説明

CMOSイメージセンサ用ウエハ封止方法

【課題】チップサイズパッケージ製造工程中のCMOSイメージセンサ用ウエハとガラスウエハを貼りあわせにおいて、パターン形成された接着剤が流れ出し、イメージセンサ面への接着剤の付着を防止し、イメージセンサ面ギリギリまで接着剤にて埋め、合わせて遮光性を付加した方法を提供する。
【解決手段】CMOSイメージセンサが多面付け形成されたウエハと貼り合せる、
封止用ガラスウエハ面のダイシングライン上に、
格子パターン状に溝加工を行い、
格子パターン及び格子パターンの交点部分の、格子交点から同一距離の点を結ぶ直線内又は同一距離の曲線内を含んだパターン状に、
接着剤ペーストをスクリーン印刷、あるいはディスペンサーによりパターン状に塗布し、前記CMOSイメージセンサが多面付けされたウエハと前記ガラスウエハとを貼り合せる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程により、シリコンウエハ上に多数面付けして作製されているCMOSイメージセンサに関し、シリコンウエハからチップサイズパッケージ(CSP)を作製する工程におけるCMOSイメージセンサ用ウエハとガラスウエハを貼りあわせ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンウエハからチップサイズパッケージ(CSP)を作製する基本的な方法は、CMOSイメージセンサ用ウエハとガラスウエハを貼りあわせ、CMOSイメージセンサの裏面のシリコン面に配線を引き出し、基板実装用のはんだバンプ等を形成したのち、個々に切り出すというものである。
【0003】
CMOSイメージセンサ用ウエハとガラスウエハを貼りあわせ方法としては、CMOSイメージセンサ用ウエハかガラスウエハのどちらかのウエハに、接着剤となる感光性樹脂を塗工し、もう一方のウエハに貼り合わせる方法が使われる。
【0004】
しかしながら、ウエハに貼り合わせると、余分な接着剤がCMOSセンサ面に流入することがある。流入すると、接着剤は黒い遮光機能を有する場合もあって、CMOSイメージセンサの機能を大幅に損なってしまい、しかも、接着剤の塗布量も制御が難しく、CMOSイメージセンサ用ウエハを覆ってしまい兼ねず、CMOSイメージセンサの歩留りが低下してしまう。
【0005】
その様な要求に対して、接着剤をパターン化させるためにフォトリソ対応の接着剤を全面塗布した後、フォトリソで不要な部分を取り除くパターン形成方法や、スクリーン印刷機でCMOSセンサ面に接着剤が載らない様に格子状に塗布するパターン印刷方式が提案されている。
【0006】
接着剤がCMOSセンサ面に接触しない様に隙間をあけるために、井桁型のパターンに形成する必要があり、更にCMOSイメージセンサとガラスウエハの貼り合わせでは、ガラスとCMOSセンサ面が接触しない様に固定、接着する必要があるため、隙間の高さの制御が大変である。
【0007】
ウエハの貼り合わせに用いる接着剤を、ガラス面にスクリーン印刷で塗布し、CMOSイメージセンサのウエハに貼り付けると、2枚の板に挟まれた状態となるため、塗工された材料(主にペースト材料)が拡がる。ガラスウエハ面もCMOSイメージセンサウエハ面のどちらのウエハも表面が平坦なため、流れ出しを制御することは難しく、どこまで広がるか予測は困難で、更に拡がりが不均一で塗工材料が拡がった端の部分が波打つ様になるので、イメージセンサ面ギリギリまで埋めることが難しい。
【0008】
また制御を簡便化するために、余分な接着剤の流入を阻止する液止め手段として、光学素子の回りに、凹部または凸部を設ける提案がなされている(特許文献1)。
【0009】
しかしながら、光学素子の回りに凹部または凸部を設けると、加工時にCMOSイメージセンサに傷等が着いてしまい、歩留まりに影響してしまう。
【0010】
また、イメージセンサモジュールでは横から入ってくる光を遮る必要があり、側面やイメージセンサ部ギリギリのところまでを覆う必要がある。これに対し、ガラスを貼り併せ
てから遮光構造の形成する方法が提案されている。しかしながら工程が繁雑であるため簡便に遮光層を設ける方法が望まれている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−251249号公報
