説明

D1452GB光ファイバ用放射線硬化性被覆材

本発明は、放射線硬化性組成物に関する。本発明は、オリゴマー、少なくとも2種類の反応性希釈剤モノマーを含む反応性希釈剤モノマーブレンド、および少なくとも1種類の光開始剤を含む放射線硬化性光ファイバ一次被覆組成物を提供し、前記ブレンド中の前記モノマーのそれぞれが式(I)(式中、xは1〜6の整数であり;nは1〜5の整数であり;各Yは同じであってもまたは異なってもよく、独立して水素、C〜C12アルキル基、およびアルカリールアルコキシ化アクリレート基からなる群から選択される);および少なくとも1種類の光開始剤を有し;前記反応性希釈剤モノマーブレンドは、非アリール反応性希釈剤モノマーを実質的に含有せず;分子量約300未満のアリール反応性希釈剤モノマーが存在する場合、それは全配合物の約10重量%以下で存在する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連特許出願]
本特許出願は、2009年10月9日に出願された米国仮特許出願第61/272596号明細書および2009年10月9日に出願された米国仮特許出願第61/250329号明細書の優先権を主張する。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、光ファイバ用一次被覆材として使用される放射線硬化性被覆材、前記被覆材で被覆された光ファイバ、および被覆された光ファイバの製造方法に関する。
【0003】
[発明の背景]
光ファイバは、その長さに沿って光を伝送するガラスファイバである。光ファイバは、光ファイバ通信に広く使用されており、それによって、他の通信形態より長距離にわたり且つ高い帯域幅(データ転送レート)で伝送することができる。ファイバが金属線に代わって使用されるが、その理由は、ファイバの方が信号の伝送損失が小さく、また電磁気の影響を受けないからである。
【0004】
光は、内部全反射により光ファイバのコア内に閉じ込められた状態で伝搬する。このためファイバは導波路の役割をする。多くの伝搬経路または横モードに対応するファイバはマルチモードファイバ(MMF)と称され、一方、単一のモードにしか対応できないものはシングルモードファイバ(SMF)と称される。MMFは一般にコアの直径が比較的大きく、短距離通信リンクや、高出力を伝送しなければならない用途に使用される。SMFは、550メートル(1,800フィート)より長距離のほとんどの通信リンクに使用される。
【0005】
本特許出願全体を通して、伝送損失としても知られる光ファイバ内での減衰は、伝送媒体の中を伝搬する距離に応じた光線(または信号)の強度の低下と定義される。光ファイバ内での減衰損失係数は、通常、1キロメートル当たりのデシベル(dB/kmと略記される)の単位を使用して報告される。
【0006】
減衰は、長距離にわたるデジタル信号の伝送を制限する重大な要因である。従って、多くの研究が減衰の制限と光信号の増幅の最大化の両方に費やされてきた。実証研究から、光ファイバ内での減衰は主に散乱と吸収の両方によって起こることが分かった。
【0007】
1965年、英国の会社であるStandard Telephones and Cables(STC)のCharles K.KaoおよびGeorge A.Hockhamは、光ファイバ内での減衰を20dB/km未満に低減することができ、ファイバを通信用の実用媒体とすることができるという考えを最初に推進した。彼らは、当時利用可能であったファイバ内での減衰が、散乱などの基本的な物理的効果よりもむしろ、除去可能な不純物によって起こることを提言した。20dB/km以下の決定的な減衰レベルが、1970年、米国のガラス製造業者であるコーニング・グラス・ワークス(Corning Glass Works)(現、コーニング社(Corning Incorporated))の研究者、Robert D.Maurer、Donald Keck、Peter C.Schultz、およびFrank Zimarによって初めて達成された。彼らは、石英ガラスにチタンをドープすることによって、減衰が17dB/kmのファイバを実証した。数年後、彼らは、コアのドープ剤として二酸化ゲルマニウムを使用し、減衰が僅かに4dB/kmのファイバを製造した。このような低減衰が光ファイバ遠隔通信の先駆けとなり、インターネットを可能にした。
【0008】
光ファイバは、通常、2種類以上の放射線硬化性被覆材で被覆される。これらの被覆材は、通常、光ファイバに液状で塗布した後、放射線を照射して硬化させる。被覆材の硬化に使用され得る放射線の種類は、このような被覆材の1つ以上の放射線硬化性成分の重合を開始させることができるものでなければならない。このような被覆材の硬化に適した放射線は周知であり、それには紫外線(以下、「UV」)および電子線(「EB」)が挙げられる。被覆された光ファイバの製造に使用される被覆材を硬化させるのに好ましい放射線の種類は、UVである。
【0009】
光ファイバと直接接触する被覆材は一次被覆材と称され、一次被覆材を被覆する被覆材は二次被覆材と称される。光ファイバ用放射線硬化性被覆材の分野では、一次被覆材が二次被覆材より軟質であることが有利であると知られている。この構成によってもたらされる利点の1つは、マイクロベンドに対する耐性の向上である。
【0010】
マイクロベンドは、数マイクロメートルの局所的な軸のずれと数ミリメートルの空間波長を含む、光ファイバの急であるが微視的な湾曲である。マイクロベンドは、熱応力および/または機械的な横方向の力によって起こり得る。マイクロベンドが存在すると、被覆された光ファイバの信号伝送能力が低下する。従って、遠隔通信網における光ファイバの成功のために、マイクロベンドを低減することにより減衰を低減することが知られている。
【0011】
比較的軟質の一次被覆材により、光ファイバのマイクロベンディングに対する耐性が得られ、それにより信号の減衰が最小限になる。比較的硬質の二次被覆材により、被覆されたファイバをリボン化および/またはケーブル化するときに加わるような操作力に対する耐性が得られる。
【0012】
被覆材は横方向の力に対する保護を提供することができ、光ファイバをマイクロベンディングから保護するが、被覆材の直径が小さくなるにつれ、提供される保護の量が減少する。被覆材と、マイクロベンディングを生じさせる横方向の応力からの保護との関係については、例えば、D.Gloge、「Optical−fober packaging and its influence on fiber straightness and loss」、Bell System Technical Journal、第54巻、2、245(1975);W.B.Gardner、「Microbending Loss in Optical Fibers」、Bell System Technical Journal、第54巻、第2号、457頁(1975);T.Yabuta、「Structural Analysis of Jacketed Optical Fibers Under Lateral Pressure」、J.Lightwave Tech.」、第LT−1巻、第4号、529頁(1983);L.L.Blyler、「Polymer Coatings for Optical Fibers」、Chemtech、682頁(1987);J.Baldauf、「Relationship of Mechanical Characteristics of Dual Coated Single Mode Optical Fibers and Microbending Loss」、IEICE Trans.Commun.、第E76−B巻、第4号、352(1993);およびK.Kobayashi、「Study of Microbending Loss in Thin Coated Fibers and Fiber Ribbons」、IWCS、386(1993)に記載されている。
【0013】
論文、「UV−CURED POLYURETHANE−ACRYLIC COMPOSITIONS AS HARD EXTERNAL LAYERS OF TWO−LAYER PROTECTIVE COATINGS FOR OPTICAL FIBRES」、W.PodkoscielnyおよびB.Tarasiuk著、Polim.Tworz.Wielk、第41巻、第7/8号、448〜55頁、1996、NDN−131−0123−9398−2は、UV硬化ウレタン−アクリルオリゴマーの合成の最適化、および光ファイバ用硬質保護被覆材としてのそれらの使用についての研究を記載している。ヒドロキシエチルおよびヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの他に、ポーランド製のオリゴエーテルオール、ジエチレングリコール、トルエンジイソシアネート(Izocyn T−80)およびイソホロンジイソシアネートを合成に使用した。重合活性二重結合を有するこれらのウレタン−アクリルオリゴマーに、活性希釈剤(ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよび1,4−ブタンジオールアクリレートまたはこれらの混合物)、および光開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを添加した。無酸素雰囲気中で組成物をUV照射した。組成物のIRスペクトルを記録し、幾つかの物理的特性および化学的特性および機械的特性(密度、分子量、温度による粘度の変化、屈折率、ゲル含有量、ガラス転移温度、ショア硬度、ヤング率、引張強度、破断点伸び、耐熱性、および水蒸気拡散係数)を硬化の前後に測定した。論文、「PROPERTIES OF ULTRAVIOLET CURABLE POLYURETHANE−ACRYLATES」(M.Koshiba、K.K.S.Hwang、S.K.Foley、D.J.Yarusso、およびS.L.Cooper著、J.Mat.Sci.、17、第5号、1982年5月、1447〜58頁;NDN−131−0063−1179−2に掲載)は、イソホロンジイソシアネートおよびTDIをベースにするUV硬化ポリウレタン−アクリレートの化学構造と物理的特性との関係について行った研究を記載している。ソフトセグメント分子量および架橋剤含有量を変えて、2つの系を製造した。動的機械的試験の結果から、ソフトセグメントの分子量に応じて、1相または2相の材料が得られる可能性があることが分かった。後者が増加するにつれ、ポリオールのTgは低温側にシフトした。N−ビニルピロリドン(NVP)またはポリエチレングリコールジアクリレート(PECDA)の使用量が増加すると、ヤング率および極限引張強度が増大した。NVP架橋により、2相材料の靭性が増大し、高温のTgピークがより高温側にシフトしたが、PEGDAにはこれらの効果がなかった。2つの系の引張特性は略類似していた。
【0014】
通常、光ファイバに使用する放射線硬化性被覆材の製造では、イソシアネートを使用してウレタンオリゴマーを製造する。米国特許第7,135,229号明細書、「RADIATION−CURABLE COATING COMPOSITIONS」(2006年11月14日発行、DSM IPアセッツB.V.(DSM IP Assets B.V.に譲渡、第7欄、10〜32行目)を含む多くの参考文献に以下の教示が記載されており、ウレタンオリゴマーの合成方法について当業者に指針を示している:本発明の組成物の製造に使用するのに適したポリイソシアネートは、脂肪族、脂環式または芳香族であり得、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1,3−キシレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシル)イソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネート−エチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートおよび2,5(または6)−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどのジイソシアネートが挙げられる。これらのジイソシアネートのうち、2,4−トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、およびメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)が特に好ましい。これらのジイソシアネート化合物は、個々にまたは2種類以上の組み合わせで使用される。
【0015】
光ファイバ二次被覆組成物は、一般に、硬化前、1種類以上のオリゴマーを液状エチレン性不飽和希釈剤中に溶解または分散させたものからなることが多いエチレン性不飽和化合物の混合物と光開始剤を含む。被覆組成物は、通常、光ファイバに液状で塗布された後、化学線を照射して硬化させる。
【0016】
これらの組成物の多くには、反応性末端とポリマー主鎖を有するウレタンオリゴマーが使用される。さらに、組成物は一般に、反応性希釈剤、組成物をUV硬化性にする光開始剤、および他の適した添加剤を含む。
【0017】
PCT特許出願公開、国際公開第2005/026228Al号パンフレット(2004年9月17日公開、「Curable Liquid Resin Composition」、杉本(Sugimoto)、加茂(Kamo)、重本(Shigemoto)、小宮(Komiya)およびSteemangらの名前が発明人として記載されている)は、(A)ポリオール由来の構造を有し、数平均分子量が800g/mol以上、かつ6000g/mol未満であるウレタン(メタ)アクリレート、および(B)ポリオール由来の構造を有し、数平均分子量が6000g/mol以上、かつ20,000g/mol未満であるウレタン(メタ)アクリレートを含み、成分(A)と成分(B)の合計量が液状硬化性樹脂組成物の20〜95重量%であり、成分(B)の含有量が成分(A)と成分(B)の合計の0.1〜30重量%である液状硬化性樹脂組成物を記載し、特許請求している。
【0018】
ウレタンオリゴマーのポリマー主鎖として使用される材料が多数、提示されている。例えば、炭化水素ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、およびポリエステルポリオールなどのポリオールがウレタンオリゴマーに使用されてきた。ポリエステルポリオールは、市販されており、酸化安定性があり、主鎖を調整することにより被覆材の特性を調整できる汎用性があるため、特に魅力的である。ポリエステルポリオールをウレタンアクリレートオリゴマーの主鎖として使用することについては、例えば、米国特許第5,146,531号明細書、同第6,023,547,同第6,584,263号明細書、同第6,707,977号明細書、同第6,775,451号明細書、および同第6,862,392号明細書、ならびに欧州特許出願公開第539030A号明細書に記載されている。
【0019】
ウレタン前駆体のコスト、使用および取り扱いに関する問題のため、ウレタン非含有オリゴマーが被覆組成物に使用されてきた。例えば、ウレタン非含有ポリエステルアクリレートオリゴマーが、ガラス光ファイバ用放射線硬化性被覆組成物に使用されてきた。特開昭57−092552(日東電気工業株式会社)は、全て、ポリエステル主鎖の平均分子量が300以上のポリエステルジ(メタ)アクリレートを含む光学ガラス繊維用被覆材料を開示している。独国特許出願公開第04126860A1号明細書(バイエル(Bayer))は、ポリエステルアクリレートオリゴマー、反応性希釈剤として2−(N−ブチル−カルバミル)エチルアクリレート、および光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンからなる3心リボン用マトリックス材料を開示している。特願平10−243227(特開2000−072821)は、2つの二塩基酸または酸無水物でエンドキャップされ、末端にヒドロキシエチルアクリレートを有するポリエーテルジオールからなるポリエステルアクリレートオリゴマーを含む液状硬化性樹脂組成物を開示している。米国特許第6,714,712B2号明細書は、ポリ酸残基またはその酸無水物を含むポリエステルおよび/またはアルキド(メタ)アクリレートオリゴマー、任意選択により反応性希釈剤、および任意選択により光開始剤を含む放射線硬化性被覆組成物を開示している。また、Mark D.SoucekおよびAaron H.Johnsonは、「New Intramolecular Effect Observed for Polyesters:An Anomeric Effect」、JCT Research、第1巻、第2号、111頁(2004年4月)に、耐加水分解性のためのヘキサヒドロフタル酸の使用を開示している。
【0020】
放射線硬化性被覆組成物を記載し、特許請求する以下の米国特許および米国特許出願は、参照によりその内容全体が本明細書に援用される:米国特許出願第11/955935号明細書(2007年12月13日出願、米国特許出願公開第20080226916号明細書として2008年9月18日に公開);米国特許出願第11/955838号明細書(2007年12月13日出願、米国特許出願公開第20080241535号明細書として2008年10月23日に公開);米国特許出願第11/955547号明細書(2007年12月13日出願、米国特許出願公開第20080226912号明細書として2008年9月19日に公開);米国特許出願第11/955614号明細書(2007年12月13日出願、米国特許出願公開第20080226914号明細書として2008年9月19日に公開);米国特許出願第11/955604号明細書(2007年12月13日出願、米国特許出願公開第20080226913号明細書として2008年9月19日に公開);米国特許出願第11/955721号明細書(2007年12月13日出願、米国特許出願公開第20080233397号明細書として2008年9月25日に公開);米国特許出願第11/955525号明細書(2007年12月13日出願、米国特許出願公開第20080226911号明細書として2008年9月19日に公開);米国特許出願第11/955628号明細書(2007年12月13日出願、米国特許出願公開第20080226915号明細書として2008年9月19日に公開);米国特許第6,014,488号明細書(2000年1月11日発行)および米国特許出願第11/955541号明細書(2007年12月13日出願、米国特許出願公開第20080226909号明細書として2008年9月19日に公開)。
【0021】
現在、多くの光ファイバ被覆材が入手可能であるが、既存の被覆材と比較して改善された製造特性および/または性能特性を有する、新規な光ファイバ被覆材を提供することが望ましい。
【0022】
光ファイバ被覆材の技術開発の重要な推進力の1つは、映像に対する使用者の要求の高まりである。2Gネットワークアプリケーションは、既存の光ファイバ被覆材の技術で十分である。しかし、3G、4GおよびIPTVなどの将来のネットワーク、高精細度テレビジョン(HDTV)、テレビ会議、ならびに他の高帯域幅アプリケーションは、光ファイバに対してさらに高い要求を課し、そのため光ファイバ被覆材に対する要求がますます高くなるであろう。
【0023】
インターネット上の映像アプリケーションの非常に大きな要求を満たすため、次世代の遠隔通信網は、伝送の大容量化、長距離化、スペクトルの広帯域化に対応することが必要であり、現世代の光ファイバG652の性能は、長距離の直線的配置の設備向けに開発されたため、G562はファイバー・トゥー・ザ・ホーム(FTTH)の課題の要求を満たすのに適していない。
【0024】
通信信号の光伝送は家庭およびMDUに移行しているため、ガラス光ファイバは、より急な曲がりに遭遇し、光ファイバ製造業者はG657マクロベンド耐性ファイバを提供することが求められている。同時に、帯域幅に対する要求の高まりは、敷設されたネットワークで利用可能なマージンを圧迫している。
【0025】
インターネットおよび現在の遠隔通信装置において帯域幅のさらなる拡大の要求が生じているため、減衰しにくい光ファイバに対する要求も高まるであろう。減衰しにくい光ファイバに対する要求の高まりのため、光ファイバのマイクロベンディングの量を低減し、このようにして光ファイバを採用する遠隔通信システム内での減衰の量を低減する、光ファイバ用放射線硬化性被覆材として適している組成物を有することが望ましい。
【0026】
[発明の簡単な概要]
本発明の第1の態様は、放射線硬化性光ファイバ一次被覆組成物であり、本組成物は、未硬化状態で、
a)分子量約3,500g/mol〜約10,000g/molの少なくとも1種類のポリエーテルポリオールと、
b)芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類のジイソシアネートと、
c)少なくとも1種類のヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートと、
d)任意選択によりアルコールと、
の反応生成物を含む、組成物の約50重量%〜約65重量%のオリゴマー、
少なくとも2種類の反応性希釈剤モノマーを含む反応性希釈剤モノマーブレンドであって、前記ブレンド中の前記モノマーのそれぞれが少なくとも1つのフェニル基と少なくとも1つのアクリレート基を含み、次式:
【化1】



