説明

CO2インキュベータ

【課題】インキュベータを用いて培養物を培養した後に、細胞や微生物等の先の培養物自体又は同培養物に寄生していた菌やウイルス等が培養室の内壁に付着していたり、培養室内を浮遊していたりするため、次の培養物の汚染を回避するべく、培養室内の滅菌又は殺菌処理を行なう装置の提供。
【解決手段】外部から供給されるCOガスを培養室内に取り込むためのバルブ18を設けて培養室内を所定のCOガス濃度に制御するCOインキュベータであって、殺菌効果を有するガスを発生する殺菌ガス発生装置7、12と、紫外線を発する紫外線ランプ11と、扉を施錠する電気錠32と、殺菌ガス発生装置によってガス(オゾンガス、過酸化水素ガス)を発生させて庫内を殺菌した後、紫外線ランプを点灯してガスを分解促進するよう制御する制御装置とを備えた装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COインキュベータに関する。
【背景技術】
【0002】
培養物を収納する培養室内に二酸化炭素(CO)ガスを供給するための手段と、培養室内のCOガスの濃度を検出するためのセンサとを備え、COガスの濃度に応じて、COガスの供給量を制御するCOインキュベータ(以後、「インキュベータ」と称する)が知られている。
【0003】
このようなインキュベータを用いて培養物を培養した後にこれを変更する場合、細胞や微生物等の先の培養物自体又は同培養物に寄生していた菌やウイルス等が培養室の内壁に付着していたり、培養室内を浮遊していたりするため、これらによる次の培養物の汚染を回避するべく、培養室内の滅菌又は殺菌処理(以後、「殺菌処理」と称する)を行なう必要がある。
【0004】
このような殺菌処理は、例えばアルコールや消毒液等で培養室内を拭き清掃することによって行なわれていた。
或いは、例えば殺菌灯としての紫外線ランプ等を培養室内で点灯することによって、同培養室内の殺菌処理が行われていた(例えば、特許文献1参照)。
また或いは、例えば強い酸化作用を有するとされているオゾン(O)ガス等を培養室内に供給することによって、殺菌処理が行われていた(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−166536号公報
【特許文献2】特開2004−267064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示されるインキュベータでは、有毒なオゾンガスが用いられるため、オゾンガスの使用が終了してから、培養室内の残留オゾンガスが自然に分解して次の培養物及び人体にとって影響を及ぼさない許容濃度に減少するまでに時間がかかる。このような残留オゾンガスの自然分解を待つ時間を含めた時間を広義の殺菌処理時間とすれば、この殺菌処理時間が長くなることによって、先の培養から次に培養への移行が遅れるという問題がある。
【0006】
一方、特許文献1に開示されるインキュベータでは、培養室内で紫外線が照射されない例えば陰の部分には殺菌効果が及ばないため、前述したオゾンガス等を用いる場合に比べて、殺菌処理が不完全になる虞がある。また、培養室内を拭き清掃する方法では、前述したオゾンガスを用いる場合に比べて、殺菌処理が不完全になる虞があるのみならず、同方法は、利用者に大きな作業負担をかけるため、そもそもこのようなインキュベータ自体の導入が敬遠される虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための発明は、培養物を収納する培養室と当該培養室の開口を開閉自在に閉塞する扉と、外部から供給されるCOガスを前記培養室内に取り込むためのバルブとを設けて前記培養室内を所定のCOガス濃度に制御するCOインキュベータであって、前記培養室内の空気を循環させるファンと、殺菌効果を有するガスを発生する殺菌ガス発生装置と、紫外線を発する紫外線ランプと、前記扉を施錠する電気錠と、前記殺菌ガス発生装置によってガスを発生させて庫内を殺菌した後、前記紫外線ランプを点灯して当該ガスを分解促進するよう制御する制御装置とを備え、当該制御装置は、前記殺菌ガス発生装置によって殺菌ガスを発生させてから前記紫外線ランプを点灯して当該ガスを分解終了するまでの間、前記電気錠により前記扉を施錠したままとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、培養室内を確実に殺菌できる上に殺菌処理時間を短縮できるCOインキュベータを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
