説明

CNS疾患の治療のための、α7ニコチンアゴニスト活性及び5HT3アンタゴニスト活性を有する化合物

本発明は、選択的なα7nAChRアゴニスト及び5−HTアンタゴニストである化合物を開示する。当該化合物は多くのCNS疾患の治療に有用である。当該化合物は下記式(I):
【化1】


{式中、アザビシクロは、式(2)であり、ここで各Rは独立にH、アルキル又は置換アルキルであり;RはH、アルキル又は置換アルキルであり;kは1又は2である、但し、kが2の場合、RはH以外である;RはH、アルキル又はアミノ保護基であり;Wは、式(3)であり、ここでWはCH又はNであり;WはO、N(R)、N(C(O)R)又はSであり;WはO、N(R)、N(C(O)R)又はSであり;RはH、F、Cl、Br、I、アルキル、置換アルキル又はアルキニルであり;アルキルは1〜6炭素数を有する直鎖−及び分岐鎖部分である}
を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大リガンドゲート受容体ファミリーの他の非常に密接なメンバーと比べて、α7nAChRsに対して多大な効果を有し、同時に5−HTアンタゴニストである分子に関する。従って、本発明は、ほとんど副作用を伴わない活性薬物分子である化合物を提供する。
【背景技術】
【0002】
5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)は、非常に薬理学的に用途が広い神経伝達物質である。これは、滑面小胞体及び心筋、外分泌腺及び内分泌腺、中枢及び抹梢神経、metatopoietic細胞並びに免疫系の活性化及び/又は阻害を誘導する(総説として、Fozard & Sazenam 1991; Serotonin: Molecular Biology, Receptors and Functional Effects, Basel, Birkhauserを参照されたい)。当該用途の根拠は、そのうちの7つが一般的に遺伝的な第二のメッセージ結合及び薬理学的評価に基いて認識されている複数の受容体部位の存在である(Hoyer et al., 1994; Pharmacol Rev, 46, 157-203)。5−HT受容体は、G蛋白質によってそのエフェクタ系と結合されていないモノ−及びジ−アミン神経伝達物質受容体の中では、類をみない。むしろ、それは、リガンドゲートイオンチャンネル(Derkach et al., 1989; Nature, 339, 706-709)であり、G蛋白質結合受容体に関して典型的に予想されるよりも低い分子量の複数サブユニットから形成される。
【0003】
強力で、選択的かつ特定の5−HT受容体アンタゴニストの開発によって、中枢作用を示唆する齧歯動物及び霊長類における行動結果が証明されている(Costall et al., 1990; Pharmacol Ther, 47, 181-202)。ヒト脳組織のオートラジオグラフ研究は、前脳及び延髄における5−TH結合部位が、本質的に、ラット研究で観察した構造と同一の構造中に存在することを示した。CNS障害の様々な動物モデルにおける当該アンタゴニストの効果は、化学療法による嘔吐、不安症、精神分裂症、精神病、痴呆、薬物依存、カルチノイド症候群に関連する下痢及び疼痛の治療のための用途を示唆している。
【0004】
ニコチンアセチルコリン受容体(nAChRs)はまた、中枢神経系(CNS)活性に多大な役割を演じる。特にそれらは、認識、学習、憂鬱、情動及び神経保護に関与することが知られている。ニコチンアセチルコリン受容体には様々な種があり、それぞれはCNS機能の調節において異なった役割を有するように見える。ニコチンは全てのかかる受容体に作用し、様々な活性を有する。不幸なことに、当該活性のうちの全てが望ましいわけではない。事実、ニコチンの少なくとも望ましい性質は、その中毒的性質及び有効性と安全性との低比例関係である。本発明は、選択的なα7nAChRsアゴニストであり、同時に5−HTアンタゴニストである分子に関する。従って、本発明は、ほとんど副作用がない活性薬物分子である化合物を提供する。
【0005】
α7nAChRは、試験には難解な標的であることが判っている一つの受容体系である。天然のα7nAChRは、規定どおりには、ほとんどの哺乳動物の細胞株で安定に発現することができない(Cooper and Millar, J. Neurochem., 1997, 68 (5): 2140-51)。α7nAChRsの機能的試験を困難にする別の特徴は、当該受容体が急速に(100ミリ秒)不活性化されることである。当該急速不活性化は、チャンネル活性を測定するために使用できる機能的試験を大幅に制限する。
【0006】
近年、Eisele et al.は、キメラ受容体が、α7nAChRsのN−末端リガンド結合ドメイン間で形成され(Eisele et al., Nature, 366 (6454), p 479-83, 1993)、5−HTのC−末端ドメインを形成する細孔がゼノパス卵母細胞中に首尾良く発現し、同時にニコチンアゴニスト感受性を維持することを示した。Eisele et al.は、家禽(ヒヨコ)型のα7nAChR受容体のN末端及びマウス型の5−HT遺伝子のC末端を用いた。しかしながら、生理的条件下では、α7nAChRはカルシウムチャンネルであり、同時にナトリウム及びカリウムチャンネルである。実際、Eisele et al.は、ニワトリのα7nAChR/マウスの5−HTRは、カルシウムとして挙動するのではなく実際にはカルシウムイオンによって妨害される細孔要素を有する天然のα7nAChRと比べて著しく異なって挙動することを示している。国際公開第00/73431 A2号パンフレットは、5−HTRがカルシウムとして挙動するように設定されている試験条件を報告している。当該試験は、当該受容体においてアゴニスト活性の篩い分けに用いることができる。
【0007】
国際公開第00/73431 A2は、α7nAChR及び5−HTRにおいて化合物の親和性及び選択性を直接測定するために2種の結合試験を開示している。当該機能及び結合試験の併用は、α7nAChRの選択的アゴニストである化合物を同定するために用いることができる。
【0008】
近年、Macorは、トロペシトロンはα7ニコチンアゴニスト活性及び5−HTアンタゴニスト活性を有し、試験された他の化合物は両活性を有さなかったことを報告した(Macor et al., Bioorg & Med Chem Let 11 (2001) 319-321)。驚くべきことに、本発明の化合物がα7アゴニスト及び5−HTアンタゴニストであることを我々は発見した。当該両活性を有する化合物は、次の疾患又は症状の1以上の組み合わせを治療するために、α7アゴニスト又は5−HTアンタゴニストのいずれかであり両方でない化合物を超えるような類を見ない機会を提供する:精神分裂症、精神病、アルツハイマー病の認知及び注意不足症状、アルツハイマー病のような疾患に関連する神経変性、初老期痴呆(軽度の認識障害としても知られている)、老人性痴呆症、外傷性脳損傷、脳腫瘍に関連する行動及び認知問題、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、AIDS痴呆、ダウン症候群に関連する痴呆、レービーボディーに関連する痴呆、ハンチントン病、注意不足障害、注意不足過敏障害、鬱病、不安症、一般的不安障害、心的外傷後ストレス障害、破壊的及び反抗性障害を含む憂鬱及び情動障害、境界性人格障害、パニック障害、遅発性ジスキネジー、下肢静止不能症候群、ピック病、過食症及び拒食症を含む食物摂取量の調節異常(dysregulation)、禁煙及び薬物依存停止に関連する禁断症候群、ジル・デ・ラ・トゥーレット症候群、加齢黄斑変性症、視神経症、疼痛に関連する症状、化学療法による嘔吐減少、偏頭痛、線維筋肉痛、過敏性腸症候群、又はカルチノイド症候群に関連する下痢。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、α7ニコチンアゴニスト活性及び5HTアンタゴニスト活性の両方を有する式Iの化合物を開示する。下記式Iの化合物は、
【0010】
【化1】

【0011】
{式中、アザビシクロは、下記式:
【0012】
【化2】

【0013】
[式中、各Rは独立にH、アルキル又は置換アルキルであり;RはH、アルキル又は置換アルキルであり;kは1又は2である、但し、kが2の場合、Rの1つはH以外である;RはH、アルキル又はアミノ保護基であり;Wは、下記式:
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、WはCH又はNであり;WはO、N(R)、N(C(O)R)又はSであり;WはO、N(R)、N(C(O)R)又はSであり;RはH、F、Cl、Br、I、アルキル、置換アルキル又はアルキニルであり;各Rは独立にH又はアルキル、又は価数が3までならば、−OH、−CN、NH、−NO、−CF、F、Cl、BrもしくはIから独立して選ばれる置換基によって場合により置換されていてもよいアルキルである。)]
で表される。}
で表される化合物及びその薬学的に許容される塩である。
【0016】
本発明の実施態様は、次の1以上の組み合わせを含む。本発明の一実施態様は、疾患又は症状を治療するために薬物を処置又は調製するための式Iの化合物の使用を提供し、ここで当該疾患、障害及び/又は症状は次のいずれかの1以上の組み合わせである:精神分裂症、精神病、アルツハイマー病の認知及び注意不足症状、アルツハイマー病のような疾患に関連する神経変性、初老期痴呆(軽度の認識障害としても知られている)、老人性痴呆症、外傷性脳損傷、脳腫瘍に関連する行動及び認知問題、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、AIDS痴呆、ダウン症候群に関連する痴呆、レービーボディーに関連する痴呆、ハンチントン病、注意不足障害、多運動障害としても知られる注意不足過敏障害、鬱病、不安症、一般的不安障害、心的外傷後ストレス障害、破壊的及び反抗性障害を含む憂鬱及び情動障害、境界性人格障害、パニック障害、遅発性ジスキネジー、下肢静止不能症候群、ピック病、過食症及び拒食症を含む食物摂取量の調節異常(dysregulation)、禁煙及び薬物依存停止に関連する禁断症候群、ジル・デ・ラ・トゥーレット症候群、加齢黄斑変性症、視神経症(例えば緑内症及び糖尿病性網膜症)、疼痛に関連する症状(中枢及び抹梢)、化学療法による嘔吐減少、偏頭痛、線維筋肉痛、過敏性腸症候群、又はカルチノイド症候群に関連する下痢。
【0017】
別の特徴では、本発明は、式Iの化合物を抗精神病薬(抗精神病剤とも呼ばれる)と組み合わせて投与することによって、精神分裂症又は精神病に罹患している哺乳動物を治療することを含む。本発明の化合物及び抗精神病薬は、同時に又は離れた間隔で投与することができる。同時に投与される場合、本発明の化合物及び抗精神病薬は、単一の医薬組成物に組み込むことができる。あるいは、2つの独立した組成物、すなわち本発明の化合物を含むものと、抗精神病薬を含むものとを同時に投与することができる。
【0018】
本発明はまた、本発明の化合物、遊離塩基又は薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物、及び特定の疾患を治療する方法を含む。
【0019】
本発明の更なる実施態様は、本発明の化合物、又は当該化合物を含む医薬組成物の治療上有効量を哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0020】
式Iの化合物の別の群は、RがHである化合物を含む。式Iの化合物の別の群は、RがH又はアルキルである化合物を含む。式Iの化合物の別の群は、Rがアルキルである化合物を含む。式Iの化合物の別の群は、Rがメチルである化合物を含む。式Iの化合物の別の群は、Rが置換アルキルである化合物を含む。式Iの化合物の別の群は、Rがベンジル(フェニルで置換されたメチル)である化合物を含む。
【0021】
式Iの化合物の別の群は、アザビシクロがI、II、III又はIVである化合物を含む。式Iの化合物の別の群は、Wが(a)、(b)又は(c)である化合物を含む。
【0022】
式Iの化合物の別の群は、各RがHである化合物を含む。式Iの化合物の別の群は、一つのRがHであり、かつ他のRがアルキル又は置換アルキルのいずれか一つを含有する化合物を含む。式Iの化合物の別の群は、各Rが独立にアルキル又は置換アルキルのいずれか一つである化合物を含む。
【0023】
式Iの化合物の別の群は、RがHである化合物を含む。式Iの化合物の別の群は、Rがアルキルである化合物を含む。式Iの化合物の別の群は、Rがアミノ保護基である化合物を含む。
【0024】
式Iの化合物の別の群は、W及びWが独立に次:O、N(R)、N(C(O)R)又はSのいずれかの1以上である化合物を含む。式Iの化合物の別の群は、RがHである化合物を含む。式Iの化合物の別の群は、Rが、−OH、−CN、NH、−NO、−CF、F、Cl、BrもしくはIから独立して選ばれる価数が3までの置換基によって、場合により置換されていてもよいアルキルである化合物を含む。
【0025】
式Iの化合物の別の群は、Rが次:H、F、Cl、Br、I、アルキル、置換アルキル又はアルキニルのいずれかの1以上である化合物を含む。Rは、F、Cl、Br、I、低級アルキルを含むアルキル、低級置換アルキルを含む置換アルキル又は低級アルキニルを含むアルキニル、例えば限定されないが、RはF、Cl、Br、I又は低級アルキルを含むアルキル;RはBr;Rは低級アルキルを含むアルキル;あるいはRはi−プロピルであることが好ましい。
【0026】
式Iの化合物の別の群は、WがCHであり、かつW、W、R、R、R、R及びRが本明細書で記載された通りである化合物を含む。式Iの化合物の別の群は、WがNであり、かつW、W、R、R、R、R及びRが本明細書で記載された通りである化合物を含む。当業者は、アルキル、置換アルキル又はアルキニルが許可される場合、それぞれ低級アルキル、低級置換アルキル又は低級アルキニルが許可されることを理解するだろう。
【0027】
別の特徴では、本発明は、式Iの化合物を投与する又は式Iの化合物を含む薬物を調製することによって、抗精神病薬と組み合わせて、精神分裂症又は精神病に罹患している哺乳動物を治療する方法を含む。式Iの化合物及び抗精神病薬は、同時に又は離れた間隔で投与することができる。同時に投与する場合、式Iの化合物及び抗精神病薬は、単一の医薬組成物に組み込むことができる。あるいは、2つの分離組成物、すなわち式Iの化合物を含むものと抗精神病薬を含むものは、同時に投与することができる。
【0028】
アザビシクロがIである式Iの化合物は、キヌクリジン環に不斉中心を有する。本発明の化合物は、3R配置、2S,3R配置又は3S配置を有するキヌクリジンを含み、またラセミ混合物及び種々の程度の立体化学的純度を含む。例えば、限定されないが、式Iの化合物は下記式:
【0029】
【化4】

【0030】
[式中、アザビシクロ(i)はラセミ混合物であり;(ii)はC3が3Rの立体化学を有し;(iii)はC3及びC2が各々3R、2Sの立体化学を有し;(iv)C3が3Sの立体化学を有し;又は(v)はラセミ混合物であり;かつ、(iii)及び(v)に関し、Rは本明細書で議論されたいずれかの定義又は特定の値を有する。]
を含む立体特異性を有する化合物を含む。
【0031】
アザビシクロがIIIである式Iの化合物は、多数の立体化学的配置を示すことができる7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に不斉中心を有する。
【0032】
【化5】

【0033】
エキソ及びエンドの語は、二環系の橋(頭橋位でない)上にある相対的な置換基の配置を記載する立体化学的接頭語である。もし置換基がより大きな他の橋方向に向いているならば、それはエンドである。もし置換基がより小さな橋方向に向いているならば、それはエキソである。炭素原子上の置換基によって、エキソ及びエンド方向は、異なった立体異性体を与えることができる。例えば、炭素原子1及び4が水素原子で置換され、炭素原子2が窒素原子を含む種に結合されている場合には、エンド方向は、一対のエナンチオマー:1S,2S,4R異性体又はそのエナンチオマー1R,2R、4S異性体のいずれかの可能性を生じる。同様に、エキソ方向は、ジアステレオマーであり、エンド異性体:1R,2S、4S異性体又はそのエナンチオマーである、1S,2R,4R異性体のいずれかに関してC−2エピマーである別の対の立体異性体の可能性を生じる。本発明の化合物は、エキソ方向にある。例えば、R、RがいずれもHである場合、絶対立体化学は、エキソ−(1S,2R,4R)である。
【0034】
アザビシクロがIIIである本発明の化合物は、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン環のC−2炭素原子にエキソ方向、C−1炭素原子にS配置、及びC−2とC−4炭素原子にR配置を有する。予期しないことに、本発明の化合物は、エキソ2R立体化学のない化合物に比較してかなり高い活性を示す。例えば、エキソ2R配置を有する化合物の、他の立体化学的配置を有する化合物に対する活性比率は、約100:1より大きいだろう。立体化学的純度ができる限り高いことが望ましいが、絶対純度は必要とされない。例えば、医薬組成物は、各化合物がエキソ2R配置である1以上の化合物、又はエキソ2R及び他の配置を有する化合物の混合物を含むことができる。化合物の混合物において、エキソ2R以外の立体化学配置を有する当該種は、希釈剤として働き、医薬組成物の活性を減じる傾向がある。典型的には、化合物の混合物を含む医薬組成物は、他の配置に比較してエキソ2R配置を有する種をかなりの比率で含む。
【0035】
式Iの化合物は、[2.2.1]アザ二環性環上のC3及びC4に不斉中心を有する。本発明の範囲は、エンド−4S、エンド−4R、エキソ−4S、エキソ−4R:
【0036】
【化6】

【0037】
である式Iの別々の立体異性体を含む。エンド異性体は、[2.2.1]アザ二環性化合物のC3にある水素原子でない置換基が2つの存在している橋のより大きい橋方向に突き出ている異性体である。エキソ異性体は、[2.2.1]アザ二環性化合物のC3にある水素原子でない置換基が2つの存在している橋のより小さい橋方向に突き出ている異性体である。従って、4種の別個の異性体:エキソ−4(R)、エキソ−4(S)、エンド−4(R)及びエンド−4(S)が存在し得る。アザビシクロがIIである場合の式Iの化合物のいくつかの実施態様は、Rが存在しないか(kが0)又はC2もしくはC6にある;あるいは、アザビシクロIIがエキソ−4(S)立体化学であり、かつRが本明細書で議論されたいずれかの定義を有し、本明細書で議論されたいずれかの炭素原子、例えばC2又はC6で結合されている、ラセミ混合物を含む。
【0038】
式Iの化合物は、[3.2.1]アザ二環性環のC3及びC5に不斉中心を有する。本発明の範囲は、エンド−3S,5R、エンド−3R,5S、エキソ−3R,5R、エキソ−3S,5S:
【0039】
【化7】

【0040】
である式Iの別個の立体異性体を含む。式Iの化合物の別の群は、次:
【0041】
【化8】

【0042】
の1以上又はその組み合わせを含み、ここでアザビシクロは3R、5Rの立体化学を含むか、あるいはラセミ混合物であり、各Rは存在しても存在しなくてもよく、本明細書で議論されたいずれかの定義又は特定の値を有する。
【0043】
立体選択的合成及び/又は反応生成物を好適な精製工程に供することにより、実質的に純粋な原料を得る。光学的に純粋な原料を製造するための好適な立体選択的合成方法は、ラセミ混合物を光学的に純粋な分画に精製するための方法として当該分野で周知である。
【0044】
上で特定された立体化学を有する本発明の化合物は、異なったレベルの活性を有し、変換可能な置換基のための特定の組の値に関し、ある異性体が他の異性体よりも好ましいことがある。立体化学的純度はできる限り高いことが望ましいが、絶対純度は必要とされない。実質的に光学的に純粋な原料を製造するために、立体選択的合成を実施し及び/又は反応生成物を好適な精製工程に供することが好ましい。光学的に純粋な原料を製造するための好適な立体選択的合成方法は、ラセミ混合物を光学的に純粋な分画に精製するための方法として、当該分野で周知である。
【0045】
本発明の更なる特徴及び実施態様は、実施例及び添付の請求の範囲と組み合わせることにより、次の詳細な説明の総説から当業者に明らかであろう。本発明は種々の形態での実施態様が可能であるが、本開示が例示に過ぎず、本明細書に記載された特定の実施態様に本発明を限定するものではないことを理解して、本発明の特定の実施態様を以下に記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
驚くべきことに、式Iの化合物はα7ニコチンアゴニスト活性及び5HTアンタゴニスト活性の両方を有することを、我々は発見した。式Iの化合物は、
【0047】
【化9】

【0048】
{式中、アザビシクロは、下記式:
【0049】
【化10】

【0050】
[式中、各Rは独立にH、アルキル又は置換アルキルであり;RはH、アルキル又は置換アルキルであり;kは1又は2である、但し、kが2の場合、Rの1つはH以外である;RはH、アルキル又はアミノ保護基であり;Wは、下記式:
【0051】
【化11】

