説明

CO2の分離回収及び圧縮を実施する発電プラント

【課題】二酸化炭素(CO2)分離回収システムを有する発電設備と定格運転中に最小損失を呈するCO2圧縮機とから構成される発電プラントを最適に運転するための方法を提供すること。
【解決手段】蒸気タービン10を駆動させるために発電設備1からの蒸気を使用して、CO2圧縮機7を発電機8によって駆動させることを可能にする。十分な量の蒸気が、発電設備から確保できる場合、当該蒸気タービンが、係合されたオーバーランニングクラッチ9を介してCO2圧縮機を駆動させる。蒸気が、発電設備から十分に確保できない場合、当該発電機は、電動機として使用される。蒸気が確保不可能か又は蒸気の確保が不十分である時は、オーバーランニングクラッチが外れ、蒸気タービンが停止するか又はアイドリングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2の分離回収及び圧縮を実施する発電プラントを運転する方法及びこの方法を実施する発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
CO2(二酸化炭素)は、主要な温室効果ガスとして認識されている。CCS(二酸化炭素の回収・貯蔵)は、温室効果ガスの大気中への放出を低減して地球温暖化を制御するための可能で優れた手段のうちの1つの手段として考えられている。この文中では、CCSは、CO2の回収、圧縮、搬送及び貯蔵のプロセスとして定義される。回収は、CO2が炭素系燃料の燃焼後の燃料排ガスから取り除かれるか又は燃焼前に炭素を取り除き処理するプロセスとして定義される。燃料排ガス又は燃料ガス流からCO2を取り除くための吸収剤、吸着剤又はその他の手段の再生が、当該回収プロセスの一部とみなされる。
【0003】
最終段階のCO2の回収又はポストコンバッションは、CCPP(コンバインドサイクル発電プラント)を含む化石燃料発電プラントにとって商業的に前途有望な技術である。CO2が、最終段階の回収中に燃料排ガスから取り除かれる。残りの燃料排ガスは、大気中に放出される。当該CO2は、搬送及び貯蔵のために圧縮される。吸収、吸着、膜分離及び極低温分離のような燃料排ガスからCO2を取り除くために知られている幾つかの技術が存在する。
【0004】
燃料排ガスからCO2を取り除くために要求されるエネルギーのほかに、CO2を圧縮するために要求されるエネルギーが重要である。CO2の圧縮に起因した性能ペナルティーを最小限にするため、CO2圧縮機を駆動させるために蒸気タービンを使用することが提唱されている。しかしながら、これらの蒸気タービンは、十分な量の生蒸気の供給力に依存する。この蒸気は、発電プラントの始動中及び/又は部分負荷運転中は確保できない。発電プラントは、発電プラントの種類によっては蒸気が確保できるまで相当な時間を要する。したがって、より柔軟なCO2圧縮機の運転に対しては、CO2圧縮機は、一般に電動機によって動力供給される。当該電動機は、運転の柔軟性を増大させるものの、発電機及び電動機に関する追加の経費、電力損失及び効率損失を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ヨーロッパ特許第1973222号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な課題は、二酸化炭素(CO2)分離回収システムを有する発電設備と設計点に対する定格運転中に最小損失を呈するCO2圧縮機とから構成される発電プラントを最適に運転するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この方法は、CO2分離回収システム及び圧縮機の柔軟な部分負荷運転を可能にする。CO2圧縮機の、COE(電力費)に関する影響が、この課題によって低減され得る。この課題は、商業用発電プラントに対する二酸化炭素の回収・貯蔵(CCS)の早期の導入にとって有益である。
【0008】
この文中では、発電設備又は発電ユニットが、例えばガスタービン、コンバインドサイクル又は水蒸気サイクル運転による石炭燃料ボイラーとしての化石燃料発電プラントと、CO2分離回収装置とから構成される。
【0009】
本発明の要旨は、柔軟な運転方法である。この方法は、発電ユニットからの蒸気を蒸気タービン駆動させるために使用することを可能にする。十分な量の蒸気が、当該発電ユニットから確保可能である場合、この蒸気タービンは、係合されたオーバーランニングクラッチを介してCO2圧縮機を駆動させ、発電機によってCO2圧縮機を駆動させる。十分でない蒸気が、発電ユニットから入手可能である場合、この発電機は、電動機として使用される。蒸気が確保不可能か又は蒸気の確保が不十分である時は、オーバーランニングクラッチが外れ、蒸気タービンが停止するか又はアイドリングする。
