説明

Chlamydiatrachomatis抗原

【課題】ワクチン開発における使用に適切な抗原および免疫原を提供するため、天然の感染の間に免疫応答を惹起するクラミジア抗原を同定することが本発明の課題である。
【解決手段】本発明は、Chlamydia trachomatis由来の抗原性タンパク質に関する。詳細には、これは、慢性に感染した患者血清またはセロコンバージョンした患者の血清由来の抗体により認識される抗原に関する。上記課題は、感染の結果としてヒトにおいて免疫原性である、Chlamydia trachomatisによってコードされるタンパク質を、二次元電気泳動マップのウエスタンブロットを用いて同定することで解決された。いくつかの公知の免疫原は、免疫原として以前には公知ではないタンパク質、および発現された遺伝子産物として以前には報告されていないタンパク質として、同定された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(クラミジア抗原)
本発明は、Chlamydia trachomatis由来の抗原性タンパク質に関する。詳細には、これは、慢性に感染した患者血清またはセロコンバージョンした患者の血清由来の抗体により認識される抗原に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
Chlamydiaは、風土性の性感染症、トラコーマ、感染性肺炎、および種々の他の疾患症候群の原因である真核生物細胞の偏性細胞内寄生生物である。それらは、排他的真正細菌の系統学的な分科であり、任意の他の公知の生物体に密接な関係を有さない。それらは、それ自体の目(Chlamydiales)に分類され、これは、単一の科(Chlamydiaceae)を含み、次に、これは単一の属(Chlamydia)を含む。4つのChlamydia種が現在、公知である。C.trachomatis、C.pneumoniae、C.pecorumおよびC.psittaci[例えば、引用文献1を参照のこと]。C.trachomatis(血清型亜型D)のゲノム配列は、現在公表されている[2]。
【0003】
C.Trachomatisのヒトの血清改変体(「血清型亜型」)は、2つのバイオ改変体(「biovar」)に分けられる。血清型亜型A〜Kは、主に眼の組織(A〜C)または泌尿生殖器管(D〜K)において上皮性感染を誘発する。血清型亜型L1、L2およびL3は、浸潤性の性病性リンパ肉芽腫(LGV)の因子である。
【0004】
クラミジア感染自体が疾患を生じるが、幾人かの患者においては、症候群の重篤度は、実際には、異常な宿主免疫応答に起因していると考えられる。感染を排除することの失敗は持続的な免疫刺激を生じ、そして宿主を助けることよりも、これは、重篤な結果(不妊および失明を含む)を伴う慢性感染を生じる[3]。
【0005】
さらに、天然のクラミジア感染により与えられる防御は、通常、不完全で、一過性で、そして株特異的である。
【0006】
疾患の深刻な性質に起因して、適切なワクチンを提供することが所望される。これらは、(a)クラミジア感染に対する、またはクラミジア誘導性疾患に対する免疫のために(予防ワクチン接種)、あるいは(b)確立された慢性クラミジア感染の根絶のために(治療ワクチン接種)有用であり得る。しかし、細胞内寄生生物であることから、この細菌は、一般に抗体媒介免疫応答を逃れ得る。
【0007】
種々の抗原性タンパク質が、C.trachomatisについて記載されており、そして特に細胞表面が、詳細な検索の標的となっている[例えば、1,4]。これらとしては、例えば、pgp3[5,6,7]、MOMP[8]、Hsp60(GroEL)[9]およびHsp70(DnaK様)[10]が挙げられる。しかし、これらの全てが有効なワクチンであると証明されたわけではなく、そして、ワクチン開発における使用に適切な抗原および免疫原を提供するため、天然の感染の間に免疫応答を惹起するクラミジア抗原を同定することが本発明の目的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の詳細な説明)
本発明は、感染の結果、ヒトにおいて免疫原性である、Chlamydia trachomatisによりコードされるタンパク質の同定に基づく。
【0009】
本発明は、15頁(PCT英文)の表IIに列挙されたような、タンパク質、5、6、7、8、9、11、13、14、15、16、17、18、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、または55の分子量およびpIの特徴を有するC.trachomatisタンパク質を提供する。
【0010】
これらは、C.trachomatisのL2株において、16頁(PCT英文)の表IIIに開示されたN末端アミノ酸配列を有するタンパク質を含む。
【0011】
本発明はまた、これらのC.trachomatisタンパク質に同一の配列を有するタンパク質を提供する。特定のタンパク質に依存して、同一性の程度は、好ましくは、50%より大きい(例えば、65%、80%、90%、95%、98%、99%以上)。これらの相同なタンパク質としては、変異体、対立遺伝子改変体、血清型改変体、およびバイオ改変体が挙げられる。タンパク質の間の同一性は、好ましくは、MPSRCHプログラム(Oxford Molecular)において実行されるようなSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムにより決定される。これは、パラメーターgap open penalty=12、およびgap extension penalty=1を有するアフィンギャップ検索を用いる。代表的には、2つのタンパク質の間の50%以上の同一性は、機能的に等価の指標とみなされる。
