説明

DNAインサート増殖およびファージディスプレイ法のためのタンパク質発現の切り離し

【課題】異種ポリペプチドをコードする挿入配列を含むファージの増殖と、異種ポリペプチドの発現との切り離しを可能にすることによって、ファージディスプレイ技術の進歩をもたらす方法の提供。
【解決手段】異種ポリペプチドの提示を伴うことなくファージコートタンパク質の発現(従って、ファージの増殖)を可能にし、異種ポリペプチドをコートタンパク質との融合として調節されたやり方で発現することができるファージ構築物およびその使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ファージコートタンパク質および異種ポリペプチドをコードする核酸配列を含む融合核酸構築物の発現に基づくファージディスプレイ技術の改善に関する。このような核酸構築物が発現されると融合タンパク質が産生される。融合タンパク質は、構築物を増殖し、粒子表面に異種ポリペプチドを提示するファージ粒子に組み立てられる。本発明は、ファージコートタンパク質および異種ポリペプチドをコードする配列の増殖と、異種ポリペプチドの発現および提示を切り離すのに使用することができる核酸構築物およびその使用方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
ファージディスプレイ法は生物科学および生物工学において公知であり、広範囲に適用されている(米国特許第5,223,409号(特許文献1);同第5,403,484号(特許文献2);同第5,4571,698号(特許文献3);同第5,766,905号(特許文献4);ならびにこれらに引用された参考文献を参照のこと)。この手法では、関心対象の外来ポリペプチドをバクテリオファージ粒子の表面に提示するために、外来ポリペプチドをコードする核酸配列とファージコートタンパク質をコードする配列の融合を利用する。この技術の応用には、親和性相互作用を使用して、ポリペプチドライブラリー(ライブラリーのメンバーは個々のファージ粒子の表面に提示される)から特定のクローンを選択することが含まれる。ポリペプチドの提示は、ポリペプチドをコードする配列が挿入されているファージベクターから、ポリペプチドをコードする配列が発現された結果である。従って、関心対象のポリペプチドのスクリーニングに使用できるファージライブラリーを形成するために、ポリペプチドをコードする配列のライブラリーが個々のディスプレイファージベクターに導入される。
【0003】
ファージディスプレイ法は様々なやり方で用いられており、また、提示されたポリペプチドの単離を容易にするために改良されてもいる。Wardら(J.Imm.Meth.189(1):73-82,1996)(非特許文献1)は、ヒトIgG1ポリペプチドをコードする配列と短縮M13ファージgene IIIの間への酵素的切断部位をコードする配列の導入について述べている。ポリペプチドがファージ表面上に発現された後、酵素的切断によってファージから分離することができた。
【0004】
繊維状バクテリオファージfdに基づくファージディスプレイ法もまた、使用する細胞株に応じて、異種ポリペプチドが可溶性形態またはファージコートタンパク質との融合として発現できるように、異種ポリペプチドをコードする配列およびファージタンパク質をコードする配列を使用するために改良されている(Hoogenboomら,Nucl.Acids Res.19(15):4133-7,1991(非特許文献2)およびLucicら,J.Biotech.61:95-108,1998(非特許文献3)を参照のこと)。異種ポリペプチドをバクテリオファージλ頭部に条件付で発現させるために、同様に改良された配列がバクテリオファージλに基づくディスプレイシステムにおいて用いられている(Mikawaら,J.Mol.Biol.262:21-30,1996(非特許文献4)を参照のこと)。
【0005】
しかしながら、ファージディスプレイに関する制約は、異種ポリペプチドの発現が、ファージライブラリーを増殖するのに用いられる宿主細胞または提示用ファージを産生するのに用いられる宿主細胞の生存に影響を及ぼす点である。この制約に対処する1つのアプローチは、異種ポリペプチドおよびファージコートタンパク質の融合の発現を制御する、従って、タンパク質のファージ上での提示を制御する、厳しく調節されるプロモーターを使用することであった(Huangら,Gene,251:187-197,2000(非特許文献5)を参照のこと)。しかしながら、このアプローチは、異種ポリペプチドがファージコートタンパク質との融合として存在すると、ファージの生活環を妨害するという第2の問題に完全に対処していない。ファージの生活環の妨害と宿主細胞の生存に及ぼす悪影響の両方に対処できる可能性のあるアプローチは、異種ポリペプチドの発現レベルを低下させる改良された転写レギュレーターおよび/または翻訳レギュレーターを使用することである。
【0006】
本明細書中の文献の引用によって、いかなる文献も、関連する先行技術であると認められない。これらの文献の日付に関する全ての声明または文献の内容に関する説明は出願人が入手できた情報に基づいており、これらの文献の日付または内容が正しいことを認めるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,223,409号
【特許文献2】米国特許第5,403,484号
【特許文献3】米国特許第5,4571,698号
【特許文献4】米国特許第5,766,905号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Wardら,J.Imm.Meth.189(1):73-82,1996
【非特許文献2】Hoogenboomら,Nucl.Acids Res.19(15):4133-7,1991
