説明

DME地上装置、及びDME地上装置による距離情報送信方法

【課題】所定の信号レベル以上のCW妨害波が入力されても、正常な応答信号の送信パルスを発生させることによってDME地上装置が運用停止に至らないようにする。
【解決手段】受信機15は、航空機(図示せず)から到来した測定用質問信号の信号レベルや自己診断を行うために質問信号発生部18で発生させた診断用質問信号の受信信号レベルを常時監視している。受信機15にCW妨害波が到来すると、監視制御装置17aの質問信号発生部18で発生させた診断用質問信号の信号レベルを可変増幅器19で増幅し、増幅された診断用質問信号の信号レベルがCW妨害波の信号レベルより高くなるように制御を行う。これにより、CW妨害波の信号レベルが高くなっても、送信機16から空中線11を経由して航空機へ安定した応答信号を送信することができる。したがって、DME地上装置10aは、航空機に対して安定的に距離測定情報を送信し続けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、航空機と地上側に設置された地上装置との間の距離を測定する距離測定装置(DME:Distance Measuring Equipment)及びDMEによる距離情報送信方法に係り、特に、地上側に設けられているDME地上装置、及び航空機に対して距離情報を送信するためのDME地上装置による距離情報送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機に対して用いられるDMEは、航空機に搭載されたDME機上装置と、このDME機上装置に対して地上側から交信するDME地上装置とによって構成されている。そして、DME機上装置には質問装置(インタロゲータ)が設けられ、DME地上装置には応答装置(トランスポンダ)が設けられている。このような構成において、DME機上装置の質問装置からDEM地上装置の応答装置へUHF帯の測定用質問信号を送信し、それに対して応答装置からの応答信号(質問信号と応答信号はペアパルスとなっている)を質問装置が受信するまでの時間に基づいて、航空機とDME地上装置との間の距離を測定している。すなわち、航空機のDME機上装置が、測定用質問信号を送信した時刻から対応する応答信号を受信した時刻までの時間間隔に基づいて航空機とDME地上装置との間の距離を測定している。したがって、DME機上装置側の質問装置とDEM地上装置側の応答装置との間で交信される信号は、CW(Continuous Wave)妨害波などによって攪乱されないように様々な対策がなされている。
【0003】
例えば、DME地上装置の運用面からみて許容できる低レベルのCW妨害波が持続しても、DEM地上装置の応答装置が、CW妨害波より強い測定用質問信号を正常に検出して応答信号を送信できるようにして、距離測定サービスを常に提供できるようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、この技術では、運用上許容できない強度のCW妨害波があっても、所定時間以内のCW妨害波であれば、運用停止に至らないようにして距離測定サービスを継続して提供できるようにしている。
【0004】
また、DME地上装置の受信機に混入するCW妨害波のCW信号に対して逆位相の信号を加えることによってCW妨害波のCW信号を相殺(除去)し、DME地上装置が測定用質問信号を確実に受信して応答信号を送信できるようにすることにより、DME機上装置が正確に距離測定を行うことができるようにした技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、DME地上装置の受信機が、CW妨害波の雑音レベルに応じて測定用質問信号の利得を制御(増幅)することにより、CW妨害波の雑音レベルより高い信号レベルの測定用質問信号を受信することでCW妨害波の成分を抑圧する技術も開示されている(例えば、特許文献3参照)。この技術によれば、DME地上装置の受信機は、常に、CW妨害波の雑音レベルより高い信号レベルの測定用質問信号を受信して、DME機上装置へ応答信号を送信することができるので、DME地上装置は常に正常な距離測定サービスをDME機上装置へ提供することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−198839号公報
【特許文献2】特開平10−062520号公報