===インキュベータの構成===
図1及び図2を参照しつつ、本実施の形態のインキュベータ1の構成例について説明する。図1は、インキュベータ1の一例の側面断面図である。図2は、図1のインキュベータ1の制御を司る構成の一例を示すブロック図である。尚、図1の例示では、X軸はインキュベータ1の横幅方向を示し、Y軸はインキュベータ1の奥行方向を示し、Z軸はインキュベータ1の高さ方向を示すものとする。
【0010】
図1及び図2に例示されるように、インキュベータ1は、チャンバー4と、ダクト10と、ファン6と、過酸化水素ガス発生装置(殺菌ガス発生装置)7と、オゾンガス発生装置(殺菌ガス発生装置)12と、紫外線ランプ11と、電気錠32と、制御装置100とを備えている。
【0011】
尚、本実施の形態では、インキュベータ1は、殺菌ガスとして、過酸化水素(H)ガス及びオゾンガスの双方を使用可能となっており、殺菌処理に際して、何れか一方を選択的に使用するようになっている。特に、過酸化水素ガス発生装置7は、図1において点線で表わされるように、殺菌処理時のみチャンバー4の内部に設置され、例えば培養時には同チャンバー4から取り外されている。但し、以上に限定されるものではなく、インキュベータ1は、例えば、過酸化水素ガス発生装置7及びオゾンガス発生装置12の何れか一方のみを備えているものであってもよい。
【0012】
<チャンバー>
チャンバー4は、その内部に、培養物を収納する培養室40と、後述するダクト10とを有する例えばステンレス製の略直方形状の箱であり、その奥行方向の前側の開口にはヒンジ(不図示)を介して開閉可能な内扉5が設けられている。内扉5は、例えば強化ガラス製の平板であり、チャンバー4の開口をパッキン(不図示)を介して閉じると、同チャンバー4の内部が外部に対し気密になるように構成されている。
【0013】
また、チャンバー4は、例えば金属製で同チャンバー4と略相似形状をなす外箱2に収容されている。この外箱2の奥行方向の前側の開口にはヒンジ(不図示)を介して開閉可能な外扉3が設けられている。外扉3は、外箱2の開口をパッキン33を介して閉じると、同外箱2の内部が外部に対し気密になるように構成されている。
【0014】
更に、チャンバー4の壁と外箱2の壁との間には、エアジャケットが形成されており、同エアジャケット内には、不図示の断熱材とともに不図示のヒータが設けられている。また、この断熱材及びヒータは、外扉3の内側にも設けられている。このヒータによって、例えば培養時及び殺菌処理時の双方において、チャンバー4の内部の温度を調節できる。
【0015】
尚、培養室40では、その横幅方向に対をなす内壁に対し、培養物を載置するための例えばステンレス製の棚41が支持されている。
【0016】
<ダクト>
ダクト10は、チャンバー4の例えば奥行方向の後側の壁と、同チャンバー4の内部にあって同壁と対向する例えばステンレス製の壁板9との間に形成されている。この壁板9によって、チャンバー4の内部は、培養室40と、ダクト10とに分けられる。
【0017】
また、ダクト10内には、ファン6、オゾンセンサ16、過酸化水素センサ15、COセンサ14、O(酸素)センサ13、オゾンガス発生装置12等が設けられている。
【0018】
オゾンセンサ16、過酸化水素センサ15、COセンサ14、及びOセンサ13のそれぞれにおける配線側(庫内側のヘッドとは反対側)の部分は、外箱2の壁を貫通して同壁の外側に露出している。また、オゾンガス発生装置12は、チャンバー4の奥行方向の後側の壁に形成された2つの孔4a、4bに対し例えばステンレス製の管を介して連通しており、これらの管及びオゾンガス発生装置12の本体は、外箱2の壁を貫通して同壁の外側に露出している。これらの露出部分は、例えば、内側にヒータを備えた保護箱(不図示)によって覆われている。但し、このような構成に限定されるものではなく、オゾンガス発生装置12の本体及び各種センサ13、14、15、16の配線側部分は、例えば、チャンバー4の奥行方向の後側の壁と、外箱2の奥行方向の後側の壁との間にあってもよい。
