説明

DKK−1に特異的な抗体

骨同化性Wnt/LRP5シグナリング経路のインヒビターであるDkk−1に特異的な抗体を記載する。LRP5へのDkk−1の結合を抑制する該抗体は、骨の成長を刺激するための組成物、特に、骨の減少を引き起こす骨障害、例えば骨粗鬆症を治療するための組成物において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Dkk−1に選択的に結合する抗体および免疫学的に機能的なそのフラグメント、ならびに多種多様な疾患の治療、例えば、骨量の減少に関連した状態および種々の非骨関連障害の予防もしくは治療または新たな骨の産生の促進のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
骨格障害である骨粗鬆症は高齢者における疾患の主要原因である。骨粗鬆症は、骨吸収(破壊)と骨形成との間の不均衡から生じる骨減少により特徴づけられる。この状態は、低レベルの外傷後に生じうる骨折のリスクの増加を招く。米国では、現在、約2000万人に、骨粗鬆症による椎骨の骨折が認められる。高齢者患者集団では骨折による死亡が珍しくない。
【0003】
閉経後の高齢女性は、適切な骨維持に必要なエストロゲンの欠乏により、骨粗鬆症を発症するリスクが最も高い。不十分なエストロゲンレベルは破壊性破骨細胞の産生および寿命の増加を招き、そしてこれは骨吸収の増加を招く。その結果、椎骨における年平均5%の骨減少が認められる。それほど一般的ではないが、骨粗鬆症は高齢男性も罹患する。高齢男性における骨粗鬆症の存在は、1つには、循環テストステロンの減少により引き起こされる不十分なエストロゲンレベルによるものでありうる。
【0004】
骨減少を克服するための治療戦略は骨吸収の予防および骨成長の刺激の両方を含む。有効な骨粗鬆症治療をもたらしている治療標的の大多数は前者の範疇に属する。したがって、これまでのところ、この状態の一線級の治療/予防は、ビスホスホナート、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)およびカルシトニンのような化合物を使用する骨吸収の抑制であった。骨吸収の抑制は骨量を回復し得ないため、このアプローチは、既に相当量の骨を喪失している患者には無効な治療法である。また、このメカニズムにより機能する骨粗鬆症治療の有効性は骨格構造の全体にわたって一貫したものではない。なぜなら、骨ターンオーバーの速度は部位によって異なるからである。例えば、骨ターンオーバー速度は椎骨の柱骨においては長骨の皮層におけるものより長く、したがって、骨吸収インヒビターは寛骨ミネラル密度(BMD)の増加および臀部骨折の予防にはそれほど有効ではない。したがって、長骨における皮質/骨膜骨形成および骨量を増加させる骨同化促進物質は、特に臀部骨折の高いリスクを有する患者において、骨粗鬆症の治療における、満たされていない要求を満たすであろう。
【0005】
骨粗鬆症を含む代謝障害のための1つの可能な治療標的は低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5(LRP5)である。LRP5は、システインに富む相補型LDLRリガンド結合ドメインにより特徴づけられる、細胞表面受容体の低密度リポタンパク質受容体(LDLR)遺伝子ファミリーに属する。LRP5は、重篤な骨粗鬆症により特徴づけられる常染色体劣性障害である骨粗鬆症偽性神経膠腫症候群(OPPG)の遺伝子座に対するその接近性に基づいて単離された(Heyら,Gene 216:103−111(1998);米国特許第6,555,654号および第6,545,137号)。LRP5受容体が骨粗鬆症の治療標的に相当するという見解に対する更なる裏づけは、LRP5の機能喪失突然変異がOPPGを引き起こすという観察から得られる(Gongら,Cell 107:513−523(2001))。
【0006】
興味深いことに、LRP5の異常発現は、顕著に増加した骨量により特徴づけられる常染色体優性ヒト遺伝的骨格状態である高骨量形質(HBM)にも関連している。HBM突然変異のポジショナルクローニングは、HBMが、機能獲得を招くLRP5遺伝子のG171V突然変異から生じることを示した(例えば、Littleら,Am.J.Hum.Genet.70:11−19(2002);米国特許第6,770,461号および第6,780,609号;米国公開特許出願番号20040038860および20050070699を参照されたい)。これらの知見は、マウスにおけるLRP5のヌル突然変異が重篤な骨減少を引き起こすという事実(Kato,J.Cell Biol.157(2):303−314(2002))と共に、ヒトの骨形成および骨量におけるLRP5に関する必須の役割を示した。
【0007】
LRP5遺伝子は、骨成長の刺激におけるその特異的役割にもかかわらず、ほぼ遍在的な発現プロファイルを有することが示された。LRP5の活性化が骨形成を招くメカニズムは不明である。分子レベルで、LRP5および密接に関連しているLRP6はWntに対する共受容体としてWntシグナリングに関与していることが最近示された。Wnt遺伝子は、中枢神経系における細胞成長および分化の媒介のような多種多様な発生過程および成体生理的過程に関与する分泌タンパク質をコードしている。また、LRP5およびLRP6は分泌タンパク質dickkopf−1(Dkk−1)に対する受容体であること、ならびにDkk−1に対するそれらの連関はWntシグナリングを抑制することも示された(Maoら,Nature 411:321−325(2001);Semenovら,Curr.Biol.,(2001);Baficoら,Nat Cell Biol 3:683−686(2001))。
【0008】
Dickkopf−1(Dkk−1)は、胚頭部誘導に関与しWntに拮抗する分泌タンパク質である(Glinkaら,Nature 391:357−362(1998))。ヒトDkk−1のアミノ酸配列およびそれをコードするヌクレオチドは既に記載されている(米国特許第6,344,541号、第6844422号、第7,057,017号;公開特許出願番号20050069915;Krupnickら,Gene 238:301−313(1999))。ヒトにおけるDkk−1の発現は胎盤に限局されると考えられたが、これは胚発生におけるDkk−1の役割を示唆している(Krupnickら,前掲)。Allenら(米国公開特許出願番号20040038860)はLRP5、HBMまたはLRP6とDkk−1との間の相互作用に関するアッセイを記載している。Dkk−1に結合する抗体は前記特許および特許出願ならびに米国公開特許出願番号20050079173および20060127393に既に記載されている。
【0009】
ヒトDkk−1は、Dkk−1、Dkk−2、Dkk−3およびDkk−4を含むDickkopf遺伝子ファミリーのメンバーである(Krupnickら,前掲)。Dkk−1およびDkk−4はクセノプス(Xenopus)胚におけるWnt誘導二次軸誘導を抑制することが示されているが、いずれも、Xenopus Dishevelled(クセノプス・ディシェベルド)またはFrizzled(フリズルド)により誘発される軸誘導を遮断せず、このことは、それらのWnt抑制活性がWntシグナリング経路におけるFrizzledの上流に存在することを示唆している(Krupnickら,前掲)。Dkk−1は骨形成に抑制効果を及ぼしうるため、それらは骨粗鬆症の予防または治療のための潜在的標的となりうることが示唆されている(PatelおよびKarensky,N.Eng.J.Med.346:1572−1573(2002);Boydenら,N.Eng.J.Med.346:1513−1521(2002))。Dickkopf遺伝子ファミリーの他のメンバーと交差反応することなく骨同化における付随的増進を伴ってLRP5/6とのDkk−1の相互作用を選択的に抑制して骨におけるWntシグナリング経路を刺激する試薬および方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,555,654号明細書
【特許文献2】米国特許第6,545,137号明細書
【特許文献3】米国特許第6,770,461号明細書
【特許文献4】米国特許第6,780,609号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0038860号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0070699号明細書
【特許文献7】米国特許第6,344,541号明細書
【特許文献8】米国特許第6,844,422号明細書
【特許文献9】米国特許第7,057,017号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2005/0069915号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2005/0079173号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2006/0127393号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Gene 216:103−111(1998)
【非特許文献2】Cell 107:513−523(2001)
【非特許文献3】Am.J.Hum.Genet.70:11−19(2002)
【非特許文献4】J.Cell Biol.157(2):303−314(2002)
【非特許文献5】Nature 411:321−325(2001)
【非特許文献6】Curr.Biol.,(2001)
【非特許文献7】Nat Cell Biol 3:683−686(2001)
【非特許文献8】Nature 391:357−362(1998)
【非特許文献9】Gene 238:301−313(1999)
【非特許文献10】N.Eng.J.Med.346:1572−1573(2002)
【非特許文献11】N.Eng.J.Med.346:1513−1521(2002)
【発明の概要】
【0012】
本発明は、Dkk−1に選択的に結合する抗体および免疫学的に機能的なそのフラグメントを提供する。該抗体および免疫学的に活性なフラグメントはまた、Dkk−1とLRP5および/またはLRP6との間の結合を遮断または軽減して、Wntシグナリングに関連した少なくとも1つの活性を刺激する。特に、該抗体および免疫学的に機能的なそのフラグメントは、Dickkopf遺伝子ファミリーの他のメンバーとの検出可能な交差反応を伴うことなく骨量における付随的増進を伴って、LRP5/6とのDkk−1の相互作用を選択的に抑制して、Wntシグナリング経路を刺激する。該抗体およびフラグメントには、天然に存在する構造を有する抗体、および抗原結合ドメインを有するポリペプチド(例えば、ドメイン抗体)が含まれる。該抗体およびフラグメントは、多種多様な疾患の治療、例えば、骨量の減少に関連した状態および種々の非骨関連障害の予防もしくは治療または新たな骨の産生の促進のために使用されうる。該抗体および選択的結合性物質の製造において有用な核酸分子、ベクターおよび宿主細胞も提供する。
【0013】
提供する抗体および免疫学的に機能的なフラグメントのいくつかは、(a)(i)配列番号12に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC CDR1、(ii)配列番号13に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC CDR2および(iii)配列番号14に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC CDR3よりなる群から選ばれる1以上の軽鎖(LC)相補性決定領域(CDR)、(b)(i)配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC CDR1、(ii)配列番号10に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC CDR2および(iii)配列番号11に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC CDR3よりなる群から選ばれる1以上の重鎖(HC)CDR、または(c)(a)の1以上のLC CDRおよび(b)の1以上のHC CDRを含む。
【0014】
そのような抗体またはフラグメントはDkk−1ポリペプチドに特異的に結合しうる。ある抗体またはフラグメントは前記CDRの1、2、3、4、5または全6個を含む。
【0015】
他の抗体またはフラグメントの軽鎖および重鎖が前記のとおりに提供されるが、前記配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。更に他の抗体またはそのフラグメントは、配列番号12に記載されているアミノ酸配列をCDR1が有し、配列番号13に記載されているアミノ酸配列をCDR2が有し、および/または配列番号14に記載されているアミノ酸配列をCDR3が有する軽鎖を有する。また、いくつかの抗体およびフラグメントは、配列番号9に記載されているアミノ酸配列をCDR1が有し、配列番号10に記載されているアミノ酸配列をCDR2が有し、および/または配列番号11に記載されているアミノ酸配列をHC CDR3が有する重鎖を有しうる。個々の抗体またはフラグメントは、配列番号14のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3、および/または配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を含む。
【0016】
さらに、(a)配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(V)、(b)配列番号8に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域(V)、または(c)(a)のVおよび(b)のVを含む抗体および免疫学的に機能的なフラグメントを提供する。
【0017】
さらにまた、構造において類似している抗体または免疫学的に機能的なフラグメントを提供するが、該Vは配列番号4に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、Vは配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。特定の抗体または機能的フラグメントにおいては、該Vは配列番号4に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、Vは配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。さらに他の態様においては、該抗体または免疫学的に機能的なフラグメントは、配列番号4のアミノ酸配列を有するV、および/または配列番号8のアミノ酸配列を有するVを含む。
【0018】
いくつかの抗体またはフラグメントは、配列番号2もしくは3のアミノ酸配列を含む若しくはそれらよりなる軽鎖、および/または配列番号6もしくは7のアミノ酸配列を含む若しくはそれらよりなる重鎖を有する。
【0019】
また、配列番号35のアミノ酸32−266よりなる、システイン残基220と245との間のジスルフィド結合により確立された三次構造を有する成熟ヒトDkk−1タンパク質に特異的に結合する抗体または免疫学的に機能的なフラグメントを含む。ここで、該抗体は、配列番号35のシステイン残基201と210との間のアミノ酸よりなるループを部分的に含むエピトープに結合する。
【0020】
さらに、Dkk−1ポリペプチドへの特異的結合に関して抗体(例えば、前記のもの)と競合する抗体またはフラグメントを含む。例えば、いくつかの抗体およびフラグメントは、2つの同一重鎖および2つの同一軽鎖よりなる抗体と競合し、ここで、該重鎖は配列番号3に記載のアミノ酸配列よりなり、該軽鎖は配列番号7に記載のアミノ酸配列よりなる。
【0021】
提供する種々の抗体およびフラグメントは、単一の重鎖および/もしくは軽鎖または単一の可変軽ドメインおよび/または単一の可変重ドメインを含みうる。他の抗体およびフラグメントは2つの軽鎖および/または2つの重鎖を含む。該抗体またはフラグメントが2つの軽鎖および/または重鎖を含む場合、いくつかの場合のそれらの2つの軽鎖は互いに同一であり、同様に、いくつかの場合のそれらの2つの重鎖は同一である。提供する抗体には、例えば、モノクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体が含まれうる。免疫学的に機能的なフラグメントには、scFv、Fab、Fab’、(Fab’)またはドメイン抗体が含まれうるが、これらに限定されるものではない。いくつかの場合には、該抗体またはフラグメントは約269pMまたはそれ未満のKdでDkk−1ポリペプチドから解離する。
【0022】
さらに、前記抗体および免疫学的に活性なフラグメントのいずれかを含む医薬組成物を提供する。そのような組成物は、典型的には、バッファー、医薬上許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤または保存剤をも含む。医薬組成物または医薬の製造における前記抗体および免疫学的に活性なフラグメントの使用も記載する。
【0023】
前記抗体をコードする種々の核酸も提供する。いくつかの核酸は、例えば、(a)配列番号14に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR、および/または(b)配列番号11に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDRをコードしていて、コードされるCDRは、Dkk−1ポリペプチドに特異的に結合しうる抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメントをコードしている。特定の態様においては、該核酸は、抗体または免疫学的に活性なフラグメントの可変軽領域(V)および/または可変重領域(VH)をコードする配列を含む又はそれらよりなり、ここで、該Vは配列番号4に対して少なくとも80%、90%または95%の配列同一性を有し、該Vは配列番号8に対して少なくとも80%、90%または95%の配列同一性を有する。該核酸のいくつかは、配列番号4を含む若しくはそれよりなるVをコードする配列、および/または配列番号8を含む若しくはそれよりなるVをコードする配列を含む。さらに他の核酸は、前記配列特性を有するVまたはVの両方をコードする配列を含む。前記核酸を含む発現ベクターも本明細書に開示し、同様に、そのような発現ベクターを含む細胞(例えば下等真核生物細胞、例えば酵母細胞、または高等真核生物細胞、例えば哺乳類細胞、例えばCHO細胞もしくは昆虫細胞)も本明細書に開示する。そのような発現ベクターを含有する細胞を培養することによる、抗体または免疫学的に活性なそのフラグメントの製造方法も記載する。