{式中、xは1〜6の整数であり;nは1〜5の整数であり;各Yは同じであってもまたは異なってもよく、独立して水素、C〜C12アルキル基、およびアルカリールアルコキシ化アクリレート基からなる群から選択される}
を有する、組成物の約30%〜約50重量%の反応性希釈剤モノマーブレンド、および
少なくとも1種類の光開始剤
を含み、
前記反応性希釈剤モノマーブレンドは非アリール反応性希釈剤モノマーを実質的に含有せず、
分子量約300未満のアリール反応性希釈剤モノマーが存在する場合、それは全配合物の約10重量%以下で存在する。
【0027】
本発明の第2の態様は、ポリオールの分子量が約3,500g/mol〜約4,500g/molである、第1の態様の被覆組成物である。
【0028】
本発明の第3の態様は、オリゴマーと反応性希釈剤モノマーブレンドの合計量が被覆組成物の約85%〜約98重量%である、第1の態様の被覆組成物である。
【0029】
本発明の第4の態様は、ジイソシアネートが、芳香族ジイソシアネートおよび脂肪族ジイソシアネートからなる群から選択される、第1の態様の被覆組成物である。
【0030】
本発明の第5の態様は、少なくとも1種類のポリオールと、少なくとも1種類のジイソシアネートと、少なくとも1種類のヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートと、任意選択によりアルコールとの反応生成物が室温で液状である、第1の態様の被覆組成物である。
【0031】
本発明の第6の態様は、光開始剤がビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドである、第1の態様の被覆組成物である。
【0032】
本発明の第7の態様は、反応性希釈剤モノマーブレンド中の反応性希釈剤モノマーが次式:
【化2】



{式中、xは1〜6の整数であり、Yは独立して水素、C〜C12アルキル基、およびアルカリールアルコキシ化アクリレート基からなる群から選択される}
を有する、第1の態様の被覆組成物である。
【0033】
本発明の第8の態様は、反応性希釈剤モノマーブレンドが、エトキシ化ノニルフェノールアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレートおよび2−フェノキシエチルアクリレートからなる群から選択される少なくとも2種類のモノマーから本質的になる、第7の態様の被覆組成物である。
【0034】
本発明の第9の態様は、光開始剤がビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドである、第8の態様の被覆組成物である。
【0035】
本発明の第10の態様は、放射線硬化性光ファイバ一次被覆組成物であり、本組成物は、未硬化状態で、
a)分子量約3,500g/mol〜約10,000g/molの少なくとも1種類のポリエーテルポリオールと、
b)芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類のジイソシアネートと、
c)少なくとも1種類のヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートと、
d)任意選択によりアルコールと、
の反応生成物を含む、組成物の約55重量%〜約65重量%のオリゴマー、
少なくとも2種類の反応性希釈剤モノマーを含む反応性希釈剤モノマーブレンドであって、前記ブレンド中の前記モノマーのそれぞれが少なくとも1つのフェニル基と少なくとも1つのアクリレート基を含み、次式:
【化3】