【0012】
本発明は、さらに、本発明のC.trachomatisタンパク質のフラグメントを含むタンパク質を提供する。このフラグメントは、このタンパク質から少なくともnの連続するアミノ酸を含むべきであり、そして特定のタンパク質に依存して、nは、7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、50、100以上)である。好ましくは、このフラグメントは、このタンパク質由来のエピトープを含む。
【0013】
本発明のタンパク質は、当然ながら、種々の手段(例えば、組換え発現、細胞培養物からの精製、化学合成など)により、そして種々の形態(例えば、ネイティブ、融合など)で調製され得る。それらは、好ましくは、実質的に単離されたまたは精製された形態(すなわち、実質的に他のC.trachomatisまたは宿主細胞タンパク質を含まない)で調製される。
【0014】
さらなる局面に従って、本発明は、これらのタンパク質に結合する抗体を提供する。これらは、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってもよく、そして、任意の適切な手段により生成されてもよい。
【0015】
さらなる局面に従って、本発明は、本発明のタンパク質およびタンパク質のフラグメントをコードする核酸を提供する。この核酸に配列同一性を有する核酸がまた提供される。特定の核酸に依存して、同一性の程度は、好ましくは、50%より大きい(例えば、65%、80%、90%、95%、98%、99%以上)。
【0016】
さらに、本発明は、好ましくは「高ストリンジェンシー」な条件(例えば、0.1×SSC、0.5% SDS溶液中、65℃)下で、この核酸にハイブリダイズし得る核酸を提供する。この核酸のフラグメントもまた提供される。このフラグメントは、この配列由来の少なくともnの連続するヌクレオチドを含むべきであり、そして特定の配列に依存して、nは10以上である(例えば、12、14、15、18、20、25、30、35、40以上)。
【0017】
本発明は、上記の核酸に相補的(例えば、アンチセンスまたはプローブする目的のため)な配列を含む核酸を提供することもまた理解されるべきである。
【0018】
本発明に従う核酸は、当然ながら、多くの方法(例えば、化学合成により、ゲノムライブラリーもしくはcDNAライブラリー、または生物体自体から、など)で調製され得、そして種々の形態(例えば、一本鎖、二本鎖、ベクター、プローブ、など)をとり得る。
【0019】
さらに、用語「核酸」は、DNAおよびRNA、そしてまたそれらのアナログ(例えば、改変された骨格を含むもの)、そしてまたペプチド核酸(PNA)などを含む。
【0020】
さらなる局面に従って、本発明は、本発明の核酸を含むベクター(例えば、発現ベクター)およびこのようなベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。
【0021】
さらなる局面に従って、本発明は、本発明に従うタンパク質、抗体および/または核酸を含む組成物を提供する。これらの化合物は、免疫原性組成物(ワクチンを含む)として、例えば、または診断試薬として、適切であり得る。
【0022】
本発明はまた、医薬として(例えば、ワクチンとして)、または診断試薬としての使用のための、本発明に従う核酸、タンパク質、または抗体を提供する。詳細には、本発明は、クラミジア免疫原としての使用のため、(15頁(PCT英文)の表IIに列挙されたような)タンパク質5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、または55を提供する。表IIに記載のタンパク質のいくつかは、それ自体、公知であり得ると考えられるが、それらが免疫原性であるとは開示されていない。
【0023】
本発明はまた、以下の製造における、本発明に従う核酸、タンパク質、または抗体の使用を提供する:(i)Chlamydiaに起因する感染を処置または予防するための医薬、(ii)Chlamydiaの存在またはChlamydiaに対して惹起された抗体の存在を検出するための診断試薬、および/あるいは(iii)Chlamidiaに対して抗体を惹起し得る試薬。Chlamydiaは、任意の種または株であってもよいが、好ましくは、C.trachomatisである。好ましい実施形態では、本発明は、このような製造における使用のための表IIの55タンパク質のタンパク質を提供する。
【0024】
本発明はまた、患者を処置する方法を提供する。この方法は、本発明に従う核酸、タンパク質および/または抗体の治療的有効量を患者に投与する工程を包含する。
【0025】
さらなる局面に従って、本発明は、種々のプロセスを提供する。
【0026】
本発明のタンパク質を生成するためのプロセスが提供される。このプロセスは、タンパク質発現を誘導する条件下で本発明に従う宿主細胞を培養する工程を包含する。
【0027】
本発明のタンパク質または核酸を生成するためのプロセスが提供される。ここで、タンパク質または核酸は、化学的手段を用いて部分的にまたは全体として合成される。
【0028】
本発明の核酸を検出するためのプロセスが提供される。このプロセスは、以下の工程:(a)本発明に従う核酸プローブを、二重鎖を形成するハイブリダイズ条件下で、生物学的サンプルに接触させる工程:および(b)この二重鎖を検出する工程、を包含する。
【0029】
