説明

DNA−PK阻害剤

式I〔式中、A、B、およびDは、それぞれ、(i)CH、NH、C;(ii)CH、N、N;および(iii)CH、O、C;よりなる群から選択され、点線は、適切な位置にある2つの二重結合を表し、Zは、S、O、C(=O)、CH2およびNHよりなる群から選択される〕で示される化合物をDNA-PKの阻害に使用すべく開示する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA-PK阻害剤として作用する化合物、その使用および合成に関する。
【背景技術】
【0002】
DNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)は、DNAとの会合により活性化される核セリン/トレオニンプロテインキナーゼである。生化学的および遺伝学的なデータにより、このキナーゼは、DNA-PKcsと称される大きい触媒サブユニットとKuと称される調節成分とで構成されることが明らかにされている。DNA-PKは、DNA二本鎖切断(DSB)修復機構およびV(D)J組換え機構の両方のきわめて重要な成分であることが示されている。そのほかに、最近の研究から、クロマチン構造のモジュレーションおよびテロメアの維持をはじめとするさまざまな他の過程でDNA-PK成分の関与が示唆されている(Smith, G. C. M. and Jackson, S.P., Genes and Dev., 13, 916-934 (1999))。
【0003】
DNA DSBは、細胞が遭遇しうる最も致命的な病変であるとみなされている。DNA DSBによりもたらされる深刻な脅威に対抗するために、真核細胞は、その修復を媒介するいくつかの機序を進化させてきた。高等真核生物では、こうした機序のうちで有力なのは、非正統的組換えとしても知られるDNA非相同的末端結合(NHEJ)である。DNA-PKは、この経路できわめて重要な役割を果たす。DNA-PKの活性の増大は、in vitroおよびin vivoの両方で実証されており、IRおよび二官能性アルキル化剤に対する腫瘍細胞の耐性と相関関係を示す(Muller C., et al., Blood, 92, 2213-2219 (1998), Sirzen F., et al., Eur. J. Cancer, 35, 111-116 (1999))。したがって、DNA-PKの活性の増大は、細胞および腫瘍の耐性機序として提案されている。このため、小分子阻害剤でDNA-PKを阻害すれば、過剰発現が耐性機序とみなされる腫瘍に奏効することが明らかにされる可能性がある。
【0004】
また、PI 3-キナーゼ阻害剤LY294002:
【化1】

【0005】
は、in vitroでDNA-PKの機能を阻害しうることもすでにみいだされている(Izzard, R.A., et al., Cancer Res., 59, 2581-2586 (1999))。DNA-PKに対するLY294002のIC50(酵素活性の50%が失われる濃度)は約1μMであり、これはPI 3-キナーゼに対するIC50と同じである。さらに、LY294002はまた、IRの作用に対する細胞の感受性をわずかに増強しうることが示されている(Rosenzweig, K.E., et al., Clin. Cancer Res., 3, 1149-1156 (1999))。
【0006】
WO 03/024949には、一般構造:
【化2】

【0007】
で示される2-アミノ-クロメン-4-オン類を含めてDNA-PK阻害剤として有用ないくつかのクラスの化合物が記載されている。
【化3】

【0008】
は、その一例であった。この化合物は、10〜12nMのIC50および1.3のSER(100nM)(方法については下記参照)を呈した。
【0009】
DNA-PK阻害剤の他の例としては、1-(2-ヒドロキシ-4-モルホリン-4-イル-フェニル)-エタノン(Kashishian, A., et al., Mol. Cancer Ther, 2, 1257-1264 (2003)):
【化4】

【0010】
およびSU11752(Ismail, I. H., et al., Oncogene, 23, 873-882 (2004)):
【化5】

【0011】
が挙げられる。
【0012】
DNA修復過程へのDNA-PKの関与、および小分子阻害剤が培養下で哺乳動物細胞の放射線感受性および化学感受性を増強することが示されていることを考えると、特異的DNA-PK阻害剤を適用すれば、癌の化学療法および放射線療法の両方の効力を増強する薬剤として作用するであろう。DNA-PK阻害剤はまた、レトロウイルス媒介疾患の治療に有用であることが明らかにされる可能性もある。たとえば、DNA-PK活性が失われるとレトロウイルス組込み過程が極度に抑制されることが実証されている(Daniel R, et al., Science, 284, 644-7 (1999))。
【発明の開示】
【0013】
本発明者らは、このたび、類似したもしくは改良されたDNA-PK阻害レベルを呈するとともに活性医薬として使用するのに有用な他の性質(特定的には、改良された溶解性および細胞に対する有効性)を有するさらなる化合物を見いだした。
【0014】
したがって、本発明の第1の態様は、式I:
【化6】

【0015】
で示される化合物、ならびにその異性体、塩、溶媒和物、化学的保護形態、およびプロドラッグを提供する。ただし、上記式中、A、B、およびDは、それぞれ、
(i) CH、NH、C;
(ii) CH、N、N;および
(iii) CH、O、C;
よりなる群から選択され、
点線は、適切な位置にある2つの二重結合を表し;
RN1およびRN2は、独立して、水素、場合により置換されていてもよいC1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、もしくはC5〜20アリール基から選択されるか、または一緒になって、それらが結合されている窒素原子と共に、4〜8個の環原子を有する場合により置換されていてもよいヘテロ環式環を形成していてもよく;
A、B、Dが上記の群(i)、(ii)から選択される場合、Zは、S、O、C(=O)、CH2およびNHよりなる群から選択され;A、B、Dが群(iii)を表す場合、Zは、O、C(=O)、CH2およびNHよりなる群から選択され;
R4は、H、OH、NO2、NH2、およびQ-Y-X
{ここで、
Qは、-NH-C(=O)-または-O-であり;
Yは、場合により置換されていてもよいC1〜5アルキレン基であり;
Xは、SRS1またはNRN3RN4(ここで、RS1、もしくはRN3およびRN4は、独立して、水素、場合により置換されていてもよいC1〜7アルキル基、C5〜20アリール基、もしくはC3〜20ヘテロシクリル基から選択されるか、またはRN3およびRN4は、一緒になって、それらが結合されている窒素原子と共に、4〜8個の環原子を有する場合により置換されていてもよいヘテロ環式環を形成していてもよい)から選択され;
Qが-O-である場合、Xは、追加的に、-C(=O)-NRN5RN6(ここで、RN5およびRN6は、独立して、水素、場合により置換されていてもよいC1〜7アルキル基、C5〜20アリール基、もしくはC3〜20ヘテロシクリル基から選択されるか、またはRN5およびRN6は、一緒になって、それらが結合されている窒素原子と共に、4〜8個の環原子を有する場合により置換されていてもよいヘテロ環式環を形成していてもよい)から選択されてもよく、そして
Qが-NH-C(=O)-である場合、-Y-Xは、追加的に、C1〜7アルキルから選択されてもよい}
よりなる群から選択され;
ただし、A、B、Dが群(iii)を表し、かつRN1およびRN2が、それらが結合されている炭素原子と共にモルホリノ基を形成している場合、R4はHではないことを条件とする。
【0016】
A、B、およびDに対する選択肢から、次式で示される化合物が得られる:
【表1】

【0017】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係る化合物と製薬上許容される担体または希釈剤とを含む組成物を提供する。
【0018】
本発明の第3の態様は、治療方法に使用するための第1の態様に係る化合物を提供する。
【0019】
本発明の第4の態様は、DNA-PKを阻害することにより改善される疾患を治療するための医薬の調製における第1の態様に係る化合物の使用を提供する。
【0020】
第4の態様に係る医薬は、PI 3-キナーゼおよび/またはATMと比較してDNA-PKの活性を選択的に阻害することが好ましい。他のPI 3-キナーゼファミリーメンバーを阻害するとそうした酵素の機能の消失に伴う望ましくない副作用を生じる可能性があるので、選択性は重要な問題である。
【0021】
特定的には、本化合物は、
(a) 癌治療における補助剤としての使用または腫瘍細胞に対する電離放射線もしくは化学療法剤による治療の効力を増強するための使用;あるいは
(b) レトロウイルス媒介疾患の治療;
のための医薬を調製するために使用可能である。
【0022】
本発明のさらなる態様は、人体または動物体の治療方法に使用すべく、好ましくは医薬組成物の形態で、本明細書に記載の活性化合物を提供する。
【0023】
本発明の他の態様は、細胞を有効量の本明細書に記載の活性化合物に接触させることを含む、in vitroまたはin vivoにおけるDNA-PKの阻害方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
定義
C1〜7アルキル: 本明細書中で使用される「C1〜7アルキル」という用語は、脂肪族であっても脂環式であってもそれらの組合せであってもよくかつ飽和であっても部分不飽和であっても完全不飽和であってもよい1〜7個の炭素原子を有するC1〜7炭化水素化合物から水素原子を除去することにより得られる一価部分を意味する。
【0025】
飽和直鎖C1〜7アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、およびn-ペンチル(アミル)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
飽和分岐状C1〜7アルキル基の例としては、iso-プロピル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、およびneo-ペンチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
飽和脂環式C1〜7アルキル基(「C3〜7シクロアルキル」基とも呼ばれる)の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルのような基、さらには置換された基(たとえば、そのような基を含む基)、たとえば、メチルシクロプロピル、ジメチルシクロプロピル、メチルシクロブチル、ジメチルシクロブチル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、シクロプロピルメチル、およびシクロヘキシルメチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
1つ以上の炭素炭素二重結合を有する不飽和C1〜7アルキル基(「C2〜7アルケニル」基とも呼ばれる)の例としては、エテニル(ビニル、-CH=CH2)、2-プロペニル(アリル、-CH-CH=CH2)、イソプロペニル(-C(CH3)=CH2)、ブテニル、ペンテニル、およびヘキセニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
1つ以上の炭素炭素三重結合を有する不飽和C1〜7アルキル基(「C2〜7アルキニル」基とも呼ばれる)の例としては、エチニル(ethynyl)(エチニル(ethinyl))および2-プロピニル(プロパルギル)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
1つ以上の炭素炭素二重結合を有する不飽和脂環式(炭素環式)C1〜7アルキル基(「C3〜7シクロアルケニル」基とも呼ばれる)の例としては、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、およびシクロヘキセニルのような無置換の基、さらには置換された基(たとえば、そのような基を含む基)、たとえば、シクロプロペニルメチルおよびシクロヘキセニルメチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
C3〜20ヘテロシクリル: 本明細書中で使用される「C3〜20ヘテロシクリル」という用語は、C3〜20ヘテロ環式化合物の環原子から水素原子を除去することにより得られる一価部分を意味する。ただし、該化合物は、1つの環または2つ以上の環(たとえば、スピロ環、縮合環、架橋環)を有し、かつ3〜20個の環原子を有し、そのうちの1〜10個の原子は、環ヘテロ原子であり、しかも該環のうちの少なくとも1つは、ヘテロ環式環である。好ましくは、各環は、3〜7個の環原子を有し、そのうちの1〜4個は、環ヘテロ原子である。環ヘテロ原子は、好ましくは、O、N、S、およびPよりなる群から選択されうる。「C3〜20」は、炭素原子であるかヘテロ原子であるかを問わず、環原子を表す。
【0032】
1個の窒素環原子を有するC3〜20ヘテロシクリル基の例としては、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン(テトラヒドロピロール)、ピロリン(たとえば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)、2H-ピロールまたは3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)、ピペリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、およびアゼピンから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
1個の酸素環原子を有するC3〜20ヘテロシクリル基の例としては、オキシラン、オキセタン、オキソラン(テトラヒドロフラン)、オキソール(ジヒドロフラン)、オキサン(テトラヒドロピラン)、ジヒドロピラン、ピラン(C6)、およびオキセピンから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されたC3〜20ヘテロシクリル基の例としては、環形の糖、たとえば、フラノースおよびピラノース、たとえば、リボース、リキソース、キシロース、ガラクトース、スクロース、フルクトース、アラビノースなどが挙げられる。
【0034】
1個の硫黄環原子を有するC3〜20ヘテロシクリル基の例としては、チイラン、チエタン、チオラン(テトラヒドロチオフェン)、チアン(テトラヒドロチオピラン)、およびチエパンから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
2個の酸素環原子を有するC3〜20ヘテロシクリル基の例としては、ジオキソラン、ジオキサン、およびジオキセパンから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
2個の窒素環原子を有するC3〜20ヘテロシクリル基の例としては、イミダゾリジン、ピラゾリジン(ジアゾリジン)、イミダゾリン、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)、およびピペラジンから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
1個の窒素環原子と1個の酸素環原子とを有するC3〜20ヘテロシクリル基の例としては、テトラヒドロオキサゾール、ジヒドロオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール、ジヒドロイソオキサゾール、モルホリン、テトラヒドロオキサジン、ジヒドロオキサジン、およびオキサジンから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
1個の酸素環原子と1個の硫黄環原子とを有するC3〜20ヘテロシクリル基の例としては、オキサチオランおよびオキサチアン(チオキサン)から誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
1個の窒素環原子と1個の硫黄環原子とを有するC3〜20ヘテロシクリル基の例としては、チアゾリン、チアゾリジン、およびチオモルホリンから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
C3〜20ヘテロシクリル基の他の例としては、オキサジアジンおよびオキサチアジンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
1つ以上のオキソ(=O)基を追加的に有するヘテロシクリル基の例としては、以下のものから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない:
C5ヘテロ環式化合物、たとえば、フラノン、ピロン、ピロリドン(ピロリジノン)、ピラゾロン(ピラゾリノン)、イミダゾリドン、チアゾロン、およびイソチアゾロン;
C6ヘテロ環式化合物、たとえば、ピペリジノン(ピペリドン)、ピペリジンジオン、ピペラジノン、ピペラジンジオン、ピリダジノン、およびピリミジノン(たとえば、シトシン、チミン、ウラシル)、ならびにバルビツール酸;
縮合ヘテロ環式化合物、たとえば、オキシインドール、プリノン(たとえば、グアニン)、ベンゾオキサゾリノン、ベンゾピロン(たとえば、クマリン);
環状無水物(環中の-C(=O)-O-C(=O)-)、たとえば、無水マレイン酸、無水コハク酸、および無水グルタル酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない;
環状カーボネート(環中の-O-C(=O)-O-)、たとえば、エチレンカーボネートおよび1,2-プロピレンカーボネート;
イミド(環中の-C(=O)-NR-C(=O)-)、たとえば、スクシンイミド、マレイミド、フタルイミド、およびグルタルイミドが挙げられるが、これらに限定されるものではない;
ラクトン(環状エステル、環中の-O-C(=O)-)、たとえば、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン(2-ピペリドン)、およびε-カプロラクトンが挙げられるが、これらに限定されるものではない;
ラクタム(環状アミド、環中の-NR-C(=O)-)、たとえば、β-プロピオラクタム、γ-ブチロラクタム(2-ピロリドン)、δ-バレロラクタム、およびε-カプロラクタムが挙げられるが、これらに限定されるものではない;
環状カルバメート(環中の-O-C(=O)-NR-)、たとえば、2-オキサゾリドン;
環状ウレア(環中の-NR-C(=O)-NR-)、たとえば、2-イミダゾリドンおよびピリミジン-2,4-ジオン(たとえば、チミン、ウラシル)。
【0042】
C5〜20アリール: 本明細書中で使用される「C5〜20アリール」という用語は、C5〜20芳香族化合物の芳香環原子から水素原子を除去することにより得られる一価部分を意味する。ただし、該化合物は、1つの環または2つ以上の環(たとえば、縮合環)を有し、かつ5〜20個の環原子を有し、しかも該環のうちの少なくとも1つは、芳香環である。好ましくは、各環は、5〜7個の環原子を有する。
【0043】
環原子は、「カルボアリール基」の場合のようにすべて炭素原子であってもよく、その場合、この基は、適宜、「C5〜20カルボアリール」基と呼びうる。
【0044】
環ヘテロ原子を有していないC5〜20アリール基(すなわち、C5〜20カルボアリール基)の例としては、ベンゼン(すなわち、フェニル)(C6)、ナフタレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、ナフタセン(C18)、およびピレン(C16)から誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
縮合環(そのうちの1つは芳香環でない)を含むアリール基の例としては、インデンおよびフルオレンから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
他の選択肢として、環原子は、「ヘテロアリール基」の場合のように1個以上のヘテロ原子(たとえば、酸素、窒素、および硫黄が挙げられるが、これらに限定されるものではない)を含んでいてもよい。この場合、この基は、適宜、「C5〜20ヘテロアリール」基と呼びうる。ただし、「C5〜20」は、炭素原子であるかヘテロ原子であるかを問わず、環原子を表す。好ましくは、各環は、5〜7個の環原子を有し、そのうちの0〜4個は、環ヘテロ原子である。
【0047】
C5〜20ヘテロアリール基の例としては、フラン(オキソール)、チオフェン(チオール)、ピロール(アゾール)、イミダゾール(1,3-ジアゾール)、ピラゾール(1,2-ジアゾール)、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、およびオキサトリアゾールから誘導されるC5ヘテロアリール基;ならびにイソオキサジン、ピリジン(アジン)、ピリダジン(1,2-ジアジン)、ピリミジン(1,3-ジアジン;たとえば、シトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4-ジアジン)、トリアジン、テトラゾール、およびオキサジアゾール(フラザン)から誘導されるC6ヘテロアリール基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
縮合環を含むC5〜20ヘテロ環式基(そのうちのいくつかは、C5〜20ヘテロアリール基である)の例としては、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、インドール、イソインドール、プリン(たとえば、アデニン、グアニン)、ベンゾチオフェン、ベンゾイミダゾールから誘導されるC9ヘテロ環式基;キノリン、イソキノリン、ベンゾジアジン、ピリドピリジン、キノキサリンから誘導されるC10ヘテロ環式基;カルバゾール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフランから誘導されるC13ヘテロ環式基;アクリジン、キサンテン、フェノキサチイン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジンから誘導されるC14ヘテロ環式基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
以上のC1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、およびC5〜20アリール基は、単独であるか他の置換基の一部分であるかを問わず、それら自体が、場合により、それら自体および以下に列挙される追加の置換基から選択される1つ以上の基で置換されていてもよい。
【0050】
ハロ: -F、-Cl、-Br、および-I。
【0051】
ヒドロキシ: -OH。
【0052】
エーテル: -OR、ただし、Rは、エーテル置換基、たとえば、C1〜7アルキル基(以下に論述されるC1〜7アルコキシ基とも呼ばれる)、C3〜20ヘテロシクリル基(C3〜20ヘテロシクリルオキシ基とも呼ばれる)、またはC5〜20アリール基(C5〜20アリールオキシ基とも呼ばれる)、好ましくはC1〜7アルキル基である。
【0053】
C1〜7アルコキシ: -OR、ただし、Rは、C1〜7アルキル基である。C1〜7アルコキシ基の例としては、-OCH3(メトキシ)、-OCH2CH3(エトキシ)、および-OC(CH3)3(tert-ブトキシ)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
オキソ(ケト、-オン): =O。置換基としてオキソ基(=O)を有する環式化合物および/または環式基の例としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:炭素環式化合物、たとえば、シクロペンタノンおよびシクロヘキサノン;ヘテロ環式化合物、たとえば、ピロン、ピロリドン、ピラゾロン、ピラゾリノン、ピペリドン、ピペリジンジオン、ピペラジンジオン、およびイミダゾリドン;環状無水物、たとえば、無水マレイン酸および無水コハク酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない;環状カーボネート、たとえば、プロピレンカーボネート;イミド、たとえば、スクシンイミドおよびマレイミドが挙げられるが、これらに限定されるものではない;ラクトン(環状エステル、環中の-O-C(=O)-)、たとえば、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、およびε-カプロラクトンが挙げられるが、これらに限定されるものではない;ならびにラクタム(環状アミド、環中の-NH-C(=O)-)、たとえば、β-プロピオラクタム、γ-ブチロラクタム(2-ピロリドン)、δ-バレロラクタム、およびε-カプロラクタムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
イミノ(イミン): =NR、ただし、Rは、イミノ置換基、たとえば、水素、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくは水素またはC1〜7アルキル基である。エステル基の例としては、=NH、=NMe、=NEt、および=NPhが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
ホルミル(カルバルデヒド、カルボキサルデヒド): -C(=O)H。
【0057】
アシル(ケト): -C(=O)R、ただし、Rは、アシル置換基、たとえば、C1〜7アルキル基(C1〜7アルキルアシルもしくはC1〜7アルカノイルとも呼ばれる)、C3〜20ヘテロシクリル基(C3〜20ヘテロシクリルアシルとも呼ばれる)、またはC5〜20アリール基(C5〜20アリールアシルとも呼ばれる)、好ましくはC1〜7アルキル基である。アシル基の例としては、-C(=O)CH3(アセチル)、-C(=O)CH2CH3(プロピオニル)、-C(=O)C(CH3)3(ブチリル)、および-C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
カルボキシ(カルボン酸): -COOH。
【0059】
エステル(カルボキシレート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル): -C(=O)OR、ただし、Rは、エステル置換基、たとえば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。エステル基の例としては、-C(=O)OCH3、-C(=O)OCH2CH3、-C(=O)OC(CH3)3、および-C(=O)OPhが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
アシルオキシ(逆エステル): -OC(=O)R、ただし、Rは、アシルオキシ置換基、たとえば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。アシルオキシ基の例としては、-OC(=O)CH3(アセトキシ)、-OC(=O)CH2CH3、-OC(=O)C(CH3)3、-OC(=O)Ph、および-OC(=O)CH2Phが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキサミド): -C(=O)NR1R2、ただし、R1およびR2は、独立して、アミノ基に関連して定義されるようなアミノ置換基である。アミド基の例としては、-C(=O)NH2、-C(=O)NHCH3、-C(=O)N(CH3)2、-C(=O)NHCH2CH3、および-C(=O)N(CH2CH3)2、さらにはたとえば、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、およびピペラジノカルボニルの場合のように、R1およびR2が、それらが結合されている窒素原子と一緒になって、ヘテロ環式構造を形成しているアミド基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
アシルアミド(アシルアミノ): -NR1C(=O)R2、ただし、R1は、アミド置換基、たとえば、水素、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくは水素またはC1〜7アルキル基であり、そしてR2は、アシル置換基、たとえば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくは水素またはC1〜7アルキル基である。アシルアミド基の例としては、-NHC(=O)CH3、-NHC(=O)CH2CH3、および-NHC(=O)Phが挙げられるが、これらに限定されるものではない。R1およびR2は、一緒になって、たとえば、スクシンイミジル、マレイミジル、およびフタルイミジル:
【化7】