【0052】
(式中、WはCH又はNであり;WはO、N(R)、N(C(O)R)又はSであり;WはO、N(R)、N(C(O)R)又はSであり;RはH、F、Cl、Br、I、アルキル、置換アルキル又はアルキニルであり;アルキルは、1〜6の炭素原子を有する直鎖−及び分岐−鎖部分であり;置換アルキルは、F、Cl、Br又はIから独立に選ばれる1〜3の置換基を有し、更に場合により、−CN、−NO、−CF、−OR、−SR、−S(O)、−S(O)R、−OS(O)、−N(R、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)OR、−C(O)N(R、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)N(R、−S(O)N(R、−N(R)S(O)又はフェニルから選ばれる1置換基を有していてもよいアルキルであり、ここで、フェニルは、場合によりF、Cl、Br、I、−CN、−NO、−CF、−OR、−SR、−S(O)、−S(O)R、−OS(O)、−N(R、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)OR、−C(O)N(R、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)N(R、−S(O)N(R、−N(R)S(O)から独立に選ばれる4までの置換基によって置換されていてもよい;低級アルキルは、1〜4の炭素原子を有する直鎖−及び分岐−鎖部分であり;低級置換アルキルは、F、Cl、Br又はIから独立に選ばれる1〜3の置換基を有し、更に場合により、−CN、−NO、−CF、−OR、−SR、−S(O)、−S(O)R、−OS(O)、−N(R、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)OR、−C(O)N(R、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)N(R、−S(O)N(R、−N(R)S(O)又はフェニルから選ばれる1置換基を有していてもよいアルキルであり、ここで、フェニルは、場合によりF、Cl、Br、I、−CN、−NO、−CF、−OR、−SR、−S(O)、−S(O)R、−OS(O)、−N(R、−C(O)R、−C(S)R、−C(O)OR、−C(O)N(R、−N(R)C(O)R、−N(R)C(O)N(R、−S(O)N(R、−N(R)S(O)から独立に選ばれる4までの置換基によって置換されていてもよい;アルキニルは、2〜4の炭素原子を有し、かつ少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を有する直鎖−及び分岐−鎖部分であり;低級アルキニルは、2〜3の炭素原子を有し、かつ少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を有する直鎖−及び分岐−鎖部分であり;各Rは、独立にH又は−OH、−CN、NH、−NO、−CF、F、Cl、BrもしくはIから独立して選ばれる価数が3までの置換基によって、場合により置換されていてもよいアルキルである。)
で表される。]}
で表される化合物及びその薬学的に許容される塩である。
【0053】
本発明の化合物は、次のいずれかの1以上を治療するために薬物を処置し又は調製するために有用である:筋萎縮性側索硬化症、AIDS痴呆、ダウン症候群に関連する痴呆、レービーボディーに関連する痴呆、ハンチントン病、注意不足障害、注意不足過敏障害、不安症、一般的不安障害、心的外傷後ストレス障害、破壊的及び反抗性障害を含む憂鬱及び情動障害、境界性人格障害、パニック障害、遅発性ジスキネジー、下肢静止不能症候群、ピック病、過食症及び拒食症を含む食物摂取量の調節異常(dysregulation)、禁煙及び薬物依存停止に関連する禁断症候群、ジル・デ・ラ・トゥーレット症候群、加齢黄斑変性症、視神経症、疼痛に関連する症状、化学療法による嘔吐減少、偏頭痛、線維筋肉痛、過敏性腸症候群、又はカルチノイド症候群に関連する下痢。
【0054】
本発明はまた、本発明の化合物、当該活性化合物を含む医薬組成物及び特定の疾患を治療するための方法を含む。
【0055】
当業者に周知の略語を用いることができる(例えば、フェニルについて「Ph」、メチルについて「Me」、エチルについて「Et」、時間又は数時間について「h」、室温について「rt」又は「RT」及び分又は数分について「min」)。
【0056】
全ての温度は摂氏温度である。室温は15〜25℃の範囲内である。Eqは等価を言う。AChRは、アセチルコリン受容体を言う。nAChRはニコチン作動性アセチルコリン受容体を言う。前老人性痴呆症(pre-senile dementia)は、穏やかな認識欠陥としても知られている。5HTRはセロトニン型3受容体を言う。α−btxはα−ブンガロトキシンを言う。FLIPRは、ハイスループット・ホールセル試験において細胞性蛍光を正確に測定するために設計されたMolecular Devices,Inc.によって市販されている装置を言う(Schroeder et al., J. Biomolecular Screening, 1 (2), p 75-80, 1996)。TLCは薄層クロマトグラフィーを言う。HPLCは高速液体クロマトグラフィーを言う。MeOHはメタノールを言う。EtOHはエタノールを言う。IPAはイソプロピルアルコールを言う。THFはテトラヒドロフランを言う。DMSOはジメチルスルホキシドを言う。DMFはジメチルホルムアミドを言う。EtOAcは酢酸エチルを言う。TMSはテトラメチルシランを言う。TEAはトリエチルアミンを言う。DIEAはジイソプロピルエチルアミンを言う。MLAはメチリカコニチン(methyllycaconitine)を言う。エーテルはジエチルエーテルを言う。MgSOは硫酸マグネシウムを言う。NaHCOは炭酸水素ナトリウムを言う。KHCOは炭酸水素カリウムを言う。CHCNはアセトニトリルを言う。HATUはO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェートを言う。
【0057】
種々の炭化水素含有部分の炭素原子含有量は、当該部分中の最小及び最大炭素原子数を設計する接頭語によって表される、すなわち接頭語Ci−jは整数「i」から整数「j」の部分を包括的に示す。従って、例えばC1−6アルキルは、1〜6の炭素原子のアルキルを言う。ハロゲンはF、Cl、Br又はIである。ハロ及びハロゲンは交換して用いることができる。哺乳動物はヒト及び他の哺乳動物を言う。飽和食塩水は、水溶性飽和塩化ナトリウム溶液を言う。IRは赤外分光法を言う。LvはCl、OH又は混合無水物を含む分子内の脱離基を言う。
【0058】
アミノ保護基は、カルボベンジルオキシ(CBz)、tert−ブトキシカルボニル(BOC)等を含むが、これらに限定されない。他の好適なアミノ保護基の例は、当業者に知られており、Theodora Greene and Peter Wuts著の「Protective Groups in Organic Synthesis」 3rd Editionに見ることができる。
【0059】
NMRは核磁気共鳴スペクトルを言い、化学シフトはTMSからppm(δ)ダウンフィールドで記録される。
【0060】
MSは、m/e又はmass/電荷単位として表される質量分析法を言う。HRMSは、m/e又はmass/電荷単位として表される高分解質量分析法を言う。[M+H]+は、親+プロトンを含むイオンを言う。[M-H]+は、親-プロトンを含むイオンを言う。[M+Na]+は、親+ナトリウムイオンを含むイオンを言う。[M+K]+は、親+カリウムイオンを含むイオンを言う。ELは電子衝撃を言う。ESIは電子スプレイイオン化を言う。CIは化学イオン化を言う。FABは高速原子衝撃を言う。
【0061】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態でもよい。「薬学的に許容される塩」の語は、無機塩及び有機塩を含む薬学的に許容される非毒性塩基から調製される塩及び無機酸及び有機酸から調製される塩を言う。無機塩基から得られる塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛等を含む。薬学的に許容される有機非毒性塩基から得られる塩は、第一、第二及び第三アミン、天然由来の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、レジン、プロカイン、プリン、セオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン等を含む。無機酸から得られる塩は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸、亜リン酸等の塩を含む。薬学的に許容される有機非毒性酸から得られる塩は、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、マレン酸、アジピン酸及びクエン酸等のC1−6アルキルカルボン酸、ジカルボン酸及びトリカルボン酸、並びにトルエンスルホン酸等のアリール及びアルキルスルホン酸の塩を含む。
【0062】
本明細書で提供された化合物の「有効量」の語については、非毒性であって、望ましい効果を提供するための化合物(化合物類)の十分な量を意味する。投与される治療上有効化合物(化合物類)の量、及び本発明の化合物及び/又は組成物によって疾患症状を治療するための投薬計画は、年齢、体重、性別及び患者の病状、疾患の重大性、投与の経路及び頻度、並びに使用する特定の化合物(化合物類)を含む種々の要因に依拠し、そのため幅広く変化する。従って、正確な「有効量」を特定するのは不可能である、しかしながら、好適な有効量は当業者によって決定することができるだろう。当該組成物は、本発明の化合物の治療上有効量に加えて、周知の担体及び賦形剤を含む。
【0063】
本発明はまた、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される賦形剤を含む。当該医薬組成物は、治療上効果的な間隔で、直腸的、局所的、経口的、舌下的又は非経口的に投与する。当該医薬組成物は、一日に、前記哺乳動物の体重当たり、約0.001〜約100mg/kgの量で、本発明の化合物を送達するために投与する。当該医薬組成物はまた、一日に、前記哺乳動物の体重当たり、約0.1〜約50mg/kg、又はその中のいずれかの範囲、例えば前記哺乳動物の体重当たり、約0.1〜約20mg/kgの量で、本発明の化合物を送達するために投与する。日量は日に1〜4用量で投与することができる。
【0064】
医薬組成物はまた、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。当該医薬組成物は、治療上効果的な間隔で、前記化合物及び前記薬剤を独立に、直腸的、局所的、経口的、舌下的又は非経口的に投与する。当該医薬組成物は、一日に、前記哺乳動物の体重当たり、約0.001〜約100mg/kgの量で、本発明の化合物を送達するために投与する。当該医薬組成物はまた、一日に、前記哺乳動物の体重当たり、約0.1〜約50mg/kg、又はその中のいずれかの範囲、例えば前記哺乳動物の体重当たり、約0.1〜約20mg/kgの量で、本発明の化合物を送達するために投与する。日量は日に1〜4用量で投与することができる。
【0065】
式Iの化合物(化合物群)に加えて、治療的使用のための組成物は、1以上の非毒性で、かつ薬学的に許容される担体材料又は賦形剤を含んでもよい。本明細書の「担体」材料又は「賦形剤」の語は、治療薬剤を患者に送達するための担体及び/又は希釈剤及び/又はアジュバント又は媒質として用いられる、あるいは取り扱い性もしくは保存性を改善し又は当該組成物の投薬単位を経口投与用のカプセル剤もしくは錠剤のような離散型粒子に形成することを可能にする又は促進するために、医薬組成物に添加される、それ自身治療薬剤でないいずれかの物質を意味する。賦形剤は、希釈剤、崩壊剤、結合剤、接着剤、湿潤剤、ポリマー、潤滑剤、滑沢剤、不愉快な味もしくは香りを覆い隠す又は弱めるために添加される物質、香料、色素、芳香、及び組成物の概観を改善するために添加される物質を含むことができるが、これらは例示にすぎず、限定されない。許容される賦形剤は、ラクトース、ショ糖、デンプン粉末、アルカノイック酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸及び硫酸のナトリウム及びカルシウム塩、ゲラチン、アカシアガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン及び/又はポリビニルアルコールを含み、次に簡便な投与のために錠剤化又はカプセル化する。かかるカプセル剤又は錠剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース中に活性化合物を分散させて又は当業者に知られた他の方法で提供することができる制御された放出錠剤を含んでもよい。経口投与に関しては、医薬組成物は、例えば錠剤、カプセル剤、懸濁液又は液体の形態でもよい。必要ならば、他の活性成分を当該組成物中に含んでもよい。
【0066】
上記のように、経口投薬に加えて、本発明の組成物は、いずれかの好適な経路、例えば非経口的、舌下的、膣内的、直腸的経路によって、かかる経路に適用される医薬組成物の形態で及び意図した治療に効果的な用量で投与することができる。例えば、当該組成物は、非経口、例えば静脈内で、腹腔内で、皮下で、又は筋肉内で投与することができる。非経口投与に関しては、生理食塩水溶液、デキストロース溶液又は水を好適な担体として使用することができる。非経口投与のための製剤は、水溶性もしくは非水溶性等張殺菌注射液又は懸濁液の形態でもよい。当該溶液及び懸濁液は、経口投与のための製剤で使用するために記載された1以上の担体もしくは希釈剤を有する殺菌性粉末又は粒子から調製することができる。当該化合物は、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム及び/又は種々の緩衝液に溶解することができる。他のアジュバント及び投与方法は、医薬分野でよくかつ幅広く知られている。
【0067】
セロトニン型3受容体(5HTR)は、筋肉及びニューロンのnAChR、グリシン受容体及びγ−アミノ酪酸型A受容体を含む、リガンドゲートイオンチャンネルのスーパーファミリーのメンバーである。当該受容体スーパーファミリーの他のメンバーと同様に、5HTRは、α7nAChRと相当な程度の配列相同性を示すが、機能的には、2つのリガンド−ゲートイオンチャンネルは非常に明確に識別できる。例えば、α7nAChRは、急激に不活性化され、カルシウムに対して透過性が高く、及びアセチルコリン及びニコチンによって活性化される。一方、5HTRは、ゆっくりと不活性化され、カルシウムに対して比較的非透過性で、及びセロトニンによって活性化される。5HTR及びα7nAChR蛋白質はある程度の相同性を有するが、機能は非常に相違することを、当該実験は示唆する。実際、チャンネルの薬理学は非常に異なっている。例えば、オンダンセトロン、すなわち高選択的5HTRアンタゴニストは、α7nAChRにほとんど活性を有さない。反対もまた真実である。例えば、GTS−21、すなわち高選択的α7nAChRアゴニストは、5HTRにほとんど活性を有さない。
【0068】
α7nAChRは、α7サブユニットのホモペンタマーによって形成されるリガンド−ゲートCa++チャンネルである。α−ブンガロトキシン(α−btx)が当該ホモペンタマーのα7nAChRサブタイプに選択的に結合し、α7nAChRがα−btx及びメチリカコニチン(MLA)の高親和性結合部位を有することを、従来の研究では確立している。α7nAChRは、海馬、腹部被蓋領域及び基底核から視床皮質領域までの上昇コリン作用性突起に高レベルで現れる。α7nAChRアゴニストは、神経伝達放出を増加させ、認識、覚醒、注意、学習及び記憶を増大させる。
【0069】
ニコチンコリン作用性神経経路は、注意、学習及び記憶を含む認識機能の多くの重要な局面を制御することを、ヒト及び哺乳動物の薬理学的研究からのデータは確立している(Levin, E. D., Psychopharmacology, 108: 417-31, 1992; Levin, E. D. and Simon B. B., Psychopharmacology, 138: 217-30, 1998)。例えば、ニコチンはヒトの認識及び注意を増大させることはよく知られている。ABT−418はα4β2及びα7nAChRを活性化する化合物であり、アルツハイマー疾患及び注意不足の臨床試験において認識及び注意を改善する(Potter, A. et al., Psychopharmacology (Berl)., 142 (4): 334-42, Mar. 1999; Wilens, T. E. et al., Am. J. Psychiatry, 156 (12): 1931-7, Dec. 1999)。ニコチン及び選択的であるが弱いα7nAChRアゴニストが、齧歯動物及び非ヒト霊長類において認識及び注意を増大させることは明白である。
【0070】
放射性同位体でラベルされたアンタゴニストが使用できることにより、中枢5−HT受容体を直接的に証明することができた(Kilpatrick et al., 1987; Nature, 330, 746-748)。ヒト脳組織のオートラジオグラフ研究は、前脳構造及び延髄における5−HT結合部位が、ラットの研究で観察された同一構造中に本質的に存在していることを示した。海馬内では、特異的結合は、歯状回の分子状及び顆粒状層並びにアモンホーン(Ammon’s horn)のCA1、CA2及びCA3部分体の錐体状層に限定される。いくつかの特異的結合はまた、扁桃及び内側嗅皮質(entorhinal cortex)にも見られたが、基底核、新皮質、視床、小脳及び橋は、当該受容体を外見上欠いていた(Waeberm, et al., 1989; Neuroscience, 31, 393-400; Parker et al., 1996; J Neurol Sci, 144, 119-127)。当該受容体の辺縁系の位置は、人間の気分、情動及び認識機能の調節意志と一致しているが、脳幹にある受容体は、当該化合物の抗嘔吐作用を与える。結合部位はまた、神経ペプチドの放出及びG疼痛伝達調節をするGABA作動性経路の活性化の制御機会を与える後角の表層に見られる。
【0071】
α7及び5−HT受容体が共存している領域、例えば海馬、striatum、側位、視床下部等の前脳領域では、α7及び5−HTアンタゴニストである化合物は、治療上の有用性を生じる、アセチルコリン、ドーパミン、5−HT、ノルエピネフリン及び成長因子活性の調節の類のない調和を与える。前記化合物は、精神分裂症、精神病、アルツハイマー病の認知及び注意不足症状、アルツハイマー病のような疾患に関連する神経変性、初老期痴呆(軽度の認識障害としても知られている)、老人性痴呆症、外傷性脳損傷、脳腫瘍に関連する行動及び認知問題、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、AIDS痴呆、ダウン症候群に関連する痴呆、レービーボディーに関連する痴呆、ハンチントン病、注意不足障害、注意不足過敏障害、鬱病、不安症、一般的不安障害、心的外傷後ストレス障害、破壊的及び反抗性障害を含む憂鬱及び情動障害、境界性人格障害、パニック障害、遅発性ジスキネジー、下肢静止不能症候群、ピック病、過食症及び拒食症を含む食物摂取量の調節異常(dysregulation)、禁煙及び薬物依存停止に関連する禁断症候群、ジル・デ・ラ・トゥーレット症候群、加齢黄斑変性症、視神経症、疼痛に関連する症状、化学療法による嘔吐減少、偏頭痛、線維筋肉痛、過敏性腸症候群、又はカルチノイド症候群に関連する下痢を含むがこれらに限定されない中枢神経系のいずれかの多くの疾患もしくは症状の1以上又はそれらの組み合わせの治療に有用である。
【0072】
選択的α7nAChRアゴニストは、FLIPRでの機能試験を用いて検出することができる(国際公開第00/73431 A2号パンフレットを参照されたい)。FLIPRは、30分までの間、1秒間に2回の速度で、96又は384ウェルプレートの各ウェルの蛍光シグナルを読むように設計されている。当該試験は、α7nAChR及び5HTRの機能性薬理学的特性を厳密に測定するために使用することができる。かかる試験を実施するために、薬物標的としてα7/5−HTRチャンネルを用いてα7nAChRの機能的な形態を発現した細胞株、及び機能的5HTRを発現した細胞株を使用する。両方の場合では、リガンド−ゲートイオンチャンネルがSH−EP1細胞中に発現した。両イオンチャンネルは、FLIPR試験で強力なシグナルを生成することができる。
【0073】
精神分裂症は、積極的及び消極的症状群を発症する遺伝的及び非遺伝的危険因子によって引き起こされる複雑な多因子疾患である。積極的症状は、妄想及び幻覚を含み、消極的症状は、感情、認識及び情報処理手続きの不足を含む。当該疾患では、主な病原性要因として簡単な生物学的要素は現れない。実際に、精神分裂症は、多くの低浸透度危険因子の組み合わせによって引き起こされる症候群である。ドーパミン受容体アンタゴニストが、妄想及び幻覚等の精神分裂症の明らかな精神病的特徴(積極的症状)の治療に効果的であることが薬理学的研究によって確立している。クロザピン、すなわち「異型」の抗精神病薬は、当該疾患の積極的及びいくつかの消極的症状の治療に効果的であるため、新規である。クロザピンの薬物としての利用性は、継続使用が顆粒球減少及び発作を引き起こすため、大幅に制限されている。新世代異型抗精神病剤は、毒性を減少させて、クロザピンの治療上のいくつかの利益を保持するが、幅広い程度で体重増加を示すことが知られている。精神分裂症の消極的症状を治療するために効果的な他の抗精神病薬はない。認識機能の回復が、精神分裂症患者の成功した臨床的及び機能的結果の最善の予言者であるため、かかることは意義深い(Green, M. F., Am J Psychiatry, 153: 321-30, 1996)。拡大解釈すれば、当該疾患を有する患者に精神的健康のより良い状態を回復させるために、精神分裂症の認識障害を治療するためのより優れた薬物が求められていることは明白である。
【0074】
精神分裂症の認識不足の一つの局面は、感覚ゲートの聴覚事象関連電位(P50)試験を用いて測定することができる。当該試験では、海馬のニューロンの活動の脳波(EEG)記録を、一連の聴覚の「カチカチという音」に対する対象の応答を測定するために用いることができる(Adler, L. E. et al., Biol, Psychiatry, 46: 8-18, 1999)。健常人は、二番目のカチカチという音に対してよりも、最初のカチカチという音に対して大きく反応する。一般的に、精神分裂症及び精神病の患者は、ほとんど同時に、両方のカチカチという音に反応する(Cullum, C. M. et al., Schizophr. Res., 10: 131-41, 1993)。当該データは、精神分裂症が不要な情報を「ろ過する」又は無視することができないことを反映している。感覚ゲート不足は、当該疾患の重要な病理学的特徴の一つと考えられる(Cadenhead, K. S. et al., Am. J. Psychiatry, 157: 55-9, 2000)。ニコチンが精神分裂症の感覚不足を標準化することを多数の研究は示している(Adler, L. E. et al., Am. J. Psychiatry, 150: 1856-61, 1993)。感覚ゲートに対するニコチンの効果がα7nAChRによることを薬理学的研究は示している(Adler, L. E. et al., Schizophr. Bull., 24: 189-202, 1998)。実際に、精神分裂症が海馬においてα7nAChR受容体の50%未満を有し、そのため、α7nAChR機能の部分的喪失の理論的根拠を与えていることを生化学的データは示している(Freedman, R. et al., Biol. Psychiatry, 38: 22-33, 1995)。興味深いことに、α7nAChR遺伝子のプロモーター領域が精神分裂症の感覚ゲート不足と強く関連していることを遺伝子データは示している(Freedman, R. et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA, 94 (2): 587-92, 1997; Myles-Worsley, M. et al., Am. J. Med. Genet, 88 (5): 544-50, 1999)。現在まで、α7nAChRのコード領域では突然変異は全く同定されなかった。従って、精神分裂症は、非精神分裂症と同じα7nAChRを発現する。
【0075】
本発明の化合物は、α7nAChRアゴニストであり、幅広い疾患を治療するために用いることができる。例えば、それらは、精神分裂症又は精神病の治療に使用することができる。
【0076】
精神分裂症は、複数の局面を有する疾患である。現在のところ、入手可能な薬物は一般的に妄想等の精神分裂症の積極的な局面を制御することを目的としている。一つの薬物、クロザピンは、精神分裂症に関連する症状の広域スペクトルを目的としている。当該薬物は、多くの副作用を有し、そのため多くの患者には適していない。従って、精神分裂症に関連する認識及び注意不足を治療する薬物が求められている。同様に、分裂情動性障害に関連する認識及び注意不足、又は精神分裂症患者の肉親に見られる同様な症状を治療するための薬物が求められている。
【0077】
精神病は、患者の現実認識における全体的な欠陥を特徴とする精神的障害である。当該患者は、妄想及び幻想に罹患し、話が支離滅裂であるかもしれない。その行動は波立っており、その周りの人には理解されにくいことが多い。従来は、精神病という語は、上で示した厳密な定義を充たさない多くの症状に使用されてきた。例えば、気分障害は精神病と呼ばれた。
【0078】
種々の抗精神病薬がある。慣用的な抗精神病薬は、クロロプロマジン、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモザイド、チオリダジン、チオチキセン及びトリフルオペラジンを含む。当該薬物は全てドーパミン2受容体に親和性を有する。
【0079】
当該慣用的な抗精神病薬は、鎮静、体重増加、震え、高プロラクチンレベル、静座不能(運動情動不安)、ジストニー及び筋肉剛性を含む種々の副作用を有する。当該薬物はまた、遅発性ジスキネジーを引き起こす。不幸なことに、精神分裂症患者の約70%が慣用的抗精神病薬に応答するに過ぎない。当該患者については、異型抗精神病薬を使用することができる。
【0080】
異型抗精神病薬は、一般的に、精神病の積極的症状を軽減することができると同時に、慣用的抗精神病薬よりも大幅に精神病の消極的症状を改善することができる。当該薬物は神経認識欠陥を改善できる。錐体外路系(運動)副作用は、おそらく異型抗精神病薬では起こらず、従って当該異型抗精神病薬は、遅発性ジスキネジーを引き起こす危険性が低い。最後に、当該異型抗精神病薬はプロラクチンの上昇をほとんど又は全く引き起こさない。不幸なことに、当該薬物は、副作用がなくはない。当該薬物は各々異なった副作用を生ずるが、分類すると、当該副作用は顆粒球減少;発作、体重増加、眠気、目眩、頻脈の増加危険性、射精量の減少及びQTc間隔のやや延長を含む。
【0081】
精神分裂症等の疾患の複数症状を治療するための併用療法では、式Iの化合物及び抗精神病薬(典型的及び異型)は、同時に又は離れた間隔で投与することができる。同時に投与する場合には、式Iの化合物及び抗精神病薬は、例えば医薬併用療法組成物のような単一の医薬組成物に組み込むことができる。あるいは、2つの別々の組成物、すなわち式Iの化合物を含むものと抗精神病薬を含む他のものは同時に投与することができる。抗精神病薬の例は、上記のものに加えて、トラジン、メラリル、トリラフォン、ナバン、ステラジン、オエルミチル、プロリキシン、リスペルダール、ジプレクサ、セロクイル、ゼルドックス、アセトフェナジン、カーフェナジン、クロルプロチキセン、ドロペリドール、ロキサピン、メソリダジン、モリンドン、オンダンセトロン、ピモザイド、プロクロルペラジン、プロマジン、ゲオドン、カイエチピン(Quietipine)及びアリプレパロールを含むが、これらに限定されない。
【0082】
医薬併用療法組成物は、上記の式Iの化合物の治療上有効量及び抗精神病薬の治療上有効量を含むことができる。当該組成物は、通常の賦形剤、希釈剤又は担体と共に製剤化することができ、錠剤に圧縮し、あるいは簡易な経口投与のための又は筋肉内もしくは静脈内経路によって投与されるためのエリキシル又は溶液に製剤化することができる。当該化合物は、直腸的、局所的、経口的、舌下的又は非経口的に投与することができ、徐放剤形等として製剤化することができる。
【0083】
別々に投与する場合には、式Iの化合物及び抗精神病薬を含む組成物の治療上有効量は、異なったスケジュールに従って投与する。2つの投与間の時間が治療上有効な間隔内にある限り、一方を他方の前に投与することができる。治療上有効な間隔は、(a)式Iの化合物又は(b)抗精神病薬のいずれか一つがヒトに投与した時から始まり、(a)及び(b)の組み合わせが精神分裂症又は精神病の治療に有益な結果を与える限界を最後とする期間である。式Iの化合物又は抗精神病薬の投薬方法は、変化させることができる。従って、薬剤又は両薬剤は、直腸的、局所的、経口的、舌下的又は非経口的に投与することができる。
【0084】
議論したように、本発明の化合物は、α7nAChRアゴニスト及び5−HTアンタゴニストである。そのため、本発明の別の局面として、本発明の化合物は、アルツハイマー病の認知及び注意不足症状、アルツハイマー病のような疾患に関連する神経変性、初老期痴呆(軽度の認識障害としても知られている)、老人性痴呆症、外傷性脳損傷、脳腫瘍に関連する行動及び認知問題又はパーキンソン病を含む種々の疾患を治療するために使用することができる。
【0085】
アルツハイマー病は、認識及び注意不足を含む多くの局面を有する。現在のところ、当該不足は、コリンエステラーゼ阻害剤によって治療する。当該阻害剤は、アセチルコリンの衰退を遅延し、それによってコリン作動性神経系の作用を一般的に非特異的に増大させる。当該薬物は非特異的であるため、幅広い副作用を有する。従って、コリン作動性経路の一部分を刺激し、それによって、コリン作動性経路の非特異的刺激によって生じる副作用なしに、アルツハイマー病に関連する認識及び注意不足を改善する薬物が求められている。
【0086】
神経変性は、アルツハイマー病等の疾患に関連する一般的な問題である。現存の薬物は当該疾患の症状のいくつかを治療するが、当該疾患の根底にある病理を制御するものではない。従って、アルツハイマー病の進行を遅延することができる薬物を提供することが求められるだろう。
【0087】
初老期痴呆(軽度の認識欠陥)は、注意不足の問題よりも記憶欠陥及びその他の点では損なわれていない認識機能に関する。軽度の認識欠陥は、軽度の認識欠陥が患者の年齢に伴う記憶喪失というより持続的な厄介な問題を含む点で、老人性痴呆症とは区別される。現在、疾患の特定が若干新しいために、軽度の認識欠陥の治療に特別に特定された薬物はない。そのため、軽度の認識欠陥に関連する記憶の問題を治療するための薬物が求められている。
【0088】
老人性痴呆症は、単純な病状ではない。しかしながら、この名前で分類される症状は頻繁に認識及び注意不足を含む。一般的に、かかる不足は治療されない。従って、老人性痴呆症に関連する認識及び注意不足を改善するための薬物が求められている。
【0089】
外傷性脳損傷は、頭の急激な身体的打撃によって脳が損傷された場合に起こる。外傷性脳損傷の症状は、意識混濁及び他の認識問題を含む。そのため、意識混濁及び他の認識問題の症状を解決する必要がある。
【0090】
脳腫瘍は、頭蓋内に発見される組織の異常成長である。脳腫瘍の症状は、行動及び認識問題を含む。手術、放射線及び化学療法が腫瘍の治療に用いられるが、他の薬剤は関連する症状を処置するために必要である。そのため、行動及び認識問題を処置する必要がある。
【0091】
パーキンソン病は、震え、運動低下症及び筋肉硬直を特徴とする神経疾患である。現在、当該疾患の進行を止める治療法はない。従って、パーキンソン病を処置する医薬が求められている。
【0092】
議論したように、本発明の化合物は、α7nAChRアゴニスト及び5−HTアンタゴニストである。従って、本発明の化合物によって治療される他の疾患は、筋萎縮性側索硬化症、AIDS痴呆、ダウン症候群に関連する痴呆、レービーボディーに関連する痴呆、ハンチントン病、注意不足障害、注意不足過敏障害、不安症、一般的不安障害、心的外傷後ストレス障害、破壊的及び反抗性障害を含む憂鬱及び情動障害、境界性人格障害、パニック障害、遅発性ジスキネジー、下肢静止不能症候群、ピック病、過食症及び拒食症を含む食物摂取量の調節異常(dysregulation)、禁煙及び薬物依存停止に関連する禁断症候群、ジル・デ・ラ・トゥーレット症候群、加齢黄斑変性症、視神経症(例えば緑内障及び糖尿病性網膜症)、疼痛に関連する症状(中枢及び抹梢)、化学療法による嘔吐減少、偏頭痛、線維筋肉痛、過敏性腸症候群、又はカルチノイド症候群に関連する下痢を含む。
【0093】
筋萎縮性側索硬化症は、ルー・ゲーリック病としても知られ、脳及び脊髄中の特定の神経細胞が徐々に破壊し、自発行動の制御に否定的な影響を与える自律神経疾患として知られる疾患類に属する。現在、患者はかかる症状のいくつかの治療を受け、Riluzoleは患者の寿命を延長できることを示しているが、筋萎縮性側索硬化症の治療法はない。従って、当該疾患を治療するための医薬が求められている。
【0094】
後天性免疫不全症候群(AIDS)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染の結果引き起こる。当該ウイルスは特定の細胞を攻撃し、免疫、神経及び他の系の正常な機能を損なう。HIV感染は、限定されないが、AIDS痴呆として知られている思慮困難等の他の問題を引き起こす。従って、AIDSに罹患した人の意識混濁及び精神的衰弱を取り除く薬物が求められている。
【0095】
ダウン症候群に罹患した人は、その細胞の全てに又は少なくともいくつかに、21番目の染色体の過剰で重要部分を有する。ダウン症候群の成人は、アルツハイマー型痴呆の危険にあることが知られている。現在、ダウン症候群の治療法は知られていない。従って、ダウン症候群に関連する痴呆を処置する必要がある。
【0096】
レービーボディー痴呆は、脳の特定領域に見られるレービーボディーとして知られる異常構造を含む神経変性障害である。レービーボディー痴呆の症状は、挿話的な精神錯乱を伴う認識欠陥の変動を含むが、限定されない。現在、治療法は、パーキンソン及び精神科的症状の処置に関連する。しかしながら、震え又は筋肉運動喪失を制御する薬物は、現実には、レービーボディー痴呆の根底にある疾患を目立たせる。従って、レービーボディー痴呆を治療する医薬が求められている。
【0097】
脳の特定領域における遺伝的にプログラムされた神経変性は、ハンチントン病を引き起こす。ハンチントン病の初期症状は、気分変動、新しいことの学習障害又は事実の記憶障害を含む。ハンチントン病の症状を治療するために用いられるほとんどの薬物は、倦怠感、情動不安又は興奮性亢進等の副作用を含む。現在、ハンチントン病の進行を止める又は逆転する治療法はない。従って、ほとんど副作用のない、症状を処置する医薬が求められている。
【0098】
注意不足障害は、一般的に、悪用の可能性があるメチルフェニデート、すなわちアンフェタミン様分子で治療する。従って、注意不足障害を治療し、同時に現在使用されている薬物よりも副作用が少ない薬物を提供することが望ましい。
【0099】
多動障害としても知られている注意不足過敏障害(ADHD)はまた、全てのアメリカの子供の3〜5%がかかっている神経行動障害である。ADHDは、仕事を継続し、かつ年齢に適した抑制行動をとる人の能力を妨害することによって、認識のみ又は認識及び行動の両方に関連する。ADHDにはいくつかの型が存在する;主に不注意型、主に異常に活発−衝動型及び混合型。治療は、衝動及び異常活発を減じ、注意を増大させるように作用する、メチルフェニデート、デキストロアンフェタミン又はペモリン等の医薬を含んでもよい。ADHDに対する「治療」は現在のところ、存在しない。障害を有する子供は、それからほとんど脱却しない;そのため、好適な医薬が必要とされる。
【0100】
憂鬱は、一般住民の10%が罹っている気分障害であり、数ヶ月から2年を超える範囲で長さを変え、及び悲しみ、絶望及び落胆を含む感情の程度を変えることが明らかとなっている。複素環系抗鬱薬(HCA’s)は、現在最も多い抗鬱薬類であるが、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI’s)は、特定の種類の憂鬱に使用される。HCA’sの一般的副作用は、鎮静、口渇、性的不全及び体重増加である。器質脳疾患を有する老齢患者では、HCA’sの副作用はまた、発作及び行動的症状を含む。MAOI’sを用いる主な副作用は、節食及び薬物間相互作用から起こる。上記の代替療法は、記憶喪失の副作用を有する電気痙攣療法である。従って、ほとんど副作用のない薬剤が有用である。
【0101】
不安障害(顕著な不安又は恐怖的回避を伴う障害)は、精神科的疾患の治療においてumet医薬が必要とされる分野を代表する。不安の種々の疾患型についてはDiagnostic & Statistical Manual of Mental Disorders, IV (1994), pp 393-394を参照されたい。
【0102】
一般的不安障害(GAD)は、家族、健康又は仕事等の事項について心配する場合、心配する理由がなく、心配しないではいられない場合に起こる。アメリカ人口の約3〜4%は、一年を通してGADを有している。GADのほとんどは、子供期又は思春期に罹患することが多いが、大人になってから発症する場合もある。それは男性よりも女性に多い。現在、治療法は、認識−行動療法、休養療法及び筋肉の緊張を制御する生体フィードバック、並びにベンゾジアゼピン、イミプラミン及びバスピロン等の医薬を含む。当該薬物は、効果的であるが、全て副作用障害を有する。そのため、副作用がほとんどない、当該症状を処置する医薬が求められている。
【0103】
不安症はまた、直接的に患者を襲い又は患者が直面してきたであろう忘れられない衝撃的な出来事の記憶が引き金となる不安症の形態である、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を含む。当該障害は、一般的に、性的強姦、身体的強姦、戦争、不正、自然災害、車両災害、航空機墜落、人質状態又は死の収容所を含む忘れられない衝撃的な出来事の遺物に関連する。当該苦痛はまた、航空機墜落又は大量発砲の救助隊、悲惨な事故に直面した人、あるいは不意に愛する人をなくした人にも襲う。PTSDの治療は、認識−行動療法、集団心理療法及びクロナゼパム、ロラゼパム等の医薬、並びにフルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、キタロプラム及びフルボキサミン等の選択的セロトニン再取り込み阻害剤を含む。当該医薬は不安及び憂鬱を制御するのに役立つ。様々な種類の暴露療法(例えば系統的脱感作療法及び情動洪水法)は全てPTSD患者に用いられてきた。PTSDの暴露療法は、外傷の処理を促進する目的で、制御された条件下での外傷の反復回想を含む。従って、心的外傷後ストレス障害を治療する優れた医薬が必要とされる。
【0104】
憂鬱及び情動障害は、単極性鬱病及び二極性鬱病障害を含む広い群の疾患である。当該疾患は、3種の主な化合物群で治療する。第一群は、複素環系抗精神病薬(HCA’s)である。この群は、周知の三環性抗精神病薬を含む。憂鬱障害を治療するために使用される化合物の第二群は、特定の種類の疾患に使用されるモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI’s)である。第三の薬物は、リチウムである。HCA’sの一般的副作用は、鎮静及び体重増加である。器質脳疾患を注する老齢の患者では、HCA’sの副作用は発作及び行動的症状を含む。MAOI’sを用いる主な副作用は節食及び薬物間相互作用から起こる。リチウムを使用する良性の副作用は、体重増加、吐き気、下痢、多尿症、多渇症及び震えを含むが、限定されない。リチウムを用いる有毒な副作用は、継続的頭痛、精神錯乱を含み、発作及び心臓不整脈を引き起こす。従って、ほとんど副作用がなく、食物もしくは他の薬物との相互作用のない薬剤が使用できる。
【0105】
境界性人格障害は、二極性障害としてはよく知られておらず、それよりは一般的である。境界性人格障害を有する人は、感情調節障害を患っている。医薬は憂鬱又は思考歪曲等の特定の症状を治療するために使用される。
【0106】
パニックは、不安の急性で、急激かつ強烈な形態である。パニック発作は、身体的及び認識症状を伴う不連続期間の強烈な恐怖又は不安として定義されている。パニック発作の特徴である不安は、その断続性、ほとんどが発作性及びその典型的な深刻さの点で、一般化された不安とは区別される。パニック障害は、再発性パニック発作、予期神経症、広所恐怖症、心気症及び士気喪失/二次的憂鬱によって特徴付けられる。Schlegalら(1994; Eur Arch Psychia Clin Neuorsci, 244, 49-51)は、ロマゼニリSPECTを用いるパニック障害における減少GABA作動性活性を最初に報告した。当該減少は、後頭及び前頭で顕著であり、側頭に最大である。本発明は、5−HT受容体による不安を軽減し、アルファ7ニコチン作動性受容体活性によるGABA作動性状態を増大させるために相互作用する前記分子の相乗作用に関する。
【0107】
遅発性ジスキネジーは、慣用的な抗精神病薬の使用と関連する。当該疾患は、唇及び舌をすぼめ及び/又は腕又は脚をねじ曲げることによってしばしば明らかにされる自発的でない行動よって特徴付けられる。遅発性ジスキネジーの発症は、慣用的な抗精神病薬を服用する患者では、1年間の薬物暴露当たり約5%である。当該疾患を有する人の約2%では、遅発性ジスキネジーは、大きな傷跡となっている。現在、遅発性ジスキネジーの一般化治療法はない。更に、結果の原因となる薬物の除去は、必ずしもその根底にある問題に対する選択肢ではない。従って、遅発性ジスキネジーの症状を処置する医薬が求められている。
【0108】
下肢静止不能症候群(RLS)は、知覚障害、睡眠障害を伴う神経感覚運動障害でありほとんどの場合、睡眠中の継続的な手足の運動(PLMS)である。RLS及びPLMSの治療は様々であり、クロナゼパム及び他のベンゾジアゼピン、プロポキシフェン及び他の鎮痛剤、並びにL−ドーパ及び他のドーパミン様薬物を含む。L−ドーパは、PLMSの治療に幾分首尾よく使用されてきたが、終夜の反復投薬がしばしば求められている。PLMS治療の有効投薬は、患者によっては昼間の眠気をも引き起こす。徐放型のカルビドーパ−レボドーパは、反復される夜間投薬への回答になると考えられた;しかしながら、臨床試験では実証されなかった。従って、RLS及びPLMSに苦しむ患者を効果的に治療する必要がある。
【0109】
ピック病は、社交術の遅行的悪化に起因し、興味、記憶及び言語の減退の結果である症状を伴い、人格に変化をもたらす。一般的症状は、記憶喪失、自然さの欠如、思考又集中の困難及び言語障害を含む。現在、ピック病の特別の治療又は治癒はないが、いくつかの症状はコリン作動性及びセロトニン−促進抗精神病薬によって治療することができる。更に、抗精神病薬は、妄想、幻想及び麻薬の経験のあるFTD患者の症状を軽減する。従って、副作用のほとんどない、社交術の進行的悪化及び人格の変化を治療し、及び当該症状を治療するための医薬が求められている。
【0110】
過食症及び拒食症を含む食物摂取疾患に関連する食物取り込みの調節異常(dysregulation)は、神経生理学的経路と関連する。拒食症は、治療プログラムに入っていない又は入ったままである患者については、治療は困難である。現在、深刻な拒食症に苦しむ患者の効果的な治療はない。認識行動療法は過食症に苦しむ患者を救ってきた;しかしながら、応答率は約50%にすぎず、現行の治療は十分に情動調節を処置することができない。そのため、食物取り込みの調節異常の疾患の根底にある神経生理学的問題を処置するための医薬が求められている。
【0111】
喫煙は、長い間、主な公衆衛生の問題として認識されている。しかしながら、健康危害の公衆的認識にもかかわらず、喫煙習慣は極度に継続し、これを止めるのは困難である。多くの治療法が利用できるが、人は喫煙を続ける。ニコチンの経皮的投与又はチューインガム系は、一般的な治療である。しかしながら、ニコチンは体に非常に多くの作用を有し、そのため多くの副作用を有する。喫煙者のタバコの消費の削減又は低減を助ける便利で比較的簡単な方法について永続的な要求又は需要があることは明白である。ニコチン受容体のみを選択的に刺激することができた薬物は、喫煙中止プログラムに有用であろう。
【0112】
喫煙中止プログラムは、選択する薬物の経口用量を含んでもよい。当該薬物は錠剤の形態でもよい。しかしながら、その日の一連の追加用量を投与することによって、起きている時間に日量を投与することが好ましい。かかる投与の好ましい方法は、そこに当該薬物が分散されている飴、トローチ又はチューインガムをゆっくり溶解することである。ニコチン常用癖を治療する他の薬物はズィバンである。ガム及びパッチと同様に、これはニコチンの代用品ではない。むしろ、これは脳の他の領域に作用し、その効果は、ニコチン渇望又は喫煙を止めようとしている人のタバコの使用を思いつくことを制御するために役立つ。当該治療にもかかわらず、より効果的な薬物が、喫煙者の喫煙を止めたいという願望を助けるために求められている。当該薬物は、皮膚パッチの使用により経皮的に投与することができる。特定の場合には、特に徐放剤が使用される場合には、当該薬物は、皮下注射によって投与することができる。
【0113】
薬物使用及び依存は、一つの定義に要約することができない複合現象である。異なった薬物は異なった効果を有し、そのため異なった依存型を有する。薬物依存は、2種の基本的要因、すなわち耐性及び身体的依存を有する。使用者がより少ない用量で最初は得られた効果を生じさせるために徐々に大きな用量を服用する必要がある場合に、耐性が存在する。身体的依存は、使用者が薬物への生理学的適用状態に進展した場合に存在し、当該薬物がもはや服用できない場合に、使用中止(禁断)症候群が存在する。使用中止症候群は、当該薬物が継続されない場合又はアンタゴニストが細胞受容体上の結合部位から薬物にとって代わり、その効果を妨げる場合に起こる。薬物依存は必ずしも身体的依存を必要としない。
【0114】
更に、薬物依存は精神的依存、すなわち当該薬物を服用した場合の幸福又は満足感を含むことが多い。当該感情は、使用者に薬物経験を繰り返させ又は薬物から得られる不愉快の回避を促す。例えばニコチン、ヘロイン及びアルコール等の強い身体的依存を生じる薬物は、乱用されることが多く、当該依存のパターンを切断することは困難である。身体的依存を生じる薬物は、CNSに作用し、一般的に不安及び緊張を低減する;上機嫌、幸福又は他の幸福な気分変化を生じる;使用者に増大した精神的及び身体的能力の感情を与える;あるいは、いくつかの幸福的な方法で知覚を変える。一般的に乱用される薬物は、エチルアルコール、オピオイド、抗不安剤、睡眠薬、大麻(マリファナ)、コカイン、アンフェタミン、幻覚剤及び麻薬である。薬物常習者の現在の治療は、行動療法及び医薬の組み合わせを含むことが多い。メタドン又はLAAM(レボ−アルファ−アセチル−メタドール)等の医薬は、使用禁止症状及び麻薬常習に関連する薬物渇望を抑制し、それによって不法薬物使用を低減し、治療中の個体の機会を改善することに効果がある。麻薬常習についての一次的な医学的に補助された使用禁止法は、穏やかな使用禁止症状を生じる類似の薬物に患者を切り替え、徐々に当該置換薬物を先細りにすることである。最も頻繁に使用される医薬は、一日に一回口から服用されるメタドンである。患者は、使用禁止の重度の兆候を回避する最低用量から開始し、次いで当該用量を徐々に低減する。置換体も、鎮痛剤の使用禁止のために使用することができる。患者は、ジアゼパム又はフェノバルビタール等の、後で徐々に低減される、長期間作用する鎮痛剤に切り替えることができる。
【0115】
ジル・デ・ラ・トゥーレット症候群は、遺伝的神経障害である。当該障害は、チックと言われる制御不可能な音声及び非自発的な行動によって特徴付けられる。当該症状は、一般的に18歳になる前に個体に現れる。行動障害は、呼吸的及び音声的なものを含む複数の複合チックに進行する単一のチックから始まる。音声チックは、ウウーッと呻き又は吠えることから始まり、我慢できない発声に発展していく。汚言症(非自発的スカトロ的発声)は、患者の50%で起こる。重大なチック及び汚言症は、身体的及び社会的に障害となるだろう。チックは筋間代より複雑になる傾向があるが、それとは区別する必要がある舞踏病性運動よりも氾濫していない。当該患者は、数秒間又は数分間、それらを自発的に抑えることができる。
【0116】
現在のところ、簡単なチックはベンゾジアゼパンによって治療できることが多い。簡単及び複雑なチックについて、クロニディンを使用することができる。クロニディンの長期使用は、遅発性ジスキネジーを起こさない;その限界的逆の作用は、低血圧症である。より深刻な場合には、ハロペリドール等の抗精神病薬が必要とされるが、発音障害、パーキンソニズム、静座不能及び遅発性ジスキネジーの副作用は、かかる抗精神病薬の使用を制限する。当該症候群を治療する安全かつ効果的な方法が求められている。
【0117】
加齢黄斑変性症(AMD)は、読書及び運転を含む「まっすぐな前進」活動に必要な鋭敏で中心視を助ける網膜内の極めて小さい領域である、班の一般的な眼疾患である。AMDに罹っている人は透明な中心視を喪失している。AMDには2種ある:湿潤及び乾燥。乾燥AMDでは、班における光感知細胞の破壊がゆっくりと起こる。現在のところ、乾燥AMDについて治療法はない。湿潤AMDでは、乾燥AMDと同様に、班の下で成長している新しく脆い血管が更に悪化し、この血管は、しばしば血及び体液を漏らし、班に急激にダメージを引き起こし、中心視の喪失を招く。レーザー手術は、湿潤AMDのいくつかの場合を治療することができる。従って、AMDを処置する医薬が求められている。
【0118】
緑内障は、視盤及び視神経に病理学的変化の原因となる眼圧の増加を引き起こし、視野に悪影響を与える疾患群である。緑内障を治療する医薬は、眼に入る液体の量を減らすか又は眼から液体の排水を増やすかのいずれかでる。しかしながら、現在の薬物は、長時間作用しない又は副作用を引き起こすという欠点を有する。眼の管理をする専門家が他の薬物を処方し又は使用されている薬物の処方を変更しなければならない。更に、かなりの数の緑内障患者は、疾患が進行しており、同時に通常のIOPを有する。緑内障に繋がることが明らかな問題を治療するための安全で効果的な方法が求められている。
【0119】
緑内障の虚血期間は、興奮毒性アミノ酸の放出の原因となり、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)を刺激して神経変性を引き起こす。α7ニコチンアゴニストは、興奮性亢進を抑えるGABA等の阻害性アミノ酸の放出を刺激する。α7ニコチンアゴニストはまた、直接的に神経保護性であり又は神経細胞体である。従って、α7ニコチンアゴニストは、緑内障において神経保護性を有する可能性がある。
【0120】
眼系での5−HTの生理学的役割は、哺乳動物の網膜のセロトニン受容体及びトランスポーターの証明と関連する(Brunken and Jin, 1993; Visual Neuroscience, 10, 511-522)。哺乳動物受容体の5−HT受容体は、網膜における興奮的影響を仲介することが報告されている(Brunken et al, 1993; Prog. Retinal Res., 12, 75-99)。従って、5−HTアンタゴニスト及びα7アゴニストである化合物は、興奮性亢進を抑える。
【0121】
糖尿病性網膜症は、糖尿病を患っている人の90%を超えて罹患し、約5%が法的盲に進行する、最も一般的な糖尿病の病訴である。長期間の糖尿病性網膜症の血管的特徴は、広く証明されているが、非血管的病理学は、ラットの経験的糖尿病及びヒトのメリティス糖尿病が網膜神経細胞の増加したアポトーシスを伴うという最近の観察まで、ほとんど注目されていなかった(Barber et al, 1988; J Clin Invest, 102, 783-791)。アポトーシス頻度の増加は、ラットの実験的糖尿病のわずか1ヶ月後に起こり、同様にヒト網膜では糖尿病の6年後に観察される。網膜神経節細胞の重大な衰退、及びストレプトゾチン(STZ)の7.5ヶ月後の内部網状核層の肥厚の減退が糖尿病を誘導したことは、アポトーシス細胞が神経節細胞その他のニューロンを含むことを示すものである。従って、神経変性は、糖尿病性網膜症の重要な特徴である(Bloodworth, 1962; Diabetes, 2, 1-22)。本文脈においてα7受容体介在神経保護を考慮する価値は、網膜の細胞群における神経分化誘導因子の影響を増大させ、代謝性その他の糖尿病に関連する損傷への応答における脆弱性を低減する能力である。5−HT受容体の遮断薬は、興奮性亢進を抑制することができる。
【0122】
疼痛を患っている人は、睡眠不足及び憂鬱をもたらし、その全てが患っている個体及び個体の家族に耐え難い、疼痛罹患の「つらい三体(terrible triad)」と言われるものをしばしば経験する。疼痛は、それ自身、その存在又は根絶するための治療法の点から、重度の頭痛、背中の疼痛、神経性、関節炎及び癌等の他の病気からくる疼痛を含むがこれらに限定されない種々の形で現われる。疼痛は慢性的(数ヶ月又は数年の間疼痛が継続)又は急性的(損傷の可能性及び治療の必要性のある人を知らせるための短時間で急激な疼痛)のいずれかである。疼痛を患っている人は、様々な程度の上首尾の治療の各々に異なった応答をする。
【0123】
CNSにおける高密度5−HT受容体は、脳延髄の4つの鍵領域、すなわち孤束核(NTS)、迷走神経の背側運動ニューロン、最後野及び三叉神経の脊髄路核で見られる(Kilpatrick, et al., 1990; Medicinal Res., 10, 441-475)。最後野及びNTSへの5−HTアンタゴニストの局所的注射は、嘔吐を催す細胞毒性薬物による吐気及び嘔吐を回避する点で強力な効果を解剖学的に支持する(Higgins, et al., 1989, Br. J. Pharmacol., 97, 247-25; Perez, et al., 1991, Seminars Oncol., 18, 73-80)。癌化学療法の嘔吐成分は市場では5−HTアンタゴニストによって管理されているが、細胞毒性薬物は、CNSにおけるニューロンを含み身体の全ての細胞に毒性的影響を与え続ける。5−HT受容体アンタゴニスト及びα7ニコチン受容体アゴニストとしての両作用を有する化合物は、α7作用によって神経保護影響を与えると同時に抗嘔吐効果を維持する新規な特徴を有する。同様に、当該分子は、ニューロン興奮性亢進及び偏頭痛に関連する嘔吐の制御(Ferrari, 1991; J Neurol, 238, 553-556)、及び偏頭痛の予防的治療に優れていると期待される。
【0124】
線維筋肉痛は、定義では、疼痛及び筋肉の圧痛を起こす、筋肉、看板、腱膜及びおそらく神経の線維性の組織の感染を言い、又は特に寒気、湿気もしくは些細な外傷の暴露後に骨格系を通して広がるが、原因が全くないことが多い。これまで、当該症状の病理的基礎は不明のままである。神経消極的機能を調節する脳幹における5−HT受容体及び脊髄における疼痛伝達の役割が明かな場合に、5−HT受容体アンタゴニスト、特にトロピセトロンは、「圧痛部分」における圧痛及び疼痛スコアの軽減を減じることが判っている(Farber, et al., 2001; Int. J. Clin. Pharmacol. Res., 21, 1-13)。
【0125】
5−HT受容体の活性化は、コリン作動性及び非コリン作動性伝達をもたらし、収縮性応答を生じ、GI域での液体分泌を生じる(Cohen, et al., 1985, J. Pharmacol. Exp. Ther., 232, 770-774; Boeckxstaens, et al., 1990, J. Pharmacol. Exp. Ther., 254, 652-658)。当該受容体が結腸感覚的及び行動的機能において役割を果たす場合、5−HT受容体アンタゴニストは、過敏性腸症候群(Camilleri, et al., 1999; Alimnet Pharmacol. Ther., 13, 1149-59)及びカルチノイド症候群に関連する下痢(Anderson, et al., 187; Br. Med. J., 294, 1129)の治療に提案されている。5−HT受容体アンタゴニスト及びα7ニコチン受容体アゴニストとしての両作用を有する化合物の利益は、神経変性を仲介する疼痛の別の処置態様である。
【0126】
最後に、本発明の化合物は、典型的及び異型の抗精神病薬との併用療法に用いることができる。本発明内の全ての化合物は、医薬組成物の調製に有用であり、医薬組成物を調製するために互いに組み合わせて使用することができる。かかる併用療法は、抗精神病薬の有効量を下げ、それによって副作用を削減する。本発明の実施に使用することができるいくつかの典型的な抗精神病薬は、ハルドールを含む。いくつかの異型抗精神病薬は、ジプラシドン、オランザピン、レスペリドン及びカイチアピンを含む。
【0127】
式Iの化合物は、スキーム1で示したようにして調製することができる。当該化合物群の調製の鍵ステップは、アミノ−アザビシクロ部分と、不可欠な酸クロリド(LvはCl)、混合酸無水物(例えばLvはジフェニルホスホリル、ビス(2−オキソ3−オキサゾリジニル)ホスフィニル又は一般式:O−C(O)−RLv[ここで、RLvはフェニル又はt−ブチルを含む]のアシルオキシ)との結合である。好適な活性化剤は、当業者に周知であり、例えばKiso, Y., Yajima, H. “Peptide” pp. 39-92, San Diego, CA, Academic Press, (1995)を参照されたい、またカルボジイミド、ホスホニウム及びウロニウム塩(例えばHATU)等の薬剤を含むがこれらに限定されない。
【0128】
【化12】

