説明

DCOITまたはOITまたはBBITの1種と、グリホサート化合物との相乗的組み合わせ

【課題】相乗的抗微生物組成物が提供する。
【解決手段】4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたはN−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンからの1種と、グリホサート化合物とを含む相乗的抗微生物組成物。該相乗的抗微生物組成物を含むコーティング材料を塗布することにより、建築材料における微生物の成長を阻止もしくは成長を制御できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は殺生物剤の組み合わせに関し、この組み合わせは個々の抗微生物化合物の双方の使用について予想されるであろうよりも予想外に高い活性を有する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2種類の抗微生物化合物の組み合わせの使用は潜在的な市場を広げることができ、使用濃度およびコストを低減させることができ、かつ廃棄物を低減させることができる。ある場合には、市販の抗微生物化合物は、ある種の微生物、例えば、いくつかの抗微生物化合物に耐性の微生物に対する弱い活性のせいで高い使用濃度でさえ微生物の効果的な制御を提供することができない。特定の最終使用環境における微生物の全体的な制御を提供するために、異なる抗微生物化合物の組み合わせが場合によっては使用される。例えば、国際公開第1998/121962号は3−ヨード−2−プロピニル−ブチルカルバマートとピリチオン亜鉛との組み合わせを開示するが、この文献は本願で特許請求される組み合わせのいずれも示唆していない。さらに、健康および/または環境に比較的低い影響の抗微生物化合物のさらなる組み合わせについての必要性が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第1998/121962号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によって取り組まれる課題は、抗微生物化合物のそのような追加の組み合わせを提供することである。
抗微生物化合物は場合によっては、基体に適用されて乾燥膜になる液体コーティング組成物中に含まれる。このような乾燥膜が表面の真菌および藻類を制御し、かつこのような乾燥膜が健康および環境に対してできるだけ少ない悪影響しかもたらさないことが望ましい。
以下は、本発明の説明である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の形態は、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたは2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたはN−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの1種と、グリホサート化合物とを含む相乗的抗微生物組成物である。本発明の第2の形態は、本発明の第1の形態の相乗的抗微生物組成物を添加することにより、建築材料における微生物の成長を阻止、または成長を制御する方法である。本発明の第3の形態は、本発明の第1の形態の相乗的抗微生物組成物を含むコーティング組成物である。
【0006】
本発明の第4の形態は、本発明の第3の形態のコーティング組成物から製造された乾燥膜である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下は本発明の詳細な説明である。
本明細書において使用される場合、文脈が明らかに他のことを示さない限りは以下の用語は指定された定義を有する。
【0008】
用語「抗微生物化合物」とは、微生物の成長を阻止し、または成長を制御することができる化合物をいい;抗微生物化合物には、適用される用量レベル、システム条件および望まれる微生物制御の水準に応じて、殺バクテリア剤、静バクテリア剤、殺真菌剤、静真菌剤、殺藻剤および静藻剤が挙げられる。用語「微生物」には、例えば、真菌(例えば、酵母およびカビ)、バクテリアおよび藻類が挙げられる。以下の略語が本明細書を通して使用される:ppm=重量基準の100万分率(重量/重量)、mL=ミリリットル、ATCC=アメリカンタイプカルチャーコレクション、およびMIC=最小阻止濃度。他に特定されない限りは、温度は摂氏度(℃)であり、パーセンテージに関する言及は重量基準(重量%)である。本発明の組成物中の抗微生物化合物のパーセンテージは組成物中の活性成分の全重量、すなわち、溶媒、担体、分散剤、安定化剤もしくは存在しうる他の物質の量を除いた抗微生物化合物自体に基づく。
【0009】
