説明

DNAを単離するための溶出試薬、方法およびキット

【課題】生物学的物質からのDNAの効果的な単離手段の提供
【解決手段】緩衝剤、塩基、キレート剤及び水を含むDNA溶離試薬を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAを単離するための溶出(または溶離)組成物及びそれを用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAのような核酸は、研究及び臨床分析のために分子生物学の分野において広く用いられる。DNAを分析するための一般的な方法は、サザンブロッティング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような方法による増幅及びシークエンシングである。これらの方法を用いて、遺伝子同定、集団スクリーニング、病原体同定及び診断試験を促進するためにDNA配列中の違いを決定する。これらの分析は全て、一貫し且つ確かな結果のための基礎として精製されたDNAサンプルを必要とする。
【0003】
液相及び固相精製の2つの一般的カテゴリーに入る多数の核酸精製方法がある。液相精製では、DNAは液相中にとどまり、一方、不純物は沈殿及び/または遠心分離により除かれる。固相精製では、DNAは固体支持体に結合しており、一方、不純物は選択的に溶出される。両方の精製方法は、多数の工程及びしばしば危険な試薬を必要とする常法、並びにより少ない工程及び通常危険が低い試薬を必要とするより迅速な方法を利用する。
【0004】
通常の液相法を用いて、DNAは密度勾配遠心分離、有機溶媒抽出または塩沈殿を用いて最も一般的に単離される。これらの精製方法を記述するプロトコルは、非特許文献1及び非特許文献2中に与えられる。簡潔に言えば、密度勾配遠心分離、フェノール−クロロホルム抽出及び塩沈殿の液相精製法は、一般に、4つの主要な工程:細胞及び核膜からDNAを遊離させるために細胞を溶解すること;(タンパク質、脂質及び炭水化物のような)不純物を除くこと;アルコール沈殿により濃縮すること;及び次に水和溶液中でDNAを再水和させることを必要とする。これら3つの方法の主要な違いは、第二の工程中に存在し、そこで、不純物は密度差異化、有機−水相分配または選択的塩沈殿によりDNAから除かれる。
【0005】
標本収集カード(ガスリーカード)上で乾燥させた血液を精製するための通常の液相精製法は、非特許文献3により記述されている。その方法は、非特許文献1に記述された液体血液のための方法に厳密に従う。このフェノール抽出法では、生理的食塩水溶液で再水和させることにより収集紙から乾燥した白血球を取り出す。それらの白血球を溶解するためにそれらの細胞を緩衝剤中でインキュベートする。次に、3回のフェノール抽出を実施してタンパク質不純物を除き、続いて、3回エーテル抽出してフェノールを除く。酢酸ナトリウム−エタノール沈殿によりDNAを濃縮し、70%エタノールで洗浄し、次に、標準的なDNA水和溶液中に再水和させる。この方法には、典型的に、2種が危険な(フェノール及びエーテル)いくつかの試薬(10)が必要とされる。これらの常法は、典型的に、非常に精製されたDNA調製物をもたらすが、それらは労力を要し且つ危険である。
【0006】
液相精製でのように、通常の固相法が非常に精製されたDNAを生成するために開発されている。一般に、これらの方法は4つの一般的な工程:細胞及び核膜からDNAを遊離させるために細胞を溶解すること;遊離されたDNAを固体支持体に結合すること;不純物を洗浄して除くこと;及び精製されたDNAを次に溶離させることを必要とする。最初の2つの工程、細胞を溶解すること及び遊離されたDNAを結合することは、通常、高濃度の危険な試薬を必要とする。
【0007】
固相DNA精製では、膜フィルター、磁気ビーズ、金属酸化物及びラテックス粒子を初め
とする多数の固体支持体が用いられている。おそらく最も広く用いられる固体支持体はシリカに基づく粒子である(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5を参照)。例えば、特許文献1中に開示された方法は、シリカ粒子にDNAを結合するために高濃度のカオトロピック溶液を用い、そして全血からDNAを精製するために6回の遠心分離工程及び5種の試薬を必要とする。この方法の不都合な点は、粒子懸濁液の使用、多数の遠心分離工程の使用並びにグアニジニウムイソチオシアネート及びアセトンのような危険な試薬の使用である。
【0008】
通常の固相精製方法を簡略化するための一つの手段は、溶離工程を省き、そして増幅のような次の分析のために固体支持体に結合したままでDNAを用いることである。従って、固定されたDNAを用いることにより、通常、少なくとも1つの試薬及び1つの工程が省かれる。例えば、特許文献1は、血液のような複雑な混合物では存在しないが、DNAを精製するための方法を記述している。上記の方法を用いるが、溶離工程を省くことにより、試薬及び工程の数が1つ減らされる。
【0009】
別の例として、特許文献6は、4回のフェノール洗浄及び5回のイソプロパノール洗浄中に4種の試薬を用いる、乾燥した血液を含有するセルロース濾紙を精製する方法を記述している。乾燥させた後、濾紙の小片を四角から切り、PCR増幅のための基質として直接用いる。分析のために結合したDNAを用いるにもかかわらず、これらの方法は多数の工程及び危険な試薬をなお必要とする。
【0010】
最近、液相及び固相精製の両方のためにより迅速で且つ簡単な方法を開発する傾向がある。これは一つには分析のために必要な時間を減らすDNA増幅アッセイの開発により推進されている。DNAに基づくアッセイの数がその分野において増えるにつれて、生物学的サンプルを処理するより迅速な手段が必要とされる。また、より簡単な方法を用いることは、サンプル取り扱い工程の数を減らすことによりサンプル交差汚染の危険を減らす。さらに、方法がより簡単になるほど、その方法をより容易に自動化できる。
【0011】
DNA精製のための一つの迅速な液相法は、液体血液または血液ステインから金属不純物を除くためにキレート化樹脂を使用する(非特許文献4)。この方法を用いて、血液細胞をまず脱イオン水で洗浄し、次に、キレート化樹脂及び脱イオン水の懸濁液と56℃で15-30分間インキュベートする。このインキュベート後、ボルテックスし、100℃で8分間インキュベートし、再びボルテックスし、そして遠心分離により不純物を除く。この方法は迅速であり(45-75分のうちの完了する)、そして簡単である(2種の試薬のみを必要とする)。
【0012】
液相DNA精製のための別の簡単で且つ迅速な方法は、非特許文献5により記述されている。ヒト全血から出発し、血液細胞を10mM EDTA及び10mM NaClの溶液で2回洗浄し、各洗浄後にミクロ遠心分離により集める。次に、それらの細胞を50mM トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸(Tris-HCl)緩衝剤(pH 8.0)中に再懸濁し、PCR増幅の前に3分間沸騰させる。この精製法では、2種の試薬のみが必要とされ、それらは両方とも一般的に危険でない。さらに、その方法は約15分のみを必要とする。
【0013】
さらにより簡単な単一試薬法が非特許文献6により記述されている。この方法を用いて、3mm直径の血液スポットを3分間オートクレーブし、次に、PCRに適合した緩衝剤(10mM Tris-HCl pH 8.3、50mM KCl、3mM MgCl2及び0.001ゼラチン)中で5分間沸騰させるかまたは10分間超音波処理する。オートクレーブ後、不純物はディスクに結合したままであり、一方、DNAは緩衝剤中に回収される。
【0014】
DNA精製のためのこれらの液相法の3つは全て、低濃度の危険でない試薬及び簡略化さ
れた方法を使用する。しかしながら、(使用前に均一に懸濁されなければならい)樹脂の使用を省くか、細胞の繰返された洗浄を省くか、または血液スポットの面倒なオートクレーブを省くことによりこれら3つの方法(非特許文献4、非特許文献5及び非特許文献6)をさらに簡略化できるはずである。
【0015】
また、固相DNA精製のための迅速で且つ簡単な方法も開発されている。非特許文献7の方法は、乾燥させた血液スポットを非イオン溶剤を含有する緩衝剤で連続して洗浄することを記述している。濾紙からDNAを溶離させるために、プロテイナーゼK溶液を含む別の非イオン溶剤を含有する緩衝剤と各サンプルを65℃で1時間インキュベートする。 95℃より高温で10分間の最後のインキュベートは、プロテイナーゼKを不活性化するために必要である。この方法は必要な試薬の数を3種に減らすが、酵素、長いインキュベート時間及び高いインキュベート温度(すなわち、95℃より高い)を用いるという不都合な点を有する。
【0016】
DNAを分離する手段として膜フィルターを用いる迅速な方法が特許文献7中に開示されている。典型的に、この方法は、全血中に存在する細胞を溶解するために高濃度の溶解試薬を必要とする。次に、ライセートをフィルターに加え、DNAをさらに精製するために第二の溶解試薬、そして次に緩衝剤または水のいずれかで連続して洗浄する。水中または塩化マグネシウムを含有する緩衝試薬中で15分間沸騰させることによりDNAを膜から溶離させる。この固相精製法の不都合な点は、精製及び溶離試薬中のキレート化剤の欠如を含み、それは(例えばヌクレアーゼによる)DNA損傷の可能性を高める可能性がある。さらに、面倒な高温インキュベーション(すなわち、約100℃)の条件がある。
【0017】
別の例として、特許文献8は、細胞を溶剤及び磁気ビーズからなる固相と混合することにより細胞からDNAを精製する方法を記述している。この方法では、細胞を溶剤により先に溶解してDNAを遊離させることができ、それを続いて固相に結合する。あるいはまた、細胞及び固相からなる懸濁液に溶剤を添加してもよく、または細胞、溶剤及び固相を一緒に懸濁してもよく、溶剤により液相中で細胞を溶解させ、続いて、DNAを固相に結合させる。しかしながら、この方法は、液相(すなわち、溶剤または細胞残渣−溶剤懸濁液)を添加するかまたは固相から除く多数の工程を含む。
【0018】
非常に簡単な方法が非特許文献8により提示され、その場合、セルロース収集紙上で乾燥させた血液サンプルから穴をあけた3mm直径のディスクを脱イオン水で洗浄し(2回の30分洗浄)、PCR増幅のために直接用いる。特許文献7上の分析において説明したように、精製試薬として脱イオン水を用いる主要な不都合な点は、キレート化剤の欠如により(例えばヌクレアーゼによる)DNA損傷の可能性が上がることである。さらに、溶剤の欠如により不純物を可溶化する効率が下がる。
【0019】
いくつかの手段により核酸を検出し、定量することができる。一般に、260nmの波長でのUV吸光度を用いる。バックグラウンドの吸光度を測定するために320nmの波長を用いる。また、核酸を検出し、定量するためにヘキスト33258色素の存在下での蛍光測定法(例えば、Hoefer、DyNA Quant蛍光計、Pharmacia Biotech、Piscataway、NJ)、抗体検出片(DNA Dipstick、Invitrogen、Carlsbad、CA)、分岐シグナル増幅(Chiron Corporation、Emeryville、CA)及び定量的PCR増幅(例えば、Applied Biosystems 7700、Perkin Elmer Applied Biosystems Division、Foster City、CA)も用いる。
【0020】
一般的に既知であり、実施されるように、様々な波長で吸光度を測定することによりDNAの純度を確かめることができる。タンパク質、脂質、炭水化物、細胞残渣等のような不純物の存在は測定される吸光度を上げる可能性がある。それに反して、純粋な核酸、特にPCR増幅に用いられるDNAは、確立された波長で実質的により低い吸光度を有する。
【0021】
現在、利用できる多数の核酸増幅系がある。最も一般的に用いられる増幅方法はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であるが、他の標的増幅技術はリガーゼ連鎖反応(LCR)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、自給配列複製(SSRまたは3SR)、鎖置換増幅(SDA)及び転写によりもたらされる増幅(TMA)を含む。
【0022】
サンプルまたは核酸の混合物内の1つまたはそれ以上の標的核酸配列を増幅するためにPCRが慣例的に用いられる。この方法は、特許文献9中に開示されている。この方法で増幅される各標的核酸配列に対して、2本の鎖内の標的核酸の一部に実質的に相補的であるように選択された2個のプライマーで核酸の別個の相補鎖を処理する。一般に、熱安定性酵素(ポリメラーゼ)を用いてプライマーを伸長し、相補的プライマー伸長生成物を生成せしめる。これらがそれらの相補鎖に分離されると、それらは相補的プライマーを標的核酸配列に伸長するための鋳型として働く。分離されると、これらは次にさらなる核酸配列の合成のための鋳型として働く。PCR増幅方法は、一連の簡単な工程を含む。これらは、プライマーと鋳型のハイブリダイゼーション、ポリメラーゼによりもたらされるプライマー伸長生成物の合成、並びに鋳型鎖の鎖と合成された標的核酸配列の分離及びそれに続くアニーリングを引き起こすための温度サイクリングを含む。従って、合成される標的核酸配列の量の指数的増加がある。PCR増幅は非常に高感度の方法である。それ故、非常に高純度の出発サンプルが必要である。
【0023】
LCRは、一次PCR増幅と共にしばしば利用される別の診断技術である。LCRは熱安定性リガーゼを用い、単一塩基対のみが異なるDNA配列の区別を可能にする。LCRはその感度のために非常に純粋なNA鋳型に依存する。
【0024】
精製された核酸をサザンハイブリダイゼーションまたはより一般的に知られているようなサザンブロッティングによりさらに分析することができる。サザンブロッティングは、ゲルから様々な種類の濾紙へのDNAフラグメントの毛管移動である。それにより研究者は制限フラグメントの複雑な集団において稀な配列を検出することができ、そして遺伝子クローニング、逆遺伝学及びヒト遺伝病診断のための制限断片長多型(RFLP)の分析において有用である。サザンブロッティングは、1種またはそれ以上の制限酵素でのDNAの消化及びそれに続くアガロースゲルでの電気泳動によるサイズ分離を含む。次に、DNAをインサイチューで変性させ、ゲルから膜(例えば、ニトロセルロースまたはナイロン)に移す。次に、膜に結合したDNAを放射性標識したDNAまたはRNAにハイブリダイズさせ、プローブに相補的なバンドの位置を突き止めるためにオートラジオグラフィーを用いる。サザンブロッティングは非常に高感度である。10μgのゲノムDNAをフィルターに移し、そして数百ヌクレオチドの長さのプローブにハイブリダイズさせる場合、哺乳類ゲノム中に1回だけ(すなわち、3百万分の1)存在する1000塩基対(bp)の配列を一晩の露出で検出することができる。
【0025】
DNAサンプル調製の分野を前進させるためには、固相DNA精製方法が必要とされる。また、簡単で且つ迅速であるだけでなく、自動化のための適応性を最大にする目的において一般的である、固相精製方法に適応できる試薬及び方法も必要とされる。一般に低濃度のものであり、室温(すなわち、20-25℃)で安定であり、危険が低く(すなわち、腐食性、引火性または毒性が低く)、混合する必要性を省くために非粒子であり、そしてDNAの質を保護する試薬が必要とされる。また、特に臨床試験所において見られるような日常的試験に用いられる場合、水和していようと乾燥していようと、様々な生物学的出発材料を用いて実施することができる数工程の方法も必要とされる。それらの試薬は、PCR緩衝剤の緩衝能力を妨げることにより次のDNA分析方法を阻害してはならず、またはDNA増幅に用いられるポリメラーゼ、プライマーもしくはオリゴヌクレオチドの分解を引き起こしてはならない。また、特に臨床試験所において見られるような日常的試験に用いられる場合、水
和していようと乾燥していようと、様々な生物学的出発材料を用いて実施することができる数工程の方法も必要とされる。
【0026】
また、固相精製方法に用いられる試薬及び方法は、核酸定量、制限酵素消化、DNAシークエンシング、サザンブロッティングのようなハイブリダイゼーション技術等の標準的な方法、並びにリガーゼ連鎖反応(LCR)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、自給配列複製(SSRもしくは3SR)、鎖置換増幅(SDA)及び転写によりもたらされる増幅(TMA)を含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような増幅方法、または他のDNA分析も妨げてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国特許第5,234,809号(Boom等)
【特許文献2】国際公開第WO95/01359号(Colpan等)
【特許文献3】米国特許第5,405,951号(Woodard)
【特許文献4】国際公開第WO95/02049号(Jones)
【特許文献5】国際公開第WO92/07863号(Qiagen GmbH)
【特許文献6】米国特許第5,496,562号(Burgoyne)
【特許文献7】米国特許第5,234,824号(Mullis)
【特許文献8】国際公開第WO96/18731号(Deggerdal)
【特許文献9】米国特許第4,965,188号(Mullis)