【特許文献3】特開昭56−108982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、通常のDME地上装置は、自己診断を行うために、固定した信号レベルの診断用質問信号を監視制御装置で繰り返し発生させて受信機へ入力し、入力した診断用質問信号に対する応答信号の送信パルスをモニタしながらDME地上装置の動作状況を常時監視している。この場合、診断用質問信号の信号レベル以上のCW妨害波が外部から混入すると、受信機が正常な信号レベルの診断用質問信号を受信できなくなり、その結果、応答信号の送信パルスが発生しなくなるため、DME地上装置は運用を停止(シャットダウン)してしまう。
【0008】
このことについて、図5、図6、及び図7を用いてさらに詳しく説明する。図5は、従来のDME地上装置の一部構成を示すブロック図である。図5に示すように、DME地上装置30は、自己診断を行うために、監視制御装置37内の質問信号発生部38にて固定レベルの診断用質問信号S38を発生させる。そして、この診断用質問信号S38は、方向性結合器33を通して、デュプレクサ34により受信機35へ導かれる。
【0009】
このとき、診断用質問信号S38が受信機35により正常な信号レベルの質問信号であると判定された場合は、DME地上装置30のシステムに起因するシステム遅延時間の後に、送信機36によって応答信号の送信パルスS36を発生させる。そして、この送信パルスS36は、デュプレクサ34の方向選択により方向性結合器33を通過し、さらに、方向性結合器32を経由して、空中線31からDME機上装置(図示せず)へ放射される。このとき、送信パルスS36の一部は、方向性結合器32から監視制御装置37内の送信パルスモニタ部40へ入力されて常時監視される。
【0010】
図6は、図5に示すDME地上装置におけるCW妨害波がない場合の各部の動作波形図であり、横軸に時間の流れを示し、縦軸に信号レベルを示している。したがって、図6の動作波形図を用いて、CW妨害波がない場合のDME地上装置30の動作について説明する。
【0011】
先ず、図6(a)に示すような診断用質問信号S38が、監視制御装置37の質問信号発生部38において発生する。そして、質問信号発生部38から出力された診断用質問信号S38は、方向性結合器33によって、空中線31から入力された距離を測定するための測定用質問信号と時間軸上で合併される。すなわち、図6(b)に示すように、診断用質問信号S38と測定用質問信号は受信信号として受信機35へ入力される。そして、受信機35によって正常な信号レベルの診断用質問信号S38であると判定されると、この診断用質問信号S38は、図6(c)に示すように、受信機35から送信機36へ受信器出力信号として出力される。
【0012】
さらに、DME地上装置30のシステム構成に起因するシステム遅延時間Tの後、図6(d)に示すように、送信機3によって応答信号の送信パルスS36を発生させる。そして、この送信パルスS36は、デュプレクサ34、方向性結合器33、及び方向性結合器32を経由して空中線31からDME機上装置(図示せず)へ放射される。さらに、その送信パルスS36の一部は監視制御装置37内の送信パルスモニタ部40へ入力される。そして、送信パルスモニタ部10にて、診断用質問信号S38と送信パルスS36との時間間隔を計測し、システム遅延時間Tの後に正常に送信パルスS36が存在するときは、診断用質問信号S38の信号レベルは正常であると判断する。
【0013】
次に、CW妨害波が存在する場合のDME地上装置30の動作について説明する。図7は、図5に示すDME地上装置におけるCW妨害波が存在する場合の各部の動作波形図であり、横軸に時間の流れを示し、縦軸に信号レベルを示している。したがって、図7の動作波形図を用いて、CW妨害波が存在する場合のDME地上装置30の動作について説明する。
【0014】
図7(a)に示すように、監視制御装置37の質問信号発生部38において診断用質問信号S38が発生すると、質問信号発生部38から出力された診断用質問信号S38は、方向性結合器33によって、空中線1から入力された測定用質問信号と時間軸上で合併される。すなわち、図7(b)に示すように、診断用質問信号S38と測定用質問信号は受信信号として受信機35へ入力される。
【0015】