本発明のタンパク質を検出するためのプロセスが提供される。このプロセスは、以下の工程:(a)本発明に従う抗体を、抗体−抗原複合体の形成に適切な条件下で、生物学的サンプルに接触させる工程;および(b)この複合体を検出する工程、を包含する。同様に、本発明は、サンプル中の抗クラミジア抗体を検出するためのプロセスを提供する。このプロセスは、以下の工程:(a)本発明に従うタンパク質を、抗体−抗原複合体の形成に適切な条件下で、生物学的サンプルと接触させる工程;および(b)この複合体を検出する工程、を包含する。
【0030】
本発明はまた、これらのプロセスにおける使用に適切な試薬を備えるキットを提供する。
【0031】
本発明に従う核酸プローブ、およびこのプローブにより形成された二重鎖を検出するための手段を備えるキットが、提供される。本発明に従う抗体、およびこの抗体により形成された抗体−抗原複合体を検出するための手段を備えるキットが提供される。本発明に従うタンパク質、およびこのタンパク質により形成された抗体−抗原複合体を検出するための手段を備えるキットが提供される。
【0032】
疑いを回避するため、用語「含む、備える(comprising)」は、「を含む、が挙げられる(including)」、および「からなる(consisting)」を包含する。例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、排他的にXから構成されてもよいし、またはX以外に何かを含んでも(例えば、X+Y)よい。
【0033】
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1) 15頁の表IIに記載のようなタンパク質5、6、7、8、9、11、13、14、15、16、17、18、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、または55の分子量特性およびpI特性を有する、C.trachomatisタンパク質。
(項目2) C.trachomatisのL2株において、16頁の表IIIに開示されるN末端アミノ酸配列を有する、項目1に記載のタンパク質。
(項目3) 項目1に記載のタンパク質に50%以上の配列同一性を有する、タンパク質。
(項目4) 項目1に記載のC.trachomatisタンパク質の少なくとも7つの連続するアミノ酸のフラグメントを含む、タンパク質。
(項目5) 項目1から4のいずれか一項に記載のタンパク質に結合する、抗体。
(項目6) 項目1〜4のいずれか一項に記載のタンパク質をコードする、核酸。
(項目7) 項目6の核酸に50%以上の配列同一性を有する、核酸。
(項目8) 項目6に記載の核酸にハイブリダイズし得る、核酸。
(項目9) 項目6に記載の核酸の10以上連続するヌクレオチドのフラグメントを含む、核酸。
(項目10) 項目6に記載の核酸を含む、ベクター。
(項目11) 項目10に記載のベクターで形質転換された、宿主細胞。
(項目12) 項目1から4のいずれか一項に記載のタンパク質、項目5に記載の抗体、および/または項目6から9のいずれか一項に記載の核酸を含む、組成物。
(項目13) 医薬として、または診断試薬として用いるための、項目1から4のいずれか一項に記載のタンパク質、項目5に記載の抗体、および/または項目6から9のいずれか一項に記載の核酸。
(項目14) クラミジアの免疫原として用いるための(15頁の表IIに記載のような)タンパク質5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、または55の分子量特性およびpI特性を有する、C.trachomatisタンパク質。
(項目15) Chlamydiaによる感染の処置または予防のための医薬の製造における、項目1から4のいずれか一項に記載のタンパク質、項目5に記載の抗体、および/または項目6から9のいずれか一項に記載の核酸の、使用。
(項目16) Chlamydiaの存在の検出のための診断試薬、またはChlamydiaに対して惹起される抗体の製造における、項目1から4のいずれか一項に記載のタンパク質、項目5に記載の抗体、および/または項目6から9のいずれか一項に記載の核酸の、使用。
(項目17) Chlamydiaに対する抗体を惹起し得る試薬の製造における、項目1から4のいずれか一項に記載のタンパク質、項目5に記載の抗体、および/または項目6から9のいずれか一項に記載の核酸の、使用。
(項目18) 項目1から4のいずれか一項に記載のタンパク質、項目5に記載の抗体、および/または項目6から9のいずれか一項に記載の核酸の、治療的有効量を患者に投与する工程を包含する、患者を処置する方法。
(項目19) タンパク質の発現を誘導する条件下で、項目11に記載の宿主細胞を培養する工程を包含する、項目1から4のいずれか一項に記載のタンパク質を産生するためのプロセス。
(項目20) 項目1から4のいずれか一項に記載のタンパク質または項目6から9のいずれか一項に記載の核酸を産生するためのプロセスであって、該タンパク質または該核酸が、一部または全体において化学的手段を用いて合成される、プロセス。
(項目21) 項目6から9のいずれか一項に記載の核酸を検出するためプロセスであって、以下の工程:(a)ハイブリダイズする条件下で、核酸プローブを生物学的サンプルに接触させて二重鎖を形成する工程;および(b)該二重鎖を検出する工程、を包含する、プロセス。
(項目22) 項目1から4のいずれか一項に記載のタンパク質を検出するためのプロセスであって、該プロセスは、以下の工程:(a)抗体−抗原複合体の形成のために適切な条件下で、項目5に記載の抗体を生物学的サンプルに接触させる工程;および(b)該複合体を検出する工程、を包含する、プロセス。
