説明

CNTを適合された宇宙ベース複合材料構造体

第1のカーボンナノチューブ浸出材料と第2のカーボンナノチューブ浸出材料とを備えた宇宙ベースの複合材料構造体を有する装置。前記第1及び第2のカーボンナノチューブ浸出材料は、それぞれ異なる機能性を提供するために選択されたカーボンナノチューブ担持量の範囲を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年11月23日に出願された米国特許仮出願第61/263,807号及び2009年12月14日に出願された米国特許仮出願第61/286,340号に対する優先権を主張し、それらの全内容は参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
(連邦支援研究又は開発に関する記載)
適用無し。
【背景技術】
【0003】
本発明は、概してカーボンナノチューブ(CNT)に関し、より詳細には、複合材料及び複合材料構造体に組み込まれたCNTに関する。
【0004】
ハイブリッド複合材料は、様々な成功の度合いで使用されている。機械的強化、コスト削減、煤煙防止及び耐薬品性等の様々な目的のために使用される凝集体やフィルタの追加とともに、複合材料内での2,3の異なる補強材の使用が行われている。
【0005】
宇宙ベース構造体は、操作性及び効率性に関する多くの要求にさらされる。構造体筐体の電気回路は、適切な保護無しでは動作に支障をきたすおそれのある電磁伝導や電磁放射にさらされやすい。構造体の小規模な又は修繕可能な構造損傷は、迅速に発見しなければ、深刻な又は完全な故障にすぐさま発展するおそれがある。除氷をしないと、重要な部品上に氷が形成され、機能性を変化させ、故障を引き起こしかねない。構造体の重要部分におけるせん断力、張力及び圧力は、適切な構造的健全性がないと、徐々に故障を引き起こす可能性がある。微小亀裂を形成初期に防がないと、亀裂伝播が深刻な又は完全な故障を引き起こすおそれがある。様々な温度や他の要素が、構造体に不適切な熱伝導性の影響を与えることもある。構造体は、適切な保護がないと、突然の静電蓄積を経験することもある。宇宙ベース構造体におけるこれらの(及びさらなる)要求は、それぞれの要求に適した材料の選択を困難にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本明細書で開示された実施形態は、マトリックス材と特定の機能性を備えたCNT浸出繊維材料とを含む適合された複合材料(tailored composite materials)に関する。
【0007】
一態様において、本明細書で開示された実施形態は、少なくとも(1)構造体に第1の機能性を与える第1のカーボンナノチューブ浸出材料と、(2)構造体に第2の機能性を与える第2のカーボンナノチューブ浸出材料と、を有する複合材料構造体を備えた宇宙で支持される構造体を含む装置に関する。ある実施形態において、前記複合材料構造体は、構造体にさらなる機能性を与えるさらなるカーボンナノチューブ浸出材料を有する。
【0008】
一態様において、本明細書で開示された実施形態は、少なくとも(1)構造体に第1の機能性を与える第1のカーボンナノチューブ浸出材料と、(2)構造体に第2の機能性を与える第2のカーボンナノチューブ浸出材料と、を有する複合材料構造体を備えた宇宙で支持される構造体を含む提供することを含む方法に関する。ある実施形態において、前記複合材料構造体は、構造体にさらなる機能性を与えるさらなるカーボンナノチューブ浸出材料を有する。カーボンナノチューブ浸出材料のカーボンナノチューブの担持量は、対応する機能性に基づいて選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】連続化学蒸着(CVD)処理によりパンベースの(PAN-BASED)炭素繊維上に成長した多層CNT(MWNT)の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。
【図2】連続CVD処理によりパンベースの炭素繊維上に成長した2層CNT(DWNT)のTEM画像を示す。
【図3】CNT形成ナノ粒子触媒が繊維材料表面に機械的に浸出された部分のバリアコーティング内部から成長したCNTの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【図4】炭素繊維材料上で目標とする長さである約40ミクロンの20%以内まで成長したCNTの長さ分布の一貫性を明示するSEM画像を示す。
【図5】繊維全体に亘って約10%以内でCNTの密度が均一であることを明示する炭素繊維上に成長したCNTの低倍率SEM画像を示す。
【図6】本開示の一実施形態による宇宙ベース装置の斜視図である。
【図7】本開示の一実施形態による宇宙ベース装置の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
CNT浸出繊維を活用して適合されたマルチスケール複合材料が開発されている。出願人による同時係属中の出願であり、その内容が参照により本出願に組み込まれた、米国特許出願公開第2010/0279569号明細書及び米国特許出願公開第2010/0178825号明細書に記載された処理のような、修正CVD処理を利用した連続,ライン処理によって、ガラス繊維及び炭素繊維の表面にCNTを直接成長させることができる。CNT浸出繊維材料により形成された複合材料構造体は、高い機械的特性、特に高い層間せん断力及び面内せん断力を示す。さらに、これらの複合材料構造体は、CNTの担持量及び配向性に基づく高い電気伝導性及び熱伝導性を有する。これらのCNT浸出繊維材料は、従来の繊維材料では得られない性能を含む特注の(custom tailored)性能を提供するために、様々な配向及び担持量で複合材料内に使用することができる。
【0011】
CNT浸出繊維複合材料は、例えば、カーボン、ガラス、アルミナ、シリコンカーバイド又はケブラー(登録商標)等のあらゆる種類の繊維基材を使用することができる。その上、多くの種類の繊維が機械的強化のために使用されるため、浸出されたCNTは、機械的強度の向上におけるさらなる役割を果たすことができる。CNT浸出繊維材料内でのCNT担持量の範囲は、複合部品に要求される性能を提供するように特定される。より詳細には、特注及び最適化のため、各複合材料構造体内における特定のCNT浸出繊維材料の位置に基づいて、CNT担持量を変えることができる。構造体のある特定の点で望まれる機能性に応じて、構造体はCNT浸出繊維材料内の異なる位置にて異なるCNT担持量範囲を有し、CNT浸出繊維材料の異なる層(又は勾配)内にて異なるCNT担持量範囲を有し、又は異なるCNT浸出繊維材料ごとに異なるCNT担持量範囲を有することができる。繊維上及び複合材料全体のCNT担持量は、様々な範囲から選択することができる。例えば、複合材料中のCNT担持量は、4つの領域に分けることができる。ある実施形態において、0.01%から2%を「低」領域とすることができる。この「低」領域は、約0%から約2%であり、0%,1%,2%及びその端数の担持量を含む。「中」領域は、約2%から約5%であり、2%,3%,4%,5%及びその端数の担持量を含む。「高」領域は、約5%から約40%であり、5%、10%、15%、20%、25%,30%,35%,40%及びその端数の担持量を含む。約40%を越えると「超高」領域である。
【0012】
繊維強化複合材料構造体は、その性質を任意の一連の要求を満たすように適合することができるため、先進的な宇宙ベースの用途に使用されている。例えば、合成梁(composite beam)の曲げ剛性を最適化するために特定の薄膜積層順序を使用し、ねじれ剛性を最適化するために他の順序を使用することができる。異なる2種類の強化繊維を使用するハイブリッド複合材料は、全体的な複合材料の機械的、熱的あるいは電気的性質に対するそれぞれの繊維のもつ有益な貢献からの利益を享受する。
【0013】
宇宙ベースの複合材料構造体に適用可能な広範な機能性は、CNT浸出繊維材料中でのCNT担持量のレベルの違いにより得ることができる。このようなCNT浸出繊維材料には、連続繊維(continuous fiber)、短繊維(chopped fiber)及び織物(woven fabrics)が含まれる。
【0014】
このような機能性には、電磁妨害(EMI)遮蔽、損傷検知、除氷、及び機械的性質が含まれる。機械的性質には、層間及び面内せん断強度及び剛性率、引張強度及び引張係数、圧縮強度及び圧縮率、曲げ強度及び曲げ弾性率、亀裂抵抗及び伝播抵抗、熱伝導性の向上、電気回路組み込み能力(embedded circuitry capabilities)、及び静電放電防止(electrostatic discharge prevention)が含まれるが、これに限られない。
【0015】
ある利用において、高レベルのCNT担持量は、EMI遮蔽機能性を提供することができる。このような機能性は、出願人による同時係属中の出願であり、その全内容が参照により本出願に組み込まれた米国特許出願公開第2010/0270069号明細書に記載されたような、精密な電気回路への電磁伝導又は電磁放射による悪影響を防ぐことができる。EMI遮蔽複合材料は、マトリックス材の一部に配置されたCNT浸出繊維材料を有することができる。この複合材料は、約0.01MHzから約18GHzまでの周波数帯域において、電磁(EM)放射の吸収、EM放射の反射、又はその両方が可能である。EMI遮蔽効果(SE)として計測される複合材料のEM遮蔽能力は、約40デシベル(dB)から約130dBまでの範囲である。CNTは、その高アスペクト比による望ましい電磁吸収特性を有する。複合材料中のCNTは、広い範囲の周波数のEM放射を吸収し、吸収したエネルギーを例えば電気接地へ又は熱として消散させることができる。また、CNTは機構的にEM放射を反射することができる。その上、EMI遮蔽用途において、吸収率及び反射率のいずれの組み合わせも、電磁放射の透過率が最小化する限り有益である。使用可能な実際のメカニズムと関係なく、かつ理論に制限されることなく、複合材料は電磁妨害を十分に低下又は妨げることができる。EMI遮蔽複合材料は、EMI遮蔽用途に既に使用されている材料の遮蔽特性を向上させることができる。CNT浸出繊維は、誘電性複合材料及び導電性複合材料のEMI遮蔽を向上させ、これにより軽量で高強度の複合材料を使用可能とする。このような複合材料のいくつかは、その本質的に乏しいEMI遮蔽能力により、予め用途を制限されてもよい。