説明

DFF調整によって亜鉛めっきまたは合金化亜鉛めっき鋼板を製造する方法

本発明は、TRIP微構造を有する溶融亜鉛めっきまたは合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法に関し、上記方法は、組成が、重量で、0.01≦C≦0.22%、0.50≦Mn≦2.0%、0.2≦Si≦2.0%、0.005≦Al≦2.0%、Mo<1.0%、Cr≦1.0%、P<0.02%、Ti≦0.20%、V≦0.40%、Ni≦1.0%、Nb≦0.20%を含み、組成の残部は鉄および精錬に起因する不可避的不純物である鋼板を準備するステップと、雰囲気が空気および燃料を0.80から0.95の空気燃料混合比で含む直火加熱炉内で上記鋼板を酸化し、その結果、0.05から0.2μmの厚みを有する酸化鉄の層が鋼板の表面上に形成され、Siおよび/またはMnおよび/またはAlの内部酸化物が形成されるステップと、酸化鉄の層の還元を達成するために、上記酸化された鋼板を0.001から0.010μm/sの還元速度で還元するステップと、上記還元された鋼板に溶融亜鉛めっきをして、亜鉛被覆鋼板を形成するステップと、上記溶融被覆鋼板に任意に合金化処理を施して、合金化亜鉛めっき鋼板を形成するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TRIP微構造を有する溶融亜鉛めっきまたは合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動力駆動の地上車両の構造を軽量化する要件を満足するために、TRIP鋼を使用することが知られており(用語TRIPは、変態誘起塑性を表す)、それは、非常に高い機械的強度と非常に高レベルの変形の可能性とを兼ね備える。TRIP鋼は、フェライト、残留オーステナイト、および任意にマルテンサイトおよび/またはベイナイトを含む微構造を有し、TRIP鋼が600から1000MPaの引張強度を達成することを可能にする。この種の鋼は、例えば、長尺材や補強材などの構造部品や安全部品などのエネルギー吸収部品を製造するために広く使用される。
【0003】
鋼板は、自動車メーカーへの納入前に、耐腐食性を高めるために溶融亜鉛めっきをすることによって一般に行なわれる亜鉛系コーティングで被覆される。亜鉛浴から出た後に、亜鉛めっき鋼板は、多くの場合、鋼の鉄と亜鉛コーティングとの合金化を促進するアニールをうける(いわゆる合金化亜鉛めっき)。亜鉛−鉄合金からなるこの種のコーティングは、亜鉛コーティングよりも良好な溶接性を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ほとんどのTRIP鋼板は、鋼に多量のケイ素を添加することによって得られる。ケイ素は、室温でフェライトおよびオーステナイトを安定させるとともに、残留オーステナイトが分解して炭化物を形成することを防ぐ。しかしながら、酸化ケイ素がコーティング直前に行われるアニールの間に鋼板の表面上に形成されるので、0.2重量%より多いケイ素を含むTRIP鋼板の亜鉛めっきは困難を伴う。これらの酸化ケイ素は、溶融亜鉛に対して悪い湿潤性を示し、鋼板のめっき性能を悪化する。
【0005】
ケイ素含有量が低い(0.2重量%未満)TRIP鋼を使用することも、上記問題の解決方法となり得る。しかしながら、これは大きな欠点を有する:炭素の含有量が増大される場合のみ、高レベルの引張強度、すなわち約800MPaが達成されることができる。しかし、これは、溶接されたポイントの機械的抵抗を低下させる影響を有する。
【0006】
他方、いかに外部選択的酸化のためにTRIP鋼の組成が鉄に対して拡散バリアの役割をするにしても、合金化亜鉛めっき工程の間の合金化速度は大きくスローダウンされ、合金化亜鉛めっき処理の温度は高くされなければならない。合金化亜鉛めっき処理の温度の高まりは、高温での残留オーステナイトの分解のためにTRIP効果の維持に不利である。TRIP効果を維持するために、鋼に多量のモリブデン(0.15重量%より多い)が添加されなければならず、その結果、炭化物の析出が遅延されることができる。しかしながら、これは、鋼板のコストに影響を有する。
【0007】