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】Sambrook等、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、7.19-7.25、9.16-9.19、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、NY(1989)
【非特許文献2】Ausubel等、Current Protocols in Molecular Biology、4.4.2-4.4.4(1987)
【非特許文献3】McCabe等、Human Genetics、75、213―216(1987)
【非特許文献4】Walsh等、BioTechniques、10、506-513(1991) 非特許文献5:Nordvag等、BioTechniques、12、490-492(1992)
【非特許文献6】Carducci等、BioTechniques、13、735-737(1992)
【非特許文献7】Berlin等、Human Mutation、1、260-261(1992)
【非特許文献8】Makowski等、Nucleic Acids Research、23、3788-3789(1995)
【発明の概要】
【0029】
本発明は、液体または乾燥した生物学的サンプルからDNAを精製し、増幅し、そして特性化するための試薬、方法及び固体支持体を含むキットを提供する。精製されたDNAは、増幅及び制限酵素消化のような次に広く用いられる技術における使用のために適している。
【0030】
本発明の試薬は、一般に、次のDNA分析を著しく阻害しないように低濃度の緩衝剤、塩、酸、塩基、キレート化剤及び/または溶剤を含有する。通常の系では、典型的に、高濃度の1種またはそれ以上のこれらの化合物を含有する試薬をDNA精製のために用いる。これらの低濃度の試薬を用いることにより、DNA精製のために必要な工程の数を減らし、方法をより迅速で且つ簡単にする。また、これらの試薬は一般に、通常のDNA精製のために用いられるものより危険も低い。記述される固相精製法は典型的に2つの主要な工程(例えば洗浄及び乾燥)のみを必要とする。固体支持体(または固体支持マトリックス)からのDNAの除去が必要とされる場合、別の工程(溶離)を用いる。
【0031】
細胞またはタンパク質コート膜を可溶化し、そして/もしくは破壊してDNAの遊離を容易にするため及び/または不純物を可溶化してそれらの除去を容易にするために市販され
ているDNA精製試薬を本発明に用いる。DNA精製試薬の組成は、PCR増幅のような次のDNA分析とそれが適合する(すなわち、著しく阻害しない)ようにすべきである。例えば、DNA精製試薬のモル濃度は低いべきである。
【0032】
固相精製後に精製されたDNAを固体支持体から取り出す(または取り除く)ためにDNA溶離(本明細書では、「溶離」と「溶出」の語は互換可能に使用されている)試薬を用いることができる。DNA溶離試薬は:pHを少なくとも約7(好ましくは少なくとも約8、より好ましくは少なくとも約9、そして最も好ましくは少なくとも約10)で保つための緩衝剤;試薬pHを調整するための塩基;キレート化剤(本明細書では、「キレート化剤」と「錯化剤」の語は互換可能に使用されている);及び脱イオンし且つ実質的にヌクレア−ゼを含まない水を含む。緩衝剤は好ましくは少なくとも約8のpKaを有する。好ましい緩衝剤はトリスである。塩基は好ましくは、試薬のpHを7ほどまでに上げることができるものである。塩基は好ましくはアルカリ金属水酸化物である。そのようなアルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムを含む。キレート化剤は好ましくはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはシクロへキサンジアミン四酢酸(CDTA)である。しかしながら、ヌクレア−ゼ活性を下げることができるあらゆるキレート化剤が使用のために適している。緩衝剤、塩基及びキレート化剤の合わせた量は低濃度のものであり(典型的には、約20mMにすぎない)、それをPCR増幅または制限酵素消化のような次のDNA分析と一般に適合する(すなわち、著しく阻害しない)ようにする。
【0033】
適当な固体支持体は、セルロース、酢酸セルロース、ガラス繊維、ニトロセルロース、ナイロン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン及びそれらの組み合わせを含む。好ましい固体支持体は、標本収集のために一般に用いられるもののようなセルロースから構成される。
【0034】
乾燥による溶解または非イオン性溶剤を含有するDNA精製試薬での処理に組織、細胞膜、細胞壁またはウイルスタンパク質コートが耐性である場合、溶解及び次の精製を助けるために固体支持体を溶解試薬で処理することができる。常法では、この溶解工程を典型的に固体支持体と生物学的物質を接触させる前に実施する。しかしながら、固体支持体に溶解試薬を添加することにより、工程を省き、方法を簡略化する。好ましくは、溶解試薬を固体支持体に加え、次に固体支持体上で乾燥させ、その後、処理した固体支持体と生物学的物質を接触させるが、これは必要な条件ではない。
【0035】
好ましくはDNAの精製のために溶解試薬を用い、それは十分に細胞またはタンパク質コートを溶解してDNAを遊離させるために有効な溶剤の量;DNA損傷を減らすためのキレート化剤;水;及び場合により約2より大きいpHを与えるために有効な緩衝剤からなることができる。溶剤は好ましくは陰イオン性である。陰イオン溶剤の例は、N-ラウロイルサルコシンまたはドデシル硫酸塩を含む。ドデシル硫酸ナトリウムが特に好ましい陰イオン溶剤である。緩衝剤は好ましくは約6より大きいpHを与えるために有効である。トリスが特に好ましい緩衝剤である。キレート化剤は好ましくはEDTAまたはCDTAである。
【0036】
場合により、溶解試薬は、生物学的サンプル中に存在するRNAを分解する目的のために、RNアーゼAのようなRNA消化酵素を含むことができる。RNA消化酵素を含むことにより、常法において典型的に必要とされるような別個のRNアーセ゛消化工程の必要性が省かれる。
【0037】
また、本発明は生物学的サンプルからDNAを精製するための方法も提供する。生物学的サンプルは、例えば、細胞またはウイルス懸濁液、体液、全血、骨髄、軟層、血漿、培養細胞、全ての懸濁液(例えば、細菌、組織ホモジネート)及び環境サンプルを含む。環境サンプルは、例えば、空気、水または土壌を含む。固相精製のために、本発明の方法は、
固体支持体と生物学的サンプルを接触させることを含む。不純物の可溶化、細胞壁の溶解、細胞からのDNAの遊離及び固体支持体へのDNA結合を容易にするために生物学的サンプルを含有する固体支持体にDNA精製試薬を添加する。DNA精製試薬で固体支持体を(好ましくは少なくとも2回)洗浄することにより、不純物が固体支持体から除かれる。結合し、精製されたDNAを含有する固体支持体を増幅または他の分析に直接用いることができる。あるいはまた、DNA溶離試薬を用いてDNAを取り出すことができる。固体支持体からDNAを溶離させるために、DNA溶離試薬を固体支持体と接触させ、インキュベートし、次に取り除く。
【0038】
本発明の別の態様は、1種またはそれ以上の任意の補助試薬とDNA精製試薬及び/またはDNA溶離試薬の組み合わせを含む。赤血球細胞を溶解し、次に哺乳類全血中に含まれる白血球からのNAの精製を容易にするために第一の補助試薬、RBC溶解試薬を用いる。DNA精製前に酵母及びグラム陽性細菌の細胞壁を消化するために第二及び第三の補助試薬、細胞懸濁試薬及び溶解酵素試薬を一緒に用いる。混入するタンパク質を消化するために第四の補助試薬、タンパク質消化試薬を用いる。DNA及び/または細胞を必要なように懸濁するために第五の補助試薬、等張溶液を用いる。
【0039】
本発明のさらなる態様は、酵母及びグラム陽性細菌からDNAを精製するための方法である。その方法は、細胞懸濁試薬と生物学的サンプルを合わせることを含む。細胞懸濁試薬は、緩衝剤、キレート化剤及び細胞懸濁液を生成せしめるための細胞沈殿防止剤を含む。細胞懸濁液に溶解酵素試薬を添加する。溶解酵素試薬は、細胞壁を消化するための酵素、緩衝剤、試薬のpHを調整するための酸及び2種の安定剤を含む。消化した細胞を上記の液相または固相精製に用いることができる。
【0040】
また、本発明は、生物学的サンプルから実質的に純粋なDNAを調製するための指示手段及び以下のもの:DNA精製試薬、DNA溶離試薬、溶解試薬、RBC溶解試薬、細胞沈殿防止試薬、溶解酵素試薬、等張溶液またはそれらのあらゆる組み合わせの一つまたは全部を含んでなるDNAを精製するためのキットも提供する。また、キットは、溶解試薬で処理されていないかまたは処理されたいずれかの固体支持体も含むことができる。さらに、キットは、固体支持体を入れるための容器を含むことができる。実質的に純粋な核酸は、例えば、DNA増幅、逆転写及び制限酵素消化のような、当業者に既知の次の分析における使用のために適当なものである。
【発明の詳細な記述】
【0041】
本発明は固体支持体を導入して生物学的サンプルからのDNAを精製し、増幅し、特性化するための試薬、方法及びキットを提供する。そのような生物学的サンプルには、DNAのような核酸(NAs)を含有する典型的には水性混合物中の、又は乾燥された生物材料が含まれ、原核もしくは真核細胞の複合生物学的混合物(complex biological mixtures)を含む。典型的には、生物材料は炭水化物、タンパク質及び脂質も含有する。生物材料には以下が含まれる:体液、例えば全血、骨髄、血斑、血清、血漿、バフィーコート試料、唾液及び脳脊髄液、頬スワブ(buccal swabs)、培養細胞、バクテリアの細胞懸濁液又は組織ホモジネート、固体の動物組織、例えば心臓、肝臓及び脳、体の廃物、例えば便及び尿、空気、水、沈渣(sediment)もしくは土壌から採取された環境試料、植物組織、酵母、バクテリア、ウィルス、マイコプラズマ、菌・カビ、原生動物、リケッチア及び他の小さい微生物細胞。これらの生物材料のライセート又はホモジネートも用いることができる。
【0042】
好ましくは、本発明の固体支持体が導入された試薬、方法及びキットはいずれかの形態の実質的に純粋なDNAを与える。DNAは例えば染色体もしくはゲノムDNA、染色体外DNA(ミトコンドリア及びプラスミドDNAのような)、1本鎖DNA及びウィルス
DNAから成ることができる。
【0043】
これらの固体支持体が導入された試薬、方法及びキットを用い、実質的に高純度のDNAを得ることができる。DNAの純度は、感受性(sensitive)RT−PCR及び/又はPCRアッセイのようなその後の分析を妨げ得る不純物、例えばタンパク質の実質的な減少により決定される。本明細書で用いられる場合、「純粋」は実質的に炭水化物、タンパク質及び脂質の不純物を含有せず、精製されたDNAを当該技術分野における熟練者に既知のその後の分析において用いることができることを意味する。かくして本発明に従って得られる単離され且つ精製されたDNAはその後の分析で用いるのに適している。好ましくは、本発明の方法及びキットは広い範囲のDNAを精製し、そのすべてを広い分子量範囲に及んで回収できる。
【0044】
本発明はDNAの精製のために低濃度の試薬を用いるための方法を記載する。これらの方法は一般に、DNA精製のために典型的に用いられる方法より迅速で簡単である。これらの精製段階から得られる精製されたDNAを純度、収率、寸法、増幅能力などに関して評価することができる。
【0045】
生物学的サンプルには例えば細胞もしくはウィルス懸濁液、体液及び組織ホモジネートが含まれる。生物学的サンプルが細胞もしくはウィルスから成る場合、細胞もしくはウィルスをこの段階の前に計数することができる。計数は標準的細胞カウンティング法、例えば電子的細胞カウンター(例えばCBC5 Coulter Counter,Coulter Corp.,Hialeah,FL)又は視覚的カウンター(例えばヘマシトメーター(hemacytometer),Bright Line,American Optical,Buffalo,NY)を用いて行うことができる。
【0046】
固相DNA精製のための方法は、ライシング試薬(lysing reagent)で処理されていることができる固体支持体に生物学的サンプルを適用することを含む。固体支持体との接触は細胞及び核膜を可溶化及び/又は破裂させ、それによりDNAを放出させ、それが次いで固体支持体に結合する。固体支持体を加熱して細胞及び核膜の可溶化及び破裂を助長することができる。放出されるDNAは固体支持体に結合し、第1の試薬の添加による不純物の除去を可能にする。この第1の試薬は商業的に入手可能なDNAのための精製試薬であることができる。不純物は第1の試薬中で可溶化され、遠心、ピペット使用、圧力又は真空のような適した手段により除去され、DNAが固体支持体に結合して残される。かくして方法は1種のみの試薬及び2つの主要な段階(すなわち洗浄及び過剰の水溶液の除去)を用いる。DNAが固体支持体から取り出されたら、追加の試薬であるDNA溶離試薬を加え、さらに別の段階(溶離)を行う。
【0047】
固相DNA精製の場合、精製されたDNAを分析の前に固体支持体から取り出すことが必要であり得る。本発明は、固体支持体からのDNAの溶離のための低濃度DNA溶離試薬も含む。低濃度DNA溶離試薬の組成は変わり得るが、合計濃度はすべての組成の場合に典型的に20mM未満である。
【0048】
本明細書において「DNA溶離試薬」と呼ぶ低濃度DNA溶離試薬は固体支持体からDNAを取り出すことができる。それは塩基、緩衝剤、キレート化剤及び水を、少なくとも約7、好ましくは少なくとも約8、より好ましくは少なくとも約9、そして最も好ましくは少なくとも約10のpHを保持するような組合わせにおいて含有する。
【0049】
DNA溶離試薬はpHを少なくとも約7に保持するための緩衝剤を含有し、好ましくは少なくとも約8のpKaを有する。適した緩衝剤にはN,N−ビス[2−ヒドロキシエチル]グリシン(Sigma Chemical Company.St.Louis,M
Oから商品名「BICINE」の下に入手可能)、3−[シクロヘキシルアミノ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(Sigma Chemical Companyから商品名「CAPSO」の下に入手可能)及びTrisが含まれるがこれらに限られるわけではない。緩衝剤は、PCR増幅のようなその後のDNA分析に有意に妨害性でない量で用いられる。かくしてそれは典型的には約20mM以下の量で用いられる。好ましくは緩衝剤はTrisであり、試薬の合計容積に基づいて約0.001〜20mM、より好ましくは約0.01〜15mM、そして最も好ましくは約1〜10mMの量で用いられる。
【0050】
緩衝剤の他に、DNA溶離試薬は試薬のpHを調節するための塩基を含有する。塩基は、PCR増幅のようなその後のDNA分析に有意に妨害性でない量で用いられる。かくして塩基は典型的には約20mM以下の量で用いられる。そのような塩基には水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムが含まれるが、これらに限られない。好ましくは塩基は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウムのようなアルカリ金属水酸化物であり、試薬の合計容積に基づいて約0.2〜20mM、より好ましくは約0.5〜15mM、そして最も好ましくは約1〜5mMの量で用いられる。
【0051】
緩衝剤及び塩基の他に、DNA溶離試薬はキレート化剤を含む。キレート化剤は、固体担体から取り出す間及びその後のDNA損傷(例えばヌクレアーゼ活性による)を減少させてDNAをその後の分析に適したものとするのに有効な量で用いられる。適したキレート化剤は水性媒体中で2価のカチオンをキレート化することができるものである。そのようなキレート化剤にはエチレンジアミンテトラアセテート(EDTA)及びシクロヘキサンジアミンテトラアセテート(CDTA)が含まれるがこれに限られない。好ましくはキレート化剤はEDTAである。さらに、キレート化剤はPCR増幅のようなその後のDNA分析に有意に妨害性でない量で用いられる。かくしてそれは典型的には約0.1mM以下の量で用いられる。好ましくはキレート化剤は試薬の合計容積に基づいて約0.0001〜0.1mM、より好ましくは約0.005〜0.05mM、そして最も好ましくは約0.0015〜0.015mMの量で用いられる。
【0052】
緩衝剤、塩基及びキレート化剤は水と一緒になってDNA溶離試薬を形成する。水は好ましくは脱イオン化され且つヌクレアーゼを含有しない。緩衝剤、塩基及びキレート化剤の合計された量は低濃度のものであり(典型的には約20mM以下)、PCR増幅又は制限酵素消化のようなその後のDNA分析と一般的に適合するものとなっている(すなわち有意に妨害性でない)。
【0053】
生物材料源からのDNAの精製において用いられるすべての試薬は、増幅及び他の分析と適合性であるように調製されている。試薬は低濃度の緩衝剤、塩、洗剤及びキレート化剤を有し、それは試薬を増幅分析と適合するものとしている。最終的な精製された核酸は、固相核酸抽出のためにDNA溶離試薬中に懸濁される。従ってこれらの試薬は下流のDNA分析において用いるために最適化されている。そのようなDNA分析にはRT−PCR及びPCRが含まれ得るがこれらに限られない。
【0054】
3つの製造者、Perkin Elmer、Promega及びRoche Molecular Biochemicalsからの現在利用できるPCR増幅反応は、典型的には表1に示す濃度のTris緩衝剤、塩及び非イオン性洗剤を8〜10の塩基性pHにおいて有する1X緩衝液中で行われる。