【0063】
の場合のように、環状構造を形成していてもよい。
【0064】
アシルウレイド: -N(R1)C(O)NR2C(O)R3、ただし、R1およびR2は、独立して、ウレイド置換基、たとえば、水素、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくは水素またはC1〜7アルキル基である。R3は、アシル基に関連して定義されるようなアシル基である。アシルウレイド基の例としては、-NHCONHC(O)H、-NHCONMeC(O)H、-NHCONEtC(O)H、-NHCONMeC(O)Me、-NHCONEtC(O)Et、-NMeCONHC(O)Et、-NMeCONHC(O)Me、-NMeCONHC(O)Et、-NMeCONMeC(O)Me、-NMeCONEtC(O)Et、および-NMeCONHC(O)Phが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
カルバメート: -NR1-C(O)-OR2、ただし、R1は、アミノ基に関連して定義されるようなアミノ置換基であり、そしてR2は、エステル基に関連して定義されるようなエステル基である。カルバメート基の例としては、-NH-C(O)-O-Me、-NMe-C(O)-O-Me、-NH-C(O)-O-Et、-NMe-C(O)-O-t-ブチル、および-NH-C(O)-O-Phが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
チオアミド(チオカルバミル): -C(=S)NR1R2、ただし、R1およびR2は、独立して、アミノ基に関連して定義されるようなアミノ置換基である。アミド基の例としては、-C(=S)NH2、-C(=S)NHCH3、-C(=S)N(CH3)2、および-C(=S)NHCH2CH3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
テトラゾリル: 4個の窒素原子と1個の炭素原子とを有する五員芳香環、
【化8】

【0068】
アミノ: -NR1R2、ただし、R1およびR2は、独立して、アミノ置換基、たとえば、水素、C1〜7アルキル基(C1〜7アルキルアミノもしくはジ-C1〜7アルキルアミノとも呼ばれる)、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくは、HまたはC1〜7アルキル基であるか、あるいは「環状」アミノ基の場合、R1およびR2は、それらが結合されている窒素原子と一緒になって、4〜8個の環原子を有するヘテロ環式環を形成している。アミノ基の例としては、-NH2、-NHCH3、-NHC(CH3)2、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、および-NHPhが挙げられるが、これらに限定されるものではない。環状アミノ基の例としては、アジリジノ、アゼチジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノ、およびチオモルホリノが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
イミノ: =NR、ただし、Rは、イミノ置換基、たとえば、たとえば、水素、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくはHまたはC1〜7アルキル基である。
【0070】
アミジン: -C(=NR)NR2、ただし、各Rは、アミジン置換基、たとえば、水素、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくはHまたはC1〜7アルキル基である。アミジン基の例は、-C(=NH)NH2である。
【0071】
カルバゾイル(ヒドラジノカルボニル): -C(O)-NN-R1、ただし、R1は、アミノ基に関連して定義されるようなアミノ置換基である。アジノ基の例としては、-C(O)-NN-H、-C(O)-NN-Me、-C(O)-NN-Et、-C(O)-NN-Ph、および-C(O)-NN-CH2-Phが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
ニトロ: -NO2
【0073】
ニトロソ: -NO。
【0074】
アジド: -N3
【0075】
シアノ(ニトリル、カルボニトリル): -CN。
【0076】
イソシアノ: -NC。
【0077】
シアナト: -OCN。
【0078】
イソシアナト: -NCO。
【0079】
チオシアノ(チオシアナト): -SCN。
【0080】
イソチオシアノ(イソチオシアナト): -NCS。
【0081】
スルフヒドリル(チオール、メルカプト): -SH。
【0082】
チオエーテル(スルフィド): -SR、ただし、Rは、チオエーテル置換基、たとえば、C1〜7アルキル基(C1〜7アルキルチオ基とも呼ばれる)、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。C1〜7アルキルチオ基の例としては、-SCH3および-SCH2CH3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
ジスルフィド: -SS-R、ただし、Rは、ジスルフィド置換基、たとえば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基(本明細書中ではC1〜7アルキルジスルフィドとも呼ばれる)である。C1〜7アルキルジスルフィド基の例としては、-SSCH3および-SSCH2CH3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
スルホン(スルホニル): -S(=O)2R、ただし、Rは、スルホン置換基、たとえば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。スルホン基の例としては、-S(=O)2CH3(メタンスルホニル、メシル)、-S(=O)2CF3(トリフリル)、-S(=O)2CH2CH3、-S(=O)2C4F9(ノナフリル)、-S(=O)2CH2CF3(トレシル)、-S(=O)2Ph(フェニルスルホニル)、4-メチルフェニルスルホニル(トシル)、4-ブロモフェニルスルホニル(ブロシル)、および4-ニトロフェニル(ノシル)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
スルフィン(スルフィニル、スルホキシド): -S(=O)R、ただし、Rは、スルフィン置換基、たとえば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。スルフィン基の例としては、-S(=O)CH3および-S(=O)CH2CH3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
スルホニルオキシ: -OS(=O)2R、ただし、Rは、スルホニルオキシ置換基、たとえば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。スルホニルオキシ基の例としては、-OS(=O)2CH3および-OS(=O)2CH2CH3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
スルフィニルオキシ: -OS(=O)R、ただし、Rは、スルフィニルオキシ置換基、たとえば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。スルフィニルオキシ基の例としては、-OS(=O)CH3および-OS(=O)CH2CH3が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
スルファミノ: -NR1S(=O)2OH、ただし、R1は、アミノ基に関連して定義されるようなアミノ置換基である。スルファミノ基の例としては、-NHS(=O)2OHおよび-N(CH3)S(=O)2OHが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
スルフィンアミノ: -NR1S(=O)R、ただし、R1は、アミノ基に関連して定義されるようなアミノ置換基であり、そしてRは、スルフィンアミノ置換基、たとえば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。スルフィンアミノ基の例としては、-NHS(=O)CH3および-N(CH3)S(=O)C6H5が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
スルファミル: -S(=O)NR1R2、ただし、R1およびR2は、独立して、アミノ基に関連して定義されるようなアミノ置換基である。スルファミル基の例としては、-S(=O)NH2、-S(=O)NH(CH3)、-S(=O)N(CH3)2、-S(=O)NH(CH2CH3)、-S(=O)N(CH2CH3)2、および-S(=O)NHPhが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
スルホンアミノ: -NR1S(=O)2R、ただし、R1は、アミノ基に関連して定義されるようなアミノ置換基であり、そしてRは、スルホンアミノ置換基、たとえば、C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくはC1〜7アルキル基である。スルホンアミノ基の例としては、-NHS(=O)2CH3および-N(CH3)S(=O)2C6H5が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特殊クラスのスルホンアミノ基は、スルタムから誘導される基であり、こうした基では、R1およびRのうちの一方は、C5〜20アリール基、好ましくはフェニルであり、R1およびRのうちの他方は、C5〜20アリール基に連結する二座基、たとえば、C1〜7アルキル基から誘導される二座基である。そのような基の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:
【化9】

【0092】
ホスホルアミダイト: -OP(OR1)-NR22、ただし、R1およびR2は、ホスホルアミダイト置換基、たとえば、-H、(場合により置換されていてもよい)C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくは、-H、C1〜7アルキル基、またはC5〜20アリール基である。ホスホルアミダイト基の例としては、-OP(OCH2CH3)-N(CH3)2、-OP(OCH2CH3)-N(i-Pr)2、および-OP(OCH2CH2CN)-N(i-Pr)2を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
ホスホルアミデート: -OP(=O)(OR1)-NR22、ただし、R1およびR2は、ホスホルアミデート置換基、たとえば、-H、(場合により置換されていてもよい)C1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、またはC5〜20アリール基、好ましくは、-H、C1〜7アルキル基、またはC5〜20アリール基である。ホスホルアミデート基の例としては、-OP(=O)(OCH2CH3)-N(CH3)2、-OP(=O)(OCH2CH3)-N(i-Pr)2、および-OP(=O)(OCH2CH2CN)-N(i-Pr)2が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0094】
多くの場合、置換基は、それ自体が置換されていてもよい。たとえば、C1〜7アルコキシ基は、たとえば、C1〜7アルキル(C1〜7アルキルC1〜7アルコキシ基とも呼ばれる)(たとえば、シクロヘキシルメトキシ)、C3〜20ヘテロシクリル基(C5〜20アリールC1〜7アルコキシ基とも呼ばれる)(たとえば、フタルイミドエトキシ)、またはC5〜20アリール基(C5〜20アリールC1〜7アルコキシ基とも呼ばれる)(たとえば、ベンジルオキシ)で置換されていてもよい。
【0095】
C1〜5アルキレン: 本明細書中で使用される「C1〜5アルキレン」という用語は、飽和であっても部分不飽和であっても完全不飽和であってもよい1〜5個の炭素原子(とくに明記されていないかぎり)を有する脂肪族直鎖炭化水素化合物の2個の水素原子を両方とも同一の炭素原子からまたは2個の異なる炭素原子のそれぞれから1個ずつ除去することにより得られる二座部分を意味する。したがって、「アルキレン」という用語は、以下に論述されるサブクラスのアルケニレン、アルキニレンなどを包含する。
【0096】
飽和C1〜5アルキレン基の例としては、-(CH2)n-〔式中、nは、1〜5の整数である〕、たとえば、-CH2-(メチレン)、-CH2CH2-(エチレン)、-CH2CH2CH2-(プロピレン)、および-CH2CH2CH2CH2-(ブチレン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
部分不飽和C1〜5アルキレン基の例としては、-CH=CH-(ビニレン)、-CH=CH-CH2-、-CH2-CH=CH2-、-CH=CH-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-CH2-CH2-、-CH=CH-CH=CH-、および-CH=CH-CH=CH-CH2-が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
以上に列挙された置換基は、アルキレン基上の置換基であってもよい。
【0099】
包含される他の形態
以上の事項には、これらの置換基の周知のイオン形態、塩形態、溶媒和形態、および保護形態が包含される。たとえば、カルボン酸(-COOH)が言及された場合、そのアニオン(カルボキシレート)形態(-COO-)、塩形態、または溶媒和形態、さらには従来の保護形態も包含される。同様に、アミノ基が言及された場合、アミノ基のプロトン化形態(-N+HR1R2)、塩形態、または溶媒和形態、たとえば塩酸塩、さらにはアミノ基の従来の保護形態が包含される。同様に、ヒドロキシル基が言及された場合、そのアニオン形態(-O-)、塩形態、または溶媒和形態、さらには従来の保護形態も包含される。
【0100】
異性体、塩、溶媒和物、保護形態、およびプロドラッグ
ある種の化合物は、1種以上の特定の幾何異性体、光学異性体、鏡像異性体、ジアステレオ異性体、エピマー異性体、立体異性体、互変異性体、配座異性体、またはアノマー異性体、たとえば、限定されるものではないが、シス形およびトランス形;E形およびZ形;c形、t形、およびr形;エンド形およびエキソ形;R形、S形、およびメソ形;D形およびL形;d形およびl形;(+)形および(-)形;ケト形、エノール形、およびエノラート形;シン形およびアンチ形;シンクリナル形およびアンチクリナル形;α形およびβ形;アキシアル形およびエクアトリアル形;船形、椅子形、ねじれ形、封筒形、および半椅子形;ならびにそれらの組合せで存在可能である。これ以降では、まとめて「異性体」(または「異性形」)と呼ばれる。
【0101】
互変異性体に関連して以下で論述される場合を除いて、構造異性体(すなわち、空間内の原子の位置が単に異なるのではなく原子間の結合が異なる異性体)は、本明細書中で使用される「異性体」という用語からとくに除外されることに留意されたい。たとえば、メトキシ基(-OCH3)が言及された場合、その構造異性体であるヒドロキシメチル基(-CH2OH)が言及されたと解釈されることはない。同様に、オルト-クロロフェニルが言及された場合、その構造異性体であるメタ-クロロフェニルが言及されたと解釈されることはない。しかしながら、構造のクラスが言及された場合、そのクラスに属する構造異性体が包含されることは当然であろう(たとえば、C1〜7アルキルには、n-プロピルおよびiso-プロピルが包含され;ブチルには、n-、iso-、sec-、およびtert-ブチルが包含され;メトキシフェニルには、オルト-、メタ-、およびパラ-メトキシフェニルが包含される)。
【0102】
たとえば、次の互変異性対:ケト/エノール(以下に示される)、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エンチオール、N-ニトロソ/ヒドロキシアゾ(hyroxyazo)、およびニトロ/アシニトロに見られるような互変異性体、たとえば、ケト形、エノール形、およびエノラート形は、以上の除外の対象にはならない。
【化10】