【0129】
一般的に、当該酸は、HATUを用いて活性化されるか、又はDPPAを用いることによってアシルアジドに変換されるか、又はTEAの存在下、溶媒としてCHClもしくはCHClを用い、ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリドで処理することによって、混合酸無水物に変換される。Rがtert−ブチルオキシカルボニル(アザビシクロがIII)である場合、7−アザ基の脱保護は、メタノール等の好適な溶媒中で酸性条件下、簡便に行うことができる。
【0130】
好適なアミンが酸性塩の形態である場合には、当該好適なアミンはTEAと反応し、次いで無水物又はアジドの溶液に加えて、所望の最終化合物を与える。ある場合には、エステル(LvがOMe又はOEeである)は、リフラックスのメタノール又はエタノール中でアミンと直接反応して、式Iの化合物を与える。
【0131】
当業者は、無置換3−アミノカイヌクリジン(RがH)の反応のために記載した方法が置換化合物(RがHでない)にも同様に適用できることを理解するだろう。当該化合物は、対応する3−アミノカイヌクリジンのオキシムの還元によって調製することができる(J. Labelled Compds. Radiopharm., 53-60 (1995)及びJ. Med. Chem. 988-995 (1998)を参照されたい)。オキシムは、塩基存在下、3−アミノカイヌクリジンをヒドロキシルアミンヒドロクロリドで処理することによって調製することができる。Rが置換アルキル又はシクロアルキルである3−アミノカイヌクリジンは、知られた方法によって調製することができる(Tet. Lett. 1015-1018, (1972), J. Am Chem. Soc. 1278-1291 (1994), J. Am. Chem. Soc. 4548-4552 (1989), Tetrahedron, 1139-1146 (2000)を参照されたい)。Rがアリールである3−アミノカイヌクリジンは、J. Am Chem. Soc. 1473-1478 (1999)及びJ. Am Chem. Soc. 1360-1370 (2000)に記載のパラジウム触媒アリール化によて調製することができる。
【0132】
当業者は、無置換3−アミノ−1−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(RがH)の反応のために記載した方法が置換化合物(RがHでない)にも同様に適用できることを理解するだろう。アザビシクロIIがC−2位に置換基を有する場合に関し、化合物は、以下に示すTetrahedron (1997), 53, p. 11121に記載の方法を用いて、好適な置換ニトロアルコールから調製することができる。ニトロアルコールを合成する方法は、当業者に周知である(J. Am Chem. Soc. (1947), 69, p 2608を参照されたい)。以下のスキームは、当該アミン前駆体を得る方法を示すために、本明細書に記載されたビス(ヒドロ パラ−トルエンスルホン酸塩)としてのエキソ−3−アミノ−1−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンの合成の修飾である。所望の塩は、標準的方法を用いて製造することができる。
【0133】
【化13】

