説明

DIAPEUTIC(登録商標)剤としてのリン脂質類似体、及びその方法

【課題】本発明は、ある態様において、癌である又はその疑いのある患者において、肺癌、副腎癌、黒色腫、結腸癌、結腸直腸癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、皮下癌、腸癌、肝細胞癌、網膜芽腫、子宮けい癌を検出し、かつ、部位を特定する方法を提供する。
【解決手段】当該方法は、以下のステップ:(a)リン脂質エーテル類似体を被験者に投与する;(b)癌があると疑われる当該被験者の器官が、周囲領域よりも高いレベルの当該類似体を保持するかかどうか測定する、を含み、ここで、より高い保持領域は癌の検出及び位置を示す。他の態様において、本発明は、被験者の癌の治療方法を提供する。本発明は、リン脂質エーテル類似体を含む分子の有効量の投与を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年3月2日に出願された米国仮出願番号第60/521,166号からの優先権の利益を主張し、そしてその内容全体を本願明細書中に援用する。
【背景技術】
【0002】
技術背景
本発明は、腫瘍の画像診断に一般的に関し、かつ、リン脂質類似体を用いた画像診断に特に関する。
【0003】
癌の早期発見は現代の画像技術の主要目的の内の1つである、というのは、限局性ステージにおける疑わしい腫瘍の同定は、成功的治療及び癌組織の除去の機会を著しく改善するからである。それ故、様々な技術及びモダリティを使用する多くの画像化戦略が、できるだけ早く正確な診断を行う際の医師を補助するために計画される。
【0004】
不運なことに、コンピューター断層撮影法(CT)及びMRI(磁気共鳴影像法)の如き慣習的な画像技術は、疑わしい病巣の最終的な診断を提供するために、その能力において限界がある、というのは、組織の密度及び形態における相違を観察することができるに過ぎないからである。より侵襲的な及び費用のかかる生検手技が、確定診断を提供するためにしばしば必要とされる。対照的に、陽電子放出型断層撮影法(PET)及び単光子放出断層撮影法(SPECT)の如き核医学技術は、特に着目の器官又は領域について機能的又は生物化学的情報を提供し得る。しかしながら、これらの核医学技術の成功は、適した放射性医薬品の取り込み及び検出に大部分を依存する。言い換えると、選択的取り込みは、標的組織に対する高度の特異性を有する放射性医薬品の開発に依存する。不運なことに、これまでのところ、腫瘍学の適用のために開発された腫瘍−局在物質は、適用が限られている。
【0005】
例えば、これらの先行技術の化合物の内の1つである67Ga ガリウム シトレートは、当初、腫瘍組織中に蓄積するその能力について同定された。不運なことに、67Ga ガリウム シトレートは、非炎症性病巣、並びに様々な他の非癌性病巣により取り込まれ、そして許容し得ない量の放射活性が、肝臓及び脾臓組織中にも蓄積され得る。これらの臓器中の放射性医薬品の迅速な集積は、周辺病巣の画像に重大な緩衝を及ぼし、患者に安全に与えられ得る用量にも悪影響を与える。
【0006】
代替的アプローチは、腫瘍特異的抗原に直接作用する放射標識モノクローナル抗体(Mabs)の開発である。しかしながら、これらのモノクローナル抗体は、それらが産生される特定の腫瘍組織に対してのみ特異的であり、それ故、一般的に新生物組織中に局在しないだろう。さらに、画像診断のためのMabsの使用は、抗原発現、低い腫瘍取り込み、非特異性結合、及び免疫原性副作用を含む更なる問題を導く。
【0007】
これらの問題に応えるようと試みるにあたり、本願発明者等は、最近、有用な腫瘍特異性を示す一連の新規化合物を同定し開発した。例えば、米国特許第4,925,649号、同第4,965,391号、同第5,087,721号、同第5,347,030号、及び同第6,417,384号を参照のこと、これらの全てを引用により本願明細書中に援用する。これらの放射性ヨウ化リン脂質エーテル類似体は、悪性腫瘍細胞の特異な生物化学的性質、すなわち、対応する通常組織と比較して当該腫瘍細胞膜中の天然由来のエーテル脂質の高濃度をうまく利用すると信じられる。作用の正確なメカニズムは完全に理解されたわけではないけれども、一般的な仮説としては、当該リン脂質エーテル類似体は腫瘍膜に取り込まれる。従って、これらの化合物は、腫瘍組織に局在し、そして診断、及び/又は治療の適用のために所定の場所に留保する。
【0008】
上記特許中に記載される放射標識されたリン脂質エーテル類似体の選択的保持は、様々なげっ歯目及び動物の腫瘍異種移植片において例証され、そしてヒト疾患によりそっくりな模倣と思われる自然発生の腫瘍モデルにおいては例証されない。不運なことに、これらの試験から得られたデータは、血液から放射性薬剤化合物の非常に早い一掃、及び非標的組織による所望しない蓄積を例証する。上記のように、非標的組織の取り込みは、高いバックグラウンド活性を作り出すことにより、又は注入された放射活性に対する放射感受性組織の過度の放射を引き起こすことにより、放射性画像診断の効果を低減させる。
【0009】
従って、非標的組織からの素早い一掃、並びに延長された血漿中の半減期を示し、一方、新生物組織に対する特異性及び親和力をさらに保持する放射性医薬物について、本分野における重要な必要性の余地がある。そのような物質は、原発腫瘍及び転移の非侵襲性画像において支援するだけでなく、悪性腫瘍の部位特異的撲滅のための細胞毒性薬用担体として、特に最も頻繁に診断された癌形成に関するものとして役立つべきである。放射性医薬物質が悪性腫瘍に対して選択的であり、腺腫及び過形成を含む前癌状態の組織に対してはそうではないことが、さらに所望される。
【0010】
結腸直腸癌の約147,000人の新患が米国内で毎年診断される。このように、結腸直腸癌は、第4の最も一般的な癌であり、1年あたり60,000人の死亡を計上する。治療は、癌のステージに主に依存するが、手術、放射線療法、化学療法、及び/又は高周波又は細胞アブレーションを含み得る。しかしながら、結腸直腸癌患者についての所定の検証において、癌胎児性抗原(CEA)、大腸腫瘍マーカー、及び反復結腸内視鏡の測定は、患者の50%以上における再発を検出できない。それ故、再発病の検出のための更なる方法の開発必要性がある。
【0011】
さらに、CTスキャン及びRFアブレーションを使用する治療及び診断の間、CTスキャンからの機能的情報は、入手困難である。機能強化されたらせんCTと対比して、当該腫瘍血管増生はある程度評価され得るが、生存腫瘍細胞がRF損傷の中に残留するかどうか、正確に測定する方法がない。さらに、RFにより作り出された熱損傷は、CTスキャン処置後6ヶ月に渡って、通常その周囲の炎症縁を有する。PETスキャンは、その後、アブレーション後の患者に使用されるが、炎症縁周囲のRF熱損傷は、生存腫瘍細胞の非存在部分でさえ、通常、増大された取り込みを示す。これは、再発性腫瘍の早期発見のための感受性及び特異性を低減する。
【0012】
よって、悪性腫瘍細胞に対して選択性があり、及び無期限に保持されるNM404の如き物質が好ましく、腫瘍細胞選択的ではなく、並びに感染部位及び異常増殖(バレット食道)に向かうFDGは好ましくない。さらに、124Iを含むNM404のごとき化合物であって、4日間の物理的半減期を有し及び世界中のどこにでも出荷され得る当該化合物は、110分間の半減期を有し、それ故、製造地から200マイル以内のみの限定販路であろうFDGと比較して好ましい。さらに、長期保持(代謝されない)を被るN404の如き化合物は、131Iの如き適当な放射性同位体と結合するとき、顕著な治療可能性を有し得がちであるので、好ましい。さらに、様々なヨウ素同位体で標識され及び拡張された汎用性(診断及び治療、並びに動物実験研究のための道具)を有するNM404の如き化合物は、PETスキャン用の18F又は低感受性レベルではあるが磁気共鳴画像用の19F(安定)に限定されるFDGと比較して好まれる。その腫瘍標的能力にかかわらず、FDGは、腫瘍細胞における素早い代謝に起因し、治療用可能性を有さない。その結果、他の化合物が、RF後の局所再発を調査するために必要とされる。さらに、もし当該腫瘍が、当該局所腫瘍の発育及び再発のいずれかにより転移するならば、ハイブリッド画像診断法(PET及びCTの組み合わせ)であって、処置後、個々のCT及びPETスキャンを置き換えることが非常に望まれる。
【0013】
さらに、化学療法が治療形態の場合でさえ、化学療法に対する反応の改良されたモニタリングが必要不可欠である。それ故、患者を長期治療の毒性にさらすことなく、医師が効果の無い化学療法の投与計画の使用を素早く中止することを可能とするような、化学療法に対する反応を試験するための初期マーカーの開発が、望まれる。外部照射療法(External Beam Radiation Therapy)が組織学的に類似する腫瘍を有する患者のための代替治療の場合、腫瘍は治癒目的の体外照射療法(XRT)と劇的に異なる反応を有し得る。術前放射線療法で治療された直腸癌を有する患者において完全消失となり者もいれば、一方、組織学的に類似するもの(光学顕微鏡レベルで)を有する患者において、治療に対する応答不良となり疾病が再発する者もいるだろう。放射線療法に対する反応が、最終的な腫瘍制御、及び多くの消化管癌、肺癌、頭頸部癌、及び婦人科癌を含む多くの癌に対する生存の予測因子となる。反応の前兆となる、大抵の反応キャラクタリゼーション法は、治療完了後に実施される。治療内の臨床評価は治療を調整するにあたり有用である14一方、多くの場合、実際の治療の間、腫瘍反応を予測する正確な方法はない。そのような試験であって、特に腫瘍部位及び組織像の広範囲に適用されるものは、明らかに非常に有用であり及び所望されるだろう。他の治療及び診断方法は、治療に対する反応を予測することを企図する分子アッセイを含み、最近の取り組みは、治療に対する反応又は反応の欠如と相関する遺伝的変化を同定するためのDNAマイクロアレイの使用を含む。これらは治験用途であり、日常的な臨床用途中にはない。
【0014】
さらに他の診断及び治療方法は、XRT治療の間の反応を予測するための画像診断法の使用を含む。FDGを使用する治療内PETスキャンは活発な調査の下にあり、ここで放射線治療を通じて、原発腫瘍の中途における当該同位体の取り込みは、前治療の取り込みと比較される。いくつかの遡及的試験は、治療の間における継続した強い取り込みを有する患者は、その腫瘍が治療の間において非常に少ないFDGである患者よりも低い腫瘍制御成果を有することを提示する。しかしながら、様々な癌に対するさらに効果的なスクリーニング、診断、及び治療方法が、非常に望まれる。
【0015】
他のよく観察される腫瘍は、原発性脳腫瘍と最も共通するタイプである悪性神経こう腫を含む。外科的処置、放射線療法、及び化学療法での積極的治療にかかわらず、これらの腫瘍を持つ大抵の患者で、診断後生き残るのは2年未満である。神経放射線学及び磁気共鳴影像法(MRI)における最近の進歩は、これらの腫瘍の初期診断及び治療に重大な衝撃を与える。しかしながら、大抵の悪性神経こう腫は湿潤性成分を有し、そしてそれは現在の画像技術により浮腫性頭脳組織と識別される。治療が最も困難であり及び局所再発の原因となるのは、しばしば当該腫瘍のこの成分である。疑いようも無く、侵襲的神経こう腫細胞のより良い視覚化が、重大な治療上の措置として所望される。
【0016】
同様にすい臓癌は、主要な悪性腫瘍の全ての中で、存命の最も低い可能性を有する致命的な疾患である。それは、米国内の癌死亡の、及び米国内の新たに診断された癌の5番目の主要原因であり、1年当たり2%がすい臓癌に起因する。しかしながら、それは、全癌死亡の5%の割合を占める最も高い致命的な疾患の内の1つである。Miller BA,et al.NIH Pub.No.96−4104.Bethesda,MD.1996。これは、切除不能癌を有する患者の内、5年間生きる人はいない事実を示す。さらに、外科的切除は治療としての僅かな期待を与えるけれども、切除後5年間生き残る者はたった20%である。Geer RJ,Brennan MF.Am J Surg 1993;165:68−72;Yeo CJ,Cameron JL,et al.,Ann Surg 1997.18−FDGを有するPETスキャンは、様々な他の原発性癌を画像化するに際し保証を示すけれども、特に転移性疾患を評価する際の、すい臓癌を有する患者に対するCTスキャンの画像化能力に関して改善するためには、能力が限られているように思われる。Kasperk RK,Riesener KP,et al.,World J Surg 2001;25:1134−1139;Sendler A,Avril,N,et al.,World J Surg 2000;24:1121−1129。それ故、潜在性転移すい臓癌を有する患者を正確に画像化する方法の必要性が残る。
【0017】
肝細胞癌は、世界的に最も一般的な固形臓器の悪性腫瘍であり、肝炎又はアルコール依存症による慢性の肝臓損傷のその病因に起因する。発生率は、北米の100,000人当たり2.1人〜中国の高発生地域における100,000人当たり80人と顕著に異なる。肝硬変を有する患者におけるHCCになる危険性は、年当たり1〜6%である。切除が唯一の治療用選択肢であるけれども、弱い肝臓の保有、あるいは切除不可能又は転移性疾患に起因して、患者の僅か10〜30%のみが提示期間での外科的処置の候補となる。この疾患の悪性の性質を証明するように、5年間の生存率は、治療的切除後、僅か15〜35%のみである。Treiber G.Digestive Diseases(2001)19:311−323。
【0018】
今日、乳癌は、米国で女性について主要な健康上の懸念である。米国だけで216,000人ちかくが、2004年に乳癌と診断され、これらの40,000人は死の危険性があることが予想された。局所的、局地的、及び遠隔の転移拡散の正確な評価は、疾患治療及び管理にとって必要不可欠である。リンパ節転移を含む、局所的又は遠隔乳癌転移の検出及び/又は特徴付けを可能とする断層画像診断法の開発は、この疾患の管理において重要な利点を示すだろう。マンモグラフィーは、乳癌の早期発見のための最適な現在のスクリーニング法であるけれども、リンパ節周辺への組織学的確認及び局地的拡散は、生検により評価される。99mTc−Sestamibi及び18F−FDG PETスキャンでのシンチグラフィースキャンを含む、さらに洗練された画像方法は、現在、広範に検査されるが、主に予測できない特異度に起因する治療計画に重要な影響を及ぼさない。Wahl RL.Quart J of Nucl Med(1998)42:1−7。しかしながら、PETスキャンの役割は、化学療法に対する腫瘍反応を測定する際の有効性を示唆することである。Smith IC,Welch AE,et al.,J of Clin Oncol(2000)18:1676−1688;Schelling M,Avril N,et al.,J of Clin Oncol(2000)18:1689−1695。放射線療法は、電離放射線に対する浸潤性乳管癌を含む多くの固形上皮腫瘍の感受性に主に起因する、乳癌治療における確立した役割を有する。DeVita V,Hellman S,Rosenberg S.Cancer:Principles and Practice of Oncology,第6版.Philadelphia(PA):Lippincott,Williams and Wilkins,2002,1667−1680ページ。乳癌における放射線についての最も一般的な適用は、腫瘍摘出手術又は乳腺切除手術の後の補助療法としてのものである。
【0019】
これに関連して、放射線療法は、これらの組織中の微細な沈着物を殺菌することにより局所的及び局地的な再発を劇的に低減することを示す。化学療法は、患者が転移性疾患を有するとき又は潜在性転移の危険性を有するとみなされるときに提案される。この後者の適用において、補助化学療法剤の投与における試験は、補助的な化学療法又はホルモン療法を受ける患者における生存の改善を確固たるものとする。放射線は、固形臓器及び骨における転移の痛みや体積効果を低減する良い効果を有する苦痛緩和剤の設定にも使用される。多くの患者は、多因子的な理由から、根治治療後に再発する。放射線及び化学療法に対する獲得耐性は、疑いようもなく一次治療後、再発の一因となる。
【0020】
さらに、放射線の使用は、一般的に遅れて生ずる及び用量を制限する特異的毒性に関連する。もし放射線の過量が使用されたならば、繊維症、神経損傷、及び軟組織の壊死が重度となり得る。腕のリンパ水腫は、乳癌患者にとって最も一般的及び重篤な毒性であり、かつ、腋下切開(診断目的で行われる)と脇の下への補助放射線療法との組み合わせに起因する。主として、各特定の腫瘍型に特異的な受容体又は分子を標的にされる新たな抗がん剤と対照的に、様々な異なる腫瘍型に適用可能な共通機構に依存する新たな化合物が、非常に望まれる。
【0021】
それ故、高い感受性及び特異性のいずれをも得られる、非侵襲性乳癌の画像技術についての急を要する臨床的必要性の余地がある。さらに、原発腫瘍及び転移性腫瘍の双方に同時にヨウ素131の用量をデリバリーする可能性は、重要な付加利益である。
【0022】
非小細胞肺癌(NSCLC)は、米国内の癌死の主な原因である。適切に選択された患者における外科的切除は、長期生存の最も良い機会を提供し、治癒し得る。それ故、局所的、局地的、及び遠隔転移拡散の正確な術前評価は、最適な管理のための重大な意味をもつ。縦隔リンパ節の状態の評価は必要不可欠であり、なぜならば、NSCLCを有する全患者の内の半分近くに生ずるリンパ節転移は、治癒に対するおそらく最も頻繁な障害となるからである。正確な病状は、患者を不必要な病的状態、非治癒外科手術からも救う。
【0023】
FDG−PETスキャンでの画像化は、特にCT画像化と比較したときの改良された感度に起因して、すぐに、NSCLCを画像化する最も基準となる検査となる。しかしながら、これは、大抵の一般診療において有用ではない高価な画像検査である。それ故、感受性、特異性があり、大抵の患者とって容易に利用可能である手段を使用する画像技術の必要性の余地がある。
【0024】
18F−FDGを有するポジトロン放出型断層撮影法(PET)スキャンは、画像技術としてかなりの関心を集める。最近の研究は、NSCLCの状態に対する標準的アプローチ(CT、超音波、骨のスキャンなど)の能力と、縦隔リンパ節及び遠隔部位の転移を検出するためのPETスキャンを予め比較する。Pieterman RM,vanPutten JWG,Meuzzelaar JJ,Mooyaart EL,Valburg W,Koeter GH,Fidler V,Prium J,Groen HJM.Preoperative Staging of Non−Small Cell Lung cancer with Positron−Emission Tomography.New Eng J Med 343:254−261,2000。
【0025】
縦隔関与が病理組織的に確認され、及び遠隔転移が他の画像試験により確認された。縦隔転移を検出するためのPETの感受性及び特異性は、それぞれ91%及び86%であり、遠隔転移の検出については、それぞれ82%及び93%である。比較として縦隔関与のCTスキャンについての感受性及び特異性は、それぞれ75%及び66%である。他の試験は、画像化とFDG−PET、CT、及び組織学的結果と比較した。リンパ節(54人の患者において、n=168)の状態についてのPETの総合的な、感受性、特異性、及び正確性は、96%、93%、及び94%であり、比較としてCTでは68%、65%、及び6%であった。Gupta NC,Graeber GM,Bishop HA.Comparative efficacy of positron emission tomography with fluorodeoxyglucose in evaluate of small(<1cm),intermediate(1〜3cm),and large(>3cm)lymph node lesions.Chest 117(3):773−778,2000。
【0026】
しかしながら、PETスキャンの限界は、費用、限られた利用、1cm未満の病巣を検出するのはできないこと、及び特異性の欠如を、特に炎症又は肉芽腫疾患を有する患者において含む。Stokkel MP,Bakker PF,Heine R,Schlosser NJ,Lammers JW, Van Rijk PP.Staging of lymph nodes with FDG dual headed PET in patients with non−small cell lung cancer. Nucl Med Communications 20(11):1001−1007,1999;Kapuco LO,Meltzer CC,Townsend DW,Keenan RJ,Luketich JD.Fluorine−18−fluoro−deoxyglucose uptake in pneumonia.J Nucl Med 39(7):1267−1269,1998。
【0027】
CTスキャンの如き慣習的解剖学的画像技術は、治療後の腫瘍の縮小にも関わらず、処置後の生存を予見するのも弱さがある。進行疾患に対するシスプラチンに基づく化学/放射線療法の併用療法又は放射線療法のみで処置を受けている56人のNSCLCの患者に関する最近の研究において、慣習的CT画像化による反応は、生存に相関しなかった。MacManus MP,Hicks RJ,Wada M,Hoff A,Matthews J,Wirth A,Rischin D,Ball DL.Early F−18 FDG−PET response to radical chemoradiotherapy correlates strongly with survival in unresectable non−small cell lung cancer.Proc ASCO 19:483a,2000。しかしながら、FDG−PETスキャンによる反応は、生存と強固に相関した(p=0.0006)。続くPETスキャンの日からの生存は、PETにおける完全消失を有する24人の患者について、1及び2年でそれぞれ84%及び84%だったが、しかしそうでなかった32人の患者では、43%及び31%に過ぎなかった(p=0.010)。これらの結果は、他の筆者により最近報告された類似の所見を裏付ける。Patz EF Jr.Connolly J,Herndon J.Prognostic value of thoracic FDG PET imaging after treatment for non−small cell lung cancer.Am J Roentgenology 174(3):769−774,2000;Vansteenkiste JF,Stroobants SG,Dupont PJ,DeLeyn PR,Verbeken EK,Deneffe GJ,Mortelmans LA,Demedts MG.Prognostic importance of the standardized uptake value on (18)F−fluoro−2−deoxy−glucose positron emission tomography scan in non−small cell lung cancer:An analysis of 125 cases.J Clin Oncol 17(10):3201−3206,1999;Ahuja V,Coleman RE,Herndon J,Patz EFJr.The Prognostic significance of fluorodexoyglucose positron emission tomography imaging for patients with non−small cell lung carcinoma.Cancer 83(5):918−924,1998。
【0028】
それ故、NSCLCを有する患者における初期の転移性疾患を正確に同定し得、場合により処置し得る、容易に入手可能な放射性医薬品は、ステージ及び治療に対する応答に関して、患者治療に重要な影響を有する。PET撮像法はこの領域内に有効性を有するけれども、費用及び近づきにくいことが、実用化を厳しく制限する。比較的安価で及び広範に入手可能な画像化装置を使用して、非侵襲的に全身を審査し得る腫瘍特異的機能に基づく、正確な機能的画像化技術の必要性が残る。
【発明の概要】
【0029】
本発明の概要
本発明は、様々な癌の検出及び治療のための方法及び技術を広く提供する。ある好ましい態様において、本発明は、癌である又はその疑いのある患者において、肺癌、副腎癌、黒色腫、結腸癌、結腸直腸癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、皮下癌、腸癌、肝細胞癌、網膜芽腫、子宮けい癌を検出し、かつ、部位を特定する方法を提供する。当該方法は、以下のステップ:
(a)リン脂質エーテル類似体を当該被験者に投与する;
(b)当該被験者の癌があると疑われる器官が、周囲領域よりも高いレベルの当該類似体を保持するかかどうか測定する、を含み、ここで、より高い保持領域は癌の検出及び位置を示す。
【0030】
この方法において、当該リン脂質類似体は、以下の:
【化1】