このとき、図7(b)に示すように、診断用質問信号S38の信号レベルに比べて、空中線31から混入したCW妨害波の信号レベルの方が高いため、受信機35は、この診断用質問信号S38を正常な信号レベルの質問信号として処理することができない。そのため、図7(c)に示すように、受信機35は診断用質問信号S38に基づく受信器出力信号を出力することができない。したがって、送信機36は、受信器35から受信器出力信号を受信することができないので、図7(d)に示すように、システム遅延時間Tの後に、送信機36から応答信号の送信パルスS36が出力されない。すなわち、診断用質問信号S38の信号レベルを基準として、システム遅延時間Tの後に送信パルスS36が存在しないため、監視制御装置37は、DME地上装置30が通信異常であると判断する。このようにして通信異常の状態が所定時間以上に亘って継続すると、DME地上装置30は運用を停止してしまう。したがって、DME地上装置30は航空機に対して距離測定サービスを提供することができない。
【0016】
なお、前述の特許文献1の技術は、DME地上装置の運用上許容できる低レベルのCW妨害波が持続しても、そのCW妨害波より強い測定用質問信号を正常に検出して応答信号を送信できるようにしているが、運用上許容できない強度の妨害波が所定時間以上に亘って発生した場合はDME地上装置の運用が停止してしまう。したがって、この場合は、DME地上装置は航空機に対して距離測定サービスを提供することができない。
【0017】
また、前述の特許文献2の技術は、所定レベルのCW妨害波のCW信号を除去することはできるが、測定用質問信号に対してCW妨害波が強い場合やCW妨害波の変動が大きい場合は、CW妨害波のCW信号を打ち消すことが困難となる。したがって、DME地上装置はCW妨害波を除去した測定用質問信号のみを入力することができなくなる。その結果、DME地上装置からDME機上装置へ応答信号を送信することができないために、DME地上装置とDME機上装置との間で距離の測定データを交信することができない。
【0018】
さらに、前述の特許文献3の技術は、CW妨害波の雑音レベルに応じて測定用質問信号の利得を制御(増幅)することにより、CW妨害波の雑音レベルより高い信号レベルの測定用質問信号を受信するようにしている。しかしながら、この技術は、診断用質問信号によって自己診断しながら、CW妨害波の雑音レベルより高い診断用質問信号を生成してDME地上装置の運用停止を防止するものではない。すなわち、この技術では、DME機上装置から刻々と到来する測定用質問信号がCW妨害波の雑音レベルより高くなるように測定用質問信号の利得を制御している。そのため、DME地上装置に到来してくる大小様々な測定用質問信号を、その都度、CW妨害波の雑音レベルと比較しながら、測定用質問信号の信号レベルがCW妨害波の雑音レベルより常に高くなるように利得を制御しなければならない。したがって、測定用質問信号の利得を制御するための制御系の回路構成が複雑になるためDME地上装置がコストアップしてしまう。
【0019】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、所定の信号レベル以上のCW妨害波が入力されても、正常な応答信号の送信パルスを発生させることによって運用停止に至ることのないようなDME地上装置、及び航空機に対して距離情報を送信するためのDME地上装置による距離情報送信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、この発明の第1の構成は、地上に設置され、航空機から受信した距離測定のための測定用質問信号に対応する応答信号を前記航空機へ送信し、前記航空機と地上との距離を測定するための距離測定情報を前記航空機へ提供するDME地上装置であって、入力されたCW妨害波の信号レベルに応じて、自己診断を行うための診断用質問信号の信号レベルを制御する制御手段を備えてなることを特徴としている。
【0021】
また、この発明の第2の構成は、地上に設置され、航空機から受信した距離測定のための測定用質問信号に対応する応答信号を前記航空機へ送信し、前記航空機と地上との距離を測定するための距離測定情報を前記航空機へ提供するDME地上装置が、前記航空機に対して距離情報を送信するためのDME地上装置による距離情報送信方法であって、前記DME地上装置に入力されたCW妨害波の信号レベルに応じて、自己診断を行うための診断用質問信号の信号レベルを制御する制御ステップを含んでいることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、所定の信号レベル以上のCW妨害波が入力信号に混入されても、DME地上装置は、運用停止に至ることなく、航空機に対して距離測定情報を提供し続けることができる。