【0134】
がC−6位においてH以外のアザビシクロIIに関し、化合物は、本明細書に記載されたビス(ヒドロ パラ−トルエンスルホン酸塩)としてのエキソ−3−アミノ−1−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンの合成で記載した中間体の修飾によっても調製することができる。例えば、Int6を酸化してアルデヒドとし、有機金属試薬で処理し、Tetrahedron (1999), 55, p. 13899に記載の方法を用いてInt20を得る。Int20は、ビス(ヒドロ パラ−トルエンスルホン酸塩)としてのエキソ−3−アミノ−1−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンの合成で記載した方法を用いてアミンに変換することができる。一旦アミンが得られると、所望の塩は標準的方法を用いて製造することができる。
【0135】
【化14】

【0136】
用いるスキームは、エキソ−3−アミノ−1−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンを製造するためのものである。しかしながら、議論した修飾は、エンド異性体の製造にも適用することができる。
【0137】
<アミン>
N−(2S,3R)−2−メチル−1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3−アミンジヒドロクロリド(2S−メチル−2.2.2−アミン)の調製:例えばUS20020042428 A1を参照。
【0138】
1−アザビシクロ−2.2.1アミンの調製:
ビス(ヒドロパラ−トルエンスルホン酸)塩(エキソ−[2.2.1]−アミン)としてのエキソ−3−アミノ−1−アザビシクロ[2.2.1]へプタンの合成:
【0139】
【化15】

【0140】
ステップA 2−(ベンゾイルオキシ)−1−ニトロエタン(Int1)の調製
ベンゾイルクロリド(14.9mL,128mmol)をニトロエタノール(9.2mL,128mmol)の乾燥ベンゼン(120mL)攪拌溶液に加えた。当該溶液を24時間リフラックスし、次いで真空下で濃縮した。粗生成物をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン−EtOAc(80:20)で溶出し、Int1を白色固体(収率68%)として得た:H NMR(CDCl)δ8.0,7.6,4.9,4.8。
【0141】
ステップB エチル E−4−(ベンジルアミノ)−2−ブテノエート(Int2)の調製
エチル E−4−ブロモ−2−ブテノエート(10mL,56mmol,工業等級)をベンジルアミン(16mL,146mmol)のCHCl(200mL)の攪拌溶液に室温で加えた。反応混合物を15分間攪拌し、エーテル(1L)で希釈した。混合物を飽和NaHCO水溶液(3x)及び水で洗浄し、NaSO上で乾燥し、ろ過し及び真空下で濃縮した。ヘキサン−EtOAc(70:30)で溶出し、Int2を透明油として得た(収率62%):H NMR(CDCl)δ7.4−7.2,7.0,6.0,4.2,3.8,3.4,2.1−1.8,1.3。
【0142】
ステップC トランス−4−ニトロ−1−(フェニルメチル)−3−ピロリジン酢酸エチルエステル(Int3)の調製
Int1(6.81g,34.9mmol)及びInt2(7.65g,34.9mmol)のエタノール(70mL)溶液を室温で15時間攪拌し、次いで真空下で濃縮した。残渣をエーテル(100mL)及び飽和NaHCO水溶液(100mL)で希釈した。有機層を分離し、NaSO上で乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。粗生成物をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン−EtOAc(85:15)で溶出し、Int3を透明油として得た(収率76%):H NMR(CDCl)δ7.4−7.3,4.8−4.7,3.8−3.6,3.3−3.0,2.7−2.6,2.4−2.3,1.2。
【0143】
ステップD トランス−4−アミノ−1−(フェニルメチル)−3−ピロリジン酢酸エチルエステル(Int4)の調製
Int3(3.28g,11.2mmol)及びRaNi(1.5g)のEtOH(100mL)の混合物をParr容器中に置き、室温で水素(46psi)の雰囲気下で4時間水素添加した。混合物をセライトのパッドを通してろ過し、溶媒を真空下で除去し、Int4透明油として得た(収率100%):H NMR(300MHz,CDCl)δ7.3−7.2,4.1,3.6,3.2,3.0−2.9,2.8,2.8−2.6,2.6−2.4,2.30−2.2,1.2。
【0144】
ステップE トランス−4−(1,1−ジメチルエトキシカルボニルアミド)−1−(フェニルメチル)−3−ピロリジン酢酸エチルエステル(Int5)の調製
ジ-tert-ブチルジカーボネート(3.67g,16.8mmol)を、Int4(2.94g,11.2mmol)のCHC1(30mL)の攪拌溶液に加え、アイスバスで冷却した。反応を室温まで暖め、終夜攪拌した。混合物を真空下で濃縮した。粗生成物をシルカゲル上でフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。ヘキサン−EtOAc(80:20)で溶出し、Int5を白色固体として得た(収率77%):H NMR(300MHz,CDC1)δ7.4−7.2,5.1−4.9,4.1,4.0−3.8,3.6,3.2−3.0,2.8−2.6,2.5−2.4,2.3−2.1,1.4,1.3。
【0145】
ステップF トランス(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4−(2−ヒドロキシエチル)−1−(N−フェニルメチル)ピロリジン(Int6)の調製
【0146】
LiAlH粉末(627mg,16.5mmol)を、5℃のバス中で、少しずつInt5(3.0g,8.3mmol)の無水THF(125mL)の攪拌溶液に加えた。混合物を5℃のバス中で20分間攪拌し、次いで水(0.6mL),15%(w/v)の水溶性NaOH(0.6mL)及び水(1.8mL)で順次停止した。過剰の無水KOCを加え、混合物を1時間攪拌し、次いでろ過した。ろ液を真空下で濃縮した。残渣をシルカゲル上でフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。EtOAcで溶出し、Int6を白色固体として(収率94%):H NMR(CDC1)δ7.4−7.3,5.3−5.2,4.1−4.0,3.9−3.7,3.3−3.2,2.8−2.7,2.3−2.1,1.7,1.5。
【0147】
Int6は、Diacel chiral pack ADカラムを使うクロマトグラフィーによって分割することができる、ラセミ混合物である。このようにして得られた2種のエナンチオマーから、(+)−エナンチオマー、[α]25 +35(c1.0,MeOH)は対応する光学的に純粋なエキソ−4−S最終化合物を得たが、(−)−エナンチオマー、[α]25 −34(c0.98,MeOH)は光学的に純粋なエキソ−4−R化合物を与えた。本明細書に記載の方法は、Int6の(+)−エナンチオマーを用い、光学的に純粋なエキソ−4−S最終化合物を与えた。しかしながら、使用した当該方法は、本明細書に記載の方法に大きな変更を加えることなく、Int6の(−)−エナンチオマーにも適用でき、光学的に純粋なエキソ−4−R化合物を与えた。
【0148】
ステップG エキソ3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−1−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(Int7)の調製
TEA(8.0g,78.9mml)をInt6(2.5g,7.8mmol)のCHC1(50mL)の攪拌溶液に加え、反応をアイスバス中で冷却した。次いで、CHSOC1(5.5g,47.8mmol)を一滴ずつ加え、混合物をアイスバス中で10分間攪拌した。得られた黄色混合物を飽和NaHCO水溶液で希釈し、生成物がTLCによって水溶液中に存在しなくなるまで、CHC1で数回抽出した。有機層を併せ、飽和食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、真空下で濃縮した。残渣をEtOH(85mL)に溶解し、16時間リフラックスするまで加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、Parr容器に移し、10%Pd/C触媒(1.25g)で処理した。容器を水素ガス(53psi)気流下に16時間置いた。混合物をセライトでろ過し、新鮮な触媒(10%Pd/C,1.25g)を加えた。水素添加を終夜続けた。この工程を水素添加が終了するまで3回繰り返した。最終混合物をセライトでろ過し、真空下で濃縮した。残渣をシリカゲル上でフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。CHCl−MeOH−NHOH(90:9.5:0.5)で溶出し、Int7を白色固体として得た(収率46%):H NMR(CDCl)δ5.6−5.5,3.8−3.7,3.3−3.2,2.8−2.7,2.0−1.8,1.7−1.5,1.5。
【0149】
ステップH エキソ−3−アミノ−1−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンビス(ヒドロ−パラ−トルエンスルホン酸塩)の調製
パラ−トルエンスルホン酸一水和物(1.46g,7.68mmol)をInt7(770mg,3.63mmol)のEtOH(50mL)の攪拌溶液に加えた。反応混合物を10時間リフラックスするまで加熱し、次いで室温まで冷却した。沈殿を真空ろ過によって集め、冷EtOHで洗浄し、エキソ−[2.2.1]−アミンを白色固体として得た(収率84%):H NMR(CDOD)δ7.7,7.3,3.9−3.7,3.7−3.3,3.2,2.4,2.3−2.2,1.9−1.8。
【0150】
【化16】