{式中、Xは、ヨウ素の放射性同位体からなる群より選択され;nは、16〜30の整数であり;及びYは、NH、NR、及びNRを含む群より選択され、ここで、Rは、アルキル又はアリールアルキル置換基である。}又は
【0031】
【化2】

{式中、Xは、ヨウ素の放射性同位体であり;nは、16〜30の整数であり;Yは、H、OH、COOH、COOR、及びORからなる群より選択され;及びZは、NH、NR、及びNRからなる群より選択され、ここで、Rは、アルキル又はアリールアルキル置換基である。}
から選択される。
【0032】
この方法において、Xは、122I、123I、124I、125I、及び131Iからなるヨウ素の放射性同位体の群より選択される。
【0033】
好ましくは、この方法において、当該リン脂質エーテルは、18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル ホスホコリン、1−O−[18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル]−1,3−プロパンジオール−3−ホスホコリン、又は、1−O−[18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル]−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホコリンであり、ここでヨウ素は放射性同位体の形態である。
【0034】
他の態様において、本発明は被験者の癌の治療方法を提供する。当該方法は、上記のように、リン脂質エーテル類似体を含む有効量の分子を当該被験者に投与することを含む。
この方法において、当該癌は、肺癌、副腎癌、黒色腫、結腸癌、結腸直腸癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、皮下癌、腸癌、肝細胞癌、網膜芽腫、子宮けい癌、神経こう腫、乳癌、すい臓癌、癌肉腫、及びProstrate癌からなる群より選択される。
【0035】
本発明は、癌の治療用医薬組成物の製造のためのリン脂質エーテル類似体の使用をも企図する。これらのリン脂質類似体は、上記の群から選択される。
【0036】
さらに、本発明の他の態様は、被験者において、新生組織形成と、炎症、腺腫、過形成を識別する方法を提供する。当該方法は、以下のステップ:
(a)リン脂質エーテル類似体を当該被験者に投与する;及び
(b)当該被験者の炎症、腺腫、過形成又は新生組織形成の疑いのある器官が、周囲領域より高いレベルの当該類似体を保持するかどうか測定する;
を含む。当該被験者がより高い保持領域を有するとき、それは新生組織形成の検出及び位置を示し、及び、当該被験者がより低い保持領域を有するとき、それは当該腺腫、過形成又は炎症を有する疑いのある器官の存在を示す。
【0037】
本発明の他の態様は、ホスホリパーゼD(PLD)を有する組織サンプル中の新生組織形成を検出する方法を提供する。当該方法は、以下のステップ:
(a)当該組織サンプル中のPLD蛋白質活性レベル又はPLDmRNAレベルを定量化する;及び
(b)当該組織サンプルが周囲の組織領域より低い蛋白質活性レベルであるかどうか測定する、ここでより低い活性領域は新生組織形成の検出及び位置を示す、又は
(c)当該組織サンプルが周囲の組織領域より低いmRNAレベルであるかどうか測定する、ここでより低いmRNAレベル領域は新生組織形成の検出及び位置を示す、
を含む。
【0038】
この方法において、当該PLD蛋白質活性又はmRNAレベルは、当該組織サンプルと当該PLE類似体との接触により定量化され、ここで当該PLE類似体は、上記のような類似体である。
【0039】
さらに、本発明の他の態様は、以下のステップ:
(a)PLD蛋白質活性レベル又はPLDmRNAレベルを定量化するステップであって、ここで周囲の組織領域と比較して低減されたPLD蛋白質活性又は低減されたmRNAのレベルが、新生組織形成を示す、
を含む、PLDを有する組織サンプルをスクリーニングする方法により選択される抗腫瘍薬を提供する。当該PLD蛋白質活性又はmRNAレベルが、当該組織サンプルとPLE類似体との接触により定量化され、ここで当該PLE類似体は、上記の通りである。
【0040】
本発明の他の対象及び利点は、詳細な説明、本明細書に添付する図面、請求項から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、PLE腫瘍細胞の画像化仮説である。
【図2】図2は、1mCiの131I−NM324の静脈内投与後、1、2、及び6日で得た患者03の前胸部のシンチグラフィーである。取り込みは、時間とともに増大する腫瘍対バックグラウンドの比での、左舌の肺癌(T)に見られる。
【図3】図3は、PLE類似体の構造である。
【図3A】図3Aは、NM404類似体である。
【図4】図4は、静脈内投与後のSCIDマウスA549肺腫瘍モデルにおけるNM324及びNM404の比較である。NM324活性の大部分は腸内に見られ、及び当該腫瘍内(大腿部に移植された)には見られない、一方、NM404は、各大腿部内に腫瘍が同定されたことに留意する。
【図4A】図4Aは、外科的に除去された原発腫瘍部位(脚)を有するコペンハーゲンラットにおける、ダニングR3327転移性前立腺腫瘍のシンチグラフィーによるNM404の画像である。2つのリンパ節腫瘍が、死後に確認された。
【図5】図5は、皮下注入されたマウスモデルにおけるCT26腫瘍の成長パターンを示す。
【図6】図6は、摘出されたCT−26腫瘍(T)並びに左及び右リンパ節(LN)のデジタル写真(A)、バイオスキャン画像(B)、及び腫瘍内の放射活性の相関関係を示す融合された写真/バイオスキャン画像(C)である。
【図7】図7は、CT−26腫瘍(矢印)のサイズ及び配置を示す、図6の生存マウスのマイクロCT画像である。表示された3D−表面、及びプレーナ スライス画像(A、B)、並びに冠状(C)及び軸方向(D)のスライス(厚さ40μm)である。
【図8】図8は、正常な(左)及びRF−剥離された(右)CT−26腫瘍の組織切片(H&E)である。剥離された部分は、完全に膜を失い、かつ、濃縮が現れる。
【図9】図9は、125I−NM404の注入後4日目のc−mycすい臓腫瘍マウスの融合された生体内バイオスキャン/デジタル写真画像(A)、及びデジタル写真ン(C)と比較のための摘出腫瘍の生体外画像(B)である。色は、図10と同様の範囲である。
【図10】図10は、125I−NM404の投与後4日目のc−mycすい臓腫瘍マウスのバイオスキャン画像である。生体内画像(A)と並んで、大きな(2cm)すい臓腫瘍(T)の存在を示す解剖されたマウス(B)のデジタル画像である。3つの腫瘍を摘出し、残った死体をスキャンした(C)。当該摘出された腫瘍をスキャンし(D)、比較としてデジタル写真(E)を並べた。カラースケールは、0(黒)〜40(白)cpmの範囲である。
【図11】図11は、すい臓腫瘍を有するマウスのマイクロCTの軸方向のスキャンである。2つの大きな腫瘍(T)が、パネルAにおける当該軸方向の画像中に容易にみられる。Bにおける異なるマウスの画像は、脾臓に近接したすい臓腫瘍(矢印)を描く。マウスにおいて、当該すい臓は普遍的な組織である。当該摘出された脾臓及び付着腫瘍のデジタル写真を、比較として図11Cに示す。
【図12】図12は、病気の対照ラット脳(A)のバイオスキャン画像(125I−NM404の静脈内注入後4日目)であり、そして同様のバイオスキャン画像を、正常な脳組織におけるNM404の低いバックグラウンドを示す摘出されたラットの脳の対応するデジタル写真の上に重ね焼きした。
【図13】図13は、125I−NM404の静脈内注入後4日目のラット脳を有する摘出されたC6−神経こう腫のデジタル写真(A)及び対応するバイオスキャン画像(B)である。位置及び大きさを接合した、融合されたバイオスキャン画像及び写真(C)は、腫瘍中のNM404の非常に強い局在を示す。当該腫瘍の存在は、D中のH&E染色されたサンプルにおいて、組織学的に確認された。
【図14】図14は、125I−NM404の注入後10日目のTGFα肝臓癌を有するマウスの冠状マイクロCTスキャン(左)及び背部バイオスキャン画像(右)である。肝臓は、ITG、肝細胞選択的CT造影剤で、マイクロCT画像上、強化された(腫瘍=T)。
【図15】図15は、NM404の注入後7日目の摘出されたCT−26腫瘍を有するマウス肝臓の写真(左)及びバイオスキャン画像(右)である。肝臓腫瘍の関与は広範囲に及んだ。腫瘍移植は、このスキャンの15日前に実施された。摘出され解剖された腫瘍(T)及び正常な関与しない肝臓(L)のバイオスキャン画像(C)及び写真(D)である。
【図16】図16は、複数のCT26腫瘍の存在を示す図15に表されたのと同じマウスのマイクロCTである。肝臓を、ITG、肝細胞選択的造影剤を使用して強化した。これらの画像を、腫瘍細胞移植後10日目、かつ、上記バイオスキャン画像に先立ち5日で得た(腫瘍は矢印により示され、胆嚢=GBである。)。
【図17】図17は、125I−NM404(15μCi)の静脈投与後、様々な時で、自然発生の右腋下乳腺腫瘍(直径10mm)を有するMinマウスのNM404バイオスキャン画像である。冠状マイクロCT画像(非コントラスト促進)を、解剖学的比較として示す(左のパネル、T=腫瘍)。
【図18】図18は、摘出された左及び右の腹部の乳腺の、カルミン染色写真(A、C)及びバイオスキャン画像(B、D)である。当該左の乳腺のバイオスキャン画像(B)において容易に検出されるパネルAにおける2mmの腫瘍(T)に留意する。リンパ節(Aにおける小さな矢印)は、NM404の非取り込みを示す。右の乳腺(C、D)中に、視覚的に腫瘍は検出されなかった。結腸の写真(E)及びバイオスキャン画像(F)は、腺腫性ポリープ(矢印)におけるNM404の非取り込みを示す。
【図19】図19は、図18のMinマウスのマイクロCTスキャンである。パネルAは、大きな左腋下乳腺腫瘍を示す低密度表面画像三次元化である。パネルBは、腫瘍栄養血管の場所を示す補助のための血液プールCT造影剤BP10を投与後、高密度表面画像三次元化である。パネルCは、冠状CT画像、及び完全栄養血管の配置を示す高密度表面画像三次元化の合成である。位置づけとして、パネルCでは下からであり、一方、パネルA及びBは、上からの眺望である。
【図20】図20は、125I−NM404(15μCi)の静脈投与後、様々な時で、自然発生の右腋下乳腺腺癌(直径10mm)を有するMinマウスのNM404バイオスキャン画像である。冠状マイクロCT画像(非コントラスト促進)を、解剖学的比較として示す(左のパネル、T=腫瘍)。
【図21】図21は、NM404投与後8日目のFVBxB6Minマウス由来の摘出された乳腺(A)及び結腸(E)のバイオスキャン画像である。B及びDは、それぞれ同じ摘出された組織の対応するデジタル写真である。カルミン染色拡大写真(C)は過形成(矢印)の存在を示すが、バイオスキャン画像(A)において対応する限局性活動はない。バイオスキャン画像(A)における腫瘍取り込みは、(B)におけるより大きな腺癌に対応する。摘出された結腸の写真(D)及びバイオスキャン画像(E)は、腺腫性ポリープ(矢印)中のNM404の取り込みの無いことを示す。
【図22】図22は、図21に示されるMinマウスのマイクロCTスキャンである。パネルAは、大きな左腋下乳腺腫瘍を示す低密度表面画像三次元化である。パネルBは、腫瘍栄養血管の場所を示す補助のための血液プールCT造影剤BP10を投与後、高密度表面画像三次元化である。パネルCは、冠状CT画像、及び完全栄養血管の配置を示す高密度表面画像三次元化の合成である。位置づけとして、パネルCでは下からであり、一方、パネルA及びBは、上からの眺望である。
【図23】図23は、A549肺CA微少転移細胞(<直径1mm)を含む、摘出されたSCIDマウスの肺における125I−NM404(A&B)及びNM324(C&D)取り込みの比較を示す。
【図24】図24は、PLEの酵素代謝である。
【図25】図25は、ENU処理されたMin/+マウスの最初に腫瘍となるまでの時間である。最初に乳腺腫瘍となるまでの時間を、ENU後の日にちとして表した。雌のMin/+マウスを、ENUで処理し、乳腺腫瘍の存在について、週に2回検査した。ENU処理後最初の腫瘍までの時間は、B6Min/+(n=45)(四角形)、BRB6Min/+(n=18)(三角形)、FVBB6Min/+(n=18)(ひし形)について、5日の間隔でプロットされる。
【図26】125I−NM404投与後、1日後(A)及び7日後(B)のうつ伏せのFVBxB6minマウスのバイオスキャン画像は、大きな腋下乳腺腫瘍を示す。注入後10日目の摘出された乳腺(C)のバイオスキャン画像は、生体内スキャンにおいて可視ではなかった大きな10mmの腺癌、及び小さな隣接する2mmの腫瘍における、NM404の取り込みを示す。
【図27】図27は、大きな腋下乳腺腫瘍を示す図26に示されるような、同様のFVBxB6minマウスのマイクロCT画像を示す。冠状及び軸方向のスライスは、A及びBに示され、一方、3D−表面(gold)及び冠状スライスは、後面像(C)及び前面像(D)において同時に表示される。
【図28】図28は、125I−NM404投与後の明白なSCC1及び6の腫瘍の緩解を示す。
【図29】131I−NM404注入後4日目及び11日目の被験者1のガンマカメラの画像(左パネル)は、双方のNSCLC腫瘍(矢印)において、当該物質の非常に強く長期の保持を示す。軸方向のCTスキャン(右パネル)は、左肺における局所性3cmの病変(A)並びに右肺の大きな浸潤性塊(B)(矢印)の大きさ及び配置を示す。
【図30】図30は、131I−NM404の静脈内投与後、患者2の前面及び後面の全身平面的核医学画像(左パネル)である。軸方向(A)及び冠状(B)CTスキャン(右パネル)は、大きな6cmのNSCLCの位置(矢印)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
I.本発明の概要
本発明の概要
本方法を記載する前に、当該発明は、変化するものとして、特に方法論、プロトコール、細胞系、及び記載の試薬に限定するものではないことが理解される。本明細書において使用される専門用語は、特定の態様のみを記載するためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるであろう本発明の範囲を限定することを意図しないことも理解されたい。
【0043】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈に明らかな指示のあるときを除いて、複数形を含むことに留意しなければならない。それ故、例えば、「a cell」は、そのような細胞群、及び当業者に知られるそれらと等価なものの複数などを含む。同様に、「a」(又は「an」)、「1又は複数」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書において同義的に使用される。「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」も同義的に使用され得ることに留意すべきである。
【0044】
別段の定義がなければ、本明細書中に使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する分野におけるいわゆる当業者の内の1人により一般的に理解される通りの同じ意味を有する。本明細書中の記載と類似の又は等価の方法及び材料が、本発明の実施又は試験において使用され得るけれども、当該好ましい方法及び材料は、ここに記載され得る。本明細書中に言及される全ての刊行物の全内容を、本発明に関連して使用され得る当該刊行物中に報告される薬品、細胞系、ベクター、動物、器具、統計的分析、及び方法論の記載及び開示のために本願明細書中に援用する。本発明が先行発明によるそのような開示を予期するとして権利を与えられないことを、承認すると解釈されるものは本願においてない。
【0045】
本明細書中に定義するとき、用語「異性体」は、光学異性体及び類似体、構造異性体及び類似体、配座異性体及び類似体などを非制限的に含む。ある態様において、本発明は、図3Aの坑腫瘍化合物の異なる光学異性体の使用を含む。本発明における有用な抗腫瘍化合物が少なくとも1つのキラル中心を含むことは、本分野の当業者により理解されるだろう。従って、本発明の方法において使用される当該化合物は、光学活性体又はラセミ体で存在し、そして単離され得る。化合物によっては多形も示し得る。
【0046】
本発明は、本願の明細書及び特許請求の範囲に記載される腫瘍関連状態の処置に有用な特性を有するラセミ体、光学活性体、多形体又は立体異性体、あるいはそれらの混合物の使用を含み得ることが理解される。ある態様において、当該抗腫瘍化合物は、純粋(R)−異性体を含み得る。他の態様において、当該抗腫瘍化合物は、純粋(S)−異性体を含み得る。他の態様において、当該化合物は、当該(R)及び(S)異性体の混合物を含み得る。光学活性体の作成の仕方は、本分野においてよく知られている(例えば、当該ラセミ体の分割による、再結晶技術による、光学活性出発物質からの合成による、キラル合成による、又はキラル安定層を使用するクロマトグラフ分離による方法である。)。
【0047】
本発明は、例えば、クエン酸、及び塩酸といった、有機酸及び無機酸でアミノ−置換された化合物の医薬として許容される塩の使用を含む。本発明は、本明細書中に記載される当該化合物のアミノ置換基のN−酸化物も含む。医薬として許容される塩は、無機塩基、例えば水酸化ナトリウムでの処理によりフェノール化合物からも作成され得る。さらに、当該フェノール化合物のエステルは、脂肪酸及び芳香族カルボン酸、例えば、酢酸及び安息香酸エステルで作られ得る。本明細書中に使用されるとき、用語「医薬として許容される塩」は、主剤から配合される化合物であって、実質的に当該主剤と同等の医薬効果を得る当該化合物をいう。
【0048】
本発明は、抗腫瘍化合物の誘導体を利用する方法をさらに含む。当該用語「誘導体」は、エーテル誘導体、酸誘導体、アミド誘導体、エステル誘導体などを非制限的に含む。さらに、本発明は、抗腫瘍化合物の水和物を利用する方法をさらに含む。当該用語「水和物」は、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物などを非制限的に含む。
