説明

CpGレセプター(CpG−R)およびCpG−Rに関する方法

【課題】CpG−Rの特徴づけおよび同定、同様の免疫応答を導き得る他のタンパク質またはレセプターをCpG−Rと区別すること。
【解決手段】本発明は、CpGレセプター(CpG−R)をコードする核酸分子およびポリペプチドに関する。このCpG−Rは、THDを含み、MyD88アダプタータンパク質と相互作用し、そしてCpGオリゴヌクレオチドに結合し得る。本発明は、CpG−Rに対する抗体、および免疫応答を調節する方法、およびCpG−Rに結合し、そして/またはCpG−Rを調節する化合物を同定する方法に関する。本発明はまた、CpGレセプターとしてのポリペプチドの使用に関し、このポリペプチドは、Toll相同性ドメインを含み、かつCpGオリゴヌクレオチドに結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、米国特許法第119条(e)項に基づいて、1999年11月2日に出願した出願番号60/163,157号および1999年11月24日に出願した出願番号60/167,389号の優先権を主張する。これらの各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、免疫応答、およびタンパク質の同定、および免疫応答をシグナル伝達するための経路、具体的には、CpGレセプター(CpG−R)の同定に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
哺乳動物の固有の免疫系は、病原性生物に特徴的な分子特徴を認識し、これに応答する。病原体の種々の部分(例えば、表面タンパク質、特に細胞壁成分および特定のヌクレオチド配列)が認識され得、種々の免疫応答を誘発し得る。細胞が種々のレセプターおよび膜結合タンパク質を有し、これらのレセプターおよび膜結合タンパク質が、外来エレメントを認識し、そして免疫応答として公知のカスケードを誘発することは長い間公知であった。2つの広範なクラスまたは型の応答が周知である:体液性免疫すなわち抗体媒介性免疫;および細胞媒介性免疫。特定の病原体または状態は、主に抗体媒介性反応により効果的に制御され得る一方、他の状態または病原体は、宿主の防御を媒介するために強力な細胞性応答を必要とする。
【0004】
アジュバントは、固有の免疫応答を増強し得る化合物である。アジュバントは、体液性免疫および細胞性免疫の両方を増強し得る。いくつかの状態または疾患、例えば、ヒト免疫不全ウイルスまたはC型肝炎ウイルスにより引き起こされる状態または疾患に関しては、アジュバントの投与により固有の細胞媒介性免疫応答を増大させることが特に望ましい。
【0005】
非メチル化CGジヌクレオチド配列(細菌DNAにおいて一般的に見出されるが、哺乳動物DNAにおいては見出されない)は、固有の免疫系を刺激することが見出された(Lipfordら,Trends Microbiol.,1998,6,496−500,Carsonら,J Exp.Med.,1997,186,1621−2,およびKriegら,Trends Microbiol.,1998,6,23−7に総説されている)。天然のDNAまたは合成オリゴヌクレオチドにおける非メチル化CGオリゴヌクレオチドまたはモチーフへの曝露は、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞およびマクロファージ(Jakobら,J.Immunol.,1998,161,3042−9,Sparwasserら,Eur.J Immunol.,1998,28,2045−54,Sparwasserら,Eur.J.Immunol.,1997,27,1671−9,Staceyら,J.Immunol.,1996,157,2116−22,およびJakobら,Int.Archives Allergy Immunol.,1999,118,457−461)、ならびにB細胞(Kriegら,Nature,1995,374,546−9)を直接活性化する。NK細胞およびT細胞はまた、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドに曝露することにより活性化されるが、これらの効果のうちのいくつかは、他の細胞型により生成されたサイトカインにより間接的に媒介され得る(Bendigsら,Eur.J.Immunol.,1999,29,1209−18,Sunら,J.Exp.Med.,1998,188,2335−42,およびBallasら,J.Immunol.,1996,157,1840−5)。
【0006】
実験的ワクチンにおいて、プラスミドDNAへの直接的組み込みまたは合成CpGオリゴヌクレオチドをタンパク質抗原とともに同時投与することのいずれかにより、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドをアジュバントとして含めることは、増加した抗体力価(特に、IgG2aサブタイプ)を生じる。CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドはまた、細胞溶解性T細胞活性の強力な刺激因子であることが示されており、この細胞溶解性T細胞活性は、細胞媒介性免疫応答に特徴的である(Brazolot−Millanら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1998,95,15553−8,Davisら,J.Immunol.1998,160,870−6,Davis Mt. Sinai J.Med.,1999,66,84−90,およびMcCluskieら,J.Immunol.,1998.161,4463−6に総説されている)。CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドがTh1サイトカイン(特に、インターロイキン−12(IL−12)およびインターフェロン−γ(IFN−γ))の発現を誘導する能力は、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドが多様な抗原(顕著には、B型肝炎)のアジュバントとして用いられる場合に観察される免疫応答の、強力なTh1への偏りを担うようである。Th1細胞媒介性免疫は、現在研究中の多くのワクチン標的(例えば、前述のヒト免疫不全ウイルス)に対する防御に必要であると考えられている。CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドはまた、CpGオリゴヌクレオチド処置が付随する抗原なしで投与した場合ですらListeriaおよびLeishmaniaのような病原体に対する防御を付与することが示された(Zimmermannら,J.Immunol.,1998,160,3627−30,Lipfordら,Eur.J.Immunol.,1997,27,3420−6,およびWalkerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1999,96,6970−6975)ので、微生物感染を処置することにおける治療的適用を有し得る。さらに、CpGオリゴヌクレオチド処置は、未成熟のB細胞をアポトーシスから保護する。さらにCpGオリゴヌクレオチド活性は、不特定の結果であり、そして5’隣接プリンおよび3’隣接ピリミジンを有する非メチル化CGが最も大きな効果を有するという点において特異的なメチル化である。CpGオリゴヌクレオチドでの予備処置は、アレルギー性喘息モデルおよびLPS誘導性喘息モデルにおいて防御効果を有し(Schwartz,J.Inmunol.,163,224およびSurら,J.Immunol.,162,6284)、そしてアトピー性患者由来のヒト末梢血単球によるインビトロでのIgE生成を減少させ得る。
【0007】
CpGオリゴヌクレオチドが細胞レセプターと相互作用し、そして細胞内シグナル伝達を開始することによる機構は、未知である。CpGモチーフを含むDNAは、オリゴマーまたはプラスミドDNAの状況において、エンドサイトーシス経路を介して始められ、そしてエンドソームに蓄積される(Hackerら,EMBO J.,1998,17,6230−40,Yiら,J.Immunol.,1998,161,4493−7,Yiら,J Immunol.,1998,160,4755−61,およびMacfarlaneら,J.Immunol.,1998,160,1122−31)。この取り込みは、CpGモチーフを欠くDNAにより競合され得る(Hackerら,前出)ので、配列特異的ではないようである。CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドに対する応答は、クロロキンおよびエンドソーム成熟の他のブロッカーが、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドに対する細胞応答および分子応答を阻害し得るので、細胞取り込み(Kriegら,1995,前出)およびエンドソーム酸性化を必要とし得る。この阻害の正確な機構は未解決のままであり、任意のCpGオリゴヌクレオチド関連タンパク質または推定CpGレセプターの細胞下位置もまた未解決のままである。
【0008】