EMI遮蔽複合材料は、可視光線、赤外線(IR)及び他の様々なレーダー帯域部分を含む電磁スペクトルの異なる部分に亘ってほとんど黒体であるの吸収表面を提供することができる。黒体様(black body-like)の性質を得るために、繊維材料上のCNT密度が制御される。例えば、CNT浸出繊維材料の屈折率は、空気の屈折率と略一致するように調整される。フレネルの法則によれば、このとき反射率は最小となる。反射の最小化はEM吸収を最適化するのに有益であるが、複合材料はまた、EMI遮蔽層の透過を最小化するよう設計することもできる。言い換えれば、吸収は、EMI遮蔽を提供するという点で有益である。CNT浸出繊維材料により効果的に吸収されない特定の波長に対して、反射率を与えること又は当該CNT浸出繊維材料により吸収されない放射線を吸収することができる第2の構造体を与えることは有益である。これに関して、交互に変化する吸収特性を提供する異なったCNT浸出繊維材料の漸進的な層化は有益となり得る。多層材料のかわりに又は多層材料に加えて、それ自体もCNT浸出繊維材料である反射材料を組み込むことも有益となり得る。したがって、本発明の複合材料は、例えば、CNT浸出繊維材料を含んで構成される複数の吸収層又は反射層を有してもよい。繊維材料自体は、EM放射の吸収で得たエネルギーを消散するための効果的なパーコレーション経路(percolation pathways)を形成するのに十分なCNT密度を複合材料全体に与えるCNTの配列を構築する足場の役割を果たす。浸出したCNTは、EM放射の吸収を最大化するために、繊維材料上及び複合材料全体で均一な長さ、密度及び制御された配向を有するように適合することができる。EM遮蔽特性をCNTに依存することにより、複合材料は、導電性又は絶縁性の繊維材料又はマトリックスを利用することができる。その上、EMI遮蔽複合材料は、それが使用される部品の表面構造体の一部として一体化することができる。ある実施形態において、表面だけでなく部品全体がEMI遮蔽の役割を果たすことができる。ある実施形態において、CNT浸出繊維材料は、EMI遮蔽用途に使用するために予め加工された複合材料のコーティングとして使用することができる。EMI遮蔽複合材料の製造方法は、マトリックス材内でCNT浸出繊維材料の配向が制御された状態で、CNT浸出繊維材料をマトリックス材の一部に配置すること及びマトリックス材を硬化させることを含む。CNT浸出繊維材料の制御された配向は、複合材料構造体全体に浸出されたCNTの相対配向を制御することができる。CNT浸出繊維を形成する製造プロセスは、大規模連続プロセスに適している。このプロセスにおいて、CNTは、カーボン、ガラス、セラミック又はトウ(tows)やロービング(rovings)等の巻取り可能な寸法の同種の繊維材料上に直接成長する。CNT成長の性質は、深い森が約約5ミクロンから約500ミクロンまでの範囲に調整された長さで堆積するようなものであり、この長さは、以下に記載する様々な要因により制御される。この森は、CNTが繊維材料のそれぞれのフィラメントの表面と直交するように配向することができ、これにより放射状の被覆を形成する。CNTはさらに、繊維材料の軸に対して平行な配向を得るために処理されてもよい。結果として得られたCNT浸出繊維材料は、製造された形態のままで使用するか、又はEMI遮蔽用途に使用されるEMI遮蔽複合材料の製造に使用される織物製品(fabric goods)に織ることができる。パネルは、EMI遮蔽複合材料を含み、EMI遮蔽用途に使用される装置と整合するように適応させることができる。このようなパネルは、さらに電気接地を備えてもよい。
【0016】
ある用途において、低レベルのCNT担持量は、損傷検知機能を提供することができる。CNTは、抵抗又は信号伝送の変化を測定するために搭載されるパーコレーションネットワーク(percolation network)を形成することができる。このように計測された変化は、複合材料が被った損傷の規模の情報を提供することができる。このような損傷検知機能は、出願人による同時係属中の出願であり、その全内容が参照により本出願に組み込まれた米国特許出願第12/900,405号明細書(2010年10月7日出願)に記載されたような、スキン(skin)もしくは構造体、そのいずれかの織物(fabric)、又は多方向トウベース繊維もしくは短繊維の形態とすることができる。損傷検知複合材料は、マトリックス材の少なくとも一部内のCNT浸出繊維を含んでもよい。この複合材料は、構造用部品内の複合材料の健全性を監視するためのいずれのプラットフォームでも使用することができる。このような損傷検知複合材料は、高度な制御及び精度を有する損傷検知システムを形成するために、拡張性のある製造プロセスを活用しながら、様々な信号源を利用することができる。複合材料は、特定の用途に適合することが可能であり、1)材料の同位置での使用前、使用中又は使用後の応力等を監視することにより、複合材料の損傷の種類を検知し、2)構造的強化及び構造的健全性の実時間評価を与えることにより突発故障の可能性を低下させるために使用することができる。複合材料の構成要素の1つはCNT浸出繊維である。繊維担体上に浸出されたCNTを有することにより、複合材料全体又は複合品の重要な部分にCNT要素を組み込むための従来の繊維強化複合材料製造技術を使用する大型の複合材料構造体の製造が容易になる。CNTの密度及び分布は、自由なCNTに比べてCNT浸出繊維によりしっかりと制御されるため、CNTの量は実質的に減少させることができる。その上、繊維上にCNTを有することにより、CNT繊維組織階層による相乗的な機械的強度の強化が可能になり、損傷の検知と耐荷重性応力の再分配を補助することによる構造的健全性への貢献との2つの役割をCNTが果たせるようになる。また、繊維担体は、3次元部品全体又は2次元「スキン」内でのCNTの戦略的な配置を容易にする。この戦略的配置は、繊維軸及び横断方向に沿った伝導性の制御を可能にする。複合材料の性質は、例えば、CNTの密度、長さ、配置及び配列の制御により調節することができる。したがって、複合材料は、特定の用途に適合し、任意の種類の損傷を検知するよう適合し、また損傷の可能性を低下させるように適合することができる。浸出されたCNTは、複合材料の電気的性質に影響を与え、複合材料への応力の連続的、非連続的又は断続的な監視を可能にするパーコレーション経路を形成するのに役目を果たすことができる。複合材料の静止状態は、電極対のような適切に配置された一対のセンサによって監視が可能な抵抗などの電気的性質と関連したパーコレーション経路を有することができる。材料が歪むにつれて、CNT間の接触の一部が破壊され、使用可能なパーコレーション経路が減少する。その結果、この可逆又は不可逆の歪み荷重を受けている間、複合材料を亘って抵抗が増大する。電気的性質が向上するよう適合されたCNTを担持するCNT浸出繊維を使用して作られた複合材料は、損傷検知用途に使用することができる。また、複合材料は、複合材料の強度を向上させるために使用することができる。特定の用途において、CNT浸出繊維材料は、複合材料の強度を向上させ、重要な構造用部品の損傷検知手段を提供するために、特定の位置で使用することができる。このような用途の1つは、ある複合材料構造体と他の複合材料構造体とが結合した複合材料の重ね継ぎ(lap joints)である(一方の構造体は他方の構造体に対して垂直又は平行であってもよい)。構造体間の結合された接触部分は、構造体の脆弱な部分であると考えられるため特に興味深い。この位置でのCNT浸出構造体の利用は、層間せん断力(ILSS)の向上と損傷検知の提供を可能にする。調整された電気信号(振幅及び周波数とともに波形)の監視及び高い検出分解能及び検出感度による構造的健全性の評価を含む複合材料内での応力の検知方法に複合材料を使用することができる。電圧測定は歪みの測定に使用することができる。位相は亀裂伝播の監視に使用することができる。周波数は亀裂の大きさを特定するのに使用することができる。電極のネットワークは、複合材料内での歪み、疲労、損傷及び亀裂の位置の測定及び地図作成に使用することができる検知回路に関与するかあるいは一体化することができる。損傷検知機能を一体化した複合材料、システム及び方法は、例えば、商用航空機産業から戦車及び他の軍事装甲車両の弾道装甲損傷検知まで、様々な産業に使用することができる。
【0017】
中領域レベルのCNT担持量は、いくつかの用途において除氷機能を提供することができる。CNTの量は、出願人の同時係属中の出願であり、その全内容が参照により本出願に組み込まれた米国特許出願第12/767,719号明細書(2010年4月26日出願)に記載されたような特定の構造体又は構造体の一部に、要求される抵抗に基づいて適合することができる。除氷複合材料は、マトリックス材及びCNT浸出繊維材料を備えてもよい。CNT浸出繊維材料は、CNT浸出繊維材料を介して電流を流すのに適合されたマトリックス材及び複合材料構造体の一部に亘って配置することが可能であり、これによって除氷又は複合材料構造体の表面への氷の形成を防ぐためにマトリックス材を加熱する。理論に制限されることなく、CNT浸出繊維のCNTは、パーコレーション伝導を提供することによりバルクマトリックス材の伝導性を変化させることができる。複合材料構造体のパーコレーション伝導は、CNT−CNT間の点接触、CNTの相互嵌合/重複又はこれらの組み合わせの結果である。CNTはパーコレーション伝導経路を提供し、CNTが浸出される繊維担体は、1)CNT配向及び異方性の度合い、2)CNT濃度、及び3)バルクマトリックス材内におけるCNTの位置を制御する。複合材料内における繊維に浸出されたCNTの組み込みは、複合材料構造体自体を抵抗加熱素子として使用可能にする。こうして、このような複合材料により形成された航空機(又はヘリコプター)の翼、機体及び尾翼等の構造体を除氷する場合には、さらなる加熱装置を必要としない。CNTは、3%を上回る質量パーセントが達成される繊維レベルで導入される。CNT浸出繊維材料は、従来のマトリックスとともに使用し、複合材料構造体を形成するために繊維に浸出されるのではないさらなるCNTを付加的にドープすることもできる。CNTの質量パーセントを適合させることにより、材料を抵抗加熱素子として使用するために適切な熱的特性/導電性を提供するように、構造体の抵抗率を適合し制御することができる。