【非特許文献3】Lucicら,J.Biotech.61:95-108,1998
【非特許文献4】Mikawaら,J.Mol.Biol.262:21-30,1996
【非特許文献5】Huangら,Gene,251:187-197,2000
【発明の概要】
【0009】
発明の開示
本発明は、ファージディスプレイを実施している間は連関している増殖とファージ表面タンパク質および異種ポリペプチドの発現とを切り離す能力を提供する。この切り離しは制御可能であり、異種ポリペプチドを発現することなくファージディスプレイ融合構築物を増殖できるという利点をもたらす。好ましい態様では、ファージディスプレイ融合構築物の増殖は、コードされる異種ポリペプチドの発現から切り離されている。
【0010】
本発明は、一般的に、ファージ表面タンパク質および異種ポリペプチドの発現に関して2種類の条件下でのファージディスプレイ構築物の増殖を提供する。第1の条件は、ファージ表面タンパク質が発現され、異種ポリペプチドが発現されていない状態での、構築物のファージ粒子へのパッケージングによる核酸増殖である。第2の条件は、ファージ表面タンパク質および異種ポリペプチドが融合タンパク質として発現される状態での核酸増殖である。これら2種類の条件の後者は、パッケージングされたファージがファージディスプレイに使用することができる条件である。これらの条件下での本発明の実施に好ましい構築物は、ファージによりコードされる核酸配列を増殖するためにファージ産生を必要とする、ファージゲノムに基づく構築物である。
【0011】
増殖を異種ポリペプチドの発現から切り離す能力は、異種ポリペプチドの発現が宿主細胞に毒性であり得る状況または正常なファージ生活環に有害であり得る状況に最適な本発明の1つの局面である。別の局面では、本発明はまた、ファージ表面タンパク質の発現と異種ポリペプチドの発現との切り離しを制御することができる。これは、異種ポリペプチドの発現が、宿主細胞の増殖もしくは生存または生存可能なファージ粒子の産生に悪影響を及ぼす状況において特に有利である。さらなる有益な効果は、本発明のファージにおける異種ポリペプチドをコードする配列の収集物(collection)が、一部の配列の発現による悪影響のために複雑さ(または個々の配列の提示)を失うことなく増殖または維持できることである。
【0012】
本発明はまた、有利なことに、ファージ表面タンパク質を(任意で、ファージディスプレイのための異種ポリペプチドとの融合として)高レベルで発現できるように転写および/または翻訳を制御する非改変調節配列を使用することもできる。別の仕方で述べると、ファージ表面タンパク質の発現と異種ポリペプチドの発現とを切り離すことができるので、ファージ増殖または宿主細胞の生存に大きな悪影響を及ぼすことなく、弱められていないプロモーターおよび翻訳シグナル(例えば、リボソーム結合部位および/またはリボソーム進入部位)を使用することができる。あるいは、本発明は、発現が増大するように改変された調節配列を用いて実施することができる。なぜなら、ファージ表面タンパク質の発現と異種ポリペプチドの発現とを切り離すことができるので、異種ポリペプチドがファージ増殖もしくは宿主細胞の生存に影響を及ぼさない、または異種ポリペプチドの影響が低下するからである。
【0013】
本発明は、核酸構築物の増殖と、構築物に存在する配列によりコードされる異種ポリペプチドの発現とを切り離すためのファージ由来核酸構築物およびその使用方法を提供する。本発明のファージ由来核酸構築物は、一般的に、ファージ表面タンパク質および異種ポリペプチドが融合タンパク質として発現できるように、ファージ表面タンパク質および異種ポリペプチドの両方をコードする核酸分子を含む。従って、これらは、同じ読み枠の中に配置され、同じプロモーターおよび/または調節領域の制御下にあることによって作動可能に連結される。ファージ表面タンパク質をコードする配列と異種ポリペプチドをコードする配列との間の作動可能な連結は終止(または「停止」)コドンを含む。終止コドンは、融合タンパク質の発現には終止コドンでの早すぎる翻訳終止の抑制が必要となるように、2つの配列間に挿入される。任意で、異種ポリペプチドがファージ表面タンパク質との融合タンパク質として発現された後に酵素的切断によってファージ粒子から放出できるように、酵素的切断部位をコードする配列も連結に含まれる。このような切断部位の限定しない例は、タバコエッチウイルス(tobacco etch virus:TEV)プロテアーゼにより認識および切断される部位である。
【0014】
ファージ表面タンパク質のコード配列および異種ポリペプチドのコード配列の配置は、好ましくは、5'→3'方向に存在し、ファージ表面タンパク質のコード配列の後ろに異種ポリペプチドのコード配列が続く。もちろん、本発明は、ファージ表面タンパク質をコードする配列と異種ポリペプチドをコードする配列との間の任意の配列の存在を提供する。このような任意の配列の限定しない例として、リンカーおよび/またはプロテアーゼにより認識される切断部位をコードする配列が挙げられる。コード配列は、天然のプロモーターまたはファージ由来核酸構築物に存在する異種プロモーターの制御下にあってもよい。本発明の好ましい態様において、構築物はファージゲノムに由来し、プロモーターはファージゲノムに内因性のものである。限定しない例は、T7ファージに基づく構築物の使用およびT7プロモーターの使用である。あるいは任意で、プロモーターは、遺伝子発現のさらなる制御をもたらす誘導性プロモーターでもよい。誘導性プロモーターとして、IPTGにより誘導されるlac UV5プロモーターなどがあるが、これに限定されない。
【0015】