確かに、残留オーステナイトが変形の影響でマルテンサイトに変わるので、TRIP鋼板が変形される場合にTRIP効果が観察され、TRIP鋼板の強度は高まる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、前述の欠点を改善することであり、鋼板の表面の良好な湿潤性および非被覆部分がないことを保証し、したがって、良好な付着性および鋼板上での亜鉛合金コーティングの良好な外観を保証し、TRIP効果を維持し、ケイ素含有量が高く(0.2重量%より多い)、高い機械的特性を示すTRIP微構造を有する鋼板に溶融亜鉛めっきをするまたは合金化溶融亜鉛めっきをする方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主題は、フェライト、残留オーステナイト、および任意にマルテンサイトおよび/またはベイナイトを含むTRIP微構造を有する溶融亜鉛めっきまたは合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法であって、上記方法は:
組成が、重量で、
0.01≦C≦0.22%
0.50≦Mn≦2.0%
0.2≦Si≦2.0%
0.005≦Al≦2.0%
Mo<1.0%
Cr≦1.0%
P<0.02%
Ti≦0.20%
V≦0.40%
Ni≦1.0%
Nb≦0.20%を含み、
組成の残部は鉄および精錬に起因する不可避的不純物である鋼板を準備するステップと、
雰囲気が空気および燃料を0.80から0.95の空気燃料混合比で含む直火加熱炉内で上記鋼板を酸化し、その結果、0.05から0.2μmの厚みを有する酸化鉄の層が鋼板の表面上に形成され、Si酸化物、Mn酸化物、Al酸化物、SiおよびMnを含む複合酸化物、SiおよびAlの複合酸化物、MnおよびAlの複合酸化物、およびSi、MnおよびAlを含む複合酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の酸化物の内部酸化物が形成されるステップと、
酸化鉄の層を完全に還元するために、上記酸化された鋼板を0.001から0.010μm/sの還元速度で還元するステップと、
上記還元された鋼板に溶融亜鉛めっきをして、亜鉛系被覆鋼板を形成するステップと、
上記亜鉛系被覆鋼板に任意に合金化処理を施して、合金化亜鉛めっき鋼板を形成するステップとを含む、方法である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によるTRIP微構造を有する溶融亜鉛めっきまたは合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得るために、次の元素を含む鋼板が提供される:
0.01から0.22重量%の含有量の炭素。この元素は、良好な機械的特性を得るために不可欠であるが、それは、溶接性を低下しないように余りに多量で存在してはいけない。焼入性を促進するとともに十分な降伏強度Rを得、さらに安定化残留オーステナイトを形成するために、炭素含有量は0.01重量%未満であってはいけない。ベイナイト変態は、高温で形成されるオーステナイト微構造から起こり、フェライト/ベイナイト薄層が形成される。オーステナイトと比較してフェライト中の炭素の非常に低い溶解度のために、オーステナイトの炭素は薄層間で拒絶される。ケイ素およびマンガンのために、炭化物の析出はほとんどない。したがって、層間オーステナイトは、いかなる炭化物が析出されることなく炭素で発展的に強化される。この強化は、オーステナイトが安定された状態であり、すなわち、室温にクールダウンする際に、このオーステナイトのマルテンサイト変態は起こらない、
0.50から2.0重量%の含有量のマンガン。マンガンは、焼入性を促進して高い降伏強度Rを達成することを可能する。マンガンは、オーステナイトの形成を促進し、マルテンサイト変態開始温度Msを低下するとともにオーステナイトを安定させることに寄与する。しかしながら、鋼板の熱処理の間に示される可能性がある偏析を防ぐために、あまりにも高いマンガン含有量を有する鋼を回避することが必要である。さらに、マンガンを過剰に添加すると、脆性を引き起こす厚い内部酸化マンガン層が形成され、亜鉛系コーティングの付着性は十分ではない、
0.2から2.0重量%の含有量のケイ素。好ましくは、ケイ素の含有量は0.5重量%より高い。ケイ素は鋼の降伏強度Rを改善する。この元素は、室温でフェライトおよび残留オーステナイトを安定させる。ケイ素は、オーステナイトからの冷却の際にセメンタイトの析出を抑制して、炭化物の成長を相当に遅延させる。これは、セメンタイト中のケイ素の溶解度が非常に低いということ、およびケイ素がオーステナイト中の炭素の活性を高めるということに起因する。したがって、形成するいかなるセメンタイト核もケイ素に富んだオーステナイト領域に囲まれ、析出物−マトリックス界面に拒絶される。このケイ素に富んだオーステナイトは、また、炭素がよりリッチであり、セメンタイトの成長は、セメンタイトと、近隣するオーステナイト領域との間の低下された炭素傾斜に起因する低下された拡散のためにスローダウンされる。したがって、このケイ素の添加は、TRIP効果を得るのに十分な残留オーステナイトの量を安定させることに寄与する。鋼板の湿潤性を改善するアニールステップの間に、内部酸化ケイ素、およびケイ素およびマンガンを含む複合酸化物は、鋼板の表面下に形成、分散される。しかしながら、ケイ素を過剰に添加すると、厚い内部酸化ケイ素層、および場合により、脆性を引き起こすケイ素および/またはマンガンおよび/またはアルミニウムを含む複合酸化物が形成され、亜鉛系コーティングの付着性は十分ではない、