【0019】
<ファン>
ファン6は、ダクト10内の上側に設けられるシロッコファンである。培養時及び殺菌処理時において、このファン6が一定方向に回転することにより、培養室40内の例えば棚41が配置された領域では下側から上側へ空気の流れが生じるとともに、ダクト10内では上側から下側へ空気の流れが生じる(図1の白抜きの矢印参照)。
【0020】
具体的には、先ず、ファン6の回転によって、培養室40内の上側の空気は、壁板9の上側の孔9aを通じてダクト10内に吸い込まれ、同ダクト10内の上側から下側へ流れた後、同ダクト10の下側の開口部から吐き出され、次に、培養室40内の棚41が配置された領域を下側から上側に流れる。
【0021】
このような空気の循環によって、チャンバー4の内部の空気が攪拌されるため、培養時には、チャンバー4の内部のCOガス又はOガスの濃度が略均一になり、殺菌処理時には、チャンバー4の内部のオゾンガス又は過酸化水素ガスの濃度が略均一になる。
【0022】
<殺菌ガス発生装置>
過酸化水素ガス発生装置7は、例えば、過酸化水素水を超音波振動子(不図示)によって霧化することによって、過酸化水素ガスを発生させる。超音波振動子を駆動するための電力は例えばインキュベータ1の電源から供給される。但し、これに限定されるものではなく、過酸化水素ガス発生装置7は、例えば、過酸化水素水を収容する容器と、同容器を加熱するヒータとからなるものであってもよい。過酸化水素水をヒータで加熱することによって、過酸化水素ガスを発生させる。ここで、ヒータは、チャンバー4の内部の温度を調節するための前述したヒータで兼用してもよい。
【0023】
尚、前述したように、過酸化水素ガス発生装置7は、殺菌処理時のみチャンバー4の内部に設置され、培養時には同チャンバー4から取り外されているため、図2での例示は省略されている。過酸化水素ガス発生装置7をチャンバー4の内部に設置して殺菌処理を行う場合、制御装置100は、コントロールパネル31上の操作を受けて、例えば超音波振動子の駆動開始及び駆動停止等を行なうようになっている。
【0024】
オゾンガス発生装置12は、例えば、チャンバー4の孔4bと連通するオゾンガス供給部(不図示)と、チャンバー4の孔4aと連通するオゾンガス排気部(不図示)とを備えている。オゾンガス供給部は、不図示のOガスボンベからのOガスから放電等によってオゾンガスを生成して同ガスを含む空気をチャンバー4に供給し、オゾンガス排気部は、チャンバー4からのオゾンガスを含む空気を不図示の分解装置を経由して同チャンバー4の外部に排気する。
【0025】
<紫外線ランプ>
紫外線ランプ11は、例えばダクト10の下側の開口部に設けられて、殺菌処理時に用いられた過酸化水素ガスやオゾンガス等を分解するための紫外線を発生する。このように、培養室40内の残留殺菌ガスの分解を促進することによって、殺菌ガスの使用が終了してから、残留殺菌ガスが次の培養物及び人体にとって影響を及ぼさない許容濃度に減少するまでの時間を短縮できる。このような残留殺菌ガスの分解を待つ時間を含めた時間を広義の殺菌処理時間とすれば、この殺菌処理時間が短くなることによって、先の培養物の培養から次の培養物の培養への移行を円滑に行なえる。
【0026】
また、紫外線ランプ11には、例えば光学フィルタ等が設けられて、200nm以下の波長の紫外線が減衰した紫外線を発生するようになっている。これにより、短波長(200nm以下)の紫外線の照射に起因して例えばダクト10内の空気や水蒸気等からオゾンガスが発生する事態が抑制されるため、結果的に、残留オゾンガスに対する紫外線ランプ11の分解効率がより一層向上する。
【0027】
尚、紫外線ランプ11は、例えば、ファン6の回転によってダクト10から吐き出される空気や、チャンバー4の底面に載置される水皿(不図示)中の水等に対し、同ランプ11からの紫外線が届く範囲内で、殺菌処理を行うこともできる。
【0028】
<電気錠>
