説明

Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)組成物及びその利用法

本発明は中国の漢方薬のRamulus Cinnamomi(ケイシ)及びPoria cocos(ブクリョウ)からなる組成物を提供するものである。この組成物はフィンガープリントの特性により定義され、この特性は改良されたクロマトグラフ法により得られるものである。本発明はまた、このような組成物の様々な利用法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は2006年10月18日出願の米国仮特許出願番号第60/829,945号の優先権を主張するものである。前述の出願の全体の内容及び開示は、参照することにより本出願に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
本発明は中国の漢方薬Ramulus cinnamomi(中国名:桂枝)及びPoria cocos(中国名:茯苓)からなる組成物の製造方法及び使用法に関するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
伝統的な漢方薬において、身体調整治療を行うのに薬草製剤が用いられている。時には、薬草単独或いは薬草由来物が用いられる。しかし、より一般的には、「製剤」、或いは様々な特殊な薬草の特定の組み合わせが投与されている。以下の5つの薬草材料は、伝統的な漢方医学において2000年以上も利用されているものである。これらの薬草材料は様々な歴史的漢方医学書に記録されており、また、現代の科学雑誌に掲載されている様々な論文に引用されている。


【0004】
ケイシは、Cinnamomum cassia Presl(カシア)(クスノキ科)の若い茎を乾燥させたものである。この植物は春或いは夏に採取される。採取後は天日で乾燥させ、葉を取り除く。また、ケイシは薄切りにしてもよい。この製剤は円筒状で、多数の枝を有し、長さ30から75cmで、直径が0.3から1cmの先端部を有する。表面は茶色或いは赤茶色で、縦走線、細かい縮緬皺を有し、葉、枝或いは出芽痕に斑点がある。ケイシは堅くて脆く、壊れやすい。薄切りの場合には、厚さを2から4mmにする。その切り口は、樹皮部は赤茶色を示し、木部は黄白色から淡黄茶色を示す。ケイシは独特の芳香を有し、甘み或いは僅かな辛味を有する(特に樹皮部)。この製剤は混じりけのない小片であり、目に見える混入物を有さない。Cinnamomi(ケイシ)の重要な含有物は桂皮アルデヒド或いは桂皮酸である。
【0005】
ブクリョウ(Indian Bread)は菌類の菌核粒子を乾燥させたPoria cocos(ブクリョウ)(サルノコシカケ科)である。この植物は6月から9月にかけて採取される。採取後は、積み重ねて空気乾燥させ、これを表面に縮緬皺が表れ内部の水分が蒸発するまで繰り返す。完全に乾燥した菌核粒子は「Fulingge」として知られる。乾燥させていない菌核粒子の皮を乾燥前に剥いた場合、分離した部分は「Fulingpi(皮)」及び「Fulingkuai(身)」と呼ばれる。
【0006】
ブクリョウ(Indian Bread)は厚みがありごつごつした茶色から黒褐色の外皮を有する。また、際立ってしなびて筋を有する外皮である。その組織は堅く、圧縮されている。ブクリョウ(Indian Bread)は無臭で、味はほとんどなく、噛むと粘着性が生じる。この製剤はPoria(ブクリョウ)の混じりけのない小片で、目に見える含有物を有さない。ブクリョウ(Indian Bread)の重要な有効成分はパキマン及びブクリョウ酸である。
【0007】
多数の米国特許及び文献が、Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)等との薬草から治療薬組成物を組成する方法について教示している。多数の中国出身の研究者達が、特定の、Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)の組成物を用いた動物研究或いは臨床研究についての報告をしている。
【0008】
米国特許番号第6,093,403号明細書において、20重量%までのPoria(ブクリョウ)抽出物を含有する処方が、疾患の治療或いは予防に用いられている。疾患とは例えば、糖分のバランスにおける疾患、糖尿病、及び狭心症等の血液循環の病気が挙げられる。
【0009】
Poria cocos wolf(ブクリョウ)は、心疾患、脳血管疾患、アルツハイマー及びうつ病の治療に用いられている。20重量%までのPoria cocos wolf(ブクリョウ)を含有する組成物は、米国特許第5,589,182号明細書に開示されている。
【0010】