本明細書において使用される場合、「DCOIT」は4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンであり、「OIT」は2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンであり、および「BBIT」はN−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンである。本明細書において、ある比率が「X以上:1」であると称される場合には、その比率はY:1(YはX以上である)であることを意味し、並びに本明細書においてある比率が「X以下:1」であると称される場合には、その比率はZ:1(ZはX以下である)ことを意味する。
【0010】
グリホサートはN−(ホスホノメチル)グリシンである(登録番号1071−83−6)。グリホサートは、食品作物における雑草制御のための使用について多くの自治体で承認されている既知の除草剤である。グリホサートの環境に対する比較的小さな影響の指標の1つは様々な藻類に対するその比較的低い活性によって示される。様々な藻類に対するグリホサートの活性を示すいくつかの結果が以下に示される:
【0011】
【表1】

(1)注:
EC/EC50 有効濃度ECは所定の期間で集団のn%に影響を及ぼす物質の濃度である。EC50はそれが濃度効果曲線において最も正確な点なので、広く使用されている。
50 バイオマス(藻類)についての半有効濃度:特定の期間にわたって、対照サンプルと比較したバイオマスの増加を50%低減させる物質の濃度。
50 成長速度(藻類)についての半有効濃度:特定の期間にわたって、対照サンプルと比較した藻類細胞の成長速度を50%低減させる物質の濃度。
【0012】
上記データはグリホサートが藻類に対して比較的小さな影響しか有さず、このことはグリホサートが環境に対して比較的小さな影響しか有さないことを示す。この特徴はコーティング組成物に含まれうる抗微生物材料に望ましいと考えられる。
【0013】
本発明はグリホサート化合物の使用を伴う。本明細書において使用される場合、「グリホサート化合物」とはグリホサートもしくはグリホサート塩を意味する。グリホサート塩はグリホサートの金属塩である。好適な金属には、アルカリ金属アルカリ土類金属および遷移金属が挙げられる。グリホサート塩はグリホサートよりも好ましい。より好ましいのはグリホサートの遷移金属塩であり;最も好ましいのはグリホサート亜鉛である。
【0014】
グリホサートは水中での比較的高い溶解度を有する。乾燥したコーティングおよび建築材料は水にさらされ、この水は高可溶性の化合物を乾燥コーティングもしくは建築材料から除去する傾向があり得たので、水中でのこの比較的高い溶解度は、コーティング組成物もしくは他の建築材料に含まれうる抗微生物材料としては好ましくない。好ましいのは水中に20℃で3g/l以下の溶解度を有するグリホサート塩であり、より好ましいのは1g/l以下であり、より好ましいのは0.3g/l以下である。
【0015】
グリホサート塩は健康および環境に対してグリホサートの影響と類似した影響を有するであろうと考えられるから、グリホサート塩は健康および環境に対して比較的小さな影響しか有しないであろうと考えられる。
【0016】
本発明は4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたは2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたはN−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの1種と、グリホサート化合物との双方を含む組成物に関連する。この組成物が殺生物剤として相乗的に有効であることが驚くべきことに見いだされた。DCOITまたはOITまたはBBITの1種と、グリホサート亜鉛との双方を含む組成物が殺生物剤として相乗的に有効であることが特に驚くべきことに見いだされた。好ましいのは、グリホサート化合物とDCOITとの双方を含む組成物である。グリホサート亜鉛とDCOITとの双方を含む組成物が殺生物剤として相乗的に有効であることがさらにより驚くべきことに見いだされた。
【0017】
DCOITが存在する場合には、DCOIT:グリホサート化合物の重量比は好ましくは0.33以上:1である。DCOITが存在する場合には、DCOIT:グリホサート化合物の重量比は好ましくは2以下:1である。OITが存在する場合には、OIT:グリホサート化合物の重量比は好ましくは0.3:1〜0.4:1である。BBITが存在する場合には、BBIT:グリホサート化合物の重量比は好ましくは0.1:1〜10:1である。
【0018】