【0055】
【表1】

【0056】
ライシング試薬及び溶離試薬はPCR系において見られる濃度と同じ大きさの程度か、又はそれより有意に低いTris緩衝剤濃度を有する。溶離試薬中のTris緩衝剤の濃度は典型的には1〜10mMの範囲であり、増幅プロセスを妨害したり、又は有意に損なったりしないであろう。
【0057】
本発明の他の側面は、DNA精製試薬及び/又はDNA溶離試薬と1種もしくはそれより多い任意の補助試薬の組合わせを含む。これらの補助試薬は核酸精製のための当該技術分野における熟練者に既知の試薬を含む。しかしながら本発明の方法及びキットはこれらの特定の補助試薬の使用に制限されず、それは当該技術分野における熟練者が同じ目的を達成するために他の試薬及び/又は方法を用いることができるからである。又、DNA精製試薬及び/又はDNA溶離試薬を、必要なら他の試薬及び/又は方法と一緒に用いることもできる。
【0058】
第1の補助試薬は赤血球を溶解し(lyse)、哺乳類の全血中に含有される白血球からのDNAのその後の精製を容易にするために用いられる赤血球ライシング試薬である。この試薬を本明細書で「RBC 溶解試薬(RBC Lysis Reagent)」と呼び、それは塩化アンモニウム、重炭酸ナトリウム及びEDTAを含有する。好ましくは、塩化アンモニウムはRBC溶解試薬中で、試薬の合計容積に基づいて約140〜150mM、そしてより好ましくは約142〜146mMの濃度で用いられる。好ましくは、重炭酸ナトリウムは試薬の合計容積に基づいて約0.5〜5mM、そしてより好ましくは約0.5〜2mMの濃度で用いられる。好ましくは、EDTAは試薬の合計容積に基づいて約0.5〜10mM、そしてより好ましくは約0.75〜1.25の濃度で用いられる。RBC溶解試薬は、好ましくは上記の純度の水を含有する。RBC溶解試薬を血液の1体積に対してRBC溶解試薬の3体積の量で哺乳類全血と接触させる。試料を約1〜30分、好ましくは約10分インキュベートし、15,000における20秒間の遠心により白血球を試料から分離する。上澄み画分の約1〜3%を除いてすべてを捨て、DNA精製のために利用できる白血球を残す。
【0059】
RBC溶解試薬は、哺乳類全血と合わされると、実質的に無損傷の白血球を含有する赤血球ライゼートを形成する。それは実質的に無損傷のタンパク質外被を有するウィルスも含有し得る。白血球(及び存在し得る細胞性ウィルス)を次いで赤血球ライゼートから分離する。白血球を直接、又は固体支持体への適用の後に核酸精製試薬と合わせることができる。
【0060】
第2及び第3の補助試薬は、DNA精製の前に酵母及びグラム−陽性バクテリアから細胞壁を消化するために一緒に用いられる。本明細書で該試薬を「細胞懸濁試薬(Cell
Suspension Reagent)」及び「溶解酵素試薬(Lytic Enzyme Reagent)」と呼ぶ。それらは核酸精製試薬による溶解に抵抗性であり得る細胞壁を消化するために、DNA精製法の第1段階で用いられる。細胞懸濁試薬を生物学的サンプルと合わせて細胞懸濁液を形成する。溶解酵素試薬を細胞懸濁液と合わせて消化された細胞を含有する混合物を形成する。これらの消化された細胞を次いで例えば遠心により混合物から分離し、次いで直接、又は固体支持体への適用の後に核酸精製試薬と接触させる。
【0061】
細胞懸濁試薬は細胞を無損傷に保ち、その間にその細胞壁が溶解酵素により消化される。この試薬は、試薬のpHを約7〜8.5、そしてより好ましくは約7.5〜8.0に保持するために緩衝剤、好ましくはTrisを含有する。緩衝剤は試薬の合計容積に基づいて好ましくは約0.05〜0.15M、そしてより好ましくは約0.08〜0.12Mの濃度で用いられる。細胞懸濁試薬はDNA損傷を減少させるためにキレート化剤、好ましくはEDTAも含有する。キレート化剤は試薬の合計容積に基づいて好ましくは約0.05〜0.15Mの濃度、そしてより好ましくは約0.08〜0.12Mにおいて用いられる。緩衝剤対キレート化剤の好ましいモル比は約1:1である。この試薬は細胞の細胞壁が消化されている間に細胞を無損傷に保つために、ソルビトールのような薬剤も含有する。この薬剤は試薬の合計容積に基づいて好ましくは約0.8〜1.0M、そしてより好ましくは約0.85〜0.95Mの濃度で用いられる。緩衝剤、キレート化剤及び細胞懸濁剤は水中で合わされる。水は好ましくは脱イオン化され且つ実質的にヌクレアーゼを含有しない。
【0062】
溶解酵素試薬は、酵母細胞壁に含有されるベータ−1,3−グルコースポリマーを消化する溶解酵素を含む。この酵素の精製された形態はSigma Chemical Company,St.Louis,MOのような商業的供給源から容易に入手可能である。この酵素の活性は好ましくはmg当たりに少なくとも200単位、より好ましくはmg当たりに少なくとも1000単位、そして最も好ましくはmg当たりに少なくとも約5,000単位である。酵素に加え、溶解酵素試薬は試薬のpHを保持するために緩衝剤、好ましくはTrisを含有する。Trisは試薬の合計容積に基づいて好ましくは約1〜20mM、より好ましくは約5〜15mM、そして最も好ましくは約8〜12mMの濃度で用いられる。溶解酵素試薬のpHは、塩酸のような酸を用いて約7.5〜8.2のpHに調節される。さらに、溶解酵素試薬は2種の安定化剤を含有する。第1は好ましくはグリセロールである。グリセロールは好ましくは約20〜50%グリセロール(容積/容積)、より好ましくは約24〜40%グリセロール、そして最も好ましくは約28〜32%グリセロールの量で用いられる。第2の安定化剤は好ましくは塩化カルシウムである。塩化カルシウムは試薬の合計容積に基づいて好ましくは約0.5〜5mMの濃度、そしてより好ましくは約0.75〜1.25mMにおいて用いられる。酵素、緩衝剤、酸及び2種の安定化剤は水中で合わされる。水は好ましくは脱イオン水である。好ましくは試薬を約0.2μMの孔径のフィルターに通過させることにより精製する。
【0063】
典型的には、第2及び第3の補助試薬を用いて例えば酵母の細胞壁を消化するために、300μlの細胞懸濁試薬を約1億個の酵母細胞の10〜20μlの懸濁液に1.5μlの溶解酵素試薬と一緒に加え、37℃で30分間インキュベートする。15,000xgで1分間遠心した後、上澄み画分を除去し、DNA精製に利用できる消化された細胞を残す。
【0064】
本明細書で「タンパク質消化試薬(Protein Digesting Reage
nt)」と呼ぶ第4の補助試薬であるタンパク質消化試薬は、特に固体組織試料中の汚染タンパク質を消化するために用いられる。この酵素の精製された形態であるプロテイナーゼ K(Proteinase K)はSigma Chemical Companyのような商業的供給源から容易に入手可能であり、約0.1mg/mLの濃度で用いられる。36℃より高い温度における加熱はこの酵素の活性を促進する。
【0065】
第5の補助試薬である等張液(Isotonic Solution)は、典型的に細胞もしくはDNA懸濁液を作るために用いられる。適した等張液は塩に基づき、多くの場合にtris、クエン酸塩又はリン酸塩で緩衝されている。1つの例はリン酸塩緩衝食塩水(PBS)である。
【0066】
固相精製のためには、適する固体支持体は、セルロース、酢酸セルロース、ガラス繊維、ニトロセルロース、ナイロン、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデンおよびそれらの組み合わせを包含するがしかしこれらに制限されない。好ましい固体支持体は、シュライヒャー アンド シュエル(Schleicher and Schuell)(ニューハンプシャー州キーン)から入手可能な試料収集紙903、もしくはワットマン インターナショナル リミテッド(Whatman International Ltd)(イギリスケント州スプリングフィールドミル)から入手可能なBFC180に見出されるようなセルロース繊維から構成される。別の好ましい固体支持体はポリオレフィンである。ポリオレフィンは、本明細書で、グラフトコポリマーのような改質ポリマーを包含するいずれかのオレフィンを基材とするコポリマーもしくはホモポリマーと定義される。許容できるポリオレフィンは、低、中および高密度ポリオレフィン、ならびに線状の低密度ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブチレンを包含する。好ましくは、ポリオレフィンの固体支持体は親水性であり、そして、アメリカン フィルトローナ インク(American Filtrona,Inc.)(ヴァージニア州リッチモンド)から入手可能なフィルトローナ[Filtrona](商標)ポリオレフィンで見出されるもののような低密度ポリエチレンおよびポリプロピレン繊維の混合物から構成される。最も好ましくは、固体支持体は、均一な流動の特徴および低背圧を与える方向性に多孔質であり、相互に交錯かつ結合される繊維から構成され、回転チューブ(spin tube)、ウェル、カートリッジもしくは別の容器中への容易な充填を見込むように弾性であり、約50〜90%の気孔率を有し、そして約20〜30μmの直径を有する繊維から構成される。
【0067】
本発明の試薬との使用に適する固体支持体の大きさは、生物学的物質の体積に従って変動してよい。例えば、0.5mmの厚さを有するシュライヒャー アンド シュエル(Schleicher and Schuell)の903紙を固体支持体に使用する場合、3mm直径の円板は約3μlの血液を保持することができ、また、8mm直径の円板は約25μlの血液を保持することができる。生物学的物質の体積が増大する際に、厚さおよび/もしくは直径がそれに従って増大してよい。
【0068】
本発明の試薬との使用に適する固体支持体の形状は、生物学的物質の型に従って変動してよい。例えば、頬側、鼻咽頭、膣、尿道および直腸のサンプルを得る場合には、スワブが適切な収集装置である。血液もしくは唾液サンプルのような体液を得る場合には、固体支持体は、例えばシート、予め切断された円板もしくは筒であってよい。必要な場合は、固体支持体を適切な容器、例えば(ガスリー(Guthrie)カードのような)紙の形態、微小遠心管、回転チューブ、96穴プレート、チャンバーもしくはカートリッジ中に含有する。
【0069】
固体支持体は、溶解およびその後の精製で補助するために溶解試薬で処理してよい。好ましくは、固体支持体を処理するのに使用される溶解試薬の体積は、その固体支持体の総
体積の最低1/10である。より好ましくは、溶解試薬の体積は固体支持体の総体積の最低半分であり、そして最も好ましくは、溶解試薬の体積は固体支持体の総体積に対応する。固体支持体の総体積は、その固体支持体の外的境界により規定される体積を指す。生じる生成物は、本明細書で「溶解マトリックス(Lysing Matrix)」と称される、DNAのような核酸の単離のための溶解マトリックスである。溶解試薬を固体支持体と組み合わせることにより、DNA精製法は、別個の溶解段階を除去することにより単純化される。好ましくは、溶解試薬を固体支持体に適用し、そしてその後、生物学的物質との接触前に固体支持体上で乾燥する。対照的に、慣習的系は、典型的には、生物学的物質を、固体支持体との接触に先立つ1段階として溶解試薬と接触させるか、もしくは、生物学的物質を固体支持体とともに懸濁し、その後、溶解試薬を、生じる懸濁液に添加する。
【0070】
場合によっては、溶解試薬は、生物学的サンプル中に存在するRNAを消化することが必要である場合にはRNA消化酵素を包含し得る。RNA消化酵素を固体支持体と組み合わせることにより、DNA精製方法は、別個の消化段階を除去することにより単純化される。好ましいRNA消化酵素はRNアーゼAである。この酵素の精製された形態は、シグマ ケミカル カンパニー(Sigma Chemical Company)、ミズーリ州セントルイスのような商業的供給源から容易に入手可能である。好ましくは、RNアーゼAを、1mlあたり約0.005〜1mg、そしてより好ましくは1mlあたり約0.01〜0.1mgの量で溶解試薬(Lysing Reagent)に添加する。この酵素の活性は、好ましくは、1mgあたり最低約50単位、そしてより好ましくは1mgあたり最低約100単位である。
【0071】
好ましい一態様において、溶解試薬は、陰イオン性洗剤およびRNA消化酵素を包含するが、しかしキレート剤もしくは緩衝剤を包含しない。適する陰イオン性洗剤は、細胞を溶解するそして/もしくはタンパク質および脂質を可溶化することが可能である。こうした陰イオン性洗剤は、ドデシル硫酸の塩(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム塩)、ならびにN−ラウロイルサルコシンもしくはドデシル硫酸塩を包含するがしかしこれらに制限されない。好ましくは、陰イオン性洗剤はドデシル硫酸塩である。好ましくは、それは、試薬の総体積に基づき、約0.1〜10%、より好ましくは0.2〜1.6%、そして最も好ましくは約1.0〜1.2重量/体積%の量で使用される。細胞培養懸濁液のような高RNA含量を伴う生物学的サンプルには、RNA消化酵素が必要である。好ましいRNA消化酵素はRNアーゼAである。高RNA含量を伴う生物学的サンプルには、商業的に入手可能なRNアーゼA(例えば、4mg/mLの濃度で入手可能なピュアジーン[Puregene]RNアーゼA、ジェントラ システムズ インク(Gentra Systems,Inc.)、ミネソタ州ミネアポリス)を、1mLあたり約0.005〜1mg、そしてより好ましくは1mLあたり約0.01〜0.1mgの量で陰イオン性洗剤溶液に添加する。この酵素の活性は、好ましくは、1mgあたり最低約50単位、そしてより好ましくは1mgあたり最低約100単位である。
【0072】
なお別の好ましい態様において、溶解試薬は陰イオン性洗剤のみを包含するが、しかし、キレート剤、緩衝剤もしくはRNA消化酵素を包含しない。陰イオン性洗剤は上述されたとおり使用される。
【0073】
本発明は生物学的サンプルからのDNAの精製方法もまた提供する。固相精製には、本発明の方法は、典型的には、ただ1種の試薬および2個の主段階(例えば、洗浄および乾燥)を使用する。当該方法は、生物学的サンプルを、細胞を溶解するために固体支持体と接触させて、それによりDNAを遊離させることを必要とし、DNAはその後固体支持体に結合する。商業的に入手可能なDNA精製試薬を、可溶化および不純物の除去を助長するため固体支持体に添加する。この試薬での固体支持体の連続的洗浄は、不純物が固体支持体から除去されることを引き起こす。その後の分析での使用に先立ち、過剰の水性溶液
を、実施例1、2および3に記述されるとおり蒸発もしくは遠心分離のような方法により精製されたDNAを含有する固体支持体から除去することができる。
【0074】
その後の分析での、精製されたDNAを含有する固体支持体の使用に対する一代替として、DNAは固体支持体から取り出されてよい。追加の試薬および追加の段階(溶出)を、DNAが固体支持体から取り出される場合は使用する。好ましくは、DNA溶出試薬(Eluting Reagent)を、固体支持体からDNAを取り出すのに使用する。これは実施例4、5、7、8、9、10、11および13に具体的に説明される。
【0075】
好ましくは、当該方法は、DNAを含有する固体支持体をDNA溶出試薬と接触させること、そしてインキュベートすることを必要とする。好ましくは、DNA溶出試薬の量は、約1体積の固体支持体に対し約0.25体積のDNA溶出試薬であり、より好ましくは、当該体積は約1体積の固体支持体に対し約1体積の試薬であり、そして最も好ましくは、当該体積は約1体積の固体支持体に対し約4体積の試薬である。
【0076】
インキュベートの温度は、好ましくは最低約30℃、より好ましくは最低約80℃、そして最も好ましくは最低約100℃である。インキュベートの持続期間は、好ましくは最低約2分、より好ましくは最低約5分、そして最も好ましくは最低約10分である。DNAは、遠心分離、真空もしくは圧のような標準的方法により固体支持体から取り出される。
【0077】
好ましい一態様において、固体支持体は、溶解試薬が固体支持体に結合されるように溶解試薬で処理される。溶解試薬は、共有結合で、非共有結合で、固体支持体の内的空間内に捕捉されることにより、もしくは固体支持体の素材(例えば繊維、ビーズなど)上に付着されることにより結合されてよい。生じる生成物が溶解マトリックスである。好ましくは、溶解試薬は固体支持体上で乾燥させられる。
【0078】
溶解試薬は、好ましくは固体支持体の総体積の最低1/10に対応する体積で、より好ましくは固体支持体の総体積の最低半分に対応する体積で、そして最も好ましくは、固体支持体の少なくとも総体積に対応する体積で、固体支持体に添加される。
【0079】
本発明の別の態様においては、溶解試薬は、固体支持体の作成で使用された素材(例えば繊維、ビーズなど)に直接添加されてよく、そして、好ましくは、それが最終の使用者に準備のできた(user-ready)形態(例えば、紙、スワブ、円板、栓、カラムなど)に作成される前に乾燥させられてよい。なお別の態様において、固体支持体は、結晶もしくは粉末の形態の溶解試薬で処理されてそして固体支持体に結合させられてよい。
【0080】
