説明

CRF受容体アンタゴニスト、その調製法、その医薬組成物およびその使用

温血動物におけるCRFの過分泌を示す障害の処置を含む、種々の障害の処置に有用な、CRF受容体アンタゴニストを開示する。PETでの使用のために陽電子放出同位体で標識化されたCRF受容体アンタゴニストも開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、概してCRF受容体アンタゴニスト、その調製法、その医薬組成物およびその使用に関する。CRF受容体アンタゴニストが、温血動物におけるCRFの過分泌を示す障害の処置を含む、種々の障害の処置に有用であることを開示する。PETでの使用のために陽電子放出同位体で標識化された化合物であるCRF受容体アンタゴニストも開示する。
【0002】
(背景技術)
陽電子放出断層撮影法(PET)は、非侵襲性の画像化技術であり、陽電子放出同位体で標識化された化合物を投与し、陽電子を放出する化合物の結合のインシトゥ画像を提供する技術である。診断および創薬応用を提供する、標識化化合物が結合する特定領域の局在および定量を決めるために、画像を用いることができる。一般的にPETに用いられる陽電子放出同位体には、11C、13N、15O、18F、76Brおよび124Iが含まれる。13Nおよび15O同位体は、その有用性を制限する非常に短い半減期を有する。76Brおよび124Iは、それぞれ16.3時間および4.2日の半減期を有し、標識化CRFアンタゴニストの容易な生成を可能とするが、大きなハロゲン基の付加により、その化合物の活性が変化し、望ましくない脂溶性が与えられる。11Cは比較的短い20.5分の半減期を有するが、11CをPET化合物に組み込むことの容易さが、これを有用な同位体とする。18Fは、110分の半減期を有し、同位体の追跡子への組み込み、精製および被験者への投与に十分な時間を提供する。
【0003】
コルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニストへの陽電子放出同位体の組み込みは、標識化されたアンタゴニストのCRF受容体への結合を決定するPET画像化の使用を可能とし得る。CRFは、内分泌系、神経系および免疫系の機能に重大な改変を与えることが見出された、41アミノ酸ペプチドである。CRFは、副腎皮質刺激ホルモン(「ACTH」)、β−エンドルフィン、および下垂体前葉からの他のプロオポオメラノコルチン(「POMC」)誘導ペプチドの基底であり、ストレス発散の主要な生理学的調節因子であると考えられる(Valeら、Science 213:1394-1397, 1981)。CRF受容体は、cAMPの細胞内産生におけるCRF−刺激増加を媒介するGTP結合蛋白質(Perrinら、Endocrinology 118:1171-1179, 1986)と連結されている(Bilezikjian, L.MおよびW.W. Vale, Endocrinology 113:657-662, 1983)。ACTHおよびPOMCの産生を刺激する役割に加えて、CRFは、ストレスに対して多くの内分泌反応、自立反応、および行動反応を調整するとも考えられており、異常生理の情動障害に関与し得る。さらに、CRFは免疫系、中枢神経系、内分泌系および心血管系間の伝達における重要な媒介物であると考えられている(Croffordら、J. Clin. Invest. 90:2555-2564, 1992; Sapolskyら、Science 238:522-524, 1987; Tildersら、Regul. Peptides 5:77-84, 1982)。総体的に、CRFは非常に重要な中枢神経系の神経伝達物質の1つのようであり、ストレスに対して体全体の応答を統括する重大な役割を果たしている。
【0004】
脳への直接的なCRFの投与は、ストレス環境に曝された動物で観察されれる行動反応、生理学的反応、および内分泌反応と同じ反応を惹起する。例えば、CRFの脳室内投与は、行動活性化(Suttonら、Nature 297:331, 1982)、脳電図の持続的活性化(Ehlersら、Brain Res. 278:332, 1983)、交感神経副腎髄質経路の刺激(Brownら、Endocrinology 110:928, 1982)、心拍および血圧の増加(Fisherら、Endocrinology 110:2222, 1982)、酸素消費量の増大(Brownら、Life Sciences 30:207, 1982)、胃腸活動の改変(Williamsら、Am. J. Physiol. 253:G582, 1987)、食品消費の抑制(Levineら、Neuropharmacology 22:337, 1983)、性行動の緩和(Sirinathsinghjiら、Nature 305:232, 1983)、および免疫機能欠陥(Irwinら、Am. J. Physiol. 255:R744, 1988)をもたらす。さらに、臨床データは、CRFがうつ病、不安症関連の障害および拒食症の脳内で過分泌され得ることを示唆している(DeSouza, Ann. Reports in Med. Chem. 25:215-223, 1990)。従って、臨床データは、CRF受容体アンタゴニストが、CRFの過剰分泌を示す神経精神病の処置に有用な新規の抗うつ薬および/または抗不安薬であり得ることを示している。