細胞がCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドを認識することによる機構は、これまで記載されていないが、CpGオリゴヌクレオチドが、マクロファージおよびB細胞において複数の細胞内シグナル伝達経路を活性化することは公知である。具体的には、ストレス活性化MAPキナーゼ、JNKおよびp38、ならびにそれらの転写因子標的であるAP−1およびATF−2は、CpGオリゴヌクレオチド処置に対する応答においてリン酸化される(Hackerら,EMBO J.,1998,17,6230−40,およびYiら,J.Immunol.,1998,161.4493−7)。NF−κBの核移行を導く経路(これは、阻害性サブユニットのリン酸化および分解を導くキナーゼカスケードを含む)、IκB(Zandiら,Mol.Cell.Biol.,1999,19,4547−51を参照のこと)はまた、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドにより活性化される(Yiら,J.Immunol.,1998,160,1240−5,およびYiら,J.Immunol.1998.160,4755−61)。
【0009】
他の免疫刺激性薬剤は、同様の効果を有することが公知である。モノホスホリルリピドA(MPL)は、Th1リンパ球応答を誘導する(Ullrichら,Monophosphoryl Lipid A as an Adjuvant in Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach. Powell and Newman, Eds.,1995,pp.495−523)ことが当業者に公知である。マクロファージにおいて、MAPKおよびNF−κB経路は、他の薬剤(顕著には、細菌エンドトキシン、リポポリサッカリド(LPS))により活性化される。核のNF−κB(しばしば、AP−1のような他の転写因子と組み合わせて)は、多くの免疫応答遺伝子(同時刺激性分子およびサイトカイン)の転写の誘導に必要とされる(Baldwin,Annu.Rev.Immunol.,1996,14,649−83に総説される)。
【0010】
マウスにおいて、遺伝子の証拠は、多くのToll/IL−1レセプターファミリーである、Toll様レセプター(TLR)4に対する細菌エンドトキシンに対する免疫応答性に関連する。ヒトTLRを用いた実験は、LPS応答におけるTLR2および/またはTLR4に関する(Qureshiら,Trends in Genetics,1999,15,291−294に総説される)。より最近では、さらなる細菌産物(ペプチドグリカンおよびミコバクテリアリポタンパク質を含む)もまた、Tollレセプターファミリーのメンバーを介して作用することが示されている(Yoshimuraら,J.Immunol.,1999,163,1−5,Brightbillら,Science,1999,285,732−736,Aliprantisら,Science,1999,285,736−739,およびHirschfeldら,J.Immunol.,1999,163,2382−2386)。Toll関連レセプターは、数百万年もの進化を経て保存されている;昆虫においておよび植物においてすら、Toll関連レセプターは、遺伝的に、種々の病原体(細菌、真菌、および少なくとも1つのウイルス)に対する応答と関連する(Hoffmannら,Science,1999,284,1313−1318に総説される)。CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドが、同様にToll関連レセプターを介して作用するか否か、または推定CpGレセプターが、Toll相同性ドメイン(THD)を含み得るか否かは未知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これらのCpGオリゴヌクレオチドの種々の免疫応答の刺激因子としての潜在的有用性のために、CpG−Rの単離、特徴づけ、ならびにCpG−Rの作用機構およびシグナル伝達経路においてかなり興味がもたれている。従って、本発明の目的は、CpG−Rの特徴づけおよび同定、同様の免疫応答を導き得る他のタンパク質またはレセプターをCpG−Rと区別すること、ならびにより望ましい薬理学的特性を有すると同時に、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドの免疫刺激特性を保持し得る新規なCpG−Rリガンドの設計を可能にする有用な方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、一部分、CpG−Rまたはそのフラグメントをコードする、単離された核酸分子、CpG−Rをコードするヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的なヌクレオチド配列、およびCpG−Rまたはそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列に相同なヌクレオチド配列に関する。
【0013】
本発明はまた、上記の核酸分子のいずれかを含む組換え発現ベクターおよびこのベクターで形質転換された宿主細胞に関する。
【0014】
本発明はまた、CpG−Rをコードするポリペプチド、もしくはポリペプチドの複合体、またはこれらのホモログもしくはフラグメントに関する。このようなポリペプチドは、上記の核酸分子のいずれかを含む組換え発現ベクターを適合性の宿主細胞に導入すること、この宿主細胞をこのポリペプチドの発現を可能にする条件下で増殖させること、およびこの宿主細胞からこのポリペプチドを単離することにより調製され得る。
【0015】
本発明はまた、上記の核酸分子またはポリペプチドのいずれか、および受容可能なキャリアまたは希釈剤を含む組成物に関する。
【0016】
本発明はまた、上記の核酸分子のいずれかによりコードされるポリペプチド上のエピトープに結合する単離された抗体に関する。
【0017】
本発明はまた、上記の核酸分子のいずれかによりコードされるポリペプチドに結合する抗体、およびコントロール抗体を含むキットに関する。
【0018】
本発明はまた、CpG−Rに結合するか、またはCpG−RのCpG活性化を活性化もしくは阻害する一定量の化合物を哺乳動物に投与することによる、哺乳動物の免疫応答を調節する方法に関する。
本発明はまた、CpG−RまたはCpG−Rを発現する細胞と化合物とを接触させること、およびこの化合物がCpG−Rに結合するか否かまたはこの化合物がCpG−Rの活性を調節するか否かを決定することによる、CpG−Rに結合するか、またはCpG−Rの活性を調節する化合物を同定する方法に関する。
本発明はさらに、以下の項目を提供する。
(項目1)CpGレセプターをコードする核酸配列またはそのフラグメントを含む、単離された核酸分子。
(項目2)CpGレセプターをコードするヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的なヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
(項目3)CpGレセプターをコードするヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
(項目4)項目1に記載の核酸分子を含む組換え発現ベクター。
(項目5)項目4に記載の組換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
(項目6)CpGレセプターをコードするアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、単離されたポリペプチド。
(項目7)Toll相同性ドメインを含む、項目6に記載のポリペプチド。
(項目8)前記ポリペプチドがMyD88タンパク質と相互作用する、項目6に記載のポリペプチド。
(項目9)項目6に記載のポリペプチドを産生する方法であって、該方法は、項目4に記載の組換え発現ベクターを適合性の宿主細胞に導入する工程、該宿主細胞を該ポリペプチドの発現を可能にする条件下で増殖させる工程、および該宿主細胞から該ポリペプチドを単離する工程を包含する、方法。
(項目10)項目1に記載の核酸分子、および受容可能なキャリアまたは希釈剤を含む、組成物。
(項目11)項目6に記載のポリペプチド、および受容可能なキャリアまたは希釈剤を含む、組成物。
(項目12)項目6に記載のポリペプチド上のエピトープに結合する単離された抗体。
(項目13)項目12に記載の抗体、およびコントロール抗体を含む、キット。
(項目14)哺乳動物において免疫応答を調節する方法であって、該方法は、CpGレセプターに結合する一定量の化合物を該哺乳動物に投与する工程を包含し、該化合物は該CpGレセプターを調節する、方法。
(項目15)CpGレセプターに結合するか、または、CpGレセプターの活性を調節する化合物を同定する方法であって、該方法は、該レセプターまたは該レセプターを発現する細胞を化合物と接触させる工程、および、該化合物が該タンパク質に結合するか否か、または、該化合物が該タンパク質の該活性を調節するか否かを決定する工程を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】図1Aは、RAW 264.7マクロファージにおけるNF−κBの活性化を示す棒グラフである。ここでRAW 264.7細胞を、κBで駆動したルシフェラーゼレポーター遺伝子でトランスフェクトし、そして24時間後にインターロイキン−1(IL−1;20ng/ml)、MPL(1μg/ml)、LPS(1μg/ml)またはホスホロチオエートCpGオリゴヌクレオチド(4μM)で6時間処理した。
【図1B】図1Bは、CpGオリゴヌクレオチド誘導性κB−ルシフェラーゼ(κB−Luc)活性化を示すグラフである。ここで、RAW 264.7細胞を、κB−ルシフェラーゼレポータープラスミドで一過性にトランスフェクトし、そして24時間後に示された濃度の、CpGモチーフを含むホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(0.25〜8μM)またはコントロールオリゴヌクレオチド(4μM)で6時間処理した。