本発明は、好ましくは、本明細書に記載のようにファージ表面タンパク質に融合した異種ポリペプチドコード配列を含むように保存的に改変されたファージゲノムを使用することによって実施される。改変は、好ましくは、異種ポリペプチド、終止コドン、任意の切断配列、および様々な配列のクローニングまたは連結を容易にする任意の配列をコードする、必要な配列の導入に必要な改変に限られる。改変されたファージゲノムは、好ましくは、その中に見出される調節配列およびコード配列を保持する。本発明の実施に好ましいファージゲノムは、溶菌性ファージ(T7、T4、T3、およびλファージに限定されない)ならびに繊維状ファージのゲノムである。
【0016】
異種ポリペプチドをコードする配列は、好ましくは、当技術分野において公知の、または当技術分野において公知の方法によって調製される、cDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーの配列である。前記の配列はまた、単に、当業者に公知のまたは当業者によって同定されるオープンリーディングフレーム(ORF)または細胞転写物に相補的なDNAでもよい。前記のcDNA配列、ゲノム配列、またはORF配列は細胞株および生物を含む任意の供給源に由来してもよく、本発明に従って、ファージ表面タンパク質との融合タンパク質として条件付で発現され得るようにファージ由来核酸構築物に導入される。好ましくは、ライブラリー配列は、関心対象の細胞タイプから調製されたcDNA(細胞特異的cDNA)を含む。細胞タイプとして、真核細胞または原核細胞、正常または病気の細胞または組織、ヒト細胞、非ヒト霊長類、哺乳動物、菌類、植物、細菌、または他の天然供給源などがあるが、これに限定されない。あるいは、ライブラリー配列は、ある特定のタイプの機能をコードしてもよい。機能として、酵素活性、受容体、核酸結合タンパク質、またはシグナル伝達経路の成分などがあるが、これに限定されない。さらなる態様において、配列は、天然に生じる配列の人工的に改変された形でもよい。配列はまた、選択された供給源または選択されていない供給源に由来するものでもよく、供給源として、薬物もしくは他の化学薬品で処理されている細胞もしくは組織、または薬物もしくは他の化学薬品で処理されていない細胞などがあるが、これに限定されない。
【0017】
本発明はまた、調節性プロモーターの制御下にあるサプレッサーtRNA分子を条件付で発現することができるサプレッサー構築物を提供する。調節性プロモーターとして、誘導性プロモーターなどがあるが、これに限定されない。好ましくは、前記プロモーターは、調節遺伝子araCを伴うアラビノースPBADプロモーターまたは当技術分野において公知の他の誘導性プロモーターである。調節性プロモーターとして使用するための別の調節系として、tetオペロン系、lacオペロン系、およびlpp-lacオペロン系が挙げられるが、これに限定されない。好ましくは、サプレッサー構築物は、(例えば、サプレッサー構築物により発現されるマーカーの選択により)選択圧のかかった状態で、または安定に組み込まれてサプレッサー細胞株を形成するように、細胞に導入される。
【0018】
本発明の実施に特に好ましいのは、サプレッサーtRNAの発現を徐々に増やすように制御することができる「整調可能な(tunable)」プロモーターの使用である。このプロモーターを使用すると、発現され、ファージ表面に組み込まれる異種ポリペプチドの量がサプレッサー発現の制御によって「整調可能」なように、終止コドンを調節された形で抑制することが可能になる。ファージ表面の異種ポリペプチド発現のこのような制御は、ファージ表面の異種ポリペプチドの「結合価(valency)」の制御と考えることができる。本発明の好ましい構築物はファージに由来し、「整調可能な結合価(tunable valency)」を有するファージを産生することができる。このようなファージは、「整調可能な結合価」(または「TV」)ファージと呼ぶことができる。
【0019】
本明細書では、ファージ由来核酸構築物とサプレッサー構築物との組み合わせを本発明の発現系と呼ぶ。本発明の発現系では、ファージ由来構築物における終止コドンの抑制は、サプレッサー構築物によりコードされるサプレッサーtRNAの発現に左右される。別の仕方で述べると、本発明の発現系を用いると、ファージタンパク質と異種ポリペプチドとが融合産物として同時発現することなくファージタンパク質が発現できるように、ファージ表面タンパク質の発現と異種ポリペプチドの発現とを切り離すことが可能になる。
【0020】
本発明はまた、異種ポリペプチドが少なくともサプレッサーtRNAの発現を条件として発現されるような本発明の発現系を含む細胞も提供する。終止コドンの抑制が無ければ、異種ポリペプチドが発現されることなく、ファージ表面タンパク質が発現される。サプレッサーtRNA分子が発現されると、ファージ表面タンパク質および異種ポリペプチドの両方を含む融合タンパク質の発現が可能になる。ファージ表面タンパク質および異種ポリペプチドの両方を含む融合タンパク質を発現することができる構築物が誘導性プロモーターによって調節される本発明の態様では、融合タンパク質は、プロモーターの活性化およびサプレッサーtRNAの発現を条件として発現される。これにより、サプレッサーtRNA発現の存在下で異種ポリペプチドを条件付で発現させる手段が得られる。
【0021】
本発明の発現系を含む細胞は、異種ポリペプチド発現の非存在下でファージを産生することよってファージ由来構築物を増殖するのに使用することができる。これは、サプレッサーtRNAの発現を誘導しないことによって容易に行われる。あるいは、ファージディスプレイ構築物は、抑制が不可能なように、サプレッサー構築物を含まない細胞において増殖することができる。これらの産生されたファージ粒子では、偽の「読み過し(readthrough)」終止コドン抑制によって異種ポリペプチドを発現する機会は極めてわずかしかない。任意で、このような細胞におけるファージディスプレイ構築物の増殖は、細胞内の(任意で、調節されている)別の配列によるファージ表面タンパク質の発現によって高めることができる。偽の「読み過し」事象から生じてファージ表面に組み込まれる融合タンパク質を希釈することによってファージ表面の異種ポリペプチドの存在をさらに抑制するために、ファージ表面タンパク質の発現を高レベルに設定することができる。
