説明

CRFアンタゴニスト活性を有する縮合複素環化合物

本発明は、CRF受容体アンタゴニスト活性を有する式(I):


(式中、Rは置換されていてもよいヒドロカルビル、置換アミノ等;RはZに結合した位置の隣の位置が1または2個の置換基で置換された芳香族基であって、該芳香族基は更に置換基を有していてもよく;Xは−NR−(式中、Rは水素、置換されていてもよいヒドロカルビルまたはアシルである)または硫黄;Y、YおよびYは、置換されていてもよいメチンまたは窒素等;およびZは置換されていてもよいメチレン(ただし、カルボニルは除く)である)で表される化合物;またはその塩またはそのプロドラッグ、およびその用途を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副腎皮質刺激ホルモン放出因子拮抗活性を有する新規な縮合複素環化合物およびそれを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
副腎皮質刺激ホルモン放出因子(以下、「CRF」と略す)は、41アミノ酸からなる神経ペプチドであり、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の放出を促進するペプチドとして脳下垂体から単離され、精製された。はじめに、その構造は、ヒツジ視床下部から決定され、その後、ラットまたはヒトにおいてもその存在が確認され、その構造が決定された(非特許文献1〜3参照)。アミノ酸配列は、ヒトとネズミにおいて同じであるが、ヒツジでは7個のアミノ酸が異なっている。CRFは、プレプロCRFのカルボキシ末端として合成され、切断され、分泌される。CRFペプチドおよびそのmRNAは、視床下部および脳下垂体中に最も多量に存在し、大脳皮質、小脳、海馬および扁桃体などの脳に広く分布している。また、末梢組織においては、その存在は、胎盤、副腎、肺、肝臓、膵臓、皮膚および消化管において確認されている(非特許文献4〜7参照)。CRF受容体は、7回膜貫通Gタンパク質共役受容体であり、CRF1およびCRF2の2つのサブタイプが存在している。CRF1は主として大脳皮質、小脳、嗅球、脳下垂体および扁桃核に存在することが報告されている。一方、CRF2受容体は、CRF2αおよびCRF2βの2つのサブタイプを有している。CRF2α受容体は視床下部、中隔野および脈絡叢に多く分布しており、CRF2β受容体は主に骨格筋のような抹消組織に存在し、脳の血管に分布することが明らかにされた(非特許文献8〜10参照)。各受容体は生体における分布が異なるので、その役割も異なることが示唆されてる(非特許文献11参照)。
【0003】
CRFの生理的作用としては、内分泌系に対する作用が知られており、視床下部におけるストレスに応答してCRFが産生されて分泌され、そして脳下垂体に作用してACTHの放出を促進する(非特許文献12参照)。内分泌系に対する作用に加え、CRFは脳における神経伝達物質または神経調節因子として作用し、電気生理学、自律神経およびストレスに対する行動を統合する(非特許文献13、14参照)。CRFがラットのような実験動物の脳室内に投与されると、不安行動が観察され、正常動物と比較するとCRF過剰発現マウスではさらに多くの不安行動が観察される(非特許文献15〜17参照)。また、ペプチド作動性CRF受容体アンタゴニストのα−ヘリカルCRF(9−41)は、動物モデルにおいて抗不安作用を示す(非特許文献17、18参照)。ラットの血圧、心拍数および体温は、ストレスまたはCRF投与によって増加するが、ペプチド作動性CRFアンタゴニストのα−ヘリカルCRF(9−41)は、ストレスによる血圧、心拍数および体温の上昇を抑制する(非特許文献19参照)。ペプチド作動性CRF受容体アンタゴニストのα−ヘリカルCRF(9−41)は、アルコールやコカインなどの依存性薬物の休薬による異常行動を抑制する(非特許文献20、21参照)。さらに、ラットにおいてCRF投与により学習および記憶が促進されることが報告されている(非特許文献22〜24参照)。
【0004】
CRFは生体におけるストレス応答と関連しているため、ストレスが関与したうつ病や不安症に関する臨床報告がある。うつ病患者の脳脊髄液中のCRF濃度は、正常者のCRF濃度に比べて高く(非特許文献25参照)、うつ病患者の視床下部におけるCRFのmRNA濃度は、正常者のそれに比べ増加している(非特許文献26参照)。うつ病で自殺した患者の大脳皮質のCRF結合部位は減少している(非特許文献27参照)。CRF投与による血漿ACTH濃度の増加は、うつ病患者においては小さい(非特許文献28参照)。パニック症患者において、CRF投与による血漿ACTH濃度の増加は小さい(非特許文献29参照)。強迫神経症、心的外傷後ストレス障害、トゥレット症候群などのようなストレスによって誘発された不安症の患者の脳脊髄液中のCRF濃度は、正常者のそれと比較して高い(非特許文献30〜32参照)。分裂病患者の脳脊髄液のCRF濃度は、正常者のそれと比較して高い(非特許文献33,34参照)。このように、ストレスが関与する精神病において、CRFを介する生体応答系に異常が存在することが報告されている。
【0005】
内分泌系に対するCRFの作用は、CRF遺伝子導入動物の特徴および実験動物の行動から推定することができる。CRF過剰発現マウスにおいては、ACTHおよび副腎皮質ステロイドの過剰分泌が起こり、筋肉の萎縮症、脱毛症、不妊症などのようなクッシング症候群に類似した異常が観察される(非特許文献35参照)。CRFは、ラットのような実験動物における摂食を阻害する(非特許文献36,37参照)。また、ペプチド作動性CRFアンタゴニストのα−ヘリカルCRF(9−41)は、実験モデルでストレス負荷による摂食の減少を抑制した(非特許文献38参照)。CRFは、遺伝性肥満動物の体重増加を阻害した(非特許文献39参照)。神経性の摂食障害の患者において、CRF投与による血漿中のACTHの増加は小さい(非特許文献40参照)。低いCRF値が肥満症候群と関連することが判る(非特許文献41参照)。セロトニン再取込み阻害剤の摂食抑制および体重減少作用は、CRFの放出を介して働くという可能性が示唆された(非特許文献42参照)。
【0006】
CRFは、ストレスまたは炎症に関与する消化管運動と中枢的または末梢的に関連している(非特許文献43参照)。CRFは、中枢または末梢に作用し、胃の収縮性を弱め、胃の排出力を減少させる(非特許文献44,45参照)。また、ペプチド作動性CRFアンタゴニストのα−ヘリカルCRF(9−41)は、開腹手術による胃の機能低下に対して修復作用を有する(非特許文献46参照)。CRFは、胃の重炭酸イオンの分泌を抑制し、胃酸分泌を減少させ、低温抑制ストレスに起因する潰瘍を抑制する(非特許文献46参照)。さらに、ペプチド作動性CRFアンタゴニストのα−ヘリカルCRF(9−41)は、抑制ストレスによる胃酸分泌減少、胃排出減少、小腸輸送減少および大腸の輸送強化に対して抑制作用を示す(非特許文献47参照)。健康な人において、精神的ストレスが、不安症および腸拡張に起因するガスおよび腹痛を増加させ、CRFは、不快の閾値を減少させる(非特許文献48,49参照)。過敏性腸症候群患者においては、大腸運動は、健康な人と比較して、CRF投与によって過度に強化される(非特許文献50参照)。
【0007】
CRFが炎症によって誘発され、炎症反応に関与していることは、実験動物の研究および臨床研究から報告されている。実験動物の炎症部位および関節リウマチ患者の関節滑液において、CRFの産生は、局所的に増加している(非特許文献51〜53参照)。CRFは、肥満細胞の脱顆粒を誘発し、血管透過性を高める(非特許文献54,55参照)。CRFは、自己免疫性甲状腺炎患者の甲状腺においても見出すことができる(非特許文献56参照)。CRFを実験的な自己免疫脳脊髄膜炎ラットに投与すると、麻痺のような症状の進行が著しく阻害された(非特許文献57参照)。ラットにおいて、Tリンパ球増殖およびナチュラルキラー細胞活性のような免疫応答活性は、CRF投与またはストレス負荷によって減少する(非特許文献58参照)。
【0008】
上記報告から、CRF受容体アゴニスト作用を有する化合物は、CRFが関与するさまざまな疾患の治療または予防に優れた効果を発揮することが期待される。
CRFアンタゴニストとして、例えば、ヒトまたは他の哺乳類のCRFまたは関連するペプチドのアミノ酸配列の一部分を改変または除去したペプチド性CRF受容体アンタゴニストが報告されており、それらがACTH放出抑制作用や抗不安作用のような薬理作用を示すことが報告されている(非特許文献59〜61参照)。しかし、生体における経口投与での化学的安定性や吸収性、バイオアベイラビリティおよび大脳内の輸送機能などの薬物動態的観点から、ペプチド誘導体は医薬としての有用性は低い。
CRFアンタゴニスト化合物としては、例えば、含窒素縮合複素環化合物が、特許文献1〜3に報告されている。
特許文献4〜9および非特許文献62はベンズイミダゾール化合物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2005/44793号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/099688号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2006/116412号パンフレット
【特許文献4】国際公開第97/48697号パンフレット
【特許文献5】国際公開第98/5327号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2005/060958号パンフレット
【特許文献7】国際公開第98/38188号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2006/062972号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2006/099379号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Science, 213, 1394(1981)
【非特許文献2】Proc. Natl. Acad. Sci USA, 80, 4851(1983)
【非特許文献3】EMBO J. 5, 775(1983)
【非特許文献4】J. Clin. Endocrinol. Metab., 65, 176(1987)
【非特許文献5】J. Clin. Endocrinol. Metab., 67, 768(1988)
【非特許文献6】Regul. Pept., 18, 173(1987)
【非特許文献7】Peptides, 5(Suppl. 1), 71(1984)
【非特許文献8】J. Neurosci. 15, 6340(1995)
【非特許文献9】Endocrinology, 137, 72(1996)
【非特許文献10】Biochim. Biophys. Acta, 1352, 129(1997)
【非特許文献11】Trends. Pharmacol. Sci. 23, 71(2002)
【非特許文献12】Recent Prog. Horm. Res., 39, 245(1983)
【非特許文献13】Brain Res. Rev., 15, 71(1990)
【非特許文献14】Pharmacol. Rev., 43, 425(1991)
【非特許文献15】Brain Res., 574, 70(1992)
【非特許文献16】J. Neurosci., 10, 176(1992)
【非特許文献17】J. Neurosci., 14, 2579(1994)
【非特許文献18】Brain Res., 509, 80(1990)
【非特許文献19】J. Physiol., 460, 221(1993)
【非特許文献20】Psychopharmacology, 103, 227(1991)
【非特許文献21】Pharmacol. Rev. 53, 209(2001)
【非特許文献22】Nature, 375, 284(1995)
【非特許文献23】Neuroendocrinology, 57, 1071(1993)
【非特許文献24】Eur. J. Pharmacol., 405, 225(2000)
【非特許文献25】Am. J. Psychiatry, 144, 873(1987)
【非特許文献26】Am. J. Psychiatry, 152, 1372(1995)
【非特許文献27】Arch. Gen. Psychiatry, 45, 577(1988)
【非特許文献28】N. Engl. J. Med., 314, 1329(1986)
【非特許文献29】Am. J. Psychiatry, 143, 896(1986)
【非特許文献30】Arch. Gen. Psychiatry, 51, 794(1994)
【非特許文献31】Am. J. Psychiatry, 154, 624(1997)
【非特許文献32】Biol. Psychiatry, 39, 776(1996)
【非特許文献33】Brain Res., 437, 355(1987)
【非特許文献34】Neurology, 37, 905(1987)
【非特許文献35】Endorcrinology, 130, 3378(1992)
【非特許文献36】Life Sci., 31, 363(1982)
【非特許文献37】Neurophamacology, 22, 337(1983)
【非特許文献38】Brain Res. Bull., 17, 285(1986)
【非特許文献39】Physiol. Behav., 45, 565(1989)
【非特許文献40】J. Clin. Endocrinol. Metab., 62, 319(1986)
【非特許文献41】Endocrinology, 130, 1931(1992)
【非特許文献42】Pharmacol. Rev., 43, 425(1991)
【非特許文献43】Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol. 280, G315(2001)
【非特許文献44】Regulatory Peptides, 21, 173(1988)
【非特許文献45】Am. J. Physiol., 253, G241(1987)
【非特許文献46】Am. J. Physiol., 258, G152(1990)
【非特許文献47】Gastroenterology, 95, 1510(1988)
【非特許文献48】Gastroenterology, 109, 1772(1995)
【非特許文献49】Neurogastroenterol. Mot., 8, 9(1996)
【非特許文献50】Gut, 42, 845(1998)
【非特許文献51】Science,254, 421(1991)
【非特許文献52】J. Clin. Invest., 90, 2555(1992)
【非特許文献53】J. Immunol., 151, 1587(1993)
【非特許文献54】Endocrinology, 139, 403(1998)
【非特許文献55】J. Pharmacol. Exp. Ther., 288, 1349(1999)
【非特許文献56】Am. J. Pathol. 145, 1159(1994)
【非特許文献57】J. Immunil., 158, 5751(1997)
【非特許文献58】Endocrinology, 128, 1329(1991)
【非特許文献59】Science,224,889(1984)
【非特許文献60】J. Pharmacol. Exp. Ther., 269, 564(1994)
【非特許文献61】Brain Res. Rev., 15, 71(1990)
【非特許文献62】J. Med. Chem., 30, 2216 (1987)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
[1]式(I):
【化1】