【特許文献2】特開2010−114304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本願発明の課題は、チップサイズパッケージ製造工程中のCMOSイメージセンサ用ウエハとガラスウエハを貼りあわせにおいて、パターン形成された接着剤が流れ出し、イメージセンサ面への接着剤の付着を防止し、イメージセンサ面ギリギリまで接着剤にて埋め、さらに簡便な遮光性を付加した方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、CMOSイメージセンサが多面付け形成されたウエハと貼り合せる、
封止用ガラスウエハ面のダイシングライン上に、
格子パターン状に溝加工を行い、
格子パターン及び格子パターンの交点部分の、格子交点から同一距離の点を結ぶ直線内又は同一距離の曲線内を含んだパターン状に接着剤ペーストを、
スクリーン印刷、あるいはディスペンサーによりパターン状に塗布し、
前記CMOSイメージセンサが多面付けされたウエハと前記ガラスウエハとを貼り合せたことを特徴とするCMOSイメージセンサ用ウエハ封止方法である。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、前記ガラスウエハ面に、前記溝加工パターンのネガ形状に、レジストを形成し、ドライ化学エッチング、湿式化学エッチング、サンドブラストのいずれかによってガラスウエハ面をエッチングし、エッチング加工後、前記レジストを除去して前記ガラスウエハ面に溝を形成することを特徴とする請求項1に記載のCMOSイメージセンサ用ウエハ封止方法である。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、前記接着剤ペーストを黒色化し、遮光性を持たせたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のCMOSイメージセンサ用ウエハ封止方法である。
【発明の効果】
【0016】
今まで、CMOSイメージセンサ用ウエハとガラスウエハを貼り合わせ時に、接着剤が圧力で広がり、イメージセンサ面へ接着剤が付着する事故があったが、本発明により、塗工形成された接着剤バターンの拡がりを制御することができるため、イメージセンサ面へ接着剤の付着が無く、歩留まりの向上、イメージセンサ部のセンサパターンの至近位置まで接着剤の塗工(パターン形成)ができる様になった。更に接着剤を黒くすることにより、ガラスを貼り併せてから遮光構造を形成すると言った繁雑な工程のない、工程を追加することなく、簡便で耐性の向上も図れる様になった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ガラスウエハの一部分の平面及び断面を示した概念図である。
【図2】本発明のパターン状にガイド溝加工を施したガラスウエハの平面及び断面を示した概念図である。
【図3】本発明の接着剤ペーストを設けた、パターン状にガイド溝加工を施したガラスウエハの平面及び断面を示した概念図である。
【図4】CMOSイメージセンサ用ウエハとガイド溝加工を施したガラスウエハとを貼り合せた時の接着剤ペーストの形状を示した平面及び断面概念図である。
【図5】交点から同一距離の点を結ぶ直線からなる範囲を示した概念図である。
【図6】交点から同一距離の点を結ぶ曲線からなる範囲を示した概念図である。
【図7】CMOSイメージセンサ用ウエハとガイド溝加工を設けていないガラスウエハとを貼り合せた時の接着剤ペーストの形状を示した平面及び断面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に用いたガラスウエハ1の平面及び断面を示しており、直径200mm、厚み0.5mmのものを用いた。
【0019】
図2は本発明のパターン状にガイド溝2の加工を施したガラスウエハ1を示している。ガラスウエハ1に、感光性ドライフィルムタイプのレジストを貼る。
【0020】
