説明

CNS髄鞘再形成を促進する組換えヒトmAbを含む組成物および方法

ウイルス、細菌または特発性起源の中枢神経系の他の疾患の治療において活性を示す抗体、特にヒト抗体を開示する。中枢神経系における構造または細胞に結合することができる抗体、ペプチド類似体、ハプテン、それらの活性フラグメント、それらのアゴニスト、それらの擬態、それらの単量体およびそれらの組み合せからなる群より選択される物質を包含する神経調節物質を示す。ポリクローナル抗体およびヒトモノクローナル抗体およびそれらの活性フラグメント等を使用して、ヒトおよび家畜の脱髄疾患および中枢神経系の疾患を治療するための方法を述べる。本発明はまた、ヒト抗体、フラグメント、ペプチド誘導体および同様の物質の使用、および上記で言及した治療適用におけるそれらの使用、および脱髄を含む症状を治療し、髄鞘再形成を促進するために望ましい低用量で投与しうる、それらを含有する薬学的組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に神経生物学の分野、特に中枢神経系の機能および治療において役割を果たす、組換え生産される抗体の特定に関する。本発明はまた、例として、薬学的組成物、神経障害に関連する疾患の治療の方法、神経機能損傷における再生および修復の方法、スクリーニングアッセイおよびワクチンを含む、治療物質および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
多発性硬化症(MS)は、通常は初期軸索損傷を伴わない、原発性脱髄によって病理学的に特徴付けられる慢性の、しばしば進行性の、炎症性中枢神経系(CNS)疾患である。多発性硬化症の病因および病原は不明である。多発性硬化症のいくつかの免疫学的特徴、およびある種の主要組織適合遺伝子複合体対立遺伝子との中程度の結びつきは、多発性硬化症が免疫介在性疾患であるという推測を喚起した。
【0003】
自己免疫仮説は、試験的自己免疫性(アレルギー性)脳脊髄炎(EAE)モデルによって裏付けられ、そのモデルでは、遺伝的に感受性がある動物へのある種のミエリン成分の注入はT細胞介在性中枢神経系脱髄を導く。しかし、特異性自己抗原および病原性ミエリン反応性T細胞は、多発性硬化症患者の中枢神経系において明確には特定されておらず、また多発性硬化症は他の自己免疫疾患には関連しない。疫学的データに基づく代替的仮説は、環境因子、おそらく特定されていないウイルスが中枢神経系における炎症応答を促進し、それが、潜在的には誘導自己免疫成分を伴って、直接または間接的な(「バイスタンダー(傍観者的)」ミエリン破壊を導くというものである。この仮説は、ヒトおよび動物の両方において、いくつかの自然発生的なウイルス感染が脱髄を引き起こしうるというエビデンスによって裏付けられる。1つの一般的に使用される試験用ウイルスモデルは、タイレルネズミ脳脊髄炎ウイルス(TMEV)によって誘導される(Dal Canto,M.C.,およびLipton,H.L.,Am.J.Path.,88:497−500(1977))。
【0004】
多発性硬化症および他の脱髄疾患についての現在の治療法の限られた効果は、これらの疾患を改善するための新規療法への関心を刺激していた。しかし、潜在的に環境と自己免疫因子の両方を含む、これらの疾患の見かけ上複雑な病因病原論の故に、これらの脱髄疾患の有効な治療への必要性が現在も存在する。
【0005】
rHIgM22は、げっ歯動物およびヒトの両方の成熟乏突起膠細胞およびミエリンに結合し、脱髄のインビボモデルにおいて新しいミエリンの合成を促進する組換えヒトIgM抗体である。これまでの試験における髄鞘再形成促進性mAbの標準的な用量は、IP投与で25mg/kgであった。この用量は、ヒトに当てはめて推定すると、非実用的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、中枢神経系疾患、特に脱髄および/または再髄鞘形成を含むものについての実際的で安全且つ有効な治療レジメンを開発することの必要性が存在し、本発明が指向するのはその必要性に応えることである。
【0007】
ここでの参考文献の引用は、そのような参考文献が本出願の「先行技術」として入手可能であることの承認と解釈されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の開示)
本発明によれば、中枢神経系におけるニューロンの促進、刺激、再生および/または髄鞘再形成、および/または中枢神経系における脱髄の阻止または低減において活性を示すヒト抗体がクローン化され、単離された。特に、本発明は、特に乏突起膠細胞を含む、中枢神経系の構造および細胞に結合するそれらの能力によって特徴付けられる、IgMサブタイプの抗体およびそれらの単量体、またはそれらの混合物および/または活性フラグメントを含む、組換え自己抗体、特に組換えヒト自己抗体を使用して、中枢神経系(CNS)の軸索の髄鞘再形成を刺激する方法に関する。
【0009】
本発明の第一態様では、前記抗体は、rHIgM22と称されるもののようなヒト抗体であり、組成物は、中枢神経系における髄鞘再形成を促進するために有効な量でそのような抗体を含む。前記抗体および対応する組成物は、体重kg当りで計算して約500ng−約600μgの範囲の用量を送達するように作製される。
【0010】
特定実施形態では、rHIgM22抗体を薬学的に受容可能な組成物中で単独投与する。別の実施形態では、rHIgM22抗体をメチルプレドニゾロンと組み合わせて投与する。メチルプレドニゾロンは、約1−2mgの範囲の用量で週に1回または2回投与しうる。
【0011】
別の実施形態では、rHIgM22抗体とメチルプレドニゾロンの投与は同時であるかまたは連続的でありうる。
【0012】
本発明の第二の態様は、治療有効量のrHIgM22抗体と薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物を提供する。1つの実施形態では、前記組成物は治療有効量のrHIgM22抗体だけを含有する。別の実施形態では、前記組成物は、治療有効量のメチルプレドニゾロンと組み合わせた治療有効量のrHIgM22を含有する。さらに別の実施形態では、rHIgM22抗体の組成物を1つの組成物として製剤し、およびメチルプレドニゾロンを別個の組成物として製剤して、各々を連続的にまたは同時に、そのような治療を必要とする被験者に処方しうる。さらに別の実施形態では、rHIgM22抗体の治療有効量は、ニューロンの髄鞘再形成を促進する量である。別の実施形態では、rHIgM22抗体の治療有効量は、同時に髄鞘再形成を促進しながら脱髄を低下させる量である。メチルプレドニゾロンと組み合わせて使用するとき、rHIgM22抗体は、脱髄を予防すること、髄鞘再形成を促進することまたはそれらの組み合せにおいてより有効でありうる。
【0013】
本発明の4番目の態様は、本発明の組換えヒト抗体に由来するか、またはそれに関連するフラグメントおよび単量体を提供する。そこで、本発明は特にsHIgM22(LYM22)に由来するか、または基づくフラグメントまたは単量体に関する。そのようなフラグメントおよび/または単量体は、親抗体分子と同じ活性を有し、ニューロンを再髄鞘化するか、またはニューロンの脱髄を防ぐ能力を示しうる。
【0014】
本発明の5番目の態様は、ハプテンおよびペプチド類似体を含む、同様の治療活性を示しうる他の抗体および関連結合パートナーをスクリーニングするためのアッセイを提供する。そのような活性は、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、卒中、パーキンソン病およびアルツハイマー病などの神経損傷または機能障害の治療または予防を含む。
【0015】
本発明の6番目の態様は、本発明の組換えモノクローナル抗体またはその活性フラグメントを使用して、ヒトにおける多発性硬化症などの哺乳動物における脱髄疾患、および感染後脳脊髄炎などのヒトおよび家畜の中枢神経系のウイルス性疾患を治療する、またはこれらの疾患状態における脱髄の開始または進行を予防的に阻止する方法を提供する。
【0016】
本発明はさらに、乏突起膠細胞などのグリア細胞を生産し、その増殖を刺激するインビトロでの方法、および脱髄疾患を治療するためのこれらのグリア細胞の使用に関する。従って、1つの実施形態では、そのような抗体療法が有効である脱髄性神経症状または障害は、多発性硬化症である。別の実施形態では、そのような抗体療法が有効である脱髄性神経症状または障害は、急性または慢性脊髄損傷である。神経または神経線維の脱髄が著明である他の神経症状または疾患も考慮される。
【0017】
本発明はまた、ニューロンの髄鞘再形成を助けるまたはニューロンの脱髄を防ぐ組換えヒト自己抗体のクローニング、単離および使用におよび、前記ヒト自己抗体の例はrHIgM22である。以下の用語は本出願全体を通じて相互に使用可能である:RsHIgM22、sHIgM22、rHIgM22およびLYM22。組換えrHIgM22抗体の重鎖および軽鎖の可変領域配列を図5および6に示しており、従って、本発明は、前記の図に示す配列を有するか、または少なくとも部分的にそれに対応する抗体および対応抗体タンパク質、およびハプテンなどの低分子に関する。抗体のこれらの配列は、部分的に、ヒト組換え形態の抗体をクローニングするために使用でき、あるいは研究または診断目的のためのプローブとして使用しうる。本発明はさらに、新たに特定された組換え抗体が、髄鞘再形成の促進、損傷した神経細胞の再生、神経保護、神経成長等のような様々な目的に使用しうることに関する。
【0018】
本発明はまた、ここで述べる自己抗体に結合するペプチドを広く対象とし、これらのペプチドは、それらの配列、三次元構造または抗体結合から生じる構造配置的変化により、ペプチドワクチンにおいておよびそれら自体がペプチドワクチンとして使用することができる。本発明のさらなる態様では、これらのペプチドは、神経調節および/または免疫調節特性を有すると考えられ、そのような治療を必要とする哺乳動物において、神経細胞増殖応答および/または神経保護、神経再生および/または髄鞘再形成の役割を誘導する方法を提供しうる。
【0019】
同様に、本発明は、ワクチンを含む治療製剤における有効成分としても機能しうるように、前記ペプチド、抗体および/または他の関連基質に結合することができ、免疫原性を有しうるハプテンを包含する。特定実施形態では、1つまたはそれ以上のハプテンをワクチン製剤中で本発明の他のペプチドと組み合わせうる。
【0020】
本発明のさらなる態様では、これらのペプチドは、タンパク質分解を防ぎ、それによって半減期を延長させるための安定剤と共に、そのような治療を必要とする哺乳動物に経口的、皮下、静脈内、鼻内、髄腔内経路でまたはリポソーム製剤として投与される薬学的組成物として製剤することができる。
【0021】
さらなる態様では、本発明は、ここでは神経調節物質と称し、中枢神経系における治療作用が著明である分子群を対象とする。従って、本発明は、中枢神経系において特に有効性を有する神経調節物質に関し、それらの物質は、IgMサブタイプの抗体、ペプチド類似体、ハプテン、それらの活性フラグメント、それらの単量体、それらのアゴニスト、それらの擬態、およびそれらの組み合せからなる群より選択される物質を含む。クラススイッチ(天然にあるいは組換えまたは合成手段によって生じる)を受けたものを含む、種々のサブタイプの関連抗体も考慮され、但し、前記クラススイッチ抗体は本発明の方法において有用な神経調節物質としての特徴を有する。前記神経調節物質は以下の特徴の1つまたはそれ以上を有する:それらはグリア細胞の髄鞘再形成および/または細胞増殖を誘導する;乏突起膠細胞によるCa++シグナル伝達を惹起する;および/または細胞死、例えば過酸化水素誘導の細胞死を阻止する。
【0022】
本発明の抗体は、髄鞘再形成も同時に誘導しうるポリクローナル抗体などの、神経組織に結合する他の抗体、特に他のポリクローナルIgM抗体、特にポリクローナルIgM免疫グロブリンおよびその製剤、より具体的には、プールポリクローナルIgM免疫グロブリンおよびプールポリクローナルヒトIgM免疫グロブリンと共に使用しうる。好ましくは、前記抗体は、髄鞘再形成することができる組換え生産されたヒト抗体または組換え生産されたキメラ抗体である。もう1つの特定実施形態では、前記組換え抗体は、rHIgM22(LYM22)、その単量体、その活性フラグメント、およびrHIgM22の特徴を有する天然または合成抗体である。本発明は、図5および6から選択される配列に少なくとも部分的に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドおよびその活性フラグメントを含む抗体を提供する。
【0023】
本発明はまた、同じかまたは相補的な配列を有する組換えDNAまたはクローン化された遺伝子を含む、ここでは神経調節物質とも称され、および本発明の抗体、特に図5および6に示す配列に少なくとも部分的に対応する配列を有する抗体;本発明の抗体に少なくとも部分的に対応しうる、そしてここでは抗体ペプチドとも称されるペプチド、例えば図5および6に少なくとも部分的に対応する1つまたはそれ以上の配列を有するペプチド;およびハプテンなどの低分子を包含し且つそれらから選択されうる分子のクラスをコードする、組換えDNA分子またはクローン化された遺伝子またはそれらの縮重変異体に関する。
【0024】
本発明はまた、ここで述べる活性を有し、上記に示すおよび上記で述べた、少なくとも一部は図5および6からなる群より選択されるアミノ酸配列を示す、前記抗体に由来するか、または前記抗体に対応するタンパク質、そのフラグメントまたは誘導体を包含する。
【0025】
本発明は、同様に、前記タンパク質または抗体ペプチドと同じ活性を示し、ワクチン中の製剤などによって同様に治療のために投与しうるハプテンに関する。1つの実施形態では、ペプチドとハプテンの両方を含むワクチンを製造しうる。
【0026】
本発明のさらなる実施形態では、そのようにして決定した組換えDNA分子またはクローン化遺伝子の完全なDNA配列を、適切な宿主に導入しうる発現調節配列に作動可能に連結しうる。本発明は、従って、本発明の抗体ペプチドをコードするDNA配列を含むクローン化遺伝子または組換えDNA分子で形質転換された単細胞宿主に関する。
【0027】
特定実施形態では、本発明の抗体の可変領域のDNA配列は、合成抗体を産生するときに使用しうる。特に、可変領域配列は、合成抗体を提供するためにその天然のまたは遺伝学的に提供される定常領域配列と組み合わせうる。本発明は、本発明の抗体のDNA配列、特に可変領域配列に由来し且つそれを含む合成抗体を産生するためのベクターを提供する。
【0028】
本発明のある種の好ましい実施形態の他の好ましい特徴によれば、生物学的に活性を示す動物または特にヒト抗体ペプチドを生産するための組換え発現系が提供される。
【0029】
本発明は、ここで例示する公知の組換え手法を含む、自己抗体、ペプチド、対応するハプテンまたはその他の低分子類似体のクローンの作製のためのいくつかの手段を包含し、本発明は、従って、そのような合成製剤をその範囲内に含むことが意図されている。ここで開示するcDNAおよびアミノ酸配列の単離は、そのような組換え手法による本発明の抗体またはそれらの類似体の再生産(reproduction)を促進し、従って本発明は、組換えDNA手法による宿主系での発現のための、開示DNA配列から作製される発現ベクター、および生じる形質転換宿主に関する。
【0030】
本発明は、例えば本発明の自己抗体またはそれらの類似体の活性を増強することによって、標的哺乳動物神経細胞の神経活性を調節するために有効な潜在的薬剤のスクリーニングのためのアッセイシステムを包含する。1つの例として、試験薬剤を、対照との比較によって何らかの化学的試料(DNAを含む)または試験薬剤への自己抗体の結合活性に及ぼす作用を測定するために、自己抗体の活性を抑制するか、または阻害するリガンドまたは抑制された抗体を含む抽出物と共に、細胞試料に投与することができる。
【0031】
本発明は、神経調節物質の存在の程度の定量的分析のため、またはそれらの活性を模倣しうるまたは阻止しうる薬剤または他の物質を特定するための、試験キットの形態で作製しうるアッセイシステムを包含する。前記システムまたは試験キットは、標識を神経調節物質、それらのアゴニストおよび/またはアンタゴニストに結合する、ここで述べる放射性および/または酵素的手法の1つによって作製される標識成分、および1つまたはそれ以上の付加的な免疫化学試薬を含みうるが、前記免疫化学試薬の少なくとも1つは、前記標識成分、その結合パートナー、測定する成分またはそれらの結合パートナーの1つに結合することができる、遊離または固定リガンドである。
【0032】
特定のおよびさらなる態様では、本発明は、特に乏突起膠細胞を含む、中枢神経系の構造および細胞に結合するそれらの能力によって特徴付けられる、IgMサブタイプの抗体およびそれらの単量体、またはそれらの混合物および/または活性フラグメントを含む、本発明の抗体、特に自己抗体の、画像化およびインビボ診断適用における使用および適用に関する。そこで、前記抗体は、特に乏突起膠細胞を含む、中枢神経系の構造および細胞に結合するそれらの能力により、免疫蛍光、放射性および他の診断的に適するタグを通して、中枢神経系を含む神経系の特徴付けおよび、特に多発性硬化症を含む、神経疾患の診断、モニタリングおよび評価のための、画像化試薬または画像化分子として利用することができる。前記抗体はさらに、卒中、脊髄損傷およびアルツハイマー病を含む様々な痴呆の診断、モニタリングおよび評価における画像化試薬または画像化分子として利用しうる。
【0033】