【0022】
異種ポリペプチドの提示が望ましい場合、異種ポリペプチドをファージ表面に提示するファージを発現させるために、産物であるファージをサプレッサー構築物を含む細胞に導入することができる。
【0023】
異種ポリペプチドの発現を伴わない、または最小レベルの異種ポリペプチドの発現を伴う増殖には、異種ポリペプチドをコードする配列における変異の出現(選択)を減らすというさらなる利点がある。別の仕方で述べると、本発明を使用すると、異種ポリペプチドをコードする配列の変異頻度が小さくなる。ポリペプチドが発現されず、従って、ファージまたは宿主細胞の生存に影響を及ぼすことができないので、これは当然の結果である。これは、選択の回の間に行われるファージの増殖・増幅サイクルにおいて(特に、選択されたファージの感染多重度(m.o.i)頻度が低い場合に)特に有利である。別の仕方で述べると、所定の回で選択されたファージは(低いm.o.i.でも)細胞への感染に使用し、その後に、異種ポリペプチド発現の非存在下で増殖/増幅を行うことができる。このような増殖/増幅を用いると、ファージが高いm.o.iで産生され、異種ポリペプチドの発現より引き起こされる選択圧が無くなる。結果として得られたファージは、次の回の選択に用いられる、異種ポリペプチドを表面に提示する多量のファージ粒子を産生するための、(サプレッサーtRNAの発現の誘導による)異種ポリペプチドの発現の誘導と組み合わせて細胞に感染するのに使用することができる。
【0024】
異種ポリペプチドを発現させることなく、異種ポリペプチドをコードする配列を含むファージを増殖/増幅する能力は、ファージライブラリーの貯蔵物および核酸クローン収集物の維持に有利に使用することができる。有利なことに、この能力を用いると、異種ポリペプチドの発現のためにゆっくりと増殖するファージに不利に、または異種ポリペプチドの発現のために急速に増殖するファージに有利に(選択圧とは異なる)増殖が偏ることなく、ファージを増殖することも可能になる。従って、本発明を用いると、個々のクローンの喪失または過剰提示のために複雑さを失うことなく、ファージライブラリーおよびファージ収集物を増殖することができる。
【0025】
増殖の偏りがないことは、本発明を用いて、小さな偏りおよび高い計数効率でプラーク選択を助けることも可能にする。偏りが小さくなり、計数効率が高くなるのは、異種ポリペプチド発現の非存在下では増殖速度および溶解速度の差が小さくなるためである。
【0026】
本発明は、当技術分野において公知の、および当技術分野において使用されている、選択またはスクリーニングのためのポリペプチドファージディスプレイに使用することができるか、またはポリペプチドファージディスプレイにおける使用に適合させることができる。例えば本発明は、ある特定の細胞タイプのcDNAライブラリーに由来するポリペプチドをファージ粒子の集団(またはライブラリー)として提示するのに使用することができる。それぞれのファージ粒子は、cDNAライブラリーの1つのクローン(またはメンバー)によりコードされるポリペプチドを提示する。次いでファージ粒子は、関心対象の分子(別のポリペプチドまたは小さな有機化合物などがあるが、これに限定されない)との親和性相互作用に基づいて選択することができる。選択されたファージ粒子は単離されてもよく、(任意で、異種ポリペプチドの発現の非存在下で)増殖/増幅されてもよく、さらなる回の選択のために、コードされたポリペプチドを提示するのに使用されてもよい。選択の後、ポリペプチドを同定するために、選択されたポリペプチドをコードする配列を単離および/または配列決定することができる。これらを含むファージ構築物はまた、後にポリペプチド調製に使用するためのコード配列の供給源として使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ファージ表面のポリペプチドの提示が、サプレッサーtRNAの発現を制御するアラビノースの存在下または非存在下でファージを増殖させることによって制御できることを示す。
【図2】大腸菌のサプレッサー株に導入された本発明のファージ由来核酸構築物(パネルA)および非サプレッサー株に導入された本発明のファージ由来核酸構築物(パネルB)を介しての様々なcDNAの発現を示す。
【図3】様々な濃度のL-アラビノースによる誘導を介したサプレッサーtRNAの発現レベルへの融合タンパク質発現の依存性を示す。
【図4】実施例に記載の本発明のATVファージディスプレイ構築物を用いて観察された変異率の低下を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明を実施する態様
本発明のファージ由来核酸構築物は、プロモーターおよび/または調節領域がファージ表面タンパク質のコード配列に作動可能に連結され、ファージ表面タンパク質のコード配列が終止コドンを含む配列にインフレームに連結され、終止コドンを含む配列が異種ポリペプチドをコードする配列にインフレームに連結されている核酸分子を含む。本明細書で使用する「ファージ由来」とは、ファージ遺伝子産物をコードする天然に生じるポリヌクレオチドに見出される1つまたは複数の核酸配列を含む構築物を意味する。「作動可能に連結された」という用語は、連結されたプロモーターおよび/または調節領域がコード配列の発現を機能的に制御するような、核酸配列間の機能的連結を意味する。「作動可能に連結された」という用語はまた、同じ列に並んだプロモーターおよび/または調節領域がコード配列を制御できるような、コード配列間の連結も意味する。このようなコード配列間の連結はまた、コード配列によりコードされるアミノ酸を含む融合タンパク質が発現されるようにインフレームに連結している、または同じ読み枠内にあると言うこともできる。
