説明

DEPDC1ポリペプチドを使用した膀胱癌の治療または予防のための方法

本発明は、DEPDC1のポリペプチド断片を含むアミノ酸配列から構成されるポリペプチドを使用してがんを治療するための治療剤および方法を提供する。本発明のポリペプチドは、ポリアルギニンなどのトランスフェクション剤によりポリペプチドを修飾することによりがん細胞へ導入され得る。さらに、本発明は、DEPDC1/ZNF224複合体形成の阻害またはがんの治療において有用な治療剤または化合物をスクリーニングする方法を提供する。本発明は、膀胱癌の治療において有用であることが示唆されているZNF224遺伝子を標的とするsiRNAも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本願は、2008年8月28日付で出願された米国特許仮出願第61/190,531号の恩典を主張するものである。その内容全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、膀胱癌を治療または予防するための方法、および膀胱癌を治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法に関する。特に、本発明はDEPDC1に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
膀胱癌は、2番目に多い尿生殖器腫瘍であり、世界中で毎年およそ357,000の新症例という発生率を有する(Parkin DM, et al., Cancer J Clin 2005 55:74-108(非特許文献1))。それらのおよそ3分の1は、診断の時点で浸潤性または転移性の疾患であると推測される(非特許文献1〜3)。世界の多くの地域で、浸潤性膀胱癌のための根治的膀胱切除が、治療の標準のままであるが、そのような患者のほぼ半分は、膀胱切除後2年以内に転移を発症し、その後、その疾患により死亡する。過去20年間に、CMV(シスプラチン、メトトレキサート、およびビンブラスチン)またはM−VAC(メトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、およびシスプラチン)などのシスプラチンに基づく組み合わせ化学療法レジメンが、進行膀胱癌を有する患者のために処方されるようになった(非特許文献3〜6)。しかしながら、全体の予後は依然として非常に不十分なままであり、これらの組み合わせ化学療法によって引き起こされる有害反応は著しく重篤である(非特許文献7)。したがって、膀胱癌に対する新たな分子標的薬の開発が、切実に望まれている。
【0004】
その目標を念頭において、本発明者らは、以前に、26例の膀胱癌ならびに29例の正常ヒト組織の遺伝子発現プロファイルを分析し(非特許文献8、9)、DEP domain containing 1(DEPDC1)とされた遺伝子および対応するペプチドを同定した。DEPDC1は、膀胱癌細胞の大多数において高度に上方制御されているが、精巣以外の正常ヒト器官には発現しておらず、このことから、この分子が新規ながん/精巣抗原であることが示された(特許文献1)。このデータは、DEPDC1が、膀胱癌のための抗がん剤またはがんペプチドワクチンの開発のための有益な標的として役立つかもしれないことをさらに示唆した(特許文献2)。さらなる研究は、低分子干渉RNA(siRNA)によるDEPDC1発現の抑制が、膀胱癌細胞の増殖を著しく阻害することを証明した。現在までのデータは、DEPDC1が膀胱癌の増殖および/または生存において重大な役割を果たすことを示唆しているが、その分子的な機序は未知のままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2006/085684
【特許文献2】WO2008/047473
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Parkin DM, et al., Cancer J Clin 2005 55:74-108
【非特許文献2】Sternberg CN, et al., Ann Oncol 1995 6:113-26
【非特許文献3】Ardavanis A, et al., Br J Cancer 2005 92:645-50
【非特許文献4】Lehmann J, et al., World J Urol 2002 20:144-50
【非特許文献5】Rosenberg JE, et al., J Urology 2005 174:14-20
【非特許文献6】Theodore C, et al., Eur J Cancer 2005 41:1150-7
【非特許文献7】Vaughn DJ, et al., Semin Oncol 1999 Suppl 2;117-22
【非特許文献8】Takata R, et al., Clin Cancer Res 2005 11:2625-36
【非特許文献9】Saito-Hisaminato A, et al., DNA Res 2002 9:35-45
【発明の概要】
【0007】
本発明は、DEPDC1が、転写リプレッサーであるzinc finger protein 224(ZNF224)との相互作用を通して、DIG1を含む複数の下流遺伝子を抑制することにより、膀胱癌発生において重要な役割を果たすことを開示する。本明細書において証明されるように、細胞透過性ドミナントネガティブペプチドによるDEPDC1とZNF224との相互作用の阻害は、膀胱癌細胞の増殖抑制をもたらした。さらに、低分子干渉RNA(siRNA)によるZNF224遺伝子の抑制は、膀胱癌細胞の増殖阻害および/または細胞死をもたらした。これらの知見は、DEPDC1/ZNF224複合体が膀胱癌発生において重大な役割を果たしており、DEPDC1/ZNF224複合体形成の阻害が、膀胱癌の治療のための可能性のある戦略をもたらすであろうという本発明の前提を支持する。
【0008】
したがって、DEPDC1タンパク質およびZNF224タンパク質を試験化合物と接触させる工程、ならびにこれらのペプチドの相対的な結合を決定する工程を含む、DEPDC1タンパク質とZNF224タンパク質との間の結合を阻害する化合物を同定するための方法を提供することが、本発明の目的である。試験化合物の非存在下で観察される対照レベルと比較した、これらのペプチドの結合の測定された阻害は、その試験化合物が膀胱癌の症状を軽減するために使用され得ることを示す。
【0009】
DEPDC1およびZNF224を発現している細胞を試験化合物と接触させる工程、ならびにDLG1またはA20(TNFAIP3)の発現レベルを決定する工程を含む、がんを治療または予防するための化合物を同定するための方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。試験化合物の非存在下で観察される対照レベルと比較した、発現レベルの測定された低下は、その試験化合物が膀胱癌の症状を軽減するために使用され得ることを示す。
【0010】
DLG1またはA20(TNFAIP3)の転写調節領域とレポーター遺伝子とを保持しているベクターが導入されている、DEPDC1およびZNF224を発現している細胞を、試験化合物に接触させる工程、ならびにレポーター遺伝子の発現または活性を決定する工程を含む、がんを治療または予防するための化合物を同定するための方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。試験化合物の非存在下で観察される対照レベルと比較した、発現または活性の測定された低下は、その試験化合物が膀胱癌の症状を軽減するために使用され得ることを示す。
【0011】
siRNA組成物を対象へ投与する工程を含む、対象における乳癌を治療または予防する方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。本発明との関連において、siRNA組成物は、ZNF224遺伝子の発現を低下させる。さらに別の方法において、対象における膀胱癌の治療または予防は、核酸組成物を対象へ投与することにより実施され得る。本発明との関連において、核酸またはアミノ酸に特異的な核酸組成物は、ZNF224遺伝子の発現または活性を低下させる。
【0012】
本明細書に提示された結果は、ZNF224遺伝子に対するsiRNAの阻害効果を立証する。例えば、siRNAによるがん細胞の細胞増殖の阻害は、実施例セクションにおいて証明され、そのデータは、ZNF224遺伝子が膀胱癌の好ましい治療標的として役立つという事実を支持する。このように、ZNF224遺伝子に対するsiRNAとして役立つ二本鎖分子、および該二本鎖分子を発現するベクターを提供することが、本発明のさらにもう一つの目的である。
【0013】
本明細書に記載された方法の1つの利点は、膀胱癌の明白な臨床症状の検出前に、疾患が同定され得るという点である。疾患を早期に検出することによって、本発明は、患者の予後を改善し、回復および/または生存期間延長の確率を増加させることができる。本発明のその他の特色および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下の図面の簡単な説明、ならびに本発明およびその好ましい態様の詳細な説明を考慮することにより、本発明の様々な局面および用途が、熟練した当業者には明白になるであろう。
【0015】
【図1】膀胱癌細胞におけるDEPDC1のZNF224との相互作用を示す図である。パートAは、臨床膀胱癌試料におけるDEPDC1およびZNF224のアップレギュレーションを順に確認している半定量的RT−PCR分析の結果を示す。GAPDH発現のレベルを定量対照としてとり、臨床膀胱癌試料のmRNAから一本鎖cDNAの適切な希釈物を調製した。上皮;正常上皮膀胱、N膀胱;正常膀胱。パートBは、ZNF224−Flagプラスミドを一過性発現している膀胱癌細胞株UM−UC−3の抽出物からの内在性DEPDC1および外来ZNF224の免疫沈降アッセイの結果を示す。パートCは、UM−UC−3細胞における内在性DEPDC1(緑)および外来ZNF224(赤)の共局在を示す。
【図2】ZNF224に対するsiRNAによる膀胱癌細胞の増殖抑制を示す図である。左上部分は、UM−UC−3細胞における、si−ZNF224−1、si−ZNF224−2、または対照siRNA(EGFPまたはSCR)に応答して起こるノックダウン効果を証明している、半定量的RT−PCR分析の結果を示す。左下および右の部分は、特異的siRNAまたは対照プラスミドによりトランスフェクトされたUM−UC−3細胞のコロニー形成アッセイおよびMTTアッセイの結果を示す。バーは、3回のアッセイのSDを示す。
【図3】DEPDC1/ZNF224の増殖促進効果および候補下流遺伝子の抑止を示す図である。パートAは、siRNA−DEPDC1、siRNA−ZNF224、またはsiRNA−EGFP(対照)により処理された細胞におけるDLG1およびA20の発現の増加を立証している、リアルタイムPCR分析の結果を示す。パートBは、DEPDC1およびZNF224の過剰発現によるDLG1のトランス活性化の阻害を示す。パートCは、レポーター活性アッセイの結果を示す。
【図4】DEPDC1におけるZNF224結合領域の同定、およびDEPDC1のドミナントネガティブ断片による膀胱癌細胞の増殖の阻害を示す図である。パートAは、末端領域の片方または両方を欠く、6種のCOOH末端HAタグ付きDEPDC1部分クローンの概略図である。各部分クローンの分子量は括弧内に記載されている。上の部分は、構築物(アミノ酸)の相対的なポリペプチドサイズ(1〜200)を示す。パートBは、ZNF224に結合するDEPDC1における領域を同定している、免疫沈降実験の結果を示す。DEPDC1における148〜176アミノ酸ポリペプチドまたは598〜653アミノ酸ポリペプチドを欠くDEP1−147構築物、DEP177−597構築物、およびDEP654−811構築物は、Cos7細胞において外来ZNF224と相互作用するいかなる能力も保持していなかった。この結果は、29アミノ酸セグメント(コドン148〜176)および56アミノ酸セグメント(コドン598〜653)が、内在性ZNF224と相互作用するために重要であると考えられることを示唆している。
【図5】DEPDC1のドミナントネガティブペプチドによる膀胱癌細胞の増殖阻害を示す図である。パートAは、ZNF224を用いてDEPDC1の結合領域に由来する有効なペプチドがスクリーニングされた、UM−UC−3における増殖阻害アッセイの結果を提示する。本明細書中の6種の合成ペプチドから、ドミナントネガティブペプチドを選択した。パートBは、複合体形成の低下が検出された、DEPDC1611−628ペプチドにより処理された膀胱癌細胞における外来DEPDC1タンパク質と外来ZNF224タンパク質との間の免疫沈降アッセイの結果(黒矢印)を示す。インプット画分が下に示される。パートCは、アッセイされた4種の正常細胞株および膀胱癌細胞株における内在性DEPDC1タンパク質および内在性ZNF224タンパク質の発現を検出するための、抗DEPDC1抗体および抗ZNF224抗体を使用したウェスタンブロッティング分析の結果を示す。膀胱癌細胞株と比較した、正常ヒト皮膚線維芽細胞由来NHDF−Ad細胞におけるDEPDC1タンパク質およびZNF224のタンパク質の発現は無い。パートDは、DEPDC1−ZNF224を過剰発現しているUM−UC−3細胞およびDEPDC1−ZNF224を発現していないNHDF−Ad細胞へ導入された、DEPDC1611−628ペプチドの増殖抑制効果を確認している、MTTアッセイの結果を示す。バーは、3回のアッセイのSDを示す。MTTアッセイは、DEPDC1タンパク質およびZNF224タンパク質をほとんど発現していないNHDF−Ad細胞に対するDEPDC1611−628ペプチドのオフターゲット効果が存在しないことを示している(下)。パートEは、11R−DEP611−628ペプチドにより処理されたCOS7細胞における、外来DEPDC1タンパク質と外来ZNF224タンパク質との間の免疫沈降により検出された複合体形成の低下を実証している。COS7細胞を、HAタグ付きDEPDC1およびFlagタグ付きZNF224構築物によりコトランスフェクトし、次いでトランスフェクションの6時間後、11R−DEP611−628ペプチドまたはスクランブル611−628ペプチドにより処理した。15時間後、MTTアッセイを実施した。パートFは、11R−DEP611−628ペプチドによる膀胱癌細胞株J82の増殖の阻害を示す。MTTアッセイは、DEPDC1−ZNF224を過剰発現しているJ82細胞へ導入された、11R−DEP611−628ペプチドの増殖抑制効果を示した。パートGは、免疫沈降実験によるZNF224に結合するDEPDC1における領域の同定を示す。11R−DEP611−628ペプチド処理は、外来Flagタグ付きZNF224と相互作用するための分析可能性を保持せず、この11R−DEP611−628は、HAタグ付きDEPDC1およびFlagタグ付きZNF224構築物の複合体形成、発現の阻害を示唆している。
【図6】11R−DEP611−628ペプチドによる処理後のDEPDC1−ZNF224複合体によるDLG1およびA20の抑止を示す図である。パートAは、膀胱癌細胞におけるドミナントネガティブペプチドによるDLG1発現のアップレギュレーションおよびG1停止を示す。パートBは、膀胱癌細胞におけるドミナントネガティブペプチドによるA20発現のアップレギュレーションおよびG1停止を示す。
【図7】DEPDC1のドミナントネガティブペプチドによる膀胱癌の細胞増殖の阻害を示す図である。パートAは、4種のドミナントネガティブペプチド(11R−DEP598−615、11R−DEP611−628、11R−DEP624−641、および11R−DEP636−653)の各々により処理されたCOS7細胞における、外因的に発現されたDEPDC1タンパク質(DEPDC1−HA)と外因的に発現されたZNF224タンパク質(ZNF224−FLAG)との間の免疫沈降により検出された複合体形成の効果を示す。パートBは、11R−DEP611−628ペプチドまたはスクランブルペプチドによる処理がアポトーシス細胞死を誘導した後のUM−UC−3細胞のアポトーシス分析を示す。細胞を、ペプチド(11R−DEP611−628ペプチドおよびスクランブルペプチド;3μM添加)またはPBSと共に、それぞれ12時間インキュベートした。上パネルは、TUNELアッセイの代表的な画像を示す。TUNEL染色の計数によりアポトーシス細胞を測定した(下パネル、材料および方法を参照されたい)。データは3回の実験からの平均値±SEである。(11R−DEP611−628対PBS;、P<0.000001、独立t検定、NS、非有意)。パートCは、11R−DEP611−628による処理によるアポトーシスの増加を示す。FACS分析におけるsub−G1画分の比率としてアポトーシス細胞の割合を示した。
【図8】DEPDC1およびZNF224の共発現による細胞増殖の増強を示す図である。細胞生存能を評価するためにMTTアッセイを実施し、モックを1.0として標準化した後、グラフ化した。ウェスタンブロット分析は、DEPDC1−HAタンパク質およびZNF224−FLAGタンパク質の発現をそれぞれ示した(下パネル)。βアクチンの発現を負荷対照として使用した。アスタリスクは、独立t検定により決定された有意差(P<0.05)を意味する。
【図9】DEPDC1内のZNF224結合領域の同定を示す図である。パートAは、末端領域の片方または両方を欠く6種のCOOH末端HAタグ付きDEPDC1部分クローンの模式図を示す。上は、構築物(アミノ酸)の相対ポリペプチドサイズ(1〜200)を示す。パートBは、免疫共沈降実験によるZNF224に結合するDEPDC1内の領域の同定を示す。DEPDC1598−653に相当する56アミノ酸ポリペプチドを失った1−147HA構築物、1−300HA構築物、177−597HA構築物、および654−811HA構築物は、外来ZNF224タンパク質と相互作用することができなかった。
【図10】DEPDC1−ZNF224複合体の候補下流遺伝子としてのA20の同定を示す図である。パートAは、NHDF細胞におけるA20遺伝子のプロモーター領域を含有しているレポータープラスミドのルシフェラーゼ活性に対するDEPDC1−ZNF224複合体の効果を示す。ルシフェラーゼ活性は、A20プロモーター領域を含まないpRL−TKプロモーターベクターの活性に対して相対的に示されている。パートBは、ChIPアッセイにより検出された、DEPDC1−ZNF224複合体の、A20プロモーター領域を含有しているDNA断片との会合を示す。上パネルにおいては、HEK293細胞からのDNAを、示された抗体により免疫沈降させ、PCRのために使用した。
【図11】11R−DEP611−628ペプチドによる処理による膀胱癌細胞におけるNF−κBシグナル伝達経路の阻害を示す図である。パートAは、11R−DEP611−628ペプチドによる処理によるA20発現のアップレギュレーションおよびIκBの蓄積を示す。UM−UC−3細胞を11R−DEP611−628ペプチド(3μM)により処理した。次いで、処理の0時間後、1時間後、3時間後、6時間後、12時間後、および24時間後に、抗A20抗体および抗IκB抗体を用いたウェスタンブロット分析により、細胞溶解物を分析した。GAPDHをRT−PCRのための定量対照として使用した。βアクチンをウェスタンブロット分析のための負荷対照として使用した。A20タンパク質およびIκBタンパク質の相対発現レベルを、濃度測定分析により定量化し、未処理の試料と比較した増加倍率を計算した。パートBは、11R−DEP611−628ペプチドによる処理によるUM−UC−3細胞におけるNF−κB(p65)核輸送の阻止を示す。ペプチド処理後、NF−κB(p65)タンパク質発現を、抗NF−κB(p65)モノクローナル抗体による免疫細胞化学的染色(緑)により分析した。画像分析のため、各実験について、11R−DEP611−628ペプチドにより処理された細胞(白矢印)およびスクランブルペプチドにより処理された細胞(黄矢印)の50個の核を観察することにより、NF−κB(p65)の核シグナル強度を測定した。データは3回の実験からの平均値±SEである。*、P<0.01、スクランブルペプチドと比較した11R−DEP611−628ペプチド処理。黄矢印は核輸送されたNF−κB(p65)タンパク質を示す。
【図12】11R−DEP611−628ペプチドによるA20の再活性化を介したNF−κB抗アポトーシス経路の阻止の模式図である。膀胱癌細胞において、トランス活性化されたDEPDC1タンパク質は、同時転写リプレッサーとしてのZNF224との相互作用を通して、A20トランス活性化を抑止し、NF−κBの活性化を通して抗アポトーシス経路の活性化をもたらす(上パネル)。他方、ドミナントネガティブペプチドである11R−DEP611−628による処理においては、DEPDC1−ZNF224複合体形成の阻害によりA20の転写活性が上方制御されてIκBの細胞内蓄積がもたらされ、その後、NF−κBの不活化を通して抗アポトーシス経路が阻害される(下パネル)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
態様の説明
本明細書に記載されたものと類似しているかまたは等価である任意の方法および材料を、本発明の態様の実施または試行において使用することができるが、好ましい方法、装置、および材料を以下に記載する。しかしながら、本材料および本方法を記載する前に、本発明が、本明細書に記載された特定のサイズ、形、寸法、材料、方法論、プロトコル等に限定されず、これらがルーチンの実験法および最適化に従い変動し得ることを理解されたい。また、明細書中で使用される用語は、特定の形式または態様を記載するためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図していないことも理解されたい。
【0017】
本明細書中で言及された各々の公開、特許、または特許出願の開示は、参照によりその全体が具体的に本明細書に組み入れられる。しかしながら、本明細書中のいかなる記載も、先行発明のため、本発明がそのような開示に先行している資格を有しないことの承認として解釈されるべきではない。
【0018】
矛盾が生じた場合には、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および例は、例示的なものに過ぎず、限定することを意図していない。
【0019】
I.定義
「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単語は、本明細書で使用される場合、特に指定のない限り、「少なくとも1つの」を意味する。
【0020】
本明細書で使用される場合、「生物学的試料」という用語は、完全な生物、またはその組織、細胞、もしくは構成部分のサブセット(例えば、血液、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、羊膜臍帯血、尿、膣液、および精液を含むが、これらに限定されない体液)をさす。「生物学的試料」とは、完全な生物、またはその細胞、組織、もしくは構成部分のサブセットから調製されたホモジネート、溶解物、抽出物、細胞培養物、もしくは組織培養物、またはそれらの画分もしくは部分をさらにさす。最後に、「生物学的試料」とは、タンパク質またはポリヌクレオチドなどの細胞成分を含有している、生物が増殖したニュートリエントブロスまたはゲルなどの培地をさす。
【0021】
「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「核酸」、および「核酸分子」という用語は、核酸残基のポリマーをさすために互換的に本明細書で使用され、特に指定されない限り、一般的に認められている一文字記号により言及される。これらの用語は、一つまたは複数の核酸がエステル結合により連結されている核酸(ヌクレオチド)ポリマーに当てはまる。核酸ポリマーは、DNA、RNA、またはそれらの組み合わせから構成されていてよく、天然に存在する核酸ポリマーおよび天然には存在しない核酸ポリマーの両方を包含する。
【0022】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーをさすために互換的に本明細書で使用される。これらの用語は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸のみならず、アミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体もさし、1つまたは複数のアミノ酸残基が、修飾された残基であるか、または対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学的模倣体などの、天然には存在しない残基であるアミノ酸ポリマーもさす。天然に存在するアミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされたもの、ならびに細胞内で翻訳後に修飾されたもの(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリン)である。「アミノ酸類似体」という語句は、天然に存在するアミノ酸と同一の基本化学構造(水素に結合したα炭素、カルボキシ基、アミノ基、およびR基)を有するが、修飾されたR基または修飾された骨格を有する化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニン、スルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)をさす。「アミノ酸模倣体」という語句は、一般的なアミノ酸と異なる構造を有するが、類似した機能を有する化学物質をさす。アミノ酸は、本明細書中、IUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨された、それらの一般的に公知の3文字記号または1文字記号により言及される場合もある。
【0023】
他に定義されない限り、「がん」という用語は、DEPDC1遺伝子を過剰発現しているがんをさす。DEPDC1を過剰発現しているがんの例には膀胱癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
II.遺伝子およびタンパク質
本発明の関心対象である遺伝子の核酸配列およびポリペプチド配列は、以下の番号で示されるが、これらに限定されない;
DEPDC1:SEQ ID NO:44および45、または46および47;
ZNF224:SEQ ID NO:48および49;
DLG1:SEQ ID NO:50および51;ならびに
A20(TNFAIP3):SEQ ID NO:52および53。
追加的な配列データは以下のアクセッション番号を介して入手可能である;
DEPDC1:AB382287またはNM_017779.4;
ZNF224:NM_013398;
DLG1:NM_001098424;および
A20(TNFAIP3):NM_006290。
【0025】
本発明の一局面によると、機能的等価物も上記の「ポリペプチド」であると見なされる。本明細書において、タンパク質の「機能的等価物」とは、そのタンパク質と等価な生物学的活性を有するポリペプチドである。すなわち、元のポリペプチドの生物学的能力を保持している任意のポリペプチドが、本発明において、そのような機能的等価物として使用され得る。そのような機能的等価物には、タンパク質の天然に存在するアミノ酸配列と比べて、1つまたは複数のアミノ酸が置換されているか、欠失しているか、付加されているか、または挿入されているものが含まれる。あるいは、ポリペプチドは、それぞれのタンパク質の配列に対して少なくとも約80%の相同性(配列同一性とも呼ばれる)、より好ましくは少なくとも約90%〜95%の相同性、さらに好ましくは96%〜99%の相同性を有するアミノ酸配列から構成されていてもよい。他の態様において、ポリペプチドは、遺伝子の天然に存在するヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされていてもよい。
【0026】
本発明のポリペプチドは、それを作製するために使用された細胞もしくは宿主、または利用された精製法に依って、アミノ酸配列、分子量、等電点、糖鎖の有無、または形態における変動を有していてもよい。それにもかかわらず、本発明のヒトタンパク質のものと等価な機能を有する限り、それは本発明の範囲内である。
【0027】