{式中、xは1〜6の整数であり;nは1〜5の整数であり;各Yは同じであっても、または異なってもよく、独立して水素、C〜C12アルキル基、およびアルカリールアルコキシ化アクリレート基からなる群から選択される}
を有する、組成物の約30重量%〜約50重量%の反応性希釈剤モノマーブレンド、および
少なくとも1種類の光開始剤
を含み、
前記反応性希釈剤モノマーブレンドは非アリール反応性希釈剤モノマーを実質的に含有せず、
分子量約300未満のアリール反応性希釈剤モノマーが存在する場合、それは全配合物の約10重量%以下で存在する。
【0036】
本発明の第11の態様は、反応性希釈剤モノマーブレンドが被覆組成物の約30重量%〜約42重量%を構成する、本発明の第10の態様の被覆組成物である。
【0037】
本発明の第12の態様は、放射線硬化性光ファイバ一次被覆組成物であり、本組成物は、未硬化状態で、
a)分子量約3,500g/mol〜約10,000g/molの少なくとも1種類のポリエーテルポリオールと、
b)芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類のジイソシアネートと、
c)少なくとも1種類のヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートと、
d)任意選択によりアルコールと、
の反応生成物を含む、組成物の約50重量%〜約65重量%のオリゴマー、
少なくとも2種類の反応性希釈剤モノマーを含む反応性希釈剤モノマーブレンドであって、前記ブレンド中の前記モノマーのそれぞれが少なくとも1つのフェノキシ基と少なくとも1つのアクリレート基を含み、次式:
【化4】



{式中、xは1〜6の整数であり;nは1〜5の整数であり;各Yは同じであっても、または異なってもよく、独立して水素、C〜C12アルキル基、およびアルカリールアルコキシ化アクリレート基からなる群から選択される}
を有する、組成物の約30重量%〜約50重量%の反応性希釈剤モノマーブレンド、および
少なくとも1種類の光開始剤
を含み、
前記反応性希釈剤モノマーブレンドは非アリール反応性希釈剤モノマーを実質的に含有せず、
分子量約300未満のアリール反応性希釈剤モノマーが存在する場合、それは全配合物の約10重量%以下で存在する。
【0038】
本発明の第13の態様は、少なくとも1種類のポリオールの分子量が約3,500g/mol〜約4,500g/molである、本発明の第12の態様の組成物である。
【0039】
本発明の第14の態様は、オリゴマーと反応性希釈剤モノマーブレンドの合計量が被覆組成物の約85重量%〜約98重量%である、本発明の第12の態様の組成物である。
【0040】
本発明の第15の態様は、ジイソシアネートが、芳香族ジイソシアネートと脂肪族ジイソシアネートとの混合物からなる群から選択される、本発明の第12の態様の組成物である。
【0041】
本発明の第16の態様は、少なくとも1種類のポリオールと、少なくとも1種類のジイソシアネートと、少なくとも1種類のヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートと、任意選択によりアルコールとの反応生成物が室温で液状である、本発明の第12の態様の組成物である。
【0042】
本発明の第17の態様は、ジイソシアネートが、芳香族ジイソシアネートと脂肪族ジイソシアネートとの混合物からなる群から選択される、本発明の第13の態様の組成物である。
【0043】
本発明の第18の態様は、少なくとも1種類のポリオールと、少なくとも1種類のジイソシアネートと、少なくとも1種類のヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートと、任意選択によりアルコールとの反応生成物が室温で液状である、本発明の第17の態様の組成物である。
【0044】
本発明の第19の態様は、オリゴマーと反応性希釈剤モノマーブレンドの合計量が被覆組成物の約85重量%〜約98重量%である、本発明の第18の態様の組成物である。
【0045】
本発明の第20の態様は、反応性希釈剤モノマーブレンド中の反応性希釈剤モノマーが次式:
【化5】



{式中、xは1〜6の整数であり、Yは独立して水素、C〜C12アルキル基、およびアルカリールアルコキシ化アクリレート基からなる群から選択される}
を有する、本発明の第19の態様の組成物である。
【0046】
本発明の第21の態様は、反応性希釈剤モノマーブレンドが、エトキシ化ノニルフェノールアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレートおよび2−フェノキシエチルアクリレートからなる群から選択される反応性希釈剤モノマーから本質的になる、本発明の第20の態様の組成物である。
【0047】
本発明の第22の態様は、放射線硬化性光ファイバ一次被覆組成物であり、未硬化状態で、
a)分子量約3,500g/mol〜約10,000g/molの少なくとも1種類のポリエーテルポリオールと、
b)芳香族ジイソシアネートと脂肪族ジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種類のジイソシアネートと、
c)少なくとも1種類のヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートと、
d)任意選択によりアルコールと、
の触媒反応生成物から本質的になる、組成物の約50重量%〜約65重量%のオリゴマー、
少なくとも2種類の反応性希釈剤モノマーから本質的になる反応性希釈剤モノマーブレンドであって、前記ブレンド中の前記モノマーのそれぞれが少なくとも1つのフェニル基と少なくとも1つのアクリレート基を含み、次式:
【化6】



{式中、xは1〜6の整数であり;nは1〜5の整数であり;各Yは同じであっても、または異なってもよく、独立して水素、C〜C12アルキル基、およびアルカリールアルコキシ化アクリレート基からなる群から選択される}
を有する、組成物の約30重量%〜約50重量%の反応性希釈剤モノマーブレンド、および
少なくとも1種類の光開始剤
から本質的になり、
前記反応性希釈剤モノマーブレンドは非アリール反応性希釈剤モノマーを実質的に含有せず、
分子量約300未満のアリール反応性希釈剤モノマーが存在する場合、それは全配合物の約10重量%以下で存在する。
【0048】
本発明の第23の態様は、ファイバ上で硬化した後のin−situ弾性率が約0.1MPa〜約0.45MPaである、本発明の第1の態様、第10の態様、第12の態様、または第22の態様のいずれか1つの被覆組成物である。
【0049】
本発明の第24の態様は、ファイバ上で硬化した後のin−situ Tgが約−50℃未満である、本発明の第1の態様、第10の態様、第12の態様、または第22の態様のいずれか1つの被覆組成物である。
【0050】
本発明の第25の態様は、in−situ Tgが約−55℃未満である、第24の態様の被覆組成物である。
【0051】
本発明の第26の態様は、被膜として硬化した後の−60℃におけるE’が約2100MPa以下である、本発明の第1の態様、第10の態様、第12の態様、または第22の態様のいずれか1つの被覆組成物である。
【0052】
本発明の第27の態様は、E’が約1800MPa〜約2100MPaである、第25の態様の被覆組成物である。
【0053】
本発明の第28の態様は、ファイバ上で硬化した後のtanδが約0.18〜約0.24である、本発明の第1の態様、第10の態様、第12の態様、または第22の態様のいずれか1つの被覆組成物である。
【0054】
本発明の第29の態様は、被覆組成物で被覆された光ファイバであり、本被覆組成物は、未硬化状態で、
a)分子量約3,500g/mol〜約10,000g/molの少なくとも1種類のポリエーテルポリオールと、
b)芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類のジイソシアネートと、
c)少なくとも1種類のヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートと、
d)任意選択によりアルコールと、
の反応生成物を含む、組成物の約50重量%〜約65重量%のオリゴマー、
少なくとも2種類の反応性希釈剤モノマーを含む反応性希釈剤モノマーブレンドであって、前記ブレンド中の前記モノマーのそれぞれが、少なくとも1つのフェニル基と少なくとも1つのアクリレート基を含み、次式:
【化7】



{式中、xは1〜6の整数であり;nは1〜5の整数であり;各Yは同じであっても、または異なってもよく、独立して水素、C〜C12アルキル基、およびアルカリールアルコキシ化アクリレート基からなる群から選択される}
を有し、
前記反応性希釈剤モノマーブレンドがフェニル基のない反応性希釈剤モノマーを実質的に含有しない、組成物の約30重量%〜約50重量%の反応性希釈剤モノマーブレンド、および
少なくとも1種類の光開始剤
を含む。
【0055】
本発明の第30の態様は、1625nm、−60℃、第2サイクルにおける最大マイクロベンド感受性が0.2dB/km未満である、第29の態様の光ファイバである。
【0056】
本発明の第31の態様は、1625nm、−60℃、第2サイクルにおける最大マイクロベンド感受性が約0.01〜約0.15dB/kmである、第30の態様の光ファイバである。
【0057】
本発明の第32の態様は、1625nm、−60℃、第2サイクルにおける最大マイクロベンド感受性が約0.012〜0.146dB/kmである、第31の態様の光ファイバである。
【0058】
本発明の第33の態様は、少なくとも1種類のポリエーテルポリオールが分子量約4,000g/molのポリプロピレングリコールである、本発明の第1の態様、第10の態様、第12の態様、または第22の態様のいずれか1つの被覆組成物である。
【0059】
本発明の第34の態様は、本発明の第1の態様、第10の態様、第12の態様、または第22の態様のいずれか1つの一次被覆組成物で被覆された光ファイバである。
【0060】
本発明の第35の態様は、初期硬化後、および85℃、相対湿度85%で1ヶ月エージングした後、%RAUが約84%〜約99%である、本発明の第1の態様、第10の態様、第12の態様、または第22の態様のいずれか1つの一次被覆組成物で被覆された光ファイバである。
【0061】
本発明の第36の態様は、1625nm、−60℃、第2サイクルにおける最大マイクロベンド感受性が約0.012〜0.146dB/kmである、本発明の第1の態様、第10の態様、第12の態様、または第22の態様のいずれか1つの一次被覆組成物で被覆された光ファイバである。
【0062】
本発明の第37の態様は、放射線硬化性光ファイバ一次被覆組成物であり、本組成物は、未硬化状態で、
a)分子量3500g/mol〜10000g/molの少なくとも1種類のポリエーテルポリオールと、
b)芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類のジイソシアネートと、
c)少なくとも1種類のヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートと、
d)任意選択によりアルコールと、
の反応生成物を含む、組成物の50重量%〜65重量%のオリゴマー、
少なくとも2種類の反応性希釈剤モノマーを含む反応性希釈剤モノマーブレンドであって、前記ブレンド中の前記モノマーのそれぞれが少なくとも1つのフェニル基またはフェノキシ基、および少なくとも1つのアクリレート基を含み、次式:
【化8】



