説明

CT装置

【課題】層状構造を有する被検体の断面像を短い断層撮影時間で得るCT装置。
【解決手段】被検体5を透過したX線ビーム2を検出して透過データとして出力するX線検出器3と、被検体5とX線ビーム2とを平行移動させる平行移動機構7と、被検体5とX線ビーム2とを回転軸RAに対し回転させる回転機構6と、回転の1つの位置で1回の平行移動をする間に透過データを収集する1回移動スキャンと、回転の約90°異なる2つの位置それぞれで平行移動をする間に透過データを収集する2回移動スキャンとを実施するもので、選択入力に応じて1回移動スキャンと2回移動スキャンのどちらかを実施する制御処理部9と、1回移動スキャンの透過データから被検体5の第一の断面像を再構成し、また、2回移動スキャンの透過データから被検体5の第二の断面像を再構成する再構成部9eを有するCT装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の断面像を撮影するコンピュータ断層撮影装置(以下CT(Computed Tomography)装置と記載する)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などのモバイル機器の発達や電気自動車の実用化でリチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池の需要が拡大している。それに伴いショートや発火が生じない安全で信頼性の高い電池を供給するための電池検査の重要度がますます高まってきている。この電池検査としては、層状構造を有する被検体の断面像を撮影して、検査する方法が知られている。
【0003】
まず、図6に被検体である電池90の概念図(断面図)を示す。この図は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニカド電池等の構造の概略を示す断面図である。ケース91内には、正極板92と負極板93がセパレータ(不図示)を介して何重にも巻かれて収められ、空隙には電解液94が満たされている。例えば、層のピッチ(正極板−正極板)は0.3mm程度で巻数は数十回で、断面全体の寸法としては30mm×120mm程度である。
【0004】
このような構造の電池を検査するために、CT装置を用いた電池の検査においては、図6に示すような断面像を撮影し、電極板(正極板92と負極板93の総称)の層の皺や層間隔の乱れ等を確認でき、電池を使用したときの経時的変化を追跡して検査することができる。
【0005】
この電池の検査に用いられている従来のCT装置について記載する。
【0006】
従来のCT装置で、回転のみを行う所謂RR(Rotate Rotate)方式(第三世代方式)と呼ばれるCT装置は、放射線源から発生する放射線(X線)を被検体に向けて照射し、被検体を放射線の光軸の方向に対し交差する回転軸で放射線に対して相対的に回転させ、一回転中の所定の回転角度間隔毎に被検体から透過してくる放射線を1次元あるいは2次元の複数検出チャンネルを有する放射線検出器で検出し、この検出器出力から被検体の断面像ないし3次元データを得る(断層撮影する)ものである。
【0007】
従来技術として、特許文献1に記載されているCT装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−310943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、電池等の層状構造を有する被検体を断層撮影するとき、回転中に透過像を検出する回転角度間隔(回転方向のサンプリングピッチ)を小さくする必要がある。
【0010】
図6の電池の場合を例にして説明する。断面上で、電極層の直線的な部分では、各電極板およびセパレータは厚さ約0.1mmで、長さ100mm程度と非常に細長いものである。このような細長い電極板は回転角度間隔が大きいと電極板に沿った方向に直線状の偽像が生じて厚さ方向の分解能(層構造に対する分解能)を損なうため、分解能を確保して断面像を作成するためには、この場合で、一回転中に透過像を検出する回転角度間隔を0.06°程度に細かくする必要があり、360°のビュー数(1回転中の透過像撮影数)が6000と大きくなる。
【0011】
このように、従来のCT装置では、層状構造の被検体の層に直交する方向の分解能を確保するためにビュー数を多くする必要があり、断層撮影時間が長いという問題があった。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、層状構造を有する被検体の断面像を短い断層撮影時間で得るCT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ファン面に沿って放射線光軸を中心に90°以上180°未満に亘る放射線を放射する放射線源と、被検体を透過した前記放射線を検出して透過データとして出力する放射線検出手段と、前記被検体と前記放射線とに、前記ファン面に沿って前記放射線を横切る所定の平行移動方向に対し相対的な平行移動を与える平行移動手段と、前記被検体と前記放射線とに、前記ファン面に直交する回転軸に対し相対的な回転を与える回転手段と、前記平行移動手段と前記回転手段及び前記放射線検出手段を制御して、前記回転の1つの位置で1回の前記平行移動をする間に前記透過データを収集する1回移動スキャンと、前記回転の約90°異なる2つの位置それぞれで前記平行移動をする間に前記透過データを収集する2回移動スキャンとを実施するもので、選択入力に応じて前記1回移動スキャンと前記2回移動スキャンのどちらかを実施する制御手段と、前記1回移動スキャンの透過データから前記被検体の第一の断面像を再構成し、また、前記2回移動スキャンの透過データから前記被検体の第二の断面像を再構成する再構成手段と、を有することを要旨とする。