【0103】
1つ以上の同位体置換を有する化合物は、「異性体」という用語にとくに包含されることに留意されたい。たとえば、Hは、1H、2H(D)、および3H(T)をはじめとする任意の同位体形態で存在可能であり;Cは、12C、13C、および14Cをはじめとする任意の同位体形態で存在可能であり;Oは、16Oおよび18Oをはじめとする任意の同位体形態で存在可能であり;他の場合も同様である。
【0104】
とくに明記されていないかぎり、特定の化合物が言及された場合、その(完全もしくは部分)ラセミ混合物および他の混合物を含めて、そのような異性体がすべて包含される。そのような異性体の調製方法(たとえば不斉合成)および分離方法(たとえば、分別結晶化手段やクロマトグラフィー手段)は、当技術分野で公知であるか、または本明細書に教示される方法もしくは公知の方法を慣例に従って適合化させることにより容易に得られる。
【0105】
とくに明記されていないかぎり、特定の化合物が言及された場合、たとえば以下に論述されるようなそのイオン形態、塩形態、溶媒和形態、および保護形態もまた包含される。
【0106】
活性化合物の対応する塩(たとえば、製薬上許容される塩)を調製し、精製し、かつ/または取り扱うことが好都合であるかまたは望ましいこともある。製薬上許容される塩の例については、Berge, et al., J. Pharm. Sci., 66, 1-19 (1977)に論述されている。
【0107】
たとえば、化合物がアニオン性である場合またはアニオン性になりうる官能基(たとえば、-COOHは-COO-になりうる)を有する場合、好適なカチオンを用いて塩を形成することが可能である。好適な無機カチオンの例としては、Na+やK+のようなアルカリ金属イオン、Ca2+やMg2+のようなアルカリ土類カチオン、およびAl3+のような他のカチオンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な有機カチオンの例としては、アンモニウムイオン(すなわち、NH4+)および置換されたアンモニウムイオン(たとえば、NH3R+、NH2R2+、NHR3+、NR4+)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの好適な置換されたアンモニウムイオンの例は、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、およびトロメタミン、さらにはリシンやアルギニンのようなアミノ酸から誘導されるものである。一般的な第四級アンモニウムイオンの例は、N(CH3)4+である。
【0108】
化合物がカチオン性である場合またはカチオン性になりうる官能基(たとえば、-NH2は-NH3+になりうる)を有する場合、好適なアニオンを用いて塩を形成することが可能である。好適な無機アニオンの例としては、次の無機酸:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、および亜リン酸から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な有機アニオンの例としては、次の有機酸:酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、乳酸、リンゴ酸、パモ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、サリチル酸(salicyclic)、スルファニル酸、2-アセチルオキシ安息香酸(2-acetyoxybenzoic)、フマル酸、フェニルスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、パントテン酸、イセチオン酸、吉草酸、ラクトビオン酸、およびグルコン酸から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な高分子アニオンの例としては、次の高分子酸:タンニン酸、カルボキシメチルセルロースから誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
活性化合物の対応する溶媒和物を調製し、精製し、かつ/または取り扱うことが好都合であるかまたは望ましいこともある。「溶媒和物」という用語は、本明細書中では従来の意味で使用され、溶質(たとえば、活性化合物、活性化合物の塩)と溶媒との複合体を意味する。溶媒が水である場合、溶媒和物は、適宜、一水和物、二水和物、三水和物などのような水和物と呼びうる。
【0110】
活性化合物を化学的保護形態で調製し、精製し、かつ/または取り扱うことが好都合であるかまたは望ましいこともある。本明細書中で使用される「化学的保護形態」という用語は、1つ以上の反応性官能基が望ましくない化学反応から保護されている化合物、すなわち、1つ以上の反応性官能基がプロテクテッド基もしくは保護基(マスクド基もしくはマスキング基またはブロックド基もしくはブロッキング基としても知られる)の形態をとる化合物を意味する。反応性官能基を保護することにより、プロテクテッド基に影響を及ぼすことなく、他の未保護の反応性官能基が関与する反応を行うことが可能であり;保護基は、通常は後続工程で、分子の残りの部分に実質的な影響を及ぼすことなく除去可能である。たとえば、Protective Groups in Organic Synthesis (T. Green and P. Wuts, Wiley, 1999)を参照されたい。
【0111】
たとえば、ヒドロキシ基は、エーテル(-OR)またはエステル(-OC(=O)R)として、たとえば、t-ブチルエーテル;ベンジルエーテル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)エーテル、またはトリチル(トリフェニルメチル)エーテル;トリメチルシリルエーテルまたはt-ブチルジメチルシリルエーテル;またはアセチルエステル(-OC(=O)CH3、-OAc)として保護可能である。
【0112】
たとえば、アルデヒド基またはケトン基は、それぞれ、アセタールまたはケタールとして保護可能である。この場合、カルボニル基(>C=O)は、たとえば、第一級アルコールとの反応によりジエーテル(>C(OR)2)に変換される。アルデヒド基またはケトン基は、酸の存在下で大過剰の水を用いて加水分解により容易に再生される。
【0113】
たとえば、アミン基は、たとえば、アミドまたはウレタンとして、たとえば、メチルアミド(-NHCO-CH3)として、ベンジルオキシアミド(-NHCO-OCH2C6H5、-NH-Cbz)として、t-ブトキシアミド(-NHCO-OC(CH3)3、-NH-Boc)として、2-ビフェニル-2-プロポキシアミド(-NHCO-OC(CH3)2C6H4C6H5、-NH-Bpoc)として、9-フルオレニルメトキシアミド(-NH-Fmoc)として、6-ニトロベラトリルオキシアミド(-NH-Nvoc)として、2-トリメチルシリルエチルオキシアミド(-NH-Teoc)として、2,2,2-トリクロロエチルオキシアミド(-NH-Troc)として、アリルオキシアミド-NH-Allocとして、2-(フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(-NH-Psec)として、または好適な場合にはN-オキシド(>NO$)として保護可能である。
【0114】
たとえば、カルボン酸基は、エステルとして、たとえば、C1〜7アルキルエステル(たとえば、メチルエステル、t-ブチルエステル)、C1〜7ハロアルキルエステル(たとえば、C1〜7トリハロアルキルエステル)、トリC1〜7アルキルシリル-C1〜7アルキルエステル、もしくはC5〜20アリール-C1〜7アルキルエステル(たとえば、ベンジルエステル、ニトロベンジルエステル)として、またはアミドとして、たとえば、メチルアミドとして保護可能である。
【0115】
たとえば、チオール基は、チオエーテル(-SR)として、たとえば、ベンジルチオエーテル、アセトアミドメチルエーテル(-S-CH2NHC(=O)CH3)として保護可能である。
【0116】
活性化合物をプロドラッグの形態で調製し、精製し、かつ/または取り扱うことが好都合であるかまたは望ましいこともある。本明細書中で使用される「プロドラッグ」という用語は、代謝されたときに(たとえば、in vivoで)所望の活性化合物を生成する化合物を意味する。典型的には、プロドラッグは、不活性であるかまたは活性化合物ほど活性でないが、有利な取扱い、投与、または代謝性を提供しうる。
【0117】
たとえば、いくつかのプロドラッグは、活性化合物のエステル(たとえば、生理学的に許容される代謝不安定性エステル)である。代謝中、エステル基(-C(=O)OR)は、切断されて活性薬剤を生成する。そのようなエステルは、たとえば、親化合物中のカルボン酸基(-C(=O)OH)のいずれかをエステル化することにより形成可能であり、その際、適切であれば、親化合物中に存在する任意の他の反応性基を事前に保護しておき、必要であれば、後で脱保護することが可能である。そのような代謝活性エステルの例としては、RがC1〜7アルキル〔たとえば、-Me、-Et〕、C1〜7アミノアルキル〔たとえば、アミノエチル、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル、2-(4-モルホリノ)エチル〕、ならびにアシルオキシ-C1〜7アルキル〔たとえば、アシルオキシメチル、アシルオキシエチル、たとえば、ピバロイルオキシメチル、アセトキシメチル、1-アセトキシエチル、1-(1-メトキシ-1-メチル)エチル-カルボニルオキシエチル、1-(ベンゾイルオキシ)エチル、イソプロポキシ-カルボニルオキシメチル、1-イソプロポキシ-カルボニルオキシエチル、シクロヘキシル-カルボニルオキシメチル、1-シクロヘキシル-カルボニルオキシエチル、シクロヘキシルオキシ-カルボニルオキシメチル、1-シクロヘキシルオキシ-カルボニルオキシエチル、(4-テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシメチル、1-(4-テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシエチル、(4-テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシメチル、および1-(4-テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシエチル〕であるものが挙げられる。
【0118】
また、いくつかのプロドラッグは、酵素的に活性化されることにより、活性化合物を生じるか、またはさらなる化学反応を受けて活性化合物を生成する化合物を生じる。たとえば、プロドラッグは、糖誘導体もしくは他のグリコシドコンジュゲートでありうるか、またはアミノ酸エステル誘導体でありうる。
【0119】
選択的阻害
「選択的阻害」とは、1種の酵素を1種以上の他の酵素の阻害よりも大きく阻害することを意味する。この選択性は、1種の酵素の活性を50%阻害するのに必要な化合物の濃度(IC50)と他の酵素の活性を50%阻害するのに必要な化合物の濃度(IC50)とを比較することにより測定可能である(下記参照)。結果は、比として表される。比が1を超える場合、試験化合物は、その阻害作用に関していくらかの選択性を呈する。
【0120】
本発明に係る化合物は、好ましくは、PI 3-キナーゼに対するよりもDNA-PKに対して3、10、20、または50倍超の選択性を呈する。
【0121】
本発明に係る化合物は、好ましくは、ATMに対するよりもDNA-PKに対して5、10、50、または100倍超の選択性を呈する。
【0122】
選択性の評価に使用されるIC50値は、WO 03/024949(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載の方法を用いて決定されることが好ましい。
【0123】
さらなる好ましい選択肢
R4
R4は、Q-Y-Xであることが好ましい。
【0124】
Qが-NH-C(=O)-である場合、Xは、好ましくはNRN3RN4である。さらに好ましくは、Yは、場合により置換されていてもよいC1〜3アルキレン基、より好ましくは場合により置換されていてもよいC1〜2アルキレン基、最も好ましくはC1〜2アルキレン基である。
【0125】
Qが-O-でありかつXがNRN3RN4である場合、Yは、好ましくは場合により置換されていてもよいC1〜3アルキレン基、より好ましくは場合により置換されていてもよいC1〜2アルキレン基、最も好ましくはC1〜2アルキレン基である。
【0126】
いくつかの実施形態では、RN3およびRN4は、好ましくはHおよび場合により置換されていてもよいC1〜7アルキル、より好ましくはHおよび場合により置換されていてもよいC1〜4アルキル、最も好ましくはHおよび場合により置換されていてもよいC1〜3アルキル(たとえば、メチル、エチル、iso-プロピル)から独立して選択される。場合により存在していてもよい好ましい置換基としては、ヒドロキシ、メトキシ、-NH2、場合により置換されていてもよいC6-アリール、および場合により置換されていてもよいC5〜6ヘテロシクリルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0127】
他の実施形態では、RN3およびRN4は、それらが結合されている窒素原子と一緒になって、4〜8個の環原子を有する場合により置換されていてもよい窒素含有ヘテロ環式環を形成している。好ましくは、ヘテロ環式環は、5〜7個の環原子を有する。好ましい基の例としては、モルホリノ、ピペリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、およびテトラヒドロピロロが挙げられ、なかでもピペラジニルがとくに好ましい。これらの基は、置換されていてもよく、とくに好ましい基は、場合により置換されていてもよいピペラジニルであり、その場合、置換基は、好ましくは4位の窒素原子上に存在する。好ましいN-置換基としては、場合により置換されていてもよいC1〜4アルキル、場合により置換されていてもよいC6アリール、およびアシル(アシル置換基としてC1〜4アルキル基を有する)が挙げられる。
【0128】
Z
Zは、好ましくは、必要に応じてSおよびOから選択され、より好ましくはSである。
【0129】
RN5およびRN6
RN5およびRN6に対する好ましい選択肢は、以上に示されたRN3およびRN4に対するものと同じである。
【0130】
RN1およびRN2
式Iで示される化合物では、RN1およびRN2が、それらが結合されている窒素原子と共に、4〜8個の原子を有するヘテロ環式環を形成している場合、これは、以上に定義されたC4〜20ヘテロシクリル基(最小限の4個の環原子を有する場合を除く)の一部分を形成することが可能である(ただし、少なくとも1個の窒素環原子を含有していなければならない)。RN1およびRN2は、それらが結合されている窒素原子と共に、5、6、または7個の原子、より好ましくは6個の環原子を有するヘテロ環式環を形成していることが好ましい。
【0131】
1個の窒素原子を有する単環としては、アゼチジン、アゼチジン、ピロリジン(テトラヒドロピロール)、ピロリン(たとえば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)、2H-ピロールまたは3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)、ピペリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、およびアゼピンが挙げられ、2個の窒素原子を有する単環としては、イミダゾリジン、ピラゾリジン(ジアゾリジン)、イミダゾリン、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)、およびピペラジンが挙げられ、1個の窒素と1個の酸素とを有する単環としては、テトラヒドロオキサゾール、ジヒドロオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール、ジヒドロイソオキサゾール、モルホリン、テトラヒドロオキサジン、ジヒドロオキサジン、およびオキサジンが挙げられ、1個の窒素と1個の硫黄とを有する単環としては、チアゾリン、チアゾリジン、およびチオモルホリンが挙げられる。
【0132】
好ましい環は、窒素に加えて1個のヘテロ原子を含有する環であり、特定的には、好ましいヘテロ原子は、酸素および硫黄である。したがって、好ましい基としては、モルホリノ、チオモルホリノ、チアゾリニルが挙げられる。さらなるヘテロ原子を含まない好ましい基としては、ピロリジノが挙げられる。
【0133】
最も好ましい基は、モルホリノおよびチオモルホリノである。
【0134】
以上に述べたように、こうしたヘテロ環式基は、それ自体が置換されていてもよく、好ましいクラスの置換基は、C1〜7アルキル基である。ヘテロ環式基がモルホリノである場合、1つもしくは複数の置換基は、好ましくはメチルまたはエチル、より好ましくはメチルである。唯一のメチル置換基は、最も好ましくは2位に存在する。
【0135】
以上に列挙された単環基だけでなく、橋架け、すなわち架橋結合を有する環も考えられる。基が窒素原子と酸素原子とを含有するときのこうしたタイプの環の例は、以下のとおりである:
【化11】

【0136】
これらは、それぞれ、8-オキサ-3-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル、6-オキサ-3-アザ-ビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イル、2-オキサ-5-アザ-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-イル、および7-オキサ-3-アザ-ビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-イルと命名される。
【0137】
一般的合成方法
R4がQ-Y-XでありかつQが-NH-C(=O)-であるときの式IIで示される化合物は、式1:
【化12】

【0138】
として表すことが可能である。
【0139】
-Y-XがC1〜7アルキルでないときのこうした化合物は、適切なアミンまたはチオールとの反応により、式2:
【化13】

【0140】
〔式中、Lは、脱離基、たとえば、クロロまたはブロモである〕
で示される化合物から調製可能である。この反応は、室温で実施可能であるか、または必要であれば加熱を行ってもよい。
【0141】
式2で示される化合物は、有機塩基、たとえば、トリエチルアミンの存在下で、式3:
【化14】

【0142】
で示される化合物を、式4:
【化15】

【0143】
で示される化合物と反応させることにより、合成可能である。
【0144】
-Y-XがC1〜7アルキルであるときの式1で示される化合物は、有機塩基、たとえば、トリエチルアミンの存在下で、式3で示される化合物を、式4a:
【化16】

【0145】
で示される化合物と反応させることにより、合成可能である。
【0146】
式3で示される化合物は、酢酸中で亜鉛などの適切な還元剤を用いて、式5:
【化17】

【0147】
で示される化合物を還元することにより、合成可能である。
【0148】
式5で示される化合物は、式6および7:
【化18】

【0149】
〔式中、X'は、ブロモまたはOTfのような基である〕
で示される化合物の鈴木・宮浦(Suzuki-Miyaura)カップリングにより合成可能である。カップリング部分は、逆にしてもよい。
【0150】
式7で示される化合物は、以下のように合成可能である。
【0151】
式7a:
【化19】

【0152】
で示される化合物は、脱炭酸を伴う熱分解を介して環化縮合により、式8a:
【化20】

【0153】
で示される化合物から合成可能である。
【0154】
式8aで示される化合物は、適切な溶媒中で式HNRN1RN2で示される適切なアミンと反応させることにより、式9a:
【化21】

【0155】
で示される化合物から合成可能である。
【0156】
式9aで示される化合物は、式10a:
【化22】

【0157】
で示される化合物から、適切な溶媒中で式11a:
【化23】

【0158】
で示されるメルドラム酸誘導体と反応させることにより、合成可能である。
【0159】
式7b:
【化24】

【0160】
で示される化合物は、トリエチルアミンのような塩基の存在下、DCMのような溶媒中で、式8b:
【化25】

【0161】
で示される化合物を無水トリフルオロメタンスルホン酸と反応させることにより、合成可能である。
【0162】
式8bで示される化合物は、式HNR1R2で示されるアミンでクロリドを求核置換することにより、式9b:
【化26】

【0163】
で示される化合物から合成可能である。
【0164】
式9bで示される化合物は、POCl3などの塩素化剤を用いて塩素化することにより、式10b:
【化27】

【0165】
で示される化合物から合成可能である。式10bで示される化合物は、ジエチルマロネートまたはその等価物との反応により、式11b:
【化28】

【0166】
で示される化合物から合成可能である。
【0167】
式7c:
【化29】

【0168】
で示される化合物。
【0169】
式7cで示される化合物に至る経路については、WO 03/024949(合成経路6)に記載されている。
【0170】
R4がQ-Y-Xであり、Qが-O-であり、かつXがSRS1またはNRN3RN4から選択されるときの式IIで示される化合物は、式13:
【化30】

【0171】
〔式中、X''は、SRS1またはNRN3RN4を表す〕
として表すことが可能である。こうした化合物は、適切なアミンまたはチオールとの反応により、式14:
【化31】

【0172】
〔式中、Lは、脱離基、たとえば、クロロまたはブロモである〕
で示される化合物から合成可能である。この反応は、室温で実施可能であるか、または必要であれば加熱を行ってもよい。
【0173】
式14で示される化合物は、たとえば炭酸カリウムなどの存在下で、式15:
【化32】

【0174】
で示される化合物を、式16:
【化33】

【0175】
〔式中、Yが非対称である場合、Lは、Brでないことが好ましい〕
で示される化合物と反応させることにより、合成可能である。
【0176】
式15で示される化合物は、ジアゾ化-加水分解手順を用いて、式3で示される化合物から合成可能である。これにより、最初に、たとえばHBF4および亜硝酸ブチルを用いて、アミノ基がジアゾニウムフルオロボレート塩に変換され、次に、たとえば水性酸化銅(I)-硝酸銅(II)を用いて、加水分解される。
【0177】
Qが-O-でありかつXが-C(=O)-NRN5RN6であるときの式IIで示される化合物は、式17:
【化34】

【0178】
〔式中、X'''は、NRN5RN6を表す〕
として表すことが可能である。こうした化合物は、HBTUおよびHOBTの存在下で適切なアミンと反応させることにより、式18:
【化35】

【0179】
で示される化合物から合成可能である。
【0180】
式18で示される化合物は、メタノール中で水酸化ナトリウムと反応させることにより、式19:
【化36】

【0181】
で示される化合物から調製可能である。式19で示される化合物は、炭酸カリウムなどの存在下で、式20:
【化37】

【0182】
で示される化合物と反応させることにより、式15で示される化合物から合成可能である。
【0183】
R4がHであるときの本発明に係る化合物は、以上に記載のものと類似した方法で適切なボロン酸を式7で示される化合物にカップリングさせることにより調製可能である。
【0184】
本発明に係る化合物の使用
本発明は、活性化合物、特定的には、活性な8-アリール-2-アミン-4-イル-キノリン-4-オン類、ピリドピリミジン-4-オン類、およびクロメン-4-オン類を提供する。
【0185】
本明細書中で使用される「活性」という用語は、DNA-PK活性を阻害しうる化合物を意味し、特定的には、固有活性を有する化合物(薬剤)さらにはそのような化合物のプロドラッグ(プロドラッグはそれ自体では固有活性をほとんどもしくはまったく呈しえない)の両方を包含する。
【0186】
特定の化合物により提供されるDNA-PK阻害を評価するために使用しうるアッセイの一例を以下の実施例に記載する。
【0187】
本発明は、細胞におけるDNA-PK阻害の阻害方法をさらに提供する。この方法は、該細胞を有効量の活性化合物(好ましくは、製薬上許容される組成物の形態をとる)に接触させることを含む。そのような方法は、in vitroまたはin vivoで実施可能である。
【0188】
たとえば、細胞のサンプル(たとえば、腫瘍に由来するサンプル)をin vitroで増殖させ、既知の治癒効果を有する薬剤と併行して活性化合物を該細胞に接触させ、そうした細胞に及ぼす化合物の治癒効果の増強を観察することが可能である。
【0189】
本発明はさらに、DNA-PK活性を阻害する活性化合物と、さらにはin vitroであるかin vivoであるかを問わず細胞を有効量の活性化合物に接触させることを含むDNA-PK活性の阻害方法の方法と、を提供する。
【0190】
活性化合物はまた、たとえば、in vitroで既知の化学療法剤または電離放射線治療に対する細胞の感受性を増強するために、DNA-PKを阻害する細胞培養添加剤として使用することも可能である。
【0191】
活性化合物はまた、たとえば、対象化合物による治療が候補宿主で奏効する可能性があるかどうかを調べるために、in vitroアッセイの一部として使用することも可能である。
【0192】
本発明はさらに、人体または動物体を治療する方法に使用するための活性化合物を提供する。そのような方法は、そのような被験者に治療上有効な量の活性化合物(好ましくは、医薬組成物の形態をとる)を投与することを含みうる。
【0193】
病状の治療に関連して本明細書中で使用される「治療」という用語は、ヒトであるか動物(たとえば、獣医学的用途)であるかを問わず、一般的に、なんらかの所望の治療効果、たとえば、病状の進行の阻害(進行速度の減少、進行速度の停止、病状の改善、および病状の治癒を包含する)が達成される治療や療法を意味する。予防手段としての治療(すなわち予防)もまた包含される。
【0194】
本明細書中で使用される「治療上有効な量」という用語は、活性化合物、または活性化合物を含む材料、組成物、もしくは製剤に関して、妥当なベネフィット/リスク比に見合ったなんらかの所望の治療効果を生じるのに有効な量を意味する。
【0195】
本明細書中で使用される「補助剤」という用語は、既知の治療手段と併行して活性化合物を使用することを意味する。そのような手段としては、さまざまなタイプの癌の治療に使用される薬剤および/または電離放射線の細胞傷害性レジームが挙げられる。本発明に係る化合物と組み合わせうる補助抗癌剤の例としては、次の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない:アルキル化剤:ナイトロジェンマスタード、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル;ニトロソウレア:カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル-CCNU)、エチレンイミン/メチルメラミン、トリエチレンメラミン(thriethylenemelamine)(TEM)、トリエチレンチオホスホルアミド(チオテパ)、ヘキサメチルメラミン(HMM、アルトレタミン);アルキルスルホネート(Alkyl sufonates):ブスルファン;トリアジン、ダカルバジン(DTIC);抗代謝剤:葉酸類似体、メトトレキセート、トリメトレキセート、ピリミジン類似体、5-フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド(AraC、シタラビン)、5-アザシチジン、2,2'-ジフルオロデオキシシチジン;プリン類似体:6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アザチオプリン、2'-デオキシコホルマイシン(ペントスタチン)、エリトロヒドロキシノニルアデニン(EHNA)、リン酸フルダラビン、2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン、2-CdA);トポイソメラーゼI阻害剤:カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン、ルビテカン;天然産物:抗有糸分裂剤、パクリタキセル、ビンカアルカロイド、ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキソテール(Taxotere)TM(ドセタキセル)、エストラムスチン、エストラムスチンホスフェート;エピポドフィロトキシン:エトポシド、テニポシド;抗生物質:アクチノマイシンD(actimomycin D)、ダウノマイシン(ルビドマイシン)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ミトキサントロン、イダルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシンC、ダクチノマイシン;酵素:L-アスパラギナーゼ、RNAse A;生物学的応答調節剤:インターフェロン-α、IL-2、G-CSF、GM-CSF;分化剤:レチノイン酸誘導体;放射線感受性増強剤:メトロニダゾール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、RSU 1069、EO9、RB 6145、SR4233、ニコチンアミド、5-ブロモデオキシウリジン(5-bromodeozyuridine)、5-ヨードデオキシウリジン、ブロモデオキシシチジン;白金配位錯体:シスプラチン、カルボプラチン;アントラセンジオン:ミトキサントロン、AQ4N;置換ウレア:ヒドロキシウレア;メチルヒドラジン誘導体:N-メチルヒドラジン(MIH)、プロカルバジン;副腎皮質抑制剤:ミトタン(o.p'-DDD)、アミノグルテチミド;サイトカイン:インターフェロン(α、β、γ)、インターロイキン;ホルモンおよびアンタゴニスト:副腎皮質ステロイド/アンタゴニスト、プレドニゾンおよびその等価体、デキサメタゾン、アミノグルテチミド;プロゲスチン:ヒドロキシプロゲステロンカプロエート、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール;エストロゲン:ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール/等価体;抗エストロゲン剤:タモキシフェン;アンドロゲン:プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン/等価体;抗アンドロゲン剤:フルタミド、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体、ロイプロリド;非ステロイド系抗アンドロゲン剤:フルタミド;EGFR阻害剤、VEGF阻害剤;プロテアソーム阻害剤。
【0196】