0.005から2.0重量%の含有量のアルミニウム。アルミニウムは、ケイ素のように、フェライトを安定させるとともに、鋼板がクールダウンするにつれてフェライトの形成を高める。それは、セメンタイト中にあまり溶けやすくなく、ベイナイト変態温度で鋼を保持する場合にセメンタイトの析出を回避するとともに、残留オーステナイトを安定させるために、この点で使用されることができる。しかしながら、鋼を脱酸するために最小量のアルミニウムが必要である、
1.0未満の含有量のモリブデン。モリブデンは、マルテンサイトの形成を助け、耐腐食性を高める。しかしながら、過剰のモリブデンは、溶接部での冷間割れの現象を促進し、鋼のじん性を低下する可能性がある。
【0011】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板が望まれる場合、従来の方法では、亜鉛めっき後の再加熱の間に、炭化物の析出を防ぐために、Moを添加することが必要である。ここで、ケイ素およびマンガンの内部酸化の結果、亜鉛めっき鋼板の合金化処理は、内部酸化物を含まない従来の亜鉛めっき鋼板より低温で行なわれることができる。その結果、従来の亜鉛めっき鋼板の合金化処理の間の場合のように、ベイナイト変態を遅延させる必要はないので、モリブデンの含有量は低下されることができ、0.01重量%未満とすることができる、
1.0重量%を超えない含有量のクロム。クロム含有量は、鋼に亜鉛めっきをする場合に外観の問題を回避するために限定されなければならない、
0.02重量%未満、好ましくは0.015重量%未満の含有量のリン。リンは、ケイ素と相まって、炭化物の析出を抑制することによって残留オーステナイトの安定性を高める、
0.20重量%を超えない含有量のチタン。チタンは、Rの降伏強度を改善するが、その含有量は、じん性を低下しないようにするために、0.20重量%に限定されなければならない、
0.40重量%を超えない含有量のバナジウム。バナジウムは、微細化強化によってRの降伏強度を改善し、鋼の溶接性を改善する。しかしながら、0.40重量%より多いと、鋼のじん性は低下され、溶接部にクラックが現われる危険性がある、
1.0重量%を超えない含有量のニッケル。ニッケルはRの降伏強度を高める。その含有量は、一般に、そのコストが高いために1.0重量%に限定される、
0.20重量%を超えない含有量のニオブ。ニオブは炭窒化物の析出を促進し、それによって、Rの降伏強度を高める。しかしながら、0.20重量%より多いと、溶接性および熱間成形性が低下される。
【0012】
組成の残部は、通常発見されると予測される鉄および他の元素、および所望の特性に影響がない割合の鋼の精錬に起因する不純物からなる。
【0013】
上記組成を有する鋼板は、まず、酸化が施され、続いて遅い還元が施され、その後に溶融亜鉛浴内で溶融亜鉛めっきされ、任意に熱処理されて上記合金化亜鉛めっき鋼板を形成する。
【0014】
目的は、鋼板が溶融亜鉛めっき前にアニ−ルされながら、ケイ素、アルミニウムおよびマンガンの選択的外部酸化から鋼を保護する制御された厚みを備える酸化鉄の外層を有する酸化された鋼板を形成することである。
【0015】
鋼板の上記酸化は、0.05から0.2μmの厚みを有するとともにケイ素および/またはアルミニウムおよび/またはマンガンの表面酸化物を含まない酸化鉄の層の鋼板の表面上での形成を可能にする条件で、雰囲気が空気および燃料を0.80から0.95の空気燃料混合比で含む直火加熱炉内で行なわれる。
【0016】
これらの条件で、ケイ素、アルミニウムおよびマンガンの内部選択的酸化は、酸化鉄層の下に成長し、表面選択的酸化の危険性を最小限にするケイ素、アルミニウムおよびマンガン内に深い空乏領域をもたらす。したがって、Si酸化物、Mn酸化物、Al酸化物、SiおよびMnを含む複合酸化物、SiおよびAlを含む複合酸化物、MnおよびAlを含む複合酸化物、およびSi、MnおよびAlを含む複合酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の酸化物の内部酸化物が、鋼板内に形成される。