「ストリンジェントな(ハイブリダイゼーション)条件」という語句は、核酸分子が、その標的配列、典型的には核酸の複雑な混合物中にある標的配列とハイブリダイズするが、他の配列とは検出可能にハイブリダイズしない条件をさす。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、異なる状況下で変動する。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範囲の案内は、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Probes, "Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays" (1993)に見出される。一般的に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度およびpHにおける特定の配列の熱融解点(Tm)よりも約5〜10℃低く選択される。Tmとは、平衡状態で、標的に相補的なプローブの50%が、標的配列とハイブリダイズする(規定のイオン強度、pH、核濃度での)温度である(標的配列が過剰に存在するので、Tmでは、平衡時に、プローブの50%が占有される)。ホルムアミドなどの脱安定化剤の添加によっても、ストリンジェントな条件を達成することができる。選択的または特異的なハイブリダイゼーションのため、陽性シグナルは、バックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくは、バックグラウンドハイブリダイゼーションの10倍である。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、以下のものが含まれる:50%ホルムアミド、5×SSC、および1%SDS、42℃でのインキュベーション、または5×SSC、0.1%SDS、65℃でのインキュベーションと、50℃での0.2×SSCおよび1%SDSによる洗浄。
【0028】
本発明との関連において、上記のヒトタンパク質と機能的に等価なポリペプチドをコードするDNAを単離するためのハイブリダイゼーションの条件を、当業者はルーチンに選択することができる。例えば、「Rapid−hyb buffer」(Amersham LIFE SCIENCE)を使用して、68℃で30分以上プレハイブリダイゼーションを実施し、標識されたプローブを添加し、68℃で1時間以上加熱することにより、ハイブリダイゼーションを実施することができる。例えば、低ストリンジェントな条件においては、以下の洗浄工程を実施することができる。例示的な低ストリンジェントな条件には、42℃、2×SSC、0.1%SDS、好ましくは、50℃、2×SSC、0.1%SDSが含まれ得る。多くの場合、高ストリンジェンシー条件が好んで使用される。例示的な高ストリンジェンシー条件には、2×SSC、0.01%SDSで20分間、室温での3回の洗浄、次いで1×SSC、0.1%SDSで20分間、37℃での3回の洗浄、および1×SSC、0.1%SDSで20分間、50℃での2回の洗浄が含まれ得る。しかしながら、温度および塩濃度などの幾つかの因子が、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を及ぼす場合があり、当業者は、必要なストリンジェンシーを達成するために適切に因子を選択することができる。
【0029】
一般的に、タンパク質における1つ、2つ、またはそれ以上のアミノ酸の改変は、タンパク質の機能に影響を与えない。実際に、変異型タンパク質または改変型タンパク質(すなわち、1つ、2つ、または幾つかのアミノ酸残基が、置換、欠失、挿入、および/または付加により改変されているアミノ酸配列から構成されたペプチド)は、元の生物学的活性を保持することが公知である(Mark et al., Proc Natl Acad Sci USA 81: 5662-6 (1984);Zoller and Smith, Nucleic Acids Res 10:6487-500 (1982);Dalbadie-McFarland et al., Proc Natl Acad Sci USA 79: 6409-13 (1982))。したがって、一態様において、本発明のペプチドは、参照配列内の1つ、2つ、またはそれ以上のアミノ酸が付加、挿入、欠失、および/または置換されているアミノ酸配列を有することができる。
【0030】
単一のアミノ酸もしくは少ない比率のアミノ酸を変更する、アミノ酸配列に対する個々の付加、欠失、挿入、もしくは置換、または「保存的修飾」であるとみなされるもの、すなわち、変更が元のアミノ酸側鎖の特性の保存をもたらすようなものは、元の参照タンパク質のものと類似した機能を有するタンパク質の生成をもたらす傾向があり、したがって、本発明に関して許容可能であることを、当業者は認識するであろう。
【0031】
タンパク質の活性が維持される限り、アミノ酸変異の数は特に限定されない。しかしながら、アミノ酸配列の5%以下を変えることが一般的に好ましい。したがって、好ましい一態様において、そのような変異体において変異させるべきアミノ酸の数は、一般的には、30アミノ酸以下、好ましくは20アミノ酸以下、より好ましくは10アミノ酸以下、より好ましくは5または6アミノ酸以下、さらに好ましくは3または4アミノ酸以下である。
【0032】
変異させられるアミノ酸残基は、好ましくは、アミノ酸側鎖の特性が保存される異なるアミノ酸に変異させられる(保存的アミノ酸置換として公知のプロセス)。アミノ酸側鎖の特性の例は、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、および以下の官能基または特徴を共通に有する側鎖である:脂肪族側鎖(G、A、V、L、I、P);ヒドロキシル基を含有している側鎖(S、T、Y);硫黄原子を含有している側鎖(C、M);カルボン酸およびアミドを含有している側鎖(D、N、E、Q);塩基を含有している側鎖(R、K、H);ならびに芳香族を含有している側鎖(H、F、Y、W)。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当技術分野で周知である。例えば、以下の8つの群は、各々、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有している:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リシン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、スレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins 1984を参照されたい)。
【0033】
そのような保存的に改変されたポリペプチドは、本タンパク質に含まれる。しかしながら、本発明は、これらに限定されず、かつタンパク質の生物学的活性が少なくとも1つ保持される限り、非保存的改変を含む。さらに、改変されたタンパク質は、多型バリアント、種間相同体、およびこれらのタンパク質の対立遺伝子によってコードされるものを除外しない。
【0034】
さらに、本発明の遺伝子には、タンパク質のそのような機能的等価物をコードするポリヌクレオチドが包含される。タンパク質と機能的に等価なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを単離するためには、ハイブリダイゼーションに加えて、上記の配列情報に基づき合成されたプライマーを使用した、遺伝子増幅法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を利用することができる。ヒト遺伝子およびヒトタンパク質と機能的に等価なポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、それぞれ、通常、元のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列に対して高い相同性を有する。「高い相同性」とは、典型的には40%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%〜95%以上、さらに好ましくは96%〜99%以上の相同性をさす。特定のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの相同性は、「Wilbur and Lipman, Proc Natl Acad Sci USA 80: 726-30 (1983)」のアルゴリズムに従い、決定され得る。
【0035】
III.DEPDC1変異ポリペプチド
本明細書に開示されるタンパク質のドミナントネガティブ変異体は、がんを治療または予防するために使用され得、該がんは膀胱癌である。例えば、本発明は、ドミナントネガティブ効果を有するDEPDC1変異体またはそのような変異体をコードするポリヌクレオチドを投与することにより、対象におけるがんを治療または予防する方法を提供する。DEPDC1変異体は、ZNF224結合領域を含むアミノ酸配列を含み得る(図4および図5を参照されたい)。DEPDC1変異体は、SEQ ID NO:45の611〜628位またはSEQ ID NO:47の327〜344位に相当するSEQ ID NO:28のアミノ酸配列を有し得る。
【0036】
本発明は、SEQ ID NO:45または47からなるペプチドの生物学的機能を欠く、配列PPNRRKLQLLMRMISRMS(SEQ ID NO:28)を含むポリペプチド;または該ポリペプチドと機能的に等価なポリペプチドのアミノ酸配列も提供する。好ましい態様において、欠失させられる生物学的機能は、がん細胞の細胞増殖を促進する活性である。本発明のポリペプチドの長さは、全長DEPDC1(SEQ ID NO:45または47;811残基または527残基)未満であり得る。一般的に、本発明のポリペプチドは、200個未満のアミノ酸残基、好ましくは100個未満のアミノ酸残基、より好ましくは10〜50個、あるいは8〜30個のアミノ酸残基を有し得る。
【0037】
本発明のポリペプチドには、修飾型ポリペプチドが包含される。本発明において、「修飾型」という用語は、例えば、他の物質との結合をさす。したがって、本発明との関連において、ポリペプチドは、細胞膜透過性物質などの他の物質をさらに含んでいてもよい。他の物質の例には、ペプチド、脂質、糖、および様々な天然に存在するポリマーまたは合成ポリマーなどの有機化合物が含まれるが、これらに限定されない。得られるポリペプチドが、DEPDC1のZNF224との結合を阻害するという所望の活性を保持する限り、本発明のポリペプチドは、任意の数の修飾を有していてもよい。いくつかの態様において、阻害性ポリペプチドは、直接、DEPDC1のZNF224との結合に競合することができる。修飾は、本発明のポリペプチドに付加的な機能を付与するものであってもよい。付加的な機能の例には、標的に向かう能力(targetability)、送達能力(deliverability)、および安定化が含まれる。
【0038】
いくつかの好ましい態様において、DEPDC1変異体は膜伝達剤(membrane transducing agent)に連結され得る。多数のペプチド配列が、生細胞へと移動する能力について特徴付けられており、本発明においてこの目的のため使用され得る。そのような膜伝達剤(典型的には、ペプチド)は、内部移行後に生細胞内の細胞質コンパートメントおよび/または核コンパートメントに到達する能力により定義される。伝達剤が由来し得るタンパク質の例には、HIV Tatトランス活性化因子1および2、ならびにキイロショウジョウバエ転写因子アンテナペディア3が含まれる。さらに、伝達活性を有する非天然ペプチドが使用されている。これらのペプチドは、典型的には、移動について試験される、膜相互作用特性について公知の低分子ペプチドである。K−線維芽細胞増殖因子(FGF)の分泌シグナル配列内の疎水性領域、毒液毒素マストパラン(トランスポータン)13、およびブフォリンI14(両生類抗微生物ペプチド)が、伝達剤として有用であることが示されている。本発明に関して有用な伝達剤の概説に関しては、Joliot et al. Nature Cell Biology 6:189-96 (2004)を参照されたい。
【0039】
DEPDC1変異体は、一般式:
[R]−[D]
を有してもよく、式中、[R]は膜伝達剤であり、かつ[D]はSEQ ID NO:28のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。該一般式において、[R]は、[D]に直接連結されていてもよいし、またはリンカーを通して[D]に間接的に連結されていてもよい。複数の官能基を有するペプチドまたは化合物が、リンカーとして使用され得る。特に、−GGG−であるアミノ酸配列が、リンカーとして使用され得る。あるいは、膜伝達剤およびSEQ ID NO:28のアミノ酸配列を有するポリペプチドが、微粒子の表面に結合していてもよい。
【0040】
本発明との関連において、[R]は[D]の任意の領域に連結され得る。例えば、[R]は、[D]のN末端もしくはC末端、または[D]を構成するアミノ酸残基の側鎖に連結され得る。さらに、[R]の複数の分子が、[D]の1つの分子に連結されていてもよい。いくつかの態様において、[R]の複数の分子は、[D]の異なる部位に連結されていてもよい。別の態様において、共に連結された幾つかの[R]によって[D]が修飾されていてもよい。
【0041】
膜伝達剤は、以下にリストされる群より選択され得る。
[ポリアルギニン]; Matsushita, M. et al, J Neurosci. 21, 6000-7 (2003).
[Tat/RKKRRQRRR](SEQ ID NO:29) Frankel, A. et al, Cell 55,1189-93 (1988).
Green, M. & Loewenstein, P. M. Cell 55, 1179-88 (1988).
[ペネトラチン(Penetratin)/RQIKIWFQNRRMKWKK](SEQ ID NO:30)
Derossi, D. et al, J. Biol. Chem. 269, 10444-50 (1994).
[ブフォリンII/TRSSRAGLQFPVGRVHRLLRK](SEQ ID NO:31)
Park, C. B. et al. Proc. Natl Acad. Sci. USA 97, 8245-50 (2000).
[トランスポータン/GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL](SEQ ID NO: 32)
Pooga, M. et al. FASEB J. 12, 67-77 (1998).
[MAP(model amphipathic peptide) / KLALKLALKALKAALKLA](SEQ ID NO:33)
Oehlke, J. et al. Biochim. Biophys. Acta. 1414, 127-39 (1998).
[K−FGF/AAVALLPAVLLALLAP](SEQ ID NO:34)
Lin, Y. Z. et al. J. Biol. Chem. 270, 14255-14258 (1995).
[Ku70/VPMLK](SEQ ID NO:35)
Sawada, M. et al. Nature Cell Biol. 5, 352-7 (2003).
[Ku70/PMLKE](SEQ ID NO:36)
Sawada, M. et al. Nature Cell Biol. 5, 352-7 (2003).
[プリオン/MANLGYWLLALFVTMWTDVGLCKKRPKP](SEQ ID NO:37)
Lundberg, P. et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 299, 85-90 (2002).
[pVEC/LLIILRRRIRKQAHAHSK](SEQ ID NO:38)
Elmquist, A. et al. Exp. Cell Res. 269, 237-44 (2001).
[Pep−1/KETWWETWWTEWSQPKKKRKV](SEQ ID NO:39)
Morris, M. C. et al. Nature Biotechnol. 19, 1173-6 (2001).
[SynB1/RGGRLSYSRRRFSTSTGR](SEQ ID NO:40)
Rousselle, C. et al. Mol. Pharmacol. 57, 679-86 (2000).
[Pep−7/SDLWEMMMVSLACQY](SEQ ID NO:41)
Gao, C. et al. Bioorg. Med. Chem. 10, 4057-65 (2002).
[HN−1/TSPLNIHNGQKL](SEQ ID NO:42)
Hong, F. D. & Clayman, G. L. Cancer Res. 60, 6551-6 (2000).
【0042】
本発明との関連において、ポリアルギニンを構成するアルギニン残基の数は限定されないが、いくつかの好ましい態様において、5〜20個の連続アルギニン残基が、例として挙げられうる。好ましい態様において、ポリアルギニンのアルギニン残基の数は、11である(SEQ ID NO:43)。
【0043】
本明細書で使用される場合、「DEPDC1のドミナントネガティブ断片」という語句は、ZNF224と複合体化することができるDEPDC1の変異型をさす。このように、ドミナントネガティブ断片は、全長DEPDC1ポリペプチドと機能的に等価でないものである。好ましいドミナントネガティブ断片は、ZNF224結合領域を含むものである。
【0044】
別の態様において、本発明は、SEQ ID NO:45または47からなるペプチドの生物学的機能を欠く、配列PPNRRKLQLLMRMISRMS(SEQ ID NO:28)を有するポリペプチド;そのようなポリペプチドと機能的に等価なポリペプチド;またはこれらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの、がんを治療または予防するための医薬組成物の製造における使用を提供する。さらに、別の態様において、本発明は、SEQ ID NO:45または47のペプチドの生物学的機能を欠く、配列PPNRRKLQLLMRMISRMS(SEQ ID NO:28)を含むポリペプチド;該ポリペプチドと機能的に等価なポリペプチド;またはそれらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを活性成分として含む、がんの治療および予防のいずれかまたは両方のための剤も提供する。あるいは、本発明は、SEQ ID NO:45または47のペプチドの生物学的機能を欠く、配列PPNRRKLQLLMRMISRMS(SEQ ID NO:28)から構成されるポリペプチド;または該ポリペプチドと機能的に等価なポリペプチド;および薬学的に許容可能な担体とを含む、がんの治療または予防のための医薬組成物も提供する。
【0045】
がんを治療するかまたは細胞におけるアポトーシスを誘導するために、ヒト、ならびにマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、サル、ヒヒ、およびチンパンジーなどのその他の哺乳動物に、例えば、調製された医薬として、本発明のポリペプチドを投与する場合には、単離された化合物を、直接投与してもよいし、または医薬を調製するための公知の方法を使用して適切な剤形へと製剤化してもよい。例えば、必要であれば、医薬は、水または任意のその他の薬学的に許容可能な液体を含む滅菌された溶液または懸濁物である注射可能な形態で投与され得る。例えば、化合物は、一般的に認められている医薬を製造するのに必要な単位剤形で、薬理学的に許容可能な担体または媒体、特に、滅菌水、生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁化剤、界面活性剤、安定剤、矯味剤、賦形剤、媒体、保存剤、および結合剤と混合され得る。これらの製剤の中の活性成分の量に依って、指定範囲内の好適な用量が決定され得る。
【0046】
当業者は、対象の体重、年齢、性別、疾患の種類、症状、およびその他の条件;投与経路;ならびに投与が局所的であるかそれとも全身的であるかなどの因子を考慮することにより、所定の対象に投与されるポリペプチドの有効量を容易に決定することができる。
【0047】
投薬量は症状によって変動し得るが、がんの治療または予防のためのポリペプチドまたはその活性断片の例示的な用量は、標準的な成人(体重60kg)に経口投与される場合、1日当たり約0.1mg〜約100mg、好ましくは1日当たり約1.0mg〜約50mg、およびより好ましくは1日当たり約1.0mg〜約20mgである。
【0048】
化合物が注射可能な形態で標準的な成人(体重60kg)に非経口投与される場合、約0.01mg〜約30mg/日、好ましくは約0.1mg〜約20mg/日、より好ましくは約0.1mg〜約10mg/日の用量を静脈注射することが便利であるが、それは患者、標的器官、症状、および投与方法に依って、わずかに変動する。同様に、60kgの体重のための用量から変換された量で、他の動物に化合物を投与することができる。
【0049】
より多量またはより少量のペプチドが投与され得ることが企図される。特定の状況に必要とされる正確な投薬量は、当業者によって容易にルーチンに決定され得る。
【0050】
本発明は、膀胱癌などの、DEPDC1を過剰発現しているがんを治療するための医薬組成物を製造するための方法またはプロセスをさらに提供し、そのような方法またはプロセスは、配列PPNRRKLQLLMRMISRMS(SEQ ID NO:28)を含むポリペプチド;または該ポリペプチドと機能的に等価なポリペプチドである活性成分を、薬学的または生理学的に許容可能な担体と混和する工程を含む。
【0051】
IV.抗がん化合物のスクリーニング
本発明との関連において、本スクリーニング法により同定される剤には、任意の化合物、または幾つかの化合物を含む組成物が含まれる。さらに、本発明のスクリーニング法によって細胞またはタンパク質に曝露される試験剤または試験化合物は、単一の化合物であっても、または化合物の組み合わせであってもよい。化合物の組み合わせを前記方法において使用する場合には、化合物を逐次的に接触させてもよいし、または同時に接触させてもよい。
【0052】
任意の試験剤または試験化合物、例えば、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産物、海洋生物抽出物、植物抽出物、精製されたタンパク質または粗タンパク質、ペプチド、非ペプチド化合物、合成微小分子化合物(アンチセンスRNA、siRNA、リボザイム、およびアプタマー等などの核酸構築物を含む)、および天然化合物を、本発明のスクリーニング法において使用することができる。本発明の試験剤または試験化合物は、(1)生物学的ライブラリ、(2)空間的にアドレス可能なパラレルな固相または液相のライブラリ、(3)デコンボリューションを必要とする合成ライブラリ法、(4)「一ビーズ一化合物」ライブラリ法、および(5)アフィニティクロマトグラフィ選択を使用する合成ライブラリ法を含む、当技術分野で公知のコンビナトリアルライブラリ法の多数のアプローチのいずれかを使用して入手され得る。アフィニティクロマトグラフィ選択を使用する生物学的ライブラリ法はペプチドライブラリに限定されるが、他の4つのアプローチは化合物のペプチドライブラリ、非ペプチドオリゴマーライブラリ、または低分子ライブラリに適用可能である(Lam, Anticancer Drug Des 1997, 12: 145-67)。分子ライブラリの合成法の例は、当技術分野で見い出され得る(DeWitt et al., Proc Natl Acad Sci USA 1993, 90: 6909-13;Erb et al., Proc Natl Acad Sci USA 1994, 91: 11422-6;Zuckermann et al., J Med Chem 37: 2678-85, 1994;Cho et al., Science 1993, 261: 1303-5;Carell et al., Angew Chem Int Ed Engl 1994, 33: 2059;Carell et al., Angew Chem Int Ed Engl 1994, 33: 2061;Gallop et al., J Med Chem 1994, 37: 1233-51)。化合物のライブラリは、溶液中(Houghten, Bio/Techniques 1992, 13: 412-21を参照されたい)、またはビーズ上(Lam, Nature 1991, 354: 82-4)、チップ上(Fodor, Nature 1993, 364: 555-6)、細菌上(米国特許第5,223,409号)、胞子上(米国特許第5,571,698号;第5,403,484号、および第5,223,409号)、プラスミド上(Cull et al., Proc Natl Acad Sci USA 1992, 89: 1865-9)、もしくはファージ上(Scott and Smith, Science 1990, 249: 386-90;Devlin, Science 1990, 249: 404-6;Cwirla et al., Proc Natl Acad Sci USA 1990, 87: 6378-82;Felici, J Mol Biol 1991, 222: 301-10;米国特許出願第2002103360号)に提示され得る。
【0053】
本スクリーニング法のいずれかによってスクリーニングされた化合物の構造の一部が、付加、欠失、および/または置換により変換された化合物は、本発明のスクリーニング法によって入手される剤に含まれる。
【0054】
さらに、スクリーニングされた試験剤または試験化合物がタンパク質である場合、タンパク質をコードするDNAを入手するためには、タンパク質の全アミノ酸配列を決定して、タンパク質をコードする核酸配列を推定することもできるし、または入手されたタンパク質の部分アミノ酸配列を分析して、その配列に基づきオリゴDNAをプローブとして調製し、そのプローブを用いてcDNAライブラリをスクリーニングして、タンパク質をコードするDNAを入手することもできる。入手されたDNAは、がんを治療または予防するための候補である試験剤または試験化合物の調製における有用性に関して確認される。
【0055】
本明細書に記載されるスクリーニングにおいて有用な試験剤または試験化合物は、DEPDC1またはZNF224タンパク質に特異的に結合する抗体であってもよく、またはインビボで元のタンパク質の生物学的活性を欠くその部分ペプチドに特異的に結合する抗体であってもよい。
【0056】
試験剤/試験化合物ライブラリの構築は当技術分野で周知であるが、本スクリーニング法のための試験剤または試験化合物の同定およびそのような剤のライブラリの構築に関するさらなる指針を以下に提供する。
【0057】
(i)分子モデリング
試験剤/試験化合物ライブラリの構築は、求められる特性を有することが既知の化合物の分子構造、および/またはDEPDC1またはZNF224の分子構造の知識により容易になる。さらなる評価のために好適な試験剤または試験化合物を予備スクリーニングするための1つのアプローチは、試験剤/試験化合物とその標的との間の相互作用のコンピュータモデリングを利用する。
【0058】
コンピュータモデリング技術により、選択された分子の三次元原子構造の可視化、およびその分子と相互作用する新たな化合物の合理的設計が可能になる。三次元構築物は、典型的には、選択された分子のX線結晶学的分析またはNMRイメージングからのデータに依存する。分子動力学は力場データを必要とする。コンピュータグラフィックスシステムは、新たな化合物が標的分子にどのように結合するかを予測可能にし、結合特異性を完全にするための化合物および標的分子の構造の実験的操作を可能にする。一方または両方に軽微な変化が加えられた場合に、分子−化合物相互作用がどのようになるかを予測するには、分子力学ソフトウェアおよび計算集約型コンピュータが必要とされ、それらは、通常、分子設計プログラムと使用者との間のユーザーフレンドリーなメニュー方式のインターフェースと連結される。
【0059】
上記に概説された分子モデリングシステムの例には、CHARMmプログラムおよびQUANTAプログラム、Polygen Corporation,Waltham,Massが含まれる。CHARMmは、エネルギー最小化および分子動力学の機能を実行する。QUANTAは、分子構造の構築、グラフィックモデリング、および分析を実行する。QUANTAは、相互作用的構築、改変、可視化、および分子の互いの挙動の分析を可能にする。