さらなる実施形態では、本発明は、神経調節物質、それらのサブユニット、またはそれらの活性フラグメント、それらのペプチド等価物、それらの類似体の活性に基づく、あるいは同じ活性を有すると判定された物質または他の薬剤に基づく、ある種の治療方法に関する。最初の治療法は、抗体またはそれらのサブユニットの結合活性と因果関係があるまたはその結果として起こる症状の発現の予防に関連し、そして神経調節物質、対応する自己抗体、抗体ペプチド、それらの活性フラグメントまたはサブユニットの産生および/または活性を刺激することができる物質を、宿主においてそれらの症状の発現を予防するか、または治療するために有効な量で個別にまたは互いに混合して投与することを含む。例えば薬剤あるいは抗体またはそれらのフラグメントへの他の結合パートナー等を、多発性硬化症の治療におけるように、神経再生および/または神経保護作用を増強するため、または髄鞘再形成を刺激するために投与しうる。
【0034】
より具体的には、一般にここで言及する治療方法は、神経調節物質の活性の有効な阻害因子またはエンハンサーを含有しうる薬学的組成物、または、例えばここで述べる本発明の態様に従って作製され、使用される薬剤スクリーニングアッセイによって開発される、他の等しく有効な薬剤の投与による、様々な疾病または他の細胞機能不全および障害の治療のための方法を包含しうる。例えば、図5および6に示す配列に少なくとも部分的に対応する配列を有する、薬剤または神経調節物質への他の結合パートナーまたは同様のタンパク質を、パーキンソン病または多発性硬化症の治療におけるように、神経再生、神経保護または髄鞘再形成を阻止するか、または増強するために投与しうる。特に、その配列を図5および6に示す、sHIgM22(LYM22)のタンパク質、それらの抗体、アゴニスト、アンタゴニスト、単量体またはそれらの活性フラグメントは、それらの混合物および組み合せを含めて、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病または脊髄損傷を治療するためのような、神経再生および/または神経保護治療または髄鞘再形成が適切である場合の投与のために、ワクチンを含む医薬製剤として製造しうる。本発明は、ここで提供する抗体の組み合せを包含し、その場合特にsHIgM22から選択される抗体、特にヒト抗体は、医薬および治療組成物または製剤として製造することができる。様々なヒト抗体、マウス抗体、あるいはそれらに由来するか、またはそれらに基づく単量体、フラグメント、組換えまたは合成抗体の組み合せまたは混合物も、本発明によって提供され、本発明に包含される。ヒト抗体(それらに由来する単量体、フラグメント、組換えまたは合成抗体に及ぶ)は、特にsHIgM22、sHIgM46、MSI19E10、CB2bG8、AKJR4、CB2iE12、CB2iE7、MSI19E5およびMSI10E10の群から選択される。マウス抗体(それらに由来する単量体、フラグメント、組換えまたは合成抗体およびヒト化抗体に及ぶ)は、特にSCH94.03、SCH79.08、O1、O4、O9、A2B5およびHNK−1の群から選択される。加えて、本発明はさらに、そのような何らかの神経再生および/または神経保護治療または髄鞘再形成において有用な治療化合物、薬剤または物質と前記抗体の組み合せを提供する。例えば本発明の抗体製剤または組成物は、βインターフェロン製剤(ベタセロン(Betaseron)等)およびコポリマー1(コパキソン(Copaxone))を含むがこれらに限定されない、多発性硬化症の治療のための治療化合物と組み合わせうる。加えて、本発明の抗体は、損傷部位で炎症を抑制するように作用しうる他の物質と組み合わせうる。1つのそのような物質はメチルプレドニゾロンである。
【0035】
従って、神経再生および/または神経保護作用の促進に関連するある種の特徴および活性を示す、精製された形態でのヒト自己抗体および対応する抗体ペプチド、ハプテン、類似体およびそれらの活性フラグメントを含む、神経調節物質を提供することが本発明の主たる目的である。
【0036】
侵襲性、自発性または特発性疾病状態が存在することが疑われる哺乳動物において自己抗体の存在、量および活性を検出するための方法を提供することが本発明のさらなる目的である。
【0037】
哺乳動物において自己抗体および/またはそれらのフラグメント、サブユニット等の活性を模倣するか、またはそれらの何らかの有害作用に対抗する上で潜在的に有効な、薬剤、作用物質等のような物質をスクリーニングするための方法および関連アッセイシステムを提供することが本発明のさらなる目的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
(発明の詳細な説明)
本発明の方法および治療方法を述べる前に、本発明は特定の方法および記述する試験条件に限定されず、方法および条件はそれら自体が変化しうることが了解されるべきである。また、本発明の範囲は付属の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、ここで使用する用語は特定実施形態を説明することだけを目的とするものであり、限定を意図しないことも了解されるべきである。
【0039】
本明細書および付属の特許請求の範囲において使用するとき、単数形態の「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに異なる規定を与えない限り、複数の言及を包含する。そこで、例えば、「方法(the method)」への言及は、ここで述べるタイプのおよび/または本開示等を読了後に当業者には明白となる、1つまたはそれ以上の方法および/または工程を包含する。
【0040】
特に異なる規定がない限り、ここで使用するすべての技術的および学術的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。ここで述べるものと類似のまたは等価のいかなる方法および材料も本発明の実施または試験において使用できるが、ここでは好ましい方法および材料を述べる。ここで言及するすべての公表文献は参照としてここに組み込まれる。
【0041】
(定義)
同じくここで使用するとき、本発明の抗体に関係する「rHIgM」および「rsHIgM」、「sHIgM22」および「LYM22」という用語は、ここでは等価とみなされるものとする。
【0042】
「被験者」は、ヒトを包含する。「ヒト」、「患者」および「被験者」という用語は、ここでは相互に使用可能である。
【0043】
「治療有効量」は、疾患を治療するために被験者に投与するとき、疾患のためのそのような治療を生じさせるのに十分な化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患およびその重症度、および治療する被験者の年齢、体重等に依存して異なりうる。
【0044】
何らかの疾患または障害を「治療すること」または何らかの疾患または障害の「治療」は、1つの実施形態では、その疾患または障害を改善すること(すなわち、疾患またはその臨床症状の少なくとも1つの発現を阻止することまたは軽減すること)を指す。別の実施形態では、「治療すること」または「治療」は、被験者が識別できない、少なくとも1つの物理的パラメータを改善することを指す。さらに別の実施形態では、「治療すること」または「治療」は、物理的に(例えば識別可能な症状の安定化)、生理的に(例えば物理的パラメータの安定化)、またはその両方で、疾患または障害を調節することを指す。さらに別の実施形態では、「治療すること」または「治療」は、疾患または障害の発症を遅延させることを指す。
【0045】
本出願および特許請求の範囲全体を通じて個々に使用される「神経調節物質」という用語は、中枢神経系における特定の恩恵および作用を伴って神経突起の成長、再生および髄鞘再形成を促進するように機能する広いクラスの物質を指し、それ故、IgMサブタイプの抗体、特に、図35−38、45、46、55−61および71−72に示すペプチド配列に少なくとも部分的な配列類似性を有しうる物質を含む、sHIgM22(LYM22)、ebvHIgM MSI19D10、sHIgM46(LYM46)、CB2bG8、AKJR4、CB2iE12、CB2iE7およびMSI19E5、ペプチド類似体、ハプテン、それらの活性フラグメント、それらの単量体、アゴニスト、擬態等としてここで特定して言及するもののようなヒト抗体を含む。神経調節物質はまた、その単量体または活性フラグメントを含む、ここで提供する抗体の2つ以上の組み合せまたは混合物を含み、包含する。
【0046】
また、「神経調節物質」、「自己抗体」、「抗体ペプチド」、「ペプチド」、「ハプテン」という用語および特定して列挙されていない何らかの変異体は、それらがすべて単一または複数のタンパク質を含むタンパク質様物質を指すことができ、それを含みうる限り、ここでは交換可能に使用でき、そして、ここで述べるおよび図5−6に示すアミノ酸配列データおよびここでおよび特許請求の範囲において述べる活性プロフィールを有するタンパク質を対象とする。従って、実質的に等しいまたは変化した活性を示すタンパク質も同様に考慮される。これらの修飾は、例えば部位指定的突然変異を通して得られる修飾のように意図的であるか、または複合体またはその指定サブユニットの生産者である宿主における突然変異を通しえるもののように偶発的でありうる。また、「神経調節物質」、「自己抗体」、「抗体ペプチド」、「ペプチド」、「ハプテン」という用語は、適宜に、ここで特定して列挙されるそれらの範囲内のタンパク質並びに実質的に相同な類似体および対立遺伝子変異体を包含することが意図されている。
【0047】
ここで述べるアミノ酸残基は、「L」異性形態であることが好ましい。しかし、「D」異性形態の残基は、免疫グロブリン結合の所望の機能特性がそのポリペプチドによって保持されている限り、何らかのL−アミノ酸残基に置換することができる。NHは、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基を指す。COOHは、ポリペプチドのカルボキシ末端に存在する遊離カルボキシ基を指す。標準的なポリペプチド命名法、J.Biol.Chem.,243:3552−59(1969)に従って、アミノ酸残基についての略記法を以下の対応表に示す:
対応表
記号 アミノ酸
1文字 3文字
Y Tyr チロシン
G Gly グリシン
F Phe フェニルアラニン
M Met メチオニン
A Ala アラニン
S Ser セリン
I Ile イソロイシン
L Leu ロイシン
T Thr トレオニン
V Val バリン
P Pro プロリン
K Lys リシン
H His ヒスチジン
Q Gln グルタミン
E Gln グルタミン酸
W Trp トリプトファン
R Arg アルギニン
D Asp アスパラギン酸
N Asn アスパラギン
C Cys システイン
すべてのアミノ酸残基配列は、ここでは、その左および右方向がアミノ末端からカルボキシ末端への従来の方向である式によって表わされていることに留意すべきである。さらに、アミノ酸残基配列の起始部または末端のダッシュは、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基のさらなる配列へのペプチド結合を示すことに留意すべきである。上記の表は、ここで交互に出現しうる3文字表記と1文字表記を相関させて示している。
【0048】
「レプリコン」は、インビボでのDNA複製の自律単位として機能する、すなわちそれ自身の制御下で複製することができる何らかの遺伝的エレメント(例えばプラスミド、染色体、ウイルス)である。
【0049】
「ベクター」は、もう1つ別のDNAセグメントが、結合したセグメントの複製を生じさせるように結合している、プラスミド、ファージまたはコスミドなどのレプリコンである。「DNA分子」は、その一本鎖形態または二本鎖らせんのデオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミンまたはシトシン)の重合体形態を指す。この用語は、分子の一次および二次構造のみを指し、いずれの特定三次形態にも限定されない。それ故、この用語は、中でも特に線状DNA分子(例えば制限断片)、ウイルス、プラスミドおよび染色体中に認められる、二本鎖DNAを包含する。特定二本鎖DNA分子の構造を論じるとき、配列は、ここでは、DNAの転写されない鎖(すなわちmRNAに相同な配列を有する鎖)に沿って5’から3’方向の配列のみを与える通常慣例に従って記述しうる。
【0050】
「複製起点」は、DNA合成に関与するDNA配列を指す。
【0051】
DNA「コード配列」は、適切な調節配列の制御下においたとき、インビボでポリペプチドに転写され、翻訳される二本鎖DNA配列である。コード配列の範囲は、5’(アミノ)末端の開始コドンと3’(カルボキシル)末端の翻訳終結コドンによって決定される。コード配列は、原核生物配列、真核生物mRNAからのcDNA、真核生物(例えば哺乳動物)DNAからのゲノムDNA配列、およびさらには合成DNA配列を含みうるが、これらに限定されない。ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列は、通常はコード配列の3’側に位置する。
【0052】
転写および翻訳調節配列は、宿主細胞におけるコード配列の発現をもたらす、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター等のようなDNA調節配列である。
【0053】
「プロモーター配列」は、細胞中のRNAポリメラーゼに結合して、下流(3’方向)のコード配列の転写を開始させることができるDNA調節領域である。本発明を定義するために、プロモーター配列は、転写開始部位によってその3’末端に隣接し、バックグラウンドより上の検出可能なレベルで転写を開始させるために必要な最小数の塩基またはエレメントを含むように上流(5’方向)に伸びる。プロモーター配列内には、転写開始部位(ヌクレアーゼS1によるマッピングによって好都合に規定される)、並びにRNAポリメラーゼの結合の役割を担うタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が存在する。真核生物プロモーターはしばしば、必ずではないが、「TATA」ボックスと「CAT」ボックスを含む。原核生物プロモーターは、−10および35コンセンサス配列に加えてシャイン−ダルガーノ配列を含む。
【0054】
「発現制御配列」は、もう1つ別のDNA配列の転写および翻訳を制御し、調節するDNA配列である。コード配列は、RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAへと転写し、次にそれがコード配列によってコードされるタンパク質へと翻訳されるとき、細胞中の転写および翻訳調節配列の「制御下に」ある。
【0055】
「シグナル配列」は、コード配列の前に含まれうる。この配列は、ポリペプチドを細胞表面に向かわせるまたはポリペプチドを培地中に分泌するように宿主細胞に伝達する、ポリペプチドのN末端のシグナルペプチドをコードし、このシグナルペプチドは、タンパク質が細胞を離れる前に宿主細胞によって切り取られる。シグナル配列は、原核生物および真核生物にネイティブな種々のタンパク質に関連して認められうる。
【0056】
本発明のプローブに言及するときここで使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、2個またはそれ以上、好ましくは3個以上のリボヌクレオチドからなる分子と定義される。その正確な大きさは、そのオリゴヌクレオチドの最終的な機能および用途に依存する、多くの因子に依存する。
【0057】
ここで使用する「プライマー」という用語は、精製制限消化におけるように天然に生じるかまたは合成によって生産されるかに関わらず、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下においたとき、すなわち適切な温度とpHでヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼなどの誘導物質の存在下においたとき、合成の開始点として働くことができるオリゴヌクレオチドを指す。プライマーは一本鎖または二本鎖でありえ、誘導物質の存在下で所望の伸長産物の合成を開始させるのに十分な長さでなければならない。プライマーの正確な長さは、温度、プライマーのソースおよび使用する方法を含む、多くの因子に依存する。例えば診断適用のためには、標的配列の複雑さに依存して、オリゴヌクレオチドプライマーは、典型的には15−25個またはそれ以上のヌクレオチドを含むが、より少ないヌクレオチドを含んでもよい。
【0058】
プライマーは、ここでは、特定標的DNA配列の異なる鎖に「実質的に」相補的であるように選択する。これは、プライマーが、それらのそれぞれの鎖とハイブリダイズするために十分に相補的でなければならないことを意味する。それ故、プライマー配列は鋳型の正確な配列を反映する必要はない。例えば非相補的ヌクレオチド断片をプライマーの5’末端に結合し、残りのプライマー配列は鎖に相補的でありうる。あるいは、プライマー配列がそれとハイブリダイズし、それによって伸長産物の合成のために鋳型を形成するために鎖の配列と十分な相補性を有することを条件として、非相補的塩基またはより長い配列をプライマーの中に散在させることができる。
【0059】
ここで使用する、「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」という用語は、各々が特定ヌクレオチド配列でまたはその近傍で二本鎖DNAを切断する、細菌酵素を指す。
【0060】
