説明

CT装置

【課題】層状構造を有する被検体の断面像を短い断層撮影時間で得るCT装置を提供する
【解決手段】層状構造を有する被検体の断面像を撮影するCT装置であって、X線管1により発生して被検体5を透過した放射線光軸Lを中心とするX線ビーム2を検出して透過データとして出力するX線検出器3と、被検体5とX線ビーム2とに放射線光軸Lを横切る方向の相対的な平行移動を与える平行移動機構7と、被検体5の撮影する層状構造の層面が放射線光軸Lに平行でかつ平行移動の方向に交差する姿勢で、平行移動をする間に所定の移動間隔毎に検出された透過データのみから放射線光軸Lと平行移動の方向で規定されるファン面に対する被検体5の断面像を再構成する再構成部11eとを有することを特徴とするCT装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の断面像を撮影するコンピュータ断層撮影装置(以下CT(Computed Tomography)装置と記載する)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などのモバイル機器の発達や電気自動車の実用化でリチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池の需要が拡大している。それに伴いショートや発火が生じない安全で信頼性の高い電池を供給するための電池検査の重要度がますます高まってきている。この電池検査としては、層状構造を有する被検体の断面像を撮影して、検査する方法が知られている。
【0003】
まず、図8に被検体である電池90の概念図(断面図)を示す。この図は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニカド電池等の構造の概略を示す断面図である。ケース91内には、正極板92と負極板93がセパレータ(不図示)を介して何重にも巻かれて収められ、空隙には電解液94が満たされている。例えば、層のピッチ(正極板−正極板)は0.3mm程度で巻数は数十回で、断面全体の寸法としては30mm×120mm程度である。
【0004】
このような構造の電池を検査するために、CT装置を用いた電池の検査においては、図8に示すような断面像を撮影し、電極板(正極板92と負極板93の総称)の層の皺や層間隔の乱れ等を確認でき、電池を使用したときの経時的変化を追跡して検査することができる。
【0005】
この電池の検査に用いられている従来のCT装置について記載する。
【0006】
従来のCT装置で、回転のみを行う所謂RR(Rotate Rotate)方式(第三世代方式)と呼ばれるCT装置は、放射線源から発生する放射線(X線)を被検体に向けて照射し、被検体を放射線の光軸の方向に対し交差する回転軸で放射線に対して相対的に回転させ、照射された一回転中の所定の回転角度間隔毎に被検体から透過してくる放射線を1次元あるいは2次元の複数検出チャンネルを有する放射線検出器で検出し、この検出器出力から被検体の断面像ないし3次元データを得る(断層撮影する)ものである。
【0007】
従来技術として図9に、特許文献1に記載されているCT装置の構成を示す((a)は平面図、(b)は正面図)。図中では、X線管101と、ここから発生する角錐状のX線ビーム102を2次元の分解能で検出するX線検出器103が対向して配置され、このX線ビーム102に入るようにテーブル104上に載置された被検体105の透過像(透過データ)を得るようになっている。
【0008】
テーブル104はXY機構106上に配置され、XY機構106は回転・昇降機構107上に配置されている。被検体105の断面像を撮影する場合は、テーブル104を回転軸RAに対し回転・昇降機構107により1回転させながら多数の方向について透過像を得る(スキャンと言う)。このスキャンにより得られた多数の透過像を制御処理部108で処理して被検体105の断面像(1枚ないし多数枚)を得る。
【0009】
ここで、XY機構106は、回転軸RAに対しテーブル104を回転軸RAと直交する面内で移動させ、被検体105の着目部105aが回転軸RA上になるように位置調整するために用いられる。
【0010】
さらに、回転軸RAおよびX線検出器103はシフト機構109によりX線管101に近づけあるいは遠ざけることができ、目的に応じて撮影倍率(=FDD/FCD)を変更できるようになっている。
【0011】
一方、再構成処理の方法は、通常、角錐状のX線ビームの場合、非特許文献1記載の方法が用いられる。この方法は、フィルタ補正逆投影法(FBP(Filtered Back Projection)法)の一種で、3次元的に逆投影するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−310943号公報
【非特許文献1】L.A.Feldkamp,L.C.Davis and J.W.Kress,Practical cone−beam algorithm, J.Opt.Soc.Am.A/Vol.1,No.6/June1984
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、電池等の層状構造を有する被検体を断層撮影するとき、回転中に透過像を検出する回転角度間隔(回転方向のサンプリングピッチ)を小さくする必要がある。
【0014】
図8の電池の場合を例にして説明する。断面上で、電極層の直線的な部分では、各電極板およびセパレータは厚さ約0.1mmで、長さ100mm程度と非常に細長いものである。このような細長い電極板は回転角度間隔が大きいと電極板に沿った方向に直線状の偽像が生じて厚さ方向の分解能(層構造に対する分解能)を損なうため、分解能を確保して断面像を作成するためには、この場合で、一回転中に透過像を検出する回転角度間隔を0.06°程度に細かくする必要があり、360°のビュー数(1回転中の透過像撮影数)が6000と大きくなる。