【0060】
特定のタンパク質と相互作用する薬物のコンピュータモデリングを主題として、多数の論文が発表されており、その例には、Rotivinen et al. Acta Pharmaceutica Fennica 1988, 97: 159-66;Ripka, New Scientist 1988, 54-8;McKinlay & Rossmann, Annu Rev Pharmacol Toxiciol 1989, 29: 111-22;Perry & Davies, Prog Clin Biol Res 1989, 291: 189-93;Lewis & Dean, Proc R Soc Lond 1989, 236: 125-40, 141-62;および核酸成分のモデル受容体に関するAskew et al., J Am Chem Soc 1989, 111: 1082-90が含まれる。
【0061】
化学物質をスクリーニングし図示するその他のコンピュータプログラムは、BioDesign, Inc.(Pasadena,Calif.)、Allelix, Inc.(Mississauga,Ontario,Canada)、およびHypercube, Inc.(Cambridge,Ontario)などの会社から入手可能である。例えば、DesJarlais et al., J Med Chem 1988, 31: 722-9;Meng et al., J Computer Chem 1992, 13: 505-24;Meng et al., Proteins 1993, 17: 266-78;Shoichet et al., Science 1993, 259: 1445-50を参照されたい。
【0062】
推定の阻害剤が同定されたならば、以下に詳述されるように、同定された推定の阻害剤の化学構造に基づき、多数のバリアントを構築するため、コンビナトリアルケミストリー技術を利用することができる。その結果得られた推定の阻害剤または「試験剤または試験化合物」のライブラリは、試験剤または試験化合物、がんの治療および/もしくは予防、ならびに/またはそれらの術後再発の予防を同定するため、本発明の方法を使用してスクリーニングされ得、特に、該がんは膀胱癌である。
【0063】
(ii)コンビナトリアル化学合成
試験剤または試験化合物のコンビナトリアルライブラリは、既知の阻害剤に存在しているコア構造の知識を含む、合理的薬物設計プログラムの一部として作製され得る。このアプローチにより、ハイスループットスクリーニングを容易にする適度のサイズにライブラリを維持することが可能になる。あるいは、ライブラリを構成する分子ファミリーの全順列を簡便に合成することにより、単純な、特に短い、重合体分子ライブラリを構築することもできる。この後者のアプローチの一例は、6アミノ酸長の全ペプチドのライブラリである。そのようなペプチドライブラリは、6アミノ酸配列のあらゆる順列を含み得る。この種類のライブラリは、線形コンビナトリアルケミカルライブラリと称される。
【0064】
コンビナトリアルケミカルライブラリの調製は、当業者に周知であり、化学合成または生物学的合成のいずれかにより作製され得る。コンビナトリアルケミカルライブラリには、ペプチドライブラリ(例えば、米国特許第5,010,175号;Furka, Int J Pept Prot Res 1991, 37: 487-93;Houghten et al., Nature 1991, 354: 84-6を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。化学的多様性ライブラリを作製するためのその他の化学を使用することもできる。そのような化学には、ペプチド(例えば、PCT公報WO91/19735)、コードされたペプチド(例えば、WO93/20242)、ランダムバイオオリゴマー(例えば、WO92/00091)、ベンゾジアゼピン(例えば、米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン、およびジペプチドなどのダイバーソマー(diversomers)(DeWitt et al., Proc Natl Acad Sci USA 1993, 90: 6909-13)、ビニロガス(vinylogous)ポリペプチド(Hagihara et al., J Amer Chem Soc 1992, 114: 6568)、グルコース足場を有する非ペプチド性ペプチド模倣体(Hirschmann et al., J Amer Chem Soc 1992, 114: 9217-8)、低分子化合物ライブラリの類似有機合成(Chen et al., J. Amer Chem Soc 1994, 116: 2661)、オリゴカルバメート(Cho et al., Science 1993, 261: 1303)、および/またはペプチジルホスホネート(Campbell et al., J Org Chem 1994, 59: 658)、核酸ライブラリ(Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology 1995 supplement;Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, USAを参照されたい)、ペプチド核酸ライブラリ(例えば、米国特許第5,539,083号を参照されたい)、抗体ライブラリ(例えば、Vaughan et al., Nature Biotechnology 1996, 14(3): 309-14およびPCT/US96/10287を参照されたい)、炭水化物ライブラリ(例えば、Liang et al., Science 1996, 274: 1520-22;米国特許第5,593,853号を参照されたい)、ならびに有機低分子ライブラリ(例えば、ベンゾジアゼピン、Gordon EM. Curr Opin Biotechnol. 1995 Dec 1; 6(6): 624-31.;イソプレノイド、米国特許第5,569,588号;チアゾリジノンおよびメタチアザノン、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735号および第5,519,134号;モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン、米国特許第5,288,514号等を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
コンビナトリアルライブラリの調製のための装置は市販されている(例えば、357 MPS、390 MPS(Advanced Chem Tech, Louisville KY)、Symphony(Rainin, Woburn, MA)、433A(Applied Biosystems, Foster City, CA)、9050 Plus(Millipore, Bedford, MA)を参照されたい)。さらに、コンビナトリアルライブラリ自体も多数市販されている(例えば、ComGenex, Princeton, N.J.,Tripos, Inc., St. Louis, MO、3D Pharmaceuticals, Exton, PA、Martek Biosciences, Columbia, MD等を参照されたい)。
【0066】
(iii)その他の候補
もう1つのアプローチは、ライブラリを作製するために組換えバクテリオファージを使用する。「ファージ法」(Scott & Smith, Science 1990, 249: 386-90;Cwirla et al., Proc Natl Acad Sci USA 1990, 87: 6378-82;Devlin et al., Science 1990, 249: 404-6)を使用すれば、極めて大きいライブラリを構築することができる(例えば、106〜108個の化学物質)。第2のアプローチは、主として化学的な方法を使用し、Geysenの方法(Geysen et al., Molecular Immunology 1986, 23: 709-15;Geysen et al., J Immunologic Method 1987, 102: 259-74);およびFodorらの方法(Science 1991, 251: 767-73)がその例である。Furkaら(14th International Congress of Biochemistry 1988, Volume #5, Abstract FR: 013; Furka, Int J Peptide Protein Res 1991, 37: 487-93)、Houghten(米国特許第4,631,211号)、およびRutterら(米国特許第5,010,175号)は、アゴニストまたはアンタゴニストとして試験され得るペプチドの混合物を作製する方法を記載している。
【0067】
アプタマーは、特定の分子標的に強固に結合する核酸から構成された巨大分子である。TuerkおよびGold(Science. 249:505-510 (1990))は、アプタマーの選択のためのSELEX(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)法を開示している。SELEX法においては、核酸分子の大きなライブラリ(例えば、1015個の異なる分子)をスクリーニングに使用することができる。
【0068】
V.DEPDC1とZNF224との間の結合を減少させる化合物のスクリーニング:
本発明との関連において、DEPDC1とZNF224との間の相互作用は、免疫沈降により確認される(図1B)。したがって、本発明は、DEPDC1とZNF224との間の結合を阻害する化合物をスクリーニングする方法を提供する。DEPDC1とZNF224との間の結合を阻害する化合物は、DEPDC1を発現しているがん細胞の増殖を抑制し、DEPDC1と関係のあるがんの治療または予防のために有用であると予想される。したがって、本発明は、DEPDC1とZNF224との間の結合を阻害して、がん細胞の増殖を抑制する化合物をスクリーニングする方法、およびがんを治療または予防するための化合物をスクリーニングする方法も提供し、特に、該がんは膀胱癌である。
【0069】
より具体的には、本発明の方法は、以下の工程を含む:
(a)試験化合物の存在下で、DEPDC1ポリペプチドまたはその機能的等価物を、ZNF224ポリペプチドまたはその機能的等価物と接触させる工程;
(b)前記ポリペプチド間の結合を検出する工程;および
(c)前記ポリペプチド間の結合を阻害する試験化合物を選択する工程。
【0070】
本発明によると、細胞増殖の阻害に関する試験剤もしくは試験化合物の治療効果、またはDEPDC1関連疾患を治療もしくは予防するための候補剤もしくは候補化合物の治療効果が評価され得る。したがって、本発明は、がん細胞の増殖を抑制する候補剤または候補化合物をスクリーニングする方法、およびがんを治療または予防するための候補剤または候補化合物をスクリーニングする方法も提供する。
【0071】
より具体的には、前記方法は、以下の工程を含む:
(a)試験剤または試験化合物の存在下で、DEPDC1ポリペプチドまたはその機能的等価物を、ZNF224ポリペプチドまたはその機能的等価物と接触させる工程;
(b)前記ポリペプチド間の結合のレベルを検出する工程;および
(c)DEPDC1タンパク質とZNF224タンパク質との結合レベルを、試験剤または試験化合物の非存在下で検出されるものと比較する工程;および
(d)(c)の結合レベルを試験剤または試験化合物の治療効果と相関させる工程。
【0072】
本発明との関連において、治療効果を、DEPDC1タンパク質とZNF224タンパク質との結合レベルと相関させることができる。例えば、試験剤または試験化合物が、試験剤または試験化合物の非存在下で検出されるレベルと比較して、DEPDC1タンパク質とZNF224タンパク質との結合のレベルを低下させる場合には、その試験剤または試験化合物を、治療効果を有する候補剤または候補化合物として同定または選択することができる。あるいは、試験剤または試験化合物が、試験剤または試験化合物の非存在下で検出されるレベルと比較して、DEPDC1タンパク質とZNF224タンパク質との結合レベルを低下させない場合には、その試験剤または試験化合物を、有意な治療効果を有しない剤または化合物として同定することができる。
【0073】
「DEPDC1ポリペプチドの機能的等価物」という語句は、本明細書で使用される場合、ZNF224結合ドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチドをさす。好ましくは、ZNF224結合ドメインは、SEQ ID NO:45の141〜300、300〜669、または587〜740を含む、SEQ ID NO:28、54、および55の群より選択されるアミノ酸配列を含む。同様に、「ZNF224ポリペプチドの機能的等価物」という用語は、DEPDC1結合ドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチドをさす。
【0074】
本発明の方法を、さらに詳細に、以下に説明する。DEPDC1とZNF224との間の結合を阻害する化合物をスクリーニングする方法として、当業者に周知の多くの方法を使用することができる。インビトロアッセイシステムとして、そのようなスクリーニングを実施することができる。より具体的には、まず、DEPDC1ポリペプチドを支持体に結合させ、ZNF224ポリペプチドを試験化合物と共にそれに添加する。次に、混合物をインキュベートし、洗浄し、支持体に結合したZNF224ポリペプチドを検出し、および/または測定する。有望な候補化合物は、検出されるZNF224ポリペプチドの量を低下させることができる。
【0075】
あるいは、ZNF224ポリペプチドを支持体に結合させ、DEPDC1ポリペプチドを添加してもよい。本明細書中、DEPDC1およびZNF224は、天然タンパク質としてだけでなく、遺伝子組換え技術により調製される組換えタンパク質としても調製され得る。天然タンパク質は、例えば、アフィニティクロマトグラフィにより調製され得る。他方、組換えタンパク質は、DEPDC1またはZNF224をコードするDNAにより形質転換された細胞を培養してその中でタンパク質を発現させ、次いで、それを回収することにより調製され得る。
【0076】
タンパク質を結合させるために使用され得る支持体の例には、アガロース、セルロース、およびデキストランなどの不溶性多糖;ならびにポリアクリルアミド、ポリスチレン、およびシリコンなどの合成樹脂が含まれ;好ましくは、上記の材料から調製された市販のビーズおよびプレート(例えば、マルチウェルプレート、バイオセンサーチップ等)が使用され得る。ビーズを使用する場合には、ビーズをカラムへ充填することができる。あるいは、同様に当技術分野において公知である磁気ビーズを使用すれば、ビーズ上に結合したタンパク質を磁気によって容易に単離することが可能である。
【0077】
タンパク質の支持体との結合は、化学結合および物理的吸着などのルーチンの方法によって実施され得る。あるいは、タンパク質を特異的に認識する抗体を介して、タンパク質を支持体に結合させてもよい。さらに、アビジンおよびビオチンによっても、タンパク質の支持体との結合を実施することができる。緩衝液がタンパク質間の結合を阻害しない限り、例えばリン酸緩衝液およびトリス緩衝液であるがこれらに限定されない緩衝液において、タンパク質間の結合を実施する。
【0078】
本発明との関連において、結合したタンパク質を検出または定量化する手段として、表面プラズモン共鳴現象を使用するバイオセンサーを使用してもよい。そのようなバイオセンサーを使用した場合、極微量のポリペプチドを使用して、標識することなく、タンパク質間の相互作用を、表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムで観察することができる(例えば、BIAcore、Pharmacia)。したがって、BIAcoreなどのバイオセンサーを使用して、DEPDC1とZNF224との間の結合を評価することが可能である。
【0079】
あるいは、DEPDC1またはZNF224を標識し、ポリペプチドの標識を、結合活性を検出または測定するために使用してもよい。具体的には、ポリペプチドの一方を前標識した後、試験化合物の存在下で、標識されたポリペプチドをもう一方のポリペプチドと接触させ、次いで、洗浄後に、結合したポリペプチドを標識によって検出または測定する。放射性同位元素(例えば、3H、14C、32P、33P、35S、125I、131I)、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β‐ガラクトシダーゼ、b−グルコシダーゼ)、蛍光物質(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン)、およびビオチン/アビジンなどの標識物質を、本方法において、タンパク質の標識のために使用することができる。タンパク質を放射性同位元素により標識する場合には、液体シンチレーションにより検出または測定を実施することができる。あるいは、酵素により標識されたタンパク質は、酵素の基質を添加して、発色などの、酵素による基質の変化を、吸光光度計により検出することにより、検出または測定することができる。さらに、蛍光物質を標識として使用する場合には、蛍光光度計を使用して、結合したタンパク質を検出または測定することができる。
【0080】
さらに、DEPDC1またはZNF224に対する抗体を使用して、DEPDC1とZNF224との間の結合を検出または測定することもできる。例えば、支持体に固定化されたDEPDC1ポリペプチドを、試験化合物およびZNF224ポリペプチドと接触させた後、混合物をインキュベートし、洗浄し、ZNF224ポリペプチドに対する抗体を使用して検出または測定を実施することができる。
【0081】
あるいは、ZNF224ポリペプチドを支持体上に固定化し、DEPDC1に対する抗体を抗体として使用してもよい。本スクリーニングとの関連において抗体を使用する場合には、抗体は、好ましくは、前記標識物質のうちの1つにより標識され、該標識物質に基づき検出または測定される。あるいは、標識物質により標識された二次抗体により検出される一次抗体として、DEPDC1ポリペプチドまたはZNF224ポリペプチドに対する抗体を使用してもよい。さらに、本発明のスクリーニングにおいて、タンパク質に結合した抗体を、プロテインGカラムまたはプロテインAカラムを使用して検出または測定することもできる。
【0082】
あるいは、本発明のスクリーニング法の別の態様において、細胞を利用するツーハイブリッドシステムを使用してもよい(「MATCHMAKER Two−Hybrid system」、「Mammalian MATCHMAKER Two−Hybrid Assay Kit」、「MATCHMAKER one−Hybrid system」(Clontech);「HybriZAP Two−Hybrid Vector System」(Stratagene);参考文献「Dalton and Treisman, Cell 68: 597-612 (1992)」、「Fields and Sternglanz, Trends Genet 10: 286-92 (1994)」)。
【0083】
ツーハイブリッドシステムにおいては、例えば、DEPDC1ポリペプチドを、SRF結合領域またはGAL4結合領域と融合させ、酵母細胞において発現させる。ZNF224ポリペプチドに結合するDEPDC1ポリペプチドに結合するZNF224ポリペプチドを、VP16またはGAL4の転写活性化領域と融合させ、試験化合物の存在下で、同様に酵母細胞において発現させる。あるいは、DEPDC1ポリペプチドをSRF結合領域またはGAL4結合領域と融合させ、ZNF224ポリペプチドをVP16またはGAL4の転写活性化領域と融合させてもよい。2つの結合はレポーター遺伝子を活性化し、陽性クローンを検出可能にする。レポーター遺伝子としては、HIS3遺伝子に加えて、例えば、Ade2遺伝子、lacZ遺伝子、CAT遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子等を使用することができる。
【0084】
VI.DLG1またはA20(TNFAIP3)の発現を変更する化合物のスクリーニング:
本発明との関連において、DLG1またはA20(TNFAIP3)の発現は、DEPDC1またはZNF224のsiRNAにより増加した(図3A)。さらに、DEPDC1のドミナントネガティブタンパク質によるDLG1またはA20(TNFAIP3)の増加は、細胞周期に関係していた(図6)。したがって、本発明は、DEPDC1およびZNF224を発現しているがん細胞の増殖を抑制する化合物、またはDEPDC1と関係のあるがんを治療もしくは予防するために有用な化合物をスクリーニングする方法を提供し、特に、該がんは膀胱癌である。本発明との関連において、そのようなスクリーニングは、例えば、以下の工程を含み得る:
(a)候補化合物を、DEPDC1およびZNF224を発現している細胞と接触させる工程、ならびに
(b)試験化合物の非存在下で検出される発現レベルと比較して、DLG1またはA20(TNFAIP3)の発現レベルを増加させる候補化合物を選択する工程。
【0085】
本発明によると、細胞増殖の阻害に関する試験剤もしくは試験化合物の治療効果、またはDEPDC1関連疾患を治療もしくは予防するための候補剤もしくは候補化合物の治療効果を評価することができる。したがって、本発明は、がん細胞の増殖を抑制する候補剤または候補化合物をスクリーニングする方法、およびDEPDC1関連疾患を治療または予防するための候補剤または候補化合物をスクリーニングするための方法も提供する。
【0086】
本発明との関連において、そのようなスクリーニングは、例えば、以下の工程を含み得る:
(a)試験剤または試験化合物を、DEPDC1遺伝子およびZNF224遺伝子を発現している細胞と接触させる工程;
(b)DLG1遺伝子またはA20(TNFAIP3)遺伝子の発現レベルを検出する工程;ならびに
(c)(b)の発現レベルを試験剤または試験化合物の治療効果と相関させる工程。
【0087】
本発明との関連において、治療効果を、DLG1遺伝子またはA20(TNFAIP3)遺伝子の発現レベルと相関させることができる。例えば、試験剤または試験化合物が、試験剤または試験化合物の非存在下で検出されるレベルと比較して、DLG1遺伝子またはA20(TNFAIP3)遺伝子の発現レベルを増加させる場合には、その試験剤または試験化合物を、治療効果を有する候補剤または候補化合物として同定または選択することができる。あるいは、試験剤または試験化合物が、試験剤または試験化合物の非存在下で検出されるレベルと比較して、DLG1遺伝子またはA20(TNFAIP3)遺伝子の発現レベルを増加させない場合には、その試験剤または試験化合物を、有意な治療効果を有しない剤または化合物として同定することができる。
【0088】
本発明の方法を、より詳細に、以下に説明する。DEPDC1およびZNF224を発現している細胞には、例えば、膀胱癌から樹立された細胞株、またはDEPDC1およびZNF224発現ベクターによるトランスフェクションにより樹立された細胞株が含まれる。当業者に周知の方法、例えば、RT−PCR、ノーザンブロットアッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、免疫染色、フローサイトメトリー分析により、発現レベルを推定することができる。本明細書で定義される「発現レベルを増加させる」とは、好ましくは、化合物の非存在下での発現レベルと比較した、DLG1またはA20(TNFAIP3)の発現レベルの少なくとも110%の低下、より好ましくは少なくとも125%、150%、または175%低下したレベル、最も好ましくは200%低下したレベルである。本明細書中の化合物には、化学物質、DEPDC1またはZNF224の二本鎖ヌクレオチド等が含まれる。スクリーニングの方法において、DLG1またはA20(TNFAIP3)の発現レベルを増加させる化合物を、がんの治療または予防のために使用される候補化合物として選択することができる。
【0089】
あるいは、本発明のスクリーニング法は、以下の工程を含み得る:
(a)DLG1またはA20(TNFAIP3)の転写調節領域と、該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子とを含むベクターが導入されている、DEPDC1およびZNF224を発現している細胞に、候補化合物を接触させる工程;
(b)レポーター遺伝子の発現または活性を測定する工程;および
(c)対照と比較して、レポーター遺伝子の発現または活性のレベルを増加させる候補化合物を選択する工程。
【0090】
本発明によると、細胞増殖の阻害に関する試験剤もしくは試験化合物の治療効果、またはDEPDC1関連疾患を治療もしくは予防するための候補剤もしくは候補化合物の治療効果を評価することができる。したがって、本発明は、がん細胞の増殖を抑制する候補剤または候補化合物をスクリーニングする方法、およびDEPDC1関連疾患を治療または予防するための候補剤または候補化合物をスクリーニングするための方法も提供する。
【0091】
本発明との関連において、そのようなスクリーニングは、例えば、以下の工程を含み得る:
(a)DLG1遺伝子またはA20(TNFAIP3)遺伝子の転写調節領域と、該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子とを含むベクターが導入されている細胞に、試験剤または試験化合物を接触させる工程;
(b)レポーター遺伝子の発現または活性を検出する工程;および
(c)(b)の発現レベルを試験剤または試験化合物の治療効果と相関させる工程。
【0092】
本発明との関連において、治療効果は、レポーター遺伝子の発現または活性と相関し得る。例えば、試験剤または試験化合物が、試験剤または試験化合物の非存在下で検出されるレベルと比較して、レポーター遺伝子の発現または活性を増加させる場合には、その試験剤または試験化合物を、治療効果を有する候補剤または候補化合物として同定または選択することができる。あるいは、試験剤または試験化合物が、試験剤または試験化合物の非存在下で検出されるレベルと比較して、レポーター遺伝子の発現または活性を増加させない場合には、その試験剤または試験化合物を、有意な治療効果を有しない剤または化合物として同定することができる。
【0093】
好適なレポーター遺伝子および宿主細胞は、当技術分野で周知である。例示的なレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、サンゴ(Discosoma sp.)赤色蛍光タンパク質(DsRed)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、lacZ、およびβグルクロニダーゼ(GUS)が含まれるがこれらに限定されず、宿主細胞はCOS7、HEK293、HeLa等である。スクリーニングに必要とされるレポーター構築物は、レポーター遺伝子配列を、DLG1またはA20(TNFAIP3)の転写調節領域と接続することにより調製され得る。本明細書中のDLG1の転写調節領域には、転写開始部位から少なくとも500bp上流、好ましくは1000bp、より好ましくは5000bpまたは10000bp上流までの領域が含まれる。DLG1の好適な転写調節領域は、DLG1の転写開始部位から−1211〜+19位(SEQ ID NO:56)である。あるいは、A20(TNFAIP3)の好適な転写調節領域は、A20(TNFAIP3)の転写開始部位から−300〜−35位(SEQ ID NO:82)である。転写調節領域を含有しているヌクレオチドセグメントは、ゲノムライブラリから単離されてもよいし、またはPCRによって増幅させられてもよい。スクリーニングに必要とされるレポーター構築物は、レポーター遺伝子配列をこれらの遺伝子のいずれか1つの転写調節領域と接続することにより調製され得る。転写調節領域を同定するための方法、およびアッセイプロトコルも周知である(Molecular Cloning third edition chapter 17, 2001, Cold Springs Harbor Laboratory Press)。
【0094】