電気錠32は、外扉3に設けられており、コントロールパネル31上の操作を通じて又は制御装置100からの直接の命令によって、同外扉3が外箱2の開口を閉じた状態で電気的に施錠したり、同施錠を解除したりする。
【0029】
<制御装置>
制御装置100は、図2に例示されるように、前述した、ファン6を駆動するファンモータ6a、過酸化水素ガス発生装置7、オゾンガス発生装置12、紫外線ランプ11、及び電気錠32を統括制御する。
【0030】
また、インキュベータ1は、以下述べる、電流トランス11a、流量制御バルブ18、ROM101、RAM102、タイマ103、及びコントロールパネル31を更に備えており、図2に例示されるように、制御装置100は、これらを統括制御する。
【0031】
<電流トランス他>
電流トランス(故障検知装置)11aは、前述した紫外線ランプ11に流れる電流を電圧に変換する。後述するように、この電流トランス11aから出力される電圧を検出することによって、紫外線ランプ11の故障の有無を判別できる。
【0032】
流量制御バルブ18は、培養時において、培養室40内でCOやO等のガスの濃度を所定値に維持するために、チャンバー4の壁を貫通して設けられたノズル17を通じて供給されるガスの流量を制御するための電磁バルブである。尚、本実施の形態では、ノズル17の先端は、ダクト10内に位置している。この流量制御バルブ18は、インキュベータ1の外部に設置されたCOやO等のガスボンベ(不図示)と所定の配管(不図示)を介して接続されている。培養室40内の空気を所定濃度のCOガス雰囲気に維持する場合、制御装置100は、ファン6を駆動して、培養室40内の空気をダクト10に導きつつ、同ダクト10内でCOセンサ14により検出されるCOガスの濃度が所定値に維持されるように、流量制御バルブ18を制御するようになっている。或いは、培養室40内の空気を所定濃度のOガス雰囲気に維持する場合も、Oセンサ13を用いて、制御装置100は、同様の制御を実行するようになっている。
【0033】
ROM101は、培養及び殺菌処理の双方において、制御装置100の処理手順を定めるプログラム等を記憶し、RAM102は、同制御装置100による処理の際に用いられるデータ等を記憶する。
タイマ103は、例えば殺菌処理の時間等を計時する。
【0034】
コントロールパネル31は、例えば外扉3の正面に設けられており、チャンバー4の内部の温度やCO又はOガスの濃度等を入力するためのキー(不図示)や、現在の温度や濃度等を表示するためのディスプレイ(不図示)等を有している。また、培養及び殺菌処理の開始及び停止も、このコントロールパネル31上の操作を通じて行なわれる。
【0035】
===インキュベータの動作===
図3を参照しつつ、残留殺菌ガス(過酸化水素ガス又はオゾンガス)の分解時における前述した構成を備えたインキュベータ1の動作例について説明する。同図は、殺菌ガスの使用終了から残留殺菌ガスの分解終了までの制御装置100の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0036】
前提として、チャンバー4の内部の殺菌処理を開始する時点で、制御装置100は、電気錠32の施錠を既に開始しているものとする。また、制御装置100は、殺菌ガス発生装置(過酸化水素ガス発生装置7又はオゾンガス発生装置12)による殺菌ガスの発生を終了してからも、電気錠32による施錠を維持しているものとする。
【0037】
制御装置100は、殺菌ガス発生装置による殺菌ガスの発生を終了すると同時に、紫外線ランプ11の点灯を開始する(S101)。
制御装置100は、電流トランス11aから出力される電圧を参照し、その電圧値が0か否かを判別する。つまり、制御装置100は、紫外線ランプ11が故障しているか否かを判別する(S102)。
【0038】
<紫外線ランプが故障していない場合>
電流トランス11aの電圧値が0ではなく、よって紫外線ランプ11が故障していないと判別した場合(S102:NO)、制御装置100は、タイマ103をリセットした後に計時を開始し(S103)、タイマ103により計時された時間tが所定時間Xに達したか否かを判別する(S104)。ここで、所定時間Xは、例えば、所定線量の紫外線の照射によって残留殺菌ガスが分解し、その濃度が次の培養物及び人体にとって影響を及ぼさない許容濃度まで低下するのに要する時間であり、これは予め測定されているものとする。