【0024】
もう1つの態様においては、種々の疾患の治療における前記抗体または免疫学的に機能的なフラグメントの使用を開示する。特定の方法においては、骨粗鬆症、関節炎、多発性骨髄腫、転移性骨疾患、歯周病、幹細胞再生に応答性の疾患、炎症疾患、神経疾患、眼疾患、腎疾患、肺疾患および皮膚疾患を治療するために、本明細書に記載の抗体または免疫学的に活性なフラグメントの有効量を、それを要する個体に投与する。いくつかの治療方法は、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎または骨関節炎を治療することを含む。
【0025】
さらに、本明細書に記載されている抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメントの治療的有効量を、それを要する個体に投与することを含む、骨量の減少の治療または予防方法を本明細書において提供する。特定の態様においては、該個体は、骨粗鬆症または他の骨減少罹患もしくは障害、例えば骨減少症、パジェット病、歯周炎、慢性関節リウマチ、および不動性(長期臥床)による骨減少に罹患している個体である。この実施形態のもう1つの態様においては、該個体は、骨に転移する癌に罹患している個体であり、もう1つの態様においては、該患者は、多発性骨髄腫に罹患している患者である。
【0026】
骨量の増加を誘導または刺激する方法も開示する。そのような方法は、本明細書に開示されている抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメントの治療的有効量を個体に投与することを含む。1つの態様においては、該個体は、骨に転移する癌に罹患しており、もう1つの態様においては、該患者は多発性骨髄腫に罹患している。さらにもう1つの態様においては、該個体は、骨粗鬆症、骨減少症、パジェット病、歯周炎、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、および不動性による骨減少を有する個体から選ばれる。この方法のもう1つの態様においては、該個体は、骨移植片レシピエント、または骨折に罹患している個体である。
【0027】
本明細書に開示されているDkk−1抗体および免疫学的に機能的なそのフラグメントは、骨微小環境を侵す癌細胞(例えば、多発性骨髄腫、乳癌、前立腺癌など)の骨破壊性効果を軽減するための治療的治療をもたらしうる。
【0028】
前記を考慮して、さらに、本明細書に記載されている抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメントの治療的有効量を個体に投与することを含む、個体においてWnt活性を誘導する方法を提供する。
【0029】
定義
本明細書中で用いる「抗体」、「免疫グロブリン」および「免疫グロブリン分子」なる語は互換的に用いられる。各免疫グロブリン分子は、その特異的抗原にそれが結合するのを可能にする特有の構造を有するが、すべての免疫グロブリンは、本明細書に記載されているのと同じ全体的構造を有する。基本的な免疫グロブリン構造単位はサブユニットの四量体を含むことが公知である。各四量体は、ポリペプチド鎖の、2つの同一ペアを有し、各ペアは1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主として抗原認識をもたらす約100〜110個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能をもたらす定常領域を定める。軽鎖はカッパまたはラムダとして分類される。重鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロンとして分類され、それぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEとして抗体のイソタイプを定める。
【0030】
軽鎖および重鎖は可変領域および定常領域に細分される(全般的には、Fundamental Immunology(Paul,W.編,2nd ed.Raven Press,N.Y.,1989),Ch.7を参照されたい)。したがって、完全抗体は2つの結合部位を有する。二官能性または二重特異性抗体の場合を除き、それらの2つの結合部位は同一である。鎖は全て、相補性決定領域またはCDRとも称される3つの超可変領域により連結された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の、同じ全体構造を示す。各ペアの2つの鎖からのCDRは該フレームワーク領域により整列され、特異的エピトープへの結合を可能にする。これらの用語は、天然に存在する形態、ならびにフラグメント(断片)および誘導体を含む。用語の範囲内には、免疫グロブリンのクラス、すなわち、IgG、IgA、IgE、IgMおよびIgDが含まれる。IgGのサブタイプ、すなわち、IgG、IgG、IgGおよびIgGも用語の範囲内に含まれる。用語は広義に用いられ、単一のモノクローナル抗体(アゴニストおよびアンタゴニスト抗体を含む)、および複数のエピトープまたは抗原に結合する抗体組成物を含む。用語は、特に、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体フラグメントを含むが、それらはC2ドメインのN結合グリコシル化部位を含む重鎖免疫グロブリン定常領域のC2ドメインの部分またはその変異体を少なくとも含有するか又は含有するよう修飾されなければならない。また、これらの用語は、N結合グリコシル化部位を少なくとも含有する少なくともFab領域の抗体フラグメントを意味しうる。
【0031】
「Fc」フラグメントなる語は、C2およびC3ドメインを含有する、抗体のC末端領域「結晶性フラグメント」を意味する(図1)。「Fab」フラグメントなる語は、V、C1、VおよびCドメインを含有する、抗体の「抗原結合フラグメント」領域を意味する(図1)。
【0032】
本明細書中で用いる「モノクローナル抗体」(mAb)なる語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する。すなわち、該集団を含む個々の抗体は、少量で存在しうる可能な天然に存在する突然変異の場合を除き同一である。モノクローナル抗体は単一の抗原部位に対して高特異性である。さらに、種々の決定基(エピトープ)に対する種々の抗体を典型的に含む通常の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各mAbは該抗原上の単一の決定基に対するものである。モノクローナル抗体は、その特異性に加えて、他の免疫グロブリンの混入を伴わないハイブリドーマ培養により合成されうる点で好都合である。「モノクローナル」なる語は、抗体の実質的に均一な集団から得られるという抗体の特性を示すものであり、いずれかの特定の方法による該抗体の製造を要すると解釈されるべきではない。例えば、本明細書におけるモノクローナル抗体は、Kohlerら,(1975)Nature,256:495に最初に記載されたハイブリドーマ法により製造されることが可能であり、あるいは組換えDNA法により製造されうる(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。
【0033】
「抗体」または「免疫グロブリン」なる語の範囲内の「フラグメント」なる語は、種々のプロテアーゼでの消化により製造されたもの、化学的切断および/または化学的解離により製造されたもの、ならびに組換え的に製造されたものを含むが、該フラグメントは尚も標的分子に特異的に結合しうるものでなければならない。そのようなフラグメントとしては、Fc、Fab、Fab’、Fv、F(ab’)および一本鎖Fv(scFv)フラグメントが挙げられる。以下、「免疫グロブリン」なる語は「フラグメント」なる語をも含む。
【0034】
免疫グロブリンは更に、配列において修飾されているが尚も標的分子に特異的に結合しうる免疫グロブリンまたはフラグメント、例えば、種間キメラおよびヒト化抗体;抗体融合体;ヘテロマー抗体複合体および抗体融合体、例えばジアボディ(二重特異性抗体)、一本鎖ジアボディおよびイントラボディを含む(例えば、Intracellular Antibodies:Research and Disease Applications,(Marasco編,Springer−Verlag New York,Inc.,1998))。
【0035】
「エピトープ」なる語は、Bおよび/またはT細胞が応答する、抗原上の部位、あるいは抗体の産生対象となる及び/又は抗体が結合する、分子上の部位を意味する。例えば、エピトープは、該エピトープを定める抗体により認識されうる。線状エピトープは、認識されるエピトープをアミノ酸一次配列が含むエピトープである。線状エピトープはユニーク配列内に典型的には少なくとも3個、より通常は少なくとも5個、例えば約8個〜約10個のアミノ酸を含む。線状エピトープとは対照的に、コンホメーションエピトープは、該エピトープを含むアミノ酸の一次配列が、認識されるエピトープの唯一の限定成分ではないエピトープ(例えば、アミノ酸の一次配列が、該エピトープを定める抗体により必ずしも認識されないエピトープ)である。典型的には、コンホメーションエピトープは、線状エピトープに比べて増加した数のアミノ酸を含む。コンホメーションエピトープの認識に関して、該抗体は該ペプチドまたはタンパク質の三次元構造を認識する。例えば、タンパク質分子が折り畳まれて三次元構造を形成する場合、該コンホメーションエピトープを形成する或るアミノ酸および/またはポリペプチドバックボーンは、該抗体が該エピトープを認識することを可能にするよう並置される。
【0036】
エピトープのコンホメーションを決定する方法には、例えば、X線結晶学、二次元核磁気共鳴分光法および部位特異的スピンラベル法および電子常磁性共鳴分光法が含まれるが、これらに限定されるものではない。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology(1996)Vol.66,Morris(編)を参照されたい。
【0037】
本明細書中で用いる「Dkk−1」は、例えば、Dkk−1のアカゲザル、マウスおよびヒト形態を含む。ヒトおよびアカゲザルDkk−1タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号35および38に示す。ヒトDkk−1タンパク質(配列番号35)は、配列番号35のアミノ酸1−31よりなるリーダー配列を有する。マウスDkk−1タンパク質配列はGlinkaら,Nature 391:357−362(1998)に開示されている。アカゲザルDkk−1は、国際公開番号WO2005049640に開示されている。「Dkk−1」なる語は、これらの天然タンパク質と免疫学的に交差反応性である、そのような天然配列の変異体をも含む。これらのDkk−1タンパク質はLRP5またはLRP6タンパク質とWntとの間の相互作用を抑制しうる。ヒトLRP5の典型的なアミノ酸配列を配列番号39に示す。ヒトLRP6をコードする典型的なアミノ酸配列を配列番号40に示す。該用語は、本明細書に開示されている抗体が特異的に結合しうるエピトープを含有する、Dkk−1の天然または変異体形態の断片をも意味する。
【0038】
「骨減少症」なる語は、正常な骨ミネラル密度(BMD)を有するとみなされる標準的な患者と比較して少なくとも1標準偏差の骨減少を有する患者に関するものである。この目的においては、該測定値を二重エネルギーX線吸収(DEXA)により決定し、患者のBMDを、年齢および性別に釣り合わされた標準値(Zスコア)と比較する。骨減少症の判定の際には、1以上の骨からBMD測定値を得る。
【0039】
「治療的有効量」なる語は、哺乳動物において治療応答をもたらすと判断された抗Dkk−1抗体の量を意味する。そのような治療的有効量は当業者により容易に確認される。
【0040】
発明の詳細な説明
本発明は、Dkk−1のC末端領域において多次元コンホメーションエピトープを標的化することによりLRP5へのDkk−1の結合を選択的に抑制する抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメントを含む組成物を提供する。該抗体は更に、FcRnへの結合の実質的な変化も半減期の変化も伴うことなく生理的に妥当な程度でいずれのFc受容体またはC1qにも該抗体が結合できなくする、該抗体のFcドメインへの修飾を含む。換言すれば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)または補体媒介性細胞傷害(CMC)を誘発せず免疫複合体も形成することなく、Dkk−1の多次元コンホメーションエピトープを認識する抗体を含む組成物を提供する。現在好ましい実施形態においては、該抗体は完全ヒトモノクローナル抗体であり、これは、好ましくは、どのような度合であれ、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体媒介性細胞傷害(CMC)を誘発せず、また、免疫複合体を形成しない一方で、その正常な薬物動態学的(PK)特性を保有する。骨同化を刺激するための成長中のマウスモデルにおいて、該抗体を含む組成物は、該抗体を含む組成物が骨粗鬆症の治療に有用であることを示している。
【0041】
種々の骨同化性標的のうち、骨における規定(canonical)Wntシグナリング経路は、療法に対する有効かつ安全な同化応答を惹起するための最良の機会を提供する。規定Wntは、2つの共受容体、すなわち、フリズルド(frizzled)ならびにLDL受容体関連タンパク質(LRP)5および6(それぞれ配列番号39および40を参照されたい)を介して、シグナルを伝達する。LRP5の高次形態(hypermorphic)突然変異は、年齢が釣り合わされた正常対照と比較してBMDにおける有意な増加を引き起こす(臨床集団における平均より約5SD高い)。その原因となる突然変異(例えば、G171V)が、骨量および骨形成速度の増加を招くトランスジェニックマウスにおいて試験されている。規定Wntシグナリングは、骨において高発現される抑制性タンパク質Dickkopf−1(Dkk1)の存在下で遮断される。Dkk−1は、26kDaの分子量を有する266アミノ酸のタンパク質である。該タンパク質は、システインに富む2つのドメイン、すなわち、アミノ酸97−138および183−245(種間で高度に保存されているモチーフ)を有する。Dkk−1は高い比率の種間配列同一性/類似性を有する(ヒト:アカゲザル 97/99、ヒト:マウス 80/87およびアカゲザル:マウス 79/87)。興味深いことに、Dkk−1は、LRP5の高次形態G171突然変異体を抑制するその能力を喪失する(該突然変異受容体の中心的シグナリング欠損)。さらに、同様に、Dkk−1を欠くヘテロ接合ノックアウトマウスは(G171V−LRP5マウスの場合と同様に)骨量の増加を示し、これは骨形成速度における4倍の上昇を伴う。LRP5に関する、およびDkk−1によるその抑制に関する複合的データは、骨同化応答が、該受容体の選択的活性化を介して、または骨微小環境におけるLRP5シグナリングのDkk−1抑制を妨げる阻害性療法により生じうることを示唆している。実際、実施例において示されるとおり、本明細書に開示されている中和抗Dkk−1抗体(0.5〜5.0mg/kg、皮下、週2回)は、遠位および全大腿骨に対するPTH様効果を伴って、成長中のマウスにおいて骨量を増加させた。他の抗Dkk−1抗体も、成長中のマウスにおいて骨量を増加させることが示されている。例えば、米国公開出願番号20060127393を参照されたい。
【0042】
したがって、Dkk−1の活性を調節するのに有用である、種々の抗Dkk−1抗体(一本鎖抗体、ドメイン抗体、および抗原結合領域を有するポリペプチドを含む)および免疫学的に機能的なそれらのフラグメントを提供する。これらの抗Dkk−1抗体および免疫学的に機能的なそれらのフラグメントはヒトDkk−1ポリペプチドに特異的に結合し、Wntシグナリング経路のDkk−1抑制を軽減し、骨組織における骨形成を誘導する。
【0043】
本発明の或る実施形態においては、該抗Dkk−1抗体は、IgG1、IgG2またはIgG4サブタイプのものである。好ましい実施形態においては、該抗体は完全ヒトモノクローナル抗体であり、これは、好ましくは、どのような度合であれ、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体媒介性細胞傷害(CMC)を誘発せず、また、免疫複合体を形成しない一方で、その正常な薬物動態学的(PK)特性を保有する。現在好ましい実施形態においては、該抗体はIgG2m4イソタイプを有する(2006年10月17日付け出願の米国出願番号11/581,931および2005年10月21日付け出願の米国出願11/256,332を参照されたい)。
【0044】
抗体を構成する各軽/重免疫グロブリン鎖ペアの可変領域は典型的には抗原結合部位を形成する。免疫グロブリン鎖の可変領域は、一般に、3つの超可変領域または「相補性決定領域」(CDR)により連結された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)よりなる同じ全体構造を示す。CDRは各重鎖/軽鎖ペアの2つの鎖を形成し、これらは、典型的には、フレームワーク領域により整列されて、標的タンパク質上の特異的エピトープに特異的に結合する構造を形成する。天然に存在する軽および重鎖可変領域は共に、典型的には、該免疫学的鎖のN末端からC末端に以下の順序のこれらの要素に適合する:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4。これらのドメインのそれぞれの位置を占めるアミノ酸に番号を割り当てるための付番系が案出されている。この付番系はChothiaおよびLesk,J.Mol.Viol.196:901−917(1987);Chothiaら,Nature 342:878−883(1989)に記載されている。