CNTベース複合材料は、除氷用途で使用される任意の部品を作るために使用することができる(例えば、翼、機体及び尾翼等の)構造体の目標とした領域の表面層又は複合材料構造体全体に使用することができる。CNT浸出繊維複合材料は、それ自体が抵抗加熱要素である複合材料であってもよい。当該技術分野で除氷用途に使用される金属溶射コーティングである「ヒーターマット(heater mat)」のアプローチはコスト及び複雑性を高める製造プロセスを使用し、複合材料構造体の大きな表面領域に使用される金属溶射コーティングはまた、構造体全体の重量を増加させる。さらに、抵抗加熱素子としての金属の使用は、(構造体内の弱い接触面であるガラス層の使用による)電解腐食の危険性をもたらし、繰り返し使用すると故障の危険性をもたらす。結局、金属コーティングは複合材料構造体内で同種の物質ではないため、複合材料構造体内における弱点となる。複合材料構造体内へのCNTの組み込みは、これらの問題を軽減又は排除する。従来の複合材料はCNTとともに使用されるため、複合材料構造体の製造方法は事実上変更されない。複合繊維上へCNTを組み込むために用いられる方法もまた開発されているが、これは低コスト材料解決法をもたらすものであり、重量の増加をともなわない単純な低コスト解決法(実際、CNT/繊維材料が構造用部品として用いられたなら重量は減少するはずである)と結び付いたものである。実際、CNT/繊維材料が構造用部品として使用されると重量は減少する)。電気路を形成するために金属を使用しないので、CNTの使用により電解腐食を避けることができる。結局、材料は繊維内にCNTを組み込まれるので、もし材料が抵抗加熱層として使用されたとしても、構造体全体の弱点とはならない。したがって、電位差が与えられると大きな電気回路が形成され、CNTが大きな抵抗加熱器としての役割を果たし、凍結状態が回避又は除去される。このような構造により、外部加熱を不要とすることができる。あまりに少ないCNTが電流を流すには高電位差を必要とし、逆にあまりに多すぎるCNTは加熱素子として機能するのに十分な抵抗を示さないため、中領域レベルが選択される。このような除氷構築は、CNT被覆されたリード線による織物の1枚又は複数枚の布片の形態又は電流経路を形成する単に組み込まれただけのトウの形態であってもよい。
【0018】
ある用途において、中領域レベルのCNT担持量は、せん断強度機能を提供することができる。CNTは、より大きなマトリックス材のせん断強度を利用可能にし、フィラメント間の荷重伝達を向上させることができる。複合材料は、一方向繊維、短繊維又は織物を含んでもよい。
【0019】
ある構造体は、中心平面における高いせん断荷重に対処する複合材料構造体を含んでもよいが、厚さによって電気的に絶縁されてもよい。CNT浸出繊維材料は、最大せん断強度特性を向上させるために適合された複合材料の主要な薄膜として使用することができる。未修飾繊維は、電気的絶縁性を提供するための表面層として使用することができる。
【0020】
ある用途において、低レベルのCNT担持量は、引張強度機能を提供することができる。すなわち、基本フィラメント強度はCNT自体の強度により強化することができる。低いCNT担持量は、繊維の量に直接比例する複合材料の繊維方向の引張強度を考慮すると、丈夫な複合材料をもたらす高い繊維充填に対応することができる。フィラメントの最密充填はまた、内部フィラメントの荷重伝達の有効性を高めるCNT間の絡み合い(entanglement)を強化することができる。その上、CNT材料の高度な処理により、CNTを基質フィラメントの方向に整列させ、これにより複合材料の繊維方向の引張強度を強化するためにCNTの強度を直接利用することができる。
【0021】
ある用途において、低レベルのCNT担持量は、圧縮強度機能を提供することができる。すなわち、基本フィラメント強度はCNT自体の強度により強化することができる。低いCNT担持量は、繊維の量に直接比例する複合材料の繊維方向の引張強度を考慮すると、丈夫な複合材料をもたらす高い繊維充填に対応することができる。フィラメントの最密充填はまた、内部フィラメントの荷重伝達の有効性を高めるCNT間の絡み合い(entanglement)を強化することができる。その上、CNTはマトリックス材のせん断剛性及びせん断強度を強化し、これによりフィラメントのマイクロバックリング(micro-buckling)の防止を手助けすることができる。
【0022】
ある用途において、中領域レベルのCNT担持量は、亀裂抵抗機能を提供することができる。CNTは、一般に弱連結であるマトリックス材を強靭にすることができる。一般に亀裂は、フィラメントよりもマトリックス材中を容易に伝播する。すなわち、CNTは亀裂停止機構の役割を果たすことができる。
【0023】
ある用途において、高レベルのCNT担持量は、熱伝導機能を提供することができる。このような用途において、CNTは、出願人による同時係属中の出願であり、その全内容が参照により本出願に組み込まれている米国特許出願12/767,719号明細書(2010年4月26日出願)に記載されたような、熱が伝達可能な相互接続経路を提供することができる。熱伝導複合材料は、マトリックス材及びCNT浸出繊維材料を備えてもよい。マトリックス材やCNT浸出繊維材料を介して電流を流すのに適合した複合構造体の一部にCNT浸出繊維材料を配置して、マトリックス材の熱伝導性を提供することができる。理論に制限されることなく、CNT浸出繊維のCNTは、パーコレーション伝導を提供することによりバルクマトリックス材の伝導性を変化させることができる。複合材料構造体のパーコレーション伝導は、CNT−CNT間の点接触、CNT相互嵌合/重複又はこれらの組み合わせの結果である。CNTはパーコレーション伝導経路を提供し、CNTが浸出される繊維担体は、1)CNT配向及び異方性の度合い、2)CNT濃度、及び3)バルクマトリックス材内におけるCNTの位置を制御する。複合材料内における繊維に浸出されたCNTの組み込みは、複合材料構造体自体を熱伝導素子として使用可能にする。3%を上回る質量パーセントが達成される繊維レベルで導入される。CNT浸出繊維材料は、従来のマトリックスとともに使用し、複合材料構造体を形成するために繊維に浸出されるのではないさらなるCNTを付加的にドープすることもできる。CNTの質量パーセントを適合させることにより、材料を熱伝導素子として使用するために適切な熱的特性/導電性を提供するように、構造体の抵抗率を適合し制御することができる。CNTベース複合材料は、熱用途で使用される任意の部品を作るために使用することができる構造体の目標とした領域の表面層又は複合材料構造体全体に使用することができる。CNT浸出繊維複合材料は、抵抗加熱要素自体である複合材料であってもよい。CNT浸出繊維複合材料は、例えば、カーボン、ガラス、アルミナ、シリコンカーバイド又はケブラー(登録商標)等のあらゆる種類の繊維基材を使用することができる。その上、多くの種類の繊維が機械的強化のために使用されるため、浸出されたCNTは、機械的強度の向上におけるさらなる役割を果たすことができる。抵抗加熱素子としての金属の使用は、(構造体内の弱い接触面であるガラス層の使用による)電解腐食の危険性をもたらし、繰り返し使用すると構造体故障の危険性をもたらす。結局、金属コーティングは複合材料構造体内で同種の物質ではないため、複合材料構造体内における弱点となる。複合材料構造体内へのCNTの組み込みは、これらのそれぞれの問題を軽減又は排除する。従来の複合材料はCNTとともに使用されるため、複合材料構造体の製造方法は事実上変更されない。複合繊維上へのCNTの組み込みに使用される方法は、単純な低コストの解決策である同種の製造可能性と併用される低コストの材料による解決策が開発されている(重量の増加をともなわない。実際、CNT/繊維材料が構造用部品として使用されると重量は減少する)。電気路を形成するために金属を使用しないので、CNTの使用により電解腐食及び熱膨張の相違を避けることができる。結局、材料は繊維内のCNTを組み込まれるので、もし材料が抵抗熱伝導層として使用されたとしても、構造体全体の弱点とはならない。したがって、電位差が与えられると大きな電気回路が形成され、CNTが大きな熱導体としての役割を果たす。このような熱伝導構築は、CNT被覆されたリード線による織物の1枚又は複数枚の布片の形態又は電流経路を形成する単に組み込まれただけのトウの形態であってもよい。
【0024】
特定の用途において、高レベルのCNT担持量は、電気回路組み込み機能を提供することができる。このような用途において、CNTは信号が伝達される電気経路を提供することができる。
【0025】
ある用途において、中領域レベルのCNT担持量は、静電放電(ESD)機能を提供することができる。材料の電気伝導性及び熱伝導性は、電子が流れるための経路を提供することにより電化蓄積への抵抗を提供することができる。
【0026】
ある宇宙ベースシステムは、複合材料構造体に上記の機能を様々な組合せで組み込むことができる。例えば、衛星、ロケット及びシャトル等は、1つ以上の複合材料を組み込んで、機能を強化することができる。
【0027】
構造体又は構造体の一部に応じて、様々な機能性を選択することができる。構造体の例として、複合材料部品は様々な荷重にさらされてもよい。この部品は、せん断荷重を支える結合部を有するとともに、他の部分が圧縮荷重を支持する。せん断荷重にさらされた剥離損傷を受けやすい前記部分は、中領域のCNT充填材料により形成される一方、引張荷重を支持する部分に低CNT充填材料を使用することができる。
【0028】
CNT浸出繊維材料は、CNT充填、CNT長及びCNT配向を正確に制御しながら連続的に製造することができる。ナノスケールの補強材を組み込む他のハイブリッド複合材料システムは、マトリックス材にナノチューブのナノ粒子を適切に分散させるためのさらなる処理工程を必要とする。さらに、隣り合った層と異なる特定のCNT担持量を備えた薄膜の形成は、CNT浸出工程を通じて達成される。CNT浸出繊維材料は、例えば、CNTの配向や多層複合材料における部分的な層化を含む余計な加工工程なしに、未加工のガラス及びカーボンフィラメントに使用される製造技術と同様の技術を使用して、複合材料に組み込むことができる。その上、CNTは繊維担体に浸出されるため、CNTの均一な組み込み、CNTの束化(bundling)及び凝集等に関する問題が軽減される。CNT浸出繊維材料により、複合材料構造体が複合マトリックス材にCNTを単純に混合して得られるものよりも大きなCNT担持量を有することが可能となる。
【0029】