フォトマスクのパターンは、CMOSイメージセンサ6の個片切り出し時の切りシロ(切断部分)となるダイシングライン7上の、線幅中心を合わせて幅0.55mmの格子状とした。作製したフォトマスクをガラスウエハ1に位置合わせした後、フォトマスクを介して紫外線を照射してガイド溝2のパターンを露光し、現像を行った。
【0021】
現像により、ガイド溝2加工の部分がパターン状に露出したガラスウエハ1となり、続いてサンドブラスト装置でブラスト処理し、溝となる部分を5μm削り取り、残ったサンドブラスト用レジストを剥膜して、図2に示すガイド溝2加工の部分をもったガイド溝加工ガラスウエハ4となる。
【0022】
図3はパターン状にガイド溝2加工を施したガラスウエハ1に、接着剤ペースト3を設けた状態を示している。アクリル系紫外線硬化型接着剤からなる接着剤ペースト3は、スクリーン印刷法により、ガラスウエハ1のガイド溝2上にパターン状に設けた。この時スクリーン印刷で用いるスクリーン版は、CMOSイメージセンサ用ウエハ6のダイシングライン7上の位置にパターン幅0.55mmとなる開口部を形成した版を使用した。
【0023】
図4は、CMOSイメージセンサ6用ウエハとガイド溝2加工を施したガラスウエハ1とを貼り合せた時の接着剤ペースト3の形状を示している。用いたCMOSウエハ5の直径は200mmであり、厚みは0.725mmである。CMOSセンサウエハ5と位置合わせをした後、規定の圧力にて圧着した。貼り合せの圧力条件は、貼り合わせ後の接着剤ペースト層の厚さの関係から設定し、接着剤ペースト層の厚さを50μmとした。貼り合わせ後、接着剤ペースト3を硬化させるため、高圧水銀灯のUV照射機にて硬化処理を行った。
【0024】
前述の様に、イメージセンサは横から入ってくる光を遮る必要がある。遮光層をイメージセンサの側面やイメージセンサ部ギリギリのところまでを覆う必要がある。本願発明おける接着剤ペースト3は、CMOSイメージセンサ6ギリギリまで埋めことが可能である。接着剤ペースト3に黒色の顔料を分散するか染料を添加することにより、遮光性を付与することができ、しかもイメージセンサ部ギリギリのところまでを覆うことができる。例えば、染料もしくは顔料の色材、比較的低分子量の溶剤可溶性樹脂、光重合性モノマーもしくはオリゴマー、光重合開始剤および溶剤からなるものが好適である。
【0025】
アクリル樹脂(メタクリル酸20重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート15重量部、メチルメタクリレート10重量部、ブチルメタクリレート55重量部をエチルセロソルブ300重量部に溶解し、窒素雰囲気下でアゾビスニトリル0.75重量部を加えて、70℃、5時間反応させ得られたアクリル樹脂)を、樹脂濃度20重量%になるようにエチルセロソルブで希釈した。この希釈樹脂80gと、カーボンブラック20gと分散剤(フッ素系界面面活性剤)0.2gを添加して、ビーズミル分散機で冷却しながら3時間分散した。この着色樹脂液100.2gに対し、光重合性モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート3.9gと、光重合開始剤としてピペロニル−s−トリアジン0.8gを添加し、溶剤としてエチルセロソルブで固形分7重量%になるように希釈し、よく攪拌して遮光層を兼ねた接着剤ペーストを調整した。
【0026】
調整した接着剤ペーストを図4に示した方法にて、厚さを50μmの接着剤ペースト層を形成した。貼り合わせ後、接着剤ペースト3を硬化させるため、高圧水銀灯のUV照射機にて硬化処理を行った。
【0027】
貼り合せ時の圧力により、接着剤ペースト3はガイド溝2に沿って広がり、CMOSイメージセンサ6面ギリギリまで接着剤ペースト3を埋めることができた。特に、ガイド溝が交差するコーナー部が細ることなく、CMOSイメージセンサ6上に接着剤ペースト3が来ることはなかった。
【0028】
図5は交点から同一距離の点を結ぶ直線からなる範囲11を示しており、格子パターンの交点部分の、格子交点10から同一距離の点14を結ぶ直線内である。接着剤ペーストが多く印刷、塗布された部分13が形成される。これがないとCMOSイメージセンサ4用ウエハとガイド溝2加工を施したガラスウエハ1を貼りあわせた時に、CMOSイメージセンサ5のコーナー部が細ってしまい、接着剤ペースト3がCMOSイメージセンサ5面ギリギリまで広がらない。