【0045】
提供する抗Dkk−1抗体の完全長軽および重免疫グロブリン鎖の幾つかの具体例ならびに対応ヌクレオチドおよびアミノ酸配列を表1に要約する。
【0046】
【表1】

【0047】
抗Dkk−1抗体は、表1に挙げられている軽鎖のいずれか1つを、表1に挙げられている重鎖のいずれかと合体させることにより形成されうる。いくつかの場合には、該抗体は、表1に挙げられているものから選ばれる少なくとも1つの重鎖および1つの軽鎖を含み、他の場合には、該抗体は2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖を含有する。一例としては、抗体または免疫学的に機能的なフラグメントは、表1に挙げられている2つのL2軽鎖および2つのH1重鎖、または2つのL2軽鎖および2つのH3重鎖、または2つのL2軽鎖および2つのH4重鎖、ならびに軽鎖のペアと重鎖のペアとの他の類似の組合せを含みうる。
【0048】
Dkk−1のC末端領域内の前記多次元コンホメーションエピトープに結合しうる典型的な抗Dkk−1抗体はモノクローナル抗体RH1−10、RH2−18、RH2−59およびRH2−80(後記実施例を参照されたい)であり、それらのそれぞれは軽鎖および重鎖を含む。
【0049】
RH1−10の完全軽鎖は、配列番号17に示すヌクレオチド配列によりコードされ、RH1−10の完全重鎖は、配列番号19に示すヌクレオチドによりコードされる。RH1−10の対応軽鎖および重鎖アミノ酸配列をそれぞれ配列番号18および20に示す。配列番号18のアミノ酸残基1−20および配列番号20の残基1−19は、それぞれ、RH1−10のこれらの軽鎖および重鎖のシグナル配列に対応する。該シグナル配列を含有しない該軽鎖のアミノ酸配列を配列番号42に示し、該シグナル配列を欠く該重鎖のアミノ酸配列を配列番号41に示す。したがって、前記実施形態の1つの態様においては、該重鎖は配列番号20のアミノ酸20−457(配列番号41に対応するH1)よりなり、この実施形態のもう1つの態様においては、該軽鎖は配列番号18のアミノ酸21−237(配列番号42に対応するL1)よりなることが可能である。この実施形態の更にもう1つの態様においては、該抗体は、配列番号20のアミノ酸20−457よりなる重鎖および配列番号18のアミノ酸21−247よりなる軽鎖の両方を含む。いくつかの場合には、該抗体は2つの同一の重鎖(それぞれは配列番号20のアミノ酸20−457よりなる)および2つの同一の軽鎖(それぞれは配列番号18のアミノ酸21−237よりなる)よりなる。
【0050】
RH2−18の完全軽鎖は、配列番号1に示すヌクレオチド配列によりコードされ、RH2−18の完全重鎖は、配列番号5に示すヌクレオチドによりコードされる。RH2−18の対応軽鎖および重鎖アミノ酸配列をそれぞれ配列番号2および6に示す。配列番号2のアミノ酸残基1−20および配列番号6の残基1−19は、それぞれ、RH2−18のこれらの軽鎖および重鎖のシグナル配列に対応する。該シグナル配列を含有しない該軽鎖のアミノ酸配列を配列番号3に示し、該シグナル配列を欠く該重鎖のアミノ酸配列を配列番号7に示す。したがって、前記実施形態の1つの態様においては、該重鎖は配列番号6のアミノ酸20−457(配列番号7に対応するH2)よりなり、この実施形態のもう1つの態様においては、該軽鎖は配列番号2のアミノ酸21−237(配列番号3に対応するL2)よりなることが可能である。この実施形態の更にもう1つの態様においては、該抗体は、配列番号6のアミノ酸20−457よりなる重鎖および配列番号2のアミノ酸21−237よりなる軽鎖の両方を含む。いくつかの場合には、該抗体は2つの同一の重鎖(それぞれは配列番号6のアミノ酸20−457よりなる)および2つの同一の軽鎖(それぞれは配列番号2のアミノ酸21−237よりなる)よりなる。
【0051】
RH2−59の完全軽鎖は、配列番号21に示すヌクレオチド配列によりコードされ、RH2−59の完全重鎖は、配列番号23に示すヌクレオチドによりコードされる。RH2−59の対応軽鎖および重鎖アミノ酸配列をそれぞれ配列番号22および24に示す。配列番号22のアミノ酸残基1−20および配列番号24の残基1−19は、それぞれ、RH2−59のこれらの軽鎖および重鎖のシグナル配列に対応する。該シグナル配列を含有しない該軽鎖のアミノ酸配列を配列番号44に示し、該シグナル配列を欠く該重鎖のアミノ酸配列を配列番号43に示す。したがって、前記実施形態の1つの態様においては、該重鎖は配列番号24のアミノ酸20−457(配列番号43に対応するH3)よりなり、この実施形態のもう1つの態様においては、該軽鎖は配列番号22のアミノ酸21−237(配列番号44に対応するL3)よりなることが可能である。この実施形態の更にもう1つの態様においては、該抗体は、配列番号24のアミノ酸20−457よりなる重鎖および配列番号22のアミノ酸21−237よりなる軽鎖の両方を含む。いくつかの場合には、該抗体は2つの同一の重鎖(それぞれは配列番号24のアミノ酸20−457よりなる)および2つの同一の軽鎖(それぞれは配列番号22のアミノ酸21−237よりなる)よりなる。
【0052】
RH2−80の完全軽鎖は、配列番号25に示すヌクレオチド配列によりコードされ、RH2−80の完全重鎖は、配列番号27に示すヌクレオチドによりコードされる。RH2−80の対応軽鎖および重鎖アミノ酸配列をそれぞれ配列番号26および28に示す。配列番号26のアミノ酸残基1−20および配列番号28の残基1−19は、それぞれ、RH2−80のこれらの軽鎖および重鎖のシグナル配列に対応する。該シグナル配列を含有しない該軽鎖のアミノ酸配列を配列番号46に示し、該シグナル配列を欠く該重鎖のアミノ酸配列を配列番号45に示す。したがって、前記実施形態の1つの態様においては、該重鎖は配列番号28のアミノ酸20−457(配列番号45に対応するH4)よりなり、この実施形態のもう1つの態様においては、該軽鎖は配列番号26のアミノ酸21−237(配列番号46に対応するL4)よりなることが可能である。この実施形態の更にもう1つの態様においては、該抗体は、配列番号28のアミノ酸20−457よりなる重鎖および配列番号26のアミノ酸21−237よりなる軽鎖の両方を含む。いくつかの場合には、該抗体は2つの同一の重鎖(それぞれは配列番号28のアミノ酸20−457よりなる)および2つの同一の軽鎖(それぞれは配列番号26のアミノ酸21−237よりなる)よりなる。
【0053】
提供する他の抗Dkk−1抗体は、前記の重鎖および軽鎖のいずれかの組合せにより形成される抗体の変異体であり、これらの軽鎖および重鎖のアミノ酸配列に対する少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%の同一性をそれぞれが有する軽鎖および/または重鎖を含む。いくつかの場合には、そのような抗体は少なくとも1つの重鎖および1つの軽鎖を含み、他の場合には、そのような変異体形態は2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖を含有する。
【0054】
また、以下の表2に示すとおり、VL1、VL2、VL3およびVL4よりなる群から選ばれる軽鎖可変領域ならびに/またはVH1、VH2、VH3およびVH4よりなる群から選ばれる重鎖可変領域とを含む抗Dkk−1抗体、ならびにこれらの軽鎖および重鎖可変領域の免疫学的に機能的なフラグメント(断片)、誘導体、突然変異タンパク質および変異体を提供する。
【0055】
【表2】

【0056】
したがって、提供する抗Dkk−1抗体は、限定的なものではないが、以下の形態を有するものを含む:VL1VH1、VL1VH2、VL1VH3、VL1VH4、VL2VH1、VL2VH2、VL2VH3、VL2VH4、VL3VH1、VL3VH2、VL3VH3、VL3VH4、VL4VH1、VL4VH2、VL4VH3、およびVL4VH3。いくつかの場合には、前記抗体は2つの軽鎖可変領域ドメインおよび2つの重鎖可変領域ドメインを含み、ここで、各軽鎖は同一であり、各重鎖は同一である。他の場合には、前記抗体は2つの軽鎖可変領域ドメインおよび2つの重鎖可変領域ドメインを含み、ここで、各軽鎖は異なり、各重鎖は異なる。
【0057】
そのような抗Dkk−1抗体の具体例として、特定の抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメントはRH2−18の軽鎖の可変領域または重鎖の可変領域を含むことが可能であり、ここで、該軽鎖可変領域は配列番号2のアミノ酸21−132(配列番号4に対応するVL1)よりなり、該重鎖可変領域は配列番号6のアミノ酸20−131(配列番号8に対応するVH1)よりなる。この実施形態の1つの態様においては、該抗体は2つの同一の重鎖および2つの同一の軽鎖よりなる。また、例えば、配列番号2のアミノ酸21−132よりなる軽鎖可変領域または抗原結合性である若しくは免疫学的に機能的なそのフラグメントを含み、さらに、配列番号6のアミノ酸20−131よりなる重鎖可変領域を含む抗体を提供する。
【0058】
個々の抗Dkk−1抗体は、1〜約20アミノ酸残基のVL1、VL2、VL3またはVL4から選ばれる軽鎖可変ドメインの配列とは異なるアミノ酸の配列を含む軽鎖可変ドメインを含むことが可能であり、ここで、それぞれのそのような配列相違は、独立して、1個のアミノ酸の欠失、挿入または置換である。いくつかの抗体における軽鎖可変領域は、VL1、VL2、VL3またはVL4の軽鎖可変領域のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0059】
個々の抗Dkk−1抗体は、1〜約20アミノ酸残基のVH1、VH2、VH3またはVH4から選ばれる重鎖可変ドメインの配列とは異なるアミノ酸の配列を含む重鎖可変ドメインを含むことが可能であり、ここで、それぞれのそのような配列相違は、独立して、1個のアミノ酸の欠失、挿入または置換である。いくつかの抗体における重鎖可変領域は、VH1、VH2、VH3またはVH4の重鎖可変領域のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0060】
本明細書に開示されている個々の抗Dkk−1抗体は、表3に要約するとおり、CDRの1以上のアミノ酸配列と同一である又は実質的な配列同一性を有する1以上のアミノ酸配列を含みうる。
【0061】
【表3】

【0062】
提供する抗Dkk−1抗体および免疫学的に機能的なフラグメントは、前記に挙げたCDRの1以上を含むことが可能であり、該CDRの任意の組合せを含むことが可能である。例えば、いくつかの抗体またはフラグメントは軽鎖CDR3および重鎖CDR3の両方を含みうる。ある抗体は、表3に挙げたCDRの変異体形態を含有し、該CDRの1以上のそれぞれは、表3に挙げたCDR配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%の配列同一性を有する。例えば、該抗体またはフラグメントは、表3に挙げたそれぞれ軽鎖CDR3配列および重鎖CDR3に対して少なくとも80%、85%、90%または95%の配列同一性をそれぞれが有する軽鎖CDR3および重鎖CDR3の両方を含みうる。挙げられている配列との相違は、通常、保存的置換である。軽鎖または重鎖CDRの1以上を含むポリペプチドは、後記で更に詳しく説明するとおり、適当な宿主細胞内で該ポリペプチドを発現させるために適当なベクターを使用して製造されうる。
【0063】
表2および3に開示されている重鎖および軽鎖可変領域ならびにCDRを使用して、ドメイン抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’):フラグメント、Fv:フラグメント、一本鎖抗体およびscFvを含む(これらに限定されるものではない)当業者に公知の種々のタイプの免疫学的に機能的なフラグメントのいずれかを製造することが可能である。
【0064】
抗Dkk−1抗体エピトープ
抗Dkk−1抗体はDkk−1のC末端領域内の複合的な多次元コンホメーションエピトープに結合する。コリパーゼでの相同性モデルにより(後記のとおり)、Dkk−1のC末端ドメインは球状三次構造を形成すると予想される。実施例5に示す結果は、RH2−18抗体により例示されるとおり、抗Dkk−1抗体により認識されるエピトープが、Dkk−1のC末端内のシステイン・リッチ・ドメイン2におけるDkk−1の配列および三次構造の両方により影響される複合エピトープであることを示している。図5Cは、アラニン−スキャニングにより決定されたRH2−18抗体へのDkk−1の結合に必要なアミノ酸残基を示すDkk−1 C末端ドメイン(アミノ酸187−266)の構造-相同性モデルを示す(図5Cを参照されたい)。アミノ酸残基S187からV188、R203からK208、E24およびL243の置換は、非変性タンパク質を使用する免疫ブロット実験において抗原−抗体相互作用の低下をもたらすことが判明した。したがって、これらのアミノ酸残基は該複合エピトープの形成において重要な役割を果たしているらしい。該C末端相同性モデルにおいて示されるアミノ酸配列の範囲外であるアミノ酸残基R171−L174も該複合エピトープに寄与することが判明した。また、アラニンでのアミノ酸C220の置換もDkk−1へのRH2−18結合の喪失を引き起こした。しかし、Dkk−1 C末端ドメインの第2および第3フィンガー(ループ)に位置づけられる図5cに示されているアミノ酸残基の特定の置換はDkk−1へのRH2−18の結合に悪影響を及ぼさないようであった。したがって、それはDkk−1へのRH2−18の結合に必要であるとはみなされない。
【0065】
したがって、RH2−18抗体は、抗体結合に必要であると確認された第2のシステイン・リッチ・ドメインの種々の別個の領域からの以下のアミノ酸残基を含む複合エピトープに結合する:アミノ酸残基S187およびV188(それらは共に、第1フィンガードメインに先行する領域内に存在する)ならびにアミノ酸R203、H204、F205、W206、S207およびK208(それらは全て、該ドメインの第1フィンガーを構成する)。さらに、該ドメインのC末端側に、そして第2フィンガーに先行して、E241およびL243が存在し、それらもDkk−1へのRH2−18結合に必要であった。最後に、Cys220はDkk−1へのRH2−18結合に必要である。Cys220は適切な三次構造の確立において重要な役割を果たすと予想され、このこともこのエピトープの複合的性質を示すものである。総合すると、該データは、RH2−18エピトープが、Dkk−1の第1フィンガードメインA202−I209を含む(これに限定されるものではない)Dkk−1 C末端領域のトポグラフ的表面により定められることを示唆している。したがって、抗Dkk−1抗体は、システイン残基220および245の間のジスルフィド結合により確立される三次構造を有し配列番号35のアミノ酸32−266よりなる成熟ヒトDkk−1タンパク質の複合エピトープに結合し、ここで、該抗体は、配列番号35のシステイン残基201および210の間のアミノ酸よりなるループを含むエピトープに結合する。
【0066】
Dkk−1のアミノ酸配列はDkk−2およびDkk−4のアミノ酸配列と密接に関連しており、アミノ酸レベルでそれらに対してそれぞれ50%および45%の同一性を有する。ヒトDkk−1、−2、−4およびアカゲザルDkk−1のアミノ酸配列の比較(図6A)は、前記のとおりDkk−1へのRH2−18結合に重要であることが確認されたDkk−1内に位置するアミノ酸残基の保存性の欠如を示している。RH2−18結合に必要なDkk−1内のアミノ酸残基は青色の枠内に囲われている。認められうるとおり、Dkk−2およびDkk−4における対応領域内の配列保存性の完全な欠如が存在する。アミノ酸残基Arg171からLeu174、Ser187、Val188、Ser207およびGlu241がDkk−1へのRH2−18の結合に必要であることを示した、Dkk−1におけるアミノ酸残基のエピトープマッピングに基づいて、そしてアミノ酸残基Arg171からLeu174、Ser187、Val188、Ser207およびGlu241におけるDkk−1およびDkk−2およびDkk−4の間の配列保存性の欠如に基づいて、RH2−18および類似エピトープを共有する他の抗Dkk−1抗体はDkk−1に対する高度の選択性を有すると予想される。実施例5に示すとおり、Dkk−2またはDkk−4へのRH2−18の検出可能な特異的結合はほとんど又は全く認められなかった。該抗体の、Dkk−1に対する選択性は、少なくとも100倍であり、アカゲザルDkk−1へのRH2−18の結合の検出限界は約1ngであることが判明した。これらのデータは、RH2−18抗体および本明細書に記載されている類似の抗Dkk−1抗体が、Dkk−1の幾つかの異なる領域を含む新規な複合的な三次元エピトープを認識することを示しており、このことは、RH2−18および該類似抗体が特有のものであることを示している。
【0067】
抗Dkk−1抗体の製造
本発明における抗Dkk−1抗体は、Kohlerら,(1975)Nature,256:495に最初に記載されたハイブリドーマ法により製造されることが可能であり、あるいは組換えDNA法により製造されることが可能である(例えば、実施例1;米国特許第4,816,567号を参照されたい)。現在好ましい態様においては、本発明における抗Dkk−1抗体は組換えDNA法により製造される。
【0068】
本発明における抗Dkk−1抗体をコードする組換えDNA構築物は、下等真核宿主細胞、例えば酵母または糸状菌、植物宿主細胞、哺乳類宿主細胞、昆虫宿主細胞または微生物宿主細胞を形質転換するために使用されうる。形質転換は、宿主細胞内に核酸を導入するための任意の公知方法を用いて行われうる。用いられる最適な形質転換法は、形質転換される宿主細胞のタイプに左右される。
【0069】
典型的な組換えDNA発現構築物は、以下のものの1以上をコードするポリペプチドをコードする核酸分子を含む:重鎖定常領域(例えば、C1、C2および/またはC3)、重鎖可変領域、軽鎖定常領域、軽鎖可変領域、および抗Dkk−1抗体の軽または重鎖の1以上のCDR。これらの核酸配列は、標準的な連結技術を用いて適当な発現ベクター内に挿入される。例えば、1つの実施形態においては、RH2−18重鎖をコードする核酸およびRH2−18軽鎖をコードする核酸はそれぞれ、発現ベクター内に連結され、各鎖は別々に発現される。あるいは、重鎖および軽鎖の両方をコードする単一の核酸をペプチド切断部位により連結して、単一のポリペプチドとしての軽鎖および重鎖の発現後に該ペプチド切断部位が切断されて別々の軽鎖および重鎖が得られるようにする。