【0151】
ステップI エチル 5−ヒドロキシ−6−オキソ−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン−4−カルボキシレート(Int10)の調製
無水EtOH(92.0mL,1.58mol)をカリウムエトキシド(33.2g,395mmol)の乾燥トルエン(0.470L)の機械攪拌懸濁液に加えた。混合物が均一になったら、2−ピロリジノン(33.6g,395mmol)を加え、次いでジエチルオキサレート(53.1mL,390mmol)のトルエン(98mL)溶液を漏斗によって加えた。添加終了後、トルエン(118mL)及びEtOH(78mL)を順次加えた。混合物を18時間リフラックスするまで加熱した。混合物を室温まで冷却し、HC1水溶液(150mLの6.0M溶液)を加えた。混合物を15分間機械的に攪拌した。水層をCHC1で抽出し、併せた有機層を乾燥し(MgSO)、ろ過し、真空下で濃縮し、黄色残渣を得た。残渣をEtOAcから再結晶化し、Int10を黄色固体として得た(収率38%):H NMR(CDC1)δ11.4,7.4,4.3,3.4,2.6,1.3。
【0152】
ステップJ エチル シス−3−ヒドロキシ−2−オキソピペリジン−4−カルボキシレート(Int11)の調製
Int10(15g,81mmol)及び5%ロジウムカーボン(2.0g)氷酢酸中の混合物を水素ガス(52psi)雰囲気下に置いた。混合物を72時間振した。混合物をセライトでろ過し、ろ液を真空下で濃縮し、Int11を白色固体として得た(収率98%):H NMR(CDC1)δ6.3,4.2,4.0−3.8,3.4,3.3−3.2,2.2,1.3。
【0153】
ステップK エチル シス−4−(ヒドロキシメチル)ピペリジン−3−オール(Int 12)の調製
Int11(3.7g,19.9mmol)を固体として、アイスバス中、LiAlHのTHF(80mLの1.0M溶液)の攪拌溶液に少しずつ加えた。混合物を室温まで暖め、次いで反応を48時間リフラックスするまで加熱した。水(3.0mL,170mmol)を一滴ずつ加える前に、混合物をアイスバス中で冷却し、次いでNaOH(3.0mLの15%(w/v)溶液)及び水(9.0mL,500mmol)を順次加えた。過剰のKCOを加え、混合物を15分間激しく攪拌した。混合物をろ過し、ろ液を真空下で濃縮し、Int12を黄色粉末(収率70%)を得た:H NMR(DMSO−d)δ4.3,4.1,3.7,3.5−3.2,2.9−2.7,2.5−2.3,1.5,1.3。
【0154】
ステップL ベンジル シス−3−ヒドロキシ−4−(ドロキシメシル)ピペリジン−1−カルボキシレート(Int13)の調製
N−(ベンジルオキシ カルボニルオキシ)スクシニミド(3.04g,12.2mmol)を室温で、Int12(1.6g,12.2mmol)の飽和NaHCO(15mL)水溶液の攪拌溶液に加えた。混合物を18時間室温で攪拌した。有機層及び水槽を分離した。水層をエーテル(3x)で抽出した。併せた有機層を無水KCOで乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮し、Int13を黄色油として得た(収率99%):H NMR(CDC1)δ7.4−7.3,5.2,4.3,4.1,3.8−3.7,3.0−2.8,2.1,1.9−1.7,1.4。
【0155】
ステップM ベンジル シス−3−ヒドロキシ−4−[(4−メチルフェニル)スルホニル オキシメチル]ピペリジン−l−カルボキシレート(Int14)の調製
パラ−トルエンスルホニルクロリド(1.0g,5.3mmol)を−15℃のバス中、Int13(3.6g,5.3mmol)のピリジン(10mL)の攪拌溶液に加えた。混合物を4時間攪拌し、HCl(4.5mLの6.0M溶液)を加えた。CHCl(5mL)を加えた。有機層及び水層を分離した。水層をCHC1で抽出した。併せた有機層を飽和食塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO)、ろ過し、真空下で濃縮し、Int14を無色油として得た(収率78%):H NMR(CDC1)δ7.8,7.4−7.2,5.1,4.3−4.2,4.1,3.9−3.8,2.9−2.7,2.4,1.9,1.6−1.3。
【0156】
ステップN エキソ−1−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−3−オール(Int15)の調製
Int14(3.6g,8.6mmol)及び10%Pd/C触媒(500mg)のエタノール(50mL)混合物を水素ガス雰囲気下に置いた。混合物を16時間振とうした。混合物をセライトによってろ過した。固体NaHCO(1.1g,13mmol)をろ液に加え、混合物を50℃のオイルバス中5時間加熱した。溶媒を真空下で除いた。残渣を飽和KCO水溶液に溶解した。水層を液−液抽出装置を用いて順次抽出し(18時間)、次いで有機層を無水KCOで乾燥し、溶媒を真空下で除き、Int15を白色固体として得た(収率91%):H NMRδ3.8,3.0−2.8,2.6−2.5,2.4−2.3,1.7,1.1。
【0157】
ステップO エンド−3−アジド−1−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(Int16)の調製
Int15(1.0g,8.9mmol)及びトリフェニルホスフィン(3.0g,11.5mmol)のトルエン−THF(50mL,3:2)の混合物にアイスバス中で、アジ化水素酸トルエン(15mL)の約2M溶液)溶液及びジエチルアザジカルボキシレート(1.8mL,11.5mmol)のトルエン(20mL)溶液を順次加えた。混合物を室温まで暖め、18時間攪拌した。混合物を1.0M HC1溶液で抽出した。水溶をEtOAcで抽出し、併せた有機層を廃棄した。水層のpHを50%NaOH水溶液で9に調整した。水層をCHC1(3x)で抽出し、併せた有機層を飽和食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。粗成生物をシリカゲル上でフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。CHCl−MeOH−NHOH(92:7:1)で溶出し、Int16を無色油として得た(収率41%):H NMR(CDC1)δ4.1,3.2,2.8,2.7−2.5,2.2,1.9,1.5。
【0158】
ステップP エンド−3−アミノ−1−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン ビス(ヒドロ−パラ−トルエンスルホン酸塩)の調製
Int16(250mg,1.8mmol)及び10%Pd/C触媒(12mg)のEtOH(10mL)の混合物を水素ガス(15psi)雰囲気下に置いた。混合物を室温で1時間攪拌した。混合物をセライトでろ過し、ろ液を真空下で濃縮した。残渣をEtOH(10mL)に溶解し、パラ−トルエンスルホン酸一水和物(690mg,3.7mmol)を加えた。混合物を30分間攪拌し、沈殿をろ過した。沈殿を冷EtOH及びエーテルで順次洗浄した。沈殿を真空下で乾燥し、エンド−[2.2.1]−アミンを白色固体として得た(収率85%):H NMR(CDOD)δ7.7,7.3,4.2,3.9,3.6−3.4,3.3−3.2,2.4,2.3,2.1。
【0159】
tert−ブチル(1S,2R,4R)−2−アミノ−7−アザシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−カルボキシレートの調製:
【0160】
【化17】

【0161】
メチル プロピオレート(52ml,0.583mol)を窒素雰囲気下、再結晶したN−ブロモスクシンイミド(120g,0.674mol)の1,700mlアセトンと混合した。溶液を硝酸銀(9.9g,0.0583mol)で単一のロットでそのまま処理し、反応を室温で6時間攪拌した。アセトンを減圧下で除き(25℃,バス温度)、灰色スラリーを得た。スラリーを200mlへキサンで2回洗浄し、灰色固体をろ取し、ろ液を真空下で濃縮し、95gの青白色油状残渣を得た。粗原料を減圧下で短経路により蒸留し(65℃,約25mmHg)、乾燥冷/アセトン冷却受液器に受け、83.7g(88%)のメチル−3−ブロモ−プロピオレートを黄色油として得た。元素分析:計算値:CBrOとして、C,29.48;H,1.86、実測値C,29.09;H,1.97。
【0162】
メチル−3−ブロモ−プロピオレート(83.7g,0.513mol)を窒素雰囲気下、N−t−ブチルオキシ−ピロール(430ml,2.57mol)に加えた。褐色混合物を90℃のバスで30時間暖め、冷却し、ドラスアイス/アセトンコンデンサーを用いて、過剰量のN−t−ブチルオキシ−ピロールを真空下に除いた。褐色油状残渣を1kgのシリカゲル(230−400メッシュ)上で、0〜15%EtOAc/ヘキサンで溶出し、クロマトグラフィーに付した。好適な分画を集め、濃縮し、97g(57%)の7−tert−ブチル 2−メチル 3−ブロモ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン−2,7−ジカルボキシレートを黄褐色油として得た。HRMS(FAB)計算値:C13l6BrNO+Hとして、330.0341、実測値330.0335(M+H)
【0163】
7−tert−ブチル 2−メチル 3−ブロモ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン−2,7−ジカルボキシレート(97g,0.294mol)をPARR容器中で、l0%Pd/C(6.8g)の900ml無水EtOHに加えた。懸濁液をNaHCO(25g,0.301mol)の250ml水溶液で希釈し、混合物を50 PSIで2.5時間、水素添加した。触媒をろ過によって除き、新鮮なEtOHで洗浄し、ろ液を真空下で濃縮し、残渣を得た。残渣を1x200ml飽和NaHCO及びCHCl(4x100ml)に分配した。併せた有機層を1:1の無水KCO/無水MgSOで乾燥し、真空下で濃縮し、72.8g(98%)の(+/−)エンド−7−tert−ブチル 2−メチル 7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,7−ジカルボキシレートを得た。Cl422としてMS(EI)m/z:255(M)
【0164】
(+/−)エンド−7−tert−ブチル 2−メチル 7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,7−ジカルボキシレート(72.8g,0.285mol)を窒素雰囲気下、乾燥フラスコ中で、1000mlの乾燥MeOHに溶解した。溶液を固体NaOMe(38.5g,0.713mol)そのままで一回処理し、反応を4時間リフラックスまで暖めた。混合物を0℃まで冷却し、400mlの水で処理し、反応を室温に上昇するまで1時間攪拌した。混合物を真空下で約400mlに濃縮し、水溶性残渣のpHを12N HC1で4.5に調整した。沈殿を集め、乾燥した。黄褐色でやや粘性固体を2x100mlの60%エーテルのヘキサン溶液で洗浄し、乾燥し、47g(68%)の(+/−)エキソ−7−(tert−ブトキシカルボニル)−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸をオフホワイト粉末として得た。HRMS(FAB)計算値:C12l9NO+Hとして、242.1392、実測値:242.1390(M+H)
【0165】
(+/−)エキソ−7−(tert−ブトキシカルボニル)−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸(103.9g,0.430mol)を窒素雰囲気下、乾燥フラスコ中で、TEA(60ml,0.430mol)の1200ml乾燥トルエンと混合した。溶液をジフェニルホスホリルアジド(92.8ml,0.430mol)で一滴ずつ処理し、室温で20分間攪拌した。混合物をベンジルアルコール(47.9ml,0.463mol)で処理し、反応を55℃で終夜攪拌した。混合物を冷却し、2x500mlの5%クエン酸、2x500ml水、2x500ml飽和炭酸ナトリウム及び500ml飽和NaClで順次抽出した。有機層を無水MgSOで乾燥し、真空下、琥珀色油に濃縮した。粗原料を900gのシリカゲル(230〜400メッシュ)上、10〜30%EtOAc/ヘキサンで溶出してクロマトグラフィーに付した。好適な分画を併せ、濃縮し、106g(71%)の(+/−)エキソ−tert−ブチル 2−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−カルボキシレートを青白色油として得た。H NMR(CDC1)δ1.29−1.60,1.44,1.62−2.01,3.76−3.88,4.10,4.24,5.10,7.36ppm。
【0166】
(+/−)エキソ−tert−ブチル 2−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−カルボキシレート(1.5g,4.33mmol)を250mlのParr振とう容器中で、10%Pd/C(150mg)の40mlのEtOHと混合した。混合物を50PSIで1.5時間水素添加した。触媒をろ過によって除き、ろ液を真空下で濃縮した。粗原料を30gのシリカゲル(230〜400メッシュ)上、7%MeOH/CHCl+1%濃NHOHで溶出してクロマトグラフィーに付した。好適な分画を集め、濃縮し、606mg(66%)の(+/−)エキソ−tert−ブチル 2−アミノ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−カルボキシレートを得た。HRMS(FAB)計算値:Cll20+Hとして、213.1603、実測値:213.1580(M+H)。当該ラセミ混合物は(+/−)−7−アザ−[2.2.1]−アミンとして参照するだろう。
【0167】
ラセミカルボキシレート混合物の分割:
単離(+/−)エキソ−tert−ブチル 2−アミノ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−カルボキシレートをpreparative chiral HPLC(50x500mm Chiralcel OJ column,30℃,70mL/min.10/90(v/v)イソプロパノール/ヘキサン)によって分割した。分割によって、40gのtert−ブチル(1S,2R,4R)−(+)−2[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−カルボキシレート及び42gのtert−ブチル−(lR,2S,4S)(−)−2{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−カルボキシレートを得た。
【0168】
2Rエナンチオマーを40mlエーテル、次いで40mlへキサン(なかなか除けないジアステロ及びエンアチオ的不純物を除くために)で粉砕し、乾燥し、30g(56%)の純粋なtert−ブチル(1S,2R,4R)−(+)−2{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−カルボキシレートを99%のエナンチオ過剰率で得た。MS(EI) C1926として、m/z:346(M)。[α]25 22(c0.42,クロロホルム)。
【0169】
2Sエナンチオマーを40mlエーテル、次いで40mlへキサンで粉砕し、35g(66%)の純粋なtert−ブチル(1S,2R,4R)−(−)−2{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−カルボキシレートを99%のエナンチオ過剰率で得た。MS(EI) C1926として、m/z:346(M)。[α]25 −23(c0.39,クロロホルム)。
【0170】
(2R)−7−アザ−[2.2.1]−アミン。
tert−ブチル(1S,2R,4R)−(+)−2{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−カルボキレート(9.5g,27.4mmol)を500mlのParr容器中で、950mgの10%Pd/Cを含む75ml無水EtOHと混合した。反応混合物を50PSIで3時間、水素添加し、触媒をろ過によって除き、ろ過ケーキをMeOHで洗浄した。ろ液を真空下で濃縮し、6.4gの残渣を得た。粗原料を200gのシリカゲル(230〜400メッシュ)上で、1%濃NHOHを含む7%CHOH/CHC1で溶出し、クロマトグラフィーに付した。好適な分画を集め、濃縮し、5.61g(96%)のtert−ブチル−(lS,2R,4R)−(+)−2−アミノ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−カルボキシレートを青白色油として得た。MS(EI)Cll20として、m/z:212(M)。[α]25 9(c0.67,クロロホルム)。当該化合物は(2R)−7−アザ−[2.2.1]−アミンとして参照される。
【0171】
1−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−アミンの調製:
エキソ−及びエンド−l−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−アミンを、Lewin, A. H., et al., J. Med. Chem., 988-995 (1998)に記載の一般的方法に準じて、1−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オン(Thill, B. P. , Aaron, H. S., J. Org. Chem., 4376-4380 (1968))から調製した。
【0172】
【化18】