配合物が、示されたIT化合物(すなわち、DCOIT、OITおよびBBIT)の1種より多くを含む場合には、示されたIT化合物全ての重量の合計(すなわち、DCOITの重量(存在する場合には)+OITの重量(存在する場合には)+BBITの重量(存在する場合には)の合計)を考慮することが有用である。示されたIT化合物全ての重合の合計:グリホサート化合物の重量の好ましい比率は0.1:1〜10:1である。
【0019】
DCOITまたはOITまたはBBITの1種と、グリホサート化合物との混合物はコーティング組成物中に含まれうる。DCOITまたはOITまたはBBITの1種と、グリホサート化合物とはコーティング組成物に別々に、またはその混合物もしくはその組み合わせとして添加されうる。好ましいコーティング組成物は液体である。コーティング組成物は水性もしくは非水性でありうる。水性コーティング組成物は、コーティング組成物の重量を基準にして40重量%以上の水を含む。
【0020】
DCOITまたはOITまたはBBITの1種と、グリホサート化合物とが塗料もしくは他のコーティング組成物中に含まれる実施形態の中では、好ましいコーティング組成物は液体組成物、特に水性媒体中のポリマーの分散物を含む組成物である。
【0021】
塗料および他のコーティング組成物に加えて、本発明の殺生物剤の組み合わせは建築材料、例えば、接着剤、コーキング材、目地材、シーラント、ウォールボードなど、ポリマー、プラスチック、合成および天然ゴム、紙製品、ガラス繊維シート、断熱材、外断熱仕上げシステム、屋根用および床用フェルト、建築用プラスター、レンガ、モルタル、石膏板、木材製品および木材−プラスチック複合体の保存に特に有用である。本発明の殺生物剤の組み合わせが建築材料中に存在する場合には、その表面での微生物の成長を阻止するように、この殺生物剤の組み合わせのいくらかもしくは全部がその建築材料の表面に、もしくはその建築材料の表面の充分近くに存在するのが好ましい。
【0022】
ある実施形態においては、本明細書において開示された殺生物剤の組み合わせを含むラテックス塗料もしくは他の液体コーティング組成物が使用される。
【0023】
コーティング組成物はそのコーティング組成物の層が基体に容易に適用され、次いで乾燥させられもしくは乾燥できるようにされて、乾燥膜を形成することができるように設計される。コーティング組成物はバインダーを含む。バインダーは以下の1種以上を含む:1種以上のポリマー、1種以上のオリゴマーおよび/または1種以上のモノマー。バインダー中のオリゴマーおよびモノマーは乾燥膜の形成中もしくは形成後に重合および/または架橋するように設計される。バインダー中のポリマーは乾燥膜の形成中もしくは形成後に架橋するように設計されてよく、またはされなくてよい。
【0024】
コーティング組成物は場合によっては1種以上の顔料を含む。顔料は小さな固体粒子の形態の鉱物もしくは有機物質である。顔料は乾燥膜に完全なもしくは部分的な不透明さを提供する。
【0025】
殺生物剤の組み合わせは、塗料もしくは他の液体コーティング組成物の適用後に得られる乾燥膜コーティングの保存に有用である。好ましくは、抗微生物組成物は本明細書に開示される殺生物剤の組み合わせの1種以上を含む水性ラテックス塗料であるか、またはこの塗料をある表面に適用して得られる乾燥膜コーティングである。水性ラテックス塗料はバインダーがラテックスの形態(すなわち、水全体にわたって分散したポリマー粒子の形態)のポリマーである水性液体コーティング組成物である。より好ましいのはバインダーが1種以上のアクリルポリマーを含む水性ラテックス塗料である。
【0026】
典型的には、微生物の成長を制御するための本発明の殺生物剤の組み合わせの量は100ppm〜10,000ppm活性成分である。好ましくは、組成物の活性成分は少なくとも300ppm、好ましくは少なくとも500ppm、好ましくは少なくとも600ppm、好ましくは少なくとも700ppmの量で存在する。好ましくは、組成物の活性成分は8,000ppm以下、好ましくは6,000ppm以下、好ましくは5,000ppm以下、好ましくは4,000ppm以下、好ましくは3,000ppm以下、好ましくは2,500ppm以下、好ましくは2,000ppm以下、好ましくは1,800ppm以下、好ましくは1,600ppm以下の量で存在する。上で言及された濃度は殺生物剤の組み合わせを含む液体組成物中のものであり、乾燥膜コーティングにおける殺生物剤のレベルはより高いであろう。
【0027】
本発明は、特許請求の範囲に特定された殺生物剤の組み合わせのいずれかを建築材料、特に乾燥膜コーティングに組み込むことにより、建築材料、特に乾燥膜コーティングにおける微生物の成長を妨げるための方法も包含する。
【0028】
典型的には、藻類および/または真菌の成長を阻止するために抗微生物組成物が使用される。
【0029】
本発明の組成物はDCOITまたはOITまたはBBITの1種と、グリホサート化合物とを含む。いくつかの実施形態は1種以上の追加の抗微生物化合物を含むことができると考えられる。