【0070】
該発現ベクターは、典型的には、使用される個々の宿主細胞において機能的となるよう選ばれる。適当な発現ベクターは、例えばInvitrogen Life TechnologiesまたはBD Biosciencesから購入されうる。本発明の抗体およびフラグメントをクローニングし発現させるための他の有用なベクターには、BianchiおよびMcGrew,Biotech.Biotechnol.Bioeng.84(4):439−44(2003)に記載されているものが含まれる。他の適当な発現ベクターは例えばMethods Enzymol.185(D.V.Goeddel編),1990,New York:Academic Pressに記載されている。
【0071】
典型的には、発現ベクターは更に、プラスミドまたはウイルスの維持のための並びに外在性ヌクレオチド配列のクローニングおよび発現のための核酸配列を含む。これらの核酸配列は、典型的には、以下の機能的に連結されたヌクレオチド発現配列の1以上を含む:プロモーター、1以上のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、供与および受容スプライス部位を含有する完全イントロン配列、ポリペプチド分泌のためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現されるポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、ならびに選択マーカー要素。
【0072】
場合によっては、該ベクターは、ポリHisタグ(例えば、ヘキサHis)、または商業的に入手可能な対応抗体が存在する別のタグ、例えばFLAG、HA(インフルエンザウイルスからの赤血球凝集素)またはmycをコードする、コード配列の5’または3’末端に位置するタグコード化配列を含有しうる。該タグは、宿主細胞からの該抗体のアフィニティー精製のための手段として働きうる。アフィニティー精製は、例えば、アフィニティーマトリックスとして該タグに対する抗体を使用するカラムクロマトグラフィーにより達成されうる。場合によっては、ついで、例えば切断のための或るペプチダーゼを使用する種々の手段により、精製抗体から該タグを除去することが可能である。
【0073】
該発現ベクター内のヌクレオチド発現配列は同種(宿主細胞と同じ種または株に由来する)、異種(宿主細胞種または株以外の種に由来する)、ハイブリッド(2以上の起源に由来する配列の組合せ)、合成または天然物でありうる。したがって、発現配列の起源は任意の原核生物または真核生物でありうる。該ベクターにおいて有用な発現配列は、当技術分野でよく知られている幾つかの方法のいずれかにより得られうる。複製起点は、典型的には、原核生物発現ベクター(特に商業的に購入されるもの)の一部であり、該起点は宿主細胞内の該ベクターの増幅を補助する。該ベクターが複製起点部位を含有しない場合、それを、既知配列に基づいて化学合成し、該ベクター内に連結することが可能である。
【0074】
該発現ベクターは、典型的には、抗Dkk−1抗体を産生するよう抗Dkk−1抗体をコードする核酸に機能的に連結された、宿主生物により認識されるプロモーターを含有する。プロモーターは誘導性プロモーターまたは構成的プロモーターでありうる。誘導性プロモーターは、栄養素の存在もしくは非存在または温度変化のような培養条件における何らかの変化に応答したその制御下、DNAからの、増加したレベルの転写を開始させる。一方、構成的プロモーターは連続的な遺伝子産物の産生を開始させる。すなわち、遺伝子発現に対する実験的制御はほとんど又は全く存在しない。種々の潜在的宿主細胞により認識される多数のプロモーターがよく知られている。プロモーターを制限酵素消化により起源DNAから除去することにより、またはプロモーターをポリメラーゼ連鎖反応により増幅し所望のプロモーター配列を該ベクター内に挿入することにより、適当なプロモーターが、抗Dkk−1抗体をコードするDNAに機能的に連結される。酵母宿主で使用する適当なプロモーターも当技術分野でよく知られている。酵母プロモーターと共に酵母エンハンサーが有利に使用される。哺乳類宿主細胞で使用するための適当なプロモーターはよく知られており、それらには、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、そして最も好ましくはシミアンウイルス40(SV40)のようなウイルスのゲノムから得られるものが含まれるが、これらに限定されるものではない。他の適当な哺乳類プロモーターには、異種哺乳類プロモーター、例えば、熱ショックプロモーターおよびアクチンプロモーターが含まれる。抗Dkk−1抗体をコードする核酸の、高等真核生物における転写を増加させるために、該ベクター内にエンハンサー配列が挿入されうる。エンハンサーは、転写を増強するためにプロモーターに作用する、通常は約10〜300bp長のDNAのシス作用性要素である。エンハンサーは、比較的に、配向および位置に非依存性である。
【0075】
発現ベクターにおいては、転写終結配列は、典型的には、ポリペプチドコード領域の末端の3’側に位置し、転写を終結させるように働く。原核細胞内での発現のために使用される転写終結配列は、典型的には、G−Cに富む断片およびそれに続くポリT配列である。
【0076】
選択マーカー遺伝子要素は、選択培地内で増殖させる宿主細胞の生存および増殖に必要なタンパク質をコードする。発現ベクター内で使用される典型的な選択マーカー遺伝子は、(a)原核宿主細胞の場合の例えばアンピシリン、テトラサイクリンまたはカナマイシンのような抗生物質または他の毒素に対する耐性を付与するタンパク質、(b)該細胞の栄養要求性欠損を相補するタンパク質、あるいは(c)複合培地からは入手できない決定的に重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。選択マーカーの具体例には、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子およびテトラサイクリン耐性遺伝子が含まれる。また、細菌ネオマイシン耐性遺伝子は原核宿主細胞および真核宿主細胞の両方における選択に使用されうる。
【0077】
リボソーム結合部位は、通常、mRNAの翻訳開始に必要であり、シャイン−ダルガルノ配列(原核生物)またはコザック配列(真核生物)により特徴づけられる。該要素は、典型的には、プロモーターの3’側、かつ発現されるポリペプチドのコード配列の5’側に位置する。
【0078】
いくつかの場合には、特定のグリコシル化構造またはパターンを有する抗Dkk−1抗体が望まれる。例えば、多数の哺乳類および植物細胞は、個体内に導入された場合にタンパク質を免疫原性にする特定のN−グリカンを有するタンパク質を産生する。抗Dkk−1抗体に対する免疫応答の誘発が望ましくない抗Dkk−1抗体の場合には、哺乳類宿主細胞のグリコシル化経路は、望ましくないN−グリカンを有さない抗Dkk−1抗体を産生するよう修飾されることが好ましい。特定のN−グリカンを有する抗体を産生するための哺乳類細胞におけるグリコシル化経路を修飾するための方法は、例えば、国際特許出願番号WO0061739および米国公開特許出願番号20040093621、20040259150、20030157108、20040191256、20040136986および米国特許第6,946,292号に記載されている。植物におけるグリコシル化経路を修飾するための方法は、Coxら,Nature Biotechnology,doi:10.1038/nbtl260(2006年11月26日付けオンライン公開)に記載されている。多数の下等真核生物細胞も、個体内に導入された場合にタンパク質を免疫原性にする特定のN−グリカンを有するタンパク質を産生する。抗Dkk−1抗体の場合、該下等真核宿主細胞のグリコシル化経路は、望ましくないN−グリカンを有さない抗Dkk−1抗体を産生するよう修飾されることが好ましい。特定のN−グリカンおよびグリコシル化パターンを有する抗体を産生するための、酵母を含む下等真核生物におけるグリコシル化経路を修飾するための方法は、例えば、米国特許第7,029,872号ならびに公開米国特許出願番号20060034829、20060024304、20060034828、20060034830、20060029604および20060024292に記載されている。
【0079】
適当な条件下で培養された場合の形質転換宿主細胞は抗Dkk−1抗体を合成し、ついでこれは(宿主細胞がそれを培地内に分泌する場合には)培地から採集されることが可能であり、あるいは(それが分泌されない場合には)それを産生する宿主細胞から直接的に採集されることが可能である。適当な宿主細胞の選択は、種々の要因、例えば、望まれる発現レベル、活性のために望ましい又は必要なポリペプチド修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)および生物学的に活性な分子への折り畳みの容易さに左右される。
【0080】
発現のための宿主として利用可能な哺乳類細胞系は当技術分野でよく知られており、限定的なものではないが、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多数の不死化細胞系、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、乳児ハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)および多数の他の細胞系を包含する。ある実施形態においては、どの細胞系が最高レベルの発現レベルを有し、構成的Dkk−1結合特性を有する抗体を産生するのかを決定するために、種々の細胞系を試験することにより、特定のDNA構築物を発現させるための最良の細胞系が選択されうる。
【0081】
特定の実施形態においては、該抗体は、ヒト様N−グリカン構造を有する糖タンパク質を産生するよう遺伝的に操作された下等真核生物細胞内で産生されることが好ましい。米国特許第7,029,872号ならびに公開米国特許出願番号20060034829、20060024304、20060034828、20060034830、20060029604および20060024292は、特定のN−グリカン構造を主に有する酵母および糸状菌のような下等真核生物細胞内での抗体の産生を開示している。該抗体を製造するために使用されうる遺伝的に操作された下等真核生物には、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ピチア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピチア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピチア・コクラメ(Pichia koclamae)、ピチア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピチア・オプンチエ(Pichia opuntiae)、ピチア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピチア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピチア・グエルクウム(Pichia guercuum)、ピチア・ピエペリ(Pichia pijperi)、ピチア・スチプチス(Pichia stiptis)、ピチア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピチア属種(Pichia sp.)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス属種(Saccharomyces sp.)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス属種(Kluyveromyces sp.)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ルッコノウェンセ(Chrysosporium lucknowense)、フザリウム属種(Fusarium sp.)、フザリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)およびニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)よりなる群から選ばれるものが含まれる。
【0082】
抗Dkk−1抗体組成物
さらに、抗Dkk−1抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメントの有効量と医薬上許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、保存剤および/またはアジュバントの1以上とを含む組成物を提供する。したがって、本発明において提供する抗体および免疫学的に活性なフラグメントの、医薬組成物または医薬の製造における使用も含まれる。そのような組成物は、種々の骨障害、例えば骨粗鬆症の治療において使用されうる。医薬製剤用の許容される製剤成分は、用いられる投与量および濃度において被投与者に対して無毒性である。
【0083】
提供する抗Dkk−1抗体および免疫学的に機能的なフラグメントに加えて、該組成物は、例えば、該組成物のpH、浸透圧、粘度、清澄度、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、解離または放出の速度、吸着または浸透の修飾、維持または保存のための成分をも含有しうる。医薬組成物を製剤化するための適当な物質には、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシン)、抗微生物剤、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウム)、バッファー(例えば、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸水素塩、Tris−HCl、クエン酸塩、リン酸塩または他の有機酸)、増量剤(例えば、マンニトールまたはグリシン)、キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ−tシクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン)、充填剤、単糖、二糖、および他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノースまたはデキストラン)、タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン)、着色剤、香味剤および希釈剤、乳化剤、親水性重合体(例えば、ポリビニルピロリドン)、低分子量ポリペプチド、塩形成対イオン(例えば、ナトリウム)、保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸または過酸化水素)、溶媒(例えば、グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)、糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール)、懸濁化剤、界面活性剤または湿潤剤(例えば、プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパール)、等張性増強剤(例えば、ハロゲン化アルカリ金属、好ましくは、塩化ナトリウムまたはカリウム、マンニトール、ソルビトール)、運搬用ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または医薬アジュバントが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
医薬組成物中の主要ビヒクルまたは担体は本質的に水性または非水性でありうる。そのような組成物用の適当なビヒクルまたは担体には、注射用水、生理食塩水または人工脳脊髄液(おそらくは、非経口投与用組成物において一般的な他の物質で補足されたもの)が含まれる。中性緩衝食塩水、または血清アルブミンと混合された塩類液は更なる典型的なビヒクルである。抗Dkk−1抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメントを含む組成物は、所望の純度を有する選択された組成物を随意的製剤化物質と混合することにより、凍結乾燥ケークまたは水溶液の形態で、保存用に製造されうる。さらに、該抗Dkk−1抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメントは、スクロースのような適当な賦形剤を使用して、凍結乾燥物として製剤化されうる。該製剤化成分は、投与部位において許容される濃度で存在する。生理的pHまたはそれより若干低いpH、典型的には、約4.0〜約8.5または約5.0〜8.0のpH範囲を維持するために、バッファーが有利に使用される。医薬組成物はpH約6.5〜8.5のTRISバッファー、またはpH約4.0〜5.5の酢酸バッファーを含むことが可能であり、これは更に、ソルビトールまたはその適当な代替物を含みうる。
【0085】