【0014】
前記目的を達成するため、請求項2記載の発明は、請求項1に記載のCT装置において、前記被検体は平面状の層状構造部を持ち、前記1回移動スキャンにおける前記回転の1つの位置は前記層状構造部の層面の方向に基づいて設定されることを要旨とする。
【0015】
この構成により、操作者は、必要に応じて、1回移動スキャンと2回移動スキャンを選択して実施することができ、2回移動スキャンを選択した場合は、ファン面に沿って被検体の周囲の180°以上の方向範囲の透過データを用いて再構成できるので、従来と同様に被検体の全体の良好な断面像が得られる。
【0016】
1回移動スキャンを選択した場合は、被検体の平面状の層状構造部のみが正常な断面像が短時間で得られる。詳述すると、被検体の平面状の層状構造部の層面が放射線光軸に実質的に平行でかつファン面と交差する姿勢(回転の1つの位置)で平行移動する間に検出されたファン面に沿った180°未満の方向範囲の透過データのみから被検体の断面像を再構成するので、ファン面内の180°以上の方向範囲の透過データを得る2回移動スキャンと比べ、断面像上の層構造の分解能に寄与しない放射線が層面に大きな角度で交差する方向の透過データ検出を省くことで、層面に直交する方向の分解能を保ったままスキャンに要する時間を短縮できる。また、断面像再構成に要する時間も短縮できる。
【0017】
これにより、検査部位に応じ、1回移動スキャンと2回移動スキャンを使い分けることができる。
【0018】
前記目的を達成するため、請求項3記載の発明は、ファン面に沿って放射線光軸を中心に90°以上180°未満に亘る放射線を放射する放射線源と、被検体を透過した前記放射線を検出して透過データとして出力する放射線検出手段と、前記被検体と前記放射線とに、前記ファン面に沿って前記放射線を横切る所定の平行移動方向に対し相対的な平行移動を与える平行移動手段と、前記被検体と前記放射線とに、前記ファン面に直交する回転軸に対し相対的な回転を与える回転手段と、前記平行移動手段と前記回転手段及び前記放射線検出手段を制御して、前記回転の約90°異なる2つの位置それぞれで前記平行移動をする間に前記透過データを収集する2回移動スキャンを実施する制御手段と、前記被検体の断面像を再構成する領域を第一の領域と第二の領域の2種の領域として設定する領域設定手段と、前記2回移動スキャンの透過データの内、前記被検体に対して前記ファン面に沿って180°未満の方向範囲の透過データを用いて前記被検体の第一の領域の断面像を再構成し、前記被検体に対して前記ファン面に沿って180°以上の方向範囲の透過データを用いて前記被検体の第二の領域の断面像を再構成する再構成手段と、を有することを要旨とする。
【0019】
前記目的を達成するため、請求項4記載の発明は、請求項3に記載のCT装置において、前記被検体は平面状の層状構造部を持ち、前記180°未満の方向範囲は、前記ファン面に沿った前記層状構造部の層面の方向に基づいた範囲であり、前記第一の領域は前記平面状の層状構造部を選択的に設定することを要旨とする。
【0020】
この構成により、第二の領域に対しては、ファン面に沿って被検体の周囲の180°以上の方向範囲の透過データを用いて再構成するので、被検体の構造の良好な断面像が得られる。
【0021】
また、この構成により、第一の領域に対しては、被検体の平面状の層状構造部のみが正常な断面像が短時間で得られる。詳述すると、被検体の平面状の層状構造部の層面のファン面内での方向に基づいた(この層面の方向を実質的に中心とした)ファン面に沿った180°未満の方向範囲の透過データから第一の領域を再構成するので、ファン面内の180°以上の方向範囲の透過データからの再構成と比べ、断面像上の層構造の分解能に寄与しない放射線が層面に大きな角度で交差する方向の透過データを用いないことで、層面に直交する方向の分解能を保ったまま断面像再構成に要する時間を短縮できる。このように、この構成により、層状構造を有する被検体の断面像再構成に要する時間を短縮できる。
【0022】
前記目的を達成するため、請求項5記載の発明は、請求項3あるいは4に記載のCT装置において、前記領域設定手段は、グラフィカル入力に基づき前記第一の領域と前記第二の領域を設定することを要旨とする。
【0023】
この構成により、再構成領域の設定を容易に行うことができる。
【0024】
前記目的を達成するため、請求項6記載の発明は、請求項3あるいは4に記載のCT装置において、前記再構成手段は、さらに、前記2回移動スキャンの透過データから被検体の初期断面像を再構成し、前記領域設定手段は、前記初期断面像に基づき前記第一の領域と前記第二の領域を設定することを要旨とする。
【0025】
この構成により、再構成領域の設定を自動で行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、層状構造を有する被検体の断面像を短い断層撮影時間で得るCT装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図((a)平面図、(b)正面図)。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る断層撮影のフロー図。
【図3】本発明の実施形態の変形例1及び変形例3に係る使用ファン角θ0’の設定法を示す平面図。
【図4】第二の実施形態に係る断層撮影のフロー図。
【図5】第二の実施形態の再構成領域の設定例を示す概念図。
【図6】被検体である電池90の概念図(断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0029】