【図1C】図1Cは、CpGオリゴヌクレオチドまたはLPSによるκB−ルシフェラーゼ活性化の反応速度論を示すグラフである。ここで、RAW 264.7細胞を、κB−Lucで一過性にトランスフェクトし、そして24時間後に、CpGオリゴヌクレオチド(4μM;白丸)またはLPS(1μg/ml;黒丸)で処理した。
【図2A】図2Aは、ドミナントネガティブ変異体MyD88(MyD88lpr)が、CpGオリゴヌクレオチド誘導性κB−ルシフェラーゼ活性化を阻害することを示すグラフである。ここで、RAW 264.7細胞を、κB−Luc(1μg)単独(黒棒)またはMyD88lprをコードするプラスミド(10:1(灰色棒)もしくは1:1(白棒)の2つの比で)でトランスフェクトした。
【図2B】図2Bは、NF−κBの活性化およびMyD88lprによる阻害が、非メチル化CG配列に依存することを示す棒グラフである。ここで、RAW 264.7マクロファージを、κB−Luc単独(黒棒)、またはκB−LucおよびMyD88lpr(白棒)(1:1のプラスミド比)でトランスフェクトした。
【図3A】図3Aは、MyD88ドミナントネガティブ構築物をコードするプラスミドでトランスフェクトしたNIH−3T3細胞の代表的なルシフェラーゼアッセイを示す棒グラフである。
【図3B】図3Bは、MyD88ドミナントネガティブ構築物をコードするプラスミドでトランスフェクトしたRAW 264.7細胞の代表的なルシフェラーゼアッセイを示す棒グラフである。
【図4】図4は、CpGオリゴヌクレオチド処理に対するAPC応答についてのToll様レセプター4(TLR4)非依存性を示す棒グラフである。ここで、野生型(Balb/c;黒棒)およびTLR4変異マウス(CH3/HeJ;白棒)に由来する未成熟骨髄由来樹状細胞(BMDCC)を、上記のようにGM−CSF中で6日間増殖させ、次いで、CpGオリゴヌクレオチド(5μM)、コントロールオリゴヌクレオチド(5μM)、またはLPS(1μg/ml)で一晩処理したか、あるいは刺激しないままにした。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(好ましい実施形態の説明)
本発明は、特異的CpGレセプター(CpG−R)の正体の驚くべき発見に基づく。これはまた、CpG−Rまたはそれを含む複合体が、THDを含むという驚くべき発見にさらに基づく。このレセプター内のTHDの存在の発見は、CpG応答のための既知のTollレセプターの必要性およびCpG−Rのさらなる特徴付けのために試験することを可能にした。本発明は、とりわけ、CpG−Rに関し、これは、単一のポリペプチド、または複数のポリペプチドの複合体であり得、そして必要に応じて、例えば、多糖類、脂質などのようなさらなる成分を含み得る。このCpG−Rまたはそれを含む複合体は、好ましくは、THDを含み、そしてMyD88アダプタータンパク質と相互作用する。さらに、CpG−Rは、CpGオリゴヌクレオチドに結合し得る。
【0021】
本発明の実施は、他に示されない限り、当業者の範囲内のウイルス学、免疫学、微生物学、分子生物学および組換えDNA技術の慣用的方法を使用する。このような技術は、文献に十分に説明されている。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、1989);DNA Cloning:A Practical Approach、第1巻および第2巻(D.Glover編);Methods In Enzymology(S.ColowickおよびN.Kaplan編、Academic Press,Inc.);Fundamental Virology,第2版、第1巻および第2巻(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編)、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Handbook of Experimental Immunology、第1〜4巻(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編、1986、Blackwell Scientific Publications);Handbook of Surface and Colloidal Chemistry(Birdi,K.S.編、CRC Press,1997)ならびにSeymour/Carrahers Polymer Chemistrv (第4版、Marcel Dekker Inc.,1996)を参照のこと。
【0022】
本明細書中で使用される場合、用語「CpG−R」とは、CpGレセプターをいい、これは、単一のポリペプチドまたは複数のポリペプチドの複合体であり得、そして必要に応じて、例えば、多糖類、脂質などのようなさらなる成分を含み得る。CpG−Rは、CpGシグナル伝達カスケードに関与するタンパク質であり得るか、またはCpGオリゴヌクレオチドを結合するためのレセプターであり得る。
【0023】
本明細書中で使用される場合、用語「活性」とは、CpGオリゴヌクレオチドの結合またはシグナル伝達(例えば、上記のような)に関連する、任意の活性または活性のカスケードをいう。
【0024】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」とは、非限定的に、完全なインタクトな抗体、それらのFabフラグメントおよびF(ab)2フラグメント、およびキメラ抗体をいうことが意味される。
【0025】
本明細書中で使用される場合、句「少なくとも1つのCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチド」または「CpGオリゴヌクレオチド」とは、少なくとも1つのメチル化されていないCGジヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド、好ましくは、オリゴヌクレオチドをいう。少なくとも1つのCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドは、複数のCpGモチーフを含み得る。
【0026】
本明細書中で使用される場合、句「CpGモチーフ」とは、シトシンヌクレオチドと、それに続くグアノシンヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのメチル化されていないジヌクレオチド部分をいう。5−メチルシトシンもまた、シトシンの代わりに使用され得る。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「相同」とは、CpG−Rをコードするヌクレオチド配列全体またはアミノ酸配列全体、あるいはCpG−Rの少なくとも一部に、少なくとも約70%、より好ましくは、少なくとも約80%、より好ましくは、少なくとも約90%、そして最も好ましくは、少なくとも約95%の配列同一性によって特徴付けられる、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列をいう。相同なアミノ酸配列としては、保存的アミノ酸置換をコードするアミノ酸配列を含み得る。配列同一性は、例えば、デフォルト設定を使用する、Gapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix(登録商標),Genetics Computer Group,University Reserach Park,Madison Wi)によって決定され得る。このプログラムは、SmithおよびWatermanのアルゴリズム(Adv.Appl.Math.,1981,2,482−489(これは、本明細書中でその全体が参考として援用される))を使用する。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「約」とは、値が、その値の±10%で変化することを意味する。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「調節する」とは、特定の活性またはタンパク質の量または効果の増加または減少を意味する。
【0030】
本発明の1つの局面は、CpG−Rをコードする新規ヌクレオチド配列を含む新規核酸分子に関する。核酸分子は、好ましくは、RNAまたはDNAのいずれかであるが、RNAおよびDNAのモノマーの両方またはペプチド核酸モノマーを含み得る。核酸分子は、一本鎖でも二本鎖でもあり得る。核酸分子のモノマーは、従来のホスホジエステル結合または修飾された結合(例えば、ホスホロチオエート結合など)を介して連結され得る。さらに、モノマーの糖部分は、例えば、2’置換基の付加によって修飾され得、これは、ヌクレアーゼ耐性を付与しおそして/または細胞の取り込みを補助する。核酸分子はまた、CpG−Rをコードするヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的なヌクレオチド配列を含み得る。好ましくは、この核酸分子は、その配列全体に相補的なヌクレオチド配列を含むが、その配列全体の一部に相補的なヌクレオチド配列を含み得る。この核酸分子はまた、CpG−Rをコードするヌクレオチド配列に相同なヌクレオチド配列を含み得、そして上記のように決定されるように、CpG−Rをコードする配列全体またはその任意の部分に対して、少なくとも約70%相同、より好ましくは、少なくとも約80%相同、より好ましくは、少なくとも約90%相同、そして最も好ましくは、少なくとも約95%相同であり得る。
【0031】
広範な種々の代替的なクローニング方法およびインビトロ増幅方法は、当業者に周知である。これらの技術の例は、例えば、Bergerら、Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology 152 Academic Press,Inc.,San Diego,CA(Berger)(これは、その全体が本明細書中で参考として援用される)に見い出される。