(式中、Rは、(1)置換されていてもよいヒドロカルビル、(2)置換されていてもよいヒドロカルビルおよび置換されていてもよい複素環基から選ばれる1または2個の置換基で置換されたアミノ、(3)置換されていてもよい環状アミノ、(4)置換されていてもよい複素環基、(5)アシルまたは(6)置換されていてもよいヒドロカルビルオキシ;
は、Zに結合した位置の隣の位置が1または2個の置換基で置換された芳香族基であって、該芳香族基は更に置換基を有していてもよく;
Xは、(1)−NR−(式中、Rは水素、置換されていてもよいヒドロカルビルまたはアシルである)または(2)硫黄;
、YおよびYは、各々、置換されていてもよいメチンまたは窒素(ただし、Y、YおよびYの窒素は1個以下);および
Zは、置換されていてもよいメチレン(ただし、カルボニルは除く)である)で表される化合物(ただし、
(1)N−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド、
(2)7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−カルボン酸 1’−ベンゾトリアゾリルエステル、
(3)7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−カルボン酸、
(4)7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−カルボン酸メチル、
(5)6−ベンジルオキシ−2−(7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−イル)−2−ピリド−4−イルメチルインダン−1,3−ジオン、
(6)3−(7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−イル)−ピロリジン―2―オン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル、
(7)6−ベンジルオキシ−2−(7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−イル)インダン−1,3−ジオン、
(8)7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−イル酢酸、
(9)7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−カルボン酸クロライド、
(10)7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−カルボン酸、
(11)7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−カルボン酸メチル、
(12)3−シアノ−2−(7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−イル)プロパン酸メチル、
(13)3−(7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−イル)−ピロリジン−2−オン、
(14)4−ベンジルオキシ−2−(2−メトキシベンジル)−7−メチル−1H−ベンズイミダゾール、
(15)4−ヒドロキシ−2−(2−メトキシベンジル)−7−メチル−1H−ベンズイミダゾール、
(16)2−(4−メチル−2−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−5−イル)メチルベンゾチアゾール−7−イル酢酸、
(17)2−(4−メチル−2−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−5−イル)メチルベンゾチアゾール−7−イルオキシ酢酸、
(18)2−メチル−2−(2−(4−メチル−2−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−5−イル)メチルベンゾチアゾール−7−イルオキシ)プロパン酸、
(19)3−[4−クロロ−2−[(2−クロロフェニル)メチル]−6−フルオロ−1H−ベンズイミダゾール−7−イル]−1−メチル−6−(トリフルオロメチル)−2,4(1H,3H)−ピリミジンジオン、
(20)4−((5−エトキシ−2−フルオロ−3−イソプロポキシフェニル)(4−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)メチルアミノ)ベンズアミジン、
(21)4−((5−エトキシ−2−フルオロ−3−イソプロポキシフェニル)(4−メトキシ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)メチルアミノ)ベンズアミジン、
(22)4−((4,5−ジメチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)(5−エトキシ−2−フルオロ−3−イソプロポキシフェニル)メチルアミノ)ベンズアミジン、
(23)4−((4,6−ジメチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)(5−エトキシ−2−フルオロ−3−イソプロポキシフェニル)メチルアミノ)ベンズアミジン、
(24)N−[[1―メチル―2−[(4−メチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)メチル]−1H−ベンズイミダゾール−6−イル]カルボニル]−3−ホスホノアラニン、
(25)N−[[2―[(4−メトキシ−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)メチル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−6−イル]カルボニル]−3−ホスホノアラニン、
(26)N−[[2―[ジフルオロ(4−メチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)メチル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−6−イル]カルボニル]−3−ホスホノアラニン、および
(27)2−[(メトキシフェニル)メチル]−7−メチル−1H−ベンズイミダゾール−4−オールは除く);またはその塩(以下、「化合物(I)」と略すことがある);
[2]上記[1]記載の化合物のプロドラッグ;
[3]Rが、置換されていてもよいC3−10アルキル、置換されていてもよいC3−10アルケニルまたは2個の置換されていてもよいC1−4アルキルで置換されたアミノである上記[1]記載の化合物;
[4]Rが(i)2,4,6−三置換フェニル、(ii)2,4−二置換フェニル、(iii)2,4,6−三置換3−ピリジル、(iv)2,6−または4,6−二置換3−ピリジル、または(v)3,5−二置換2−ピリジルである上記[1]記載の化合物;
[5]Xが−NR−である上記[1]記載の化合物;
[6]Y、YおよびYがメチンである上記[1]記載の化合物;
[7]Zがメチレンまたはヒドロキシメチレンである上記[1]記載の化合物;
[8]Rが(1)ヒドロキシまたはC1−6アルキル−カルボニルオキシで置換されていてもよいC3−10アルキル、(2)C3−10アルケニルまたは(3)ジ−C1−4アルキルアミノ;
は2,4,6−三置換フェニルであって、該置換基は(1)ハロゲン原子および(2)ハロゲン化されていてもよいC1−4アルキルからなる群から選ばれたものであり;
Xは−N(C1−6アルキル)−;
がCH;
がCH;
がCH;および
Zがメチレンまたはヒドロキシメチレンである上記[1]記載の化合物;
[9](1)N,N−ジエチル−2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−アミン;
(2)2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−N,N−ジエチル−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−アミン;
(3)3−[2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル]ペンタン−3−オール;
(4)7−[1−エチルプロパ−1−エン−1−イル]−2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール;
(5)7−(1−エチルプロピル)−2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール;
(6)3−{2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル}ペンタン−3−オール;
(7)2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−7−[1−エチルプロパ−1−エン−1−イル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール;
(8)2−{2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル}−1−メチルブチルアセテート;
(9)3−{2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル}ペンタン−2−オール;または
(10)[7−(1−エチルプロピル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル](メシチル)メタノール;またはその塩;
[10]上記[1]記載の化合物またはそのプロドラッグを含有する医薬;
[11]CRF受容体が関与する疾患の治療または予防に用いられる上記[10]記載の医薬;
[12]疾患が情動障害、うつ病または不安症である上記[11]記載の医薬;
[13]上記[1]記載の化合物またはそのプロドラッグの有効量を、それを必要とする対象に投与することを特徴とするCRF受容体が関与する疾患の治療または予防方法;
[14]疾患が情動障害、うつ病または不安症である上記[13]記載の方法;
[15]CRF受容体が関与する疾患の治療または予防剤を製造するための上記[1]記載の化合物またはそのプロドラッグの使用;
[16]疾患が情動障害、うつ病または不安症である上記[15]記載の使用;等を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記式における各記号について、以下に詳述する。
本明細書において、「置換されていてもよいヒドロカルビル」の「ヒドロカルビル」としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂環式−脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族−脂肪族炭化水素基(アラルキル基)等が挙げられる。
上記「脂肪族炭化水素基」としては、C1−8アルキル(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル等)、C2−8アルケニル(例、ビニル、アリル、1−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、1−ヘプテニル、1−オクテニル等)、C2−8アルキニル(例、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル、1−ヘプチニル、1−オクチニル等)、C2−8アルカジエニル(例、2,4−ヘキサジエニル等)、C2−8アルカジイニル(例、2,4−ヘキサジイニル等)などが挙げられる。
上記「脂環式炭化水素基」としては、C3−7シクロアルキル(例、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等);C3−7シクロアルケニル(例、1−シクロペンテニル、2−シクロペンテニル、3−シクロペンテニル、1−シクロヘキセニル、2−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、1−シクロヘプテニル、2−シクロヘプテニル、3−シクロヘプテニル等);C3−7シクロアルカジエニル(例、2,4−シクロヘプタジエニル等);1−インデニル、2−インデニル、1−インダニル、2−インダニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフチル、1,2,3,4−テトラヒドロ−2−ナフチル、1,2−ジヒドロ−1−ナフチル、1,2−ジヒドロ−2−ナフチル、1,4−ジヒドロ−1−ナフチル、1,4−ジヒドロ−2−ナフチル、3,4−ジヒドロ−1−ナフチル、3,4−ジヒドロ−2−ナフチル等の部分飽和縮合二環式炭化水素基、好ましくは、C9−10部分飽和縮合二環式炭化水素基等(ベンゼン環が5または6員の非芳香族環状炭化水素基に結合したものを含む);などが挙げられる。該脂環式炭化水素基は、架橋していてもよい。
【0013】
上記「脂環式−脂肪族炭化水素基」としては、上記脂環式炭化水素基と上記脂肪族炭化水素基が結合したもの、例えば、4〜14個の炭素原子を有するもの、例えば、C3−7シクロアルキル−C1−4アルキル、C3−7シクロアルケニル−C1−4アルキル、C3−7シクロアルキル−C2−4アルケニル、C3−7シクロアルケニル−C2−4アルケニル、C9−10部分飽和縮合二環式炭化水素−C1−4アルキル、またはC9−10部分飽和縮合二環式炭化水素−C2−4アルケニル(例、シクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、シクロブチルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルメチル、2−シクロペンテニルメチル、3−シクロペンテニルメチル、シクロペンチルエチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキセニルメチル、3−シクロヘキセニルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロヘプチルメチル、シクロヘプチルエチル、2−(3,4−ジヒドロ−2−ナフチル)エチル、2−(1,2,3,4−テトラヒドロ−2−ナフチル)エチル、2−(3,4−ジヒドロ−2−ナフチル)エテニル等)などが挙げられる。
上記「芳香族炭化水素基」としては、フェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、4−インデニル、5−インデニル、4−インダニル、5−インダニル、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル、5,6−ジヒドロ−1−ナフチル、5,6−ジヒドロ−2−ナフチル、5,6−ジヒドロ−3−ナフチル、5,6−ジヒドロ−4−ナフチル等のC6−10アリール(5〜6員の非芳香族炭化水素環がフェニルと縮合したものを含む)などが挙げられる。
上記「芳香族−脂肪族炭化水素基」としては、C7−14アラルキル等が挙げられる。該C7−14アラルキルとしては、フェニル−C1−4アルキル(例、ベンジル、フェネチル、1−フェニルエチル、1−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、3−フェニルプロピル等)、ナフチル−C1−4アルキル(例、α−ナフチルメチル、α−ナフチルエチル、β−ナフチルメチル、β−ナフチルエチル等)、C6−10アリール−C2−4アルケニル(例、スチリル、シンナミルなどのフェニル−C2−4アルケニル)等のC6−10アリール−C1−4アルキルなどが挙げられる。
【0014】
「置換されていてもよいヒドロカルビル」の置換基としては、例えば、アミノ、モノ−またはジ−C1−6アルキルアミノ(例、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ等のモノ−C1−6アルキルアミノ;ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、ジブチルアミノ等のジ−C1−6アルキルアミノ)、ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ、シアノ、ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキル(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、トリフルオロメチル等)、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル(例、メトキシエチル、エトキシメチル等)、アミノ−C1−6アルキル(例、アミノメチル等)、モノ−またはジ−C1−6アルキルアミノ−C1−6アルキル(例、メチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル等)、C2−6アルケニル(例、ビニル、アリル、プロペニル等)、C2−6アルキニル(例、エチニル等)、C3−7シクロアルキル(例、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、C6−14アリール(例、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−ビフェニル、3−ビフェニル、4−ビフェニル等)、C7−19アラルキル(例、ベンジル等)、5ないし6員芳香族複素環基(例、フリル、チエニル、1−または3−ピロリル、2−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、チアゾリル、3−イソチアゾリル、1−または2−イミダゾリル、1−ピラゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、フラザニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、テトラゾリル、2−、3−または4−ピリジル、2−または4−ピリミジニル、3−ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル等)、3ないし6員非芳香族複素環基(例、オキシラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、1−、2−または3−ピロリジニル、テトラヒドロフリル、チオラニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペラジニル等)、8ないし12員二環式または三環式縮合複素環基(例、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンズインダゾリル、ベンゾオキサゾリル、1,2−ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾピラニル、1,2−ベンゾイソチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、α−カルボリニル、β−カルボリニル、γ−カルボリニル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、インドリジニル、ピロロ〔1,2−b〕ピリダジニル、ピラゾロ〔1,5−a〕ピリジル、イミダゾ〔1,2−a〕ピリジル、イミダゾ〔1,5−a〕ピリジル、イミダゾ〔1,2−b〕ピリダジニル、イミダゾ〔1,2−a〕ピリミジニル、1,2,4−トリアゾロ〔4,3−a〕ピリジル、1,2,4−トリアゾロ〔4,3−b〕ピリダジニル、1,2,5,6−テトラヒドロ−4H−ピロロ〔3,2,1−ij〕キノリニル等)、ハロゲン化されていてもよいC1−6アルコキシ(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシ、トリフルオロメトキシ等)、ヒドロキシ、C6−14アリールオキシ(例、フェニルオキシ、1−ナフチルオキシ等)、C7−16アラルキルオキシ(例、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ等)、ヒドロキシアミノ、モノ−C6−14アリールアミノ(例、フェニルアミノ、1−ナフチルアミノ等)、ジ−C6−14アリールアミノ(例、ジフェニルアミノ等)、C1−6アルキル−カルボニルアミノ(例、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ等)、C1−6アルコキシ−カルボニルアミノ(例、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ等)、5ないし7員飽和環状アミノ(例、ピロリジン−1−イル、ピペリジノ、ピペラジン−1−イル、モルホリノ、チオモルホリノ、ホモピペラジン−1−イル等)、ホルミル、カルボキシ、C1−6アルキル−カルボニル(例、アセチル、プロピオニル等)、C3−6シクロアルキル−カルボニル(例、シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル等)、C1−6アルコキシ−カルボニル(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、C6−14アリール−カルボニル(例、ベンゾイル等)、C7−16アラルキル−カルボニル(例、フェニルアセチル、3−フェニルプロピオニル等)、C6−14アリールオキシ−カルボニル(例、フェノキシカルボニル等)、C7−16アラルキルオキシ−カルボニル(例、ベンジルオキシカルボニル等)、5ないし6員複素環−カルボニル(例、ニコチノイル、イソニコチノイル、テノイル、フロイル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、ピペラジン−1−イルカルボニル、ピロリジン−1−イルカルボニル等)、カルバモイル、モノ−C1−6アルキル−カルバモイル(例、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル等)、ジ−C1−6アルキル−カルバモイル(例、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、エチルメチルカルバモイル等)、C6−14アリール−カルバモイル(例、フェニルカルバモイル、1−ナフチルカルバモイル等)、C1−6アルコキシ−カルバモイル(例、メトキシカルバモイル、エトキシカルバモイル等)、5ないし6員複素環カルバモイル(例、2−ピリジルカルバモイル、3−ピリジルカルバモイル、4−ピリジルカルバモイル、2−チエニルカルバモイル、3−チエニルカルバモイル等)、メルカプト、スルホ、C1−6アルキルスルフィニル(例、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル等)、C6−14アリールスルフィニル(例、フェニルスルフィニル等)、C1−6アルキルスルホニル(例、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル等)、C6−14アリールスルフィニル(例、フェニルスルフィニル等)、ホルミルアミノ、C1−6アルキル−カルボニルアミノ(例、アセチルアミノ等)、C6−14アリール−カルボニルアミノ(例、ベンゾイルアミノ等)、C1−6アルコキシ−カルボニルアミノ(例、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ等)、C1−6アルキルスルフィニルアミノ(例、メチルスルフィニルアミノ、エチルスルフィニルアミノ、プロピルスルフィニルアミノ、ブチルスルフィニルアミノ等)、C1−6アルキルスルホニルアミノ(例、メチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノ、プロピルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ等)、C1−6アルキル−カルボニルオキシ(例、アセトキシ、プロピオニルオキシ等)、C6−14アリール−カルボニルオキシ(例、ベンゾイルオキシ等)、C1−6アルコキシ−カルボニルオキシ(例、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ等)、モノ−C1−6アルキル−カルバモイルオキシ(例、メチルカルバモイルオキシ、エチルカルバモイルオキシ等)、ジ−C1−6アルキル−カルバモイルオキシ(例、ジメチルカルバモイルオキシ、ジエチルカルバモイルオキシ等)、C6−14アリール−カルバモイルオキシ(例、フェニルカルバモイルオキシ等)、5ないし6員複素環−カルボニルオキシ(例、ニコチノイルオキシ、イソニコチノイルオキシ等)、オキソ、イミノ、C1−6アルキルイミノ(例、メチルイミノ、エチルイミノ等)などが挙げられる。とりわけ、「置換されていてもよいヒドロカルビル」の好ましい置換基としては、アミノ、モノ−C1−6アルキルアミノ、ジ−C1−6アルキルアミノ、ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよいC1−4アルキル、5ないし6員芳香族複素環基、シアノ、C6−14アリール、C1−6アルコキシ、ヒドロキシ、C1−6アルキル−カルボニルオキシ、オキソなどである。より好ましい置換基は、ハロゲン原子、ハロゲン化されたC1−4アルキル、ヒドロキシ、C1−6アルキル−カルボニルオキシなどである。
該「ヒドロカルビル」は、置換可能な位置に1〜5個(好ましくは、1〜3個)の上記置換基を有していてもよく、置換基の数が2以上のときは、これらの置換基は同じであっても、互いに異なっていてもよい。
【0015】
本明細書において、「置換されていてもよい複素環基」の「複素環基」としては、例えば、炭素原子以外に、窒素原子、硫黄原子および酸素原子の1または2種から選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する5〜14員(単環式、二環式または三環式)複素環から何れか1つの水素原子を除いてできる一価の基などが挙げられる。好ましくは、(i)5〜14員(好ましくは、5〜10員)芳香族複素環、(ii)5〜10員非芳香族複素環および(iii)7〜10員架橋複素環から何れか1つの水素原子を除いてできる一価の基である。
上記「5〜14員(好ましくは、5〜10員)芳香族複素環」としては、例えば、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾ[b]フラン、ベンズイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ナフト[2,3−b]チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、1H−インダゾール、プリン、4H−キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、カルバゾール、β−カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナジン、チアゾール、イソチアゾール、フェノチアジン、イソキサゾール、フラザン、フェノキサジンなどの芳香族複素環;または芳香族複素環(好ましくは、単環式複素環)が1以上(好ましくは、1または2)の芳香環(例、ベンゼン環等)と縮合してできた環などが挙げられる。
上記「5〜10員非芳香族複素環」としては、例えば、ピロリジン、イミダゾリン、ピラゾリジン、ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサゾール、オキサジアゾリン、チアジアゾリン、トリアゾリン、チアジアゾール、ジチアゾールなどが挙げられる。
上記「7〜10員架橋複素環」としては、例えば、キヌクリジン、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどが挙げられる。
「複素環基」の好ましい例としては、炭素原子以外に、窒素原子、硫黄原子および酸素原子の1または2種から選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する5〜14員(好ましくは、5〜10員)(単環式または二環式)複素環基が挙げられる。具体的には、2−チエニル、3−チエニル、2−フリル、3−フリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、5−キノリル、8−キノリル、1−イソキノリル、3−イソキノリル、4−イソキノリル、5−イソキノリル、ピラジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、3−ピロリル、2−イミダゾリル、3−ピリダジニル、3−イソチアゾリル、3−イソキサゾリル、1−インドリル、2−インドリル、3−インドリル、2−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾ[b]チエニル、3−ベンゾ[b]チエニル、2−ベンゾ[b]フラニル、3−ベンゾ[b]フラニルなどの芳香族複素環;1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、2−イミダゾリニル、4−イミダゾリニル、2−ピラゾリジニル、3−ピラゾリジニル、4−ピラゾリジニル、ピペリジノ、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニル、モルホリノ、チオモルホリノなどの非芳香族複素環基等が挙げられる。
中でも、炭素原子以外に、窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選択される1〜3個のヘテロ原子を含有する5または6員複素環基などがより好ましい。具体的には、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−フリル、3−フリル、ピラジニル、2−ピリミジニル、3−ピロリル、3−ピリダジニル、3−イソチアゾリル、3−イソキサゾリル、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、2−イミダゾリニル、4−イミダゾリニル、2−ピラゾリジニル、3−ピラゾリジニル、4−ピラゾリジニル、ピペリジノ、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニル、モルホリノ、チオモルホリノなどである。
「置換されていてもよい複素環基」の「置換基」は、上記「置換されていてもよいヒドロカルビル」の「置換基」と同様の意味を有する。
該「複素環基」は、置換可能な位置に1〜5個(好ましくは、1〜3個)の上記置換基を有していてもよく、置換基の数が2以上のときは、これらの置換基は同じであっても、互いに異なっていてもよい。
【0016】
本明細書において「アシル」としては、例えば、ホルミル、C1−6アルキル−カルボニル(例、アセチル、プロピオニル等)、C3−6シクロアルキル−カルボニル(例、シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル等)、C1−6アルコキシ−カルボニル(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、C6−14アリール−カルボニル(例、ベンゾイル等)、C7−16アラルキル−カルボニル(例、フェニルアセチル、3−フェニルプロピオニル等)、C6−14アリールオキシ−カルボニル(例、フェノキシカルボニル等)、C7−16アラルキルオキシ−カルボニル(例、ベンジルオキシカルボニル等)、5ないし6員複素環−カルボニル(例、ニコチノイル、イソニコチノイル、テノイル、フロイル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、ピペラジン−1−イルカルボニル、ピロリジン−1−イルカルボニル等)、カルバモイル、モノ−C1−6アルキル−カルバモイル(例、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル等)、ジ−C1−6アルキル−カルバモイル(例、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、エチルメチルカルバモイル等)、C6−14アリール−カルバモイル(例、フェニルカルバモイル、1−ナフチルカルバモイル等)、C1−6アルコキシ−カルバモイル(例、メトキシカルバモイル、エトキシカルバモイル等)、5ないし6員複素環カルバモイル(例、2−ピリジルカルバモイル、3−ピリジルカルバモイル、4−ピリジルカルバモイル、2−チエニルカルバモイル、3−チエニルカルバモイル等)、C1−6アルキルスルフィニル(例、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル等)、C6−14アリールスルフィニル(例、フェニルスルフィニル等)、C1−6アルキルスルホニル(例、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル等)、C6−14アリールスルフィニル(例、フェニルスルフィニル等)などが挙げられる。
【0017】
式(I)におけるRは、(1)置換されていてもよいヒドロカルビル、(2)置換されていてもよいヒドロカルビルおよび置換されていてもよい複素環基から選ばれる1または2個の置換基で置換されたアミノ、(3)置換されていてもよい環状アミノ、(4)置換されていてもよい複素環基、(5)アシル、または(6)置換されていてもよいヒドロカルビルオキシである。
の「置換されていてもよい環状アミノ」における「環状アミノ」としては、例えば、アジリジノ、ピロリジノ、イミダゾリジノ、オキサゾリジノ、チアゾリジノ、ピペリジノ、1,2−ジヒドロピリジル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジル、ピペラジノ、モルホリノ、チオモルホリノなどの3〜7員環状アミノが挙げられる。
「置換されていてもよい環状アミノ」の「置換基」は、上記「置換されていてもよいヒドロカルビル」の「置換基」と同様の意味を有する。
該「環状アミノ」は、置換可能な位置に1〜3個の上記置換基を有していてもよく、置換基の数が2以上のときは、これらの置換基は同じであっても、互いに異なっていてもよい。
の「置換されていてもよいヒドロカルビルオキシ」における「ヒドロカルビルオキシ」としては、例えば、C1−8アルコキシ(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、tert−ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ等)、C2−8アルケニルオキシ(例、ビニルオキシ、アリルオキシ、1−プロペニルオキシ、2−メチル−1−プロペニルオキシ、1−ブテニルオキシ、2−ブテニルオキシ、3−ブテニルオキシ、3−メチル−2−ブテニルオキシ、1−ペンテニルオキシ、2−ペンテニルオキシ、3−ペンテニルオキシ、4−ペンテニルオキシ、4−メチル−3−ペンテニルオキシ、1−ヘキセニルオキシ、2−ヘキセニルオキシ、3−ヘキセニルオキシ、4−ヘキセニルオキシ、5−ヘキセニルオキシ、1−ヘプテニルオキシ、1−オクテニルオキシ等)、C2−8アルキニルオキシ(例、エチニルオキシ、1−プロピニルオキシ、2−プロピニルオキシ、1−ブチニルオキシ、2−ブチニルオキシ、3−ブチニルオキシ、1−ペンチニルオキシ、2−ペンチニルオキシ、3−ペンチニルオキシ、4−ペンチニルオキシ、1−ヘキシニルオキシ、2−ヘキシニルオキシ、3−ヘキシニルオキシ、4−ヘキシニルオキシ、5−ヘキシニルオキシ、1−ヘプチニルオキシ、1−オクチニルオキシ等)、C2−8アルカジエニルオキシ(例、2,4−ヘキサジエニルオキシ等)、C2−8アルカジイニルオキシ(例、2,4−ヘキサジイニルオキシ等)、C3−7シクロアルキルオキシ(例、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ等)、C3−7シクロアルケニルオキシ(例、1−シクロペンテニルオキシ、2−シクロペンテニルオキシ、3−シクロペンテニルオキシ、1−シクロヘキセニルオキシ、2−シクロヘキセニルオキシ、3−シクロヘキセニルオキシ、1−シクロヘプテニルオキシ、2−シクロヘプテニルオキシ、3−シクロヘプテニルオキシ等)、C3−7シクロアルカジエニルオキシ(例、2,4−シクロヘプタジエニルオキシ等)、部分飽和縮合二環式ヒドロカルビルオキシ、好ましくは、C9−10部分飽和縮合二環式ヒドロカルビルオキシ等(環系としてベンゼン環が5または6員の非芳香族環状炭化水素基に結合したものを含む)(例、1−インデニルオキシ、2−インデニルオキシ、1−インダニルオキシ、2−インダニルオキシ、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフチルオキシ、1,2,3,4−テトラヒドロ−2−ナフチルオキシ、1,2−ジヒドロ−1−ナフチルオキシ、1,2−ジヒドロ−2−ナフチルオキシ、1,4−ジヒドロ−1−ナフチルオキシ、1,4−ジヒドロ−2−ナフチルオキシ、3,4−ジヒドロ−1−ナフチルオキシ、3,4−ジヒドロ−2−ナフチルオキシ等)、C3−7シクロアルキル−C1−4アルコキシ、C3−7シクロアルケニル−C1−4アルコキシ、C3−7シクロアルキル−C2−4アルケニルオキシ、C3−7シクロアルケニル−C2−4アルケニルオキシ、C9−10部分飽和縮合二環式炭化水素−C1−4アルコキシ、C9−10部分飽和縮合二環式炭化水素−C2−4アルケニルオキシ(例、シクロプロピルメチルオキシ、シクロプロピルエチルオキシ、シクロブチルメチルオキシ、シクロブチルエチルオキシ、シクロペンチルメチルオキシ、2−シクロペンテニルメチルオキシ、3−シクロペンテニルメチルオキシ、シクロペンチルエチルオキシ、シクロヘキシルメチルオキシ、2−シクロヘキセニルメチルオキシ、3−シクロヘキセニルメチルオキシ、シクロヘキシルエチルオキシ、シクロヘプチルメチルオキシ、シクロヘプチルエチルオキシ、2−(3,4−ジヒドロ−2−ナフチル)エチルオキシ、2−(1,2,3,4−テトラヒドロ−2−ナフチル)エチルオキシ、2−(3,4−ジヒドロ−2−ナフチル)エテニルオキシ等)、C6−10アリールオキシ(5〜6員の非芳香族炭化水素環がフェニルと縮合したものを含む)(例、フェニルオキシ、α−ナフチルオキシ、β−ナフチルオキシ、4−インデニルオキシ、5−インデニルオキシ、4−インダニルオキシ、5−インダニルオキシ、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチルオキシ、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチルオキシ、5,6−ジヒドロ−1−ナフチルオキシ、5,6−ジヒドロ−2−ナフチルオキシ、5,6−ジヒドロ−3−ナフチルオキシ、5,6−ジヒドロ−4−ナフチルオキシ等)、C7−14アラルキルオキシ(例、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ、1−フェニルエチルオキシ、1−フェニルプロピルオキシ、2−フェニルプロピルオキシ、3−フェニルプロピルオキシ、α−ナフチルエチルオキシ、β−ナフチルメチルオキシ、β−ナフチルエチルオキシ、スチリルオキシ、シンナミルオキシ等)などが挙げられる。
「置換されていてもよいヒドロカルビルオキシ」の「置換基」は、上記「置換されていてもよいヒドロカルビル」の「置換基」と同様の意味を有する。
該「ヒドロカルビルオキシ」は、置換可能な位置に1〜5個(好ましくは、1〜3個)の上記置換基を有していてもよく、置換基の数が2以上のときは、これらの置換基は同じであっても、互いに異なっていてもよい。
【0018】
は、好ましくは(1)置換されていてもよいヒドロカルビル、または(2)置換されていてもよいヒドロカルビルから選ばれる2個の置換基で置換されたアミノである。より好ましくは、置換されていてもよいC3−10アルキル、置換されていてもよいC3−10アルケニルまたは2個の置換されていてもよいC1−4アルキルで置換されたアミノである。Rは、さらに好ましくは(i)ヒドロキシまたはC1−6アルキル−カルボニルオキシで置換されていてもよいC3−10アルキル,(ii)C3−10アルケニル、または(iii)ジ−C1−4アルキルアミノである。
【0019】
は、Zに結合した位置の隣の位置が1または2個の置換基で置換された芳香族基であって、該芳香族基は更に置換基を有していてもよい。
の「Zに結合した位置の隣の位置が1または2個の置換基で置換された芳香族基であって、更に置換基を有していてもよい芳香族基」の「芳香族基」としては、例えば、C6−14アリール(例、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−ビフェニル、3−ビフェニル、4−ビフェニル等)、5ないし6員芳香族複素環基(例、フリル、チエニル、1−または3−ピロリル、2−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、チアゾリル、3−イソチアゾリル、1−または2−イミダゾリル、1−ピラゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、フラザニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、テトラゾリル、2−、3−または4−ピリジル、2−または4−ピリミジニル、3−ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル等)、8ないし12員二環式または三環式縮合芳香族複素環基(例、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンズインダゾリル、ベンゾオキサゾリル、1,2−ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾピラニル、1,2−ベンゾイソチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、α−カルボリニル、β−カルボリニル、γ−カルボリニル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、インドリジニル、ピロロ〔1,2−b〕ピリダジニル、ピラゾロ〔1,5−a〕ピリジル、イミダゾ〔1,2−a〕ピリジル、イミダゾ〔1,5−a〕ピリジル、イミダゾ〔1,2−b〕ピリダジニル、イミダゾ〔1,2−a〕ピリミジニル、1,2,4−トリアゾロ〔4,3−a〕ピリジル、1,2,4−トリアゾロ〔4,3−b〕ピリダジニル等)などが挙げられる。なかでも、C6−10アリール、5ないし6員芳香族複素環基等が好ましい。さらにフェニル、ピリジル等が好ましく、特にフェニルが好ましい。
「Zに結合した位置の隣の位置が1または2個の置換基で置換された芳香族基であって、更に置換基を有していてもよい芳香族基」の「置換基」は、上記「置換されていてもよいヒドロカルビル」の「置換基」と同様の意味を有するが、オキソ、イミノおよびC1−6アルキルイミノは除かれる。
該「芳香族基」は、Zに結合した位置の隣の位置および置換可能な位置で1〜5個(好ましくは、1〜3個)の上記置換基を有していてもよく、置換基の数が2以上のときは、これらの置換基は同じであっても、互いに異なっていてもよい。
【0020】
は、好ましくは(i)2,4,6−三置換フェニル、(ii)2,4−二置換フェニル、(iii)2,4,6−三置換3−ピリジル、(iv)2,6−または4,6−二置換3−ピリジル、または(v)3,5−二置換2−ピリジルである。中でも好ましい置換基としては、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1−4アルキル(例、ハロゲン化されていてもよいC1−4アルキル等)、置換されていてもよいC1−4アルコキシ(例、ハロゲン化されていてもよいC1−4アルコキシ等)、置換されていてもよいアミノ(例、モノ−またはジ−C1−4アルキルアミノ等)、アシル(例、ハロゲン化されていてもよいC1−4アルキル−カルボニル等)、シアノなどが挙げられる。より好ましい置換基はハロゲン原子およびハロゲン化されていてもよいC1−4アルキルである。
【0021】
Xは、(1)−NR−(式中、Rは水素、置換されていてもよいヒドロカルビルまたはアシルである)または(2)硫黄である。
Xは、好ましくは−NR−(式中、Rは水素、置換されていてもよいヒドロカルビルまたはアシルである)である。なかでも、好ましいXは、−NH−または−N(置換されていてもよいC1−6アルキル)−であり、最も好ましいXは−N(CH)−である。
【0022】
、YおよびYは、各々、置換されていてもよいメチンまたは窒素(ただし、Y、YおよびYの窒素は1個以下)である。
、YおよびYの「置換されていてもよいメチン」の置換基としては、例えば、(1)置換されていてもよいC1−4ヒドロカルビル、(2)置換されていてもよいアミノ、(3)置換されていてもよい複素環基、(4)アシル、(5)置換されていてもよいヒドロカルビルオキシ、(6)ハロゲン、(7)ニトロ、(8)シアノなどが挙げられる。
上記(2)の「置換されていてもよいアミノ」の置換基としては、例えば、置換されていてもよいヒドロカルビルまたはアシルが挙げられる。
上記(5)の「置換されていてもよいヒドロカルビルオキシ」としては、Rの置換されていてもよいヒドロカルビルオキシと同様のものが挙げられる。
、YおよびYの「置換されていてもよいメチン」の好ましい置換基は、ハロゲン、C1−4アルコキシ、C1−4アルキル、シアノなどである。
各Y、YおよびYは、好ましくはCHである。
【0023】
Zは、置換されていてもよいメチレンであるが、カルボニルは除かれる。
Zの「置換されていてもよいメチレン」の置換基は、上記「置換されていてもよいヒドロカルビル」の「置換基」と同様の意味を有する。
Zは、好ましくはメチレンまたはヒドロキシメチレンなどである。
【0024】
化合物(I)の好ましい例としては、Rが置換されていてもよいC3−10アルキル、置換されていてもよいC3−10アルケニルまたは2個の置換されていてもよいC1−4アルキルで置換されたアミノ;
が(i)2,4,6−三置換フェニル、(ii)2,4−二置換フェニル、(iii)2,4,6−三置換3−ピリジル、(iv)2,6−または4,6−二置換3−ピリジル、または(v)3,5−二置換2−ピリジル;
Xが−NH−または−N(置換されていてもよいC1−6アルキル)−;
、YおよびYのそれぞれがCH;および
Zがメチレンまたはヒドロキシメチレンである化合物が挙げられる。
【0025】
化合物(I)のより好ましい例としては、Rが(i)ヒドロキシおよびC1−6アルキル−カルボニルオキシからなる群から選ばれる1ないし2個の置換基で置換されていてもよいC3−10アルキル,(ii)C2−6アルケニルまたは(iii)ジ−C1−4アルキルアミノ;
が(i)2,4,6−三置換フェニル、(ii)2,4−二置換フェニル、(iii)2,4,6−三置換3−ピリジル、(iv)2,6−または4,6−二置換3−ピリジル、または(v)3,5−二置換2−ピリジルであって、その置換基がハロゲン原子、置換されていてもよいC1−4アルキル(例、ハロゲン化されていてもよいC1−4アルキル等)、置換されていてもよいC1−4アルコキシ(例、ハロゲン化されていてもよいC1−4アルコキシ等)、置換されていてもよいアミノ(例、モノ−またはジ−C1−4アルキルアミノ等)、アシル(例、ハロゲン化されていてもよいC1−4アルキル−カルボニル等)およびシアノからなる群から選ばれるもの;
Xが−NH−または−N(ハロゲン化されていてもよいC1−6アルキル)−;
、YおよびYのそれぞれがCH;および
Zがメチレンまたはヒドロキシメチレンである化合物が挙げられる。
【0026】
化合物(I)のさらに好ましい例は、Rが(1)ヒドロキシまたはC1−6アルキル−カルボニルオキシで置換されていてもよいC3−10アルキル,(2)C3−10アルケニルまたは(3)ジ−C1−4アルキルアミノ;
が、置換基が(1)ハロゲン原子および(2)ハロゲン化されていてもよいC1−4アルキルからなる群から選ばれた2,4,6−三置換フェニル;
Xが−N(C1−6アルキル)−;
がCH;
がCH;
がCH;および
Zがメチレンまたはヒドロキシメチレンである化合物である。
【0027】
化合物(I)の特に好ましい例は、
(1)N,N−ジエチル−2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−アミン;
(2)2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−N,N−ジエチル−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−アミン;
(3)3−[2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル]ペンタン−3−オール;
(4)7−[1−エチルプロパ−1−エン−1−イル]−2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール;
(5)7−(1−エチルプロピル)−2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール;
(6)3−{2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル}ペンタン−3−オール;
(7)2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−7−[1−エチルプロパ−1−エン−1−イル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール;
(8)2−{2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル}−1−メチルブチルエステルアセテート;
(9)3−{2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル}ペンタン−2−オール;
(10)[7−(1−エチルプロピル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル](メシチル)メタノール;またはその塩である。
【0028】
式(I)の化合物の塩としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩または有機塩基との塩、無機酸、有機酸もしくは塩基性または酸性アミノ酸との塩が挙げられる。金属塩の好ましい例としては、ナトリウム塩またはカリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩またはバリウム塩などのアルカリ土類金属塩;およびアルミニウム塩が挙げられる。有機塩基との塩の好ましい例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、およびN,N−ジベンジルエチレンジアミンとの塩が挙げられる。無機酸との塩の好ましい例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸およびリン酸との塩が挙げられる。有機酸との塩の好ましい例としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp−トルエンスルホン酸との塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好ましい例としては、アルギニン、リジンおよびオルニチンとの塩が挙げられる。酸性アミノ酸との塩の好ましい例としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸との塩が挙げられる。
【0029】
なかでも、薬学的に許容できる塩が好ましい。そのような例としては、化合物が酸性官能基を持っている場合は、アルカリ金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩等)もしくはアルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)およびアンモニウム塩などの無機塩が挙げられ、化合物が塩基性官能基を持っている場合は、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩または臭化水素酸塩等の無機塩および酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩または酒石酸塩などの有機塩が挙げられる。
【0030】
化合物(I)は水和物であっても非水和物であってもよい。水和物としては、0.5水和物、1水和物、1.5水和物および2水和物が挙げられる。化合物(I)は溶媒和していても、非溶媒和物であってもよい。
同位元素(例、H、H、14C、35S、125I)で標識された化合物(I)も化合物(I)の範囲に含まれる。
化合物(I)が立体配置異性体、ジアステレオマー、配座異性体などとして存在する場合は、それらは、必要であれば、通常の分離または精製法によって単離することができる。
化合物(I)がラセミ体として存在する場合は、通常の光学分割法によってS体とR体に分割することができる。
化合物(I)が立体異性体を有する場合、それぞれの異性体またはその混合物もまた、本発明に含まれる。
【0031】
化合物(I)は、それらのプロドラッグの形態であってもよい。化合物(I)のプロドラッグは、生体内における生理条件下で酵素や胃酸等との反応により化合物(I)に変換する化合物、すなわち(i)酵素的に酸化、還元、加水分解等を起こして化合物(I)に変換する化合物、(ii)胃酸等により加水分解を起こして化合物(I)に変化する化合物をいう。用いられる化合物(I)のプロドラッグとしては、化合物(I)の水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸エステル化された化合物またはその塩(例、化合物(I)の水酸基がアセチルオキシ、パルミトイルオキシ、プロパノイルオキシ、ピバロイルオキシ、サクシニルオキシ、フマリルオキシ、アラニルオキシ、ジメチルアミノメチルカルボニルオキシ等に変換された化合物またはその塩など)、化合物(I)のカルボキシル基がエステル化またはアミド化された化合物またはその塩(例、化合物(I)のカルボキシル基がエチルエステル化、フェニルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、フタリジルエステル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルエステル化、シクロヘキシルオキシカルボニルエステル化またはメチルアミド化された化合物またはその塩など)等が挙げられる。これらのプロドラッグは自体公知の方法またはその変法によって製造することができる。
【0032】
また、化合物(I)のプロドラッグは、広川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻分子設計163頁から198頁に記載されているような、生理的条件で化合物(I)に変換する化合物またはその塩であってもよい。
【0033】
一般的合成法
以下に、化合物(I)の製造について記載する。以下の例は発明を説明するためのものである。当業者は他の方法も用いることができ、化合物(I)の置換基は公知技術によって他の置換基に変換してもよい。
化合物(I)の製造法を以下に示す。スキームにおいて、化合物は塩の形態であってもよく、そのような塩としては、化合物(I)の塩と同様の塩などが挙げられる。化合物(I)を調製する各工程の順序は、変えてもよい。スキームにおける各原料は、市販品で入手できる場合は、そのまま使用することができ、また自体公知の方法もしくはそれに準じた方法にしたがって製造することができる。
(スキーム1)
【化2】