【0029】
「ファージ表面タンパク質」という用語は、バクテリオファージの表面に通常見出される任意のタンパク質を意味する。ファージ表面タンパク質は、異種ポリペプチドとの融合タンパク質として発現され、それでもなお、ファージ粒子に組み立てられて、異種ポリペプチドがファージ表面に提示されるように適合することができる。好ましくは、ファージ表面タンパク質は溶菌性ファージのファージ表面タンパク質であり、ファージ由来核酸構築物は溶菌性ファージのファージ由来核酸構築物である。溶菌性ファージには、λ、T4、およびT7などがあるが、これに限定されない。本発明の特に好ましい態様はT7ファージコートタンパク質を使用する。T7ファージコートタンパク質には、gene 10およびT7由来構築物の産物などがあるが、これに限定されない。ファージ表面タンパク質の他の限定しない例として、繊維状バクテリオファージのgene IIIキャプシドタンパク質、繊維状ファージのgene VIIIキャプシドタンパク質、およびバクテリオファージλのキャプシドDタンパク質(gpD)が挙げられる。当業者により認められるように、ファージ表面タンパク質の選択は、ファージ由来構築物およびファージ由来構築物の増殖に用いられる細胞も考慮した上で行われる。
【0030】
「異種ポリペプチド」という用語は、本発明のファージ由来構築物を調製するのに使用された配列が得られたファージによりコードされることが通常見出されないポリペプチドを意味する。好ましい異種ポリペプチドは、真核細胞または原核細胞に見出される核酸分子またはオープンリーディングフレーム(ORF)(特に、ヒト、植物、植物細胞、ならびに研究用生物および動物に由来する核酸分子またはORF)によりコードされるものである。限定しない例として、細菌、マウス、ラット、ショウジョウバエ、酵母、ウサギ、非ヒト霊長類、およびゼブラフィッシュが挙げられる。他の好ましい核酸分子は、他の哺乳動物、特に、農業分野にとって重要な哺乳動物(ウシ、ヒツジ、ウマ、および他の「家畜」などがあるが、これに限定されない)、ならびに人との交わりに重要な哺乳動物(イヌおよびネコなどがあるが、これに限定されない)に由来する核酸分子である。別の供給源の核酸分子は、昆虫、雑草、菌類、ウイルス、および単細胞生物などの有害生物の核酸分子である。特に好ましい態様において、核酸分子またはORFは、臨床に関連する遺伝子産物をコードするもの、または臨床に関連する遺伝子産物をコードすると思われるものである。臨床に関連する遺伝子産物として、特定の疾患徴候の薬物を同定するための潜在的な標的が挙げられる。
【0031】
終止コドンは当技術分野において公知であり、UAGはアンバーコドンと呼ばれ、UAAはオーカーコドンと呼ばれる。UGAも適宜、使用することができる。終止コドンの選択は、終止コドンの周囲に特定の配列を導入することによって増強することもできる。例えば、アンバーコドンの後ろにプリン塩基(アデニンまたはグアニン)があると、特定の条件下で抑制されることも報告されている。
【0032】
本発明の実施において、多種多様なファージ由来構築物を使用することができる。本発明の好ましい態様では、構築物は、本明細書に記載のように異種ポリペプチドをファージ表面タンパク質との融合タンパク質として条件付で発現できるように改変されているファージゲノムである。本発明の他の態様では、融合タンパク質を発現する能力は、一つには、調節性プロモーターまたは他の調節領域(例えば、誘導が無い場合、プロモーターにより制御される発現が低くなるような、または検出不可能になるような誘導性プロモーター)を使用することによって調節される。誘導性プロモーターの限定しない例として、lacプロモーター、lac UV5プロモーター、アラビノースプロモーター、およびtetプロモーターが挙げられる。
【0033】
本発明のファージゲノム由来構築物は、好ましくは、ファージ表面タンパク質および異種ポリペプチドの融合を含む感染性ファージをパッケージングするのに必要なファージ遺伝子産物をコードする配列を含む。従って、異種ポリペプチドの条件付き発現は、必要なサプレッサーtRNAの発現を条件とする。本発明の構築物が、ファージ増殖に必要なファージ遺伝子産物をコードしない態様では、足りない産物は、ファージを増殖するのに用いられる細胞に存在する配列の発現によって供給されてもよい。本発明の他の態様では、ファージ由来構築物は、核酸分子の増殖および操作を助ける非ファージベクターに由来する配列を含む。核酸を増殖または導入するための、ファージに基づくベクターを含む適切なベクターの選択は、当技術分野において周知である。ベクター構築、宿主へのベクターの導入、および宿主における増殖または発現に必要な技法は当業者の日常業務である。本発明において使用することができるベクターの限定しない例を以下で説明する。
【0034】
ファージ表面タンパクのコード配列および異種ポリペプチドのコード配列の配置は、好ましくは、5'→3'方向に存在し、ファージ表面タンパク質のコード配列の後ろに、(抑制可能な)終止コドンを含む配列、および異種ポリペプチドのコード配列が続く。「5'」(5ダッシュ)という用語は、一般的にポリヌクレオチド内のある領域または位置が、同じポリヌクレオチド内の別の領域または位置の5'(上流)にあることを意味する。「3'」(3ダッシュ)という用語は、一般的にポリヌクレオチド内のある領域または位置が、同じポリヌクレオチド内の別の領域または位置の3'(下流)にあることを意味する。終止コドンを含む配列は、ファージ表面タンパク質をコードする配列および異種ポリペプチドをコードする配列の両方とインフレームに配置された、他のアミノ酸をコードする配列を含むリンカーと呼ばれることもある。リンカーは、任意で酵素的切断部位をコードする配列を含んでもよい。このような部位の限定しない例として、サブチリシン、H64Aサブチリシン、ゲネナーゼ(Genenase)I、TEVプロテアーゼ、トロンビン、第Xa因子、およびエンテロキナーゼが挙げられる。