【0017】
次の還元ステップの間に、ケイ素、アルミニウムおよびマンガンの内部選択的酸化は、鋼板の深さ方向に成長し続け、その結果、さらなる還元ステップが達成される場合に、Si、MnおよびAlの外部選択的酸化物が回避される。
【0018】
酸化は、好ましくは周囲温度から680から800℃の加熱温度T1に、直火加熱炉内で上記鋼板を加熱することによって行われる。
【0019】
温度T1が800℃より高い場合、鋼板の表面上に形成された酸化鉄層は、鋼に由来するマンガンを含み、湿潤性が損なわれる。温度T1が680℃より低い場合、ケイ素およびマンガンの内部酸化は助けられず、鋼板の亜鉛めっき性は不十分になる。
【0020】
0.80未満の空気燃料混合比を有する雰囲気では、酸化鉄の層の厚みは、還元ステップの間にケイ素、マンガンおよびアルミニウムの表面酸化から鋼を保護するために十分ではなく、酸化ケイ素および/または酸化アルミニウムおよび/または酸化マンガンの表面層の形成の危険性は、場合により酸化鉄と相まって、還元ステップの間は高い。しかしながら、0.95より大きい空気燃料混合比で、酸化鉄の層は厚過ぎ、完全に還元される浸漬帯域においてより高い水素含有量を必要とし、コストの影響がある。したがって、湿潤性は、両方の場合に損なわれる。
【0021】
本発明によれば、酸化鉄の層の厚みが薄いにもかかわらず、還元速度が約0.02μm/sである従来の方法と比較して、この酸化鉄の還元の速度が還元ステップの間に低下されるので、ケイ素、アルミニウムおよびマンガンの表面酸化は回避される。実は、0.001から0.010μm/sの還元速度で酸化鉄の還元が行なわれることが必須である。還元速度が0.001μm/s未満の場合、還元ステップに必要な時間は、工業上の要件に適合されない。しかし、還元速度が0.010μm/sより速い場合、ケイ素、アルミニウムおよびマンガンの表面酸化は回避されない。したがって、ケイ素、アルミニウムおよびマンガンの内部選択的酸化の進展は、鋼板の表面から0.5μmより大きな深さで行なわれ、一方、従来の方法では、内部選択的酸化は、鋼板の表面から0.1μm以下の深さで行なわれる。
【0022】
直火加熱炉から出ると、酸化された鋼板は、鉄への酸化鉄の完全な還元の達成を可能にする状態で還元される。この還元ステップは、放射管炉内または抵抗炉内で行われることができる。
【0023】
したがって、本発明によれば、上記酸化された鋼板は、2から15体積%未満の水素、好ましくは2から5体積%未満の水素を含み、残部は窒素および不可避的不純物である雰囲気で加熱処理される。目的は、鉄への酸化鉄の還元速度をスローダウンすることであり、その結果、ケイ素、アルミニウムおよびマンガンの深い内部選択的酸化の進展は助けられる。放射管炉内または抵抗炉内の雰囲気が、空気が上記炉に入る場合に雰囲気の汚染を回避するために、2体積%より多い水素を含むことが好ましい。
【0024】
上記酸化された鋼板は、加熱温度T1から浸漬温度T2に加熱され、次いで、それは、浸漬時間t2の間、上記浸漬温度T2で浸漬され、最終的に上記浸漬温度T2から冷却温度T3に冷却され、上記熱処理は、上記雰囲気のうちの1つで行なわれる。
【0025】
上記浸漬温度T2は好ましくは770から850℃である。鋼板が温度T2である場合、フェライトおよびオーステナイトからなる二重相微構造が形成される。T2が850℃より高い場合、オーステナイトの体積比は過剰に成長し、ケイ素、アルミニウムおよびマンガンの外部選択的酸化が鋼の表面で生じる可能性がある。しかし、T2が770℃より低い場合、オーステナイトの十分な体積比を形成するのに必要な時間は長すぎる。
【0026】
所望のTRIP効果を得るためには、浸漬ステップの間に十分なオーステナイトを形成しなければならず、その結果、十分な残留オーステナイトは冷却ステップの間に維持される。浸漬は時間t2の間行なわれ、時間t2は好ましくは20から180sである。時間t2が180sより長い場合、オーステナイト粒は粗くなり、形成後の鋼の降伏強度Rは限定される。さらに、鋼の焼入性は低い。しかしながら、鋼板が20s未満の時間t2の間浸漬される場合、形成されるオーステナイトの割合は不十分であり、十分な残留オーステナイトおよびベイナイトは冷却時に生じない。
【0027】
還元された鋼板は、溶融亜鉛浴の冷却または再加熱を回避するために、上記溶融亜鉛浴の温度に近い冷却温度T3で最終的に冷却される。したがって、T3は460から510℃である。したがって、均質微構造を有する亜鉛系コーティングが得られることができる。
【0028】