その理由は次の通りである。すなわち、DME地上装置が受信信号レベルを常時監視し、CW妨害波が到来したと判断した場合は、制御手段(可変増幅器)を用いて診断用質問信号の信号レベルを制御することにより、診断用質問信号の信号レベルをCW妨害波の信号レベル以上に上昇させている。これにより、CW妨害波の信号レベルが突然高くなっても、診断用質問信号の信号レベルはそれ以上に高くなるので、診断用質問信号に対応する応答信号の送信パルスを発生させて航空機へ送信することができる。したがって、DME地上装置は運用を停止することなく、航空機に対して距離測定情報を提供し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施形態1に適用されるDME地上装置の一部構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すDME地上装置におけるCW妨害波が存在する場合の各部の動作波形図である。
【図3】この発明の実施形態2に適用されるDME地上装置の一部構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施形態3に適用されるDME地上装置の一部構成を示すブロック図である。
【図5】従来のDME地上装置の一部構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示すDME地上装置におけるCW妨害波がない場合の各部の動作波形図である。
【図7】図5に示すDME地上装置におけるCW妨害波が存在する場合の各部の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、地上に設置され、航空機から受信した距離測定のための測定用質問信号に対応する応答信号を航空機へ送信し、航空機と地上との距離を測定するための距離測定情報を航空機へ提供するDME地上装置であって、入力されたCW妨害波の信号レベルに応じて、自己診断を行うための診断用質問信号の信号レベルを制御する制御手段を備えることにより、所定の信号レベル以上のCW妨害波が入力されても、正常な応答信号の送信パルスを発生させることによってDME地上装置が運用停止に至らないようにするという目的を実現している。
【実施形態1】
【0025】
以下、図面を参照して、この発明に係るDME地上装置の実施形態1について詳細に説明する。図1は、この発明の実施形態1に適用されるDME地上装置の一部構成を示すブロック図である。図1に示すように、この発明のDME地上装置10aは、空中線11、方向性結合器12、13、デュプレクサ14、受信機15、送信機16、及び監視制御装置17aから構成されている。なお、監視制御装置17aは、質問信号発生部18と可変増幅器19と送信パルスモニタ部20とによって構成されている。
【0026】
空中線11は、図示しない航空機のDME機上装置から距離を測定するための測定用質問信号を受信したり、受信した測定用質問信号に対応する応答信号をDME機上装置へ送信したりするためのアンテナである。方向性結合器12、13は、複数系統の各信号(測定用質問信号、診断用質問信号、及び応答信号など)を結合したり分配したりするための結合/分配要素である。デュプレクサ14は、測定用質問信号や診断用質問信号や応答信号などの各種信号の系統を切り替えるための系統切替要素である。
【0027】
受信機15は、測定用質問信号や診断用質問信号やCW妨害波を受信して、それらの信号の受信レベルに応じた信号情報を送信機16や可変増幅器19へ送信する機能を備えた要素である。送信機16は、受信機15からの信号情報に基づいて応答信号を生成し、その応答信号を、空中線11を介して図示しない航空機のDME機上装置へ送信する機能を備えた要素である。
【0028】
監視制御装置17a内の質問信号発生部18は、DME地上装置10aが自己診断を行うために、固定レベルの診断用質問信号を生成するための要素である。可変増幅器19は、受信機15からの信号情報に含まれるCW妨害波の信号レベルに応じて診断用質問信号の信号レベルを制御(増幅)する機能を備えた要素である。送信パルスモニタ部20は、送信機16から空中線11を介してDME機上装置(図示せず)へ送信される応答信号の送信パルスの一部を抽出してモニタする監視手段である。
【0029】