構造用複合材料において、おおよそ繊維60%、マトリックス材40%という割合が標準的だが、第3の要素、すなわち浸出されたCNTの導入により、これらの割合を変化させることができる。例えば、体積パーセントが約25%以下のCNTの添加により、繊維の部分は、約35%から約60%までの間で変化するとともに、マトリックス材の範囲が約40%から約65%までに変化する。様々な割合は、1つ以上の望ましい特性を目標に適合された複合材料全体の性質を変化させることができる。CNTの性質は、そのCNTにより強化された繊維に対してそれ自体が役に立つ。適合された複合材料内でのこれらの強化された繊維の利用は、繊維破片により変化する増大を同様に与えるが、周知技術に比べて適合された複合材料の性質を大きく変化させることができる。
【0030】
図1〜図5は、繊維材料のTEM画像及びSEM画像を示す。図1及び図2は、連続処理によりパンベース炭素繊維上に用意されたMWNT及びDWNTのTEM画像をそれぞれ示す。図3は、繊維材料表面にCNT形成ナノ粒子触媒を機械的に浸出した後、バリアコーティング内から成長したCNTの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。図4は、炭素繊維材料上で目標とする長さである約40ミクロンの20%以内まで成長したCNTの長さ分布の一貫性を明示するSEM画像を示す。図5は、繊維全体に亘って約10%以内でCNTの密度が均一であることを明示する炭素繊維上に成長したCNTの低倍率SEM画像を示す。
【0031】
CNT浸出繊維材料は、無数の用途に使用することができる。例えば、限定するものではないが、衛星等の宇宙ベース装置はバス(buses)等の宇宙ベース構造体を含む。複合材料は、重量が重要な設計パラメータであることを考慮すれば、衛星構造体にとって理想的な選択である。衛星を発射するコストは、直接その質量に比例する。もし構造体をより軽量な材料から構築することができれば、(例えば、追加の装置等を含む)最大積載量を大きくすることができる。
【0032】
図6に関して、衛星10は、それぞれ特定の機能及び特定の要求を有する複数の特徴を備える。したがって、複合材料は、構造体内における位置によって様々な機能を果たさなければならない。周回低軌道(low earth orbit)、周回中軌道(middle earth orbit)及び地球静止軌道(geosynchronous orbit)のいずれの厳しい宇宙環境においても、1次構造体(又はバス)12は、流星塵及び破片からの衝撃に耐えるとともに、表面電荷を蓄積させずに入射する熱を伝達することができなければならない。中領域CNT充填材料は、せん断に耐久性があり、また危険な表面電荷の蓄積を妨げる導電媒質を提供することができる。
【0033】
衛星は通常、破片や入射放射線から保護しなければならない精密機器を収納している。図7に関して、高CNT充填材料の外層14は、電磁放射の入射を吸収するために使用することができる。
【0034】
一次構造体12と打上げ機との間の取り付け連結部は、打上げの間、高いせん断応力を受ける。したがって、複合材料のこれらの領域のせん断強度は、中領域CNT充填材料を使用することにより増強される。
【0035】
周回低軌道の宇宙船は、高分子マトリックスに対して強い侵食性を有する原子状酸素にさらされる。長期間の宇宙飛行では、複合材部品の構造的健全性に支障をきたすおそれがある。暴露される複合材料部分の表面の低CNT充填材料の損傷検知層16は、衛星10の構造体の状態をフィードバックするために使用することができる。また、これらの衛星が、最終的に微小亀裂や他の疲労効果が生じる熱サイクルを経験することを考慮すれば、この損傷検知機能もまた重要である。
【0036】
再び図7に関して、低CNT充填材料の内層18は、衛星10に剛性及び寸法安定性を与える。
【0037】
種々の宇宙ベース構造体はいずれも、様々な機能性に関連するCNT担持量に基づいて設計又は選択された複合材料とCNT浸出繊維材料とから構成することができる。このような機能性には、EMI遮蔽、損傷検知、除氷、及び機械的性質が含まれるがこれに限られない。機械的性質には、層間及び面内せん断強度及び剛性率、引張強度及び引張係数、圧縮強度及び圧縮率、曲げ強度及び曲げ弾性率、亀裂抵抗及び伝播抵抗、熱伝導性の向上、及び静電放電防止が含まれるが、これに限られない。
【0038】
CNT浸出繊維材料が適用される宇宙ベース構造体における特定の位置は、構造体の特定の状態に基づき選択することができる。高CNT担持量を備えたCNT浸出繊維材料は、構造体における特定の位置に使用することができる。より具体的にいうと、高CNT担持量は、(1)高CNT担持量がEMI遮蔽を提供するため、EMIにさらされやすい位置での使用、(2)高CNT担持量が熱伝導性を強化するため、熱伝導性が望まれる位置での使用、及び(3)高CNT担持量が電気信号の伝達を容易にするため、電気回路に近接した位置での使用に有用である。
【0039】
同様に、中領域CNT担持量を備えたCNT浸出繊維材料は、構造体における特定の位置、例えば、(1)中領域CNT担持量が除氷に使用するための適切な抵抗率/伝導率を提供するため、氷が生成されやすい位置、(2)中領域CNT担持量がせん断強度を強化するため、せん断力にさらされやすい位置、(3)中領域CNT担持量が亀裂抵抗を強化するため、亀裂が入りやすい位置、及び(4)中領域CNT担持量が静電放電を妨げるため、電荷が蓄積されやすい位置等で使用することができる。
【0040】
同様に、低CNT担持量を備えるCNT浸出繊維材料は、構造体の特定の位置、例えば、(1)低CNT担持量が損傷検知を容易にするため、損傷を受けやすい位置、(2)低CNT担持量が引張強度を強化するため、張力を受けやすい位置、及び(3)低CNT担持量が圧縮強度を強化するため、圧縮力を受けやすい位置等で使用することができる。
【0041】
ある実施形態において、宇宙ベース構造体の特定の機能性を設計し、選択し、構成し、或いは確保する方法は、構造体を選択すること及び望ましい機能性を特定することを含む。望ましい機能性が決定されると、望ましい機能性に応じて、CNT担持量を備えたCNT浸出繊維材料が選択される。購入、製造又は他の方法により、複合材料を含んで構成される宇宙ベース構造体を提供することができる。構造体が製造されている場合には、CNT浸出繊維材料を構造体の一部として形成することができる。他の例では、予め形成された複合材料構造体にCNT浸出繊維材料を適用することができる。いずれのシナリオでも、第1CNT浸出繊維材料及び第2CNT浸出繊維材料が提供される。第1CNT浸出繊維材料は、CNT担持量の第1領域を有し、構造体に第1機能性を提供するために選択される。同様に、第2CNT浸出繊維材料は、CNT担持量の第2領域を有し、構造体に第2機能性を提供するために選択される。第1CNT浸出繊維材料は構造体の第1位置に適用され、第2CNT浸出繊維材料は構造体の第2位置に適用される。場合によっては、第1位置と第2位置とは、互いに離れてはいるが、それでも構造体の一部である。他の場合には、第1位置と第2位置とは、近接、重複又は構造体の同一の位置を占めてもよい。例えば、第1CNT浸出繊維材料はEMI遮蔽に有用な高CNT担持量を有し、第2CNT浸出繊維材料は損傷検知に有用な低CNT担持量を有してもよい。このようなシナリオにおいて、第2材料を構造体に直接適用し、第1材料を第2材料に異なる層として適用することができる。
【0042】
ある実施形態において、宇宙ベース構造体は、電気抵抗、損傷検知、除氷、及び機械的性質を有し、機械的性質には、層間及び面内せん断強度及び剛性率、引張強度及び引張係数、圧縮強度及び圧縮率、曲げ強度及び曲げ弾性率、亀裂抵抗及び伝播抵抗、静電放電防止、電磁妨害遮蔽、熱伝導性、及び電気信号の伝送機能が含まれるが、これに限られない。他の実施形態において、宇宙ベース構造体は、これらの全てよりも少ない機能性を有する。例えば、ある宇宙ベース構造体は、電磁妨害遮蔽、損傷検知及び強度機能を有するか、又は静電放電抵抗、亀裂抵抗及び除氷機能を有する。ある実施形態において、宇宙ベース構造体は、電気抵抗、損傷検知、及び除氷、並びに、これに限られるものではないが機械的性質に含まれる層間及び面内せん断強度及び剛性率、引張強度及び引張係数、圧縮強度及び圧縮率、曲げ強度及び曲げ弾性率、亀裂抵抗及び伝播抵抗、静電放電防止、電磁妨害遮蔽、熱伝導性、並びに電気信号の伝送機能から選択されるいずれか1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又は11個の性質を有する。宇宙ベース構造体は、上記にはないさらなる機能性を有してもよい。
【0043】
ある実施形態において、CNTの第1の量及び第2の量は、特定の構造体の異なる領域間で相違する。これは、CNTの種類の変化をともなってもともなわなくてもよい。したがって、CNTの種類を変化させなくても、CNT密度を変化させることにより、元の繊維材料の性質を変化させることができる。CNTの種類には、例えば、CNTの長さ及び層の数が含まれる。ある実施形態において、第1の量及び第2の量は等しい。巻取り可能な材料の2つの異なる範囲において望ましい性質が相違する場合、例えばCNTの長さのようなCNTの種類を変えることができる。例えば、長いCNTは電気的/熱的用途に有用であるのに対し、短いCNTは機械的強化用途に有用である。
【0044】
繊維材料の性質を変化させることに関する上記議論の観点から、ある実施形態において、CNTの第1の種類及びCNTの第2の種類は同一であってもよく、一方他の実施形態において、CNTの第1の種類及びCNTの第2の種類は異なってもよい。同様に、ある実施形態において、第1の性質及び第2の性質は同一であってもよい。例えば、EMI遮蔽特性は、CNTの第1の量及び第1の種類と、CNTの第2の量及び第2の種類と、により影響される性質であるが、使用されたCNTの異なる量及び種類に影響されてこの性質の変化の度合いが相違する。結局、ある実施形態において、第1の性質及び第2の性質は異なってもよい。また、これはCNTの種類の変更を反映してもよい。例えば、第1の性質がより短いCNTによる機械的強化であり、第2の性質が長いCNTによる電気的/熱的性質であってもよい。当業者は、異なるCNT密度、CNT長、及び単層、2層、多層等のCNTの層の数を使用することにより、繊維材料の性質を適合できることを理解するだろう。
【0045】