【0049】
本発明は、抗腫瘍化合物の代謝体を利用する方法をさらに含む。当該用語「代謝体」は、代謝作用又は代謝過程より他の薬物から製造される薬物を意味する。
【0050】
本明細書中に使用されるとき、「接触する」は、本発明において使用される抗腫瘍化合物が、試験管、フラスコ、組織培養、チップ、アレイ、プレート、マイクロプレート、キャピラリーなどの中の受容体を有するサンプルの中に誘導され、そして、当該抗腫瘍物質が受容体へ結合できるのに十分な温度及び時間で培養されることを意味する。当該サンプルを当該抗腫瘍化合物又は他の特異的結合成分と接触するための方法は、本分野の当業者に知られ、実施されるアッセイ・プロトコール型に依存して選択され得る。培養方法は、標準的でもあり、本分野における当業者に知られる。
【0051】
他の態様において、当該用語「接触する」は、本発明において使用される抗腫瘍化合物が、処置を受けている患者の中に誘導されることを意味し、当該化合物は、生体内での接触を生じ得る。
【0052】
本明細書中に使用されるとき、用語「処置」は、予防、並びに障害の弛張熱治療を含む。本明細書中に使用されるとき、用語「低減」、「抑制」、及び「阻害」は、低下又は減少の一般的に理解される意味である。本明細書中に使用されるとき、「進行」は、重篤度の範囲が増大すること、前進する、成長する、又は悪くなることを意味する。本明細書中に使用されるとき、用語「再発」は、回復後再度疾患となることを意味する。
【0053】
本明細書中に使用されるとき、用語「投与」は、患者、組織、器官又は細胞に、抗腫瘍リン脂質エーテル化合物の接触をもたらすことをいう。本明細書中に使用されるとき、投与は、生体外すなわち試験管内で、又は生体内すなわち生命体、例えば人間の細胞及び組織内で実施され得る。ある態様において、本発明は、本発明において有用な化合物を、患者又は被験者に投与することを含む。本明細書中、等価に使用される「患者」又は「被験者」は、哺乳類、好ましくは人間であって、以下の:(1)リン脂質エーテル化合物を使用する抗腫瘍薬物の投与により治療可能又は処置可能な障害を有する者、又は(2)リン脂質エーテル化合物を使用する抗腫瘍化合物を投与することにより予防可能な、障害の影響を受けやすい者、のいずれかの者であることをいう。
【0054】
本明細書中に使用される「医薬組成物」は、治療有効量の抗腫瘍化合物、並びに好適な希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、及び補助剤であり、まとめて「医薬として許容される担体」を意味する。本明細書中に使用されるとき、用語「有効量」及び「治療有効量」は、毒性、刺激、アレルギー反応の如き過度の逆に作用する副作用なしに、所望の治療応答を産生するのに十分な活性治療薬の量をいう。当該特定の「有効量」は、明らかに、処置される特定の症状、当該患者の体調、処置される動物の型、当該処置期間、併用療法の特質(もしあれば)、並びに使用される特定の配合及び当該化合物又はその誘導体の構造の如き要因によって変化する。この場合、もし、以下の:(a)疾患(例えば、すい臓癌、乳癌)の予防;及び(b)そのような疾患の拮抗状態又は安定状態、の1以上の結果となるならば、量が治療有効量とみなされるだろう。当該最適な有効量は、ありきたりの実験を使用して、当業者の内の1人により容易に測定され得る。
【0055】
医薬組成物は、液剤又は凍結乾燥剤、さもなければ乾燥剤であり、そして、様々な緩衝剤内容(例えば、Tris−HCl、酢酸塩、リン酸塩)の希釈剤、pH及びイオン強度、表面への吸収を阻害するためのアルブミン又はゼラチンの如き添加剤、界面活性剤(例えば、Tween(ポリソルベート)20、Tween80、Pluronic F68、胆汁酸塩)、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、増量剤又は等張化剤(例えば、ラクトース、マンニトール)、ポリエチレングリコールの如きポリマーの蛋白質への共有結合、金属イオンとの複合体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲルなどの如きポリマー化合物の特定の製剤の中へ又は上への、あるいは、リポソーム、マイクロエマルション、ミセル、単層又は多重層媒体、赤血球ゴースト、又はスフェロプラスの上への当該材料の取り込み、を含む。そのような組成物は、体調、溶解度、安定性、生体内放出比、生体内一掃比に影響を与えるだろう。制御又は持続放出組成物は、親油性貯蔵所(例えば、脂肪酸、ろう、油)中に薬剤を含む。
【0056】
ポリマー(例えば、ポロキサマー又はポロキサミン)で被膜された特定の組成物の投与方法も本発明に含まれる。当該組成物の他の態様は、局所的、非経口、肺、経鼻、及び経口を含む、投与の様々な経路のために、微粒子型保護被膜、プロテアーゼ阻害剤又は透過促進剤を含む。ある態様において、当該医薬組成物は、非経口、癌周囲、経粘膜、経皮、筋肉内、静脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、頭蓋骨内、及び腫瘍内で投与される。
【0057】
さらに、本明細書中に使用されるとき、「医薬として許容される担体」は、当業者によく知られ、及び0.01〜0.1M、好ましくは0.05Mのリン酸緩衝液又は0.9%の生理食塩水を非制限的に含む。さらに、そのような医薬として許容される担体は、水溶液又は非水溶液、溶液、懸濁液、及び乳濁液であり得る。非水溶液の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油の如き植物油、及びオレイン酸エチルの如き注入可能な有機エステルである。水性担体は、生理食塩水、及び緩衝化媒体を含む、水、アルコール/水の溶液、乳濁液又は懸濁液を含む。
【0058】
非経口媒体は、食塩水、リンガー・デキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンガー液、及び固定油を含む。静脈内媒体は、流動体及び栄養補給、リンガー・デキストロースに基づくものの如き電解質補給などを含む。防腐剤及び他の添加剤は、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、照合剤、希ガスなどの如きものも存在し得る。
【0059】
本発明による投与可能な制御又は持続放出組成物は、親油性貯蔵所(例えば、脂肪酸、ろう、油)中の製剤を含む。ポリマー(例えば、ポロキサマー又はポロキサミン)で被膜される特定の組成物、及び組織特異的受容体、リガンド又は抗原に対する抗体と共役される、又は組織特異的受容体のリガンドと共役される当該化合物も、本発明に包含される。
【0060】
本発明に従おける投与される当該組成物の他の態様は、非経口、肺、経鼻、及び経口を含む、投与の様々な経路のために、微粒子型保護被膜、プロテアーゼ阻害剤又は透過促進剤を含む。
【0061】
ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、又はポリプロリンの如き水溶性高分子の共有結合により修飾される化合物は、対応する非修飾化合物よりも、静脈注入後に血中において実質的により長い半減期を示すことが知られる(Abuchowski et al.,1981;Newmark et al.,1982;及びKatre et al.,1987)。そのような修飾は、当該化合物の水溶液中の溶解度を増大させ、凝集を除去し、当該化合物の物理的及び化学的安定性を促進し、そして当該化合物の免疫原性及び反応性を非常に低減し得る。結果として、所望の生体内生物学的活性は、それほど頻繁ではないが外転する、そのようなポリマー化合物の投与により、又は当該非修飾化合物との投与よりも少ない投与量において、達成され得る。
【0062】
さらに本発明における他の方法において、医薬組成物は、制御放出系においてデリバリーされ得る。例えば、当該剤は、静脈内注入、移植可能な浸透圧ポンプ、経皮貼付、リポソーム、又は他の投与形式を使用して投与され得る。ある態様において、ポンプが使用され得る(Langer, supra;Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwald et al.,Surgery 88:507(1980);Saudek et al.,N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと。)。他の態様において、ポリマー材料が使用され得る。さらに他の態様において、制御放出系は、治療標的、例えば、肝臓に近接して置かれ得、それ故、当該全身性投与量のごく少量しか必要としない(例えば、Goodson in Medical Applications of Controlled Release,supra,vol,2,115〜138ページ(1984)を参照のこと。)。他の制御放出系は、Langer(Science 249:1527−1533(1990))の概説により議論される。
【0063】
当該医薬製剤は、当該抗腫瘍化合物のみを含み得、または医薬として許容される担体をさらに含み得、そしてタブレット剤、粉末剤、カプセル剤、ペレット剤、液剤、懸濁液、エリキシリル剤、乳濁液、ゲル、クリーム、肛門及び尿道座薬を含む座薬の如き固形又は液体状態となり得る。医薬として許容される担体は、ガム、澱粉、糖、セルロース系材料、及びそれらの混合物を含む。当該抗腫瘍化合物を含む当該医薬製剤は、例えば、ペレットの皮下移植により患者に投与され得る。さらなる態様において、ペレットは、一定期間にわたり抗腫瘍化合物の制御放出を提供する。当該製剤は、液体製剤の静脈内注入、動脈内注入、又は筋肉内注入、液体又は固形製剤の経口投与、又は局所適応によっても投与され得る。投与は、肛門坐薬又は尿道坐薬によっても達成され得る。
【0064】
本発明により投与可能な当該医薬製剤は、溶解、混合、造粒、又はタブレット形成方法により製造され得る。経口投与について、当該抗腫瘍化合物又は塩、エステル、N−酸化物などの如きそれらの生理学的に許容される誘導体は、媒体、安定剤、又は不活性希釈剤の如き添加剤と、この目的のために慣習的に混合され、そして慣習的方法により、タブレット剤、被膜タブレット剤、硬又は柔ゼラチンカプセル、溶液、アルコール溶液、油性溶液の如き、投与に好適な形に転換される。好適な不活性媒体の例は、アカシア、澱粉、ゼラチンの如き結合剤、澱粉、ジャガイモ澱粉、アルギン酸の如き崩壊剤、又はステアリン酸又はステアリン酸マグネシウムの如き滑剤との組み合わせによるラクトース、スクロース、又は澱粉の如き慣習的なタブレット基剤である。
【0065】
好適な油性媒体又は溶液は、ひまわり油又は魚肝油の如き植物油又は動物油である。製剤は、乾燥及び湿潤顆粒の双方として成立する。非経口投与(皮下、静脈内、動脈内、または筋肉内注入)のために、当該抗腫瘍化合物又は塩、エステル、N−酸化物などの如きそれらの生理学的に許容される誘導体は、溶液、懸濁液、又は放出剤に転換され、所望により、本目的のために慣習的で好適な薬物、例えば、可溶化剤又は他の補助剤とともに転換される。その例は、水及び油、界面活性剤及び他の医薬として許容される補助剤の添加を有する又は有しないような滅菌液である。例証となる油は、石油、動物油、植物油又は合成起源油のいずれかであり、例えば、ピーナッツ油、大豆油又は鉱油である。一般的に、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールの如き、水、生理食塩水、水性デキストロース及び関連砂糖水、及びグリコールは、液体担体、特に注入可能な溶液を好む。
【0066】
活性成分を含む当該医薬組成物の製剤は、本分野においてよく知られる。そのような組成物は、鼻咽頭へデリバリーされるエアロゾルとして、あるいは、溶液又は懸濁液のいずれかとして注入可能なように作られ得る;しかしながら、注入前の液体である、溶液、又は懸濁液のために好適な固形もまた作られ得る。当該製剤は、乳化もされ得る。当該活性医薬成分は、医薬として許容され、当該活性成分と相性の良い賦形剤としばしば混合される。例えば、好適な賦形剤は、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、又はそれらのいずれかの組み合わせである。
【0067】
さらに、当該組成物は、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤の如き、当該活性成分の効果を促進する少量の補助剤を含み得る。
【0068】
活性成分は、不活性化された医薬として許容される塩の剤形として当該組成物中に配合され得る。医薬として許容される塩は、当該酸付加塩を含み、それは、例えば、塩酸又はリン酸の如き無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの如き有機酸と配合される。遊離のカルボキシル基から配合される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第2鉄の如き無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノ・エタノール、ヒスチジン、プロカインなどの如き有機塩基にも由来し得る。
【0069】
例えば、クリーム、ゲル、滴などを使用する体表面への局所的投与として、抗腫瘍化合物、あるいは、塩、エステル、N−酸化物などの如きそれらの生理学的に許容される誘導体は、生理学的に許容される希釈剤中に、医薬担体を有し又は有さず、溶液、懸濁剤、又は乳化剤として作られ、そして適用される。
【0070】
本発明における他の方法において、当該活性化合物は、媒体中に、特にリポソーム中にデリバリーされ得る(Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treat et al.,in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−Berestein and Fidler(eds.),Liss,N.Y.,353〜365ページ(1989);Lopez−Berestein ibid.,317〜327ページを参照のこと。)。
【0071】
薬物中に使用するために、当該抗腫瘍化合物の塩は、医薬として許容される塩であり得る。しかしながら、他の塩は、本発明における当該化合物又はそれらの医薬として許容される塩の製造において有用となり得る。当該化合物の好適な医薬として許容される塩は、例えば、本発明における化合物の溶液を医薬として許容される酸の溶液で混合することにより形成される酸付加塩を含む、ここで当該医薬として許容される酸の溶液は、例えば、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸又はリン酸である。
【0072】
一般的に、NM404は、いくつかの腫瘍治療法の治療反応を測定するための有望な新腫瘍選択的診断用造影剤である。第2世代リン脂質エーテル類似体である放射性ヨウ化NM404は、10/10異種移植腫瘍モデルにおいて、及びより最近では他の14/14自然発生のげっ歯類腫瘍モデルにおいて顕著な腫瘍選択性を示す。このアプローチの有力な仮説は、腫瘍細胞の膜における代謝性ホスホリパーゼ酵素の欠如に起因して、リン脂質エーテル類似体が代謝され除去されないせいで腫瘍細胞の膜に独占的に捕捉されるというものである。それ故、正常細胞由来のリン脂質エーテル対明らかに生存腫瘍細胞由来のものの示唆クリアランスの比が、この概念の根拠を形成する。様々な腫瘍モデルにおいて得られた結果は、NM404が生存腫瘍細胞により隔離され、選択的に保持され、そして、リンパ節に見られる病巣を含む解剖学的位置にもかかわらず、一次病巣及び転移病巣の双方に局在することを示す。FDGとは異なり、この剤は、感染部位に局在しない。FDG以上のNM404の他の利点は、NM404は、悪性腫瘍により選択され、そして無制限に保持される一方、FDGは、腫瘍細胞選択的ではなく、感染部位及び過形成(バレット食道)へ向かう。
【0073】
さらに、124Iは4日間の物理的半減期を有するので、世界中のどこにでも出荷され得るが、一方、110分の半減期であるFDGは、製造地の200マイル以内の限定流通となる。NM404は長期の残存(代謝されない)に耐え、そしてそれ故、131Iのような適切な放射性同位体と結合されるとき重要な治療可能性を提供するが、一方、FDGは治療可能性を有さない。NM404は様々なヨウ素同位体で標識され得、汎用性(診断、及び治療、並びに実験動物研究用道具)を広げ、一方、FDGは、PETスキャン用の18F、又は非常に低い感受性レベルにもかかわらず、磁気共鳴映像法用の潜在的に19F(安定)に限定される。その腫瘍標的能力にもかかわらず、腫瘍細胞内のその素早い代謝作用に起因して、治療のための潜在性はない。NM404は、様々な治療方法のために局所的腫瘍応答を正確に予測するだけでなく、治療量以下の原発腫瘍処置の場合における遠隔転移病巣の検出をも可能とする潜在性を提供する。
【0074】
II.本発明
本発明は、様々な癌の検出及び治療のための方法及び技術を広く提供する。ある好ましい態様において、本発明は、癌である又はその疑いのある患者において、肺癌、副腎癌、黒色腫、結腸癌、結腸直腸癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、皮下癌、腸癌、肝細胞癌、網膜芽腫、子宮けい癌を検出し、かつ、部位を特定する方法を提供する。当該方法は、以下のステップ:
(a)リン脂質エーテル類似体を当該被験者に投与する;
(b)当該被験者の癌があると疑われる器官が、周囲領域よりも高いレベルの当該類似体を保持するかかどうか測定する、を含み、ここで、より高い保持領域は癌の検出及び位置を示す。
【0075】
この方法において、当該リン脂質類似体は、以下の:
【化3】

{式中、Xは、ヨウ素の放射性同位体からなる群より選択され;nは、16〜30の整数であり;及びYは、NH、NR、及びNRを含む群より選択され、ここで、Rは、アルキル又はアリールアルキル置換基である。}又は
【0076】
【化4】