He他は1994年に、婦人病の100の症例における、Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)組成物の臨床研究に関する論文を出版した。この婦人病とは、子宮内膜の剥脱不全が原因となる不正子宮出血、慢性的骨盤炎症、月経困難症及び小さい子宮壁内筋腫である。他の製剤(Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)のボーラス:BCP)の治療を受けた患者の50の症例と比較すると、苦痛を訴える複数の症状及び身体的症状は、2つの群の間で大きな差異は現れなかった。
【0011】
Shi他は2000年に、子宮筋腫の患者60人における、Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)組成物の治療効果について報告した。患者は婦人科の健康診断、超音波診断及びヘマトクロームの検査を受けた。Shiの研究によると、有効率は91.7%であると報告された。またそのうちの症例の10%に大きな改善が見られた。治療の効果は以下のように定義された。すなわち、腫瘍が3から5cm縮小し、増加した月経の量が50%以上減少した場合は「大きな改善あり」とされた。或いは、腫瘍が2から3cm縮小し、月経の量が25%以上減少した場合は「改善あり」とされた。
【0012】
本発明は、Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)からなる薬草の組成物を提供するものである。この薬草の組成物は、上記のような多数の病気の症状を和らげるのに効果的である。漢方医学におけるより伝統的な慣習と対照的に、本発明は最新技術で創出されるものである。この最新技術は、Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)の有効成分をよりよい状態で保存することが可能である。
【0013】
本出願を通して、様々な出版物が参照され、これらの出版物の引用は請求の範囲に先行する明細書の最後の引例内において見られる。これらの出版物の開示は、参照することにより本出願に含まれることとする。これにより、本明細書に記述され主張される発明の日付において、当業者にとって周知である最新技術がさらに十分に記述されることとなる。
【0014】
本発明は中国の漢方薬Ramulus cinnamomi(中国名:桂枝)及びPoria cocos(中国名:茯苓)からなる組成物を提供するものである。ある実施例において、この漢方薬はカプセルとして処方される。これは米国特許第7,052,700号明細書において述べられており、参照することにより本明細書に組み込まれることとする。
【0015】
本発明の薬草組成物は、12のピークを表示するHPLC(高速液体クロマトグラフィ)フィンガープリントにより定義される。メタノールを用いて薬草組成物を抽出し、標準品としてのペオニフロリンに対し分析をした。12のピークは以下の特性を有する。


【課題を解決するための手段】
【0016】
ある実施例において、本発明はRamulus cinnamomi(ケイシ)及びPoria cocos(ブクリョウ)からなる薬草組成物であって、(a)適切な有機溶媒を用いて組成物を抽出するステップ、(b)クロマトグラフ分析を行うステップからなる方法にしたがう時、前記組成物が12のピークを作り出す。ピーク1から12の相対保持時間幅は、ペオニフロリンと比較した場合、それぞれ0.209から0.314、0.456から0.683、0.733から0.999、0.871から1.306、0.921から1.382、0.968から1.451、1.009から1.514、1.058から1.587、1.152から1.728、1.69から2.536、1.771から2.657、及び1.943から2.915である
【0017】
他の実施例において、本発明はペオニフロリン及びペオノールをさらに含む。好適には、ペオニフロリンは1.26〜1.90%で存在し、ペオノールは0.71〜1.07%で存在する。
【0018】
他の実施例において、本発明は、(a)Poria(ブクリョウ)の粉末を調製するステップ、(b)Cortex moutan(牡丹皮)の抽出物を調製するステップ、(c)Ramulus cinnamomi(ケイシ)の抽出物を調製するステップ、(d)Radix paeoniae alba(シャクヤク)、Semen persicae(トウニン)及びPoria(ブクリョウ)の抽出物を調製するステップ、(e)ステップ(b)から(d)で得られた抽出物を合わせるステップ、(f)Poria(ブクリョウ)の粉末をステップ(e)で得られた抽出物と混合させ、微粉末にするステップ、及び(g)前記微粉末をCortex moutan(牡丹皮)及びRamulus cinnamomi(ケイシ)の抽出物からなる含有物質と混合させるステップからなる方法により製造される組成物を提供する。
【0019】