DNAは、生物学的物質(培養細胞、全血など)のサンプルが溶解マトリックスを接触することを可能にすることにより単離される。サンプルは溶解マトリックスとの接触前に溶解試薬で処理してよいとは言え、精製の効率およびDNAの収量は、生物学的物質が予め溶解されない場合に大きく向上される。従って、好ましくは、生物学的物質は、細胞を溶解しかつタンパク質コートおよび脂質を可溶化する溶解マトリックスに直接添加される。溶解の効率は、最低30℃より上で、より好ましくは最低50℃より上で、そして最も好ましくは最低80℃より上で加熱することにより向上させることができる。サンプルを溶解マトリックス内で最低1分インキュベート後に、それをDNA精製試薬で洗浄する。DNA精製試薬での溶解マトリックスの連続的洗浄は、不純物が溶解マトリックスから除去されることを引き起こす。好ましくは、DNAの精製に使用されるDNA精製試薬の量は、約1体積の生物学的物質に対し約0.5体積のDNA精製試薬、より好ましくは、約1体積の生物学的物質に対し約2体積のDNA精製試薬、そして最も好ましくは、約1体積の生物学的物質に対し約5体積のDNA精製試薬である。好ましくは、DNA精製試薬
での洗浄の回数は最低2回、そしてより好ましくは最低3回である。本方法は実施例7、8、9、10、12および13で具体的に説明される。
【0081】
本発明のさらなる一態様は、酵母およびグラム陽性細菌からのDNAのような核酸の精製方法である。これらの生物学的物質は、典型的には溶解に対しより抵抗性である。当該方法は、生物学的サンプルを、第一の補助試薬、すなわち細胞懸濁試薬(Cell Suspension Reagent)(例えば、細胞懸濁溶液(Cell Suspension Solution)、ジェントラ システムズ インク(Gentra Systems,Inc.)、ミネソタ州ミネアポリス)と組み合わせることを必要とする。細胞懸濁試薬は、緩衝剤、キレート剤、および細胞懸濁液を形成するための細胞懸濁剤を包含する。細胞懸濁液に、第二の補助試薬、すなわち溶解酵素試薬(Lytic Enzyme Reagent)(例えば、溶解酵素溶液(Lytic Enzyme Solution)、ジェントラ システムズ インク(Gentra Systems,Inc.)、ミネソタ州ミネアポリス)を添加する。溶解酵素試薬は、細胞壁を消化するための酵素、緩衝剤、試薬のpHを調節するための酸および2種の安定剤を包含する。消化された細胞を、上述された液相もしくは固相精製に使用することができる。
【0082】
本発明の別の局面として、特別のプロトコルを包含するキットが提供され、これは、本明細書に記述される試薬および場合によっては固体支持体と共同して、本発明の方法に従って生物学的物質からDNAを精製するのに使用することができる。このキットは説明手段を包含する。応用に依存して、このキットは、DNA精製試薬、DNA溶出試薬、RBC溶解試薬、細胞懸濁試薬、溶解酵素試薬、タンパク質消化試薬(Protein Digesting Reagent)、等張溶液(Isotonic Solution)、固体支持体、溶解試薬および/もしくはRNA消化酵素で処理された固体支持体、固体支持体を含有するための容器、廃液を含有するための容器、ならびにいかなる溶出されたDNAも含有するための容器のいずれかの組み合わせもまた包含してよい。2種の好ましいDNA精製キット(Purification Kit)を以下に記述する。
【0083】
固相精製を使用する、DNAを精製するための1キットは、DNA精製試薬(例えば、ジェネレーション[GENERATION](商標)DNA精製溶液(Purification Solution)、ジェントラ システムズ インク(Gentra Systems,Inc.)、ミネソタ州ミネアポリス)、説明手段、溶解マトリックス、および溶解マトリックスを保持するための容器を含有する。本キットでは、精製されたDNAはその後の分析のため固体支持体に結合されたままである。本キットの使用を具体的に説明する方法を実施例5および28に示す。
【0084】
固相精製およびその後の溶出を使用する、DNAを精製するための1キットは、DNA精製試薬、説明手段、DNA溶出試薬、固体支持体もしくは溶解マトリックス、固体支持体もしくは溶解マトリックスを保持するための容器、廃棄物を収集するための1個もしくはそれ以上の容器、そして精製されたDNAを収集するための容器を含有する。本キットの使用を具体的に説明する方法を実施例4、5、7、8、9、10および25に示す。
【0085】
本発明をより良好に理解することができるために、固体支持体を含有する容器についての特定の態様を今やより詳細に記述するであろう。
【0086】
本発明の好ましい一態様において、当該容器は上部に2個の入口ポートを装備されたカートリッジである。入口ポートは雌型ルーアロック[Luer−Lock](商標)のようなコネクタによりサンプルもしくは試薬を含有する上流の容器に取付けられる。一方の入口(サンプルポート)は、固体支持体への生物学的サンプルの適用に使用される。サンプルポート上の任意の一特徴は、サンプルがそれを通って移動された後でサンプルポート
を封止する自己封止機構である。第二の入口は試薬ポートとしてはたらく。双方の入口ポート上の任意の一特徴は保護解放(breakaway)封止である。さらに、入口ポート、解放封止および拡散装置が任意のスクリューキャップ中に収容されてよい。固体支持体の底部には、細胞破片、タンパク質および脂質分子の通過に適する孔径をもつ任意の拡散装置がある。この拡散装置は、カートリッジの断面を横断する生物学的物質の均一な横切りを見込み、そして固体支持体の下のどこででも生物学的物質の一様でない集積を予防する。カートリッジの出口は、テーパーバレルの上に適切に嵌まる保護キャップを装備されてできあがる。精製されたDNAは、容易なかつ混入のない貯蔵のため、スナップキャップを伴う円錐チューブより成る収集チューブに収集される。容器全体は、加工されるべきサンプルの大きさおよびその後の分析に必要とされる収量に依存して、大きさに合わせて調整し得る。
【0087】
本発明の別の好ましい態様において、容器は、その中に固体支持体が充填されるインサートを保持するよう設計された回転チューブより成る。固体支持体は、セルロース、酢酸セルロース、ガラス繊維、ニトロセルロース、ナイロン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデンおよびこれらの組み合わせであってよい。インサートは、それを回転チューブ中に保持するためのフランジをつけられた上部、および固体支持体を支持しつつ液体を通過させる孔底より成る。回転チューブにつながれるキャップはインサートを覆うために使用した。商業的に入手可能な回転チューブの例を、実施例2、4、7、8、9および10に示す。生物学的物質は孔底を通過し、そして回転チューブの底部で収集される。使用される場合、生物学的物質は固体支持体に適用される。必須の体積の試薬(核酸精製試薬であろうと溶出試薬であろうと)がその後固体支持体に添加される。回転チューブをその後遠心分離器中に置き、そして遠心力にさらし、遠心力は、生物学的物質、精製試薬および精製されたDNAを、精製過程の間に固体支持体を通って引き出す。
【0088】
なお別の態様において、容器は複数のウェルのプレート、例えば6、12、24、48もしくは96穴プレートであってよく、ここでは固体支持体が各ウェル中に充填される。各ウェルの底部は出口ポートを有し、それを通って廃棄物および破片が進み得る。
【0089】
本発明は以下の詳細な実施例への言及によりさらに記述されるであろう。これらの実施例は、多様な特定のかつ具体的に説明する態様および技術をさらに具体的に説明するために提供される。しかしながら、多くの変形物および改変が本発明の範囲内にとどまりつつなされてよいことが理解されるべきである。
【0090】
以下で挙げられる原料の全部は、シグマ ケミカル カンパニー(Sigma Chemical Company)、ミズーリ州セントルイスのような商業的供給源から容易に入手可能である。全部のパーセンテージは、別に明記されない限り、試薬の総体積に基づく体積につき体積である。
【実施例】
【0091】
実施例1.DNA精製のための固体支持体の評価
約3mm直径もしくは2mm平方の表面積をもつ小片に切断されたいくつかの固体支持体を、DNA精製のための支持体として評価した。1μl体積の全血を各固体支持体上にピペットで移し、0.6mlチューブもしくは96穴プレートのウェル中に保持し、そして乾燥させた。DNAを精製するために、200μlのDNA精製試薬(ジェネレーション[GENERATION](商標)DNA精製溶液、ジェントラ システムズ インク(Gentra Systems,Inc.)、ミネソタ州ミネアポリス)を添加し、そして15分間インキュベートした。ピペットで3回上下して混合した後に、DNA精製試薬(溶出された不純物を含有する)を廃棄した。この洗浄処置を、合計3回の洗浄のため
さらに2回反復した。この3段階の洗浄処置の間に、不純物は選択的に除去されて、固体支持体に結合された精製されたDNAが残った。固体支持体は室温ないし80℃での蒸発により乾燥し得たとは言え、任意のアルコール洗浄段階を使用して乾燥過程を加速した。200μlの体積の100%エタノールを各固体支持体上にピペットで移し、1分間インキュベートし、そしてその後除去した。100%のイソプロパノール(2−プロパノール)もまた乾燥を加速するための適するアルコールであることが見出された。エタノールのすすぎを、合計2回のすすぎのためさらに1回反復し、そしてその後、円板を室温で最低2時間乾燥させた。
【0092】
固体支持体をDNA増幅アッセイで評価するため、それぞれを0.6mlチューブに移した。各増幅反応は、1×増幅緩衝液(プロメガ(Promega)、ウィスコンシン州マディソン)、1.5mM MgCl2、200μMの各デオキシヌクレオチド、2.5単位のTaq DNAポリメラーゼ(プロメガ(Promega)、ウィスコンシン州マディソン)、およびD1S80遺伝子座に特異的なそれぞれ1μMのプライマーを含有した。このプライマーは、以下のようなオリゴヌクレオチド配列、すなわちセンス5’GAA−ACT−GGC−CTC−CAA−ACA−CTG−CCC3’(配列番号1)およびアンチセンス5’GTC−TTG−TTG−GAG−ATG−CAC−GTG−CCC3’(配列番号2)を伴い、バドウル(Budowle)ら、Am.J.Hum.Genet.48、137−144(1991)により示されるものから短くした。サンプルを、94℃1分間、70℃1分間および72℃2分間の35周期を使用して増幅した。
【0093】
この結果は、数種の固体支持体を使用してのD1S80の増幅産物の存在を示した。DNA精製に適することが見出された固体支持体を以下に列挙する。最良の結果(すなわち増幅産物の最大の量)は、セルロース紙固体支持体を使用して観察された。
【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
実施例2:全血からのDNAの迅速固相精製
迅速固相精製法を評価するため、2個の血液サンプルを3個体のそれぞれから収集し、一方は新鮮で使用し、そして他方は3ヶ月間−80℃で凍結させて保存しそしてその後使用前に融解した。3μlの体積の全血を、2ml回転チューブ(スピン(Spin)−X、カタログ番号9424、コーニング コスター(Corning Costar)、マサチューセッツ州ケンブリッジ)のインサート中に含有されたS&S 903紙の3mm直径の円板上にピペットで移した。200μlの体積の核酸DNA精製試薬(ジェネレーション[GENERATION](商標)DNA精製試薬、ジェントラ システムズ インク(Gentra Systems,Inc.)、ミネソタ州ミネアポリス)をインサート中にピペットで移し、そしてサンプルを1分間インキュベートした。DNA精製試薬を、15,000×gで10秒間の遠心分離により除去して、溶出された不純物を回転チューブ中に収集した。DNA精製試薬での第二のおよび第三の洗浄を、合計3回の洗浄のため同一の様式で実施した。精製されたDNAを含有する各円板を、増幅分析のため0.6mlのシリコン処理チューブに移した。回転チューブ中に収集された廃棄物を廃棄した。
【0097】
精製されたDNAサンプルを増幅アッセイで評価するため、50μlのPCR増幅溶液を各円板に添加した。各増幅反応は、1×増幅緩衝液(プロメガ(Promega)、ウィスコンシン州マディソン)、1.5mM MgCl2、200μMの各デオキシヌクレオチド、2.5単位のTaq DNAポリメラーゼ(プロメガ(Promega)、ウィスコンシン州マディソン)および1μMの各プライマーを含有した。リドカー(Ridker)ら、New.Engl.J.Med.332、912−917(1995)により与えられたオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、第V因子の遺伝子配列を35周期の間増幅し、ここで1周期は94℃1分間、58℃1分間および72℃1分間と定義した。各DNAサンプルからの10μlのアリコートを、2%アガロースゲルにより80ボルトで45分間電気泳動して、増幅の結果を決定した。ゲルおよび泳動緩衝液は、透視器上で増幅されたDNAの可視化を可能にするために1mlあたり0.125μgの臭化エチジウムを含有した。
【0098】
223塩基対の第V因子の増幅産物が、ゲル電気泳動後に6サンプルのそれぞれについて観察された。増幅の結果は、約5分で実施された迅速固相DNA精製法が、新鮮もしくは凍結された全血から本質的に純粋なDNAを生じたことを示した。
【0099】
実施例3:数種の生物学的サンプルからのDNAの固相精製
最低2個のDNAサンプルを、以下の生物学的物質(注記された場合を除いてヒト起源)、すなわち全血、骨髄、唾液、頬側細胞、培養されたK562リンパ腫細胞、ショウジョウバエDrosophila melanogaster(D.melanogaster)、アルファルファ葉および大腸菌Escherichia coli(E.coli)細菌から調製した。全血、骨髄、唾液および頬側細胞切屑のサンプルをS&S 903紙に適用し、乾燥し、そしてその後穴あけ器で3mm直径の円板を打ち抜くことによりサンプリングした。植物もしくは動物組織のサンプルは、成体のD.melanogasterハエもしくはアルファルファの第一葉(子葉)をS&S 903紙上で押すことにより調製した。サンプルを、収集紙と一片のパラフィルム(PARAFILM)「M」(アメリカン ナショナル キャン(American National Can)、コネティカット州グリニッジ)との間に置き、そして親指の圧を用いて押した。培養細胞懸濁液は、K562ヒト細胞もしくは大腸菌(E.coli)細菌細胞のいずれかに適する標準的成長培地中で調製した。約10,000個のK562細胞を含有する1μlの体積の培地、もしくは約300万個の大腸菌(E.coli)細胞を含有する5μlの体積を、3mm直径の円板上にピペットで移し、そして乾燥した。その後、各円板を実施例1に記述されたとおり精製した。
【0100】
精製されたDNAサンプルを増幅アッセイで評価するため、50μlの体積のPCR増幅溶液を、結合されたDNAを含む円板を含有する各チューブに直接添加した。PCR溶液は、プライマーについてを除き、上の実施例2に記述されたようであった。プライマーを以下に示す。全血、骨髄、唾液、頬側細胞、D.melanogaster組織、およびK562細胞を、mRNA捕捉キット(Capture Kit)(ユナイテッド ステイツ バイオケミカル コーポレーション(United States Biochemical Corporation)、オハイオ州クリーヴランド)で与えられるグリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)遺伝子配列に特異的なプライマーを使用して増幅した。GAPDHを増幅するために使用された増幅プログラムは、94℃1分間、55℃1分間および72℃1分間の30周期であった。全血からのDNAサンプルは、ワン(Wang)ら、BioTechniques 17、76−82(1994)により記述されたミトコンドリアのプライマーMT−1およびMT−2、ならびにGAPDHについて上述された増幅プログラムを使用することにより、染色体外DNAの存在についてもまた試験した。アルファルファおよび大腸菌(E.coli)のDNAサンプルは、シュミット(Schmidt)ら、BioTechniques11、176−177(1991)により記述された16s様リボソームDNAに特異的なプライマーを使用することにより試験した。増幅プログラムは、94℃1分間、50℃1分間および72℃2分間の30周期であった。増幅後、50μlの反応の10μlを、実施例2に記述されたとおりアガロースゲル電気泳動により分析した。
【0101】
この結果は、各サンプルが、本質的に純粋なDNAの存在を示す期待された増幅産物を生じたことを示した。全血、骨髄、唾液、頬側細胞、D.melanogasterおよびK562細胞から精製されたDNAの増幅は、GAPDHの約300塩基対の増幅産物を生じた。また、全血から精製されたDNAの増幅は、ミトコンドリアDNAに特異的なプライマーを使用して約394塩基対の増幅産物を生じ;これは、染色体外DNAが固体支持体の円板上に保持されたことを示した。アルファルファおよび大腸菌(E.coli)のDNAからは、16s様リボソームDNA増幅由来の約400塩基対の増幅産物が観
察された。
【0102】
実施例4: 全血および頬側スワブサンプルからのDNAの固相精製および溶出
