説明

DNAアレイ自動作製装置におけるメンブレン固定装置

【課題】吸引槽上の定められた位置に、移動したり、離脱することなく、メンブレンを確実に載置固定する。
【解決手段】メンブレン19を載置固定する吸引槽3が、下部吸引槽4上に上部吸引槽5を被冠固定できるようにして形成され、且つ上部吸引槽5の嵌合板12上に方形枠状のマグネットシート13を固着すると共に、該マグネットシート13上に、方形枠状の押さえ用マグネットシート18を、吸着・剥離自在なるようにして形成する。そして、上部吸引槽5の多孔板17上にメンブレン19を載置し、押さえ用マグネットシート18をマグネットシート13に吸着させて、メンブレン19を上部吸引槽5に固定する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、DNAを張り付けるメンブレンを、吸引槽上の定められた位置に移動したり、離脱することなく確実に載置固定することができると共に、DNAを張り付けた後は極めて簡単にメンブレンを取外すことができるDNAアレイ自動作製装置におけるメンブレン固定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のDNAアレイ自動作製装置におけるメンブレン固定装置は、図示していないDNA溶液自動分注機の分注ノズル群の下面に、吸引管31の先端を開口連設すると共に、断面凹状をした吸引槽32の上方部に多数の吸引小孔33を等間隔で穿設した吸引プレート34が設けられ、該吸引プレート34上にポーラスシート35を装置固定し、更に該ポーラスシート35上にDNAを張り付けるシートであるナイロン製のメンブレン36を載置することができるようにして形成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来のメンブレン固定装置は、単にポーラスシート35上にメンブレン36を載置し、図示していない吸引ポンプから吸引管31を介して吸引槽32内の空気を吸引して、その吸引力により前記メンブレン36を吸引して、該メンブレン36の移動と離脱を防止しているだけなので、いちいち手作業でメンブレン36をポーラスシート35上に位置合わせして載置しなければならず、手間と時間がかかるという課題があった。
【0004】本発明は、前記課題を解決すべくなされたもので、メンブレンを吸引槽上の定められた位置に移動したり、離脱することなく確実に載置固定することができると共に、DNAを張り付けた後は簡単にメンブレンを取外すことができるDNAアレイ自動作製装置におけるメンブレン固定装置を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、メンブレンを載置固定する吸引槽が、下部吸引槽上に上部吸引槽を被冠固定できるようにして形成され、前記下部吸引槽は、方形状の底板の外側縁部に方形枠状に外側壁板を突設して、該外側壁板に囲繞された吸引凹部を設けると共に、前記外側壁板の内側縁部に該外側壁板より高い起立片を周設し、且つ吸引管の先端を前記吸引凹部に開口連設して形成され、前記上部吸引槽は、前記起立片の外側面に摺接して嵌合する方形枠状の嵌合板の上端面に、方形枠状のゴム磁石あるいは磁性のある金属板等より成るマグネットシートを固着し、且つ前記嵌合板に多数の通気開口を備えた受板を装着固定すると共に、該受板上に多数の微小吸引孔を設けた多孔板を固定し、且つ前記マグネットシート上に方形枠状のゴム磁石あるいは磁性のある金属板等より成る押さえ用マグネットシートを吸着・剥離自在なるように固定して形成され、更に、前記上部吸引槽の多孔板上にメンブレンを載置し、該メンブレンの外側縁部上から押さえ用マグネットシートを前記マグネットシート上に吸着させて、前記メンブレンを上部吸引槽に載置固定し、且つDNA溶液自動分注機の分注ノズル群、またはDNAを張り付けるピン式スポッターのピン群の前方下面のステージに固定された下部吸引槽の外側壁板の上端面に、前記上部吸引槽の嵌合板の底面を載置して、前記上部吸引槽を下部吸引槽上に被冠固定するという手段を採用することにより、上記課題を解決した。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明すると、本発明のメンブレン固定装置は、図4に示すように公知のDNA溶液自動分注機1の分注ノズル群2の前方下面に装置されるが、本発明においては、吸引槽3が下部吸引槽4と上部吸引槽5とに分離できるように形成されており、該下部吸引槽4上に上部吸引槽5を被冠固定して使用する。なお、前記図4においては、DNA溶液自動分注機1および分注ノズル群2が図示されているが、前記DNA溶液自動分注機1に代えて、DNAを張り付ける公知のピン式スポッターを用いると共に、前記分注ノズル群2に代えて公知のピン群を用いてもよい。