【0029】
図6は交点から同一距離の点を結ぶ曲線からなる範囲12を示しており、格子パターンの交点部分の、格子交点から同一距離の点14を結ぶ曲線内である。図5,6に示す、格子パターンの交点部分の、格子交点10から同一距離の点を結ぶ直線内又は同一距離の曲線内のパターン部分に相当する接着剤ペースト3が多く印刷、塗布された部分13がもうけられ、これにより貼り合せ時に接着剤ペースト3がCMOSイメージセンサ5面ギリギリまで到達する。また黒く着色した接着剤ペースト1を設けたものは、遮光性能も十分であり、遮光層を設ける工程を増やすことなく、遮光機能を付加することができた。。
【0030】
図7は、ガイド溝加工を設けていないガラスウエハ4とCMOSイメージセンサ用ウエハとを貼り合せた時の接着剤ペースト3の形状を示している。ガラスウエハ1上にアクリル系紫外線硬化型接着剤からなる接着剤ペースト3を、CMOSイメージセンサ用ウエハのダイシングライン上の位置にスクリーン印刷法により設けた。
【0031】
ガイド溝2加工を施したガラスウエハ1を用いた場合と同様に。CMOSセンサウエハ5と位置合わせをした後、規定の圧力にて圧着した。貼り合せの圧力条件は、貼り合わせ後の接着剤ペースト層の厚さの関係から設定し、接着剤ペースト層の厚さを、削り取ったガイド溝2を考慮し、45μmとした。貼り合わせ後、接着剤ペースト3を硬化させるため、高圧水銀灯のUV照射機にて硬化処理を行った。
【0032】
貼り合わせ時の圧力により、接着剤ペースト3は横に沿って広がり、CMOSイメージセンサ6面ギリギリまで接着剤ペースト3を埋めようとするとCMOSイメージセンサ6が接着剤ペースト3に来てしまうことが起きた。特に遮光性を付与するために、接着剤ペースト3に黒色顔料を添加した場合、接着剤ペーストがCMOSイメージセンサ6にまで到達してしまうとセンサ機能が問題となってしまい、ガイド溝2の効果が証明された。
【符号の説明】
【0033】
1・・・ガラスウエハ
2・・・ガイド溝
3・・・接着剤(ペースト)
4・・・ガイド溝加工ガラスウエハ
5・・・CMOSウエハ
6・・・CMOSイメージセンサ
7・・・ダイシングライン
8・・・UV(紫外線)
9・・・デバイス境界線
10・・・交点部分
11・・・交点から同一距離の点を結ぶ直線からなる範囲
12・・・交点から同一距離の点を結ぶ曲線からなる範囲
13・・・接着剤ペーストが多く印刷、塗布された部分
14・・・同一距離の点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CMOSイメージセンサが多面付け形成されたウエハと貼り合せる、
封止用ガラスウエハ面のダイシングライン上に、
格子パターン状に溝加工を行い、
格子パターン及び格子パターンの交点部分の、格子交点から同一距離の点を結ぶ直線内又は同一距離の曲線内を含んだパターン状に接着剤ペーストを、
スクリーン印刷、あるいはディスペンサーによりパターン状に塗布し、
前記CMOSイメージセンサが多面付けされたウエハと前記ガラスウエハとを貼り合せたことを特徴とするCMOSイメージセンサ用ウエハ封止方法。
【請求項2】
前記ガラスウエハ面に、前記溝加工パターンのネガ形状に、レジストを形成し、ドライ化学エッチング、湿式化学エッチング、サンドブラストのいずれかによってガラスウエハ面をエッチングし、エッチング加工後、前記レジストを除去して前記ガラスウエハ面に溝を形成することを特徴とする請求項1に記載のCMOSイメージセンサ用ウエハ封止方法。
【請求項3】
前記接着剤ペーストを黒色化し、遮光性を持たせたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のCMOSイメージセンサ用ウエハ封止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−115104(P2013−115104A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257473(P2011−257473)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】