(式中、RおよびRは、独立して、置換されていてもよいヒドロカルビル、R4a、R4b、R5aおよびR5bは、独立して、水素または置換されていてもよいヒドロカルビル、LおよびLは、独立して、塩素、臭素およびヨウ素等のハロゲン原子、p−トルエンスルホニルオキシ、メタンスルホニルオキシおよびトリフルオロメタンスルホニルオキシ等のスルホニルオキシ、およびアセチルオキシおよびベンゾイルオキシ等のアシルオキシなどを含む脱離基であり、他の各記号は上記と同義である)
化合物(IIa)の調製は、スキーム4に記載している。
【0034】
化合物(I)に含まれる化合物(Ia)は、R4a4bC=OまたはR5a5bC=Oを用いた還元的アルキル化、またはRまたはRを用いたアルキル化によって化合物(IIa)から調製することができる。還元的アルキル化は、イミンをin situで生成させ、次いで適当な還元剤により、または水素化触媒の存在下での水素化により還元することによって行ってもよい。最初のアルキル化でR4a4bC=OまたはRを用い、2番目のアルキル化でR5a5bC=OまたはRを用いてもよい。化合物(Ia)でRがRと同一の場合は、2番目のアルキル化にR4a4bC=OまたはRを用いてもよいが、これは工程aで連続的に行ってもよいし、工程bで段階的に行ってもよい。
4a4bC=OまたはR5a5bC=Oを用いる場合、化合物(IIa)1モルに対して、R4a4bC=Oで表される化合物もしくはその塩またはR5a5bC=Oもしくはその塩の1〜過剰モル、好ましくは1〜20モルが用いられる。
還元剤としては、好ましくは水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化シアノホウ素ナトリウムおよび水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムであり、化合物(IIa)1モルに対し、還元剤1〜20モル、好ましくは1〜10モルが用いられる。
水素化触媒としては、好ましくはパラジウム黒、酸化パラジウム、硫酸パラジウムバリウム、パラジウム炭素、水酸化パラジウムなどのパラジウム触媒、白金黒、酸化白金および白金炭素などの白金触媒、または還元ニッケル、酸化ニッケル、ラネーニッケルなどのニッケル触媒が用いられる。
【0035】
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、水、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、アセトニトリルなどのニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよび1−メチル−2−ピロリジノンなどのアミド類、アセトン、2−ブタノンなどのケトン類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類および酢酸などの酸類が挙げられる。これらの溶媒は、適当な比率で混合して用いてもよいし、用いなくてもよい。
【0036】
イミンを製造するとき、モレキュラーシーブスの使用や、酢酸およびトリフルオロ酢酸などの酸、またはトリハロゲン化ホウ素(例、三塩化ホウ素および三フッ化ホウ素)、テトラハロゲン化チタン(例、四塩化チタン、四臭化チタンおよびチタン酸テトライソプロピル)およびハロゲン化アルミニウム(例、塩化アルミニウムおよび臭化アルミニウム)などのルイス酸の添加は、反応を促進する。
このイミン製造における反応温度は他の条件と同様に化合物(IIa)またはその塩により異なるが、−50〜150℃、好ましくは0〜100℃である。反応時間は、30分〜48時間、好ましくは1時間〜24時間である。
【0037】
またはRを用いる場合、化合物(IIa)1モルに対し、RまたはRで表される化合物もしくはその塩1〜10モル、好ましくは1〜5モルおよび塩基1〜10モル、好ましくは1〜3モルを用いる。
塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属重炭酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸セシウムなどのセシウム塩、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物、ナトリウムアミド、ナトリウムメトキシドおよびナトリウムエトキシドなどのアルコキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミンおよびジイソプロピルエチルアミンなどのアミン類、ピリジンなどの環状アミンなどが用いられる。
【0038】
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、アセトニトリルなどのニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類が用いられる。これらの溶媒は、適当な比率で混合して用いてもよい。
【0039】
反応温度は、他の条件と同様に化合物(IIa)により変えてもよいが、−20〜200℃、好ましくは、0〜150℃である。反応時間は、5分〜48時間、好ましくは、5分〜24時間である。
【0040】
このようにして得られた化合物(I)に含まれる化合物(Ia)は、公知の単離・精製法、例えば、濃縮、減圧濃縮、溶媒抽出、結晶化、再結晶、転溶およびクロマトグラフィーにより、単離・精製することができる。
【0041】
(スキーム2)
【化3】