【0005】
陽電子放出同位体で標識化されたCRFアンタゴニストの投与は、脳内での標識化されたアンタゴニストの結合特性のインシトゥ評価を提供するPET画像化の使用を可能にし得る。アンタゴニストは、幾つかの特徴、例えば、CRF受容体への特異的な結合、高い脳透過性および合成の最終段階の陽電子放出同位体で標識化される能力を有するべきである。
【0006】
米国特許第6,514,982号、6,531,475号、6,664,261号および国際公開第98/03510号パンフレットには、種々のCRF媒介型の疾病を処置するために使用するCRFアンタゴニストが記載されている。CRF受容体に対するPETリガンドとしての特定のピロロピリミジン合成もまた記載されている(L. Martarelloら、Nuclear Medicine and Biology, 28 (2001) 187-195)。
【0007】
CRF受容体アンタゴニストの投与を通じたCRF調節を達成することに対して、重大な進歩がある一方で、当分野には効果的な小分子のCRF受容体アンタゴニストに対する必要性が残っている。そのようなCRF受容体アンタゴニストを含む医薬組成物、および例えばストレス関連の障害を処置するためのその使用方法に関する必要性も存在する。陽電子放出同位体を有するCRFアンタゴニストを、診断ツールおよび薬物探索ツールとして使用することも取り組まれている。本発明は、これらの必要性を満たし、そして別の関連する利益を提供する。
【0008】
(発明の要約)
簡単には、本発明は、概してCRF受容体アンタゴニスト、2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−(ジエチルアミノ)ピラゾロ[2,3−a]ピリミジン、2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−(N−エチル−N−メトキシエチルアミノ)ピラゾロ[2,3−a]ピリミジン、2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−{2−(S)−メトキシメチルピロリジニル}−ピラゾロ[2,3−a]ピリミジン、2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−(N−エチル−N−{2−フルオロエチル}アミノ)ピラゾロ[2,3−a]ピリミジンおよび6−(シクロプロピルメチル)−2−(2,4−ジクロロフェニル)−7−(S)−エチル−7,8−ジヒドロ−4−メチル−6H−1,3,6,8a−テトラアザアセナフチレン、その立体異性体、プロドラッグおよび医薬上許容される塩に関する。
【0009】
本発明のCRF受容体アンタゴニストは、放射標識されることができ、診断物質、研究物質並びに薬物開発および評価に有用な物質として有用である。本発明のこれらの態様および他の態様は、以下の詳細な説明での言及により明らかとなろう。この目的を達成するために、より詳細な特定の手順、化合物および/または組成物を記載した種々の引例が本明細書中に記載され、その内容は出典明示により本明細書の一部とされる。
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は、概してコルチコトロピン放出因子(CRF)受容体アンタゴニストおよびPETリガンドとして有用な化合物に関する。
【0011】
第一の実施形態において、本発明のCRF受容体アンタゴニストは、2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−(ジエチルアミノ)ピラゾロ[2,3−a]ピリミジン、2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−(N−エチル−N−メトキシエチルアミノ)ピラゾロ[2,3−a]ピリミジン、2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−{2−(S)−メトキシメチルピロリジニル}−ピラゾロ[2,3−a]ピリミジン、2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−(N−エチル−N−{2−フルオロエチル}アミノ)ピラゾロ[2,3−a]ピリミジンおよび6−(シクロプロピルメチル)−2−(2,4−ジクロロフェニル)−7−(S)−エチル−7,8−ジヒドロ−4−メチル−6H−1,3,6,8a−テトラアザアセナフチレンから選ばれる。
