOD600 が測定された。5 mL において 0.03 のOD600 に相当する細菌の内容量(volume)が採取され、遠心分離され、100 μlのM9培地に再懸濁された。それは次に5 mL M9( 1 mM MgSO4, 20 μM CaCl2, 0.5 μg/mL チアミン, 0.12% カザミノ酸, 40 μg/mL D-L-メチオニン, 100 μg/mL L-アスパラギン, 微量金属および 50 μg/mL アンピシリンを含有している)に添加された。この培地には、0.5% グルコース または 0.5% コハク酸が添加された。E.coli JF496を、37°C で 8 時間成長させた。サンプル(700-μL)は、2-時間のインターバルで採取された。そしてOD600 を、成長速度を決定するために測定した。
【0185】
免疫ブロット分析 − 最初に、免疫ブロットにおいてシグナルを産生させるために十分な細菌培養物(bacterial culture)の量が決定された。細菌のペレットは、ddH2Oで洗浄され、SDSサンプル緩衝剤に 100 mM DTTおよび 50 ng/μL DNAseIを添加したもので再懸濁された。次の工程で、12.5 μLの細菌サンプルは、 12.5 μL SDSサンプル緩衝剤(Bio-Rad)に100 mM DTTを添加したものと混合され、5 min 85°Cで熱せられた。タンパク質は、SDS-PAGEを用いて分離された(12%分離用ゲル および 4.5%濃縮用ゲル)。Benchmark(TM) 着色タンパク質マーカー (インビトロゲン)が、分子量標準として使用された。電気泳動法 (90-100 V/3h30min)の後に、前記タンパク質は、ニトロセルロース膜(Trans-Blot(登録商標) Transfer Medium, Bio-Rad)上に、使用者の手引きに記載のとおり(70 V/1h25min)に転写された。免疫ブロット分析は、Novagen ガイドに記載されたとおりに実施された。検出は、His-Tag(登録商標) モノクローナル抗体(1:1000, Novagen)で行った。ヤギ抗-マウスHRP抱合型(Novagen)が、二次抗体 (1:5000)として使用された。ECLウエスタンブロット検出試薬(Amersham Biosciences)が、検出処置に使用された。
【0186】
6.2 典型的なスクリーニング手順
JF496 (または同等な大腸菌、またはUbiF活性が欠乏している任意の他の細菌)を、ubiF、ubiFの相同体、ubiFの機能的な変異体、ubiFの酵素的に機能的な断片、ubiFの相同体の酵素的に機能的な断片、または細菌からの(ヒトの病原菌からのものを含む)ubiFの機能的変異体の酵素的に機能的な断片で形質転換する。集団的に(Collectively)、これらの検査細胞は、JF496-ubiFと称される。
【0187】
JF496 (または同等な大腸菌、またはUbiF活性が欠乏している任意の他の細菌)を、clk-1、clk-1の相同体、clk-1の機能的な変異体、clk-1の酵素的に機能的な断片、clk-1の相同体の酵素的に機能的な断片、または真核生物からの(ヒトまたは他の哺乳類からのものを含む)clk-1の機能的な変異体の酵素的に機能的な断片で形質転換する。集団的に、これらの検査細胞は、JF496-clk-1と称される。
【0188】
液体培養で JF496-ubiF および JF496-clk-1 を並行して成長させる、この際の培地には、唯一の炭素源としてコハク酸を含有している最少成長培地を用いる。これらの2つの株は、コハク酸含有培地で発育され得る;というのも、それぞれ UbiF または CLK-1は、活性であり、Q生産を許容し、そしてコハク酸などのような非発酵性の炭素源での成長を維持するからである。さらに、液体培養で JF496-ubiF および JF496-clk-1 を並行して成長させる、この際の培地には、唯一の炭素源としてコハク酸を含有している最少成長培地にユビキノン(Q1)が添加されたものを用いる。成長は、最大 8 時間モニターされ、分光測光法で600 nmを測定することにより、または細菌の成長を追跡することが可能な他の任意の他の処置により評価される。
【0189】
JF496-clk-1 成長を阻害するが、JF496-ubiF 成長は阻害しない任意の化合物は、 clk-1- または CLK-1- 特異的なインヒビターである。このクラスの化合物は、一般的に大腸菌に毒性ではない。というのも、それらはJF496-ubiF 成長に干渉しないからである。
【0190】
JF496-ubiF 成長を阻害するが、JF496-clk-1 成長は阻害しない任意の化合物は、 ubiF- または UbiF- 特異的なインヒビターである。このクラスの化合物は、一般的に大腸菌に毒性ではない。というのも、それらはJF496-clk-1 成長に干渉しないからである。ubiF- または UbiF-特異的なインヒビターは、細菌に特異的に作用し、彼らの成長を阻害する。これらのインヒビターは、抗生物質として開発できる。
【0191】