(本発明の第一の実施の形態の構成)
以下、本発明の第一の実施形態の構成について図1を参照して説明する。図1は本発明の第一の実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図((a)平面図、(b)正面図)である。
【0030】
X線管(放射線源)1と、X線管1のX線焦点Fより放射されたX線の一部であるファン面TPに沿って90°以上180°未満に亘る角錐状のX線ビーム(放射線)2を2次元の分解能で検出するX線検出器(放射線検出手段)3とが対向して配置され、テーブル4上に載置された被検体5を透過したX線ビーム2がX線検出器3により検出され、透過像(透過データ)として出力される。
【0031】
検出されるX線ビーム(放射線)2は、ファン面TP上にあるX線光軸(放射線光軸)L(x方向)を中心に、ファン面TPに沿って90°以上で180°未満のファン角θ0、ファン面TPと直交する方向にコーン角γ0の広がりを持つ。
【0032】
テーブル4は回転機構(回転手段)6上に配置され、回転機構6は平行移動機構(平行移動手段)7上に配置されている。テーブル4(と被検体5)は回転機構6によりファン面TPに直交する回転軸RAに対し回転され、回転機構6(と回転軸RA、テーブル4及び被検体5)は平行移動機構7によりファン面TPに沿ってX線ビーム2を横切る1つの平行移動方向(y方向)に平行移動される。ここで、平行移動方向はX線光軸Lと直交するように設定している。なお、平行移動とは、回転することなく姿勢を保ったまま直線的に移動することである。
【0033】
回転軸RAとファン面TPとの交点をCで表すと、C点は平行移動に伴ってy方向の直線であるC点軌道8上を移動し、C点の位置でテーブル4の平行移動の位置を表すことができる。
【0034】
X線焦点FとX線検出器3の検出面3aとの間の距離を検出距離FDD(Focus to Detector Distance)で表し、X線焦点FとC点軌道8との間の距離を撮影距離FCD(Focus to rotation Center Distance)で表すと、撮影倍率はFDD/FCDで計算できる。
【0035】
X線検出器3は2次元の分解能でX線ビーム2を検出するもので、ファン面の方向位置nとファン面と直交する方向位置m(y方向のチャンネル番号nとz方向のチャンネル番号m)で区別される2次元透過像を出力するもので、たとえばFPD(Flat Panel Detector)、あるはX線II(Image Intensifier)とテレビカメラを組合せたものを用いる。
【0036】
構成要素として、他に、各機構(回転機構6、平行移動機構7)を制御し、また、X線検出器3からの透過像を処理する制御処理部9、処理結果等を表示する表示部9a、X線管1を制御するX線制御部(図示せず)等がある。
【0037】
制御処理部9は通常のコンピュータで、CPU、メモリ、ディスク(不揮発性メモリ)、表示部9a、入力部(キーボードやマウス等)9b、機構制御ボード、インターフェース、等より成っている。
【0038】
制御処理部9は、機構制御ボードにより、各機構部6,7の動作位置の信号(エンコーダパルス等)を受けて各機構部6,7を制御してスキャン(断層撮影走査)を行わせる他、透過データの収集指令パルス等をX線検出器3に送る(制御する)。なお、各機構部6,7には図示してないエンコーダが取付けられており、回転機構6による回転位置φ、平行移動機構7による平行移動位置tが読み取られ、それぞれ制御処理部9に送られる。
【0039】
また、制御処理部9は、断層撮影時にX線検出器3からの透過像を収集し、記憶し、再構成処理してファン面TPに平行な1枚ないし複数枚の被検体5の断面像を作成し、記憶し表示部9aに表示する。
【0040】
また、制御処理部9は、X線制御部(図示せず)に指令を出し、管電圧、管電流を指定すると共に、X線の放射、停止の指示を行なう。管電圧、管電流は被検体に合わせて変えることができる。
【0041】
図1に示すように、制御処理部9はソフトウエアを読み込んでCPUが機能する機能ブロックとして、断層撮影の撮影条件を設定する撮影条件設定部9c、回転角度を設定して所定の範囲でテーブル4を平行移動させつつ検出された複数の透過像を取り込んで記憶するスキャンを実施するためのスキャン制御部(制御手段)9d、複数の透過像を用いて断面像を作成する再構成部(再構成手段)9e、等を備えている。
【0042】
(第一の実施の形態の作用)
図6、図1、図2を参照して、被検体5として電池90を撮影する場合を例に、第一の実施の形態の作用を説明する。
【0043】
図6に被検体である電池90の概念図(断面図)を示す。この図は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニカド電池等の構造の概略を示す断面図である。ケース91内には、正極板92と負極板93がセパレータ(不図示)を介して何重にも巻かれて収められ、空隙には電解液94が満たされている。例えば、層のピッチ(正極板−正極板)は0.3mm程度で巻数は数十回で、断面全体の寸法としては30mm×120mm程度である。
【0044】
電池90は、平行平面の層面12を持った層状構造を有し、層面12に平行に各電極板92,93およびセパレータは厚さ約0.1mmで、長さ100mm程度と非常に細長構造となっている。
【0045】
図2は第一の実施形態に係る断層撮影のフロー図である。
ステップS1では、図1を参照して、操作者は電池90をテーブル4の中央に載置するが、層状構造の層面12がX線光軸Lに実質的に平行でかつファン面TPと交差(実質的に直交)する姿勢で載置し、さらに断層撮影の撮影条件を設定する。