細胞は、外来性または異種DNAが細胞の内部に導入されたとき、そのようなDNAによって「形質転換」された。形質転換DNAは、細胞のゲノムを構成する染色DNAに組み込まれても(共有結合されても)よくまたは組み込まれなくてもよい。例えば原核生物、酵母および哺乳動物細胞では、形質転換DNAはプラスミドなどのエピソームエレメントに維持されうる。真核細胞に関しては、安定に形質転換された細胞は、形質転換DNAが、染色体複製を通して娘細胞によって受け継がれるように染色体内に組み込まれたものである。この安定性は、形質転換DNAを含む娘細胞の個体群からなる細胞系またはクローンを樹立する真核細胞の能力によって示される。「クローン」は、有糸分裂によって単一細胞または共通祖先から誘導される細胞の個体群である。「細胞系」は、多くの世代にわたってインビトロで安定に増殖することができる一次細胞のクローンである。
【0061】
2つのDNA配列は、ヌクレオチドの少なくとも約75%(好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90または95%)がDNA配列の規定の長さにわたってマッチするとき「実質的に相同」である。実質的に相同な配列は、配列データバンクにおいて入手可能な標準的なソフトウエアを使用して、または、例えばその特定システムに関して定義されるストリンジェント条件下での、サザンハイブリダイゼーション試験において、配列を比較することによって特定できる。適切なハイブリダイゼーション条件を規定することは当技術分野の技術的範囲内である。例えばManiatisら、前出;DNA Cloning,Vol.I&II、前出;Nucleic Acid Hybridization、前出参照。特に、本発明の抗体の重鎖および軽鎖の可変領域配列は、対応する生殖細胞系遺伝子配列に実質的に相同であり、対応生殖細胞系遺伝子配列に少なくとも約90%の相同性を有する。
【0062】
本発明の抗体をコードするDNA配列、または少なくともその一部を規定する、または図5−6に示すのと同じアミノ酸配列を有するが、同じ配列番号に縮重しているペプチドをコードする、ペプチド類似体、ハプテンまたはそれらの活性フラグメントも、本発明の範囲内であることは認識されるべきである。「〜に縮重」とは、特定アミノ酸を規定するために異なる3文字コドンが使用されることを意味する。以下のコドンが、各々の特定アミノ酸をコードするために交換可能に使用できることは当技術分野において周知である。
フェニルアラニン(PheまたはF) UUUまたはUUC
ロイシン(LeuまたはL) UUAまたはUUGまたはCUUまたはCUCまたはCUAまたはCUG
イソロイシン(IleまたはI) AUUまたはAUCまたはAUA
メチオニン(MetまたはM) AUG
バリン(ValまたはV) GUUまたはGUCまたはGUAまたはGUG
セリン(SerまたはS) UCUまたはUCCまたはUCAまたはUCGまたはAGUまたはAGC
プロリン(ProまたはP) CCUまたはCCCまたはCCAまたはCCG
トレオニン(ThrまたはT) ACUまたはACCまたはACAまたはACG
アラニン(AlaまたはA) GCUまたはGCGまたはGCAまたはGCG
チロシン(TyrまたはY) UAUまたはUAC
ヒスチジン(HisまたはH) CAUまたはCAC
グルタミン(GlnまたはQ) CAAまたはCAG
アスパラギン(AsnまたはN) AAUまたはAAC
リシン(LysまたはK) AAAまたはAAG
アスパラギン酸(AspまたはD) GAUまたはGAC
グルタミン酸(GluまたはE) GAAまたはGAG
システイン(CysまたはC) UGUまたはUGC
アルギニン(ArgまたはR) CGUまたはCGCまたはCGAまたはCGGまたはAGAまたはAGG
グリシン(GlyまたはG) GGUまたはGGCまたはGGAまたはGGG
トリプトファン(TrpまたはW) UGG
終結コドン UAA(オーカー)またはUAG(アンバー)またはUGA(オパール)
上記に明記するコドンはRNA配列に関するものであることが了解されるべきである。DNAについての対応コドンはUの代わりにTを有する。
【0063】
特定コドンを、異なるアミノ酸をコードするコドンに変更するように、特定DNA配列または分子内で突然変異を実施することができる。そのような突然変異は、一般に、最小ヌクレオチド変化を可能にすることによって実施される。この種の置換突然変異は、生じるタンパク質内のアミノ酸を非保存的に(すなわち特定の大きさまたは特徴を有するアミノ酸のグループに属するアミノ酸から、別のグループに属するアミノ酸にコドンを変更することによって)または保存的に(すなわち特定の大きさまたは特徴を有するアミノ酸のグループに属するアミノ酸から、同じグループに属するアミノ酸にコドンを変更することによって)変化させるように実施しうる。そのような保存的変化は、一般に、生じるタンパク質の構造および機能のより小さな変化を導く。非保存的変化は、生じるタンパク質の構造、活性または機能を変化させる可能性がより高い。本発明は、生じるタンパク質の活性または結合特徴を有意に変化させない保存的変化を含む配列を包含するとみなされるべきである。
【0064】
以下は、アミノ酸の様々なグループの一例である:
非極性R基を有するアミノ酸
アラニン
バリン
ロイシン
イソロイシン
プロリン
フェニルアラニン
トリプトファン
メチオニン。
【0065】
無電荷極性R基を有するアミノ酸
グリシン
セリン
トレオニン
システイン
チロシン
アスパラギン
グルタミン。
【0066】
電荷極性R基(pH6.0で負に荷電)
アスパラギン酸
グルタミン酸。
【0067】
塩基性アミノ酸(pH6.0で正に荷電)
リシン
アルギニン
ヒスチジン(pH6.0で)
もう1つのグループは、フェニル基を有するアミノ酸でありうる:
フェニルアラニン
トリプトファン
チロシン。
【0068】
もう1つのグループは、分子量(すなわちR基の大きさ)に従いうる:
グリシン 75
アラニン 89
セリン 105
プロリン 115
バリン 117
トレオニン 119
システイン 121
ロイシン 131
イソロイシン 131
アスパラギン 132
アスパラギン酸 133
グルタミン 146
リシン 146
グルタミン酸 147
メチオニン 149
ヒスチジン(pH6.0で) 155
フェニルアラニン 165
アルギニン 174
チロシン 181
トリプトファン 204。
【0069】
特に好ましい置換は:
−正電荷が維持されうるArgの代わりのLysおよびその逆;
−負電荷が維持されうるAspの代わりのGluおよびその逆:
−遊離−OHが維持できるThrの代わりのSer;および
−遊離NHが維持できるAsnの代わりのGln
である。
【0070】
アミノ酸置換はまた、特に好ましい特性を有するアミノ酸に置換するためにも導入しうる。例えばCysを、別のCysとのジスルフィド架橋のための潜在的部位に導入しうる。Hisは、特に「触媒」部位として導入しうる(すなわちHisは酸または塩基として働くことができ、生化学的触媒作用において最も一般的なアミノ酸である)。Proは、タンパク質構造にβターンを導入する、その特に平面的な構造の故に導入されうる。
【0071】
2つのアミノ酸配列は、アミノ酸残基の少なくとも約70%(好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは約90または95%)が同一であるかまたは保存的置換であるとき、「実質的に相同」である。特に、本発明の抗体の重鎖および軽鎖の可変領域配列は、対応する生殖細胞系遺伝子アミノ酸配列に実質的に相同であり、対応生殖細胞系遺伝子アミノ酸配列に少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%の相同性を有する。
【0072】
DNA構築物の「異種」領域は、より大きなDNA分子内の、天然ではそのより大きな分子と結びついて認められることがない、DNAを特定することが可能なセグメントである。そこで、異種領域が哺乳動物遺伝子をコードするとき、その遺伝子は通常、ソース生物のゲノム内ではその哺乳動物ゲノムDNAに隣接しないDNAによって隣接される。異種コード配列のもう1つの例は、そのコード配列自体が天然では認められない構築物である(例えばゲノムコード配列が、イントロンまたは天然遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列を含むcDNA)。対立遺伝子変異または自然発生的な突然変異的事象は、ここで定義するDNAの異種領域を生じさせない。
【0073】
ここで使用する、「抗体」という用語は、特定エピトープに結合する、抗体およびそのフラグメントを含む免疫グロブリンである。この用語は、ポリクローナル、モノクローナルおよびキメラ抗体を包含し、キメラ抗体は米国特許第4,816,397号および同第4,816,567号に詳細に述べられている。そのような抗体は、公知の一般的手法によって作製されるポリクローナルおよびモノクローナル抗体、並びに二重特異性またはキメラ抗体、および、例えば中枢神経系軸索の髄鞘再形成および/または再生を刺激する、または神経保護を提供するそれらの調節作用の能力と共に付加的な診断用途に適する他の機能性を含む抗体を包含する。「抗体結合部位」は、抗原に特異的に結合する重鎖および軽鎖の可変および超過変領域からなる抗体分子の構造部分である。ここで使用するその様々な文法的形態での「抗体分子」という語句は、無傷の免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫活性部分の両方を考慮する。例示的な抗体分子は、無傷の免疫グロブリン分子、実質的に無傷の免疫グロブリン分子、およびFab、Fab’、F(ab’)およびF(v)として当技術分野で知られる部分を含む、パラトープを有する無傷の免疫グロブリン分子の部分である。
【0074】
抗体分子のFabおよびF(ab’)部分または抗体フラグメントは、周知の方法による、実質的に無傷の抗体分子に関する、それぞれパパインおよびペプシンのタンパク質分解応によって作製しうる。例えばTheofilopolousらへの米国特許第4,342,566号参照。Fab’抗体分子部分も周知であり、F(ab’)部分から、2つの重鎖部分を連結するジスルフィド結合をメルカプトエタノールなどで還元し、次に生じたタンパク質メルカプタンをヨードアセトアミドなどの試薬でアルキル化することによって作製される。無傷の抗体分子を含む抗体がここでは好ましい。
【0075】
その様々な文法的形態での「モノクローナル抗体」という語句は、特定抗原と免疫反応することができる1つの種だけの抗体結合部位を有する抗体を指す。モノクローナル抗体は、それ故、典型的にはそれが免疫反応する抗原に対して単一結合親和性を示す。モノクローナル抗体は、それ故、各々が異なる抗原に対して免疫特異性である複数の抗体結合部位を有する抗体分子、例えば二重特異性(キメラ)モノクローナル抗体を含みうる。
【0076】
ハイブリドーマによってモノクローナル抗体を産生するための一般的方法は周知である。不朽抗体産生細胞系も、癌遺伝子DNAによるBリンパ球の直接形質転換またはエプスタイン−バーウイルスでのトランスフェクションなどの、融合以外の手法によって創造することができる。例えばM.Schereierら、「Hybridoma Techniques」(1980);Hammerlingら、「Monoclonal Antibodies And T−cell Hybridomas」(1981);Kennettら、「Monoclonal Antibodies」(1980)参照;また米国特許第4,341,761号;同第4,399,121号;同第4,427,783号;同第4,444,887号;同第4,451,570号;同第4,466,917号;同第4,472,500号;同第4,491,632号;同第4,493,890号も参照のこと。
【0077】
(一般的説明)
本発明によれば、従来の分子生物学、微生物学および当技術分野の技術的範囲内の組換えDNA手法が使用できる。そのような手法は文献において詳細に説明されている。例えばSambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」Volumes I−III[Ausubel,R.M.編集(1994)];「Cell Biology:A Laboratory Handbook」Volumes I−III[J.E.Celis編集(1994)];「Current Protocols in Immunology」 Volumes I−III[Coligan,J.E.編集(1994)];「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.Gait編集、1984);「Nucleic Acid Hybridization」[B.D.Hames & S.J.Higgins編集(1985)];「Transcription And Translation」[B.D.Hames & S.J.Higgins編集(1984)];「Animal Cell Culture」[R.I.Freshney編集(1986)];「Immobilized Cells And Enzymes」[IRL Press,(1986)];B.Perbal,「A Practical Guide to Molecular Cloning」(1984)参照。
【0078】
本発明の方法において有用であり、神経調節物質ペプチドまたは自己抗体ペプチドに対して産生されるモノクローナル抗体のパネルは、様々な性質、すなわちアイソタイプ、エピトープ、親和性等に関してスクリーニングすることができる。特に興味深いのは、神経調節物質、特に本発明の自己抗体と同じ活性を示すモノクローナル抗体である。そのようなモノクローナル抗体は、ここで提示し、説明するタイラーウイルス、EAEおよびリゾレシチンモデルなどの活性のアッセイにおいて容易に特定できる。天然または組換え自己抗体の免疫親和性の精製が可能であるとき、高親和性抗体も有用である。
【0079】
好ましくは、本発明の診断方法および治療方法において使用する抗体は、アフィニティー精製されたポリクローナル抗体である。より好ましくは、抗体はモノクローナル抗体(mAb)である。加えて、ここで使用する抗体分子は、全抗体分子のFab、Fab’、F(ab’)またはF(v)部分の形態であることが考慮される。
【0080】
先に示唆したように、本発明の診断方法は、抗ペプチド抗体、好ましくはアフィニティー精製されたポリクローナル抗体、より好ましくはmAbなどの、抗体ペプチド/タンパク質に対するアンタゴニストの有効量を含むアッセイによって細胞試料または媒体を検討することを含む。加えて、ここで使用する抗ペプチド抗体分子は、Fab、Fab’、F(ab’)またはF(v)部分の形態または全抗体分子であることが好ましい。先に述べたように、この方法から恩恵を受けることができる患者は、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ウイルス感染または身体的外傷から生じる損傷を含む他の同様の神経病理学的障害などの神経学的症状を呈している患者を含む。ペプチドを単離し、抗ペプチド抗体を誘導するための方法および標的細胞の検討を助ける抗ペプチド抗体の能力を判定し、最適化するための方法は、すべて当技術分野において周知である。
【0081】
ポリクローナル抗ポリペプチド抗体を産生するための方法は当技術分野において周知である。Nestorらへの米国特許第4,493,795号参照。典型的には有用な抗体分子のFabおよび/またはF(ab’)部分を含む、モノクローナル抗体は、参照としてここに組み込まれる、「Antibodies−A Laboratory Manual」HarlowとLane編集、Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1988)に述べられているハイブリドーマテクノロジーを使用して作製することができる。簡単に述べると、それからモノクローナル抗体組成物が生産されるハイブリドーマを形成するために、骨髄腫または他の自己永続化細胞系を、その抗体ペプチド結合部分、または抗体ペプチドまたはフラグメント、またはその起源特異的DNA結合部分で超免疫化した哺乳動物の脾臓から得たリンパ球と融合する。
【0082】
脾細胞を、典型的には、ポリエチレングリコール(PEG)600を使用して骨髄腫細胞と融合する。融合したハイブリッドを、HATに対するそれらの感受性によって選択する。本発明を実施する上で有用なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、本発明の自己抗体と同じように免疫反応するそれらの能力および標的細胞および組織において規定の活性を阻害するか、または促進するそれらの能力によって特定する。
【0083】
本発明を実施する上で有用なモノクローナル抗体は、適切な抗原特異性の抗体分子を分泌するハイブリドーマを含む栄養培地を含むモノクローナルハイブリドーマ培養を開始させることによって生産できる。前記培養を、ハイブリドーマが媒体中に抗体分子を分泌するのに十分な条件下で十分な時間維持する。次に抗体含有媒体を収集する。その後周知の手法によって抗体分子をさらに単離することができる。
【0084】
これらの組成物の調製のために有用な媒体は、当技術分野において周知であり且つ市販されており、合成培地、近交系マウス等を含む。例示的な合成培地は、4.5g/lグルコース、20mmグルタミンおよび20%ウシ胎児血清を添加したダルベッコ最小必須培地(DMEM;Dulbeccoら、Virol.8:396(1959))である。例示的な近交系マウス系統はBalb/cである。