JF496-ubiF 成長、同様にJF496-clk-1 成長を阻害するが、唯一の炭素源としてコハク酸を含有している最少成長培地にユビキノン(Q1)が添加された培地で JF496 成長を阻害しない任意の化合物は、DMQ ヒドロキシル化の特異的なインヒビターである。このクラスの化合物は、一般的に大腸菌に毒性ではない。というのも、それらはQ1を添加されたJF496の成長に干渉しないからである。このクラスの化合物は、DMQ ヒドロキシル化に重要な、UbiF および CLK-1 の共通の特性(前記酵素の活性部位を含む)を標的にする。
【0192】
6.3 結果
線虫 clk-1 が JF496 成長欠陥をレスキューできることが見出された、これにより真核生物のclk-1が原核生物中で機能的な酵素を発現でき、内在性 ubiFの機能を置換できることが証明された(図 6)。このレスキュー活性は機能的なCLK-1に依存する。というのも、CLK-1の推定上の鉄結合部位におけるclk-1二重変異体バージョン(E147A/E148A)は、完全長タンパク質が形質転換された細菌で発現されたときでさえも、JF496をレスキューできないからである(図6)。図7は、CLK-1 (wt), または CLK-1 (E147A/E148A)を発現しているJF496 に由来するタンパク質抽出物の免疫ブロット分析を示している(これら変異体は、両方のケースにおいてCLK-1の存在を示している)。従って、 CLK-1 (E147A/E148A)がJF496のレスキューに失敗したことは、機能喪失によるのであって、形質転換された細菌中での発現に欠損があったためではない。
【0193】
7. CLK-1構造および機能の分析
JF496システムを、線虫 CLK-1のバリアントの構造および機能の研究のために使用した。また、前記システムを使用することによって次の事項が実証された;その事項とは、組換え型の哺乳類CLK-1タンパク質が、大腸菌におけるUbiFの機能を補足できることである。
【0194】
7.1 材料および方法
細菌株 − JF496 (ubiF411); BL21(DE3)。
【0195】
発現ベクターpET16bベクター(Novagen)を使用して、異なるclk-1バリアント, 大腸菌 ubiFが、pET101-Topo (インビトロゲン)にクローン化された。これはpET16に基づくものであり、Topo クローニングが可能である。
【0196】
pET16-線虫 clk-1;pET16-マウス clk-1。
【0197】
pET16-ヒト clk-1を、以下の通り構築した、即ち:hclk-1 cDNAを、インビトロゲンから入手し、SHP2468およびSHP2469プライマーを用いてPCR増幅した。PCR 断片を、pCDNA3.1-V5-His-Topo(インビトロゲン)にサブクローニングした。hclk-1を次にpET16bにサブクローニングした(NdeI/BamHI断片として)。
【0198】
pET101 E.coli ubiFを以下の通り構築した、即ち:ubiFをSHP2756およびSHP1955を用いて増幅し、そしてTopo クローニングによってpET101に導入した。
【0199】
部位特異的突然変異誘発 − 線虫 clk-1を含むpET-16b ベクター(Novagen)を使用して、点変異体が作出された。突然変異誘発を、「Quickchange(登録商標) 部位特異的突然変異誘発キット」(ストラタジーン(登録商標))で実施した。プライマーを、BioCorp Inc. から入手した。TOP10 大腸菌 (インビトロゲン)が、形質転換に使用された。プラスミド DNAの精製を、「Qiaprep(登録商標) spin miniprep kit」(Qiagen)で行った。突然変異誘発を、DNA シークエンシングで検証した(Mobix Lab)。プライマー SHP1511, SHP1513 および SHP1514を使用して、前記クローンの妥当性を確認した。
【0200】
成長コンディション − セクション6.1に記載のとおり
【0201】
7.2 結果:線虫 CLK-1バリアント
CLK-1バリアントの選択物は、部位特異的突然変異誘発で構築し、JF496系にクローン化して、野生型と比較したそれらの酵素活性を評価した。JF496-clk-1 バリアントの各々の株を記載したとおりに培養し、各々の成長速度を測定した。表4に示した結果は次の事項を指摘している;その事項とは、特定の残基および領域が、アミノ酸置換(アミノ酸置換は一文字表記で示される)に寛容性(tolerant)であることである。
【0202】
【表4】

【0203】
7.3 結果:哺乳類 CLK-1
図8は、JF496におけるマウス clk-1 cDNA (mclk-1)の発現が、選択的な条件下で細菌の成長をレスキューすることを示している。示された実験は、M9 緩衝剤(0.5% グルコースを含有している)で実施した。mclk-1 cDNAの発現は、この培地中でのJF496-mclk-1 クローンの成長を維持することが可能であった。相対的に、ベクター pET16を具備するコントロール細菌の成長は、非常に緩徐であった。このことは、哺乳類CLK-1が、細菌中で機能し、ubiF 活性を機能的に置換することを示している。
【0204】