【0030】
グリホサート亜鉛は、亜鉛とグリホス酸(glyphosic acid)との組み合わせから予想されるであろう結果との比較において予想外の相乗的抗微生物作用を示すと期待される。
以下は本発明の実施例である。
【実施例】
【0031】
グリホサート亜鉛が以下のように合成された。
【0032】
まず、以下のように予備調製が行われた。15〜20gのグリホサート酸がオーブン内で80〜90℃で一晩乾燥させられた。脱イオン(DI)水中のNaOHの1M溶液が製造された。
【0033】
グリホサート溶液が以下のように製造された。スターラーバーを備えた600mLのビーカーに200mLのDI水が計り取られた。中程度のスピードで攪拌プレート上で攪拌しつつ、15gのグリホサート酸がゆっくりとビーカー内の水に添加された。温度が60〜70℃に上げられてグリホサートを溶解させた;温度は温度計で監視された。pHが6.0に至るまで1MのNaOHが添加された。このグリホサートは約2.4のpHで溶解した。この混合物は5〜10分間攪拌された。
【0034】
亜鉛溶液が以下のように製造された。スターラーバーを備えた400mLのビーカーに100mLのDI水が計り取られた。36.25gの塩化亜鉛(試薬等級、98%以上、シグマアルドリッチ、材料#208086)が秤量ボートに計り取られた。攪拌プレート上で混合しつつ、ビーカー内の水に塩化亜鉛がゆっくりと添加された。溶液は65℃まで加熱された。
【0035】
グリホサート亜鉛溶液は以下のように製造された。9−インチのパスツールピペットを用いて亜鉛溶液はグリホサート溶液に添加された。グリホサート溶液への少量の亜鉛溶液の各添加の後で、沈殿物は溶解し、その後さらに亜鉛溶液が添加された。沈殿物がもはや溶解しなくなったときに、pHが5に調節された。残りの亜鉛溶液がグリホサート溶液に注がれ、この混合物が一晩攪拌された。
【0036】
注:溶液のpHの制御は所望の生成物を得るために非常に重要である。ここで報告された製造の際に、pHの値が5を超えないように注意された。
【0037】
グリホサート亜鉛ろ過が以下のように行われた。
【0038】
ブフナー漏斗、およびフラスコシールを用いて接続されかつ水真空ポンプにつながれたフィルターフラスコを使用してろ過装置が組み立てられた。#41ワットマン商標ろ紙が漏斗内に配置された。ポンプが駆動され、ろ紙上にDI水が注がれて真空を造り出した。グリホサート亜鉛スラリーはろ紙上にゆっくりと注がれ、次いで高温(約50℃)DI水で1回洗浄され、次いでイソプロピルアルコール(IPA)で2回すすがれた。
【0039】
グリホサート亜鉛最終製造は以下のように行われた。
【0040】
グリホサート亜鉛沈殿物を収容しているろ紙が取り外され、大きなパイレックス(登録商標)皿内に置かれた。この皿は金属ホイルで覆われ、通気のためにそのホイルにいくつかの穴が開けられた。この沈殿物はオーブン内で80〜90℃で一晩乾燥させられた。次いで、この沈殿物はあらかじめ質量測定された清浄なラベルを付されたガラス瓶の中に計り分けられ、その沈殿物の質量が記録された。
【0041】
抗微生物試験のためのサンプル調製は以下のように行われた。
【0042】
試験される活性成分最大合計濃度をもたらすように、殺生物剤を含まない白色アクリルラテックス塗料に単独の殺生物剤もしくは殺生物剤のブレンドが後添加された。次いで、試験のための目標濃度をもたらすように、殺生物剤を含まないアクリルラテックス塗料でこの塗料が希釈された。試験される殺生物剤ブレンドの種類に応じて、殺生物剤合計濃度は400〜3300ppmで変動した。殺生物剤添加もしくは希釈の後で、均質さが達成されるまで少なくとも1分間、各サンプルは手作業で混合された。塗料サンプルのそれぞれおよびコントロールサンプル(殺生物剤を含まない)が使用され、0.0762mm(3mil)のバードバーアプリケータを使用して黒色プラスチック−ビニルクロライド/アセタートコポリマーパネル(レネタカンパニー、ニュージャージー州モーウォー)上に膜を製造した。このパネルは、太陽光への直接の曝露を避けつつ少なくとも2日間完全に乾燥させられた。正方形のディスク(0.5インチ;1.27cm)が各パネルから切り出されて、真菌および藻類有効性試験のための基材として使用された。このサンプルサイズは、このサンプルディスクが試験プレートのウェルに配置された場合の寒天境界を可能にした。各サンプルは二重に試験された。
【0043】
試験条件は以下の通りであった。
【0044】
微生物の成長をサポートするために、好適な培地(緑藻植物(Chlorophytes)についてBOLDの3N、シアノバクテリアについてはBG−11、および真菌についてはPDA)が使用された。試験プレートは、藻類については、室温(25℃〜26℃)で、サイクル化された明暗環境で4週間維持された。真菌有効性試験のためのプレートは30℃で4週間維持された。インキュベーション期間の終わりに、サンプルは目に見える微生物の成長によって覆われた領域のパーセントについて集計された。