本発明は、抗癌剤または癌治療補助剤である活性化合物を提供する。当業者であれば、単独もしくは組合せのいずれかの候補化合物によりいずれかの特定の細胞タイプの癌性病状が治療されるか否かを容易に判定することが可能である。
【0197】
癌の例としては、肺癌、小細胞肺癌、胃腸癌、腸癌、結腸癌、乳癌(breast carinoma)、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、肝癌、腎臓癌、膀胱癌、膵臓癌、脳癌、肉腫、骨肉腫、カポジ肉腫、黒色腫、および白血病が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0198】
肺、胃腸(たとえば、腸、結腸など)、乳房(乳腺)、卵巣、前立腺、肝臓(肝性)、腎臓(腎性)、膀胱、膵臓、脳、および皮膚(ただし、これらに限定されるものではない)をはじめとする任意のタイプの細胞を治療することが可能である。
【0199】
以上に規定された抗癌治療は、単独療法として適用しうるか、または本発明に係る化合物に加えて従来の手術もしくは放射線療法もしくは化学療法を含みうる。そのような化学療法は、次の抗腫瘍剤カテゴリーの1つ以上を含みうる:
(i) 内科腫瘍学で使用される他の抗増殖剤/抗新生物剤およびそれらの組合せ、たとえば、アルキル化剤(たとえば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、テモゾロミド(temozolamide)、およびニトロソウレア);抗代謝剤(たとえば、ゲムシタビンおよび抗葉酸剤、たとえば、5-フルオロウラシルやテガフールのようなフルオロピリミジン、ラルチトレキセド、メトトレキセート、シトシンアラビノシド、およびヒドロキシウレア);抗腫瘍抗生物質(たとえば、アントラサイクリン、たとえば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシンC、ダクチノマイシン、およびミトラマイシン);抗有糸分裂剤(たとえば、ビンカアルカロイド、たとえば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、およびビノレルビン、ならびにタキソイド、たとえば、タキソールおよびタキソテール、さらにはポロキナーゼ阻害剤);およびトポイソメラーゼ阻害剤(たとえば、エトポシドやテニポシドのようなエピポドフィロトキシン、アムサクリン、トポテカン、およびカンプトテシン);
(ii) 細胞増殖抑制剤、たとえば、抗エストロゲン剤(たとえば、タモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、およびヨードキシフェン)、抗アンドロゲン剤(たとえば、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、および酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(たとえばゴセレリン、ロイプロレリン、およびブセレリン)、プロゲストゲン(たとえば、酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(たとえば、アナストロゾール、レトロゾール、ボラゾール、およびエキセメスタン)、および5α-レダクターゼ(5*-reductase)阻害剤、たとえば、フィナステリド;
(iii) 抗浸潤剤(c-Srcキナーゼファミリー阻害剤、たとえば、4-(6-クロロ-2,3-メチレンジオキシアニリノ)-7-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]-5-テトラヒドロピラン-4-イルオキシキナゾリン(AZD0530;国際特許出願WO01/94341)およびN-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-{6-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]-2-メチルピリミジン-4-イルアミノ}チアゾール-5-カルボキサミド(ダサチニブ、BMS-354825;J. Med. Chem., 2004, 47, 6658-6661)、ならびにメタロプロテイナーゼ阻害剤、たとえば、マリマスタット、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーターレセプター機能の阻害剤、またはヘパラナーゼに対する抗体);
(iv) 増殖因子機能の阻害剤:たとえば、そのような阻害剤としては、増殖因子抗体および増殖因子レセプター抗体(たとえば、抗erbB2抗体トラスツズマブ[ハーセプチンT(Herceptin T)]、抗EGFR抗体パニツムマブ、および抗erbB1抗体セツキシマブ[エルビタックス(Erbitux)、C225]、ならびにStern et al. Critical reviews in oncology/haematology, 2005, Vol. 54, pp11-29に開示されている任意の増殖因子抗体または増殖因子レセプター抗体)が挙げられる;同様に、そのような阻害剤としては、チロシンキナーゼ阻害剤、たとえば、表皮増殖因子ファミリーの阻害剤(たとえば、EGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤、たとえば、N-3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-メトキシ-6-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン-4-アミン(ゲフィチニブ、ZD1839)、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミン(エルロチニブ、OSI 774)、および6-アクリルアミド-N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-(3-モルホリノプロポキシ)-キナゾリン-4-アミン(CI 1033)、erbB2チロシンキナーゼ阻害剤、たとえば、ラパチニブ、肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤、血小板由来増殖因子ファミリーの阻害剤、たとえば、イマチニブ、セリン/トレオニンキナーゼの阻害剤(たとえば、Ras/Rafシグナリング阻害剤、たとえば、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、たとえば、ソラフェニブ(BAY 43-9006))、MEKおよび/またはAKTキナーゼを介する細胞シグナリングの阻害剤、肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤、c-kit阻害剤、ablキナーゼ阻害剤、IGFレセプター(インスリン様増殖因子)キナーゼ阻害剤;オーロラキナーゼ阻害剤(たとえば、AZD1152、PH739358、VX-680、MLN8054、R763、MP235、MP529、VX-528、およびAX39459)、ならびにサイクリン依存性キナーゼ阻害剤、たとえば、CDK2および/またはCDK4阻害剤が挙げられる;
(v) 抗血管新生剤、たとえば、血管内皮増殖因子の作用を阻害するもの[たとえば、抗血管内皮細胞増殖因子抗体ベバシズマブ(アバスチンT(Avastin T))およびVEGFレセプターチロシンキナーゼ阻害剤、たとえば、4-(4-ブロモ-2-フルオロアニリノ)-6-メトキシ-7-(1-メチルピペリジン-4-イルメトキシ)キナゾリン(ZD6474;WO 01/32651内の実施例2)、4-(4-フルオロ-2-メチルインドール-5-イルオキシ)-6-メトキシ-7-(3-ピロリジン-1-イルプロポキシ)キナゾリン(AZD2171;WO 00/47212内の実施例240)、バタラニブ(PTK787;WO 98/35985)、およびSU11248(スニチニブ;WO 01/60814)、国際特許出願WO 97/22596、WO 97/30035、WO 97/32856、およびWO 98/13354に開示されているような化合物、ならびに他の機序で機能する化合物(たとえば、リノミド、インテグリンavb3機能の阻害剤、およびアンギオスタチン)];
(vi) 血管損傷剤、たとえば、コンブレタスタチンA4、ならびに国際特許出願WO 99/02166、WO 00/40529、WO 00/41669、WO 01/92224、WO 02/04434、およびWO 02/08213に開示されている化合物;
(vii) アンチセンス療法、たとえば、以上に列挙された標的を対象とするもの、たとえば、ISIS 2503、抗rasアンチセンス;
(viii) 遺伝子療法、たとえば、異常なp53または異常なBRCA1もしくはBRCA2のような異常な遺伝子を置き換える手法、GDEPT(遺伝子依存性酵素プロドラッグ療法)手法、たとえば、シトシンデアミナーゼ酵素、チミジンキナーゼ酵素、または細菌性ニトロレダクターゼ酵素を用いるもの、および化学療法または放射線療法に対する患者の耐性を増大させる手法、たとえば、多剤耐性遺伝子療法など;ならびに
(ix) 免疫療法、たとえば、患者腫瘍細胞の免疫原性を増大させるex vivoおよびin vivo手法、たとえば、インターロイキン2、インターロイキン4、または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子のようなサイトカインによるトランスフェクション、T細胞アネルギーを減少させる手法、トランスフェクトされた免疫細胞(たとえば、サイトカインでトランスフェクトされた樹状細胞)を用いる手法、サイトカインでトランスフェクトされた腫瘍細胞系を用いる手法、および抗イディオタイプ抗体を用いる手法。
【0200】
投与
活性化合物または活性化合物を含む医薬組成物は、全身的/末梢的であるか所望の作用の部位であるかを問わず、任意の便利な投与経路により、たとえば、限定されるものではないが、経口(たとえば、摂取による)経路により;局所(たとえば、経皮、鼻腔内、経眼、頬腔内、舌下など)経路により;経肺(たとえば、口や鼻などを介してエアロゾルなどを用いる吸入療法または吹送療法による)経路により;経直腸経路により;経膣経路により;非経口経路により、たとえば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内、脊髄内、嚢内、被膜下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、クモ膜下、胸骨内などへの注射により;皮下や筋肉内などへのデポ剤の埋植により、被験者に投与可能である。
【0201】
被験体は、真核生物、動物、脊椎動物、哺乳動物、齧歯動物(たとえば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ科動物(たとえば、マウス)、イヌ科動物(たとえば、イヌ)、ネコ科動物(たとえば、ネコ)、ウマ科動物(たとえば、ウマ)、霊長動物、シミアン(たとえば、サルもしくは類人猿)、サル(たとえば、マーモセット、ヒヒ)、類人猿(たとえば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、ギボン)、またはヒトでありうる。
【0202】
製剤
活性化合物を単独で投与することが可能であるが、1種以上の製薬上許容される担体、佐剤、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、安定化剤、保存剤、滑沢剤、または当業者に周知である他の材料、および場合により他の治療剤または予防剤と共に、少なくとも1種の以上で定義したような活性化合物を含む医薬組成物(たとえば、製剤)として、それを提供することが好ましい。
【0203】
したがって、本発明はさらに、以上で定義したような医薬組成物と、1種以上の製薬上許容される担体、賦形剤、緩衝剤、佐剤、安定化剤、または本明細書に記載されるような他の材料と共に少なくとも1種の以上で定義したような活性化合物を混合することを含む医薬組成物の調製方法と、を提供する。
【0204】
本明細書中で使用される「製薬上許容される」という用語は、妥当なベネフィット/リスク比に見合って、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答、もしくは他の問題、または合併症を伴うことなく、健全な医学的判断の範囲内で、被験者(たとえば、ヒト)の組織に接触させて使用するのに好適な化合物、材料、組成物、および/または製剤を意味する。それぞれの担体、賦形剤なども同様に、製剤の他方の成分と適合するという意味で「許容される」ものでなければならない。
【0205】
好適な担体、賦形剤などは、標準的な薬学の教科書、たとえば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1990中に見いだしうる。
【0206】
製剤は、適宜、ユニット製剤の形態で提供可能であり、製薬技術分野で周知の任意の方法により調製可能である。そのような方法は、活性化合物と、1種以上の副成分を構成する担体と、を一体化させる工程を含む。一般的には、製剤は、活性化合物と液体担体もしくは微細分割固体担体またはその両方とを均一かつ十分に一体化させてから必要であれば生成物を造形することにより、調製される。
【0207】
製剤は、液剤、溶液剤、サスペンジョン剤、エマルジョン剤、エリキシル剤、シロップ剤、錠剤、ロゼンジ剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、アンプル剤、坐剤、膣坐剤、軟膏剤、ゲル剤、ペースト剤、クリーム剤、スプレー剤、ミスト剤、フォーム剤、ローション剤、油剤、ボーラス剤、舐剤、またはエアロゾル剤の形態をとりうる。
【0208】
経口投与(たとえば、摂取による)に好適な製剤は、それぞれ所定量の活性化合物を含有するカプセル剤、カシェ剤、もしくは錠剤のような個別ユニットとして;粉末剤もしくは顆粒剤として;水性もしくは非水性の液体中の溶液剤もしくはサスペンジョン剤として;または水中油型液状エマルジョン剤もしくは油中水型液状エマルジョン剤として;ボーラス剤として;舐剤として;あるいはペースト剤として、提供可能である。
【0209】
錠剤は、場合により1種以上の副成分を用いて、圧縮や成形などの従来の手段により調製可能である。圧縮錠剤は、場合により、1種以上の結合剤(たとえば、ポビドン、ゼラチン、アカシア、ソルビトール、トラガカント、ヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤または希釈剤(たとえば、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム);滑沢剤(たとえば、マグネシウムステアレート、タルク、シリカ);崩壊剤(たとえば、ナトリウムデンプングリコレート、架橋型ポビドン、架橋型ナトリウムカルボキシメチルセルロース);界面活性剤または分散剤または湿潤剤(たとえば、ナトリウムラウリルスルフェート);および保存剤(たとえば、メチルp-ヒドロキシベンゾエート、プロピルp-ヒドロキシベンゾエート、ソルビン酸)と混合して、粉末または顆粒のような自由流動性形態の活性化合物を好適な機械で圧縮することにより調製可能である。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤された粉末状化合物の混合物を好適な機械で成形することにより調製可能である。錠剤は、場合により、コーティングや切込みを施すことが可能であり、所望の放出プロファイルを提供するさまざまな割合でヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを用いて内部の活性化合物の徐放または制御放出を提供するように製剤化することが可能である。錠剤は、場合により、胃以外の消化管部分で放出を提供すべく腸溶コーティングを施すことが可能である。
【0210】
局所投与(たとえば、経皮、鼻腔内、経眼、頬腔内、および舌下)に好適な製剤は、軟膏剤、クリーム剤、サスペンジョン剤、ローション剤、粉末剤、溶液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアロゾル剤、または油剤として製剤化可能である。他の選択肢として、製剤は、活性化合物と場合により1種以上の賦形剤または希釈剤とで含浸されたバンデージまたは絆創膏のような貼付剤またはドレッシングを包含する。
【0211】
口内局所投与に好適な製剤としては、フレーバーベース(通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカント)中に活性化合物を含むロゼンジ剤;不活性ベース(たとえば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア)中に活性化合物を含むパステル剤;および好適な液体担体中に活性化合物を含む洗口剤が挙げられる。
【0212】
同様に、眼への局所投与に好適な製剤としては、活性化合物が好適な担体(特定的には、活性化合物用の水性溶媒)中に溶解または懸濁されている点眼剤が挙げられる。
【0213】
担体が固体であるときの経鼻投与に好適な製剤としては、たとえば約20〜約500ミクロンの範囲内の粒子サイズを有する粗末剤が挙げられる。これは、鼻呼吸する方法で、すなわち、鼻のすぐ近くに保持された粉末剤の容器から鼻道を介して迅速な吸入を行うことにより、投与される。経鼻スプレー、点鼻剤などとして、またはネブライザーによるエアロゾル投与により、投与に供される、担体が液体であるときの好適な製剤としては、活性化合物の水性もしくは油性の溶液剤が挙げられる。
【0214】
吸入による投与に好適な製剤としては、好適な噴射剤(たとえば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタン(dichoro-tetrafluoroethane)、二酸化炭素、または他の好適なガス)を用いて加圧パックからエアロゾルスプレーとして提供されるものが挙げられる。
【0215】
皮膚を介する局所投与に好適な製剤としては、軟膏剤、クリーム剤、およびエマルジョン剤が挙げられる。軟膏剤として製剤化する場合、活性化合物は、場合により、パラフィン系軟膏ベースまたは水混和性軟膏ベースのいずれかと併用可能である。他の選択肢として、活性化合物は、水中油型クリームベースを用いてクリーム剤の形態で製剤化可能である。所望により、クリームベースの水性相は、たとえば、少なくとも約30%w/wの多価アルコール、すなわち、2つ以上のヒドロキシル基を有するアルコール、たとえば、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、およびポリエチレングリコール、ならびにそれらの混合物を含みうる。局所製剤は、望ましくは、皮膚または他の罹患領域を介する活性化合物の吸収または浸透を促進する化合物を含みうる。そのような真皮浸透促進剤の例としては、ジメチルスルホキシドおよびその関連類似体が挙げられる。
【0216】
局所エマルジョン剤として製剤化する場合、油性相は、場合により、乳化剤(エマルジェントとしても知られる)だけを含みうるか、または少なくとも1種の乳化剤と脂肪もしくは油または脂肪および油の両方との混合物を含みうる。好ましくは、親水性乳化剤は、安定化剤として作用する親油性乳化剤と一緒に含まれる。また、油および脂肪の両方を含むことが好ましい。乳化剤は、安定化剤の有無を問わず、一緒になって、いわゆる乳化ワックスを構成し、ワックスは、油および/または脂肪と一緒になって、クリーム製剤の油性分散相を形成するいわゆる乳化軟膏ベースを構成する。
【0217】
好適なエマルジェントおよびエマルジョン安定化剤としては、トゥイーン60(Tween 60)、スパン80(Span 80)、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノステアレート、およびナトリウムラウリルスルフェートが挙げられる。医薬エマルジョン製剤に使用される可能性のあるほとんどの油への活性化合物の溶解度は、非常に低い可能性があるので、製剤に好適な油または脂肪の選択は、所望の化粧特性を達成することに基づく。したがって、クリーム剤は、好ましくは、チューブまたは他の容器からの漏れを防止するのに好適な粘稠度を有する非べたつき性、非汚染性、かつ可洗性の生成物であることが望ましい。直鎖状もしくは分岐鎖状の一塩基性もしくは二塩基性のアルキルエステル、たとえば、ジ-イソアジペート(di-isoadipate)、イソセチルステアレート、ココナツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、イソプロピルミリステート、デシルオレエート、イソプロピルパルミテート、ブチルステアレート、2-エチルヘキシルパルミテート、またはクロダモルCAP(Crodamol CAP)として知られる分岐鎖状エステルのブレンドを使用することが可能であり、最後の3つが、好ましいエステルである。これらは、所要の性質に依存して単独でまたは組合せで使用することが可能である。
【0218】
他の選択肢として、高融点脂質(たとえば、白色ワセリン)および/または流動パラフィンもしくは他の鉱油を使用することが可能である。
【0219】
経直腸投与に好適な製剤は、ココアバターやサリチレートなどを含む好適なベースを用いて坐剤として提供することが可能である。
【0220】
経膣投与に好適な製剤は、活性化合物に加えて当技術分野で適切であることが知られている担体を含有する膣坐剤、タンポン剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤、またはスプレー剤として提供することが可能である。
【0221】
非経口投与(たとえば、皮膚、皮下、筋肉内、静脈内、皮内などへの注射による)に好適な製剤としては、水性および非水性で等張性で発熱原を含まない無菌注射溶液剤(抗酸化剤、緩衝剤、保存剤、安定化剤、静菌剤、および製剤を対象のレシピエントの血液と等張になるようにする溶質を含有していてもよい)、ならびに水性および非水性の無菌サスペンジョン剤(懸濁化剤および粘稠化剤を含んでいてもよい)、さらには血液成分または1つ以上の器官に化合物をターゲッティングするようにデザインされたリポソームまたは他の微粒子系が挙げられる。そのような製剤に使用するのに好適な等張性媒体の例としては、食塩注射液、リンゲル液、または乳酸加リンゲル注射液が挙げられる。典型的には、溶液中の活性化合物の濃度は、約1ng/ml〜約10μg/ml、たとえば、約10ng/ml〜約1μg/mlである。製剤は、ユニット用量またはマルチ用量の密閉容器(たとえば、アンプルおよびバイアル)に入れて提供可能であり、そして使用直前に無菌液体担体(たとえば、注射用水)の添加だけを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することが可能である。即時注射用の溶液剤およびサスペンジョン剤は、無菌の粉末剤、顆粒剤、および錠剤から調製可能である。製剤は、血液成分または1つ以上の器官に活性化合物をターゲッティングするようにデザインされたリポソームまたは他の微粒子系の形態をとりうる。
【0222】
用量
当然のことであろうが、活性化合物および活性化合物を含む組成物の適切な用量は、患者ごとに異なる可能性がある。最適用量を決定するには、一般的には、本発明に係る治療に伴うなんらかのリスクまたは有害な副作用に対して治療効果のレベルを比較評価することが必要であろう。選択される用量レベルは、特定の化合物の活性、投与の経路、投与の時期、化合物の排泄速度、治療の継続期間、組み合わせて使用される他の薬剤、化合物、および/または材料、ならびに患者の年齢、性別、体重、病状、全般的健康状態、および既往歴など(ただし、これらに限定されるものではない)をはじめとするさまざまな因子に依存するであろう。化合物の量および投与の経路は、最終的には、医師の自由裁量にゆだねられるであろうが、一般的には、実質的に危険もしくは有害な副作用を引き起こすことなく所望の効果を達成する局所濃度が作用部位で得られる用量が用いられるであろう。
【0223】
in vivo投与は、治療の全期間にわたり、1回投与方式、連続方式、または断続方式(たとえば、適切な間隔をあけて分割投与方式)で、行うことが可能である。最も効果的な投与手段および投与量を決定する方法は、当業者に周知であり、治療に用いられる製剤、治療の目的、治療対象の標的細胞、および治療対象の被験体によって異なるであろう。単回もしくは反復の投与は、治療医により選択される用量レベルおよびパターンで行うことが可能である。
【0224】
一般的には、活性化合物の好適な用量は、被験体の体重1キログラムあたり1日約100μg〜約250mgの範囲内である。活性化合物が塩、エステル、プロドラッグなどである場合、投与量は、親化合物を基準にして使用される実際の重量が比例して増大されるように計算される。
【実施例】
【0225】
以下は、実施例であるが、本発明を単に例示するために提供されたものであり、本明細書に記載の本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0226】
頭字語
便宜上、多くの化学部分は、メチル(Me)、エチル(Et)、n-プロピル(nPr)、iso-プロピル(iPr)、n-ブチル(nBu)、tert-ブチル(tBu)、n-ヘキシル(nHex)、シクロヘキシル(cHex)、フェニル(Ph)、ビフェニル(biPh)、ベンジル(Bn)、ナフチル(naph)、メトキシ(MeO)、エトキシ(EtO)、ベンゾイル(Bz)、アセチル(Ac)など(ただし、これらに限定されるものではない)をはじめとする周知の略号を用いて表される。
【0227】
便宜上、多くの化学化合物は、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、イソ-プロパノール(i-PrOH)、メチルエチルケトン(MEK)、エーテルまたはジエチルエーテル(Et2O)、酢酸(AcOH)、ジクロロメタン(メチレンクロリド、DCM)、トリフルオロ酢酸(TFA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)など(ただし、これらに限定されるものではない)をはじめとする周知の略号を用いて表される。
【0228】
一般的実験に関する詳細
化学物質は、Aldrich Chemical Company、Lancaster Synthesis Ltd、およびAcros Organics (Fisher Scientific UK Ltd)から購入した。THFは、ナトリウム/ベンゾフェノンから新たに蒸留した。メタノールおよびエタノールは、マグネシウム/ヨウ素から蒸留した。DCMは、五酸化リンを用いて蒸留することにより脱水した。アセトンは、水素化カルシウムを用いて蒸留することにより脱水した。ただちに使用されない溶媒はすべて、窒素下、モレキュラーシーブ(4Å、3〜5mmビーズ)を用いて貯蔵した。無水DMFは、シュアシール(SureSeal)TM瓶に入った状態でAldrichから入手した。トリエチルアミンは、水素化カルシウムを用いて蒸留することにより脱水し、窒素下、水酸化カリウムを用いて貯蔵した。
【0229】
薄層クロマトグラフィー(TLC)は、アルミニウムシート上にあらかじめコーティングされたMerckシリカゲル60F254を用いて実施した。続いて、このシリカゲルを乾燥させ、そして短波(254nm)紫外光を用いてまたはニンヒドリンで処理するかもしくは硫酸に続いてバニリンで処理することにより視覚化した。「フラッシュ」カラムクロマトグラフィーは、ダビシル(Davisil)シリカゲル(40〜63μm)を用いて中圧で行った。
【0230】
融点は、Stuart Scientific SMP3装置を用いて測定したが、未補正である。1Hおよび13C核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、Bruker Spectrospin AC 300E分光計(1H 300MHzもしくは13C 75MHz)またはBruker Spectrospin AC 500E分光計(1H 500MHzもしくは13C 125MHz)を用いて取得した。化学シフトは、内部標準として残留溶媒ピークを用いてテトラメチルスルホン(teramethylsulfone)の低磁場側でppm(δ)単位で報告する。多重度は、s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、m(多重線)、br(広幅)、またはそれらの組合せにより示す。LC/MSスペクトルは、正イオンまたは負イオンのエレクトロスプレーモードで動作するMicromass Platform装置を用いて取得した。分離は、C18カラム(50×4.6mm;Supelco DiscoveryまたはWaters Symmetry)ならびに0.05%ギ酸およびメタノール(10〜90%)の15分間グラジエント溶出を用いて達成した。IRスペクトルは、Bio-Rad FTS 3000MX diamond ATRを用いてニートなサンプルとして記録した。
【0231】
主要な中間体の合成
(i) トリフルオロ-メタンスルホン酸1-ニトロ-ジベンゾチオフェン-4-イルエステル(6)
【化38】