{式中、Xは、ヨウ素の放射性同位体であり;nは、16〜30の整数であり;Yは、H、OH、COOH、COOR、及びORからなる群より選択され;及びZは、NH、NR、及びNRからなる群より選択され、ここで、Rは、アルキル又はアリールアルキル置換基である。}
から選択される。
【0077】
この方法において、Xは、122I、123I、124I、125I、及び131Iからなるヨウ素の放射性同位体の群より選択される。
【0078】
好ましくは、この方法において、当該リン脂質エーテルは、18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル ホスホコリン、1−O−[18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル]−1,3−プロパンジオール−3−ホスホコリン、又は、1−O−[18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル]−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホコリンであり、ここでヨウ素は放射性同位体の形態である。
【0079】
様々なリン脂質エーテル及び当該リン脂質エーテル化合物の関連する製造方法及び使用は、米国特許第4,925,649号;同第4,965,391号;同第5,087,721号;同第5,347,030号;同第6,255,519号及び同第6,417,384号に記載され、それらの全内容を本願明細書中に援用する。
【0080】
他の態様において、本発明は被験者の癌の治療方法を提供する。当該方法は、上記のように、リン脂質エーテル類似体を含む有効量の分子を前記被験者に投与することを含む。
この方法において、当該癌は、肺癌、副腎癌、黒色腫、結腸癌、結腸直腸癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、皮下癌、腸癌、肝細胞癌、網膜芽腫、子宮けい癌、神経こう腫、乳癌、すい臓癌、癌肉腫、及びProstrate癌からなる群より選択される。
【0081】
本発明は、癌の当該治療用医薬組成物の製造のためのリン脂質エーテル類似体の使用をも企図する。これらのリン脂質の類似体は、上記の群から選択される。
【0082】
さらに、本発明の他の態様は、被験者において、新生組織形成と、炎症、腺腫、過形成を識別する方法を提供する。当該方法は、以下のステップ:
(a)リン脂質エーテル類似体を当該被験者に投与する;及び
(b)炎症、腺腫、過形成又は新生組織形成の疑いのある当該被験者の器官が、周囲領域より高いレベルの当該類似体を保持するかどうか測定する;
を含む。当該被験者がより高い保持領域を有するとき、それは新生組織形成の検出及び位置を示し、及び、当該被験者がより低い保持領域を有するとき、それは当該腺腫、過形成又は炎症を有する疑いのある器官の存在を示す。
【0083】
本発明の他の態様は、ホスホリパーゼD(PLD)を有する組織サンプル中の新生組織形成を検出する方法を提供する。当該方法は、以下のステップ:
(a)当該組織サンプル中のPLD蛋白質活性レベル又はPLDmRNAレベルを定量化する;及び
(b)当該組織サンプルが周囲の組織領域より低い蛋白質活性レベルであるかどうか測定する、ここでより低い活性領域は新生組織形成の検出及び位置を示す、又は
(c)当該組織サンプルが周囲の組織領域より低いmRNAレベルであるかどうか測定する、ここでより低いmRNAレベル領域は新生組織形成の検出及び位置を示す、
を含む。
【0084】
この方法において、当該PLD蛋白質活性又はmRNAレベルは、当該組織サンプルと当該PLE類似体との接触により定量化され、ここで当該PLE類似体は、上記のような類似体である。
【0085】
さらに、本発明の他の態様は、以下のステップ:
(a)PLD蛋白質活性レベル又はPLDmRNAレベルを定量化するステップであって、ここで周囲の組織領域と比較して低減されたPLD蛋白質活性又は低減されたmRNAのレベルが、新生組織形成を示す、
を含むPLDを有する組織サンプルをスクリーニングする方法により選択される抗腫瘍薬を提供する。当該PLD蛋白質活性又はmRNAレベルが、当該組織サンプルとPLE類似体との接触により定量化され、ここで当該PLE類似体は、上記の通りである。
【0086】
以下の章は、いくつかのリン脂質エーテル化合物にのみ関連する使用及び方法を議論するが、しかしながら、そのような使用は、例示的なものであり、本発明の範囲を狭くみなすべきではない。
【0087】
例えば、NM404リン脂質エーテルは、腫瘍性組織に対して著しい特異性を実証するが、しかし、多くの実験的腫瘍モデルにおける前癌組織についてはそうではない。NM404の高い腫瘍対バックグラウンドの親和力及び腫瘍選択性は、NM404が治療における腫瘍画像化について、18F−FDG PETスキャンよりも潜在的に優れているかもしれないこと提示する。当該NM404の腫瘍特異性の正確なメカニズムは、調査中であり、そして現在のところ、18F−FDG取り込みのためのグルコースの利用メカニズムと同様に記載されない。腫瘍性組織におけるNM404の取り込みがその組織の生存に依存するのか、又はこの取り込み現象は、組織の生存とは独立して、膜又はマトリクス成分に関連するのかは、はっきりと確立されていない。もしこの取り込み及び特異性が腫瘍の生存に関連するならば、放射線により滅菌されたばかりの腫瘍内へのNM404の取り込みは、存在しないか僅かとなり、一方、放射線耐性の腫瘍は連続した取り込みが見られることになるだろう。最近、発明者等は、ヌードマウスにおける放射線感受性及び放射線耐性の双方の扁平上皮癌(SCC1及び6)において、NM404が取り込まれ、及び消え去ることを示した。そのような試験は、放射線療法で治療される患者を管理するのに非常に有益となるだろう、というのは、処置後のNM404の局在の無いことを明確に示す患者は治癒を示すだろうし、一方、耐性腫瘍(NM404の継続取り込み)を有する患者は、他の非放射線療法選択の余地(外科、化学療法)などを提案され得るからである。
【0088】
感受性がよく、より入手可能な画像試験の開発へのあるアプローチは、所望の標的組織に放射性医薬品プローブを選択的にデリバリーすることを可能とする担体分子を設計することである。本発明者等のアプローチは、高度な組織又は腫瘍選択性を示す分子の固有の生物化学的又は薬理学的特性を十分に利用している。
【0089】
Snyder及び共働者16,17は、様々な動物及び人間の腫瘍細胞は、正常な組織よりも当該細胞膜におけるより高い濃度の自然発生的なエーテル脂質を含むことを観察した。彼は、腫瘍中のエーテル脂質の蓄積は、重要な代謝酵素の欠如に起因するこれらの脂質を代謝するための腫瘍細胞の弱い能力の結果であることを提案した。本発明者等は、潜在的な腫瘍選択的造影剤として、多くの放射性ヨウ化リン脂質エーテル(PLE)類似体を合成することにより、この観察を十分利用した。これらのPLE類似体のいくつかは、局在するための著しいそして明らかに普遍的な能力を示し、そして広範囲の自然発生的及び移植されたラット、マウス及びヒト腫瘍モデル(24/24)により選択的に保持された。
【0090】
本発明者等の有力な仮説(図1)は、リン脂質エーテルが、代謝及び除去されないために、生存腫瘍細胞膜に捕捉されることを示す。放射性ヨウ化リン脂質エーテル投与後の腫瘍の摘出は、そのままの当該薬剤のみの存在を示し、一方、尿及び糞の分析は、代謝産物のみを示した。それ故、この概念の根拠を形成するものは、正常細胞対腫瘍細胞に由来するリン脂質エーテルの異なる示唆クリアランス比である。
【0091】
24を超える移植片及び自然発生的腫瘍モデルにおいて得られた中間集計は、NM404が腫瘍内に選択的に取り込まれ、そして長期保持を受けることを一般的に示す。当該薬剤は肝臓内において、ある程度代謝されるので、本発明者等は、高い肝臓のバックグラウンド放射活性レベルに起因して、肝臓腫瘍モデルにおける早期化合物評価を避けた。さらに、NM404はその前身より低い肝臓のバックグラウンドレベルを有するので、本発明者等は、HCCを有する患者の画像化は問題がある事実を考慮して、肝臓腫瘍中の評価を拡張した。多数の患者は潜在的な肝硬変を有し、そしてそれ故、断面画像上のHCCから再生結節を識別するのは困難である。さらに、FDGでのPETスキャンを評価する予備調査は、当該疾患を検出するに際し、たった20〜50%の感受性のみを示す。Verhoef C,Valkema R.et al.,Liver(2002)22:51−56。
【0092】
さらに、PET−FDGは、脳の診断的スクリーニングにおいて有用ではない。同様に、FDGは、肝細胞による高い自然な取り込みに起因して、肝臓内の疾患を評価するのに有用ではない。
【0093】
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を示し、及び例証目的のみである。これらの実施例は、本発明の範囲を狭くみなすべきではない。
【実施例】
【0094】
III.実施例
A.実施例I:合成、放射性同位体標識法、及びNM404の製造
本発明の合成アプローチは、アルキル鎖伸長のためのトシル酸アルキル又はハロゲン化物と共にグリニャール試薬の銅触媒によるクロスカップリング反応(下記スキーム参照のこと。)に基づいた。当該合成をp−ヨードベンジル アルコール 1から出発し、トリメチルシリル ブロマイドとの反応により、p−ヨードベンジル ブロマイド 2に転換した。p−ヨードベンジル ブロマイド 2を、触媒としてLiCuCl存在下において、さらにグリニャール試薬 3とカップリングした。当該第1カップリング生成物 4の脱保護の後、得られた12−(p−ヨードフェニル)ドデカノール 5を、トシレート 6に転換した。次のステップにおいて、トシレート 6を、6個の炭素原子を含むグリニャール試薬 7とカップリングし、そして、当該鎖伸長過程を終了した。8のTHP脱保護により18−(p−ヨードフェニル)オクタデカノール 9を得た。そして当該スキームに示されるような2ステップ方法により10(NM−404)に転換した。
【0095】
【化5】

【0096】
さらに、以下の方法により、もしヨウ素ならば、124I、125I、及び131Iを含む、いずれかの同位体でNM404を標識化する高速高収率合成方法を実施した。
【0097】
第1、アルミニウム加熱ブロック装置を145°まで事前に加熱し、そして、曲がった1.5インチ18ゲージの使い捨て注射針、及びゴムの隔膜を頂点に取り付けた5mlの使い捨て注射筒を使用して、コンデンサーを製造した。
【0098】
第2、当該HPLCシステムを起動し、当該容器をろ過された脱気溶液(ヘキサン/イソプロパノール/水の40:52:8)で満たした。当該システムを平衡化し、その後、当該ポンプ、検出器、チャート式記録計、及びコンピューター積算器の如き付属のシステムの系統的点検をした。
【0099】
第3、底にグラスウールプラグを使用し、シリンジを2.5mLの粒状炭で満たし、他のグラスウールプラグを追加し、そして頂点に隔膜を挿入して、3mlの使い捨てシリンジ炭トラップを製造した。当該炭トラップを当該コンデンサーの頂点と接続し、チオ硫酸ナトリウム・トラップを通して空気を放出した。
【0100】
第4、硫酸アンモニウムの5mgを、2mlのホウケイ酸ガラスのvバイアル中の20μLの脱イオン水に添加し、その後、当該バイアルに、20μlの無水エタノール中の非標識NM404の20μgを添加した。当該バイアルを穏やかに回転し又は軽く叩いて混合を確実にし、そして6ホウケイ酸ガラスビーズ(3mm)も当該バイアルに加えた。次いで、当該バイアルを、テフロン(登録商標)被膜されたブチルラバー隔膜、及びアルミニウム・クリンプキャップで封をした。当該隔膜に18ゲージ針で穴を開け、そして所望の量の水性131ヨウ化ナトリウム(0.1NのNaOH中、典型的には15μl中5mCi)を、当該隔膜を通してハミルトン・マイクロシリンジを経由して添加した。当該バイアルを、再度穏やかに回転し又は軽く叩いて混合を確実とした。当該バイアルを、ドーズキャリブレータで分析した。
【0101】
第5、当該活性炭トラップシリンジを、反応バイアル中に挿入し、そして当該反応バイアルを加熱ブロック(砂が半分まで入っている)の中に十分に降ろした。当該反応バイアルを、当該溶媒の大部分が蒸留され、そして濃縮器内で濃縮される間、145℃で40分間加熱した。空気の流れ(4×25ml)を、25mlシリンジで当該バイアルにゆっくり注入した。当該反応バイアルの温度を、155℃に増大し、そして加熱をさらに30分間続けた。当該反応バイアルを、当該ブロック・ヒーターから除去し、そして当該濃縮器/トラップ集合を、接続を断ち及び処分し、そしてバイアルを室温まで冷やしておいた。
【0102】
第6、無水エタノールの0.5mlを、当該反応バイアル中に添加した。当該バイアルを穏やかに回転し、当該ドーズキャリブレータ中で分析した。
【0103】
第7、粗標識化製造混合物の放射性TLC分析を、シリカゲル(クロロホルム/メタノール/水(65/35/4))上で実施した。
【0104】
第8、アンバーライトIRA400-OH樹脂カラムを、5mlのabs中における1.0gの樹脂をアルコールに30分間予め浸すことより準備した。エタノールを移し、そして当該樹脂を、2つの追加5ml部分のエタノールで洗浄した。当該湿潤樹脂を、底にガラスウール・プラグを有し並びにAcrodiscフィルター及び1方活栓を取り付けた3mlの使い捨てシリンジバレル中に添加した。当該放射性ヨウ化生成物のエタノール溶液を、当該樹脂カラムを通して徐々に溶出した。
【0105】
第9、隔膜を挿入し、そして当該溶液を、窒素の流れで吹き飛ばした。窒素流を開始する前に、当該バイアルの出口に活性炭シリンジを装着した。一旦乾燥し、50μlのエタノールを使用して希釈し、そして300μlのvバイアルに内容を移した。当該元のバイアルを、50μlのエタノールで2度洗浄し、そして当該vバイアル中に移した。
【0106】
第10、HPLCポンプを安定させ、そして、1.0ml/分の溶液流を確保した。当該反応混合物を、1.0ml/分で、ヘキサン/イソプロパン/水(40:52:8)により溶出されるパーキンエルマーのカートリッジ・シリカゲル(4.3×33mm、3μmシリカ)上のHPLCにより精製した。ピーク検出を、230及び254でのUV、及び放射活性により実施した。いったん、当該適切な頂点を滅菌バイアル中に回収し、放射性TLC分析のための僅かなサンプルを除去し、そして当該残存溶液を窒素流で蒸発し、乾燥残留物として当該所望の化合物を得た。非活性度を必要に応じて計算した。
【0107】
第11、ポリソルベート20を、0.1μl/1.0μgNM−404の比率で、無水エタノール中の5%ポリソルベート20の原液から当該フラスコに添加した。ポリソルベート20は、NM404での人間及び動物実験の双方に現在使用されるTween20の医薬品グレードである。当該溶液を、10分間、<30℃で、回転式蒸発により除去した。当該残留物を、滅菌水中に混合することで溶解し、2%のポリソルベート20溶液を得た。当該配合生成物を、滅菌0.2μmのPall−Gelman Acrodiscフィルター(13mm)を通し、他の滅菌0.2μmのフィルターで通気される乾燥し滅菌したマルチドーズバイアル(Hollister−Stier)に入れた。100μlの生成物溶液をQC分析のためにバイアル中に分けた。
【0108】
第12、放射活性を、当該ドーズキャリブレータで測定し、品質管理試験(滅菌、無発熱原性)を実施した。
【0109】
全ての非標識NM404を、研究間の潜在的な合成の相違を最小化するために、厳しい毒性試験を受けたばかりの最初の貯蔵バッチから取り出した。NM404の放射性ヨウ素化を、発明者等19により開発されたピバル酸の溶解における同位体交換反応により、又は本明細書中に記載の新たな方法により実施し、そして発明者等22により記載される標準方法における注入の準備をした。この方法を、NM404の前身であるNM324での初期臨床試験用の滅菌材料の製造のために効果的に使用し、125I及び131Iで標識されたNM404を製造するために40回超使用した。一般的に、精製及びHPLCによる厳しい質量定量化の後、放射性医薬品を、無水エタノール(50〜500μl)及びポリソルベート20(化合物の0.1μl/μg)中に溶解した。当該エタノールを、真空下除去し、そして当該残留物を、滅菌水に溶解し、2〜3%以下のポリソルベート20を含む最終溶液を得た。滅菌を、滅菌0.2μmのフィルターユニットを通したろ過により実施した。最終放射化学的純度は、動物に使用する前に97%超でなければならない。最終的な特異活性の定量化及び計算を、知られた質量標準を使用するHPLC分析により実施し、放射性活性(125I)の定量化を、減衰懸念を避けるための希釈及びPE Wallac ガンマ・カウンターにおいて計算することにより実施した。131Iを含む高エネルギー同位体の定量を、これらの同位体のための設定で作られたドーズキャリブレータで実施した。放射性ヨウ素化NM404の100μgあたりの1mCiの特異的活性を、典型的に達成した。注入量は、通常、1匹のマウスあたり、およそ100μlである。
組織分布データを、組織グラムあたり注入される用量(+SEM)パーセントとして示し、そして、発明者ら22により確立され刊行された方法により全組織が計量されるときの組織あたりの注入される用量パーセントとしても示した。各時点において、腫瘍対組織の比を、組織基準のグラムあたりの注入用量のパーセントに基づいて計算した。
【0110】
一般的組織分布分析
生体内分布試験を、発明者等27により開発された標準方法における雌のマウスにおいて実施した。放射性ヨウ素化されたNM404(100μl中5μCi)を、尾静脈注射経由で投与した。所定の時点において、動物(3/時点)を、ペントバルビタール麻酔中に、放血により安楽死させた。血液、血漿、副腎、膀胱、骨髄、脂肪、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、脾臓、卵巣、皮膚、甲状腺、及び腫瘍を含む総16組織を、摘出し、洗浄し、そして異質な組織が無いように解剖した。大きな組織を細分化し、そしてそっくり同じ組織サンプルは、重さを量られ、同位体計測用プラスチックチューブ内に置かれるだろう。注入部位及び残骸の放射活性をも、同様に計測した。これらの標準方法は、適切な動物の世話及び放射線安全認可の下、本発明者等の研究所において多数年にわたり利用される。組織分布図を、注入された用量/gのパーセント、%kg用量、及び注入された用量/器官+SEM基準のパーセントに基づいて減衰補正される組織放射活性濃度を作成するコピュータープログラムにより作成した。各時点において、腫瘍対組織の比を、組織基準のグラムあたりの注入された用量パーセントに基づいて計算した。全ての治療上の処方計画のための比較TD図を確立するために、対照TD試験(3マウス/時点、15総マウス)を、4、7、14、21、及び28日で最も多くのNM404注入される腫瘍を有するマウスに関して実施した。
【0111】
一般的画像プロトコール
尾静脈注入経由で125I−NM404(10μCi)を受け、そしてその後の所定の時点での動物を、麻酔(ペントバルビタールナトリウム麻酔、0.06mg/g bw)し、そして、マウス画像化のために改良されたBioscan AR2000放射性TLCスキャナー(1mmの高解像度コリメータ/レーンあたり1分の補足時間/1mmのレーン増大)を使用して、核医学検査を受けさせた。データを、BioscanのWinscan 2Dソフトウェアを使用して、定量し与えられた。いったん摘出されると、対照及び治療された腫瘍も、全身性の放射性各種減衰を除去することにより、より厳密なROI分析を受けるために、当該Bioscanユニットにおいて生体外でスキャンした。動物(ペントバルビタールナトリウム麻酔、0.06mg/g bw)は、中分解能取得パラメータを使用するマイクロCTスキャン(Imtek マイクロCAT I、390ステップ取得/43Kvp/410マイクロA)を受けた。データセットを、AMIRA 3D視覚化ソフトウェアで3次元的に再構築し、そして視覚化した。当該ソフトウェアは、ROI密度分析、及び便利な画面上測定を可能とする。
【0112】
B.実施例II:第1世代のPLE類似体を有する前臨床試験
リン脂質エーテルは、発明者等19により開発された同位体交換法を使用して、ヨード放射性同位体元素で容易に標識され得る。各分子に加える放射性ヨウ素は安易な生体内脱ヨード化に対して安定となるために、当該ヨードフェニルリン脂質エーテル類似体は特異的にデザインされる。20超の放射性標識化PLE化合物を合成し、そして生体外及び生体内で試験した20〜22。これらの2つ、すなわちNM294及びNM324[12−(3−ヨードフェニル)−ドデシル−ホスホコリン]は、動物の腫瘍局在性試験において最も見込みのあることを当初示した。ヨウ素−125で標識される、これらの原型化合物は、以下の動物腫瘍モデルにおいて、時間とともに腫瘍内に選択的に局在した;当該動物腫瘍モデルは、1)Walker256癌肉腫を有するSprague−Dawleyラット;2)乳腺腫瘍を有するLewisラット;3)Dunning R3327前立腺腫瘍を有するコペンハーゲンラット;4)Vx2腫瘍を有するラビット;及び5)ヒト乳房腫瘍(HT39)、小細胞肺腫瘍(NCl−69)、大腸腫瘍(LS174T)、卵巣腫瘍(HTB77IP3)、及び黒色腫腫瘍を有する胸腺欠損マウスである。これらの薬剤の最適な腫瘍局在は、1〜数日間である。
【0113】
PLE類似体を有する機構研究
NM324及びNM404は、ミルテホシン(ヘキサデシルホスホコリン)に似た構造であり、欧州において最も広範囲に研究される抗腫瘍エーテル脂質である。ミルテホシン及びいくつかの他の抗腫瘍リン脂質エーテル類似体の抗腫瘍特性は、前立腺、膀胱、及び奇形の癌、マウス及びヒトの白血病、並びに結腸、卵巣、脳、及び乳癌を含む広範な腫瘍細胞系において実証される23。多くの抗癌剤と対照的に、これらのリン脂質エーテル類似体は、DNAに直接的に結合せず、そして変異原性ではない。作用の正確な抗増殖性機構は立証されていないけれども、それらは、明らかにいくつかの腫瘍細胞部位で作用する。これらの化合物は、輸送、サイトカイン生成の促進、アポトーシス誘導、そして様々な重要な脂質代謝及び大部分が細胞膜に局在する細胞シグナル酵素の障害を含む様々な細胞効果に関連する。細胞内への取り込み方法に関して議論はあるけれども、報告書の大半は、これらのエーテル脂質が直接的に、それらが蓄積する細胞膜内に吸収されるという考えを支持する。広く受け入れられる信念は、これらの薬剤が、膜のリン脂質代謝を摂動することにより作用するということである;しかしながら、これらの薬剤での細胞分布研究は、均質化及び細胞下分画手順の間、自然発生的な細胞区画の再分配により制限される。本発明者等が使用したトレイサー画像化剤(数μg)と対照的に、抗腫瘍効果は、一般的に過度な1日あたり300〜1000mgを超える投与量でしか見られない。
【0114】
形式的な代謝作用試験を、NM404の前身であるNM324を含むいくつかのPLE類似体で実施した。これらの研究において、各剤を、PLE代謝作用に関連する酵素のための基質としての機能を果たすそれらの能力を測定するために試験した。図24に示されるように、3つの主な酵素経路は、PLEの代謝作用に関係する。O−アルキル グリセロール モノオキシゲナーゼ(AGMO)は、長鎖脂肪アルコールか、その後対応する脂肪酸のいずれかを形成するためのC−1でアルキルエーテルの連結の開裂に関与する。反対に、ホスホリパーゼC(PL)及びD(PL)は、グリセロール又はホスファチジン酸の生成物を、それぞれ生じさせる。ミクロソームAGMO酵素の生成を使用するとき、NM324は、[H]−リソ−PAF(血小板活性化因子)と比較したとき、この酵素の基質ではなく、広範囲に代謝された。同様に、NM324を、セレウス菌から単離されるPLの基質として分析し、1−パルミトイル−2−[3H]−パルミトイル−L−3−ホスファチジルコリン(DPPC)と比較して加水分解せず、そしてそれは顕著な加水分解を受けた。
【0115】
最後に、いくつかのPLE類似体が、PL分析に供された。キャベツから単離されたPLは、キャベツ型が、ホスファチジルエタノール型生成物、さらに、当該酵素反応がエタノールの存在下で実施されるときホスファチジン酸を得るという点において、哺乳類のPLと同類である。これらの分析条件に供されるいくつかのPLE類似体は、PLとの相互作用可能性を誘導する、ホスファチジルエタノール付加化合物を生じる。
【0116】
いくつかのNM404前駆体を、Walker腫瘍細胞、ラット筋肉(H9c2)、及びラット肝細胞を含む様々な細胞系における生体外代謝試験にも供した。これらの試験において、代謝の程度を、様々な時間で培養後に形成される放射性標識生成物に基づいて測定し、当該結果を、細胞数又は細胞蛋白質量に対して標準化した。続いて、培養培地及び細胞懸濁液の脂質抽出物は、Walker腫瘍細胞におけるPLE代謝産物の産生がほとんどないことを立証した、一方、48時間超の期間試験された筋肉細胞、及び肝細胞の双方において、代謝産物の顕著な生成が見られた。これらの結果は、全類似体に関して完成される生体内の生体内分布と密接な関連がある。いくつかの試験が完成させているけれども、腫瘍細胞において放射性標識されたPLE類似体の取り込み及び保持における、代謝的捕獲の役割はうまく定義されず、そして現在のところ、研究の活動領域として残っている。
【0117】
NM324の臨床評価
いくつかの有望な第1世代PLE類似体の内、NM324はより容易に合成され、それ故、初期臨床試験のための主要化合物として選択した。5人の肺癌患者から得られた画像は腫瘍を検出したけれども、高い肝臓の放射活性が画像を複雑にした(図2)。
【0118】
第2世代PLE類似体
肝臓の取り込みを低減し、そしてプラズマ相を長引かせるために、NM324の9つの構造類似体を合成し、そして、Dunning R3327前立腺腫瘍を有するコペンハーゲンラットにおける初期の画像分析のために125Iで放射性標識した。この初期スクリーンに基づいて、NM347、NM404[18−(4−ヨードフェニル)−オクタデシルホスホコリン]、及びNM412(図3)を、動物腫瘍細胞において、さらに画像化及び細胞内分布分析に供するために選択した。
【0119】
さらに動物モデルにおけるNM404及びNM412を有する最近の画像化試験は、様々な腫瘍を視覚化することにおいて当該双方共にNM324より優れていることを示した。重要なことに、NM404又はNM412のいずれかの静脈投与後の転移性前立腺腫瘍モデルにおいて、リンパ節転移を明らかに描写した。最も重要なことは、当該トレーサーは、関与しないリンパ節により保持されなかったことである24(図4A)。前立腺モデルにおいて実施されるけれども、この結果は乳癌に特に関し、ここでリンパ転移はそのような重要な予後指標である。ヒトA549 NSCLC腫瘍を有するSCIDマウスにおいて実施される予備試験は、有望であり、そして、NM404が肝臓によるNM324の高い初回通過の一掃問題を克服することを実証した。NM404は、NM324と比較して最小限の肝臓及び腎臓の取り込みに関して、特に遅延像において著しく優れた、腫瘍の視覚化を示す(図4)。組織生体内分布研究は、当該腫瘍に残留する高レベルの放射活性をさらに確認した。画像化の結果は、NM404及びNM412で似ていたけれども、ラットにおいて得られた線量測定データから、NM412と比較してNM404の方がより低い腎臓の用量であることが明らかとなり、それ故、NM404を更なる研究のために選択した。前立腺及びA549肺癌を有するSCIDマウス腫瘍モデルにおけるNM324とNM404との比較生体内分布データは、高度腫瘍組織対正常な組織の比、及びNM404の注入量の25%超の腫瘍取り込みを明らかとした。
【0120】
広範な腫瘍モデルにおける取り込みの特徴を測定することを目的としたマウスモデルにおいて実施される動物の画像化試験の概略を、表1に示す。B6APCMin/+マウスにおける予備段階の結果は、NM404は腺腫性ポリープにより取り込まれず、しかしこのモデルにおける乳腺腺癌により取り込まれ保持されることを示し、それ故、悪性腫瘍細胞に対する可能性のある特異性を示す。これらの試験は、非侵襲的に特徴付けられる腫瘍に対するNM404の潜在性を測定することを目的とする。NM404は、研究された全腺癌モデルにおいて優位な腫瘍取り込み及び保持を表示する。
【0121】
【表1】