【0046】
撮影条件設定として、撮影条件設定部9cは、入力部9bからの操作者の入力により、撮影条件を以下のように設定する。
【0047】
撮影条件としては、X線管1の管電圧と管電流、C点を中心とするスキャン領域の半径、透過像を検出する平行移動の移動間隔Δt(例えば0.2mm)、1透過像の積分フレーム数(例えば5)、断面像の再構成領域サイズとボクセルサイズ、等を設定する。ここで、スキャン領域はファン面TP上で電池90を包含する円として設定するが、例えば、長方形として設定することもできる。
【0048】
また、撮影条件として、操作者の入力する選択入力に応じて、1回移動スキャンか、2回移動スキャンかを設定する。
【0049】
ここで、操作者は、電池90の平行平面の層面12の部分(平面状の層状構造部)のみの断面像を得たい場合は1回移動スキャンを選択し、電池90の全体の断面像を得たい場合は2回移動スキャンを選択する。
【0050】
ステップS2では、操作者がスキャン開始を入力すると、スキャン制御部9dは、1回移動スキャンか?を判定し、1回移動スキャンの場合はステップS3に進む。
【0051】
ステップS3で、スキャン制御部9dは、以下のように、1回移動スキャンとして1回の往路スキャンを行う。
【0052】
まず、被検体を載置したときの回転の状態(0°)のままで、先ず、テーブル4の平行移動位置tを、設定したスキャン領域がX線ビーム2に掛からない位置にリセットし、次に、平行移動をリセット位置から往路で平行移動させつつ、少なくともスキャン領域がX線ビーム2に掛る範囲内で移動間隔Δt毎にX線検出器3が検出した透過像を収集し、第一の透過データとして記憶し、平行移動を終了して1回移動スキャンを終了する。
【0053】
X線検出器はチャンネル番号nとmで区別される2次元透過像を出力するので、透過データはファン面TPの方向位置n、ファン面TPと直交する方向位置m及び平行移動位置tで構成される透過データでありI(n,m,t)と記述できる。
【0054】
次に、ステップS4で、再構成部9eは、記憶した第一の透過データを用いて電池90の断面像(第一の断面像)を再構成する。再構成は、特開平2005−351747に記載されているように、n毎にデータI(m,t)を一組として、対数変換してからt方向にフィルタ掛けしてフィルタ補正逆投影を行い、電池90のファン面に沿った複数の断面像を再構成する。この時の、逆投影の方向は電池90に対しファン面に沿ってファン角θ0(180°未満)である。
【0055】
ステップS2で、1回移動スキャンでない場合は、スキャン制御部9dは、2回移動スキャンと判断し、ステップS5に進んで、ステップS5ないしステップS7で、以下のように、2回移動スキャンとして1回の往路スキャンと1回の復路スキャンを行う。
【0056】
ステップS5で、まず、被検体を載置したときの回転の状態(0°)のままで、先ず、テーブル4の平行移動位置tを、設定したスキャン領域がX線ビーム2に掛からない位置にリセットし、次に、平行移動をリセット位置から往路で平行移動させつつ、少なくともスキャン領域がX線ビーム2に掛る範囲内で移動間隔Δt毎にX線検出器3が検出した透過像を収集し、往路の透過データとして記憶し、平行移動を停止して往路スキャンを終了する。
【0057】
往路の透過データは、第一の透過データと同様に、I(n,m,t)と記述できる。
【0058】
ステップS6で、テーブル4を90°回転させる。
【0059】
ステップS7で、回転を固定した状態(90°)で、テーブル4の平行移動位置tを、ステップS5の終了位置から、復路で平行移動させつつ、少なくともスキャン領域がX線ビーム2に掛る範囲内で移動間隔Δt毎にX線検出器3が検出した透過像を収集し、復路の透過データとして記憶し、平行移動を停止して復路スキャンを終了する。
【0060】
復路の透過データは、第一の透過データと同様に、I(n,m,t)と記述できる。
【0061】
次に、ステップS8で、再構成部9eは、記憶した往路の透過データと復路の透過データより成る第二の透過データを用いて電池90の断面像(第二の断面像)を再構成する。再構成は、特開平2005−351747に記載されているように、n毎にデータI(m,t)を一組として、対数変換してからt方向にフィルタ掛けしてフィルタ補正逆投影を行い、電池90のファン面に沿った複数の断面像を再構成する。この時の、逆投影の方向は電池90に対しファン面に沿って180°以上に亘っている。
【0062】
(第一の実施の形態の効果)
第一の実施形態によれば、2回移動スキャンを選択した場合、ファン面TRに沿って被検体5の周囲の180°以上の方向範囲の透過データを用いて再構成するので、従来と同様に被検体の全体の良好な断面像が得られる。
【0063】
第一の実施形態によれば、1回移動スキャンを選択した場合、電池90の平面状の層状構造部のみが正常な断面像が短時間で得られる。詳述すると、電池90の平面状の層状構造部の層面12がX線光軸Lに実質的に平行でかつファン面TPと交差(実質的に直交)する姿勢で、X線ビームを横切って平行移動をする間に検出されたファン面に沿った180°未満の方向範囲の(往路スキャンの)透過データのみから電池90の断面像を再構成するので、ファン面内の180°以上の方向範囲の透過データを得る2回移動スキャンと比べ、断面像上の層構造の分解能に寄与しないX線ビーム2が層面12に大きな角度で交差する方向の透過データ検出(復路スキャン)を省くことで、層面に直交する方向の分解能を保ったままスキャンに要する時間を短縮できる。また、断面像再構成に要する時間も短縮できる。
【0064】