【0232】
(a) ジベンゾチオフェン-4-オール(i)
無水THF(400ml)に溶解したジベンゾチオフェン(20.8g、113mmol)の冷却溶液(-78℃)に、tert-ブチルリチウム(ペンタン中1.7M;100ml、170mmol)を添加した。反応混合物を-78℃で1時間撹拌し、その後室温まで温め、16時間にわたり同様に撹拌した。その後、混合物を0℃まで冷却し、この黄褐色の反応混合物にカニューレを通して臭化エチルマグネシウム(THF中1M;170ml、170mmol)をゆっくりとした流動で添加した。この反応物を再び室温に戻し、その後、30分間にわたり同様に撹拌した。反応槽に還流冷却器を取り付けた後、40分間かけて酸素をその溶液を通してバブリングさせた。次いで、混合物をさらに1時間撹拌した後、砕いた氷上に注意深く注ぎ入れ、濃HClでpH3まで酸性化した。次いで、酢酸エチル(3×80ml)を用いて混合物を抽出した。その後、pH10になるまで3Mの水酸化ナトリウム溶液でその有機抽出物を処理した。塩基性の水層を分離し、2M HClでpH3まで酸性化したところ、油状固体が生じ沈殿した。これをジエチルエーテル(150ml)に溶解し、MgSO4で脱水し、濾過し、真空で濃縮し、次いでエタノール:水(1:1)(250ml)から再結晶させると、標記化合物に相当する淡黄色の固体が得られた(21.6g、96%)。これはそれ以上精製する必要はなかった。m/z (LC-MS, ESP)、RT=3.64分、(M+H)=201.1。
【0233】
(b) 4-メトキシ-ジベンゾチオフェン(ii)
アセトン(500ml)中のジベンゾチオフェン-4-オール(i)(14.2g、71.0mmol)の溶液に、炭酸カリウム粉末(14.72g、106.5mmol)およびヨウ化メチル(4.43ml、71mmol)を加えた。混合物を加熱し還流させ、16時間にわたり同様に撹拌した。次いで、混合物を冷却し、セライト(Celite)(商標)充填材を通して濾過した。得られた濾過物(filtrant)を真空下で濃縮したところ、油状残渣が得られた。これをジクロロメタン(100ml)で希釈し、1M NaOHおよび飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSO4で脱水し、濾過し、真空下で濃縮することにより、標記化合物に相当する淡黄色の固体が得られた。これはそれ以上精製することなく用いた。(15.2g、100%) m/z (LC-MS, ESP)、RT=4.22分、(M+H)=215.1。
【0234】
(c) 4-メトキシ-1-ニトロ-ジベンゾチオフェン(iii)
氷酢酸(60ml)に4-メトキシ-ジベンゾチオフェン(ii)(4.3g、20.0mmol)を溶解させ、この溶液に、混合物の温度が25℃を超えて上昇することのないように滴下法で発煙硝酸(3.37ml)を加えた。黄色懸濁液をさらに45分間撹拌した後、水(200ml)に注意深く注ぎ入れ、15分間撹拌した。黄色固体を濾過により除去し、多量の水、次いでヘキサンを用いて完全に洗浄した。その後、このようにして得た残渣を真空オーブンで乾燥させたところ、黄色固体として標記化合物が得られた。これはそれ以上精製を行うことなく用いた。(5.19g、97%) m/z (LC-MS, ESP)、RT=4.15分、(M+H)=260.1。
【0235】
(d) 1-ニトロ-ジベンゾチオフェン-4-オール(iv)
固体のピリジン塩酸塩(1kg、8.7mol)を4-メトキシ-1-ニトロ-ジベンゾチオフェン(iii)(35.44g、187mmol)に加え、反応物を十分に混合した後、連続撹拌を行いながら165℃まで加熱した。混合物を8時間にわたり同様に保持し、冷却し、水(500ml)で希釈し、ジクロロメタン(3×200ml)で抽出した。この有機抽出物に、溶液から暗黒色固体が沈殿するまで3Mの水酸化ナトリウム溶液を加えた。濾液を取り出し、濃HClを用いて液体をpH1まで酸性化した。次いで、酸性化により形成された鮮黄色固体を濾過によって取り出し、水で洗浄し、乾燥させたところ、標記化合物が得られた。これはそれ以上精製を行うことなく用いるのに適した純度であった。(35.44g、77%) m/z (LC-MS, ESP)、RT=3.69分、(M+H)=246.2, (M-H)=244.1。
【0236】
(e) トリフルオロ-メタンスルホン酸1-ニトロ-ジベンゾチオフェン-4-イルエステル(6)
ジクロロメタン(75ml)に溶解した1-ニトロ-ジベンゾチオフェン-4-オール(iv)(5.37g、22.0mmol)の冷却懸濁液(-5℃)に、トリエチルアミン(9.20ml、66.00mmol)を加え、この懸濁液を完全に可溶化させた。次いで、この混合物に、シリンジを通して無水トリフルオロメタンスルホン酸(5.85ml、33.00mmol)を滴下法で添加した。反応物をこの温度で1時間撹拌した後、砕いた氷上に注ぎ入れた。氷を溶解させ、CH2Cl2(3×20ml)を用いて混合物を抽出した。次いで、合わせた有機層を脱水(MgSO4)、濾過し、真空で濃縮したところ、薄い黄褐色の油状物が得られた。これをシリカ充填材(新しいCH2Cl2)を通して溶出させると、それ以上精製を行うことなく用いるのに適した純度の標記化合物が得られた。(8.30g、99%) m/z (LC-MS, ESP)、RT=4.40分、イオン化せず。
【0237】
(f) 1-ニトロ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ジベンゾチオフェン(7)
乾燥させたきれいなフラスコに、アルゴン下で、トリフルオロ-メタンスルホン酸1-ニトロ-ジベンゾチオフェン-4-イルエステル(6)(250mg、0.66mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(185mg、0.73mmol)、酢酸カリウム(390mg、3.98mmol)、PdCl2(dppf)(27mg、0.033mmol)およびdppf(19mg、0.033mmol)を満たした。真空下でフラスコを減圧排気し、アルゴンでフラッシュを3回行った。ジオキサン(20ml)を加え、混合物を90℃で12時間撹拌した。DCM(100ml)で反応混合物を希釈し、有機層を水(3×30ml)、塩水(1×30ml)で連続して洗浄し、脱水し(Na2SO4)、溶媒を真空で蒸発させたところ、ニトロボロン酸エステル(7)が得られた。これはそれ以上精製することなく用いた。
【0238】
(ii) 1-ニトロ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ジベンゾフラン(12)
【化39】

【0239】
(a) ジベンゾフラン-4-オール(7)
-78℃の無水THF中のジベンゾフラン(27.4g、163mmol)溶液にn-BuLi(120mL、300mmol)を加えた。この反応物をゆっくり40℃で加熱し、18時間撹拌した。次いで、反応物を-5℃で冷却し、MeMgBr(100mL、300mmol)を滴下添加した。添加終了後、反応物を室温で1時間撹拌した。バブラーを備えた還流冷却器を取り付け、4時間にわたり酸素を反応物に通してバブリングさせた。その間、反応物を40℃でゆっくり加熱した。酸素をバブリングし続けることによって、反応の進行が進むことはなかった。反応混合物を氷へ注意深く注ぎ入れることによって反応をクエンチした。濃HClを加えてpHを3に調整し、生成物をDCMへ抽出した。溶出剤としてDCM/EP(6:4)を用いて、フラッシュクロマトグラフィーにより残渣を精製した。蒸発を行うと、一部の未反応のジベンゾフランも単離された(13g、47%)。白色固体として生成物(10.9g、59mmol、36%)が得られた: Rf = 0.18 (DCM-EP 6:4); mp:102℃; λmax (EtOH)/nm 234; IR (cm-1) 3258, 3049, 1635, 1603, 1477, 1436, 1347, 1309, 1245, 1189, 1158; 1H NMR, (300 MHz, CDCl3) δ 5.40 (1H, s, OH), 7.05 (1H, d, JH2-H3 = 8 Hz, H-3), 7.27 (1H, d, J = 8 Hz), 7.38 (1H, t, J = 7 Hz), 7.47-7.56 (2H, m), 7.61 (1H, d, J = 8 Hz), 7.97 (1H, d, J = 8 Hz); 13C NMR, (75 MHz, CDCl3) δ 111.84, 112.79, 113.95, 121.00, 122.97, 123.72, 124.63 (Cq), 125.90 (Cq), 127.26, 141.35 (Cq), 144.31 (Cq), 156.04 (Cq); MS (EI) m/z 184.0 M+; HRMS 計算値 C12H8O2 [M+H]+ 184.0519、実測値 184.0517。
【0240】
(b) 4-メトキシ-ジベンゾフラン(8)
炭酸カリウム(1.4g、10.11mmol)およびヨウ化メチル(0.42mL、6.74mmol)をアセトン(65mL)中のジベンゾフラン-4-オール(1.24g、6.74mmol)の溶液に加えた。反応物を還流状態で加熱し、18時間撹拌した。冷却後、反応混合物を1Mの水酸化ナトリウム、水および塩水で連続して洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、次いで濃縮したところ、白色針状物として生成物(1.33g、6.74mmol、100%)が得られた。これはそれ以上精製することなく用いた: Rf = 0.37 (AcOEt-EP 1:19); mp: 49-50℃; λmax (EtOH)/nm 279; IR (cm-1) 3054, 2839, 1900, 1633, 1496, 1451, 1423, 1330, 1309, 1267, 1188, 1089, 931, 893, 782, 737; 1H NMR, (300 MHz, CDCl3) δ 4.03 (3H, s, OCH3), 6.94 (1H, d, JH2-H3 = 8 Hz, H-3), 7.26 (1H, t, J = 8 Hz), 7.36 (1H, t, J = 7 Hz), 7.48 (1H, t, J= 7 Hz), 7.54 (1H, d, J= 7 Hz), 7.69 (1H, d, J = 8 Hz), 7.94 (1H, d, J = 8 Hz); 13C NMR, (75 MHz, CDCl3) δ 56.11 (OCH3), 109.31, 111.96, 112.82, 120.85, 122.86, 123.46, 124.43 (Cq), 125.72 (Cq), 127.21, 145.20 (Cq), 145.63 (Cq), 156.04 (Cq); MS (EI) m/z 199.1 M+; HRMSの計算値 C13H10O2 [M+H]+ 199.0754、実測値 199.0754。
【0241】
(c) 4-メトキシ-1-ニトロ-ジベンゾフラン(9)
氷酢酸(50mL)に溶解した4-メトキシ-ジベンゾフラン(3.15g;15.89mmol)の溶液に、発煙硝酸(2.6mL;63.50mmol)を滴下添加した。添加中、反応物を20℃に維持し、3時間撹拌した。終了後、反応混合物を氷水上に注意深く注ぎ入れた。1Mの水酸化ナトリウムを加えてpHを7に調整し、生成物をDCMで抽出した。硫酸マグネシウムで有機層を脱水し、濾過した後、濃縮した。溶出剤として酢酸エチル/EP(1:19)を用いて、フラッシュクロマトグラフィーにより残渣を精製した。最初にカラムから化合物4-メトキシ-3-ニトロ-ジベンゾフラン(270mg、1.11mmol、7%)が単離され、次いで、クリーム色の固体として標記化合物(1.85g、7.62mmol、48%)が得られた:Rf = 0.13 (EtOAc-EP 1:19); mp: 155-156℃; λmax (EtOH)/nm 239; IR (cm-1) 3092, 2917, 2851, 2042, 1876, 1630, 1568, 1506, 1438, 1396, 1342, 1297, 1274, 1239, 1205, 1159, 1129, 1091, 1002, 938, 888, 831, 812, 738, 676; 1H NMR, (300 MHz, CDCl3) δ 4.06 (3H, s, OCH3), 6.92 (1H, d, J = 8 Hz), 7.18 (1H, t, J = 8 Hz), 7.36 (2H, m), 8.17 (1H, d, J = 8 Hz), 8.63 (1H, d, J= 8 Hz); 13C NMR, (75 MHz, CDCl3) δ 56.81 (OCH3), 107.53 , 111.81, 120.50 (Cq), 121.14 (Cq), 122.27, 123.71, 126.32, 129.55, 136.29 (Cq), 145.20 (Cq), 150.53 (Cq), 157.02 (Cq); MS (EI) m/z 243.1 M+; HRMS 計算値 C13H9NO4 [M+H]+ 243.0526、実測値 243.0528。
【0242】
(d) 1-ニトロ-ジベンゾフラン-4-オール(10)
4-メトキシ-1-ニトロ-ジベンゾフラン(2g、8.22mmol)をピリジン塩酸塩(17g)中で150℃において18時間加熱した。反応物を90℃まで冷却し、水20mLを加えた。冷却後、DCMで生成物を抽出した。硫酸マグネシウムで有機層を脱水し、濾過した後、濃縮した。溶出剤としてDCMを用いて、フラッシュクロマトグラフィーにより残渣を精製した。黄色固体として生成物(1.88g、8.22mmol、100%)が得られた。Rf = 0.13 (AcOEt-EP 1:4); mp: 175℃; λmax (EtOH)/nm 239; IR (cm-1) 1626, 1577, 1487, 1442, 1273, 1240, 1197, 1153, 1076, 1016, 983, 912, 817.; 1H NMR, (300 MHz, CDCl3) δ 6.35 (1H, s, OH), 7.03 (1H, d, J = 8 Hz), 7.42 (1H, m, J = 8 Hz), 7.56 (2H, m), 8.18 (1H, d, J = 8 Hz), 8.70 (1H, d, J= 8 Hz); 13C NMR, (75 MHz, CDCl3) δ 111.69, 112.56, 120.85 (Cq), 121.56 (Cq), 122.57, 124.00, 126.72, 129.83, 136.30 (Cq), 143.98 (Cq), 146.79 (Cq), 156.99 (Cq); MS (EI) m/z 229.1 M+; HRMS 計算値 C12H7NO4 [M+H]+ 229.0370、実測値 229.0369。
【0243】
(e) トリフルオロ-メタンスルホン酸1-ニトロ-ジベンゾフラン-4-イルエステル(11)
1-ニトロ-ジベンゾフラン-4-オール(3.01g;13.36mmol)をDCM(50mL)中に可溶化し、-40℃まで冷却し、トリエチルアミン(5.5mL、40mmol)を加えた。5分後、反応混合物に無水トリフルオロメタンスルホン酸(3.45mL、20mmol)を滴下添加した。添加中、反応混合物の温度は-30℃未満に維持した。3時間後、反応混合物を飽和炭酸ナトリウム溶液(50mL)で洗浄し、DCM(3×30mL)で抽出した。硫酸マグネシウムで有機層を脱水し、蒸発させたところ、褐色固体が得られた。溶出剤としてDCM/EP(6:4)を用いて、この固体をシリカ充填材上で精製したところ、白色固体として標記化合物(4.536g、12.56mmol、94%)が得られた。Rf = 0.33 (DCM-EP 1:4); mp: 102-103℃; λmax (EtOH)/nm 243; IR (cm-1) 1643, 1572, 1528, 1488, 1427, 1348, 1317, 1246, 1209, 1132, 1068, 981, 921, 828, 792, 742, 700; 1H NMR, (300 MHz, CDCl3) δ 7.39 (1H, m); 7.55 (1H, d, J = 8 Hz); 7.65 (2H, m); 8.20 (1H, d, J = 8 Hz); 8.51 (1H, d, J= 8 Hz); 13C NMR, (75 MHz, CDCl3) δ 112.35, 117.12 (CF3), 119.49, 120.55 (CF3), 120.75, 121.38 (CF3), 122.81 (CF3), 124.92, 126.60, 131.24, 137.88 (Cq), 142.32 (Cq), 148.21 (Cq), 157.99 (Cq); MS (EI) m/z 361.1 M+; HRMS 計算値 C13H6F3NO6S [M+H]+ 360.9862、実測値 360.9861。
【0244】
(f) 1-ニトロ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ジベンゾフラン(12)
シュレンク(Schlenk)管中で、ビス(ピナコラト)ジボロン(3.075mg、12.11mmol)および酢酸カリウム(1.17g、18.16mmol)をジオキサン(10mL)中に可溶化し、脱気した。同時に、4-ヒドロキシ-1-ニトロ-ジベンゾフラン4-O-トリフレート(2.186g、6.05mmol)、PdCl2dppf(247mg、0.30mmol)およびdppf(167mg、0.30mmol)をジオキサン(10mL)中に可溶化し、脱気した。これらの溶液をシュレンク管中で共に混合し、撹拌し、110℃で18時間加熱した。冷却後、DCM(20mL)を加えた。溶液を水(20mL)で洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで脱水し、蒸発させた。溶出剤としてDCM/EP(6:4)を用い、かつカラムに浸透している全生成物を回収するためにDCM/AcOH(98:2)の勾配をつけて、フラッシュクロマトグラフィーにより残渣を精製した。生成物を濃縮し、炭酸ナトリウム(3×20mL)で洗浄して酢酸を除去した。蒸発させた後、生成物(1.783mg、5.26mmol、87%)をDCM中で再結晶化したところ、黄色の結晶が得られた。Rf = 0.30 (AcOEt-EP 1:49); mp: 185℃; λmax (EtOH)/nm 347; IR (cm-1) 2981, 1701, 1624, 1597, 1521, 1474, 1447, 1369, 1329, 1309, 1192, 1172, 1137, 1043, 979, 883, 852, 818, 785, 754, 732, 663; 1H NMR, (300 MHz, CDCl3) δ 1.48 (12H, s, 4 x CH3), 7.46 (1H, t, J = 6 Hz), 7.63 (1H, t, J = 6 Hz), 7.76 (1H, d, J = 9 Hz), 8.01 (1H, d, J = 9 Hz), 8.19 (1H, d, J = 9 Hz), 8.66 (1H, d, J = 9 Hz); 13C NMR, (125 MHz, CDCl3) δ 24.82 (4 x CH3), 84.78 (2 x Cq-O), 112.14, 118.07 (Cq), 118.61, 120.29 (Cq), 123.42, 125.82, 129.47, 133.50, 144.81 (Cq), 157.33 (Cq), 161.39 (Cq); MS (EI) m/z 339.2 M+; HRMS 計算値 C18H18BNO5 [M+H]+ 339.1273、実測値 339.1270。
【0245】
(iii) 9-トリフレート-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(17)の合成
【化40】