【0122】
CT26マウス腫瘍モデルの関連性
発明者等は、マウスの側面に皮下CT26細胞の接種を有するマウス(BALB/cマウス)モデルにおける腫瘍応答の前兆として、NM404を検討した。当該CT26細胞系は、僅かな分化型マウス腺腫であり、BALB/cマウスのN−ニトロソ−N−メチルウレタンの直腸注入により誘導されるものである。当該細胞系は、生体外で育てやすく、脈管構造(尾静脈注入、転移モデル)又は皮膚(図5)又は肝臓25、26に注入したとき、予想可能な成長パターンを得る。当該細胞系は結腸直腸癌に由来するので、このマウスモデルはこれらの研究として高く臨床的に関連する。
【0123】
CT26腫瘍におけるNM404を有する予備的画像結果
NM404が皮下CT26移植片に局在することを示すための予備試験において、2匹の動物を125I−NM404(10μCi)で注入(尾静脈)し、その後、注入後1、4、及び7日後に、改良バイオスキャンAR2000放射性TLCスキャナー(高解像度1mmコリメータ、並びに2−D取得及び分析ソフトウェアを装備)で画像化した。7日目において、当該動物を安楽死させ、当該腫瘍を除去し、写真を撮り、そして生体外でバイオスキャンによりスキャンした(図6)。生体外スキャンは、ヨウ素−125に関連する深刻な組織減弱作用に起因して本発明者等の研究所において標準的なプロトコールである。各動物は、安楽死及び当該腫瘍の解剖の前に、7日目において、マイクロCTスキャンをも受けた(図7)。病巣のホットスポットは、生体外バイオスキャン画像における全腫瘍と視覚的に相関する(図6)。リンパ節が視覚化されるけれども、腫瘍細胞の浸潤を示すそれらと放射活性を関連付けるものはなかった。図6及び7における主な腫瘍を腺癌として組織学的に分類した。本発明者等は、マイクロCTにより広範な皮下腫瘍をスキャンし、そして全ては、直径300ミクロン未満まで、非常に容易に検出可能である。
【0124】
皮下マウスCT26腫瘍の初期RF除去は成功し、そして、H&E着色で処理された部分において、細胞膜の欠如により示されるような重篤な細胞損傷の結果をもたらした(図8)。
【0125】
C.実施例III:非小細胞肺癌
画像化及び生体内分布の試験を、ヒトNSCLC腺癌A549細胞系(腺腫は、最も頻繁に起こるヒト肺癌組織型である。)を有するSCID(重症免疫不全変異株)マウスにおいて、実施した。予備試験は、5匹の動物を発育させ、当該新たな薬剤NM404がNM324化合物の限界を克服することを示した結果をもたらした。NM324をよく取り込む腫瘍もあるが、肝臓による高い初回通過の一掃により障害となる。しかしながら、NM404は、最小限の肝臓及び腎臓の取り込みに関して、特に遅延像において著しく優れた、腫瘍の視覚化を示す。さらに組織生体内分布研究は、当該腫瘍に残留する高レベルの放射活性をさらに確認した。SCIDマウス−ヒトNSCLCモデルにおけるNM324とNM404画像の比較を図4に示す。NM404の肝臓、腎臓、及び腸の活性の比較的少ないことは、優れた腫瘍視覚化と一体となったことに留意する。画像化の結果は、NM404及びNM412で似ていたけれども、ラットにおいて得られた最近の線量測定データから、NM412と比較してNM404の方がより低い腎臓の用量であることが明らかとなり、それ故、NM404を更なる研究のために選択した。
【0126】
いくつかの腫瘍モデルにおける原型薬剤である125I−NM324の広範な生体内分布データは、以前に蓄積されている。Counsell RE,Schwendner SW,Meyer KL,Haradahira T,Gross MD.Tumor Visualization with a radioiodinated phospholipid ether.J Nucl Med 31(3):332−336,1990;Plotzke KP,Fisher SJ,Wahl RL,Olken NM,Skinner S,Gross MD.Counsell RE.Selective localization of a radioiodinated phospholipid ether analog in human tumor xenografts.J Nucl Med 34(5):787−792,1993;Rampy MA,Brown RS,Pinchuk AN,Weichert JP,Skinner RW,Fisher SJ,Wahl RL,Gross MD,Etheir SP,Counsell RE.Biological disposition and imaging of a radioiodinated alkylphosphocholine in two rodent models of breast cancer.J Nucl Med 37(9):1540−1545,1996。
【0127】
8:1を超える腫瘍対血液の比が、注入後の遅延時で見られた。例えば、ラット乳腺腫瘍モデルにおいて、腫瘍対正常組織の比は、8:6の腫瘍対血液の比、及び20:1の腫瘍対筋肉の比となり96時間で最大に達した。Rampy MA,Brown RS,Pinchuk AN,Weichert JP,Skinner RW,Fisher SJ,Wahl RL,Gross MD,Etheir SP,Counsell RE.Biological disposition and imaging of a radioiodinated alkylphosphocholine in two rodent models of breast cancer.J Nucl Med 37(9):1540−1545,1996。
【0128】
さらに、PLEに関連する放射活性の生体内分布は、マイクロ・オートラジオグラフィー試験により示されるように腫瘍における異質成分である、ここで当該オートラジオグラフィー試験は、PLE放射活性が、中央の壊死領域よりもむしろ外側の領域に局在する生存腫瘍細胞中に独占的に残存することを示す。Rampy MA,Brown RS,Pinchuk AN,Weichert JP,Skinner RW,Fisher SJ,Wahl RL,Gross MD,Etheir SP,Counsell RE.Biological disposition and imaging of a radioiodinated alkylphosphocholine in two rodent models of breast cancer.J Nucl Med 37(9):1540−1545,1996。
【0129】
SCIDマウスにおけるNM324とNM404との比較生体内分布データは、今までのところ、前立腺及びA549肺癌腫瘍モデルにおいてのみ実施される。これらの試験は、高い腫瘍対正常な組織の比、及びNM404の注入量の25%超の腫瘍取り込みを明らかとした、それ故、さらに自然発生腫瘍モデル及びヒトにおいてPLE類似体の生体内分布を研究する我々の望みを支持する。
【0130】
NM324に対するNM404の比較感受性に取り組むさらなる試験を、SCIDマウスA549肺癌モデルにおいて実施した。各動物の肺を、各薬剤の同量の投与後10日で摘出し、解像度を上げるために1時間の間、生体外で画像化した。図23に示される低解像度及び高増幅画像は、NM404で画像化される、及びNM324におけるほとんど取り込まれない又は全く取り込まれない動物の双方の肺において病巣の放射活性の存在を明らかとした。続いて、病理学的分析は、全4動物における小さなA549のミクロ転移(直径1mm未満)の存在を確証した。NM404マウスの計数率は、対応するNM324の2.5倍超であり、再度、NM324を越えるNM404の優位性を示した。
【0131】
腫瘍標的戦略は時間をかけて選択的な腫瘍保持に関係するようであることを理由として、18F又は99mTcの如き比較的短命の核種は、今日、標識として実用的ではないようである。しかしながら、ヨウ素の放射性同位体で独占的に標識されるモノクローナル抗体の早期使用と同様に、ヨウ素−124の如き他の標識でPLE類似体を標識することが、将来可能となるかもしれない、ここで、物理的半減期は、PLEの腫瘍取り込みと滞留速度に釣り合う。事実、腫瘍選択的PET剤としての124Iで標識されたNM404の有用性は、我々のマイクロPET取得のための予備計画に供される。この計画の目的は、NM404をヨウ素−124、4日間の物理的半減期を有する比較的新しい陽電子同位体で標識することの実現可能性、及び小動物モデルにおける腫瘍のPET画像化に有用であることを評価することである。PET画像化が伝統的ガンマカメラ画像化と比較して得られる、解像度の向上及び3次元機能に加えて、このアプローチは、グルコースの利用より、腫瘍細胞へのその取り込みが異なる生物化学的機構経由で生ずるフッ素−18FDGの使用を褒めるだろう。
【0132】
上記議論のように、現在有用なトレイサー(例えば、67Ga及び18F−FDG)の利用は、炎症と腫瘍を識別する特異性の欠如により制限される。しかしながら、PLE剤を有する予備的試験は、臨床的に重要な制限を克服することにおいて期待を与える、ここで、ラットにおけるカラギーナン誘導肉芽腫は、バックグラウンド活性を超えて視覚化できず、そして組織保持を示さなかった。Counsell RE,Schwendner SW,Meyer KL,Haradahira T,Gross MD.Tumor Visualization with a radioiodinated phospholipid ether.J Nucl Med 31(3):332−336,1990。しかしながら、それらの研究において対照として利用されるクエン酸ガリウムは、肉芽腫において非常に濃縮される。そのような発見は、潜在的に有用な腫瘍選択画像化造影剤としてPLE類似体の剤を有する本発明者等の研究を拡張することをさらに正当化する。
【0133】
人体試験
動物における非常に有望な薬物動態及び画像データに基づいて、本発明者等は、臨床の場に放射性標識されたリン脂質エーテルの試験を提案することを奨励された。非標識NM404を、バッファローにあるニューヨーク州立大学(SUNY)の毒物学的研究センターで実施された研究におけるラット及びラビットにおける急性毒性効果として最初に評価した。これらの急性毒性効果研究において、3.2mg/kg(>最も多い予想されるヒトの用量の150倍)の用量レベルで、毒性効果は見られなかった。さらに、血小板活性特性は、この高い用量レベルで立証されなかった。
【0134】
放射性薬物研究委員会(RDRC)による人間の投与のための放射標識された剤の承認を得るために、非標識NM324を、5人の正常な疾患の無い人間に投与した。これらの被験者は、症状、臨床検査、生命徴候、及び連続血液化学による毒性の証拠は無かった。
【0135】
実現可能な予備的実験として、4人の肺癌患者を、131I標識されたNM324を有するRDRCの承認の下、Ann Arbor,Michigan VA病院で試験した。肺腫瘍は、肺癌を有する全3人の患者(NSCLCを有する2人、及び小細胞肺癌を有する1人)においてはっきりと視覚化された、詳細は下記に示す。様々な時点における、腫瘍の取り込み程度は、1+(バックグラウンドを超えてかろうじて認知できる)〜3+(極めて強い取り込み、正常の構造より非常に優れている)に変化した。これらの初期検査に選択された患者は、比較的大きな癌を有する者であったことに留意すべきである。腫瘍の病気分類問題が存在する患者を研究することは、このステージにおいて意図していなかった。
【0136】
病歴
患者01は、55歳高齢女性であり、右の肋骨内に侵食している右中葉肺腫瘤、組織学的には、肺癌起源の可能性となるムチン産生腺癌を有した。6時間での初期131I−NM324シンチグラフ画像は、右側面の中肺において取り込みの病巣を示した。シンチグラフ試験とは関係ない理由から、当該患者は、さらなる画像化立会いのための6時間を過ぎても病院に戻ってこなかった。
【0137】
患者02は、62歳高齢男性であり、大きな(9×7×7.5cm)、大動脈肺動脈窓及び左門から広がる分葉状縦隔腫瘤を有した。組織型は、小細胞未分化(燕麦細胞)癌であった。131I−NM324シンチグラフ画像は、左上肺野における取り込みの病巣を明らかにし、そしてそれは、正常なバックグラウンド活性と比較して時間とともに強度において増大した。
【0138】
患者03は、74歳高齢男性であり、前もって放射線治療で5ヶ月間処置された肺上葉NSCLC(腺癌)を有した。疾患は、左小舌(2.5×2×3cm腫瘤)、下部胸椎(およそT8)、及び肝臓の右葉において再発した。131I−NM324シンチグラフィーは、肺腫瘤及び胸椎病変における明確な取り込みをよく示し、そしてそれは、時間の経過とともにバックグラウンドに対する標的の比が増大すること(図2)を実証した。肝臓転移における取り込みは、正常な肝臓のバックグラウンドの上に決定できなかった。
【0139】
これらの試験は、放射標識したPLE類似体の臨床的有望性を早期に垣間見ることを提供した。131Iは画像化目的のために次善の剤であるけれども、全3つの肺癌における取り込みは、明らかに描写された。予想通り、先の動物生体内分布実験に基づいて、当該腫瘍における活性は、患者02及び03において明らかに実証されたように、時間の経過とともに増大した。患者03において、腫瘍対正常組織の比は、2日目の2.74から7日目の4.23に増大した。患者01は、6時間を過ぎても、その後の画像化立会いに戻らなかった。当該増大する標的対バックグラウンドの比は、腫瘍視覚化の機構が、血流異常又は血管過剰増生だけに基づくものではないという強い証拠を構成する。実際には、99mTcヒト血清アルブミンを使用する動物実験は、これを確認した
【0140】
NM404を使用する非小細胞肺癌(NSCLC)を有する患者を評価する臨床試験
NM404は、移植片及び自然発生のげっ歯類モデルの25/25において、選択的及び持続的腫瘍貯留性を示すけれども、医師は、人間において似たような腫瘍の取り込み及び貯留特性を示すかどうか測定するためにステージ4のヒト小細胞肺癌の患者における薬剤の臨床評価を最近開始したINDを後援した。今まで、進行したNSCLCを有する2人の患者を、<131I−NM404の1mCiの注入後に画像化した。血液及び尿サンプルを、所定時間に回収し、そして投与後いくつかの時点でガンマ画像化を実施した。両患者において、NM404の有効な腫瘍取り込み及び保持が、図29及び30に見られるように、原発肺腫瘍において実証された。第1世代前身であるNM324における前記に見られる高い肝臓取り込み値と比較して、NM404による場合、肝臓及び腹部の活性は非常に低く、このことは、すい臓癌、直腸癌、及び前立腺癌を含む他の腹部癌においてこの剤を評価する実現可能性を提示する。
【0141】
材料及び方法
ヨウ素−131で標識されたNM404(1mCi/20μg)の静脈注入後、進行したNSCLCを有する患者を、GE Maxxus dual Head SPECTスキャナーに関して、3、6、24、48、96時間、並びに7及び11日でスキャンした。血液及び尿サンプルを、臨床的血液、腎臓、及び肝臓の生物分析のために回収した。
【0142】
結果
初期の定性的画像化結果は、ヨウ素−131で標識されるNM404は、注入後24時間で両側肺腫瘤内に明らかに局在し、11日間を過ぎてもこれらの腫瘍内に選択的に保持されることを示す。さらに、肝臓、並びに膀胱、腎臓、及び腸を含むより低い異常領域におけるバックグラウンド放射活性は、その前身であるNM324で先に観察されたよりも非常に低い。当該患者において副作用は観察されなかった。
【0143】
結論
これらの予備的所見が提示するには、げっ歯類モデルにおいて以前見られたように、NM404は、ヒトNSCLCにおける似たような腫瘍取り込み及び保持特性を示す。
【0144】
この点について、たった2人の患者に基づいているけれども、NM404が、ヒト非小細胞肺癌中に局在し、そして選択的及び持続的な腫瘍貯保持を受けるように見える。
【0145】
患者1
55歳高齢男性であり、両側3cmの左葉及び浸潤性右葉のNSCLC、及び脳転移、及び小さな右副腎腫瘤を有していた。彼は、多くの標準的及び実験的治療計画に参加していた。画像を図29に示す。
【0146】
患者2
70歳高齢男性であり、6cmの上葉非小細胞腫瘤、5mmの肝臓腫瘤、腸骨転移及び非常に小さい脳転移を有していると最近診断された。彼は、当該NM404試験を開始する前の週に、当該腸骨及び脳転移に対して低用量のカルボプラチン/タクソール化学療法及び緩和的放射線治療を最近完了していた。画像を図30に示す。
【0147】