【0012】
別の実施形態において、CRFアンタゴニストは、PETによるアンタゴニストの画像化を可能とするために陽電子放出同位体で標識化される。同位体は、一般的に合成の最後の工程のときに加えることができ、迅速に精製することができ、そして一般的に静脈内型にて被験者に投与することができる、11Cおよび18Fが一般的に選ばれる。
【0013】
本発明の化合物は、遊離塩基として一般的に利用され得る。あるいは、本発明の化合物は酸付加塩の形で用いられ得る。本発明の遊離塩基アミノ化合物の酸付加塩は、当分野で周知の方法により調製することができ、有機酸および無機酸から形成させることができる。適切な有機酸は、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、桂皮酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、グリコール酸、グルタミン酸およびベンゼンスルホン酸を含む。適切な無機酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸および硝酸を含む。従って、構造(I)の「医薬上許容される塩」なる用語は、いずれか及び全ての許容される塩型を包含するものである。
【0014】
一般的に、本発明の化合物は、当業者には既知の有機合成技術に従って、並びに実施例に記載の代表的な方法により作製することができる。
【0015】
CRF受容体アンタゴニストとしての化合物の有効性は、種々のアッセイ法により決定することができる。本発明の適切なCRFアンタゴニストは、CRFのその受容体に対する特異的な結合を阻害し、CRFに関する活性を中和することができる。本発明の化合物は、この目的のために、1つまたはそれ以上の一般的に受け入れられているアッセイ、(限定するものではないが)DeSouzaら(J. Neuroscience 7:88, 1987)およびBattagliaら(Synapse 1:572, 1987)により開示されたアッセイによりCRFアンタゴニストとしての活性について評価され得る。以上で記載したように、適切なCRFアンタゴニストは、CRF受容体親和性を示す化合物を含む。CRF受容体親和力は、放射標識されたCRF(例えば[125I]チロシン−CRF)のその受容体(例えば、ラットの大脳皮質膜から調製された受容体)に対する結合を阻害する化合物の能力を測定する、結合研究により決定され得る。DeSouzaら(前掲、1987)により記載された放射性リガンド結合アッセイは、CRF受容体についての化合物の親和力を決定するためのアッセイを提供する。そのような活性は典型的には、その受容体から放射標識されたリガンドの50%を置き換えるのに必要な化合物の濃度としてのIC50から計算され、以下の方程式:
【化1】

【0016】
CRF受容体結合を阻害することに加えて、化合物のCRF受容体アンタゴニスト活性は、CRFと関連する活性を中和する化合物の能力により確立される。例えば、CRFは、アデニル酸シクラーゼ活性を含む種々の生化学過程を刺激することが知られている。従って、化合物は、例えば、cAMPレベルを測定することによって、CRF刺激されたアデニル酸シクラーゼ活性を中和する能力によりCRFアンタゴニストとして、評価され得る。Battagliaら(前掲、1987)により記載されたCRF刺激によるアデニル酸シクラーゼ活性アッセイは、CRF活性を中和する化合物の能力を決定するためのアッセイを提供する。従って、CRF受容体アンタゴニスト活性は、一般的に初期結合アッセイ(例えば、DeSouzaにより開示された(前掲、1987))、続いてcAMPスクリーニングプロトコル(例えば、Battagliaにより開示された(前掲、1987))を含むアッセイ技術により決定することができる。
【0017】