また、第一の実施形態によれば、操作者は、必要に応じて、1回移動スキャンと2回移動スキャンを選択して実施することができる。
【0065】
(第一の実施の形態の変形)
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。以下に示す変形例は組合わせて実施することもできる。
【0066】
(変形例1)
第一の実施形態で、1回移動スキャンにおいて、再構成に使用する透過データの使用ファン角θ0’をファン角θ0より小さくしてもよい。
【0067】
すなわち、再構成部9eは、第一の透過データから電池90の第一の断面像を再構成する際に、第一の透過データのファン面TPに沿った角度範囲を制限して再構成に用いる。すなわち、ファン面TPに沿ってX線光軸Lから離れた端部のX線ビームを検出した透過データ(nの両端部)を再構成に使わないようにして再構成する。
【0068】
図3は使用ファン角θ0’の設定法を示す平面図である。
【0069】
図3のように、電池90の平面状の層状構造部は巻むらや皺によって局所的に層面12から傾斜している。この傾斜範囲内の方向からの透過像が得られれば良いので、見込まれる(予測される最大の)ファン面に沿った傾斜角度範囲αを含むように使用ファン角θ0’を設定すればよい。これにより再構成に要する時間を短縮できる。
【0070】
また、検出して再構成に用いない透過データは記憶しないようにしてもよい。さらに、平行移動範囲を、電池90が再構成に用いるX線ビームに掛かる最小限の範囲に減らして、スキャン時間を短縮することもできる。
【0071】
なお、使用ファン角θ0’は、X線光軸Lに対称でなくても余裕を持ってαを包含するように設定すればよく、被検体の平面性が良い場合は例えば5°とか2°とか小さな範囲で済むこともある。
【0072】
さらに、第一の実施形態では、層状構造の層面12がX線光軸Lに実質的に平行な姿勢で往路スキャンをしているが、層面12とX線光軸Lとの平行は正確でなく実質的であればよい。
【0073】
実質的に平行とは、図3に示すように撮影する層状構造部が局所的に層面12から傾斜する(見込まれる:予測される最大の)ファン面に沿った斜角度範囲αがファン角θ0あるいは使用ファン角θ0’に含まれる状態のことである。
【0074】
(変形例2)
第一の実施形態で、1回移動スキャンにおいて、ボクセルサイズの設定は層面12と直交するy方向に比べ層面12に沿ったx方向とz方向でボクセルサイズを大きく設定してもよい。これにより、第一の断面像の再構成に要する時間をさらに短縮できる。
【0075】
また、再構成後、補間してx方向ボクセルサイズをy方向と同じに変換することもできる。
【0076】
(本発明の第二の実施の形態の構成)
本発明の第二の実施形態の構成は、図1に示す第一の実施形態の構成から、制御処理部9のソフトウエアのみを変更したもので、撮影条件設定部9c、スキャン制御部9d、再構成部9eの代わりに撮影条件設定部9c’、スキャン制御部9d’、再構成部9e’を持ち、それ以外の構成は全く同じCT装置である。
【0077】
第二の実施の形態に係る制御処理部9はソフトウエアを読み込んでCPUが機能する機能ブロックとして、断層撮影の撮影条件を設定する撮影条件設定部9c’(領域設定手段)、回転角度を設定して所定の範囲でテーブル4を平行移動させつつ検出された複数の透過像を取り込んで記憶するスキャンを実施するためのスキャン制御部(制御手段)9d’、複数の透過像を用いて断面像を作成する再構成部(再構成手段)9e’、等を備えている。
【0078】
(第二の実施の形態の作用)
図6、図1、図4、図5を参照して、被検体5として電池90を撮影する場合を例に、第二の実施の形態の作用を説明する。
【0079】
図6に被検体である電池90の概念図(断面図)を示す。これは第一の実施の形態で説明した電池90であるので、説明は省略する。
【0080】
図4は第二の実施形態に係る断層撮影のフロー図である。
【0081】
ステップS10では、図1を参照して、操作者は電池90をテーブル4の中央に載置するが、層状構造の層面12がX線光軸Lに実質的に平行でかつファン面TPと交差(実質的に直交)する姿勢で載置し、さらに断層撮影の撮影条件を設定する。
【0082】
撮影条件設定として、撮影条件設定部9c’は、入力部9bからの操作者の入力により、撮影条件を以下のように設定する。
【0083】
撮影条件としては、X線管1の管電圧と管電流、C点を中心とするスキャン領域の半径、透過像を検出する平行移動の移動間隔Δt(例えば0.2mm)、1透過像の積分フレーム数(例えば5)、等を設定する。ここで、スキャン領域はファン面TP上で電池90を包含する円として設定するが、例えば、長方形として設定することもできる。
【0084】
また、撮影条件として、スキャン領域内に再構成領域を次のように設定する。
【0085】
図5は再構成領域の設定例を示す概念図である。操作者は予め既知である電池90の構造(設計図)に基づきC点を基準に第一の領域と第二の領域の2種の領域を設定する。各領域は、例えばxyz座標で、直方体の領域を数値入力で設定し、第一の領域と第二の領域共に単数あるいは複数個設定でき、互いに重なりあっても正確に接しても間を空けた設定も可能である。
【0086】
例えば、図5のように、電池90の平行平面の層面12の部分(平面状の層状構造部)を含むように第一の領域13を設定し、それ以外の部分(平面状でない部分)を含むように第二の領域14a、14bを設定する。
【0087】
さらに、ボクセルサイズも設定する。
【0088】
次に、操作者がスキャン開始を入力すると、スキャン制御部9d’は、以下のように、ステップS11ないしステップ13の2回移動スキャンを開始する。
【0089】