【0173】
エキソ−1−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−アミン ジヒドロクロリド(エキソ−[3.2.1]−アミン):
1−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オン ヒドロクロリド(2.80g,17.3mmol)、エタノール(25mL)及びヒドロキシルアミン ヒドロクロリド(1.56g,22.4mmol)の混合物を酢酸ナトリウム三水和物(7.07g,51.2mmol)で処理した。混合物を3時間攪拌し、真空下で濃縮した。残渣をCHC1で希釈し、活性炭で処理し、ろ過し、濃縮した。得られた原料を1−プロパノール(45mL)に取り、100℃のオイルバス中で加熱した。溶液を金属ナトリウム(6.4gを分けて)で処理した。加熱を3時間継続し、混合物を室温まで冷却した。水を注意深く加え、有機層を抽出し、乾燥し(MgSO)、ろ過し、MeOH/HCl(g)で酸性にし、濃縮した。2−プロパールを加え、得られた固体をろ過し、真空下で乾燥し、エキソ−[3.2.1]−アミンを49%の収率で得た。Cl4−(HCl)として、MS(ESI)(M+H) m/z:127。
【0174】
エンド−1−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−アミン ジヒドロクロリド(エンド−[3.2.1]−アミン):
1−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オン ヒドロクロリド(2.80g,17.3mmol)、エタノール(25mL)及びヒドロキシルアミン ヒドロクロリド(1.56g,22.4mmol)の混合物を酢酸ナトリウム(7.07g,51.2mmol)三水和物で処理した。混合物を3時間攪拌し、真空下で濃縮した。残渣をCHC1で希釈し、活性炭で処理し、ろ過し、濃縮した。得られたオキシム(3.1mmol)を酢酸(30mL)で処理し、12時間50psiで、PtO(50mg)で水素添加した。次いで、混合物をろ過し、濃縮した。残渣を最小量の水(6mL)に取り、pHを固体NaOHで12を超えて調整した。次いで、混合物を酢酸エチル(4x25mL)で抽出し、乾燥し(MgSO)、ろ過し、エーテルを含むHC1で処理し、濃縮し、エンド−[3.2.1]−アミンを得た。
【0175】
3R,5R−[3.2.1]−アミンの調製:
当該アミンはまた、以下の方法に準じて調製することができた:(3S)−1−[(S)−1−フェネチル]−5−オキソ−3−ピロリジン−カルボン酸:
文献の方法(Nielsen et al. J. Med. Chem 1990, 70-77)に従い、イタコン酸(123.2g,946.7mmol)及び(S)−(−)−α−メチルベンジルアミン(122mL,946mmol)の混合物を160℃のオイルバス中で4時間、加熱した(そのまま)。冷却後、MeOH(約200mL)を加え、得られた固体をろ過によって集めた。固体をEtOH(約700mL)で処理し、スチームバスを使って約450mLの溶媒が残るまで暖めた。室温まで冷却した後、固体生成物を集め、乾燥し、83.2gを結晶性固体として得た:[α]25 −80(c0.97,DMSO)。H NMR(400MHz,DMSO−d)δ12.66,7.20−7.40,5.23,3.40−3.55,3.10−3.25,2.40−2.65,1.45;MS(EI)m/z:233(M)。
【0176】
(3S)−1−[(S)−1−フェネチル]−3−(ヒドロキシメチル)ピロリジン:
(3S)−1−[(S)−l−フェナチル]−5−オキソ−3−ピロリジン−カルボン酸(82.3g,352.3mmol)のEtO(200mL)懸濁液をLiAlH(17.4g,459mmol)のEtO(700mL)スラリーに少しずつ加えた。混合物を添加している間、リフラックスした;懸濁液を含む添加漏斗をEtO(2x50mL)で洗浄した。混合物を50℃のオイルバス中で更に2時間攪拌し、室温まで冷却し、更にアイスバスを使って冷却した。混合物を注意深くHO(62mL)で処理した。得られた沈殿をろ過し、EtOで洗浄し、廃棄した。ろ液を濃縮し、油を得た。この油にEtOAcを加えると、固体が析出し始めた。ヘキサンを加え、混合物をろ過し、固体を乾燥し、43.3gの所望の生成物を得た。[α]25 −71(c0.94,クロロホルム);H NMR(400MHz,CDC1)δ7.20−7.45,3.60−3.70,3.40−3.60,3.19,3.05−3.15,2.35−2.55,2.25−2.35,1.95−2.10,1.75−1.90,1.42;HRMS(FAB)計算値:Cl319NO(MH)として、206.1545、実測値:206.1532。
【0177】
(3R)−1−[(S)−1−フェネチル]−3− (シアノメチル)ピロリジン:
(3S)−1−[(S)−1−フェネチル]−3−(ヒドロキシメチル)ピロリジン(42.75g,208.2mmol)のクロロホルム(350mL)溶液を窒素ガス下でリフラックスするまで加熱した。溶液をチオニルクロリド(41.8mL,573mmol)のクロロホルム(40mL)溶液で、45分間一滴ずつ処理した。混合物を更に30分間攪拌し、冷却し、濃縮した。残渣をHO(約200mL)で希釈し、1N NaOHを約pH(pH紙)になるまで加えた。飽和NaHCOの少量(約50mL)を加え、混合物をEtOAc(3x400mL)で抽出し、飽和食塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO)、ろ過し、濃縮し、46.51gの(3S)−1−[(S)−1−フェネチル]−3−(クロロメチル)ピロリジンを得た:MS(ESI+)m/z:224.2(MH).クロリド(46.4g,208mmol)をフラスコに移し、DMSO(200mL)を加え、当該溶液をNaCN(17.84g,363.9mmol)で処理した。混合物を100℃のオイルバス中で、窒素ガス気流下に終夜加熱し、冷却した。茶色の混合物をHO(300mL)に注ぎ、EtOAc(1000mLを分けて)で抽出した。併せた有機層をHO(6x約50mL)、飽和食塩水(約100mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、ろ過し、濃縮し、40.61gの油を得た:H NMR(400MHz,CDC1)δ7.20−7.40,3.26,2.70−2.85,2.40−2. 60,2.27,2.10−2.20,1.50−1.70,1.41;MS(ESI+)m/z:215.2(M+H)。
【0178】
(3R)−メチル l−[(S)−l−フェニルエチル]ピロリジン−3−アセテート:
アセチルクロリド(270mL,3.8mol)を冷(0℃)メタノール(1100mL)を含むフラスコに注意深く加えた。添加終了後、酸性溶液を(0℃で)45分間攪拌し、次いで(3R)−l−[(S)−l−フェネチル]−3−(シアノメチル)ピロリジン(40.50g,189.0mmol)のメタノール(200mL)を加えた。アイスバスを除き、混合物を室温で100時間攪拌した。得られた懸濁液を濃縮した。水(約600mL)を加え、混合物を45分間攪拌し、次いで約700mLの飽和NaHCO水溶液を加えてpHを調整した(酸性に)。混合物をEtOAc(3x300mL)で抽出した。併せた有機層を飽和食塩水で洗浄し、乾燥し(MgS0)、セライトでろ過し、濃縮し、36.9gを油として得た:H NMR(400MHz,CDC1)δ7.20−7.40,3.69,3.30−3.40,2.85−2.95,2.40−2.70,2.00−2.20,1.10−1.65;MS(ESI+)m/z:248.2(M+H)。
【0179】
(5R)−1−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オン ヒドロクロリド:
(3R)−メチル l−[(6)−l−フェニルエチル]ピロリジン−3−アセテート(25.7g,104.0mmol)のTHF(265mL)溶液を窒素ガス雰囲気下、CO/アセトンバス中で冷却した。次いで、ICHCl(22.7mL,312.0mmol)を加え、混合物を30分間攪拌した。2.0M リチウム ジイソプロピルアミド(ヘキサン/THF/エチルベンゼン,156mL,312mmol)の溶液をゆっくりと30分間かけて加えた。添加している間、内温は最高−40℃まで上昇した。1時間後、飽和NHC1(100mL)を加え、混合物を室温まで暖めた。有機層を分離し、乾燥し(MgSO)、ろ過し、濃縮した。得られた泡をクロマトグラフィー(300gSiO,CHC1−MeOH−NHOH(89:10:1),次いでCHC1−MeOH(3:1))。生成物の分画を集め、濃縮し、(5R)−3−オキソ−l−[(1S)−l−フェニルエチル]−l−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタン クロリド(10.1g)を泡として得た(MS(ESI+)m/z:230.1(M+H)。この泡(10.1g,38.0mmol)をMeOH(500mL)に取り、10%Pd(C)(3.0g)を加え、混合物を終夜、水素添加した(45psi)。混合物をろ過し、再度、還元条件(9.1g,10%Pd/C,50psi)に供した。5時間後、TLCは、(5R)−3−オキソ−1−[(1S)−l−フェニルエチル]−l−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンクロリドの消失を示した。混合物をろ過し、濃縮し、粉砕し(少量のiPrOHで)、3.73gの2種の生成物を固体として得た:[α]25 33(c0.97,DMSO);HRMS(FAB)計算値(M+H):C11NOとして、126.0919、実測値:126.0937。
【0180】
エキソ−(3R,5R)−1−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−アミン ジヒドロクロリド:
(5R)−l−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オン ヒドロクロリド(3.64g,22.6mmol)、ヒドロキシルアミン ヒドロクロリド(2.04g,29.4mmol)及びエタノール(130mL)を含むフラスコに、酢酸ナトリウム三水和物(9.23g,67.8mmol)を加えた。混合物を3時間攪拌し、ろ過し、濃縮した。得られた固体をn−プロパノール(100mL)に取り、ナトリウム(約13.6g,618 mmol)を20〜25回に分けて加えた。反応は自然にリフラックスし始め、反応をオイルバス(100℃)で加熱した。添加を約20分で終了し、混合物は約40分後に凝固した。オイルバスを除き、n−プロパノール(2x25 mL)を加え、残余のナトリウム金属を溶解した。混合物をHO(100mL)を一滴ずつ加えて注意深く停止した。飽和NaCl水溶液(20mL)を加え、層を分離した。有機層を乾燥し(MgSO)、ろ過し、新たに調製したMeOH/HClで処理し、濃縮した。得られた固体を30mL EtOHで粉砕し、ろ過し、真空下で乾燥し、3.51gの(3R,5R)−[3.2.1]−アミンを固体として得た:[α]25 −3(c0.94,DMSO);H NMR(400MHz,DMSO−d)δ3.60−3.80,2.95−3.10,2.65−2.75,1.90−2.15,1.70−1.90;HRMS(FAB)計算値:Cl4(M+H)として、127.1235、実測値:127.1235。
【0181】
以下の実施例は例示にすぎず、本発明の範囲を、提供した実施例及び指定した化合物にのみ限定するものではない。また、実施例で製造した塩は、例示にすぎず、本発明を限定するものではない。いずれかの薬学的に許容される塩は当業者によって製造することができる。更に、特定の立体異性体の命名は例示のためであり、本発明の範囲を少しも限定するものではない。本発明は、純粋な立体異性体での又はラセミ混合物として以下の実施例を含む。
【実施例】
【0182】
実施例1:N−[(3R)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]チエノ[3,2−c]ピリジン−6−カルボキサミド ジヒドロクロリド:
【0183】
【化19】

【0184】
グリコール酸一水和物(20.3g,221mmol)及びベンジルカルバメート(30.6g,202mmol)をエーテル(200mL)に加えた。溶液を室温で24時間攪拌した。得られた高粘度の沈殿をろ過し、残渣をエーテルで洗浄し、([(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ)(ヒドロキシ)酢酸(C150)を白色固体として得た(収率47%)。MS(CI)C1011NO+Hとして、m/z:226(M+H)+
【0185】
C150(11.6g,51.5mmol)を無水MeOH(120mL)に溶解し、アイスバスで冷却した。濃硫酸(2.0mL)を注意深く一滴ずつ加えた。溶液を2時間攪拌するまでアイスバスで冷却した。反応を500gの氷及び飽和NaHCO溶液(400mL)との混合に注いで停止させた。溶液をEtOAc(3x300mL)で抽出し、併せた有機層を乾燥し(MgSO)、ろ過し、濃縮して青白色油とした。これは放置するとメチル([(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ)(メトキシシ)アセテート(C151)を白色固体として得た(収率94%)。元素分析 C1215NOとして、理論値C,56.91:H,5.97;N,5.53、実測値C,56.99:H,6.02;N,5.60。
【0186】
C151(11.76g,46.4mmol)を窒素ガス下、トルエン(50mL)に溶解し、70℃まで加熱した。三塩化リン(23.2mL,46.4mmol)をシリンジで一滴ずつ加え、溶液を70℃で18時間攪拌した。亜リン酸トリメチル(5.47mL,46.4mmol)を次いで一滴ずつ加え、70℃で更に2時間攪拌した。混合物を真空下で油まで濃縮し、粗原料をEtOAc(100mL)に溶解し、飽和NaHCO(3x50mL)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、ろ過し、30mLの体積まで濃縮した。この残余溶液を激しく攪拌し、同時にヘキサンを沈殿ができるまで加えた。この沈殿固体をろ取し、メチル([(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ)(ジメトキシホスホリル)アセテート(C152)を白色固体として得た(収率84%)。MS(EI)C1318NOPとして、m/z:331(M)+
【0187】
C152(12.65g,38.2mmol)及び無水酢酸(9.02mL,95.5mmol)のMeOH(100mL)溶液をParrフラスコに加えた。溶液を10%Pd/C触媒(0.640g)により、45PSIで3時間水素添加した。触媒をろ過して除き、ろ液を真空下で油に濃縮した。当該油を減圧下に置き、減圧により凝固させた。白色残渣を少量のEtOAcに溶解し、激しく攪拌し、同時にペンタンを沈殿が形成されるまで加えた。沈殿をろ取し、メチル(アセチルアミノ)(ジメトキシホスホリル)アセテート(C153)を白色粉体として得た(収率87%)。MS(CI)C14NOPとして、m/z:240(M+H)+
【0188】
2,3−チオフェン ジカルボキサアルデヒド(1.40g,9.99mmol)をCHCl(100mL)に溶解し、スラスコをアイスバス中に置いた。C153(2.63g,11.0mmol)をCHCl(100mL)に溶解し、DBU(1.65mL,11.0mmol)を加え、当該溶液を冷却チオフェン溶液に一滴ずつ加えた。反応混合物を真空下で濃縮し、粗原料を300gのスラリー充填シリカ上で、50%EtOAc/へキサンで溶出してクロマトグラフィーに付した。分画を2種の群で集め、所望の化合物を得た。各群の分画を併せ、別々に濃縮した。メチルチエノ[2,3-c]ピリジン−5−カルボキシレート(C154)は最初に溶出し、好適な分画を濃縮して白色固体を得た(収率41%)。第二群の好適な分画を集め、濃縮してメチルチエノ[3,2-c]ピリジン−6−カルボキシレート(C155)を黄固体として得た(収率38%)。C154のMS(EI)CNOSとして、m/z:193(M)+C155のMS(EI)CNOSとして、m/z:193(M)+
【0189】
C155(736mg,3.8mmol)を、水(2mL)を含むMeOH(16mL)に溶解した。2M NaOH(2.0mL,4.0mmol)を一滴ずつ加え、当該溶液を室温で攪拌した。2日後(TLCでエステルが完全に消失)、反応を真空下で濃縮した。残渣を水(12mL)に溶解し、pHを10%HClで3.5に調整した。沈殿固体をろ取し、固体をエーテルで洗浄し、チエノ[3,2-c]ピリジン−6−カルボン酸(C156)を白色固体として得た(収率58%)。HRMS(FAB) 計算値CNOS+H:180.0119、実測値180.0123(M+H)+
【0190】
方法A:
チエノ[3,2-c]ピリジン−6−カルボン酸(185mg,1.03mmol)を、CHCl(4mL)中でTEA(0.167mL,1.20mmol)と混合した。ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)−ホスフィン酸クロリド(308mg,1.20mmol)を一滴ずつ加え、当該溶液を室温で30分間攪拌した。0.5M遊離塩基(R)−(3)−アミノキヌクリジンのDMF(3mL,1.5mmol)溶液を一滴ずつ加え、反応を4時間攪拌した。反応混合物を、洗浄済みのAmberjet 4400 OH強塩基性アニオン交換樹脂から、洗浄済みのAG 50W-X2水素型樹脂に注いだ。酸性樹脂をMeOH(100mL)で洗浄し、生成物を105TEA/MeOH溶液(100mL)で溶出した。ガラス状になるまで溶液を真空下で濃縮した。粗原料を10gのスラリー充填シリカ上でクロマトグラフィーに付し、1%NHOH/10%MeOH/CHClで100mm分画に溶出した。好適な分画を集め、真空下で濃縮し、ガラスを0.115g(39%)得た。ガラスを1M HClのMeOH(1.6mL)に溶解し、2時間攪拌した。IPA(2mL)及びEtO(4mL)を加えて沈殿化を促進した。沈殿をろ過によって単離し、乾燥して白色塩として116mg(31%)を得た。HRMS(FAB)計算値:C1517OS+Hとして、288.1170、実測値288.1174(M+H)+
【0191】
実施例2:N−[(3S)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]チエノ[3,2−c]ピリジン−6−カルボキサミド ジヒドロクロリド:
実施例2は、特に大きな変更を加えることなく方法Aを用い、(S)−3−アミノキヌクリジン遊離塩基を用いて調製した。
【0192】
実施例3:N−[(3R)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−3−ブロモ−1−ベンゾフラン−5−カルボキサミド:
【0193】
【化20】

【0194】
4−ヒドロキシ安息香酸(34.5g,250mmol)をMeOH(500mL)に懸濁し、ヨウ化ナトリウム(34.5g,250mmol)及びNaOH(20g,500mmol)で処理し、0℃に冷却した。次亜塩素酸ナトリウム(Clorox bleach)(423mL,250mmol)を0〜5℃で一滴ずつゆっくりと加え、混合物を1時間攪拌した。混合物を飽和Na(135mL)及び水(135mL)で処理し、アイスバスのまま終夜攪拌した。混合物を濃HClでpH3.5まで酸性にし、得られた沈殿をろ取し、廃棄した。ろ液を乾燥するまで濃縮し、水(300mL)及びEtOAc(1x500mL,次いで3x300mL)で分配し、無水NaSOで乾燥し、濃縮し、基本的に純粋な4−ヒドロキシ−3−ヨウ化安息香酸を白色固体として59.6g(90%)得た。MS(ESI):262.9(M-H)-
【0195】
4−ヒドロキシ−3−ヨウ化安息香酸(59.6g,226mmol)を3Nメタノール性HCl(276mL,678mmol)と混合し、65℃で24時間加熱し、次いで乾燥するまで濃縮した。残渣を水で希釈し、3N NaOHでpH7で中性にし、得られた固体をろ過によって集めた。粗原料をシリカゲル(230〜400メッシュ)に吸着させ、1kgのシリカゲル上でEtOAc/へキサン混合物で溶出してクロマトグラフィーに付した。生成物を含む全ての分画を集め、固体(47.2g)に濃縮した。原料はEtOAcで再結晶し、透明な原料(16.6g)を得た。EtOAc中でのろ液の第二の再結晶により、同程度の純度の第二固体を得た(6.2g)。残余の固体(24.5g)は更に精製せず使用した。再結晶総量:白色固体として22.8g(36%)。HRMS(FAB) 計算値:CIO+Hとして、278.9520、実測値278.9534(M+H)+
【0196】
メチル 4−ヒドロキシ−3−ヨウ化安息香酸エステル(5.56g,20mmol)を、乾燥機で乾燥したフラスコで窒素下で、トリメチルシリルアセチレン(3.96mL,28mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(414mg,0.6mmol)及びヨウ化銅(57mg,0.3mmol)と、THF(20mL)/CHCl(40mL)中で混合した。トリエチルアミン(8.7mL,62.3mmol)を加え、混合物を50℃で4時間加熱した。混合物をCHCl(60mL)で希釈し、5%HCl(2x40mL)で乾燥し、無水MaSOで乾燥し、茶色固体に濃縮した。粗原料をシリカゲルに吸着させ、200gのシリカゲル上でクロマトグラフィーに付し、15%〜30%EtOAc/へキサンで溶出し、50mL分画を得た。好適な分画を混合し、濃縮して5.0g(95%)のメチル 4−ヒドロキシ−3−[(トリメチルシリル)エチニル]安息香酸エステルをオレンジ色固体として得た。HRMS(FAB)計算値:C1316Si+Hとして、249.0947、実測値249.0955(M+H)+
【0197】
メチル 4−ヒドロキシ−3−[(トリメチルシリル)エチニル]安息香酸エステル(11g,44.5mmol)を、窒素ガス下のフラスコ中でジイソプロピルアミン(7.1mL,50mmol)及びヨウ化銅(423mg,2.2mmol)と100mL MeOH中で混合した。反応を60℃で6時間暖め、真空下で揮発物質を除き、茶緑色残渣を500gのシリカゲル(230〜400メッシュ)上でクロマトグラフィーに付し、20%EtOAc/へキサンで溶出した。好適な分画を併せ、濃縮し、2.63g(34%)のメチル ベンゾフラン−5−カルボキシレートを得た。H−NMR(300MHz,CDCl)δ3.96,6.86,7.55,7.70,8.04,8.36ppm。
【0198】
メチル ベンゾフラン−5−カルボキシレート(667mg,3.8mmol)を、窒素ガス下のフラスコ中で20mLのCHClに溶解した。溶液を臭素(1.2mL,22.8mmol)で処理し、20mLの飽和炭酸ナトリウムで層状にし、反応を室温で2時間穏やかに攪拌した。反応を30分間激しく攪拌し、層を分離し、有機層を真空下で濃縮し、琥珀油を得た。残渣を30mLのEtOHに溶解し、溶液を無水KCO(3.15g,22.8mmol)で処理し、反応を終夜激しく攪拌した。不溶性原料をろ過によって除き、ろ液を3mLの3N NaOHで希釈し、混合物を室温で3時間攪拌した。混合物を真空下で濃縮し、残渣を10mLの水で溶解し、溶液のpHを10%HCl水溶液で2に調整した。沈殿を集め、水で洗浄し、乾燥して880mg(96%)の3−ブロモベンゾフラン−5−カルボン酸をオフホワイト色の固体として得た。HRMS(FAB)計算値:CBrO+Hとして、240.9501、実測値240.9505(M+H)+
【0199】
方法B:
3−ブロモベンゾフラン−5−カルボン酸(1.0g,4.1mmol)を、窒素ガス下のフラスコ中で、3(R)−アミノキヌクリジンジヒドロクロリド(908mg,4.6mmol)及びDIEA(2.9mL,16.6mmol)と、10mLDMF中で混合した。混合物をHATU(1.73g,4.6mmol)で処理し、反応を室温で終夜攪拌した。揮発物質を真空下で除き、残渣を50mL CHCl及び50mL 1:1濃NHOH/飽和NaClに分配し、水層を50mL CHClで抽出した。併せた有機層を無水KCOで乾燥し、乾燥するまで濃縮し、残渣を30gのシリカゲル(230〜400メッシュ)上でクロマトグラフィーに付し、80%MeOH/CHCl+0.5濃NHOHで溶出した。好適な分画を併せ、濃縮し、1.34g(93%)の実施例3をオフホワイト色固体として得た。HRMS(FAB)計算値:C1617BrN+Hとして、349.0552、実測値349.0555(M+H)+
【0200】
実施例4:N−[(3S)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−3−ブロモ−1−ベンゾフラン−5−カルボキサミド:
実施例4は、特に大きな変更を加えることなく方法Bを用い、(S)−3−アミノキヌクリジン遊離塩基を用いて調製した。
【0201】
実施例5:N−[(3R)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−1H−ピロロ[2,3−c]ピリジン−5−カルボキサミド ジヒドロクロリド:
【0202】
【化21】