【0010】
CO2圧縮機の当該柔軟な運転を実現し、同時に電動機を駆動させる発電機に起因した電力損失及び効率損失を阻止できるようにするため、及び電動機の損失を阻止するため、CO2圧縮機を発電機及び蒸気タービンと共に1つのシャフト上に配置することが提唱される。
【0011】
この配置では、蒸気が確保できない場合、蒸気タービンが、(フリーホイールクラッチ又はSSSクラッチとしても公知の)オーバーランニングクラッチによって発電機から遮断され得る。次いで、CO2圧縮機が、当該発電機によって駆動される。この発電機は、例えばSFC(静止形周波数変換装置)を使用する電動機として運転され得る。
【0012】
CO2圧縮機の部分負荷運転の効率を向上させるため、発電機が、静止形周波数変換装置又はその他の周波数変換装置によって可変速度で運転され得る。CO2圧縮機が、当該発電機単体によって低速で駆動される場合及び蒸気タービン又は蒸気タービン及び発電機の双方の組み合わせによって高速で駆動される場合、可変速度運転が可能である。
【0013】
一般に、発電プラントの正常な定常状態の高い部分負荷及び/又はベース負荷運転中は、蒸気タービンが、オーバーランニングクラッチを介して係合され、CO2圧縮機が、この蒸気タービンによって駆動される。
【0014】
蒸気タービンは、例えば発電機及びCO2圧縮機を駆動させるために寸法決めされている。したがって、発電プラントは通常は、CO2圧縮機を駆動させるために要求される電力を超えている蒸気タービンの余分の出力が、当該発電機によって電力に変換され、配電網内に供給されるように運転される。一実施の形態では、蒸気タービンの出力が、設計条件に対してCO2の出力要求量を加えた発電機の能力に等しいように、当該蒸気タービンが寸法決めされている。
【0015】
さらなる実施の形態では、低い部分負荷運転の間及び/又は蒸気タービンがオーバーランニングクラッチを介して係合されていない間に、CO2圧縮機が、発電機によって駆動されるように、発電プラントが運転される。当該発電機は、この運転モード中は電動機として運転される。低い部分負荷は通常は、発電プラントのベース負荷の30%未満の負荷であるものの、発電プラントの設計に応じて、低い部分負荷運転が、発電プラントのベース負荷の50%までなり得る。蒸気が、コンバインドサイクル発電プラントの段階的な建設に起因して又はコンバインドサイクル発電プラントの蒸気部の故障停止に起因して確保できない場合、当該発電機を、CO2圧縮機を駆動させるための電動機として使用することも有益である。このコンバインドサイクル発電プラントでは、ガスタービンが、シングルサイクルで運転される。
【0016】
さらに、蒸気タービンが、オーバーランニングクラッチを介して発電機及びCO2圧縮機に係合され、当該蒸気タービン及び発電機の双方が、当該CO2圧縮機を駆動させる発電プラントの運転が考えられる。この運転モードは、蒸気が蒸気タービンを駆動させるために確保できるものの、蒸気タービンの電力出力がCO2圧縮機を駆動させるために要求される電力より小さい負荷状態に適している。
【0017】
さらに、本発明の別の実施の形態では、発電プラントが、複数の発電設備から構成される。分離回収されたCO2が、少なくとも1つのCO2マニホールドによってこれらの発電設備から集められる。このCO2マニホールドによって集められたCO2は、複数のCO2圧縮機によって圧縮される。CO2をCO2マニホールド内に集めること及び当該CO2を複数のCO2圧縮機内で圧縮することは、CO2の圧縮の柔軟性を向上させ、部分負荷でのCO2の圧縮の効率を向上させ得る。1つの発電ユニットから分離回収されたCO2の量が、電力出力に比例する。1つのCO2圧縮機が、1つの発電ユニットからのCO2を圧縮するために使用される場合、圧縮機は、CO2の流量の減少に比例して負荷解除される必要がある。しかしながら、CO2圧縮機の効率は、流速の減少と共に減少し、約70%の設計流量より下の流速で低下し、約50%の設計流量より下の流速に対して劇的に減少する。CO2をマニホールド内に集めること及び複数のCO2圧縮機による圧縮は、CO2圧縮機を設計点の近くで運転させることを可能にする。
【0018】