【0032】
本発明の別の局面は、上記の任意の核酸分子を含む、ベクターまたは組換え発現ベクターに関する。ベクターは、本明細書中では、CpG−RをコードするDNAを発現させるために、CpG−RをコードするDNAまたはRNAのいずれかを増幅するために使用される。好ましいベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、エピソーム、ウイルス粒子またはウイルス、および組み込み可能なDNAフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいウイルス粒子としては、アデノウイルス、パルボウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノ随伴ウイルス、セムリキ森林ウイルス、ワクシニアウイルスおよびレトロウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい発現ベクターとしては、pcDNA3(Invitrogen)およびpSVL(Pharmacia Biotech)、pGEMベクター(Promega)、pPROEXベクター(LTI,Bethesda、MD)、Bluescrpitベクター(Stratagene)、pQEベクター(Qiagen)、pSE420(Invitrogen)、ならびにpYES2(Invitrogen)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
好ましい発現ベクターは、CpG−RをコードするDNA配列が適切な制御配列に作動可能に連結されている、複製可能なDNA構築物であり、この制御配列は、適切な宿主または生物においてこのCpG−Rの発現をもたらし得る。DNA領域は、その領域が、互いに機能的に配置されている場合に、作動可能に連結されている。制御配列としては、プロモーター、オペレーター、リボソーム結合配列、および転写/翻訳終結配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
好ましいベクターは、好ましくは、宿主生物によって認識されるプロモーターを含む。本発明のプロモーター配列は、原核生物性、真核生物性またはウイルス性であり得る。適切な原核生物配列の例としては、バクテリオファージλのPRプロモーターおよびPLプロモーター(The Bacteriopharge Lambda,Hershey,A.D.編、Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1973)、およびLambda II,Hendrix,R.W.編、Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1980)(これらの各々は、本明細書中でそれらの全体が参考として援用される));E.coliのtrpプロモーター、recAプロモーター、熱ショックプロモーターおよびlacZプロモーター、ならびにSV40初期プロモーター(Benoistら、Nature、1981、290、304−310(これは、本明細書中でその全体が参考として援用される))が挙げられる。さらなるプロモーターとしては、マウス乳腺癌ウイルス、ヒト免疫不全ウイルスの長末端反復、マロニー(maloney)ウイルス、サイトメガロウイルス最初期プロモーター、エプスタイン−バーウイルス、ラウス肉腫ウイルス、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、およびヒトメタロチオネインが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、適切な発現ベクターは、形質転換された宿主細胞のスクリーニングを可能にするマーカーを含み得る。発現ベクターは、標準的な方法によって調製され得る。
【0035】
本発明の別の局面は、上記の任意の核酸分子を含む発現ベクターを有する、形質転換された宿主細胞に関する。本発明のポリペプチドの発現のための適切な宿主細胞としては、原核生物、酵母および真核生物が挙げられるが、これらに限定されない。適切な原核生物細胞としては、Escherichia属、Bacillus属、Salmonella属、Pseudomonas属、Streptomyces属、およびStaphylococcus属の細菌が挙げられるが、これらに限定されない。適切な真核生物細胞としては、昆虫細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、アフリカミドリザル腎臓細胞(COS細胞)、マウス3T3線維芽細胞が挙げられるが、これらに限定されない。適切な酵母細胞としては、Saccharomyces属、Pichia属およびKluveromyces属が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のポリペプチドはまた、バキュロウイルス発現系を使用して発現され得る(Luckowら、Bio/Technology、1988、6、47、Baculovirus Expression Vector:A Laboratory Manual,O’Riellyら(編)、W.H.Freeman and Company,New York,1992および米国特許第4,879,236(これらの各々は、本明細書中でその全体が参考として援用される))。さらに、MAXBACJ完全バキュロウイルス発現系(Invitrogen)は、例えば、昆虫細胞における産生のために使用され得る。細胞培養物中のこのような細胞の増殖は、例えば、Tissue Culture,Academic Press,KruseおよびPatterson編(1973)(これは、本明細書中でその全体が参考として援用される)に記載されるような、慣用的手順である。
【0036】
本発明の別の局面において、上記の核酸分子によってコードされる、単離されたポリペプチドに関する。本発明の好ましい実施形態において、単離されたポリペプチドは、CpG−Rをコードするアミノ酸配列を含む。あるいは、このポリペプチドは、CpG−Rをコードするポリペプチドのフラグメントである。あるいは、このポリペプチドは、CpG−Rまたはそのフラグメントに相同なアミノ酸配列を含む。CpG−Rに対して、少なくとも約70%の配列同一性または相同性(上記のように決定した場合に)、少なくとも約80%の配列同一性または相同性、好ましくは、約90%の配列同一性または相同性、より好ましくは、約95%の配列同一性または相同性、そして最も好ましくは、約98%の配列同一性または相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドが、本発明に含まれることが意図される。好ましい相同なポリペプチドは、ネイティブCpG−Rと比較して、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を含む。他の好ましい相同なポリペプチドは、ネイティブCpG−Rと比較して、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個までの保存的アミノ酸置換を含む。これらのポリペプチドは、異種タンパク質由来の領域を含み得る融合タンパク質として、宿主細胞中で発現され得る。本発明のポリペプチドはまた、同じタンパク質であるが天然に存在するポリペプチドと配列が異なる領域を含み得る。さらに、相同なCpG−Rペプチドは、CpG−Rと比較して、少なくとも約70%の機能的相同性、少なくとも約80%の機能的相同性、好ましくは、約90%の機能的相同性、より好ましくは、約95%の機能的相同性、そして最も好ましくは、約98%の機能的相同性を有するポリペプチド含む。従って、本発明は、CpG−Rに相同でありかつCpG−Rの生物学的特性と実質的に類似する少なくとも1つの生物学的特性(機能的相同性)を本質的に有するタンパク質を包含する。
【0037】
CpG−Rをコードする本発明のポリペプチドは、CpGオリゴヌクレオチドを結合する能力について、THDドメインを含むことについて、およびMyD88アダプタータンパク質と相互作用する能力について、例えば、組換え発現ライブラリーまたは配列データベースなどをスクリーニングすることによって、単離され得る。MyD88アダプタードメインは、多糖類およびリポタンパク質のような産物ならびにインターロイキン−1に対するレセプターからのシグナル伝達について必要とされる。本発明のポリペプチドは、好ましくは、単離された形態で提供され、好ましくは、実質的に精製され、そして最も好ましくは、均一に精製される。宿主細胞は、好ましくは溶解され、そしてポリペプチドは、その宿主細胞の溶解物から回収される。あるいは、ポリペプチドは、好ましくは宿主細胞を溶解することなく、宿主細胞からの細胞培養培地を精製することによって回収される。ポリペプチドは、周知の方法(硫酸アンモニウム沈殿またはエタノール沈殿、アニオン交換クロマトグラフィーまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む)によって、組換え細胞培養物から回収および精製され得る。
【0038】