D.実施例IV:マウスすい臓腺癌モデル
発明者等は、混合された腺房/腺管表現型を有する浸潤性腫瘍を産生することで知られるc−mycマウスすい臓腺癌モデルにおいて、第2世代のPLE類似体であるNM404の腫瘍親和性をも試験した。
【0148】
材料及び方法
癌遺伝子としてよく知られるc−myc又はk−rasのいずれかを内因する2つのマウス系統が、ウィスコンシン大学で開発された。Sandgren EP,Quaife CJ,et al.,Proc Natl Acad Sci USA.1991;88:93−97;Grippo PJ.Nowlin PS.et al.,Cancer Research.63(9):2016−9,2003。
【0149】
c−mycの発現は、すい臓腺房細胞を対象とされる、なぜならば、すい臓のみで発現されるエラスターゼ・プロモーターと連結するからである。これらのela−1−myc内因性マウスは、腺房及び腺管の新生組織形成が発達し、それは、誕生から2〜7ヶ月以内の死亡をもたらす。誕生から1ヶ月までは、当該すい臓は、厚くなりそして安定するように見える。それ故、誕生後1〜3ヶ月のマウスは、すい臓癌の研究のための優れたモデルとして役立つ。大抵のヒトすい臓新生組織形成は腺管形態であり、Sandgren博士の導入遺伝子標的戦略は、すい臓腺管上皮に対して特異的な腫瘍の発達を目的とされる。
【0150】
当該c−mycモデルは、混合された腺房/腺管表現型を有する浸潤性腫瘍を産生する。k−rasモデルの生物学は、非常に異なる。当該k−ras腫瘍は、新組織形成の特徴を有することを意味する、「癌腫 in situ」として分類されるが、しかしそれらは侵略せず、そして一般的に小さいままである(<2mm)。それらの細胞的外見は初期のヒト腫瘍と似ており、よって、組織学的展望より、それらはヒト疾患のより適切なモデルである。さらに、それらは、非常に初期のヒト疾患に似ている。c−mycマウスの大きな、及びより発達した腫瘍に対する当該k−ras腫瘍の「初期」発生を検出するための能力は、人間における初期の(おそらく治癒できる)病巣を同定することに対して、非常に重要なステップとなるだろう。k−ras変異がヒトすい臓腺癌の90%超の原因となるという事実は、新たな腫瘍造影剤の評価のためのこのモデルの妥当性に対するさらなる支持を導く。
【0151】
画像化試験
NM404がマウス・すい臓腫瘍において局在するかどうか測定するために、6匹のc−myc内因性マウスが、Bioscan AR−2000放射性TLCスキャナー(マウス画像化のために本発明者等の研究所において改良されたもの)で、125I−NM404の尾静脈注入後(15μCi/20gbw)、2〜21日間、スキャンされた。当該最終日において、マウスは、マイクロCTスキャン(42kvp、410μA、390ステップ、マイクロCAT−I、ImTek、Inc.,Knoxville,TN)も受けた。ヨウ素−125の低エネルギーに関連する組織的減衰を避けるために、麻酔されたマウスの生体内画像化の後、当該すい臓腫瘍を摘出し、そして同じスキャナー(高解像度1mmコリメータ、及び2−D取得及び分析ソフトウェアを装備した)で生体外スキャンした。犠牲になった際、組織を摘出し、重量を測定し、そしてガンマ計数器で放射活性を定量した。
【0152】
結果及び考察
初期画像化は、c−mycモデルにおけるNM404が直径5〜12mmの範囲にある全腺癌において著しい取り込み及び持続的保持(>21日)を示すことをもたらす。先の細胞培養及び生体内動物モデル試験において観察されたように、NM404は明らかに代謝され、そして正常細胞から除去されるが、しかし、腫瘍細胞膜において代謝的に捕捉される。他の腫瘍モデルにおける先のオートラジオグラフィー実験は、正常な組織又は壊死組織ではなく、生存腫瘍細胞のみが、NM404を蓄積することができることを提示した。本発明者等は、マウスにおけるどこにでもある種類のすい臓にもかかわらず、マイクロCTで生きているマウスにおけるすい臓の腫瘍をも検出できた(図11)。すい臓の腫瘍を有する動物の数は少ないけれども(n=6)、予備的な、バックグラウンドに対するNM404腫瘍のデータは有望に思える。
【0153】
結論
NM404は、この研究において実験された、自然発生的すい臓腺癌中に選択的及び持続的な貯留を示した、それ故、さらにこの剤の腫瘍選択性を拡張した。
【0154】
E.実施例V:ラット神経こう腫モデル
材料及び方法
ウィスコンシン大学のResearch Animal Resources Centerガイドラインに従って、全動物を飼育し処理した。ラットC6神経こう腫細胞を、10%加熱不活性化FBS(BioWhittaker,Walkersville,MD)、100U/mlのペニシリンG、100mg/mlのストレプトマイシン、及び0.01MのHEPES(Life Technologies,Gaithersburg,MD)で補充したDMEM培地(Life Technologies,Gauthersburg,MD)中で増殖させた。先に記載(参照)のように頭蓋骨内腫瘍の移植を実施した。簡潔にいうと、1×10個のC6細胞を、5mlの1.2%メチルセルロース中に再懸濁し、そして、麻酔された雌のWistarラット(Harlan,Indianapolis,IN)の前頭葉中に注入した。偽手術された動物は、腫瘍細胞なしのメチルセルロースの等量の頭蓋骨内注入を受けた。
【0155】
画像化実験
移植後10日目、頭蓋骨内腫瘍の存在を、MRIで確かめた。簡潔にいうと、麻酔されたラット(6)は、腹腔内に2mlのガドジアミド(Gd,オムニスキャン 287mg/ml,Nycomed,Princeton,NJ)を受け、10分後、GEフェイズド・アレイ先端コイルを使用して画像化した。各ラットの全脳を覆うT1−weighted(TR=500ms,TE=16.5ms)マルチスライス・シークエンスを、NM404注入に対して、様々な大きさの腫瘍を有する腫瘍保有ラットと偽手術ラットを選択するために検査した。
【0156】
NM404[18−(4−ヨードフェニル)−オクタデシルホスホコリン](図3A、100mg)を、ピバル酸中におけるNa125Iでの同位体交換を経由して、125Iで放射性ヨウ化した。Weichert,et al.,Int J Appl Rad Isotopes.1986,37:907−913。HPLC精製後、4匹の腫瘍保有、及び3匹の偽手術ラットへの尾静脈注入(5〜20μCi/200gラット)に先立ち、NM404を、水性2%ポリソルベート20溶液中に溶解した。NM404注入後、1(n=1)、2(n=1)、及び4日目(n=2)に、動物を安楽死(CO2)させ、そして脳を摘出し、改良Bioscan AR2000 放射性TLCスキャナー(2分間で1mm増大の取得/レーン、1mm高解像度コリメータ)で画像化した。さらに、正常な脳、血液、腎臓、肝臓、脾臓、甲状腺、及び腫瘍組織の重量を測定し、そしてガンマ計数器で放射活性をカウントした。次いで、放射活性の組織分布を、脳組織学と対応させた。
【0157】
結果及び考察
NM404による初期画像化結果は、直径3〜5mmの範囲に渡る全神経こう腫内に著しい取り込み及び持続的保持を示した。正常な脳組織内の放射活性は、偽手術の対照動物において最小量となり(図12)、一方、NM404は、神経こう腫内で著しく濃縮された(図13)。C6保有ラットにおける腫瘍対脳の比率(注入された用量/gの%)は、24、48、及び96時間で、それぞれ10.5、12.2、及び6.7だった。先の細胞培養及び生体内動物モデル試験において観察された通り、NM404は、明らかに代謝され、そして正常な細胞から除去されるが、しかし、腫瘍細胞膜において、代謝的に捕捉される。他の腫瘍モデルにおける先のオートラジオグラフィー実験は、正常な組織又は壊死組織ではなく、生存腫瘍細胞のみが、NM404を蓄積することができることを提示した。興味深いことには、直径数mmと測定される小さな腫瘍でさえ、NM404投与後に検出された。これらの予備所見は、NM404は小さな浸潤性腫瘍病巣の視覚化にも有用かもしれないことを提示する。
【0158】
結論
先に実験された全腫瘍モデルにおける場合の通り、NM404は、この試験において評価されたラットC6神経こう腫により選択的及び持続的保持を示した。
【0159】
F.実施例VI:マウス肝臓腫瘍
14超の移植片及び自然発生の腫瘍モデルにおいて得られた予備的結果は、例外なくNM404が腫瘍内における選択的取り込み及び持続的保持を受けることを示した。さらに、NM404が、その前身よりも低い肝臓バックグラウンド値を得ることを理由として、本発明者等は、HCCで患者を画像化することは問題であるという事実を踏まえて、肝臓内の評価を拡張した。多くの患者は肝硬変を内在しており、それ故、断面画像においてHCCから再生結節を識別することは困難である。さらに、FDGでのPETスキャンを評価する予備実験は、当該疾患を検出することにおいて、たった20〜50%の検出感度しか示さなかった。Verhoef C,Valkema R.et al.,Liver(2002)22:51−56。
【0160】
材料及び方法
内因性マウスHCCモデル。TGFα遺伝子を過剰発現する内因性マウスにおける自然発生の肝細胞癌の進行は、広範囲にわたり評価され、この疾患の研究のための非常に有望な動物モデルである。Lee GH,Merlono G,Fausto N.Cancer Research(1992)52:5162−5170。TGFαは、上皮細胞のマイトジェンであり、EGF受容体と結合する;TGFαの非制御発現は、腫瘍形成をもたらす。ジンク誘導型メタロチオニン1(MT1)プロモーターの制御下、導入遺伝子TGFαを発現している雄のCD1マウスにおいて、75〜80%が、生後12ヶ月後、HCCを進行する。しかしながら、化学的発癌物質である、アルキル化剤ジエチルニトロソアミン(DEN)を使用して、生後15日で腫瘍成長を誘導するとき、生後6ヶ月までに90%のマウスがHCCを進行する。組織学的実験において、これらの腫瘍は、確かなパターンのよく分化された肝細胞癌からなる。当該腫瘍は自然発生的に生ずるので、本発明者等は、前臨床試験のための好適なモデルとしてこれらの動物を利用する。
【0161】
CT26結腸腺癌移植片モデル
自然発生のHCCモデルに加えて、NM404をも、移植片結腸腺癌腫瘍モデルにおいて評価し、一方、CT26細胞(5×10細胞数/50μl)を、病巣である肝臓腫瘍の形成のために雌のBALB/cマウスの肝実質の中に直接、前もって注入した。
【0162】
画像化試験
NM404(図3A、100μg)を、ピバル酸の溶解中の同位体交換を経由して125Iで放射性ヨウ化した。Weichert JP,et al.,Int J Applied Radiat Isot(1986)37(8):907−913。HPLC精製後、水性2%ポリソルベート20溶液中に溶解し、その後、3匹のTGFα内因性マウス、あるいは3匹のCT26腫瘍保有マウスの中へ、尾静脈注入(15μCi/20gマウス)した。マウスを麻酔し、注入後21日目まで、改良Bioscan AR2000放射性TLCスキャナー(2分間取得で1mm増大/レーン、及び1mm高解像度コリメータ)でスキャンし、そして解剖学的相関のためのImTek マイクロCTスキャナー(390ステップ)でもスキャンした。マイクロCT画像を、Amiraソフトウェアを使用して表示した。犠牲になったとき、腫瘍保有肝臓を、はじめに摘出し、生体外でスキャンした。次いで、腫瘍を摘出し、重さを量り、生体外でスキャンし、そして放射活性を定量した。病変サンプルを、組織学的分類のために提出した。
【0163】
結果及び考察
NM404での最初の画像化結果(図14、15)は、肝臓内の自然発生的及び移植された癌腫の双方において、著しい取り込み(>20% 用量/g)及び持続的保持を示した。NM404の腫瘍保持は、これらの動物において、当該所定の実験の終点である21日間持続した。コントラスト強化マイクロCT画像は、全肝臓腫瘍の存在及び正確な位置を確かにした(図14、16)。脂質抽出及び続いて腫瘍組織のHPLC分析は、放射活性は親化合物とさらに関連することを示した。予備的細胞培養及び生体内動物モデル試験において観察されたとおり、NM404は、明らかに、正常細胞から代謝され除去されるが、しかし腫瘍細胞の膜中に代謝的に捕捉される。
【0164】
結論
事前に試験された全腫瘍モデルにおける場合のように、NM404は、この試験において評価された自然発生及び移植片マウスの肝臓腫瘍モデルの双方により、選択的及び持続的保持を示した。
【0165】
G.実施例VII:ApcMin/+自然発生の乳癌モデル
材料及び方法
ApcMin/+マウスモデル:このモデルは、ApcのMin対立遺伝子を有するマウス(ApcMin/+マウス)からなる。このモデルは、雌のApcMin/+マウスは乳腺過形成、及び乳癌、及び腸腺腫を進行する性質があるという、移植片モデルを超える特別の利点を提供する。C57BL/6J遺伝的背景に関して、非処置の雌の約5%は、生後100日まで乳腺腫瘍を進行するだろう。Moser AR Dove,et al.Proc Natl Acad Sci USA(1993)90:8977−81。乳腺病変の発生及び多様性は、直接作用アルキル化剤である、エチルニトロソウレア(ENU)の単回投与により増大させられる。ENUでの処理は、B6ApcMin/+雌の90%において3つの乳腺扁平上皮癌(SCC)の平均を進行させることをもたらすが、しかし処理後60日以内の過形成病変はほとんどない。
【0166】
ApcMin/+マウスは、Apc(大腸腺腫様ポリポーシス)遺伝子の1塩基対変換を有する。当該APC/Apc遺伝子は、いくつかの潜在性機能ドメインを有する巨大蛋白質をコードする。Groden,J.,Thliveris,A.,Samowitz,W.,Carson,M.,Gelbert,L.,Albertsen,H.,Joslyn,G.,Stevens,J.,Spirio,L.,Robertson,M.and et al.Identification and characterization of the familial adenomatous polyposis coli gene.Cell,(1991)66,589−600;Kinzler,K.W.,Nilbert,M.C.,Vogelstein,B.,Bryan,T.M.,Levy,D.B.,Smith,K.J.,Preisinger,A.C.,Hamilton,S.R.,Hedge,P.,Markham,A.and et al.Identification of a gene located at chromosome 5q21 that is mutated in colorectal cancers.Science,(1991)251,1366−70。
【0167】
マウス及びヒトのAPC蛋白質は、90%同一であり、そして全潜在性機能ドメインが保存される。APCはβカテニン値を調節する。βカテニンは、細胞内で多様な役割を担い、当該役割は、Eカドヘリンの安定化、並びに、LEF及び転写因子のTCFファミリーを通じての転写調節を含む。Aberle,H.,Schwartz,H.and Kemler,R.Cadherin−Catenin Complex−Protein interactions and Their Implixcation For Cadherin Function.Journal of Cellular Biochemistry,(1996)61,514−523;Huber,O.,Korn,R.,McLaughlin,J.,Ohsugi,M.,Herrmann,B.G.and Kemler,R.Nuclear localization of beta−catenin by interaction with transcription factor LEF−1.Mechanisms of Development,(1996)59,3−10;Behrens,J.,Vonkries,J.P.,Kuhl,M.,Bruhn,L.,Wedlich,D.,Grosschedl,R.and Birchmeier,W.Functional Interaction of Beta−Catenin With the Transcription Factor Lef−1.Nature,(1996)382,638−642。
【0168】
当該β−カテニン値の調節は、APC、axin(アキシン)又はconductin、及びグリコーゲン・シンターゼ・キナーゼ 3β(GSK3β)とβカテニンとの相互作用に関係する。
【表2】