抗Dkk−1抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメントを含む医薬組成物の有効量は例えば治療の状況および目的に左右される。したがって、ある実施形態における治療のための適当な投与量レベルは、部分的には、運搬される分子、該抗Dkk−1抗体が使用される適応症、投与経路ならびに患者のサイズ(体重、体表面積または臓器サイズ)および/または状態(年齢および全身健康状態)に応じて変動する、と当業者は理解するであろう。臨床家は投与量を力価測定し、最適な治療効果を得るために投与経路を修飾することが可能である。典型的な投与量は、前記の要因に応じて約0.1μg/kg〜約100mg/kgまたはそれ以上の範囲となる。ある実施形態においては、該投与量は0.1μg/kg〜約150mg/kg、または1μg/kg〜約100mg/kg、または5μg/kg〜約50mg/kgの範囲となりうる。一般に、抗Dkk−1抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメントは、等張性緩衝食塩水(20mM ヒスチジン、150mM 塩化ナトリウム、0.05% ポリソルベート80,pH6.4)中の少なくとも10mg/mLの濃度の無菌透明液として製剤化される、と現在予想される。典型的な抗体製剤は単一用量(1回量)として充填され、0.6mLガラスバイアルにバイアル当たり3.3mLの溶液が充填され、各バイアルは、West Fluortec Teflonでコーティングされた栓で蓋をされ、アルミニウムキャップで密封される。
【0086】
骨粗鬆症適応症に対する抗体療法の静脈内投与が許容されると考えられ、本発明における抗体に関する最適プロファイルは2週間に1回または毎月1回の皮下または腹腔内投与である。
【0087】
該抗Dkk−1抗体またはフラグメントは骨芽細胞活性の刺激および骨ミネラル濃度または骨量の増加における治療用途を有する。したがって、これらの抗体およびフラグメントは、過剰な骨減少が関わる種々の医学的障害に罹患した患者、または過剰な破骨細胞活性が必ずしも存在しない可能性がある場合であっても新たな骨の形成を要する患者を治療するのに有用である。Dkk−1活性の遮断は、Wntタンパク質によるシグナリングを介した骨芽細胞活性化の上昇をもたらす。過剰な骨芽細胞活性は、提供する抗Dkk−1抗体および免疫学的に機能的なそのフラグメントで治療されうる多数の骨形成性障害、例えば骨減少症、骨粗鬆症、歯周炎、パジェット病、不動性による骨減少、溶解性骨転移、および関節炎、例えば慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、および骨侵食が関わる他の状態に関連している。
【0088】
グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、移植後に誘発される骨粗鬆症、化学療法に関連した骨粗鬆症、不動誘発性骨粗鬆症、機械的負荷減少による骨粗鬆症、および抗痙攣薬の使用による骨粗鬆症を含む(これらに限定されるものではない)種々の形態の骨粗鬆症を含む種々の他の低骨量状態も治療されうる。抗体またはフラグメントの幾つかで治療されうる他の骨疾患には、腎不全に関連した骨疾患ならびに栄養、胃腸および/または肝臓に関連した骨疾患が含まれる。
【0089】
種々の形態の関節炎も治療可能であり、その具体例には、骨関節炎および慢性関節リウマチが含まれる。該抗体およびフラグメントは、関節炎(例えば、慢性関節リウマチ)に関連した全身性骨減少を治療するためにも使用されうる。関節炎の治療においては、患者は本発明の抗体またはそのフラグメントの病巣周囲または病巣内注射により利益を得ることが可能である。例えば、該抗体またはそのフラグメントを炎症関節の隣接部位に又は直接的に炎症関節内に注射して、該部位における損傷骨の修復を促進することが可能である。
【0090】
乳癌および前立腺癌のような幾つかの癌は破骨細胞活性を増強し骨吸収を誘導することが公知である。骨髄において生じる多発性骨髄腫も骨減少に関連しており、これは1つには、おそらく、形質細胞によるDkk−1の発現の増強によるものであり、ついでこれは周辺部の骨芽細胞の骨構築活性を抑制する。本発明の抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメントを投与することによるDkk−1活性の軽減は、過剰な破骨活性を相殺するように働く骨芽細胞活性の増強をもたらし、それにより、患者において前記障害の重症度を軽減して、骨侵食を軽減し、新たな骨形成を誘導することが可能である。
【0091】
該抗Dkk−1特異的抗体または免疫学的に機能的なフラグメントの幾つかでの治療は、骨減少障害に罹患した患者における骨ミネラル密度の有意な増加を誘導しうる。本明細書に記載されている抗体または免疫学的に機能的なフラグメントでのDkk−1の抑制は種々の骨修復用途においても用いられうる。例えば、ある抗体およびフラグメントは、人工関節に関連した消耗残渣骨溶解の遅延、骨折の回復の加速、および骨移植片が移植される、周囲の生きた骨内への該骨移植片の取り込みの促進において有用でありうる。
【0092】
抗Dkk−1抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメントは、単独で、または他の治療剤と組合せて、例えば、癌治療剤、破骨細胞活性を抑制する物質もしくは骨芽細胞活性を増強する他の物質と組合せて投与されうる。例えば、本発明の抗体は、放射線療法または化学療法を受けている癌患者に投与されうる。
【0093】
抗Dkk−1抗体および免疫学的に機能的なそのフラグメントは、骨量の減少を引き起こす前記状態の治療のために単独で、あるいは骨成長促進(同化)物質または骨抗吸収物質、例えば、BMP−1〜BMP−12と称される骨誘導因子;トランスフォーミング増殖因子−βおよびTGF−βファミリーメンバー;繊維芽細胞増殖因子FGF−1〜FGF−10;インターロイキン−1インヒビター、INFαインヒビター;RANKリガンドインヒビター、副甲状腺ホルモン(PTH)、E系列プロスタグランジン、ビスホスホナートおよび骨増強ミネラル、例えばフッ化物およびカルシウム(これらに限定されるものではない)の治療的有効量と組合せて使用されうる。本発明の抗体およびその機能性フラグメントと組合せて使用されうる同化物質には、副甲状腺ホルモンおよびインスリン様成長因子(IGF)が含まれ、後者の物質は、好ましくは、IGF結合タンパク質と複合体化される。
【0094】
また、該抗Dkk−1抗体は、腫瘍細胞に結合し腫瘍成長に対する細胞毒性および/または静細胞効果を誘導する抗体と組合せて患者に投与されうる。そのような抗体の具体例には、腫瘍細胞上に存在する細胞表面タンパク質Her2、CDC20、CDC33、ムチン様糖タンパク質Iおよび上皮増殖因子受容体(EGFR)に結合し、これらのタンパク質を提示する腫瘍細胞に対する静細胞および/または細胞毒性効果を誘導するものが含まれる。また、組合せ療法は、腫瘍細胞におけるアポトーシスを選択的に誘導するポリペプチド、例えばTNF関連ポリペプチドTRAILを癌治療剤として含みうる。
【0095】
該抗Dkk−1抗体またはその免疫学的に機能的なフラグメントは、同一状態に対して投与されている他の治療および療法剤と共に投与されうる。抗Dkk−1抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメントは、初期段階の癌(第I期または第II期)による骨量の減少の開始を予防または軽減するために予防的に投与されることが可能であり、あるいは骨への転移による骨量の減少の既存状態を改善するために投与されることが可能である。本発明の抗Dkk−1抗体は、骨における腫瘍細胞の増殖を予防および/または治療するために使用されうる。腫瘍細胞は、内部骨マトリックスを吸収するよう破骨細胞を刺激するため、骨に転移する癌は容易に広がりうる。抗Dkk−1抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメントでの治療は、骨芽細胞活性の増強を刺激することによりそのような転移の部位における骨ミネラル密度を維持するのを助ける。骨への転移能を有する任意の癌が、転移が生じる前または生じた後に投与される抗Dkk−1抗体で予防または治療されうる。
【0096】
本発明における抗体は単独療法として有効であると予想される。しかし、本発明における抗体は、骨粗鬆症に対する既存治療剤、例えば、とりわけ、アレンドロネート(alendronate)、リセンドロネート(risedronate)、イバンドロネート(ibandronate)、ゾレドロン酸(zoledronic acid)、カルシトニン、エストロゲン、PTHおよび複合エストロゲン、ラロキシフェン(raloxifene)および他の選択的エストロゲン受容体モジュレーター、テリパラチド(teriparatide)、ビタミンDおよびその代謝産物(これらに限定されるものではない)と共に投与されうると予想される。これらの承認治療薬に加えて、本発明における抗体は、とりわけ、カテプシンKインヒビター、ATP6インヒビター、塩素イオンチャネル−7インヒビター、ドノスマブ(denosumab)または他の抗RANK抗体またはインヒビター、オステオプロテゲリン(osteoprotegerin)−Fc、αvβ3インテグリンアンタゴニストおよびカルシリティクス(calcilytics)を含む(これらに限定されるものではない)骨粗鬆症の治療のための現在開発中の幾つかのアプローチのいずれかに対する相乗的/相加的利益をもたらしうることも予想される。
【0097】
Dkk−1は、骨芽細胞分化の抑制による骨髄腫骨疾患の発病に関連づけられている。Tianら(N.Engl.J.Med.349:2483−2494(2003))は、病巣骨病変を有する多発性骨髄腫(MM)患者におけるDkk−1遺伝子およびDkk−1タンパク質の過剰発現を見出した。インビトロにおいて、組換えヒトDkk−1または骨髄血漿(高いDkk−1レベルを有するもの)は骨芽細胞機能を抑制した。この効果はポリクローナル抗Dkk−1抗体での処理により中和された。また、処理(自己幹細胞導入)後のDkk−1レベルの減少は骨芽細胞機能の正常化に相関しうることが示唆され、これは、Dkk−1活性を遮断して、骨芽細胞機能を回復させ、骨髄腫において観察される破骨の亢進を相殺する物質(例えば、本明細書に開示されている抗体)を開発するための基礎となりうるであろう(Politouら,In J Cancer 119:1728(2006)を参照されたい)。
【0098】
対照またはDkk−1中和抗体で4〜6週間処理された場合の、種々のレベルのDkk−1を発現する初代多発性骨髄腫細胞が移植されたマウスは、対照においてはBMDの減少を示したが、抗Dkk−1抗体群においては前処理レベルからのBMDの増加を示した(p<0.001)。抗Dkk−1抗体の骨同化効果は多発性骨髄腫負荷の減少に関連づけられた(p<0.04)。該著者らは、多発性骨髄腫骨疾患におけるDkk−1が鍵作用因子であり、骨髄腫骨におけるDkk−1活性の遮断が骨溶解骨吸収を軽減し、骨形成を増強し、多発性骨髄腫の成長を抑制するのを助けると結論づけた(Yaccobyら,Blood.2006年10月26日;[印刷前のEpub]を参照されたい)。また、PC−3前立腺癌細胞はWntインヒビターDkk−1を発現する。Dkk−1レベルの減少は、マウス骨髄腫基質細胞において、PC−3細胞が、アルカリホスファターゼ産生およびミネラル化を含む骨芽細胞活性を誘導することを可能にしたが、このことは、Dkk−1がPC−3細胞におけるWnt媒介骨芽細胞活性を遮断したことを示している(Hallら,Cancer Res 65:7554(2005))。総合すると、前記の結果は、骨環境を侵すことが知られている癌細胞におけるWntシグナリングおよびDkk−1の関与を示唆している。したがって、本明細書に開示されているDkk−1抗体および免疫学的に機能的なそのフラグメントは、癌細胞(例えば、多発性骨髄腫、乳癌、前立腺癌など)の骨破壊効果を軽減するための治療を提供しうる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1A】RH2−18軽鎖をコードするプラスミドの概要図を示す。OriPは真核細胞における発現のためのエプスタインバーウイルス複製起点である。HCMVイントロンAプロモーターはヒトサイトメガロウイルスプロモーターおよび第1イントロンである。LCラムダは軽鎖ラムダ定常領域をコードしている。リーダーは培地内への該軽鎖ポリペプチドの分泌のためのリーダーまたはシグナル配列をコードしている。BGH pAはウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル配列である。SV40プロモーターはSV40ウイルスプロモーターである。GSはグルタミンシンターゼである。SV40はSV40ポリアデニル化シグナル配列である。Kanは大腸菌(E.coli)における該ベクターの選択のためのカナマイシン遺伝子である。
【図1B】RH2−18重鎖をコードするプラスミドの概要図を示す。OriPは真核細胞における発現のためのエプスタインバーウイルス複製起点である。HCMVイントロンAプロモーターはヒトサイトメガロウイルスプロモーターおよび第1イントロンである。IgG2M4は重鎖IgG2M4定常領域をコードしている。リーダーは培地内への該軽鎖ポリペプチドの分泌のためのリーダーまたはシグナル配列をコードしている。BGH pAはウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル配列である。Kanは大腸菌(E.coli)における該ベクターの選択のためのカナマイシン遺伝子である。
【図1C】RH2−18軽鎖および重鎖アミノ酸配列のアミノ酸配列(それぞれ配列番号3および配列番号7)を示す。軽鎖および重鎖配列のリーダー配列は示されていない。可変領域がイタリック体で示されている。
【図1D】軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号4)を、生殖系列における該領域の配列(配列番号16)と整列させて示す。3つの軽鎖(LC)相補性決定領域(CDR)が下線で示されており、RH2−18における可変領域配列と生殖系列配列との間のフレームワークにおけるアミノ酸配列相違が太字で示されている。
【図1E】重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号8)を、生殖系列における該領域の配列(配列番号15)と整列させて示す。3つの軽鎖(HC)CDRが下線で示されており、RH2−18における可変領域配列と生殖系列配列との間のフレームワークにおけるアミノ酸配列相違が太字で示されている。
【図1F】インビトロ分析のために精製された12種の変換された抗Dkk−1抗体のLABCHIP 90キャピラリー電気泳動の結果を示す。レーン2はRH2−18抗Dkk−1抗体である。
【図2A】HEK293hLrp5細胞へのEu−Dkk−1結合および種々の濃度の抗Dkk−1抗体RH2−10、RH2−18、RH2−31、RH2−59およびRH2−80の抑制活性を示す。8B4は、Dkk−1に非特異的な対照抗体である。
【図2B】拡張された用量範囲を用いて再力価測定されたRH2−18抗体の結果を示す。該結果は、このアッセイ形態でRH2−18抗体が約5nMの有効量を示したことを示している。
【図3】Wnt3A誘導シグナリングにおけるDkk−1機能に対する抗Dkk−1抗体RH1−10、RH2−18、RH2−31、RH2−59およびRH2−80抗体の中和活性を示す。Wnt3Aでの処理(黒塗りの棒グラフ)は、対照処理(白抜きの棒グラフ)と比較してシグナリング経路を有意に刺激した。示されている濃度の抗Dkk−1抗体を加えた。
【図4】骨芽細胞分化に対するRH2−18、RH2−59およびRH2−80抗体の効果を示す。骨芽細胞表現型へのC3H10T1/2細胞の分化は内在性ALP活性により決定された。
【図5A】Dkk−1のC末端領域への特異性を示す抗体RH2−18を使用するドットブロット結合分析を示す。アカゲザルDkk−1タンパク質をグリーン蛍光タンパク質(GFP)タグ(ローディング対照)に融合させた。完全長アカゲザルDkk−1タンパク質、C末端領域(残基159−266をコードするΔN−Dkk−1)またはN末端領域(残基1−158をコードするΔC−Dkk−1)を発現させ、RH2−18抗体を使用するドット免疫ブロット法により分析した。
【図5B】ドットブロット結合分析を示し、これは、Dkk−1 C末端ドメインにおいて種々のアミノ酸置換が施された場合、RH2−18抗体結合が喪失することを示している。アカゲザルDkk−1タンパク質をGFPタグ(ローディング対照)に融合させた。完全長アカゲザルDkk−1タンパク質、C末端領域(残基159−266をコードするΔN−Dkk−1)またはN末端領域(ΔC−Dkk−1)を発現させ、RH2−18抗体を使用するドット免疫ブロット法により分析した。ΔN−Dkk−1内にアラニン置換を導入した。その置換されたアミノ酸残基の位置番号が示されている。
【図5C】RH2−18抗体の結合に必要なアミノ酸残基を示すDkk−1 C末端ドメイン(アミノ酸187−266)の構造-相同性モデルを示す。示されているアミノ酸番号はアラニンスキャニングにより置換されている。非変性タンパク質を使用する免疫ブロット実験において抗原−抗体相互作用の低下をもたらすことが見出されたアミノ酸残基の置換はアミノ酸S187からV188、R203からK208、E241、およびL243である。Dkk−1−相同性モデルの範囲外でRH2−18抗体結合エピトープに寄与するアミノ酸残基(R171からL174)が挙げられている。アミノ酸C220の置換もDkk−1へのRH2−18抗体結合の喪失を引き起こす。残りのアミノ酸残基の置換はDkk−1へのRH2−18抗体の結合に影響を及ぼさないようであった。
【図6A】ヒト(「Human」)Dkk−1、Dkk−2、Dkk−4およびアカゲザル(「Rhesus」)Dkk−1のアミノ酸配列アライメントを示す。保存アミノ酸が赤色で示されており、非保存アミノ酸が緑色で示されている。RH2−18結合に必要な、Dkk−1におけるアミノ酸残基が青色の枠内に囲まれている。アミノ酸残基R171からL174、S187からV188、S207およびE241に関するDkk−1およびDkk−2およびDkk−4の間の配列保存性の欠如に注目されたい。
【図6B】Dkk−1へのRH2−18抗体の特異性を示す種々のDkkアイソフォームを使用するドットブロット分析を示す。天然組換えアカゲザルDkk−1、Dkk−2およびシノモルグスサルDkk−4タンパク質(0.1ng〜100ng)を使用した。非関連組換えタンパク質を非特異的アッセイシグナルに関する対照(HISタンパク質)としてローディングし、RH2−18抗体でプローブした。
【図7】0.5〜5mg/kgの用量範囲のRH2−18抗体により遠位大腿骨ミネラル密度(BMD)が用量効果的に5.2〜8.7%増加したことを示している。誤差線=SEM。N=11/群。
【図8】1.5〜5mg/kgの用量範囲のRH2−18抗体により全大腿骨BMDが4.7〜4.8%増加したことを示している。誤差線=SEM。N=11/群。