鋼板が冷却される場合、鋼板は、温度が好ましくは450から500℃である溶融亜鉛浴内で溶融めっきされる。
【0029】
溶融亜鉛めっき鋼板が必要な場合、溶融亜鉛浴は0.14から0.3重量%のアルミニウムを含み、残部は亜鉛および不可避的不純物である。脆く、したがって成形されることができない鉄と亜鉛の界面合金の形成を抑制するために、アルミニウムが溶融亜鉛浴に添加される。浸漬の間、FeAlの薄い層(0.2μm未満の厚み)が、鋼と亜鉛系コーティングの界面に形成される。この層は、鋼に対する亜鉛の良好な付着性を保証し、その非常に薄い厚みにより成形されることができる。しかしながら、アルミニウムの含有量が0.3重量%より多い場合、一掃されたコーティングの外観は、液体亜鉛の表面上での酸化アルミニウムのあまりに強い成長のために損なわれる。
【0030】
溶融亜鉛浴を出ると、鋼板は、亜鉛系コーティングの厚みを調整するために、ガスの噴射によって一掃される。この厚みは、一般に3から20μmであり、要求される耐腐食性によって決まる。
【0031】
合金化溶融亜鉛めっきが必要な場合、溶融亜鉛浴は好ましくは0.08から0.135重量%の溶解されたアルミニウムを含み、残部は亜鉛および不可避的不純物であり、鋼中のモリブデンの含有量は0.01重量%未満とすることができる。溶融亜鉛を脱酸するとともに、亜鉛系コーティングの厚みを制御することをより簡単にするために、アルミニウムが溶融亜鉛浴に添加される。その条件では、デルタ相(FeZn)の析出が、鋼と亜鉛系コーティングの界面で引き起こされる。
【0032】
溶融亜鉛浴を出ると、鋼板は、亜鉛系コーティングの厚みを調整するためにガスの噴射によって一掃される。この厚みは、一般に3から10μmであり、要求される耐腐食性によって決まる。上記亜鉛系被覆鋼板は、亜鉛−鉄合金からなるコーティングが、コーティングの亜鉛への鋼からの鉄の拡散によって得られるように、最終的に加熱処理される。
【0033】
この合金化処理は、10から30sの浸漬時間t4の間、460から510℃の温度T4で上記鋼板を維持することによって行なわれることができる。ケイ素およびマンガンの外部選択的酸化がない結果、この温度T4は従来の合金化温度より低い。その理由で、鋼に多量のモリブデンは要求されず、鋼中のモリブデンの含有量は0.01重量%未満に限定されることができる。温度T4が460℃未満である場合、鉄と亜鉛の合金化は可能ではない。温度T4が510℃より高い場合、望まれない炭化物の析出のために、安定したオーステナイトを形成することは困難になり、TRIP効果は得られることができない。合金中の平均鉄含有量が8から12重量%であるように時間t4は調整され、それは、コーティングの溶接性を改善するとともに、成形する間のパウダリングを制限するための良好な妥協である。
【0034】
本発明は、以下に、限定しない表示によって付与される実施例によって説明される。
【0035】
組成が表Iで与えられる鋼から製造される厚み0.8mm、幅1.8mの鋼板A、BおよびCを使用して、試験が行なわれた。
【0036】
表I:重量%での鋼板A、BおよびCの鋼の化学組成、組成の残部は鉄および不可避的不純物である(サンプルAおよびB)。
【表1】

【0037】
目的は、本発明によって処理された鋼板に対する亜鉛コーティングの湿潤性および付着性を、本発明の範囲外の条件で処理されたものと比較することである。
【0038】
湿潤性は、オペレータによって視覚的に制御される。コーティングの付着性も、サンプルの180度曲げ試験後に視覚的に制御される。
【0039】
本発明による実施例1
周囲温度(20℃)から700℃で、直火加熱炉に鋼板Aが連続的に導入され、ここで、鋼板Aは、空気および燃料を0.94の空気燃料混合比で含む雰囲気と接触され、その結果、0.073μmの厚みを有する酸化鉄の層が形成される。その後、鋼板Aは放射管炉内で連続的にアニールされ、ここで、700℃から850℃に加熱され、次いで、850℃で40s間浸漬され、最後に、460℃に冷却される。
【0040】
放射管炉内の雰囲気は4体積%の水素を含み、残部は窒素および不可避的不純物である。放射管炉の長さは60mであり、鋼板速度は90m/minであり、ガス流量は250Nm/hである。これらの条件で、酸化鉄層の還元速度は0.0024μm/sである。その結果、酸化鉄層の還元は、放射管炉内で鋼板の滞留時間の間続き、上記炉の出口において、酸化鉄は完全に還元される。Al、SiおよびMnの外部選択的酸化物は形成されず、これに対して、直火加熱炉内で滞留の間に形成されたAl、SiおよびMnの内部選択的酸化物は、鋼板のより深いところに形成された。