【0169】
この相互作用は、βカテニンのリン酸化反応をもたらし、それは、ユビキチン−プロテアソーム経路による分解のための標的となる。
【表3】

【0170】
APCにおける大抵の生殖細胞系列及び体細胞変異は、βカテニン結合部位のいくつか又は全てを欠失する蛋白質をもたらす26、28、29。Polakis,P.Mutations in the APC gene and their implications for protein structure and function.Current Opinion in Genetics & Development,(1995)5,66−71;Nagase,H.and Nakamura,Y.Mutations of the APC(adenomatous polyposis coli)gene.Human Mutation.(1993)2,425−34;Beroud,C.and Soussi,T.APC gene:database of germline and somatic mutations in human tumors and cell lines.Nucleic Acid Research,(1996)24,121−4。
【0171】
APCの2つの領域がこの相互作用のために要求され、Min対立遺伝子によりコードされる当該短縮蛋白質は、これらの領域の双方を欠失する;Polakis,P.Mutations in the APC gene and their implications for protein structure and function.Current Opinion in Genetics & Development,(1995)5,66−71;Su,L.K.,Kinzler,K.W.,Vogelstein,B.,preisinder,A.C.,Moser,A.R.,Luongo,C.,Gould,K.A.and Dove,W.F.Multiple intestinal neoplasia caused by mutation in the murine homolog of the APC gene.Science,(1992)256,668−70。
【0172】
APCは、核小体からのβカテニンの輸送においての役割も有する。それ故、APC機能を失うと、βカテニンは、細胞質及び核小体内に蓄積し、場合により、標的遺伝子の転写及びE−カドヘリンを通ずる細胞間相互作用の双方に影響を与えるだろう。APC変異は、腸腫瘍及び他の上皮腫瘍を含むヒトにおけるいくつかの腫瘍型において頻繁に起こる。APC遺伝子座での異型接合性の損失又はβカテニンの増大値は、乳癌の25%超に見られる。Furuuchi,K.,Tada,M.,Yamada,H.,Kataoka,A.,Furuuchi,N.,Hamada,J.,Takahashi,M.,Todo,S.and Moriuchi,T.原発性乳癌におけるAPC遺伝子の体細胞変異、Somatic mutations of the APC gene in primary breast cancers,American Jounal of Pathology.(2000)156:1997−2005;Jonsson,M.,Borg,A.,Nilbert,M.,and Andersson,T.ヒト乳癌における大腸腺腫様ポリポーシス(APC)/βカテニンのシグナル伝達の関与、Involvement of adenomatous polyposis coli(APC)/beta−catenin signaling in human breast cancer,European Journal of Cancer.(2000)36:242−248。それ故、これらのマウスに見られるような病変の当該型は、ヒトの乳癌と分子的及び組織学的に似ているだろう。
【0173】
遺伝的背景は、偶発的事件、潜伏時間、及び進行する乳腺の病変の型に影響を与え得る。例えば、FVBxB6ApcMin/+雌マウスは、マウス1匹あたり平均0.2乳腺腫瘍を患うが、しかし、処置後120日内に、マウス1匹あたり4過形成を患う。BALB/xB6ApcMin/+は、マウス1匹あたり平均1.8乳腺腫瘍及び平均0.6過形成を患う。Moser AR,Hegge LF,Cardiff RD.Cancer Research(2001)61:3480−3485。FVBxB6及びBALBxB6ApcMin/+マウスは、乳腺SCCと腺癌(AC)の両方を患う。
【0174】
FVBxB6ApcMin/+マウスにおける過形成病変は、肺胞過形成か扁平上皮結節のいずれかとして分類できる。Moser A.R.,Hegge L.F.,Cardiff,R.D.Genetic background affects susceptibility to mammary tumors and hyperplasias in ApcMin/+mice.Cancer Research(2001)61:3480−3485。肺胞過形成は腺腫の前駆体であり、そして扁平上皮結節はSCCの前駆病変である。それ故、遺伝的背景の操作により、過形成及び癌腫の多型を患うマウスが、同じ動物内でしばしば産生され得る。当該肺胞過形成は、ヒトの胸由来のサンプル中に一般的にみられる異型の小葉(A型)に似ている。Cardiff,R.D.and Wellings,S.R.ヒト及びマウスの乳腺の比較病理学、The comparative pathology of human and mouse mammary glands,Journal of Mammary Gland Biology & Neoplasia.(1999)4:105−22。これらの異型の小葉は、乳癌を有する女性において、乳癌病巣内、又は対側乳房内に多く見られる。SCCは、乳腺腫瘍の頻繁な型ではない一方、ACはヒト乳腺腫瘍の普通型のようである。さらに、APC経路における変更を伴った腫瘍は、ヒトの乳癌において一般的である。APC遺伝子座での異型接合性の損失又はβカテニンの増大値は、乳癌の25%超に見られる。Furuuchi,K.,Tada,M.,Yamada,H.,Kataoka,A.,Furuuchi,N.,Hamada,J.,Takahashi,M.,Todo,and Moriuchi,T. 原発性乳癌におけるAPC遺伝子の体細胞変異、Somatic mutations of the APC gene in primary breast cancers,American Jounal of Pathology.(2000)156:1997−2005.35;Jonsson,M.,Borg,A.,Nilbert,M.,and Andersson,T. ヒト乳癌における大腸腺腫様ポリポーシス(APC)/βカテニンのシグナル伝達の関与、Involvement of adenomatous polyposis coli(APC)/beta−catenin signaling in human breast cancer,European Journal of Cancer.(2000)36:242−248。それ故、これらのマウスに見られるような病変の当該型は、ヒトの乳癌と分子的及び組織学的に似ているだろう。このモデルの独自の観点及び長所は、しばしば同様の動物の範囲内で、乳腺過形成及び乳癌の多型を患うマウスを産生する能力である。このように、我々は、同様の動物の範囲内で、過形成及び腫瘍の多型におけるNM404の取り込み及び保持を試験し得る。
【0175】
マウスのポリオーマウイルスの感染は、乳腺腫瘍を含む多くの腫瘍型の発現を導く。マウス乳腺腫瘍ウイルスLTR(MMTV)の制御下、ポリオーマ・ミドルT抗原(PyVT)を発現する内因性マウスは、素早く、乳腺異形成及び腫瘍を患う。Amy Moser;Guy,C.T.,Cardiff,R.D.,and Muller,W.J.ポリオーマウイルス・ミドルT癌遺伝子の発現による乳腺腫瘍の誘導:転移性疾患のための内因性マウスモデル、Induction of mammary tumor by expression of polyomavirus middle T oncogene:a transgenic mouse model for metastatic disease,Molecular & Cellular Biology.(1992)12:954−61。
【0176】
上皮内癌の兆候は、早ければ生後3週間で見ることができ、早ければ生後5週間までに乳腺腫瘍を100%発症する。当該腫瘍は、主として、AC及び/又は腺棘細胞腫として分類される。当該マウスは、主な腫瘍が出現する50日以内に、肺において多発性転移病巣を患う。Lifsted,T.,Le Voyer,T.,Williams,M.,Muller,W.,Klein−Szanto,AA.,Buetow,K.H.,and Hunter,K.W.開始及び転移進行の乳腺腫瘍世代の遺伝的修飾因子を有する近交系マウス系の同定、Identification of inbred mouse strains harboring genetic modifier of mammary tumor age of onset and metastatic progression,Int J of Cancer.(1998)77:640−4。それ故、これらのマウスは、転移性乳癌の短時間モデルを提供する。APCMin/+マウスと同様に、遺伝的背景は、腫瘍の発現及び転移の拡散の経時変化に影響を与える。Lifsted,T.,Le Voyer,T.,Williams,M.,Muller,W.,Klein−Szanto,AA.,Buetow,K.H.,and Hunter,K.W.開始及び転移進行の乳腺腫瘍世代の遺伝的修飾因子を有する近交系マウス系の同定、Identification of inbred mouse strains harboring genetic modifier of mammary tumor age of onset and metastatic progression,Int J of Cancer.(1998)77:640−4。このように、本発明者等は、腫瘍発現の短い経過を伴うマウスを産生するための交配種を使用する。PyVTは、SRCキナーゼファミリーの一員である、ホスファチジルイノシトール−3’’キナーゼ、当該SHCアダプター蛋白質、及び蛋白質ホスファターゼ2Aと関連し得る。Dankort,D.L.and Muller,W.J.乳癌転移のトランスジェニック・モデル、Transgenic model of breast cancer metastasis,Cancer Treatment & Research.(1996)83:71−88。SRCファミリーキナーゼの活性化は、ヒト乳房の腫瘍において、頻繁に観察される。Amy Moser;Muthuswamy,S.K.and Muller,W.J.乳腺腫瘍発生におけるチロシンキナーゼのSrcファミリーの活性化、Activation of the Src family of tyrosine kinase in mammary tumorigenesis,Advancesin Cancer Research(1994)64:111−23。
【0177】
画像試験
NM404(図3A、100μg)を、ピバル酸中、同位体交換を経由して、125Iで放射線ヨウ化した。HPLC精製後、水性2%tween−20溶液中に溶解させ、その後、6匹の雌APCMIN/+マウスに、尾静脈注入(15μCi/20gマウス)した。マウスを麻酔し、そして注入後50日に渡り、改良Bioscan AR2000放射性TLCスキャナー(2分間取得で1mm増大/レーン、及び1mm高解像度コリメータ)でスキャンし、そして解剖学的比較のためにImTekマイクロCTスキャナー(390ステップ)でもスキャンした。マイクロCT画像を、Amiraソフトウェアを使用して表示した。犠牲としたとき、乳腺又は摘出した腫瘍を生体外で画像化し、病変を摘出し重さを量り、そして放射活性を定量した。病変サンプルを、組織学的分類に供した。もし必要ならば、長期作用CT血液プール造影剤(BP10)であって、本発明者等の研究所内で開発され長期マイクロCT取得時間に好適な当該造影剤を、静脈内注入し、その後血管視覚化を補助するためCTスキャンした(図19)。Weichert JP,et al.,Radiology(2000)216:865−871。
【0178】
結果及び考察
このモデルは、同じマウス中に、過形成乳腺病変、乳癌、及び腸腺腫が発現する点で独特である。初期画像は、NM404(図17、18)が著しい取り込み(>20%用量/g)をみせ、そして直径2〜15mmの範囲の全自然発生乳癌中の長期保持という結果をもたらす。腫瘍の局在は素早く見えるけれども、バックグラウンドの放射活性は、体内一掃期間、肝臓及び腸内に数日持続する。放射活性糞尿のHPLC分析は、代謝体の存在及び親のNM404の非存在を示した。NM404の腫瘍貯留性は、所定の試験の終点となる50日間持続した。しかしながら、NM404は、これらのマウス内に頻繁に見つかる腸腺腫性ポリープ内に局在しなかった(図18)。マイクロCT画像は、全乳腺腫瘍の存在及び正確な位置を確証した(図19)。脂質抽出及び続く腫瘍組織のHPLC分析は、放射活性が親化合物にさらに関連することを示した。以前の細胞培養試験において観察されたように、NM404は、正常な細胞から代謝され、そして除去されるが、腫瘍細胞膜中に代謝的に捕捉されるようである。
【0179】
結論
NM404は、今まで試験されたヒト及び動物の移植片腫瘍モデルにおいて、著しい腫瘍親和力を表示する。さらに、この自然発生腫瘍モデル中の乳腺腫瘍による選択的及び長期保持を表示する一方、関連する腸腺腫性ポリープ中には局在しなかった。
【0180】
H.実施例VIII:ApcMin/+内因性乳腺腺癌モデルにおける過形成対新組織形成の選択性
材料及び方法
ApcMin/マウスモデル:このモデルは、ApcのMin対立遺伝子を保有するマウス(ApcMin/マウス)からなる。このモデルは、雌ApcMin/マウスが乳腺過形成及び乳腺腺癌及び腸腺腫を発現する性質を有する点において、移植片モデルを超える特異的な利点を提供する。C57BL/6J遺伝的背景に関して、未処置の雌の約5%は、生後100日までに乳腺腫瘍を発現するだろう。Moser AR,Dove,et al.Proc Natl Acad Sci USA(1993)90:8977−81。当該発生率及び当該乳腺病変の多様性は、直接作用するアルカリ化剤であるエチルニトロソウレア(ENU)の単回投与により増大され得る。ENUでの処理は、B6ApcMin/+雌の90%に平均3の乳腺扁平上皮癌(SCC)発現をもたらすが、処置後60日以内に過形成の病変をほぼ発現しない。
【0181】
遺伝的背景は、当該事件、潜伏、及び発現する乳腺病変の型に影響を与え得る。例えば、FVBxB6ApcMin/雌マウスは、マウス1匹あたり平均0.2の乳腺腫瘍を発現するが、しかし処置の120日内でマウス1匹あたり4過形成を発現する。BALB/xB6ApcMin/+は、マウス1匹あたり平均1.8の乳腺腫瘍、及び0.6の過形成を発現する。Moser AR,Hegge LF,Cardiff RD.Cancer Research(2001)61:3480−3485。FVBxB6、及びBALB/xB6 ApcMin/+マウスは、乳腺SCC及び腺癌(AC)の双方を発現する。
【0182】
画像試験
NM404(図3A、100μg)を、ピバル酸中、同位体交換を経由して、125Iで放射線ヨウ化した。HPLC精製後、水性2%tween−20溶液中に溶解させ、その後、6匹の雌APCMIN/+マウスに、尾静脈注入(15μCi/20gマウス)した。マウスを麻酔し、そして注入後30日に渡り、改良Bioscan AR2000放射性TLCスキャナー(2分間取得で1mm増大/レーン、及び1mm高解像度コリメータ)でスキャンし、そして解剖学的比較のためにImTekマイクロCTスキャナー(390ステップ)でもスキャンした。マイクロCT画像を、Amiraソフトウェアを使用して表示した。犠牲としたとき、乳腺又は摘出した腫瘍を生体外で画像化し、病変を摘出し重さを量り、そして放射活性を定量した。病変サンプルを、組織学的分類に供した。もし必要ならば、長期作用CT血液プール造影剤(BP20)であって、本発明者等の研究所内で開発され長期マイクロCT取得時間に好適な当該造影剤を、静脈内注入し、その後血管視覚化を補助するためCTスキャンした(図22)。Weichert JP,et al.,Radiology(2000)216:865−871。
【0183】
結果及び考察
このモデルは、同じマウス中に、過形成乳腺病変、乳癌、及び腸腺腫が発現する点で独特である。初期画像は、NM404(図20、21)が著しい取り込み(>20%用量/g)をみせ、そして直径2〜15mmの範囲の全自然発生乳癌中の長期保持という結果をもたらす。腫瘍の局在は素早く見えるけれども、バックグラウンドの放射活性は、体内一掃期間、肝臓及び腸内に数日持続する。放射活性糞尿のHPLC分析は、代謝体の存在及び親のNM404の非存在を示した。NM404の腫瘍貯留性は、所定の試験の終点となる>21日間持続した。しかしながら、NM404は、病巣肺胞の過形成又はこれらのマウス内に頻繁に見つかる腸腺腫性ポリープ内のどちらにも局在しなかった(図21)。マイクロCT画像は、全乳腺腫瘍の存在及び正確な位置を確証した(図22)。NM404は、正常な細胞から代謝され、そして除去されるが、腫瘍細胞膜中に代謝的に捕捉されるようである。
【0184】
結論
NM404は、今まで試験された20/20のヒト及び動物の移植片腫瘍モデルにおいて、著しい腫瘍親和力を表示する。さらに、この自然発生腫瘍モデル中の乳腺腺癌及び扁平上皮腺癌による選択的及び長期保持を表示する一方、関連する病巣の肺胞過形成又は腸腺腫性ポリープ中には局在せず、それ故、悪性腫瘍細胞選択的のようである。
【0185】
実施例IX:NM404の選択的貯留機構
序論
NM404の如きリン脂質エーテル類似体は、長時間、多く型の腫瘍細胞中に選択的に保持される。本発明者等は、ホスホリパーゼD(PLD)蛋白質の活性を評価するための酵素的分析及び定量的PCRの双方を使用して、腫瘍細胞中のNM404の選択的保持の機構を評価しようとした。腫瘍細胞中のPLDの低減レベルがNM404を代謝し排泄する能力の低減をもたらすと、本発明者等は仮定した。
【0186】
方法
hepa−1(肝臓癌)、CT26(結腸直腸腺癌)、及びTS/A(乳腺腺癌)を含むマウス腫瘍細胞株の単細胞浮遊液を、2つの分析法で分析した:(1)Amplex(登録商標)Redアッセイであって、蛍光性マイクロプレートリーダーを使用してPLD蛋白質活性を評価する、商業的に入手可能なキット(Molecular Probes)を使用する当該アッセイ、及び(2)PLDのmRNAのレベルを測定するための定量的PCRである。腫瘍細胞株を、正常な肝臓組織と比較した、ここで当該正常な肝臓組織は、NM404のより高いレベルの取り込み及び除去を示し、そしてそれ故、おそらく他の正常な組織よりもより低いPLDレベルを有する。Amplex(登録商標)Redアッセイについて、全蛋白質を、清浄液(Triton−X−100)を使用して抽出し、PLDの量を、標準陽性対照と比較した。PCRについて、mRNAを精製し、逆転写酵素(Promega)を使用してcDNAに転換した。リアルタイムPCRのためのcDNAの増幅の条件は:(94℃、30秒;65℃、30秒;及び72℃、30秒)で50サイクル(iCycler、iQmix、Bio−Rad)を含んだ。PLD1のプライマー、(センス)5’−TCTGGTTTCACCCCGTCAGAA−3’、(アンチセンス)5’−TTGCTCATATCTGCGGCGAT−3’を使用した。生成物を、1μg〜10−7μgまで希釈した標準cDNA(GAPDH、Biosource)と比較した。全アッセイを2重に実施した。
【0187】
結果
PLDを表3に示されるように定量した。PLD蛋白質活性及びmRNAレベルの双方は、全細胞系において正常な肝臓組織(p<0.05、T−検定)より著しく低かった。
結論
低減PLD蛋白質活性及びPLDのmRNAの低減を、マウス腫瘍細胞株において観察した。それ故、NM404の選択的保持機構は、PLDによるNM404の分解における低減に起因し得る。腫瘍における低減PLD活性は、抗腫瘍物質の潜在的な分子標的として有用となり得る。
【0188】
【表4】