ある実施形態において、繊維材料上におけるCNTの第1の量は、繊維材料自体が示す性質の第1のグループとは異なる性質のグループを示す。すなわち、量の選択は、引張強度のような繊維材料の性質の1つ以上を変化させることができる。性質の第1のグループ及び性質の第2のグループは、少なくとも1つ同一の性質を含んでもよく、これにより、繊維材料の既存の性質の強化を示す。ある実施形態において、CNTの浸出は、繊維材料自体が示す性質の第1のグループには含まれない性質の第2のグループを、CNT浸出繊維材料に与えることができる。
【0046】
CNT浸出炭素繊維材料及びCNT浸出ガラス繊維材料は、出願人による同時係属中の出願であり、その全内容が参照により本出願に組み込まれた米国特許出願公開第2010/0279569号明細書及び米国特許出願公開第2010/0178825号明細書に記載されている。このようなCNT浸出繊維材料は、適合された複合材料中で補強材料として使用することができるものの典型である。他のCNT浸出繊維材料には、金属繊維、セラミック繊維、及びアラミド繊維のような有機繊維が含まれる。上記の参照される出願で開示されたCNT浸出プロセスにおいて、繊維材料は、繊維上にCNT開始触媒ナノ粒子(CNT-initiating catalyst nanoparticles)の層(一般には単層)を提供するために修飾される。そして、触媒含浸繊維は、CNTを一直線に連続して成長させるために使用されるCVDベース処理を行われる。成長したCNTは繊維材料に浸出される。結果として得られるCNT浸出繊維材料は、それ自体が複合材料構造体である。
【0047】
CNT浸出繊維材料は、様々な性質が得られるように、繊維材料の表面のCNTの特定の種類により適合される。例えば、繊維上に様々な種類、直径、長さ及び密度のCNTを適用することにより、電気的性質を変更することができる。複合材料の伝導性を向上させるパーコレーション経路を形成するために、CNT−CNT間の適切な架橋を提供することができる長さのCNTが必要とされる。繊維間隔は一般に繊維の直径(約5〜約50ミクロン)以上であるため、CNTは効果的な電気的経路を達成するに少なくともこの長さである。短いCNTは、構造的性質を強化するために使用することができる。
【0048】
ある実施形態において、CNT浸出繊維材料には、同一の繊維材料の異なる部分に沿って長さが相違するCNTが含まれる。適合された複合材料補強材として使用された場合、このような多機能CNT浸出繊維材料は、それらが組み込まれた複合材料の複数の性質を強化する。
【0049】
ある実施形態において、CNTの第1の量が繊維材料に浸出される。CNT浸出繊維材料の引張強度、ヤング率、せん断強度、剛性率、強靭性、圧縮強度、圧縮係数、密度、電磁波吸収性/反射性、音響透過率、電気伝導性、及び熱伝導性からなるグループから選択される少なくとも1つの性質の値が、繊維材料自体の同一の性質の値と異なるように、前記量は選択される。結果として得られたCNT浸出繊維材料のこれらの性質は、いずれも最終的な複合材料に与えることができる。
【0050】
引張強度は、3つの異なる大きさを含む。1)材料の歪みが弾性変形から材料を永久に変形させる塑性変形に変化する応力を評価する降伏力、2)伸張、圧縮又はせん断にさらされたときに材料が耐えることができる最大応力を評価する極限強度、及び3)応力・歪み曲線上の破断点における応力の座標を評価する破壊強度である。複合せん断強度は、繊維方向と垂直な方向に応力が加えられた場合に材料が機能しなくなる応力を評価する。圧縮強度は、圧縮応力が適用された場合に材料が機能しなくなる応力を評価する。
【0051】
特に、MWNTは、これまで計測された全ての材料の中で最も高い引張強度を有し、63GPaの引張強度が達成されている。その上、理論計算はCNTの可能な引張強度が約300GPaであることを示している。これにより、CNT浸出繊維材料は、元の繊維材料と比較して実質的により高い極限強度が期待される。上記の通り、引張強度の向上は、使用されるCNTの正確な性質と、繊維材料上での密度及び分布とに依存する。CNT浸出繊維材料は、例えば、2倍又は3倍の引張特性の向上を示す。例としてのCNT浸出繊維材料は、元の機能化されていない繊維材料に比べて、3倍のせん断強度と2.5倍の圧縮強度を有することができる。このような強化繊維材料の強度の向上は、CNT浸出繊維材料が組み込まれた複合材料の強度の向上に転換される。
【0052】
ヤング率は、等方性弾性材料の剛性の大きさである。これは、フックの法則に従う応力の範囲における一軸歪みに対する一軸応力の割合により定義される。これは、材料のサンプルの対して行われる引張試験の間に作成される応力・歪み曲線の傾斜から実験的に決定される。
【0053】
電気伝導性又は特定の伝導性は、電荷を導く材料の能力の大きさである。CNTキラリティー(chirality)に関連する捩れの度合いのような特定の構造的パラメータを備えたCNTは高い伝導性を有し、これにより、金属的な性質を示す。広く認められた命名方式(M. S. Dresselhaus, et al. Science of Fullerenes and CNTs, Academic Press, San Diego, CA pp. 756-760(1996))が正式なものとされており、CNTキラリティーに関して当業者に認められている。こうして、CNTは例えば2つの指標(n,m)により互いに区別される。n及びmは、円柱形の表面に巻きつけられ、端部が互いに閉塞されたときに筒を形成するように、六角形グラファイトの切れ目(cut)と巻きつけ(wrapping)とを説明する整数値である。2つの指標が等しい(m=n)場合、結果として得られるチューブは「アームチェアー」(又はn,n)型と呼ばれる。なぜなら、チューブをCNT軸に対して垂直に切断すると、六角形の辺だけが露出し、チューブのふちの外周のパターンが、n回繰り返されるアームチェアーのアーム及びシートに似ているためである。アームチェアーCNT、特に単層CNT(SWNT)は、金属的であり、極めて高い電気伝導性及び熱伝導性を有する。加えて、このようなSWNTは、極めて高い引張強度を有する。
【0054】
捩れの度合いに加えて、CNTの直径もまた電気伝導性に影響する。上記の通り、CNTの直径は、大きさを制御されたCNT形成触媒ナノ粒子を使用することにより制御することができる。CNTはまた、半導体材料として形成することができる。MWNTの伝導性はより複雑である。MWNTにおける内層反応(interwall reactions)は、個々のチューブの全面に電流を不均一に再分配する。それに反して、金属的なSWNTの異なる部分において電流は変化しない。CNTはまた、ダイアモンド結晶及び面内グラファイトシートと比較して、極めて高い熱伝導性を有する。
【0055】
繊維に浸出されたCNTは、SWNT、DWNT及びMWNTを含むフラーレン族のカーボンの円柱形状の多くの同素体のいずれかである。CNTは、フラーレン様構造により閉塞されているか、開口している。CNTには、他の物質を封入したものが含まれる。
【0056】
本明細書において、「宇宙ベース」という用語は、一般に動作状態において宇宙で支持可能なことを意味する。宇宙ベースとして考慮される構造体は、また地上ベース、海ベース又は空ベースであってもよい。例えば、貨物用コンテナは、宇宙ベース、地上ベース、海ベース及び空ベースである。同様に、ある種の乗り物は空中及び宇宙の両方を飛行することができる。
【0057】
本明細書において、「浸出される」という用語は結合されることを意味し、「浸出」という用語は、結合プロセスを意味する。このような結合には、直接共有結合、イオン結合、π−π相互作用、及びファンデルワールス力媒介物理吸着が含まれる。例えば、ある実施形態において、CNTは、繊維材料に直接結合されてもよい。結合は、バリアコーティング又はCNTと繊維材料との間に配置された媒介遷移金属ナノ粒子を介した繊維材料へのCNTの浸出のように、間接的であってもよい。本明細書に開示されたCNT浸出繊維材料において、CNTは上記の通り、繊維材料に対して直接的又は間接的に「浸出される」。CNTが繊維材料に「浸出される」特定の方法は、「結合モチーフ(bonding motif)」と呼ばれる。
【0058】
繊維材料の一部に浸出されたCNTは、一般に長さが均一である。本明細書において、「長さが均一」とは、反応器内で成長したCNTの長さについて言及する。「均一な長さ」とは、CNTの長さが、CNTの全長に対して±約20%以下の許容誤差を有することを意味し、CNTの長さは約1ミクロンから約500ミクロンまでの範囲で変化する。例えば1〜4ミクロンのような極めて短い長さにおいて、この誤差は、CNT全長の±約20%からCNT全長の約20%よりやや大きい±約1ミクロン以下の範囲内である。
【0059】
また、繊維材料の一部に浸出されたCNTは、一般にその分布も均一である。本明細書において、「分布が均一」とは、繊維材料上のCNTの密度の一貫性に関して言及する。「均一な分布」とは、繊維材料上のCNTの密度が、CNTにより覆われた繊維の表面領域のパーセンテージとして定義される被覆率で±約10%の許容誤差を有することを意味する。これは、直径8nmで5層のCNTにおいて±1500CNT/μmに等しい。この数値は、CNTの内部空間を充填可能(fillable)とみなしている。
【0060】
本開示は、ある程度CNT浸出繊維材料を志向している。繊維材料へのCNTの浸出は、例えば、蒸気、酸化、摩耗及び圧縮による損傷から保護するためのサイジング剤としての機能を含む多くの機能性を提供することができる。CNTベースのサイジング剤はまた、複合材料内で、繊維材料とマトリックス材との間の接触部分としての役割も果たす。CNTはまた、繊維材料を被覆するいくつかのサイジング剤のうちの1つとしての役割を果たす。
【0061】
さらに、繊維材料に浸出されたCNTは、例えば、熱伝導性、電気伝導性、又は引張強度のような繊維材料の様々な性質を変化させることができる。CNT浸出繊維材料を作成するために使用されるプロセスは、改良された繊維材料全体にその有益な性質を均一に与えるように、実質的に均一な長さ及び分布のCNTを提供する。このようなプロセスの中には、巻取り可能な寸法のCNT浸出繊維材料の製造に適しているものもある。
【0062】