(式中、R、R、R、R10、R11およびR12は、独立して、水素または置換されていてもよいヒドロカルビル、Rは置換されていてもよいヒドロカルビルであり、R11はRと同一であってもよく、R12はRと同一であってもよく、LおよびLは、独立して、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子であり、他の各記号は上記と同義である)
化合物(IIb)の調製は、スキーム4に記載している。
【0042】
化合物(IIc)は、グリニア試薬を用いたグリニア反応またはアルキルリチウムを用いたアルキル化によって化合物(IIb)から調製することができる。Rが置換されていてもよいヒドロカルビルである場合、最初のアルキル化でRMgLまたはRLiを用い、2番目のアルキル化でRMgLまたはRLiを用いてもよい。化合物(IIc)でRがRと同一の場合は、2番目のアルキル化にRMgLまたはRLiを用いてもよいが、これは工程cで連続的に行ってもよいし、工程dで段階的に行ってもよい。Rが水素の場合は、化合物(IIc)は工程dを行うことなく化合物(IIb)から調製することができる。
MgLまたはRMgLを用いる場合、化合物(IIb)1モルに対し、RMgLまたはRMgLで表される化合物1〜20モル、好ましくは1〜10モルが用いられる。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、アセトン、2−ブタノンなどのケトン類およびジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類が挙げられる。これらの溶媒は、適当な比率で混合して用いてもよいし、用いなくてもよい。
反応温度は他の反応条件と同様に化合物(IIb)またはその塩により異なるが、−20〜150℃、好ましくは0〜100℃である。反応時間は、5分〜48時間、好ましくは5分〜24時間である。
【0043】
LiおよびRLiを用いる場合、化合物(IIb)またはその塩1モルに対し、RLiおよびRLiで表される化合物1〜20モル、好ましくは1〜10モルが用いられる。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、アセトン、2−ブタノンなどのケトン類およびジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類が挙げられる。これらの溶媒は、適当な比率で混合して用いてもよいし、用いなくてもよい。
反応温度は他の反応条件と同様に化合物(IIb)またはその塩により異なるが、−100〜150℃、好ましくは−80〜100℃である。反応時間は、5分〜48時間、好ましくは5分〜24時間である。
このようにして得られた化合物(IIc)は、公知の単離・精製法、例えば、濃縮、減圧濃縮、溶媒抽出、結晶化、再結晶、転溶およびクロマトグラフィーにより、単離・精製することができる。
【0044】
化合物(I)に含まれる化合物(Ib)は、酸を用いた化合物(IIc)の脱水により調製することができsる。
酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸および塩化チオニルなどの無機酸、およびギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸およびメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの通常の有機酸並びにルイス酸が挙げられる。
脱水工程では、化合物(IIc)1モルに対し、1モル〜過剰モルの酸を用いるか、酸は溶媒として用いてもよい。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、水、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、アセトニトリルなどのニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよび1−メチル−2−ピロリジノンなどのアミド類、アセトン、2−ブタノンなどのケトン類およびジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類が挙げられる。これらの溶媒は、適当な比率で混合して用いてもよいし、用いなくてもよい。
反応温度は、他の条件と同様に化合物(IIc)またはその塩により異なるが、−20〜200℃、好ましくは、−20〜150℃である。反応時間は、5分〜48時間、好ましくは、5分〜24時間である。
このようにして得られたオレフィンは、公知の単離・精製法、例えば、濃縮、減圧濃縮、溶媒抽出、結晶化、再結晶、転溶およびクロマトグラフィーにより、単離・精製することができる。
【0045】
化合物(I)に含まれる化合物(Ic)は、適当な還元剤または接触水素化による化合物(Ib)の還元によって調製することができる。
還元工程では、還元剤は、好ましくは水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化シアノホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、ボラン−ジメチルスルフィド錯体およびボラン−テトラヒドロフラン錯体などのボラン等である。
接触水素化は、この工程で行ってもよい。水素化触媒としては、好ましくはパラジウム黒、酸化パラジウム、硫酸パラジウムバリウム、パラジウム炭素、水酸化パラジウムなどのパラジウム触媒、白金黒、酸化白金および白金炭素などの白金触媒、または還元ニッケル、酸化ニッケル、ラネーニッケルなどのニッケル触媒が用いられる。
還元工程において、酢酸およびトリフルオロ酢酸などの酸、またはトリハロゲン化ホウ素(例、三塩化ホウ素および三フッ化ホウ素)、テトラハロゲン化チタン(例、四塩化チタン、四臭化チタンおよびチタン酸テトライソプロピル)およびハロゲン化アルミニウム(例、塩化アルミニウムおよび臭化アルミニウム)などのルイス酸を反応促進のために添加してもよい。
この工程では、オレフィンまたはその塩1モルに対して、1〜20モル、好ましくは1〜10モルの還元剤が用いられる。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、水、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、アセトニトリルなどのニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよび1−メチル−2−ピロリジノンなどのアミド類、アセトン、2−ブタノンなどのケトン類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類および酢酸などの酸類が挙げられる。これらの溶媒は、適当な比率で混合して用いてもよい。
反応温度は、他の条件と同様にオレフィンまたはその塩により異なるが、0〜150℃、好ましくは、0〜100℃である。反応時間は、5分〜48時間、好ましくは、5分〜24時間である。
このようにして得られた化合物(Ic)は、公知の単離・精製法、例えば、濃縮、減圧濃縮、溶媒抽出、結晶化、再結晶、転溶およびクロマトグラフィーにより、単離・精製することができる。
工程e、工程f、脱水および還元は連続的に行ってもよく、酸および還元剤または触媒は同時に用いてもよい。
【0046】
(スキーム3)
【化4】