図9は、JF496におけるヒト clk-1 cDNA (hclk-1)の発現が、選択的な条件下で細菌の成長をレスキューすることを示している。示された実験は、M9 緩衝剤(0.5% グルコースを含有している)で実施した。hclk-1 cDNAの発現は、この培地中でのJF496-hclk-1 クローンの成長を維持することが可能であった。相対的に、ベクター pET16を具備するコントロール細菌の成長は、非常に緩徐であった。このことは、二番目の哺乳類CLK-1が、細菌中で機能し、ubiF 活性を機能的に置換することを示している。また、結果は次の事項を示している;その事項とは、hclk-1のレスキューする能力が、mclk-1 または 線虫 clk-1よりも低いことである。
【0205】
全体的に、哺乳類CLK-1タンパク質で得られた結果によって、原核細胞システム(例えば、大腸菌および特にJF496)を薬物スクリーニングに用いる発明者のアプローチが確証された。このアプローチは、被験者またはモデル動物の薬物ターゲットを直接的に試験することを認容する、また、アッセイに線虫の相同分子種(orthologue)などの代理(surrogate)が関与しない。
【0206】
反対の結果が、clk-1の酵母の相同分子種(coq7としても知られる)で得られ、それは明らかに次の事項を示唆していた;その事項とは、真核生物のclk-1が、大腸菌におけるUbiF欠乏を補足することができないだろうことである。Saccharomyces pombe coq7 (Berthold et al. 2003, Protein Sci., 12: 124-134) および Saccharomyces cerevisiae 双方は、JF496細菌においてUbiF欠乏を補足することができない。ここで提示した結果は、次の事項を示している;その事項とは、他の真核生物のCLK-1タンパク質(例えば、哺乳類のCLK-1)は、UbiF欠乏を補足することができ、UbiF欠乏の原核細胞中で、これらのCLK-1の試験ができることである。
【0207】
7.4 結果:原核生物のUBI F
図10は、JF496における大腸菌 UbiFの発現が、選択的な条件下で細菌の成長をレスキューすることを示している。JF496-ubiFを、M9 緩衝剤(0.5% グルコースを含有している)で培養した。プラスミドからの大腸菌 UbiFの発現は、JF496におけるQ生合成経路を再構成することができた。相対的に、ベクター pET16を具備するコントロール細菌の成長は、非常に緩徐であった。JF496-ubiF細胞を二次アッセイに使用することによって、検査化合物の活性の特異性を決定することができる。
【0208】
これらの結果は、次の事項を示している;その事項とは、原核生物のUbiF(例えば、原核生物の病原体からの)をJF496に導入することによって、その欠乏したubiF活性を補足できることである。係るJF496-ubiF(病原体)細胞を使用することによって、病原体に対抗する抗生物質を選抜することができる。
【0209】
8 ハイスループット スクリーニング アッセイ
本発明のスクリーニング方法の理論的根拠は、線虫 clk-1、マウス clk-1、またはヒト clk-1を具備する、JF496システムにより説明される。細菌細胞を用いることの利便性および経済性を活用するために、検査化合物の効果がJF496-clk-1細胞において最初に調査される。CLK-1インヒビターは、炭素源および過酸化水素の存在下におけるJF496-clk-1細胞の成長を補足する能力における、標的 CLK-1の能力に対するその効果によって同定される。陽性の化合物を次に二次的な毒性アッセイで試験して、CLK-1と独立に作用するものを同定する。CLK-1に対する特異性を、UbiFタンパク質を具備する別の検査細胞株を用いて、同じフォーマットおよびコンディションを用いて、更に試験することができる。これらの細菌性の選抜において、CLK-1の特異的なインヒビターとして同定された化合物は、セクション9に記載されたような、哺乳類細胞株において内在性のCLK-1を阻害する能力に関して、更に選抜される。
【0210】
8.1 材料
M9-LB(50:50; v:v)において一晩プレカルチャーした細菌を、0.03のOD600に希釈した。前記M9-LB培地には、1mM 過酸化水素を含有させた。1% DMSOを、陽性コントロールに添加した。容量100〜200ulのJF496-pET16-mclk-1 (OD600=0.03)を、 80 ウェルの平底96ウェルプレート(カラム 2 から 11)に分配した。陰性コントロールはJF496-pET16から構成され、JF496-mclk-1は陽性コントロールとして寄与する。化合物を、細菌を含有しているウェルの各々に加えた。化合物の分注は、換気フード中で行った。プレートを、37゜Cで 6 時間のあいだ振盪の有り無しでインキュベーションした。OD570 を、プレートリーダー(AD340, ベックマン)中で、5秒間振盪後に測定した。
【0211】
検査化合物を、-80゜Cから室温で 4 時間解凍させ、4゜Cでスクリーニング期間(約 1 月)保存した。細菌および化合物は、多チャネルのピペット(エッペンドルフ)で分配される。これらの処置は、細菌の分注のためのmultidrop 96/384 (Titertek)、および化合物の分注のためのBiomek FX (ベックマン)を使用して行った。