【0085】
モノクローナル抗ペプチド抗体を産生するための方法も当技術分野において周知である。Nimanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80:4949−4953(1983)参照。典型的には、本発明の抗体ペプチドあるいはペプチド類似体またはフラグメントは、抗ペプチドモノクローナル抗体を産生するための前述した手順における免疫源として、単独でまたは免疫原性キャリアと併用して使用される。ハイブリドーマは、抗体ペプチド類似体と免疫反応し、それによって本発明の抗体と同様に反応する抗体を産生する能力に関してスクリーニングされる。
【0086】
抗体の作製において、所望の抗体に関するスクリーニングは、当技術分野において周知の手法、例えば放射免疫測定法、ELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)、「サンドイッチ」免疫測定法、免疫放射定量測定法、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散測定法、インサイチュー免疫測定法(例えばコロイド状金、酵素または放射性同位体標識を用いる)、ウエスタンブロット法、沈降反応、凝集アッセイ、赤血球凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫蛍光測定法、プロテインAアッセイ、および免疫電気泳動アッセイ等によって達成できる。1つの実施形態では、一次抗体への二次抗体または試薬の結合を検出することによって一次抗体を検出する。さらなる実施形態では、二次抗体を標識する。免疫測定法において結合を検出するための多くの手段が当技術分野において公知であり、本発明の範囲内である。
【0087】
抗体は、例えば酵素、発蛍光団、発色団、放射性同位体、染料、コロイド状金、ラテックス粒子および化学発光物質などの標識で、インビトロでの検出のために標識することができる。あるいは抗体は、例えば放射性同位体(好ましくはテクネチウムまたはヨウ素)、磁気共鳴シフト試薬(ガドリニウムおよびマンガンなど)または放射線不透過性試薬で、インビボでの検出のために標識することができる。
【0088】
これらの試験のために最も一般的に使用される標識は、放射性元素、酵素、紫外線に曝露したとき蛍光を有する化学物質その他である。
【0089】
多くの蛍光物質が公知であり、標識として利用できる。これらは、例えばフルオレセイン、ローダミン、オーラミン、テキサスレッド、AMCAブルーおよびルシファーイエローを含む。特定検出材料は、ヤギにおいて調製し、イソチオシアネートを通してフルオレセインとコンジュゲートした抗ウサギ抗体である。ポリペプチドも放射性元素または酵素で標識することができる。放射性標識は、現在使用可能な計数手段のいずれかによって検出できる。好ましい同位元素は、H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、58Co、59Fe、90Y、125I、131I、および186Reから選択されうる。
【0090】
酵素標識も同様に有用であり、現在使用される比色定量、分光測光法、蛍光分光光度法、電流滴定またはガス定量手法のいずれかによって検出できる。酵素は、カルボジイミド、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド等のような架橋分子との反応によって選択粒子にコンジュゲートされる。これらの手順において使用できる多くの酵素が公知であり、利用できる。好ましいものとしては、ペルオキシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼプラスペルオキシダーゼ、およびアルカリホスファターゼである。米国特許第3,654,090号、同第3,850,752号および同第4,016,043号が、例として、選択的な標識材料および方法についてのそれらの開示に関して参照される。
【0091】
ポリクローナル免疫グロブリン製剤は、免疫系の機能不全または調節不全を特徴とするか、またはそれらを伴う様々な臨床状況において有益な臨床作用を及ぼすことが示された。免疫グロブリンはまた、個体が一部の疾病を予防するために十分なそれ自身の免疫を生成しないときに起こりうる疾病を予防するか、または治療するために使用される。今日使用されているほぼすべての免疫グロブリン製剤が、分画によるヒト血漿の大きなプールに由来する、高度精製IgGからなる。これらの製剤は一般に静脈内経路(IVIG)で投与されるが、筋肉内投与(IGIM)および経口投与も使用される。
【0092】
一般的に使用されるIgG製剤は、Gamimune(5%および10%)(Bayer Corporation)、ガンマガード(Gammagard)(Baxter Healthcare Corporation)、ポリガム(Polygam)(American Red Cross)、サンドグロビン(Sandoglobin)(Sandoz Pharmaceuticals)、ベノグロビン(Venoglobin)(Alpha Therpeutic)およびイントラグロビン(Intraglobin)(Biotest Pharma GmbH)を含む。筋肉内免疫グロブリン(IGIM)、ベイガム(BayGam)はBayer Corporationより入手可能である。臨床用途のIVIG製剤は、主としてIgG、より少量のIgA、およびさらに少量のIgM、IgEおよびIgDを含有し、一般に95%またはそれ以上のIgG、2−5%IgAおよび極微量のIgMを含む。
【0093】
ペンタグロビン(Pentaglobin)(Biotest Pharma GmbH)は、IgMに富む多価免疫グロブリン製剤であり、溶液各々1mlは、IgM 6mg、IgA 6mg、IgG 38mgおよび注射用グルコース一水和物27.5mg、または12%IgM、一般には10−15%IgMを含有する。IgMをさらに強化した免疫グロブリン製剤は容易に生成することができ、ある種の症状の治療または緩和のために動物モデルにおいて有効と報告されている。Riebertらは、急性炎症のラットモデルにおけるIgM強化ヒト静脈内免疫グロブリンの使用、特にペンタグロビンおよびIVIgMの試験用製剤(35g/l IgM、12g/l IgA、3g/l IgG)の使用を報告している(Riebert,R.ら(1999)Blood 93(3):942−951)。Hurezらは、試験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)における90%以上の静脈内IgM製剤の使用を報告している(Hurez,V.ら(1997)Blood 90(10):4004−4013)。少なくとも20重量%IgMのIgM抗体免疫グロブリン製剤が、それらの全体が参照としてここに組み込まれる、米国特許第5,256,771号、同第5,510,465号および同第5,612,033号に述べられている。免疫グロブリンの総含有量に対して少なくとも50%重量%のIgMを含有する静脈内投与可能なポリクローナル免疫グロブリン製剤が、その全体が参照としてここに組み込まれる、米国特許第5,190,752号においてMollerらによって記述されている。
【0094】
免疫グロブリン製剤は、一般に当業者に周知の方法および工程によって生成される。免疫グロブリンは健常志願者の血液から調製され、供血者の数は少なくとも約5または10、好ましくは少なくとも約100、より好ましくは少なくとも約1,000、さらに一層好ましくは少なくとも約10,000人である。1つの一般的の方法では、数千人の供血者のプールに由来するヒト血漿を低温エタノール分画(Cohn法またはCohn−Oncley法)(Cohnら(1946)J.Am.Chem.Soc.68:459−475;Oncleyら(1949)J.Am.Chem.Soc.71:541−550)によって分別し、次に低いpHで酵素処理し、分画して、クロマトグラフィーにかける。低温エタノール分画の後に限外ろ過およびイオン交換クロマトグラフィーを実施してもよい。免疫グロブリン製剤をウイルス伝播から安全にするために、酵素修飾、化学修飾、β−プロピオラクトンでの処理、低いpHでの処理、高熱での処理および溶媒/洗浄剤での処理を含むがこれらに限定されないさらなる工程を組み込む。有機溶媒/洗浄剤(S/D)混合物での処理は、エンベロープに包まれたウイルス(HIV、B型肝炎、C型肝炎)によるウイルス伝播を排除する(Gao,F.ら(1993)Vox Sang 64(4):204−9;参照としてここに組み込まれる、米国特許第4,481,189号および同第4,540,573号)。IgM強化免疫グロブリン溶液のための個々の工程および方法は、それらの全体が参照としてここに組み込まれる、米国特許第4,318,902号および同第6,136,132号に述べられている。
【0095】
ここで考慮するおよび本発明の方法における使用に適するポリクローナルIgM強化免疫グロブリン製剤は、免疫グロブリン製剤を製造するために使用される周知の方法のいずれかによって生成できる。適切な免疫グロブリンはまた、市販のものを入手することができる。免疫グロブリン製剤はヒト免疫グロブリン製剤でありうる。適切な免疫グロブリン製剤は、少なくとも約10%IgM、少なくとも約15%IgM、少なくとも約20%IgM、少なくとも約25%IgM、少なくとも約30%IgM、少なくとも約40%IgM、少なくとも約50%IgM、少なくとも約60%IgM、少なくとも約70%IgM、少なくとも約80%IgM、少なくとも約90%IgMおよび少なくとも約95%IgMを含む。本発明における使用に適するポリクローナルIgM免疫グロブリン製剤は、10%以上のIgM、20%以上のIgMおよび50%以上のIgMを含む。本発明における使用に適するポリクローナルIgM免疫グロブリン製剤は、IgGの量より多く且つIgAの量より多い量のIgMを含む。
【0096】
IgM強化免疫グロブリン、特にヒト免疫グロブリンのフラグメントの製剤も本発明に従って使用できる。免疫グロブリンのフラグメントは、Fc、Fab、Fab’、F(ab)’および一本鎖免疫グロブリンまたは単量体などの無傷の免疫グロブリンの部分を指す。
【0097】
IgM強化免疫グロブリン製剤は、好ましくは薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤中で提供され、静脈内、筋肉内経路でまたは経口的に投与される。IgM免疫グロブリンは、IVIGまたはIGIMまたはペンタグロビンを含む、臨床的に採用されている免疫グロブリンの投与のために当業者によって認識され、使用される投与と同様の用法および用量で、あるいは製造者によって臨床的に示されるまたは推奨されるように投与される。本発明の中心的な態様によれば、組換えIgM製剤は、マウスにおいて決定される、約500ng−約600μgの用量で投与される。被験者の大きさおよび表面積対容積の差を考慮して、ヒトに適合するようにこれらの量を調整することにより、おおよその範囲は約1.25−約2.5μg/kg体重となる。投与は、単回投与でまたは1日中で複数回に分けたまたは分割した用量でまたは数日間または数ヶ月間にわたって、実施することができる。適切な用量は、1.25μg/kg体重、1.3μg/kg体重、1.4μg/kg体重、1.5μg/kg体重、1.6μg/kg体重、1.7μg/kg体重、1.8μg/kg体重、1.9μg/kg体重、2.0μg/kg体重、2.1μg/kg体重、2.2μg/kg体重、2.3μg/kg体重、2.4μg/kg体重および2.5μg/kg体重を含む。ポリクローナルIgM免疫グロブリン製剤は、単独でまたは、症状の治療または緩和のための他の化合物または作用物質を含むがこれらに限定されない、他の治療と組み合わせて投与しうる。脱髄疾患、特に多発性硬化症の治療または緩和の場合は、IgM免疫グロブリンを抗炎症薬、ステロイド、ベタセロン、コパキソン等と共に投与しうる。
【0098】
従って、本発明の診断適用の1つの態様では、抗体、ペプチド類似体、ハプテン、それらの単量体、それらの活性フラグメント、それらのアゴニスト、それらの擬態およびそれらの組み合せからなる群より選択される物質を含む神経調節物質の存在または活性を検出するための方法を開示し、前記神経調節物質は、以下の特徴:髄鞘再形成を誘導すること;神経組織に結合すること;乏突起膠細胞によるCa++シグナル伝達を促進すること;および選択的に、グリア細胞の細胞増殖を促進すること、の1つまたはそれ以上を有しており、また前記神経調節物質は、
A)前記神経調節物質の存在または活性が疑われる哺乳動物からの生物学的試料を、神経調節物質がその結合パートナーに結合することを可能にする条件下で、前記神経調節物質の結合パートナーと接触させること;および
B)前記試料からの前記神経調節物質と結合パートナーとの間で結合が起こったかどうかを検出すること
によって測定され、結合の検出は、試料中の神経調節物質の存在または活性を示す。
【0099】
異なる態様では、本発明は、前述したように神経調節物質の存在または活性を検出することを含む、哺乳動物において所与の侵襲性刺激に関連するポリペプチドリガンドの存在および活性を検出するための方法に関し、神経調節物質の存在または活性の検出は、哺乳動物における所与の侵襲性刺激に関連したポリペプチドリガンドの存在および活性を示す。特定の態様では、侵襲性刺激は感染であり、ウイルス感染、原生動物感染、細菌感染、腫瘍状哺乳動物細胞および毒素から選択されうる。
【0100】
さらなる態様では、本発明は、IgMサブタイプの抗体およびそれらの単量体を含む抗体、ペプチド類似体、ハプテン、それらの活性フラグメント、それらのアゴニスト、それらの擬態およびそれらの組み合せからなる群より選択される物質を含む神経調節物質に対する結合部位を検出するための方法に関し、前記神経調節物質は、以下の特徴:髄鞘再形成を誘導すること;神経組織に結合すること;乏突起膠細胞によるCa++シグナル伝達を促進すること;および選択的に、グリア細胞の細胞増殖を促進すること、の1つまたはそれ以上を有しており、前記方法は、
A.標識した神経調節物質試料を、前記神経調節物質に対する結合部位が疑われる哺乳動物からの生物学的試料と接触させること;
B.結合試験において、前記生物学的試料を前記標識神経調節物質の存在に関して検査すること;
を含み、前記標識神経調節物質の存在は、神経調節物質に対する結合部位を示している。
【0101】
さらに、本発明は、IgMサブタイプの抗体を含む抗体、ペプチド類似体、ハプテン、それらの単量体、それらの活性フラグメント、それらのアゴニスト、それらの擬態およびそれらの組み合せからなる群より選択される物質を含む神経調節物質の活性を調節する、薬剤または他の実体の能力を試験する方法を含み、前記方法は、
A.神経調節物質に対する受容体を有する試験細胞のコロニーを、神経調節物質を含む増殖培地で培養すること;
B.試験下の薬剤を添加すること;および
C.前記神経調節物質と前記試験細胞のコロニー上の受容体との反応性を測定すること
を含み、前記神経調節物質は、以下の特徴:
a) 髄鞘再形成を誘導すること;
b)神経組織、特に乏突起膠細胞に結合すること;
c)乏突起膠細胞によるCa++シグナル伝達を促進すること;および
d)グリア細胞の細胞増殖を促進すること
の1つまたはそれ以上を有する。
【0102】
これらに対応して、本発明は、薬剤および他の作用物質を、抗体、ペプチド類似体、ハプテン、それらの単量体、それらの活性フラグメント、それらのアゴニスト、それらの擬態およびそれらの組み合せからなる群より選択される物質を含む神経調節物質の産生を調節するか、または活性を模倣する能力に関してスクリーニングするためのアッセイ方法を包含し、前記方法は、
A.薬剤または作用物質を接種した観察可能な細胞試験コロニーを培養すること;
B.前記試験細胞コロニーから上清を採集すること;および
C.前記上清を前記神経調節物質の存在に関して検査し、前記神経調節物質のレベルの上昇または低下が、前記神経調節物質の活性を調節する薬剤の能力を示すこと
を含み、前記神経調節物質は、以下の特徴:
i) 髄鞘再形成を誘導すること;
ii)神経組織、特に乏突起膠細胞に結合すること;
iii)乏突起膠細胞によるCa++シグナル伝達を促進すること;および
iv)グリア細胞の細胞増殖を促進すること
の1つまたはそれ以上を有する。
【0103】
最後に、真核細胞試料において、IgMサブタイプの抗体およびそれらの単量体を含む抗体、ペプチド類似体、ハプテン、それらの活性フラグメント、それらのアゴニスト、それらの擬態およびそれらの組み合せからなる群より選択される物質を含む神経調節物質を明らかにするための試験キットが考慮され、前記キットは、
A.以下の特徴:髄鞘再形成を誘導すること;神経組織に結合すること;乏突起膠細胞によるCa++シグナル伝達を促進すること;およびグリア細胞の細胞増殖を促進するもののうちの1つまたはそれ以上を有する神経調節物質の、検出可能に標識された特異的結合パートナーの所定の量;
B.他の試薬;および
C.前記キットの使用のための指示
を含む。
【0104】
真核細胞試料において、抗体、ペプチド類似体、ハプテン、それらの単量体、それらの活性フラグメント、それらのアゴニスト、それらの擬態およびそれらの組み合せからなる群より選択される物質を含む神経調節物質の存在を明らかにするための異なる試験キットを開示する。前記キットは、
A.以下の特徴:髄鞘再形成を誘導すること;神経組織に結合すること;乏突起膠細胞によるCa++シグナル伝達を促進すること;およびグリア細胞の細胞増殖を促進すること、の1つまたはそれ以上を有する神経調節物質の所定の量;
B.前記神経調節物質の特異的結合パートナーの所定の量;