(式中、Lは塩素、臭素およびヨウ素等のハロゲン原子、p−トルエンスルホニルオキシ、メタンスルホニルオキシおよびトリフルオロメタンスルホニルオキシ等のスルホニルオキシ、およびアセチルオキシおよびベンゾイルオキシ等のアシルオキシを含む脱離基であり、他の各記号は上記と同義である)
化合物(IV)は、それぞれハロゲン化剤、スルホニル化剤またはアシル化剤を用いて、化合物(III)をハロゲン化、スルホニル化またはアシル化することにより調製することができる。
ハロゲン化剤としては、オキシ塩化リン、オキシ臭化リン、三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、塩素、臭素、塩化スルフリルおよび塩化チオニルが挙げられる。ハロゲン化剤は、化合物(III)1モルに対して、1モル〜過剰量で、または溶媒として用いる。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサンおよびテトラヒドロフランなどのエーテル類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトニトリルなどのニトリル類、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムおよびジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよび1−メチル−2−ピロリジノンなどのアミド類、アセトンおよび2−ブタノンなどのケトン類およびジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類が挙げられる。これらの溶媒は、適当な比率で混合して用いてもよい。
反応温度は、他の条件と同様に使用する化合物(III)またはその塩により変えてもよいが、0〜200℃、好ましくは、20〜150℃である。反応時間は、10分〜180時間、好ましくは、30分〜96時間である。
【0047】
スルホニル化剤としては、p−トルエンスルホニルクロリド、メタンスルホニルクロリドおよびトリフルオロメタンスルホニルクロリドなどが挙げられる。スルホニル化剤は、化合物(III)1モルに対して、1〜10モル、好ましくは1〜5モルの量で用いる。
アシル化剤としては、塩化アセチル、塩化ベンゾイルなどが挙げられる。アシル化剤は、化合物(III)1モルに対して、1〜10モル、好ましくは1〜5モルの量で用いる。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、水、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、アセトニトリルなどのニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類が挙げられる。これらの溶媒は、適当な比率で混合して用いてもよい。
反応温度は、他の条件と同様に化合物(III)またはその塩により変えてもよいが、0〜200℃、好ましくは、0〜150℃である。反応時間は、10分〜24時間、好ましくは、30分〜12時間である。
このようにして得られた化合物(IV)は、公知の単離・精製法、例えば、減圧濃縮、溶媒抽出、結晶化、再結晶、転溶およびクロマトグラフィーにより、単離・精製することができる。
【0048】
化合物(I)に含まれる化合物(Id)は、化合物(IV)を、有機金属試薬で処理した後、RCHOで表されるアルデヒドまたはその塩と反応させることによって調製することができる。
有機金属試薬は、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムおよびtert−ブチルリチウムなどのアルキルリチウムでよく、化合物(IV)またはその塩1モルに対し、1〜10モル、好ましくは1〜5モルの量で用いる。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、ペンタン、ヘキサンおよびヘプタンなどの炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。これらの溶媒は、適当な比率で混合して用いてもよい。
反応温度は他の条件と同様に化合物(IV)またはその塩により変えてもよいが、−100〜100℃、好ましくは−80〜50℃である。反応時間は、10分〜24時間、好ましくは30分〜12時間である。
このようにして得られた化合物(Id)は、公知の単離・精製法、例えば、減圧濃縮、溶媒抽出、結晶化、再結晶、転溶およびクロマトグラフィーにより、単離・精製することができる。
【0049】
化合物(I)に含まれる化合物(Ie)は、適当な還元剤または接触水素化による化合物(Id)の還元によって調製することができる。
還元剤は、好ましくは水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化シアノホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、ボラン、トリエチルシラン等である。
接触水素化は、この工程で行ってもよい。水素化触媒は、好ましくはパラジウム黒、酸化パラジウム、硫酸パラジウムバリウム、パラジウム炭素、水酸化パラジウムなどのパラジウム触媒、白金黒、酸化白金および白金炭素などの白金触媒、または還元ニッケル、酸化ニッケルまたはラネーニッケルなどのニッケル触媒である。
還元工程において、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸およびメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの通常の有機酸、塩酸、硫酸、硝酸および塩化チオニルなどの無機酸、またはトリハロゲン化ホウ素(例、三塩化ホウ素および三フッ化ホウ素)、テトラハロゲン化チタン(例、四塩化チタン、四臭化チタンおよびチタン酸テトライソプロピル)およびハロゲン化アルミニウム(例、塩化アルミニウムおよび臭化アルミニウム)などのルイス酸、および無水酢酸および無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を反応促進のために添加してもよい。
この工程では、化合物(Id)またはその塩1モルに対して、1〜20モル、好ましくは1〜10モルの還元剤が用いられる。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、水、メタノールおよびエタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサンおよびテトラヒドロフランなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムおよびジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、アセトニトリルなどのニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよび1−メチル−2−ピロリジノンなどのアミド類、アセトンおよび2−ブタノンなどのケトン類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、および酢酸などの酸類が挙げられる。これらの溶媒は、適当な比率で混合して用いてもよい。
反応温度は他の反応条件と同様に化合物(Id)またはその塩により変えてもよいが、0〜150℃、好ましくは0〜100℃である。反応時間は、5分〜48時間、好ましくは5分〜24時間である。
このようにして得られた化合物(Ie)は、公知の単離・精製法、例えば、濃縮、減圧濃縮、溶媒抽出、結晶化、再結晶、転溶およびクロマトグラフィーにより、単離・精製することができる。
【0050】
(スキーム4)
【化5】