例えば、70%で稼働している4つの発電ユニット及び4つのCO2圧縮機を有する発電プラントは、ベース負荷の70%と75%の間でCO2を生産する。約70%でのCO2圧縮機の運転は、深刻な性能ペナルティーを招きうる。当該提唱したマニホールド及び運転コンセプトは、1つのCO2圧縮機を停止させ、全てのCO2の流量を残っている3つの運転可能なCO2圧縮機で圧縮することを可能にする。この場合、当該残っている3つの運転可能なCO2圧縮機は、これらのCO2圧縮機の設計点の近くで高効率に稼働する。
【0019】
さらに、例えば、オペレーターが、性能又は耐用年限の理由のために当該発電ユニットのうちの1つの発電ユニットを異なる負荷レベルで運転することを決定した場合、当該CO2圧縮機が、その1つの発電ユニットに追従する。最低の負荷レベルで稼働しているこの発電ユニットは、最低のCO2質量流量でこれに応じて低い効率で稼働する。CO2の圧縮に対する全体の効率は、稼働している全てのCO2圧縮機にCO2の質量流量を均等に分配することによって上げられ得る。
【0020】
CO2圧縮機の柔軟性をさらに増大させるため、及びCO2圧縮機の部分負荷での効率を向上させるため、少なくとも1つのCO2圧縮機を可変速度で運転することが提唱される。少なくとも1つのCO2圧縮機を可変速度で運転するため、このCO2圧縮機は、速度制御装置を有する発電機若しくは蒸気タービン又はこれらの双方によって駆動される。発電機の可変速度運転を可能にするため、発電機は、例えば運転速度に依存しない配電網接続を可能にするためのマトリクスコンバータ又はその他の種類の周波数変換装置を有する発電機として構成され得る。「マトリクスコンバータを有する発電機」とも呼ばれる発電機とマトリクスコンバータとの最適な組み合わせが、例えば先行技術文献として示されているヨーロッパ特許第1973222号明細書から公知である。
【0021】
本発明の一実施の形態は、CO2圧縮機を有する発電プラントの始動、部分負荷運転及び停止を実施する方法に関する。CO2が、1つの発電ユニットから分離回収されると、蒸気タービンを駆動させるための蒸気が確保できないか又は十分な蒸気が確保できない場合は発電機のアシストを受けて、CO2圧縮機が始動され運転され得る。当該蒸気タービンが、オーバーランニングクラッチのアシストを受けて発電機から遮断される。当該蒸気タービンが一端始動すると、十分な量の蒸気が、負荷中に確保可能である。蒸気タービンが、運転速度に達した時に、クラッチが係合する。蒸気タービンの出力が増大すると共に、SFC制御される発電機の出力が低減される。蒸気タービンの出力が、CO2圧縮機を駆動させるのに十分である時点で、静止形周波数変換装置が遮断され、当該発電機が、配電網に同期され得る。次いで、蒸気タービンの出力がさらに増大され、当該発電機が当該配電網に同期され、電力が当該配電網に供給され得る。負荷解除及び停止は、逆順に実施される。当該蒸気タービンの出力が、CO2圧縮機を駆動させるには小さ過ぎると、CO2圧縮機の直接の停止も考えられる。
【0022】
当該方法のほかに、この方法を可能にするために設計された発電ユニットを構成する発電プラント、CO2分離回収システム及びCO2圧縮機が、本発明の対象である。説明した当該方法を可能にするため、CO2圧縮機が、発電機及び蒸気タービンを有する1つのシャフト上に配置されている。この蒸気タービンは、オーバーランニングクラッチを介して発電機に係合可能に連結されている。この発電機自体が、CO2圧縮機に連結されている。
【0023】
当該発電機は、発電機として運転される場合は配電網に給電するための当該配電網に接続可能であり、電動機として運転され得る。発電プラントの柔軟性をさらに増大させるため、発電機は、この発電機の配電網接続を可能にし、CO2圧縮機の可変運転速度を可能にするマトリクスコンバータを有する発電機として構成され得る。
【0024】
別の実施の形態では、高速で稼働するCO2圧縮機を駆動させるため、機械式歯車が、発電機と発電機との間に配置されている。したがって、商用周波数、例えば50Hz又は60Hzで稼働する発電機及び/又は蒸気タービンでさえも、当該CO2圧縮機はより高速で運転され得る。一般に、歯車は、1.5より大きい速度伝達比を有する。例えば、100Hzの速度を有するCO2圧縮機が、歯車を介して50Hzで稼働している発電機又は蒸気タービンによって駆動され得る。
【0025】
別の実施の形態では、CO2圧縮機、発電機及び蒸気タービンが、商用周波数と異なる速度で稼働する。速度又は周波数は通常は、CO2圧縮機の寸法及び設計に応じて商業周波数より高い。より高い速度で運転を可能にするため、CO2圧縮機を駆動させる発電機は、マトリクスコンバータを有する発電機又は発電機と周波数変換装置とを組み合わせたものである。さらに、蒸気タービンは、CO2圧縮機を高い速度で運転させるために設計されている。