また、本発明は、(a)Poria(ブクリョウ)の粉を調製するステップ、(b)Cortex moutan(牡丹皮)の抽出物を調製するステップ、(c)Ramulus cinnamomi(ケイシ)の抽出物を調製するステップ、(d)Radix paeoniae alba(シャクヤク)、Semen persicae(トウニン)及びPoria(ブクリョウ)の抽出物を調製するステップ、(e)ステップ(b)から(d)で得られた抽出物を合わせるステップ、(f)Poria(ブクリョウ)の粉をステップ(e)で得られた抽出物と混合させ、微粉末にするステップ、及び(g)前記微粉末をCortex moutan(牡丹皮)及びRamulus cinnamomi(ケイシ)の抽出物からなる含有物質と混合させるステップからなる方法により製造されるRamulus cinnamomi(ケイシ)及びPoria cocos(ブクリョウ)からなる組成物の製造方法を提供する。
【0020】
本発明はまた、医薬的に許容可能な担体及び本明細書中に記載の薬草組成物からなる医薬組成物も提供する。
【0021】
本発明はまた、初期の月経困難症、続発性の月経困難症、不正子宮出血、慢性骨盤炎症、及び小さい子宮壁内筋腫といった病気或いは障害の治療のための薬剤の製造における本明細書中に記載の組成物の使用法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は中国の漢方薬の柱枝及び茯苓(Ramulus cinnamomi(ケイシ)及びPoria cocos(ブクリョウ))からなる組成物を提供する。ある実施例において、薬草組成物はカプセル状で処方される。これは米国特許第7,052,700号明細書に記載されており、この開示を参照することにより本発明に組み込むこととする。
【0023】
ある実施形態において、本発明はRamulus cinnamomi(ケイシ)及びPoria cocos(ブクリョウ)からなる薬草組成物を提供し、前記薬草組成物は、12のピークのフィンガープリント(図1)により定義され、このフィンガープリントは、適切な有機溶媒を用いて組成物を抽出するステップ及びクロマトグラフ分析を行うステップからなるフィンガープリント法により得られる。ある実施例において、クロマトグラフ分析は高速液体クロマトグラフィ(HPLC)である。一般に、本発明における薬草組成物は、有機溶媒のメタノールを用いて抽出される。そして、周知の従来技術の手順に従って、ペオニフロリン標準品を用いてHPLCを行った。
【0024】
ピーク1,8,9及び12の相対ピーク領域幅は、ペオニフロリンと比較した場合、夫々0.25から0.89、0.69から1.5、0.3から0.85、及び1.56から3.06である。
【0025】
ピーク1から12の相対保持時間幅は、ペオニフロリンと比較した場合、それぞれ0.209から0.314、0.456から0.683、0.733から0.999、0.871から1.306、0.921から1.382、0.968から1.451、1.009から1.514、1.058から1.587、1.152から1.728、1.69から2.536、1.771から2.657、及び1.943から2.915である。
【0026】
本発明の薬草組成物はペオニフロリン及びペオノールをさらに含む。ある実施例において、ペオニフロリンは1.26〜1.90%で存在し、ペオノールは0.71〜1.07%で存在する。
【0027】
本発明はまた、本明細書中に記載の薬草組成物からなる医薬組成物及び薬学的に許容可能な担体も提供する。一般に、標準的な手順に従って、薬草組成物は錠剤、カプセル、タブレット、懸濁液、或いはシロップの形状で処方される。
【0028】
本発明に従って用いられる医薬組成物は、医薬品賦形剤或いは担体を含んでもよい。本明細書に用いられるように、「医薬的に許容可能な担体」という言葉は、非毒性、不活性固体、半固体或いは液体の充填剤、希釈剤、封入材料或いは製剤を意味する。医薬的に許容可能な担体とすることが可能な材料の代表例は、乳糖、ブドウ糖、及び白糖等の糖類、コーンスターチ及びジャガイモでんぷん等のでんぷん、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース等のセルロース及びその派生物、麦芽、ゼラチン、タルク、ココアバター及び座薬ワックス等の賦形剤、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ごま油、オリーブ油、コーン油、及び大豆油等の油、プロピレングリコール等のグリコール、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル等のエステル、寒天、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム等の緩衝剤、純水、等張食塩水、リンガー溶液、エチルアルコール、及びリン酸緩衝液である。またこれらと同様に、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム等のその他の非毒性の相溶性のある潤滑剤、また同様に、着色剤、コーティング剤、甘味料、調味料及び香味料、保存料及び酸化防止剤もまた、薬草組成物の使用に関連する組成物中に存在することが可能である。
【0029】