ステップS11で、まず、被検体を載置したときの回転の状態(0°)のままで、先ず、テーブル4の平行移動位置tを、設定したスキャン領域がX線ビーム2に掛からない位置にリセットし、次に、平行移動をリセット位置から往路で平行移動させつつ、少なくともスキャン領域がX線ビーム2に掛る範囲内で移動間隔Δt毎にX線検出器3が検出した透過像を収集し、往路の透過データとして記憶し、平行移動を停止して往路スキャンを終了する。
【0090】
往路の透過データは、第一の実施形態と同様に、I(n,m,t)と記述できる。
【0091】
ステップS12で、テーブル4を90°回転させる。
【0092】
ステップS13で、回転を固定した状態(90°)で、テーブル4の平行移動位置tを、ステップS11の終了位置から、復路で平行移動させつつ、少なくともスキャン領域がX線ビーム2に掛る範囲内で移動間隔Δt毎にX線検出器3が検出した透過像を収集し、復路の透過データとして記憶し、平行移動を停止して復路スキャンを終了し、2回移動スキャンを終了する。
【0093】
復路の透過データは、第一の実施形態と同様に、I(n,m,t)と記述できる。
【0094】
次に、ステップS14で、再構成部9e’は、記憶した往路の透過データのみ(被検体に対してファン面に沿って180°未満の方向範囲の透過データ)を用いて電池90の第一の領域13の断面像を再構成し、記憶した往路の透過データと復路の透過データ(被検体に対してファン面に沿って180°以上の方向範囲の透過データ)を用いて電池90の第二の領域14a、14bの断面像を再構成する。再構成は、特開平2005−351747に記載されているように、n毎にデータI(m,t)を一組として、対数変換してからt方向にフィルタ掛けしてフィルタ補正逆投影を行い、電池90の設定した第一及び第二の領域のファン面に沿った複数の断面像を再構成する。この時の、逆投影の方向は、第一の領域では、電池90に対しファン面に沿って180°以下で、第二の領域では、電池90に対しファン面に沿って180°以上に亘っている。
【0095】
さらに、ステップS14で、第一の領域の断面像と第二の領域の断面像(それぞれ単数あるいは複数個)を個別に表示、あるいは任意の複数断面像を合成して繋げて表示する。
【0096】
(第二の実施の形態の効果)
第二の実施形態によれば、第二の領域に対しては、往路と復路の透過データを用いることで、ファン面TRに沿って被検体5の周囲の180°以上の方向範囲の透過データを用いて再構成するので、被検体のすべての構造の従来と同様な良好な断面像が得られる。
【0097】
第二の実施形態によれば、第一の領域に対しては、電池90の平面状の層状構造部のみが正常な断面像が短時間で得られる。詳述すると、電池90の平面状の層状構造部の層面12がX線光軸Lに実質的に平行でかつファン面TPと交差(実質的に直交)する姿勢で、X線ビームを横切って平行移動をする間に検出されたファン面に沿った180°未満の方向範囲の(往路スキャンの)透過データのみから電池90の断面像を再構成するので、ファン面内の180°以上の方向範囲の透過データからの再構成と比べ、断面像上の層構造の分解能に寄与しないX線ビーム2が層面12に大きな角度で交差する方向の(復路スキャンの)透過データを用いないことで、層面に直交する方向の分解能を保ったまま断面像再構成に要する時間を短縮できる。
【0098】
このように、第二の実施形態によれば、平面状の層状構造を持つ被検体の断面像再構成に要する時間を短縮できる。
【0099】
(第二の実施の形態の変形)
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。以下に示す変形例は組合わせて実施することもできる。
【0100】
(変形例3)
第二の実施形態で、第一の領域の再構成において、再構成に使用する透過データの使用ファン角θ0’をファン角θ0より小さくしてもよい。
【0101】
すなわち、再構成部9e’は、往路の透過データから電池90の第一の領域の断面像を再構成する際に、往路の透過データのファン面TPに沿った角度範囲を制限して再構成に用いる。すなわち、ファン面TPに沿ってX線光軸Lから離れた端部のX線ビームを検出した透過データ(nの両端部)を再構成に使わないようにして再構成する。
【0102】
図3は使用ファン角θ0’の設定法を示す平面図である。
【0103】
図3のように、電池90の平面状の層状構造部は巻むらや皺によって局所的に層面12から傾斜している。この傾斜範囲内の方向からの透過像が得られれば良いので、見込まれる(予測される最大の)ファン面に沿った傾斜角度範囲αを含むように使用ファン角θ0’を設定すればよい。これにより再構成に要する時間を短縮できる。
【0104】
なお、使用ファン角θ0’は、X線光軸Lに対称でなくても余裕を持ってαを包含するように設定すればよく、被検体の平面性が良い場合は例えば5°とか2°とか小さな範囲で済むこともある。
【0105】
さらに、第二の実施形態では、層状構造の層面12がX線光軸Lに実質的に平行な姿勢で往路スキャンをしているが、層面12とX線光軸Lとの平行は正確でなく実質的であればよい。
【0106】
実質的に平行とは、図3に示すように撮影する層状構造部が局所的に層面12から傾斜する(見込まれる:予測される最大の)ファン面に沿った斜角度範囲αがファン角θ0あるいは使用ファン角θ0’に含まれる状態のことである。
【0107】
(変形例4)
第二の実施形態で、第一の領域のボクセルサイズ設定において、層面12と直交するy方向に比べ層面12に沿ったx方向とz方向でボクセルサイズを大きく設定してもよい。これにより、断面像再構成に要する時間をさらに短縮できる。
【0108】