【図9】1.5〜5mg/kgの用量範囲のRH2−18抗体により中央大腿骨BMDが用量効果的に3.2〜3.5%増加したことを示している。誤差線=SEM。N=11/群。
【図10A】完全培地内のHCT116細胞において行ったTOPflash転写アッセイにおける、RH2−80抗体(Dkk−1 AB)の、培養癌細胞に対する転写効果を示す。8B4は対照非特異的抗体であった。Conはビヒクル対照であった。
【図10B】完全培地内のHCT116細胞において行った細胞増殖アッセイにおける、RH2−80抗体(Dkk−1 AB)の、培養癌細胞に対する転写効果を示す。8B4は対照非特異的抗体であった。Conはビヒクル対照であった。
【図11】腫瘍増殖に関する異種移植片モデルおよび腫瘍増殖に対するRH2−59抗体の効果を示す。6週齢NOD.CB17−Prkdcscid/J(SCID)マウスの右側腹部への100μLのPBS中の1×10 HCT116細胞の皮下注射。注射後の第2日に、続いて処理を行い、週2回、合計7回の処理を続けた。リン酸緩衝食塩水(PBS)および非特異的抗体(NS AB)を陰性対照として使用した。約3.5週の時点で腫瘍を単離した。剖検後に該腫瘍を切除することにより腫瘍塊を得、秤量した。片側ANOVAを用いて統計分析を行った。全サンプルにおいて統計的な差は認められなかった。 腫瘍細胞を非意図的に真皮内に注射した。各群における1/5のマウスは腫瘍破裂を有していた。
【0100】
以下の実施例は、本発明の更なる理解を促すことを意図したものである。
【実施例1】
【0101】
Cambridge Antibody Technology (CAT)ヒト一本鎖Fvファージディスプレイライブラリー(Cambridgeshire,United Kingdom)を使用して、ヒト抗Dkk−1抗体を製造した。該ライブラリーをアカゲザルおよびマウスDkk−1(それぞれRhDkk−1およびMsDkk−1)の両方に対してパンニングした。各ライブラリーを、ビオチン標識Dkk−1(100nM)に対して、3ラウンドの、溶液に基づくパンニングに付した。配列同一性および類似性の割合はマウスおよびアカゲザルDkk−1間で高いが、ライブラリー選択が両方の種からのDkk−1と交差反応することを保証するために6つの異なるパンニング法を用いた(表4)。すべての後続データはスキーム(E)から導かれる。
【0102】
【表4】

【0103】
該分泌scFv−ファージクローンの抗原特異性の妥当性を証明するために、ラウンド2における各ライブラリーからの176個のファージクローンおよびそれぞれの3ラウンドのライブラリーからの88個のクローンを、蛍光ユウロピウム−キレート(Eu)で標識されたアカゲザルまたはマウスDkk−1タンパク質およびLRP5またはLRP6を過剰発現するHEK293細胞を使用する時間分解蛍光(TRF)ELISAアッセイにおいて試験した。ヒトLRP5またはLRP6を過剰発現するヒト胎児腎HEK293細胞へのEu−Dkk−1タンパク質結合を、結合リガンドの時間分解蛍光を測定することによりモニターした。Dkk−1タンパク質がLRP5(または6)発現細胞に結合した場合、強力なシグナルが検出された。Dkk−1を抗Dkk−1抗体の存在下で試験した場合には、蛍光シグナルの減少はDkk−1/LRP5(または6)相互作用の阻害を示した。細胞表面へのDkk−1タンパク質の結合を抑制する能力に関して、この一次アッセイにおいて、264個のDkk−1 scFVを試験した。前記アッセイに基づいて、細胞表面へのDkk−1の結合を抑制すると確認された群のなかの20個のscFV(表5)を完全ヒトIgGへの変換のために選択した。
【0104】
【表5】

【0105】
重鎖可変領域をコードするDNAを、IgG2M4定常領域をコードするDNAにインフレームで融合させ、一方、軽鎖可変領域をコードするDNAを、対応可変領域と整列してラムダまたはカッパ軽鎖定常領域をコードするDNAにインフレームで融合した。一例として抗体RH2−18をコードする発現ベクターを用いることにより、得られた抗体発現ベクターをプラスミド地図(図1Aおよび1B)中に示す。クローニング法を以下に説明する。使用する軽鎖ラムダベクターを社内で構築した。これは、一方のクローニング部位の5’末端においてヒトCMV(HCMV)プロモーターおよびリーダー配列に、そして他方のクローニング部位の3’側において軽鎖ラムダ配列およびウシ成長ホルモン(BGH)pAポリアデニル化シグナルに隣接するクローニング部位を含む。使用する重鎖IgG2M4定常領域ベクターを社内で構築した。これは、一方のクローニング部位の5’末端においてHCMVプロモーターおよびリーダー配列に、そして他方のクローニング部位において重鎖IgG2M4配列およびBGH pAポリアデニル化シグナルに隣接するクローニング部位を含む。該発現ベクターは293EBNA細胞における持続性発現のためのエプスタインバーウイルス(EBV)ウイルスゲノム由来のoriP、およびカナマイシン選択マーカーのための細菌配列、および大腸菌(E.coli)における複製起点を含有する。該抗体のアミノ末端におけるリーダー配列は培地内への発現抗体の分泌をもたらした。リーダー配列は、重鎖ではMEWSWVFLFFLSVTTGVHS(配列番号29)であり、軽鎖ではMSVPTQVLGLLLLWLTDARC(配列番号30)である。19個のscFvリード体の残りを同様にしてIgGに変換した。
【0106】
図1Aおよび1Bに示すベクターを作製するために、それぞれの可変領域を、高忠実度PCRマスターミックス、鋳型(容量1μL)ならびにフォワードおよびリバースプライマー(それぞれ1μL)を含有する25μLの容量中でPCR精製した。PCR条件は、94℃で2分間の1サイクル、94℃で1.5分間、60℃で1.5分間および72℃で1.5分間の25サイクルならびに72℃で7分間の最終伸長であった。以下のPCRプライマーを使用した:重鎖フォワード,5’−ACAGG TGTCC ACTCG GAGGT GCAGC TGGTG CAGTC T−3’(配列番号31);重鎖リバース,5’−GCCCT TGGTG GATGC ACTCG AGACG GTGAC CAGGG T−3’(配列番号32)および軽鎖フォワード,5’−ACAGA TGCCA GATGC CAGTC TGTGT TGACG CAGCC G−3’(配列番号33);軽鎖リバース5’−GTTGG CCTTG GGCTG ACTTA AAACG GTGAG CTGGG T−3’(配列番号34)。In−Fusion法(Clontech,Palo Alto,CA)を用いて、増幅された軽鎖および重鎖可変領域PCR産物を5’末端における適当なリーダー配列および3’末端における定常領域とインフレームでクローニングし、大腸菌(E.coli)XL10細胞(Stratagene,La Jolla,CA)内にクローニングした。該クローンのDNA配列を配列決定により確認し、該DNA配列からアミノ酸配列を推定した。RH2−18軽鎖および重鎖のアミノ酸配列(リーダー配列を伴わないもの)を図1Cに示す。可変領域はイタリック体で示されている。図1Dおよび1EはRH2−18軽鎖および重鎖可変領域のCDR領域を示し、また、RH2−18軽鎖および重鎖改変領域および生殖系列における対応領域間のフレームワークにおける配列相違を示す。
【0107】
FUGENEトランスフェクション試薬(FUGENEはFugent LLCの商標であり、Roche Diagnostics,Nutley,NJから入手可能である)を使用して、前記プラスミドを293EBNA単層細胞内にトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞をOPTI−MEM無血清培地(Invitrogen)内でインキュベートし、分泌された抗体を、プロテインA/Gアフィニティークロマトグラフィーを用いて培地から精製した。精製された濃度の濃度を280nmでのODにより決定し、純度をLABCHIPキャピラリーSDSゲル電気泳動(Caliper Life Sciences,Hopkinton,MA)により決定した。図1Fは、12種の変換された抗体のLABCHIP電気泳動の結果を示す。レーン2はRH2−18抗体を示す。本明細書に記載されているとおりにインビトロ特徴づけのために該精製抗体を使用した。また、前記プラスミドを、動物研究の節に記載されているインビボ動物研究のためのRH2−18抗体およびその他の抗体の大量製造のために使用した。
【0108】
すべての生物アッセイにおいては、アカゲザルDkk−1タンパク質をバキュロウイルス発現により調製し、金属アフィニティー樹脂により精製した。CAT−ライブラリーパンニングからの単離された抗Dkk−1抗体を、アカゲザル(およびマウス)Dkk−1タンパク質への結合能に基づいて選択した。抗体が細胞表面受容体(LRP5/6)とのDkk−1相互作用を抑制し、Dkk−1機能を抑制したかどうかを決定するために、以下のアッセイを確立した:細胞に基づくDkk−1結合アッセイ、規定(canonical)Wntシグナリングを測定するDkk−1機能分析、および骨芽細胞分化マーカーであるアルカリホスファターゼ(ALP)を使用するDkk−1機能分析のための細胞分化アッセイ。(a)LRP5/6へのDkk−1結合を遮断するための、(b)WntシグナリングにおけるDkk−1機能を抑制するための、および(c)インビトロでの骨細胞分化に対する負のDkk−1機能を中和するための中和抗体を選択するために、前記アッセイを連続的に行った。
【実施例2】
【0109】
抗Dkk−1抗体の4つがLRP5/6へのDkk−1結合を抑制したことを示すために、細胞に基づく時間分解蛍光(TRF)アッセイを用いた。
【0110】
該アッセイのために、該抗Dkk−1抗体を、0.2、0.6、2.0、6.0および20nMで、LRP5を過剰発現するHEK細胞(HEK293hLrp5細胞)に加えた。抗IL3受容体モノクローナル抗体(8B4)を陰性対照として使用した。Eu標識Dkk−1(100pM)を、該抗体の非存在下または存在下、該細胞と共に20分間インキュベートした。溶解状態で該抗体に結合し該HEK293hLrp5細胞の細胞表面への結合が遮断されたDkk−1を4回の洗浄段階により除去し、細胞表面に結合したEu標識Dkk−1をTRFシグナルにより測定した。ヒトLRP5またはLRP6を過剰発現するHEK293細胞へのEu標識Dkk−1タンパク質の結合を、結合リガンドの時間分解蛍光を測定することによりモニターした。これらの抗体の上位5つ(RH1−10、RH2−18、RH2−31、RH2−59およびRH2−80)の結果を図2Aおよび2Bを示す。図2Aは、HEK293hLrp5細胞へのEu−Dkk−1結合、およびLRP5へのDkk−1の結合を抑制する前記の5つの抗体の能力を示す。図2Aは、拡張された用量範囲にわたるLRP5へのDkk−1結合のRH2−18抗体抑制の力価測定を示す。図2Bは、このアッセイ形態でRH2−18の有効量が約5nMであったことを示している。図2Aおよび2Bにおけるデータは、該抗Dkk−1抗体の抑制活性が、低ナノモル範囲において完結するのに十分なものであったこと示している(RH2−18抗体で4.75nM)。Eu標識組換えマウスDkk−1を使用する追加的分析は同様の結果を示した。このことは、選択された抗Dkk−1抗体の抑制メカニズムがマウスおよびアカゲザルDkk−1タンパク質の両方において保存されていたことを示している。
【実施例3】
【0111】
この実施例はWntシグナリングにおけるDkk−1機能に対する抗Dkk−1抗体の中和活性を示す。Dkk−1はβ−カテニンおよび核Lef−1/TCFを介した規定Wntシグナリングの負の調節因子である。
【0112】
HEK293hLrp5細胞を、Lef−1/TCF結合部位を有するレポータープラスミド(pTOPflash)およびLef−1をコードする発現ベクターでコトランスフェクトした。pTOPflash/Lef−1でトランスフェクトされた細胞は、該レポーター(ルシフェラーゼ)の活性の増加により示されるとおり、Wnt−リガンドに対して高応答性である。アカゲザルDkk−1(50nM)はこの細胞系におけるpTOPflash活性を強固に抑制する。ここでは、抗Dkk−1抗体RH1−10、RH2−18、RH2−31およびRH2−80を、同様にDkk−1機能を中和するそれらの能力に関して20時間にわたって試験した。該抗Dkk−1抗体を10、30および100nMの濃度で加えた。図3に示す結果は、試験した抗Dkk−1抗体の全てが細胞表面上のLRP5へのDkk−1結合を遮断し、それによりWnt3Aシグナリング経路におけるDkk−1の機能活性を抑制したことを示している。図3に示すとおり、Wnt3Aでの処理は、対照と比較してシグナリング経路を有意に刺激し、そのアカゲザルDkk−1は該レポーター測定のWnt3A活性化を抑制した。該抗体はDkk−1の効果を30nM以上の濃度で中和した。試験した全ての抗Dkk−1抗体に関して、シグナルは、Wnt3Aリガンド単独の場合よりも上昇することが可能であったことに注目されたい。並行して行ったアッセイにおいて、Wntシグナリングに対するこの抗体効果は、外因的に添加されたアカゲザルDkk−1タンパク質の非存在下では観察されなかったため、この効果は該アッセイ系への組換えDkk−1タンパク質の添加を要した。
【実施例4】
【0113】
インビトロにおける骨芽細胞分化に対する中和性Dkk−1抗体の効果を試験した。間葉多能性細胞系C3H10T1/2は骨形成因子での処理により骨芽細胞系列へと分化する。3日間にわたるWnt3Aでの処理は、初期造骨マーカーであるアルカリホスファターゼ(ALP)の発現を誘導する。内因性ALP活性の測定による判定によれば、Dkk−1はWnt3A誘発性分化を抑制する。この骨芽細胞分化系は、妥当な細胞状況およびより長い3日間のアッセイ期間を提供する。
【0114】
内因性ALP活性の増加を測定することにより、C3H10T1/2細胞の骨芽細胞分化を決定した。細胞を培養内でコンフルエントにまで増殖させ、骨芽細胞分化を誘導するためにWnt3Aで3日間処理した。組換えDkk−1での同時処理はWnt3A誘発性ALP活性を抑制した。図4に示すとおり、抗Dkk−1抗体RH2−18、RH2−59またはRH2−80を10nM、30nMまたは100nMの最終濃度で加えたところ、骨芽細胞分化に対するDkk−1の抑制機能は用量依存的に中和された。Dkk−1に対する100nM RH2−18の中和効果はほぼ完全であり、その安定性は、3日間のアッセイ期間内で中和効果を生成し維持するのに十分なものであった。RH2−31は効力/安定性をほとんど有さないことが判明し、したがって、さらなる研究から除外された(データ非表示)。処理の最初の24時間以内に誘導された内因性マーカー遺伝子(TROY、IGFBP2、Axin2)の関連分析は、この細胞バックグラウンドにおけるWnt3a誘導性遺伝子発現のDkk−1抑制を遮断するこれらの抗体の同様の能力を示した。
【実施例5】
【0115】
RH2−18抗体のエピトープ地図を作成した。Dkk−1タンパク質は、それぞれN末端およびC末端領域に位置する、システインに富む(システイン・リッチ)2つのドメインから構成される。本発明者らは、アカゲザルDkk−1のN末端またはC末端領域をコードするDkk−1に関する欠失構築物を作製し、Dkk−1のC末端半分に位置するシステイン・リッチ・ドメイン2が受容体LRP5/6へのDkk−1結合に必要かつ十分であることを証明した。
【0116】
本明細書に開示されている中和抗Dkk−1抗体はウエスタン−免疫ブロット上の変性Dkk−1タンパク質を検出できない。さらに、それらは、Dkk−1 C末端に由来する別個のペプチドに結合しない。これは、本発明における抗Dkk−1抗体により認識されるDkk−1上のエピトープが複合性である(すなわち、トポグラフに基づくものであり、ペプチドに基づくものではない)ことを示唆している。
【0117】
図5AはRH2−18を使用するドットブロット結合分析を示す。アカゲザルDkk−1タンパク質をGFPタグ(ローディング対照)に融合させた。完全長アカゲザルDkk−1タンパク質、C末端領域(残基159−266をコードするΔN−Dkk−1)またはN末端領域(ΔC−Dkk−1)を発現させ、RH2−18抗体を使用するドット免疫ブロット法により分析した。簡潔に説明すると、一過性にトランスフェクトされた293細胞においてDKK1−GFPタグ付き変異体を発現させ、天然馴らし培地をニトロセルロース膜上に直接的にブロットした。結合天然タンパク質をタグ−抗体(抗GFP,Abeam Inc.,Cambridge,MA)または抗DKK1抗体RH2−18でプローブした。アルカリホスファターゼに結合した二次抗体で結合抗体を検出した。
【0118】
該ドットブロット分析は、Dkk−1のC末端領域(アミノ酸159−266)への中和抗体RH2−18(およびRH1−10、RH2−31、RH2−59、RH2−80)の結合を示した。これは、該抗体エピトープが主としてDkk−1のシステイン・リッチ・ドメイン2内に位置づけられることを示した。さらに、該ドットブロット分析は、該抗体が天然タンパク質に結合することを示した(一方、ウエスタンブロットは変性タンパク質への結合を示さなかった)。Dkk−1のC末端ドメインは、コリパーゼでの相同性モデルにより、球状三次構造を形成すると予想される(後記のとおり)。総合すると、これらのデータは、本発明における抗Dkk−1抗体および特にRH2−18抗体のエピトープが、Dkk−1のそのシステイン・リッチ・ドメイン2内の配列および三次構造の両方により影響される複合エピトープにより特徴づけられることを示している。
【0119】