前記レポーター構築物を含有しているベクターを、宿主細胞に感染させ、レポーター遺伝子の発現または活性を、当技術分野で周知の方法により(例えば、ルミノメーター、吸光度計、フローサイトメーター等を使用して)検出する。本明細書中で定義される「発現または活性を低下させる」とは、レポーター遺伝子の発現または活性の、化合物の非存在下と比較した、好ましくは少なくとも10%の低下、より好ましくは少なくとも25%、50%、または75%の低下、および最も好ましくは95%の低下である。
【0095】
本発明において、DEPDC1とZNF224との間の結合を抑制することにより、細胞増殖が低下することが明らかになった。したがって、DEPDC1とZNF224との結合を阻害する候補化合物をスクリーニングすることにより、がんを治療または予防する可能性を有する候補化合物を同定することができる。これらの候補化合物の治療的可能性は、がんの治療剤を同定するための二次スクリーニングおよび/またはさらなるスクリーニングにより評価され得る。
【0096】
VII.二本鎖分子
本明細書で使用される場合、「単離二本鎖分子」という用語は標的遺伝子の発現を阻害する核酸分子を意味し、例えば短鎖干渉RNA(siRNA、例えば二本鎖リボ核酸(dsRNA)または低分子ヘアピン型RNA(shRNA))および短鎖干渉DNA/RNA(siD/R−NA、例えばDNAとRNAとの二本鎖キメラ(dsD/R−NA)またはDNAとRNAとの低分子ヘアピンキメラ(shD/R−NA))を含む。
【0097】
本明細書で使用される場合、「siRNA」という用語は、標的mRNAの翻訳を防ぐ二本鎖RNA分子をさす。DNAが、RNAが転写される鋳型である技術を含む、siRNAを細胞に導入する標準的な技術が用いられる。siRNAは、ZNF224のセンス核酸配列(「センス鎖」とも称される)、ZNF224のアンチセンス核酸配列(「アンチセンス鎖」とも称される)、またはその両方を含む。単一の転写産物が、標的遺伝子のセンス核酸配列および相補的なアンチセンス核酸配列の両方を有するように(例えばヘアピン)、siRNAを構築してもよい。siRNAはdsRNAまたはshRNAのいずれであってもよい。
【0098】
本明細書で使用される場合、「dsRNA」という用語は、互いに相補的な配列から構成され、かつその相補的な配列を介して共にアニーリングして二本鎖RNA分子を形成している、2つのRNA分子の構築物をさす。2つの鎖のヌクレオチド配列は、標的遺伝子配列のタンパク質コード配列から選択される「センス」または「アンチセンス」RNAだけでなく、標的遺伝子の非コード領域から選択されるヌクレオチド配列を有するRNA分子も含み得る。
【0099】
本明細書で使用される場合、「shRNA」という用語は、互いに相補的である第1および第2の領域、すなわちセンス鎖およびアンチセンス鎖から構成される、ステム−ループ構造を有するsiRNAをさす。該領域の相補性および配向性の程度は、塩基の対合が領域間で起こるのに十分であり、第1および第2の領域はループ領域によって連結し、該ループは、ループ領域内のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)間の塩基対合の欠如によって生じる。shRNAのループ領域は、センス鎖とアンチセンス鎖との間に介在する一本鎖領域であり、「介在一本鎖」とも称され得る。
【0100】
本明細書で使用される場合、「siD/R−NA」という用語は、RNAおよびDNAの両方から構成される二本鎖ポリヌクレオチド分子を意味し、RNAおよびDNAのハイブリッドおよびキメラを含み、標的mRNAの翻訳を防ぐ。本明細書において、ハイブリッドは、DNAから構成されるポリヌクレオチドとRNAから構成されるポリヌクレオチドとが互いにハイブリダイズして二本鎖分子を形成する分子を示し、キメラは、二本鎖分子を含む鎖の一方または両方がRNAおよびDNAを含有し得ることを示す。siD/R−NAを細胞に導入する標準的な技術が用いられる。siD/R−NAは、ZNF224のセンス核酸配列(「センス鎖」とも称される)、ZNF224のアンチセンス核酸配列(「アンチセンス鎖」とも称される)、またはその両方を含む。単一の転写産物が、標的遺伝子由来のセンス核酸配列および相補的なアンチセンス核酸配列の両方を有するように(例えばヘアピン)、siD/R−NAを構築してもよい。siD/R−NAはdsD/R−NAまたはshD/R−NAのいずれであってもよい。
【0101】
本明細書で使用される場合、「dsD/R−NA」という用語は、互いに相補的な配列から構成され、かつ該相補的な配列を介して共にアニーリングして二本鎖ポリヌクレオチド分子を形成している、2つの分子の構築物をさす。2つの鎖のヌクレオチド配列は、標的遺伝子配列のタンパク質コード配列から選択される「センス」または「アンチセンス」ポリヌクレオチド配列だけでなく、標的遺伝子の非コード領域から選択されるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドも含み得る。dsD/R−NAを構築する2つの分子の一方または両方が、RNAおよびDNAの両方から構成されるか(キメラ分子)、またはもう一つの選択肢として分子の一方がRNAから構成され、もう一方がDNAから構成される(ハイブリッド二本鎖)。
【0102】
本明細書で使用される場合、「shD/R−NA」という用語は、互いに相補的である第1および第2の領域、すなわちセンス鎖およびアンチセンス鎖から構成される、ステム−ループ構造を有するsiD/R−NAをさす。該領域の相補性および配向性の程度は、塩基の対合が領域間で起こるのに十分であり、第1および第2の領域はループ領域によって連結し、該ループは、ループ領域内のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)間の塩基対合の欠如によって生じる。shD/R−NAのループ領域は、センス鎖とアンチセンス鎖との間に介在する一本鎖領域であり、「介在一本鎖」とも称され得る。
【0103】
本明細書で使用される場合、「単離核酸」は、その元の環境(例えば、天然物の場合は自然環境)から取り出した核酸であり、したがって、その自然状態から合成的に変化させた核酸である。本発明との関連において、単離核酸の例としてはDNA、RNA、およびその誘導体が挙げられる。
【0104】
標的mRNAにハイブリダイズする、ZNF224に対する二本鎖分子は、遺伝子の通常一本鎖であるmRNA転写物と結合し、それにより、翻訳に干渉し、したがって、タンパク質の発現を阻害することにより、ZNF224遺伝子によってコードされるタンパク質の産生を減少させるかまたは阻害する。本明細書中で証明される通り、PDAC細胞株におけるZNF224の発現はdsRNAによって阻害された(図2)。したがって、本発明は、ZNF224遺伝子を発現している細胞へ導入された場合に、ZNF224遺伝子の発現を阻害することができる単離された二本鎖分子を提供する。二本鎖分子の標的配列は、後述されるものなどのsiRNA設計アルゴリズムによって設計され得る。
【0105】
ZNF224標的配列には、例えば、SEQ ID NO:57(SEQ ID NO:48の494〜510位);およびSEQ ID NO:58(SEQ ID NO:48の576〜592位)のヌクレオチドが含まれ、二本鎖分子のセンス鎖には、SEQ ID NO:9および10のヌクレオチドが含まれる。特に、本発明は、以下の[1]〜[20]の二本鎖分子を提供する:
[1]互いにハイブリダイズすることで二本鎖分子を形成するセンス鎖と該センス鎖に相補的なアンチセンス鎖とから構成され、かつ細胞に導入された場合にZNF224のインビボ発現および細胞増殖を阻害する、単離された二本鎖分子;
[2]SEQ ID NO:57(SEQ ID NO:48の494〜510位);およびSEQ ID NO:58(SEQ ID NO:48の576〜592位)の中から選択される標的配列に一致するmRNAに対して作用する、[1]に記載の二本鎖分子;
[3]センス鎖が、SEQ ID NO:57および58の中から選択される標的配列に対応する配列を含有している、[2]に記載の二本鎖分子;
[4]約100ヌクレオチド長未満である、[3]に記載の二本鎖分子;
[5]約75ヌクレオチド長未満である、[4]に記載の二本鎖分子;
[6]約50ヌクレオチド長未満である、[5]に記載の二本鎖分子;
[7]約25ヌクレオチド長未満である、[6]に記載の二本鎖分子;
[8]約19〜約25ヌクレオチド長である、[7]に記載の二本鎖分子;
[9]センス鎖が、SEQ ID NO:9および10の中から選択される配列に対応する配列からなる、[7]に記載の二本鎖分子;
[10]介在一本鎖により連結されたセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を有する単一のポリヌクレオチドから構成される、[1]に記載の二本鎖分子;
[11]一般式5’−[A]−[B]−[A’]−3’ を有する二本鎖分子であって、式中、[A]はSEQ ID NO:57および58の中から選択される標的配列に対応する配列を含有しているセンス鎖であり、[B]は3〜23個のヌクレオチドから構成される介在一本鎖であり、かつ[A’]は[A]に相補的な配列を含有しているアンチセンス鎖である、[10]に記載の二本鎖分子;
[12][A]が、SEQ ID NO:9および10の中から選択される配列に対応する配列からなる、[11]に記載の二本鎖分子;
[13]RNAから構成される、[1]に記載の二本鎖分子;
[14]DNAおよびRNAの両方から構成される、[1]に記載の二本鎖分子;
[15]DNAポリヌクレオチドとRNAポリヌクレオチドとのハイブリッドである、[14]に記載の二本鎖分子;
[16]センス鎖およびアンチセンス鎖がそれぞれDNAおよびRNAから構成される、[15]に記載の二本鎖分子;
[17]DNAとRNAとのキメラである、[14]に記載の二本鎖分子;
[18]アンチセンス鎖の3’末端に隣接する領域、またはセンス鎖の5'末端に隣接する領域およびアンチセンス鎖の3’末端に隣接する領域の両方がRNAである、[17]に記載の二本鎖分子;
[19]隣接領域が9個〜13個のヌクレオチドから構成される、[18]に記載の二本鎖分子;ならびに
[20]3’オーバーハングを含有する、[1]に記載の二本鎖分子。
【0106】
本発明の二本鎖分子は以下でより詳細に説明される。
【0107】
細胞において標的遺伝子の発現を阻害する能力がある二本鎖分子を設計する方法が知られている(例えば米国特許第6,506,559号(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)を参照されたい)。例えば、siRNAを設計するためのコンピュータプログラムは、Ambionのウェブサイトから入手可能である(www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)。
【0108】
コンピュータプログラムは、以下のプロトコルに基づき、二本鎖分子に対する標的ヌクレオチド配列を選択する。
【0109】
標的部位の選択
1. 転写産物のAUG開始コドンから始めて、AAジヌクレオチド配列について下流を探索する。潜在的なsiRNA標的部位として、それぞれのAAの存在とその3’側に隣接した19個のヌクレオチドとを記録する。Tuschl et al.は、5’および3’非翻訳領域(UTR)および開始コドン近くの領域(75塩基以内)に対してsiRNAを設計することを避けることを推奨している。これは、これらの領域に調節タンパク質結合部位がより多く存在する可能性があり、UTR結合タンパク質および/または翻訳開始複合体が、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合に干渉する可能性があるためである。
2. 潜在的な標的部位と、適当なゲノムデータベース(ヒト、マウス、ラット等)とを比較し、他のコード配列との相同性が大きい任意の標的配列を考慮から外す。基本的には、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/でのNCBIサーバーにあるBLASTを用いる(Altschul SF et al., Nucleic Acids Res 1997 Sep 1, 25(17):3389-402)。
3. 合成のために適格である標的配列を選択する。評価するために、遺伝子の長さに沿って標的配列を幾つか選択するのが一般的である。
【0110】
上記のプロトコルを使用して、本発明の単離二本鎖分子の標的配列を、以下のように設計した。
ZNF224遺伝子に関して、SEQ ID NO:57および58。
【0111】
上述の標的配列を標的とする二本鎖分子をそれぞれ、標的遺伝子を発現する細胞の増殖を抑制する能力について調査した。したがって、本発明は以下の群から選択される配列のいずれかを標的とする二本鎖分子を提供する:
ZNF224遺伝子に関して、
SEQ ID NO:57(SEQ ID NO:48の494〜510位)、および
SEQ ID NO:58(SEQ ID NO:48の576〜592位)。
【0112】
本発明の二本鎖分子は単一の標的ZNF224遺伝子配列を対象としてもよく、または複数の標的ZNF224遺伝子配列を対象としてもよい。
【0113】
上述のZNF224遺伝子の標的配列を標的とする本発明の二本鎖分子は、標的配列の核酸配列および/または該標的配列に相補的な配列のいずれかを含有する単離ポリヌクレオチドを含む。ZNF224遺伝子を標的とするポリヌクレオチドの例としては、SEQ ID NO:57または58の配列、ならびに/またはこれらのヌクレオチドに相補的な配列を含有するポリヌクレオチドが挙げられる。しかしながら、本発明はこれらの例に限定されず、上述の核酸配列における軽微な改変は、改変された分子がZNF224遺伝子の発現を抑制する能力を保持する限りは許容可能である。本明細書において、核酸配列と関連して使用される「軽微な改変」という句は、配列に対する核酸の1つ、2つ、または幾つかの置換、欠失、付加、または挿入を示す。
【0114】
本発明との関連において、核酸の置換、欠失、付加、および/または挿入に対し適用される「幾つか」という用語は、3〜7個、好ましくは3〜5個、さらに好ましくは3〜4個、さらに好ましくは3個の核酸残基を意味しうる。
【0115】
本発明の好ましい態様において、二本鎖分子は、SEQ ID NO:9および10の群から選択されるセンス鎖を有する。
【0116】
本発明によれば、本発明の二本鎖分子は、実施例で利用される方法を用いて、その能力に関して試験することができる。本明細書の以下の実施例では、ZNF224遺伝子のmRNAの様々な部分のセンス鎖、またはそれに対して相補的なアンチセンス鎖から構成される二本鎖分子を、がん細胞株におけるZNF224遺伝子産物の産生を低減させる能力に関して、標準的な方法に従って、インビトロで試験した。さらに、例えば、候補分子の非存在下で培養した細胞に比べた、候補二本鎖分子と接触させた細胞におけるZNF224遺伝子産物の低減は、例えば、実施例1における「半定量的逆転写−PCR」の項で述べられたZNF224のmRNAに対するプライマーを用いて、RT−PCRにより検出することができる。インビトロでの細胞ベースのアッセイにおいてZNF224遺伝子産物の産生を低減する配列は、続いて、細胞増殖に及ぼすこれらの阻害効果に関して試験することができる。インビトロでの細胞ベースのアッセイにおいて細胞増殖を阻害する配列は、続いて、ZNF224遺伝子産物の産生の低減およびがん細胞増殖の低減を確認するために、がんを有する動物、例えばヌードマウス異種移植片モデルを用いて、これらのインビボ能力に関して試験することができる。
【0117】
単離ポリヌクレオチドがRNAまたはそれらの誘導体である場合、ヌクレオチド配列において塩基「t」は「u」に置き換えるものとする。本明細書で使用される場合、「相補性」という用語は、ポリヌクレオチドのヌクレオチドユニット間のワトソンクリック型またはフーグスティーン型の塩基対合を表し、「結合」という用語は、2つのポリヌクレオチド間の物理的なまたは化学的な相互作用を意味する。ポリヌクレオチドが改変ヌクレオチドおよび/または非ホスホジエステル結合を含む場合、これらのポリヌクレオチドもまた同じように互いに結合することができる。一般的に、相補的なポリヌクレオチド配列は、適当な条件下でハイブリダイズして、ほとんどまたは全くミスマッチを含有しない安定二本鎖を形成する。さらに、本発明の単離ポリヌクレオチドのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、ハイブリダイゼーションによって二本鎖分子またはヘアピンループ構造を形成することができる。好ましい態様において、このような二本鎖は10個のマッチ毎にわずか1個のミスマッチしか含有していない。特に好ましい態様では、二本鎖の鎖が完全に相補的である場合、このような二本鎖はミスマッチを含有しない。
【0118】
ポリヌクレオチドは好ましくは、ZNF224では2466ヌクレオチド長未満である。例えば、ポリヌクレオチドは、全ての遺伝子に関して、500ヌクレオチド長未満、200ヌクレオチド長未満、100ヌクレオチド長未満、75ヌクレオチド長未満、50ヌクレオチド長未満、または25ヌクレオチド長未満である。本発明の単離ポリヌクレオチドは、NM_013398遺伝子に対する二本鎖分子を形成するのに、または該二本鎖分子をコードする鋳型DNAを調製するのに有用である。ポリヌクレオチドが二本鎖分子の形成に使用される場合、ポリヌクレオチドは19ヌクレオチドより長く、好ましくは21ヌクレオチドより長くてもよく、およびより好ましくは、約19〜25ヌクレオチドの長さを有する。
【0119】
したがって、本発明は、センス鎖とアンチセンス鎖とを含む二本鎖分子を提供し、該センス鎖は標的配列に対応するヌクレオチド配列を含む。好ましい態様において、センス鎖は、標的配列においてアンチセンス鎖とハイブリダイズすることで、ヌクレオチド対19〜25個の長さを有する二本鎖分子を形成する。
【0120】
本発明の二本鎖分子は、1つまたは複数の修飾ヌクレオチドおよび/または非ホスホジエステル結合を含有し得る。当技術分野において公知の化学修飾は、二本鎖分子の安定性、利用可能性、および/または細胞取り込みを増大させることができる。当業者は、本発明の分子に取り込むことができる他の種類の化学修飾にも気づくであろう(WO03/070744、WO2005/045037)。一態様では、分解耐性の改善または取り込みの改善を与えるために、修飾を用いることができる。このような修飾の例としては、非限定的に、ホスホロチオエート結合、2’−O−メチルリボヌクレオチド(特に二本鎖分子のセンス鎖上)、2’−デオキシ−フルオロリボヌクレオチド、2’−デオキシリボヌクレオチド、「ユニバーサル塩基」ヌクレオチド、5’−C−メチルヌクレオチド、および逆方向デオキシ塩基残基の組み込みが挙げられる(米国特許出願第20060122137号)。
【0121】
別の態様では、二本鎖分子の安定性を向上させるために、または標的指向化効率を増大させるために、修飾を用いることができる。このような修飾の例としては、非限定的に、二本鎖分子の2つの相補鎖間の化学架橋結合、二本鎖分子の鎖の3’または5’末端の化学修飾、糖修飾、核酸塩基修飾および/または骨格修飾、2−フルオロ修飾リボヌクレオチド、ならびに2’−デオキシリボヌクレオチドが挙げられる(WO2004/029212)。別の態様では、標的mRNAにおける、および/または相補的二本鎖分子鎖における相補的ヌクレオチドに対する親和性の増減に修飾を用いることができる(WO2005/044976)。例えば、非修飾ピリミジンヌクレオチドを2−チオピリミジン、5−アルキニルピリミジン、5−メチルピリミジン、または5−プロピルピリミジンに置換することができる。さらに、非修飾プリンを7−デザプリン、7−アルキルプリン、または7−アルケニルプリンに置換することができる。別の態様では、二本鎖分子が3’オーバーハングを有する二本鎖分子である場合、3’末端のヌクレオチドオーバーハングヌクレオチドをデオキシリボヌクレオチドに置き換えることができる(Elbashir SM et al., Genes Dev 2001 Jan 15, 15(2): 188-200)。さらに詳細には、公開文献、例えば米国特許出願第20060234970号が利用可能である。本発明は、これらの例には限定されず、得られた分子が標的遺伝子の発現を阻害する能力を保持していれば、任意の公知の化学修飾を本発明の二本鎖分子に利用することができる。
【0122】
さらに、本発明の二本鎖分子はDNAおよびRNAの両方を含み得る(例えばdsD/R−NAまたはshD/R−NA)。特に、DNA鎖とRNA鎖とのハイブリッドポリヌクレオチドまたはDNA−RNAキメラポリヌクレオチドは安定性の増大を示す。DNAとRNAとの混合物、すなわちDNA鎖(ポリヌクレオチド)およびRNA鎖(ポリヌクレオチド)から構成されるハイブリッド型二本鎖分子、一本鎖(ポリヌクレオチド)の一方または両方上でDNAおよびRNAの両方を含むキメラ型二本鎖分子等を、二本鎖分子の安定性を向上させるために形成することができる。
【0123】
DNA鎖とRNA鎖とのハイブリッドは、標的遺伝子を発現する細胞に導入した場合に該標的遺伝子の発現を阻害することが可能であれば、センス鎖がDNAであり、アンチセンス鎖がRNAであるか、またはその反対のいずれであってもよい。好ましくは、センス鎖のポリヌクレオチドがDNAであり、アンチセンス鎖のポリヌクレオチドがRNAである。また、キメラ型二本鎖分子は、標的遺伝子を発現する細胞に導入した場合に該標的遺伝子の発現を阻害する活性があれば、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方がDNAおよびRNAから構成されるか、またはセンス鎖およびアンチセンス鎖のいずれか一方がDNAおよびRNAから構成されるか、のいずれであってもよい。二本鎖分子の安定性を向上するためには、分子は可能な限り多くのDNAを含有する事が好ましいが、標的遺伝子発現の阻害を誘導するためには、分子は発現の十分な阻害を誘導する範囲内でRNAである事が必要である。
【0124】
キメラ型二本鎖分子の好ましい例では、二本鎖分子の上流部分領域(すなわちセンス鎖またはアンチセンス鎖内の標的配列またはその相補配列に隣接する領域)はRNAである。好ましくは、上流部分領域は、センス鎖の5’側(5’末端)およびアンチセンス鎖の3’側(3’末端)を示す。あるいは、センス鎖の5’末端および/またはアンチセンス鎖の3’末端に隣接する領域が、上流部分領域と称される。すなわち、好ましい態様では、アンチセンス鎖の3’末端に隣接する領域、またはセンス鎖の5’末端に隣接する領域およびアンチセンス鎖の3’末端に隣接する領域の両方がRNAから構成される。例えば、本発明のキメラまたはハイブリッド型の二本鎖分子は以下の組み合わせを含む。
センス鎖:5’−[−−−DNA−−−]−3’
3’−(RNA)−[DNA]−5’:アンチセンス鎖、
センス鎖:5’−(RNA)−[DNA]−3’
3’−(RNA)−[DNA]−5’:アンチセンス鎖、および
センス鎖:5’−(RNA)−[DNA]−3’
3’−(−−−RNA−−−)−5’:アンチセンス鎖。
【0125】
上流部分領域は、好ましくは、二本鎖分子のセンス鎖またはアンチセンス鎖内で、標的配列またはこれに対する相補配列の末端から数えて9個〜13個のヌクレオチドから構成されるドメインである。さらに、そのようなキメラ型二本鎖分子の好ましい例としては、ポリヌクレオチドの少なくとも上流半分の領域(センス鎖では5’側領域およびアンチセンス鎖では3’側領域)がRNAであり、もう半分がDNAである、19個〜21個のヌクレオチド鎖長を有するものが挙げられる。そのようなキメラ型二本鎖分子では、アンチセンス鎖全体がRNAである場合、標的遺伝子の発現阻害効果が非常に高くなる(米国特許出願第20050004064号)。
【0126】
本発明との関連において、二本鎖分子は、ヘアピン、例えば低分子ヘアピン型RNA(shRNA)およびDNAおよびRNAからなる低分子のヘアピン(shD/R−NA)を形成することができる。shRNAまたはshD/R−NAは、RNA干渉を介して遺伝子発現をサイレンシングするのに使用することができる、タイトなヘアピンターン(tight hairpin turn)を作る、RNAまたはRNAとDNAとの混合物の配列である。shRNAまたはshD/R−NAは、一本鎖上にセンス標的配列とアンチセンス標的配列とを含み、これらの配列はループ配列によって分けられる。一般的に、ヘアピン構造は、細胞機構によってdsRNAまたはdsD/R−NAに切断され、続いてRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と結合する。この複合体は、dsRNAまたはdsD/R−NAの標的配列に適合するmRNAと結合してこれを切断する。
【0127】
任意のヌクレオチド配列から構成されるループ配列は、ヘアピンループ構造を形成するために、センス配列とアンチセンス配列との間に位置し得る。したがって、本発明は、一般式5’−[A]−[B]−[A’]−3’ を有する二本鎖分子も提供し、式中、[A]は標的配列に対応する配列を含むセンス鎖であり、[B]は介在一本鎖であり、かつ[A’]は[A]に対する相補配列を含むアンチセンス鎖である。標的配列は、例えば、ZNF224に関して、SEQ ID NO:57または58のヌクレオチドの中から選択され得る。
【0128】
本発明はこれらの例には限定されず、[A]における標的配列は、二本鎖分子が標的となるZNF224遺伝子の発現を抑制する能力を保持していれば、これらの例から改変された配列であってもよい。本発明において、領域[A]は、好ましくはSEQ ID NO:9または10の配列から選択される。[A]領域は[A’]領域とハイブリダイズし、[B]領域から構成されるループを形成する。介在一本鎖部分[B]、すなわちループ配列は、好ましくは3〜23ヌクレオチド長であり得る。例えばループ配列は以下の配列の中から選択することができる(www.ambion.com/techlib/tb/tb_506.html)。さらに、23個のヌクレオチドからなるループ配列は活性siRNAも提供する(Jacque JM et al., Nature 2002 Jul 25, 418(6896): 435-8, Epub 2002 Jun 26):
CCC、CCACC、またはCCACACC:Jacque JM et al., Nature 2002 Jul 25, 418(6896): 435- 8, Epub 2002 Jun 26;
UUCG:Lee NS et al., Nat Biotechnol 2002 May, 20(5): 500-5、Fruscoloni P et al., Proc Natl Acad Sci USA 2003 Feb 18, 100(4): 1639-44, Epub 2003 Feb 10;および
UUCAAGAGA:Dykxhoorn DM et al., Nat Rev Mol Cell Biol 2003 Jun, 4(6): 457-67。
【0129】
ヘアピンループ構造を有する本発明の好ましい二本鎖分子の例は以下に示される。以下の構造では、ループ配列は、AUG、CCC、UUCG、CCACC、CTCGAG、AAGCUU、CCACACC、およびUUCAAGAGAの中から選択することができるが、本発明はこれらに限定されない:
GAUUUGGAUGAUGAAGA−[B]−UCUUCAUCAUCCAAAUC(標的配列SEQ ID NO:57用);
GCAGGAACACAUCAAGA−[B]−UCUUGAUGUGUUCCUGC(標的配列SEQ ID NO:58用);
CCGAUUUGGAUGAUGAAGA−[B]−UCUUCAUCAUCCAAAUCGG(SEQ ID NO:9用);
CCGCAGGAACACAUCAAGA−[B]−UCUUGAUGUGUUCCUGCGG(SEQ ID NO:10用)
【0130】
さらに、二本鎖分子の阻害活性を高めるために、ヌクレオチド「u」を3’オーバーハングとして標的配列のアンチセンス鎖の3’末端に付加することができる。付加される「u」の数は少なくとも2、概して2〜10、好ましくは2〜5である。付加される「u」は二本鎖分子のアンチセンス鎖の3’末端で一本鎖を形成する。
【0131】
二本鎖分子を調製するための方法は特に限定されないが、当技術分野で公知の化学合成方法を使用するのが好ましい。化学合成方法に従って、センスおよびアンチセンスの一本鎖ポリヌクレオチドを別々に合成した後、それらを適当な方法により共にアニーリングして二本鎖分子を得る。アニーリングの具体的な例では、合成一本鎖ポリヌクレオチドは好ましくは少なくとも約3:7、より好ましくは約4:6、最も好ましくは実質的に等モル量(すなわち約5:5のモル比)のモル比で混合される。次に、混合物を二本鎖分子が解離する温度まで加熱した後、徐々に冷ます。アニーリングした二本鎖ポリヌクレオチドは、当技術分野で公知の通常利用される方法によって精製することができる。精製方法の例としては、アガロースゲル電気泳動を利用するか、または残存一本鎖ポリヌクレオチドが、例えば適当な酵素による分解によって任意で取り除かれる方法が挙げられる。