【0246】
(a) 2,9-ジヒドロキシ-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(14)
ブロモベンゼン(37mL)に溶解したマロン酸ビス-(2,4,6-トリクロロ-フェニル)エステル(17.33g;37.5mmol)および3-ヒドロキシ-2-アミノ-ピリジン(13)(4.12g;37.5mmol)の混合物を3時間にわたり還流状態で加熱した。冷却後、反応混合物を濾過し、固体をエタノールで洗浄した。固体を1M NaOH中に可溶化し、AcOHを滴下添加したところ、浅黄色固体(6.53g)として生成物が沈殿した。収率=98%。m.p.:320℃(分解); Rf = 0.11, MeOH:DCM (3:17); UV: λmax = 252 nm; IR: (cm-1) 2862, 1688, 1564, 1374, 1295, 1102, 783; 1H NMR, (DMSO, 300 MHz), δ (ppm): 5.22 (1H, s, CH-3), 7.12 (1H, t, JH6-H7 = 7 Hz, Harom-7), 7.27 (1H, d, JH7-H8 = 8 Hz, Harom-8), 8.43 (1H, d, JH6-H7 = 7 Hz, Harom-6); 13C NMR, (CDCl3, 75 MHz), δ (ppm): 103.25, 116.46, 117.05, 119.03, 143.97, 148.82, 157.26, 157.50。
【0247】
(b) 2-クロロ-9-ヒドロキシ-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(15)
丸底フラスコ中で、オキシ塩化リン(7.5mL)に2,9-ジヒドロキシ-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(14)(1.07g;6.0mmol)を溶解した。この溶液を48時間にわたり還流状態で加熱した。冷却後、反応混合物を氷冷水(100mL)へ注意深く注ぎ入れ、飽和炭酸ナトリウム溶液を添加してpHを7に調整した。ジクロロメタンで水層を抽出した。硫酸マグネシウムで有機層を脱水し、蒸発させると、褐色固体が得られた。溶出剤としてジクロロメタンを用いて、フラッシュクロマトグラフィーによりこの固体を精製したところ、白色固体(712mg)として標記化合物を得た。収率=60%。m.p.: 162℃; Rf = 0.34, MeOH:DCM (1:19); 質量スペクトル: (m/z) 196.93 [M+1]+ (Rt = 4.67分、12分間グラジエント); UV: λmax = 210 nm; IR: (cm-1) 3103, 1684, 1630, 1511, 1458, 1297, 1105; 1H NMR, (CDCl3, 300 MHz), δ (ppm): 6.4 (1H, s, CH-3), 7.11 (1H, t, JH6-H7 = 7 Hz, Harom-7), 7.25 (1H, d, JH7-H8 = 8 Hz, Harom-8), 8.51 (1H, d, JH6-H7 = 7 Hz, Harom-6); 13C NMR, (CDCl3, 75 MHz), δ (ppm): 103.25, 116.46, 117.05, 119.03, 143.97, 148.82, 157.26, 157.50。
【0248】
(c) 9-ヒドロキシ-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(16)
丸底フラスコ中で、エタノール(5mL)に2-クロロ-9-ヒドロキシ-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(15)(141.7mg;0.721mmol)およびモルホリン(314μL;3.605mmol)を溶解させた。この溶液を激しく撹拌しなら、18時間にわたり加熱して還流させた。冷却後、溶媒を蒸発させた。黄色の粗製固体をエタノール中で再結晶させて、173.8mgの白色結晶を得た。収率=97%。m.p.: 245℃; Rf = 0.27, MeOH:DCM (1:19); 質量スペクトル: (m/z) 248.08 [M+1]+ (Rt = 4.92分、12分間グラジエント); UV: λmax = 267 nm; IR: (cm-1) 3302, 1690, 1644, 1551, 1427, 1224, 1110.; 1H NMR, (CDCl3, 500 MHz), δ (ppm): 3.56 (4H, m, N-CH2-モルホリン), 3.75 (4H, m, O-CH2-モルホリン), 5.55 (1H, s, CH-3), 6.80 (1H, t, JH6-H7 = 7 Hz, Harom-7), 7.02 (1H, dd, JH7-H8 = 8 Hz, JH6-H8 = 1.3 Hz, Harom-8), 7.33 (1H, s, OH), 8.37 (1H, dd, JH6-H7 = 7 Hz, JH6-H8 = 1.3 Hz, Harom-6); 13C NMR, (CDCl3, 125 MHz), δ (ppm): 45.27, 67.02, 82.16, 113.46, 114.18, 119.05, 143.00, 147.51, 159.00, 161.00。
【0249】
(d) 9-トリフレート-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(17)
温度計を備えた三口丸底フラスコ中で、9-ヒドロキシ-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(16)(2.11g;8.54mmol)をDCM(70mL)中に可溶化させ、-30℃に冷却し、トリエチルアミン(3.572mL;25.63mmol)を添加した。5分後、10mlのDCM中に可溶化した無水トリフルオロメタンスルホン酸(2.101mL;12.81mmol)を30分間かけて添加漏斗により反応混合物に滴下添加した。添加中、反応混合物の温度を-20℃未満に保持した。3時間後、反応混合物をNa2CO3の飽和溶液(50mL)で洗浄し、DCM(3×30mL)で抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、蒸発させたところ、褐色固体が得られた。溶出剤としてジクロロメタンを用いて、フラッシュクロマトグラフィーによりこの固体を精製し、橙色の固体(2.91g)として標記化合物を得た。収率=90%。146-147℃; Rf = 0.42; MeOH:DCM (1:19); 質量スペクトル: (m/z) 380.16 [M+1]+ (Rt = 3.34分、12分間グラジエント); UV: λmax = 271 nm; IR: (cm-1) 1705, 1644, 1551, 1189, 1112, 939, 769; 1H NMR, (CDCl3, 300 MHz), δ (ppm): 3.56 (4H, m, N-CH2-モルホリン), 3.71 (4H, m, O-CH2-モルホリン), 5.53 (1H, s, CH-3), 6.80 (1H, t, JH6-H7 = 7 Hz, Harom-7), 7.46 (1H, dd, JH7-H8 = 8 Hz, JH6-H8 = 1.3 Hz, Harom-8), 8.79 (1H, dd, JH6-H7 = 7 Hz, JH6-H8 = 1.3 Hz, Harom-6); 13C NMR, (CDCl3, 75 MHz), δ (ppm): 45.19, 66.87, 81.76, 110.16, 112.61, 116.85, 121.10, 125.34, 127.86, 128.13, 141.46, 145.79, 158.07, 160.42。
【0250】
(iv) 8-ブロモ-2-モルホリン-4-イル-1H-キノリン-4-オン(21)の合成
【化41】

【0251】
(a) 5-(ビス-メチルスルファニル-メチレン)-2,2-ジメチル-[1,3]ジオキサン-4,6-ジオン(18)
250mL容の二口フラスコ中で、DMSO(14mL)中の2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン(12)(メルドラム酸)(4.09g;28.4mmol)の十分に撹拌された溶液を形成させた。この混合物に、トリエチルアミン(7.92mL;56.8mmol)および二硫化炭素(1.71mL;28.4mmol)を次々と添加した。次いで、混合物を室温で1時間にわたり激しく撹拌した後、氷浴中で冷却させた。ヨードメタン(3.54mL;56.8mL)を冷却(氷浴)しながら反応混合物にゆっくりと添加した。添加が終了したら、反応混合物を室温まで加温し、さらに4時間撹拌した後、氷冷水(25mL)で希釈した。混合物をスクラッチングして生成物を沈殿させ、これを濾別し、軽油で洗浄した。黄色の固体(2.76g)として生成物を得たが、これは、後続反応に使用するのに十分な純度であった。収率=45%。m.p.: 118℃ (文献28: 116-118℃); IR: (cm-1) 3728, 1668, 1373, 1302, 1264, 1199; 1H NMR, (CDCl3, 300 MHz), δ (ppm): 1.54 (6H, s, 2CH3), 2.58 (6H, s, 2CH3-S); 13C NMR, (CDCl3, 75 MHz), δ (ppm): 21.86, 27.22, 103.32, 160.33, 194。
【0252】
(b) 5-[2-ブロモアニリノ-(メチルチオ)-メチレン]-2,2-ジメチル-4,6-ジオン(19)
冷却器および窒素バブラーを備えた10mL容の丸底フラスコ中で、イソプロピリデンビスメチルチオリデンマロネート(18)(900mg;3.63mmol)および2-ブロモアニリン(15)(624mg;3.63mmol)を2,2,2-トリフルオロエタノール(3.6mL)中に溶解させた。混合物を撹拌し、22時間にわたり加熱して還流させた。冷却後、溶媒を蒸発させた。残渣をメタノールから再結晶させたところ、白色の結晶(1.192g)として標記化合物が得られた。収率=88%。m.p.: 159℃; Rf = 0.31, DCM; IR: (cm-1) 2990, 1706, 1653, 1535, 1370, 1199; UV: λmax = 313 nm; 1H NMR, (CDCl3, 300 MHz), δ (ppm): 1.69 (6H, s, 2CH3), 2.15 (3H, s,CH3-S), 7.18 (1H, dt, JH4-H5 = 8 Hz, JH4-H6 = 2 Hz, Harom-4), 7.35 (2H, m, Harom-5 and Harom-6), 7,61 (1H, dd, JH3-H4 = 8 Hz, JH3-H5 = 1.2 Hz, Harom-3), 12.51 (1H, s, N-H); 13C NMR, (CDCl3, 75 MHz), δ (ppm): 18.75, 26.48, 87.54, 103.32, 120.45, 127.78, 128.46, 129.48, 133.57, 136.91, 163.87, 178.70。
【0253】
(c) 5-[(2-ブロモ-アニリノ)-モルホリン-4-イル-メチレン]-2,2-ジメチル-[1,3]ジオキサン-4,6-ジオン(20)
冷却器および窒素バブラーを備えた10mL容の丸底フラスコ中で、5-[2-ブロモアニリノ-(メチルチオ)-メチレン]-2,2-ジメチル-4,6-ジオン(19)(234mg;0.629mmol)およびモルホリン(110μL;1.257mmol)を2,2,2-トリフルオロエタノール(1mL)中に溶解させた。混合物を撹拌し、18時間にわたり加熱して還流させた。冷却後、溶媒を蒸発させた。残渣をメタノールから再結晶させたところ、白色の結晶(0.124g)として標記化合物が得られた。収率=50%。m.p.: 212-213℃; Rf = 0.05; DCM; IR: (cm-1) 1627, 1342, 1305, 1100, 1022, 934; UV: λmax = 241 nm; 1H NMR, (CDCl3, 300 MHz), δ (ppm): 1.77 (6H, s, 2CH3), 3.24 (4H, t, Jab = 5 Hz, 2CH2-N モルホリン), 3.66 (4H, t, Jab = 5 Hz, 2CH2-O モルホリン), 7.18 (2H, m, Harom-4 and Harom-6), 7.40 (1H, t, JH5-H6 = 8 Hz, Harom-5), 7.69 (1H, dd, JH3-H4 = 8 Hz, JH3-H5 = 1.4 Hz, Harom-3), 9.62 (1H, s, N-H); 13C NMR, (CDCl3, 75 MHz), δ (ppm): 26.83, 51.14, 65.62, 87.54, 102.84, 120.45, 127.15, 128.92, 129.03, 134.48, 138.46, 164.92, 178.70。
【0254】
(d) 8-ブロモ-2-モルホリン-4-イル-1H-キノリン-4-オン(21)
シュレンク管中で、5-[(2-ブロモ-アニリノ)-モルホリン-4-イル-メチレン]-2,2-ジメチル-[1,3]ジオキサン-4,6-ジオン(20)(103.3mg;0.2513mmol)をジフェニルエーテル(0.7mL)中に溶解させた。混合物を撹拌し、4時間にわたり加熱して還流させた。冷却後、石油エーテルを添加した。生成物を吸引により回収した。溶出剤としてジクロロメタン/メタノール(95:5)を用いて、フラッシュクロマトグラフィーにより残渣を精製した。褐色の油状物(65.1mg)として生成物が得られた。収率=84%。Rf = 0.25, MeOH:DCM (1:19); 質量スペクトル: (m/z) 310.98 [M+1]+ (Rt = 5.24分、12分間グラジエント); IR: (cm-1) 3395, 2959, 2849, 1617, 1577, 1487, 1421, 1384, 1327, 1263, 1229, 1188, 1152, 1111, 1066, 999, 902, 785; UV: λmax = 254 nm; 1H NMR, (CDCl3, 300 MHz), δ (ppm): 3.72 (4H, t, Jab = 5 Hz, 2CH2-N モルホリン), 3.75 (4H, t, Jab = 5 Hz, 2CH2-O モルホリン), 5.95 (1H, s, H-3), 7.04 (1H, t, JH6-H7 = 8 Hz, Harom-6), 7.69 (1H, dd, JH6-H7 = 8 Hz, JH5-H7 = 1.3 Hz, Harom-7), 8.09 (1H, d, JH5-H6 = 8 Hz, Harom-5); 13C NMR, (CDCl3, 75 MHz), δ (ppm): 46.35, 66.59, 92.50, 114.53, 123, 123.50, 124.73, 134.45, 138, 156.06, 172.6。
【0255】
(v) 9-(1-アミノ-ジベンゾチオフェン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(23)の合成
【化42】

【0256】
(a) 9-(1-ニトロ-ジベンゾチオフェン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(22)
シュレンク管中で、1-ニトロ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ジベンゾチオフェン(7)(983mg;2.8mmol)および炭酸セシウム(2.705g;8.3mmol)をTHF(8mL)中に可溶化させた。アルゴンを溶液中にバブリングし、これを15分間超音波処理にかけた。同時に、9-トリフレート-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(6)(1.154g;3.045mmol)およびPdCl2dppf(112.7mg;0.138mmol)をTHF(8mL)中で可溶化した。アルゴンを溶液中にバブリングし、これを15分間超音波処理にかけた。これらの溶液をシュレンク管中で共に混合し、撹拌し、80℃で18時間加熱した。冷却後、DCM(20mL)を加えた。溶液を水(20mL)で洗浄し、次いで、硫酸マグネシウムで脱水し、蒸発させた。溶出剤として酢酸エチル/DCM(1:1)を用いて、フラッシュクロマトグラフィーにより残渣を精製した。蒸発させた後、黄色の固体(1.168g)として生成物が得られた。収率=92%。Rf = 0.37; AcOEt:DCM (1:1); 質量スペクトル: (m/z) 459.3 [M+1]+ (Rt = 4.69分)。
【0257】
(b) 9-(1-アミノ-ジベンゾチオフェン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(23)
丸底フラスコ中で、AcOH(10mL)中に9-(1-ニトロ-ジベンゾチオフェン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(17)(618.8mg;1.351mmol)を懸濁させた。この溶液に亜鉛粉末(883.3mg;13.51mmol)を加え、反応物を室温で一晩撹拌した。反応混合物をセライト(商標)に通して濾過し、メタノール(4×50mL)およびDCM(4×50mL)で連続して洗浄した。合わせた有機層を減圧下で蒸発させた。残渣を水(100mL)で撹拌し、その溶液にアンモニア水(25mL)を加えた。得られた沈殿物を濾過によって回収した。残渣を乾燥させたが、これにはさらなる精製は必要ではなかった。黄色の固体(575.3mg)として生成物を得た。収率=99%。Rf = 0.36; AcOEt:DCM (1:1);質量スペクトル: (m/z) 429.47 [M+1]+ (Rt = 4.17分)。
【0258】
(vi) 8-(1-アミノ-ジベンゾチオフェン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-1H-キノリン-4-オン(25)の合成
【化43】