(項目23) 項目5に記載の抗体を検出するためのプロセスであって、該プロセスは、以下の工程:(a)抗体−抗原複合体の形成のために適切な条件下で、項目1から4のいずれか一項に記載のタンパク質を生物学的サンプルに接触させる工程;および(b)該複合体を検出する工程、を包含する、プロセス。
(項目24) 項目21から23のいずれか一項に記載のプロセスにおける使用のために適切な試薬を含む、キット。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、注釈付き参照2D電気泳動EBマップを示し、免疫反応性タンパク質スポット(標識された1〜55)の位置もまた示す。同じタンパク質の一連の等電点として現れるスポットの群を、一緒に囲み、そして同じ識別番号に分類した。
【図2A】図2は、典型的な免疫ブロットを示す。全マップ領域を示す。より簡単な比較のために、主要な公知の免疫原は、印を付けている。他のスポットの同定に関しては、図1および表IIを参照する。ブロットAは、PID患者JO51(MIF力価256)由来でありかつ血清希釈は、1:5000を有する。ブロットBは、続発性不妊症によって影響された患者JO35(MIF力価64)由来でありかつ血清希釈1:2500を有する。ブロットCは、ブロットBに類似するが、患者JO52に由来する。ブロットDは、PID患者JO31(MIF力価256)由来でありかつ血清希釈1:5000を有する。
【図2B】図2は、典型的な免疫ブロットを示す。全マップ領域を示す。より簡単な比較のために、主要な公知の免疫原は、印を付けている。他のスポットの同定に関しては、図1および表IIを参照する。ブロットAは、PID患者JO51(MIF力価256)由来でありかつ血清希釈は、1:5000を有する。ブロットBは、続発性不妊症によって影響された患者JO35(MIF力価64)由来でありかつ血清希釈1:2500を有する。ブロットCは、ブロットBに類似するが、患者JO52に由来する。ブロットDは、PID患者JO31(MIF力価256)由来でありかつ血清希釈1:5000を有する。
【図2C】図2は、典型的な免疫ブロットを示す。全マップ領域を示す。より簡単な比較のために、主要な公知の免疫原は、印を付けている。他のスポットの同定に関しては、図1および表IIを参照する。ブロットAは、PID患者JO51(MIF力価256)由来でありかつ血清希釈は、1:5000を有する。ブロットBは、続発性不妊症によって影響された患者JO35(MIF力価64)由来でありかつ血清希釈1:2500を有する。ブロットCは、ブロットBに類似するが、患者JO52に由来する。ブロットDは、PID患者JO31(MIF力価256)由来でありかつ血清希釈1:5000を有する。
【図2D】図2は、典型的な免疫ブロットを示す。全マップ領域を示す。より簡単な比較のために、主要な公知の免疫原は、印を付けている。他のスポットの同定に関しては、図1および表IIを参照する。ブロットAは、PID患者JO51(MIF力価256)由来でありかつ血清希釈は、1:5000を有する。ブロットBは、続発性不妊症によって影響された患者JO35(MIF力価64)由来でありかつ血清希釈1:2500を有する。ブロットCは、ブロットBに類似するが、患者JO52に由来する。ブロットDは、PID患者JO31(MIF力価256)由来でありかつ血清希釈1:5000を有する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(実施例)
(ヒト血清)
血清(表1)は、生殖管のクラミジア属感染に応答した女性から得た。17の血清(A〜Q)を、低い4症例の生殖管感染および2症例の続発性不妊症(secondary sterility)を含む腹腔鏡検査で確認した13症例のPID(骨盤炎症疾患)から得た。全ての血清は、精製したC.trachomatis L2基本小体[11]を用いた標準の微小免疫蛍光試験(MIF)に対して陽性であり、そしてpgp3抗原[5]をコードしたプラスミドを用いるELISA試験により、C.trachomatis免疫血清として確認した。
【0036】
健康な血液ドナー由来の10のセロネガティブコントロール血清の群を、同じ方法で免疫ブロッティングすることにより、かつ非特異的反応の発生を除外するために患者の血清と同じ希釈を用いて試験した。
【0037】
ほとんどの血清は、Biobanque de Picardie(Amiens、France)のChlamydia収集から得た。いくつかのPIDおよび健康な血液ドナー由来のコントロール血清は、Ospedale Policlinico S.Orsola(Bologna,Italy)から得た。
【0038】
(タンパク質サンプルの調製)
精製したクラミジア属細胞を参考文献12に記載のように、Vero細胞培養中のC.trachomatis種L2/343/Buを通常の手順に従って増殖し、続く2サイクルの密度勾配遠心分離[13]によって得た。精製した基本小体(EB)調製物の平均タンパク質濃度を、ビウレットアッセイを用いて決定した。アリコート(2mgタンパク質/ml)を、続く電気泳動分析のために−20℃で水中に貯蔵した。使用した細胞は、主にEBの形態であり、現在までに知られているクラミジアの抗原の全ては、網様体(reticular body)よりもむしろ基本小体に見出される。
【0039】
(クラミジアのタンパク質の分離)