【0015】
このように、従来のCT装置では、層状構造の被検体の層に直交する方向の分解能を確保するためにビュー数を多くする必要があり、断層撮影時間が長いという問題があった。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、層状構造を有する被検体の断面像を短い断層撮影時間で得るCT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、層状構造を有する被検体の断面像を撮影するCT装置であって、放射線源により発生して被検体を透過した放射線光軸を中心とする放射線を検出して透過データとして出力する放射線検出手段と、前記被検体と前記放射線とに前記放射線光軸を横切る方向の相対的な平行移動を与える平行移動手段と、前記被検体の撮影する層状構造の層面が前記放射線光軸に平行でかつ前記平行移動の方向に交差する姿勢で、前記平行移動をする間に所定の移動間隔毎に検出された透過データのみから前記放射線光軸と前記平行移動の方向で規定されるファン面に対する前記被検体の断面像を再構成する再構成手段と、を有することを要旨とする。
【0018】
この構成により、被検体の撮影する層状構造の層面が放射線光軸に実質的に平行でかつ平行移動の方向と交差する姿勢で、放射線を横切って平行移動をする間に所定の移動間隔毎に検出された透過データのみから放射線光軸と平行移動の方向で規定されるファン面に対する被検体の断面像を再構成するので、ファン面内の全方向の透過像を得るスキャンと比べ、断面像上の層構造の分解能に寄与しない放射線光軸が層面に大きな角度で交差する方向の透過像検出を省くことで、層面に直交する方向の分解能を保ったままスキャンに要する時間を短縮できる。また、断面像再構成に要する時間も短縮できる。
【0019】
前記目的を達成するため、請求項2記載の発明は、請求項1に記載のCT装置において、前記放射線源と前記放射線検出手段との距離を変更する検出距離変更手段を有し、検出する放射線の前記ファン面上の広がり角であるファン角を変更する、ことを要旨とする。
【0020】
この構成により、被検体に合せて、見込まれる局所的な層面の傾斜角度範囲を含むようにファン角を最適に設定できる。
【0021】
前記目的を達成するため、請求項3記載の発明は、請求項1に記載のCT装置において、前記再構成手段は、前記放射線光軸から離れた端部の放射線を検出した透過データを再構成に使わないことで、検出する放射線の前記ファン面上の広がり角であるファン角を変更する、ことを要旨とする。
【0022】
この構成により、被検体に合せて、見込まれる局所的な層面の傾斜角度範囲を含むようにファン角を最適に設定できる。
【0023】
前記目的を達成するため、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のCT装置において、前記再構成手段は、前記ファン面の方向位置n、前記ファン面と直交する方向位置m及び平行移動位置tで構成される前記透過データを、t方向に高周波強調フィルタ掛けするフィルタ機能と、n毎に、前記高周波強調フィルタ掛けした透過データから構成したm方向とt方向の面データである透過データを、前記被検体を表す仮想の3次元格子に対して、前記放射線の焦点に向けて3次元逆投影する逆投影機能と、を有し、前記被検体の前記ファン面に平行な複数の断面像を再構成する、ことを要旨とする。
【0024】
この構成により、全てのnで、m方向とt方向の面データである透過データを3次元格子に対し3次元逆投影することで、被検体のファン面に平行な複数の断面像が再構成できる。
【0025】
前記目的を達成するため、請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のCT装置において、前記再構成手段は、前記ファン面の方向位置n、前記ファン面と直交する方向位置m及び平行移動位置tで構成される前記透過データを、t方向に高周波強調フィルタ掛けするフィルタ機能と、mにおいて、前記高周波強調フィルタ掛けした透過データから構成したn毎のt方向の1次元の透過データを、mと前記放射線の焦点が規定する傾斜面上に設定した被検体を表す仮想の2次元格子に対して、n毎に前記放射線の焦点に向けて2次元逆投影する逆投影機能と、を有し、複数のm毎に、前記2次元逆投影を行って前記被検体の前記ファン面から離れるに従い傾斜する複数の前記傾斜面上の断面像を再構成する、ことを要旨とする。
【0026】
この構成により、mにおいて、n毎に、t方向の1次元の透過データを、mと放射線の焦点が規定する傾斜面上に設定した2次元格子に対して2次元逆投影することで、被検体のファン面から離れるに従い傾斜する複数の傾斜面上の断面像が再構成できる。
【0027】
前記目的を達成するため、請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のCT装置において、前記平行移動手段は、複数の被検体を順次1方向に、前記放射線を横切って前記平行移動させる搬送手段である、ことを要旨とする。
【0028】
この構成により、複数の被検体を順次1方向に、前記放射線を横切ってスキャンさせることで、スキャンを無駄時間無く効率よく実施でき、多数の被検体の断面像を短時間で能率よく得ることができる。
【0029】
前記目的を達成するため、請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のCT装置において、前記平行移動手段は、前記被検体の前記平行移動の方向での両側に放射線吸収材を配し、前記放射線検出手段により空気のみを透過した放射線が検出されないように構成される、ことを要旨とする。