【0026】
一実施の形態では、発電ユニットは、ガスタービン、HRSG(排ガスボイラ)及び蒸気タービンから構成されるCC(コンバインドサイクル発電プラント)である。HRSG及びCCの蒸気タービンは通常は、マルチプレッシャーシステムである。例えば、蒸気を高圧タービン、中圧タービン及び低圧タービンに供給する三重圧式のHRSGが、この用途に対して適している。
【0027】
CC発電プラントのプラント最適化のため、ガスタービンを始動するためのガスタービン発電機に接続可能である静止形周波数変換装置も、この発電機に接続可能である。この発電機は、CO2圧縮機のシャフト上に配置され、このCO2圧縮機を連続的に駆動させるために寸法きめされ設計されている。
【0028】
CCから構成されている発電プラントのさらなる実施の形態では、CCガスタービンの排気ガスの一部が、ガスタービンの吸気中に再循環されて、排気ガス中の二酸化炭素を増大させる結果、効果的なCO2の除去を促進する。
【0029】
一実施の形態では、発電プラントが、複数の発電ユニットと複数のCO2圧縮機とから構成される。これらの発電ユニットの燃焼排ガスから分離回収されたCO2が、配管を含む少なくとも1つのCO2マニホールド内に集められ、次いで搬送されて当該CO2圧縮機に供給される。
【0030】
一実施の形態では、複数の発電機のうちの少なくとも1つの発電機が、マトリクスコンバータを有する発電機として構成されている。少なくとも1つの発電機が、配電網に直接接続されていて且つ商業周波数で運転される。このマトリクスコンバータを有する発電機は、CO2圧縮機の効果的な部分負荷運転を可能にする。CO2質量流量の変化量は、可変速度で稼働している少なくとも1つの当該発電機によって主に調整される。CO2質量流量の大きい変化は、CO2圧縮機をオン・オフすることによって調整される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】CO2分離回収システム、CO2圧縮機、発電機及びCO2圧縮機を駆動する蒸気タービンを有する発電プラントを概略的に示す。
【図2】CO2分離回収システム、CO2圧縮機、発電機及びCO2圧縮機を駆動する蒸気タービンを有するコンバインドサイクル発電プラントを概略的に示す。
【図3】CO2分離回収システム、CO2圧縮機、発電機及びCO2圧縮機を駆動する背圧蒸気タービンを有するコンバインドサイクル発電プラントを概略的に示す。
【図4】複数のCO2分離回収システムを有する複数の発電設備と複数のCO2圧縮機とを備えた発電プラントを概略的に示す。各CO2圧縮機は、1つの発電機とこのCO2圧縮機を駆動する蒸気タービンとにシャフトを介して連結されて配置されている。
【図5】1つのCO2分離回収システム及び1つのCO2圧縮機を有するコンバインドサイクル発電プラントを概略的に示す。このコンバインドサイクル発電プラントでは、CO2圧縮機が、このコンバインドサイクル発電プラントの蒸気タービン及び/又は発電機によって駆動される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、添付図面に基づいて本発明、その性質及びその利点を詳しく説明する。
【0033】
提唱された方法を実施する発電プラントは、CO2分離回収システムを有する発電設備1、CO2圧縮機7、発電機8、オーバーランニングクラッチ9及び蒸気タービン10から構成される。
【0034】
典型的な配置が、図1中に示されている。燃料2及び周囲空気3が、発電設備1に供給される。発電設備1は、少なくとも1つの蒸気サイクルを有する通常の化石燃料発電プラントから構成される。この発電設備1は、例えばコンバインドサイクル発電プラント、通常の石炭火力蒸気発電プラント又は石炭ガス化複合発電プラントでもよい。この発電設備は、CO2分離回収システムから構成される。このCO2分離回収システムは、発電工程中に発生したCO2を取り除く。一般に、CO2は、最終段階の分離回収工程中に燃料排ガスから取り除かれるものの、石炭ガス化複合発電プラントの場合のように、発電工程中に取り除かれてもよい。
【0035】
送電線36を経由して配電網に給電される電力のほかに、当該発電設備は、CO2が減損した燃料排ガス5を生産する。当該燃料排ガス5は、濃縮CO2 6の大量の流量を経て大気に放出される。さらに、生蒸気15が、発電設備1の蒸気サイクルから分岐される。
【0036】
さらに、発電プラント20は、シャフト35に沿って配置されているCO2圧縮機7、発電機8及び蒸気タービン10を有する。蒸気タービン10は、オーバーランニングクラッチ9を介して発電機8に係合可能に連結されている。