また、再構成後、補間してx方向ボクセルサイズをy方向と同じに変換することもできる。
【0109】
(変形例5)
第二の実施形態では、層状構造の層面12がX線光軸Lに実質的に平行な姿勢で往路スキャンをしているが、層状構造の層面12がX線光軸Lに実質的に垂直になる姿勢で往路スキャンをしてもよい。この場合は、復路の透過データのみを用いて第一の領域を再構成する。これにより、第二の実施形態と同じ結果となることは容易に理解できる。
【0110】
(変形例6)
第二の実施形態では、層状構造の層面12がX線光軸Lに実質的に平行な姿勢で往路スキャンをしているが、層面12がX線光軸Lに対し約45°傾斜し姿勢で往路スキャンをしてもよい。この場合は往路の透過データの一部と復路の透過データの一部を用いて、層面12の方向(ファン面に沿った斜角度範囲α)を含むような被検体に対してファン面に沿った180°未満の方向範囲の透過データを用いて第一の領域の断面像を再構成する。
【0111】
(変形例7)
第二の実施形態では、再構成領域を都度、数値入力して設定しているが、電池の種類毎に予め第一の領域と第二の領域を記憶させておき、電池の種類を指定するだけで再構成領域が設定されるようにしてもよい。
【0112】
(変形例8)
第二の実施形態では、再構成領域を設定するとき、xyz座標で、直方体の領域を数値入力で設定しているが、撮影条件設定部9c’が予め既知である電池90の構造(図面、予め断層撮影した同種電池の断面像、同種電池のカットサンプルの写真、等)あるいは方眼グラフを表示し、操作者がこの表示上でグラフィカル入力して第一の領域と第二の領域を設定するようにしてもよい。グラフィカル入力は、構造の表示上で、指標を移動させて図形を入力するものである。
【0113】
(変形例9)
第二の実施形態では、スキャン前に第一の領域と第二の領域を設定しているが、スキャンが終了して再構成を開始する前(ステップS13とステップS14の間)に、次の様に設定してもよい。
【0114】
まず、再構成部(再構成手段)9e’がスキャンで得られた往路データ及び復路データから、間引いたまばらな透過データを用いて粗い画像である初期断面像を作成し、撮影条件設定部9c’がこの初期断面像を表示し、操作者がこの表示上でグラフィカル入力して第一の領域と第二の領域を設定する。
【0115】
(変形例10)
第二の実施形態では、スキャン前に第一の領域と第二の領域を設定しているが、スキャンが終了して再構成を開始する前(ステップS13とステップS14の間)に、次の様に設定してもよい。
【0116】
まず、再構成部(再構成手段)9e’がスキャンで得られた往路データ及び復路データから、間引いたまばらな透過データを用いて粗い画像である初期断面像を作成し、撮影条件設定部9c’がこの初期断面像を画像処理して自動的に第一の領域と第二の領域を設定する。
【0117】
このとき用いる画像処理としては、例えば、2値化処理で電池90のケース91の外形(長方形)を抽出し、この外形(D×W)から長手方向Wの画端をD/2ずつ削った領域を第一の領域とし、両端の削られた部分を第二の領域とする。
【0118】
(変形例11)
第二の実施形態で、層面の方向が異なる2つ以上の平面状の層状構造部部分がある場合、第一の領域を、層面の方向がそれぞれで一致している2種以上の領域A,B…に分けて設定し、それぞれで、ファン面に沿ってそれぞれの層面の方向を実質的に中心とする異なる180°未満の方向範囲の透過データを用いてそれぞれの領域A,B…を再構成するようにしても良い。
【0119】
(第一及び二の実施の形態の変形)
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。以下に示す変形例は組合せて実施することもできる。
【0120】
(変形例12)
第一及び第二の実施形態では、層状構造の層面12が、ファン面TPと実質的に直交する姿勢で往路スキャン及び復路スキャンをしているが、層面12とファン面TPとの直交は正確でなく実質的であればよい。
【0121】
直交から角度δずれたとしても断面が傾斜するだけで断面上の層間隔が1/cos(δ)になるだけで大きな問題ではない。
【0122】
(変形例13)
第一及び第二の実施形態では、平行移動方向はX線光軸Lと直交するように設定しているが、機構の干渉が避けられる範囲で直交から傾斜していてもかまわない。
【0123】
傾斜している場合は、平行移動方向と直交するX線ビームを新たなX線光軸と捉えればよく、X線ビーム2(ファン角θ0)がX線光軸と非対称に設定されているのと同じである。
【0124】
(変形例14)
第一及び第二の実施形態では、2回移動スキャンにおいて、90°の回転を行っているが、回転角度は必ずしも正確に90°でなくてもよい。被検体に対するX線ビーム2の角度範囲が2回のスキャンで少なくとも180°に亘るようにできればよい。
【0125】
例えば、ファン角θ0が、
θ0=90°+β (0°≦β<90°) ………(1)
のとき、回転角度は、
90°−β ≦ 回転角度 ≦ 90°+β ………(2)
の範囲の任意の角度に設定できる。
【0126】
(変形例15)
第一及び第二の実施形態で、透過データI(n,m,t)に対して全てのnでフィルタ補正逆投影を行っているが、n方向にデータの束ねを行いn方向のデータ点数を減らしてから再構成することもできる。この場合、n1を中心にn方向にデータを束ねる際には、n毎にt方向にずらし[=FCD・{tan(θ(n))−tan(θ(n1))}]を加えてから補間して束ねて、I(n1,m,t)を得るようにすると分解能の低下を緩和することができる。ここで、θ(n)はX線光軸Lを基準としたチャンネルnのファン面TPに沿った配置角である。この束ねは対数変換の前でも後でも良い。