全血および頬側スワブの含水および乾燥双方のサンプルを試験するため、各型の3サンプルを3個体から収集し、合計12サンプルを生じた。液体の全血サンプルについて、25μlの体積を、2ml回転チューブ(スピン(Spin)−X、カタログ番号9424、コーニング コスター(Corning Costar)、マサチューセッツ州ケンブリッジ)のインサート中に置かれたS&S 903収集紙の8mm直径の円板上にピペットで移した。乾燥の全血サンプルについては、8mmの円板を、300μlの乾燥された血液のスポットから打ち抜き、そして2ml回転チューブのインサート中に挿入した。頬側スワブを、滅菌の先端に綿をつけられた(cotton-tipped)スワブ(パーラップス[Pur−Wraps](商標)、ハードウッド プロダクツ(Hardwood Products)、メーン州ギルフォード)で内側頬表面を20回ぬぐうことにより得た。スワブの綿端部を切り離し、そして、含水サンプルについては収集の2時間以内に、また、乾燥サンプルについては24時間乾燥後に、2ml回転チューブのインサート中に置いた。サンプルを精製するため、200μlのDNA精製試薬(ジェネレーション[GENERATION](商標)DNA精製溶液、ジェントラ システムズ インク(Gentra Systems,Inc.)、ミネソタ州ミネアポリス)を各インサート中にピペットで移し、そして、含水サンプルについて1分、また乾燥サンプルについて15分インキュベーションした。DNA精製試薬を、15,000×gで10秒間の遠心分離により除去して、溶出された不純物を2ml回転チューブ中に収集した。DNA精製試薬での第二および第三の洗浄を、合計3回の洗浄のため同一の様式で実施した。固体支持体に結合された精製されたDNAを溶出するため、各インサートを清浄な2ml受容器チューブに移した。その後、100μlのDNA溶出試薬を、固体支持体を含有するインサート中にピペットで移し、そして、12mm直径のウェルを含有するアルミニウムブロックを取り付けられた乾燥ブロックヒーター(例えば、VWR サイエンティフィック プロダクツ(VWR Scientific Products)カタログ番号13259−007)中で、80℃で15分間加熱した。DNA溶出試薬は、10mMトリス、1mM NaOHおよび0.1mM EDTA、pH10.9を含有した。加熱した後、各サンプルを15,000×gで20秒間遠心分離して、精製されたDNAを収集した。
【0103】
精製されたDNAサンプルを増幅アッセイで評価するため、5μlのアリコートを各サンプルから試験した。実施例2に記述された増幅手順を使用した。
【0104】
約223塩基対の第V因子の増幅産物が、12サンプルのそれぞれについて観察された。この結果は、固相精製法が、固体支持体にセルロース収集紙および綿スワブを使用して、含水および乾燥双方の血液および頬側細胞サンプルから本質的に純粋なDNAを生じたことを示した。
【0105】
実施例5:カートリッジを使用する全血および培養細胞中のDNAの精製
カートリッジを、標準的な1mlポリプロピレンシリンジ(カタログ番号309602、ベクトン ディッキンソン(Beckton Dickinson)、ニュージャージー州フランクリンレイクス)を使用して構築し、その中に固体支持体を挿入した。固体支持体は、約5mm直径×27mm長さの寸法のセルロースアセテート(フィルトローナ[Filtrona](商標)、アメリカン フィルトローナ(American Filtrona)、ヴァージニア州リッチモンド)から構成された。固体支持体は、既に500μlの溶解試薬およびRNアーゼAで処理しそして室温で24時間乾燥させてあった。溶解試薬は、0.5%SDS、0.1Mトリス、0.1M EDTAを含有し、これに0.04mg/mlのRNアーゼAを添加した(1mgあたり約100単位のRNアーゼA)。それぞれ300μlの体積中に約200万個の細胞を含有する、2個の全血サンプル
および2個のK562培養細胞サンプルを、それぞれ垂直の位置に支持されたカートリッジにピペットで移した。細胞を溶解させそしてRNアーゼにサンプル中に存在するRNAを消化させるために室温で15分間インキュベートした後に、300μlの体積のDNA精製試薬(ジェネレーション[GENERATION](商標)DNA精製溶液、ジェントラ システムズ インク(Gentra Systems,Inc.)、ミネソタ州ミネアポリス)を、60rpmのペリスタリックポンプ(カタログ番号MC13003、マークソン サイエンス(Markson Science)、オレゴン州ヒルズボロ)を使用して2.5mm内径のシリコンチューブを介して導入した。1分のインキュベート後に、空気を、カートリッジを通してポンプで送って、カートリッジの内容物を廃棄物容器中に排出した。その後、第二の300μlの体積のDNA精製試薬をカートリッジ中にポンプで送り、そして1分インキュベートした。この洗浄段階を、DNA精製試薬での合計3回の洗浄のためさらに1回反復した。カートリッジ中の固体支持体を、それを通して300μlのDNA溶出試薬をポンプで送ることによりすすいだ。精製されたDNAを固体支持体から取り出すために、300μlのDNA溶出試薬をカートリッジ中にポンプで送った。カートリッジを、双方の端部で栓をし、そして重力対流オーブン中60℃で30分間インキュベートした。あるいは、適切な電子レンジを使用してもよい。カートリッジは、1100Wのシャープ(Sharp)電子レンジ中で、30%出力で25分間加熱してよい。その後、精製されたDNAを含有したDNA溶出試薬を、カートリッジからそして1.5ml微小遠心管中にポンプで送った。あるいは、DNA溶出試薬を、60℃より上の温度に加熱し得そしてその後カートリッジ上にポンプで送り得る。
【0106】
精製されたDNAサンプルを増幅アッセイで評価するため、5μlのアリコートを各サンプルから試験した。実施例2に記述された増幅手順を使用した。
【0107】
約223塩基対の第V因子の増幅産物が、4サンプルのそれぞれについて観察された。この結果は、カートリッジの形式の固相精製法が、全血もしくは培養細胞双方のサンプルから本質的に純粋なDNAを生じたことを示した。
【0108】
実施例6:個体支持体に結合されたDNAの精製および制限酵素消化
DNA精製試薬(ジェネレーション[GENERATION](商標)DNA精製溶液、ジェントラ システムズ インク(Gentra Systems,Inc.)、ミネソタ州ミネアポリス)を使用して精製されたDNAの質を、固体支持体に結合されている間にさらに試験するため、7種の制限酵素を使用して精製されたDNAを消化するそれらの能力を試験した。単一の個体からの300μlの体積の全血をS&S 903紙上にピペットで移し、そして室温で乾燥した。その後、7個の5mm直径の円板を押して抜き取り、そしてそれぞれを0.6mlチューブ中に置いた。200μlの体積のDNA精製試薬を各チューブに添加し、そして15分間インキュベートした。ピペットで3回上下して混合した後に、DNA精製試薬を廃棄した。この洗浄処置を、合計3回の洗浄のため2回反復した。この3段階の洗浄処置の間に、不純物は選択的に除去されて、円板に結合された精製されたDNAが残った。200μlの体積の100%イソプロパノール(2−プロパノール)を各円板上にピペットで移し、1分間インキュベートし、そしてその後除去した。これを、合計2回のアルコールのすすぎのため1回反復した。精製されたDNAを含有する円板を室温で2時間乾燥させた。
【0109】
各円板に結合されたDNAの質を試験するため、25μlの体積の制限酵素溶液を各チューブに直接添加した。各制限酵素溶液は、製造元(ニュー イングランド バイオラブス(New England Biolabs)、マサチューセッツ州ビバリー)により供給された適切な緩衝剤、および2.5mMのスペルミジン(シグマ ケミカル カンパニー(Sigma Chemical Company))を含有した。以下の酵素、すなわち、Pst I(12単位)、Hind III(20単位)、Eco RI(20
単位)、Msp I(20単位)、Bam HI(20単位)、Hpa I(5単位)、およびHae III(10単位)を、明記された各反応に添加された単位で試験した。サンプルを37℃で4時間消化し、その時間の間、消化されたDNAフラグメントは固体支持体から消化溶液中に遊離された。制限フラグメントを収集するために、各サンプルチューブを27ゲージの針を用いて刺し通し、そして清浄な0.6mlチューブ中に置いた。消化溶液を、2,000×gで2分間の遠心分離により収集した。精製されたDNAが消化されたかどうかを決定するために、20μlの体積を各サンプルから取り出し、そして1%アガロースゲルにより22ボルトで12時間電気泳動した。
【0110】
この結果は、試験された7種の酵素のそれぞれについて高分子量から低分子量までの範囲にわたるDNA制限フラグメントの特徴的なスメアの存在を示した。これは、このDNAサンプルが本質的に純粋でありそして制限酵素消化に適したことを立証した。
【0111】
実施例7固体支持体の処理に関する界面活性剤の評価
種々の界面活性剤を試験して、DNAの収量を至適化するために必要な界面活性剤の最良の種類を決定した。以下の種類の界面活性剤を試験した:
アニオン性 ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)
Sarkosyl
カチオン性 ドデシルトリメチラム−モニウム ブロミド
非イオン性 Tween-20
Triton X-100
【0112】
対照は、界面活性剤を含めず、そしてサンプルを加えずに設定した。
【0113】
使用した各ポリスルホン固体支持体は、25.31mmの円周および9.73mmの高さを有した(Filtrona(商標)、ロット#18475、アメリカン フィルトロナ(American Filtrona)、リッチモンド、バージニア州)。360μl容量の1%界面活性剤溶液を、各固体支持体に添加し、室温で少なくとも16時間、固体支持体を飽和した。2連の固体支持体を各処理について調製した。固体支持体を2mlのスピン管(スピン−X、カタログ番号9424、コーニング コースター(Corning Costar)、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)のインサート中に置いた。約2百万個の細胞を300μl中に含む全血サンプルを各固体支持体に適用し、そして室温で少なくとも1時間インキュベートして、細胞を溶解させた。200μl容量のDNA精製試薬(GENERATION(商標)DNA 精製溶液、ジェントラ システムズ社(Gentra Systems,Inc.),ミネアポリス、ミネソタ州)を次に加えた。1分インキュベートした後、DNA精製試薬を15,000×gで10秒間遠心して2mlの回収管に不純物を集めることにより除去した。これを全部で3回洗浄するために2回繰り返した。廃液は2回目および3回目の洗浄の間に受容管から除去した。次に固体支持体は200μlのDNA溶出試薬(1mM Tris、0.001mM EDTA、5mM NaOH)を加え、そして15,000×gで10秒間遠心することによりすすいだ。精製したDNAを支持体から取り出すために、固体支持体を含有するインサートをきれいな受容管に移し、そして200μlのDNA溶出試薬をそれに加えた。次に固体支持体を80℃で10分間、ドライブロックヒーター(例えばVER サイエンティフィック プロダクツ(Scientific Products) カタログ番号13259-007)中でインキュベートし、そして精製したDNAを含有するDNA溶出試薬を15,000×gで20秒間遠心することにより取り出した。
【0114】
ゲノムDNAの収量およびPCR増幅収量を測定し、精製したDNAを評価した。相対的なゲノムDNAの収率を決定するために、10μl容量の精製したDNAを1μlの10×標準追跡色素と混合し、そして0.125μg/mlのエチジウムブロミドをゲルおよび泳動緩衝剤に含有する0.7%アガロースゲルに乗せた。DNAを80ボルトで15分間泳動し、そしてバンドはUVトランスイルミネーター上でバンド強度について視覚的に調査した。
【0115】
PCR増幅アッセイは、2.5μlの精製したDNAサンプルを22.5PCR増幅ミックスに直接加えることにより、25μlの全増幅容量について行った。各増幅反応は1×増幅緩衝剤(プロメガ(Promega)、マジソン、ウィスコンシン州)、1.5mM MgCl2、200μMの各デオキシメクレオチド、1.25単位のTaq DNAポリメラーゼ(プロメガ、マジソン、ウィスコンシン州)、および1μMの各プライマーを含んだ。プライマーはヒトベータグロビン遺伝子に特異的な配列であった:
センス5’CCT−GGC−TCA−CCT−GGA−CAA−CCT−CAA3’(配列番号3)およびアンチセンス5’TAG−CCA−CAC−CAG−CCA−CCA−CTT−TCT3’(配列番号4)。サンプルは、94℃で1分間、70℃で1分間、そして72℃で2分間の35サイクルを使用して増幅した。次に10μlの増幅したDNAは、0.125μg/mlのエチジウムブロマイドをゲルおよび泳動緩衝剤に含有する2%アガロースゲルに乗せた。サンプルは80ボルトで45分間電気泳動し、そして1.1kbのDNAバンドをUVトランスイルミネーター上で視覚化した。界面活性剤は表2に示すように、ゲノムおよび増幅DNAの両方についてバンド強度を視覚で順位付けすることにより評価した。
【0116】
【表4】

【0117】
非イオン性の界面活性剤は、対照を上回るDNA収量の実質的に向上を示さなかった。使用したカチオン性界面活性剤は、ゲノムDNA収量において約2倍の上昇を示した。2つのアニオン性界面活性剤は、ゲノムおよび増幅DNAについて最高の収量を与えた。
【0118】
実施例8DNA増幅に及ぼすNaOH濃度、界面活性剤の種類および固体支持体密度の効果
NaOH濃度および界面活性剤の種類(アニオン性または両イオン性であるか)の効果を、2種の固体支持体密度で調査した。0または5mM NaOHおよび1% ドデシル硫酸ナトリウムまたは1%CHAPSを含有する4種の溶液を調製した。CHAPSは市販されている両イオン性界面活性剤である。各360μl容量のこのような溶液を実施例7に記載するように固体支持体に加えた。調査した2種類のポリオレフィン固体支持体密度は、0.113グラム繊維/cc(低密度)および0.184グラム繊維/cc(高密度)(Filtrona(商標)、アメリカン フィルトロナ、リッチモンド、バージニア州)であった。300μlの全血を各固体支持体に加え、洗浄し、そして実施例7に記載したように、しかし150μl容量のDNA精製試薬(GENERATION(商標)DNA 精製溶液、ジェントラ システムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)の使用は除いて溶出させた。精製したDNAはPCR増幅およびUV分光光度計により分析した。使用したPCRプロトコルは、実施例7に記載したものと同一であった。ゲノムDNAの収量は、UV分光光度計および0.7%アガロースゲル電気泳動により調査した。UV
分光光度計によりDNAを定量するために、50μlの精製したDNAを950μlの脱イオン水に最初に加えた。次にUV吸収を320(バックグラウンド)nmおよび260nmおよび280nmの波長で測定した。収量はA260×50×希釈因子×溶出容量として計算した。
【0119】
結果は、NaOH無し、および5mM NaOHを使用して行った固体支持体処理に関して、DNA収量に検出できる差異はないことが示された。DNA収量において、SDSの使用はCHAPSより2.8倍上昇した。高密度固体支持体を使用すると低密度固体支持体よりも75%の上昇が観察された。
【0120】
実施例9.錯化剤、塩および界面活性剤が固体支持体の処理に及ぼす効果
錯化剤、塩および界面活性剤が固体支持体の処理に及ぼす効果を決定するために、ポリオレフィン固体支持体を0.5%または2.0%のドデシル硫酸ナトリウム、0または50mM EDTAおよび0または100mM NaClを含有する8種類の溶液を用いて処理した。実施例7に記載したように200μlの全血サンプルを各固体支持体に加え、洗浄し、そして溶出させた。精製したDNAを回収し、そしてゲノムDNAの収量を実施例8に記載したようにUV分光光度計により調査した。相対的収率は、さらに実施例7に記載したように0.7%アガロースゲルで精製したDNAサンプルをアガロースゲル電気泳動することにより視覚化した。0と50mM NaClの間で観察されるDNA収率の差異は無かった。同様に0と50mM EDTAとの間で観察されるDNA収量の差異は無かった。しかし2%SDSに比べて0.5%SDSを使用した時、収率が3倍向上した。
【0121】
実施例10最適なアニオン性界面活性剤濃度の決定
最適なアニオン性界面活性剤濃度は、ポリオレフィン固体支持体を0.2〜1.6%の範囲のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液を用いて処理することにより予測した。固体支持体は実施例7に記載するように0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6%SDSを含有する8溶液で処理した。実施例7に記載するように200μlの全血を各固体支持体に加え、洗浄し、そして溶出した。精製したDNAを集め、そしてゲノムDNAの収量を実施例7に記載したようにアガロースゲル電気泳動により視覚化した。
【0122】
0.7%アガロースゲル上のバンド強度の見積もりは、すべての濃度のSDSが良好なゲノムDNA収量を示したが、2つの最高の収量は1.0および1.2%濃度のSDSで観察されたことを示した。
【0123】
実施例11DNA溶出に及ぼす時間および温度の変動効果
DNA収量に及ぼす時間および温度の効果を、実施例7に記載したポリオレフィン固体支持体を使用して試験した。200μlの血液サンプルに由来するDNAは、DNA精製試薬(GENERATION(商標)DNA 精製溶液、ジェントラ システムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)を用いた2回の400μl洗浄およびDNA溶出試薬を用いた1回の洗浄を使用して精製した。