【0259】
(a) 2-モルホリン-4-イル-8-(1-ニトロ-ジベンゾチオフェン-4-イル)-1H-キノリン-4-オン(24)
シュレンク管中で、1-ニトロ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ジベンゾチオフェン(6)(983mg;2.768mmol)および炭酸セシウム(2.705g;8.3047mmol)をTHF(8mL)中に可溶化した。アルゴンを溶液中にバブリングし、これを15分間超音波処理にかけた。同時に、8-ブロモ-2-モルホリン-4-イル-1H-キノリン-4-オン(21)(941.4mg;3.045mmol)およびPdCl2dppf(112.7mg;0.138mmol)をTHF(8mL)中に可溶化した。アルゴンを溶液中にバブリングし、これを15分間超音波処理にかけた。これらの溶液をシュレンク管中で共に混合し、撹拌し、80℃で18時間加熱した。冷却後、DCM(20mL)を加えた。溶液を水(20mL)で洗浄し、次いで、硫酸マグネシウムで脱水し、蒸発させた。溶出剤として酢酸エチル/DCM(1:1)を用いて、フラッシュクロマトグラフィーにより残渣を精製した。蒸発させた後、黄色の固体(255.5mg)として生成物を得た。収率=20%。Rf = 0.24, AcOEt:DCM (1:1);質量スペクトル: (m/z) 4.58.4 [M+1]+ (Rt = 5.33分)。
【0260】
(b) 8-(1-アミノ-ジベンゾチオフェン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-1H-キノリン-4-オン(25)
丸底フラスコ中で、AcOH(5mL)中に2-モルホリン-4-イル-8-(1-ニトロ-ジベンゾチオフェン-4-イル)-1H-キノリン-4-オン(24)(365mg;0.798mmol)を懸濁させた。この溶液に亜鉛粉末(5223.3mg;7.98mmol)を加え、反応物を室温で一晩撹拌した。反応混合物をセライト(商標)に通して濾過し、メタノール(4×25mL)およびDCM(4×25mL)で連続して洗浄した。合わせた有機層を減圧下で蒸発させた。残渣を水(50mL)で撹拌し、その溶液にアンモニア水(15mL)を加えた。得られた沈殿物を濾過によって回収した。残渣を乾燥させたが、これにはさらなる精製は必要ではなかった。黄色の固体(291.3mg)として生成物を得た。収率=85.4%。質量スペクトル: (m/z) 428.4 [M+1]+ (Rt = 3.83分)。
【0261】
(vii) 9-(1-アミノ-ジベンゾフラン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(27)の合成
【化44】

【0262】
(a) 9-(1-ニトロ-ジベンゾチオフェン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(26)
シュレンク管中で、1-ニトロ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ジベンゾフラン(12)(500mg、1.47mmol)および炭酸カリウム(480mg、3.69mmol)をジオキサン(10mL)中に可溶化し、脱気した。同時に、9-ヒドロキシ-2-モルホリン-4-イル-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン9-O-トリフレート(17)(466mg、1.23mmol)およびPd(PPh3)4(71mg、0.06mmol)をジオキサン(10mL)中に可溶化し、脱気した。これらの溶液をマイクロ波容器中で共に混合し、30分間180℃のマイクロ波反応器中に入れた。冷却後、DCM(20mL)を加えた。溶液を水(20mL)で洗浄し、次いで、硫酸マグネシウムで脱水し、蒸発させた。残渣を加熱したメタノール中で粉砕し、生成物(375mg、0.85mmol、69%)を褐色固体として濾別した。Rf = 0.51 (AcOEt); mp: 262℃; λmax (EtOH)/nm 268; IR (cm-1) 1706, 1673, 1631, 1599, 1541, 1511, 1430, 1338, 1306, 1230, 1194, 1116, 1070, 1028, 999, 975, 860; 1H NMR, (300 MHz, CDCl3) δ 3.26 (4H, m, 2 x N-CH2-モルホリン), 3.47 (4H, m, 2 x O-CH2-モルホリン), 5.57 (1H, s, H-3), 7.03 (1H, t, JH6-H7 = 7 Hz, H-7), 7.44 (1H, t, J = 7 Hz), 7.58 (2H, m), 7.74 (1H, d, J = 7 Hz), 7.86 (1H, d, J = 7 Hz), 8.24 (1H, d, J = 8 Hz), 8.66 (1H, d, J = 8 Hz), 9.10 (1H, d, J = 8 Hz, H-6); 13C NMR, (125 MHz, CDCl3) δ 44.41 (2 x CH2-N-モルホリン), 66.32 (2 x CH2-O-モルホリン), 81.09 (C-3), 111.58, 112.05, 119.26, 120.67, 123.89, 126.28, 127.57, 128.32, 128.76, 128.95, 130.01, 138.39, 142.88, 143.92, 148.48, 154.66, 157.04 (Cq), 158.67 (Cq), 160.28 (Cq); MS (EI) m/z 443.35 M+; HRMS 計算値 C24H19N4O5 [M+H]+ 443.1350, 実測値 443.1352。
【0263】
(b) 9-(1-アミノ-ジベンゾフラン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(27)
丸底フラスコ中で、9-(1-ニトロ-ジベンゾフラン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン(26)(300mg、0.68mmol)をAcOH(5mL)中に懸濁させた。この溶液に亜鉛粉末(445mg、6.8mmol)を加え、反応物を室温で一晩撹拌した。セライト(商標)を通して反応混合物を濾過し、メタノール(4×50mL)およびDCM(4×50mL)で連続して洗浄した。合わせた有機層を減圧下で蒸発させた。残渣を水(100mL)で撹拌し、その溶液にアンモニア水(25mL)を加えた。得られた沈殿物を濾過によって回収した。溶出剤としてAcOEtを用いて、フラッシュクロマトグラフィーによりこの固体を精製したところ、白色固体として標記化合物(269mg、0.65mmol、96%)が得られた。Rf = 0.32 (AcOEt); mp: 294℃; λmax (EtOH)/nm 238; IR (cm-1) 3340, 3224, 2937, 2872, 2258, 1697, 1637, 1623, 1543, 1493, 1440, 1373, 1309, 1258, 1234, 1191, 1150, 1109, 1073, 999, 909, 856, 776; 1H NMR, (300 MHz, MeOD) δ 3.36 (4H, m, 2 x N-CH2-モルホリン), 3.52 (4H, m, 2 x O-CH2-モルホリン), 6.72 (1H, d, J = 7 Hz), 6.88 (1H, t, J = 7 Hz), 7.31-7.47 (5H, m), 7.90 (2H, m), 8.90 (1H, d, J = 7 Hz); 13C NMR, (75 MHz, MeOD) δ 46.23 (2 x CH2-N-モルホリン), 68.02 (2 x CH2-O-モルホリン), 110.44, 112.78, 114.57, 122.46, 124.53, 125.58 (Cq), 127.53, 128.01, 131.81, 133.58, 138.88, 145.06 (Cq), 150.82 (Cq), 156.70 (Cq), 156.90 (Cq), 161.68 (Cq), 162.11 (Cq); MS (EI) m/z 413.19 M+; 分析計算値 0.86 mol C24H20N4O3 + 0.14 mol MeOH: C, 69.48, H, 4.99, N, 13.41。実測値: C, 69.22, H, 4.79, N, 13.38; HRMS 計算値 C24H21N4O3 [M+H]+ 413.1608、実測値 413.1609。
【0264】
(viii) 9-(1-アミノ-ジベンゾフラン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(29)の合成
【化45】

【0265】
(a) 2-モルホリン-4-イル-8-(1-ニトロ-ジベンゾフラン-4-イル)-1H-キノリン-4-オン(28)
シュレンク管中で、1-ニトロ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ジベンゾフラン(12)(500mg、1.47mmol)および炭酸カリウム(480mg、3.69mmol)をジオキサン(10mL)中に可溶化し、脱気した。同時に、8-ブロモ-2-モルホリン-4-イル-1H-キノリン-4-オン(21)(380mg、1.23mmol)およびPd(PPh3)4(71mg、0.06mmol)をジオキサン(10mL)中に可溶化し、脱気した。これらの溶液をマイクロ波容器中で共に混合し、30分間180℃のマイクロ波反応器中に入れた。冷却後、DCM(20mL)を加えた。溶液を水(20mL)で洗浄し、次いで、硫酸マグネシウムで脱水し、蒸発させた。溶出剤としてAcOEt/EP(8:2)を用いて、フラッシュクロマトグラフィーにより残渣を精製したところ、黄色固体として標記化合物(303mg、0.74mmol、60%)が得られた。Rf = 0.67 (AcOEt); mp: 247℃; λmax (EtOH)/nm 251; IR (cm-1) 3421, 2852, 2360, 2333, 1614, 1573, 1500, 1435, 1429, 1348, 1309, 1233, 1199, 1152, 1124, 1039, 991, 917, 866, 823; 1H NMR, (300 MHz, CDCl3) δ 3.04 (4H, m, 2 x CH2-N-モルホリン), 3.54 (4H, m, 2 x CH2-O-モルホリン), 5.92 (1H, s, H-3), 7.19-7.45 (2H, m), 7.51-7.58 (2H, m), 7.65-7.70 (2H, m), 8.31 (2H, m), 8.67 (1H, d, J = 7 Hz); MS (EI) m/z 442.29 M+; HRMS 計算値 C25H20N3O5 [M+H]+ 442.1397、実測値 442.1398。
【0266】
(b) 8-(1-アミノ-ジベンゾフラン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-1H-キノリン-4-オン(29)
丸底フラスコ中で、酢酸(5mL)に2-モルホリン-4-イル-8-(1-ニトロ-ジベンゾチオフェン-4-イル)-1H-キノリン-4-オン(28)(290mg、0.66mmol)を懸濁させた。この溶液に亜鉛粉末(430mg、6.58mmol)を加え、反応物を室温で一晩撹拌した。反応混合物をセライト(商標)に通して濾過し、メタノール(4×25mL)およびDCM(4×25mL)で連続して洗浄した。合わせた有機層を減圧下で蒸発させた。残渣を水(50mL)で撹拌し、その溶液にアンモニア水(15mL)を加えた。得られた沈殿物を濾過によって回収した。残渣を乾燥させたが、これはさらなる精製を行う必要はなかった。褐色油状物として生成物(246mg、0.60mmol、91%)を得た。Rf = 0.44 (AcOEt); λmax (EtOH)/nm 315; IR (cm-1) 1708, 1572, 1374, 1278, 1190, 1116, 1049, 1010, 931, 880, 827, 748, 722, 688, 688; 1H NMR, (300 MHz, CDCl3) δ 3.11 (4H, m, 2 x CH2-N-モルホリン), 3.58 (4H, m, 2 x CH2-O-モルホリン), 5.98 (1H, s, H-3), 6.85 (1H, d, J = 8 Hz), 7.25-7.51 (3H, m), 7.52-7.68 (3H, m), 8.05 (1H, t, J = 8 Hz), 8.67 (1H, d, J = 8 Hz); 13C NMR, (75 MHz, MeOD) δ 48.02 (2 x CH2-N-モルホリン), 67.44 (2 x CH2-O-モルホリン), 111.94, 112.63, 122.96, 125.05, 125.57, 127.63, 127.87, 131.55, 132.68, 135.32, 146.21, 156.79; MS (EI) m/z 412.25 M+; HRMS 計算値 C25H22N3O3 [M+H]+ 412.1656, 実測値 412.1654。
【0267】
(ix) 9-(1-ヒドロキシ-ジベンゾチオフェン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(31)の合成
【化46】

【0268】
丸底フラスコ中で、9-(1-アミノ-ジベンゾチオフェン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(23)(137.2mg;0.32mmol)をエタノール(15mL)に懸濁した。HBF4(664μL;4.81mmol)を室温で滴下添加した。15分間撹拌すると、反応混合物が透明な溶液になった。これを0℃に冷却し、t-硝酸イソブチル(76.1μL;0.64mmol)を加えた。30分後、エーテル(25mL)で反応混合物を希釈した。形成された沈殿物を濾別し、次いで、エーテル(2×5mL)で洗浄し、乾燥させた。酸化銅(I)(45.78mg;0.32mmol)を含有する水(500mL)中の硝酸銅(23.193g;96mmol)溶液にこの固体を添加し、室温で1時間撹拌した。水溶液を濾過したところ、褐色固体が得られた。溶出剤としてメタノール/DCM(2:98)を用いて、フラッシュクロマトグラフィーにより残渣を精製した。脱アミノによる副生成物を収率17%(22.5mg)で単離した。黄色の固体(26.3mg)として生成物を得た。収率=19%。質量スペクトル: (m/z) 430.3 [M+1]+ (Rt = 4.23分)。
【0269】
(x) 8-(1-アミノ-ジベンゾフラン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-1-ベンゾピラン-4-オン(33)の合成
【化47】

【0270】
(a) 2-モルホリン-4-イル-8-(1-ニトロ-ジベンゾフラン-4-イル)-1-ベンゾピラン-4-オン(32)
無水ジオキサン(2ml)中の1-ニトロ-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-ジベンゾフラン(12、0.30mmol、0.10g)の溶液に、トリフルオロ-メタンスルホン酸2-モルホリン-4-イル-4-オキソ-4H-1-ベンゾピラン-8-イルエステル(0.24mmol、0.091g、WO 03/024949を参照されたい)、炭酸カリウム(0.6mmol、0.083g)およびテトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0.015mmol、0.018g)を添加した。反応容器を密閉し、マイクロ波放射の影響下で加熱した(140℃、10分間、低吸収設定)。終了後、反応混合物をシリカ薄層充填材を通して濾過し、ケーキをCH2Cl2で洗浄した。次いで、溶媒を真空で除去したところ、淡褐色の固体残渣(0.13g、100%)が得られた。これはそれ以上精製することなく用いた。m/z 443.4 [M+H]+ (Rt=4.76分)。
【0271】
(b) 8-(1-アミノ-ジベンゾフラン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-1-ベンゾピラン-4-オン(33)
酢酸(50ml)中の2-モルホリン-4-イル-8-(1-ニトロ-ジベンゾフラン-4-イル)-1-ベンゾピラン-4-オン(32、2.5mmol、1.11g)の溶液に、10分間かけて亜鉛末(25mmol、1.64g)を分けながら添加した。次いで、混合物を室温で2時間撹拌し、その後、セライト(商標)充填材を通してこれを濾過し、メタノール(20ml)およびCH2Cl2(20ml)で洗浄した。真空で溶媒を除去するとスラリーが得られ、次いで、水酸化アンモニウム(30ml)で希釈した。生じた固体を濾過により取り出した。溶出剤としてMeOH;CH2Cl2-1:99を用いて、フラッシュクロマトグラフィー(SiO2)により残渣を精製したところ、所望の生成物(75%)が分析学的に純粋な形態で得られた。m/z 413.5 [M+H]+ (Rt=4.27分)。
【0272】
実施例1:9-トリフレート-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(17)からのパラレル合成
【化48】

【0273】
適切なボロン酸(0.395mmol)および炭酸カリウム(109.3mg;0.7914mmol)をカルーセル管中に導入した。フラスコを減圧排気し、アルゴンでパージングした。この処理を3回行った。シュレンク管中で、9-トリフレート-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(17)(100mg;0.2638mmol;カルーセル管1本あたり)をジオキサン(2mL;カルーセル管1本あたり)中に可溶化させた。アルゴンを溶液中にバブリングし、これを15分間超音波処理にかけた。別のシュレンク管中で、テトラキス-(トリフェニルホスフィン)-パラジウム(15.2mg;0.013mmol;カルーセル管1本あたり)をジオキサン(2mL;カルーセル管1本あたり)中に可溶化させた。アルゴンを溶液中にバブリングし、これを15分間超音波処理にかけた。2mLの各溶液をカルーセル管中で共に混合し、撹拌し、48時間にわたり95℃で加熱した。冷却後、スタッカー・パラレル・ピューリフィケーション・システム(stalker parallel purification system)上に配置された500mgのシリカのRadleys Discovery Technologie固相抽出カラムに溶液を通して濾過した。カラムを酢酸エチル(20mL)で洗浄し、相1として回収した。次いで、カラムをジクロロメタン/メタノール(85:15)(20mL)で洗浄し、相2として回収した。LC/MSにより生成物に関して両相を検査した。一部の事例では、相2が不純物のみを含んでいた。他の事例では、両相を合わせて蒸発させた。生成物に応じて、HPLCにより、またはフラッシュクロマトグラフィーにより精製を行った。
【表2】

【0274】
NMRの結果
34a: 1H NMR, (CDCl3, 300 MHz), δ (ppm): 3.36 (4H, m, N-CH2-モルホリン); 3.56 (4H, m, O-CH2-モルホリン); 5.64 (1H, s, CH-3); 7.01 (1H, t, JH6-H7 = 7 Hz, Harom-7); 7.45-7.49 (2H, m); 7.56-7.57 (2H, m); 7.79-7.82 (1H, m); 7.86-7.89 (1H, dd); 8.19-8.23 (2H, m); 9.04 (1H, dd)。
【0275】
13C-NMR, (CDCl3, 300 MHz), δ (ppm): 44.83 (CH2-N- モルホリン); 66.84 (CH-O- モルホリン);81.37 (CH-3); 112.47 (CH-7); 121.69; 122.10; 122.92; 124.62; 124.85; 127.39; 128.27; 128.91; 132.41; 134.77; 135.88; 136.36; 137.54; 139.60; 140.13; 148.84; 159.38 (Cq); 160.54 (C=O)。
【0276】
34b: 1H NMR, (CDCl3, 300 MHz), δ (ppm): 3.35 (4H, t, N-CH2-モルホリン); 3.54 (4H, t, O-CH2-モルホリン); 5.66 (1H, s, CH-3); 7.08 (1H, t, JH6-H7 = 7 Hz, Harom-7); 7.38-7.51 (4H, m, Harom-ジベンゾフラン); 7.67 (1H, dd, JH7-H8 = 7.6 Hz, JH6-H8 = 1.3 Hz, Harom-8); 7.94 (1H, dd, J = 7 Hz, J = 1.6 Hz, Harom-ジベンゾフラン); 8.01-8.05 (2H, m, Harom-ジベンゾフラン); 9.06 (1H, dd, JH6-H7 = 7 Hz, JH6-H8 = 1.3 Hz, Harom-6)。
【0277】
13C-NMR, (CDCl3, 300 MHz), δ (ppm): 44.80 (CH2-N-モルホリン); 66.80 (CH-O-モルホリン); 81.37 (CH-3); 111.98; 112.65, 121.14, 121.75, 122.76; 123.31; 124.38; 124.89; 127.80; 128.03; 129.28; 131.42; 138.06; 156.30; 159.48; 160.69。
【0278】
21c: 1H NMR, (CDCl3, 300 MHz), δ (ppm): 3.42 (4H, m, N-CH2-モルホリン); 3.56 (4H, m, O-CH2-モルホリン); 5.40 (1H, s, CH-3); 6.87 (1H, t, JH6-H7 = 7 Hz, Harom-7); 7.26-7.83 (10H, m, Harom-ビフェニル and Harom-8); 8.87 (1H, dd, JH6-H7 = 7.1 Hz, JH6-H8 = 1.6 Hz, Harom-6)。
【0279】
実施例2:8-ブロモ-2-モルホリン-4-イル-1H-キノリン-4-オン(21)からのパラレル合成
【化49】

【0280】
適切なボロン酸(0.486mmol)および炭酸カリウム(269.2mg;1.946mmol)をカルーセル管中に導入した。フラスコを減圧排気し、アルゴンでパージングした。この処理を3回行った。シュレンク管中で、8-ブロモ-2-モルホリン-4-イル-1H-キノリン-4-オン(21)(100mg;0.324mmol;カルーセル管1本あたり)をジオキサン(2mL;カルーセル管1本あたり)中に可溶化させた。アルゴンを溶液中にバブリングし、これを15分間超音波処理にかけた。別のシュレンク管中で、テトラキス-(トリフェニルホスフィン)-パラジウム(18.7mg;0.016mmol;カルーセル管1本あたり)をジオキサン(2mL;カルーセル管1本あたり)中に可溶化させた。アルゴンを溶液中にバブリングし、これを15分間超音波処理にかけた。2mLの各溶液をカルーセル管中で共に混合し、撹拌し、48時間にわたり95℃で加熱した。冷却後、スタッカー・パラレル・ピューリフィケーション・システム(stalker parallel purification system)上に配置された500mgのシリカのRadleys Discovery Technologie固相抽出カラムに溶液を通して濾過した。カラムを酢酸エチル(20mL)で洗浄し、相1として回収した。次いで、カラムをジクロロメタン/メタノール(85:15)(20mL)で洗浄し、相2として回収した。LC/MSにより生成物に関して両相を検査した。一部の事例では、相2は、不純物のみを含有していた。他の事例では、両相を合わせて蒸発させた。生成物に応じて、HPLCにより、またはフラッシュクロマトグラフィーにより精製を行った。
【表3】