このような構成のDME地上装置10aにおいて、空中線11にて受信した航空機のDME機上装置からの測定用質問信号は、方向性結合器12、13を介して、デュプレクサ14によって受信機15へ導かれる。そして、受信機15によって所定の信号レベルの測定用質問信号であると判定された場合は、その旨の情報が受信機25から送信機26へ送信される。これにより、DME地上装置1のシステムに依存するシステム遅延時間の後に、送信機16によって応答信号の送信パルスS16を発生させる。そして、応答信号の送信パルスS16は送信機16からデュプレクサ14ヘ送信される。さらに、デュプレクサ14によって応答信号の送信パルスS6の送信系統が選択され、その応答信号の送信パルスS16は方向性結合器13、12を介して空中線11より空間に放射され、図示しない航空機のDME機上装置へ送信される。
【0030】
また、DME地上装置10aは、自己診断を行うために、監視制御装置17a内の質問信号発生部18にて固定レベルの診断用質問信号S18を発生させ、この診断用質問信号S18を可変増幅器19にて所定の信号レベルに増幅し、信号レベルの高い診断用質問信号S19にして監視制御装置7より外部へ送信する。すなわち、質問信号発生部18にて発生した診断用質問信号S18の信号レベルがCW妨害波の信号レベルより低いときは、可変増幅器19にて、CW妨害波の信号レベルより高い信号レベルに増幅した診断用質問信号S19として監視制御装置17aより外部へ送信する。そして、この診断用質問信号S19は、方向性結合器313を介して、デュプレクサ14により受信機15へ導かれる。
【0031】
このようにして、デュプレクサ14から受信機15へ入力された診断用質問信号S19が、CW妨害波の信号レベルより高い信号レベルであると受信機15によって判定されると、システム遅延時間の後に、送信機16によって応答信号の送信パルスS16を発生させる。そして、応答信号の送信パルスS16は、デュプレクサ14の方向選択によって方向性結合器13を通過し、さらに、方向性結合器12を介して空中線11から航空機のDME機上装置(図示せず)へ放射されると共に、その送信パルスS16の一部は監視制御装置17a内の送信パルスモニタ部20へ入力されて常時監視される。
【0032】
次に、図1に示すDME地上装置10aにおいてCW妨害波が存在する場合の動作について説明する。図2は、図1に示すDME地上装置におけるCW妨害波が存在する場合の各部の動作波形図である。耐干渉型のDME地上装置10aは、自己診断を行うために、監視制御装置17a内の質問信号発生部18にて診断用質問信号S18を発生させ、さらに、可変増幅器19で所定の信号レベルに増幅し、図2(a)に示すような診断用質問信号S19を生成する。
【0033】
さらに、増幅された診断用質問信号S19は、方向性結合器13を介してデュプレクサ14により受信機15へ導かれる。一方、空中線11から入力された測定用質問信号に混入されたCW妨害波も、方向性結合器12、13とデュプレクサ14を通して受信機15へ入力される。その結果、受信機15へ入力された受信信号は、図2(b)のように、診断用質問信号S19と測定用質問信号とが時間軸上に配列され、可変増幅器19で増幅された診断用質問信号S19の信号レベルはCW妨害波の信号レベルより高い状態となる。なお、図2(B)では、航空機からの強い測定用質問信号の一部もCW妨害波の信号レベルより高い状態となっている。
【0034】
このとき、受信機15は、図2(b)に示すような受信信号の信号レベル(受信レベル)を常時監視し、可変増幅器19に対してその受信レベルを出力している。したがって、可変増幅器19は、CW妨害波の信号レベルがさらに上昇した場合は、受信機16から入力したCW妨害波の受信レベルの情報に基づいて、上昇したCW妨害波の信号レベル以上になるように診断用質問信号S19の信号レベルを上昇させる。
【0035】
これにより、入力されたCW妨害波の信号レベルが突然高くなったとしても、診断用質問信号S19の信号レベルは可変増幅器19によってCW妨害波の信号レベルより上昇するので、受信機15は診断用質問信号S19を正常な信号レベルの質問信号と判定することができる。したがって、受信機15は、図2(c)に示すような受信機出力信号を送信することができる。
【0036】
このようにして、受信機15から図2(c)に示すような受信機出力信号が送信機16へ送信されると、図2(d)に示すように、DME地上装置1のシステムに起因するシステム遅延時間Tの後に、送信機6は診断用質問信号S19に対応する応答信号の送信パルスS16を発生させ、その応答信号の送信パルスS16をデュプレクサ14へ出力する。そして、この応答信号の送信パルスS16は、デュプレクサ14から方向性結合器13を通過し、さらに、方向性結合器12を介して空中線11からDME機上装置(図示せず)へ放射されると共に、その送信パルスS16の一部は監視制御装置17a内の送信パルスモニタ部20へ入力されて常時監視される。