【0037】
蒸気タービン制御バルブ17が、蒸気タービン10を駆動させる生蒸気15の流量を制御する。十分な蒸気が確保可能である場合、蒸気タービン10が、稼働可能であって自動的に係合するオーバーランニングクラッチ9及びシャフト35を介して発電機8及びCO2圧縮機7を駆動させる。蒸気タービン10は、発電機8と組み合わせたCO2圧縮機7だけを駆動するために稼働され得るか又はCO2圧縮機7及び発電機8を駆動するために稼働され得る。
【0038】
蒸気タービン10が、CO2圧縮機だけを駆動させる場合、発電機8は、好ましくは励磁なしにアイドル回転する。
【0039】
蒸気タービン10が、発電機8と共にCO2圧縮機7を駆動させる場合、発電機は、静止形周波数変換装置11でアシストされつつ電動機として稼働される。図示された例では、発電機8が、静止形周波数変換装置の電気接続12を経由して静止形周波数変換装置11に接続されている。この静止形周波数変換装置11自体が、静止形周波数変換装置の配電網接続13によって配電網に接続されている。
【0040】
蒸気タービン10が、CO2圧縮機7及び発電機8を駆動させる場合、発電機8は、配電網接続14を通じて配電網14に電力を配電する。
【0041】
蒸気タービン10を駆動させるための蒸気が確保できないか又は十分に確保できない場合、オーバーランニングクラッチが係合しないで、蒸気タービンが停止したままか又は減速してアイドリング状態にある。この場合、発電機8が、CO2圧縮機7を駆動させる。発電機8は、静止形周波数変換装置11でアシストされて電動機として再稼働される。図示された例では、発電機8が、静止形周波数変換装置の電気接続12を経由して静止形周波数変換装置11に接続されている。この静止形周波数変換装置11自体が、静止形周波数変換装置の配電網接続13によって配電網に接続されている。
【0042】
電気スイッチ、制御線等は、本発明の課題ではないので、当該電気接続は、これらの電気スイッチ、制御線等なしに概略的に示されている。同じ理由のため、コントローラ及び測定センサは示されていない。
【0043】
図2は、発電設備1としてコンバインドサイクル発電プラントを有する例を示す。このCCは、ガスタービン、排ガスボイラ(HRSG)24及びCO2分離回収システム25を有する。
【0044】
当該ガスタービンは、少なくとも1つの圧縮機21、少なくとも1つの燃焼室22及び少なくとも1つのタービン23を有する。一般に、発電機が、ガスタービンの低温の端部、例えばガスタービンの圧縮機の端部に接続されている。
【0045】
流入ガスが、定格運転中に圧縮機21内で圧縮される。当該圧縮ガスが、燃焼室22内で燃料2を燃焼するために使用される。そして、加圧された高温ガスが、タービン23内で膨張する。このタービン23の主な出力は、配電網への電力及び高温の燃焼排ガス34である。異なる蒸気圧力レベル、給水ポンプ等は、本発明の課題ではないので、蒸気サイクルは、これらの異なる蒸気圧力レベル、給水ポンプ等なしに簡略化して概略的に示されている。
【0046】
当該ガスタービンの高温の燃焼排ガス34は、HRSG24通過する。このHRSG24は、蒸気タービン30用の生蒸気15を発生させる。蒸気タービン30は、ガスタービン及びGT発電機28を有するシングルシャフト構造内に配置されているか又は図2中に示されたようにST発電機32を駆動させるマルチシャフト構造内に配置されている。さらに、蒸気が、抽出され、蒸気配管26を経由してCO2分離回収システム25に供給される。蒸気は、低圧及び低温で又は復水として戻り配管19を経由して蒸気サイクルに戻され、この蒸気サイクルに再導入される。異なる蒸気圧レベル、給水ポンプ等は、本発明の課題ではないので、この蒸気サイクルは、当該異なる蒸気圧レベル、給水ポンプ等なしに簡略化され概略的に示されている。一般に、排出水蒸気は、CO2分離回収システム25で使用される。この排出水蒸気は、例えば圧縮機30から抽出される。
【0047】
CO2分離回収システム25の効率を向上させるため、HRSG24からの燃焼排ガスの部分流が、燃料排ガス再循環流のために分岐される。この燃焼排ガスの部分流4は、ガスタービンの圧縮機21の吸気口へ再循環される。この燃焼排ガスの部分流4は、周囲空気3と混合される。一般に、この燃焼排ガスの部分流4は、周囲空気3と混合する前に(図示しなかった)再循環燃料排ガス冷却器内で冷却される。
【0048】