【0212】
8.2 スクリーニング方法
スクリーニングの工程を、次のプロトコールにしたがい実行した、即ち:
1. JF496+pET16-clk-1株を一晩成長させる
2. 前記株を最終的に0.03のOD600に希釈する
3. 希釈した細菌を、96ウェルプレートに、適切な容量(例えば、100〜200 μL)を用いて分注する
4. 検査化合物を、適切な濃度(例えば、50〜100 μM)で添加する
5. 細菌を、約 6 時間(他の時間期間も使用できる)成長させる。
6. 成長を、光学濃度の読出しを用いて評価する。
7. 一貫して(consistent)阻害活性を有する化合物を選択する
8. 選択した化合物を、同じフォーマットを用いて再試験する。
【0213】
阻害性の活性を有する化合物を、幾つかのカウンター選抜(counter screens)を用いて更に調査できる。この工程は好適である、というのも成長阻害アッセイは、偽陽性の化合物を同定できるからであり、この化合物は有毒であるか又はCLK-1活性に非依存性である成長に有害な効果を有するものである。
【0214】
2つのカウンター選抜を、以下の通り実施することができる:
【0215】
1. 毒性アッセイ
このアッセイにはJF496+pET16株が用いられ、これは非相補性の変異体細菌株に相当する。この株を用いることにより、CLK-1が非存在での成長を観察することが容認される(過酸化水素なしのM9-LB培地)。100 mM Q1(これは合成のユビキノンである)が成長培地に添加される、これはJF496 または JF496+pET16に非存在であるユビキノンの存在をミミックするものである。結果は、以下の通り解釈される:
・ 成長を阻害する任意の化合物は、CLK-1活性と独立に阻害し、CLK-1インヒビターから除外できる。
・ JF496+pET16の成長を阻害しない任意の化合物は、潜在的なCLK-1インヒビターである。
【0216】
2. UbiF/CLK-1特異性
このアッセイはJF-496+ubiF株を使用する;この株は、プラスミドから発現されるUbiF活性により補足され、過酸化水素の存在下で成長することができる。CLK-1の存在下で細菌成長を阻害する化合物は、このセッティングで試験するために選択される。結果は、以下の通り解釈される:
・ CLK-1を阻害するが、UbiFを阻害しない任意の化合物は、CLK-1特異的である。
・ CLK-1 および UbiFの双方を阻害するが、JF496に毒性ではない任意の化合物(「毒性」アッセイの効力によって)は、おそらく両方の酵素に共通の機構を標的とする。
【0217】
9 哺乳類細胞スクリーニングアッセイ
細菌性の選抜において、CLK-1のインヒビターとして同定された化合物は、哺乳類細胞株において内在性のCLK-1を阻害する能力に関して、更に選抜される。この典型的なアッセイは、HPLCを使用して、選択されたキノン(マウスにおいてQ9, ヒトにおいてQ10)のレベルをコントロールおよび試験条件下で測定する、また、検出可能である場合、Q前駆物質(DMQ)の同じサンプル中での分析が許容される。
【0218】
簡単に説明すると、溶解に続いて、細胞のキノンが、ヘキサン-エタノール(2回)に抽出され、そしてサンプルはHPLCにかけられ、キノン〔これには内部のキノン標準(Q6)が含まれる〕が分離される。ピーク下領域(The area under the peak)が推定され、そしてQ6の抽出効率と比例した、Q9/Q10の濃度がng/ugタンパク質として決定される。
【0219】
9.1 材料
ユビキノン-6 (C9504), ユビキノン-9 (C9888) および ユビキノン 10 (C9538)は、シグマから提供された。エタノール(HPLC グレード, A995-4)は、Fisherから提供された。メタノール(HPLC グレード, 270474)およびヘキサン(HPLC グレード, 27050-4)は、シグマから提供された。全ての細胞培養培地は、インビトロゲンから入手した(DMEM 11995-065, FBS 10082-147, ペニシリン-ストレプトマイシン 15140-122, トリプシン-EDTA 25300-062, 非必須アミノ酸溶液 11140-050)。細胞を、ATCCより供給されたプロトコールに記載のとおりに培養した。適切なキノンのプロフィールを得るために必要な細胞量は、各細胞株について経験的に決定された。
【0220】
キノン標準の保存溶液を、純粋なユビキノンをエタノール(HPLC グレード)に50ug/mlの濃度で溶解することにより調製した。これらの溶液を-80゜Cで保存した。作業用の標準溶液を、保存溶液を適切な終濃度に希釈することによって調製した。
【0221】
9.2 アッセイ方法