【0037】
これによって、送信パルスモニタ部20は、診断用質問信号S19と応答信号の送信パルスS16との時間間隔を計測し、システム遅延時間Tの後に正常に送信パルスS16が送信されたので、DME地上装置10aは正常に動作していると判断する。これによって所定の信号レベル以上のCW妨害波が測定用質問信号に混入しても、DME地上装置10aは運用停止に至ることはない。
【0038】
すなわち、この発明のDME地上装置10aによれば、受信機15にて図2(b)に示すような受信信号の信号レベルとCW妨害波の信号レベルとを常時監視し、それらの信号レベルの情報を可変増幅器19へ出力している。これにより、監視制御装置17a内において、質問信号発生部18が所定レベルの診断用質問信号S18を発生させると、可変増幅器19は、受信機10aからの信号レベル情報に基づいて診断用質問信号S18を制御し、可変増幅器19から出力される診断用質問信号S19の信号レベルがCW妨害波の信号レベル以上になるように増幅作用を行う。
【0039】
これによって、受信機15は正常に診断用質問信号S19を処理(デコード)して、図2(c)に示すような受信機出力信号を送信器16へ送信できるため、送信機16は、システム遅延時間Tの後に、図2(d)に示すような正常な送信パルスS16を発生させ、空中線11から図示しない航空機のDME機上装置へ応答信号を送信することができる。これにより、DME地上装置10aは、CW妨害波の信号レベルが高くなっても運用停止にはならないので、航空機のDME機上装置に対して距離測定情報を提供し続けることができる。
【0040】
以上に述べた説明を要約すると、この発明の実施形態1に係る耐干渉型のDME地上装置10aによれば、受信機15は、航空機(図示せず)から到来した測定用質問信号の信号レベルや、自己診断を行うために質問信号発生部18で発生させた診断用質問信号の受信信号レベルを、常時監視している。そして、受信機15にCW妨害波が到来したと判断した場合は、監視制御装置17aの質問信号発生部18で発生させた診断用質問信号の信号レベルを可変増幅器19で増幅し、増幅された診断用質問信号S19の信号レベルがCW妨害波の信号レベルより高くなるように制御を行う。これにより、CW妨害波の信号レベルが高くなっても、送信機16から空中線11を経由して航空機へ安定した応答信号を送信することができる。したがって、DME地上装置10aは、CW妨害波の信号レベルが高くなっても、航空機に対して安定的に距離測定情報を送信し続けることができる。
【実施形態2】
【0041】
実施形態1のDME地上装置10aでは、監視制御装置17aに可変増幅器19を設け、この可変増幅器19がCW妨害波の信号レベルに応じて診断用質問信号の信号レベルを制御することにより、診断用質問信号の信号レベルがCW妨害波の信号レベルより常に高くなるようにして、DME地上装置10aの運用停止を防止している。そこで、実施形態2のDME地上装置では、実施形態1のDME地上装置10aの作用・効果に加えて、受信機15にて監視している受信信号レベルを表示させるための表示部を設けることにより、外部からDME地上装置へ混入するCW妨害波の信号レベルを目視で確認できるようにした。
【0042】
図3は、この発明の実施形態2に適用されるDME地上装置の一部構成を示すブロック図である。すなわち、図3に示すように、監視制御装置17b内に表示部21を設け、受信機15が監視している受信信号の信号レベルを表示部21に表示させる。これによって、DME地上装置10bへ混入するCW妨害波の信号レベルを目視で確認することができるので、CW妨害波の信号レベルの高さを目視で確認しながら、手動にて可変増幅器19のボリュームを調整して、診断用質問信号S19の信号レベルがCW妨害波の信号レベルより高くなるように調整することができる。なお、追加された表示部21以外の構成要素は図1と同じであるので重複説明は省略する。
【実施形態3】
【0043】
実施形態3のDME地上装置では、実施形態2に加えて、受信機15にて監視しているCW妨害波の信号レベルに対してある規定レベルを設定し、CW妨害波の信号レベルが規定レベルを超えた場合は警報等を発生させ、ユーザに注意を喚起する警報器を備えることで常時監視が可能となる。