【0124】
さらに200μl容量のDNA溶出試薬を加えた後、サンプルをドライブロックヒーター(VER サイエンティフィック プロダクツ、カタログ番号13259-007)中で4種の溶出温度で10分間インキュベートした。各インキュベート温度に関して、3種のサンプルの平均を表3に与える。
【0125】
【表5】

【0126】
100℃のインキュベート温度で、最高のDNA収量を与えた。さらに120℃の試験では、実質的な向上は観察されなかった。
【0127】
溶出工程中、99℃でのインキュベート時間の効果を第2の全血サンプルを使用して調査した。異なるドライブロックヒーター(ロビンズ サイエンティフィック(Robbins Scientific)、TruTemp(商標)、サニーバレ、カリフォルニア州)を使用したことを除き、上記と同じ精製プロトコルを使用した。結果を表4に示す。
【0128】
【表6】

【0129】
99℃で少なくとも9分間のインキュベート時間が、最適なDNA収量を与えることが分かった。
【0130】
実施例12固体支持体を含む容器の設計
カートリッジは、中に固体支持体が挿入された標準の1mlのポリプロピレンシリンジ(カタログ番号309602、ベクトン デッキンソン(Beckton Dickinson)、フランクリンレイクス、ニュージャージー州)を使用して構成した。固体支持体は、約5mm直径×27mm長の酢酸セルロース(Filtrona(商標)、アメリカン フィルトロナ、バージニア州)から成った。
【0131】
第2設計では、カートリッジは最上部に2つの入口部分を備えている。1つの入口(サンプル口)は、生物サンプルを固体支持体に適用するために使用される。サンプル口の最適な形状は、サンプルがこれを通って輸送された後にサンプル口を密封する自己密封メカニズムである。第2入口は試薬口として役立つ。両方の入口について最適な形状は、保護離脱型シールである。固体支持体の底は、細胞屑、タンパク質および脂質分子の通過に適する孔サイズの随意の拡散器である。この拡散器はカートリッジの断面を横切る生物学的物質の公平な分散を可能とし、そして固体支持体下の任意の場所で生物学的物質の不公平な蓄積を防ぐ。カートリッジの出口は、保護カップを備えるようになっている。精製されたDNAは、保存の容易さ、および混入が無い保存のためにスナップカップを持つ0.5mlのコニカル管から成る回収管中に集められる。
【0132】
別の容器設計では、スピン管(スピン-X、コーニング コスターNo.9424、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)が使用され、これは固体支持体を中に配置したインサートを含む。使用した固体支持体はインサート中に置かれたポリオレフィンプラグ(アメリカン フィルトロナ、バージニア州)であった。インサートはスピン管内にポリオレフィンプラグを維持するためのつば付の最上部および固体支持体を支持する間に流体を通過させる孔底から成る。スピン管につながれたカップは、インサートを覆うために使用した。市販されているスピン管の例は、実施例1に与える。生物学的物質は孔底を通過し、そしてスピン管の底で集められる。使用する時、生物学的物質は固体支持体に適用する。次に必要な試薬容量を(DNA試薬またはDNA溶出試薬であっても)、固体に適用する。次にこのスピン管を遠心機に置き、そして生物学的物質、精製試薬および精製DNAを精製工程中に固体支持体を通ってを引き出す遠心力をかける。
【0133】
実施例1396-ウェルプレート系でのポリオレフィン固体支持体の使用試験
高処理量システムでDNA精製の効力を試験するために、親水性ポリオレフィン固体支持体(R-18495、アメリカン フィルトロナ社、リッチモンド、バージニア州)を、800μlのウェル容量を持つ96-ウェルプレート(マサチューセッツ州、ロックランドのポリフィルトロニックス(Polyfiltronics)による、フィルター無しで製造されたユニフィルタープレート(Unifilter plate))中のウェルに挿入した。固体支持体はサイズが円筒状であり、そして16.7mmの円周および10mmの長さを有した。前述の96-ウェルサンプル処理プレートを、廃液回収プレートとして役立つ2mlウェル容量を持つ別の96ウェルプレート上に置いた。100μl容量の全血を各固体支持体に適用し、そして1分間インキュベートした。続いて固体支持体は、200μl容量のDNA精製試薬(GENERATION(商標)DNA 精製溶液、ジェントラ システムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)をウェルに加えることにより2回洗浄し、そして1分間インキュベートした。続いて廃棄材料は、マイクロプレートキャリアーを装備したM4ローターを持つJouan C412遠心機(ジョアン(Jouan)、ウィンチェスター、バージニア州)中で1500×gにて1分間、遠心することにより除去した。次に固体支持体は、100μlのDNA溶出試薬を用いて洗浄し、そして上記のようにインキュベーション無しで遠心した。洗浄した固体支持体から精製したDNAを溶出するために、処理プレートをきれいな標準ポリスチレン96-ウェルプレートに移し、そして100μl容量のDNA溶出試薬を各ウェルに加えた。積み重ねた処理プレートおよびサンプル回収プレートを80℃に設定した対流オーブン(BioOven I、セント ジョーンズ アソシエイツ(St.John's
Associates)、ベルツビレ、メリーランド州)に置き、そして30分間インキュベートした。次にDNAを固体支持体から1500×gで1分間遠心することにより溶出させた。8つの10μlのサンプル溶出物を80ボルトで15分間、1%アガロースゲル中で電気泳動することにより、DNAの存在を分析した。8サンプルの各々が、UVトランスイルミネーターで調査することにより視覚化されるようなDNAを含んだ。
【0134】
実施例14固体支持体をRNaseAで処理する効果
300μl容量の溶解試薬(0.5% SDS、0.1M Tris塩基、0.1M EDTA二ナトリウム塩)を、酢酸セルロース固体支持体(アメリカン フィルトロナ、リッチモンド、バージニア州) に適用し、そして室温で乾燥させた。第2の固体支持体は、0.04mg/mlのRNaseA(ミネソタ州、ミネアポリスのジェントラ システムズ社からの4mg/mlで)も含む溶解試薬で処理し、そして室温で乾燥させた。固体支持体は8mmの直径および6.75mmの長さを有した。2つの処理した固体支持体をスピン管のインサート中に置き(実施例8に記載したように)、そして150μl容量の大腸菌(E.coli)の一晩のバクテリアカルチャーを各固体支持体に直接加えた。大腸菌(E.coli)のバクテリアカルチャーは、大量のRNAを含み、そして固定化されたRNA消化酵素の効力を試験するためのモデルとして役立った。次にサンプルは37℃で12分間インキュベートしてRNA消化を可能とした。続いてそれらを150μl容量のDNA精製試薬(GENERATION(商標)DNA 精製試薬、ジェントラ システムズ社、ミネ
アポリス、ミネソタ州)で3回、洗浄した。次に150μlの塩基性溶出試薬(10mM Tris、0.1M EDTAおよび1mM NaOH)を固体支持体に室温で20分間加えた。核酸は15,000×gで10秒間遠心することにより溶出させた。10μl容量を、80ボルトで60分間、1%アガロースゲルを通して電気泳動することにより、DNAの存在について分析した。UVトランスイルミネーター上でのゲルの調査では、溶解試薬を用いて処理した固体支持体を使用して精製されたサンプル中のRNAに対応する主要な低分子量スメア(約0.1〜1.4kb)の存在が明らかに示された。対照的に、RNaseAを加えた溶解試薬で精製したサンプルは、低分子量RNAスメアを欠き、RNaseの存在が混入RNAの除去に効果的であることを示している。
【0135】
実施例15DNA増幅のためのDNA溶出試薬の至適化
溶出溶液は、固体支持体から最高のDNA収量を提供し、そしてPCR緩衝剤系を妨害せずに高いPCR収量を生成するように至適化した。塩基、NaOHまたはKOHのいずれか、トリス緩衝剤および錯化剤(EDTA)の至適濃度は、PCRを使用してDNA増幅収量につい試験した。
【0136】
条件は、25μlの全血サンプルをスピン管中に含まれるセルロース固体支持体に加えることにより試験した。続いてセルロース固体支持体は、200μlのDNA精製試薬(GENERATION(商標)DNA 精製溶液、ジェントラ システムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)で3回洗浄し、そしてDNA溶出試薬で2回洗浄した。サンプルは、DNA溶出試薬中の塩基濃度を除き、すべて同一に処理した。DNA溶出試薬中の1〜8mM NaOH濃度を試験した。
【0137】
β-アクチン増幅標的を使用するTaqMan7700Quantitative PCRシステムを製造元(パーキン エルマー(Perkin Elmer)、アプライドバイオシステムズ デビジョン(Applied Biosystems Division)、ホスター市、カリフォルニア州)が推薦するようにDNA増幅に使用した。増幅阻害について試験するために、連続希釈を各試験サンプルについて調製し、そして各々についてコンピューター処理したDNA量から出発した。阻害も最高の希釈物で最大に希釈されるので、最高希釈ですべての試験サンプルをDNAサンプルと比較した。希釈したDNA試験サンプルが最大の希釈でDNAサンプルと同様の収量を与えるならば(希釈因子による調整後に)、その試験サンプル中には増幅阻害が無いと予想される。
【0138】
最良のPCR収量は、5〜8mM NaOHで得られた。KOHを用いた同様の実験では、NaOHまたはKOHを使用するPCR収量に差異は示されなかった。
【0139】
この緩衝剤濃度およびEDTA濃度は、どの濃度が高いPCR収量および低い増幅阻害を至適化するかを決定するために試験した。Tris緩衝剤濃度を1mMから0.1mMに下げ、そしてEDTA濃度を0.1mMから0.001mMに下げると有意に増幅阻害が減少することが観察された。
【0140】
実施例16洗浄および溶出手順の至適化
さまざまな洗浄および溶出手順を試験して、どの組み合わせが至適なDNA収量および低い%増幅阻害を提供するかを、TaqMan7700Quantitative PCR装置を使用して決定した。PCR手順は実施例4に記載した通りである。
【0141】
25μl容量の血液は、スピン管(スピン-X、コーニング コースター、カタログ番号9424、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)中に含まれるセルロース固体支持体に適用し、そして5分間吸収させた。DNA精製試薬(GENERATION(商標)DNA 精製溶液、ジェントラ システムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)での各洗浄には2分間を要した。DNA溶出試薬を固体支持体に80℃で20分間適用した。種々の精製および溶出手順は、以下に掲げるものを含め試験した。各手順は3連で試験した。
(1) 3×150μl NA精製試薬+1×150μl DNA 溶出試薬
(2) 4×200μl NA精製試薬+1×200μl DNA 溶出試薬
(3) 3×200μl NA精製試薬+2×200μl DNA 溶出試薬
結果を表5に示す。
【0142】
【表7】

【0143】
両手順(2)および(3)は、良好な純度および収量を与えた。
【0144】
実施例17固体支持体処理の至適化
セルロース固体支持体は、未処理固体支持体に対する比較のために異なる組成を有する溶解試薬を用いて処理した。第1組成は、0.5%SDS、0.1M Trisおよび0.1mM EDTAから成り、一方第2組成は1%SDS、10mM Trisおよび0.1mM EDTAから成った。セルロース紙をスピン管(スピン-X、コーニング コースター番号9424、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)に挿入し、そして2つの上述の組成で処理した。処理したセルロース紙を次に室温で少なくとも16時間、乾燥させた。未処理セルロース紙も、処理したサンプルに対する比較として使用した。25μl容量の血液を各セルロース固体支持体に適用し、そして5分間インキュベートした。DNA精製試薬(GENERATION(商標)DNA 精製溶液、ジェントラ システムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)を用いた3回の洗浄およびDNA溶出試薬を用いた2回の洗浄を含む最適な精製法を行った。DNAを回収し、そしてTaqMan7700Quantitative PCR装置を使用して分析し、ここでβ-アクチン増幅標的を製造元(パーキン エルマー、アプライドバイオシステムズ デビジョン、ホスター市、カリフォルニア州)が推薦するようにDNA増幅に使用した。
【0145】
1%SDS処理により最高のDNA収量を得た。SDSのレべルを0.5%から1.0%に下げた時、DNA収量および%増幅に有意な検出できる差異は無かった。しかしSDSの不在ではDNAの収量が50%まで減少し、そして阻害が10%から40%以上に上昇した。
【0146】
実施例18DNA精製の分析:DNA純度の測定
全血のサンプルを、EDTA(B-D16852、ベクトン デッキンソン アンド社(Becton Dickinson & Co.)、フランクリン レイクス、ニュージャージー州)を含むバキュテイナー(vacutainer)管に引き出し、そして良く混合した。全血の小さいアリコートを取り出し、そして白血球細胞の総数をCBC5細胞カウンター(コールター エレクトロニックス(Coulter Electronics)、ハイアレア、フロリダ州)で製造元の指示に従い計数した。これにより7.25×106細胞/mlと決定された。次に血液の残りを1mlのアリコートで-80℃にさらに精製を必要とするまで凍結した。
【0147】
凍結した血液を37℃の水浴中で急速に解凍し、そして使用するまで氷上に維持した。7つの200μlの血液サンプルをアリコートに分け、そしてそれぞれインサート中に収容された溶解マトリックス、および回収管を含む2mlのスピン管(スピン-X、カタログ番号942
4、コーニング コースター、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)に加えた。溶解マトリックスは直径8mmおよび高さ8mmの円筒状のポリオレフィン固体支持体マトリックスから成った(Filtrona(商標)、カタログ番号18475、アメリカン フィルトロナ、リッチモンド、バージニア州)。ポリオレフィン固体支持体マトリックスは、1%SDSおよび20μg/ml RNaseAを含む溶液ですでに飽和され、そして続いて乾燥された。
【0148】
サンプルを少なくとも1分間、マトリックスに吸収させた後、400μlのDNA精製試薬(GENERATION(商標)DNA 精製溶液、ジェントラ システムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)をサンプルに加え、そして室温で1分間インキュベートした。不純物はスピン管を12,000×gで10分間遠心することにより2mlのスピン管中に集めた。固体支持体を含むインサートは第2スピン管に移し、そして第1スピン管を捨てた。別に400μlのDNA精製試薬を固体支持体に加え、室温で1分間インキュベートし、そしてスピン管を12,000×gで10分間遠心した。200μl容量のDNA溶出試薬を固体支持体に加え、そしてインキュベートせずに遠心した。精製したDNAを含む各固体支持体を次にきれいな2mlのスピン管に移し、そして200μl DNA溶出試薬を加えた。管を99℃で10分間インキュベートし、そして精製したDNAは12,000×gで20秒間遠心することにより固体支持体から溶出した。
【0149】
ヘムのような不純物は、血液中を含むDNA精製工程中の主要な混入物である。ヘムの存在は、自動化EL311マイクロプレートリーダー(バイオ-テックインスツルメンツ社(Bio-Tek Instruments Inc.)、ビノースキー、バーモント州)を使用して測定することができる。サンプルを1:50に脱イオン水中で希釈し、そして200μl容量を96ウェルプレート中に入れた。吸収は405nmで測定した。405nmでの吸収が0.01nm未満である時、サンプルの純度を確定した。7つのサンプルについて405nmでの平均可視吸収は0.004であり、高度な純度を示していた。
【0150】
別のDNA純度の見積もりは、260nmおよび280nmでの吸収比、A260/A280である。この比の値が1.7〜2.0の間であれば、サンプルはタンパク質および他の混入物が比較的少ないと考えられる。この比は以下のように算出される:
(A260−A320)/(A280−A320
【0151】
7つのサンプルに関する平均A260/A280比は、1.95であると分かり、これは実質的に純粋なDNAであることを示している。
【0152】
実施例19DNA精製の分析:DNA濃度および収量の測定
実施例18からの7種の精製したサンプルを、さらに濃度および収量について分析した。各々のサンプルの1:50希釈を脱イオン水中で、DNA溶出試薬を含むブランクと共に調製した。320nm(バックグラウンド)、260nmおよび280nmで の吸収を、ベックマン DU64分光光度計(ベックマン インスツルメンツ社(Beckman Instruments,Inc.)、フラートン、カリフォルニア州)を使用して読んだ。DNA濃度は以下のように算出した:
(A260−A320)X 50(DNA消光係数)X 50(希釈因子)
【0153】
7種のサンプルの平均は、41μg/mlとなることが分かった。この濃度に次にサンプル容量(200μl)をかけて、各7つのサンプルについて8.2μgの平均収量を得た。
【0154】
理論的な最大収量は、白血球細胞のカウントから決定され、各ヒト二倍体細胞が6pgのDNAを有すると予想された。したがって以下の計算式に基づき、8.7μg DNAの理論的最大収量を得る。
(7.25×106細胞/ml)X(0.2ml)X(6×106μg)=8.7μg
【0155】
収率を計算するために、8.2μgDNAの平均収量を8.7μgの理論的最大収量で除算した
。この計算により94%の収率を得た。
【0156】
定量後に、DNA濃度を必要に応じて希釈または濃縮により調整することができる。DNAが濃すぎるならば、脱イオン水のような希釈剤で希釈することができる。DNAが希釈されすぎているならば、標準的なアルコール塩沈殿法を使用することにより濃度することができる。この方法では、塩化ナトリウムを100mMまで、(DNAサンプル容量について)2倍容量の100%エタノールを用いて加える。サンプルは管を上下逆転させながら混合し、そして15,000×gで5分間遠心してDNAをペレットにする。このDNAペレットは、3倍容量の70%エタノールを加えることにより洗浄し、管を上下逆転させ、そして15,000×gで1分間遠心する。上清を捨てた後、ペレットを15分間風乾させる。次に脱イオン水のような水和溶液を加えて所望の、より濃縮された溶液を調製する。
【0157】
しかしPCR増幅に先立ち、このようなサンプルを濃縮調製する必要は無かった。
【0158】
実施例20DNAサイズの分析
実施例18の7種の各サンプルに関するDNAサイズは、HindIIIで消化したラムダDNAの23.1kbバンドと比較することにより決定した。7種の各200μlのDNAサンプルをから10μlの容量を追跡色素と混合し、そして1%アガロースゲルに乗せた。サンプルを80ボルトで1時間、1XTAE泳動緩衝剤中で電気泳動した。ゲルおよび泳動緩衝剤の両方が、DNAをトランスイルミネーター上で視覚化できるように0.125μg/mlのエチジウムブロミドを含んだ。DNAサンプルとマーカーレーンと比較することにより、95%より多くのDNAが23.1kbマーカーを越え、DNAが実質的により高分子量であることを示した。
【0159】
実施例21精製したDNAのPCR増幅および後の制限酵素消化に対する適性試験
実施例17からの7種の各サンプルを、それらがPCRによる分析に適するかどうかを見るために試験した。2.5μl容量の7種の各サンプルを22.5PCR増幅ミックスに加えて、全増幅容量を25μlとした。各増幅反応は、1X増幅緩衝剤(プロメガ、マジソン、ウィスコンシン州)、1.5mM MgCl2、200μM 各デオキシヌクレオチド、1.25単位のTaq DNA ポリメラーゼ(プロメガ、マジソン、ウィスコンシン州)、および1μM 各プライマーを含んだ。プライマーは、遺伝性ヘモクロマトーシス遺伝子スクリーニングに使用するHLA-H遺伝子の領域に特異的な配列、5’−TGG−CAA−GGG−TAA−ACA−GAT−CC−3’(配列番号5)および5’−CTC−AGG−CAC−TCC−TCT−CAA−CC−3’(配列番号6)(Federら、1995,Nature Genetics 13:399-408)であった。サンプルは94℃で1分間、58℃で1分間、そして72℃で1分間の35サイクルを使用して増幅した。
【0160】
DNAサンプルが適当な増幅鋳型であるかどうかを決定するために、7サンプルを増幅生成物の存在および正しいサイズ(388bp)の両方について調査した。7つの各反応から10μl容量を、0.125μg/mlのエチジウムブロミドをゲルおよび泳動緩衝剤に含む2%アガロースゲルに乗せた。サンプルは80ボルトで45分間電気泳動し、そしてDNAバンドをトランスイルミネーター上で視覚化した。7種の各サンプルは388bpサイズを越える大きなバンドを与え、DNAの純度はPCR増幅に適することが示された。
【0161】
増幅したDNAサンプルは、次にそれらが制限酵素RsaIにより消化される能力について試験した。この酵素は遺伝性疾患のヘモクロマトーシスに関係するDNA点突然変異を検出するために臨床研究室で使用されている。10μl容量の増幅反応物を、3.3mgのウシ血清アルブミン、3.3単位のRsaIおよび1.5μlの10×制限酵素緩衝剤(すべての成分はマサチューセッツ州、ヴェバリーのニューイングランド バイオラボズ(New England BioLabs)から)を含む5μlのRsaI制限酵素ミックスと混合した。サンプルを37℃で30分間インキュベートし、制限酵素が増幅したDNAを消化できるようにした。
【0162】
15μlの反応容量の7種の各サンプルは、85ボルトで60分間泳動する2%アガロースゲル中で電気泳動した。エチジウムブロミドは0.125μg/mlでゲルおよび泳動緩衝剤中に存在し、トランスイルミネーター上でのバンドの視覚化を可能とした。ゲルの調査により、7種のすべてのサンプルがRsaI制限酵素部位で効果的に切断されたので、388bpのバンドは存在しなかった。各7レーンで、2つのバンドが約250および140bpのサイズで検出できた。
【0163】
実施例22DNA精製試薬を使用して精製したDNAの制限酵素消化およびサザンブロット分析
7種の5mm直径の乾燥した血液スポットに由来するDNAを、実施例6に記載したように精製し、消化し、そして電気泳動した。電気泳動後、制限断片をナイロン膜(Biotrans+(商標)、ICNバイオメディカルズ社(Biomedicals,Inc.)、イルバイン、カルフォルニア州)に、0.4N NaOHおよび0.6M NaClを含有する転写溶液を使用してサザンブロットにより7時間にわたり転写した。このナイロンブロットを65℃で14時間、HYB-9(商標)ハイブリダイゼーション溶液(ジェントラ システムズ社、ミネアポリス、ミネソタ州)中でハイブリダイズさせ、そして製造元の支持に従い洗浄した。プローブは、グルタルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼの32P-標識化dCTPを用いて標識した増幅した300bp領域から、ランダムプライミングキット(アマーシャム ライフ サイエンス社(Amersham Life Science,Inc.)、アーリントンハイツ、イリノイ州)を使用して調製した。膜は2枚の増感スクリーンの間のX-線フィルム(XRA5、イーストマン コダック社(Eastman Kodak Company)、ロチェスター、ニューヨーク州)に対して、-80℃で14時間、置いた。得られたオートラジオグラムは、消化したDNAに対応する各レーン中のバンドがゲノム中のGAPDH配列に相補的であることを示した。
【0164】
実施例23.DNA精製法における潜在的交差汚染の評価
試験材料:全血(Memorial Blood Center of Minneapolis)、8ES培養細胞(Folk,et al.,1986,Guenthner et al.,1998)もしくはリン酸緩衝剤生理食塩水(PBS)を、2種の異なる容器型(CaptureプレートTM,Gentra Systems Inc.,Minneapolis,MNおよびCaptureカラムTM,Gentra Systems Inc.,Minneapolis,MN)に含有された溶解マトリックス(lysing matrix)上に負荷した。CaptureカラムTMは、遠心チューブ内に置かれた挿入物(insert)中に封入された溶解マトリックスからなる。CaptureプレートTMは、各々溶解マトリックスを封入されている96個の流出(flow−through)ウェルからなる。各ウェルの底は先細りの出口をもつ。
【0165】
実験組み立て:血液もしくはPBSのサンプル容量200μlを、エアロゾル防止チップ(aerosol resistant tip)を用いてCaptureカラムTMチューブもしくはCaptureカラムTMウェルに添加した。
【0166】
精製法:サンプルを、DNA精製試薬(DNA精製溶液TM,Gentra Systems Inc.,Minneapolis,MN)400μlを用いて2回およびDNA溶出試薬(DNA溶出溶液,Gentra Systems Inc.,Minneapolis,MN)200μlを用いて1回洗浄することによって精製した。CaptureカラムTMを、洗浄の間で13,000xgで10秒間遠心し、そしてCaptureプレートTMを、2000xgで3分間遠心した。新しいシーリングフィルムを、汚染を防ぐために洗浄の間各プレートに使用した。サンプル溶出を、各ウェルにDNA溶出溶液TM200μlを添加することによって実施した。CaptureカラムTMを、ブロックヒーター(block heater)において99℃で10分間加熱し、そしてCaptu
reプレートTMを、1100W Sharpマイクロウェーブオーブンにおいて30%出力で25分間加熱した。遠心に続いて、溶出液を増幅のために用いた。
【0167】
増幅:各溶出液のサンプル2μlを、DNA(PBS)無添加で、サンプル中の汚染DNAを検出するために増幅した。HLA−Hプライマー(Feder et al.,1996)を、血液を用いる実験では使用し、そしてHIV−1(gag)プライマー(Guenthner et al.,1998)を、8ES培養細胞では使用した。使用したサイクリング条件は、PE2400もしくは9700サーマルサイクラーにおいて、94℃30秒間、58℃30秒間および72℃30秒間:の40サイクルであった。
【0168】
検出:CaptureカラムTM増幅産物のゲル分析では、25μl反応物の5μlを2%ゲル上に負荷し、そして80ボルトで45分間電気泳動した。CaptureプレートTM増幅産物のゲル分析では、96ウェル型ミニゲル(2%アガロース)を、80ボルトで5分間使用した。PE7200シーケンス・ディテクション・システムにおけるTaqMan検出では、HLA−HおよびHIVに対する蛍光プローブが、PE Applied Biosystemsによって合成された。
【0169】
実施例24.固形支持体におけるDNA精製のためのサンプル収集および取り扱い
DNAは、溶解マトリックス(CaptureカラムTM,Gentra Systems Inc.,Minneapolis,MN)において、全血、骨髄、軟膜、培養細胞および固形組織(solid tissue)から精製した。CaptureカラムTMにおける精製の前に、サンプルを次のように処理した:
【0170】
i.全血および骨髄
全血および骨髄は、DNA分解を減少させるためにEDTA中に収集した。しかしながら、他の抗凝血剤、例えばACD(クエン酸塩)およびヘパリンを、成功裏に使用できる。サンプルは、新鮮なものでも凍結されたものでもよい。しかしながら、改善された収量は、凍結サンプルを用いて観察される。凍結サンプルは、−80℃において少なくとも2年間安定である。使用前に、サンプルを、37℃温浴で速やかに融解し、そして使用まで氷上に保つ。血液もしくは骨髄が凍結されない場合は、4℃で貯蔵することが推奨される。血液もしくは骨髄の200μl容量がDNA精製のために使用できる。より大容量からDNAを精製する必要がある場合は、軟膜サンプルが調製されてもよい。
【0171】
ii.軟膜
全血は、DNA分解を減少させるためにEDTA中で収集した。しかしながら、他の抗凝血剤、例えばACD(クエン酸塩)およびヘパリンを、成功裏に使用できる。新鮮サンプルは、4℃で貯蔵された。白血細胞は、十分な溶解試薬(Lysis SolutionTM,Gentra Systems Inc.,Minneapolis,MN)を用いて素早く単離された。あるいはまた、軟膜は、5mlまでの全血から、室温で10分間800xgでサンプルを遠心することによって調製されてもよい。あるいはまた、血液を含有するチューブを、直立位置に4℃で一夜放置して細胞を沈降させてもよい。白血細胞の薄層(軟膜)は、上部血漿層と下部赤血細胞層の間に、肉眼で見られるであろう。上部血漿層を除去し、そして軟膜を、ピペットを用いて注意深く収集し、そして使用まで氷上に保つ。DNAは、最大10x106白血細胞を含有する200μlまでの軟膜調製物から精製できる。
【0172】
iii.体液
(例は、唾液、滑液、脳脊髄液、尿、羊水、血漿および血清を含む。)
体液サンプルを収集し、4℃で保存し、そして可能な限り速やかに使用する。あるいはまた、それらを−80℃で凍結保存してもよい。低い細胞数の体液では、サンプルを遠心
によって濃縮することが望ましい。体液3〜40mlからの細胞を、2,000xg10分間の遠心によってペレットにした。上澄液を、残液200μl〜1mlを残して除去した。残留液におけるペレットを、上下繰り返し10回ピペッティングして完全に懸濁し、そして氷上に維持するか、−80℃で凍結保存した。
【0173】
iv.培養細胞
新鮮サンプルおよび−80℃で凍結保存されたサンプルを使用した。懸濁された培養細胞を収集し、そして使用まで氷上に置いた。細胞計数は、血球計もしくは他の細胞カウンターを用いて得られた。10x106までの培養細胞を含有する懸濁液200μlを、CaptureカラムTMに直接添加した。
【0174】
v.固形組織
新鮮サンプルおよび−80℃で凍結保存されたサンプルを使用した。サンプルを、常時、氷上に保ってDNアーゼ活性を減少させた。組織20mgを、冷PBS1)(好ましくは、DNアーゼ活性を減少させるために1mM EDTAを含有)30μlを含有する1.5mlミクロフュージ(microfuge)チューブに添加し、そして素早く、ミクロフュージチューブ乳棒でホモジナイズした。サンプルを氷上に置いて細胞塊を2〜10分間沈降させた。次いで、上部細胞懸濁液200μlを採取してすべての細胞塊を排除した。
【0175】
−−−−−
1) EDTA含有PBS:8gmNaCl,0.2gmKCl,2.72gmNa2HPO4・7H2O,0.24gmKH2PO4,0.372gmEDTA二ナトリウム塩を超純水に溶解し、1000mlまでの容量にしてオートクレーブする。
【0176】
vi.グラム陰性細菌
新鮮サンプルおよび−80℃で凍結保存されたサンプルを使用した。サンプルを氷上に維持した。典型的には、一夜培養液は、1〜3x109細胞/mlを含有する。しかしながら、グラム陰性細菌の比較的小さいゲノムサイズによっては、3x109までの細胞がDNA精製用カラムに適用された。培養液を遠心し、洗浄し、再懸濁し、そしてカラムに適用した。
【0177】
実施例25.溶解マトリックスにおけるDNA精製
例24からのサンプルを、溶解マトリックス(CaptureカラムTM,Gentra
Systems,Minneapolis,MN)を用いて次のように精製した:
i.サンプル精製
1.十分混合したサンプル容量200μlを、CaptureカラムTMに添加し、そして室温で少なくとも1分〜1時間吸着させた。
【0178】
2.DNA精製試薬(DNA精製溶液TM,Gentra Systems,Minneapolis,MN)容量400μlを添加し、そして室温で1分間インキュベートした。
【0179】
3.CaptureカラムTMを、2,000〜12,000xgで10秒間遠心した。廃液容量600μlを廃液回収チューブ中に集めた。
【0180】
4.DNA精製溶液TM容量400μlを再びCaptureカラムTMに添加し、そして室温で1分間インキュベートさせた。
【0181】
5.次いで、CaptureカラムTMを、2,000〜12,000xgで10秒間遠
心し、そして廃液容量を集めた。
【0182】
6.次いで、DNA溶出溶液TM容量200μlを添加した。CaptureカラムTMを上記のように遠心した。
【0183】
7.CaptureカラムTMを、DNA回収チューブに移し、そして廃液を捨てた。
【0184】
8.DNA溶出溶液TM容量200μlを添加し、そして99℃に予備加熱した乾燥ブロックヒーター中で10分間インキュベートさせた。次いで、CaptureカラムTMを、先に記したように遠心して、溶解マトリックスからDNAを放出した。
【0185】
9.次いで、精製DNAを分析に使用した。
【0186】
ii.DNA保存
精製DNAは、4℃において少なくとも3カ月間安定である。長期保存のためには、それは−20℃で保存できる。
【0187】
実施例26.UV分光光度分析を用いるDNA定量
UV分光光度分析用のDNAを希釈するために、しばしば水が使用される。しかしながら、水が希釈液として使用される場合、測定されたA260/A280比および収量の両方には、有意な変化が生じることがある。市販緩衝剤、例えばTrisもしくはリン酸に基づく緩衝剤は、これらの問題に打ち勝つために使用できる。確実な結果は、下記のようなTE緩衝剤TM(10mM Tris,11mM EDTA pH8.0)(Gentra Systems,Minneapolis,MN)中にDNAサンプルを希釈することによって得られる。さらに確実には、マスクされた石英キュベット(例えば、Beckman
Instruments,Inc.Semi−Microcell Masked Cuvette Cat.No.533041)を用いることによって得られる。
【0188】
ii.サンプル調製およびUV分光光度分析
1.精製DNAサンプルを、5秒間静かに旋回させる。
【0189】
2.希釈チューブは、TE緩衝剤TM190μlを0.6mlミクロフュージチューブに添加することによって調製した。
【0190】