クラミジアのタンパク質を高分解能2D電気泳動を用いて分離し、本質的に参考文献14および15に記載されるようなイモビリン(immobiline)/ポリアクリルアミド系を用いて実施した。分析ゲルについては、1枚のゲル当たり約45μgの総基本小体タンパク質を使用した。(微小配列決定のための)セミプレパレーティブゲル(semipreparative gel)については、約1mgタンパク質を使用した。EBタンパク質のアリコートを低速度の遠心分離によってペレットにし、そして8M尿素、4%CHAPS(3−[(3−クロラミドプロピル)ジメチルアンモニウム]−1−プロパンスルホネート)、40mM トリス塩基、65mMジチオエリトリトール(DTE)および微量のブロモフェノールブルー中に再懸濁した。
【0040】
等電点電気泳動を、非線形の3〜10のpH勾配(IPG strips,Amersham Pharmacia Biotech)を提供するイモビリン片上で実施した。電圧は、最初の3時間の間、直線的に300〜3500Vまで上昇させ、次いで5000Vで22時間安定化させた(総電圧−時間の積は、110kVhである)。電気泳動の後、IPGストリップを、6M尿素、30%グリセロール、2%SDS、0.05M TrisHCl、pH6.8、および2%DTEに対して12分平衡化させた。二次元を9〜16%ポリアクリルアミド直線勾配ゲル(18cm×20cm×1.5mm)上、40mA/ゲル 定電流で、色素の前面がゲルの底面に到達するまで約5時間の間、Laemmli系において実施した。分析ゲルをアンモニア性の硝酸銀を用いて染色した[16]。タンパク質マップをレーザーフォトデンシトメーター(laser photodensitometer)(Molecular Dynamics)を用いてスキャンし、次いでMelanie II コンピューターソフトウェア(Bio−Rad)を用いて分析された電子ファイル(electronic file)に変換した。
【0041】
図1は、イムノブロット上の同定されたタンパク質に使用した注釈付き参照EBマップ(annotated reference EB map)を示す。参照マップに関するMWおよびpI座標を、参照タンパク質として働くヒト血清タンパク質とのクラミジアタンパク質の共同移動(co−migration)により較正した。血清タンパク質に使用した等電点の値は、参考文献17に記載の等電点の値である。
【0042】
(免疫ブロット分析)
免疫ブロットの結果を図2および表IIに要約する。
【0043】
二次元電気泳動の後、ゲルをニトロセルロース膜[18]上に電気ブロットし、そして参考文献19に記載されたように改変された標準の手順にしたがって処理した。簡単には、免疫検出の前に、膜を3%(w/v)トリクロロ酢酸中の0.2%(w/v)Ponceau Sで3分間染色し、そして選択されたアンカースポットの位置をブロット上に印をつけ、免疫ブロットと銀染色マップとの整合を補助した。免疫反応性スポットは、患者の血清(1500〜5000×希釈)を用いて室温で一晩インキュベートし、続いてペルオキシダーゼと結合体化したウサギ抗ヒトIgG(Cappel、7000×希釈)とインキュベートし、そして化学発光ベースのキット(Pharmacia Amersham Biotech)を用いる検出によって検出した。
【0044】
代表的には、6つの同一の2Dマップを各実験に関して並行して調製し、5つを、ニトロセルロース上にブロットし、そして1つを、引き続く免疫ブロットとの相関関係および参照マップに対するコンピューターに補助されたマッチングのために硝酸銀を用いて染色した。
【0045】
免疫ブロット上のスポットシグナルは、ほとんどいつも銀染色ゲル上のスポットに対応する。しかし、少なくとも2つの実例(図1のスポット13および14)において、免疫ブロット分析は、銀染色マップにおいて見えなかったタンパク質スポットを検出した。これは、この技術が、優れた感度を有し、かつ系統的なプロテオミクス(proteomics)研究の価値ある手段としてもまた考慮されるべきであることを示す。
【0046】
免疫ブロットと図1に示される参照マップとのマッチングを補助するために、ニトロセルロースブロットに、一過性Ponceau Red染色を用いて、多くの内部「アンカー」スポットに印をつけた。血清とのインキュベーションおよび化学発光による結合抗体の検出の後、免疫ブロット画像を参照マップに整合し、そしてスポットを対応するpIおよびMW座標(表II参照のこと)に割り当てた。スポット(または等電点の一連のスポット)の位置および形が、以前に同定されたEB抗原と一致した場合、そのような抗原に対する免疫応答を記録した。他の全ての場合において、免疫ブロットスポットは、染色された領域(または、複合体スポットパターンの場合は、座標領域)の重心(baricentre)において得られたMWおよびpI座標によって同定した。MWおよびpI値が、電気泳動的に決定され、そして+/−10%の潜在的な平均誤差を有し得ることが理解される。より高いMWの測定は、低精度である傾向がある。
【0047】
コントロールブロットは全く空であったが、患者のブロットは、平均約15を有する2〜28で変化した多数のスポットを含む、個々に異なるパターンを示す(表IIを参照のこと)。免疫反応性スポットの数は、血清MIF力価と相関しない(表IおよびIIを参照のこと)。それ故、ブロットパターンは、単に抗体力価の差違ではなく、体液性応答において、事実上の個々の多様性を反映するようである。このことをまた、種々の希釈での各血清の結果を比較することによって確認した。
【0048】