【0281】
NMR結果
35a: 1H-NMR, (CDCl3. 300 MHz), δ (ppm): 2.93 (4H, t, J = 5 Hz, CH2-N モルホリン), 3.57 (4H, t, J = 5 Hz, CH2-O モルホリン), 5.67 (1H, s, H-3), 7.34 (t, 1H, J = 8 Hz, Harom), 7.42 - 7.74 (m, 8H, Harom), 8.15 - 8.23 (m, 2H, Harom), 8.33 (d, 1H, J = 8 Hz, Harom)。
【0282】
13C-NMR, (CDCl3, 300 MHz), δ (ppm): 46.94 (CH2-N モルホリン), 66.22 (CH2-O モルホリン), 93.44 (CH-3), 122.38 (CH), 122.46 (CH), 123.30 (CH), 123.43 (CH), 124.62 (CH), 125.29 (CH), 125.80 (CH), 126.86 (CH), 127.69 (CH), 127.93 (CH), 131.22 (CH), 132.56 (CH), 135.60 (CH), 135.81 (CH), 137.41 (CH), 139.75 (CH), 140.74 (CH), 154.24 (C4=O), 178.86 (C2)。
【0283】
35b: 1H NMR, (CDCl3, 300 MHz), δ (ppm): 2.93 (4H, s, N-CH2-モルホリン); 3.50 (4H, s, O-CH2-モルホリン); 5.69 (1H, s, CH-3); 7.19-7.45 (6H, m, Harom-ジベンゾフラン and Harom-7); 7.64 (1H, s, Harom-8); 7.95 (3H, m, Harom-ジベンゾフラン); 8.30 (1H, s, Harom-6)。
【0284】
13C-NMR, (CDCl3, 300 MHz), δ (ppm): 46.87 (CH2-N-モルホリン); 66.27 (CH-O-モルホリン); 92.17 (CH-3);112.10;121.44; 121.80; 123.43; 123.92; 124.42; 125.82; 126.67; 128.49; 129.11; 133.84; 136.04; 153.32; 154.44; 156.31; 178.93。
【0285】
実施例3:2-アミノ-N-[4-(2-モルホリン-4-イル-4-オキソ-4H-ピリド[2,1-a]ピリミジン-9-イル)-ジベンゾチオフェン-1-イル]-アセトアミド(36)の合成
【化50】

【0286】
丸底フラスコ中で、9-(1-アミノ-ジベンゾチオフェン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(9)(152.7mg;0.356mmol)を無水DMA(4.5mL)中に可溶化した。この溶液に、トリエチルアミン(109.3μL;0.784mmol)およびクロロアセチルクロリド(31.03μL;0.392mmol)を加え、反応物を室温で4時間撹拌した。反応生成物のアリコート(0.5mL)を温室ワークステーションで異なるアミン(3eq)を含んでいる9本の各チューブに加えた。これらの反応混合物を室温で18時間同時に撹拌した。各チューブを最少量のメタノール(最大1.5mL)でそれぞれ希釈し、LC/MSバイアルへ移した。すべてのLC/MSバイアルをQCおよび精製用の分取用HPLCにかけた。
【表4】

【0287】
実施例4:3-アミノ-N-[4-(2-モルホリン-4-イル-4-オキソ-4H-ピリド[2,1-a]ピリミジン-9-イル)-ジベンゾチオフェン-1-イル]-プロピオンアミド(37)の合成
【化51】

【0288】
丸底フラスコ中で、9-(1-アミノ-ジベンゾチオフェン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-ピリド[2,1-a]ピリミジン-4-オン(23)(127mg;0.296mmol)を無水DMA(4mL)中に可溶化した。トリエチルアミン(90.8μL;0.652mmol)および3-ブロモプロピオニルクロリド(32.8μL;0.326mmol)をこの溶液に加え、反応物を室温で4時間撹拌した。反応生成物のアリコート(0.5mL)を温室ワークステーションで異なるアミン(3eq)を含んでいる8本の各チューブに加えた。これらの反応混合物を室温で18時間同時に撹拌した。各チューブを最少量のメタノール(最大1.5mL)でそれぞれ希釈し、LC/MSバイアルへ移した。すべてのLC/MSバイアルをQCおよび精製用の分取用HPLCにかけた。
【表5】

【0289】
実施例5:2-アミノ-N-[4-(2-モルホリン-4-イル-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-キノリン-8-イル)-ジベンゾチオフェン-1-イル]-アセトアミド(38)の合成
【化52】

【0290】
丸底フラスコ中で、8-(1-アミノ-ジベンゾチオフェン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-1H-キノリン-4-オン(25)(153.9mg;0.36mmol)を無水DMA(4.5mL)中に可溶化した。トリエチルアミン(110.3μL;0.696mmol)およびクロロアセチルクロリド(31.5μL;0.396mmol)をこの溶液に加え、反応物を室温で4時間撹拌した。反応生成物のアリコート(0.5mL)を温室ワークステーションで異なるアミン(3eq)を含んでいる9本の各チューブに加えた。これらの反応混合物を室温で18時間同時に撹拌した。各チューブを最少量のメタノール(最大1.5mL)でそれぞれ希釈し、LC/MSバイアルへ移した。すべてのLC/MSバイアルをQCおよび精製用の分取用HPLCにかけた。
【表6】

【0291】
実施例6:3-アミノ-N-[4-(2-モルホリン-4-イル-4-オキソ-1,4,4a,8a-テトラヒドロ-キノリン-8-イル)-ジベンゾチオフェン-1-イル]-プロピオンアミド(39)の合成
【化53】

【0292】
丸底フラスコ中で、8-(1-アミノ-ジベンゾチオフェン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-1H-キノリン-4-オン(25)(79.2mg;0.185mmol)を無水DMA(3mL)中に可溶化した。トリエチルアミン(56.8μL;0.407mmol)および3-ブロモプロピオニルクロリド(20.5μL;0.204mmol)をこの溶液に加え、反応物を室温で4時間撹拌した。反応生成物のアリコート(0.5mL)を温室ワークステーションで異なるアミン(3eq)を含んでいる6本の各チューブに加えた。これらの反応混合物を室温で18時間同時に撹拌した。各チューブを最少量のメタノール(最大1.5mL)でそれぞれ希釈し、LC/MSバイアルへ移した。すべてのLC/MSバイアルをQCおよび精製用の分取用HPLCにかけた。
【表7】

【0293】
実施例7:2-アミノ-N-[4-(2-モルホリン-4-イル-4-オキソ-4H-ピリド[2,1-a]ピリミジン-9-イル)-ジベンゾフラン-1-イル]-アセトアミド(40)の合成
【化54】

【0294】
9-(1-アミノ-ジベンゾフラン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン(27)(191mg、0.46mmol)を無水DMA(3.5mL)中に可溶化した。トリエチルアミン(129μL、0.92mmol)およびクロロアセチルクロリド(40μL、0.51mmol)をこの溶液に加え、反応混合物を室温で4時間撹拌した。得られた溶液のアリコート(0.5mL)を温室ワークステーションで異なる7本のチューブに加えた。各チューブは異なるアミン(3eq)を含んでいた。これらの反応混合物を室温で18時間同時に撹拌した。各チューブを最少量のメタノール(最大1.5mL)で希釈し、LC-MSバイアルへ移した。すべてのLC-MSバイアルをQCおよび精製用の分取用HPLCにかけた。
【表8】

【0295】
実施例8:3-アミノ-N-[4-(2-モルホリン-4-イル-4-オキソ-4H-ピリド[2,1-a]ピリミジン-9-イル)-ジベンゾフラン-1-イル]-プロピオンアミド(41)の合成
【化55】

【0296】
9-(1-アミノ-ジベンゾフラン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン(27)(147mg、0.36mmol)を無水DMA(3mL)中に可溶化した。トリエチルアミン(99μL、0.71mmol)および3-クロロプロピオニルクロリド(37μL、0.39mmol)をこの溶液に加え、反応混合物を室温で4時間撹拌した。得られた溶液のアリコート(0.5mL)を温室ワークステーションで異なる6本のチューブに加えた。各チューブは異なるアミン(3eq)を含んでいた。これらの反応混合物を室温で18時間同時に撹拌した。各チューブを最少量のメタノール(最大1.5mL)で希釈し、LC-MSバイアルへ移した。すべてのLC-MSバイアルをQCおよび精製用の分取用HPLCにかけた。
【表9】

【0297】
実施例9:2-アミノ-N-[4-(2-モルホリン-4-イル-4-オキソ-1,4-ジヒドロ-キノリン-8-イル)-ジベンゾフラン-1-イル]-アセトアミド(42)の合成
【化56】

【0298】
8-(1-アミノ-ジベンゾフラン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-1H-キノリン-4-オン(29)(126mg、0.31mmol)を無水DMA(3.5mL)中に可溶化した。トリエチルアミン(85μL、0.61mmol)およびクロロアセチルクロリド(27μL、0.34mmol)をこの溶液に加え、反応混合物を室温で4時間撹拌した。得られた溶液のアリコート(0.5mL)を温室ワークステーションで7本の異なるチューブに加えた。各チューブは異なるアミン(3eq)を含んでいた。これらの反応混合物を室温で18時間同時に撹拌した。各チューブを最少量のメタノール(最大1.5mL)で希釈し、LC-MSバイアルへ移した。すべてのLC-MSバイアルをQCおよび精製用の分取用HPLCにかけた。
【表10】

【0299】
実施例10:3-アミノ-N-[4-(2-モルホリン-4-イル-4-オキソ-1,4,4a,8a-テトラヒドロ-キノリン-8-イル)-ジベンゾフラン-1-イル]-プロピオンアミド(43)の合成
【化57】

【0300】
8-(1-アミノ-ジベンゾフラン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-1H-キノリン-4-オン(29)(115mg、0.28mmol)を無水DMA(3mL)中に可溶化した。トリエチルアミン(78μL、0.56mmol)および3-クロロプロピオニルクロリド(29μL、0.31mmol)をこの溶液に加え、反応混合物を室温で4時間撹拌した。得られた溶液のアリコート(0.5mL)を温室ワークステーションで6本の異なるチューブに加えた。各チューブは異なるアミン(3eq)を含んでいた。これらの反応混合物を室温で18時間同時に撹拌した。各チューブを最少量のメタノール(最大1.5mL)で希釈し、LC-MSバイアルへ移した。すべてのLC-MSバイアルをQCおよび精製用の分取用HPLCにかけた。
【表11】

【0301】
実施例11:2-アミノ-N-[4-(2-モルホリン-4-イル-1-ベンゾピラン-4-オン)-ジベンゾフラン-1-イル]-アセトアミド(44)の合成
【化58】

【0302】
8-(1-アミノ-ジベンゾフラン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-1-ベンゾピラン-4-オン(クロロホルム(0.02M)中1当量)の溶液に、炭酸ナトリウム(2当量)、次いでクロロアセチルクロリド(1.1当量)を加えた。混合物を室温で4時間撹拌した後、適切なアミン(1.2当量)を添加した。反応物を60℃で24時間加熱した後、真空で濃縮し、次いで、分取HPLCによって精製したところ、所望の生成物が得られた。
【表12】

【0303】
実施例12:3-アミノ-N-[4-(2-モルホリン-4-イル-1-ベンゾピラン-4-オン)-ジベンゾフラン-1-イル]-プロピオンアミド(45)の合成
【化59】

【0304】
8-(1-アミノ-ジベンゾフラン-4-イル)-2-モルホリン-4-イル-1-ベンゾピラン-4-オンの溶液(クロロホルム(0.02M)中1当量)に、炭酸ナトリウム(2当量)、次いでブロモプロピオニルクロリド(1.1当量)を加えた。混合物を室温で4時間撹拌した後、適切なアミン(1.2当量)を添加した。反応物を60℃で24時間加熱した後、真空で濃縮し、次いで、分取HPLCによって精製したところ、所望の生成物が得られた。
【表13】

【0305】
生物学的実施例
DNA-PK阻害
in vitroにおけるDNA-PKに対する化合物の阻害作用を評価するために、次のアッセイを用いてIC50値を決定した。
【0306】
HeLa細胞核抽出物(Gell, D. および Jackson S.P., Nucleic Acids Res. 27:3494-3502 (1999))から哺乳動物DNA-PK(500ng/ml)を単離し、続いて、Q-セファロース、S-セファロース、およびヘパリンアガロースを利用してクロマトグラフィーにかけた。ポリプロピレン96ウェルプレート中において、25mM Hepes、pH7.4、12.5mM MgCl2、50mM KCl、1mM DTT、10%グリセロール、0.1% NP-40、および1mgの基質GST-p53N66(ヒト野生型p53のアミノ末端の66個のアミノ酸残基をグルタチオンS-トランスフェラーゼに融合したもの)を含有する緩衝液中40μlの最終容量で、30℃にて、DNA-PK(250ng)活性を測定した。アッセイ混合物に様々な濃度の阻害剤(DMSO中1%の最終濃度で)を添加した。10分間インキュベートした後、30mer二本鎖DNAオリゴヌクレオチド(0.5ng/mlの最終濃度)と共に、50μMの最終濃度になるようにATPを添加して、反応を開始した。振盪しながら1時間経過した後、反応系に150μlのリン酸緩衝食塩水(PBS)を添加し、次いで、1ウェルあたり45μlのPBSを含有する96ウェル乳白色プレートに5μlを移し、1時間かけてGSTp53N66基質をウェルに結合させた。p53のセリン15残基においてDNA-PKにより誘発されたリン酸化事象を検出するために、p53ホスホセリン-15抗体(Cell Signaling Technology)を基本的なELISA手順で使用した。次いで、ELISAで抗ウサギHRPコンジュゲート化二次抗体(Pierce)を利用してから化学発光試薬(NEN Renaissance)を添加し、TopCount NXT(Packard)で化学発光計測を行って測定されるシグナルを検出した。
【0307】
次に、次式:
【数1】

【0308】
を用いて、化合物ごとに酵素活性を計算した。
【0309】
以下にIC50値(酵素活性の50%が阻害される濃度)として結果を考察する。これらは、一連の様々な濃度にわたり(通常は10μM〜0.001μM)測定される。かかるIC50値は、化合物の効力の増大を同定するための比較値として用いる。
【0310】
生存率増大比
生存率増大比(SER)とは、非照射の対照細胞と比較して、2グレイの照射を行った後でDNA-PK阻害剤により誘発される細胞死滅の増大比のことである。DNA-PK阻害剤は、500nMの一定濃度で使用した。毎分1Gyの線量率でFaxitron 43855D装置により照射を施した。2グレイ照射におけるSERを式:
【数2】

【0311】
から計算した。標準的クローン原性生存率アッセイにより細胞死滅度をモニタリングした。簡潔に述べると、1ウェル当たり100〜200コロニーを与えるように組織培養処理6ウェルプレートに適切な濃度でHeLa細胞を接種し、細胞を結合させるためにインキュベーターに戻した。4時間後、化合物または媒体対照を細胞に添加した。次いで、阻害剤の存在下で細胞を1時間インキュベートしてからFaxitron 43855DキャビネットX線装置を用いて2グレイの照射を施した。次に、細胞をさらに16時間インキュベートした後、培地をDNA-PK阻害剤の不在下の新しい培地で置き換えた。8日後、形成されたコロニーを固定し、ギムザ(Giemsa)(Sigma, Poole, UK)で染色し、自動コロニー計数器(Oxford Optronics Ltd, Oxford, UK)を用いてスコアを求めた。データは上述の通り計算した。
【0312】
結果
すべての化合物でDNA-PK阻害の活性が確認され、約500nM未満のIC50を示した。
【0313】
IC50が約100nM未満であって、格別のDNA-PK阻害効力を示した化合物としては、23、25、31、34b、35a〜b、36a〜d、36f〜k、37b〜e、38b、38d〜h、39d〜f、40a〜f、41a〜d、42b、42d、42f、44a〜d、45a、45cが挙げられる。
【0314】
また化合物はすべて、1以上のSERを示した。SERが2以上である化合物としては、22、23、24、25、31、36a〜k、37a〜c、37e、38a〜h、39a〜fが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

で示される化合物、またはその異性体、塩、溶媒和物、化学的保護形態、もしくはプロドラッグ。ただし、上記式中、A、B、およびDは、それぞれ、
(i) CH、NH、C;
(ii) CH、N、N;および
(iii) CH、O、C;
よりなる群から選択され、
点線は、適切な位置にある2つの二重結合を表し;
RN1およびRN2は、独立して、水素、置換されていてもよいC1〜7アルキル基、C3〜20ヘテロシクリル基、もしくはC5〜20アリール基から選択されるか、または一緒になって、それらが結合されている窒素原子と共に、4〜8個の環原子を有する置換されていてもよいヘテロ環式環を形成していてもよく;
A、B、Dが上記の群(i)、(ii)から選択される場合、Zは、S、O、C(=O)、CH2およびNHよりなる群から選択され;A、B、Dが群(iii)を表す場合、Zは、O、C(=O)、CH2およびNHよりなる群から選択され;
R4は、H、OH、NO2、NH2、およびQ-Y-X
{ここで、
Qは、-NH-C(=O)-または-O-であり;
Yは、置換されていてもよいC1〜5アルキレン基であり;
Xは、SRS1またはNRN3RN4(ここで、RS1、もしくはRN3およびRN4は、独立して、水素、置換されていてもよいC1〜7アルキル基、C5〜20アリール基、もしくはC3〜20ヘテロシクリル基から選択されるか、またはRN3およびRN4は、一緒になって、それらが結合されている窒素原子と共に、4〜8個の環原子を有する置換されていてもよいヘテロ環式環を形成していてもよい)から選択され;
Qが-O-である場合、Xは、追加的に、-C(=O)-NRN5RN6(ここで、RN5およびRN6は、独立して、水素、置換されていてもよいC1〜7アルキル基、C5〜20アリール基、もしくはC3〜20ヘテロシクリル基から選択されるか、またはRN5およびRN6は、一緒になって、それらが結合されている窒素原子と共に、4〜8個の環原子を有する置換されていてもよいヘテロ環式環を形成していてもよい)から選択されてもよく、
Qが-NH-C(=O)-である場合、-Y-Xは、追加的に、C1〜7アルキルから選択されてもよい}
よりなる群から選択され;
ただし、A、B、Dが群(iii)を表し、かつRN1およびRN2が、それらが結合されている炭素原子と共にモルホリノ基を形成している場合、R4はHではないことを条件とする。
【請求項2】
R4がQ-Y-Xである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Qが-NH-C(=O)-であり、かつXがNRN3RN4である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Qが-O-であり、XがNRN3RN4であり、かつYが置換されていてもよいC1〜3アルキレン基である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
Zが、必要に応じてSおよびOから選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
RN1およびRN2が、それらが結合されている窒素原子と共に、4〜8個の原子を有するヘテロ環式環を形成している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
RN1およびRN2が、それらが結合されている窒素原子と共に、モルホリノおよびチオモルホリノから選択される基を形成している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物と製薬上許容される担体または希釈剤とを含む、組成物。
【請求項9】
治療法に使用するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
DNA-PKを阻害することにより改善される疾患を治療するための医薬の調製における、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項11】
(a) 癌治療における補助剤としての使用、または腫瘍細胞に対する電離放射線もしくは化学療法剤による治療の効力を増強するための使用;あるいは
(b) レトロウイルス媒介疾患の治療;
のための医薬の調製における、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項12】
DNA-PKを阻害することにより改善される疾患の治療に使用するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
(a) 癌治療における補助剤としての使用、または腫瘍細胞に対する電離放射線もしくは化学療法剤による治療の効力を増強するための使用;あるいは
(b) レトロウイルス媒介疾患の治療における使用;
のための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
DNA-PKを阻害することにより改善される疾患を患っている被験体を治療する方法であって、該被験体に請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む、上記方法。
【請求項15】
in vitroまたはin vivoでDNA-PKを阻害する方法であって、細胞を有効量の請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物に接触させることを含む、上記方法。

【公表番号】特表2008−535902(P2008−535902A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505964(P2008−505964)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001369
【国際公開番号】WO2006/109081
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(507205830)クドス ファーマシューティカルズ リミテッド (7)
【出願人】(598176569)キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド (57)
【氏名又は名称原語表記】CANCER RESEARCH TECHNOLOGY LIMITED
【Fターム(参考)】