【0203】
2,4−ルチジン(51.4mL,0.445mol)を、アイスバス中で窒素ガス下のフラスコ中で、250mLの発煙硫酸に一滴ずつ加えた。溶液を15分間かけて硝酸カリウム(89.9g,0.889mol)で一滴ずつ処理した。反応をアイスバス中で1時間、室温で2時間攪拌し、100℃のオイルバス中で徐々に5時間、次いで130℃のオイルバス中で4時間暖めた。混合物を冷却し、1000mLの氷に注ぎ、混合物をNaHCO(1.100g,13.1mol)で中和した。沈殿したNaSOをろ過によって除き、固体を500mLの水で洗浄し、ろ液を4x500mLエーテルで抽出した。併せた有機層を無水MgSOで乾燥し、真空下で濃縮して黄色油(50g)を得た。粗油を真空下で蒸留し、3分画を得た:16gの回収2,4−ジメチル−5−ニトロ−ルチジン(85℃)、25%の2,4−ジメチル−5−ニトロ−ピリジン(135〜145℃)が混入した16gの2,4−ジメチル−3−ニトロ−ピリジン(C169)、及び2,4−ジメチル−3−ニトロピリジン(145〜153℃)が混入した16gの2,4−ジメチル−5−ニトロ−ピリジン(C170)。C169H−NMR(CDCl)δ2.33(s,3H),2.54(s,3H),7.10(d,J=5Hz,1H),8.43(d,J=5Hz,1H)ppm。C170H−NMR(CDCl)δ2.61(s,3H),2.62(s,3H),7.16(s,1H),9.05(s,1H)ppm。
【0204】
C170/C169(75:25)(5.64g,37mmol)を、窒素ガス下のフラスコ中で、ベンゼンセレン酸無水物(8.2g,22.8mmol)と300mLのジオキサン中で混合した。反応は10時間リフラックスするまで暖め、冷却し、濃縮して濃黄色油を得た。当該油を250gのシリカゲル(230〜400メッシュ)上でクロマトグラフィーに付し、15%EtOAc/ヘキサンで溶出した。好適な分画を集め、濃縮して2−ホルミル−4−メチル−5−ニトロピリジン(C171)(収率66%)を得た。HRMS(EI)計算値:Cとして、166.0378、実測値166.0383(M)+
【0205】
C171(1.15g,6.9mmol)、p−トルエンスルホン酸(41mg,0.22mmol)及びエチレンングリコール(1.41mL,25mmol)を、ディーン・スタークトラップを付けたフラスコ中で25mLのトルエンに加えた。反応を2時間リフラックスするまで暖め、室温まで冷却し、真空下で濃縮して油状残渣を得た。粗油を40gのシリカゲル(Biotage)上でクロマトグラフィーに付し、20%EtOAc/ヘキサンで溶出した。好適な分画を集め、濃縮して2−(1,3−ジオキソラン−2−イル)−4−メチル−5−ニトロピリジン(C172)(収率90%)を得た。MS(EI)計算値C10,m/z:210(M)+
【0206】
C172(1.3g,6.2mmol)及びDMFジメチルアセタール(1.12mL,8.4mmol)を、窒素ガス下で15mLのDMFに加えた。反応を3時間、90℃まで暖め、反応を真空下で濃縮した。残渣を250mLのParr攪拌容器中で、20mLのEtOH中で1.25gの5%Pd/BaSOと混合し、混合物を取り込むみが終了するまで、室温で水素添加した。触媒をろ過によって除き、250mLのParr攪拌容器中で、ろ液を500mgの10%Pd/C触媒と混合した。混合物を室温で1時間水素添加した。更に水素取り込みは観察されなかった。触媒をろ過によって除き、ろ液を真空下で濃縮し、黄褐色固体を得た。粗原料を50gのシリカゲル(230〜400メッシュ)上でクロマトグラフィーに付し、7%MeOH/CHClで溶出した。好適な分画を集め、濃縮して5−(1,3−ジオキソラン−2−イル)−1H−ピロロ[2,3−c]ピリジン(C173)(収率69%)を得た。MS(EI)計算値C1010,m/z:190(M)+
【0207】
C173(800mg,4.21mmol)を44mLの10%アセトニトリル水溶液に溶解した。p−トルエンスルホン酸(630mg,3.3mmol)を加え、混合物を5時間、リフラックスするまで加熱した。混合物を室温まで冷却し、真空下で濃縮し、得られた残渣を15mLの飽和NaHCOで希釈した。黄白色固体を集め、水で洗浄し、乾燥して1H−ピロロ[2,3−c]ピリジン−5−カルバアルデヒド(C174)(収率81%)を得た。HRMS(FAB)計算値:CO+Hとして、147.0558、実測値147.0564(M+H)+
【0208】
C174(500mg,3.42mmol)を1.5mLのギ酸に溶解した。溶液をアイスバス中で冷却し、30%過酸化水素溶液(722μL,6.8mmol)を一滴ずつ加え、反応をアイスバス中で1時間攪拌し、5℃で終夜放置した。混合物を水で希釈し、固体を集め、水で洗浄し、乾燥して522mgのオフホワイト固体を得た。ギ酸塩を7mLの水に加え、3mLの2N NaOHを加え、pHを5%HCl水溶液で3に調整した。沈殿を集め、乾燥して1H−ピロロ[2,3−c]ピリジン−5−カルボン酸(C176)(収率67%)を得た。HRMS(FAB)計算値:C+Hとして、163.0508、実測値163.0507(M+H)+
【0209】
実施例5は、特に変更を加えることなく方法Bを用いて、酸C176を用いて白色個体(収率40%)として得た。HRMS(FAB)計算値:C1518O+Hとして、271.1559、実測値271.1562(M+H)+
【0210】
実施例6:N−[(3S)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−1H−ピロロ[2,3−c]ピリジン−5−カルボキサミド ジヒドロクロリド:
実施例6は、特に大きな変更を加えることなく方法Bを用い、(S)−3−アミノキヌクリジン遊離塩基を用いて調製した。
【0211】
実施例7:N−[(3R)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−1−メチル−1H−ピロロ[2,3−c]ピリジン−5−カルボキサミド ジヒドロクロリド:
【0212】
【化22】

【0213】
C173(1.05g,5.52mmol)を窒素ガス下の乾燥フラスコ中で、20mLのTHFに溶解した。60%水素化ナトリウム(243mg,6.07mmol)を加え、反応を30分間攪拌し、ヨウ化メチル(360μL,5.8mmol)を加え、反応を室温で終夜攪拌した。反応を真空下で濃縮し、残渣を10mLの飽和NaCl及びCHCl(4x10mL)に分配した。併せた有機層を無水KCOで乾燥し、真空下で濃縮し、黄褐色ペーストを得た。粗原料を50gシリカゲル(230〜400メッシュ)上で、5%MeOH/CHClで溶出して、クロマトグラフィーに付した。好適な分画を集め、濃縮し、5−(1,3−ジオキソラン−2−イル)−1−メチル−1H−ピロロ[2,3−c]ピリジン(C175)(収率86%)を得た。HRMS(FAB)計算値:C1112+Hとして、205.0977、実測値205.0983。
【0214】
C175(920mg,4.5mmol)をフラスコ中で、25mLの10%アセトニトリル水溶液に溶解した。p−トルエンスルホン酸(630mg,3.3mmol)を加え、混合物を90℃で8時間加熱した。混合物を室温に冷却し、真空下で濃縮し、残渣を15mLの飽和NaHCO及びCHCl(4x10mL)に分配した。併せた有機層を無水KCOで乾燥し、真空下で濃縮し、1−メチル−ピロロ[2,3−c]ピリジン−5−カルバアルデヒド(C177)(収率99%)を得た。HRMS(FAB)計算値:CO+Hとして、161.0715、実測値161.0711。
【0215】
C177(690mg,4.3mmol)を2mLのギ酸に溶解した。溶液をアイスバス中で冷却し、30%過酸化水素水(970μL,8.6mmol)を一滴ずつ加え、反応をアイスバス中で1時間攪拌し、5℃で終夜放置した。反応を乾燥するまで濃縮し、水に懸濁し、pHを2N NaOHで7に調整した。混合物を乾燥するまで濃縮し、MeOHに溶解し、15mLの50W−X2イオン交換樹脂(水素型)に充填し、200mLのMeOH、次いで200mLの5%EtN/MeOHで溶出した。塩基性洗浄液を乾燥するまで濃縮し、1−メチル−1H−ピロロ[2,3−c]ピリジン−5−カルボン酸(C178)(収率78%)を得た。HRMS(FAB)計算値:C+Hとして、177.0664、実測値177.0622(M+H)+
【0216】
実施例7は、特に大きな変更を加えることなく方法Bに従い、酸C178を用いて黄色固体(収率54%)として得た。HRMS(FAB)計算値:C1620O+Hとして、285.1715、実測値285.1713(M+H)+
【0217】
実施例8:N−[(3S)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−1−メチル−1H−ピロロ[2,3−c]ピリジン−5−カルボキサミド ジヒドロクロリド:
実施例8は、特に大きな変更を加えることなく方法Bを用い、(S)−3−アミノキヌクリジン遊離塩基を用いて調製した。
【0218】
実施例9:N−[(3R)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−3−クロロフロ[2,3−c]ピリジン−5−カルボキサミド ジヒドロクロリド:
【0219】
【化23】

【0220】
フロ[2,3−c]ピリジン−5−イルメタノール(7.70g,51.63mmol)をピリジン(45mL)に溶解し、無水酢酸(14.36mL,154.9mmol)で処理し、室温で18時間攪拌した。ピリジンを真空下で除き、得られた残渣をEtOAc(200mL)に溶解し、50%飽和炭酸ナトリウム(4x90mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、真空下で濃縮し、9.32g(94%)のフロ[2,3−c]ピリジン−5−イルメチルアセテートを黄色油として得た。MS(EI)m/z:191(M+),277,148,119,118,86,84,77,63,51,50。
【0221】
フロ[2,3−c]ピリジン−5−イルメチルアセテート(956mg,5mmol)をCHCl(40mL)に溶解し、0℃に冷却した。塩素ガスを15分間、溶液にバブルし、冷却バスを直ちに除き、混合物を2時間攪拌した。混合物を0℃に再度冷却し、塩素ガスで飽和し、冷却バスを直ちに除き、溶液を室温まで温めた。溶液を飽和NaHCO(20mL)で層状にし、穏やかに2時間攪拌し、次いで激しく15分間攪拌した。混合物を飽和NaHCO(50mL)で希釈し、CHCl(1x40mL、次いで1x20mL)で抽出し、KCOで乾燥し、窒素ガス流下で体積20mLまで濃縮した。溶液をEtOH(35mL)で希釈し、KCO(4.09g,29.6mmol)で処理し、室温で18時間攪拌した。水(7mL)を加え、混合物を2日間攪拌した。混合物を乾燥するまで濃縮し、50%飽和NaCl(50mL)及びCHCl(4x50mL)に分配し、KCOで乾燥し、真空下で濃縮して茶色固体(833mg)を得た。粗原料を標準40gBiotageカラム上、50%EtOAc/へキサンで溶出して、クロマトグラフィーに付した。好適な分画を集め、濃縮し、624mg(68%)の(3−クロロフロ[2,3−c]ピリジン−5−イル)メタノールを黄色油として得た。H−NMR(DMSO−d):δ4.69,5.56,7.69,8.55,8.93ppm。
【0222】
オキサリルクロリド(231μL,2.6mmol)をCHCl(10mL)と混合し、−78℃まで冷却し、DMSO(373μL,5.3mmol)で一滴ずつ処理し、20分間攪拌した。冷溶液を(3−クロロフロ[2,3−c]ピリジン−5−イル)メタノール(420mg,2.3mmol)のTHF(5mL)/CHCl(5mL)溶液で一滴ずつ処理し、1時間攪拌し、次いでEtN(1.59mL,11.45mmol)で一滴ずつ処理した。混合物を−78℃で30分間、次いで0℃で30分間攪拌した。混合物を飽和NaHCO(20mL)で洗浄し、有機層をKCOで乾燥し、真空下で濃縮し黄色固体(410mg)を得た。粗原料を20gのスラリー充填シリカゲル上で、15%EtOAc/へキサンで溶出して、クロマトグラフィーに付した。好適な分画を集め、濃縮し、322mg(77%)の3−クロロフロ[2,3−c]ピリジン−5−カルバアルデヒドを白色固体として得た。飽和NaHCO(220mL)で層状にし、3−クロロフロ[2,3−c]ピリジン−5−カルバアルデヒド(317mg,1.74mmol)をTHF(10mL)/t−BuOH(5mL)/HO(5mL)に溶解し、亜塩素酸ナトリウム(592mg,5.24mmol)及びKHPO(473mg,3.48mmol)で処理し、室温で18時間攪拌した。反応混合物を真空下で乾燥するまで濃縮し、水(10mL)に懸濁し、濃HClでpH3.5の酸性にし、室温で2時間攪拌した。得られた固体をろ過し、水で洗浄し、18時間40℃で真空下に乾燥し、364mgの3−クロロフロ[2,3−c]ピリジン−5−カルボン酸を白色固体として得た。MS(EI)m/z:197(M+)。
【0223】
実施例9は、特に大きな変更を加えることなく方法Bに従って、3−クロロフロ[2,3−c]ピリジン−5−カルボン酸を使って、101mgの白色固体を得た。MS(EI)m/z:305(M+)。
【0224】
実施例10:N−[(3S)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−3−クロロフロ[2,3−c]ピリジン−5−カルボキサミド ジヒドロクロリド
実施例10は、特に大きな変更を加えることなく方法Bを用い、(S)−3−アミノキヌクリジン遊離塩基を用いて調製した。
【0225】
実施例11:N−[(3R)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−3−ブロモフロ[2,3−c]ピリジン−5−カルボキサミド:
【0226】
【化24】

【0227】
フロ[2,3−c]ピリジン−5−イルメチルアセテート(5.17g,27.05mmol)をCHCl(130mL)に溶解し、飽和NaHCO(220mL)で層状にし、臭素(8.36mL,162.3mmol)で処理し、室温で4.5時間非常にゆっくり攪拌した。混合物を30分間激しく攪拌し、CHCl(100mL)で希釈し、当該層を分離した。水層をCHCl(2x100mL)で抽出し、併せた有機層を窒素ガス気流下で少量になるまで濃縮した。溶液をEtOH(200mL)で希釈し、KCO(22.13g,160.1mmol)で処理し、室温で2.5日間攪拌した。混合物を乾燥するまで濃縮し、50%飽和NaCl(50mL)及びCHCl(4x200mL)に分配し、NaSOで乾燥し、真空下で濃縮して黄色固体(6.07g)を得た。粗原料をシリカゲル(12g)に吸着させ、250gのスラリー充填シリカゲル上で、50%EtOAc/へキサン〜100%EtOAcのグラジュエントで溶出して、クロマトグラフィーに付した。好適な分画を集め、濃縮し、5.02g(81%)の(3−ブロモフロ[2,3−c]ピリジン−5−イル)メタノールを白色固体として得た。MS(EI)m/z:227(M+)。
【0228】
オキサリルクロリド(1.77mL,20.1mmol)を窒素雰囲気下、乾燥フラスコ中で、CHCl(60mL)と混合し、−78℃まで冷却し、DMSO(2.86mL,40.25mmol)で一滴ずつ処理し、20分間攪拌した。冷溶液を(3−ブロモフロ[2,3−c]ピリジン−5−イル)メタノール(4.0mg,17.5mmol)のTHF(50mL)溶液で一滴ずつ処理し、1時間攪拌し、次いでEtN(12.2mL,87.5mmol)で一滴ずつ処理した。混合物を−78℃で30分間、次いで0℃で30分間攪拌した。混合物を飽和NaHCO(120mL)で洗浄し、有機層をKCOで乾燥し、真空下で濃縮し濃黄色固体(3.91g)を得た。粗原料を150gのスラリー充填シリカゲル上で、30%EtOAc/へキサンで溶出して、クロマトグラフィーに付した。好適な分画を集め、濃縮し、3.93g(99%)の3−ブロモフロ[2,3−c]ピリジン−5−カルバアルデヒドを白色固体として得た。MS(EI)m/z:225(M+)。
【0229】
3−ブロモフロ[2,3−c]ピリジン−5−カルバアルデヒド(3.26g,14.42mmol)をTHF(100mL)/t−BuOH(50mL)/HO(50mL)に溶解し、亜塩素酸ナトリウム(4.89g,43.3mmol)及びKHPO(3.92g,28.8mmol)で処理し、室温で18時間攪拌した。白色固体をろ過によって集め、ろ液を真空下で乾燥するまで濃縮した。残渣を水(25mL)に懸濁し、濃HClでpH2の酸性にし、残余固体をろ過によって集めた。集めた固体を50℃で18時間、真空オーブンで乾燥し、混合して、3.52g(99%)の3−ブロモフロ[2,3−c]ピリジン−5−カルボン酸を白色固体として得た。MS(EI)m/z:241(M+)。
【0230】
実施例11は、特に大きな変更を加えることなく方法Bに従い、3−ブロモフロ[2,3−c]ピリジン−5−カルボン酸を用いて、670mg(収率96%)の白色固体を得た。MS(EI)m/z:335(M+)。
【0231】
実施例12:N−[(3S)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−3−ブロモフロ[2,3−c]ピリジン−5−カルボキサミド:
実施例12は、特に大きな変更を加えることなく方法Bを用い、(S)−3−アミノキヌクリジン遊離塩基を用いて調製した。
【0232】
実施例13:N−[(3R)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−3−ブロモチエノ[2,3−c]ピリジン−5−カルボキサミド:
【0233】
【化25】

【0234】
C154(630mg,3.3mmol)を20mLのCHClに溶解した。当該溶液を臭素(1.1mL,20mmol)で処理し、20mLの飽和NaHCOで層状にし、2層混合物を2時間穏やかに攪拌した。反応を30分間激しく攪拌し、当該層を分離し、有機層を無水KCOで乾燥させた。当該有機層を濃縮して濃黄褐色固体を得た。当該固体を20mLの10%MeOH/CHClに溶解し、2gのシリカゲル(230〜400メッシュ)上で、65%EtOAc/へキサンで溶出して、クロマトグラフィーに付した。好適な分画を集め、濃縮し、635mg(71%)のメチル−3−ブロモチエノ[2,3−c]ピリジン−5−カルボキシレートを黄褐色固体として得た。H−NMR(CDCl)δ4.09,7.82,8.59,9.25ppm。
【0235】
メチル−3−ブロモチエノ[2,3−c]ピリジン−5−カルボキシレート(635mg,2.33mmol)を25mLのMeOHと混合した。混合物を2N NaOH(3mL,6mmol)及び3mL HOで処理し、反応を室温で4時間攪拌した。揮発性物質を真空下で除き、残渣を5mL HOと混合した。混合物のpHを10%HCl水溶液でpH3.5に調整した。黄褐色沈殿を集め、水で洗浄し、50℃で真空下乾燥し、475mg(79%)の3−ブロモチエノ[2,3−c]ピリジン−5−カルボン酸を黄褐色固体として得た。MS(ESI)m/z:257.9。
【0236】
実施例13は、方法Bに従い、3−ブロモチエノ[2,3−c]ピリジン−5−カルボン酸を用い、240mg(91%)のオフホワイト固体を得た。MS(EI)m/z:365(M+)。
【0237】
実施例14:N−[(3S)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−3−ブロモチエノ[2,3−c]ピリジン−5−カルボキサミド:
実施例14は、特に大きな変更を加えることなく方法Bを用い、(S)−3−アミノキヌクリジン遊離塩基を用いて調製した。
【0238】
実施例15:N−[(3R)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−3−イソプロピル−1−ベンゾフラン−5−カルボキサミド ジヒドロクロリド:
【0239】
【化26】

【0240】
メチル 4−ヒドロキシ−3−ヨードベンゾエート(6.0g,21.5mmol)を窒素雰囲気下、乾燥フラスコ中でDMF(35mL)に溶解し、0℃に冷却した。60%水素化ナトリウム(860mg,21.5mmol)を一滴ずつ加え、アイスバスが冷えている間、反応を1時間攪拌した。反応を1−クロロ−3−メチル−2−ブテン(2.67mL,23.7mmol)及びヨウ化ナトリウム(323mg,2.15mmol)で処理し、反応を室温で18時間攪拌した。反応をEtOAc(150mL)で希釈し、1:1の飽和NaCl/NaHCO(1x100mL)で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥し、濃縮して油を得た。粗原料を700gのスラリー充填シリカゲル上で、15%EtOAc/へキサンで溶出して、クロマトグラフィーに付した。好適な分画を集め、濃縮し、5.13gの青白色油を得た。次いで、当該油をDMF(40mL)に溶解し、酢酸パラジウム(165mg,0.74mmol)、炭酸ナトリウム(3.9g,36.8mmol)、ギ酸ナトリウム(1.0g,14.7mmol)及びテトラN−ブチルアンモニウムクロリド(4.5g,16.2mmol)で順次処理した。混合物を80℃で2日間攪拌した。反応をEtOAc(200mL)に注ぎ、50%飽和食塩水(3x75mL)及び5%HCl(1x75mL)で洗浄した。有機層を乾燥し(MgSO)、ろ過し、濃縮して茶色油を得た。粗原料を250gのスラリー充填シリカゲル上で、10%EtOAc/へキサンで溶出して、クロマトグラフィーに付した。好適な分画を集め、濃縮し、1.33g(2工程で28%)のメチル−3−イソプロピル−1−ベンゾフラン−5−カルボキシレートを流動性油として得た。HRMS(FAB) 計算値C1314+H:219.1021、実測値219.1021(M+H)+
【0241】
メチル−3−イソプロピル−1−ベンゾフラン−5−カルボキシレート(1.20g,5.51mmol)をMeOH(20mL)及びHO(4mL)に溶解した。2N NaOH(3.3mL,6.6mmol)を一滴ずつ加え、反応を2日間攪拌した。40℃に4時間軽く加熱した。揮発性物質を真空下で除き、残渣をHO(4mL)に溶解した。濃HClを使用してpH3に調整し、得られた沈殿をろ過によって単離し、終夜乾燥し、1.08g(97%)の3−イソプロピル−1−ベンゾフラン−5−カルボン酸を白色固体として得た。C1212として、MS(ESI)m/z:203.0(M-H)-
【0242】
実施例15は、特に大きな変更を加えることなく方法Bを用いて、白色固体として90%の収率で得た。HRMS(FAB) 計算値C1924+H:313.1916、実測値313.1913(M+H)+
【0243】
実施例16:N−[(3S)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−3−イソプロピル−1−ベンゾフラン−5−カルボキサミド ジヒドロクロリド:
実施例16は、特に大きな変更を加えることなく方法Bを用い、(S)−3−アミノキヌクリジン遊離塩基を用いて調製した。
【0244】
実施例17:N−[(1S,2R,4R)−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル]−3−イソプロピル−1−ベンゾフラン−5−カルボキサミド ジヒドロクロリド:
【0245】
【化27】

【0246】
実施例17は、特に大きな変更を加えることなく方法Bを用いて、3−イソプロピル−1−ベンゾフラン−5−カルボン酸をtert−ブチル(2R)−2−アミノ−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−カルボキシレートと結合させ、当該カルボキシレートをメタノール性HClで除去して、73%の収率で得た。HRMS(FAB) 計算値C1822+H:299.1759、実測値299.1754(M+H)+
【0247】
実施例18:N−[(3R)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−1−メチル−1H−インドール−5−カルボキサミド フマレート:
【0248】
【化28】