部位特異的突然変異誘発(アラニンスキャニング法)を用いる該C末端ドメインの追加的分析は、Dkk−1へのRH2−18抗体結合に最も重要なDkk−1アミノ酸残基としてアミノ酸残基S187からV188、R203からK208、およびE241を特定した。これに関して、これらの残基に対する突然変異は、ドットブロット分析における該突然変異Dkk−1への該抗体の結合能における顕著な低下を引き起こした(図5Bを参照されたい)。図5Bは、ドットブロット結合分析により判定した場合の、Dkk−1 C末端ドメインにおける種々のアミノ酸置換によるRH2−18結合の喪失を示している。アカゲザルDkk−1タンパク質をGFPタグ(ローディング対照)に融合させた。完全長アカゲザルDkk−1タンパク質、C末端領域(残基159−266をコードするΔN−Dkk−1)またはN末端領域(残基1−158をコードするΔC−Dkk−1)を発現させ、RH2−18抗体を使用するドット免疫ブロット法により分析した。ΔN−Dkk−1内にアラニン置換を導入し、影響を受けたアミノ酸残基が示されている。アラニンスキャニングによるDkk−1の、独立した構造/機能分析から、該C末端ドメイン内のアミノ酸残基R203、H204(F205)がLRP6へのDkk−1結合に必要であることが確認された(Identification of DKKl Residues Necessary for Interaction with LRP5/6.Lipfertら,J.Bone Miner.Res.21:S99(2006)を参照されたい)。したがって、これらの残基はDkk−1機能(LRP5/6への結合)およびRH2−18抗体への結合の両方に重要である。LRP5とのDkk1相互作用に要求される鍵アミノ酸残基、およびRH2−18抗体とのDkk1結合のためのアミノ酸残基は、RH2−18抗体の抑制活性に関する論理的根拠を提供する。
【0120】
図5Bに示す突然変異の効果の解釈は第2のシステイン・リッチ・ドメインの三次元モデルの状況において最もよく理解される(図5Cを参照されたい)。図5Cは、アラニンスキャニングにより決定されたRH2−18抗体の結合に必要なアミノ酸残基を示すDkk−1 C末端ドメイン(アミノ酸187−266)の構造-相同性モデルを示す(図5Cを参照されたい)。非変性タンパク質を使用する免疫ブロット実験において抗原−抗体相互作用の低下をもたらすことが見出されたアミノ酸残基の置換はアミノ酸S187からV188、R203からK208、E241、およびL243であり、これらは複合エピトープの形成において何らかの役割を果たしているらしい。該C末端相同性モデルに示されているアミノ酸配列の範囲外であるアミノ酸残基R171からL174も該複合エピトープに寄与することが判明した。また、アラニンでのアミノ酸C220の置換もDkk−1へのRH2−18結合の喪失を引き起こした。
【0121】
したがって、RH2−18抗体は、抗体結合に必要であると確認された第2のシステイン・リッチ・ドメインの種々の別個の領域からの以下のアミノ酸残基を含む複合エピトープに結合する:アミノ酸残基S187およびV188(それらは共に、第1フィンガードメインに先行する領域内に存在する)ならびにアミノ酸R203、H204、F205、W206、S207およびK208(それらは全て、該ドメインの第1フィンガーを構成する)。さらに、該ドメインのC末端側に、そして第2フィンガーに先行して、E241およびL243が存在し、それらもDkk−1へのRH2−18結合に必要であった。最後に、Cys220はDkk−1へのRH2−18結合に必要である。Cys220は、Dkk−1に結合するためのRH2−18の適切な三次構造の確立において重要な役割を果たすと予想され、このこともこのエピトープの複合的性質を示すものである。総合すると、該データは、RH2−18エピトープが、Dkk−1の第1フィンガードメインA202−I209を含む(これに限定されるものではない)Dkk−1 C末端領域のトポグラフ的表面により定められることを示唆している。
【0122】
ヒトDkk−1、Dkk−2、Dkk−4およびアカゲザルDkk−1のアミノ酸配列の比較(図6A)は、前記のとおりにDkk−1へのRH2−18結合に重要であることが確認されたDkk−1内に位置するアミノ酸残基の保存性の欠如を示している。RH2−18結合に必要であるとみなされたDkk−1におけるアミノ酸残基が青色の枠内に囲われている。アミノ酸残基Arg171−Leu174、Ser187からVal188、Ser207およびGlu241に関するDkk−1およびDkk−2およびDkk−4の間の配列保存性の欠如に注目されたい。RH2−18の結合に必要であるDkk−1における残基のエピトープマッピングに基づき、そしてアミノ酸残基Arg171からLeu174、Ser187、Val188、Ser207およびGlu241におけるDkk−1およびDkk−2およびDkk−4の間の配列保存性の欠如に基づき、RH2−18および類似エピトープを共有する他の抗体はDkk−1に対する高い度合の選択性を示すと予想される。
【0123】
Dkk−1のアミノ酸配列はDkk−2およびDkk−4のアミノ酸配列と密接に関連しており、アミノ酸レベルでそれらに対してそれぞれ50%および45%の同一性を有する。アカゲザルDkk−2(Dkk−2 C末端領域のC末端にmycおよびHis−6タグを有するアカゲザルDkk−2のC末端領域に融合したアカゲザルDkk−1のN末端領域よりなるキメラタンパク質を使用;配列番号71を参照されたい)およびシノモルグスサルDkk−4(配列番号70)に対するRH2−18の交差反応性を、組換えタンパク質を使用するドットブロット分析により試験した。天然組換えアカゲザルDkk−1、Dkk−2およびシノモルグスサルDkk−4タンパク質(0.1ng〜100ng)を使用した。非関連組換えタンパク質を非特異的アッセイシグナルに関する対照(HISタンパク質)としてローディングした。該ドットブロットをRH2−18でプローブした。図6Bは、Dkk−2またはDkk−4へのRH2−18の検出可能な特異的結合がほとんど又は全く認められなかったことを示している。該抗体の、Dkk−1に対する選択性は、少なくとも100倍であった。このアッセイ形態においては、アカゲザルDkk−1へのRH2−18の結合の検出限界は約1ngであることが判明した。これらのDkkアイソフォームの全濃度におけるシグナル強度は非関連HISタグ付きタンパク質に対するものに匹敵した。エピトープマッピングおよび配列アライメントデータに一致して、これらのタンパク質への該抗体の交差反応性がほとんど又は全く認められなかったことを示す結果は、RH2−18がDkk−2またはDkk−4に結合する確率が低いことを示唆している。これらのデータは、RH2−18および類似抗体が、Dkk−1の幾つかの異なる領域を含む新規な複合的な三次元エピトープを認識することを示しており、このことは、RH2−18および該類似抗体が特有のものであることを示している。
【実施例6】
【0124】
ヒトDkk−1およびアカゲザルDkk−1へのRH2−18抗体のアフィニティーを、Biacore 3000装置における該製造業者の説明(Biacore,Inc.,Piscataway,NJ)に従う表面プラズモン共鳴によりRH2−18結合速度論を測定することにより決定した。ヒトDkk−1およびアカゲザルDkk−1に対する種々のRH2−18抗体ロットを使用して、いくつかの独立したアフィニティー研究を行った。各実験に関する算出Kd値はヒトDkk−1への結合に関して202〜269pMの範囲であり、その平均値は251pMであった。アカゲザルDkk−1に関しては、外範囲は771〜934pMであり、その平均値は858pMであった。
【0125】
RH2−19抗体の量を、サイズ排除クロマトグラフィーにより、他の良く特徴づけられたmABと比較して評価した。該結果は、見掛け上の凝集が全く認められず、RH2−18抗体の優れた安定性を示唆している。
【実施例7】
【0126】
RH2−18をインビボ薬力学的および効力研究において評価した。
【0127】
発生中の骨格におけるDkk−1/Wnt相互作用の阻害が骨量の増加を招くことを示す遺伝的な概念証明(proof−of−concept)データが存在する。また、Amgenにより開発された抗Dkk−1抗体は、3週間の研究においてラットに注射された場合(30mg/kg、週2回、皮下)、骨同化性であった(DKK1 Inhibition Increases Bone Mineral Density in Rodents Grisanti Mら,J.Bone Miner.Res.21:S25(2006)を参照されたい)。成長中の及び成体のマウスの両方において、類似した様態で及び類似した期間にわたって骨量増加が認められた。該表現型を薬理学的に実証するために、インビボ概念証明研究をRH2−18で行った。この研究は、成体骨格における応答を後で試験する計画で、成長中のマウスにおいて行った。したがって、該研究の目的は、すべての被検Dkk−1機能をインビトロで中和したRH2−18抗体が、成長中の骨格において骨量を増加させることを確認することであった。したがって、試験した仮定は、RH2−18が、成長中のマウスの長骨において骨量を用量−効果的に増加させることであった。
【0128】
5週齢のC57BL/6J雌マウスを入手し、動物施設に1週間順応させた。RH2−18抗体をマウス当たり0.1mLのリン酸バッファー中で皮下(s.c.)投与した。1群当たり11匹のマウスが存在した。マウスを連続4週間にわたって週2回、0、0.5、1.5もしくは5mg/kgのRH2−18抗体で、または0.4mg/kgのPTH(1−34)(皮下、3回/週)で処理した。剖検後、大腿骨および椎骨を解剖して遊離させ、70%エタノール中で固定した。全大腿骨をPiximus(GE/Lunar;Schenectady,NY)二重エネルギーX線吸光光度法により走査した。大腿骨を、遠位末端から0〜3mmに位置する遠位関心領域(ROI)、および遠位末端から5〜10mmに位置する中央関心領域に細分した。中央ROIは100%皮質骨から構成され、一方、遠位ROIは約20%柱骨である。Piximusソフトウェアは骨ミネラル密度(BMD,mg/cm)を全骨(WFBMD)、遠位大腿骨(DFBMD)および中央大腿骨(CFBMD)に関して計算する。結果を図7〜9に示す。
【0129】
図7は、0.5〜5mg/kgの用量範囲のRH2−18抗体により遠位大腿骨ミネラル密度(BMD)が用量効果的に5.2〜8.7%増加したことを示している。このBMD変化は、十中八九、海綿質骨および皮質骨の両方に対する効果に相当する。図8は、1.5〜5mg/kgの用量範囲のRH2−18抗体により全大腿骨BMDが4.7〜4.8%増加したことを示している。このBMD変化は、十中八九、海綿質骨および皮質骨の両方に対する効果に相当する。図9は、1.5〜5mg/kgの用量範囲のRH2−18抗体により中央大腿骨BMDが用量効果的に3.2〜3.5%増加したことを示している。このBMD変化は主として皮質骨に対する効果に相当する。
【0130】
これらの結果は、4週間にわたるマウスへのRH2−18抗体の投与が、成長中の雌マウスにおける骨量の有意な増加を用量依存的に引き起こしたことを示している。
【0131】
マウスへのRH2−18抗体(これはDkk−1およびWntの相互作用を遮断する)の投与は、成長中のマウスにおける高い骨密度をもたらすことが、該結果から結論づけられうる。したがって、Dkk−1/Wntシグナリング遮断を中和するためにRH2−18のような抗体を使用して、成長中の骨格における骨密度を増加させることが可能である。
【実施例8】
【0132】
規定Wntシグナリングカスケードは腸上皮細胞増殖を調節する。細胞質シグナリング中間体(β−カテニン、APC、アクシン(axin))の遺伝子における遺伝的病変は転写活性の増強を引き起こし、これは全ての結腸直腸癌の90%以上に関連している。現在のところ、Dkk−1を含むこの経路を調節する細胞表面受容体または分泌中間体に関して、そのような腫瘍形成突然変異は記載されていない。それにもかかわらず、Dkk−1を中和する抗体の可能な腫瘍形成効果を評価した。
【0133】
Dkk−1抗体は、Dkk−1が発現される組織に対してのみ、効果を与えるべきである。したがって、Dkk−1の組織分布は、安全性の判断において重要な要因である。マウスにおいては、以下の表6に示すとおり、Dkk−1は主として骨において発現される(次に高い発現組織に比べて約64倍)。
【0134】
【表6】

【0135】
表6は、マウスの選択された組織におけるDkk−1発現に関するCT値を示す。参考のために説明すると、CTは閾サイクルである。それは、レポーター蛍光における統計的に有意な増加がバックグラウンドを超えて検出されうるリアルタイム定量PCRアッセイにおけるPCRサイクルである。中央−上位30sにおけるCT値は非常に低い発現ないし無発現を表す。mRNAレベルは、30<CT<40であれば低い、30<CT<25であれば中等度、25<CT<15であれば高い、と定義される。前記で示したとおり、Dkk−1の発現は、膀胱、腸、肝臓および子宮組織において非常に低いか又は全く認められず、骨においては中等度であった。
【0136】
ヒトの組織においては、同じ組織におけるDkk−1の発現レベルはドナーによって異なることが観察された。発現は一般に、Wntシグナリング異常が腫瘍形成に関連づけられている正常腸、結腸または肝臓においては最小検出レベルであった(CT値は高30s(すなわち、検出不能))。平均のDkk−1 CT値は、ヒト膀胱、頸部、胃および子宮(Wnt/β−カテニン誘発性腫瘍に関連づけられていない組織)に関しては高20sにおけるものであったが、膝置換後の患者から本発明者らが入手した骨サンプルの幾つかに関してはそれらは約30であった。この点においては、Dkk−1発現は、典型的にはWntシグナリング誘発性腫瘍に関連づけられていない組織において最高であった。逆に、細胞質突然変異が腫瘍形成に関連づけられうる組織は実質的なDkk−1発現を示さなかった。
【0137】
ヒト細胞系においては、CT値はMG−63、Caco−2、MCF−7、SW480およびHCT116細胞に関しては中央20sにおけるものであったが、HEK−293、SW48およびDLD1細胞においてはそれらは30sの範囲内のものであった。後者の2つの細胞系は、細胞質Wntシグナリング経路突然変異を有する結腸癌組織に由来する。ヒト組織サンプルにおいては、Dkk−1は、対(paired)正常組織と比べて腫瘍細胞においてはアップレギュレーションされる傾向にあった。これらの研究においては、TAQMAN系(Applied Biosystems,Foster City,CA)を使用するリアルタイム定量PCR分析により、これらの細胞におけるDkk−1発現を測定し、他の増殖マーカー(Ki−67、PCNA、E2F1およびIGFBP−3)のものと比較した。すべてのデータCT値を、対応正常サンプルに対する誘導倍率に変換した。要約すると、マウスDkk−1におけるDkk−1組織分布は、この遺伝子に関するmRNAが主として骨において発現されることを示したが、ヒトにおいては、それは骨、膀胱および頸部において発現される。Dkk−1は、いくつかの公知増殖マーカーの場合と同様に、ほとんどのヒト腫瘍または癌細胞系において高度にアップレギュレーションされる。
【0138】
インビボでの正常組織の増殖に対する抗Dkk−1抗体の効果をモニターするために、前記において特定された増殖マーカー(Ki−67、PCNA、E2F1)、および4週間処理されたマウス(実施例7に記載されている概念証明研究)における細胞過形成に関連した遺伝子(IGFBP−3、Dkk−1)のレベルを定量した。これらのマーカーは、選択された組織(腸、肝臓、膀胱、子宮)における細胞増殖の尺度として選択された。TAQMAN系を用いる定量的PCR分析は、4週間の処理の後、対照サンプルと比較して抗Dkk−1抗体処理サンプルにおいて該増殖マーカーの発現における一貫した又は十分な相違を示さなかった。
【0139】
結腸癌細胞系におけるDkk−1の、より高い発現に基づいて、転写および増殖に対する抗Dkk−1抗体の効果をインビトロで評価した。構成的に活性なWntシグナリングを示す結腸癌細胞系(SW480、HCT116、SW48、DLD1およびHEK293)を使用する増殖アッセイにおいて、RH2−80抗体(30μg/mL)を試験した。MG−63骨肉腫細胞および非特異的抗体8B4を対照として使用した。細胞増殖を測定するために、American Type Culture Collection(ATCC)のプロトコールにより該細胞を培養した。該増殖アッセイを行う前日に、新鮮に調製された細胞を、100μLの対応細胞培地中、96ウェルCytostarシンチレーティング・プレートに2〜5×10 細胞/ウェルで播いた。翌日、0.5μCi/mLの[メチル−14C]チミジンをRH2−80抗体、8B4抗体またはWnt3Aと共に各ウェルに加えた。該抗体の添加の1日後、2日後、3日後および5日後、1450 MICROBETA Jet(Wallac Inc.,Gaithersburg,MD)を使用して細胞増殖を測定した。細胞内への[メチル−14C]チミジンの、より大量の取り込みは、MICROBETA Jet上のCytostarプレート内で検出される、より大量の光に相関された。第3日に、治療薬を含有する新鮮培地を細胞に補充した。図10Bに示すデータは第3日の処理を表している。
【0140】
構成的に活性なWntシグナリングを示す結腸癌細胞系(SW480、HCT116、SW48、DLD1およびHEK293)を使用するTOPflash転写アッセイにおいて、RH2−80抗体(30μg/mL)を試験した。MG−63骨肉腫細胞および非特異的抗体8B4を対照として使用した。
【0141】
該アッセイにおいてWnt/DKK1シグナリングを測定するために、トランスフェクションの前日に、ATCCプロトコールにより、100μLの完全細胞培地中、96ウェルプレート内に25,000細胞/ウェルで細胞を播いた。トランスフェクションの当日、60μLのFuGene6、375ngのpTopflash、80ng pTKrenillaおよび5μg pcDNA3.1−LEF1を最終容量600μLのOPTIMEMに加えた。該混合物を室温で1時間インキュベートした。ついで1.4mLのOPTIMEMを前記混合物に加え、穏やかに良く混合した。ついで20μLの該DNA混合物を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。該プレートを穏やかに叩き、37℃のインキュベーターに戻した。トランスフェクションの翌日、細胞をRH2−80抗体、8B4抗体またはWnt3Aのいずれかで処理した。処理の約24時間後、二重ルシフェラーゼアッセイをPromegaプロトコールにより行った。誘導を計算する前に、まず、ルシフェラーゼシグナルをレニラ(renilla)シグナルに対して正規化した。対照シグナルと比較することにより、誘導倍率を得た。
【0142】