【0030】
この構成により、空気のみを透過した放射線が放射線検出手段に入射しないので放射線検出手段の出力が飽和することなく放射線を強くすることができ、速い平行移動でも良好な透過像が得られるので、スキャンを速く実施でき、スキャンに要する時間を短縮できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、層状構造を有する被検体の断面像を短い断層撮影時間で得るCT装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図((a)は平面図、(b)は正面図)。
【図2】第一の実施形態に係る断層撮影のフロー図。
【図3】第一の実施形態に係るスキャンの幾何を示す平面図。
【図4】第一の実施形態の再構成に係る3次元逆投影を示す図((a)は平面図、(b)は正面図)。
【図5】第一の実施形態の変形例4に係る「層面と光軸との実質的な平行」を説明する図(平面図)。
【図6】第一の実施形態の変形例6に掛かる傾斜面再構成を説明する図((a)は平面図、(b)は正面図)。
【図7】第一の実施形態の変形例11に掛かる平行移動機構19を示す概念図((a)は平面図、(b)は側面図)。
【図8】被検体である電池90の概念図(断面図)。
【図9】従来のCT装置の構成を示した模式図((a)は平面図、(b)は正面図)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下図面を参照して、本発明実施形態を説明する。
【0034】
(本発明の第一の実施の形態の構成)
以下、本発明の第一の実施形態の構成について図1を参照して説明する。図1は本発明の第一の実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図((a)は平面図、(b)は正面図)である。図1に示すとおり、X線管(放射線源)1と、X線管1のX線焦点Fより放射されたX線の一部である光軸(放射線光軸)Lを中心とする角錐状のX線ビーム(放射線)2を2次元の分解能で検出するX線検出器(放射線検出手段)3とが対向して配置され、このX線ビーム2に入るようにテーブル4上に載置された被検体5を透過したX線ビーム2がX線検出器3により検出され、透過像(透過データ)として出力される。
【0035】
テーブル4は昇降機構6上に配置され、昇降機構6は平行移動機構(平行移動手段)7上に配置されている。テーブル4(と被検体5)は平行移動機構7により光軸L(x方向)を実質垂直に横切るy方向に平行移動される。ここで、テーブル4と平行移動機構7が請求項記載の平行移動手段に相当する。なお、平行移動とは回転することなく姿勢を保ったまま直線的に移動することである。
【0036】
また、テーブル4は昇降機構6により光軸L(x方向)及び平行移動するy方向とに垂直なz方向に昇降される。なお昇降機構6は平行移動機構7の下に設けてもよい。
【0037】
ファン面(断層撮影面)TPは光軸Lと平行移動のy方向で規定される面と定義され、光軸Lはファン面TP上にある。また、テーブル4の中央点の真上(z方向)のファン面TP上の点をOで表すと、O点は平行移動に伴ってy方向の直線であるO点軌道8上を移動し、O点の位置でテーブルの平行移動の位置を表すことができる。
【0038】
さらに、シフト機構(検出距離変更手段)9によりX線検出器3をx方向に移動でき、X線焦点FとX線検出器3の検出面3aとの間の検出距離FDD(Focus to Detector Distance)を変えて設定することができる。また、シフト機構9によりテーブル4(及び昇降機構6と平行移動機構7)をx方向に移動でき、X線焦点FとO点軌道8との間の撮影距離FOD(Focus to Object Distance)を変えて設定することができる。
【0039】
ここで、シフト機構9は目的に応じて撮影倍率(=FDD/FOD)を変更するために用いられ、昇降機構6は被検体5の着目部をファン面TPの高さに合わせるのに用いられる。また、平行移動機構7は断面像を撮影する場合に被検体5をX線ビーム2を横切って平行移動(トランスレート)させ、スキャンして多数の平行移動位置について透過像を得るために用いられる。
【0040】
X線検出器3は2次元の分解能でX線ビーム2を検出するもので、ファン面の方向位置nとファン面と直交する方向位置m(y方向のチャンネル番号nとz方向のチャンネル番号m)で区別される2次元透過像を出力するもので、たとえばFPD(Flat Panel Detector)、あるはX線II(Image Intensifier)とテレビカメラを組合わせたものを用いる。
【0041】
図1に示す再構成領域10は、操作者が断面像を得たい領域として任意に設定するDx×Dyの領域で、この領域の全体をX線ビームが横切るように平行移動が行われファン面上のDx×Dyの断面像が再構成される。さらに、ファン面に平行な複数の断面像がz方向の間隔と枚数を設定することで再構成でき、再構成領域10としてはz方向の厚みDzを持つ。ただし、再構成領域10のz方向にX線ビーム2をはみ出す部分については断面像ができない。
【0042】
構成要素として、他に、各機構(昇降機構6、平行移動機構7、シフト機構9)を制御し、また、X線検出器3からの透過像を処理する制御処理部11、処理結果等を表示する表示部11a、X線管1を制御するX線制御部(図示せず)等がある。
【0043】
制御処理部11は通常のコンピュータで、CPU、メモリ、ディスク(不揮発性メモリ)、表示部11a、入力部(キーボードやマウス等)11b、機構制御ボード、インターフェース、等より成っている。
【0044】