本発明のCRF受容体アンタゴニストは、CRF受容体部位で作用し、内分泌の、精神の、および神経の障害または病気を含む幅広い障害または病気の処置のための治療物質として用いることができる。より詳細には、本発明のCRF受容体アンタゴニストは、CRFの過分泌から生じる生理学的条件または障害を処置するのに有用であり得る。CRFがストレスに対する内分泌応答、行動反応および無意識の応答を活性化し、かつ調整する重要な神経伝達物質であると考えられているため、本発明のCRF受容体アンタゴニストは、精神神経障害を処置するのに用いることができる。本発明のCRF受容体アンタゴニストにより処置され得る精神神経障害には、情動障害、例えばうつ病;不安症関連の障害、例えば全般性不安障害、パニック障害、強迫性障害、異常な攻撃性、心血管異常、例えば、不安定狭心症、反動的高血圧;および摂食障害、例えば神経性食欲不振、過食症、および過敏性腸症候群が含まれる。CRFアンタゴニストは、種々の病状、並びに卒中関連のストレス誘導性免疫抑制を処置するのに有用でもあり得る。本発明のCRFアンタゴニストの他の使用には、炎症状態(例えば、慢性間接リウマチ、ブドウ膜炎、喘息、炎症性腸疾患、G.I.運動性)、疼痛、クッシング病、点頭痙攣、癲癇および幼児と成人の両方における発作、並びに種々の薬物乱用および脱薬症状(アルコール中毒を含む)の処置が含まれる。
【0018】
本発明のPET標識化CRF受容体アンタゴニストの付加的な使用には、CRF受容体に関与する種々の病状の臨床的な研究および診断での使用が含まれる。標識化CRF受容体アンタゴニストもまた、薬理学、薬物動力学、薬力学、生体分布および代謝の研究に有用であり得る(Victor Pike, Drug Information Journal, 31 (1997), 997-1013)。
【0019】
本発明の別の実施形態において、1つまたはそれ以上のCRF受容体アンタゴニストを含む医薬組成物が開示される。投与目的について、本発明の化合物は、医薬組成物として製剤化することができる。本発明の医薬組成物は、本発明のCRF受容体アンタゴニスト(即ち、構造(I)の化合物および医薬上許容される担体および/または希釈剤)を含む。CRF受容体アンタゴニストは、特定の障害を処置するのに有効な量で、即ち、CRF受容体アンタゴニスト活性を発揮するのに十分な量で、そして好ましくは患者に許容される毒性を有する量で、組成物中に存在する。好ましくは、本発明の医薬組成物は、投与経路に応じて投薬あたり0.1mg〜250mgの量で、より好ましくは1mg〜60mgの量でCRF受容体アンタゴニストを含み得る。適当な濃度および投薬量は、当業者により容易に決定され得る。
【0020】
医薬上許容される担体および/または希釈剤は、同業者には既知である。溶液として製剤化された組成物について、医薬上許容される担体および/または希釈剤は、塩水および滅菌水を含み、場合により抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および他の一般的な添加剤を含んでいてもよい。組成物はまた、CRF受容体アンタゴニストに加えて、希釈剤、分散剤および界面活性剤、結合剤、および潤滑剤を含む、丸剤、カプセル剤、粒剤または錠剤として製剤化することもできる。当業者であれば、適当な様式で、また慣例に従って、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA 1990に開示される様式で、CRF受容体アンタゴニストをさらに製剤化することができる。
【0021】
加えて、プロドラッグもまた本発明の内容の範囲内に含まれる。プロドラッグは、患者に投与された場合に、インビボ(in vivo)にて構造(I)の化合物を放出する、担体と共有結合したいずれかのものである。プロドラッグは、その修飾が慣例の操作またはインビボのいずれかにより開裂し、本発明の化合物を産生するような様式で、官能基を修飾することにより一般的に調製される。
【0022】
他の実施形態において、本発明は、内分泌の、精神のおよび神経の障害または病気を含む、種々の障害または病気を処置する方法を提供する。本方法は、本発明の化合物を温血動物に該障害または病気を処置するのに十分な量で投与することを含む。当該方法は、本発明のCRF受容体アンタゴニスト、好ましくは医薬組成物の剤型での全身投与を含む。本明細書中に用いられる、全身投与は、経口投与および非経口投与方法を含む。経口投与について、CRF受容体アンタゴニストの適切な医薬組成物は、粉剤、粒剤、丸剤、錠剤およびカプセル剤並びに液剤、シロップ剤、懸濁剤、および乳剤を含む。このような組成物は、香味料、保存料、懸濁剤、増粘剤および乳化剤、並びに他の医薬上許容される添加剤を含んでいても良い。非経口投与について、本発明の化合物は、CRF受容体アンタゴニストに加えて、緩衝剤、抗酸化剤、静菌剤および水性注射溶液に一般的に用いられる他の添加剤を含んでいても良い、水性注射溶液にて製造され得る。
【0023】