【0007】前記下部吸引槽4は、方形状の底板6の外側縁部に方形枠状に外側壁板7を突設して、該外側壁板7に囲繞された吸引凹部8を設けると共に、前記外側壁板7の内側縁部に該外側壁板7より高い起立片9を周設し、且つ前記外側壁板7の上端面にスポンジゴム等で形成されたパッキング板10を周設固定し、更に吸引管11の先端を前記吸引凹部8に開口連設して形成されている。なお、本発明の実施の形態を示す図においては、パッキング板10が配設されているが、これはあった方が好ましいが、必ずしも必要なものではなく、該パッキング板10がなくても、本発明の目的を充分達成することができる。
【0008】一方、前記下部吸引槽4上に被冠固定される上部吸引槽5は、前記起立片9の外側面に摺接して嵌合できるよう方形枠状の嵌合板12を設けると共に、該嵌合板12の上端面にゴム磁石あるいは磁性のある金属板等より成る方形枠状のマグネットシート13を固着し、更に前記嵌合板12に多数の通気開口14を備えた受板15を固定し、且つ該受板15上に合成樹脂板あるいは金属板より成る多数の微小吸引孔16を設けた多孔板17を載置固定すると共に、前記マグネットシート13上に、ゴム磁石あるいは磁性のある金属板等より成る方形枠状の押さえ用マグネットシート18の一側端縁を、該マグネットシート13に吸着・剥離可能に固定して形成されている。なお、本発明の実施の形態を示す図においては、押さえ用マグネットシート18の一側端縁が、マグネットシート13に固定されて分離できないようになっているが、固定することなく分離して使用してもよい。
【0009】そして、前記多孔板17とマグネットシート13上にナイロン製のメンブレン19を載置し、該メンブレン19の外側縁部上から押さえ用マグネットシート18を嵌合板12上のマグネットシート13に吸着することにより、前記メンブレン19は前記マグネットシート13と押さえ用マグネットシート18間に挟着され、移動したり、離脱することなく、上部吸引槽5上の定められた位置に載置固定される。
【0010】而して、前記構成より成る吸引槽3の作用について説明すると、前記下部吸引槽4は、図4に示すようにDNA溶液自動分注機1の分注ノズル群2の前方下面にX−Y軸方向に移動可能に設置されたステージ20上に固定される。そして、上部吸引槽5の押さえ用マグネットシート18を押し上げてマグネットシート13への吸着状態を解除して、メンブレン19を多孔板17上に載置して、前記押さえ用マグネットシート18を前記マグネットシート13に吸着させてメンブレン19を前記多孔板17上に載置固定する。その後、前記メンブレン19を多孔板17上に固定した上部吸引槽5の嵌合板12の内側面を、下部吸引槽4の起立片9の外側面に摺接させながら嵌合し、パッキング板10上に前記嵌合板12の底面を載置することにより、上部吸引槽5は下部吸引槽4上に被冠固定される。
【0011】そして、図示していない吸引ポンプから吸引管11を介して下部・上部吸引槽4・5内の空気を吸引して、その吸引力により通気開口14および微小吸引孔16を介して多孔板17のメンブレン19を吸引し、前記メンブレン19の移動と離脱を完全に阻止する。然る後、前記メンブレン19上にDNA溶液を分注ノズル群2を介して滴下して張り付けDNAアレイを作製する。
【0012】前記DNAアレイを作製した後は、上部吸引槽5の両端部を、例えば、図4に示すようなDNAアレイ搬送ロボット21の先端に突設されたアーム22の下面のアームクランプ23を介して挟持して持ち上げ、且つ前記挟持した上部吸引槽5をストッカー24に複数枚積重ねてストックする。そして、前記上部吸引槽5を所定枚積重ねたストッカー24を測定・解析装置まで持運び、前記押さえ用マグネットシート18を押し上げてメンブレン19を取り出し、測定・解析装置にセットして測定解析する。