制御処理部11は、機構制御ボードにより、各機構部6,7,9の動作位置の信号(エンコーダパルス等)を受けて各機構部6,7,9を制御して被検体の位置合わせやスキャン(断層撮影走査)等を行わせる他、透過データの収集指令パルス等をX線検出器3に送る。なお、各機構部6,7,9には図示してないエンコーダが取付けられており、テーブル4の昇降機構6による昇降位置z、平行移動機構7による平行移動位置t、及びシフト機構9によるFOD,FDDが読み取られ、それぞれ制御処理部11に送られる。
【0045】
また、制御処理部11は、断層撮影時にX線検出器3からの透過像を収集し、記憶し、再構成処理してファン面TPに平行な1枚ないし複数枚の被検体5の断面像を作成し、記憶し、表示部11aに表示する。制御処理部11は、X線制御部(図示せず)に指令を出し、管電圧、管電流を指定すると共に、X線の放射、停止の指示を行なう。管電圧、管電流は被検体に合わせて変えることができる。
【0046】
図1に示すように、制御処理部11はソフトウェアを読み込んでCPUが機能する機能ブロックとして、断層撮影の撮影条件を設定する撮影条件設定部11c、所定の範囲でテーブル4を平行移動させつつ検出された複数の透過像をスキャンデータとして取り込んで記憶するスキャンを実施するためのスキャン制御部11d、スキャンデータを用いて断面像を作成する再構成部(再構成手段)11e、等を備えている。
【0047】
(第一の実施の形態の作用)
上記のような構成を有する第一の実施形態の作用を図8及び図1ないし図4を参照して、被検体5として電池90を撮影する場合を例に説明する。
【0048】
図8に被検体である電池90の概念図(断面図)を示す。この図は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニカド電池等の構造の概略を示す断面図である。ケース91内には、正極板92と負極板93がセパレータ(不図示)を介して何重にも巻かれて収められ、空隙には電解液94が満たされている。例えば、層のピッチ(正極板−正極板)は0.3mm程度で巻数は数十回で、断面全体の寸法としては30mm×120mm程度である。
【0049】
電池90は、平行平面の層面12を持った層構造を有し、層面12に平行に各電極板92,93およびセパレータは厚さ約0.1mmで、長さ100mm程度と非常に細長構造となっている。
【0050】
図2は第一の実施形態に係る断層撮影のフロー図である
【0051】
ステップS1では、図1を参照して、操作者は電池90をテーブル4の中央に載置するが、層状構造の層面12が光軸Lに実質的に平行でかつ平行移動の方向と交差(実質的に直交)する姿勢で載置し、さらに断層撮影の撮影条件を設定する。撮影条件には幾何条件、X線条件、スキャン条件、再構成条件等が含まれる。
【0052】
撮影条件設定として、撮影条件設定部11cは、操作者の入力により撮影条件を以下のように設定する。
【0053】
まず、図1を参照して、幾何条件設定として、入力部11bから指令を入力して、電池90の大きさに応じ、シフト機構9を制御してFODとFDDを設定する。次に、入力部11bから昇降機構6を制御して電池90の撮影箇所の高さをファン面TPに合わせる。なお、幾何条件設定は、X線検出器3が出力した透過像を表示部11aにリアルタイムで表示させ、これを目視しながら行うことができる。
【0054】
X線条件設定として、被検体5に適合する管電圧、管電流を設定する。なお、X線条件設定は、X線検出器3が出力した透過像を表示部11aにリアルタイムで表示させ、これを目視しながら行うことができる。
【0055】
スキャン条件設定として、透過像を検出する平行移動の移動間隔Δt(例えば0.2mm)、1透過像の積分フレーム数(例えば5)、等を設定する。
【0056】
図3はスキャンの幾何を示す平面図である。
【0057】
図3を参照して、さらに、再構成条件として、O点を基準とする被検体に対し固定された座標系(x’,y’,z’)において再構成領域10を設定する。再構成領域10としては、xyz方向の直方体とし、大きさをDx×Dy×Dzとする。さらに断面像のマトリックスサイズ、断面像の枚数と間隔を設定する。これにより、再構成領域10内に被検体を表す仮想の3次元格子13が設定される。
【0058】
ステップS2では、スキャンを実施する。図3を参照して、操作者がスキャン開始を入力すると、スキャン制御部11dは平行移動機構7とX線検出器3を制御してスキャンを実施する。先ず、テーブル4の平行移動位置tを、設定した再構成領域10がX線ビーム2に掛からない位置にリセットし、次に、設定した再構成領域10全体がX線ビーム2の端から端までを完全に通過する平行移動の範囲でテーブル4を平行移動させつつ、設定した移動間隔Δt毎に検出された複数の透過像をスキャンデータとして取り込んで記憶する。ここで、テーブル4のリセット位置からの平行移動量tを平行移動位置tとする。
【0059】
X線検出器はチャンネル番号nとmで区別される2次元透過像を出力するので、スキャンデータはファン面TPの方向位置n、ファン面TPと直交する方向位置m及び平行移動位置tで構成される透過データでありI(n,m,t)と記述できる。
【0060】
ステップS3では、再構成部11eは、記憶したスキャンデータに基づいて以下のように断面像を再構成する。
【0061】
まず、スキャンデータIに対し、オフセット補正を加えた後、式、
P=LOG(I0/I) ………(1)
によりエアー補正及び対数変換を加え、スキャンデータP(n,m,t)を作成する。ここで、I0は被検体が無いときのデータで予め較正して記憶してあるエアーデータI0(n,m)を用いる。
【0062】