{式中、xは1〜6の整数であり;nは1〜5の整数であり;各Yは同じであっても、または異なってもよく、独立して水素、C〜C12アルキル基、およびアルカリールアルコキシ化アクリレート基からなる群から選択される}
を有し、前記反応性希釈剤モノマーブレンドが非アリール反応性希釈剤モノマーを実質的に含有しない、組成物の30重量%〜50重量%の反応性希釈剤モノマーブレンド、および
少なくとも1種類の光開始剤
を含み;
分子量300未満のアリール反応性希釈剤モノマーが存在する場合、それは全配合物の約10重量%以下で存在する。
【0063】
本発明の第38の態様は、ポリオールの分子量が3500g/mol〜4500g/mol、好ましくは約4000g/molである、第37の態様の被覆組成物である。
【0064】
本発明の第39の態様は、組成物が、未硬化状態で、オリゴマーを組成物の55重量%〜65重量%含む、第37の態様または第38の態様の被覆組成物である。
【0065】
本発明の第40の態様は、オリゴマーと反応性希釈剤モノマーブレンドの合計量が被覆組成物の85重量%〜98重量%である、第37の態様〜第39の態様のいずれか1つの被覆組成物である。
【0066】
本発明の第41の態様は、少なくとも1種類のジイソシアネートが、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、ならびに芳香族ジイソシアネートと脂肪族ジイソシアネートとの混合物からなる群から選択される、第37の態様〜第40の態様のいずれか1つの被覆組成物である。
【0067】
本発明の第42の態様は、少なくとも1種類のポリオールと、少なくとも1種類のジイソシアネートと、少なくとも1種類のヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートと、任意選択によりアルコールとの反応生成物が室温で液状である、第37の態様〜第41の態様のいずれか1つの被覆組成物である。
【0068】
本発明の第43の態様は、光開始剤がビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドまたは2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイドである、第37の態様〜第42の態様のいずれか1つの被覆組成物である。
【0069】
本発明の第44の態様は、反応性希釈剤モノマーブレンド中の反応性希釈剤モノマーが次式:
【化9】



{式中、xは1〜6であり、Yは独立して水素、C〜C12アルキル基、およびアルカリールアルコキシ化アクリレート基からなる群から選択される}
を有する、第37の態様〜第43の態様のいずれか1つの被覆組成物である。
【0070】
本発明の第45の態様は、反応性希釈剤モノマーブレンドが、エトキシ化ノニルフェノールアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレートおよび2−フェノキシエチルアクリレートからなる群から選択される少なくとも2種類のモノマーから本質的になる、第37の態様〜第44の態様のいずれか1つの被覆組成物である。
【0071】
本発明の第46の態様は、反応性希釈剤モノマーブレンドが被覆組成物の30重量%〜42重量%を構成する、第37の態様〜第45の態様のいずれか1つの被覆組成物である。
【0072】
本発明の第47の態様は、酸化防止剤、接着促進剤、光安定剤、禁止剤、潜在酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の添加剤をさらに含む、第37の態様〜第46の態様のいずれか1つの被覆組成物である。
【0073】
本発明の第48の態様は、前記被覆組成物が以下の特性:
− ファイバ上で硬化した後のin−situ弾性率、0.1MPa〜0.45MPa、
− ファイバ上で硬化した後のin−situ Tg、−50℃未満、好ましくは−55℃未満、および/または
− ファイバ上で硬化した後のtanδ、0.18〜0.24、および/または
− 被膜として硬化した後の−60℃における貯蔵弾性率E’、2100MPa以下、好ましくは1800MPa〜2100MPa、
を有する、第37の態様〜第47の態様のいずれか1つの被覆組成物である。
【0074】
本発明の第49の態様は、第37の態様〜第48の態様のいずれか1つの被覆組成物で被覆された光ファイバである。
【0075】
本発明の第50の態様は、1625nm、−60℃、第2サイクルにおける最大マイクロベンド感受性が、0.2dB/km未満、好ましくは0.01〜0.15dB/km、より好ましくは0.012〜0.146dB/kmである、本発明の第49の態様の光ファイバである。
【0076】
本発明の第51の態様は、初期硬化後、および85℃、相対湿度85%で1ヶ月エージングした後、%RAUが84%〜99%である、第49の態様または第50の態様の光ファイバである。
【0077】
本発明は、新規な光硬化性組成物、より詳細には、光ファイバ用放射線硬化性一次被覆材として使用するのに適した新規な組成物を提供する。本発明は、また、本明細書に記載の一次被覆組成物が当該技術分野で既知のように被覆され、硬化された光ファイバも提供する。
【0078】
本発明の放射線硬化性一次被覆組成物は、オリゴマー、少なくとも2種類の反応性希釈剤モノマー、および光開始剤を含む。
【0079】
反応性希釈剤モノマーは、本明細書では、反応性モノマーブレンドまたは反応性モノマー混合物と称されることもある。しかし、当業者には、オリゴマーと混合する前に、反応性モノマー同士をブレンドまたは混合する必要がないことが分かるであろう。従って、本発明の新規な組成物は、組成物の成分を一緒に混合またはブレンドする順番に左右されない。本発明の組成物に使用するのに適した反応性希釈剤モノマーのそれぞれが、少なくとも1つのフェニル基またはフェノキシ基を含む。フェニル基またはフェノキシ基を含まないモノマーは、通常、当該技術分野ではアルキルモノマーと理解される。アルキルモノマーとしては、例えば、アルキルアクリレート(例えば、イソデシルアクリレート(IDA)、イソボルニルアクリレート(IBOA)およびラウリルアクリレートを含む)、およびビニルカプロラクタムなどのカプロラクタムが挙げられる。アルキルアクリレートを含むアルキルモノマーは揮発性であり、それらは、通常、組成物の硬化速度を遅くする。揮発性成分は、線引タワーで処理する時、被覆材から蒸発し易く、その結果、許容できない臭気が発生したり、コーティングカップ、ダイス、およびファイバを取り囲む石英管に付着物が生じたりすることがある。これらの付着物によって、塗布が困難になる、および/または、石英管を透過する紫外線量が減少するため硬化度が低下するおそれがある。また、アルキルモノマーは他のモノマーより結晶性が高いため、とりわけ低温で、より大きいマイクロベンディングが起こるおそれがある。従って、アルキルモノマーは、本発明の一次被覆組成物に使用するのに望ましい反応性希釈剤モノマーではなく、回避されなければならないが、このようなアルキルモノマーは少量であれば許容できる。例えば、組成物の約0.5重量%以下の量のアルキルモノマーは許容可能であり、これは本発明から逸脱するものではない。好ましくは、一次被覆組成物は、組成物の重量に基づいて約0.4重量%未満のアルキルモノマー、好ましくは約0.3重量%未満のアルキルモノマー、好ましくは約0.2重量%未満のアルキルモノマー、好ましくは約0.1重量%未満のアルキルモノマーを含む。従って、本発明の実施形態では、モノマーブレンドは、フェニル基のない、またはフェノキシ基のない反応性希釈剤モノマーを実質的に含有しない。
【0080】
理論に拘束されることを望むものではないが、本出願人らは、本明細書に記載のオリゴマーおよび反応性希釈剤モノマーを使用して放射線硬化性被覆組成物を製造すると、改善された特性を有する一次被覆組成物が得られることを見出した。
【0081】
本発明は、新規な光硬化性組成物、より詳細には、光ファイバ用一次被覆材として使用するのに適した放射線硬化性組成物を提供する。本出願人らは、本発明の一次被覆組成物を使用して、本発明の組成物で被覆された光ファイバを製造すると、従来の被覆材と比較して、硬化後に、低温でのマイクロベンド感受性が改善され、揮発性が低下し、結晶性が低下した光ファイバが得られることを見出した。従って、別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の一次組成物で被覆された光ファイバを提供する。一次被覆組成物を、当該技術分野で既知のように塗布し、硬化して光ファイバを形成する。光ファイバの製造にはウェットオンウェット法およびウェットオンドライ法を使用することができる。
【0082】
本発明の一次被覆組成物は、特にシングルモードファイバに有用であり、改善されたマイクロベンディング性能を付与し、帯域幅に対する要求を満たし、減衰損失を低減する。本発明の一次被覆組成物は、次の波長:1310nm、1490nm、1550nm、および1625nmで有用である。一次被覆組成物によって、広い温度範囲にわたりマイクロベンド感受性が最小限になり、製造および設置公差をより大きく取ることができる。一次被覆組成物は、マイクロベンド感受性を低減し、速いライン速度で処理することができ、様々な環境条件で安定な特性を示す。
【0083】
[発明の詳細な説明]
本発明は、未硬化時および硬化後に、低in−situ弾性率、低Tg、速い硬化速度、低揮発性、および低結晶性の組み合わせを含む、改善された特性を有する一次被覆組成物を提供する。これらの特性は、オリゴマー組成物および組成物を構成するモノマーの組み合わせによって達成される。硬化速度、およびガラスファイバへの一次被覆材の接着等を改善するために、好ましくは(1種類以上の)光開始剤と添加剤が組成物に含まれる。被覆されたファイバは、本発明の一次被覆組成物により、−60℃などの低温条件下でも優れたマイクロベンディング耐性を有する。
【0084】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1種類のポリエーテルポリオールと、少なくとも1種類のジイソシアネートと、少なくとも1種類のヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートとを含むオリゴマー;少なくとも2種類の反応性希釈剤モノマーを含む反応性希釈剤モノマーブレンド;および、少なくとも1種類の光開始剤を含む放射線硬化性光ファイバ一次被覆組成物を提供する。組成物は、また、酸化防止剤、接着促進剤、光安定剤、禁止剤、潜在酸および光増感剤を含む1種類以上の添加剤を含むことができる。
【0085】
本発明の実施形態に従って、反応性希釈剤モノマーのそれぞれが、少なくとも1つのフェニル基と少なくとも1つのアクリレート基を含み、次式:
【化10】