【0045】
藻類接種物は以下の通りであった。
【表2】

【0046】
真菌接種物は以下の通りであった。
【表3】

【0047】
藻類有効性は以下のように試験された(改変されたASTM5589)。
【0048】
ASTM5589は藻類汚損に対する様々なコーティング(塗料を含む)の抵抗性を決定するための標準加速試験方法である。高スループットスクリーニングを提供するために、この方法はペトリ皿から6ウェルプレートにスケールダウンされた。滅菌鉗子を用いて1つの試験片が塗布面が上を向くように寒天プラグの中央(上に)に配置された。藻類接種物は等しい濃度(約1×10cfu/ml)かつ等しい体積(接種されるサンプルの数に応じて)の同様に成長している生物を混合することにより調製された。
【0049】
この相乗効果試験においては、試験接種物として混合された藻類の3つのプールが調製された;BG−11培地で成長させられたシアノバクテリアの混合物であるグロエオカプサ(Gloeocapsa)sp.およびユレモ属(Oscillatoria)sp.;混合されBold培地で成長させられた単細胞緑藻植物であるクロレラ(Chlorella)sp.、クロレラケスレリ(Chlorella kessleri)およびイシクラゲ(Nostoc commune);混合され、Bold培地で成長させられた糸状藻類であるスミレモ(Trentepohlia aurea)、トレンテポーリアオダラタ(Tretepohlia odorata)およびキャロスリックスパリエンティナ(Calotrix parientina)。
【0050】
試験される試験片を収容する各ウェルに400μlの生物混合物(約1×10cfu/ml)が接種され、表面全体(塗料膜およびそれを取り囲む寒天)が均一に覆われたことを確実にした。このプレートは室温(25℃〜26℃)で明相(OTT−Liteモデル#OTL4012P、40ワット、26Kルーメン)および暗相への周期的な曝露を伴い、4週間にわたってインキュベートされた。各週の終わりに、覆われた領域のパーセントについて5%刻みで、覆われた合計領域が評価された。
【0051】
真菌有効性は以下のように試験された(改変されたASTM5590)。
【0052】
ASTM5590は真菌汚損に対する様々なコーティング(塗料を含む)の抵抗性を決定するための標準加速試験方法である。高スループットスクリーニングを提供するために、この方法はペトリ皿から6ウェルプレートにスケールダウンされた。試験をセットアップするために、寒天プラグが滅菌6ウェルプレートの各ウェルの底に配置された。滅菌鉗子を用いて1つの試験片が塗布面が上を向くように寒天プラグの中央(上に)に配置された。真菌接種物は等しい濃度(約1×10cfu/ml)かつ等しい体積(試験されるサンプルの数に応じて)の同様に成長している生物を混合することにより調製された。この相乗効果試験のために、試験接種物として混合された真菌の3つのプールが調製された。クラドスポリウムヘルバラム(Cladosporium herbarum)がトリコデルマビリデ(Trichoderma viride)と混合され;アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)がペニシリウムフニクロサム(Penicillium funiculosum)と混合され;アルターナリアアルターナタ(Alternaria alternata)がオーレオバシディウムプルランス(Aureobasidium pullulans)と混合された。各ウェルに400マイクロリットルの生物混合物(約1×10cfu/ml)が接種され、表面全体(塗料膜およびそれを取り囲む寒天)が均一に覆われたことを確実にした。このプレートは水分の存在下で30℃で4週間にわたってインキュベートされた。各週の終わりに、覆われた合計領域パーセントが評価され、記録され、並びに5%刻みで記録された。
【0053】
相乗効果指数計算は以下のように行われた。
【0054】
SIは、F.C.KullらのAl.方法(アプライドマイクロバイオロジー(Applied Microbiology)Vol.9(1961))に基づいて計算される。この検討においてSIは、試験された各微生物に対する個々の殺生物剤によって示される阻止パーセントに基づいて選択された最小阻止濃度で、以下の式に基づいて計算された。
SI=Qa/QA+Qb/QB
Qa=混合物中での殺生物剤Aの濃度
QA=この殺生物剤だけの場合の殺生物剤Aの濃度
Qb=混合物中での殺生物剤Bの濃度
QB=この殺生物剤だけの場合の殺生物剤Bの濃度
【0055】
この式における1未満のSI値は、混合された殺生物剤の相乗効果が存在することを示す。