【0132】
ZNF224配列に隣接する調節配列は同一であってもまたは異なっていてもよく、このためこれらの発現は独立に、または時間的もしくは空間的様式で調節することができる。二本鎖分子は、ZNF224遺伝子の鋳型を、例えば低分子核RNA(snRNA)U6由来のRNAポリIII転写ユニットまたはヒトH1 RNAプロモーターを含有するベクターにクローニングすることによって細胞内で転写することができる。
【0133】
VIII.本発明の二本鎖分子を含有するベクター
本明細書に記載の二本鎖分子を1つまたは複数含有するベクター、および該ベクターを含有する細胞も本発明に包含される。
【0134】
具体的には、本発明は以下の[1]〜[12]のベクターを提供する:
[1]互いにハイブリダイズすることで二本鎖分子を形成するセンス鎖とセンス鎖に相補的なアンチセンス鎖とから構成され、細胞に導入された場合にZNF224のインビボ発現および細胞増殖を阻害する二本鎖分子をコードするベクター;
[2]SEQ ID NO:57(SEQ ID NO:48の494〜510位)、およびSEQ ID NO:58(SEQ ID NO:48の576〜592位)の中から選択される標的配列に一致するmRNAに対して作用する二本鎖分子をコードする、[1]に記載のベクター;
[3]センス鎖が、SEQ ID NO:57および58の中から選択される標的配列に対応する配列を含有している、[1]に記載のベクター;
[4]約100ヌクレオチド長未満である二本鎖分子をコードする[3]に記載のベクター;
[5]約75ヌクレオチド長未満である二本鎖分子をコードする[4]に記載のベクター;
[6]約50ヌクレオチド長未満である二本鎖分子をコードする[5]に記載のベクター;
[7]約25ヌクレオチド長未満である二本鎖分子をコードする[6]に記載のベクター;
[8]約19〜約25ヌクレオチド長である二本鎖分子をコードする[7]に記載のベクター;
[9]センス鎖が、SEQ ID NO:9および10の中から選択される配列に対応する配列からなる、[1]に記載のベクター;
[10]二本鎖分子が、介在一本鎖により連結されたセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を有する単一のポリヌクレオチドから構成される、[1]に記載のベクター;ならびに
[11]一般式5’−[A]−[B]−[A’]−3’を有する二本鎖分子をコードするベクターであって、式中、[A]はSEQ ID NO:57および58の中から選択される標的配列に対応する配列を含有しているセンス鎖であり、[B]は3〜23個のヌクレオチドから構成される介在一本鎖であり、かつ[A’]は[A]に相補的な配列を含有しているアンチセンス鎖である、[10]に記載のベクター。
[12][A]が、SEQ ID NO:9および10の中から選択される配列に対応する配列からなる、[11]に記載のベクター。
【0135】
本発明のベクターは、好ましくは、発現可能な形態で本発明の二本鎖分子をコードする。本明細書において、「発現可能な形態で」という語句は、細胞に導入された場合に、ベクターが前記分子を発現するであろうことを示す。好ましい態様では、ベクターは、二本鎖分子の発現に必要な調節要素を含む。そのような本発明のベクターは、本発明の二本鎖分子を生成するのに使用でき、またはがんを治療するための活性成分として直接使用することができる。
【0136】
本発明のベクターは、例えば、両方の鎖が(DNA分子の転写によって)発現されるような方法で制御配列がZNF224配列と機能的に連結するように、ZNF224配列を発現ベクターにクローニングすることによって生成することができる(Lee NS et al., Nat Biotechnol 2002 May, 20(5): 500-5)。例えば、mRNAに対するアンチセンスであるRNA分子が第1のプロモーター(例えばクローニングされたDNAの3’末端と隣接するプロモーター配列)によって転写され、mRNAに対するセンス鎖であるRNA分子が第2のプロモーター(例えばクローニングされたDNAの5’末端に隣接するプロモーター配列)によって転写される。センス鎖とアンチセンス鎖とがインビボでハイブリダイズし、遺伝子をサイレンシングするための二本鎖分子構築物を生成する。あるいは、二本鎖分子のセンス鎖およびアンチセンス鎖をそれぞれコードする2つのベクター構築物は、センス鎖およびアンチセンス鎖をそれぞれ発現した後、二本鎖分子構築物を形成するために利用する。さらに、クローニングされた配列は二次構造(例えばヘアピン)を有する構築物、すなわち標的遺伝子のセンス配列および相補的なアンチセンス配列の両方を含有するベクターの単一転写産物をコードすることができる。
【0137】
本発明のベクターは、標的細胞のゲノムへの安定した挿入を達成するためにそのようなものを具備することもできる(例えば相同的な組換えカセットベクターの説明に関しては、Thomas KR & Capecchi MR, Cell 1987, 51: 503-12を参照されたい)。例えば、Wolff et al., Science 1990, 247: 1465-8、米国特許第5,580,859号、同第5,589,466号、同第5,804,566号、同第5,739,118号、同第5,736,524号、同第5,679,647号、およびWO98/04720を参照されたい。DNAベースの送達技術の例としては、「ネイキッドDNA」、促進性(ブピバカイン、ポリマー、ペプチド媒介性)送達、カチオン性脂質複合体、および粒子媒介性(「遺伝子銃」)または圧力媒介性の送達が挙げられる(例えば米国特許第5,922,687号を参照されたい)。
【0138】
本発明のベクターは例えば、ウイルスベクターまたは細菌ベクターを含む。発現ベクターの例としては、弱毒化ウイルス宿主、例えばワクシニアまたは鶏痘が挙げられる(例えば米国特許第4,722,848号を参照されたい)。このアプローチは、例えば二本鎖分子をコードするヌクレオチド配列を発現するためのベクターとしてのワクシニアウイルスの使用を含む。標的遺伝子を発現する細胞に導入すると、組換えワクシニアウイルスは前記分子を発現し、それにより細胞の増殖を抑制する。使用することのできるベクターの別の例としてはカルメット・ゲラン桿菌(Bacille Calmette Guerin)(BCG)が挙げられる。BCGベクターはStover et al., Nature 1991, 351: 456-60に記載されている。広範な他のベクターが、二本鎖分子の治療的投与および生成に有用である。例としては、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、チフス菌(Salmonella typhi)ベクター、無毒化炭疽毒素ベクター等が挙げられる。例えば、Shata et al., Mol Med Today 2000, 6: 66-71、Shedlock et al., J Leukoc Biol 2000, 68: 793-806、およびHipp et al., In Vivo 2000, 14: 571-85を参照されたい。
【0139】
IX.本発明の二本鎖分子を使用して、がん細胞の増殖を阻害または低下させ、がんを治療する方法
特定のsiRNAの、がんを阻害する能力は、参照として本明細書に組み入れられるWO2006/085684において以前に説明されている。本発明において、ZNF224についての2つの異なるdsRNAを、細胞増殖を阻害する能力について試験した。がん細胞株における遺伝子の発現を効果的にノックダウンした、ZNF224についての2つのdsRNAは、細胞増殖の抑制と一致した(図2)。
【0140】
したがって、本発明は、ZNF224の発現の阻害を介してZNF224遺伝子の機能障害を誘導することにより、細胞増殖、すなわち、膀胱癌の細胞増殖を阻害する方法を提供する。ZNF224遺伝子の発現は、ZNF224遺伝子を特異的に標的とする本発明の前記二本鎖分子のいずれか、または該二本鎖分子のいずれかを発現し得る本発明のベクターによって阻害され得る。
【0141】
本二本鎖分子および本ベクターの、がん性細胞の細胞増殖を阻害するそのような能力は、それらが、がんを治療するための方法に使用され得ることを示す。したがって、ZNF224遺伝子が正常器官ではほとんど検出されなかったため(図1)、本発明は、有害作用なしに、ZNF224遺伝子に対する二本鎖分子、または該分子を発現するベクターを投与することによってがんを有する患者を治療する方法を提供する。
【0142】
具体的には、本発明は、以下の[1]〜[38]の方法を提供する:
[1]互いにハイブリダイズすることで二本鎖分子を形成するセンス鎖とこれに相補的なアンチセンス鎖とから構成され、かつZNF224遺伝子を過剰発現している細胞におけるZNF224発現および細胞増殖を阻害する単離された二本鎖分子を、少なくとも1つ、投与する工程を含む、がん細胞の増殖を阻害してがんを治療するための方法であって、該がん細胞またはがんがZNF224遺伝子を発現している、方法;
[2]二本鎖分子が、SEQ ID NO:57(SEQ ID NO:48の494〜510位)、およびSEQ ID NO:58(SEQ ID NO:48の576〜592位)の中から選択される標的配列に一致するmRNAにおいて作用する、[1]に記載の方法;
[3]センス鎖が、SEQ ID NO:57および58の中から選択される標的配列に対応する配列を含有している、[2]に記載の方法;
[4]治療されるがんが膀胱癌である、[1]に記載の方法;
[5]複数種の二本鎖分子が投与される、[1]に記載の方法;
[6]二本鎖分子が約100ヌクレオチド長未満である、[3]に記載の方法;
[7]二本鎖分子が約75ヌクレオチド長未満である、[6]に記載の方法;
[8]二本鎖分子が約50ヌクレオチド長未満である、[7]に記載の方法;
[9]二本鎖分子が約25ヌクレオチド長未満である、[8]に記載の方法;
[10]二本鎖分子が約19〜約25ヌクレオチド長である、[9]に記載の方法;
[11]センス鎖が、SEQ ID NO:9および10の中から選択される配列に対応する配列からなる、[10]に記載の方法;
[12]二本鎖分子が、介在一本鎖により連結されたセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含有している単一のポリヌクレオチドから構成される、[10]に記載の方法;
[13]二本鎖分子が、一般式5’−[A]−[B]−[A’]−3’を有する方法であって、式中、[A]はSEQ ID NO:9および10の中から選択される標的配列に対応する配列を含有しているセンス鎖であり、[B]は3〜23個のヌクレオチドから構成される介在一本鎖であり、かつ[A’]は[A]に相補的な配列を含有しているアンチセンス鎖である、[12]に記載の方法;
[14][A]が、SEQ ID NO:9および10の中から選択される配列に対応する配列からなる、[13]に記載の方法;
[15]二本鎖分子がRNAである、[1]に記載の方法;
[16]二本鎖分子がDNAおよびRNAの両方を含有している、[1]に記載の方法;
[17]二本鎖分子がDNAポリヌクレオチドとRNAポリヌクレオチドとのハイブリッドである、[16]に記載の方法;
[18]センス鎖ポリヌクレオチドおよびアンチセンス鎖ポリヌクレオチドが、それぞれDNAおよびRNAから構成される、[17]に記載の方法;
[19]二本鎖分子がDNAおよびRNAのキメラである、[16]に記載の方法;
[20]アンチセンス鎖の3’末端に隣接する領域、またはセンス鎖の5’末端に隣接する領域およびアンチセンス鎖の3’末端に隣接する領域の両方が、RNAから構成される、[19]に記載の方法;
[21]隣接領域が9〜13個のヌクレオチドから構成される、[20]に記載の方法;
[22]二本鎖分子が3’オーバーハングを含有している、[1]に記載の方法;
[23]二本鎖分子が、該分子に加えて、トランスフェクション増強剤および薬学的に許容可能な担体を含む組成物に含有されている、[1]に記載の方法;
[24]二本鎖分子がベクターによりコードされる、[1]に記載の方法;
[25]ベクターによりコードされる二本鎖分子が、SEQ ID NO:57(SEQ ID NO:48の455〜485位)、およびSEQ ID NO:58(SEQ ID NO:48の576〜592位)の中から選択される標的配列に一致するmRNAにおいて作用する、[24]に記載の方法;
[26]ベクターによりコードされる二本鎖分子のセンス鎖が、SEQ ID NO:57および58の中から選択される標的配列に対応する配列を含有している、[25]に記載の方法;
[27]治療されるがんが膀胱癌である、[24]に記載の方法;
[28]複数種の二本鎖分子が投与される、[24]に記載の方法;
[29]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約100ヌクレオチド長未満である、[26]に記載の方法;
[30]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約75ヌクレオチド長未満である、[29]に記載の方法;
[31]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約50ヌクレオチド長未満である、[30]に記載の方法;
[32]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約25ヌクレオチド長未満である、[31]に記載の方法;
[33]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約19〜約25ヌクレオチド長である、[32]に記載の方法;
[34]センス鎖が、SEQ ID NO:9および10の中から選択される配列に対応する配列からなる、[33]に記載の方法;
[35]ベクターによりコードされる二本鎖分子が、介在一本鎖により連結されたセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含有している単一のポリヌクレオチドから構成される、[24]に記載の方法;
[36]ベクターによりコードされる二本鎖分子が、一般式5’−[A]−[B]−[A’]−3’を有する方法であって、式中、[A]はSEQ ID NO:9および10の中から選択される標的配列に対応する配列を含有しているセンス鎖であり、[B]は3〜23個のヌクレオチドから構成される介在一本鎖であり、かつ[A’]は[A]に相補的な配列を含有しているアンチセンス鎖である、[35]に記載の方法;
[37][A]が、SEQ ID NO:9および10の中から選択される配列に対応する配列からなる、[36]に記載の方法;ならびに
[38]ベクターによりコードされる二本鎖分子が、該分子に加えて、トランスフェクション増強剤および薬学的に許容可能な担体を含む組成物に含有されている、[24]に記載の方法。
【0143】
本発明の方法を、以下に、より詳細に説明する。ZNF224遺伝子を発現している細胞の増殖は、ZNF224遺伝子に対する二本鎖分子、該分子を発現するベクター、またはそれらを含有している組成物と、細胞を接触させることにより阻害され得る。さらに、細胞をトランスフェクション剤と接触させることもできる。好適なトランスフェクション剤は当技術分野で公知である。「細胞増殖の阻害」という語句は、その細胞が、分子に曝露されていない細胞と比較して、より低い速度で増殖するか、または減少した生存能を有することを示す。細胞増殖は、当技術分野で公知の方法によって、例えば、MTT細胞増殖アッセイを使用して、測定され得る。
【0144】
細胞が本発明の二本鎖分子の標的遺伝子を発現または過剰発現している限り、任意の種類の細胞の増殖を、本方法によって抑制することができる。例示的な細胞にはがん細胞、特に膀胱細胞株が含まれる。
【0145】
したがって、ZNF224に関連した疾患に罹患しているかまたはそれを発症するリスクを有する患者を、本二本鎖分子の少なくとも1つ、該分子の少なくとも1つを発現している少なくとも1つのベクター、または該分子の少なくとも1つを含有している少なくとも1つの組成物の投与によって治療することができる。例えば、膀胱癌に罹患している患者が、本方法によって治療され得る。がんの種類は、診断される腫瘍の特定の種類によって、標準的な方法によって同定され得る。好ましくは、本発明の方法によって治療される患者は、RT−PCRまたはイムノアッセイによって、患者由来の生検材料におけるZNF224の発現を検出することにより選択される。より好ましくは、本発明の治療の前に、対象由来の生検試料を、当技術分野で公知の方法、例えば、免疫組織化学分析またはRT−PCRによって、ZNF224遺伝子の過剰発現について確認する。
【0146】
複数種の二本鎖分子(またはそれを発現するベクターまたはそれを含有している組成物)の投与を通して、細胞増殖を阻害し、それによりがんを治療する本方法によると、分子は各々、異なる構造を有するが、ZNF224の同一の標的配列に一致するmRNAにおいて作用しうる。あるいは、複数種の二本鎖分子は、同一の遺伝子の異なる標的配列に一致するmRNAにおいて作用しうる。例えば、方法は、ZNF224から選択される1つ、2つ、またはそれ以上の標的配列に対する指向性を有する二本鎖分子を利用してもよい。
【0147】
細胞増殖を阻害するために、本発明の二本鎖分子は、該分子と対応するmRNA転写産物との結合を達成する形態で、細胞に直接導入することができる。あるいは、上記のように、二本鎖分子をコードするDNAは、ベクターとして細胞に導入することができる。二本鎖分子およびベクターを細胞に導入するために、トランスフェクション増強剤、例えばFuGENE(Roche diagnostices)、Lipofectamine 2000(Invitrogen)、Oligofectamine(Invitrogen)、およびNucleofector(和光純薬工業)を利用することができる。
【0148】
治療は、臨床的利点、例えばZNF224遺伝子の発現の低減、または対象におけるがんのサイズ、有病率、もしくは転移能の減少をもたらす場合に、「有効」とみなされる。治療を予防的に適用する場合、「有効」とは、治療ががんの形成を遅らせるもしくは防ぐか、またはがんの臨床症状を防ぐかもしくは緩和するという意味である。有効性(Efficaciousness)は、特定の腫瘍の種類を診断または治療するための任意の公知の方法に関連して求められる。
【0149】
本発明の方法および組成物が予防(Preventionおよびprophylaxis)の文脈で有用であるという点で、そのような用語は、疾患による死亡または罹患の負担を低減する任意の活性を意味するよう本明細書において互換的に用いられる。予防は、「一次的、二次的、および三次的な予防レベルで」行うことができる。一次的な予防は疾患の発症を回避するのに対して、二次的および三次的なレベルの予防は、機能を回復することおよび疾患に関連する合併症を低減することにより、疾患の進行および症状の出現の予防、ならびに既に確立された疾患の悪影響の低減を目的とする活動を包含する。あるいは、予防は、特定の障害の重症度を軽減すること、例えば、腫瘍の増殖および転移を低減することを目的とする広範な予防的療法を含み得る。
【0150】
がんの治療および/もしくは予防、ならびに/または手術後のその再発の予防は、以下の工程のいずれかを含む:がん細胞の外科的除去、がん細胞の増殖阻害、腫瘍の退縮または退行、がんの発生の寛解および抑制の誘導、腫瘍退行、ならびに転移の低減または阻害等。がんの効果的な治療および/または予防は、死亡率を減少させ、がんを有する個体の予後を改善し、血中の腫瘍マーカーのレベルを減少させ、およびがんに付随する検出可能な症状を緩和する。例えば、症状の低減または改善は、10%、20%、30%、またはそれ以上の低減を含む効果的な治療および/または予防、または安定している疾患を構成する。
【0151】
本発明の二本鎖分子は、準化学量論的な量でZNF224のmRNAを分解することが理解される。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、本発明の二本鎖分子によって、触媒的様式で標的mRNAの分解が起こると考えられている。したがって、標準的ながん治療に比べて、本発明は治療効果を発揮するためにがん部位またはその近くにおける二本鎖分子の有意に少ない送達を必要とする。
【0152】
当業者は、例えば対象の体重、年齢、性別、疾患の種類、症状、および他の状態;投与経路;ならびに投与が局所的または全身的のいずれであるかなどの因子を考慮して、所定の対象に投与されるべき本発明の二本鎖分子の有効量を容易に求めることができる。概して、本発明の二本鎖分子の有効量は、がん部位またはその近くにおいて約1ナノモル(nM)〜約100nM、好ましくは約2nM〜約50nM、より好ましくは約2.5nM〜約10nMである細胞内濃度である。より多くのまたはより少ない量の二本鎖分子を投与することができることが意図される。特定の状況において必要とされる正確な用量は、当業者により容易にかつルーチン的に決定されうる。
【0153】
本発明の方法は、少なくとも1つのZNF224発現するがん、例えば膀胱癌の増殖または転移を阻害するために使用され得る。特に、ZNF224(すなわち、SEQ ID NO:57または58)の標的配列を含む二本鎖分子は、がんの治療にとって特に好ましい。
【0154】
がんを治療するために、本発明の二本鎖分子は、該二本鎖分子とは異なる薬剤と併用して対象に投与することもできる。あるいは、本発明の二本鎖分子は、がんを治療するために設計された別の治療法と併用して対象に投与することができる。例えば、本発明の二本鎖分子は、がんを治療するまたはがん転移を予防するのに現在利用されている治療法(例えば放射線療法、外科的手術、および化学療法剤、例えばシスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、5−フルオロウラシル、アドリアマイシン、ダウノルビシン、またはタモキシフェンを用いた治療)と併用して投与することができる。
【0155】
本方法において、二本鎖分子は、送達試薬と共にネイキッド二本鎖分子として、または該二本鎖分子を発現する組換えプラスミドもしくはウイルスベクターとしてのいずれかで対象に投与することができる。
【0156】
本発明の二本鎖分子と共に投与するのに好適な送達試薬としては、Mirus Transit TKO脂溶性試薬、リポフェクチン、リポフェクタミン、セルフェクチン、またはポリカチオン(例えばポリリシン)、またはリポソームが挙げられる。好ましい送達試薬はリポソームである。
【0157】
リポソームは、特定の組織、例えば膀胱組織への二本鎖分子の送達に役立ち、二本鎖分子の血液半減期も増大させ得る。本発明の文脈における使用に好適なリポソームは、標準的な小胞形成脂質から形成してもよく、概してこれには、中性または負に帯電したリン脂質およびステロール、例えばコレステロールが含まれる。一般的には、所望のリポソームサイズおよび血流中におけるリポソームの半減期などの因子を考慮して、脂質の選択が導かれる。リポソームを調製するのに、例えばSzoka et al., Ann Rev Biophys Bioeng 1980, 9: 467、ならびに米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号、および同第5,019,369号(その開示全体が参照により本明細書に引用される)で記載されるような様々な方法が知られている。
【0158】
好ましくは、本発明の二本鎖分子を封入するリポソームは、リポソームをがん部位に送達することができるリガンド分子を含む。腫瘍または血管内皮細胞に広まった受容体に結合するリガンド、例えば腫瘍抗原または内皮細胞表面抗原と結合するモノクローナル抗体が好ましい。
【0159】
特に好ましくは、本発明の二本鎖分子を封入するリポソームは、例えばその構造の表面に結合したオプソニン化阻害部分を有することによって、単核マクロファージおよび網内系によるクリアランスを避けるように改変される。一態様では、本発明のリポソームは、オプソニン化阻害部分およびリガンドの両方を含み得る。
【0160】
本発明のリポソームを調製するのに用いるオプソニン化阻害部分は典型的に、リポソーム膜と結合する巨大な親水性ポリマーである。本明細書で使用される場合、オプソニン化阻害部分は、例えば脂質−可溶性アンカーの膜自体へのインターカレーションによって、または膜脂質の活性基への直接結合によって、膜と化学的にまたは物理的に接着する場合に、リポソーム膜と「結合」する。これらのオプソニン化阻害親水性ポリマーは、例えば米国特許第4,920,016号(その開示全体は参照により本明細書に組み入れられる)に記載されるように、マクロファージ−単球系(「MMS」)および網内系(「RES」)によるリポソームの取り込みを有意に低減する保護表面層を形成する。したがって、オプソニン化阻害部分を用いて改変されたリポソームは、非改変リポソームよりも非常に長く循環中に留まる。この理由から、そのようなリポソームは「ステルス」リポソームと呼ばれることもある。
【0161】
ステルスリポソームは、多孔性または「漏出性(leaky)」微小血管系によって送り込まれる組織中で集積することが知られている。したがって、そのような微小血管系の欠陥を特徴とする標的組織、例えば固形腫瘍は、効率的にこれらのリポソームを集積する。Gabizon et al., Proc Natl Acad Sci USA 1988, 18: 6949-53を参照されたい。さらに、RESによる取り込みの低減が、肝臓および脾臓における有意な集積を防ぐことによって、ステルスリポソームの毒性を低下させる。したがって、オプソニン化阻害部分を用いて改変された本発明のリポソームは、本発明の二本鎖分子を腫瘍細胞に送達することができる。
【0162】
リポソームを改変するのに好適なオプソニン化阻害部分は、好ましくは、分子量が約500ダルトン〜約40,000ダルトン、より好ましくは約2,000ダルトン〜約20,000ダルトンの水溶性ポリマーであり得る。そのようなポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール(PPG)誘導体;例えばメトキシPEGまたはPPG、およびPEGまたはPPGステアレート;合成ポリマー、例えばポリアクリルアミドまたはポリN−ビニルピロリドン;直鎖、分岐、または樹状のポリアミドアミン;ポリアクリル酸;多価アルコール、例えばカルボン酸基またはアミノ基が化学結合したポリビニルアルコールおよびポリキシリトール、ならびにガングリオシド、例えばガングリオシドGMが挙げられる。PEG、メトキシPEG、もしくはメトキシPPGのコポリマー、またはそれらの誘導体も好適である。さらに、オプソニン化阻害ポリマーは、PEGと、ポリアミノ酸、多糖、ポリアミドアミン、ポリエチレンアミン、またはポリヌクレオチドのいずれかとのブロックコポリマーであり得る。オプソニン化阻害ポリマーは、アミノ酸またはカルボン酸を含有する天然多糖例えばガラクツロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、ヒアルロン酸、ペクチン酸、ノイラミン酸、アルギン酸、カラゲナン;アミノ化多糖またはオリゴ糖(直鎖状または分岐状);または、例えばカルボン酸基の結果として生じた連結を有するカルボン酸の誘導体と反応させた、カルボキシル化多糖またはカルボキシル化オリゴ糖でもあり得る。
【0163】
好ましくは、オプソニン化阻害部分はPEG、PPG、またはその誘導体である。PEGまたはPEG誘導体を用いて改変したリポソームは「PEG化リポソーム」と呼ばれることもある。
【0164】
オプソニン化阻害部分は、多くの公知の技術のいずれか1つによってリポソーム膜と結合することができる。例えば、PEGのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルは、ホスファチジル−エタノールアミン脂質可溶性アンカーと結合し、続いて膜と結合することができる。同様に、デキストランポリマーは、60℃でNa(CN)BHおよび溶媒混合物、例えば30:12の比のテトラヒドロフランおよび水を用いて、還元アミノ化によってステアリルアミン脂質可溶性アンカーで誘導体化することができる。
【0165】