C.他の試薬;および
D.前記キットの使用のための指示
を含み、前記神経調節物質または前記特異的結合パートナーのいずれかは検出可能に標識されている。上記キットはどちらも、神経調節物質に対するポリクローナル抗体、神経調節物質に対するモノクローナル抗体、それらのフラグメントおよびそれらの混合物からなる群より選択される、標識した免疫化学的反応性成分を利用しうる。
【0105】
本発明は、特に乏突起膠細胞を含む、中枢神経系の構造および細胞に結合する能力によって特徴付けられる、IgMサブタイプの抗体およびそれらの単量体、またはそれらの混合物および/または活性フラグメントを含む、本発明の抗体、特に自己抗体の、画像化およびインビボ診断への適用における使用および適用に関する。そこで、前記抗体は、特に乏突起膠細胞を含む、中枢神経系の構造および細胞に結合するそれらの能力により、中枢神経系を含む神経系の特徴付けおよび、特に多発性硬化症を含む、神経疾患の診断、モニタリングおよび評価のための画像化剤または画像化分子として、免疫蛍光、放射性および他の診断に適するタグを通して利用できる。前記抗体はさらに、卒中、脊髄損傷およびアルツハイマー病を含む様々な痴呆の診断、モニタリングおよび評価における画像化剤または画像化分子として利用しうる。インビボでの画像化における使用のために抗体にカップリングするか、または結合するための十分且つ適切な免疫蛍光、放射性または他の標識分子または物質は周知であり、当業者の技術的範囲内である。
【0106】
本発明はまた、ヒトにおける多発性硬化症などの哺乳動物における脱髄疾患、および感染後脳脊髄炎のようなヒトおよび家畜の中枢神経系のウイルス性疾患を、rHIgM22としてここで述べる組換えヒト抗体並びにSCH94.03、SCH79.08、O1、O4、A2B5およびHNK−1モノクローナル抗体、およびヒト自己抗体ebvHIgM MSI19D10、sHIgM46、ハプテンを含むそれらの類似体、それらの活性フラグメント、またはそれらの特徴を有する天然または合成自己抗体を使用して治療する方法に関する。脱髄疾患の発症または進行を抑制するための、これらのmAb、それらの活性フラグメント、または同じ特徴を有する他の天然または合成自己抗体を使用した予防的治療の方法も本発明に包含される。
【0107】
中枢神経系(CNS)のミエリン形成細胞である乏突起膠細胞(OL)は、脳室下領域の神経外胚葉細胞として発生し、その後移動して成熟し、ミエリンを産生する。乏突起膠細胞の連続的な発達は、十分に特性付けられた分化段階特異的マーカーによって特定される。乏突起膠細胞/3型星状膠細胞(O−2A)前駆細胞と称される、増殖および移動性双極前駆細胞は、モノクローナル抗体(mAb)抗GDおよびA2B5によって特定される[Eisenbarthら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76(1979),4913−4917]。多極、移動後および増殖細胞によって特徴付けられる次の発達段階は、mAb O4によって認識される[Gardら、Neuron,5(1990),615−625;Sommerら、Dev.Biol.83(1981),311−327]。さらなる発達は、mAb O1によって認識されるガラクトセレブロシドの細胞表面発現によって[Schachner,J.Neurochem.,39(1982)、1−8;Sommerら、前出]、として2’,3’−環状ヌクレオチド3’−ホスホヒドロラーゼの発現によって規定される。最も成熟した細胞は、ミエリン塩基性タンパク質およびプロテオリピドタンパク質などの最終分化マーカーを発現する。
【0108】
乏突起膠細胞発達の段階を特徴付けるために使用されるmAb(A2B5、O1およびO4)は、BALB/cマウスをニワトリ胚網膜細胞またはウシ脳梁のホモジネートで免疫することによって作製された[Eisenbarthら、前出;Sommerら、前出]。A2B5は、O−2A前駆細胞だけでなくニューロンも認識し、細胞表面ガングリオシドGQ1c[Kasaiら、Brain Res.,277(1983)、155−158]および他のガングリオシド[Fredmanら、Arch.Biochem.Biophys.,233(1984)、661−666]と反応する。O4は、スルファチド、セミノリピドおよびコレステロールと反応し[Bansalら、J.Neurosci.Res.,24(1989),548−557]、一方O1は、ガラクトセレブロシド、モノガラクトシル−ジグリセリドおよびサイコシンと反応する[Bansalら、前出]。これらのmAbはIgM免疫グロブリン(Ig)サブクラスに属し、細胞質構造並びに乏突起膠細胞の表面抗原を認識する[Eisenbarthら、前出;Sommerら、前出]。BALB/cマウスをHSB−2 Tリンパ芽球細胞の膜懸濁液で免疫することによって作製されるマウスmAb HNK−1(抗Leu−7)が、ナチュラルキラー細胞についてのマーカーとして最初に報告された[Aboら、J.Immunol.,127(1981),1024−1029]。その後、HNK−1細胞は神経系と抗原決定基を共有することが示された[Schuller−Petrovicら、Nature,306(1983),179−181]。中枢および末梢ミエリン鞘の両方で認められる、ミエリン関連糖タンパク質上の糖質エピトープは、HNK−1と反応する神経組織の主要抗原であることが示された[McGarryら、Nature,306(1983),376−378]。しかし、神経組織中の他の糖タンパク質はこのmAbと反応し、その内の一部は胚形成、分化および髄鞘形成において重要である[Keilhauerら、Nature,316(1985),728−730;Kruseら、Nature,311(1984),153−155;Kruseら、Nature,316(1985),146−148;McGarryら、J.Neuroimmunol.,10(1985)、101−114]。興味深いことに、HNK−1は細胞質構造とも反応し、IgM Igサブクラスに属する。
【0109】
その全体が参照としてここに組み込まれる、特許出願第U.S.S.N.08/236,520号において本出願の発明人の一部が開示し、特許請求する、SCH94.03と称されるモノクローナル抗体は、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)に慢性感染したマウスにおいて中枢神経系の髄鞘再形成を促進することが認められた[Millerら、J.Neurosci.,14(1994)、6230−6238]。SCH94.03は、IgM(κ)Igサブクラスに属し、乏突起膠細胞上の未知の表面抗原を認識するが、すべての細胞における細胞質抗原も認識する(Asakuraら、Molecular Brain Research,製版段階)。ELISAによるSCH94.03の多反応性、および非突然変異Ig可変領域生殖細胞系配列は、SCH94.03が天然自己抗体であることを示唆した[Millerら、J.Neurosci.,14(1994)、6230−6238]。SCH94.03の綿密な試験、および周知の乏突起膠細胞反応性mAbであるA2B5、O1、O4およびHNK−1との比較は、これらが天然自己抗体である可能性を提起した。Ig可変領域cDNA配列のその後の分析およびELISAによるこれらのmAbの多反応性は、これが同様の有用性を有する天然自己抗体の属群であることを確認した。
【0110】
モノクローナル抗体、すなわちここでSCH94.03(ここではSCH94.32とも称する)およびSCH79.08と称するIgMモノクローナル抗体(どちらも正常哺乳動物(すなわちいかなる脱髄疾患にも感染していない)からの脊髄ホモジネートで免疫した哺乳動物から作製される)の抗原反応性は、その教示が参照としてここに組み込まれる、1994年4月29日出願の前記特許願第U.S.S.N.08/236,520号において、免疫組織化学、免疫細胞化学、ウエスタンブロット法、固相酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、およびIg可変領域配列決定を含むいくつかの生化学および分子アッセイを用いて特徴付けされ、説明されている。モノクローナル抗体SCH94.03およびSCH79.08を産生するハイブリドーマは、ブタペスト条約の規定の下で、それぞれ1994年4月28日および1996年2月27日にthe American Type Culture Collection(ATCC)に寄託され、それぞれCRL11627およびHB12057のATCCアクセッション番号を与えられた。帰宅物質のアベイラビリティーに対するすべての制限は、特許の許諾後取消し不能に取り除かれる。
【0111】
天然または生理的自己抗体は、正常では血清中に存在し、自己構造、抗原または細胞に反応性であるまたは結合できることによって特徴付けられる。それらは多反応性であることが多く、しばしばIgMサブタイプであり、非突然変異生殖細胞系遺伝子によってコードされるかあるいはごく僅かなまたはいくつかの配列相違を伴って生殖細胞系遺伝子と実質的に相同である。乏突起膠細胞反応性O1、O4、A2B5およびHNK−1 IgMκモノクローナル抗体の免疫グロブリン(Ig)cDNAを配列決定し、これらを公表されている生殖細胞系配列と比較することにより、これらが天然自己抗体であることが決定された。O1 Vは、再編成されていないVセグメント転写産物A1およびA4と同一であり、O4 Vは3個、HNK−1 Vは6個のVコード領域内のV101とのヌクレオチド相違を有していた。O1のDセグメントは生殖細胞系SP2遺伝子ファミリー、J4に由来し、一方O1 Jは生殖細胞系J1によってコードされ、1個の沈黙ヌクレオチド変化を有していた。O1およびO4 軽鎖は、1個の沈黙ヌクレオチド変化を除いて骨髄腫MOPC21と同一であった。HNK−1 Vκは、2個の沈黙ヌクレオチド変化を除いて生殖細胞系Vκ41と同一であった。O1 Jκ、O4 JκおよびHNK Jκは、非突然変異生殖細胞系Jκ2によってコードされた。これに対し、A2B5Vは生殖細胞系V1と7個のヌクレオチド相違を示し、A2B5 Vκをコードする生殖細胞系配列は特定されなかった。O1およびO4は、直接ELISAによって多数の抗原に対して多反応性であったが、A2B5は多反応性ではなかった。それ故、O1、O4およびHNK−1 Igは生殖細胞系遺伝子によってコードされ、天然自己抗体の遺伝子型および表現型を有する。
【0112】
(脱髄疾患の治療)
ここで述べる試験の結果は、多発性硬化症(MS)、EAEおよび他の関連中枢神経系脱髄疾患への実際的な適用を有する。自発的中枢神経系型髄鞘再形成(「陰影斑」)のまれな例が多発性硬化症において認められ、時として末梢神経系(PNS)型髄鞘再形成が根入口帯近くの脱髄脊髄斑において認められる。乏突起膠細胞は、多発性硬化症における慢性斑の中心部ではまれであるが、それらが不全型髄鞘再形成に結びつく、斑の末梢部で増殖すると思われる。髄鞘再形成の過程は、多発性硬化症において臨床的に認められる自発的寛解および改善と相関しうる。これらの臨床所見は、多発性硬化症において新しいミエリン形成が可能であることを示している。TMEV誘導性脱髄を有するマウスにおいてmAbを使用することによって刺激された髄鞘再形成は、多発性硬化症における治療適用を有望視させる。
【0113】
臨床的に重要な点としては、薄いミエリン鞘の形態学的再生が機能回復に寄与するかどうかという問題である。コンピュータでのシミュレーションは、新たなミエリン形成は、不十分な薄い鞘によるものであっても、インパルスの伝導を改善することを示唆する。正常な有髄線維の軸索膜は高度に分化しているので、跳躍性伝導により伝播するためにはランヴィエ絞輪にナトリウムチャネルが高密度で存在する必要がある。試験的エビデンスは、サキシトキシン結合によって明らかにされたように、新たに形成された節が必要な高いナトリウムチャネル密度を発現することを示唆する。現在までのデータは、不十分な薄い鞘によるものであっても髄鞘再形成は、以前の脱髄軸索における伝導を改善することを示唆する。それ故、この形態学的現象を促進するための手法は、機能回復を生じさせる潜在的可能性を有する。
【0114】
ここで示すデータは、初めて、哺乳動物への組換えヒトモノクローナル抗体の投与がインビボで中枢神経系軸索の髄鞘再形成を刺激できることを明らかにする。特に、500ngという低用量のrHIgM22によるTMEV慢性感染マウスの治療は、対照mAbで治療したマウスに比べて中枢神経系有髄化の総面積の有意な上昇をもたらした。
【0115】
ヒト抗体の使用は、治療抗体に対するヒト免疫応答の潜在的可能性を回避する。非ヒト動物に由来する治療抗体は、個人にとって重大且つ有害でありうる免疫応答を生じさせることが示されている。そこで、ポリクローナルヒトIgMおよびポリクローナルヒトIgGをインビボでの脊髄脱髄の2つのモデル:慢性ウイルス感染モデルおよび急性毒性モデルにおいて試験した。両方のモデルにおいて、ヒトIgMを投与した動物は、ポリクローナルヒトIgGで処置した動物よりも有意に高い密度の新たに髄鞘形成された軸索を有していた。ヒトモノクローナルIgM抗体のパネルも、中枢神経系に特異的な表面抗原との反応性に基づいて、特定された。これらのヒト抗体は、脱髄疾患を有する哺乳動物に投与したとき、ポリクローナルヒトIgG抗体よりも有意に多くの中枢神経系髄鞘再形成を促進する。ヒトモノクローナル抗体は、抗原的に多反応性であり、乏突起膠細胞の表面の抗原決定基およびニューロンの特定個体群を認識する。髄鞘再形成を促進するいくつかのヒト抗体の軽鎖および重鎖の可変領域が配列決定されている。特に、これらの抗体は、培養中のグリア細胞(乏突起膠細胞および星状膠細胞)においてカルシウム流入を誘導することができ、グリア細胞を通しての直接結合とシグナル伝達を示唆する。これらのヒト抗体はヒト白質と結合し、ヒトにおける髄鞘再形成を促進する上で有効であると考えられる。治療薬としての使用のための組換えモノクローナル抗体の利点は、1)抗体を、宿主感染を伴わずに増殖させることができる、および2)抗体を、その有効性を変化させるようにインビトロで遺伝的に変更することができる、ことである。
【0116】
そこで、ここで述べる試験の結果として、本発明の方法は、脱髄疾患に罹患した、ヒトおよび家畜を含む哺乳動物を治療するため、および中枢神経系軸索の髄鞘再形成および再生を刺激するため、並びに神経保護を与えるために使用することができる。ここで述べるように、モノクローナル抗体またはペプチドフラグメント、ハプテンまたは等価物の有効量を従来の投与経路によって、特に静脈内(iv)または腹腔内(ip)注射によって、投与することができる。ここで述べるように、治療組成物およびワクチンが考慮され、それらを調製して、投与しうる。抗体の有効量は、治療する哺乳動物の大きさ、疾患の重症度、投与経路、および治療課程(course of treatment)に依存して異なりうる。例えば、投与する抗体の各々の用量は、本発明に従った例示的な非制限的範囲として、約1.25−約2.5μg/kgの範囲をとりうる。抗体の用量はまた、投与経路にも依存する。治療課程は、抗体の投与の頻度(例えば毎日、週に1回、または2週に1回)および治療の期間(例えば4週間から4ヶ月間)を含む。そこで、例えば、より少量のmAbを4ヶ月間投与するのに対し、より高用量のmAbを4−5週間毎日投与することができる。
【0117】
投与するモノクローナル抗体の量の有効性は、哺乳動物の全体的外観、哺乳動物の活動および哺乳動物の麻痺の程度を含む、例えばここで実施例において述べるような、多くの臨床判定基準を用いて評価することができる。ヒトにおいて髄鞘再形成を誘導するために必要なモノクローナル抗体の量の有効性も、二重盲検対照試験において評価できる。脱髄疾患からの固定した神経障害を有する患者をモノクローナル抗体または対照物質で治療することができる。定量的生体力学筋肉試験によって検出されるような等尺性筋力の改善が一次治療エンドポイントとして使用できる。
【0118】
髄鞘再形成を促進するインビボでの方法に加えて、中枢神経系軸索における髄鞘再形成を刺激する半ビボでの方法も本発明に包含される。例えば、乏突起膠細胞などのグリア細胞の増殖および/または分化を刺激するためにモノクローナル抗体をインビトロで使用しうる。これらの外因性グリア細胞を、次に、公知の手法を用いて哺乳動物の中枢神経系に導入することができる。中枢神経系軸索の髄鞘再形成は、存在する内因性グリア細胞の数を増加させることによって上昇する(乏突起膠細胞などのグリア細胞はミエリンの産生において重要な役割を果たす)。
【0119】
グリア細胞を生産するか、または混合培養(例えばラット視神経細胞またはラット脳細胞培養)からグリア細胞の増殖を刺激するインビトロでの方法も本発明に包含される。例えば、グリア細胞を含む、ラット視神経またはラット脳から得た細胞を、細胞の増殖を促進するために十分な条件下で混合培養として培養する。次に、rHIgM22またはsHIgM46またはSCH94.03またはそれらの組み合せなどの、中枢神経系軸索の髄鞘再形成を促進することができるmAbの有効量を細胞の混合培養に加え、細胞の成長および増殖のために十分な条件下に維持する。mAbは、mAbの存在下で培養したグリア細胞の増殖を刺激し、その増殖は、mAbの不在下で成長したグリア細胞の増殖に比べて高い。
【0120】