細胞からのキノンの抽出を、次の手順で実施した。コンフルエントな細胞シャーレをPBSで洗浄し、次に5mlのPBSを各シャーレに添加し、そして細胞を緩衝液中に剥がした。遠心分離を1000rpmで5min行った後、PBSを吸引で除去した。500ulのPBSおよび500ulの3%SDSを添加して、細胞ペレットを再懸濁した。そしてQ6標準を添加した。2mlのエタノールを添加し、最高速度で20秒間ボルテックスした。ヘキサン(2ml)をこの溶液に添加し、最高速度で2 minボルテックスした。サンプルを2200rpmで5min、4゜Cで遠心分離し、上層をエッペンドルフチュウブにデカントした。この抽出を、1回反復した。Speed-Vacuum(中等度速度で30min)を使用して、ヘキサンを蒸発させた。最終的に、キノン抽出物を、HPLCにかける前に、移動相(メタノール/エタノール 70:30)に再懸濁した。
【0222】
HPLCシステムは、126溶媒モジュールポンプ(ベックマン)、モデル 7255iインジェクター(ベックマン)、オートサンプラー(モデル 508, ベックマン)、およびUV検出器(275nmにセット)から構成された。カラムにはC18が充填された。流速は、1.8ml/minであった。70% メタノールおよび30% エタノールからなる移動相を用いた定組成法(isocratic method)、およびグラジエント法(ここでエタノール組成は、6 min後に5minで30%〜70%増加する)の両方が試験された。この手順を室温で実施した。両方のシステムにより、様々なキノンが良好に分離され、グラジエント系ではより短い実施時間で達成された。
当業者は、本明細書中に記載される発明の特定の態様に対する多くの均等な発明を、認識し得る(又はルーチンの実験を用いて確認することができる)。係る均等な発明は、本願の特許請求の範囲に包含される。
本明細書中で記載された全ての公開(publications)、特許、および特許出願は、個々の公開、特許、または特許出願が特定的および個別的に参照によって本明細書に援用されたのと同程度に、本明細書中に参照によって援用される。
4. 図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】図1は、Q 生合成経路の9つの段階を示す図である。
【図2】図2は、線虫CLK-1変異体がDMQを蓄積することを示しているHPLC分析を記載した図である。
【図3】図3は、ubiF(411)変異対立遺伝子(mutant allele)のDNA配列を記載した図である。
【図4】図4は、ubiF野生型対立遺伝子(wild type allele)のDNA配列を記載した図である。
【図5】図5は、野生型のUbiF配列およびUbiF(411)配列の比較を示している図である。この図は、野生型と比較した、JF496 (UbiF)のUbiF配列(変異の部位は下線を付される)における点突然変異を示している。
【図6】図6は、機能的な鉄結合コンセンサス配列における、JF496のC. elegans clk-1レスキューの依存性を記載した図である。
【図7】図7は、形質転換されたJF496における、CLK-1タンパク質レベルを記載した図である。
【図8】マウス CLK-1がJF496成長を補足することを記載した図である。
【図9】ヒト CLK-1がJF496成長を補足することを記載した図である。
【図10】UbiFはJF496成長を補足する。UbiF活性は、大腸菌 ubiF コード配列を具備する組換え型の遺伝子構築物からの発現により提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内在性のDMQヒドロキシル化活性を欠乏し、脊椎動物からの標的DMQヒドロキシラーゼを具備する、原核生物の検査細胞。
【請求項2】
内在性のDMQヒドロキシル化活性を欠乏し、原核生物からの標的DMQヒドロキシラーゼを具備する、原核生物の検査細胞。
【請求項3】
請求項1または2記載の原核生物の検査細胞であって、内在性のDMQヒドロキシラーゼをコード化する遺伝子に変異または崩壊を含み、該内在性のDMQヒドロキシラーゼが配列番号4に対して少なくとも 50% 同一のアミノ酸配列を具備する原核生物の検査細胞。
【請求項4】
請求項1または2記載の原核生物の検査細胞であって、内在性のDMQヒドロキシラーゼをコード化する遺伝子の転写および/または翻訳が阻害され、該内在性のDMQヒドロキシラーゼが配列番号4に対して少なくとも 50% 同一のアミノ酸配列を具備する原核生物の検査細胞。
【請求項5】
請求項2記載の原核生物の検査細胞であって、前記標的DMQヒドロキシラーゼが細菌からのものである原核生物の検査細胞。
【請求項6】
大腸菌細胞である、請求項1または2記載の原核生物の検査細胞。
【請求項7】
請求項6記載の原核生物の検査細胞であって、前記検査細胞が大腸菌細胞であり、前記変異した遺伝子が配列番号1のアミノ酸配列を具備する原核生物の検査細胞。
【請求項8】
脊椎動物CLK-1タンパク質をコード化しているポリヌクレオチドを具備し、該ポリヌクレオチドは原核生物の発現制御領域に動作可能に連結されている、請求項1記載の原核生物の検査細胞。
【請求項9】
請求項1記載の原核生物の検査細胞であって、前記標的DMQヒドロキシラーゼが、配列番号13に対して少なくとも 50% 同一のアミノ酸配列を具備する脊椎動物CLK-1タンパク質である原核生物の検査細胞。
【請求項10】
請求項1記載の原核生物の検査細胞であって、前記標的DMQヒドロキシラーゼが、マウスCLK-1タンパク質またはヒトCLK-1タンパク質である原核生物の検査細胞。