【0189】
J.実施例X:内因性マウス乳腺腫瘍モデルにおける治療上の特質
NM404治療試験としてのモデル
長期生存は画像試験にとって必須ではないけれども、治療試験を提案するために有利である。画像試験のために使用されるモデルは、通常当該動物の死を導く付随的腸腫瘍を患う。マウス1匹あたりの発現する腫瘍の数を増大するため、及び当該腫瘍を有するマウスの寿命を増大することを望んで腸腫瘍を低減するため、Moser博士は、最近、雄のB6Min/+マウスと雌のC57BR/cdj(BR)マウスを交配させた。当該得られたBRB6 F1 Min/+雌マウスは、平均5近いB6Min/+マウス(P=0.016)よりも著しく多くの乳腺腫瘍を発現した。腫瘍を有するマウスの数、及び最初の腫瘍までの時間は、これらの2つの株間(P=1、及びP=0.06のそれぞれ)で異ならない(図25)。BRB6 F1マウスの増大した乳腺腫瘍数は、一部においては、当該B6Min/+マウス(P=2×10−7)と比較した交配種BRB6 F1 Min/マウスの著しく長い生存期間に起因し得る。
【0190】
B6及びBRB6 F1 Min/+マウスは、乳腺表現型に関連して非常に似ていたが、腸腫瘍に対する感受性においては著しく異なっていた。当該B6及びBR株は、当該マウスがENU処置後短期間に多くの腫瘍を発現するように、Min誘導の乳腺腫瘍形成に対する感受性の高い背景を有するとみなされ得る。しかしながら、当該BR株は、腸腫瘍の発現に影響を与える修飾遺伝子座における優性抵抗性対立遺伝子を有し、そしてそれは提案した治療試験に関連することを示し得る。これらの株の比較を表2に示す。
【0191】
【表5】

【0192】
MinマウスにおけるNM404での予備画像結果
NM404が、内因性FVBxB6 ApcMin/+マウスの乳癌に局在することを示すための予備実験において、2匹の動物を、125I−NM404(15μCi)で注入(尾静脈、静脈内投与)し、改良Bioscan AR2000放射性TLCスキャナー(高解像度1mmコリメータ、及び2−D取得及び分析ソフトウェアを装備)で、注入後1、4、及び7日後、画像化した(図27A、B)。各動物を、10日目にマイクロCTスキャンに供し(図27)、その後、安楽死させ、解剖し、乳腺及び関連腫瘍を除去した。病変スポットは、生体外Bioscan画像に関する全腫瘍と、視覚的に相互に関連付けられた(図27C)。リンパ節は可視的であるけれども、放射活性はそれらと関連せず、腫瘍細胞浸潤の欠如を示唆した。図27Cにおける主たる腫瘍を、腺癌として組織学的に分類した。双方のマウスにおいて4つの乳腺腫瘍が存在し、そして全てが、摘出乳腺の生体外Bioscan画像において、容易に検出可能であった。
【0193】
NM404の放射線治療の可能性
125Iで標識されたNM404の「画像化」物質(15〜20μCi/20gマウス)での一連の最近のマウス腫瘍の取り込み及び保持試験の間、いくつかの明白な治療反応が観察される(未発表の結果)。ApcMin/+マウスの乳腺腫瘍モデルにおいて、腫瘍成長は、NM404の単回静脈注射の後に、静的なままであることに一般的に留意すべきである。これらの動物の内、注入後8日目あたりに、より大きな乳腺腫瘍上の毛を全て失うものもいる。さらに、これらのマウスは、腸腫瘍も得、そして通常、腸内出血による重症貧血に苦しみ、そして足の血色を悪く(白く)する。Moser博士は、これらのマウスの足は、NM404の単回注入後5日目あたりに、ピンク色に戻ることを言及した。
これらの動物の結果としての解剖に関して、予想された20匹又は通常この歳で見つかる腸腫瘍を有するものの内、たとえあったとしても、ほんのわずかであるが、実際に生き残っていたことに留意した。当該「白からピンクの足」の現象を、別々に観察もしたが、しかし、より活動的な、NM404投与後12日で解剖されるマウス腸腺癌モデルは、予想された腸腫瘍の全部ではないが多くは消え去ったことを再度示した。双方の腸モデルにおいて、NM404を受け入れた動物は、処置されなかった共に生まれたものよりも容易に長生きした。これらの偶然一致した発見を、各6匹以上のマウスを含む2つの別の年齢の合った群において再確認した。125I−NM404でのこれらの観察は、特にヨウ素−131で標識したときの放射線治療の適用可能性を示唆する。この提案された乳腺腫瘍モデルにおける要点をまとめる定量的な腫瘍取り込み及び保持試験は、その真の放射線治療の可能性を予測するために、この物質についての広範囲な線量測定を開始するために十分なデータも提供するだろう。
【0194】
同位体の選択
その60日の物理的半減期、及び低エネルギー28KeV光子放出に起因して、ヨウ素−125はマウス及びラットの画像化試験に好適である。ヨウ素−125は、同様に医療特性を利用可能とし、及び目下、永続的な前立腺近接照射療法の移植片において使用される。ある画像化試験において、2匹のヌードマウスを、対立する脇腹に、皮下扁平上皮細胞の1及び6の腫瘍細胞移植片で各々植菌した。SCC1及び6を使用した、なぜならば1つは他と比べて放射感受性であるからである。14日後、平均腫瘍サイズ(総計4)が直径0.5cmに達するとき、当該マウスの内、1匹は、125Iで標識されたNM404の20μCiを受け入れ、そして他のマウスは、等量の非標識NM404を受け入れた。当該標識化合物のみを受け入れたマウスを、双方の腫瘍が我々の動物使用プロトコールにおいて定義される限界サイズ制限に達することに起因して、注入後20日で、安楽死させる必要があった。125I−NM404マウスにおける双方の腫瘍は、数週間の経過により、劇的に及び予想外に退行した(図28)。事実、このマウスの腫瘍は決して限界サイズに届かず、そして当該マウスを、組織学的区分を集めるために、90日後実際に安楽死させた。このとき、当該腫瘍の中心は壊死状態であり、一方、周囲の縁はわずかに生存しているようだった。組織学的試験は、壊死した中心部及び生存する縁を裏付けた。血液供給因子がそのような観察結果の一因となり得るが、一方、125Iからの光子放出が、当該腫瘍の「外皮」の不十分な投与を生ずる当該腫瘍周辺部で、僅かな電子平衡をもたらすことも可能である。この電子平衡問題は放射線腫瘍学において重要である。光子は、それらのエネルギーにより決定される有限距離を移動し、その後、組織と接触し、そして生物学的効果を働かせる。高すぎるエネルギーを有する光子は、当該腫瘍小結節周辺の不十分な投与をもたらし得、それは、光子が当該結節を出発し、遠くまで移動し(当該腫瘍の外)、その後それらの線量が溜まるにつれて生ずる。これは125Iに関する問題となり得たが、しかしながら、当該低エネルギーは、非常な局所堆積を保証する。複雑なモンテカルロ計算は、そのような推定値を精緻化するが、しかし、最適な同位体を決定する最も良い方法は実験であり、というのは、正確に形に表すことのできない役割を有する多くの要因があるからである(組織分布の詳細、多くの経路など)。125Iの1つの利点は、全光子が低エネルギーであり、当該腫瘍を囲む正常組織の非常に限定された照射を保証することである。
【0195】
ヨウ素−131は、甲状腺癌の治療において優れた効果を伴い使用される。131Iの非常に安全な投与は、高分化型の甲状腺癌の無症状の堆積を制御でき、そして当該高分化型甲状腺癌は、正常な甲状腺がそうであるように、非常によくヨウ素を濃縮する。この能動的取り込み過程は、正常組織への投与限界量を補助する。ヨウ素−131は、ベータ及びいくつかのガンマ放射の双方を有するが、しかし、主要な組織線量は、当該ベータ放射に起因する。本発明者等は、甲状腺癌の治療的成功に基づいて、低悪性度のリンパ腫患者におけるBexxar(ヨウ素−131標識抗体系薬剤)に伴い得られた結果を加味して、131I標識されたNM404を選択した。当該主なベータ放射、及び普通は低エネルギーのガンマ照射は、腫瘍小結節自体の中で薬剤均質性を最適化する。さらに、より短い半減期(8日間)は、125Iの60日間の半減期と比較して、より臨床的に適切な線量強度を提供する。これらの因子は、本発明者等がこの剤の当該抗腫瘍効果を最もよく評価することを許可するだろう。131Iの可能性のある不利点は、より高エネルギーのガンマ照射を有すること、さらに、125Iで生ずるであろう放射線量よりも多くの線量で、組織の近接周辺に実際に照射し得るだろうことである。本願明細書中に提案される内因性モデル中の腫瘍は、乳腺の末梢に位置し、そしてそれ故、当該動物の全体的健康に対する差し迫った脅威を意味すべきでない。臓器毒性は当該試験の評価項目の内の1つでもあるので、当該周囲組織及び主な臓器機構(髄質、肝臓、腎臓、腸、脳など)の反応を評価する。組織分布のデータ及び標識されたNM404の実際の線量測定は、その最適な治療可能性を決定するだろう。異なる同位体が、治療法の設定において互いに補完するだろうことがあり得る。
【0196】
本願明細書中に記載される実施例及び態様は例証目的のみとしてのものであること、それらを踏まえた様々な改良又は変化は当業者により示唆されるだろうこと、そしてそれらは本明細書の本質及び範囲、及び添付の特許請求の範囲の範囲に含まれるだろうことが理解される。本明細書中に引用される刊行物、特許、及び特許出願の全てを、参照することにより本願明細書中に援用する。
【0197】
【表6】

【表7】

【表8】

【0198】
「DIAPEUTIC」は、Cellectar,LLCの登録商標である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌である又はその疑いのある被験者において、肺癌、副腎癌、黒色腫、結腸癌、結腸直腸癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、皮下癌、腸癌、肝細胞癌、網膜芽腫、子宮けい癌を検出し、かつ、部位を特定する方法であって、以下のステップ:
リン脂質エーテル類似体を前記被験者に投与する;
前記被験者の癌があると疑われる器官が、周囲領域よりも高いレベルの当該類似体を保持するかかどうか測定する;
を含み、ここで、より高い保持領域は前記癌の検出及び位置を示す前記方法。
【請求項2】
前記リン脂質類似体が、以下の:
【化1】

{式中、Xは、ヨウ素の放射性同位体からなる群より選択され;nは、16〜30の整数であり;及びYは、NH、NR、及びNRを含む群より選択され、ここで、Rは、アルキル又はアリールアルキル置換基である。}又は
【化2】

{式中、Xは、ヨウ素の放射性同位体であり;nは、16〜30の整数であり;Yは、H、OH、COOH、COOR、及びORからなる群より選択され;及びZは、NH、NR、及びNRからなる群より選択され、ここで、Rは、アルキル又はアリールアルキル置換基である。}
から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Xが、122I、123I、124I、125I、及び131Iからなるヨウ素の放射性同位体の群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記リン脂質エーテルが、18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル ホスホコリン、1−O−[18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル]−1,3−プロパンジオール−3−ホスホコリン、又は1−O−[18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル]−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホコリンであり、ここでヨウ素が放射性同位体の形態である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
被験者の癌の治療方法であって、以下のステップ:
リン脂質エーテル類似体を含む有効量の分子を前記被験者に投与する、
を含む、前記方法。
【請求項6】
前記癌が、肺癌、副腎癌、黒色腫、結腸癌、結腸直腸癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、皮下癌、腸癌、肝細胞癌、網膜芽腫、子宮けい癌、神経こう腫、乳癌、すい臓癌、癌肉腫、及びProstrate癌からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記リン脂質類似体が、以下の:
【化3】

{式中、Xは、ヨウ素の放射性同位体からなる群より選択され;nは、16〜30の整数であり;及びYは、NH、NR、及びNRを含む群より選択され、ここで、Rは、アルキル又はアリールアルキル置換基である。}又は
【化4】

{式中、Xは、ヨウ素の放射性同位体であり;nは、16〜30の整数であり;Yは、H、OH、COOH、COOR、及びORからなる群より選択され;及びZは、NH、NR、及びNRからなる群より選択され、ここで、Rは、アルキル又はアリールアルキル置換基である。}
から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
Xが、122I、123I、124I、125I、及び131Iからなるヨウ素の放射性同位体の群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記リン脂質のエーテルが、18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル ホスホコリン、1−O−[18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル]−1,3−プロパンジオール−3−ホスホコリン、又は1−O−[18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル]−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホコリンであり、ここでヨウ素が放射性同位体の形態である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
癌の治療用医薬組成物の製造のためのリン脂質エーテル類似体の使用。
【請求項11】
前記リン脂質類似体が、以下の:
【化5】

{式中、Xは、ヨウ素の放射性同位体からなる群より選択され;nは、16〜30の整数であり;及びYは、NH、NR、及びNRを含む群より選択され、ここで、Rは、アルキル又はアリールアルキル置換基である。}又は
【化6】

{式中、Xは、ヨウ素の放射性同位体であり;nは、16〜30の整数であり;Yは、H、OH、COOH、COOR、及びORからなる群より選択され;及びZは、NH、NR、及びNRからなる群より選択され、ここで、Rは、アルキル又はアリールアルキル置換基である。}
から選択される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
Xが、122I、123I、124I、125I、及び131Iからなるヨウ素の放射性同位体の群より選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記リン脂質のエーテルが、18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル ホスホコリン、1−O−[18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル]−1,3−プロパンジオール−3−ホスホコリン、又は1−O−[18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル]−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホコリンであり、ここでヨウ素が放射性同位体の形態である、請求項10に記載の使用。
【請求項14】
被験者において、新生組織形成から、炎症、腺腫、過形成を識別する方法であって、以下のステップ:
リン脂質エーテル類似体を前記被験者に投与する;及び
前記被験者の炎症、腺腫、過形成又は新生組織形成の疑いのある器官が、周囲領域より高いレベルの当該類似体を保持するかどうか測定する;
を含み、ここで、より高い保持領域は新生組織形成の検出及び位置を示し、かつ、より低い保持領域は当該腺腫、過形成又は炎症を有する疑いのある器官の存在を示す前記方法。
【請求項15】
前記リン脂質類似体が、以下の:
【化7】

{式中、Xは、ヨウ素の放射性同位体からなる群より選択され;nは、16〜30の整数であり;及びYは、NH、NR、及びNRを含む群より選択され、ここで、Rは、アルキル又はアリールアルキル置換基である。}又は
【化8】

{式中、Xは、ヨウ素の放射性同位体であり;nは、16〜30の整数であり;Yは、H、OH、COOH、COOR、及びORからなる群より選択され;及びZは、NH、NR、及びNRからなる群より選択され、ここで、Rは、アルキル又はアリールアルキル置換基である。}
から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
Xが、122I、123I、124I、125I、及び131Iからなるヨウ素の放射性同位体の群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記リン脂質のエーテルが、18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル ホスホコリン、1−O−[18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル]−1,3−プロパンジオール−3−ホスホコリン、又は1−O−[18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル]−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホコリンであり、ここでヨウ素が放射性同位体の形態である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
ホスホリパーゼD(PLD)を有する組織サンプル中の新生組織形成を検出する方法であって、以下のステップ:
前記組織サンプル中のPLD蛋白質活性レベル又はPLDmRNAレベルを定量化する;及び
前記組織サンプルが周囲の組織領域より低い蛋白質活性レベルであるかどうか測定する、ここでより低い活性領域は新生組織形成の検出及び位置を示す;又は
前記組織サンプルが周囲の組織領域より低いmRNAレベルであるかどうか測定する、ここでより低いmRNAレベル領域は新生組織形成の検出及び位置を示す;
を含む前記方法。
【請求項19】
PLD蛋白質活性又はmRNAレベルが、前記組織サンプルと前記PLE類似体との接触により定量化され、ここで当該PLE類似体が、以下の:
【化9】

{式中、Xは、ヨウ素の放射性同位体からなる群より選択され;nは、16〜30の整数であり;及びYは、NH、NR、及びNRを含む群より選択され、ここで、Rは、アルキル又はアリールアルキル置換基である。}又は
【化10】

{式中、Xは、ヨウ素の放射性同位体であり;nは、16〜30の整数であり;Yは、H、OH、COOH、COOR、及びORからなる群より選択され;及びZは、NH、NR、及びNRからなる群より選択され、ここで、Rは、アルキル又はアリールアルキル置換基である。}
から選択される、請求項18に記載の新生組織形成の検出方法。
【請求項20】
Xが、122I、123I、124I、125I、及び131Iからなるヨウ素の放射性同位体の群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記PLEの類似体が、18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル ホスホコリン、1−O−[18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル]−1,3−プロパンジオール−3−ホスホコリン、又は1−O−[18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル]−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホコリンであり、ここでヨウ素が放射性同位体の形態である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
PLDを有する組織サンプルをスクリーニングする方法により選択される抗腫瘍薬であって、当該スクリーニング法が、以下のステップ:
前記PLD蛋白質活性レベル又はPLDmRNAレベルを定量化するステップ、
を含み、ここで周囲の組織領域と比較して低減されたPLD蛋白質活性又は低減されたmRNAのレベルが新生組織形成を示す、前記抗腫瘍薬。
【請求項23】
PLD蛋白質活性又は前記mRNAレベルが、前記組織サンプルと前記PLE類似体との接触により定量化され、ここで当該PLE類似体が、以下の:
【化11】

{式中、Xは、ヨウ素の放射性同位体からなる群より選択され;nは、16〜30の整数であり;及びYは、NH、NR、及びNRを含む群より選択され、ここで、Rは、アルキル又はアリールアルキル置換基である。}又は
【化12】

{式中、Xは、ヨウ素の放射性同位体であり;nは、16〜30の整数であり;Yは、H、OH、COOH、COOR、及びORからなる群より選択され;及びZは、NH、NR、及びNRからなる群より選択され、ここで、Rは、アルキル又はアリールアルキル置換基である。}
から選択される、請求項22に記載の抗腫瘍薬。
【請求項24】
Xが、122I、123I、124I、125I、及び131Iからなるヨウ素の放射性同位体の群より選択される、請求項23に記載の抗腫瘍薬。
【請求項25】
前記PLEの類似体が、18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル ホスホコリン、1−O−[18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル]−1,3−プロパンジオール−3−ホスホコリン、又は1−O−[18−(p−ヨードフェニル)オクタデシル]−2−O−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホコリンであり、ここでヨウ素が放射性同位体の形態である、請求項23に記載の抗腫瘍薬。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図24】
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【図25】
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【図2】
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【図3A】
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【図4】
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【図4A】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−97113(P2012−97113A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−5213(P2012−5213)
【出願日】平成24年1月13日(2012.1.13)
【分割の表示】特願2007−501917(P2007−501917)の分割
【原出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(506297728)セレクター,インコーポレイティド (7)
【Fターム(参考)】