【0013】当然のことながら、DNAアレイ搬送ロボット21を使用することなく、手作業で上部吸引槽5を下部吸引槽4から取り外すこともできる。
【0014】従って、本発明によれば上部吸引槽5を予め多数準備しなければならないが、DNAを張り付ける作製段階でメンブレン19に手で触れることなく、該メンブレン19を測定・解析の時点で取り外すので作業能率の向上を図ることが可能である。
【0015】
【発明の効果】本発明は上述のようであるから、予め上部吸引槽の所定位置にメンブレンが移動したり、離脱することなく確実に載置固定され、前記上部吸引槽を単にDNA溶液自動分注機の分注ノズル群の前方下面に、あるいはDNAを張り付けるピン式スポッターのピン群の前方下面に配設された下部吸引槽上に被冠固定するのみで、メンブレンの位置の調整をすることなく、直ちにDNAを張り付けることができる。また、DNAを張り付ける作製段階でメンブレンに手で触れることなく、該メンブレンを測定・解析の時点で取り外すので作業能率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明DNAアレイ自動作製装置におけるメンブレン固定装置の組立分解斜視図である。
【図2】本発明DNAアレイ自動作製装置におけるメンブレン固定装置の斜視図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】本発明DNAアレイ自動作製装置におけるメンブレン固定装置の使用状態を示す斜視図である。
【図5】従来のDNAアレイ自動作製装置におけるメンブレン固定装置の斜視図である。
【図6】図5のB−B線断面図である。
【符号の説明】
1 DNA溶液自動分注機、 2 分注ノズル群、 3 吸引槽、 4 下部吸引槽、 5 上部吸引槽、 6 底板、 7 外側壁板、 8 吸引凹部、 9起立片、 11 吸引管、 12 嵌合板、 13 マグネットシート、 14 通気開口、 15 受板、 16 微小吸引孔、 17 多孔板、 18押さえ用マグネットシート、 19 メンブレン、 20 ステージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】メンブレンを載置固定する吸引槽が、下部吸引槽上に上部吸引槽を被冠固定できるようにして形成され、前記下部吸引槽は、方形状の底板の外側縁部に方形枠状に外側壁板を突設して、該外側壁板に囲繞された吸引凹部を設けると共に、前記外側壁板の内側縁部に該外側壁板より高い起立片を周設し、且つ吸引管の先端を前記吸引凹部に開口連設して形成され、前記上部吸引槽は、前記起立片の外側面に摺接して嵌合する方形枠状の嵌合板の上端面に、方形枠状のゴム磁石あるいは磁性のある金属板等より成るマグネットシートを固着し、且つ前記嵌合板に多数の通気開口を備えた受板を装着固定すると共に、該受板上に多数の微小吸引孔を設けた多孔板を固定し、且つ前記マグネットシート上に方形枠状のゴム磁石あるいは磁性のある金属板等より成る押さえ用マグネットシートを吸着・剥離自在なるように固定して形成され、更に、前記上部吸引槽の多孔板上にメンブレンを載置し、該メンブレンの外側縁部上から押さえ用マグネットシートを前記マグネットシート上に吸着させて、前記メンブレンを上部吸引槽に載置固定し、且つDNA溶液自動分注機の分注ノズル群、またはDNAを張り付けるピン式スポッターのピン群の前方下面のステージに固定された下部吸引槽の外側壁板の上端面に、前記上部吸引槽の嵌合板の底面を載置して、前記上部吸引槽を下部吸引槽上に被冠固定することを特徴とするDNAアレイ自動作製装置におけるメンブレン固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2001−281245(P2001−281245A)
【公開日】平成13年10月10日(2001.10.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−96178(P2000−96178)
【出願日】平成12年3月31日(2000.3.31)
【出願人】(500141984)株式会社 ラボ (3)
【Fターム(参考)】