次に、スキャンデータP(n,m,t)に対し、t方向に高周波強調フィルタ掛けを行ってスキャンデータP’(n,m,t)を得る。この高周波強調フィルタ掛けは、一般的にCTで使用されている|ω|フィルタ掛けである。
【0063】
さらに、3次元逆投影を行うが、図4は再構成に係る3次元逆投影を示す図((a)は平面図、(b)は正面図)である。この図は再構成領域10を固定し、X線焦点FとX線検出器3が平行移動するものとして描いている。
【0064】
図4を参照して、フィルタ掛け後のスキャンデータP’(n,m,t)から、n毎に、m方向とt方向の面データP’(m,t)を構成して、この面データP’(m,t)を、再構成領域10内に設定した被検体を表す仮想の3次元格子13に対して、n毎に、X線焦点Fに向けて3次元逆投影を行う。このときの焦点Fは平行移動tによって焦点Fの軌道14上を移動するので、平面図(a)では逆投影方向は平行でx方向に対しθ(n)だけ傾斜している。ここでθ(n)はチャンネルnのファン面TPに沿ったセット角(図3参照)である。これに対し、正面図(b)では逆投影方向はX線焦点Fの方向に収束する3次元逆投影となっている。
【0065】
ここで、逆投影とは、全ての格子点Gに対し対応するmt面15上の点GPのデータを足し込むことである。なお、点GPは一般にデータ点に一致しないので(近傍の4点による)補間計算を行う。
【0066】
この3次元逆投影を全てのチャンネルnで行うと電池90の再構成領域10のファン面TPに平行な複数の断面像が再構成される。
【0067】
なお、図4を参照して、面データP’(m,t)はnに依存してt方向にずらし量16(=FDD・tan(θ(n)))を加えて逆投影することで、各逆投影の位置をそろえることができる。
【0068】
以上で図2のフローが終了する。
【0069】
(第一の実施の形態の効果)
第一の実施形態によれば、電池90の平面状の層状構造の層面12が光軸Lに実質的に平行でかつ平行移動の方向と交差する姿勢で、X線ビームを横切って平行移動をする間に所定の移動間隔毎に検出された透過データのみから光軸Lと平行移動の方向で規定されるファン面に対する電池90の断面像を再構成するので、ファン面内の全方向の透過像を得るスキャンと比べ、断面像上の層構造の分解能に寄与しない光軸Lが層面12に大きな角度で交差する方向の透過像検出を省くことで、層面に直交する方向の分解能を保ったままスキャンに要する時間を短縮できる。また、断面像再構成に要する時間も短縮できる。
【0070】
また、全てのnで、m方向とt方向の面データである透過データP’(m,t)を3次元格子に対し3次元逆投影することで、被検体のファン面に平行な複数の断面像が再構成できる。
【0071】
さらに、第一の実施形態によれば、電池90の層面12が光軸Lに実質的に平行になる姿勢、すなわち長手方向がX線ビーム2に沿った姿勢でX線ビーム2を横切る方向に平行移動しているので、電池90がX線ビーム2を完全によこぎるスキャンに要する時間を短縮できる。また、細長い電池の断面全体を再構成できる。また、断面像再構成に要する時間も短縮できる。
【0072】
また、第一の実施形態によれば、電池90の1回の平行移動のみでスキャンができるので多数の電池90を搬送して次々と検査するのに好適である。
【0073】
(第一の実施の形態の変形)
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。以下に示す変形例は組合わせて実施することもできる。
【0074】
(変形例1)
第1の実施形態では、2次元の分解能で検出するX線検出器3を用いたが、1次元の検出器をファン面TP上に配置するようにしてもよい。
【0075】
この場合は、mが1つのみとして扱えば、第1の実施形態の作用がそのまま適用できる。そして、ファン面TP上の1枚の断面像を再構成することになる。
【0076】
(変形例2)
第1の実施形態で、FDDを変更することで、検出するX線ビーム2のファン面TP上の広がり角であるファン角θ0を変更できる(図1参照)。これにより、被検体に合せて最適なファン角θ0を設定できる。
【0077】
電池90の層状構造は巻むらや皺によって局所的に層面12から傾斜している。この傾斜範囲内の方向からの透過像が得られれば良いので、見込まれる(予測される最大の)傾斜角度範囲αを含むようにファン角θ0を設定すればよい。
【0078】
ファン角θ0は、被検体の平面性が良い場合は例えば5°とか2°とか小さな範囲で済むこともある。
【0079】
これにより、ファン角をできるだけ小さくすることでスキャンの平行移動量を減らせ、スキャンに要する時間をさらに短縮できる。
【0080】
また、FDDを最小にしてもファン角θ0が不足する場合には、X線検出器3を検出面3aに沿ってn方向に移動させて、移動させた位置で同じスキャンをして、スキャンデータを統合することで、実質的にファン角θ0を大きくすることができる。
【0081】
(変形例3)
変形例2のファン角θ0の変更で、FDDを変更する代わりに、再構成部11eが、ファン面TPに沿って光軸Lから離れた端部のX線ビームを検出した透過データ(nの両端部)を再構成に使わないようにすることでファン角を変更することもできる。
【0082】
これにより同様に、ファン角をできるだけ小さくすることでスキャンに要する時間を短縮できる。
【0083】
(変形例4)
第一の実施形態では、層状構造の層面12が光軸Lに実質的に平行になる姿勢で平行移動のスキャンをしているが、正確に平行でなく実質的に平行であればよい。
【0084】
図5は変形例4に係る「層面と光軸との実質的な平行」を説明する図(平面図)である。実質的に平行とは、図5に示すように撮影する層状構造が局所的に層面12から傾斜する(見込まれる:予測される最大の)斜角度範囲αがファン角θ0に含まれる状態のことである。
【0085】
(変形例5)