本発明の二本鎖分子を発現するベクターが上記で検討されている。少なくとも1つの本発明の二本鎖分子を発現するそのようなベクターもまた、直接、またはMirus Transit LT1脂溶性試薬、リポフェクチン、リポフェクタミン、セルフェクチン、ポリカチオン(例えばポリリシン)、またはリポソームを含む好適な送達試薬と共に、投与することができる。本発明の二本鎖分子を発現する組換えウイルスベクターを患者のがん領域に送達する方法は当技術分野の技術範囲内である。
【0166】
本発明の二本鎖分子は、二本鎖分子をがん部位に送達するのに好適な任意の手段によって、対象に投与することができる。例えば、二本鎖分子は、遺伝子銃、電気穿孔法、または他の好適な非経口投与経路もしくは腸内投与経路によって投与することができる。
【0167】
好適な腸内投与経路としては、経口、直腸、鼻腔内、または膀胱内送達が挙げられる。
【0168】
好適な非経口投与経路としては、膀胱内または血管内投与(例えば静脈ボーラス注射、静脈注入、動脈内ボーラス注射、動脈内注入、および血管系へのカテーテル点滴注入);周囲組織および組織内への注射(例えば腫瘍周囲および腫瘍内注射);皮下注入を含む皮下注射または皮下沈着(例えば浸透圧ポンプによって);例えばカテーテルもしくは他の留置装置(例えば、多孔性、非孔性、またはゼラチン様の材料を含む、坐剤またはインプラント)による、がん部位の領域またはその近くの領域への直接適用;ならびに吸入が挙げられる。二本鎖分子またはベクターの注射または注入は、がんの部位でまたはその近くで行われることが好ましい。
【0169】
本発明の二本鎖分子は、単回投与または複数回の投与で投与することができる。本発明の二本鎖分子の投与が注入によるものである場合、注入は、単回の持続投与で行うか、または複数回の注入によって送達することができる。剤の注射は、がん部位の組織、またはがん部位の近くの組織に直接行うことが好ましい。がん部位の組織にまたはがん部位の近くの組織に剤を複数回注射することが特に好ましい。
【0170】
当業者は容易に、本発明の二本鎖分子を所定の対象に投与するのに適当な投与計画を決定することもできる。例えば、二本鎖分子は、例えばがん部位でのまたはその近くでの単回注射または沈着として、対象に1回で投与することができる。あるいは、二本鎖分子は、約3日〜約28日、より好ましくは約7日〜約10日の間、1日1回または2回、対象に投与することができる。好ましい投与計画では、二本鎖分子は1日1回7日間、がん部位にまたはその近くに注射される。投与計画に複数回の投与が含まれる場合、対象に投与される二本鎖分子の有効量は、投与計画全体を通して投与される二本鎖分子の総量を含むことが理解される。
【0171】
X.本発明の二本鎖分子を含有している組成物
上記に加えて、本発明は、本二本鎖分子または該分子をコードするベクターのうちの少なくとも1つを含む医薬組成物も提供する。具体的には、本発明は以下の[1]〜[38]の組成物を提供する:
[1]ZNF224遺伝子の発現および細胞増殖を阻害する少なくとも1つの単離された二本鎖分子を含む、がん細胞の増殖を阻害してがんを治療するための組成物であって、該がんおよびがん細胞がZNF224遺伝子を発現し、さらに該分子が、互いにハイブリダイズすることで二本鎖分子を形成するセンス鎖とこれに相補的なアンチセンス鎖とから構成される、組成物;
[2]二本鎖分子が、SEQ ID NO:57(SEQ ID NO:48の494〜510位)、およびSEQ ID NO:58(SEQ ID NO:48の576〜592位)の中から選択される標的配列に一致するmRNAにおいて作用する、[1]に記載の組成物;
[3]二本鎖分子、センス鎖が、SEQ ID NO:57および58の中から選択される標的配列に対応する配列を含有している、[2]に記載の組成物;
[4]治療されるがんが膀胱癌である、[1]に記載の組成物;
[5]複数種の二本鎖分子を含有している、[1]に記載の組成物;
[6]二本鎖分子が約100ヌクレオチド長未満である、[3]に記載の組成物;
[7]二本鎖分子が約75ヌクレオチド長未満である、[6]に記載の組成物;
[8]二本鎖分子が約50ヌクレオチド長未満である、[7]に記載の組成物;
[9]二本鎖分子が約25ヌクレオチド長未満である、[8]に記載の組成物;
[10]二本鎖分子が約19〜約25ヌクレオチド長である、[9]に記載の組成物;
[11]二本鎖分子が、介在一本鎖により連結されたセンス鎖およびアンチセンス鎖を含有している単一のポリヌクレオチドから構成される、[1]に記載の組成物;
[12]センス鎖が、SEQ ID NO:9および10の中から選択される配列に対応する配列からなる、[11]に記載の方法;
[13]二本鎖分子が、一般式5’−[A]−[B]−[A’]−3’を有する組成物であって、式中、[A]はSEQ ID NO:9および10の中から選択される標的配列に対応する配列を含有しているセンス鎖配列であり、[B]は3〜23個のヌクレオチドからなる介在一本鎖であり、かつ[A’]は[A]に相補的な配列を含有しているアンチセンス鎖である、[12]に記載の組成物;
[14][A]が、SEQ ID NO:9および10の中から選択される配列に対応する配列からなる、[13]に記載の方法;
[15]二本鎖分子がRNAである、[1]に記載の組成物;
[16]二本鎖分子がDNAおよび/またはRNAである、[1]に記載の組成物;
[17]二本鎖分子がDNAポリヌクレオチドとRNAポリヌクレオチドとのハイブリッドである、[16]に記載の組成物;
[18]センス鎖ポリヌクレオチドおよびアンチセンス鎖ポリヌクレオチドが、それぞれDNAおよびRNAから構成される、[17]に記載の組成物;
[19]二本鎖分子がDNAおよびRNAのキメラである、[16]に記載の組成物;
[20]アンチセンス鎖の3’末端に隣接する領域、またはセンス鎖の5’末端に隣接する領域およびアンチセンス鎖の3’末端に隣接する領域の両方が、RNAから構成される、[19]に記載の組成物;
[21]隣接領域が9〜13個のヌクレオチドから構成される、[20]に記載の組成物;
[22]二本鎖分子が3’オーバーハングを含有している、[1]に記載の組成物;
[23]トランスフェクション増強剤および薬学的に許容可能な担体を含む、[1]に記載の組成物;
[24]二本鎖分子がベクターによりコードされ、かつ組成物に含有されている、[1]に記載の組成物;
[25]ベクターによりコードされる二本鎖分子が、SEQ ID NO:57(SEQ ID NO:48の494〜510位)、およびSEQ ID NO:58(SEQ ID NO:48の576〜592位)の中から選択される標的配列に一致するmRNAにおいて作用する、[24]に記載の組成物;
[26]ベクターによりコードされる二本鎖分子のセンス鎖が、SEQ ID NO:57および58の中から選択される標的配列に対応する配列を含有している、[25]に記載の組成物;
[27]治療されるがんが膀胱癌である、[24]に記載の組成物;
[28]複数種の二本鎖分子が投与される、[24]に記載の組成物;
[29]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約100ヌクレオチド長未満である、[26]に記載の組成物;
[30]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約75ヌクレオチド長未満である、[29]に記載の組成物;
[31]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約50ヌクレオチド長未満である、[30]に記載の組成物;
[32]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約25ヌクレオチド長未満である、[31]に記載の組成物;
[33]ベクターによりコードされる二本鎖分子が約19〜約25ヌクレオチド長である、[32]に記載の組成物;
[34]センス鎖が、SEQ ID NO:9および10の中から選択される配列に対応する配列からなる、[33]に記載の方法;
[35]ベクターによりコードされる二本鎖分子が、介在一本鎖により連結されたセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含有している単一のポリヌクレオチドから構成される、[24]に記載の組成物;
[36]二本鎖分子が、一般式5’−[A]−[B]−[A’]−3’を有する組成物であって、式中、[A]はSEQ ID NO:9および10の中から選択される標的配列に対応する配列を含有しているセンス鎖であり、[B]は3〜23個のヌクレオチドから構成される介在一本鎖であり、かつ[A’]は[A]に相補的な配列を含有しているアンチセンス鎖である、[24]に記載の組成物;
[37][A]が、SEQ ID NO:9および10の中から選択される配列に対応する配列からなる、[36]に記載の方法;ならびに
[38]トランスフェクション増強剤および薬学的に許容可能な担体を含む、[24]に記載の組成物。
【0172】
本発明の好適な組成物は以下でより詳細に説明される。
【0173】
本発明の二本鎖分子は、好ましくは、当技術分野で公知の技術に従って、対象に投与する前に医薬組成物として調合することができる。本発明の医薬組成物は、少なくとも無菌でありかつパイロジェンを含まないことを特徴とする。本明細書で使用される場合、「医薬製剤」は、ヒトおよび獣医学的使用のための製剤を含む。本発明の医薬組成物を調製する方法は、例えばRemington's Pharmaceutical Science, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa.(1985)(その開示全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載のように当技術分野の技術範囲内である。
【0174】
本発明の医薬製剤は、生理学的に許容可能な担体媒体と混合して、本発明の二本鎖分子もしくはこれをコードするベクターの少なくとも1つ(例えば0.1重量%〜90重量%)、または該分子の生理学的に許容可能な塩を含有する。好ましい生理学的に許容可能な担体媒体は、水、緩衝水、通常の生理食塩水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸等である。
【0175】
本発明によれば、組成物は、複数種類の二本鎖分子を含有することができ、それらの分子のそれぞれが、ZNF224の同じ標的配列または異なる標的配列に対する指向性を有し得る。例えば、組成物は、ZNF224に対する指向性を有する二本鎖分子を含有することができる。あるいは、例えば組成物は、ZNF224の1つ、2つ、またはそれ以上の標的配列に対する指向性を有する二本鎖分子を含有することができる。
【0176】
さらに本発明の組成物は、1つまたは複数の二本鎖分子をコードするベクターを含有することができる。例えばベクターは、1つ、2つ、または幾つかの種類の本発明の二本鎖分子をコードすることができる。あるいは、本発明の組成物は、複数種類のベクターを含有することができ、それらのベクターのそれぞれは異なる二本鎖分子をコードする。
【0177】
さらに、本発明の二本鎖分子は、本発明の組成物中にリポソームとして含有され得る。リポソームの詳細に関しては、「本発明の二本鎖分子を使用して、がん細胞の増殖を阻害または低下させ、がんを治療する方法」の項を参照されたい。
【0178】
本発明の医薬組成物は、従来の医薬賦形剤および/または添加剤も含み得る。好適な医薬賦形剤としては、安定剤、抗酸化剤、浸透圧調整剤、緩衝剤、およびpH調整剤が挙げられる。好適な添加剤としては、生理学的に生体適合性がある緩衝剤(例えば塩酸トロメタミン)、キレート剤(chelant)の添加物(例えばDTPAもしくはDTPA−ビスアミド)もしくはカルシウムキレート錯体(例えばカルシウムDTPA、CaNaDTPA−ビスアミド)、または任意でカルシウム塩もしくはナトリウム塩の添加物(例えば塩化カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、もしくは乳酸カルシウム)が挙げられる。本発明の医薬組成物は、液体形態での使用のために包装されていても、または凍結乾燥されていてもよい。
【0179】
固体組成物には、従来の非毒性固体担体、例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム等を使用することができる。
【0180】
例えば、経口投与用の固体医薬組成物は、上記で列挙された担体および賦形剤のいずれかと、10%〜95%、好ましくは25%〜75%の1つまたは複数の本発明の二本鎖分子とを含み得る。エアロゾル(吸入)投与用の医薬組成物は、上記のようにリポソームに封入された0.01重量%〜20重量%、好ましくは1重量%〜10重量%の1つまたは複数の本発明の二本鎖分子と、噴霧剤とを含み得る。所望に応じて、担体、例えば鼻腔内送達ではレシチンが含まれ得る。
【0181】
上記に加えて、本発明の組成物は、本発明の二本鎖分子のインビボ機能を阻害しない限り、他の薬学的に活性のある成分を含有することができる。例えば組成物は、がんを治療するのに従来使用される化学療法剤を含有することができる。
【0182】
別の態様において、本発明は、ZNF224の発現を特徴とするがんの治療用の医薬組成物の製造における、本発明の二本鎖核酸分子の使用を提供する。例えば、本発明は、ZNF224を発現しているがんの治療用の医薬組成物の製造のための、細胞におけるZNF224遺伝子の発現を阻害する二本鎖核酸分子の使用に関し、該分子は、互いにハイブリダイズすることで二本鎖核酸分子を形成するセンス鎖とこれに相補的なアンチセンス鎖とを含み、かつSEQ ID NO:57および58の中から選択される配列を標的とする。
【0183】
本発明は、ZNF224遺伝子を過剰発現している細胞におけるZNF224の発現を阻害する二本鎖核酸分子と共に薬学的または生理学的に許容可能な担体を調合する工程を含む、ZNF224の発現を特徴とするがんの治療用の医薬組成物を製造するための方法またはプロセスをさらに提供し、該分子は、活性成分として、互いにハイブリダイズすることで二本鎖核酸分子を形成するセンス鎖とこれに相補的なアンチセンス鎖とを含み、かつSEQ ID NO:57および58の中から選択される配列を標的とする。
【0184】
別の態様において、本発明は、活性成分を薬学的または生理学的に許容可能な担体と混和する工程を含む、ZNF224の発現を特徴とするがんの治療用の医薬組成物を製造するための方法またはプロセスを提供し、該活性成分は、ZNF224遺伝子を過剰発現している細胞におけるZNF224の発現を阻害する二本鎖核酸分子であり、該分子は、互いにハイブリダイズすることで二本鎖核酸分子を形成するセンス鎖とこれに相補的なアンチセンス鎖とを含み、かつSEQ ID NO:57および58の中から選択される配列を標的とする。
【0185】
本発明の局面を以下の実施例で説明するが、これらは特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定する意図はない。
【0186】
他に規定のない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好適な方法および材料を以下で説明する。
【0187】
本発明を以下の実施例でさらに説明するが、これは特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定しない。
【実施例】
【0188】
I.材料および方法
1.膀胱癌細胞株および組織試料
ヒト膀胱癌細胞株UM−UC−3およびJ82は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC;Rockville, MD)から購入した。全ての膀胱癌細胞株およびCOS−7細胞は、以前に記載されたような適切な培地で単層で培養した(Takata R,et al., Semin Oncol 1999 Suppl 2:117-22)。外科的に切除された侵潤性膀胱癌または表在性膀胱癌からの組織試料、ならびにそれらの対応する臨床的情報は、書面によるインフォームドコンセントをとった上で、高知大学医学部(Kochi Medical School)、京都府立医科大学(Kyoto Prefectural University of Medicine)、名古屋市立大学大学院医学研究科(Nagoya City University Graduate School of Medical Sciences)、金沢大学大学院医学系研究科(Kanazawa University Graduate School of Medical Sciences)、および岩手医科大学(Iwate Medical University)の5つの病院から入手した。
【0189】
2.DEPDC1と相互作用するタンパク質の同定
膀胱癌細胞株UM−UC−3からの細胞抽出物を、プロテイナーゼ阻害剤の存在下で、1mLの最終量の免疫沈降緩衝液(0.5%のNP−40、50mMのトリス−HCl、150mMのNaCl)中で、100μLのプロテインG−アガロースビーズと共に4℃で1時間インキュベートすることにより予め浄化(preclear)した。80g、4℃での5分間の遠心分離の後、上清を、抗DEPDC1ポリクローナル抗体またはノーマルウサギIgGと共に4℃で2時間インキュベートした。次いで、ビーズを、2000gで2分間の遠心分離により収集し、各1mLの免疫沈降緩衝液で5回洗浄した。洗浄されたビーズを、50μLのレムリ(Laemmli)試料緩衝液に再懸濁し、5分間煮沸し、タンパク質を5〜20%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)ゲル(Bio−Rad,Hercules,CA)で分離した。電気泳動後、ゲルを銀染色した。抗DEPDC1ポリクローナル抗体により免疫沈降した抽出物に特異的に見出されたタンパク質バンドを切り出し、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF−MS)(AXIMA−CFR plus(SHIMADZU BIOTECH))に使用した。
【0190】
3.半定量的逆転写−PCR
膀胱癌細胞のマイクロダイセクションを、以前に記載されたようにして実施した(Takata R,et al., Semin Oncol 1999 Suppl 2:117-22)。本発明者らは、培養細胞ならびにマイクロダイセクションした膀胱臨床試料および正常ヒト膀胱上皮細胞の各々から、RNeasy Micro Kit(Qiagen, Valencia, CA)を使用して抽出された全RNA、ならびに心臓、肺、肝臓、腎臓、および膀胱から単離されたポリA(+)RNA(タカラクロンテック(Takara Clontech)、京都、日本)を調製した。その後、T7に基づく増幅および逆転写を、以前に記載されたようにして実施した(Takata R, et al., Semin Oncol 1999 Suppl 2:117-22)。定量対照としてグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の量をモニタリングすることにより、その後のPCRのための各一本鎖cDNAの適切な希釈物を調製した。各プライマーセットの配列は以下の通りであった;
ZNF224:5’−GAGCAGCATGGGAAGAACAT−3’(SEQ ID NO:1)および
5’−TGAGGCCTGACTAAAGCACA−3’(SEQ ID NO:2);
GAPDH:5’−CGACCACTTTGTCAAGCTCA−3’ (SEQ ID NO:3)および
5’−GGTTGAGCACAGGGTACTTTATT−3’(SEQ ID NO:4);
DEPDC1:5’−GCTACAAGTAAAGAGGGGATGG−3’(SEQ ID NO:59)および
5’−GGACAGAAAGGTAAGTCAGTGGG−3’(SEQ ID NO:60);
IkB−alpha;5’−TATATCCACACTGCACACTGC−3’(SEQ ID NO:61)および
5’−CCATTTACAGGAGGGTAACAC−3’(SEQ ID NO:62)。
【0191】
4.発現ベクターの構築
ZNF224のオープンリーディングフレーム配列に対応するcDNA、およびDEPDC1のコーディング配列の一部を、以下のようなプライマーと共にKOD−Plus DNAポリメラーゼ(東洋紡、大阪、日本)を使用したPCRにより入手した。
ZNF224−フォワード:5’−GGAAAGCGGCCGCATGACCACGTTCAA−3’(SEQ ID NO:5)、
ZNF224−リバース:5’−GCCGCTCGAGAGGTTTTTCTCCAACATGAA−3’(SEQ ID NO:6)、
DEPDC11−147−フォワード:5’−ATTCGCGGCCGCGGATGGAGAGTCAGGGTGTG−3’(SEQ ID NO:63)、
DEPDC11−147−リバース:5’−CCCGCTCGAGAGTTCTACGAGATAAGTTTCG−3’(SEQ ID NO:64)、
DEPDC11−300−フォワード:5’−ATTCGCGGCCGCGGATGGAGAGTCAGGGTGTG−3’(SEQ ID NO:65)、
DEPDC11−300−リバース:5’−CCCGCTCGAGTACAAATAATTCGTAATATTC−3’(SEQ ID NO:66)、
DEPDC1177−597−フォワード:5’−ATTCGCGGCCGCTTGATAATAGAGAACTAAGCCA−3’(SEQ ID NO:67)、
DEPDC1177−597−リバース:5’−CCCGCTCGAGAACCCTCTCTAAATGAGGTTG−3’(SEQ ID NO:68)、
DEPDC1300−669−フォワード:5’−ATTCGCGGCCGCACCATGGTAAACATTTTGGTTGTTTGTG−3’(SEQ ID NO:69)、
DEPDC1300−669−リバース:5’−CCCGCTCGAGTCCAGCAAGAAGCTCATC−3’(SEQ ID NO:70)、
DEPDC1587−740−フォワード:5’−ATTCGCGGCCGCACCATGCAAAGCTTGCTGCAACCTCA −3’(SEQ ID NO:71)、
DEPDC1587−740−リバース:5’−CCCGCTCGAGAGCTTGAGAGGTAGAAAC−3’(SEQ ID NO:72)、
DEPDC1654−811−フォワード:5’−ATTCGCGGCCGCACCATGTCTTACTTACAGACTGCAGTG−3’(SEQ ID NO:73)、
DEPDC1654−811−リバース:5’−CCCGCTCGAGTCTTAGACTACGGAACTTTG−3’(SEQ ID NO:74)。
フォワードプライマーの下線はNotI部位を示し、リバースプライマーの下線はXhoI部位を示す。
【0192】
PCR産物を、ZNF224についてはC末端FLAGタグとインフレームでpCAGGScFLAG発現ベクターのNotI−XhoI部位に挿入し(pCAGGSc−ZNF224−FLAG)、または、DEPDC1の部分ペプチドについてはHAタグとインフレームでpCAGGScHA発現ベクターのNotI−XhoI部位に挿入した(pCAGGSc−DEPDC1−HA;DEPDC11−147、DEPDC11−300、DEPDC1177−597、DEPDC1300−669、DEPDC1587−740、およびDEPDC1654−811)。構築物は、全て、ABI 3700 DNAシーケンサー(Applied Biosystems, Forster City,CA)によるDNA配列決定により確認した。DEPDC1構築物(pCAGGS−DEPDC1−V1−HA)のコーディング領域全体は、以前に記載されたようにして作製した(Kanehira M, Harada Y, Takata R, et al. Oncogene 2007;26:6448-55)。
【0193】
5.免疫細胞化学的染色分析
UM−UC−3細胞を、1ウェル当たり1×10細胞で播いた(Lab−tek II chamber slide(Nalgen Nunc, International, Naperville, IL))。24時間後、細胞を、Flagタグ付きZNF224により一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞を4%パラホルムアルデヒドを含有しているPBS(−)で固定し、次いで、室温で2分間、0.1%トリトンX−100を含有しているPBS(−)で透過性化した。その後、非特異的なハイブリダイゼーションをブロッキングするために、4℃で12時間、PBS(−)中3%BSAで細胞を覆った。次いで、ブロッキング溶液で100倍希釈された、アフィニティ精製された抗DEPDC1ポリクローナル抗体または抗ZNF224ポリクローナル抗体と共に、細胞をインキュベートした。PBS(−)で洗浄した後、1000倍希釈のAlexa488結合型抗ウサギ二次抗体およびAlexa597結合型抗ウサギ二次抗体(Molecular Probe, Eugene, OR)により、細胞を染色した。核を、4’,6’−ジアミジン−2’−フェニルインドール二塩酸塩(DAPI)で対比染色した。蛍光画像を、TCS SP2 AOBS顕微鏡(ライカ、東京、日本)下で入手した。
【0194】
ドミナントネガティブペプチド(「ドミナントネガティブペプチドセクション」を参照されたい)による処理の後の核におけるNF−κB発現の検出のため、UM−UC−3細胞(1×10個)を播き、次いで、各ペプチドにより12時間処理した。その後、抗NF−κB(p65)モノクローナル抗体(200倍希釈)(Santa Cruz, CA, USA)を使用して、免疫細胞化学的染色を実施した。NF−κB(p65)タンパク質の蛍光画像および核強度を、TCS SP2 AOBS顕微鏡(ライカ、東京、日本)下で入手した。画像分析のため、11R−DEP611−628ペプチドまたはスクランブルペプチド(「ドミナントネガティブペプチドセクション」を参照されたい)により処理された50個の細胞の核を観察することにより、NF−κB(p65)の核シグナル強度を測定した。アッセイは、3回独立に実施した。
【0195】
6.RNA干渉アッセイ
哺乳動物細胞において低分子干渉RNA(siRNA)を発現するよう設計された、ベクターに基づくRNA干渉(RNAi)システム、psiU6BX3.0は、以前に確立されている(Shimokawa T,et al., Cancer Res 2003 63:6116-20)。二本鎖オリゴヌクレオチドをpsiU6BXベクターのBbsI部位へクローニングすることにより、ZNF224に対するsiRNAを発現するよう設計されたプラスミドを調製した。RNAiの合成オリゴヌクレオチドの標的配列は以下の通りであった:
対照としての、
EGFP(高感度緑色蛍光タンパク質遺伝子、オワンクラゲ(Aequorea Victoria)緑色蛍光タンパク質の変異体):
5’−GAAGCAGCACGACTTCTTC−3’(SEQ ID NO:7);
SCR(5S rRNAおよび16S rRNAをコードするユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)葉緑体遺伝子):
5’−GCGCGCTTTGTAGGATTCG−3’(SEQ ID NO:8);
ZNF224に特異的な配列に対する、
si−ZNF224#1:5’−CCGATTTGGATGATGAAGA−3’(SEQ ID NO:9);
si−ZNF224#2:5’−CCGCAGGAACACATCAAGA−3’(SEQ ID NO:10)。
全ての構築物のDNA配列は、DNA配列決定により確認した。各8μgのsiRNA発現ベクターを、供給元の推奨に従い、FuGENE6トランスフェクション試薬(Roche)を使用して、UM−UC−3細胞へそれぞれトランスフェクトした(10cmディッシュ1枚当たり1×10細胞)。特異的なプライマー(以下を参照されたい)を用いた半定量的RT−PCRによりsiRNAのノックダウン効果を評価するために、ネオマイシン(ジェネテシン、Invitrogen)と共に4日間インキュベートした後、トランスフェクトされた細胞から全RNAを抽出した。RT−PCRのための特異的なプライマーセットは以下の通りである;
ZNF224については、
5’−GAGCAGCATGGGAAGAACAT−3’(SEQ ID NO:11)および
5’−TGAGGCCTGACTAAAGCACA−3’(SEQ ID NO:12);ならびに
定量対照としてのGAPDHについては、
5’−CGACCACTTTGTCAAGCTCA−3’(SEQ ID NO:13)および
5’−GGTTGAGCACAGGGTACTTTATT−3’(SEQ ID NO:14)。