【0044】
図4は、この発明の実施形態3に適用されるDME地上装置の一部構成を示すブロック図である。すなわち、図4に示すように、監視制御装置17には、表示部21に加えてさらに警報器22を設ける。これによって、CW妨害波の信号レベルが規定レベルを超えた場合は、警報器22を鳴動させてユーザに注意を喚起することができるので、DME地上装置10cが運用状態にあるか否かを常時監視することが可能となる。
【0045】
以上、この発明に係るDME地上装置の幾つかの実施形態について、図面を参照して詳述してきたが、この発明によるDME地上装置の具体的な構成は、上述した各実施形態に限られるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもそれらはこの発明に含まれる。例えば、自己診断機能を持たないDME地上装置においては、CW妨害波の信号レベルが高くなったら、空中線から入力される測定用質問信号の信号レベルをCW妨害波の信号レベルより高くするように可変増幅器で増幅させる。これによって、CW妨害波の信号レベルが高くなってもDME地上装置の運用停止を回避することができる。
【0046】
《まとめ》
以上説明したように、一般的なDME地上装置は、自己診断を行うために、自ら固定レベルの診断用質問信号を発生させ、その診断用質問信号が正常に受信されて、対応する応答信号の送信パルスが生成されているか否かを常時モニタしている。ここで、所定レベル以上のCW妨害波が混入された場合は診断用質問信号を受信できなくなるために応答信号の送信パルスが生成されなくなるので、DME地上装置は運用停止となってしまう。
【0047】
そこで、この発明のDME地上装置は、混入するCW妨害波の信号レベルを常時監視し、CW妨害波の信号レベルが高くなった場合は、診断用質問信号の信号レベルをそのCW妨害波の信号レベルより高くすることにより、応答信号の送信パルスを安定的に生成している。これによって、DME地上装置は運用停止に至ることなく、航空機に対して安定した距離測定情報を提供し続けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明のDME地上装置は、診断用質問信号の信号レベルがCW妨害波の信号レベルより常に高くなるように制御することにより、DME地上装置の運用停止を防止することができるので、例えば、民間の航空管制施設や防衛省の航空施設などにおいて有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10a、10b、10c、30 DME地上装置
11、31 空中線
12、13、32、33 方向性結合器
14、34 デュプレクサ
15、35 受信機(受信手段)
16、36 送信機(送信手段)
17a、17b、17c、37 監視制御装置
18、38 質問信号発生部(質問信号発生手段)
19 可変増幅器(制御手段)
20、40 送信パルスモニタ部
21 表示部(表示手段)
22 警報器(警報手段)
S16、S36 応答信号の送信パルス
S18、S38 質問信号発生部18で生成された診断用質問信号
S19 可変増幅器19で増幅された診断用質問信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設置され、航空機から受信した距離測定のための測定用質問信号に対応する応答信号を前記航空機へ送信し、前記航空機と地上との距離を測定するための距離測定情報を前記航空機へ提供するDME地上装置であって、
入力されたCW妨害波の信号レベルに応じて、自己診断を行うための診断用質問信号の信号レベルを制御する制御手段を備えることを特徴とするDME地上装置。
【請求項2】
地上に設置され、航空機と地上との距離を測定するための距離測定情報を前記航空機へ提供するDME地上装置であって、
前記航空機から距離測定のための測定用質問信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した測定用質問信号に対応する応答信号を発生させ、その応答信号を前記航空機へ送信する送信手段と、
自己診断を行うための診断用質問信号を発生させる質問信号発生手段と、
前記受信手段に入力されたCW妨害波の信号レベルに応じて、前記質問信号発生手段が発生させた診断用質問信号の信号レベルを制御する制御手段と