{式中、xは1〜6の整数であり;nは1〜5の整数であり;各Yは同じであっても、または異なってもよく、独立して水素、C〜C12アルキル基、およびアルカリールアルコキシ化アクリレート基からなる群から選択される}を有する。好ましくは、反応性希釈剤モノマーブレンドまたは混合物は、分子中に少なくとも1つのフェニル基または少なくとも1つのフェノキシ基を有していないアルキルモノマーを実質的に含有しない。好ましくは、反応性希釈剤モノマーのそれぞれが単独でフェニル基もしくはフェノキシ基を含むか、または、反応性希釈剤モノマーブレンドを構成するもしくは反応性希釈剤モノマー混合物を構成する反応性希釈剤モノマーのそれぞれが、フェニル基もしくはフェノキシ基を含む。
【0086】
一実施形態では、本発明は、少なくとも1種類のポリエーテルポリオールと、少なくとも1種類のジイソシアネートと、少なくとも1種類のヒドロキシル末端アクリレートと、任意選択によりアルコールとの触媒反応生成物から本質的になるオリゴマー;少なくとも2種類の反応性希釈剤モノマーから本質的になる反応性希釈剤モノマーブレンド;少なくとも1種類の光開始剤;および少なくとも1種類の添加剤から本質的になる放射線硬化性光ファイバ一次被覆組成物を提供する。好ましくは、添加剤は、酸化防止剤、接着促進剤、光安定剤、禁止剤、潜在酸およびこれらの混合物からなる群から選択される。さらに、組成物は、2種類以上の酸化防止剤、接着促進剤、光安定剤、禁止剤または潜在酸を含んでもよい。
【0087】
比較的低いin−situ弾性率および低Tgが達成されるように、一次被覆組成物中のオリゴマーは分子量が大きい。この結果、硬化速度が遅くなるため、より速い光開始剤系が好ましい。好ましい光開始剤は、イルガキュア(Irgacure)819(BAPO)である。ポリエーテルポリオールは低Tg、低粘度、および非結晶性を有する。
【0088】
本出願全体を通して、次の略語は表示した意味を有する:
【0089】
【表1】