【0041】
冷却後に、鋼板Aは、0.2重量%のアルミニウムを含み、残部は亜鉛および不可避的不純物である溶融亜鉛系浴内で溶融亜鉛めっきされる。上記溶融亜鉛系浴の温度は460℃である。窒素で一掃し、亜鉛系コーティングを冷却した後に、亜鉛系コーティングの厚みは7μmである。亜鉛コーティング層は連続的であり、外観表面は非常に良好なので、湿潤性は完全であり、付着性は良好であることが観察される。
【0042】
さらに、本発明者らは、鋼の微構造が、フェライト、残留オーステナイトおよびマルテンサイトを含むTRIP微構造であることを観察した。
【0043】
比較例1
周囲温度(20℃)から700℃で、直火加熱炉に鋼板Bが連続的に導入され、ここで、鋼板Bは、空気および燃料を0.94の空気燃料混合比で含む雰囲気と接触され、その結果、0.073μmの厚みを有する酸化鉄の層が形成される。その後、鋼板Bは放射管炉内で連続的にアニールされ、ここで、700℃から850℃に加熱され、次いで、850℃で40s間浸漬され、最後に、460℃に冷却される。放射管炉内の雰囲気は5体積%の水素を含み、残部は窒素および不可避的不純物である。放射管炉の長さは60mであり、鋼板速度は90m/minであり、ガス流量は400Nm/hである。これらの条件で、酸化鉄層の還元速度は0.0014μm/sである。その結果、酸化鉄層は放射管炉の最初の10mで完全に還元され、Al、MnおよびSiの外部選択的酸化物の層は放射管炉の最後の50mで鋼板上に形成される。
【0044】
冷却後に、鋼板Bは、0.2重量%のアルミニウムを含み、残部は亜鉛および不可避的不純物である溶融亜鉛系浴内で溶融亜鉛めっきをされる。上記溶融亜鉛系浴の温度は460℃である。窒素で一掃し、亜鉛系コーティングを冷却した後に、亜鉛系コーティングの厚みは7μmである。本発明者らは、鋼の微構造が、フェライト、残留オーステナイトおよびマルテンサイトを含むTRIP微構造であることを観察した。しかしながら、発明者らは、亜鉛コーティング層が連続的でないので、湿潤性は完全でなく、外観表面はかなり悪く、付着性は悪いことを観察した。
【0045】
比較例2
周囲温度(20℃)から700℃で、直火加熱炉に鋼板Cが連続的に導入され、ここで、鋼板Cは、空気および燃料を0.94の空気燃料混合比で含む雰囲気と接触され、その結果、0.073μmの厚みを有する酸化鉄の層が形成される。
【0046】
その後、鋼板Cは放射管炉内で連続的にアニールされ、ここで、鋼板Cは700℃で20s間浸漬され、最後に、460℃に冷却される。放射管炉内の雰囲気は5体積%の水素を含み、残部は窒素および不可避的不純物である。
【0047】
放射管炉の長さは60mであり、鋼板速度は180m/minであり、ガス流量は100Nm/hであり、酸化鉄層の還元速度は0.0006μm/sである。これらの条件で、本発明者らは、酸化鉄層が放射管炉内で還元されないことを観察した。
【0048】
冷却後に、鋼板Cは、0.2重量%のアルミニウムを含み、残部は亜鉛および不可避的不純物である溶融亜鉛系浴内で溶融亜鉛めっきをされる。上記溶融亜鉛系浴の温度は460℃である。窒素で一掃し、亜鉛系コーティングを冷却した後に、亜鉛系コーティングの厚みは7μmである。
【0049】
TRIP微構造が得られないことが観察される。さらに、亜鉛コーティング層が連続的でないので、湿潤性は完全でなく、付着性は悪い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェライト、残留オーステナイト、および任意にマルテンサイトおよび/またはベイナイトを含むTRIP微構造を有する溶融亜鉛めっきまたは合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法であって、
組成が、重量で、
0.01≦C≦0.22%
0.50≦Mn≦2.0%
0.2≦Si≦2.0%
0.005≦Al≦2.0%
Mo<1.0%
Cr≦1.0%
P<0.02%
Ti≦0.20%
V≦0.40%
Ni≦1.0%
Nb≦0.20%を含み、
組成の残部が鉄および精錬に起因する不可避的不純物である鋼板を準備するステップと、
雰囲気が空気および燃料を0.80から0.95の空気燃料混合比で含む直火加熱炉内で前記鋼板を酸化し、その結果、0.05から0.2μmの厚みを有する酸化鉄の層が鋼板の表面上に形成され、Si酸化物、Mn酸化物、Al酸化物、SiおよびMnを含む複合酸化物、SiおよびAlを含む複合酸化物、MnおよびAlを含む複合酸化物、およびSi、MnおよびAlを含む複合酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の酸化物の内部酸化物が形成されるステップと、