トランスフェクトされたUM−UC−3細胞を、1.0mg/mlのネオマイシンの存在下で21日間または14日間培養し、コロニーの数をギムザ染色により計数した。ネオマイシン処理の14日後、製造業者の推奨に従い、Cell Counting Kit−8(和光純薬工業、大阪、日本)を用いて、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイにより、UM−UC−3細胞の生存能を評価した。570nm波長での吸光度を、マイクロプレートリーダー550(Bio−Rad, Hercules, CA)で測定した。これらの実験は3回実施した。
【0196】
7.cDNAマイクロアレイによるDEPDC1/ZNF224の下流遺伝子の同定
UM−UC−3細胞を、DEPDC1に対するsiRNA(si−DEPDC1)、ZNF224に対するsiRNA(si−ZNF224−2)、またはEGFPに対するsiRNA(対照siRNA)によりトランスフェクトした。DEPDC1に対するsiRNAの合成オリゴ二重鎖(Sigma Aldrich)の標的配列は、以下の通りであった:
5’−CCAAAGUUCCGUAGUCUAA−3’(SEQ ID NO:75)、
ZNF224に対するもの(si−ZNF224−2)、またはEGFPに対するものは、「RNA干渉アッセイ」セクションに記載された通り。
【0197】
トランスフェクションの12時間後および24時間後に各試料から全RNAを抽出し、Cy5(si−DEPDC1およびsi−ZNF224−2によりトランスフェクトされた細胞用)またはCy3(si−EGFPによりトランスフェクトされた細胞用)により標識し、以前に記載されたような36468種のcDNAまたはESTを含有しているcDNAマイクロアレイスライドへのコハイブリダイゼーションに供した(Takata R, et al., Clin Cancer Res 2005 11:2625-36)。データの標準化後、Cy5色素およびCy3色素がカットオフ値より低いシグナル強度を与えた場合、その遺伝子はさらなる分析から排除した。その他の遺伝子について、各試料の生データを使用してCy5/Cy3比を計算した。DEPDC1およびZNF224の両方の発現の低下に従い、強度が有意に増加した遺伝子を、最初に選択した。SYBRグリーン色素(Rhoche)およびcDNAマイクロアレイ実験のために使用された、UM−UC−3細胞に由来する増幅された同一のRNAを使用した定量的RT−PCR分析により、DEPDC1およびZNF224の両方の候補下流遺伝子のバリデーションを、以下のような各遺伝子に特異的なプライマーを用いて実施した;
DLG1、
5’−ATGGTGAGAGCGATGAGGTC−3’(SEQ ID NO:15)および
5’− AATCGGGCTCGTTCTTTCTT−3’(SEQ ID NO:16);
A20、
5’−TGCACACTGTGTTTCATCGAG−3’(SEQ ID NO:76)および
5’−ACGCTGTGGGACTGACTTTC−3’(SEQ ID NO:77 );
β2−MG(対照)、
5’−TCTCTCTTTCTGGCCTGGAG−3’(SEQ ID NO:17)および
5’−AATGTCGGATGGATGAAACC−3’(SEQ ID NO:18)。
【0198】
全ての実験を2回実施した。次いで、各試料についての標的遺伝子の計算された量を、各試料に対応するβ2−ミクログロブリン(β2−MG)の計算された量の平均値で割り、各試料について標的遺伝子の相対発現を得た。
【0199】
8.DLG1についてのルシフェラーゼレポーターアッセイ
DLG1プロモーターの断片(−1211〜+19位)を、以下のプライマー:
5’−GATCACGCGTCACCGTTTGACCCTTCTATC−3’(SEQ ID NO:19)(下線はMluI部位を示す)および
5’−GATCCTCGAGCAGCAGTGCCGTTTCCAACT−3’(SEQ ID NO:20)(下線はXhoI部位を示す)
を使用したPCRにより増幅し、pGL3−エンハンサールシフェラーゼレポーターベクター(Promega, Madison, WI)へクローニングした。FuGENE6試薬(Roche)を使用して、1.6μgのpRL−TKプロモーターベクターと組み合わせた、1.6μgのpGL3−エンハンサー−DLG1ベクターまたはモックベクターのいずれかにより、Cos7細胞をコトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞をPBS(−)で濯ぎ、passive lysis buffer(Promega)により溶解した。特異的な基質に関するホタルルシフェラーゼ活性およびウミシイタケルシフェラーゼ活性の連続的な測定に依るDual Luciferaseアッセイシステム(Promega)において、直接、溶解物を使用した。ルシフェラーゼ活性の定量化および相対比の計算は、Dual−Lightキット(Tropix, Bedford, MA)を用いて手動で実施した。
【0200】
9.A20についてのルシフェラーゼレポーターアッセイ
A20プロモーターの断片(−330〜−35位)を、以下のプライマー:
5’−GATCACGCGTAGCCCGACCCAGAGAGTCACGT−3’(SEQ ID NO:78)(下線はMluI部位を示す)および
5’−GATCCTCGAGCTTTCGCAAAGTCCCAAGTC−3’(SEQ ID NO:79)(下線はXhoI部位を示す)
を使用したPCRにより増幅し、pGL3−エンハンサールシフェラーゼレポーターベクター(Promega, Madison, WI)へクローニングした。ヒト皮膚線維芽細胞Nucleofectorキット(Lonza, NJ, USA)を使用して、0.5μgのpRL−TK−プロモーターベクターと組み合わせた、1μgのpGL3−エンハンサー−A20プロモーターまたはモックベクターのいずれかにより、NHDF細胞をコトランスフェクトした。24時間後、Dual−Luciferaseレポーターアッセイキット(東洋インキ、東京、日本)を使用して、ルシフェラーゼ活性を測定した。ウミシイタケ発現プラスミドを、トランスフェクション効率を標準化するために使用した。ルシフェラーゼ活性の定量化および相対比の計算は、ルミノメーター(EG&G Berthold, Bad Wildbad, Germany)を用いて自動的に実施した。これらの実験は3回実施した。
【0201】
10.DEPDC1におけるZNF224結合領域の同定
膀胱癌細胞におけるDEPDC1とZNF224との間の相互作用を確認し、DEPDC1におけるZNF224結合領域を同定するために、免疫沈降実験を以下のように実施した。まず、免疫沈降のために抗DEPDC1ポリクローナル抗体を使用し、イムノブロッティングのために抗FLAGM2抗体(Amersham)を使用した免疫沈降実験により、内在性DEPDC1と外来ZNF224との間の相互作用を確認した。さらにDEPDC1におけるZNF224結合領域を決定するために、DEPDC1の6種の部分構築物(DEPDC11−147、DEPDC1141−300、DEPDC1177−597、DEPDC1300−669、DEPDC1587−740、およびDEPDC1654−811)を、COOH末端HAタグ付きpCAGGSベクターの適切な部位へクローニングした。各クローンのヌクレオチド配列は、各プライマーを使用して、ABI Prism 3700 DNAシーケンサー(Applied Biosystems, Foster City, CA)により決定した。これらの6種のDEPDC1の部分セグメントのうちの1つを発現する各プラスミドによりトランスフェクトされたCos7細胞株からの細胞抽出物を、プロテイナーゼ阻害剤の存在下で、2mLの最終量の免疫沈降緩衝液(0.5%NP40、50mmol/Lトリス−HCl、150mmol/L NaCl)中で100μlのプロテインG−アガロースビーズと共に4℃で1時間インキュベートすることにより予め浄化した。1,000rpm、4℃での5分間の遠心分離の後、上清を抗HAラットと共に4℃で1時間インキュベートした。5,000rpmでの2分間の遠心分離により各試料からビーズを収集し、免疫沈降緩衝液1mLにより6回洗浄した後、洗浄したビーズを50uLのレムリ試料緩衝液に再懸濁し、3分間煮沸した後、タンパク質を10%SDS−PAGEゲル上で分離した。それぞれ、抗HAラット抗体および抗FLAGM2モノクローナル抗体(Sigma−Aldrich Co., St. Louis, MO)を使用して、イムノブロットを行った。
【0202】
11.合成ドミナントネガティブペプチド
DEPDC1における2つの最小ZNF224結合ドメイン(コドン148〜176(第1領域)およびコドン598〜653(第2領域);図4Aを参照されたい)に由来する18アミノ酸配列を、そのNH末端で、膜伝達11ポリアルギニン配列(11R)に共有結合的に連結した。コドン148〜176の領域(第1領域):
DEPDC1148−166
RRRRRRRRRRR−GGG−PKRHGLHLSQENGEKIKHE(SEQ ID NO:21);
DEPDC1159−176
RRRRRRRRRRR−GGG−NGEKIKHEIINEDQENAI(SEQ ID NO:22)、
およびコドン598〜653の領域(第2領域):
DEPDC1598−615
RRRRRRRRRRR−GGG−AIDALQLCCLLLPPPNRR(SEQ ID NO:23);
DEPDC1611−628
RRRRRRRRRRR−GGG−PPNRRKLQLLMRMISRMS(SEQ ID NO:24);
DEPDC1624−641
RRRRRRRRRRR−GGG−ISRMSQNVDMPKLHDAMG(SEQ ID NO:25);
DEPDC1636−653
RRRRRRRRRRR−GGG−LHDAMGTRSLMIHTFSRC(SEQ ID NO:26)
をカバーする4種のドミナントネガティブペプチドを合成した。最も有効なDEPDC1611−639ペプチドに由来するスクランブルペプチドを対照として合成した:
スクランブル611−628
RRRRRRRRRRR−GGG−LRMSRLSPNMIMQRPKRL (SEQ ID NO:27)。
ペプチドを調製用逆相高速液体クロマトグラフィにより精製し、>90%の純度とした。
【0203】
これらのポリアルギニン(11R)連結ペプチドの、DEPDC1−ZNF224複合体形成の阻害に対する効果を調査するために、これらをDEPDC1およびZNF224構築物と共にCOS7細胞へコトランスフェクトした。トランスフェクションの6時間後、細胞を、24時間、3μMの濃度で4種のペプチドの各々を含有している培地でインキュベートした。「DEPDC1タンパク質におけるZNF224結合領域の同定」セクションに記載されたような方法に従い、免疫沈降を実施した。
【0204】
UM−UC−3細胞株および正常ヒト皮膚線維芽細胞由来NHDF−Ad細胞株を、5日間、0、1、2、または3μmol/Lの濃度の11Rペプチドと共にインキュベートした。各ペプチドを適切な濃度で24時間毎に添加し、処理後、毎日、細胞の生存能をMTTアッセイにより評価した。
【0205】
12.ウェスタンブロット分析
膀胱癌(UM−UC−3)および正常ヒト細胞株(HEK293、HMEC、SAEC、およびNHDF−Ad)における内在性DEPDC1タンパク質および内在性ZNF224タンパク質の発現を検出するために、これらの細胞の各々を、0.1%のプロテアーゼインヒビターカクテルIII(Calbiochem, San Diego, CA)を含む溶解緩衝液(50mMトリス−HCL(pH8.0)/150mM NaCL/0.5%NP−40)中でインキュベートした。全タンパク質の量をタンパク質アッセイキット(Bio−Rad, Hercules, CA)により推定し、次いで、タンパク質をSDS試料緩衝液と混合し、3分間煮沸した後、10%SDS−PAGEゲルへ負荷した。電気泳動後、タンパク質を、ニトロセルロース膜(GE Healthcare, Buckinghamshire, United Kingdom)にブロットした。4%のBlockAce(大日本製薬、大阪、日本)によるブロッキングの後、内在性DEPDC1タンパク質または内在性ZEF224タンパク質の検出のため、それぞれ、抗DEP11DC1ポリクローナル抗体または抗ZNF224ポリクローナル抗体(Abcam)と共に膜をインキュベートした。最後に、膜をHRP結合型二次抗体と共にインキュベートし、バンドをECL検出試薬(GE Healthcare)により可視化した。βアクチン(ACTB)を負荷対照として使用した。細胞透過性ペプチド(下記参照)による処理後の内在性A20タンパク質および内在性IkB−αタンパク質の発現を検出するためには、抗A20(TNFAIP3)モノクローナル抗体(50倍希釈)(59A426;Abcam)および抗IkBαモノクローナル抗体(100倍希釈)(C−15;BD Biosciences, San Jose, CA, USA)を使用して、実験を実施した。
【0206】
13.細胞周期分析
ノコダゾールへの6時間の曝露およびドミナントネガティブペプチドDEPDC1611−628による16時間の処理の後、細胞を分析した。細胞をトリプシン処理により採集し、PBSで洗浄し、固定し、4℃で保存した後、DNA分析を行った。遠心分離によるエタノールの除去の後、細胞を30分間37℃でRNaseと共にインキュベートした。次いで、遠心分離の後、細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI)溶液により1時間染色した。染色された核を、Becton Dickinson FACScanフローサイトメーターを使用して、DNA−PI蛍光について分析した。得られたDNA分布を、細胞周期のsub−G0期、G1期、S期、およびG2−M期の細胞の割合について、Modfit(Verity Software House, Topsham, ME)により分析した。
【0207】
14.細胞増殖アッセイ
細胞増殖に対するDEPDC1およびZNF224の効果を調査するために、UM−UC−3細胞(1×10細胞/10cmディッシュ)を、FuGENE6トランスフェクション試薬(Roche)を使用して、各8μgのpCAGGSn−DEPDC1−HAまたはpCAGGSn−ZNF224−FLAGまたはその両方によりトランスフェクトした。24時間後、1×10細胞/ディッシュの密度で10cmディッシュプレートに細胞を再び播き、さらに5日間、1mg/mLネオマイシン(ジェネテシン、Invitrogen, Carlsbad,CA,USA)を含有しているEMEMで培養した。ネオマイシンによる処理の7日後、製造業者の推奨に従ってCell Counting Kit−8(和光純薬工業)を用いて、MTTアッセイにより、UM−UC−3細胞の生存能を評価した。570nmの波長での吸光度をマイクロプレートリーダー550(Bio−Rad)により測定した。これらの実験は2回実施した。
【0208】
15.膀胱癌細胞増殖の阻害
UM−UC−3細胞およびNHDF細胞の細胞増殖に対するDEPDC1611−628ペプチドの効果を調査するために、それぞれ、0、1、2、または3μMの濃度のDEPDC1611−628またはスクランブルペプチドと共に、細胞を5日間インキュベートした。各ペプチドを適切な濃度で24時間毎に添加し、細胞の生存能を、毎日、MTTアッセイにより評価した。570nmの波長での吸光度を、マイクロプレートリーダー550(Bio−Rad)により測定した。これらの実験は3回実施した。
【0209】
16.アポトーシスの分析
UM−UC−3細胞を、DEPDC1611−628またはスクランブルペプチドによる処理の後、12時間インキュベートした。TUNELアッセイのため、供給元の推奨に従いアポトーシスin situ検出キット(和光純薬工業、大阪、日本)を使用して、細胞を評価した。アポトーシス細胞をTCS SP2 AOBS顕微鏡検査により観察した。各実験についてランダムに200個の細胞を観察することにより、TUNEL陽性を決定した。アッセイは3回独立に実施した。
【0210】
17.クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイ
HEK293細胞を、15cmディッシュ(Becton Dickinson, NJ, USA)1枚当たり4×10細胞で播いた。24時間後、FuGENE6トランスフェクション試薬(Roche)を使用して、HAタグ付きDEPDC1およびFLAGタグ付きZNF224構築物により、細胞を、一過性にコトランスフェクトした。24時間後、細胞を、37℃で10分間、1%ホルムアルデヒドで架橋させた。本明細書においては抗HAタグ抗体を使用した以外は、製造業者により推奨された通りに、クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイキット(Upstate, Charlottesvile, VA)を使用して、固定されたクロマチン試料を免疫沈降に供した。回収されたDNAを、A20プロモーター領域(−330〜−35位)をカバーする以下のプライマーを使用して分析した:
5’−AGCCCGACCCAGAGAGTCACGT−3’(SEQ ID NO:80)および
5’−CTTTCGCAAAGTCCCAAGTC−3’(SEQ ID NO:81)。
【0211】
18.統計分析
統計的有意性は、Statview 5.0ソフトウェア(SAS Institute, Cary, NC)を使用して、スチューデントt検定により決定した。P<0.05の差を、統計的に有意であると見なした。
【0212】
II.結果
1.DEPDC1と相互作用する分子の同定
DEPDC1は膀胱癌細胞の生存または増殖に関与していることが、siRNA実験により、以前に証明された(Kanehira M, et al., Oncogene 2007 26:6448-55)。しかしながら、その正確な分子的機序は依然として未知であった。膀胱癌細胞におけるその生物学的機能を解明するために、DEPDC1と相互作用するタンパク質を、免疫沈降および質量分析により検索した。UM−UC−3細胞からの細胞抽出物を、抗DEPDC1抗体またはウサギIgG(陰性対照)を用いて免疫沈降させた。タンパク質複合体をSDS−PAGEゲル上で銀染色した。抗DEPDC1抗体による免疫沈降物には見られたが、ウサギIgGによるものには見られなかった、およそ93kDaのタンパク質を抽出し、そのペプチド配列をMALDI−TOF分析により決定した(データ非提示)。このアプローチにより、DEPDC1と相互作用する候補としての、このタンパク質が、クルッペル関連ボックス含有ジンクフィンガータンパク質であるzinc finger protein 224(ZNF224)(Medugno L, et al., FEBS Lett. 2003 534: 93-100)であることが明確になった。臨床膀胱癌例でのZNF224の発現レベルを、半定量的RT−PCR分析によりまず調査した;ZNF224およびDEPDC1のコアップレギュレーションが、膀胱癌例10例あたり9例で観察された(図1A)。この相互作用を実証するために、FLAGタグ付きZNF224(ZNF224−FLAG)を発現するよう設計されたプラスミドを構築し、免疫共沈降実験を実施した(材料および方法を参照されたい)。この構築物プラスミドをUM−UC−3膀胱癌細胞へトランスフェクトし、タンパク質を抗FLAG抗体により免疫沈降させた。ウサギ抗DEPDC1抗体による沈降物のイムノブロッティングは、内在性DEPDC1がZNF224−FLAGタンパク質と共沈降することを明らかにした(図1B)。さらに、ZNF224−FLAG構築物をUM−UC−3細胞へトランスフェクトした時の、DEPDC1およびZNF224の細胞内局在を調査した。図1Cは、内在性DEPDC1が細胞の核において外来ZNF224と共局在したことを明らかにしており、このことは、膀胱癌細胞の核におけるそれらの相互作用を意味している。
【0213】
2.膀胱癌細胞におけるZNF224特異的siRNAの増殖阻害効果
さらに、DEPDC1と相互作用するパートナーとしてのZNF224の、膀胱癌発生における生物学的意義を調査するために、ZNF224特異的siRNA発現ベクターを構築し、UM−UC−3膀胱癌細胞における各構築物のノックダウン効果を調査した;ZNF224の過剰発現が観察された。半定量的RT−PCR分析は、ZNF224特異的siRNA(si−ZNF224−1およびsi−ZNF224−2)が、対照としてのsi−EGFPと比較して、ZNF224転写物の量を有意に抑制することを示した(図2左上)。次いで、MTTアッセイおよびコロニー形成アッセイ(図2左下)を実施した。ノックダウン効果の結果と一致して、si−ZNF224−1およびsi−ZNF224−2の導入が、UM−UC−3細胞の増殖の顕著な抑制をもたらすことが発見された(si−ZNF224−1、P=0.000019、または、si−ZNF224−2、P=0.00013、スチューデントt検定)(図2右パネル)。そのような結果は、ZNF224が、膀胱癌細胞の増殖において重大な役割を有する可能性が高いことを明白に示している。
【0214】
3.DEPDC1およびZNF224に共通の下流遺伝子の同定
ZNF224は、調節性クルッペル様ジンクフィンガータンパク質ファミリーに属することが報告されており、そのファミリーのメンバーは転写リプレッサーとして機能することが公知である(Medugno L, et al., FEBS Lett 2003 534:93-100)。ZNF224は、ウィルムス腫瘍抑制因子(WT1)との相互作用を通して、WT1タンパク質により媒介される転写活性化を阻害することが、さらに報告されており(Lee TH, et al., J Biol Chem 2002 277:44826-37)、このことは、ZNF224が転写リプレッサーであると考えられることを示している。したがって、膀胱癌細胞におけるDEPDC1/ZNF224複合体により調節される下流遺伝子を同定すべく努力した。siRNA−DEPDC1、siRNA−ZNF224、またはsiRNA−EGFP(対照siRNA)を、DEPDC1およびZNF224が高発現されているUM−UC−3膀胱癌細胞へトランスフェクトし、36468種の遺伝子からなるcDNAマイクロアレイ分析を使用して、様々な時点で遺伝子発現の変化をモニタリングした。さらに、臨床膀胱癌試料において発現が有意に下方制御されていた遺伝子を、cDNAマイクロアレイデータ(Takata R, et al., Clin Cancer Res 2005 11:2625-36)を通して選択した。DLG1およびA20(TNFAIP3としても公知)を、DEPDC1/ZNF224複合体における候補下流遺伝子として同定した。定量的RT−PCR分析は、si−DEPDC1およびsi−ZNF224によりそれぞれトランスフェクトされたUM−UC−3細胞において、siEGFPによりトランスフェクトされた細胞と比較して、両転写物が時間依存的に増加することを確認した(図3A)。特に、UM−UC−3におけるDEPDC1およびZNF224のコトランスフェクションにより、DLG1発現の抑止が検出された(図3B)。さらに、DEPDC1/ZNF224コトランスフェクションによってのみ、DLG1プロモーターのトランス活性化が阻害されることが、ルシフェラーゼアッセイシステムを使用して認識された(図3C)。これらの結果は、DEPDC1/ZNF224複合体が、腫瘍抑制遺伝子の転写を抑止し得ることを示唆している。
【0215】
4.DEPDC1におけるZNF224結合領域の同定
その後、これらの2つのタンパク質の結合の生物学的重要性、および膀胱癌の治療標的としてのそれらの可能性を調査した。まず、ZNF224との相互作用に必要とされるDEPDC1内のドメインを決定するために、COOH末端にHAタグ配列を有するDEPDC1の6種の部分構築物(DEPDC11−147、DEPDC1141−300、DEPDC1177−597、DEPDC1300−669、DEPDC1587−740、およびDEPDC1654−811;図4A、図9A)のうちの1つと、Flagタグ付きZNF224(ZNF224−Flag)とを、Cos7細胞へコトランスフェクトした。モノクローナル抗HAラット抗体による免疫沈降は、DEPDC1141−300、DEPDC1300−669、およびDEPDC1587−740は、ZNF224と相互作用することができるが、DEPDC11−147、DEPDC1177−597、およびDEPDC1654−811はZNF224と相互作用できないことを示した(図4B、図9B)。これらの所見は、DEPDC1内のNH末端の29アミノ酸ポリペプチド(コドン148〜176)およびCOOH末端の56アミノ酸ポリペプチド(コドン598〜653)が、ZNF224との相互作用において重要な役割を果たすことを示唆している。
【0216】
5.DEPDC1のドミナントネガティブペプチドによる膀胱癌細胞の増殖阻害
上に示されるように、NH末端部分の29アミノ酸ペプチドのDEPDC1148−176、およびCOOH末端部分の56アミノ酸ペプチドのDEPDC1598−653は、ZNF224と相互作用する領域を含有していると推定された。したがって、DEPDC1のZNF224との機能的結合を阻害することができる細胞透過性の生理活性ペプチドを開発するために、膜透過性の11アルギニン残基(11R)がNH末端に付加された、DEPDC1148−176およびDEPDC1598−653におけるZNF224結合ドメインをカバーする、6種の異なる18アミノ酸ポリペプチドを合成した。膀胱癌細胞の増殖または生存に対するこれらポリアルギニンペプチドの阻害効果を試験するために、UM−UC−3細胞株を6種のペプチドの各々により処理した。様々な濃度の6種のペプチドを、培養培地へ処理したところ、MTTアッセイにより測定されるように、11R−DEP611−628ペプチドが、細胞生存能の有意な減少を用量依存的にもたらし(図5A;P<0.001、1.0μM、2.0μM、3.0μMのペプチド処理について、独立t検定による)、11R−DEP598−615ペプチドが、細胞生存能の中程度の抑制を用量依存的に引き起こすことが発見された。
【0217】
COS7細胞において外因的に発現されたDEPDC1−HAとZNF224−Flagとの間の複合体形成を11R−DEP611−628ペプチドが阻害するか否かを調査するために、COS7細胞を、トランスフェクションの6時間後に6種のペプチドの各々により処理した。15時間後、免疫沈降を抗HAタグ抗体により実施し、次いで、ウェスタンブロット分析を抗Flag抗体により実施した。図5Bは、11R−DEP611−628ペプチドは、COS7細胞において外因的に発現されたDEPDC1−HAとZNF224−Flagとの間の複合体形成を阻害し得るが(図5B)、スクランブル611−628ペプチドによる処理はそれを阻害し得ないことを示した(図5E)。J82細胞の細胞生存能の抑制をさらに証明した(図5F)。2つの結合領域内の11R−DEP148−166、11R−DEP159−176、11R−DEP611−628、11R−DEP624−641、および11R−DEP636−653などの他のペプチドによる処理は、阻害をもたらさないが(図5G)、11R−DEP598−615ペプチドによる処理は、図5Aに示されるようなMTTアッセイ結果と一致して、相互作用のわずかな阻害をもたらすことがさらに確認された。11R−DEP611−628ペプチドは、ほぼ検出不可能なレベルのDEPDC1およびZNF224を発現している正常ヒト皮膚線維芽細胞(成人)由来NHDF−Ad細胞の細胞生存能に対しては効果を示さなかった(図5CおよびD、下パネル)。さらに、細胞増殖または細胞形態の変化は、スクランブル611−628ペプチドにより処理された細胞において観察されなかった(図5D)。これらの発明は、伝達可能11R−DEP611−628ペプチドが、DEPDC1とZNF224との機能的な複合体形成を阻害することができ、かつこれらのタンパク質を発現しない正常ヒト細胞に対しては毒性効果を有しないことを示唆している。
【0218】
6.11R−DEP611−628ペプチドによる処理の後のDEPDC1−ZNF224複合体の候補下流遺伝子の抑止
11R−DEP611−628ペプチドによる腫瘍抑制の機序を明らかにするために、DEPDC1−ZNF224複合体の候補下流遺伝子の発現を、定量的RT−PCR分析により調査した。DLG1およびA20の発現は、ペプチドによる処理により増強されるが、スクランブル611−628ペプチドによる処理では増強されないことが示された(図6A、B)。さらに、これらのペプチドにより処理した腫瘍細胞のフローサイトメトリー分析を実施したところ、細胞がG1−S停止を引き起こし、処理の24時間後、G1画分が有意に増加することが発見された(図6B)。