HRSG24からの燃料排ガスの残りの燃料排ガスは、CO2分離回収システム25に向けられる。一般に、燃料排ガスの分流は、ダンパーによって制御され得る。燃料排ガス流を強めるため及び再循環率を制御するため、燃料排ガス流又はCO2分離回収システムに対する可変速燃料排ガス送風機が設置されてもよい。さらに、燃料排ガス送風機又は再循環用の可変速燃料排ガス送風機が設置されてもよい。一般に、この送風機は、燃料排ガス再循環流4を周囲空気3と混合する前の、再循環燃料排ガス冷却器の下流に設置される。
【0049】
CO2が減損した燃焼排ガス5は、CO2分離回収システム25からスタックを経由して環境へ放出される。CO2分離回収システム25が稼働していない場合、(図示しなかった)燃料排ガスバイパスが、CO2分離回収システム25を迂回するために一般に考えられる。濃縮CO2 6が、CO2圧縮機7に向けられる。
【0050】
分離回収された当該CO2 6は、定格運転中にCO2圧縮機7によって圧縮される。当該圧縮CO2は、貯蔵又はさらなる処理のために転送される。
【0051】
図3は、図2中に示された発電プラントを変更したものを示す。この例では、蒸気タービン10が、背圧蒸気タービンとして構成されている。蒸気タービン10から排出された低圧蒸気31が、CO2分離回収システム25に供給される。規模、運転条件及びCO2分離回収システム25によっては、低圧蒸気31は、当該CO2分離回収システムに対して十分でありうる。図3のこの例では、運転の柔軟性を増すため、HRSGからCO2分離回収システム25への追加の蒸気供給配管が示されている。
【0052】
一般に、大規模な発電プラントは、1つの発電設備だけではなくて複数の発電設備から構成される。特に、コンバインドサイクル発電プラントは、多くの場合に複数のガスタービンを有する。これらのガスタービンは、1つのシャフト上に1つのガスタービン及び1つの蒸気タービンを有するシングルシャフト伝動機構として配置されているか又は独立したシャフト上に複数の蒸気タービン及び複数のガスタービンを有するいわゆるマルチシャフトのシャフトとして配置されている。マルチシャフトの配置に対しては、幾つかのガスタービンのHRSGから発生された蒸気が、多くの場合に1つの蒸気タービンを駆動させるために使用される。
【0053】
図4は、3つの発電設備1及び2つのCO2圧縮機7を有する発電プラントを概略的に示す。この例では、これらの発電設備1の全てが、固有の1つのCO2分離回収システムを有する。各CO2圧縮機7は、このCO2圧縮機7を駆動させるための発電機8及び蒸気タービン10を有する1つのシャフト上に配置されている。濃縮CO2 6は、CO2マニホールド16によって3つの発電設備1から集められ、このマニホールドを還流し、2つのCO2圧縮機7に搬送される。当該CO2分離回収システムによって分離回収される濃縮CO2 6の質量流量に応じて、1つ又は双方のCO2圧縮機7が稼働状態にある。3つの発電設備1から蒸気マニホールドを経由して2つの蒸気タービン10に供給される生蒸気15の供給力に応じて、1つ又は双方の蒸気タービン10が、それぞれのCO2圧縮機7を駆動させるか、又は、当該CO2圧縮機7が、発電機8だけによって駆動されるか若しくは当該蒸気タービン10及び当該発電機8の双方によって駆動される。1つの蒸気制御バルブ18が、各発電設備1からの生蒸気15の流量を制御する。個々の蒸気タービン10に供給される蒸気は、1つの蒸気タービン制御バルブ17によって制御される。蒸気タービン10から排出される蒸気が、集められて排出水蒸気/復水リターンマニホールド19を経由して発電設備1に戻される。
【0054】
図5は、CO2分離回収システム及び統合されたCO2圧縮システムを有するコンバインドサイクル発電プラントを示す。このCO2圧縮システムは、当該コンバインドサイクル発電プラントにさらに結合されている。この場合、CCの蒸気部の蒸気タービン30が、オーバーランニングクラッチ9を介して発電機32を駆動させるために使用される。この配置では、追加の蒸気タービン10が、発電機32及びCO2圧縮機7を駆動させるために要求されないため、CO2を分離回収するための追加のコストを低減する。しかしながら、当該CO2圧縮機が、可変の速度で運転される場合、大型の蒸気タービン30が、この速度で運転される必要がある。図5中に示されたこの例では、低圧蒸気31が、蒸気タービン30から抽出されて当該CO2分離回収システムに供給される。一般に、蒸気タービン30は、異なる圧力レベル、例えば高圧蒸気、中圧蒸気及び低圧蒸気31で稼働する2つ又は3つの蒸気タービンの配置である。これらの蒸気タービンのうちの1つの蒸気タービンから蒸気を抽出するための別の構成として、低圧蒸気31が、中圧蒸気タービンの排気口から取り出され得る。
【0055】