(式中、R13は置換されていてもよいヒドロカルビル、置換されていてもよいアミノまたはエステルであり、他の各記号は上記と同義である)
【0051】
化合物(IId)は、化合物(V)の環化により調製することができる。
環化用試薬としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N’−モルホリノエチルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N’−(4−ジエチルアミノシクロヘキシル)カルボジイミド、N,N’−ジエチルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N,N’−カルボニルジイミダゾール、オキシ塩化リン、オキシ臭化リン、三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、ポリリン酸、塩化チオニル、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
環化剤は、化合物(V)1モルに対して、1〜10モル、好ましくは1〜5モルが用いられる。
反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、メタノールおよびエタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジオキサンおよびテトラヒドロフランなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、クロロホルムおよびジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、アセトニトリルなどのニトリル類、1−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、および酢酸などの酸類が挙げられる。これらの溶媒は、適当な比率で混合して用いてもよい。
反応は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸カリウムなどのアルカリ金属塩、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリンおよび1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エンなどのアミン類、水素化カリウムおよび水素化ナトリウムなどの金属水素化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドおよびカリウムtert-ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドなどの無機塩基または有機塩基の存在下に行ってもよい。
反応温度は他の反応条件と同様に使用する試薬により変えてもよいが、−20〜200℃、好ましくは20〜150℃である。反応時間は、5分〜10時間、好ましくは5分〜2時間である。
このようにして得られた化合物(IId)は、公知の単離・精製法、例えば、濃縮、減圧濃縮、溶媒抽出、結晶化、再結晶、転溶およびクロマトグラフィーにより、単離・精製することができる。
【0052】
化合物(I)の出発化合物は、無機酸(例、塩酸、リン酸、臭化水素酸および硫酸等)との塩および有機酸(例、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸等)との塩を含め、塩の形態であってもよい。これらの化合物の何れかが、−COOH等のような酸性基を持っている場合は、無機塩基(例、ナトリウム、カリウムおよびカルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属、アンモニア等)と、または有機塩基(例、トリエチルアミンなどのトリ−C1−3アルキルアミン等)と塩を形成していてもよい。
上記の各反応において、出発化合物が置換基としてアミノ、アミド、ヒドラジノ、ウレア、カルボキシまたはヒドロキシを持つ場合、そのような基はペプチド化学で通常用いられる保護基を用いて誘導体にしてもよく、保護基は必要により反応後に分解して目的化合物にすることができる。
アミノ、アミドおよびウレアの保護基としては、例えば、置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニル(例、ホルミル、メチルカルボニルおよびエチルカルボニル等)、フェニルカルボニル、C1−6アルキルオキシカルボニル(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルおよびtert−ブトキシカルボニル等)、フェニルオキシカルボニル、ベンゾキシカルボニル、C7−10アラルキルカルボニル(例、ベンジルオキシカルボニル)、C7−10アラルキル(例、ベンジル、4−メトキシベンジル等)、トリチル、フタロイル等が挙げられる。上記で挙げた各基の置換基はハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素)、C1−6アルキルカルボニル(例、メチルカルボニル、エチルカルボニルおよびブチルカルボニル等)およびニトロであってもよく、これらは1〜約3個あってもよい。
カルボキシの保護基としては、例えば、置換されていてもよいC1−6アルキル(例、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル等)、フェニル、トリチル、シリル等が挙げられる。上記で挙げた各基の置換基はハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素)、C1−6アルキルカルボニル(例、ホルミル、メチルカルボニル、エチルカルボニル、ブチルカルボニル等)およびニトロ基であってもよく、これらは1〜約3個あってもよい。
ヒドロキシの保護基としては、例えば、置換されていてもよいC1−6アルキル(例、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル等)、フェニル、C7−10アラルキル(例、ベンジル、4−メトキシベンジル等)、ホルミル、C1−6アルキル−カルボニル(例、メチルカルボニル、エチルカルボニル等)、フェニルオキシカルボニル、C7−10アラルキルカルボニル(例えば、ベンジルオキシカルボニル等)、ピラニル、フラニル、シリル等が挙げられる。上記で挙げた各基の置換基はハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素)、C1−6アルキル、フェニル、C7−10アラルキル、ニトロであってもよく、これらは1〜約4個あってもよい。
保護基の分解方法は、例えば、酸、塩基、還元、紫外光、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、ナトリウムN−メチルジチオカルバメート、フッ化テトラブチルアンモニウム、酢酸パラジウム等との処理などのような自体公知の方法またはそれに準じた方法である。
【0053】
化合物(I)は、優れた副腎皮質刺激ホルモン放出因子拮抗活性を有しており、経口投与した場合、化合物(I)は優れた薬物動態特性を示し、動物に対し、特に哺乳動物(例、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス等)に対し抗不安および抗うつ作用を示す。特に、本発明の化合物(I)は、優れた溶解特性、優れた代謝安定性および優れた薬物動態の改善を示す。また、化合物(I)は、広範囲の他の受容体に対してCRF1の選択的アンタゴニストであり、毒性も低い。
上記に基づいて、化合物(I)は、そのまま、または薬学的に許容される担体と製剤化することにより、安全な医薬として有用であり、うつ病、大うつ病、双極性うつ病、気分変調、情動障害(例、季節性情動障害)、再発性うつ病、産後抑うつ病、抑制症状、そう病、不安症、全般性不安障害、不安症候群、パニック障害、恐怖症、社会恐怖症、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、ストレス誘発不眠症、精神的てんかん、ツレット症候群、自閉症、意欲障害、適応障害、気分変調性障害、睡眠障害、不眠症、双極性障害、循環器系疾患、神経症、統合失調症、消化管潰瘍、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、ストレス誘発胃腸障害、神経性嘔吐、消化性潰瘍、下痢、便秘症、術後腸閉塞、胃腸機能障害およびストレスに伴う神経性嘔吐、アルツハイマー病、アルツハイマー型老年性認知症、パーキンソン病およびハンチントン病などの神経変性疾患、多発脳梗塞性認知症、老年性認知症、神経性食欲不活性、摂食障害、拒食症、過食症および他の摂食障害、肥満、糖尿病、アルコール依存症、薬物嗜好、退薬症候、片頭痛、ストレス性頭痛、緊張性頭痛、虚血性神経障害、神経障害、脳性麻痺、進行性核上性麻痺、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、筋痙攣、慢性疲労症候群、緑内障、メニエール症候群、自律神経失調症、脱毛症、高血圧症、心血管障害、頻脈、鬱血性心発作、精神異常興奮、気管支喘息、無呼吸、幼児突然死症候群、炎症性疾患、疼痛、アレルギー疾患、性行不能、閉経期障害、受精障害、不妊症、癌、HIV感染による免疫機能異常、ストレスによる免疫機能異常、脳脊髄膜炎、末端肥大症、失調症、メタボリック症候群、骨粗鬆症、クッシング症候群または血管性うつ病などのCRF受容体またはCRFの機能と関連する疾患の予防および/または治療用医薬として用いることができる。特に、化合物(I)は、情動障害、うつ病または不安症の予防および/または治療薬として用いることができる。
【0054】
化合物(I)およびそのプロドラッグを上記疾患の予防および/または治療用の医薬として用いる場合は、投与ルートは、自体公知の方法に従って、経口であっても、また非経口であってもよい。
化合物(I)は、薬学的に許容される担体とともに製剤化して、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の固形製剤;またはシロップ剤、注射剤等の液体製剤などとして、経口的または非経口的に投与することができる。また、貼付剤、ハップ剤、軟膏剤(クリーム剤を含む)、硬膏剤、テープ剤、ローション剤、液剤および溶液剤、懸濁剤、乳剤、スプレー剤等の経皮投与製剤にすることもできる。
【0055】
薬学的に許容される担体としては、製剤材料として慣用されている種々の有機または無機担体物質が使用され、賦形剤、滑沢剤、結合剤および崩壊剤として固形製剤に;溶媒、溶解剤、懸濁剤、等張化剤、緩衝剤および無痛化剤として液状製剤に配合される。必要により、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加剤を使用してもよい
【0056】
好ましい賦形剤としては、例えば、乳糖、ショ糖、D−マンニトール、デンプン、結晶性セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。好ましい滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カリウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。好ましい結合剤としては、例えば、結晶性セルロース、α−デンプン、ショ糖、D−マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。好ましい崩壊剤としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。好ましい溶媒としては、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、コーン油等が挙げられる。
【0057】
必要により、味のマスキング、腸溶性コーティング、または作用の持続の目的で、自体公知の方法でコーティングして経口製剤を調製してもよい。このコーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、Tween80、プルロニックF68[ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール]、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートフタレート、オイドラギット(Rohm社製、メタクリル酸−アクリル酸共重合体)等が挙げられる。
【0058】
好ましい溶解剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。好ましい懸濁剤としては、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グリセリンモノステアレート等の界面活性剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子物質などが挙げられる。好ましい等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられる。好ましい緩衝剤としては、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液が挙げられる。好ましい無痛化剤としては、例えば、ベンジルアルコール等が挙げられる。好ましい防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。好ましい抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0059】
本発明の組成物における化合物(I)の含有量は、例えば、製剤全量の約0.01〜100重量%である。
投与量は、投与対象、投与経路、疾患等により異なる。例えば、化合物(I)を抗うつ剤として成人に経口投与する場合は、活性成分としての化合物(I)は約0.1〜約20mg/kg体重、好ましくは約0.2〜約10mg/kg体重、さらに好ましくは約0.5〜約10mg/kg体重、好ましくは約0.5〜約5mg/kg体重の量で投与できる。この用量は、1日に1回または数回に分けて投与することができる。
【0060】
本発明の化合物(I)を含有する医薬組成物を上記疾患の治療または/および予防に使用する場合、化合物(I)は他の活性成分と組み合わせて使用してもよい。そのような併用活性成分としては、例えば、ベンゾジアゼピン類(クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、クロラゼプ酸二カリウム、ロラゼパム、クロナゼパム、アルプラゾラム等)、L型カルシウムチャンネル遮断薬(プレガバリン等)、三環系または四環系抗うつ剤(塩酸イミプラミン、塩酸アミトリプチリン、塩酸デシプラミン、塩酸クロミプラミン、カルピプラミン)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(マレイン酸フルボキサミン、塩酸フロキセチン、臭化水素酸シタロプラム、塩酸セルトラリン、塩酸パロキセチン、シュウ酸エシタロプラム等)、セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害薬(塩酸ベンラファキシン、塩酸デュロキセチン等)、ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(メシル酸レボキセチン等)、ミルタザピン、塩酸トラゾドン、塩酸ネファゾドン、塩酸ブプロピオン、マレイン酸セチプチリン、5−HT1A受容体刺激薬(塩酸ブスピロン、クエン酸タンドスピロン塩酸オセモゾタン等)、5−HT受容体阻害薬(シアメマジン等)、非心選択性β遮断薬(塩酸プロプラノロール、塩酸オクスプレノロール等)、ヒスタミンH受容体阻害薬(塩酸ヒドロキシジン等)、抗精神病薬(クロルプロマジン、ハロペリドール、スルピリド、クロザピン、塩酸トリフロペラジン、塩酸フルフェナジン、オランザピン、フマル酸クエチアピン、リスペリドン、アリピプラゾール等)、他の抗不安薬(メプロバメート)、タキキニン拮抗薬(MK−869等)、代謝型グルタミン酸受容体に作用する薬剤、CCK拮抗薬、β3アドレナリン受容体作用薬(塩酸アミベグロン)、GAT−1阻害薬(塩酸チアガビン)、N型カルシウムチャンネル遮断薬、炭酸脱水酵素II型阻害薬、NMDAグリシン部位作用薬、NMDA拮抗薬(メマンチン等)、末梢ベンゾジアゼピン受容体配位子、バソプレッシンV1b受容体阻害薬、バソプレッシンV1a受容体阻害薬、ホスホジエステラーゼII、IVまたはX阻害薬、オピオイド遮断薬、ウリジン、ニコチン受容体作用薬、甲状腺ホルモン(T3,T4)、TSH、TRH、MAO阻害薬(硫酸フェネルジン、硫酸トラニルシプロミン、モクロベミド等)、5−HT2A受容体阻害薬、5−HT2A受容体逆作用薬、COMT阻害薬(例、エンタカポン等)、双極性障害用薬剤(炭酸リチウム、バルプロ酸セミナトリウム、ラモトリジン、リルゾール、フェルバメート等)、カンナビノイドCB1受容体遮断薬(リモナバン等)、ナトリウムチャンネル遮断薬、抗ADHD薬(塩酸メチルフェニデート、塩酸メタンフェタミン等)、アルコール依存症用薬剤、自閉症用薬剤、慢性疲労症候群用薬剤、線維筋痛症候群用薬剤、てんかん用薬剤、不眠症用薬剤(エチゾラム、ゾピクロン、トリアゾラム、ゾルピデム、ラメルテオン、インディプロン等)、禁煙療法用薬剤、過眠症用薬剤、疼痛用薬剤、男性および女性性機能障害用薬剤、偏頭痛用薬剤、ギャンブル依存症用薬剤、下肢静止不能症候群用薬剤、物質依存症用薬剤、過敏性腸症候群用薬剤、アルツハイマー病治療薬、パーキンソン病治療薬、筋萎縮性側索硬化症治療薬(例、リルゾール等、神経栄養因子等)、コレステロール低下剤[スタチン系(例、プラバスタチンナトリウム、アトルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン等)、フィブラート系(例、クロフィブラート等)、スクアレン合成酵素阻害剤]、認知症の進行に伴う異常行動または放浪癖の治療薬(例、鎮静薬、抗不安薬等)、アポトーシス抑制剤、神経分化/再生促進剤、降圧薬、糖尿病治療薬、抗肥満薬、非ステロイド性抗炎症剤(例、メロキシカム、テノキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、アスピリン等)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、抗サイトカイン薬(例、TNF阻害薬、MAPキナーゼ阻害薬等)、ステロイド薬(例、デキサメサゾン、ヘキセストロール、酢酸コルチゾン等)、性ホルモンまたはその誘導体(例、プロゲステロン、エストラジオール、安息香酸エストラジオール等)、副甲状腺ホルモン(PTH)、カルシウム受容体遮断薬、抗癌薬、モルヒネ、カンナビノイドなどが挙げられる。
【0061】
このような他の活性成分および本発明の化合物(I)は、自体公知の方法で混合して、一つの医薬組成物(例、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)、液剤、注射剤、坐剤、徐放剤等)に製剤化しても良いし、または別々の組成物に製剤化して同一の対象に同時にまたは時間差をおいて投与してもよい。
【実施例】
【0062】
以下の参考例、実施例および実験例により、本発明の製法および使用法を説明するが、これは例示であって、本発明を制限するものではない。特許請求の範囲に定義される本発明の精神および範囲に含まれる他の実施形態も存在する。
以下の実施例において、室温は0〜30℃の範囲であり、融点はヤナコ(Yanaco)微量融点測定器を用いて測定したが、補正はしていない。
プロトン核磁気共鳴(H−NMR)スペクトルは、バリアンMercurry-300スペクトロメーター(300MHz)で測定した。化学シフトは、内部基準としてテトラメチルシランを用いてppmで示した。略号は以下の意味を示す:
s:シングレット(singlet)、d:ダブレット(doublet)、t:トリプレット(triplet)、q:カルテット(quartet)、m:マルチプレット(multiplet)、dd:ダブルダブレット(doublets of doublet)、brs:ブロードシングレット(broad singlet)。カップリング定数(J値)は、ヘルツ(Hz)で示した。
LC−MS(ESI)は、CAPCELL PAK UG−120 ODS(資生堂製)カラム(2.0mm i.d.×50mm)を用いて、Micromass ZMDで行い、0.05%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル水溶液(10−95%)を使用し、HP−1100(Agilent Technologies)装置を用いて、220nmでモニターを行った。試薬や溶媒は市販品を、精製せずに使用した。
クロマト精製は、シリカゲルカラム(キーゼルゲル60、0.063−0.22mm、メルク)またはPurif−Pack(SI 60μmまたはNH 60μm、Fuji Silysia社製)で行った。
分取TLC精製は、TLCプレート(シリカゲル60、メルク)を用いて行った。
分取HPLC精製は、フォトダイオードアレイ検出器(Hewlett Packard 1100シリーズ)およびGilson 215オートサンプラーと連結して、Gilson pumping systemを用いて行った。分離は、YMC packed カラム(CombiPrep ODS−A、5μm、50×20mm)およびlinear gradient(90%水 1分間、10−100%linear gradient 3.70分間、次いで100%アセトニトリル 2.7分間、 25mL/min.)を用いて行った。
【0063】
参考例1
−メチルベンゼン−1,2,3−トリアミン
【化6】