HCT116細胞を使用する転写および増殖アッセイの結果を図10Aおよび10Bに示す。一般に、該結果は、多数の細胞が、Wnt処理によってはそれ以上増強され得ない高い基底転写レベルを有することを示した。すべての細胞系において、RH2−80単独ではLEF−1/TCFプロモーター活性を増強しなかった。応答性のこの欠如は、Wnt3a処理に応答する細胞、例えばHCT116において見られた。別の分析は、抗Dkk−1抗体RH2−80が、myc、jun、PPARd、FGF18、COX2、IGF−1およびIGF−2を含む内因性Wnt標的遺伝子の発現を変化させないことを示した。さらに、6つの被検細胞系のいずれにおいても、Dkk−1、Dkk−2、Dkk−4、LRP5、LRP6、Sost、WIF1およびCTGFのようなWntシグナリング成分の誘導は認められなかった。
【0143】
該細胞増殖研究において、その結果は、RH2−80(30μg/mL)が被検細胞系のそれぞれにおいて細胞増殖を増強しないことを示した。アッセイは、血清の存在下、および補足的なWnt3a処理の非存在下または存在下で行った。HCT116細胞増殖に対するRH2−80抗体の効果に関する結果を図11Bに示す。並行して行った分析はMG−63、HCT116およびSW480細胞の増殖に対する効果に関してRH2−80およびRH2−59抗体(共に16μg/mL)を試験した。血清含有培地においては増殖の増強は観察されなかった。ビヒクル(N.S.)と比較してOPTIMEM無血清培地において試験した場合には、MG−63およびHCT116細胞のRH2−80抗体処理による細胞増殖の刺激は観察されなかった。20C2HA(陰性対照)とRH2−80およびRH2−59(類似効力を有する抗Dkk−1抗体)の間の比較において有意性が観察され、それらは共に、ビヒクル対照(N.S.)と比較して僅かな抗増殖効果の傾向を示した。反復分析は、OPTIMEM中のSW480細胞およびHCT116細胞(より高い初期密度で播かれた)において抗体効果を示さなかった。この点において、RH2−59または20C2HAで処理された細胞の増殖における下降傾向は認められず、この場合もまた、RH2−80は該ビヒクル対照と同等に機能した。
【0144】
ヒト結腸癌異種移植片のSCIDマウスにおける該抗Dkk−1抗体の更なる研究も行った。腫瘍増殖に関するこの異種移植モデルにおいては、リン酸緩衝食塩水(PBS)をビヒクルとして使用し、ピチア(Pichia)株において5mpkで発現されたRH2−18抗体を試験群として使用し、0.02mpkのWnt3aを陽性対照として使用した。約6週齢のNOD.CB17−Prkdcscid/J(SCID)マウスの右および左側腹部への100μLのPBS中の1×10 HCT116細胞の皮下注射を行った。注射後の第2日に、続いて処理を行い、週2回、合計7回の処理を続けた。約3.5週の時点で腫瘍を単離した。1匹のマウスからの両方の腫瘍を足し合わせ該マウスの総体重で割り算することにより、腫瘍重量の百分率(%)を得た。スチューデントt検定を用いて統計処理を行った。結果を図11に示す。Wnt3aは、PBS(ビヒクル)処理群に対して約2倍、腫瘍増殖を有意に増強した。該抗体は、ビヒクル処理と比べて腫瘍増殖を有意には刺激しなかった。該ビヒクル群中の4匹中2匹の動物は腹部における腫瘍細胞の何らかの証拠を示したが、その他の群においてはそれらは観察されなかった。腹部へのこの可能なHCT116細胞浸潤は、関心領域内の細胞喪失により、これらのマウスにおける見掛け腫瘍サイズを人工的に減少させた可能性があり、したがって、これらの群における腫瘍サイズを減少させ得たのであろう。
【0145】
本発明は、例示されている実施形態に関して本明細書中で説明されているが、本発明はそれらに限定されないと理解されるべきである。当業者および本明細書中の教示に接する者は、その範囲内の追加的な修飾および実施形態を認識するであろう。したがって、本発明は、本明細書に添付されている特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)配列番号12に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC CDR1、
(ii)配列番号13に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC CDR2および
(iii)配列番号14に対して少なくとも80%の配列同一性を有するLC CDR3
よりなる群から選ばれる1以上の軽鎖(LC)相補性決定領域(CDR)、
(b)(i)配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC CDR1、
(ii)配列番号10に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC CDR2および
(iii)配列番号11に対して少なくとも80%の配列同一性を有するHC CDR3
よりなる群から選ばれる1以上の重鎖(HC)CDR、または
(c)(a)の1以上のLC CDRおよび(b)の1以上のHC CDR
を含んでなり、Dkk−1ポリペプチドに特異的に結合しうる単離された抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメント。
【請求項2】
(a)(i)配列番号12に対して少なくとも90%の配列同一性を有するLC CDR1、
(ii)配列番号13に対して少なくとも90%の配列同一性を有するLC CDR2および
(iii)配列番号14に対して少なくとも90%の配列同一性を有するLC CDR3
よりなる群から選ばれる1以上の軽鎖(LC)相補性決定領域(CDR)、
(b)(i)配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性を有するHC CDR1、
(ii)配列番号10に対して少なくとも90%の配列同一性を有するHC CDR2および
(iii)配列番号11に対して少なくとも90%の配列同一性を有するHC CDR3
よりなる群から選ばれる1以上の重鎖(HC)CDR、または
(c)(a)の1以上のLC CDRおよび(b)の1以上のHC CDR
を含んでなり、Dkk−1ポリペプチドに特異的に結合しうる、請求項1記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項3】
(a)(i)配列番号12に記載されているとおりの配列を有するLC CDR1、
(ii)配列番号13に記載されているとおりの配列を有するLC CDR2および
(iii)配列番号14に記載されているとおりの配列を有するLC CDR3
よりなる群から選ばれる1以上の軽鎖(LC)相補性決定領域(CDR)、
(b)(i)配列番号9に記載されているとおりの配列を有するHC CDR1、
(ii)配列番号10に記載されているとおりの配列を有するHC CDR2および
(iii)配列番号11に記載されているとおりの配列を有するHC CDR3
よりなる群から選ばれる1以上の重鎖(HC)CDR、または
(c)(a)の1以上のLC CDRおよび(b)の1以上のHC CDR
を含んでなり、Dkk−1ポリペプチドに特異的に結合しうる、請求項2記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項4】
配列番号14のアミノ酸配列を有するLC CDR3または配列番号11のアミノ酸配列を有するHC CDR3を含む、請求項3記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項5】
配列番号14のアミノ酸配列を有するLC CDR3または配列番号11のアミノ酸配列を有するHC CDR3を含む、請求項4記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項6】
(a)および(b)に記載されているCDRからの少なくとも2つのCDRを含む、請求項1記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項7】
(a)および(b)に記載されているCDRからの少なくとも3つのCDRを含む、請求項6記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項8】
(a)および(b)に記載されているCDRからの少なくとも4つのCDRを含む、請求項7記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項9】
(a)および(b)に記載されているCDRからの少なくとも5つのCDRを含む、請求項8記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項10】
(a)および(b)に記載されているCDRからの全6個のCDRを含む、請求項9記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項11】
ドメイン抗体である、請求項1記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項12】
約269pMまたはそれ未満のKdでDkk−1ポリペプチドから解離する、請求項1記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項13】
モノクローナル抗体である、請求項1記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項14】
scFv、Fab、Fab’または(Fab’)である、請求項1記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項15】
ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項1記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項16】
(a)配列番号4に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(V)、
(b)配列番号8に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域(V)、または
(c)(a)のVおよび(b)のV
を含んでなる単離された抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメント。
【請求項17】
2つの同一Vおよび2つの同一Vよりなる、請求項16記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項18】
が配列番号4に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、Vが配列番号8に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項16記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項19】
2つの同一Vおよび2つの同一Vよりなる、請求項18記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項20】
が配列番号4に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、Vが配列番号8に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項16記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項21】
2つの同一Vおよび2つの同一Vよりなる、請求項20記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項22】
が配列番号4のアミノ酸配列を有し、Vが配列番号8のアミノ酸配列を有する、請求項21記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項23】
2つの同一Vおよび2つの同一Vよりなる、請求項22記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項24】
(a)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖、
(b)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖、または
(c)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖および配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖
を含む、請求項22記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項25】
2つの同一軽鎖および2つの同一重鎖よりなる、請求項24記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項26】
モノクローナル抗体である、請求項16記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項27】
scFv、Fab、Fab’または(Fab’).sub.2である、請求項16記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項28】
ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項16記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項29】
配列番号35のアミノ酸32−266より構成され、システイン残基220と245との間のジスルフィド結合により確立された三次構造を有する成熟ヒトDkk−1タンパク質に特異的に結合する抗体(ここで、該抗体は、配列番号35のシステイン残基201と210との間のアミノ酸よりなるループを含むエピトープに結合する)または免疫学的に機能的なそのフラグメント。
【請求項30】
モノクローナル抗体である、請求項29記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項31】
scFv、Fab、Fab’または(Fab’).sub.2である、請求項29記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項32】
ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項29記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項33】
Dkk−1ポリペプチドへの特異的結合に関して請求項24記載の抗体と競合する抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメント。
【請求項34】
2つの同一重鎖および2つの同一軽鎖(ここで、該重鎖は配列番号3に記載のアミノ酸配列よりなり、該軽鎖は配列番号7に記載のアミノ酸配列よりなる)よりなる抗体と競合する、請求項33記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項35】
約269pMまたはそれ未満のKdでDkk−1ポリペプチドから解離する、請求項34記載の単離された抗体または免疫学的に機能的なフラグメント。
【請求項36】
(a)配列番号14に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDRおよび/または(b)配列番号11に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDRをコードしており、抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメントをコードする核酸。
【請求項37】
請求項16記載の抗体または免疫学的に活性なフラグメントのV、V、またはVとVとの両方をコードする配列を含んでなる核酸。
【請求項38】
請求項22記載の抗体または免疫学的に活性なフラグメントのV、V、またはVとVとの両方をコードする核酸セグメントを含んでなる核酸。
【請求項39】
請求項37記載の核酸を含んでなる発現ベクター。
【請求項40】
請求項39記載の発現ベクターを含んでなる単離された細胞。
【請求項41】
請求項40記載の細胞を培養する段階を含んでなる、抗体または免疫学的に活性なそのフラグメントの製造方法。
【請求項42】
請求項1記載の抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメントと、バッファー、医薬上許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤および保存剤よりなる群から選ばれる成分とを含んでなる組成物。
【請求項43】
請求項16記載の抗体または免疫学的に機能的なそのフラグメントと、バッファー、医薬上許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤および保存剤よりなる群から選ばれる成分とを含んでなる組成物。
【請求項44】
請求項1記載の抗体または免疫学的に活性なそのフラグメントの有効量を個体に投与することを含んでなる、個体における疾患の治療方法であって、該疾患が、関節炎、幹細胞再生に応答性の疾患、炎症疾患、神経疾患、眼疾患、腎疾患、肺疾患、骨障害および皮膚疾患よりなる群から選ばれる、方法。
【請求項45】
該疾患が、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎および骨関節炎よりなる群から選ばれる、請求項44記載の方法。
【請求項46】
該疾患が骨粗鬆症である、請求項44記載の方法。
【請求項47】
請求項1記載の抗体または免疫学的に活性なそのフラグメントの有効量を個体に投与することを含んでなる、個体における骨の成長を刺激する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−517570(P2010−517570A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549083(P2009−549083)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/001454
【国際公開番号】WO2008/097510
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】