本発明の別の局面は、上記の任意の核酸分子またはポリペプチドならびに受容可能なキャリアまたは希釈剤を含む組成物(薬学的組成物を含む)に関する。好ましくは、キャリアまたは希釈剤は、薬学的に受容可能である。キャリアまたは希釈剤は、当該分野で公知の任意の徐放性材料(例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリン)を、単独またはワックスとの混合物で、含み得る。処方物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、保存剤、甘味剤、濃厚剤または矯味矯臭剤を含み得る。本発明の処方物は、当該分野で周知の手段を使用することによって患者に投与された後に、活性成分の迅速な放出、持続的放出または遅延した放出を提供するように処方され得る。薬学的組成物は、滅菌され、そして所望の場合に、その活性化合物と有害には反応しない、補助剤、乳化剤、浸透圧に影響する塩、緩衝剤および/または着色物質などと混合される。濃厚剤、矯味矯臭剤、希釈剤、乳化剤、分散補助剤または結合剤もまた添加され得る。
【0039】
本発明のポリペプチドは、その本発明のポリペプチドに対する抗体を生成するために使用され得、そしてCpG−RまたはCpGオリゴヌクレオチドの活性を調節する化合物についてスクリーニングするために使用され得る。好ましくは、抗体は、CpG−R内のエピトープに結合する。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。本発明のポリペプチドに結合する抗体を産生するハイブリドーマおよびその抗体自体は、このポリペプチド単離および精製に有用である。さらに、抗体は、CpG−R活性の特異的インヒビターであり得る。本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体は、天然の供給源からまたは周知技術および容易に入手可能な出発材料を使用する組換え技術を介してこのタンパク質を精製するために使用され得る。抗体を作製する方法は、当業者に公知である。モノクローナル抗体を調製するために技術については、例えば、Stiitesら(編)Basic and Clinical Immunology(第4版)、Lange Medical Publications,Los Altos,CA(これは、その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。抗体、FabフラグメントおよびF(ab)2フラグメントの産生は、例えば、Harlow,E.およびD.Lane(1988)ANTIBODIES:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY.(これは、参考として本明細書中に援用される)に記載される。
【0040】
本発明はまた、キット(薬学的キットを含む)に関する。キットは、上記の任意の核酸分子、ポリペプチドまたは抗体、ならびに適切なコントロールを備え得る。キットは、好ましくは、さらなる成分(例えば、指示書、固体支持体、定量に補助する試薬など)を備える。
【0041】
本発明の別の局面は、ある量のCpG−R、CpG−Rに対する抗体、またはCpG−Rに結合する化合物の哺乳動物への投与によって、この哺乳動物における免疫応答を調節する方法に関する。CpG−Rの量、CpG−Rに対する抗体、またはCpG−Rに結合する化合物は、動物の種、動物のサイズなどに依存するが、当業者によって決定され得る。投与の経路は、作用の適切な部位または所望の部位に対して活性な化合物を効率的に輸送する任意の経路(例えば、経口経路、経鼻経路、直腸経路、肺経路、経皮経路もしくは非経口経路、皮下経路、静脈経路、尿道内経路、筋肉内経路、経鼻経路、眼科溶液、または軟膏、非経口または経口経路が好ましい)であり得る。
【0042】
本発明の別の局面は、CpG−Rをコードする核酸分子またはポリペプチドのいずれかに結合する化合物を同定する方法に関する。この方法は、CpG−Rまたはこれをコードする核酸分子を、化合物に接触させる工程、およびこの化合物がCpG−R、またはこれをコードする核酸分子に結合するか否かを決定する工程を包含する。結合は、当業者に周知の結合アッセイにより決定され得る。このアッセイとしては、ゲルシフトアッセイ、ウエスタンブロット、放射線標識競合アッセイ、クロマトグラフィーによる同時分画、共沈殿、ELISAなどが挙げられるがこれらに限定されない。これらのアッセイは、Current Protocols in Molecular Biology,1999,John Wiley & Sons,NY(その全体が本明細書において参考として援用される)に記載されている。このような試験で用いられるCpG−Rポリペプチドまたは核酸分子は、溶液中で遊離であるか、固体支持体に結合しているか、細胞表面に結合しているか、または細胞内に局在しているかのいずれかであり得る。
【0043】
本発明の別の局面は、CpG−Rのシグナル伝達活性を調節する化合物を同定する方法に関する。この方法は、CpG−Rを、化合物に接触させる工程、およびこの化合物がCpG−Rの活性を調節するか否かを決定する工程を包含する。試験化合物の存在下での活性を測定し、そして試験化合物の非存在下での活性と比較する。試験化合物を含有するサンプルの活性が、試験化合物を欠くサンプル中の活性よりも高い場合、この化合物は、上昇した活性を有する。試験化合物を含有するサンプルの活性が、試験化合物を欠くサンプル中の活性よりも低い場合、この化合物は、活性が阻害されている。このような試験で用いられるCpG−Rは、適切な基質の存在下の溶液中で遊離であるか、細胞表面に結合しているか、または細胞内に局在しているかのいずれかであり得る。
【0044】
CpG−Rに結合するか、および/または調節する化合物は、例えば、細胞媒介性免疫応答を促進するワクチンアジュバント、抗菌剤(例えば、リステリア(Listeria)感染からの防御)、腫瘍免疫療法、アレルギー処置(例えば、ヒトPBMCにおいてIgEを抑制し、Th2からTh1にシフトする)において、および抗炎症剤として(例えば、嚢胞性線維症、敗血症、心疾患、クラミジア、炎症性腸疾患、喘息、および多発性硬化症における使用のため)の、有用性を有する。
【0045】
本発明はさらに、本発明を明らかにする意図である、以下の実施例によってさらに例示される。前述の実施例は、本発明を例示する意図であるが、いかなる方法でも本発明を限定するとは解釈されない。当業者は、本発明の精神および範囲内である改変を認識する。本発明において言及される全ての参考文献(特許、出願、および印刷された刊行物の各々を含む)は、その全体が参考として本明細書に援用されることが意図される。
【実施例】
【0046】
(実施例)
(実施例1:一般的方法論)
(動物および細胞株)
骨髄を、種々の遺伝子型の6〜12週齢の雌性マウス(C57Bl/6,Balb/c;Charles River;またはC3H/Hel,Jackson Labs)から回収した。新鮮な骨髄細胞を用いるか、または10%ジメチルスルホキシドを含有するウシ胎仔血清(FCS;Summit)中で凍結させて、−80℃で保存した。骨髄マクロファージ(BMMO)を、前出のCurrent Protocols in Immunologyに記載のとおり、調製した。要するに、新鮮骨髄細胞または凍結骨髄細胞をRPMI(10%熱非働化(56℃30分)ウシ胎仔血清(FCS)、2mM L−グルタミン、100μg/mlストレプトマイシン、100ユニット/mlペニシリン、50μM βメルカプトエタノール、および100U/ml組み換えマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF;R&D Systems))中で培養した。24時間後、非接着細胞を新しいシャーレに回収して、7日間培養を続けてマクロファージ単層を生成した。M−CSFではなくGM−CSF(200U/ml;Preprotech)を補充した同じ培地中での培養により、非接着BMDDCを、生成した。RAW 264.7マウスマクロファージ細胞株(もともとBalb/cマウス由来)を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から入手した。RAW 264.7細胞を、10%熱不活化FCS,Lグルタミン、ストレプトマイシン、ペニシリン、および1μMピルビン酸ナトリウムとともに、DMEM中で培養する。
【0047】
(試薬)
以下の試薬を用いて、示されるとおり、細胞培養物を処理した:K235 E.Coli LPS,精製ゲル濾過(Sigma)、S.minnesota R595由来のモノホスホリルリピッドA(MPL;RIBI Immunochem Research,Inc)(添加の前に10分間超音波処理した)。Oligos Etc(Wilsonville,OR);CpGオリゴヌクレオチド配列、tccatgacgttcctgacgtt(配列番号1);コントロール非CpGオリゴヌクレオチドtccaggacttctctcaggtt(配列番号2)により;ホスホロチオエート骨格を有するオリゴヌクレオチドを合成した。同じ実験において、RAW264.7細胞を刺激するために、組み換えマウスインターロイキン−1β(1L−1)(Endogen)およびインターロイキン−18(IL−18)(Biosource)も用いた。本発明において用いられ得るさらなるCpGオリゴヌクレオチドとしては、例えば、以下のようなヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドが挙げられるがこれらに限定されない:
【0048】
【化1】

【0049】

【0050】
(イムノブロッティング)
刺激後、完全Jプロテアーゼインヒビターカクテル(Complete J protease inhibitor cocktail)(Boehringer Mannheim)(Triton lysis buffer)とともに、1%Triton X−100,50mM Tris,62.5mM EDTA(pH8.0)中で、BMMOまたはRAW 264.7細胞を溶解した。溶解物を、還元サンプル緩衝液中で煮沸し、NuPAGEJ Bis−Tris電気泳動システム(Novex)を用いて、10%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。製造業者の指示に従って、IκB−α、リン酸化−IκB−α(New England BioLabs)、または抗IL−18(Santa Cruz Biotechnology)に対する抗体を用いて、ニトロセルロースメンブレンをプローブして、強化化学発光(Amersham)を用いて、可視化した。