【0056】
注:試験された最大濃度でいずれかの活性物質が何らかの阻止を示さなかった場合には、推定SIを計算するためにこの最大濃度が使用され、かつ目標にされていた阻止を達成するにはさらに高い濃度の活性物質が必要とされることを考慮して未満(<)の印が付けられる。
【0057】
NE=各SI計算において設定された阻止パーセント基準を満たすであろう、試験された濃度での終点なし。
【0058】
DCOITまたはOITまたはBBITの1種と、グリホサート亜鉛との双方を含む以下に示される組成物が本発明の実施例である。他の組成物は比較の組成物である。
【0059】
グリホサート亜鉛とグリホス酸についての試験結果が以下に示される:
【表4】

【0060】
DCOITとグリホサート亜鉛との試験結果は以下の通りであった。
【表5】

DCOIT+グリホサート亜鉛は1:10〜10:1の比率で相乗効果を示した。DCOIT+グリホサート亜鉛は0.33:1〜2:1の比率で広いスペクトルの相乗効果を示した。
【0061】
OITとグリホサート亜鉛との試験結果は以下の通りであった。
【表6】

【0062】
BBITとグリホサート亜鉛との試験結果は以下の通りであった。
【表7】

【0063】
グリホサート亜鉛+BBITは1:1〜3:1、および1:5〜1:10の比率で相乗効果を示した。藻類の混合物であるGs+Os、速成長性真菌であるAn、Aa、Pf、Tv、および遅成長性真菌であるAp+Chを用いて、さらに3つの別の試験が行われた。これら3つの試験について相乗効果は観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたは2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたはN−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンの1種と、グリホサート化合物とを含む相乗的抗微生物組成物。
【請求項2】
前記グリホサート化合物がグリホサート亜鉛を含む請求項1に記載の相乗的抗微生物組成物。
【請求項3】
前記相乗的抗微生物組成物が4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを含み、かつ前記4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン:前記グリホサート亜鉛の重量比が0.1:1〜10:1である、請求項2に記載の相乗的抗微生物組成物。
【請求項4】
前記4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン:前記グリホサート亜鉛の重量比が0.33:1〜2:1である、請求項3に記載の相乗的抗微生物組成物。
【請求項5】
前記相乗的抗微生物組成物が2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを含み、かつ前記2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン:前記グリホサート亜鉛の重量比が0.1:1〜10:1である、請求項2に記載の相乗的抗微生物組成物。
【請求項6】
前記4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン:前記グリホサート亜鉛の重量比が0.3:1〜0.4:1である、請求項5に記載の相乗的抗微生物組成物。
【請求項7】
前記相乗的抗微生物組成物がN−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを含み、かつ前記N−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン:前記グリホサート亜鉛の重量比が0.1:1〜10:1である、請求項2に記載の相乗的抗微生物組成物。
【請求項8】
請求項2に記載の相乗的抗微生物組成物を建築材料に添加する工程を含む、建築材料における微生物の成長を阻止もしくは成長を制御する方法。
【請求項9】
請求項2に記載の相乗的抗微生物組成物を含むコーティング組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のコーティング組成物の層を基体に適用し、並びに前記コーティング組成物を乾燥させるかまたは前記コーティング組成物が乾燥できるようにすることを含む方法によって製造される乾燥膜。

【公開番号】特開2012−131771(P2012−131771A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−247060(P2011−247060)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】