内部酸化物を鋼板の深さ方向に成長させ続けるとともに、酸化鉄の層の完全な還元を達成するために、前記酸化された鋼板を0.001から0.010μm/sの還元速度で還元するステップと、
前記還元された鋼板に溶融亜鉛めっきをして、亜鉛被覆鋼板を形成するステップと、
前記溶融被覆鋼板に任意に合金化処理を施して、合金化亜鉛めっき鋼板を形成するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記鋼板が、重量%で、P<0.015%を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鋼板が、重量%で、Mo≦0.01%を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
周囲温度から加熱温度T1に鋼板を加熱することにより鋼板の酸化が行なわれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記温度T1が680から800℃である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化された鋼板の還元が、雰囲気が2から15体積%未満の水素を含み、組成の残部が窒素および不可避的不純物である炉内で行なわれる熱処理にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
雰囲気が2から5体積%未満の水素を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記熱処理が、加熱温度T1から浸漬温度T2の加熱段階と、浸漬時間t2の間の前記浸漬温度T2の浸漬段階と、前記浸漬温度T2から冷却温度T3の冷却段階とを含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記浸漬温度T2が770から850℃である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記浸漬時間t2が20から180sである、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記冷却温度T3が460から510℃である、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記還元が放射管炉または抵抗炉内で行なわれる、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
溶融亜鉛めっき鋼板が必要な場合、0.14から0.3重量%のアルミニウムを含み、残部が亜鉛および不可避的不純物である溶融浴内で、前記還元された鋼板を溶融めっきすることによって溶融亜鉛めっきが行なわれる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
合金化溶融亜鉛めっき鋼板が必要な場合、0.08から0.135重量%のアルミニウムを含み、残部が亜鉛および不可避的不純物である溶融浴内で、前記還元された鋼板を溶融めっきすることによって溶融亜鉛めっきが行なわれる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記鋼板のモリブデンの含有量が0.01重量%未満である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
10から30sの浸漬時間t4の間、460から510℃の温度T4で前記亜鉛系被覆鋼板を加熱することによって、前記合金化処理が行なわれる、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶融浴の温度が450から500℃である、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−532428(P2010−532428A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514161(P2010−514161)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001494
【国際公開番号】WO2009/004426
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(506166491)アルセロールミタル・フランス (43)
【Fターム(参考)】