【0090】
本発明の被覆組成物に適したオリゴマーは、少なくとも1種類のポリエーテルポリオールと、少なくとも1種類のジイソシアネートと、少なくとも1種類のヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートと、任意選択によりアルコールとの反応によって製造される。以下のオリゴマー合成法は、2つの異なるオリゴマー合成法を説明する。しかし、当業者には、オリゴマーがアルケニル基またはビニル基などの少なくとも1つの末端不飽和基を有するウレタン主鎖を含む限り、他の合成法も使用できることが分かるであろう。
【0091】
オリゴマー合成−方法Aは、「アウトサイド・イン」法としても知られ、まずイソシアネートをヒドロキシル末端アクリレートまたはメタクリレートと反応させた後、ポリオールと反応させる。
【0092】
ジイソシアネートと禁止剤との混合物に、温度が40℃を超えないように制御してHEAを添加する。所望のNCO含有量に達するように混合物を40℃で2時間反応させる。次いで、ポリオールと触媒を添加し、NCO含有量が0.10以下になるまで混合物を80℃で2時間以上反応させる。
【0093】
オリゴマー合成−方法Bは、「インサイド・アウト」法としても知られ、まずイソシアネートをポリオールと反応させた後、ヒドロキシル末端アクリレートまたはメタクリレートと反応させる。
【0094】
ジイソシアネート、ポリオールおよび禁止剤の混合物に触媒を添加する。所望のNCO含有量に達するように、混合物を60℃で2時間反応させる。次いで、HEAを添加し、NCO含有量が0.05以下になるまで混合物を85℃で1時間以上反応させる。
【0095】
本発明のオリゴマーの製造に適したポリエーテルポリオールは、好ましくはポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールからなる群から選択される。一実施形態では、ポリエーテルポリオールはポリプロピレングリコールである。
【0096】
本発明のオリゴマーの製造に適したポリプロピレングリコールの分子量は、約3,500g/mol〜約10,000g/molである。一実施形態では、ポリプロピレングリコールの分子量は、約3,500g/mol〜約8,500g/mol、より好ましくは約3,500g/mol〜約6,500g/molである。特に好ましい実施形態では、ポリプロピレングリコールの分子量は、約3,500g/mol〜約4,500g/molである。例示的な好ましいポリプロピレングリコールは、アクレイム4200(バイエルから入手可能)として知られる分子量4,000g/molのポリプロピレングリコールであり、これはプロピレンオキサイドをベースにする分子量4,000のジオールである。従って、本発明に従い、分子量約3,500g/mol、4,000g/mol、4,500g/mol、5,000g/mol、5,500g/mol、6,000g/mol、6,500g/mol、7,000g/mol、7,500g/mol、8,000g/mol、8,000g/mol、8,500g/mol、9,000g/mol、9,500g/molおよび10,000g/molのポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールを含むポリエーテルポリオールが適している。
【0097】
幾つかの実施形態では、オリゴマーは、2種類以上のポリオールを含むことができる。本発明に従い、オリゴマーの製造に2種類以上のポリオールを使用する場合、ポリオール成分の平均分子量は、約3,500g/mol〜約10,000g/mol、好ましくは約3,500g/mol〜約8,500g/mol、より好ましくは約3,500g/mol〜約6,500g/mol、最も好ましくは約3,500g/mol〜約4,500g/molである。例えば、2種類以上のポリオールを使用する場合、ポリオールのそれぞれの分子量は、本明細書に記載のように約3500g/mol〜約10,000g/molであってもよい。あるいは、幾つかの実施形態では、2種類以上のポリオールを使用する場合、本明細書に記載のように分子量約3,500g/mol〜約10,000g/molのポリオールの少なくとも1つを、ポリオール成分の平均分子量が本明細書に記載のように約3,500g/mol〜約10,000g/molとなるような量で使用する。
【0098】
本発明に従い、オリゴマーは、オリゴマーを高分子量にする、例えば、約5,000g/mol〜約11,000g/molにするのに適切な量のポリエーテルポリオールを含む。好ましくは、オリゴマーの分子量は、約6,000g/mol〜約10,000g/mol、より好ましくは約6,500g/mol〜約9,500g/molである。脂肪族オリゴマー、即ち、脂肪族ジイソシアネートで製造されたものは、好ましくは分子量が約6,500g/mol〜約8,000g/molである。従って、分子量約6,500g/mol、約7,000g/mol、約7,500g/mol、約8,000g/molの脂肪族オリゴマーが適している。芳香族オリゴマー、即ち、芳香族ジイソシアネートで製造されたものは、好ましくは分子量が約8,500〜約9,500g/molである。適した芳香族オリゴマーの分子量は、約8,500g/mol、9,000g/molおよび9,500g/molである。
【0099】
放射線硬化性被覆組成物は、分子量約4,000g/molのポリエーテルポリオールを約40重量%〜約60重量%、または約45重量%〜約55重量%含む。ポリエーテルポリオールの適切な量としては、約40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%、約46重量%、約47重量%、約48重量%、約49重量%、約50重量%、約51重量%、約52重量%、約53重量%、約54重量%、約55重量%、約56重量%、約57重量%、約58重量%、約59重量%、および約60重量%が挙げられる。ポリエーテルポリオールは、好ましくはポリプロピレングリコールである。より好ましくは、ポリエーテルポリオールは、分子量約4,000g/molのポリプロピレングリコールである。
【0100】
一実施形態では、本発明の一次被覆組成物は、約4000MWのポリプロピレングリコールを約53重量%含む。例えば、ポリプロピレングリコール含有量が53.03%で適切である、実施例1〜4を参照されたい。
【0101】
一実施形態では、一次被覆組成物は、約4000MWのポリプロピレングリコールを約58重量%含む。例えば、ポリプロピレングリコール含有量が57.63%で適切である、実施例13〜16を参照されたい。
【0102】
一実施形態では、一次被覆組成物は、約4000MWのポリプロピレングリコールを約46重量%含む。例えば、ポリプロピレングリコール含有量が45.78%で適切である、実施例5〜12を参照されたい。
【0103】
一実施形態では、一次被覆組成物は、約4000MWのポリプロピレングリコールを約51重量%含む。例えば、ポリプロピレングリコール含有量が50.91%で適切である、実施例17を参照されたい。
【0104】
本発明のオリゴマーの製造に適したジイソシアネートは、任意の適した種類のもの、例えば、芳香族ジイソシアネートまたは脂肪族ジイソシアネート(これらの混合物を含む)などであってもよい。適したジイソシアネートは当該技術分野で既知であり、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トルエンジイソシアネート(TDI、BASFから入手可能な2,4−異性体80%と2,6−異性体20%の混合物、およびTDS、トルエンジイソシアネートの2,4−異性体100%)が挙げられる。
【0105】
一実施形態では、ジイソシアネートは、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0106】
一実施形態では、ジイソシアネートは、芳香族ジイソシアネートまたは脂肪族ジイソシアネートであり、これらの混合物ではない。
【0107】
適した芳香族ジイソシアネートとしては、TDIおよびTDSが挙げられる。一実施形態では、芳香族ジイソシアネートはTDSである。
【0108】
オリゴマーの製造に使用されるヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートは、望ましくはヒドロキシエチルアクリレート(HEA)などのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、またはポリプロピレングリコールモノアクリレート(ECEMから入手可能なPPA6)、トリプロピレングリコールモノアクリレート(TPGMA)、カプロラクトンアクリレート、およびペンタエリトリトールトリアクリレート(例えば、サートマーから入手可能なSR444)からなる群から選択されるアクリレートである。一実施形態では、ヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートは、好ましくはHEAである。
【0109】
本発明の放射線硬化性一次被覆組成物は、ヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートを約1%〜約5%含む。ヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートの適切な量としては、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、および約5重量%が挙げられる。
【0110】
一実施形態では、本発明の被覆組成物は、HEAを約2.1重量%含む。例えば、HEA含有量が2.12%(実施例13)および2.09%(実施例14および15)で適切である実施例13、14および15を参照されたい。
【0111】
別の好ましい実施形態では、一次被覆組成物は、HEAを約1.7重量%含む。例えば、HEA含有量が1.72%で適切である、実施例1〜4を参照されたい。
【0112】
さらに別の好ましい実施形態では、一次被覆組成物は、HEAを約1.5重量%含む。例えば、HEA含有量が1.48%で適切である、実施例17を参照されたい。
【0113】
さらにまた別の好ましい実施形態では、一次被覆組成物は、HEAを約1.2重量%含む。例えば、HEA含有量が1.24%で適切である、実施例5〜12を参照されたい。
【0114】
さらにまた別の好ましい実施形態では、一次被覆組成物は、HEAを約1.8重量%含む。例えば、HEA含有量が1.82%で適切である、実施例16を参照されたい。
【0115】
本発明の幾つかの実施形態では、組成物のオリゴマーの製造にアルコールを、好ましくはヒドロキシル末端アクリレートまたはメタクリレートと組み合わせて使用することができる。適したアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、およびオクタノール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。オリゴマーの合成にアルコールを使用する効果の1つには、ウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート官能基を変化させ、このようにして最終被覆材の弾性率に影響を及ぼすことがある。
【0116】
光ファイバ用放射線硬化性被覆材に使用されるウレタンをベースにするオリゴマーを合成するための触媒は、当該技術分野で既知である。触媒は、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、2−メチルトリエチレンアミン、ジブチルスズジラウレート(DBTDL);以下に限定されるものではないが、ネオデカン酸ビスマス(CAS34364−26−6)などの有機ビスマス触媒、ネオデカン酸亜鉛(CAS27253−29−8)、ネオデカン酸ジルコニウム(CAS39049−04−2)、および2−エチルヘキサン酸亜鉛(CAS136−53−8)を含む金属カルボン酸塩;以下に限定されるものではないが、ドデシルベンゼンスルホン酸(CAS27176−87−0)、およびメタンスルホン酸(CAS75−75−2)を含むスルホン酸類;以下に限定されるものではないが、1,2−ジメチルイミダゾール(CAS1739−84−0)、およびジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)(CAS280−57−9、強塩基)、およびトリフェニルホスフィンを含むアミノまたは有機塩基触媒;以下に限定されるものではないが、ジルコニウムブトキシド(ジルコン酸テトラブチル)(CAS1071−76−7)、およびチタンブトキシド(チタン酸テトラブチル)(CAS5593−70−4)を含むジルコニウムおよびチタンのアルコキシド;ならびに、以下に限定されるものではないが、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(CAS番号374683−44−0)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(CAS番号284049−75−8)、およびN−ブチル−4−メチルピリジニウムクロライド(CAS番号125652−55−3)、およびテトラデシル(トリヘキシル)ホスホニウムなどのイオン性液状ホスホニウム塩、イミダゾリウム塩、およびピリジニウム塩からなる群から選択される。
【0117】
これらの触媒は全て市販されている。
【0118】
オリゴマー合成に使用される触媒の量は、全被覆組成物の重量に基づいて約0.01%〜約3%である。
【0119】
一実施形態では、触媒はDBTDLであるか、またはCosChemから入手可能な「COSCAT 83」の商標登録を有する有機ビスマス触媒などの有機ビスマス触媒である。
【0120】
オリゴマーの製造は、反応中のアクリレートの重合を抑制するのに使用される重合禁止剤の存在下で行われる。重合禁止剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノンおよびその誘導体(メチルエーテルヒドロキノンおよび2,5−ジブチルヒドロキノンなど);3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン;メチル−ジ−tert−ブチルフェノール;および2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等からなる群から選択される。一実施形態では、重合禁止剤はBHTである。
【0121】
一実施形態では、少なくとも1種類のポリオールと、少なくとも1種類のジイソシアネートと、少なくとも1種類のヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートと、任意選択によりアルコールとの反応生成物は、室温で液状である。
【0122】
被覆組成物中のオリゴマーの量は、他の考慮事項の中でもとりわけ、被覆材の適切な粘度および所望の機械的特性が得られるように選択される。
【0123】
本発明に従い、一次被覆組成物は、未硬化状態で、被覆組成物に適切な粘度および所望の機械的特性を付与する量のオリゴマーを含む。通常、一次被覆組成物は、オリゴマーを約50重量%〜約70重量%含み、より例示的には一次被覆組成物は、オリゴマーを約55重量%〜約65重量%、オリゴマーを約55重量%〜約60重量%含む。オリゴマーの適切な量としては、約50重量%、約51重量%、約52重量%、約53重量%、約54重量%、約55重量%、約56重量%、約57重量%、約58重量%、約59重量%、約60重量%、約61重量%、約62重量%、約63重量%、約64重量%、約65重量%、約66重量%、約67重量%、約68重量%、約69重量%、および約70重量%が挙げられる。
【0124】
一実施形態では、一次被覆組成物は、オリゴマーを少なくとも約50重量%含む。例えば、オリゴマー含有量が50.01%で適切である、実施例5〜8を参照されたい。
【0125】
別の実施形態では、一次被覆組成物は、オリゴマーを少なくとも約53重量%含む。例えば、オリゴマー含有量が53.09%で適切である、実施例13〜17を参照されたい。
【0126】
さらに別の実施形態では、一次被覆組成物は、オリゴマーを少なくとも約58重量%含む。例えば、オリゴマー含有量が58.50%および59.60%で適切である、実施例1〜4を参照されたい。
【0127】
さらにまた別の実施形態では、一次被覆組成物は、オリゴマーを少なくとも約65重量%含む。例えば、実施例9〜12を参照されたい。
【0128】
放射線硬化性一次被覆組成物は、反応性希釈剤モノマーブレンドまたは反応性希釈剤モノマー混合物と称されることがある、少なくとも2種類の反応性希釈剤モノマーを含む。
【0129】
使用できる反応性希釈剤モノマーの1種は、芳香族基としても知られるアリールを有する化合物である。芳香族基を有する希釈剤モノマーの特定の例としては、エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールフェニルエーテルアクリレート、ポリプロピレングリコールフェニルエーテルアクリレート、および上記のモノマーのアルキル置換フェニル誘導体(ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテルアクリレートなど)が挙げられる。例示的な好ましい反応性希釈剤モノマーには、エトキシ化ノニルフェノールアクリレート(例えば、コグニス(Cognis)から入手可能なフォトマー(Photomer)4066;サートマーから入手可能なSR504D)、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(例えば、サートマーから入手可能なSR349)、および2−フェノキシエチルアクリレート、別名、PEA(例えば、サートマーから入手可能なSR339)がある。これらのアリール希釈剤モノマーは、様々な分子量を有する。2−フェノキシエチルアクリレート、別名、PEAは、約300未満の非常に低い分子量を有する。2−フェノキシエチルアクリレート、別名、PEAは、分子量が小さいため、揮発性であることが知られている。従って、低分子量(300以下;250以下;200以下)のアリールモノマーが存在する場合、本発明の組成物中におけるこの低分子量アリールモノマーの重量パーセントは、約10%未満とすべきであることに留意することが重要である。
【0130】
本出願人らは、フェニル基またはフェノキシ基を有していない反応性希釈剤モノマーを実質的に含有しない一次被覆組成物に、本発明の2種類の反応性希釈剤モノマーを使用すると、以下に限定されるものではないが、速い硬化速度、低揮発性、低臭および低結晶性を含む、優れた特性を有する一次被覆組成物が得られることを見出した。被覆材中に非アリール希釈剤モノマーが存在する場合の結果を、アリールモノマーしか存在しない場合の結果と比較して示すため、比較例1〜4を参照されたい。比較例は、ゲル化時間の遅延、揮発性の増加および/または臭気の増加および/または結晶性の増加によって示される、脂肪族希釈剤モノマーの存在の有害な影響を明確に示す。
【0131】
一実施形態では、反応性希釈剤モノマーはそれぞれ、少なくとも1つのフェニル基と少なくとも1つのアクリレート基を有する。
【0132】
他の実施形態では、反応性希釈剤モノマーブレンドは、2種類または3種類の反応性希釈剤モノマーを含み、反応性希釈剤モノマーのそれぞれが、少なくとも1つのフェニル基と少なくとも1つのアクリレート基を有する。
【0133】
例として、適した反応性希釈剤モノマーは、少なくとも1つのフェニル基と少なくとも1つのアクリレート基を含み、次式:
【化11】



{式中、xは1〜6の整数であり、好ましくはxは1〜4の整数である}を有する。好ましい実施形態では、xは1、2、または4である。
【0134】
本発明に従い、反応性希釈剤モノマーのフェニル環は、少なくとも1つのY置換基で置換されており、nはY置換基の数である。
【0135】
通常、nは0〜5の整数である。特に好ましい実施形態では、nは1である。
【0136】
本発明に従って、Y置換基はフェニル環上の任意の適切な位置を占めることができる。例えば、nが1のとき、Y置換基は、エトキシ化アクリレート部分に対してオルト位、メタ位、またはパラ位とすることができる。一実施形態では、nが1のとき、Yはパラ位にある。
【0137】
例示的なY置換基としては、アルキル基、およびアルカリールアルコキシ化アクリレート基(例えば、4−(イソプロピル−2−イル)−2−フェノキシエチルアクリレートなど)が挙げられる。幾つかの実施形態では、各Yは、独立してC〜C12アルキル基、およびアルカリールアルコキシ化アクリレート基からなる群から選択される。
【0138】
適したC〜C12アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどの直鎖および分岐鎖アルキル基(これらのイソ−、sec−、tert−アルキル誘導体を含む)が挙げられる。
【0139】
〜C12アルキル基は、さらに置換されていてもよい。
【0140】
一実施形態では、C〜C12アルキル基は、Cアルキル、即ち、ノニルである。
【0141】
他の例として、希釈剤モノマーブレンドは、エトキシ化ノニルフェノールアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、および2−フェノキシエチルアクリレートからなる群から選択される少なくとも2種類のモノマーから本質的になる、即ち、モノマーのそれぞれが次式:
【化12】