第一の実施形態では、電池90の層状構造の層面12が光軸Lに実質的に平行になる第一の姿勢で平行移動の第一スキャンをして断面像を再構成しているが、電池90をO点を通ってファン面に直交する回転軸に対して180°回転させた第二の姿勢で第二のスキャンも実施し、第一のスキャンと第二のスキャンのスキャンデータから断面像を再構成するようにしてもよい。
【0086】
この場合は、昇降機構6の上あるいは下にテーブル4を180°回転させる回転機構を設ける。また、第一のスキャンと第二のスキャンはそれぞれ平行移動の往路と復路で行うことができる。
【0087】
この場合の再構成は、第一のスキャンデータから再構成された第一の断面像に対し、第二のスキャンデータから再構成された第二の断面像を、当該回転軸に対し180°回転させて加算することで断面像が得られる。あるいは、第一の断面像を当該回転軸に対し180°回転させた断面像に対し、続けて第二のスキャンデータによる再構成の逆投影を施すようにしてもよい。
【0088】
(変形例6)
第一の実施形態では、ファン面に平行な複数の断面像を再構成したが、断面はファン面から傾いていても層状構造の皺や層間隔の乱れ等を調べることができる。
【0089】
図6は、変形例6に掛かる傾斜面再構成を説明する図((a)は平面図、(b)は正面図)である。
【0090】
傾斜面再構成では、t方向に高周波強調フィルタ掛けしたスキャンデータP’(n,m,t)を、mにおいて、n毎のt方向の1次元のスキャンデータP’(t)を構成して、このP’(t)を、mとX線焦点Fが規定する傾斜面17上に設定した被検体を表す仮想の2次元格子18に対して、n毎にX線焦点Fに向けて2次元逆投影をし、全nに対してこの2次元逆投影を行って傾斜面17上の断面像を再構成する。さらに、複数のm毎に、上述した2次元逆投影を行って電池90のファン面TPから離れるに従い傾斜する複数の傾斜面17上の断面像を再構成する。
【0091】
以下、図2のフローに沿って第一の実施形態と異なる部分を詳細に説明する。
【0092】
ステップS1の撮影条件設定では、再構成条件設定において、再構成領域10’としては、xy方向の長方形Dx×Dyとz方向のO点位置での厚みDzを設定する。また、断面像を作成するmの間隔を設定して複数の傾斜面17を設定すると共に、各傾斜面17上でO点を基準に再構成領域10’内に2次元格子18を設定する。
【0093】
ステップS2のスキャンは第一の実施形態と同じである。
【0094】
ステップS3では、高周波強調フィルタ掛けまでは第一の実施形態と同じである。
【0095】
図6を参照して、フィルタ掛け後のスキャンデータP’(n,m,t)をmにおいて、n毎のt方向の1次元のスキャンデータP’(t)を構成する。ここでP’(t)は設定した断面像を作成するmの間隔に応じ、m方向に所定幅で平均して構成してもよい。このデータP’(t)を、傾斜面17上に設定した被検体を表す仮想の2次元格子18に対して、X線焦点Fに向けて傾斜面17上での2次元逆投影を行う。このときの焦点Fは平行移動tによって焦点Fの軌道14上を移動するので、平面図(a)では逆投影方向は平行でx方向に対しθ(n)だけ傾斜している。ここで、θ(n)はチャンネルnのファン面TPに沿ったセット角(図3参照)である。
【0096】
ここで、逆投影とは、全ての格子点Gに対し対応するP’(t)上の点GPのデータを足し込むことである。なお、点GPは一般にデータ点に一致しないので(近傍の2点による)補間計算を行う。
【0097】
この2次元逆投影を全てのチャンネルnで行うと電池90の傾斜面17上の再構成領域10内の断面像が再構成され、これを設定したmについて繰り返すことで、電池90のファン面TPから離れるに従い(x方向にX線焦点Fを通るように)傾斜する複数の傾斜面17上の断面像を再構成する。
【0098】
なお、図6を参照して、1次元データP’(t)はnに依存してt方向にずらし量16(=FDD・tan(θ(n)))を加えて逆投影することで、各逆投影の位置をそろえることができる。
【0099】
以上で図2のフローが終了する。
【0100】
変形例6によれば、mにおいて、n毎に、t方向の1次元の透過データP’(t)を、mとX線焦点Fが規定する傾斜面17上に設定した2次元格子18に対して2次元逆投影することで、電池90のファン面TPから離れるに従い傾斜する複数の傾斜面17上の断面像が再構成できる。
【0101】
変形例6によれば、3次元逆投影は行わず2次元逆投影で済むので、断面像再構成に要する時間を短縮できる。また、断面がファン面から傾いていても層状構の皺や層間隔の乱れ等を調べることができる
【0102】
(変形例7)
第一の実施形態では、設定した再構成領域10の全体を再構成したが、部分的に再構成(ズーミング再構成)してもよい。また再構成領域10からはみ出して再構成してもよい(はみ出し部の画質は低下)。
【0103】
また、断面像はx方向に長くなるので、長くなる方向に複数断面像に分割して再構成してもよい。分割再構成することで、メモリの作業領域を減らすことができ、高速化が図れる。また、分割再構成する場合は、断面像を表示画面に合わせたサイズにでき、切換えて1枚ずつ表示できる。
【0104】
また、分割再構成してできた断面像(3次元データ)を、繋ぎ合わせることもできる。
【0105】
(変形例8)
第一の実施形態では、断面像はx方向に長くなるので、再構成表示画面より大きな断面像を連続的にスクロールして視野を連続的に変化させて観察することができる。
【0106】
また、長い方向に表示視野を切換えて表示してもよければ、長い方向を複数画像に分割し、切換え表示してもよい。
【0107】
(変形例9)