【0035】
異種ポリペプチドをコードする配列は、当業者により選択された細胞からcDNAを調製するか、またはゲノム核酸配列を単離することによって容易に調製される。配列はまた、配列によりコードされるポリペプチドの機能が決定されていても、決定されてなくても、単に当技術分野において公知の、または当技術分野において同定されたオープンリーディングフレーム(ORF)でもよい。配列はまた、酵素活性または受容体機能などの特定の機能を有する細胞因子をコードするものでもよい。これらの配列がコードするポリペプチドを提示するファージと、ある特定のタイプの細胞機能を標的にすることが知られている、または標的にすると考えられている化合物とを接触させる本発明の態様において、これらの配列を含む構築物は有利に用いられる。本発明を限定することはないが、例えば、様々な条件下で競合してキナーゼに結合することが知られている化合物または結合すると考えられている化合物を用いた選択のために、キナーゼ活性をコードする配列を使用してキナーゼ活性を提示することができる。これにより、相互作用の特異性を求めるために異なる条件下で化合物に結合する実際のキナーゼを同定する能力を提供する。
【0036】
本発明はまた、調節性プロモーターの制御下にあるサプレッサーtRNA分子を条件付で発現することができるサプレッサー構築物も提供する。サプレッサー構築物は、以下に記載のベクターを含む様々なベクターに由来してもよく、好ましくは、抑制効果を高めるために高コピー数で細胞内に維持することができる。本発明のファージ由来構築物およびサプレッサー構築物は、好ましくは、それぞれの構築物に存在する異なるマーカーに基づいて選択することができる。このようなマーカーの限定しない例として、アンピシリン耐性、カナマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カルベニシリン耐性、クロラムフェニコール耐性、およびストレプトマイシン耐性が挙げられる。選択は、細胞と、使用されるマーカーに対する適切な選択薬剤とを接触させることによって容易に行われる。もちろん、選択薬剤の量は細胞死をもたらすのに十分でなければならず、このような量は当業者に公知である、または過度の実験なく当業者により容易に決定される。
【0037】
もちろん、サプレッサーtRNAは、本発明のファージ由来構築物に用いられる終止コドンを抑制できるように選択される。従って、終止コドンがUAGである場合、アンバーサプレッサーtRNAが用いられる。その一方で、終止コドンがUAAである場合、オーカーサプレッサーtRNAが用いられる。サプレッサーtRNAは任意のアミノ酸(特に、翻訳に用いられる12種類の天然アミノ酸の1つ)を挿入してもよいが、好ましくはアラニンまたはグルタミン酸を挿入する。
【0038】
本発明の構築物は、過度の実験なく、当技術分野において公知の任意の手段によって細胞に導入される。もちろん、ファージによる感受性細胞の感染を使用してもよい。本開示の後に開発された方法を使用することもできる。本発明の好ましい細胞は野生型であり、従って、ファージ表面タンパク質をコードする配列と異種ポリペプチドをコードする配列との間に存在する終止コドンを抑制することはできない。
【0039】
本発明を実施するための細胞は、本開示を考慮すれば過度の実験なく当業者によって選択することができる。限定しない例として、大腸菌細胞およびファージ増殖および/またはファージ感染に適した他の細菌細胞が挙げられる。好ましい細胞は、本発明の実施において用いられる終止コドンを抑制しない細胞である。このような細胞は、異種ポリペプチドの発現を伴わず、任意で過剰のファージ表面タンパク質の発現を伴うファージ産生において特に有用である。このような細胞の限定しない例は大腸菌BL21細胞である。細胞が、異種ポリペプチドの提示を伴わないファージ産生に用いられる場合、(異種ポリペプチドをコードする配列に融合した)ファージ表面タンパク質をコードする配列を調節性プロモーターの制御下で発現することができる構築物を含んでもよい。このような細胞の限定しない例は、Novagenから入手可能な、BL21細胞の誘導体である大腸菌BLT5615細胞である。BLT5615細胞は、IPTG誘導性プロモーターの制御下でT7ファージコートタンパク質を発現することができる。
【0040】
もちろん、融合タンパク質がファージ粒子表面に発現された状態でファージ由来構築物をパッケージングするために、適切なサプレッサーtRNAを内因的に発現する細胞も使用することができる。このような細胞は、異種ポリペプチドをファージ表面に提示するファージの産生に特に有用であるが、このような細胞を使用すると、サプレッサーtRNAの発現を調節することによって異種ポリペプチドの発現を制御することができない。サプレッサーtRNAのこのような制御可能な発現は本発明のサプレッサー構築物によってもたらされる。
【0041】
本明細書の説明から明らかなように、ファージ由来核酸構築物およびサプレッサー構築物の組み合わせは、サプレッサーtRNAの発現と異種タンパク質の発現とを連関させている。サプレッサーtRNAの発現が条件付きであるので、異種タンパク質の発現は条件付きである。従って、サプレッサーtRNAの発現が誘導されなければ、異種ポリペプチドはファージ表面に提示されず、ファージ由来構築物は、ファージ粒子のパッケージングを可能にするファージ表面タンパク質を発現することによって単に増殖するだけである。tRNAの発現が誘導されれば、異種ポリペプチドはファージ粒子表面に提示される。
【0042】