上述したように、本発明の方法における使用のための抗体は、薬剤、すなわち薬学的組成物として投与でき、好ましくは投与される。そこで、ポリクローナルIgM抗体の有効量を、生理的緩衝液または食塩水などの、適切な薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤と組み合わせるまたはそれらで希釈することができる。モノクローナル抗体の有効量を、生理的緩衝液または食塩水などの、適切な薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤と組み合わせるまたはそれらで希釈することができる。1つまたはそれ以上のモノクローナル抗体の組み合せの有効量を、同様に適切な薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤と組み合わせるかまたはそれらで希釈してもよい。ワクチンを製造する場合は、本発明のモノクローナル抗体または等価活性物質を医薬的に有効で適切なキャリアまたはアジュバントと共に調製し、熟達した医師に既知である免疫のための標準的手法に従って投与のためのプロトコールを実施しうる。
【0121】
動物およびヒトへの投与のために本発明の方法において使用される薬学的組成物は、医薬用キャリアまたは賦形剤と組み合わせてポリクローナルIgM抗体またはモノクローナル抗体を含有する。好ましい実施形態では、薬学的組成物は、2つ以上の、好ましくは2つの、本発明のモノクローナル自己抗体を含有しうる。そこで、例えばsHIgM22とsHIgM46の組み合せの有効量を含有する薬学的組成物がここで考慮される。そのような組成物は、2つ以上のモノクローナル自己抗体の存在が同じ治療組成物または方法における他方の活性を増強しうるという点で有利である。
【0122】
薬剤は、本発明の化合物を含有する錠剤(ロゼンジおよび顆粒剤を含む)、糖衣丸、カプセル、丸剤、アンプルまたは坐薬の形態でありうる。
【0123】
好都合には、前記組成物は、各々の単位が有効成分の固定用量を供給するように適合されている、投与単位として製剤される。錠剤、被覆錠剤、カプセル、アンプルおよび坐薬は、本発明に従った好ましい投与形態の例である。有効成分が有効量を構成する、すなわち適切な有効用量が単回または複数回の単位投与において使用される用量形態と一致することが唯一必要である。正確な個々の用量並びに一日の用量は、言うまでもなく、医師または獣医の指示の下に標準的医療原則に従って決定される。
【0124】
モノクローナル抗体はまた、水性または非水性希釈剤中の活性化合物の懸濁液、溶液および乳剤、シロップ、顆粒または粉末としても投与できる。
【0125】
錠剤、糖衣丸、カプセルおよび丸剤を形成するように適合された活性化合物を含有する薬学的組成物(例えば顆粒)において使用できる希釈剤は、以下を含む:(a)充填剤および増量剤、例えばデンプン、糖類、マンニトールおよびケイ酸;(b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチンおよびポリビニルピロリドン;(c)湿潤剤、例えばグリセロール;(d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウムおよび炭酸水素ナトリウム;(e)溶解を遅延させるための物質、例えばパラフィン;(f)吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物;(g)界面活性剤、例えばセチルアルコール、モノステアリン酸グリセロール;(h)吸着性キャリア、例えばカオリンおよびベントナイト;(i)潤滑剤、例えば滑石、ステアリン酸カルシウムおよびマグネシウムおよび固体ポリエチレングリコール。
【0126】
活性化合物を含有する錠剤、糖衣丸、カプセルおよび丸剤は、乳白剤を含みうる、慣例的な剤皮、エンベロープおよび保護基質を有しうる。それらは、おそらく一定期間にわたって、有効成分だけを放出するか、または好ましくは腸管の特定部分において有効成分を放出するように構成されうる。剤皮、エンベロープおよび保護基質は、例えばポリマー物質またはろうから作製されうる。
【0127】
坐薬を形成するように適合された薬学的組成物において使用される希釈剤は、例えばポリエチレングリコールおよび脂肪(例えばココア油および高エステル[例えばC16−脂肪酸を有するC14−アルコール])などの通常の水溶性希釈剤またはこれらの希釈剤の混合物でありうる。
【0128】
溶液および乳剤である薬学的組成物は、例えば、溶媒、溶解補助剤および乳化剤などの慣例的な希釈剤(言うまでもなく、界面活性剤が存在する場合を除いて、200未満の分子量を有する前述の溶媒は例外とする)を含みうる。そのような希釈剤の特定の非制限的例は、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(例えば落花生油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビトールの脂肪酸エステルまたはそれらの混合物である。
【0129】
非経口投与に関しては、溶液および懸濁液は、アンプルに収められた無菌の、例えば水または落花生油、であるべきであり、そして適切な場合は、血液等張性であるべきである。
【0130】
懸濁液である薬学的組成物は、液体希釈剤、例えば水、エチルアルコール、プロピレングリコール、界面活性剤(例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル)、微血漿セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、またはそれらの混合物などの通常の希釈剤を含有しうる。
【0131】
薬学的組成物はまた、着色料および防腐剤、並びに香料および香味添加物(例えばペパーミント油およびユーカリ油)、および甘味料(例えばサッカリンおよびアスパルテーム)を含有しうる。
【0132】
薬学的組成物は一般に、総組成物の重量の0.5−90%の有効成分を含む。
【0133】
モノクローナル抗体に加えて、薬学的組成物および薬剤はまた、他の医薬活性化合物、例えばステロイド、抗炎症薬等を含有することができる。
【0134】
本発明の薬剤中の希釈剤は、薬学的組成物に関して前述したもののいずれであってもよい。そのような薬剤は、単独希釈剤として分子量200未満の溶媒を含みうる。
【0135】
ポリクローナルIgM抗体およびモノクローナル抗体は、経口的、非経口的(例えば筋肉内、腹腔内、皮下、経皮または静脈内経路)、直腸経路または局所的に投与され、好ましくは経口的または非経口的に、特に舌下または静脈内経路で投与される。
【0136】
投与経路は、治療するヒトまたは動物の性質および体重、治療に対する前記被験者の個々の反応、有効成分が投与される製剤のタイプ、投与を実施する様式、および疾患の進行の段階または投与の間隔の関数である。そこで、一部の場合には、最小用量割合より少用量未満を使用すれば十分であり、また別の場合には、所望の結果を達成するには上限を超えなければならないこともある。より多くの量を投与する場合は、これらを1日の間に数回の個別投与に分けることが勧められる。
【0137】
本発明によれば、本発明の治療組成物の1つまたはそれ以上の成分を、非経口的に、髄腔内に、経粘膜的に、例えば経口的、経鼻的、肺経路で、または直腸経路で、または経皮的に、導入しうる。好ましくは、投与は非経口的であり、例えば静脈内注射によって実施され、また動脈内、筋肉内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内および頭蓋内投与も含むが、これらに限定されない。経口または肺送達は粘膜免疫を活性化するために好ましいと考えられる;治療下の症状についての起因菌は鼻咽頭および肺粘膜にコロニー形成するので、粘膜投与は治療として特に有効でありうる。本発明の治療組成物に関して使用するとき「単位用量」という用語は、各々の単位が、必要な希釈剤、すなわちキャリアまたは賦形剤と共同して所望の治療効果を生じるように算定された所定の量の活性物質を含有する、ヒトのための単位別投薬として適する物理的に別個の単位を指す。
【0138】
別の実施形態では、活性化合物を小胞中で、特にリポソーム中で送達することができる(Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら、Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancerより,Lopez−BeresteinとFidler(編集)、Liss,New York,p.353−365(1989);Lopez−Berestein,同上、p.317−327参照;一般に同上参照)。
【0139】
さらに別の実施形態では、治療組成物を制御放出システム中で送達することができる。例えばポリペプチドは、静脈内持続注入、移植可能な浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソームまたは他の投与様式を用いて投与しうる。1つの実施形態では、ポンプを使用しうる(Langer,前出;Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら、Surgery 88:507(1980);Saudekら、N.Engl.J.Med.321:574(1989)参照)。別の実施形態では、ポリマー材料が使用できる(Medical Applications of Controlled Release,LangerとWise(編集)、CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,SmolenとBall(編集)、Wiley,New York(1984);RangerとPeppas,J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983)参照;またLevyら、Science 228:190(1985);Duringら、Ann.Neurol.25:351(1989);Howardら、J.Neurosurg.71:105(1989)も参照のこと)。さらに別の実施形態では、制御放出システムを治療標的、すなわち脳の近くに設置することができ、それ故全身用量の分画だけしか必要としない(例えばGoodson,Medical Applications of Controlled Releaseより、前出、vol.2,p.115−138(1984)参照)。好ましくは、制御放出装置を被験者の不適切な免疫活性化の部位または腫瘍の付近に導入する。他の制御放出システムは、Langerによる総説(Science 249:1527−1533(1990))の中で論じられている。
【0140】
上述した活性成分の投与が、一部の場合には細菌感染を含む、中枢神経系に関連する症状または疾患のための有効な治療レジメンの被験者は、好ましくはヒトであるが、いかなる動物でもありうる。そこで、当業者には容易に認識できるように、本発明の方法および薬学的組成物は、ネコまたはイヌ被験者などのペット動物、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジおよびブタ被験者などの、但しこれらに限定されることなく家畜、野生動物(野生で存在するかまたは動物園内にいるかに関わらず)、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ等のような、すなわち獣医学的用途のための、研究動物を含むが、いかなる意味においてもこれらに限定されない、何らかの動物、特に哺乳動物への投与に特に適する。
【0141】
本発明の治療方法および組成物において、活性成分の治療有効用量が提供される。治療有効用量は、患者の特徴(年齢、体重、生物、症状、合併症、他の疾患等)に基づいて医療従事者によって決定されうるが、また当技術分野においても周知である。さらに、さらなる常用試験を実施するほど、様々な患者における様々な症状の治療のための適切な用量レベルに関するより詳細な情報が得られ、当業者は、受容者の治療背景、年齢および全身状態を考慮して、適切な用量を確認することができる。一般に、静脈注射または持続注入については、用量は腹腔内、筋肉内または他の投与経路に関する用量よりも低くてよい。投与スケジュールは、循環半減期および使用する製剤によって異なりうる。組成物は、治療有効量の投与剤型と適合させて投与される。投与する必要のある有効成分の正確な量は医師の判断に依存し、各々の個人に特有である。初期投与およびブースター投与のための適切なレジメンも変化しうるが、初期投与とそれに続く1つまたはそれ以上の時間間隔でのその後の注射または他の投与法による反復投与が典型的である。あるいは、10ナノモルから10マイクロモルの血液中濃度を維持するのに十分な持続静脈内注入が考慮される。
【0142】
(他の化合物との投与)
脱髄症状、例えば多発性硬化症の治療のために、本発明の活性成分を、(1)ステロイドなどの抗炎症薬;(2)ベタセロン;(3)コパキソン;または(4)ポリクローナルIgM;または(5)メチルプレドニゾロン、を含むがこれらに限定されない、多発性硬化症を治療するために使用される1つまたはそれ以上の薬学的組成物と共に投与しうる。投与は、同時(例えば本発明の活性成分と抗生物質の混合物の投与)、或いは順次行うことが可能である。
【0143】
従って、特定の実施形態では、治療組成物は、有効量の活性成分および1つまたはそれ以上の以下の有効成分;抗生物質、ステロイド等、をさらに含みうる。
【0144】
本発明の神経調節物質または抗炎症薬に関連しうる作用物質の肺送達もここで考慮される。肺送達のためのタンパク質の製剤についての報告が当技術分野において認められる[Adjeiら、Pharmaceutical Research,7:565−569(1990);Adjeiら、International Journal of Pharmaceutics,63:135−144(1990)(酢酸ロイプロリド);Braquetら、Journal of Cardiovascular Pharmacology,13(補遺5):143−146(1989)(エンドセリン−1);Hubbardら、Annals of Internal Medicine,Vol.III,p.206−212(1989)(α1−抗トリプシン);Smithら、J.Clin.Invest.84:1145−1146(1989)(α1−プロテイナーゼ);Osweinら、「Aerosolization of Proteins」,Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Delivery II,Keystone、Colorado,3月(1990)(組換えヒト成長ホルモン);Debsら、J.Immunol.140:3482−3488(1988)(インターフェロン−γおよび腫瘍壊死因子α);Platzら、米国特許第5,284,656号(顆粒球コロニー刺激因子)]。薬剤の肺送達のための方法および組成物は、Wongらへの1995年9月19日発行の米国特許第5,451,569号に述べられている。
【0145】
そのような装置はすべて、接着阻害剤(または誘導体)の配薬に適した製剤の使用を必要とする。典型的には、各々の製剤は用いる装置のタイプに特異的であり、治療において有用な通常の希釈剤、アジュバントおよび/またはキャリアに加えて、適切な推進薬の使用を含みうる。また、リポソーム、マイクロカプセルまたはミクロスフェア、封入複合体、または他の種類のキャリアの使用も考慮される。化学修飾された接着阻害剤も、化学修飾のタイプまたは使用する装置のタイプに依存して種々の製剤中で調製されうる。
【0146】
ジェットまたは超音波噴霧器による使用に適する製剤は、典型的には、溶液1mlにつき生物活性物質約0.1−25mgの濃度で水に溶解した神経調節物質(または誘導体)を含有しうる。製剤はまた、緩衝液と単純な糖(例えば神経調節物質の安定化および浸透圧の調節のため)を含みうる。ネブライザ製剤はまた、エアロゾルを形成するときに溶液の噴霧化によって引き起こされる神経調節物質の表面誘導性凝集を低減するか、または予防するために、界面活性剤も含有しうる。
【0147】
定量噴霧式吸入器による使用のための製剤は、一般に、界面活性剤の助けによって推進薬に懸濁された神経調節物質(または誘導体)を含有する微細に分割された粉末を含む。推進薬は、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、またはトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノールおよび1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む炭化水素、またはそれらの組み合せなどの、この目的のために使用される従来のいかなる物質でもよい。適切な界面活性剤は、トリオレイン酸ソルビタンおよびダイズレシチンを含む。オレイン酸も界面活性剤として有用でありうる。
【0148】
液体エアロゾル製剤は、生理的に許容される希釈剤中に神経調節物質および分散剤を含有する。本発明の乾燥粉末エアロゾル製剤は、微細分割固体形態の神経調節物質と分散剤からなる。液体または乾燥粉末エアロゾル製剤に関しては、製剤がエアロゾル投与されねばならない。すなわち、エアロゾル化された用量が実際に鼻通路または肺の粘膜に到達することを確実にするために液体または固体粒子に分解されねばならない。「エアロゾル粒子」という用語は、ここでは鼻または肺投与に適する、すなわち粘膜に達する液体または固体粒子を表わすために使用される。送達装置の構築、製剤中の付加的な成分および粒子特徴などの他の配慮も重要である。薬剤の肺投与のこれらの態様は当技術分野において周知であり、製剤の操作、エアロゾル化手段および送達装置の構築は、多くとも当技術分野の通常技術のいずれかによる常套的な試験しか必要としない。特定実施形態では、薬剤粒子が肺胞に到達することを確実にするため、動力学的粒径は5マイクロメーターまたはそれ以下である[Wearley,L.L,Crit.Rev.in Ther.Drug Carrier Systems 8:333(1991)]。