第一の実施形態で、昇降機構6により同じ電池90に対しテーブル高さzを変えて複数回断層撮影し、得られた断面像をz方向に繋いでz方向に長い合成断面像(3次元データ)を得ることができる。
【0108】
また、z方向に複数のX線検出器をならべて検出してスキャンデータを統合して再構成することで、z方向に長い断面像(3次元データ)を得ることができる。ここで、それぞれのX線検出器のデータからそれぞれ断面像を再構成してからz方向に長い断面像(3次元データ)を合成してもよい。
【0109】
また、X線検出器3を検出面3aに沿ってm方向に移動して、複数の移動位置で同じスキャンをしてスキャンデータを統合して再構成することで、z方向に長い断面像(3次元データ)を得ることができる。ここで、それぞれの移動位置のデータからそれぞれ断面像を再構成してからz方向に長い断面像(3次元データ)を合成してもよい。
【0110】
また、y方向よりz方向に長い2次元のX線検出器を用いることで、z方向に長い断面像(3次元データ)を得ることができる。
【0111】
(変形例10)
第一の実施形態で、テーブル4の平行移動の一方側に電池90をテーブル4に順次載置する載置機構を設け、他方側に電池90をテーブル4から順次降ろす排除機構を設け、テーブル4を往復移動させることで、複数の電池90を次々に一方向の平行移動のスキャンで断層撮影することができる。
【0112】
あるいは、第一の実施形態の変形例5で、テーブル4の平行移動の一方側に電池90をテーブル4に載置したり降ろしたりする機構を設け、複数の電池90を次々に往復の平行移動のスキャンで断層撮影することができる。
【0113】
(変形例11)
第一の実施形態では、電池90を載置したテーブル4を平行移動機構7で平行移動させてスキャンを行っているが、平行移動機構7及びテーブル4は、複数の電池90を順次1方向に、X線ビーム2を横切って平行移動させるベルトコンベヤ等の搬送機構(搬送手段)としての平行移動機構(平行移動手段)19に置き換えることができる。
【0114】
図7は変形例11に係る平行移動機構19を示す概念図((a)平面図、(b)側面図)である。
【0115】
平行移動機構19はベルト20とプーリー21a、21bとプーリーをまわすモータとその電気回路(不図示)とベルト20を水平面に支えるスリ板22より成る。ここで、ベルト20は固定されたスリ板22上を接するように滑って移動する。
【0116】
これにより、複数の電池90を順次1方向にスキャンし、スキャンを無駄時間無く効率よく実施でき、多数の電池90を短時間で能率よく検査することができる。
【0117】
変形例11で、さらに、X線管1とX線検出器を複数組用意し、それぞれの光軸Lが平行(x方向)でz方向に高さを変えて、平行移動のy方向に並べて配置することができる。これにより、順次1方向にスキャンするだけで、各X線検出器のデータをそれぞれ再構成した断面像を合成して、z方向に広い再構成領域について断面像を得ることができる。
【0118】
(変形例12)
第一の実施形態において、平行移動手段(テーブル4と平行移動機構7)は、電池90の平行移動の方向での両側にX線吸収材(放射線吸収材)を配し、X線検出器3により空気のみを透過したX線ビーム2が検出されないように構成してもよい。具体的には、テーブル4上に電池90のy方向両側(yの+側と−側)に隙間無く電池90を挟むようにX線吸収材を設ける。この場合のX線吸収材は光軸Lの方向に一定の厚みで均質な材料が望ましいが、これには限られず、また、形状が自由に変わる軟体や流体の材料でもよい。また、X線吸収材は、テーブル4に固定されていてもよいし、電池90に固定してもよく、個別のブロックとして、テーブル4上に電池90と一緒に載置するようにしてもよい。また、X線吸収材で挟むように電池90を保持して平行移動させる平行移動手段としてもよく、さらに、X線吸収材で複数の電池90を挟んで保持し、1方向に順次平行移動させる平行移動手段としてもよい。
【0119】
また、変形例11において、平行移動機構19は、順次搬送される複数の電池90の間に電池90と隙間がないようにX線吸収材(放射線吸収材)を配し、X線検出器3により空気のみを透過したX線ビーム2が検出されないように構成してもよい。この場合のX線吸収材は光軸Lの方向に一定の厚みで均質な材料が望ましいが、形状が自由に変わる軟体や流体の材料でもよい。また、X線吸収材は、ベルト20に固定されていてもよいし、電池90に固定してもよく、個別のブロックとして、ベルト20上に電池90と一緒に載置するようにしてもよい。
【0120】
電池90の平行移動の方向での両側にX線吸収材を配することで、空気のみを透過したX線ビーム2がX線検出器3の検出面3aに入射しないのでX線検出器3の出力が飽和することなくX線を強くすることができ、速い平行移動でも良好な透過像が得られるので、スキャンを速く実施でき、スキャンに要する時間を短縮できる。
【0121】
(変形例13)
第一の実施形態で、スキャンデータI(n,m,t)あるいはP(n,m,t)に対してn方向にデータの束ねを行いn方向のデータ点数を減らしてから再構成することもできる。
【0122】
これにより、電池90の必要とされる層面12と直交する方向の分解能に応じ、ファン角方向のデータ点の角度間隔を必要な上限まで大きくすることで、n方向のデータ点数を必要最小限に減らすことができ、再構成に要する時間を短縮できる。
【0123】
また、逆に、電池90の必要とされる層面12と直交する方向の分解能に対し、n方向のデータ点間隔(ファン方向の角度間隔)が粗すぎる場合には、X線検出器3を検出面3aに沿ってn方向にデータ点間隔より小さく微動させ、微動させた位置で同じスキャンを実施して、スキャンデータを統合することで、実質的にn方向のデータ点を細かくでき、必要分解能を確保することができる。
【0124】
(変形例14)