上述した実施の形態及び図面中の実施の形態は、当業者にとっては典型的な実施の形態とは異なる実施の形態であって本発明の範囲内に含まれる。
【0056】
例えば、4つのGTを有する1つのCCで3つのCO2圧縮機だけを使用することが有益であることもある。これらのCO2圧縮機のうちの1つのCO2圧縮機が、例えばマトリクスコンバータを有する発電機を通じて可変速度で運転され、その他の2つのCO2圧縮機が一定速度で運転される。非常に小さいCO2質量流量に対しては、可変速CO2圧縮機だけが稼働している。当該質量流量が、第1CO2圧縮機の能力を超えると、第2圧縮機が、設計速度で始動して運転される。第3圧縮機の運転が必要になるまで、当該可変速圧縮機が、流量の変化を制御するために再び使用される。最終的に、設計速度で稼働している2つのCO2圧縮機と共に、当該可変速CO2圧縮機が、CO2の流量に対応する要求に対して運転される。
【0057】
最終的な選択は、CO2圧縮機の寸法限界、追加のコスト、並びにCO2圧縮機の数及び速度制御される発電機の数、例えばマトリクスコンバータを有する発電機の数を考慮した資本的支出(CAPEX)及び性能のトレードオフによって決定される。さらに、静止形周波数変換装置が発電機と一緒に使用されることが説明されている全ての例では、この組み合わせ(静止形周波数変換装置+発電機)は、マトリクスコンバータと組み合わせた発電機によって交換され得る。
【符号の説明】
【0058】
1 発電設備、発電ユニット
2 燃料供給
3 周囲空気、吸気
4 燃料排ガス再循環流(任意)
5 CO2が減損した燃焼排ガス
6 濃縮CO2
7 CO2圧縮機
8 発電機
9 オーバーランニングクラッチ
10 蒸気タービン
11 静止形周波数変換装置(SFC)
12 静止形周波数変換装置から駆動発電機への電気接続
13 静止形周波数変換装置の配電網接続
14 発電機から配電網への電気接続
15 生蒸気
16 CO2マニホールド
17 蒸気タービン制御バルブ
18 蒸気制御バルブ
19 排出水蒸気/復水リターンマニホールド
20 発電プラント
21 ガスタービン圧縮機
22 ガスタービン燃焼室
23 ガスタービン
24 排ガスボイラ
25 CO2分離回収システム
26 CO2分離回収システムへの蒸気配管
27 蒸気タービン30への蒸気配管
28 ガスタービン発電機
29 圧縮機
30 蒸気タービン
31 低圧蒸気
32 水蒸気発電機
33 圧縮CO2
34 ガスタービン燃焼排ガス
35 シャフト
36 送電線
GT ガスタービン
ST 蒸気タービン
CC コンバインドサイクル発電プラント
CO2 二酸化炭素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO2分離回収システムを有する発電設備(1)とCO2圧縮機(7)とから構成されている発電プラント(20)において、
蒸気タービン(10)が、オーバーランニングクラッチ(9)を介して発電機(8)に係合可能に連結されていて、前記発電機(8)は、電力を配電網に給電するためのこの配電網に接続可能であり且つ電動機として運転可能であり、前記発電機(8)は、前記CO2圧縮機(7)に機械式に連結されていることを特徴とする発電プラント(20)。
【請求項2】
歯車が、前記CO2圧縮機(7)と前記発電機(8)との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の発電プラント(20)。
【請求項3】
前記発電機(8)は、前記CO2圧縮機(7)の運転速度に依存せずに前記発電機(8)の配電網接続を可能にするマトリクスコンバータを有する発電機又は発電機と周波数変換装置とを組み合わせたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の発電プラント(20)。
【請求項4】
前記発電設備(1)は、ガスタービン、排ガスボイラ(24)、蒸気タービン(30)及びCO2分離回収システム(25)から構成されているコンバインドサイクル発電プラントであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発電プラント(20)。
【請求項5】
燃料排ガス再循環流(4)が、前記コンバインドサイクル発電プラントのガスタービンの吸気(3)中に再循環されることを特徴とする請求項4に記載の発電プラント(20)。
【請求項6】
前記発電プラント(20)は、CO2マニホールド(16)によって連結されている複数の発電設備(1)及び複数のCO2圧縮機(7)から構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の発電プラント(20)。