N−メチル−2,6−ジニトロアニリン(407mg、2.06mmol)のテトラヒドロフラン(6.5mL)懸濁液にパラジウム炭素(45mg)を添加し、混合液を水素で置換して、風船圧の水素下、室温で5時間撹拌した。触媒をろ過で除き、ろ液を減圧下濃縮して、標題化合物(280mg、2.04mmol、99%)を油状物として得た。
1H NMR (DMSO-d6) δ 2.42 (s, 3H), 3.16 (1H, brs), 4.54 (4H, s), 5.88-5.92 (m, 2H), 6.44 (t, J = 7.8 Hz, 1H).
【0064】
参考例2
3−アミノ−2−(メチルアミノ)安息香酸メチル
【化7】

2−(メチルアミノ)−3−ニトロ安息香酸メチル(2.10g、10.0mmol)のテトラヒドロフラン(40mL)懸濁液にパラジウム炭素(210mg)を添加し、混合液を水素で置換して、風船圧の水素下、室温で2時間撹拌した。触媒をろ過で除き、ろ液を減圧下濃縮して、標題化合物(1.80g、10.0mmol、100%)を淡黄色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3) δ 2.75 (s, 3H), 3.88 (s, 3H), 3.80-3.94 (brs, 2H), 6.06 (brs, 1H), 6.78-6.90 (m, 2H), 7.37 (dd, J = 2.6, 7.2 Hz, 1H)
【0065】
参考例3
2−ブロモ−7−(1−エチルプロピル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール
【化8】

7−(1−エチルプロピル)−1−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン(2.10g,10.0mmol)、三臭化リン(5.73g、20.0mmol)およびトルエン(10mL)の混合物を16時間加熱還流した。反応混合液を減圧下濃縮した。残渣は飽和炭酸水素ナトリウム溶液および酢酸エチルに溶解して、抽出した。有機層は無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して、減圧下濃縮した。残渣は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、10−50%酢酸エチル/n−ヘキサングラジエント混液で溶出して精製し、標題化合物(312mg、1.11mmol、11%)を無色油状物として得た。
1H NMR (CDCl3) δ 0.83 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 1.63-1.85 (m, 4H), 3.25-3.31 (m, 1H), 4.03 (s, 3H), 7.11 (dd, J = 1.2, 7.8 Hz, 1H), 7.22 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.53 (dd, J = 1.2, 7.8 Hz, 1H).
MS Calcd.: 280; MS Found: 281 (M+H).
【0066】
参考例4
2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−アミン
【化9】

メシチレン酢酸(mesityleneacetic acid)(904mg、5.08mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に室温でN,N’−カルボニルジイミダゾール(823mg、5.08mmol)を添加した。混合液を50℃で1時間撹拌した後、N−メチルベンゼン−1,2,3−トリアミン(700mg、5.08mmol)のテトラヒドロフラン(8mL)溶液を混合液に加え、さらに18時間還流した。反応混合液を冷却後、溶媒は減圧下留去し、残渣はシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、60−80%酢酸エチル/n−ヘキサングラジエント混液で溶出して精製し、標題化合物(340mg、1.22mmol、24%)を無色固体として得た。得られた固体は、n−ヘキサン/テトラヒドロフランから再結晶し、標題化合物(254mg、0.85mmol)を得た。
mp 247-248℃ (分解).
1H NMR (CDCl3) δ 2.23 (s, 6H), 2.27 (s, 3H), 3.68 (brs, 2H), 3.98 (s, 3H), 4.15 (s, 2H), 6.50 (dd, J = 1.0, 7.5 Hz, 1H), 6.89 (s, 2H), 6.95 (t, J = 7.7 Hz, 1H), 7.21 (dd, J = 1.0, 8.1 Hz, 1H).
MS Calcd.: 279; MS Found: 280 (M+H).
【0067】
参考例5
2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−アミン
【化10】

[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]酢酸(273mg、1.00mmol)のトルエン(2.0mL)溶液に室温でN,N’−カルボニルジイミダゾール(162mg、1.00mmol)を添加した。反応混合液を50℃で15分間撹拌した後、N−メチルベンゼン−1,2,3−トリアミン(137mg、1.00mmol)のトルエン(2mL)溶液を反応混合液に加え、さらに60時間還流した。反応混合液を冷却後、溶媒は減圧下留去し、残渣はシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、40−60%酢酸エチル/n−ヘキサングラジエント混液で溶出して精製し、標題化合物(170mg、0.455mmol、45%)を無色固体として得た。得られた固体は、n−ヘキサン/酢酸エチルから再結晶し、標題化合物(137mg、0.38mmol)を得た。
mp 240-241℃ (分解).
1H NMR (CDCl3) δ 3.71 (brs, 2H), 4.17 (s, 3H), 4.48 (s, 2H), 6.54 (dd, J = 0.9, 7.5 Hz, 1H), 6.96 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.19 (dd, J = 0.9, 8.1 Hz, 1H), 7.64 (s, 2H)
MS Calcd.: 373; MS Found: 374 (M+H).
【0068】
参考例6
2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボン酸メチル
【化11】

標題化合物を、参考例5記載と同様の方法でメシチレン酢酸(mesityleneacetic acid)と2−(メチルアミノ)−3−ニトロ安息香酸メチルから調製した。
mp 164-165℃.
1H NMR (CDCl3) δ 2.23 (s, 6H), 2.29 (s, 3H), 3.92 (s, 3H), 3.97 (s, 3H), 4.19 (s, 2H), 6.91 (s, 2H), 7.18 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.71 (dd, J = 1.1, 7.7 Hz, 1H), 7.85 (dd, J = 1.1, 8.1 Hz, 1H).
MS Calcd.: 322; MS Found: 323 (M+H).
【0069】
参考例7
2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボン酸メチル
【化12】

標題化合物を、参考例5記載と同様の方法で2−(メチルアミノ)−3−ニトロ安息香酸メチルから調製した。
mp 171-172℃.
1H NMR (CDCl3) δ 3.99 (s, 3H), 4.05 (s, 3H), 4.55 (s, 2H), 7.20 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.65 (s, 2H), 7.76 (dd, J = 1.1, 7.7 Hz, 1H), 7.83 (dd, J = 1.1, 8.1 Hz, 1H).
MS Calcd.: 416; MS Found: 417 (M+H).
【0070】
参考例8
2−メシチル−N−[2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル]アセトアミド
【化13】

メシチレン酢酸(mesityleneacetic acid)(39mg、0.219mmol)のテトラヒドロフラン(0.5mL)溶液にN,N’−カルボニルジイミダゾール(36mg、0.219mmol)を添加し、混合液を50℃で1時間撹拌した。N−メチルベンゼン−1,2,3−トリアミン(30mg、0.219mmol)のテトラヒドロフラン(0.5mL)溶液を混合液に加え、50℃で2時間撹拌し、1時間還流した。さらに反応混合液にメシチレン酢酸(mesityleneacetic acid)(39mg、0.219mmol)およびN,N’−カルボニルジイミダゾール(36mg、0.219mmol)を追加し、2時間還流した。反応混合液を冷却後、溶媒を減圧下留去し、残渣は1−メチル−2−ピロリジノン(0.2mL)に溶解した。溶液は80℃で15時間撹拌した。反応混合液を水で希釈して、酢酸エチルを加えた。析出した固体をろ取し、水および酢酸エチルで洗浄した。得られた固体は、再度酢酸エチルで洗浄し、標題化合物(21.1mg、0.0480mmol、22%)を固体として得た。
1H NMR (CDCl3+DMSO-d6) δ 2.15 (s, 12H), 2.33 (s, 6H), 3.61 (s, 3H), 3.81 (s, 2H), 4.18 (s, 2H), 6.86 (s, 2H), 6.92 (s, 2H), 7.07-7.13 (m, 2H), 7.53 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.62 (brs, 1H).
【0071】
実施例1
N,N−ジエチル−2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−アミン
【化14】

2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−アミン(200mg、0.717mmol)、アセトアルデヒド(0.400mL、0.717mmol)および酢酸(0.330mL、5.78mmol)のメタノール(5.0mL)溶液に、0℃で水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(1.52g、7.17mmol)を少しずつ添加した。混合液は室温まで温め、14時間撹拌した。混合液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)を加え、酢酸エチルで抽出した(25mL、3回)。有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)および食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮して、標題化合物(237mg、0.707mmol、97%)を無色固形物として得た。得られた固体は、n−ヘキサン/酢酸エチルから再結晶し、標題化合物(145mg、0.433mmol)を得た。
mp 149-150-151℃ (分解).
1H NMR (CDCl3) δ 1.00 (t, J = 7.0 Hz, 6H), 2.24 (s, 6H), 2.28 (s, 3H), 3.04-3.16 (m, 4H), 4.10 (s, 3H), 4.15 (s, 2H), 6.90 (s, 2H), 6.99 (dd, J = 1.1, 7.9 Hz, 1H), 7.09 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.46 (dd, J = 1.1, 7.9 Hz, 1H)
MS Calcd.: 335; MS Found: 336 (M+H).
【0072】
実施例2
2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−N,N−ジエチル−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−アミン
【化15】

標題化合物を、実施例1記載と同様の方法で2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−アミンから調製した。
mp 150-151℃
1H NMR (CDCl3) δ 1.03 (t, J = 7.0 Hz, 6H), 3.04-3.18 (m, 4H), 4.26 (s, 3H), 4.49 (s, 2H), 7.02 (dd, J = 1.1, 7.9 Hz, 1H), 7.10 (t, J = 7.7 Hz, 1H), 7.44 (dd, J = 1.1, 7.9 Hz, 1H), 7.64 (s, 2H).
MS Calcd.: 429; MS Found: 430 (M+H).
【0073】
実施例3
3−[2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル]ペンタン−3−オール
【化16】

2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボン酸メチル(1.30g、4.0mmol)のテトラヒドロフラン(80mL)溶液に、エチルリチウムのベンゼン/シクロヘキサン(90/10)溶液(0.5M,32mL、16.1mmol)を−78℃で滴下した。反応液は1時間かけて室温まで温め、次いで飽和塩化アンモニウム水溶液(20mL)を加えた。反応混合液は酢酸エチルで抽出し(100mL、3回)、有機層を合わせて食塩水で洗浄し(100mL、無水硫酸ナトリウムで乾燥して、減圧下濃縮した。残渣は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、15−25%酢酸エチル/n−ヘキサングラジエント混液で溶出して精製し、標題化合物(590mg、1.68mmol、42%)を無色固体として得た。得られた固体は、n−ヘキサン/酢酸エチルから再結晶し、標題化合物(435mg、1.24mmol)を得た。
1H NMR (CDCl3)δ 0.92 (t, J = 7.3 Hz, 6H), 1.98 (s, 1H), 2.00-2.16 (m, 4H), 2.23 (s, 6H), 2.29 (s, 3H), 4.16 (s, 2H), 4.19 (s, 3H), 6.91 (s, 2H), 6.98-7.13 (m, 2H), 7.64 (dd, J = 1.5, 7.5 Hz, 1H).
MS Calcd.: 350; MS Found: 351 (M+H).
【0074】
実施例4
7−[1−エチルプロパ−1−エン−1−イル]−2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール
【化17】

3−[2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル]ペンタン−3−オール(200mg,0.571mmol)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(326mg、1.71mmol)のキシレン(10mL)溶液を3時間還流した。冷却後、混合液は酢酸エチル(50mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30mL)および食塩水(30mL)で洗浄した。有機層は、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、10−20%酢酸エチル/n−ヘキサングラジエント混液で溶出して精製し、標題化合物(180mg、0.542mmol、95%、幾何異性体混合物)を無色固体として得た。
1H NMR (CDCl3)δ 0.96 (t, J = 7.3 Hz, 2.4H), 1.05 (t, J = 7.3 Hz, 0.6H), 1.37-1.44 (m, 0.6H), 1.82 (d, J = 6.8 Hz, 2.4H), 2.22-2.45 (m, 2H), 2.23 (s, 6H), 2.28 (s, 3H), 3.70 (s, 0.6H), 3.71 (s, 2.4H), 4.16 (s, 1.6H), 4.17 (s, 0.4H), 5.51 (q, J = 7.0 Hz, 0.8H), 5.65-5.78 (m, 0.2H), 6.81 (dd, J = 1.1, 7.2 Hz, 0.2H), 6.85-6.89 (m, 0.8H), 6.90 (s, 2H), 7.04-7.18 (m, 1H), 7.56-7.62 (m, 1H).
MS Calcd.: 332; MS Found: 333 (M+H).
【0075】
実施例5
7−(1−エチルプロピル)−2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール
【化18】

7−[1−エチルプロパ−1−エン−1−イル]−2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール(110mg,0.331mmol)のテトラヒドロフラン(3.5mL)溶液に、ボラン−ジメチルスルフィド錯体のテトラヒドロフラン溶液(1.9M,3.5mL,6.63mmol)を0℃で添加した。反応混合液を室温で15時間撹拌した後、混合液に酢酸(5.0mL)を加え、120℃で2時間加熱した。反応混合液は、冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)に注ぎ、酢酸エチルで抽出した(50mL、2回)。有機層を合わせて食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して、減圧下濃縮した。残渣は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、10−25%酢酸エチル/n−ヘキサングラジエント混液で溶出して精製し、標題化合物(12mg、0.0359mmol、11%)を無色固体として得た。
1H NMR (CDCl3)δ 0.84 (t, J = 7.4 Hz, 6H), 1.66-1.87 (m, 4H), 2.23 (s, 6H), 2.29 (s, 3H), 3.22-3.41 (m, 1H), 3.90 (s, 3H), 4.19 (s, 2H), 6.90 (s, 2H), 7.02-7.07 (m, 1H), 7.14 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.52 (dd, J = 1.2, 7.8 Hz, 1H).
MS Calcd.: 334; MS Found: 335 (M+H).
【0076】
実施例6
3−{2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル}ペンタン−3−オール
【化19】

標題化合物を、実施例3記載と同様の方法で2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボン酸メチルから調製した。
1H NMR (CDCl3) δ 0.93 (t, J = 7.5 Hz, 6H), 2.02 (s, 1H), 2.02-2.20 (m, 4H), 4.31 (s, 3H), 4.52 (s, 2H), 7.01-7.15 (m, 2H), 7.60 (dd, J = 1.5, 7.5 Hz, 1H), 7.65 (s, 2H).
MS Calcd.: 444; MS Found: 445 (M+H).
【0077】
実施例7
2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−7−[1−エチルプロパ−1−エン−1−イル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール
【化20】