本発明はまた、病気及び障害を有する患者の治療方法を提供するものである。この方法は患者に本明細書に開示された有効量の薬草組成物を投与するステップを含む。薬剤或いは組成物の「有効量」とは、所望の生物学的反応を導くのに必要な量のことを言う。薬草あるいは薬草剤の有効成分の有効量は、特定の兆候及び/又は症状を減少させるのに必要な量である。通常の技術を有するものは、従来の方法及び技術を用いて本発明の薬草組成物の有効量を容易に想到することが可能である。
【0030】
本発明の薬草組成物は様々な種類の病気或いは障害を治療するのに用いられる。多数の応用については、米国特許第7,052,700号明細書の中で論じられている。例えば、Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)のカプセルは、初期或いは続発性の月経困難症、子宮内膜の剥脱不全が原因となる不正子宮出血、炎症性の下腹部の腫瘤或いは小さい子宮壁内筋腫に伴う慢性骨盤炎症、及びその他多数の一般の骨盤障害を治療するのに用いられる。さらなる医薬的研究として、本発明の薬草組成物を用いた臨床研究と同様に前臨床研究が、米国特許第7,052,700号明細書に記載の通り行われることも可能である。
【0031】
好適には、本発明の独創的な医薬的組成物は、経口投与も可能である。他の実施例において、医薬的組成物は、例えば吸入或いは注射によって、粘膜へと運搬される。一般に、本発明の独創的な医薬的組成物は、ヒト及び/又は他の動物へ経口で、直腸に、嚢内に、非経口で、膣経口で、腹腔内に、局所に(粉末、軟膏、或いはドロップとして)、頬内に、経口噴霧剤或いは鼻内噴霧剤として投与することができる。
【0032】
本明細書中で記述されてきた本発明は、以下に続く実施例を参照することによりさらに容易に理解することが可能である。この実施例は本発明の特定の態様及び実施例を説明する目的にのみ含められ、本発明を限定することを意図したものではない。
【0033】
<実施例1> Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)のカプセル
本実施例は、カプセルの形状をしたCinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)(Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)のカプセル)からなる薬草組成物を提供するものである。Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)のカプセルの製造方法は、米国特許第7,052,700号明細書に開示されており、参照することにより本明細書に組み込むものとする。Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)のカプセルは、黄色がかった茶色の顆粒を含有しており、その味は僅かに苦味を有する。ある実施例において、この顆粒0.31gを含有する各カプセルは、室温で24ヶ月保存可能である。
【0034】
ある実施例において、Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)のカプセルは、下記の手順により製造されてもよい。



【0035】
<技術的要件>
(1)Poria(ブクリョウ)の微粉末は100メッシュの目(内径150±6.6μm)の篩にかけられる必要がある。
【0036】
(2)粗製ペオノールの濃度は90%以下とすること。
【0037】
(3)濃縮は真空条件下において行われること。
【0038】
(4)揮発性物質は桂皮アルデヒドの存在下で試験されること。
【0039】
(5)材料の質量平衡は±5であること。
【0040】
<品質管理>
クリーム状の抽出物:クリーム状の抽出物はこげ茶色である。その相対密度は1.15〜1.35(60〜70度)でなくてはならない。ペオニフロリンの含有量は1.36〜2.04でなくてはならない。
【0041】
Poria cocos(ブクリョウ)を混合した後の柔らかい粉:黄色がかった茶色であって、僅かに苦味を有する。微生物の上限:多数のバクテリアは5000数/gを超えない。菌類は100数/gを超えない。生きているコナダニ、コナダニの卵或いは大腸菌は検出されない。ペオニフロリンの含有量は(1.23〜1.87)である。
【0042】
最終的な顆粒:黄色がかった茶色で、水分含量は6.0%以下である。
【0043】
カプセル:無菌で、粘着性を有さない、或いは形が損傷していない。含有量の差異は±10%以下(0.31g/カプセル)でなければならない。溶解時間は30分以内である。水分含量は7.0%以下である。ペオニフロリンの含有量は1.26〜1.90%、またペオノールの含有量は0.71〜1.07%である。
【0044】
<実施例2> Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)のカプセルのフィンガープリント法
試験はHPLC方法(中国薬局方2000年編集、第1巻、別表6 D)およびフィンガープリント法の条件に従って実施された。
【0045】