【0039】
tが所定時間Xに達していないと判別した場合(S104:NO)、制御装置100は、ステップS104の処理を再度実行する。
tが所定時間Xに達したと判別した場合(S104:YES)、制御装置100は、紫外線ランプ11の点灯を終了し(S105)、電気錠32による施錠を解除する(S106)。
【0040】
このように、殺菌ガスの濃度が前述した許容濃度となるまで、電気錠32の施錠が維持されて外扉3は確実に外箱2の開口を閉じているため、少なくとも外箱2の外部に有害な殺菌ガスが漏れる事態は確実に防止される。これにより、先の培養から次の培養までの移行を短時間に行なえるとともに、インキュベータ1の安全性が向上する。
【0041】
<紫外線ランプが故障している場合>
電流トランス11aの電圧値が0であり、よって紫外線ランプ11が故障していると判別した場合(S102:YES)、制御装置100は、タイマ103をリセットした後に計時を開始し(S107)、タイマ103により計時された時間tが所定時間Yに達したか否かを判別する(S108)。ここで、所定時間Yは、例えば、紫外線の照射なしで残留殺菌ガスが自然分解し、その濃度が前述した許容濃度まで低下するのに要する時間であり、これは予め測定されているものとする。例えば、オゾンガスについては、紫外線が照射されている場合に比べて、自然分解によってその濃度が前述した許容濃度まで低下するには、実施例ではおよそ2倍の時間を要する。つまり、所定時間Yは、前述した所定時間Xに対し延長されている(Y>X)。
【0042】
tが所定時間Yに達していないと判別した場合(S108:NO)、制御装置100は、ステップS108の処理を再度実行する。
tが所定時間Yに達したと判別した場合(S108:YES)、制御装置100は、電気錠32による施錠を解除する(S106)。
【0043】
このように、もし紫外線ランプ11が故障している場合でも、殺菌ガスの自然分解に要する予め定められた時間だけ経過しない限り、電気錠32の施錠が維持されて外扉3は確実に外箱2の開口を閉じている。よって、紫外線ランプ11が故障している場合でも、少なくとも外箱2の外部に有害な殺菌ガスが漏れる事態は確実に防止される。これにより、先の培養から次の培養までの移行を円滑に行なえるとともに、インキュベータ1の安全性が向上する。
【0044】
===その他の実施の形態===
前述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更や改良等が可能であり、また本発明はその等価物も含むものである。
【0045】
前述した実施の形態では、ダクト10は、チャンバー4の内部にあって、その奥行方向の後側に設けられていたが、これに限定されるものではない。ダクト10は、例えば、チャンバー4の内部にあって、培養室40と併設されていれば、何れの側に設けられていてもよい。或いは、例えば、チャンバー4の内部を全て培養室40とし、ダクト10をチャンバー4の外部に設けてもよい。
【0046】
また、前述した実施の形態では、ファン6は、ダクト10の内部に設けられていたが、これに限定されるものではなく、要するに、培養室40とダクト10との間で空気を循環させ、培養室40内の空気を攪拌するのに好適な位置であれば、如何なる位置に設けられていてもよい。
【0047】
また、前述した実施の形態では、電気錠32は、外扉3に設けられていたが、これに限定されるものではなく、例えば内扉5に設けられていてもよい。
【0048】
また、前述した実施の形態では、紫外線ランプ11の故障検知装置として、同紫外線ランプ11の電流を検出する電流トランス11aが用いられたが、これに限定されるものではなく、例えば、紫外線ランプ11からの紫外線の線量を直接測定する光センサ等が用いられてもよい。
【0049】