【0149】
本発明の神経調節物質はまた、ここで列挙する自己抗体、ペプチド類似体またはハプテンまたはおそらくそれらの組み合せを活性物質として含有しうる、ワクチンの形態での投与用に調製しうる。そこで、ワクチンの調製は公知の手順に従って実施でき、一価並びに多価ワクチンが考慮される。また、本発明のDNA分子に基づく、DNAサブユニットワクチンも調製しうる。すべてのワクチンは医師または臨床家の標準的な慣例に従って投与することができ、そのようなパラメータは本発明の範囲内であるとみなされる。
【0150】
例えば本発明に従ったDNAに基づくワクチンを含有するベクターを、当技術分野で公知の方法によって、例えばトランスフェクション、電気穿孔法、微量注入法、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン法、リン酸カルシウム沈殿法、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子ガンまたはDNAベクター輸送体の使用によって、所望の宿主に導入することができる(例えばWuら、1992、J.Biol.Chem.267:963−967;WuとWu,1988,J.Biol.Chem.263:14621−14624;Hartmutら、1990年3月15日出願のカナダ特許出願第2,012,311号参照)。
【0151】
ワクチンは、筋肉内、腹腔内、静脈内等を含むが、これらに限定されない、何らかの非経口経路によって投与できる。好ましくは、ワクチン接種の所望の結果は抗原への免疫応答、およびそれによって病原生物への免疫応答を明らかにすることであるので、リンパ組織、例えばリンパ節または脾臓への、直接投与あるいはターゲティングまたはウイルスベクターの選択による間接的な投与が望ましい。免疫細胞は絶えず複製しているので、レトロウイルスは複製細胞を必要とするため、それらはレトロウイルスベクターに基づく核酸ワクチンの理想的な標的である。
【0152】
抗血清、ポリクローナル抗体または中和モノクローナル抗体を患者に投与することによって、自己免疫介在性脱髄疾患、例えば多発性硬化症に罹患していることが疑われる動物被験者に受動免疫を与えることができる。好ましくは、受動免疫療法のために投与される抗体は自家抗体である。例えば被験者がヒトである場合、好ましくは、抗体に対する免疫応答の可能性を最小限に抑えるために、抗体はヒト起源であるかまたは「ヒト化」されている。本発明の能動または受動ワクチン、またはアドヘシンの投与は、グラム陰性菌、好ましくは連鎖球菌、より好ましくは肺炎球菌の感染から動物被験者を保護するために使用できる。
【0153】
さらに、本発明は、適切な神経調節物質を、治療のために細胞を標的する、対応する物質の発現を生じさせるまたは上昇させるために対応して導入する、遺伝子療法による治療を考慮する。それ故、1つの実施形態では、神経調節物質、自己抗体、抗体ペプチド等をコードするDNAまたは遺伝子、あるいはそのタンパク質またはポリペプチドドメインフラグメントを、ウイルスベクターを用いてまたはDNAの直接導入を通してインビボ、半ビボまたはインビトロで導入する。標的組織における発現は、ウイルスベクターまたは受容体リガンドなどでトランスジェニックベクターを特定細胞に標的することによって、または組織特異的プロモーターを使用することによって、またはその両方によって実現することができる。
【0154】
インビボまたは半ビボでのターゲティングおよび治療処置のために一般的に使用されるウイルスベクターは、DNAベースのベクターおよびレトロウイルスベクターである。ウイルスベクターを構築し、使用するための方法は当技術分野において公知である[例えばMillerとRosman,BioTechniques 7:980−990(1992)参照]。
【0155】
DNAウイルスベクターは、単純疱疹ウイルス(HSV)、パピローマウイルス、エプスタイン‐バーウイルス(EBV)、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)等を含むがこれらに限定されない、弱毒化または欠損DNAウイルスを包含する。完全にまたはほぼ完全にウイルス遺伝子を欠く欠損ウイルスが好ましい。欠損ウイルスは細胞への導入後は感染性ではない。欠損ウイルスベクターの使用は、ベクターが他の細胞に感染することがあるという懸念を伴わずに、特定の局在領域内の細胞への投与を可能にする。それ故、脂肪組織を特異的に標的することができる。特定ベクターの例は、欠損ヘルペスウイルス1型(HSV1)ベクター[Kaplittら、Molec.Cell.Neurosci.2:320−330(1991)]、糖タンパク質L遺伝子を欠く欠損ヘルペスウイルスベクター[特許公開第RD371005 A号]、または他の欠損ヘルペスウイルスベクター[1994年9月29日公開の国際公開広報第WO94/21807号;1994年4月2日公開の国際公開広報第WO92/05263号];Stratford−Perricaudetら[J.Clin.Invest.90:626−630(1992);La Salleら、Science 259:988−990(1993)も参照のこと]によって述べられたベクターのような弱毒化アデノウイルスベクター;および欠損アデノ関連ウイルスベクター[Samulskiら、J.Virol.61:3096−3101(1987);Samulskiら、J.Virol.63:3822−3828(1989);Lebkowskiら、Mol.Cell.Biol.:3988−3996(1988)]を含むが、これらに限定されない。
【0156】
好ましくは、インビボ投与に関しては、ウイルスベクターおよびトランスフェクト細胞の免疫非活性化を回避するため、適切な免疫抑制治療をウイルスベクター、例えばアデノウイルスベクターと共に使用する。例えば、ウイルスベクターに対する体液性または細胞性免疫応答を阻止するためにインターロイキン−12(IL−12)、インターフェロン−γ(IFN−γ)または抗CD4抗体などの免疫抑制サイトカインを投与することができる[例えばWilson,Nature Medicine(1995)]。加えて、最小数の抗原を発現するように構築されたウイルスベクター使用することが好都合である。
【0157】
別の実施形態では、例えばAndersonら、米国特許第5,399,346号;Mannら、1983、Cell 33:153;Teminら、米国特許第4,650,764号;Teminら、米国特許第4,980,289号;Markowitzら、1988、J.Virol.62:1120;Teminら、米国特許第5,124,263号;Doughertyらによる、1995年3月16日公開の国際公開広報第WO95/07358号;およびKuoら、1993、Blood 82:845に述べられているように、DNAまたは遺伝子をレトロウイルスベクターに導入することができる。レトロウイルスベクターは、感染性粒子として機能するようにまたは単回のトランスフェクションを受けるように構築することができる。前者の場合は、ウイルスを、腫瘍形成形質転換特性の原因となるものを除き、その遺伝子のすべてを保持し、異種遺伝子を発現するように修飾する。ウイルスパッケージングシグナルを破壊するが、異種遺伝子とパッケージングシグナルを含むように構築された共導入ウイルスをパッケージングするために必要な構造遺伝子は保持する、非感染性ウイルスベクターを作製する。それ故、生産されるウイルス粒子はさらなるウイルスを生産することができない。
【0158】
標的遺伝子の送達は、1995年10月公開の国際公開広報第WO95/28494号に述べられている。
【0159】
あるいは、リポフェクションによってインビボでベクターを導入することができる。この10年間、インビトロでの核酸の被包およびトランスフェクションのためのリポソームの使用は上昇し続けてきた。リポソームを介したトランスフェクションに関して遭遇する困難と危険性を制限するように設計された合成カチオン脂質は、マーカーをコードする遺伝子のインビボでのトランスフェクションのためのリポソームを作製するために使用できる[Felgnerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84:7413−7417(1987);Mackeyら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:8027−8031(1988);Ulmerら、Science 259:1745−1748(1993)参照]。カチオン脂質の使用は、負に荷電した核酸の被包を促進することができ、また負に荷電した細胞膜との融合も促進しうる[FelgnerとRingold,Science 337:387−388(1989)]。外来性遺伝子をインビボで特定器官に導入するためのリポフェクションの使用は、ある種の実際的な利点を有する。特定細胞へのリポソームの分子ターゲティングは1つの利点を示している。トランスフェクションを特定細胞型に差し向けることは、膵臓、肝臓、腎臓および脳などの細胞異質性を有する組織において特に好都合であることは明らかである。脂質は、ターゲティングのために他の分子に化学結合しうる[Mackeyら、前出参照]。標的ペプチド、例えばホルモンまたは神経伝達物質、および抗体などのタンパク質、または非ペプチド分子をリポソームに化学結合することができる。
【0160】
ベクターをインビボで裸のDNAプラスミドとして導入することも可能である。遺伝子治療のための裸のDNAベクターは、当技術分野で公知の方法によって、例えばトランスフェクション、電気穿孔法、微量注入法、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン法、リン酸カルシウム沈殿法、遺伝子ガンの使用、またはDNAベクター輸送体の使用によって、所望の宿主細胞に導入することができる[例えばWuら、J.Biol.Chem.267:963−967(1992);WuとWu,J.Biol.Chem.263:14621−14624(1988);Hartmutら、1990年3月15日出願のカナダ特許出願第2,012,311号;Williamsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:2726−2730(1991)参照]。受容体を介在したDNA送達アプローチも使用できる[Curielら、Hum.Gene Ther.3:147−154(1992);WuとWu,J.Biol.Chem.262:4429−4432(1987)]。
【0161】
本発明の好ましい実施形態では、上述したような遺伝子治療ベクターは、例えば本発明の自己抗体によって認識されるDNAコンセンサス配列を含む転写調節配列、すなわちベクター内に挿入された治療的異種遺伝子に作動可能に連結された、抗体結合部位を使用する。すなわち、本発明の特異的発現ベクターは遺伝子治療において使用することができる。
【0162】
本発明は、材料、化合物および組成物の調製および本発明を例示する方法の開発と実施を説明する、以下の非制限的実施例を考察することによってよりよく理解される。この開示の目的および意図から逸脱することなく、材料および方法の両方について多くの変更を実施しうることは当業者には明白である。以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をより詳細に説明するために提示するものであり、また本発明の実施のために既知の最良の方式を提示するという出願人の義務を履行する役割を果たし、いかなる意味においても本発明を広範囲に制限すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0163】
(実施例1:組換えsHIgM22を使用した用量設定試験(試験No.1))
(マウス)
Jackson Laboratoriesから得た4−6週齢の雌性SJL/Jマウスに、10μl中2×10プラーク形成単位のダニエル株TMEVを大脳内注射した。感染動物に、TMEV感染後6ヶ月目に種々の濃度のrHIgM22またはPBSの単回500μl腹腔内(IP)注射を実施した。1つの群には、5週間後に追加の500μg用量のrHIgM22を投与した。2つの群のマウスには、毎週1回メチルプレドニゾロン2mgを投与した。各々の群について10匹のマウスを使用した。治療の5または10週間後に、脊髄における髄鞘再形成の定量的分析のために動物を供犠した。
【0164】
最小有効用量を決定するため、TMEVに慢性感染したマウスにおいてRsHIgM22の用量設定試験を実施した。治療の5週間後、脊髄を切除し、脱髄および髄鞘再形成に関して等級づけた。結果を図1に直接示し、同用量を摂取した被験者に関して分類したスコアの平均値の比較を図2に示す。
【0165】
結果の検討から、0.25mg/kgまでのRsHIgM22のすべての用量において、食塩水対照群よりも有意に大きな面積の髄鞘再形成が生じていた(ANOVAによりp<0.001)。これは、本発明の抗体が妥当な用量で治療上適切な作用を提供する能力を明らかにする。
【0166】
加えて、RsHIgM22および週に2mgのメチルプレドニゾロンを投与動物は、より低レベルの脱髄(ANOVAによりp<0.001)並びに高レベルの髄鞘再形成を示した。ステロイドは、髄鞘再形成性ヒトmAbの潜在的受容者である、急性の増悪を生じた多くの患者のための一次治療方法であるので、これは重要である。さらに、これらの結果は、メチルプレドニゾロンなどのステロイドと本発明の抗体を含有する組成物の製造および投与、あるいは別々であるが結合したまたは連続的な投与のための、ステロイドと抗体を含有する組成物の製剤および投与に関する本発明の態様が、ここで示した有益な結果を生じうることを示唆する。
【0167】
これらの結果は、RsHIgM22が古典的増殖因子に必要な範囲内の濃度で作用しうることを明らかにする。
【0168】
(実施例2: より低用量のrHIgM22単独またはメチルプレドニゾロンとrHIgM22との併用による有効性の試験(試験No.2))
(材料および方法)
(マウス)
Jackson Laboratoriesから得た4−6週齢の雌性SJL/Jマウスに、10μl中2×10プラーク形成単位のダニエル株TMEVを大脳内注射した。感染動物に、TMEV感染後6ヶ月目に種々の濃度でのrHIgM22またはPBSを単回500μlで腹腔内(IP)注射を実施した。1つの群には、5週間後に追加の500μg用量のrHIgM22を投与した。2つの群のマウスには、毎週2回メチルプレドニゾロン1mgを投与した。各々の群において10匹のマウスを使用した。治療の5または10週間後に、脊髄における髄鞘再形成の定量的分析のために動物を供犠した。
【0169】
(抗体の単離および配列決定)
ヴァルデンストレームマクログロブリン血症を有する患者の血清からIgM抗体を単離し(sHIgM22と称する)、記述されているように配列決定した(Ciric,B.ら(2000)、Blood 97:321−323)。
【0170】
(rHIgM22のクローニングおよび試験)
(ベクターの構築)
(1)軽鎖フラグメント)
軽鎖の可変領域(VL)を、sHIgM22のソースである患者の末梢血白血球から単離した抗体mRNAに由来するTAクローン化VLフラグメントから増幅した。ヒトゲノムデータベース中のヒトIgM配列からの5’(−Nhe I部位、5’−UTRおよび人工リーダー配列(Tsujimoto,Y.ら(1984),Nucleic Acids Res.12:8407−8414)をこの配列に付加した。λ鎖(Cλ)の定常領域を、ヒトCλにおいて認められる付加的な3’−Avr II部位を有するヒト血液cDNAから増幅した。すべてのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、sHIgM22において認められる1つの特定された形態の主要IgM種(軽鎖:IIと称する)(Ciric,B.ら(2000)、Blood 97:321−323)のために設計された以下のプライマーを使用することにより、標準的な方法によって実施した:
【0171】
【化1】

(2)重鎖フラグメント)
ヒトIgMゲノム配列を、VHの両端に2つの固有な部位(5’:Rsr II、3’:PacI)を付加することによって単離し、クローン化した。VHを、以下のプライマー:
【0172】
【化2】

を使用することにより、付加的な人工5’−UTRおよびヒトゲノムデータベース(11)からのリーダー配列を有するTAクローン化sHIgM22 VH領域から増幅した。ヒトIgMのVHをsHIgM11のこの増幅VHフラグメントによって置換した。
【0173】
(3)デヒドロキシ葉酸レダクターゼ遺伝子(dhfr)フラグメント)
dhfrフラグメントを、ベクターpFR2000(Simonsen,C.ら(1983)、PNAS USA 80:2495−2499)から標準的なPCR反応によって増幅し、pCICλに連結した。pCICλのEagI消化によってdhfrと結合したHIgM22II 軽鎖を作製し、このフラグメントをsHIgM22 VHベクター(pDM 22BII)内のEag I部位に連結した。このpDM 22BIIベクターの遺伝子順序は、1)重鎖(ゲノム)、2)軽鎖(cDNA)および3)dhfrであった。重鎖および軽鎖遺伝子は同じ方向であったが、dhfrの方向は反対向きであった。
【0174】
(電気穿孔法、メトトレキサート(MTX)増幅、ELISAおよびIgM精製)