【0249】
予めヘキサンで3回洗浄した水素化ナトリウム(60%油状分散)の0.99g(24.8mmol)の無水DMF(50mL)攪拌懸濁液に、1H−インドール−5−カルボン酸(2.0g,12.4mmol)を加えた。混合物を室温で30分間攪拌し、ヨウ化メチル(3.09mL,49.7mmol)を加えた。混合物を終夜攪拌し、水で希釈し、EtOAc(3x)で抽出した。併せた有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮した。粗生成物をシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーに付した。ヘキサン−EtOAc(90:10)で溶出し、メチル 1−メチル−1H−インドール−5−カルボキシレートを白色固体(1.32g,56%)として得た:H−NMR(400MHz,CDCl)δ8.44,7.97,7.37,7.16,6.63,3.97,3.87ppm。
【0250】
メチル 1−メチル−1H−インドール−5−カルボキシレート(500mg,2.65mmol)のMeOH(5mL)攪拌溶液に、水素化ナトリウム(2.5%水溶液の20mL)を加えた。反応を80℃で1.5時間加熱し、MeOHを真空下で除いた。残余の水溶液を1N HCl水溶液でpH2に調整した。得られた沈殿をろ過によって集め、水で洗浄し、真空下で乾燥し、1−メチル−1H−インドール−5−カルボン酸を白色固体として得た(437mg,94%):H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ12.44,8.23,7.75,7.50,7.44,6.57,3.83。
【0251】
実施例8の遊離塩基は、特に大きな変更を加えることなく、方法Bを用いて100%の収率で得られた。
【0252】
遊離塩基(408mg,1.43mmol)のMeOH(5mL)の攪拌溶液に、ギ酸(167mg,1.43mmol)のMeOH(5mL)温溶液を加えた。混合物を50℃で10分間攪拌した。溶媒を真空下で除き、残渣をアセトン(5mL)及び水(0.5mL)で希釈した。混合物を室温で終夜攪拌した。固体をろ過によって集め、アセトンで洗浄し、高真空下で終夜乾燥し、509mg(89%)の実施例18を白色固体として得た:H−NMR(400MHz,MeOH−d)δ8.17,7.73,7.47,7.30,6.71,6.58,4.49−4.44,3.88−3.82,3.87,3.49−3.25,2.40−2.37,2.32−2.24,2.14−2.09,1.99−1.91。
【0253】
実施例19:N−[(3R)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−6−ブロモピロロ[1,2−a]ピラジン−3−カルボキサミド フマレート:
【0254】
【化29】

【0255】
TFA(44mL,510mmol)及びリン酸オキシクロリド(39.0g,140mmol)の熱(65℃)溶液に、エチル 3−エトキシ-O-エチル-N−(1H-ピロール-2−イルメチレン)セリネート(Dekhane, M; Potier, P; Dodd, R. H. Tetrahedron,49, 1993,8139-46)(9.6g,28.0mmol)の無水1,2-ジクロロエタン(200mL)溶液を一滴ずつ加えた。黒色混合物を65℃で18時間攪拌し、室温に冷却し、飽和NaHCO及び固体NaHCOでpH約9に中和した。層を分離し、塩基層をEtOAc(4x100mL)で抽出した。有機層を併せ、飽和食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮し、黒色油を得、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(35%EtOAc/ヘプタン〜50%を超える当該混合溶媒)で精製し、エチル ピロロ[1,2−a]ピラジン−3−カルボキシレートを薄茶色固体として得た。収率24%。HRMS(FAB) 計算値C1010+H:191.0820、実測値191.0823。
【0256】
エチル ピロロ[1,2−a]ピアジン−3−カルボキシレート(0.10g,0.54mmol)のCHCl(10mL)溶液に、遮光しながら、N−ブロモスクシンイミド(0.09g,0.54mmol)を加えた。10分後、溶媒を真空下で除き、残渣をプレパラトリークロマトグラフィーで精製し、エチル 6−ブロモピロロ[1,2−a]ピラジン−3−カルボキシレートを収率57%で得た。C10BrNとして、MS(ESI+)m/z:269.0(M+H)+
【0257】
エチル 6−ブロモピロロ[1,2−a]ピラジン−3−カルボキシレート(1.56g,5.80mmol)のEtOH(170mL)溶液に、水(70mL)を加え、次いで水酸化カリウム(3.2g,58.0mmol)を加えた。20分後、濃HClをpHが1〜2になるまで加えた。混合物を減圧下乾燥するまで濃縮し、得られた6−ブロモピロロ[1,2−a]ピラジン−3−カルボン酸ヒドロクロリドと塩化カリウムの混合物を精製することなく使用した。CBrNとして、MS(ESI+)m/z:241.1(M+H)+
【0258】
6−ブロモピロロ[1,2−a]ピラジン−3−カルボン酸ヒドロクロリド(1.67mmol)、(R)−3−アミノキヌクリジン ジヒドロクロリド(0.34g,1.67mmol)、DIEA(1.5mL,8.35mmol)のDMF(20mL)及びTHF(10mL)懸濁液に、N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−1−イルメチレン]−N−メチル−メタンアミニウム ヘキサフルオロホスフェート N−オキシド(0.64g,1.67mmol)を加えた。得られた懸濁液を16時間攪拌し、減圧下で乾燥するまで濃縮した。得られた原料をシリカゲルに吸収させ、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出として、9%MeOH/1%NHOH/CHCl)で精製した。実施例19は、特に変更することなく実施例18で用いた方法に従い、45%の収率で得た。HRMS(FAB) 計算値C1517BrN+H:349.0664、実測値349.0647。
【0259】
実施例20:N−[(3R)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−6−エチニルピロロ[1,2−a]ピラジン−3−カルボキサミド タートレート:
【0260】
【化30】

【0261】
N−[(3R)−l−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−6−ブロモピロロ[1,2−a]ピラジン−3−カルボキサミド(0.59g,1.7mmol)、TEA(5.8mL,42.2mmol)のジオキサン(10mL)の脱ガス溶液に、ヨウ化銅(I)(0.09g,0.50mmol)、(トリイソプロピルシリル)アセチレン(1.54g,8.5mmol)及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(0.12g,0.17mmol)を加えた。得られた混合物を80℃で17.5時間攪拌し、室温まで冷却し、乾燥するまで濃縮した。残渣をCHC1に溶解し、1:1のNHOH/飽和食塩水(3x50mL)溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過し、乾燥するまで濃縮した。得られた原料をプレパラティブHPLC(逆相C18,グラジュエント40%〜25%(5mM (NHCO(水溶性)のCHCN)に付し、色付き油を得た。収率60%。HRMS(FAB) 計算値C2638BrNOSi+H:451.2893,実測値451.2872。
【0262】
N−[(3R)−l−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−6−[(トリイソプロピルシリル)エチニル]ピロロ[1,2−a]ピラジン−3−カルボキサミド(0.45g,1.0mmol)のTHF(4.0mL)に1.0MのテトラブチルアンモニウムフルオリドのTHF(4.0mL)溶液を加えた。得られた溶液を20分間攪拌し、乾燥するまで濃縮し、シリカゲルに吸着させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出として、5%MeOH/1%NHOH/CHCl〜10%)で精製した。
【0263】
化合物をEtOHに溶解し、d−酒石酸を加え(1等量)、得られた混合物をEtOH/Et2Oから結晶化し、青白茶色固体を得た。収率98%。HRMS(FAB) 計算値C1718O+H:295.1559,実測値295.1566。
【0264】
実施例21:N−[(3R)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イル]−1−ベンゾフラン−5−カルボキサミド−(2E)−ブト−2−エンジオイック アシッド:
【0265】
【化31】

【0266】
Dunn, J. P.; Ackerman, N. A.; Tomolois, A. J. J. Med. Chem. 1986, 29, 2326を参照されたい。本法を特に変更することなく、1−(2,3−ジヒドロベンゾフロン−5−イル)エタノン 1 を同様な収率(82%)及び同様な純度(95%)で得た:H NMR(400MHz,CDC1)δ7.89,7.83,6.84,4.70,3.29,2.58。
【0267】
1(4.0g,25mmol)及び亜塩素酸ナトリウム[160mLの6.0%水溶液,(Clorox brand of bleach)]を55℃で1時間攪拌した。混合物(均一)を室温まで冷却し、固体の重硫酸ナトリウムを透明色が維持できるまで加えた。塩酸(80mLの1.0N水溶液)を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮し、3.93g(97%)の2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−カルボン酸 2 を白色固体として得た:H NMR(400MHz,CDC1)δ11.0−10.3,8.00,6.87,4.72,3.31。
【0268】
2 (3.96g,24.1mmol)のMeOH(200mL)溶液に、濃硫酸(0.5mL)を加えた。混合物を24時間、リフラックスするまで加熱した。混合物を室温まで冷却し、固体炭酸ナトリウムを添加した。反応混合物を真空下で濃縮し、残渣を酢酸エチル及び水に分配した。水層を酢酸エチルで抽出し、併せた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮し、4.22g(98%)のメチル2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−カルボキシレート 3 を白色固体として得た:H NMR(400MHz,CDC1)δ7.93−7.89,6.82,4.69,3.86,3.28。
【0269】
3(4.2g,24mmol)の無水p−ジオキサン(150mL)にアルゴン雰囲気下で、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−ベンゾキノン(6.42g,28mmol)を加えた。混合物を24時間リフラックスするまで加熱し、室温まで冷却した。反応混合物をエーテル及び1/2飽和炭酸ナトリウム水溶液に分配した。有機層を1/2飽和炭酸ナトリウム水溶液で数回抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮し、4.2g(92%)回収原料 3 及びメチルベンゾフラン−5−カルボキシレート 4の混合物(それぞれ1:3)。粗生成物をChiralcel OJカラムを用いるプレパラティブHPLCによって精製した。ヘプタン−イソプロピルアルコール(80:20,流速70mL/min)で溶出し、0.75g(18%)の3を白色固体として、2.5g(61%)の4を白色固体として得た。ベンゾフラン 4:H NMR(400MHz,CDCl))δ8.40,8.07,7.73,7.57,6.89,3.99。
【0270】
4(1.3g,7.38mmol)のメタノール(51mL)溶液及び水酸化ナトリウム(41mLの5%水溶液)を4時間65℃まで加熱した。混合物を室温まで冷却し、メタノールを真空下で除去した。残余の水層をメチレンクロリドで抽出した。メチレンクロリド層を廃棄し、水層を濃塩酸でpH1に調整した。当該水層をクロロホルムで抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、真空下で濃縮し、1.2g(98%)のベンゾフラン−5−カルボン酸 5 を白色固体として得た:H NMR(400MHz,DMSO−d)δ12.9,8.30,8.11,7.92,7.69,7.09。
【0271】
実施例21の遊離塩基は、大きな変更を加えることなく、方法Bを用いて白色固体として94%の収率で得た。
【0272】
遊離塩基3.3g(12.2mmol)をメタノール(20mL)に溶解し、ギ酸(3.5g,12.2mmol)を加えた。混合物を30分間50℃まで暖めた。溶媒を真空下で除いた。残渣を水(20mL)で希釈し、メタノール及びジエチルエーテルから結晶化し、1.6gの実施例21を白色固体として得た:元素分析 計算値C1618・C・1.1HO:C,59.14;H,6.00;N,6.90,実測値C,58.84;H,5.92;N,6.62。
【0273】
α7nAChRアゴニスト活性及び5−HTアンタゴニスト活性を測定するための材料及び方法
α7nAChRアゴニストのEC50の測定のための細胞系試験
α7−5HT受容体のコンストラクション及び発現:
イオンチャンネルのリガンド結合ドメインを含む、ヒトα7nAChR由来のN−末端の201アミノ酸をコードするcDNAを、Eisele JL, et al., 「キメラニコチン−セロトニン作動性受容体が別個のガンド結合とチャンネル特性を組み合わせる」Nature (1993), Dec. 2; 366 (6454): 479-83によって記載された及びGroppi, et al., 国際公開第00/73431号パンフレットによって修飾されたマウス5HT受容体の細孔形成領域をコードするcDNAに融合した。キメラα7−5HTイオンチャンネルを、各々、G−418及びヒグロマイシンBの抵抗性遺伝子を含むpGS175及びpGS179に挿入した。両プラスミドを同時にSH−EP1細胞にトランスフェクトし、G−418及びヒグロマイシンBに抵抗性を示す細胞株を選択した。キメライオンチャンネルを示す細胞株を、細胞表面上の蛍光性α−ブンガロトキシンと結合する能力によって同定した。結合している蛍光性α−ブンガロトキシンの最大量を有する細胞を、蛍光活性化セルソーター(FACS)を用いて単離した。10%牛胎児血清、L−グルタミン、100単位/mLペニシリン/ストレプトマイシン、250ng/mgファンギゾン、400μg/mL ヒグロマイシンB及び400μg/mL G−418を補った非必須アミノ酸を含む最小必須培地で、標準的な哺乳動物細胞インキュベーター中で、37℃、6%COにて、少なくとも4週間継続的培養して、当該細胞を生育させた後、キメラα7−5HTを安定に発現している細胞株を、蛍光性α−ブンガロトキシン結合を測定することによって同定した。
【0274】
キメラα7−5HT受容体の活性試験
α7−5HTイオンチャンネルを試験するために、当該チャンネルを発現する細胞を96又は384ウェルディッシュ(Corning#3614)の各ウェルに蒔き、試験前にコンフルエンスとなるように生育させた。試験当日、当該細胞を、無水DMSO及び20%プルロニックF−127(Molecular Probes)に溶解させた2mMカルシウムグリーン1,AM(Molecular Probes)の1:1混合物で固定した。当該溶液を直接、最終濃度2μMとなるように各ウェルの生育培地に加えた。当該細胞を37℃で60分間、色素と共にインキュベートし、国際公開第00/73431号パンフレットに記載の修飾型Earle’s平衡塩溶液(MMEBSS)で洗浄した。MMEBSSのイオン条件を、国際公開第00/73431号パンフレットに記載のキメラα7−5HTイオンチャンネルによって、カルシウムイオンの流量を最大限とできるように調整した。キメラα7−5HTイオンチャンネル上の化合物の活性は、FLIPRによって解析した。当該装置は、500ミリワットの電力を用いて励起波長488nmに設定した。蛍光出力を、ノイズ比に対して最大シグナルを維持するために好適なF−停止を用いて、525nm以上で測定した。各化合物のアゴニスト活性を、当該化合物をキメラα7−5HTイオンチャンネルを発現する細胞に直接加え、キメライオンチャンネルのアゴニスト誘導活性によって起こる細胞内カルシウム増加を測定することによって測定した。当該試験は定量的であり、例えば、細胞内カルシウムの濃度依存的増加が、カルシウムグリーン蛍光の濃度依存的変化として測定される。細胞内カルシウムの50%最大増加をもたらす化合物に必要とされる効果的な濃度は、EC50と呼ばれる。
【0275】
結合定数:
α7nAChRアゴニスト活性を測定するための別の方法は、競合結合試験におけるポテンシャルアゴニストの結合定数を測定することである。α7nAChRアゴニストに関し、薬物標的としてキメラα7−5HTイオンチャンネルを用いる機能的EC50値と、内生的α7nAChRに対して結合親和性を有する化合物との間には、良い相関関係があった。
【0276】
膜調製
雌性Sprague-Dawleyラット(300〜350g)を首を切って屠殺し、脳(全脳から小脳を除いた)を即座に解剖し、秤量し、設定50の回転乳棒(10上下動作)を用いて、冷却した0.32Mショ糖の9体積/g湿潤重量でホモジナイズした。ホモジネートを4℃で10分間1,000xgで遠心した。上清を集め、4℃で20分間20,000xgで遠心した。得られたペレットを1〜8mg/mLの蛋白濃度に再懸濁した。5mLホモジネートのアリコートを試験まで−80℃で冷凍した。試験の日に、アリコートを室温に解凍し、4.16mMのNaHCO、0.44mMのKHPO、127mMのNaCl、5.36mMのKCl、1.26mMのCaCl及び0.98mMのMgClを含む、Kreb’s−20mMヘペス緩衝液 pH7.0(室温)で希釈し、各試験管に25〜150μgの蛋白質を添加した。蛋白質は、スタンダードとして牛胎児血清アルブミンを用いるBradford法で測定した(Bradford, M. M., Anal. Biochem., 72, 248-254, 1976)。
【0277】
結合試験
飽和試験のため、0.4mLホモジネートを緩衝液及び種々の濃度の放射性リガンドを含む試験管に加え、25℃で1時間、0.5mLの最終体積にインキュベートした。非特異的結合を、放射性リガンドの前に添加した、最終濃度1μMの0.05mls MLAの存在下で、平行してインキュベートした組織で測定した。競合試験では、最終濃度3.0〜4.0nMの0.05mls [H]−MLAを添加する前に、薬物を試験管に濃度を増加させながら加えた。インキュベーションは、48ウェルBrandel細胞ハーベスター上に置いたWhatman GF/Bガラスフィルター紙を通して、高速真空ろ過によって終了させたフィルターを50mMのトリスHCl pH7.0−0.05%ポリエチレンイミンで予め洗浄した。フィルターを冷0.9%生理食塩水の5mLアリコートで2回、速やかに洗浄し、液体シンチレーション分光測定法で放射活性を計数した。
【0278】
データ解析
競合結合試験では、阻害定数(Ki)を、Cheng-Prusoff平衡に従う非直線回帰適合プログラム(Cheng, Y. C. and Prusoff, W. H., Biochem. Pharmacol., 22, p. 3099-3108, 1973)から得られる[H]−MLA結合の濃度依存的阻害から計算した。ヒル係数は、非直線回帰(種々の傾斜を有するGraphPad PrismS字状用量反応)を用いて得た。
【0279】
化合物の5−HTアンタゴニスト活性を測定する方法は当業者に周知であり、本発明の化合物を5−HTアンタゴニストとして同定するために使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式I:
【化1】

{式中、アザビシクロは、下記式:
【化2】

[式中、各Rは独立にH、アルキル又は置換アルキルであり;RはH、アルキル又は置換アルキルであり;kは1又は2である、但し、kが2の場合、Rの1つはH以外である;RはH、アルキル又はアミノ保護基であり;Wは、下記式:
【化3】

(式中、WはCH又はNであり;WはO、N(R)、N(C(O)R)又はSであり;WはO、N(R)、N(C(O)R)又はSであり;RはH、F、Cl、Br、I、アルキル、置換アルキル又はアルキニルであり;各Rは独立にH又はアルキル、又は−OH、−CN、NH、−NO、−CF、F、Cl、BrもしくはIから独立して選ばれる価数が3までの置換基によって場合により置換されていてもよいアルキルである。)]
で表される。}
で表される化合物及びその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
Rが、F、Cl、Br、I、低級アルキル、置換低級アルキル又は低級アルキニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
哺乳動物の疾患及び/又は症状を治療するために薬物を製造するための請求項1又は2の化合物の使用であって、α7nAChRが活性化され、かつ5−HT受容体が不活性化されている、前記使用。
【請求項4】
前記疾患又は症状が精神分裂症又は精神病である、請求項3記載の使用。
【請求項5】
前記薬物がまた、抗精神病薬を含むか、又は第二の薬物が、治療上有効な間隔で前記哺乳動物に別々に投与されるために抗精神病薬を用いて製造される、請求項4記載の使用。
【請求項6】
前記疾患又は症状が、アルツハイマー病の認知及び注意不足症状、アルツハイマー病のような疾患に関連する神経変性、初老期痴呆(軽度の認識障害としても知られている)、老人性痴呆症、外傷性脳損傷、脳腫瘍に関連する行動及び認知問題又はパーキンソン病である、請求項3記載の使用。
【請求項7】
前記症状又は症状が、筋萎縮性側索硬化症、AIDS痴呆、ダウン症候群に関連する痴呆、レービーボディーに関連する痴呆、ハンチントン病、注意不足障害、注意不足過敏障害、不安症、一般的不安障害、心的外傷後ストレス障害、破壊的及び反抗性障害を含む憂鬱及び情動障害、境界性人格障害、パニック障害、遅発性ジスキネジー、下肢静止不能症候群、ピック病、過食症及び拒食症を含む食物摂取量の調節異常(dysregulation)、禁煙及び薬物依存停止に関連する禁断症候群、ジル・デ・ラ・トゥーレット症候群、加齢黄斑変性症、視神経症、疼痛に関連する症状、化学療法による嘔吐減少、偏頭痛、線維筋肉痛、過敏性腸症候群、又はカルチノイド症候群に関連する下痢である、請求項3記載の使用。
【請求項8】
前記症状又は症状が、化学療法による嘔吐減少、偏頭痛、線維筋肉痛、過敏性腸症候群、カルチノイド症候群に関連する下痢、精神分裂症、不安症、精神病、下肢静止不能症候群、疼痛、緑内症、加齢黄斑変性症、糖尿病性網膜症、及び人が依存している薬物、タバコ又はアルコールの使用の停止に関連する禁断症である、請求項7記載の使用。
【請求項9】
前記症状又は症状が、化学療法による嘔吐減少、偏頭痛、線維筋肉痛、過敏性腸症候群、カルチノイド症候群に関連する下痢、下肢静止不能症候群、又は人が依存している薬物、タバコ又はアルコールの使用の停止に関連する禁断症である、請求項8記載の使用。
【請求項10】
前記症状又は症状が、化学療法による嘔吐減少、偏頭痛、線維筋肉痛、過敏性腸症候群、又はカルチノイド症候群に関連する下痢である、請求項9記載の使用。
【請求項11】
請求項1又は2記載の化合物、薬学的に許容される賦形剤及び抗精神病薬を含む薬物の製造のための、請求項1又は2記載の化合物の使用。
【請求項12】
前記薬物が、請求項1又は2記載の化合物及び薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項11記載の使用。

【公表番号】特表2006−506395(P2006−506395A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547891(P2004−547891)
【出願日】平成15年10月20日(2003.10.20)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004681
【国際公開番号】WO2004/039815
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】