上述のように、本発明の化合物の投与は、多種多様な障害または病気を処置するのに用いることができる。特に、本発明の化合物は、うつ病、不安障害、パニック障害、強迫性障害、異常な攻撃性、不安定狭心症、反動的高血圧、神経性食欲不振、過食症、過敏性腸症候群、ストレス誘導性免疫抑制、卒中、炎症、疼痛、クッシング病、点頭痙攣、癲癇、および薬物乱用または脱薬症状の処置のために、温血動物に投与することができる。
【0024】
以下の実施例は、限定するものではなく、例証の目的で提供される。
【0025】
実施例
本発明のCRF受容体アンタゴニストは、実施例1〜4で開示される方法により調製することができる。実施例5は、受容体結合親和力を決定する方法を示す。
【0026】
分析HPLC−MS(LC−MS)
HP1100シリーズ:自動−試料採取器、UV検出器(220nmおよび254nm)、MS検出器(エレクトロスプレイ)を備えている;
HPLCカラム:YMC ODS AQ、S−5、5μ、2.0×50mmカートリッジ;
HPLC勾配:1.5mL/分、2.5分での水中の10%アセトニトリルから水中の90%アセトニトリル、1分間90%を維持する。
【0027】
分取HPLC−MS
ギルソン215自動−試料分取器/画分収集器、UV検出器およびサーモフィンニガン(ThermoFinnigan)AQAシングルQUADマス検出器(エレクトロスプレイ)を備えたギルソンHPLC−MS;
HPLCカラム:BHK ODS−O/B、5μ、30×75mm
HPLC勾配:35mL/分、7分での水中の10%アセトニトリルから100%アセトニトリル、3分間100%アセトニトリルを維持する。
【0028】
実施例1
【化2】

【0029】
工程1A:
1,2−ジメトキシエタン(DME、40mL)中のカリウムt−ブチルオキシド(7.3g、65mmol、1.4当量)の懸濁液を、窒素存在下で−50℃まで冷却した。温度を−50℃以下に保ちながら、40mLのDME中のトシルメチルイソシアニド(9.1g、46.5mmol、1当量)を滴加した。2,4−ジメトキシベンズアルデヒド(7.7g、46.5mmol、1当量)を滴加し、反応混合物を30分間攪拌し、化合物<1a>を得た。MeOH(100mL)を加え、混合物を30分間還流させた。DMEおよびMeOHのほとんどを除去し、残渣を水(100mL)および酢酸エチル(100mL)に再懸濁した。酢酸で中和させて、有機相を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、ヘキサン中25%酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムにより精製して、5.5gの<1b>を白色固体として得た。
【0030】
工程1B:
乾燥THF(300mL)中の2,4−ジメトキシフェニルアセトニトリル<1b>(36.0g、204mmol、1当量)に、12g(510mmol、2.5当量)の60% NaHを滴加した。数適のEtOAcを加え、反応物をゆっくりと加熱して反応を開始させた。次いで、残ったEtOAc(150mL)を滴加した。2時間後、反応物を氷水に注ぎ、エーテルで洗浄した。水相をpH=6まで酸性化させ、EtOAcで抽出し、MgSOで乾燥させて、濾過して、減圧にて濃縮して44.2gの<1c>を得た。
【0031】
工程1C:
<1c>(8.17g、37.3mmol)およびヒドラジン一臭化水素酸塩(15.3g、135.4mmol)の混合物をEtOH/HO(6:1)中で5時間還流させた。EtOHを蒸発させた後、残渣をEtOAcおよび水で抽出した。有機相を乾燥、蒸発乾固させて<1d>を得た。
【0032】
工程1D:
化合物<1d>(6.5g、27.9mmol)の混合物を、酢酸(100mL)中のアセト酢酸エチル(5.0mL)と共に3時間還流させた。AcOHの蒸発させた後、エチルエーテルを加え、媒質フリット化漏斗(medium firtted funnel)を通じて濾過した後に、<1e>(10.4 g)を得た。酢酸溶媒に代えて、反応物をジオキサン(50mL)中で一晩還流させ、次いでエーテルを加えて生成物を沈殿させてもよい。
【0033】
工程1E:
アセトニトリル中の化合物<1e>(1.9g、6.3mmol)の懸濁液にPOCl(2.2mL、24.1mmol)加えた。懸濁液を5時間加熱還流させた。得られた橙色溶液を室温まで冷却し、氷水に注いだ。EtOAcで抽出した後、カラムクロマトグラフィー精製により、化合物<1f>を得た(1.70g、85%)。
【0034】
工程1F:
アセトニトリル(0.8mL)中の化合物<1f>(30mg)および過剰量のジエチルアミンをマイクロ波にて160℃で16分間加熱した。Sciex2 prep LC−MS系で精製して2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−(ジエチルアミノ)ピラゾロ[2,3−a]ピリミジン<1−1>を得た。 LCMS 355 (MH+), FW = 354.45
同様の一般手順に従って、以下の化合物も合成される:2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−(N−エチル−N−メトキシエチルアミノ)ピラゾロ[2,3−a]ピリミジン。 LCMS 385 (MH+), FW = 384.48;
2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−{2−(S)−メトキシメチルピロリジニル}−ピラゾロ[2,3−a]ピリミジン。 LCMS 396 (MH+), FW = 396.49。
【0035】
実施例2
【化3】

工程2A:
2−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒドを、DMF中のtert−ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMSCl)およびイミダゾールと反応させて保護し、tert−ブチルジメチルシリルエーテル<2a>を得た。<2a>を用い、工程1A〜1Eで概説した手順に従って、化合物<2f>が得られる。<2f>およびジエチルアミンを工程1Fの手順に従って処理し、続いて標準条件下でフッ化テトラブチルアンモニウムまたは酸を用いてtert−ブチルジメチルシリル基を脱保護して<2g>を得た。DMFまたはアセトニトリルなどの溶媒中の11Cヨウ化メチルおよび水素化ナトリウムで<2g>のヒドロキシ基のアルキル化により<2−1>を得た。
【0036】
実施例3
【化4】

【0037】
工程3A:
工程1Fの手順に従って、化合物<1f>およびエチルアミノエタノールにより<3a>を得た。
【0038】
工程3B:
化合物<3a>をメシラート、トシルレートまたはトリフレートなどのスルホン酸エステルに転化し、18Fイオンと反応させて<3−1>を得た(L. Martarelloら、Nuclear Medicine and Biology 28 (2001) 187-195)。ピリジン中の化合物<3a>およびメタンスルホニルクロリドによりメシラートを得て、それをK18Fで求核置換し、HPLCにより精製して、<3−1>を得た。
【0039】
実施例4
6−(シクロプロピルメチル)−2−(2,4−ジクロロフェニル)−7−(S)−エチル−7,8−ジヒドロ−4−メチル−6H−1,3,6,8A−テトラアザアセナフチレン
【化5】

【0040】
工程4A:
Ishiwataら、 Appl. Radiat. Isot., 46, 10: 1009-1013の通常の手順に従って、シクロプロピル−[11C]−ヨウ化メチルを調製した。[11C]COを0〜5℃のTHF中の臭化マグネシウムシクロプロピル溶液に移し、続いて水素化アルミニウムリチウムを用いてすぐに還元した。ヨウ化水素酸を加え、混合物を加熱し、精製した後に<4a>を得た。
【0041】
工程4B:
化合物<4b>(米国特許第6,531,475号に記載の種々の手順に従って合成される)を、DMFなどの溶媒中の水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシドまたは炭酸セシウムなどの標準の条件を用いて化合物<4a>でアルキル化し、続いてHPLCにより精製して<4−1>を得た。
【0042】
実施例5
CRF受容体結合活性
本発明の化合物は、一般にGrigoriadisら (Mol. Pharmacol vol50, pp679-686, 1996)およびHoareら(Mol. Pharmacol vol63 pp751-765, 2003.)に記載の標準的な放射性リガンド結合アッセイによりCRF受容体に対する結合活性について評価され得る。放射標識されたCRFリガンドを利用することで、このアッセイを、本発明の化合物のCRF受容体亜型との結合活性を評価するために用いることができる。
【0043】