【0051】
(κB−Lucアッセイ)
トランスフェクションの24時間前に、1ウェルあたり、3×105細胞の密度で、RAW 264.7細胞を6ウェルプレート(Corning)に播種した。トランスフェクションにおいて用いたプラスミドは、pNF−κB−Luc(Clontech)およびpCR3.V64−Met−Flag−MyD88lpr(Jurgen Tschoppより寄贈;Burnsら、J.Biol.Chem.1998,273,12203〜9に記載)であった。空のベクター(pCMVKm2、Chiron)の添加により、全てのウェルにまたがって、総プラスミド濃度を正規化した。製造業者の指示に従って、1ウェルあたり、10mlのLipofectAMINE(Gibco BRL)とともに、言及された濃度のDNA含有Opti−MEM I(Gibco BRL)を用いて細胞をトランスフェクトした。細胞を37℃で3時間トランスフェクション混合液とともにインキュベートし、次いで、培養培地を置換し、そして細胞を一晩、回収させた。翌日、示された濃度および時間で、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、MPL、LPSまたはサイトカインを用いて、37℃、5%CO2で、培養培地中で、トランスフェクトした細胞を、処理した。冷リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を用いて細胞を1回洗浄し、そしてReporter Lysis Buffer J(Promega)を用いて溶解した。全て、製造業者の指示に従って、Microlite 2プレート(Dynex)およびML 3000 Luminometer(Dynatech)を用いて、溶解上清中のルシフェラーゼ活性を決定した。FLAG−MyD88lpr発現の検出のために、トランスフェクトされたRAW 264.7細胞由来の可溶性ペレットをTriton溶解緩衝液中に再懸濁し、そして10分間超音波処理し、その後、サンプル緩衝液を添加して、煮沸した。分離およびニトロセルロースメンブレンへの転写後、FLAG M2(Sigma)抗体を用いてメンブレンをイムノブロットした。
【0052】
(フローサイトメトリー)
BMDDCを、示されたように、アジュバントを用いて一晩処理し、洗浄し、FcBlock(0.25μg/106細胞;Pharmingen)含有、冷PBS/2% FBS中に再懸濁し、そしてFITC結合体化抗体およびPE結合体化抗体(1μg/106細胞)を5分後に添加した。細胞を30分間氷上で抗体とともにインキュベートし、洗浄し、そしてFACScan(Becton−Dickenson)上でフローサイトメトリーによって分析した。この分析には、CD11cについてポジティブに染色し、かつ生存細胞の前方散乱および側方散乱の特性を有するBMDDC培養物由来の細胞のみが含まれた。アジュバントで処理した生存CD11c細胞のCD86−FITC染色の幾何平均蛍光が未処理のBMDDC培養の幾何平均CD86−FITC蛍光を正規化することに基づいて、CD86発現の変化を、評価する。
【0053】
(実施例2:CpGオリゴヌクレオチドは、MAPK経路およびNF−κBを活性化する)
CpGモチーフを含むかまたは欠くオリゴヌクレオチドに対する、マウスBMMOおよび樹状細胞ならびにマウスマクロファージ細胞株RAW 264.7のいくつかの生化学的反応を比較した。オリゴヌクレオチドにおけるCpGモチーフの効果についてのモデルとして、1826と呼ばれるオリゴヌクレオチド(Chuら、J.Exp.Med.,1997,186,1623〜31)(マウスにおける、その活性は文献中に広範に報告されている)を用いた(Bachmaierら、Science,1999,183,1335〜9)。CpGおよびコントロールオリゴヌクレオチドを、DNAの安定性を強化するホスホロチオエート骨格を用いて各20マーに合成した(Agrawalら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1991,88,7595〜9)。
【0054】
実施例1に記載のように、C57Bl/6マウスの骨髄細胞から、マクロファージを分化し、次いで、M−CSFを欠く低血清培地に4時間トランスファーした。培地単独、ホスホロチオエート改変CpGオリゴヌクレオチド(1μM)、CG配列を欠くコントロールオリゴヌクレオチド(1μM)、またはMPL(100ng/ml)で30分間処理した細胞から、溶解物を調製して、リン酸化ERK1を認識する抗体を用いて、イムノブロッティングを実施し、そしてERK.2RAW 264.7マクロファージをLPS(100ng/ml)でのさらなる処理とともに15分間同様に処理して、そしてリン酸化ERK1およびERK2についてイムノブロッティングした。APCまたはRAW 264.7細胞由来の骨髄からの全細胞抽出物のイムノブロッティングによって、CpGオリゴヌクレオチドによる複数のマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路(ERK1/2,JNKおよびp38を含む)の活性化が実証された。3つの細胞型全てにおいて、CpGオリゴヌクレオチドでの刺激の1時間以内に、ERK、JNKおよび/またはJNK基質c−junのリン酸化、およびp38 MAPK基質ATF 2のリン酸化を観察したが、CpG配列を欠くコントロールでは観察しなかった(データ示さず)。これらの結果は、CpGオリゴヌクレオチドによるJNK経路およびp38経路の迅速な活性化を示す。RAW 264.7細胞およびBMMOにおけるERK1/2 MAPK活性化についてのポジティブな結果は、別のマウスマクロファージ細胞株J774における観察に対して対照的であるが、ERKリン酸化は、CpGオリゴヌクレオチド処理細胞においては検出されなかった。
【0055】
CpGオリゴヌクレオチドおよびコントロールオリゴヌクレオチドを含む、パネルのアジュバントで処理した、BMMOおよびRAW 264.7細胞におけるNF−κB経路の状態をまた試験した。LPS(1μg/ml)、MPL(1μg/ml)ホスホロチオエート改変CpGオリゴヌクレオチド(4μM)またはコントロールホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(非CpG;4μM)を用いて、BMMOを1.5時間処理した。全細胞溶解物を調製し、そして上記のようにIκBαについてイムノブロッティングした。LPS、MPLまたはCpGオリゴヌクレオチドで処理したBMMOにおいて、1.5時間内にNF−κB阻害性タンパク質IκBαの分解を観察したが、コントロールオリゴヌクレオチドでは観察しなかった(データ示さず)。
【0056】
また、未処理のRAW 264.7細胞またはホスホロチオエートCpGオリゴヌクレオチド(4μM)で、5分、10分、20分および60分、ならびにCpGモチーフを欠くコントロールオリゴヌクレオチドで60分間、処理した細胞から、溶解物を調製した。次いで、この溶解物を電気泳動によって分離し、そしてリン酸化IκBαおよび総IκBαに対する抗血清を用いてイムノブロッティングした。IκBαリン酸化およびRAW 264.7細胞における分解により、CpGオリゴヌクレオチドによる類似の特異的活性化が示された。この活性化は、CpGオリゴヌクレオチド添加の10分間内にIκBαリン酸化のレベルで検出され、そしてIκBαの分解は20分間で顕著であった。IκBαは、1時間内にCpGオリゴヌクレオチド処理RAW 264.7細胞中で再合成されたが、ほとんどのIκBαはリン酸化され、このことは迅速な分解についての連続的標的化を示唆する(データ示さず)。
【0057】
CpGオリゴヌクレオチドまたはMPL処理により誘導されたκB依存性転写を直接評価するため、κ軽鎖エンハンサー(κB−Luc)のマルチコピーの制御下で、ルシフェラーゼをコードするNF−κB−誘導性レポータープラスミドを用いて、RAW264.7マクロファージをトランスフェクトし、そして翌日アジュバントまたはサイトカインを用いて処理した。詳細には、κB駆動ルシフェラーゼレポーター遺伝子を用いて、RAW 264.7細胞をトランスフェクトし、そして24時間後に、IL−1(20ng/ml)、MPL(1μg/ml)、LPS(1μg/ml)またはホスホロチオエートCpGオリゴヌクレオチド(4μM)を用いて6時間処理した。細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を照度計(luminometry)によって定量し、そして未処理のトランスフェクト細胞におけるルシフェラーゼシグナルに対してこの結果を正規化した。図1Aに示されるように、RAW 264.7細胞に対するCpGオリゴヌクレオチドの添加は、MPLまたはLPSにより誘導されたレベルと類似のレベルまで、κB依存性ルシフェラーゼ発現を誘導した。CpGオリゴヌクレオチドによるκBレポーター遺伝子の活性化は、MPLまたはLPS(両方ともマクロファージにおいてNF−κBの強力なアクチベータ)に対する応答において見られる活性化よりもわずかに弱かった。IL−1は、IL−18がそうであるように、RAW 264.7細胞(図1A)において、κB−Lucの弱いアクチベータであった(データ示さず)。
【0058】