を備えることを特徴とするDME地上装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記診断用質問信号の信号レベルが前記CW妨害波の信号レベルより高くなるように増幅作用を行うことを特徴とする請求項1記載のDME地上装置。
【請求項4】
前記受信手段は、自己に入力されたCW妨害波の信号レベルをリアルタイムで前記制御手段へ送信し、
前記制御手段は、前記質問信号発生手段が発生させた診断用質問信号の信号レベルが、前記受信手段からリアルタイムで受信したCW妨害波の信号レベルより高くなるように増幅作用を行うことを特徴とする請求項2記載のDME地上装置。
【請求項5】
前記送信手段は、前記制御手段で増幅された診断用質問信号の信号レベルが前記CW妨害波の信号レベルより高いときに、前記航空機へ応答信号を送信することを特徴とする請求項4記載のDME地上装置。
【請求項6】
さらに、前記受信手段が受信したCW妨害波の信号レベルを表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項2、4、又は5記載のDME地上装置。
【請求項7】
さらに、前記受信手段が受信したCW妨害波の信号レベルがあらかじめ設定した規定レベル以上のときに警報を発生させる警報手段を備えることを特徴とする請求項6記載のDME地上装置。
【請求項8】
地上に設置され、航空機から受信した距離測定のための測定用質問信号に対応する応答信号を前記航空機へ送信し、前記航空機と地上との距離を測定するための距離測定情報を前記航空機へ提供するDME地上装置が、前記航空機に対して距離情報を送信するためのDME地上装置による距離情報送信方法であって、
前記DME地上装置に入力されたCW妨害波の信号レベルに応じて、自己診断を行うための診断用質問信号の信号レベルを制御する制御ステップを含むことを特徴とするDME地上装置による距離情報送信定方法。
【請求項9】
地上に設置され、航空機と地上との距離を測定するための距離測定情報を前記航空機へ提供するDME地上装置が、前記航空機に対して距離情報を送信するためのDME地上装置による距離情報送信方法であって、
前記航空機から距離測定のための測定用質問信号を受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信された測定用質問信号に対応する応答信号を発生させ、その応答信号を前記航空機へ送信する送信ステップと、
自己診断を行うための診断用質問信号を発生させる質問信号発生ステップと、
前記受信ステップの過程で入力されたCW妨害波の信号レベルに応じて、前記質問信号発生ステップで発生させた診断用質問信号の信号レベルを制御する制御ステップと
を含むことを特徴とするDME地上装置による距離情報送信方法。
【請求項10】
前記制御ステップにおいて、前記診断用質問信号の信号レベルが前記CW妨害波の信号レベルより高くなるように増幅作用を行うことを特徴とする請求項8記載のDME地上装置による距離情報送信方法。
【請求項11】
前記受信ステップにおいて、DME地上装置に入力されたCW妨害波の信号レベルをリアルタイムで監視し、
前記制御ステップにおいて、前記質問信号発生ステップで発生させた診断用質問信号の信号レベルが、前記受信ステップで監視されているCW妨害波の信号レベルより高くなるように増幅作用を行うことを特徴とする請求項9記載のDME地上装置による距離情報送信方法。
【請求項12】
前記送信ステップにおいて、前記制御ステップで増幅された診断用質問信号の信号レベルが前記CW妨害波の信号レベルより高いときに、前記航空機へ応答信号を送信することを特徴とする請求項11記載のDME地上装置による距離情報送信方法。
【請求項13】
さらに、前記受信ステップで受信されたCW妨害波の信号レベルを表示する表示ステップを含むことを特徴とする請求項9,11、又は12記載のDME地上装置による距離情報送信方法。
【請求項14】
さらに、前記受信ステップで受信されたCW妨害波の信号レベルがあらかじめ設定した規定レベル以上のときに警報を発生させる警報ステップを含むことを特徴とする請求項13記載のDME地上装置による距離情報送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−106956(P2011−106956A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262106(P2009−262106)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】