{xは1〜6であり、Yは独立して水素、C〜C12アルキル基、およびアルカリールアルコキシ化アクリレート基からなる群から選択される}
を有する。
【0142】
一実施形態では、Y、xおよびnは、反応性希釈剤モノマーがエトキシ化ノニルフェノールアクリレート(例えば、SR504D)、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(例えば、SR349)、および2−フェノキシエチルアクリレート(例えば、SR339)からなる群から選択されるように選択される。
【0143】
低分子量(300以下;250以下;200以下)のアリールモノマーが存在する場合、組成物中におけるこの低分子量アリールモノマーの重量パーセントを約10%未満とすべきであることに留意することが重要である。
【0144】
本発明に従って、少なくとも2種類の反応性希釈剤モノマーは、一次被覆組成物の約30重量%〜約50重量%を構成する。一実施形態では、被覆組成物は、反応性希釈剤モノマーを約30%〜約42%含む。少なくとも2種類の反応性希釈剤モノマーの適切な量としては、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%、約36重量%、約37重量%、約38重量%、約39重量%、約40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%、約46重量%、約47重量%、約48重量%、約49重量%、および約50重量%が挙げられる。
【0145】
本発明の放射線硬化性一次被覆組成物は、光開始剤を含む。一実施形態では、一次被覆材は、1種類の光開始剤を含む。別の実施形態では、一次被覆材は、光開始剤の組み合わせを含む。適した光開始剤としては、α−ヒドロキシケトタイプの光開始剤、ホスフィンオキサイドタイプの光開始剤、α−アミノ−ケトンタイプの光開始剤、およびベンジルジメチル−ケタールタイプの光開始剤が挙げられる。開始効率を改善するために、組成物に光増感剤を含んでもよい。適した光増感剤としては、イソプロピルチオキサントン(ITX)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0146】
α−ヒドロキシケトタイプの光開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズから入手可能なイルガキュア184;Chitec Chemicalsから入手可能なChivacure 184)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズから入手可能なダロキュア(Darocur)1173)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−アセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル−2−モルホリノプロパン−1−オン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズから入手可能なイルガキュア907)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−ヒドロキシ−2−プロピルケトンジメトキシ−フェニルアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、および4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンが挙げられる。
【0147】
ホスフィンオキサイドタイプの光開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイドタイプ(TPO;例えば、BASFから入手可能なルシリン(Lucirin)TPO;チバ・スペシャルティ・ケミカルズから入手可能なダロキュアTPO)、および2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニル、エトキシホスフィンオキサイド(TPO−L、例えば、BASF製のルシリンTPO−L)、またはモノアシルホスフィンオキサイド(MAPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズから入手可能なイルガキュア819)、またはビスアシルホスフィンオキサイドタイプ(BAPO)の光開始剤、(変性)MAPOと(変性)BAPOの両方の組み合わせ(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズから入手可能なイルガキュア2100)が挙げられる。
【0148】
一実施形態では、光開始剤は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドである。
【0149】
別の好ましい実施形態では、光開始剤は、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイドである。
【0150】
本発明に従い、一次被覆組成物は、未硬化の被覆組成物および組成物から製造された硬化被覆材に所望のin−situ 管Tg、in−situ弾性率、E’(貯蔵弾性率)、低温tanδ、低揮発性を付与し、結晶性の欠如を生じさせるのに十分な、本明細書に記載のオリゴマーおよび反応性希釈剤モノマーを含む。本発明の一次被覆組成物で被覆された光ファイバは、1625nmおよび−60℃でも改善された最大マイクロベンド感受性を示す。
【0151】
一実施形態では、オリゴマーと反応性希釈剤モノマーブレンドの合計量は、被覆組成物の約85重量%〜約98重量%である。オリゴマーと反応性希釈剤モノマーブレンドの適切な量としては、約85重量%、約86重量%、約87重量%、約88重量%、約89重量%、約90重量%、約91重量%、約92重量%、約93重量%、約94重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、および約98重量%が挙げられる。
【0152】
別の好ましい実施形態では、オリゴマーと反応性希釈剤モノマーブレンドの合計量は、被覆組成物の約98重量%である。例えば、オリゴマーと反応性希釈剤モノマーブレンドの合計量が97.7%で適切である、この実施例を参照されたい。
【0153】
さらに別の好ましい実施形態では、オリゴマーと反応性希釈剤モノマーブレンドの合計量は、被覆組成物の約97重量%である。例えば、2つ以上の実施例のオリゴマーと反応性希釈剤モノマーブレンドの合計量が96.55%(実施例1、3、および13〜16)および97.21%(実施例5〜12)で適切である、実施例を参照されたい。
【0154】
さらにまた別の好ましい実施形態では、オリゴマーと反応性希釈剤モノマーブレンドの合計量は、被覆組成物の約96重量%である。例えば、2つ以上の実施例のオリゴマーと反応性希釈剤モノマーブレンドの合計量が96.2%で適切である、実施例を参照されたい。
【0155】
本発明に従い、様々な添加剤および添加剤の組み合わせを一次被覆組成物添加剤に含むことができる。適した添加剤としては、例えば、酸化防止剤、接着促進剤、光安定剤、禁止剤、潜在酸、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0156】
適した酸化防止剤には、ヒンダードフェノール系化合物、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−n−ブチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、ならびに、全てチバ社からそれぞれイルガノックス1035、1076、259および1010として入手可能な、チオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシル)ヒドロシンナメート、オクタデシル−3,5−ジ−rert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、1,6−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)、およびテトラキス(メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート))メタンなどの市販の化合物がある。本明細書で有用な他のヒンダードフェノール系化合物の例としては、エチル社(Ethyl Corporation)からそれぞれエチル(Ethyl)330および702として入手可能な、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンおよび4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)が挙げられる。一実施形態では、酸化防止剤は、チオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシル)ヒドロシンナメートである。
【0157】
適した接着促進剤としては、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社(Momentive Performance Materials,Inc.)から入手可能なシルクエスト(Silquest)A−189)、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、メチルトリス(イソプロペノキシ)シラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、(N,N−ジメチル−3−アミノプロピル)シラン、ポリジメチルシロキサン、ビニルトリエトキシシラン、トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート、またはこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、接着促進剤は、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランである。
【0158】
適した光安定剤は、放射線硬化性被覆材の分野で既知であり、市販されており、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(例えば、ケムチュラ社(Chemtura Corp.)から入手可能なLowilite 20)を含むベンゾフェノン系のUVA、およびビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(例えば、チバ社から入手可能なチヌビン123)を含むヒンダードアミン光安定剤(HALS)に属する紫外線吸収剤が挙げられる。一実施形態では、光安定剤は、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートである。
【0159】
適した重合禁止剤としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノンおよびその誘導体(メチルエーテルヒドロキノンおよび2,5−ジブチルヒドロキノンなど);3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン;メチル−ジ−tert−ブチルフェノール;および2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。一実施形態では、重合禁止剤はBHTである。
【0160】
組成物中に潜在酸を含んでもよい。潜在酸は、それ自体は酸ではないが、ある一定の変化を受けると酸になる化学物質である。このような変化の一例は酸化である。
【0161】
一実施形態では、潜在酸は、トリメチロールプロパン、THIOCURE(登録商標)TMPMPとして入手可能なトリ−3−メルカプトプロピオネートである。
【0162】
一実施形態では、オリゴマーは次の通りであり、報告する重量パーセントは被覆組成物の重量パーセントに基づく:ヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレート(例えば、HEA):約1〜約3重量パーセント;芳香族ジイソシアネート(例えば、TDI):約2〜約4重量パーセント;ポリエーテルポリオール(例えば、アクレイム4200):約40〜約60重量パーセント;触媒(例えば、DBTDL):約0.01〜約0.05重量パーセント;および重合禁止剤(例えば、BHT):約0.05〜約0.10重量パーセント。
【0163】
別の実施形態では、オリゴマーは次の通りであり、報告する重量パーセントは、オリゴマーの製造に使用される成分の重量パーセントに基づく:ヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレート(例えば、HEA):約1〜約3重量パーセント;脂肪族ジイソシアネート(例えば、IPDI):約4〜約6重量パーセント;ポリエーテルポリオール(例えば、アクレイム4200):約40〜約60重量パーセント;および触媒(例えば、DBTDL):約0.01〜約0.05重量パーセント;および重合禁止剤(例えば、BHT):約0.05〜約0.10重量パーセント。
【0164】
以下の実施例は本発明をさらに説明するが、決してその範囲を限定するものと解釈されるべきではないことは言うまでもない。
【0165】
[実施例1〜4]
これらの実施例は、本発明の一次被覆組成物を説明する。
【0166】
【表2】