代表的なイムノブロットの結果を、図2に示す。試験した血清すべてについて一定である唯一の特徴は、システインリッチな外膜タンパク質OMP2に起因すると以前に同定された、スポットの複合クラスターに対する抗体の存在であった[12]。このクラスターは、図1においてスポットとして示される−「1」と表示されたスポットすべてが、単一の抗原としてスコア付けされたが、通常はOMP2の反応性に関連するようである、より低いMWおよびpI値を有する多数の付属スポットは、別々にスコア付けされた。なぜなら、OMP2ポリペプチドに対するこれらの関係が、未だ不明であるからである。OMP2タンパク質はクラミジア特異的であり、そしていかなる関連する抗原性の変化も生じるようではないので、このタンパク質は、本研究において、クラミジア感染のおそらく最良のマーカーと見なされ得る。
【0049】
観察された次の最も頻出したスポットは、以下に対応する:
・スポット2−GroEL様(hsp60)タンパク質(15/17の患者)
・スポット3−主要外膜タンパク質MOMP(13/17の患者)
・スポット4−DnaK様(hsp70)タンパク質(11/17の患者)。
【0050】
これら公知の免疫原との反応性は、本研究において使用されるヒト血清の質を示す、内部コントロールとして見なされ得る。しかし、これらのブロットに対するpgp3の反応性の欠如が、顕著である。なぜなら、これらの血清すべては、pgp3の精製された可溶性形態を用いる確認ELISAアッセイにおいて、陽性であることが見出されているからである。このことは、ヒト感染におけるpgp3に対する抗体応答が、主に、正確にフォールディングされたタンパク質構造においてのみ利用可能なエピトープに対して生じ、この応答がこれらの実験において失われたことを、示唆する。
【0051】
以下のタンパク質に対する患者の免疫反応もまた、検出された[参考文献12参照]:
・スポット10−タンパク質伸長因子EF−Tu(8/17)
・スポット19−リボソームタンパク質S1(5/17)
・スポット12−リボソームタンパク質L7/L12(7/17)。
【0052】
これら公知のタンパク質に加えて、いくつかの新規な免疫反応性タンパク質が、11/17〜1/17の範囲の頻度で検出された。これらのタンパク質のMWおよびpIの特徴を、表IIに示す。さらに、少数の場合において、さらなる分析を、データベースの相同性検索で補足した、N末端アミノ酸配列決定によって実施した。
【0053】
(スポットの小配列決定)
2D地図を上記のように調製した。参考文献20におけるように、1泳動当り1mgの総EBタンパク質から開始し、続いて、ポリビニリデンジフルオリド膜(BioRad PVDF膜、20×20cm、孔径0.2μm)上にブロットした。このブロットを、50%水性メタノール中にある0.1%(w/v)Coomassie Brilliant Blue R250を用いて5分間染色し、そして40%メタノール、10%酢酸中で脱色した。膜を37℃で乾燥し、そしてさらなる分析のために−20℃で保存した。選択したタンパク質スポットを切り出し、そしてフェニルチオヒダントイン−アミノ酸分析機モデル120Aおよびコントロール/Data Moduleモデル900A(Applied Biosystems Inc.)とオンライン接続した、自動Protein/Peptide Sequencer(mod 470A;Applied Biosystems Inc.)を使用して、エドマン分解によるアミノ酸配列決定に供した。同様のブロットから代表的には3個または4個の等価なスポットを、そのスポット中のタンパク質の推定相対モル量に従って、使用した。
【0054】
この配列決定の結果を、16頁の表IIIに示す。
【0055】
(配列のコンピューター分析)
N末端配列のデータを使用して、タンパク質の類似性についてのデータベース検索を、NCBI[http://www.ncbi.nlm.nih.gov]から入手可能なBLASTプログラム[21]およびGCGソウトウェア(Wisconsin Package Version 9.0)のプログラム[22]を使用して、実施した。理論上のpI値およびMW値を、ExPASyインターネットサーバー[http://www.expasy.ch]から入手可能なpI/MWコンピュータープログラムによって算出した。
【0056】
これら通常のデータベースに加えて、Clamydia Genome Project[http://chlamydia−www.berkeley.edu:4231]により提供される、C.trachomatis D/UW−3/Cx株のゲノム配列決定データを検索した。この研究はC.trachomatis血液型亜型L2株(リンパ肉芽腫次亜種)(これは、異なる病原性表現型を有する)を使用したが、いくつかのタンパク質配列が、この血液型亜型D遺伝子に確実に関連し得る。
【0057】
N末端のデータを用いたこれらの検索によって、7つの免疫反応性スポットを(上記の7つに加えて)以下の公知の配列に関連付けることが可能になった:
・スポット15:ペリプラズムペプチダーゼであると推測される(この血液亜型Dのゲノムデータベースにおいて、現在はhtrAと注釈が付いている)。
・スポット18および46:外膜タンパク質であると推測される(このゲノムデータベースにおいて、現在はompBと注釈が付いている)。
・スポット21:そのアミノ酸配列は、以前に記載されたどのタンパク質とも一致しないが、EF−Tuからの内部配列に対する相同性を示す。このタンパク質は、EF−Tuの分解産物またはプロセシング産物、あるいはその変異体であり得る。
・スポット24:RNAポリメラーゼαサブユニット(rpoA)。
・スポット25:細菌のロイシンペプチダーゼに対して相同((このゲノムデータベースにおいて、現在はpepAと注釈が付いている)。
・スポット38:GTP結合タンパク質であると推測される(現在は、ychFと注釈が付いている)。
【0058】
スポット26、31および33のN末端配列は、公開された血液型亜型D配列を含む、データベースのどの配列にも一致しない。