<HPLC条件及びシステム適合性>
Agilent1100液体クロマトグラフ(Alltima C18 5μm、250mm x 4.6mmカラム)を用いる。移動相Aは0.1%のリン酸と5%のアセトニトリル水溶液を含有する。移動相Bは0.1%のリン酸と50%のアセトニトリル水溶液を含有する。流量1ml/分。検出波長230nm。ペオニフロリンのピークに基づき、カラムの理論段数は6000以下である。顆粒溶出プログラムは以下の通り実施される。

【0046】
<標準溶液の調製>
一定量のペオニフロリン標準品の重量を正確に量る。そして、適切な量のメタノールを加え、50μg/mlの溶液を作る。
【0047】
<試料調製>
試料の含有物を取り出し、重量偏差試験法を行った。十分に混合させ、すりつぶして微粉末にする。混合物約0.25gを正確に量り、50%のメタノールを25ml加える。混合物を30分間超音波で分解し、そしてろ過する。ろ液の最初の部分を捨てる。残りのろ液を試液として集める。
【0048】
<分析>
標準溶液及び試液それぞれ10μlをHPLCシステムに注入し、手順を進める。
【0049】
<結果>
図1及び表1に示されるように、13のピーク(1から12番及び標準(standard)のS)が検出された。そして、相対保持時間幅が特定された。さらに、ピーク1、8、9及び12は、相対ピーク領域(表1)の幅に対し特異的であった。このような特異性は、HPLCの複合解析に基づくものである。このHPLCは、Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)の組成物の様々なバッチからなるものである。
【0050】
本明細書に示す結果により、Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)の組成物のいかなるバッチのHPLCクロマトグラムも、13の特有のピークを有する。13のピークの相対保持時間、及びピーク1,8,9及び12の相対ピーク領域は、特定の範囲内にある。このような調整を通じ、Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)の再生産性及び内部品質は調整され、確実なものとなる。Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)の10の異なるバッチからなるHPLCデータは、本明細書に示されるようなフィンガープリント分析結果を示すことが確認された。
【0051】
【表1】

【0052】
本明細書に示されるフィンガープリント分析結果は、米国特許第7,052,700号明細書に示されるものとは異なる。米国特許第7,052,700号明細書において、HPLCの水性試料は還流抽出法により調製された。3つのCinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)の含有物は、200mlの蒸留水と混合され、30分間(開始時において沸騰している状態)熱還流された。溶液は冷却され、10分間遠心分離され、0.45μmろ過膜でろ過された。ろ液の最初の部分は捨てられ、残りのろ液は試液として取り出された。結果として、米国特許第7,052,700号明細書では4つのクロマトグラムが示された。すなわち、1つは水溶性の成分、2つは脂溶性の成分(異なるクロマトグラフ条件及び検出波長の脂溶性の成分)、そしてもう1つはガスクロマトグラフィである。最初の3つのクロマトグラムは低い生産性を示し、互いに重複しあういくつかのピークを有している。
【0053】
本発明において、この処理方法は、試料を抽出するのに50%メタノールを用いるよう変更されている。重量偏差試験法に用いる試料の含有物は十分に混合され、すりつぶして微粉末にされる。メタノール25mlがこの混合物0.25gに加えられる。そして、30分間超音波で分解し、そしてろ過される。ろ液の最初の部分を捨て、そして残りのろ液を試液として集める。50%メタノールの抽出はより多くのピークを示す結果となり、Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)のカプセルのより多くの組成物を明らかにするだけでなく、製品中の脂溶性及び揮発性成分をも示した。したがって、現在の方法は1つのクロマトグラムのみ生成する。このクロマトグラムは他の品質管理作業と共に用いられ、Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)のカプセルの品質を制御する。
【0054】
ゆえに、これら2つの方法の差異は以下の通りである。前者の還流抽出法の方法は、主に水溶性の成分を抽出する。クロマトグラム中の主なピークは製品中の水溶性の成分である。これとは対照に、本発明の方法は50%メタノールを、揮発性成分ペオノールと同様に、より多くの水溶性成分、脂溶性成分を抽出する抽出溶媒として用いる。また、これらの化合物は1つのクロマトグラムにおいて示される。このクロマトグラムは同等の試料量に基づき、より高いペオノールのピークを示す。