【請求項11】
JF496-mclk-1 または JF496-hclk-1である、請求項1記載の原核生物の検査細胞。
【請求項12】
細菌のUbiFタンパク質をコード化しているポリヌクレオチドを具備し、該ポリヌクレオチドは原核生物の発現制御領域に動作可能に連結されている、請求項2記載の原核生物の検査細胞。
【請求項13】
請求項1記載の原核生物の検査細胞であって、前記標的DMQヒドロキシラーゼが、配列番号3に対して少なくとも 50% 同一のアミノ酸配列を具備する細菌のUbiFタンパク質である原核生物の検査細胞。
【請求項14】
前記標的DMQヒドロキシラーゼが、Mycobacterium tuberculosis, Mycobacterium bovis, Streptomyces coelicolor, Gloeobacter violaceus, Staphylococcus aureus, Brucella melitensis Bordetella bronchiseptica, Bordetella parapertussis, Bordetella pertussis, Ralstonia solanacearum, Chromobacterium violaceum, Neisseria meningitidis, Shewanella oneidensis, Escherichia coli O157:H7, Salmonella typhi, Salmonella typhimurium, Salmonella enterica, Shigella flexneri, Yersinia pestis, Candidatus blochmannia floridanus, Coxiella burnetii, Haemophilus ducreyi, Pseudomonas aeruginosa, Pseudomonas putida, Pseudomonas syringae, Vibrio cholerae, Vibrio parahaemolyticus, Vibrio vulnificus, Xanthomonas axonopodis, Xanthomonas campestris, Xylella fastidiosa, Streptococcus pyrogenes, または Campylobacter jejuniからのものである、請求項1記載の原核生物の検査細胞。
【請求項15】
内在性のDMQヒドロキシル化活性を欠乏し、異種性の標的DMQヒドロキシラーゼを具備する、真核細胞の検査細胞。
【請求項16】
請求項15記載の真核生物の検査細胞であって、前記標的DMQヒドロキシラーゼが細菌からのものである真核生物の検査細胞。
【請求項17】
脊椎動物CLK-1タンパク質をコード化しているポリヌクレオチドを具備し、該ポリヌクレオチドは原核生物の発現制御領域に動作可能に連結されている、請求項15記載の真核生物の検査細胞。
【請求項18】
請求項15記載の真核生物の検査細胞であって、前記標的DMQヒドロキシラーゼが、配列番号13に対して少なくとも 50% 同一のアミノ酸配列を具備する脊椎動物CLK-1タンパク質である真核生物の検査細胞。
【請求項19】
請求項15記載の真核生物の検査細胞であって、前記標的DMQヒドロキシラーゼが、マウスCLK-1タンパク質またはヒトCLK-1タンパク質である真核生物の検査細胞。
【請求項20】
請求項15または16記載の真核生物の検査細胞であって、内在性のDMQヒドロキシラーゼをコード化する遺伝子に変異または崩壊を含み、該内在性のDMQヒドロキシラーゼが配列番号11に対して少なくとも 50% 同一のアミノ酸配列を具備する真核生物の検査細胞。
【請求項21】
請求項15または16記載の真核生物の検査細胞であって、内在性のDMQヒドロキシラーゼをコード化する遺伝子の転写および/または翻訳が阻害され、該内在性のDMQヒドロキシラーゼが配列番号11に対して少なくとも 50% 同一のアミノ酸配列を具備する真核生物の検査細胞。
【請求項22】
酵母細胞、マウス細胞、またはヒト細胞である、請求項15または16記載の真核生物の検査細胞。
【請求項23】
線形動物 線虫(Caenorabditis elegans nematode)における細胞である、請求項15または16記載の真核生物の検査細胞。
【請求項24】
Saccharomyces cerevisiae 細胞である、請求項15または16記載の真核生物の検査細胞。
【請求項25】
請求項15記載の真核生物の検査細胞であって、前記標的DMQヒドロキシラーゼが、マウスCLK-1タンパク質またはヒトCLK-1タンパク質である真核生物の検査細胞。
【請求項26】