本発明はまた、ファージ由来構築物の増殖およびファージ粒子のパッケージングを助けるように改変された細胞を用いて実施することができる。このような細胞の一例が、ファージ表面タンパク質の発現のために、さらなる構築物(または第2の遺伝因子、任意で細胞ゲノムに組み込まれている)を含む細胞である。これらの細胞は、ファージ由来構築物の有効なパッケージングに十分なファージ表面タンパク質が確実に産生されるように、さらなるファージ表面タンパク質を、任意で(誘導性プロモーターを使用することなどによって)調節制御されて発現することができる。前記のように、さらなるファージ表面タンパク質を発現させるこのような構築物の使用はまた、細胞における偽の発現事象のために起こり得る表面タンパク質および異種ポリペプチドの融合体の組み込みを希釈するのに使用することもできる。
【0043】
本発明は、試験化合物を用いた選択またはスクリーニングのためのポリペプチドファージディスプレイ法において使用することができ、またはポリペプチドファージディスプレイ法における使用に合わせることができる。例えば、どのファージが試験化合物と相互作用するポリペプチドをファージ粒子表面に提示するかを確かめるために、本発明は、本明細書に開示される構築物を細胞に導入してファージ粒子ライブラリーを作成することによって実施することができる。好ましくは、相互作用には、ポリペプチドと試験化合物との結合特異的相互作用が含まれる。相互作用を検出することによって、ポリペプチドが化合物と相互作用することを確かめることができる。相互作用の検出はまた、単離、後の増殖および/もしくは増幅、ならびに/またはさらなる回の選択のためにファージ粒子を選択するのに使用することもできる。好ましくは、試験化合物と相互作用するファージを同定するために、1回、2回、3回、4回、または5回のさらなる選択を使用することができる。
【0044】
選択されたファージ内の異種ポリペプチドをコードする配列は、当技術分野において周知の様々な方法によって単離および同定することができる。限定しない例として、選択されたファージの遺伝物質内のコード領域に隣接する公知(ファージ構築物)配列に(完全にまたは部分的に)相補的なプライマーを介した簡単なPCR、およびファージ遺伝物質の直接的な単離(例えば、適切な制限酵素を用いた切除による単離)(選択的に、この後に「サブクローニング」としても知られる別のベクターまたは核酸分子へのクローニングが行われる)が挙げられる。コード配列は、当技術分野において公知の方法によって配列決定することもできる。
【0045】
ベクター
本明細書で使用する「ベクター」という用語は、連結されている別の核酸を運ぶことができる核酸分子を意味する。この用語は、ファージに基づくベクターを含む。ファージに基づくベクターとして、ファージに基づくプラスミドおよび「ファージミド」などがあるが、これに限定されない。ベクターの一種がエピソーム、すなわち、染色体外複製が可能な核酸分子である。ベクターはまた、細胞ゲノムへ組み込むために核酸分子を細胞に送達するのに使用することもできる。本発明の実施に好ましいベクターは、ベクターを含むファージ粒子のパッケージングに必要な遺伝子産物を発現することができる、ファージゲノムに由来するベクターである。
【0046】
組換えDNA法に用いられるベクターは、多くの場合、エピソームとして維持される環状二本鎖DNAループを指す「プラスミド」の形をとる。さらに本発明は、等価な機能を提供し、後に当技術分野において知られるようになる他の形のベクターを含むことが意図される。
【0047】
ベクターは、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現に使用することができる。一般的に、このようなベクターは、発現させようとするポリヌクレオチドに作動可能に連結された、宿主での発現に有効なシス作用制御領域を含む。適切なトランス作用因子が宿主によって供給されるか、相補ベクターによって供給されるか、またはベクターが宿主に導入された時にベクター自身によって供給される。
【0048】
ある特定の状況では、ベクターは特異的な発現をもたらす。このような特異的発現は誘導性発現でもよく、ある種の細胞のみでの発現でもよく、誘導性発現および細胞特異的発現の両方でもよい。ベクターは、発現のために、温度および栄養添加物などの操作が簡単な環境因子によって誘導することができる。原核生物宿主および真核生物宿主において使用するための様々なベクター(例えば、構成的発現ベクターおよび誘導性発現ベクター)が周知であり、当業者によって日常的に用いられている。
【0049】
多種多様なベクターを本発明において使用することができる。このようなベクターとして、細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体成分、哺乳動物ウイルス、哺乳動物染色体に由来するベクター、ならびにこれらの組み合わせに由来するベクター(例えば、コスミドおよびファージミドなどのプラスミドおよびバクテリオファージ遺伝因子に由来するベクター)が挙げられるが、これに限定されない。一般的に、細胞においてポリヌクレオチドを維持、増殖、または発現させるのに適した任意のベクターを使用することができる。
【0050】
以下の市販ベクターは、ファージゲノムに由来するベクターの代替として限定しない例として示される。細菌において使用するためのベクターの中には、pQE70、pQE60、およびpQE-9(Qiagenから入手可能);ファージスクリプト(Phagescript)ベクター、ブルースクリプト(Bluescript)ベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Sratageneから入手可能);およびptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5(Pharmaciaから入手可能)がある。これらのベクターは、本発明に従って使用するために当業者に利用可能な多くの市販されている周知のベクターの単なる例示として列挙した。例えば、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを宿主において導入、維持、増殖、および/または発現するのに適した他の任意のプラスミドまたはベクターを、本発明のこの局面において使用できることが理解されるだろう。