3.ブランク溶液は、0.6mlミクロフュージチューブ中で、TE緩衝剤TM190μlによりDNA溶出試薬(DNA溶出溶液TM,Gentra Systems,Minneapolis,MN)容量10μlを希釈することによって調製した。
【0191】
4.DNA 10μlを、各サンプルから採取し、そしてTE緩衝剤TMと混合して全容量200μlにすると1:20希釈になる。
【0192】
5.次いで、希釈サンプルを、高速で5秒間回転した。
【0193】
6.希釈サンプル容量200μlを使用し、UV分光光度計を用いて260nm,280nmおよび320nmにおける吸光度を測定することによって、収量および純度を測定した。
【0194】
iii.DNA収量および純度計算
1.各サンプルのDNA濃度を算出するために:(A260−A320)x50x希釈ファクター(例えば200/10)=DNA濃度(μg/ml)。注意:A320はバックグラウ
ンド散乱を測定する。
【0195】
2.DNA収量を算出するために:DNA濃度(μg/ml)x溶出溶液の容量(0.2ml)=DNA収量(μg)。
【0196】
3.DNA純度を算出するために:(A260−A320)/A280−A320)=DNAの純度。A260/280比は、少なくとも1.5でなければならないが、この比は、DNA純度の正確な測定値ではないかも知れない(引用1,2,3、参照)。この比は、タンパク質調製物中の核酸汚染を検出するために最初に使用され、そしてそれ自体、DNA品質の不正確な指標である。DNA品質は、アガロースゲル電気泳動によってDNAを単純に分析するか、または性能を評価する(例えばPCR増幅によって)ことによって、より良く検査できる。
【0197】
実施例27.平板固形支持体におけるDNA精製
新鮮もしくは凍結生物サンプルを収集し、そして例24.に記述されたように処理した。大サンプル容量(例えば300μl)を平板固形支持体(Collection CardTM,Gentra Systems,Minneapolis,MN)上にピペットで添加し、乾燥し、次いで、DNA精製前にディスクを打ち抜くことによってサンプリングした。サンプルは、室温で少なくとも9カ月、または長期保存では−20℃で、Collection Card上で保存できる。
【0198】
次のサンプルを収集し、そして室温で2時間、水平位置のCollection Card上で乾燥させた。
【0199】
i.全血(皮膚穿刺もしくは静脈穿刺により得る)
ii.頬細胞(頬内側からの上皮細胞)
iii.体液(唾液、尿、血漿、血清)
iv.培養細胞
【0200】
DNA精製
サンプルを、清潔なホールパンチを用いて3mmディスクを打ち抜くことによって、Coolection Cardから採取し、次いで、96穴プレート、0.2mlもしくは0.6mlミクロフュージ・チューブにおいて精製した。3mmディスクを、96穴プレートのウェルに置き、そしてプレートを自動ワークステーション中に設置した。(さもなくば、サンプルを、マルチチャンネルピペットを用いて96穴プレート中に、またはミクロピペットを用いて0.2もしくは0.6mlチューブ中に、手動で処理してもよい)。DNA精製試薬(DNA精製溶液TM,Gentra Systems,Minneapolis,MN)容量200μlを添加し、そして室温で15分間インキュベートさせて、汚染物が遊離される間、DNAをディスクに結合させたままにした。溶液をピペッティングによって混合し、次いで除去した。この処理を2回繰り返した。次いで、100%イソプロパノールもしくは100%エタノール容量200μlを添加し、そして室温で1分間インキュベートさせた。アルコールを除去し、そしてアルコール洗浄を繰り返した。次いで、ディスクを、室温で少なくとも1〜16時間乾燥させてアルコールを蒸発させた。乾燥後、サンプルディスクは、明橙色ないし白色であった。精製ディスクは、室温で少なくとも9カ月、または長期保存では−20℃で安定である。
【0201】
DNA増幅
1.ディスクを、0.2もしくは0.6ml増幅チューブで精製する場合は、少なくとも50μlの増幅溶液を、直接チューブに添加した。ディスクを、96穴平底プレートで精製する場合は、精製DNAサンプルディスクを増幅チューブに移し、次いで、少なくと
も50μlの増幅溶液を添加した。ディスクを完全に増幅溶液中に沈めた。次いで、サンプルを標準条件を用いて増幅した。
【0202】
2.ディスクは、増幅溶液中、室温で少なくとも4カ月間保存できる。
【0203】
DNAサンプルディスクの再使用
精製DNAディスクを洗浄し、そして少なくとも5回再使用してもよい。
【0204】
1.ディスクを増幅チューブから取り除き、続いて、2mlレシーバー遠心チューブ内に含有されたフィルター挿入物に移す。
【0205】
2.DNA精製試薬(DNA精製溶液,Gentra Systems,Minneapolis,MN)200μlをフィルター挿入物中にピペッティングし、そして13,000〜16,000xg5秒間で遠心してディスクを洗浄する。この洗浄を、全2回洗浄の間もう1回繰り返す。
【0206】
3.レシーバーチューブ中の洗浄溶液を廃棄し、そして洗浄されたディスクを、新しい増幅チューブに移す。増幅溶液を添加し、上記のように増幅する。
【0207】
実施例28.溶解マトリックスディスクにおける生物サンプルからのDNA精製、および続いての増幅
DNAは、溶解マトリックスディスク(Captureディスク,Gentra Systems,Minneapolis,MN)において、5種の生物サンプルから精製した。DNAの品質はPCR増幅を用いて確認された。
【0208】
生物サンプルを収集し、そして次のように調製した:ヒト全血および骨髄は、EDTA(Becton Dickinson No.6457)を含有するチューブ中に収集した;軟膜は、EDTA中に収集された全血0.2mlから単離した;尿沈降物0.5mlは、尿サンプル40mlを800xg10分間の遠心によって調製した;そして106K562細胞は、培養基0.3ml中に懸濁した。DNAを、次節に記述されるように各調製サンプル3μlから精製した。精製DNAを含有する各3mmディスクを、HLA−H座(遺伝的血色素症スクリーニングのために使用される)の特異的プライマーを用いて反応液50μlにおいて増幅した。388塩基対の増幅産物が期待された。
【0209】
サンプル収集および取り扱い
i.軟膜調製物
全血もしくは骨髄を、DNA分解を減少させるためにEDTA中に収集した。しかしながら、他の抗凝血剤、例えばACD(クエン酸塩)およびヘパリンを、成功裏に使用できる。白血細胞は、RBC溶解試薬(PUREGENER RBC Lysis Solution,Gentra Systems,Minneapolis,MN)を用いて、サンプル中の赤血細胞から単離された。あるいはまた、軟膜は、室温で10分間800xgでサンプルを遠心することによって調製されてもよい。白血細胞の薄層(軟膜)は、上部血漿層と下部赤血細胞層の間に、肉眼で見られるであろう。上部血漿層を除去し、そして軟膜を、ピペットを用いて収集し、そして氷上に保つ。少なくとも2,100の白血細胞を含有する軟膜の懸濁液3μlを、次いで、Captureディスクに添加した。
【0210】
ii.体液
体液の例は、唾液、滑液、脳脊髄液、尿、羊水、血漿および血清を含む。低い細胞数の体液では、サンプルを遠心によって濃縮する。体液3〜40mlからの細胞を、800xg10分間の遠心によってペレットにする。上澄液を除去し、そしてペレットを、残液中
に懸濁し、そして氷上に維持する。
【0211】
iii.培養細胞
細胞数は、血球計もしくは他の細胞カウンターを用いて測定された。少なくとも2,100培養細胞を含有する懸濁液3μlを、溶解マトリックスディスクに添加した。
【0212】
iv.グラム陰性細菌
少なくとも600,000細菌細胞を含有する懸濁液3μlを溶解マトリックスディスクに添加した。典型的には、細菌の一夜培養液は、1〜3x109細胞/mlを含有する。かくして、培養液は直接使用されても、また必要ならば、遠心によって濃縮されてもよい。
【0213】
v.マウス唾液
マウスを直立位に拘束し、そして唾液3〜5μlを、ミクロピペッターを用いてマウスの舌下から採取した。
【0214】
vi.全血もしくは骨髄
全血もしくは骨髄は、DNA分解を減少させるためにEDTA中に収集した。しかしながら、他の抗凝血剤、例えばACD(クエン酸塩)およびヘパリンを成功裏に使用できる。血液もしくは骨髄の3μl容量がDNA精製のために使用された。
【0215】
DNA精製
上記サンプルを次のように精製する:
1.十分混合したサンプル容量3μlを、2mlスピンチューブの挿入物中の3mm溶解マトリックスディスク上にピペッティングした。サンプルを、室温で少なくとも1分もしくは2時間まで吸収させた。
【0216】
2.DNA精製試薬(DNA精製溶液,Gentra Systems,Minneapolis,MN)容量200μlを挿入物に添加し、そして室温で1分間インキュベートさせた。
【0217】
3.スピンチューブを、2,000〜16,000xgで10秒間遠心して、洗浄溶液をレシーバーチューブ中に集めた。
【0218】
4.DNA精製試薬とのインキュベーションおよび遠心を2回繰り返した。固定化精製DNAを含有する溶解マトリックスディスクは、白色もしくはオフホワイト色であった。次いで、固定化されたDNAを、DNA増幅のために使用した。
【0219】
DNA増幅
ディスクを、直接、増幅チューブ中に置いた。増幅主混合液容量25〜50μlをチューブに添加し、そしてDNAを標準条件を用いて増幅した。ディスクは、増幅溶液中で少なくとも4カ月間室温で保存された。
【0220】
サンプル再使用
ディスクは、さらなる増幅のために再使用されてもよい。方法は次のとおりである:ディスクをDNA精製溶液200μlで2回洗浄し、そして増幅前に、2,000〜16,000xg5秒間遠心する。
【0221】
<本発明の主たる態様>
本発明の特徴または主たる態様を以下に挙げる。
【0222】
態様1: (a)緩衝剤;
(b)塩基;
(c)キレート剤;および
(d)水、
を含んで成るDNA溶出試薬。
【0223】
態様2: キレート剤が、DNA溶出試薬の総容量に基づいて約0.1mMより大きくない量で使用される、態様1のDNA溶出試薬。
【0224】
態様3: DNA溶出試薬が最低約7のpHを有する、態様1のDNA溶出試薬。
【0225】
態様4: 塩基が、アルカリ金属水酸化物より成る群から選ばれる、態様1のDNA溶出試薬。
【0226】
態様5: 緩衝剤が、DNA溶出試薬の総容量に基づいて20mMより大きくない量で存在する、態様1のDNA溶出試薬。
【0227】
態様6: 緩衝剤が、DNA溶出試薬の総容量に基づいて0.001から20mMの量で存在する、態様1のDNA溶出試薬。
【0228】
態様7: 緩衝剤が、DNA溶出試薬の総容量に基づいて0.01から15mMの量で存在する、態様1のDNA溶出試薬。
【0229】
態様8: 塩基が、DNA溶出試薬の総容量に基づいて20mMより大きくない量で存在する、態様1のDNA溶出試薬。
【0230】
態様9: 塩基が、DNA溶出試薬の総容量に基づいて1から10mMの量で存在する、態様1のDNA溶出試薬。
【0231】
態様10: 緩衝剤、塩基およびキレート剤の合わせられた量が、DNA溶出試薬の総容量に基づいて約20mMより大きくない、態様1のDNA溶出試薬。
【0232】
態様11: (a)DNAを含有する生物学的物質を固体支持体と接触させること;
(b)DNAを含有する生物学的物質をDNA精製試薬で処理すること;
(c)DNAを生物学的物質の残余から精製すること;そして
(d)DNAを、DNA溶出試薬を用いて固体支持体から溶出すること、
の段階を含んで成る、DNAの単離方法であって、DNA溶出試薬が、
(i)緩衝剤;
(ii)塩基;
(iii)キレート剤;および
(iv)水、
を含んで成る方法。
【0233】
態様12: DNA溶出試薬が最低約7のpHを有する、態様11の方法。
【0234】
態様13: 固体支持体が、セルロース、酢酸セルロース、ガラス繊維、ニトロセルロース、ナイロン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデンおよびそれらの組み合わせより成る群から選択される、態様11の方法。
【0235】
態様14: 固体支持体が容器中に含有され、容器が、遠心管、回転チューブ、シリンジ、カートリッジ、チャンバー、複数のウェルのプレート、試験管およびそれらの組み合わせより成る群から選択される、態様13の方法。
【0236】
態様15: 生物学的物質が、真核生物細胞、原核生物細胞、微生物細胞、細菌細胞、植物細胞、マイコプラスマ、原生動物、細菌、真菌、ウイルスならびにそれらのライセートおよびホモジェネートより成る群から選択される、態様12の方法。
【0237】
態様16: 生物学的物質が、体液、身体の廃棄生成物、排泄物および組織より成る群から選択される、態様12の方法。
【0238】
態様17: 生物学的物質が、空気、水、堆積物および土壌から採取された環境サンプルより成る群から選択される、態様12の方法。
【0239】
態様18: 塩基が、アルカリ金属水酸化物より成る群から選ばれる、態様11の方法。
【0240】
態様19: 緩衝剤が、DNA溶出試薬の総容量に基づいて20mMより大きくない量で存在する、態様11の方法。
【0241】
態様20: 緩衝剤が、DNA溶出試薬の総容量に基づいて0.001から20mMの量で存在する、態様11の方法。
【0242】
態様21: 緩衝剤が、DNA溶出試薬の総容量に基づいて0.01から15mMの量で存在する、態様11の方法。
【0243】
態様22: 塩基が、DNA溶出試薬の総容量に基づいて20mMより大きくない量で存在する、態様11の方法。
【0244】
態様23: 塩基が、DNA溶出試薬の総容量に基づいて1から10mMの量で存在する、態様11の方法。
【0245】
態様24: キレート剤が、DNA溶出試薬の総容量に基づいて0.1mMより大きくない量で存在する、態様11の方法。
【0246】
態様25: 緩衝剤、塩基およびキレート剤の組み合わせられた量が、DNA溶出試薬の総容量を基礎として約20mMより大きくない、態様11の方法。
【0247】
態様26: 緩衝剤がトリスであり、キレート剤がEDTAであり、そして塩基がアルカリ金属水酸化物より成る群から選ばれる、態様11の方法。
【0248】
態様27: 60℃より上で加熱する段階をさらに含んで成る、態様11の方法。
【0249】
態様28: (a)生物学的サンプルから本質的に純粋なDNAを単離するための説明手段;
(b)DNA精製試薬;および
(c)DNA溶出試薬、
を含んで成る、DNAを単離するためのキットであって、
DNA溶出試薬が、
(i)緩衝剤;
(ii)塩基;
(iii)キレート剤;および
(iv)水、
を含んで成るキット。
【0250】
態様29: 固体支持体をさらに含んで成る、態様28のキット。
【0251】
態様30:(a)生物学的サンプルから本質的に純粋なDNAを単離するための説明手段;および
(b)DNA溶出試薬
を含んで成る、DNAを単離するためのキットであって、
DNA溶出試薬が、
(i)緩衝剤;
(ii)塩基;
(iii)キレート剤;および
(iv)水、
を含んで成るキット。
【0252】
態様31: 固体支持体をさらに含んで成る、態様30のキット。
【0253】
態様32: 溶解試薬が固体支持体に結合されるように、
(a)生物学的サンプルから本質的に純粋なDNAを単離するための説明手段;
(b)DNA精製試薬;および
(c)溶解試薬で処理された固体支持体、
を含んで成る、DNAを単離するためのキット。
【0254】
態様33: 固体支持体を保持するための容器をさらに含んで成る、態様29、31および32のキット。
【0255】
態様34: 固体支持体が溶解試薬で処理される、態様29および31のキット。
【0256】
態様35: 固体支持体がRNA消化酵素で処理される、態様29、31および32のキット。
【0257】
態様36: DNA単離に先立つ哺乳動物の全血中の赤血球からの白血球の分離での使用のための、塩化アンモニウム、重炭酸ナトリウムおよびEDTAを含んで成るRBC溶解試薬をさらに含んで成る、態様29、31および32のキット。
【0258】
態様37: (a)トリス、EDTAおよびソルビトールを含んで成る細胞懸濁試薬;ならびに
(b)溶解酵素、グリセロール、トリスおよび塩化カルシウムを含んで成る溶解酵素試薬をさらに含んで成る、態様29、31および32のキットであって、
当該細胞懸濁試薬および当該溶解酵素試薬が酵母およびグラム陽性細菌の細胞壁を消化するための組み合わせでの使用に適するキット。
【0259】
態様38: (a)RBC溶解試薬;
(b)細胞懸濁試薬;
(c)溶解酵素試薬;
(d)タンパク質消化試薬;および
(e)等張溶液、
より成る群から選択される試薬をさらに含んで成る、態様29、31および32のキット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)緩衝剤;
(b)塩基;
(c)キレート剤;および
(d)水、
を含んで成るDNA溶離試薬。

【公開番号】特開2012−157366(P2012−157366A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−109533(P2012−109533)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【分割の表示】特願2000−529467(P2000−529467)の分割
【原出願日】平成11年2月2日(1999.2.2)
【出願人】(507279299)キアジエン・ノース・アメリカン・ホールデイングス・インコーポレーテツド (1)
【Fターム(参考)】