本開示はまた、ある程度CNT浸出繊維材料を志向している。典型的なサイジング溶液を繊維材料に適用する前に、もしくはそのかわりに、様々なプロセスが新たに製造される繊維材料の初期段階に適用される。あるいは、例えば、カーボントウのような既にサイジング剤がその表面に適用済みの商用の繊維材料をプロセスに使用することができる。このような実施形態において、バリアコーティング及び遷移金属微粒子は、以下でさらに説明されるように間接的な浸出を提供する中間層としての役割を果たすが、サイジング剤は繊維材料と合成されたCNTとの間を直接的に接触させるために除去される。CNTの合成後、要望に応じてさらなるサイジング剤を適用することができる。
【0063】
あるプロセスは、巻取り可能な寸法のトウ、テープ、織物、及び他の3次元織物構造体に沿って、均一な長さ及び分布を有するCNTの連続生産を可能にする。特定のプロセスによって様々なマット、織物、及び不織布等が機能化可能だが、トウやヤーン等の元となる材料のCNT機能化の後、これらから、より高度な秩序構造を製造することも可能である。例えば、CNT浸出織物を、CNT浸出炭素繊維トウから製造することができる。
【0064】
本明細書において、「繊維材料」という用語は、その基本的な構造要素としてフィラメント又はフィラメントの束を有する任意の材料を示す。この用語は、繊維、フィラメント、ヤーン、トウ、テープ、織物及び不織布、パイル、マット等を包含する。
【0065】
本明細書において、「巻取り可能な寸法」とは、材料をスプール又はマンドレルに保存可能にする長さに制限されない少なくとも1つの寸法を有する繊維材料に関して言及する。「巻取り可能な寸法」の繊維材料は、本明細書で記載されたCNT浸出用のバッチ処理又は連続処理のいずれかの使用を示す少なくとも1つの寸法を有する。市販の巻取り可能な寸法の繊維材料の1つとして、800tex(1tex=1g/1,000m)又は620yard/lbで12kのAS4炭素繊維トウ(Grafil, Inc., Sacramento, CA)が挙げられる。特に、市販の炭素繊維トウは、より大きなスプールの特注品を要求してもよいが、例えば、5,10,20,50及び100lb(大きな重量を有するスプール用、通常は3k/12Kトウ)のスプールにおいて得ることができる。あるプロセスは、5〜20lbのスプールで容易に行われるが、より大きなスプールを使用することもできる。さらに、例えば、100lb以上の極めて大きなスプールを、2本の50lbのスプール等の扱いやすい寸法に分割する前処理を組み込んでもよい。
【0066】
本明細書において、「カーボンナノチューブ」(CNT,複数形はCNTs)という用語は、単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotube, SWNT)、2層カーボンナノチューブ(double-walled carbon nanotube, DWNT)及び多層カーボンナノチューブ(multi-walled carbon nanotube, MWNT)を含むフラーレン族の円筒形状の任意の炭素同素体を示す。カーボンナノチューブは、フラーレン様構造により閉塞されるか、又は端部が開口する。カーボンナノチューブには、他の物質を封入したものが含まれる。
【0067】
本明細書において、「遷移金属」という用語は、周期表のdブロックの任意の元素又はその合金を示す。「遷移金属」という用語はまた、酸化物、炭化物及び窒化物等の遷移金属元素ベースの塩形態も含む。
【0068】
本明細書において、「ナノ粒子」もしくはNPという用語又はその文法的な同等物は、NPが球形である必要はないが、等価な球形における粒径が約0.1から約100ナノメートルまでの間の大きさの粒子を示す。特に、遷移金属NPは、繊維材料上でCNTを成長させる触媒としての役割を果たす。
【0069】
本明細書において、「サイジング剤(sizing agent)」、「繊維サイジング剤(fiber sizing agent)」又は単に「サイジング(sizing)」とは、炭素繊維の品質を保護し、複合材料中の炭素繊維とマトリックス材との間の界面相互作用を強化し、炭素繊維の特定の物理的性質を変化又は強化するためのコーティングとして、繊維の製造において使用される材料を総称するものである。ある実施形態において、繊維材料に浸出されたCNTはサイジング剤としての役割を果たす。
【0070】
本明細書において、「マトリックス材」という用語は、サイジング剤を適用したCNT浸出繊維材料を、ランダム配向を含む特定の配向性でまとめる役割を果たすバルク材をいう。CNT浸出繊維材料の物理的又は化学的性質の一部がマトリックス材に与えられることにより、前記マトリックス材はCNT浸出繊維材料の存在からの利益を享受することができる。
【0071】
本明細書において、「材料滞留時間」という用語は、巻取り可能な寸法の繊維材料に沿った個々の点が、CNT浸出プロセスの間にCNT成長状態にさらされる時間をいう。この定義は、多層CNTの成長チャンバーを用いる場合の滞留時間を含む。
【0072】
本明細書において、「ラインスピード(linespeed)」という用語は、CNT浸出プロセスにおいて、巻取り可能な寸法の繊維材料が送り込まれる速度をいい、ラインスピードは、CNTの(1つの又は複数の)チャンバーの長さを材料滞留時間で除して算出される速度である。
【0073】
ある実施形態において、本開示はCNT浸出繊維材料を含む複合材料を提供する。CNT浸出繊維材料には、巻取り可能な寸法の繊維材料、繊維材料の周囲に等角的に配置されたバリアコーティング、及び繊維材料に浸出されたCNTが含まれる。繊維材料へのCNTの浸出は、繊維材料への個々のCNTの直接的結合又は遷移金属NP、バリアコーティング又はその両方を介した間接的結合の結合モチーフが含まれる。
【0074】
理論に制限されることなく、CNT形成触媒としての役割を果たす遷移金属NPは、CNT成長核構造を形成することによりCNT成長に触媒作用をもたらす。一実施形態において、CNT形成触媒は、繊維材料の基部に留まり、バリアコーティングにより固定され、繊維材料の表面に浸出される。このような場合において、遷移金属ナノ粒子触媒によって初期に形成された核構造は、当該分野でしばしば観察されるCNT成長の先端部に沿った触媒の移動をさせることなく、継続した非触媒核CNT成長に十分である。このような場合において、NPは、繊維材料に対するCNTの付着点としての役割を果たす。バリアコーティングの存在はまた、さらなる間接的結合モチーフを提供する。例えば、CNT形成触媒は、繊維材料と表面接触せずに、上記の通りバリアコーティング内に固定される。このような場合において、CNT形成触媒と繊維材料との間に配置されたバリアコーティングの積層構造が生じる。いずれの場合も、形成されたCNTは繊維材料に浸出される。ある実施形態において、バリアコーティングの中には、CNT成長触媒がナノチューブ成長の先端に追従することをなお可能にするものがある。このような場合において、これは繊維材料への、又は付随的にバリアコーティングへのCNTの直接的な結合を生じさせる。CNTと繊維材料との間に形成された実際の結合モチーフの性質に関わらず、浸出されたCNTは丈夫であり、CNT浸出繊維材料がCNTの性質又は特性を示すことを可能にする。
【0075】
また、理論に制限されることなく、繊維材料上にCNTが成長する場合、反応チャンバー内の高温、残留酸素及び残留湿気等は、繊維材料に損傷を与える。その上、繊維材料自体が、CNT形成触媒自体との反応により損傷を受ける。すなわち、繊維材料は、CNT合成用に使用される反応温度にいて、触媒への炭素原料としての役割を果たす。このような過剰な炭素は、炭素原料ガスの制御された導入を妨げ、炭素を過剰供給することにより触媒を汚染することがある。本開示で使用されるバリアコーティングは、繊維材料上でのCNT合成を容易にするように設計されている。理論に制限されることなく、前記コーティングは、熱分解に対する熱障壁又は高温環境への繊維材料の暴露を防ぐ物理障壁を提供することができる。かわりに或いはさらに、前記コーティングは、CNT形成触媒と繊維材料との間の表面領域接触を最小化し、又はCNT成長温度におけるCNT形成触媒への繊維材料の暴露を軽減することができる。
【0076】
CNT浸出繊維材料を有する複合材料には、略均一な長さのCNTが提供される。連続プロセスにおいて、CNT成長チャンバー内での繊維材料の滞留時間は、CNT成長を制御、最終的にはCNTの長さを制御するために調節される。これは、CNT成長の特定の性質を制御する手段を提供する。CNTの長さはまた、炭素原料並びに搬送ガスの流量及び反応温度を調節することにより制御される。例えばCNTを作成するために使用される触媒の大きさを制御することにより、CNT特性のさらなる制御を行うことができる。例えば、1nm遷移金属ナノ粒子触媒は、特にSWNTを形成するために使用することができる。より大きな触媒は、主にMWNTを作成するために使用することができる。
【0077】
さらに、使用されるCNT成長プロセスは、予め作成されたCNTを溶媒中に浮遊又は分散して、手で繊維材料に適用するプロセス中に生じるCNTの束化又は凝集を避けつつ、繊維材料上にCNTが均一に分布したCNT浸出繊維材料を提供するのに有用である。このように凝集したCNTは、繊維材料への付着力が弱く、CNTの特性は、現れたとしても弱い。ある実施形態において、被覆率、すなわち被覆された繊維の表面領域のパーセントで表される最大分布密度は、直径約8nmで5層のCNTの場合約55%である。この被覆率は、CNTの内部空間が「充填可能な」空間であるとして計算される。表面に分散した触媒を変化させ、ガス組成及びプロセススピードを制御することにより、様々な分布/密度の値を達成することができる。一般的に与えられるパラメータにおいて、繊維表面に亘って約10%以内の被覆率を達成することができる。より高密度でより短いCNTは、機械的性質を向上させるのに有用である一方、より低密度のより長いCNTは、熱的及び電気的性質の向上に有用であるが、やはり高密度が望ましい。より長いCNTが成長した場合、より低密度が生じることがある。これは、より低い触媒微粒子収率(catalyst particle yield)を引き起こすより高温及びより急成長の結果である可能性がある。
【0078】
CNT浸出繊維材料を有する本開示の複合材料には、単一のフィラメント、繊維ヤーン、繊維トウ、テープ、繊維ブレイド(fiber-braid)、織物、不織布マット、繊維プライ、及び他の3次元織物構造等の繊維材料が含まれてもよい。フィラメントには、約1ミクロンから約100ミクロンまでの範囲の直径を有する高アスペクト比の繊維が含まれる。繊維トウは、通常は密集して結合したフィラメントの束であり、大抵はヤーンを形成するために互いに撚り合わせられる。