前記標的DMQヒドロキシラーゼが、Mycobacterium tuberculosis, Mycobacterium bovis, Streptomyces coelicolor, Gloeobacter violaceus, Staphylococcus aureus, Brucella melitensis Bordetella bronchiseptica, Bordetella parapertussis, Bordetella pertussis, Ralstonia solanacearum, Chromobacterium violaceum, Neisseria meningitidis, Shewanella oneidensis, Escherichia coli O157:H7, Salmonella typhi, Salmonella typhimurium, Salmonella enterica, Shigella flexneri, Yersinia pestis, Candidatus blochmannia floridanus, Coxiella burnetii, Haemophilus ducreyi, Pseudomonas aeruginosa, Pseudomonas putida, Pseudomonas syringae, Vibrio cholerae, Vibrio parahaemolyticus, Vibrio vulnificus, Xanthomonas axonopodis, Xanthomonas campestris, Xylella fastidiosa, Streptococcus pyrogenes, または Campylobacter jejuniからのものである、請求項16記載の真核生物の検査細胞。
【請求項27】
CLK-1タンパク質の活性を変調する検査化合物をスクリーニングする方法であって:
(a)検査細胞を検査化合物と、前記検査化合物が前記検査細胞におけるCLK-1タンパク質の活性を変調することを認容するのに十分な時間接触させることと(ここで、前記検査細胞は、内在性のDMQヒドロキシラーゼ活性を欠乏し、前記CLK-1タンパク質をコード化している発現可能なポリヌクレオチドを具備する);および
(b)DMQヒドロキシラーゼ活性における変化を検出することと(ここで、前記検査化合物と接触させない前記検査細胞におけるDMQヒドロキシラーゼ活性と比較した、前記検査化合物と接触させた前記検査細胞のDMQヒドロキシラーゼ活性の増加または減少は、前記検査化合物が前記CLK-1タンパク質の活性を変調することを示す)、
を含む方法。
【請求項28】
標的DMQヒドロキシラーゼ活性を阻害する検査化合物をスクリーニングする方法であって:
(a)検査細胞を検査化合物と、前記検査化合物が前記検査細胞におけるDMQヒドロキシラーゼ活性を変調することを認容するのに十分な時間接触させることと(ここで、前記検査細胞は、内在性のDMQヒドロキシラーゼ活性を欠乏し、標的DMQヒドロキシラーゼをコード化している発現可能なポリヌクレオチドを具備する);および
(b)前記検査細胞の成長速度を選択的な条件下で決定することと(ここで、同じ選択的な条件下の且つ前記検査化合物と接触させない検査細胞と比較した、前記検査細胞の成長速度の減少は、前記検査化合物が前記標的DMQヒドロキシラーゼを阻害することを示す)、
を含む方法。
【請求項29】
標的DMQヒドロキシラーゼ活性を増強する検査化合物をスクリーニングする方法であって:
(a)検査細胞を検査化合物と、前記検査化合物が前記検査細胞におけるDMQヒドロキシラーゼ活性を変調することを認容するのに十分な時間接触させることと(ここで、前記検査細胞は、内在性のDMQヒドロキシラーゼ活性を欠乏し、標的DMQヒドロキシラーゼをコード化している発現可能なポリヌクレオチドを具備する);および
(b)前記検査細胞の成長速度を選択的な条件下で決定することと(ここで、同じ選択的な条件下の且つ前記検査化合物と接触させない検査細胞と比較した、前記検査細胞の成長速度の増加は、前記検査化合物が前記標的DMQヒドロキシラーゼを増強することを示す)、
を含む方法。
【請求項30】
請求項27、28、または29に記載の方法であって、前記検査細胞が原核生物の検査細胞である方法。
【請求項31】
請求項27、28、または29に記載の方法であって、前記検査細胞が真核生物の検査細胞である方法。
【請求項32】
請求項27記載の方法であって、前記検出することが、前記検査細胞における1以上のキノンのレベルを検出することを具備する方法。
【請求項33】
請求項32記載の方法であって、前記キノンがDMQ6, DMQ9, DMQ10, Q6, Q9, および/または Q10の何れかである方法。
【請求項34】
請求項27、28、または29に記載の方法であって、前記検査細胞が大腸菌細胞である方法。
【請求項35】
請求項27、28、または29に記載の方法であって、前記検査細胞が酵母細胞またはヒト細胞である方法。
【請求項36】
前記標的DMQヒドロキシラーゼが、配列番号13に対して少なくとも 50% 同一のアミノ酸配列を具備する脊椎動物CLK-1タンパク質である、請求項28または29記載の方法。
【請求項37】
前記標的DMQヒドロキシラーゼが、マウスCLK-1タンパク質またはヒトCLK-1タンパク質である、請求項28または29記載の方法。
【請求項38】
前記検査細胞がJF496-mclk-1 または JF496-hclk-1である、請求項27、28、または29に記載の方法。
【請求項39】