【0059】
表IVは、いくつかの免疫反応性抗原の同定(いくつかは推定)の要旨を示す。これらは、以前の2Dマッピングデータとの比較、または上記で得られたN末端配列決定データとの相同性検索のいずれかによって、得られた。
【0060】
(特に興味深いタンパク質)
これらのイムノブロットから同定された以下のタンパク質が、特に興味深い:
(スポット24)
このスポットは、そのMW/pIの位置およびそのN末端配列に基づいて、C.trachomatis RNAポリメラーゼ(gi620029)のα鎖であると考えられる。このRNAPα鎖は、以前に記載されている[23]が、クラミジア免疫原としては、未だ報告されていない。4人の患者が、このタンパク質に対する反応性を示した。このことは、これが、クラミジア感染の結果としてヒトにおいて免疫原性であることを示す。Clamydiaの細胞内に寄生する性質は、この性質が一般的に、抗体媒介性免疫応答を回避し得ることを意味するが、上記で示される抗体の反応性は、その免疫系が、自然感染の間にこれらのタンパク質に遭遇することを示し、そして抗体の形成はまた、例えば、T細胞媒介性免疫応答を惹起することを補助し得る。
【0061】
(スポット18および46)
スポット18および46は、血清型Dのゲノム中のompB遺伝子(推定外膜タンパク質をコードすると注釈される)に相同であるようである。N末端配列ならびにpI値およびMW値(推定理論値5.06/34.5に対して、少なくともスポット18については、5.08/34.09)は、推定N末端シグナルペプチドの切断後の、ompB遺伝子産物の予想特性と一致する。
【0062】
スポット46および18の両方が、クラミジア外膜複合体の精製調製物の2D電気泳動マップ中に存在することもまた、見出された。これもまた、スポット18および46が血清型DのompB遺伝子のホモログを示すという考えを支持する。
【0063】
このタンパク質が2つの異なる電気泳動種として現れる理由を調べなかったが、この型のスポットのずれは、通常、アミノ酸配列変化および/またはいくつかのアミノ酸残基の真の誘導体化もしくは人為的な誘導体化のいずれかに起因した、アミノ酸組成の変化と関連する。
【0064】
5名の患者が、このタンパク質に対する反応性を示した。このことは、このタンパク質が、クラミジア感染の結果としてヒトにおいて免疫原性であることを実証する。
【0065】
(スポット25)
このスポットは、そのMW/pI位置およびそのN末端配列(両方を、公開された血液型亜型Dの配列pepAと比較)に基づくと、アミノペプチダーゼであると考えられる。4名の患者が、このタンパク質に対する反応性を示した。このことは、このタンパク質がクラミジア感染の結果としてヒトにおいて免疫原性であることを実証する。
【0066】
(スポット38)
このスポットは、そのMW/pI位置およびそのN末端配列(両方を、公開された血液型亜型Dの配列ychFと比較)に基づくと、GTP結合タンパク質であると考えられる。2名の患者が、このタンパク質に対する反応性を示した。このことは、このタンパク質がクラミジア感染の結果としてヒトにおいて免疫原性であることを実証する。
【0067】
(スポット15)
このスポットは、そのMW/pI位置およびそのN末端配列(両方を、公開された血液型亜型Dの配列htrAと比較)に基づくと、ストレス誘導性プロテアーゼであると考えられる。7名の患者が、このタンパク質に対する反応性を示した。このことは、このタンパク質がクラミジア感染の結果としてヒトにおいて免疫原性であることを実証する。
【0068】
(スポット8)
9名の患者が、タンパク質スポット8に対する反応性を示した。このタンパク質スポットを、N末端配列決定によって特徴づけることができなかった。しかし、このタンパク質スポットは、確かに以下の「配列型(constellation type)2」アミノ酸組成(モル%)を有する:
【0069】
【数1】

CysおよびTrpは、この型の分析では決定されず、そしてGlu/GlnとAsp/Asnとを区別することができない。
【0070】
繰り返して試みられたにも拘わらず、N末端配列を得ることができないことは、そのN末端残基が、いくつかの形態の修飾(例えば、リポタンパク質)に起因してブロックされていることを示唆する。修飾は、しばしば、真核生物における膜結合型タンパク質に特徴的であるが、細菌種における外表面タンパク質または分泌型タンパク質に特徴的でもある(例えば、リポタンパク質[24]マイコプラズマ外膜タンパク質[25]、B.pertussisのFHAビルレンス因子[26]など)。
【0071】
(スポット12)
このスポットは、リボソームタンパク質L7/L12に起因すると考えられる。7名の患者が、このタンパク質に対する反応性を示した。このことは、このタンパク質がクラミジア感染の結果としてヒトにおいて免疫原性であることを実証する。このタンパク質は、クラミジアにおいて以前に記載されたが[登録番号P38001]、クラミジア免疫原であると報告されたことは一度もなかった。しかし、Brucella感染における免疫原として記載された[27、28]。
【0072】
(スポット19)
このスポットは、リボソームタンパク質S1に起因にすると考えられる。5名の患者が、このタンパク質に対する反応性を示した。このことは、このタンパク質がクラミジア感染の結果としてヒトにおいて免疫原性であることを実証する。このタンパク質は、クラミジアにおいて以前に記載されたが[登録番号P38016]、免疫原であると報告されたことは一度もなかった。
【0073】
(スポット10)