【0219】
7.DEPDC1−ZNF224複合体の発がん活性
DEPDC1−ZNF224複合体の増殖促進効果をさらに調査するため、HAタグ付きDEPDC1、FLAGタグ付きZNF224、またはその両方をUM−UC−3細胞へトランスフェクトし、次いで、MTTアッセイにより、細胞生存能を調査した。抗HA抗体および抗FLAG抗体を使用したウェスタンブロット分析により、外来DEPDC1−HAタンパク質および外来ZNF224−FLAGタンパク質の発現を確認した(図8下パネル)。二重にトランスフェクトしたUM−UC−3細胞は、モックプラスミドによりトランスフェクトされたものと比較して、DEPDC1単独またはZNF224単独によりトランスフェクトされたものよりはるかに高い細胞増殖を示した(P<0.05、独立t検定;図8上パネル)。総合すると、本発明者らの結果は、DEPDC1−ZNF224複合体が、膀胱癌発生において重大な役割を果たす可能性が高いことを意味している。
【0220】
8.R11−DEP611−628ペプチドの増殖阻害効果
DEPDC1とZNF224との間の相互作用の阻害に対する細胞透過性ペプチドのドミナントネガティブ効果の可能性を調査するために、本発明者らは、ZNF224結合ドメインであるDEPDC1598−653をカバーすることができ、NH末端に膜透過性の11アルギニン残基(11R)を有する、4種の18アミノ酸ポリペプチドを合成した。本発明者らは、タンパク質間相互作用および膀胱癌細胞増殖に対するこれらのペプチドの効果を調査した。まず、DEPDC1−HAおよびZNF224−FLAG構築物をCOS7細胞へコトランスフェクトし、次いで、トランスフェクションの6時間後に4種のペプチドの各々により細胞を処理した。24時間後、本発明者らは、抗HAタグ抗体による免疫沈降実験を実施し、その後、抗FLAG抗体によるウェスタンブロット分析を実施した。11R−DEP611−628による処理は、COS7細胞におけるDEPDC1−HAとZNF224−FLAGとの複合体形成を明白に阻害し、11R−DEP598−615による処理は中程度の効果を示したが、その他のペプチドは複合体形成に対する効果を示さないことが証明された(図7A)。さらに、11R−DEP611−628のスクランブル配列ペプチド(スクランブル)による効果が存在しないことを確認することにより、複合体形成の阻害に関する11R−DEP611−628の特異性を確認した(図5B)。
【0221】
さらに、11R−DEP611−628ペプチドの添加は、MTTアッセイにより測定されるように、UM−UC−3膀胱癌細胞の細胞生存能の有意な減少を用量依存的に引き起こしたが(図5D;上パネル;P<0.05、2.0および3.0μMのペプチド、独立t検定による)、スクランブルペプチドは効果を示さなかった。本発明者らは、DEPDC1およびZNF224が共に上方制御(co−upregulated)されている別の膀胱癌細胞株J82においても類似した効果を観察した(図5F)。対照的に、11R−DEP611−628ペプチドは、DEPDC1およびZNF224の発現がほぼ検出不可能であった(図5C)正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)細胞の細胞生存能に対しては有意な効果を示さなかった(図5D;下パネル)。
【0222】
11R−DEP611−628ペプチドによる増殖抑制の機序をさらに明確にするために、本発明者らはこのペプチドにより処理されたがん細胞を使用して、TUNELアッセイを実施した(図7B)。結果は、このペプチドによる処理が、スクランブルペプチドおよび対照としてのPBSによる処理と比較して、TUNEL陽性細胞の有意な増加をもたらすことを示した(下パネル;P<0.000001、独立t検定)。さらに、フローサイトメトリー分析により、11R−DEP611−628ペプチドがsub−G1集団の有意な増加を示すことが確認され(図7C)、このことは、11R−DEP611−628ペプチドが、膀胱癌細胞のアポトーシス細胞死を引き起こすことを意味している。総合すると、これらのデータは、11R−DEP611−628ペプチドが、DEPDC1とZNF224との機能的な複合体形成を特異的に阻害することができ、有意な増殖抑制をもたらしたが、これらのタンパク質を発現しない正常ヒト細胞に対しては毒性効果を示さなかったことを示唆している。
【0223】
9.DEPDC1−ZNF224複合体により調節される遺伝子の同定
DEPDC1−ZNF224複合体による、可能性のあるプロモーター特異的なA20転写の抑止を調査するために、まず、A20遺伝子のプロモーター領域を、コンピュータ予測プログラムWWW Promoter Scan(www−bimas.cit.nih.gov/molbio/proscan/)により検索した。次いで、ルシフェラーゼレポーター遺伝子と融合したA20遺伝子のプロモーター領域に相当するおよそ300bpの断片を含有しているレポータープラスミドと、DEPDC1もしくはZNF224を発現するよう設計された2つのプラスミドクローンのいずれかまたは両クローンとを、UM−UC−3細胞へコトランスフェクトした。A20レポータープラスミドを使用したルシフェラーゼレポーターアッセイにおいて、DEPDC1−HAおよびZNF224−FLAG構築物の両方によりコトランスフェクトされたNHDF細胞は、DEPDC1単独、ZNF224単独、またはモックプラスミドによりトランスフェクトされたものと比較して、ルシフェラーゼレポーター活性の有意な低下を示した(図10A)。
【0224】
DEPDC1−ZNF224複合体がA20プロモーター領域に結合し得るか否かをさらに調査するために、本発明者らは、DEPDC1−HAおよびZNF224−FLAG構築物の両方によりトランスフェクトされたHEK293細胞から抽出された細胞溶解物を使用して、クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイを実施した。A20の296bpのゲノム断片(−330〜−35位)が、抗HA抗体による免疫沈降(IP)産物中のDEPDC1−ZNF224−DNA複合体に特異的に検出され、このことから、DEPDC1ではなくZNF224が直接A20遺伝子プロモーター領域に結合することが示唆された(図10B)。総合すると、本発明者らの所見は、DEPDC1−ZNF224複合体が転写リプレッサーとして機能し、膀胱癌細胞におけるA20遺伝子のトランス活性化を抑止し得ることを強く示唆している。
【0225】
10.DEPDC1−ZNF224により媒介される抗アポトーシスの11R−DEP611−628ペプチドによる阻害
A20は、最初、腫瘍壊死因子α(TNFα)の刺激後に急速に誘導され、NF−κB古典的経路の負の調節因子として機能する細胞質ジンクフィンガータンパク質として同定された(Krikos A, Laherty CD, Dixit VM. Krikos A, Laherty CD, Dixit VM. J Biol Chem. 1992;267:17971-6.、Beyaert R, Heyninck K, Van Huffel S, Biochem Pharmacol. 2000;60:1143-51)。したがって、本発明者らは、NF−κBシグナル伝達経路におけるA20の効果に焦点を当てた。ウェスタンブロット分析は、DEPDC1−ZNF224複合体形成を阻害する11R−DEP611−628ペプチドによる処理の6時間後に、A20の発現が上昇することを示した(図11A;最初のパネル)。
【0226】
A20は、NF−κBの阻害剤であるIκBαのリン酸化を阻害し、その後、そのユビキチン化およびプロテオソーム分解を阻止することが示された(Wertz IE, O'Rourke KM, Zhou H, et al. Nature. 2004 ;430:694-9、Boone DL, Turer EE, Lee EG, et al., Nat Immunol. 2004;5:1052-60.、Heyninck K, Beyaert R. Trends Biochem Sci. 2005;30:1-4.)。したがって、本発明者らは、11R−DEP611−628ペプチドによる処理によるIκBタンパク質レベルに対する効果を調査し、11R−DEP611−628ペプチドによる処理の12時間後にIκBαタンパク質レベルが上昇するが(図11A;2番目のパネル)、mRNAレベルは不変であることを見出した(図11A、3番目のパネル)。さらに、11R−DEP611−628ペプチドがNF−κB(p65)タンパク質の核染色を明白に減ずるが(図11B;左パネル、白矢印)、スクランブルペプチドによる処理は効果を示さないことが確認され(図11B、左パネル、黄矢印;右パネル、P<0.01、独立t検定)、このことは、NF−κB(p65)タンパク質の核輸送の11R−DEP611−628ペプチドによる阻害を意味している。総合すると、これらの結果は、11R−DEP611−628ペプチドが、DEPDC1−ZNF224複合体形成を阻害し、その下流遺伝子A20の転写を活性化し、NF−κB経路の不活化を通してアポトーシス誘導をもたらしたことを強く示唆している。
【0227】
III.考察
がん治療のための分子標的薬の開発における著しい進歩が、過去20年間に達成された。しかしながら、現在利用可能な治療に対して良好な応答を示す患者の割合は依然として非常に限定されており、患者の一部は、利益なしに重篤な有害反応に苦しんでいる(Ardavanis A, et al., Br J Cancer 2005 92:645-50)。したがって、本発明は、現在の療法よりも特異的かつ効率的な抗がん効果を有し、かつ有害効果のリスクが最小限である低分子化合物を開発するという目標に向けて、治療標的およびその機能的に関連するパートナーを同定するための有効なスクリーニングシステムを確立する。DEPDC1(DEP domain containing 1)は、膀胱癌細胞において高度かつ特異的にトランス活性化されることが以前に報告されている。さらに、DEPDC1発現は、精巣以外の調査された24種の正常ヒト組織のいずれにおいてもほぼ検出不可能であるので、DEPDC1は、薬物標的としての可能性を有する(Kanehira M, et al., Oncogene 2007 26:6448-55)。DEPDC1−ZNF224複合体は、膀胱癌発生において重大な役割を果たす可能性が高い。DEPDC1は、膀胱癌において過剰発現される遺伝子の遺伝子発現プロファイル検索を通して以前に同定されている。RT−PCR分析は、膀胱癌における増加したDEPDC1発現を検出した。また、その相互作用タンパク質ZNF224が、膀胱癌における増加した発現を有するものとして検出された。
【0228】
さらに、免疫細胞化学的分析は、主として膀胱癌細胞の核における、DEPDC1およびZNF224の共局在を明らかにした(図1C)。さらに、DEPDC1/ZNF224の過剰発現は、膀胱癌細胞株における増殖促進効果を示した(図3B上)。さらに、siRNAによる内在性ZNF224のノックダウンは、膀胱癌細胞株の減少した増殖およびDEPDC1ノックダウン効果を引き起こすことが示された(図2)。これらの結果は、膀胱癌発生における、ZNF224との相互作用を通した、DEPDC1の重要な役割を示唆する。
【0229】
クルッペル様ジンクフィンガータンパク質のメンバーである同定されたZNF224は、N末端にクルッペル関連ボックス(KRAB)ドメインを含有し、C末端に19個のCys2−His2ジンクフィンガードメインを含有している(Medugno L, Costanzo P, Lupo A, et al. FEBS Lett 2003;534:93-100、Medugno L, Florio F, De Cegli R, et al. Gene. 2005;359:35-43)。
【0230】
蓄積されつつある証拠は、KRABジンクフィンガータンパク質ファミリーが標的遺伝子の転写抑止に関連していること、およびKRABドメインが抑止システムのメディエーターとして機能することを示している(Margolin JF, Friedman JR, Meyer WK, Vissing H, Thiesen HJ, Rauscher FJ 3rd. Proc Natl Acad Sci USA 1994;91:4509-13;Friedman JR, Fredericks WJ, Jensen DE, et al. Genes Dev 1996;10:2067-78)。ZNF224も、特異的な下流遺伝子のプロモーター領域に特異的に結合してそれらの転写を抑止するリプレッサータンパク質として機能することが報告されている(Lee, TH, Lwu S, Kim J, Pelletier J. J Biol Chem 2002;277:44826-37;Medugno L, Costanzo P, Lupo A, et al. FEBS Lett 2003;534:93-100;Medugno L, Florio F, De Cegli R, et al. Gene. 2005;359:35-43)。
【0231】
本発明者らは、本明細書において、ZNF224との相互作用を通したDEPDC1により媒介される転写抑止の可能性を示唆した。DEPDC1−ZNF224複合体は、NF−κBシグナル伝達経路の負の調節因子として機能することが公知である(Krikos A, Laherty CD, Dixit VM. Krikos A, Laherty CD, Dixit VM. J Biol Chem. 1992;267:17971-6;Beyaert R, Heyninck K, Van Huffel S. Biochem Pharmacol. 2000;60:1143-51)A20の転写を抑止する傾向があった。A20遺伝子の可能性のあるプロモーターセグメントを使用したレポーター遺伝子アッセイおよびChIP分析は、DEPDC1−ZNF224複合体が、A20のプロモーター領域との相互作用を通して、転写抑制(transrepressing)活性を有することを示唆した。興味深いことに、A20は、NF−κB抗アポトーシス経路において負の調節因子として働くことが報告されている(He KL, Ting AT. Mol Cell Biol 2002;22:6034-45;Krikos A, Laherty CD, Dixit VM. Krikos A, Laherty CD, Dixit VM. J Biol Chem. 1992;267:17971-6)。
【0232】
NF−κBは、抗アポトーシスタンパク質を誘導し、膀胱癌を含む様々なヒト腫瘍において構成的に活性化されている転写因子であることが公知である(Horiguchi Y, Kuroda K, Nakashima J, Murai M, Umezawa K. Expert Rev Anticancer ther. 2003;3:793-8;Umezawa K. Cancer Sci 2006; 97:990-5;Yamamoto Y, Gaynor RB. J Clin Invest 2001;107:135-42)。さらに、A20タンパク質の腫瘍抑制機能の喪失により引き起こされるNF−κBシグナル伝達の調節不全が、B細胞リンパ腫の一部の病原性に関与していることが最近報告され、そのことは、A20が腫瘍抑制機能を有することを意味している(Compagno M, Lim WK, Grunn A, et al. Nature. 2009;459:717-21;Kato M, Sanada M, Kato I, et al. Nature. 2009 ;459:712-6)。
【0233】
本明細書に提示されたこれらのデータは、DEPDC1−ZNF224複合体がA20遺伝子の転写を抑止し、NF−κBタンパク質の核への輸送をもたらし、膀胱癌細胞のアポトーシスの抑制をもたらすことを示している(図12;上パネル)。さらに、本発明者らは、ZNF224タンパク質に対する結合ドメインに相当し、DEPDC1のZNF224との機能的相互作用を阻害することができた(図12;下パネル)、DEPDC1由来の18アミノ酸ペプチドを保持している細胞透過性ペプチド(11R−DEP611−628ペプチド)を設計した。11R−DEP611−628ペプチドによるそれらの相互作用の阻止は、膀胱癌細胞のアポトーシス細胞死の誘導を明白にもたらした。
【0234】
臨床的な観点から見ると、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)の膀胱内注入療法が膀胱の上皮内癌(CIS)のための標準的な治療になっているので、このペプチド阻害剤は膀胱を有する患者のために利用されることも期待される。結論として、本発明者らは、複合体形成を特異的に阻害し、増殖抑制効果をもたらすペプチド阻害剤を成功裡に作製した。
【0235】
産業上の利用可能性
本発明は、DEPDC1とZNF224との間の結合を同定し、がんの発生におけるこの結合の重要性を証明する。
【0236】
特に、ペプチド間の結合を阻止する剤は、抗がん剤、特に、膀胱癌の治療のための抗がん剤としての治療的有用性を有すると考えられる。
【0237】
その目的のため、本発明は、これらのペプチドの結合を阻害するポリペプチドを提供し、膀胱癌などのがんの治療または予防において有用なポリペプチドを同定する。本発明のポリペプチドは、好ましくは、PPNRRKLQLLMRMISRMS/SEQ ID NO:28を含有しているアミノ酸配列から構成される。本発明のポリペプチドは、膀胱癌などのがん細胞の増殖を阻害するために投与され得る。
【0238】
さらに、ZNF224遺伝子を特異的に標的とする低分子干渉RNA(siRNA)により、細胞増殖を抑制することができる。このように、本明細書に記述された新規なsiRNAは、抗がん医薬の開発のための有用な標的である。
【0239】
膀胱癌は、有効な治療法が未だ提供されていない重要ながんである。したがって、本発明は、膀胱癌を治療/または予防するための有効な方法も提供するという点で重要である。
【0240】
詳細にかつ具体的な態様を参照しながら本発明を説明したが、上記の説明は本質的に例示的かつ説明的なものであって、本発明およびその好ましい態様を例示するためのものであることを理解されたい。ルーチンな実験を通して、本発明の本旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正がなされ得ることを、当業者は容易に認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはそれと機能的に等価なポリペプチドであって、SEQ ID NO:45または47からなるペプチドの生物学的機能を欠くポリペプチド。
【請求項2】
生物学的機能が細胞増殖活性である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
8〜30個の残基からなる、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
細胞膜透過性物質により修飾されている、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
以下の一般式を有する、請求項4に記載のポリペプチド:
[R]−[D]
式中、[R]および[D]は直接連結されていてもよいしまたはリンカーにより間接的に連結されていてもよく、[R]は細胞膜透過性物質を表し;かつ[D]は請求項1に記載のポリペプチドのアミノ酸配列を表す。
【請求項6】
細胞膜透過性物質が以下のものからなる群より選択される、請求項5に記載のポリペプチド:
ポリアルギニン/RRRRRRRRRRR (SEQ ID NO:43);
Tat/RKKRRQRRR (SEQ ID NO:29);
ペネトラチン(Penetratin)/RQIKIWFQNRRMKWKK (SEQ ID NO:30);
ブフォリンII/TRSSRAGLQFPVGRVHRLLRK (SEQ ID NO:31);
トランスポータン/GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL (SEQ ID NO:32);
MAP(model amphipathic peptide)/KLALKLALKALKAALKLA (SEQ ID NO:33);
K−FGF/AAVALLPAVLLALLAP (SEQ ID NO:34);
Ku70/VPMLK (SEQ ID NO:35);
Ku70/PMLKE (SEQ ID NO:36);
プリオン/MANLGYWLLALFVTMWTDVGLCKKRPKP (SEQ ID NO:37);
pVEC/LLIILRRRIRKQAHAHSK (SEQ ID NO:38);
Pep−1/KETWWETWWTEWSQPKKKRKV (SEQ ID NO:39);
SynB1/RGGRLSYSRRRFSTSTGR (SEQ ID NO:40);
Pep−7/SDLWEMMMVSLACQY (SEQ ID NO:41);および
HN−1/TSPLNIHNGQKL (SEQ ID NO:42)。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリペプチドを活性成分として含む、がんの治療および予防のいずれかまたは両方のための剤。
【請求項8】
がんが膀胱癌である、請求項7に記載の剤。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリペプチドを、その必要のある対象に投与する工程を含む、対象におけるがんを治療または予防する方法。
【請求項10】
がんが膀胱癌である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
DEPDC1に関連したがんを治療もしくは予防するか、またはDEPDC1とZNF224との間の結合を阻害するための候補化合物をスクリーニングする方法であって、以下を含む方法:
(a)試験化合物の存在下で、DEPDC1ポリペプチドまたはその機能的等価物を、ZNF224ポリペプチドまたはその機能的等価物と接触させる工程;
(b)ポリペプチド間の結合を検出する工程;および
(c)これらのポリペプチド間の結合を阻害する試験化合物を選択する工程。
【請求項12】
DEPDC1ポリペプチドの機能的等価物がZNF224結合ドメインのアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
DEPDC1ポリペプチドの機能的等価物がSEQ ID NO:28、54、および55のアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ZNF224ポリペプチドの機能的等価物がDEPDC1結合ドメインのアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
DEPDC1に関連したがんを治療もしくは予防するか、またはDEPDC1およびZNF224を発現しているがん細胞の増殖を阻害するための候補化合物をスクリーニングする方法であって、以下を含む方法:
(a)候補化合物を、DEPDC1およびZNF224を発現している細胞と接触させる工程;ならびに
(b)試験化合物の非存在下で検出される発現レベルと比較して、DLG1またはA20(TNFAIP3)の発現レベルを増加させる候補化合物を選択する工程。
【請求項16】
DEPDC1に関連したがんを治療もしくは予防するか、またはDEPDC1を発現しているがん細胞の増殖を阻害するための候補化合物をスクリーニングする方法であって、以下を含む方法:
(a)DLG1またはA20(TNFAIP3)の転写調節領域と、該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子とを含むベクターが導入されている、DEPDC1およびZNF224を発現している細胞に、候補化合物を接触させる工程;
(b)レポーター遺伝子の発現または活性を測定する工程;ならびに
(c)対照と比較して、前記レポーター遺伝子の発現または活性のレベルを増加させる候補化合物を選択する工程。
【請求項17】
DLG1の転写調節領域がSEQ ID NO:56のヌクレオチド配列である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
A20(TNFAIP3)の転写調節領域がSEQ ID NO:82のヌクレオチド配列である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
がんが膀胱癌である、請求項11、15、および16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
センス鎖とアンチセンス鎖とを含む二本鎖分子であって、該センス鎖がSEQ ID NO:57または58からなる標的配列に対応するヌクレオチド配列を含み、かつ該アンチセンス鎖が該センス鎖に相補的なヌクレオチド配列を含み、センス分子および前記二本鎖分子が、ZNF224遺伝子を発現している細胞に導入された場合に該遺伝子の発現を阻害する、二本鎖分子。
【請求項21】
約19〜約25ヌクレオチド長であるオリゴヌクレオチドである、請求項20に記載の二本鎖分子。
【請求項22】
センス鎖がSEQ ID NO:9および10の中から選択される配列に対応する配列からなる、請求項21に記載の二本鎖分子。
【請求項23】
一本鎖ヌクレオチド配列を介して連結されたセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む単一のヌクレオチド転写物である、請求項20に記載の二本鎖分子。
【請求項24】
ポリヌクレオチドが、下記一般式を有する、請求項23に記載の二本鎖分子:
5’−[A]−[B]−[A’]−3’
式中、[A]はSEQ ID NO:57または58を含むヌクレオチド配列であり;[B]は約3〜約23個のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列であり;かつ[A’]は[A]に相補的なヌクレオチド配列である。
【請求項25】
[A]が、SEQ ID NO:9および10の中から選択される配列に対応する配列からなる、請求項24に記載の二本鎖分子。
【請求項26】
請求項20〜25のいずれか一項に記載の二本鎖分子をコードするベクター。
【請求項27】
薬学的に有効な量の、ZNF224遺伝子に対する二本鎖分子、または該二本鎖分子をコードするベクターと、薬学的に許容可能な担体とを対象へ投与する工程を含む、対象におけるがんを治療または予防する方法であって、該二本鎖分子および該ベクターが、ZNF224遺伝子を発現している細胞と接触して細胞増殖を阻害する、方法。
【請求項28】
二本鎖分子が請求項20に記載の二本鎖分子である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ベクターが請求項26に記載のベクターである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
治療されるがんが膀胱癌である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
薬学的に有効な量の、ZNF224遺伝子に対する二本鎖分子、または該二本鎖分子を含むベクターと、薬学的に許容可能な担体とを含む、がんを治療または予防するための組成物であって、該二本鎖分子および該ベクターが、ZNF224遺伝子を発現している細胞と接触して細胞増殖を阻害する、組成物。
【請求項32】
請求項20に記載の二本鎖分子を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
請求項26に記載のベクターを含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
治療されるがんが膀胱癌である、請求項31に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−501165(P2012−501165A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509333(P2011−509333)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【国際出願番号】PCT/JP2009/004006
【国際公開番号】WO2010/023850
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【Fターム(参考)】