請求項28記載の方法であって、前記標的DMQヒドロキシラーゼが、配列番号3に対して少なくとも 50% 同一のアミノ酸配列を具備する細菌のUbiFタンパク質である方法。
【請求項40】
前記標的DMQヒドロキシラーゼが、Mycobacterium tuberculosis, Mycobacterium bovis, Streptomyces coelicolor, Gloeobacter violaceus, Staphylococcus aureus, Brucella melitensis Bordetella bronchiseptica, Bordetella parapertussis, Bordetella pertussis, Ralstonia solanacearum, Chromobacterium violaceum, Neisseria meningitidis, Shewanella oneidensis, Escherichia coli O157:H7, Salmonella typhi, Salmonella typhimurium, Salmonella enterica, Shigella flexneri, Yersinia pestis, Candidatus blochmannia floridanus, Coxiella burnetii, Haemophilus ducreyi, Pseudomonas aeruginosa, Pseudomonas putida, Pseudomonas syringae, Vibrio cholerae, Vibrio parahaemolyticus, Vibrio vulnificus, Xanthomonas axonopodis, Xanthomonas campestris, Xylella fastidiosa, Streptococcus pyrogenes, または Campylobacter jejuniからのものである、請求項28記載の方法。
【請求項41】
請求項32に記載の方法であって、前記選択的な条件が、前記検査細胞をスクシナートまたはグルコースを含む最少培地中で培養することを含む方法。
【請求項42】
請求項28または29に記載の方法であって、前記選択的な条件が、前記検査細胞を過酸化水素の存在下で培養することを含む方法。
【請求項43】
工程(a)の前に600nmでの光学濃度が約0.03の前記検査細胞の培養物を提供することを更に含み、前記検査細胞がJF496-hclk-1であり、前記選択的な条件が0.5%グルコースおよび1mM過酸化水素を含むM9-LB培地中で培養することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項44】
請求項28記載の方法であって、前記検査化合物を毒性に関して検査することを更に含む方法。
【請求項45】
被験者における疾患または医学的なコンディションを治療する又は予防する方法であって、被験者に効果的な量のCLK-1活性を阻害する化合物を投与することを含み、前記疾患または医学的なコンディションはアテローム性動脈硬化症、虚血、糖尿病の脈管性合併症、癌、または肥満である方法。
【請求項46】
被験者における疾患または医学的なコンディションを治療する又は予防する方法であって、被験者に効果的な量のCLK-1活性を増強する化合物を投与することを含み、前記疾患または医学的なコンディションはパーキンソン病またはフリートライヒ失調症である方法。
【請求項47】
細菌により生じる感染症を罹患した被験者を治療する方法であって、前記被験者に、治療上効果的な量の、前記細菌のUbiF活性を阻害する化合物を投与することを含む方法。
【請求項48】
請求項45、46、または47に記載の方法であって、前記被験者がヒト、コンパニオンアニマル、または家畜動物である方法。
【請求項49】
細菌で汚染された物体または物質を滅菌する方法であって、前記細菌で汚染された物体または物質を、前記細菌におけるUbiF活性を阻害する化合物と接触させることを含む方法。
【請求項50】
標的DMQヒドロキシラーゼの活性を変調する検査化合物をスクリーニングするためのキットであって、内在性のDMQヒドロキシル化を欠乏し、標的DMQヒドロキシラーゼを具備する検査細胞を含んでなるキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−524995(P2006−524995A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504138(P2006−504138)
【出願日】平成16年5月10日(2004.5.10)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000692
【国際公開番号】WO2004/099770
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(505345680)マックギル・ユニバーシティー (2)
【出願人】(505413484)クロノゲン・インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】