【0079】
ヤーンには、撚り合わせられたフィラメントの密接に結合された束が含まれる。ヤーン内でのそれぞれのフィラメントの直径は比較的均一である。ヤーンは、1000リニアメートル(linear meter)あたりのグラム重量として表される「テックス(tex)」又は10,000yardあたりのポンド重量として表される「デニール(denier)」で示される様々な重量を有し、一般的なテックスの範囲は約200texから約2000texまでの間である。
【0080】
トウには、撚り合わせられていないフィラメントの緩やかに結合された束が含まれる。ヤーンにおけるのと同様に、トウ内でのフィラメントの直径は概して均一である。トウはまた、様々な重量を有し、texの範囲は一般に約200texから2000texまでの範囲である。トウは、例えば12Kトウ、24Kトウ、48Kトウ等のように、トウ内の数千本のフィラメントの数によりしばしば特徴付けられる。
【0081】
テープは、波状にまとめられるか、又は不織布の扁平トウを表すことができる材料である。テープの幅は様々であり、一般にリボンのような両面構造(two-sided structure)である。形成するためのプロセスは、テープの片面又は両面でのCNT浸出と相性がよい。CNT浸出テープは、平らな基質表面上の「カーペット」又は「森」のようである。また、このようなプロセスは、テープのスプールを機能化するために連続モードで行うことができる。
【0082】
繊維ブレイドは、高密度な繊維のロープ様構造を示す。このような構造は、例えば、ヤーンにより形成することができる。編み上げ構造(braided structure)は、中空部分(hollow portion)を含んでもよく、あるいは他のコア材料の周りに形成されてもよい。
【0083】
ある実施形態において、多くの主要な繊維材料構造体は、織物又はシート様構造に形成される。これには、例えば、上記のテープに加えて、織物製品、不織繊維マット(non-woven fiber mat)及び繊維プライが含まれる。このような高度な秩序構造は、元の繊維に浸出されたCNTを有する元のトウ、ヤーン又はフィラメント等から形成することができる。あるいは、このような構造体は、CNT浸出プロセス用の基板としての役割を果たすことができる。
【0084】
繊維を形成するために使用される前駆体に基づき、炭素繊維は3種類に分類され、本開示においては、レーヨン、ポリアクリロニトリル(PAN)及びピッチ(Pitch)のいずれの繊維も使用することができる。セルロース系材料であるレーヨン前駆体の炭素繊維は、約20%と比較的低い炭素含有量を有し、繊維の強度及び剛性が低い傾向がある。ポリアクリロニトリル(PAN)前駆体は、約55%の炭素含有量の炭素繊維を提供する。一般に、PAN前駆体に基づく炭素繊維は、表面欠陥が最小であるため、他の炭素繊維前駆体に基づく炭素繊維より高い引張強度を有する。
【0085】
また、石油アスファルト、コールタール及びポリ塩化ビニルに基づくピッチ前駆体をも、炭素繊維を製造するために使用できる。ピッチは、比較的低コストで炭素収率(carbon yield)が高いが、不均一性の問題が生じることがある。
【0086】
繊維材料への浸出に有用なCNTには、SWNT、DWNT、MWNT及びこれらの組み合わせが含まれる。実際に使用されるCNTは、CNT浸出繊維材料の用途によって決まる。CNTは、熱伝導性もしくは電気伝導性の用途に、又は絶縁体として使用することができる。ある実施形態において、浸出されるCNTはSWNTである。ある実施形態において、浸出されるCNTはMWNTである。ある実施形態において、浸出されるCNTはSWNTとMWNTとの組み合わせである。SWNT及びMWNTの特有の性質には、いくつかの繊維の最終用途において、いずれか一方の種類のナノチューブの合成を決定づけるいくつかの相違が存在する。例えば、SWNTは半導体的又は金属的であり得るが、MWNTは金属的である。
【0087】
CNTは、機械的強度、低〜中程度の電気抵抗率及び高い熱伝導性等の特有の性質を、CNT浸出繊維材料に与える。例えば、ある実施形態において、CNT浸出炭素繊維材料の電気抵抗率は、元の繊維材料の電気抵抗率より低い。さらに一般に、結果として得られるCNT浸出繊維が示すこれらの特性の程度は、CNTによる繊維の被覆率の程度及び密度の関数となる。直径8nmで5層のMWNTの場合、繊維の0〜55%の範囲の任意の繊維表面領域を被覆することができる(CNTの内部空間を充填可能とみなして計算している)。この数値は、より小さな直径のCNTの場合はより小さく、より大きな直径のCNTの場合はより大きい。表面領域の55%の被覆率は、約15,000CNT/ミクロンに相当する。さらに、CNTの性質は、上記の通りCNTの長さに依存した方法で繊維材料に与えることができる。浸出されたCNTの長さは、約1ミクロンから約500ミクロンまでの範囲で変化させることができ、1ミクロン,2ミクロン,3ミクロン,4ミクロン,5ミクロン,6ミクロン,7ミクロン,8ミクロン,9ミクロン,10ミクロン,15ミクロン,20ミクロン,25ミクロン,30ミクロン,35ミクロン,40ミクロン,45ミクロン,50ミクロン,60ミクロン,70ミクロン,80ミクロン,90ミクロン,100ミクロン,150ミクロン,200ミクロン,250ミクロン,300ミクロン,350ミクロン,400ミクロン,450ミクロン,500ミクロン及びこれらの間の全ての値を含む。CNTはまた、例えば、約0.5ミクロンを含む1ミクロンより短い長さとすることもできる。CNTはまた、例えば、510ミクロン,520ミクロン,550ミクロン,600ミクロン,700ミクロン及びこれらの間の全ての値を含む、500ミクロンより長い長さとすることもできる。
【0088】
本開示の複合材料には、約1ミクロンから約10ミクロンまでの長さのCNTを組み込むことができる。このようなCNTの長さは、せん断強度の強化に有益である。また、CNTは、約5から約70ミクロンまでの長さであってもよい。このようなCNTの長さは、CNTが繊維方向に配列された場合、引張強度の強化に有益である。また、CNTは、約10ミクロンから約100ミクロンまでの長さであってもよい。このようなCNTの長さは、機械的性質と同様、電気的性質/熱的性質の向上に有益である。また、CNTは、電気的性質及び熱的性質の向上に役に立つ約100ミクロンから約500ミクロンまでの長さであってもよい。このようなCNTの長さの制御は、ラインスピード及び成長温度の変化に加えて炭素原料及び不活性ガス流量を調整することにより容易に行うことができる。
【0089】
ある実施形態において、巻取り可能な寸法のCNT浸出繊維材料を含む複合材料は、CNTの長さが異なる様々な均一な領域を有する。例えば、せん断強度を強化する均一な短いCNTを備えたCNT浸出繊維の第1部分と、電気的又は熱的性質を向上する均一な長いCNTを備えた同一の巻取り可能な材料の第2部分と、を有するのが望ましい。
【0090】
繊維材料にCNTを浸出するためのあるプロセスは、一様なCNTの長さの制御を可能にし、連続プロセスにおいて、巻取り可能な繊維材料が高い割合でCNTにより機能化可能にする。材料滞留時間が5から300秒で長さ3フィートのシステム用の連続プロセスにおけるラインスピードは、約0.5ft/minから約36ft/minまでのいずれか、又はそれより大きい。選択されるスピードは、以下にさらに説明される様々なパラメータに応じて決定される。
【0091】
ある実施形態において、約5から約30秒までの材料滞留時間により、約1ミクロンから約10ミクロンまでの長さのCNTの製造が可能となる。ある実施形態において、約30から約180秒までの材料滞留時間により、約10ミクロンから約100ミクロンまでの長さのCNTの製造が可能となる。さらに他の実施形態において、約180から約300秒までの材料滞留時間により、約100ミクロンから約500ミクロンまでの長さのCNTの製造が可能となる。当業者は、これらの範囲が概算であり、CNTの長さはまた、反応温度並びに搬送ガス及び炭素原料の濃度及び流量によって調節することができることを理解するだろう。
【0092】
本開示のCNT浸出繊維材料にはバリアコーティングが含まれる。バリアコーティングには、例えば、アルコキシシラン(alkoxysilane)、メチルシロキサン(methylsiloxane)、アルモキサン(alumoxane)、アルミナナノ粒子、スピンオンガラス(spin on glass)及びガラスナノ粒子が含まれる。以下に記載のように、CNT形成触媒は、未硬化バリアコーティング材料に添加し、まとめて繊維材料に適用することができる。他の実施形態において、CNT形成触媒を付着させる前に、バリアコーティング材料を繊維材料に追加することができる。CVD成長がその後に続くように、バリアコーティング材料をCNT形成触媒が炭素原料に暴露できるくらい十分に薄くすることができる。ある実施形態において、前記厚さは、CNT形成触媒の有効径より薄いか略等しい。ある実施形態において、バリアコーティングの厚さは、約10nmから約100nmまでである。また、バリアコーティングを、1nm,2nm,3nm,4nm,5nm,6nm,7nm,8nm,9nm,10nm及びこれらの間のいずれの値も含む10nmより小さい値とすることができる。
【0093】
理論に制限されることなく、バリアコーティングは、繊維材料とCNTとの間の中間層の役割を果たし、CNTの繊維材料への機械的な浸出の役に立つ。このような機械的浸出は、繊維材料にCNTの特性をなおも与えながら、繊維材料がCNTを形成するための基盤(platform)として機能する強固な体制を依然として提供する。さらに、バリアコーティングを含むことの利益には、炭素繊維材料を蒸気にさらすことによる化学的損傷又はCNT成長を促進するために用いられる温度で繊維材料を加熱することによる熱的損傷から、繊維材料を直接的に保護することが含まれる。
【0094】