【0167】
[実施例5〜8]
これらの実施例は、本発明の一次被覆組成物を説明する。
【0168】
【表3】



【0169】
[実施例9〜12]
これらの実施例は、本発明の一次被覆組成物を説明する。
【0170】
【表4】



【0171】
[実施例13〜17]
この実施例は、本発明の一次被覆組成物を説明する。
【0172】
【表5】



【0173】
本発明の一次被覆組成物は、ファイバ上でのin−situ弾性率が約0.1MPa〜約0.45MPaの範囲であり、in−situ(管)Tgが約−50℃未満、好ましくは約−55℃未満であることが分かった。本発明の一次被覆組成物を使用して製造された光ファイバは、1625nm、−60℃、第2サイクルにおける最大マイクロベンド感受性(dB/km)が0.2未満、通常約0.01〜約0.15の範囲であることが分かった。
【0174】
マイクロベンド感受性の試験に使用される方法は、IEC TR 62221、初版10−2001に記載されている。現在、マイクロベンド感受性の測定に使用される4つの試験方法があり、それはdB/kmの減衰単位で報告される。
【0175】
方法A−拡縮ドラム法(Expandable Drum)は、少なくとも400mのファイバを、ドラム表面に一定の粗さの材料を有する拡縮ドラムの周囲に最小限の張力で巻き付けることを必要とする。方法B−定径ドラム法(Fixed−Diameter Drum)は、少なくとも400mのファイバを、ドラム表面に一定の粗さの材料を有する定径ドラムの周囲に3Nの張力で巻き付けることを必要とする。方法C−ワイヤメッシュ法(Wire Mesh)は、ワイヤメッシュを(荷重を加えて)被験ファイバに押し付けることを必要とする。方法D−バスケットウィーブ法(Basketweave)は、2.5kmのファイバを「バスケットウィーブ」巻きで定径ドラムに巻き付けることを必要とする。
【0176】
これらの4つの試験方法のうち、方法Dだけが、温度によるファイバのマイクロベンド感受性の変化を測定する方法を具体的に記載しており、広い温度範囲にわたりマイクロベンド感受性を測定でき、温度サイクルが−60℃などの比較的低温を含み得ることを示唆している。
【0177】
本特許出願全体を通して、方法D−バスケットウィーブ法を使用したマイクロベンド感受性を、特定の波長および温度におけるファイバ1キロメートル当たりの損失したdBの数値(dB/km)の低下に換算して記載する。
【0178】
また、本発明の一次被覆材は、硬化被膜で測定した場合、−60℃におけるE’(貯蔵弾性率)が約2100MPa未満、一般に約1800MPa〜約2100MPaであることが分かった。
【0179】
また、本発明の一次被覆組成物は、低温でも比較的高いtanδを示すことが分かった。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の一次被覆組成物はtanδが比較的高いため、被覆材の応力緩和速度が改善されると考えられ、それによって減衰損失の低減が改善されると考えられる。本発明の一次被覆組成物では減衰損失の低減が認められた。
【0180】
従って、別の実施形態では、本発明は、硬化ファイバで測定した場合、tanδが約0.18〜約0.24である一次被覆組成物を提供する。また、1625nm、−60℃、第2サイクルにおける最大マイクロベンド感受性(単位:dB/km)は、光ファイバのガラス成分および二次被覆材の影響を受ける可能性があるが、一般に、本発明の一次被覆組成物は、1625nm、−60℃、第2サイクルにおける最大マイクロベンディング誘導損失(単位:dB/km)が約0.012〜約0.146であることも分かった。E’およびtanδは、動的機械分析装置で硬化被膜の温度走査を行うことによって得られる。DMA試験方法は当該技術分野で既知であり、例えば、米国特許第7,076,142号明細書に記載されており、この文献は参照により本明細書に援用される。
【0181】
硬化した被覆組成物の特性は、ファイバ上での組成物の硬化度の影響を受ける可能性があることが知られており、硬化度を測定する方法の1つは、光ファイバ上の被覆材に含まれる反応したアクリレート不飽和(RAU)の量の測定である。本発明の一次被覆組成物は、好ましくは少なくとも70%RAUまで硬化され、硬化度が高いほど好ましい。例えば、%RAUで測定される硬化は、好ましくは約84%RAU〜約99%RAU、より好ましくは約87%RAU〜約95%RAUである。後硬化、例えば、文献で言及されてきたファイバ製造時の初期硬化の後に(ケーブル化時または貯蔵時などに)起こり得る暗反応を最小限にする硬化度が、硬化ファイバの物理的、化学的および機械的特性の変化を回避するために最も好ましい。約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%および約99%の%RAUとして測定される硬化が適していることが分かった。
【0182】
本発明の一実施形態では、硬化した一次被覆材を含む光ファイバの%RAUは、初期硬化後、および85℃、相対湿度85%で1ヶ月エージングした後、約84%〜約99%である。当業者には、光ファイバの%RAUをこのようにして評価するとき、光ファイバは少なくとも2つの層を含み、第1層が光ファイバの外面と接触している一次被覆材であり、第2層が一次被覆材の外面と接触している二次被覆材であることが分かるであろう。
【0183】
本特許出願に前述したように、被覆材中に非アリール希釈剤モノマーが存在する場合の結果を、アリールモノマーしか存在しない場合の結果と比較して示すため、比較例1〜4を参照されたい。比較例は、ゲル化時間の遅延、揮発性の増加および/または臭気の増加および/または結晶性の増加によって示される、脂肪族希釈剤モノマーの存在の有害な影響を明確に示す。
【0184】
【表6】



【0185】
【表7】



【0186】
【表8】



【0187】
本明細書に引用される刊行物、特許出願、および特許を含む参考文献は全て、あたかも各参考文献が参照により援用されることが個々に明確に示され、その内容全体が本明細書に記載されているかのごとく、参照により本明細書に援用される。
【0188】
本発明を説明する文脈中における(とりわけ以下の特許請求の範囲の文脈中における)「a」および「an」および「the」という用語および類似の指示物の使用は、本明細書に他の記載がない限り、または文脈により明確に否定されない限り、単数形と複数形の両方を包含するものと解釈されたい。「含む」、「有する」、「挙げる」および「含有する」という用語は、他の記載がない限り、広い解釈が可能なものと解釈されたい(即ち、「〜が挙げられるが、これらに限定されるものではない」ことを意味する)。本明細書における数値の範囲の記載は、本明細書に他の記載がない限り、範囲に入る各個別の数値を個々に記載することの略記法として使用しているに過ぎず、各個別の数値は、あたかもそれが個々に本明細書に記載されているかのごとく本明細書に援用されるものとする。本明細書に記載の方法は全て、本明細書に他の記載がない限り、または他に文脈により明確に否定されない限り、任意の適切な順番で行うことができる。いずれかのおよび全ての実施例の使用、または本明細書に記載の例示を示す用語(例えば、「など」)は、本発明をより明確にすることを意図しているに過ぎず、本明細書で他に特許請求されない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中の用語は、特許請求されていない要素を本発明の実施に不可欠であるものとして示すものと解釈されるべきではない。
【0189】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に記載したが、それらは本発明人らに既知の、本発明を実施するための最良の形態を含む。前述の説明を読めば、当業者にはそれらの好ましい実施形態の変形が明らかであろう。本発明人らは当業者がこのような変形を適宜使用するものと考え、本発明人らは本発明が本明細書に明確に記載した以外の方法でも実施されるものと考える。従って、本発明は、適用法により認可されるように、添付の特許請求の範囲に記載の対象の変更形態および均等物を含む。さらに、前述の全ての可能な変形の中の要素の任意の組み合わせも、本明細書に他の記載がない限り、または他に文脈により明確に否定されない限り、本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化性光ファイバ一次被覆組成物であって、未硬化状態で、
a)分子量3500g/mol〜10000g/molの少なくとも1種類のポリエーテルポリオールと、
b)芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類のジイソシアネートと、
c)少なくとも1種類のヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートと、
d)任意選択によりアルコールと
の反応生成物を含む、前記組成物の50重量%〜65重量%のオリゴマー;
少なくとも2種類の反応性希釈剤モノマーを含む反応性希釈剤モノマーブレンドであって、前記ブレンド中の前記モノマーのそれぞれが少なくとも1つのフェニル基またはフェノキシ基と少なくとも1つのアクリレート基を含み、次式:
【化1】



{式中、xは1〜6の整数であり;nは1〜5の整数であり;各Yは同じであってもまたは異なってもよく、独立して水素、C〜C12アルキル基、およびアルカリールアルコキシ化アクリレート基からなる群から選択される}
を有する、前記組成物の30%〜50重量%の反応性希釈剤モノマーブレンド;および
少なくとも1種類の光開始剤
を含む組成物であり、
前記反応性希釈剤モノマーブレンドが非アリール反応性希釈剤モノマーを実質的に含有せず、
分子量約300未満のアリール反応性希釈剤モノマーが存在する場合、それが前記全配合物の約10重量%以下で存在する、組成物。
【請求項2】
前記ポリオールの分子量が3500g/mol〜4500g/mol、好ましくは約4000g/molである、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項3】
前記組成物が、未硬化状態で、前記オリゴマーを前記組成物の55重量%〜65重量%含む、請求項1または2に記載の被覆組成物。
【請求項4】
前記オリゴマーと反応性希釈剤モノマーブレンドの合計量が前記被覆組成物の85%〜98重量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種類のジイソシアネートが、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、および芳香族ジイソシアネートと脂肪族ジイソシアネートとの混合物からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の被覆組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種類のポリオールと、少なくとも1種類のジイソシアネートと、少なくとも1種類のヒドロキシル末端アクリレートまたは(メタ)アクリレートと、任意選択によりアルコールとの前記反応生成物が室温で液状である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆組成物。
【請求項7】
前記光開始剤が、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドまたは2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイドである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の被覆組成物。
【請求項8】
前記反応性希釈剤モノマーブレンド中の前記反応性希釈剤モノマーが、次式:
【化2】



{式中、xは1〜6であり;Yは独立して水素、C〜C12アルキル基、およびアルカリールアルコキシ化アクリレート基からなる群から選択される}
;および、少なくとも1種類の光開始剤を有し;前記反応性希釈剤モノマーブレンドが非アリール反応性希釈剤モノマーを実質的に含有せず;分子量約300未満のアリール反応性希釈剤モノマーが存在する場合、それは前記全配合物の約10重量%以下で存在する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の被覆組成物。
【請求項9】
前記反応性希釈剤モノマーブレンドが、エトキシ化ノニルフェノールアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレートおよび2−フェノキシエチルアクリレートからなる群から選択される少なくとも2種類のモノマーから本質的になる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の被覆組成物。
【請求項10】
前記反応性希釈剤モノマーブレンドが、前記被覆組成物の30重量%〜42重量%を構成する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の被覆組成物。
【請求項11】
酸化防止剤、接着促進剤、光安定剤、禁止剤、潜在酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の添加剤をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の被覆組成物。
【請求項12】
前記被覆組成物が以下の特性:
a)ファイバ上で硬化した後のin−situ弾性率、0.1MPa〜0.45MPa、
b)ファイバ上で硬化した後のin−situ Tg、−50℃未満、好ましくは−55℃未満、および/または
c)ファイバ上で硬化した後のtanδ、0.18〜0.24、および/または
d)被膜として硬化した後の−60℃における貯蔵弾性率E’、2100MPa以下、好ましくは1800MPa〜2100MPa、
を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の被覆組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の前記被覆組成物で被覆された光ファイバ。
【請求項14】
1625nm、−60℃、第2サイクルにおける最大マイクロベンド感受性が、0.2dB/km未満、好ましくは0.01〜0.15dB/km、より好ましくは0.012〜0.146dB/kmである、請求項13に記載の光ファイバ。
【請求項15】
初期硬化後、および85℃、相対湿度85%で1ヶ月エージングした後、%RAUが84%〜99%である、請求項13または14に記載の光ファイバ。

【公表番号】特表2013−501125(P2013−501125A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523610(P2012−523610)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/002718
【国際公開番号】WO2011/049607
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】