【0055】
<実施例3>Cinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)のカプセルにおけるフィンガープリントの特異性、再生産性及び安定性
伝統的な漢方薬のフィンガープリントに用いられる評価パラメータは、通常、標準品に対する保持時間及び特徴的なピークの比率である。各ピークにおける相対保持時間及び相対ピーク領域は、フィンガープリントの特性解析に用いられる。標準のフィンガープリントにおいて、特徴を有するピークの相対保持時間及び相対ピーク領域が特定される。
【0056】
このような評価パラメータは、差異によって起こる変化を排除することができる。この差異とは器具、カラム、移動相及び環境において存在するものであり、保持時間及びピーク領域を変化させる。したがって、これらのパラメータは、客観的及び包括的に用いられ、製品中の抗生物質の実際の状態及び製品の内部品質の実際の状態を示すことができる。
【0057】
<特異性>
本明細書に示されるフィンガープリント特性は、本発明のCinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)のカプセルに特有のものである。フィンガープリントの特徴的なピークにより、開示された製造方法により製造されるCinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)のカプセルの全てのバッチの構成物質が明らかになる。
【0058】
<再生産性>
現在のフィンガープリントの基準は分析条件及び様々なバッチより収集されたデータを最適化したものより生じたものである。同じバッチの分析を繰り返し行うことにより得られた結果は、10の異なるバッチ(表2から3)から得られたデータと同様に、現在の方法は、優れた再生産性を有するCinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)のカプセルを正確にフィンガープリントすることができることを示している。この結果はまた、構成物質の含有物は異なるバッチ、そして特定の幅にある全ての特徴的なピークの相対保持時間及び相対ピーク領域において同様であることを示す。
【0059】
<安定性>
連続した3つのバッチのフィンガープリントは、0から12ヶ月研究された。12ヶ月で、特徴的なピークの明らかな変化は認められないという結果が示された。また、製品の品質の安定性と同様に、フィンガープリント分析方法(表4から6)の安定性も明らかにされた。
【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【0064】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0065】
図1は、本明細書中に記載のCinnamomi(ケイシ)及びPoria(ブクリョウ)のカプセルの組成物のHPLCフィンガープリントを示す。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ramulus cinnamomi(ケイシ)及びPoria cocos(ブクリョウ)の組成物からなる顆粒を準備する方法であって、前記方法は、
(a)Poria(ブクリョウ)をすりつぶし微粉末にしPoria(ブクリョウ)の粉を得るステップと、
(b)蒸気蒸留によりCortex moutan(牡丹皮)を抽出しペオノール抽出物を得るステップと、
(c)ステップ(b)より抽出した原料を、エタノールを用いて抽出して抽出物Iを得、そして前記原料を再び熱湯で抽出して抽出物IIを得るステップと、
(d)蒸気蒸留によりRamulus cinnamomi(ケイシ)を抽出し精油を得るステップと、
(e)ステップ(d)より抽出した原料を、エタノールを用いて抽出して抽出物IIIを得、そして前記原料を再び熱湯で抽出して抽出物IVを得るステップと、
(f)Radix paeoniae alba(シャクヤク)、Semen persicae(トウニン)及びPoria(ブクリョウ)を抽出し抽出物Vを得、そして熱湯で抽出し抽出物VIを抽出するステップと、
(g)抽出物I、III、及びVを合わせ、全てのエタノールを除去し液体Aを得るステップと、
(h)抽出物II、IV、及びVIを合わせ、合わせた抽出物を濃縮し液体Bを得るステップと、
(i)液体A及び液体Bを合わせ、前記液体を濃縮し、相対密度が1.15から1.35(60から90度)に等しい半固体抽出物を得るステップと、
(j)ステップ(b)のペオノール抽出物をエタノールに溶解し、前記溶液をβ-シクロデキストリン水溶液に加え、前記混合物がすりつぶされ乾燥されることにより含有物質Iを得るステップと、
(k)ステップ(d)の精油をβ-シクロデキストリンとエタノール中で混合し、前記混合物がすりつぶされ乾燥されることにより含有物質IIを得るステップと、
(l)ステップ(a)のPoria(ブクリョウ)の粉をステップ(i)の半固体抽出物と混合し、前記混合物がすりつぶされ乾燥され微粉末になるステップと、