簡単には、結合アッセイは、CRF受容体からの放射標識されたCRFリガンドの置換を含む。より詳細には、結合アッセイは、ヒトCRF受容体を安定導入された細胞からの1〜10mgの細胞膜を使用し、96ウェルアッセイプレートにて実施される。それぞれのウェルに、興味ある化合物または参照リガンド(例えば、サウバギン、ウロコルチン(urocortin)IまたはCRF)を含む約0.05mlのアッセイ緩衝液(例えば、ダルベッコ・リン酸緩衝生理食塩水、10mM塩化マグネシウム、2mM EGTA)、0.05mlの[125I]チロシン−サウバギン(終濃度〜150pMまたは標準的な分析法により決定されたK付近の濃度)および0.1mlのCRF受容体を含む細胞膜懸濁液を供する。この混合液を2時間22℃でインキュベートし、次いでガラス繊維フィルターにかけて迅速にろ過して結合および遊離放射性リガンドを分離する。3回の洗浄の後、そのフィルターを乾燥させ、放射能(125Iからのオージェ電子)をシンチレーション計数器を用いて計測する。全ての放射性リガンドの結合データを、非線形最小二乗曲線当てはめプログラム・プリズム(Prism)(GraphPad Software Inc)またはXLfit(ID Business Solutions Ltd)を用いて分析することができる。
【0044】
本発明の具体的な実施形式を例証の目的で本明細書中に記載したが、本発明の意図および目的から逸脱することなく、種々の修飾を施し得ることは理解されよう。従って、本発明は添付の特許請求の範囲により制限されることを除き、本発明は制限されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−(ジエチルアミノ)ピラゾロ[2,3−a]ピリミジン、2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−(N−エチル−N−メトキシエチルアミノ)ピラゾロ[2,3−a]ピリミジン、2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−{2−(S)−メトキシメチルピロリジニル}−ピラゾロ[2,3−a]ピリミジン、および2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−(N−エチル−N−{2−フルオロエチル}アミノ)ピラゾロ[2,3−a]ピリミジンから選択される化合物。
【請求項2】
PETリガンドとして使用するための2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−(ジエチルアミノ)ピラゾロ[2,3−a]ピリミジン、2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−(N−エチル−N−メトキシエチルアミノ)ピラゾロ[2,3−a]ピリミジン、2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−{2−(S)−メトキシメチルピロリジニル}−ピラゾロ[2,3−a]ピリミジン、2,5−ジメチル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−(N−エチル−N−{2−フルオロエチル}アミノ)ピラゾロ[2,3−a]ピリミジンおよび6−(シクロプロピルメチル)−2−(2,4−ジクロロフェニル)−7−(S)−エチル−7,8−ジヒドロ−4−メチル−6H−1,3,6,8a−テトラアザアセナフチレンから選択される化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物を医薬上許容される担体または希釈剤と組み合わせて含む組成物。
【請求項4】
有効量の請求項3記載の医薬組成物を温血動物に投与することを含む、温血動物におけるCRFの過分泌を示す障害の処置方法。
【請求項5】
障害がうつ病であるところの、請求項4記載の方法。
【請求項6】
障害が不安症関連の障害であるところの、請求項4記載の方法。
【請求項7】
障害が過敏性腸症候群であるところの、請求項4記載の方法。
【請求項8】
請求項2に記載の化合物を医薬上許容される担体または希釈剤と組み合わせて含む組成物。

【公表番号】特表2008−503444(P2008−503444A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552678(P2006−552678)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000432
【国際公開番号】WO2005/079868
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(502078239)エスビー・ファルムコ・プエルト・リコ・インコーポレイテッド (22)
【氏名又は名称原語表記】SB Pharmco Puerto Rico Inc
【出願人】(500389793)ニューロクライン バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】