このスポットは、タンパク質合成伸長因子EF−Tuに起因すると考えられる。8名の患者が、このタンパク質に対する反応性を示した。このことは、このタンパク質がクラミジア感染の結果としてヒトにおいて免疫原性であることを実証する。クラミジアEF−Tuは、以前に記載されたが[登録番号P26622]、免疫原であると報告されたことは一度もなかった。
【0074】
(スポット10、12、15、19および24)
慢性感染において、免疫病理反応を誘発し得る保存された微生物抗原に対する、あり得る以前の感作の重要性を仮定すると、これらの新たな免疫反応性抗原のうちのいくつかが、細菌タンパク質の保存されたファミリーに属することは注目すべきである:4つの血清(23%)がスポット24(RNAポリメラーゼのαサブユニット)と反応した;5つ(29%)がスポット19(リボソームタンパク質S1)を認識した;8つ(47%)がスポット10(EF−Tu)を認識した;7つ(41%)がスポット15(HtrA(S2Cペプチダーゼ)ファミリーの推定ストレス誘導性プロテアーゼ)を認識した;そして7つの血清(41%)がスポット12(リボソームタンパク質L7/L12)を認識した。この研究において使用した血清の群において、12/17(76%)がこれらの5つの抗原(hsp60抗原およびhsp70抗原を含む)と反応し、そして全ての血清が1と7との間(平均3.7個)のクラミジアタンパク質(他の細菌においてホモログを有する)と反応する抗体を有した。
【0075】
クラミジア病理における免疫学的感作機構に関する役割を仮定する理論は、hsp60 GroEL様抗原に関して記載される[29]ように、実際には、他のいくつかの共通する細菌抗原(この細菌抗原は、他の細菌感染に置いて免疫原性であり得る)に拡張されるべきである。例えば、タンパク質伸長因子EF−Tuは、Haemophilus influenzaeの感染の急性期の間に免疫原性であり、そしてL7/L12およびHtrAストレス誘導性プロテアーゼホモログの両方がBrucella感染において免疫原性である。EF−Tuの場合において、細菌細胞におけるこのタンパク質の豊富さは、免疫系によるその「注目度(visibility)」に好都合であり得る。しかし、EF−Tuが外膜およびペリプラズム細胞画分に関連すると記載され[30]、そしてより最近では、データにより、ペプチド伸長におけるその機能に加えて、EF−Tuがタンパク質折り畳みに関与するシャペロン活性およびストレスからの防御もまた有することが示唆される[31]ことに注意すべきである。L7/L12リボソームタンパク質に対する応答は特に興味を引く。なぜなら、Brucella melitensis感染において、相同なL7/L12抗原は、DTH細胞媒介応答を誘導する[27]からである。さらに、BALB/CマウスにL7/L12を用いてワクチン接種することは、B.abortusによる感染に対する防御を与えることが示された[32]。L7/L12に対する抗体がC.trachomatisに感染した患者においてかなり頻繁に存在するというこの予測外の知見は、おそらく、クラミジア誘導性疾患においてもまた、この抗原に対してさらなる注意が払われるべきであることを示唆する。
【0076】
(スポット5、6、7および9)
これらのタンパク質は、利用可能なゲノム配列といまだ全く相関付けられておらず、そして未だ配列決定されてもいないが、試験された血清におけるそれらの保有率(prevalence)(>50%)を考慮すると、明らかに興味深い。
【0077】
本発明は、上記で例示としてのみ記載されるにすぎず、そして本発明の範囲および趣旨内にとどまりつつ、改変が行われ得ることは理解される。
【0078】
(表I)患者血清の要旨
第1欄における文字は、表IIに示される文字と対応する。第2欄におけるコードは、起源血清コレクションをいう。それぞれの患者に関する病理学は、子宮頚管炎(下部生殖器感染)、PIDまたは不妊(感染の次の)として広範に示される。全ての血清を、精製L2基本小体を用いるMIFアッセイによって特徴付けた。表中に示されるMIF力価は、最大で2倍希釈であり、これは、陽性シグナルを示した。「最適希釈」は、弱いスポットでのシグナルの喪失なしに最低限のバックグラウンドを与えることが見出された希釈である。
【0079】
【表1】

(表II)タンパク質スポットとの患者の反応性
【0080】
【表2】

(表III)タンパク質のN末端配列
【0081】
【表3】

(表IV)抗原の同定
「CT−D遺伝子」は、参考文献2から命名される遺伝子をいい、C.trachomatis D中のホモログタンパク質をコードするような遺伝子の名称を与える。最後の欄における理論的なpI/MW値を、実験値と比較して、CT−D遺伝子配列から計算した。
【0082】
【表4】

(参考文献)(本明細書中にその全体を援用されるものの内容)
【0083】
【化1】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【公開番号】特開2010−220622(P2010−220622A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113606(P2010−113606)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【分割の表示】特願2000−589563(P2000−589563)の分割
【原出願日】平成11年12月17日(1999.12.17)
【出願人】(592243793)カイロン ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (107)
【Fターム(参考)】