κB依存性ルシフェラーゼ発現に対するCpGオリゴヌクレオチドの効果は、用量依存性および時間依存性であった(図1Bおよび図1Cを参照のこと)。図1Bに関して、κB−ルシフェラーゼレポータープラスミドで一時的にトランスフェクトされたRAW 264.7細胞を、0.25μM〜8μMの範囲にわたるホスホロチオエートCpGオリゴヌクレオチド濃度の濃度で、またはコントロールのオリゴヌクレオチド(4μM)で24時間後に6時間にわたって処理した。活性化は、0.25μM程度の低いCpGオリゴヌクレオチド濃度で検出された(図1B)が、試験した最低濃度(0.05μM)では検出されなかった(データは示さず)。図1Bに示すデータは、同じ6ウェル組織培養プレート上の未処理のトランスフェクトしたウェルからの溶解産物におけるルシフェラーゼレベルに対して正規化した、2連のウェルからの溶解産物における平均ルシフェラーゼ活性である。CpGオリゴヌクレオチド処理によるレポーター遺伝子の活性化は、8μMで最大であり(図1B)、そして10μMの用量ではさらには増強されなかった(データは示さず)。図1Cに関して、κB−Lucで一時的にトランスフェクトし、そして24時間後にCpG含有オリゴヌクレオチド(4μM;白丸)またはLPS(1μg/ml;黒丸)で処理したRAW 264.7細胞。図1Cに示す結果は、未処理のトランスフェクトされたウェルに対して正規化された2連のウェルの平均である。CpGモチーフを欠く類似の濃度のコントロールのオリゴヌクレオチドに対する、κB-LucでトランスフェクトされたRAW 264.7細胞の暴露は、ルシフェラーゼ発現の増大を誘導しなかった(図1Bおよび図1C)。RAW 264.7マクロファージにおけるκB依存性ルシフェラーゼ発現は、CpGオリゴヌクレオチドまたはLPSで処理した細胞において類似の反応速度を示した(図1C);両方の処理は、迅速な応答(2時間で、2倍の増大よりも大きい)を誘導し、この応答は、4時間〜6時間でプラトーに達した。
【0059】
これらの結果は、RAW 264.7細胞におけるCpGオリゴヌクレオチドによるNF−κB経路の活性化が、特異的であり、迅速であり、そして用量依存性であることを実証する。サイトカインによって媒介されるCpGオリゴヌクレオチドの間接的効果は、シグナル伝達の反応速度が非常に迅速であることを考慮すると、ありそうもない。CpGオリゴヌクレオチド処理RAW 264.7細胞からの上清の、κB−LucトランスフェクトRAW 264.7マクロファージに対する添加は、ルシフェラーゼ発現をほとんど誘導せず(4時間目で2倍未満)、このことは、κB−Luc転写に対するCpGモチーフが直接的な効果を有することを確認した。
【0060】
(実施例3:ドミナントネガティブMyD88の発現は、κB依存性レポーター遺伝子のCpG誘導をブロックする)
種々の細菌由来構造体(LPS、ペプチドグリカンおよびリポタンパク質を含む)に応じたTollレセプターの役割を考慮すると、Toll関連レセプターは、非メチル化CpG配列を含むオリゴヌクレオチドに応じたシグナル伝達に関与すると考えられる。非メチル化CpG配列はまた、病原性の非自己の特徴である。このために、RAW 264.7細胞を、κB−ルシフェラーゼプラスミドおよびドミナントネガティブ形態のMyD88(Toll/IL−1レセプターファミリーのメンバーによるシグナル伝達のために必要とされるアダプタータンパク質)をコードする発現ベクターで同時トランスフェクトした。これらの実験において用いられるドミナントネガティブMyD88であるMyD88lprは、インタクトなToll相同性ドメインを有するが、細胞死ドメイン(death domain;DD)に点変異を含む。lprマウスにおけるFasの細胞死ドメインにおける類似の変異は、恐らく、この細胞死ドメインのコンホメーションを変更することによってFasシグナル伝達を無くし、従って、下流のシグナル伝達分子の会合をブロックする。RAW 264.7細胞におけるMyD88lprの過剰発現は、Toll相同性ドメインを含むタンパク質との会合について内因性MyD88と競合することによって、MyD88依存性シグナル伝達を中断すると予想される。MyD88lprのこの効果は、この死ドメイン(death)における変異が、NF−κBの他のアクチベーターと共有され得る下流のシグナル伝達構成要素との会合を妨げるに違いないので、Toll関連タンパク質に対して特異的である。
【0061】
FLAGタグ化MyD88lprをコードするプラスミドでのRAW 264.7細胞のトランスフェクションは、抗FLAG抗体での免疫ブロッティングによって決定した場合、予想された大きさのタンパク質の発現をもたらした(データは示さず)。図2Aに関して、次いで、RAW 264.7細胞を、κB−Luc(1μg)単独で(黒棒)またはMyD88lprをコードするプラスミドで、2つの異なる比率(10:1(灰色の棒)または1:1(白色の棒))でトランスフェクトした。総プラスミドDNA濃度を、空のベクターの添加によって、全てのウェルにまたがって正規化した。トランスフェクション24時間後の細胞を、CpGオリゴヌクレオチド(4μM)、CpGモチーフを欠くコントロールオリゴヌクレオチド(4μM)、MPL(1μg/ml)またはLPS(1μg/ml)で処理した。示した結果は、未刺激のトランスフェクトされたコントロールの平均値(未処理カラム)に対して正規化された2連のウェルの平均+/−標準偏差であり、そして複数の実験において得られた結果の代表である。ドミナントネガティブなMyD88lprを発現するRAW 264.7細胞では、CpGオリゴヌクレオチド処理、MPLまたはLPSポジティブコントロール(図2A)によって誘導されたκB依存性ルシフェラーゼ活性が阻害された。ドミナントネガティブなMyD88によるルシフェラーゼ活性の阻害程度は、トランスフェクションにおいて用いられるMyD88lprプラスミドの量(図2A)およびMyD88lpr発現の得られるレベルに依存した(データは示さず)。IL−18またはIL−1(これらのレセプターは、シグナル伝達のためにMyD88を必要する)の誘導された発現によって媒介されるCpGオリゴヌクレオチドの間接的な効果は、これらの結果を説明し得る。しかし、RAW 264.7マクロファージを組換えIL−18で処理した場合に得られたネガティブな結果(上記を参照のこと)に加えて、活性なIL−18は、それぞれ、免疫ブロッティングまたはELISAによってRAW264.7細胞の抽出物においても上清においても検出可能ではなかった(データは示さず)。
【0062】
CpGオリゴヌクレオチドにおけるメチル化状態およびCGジヌクレオチド配列に対するκB−ルシフェラーゼの活性化およびMyD88lprの阻害の依存性を調べた。CG配列を置換するGCを有するコントロールのオリゴヌクレオチド(GCオリゴ)またはCではなくメチル−Cを用いて合成されたコントロールのオリゴヌクレオチド(メチルCG)を、κB−Luc単独で、またはMyD88lprでトランスフェクトされたRAW 264.7細胞に添加した。図2Bに関して、RAW 264.7マクロファージを、κB−Luc単独(黒棒)またはκB−Luc+MyD88lpr(白棒)(1:1のプラスミド比)でトランスフェクトした;総DNA濃度を、空のベクタープラスミドの添加によって一定に保った。トランスフェクトした細胞を、非メチル化CGモチーフを含むオリゴヌクレオチド(4μM)、非メチル化GC(GC)もしくはCpGモチーフを置換するメチル化CGモチーフ(mCG)を有する類似のオリゴヌクレオチド、またはCGモチーフを欠く無関係の配列(非CpG)で、翌日、6時間にわたって処理した。示した結果は、未刺激のトランスフェクトしたコントロールの平均値(「未処理」カラム)に対して正規化された、2連のウェルの平均+/−標準偏差であり、そして2つの実験において得られた結果の代表である。図2Bに示されるように、CG配列のメチル化またはGCでのそれらの置換は、このオリゴヌクレオチドによるほぼ全てのκB−Lucの活性化を無くした。CpGモチーフを欠くオリゴヌクレオチドで処理した細胞における基本的なルシフェラーゼ活性は、MyD88lpr発現によって阻害されなかった。これらの結果は、CpGオリゴヌクレオチドによって活性化されたMyD88依存性レセプターが、細菌DNAを模倣することが意図された非メチル化CG配列についての予測された特異性を有することを示唆する。
【0063】
別のセットの実験では、シグナルを伝達する能力を欠く3つのMyD88構築物をPCRによって増幅し、そしてCMVプロモーター(pCMV−FLAGベクター、Sigma Aldrich)の構成的制御下に置いた。第1の構築物MyD88lprは、細胞死ドメインに点変異F56Nを含む。第2の構築物MyD88−ΔDDは、細胞死ドメインを完全に欠く。第3の構築物MyD88−THDは、細胞死ドメインおよび中間ドメインの両方を欠く。DNAを、カチオン性脂質試薬を用いてRAW 264.7細胞またはマウスの胚性NIH−3T3細胞にトランスフェクトした。ルシフェラーゼレポータープラスミドを同時トランスフェクトした。上流のκB依存性プロモーターのプロセシング。ルシフェラーゼ転写は、NF−κBの放出を当てにする。NF−κBの放出は、Tollシグナル伝達経路における最終的な事象の1つである。次いで、細胞を、CpGオリゴヌクレオチドおよびいくつかのコントロールのサイトカインで刺激した。ルシフェラーゼ発現を、ルミノメーターでアッセイして、変異MyD88タンパク質がCpGシグナルに影響を与えたか否かを決定した。制限分析および配列決定の結果は、MyD88構築物の存在を確認した(データは示さず)。ドミナントネガティブなMyD88はCpGオリゴヌクレオチド刺激に応じてシグナル伝達を特異的かつ選択的にブロックする(図3Aおよび3B)。この構築物は、TNF MyD88依存性経路を経るシグナル伝達に影響を与えなかった(ネガティブコントロール)が、MyD88依存性LPSシグナル伝達およびIL−1シグナル伝達を阻害した(図3A)。MyD88 TIRドメイン単独は、シグナル伝達をブロックするために十分であった。