(m)ステップ(l)の微粉末を含有物質I及びIIと混合し、エタノールを加え練り粉状の塊を作り、及び湿潤材料を篩にかけ顆粒を得るステップと、及び、
(n)前記顆粒を乾燥させ、乾燥顆粒を再度篩にかけ、Ramulus cinnamomi(ケイシ)及びPoria Cocos(ブクリョウ)の最終の顆粒を得るステップからなることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記組成物はペオニフロリン及びペオノールをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ペオニフロリンは1.26〜1.90%で存在し、前記ペオノールは0.71〜1.07%で存在することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記組成物は錠剤、カプセル、顆粒、タブレット、懸濁液、或いはシロップの形状で処方されることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の方法。
【請求項5】
錠剤、カプセル、顆粒、タブレット、懸濁液、或いはシロップの形状で処方される前記組成物は、以下の群から選択される病気或いは障害を治療するのに用いられ、前記病気或いは障害の群は、初期の月経困難症、続発性の月経困難症、不正子宮出血、慢性骨盤炎症、及び小さい子宮壁内筋腫からなることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
錠剤、カプセル、顆粒、タブレット、懸濁液、或いはシロップの形状で処方される前記組成物は、経口で、直腸で、非経口で、膣経口で、腹腔で、局所で投与される、或いは前記組成物は経口噴霧剤或いは鼻内噴霧剤として投与されることを特徴とする請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】
請求項1記載の組成物を分析する方法であって、前記方法は、
(a)適切な有機溶媒を用いて組成物を抽出するステップと、
(b)クロマトグラフ分析を行うステップからなり、
前記分析は12のピークを作り出すことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記有機溶媒はメタノールであることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記クロマトグラフ分析において、ペオニフロリンは標準品として用いられることを特徴とする請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
前記クロマトグラフ分析は高速液体クロマトグラフィ(HPLC)であることを特徴とする請求項7乃至9いずれかに記載の方法。
【請求項11】
ピーク1,8,9及び12の相対ピーク領域幅は、ペオニフロリンと比較した場合、夫々0.25から0.89、0.69から1.5、0.3から0.85、及び1.56から3.06であることを特徴とする請求項7乃至10いずれかに記載の方法。
【請求項12】
ピーク1から12の相対保持時間幅は、ペオニフロリンと比較した場合、それぞれ0.209から0.314、0.456から0.683、0.733から0.999、0.871から1.306、0.921から1.382、0.968から1.451、1.009から1.514、1.058から1.587、1.152から1.728、1.69から2.536、1.771から2.657、及び1.943から2.915であることを特徴とする請求項7乃至11いずれかに記載の方法。
【請求項13】
初期の月経困難症、続発性の月経困難症、不正子宮出血、慢性骨盤炎症、及び小さい子宮壁内筋腫といった病気或いは障害の治療のための薬剤の製造における請求項1乃至3いずれかに記載の方法により製造された組成物の使用法。
【請求項14】
前記組成物は錠剤、カプセル、顆粒、タブレット、懸濁液、或いはシロップの形状で処方される請求項13記載の使用法。
【請求項15】
錠剤、カプセル、顆粒、タブレット、懸濁液、或いはシロップの形状で処方される前記組成物は、経口で、直腸で、非経口で、膣経口で、腹腔で、局所で投与される、或いは前記組成物は経口噴霧剤或いは鼻内噴霧剤として投与されることを特徴とする請求項14記載の使用法。

【公表番号】特表2010−506899(P2010−506899A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532916(P2009−532916)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004483
【国際公開番号】WO2008/090410
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(509020402)ジアングス カニオン ファーマシューティカルズ シーオー. エルティーディー. (1)
【Fターム(参考)】