標題化合物を、実施例4記載と同様の方法で3−{2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル}ペンタン−3−オールから調製した。
1H NMR (CDCl3) δ 0.98 (t, J = 7.5 Hz, 2.4H), 1.08 (t, J = 7.3 Hz, 0.6H), 1.35-1.49 (m, 0.6H), 1.86 (d, J = 6.8 Hz, 2.4H), 2.17-2.56 (m, 2H), 3.88 (s, 3H), 4.49 (s, 1.6H), 4.50 (s, 0.4H), 5.55 (q, J = 6.8 Hz, 0.8H), 5.76 (q, J = 6.5 Hz, 0.2H), 6.84 (dd, J = 0.9, 7.3 Hz, 0.2H), 6.90 (dd, J = 1.1, 7.2 Hz, 0.8H), 7.06-7.21 (m, 1H), 7.53-7.61 (m, 1H), 7.64 (s, 2H).
MS Calcd.: 426; MS Found: 427 (M+H).
【0078】
実施例8
2−{2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル}−1−メチルブチルアセテート
【化21】

実施例9
3−{2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル}ペンタン−2−オール
【化22】

2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−7−[1−エチルプロパ−1−エン−1−イル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール(60mg,0.141mmol)のテトラヒドロフラン(1.5mL)溶液に、ボラン−ジメチルスルフィド錯体のテトラヒドロフラン溶液(1.9M,1.5mL,2.81mmol)を0℃で添加した。反応混合液を室温で15時間撹拌した後、混合液に酢酸(3.0mL)を加え、120℃で2時間加熱した。冷却後、反応混合液は飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)に注ぎ、酢酸エチルで抽出した(50mL、2回)。有機層を合わせて食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して、減圧下濃縮した。残渣は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、5−50%酢酸エチル/n−ヘキサングラジエント混液で溶出して精製し、2−{2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル}−1−メチルブチルアセテート(17mg,0.0349mmol,25%)および3−{2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル}ペンタン−2−オール(低極性ジアステレオマー;2.4mg、0.00539mmol、4%、高極性ジアステレオマー;2.5mg、0.00562mmol、4%)を得た。
実施例8
2−{2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル}−1−メチルブチルアセテート(ジアステレオマー混合物として)
1H NMR (CDCl3) δ 0.75-0.91 (m, 3H), 1.07 (d, J = 6.0 Hz, 1.5H), 1.27 (d, J = 6.4 Hz, 1.5H), 1.64-2.04 (m, 2H), 1.81 (s, 1.5H), 2.08 (s, 1.5H), 3.55-3.75 (m, 1H), 4.08 (s, 1.5H), 4.11 (s, 1.5H), 4.53 (s, 2H), 5.12-5.31 (m, 1H), 7.04-7.23 (m, 2H), 7.49-7.59 (m, 1H), 7.65 (s, 2H).
MS Calcd.: 486; MS Found: 487 (M+H).
実施例9
3−{2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル}ペンタン−2−オール
(低極性ジアステレオマー)1H NMR (CDCl3) δ 0.81 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 1.36 (d, J = 6.0 Hz, 3H), 1.50 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 1.68-1.97 (m, 2H), 3.37-3.51 (m, 1H), 3.94-4.03 (m, 1H), 4.10 (s, 3H), 4.52 (s, 2H), 7.11-7.24 (m, 2H), 7.56 (dd, J = 1.5, 7.5 Hz, 1H), 7.65 (s, 2H)
(高極性ジアステレオマー)1H NMR (CDCl3) δ 0.86 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 1.12 (d, J = 6.4 Hz, 3H), 1.45 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 1.74-2.11 (m, 2H), 3.52-3.66 (m, 1H), 4.00-4.17 (m, 1H), 4.12 (s, 3H), 4.52 (s, 2H), 7.05 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.17 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 7.55 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.65 (s, 2H)
MS Calcd.: 444; MS Found: 445 (M+H).
【0079】
実施例10
[7−(1−エチルプロピル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル](メシチル)メタノール
【化23】

n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6M溶液、0.25mL、0.40mmol)を2−ブロモ−7−(1−エチルプロピル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール(100mg,0.36mmol)のジエチルエーテル(4mL)溶液に0℃で滴下した。反応混合液にメシトアルデヒド(mesitaldehyde)(74mg、0.50mmol)のジエチルエーテル(1mL)溶液を0℃で加えた。反応混合液を0.5時間撹拌し、反応混合液に1N塩酸を添加して反応をクエンチして、酢酸エチルで抽出した。有機層は無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧下濃縮した。残渣は、分取用HPLCにより、0.1%トリフルオロ酢酸を含有する10−100%水/アセトニトリルグラジエント混液で溶出して精製した。標題化合物を含有するフラクションを減圧下濃縮し、残渣は酢酸エチルで希釈して、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層は無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧下濃縮した。得られた固形物をエタノール/水から再結晶して、標題化合物(20mg、0.057mmol、16%)を無色結晶として得た。
mp 132-134℃.
1H NMR (CDCl3)δ 0.74 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 0.82 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.60-1.78 (m, 4H), 2.19 (s, 6H), 2.27 (s, 3H), 3.12-3.22 (m, 1H), 3.48 (s, 3H), 4.89 (s, 1H), 6.22 (s, 1H), 6.85 (s, 2H), 7.09 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.24 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 7.58 (d, J = 7.5 Hz, 1H).
MS Calcd.: 350; MS Found: 351 (M+H).
【0080】
試験例1
CRF結合阻害率の測定
受容体結合試験を、ヒトCRF受容体を発現するCHO細胞膜分画およびヒツジCRF、[125I]−tyr125I−CRF)を用いて行った。試験化合物1000nMを、ヒトCRF受容体発現CHO細胞膜分画1μgおよび125I−CRF50pMとともに、結合アッセイ緩衝液(50mM Tris−HCl、5mM EDTA、10mM MgCl、0.05% CHAPS、0.1% BSA、0.5mM PMSF、0.1μg/ml ペプスタチン、20μg/ml ロイペプチン、pH7.5)中でインキュベートした。また、非特異的結合(NSB)を測定するために、0.1μMの非標識ヒトウロコルチンを、5μgのヒトCRF受容体発現CHO細胞膜分画および50pMの125I−CRFとともに、結合アッセイ緩衝液中でインキュベートした。結合反応を室温で1.5時間行った後、膜を細胞採取機(Perkin Elmer)を用いて吸引濾過によりガラスフィルター(UniFilter プレート GF−C/Perkin Elmer)で集め、氷冷した50mMのTris−HCl(pH7.5)で洗浄した。ガラスフィルターを乾燥した後、液体シンチレーションカクテル(Microscinti 0、Perkin Elmer)を加え、ガラスフィルター上に残存する125I−CRFの放射活性を、Topcount(Perkin Elmer)を用いて測定した。
(TB−SB)/(TB−NSB)×100(SB:化合物を添加した際の放射能、TB:最大結合放射能、NSB:非特異的結合放射能)を計算し、各試験物質0.05nM〜10μMの存在範囲下での結合阻害率を得た。IC50値は、GraphPad Prismソフトウェアを用いて計算した。
本アッセイにおいて、実施例1,2,3,4,5,6,7,8,および10の化合物のテストを行って、1μM以下のIC50値を示すことを見出した。
【0081】
製剤例1
(1)実施例1の化合物 50mg
(2)ラクトース 34mg
(3)コーンスターチ 10.6mg
(4)コーンスターチ(ペースト) 5mg
(5)ステアリン酸マグネシウム 0.4mg
(6)カルボキシメチルセルロースカルシウム 20mg
全量 120mg
慣用の方法に従って、上記(1)〜(6)を混和し、錠剤製造機を用いて錠剤に加圧成型する。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の化合物(I)は、優れたCRFアンタゴニスト活性等を有し、したがって、情動障害、うつ病、不安症等の治療または予防薬として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、Rは、(1)置換されていてもよいヒドロカルビル、(2)置換されていてもよいヒドロカルビルおよび置換されていてもよい複素環基から選ばれる1または2個の置換基で置換されたアミノ、(3)置換されていてもよい環状アミノ、(4)置換されていてもよい複素環基、(5)アシルまたは(6)置換されていてもよいヒドロカルビルオキシ;
は、Zに結合した位置の隣の位置が1または2個の置換基で置換された芳香族基であって、該芳香族基は更に置換基を有していてもよく;
Xは、(1)−NR−(式中、Rは水素、置換されていてもよいヒドロカルビルまたはアシルである)または(2)硫黄;
、YおよびYは、各々、置換されていてもよいメチンまたは窒素(ただし、Y、YおよびYの窒素は1個以下);および
Zは、置換されていてもよいメチレン(ただし、カルボニルは除く)である)で表される化合物(ただし、
(1)N−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド、
(2)7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−カルボン酸 1’−ベンゾトリアゾリルエステル、
(3)7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−カルボン酸、
(4)7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−カルボン酸メチル、
(5)6−ベンジルオキシ−2−(7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−イル)−2−ピリド−4−イルメチルインダン−1,3−ジオン、
(6)3−(7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−イル)−ピロリジン―2―オン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル、
(7)6−ベンジルオキシ−2−(7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−イル)インダン−1,3−ジオン、
(8)7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−イル酢酸、
(9)7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−カルボン酸クロライド、
(10)7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−カルボン酸、
(11)7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−カルボン酸メチル、
(12)3−シアノ−2−(7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−イル)プロパン酸メチル、
(13)3−(7−メトキシ−2−(2−メトキシベンジル)−3H−ベンズイミダゾール−4−イル)−ピロリジン−2−オン、
(14)4−ベンジルオキシ−2−(2−メトキシベンジル)−7−メチル−1H−ベンズイミダゾール、
(15)4−ヒドロキシ−2−(2−メトキシベンジル)−7−メチル−1H−ベンズイミダゾール、
(16)2−(4−メチル−2−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−5−イル)メチルベンゾチアゾール−7−イル酢酸、
(17)2−(4−メチル−2−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−5−イル)メチルベンゾチアゾール−7−イルオキシ酢酸、
(18)2−メチル−2−(2−(4−メチル−2−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)チアゾール−5−イル)メチルベンゾチアゾール−7−イルオキシ)プロパン酸、
(19)3−[4−クロロ−2−[(2−クロロフェニル)メチル]−6−フルオロ−1H−ベンズイミダゾール−7−イル]−1−メチル−6−(トリフルオロメチル)−2,4(1H,3H)−ピリミジンジオン、
(20)4−((5−エトキシ−2−フルオロ−3−イソプロポキシフェニル)(4−メチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)メチルアミノ)ベンズアミジン、
(21)4−((5−エトキシ−2−フルオロ−3−イソプロポキシフェニル)(4−メトキシ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)メチルアミノ)ベンズアミジン、
(22)4−((4,5−ジメチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)(5−エトキシ−2−フルオロ−3−イソプロポキシフェニル)メチルアミノ)ベンズアミジン、
(23)4−((4,6−ジメチル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)(5−エトキシ−2−フルオロ−3−イソプロポキシフェニル)メチルアミノ)ベンズアミジン、
(24)N−[[1―メチル―2−[(4−メチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)メチル]−1H−ベンズイミダゾール−6−イル]カルボニル]−3−ホスホノアラニン、
(25)N−[[2―[(4−メトキシ−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)メチル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−6−イル]カルボニル]−3−ホスホノアラニン、
(26)N−[[2―[ジフルオロ(4−メチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)メチル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−6−イル]カルボニル]−3−ホスホノアラニン、および
(27)2−[(メトキシフェニル)メチル]−7−メチル−1H−ベンズイミダゾール−4−オールは除く);またはその塩。
【請求項2】
請求項1記載の化合物のプロドラッグ。
【請求項3】
が、置換されていてもよいC3−10アルキル、置換されていてもよいC3−10アルケニルまたは2個の置換されていてもよいC1−4アルキルで置換されたアミノである請求項1記載の化合物。
【請求項4】
が(i)2,4,6−三置換フェニル、(ii)2,4−二置換フェニル、(iii)2,4,6−三置換3−ピリジル、(iv)2,6−または4,6−二置換3−ピリジル、または(v)3,5−二置換2−ピリジルである請求項1記載の化合物。
【請求項5】
Xが−NR−である請求項1記載の化合物。
【請求項6】
、YおよびYがメチンである請求項1記載の化合物。
【請求項7】
Zがメチレンまたはヒドロキシメチレンである請求項1記載の化合物。
【請求項8】
が(1)ヒドロキシまたはC1−6アルキル−カルボニルオキシで置換されていてもよいC3−10アルキル、(2)C3−10アルケニルまたは(3)ジ−C1−4アルキルアミノ;
は2,4,6−三置換フェニルであって、該置換基は(1)ハロゲン原子および(2)ハロゲン化されていてもよいC1−4アルキルからなる群から選ばれたものであり;
Xは−N(C1−6アルキル)−;
がCH;
がCH;
がCH;および
Zがメチレンまたはヒドロキシメチレンである請求項1記載の化合物。
【請求項9】
(1)N,N−ジエチル−2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−アミン;
(2)2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−N,N−ジエチル−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−アミン;
(3)3−[2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル]ペンタン−3−オール;
(4)7−[1−エチルプロパ−1−エン−1−イル]−2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール;
(5)7−(1−エチルプロピル)−2−(メシチルメチル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール;
(6)3−{2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル}ペンタン−3−オール;
(7)2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−7−[1−エチルプロパ−1−エン−1−イル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール;
(8)2−{2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル}−1−メチルブチルエステルアセテート;
(9)3−{2−[2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−7−イル}ペンタン−2−オール;または
(10)[7−(1−エチルプロピル)−1−メチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル](メシチル)メタノール;またはその塩。
【請求項10】
請求項1記載の化合物またはそのプロドラッグを含有する医薬。
【請求項11】
CRF受容体が関与する疾患の治療または予防に用いられる請求項10記載の医薬。
【請求項12】
疾患が情動障害、うつ病または不安症である請求項11記載の医薬。
【請求項13】
請求項1記載の化合物またはそのプロドラッグの有効量を、それを必要とする対象に投与することを特徴とするCRF受容体が関与する疾患の治療または予防方法。
【請求項14】
疾患が情動障害、うつ病または不安症である請求項13記載の方法。
【請求項15】
CRF受容体が関与する疾患の治療または予防剤を製造するための請求項1記載の化合物またはそのプロドラッグの使用。
【請求項16】
疾患が情動障害、うつ病または不安症である請求項15記載の使用。

【公表番号】特表2010−514672(P2010−514672A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526974(P2009−526974)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【国際出願番号】PCT/JP2007/075427
【国際公開番号】WO2008/082003
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】