【0064】
これらの結果は、MyD88機能が、CpGオリゴヌクレオチドおよびMPLによるNF−κBの完全な活性化に必要とされることを実証する。MyD88を必要とする全ての公知のレセプターは、共通の構造的特徴THDを共有するので、この知見はまた、推定のCpGレセプターの構成要素がTHDを有することを暗示した。THDを有するレセプターの存在およびCpGモチーフによって誘導されるシグナル伝達におけるToll経路構成要素の関与は、新規である。
【0065】
この結果は、CpGレセプター構成要素の同様の構造的特徴において第1の洞察を提供する。非メチル化CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドに対する免疫応答がTHDを含むレセプターを通して媒介されることを知ることによって、対応する遺伝子を同定する新たなアプローチが提供されることが当業者によって認識される。CpGオリゴヌクレオチドのMyD88依存性効果のメチル化依存性および良好な配列特異性、ならびにAPCの他のヌクレオチドベースアクチベーターに対するこれらの知見の関連性の調査が行われ得る。
【0066】
(実施例4:TLR4はCpGシグナル伝達に必要とされない)
CpG−Rのポリペプチド配列を決定する好ましい方法は、公知のTLRが有望な候補であり得るか否かを試験することである。マウスにおけるLPSに対する応答についてのTLR4についての必要条件は、TLR4に点変異を有するエンドトキシン非応答性系統C3H/HeJ、ならびにTLR4を発現しないC57Bl/l0ScCrマウスおよびC57Bl/l0ScNCrマウスを用いて実証されている(Vogelら,J.Immunol.,1999,162,5666−70,Qureshiら,J.Exp.Med.,1999,189,615−25,Chowら,J.Biol.Chem.,1999,274,10689−92,Hoshinoら,J.Immunol.,1999,162,3749−52およびPoltorakら,Science,1998,282,2085−8)。
【0067】
インビトロでのCpGオリゴヌクレオチドおよびMPLに対するAPCの応答におけるTLR4の役割を評価するために、LPS応答性マウス(Balb/c)およびC3H/HeJマウス由来のBMDDCを、これらのアジュバントとともに一晩培養し、そしてDC活性化/成熟のマーカーのアップレギュレーションをアッセイした。細胞の表面のCD86発現を、フローサイトメトリーによって定量した。CD86は、活性化された樹状細胞およびマクロファージにおいてアップレギュレートされるNF−κB標的遺伝子である。これは、抗原特異的T細胞を活性化する能力を増強する。図4に関して、野生型(Balb/c;黒棒)およびTLR4変異マウス(C3H/HeJ;白棒)由来のBMDDCを、上記のように、GM−CSF中で6日間にわたって増殖させ、次いで、CpGオリゴヌクレオチド(5μM)、コントロールオリゴヌクレオチド(5μM)もしくはLPS(1μg/ml)で一晩処理したか、または未刺激のままにした。生きたCD11c陽性細胞上でのCD86の細胞表面発現を、フローサイトメトリーによってアッセイした。示した結果は、同じ培養物由来の未処理のBMDDCの相乗平均蛍光(MF)に対して正規化した、アジュバントで処理したBMDDCのMFであり、そして3つの実験において得られた結果の代表である。図4に示すように、CpGオリゴヌクレオチド、LPSで処理した野生型BMDDCは、細胞表面CD86発現の増加を示した。TLR4変異BMDDCでは、CD86発現における変化はMPL処理細胞でもLPS処理細胞でも観察されず、一方、野生型BMDDCにおいて観察された増加と同様の、CD86発現における増加が、CpGオリゴヌクレオチド処理培養物において見られた(図4およびデータは示さず)。従って、TLR4は、LPSおよびMPLによるインビトロでのAPC活性化に必要とされるが、CpGオリゴヌクレオチドによるインビトロでのAPC活性化には必要とされない。
【0068】
上記の実験に類似したさらなる実験を実施して、CpG−Rの正確な性質をより良く特徴付けるために他の公知のToll様レセプターを試験し得る。これを、公知のインタクトなTLRおよびこれらのレセプターを非機能的にする変異を有する任意の匹敵する細胞株において実施し得る。インタクトな場合にCpGによって活性化されるがレセプターが欠損している場合は活性化されないレセプターを有する細胞の同定は、どのTLRが存在するかおよびどの特定のTHDが存在するかを正確に指摘する。
【0069】
本明細書中に開示される結果はまた、シグナル伝達経路についてアダプタータンパク質MyD88を必要とするレセプターによって媒介される細胞のシグナル伝達のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用し得る化合物を開発するために有用なアプローチを提供することが当業者によって認識される。化合物は、細胞とともにインキュベートされ得、そしてCpG活性化から続くことが公知の事象のカスケードがもたらされたかを見るためにアッセイされ得る。次いで、細胞は、MyD88lpr遺伝子でトランスフェクトされ得る。MyD88lpr遺伝子を伴わないコントロールにおいて効果を生じるが、MyD88lpr遺伝子が発現した場合に効果を生じない化合物は、MyD88アダプタータンパク質を必要とする経路を経た細胞内シグナル伝達を活性化することが示されている。
【0070】
(実施例5:CpG−Rの単離)
多数の異なる手順を利用して、Toll関連のCpG−R構成要素を同定し得る。第1に、当業者は、公知でかつ新規のToll様レセプターが、CpGオリゴヌクレオチドに対する応答性を非応答性細胞に付与する能力を調べ得る。第2に、当業者は、MyD88を使用して、CpGオリゴヌクレオチドによって特異的に活性化され、そして他のTollレセプターリガンド(例えば、LPS)によっては活性化されない相互作用タンパク質を精製し得るか、または酵母ツーハイブリッドシステムを使用して、対応するcDNAを単離し得る。
【0071】
マウスToll様レセプター1〜6(TLR1〜6)は、密接に関連したヒトホモログを有する。完全なまたは部分的な配列は、マウスの遺伝子についての公のデータベースにおいて利用可能である。TLRをコードする発現ベクターは、CpGオリゴヌクレオチド(例えば、κB−ルシフェラーゼ)によって活性化されるレポーター遺伝子とともに、CpG非応答性細胞株(例えば、NIH3T3)中にトランスフェクトされ得る。同時トランスフェクトされたTLRのいずれかがCpGオリゴヌクレオチドに対する応答性を付与する場合、これは、CpGオリゴヌクレオチドでの処理の際にレポーター遺伝子の発現によって反映される。
【0072】
類似のアプローチを用いて、新規なTLRを含むCpGシグナル伝達における任意の候補CpG−R構成要素の関与を試験し得る。新規のToll関連レセプターを同定およびクローニングするためのアプローチとしては、ゲノミックス、配列データベースのスクリーニング、縮重PCR、酵母ツーハイブリッドシステムおよびハイブリダイゼーションによるライブラリースクリーニングが挙げられる。活性なCpGオリゴヌクレオチドは、霊長類ではなく、げっ歯類において最も良く記載されているので、マウスの系において研究して、Toll関連CpG構成要素を同定し、次いで例えばPCRを用いてヒトのホモログを単離することが好ましい。
【0073】
MyD88lprは、インタクトなToll相同性ドメインおよび単一の不活化点変異を細胞死ドメイン内に含み、そして細菌または真核生物細胞のいずれかにおいて組換えタンパク質として発現され得る。組換えタンパク質をアフィニティー試薬として用いて、CpGオリゴヌクレオチド処理細胞(例えば、RAW264.7)から相互作用タンパク質を単離および精製し得る。TLRシグナル伝達経路における下流のエフェクター分子(例えば、IRAK、TRAF6)の結合は、細胞死ドメインにおける「lpr」変異によって最少になるかまたは除去されるべきである。従って、MyD88lprに特異的に結合するタンパク質は、THDおよび/またはTHDを細胞死ドメインに連結する領域と相互作用するタンパク質である。Toll相同性ドメインは同質型相互作用を介して会合するので、THDを含むCpG−R構成要素は、MyD88 THDに結合することが予想される。一旦、推定のCpG−RがMyD88についてアフィニティー精製されると、対応するcDNAは、例えば、ペプチド分析およびPCRのような標準的な方法によって単離され得る。
【0074】
同様に、MyD88lprは、酵母ツーハイブリッドシステムにおいてベイトとして用いられて、相互作用タンパク質をコードするcDNAを単離し得る。次いで、CpGオリゴヌクレオチド誘導性シグナル伝達に対するこれらのcDNAの関連性が上記の通りに試験され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−263900(P2010−263900A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138789(P2010−138789)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【分割の表示】特願2001−535559(P2001−535559)の分割
【原出願日】平成12年11月1日(2000.11.1)
【出願人】(591076811)ノバルティス バクシンズ アンド ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド (265)
【Fターム(参考)】