pDM 22BIIを電気穿孔法によって2×10のF3B6細胞にトランスフェクトした;Bgl IIによって線状化したpDM 22BII 10gを2×10のF3B6細胞と混合し、氷上で10分間、氷冷無血清RPMI 800lに再懸濁して、Bio−Rad Gene Pulser(Bio−Rad,Hercules,CA)を用いて960F/200Vで1回パルスし、30分間氷上にもどして、25cmフラスコに移し、10%ウシ胎児血清を添加したRPMI 5mlを供給して、5%CO中37℃でインキュベートした。48時間のインキュベーション後、培地を、MTX 0.2μMを含む新鮮培地に交換し、生存コロニーが出現するまでインキュベーションを続けた。これらのコロニーを24穴プレートに移し、1M MTX中で培養した。以下で述べるような集密増殖後、これらのクローンに関してELISAを実施し、さらなる操作のために陽性クローンを選択した。NUNC Maxisorp TMプレートを20μg/mlのヤギ抗ヒトIgA+IgM+IgG(H+L)(ICN Pharmaceuticals,Inc.,Colta Mesa,CA)で被覆した。1%ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma−Aldrich Co.,St.Louis,MO)によるブロッキング工程後、sHIgM22BIIを発現するF3B6細胞からの上清を1:500、1:1000および1:2000希釈で3回プレートした。精製ヒトIgM(Organon Teknika Corp.,West Chester,PA)を標準対照として使用した。インキュベーションおよびリン酸緩衝食塩水(PBS)/1%ツイーン20による洗浄の後、アルカリホスファターゼ(Sigma−Aldrich Co.)に複合したモノクローナル抗ヒトIgMを1%BSA中1:5000希釈で適用した。p−ニトロフェニルホスフェート(Sigma−Aldrich Co.)を使用して陽性反応を検出し、Bio−Radマイクロプレートリーダーを用いて405nmで吸光度を読み取った。MTX濃度を、0.2μMから出発して2ヶ月間にわたって幾何学的に上昇させ、200iMで終了した。最大抗体産生クローンをELISAによって判定し、このクローンの培地を収集した。組換えsHIgM22BIIのIgM抗体を、PEG6000(Fluka,Buchs,Switzerland)沈殿およびHOに対する透析、それに続くSuperose 6カラムでのサイズ分画の方法によってこの培地から単離した。
【0175】
(脱髄/髄鞘再形成に関する脊髄の評価)
脊髄の脱髄および髄鞘再形成の領域を、4%パラ−フェニレンジアミン染色プラスチック包埋横断切片を使用して視覚化した。脊髄全体の代表的試料を得るために、3連続1mmブロックごとに1μmの薄い切片を切り出した。これにより、頸部、胸郭、腰部および仙椎脊髄からの試料を代表する10−12の横断切片を生成した。等級付けるために、各々の脊髄切片を視覚的に4つの四分円に分け、その後各々の四分円を脱髄または髄鞘再形成病変の存在または不在に関して採点した。すべてのスライドガラスをコード化し、ブラインドで読み取った。すべてのスライドガラスを等級付けた後、データを投与群にまとめた。病変全体が基本的に修復されているとき、その病変は髄鞘再形成されていると判定した。部分的に髄鞘再形成された病変は陰性と採点した。髄鞘再形成のレベルを以下のように算定した:(髄鞘再形成を有する四分円の数/脱髄四分円の総数)×100。分類したデータを、カイ二乗統計分析を用いて評価した。
【0176】
(免疫組織化学)
成体SJLマウス小脳の切片を先述のように調製した(Warrington,A.ら(1992)、J.Neurosci Res.33:338−353)。簡単に述べると、新鮮小脳を3%低融解温度アガロースに包埋し、No.2 Whatmanフィルターにのせて、300μmの矢状断切片に切断した。次に切片を48穴組織培養プレートに移した。N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N−エタンスルホン酸(HEPES)緩衝Earle(登録商標)平衡塩類溶液(E/H、pH7.4)中で5%BSAと共に2−3時間インキュベートした後、E/H中で、静かに揺り動かしながら4℃で少なくとも3時間、1%BSA中10μg/mlの一次抗体で標識した。E/Hで洗浄した後、切片を適切な二次抗体で染色し、洗浄して、その後手早くPBS中4%パラホルムアルデヒドで固定した。スライドガラスを、2.5%1,4−ジアゾビシクロ−[2.2.2]−オクタン(DABCO,Sigma,St.Louis,MO)を含むMOWIOL(Aldrich Chemical,Milwaukee,WI)に封入し、エピ蛍光顕微鏡で観察した。混合一次グリア細胞および精製乏突起膠細胞を、Sprague−Dawleyラット新生児から先に記述されているように(Asakura,K.ら(1997)、J.Neurochem 68:2281−2290)調製した。細胞をポリ−D−リシン被覆またはポリ−L−オルニチンカバーガラスにプレートした。3%正常ヤギ血清を含むE/Hでブロッキングした後、非固定細胞に対して生細胞表面染色を4℃で15分間実施した。結合一次抗体(Ab)を蛍光複合二次Abで検出した。スライドガラスを封入し、上述したように観察した。
【0177】
(rHIgM22の精製)
rHIgM22でトランスフェクトしたF3B6細胞を、ローラーボトルにおいて10μMメトトレキサート(MTX)を添加したRPMI/10%熱不活性化FBS/ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン中で増殖させた。十字流ろ過(TFF)によって順化培地を0.2mg/mlタンパク質に濃縮した。濃縮順化培地をdHOに対して一晩透析し、IgM抗体を沈殿させた。ペレットを50mMトリス(トリズマ塩基)、pH8.0、150mM NaCl、0.5%w/vベタイン中に再懸濁した。再懸濁したペレットをSephacryl S−300(26/60)カラムに負荷し、20mMトリス、pH8.0、200mM NaCl、0.5%ベタインで溶出した。溶出プロフィールは、およそ2つの主要ピーク:HMW(約80%)およびLMW(約20%)から成った。HMWピークにおいて五量体IgMを認めた。プールGF分画を〜0.5mg/mlに濃縮し(A280)、20mMリン酸ナトリウム、200mM NaCl、pH8.0(最終製剤緩衝液)に対して透析した。
【0178】
(結果)
この試験では、単一有効成分またはメチルプレドニゾロンなどのステロイドとの組み合せとして抗体濃度のより大きな低下で有効用量が達成できるかどうかを判定するためにさらなる試験を実施した。その結果は、用量のさらに大きな低下および結果として生じる利益が可能であることを確認する(図3および4)。rHIgM22は、メチルプレドニゾロンと組み合わせたとき600μgの用量で脱髄を予防するのに有効である(図3)。さらにrHIgM22は、単独で使用したとき500ngという低用量で髄鞘再形成において有意に有効であり(図4)、またメチルプレドニゾロンと組み合わせて600μgの用量で投与したときさらに一層大きな髄鞘再形成能力を示した。
【0179】
前記の説明から、当業者には本発明の組成物および方法における様々な修正および変更が生じることになる。付属の特許請求の範囲内に属するそのような修正はすべて、その中に包含されることが意図されている。
【0180】
本明細書の中で引用する、特許および特許出願を含むがこれらに限定されないすべての公表文献は、個々の公表文献が、各々その全部が記述されているかのように参照としてここに組み込まれることが特定しておよび個別に指示されているかのごとくに、参照としてここに組み込まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】図1は、様々な濃度のrHIgM22、プラセボ、メチルプレドニゾロン単独およびrHIgM22との組み合せに関する、比較用量設定試験の結果のグラフである。
【図2】図2は、用量設定試験における被験者群の平均スコアのグラフである。
【図3】図3は、メチルプレドニゾロンと組み合わせたrHIgM22が髄鞘再形成を促進し、損傷負荷を軽減することを示すグラフである。
【図4】図4は、様々な濃度のrHIgM22に関する比較用量設定試験の結果のグラフである。
【図5】図5は、sHIgM22の重鎖の可変領域配列を示す。配列は、出版物:Sequences of Proteins of Immunological Interest,Vol I,Fifth Edition(1991),Kabat E.A.,Wu,T.T.,Perry,H.M.,Gottesman,K.S.およびFoeller,C.,NIH Publicationの中のヒトV配列の番号付けシステムに従って整列している。sHIgM22 Vは、VサブグループIIIの成員である。下線を付したアミノ酸はタンパク質配列決定によって確認された。アミノ酸配列はsHIgM22ヌクレオチド配列に対応する。sHIgM22 VタイプAおよびB配列は、IGHV3−30/3−30−0501、IGHJ402およびIGHD2−2102生殖細胞系配列とは異なるヌクレオチドに関してのみ示している。sHIgM22 VタイプBのタンパク質配列における2個のアミノ酸置換を太字で示している。sHIgM22 VタイプAおよびBの両方の配列が、IGHV3−30/3−30−0501生殖細胞系配列と最も密接にマッチした(96%の相同性)。生殖細胞系配列についての参考文献:IMGT、the international ImMunoGeneTics database[http://imgt.cnusc.fr:8104]。(創始者およびコーディネーター:Marie−Paule Lefranc,Montpellier,France)。
【図6】図6は、sHIgM22の軽鎖の可変領域配列を示す。配列は、出版物:Sequences of Proteins of Immunological Interest,Vol I,Fifth Edition(1991),Kabat E.A.,Wu,T.T.,Perry,H.M.,Gottesman,K.S.およびFoeller,C.,NIH Publicationの中のヒトV配列の番号付けシステムに従って整列している。Vλ sHIgM22は、λサブグループIの成員である。下線を付したアミノ酸はタンパク質配列決定によって確認された。アミノ酸配列はsHIgM22ヌクレオチド配列に対応する。sHIgM22 VλタイプIおよびII配列は、IGLV1−5101およびIGLJ301生殖細胞系配列とは異なるヌクレオチドに関してのみ示している。sHIgM22 VλタイプIIのタンパク質配列における2個のアミノ酸置換を太字で示している。sHIgM22からのVλ配列は、IGLV−5101生殖細胞系配列と最も密接にマッチした(97%の相同性)。2個の遺伝子は、1個のヌクレオチド変化によってそれらの共通祖先と異なる。生殖細胞系配列についての参考文献:IMGT、the international ImMunoGeneTics database[http://imgt.cnusc.fr:8104]。(創始者およびコーディネーター:Marie−Paule Lefranc,Montpellier,France)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
mAb sHIgM22(LYM22)、sHIgM46(LYM46)、ebvHIgM MSI19D10、Cb2BG8、MSI10E10、これらの混合物,これらの単量体、これらの活性フラグメント、これらに対する結合パートナーおよびこれらに由来する組換え抗体からなる群より選択されるヒトモノクローナル抗体、ならびに、薬学的に受容可能なキャリア、ビヒクルまたは希釈剤を含有する薬学的組成物であって、約500ng〜約600μgに相当するか、またはそれに等しい用量範囲での送達のために調製される、薬学的組成物。
【請求項2】
前記用量が、約500ngである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記用量が、約600μgである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記用量が、約1.25μg/kg〜約2.5μg/kgの範囲に相当する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記用量が、約2.5μg/kgに相当する、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記用量が、約1.25μg/kgの範囲に相当する、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記ヒト組換え抗体が、mAb SHIgM22(LYM22)に相当するか、またはそれから誘導される、請求項1〜6のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記ヒト組換え抗体が、mAb SHIgM46(LYM46)に相当するか、またはそれから誘導される、請求項1〜6のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記組成物が、約2mgまでのステロイドをさらに含有し、該ステロイドが、メチルプレドニゾロンを含むか、またはそれに相当する、請求項1〜8のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記組成物が、約1〜約2mgの前記ステロイドを含有する、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記ステロイドが、メチルプレドニゾロンを含む、請求項9または10のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項12】
哺乳動物において中枢神経系軸索の髄鞘再形成を刺激する方法であって、該方法は、乏突起膠細胞を含む、中枢神経系内の構造および細胞に結合する能力によって特徴付けられる、モノクローナル抗体、またはこれらの混合物、単量体、活性フラグメント、またはこれらに由来する組換え抗体の有効量を該哺乳動物に投与する工程を包含し、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項13】
哺乳動物において中枢神経系軸索の髄鞘再形成を刺激する方法であって、該方法は、中枢神経系内の構造および細胞に結合する能力によって特徴付けられる、ヒトモノクローナル抗体、またはこれらの混合物、単量体、活性フラグメント、またはこれらに由来する組換え抗体の有効量を該哺乳動物に投与する工程を包含し、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項14】
請求項12または13のいずれかに記載の方法であって、該方法は、mAb sHIgM22(LYM22)、ebvHIgM MSI19D10、sHIgM46(LYM46)、ebvHIgM CB2b−G8、MSI10E10、これらの混合物,これらの単量体、これらの活性フラグメント、これらに対する結合パートナーおよびこれらに由来する組換え抗体からなる群より選択されるヒトモノクローナル抗体の投与を包含する、方法。
【請求項15】
哺乳動物において中枢神経系の脱髄疾患を処置するか、または予防する方法であって、該方法は、乏突起膠細胞を含む、中枢神経系内の構造および細胞に結合して、中枢神経系軸索の髄鞘再形成を刺激する能力によって特徴付けられる、モノクローナル抗体、またはこれらの混合物、単量体、活性フラグメント、またはこれらに由来する組換え抗体の有効量を該哺乳動物に投与する工程を包含し、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、該方法は、mAb sHIgM22(LYM22)、ebvHIgM MSI19D10、sHIgM46(LYM46)、ebvHIgM CB2b−G8、MSI10E10、これらの混合物,これらの単量体、これらの活性フラグメント、これらに対する結合パートナーおよびこれらに由来する組換え抗体からなる群より選択されるヒトモノクローナル抗体の投与を包含する、方法。
【請求項17】
前記哺乳動物が、多発性硬化症を有するヒト、あるいは脱髄疾患または中枢神経系の疾患もしくは他の損傷もしくは機能障害を有するヒトまたは家畜である、請求項12〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
投与の方法が、静脈内投与、腹腔内投与、鞘内投与、皮下投与、舌下投与、筋肉内投与、直腸投与、呼吸器投与および鼻咽頭投与から選択される、請求項12〜17のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−505157(P2007−505157A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533147(P2006−533147)
【出願日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/015436
【国際公開番号】WO2004/110355
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(502204218)マヨ ファウンデイション フォア メディカル エデュケイション アンド リサーチ (4)
【出願人】(505424848)
【Fターム(参考)】