【0127】
これにより、電池90の必要とされる層面12と直交する方向の分解能に応じ、ファン角方向のデータ点の角度間隔を必要な上限まで大きくすることで、n方向のデータ点数を必要最小限に減らすことができ、再構成に要する時間を短縮できる。
【0128】
(変形例16)
第一及び第二の実施形態で、テーブル4(電池90)をX線ビーム2に対し平行移動と回転とをさせているが、平行移動及び回転は相対的でよい。例えば、テーブル4を平行移動させず、X線管1とX線検出器3を平行移動させてもよければ、テーブル4を回転させず、X線管1とX線検出器3を回転させてもよい。
【0129】
(変形例17)
第一及び第二の実施形態では被検体5として電池90を例にして説明したが、本発明の被検体5は電池90に限られること無く、他の層状構造を持つ被検体、例えばコンデンサ、コイル、多層基板、等に対しても有効に適用することができる。
【0130】
(変形例18)
第一及び第二の実施形態で、放射線としてX線を用いているが、X線には限られず透過性の放射線であればよい。例えば、放射線としては、γ線やマイクロ波などでもよい。
【符号の説明】
【0131】
1…X線管、2…X線ビーム、3…X線検出器、4…テーブル、5…被検体、6…回転機構、7…平行移動機構、8…C点軌道、9……制御処理部、9a…表示部、9b…入力部、9c,9c’…撮影条件設定部、9d,9d’…スキャン制御部、9e,9e’…再構成部、12…層面、13…第一の領域、14a,14b…第二の領域、
L…X線光軸、TP…ファン面、F…X線焦点、RA…回転軸、θ0…ファン角、γ0…コーン角、θ0’…使用ファン角、
90…電池、91…ケース、92…正極板、93…負極板、94…電解液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファン面に沿って放射線光軸を中心に90°以上180°未満に亘る放射線を放射する放射線源と、被検体を透過した前記放射線を検出して透過データとして出力する放射線検出手段と、
前記被検体と前記放射線とに、前記ファン面に沿って前記放射線を横切る所定の平行移動方向に対し相対的な平行移動を与える平行移動手段と、
前記被検体と前記放射線とに、前記ファン面に直交する回転軸に対し相対的な回転を与える回転手段と、
前記平行移動手段と前記回転手段及び前記放射線検出手段を制御して、前記回転の1つの位置で1回の前記平行移動をする間に前記透過データを収集する1回移動スキャンと、前記回転の約90°異なる2つの位置それぞれで前記平行移動をする間に前記透過データを収集する2回移動スキャンとを実施するもので、選択入力に応じて前記1回移動スキャンと前記2回移動スキャンのどちらかを実施する制御手段と、
前記1回移動スキャンの透過データから前記被検体の第一の断面像を再構成し、また、前記2回移動スキャンの透過データから前記被検体の第二の断面像を再構成する再構成手段と、
を有することを特徴とするCT装置。
【請求項2】
請求項1に記載のCT装置において、
前記被検体は平面状の層状構造部を持ち、前記1回移動スキャンにおける前記回転の1つの位置は前記層状構造部の層面の方向に基づいて設定されることを特徴とする層状構造部を持つ被検体用のCT装置。
【請求項3】
ファン面に沿って放射線光軸を中心に90°以上180°未満に亘る放射線を放射する放射線源と、被検体を透過した前記放射線を検出して透過データとして出力する放射線検出手段と、
前記被検体と前記放射線とに、前記ファン面に沿って前記放射線を横切る所定の平行移動方向に対し相対的な平行移動を与える平行移動手段と、
前記被検体と前記放射線とに、前記ファン面に直交する回転軸に対し相対的な回転を与える回転手段と、
前記平行移動手段と前記回転手段及び前記放射線検出手段を制御して、前記回転の約90°異なる2つの位置それぞれで前記平行移動をする間に前記透過データを収集する2回移動スキャンを実施する制御手段と、
前記被検体の断面像を再構成する領域を第一の領域と第二の領域の2種の領域として設定する領域設定手段と、
前記2回移動スキャンの透過データの内、前記被検体に対して前記ファン面に沿って180°未満の方向範囲の透過データを用いて前記被検体の第一の領域の断面像を再構成し、前記被検体に対して前記ファン面に沿って180°以上の方向範囲の透過データを用いて前記被検体の第二の領域の断面像を再構成する再構成手段と、
を有することを特徴とするCT装置。
【請求項4】
請求項3に記載のCT装置において、
前記被検体は平面状の層状構造部を持ち、前記180°未満の方向範囲は、前記ファン面に沿った前記層状構造部の層面の方向に基づいた範囲であり、前記第一の領域は前記平面状の層状構造部を選択的に設定することを特徴とする層状構造部を持つ被検体用のCT装置。
【請求項5】
請求項3あるいは4に記載のCT装置において、
前記領域設定手段は、グラフィカル入力に基づき前記第一の領域と前記第二の領域を設定することを特徴とするCT装置。
【請求項6】
請求項3あるいは4に記載のCT装置において、
前記再構成手段は、さらに、前記2回移動スキャンの透過データから被検体の初期断面像を再構成し、
前記領域設定手段は、前記初期断面像に基づき前記第一の領域と前記第二の領域を設定することを特徴とするCT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−251982(P2012−251982A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136743(P2011−136743)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】