また、前述した実施の形態では、紫外線による殺菌ガスの分解及び殺菌ガスの自然分解の双方に要する時間(所定時間X、Y)が予め設定されており、電気錠32の施錠を解除するタイミングが所定時間X、Yで決まっていたが、これに限定されるものではない。例えば、制御装置100は、過酸化水素センサ15やオゾンセンサ16等の殺菌ガスセンサにより検出された殺菌ガスの濃度を参照し、同濃度が次の培養物及び人体にとって影響を及ぼさない許容濃度まで低下したと判別した時点で、電気錠32の施錠を解除するものであってもよい。この場合、紫外線ランプ11の故障の有無と関係なく、残留殺菌ガスの濃度が許容濃度まで低下した時点で電気錠32の施錠が解除される。
【0050】
また、前述した実施の形態では、オゾンガス発生装置12は、外部から供給される酸素ガスからオゾンガスを生成してチャンバー4内に供給しているが、これに限定されるものではない。例えば、庫内の空気を取り込んでそれによりオゾンガスを生成し、取り込んだ空気と共に生成したオゾンガスを庫内に戻すことで、オゾンガスを供給するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】インキュベータの一例の側面断面図である。
【図2】図1のインキュベータの制御を司る構成の一例を示すブロック図である。
【図3】殺菌ガスの使用終了から残留殺菌ガスの分解終了までの制御装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 インキュベータ 2 外箱 3 外扉
4 チャンバー 4a、4b 孔 5 内扉
6 ファン 6a ファンモータ 7 過酸化水素ガス発生装置
9 壁板 9a 孔 10 ダクト
11 紫外線ランプ 11a 電流トランス 12 オゾンガス発生装置
13 Oセンサ 14 COセンサ 15 過酸化水素センサ
16 オゾンセンサ 17 ノズル 18 流量制御バルブ
31 コントロールパネル 32 電気錠 33 パッキン
40 培養室 41 棚 100 制御装置
101 ROM 102 RAM 103 タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養物を収納する培養室と当該培養室の開口を開閉自在に閉塞する扉と、外部から供給されるCOガスを前記培養室内に取り込むためのバルブとを設けて前記培養室内を所定のCOガス濃度に制御するCOインキュベータにおいて、
前記培養室内の空気を循環させるファンと、
殺菌効果を有するガスを発生する殺菌ガス発生装置と、
紫外線を発する紫外線ランプと、
前記扉を施錠する電気錠と、
前記殺菌ガス発生装置によってガスを発生させて庫内を殺菌した後、前記紫外線ランプを点灯して当該ガスを分解促進するよう制御する制御装置と、を備え、
当該制御装置は、前記殺菌ガス発生装置によって殺菌ガスを発生させてから前記紫外線ランプを点灯して当該ガスを分解終了するまでの間、前記電気錠により前記扉を施錠したままとする、ことを特徴とするCOインキュベータ。
【請求項2】
前記紫外線ランプは、200nm以下の波長を減衰したものであることを特徴とする請求項1に記載のCOインキュベータ。
【請求項3】
前記紫外線ランプの故障を検知する故障検知装置を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のCOインキュベータ。
【請求項4】
前記制御装置は、前記故障検知装置が前記紫外線ランプの故障を検知した際は、前記ガスの分解に要する時間を延長して、その間、前記電気錠により前記扉を施錠したままとすることを特徴とする請求項3に記載のCOインキュベータ。
【請求項5】
前記ガスはオゾンガスであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のCOインキュベータ。
【請求項6】
前記ガスは過酸化水素ガスであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のCOインキュベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−154793(P2010−154793A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334358(P2008−334358)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】