【請求項7】
前記CO2圧縮機(7)の設計運転速度が、商業周波数と異なることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の発電プラント(20)。
【請求項8】
二酸化炭素(CO2)分離回収システム、発電機(8)、蒸気タービン(10)及びCO2圧縮機(7)から構成されている発電プラント(20)を運転するための方法において、
前記蒸気タービン(10)を駆動させる蒸気が十分に確保できない場合、前記発電機(8)は、CO2圧縮機に対してはCO2圧縮機(7)を駆動するための電動機として運転されていること、及び、十分な蒸気が確保できる場合、前記蒸気タービン(10)は、係合しているオーバーランニングクラッチを介して前記CO2圧縮機(7)を駆動させることを特徴とする発電プラント(20)を運転するための方法。
【請求項9】
前記発電プラント(20)の正常な定常状態の高い部分負荷及び/又はベース負荷運転中は、前記蒸気タービン(10)が、前記オーバーランニングクラッチ(9)を介して係合され、前記CO2圧縮機(7)が、前記蒸気タービン(10)によって駆動されることを特徴とする請求項8に記載の発電プラント(20)を運転するための方法。
【請求項10】
前記CO2圧縮機(7)を駆動させるために要求される電力を超えている前記蒸気タービン(10)の余分の出力が、前記発電機(8)によって電力に変換され、配電網内に供給されることを特徴とする請求項9に記載の発電プラント(20)を運転するための方法。
【請求項11】
前記発電設備(1)の低い部分負荷運転及び/若しくは負荷中に、又は、コンバインドサイクル発電プラントの段階的な建設に起因して又はコンバインドサイクル発電プラントの蒸気部の故障停止に起因して確保できない場合、前記蒸気タービン(10)が、前記オーバーランニングクラッチ(9)を介して係合されていないこと、及び、前記CO2圧縮機(7)が、この運転モード中に電動機として運転されている前記発電機(8)によって駆動されることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の発電プラント(20)を運転するための方法。
【請求項12】
前記蒸気タービン(10)は、前記オーバーランニングクラッチ(9)を介して前記発電機(8)及び前記CO2圧縮機(7)に係合されていて、前記発電機(8)は、電動機として運転されていて、蒸気が確保できるものの、前記蒸気タービン(10)の電力出力が、前記CO2圧縮機(7)を駆動させるために要求される電力より小さい場合、前記蒸気タービン(10)と前記発電機(8)との双方が、前記CO2圧縮機(7)を駆動させることを特徴とする請求項8に記載の発電プラント(20)を運転するための方法。
【請求項13】
複数の発電設備(1)から分離回収されたCO2が、CO2マニホールドによって集められ、複数のCO2圧縮機(7)によって圧縮されることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の発電プラント(20)を運転するための方法。
【請求項14】
稼働している全てのCO2圧縮機(7)にわたってCO2質量流量を均等に分配するため、発電プラント(20)の負荷が、部分負荷運転に対してCO2圧縮機(7)を負荷解除する間に前記複数の発電設備(1)を異なる負荷レベルに対して負荷解除することによって減少されることを特徴とする請求項13に記載の発電プラント(20)を運転するための方法。
【請求項15】
少なくとも1つのCO2圧縮機(7)が、前記発電機(8)及び/又は前記蒸気タービン(10)によって駆動されること、及び、前記CO2圧縮機(7)の速度が、CO2の流量を制御するために可変に調整されること、及び/又は、少なくとも1つの発電機(8)が、運転速度に依存しない配電網接続を可能にするためのマトリクスコンバータを有する発電機として構成されているか又は周波数変換装置を介して前記配電網に接続されていることを特徴とする請求項8〜14のいずれか1項に記載の発電プラント(20)を運転するための方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−256870(P2011−256870A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128957(P2011−128957)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】