第一の実施形態で、テーブル4(電池90)をX線ビーム2に対し平行移動させているが、平行移動は相対的でよい。例えば、テーブル4を平行移動させず、X線管1とX線検出器3を平行移動させてもよい。
【0125】
また、第一の実施形態で、テーブル4をX線ビーム2に対し昇降(z移動)させているが、昇降は相対的でよい。例えば、テーブル4を昇降させず、X線ビーム2(X線管1とX線検出器3)を昇降させてもよい。
【0126】
また、シフト機構9も同様にX線管1を移動させてもよい。
【0127】
(変形例15)
第一の実施形態では被検体5として電池90を例にして説明したが、本発明の被検体5は電池90に限られること無く、他の層状構造を持つ被検体、例えばコンデンサ、コイル、多層基板、等に対しても有効に適用することができる。
【0128】
(変形例16)
第一の実施形態で、放射線としてX線を用いているが、X線には限られず透過性の放射線であればよい。例えば、放射線としては、γ線やマイクロ波などでもよい。
【符号の説明】
【0129】
1…X線管、2…X線ビーム、3…X線検出器、3a…検出面、4…テーブル、5…被検体、6…昇降機構、7…平行移動機構、8…O点軌道、9…シフト機構、10…再構成領域、11…制御処理部、11a…表示部、11b…入力部、11c…撮影条件設定部、11d…スキャン制御部、11e…再構成部、12…層面、13…3次元格子、14…焦点Fの軌道、15…mt面、16…ずらし量、17…傾斜面、18…2次元格子、19…平行移動機構、20…ベルト、21a,21b…プーリー、22…スリ板、90…電池、91…ケース、92…正極板、93…負極板、94…電解液、101…X線管、102…X線ビーム、103…X線検出器、104…テーブル、105…被検体、105a…着目部、106…XY機構、107…回転・昇降機構、108…制御処理部、109…シフト機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状構造を有する被検体の断面像を撮影するCT装置であって、
放射線源により発生して被検体を透過した放射線光軸を中心とする放射線を検出して透過データとして出力する放射線検出手段と、
前記被検体と前記放射線とに前記放射線光軸を横切る方向の相対的な平行移動を与える平行移動手段と、
前記被検体の撮影する層状構造の層面が前記放射線光軸に平行でかつ前記平行移動の方向に交差する姿勢で、前記平行移動をする間に所定の移動間隔毎に検出された透過データのみから前記放射線光軸と前記平行移動の方向で規定されるファン面に対する前記被検体の断面像を再構成する再構成手段と、
を有することを特徴とするCT装置。
【請求項2】
請求項1に記載のCT装置において、
前記放射線源と前記放射線検出手段との距離を変更する検出距離変更手段を有し、検出する放射線の前記ファン面上の広がり角であるファン角を変更する、
ことを特徴とするCT装置。
【請求項3】
請求項1に記載のCT装置において、
前記再構成手段は、前記放射線光軸から離れた端部の放射線を検出した透過データを再構成に使わないことで、検出する放射線の前記ファン面上の広がり角であるファン角を変更する、
ことを特徴とするCT装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のCT装置において、
前記再構成手段は、前記ファン面の方向位置n、前記ファン面と直交する方向位置m及び平行移動位置tで構成される前記透過データを、t方向に高周波強調フィルタ掛けするフィルタ機能と、
n毎に、前記高周波強調フィルタ掛けした透過データから構成したm方向とt方向の面データである透過データを、前記被検体を表す仮想の3次元格子に対して、前記放射線の焦点に向けて3次元逆投影する逆投影機能と、
を有し、前記被検体の前記ファン面に平行な複数の断面像を再構成する、
ことを特徴とするCT装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のCT装置において、
前記再構成手段は、前記ファン面の方向位置n、前記ファン面と直交する方向位置m及び平行移動位置tで構成される前記透過データを、t方向に高周波強調フィルタ掛けするフィルタ機能と、
mにおいて、前記高周波強調フィルタ掛けした透過データから構成したn毎のt方向の1次元の透過データを、mと前記放射線の焦点が規定する傾斜面上に設定した被検体を表す仮想の2次元格子に対して、n毎に前記放射線の焦点に向けて2次元逆投影する逆投影機能と、
を有し、複数のm毎に、前記2次元逆投影を行って前記被検体の前記ファン面から離れるに従い傾斜する複数の前記傾斜面上の断面像を再構成する、
ことを特徴とするCT装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のCT装置において、
前記平行移動手段は、複数の被検体を順次1方向に、前記放射線を横切って前記平行移動させる搬送手段である、
ことを特徴とするCT装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のCT装置において、
前記平行移動手段は、前記被検体の前記平行移動の方向での両側に放射線吸収材を配し、前記放射線検出手段により空気のみを透過した放射線が検出されないように構成される、
ことを特徴とするCT装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−247864(P2011−247864A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135542(P2010−135542)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】