本明細書で開示される浸出されたCNTは、従来の繊維「サイジング」の代用品の役割を効果的に果たす。浸出されたCNTは、従来のサイジング材料よりも丈夫であり、複合材料内における繊維−マトリックス間の界面を強化し、さらに一般に、繊維−繊維間の界面を強化することができる。実際に、本明細書で開示されるCNT浸出繊維材料は、CNT浸出繊維材料の性質が繊維材料の性質と浸出されたCNTの性質との組み合わせであるという意味ではそれ自体が複合材料である。結果として、本開示の実施形態は、望ましい性質が不十分又は欠如した繊維材料にそのような性質を与える手段を提供する。繊維材料は、特定の用途の必要性を満たすように適合又は設計することができる。サイジングとしてのCNTの作用は、CNTの疎水構造による蒸気の吸収から繊維材料を保護することができる。その上、以下にさらに例示されるように、疎水性のマトリックス材と疎水性のCNTとの相互作用により、繊維とマトリックス間の相互作用が向上する。
【0095】
上記の浸出されたCNTを有する繊維材料へ有益な性質が与えられているにもかかわらず、本開示の複合材料は、従来のサイジング剤をさらに含んでもよい。このようなサイジング剤の種類及び機能は幅広く、例えば、界面活性剤、帯電防止剤、潤滑剤、シロキサン、アルコキシシラン、アミノシラン、シラン、シラノール、ポリビニルアルコール、でんぷん、及びこれらの混合物が含まれる。このような第2のサイジング剤は、CNT自体を保護するか、又は浸出されたCNTによって与えられなかったさらなる性質を繊維に与えることができる。
【0096】
本開示の複合材料は、CNT浸出繊維材料とともに複合材料を形成するマトリックス材をさらに含む。このようなマトリックス材として、例えば、エポキシ、ポリエステル、ビニルエステル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、フェノールホルムアルデヒド及びビスマレイミドが含まれる。本開示において有用なマトリックス材として、周知の任意のマトリックス材が含まれる(Mel M. Schwartz, Composite Materials Handbook(2d ed. 1992)参照)。さらに、マトリックス材として、熱硬化性及び熱可塑性の樹脂(ポリマー)の両方、金属、セラミック及びセメントが含まれる。
【0097】
マトリックス材として有用な熱硬化性樹脂には、フタル酸/マレイン酸型のポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノール樹脂、シアン酸塩、ビスマレイミド及びナディック末端封止ポリイミド(nadic end-capped polyimide, PMR-15等)が含まれる。熱可塑性樹脂には、ポリスルホン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレン酸化物、ポリ硫化物、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート及び液晶ポリエステルが含まれる。
【0098】
マトリックス材として有用な金属には、アルミニウム6061,2024及び713アルミニウムブレーズ(aluminum braze)等のアルミニウム合金が含まれる。マトリックス材として有用なセラミックには、リチウムアルミノケイ酸塩等のカーボンセラミック、酸化アルミニウム及びムライト等の酸化物、窒化ケイ素等の窒化物及び炭化ケイ素等の炭化物が含まれる。マトリックス材として有用なセメントには、炭化物ベースのセメント(炭化タングステン、炭化クロム及び炭化チタン)、耐火セメント(タングステントリア(tungsten-thoria)及び炭酸バリウム−ニッケル(barium-carbonate-nickel))、クロム−アルミナ、ニッケル−マグネシア及び鉄−ジルコニウム炭化物が含まれる。上記のマトリックス材はいずれも単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0099】
本発明は、開示された実施形態を参照して説明されたが、当業者は、これが単に本発明を説明するためのものに過ぎないことをただちに理解するだろう。本発明の精神から逸脱することなく、様々な修正を加えることが可能であることは当然である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料構造体を備えた宇宙で支持される構造体を含んで構成される装置であって、
前記複合材料構造体は少なくとも、
電気抵抗、損傷検知、引張強度、圧縮強度、除氷、せん断強度、曲げ強度、亀裂抵抗、静電放電防止、電磁妨害遮蔽、熱伝導性、及び電気信号の伝達から選択される第1の機能性を、前記構造体に与える第1のカーボンナノチューブ浸出材料と、
電気抵抗、損傷検知、引張強度、圧縮強度、除氷、せん断強度、曲げ強度、亀裂抵抗、静電放電防止、電磁妨害遮蔽、熱伝導性、及び電気信号の伝達から選択される第2の機能性を、前記構造体に与える第2のカーボンナノチューブ浸出材料と、
を含んで構成される装置。
【請求項2】
前記複合材料構造体は、第3のカーボンナノチューブ浸出材料を含んで構成される請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のカーボンナノチューブ浸出繊維のカーボンナノチューブ担持量は、0%から2%までの間である請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のカーボンナノチューブ浸出材料は、損傷を受けやすいように前記構造体上に配置され、前記第1の機能性は損傷検知である請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1のカーボンナノチューブ浸出材料は、張力を受けやすいように前記構造体上に配置され、前記第1の機能性は引張強度である請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記第1のカーボンナノチューブ浸出材料は、圧力を受けやすいように前記構造体上に配置され、前記第1の機能性は圧縮強度である請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記第1のカーボンナノチューブ浸出繊維のカーボンナノチューブ担持量は、2%から5%までの間である請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1のカーボンナノチューブ浸出材料は、氷生成されやすいように前記構造体上に配置され、前記第1の機能性は除氷である請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1のカーボンナノチューブ浸出材料は、せん断力を受けやすいように前記構造体上に配置され、前記第1の機能性はせん断強度である請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記第1のカーボンナノチューブ浸出材料は、亀裂が入りやすいように前記構造体上に配置され、前記第1の機能性は亀裂抵抗である請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記第1のカーボンナノチューブ浸出材料は、電荷が蓄積しやすいように前記構造体上に配置され、前記第1の機能性は静電放電防止である請求項7に記載の装置。
【請求項12】
前記第1のカーボンナノチューブ浸出繊維のカーボンナノチューブ担持量は、5%から40%までの間である請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記第1のカーボンナノチューブ浸出材料は、電磁妨害にさらされやすいように前記構造体上に配置され、前記第1の機能性は電磁妨害遮蔽である請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1のカーボンナノチューブ浸出材料は、熱伝導性を与えるように前記構造体上に配置され、前記第1の機能性は熱伝導性である請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記第1のカーボンナノチューブ浸出材料は、前記構造体上に電気回路と隣接して配置され、前記第1の機能性は電気信号の伝達である請求項12に記載の装置。
【請求項16】
複合材料構造体を備えた宇宙で支持される構造体提供することを含んで構成される方法であって、
前記複合材料構造体は少なくとも、
電気抵抗、損傷検知、引張強度、圧縮強度、除氷、せん断強度、曲げ強度、亀裂抵抗、静電放電防止、電磁妨害遮蔽、熱伝導性、及び電気信号の伝達から選択される第1の機能性を、前記構造体に与える第1のカーボンナノチューブ浸出材料と、
電気抵抗、損傷検知、引張強度、圧縮強度、除氷、せん断強度、曲げ強度、亀裂抵抗、静電放電防止、電磁妨害遮蔽、熱伝導性、及び電気信号の伝達から選択される第2の機能性を、前記構造体に与える第2のカーボンナノチューブ浸出材料と、
を含んで構成される方法。
【請求項17】
前記第1のカーボンナノチューブ浸出材料と前記第2のカーボンナノチューブ浸出材料とは重複する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の機能性を決定することと、
前記第1の機能性に基づいて前記第1のカーボンナノチューブ浸出材料の第1のカーボンナノチューブ担持量を選択することと、
をさらに含んで構成される請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の機能性を決定することと、
前記第2の機能性に基づいて前記第2のカーボンナノチューブ浸出材料の第2のカーボンナノチューブ担持量を選択することと、
をさらに含んで構成される請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−511429(P2013−511429A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540167(P2012−540167)
【出願日】平成22年11月23日(2010.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/057922
【国際公開番号】WO2011/063424
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(511201392)アプライド ナノストラクチャード ソリューションズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (31)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED NANOSTRUCTURED SOLUTIONS, LLC
【Fターム(参考)】