【0051】
様々な周知の日常的な任意の技法によって、適切なDNA配列をベクターに導入することができる。一般的に、発現用のDNA配列とベクターとの結合は、このDNA配列およびベクターを1つまたは複数の制限エンドヌクレアーゼで切断し、T4 DNAリガーゼなどのDNAリガーゼ活性を用いて制限断片を結合することによって行われる。使用可能な制限および連結のための手順は周知であり、当業者にとって日常的なものである。この点に関する、および別の技法を用いてベクターを構築するための適切な手順も周知で、当業者にとって日常的なものであり、本明細書の他の場所に引用されたSambrookらに詳細に述べられている。
【0052】
ベクターの選択および/または設計は、形質転換しようとする宿主細胞および/または発現に望ましい種類のタンパク質の選択などの要因に左右されることがあると理解すべきである。さらに、ベクターのコピー数、コピー数を制御する能力、およびベクターによりコードされる他の任意のタンパク質(例えば、抗生物質マーカー)の発現も考慮すべきである。
【0053】
特別の定めのない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0054】
今や、本発明が大まかに説明されたが、以下の実施例を参照することによってさらに容易に理解されるだろう。実施例は例示として示され、特別の定めのない限り本発明を限定することが意図されない。
【実施例】
【0055】
実施例1
ファージ構築物および細胞株
代表例としてT7を用いて、T7ゲノムに由来するファージディスプレイ構築物が本発明に従って構築された。T7ゲノムの全配列は当技術分野において公知である。この構築物は、野生型T7プロモーター(

を含む)およびシャイン-ダルガルノリボソーム進入部位(

を含む)の制御下にあるgene 10によりコードされるコートタンパク質を有する。これらの配列は両方ともgene 10のATG開始コドンの上流(5')にある。gene 10は、前記および本明細書に記載の異種ポリペプチドをコードする配列との融合を容易に可能にする制限部位を含むように3'末端で改変されている。この構築物を「ATV」ファージまたはATVファージ構築物と名付けた。
【0056】
本発明の別の態様では、(gene 10が単独でも異種ポリペプチドをコードする配列との融合としてでも)gene 10からの発現レベルを低下させるために、T7プロモーターを欠失させてもよく、および/またはシャイン-ダルガルノ配列は変異されてもよい。任意で、発現をさらに低下させるために、シャイン-ダルガルノ配列を欠失させてもよい。コートタンパク質の発現に影響を及ぼすこのような変化の使用と共に、ファージ産生に十分なコートタンパク質をもたらすために、細胞内の別の構築物からコートタンパク質を発現させることが好ましい。好ましくは、このようなさらなる構築物は、前記および本明細書に記載の調節可能なプロモーターの制御下にある。
【0057】
pBAD-tRNAAla /TAGと名付けたサプレッサー構築物を構築するために、アラビノース誘導性BADプロモーターの制御下にあるアンバーtRNAサプレッサーも本発明に従ってプラスミドベクターに導入された。このプラスミドは複製起点およびクロラムフェニコール耐性選択マーカーを有する。このプラスミドは、BADプロモーターの正の調節因子または負の調節因子として作用する調節DNA結合タンパク質をコードするaraC調節遺伝子も有する。L-アラビノースが存在すると、BADプロモーターからの転写が誘導されるのに対して、アラビノースが存在しなければ、転写は非常に低いレベルまたは検出不可能なレベルで生じる。BADプロモーターの負の調節因子として作用するグルコースが存在すると、この低いレベルをさらに低下させることができる(Guzmanら,J.Bact.177(14):4121-4130,1995を参照のこと)。
【0058】
サプレッサー構築物の前記のプロモーター系はまた、異なる濃度のL-アラビノースを用いて異なるレベルの活性化を可能にするのに有用である。この構築物を使用すると、最終濃度0.2%〜0.002%のL-アラビノースにおいて直線的な反応が生じることが観察されている(図3を参照のこと)。この構築物は、サプレッサーtRNAの存在下での増殖には適合させていないが、提示のためのT7ファージ産生に理想的なBL21またはBLT5615(Novagen Inc.,Madison,Wisconsin)などの宿主細胞において本発明のファージディスプレイ構築物と共に使用するのに理想的である。BLT5615は2つの重要なプロテアーゼ遺伝子および2つの制限メチル化防御系が欠失し、ならびにIPTG調節性プロモーターの制御下で野生型コートタンパク質を発現するベクターを含むので特に好ましい。本発明の実施において使用する他の株として、BLT5403、またはファージ構築物内のファージ表面タンパク質をコードする配列と異種ポリペプチドをコードする配列との間に用いられる終止コドンを抑制しない任意の大腸菌株が挙げられる。
【0059】
本発明の実施の一例として、ATV(gene 10配列と融合した異種ポリペプチドをコードする配列を含む)が宿主細胞に導入される。任意で、宿主細胞は、ATVファージの増殖のために、IPTG調節性プロモーターの制御下でgene 10コートタンパク質を発現するための構築物を含む。次いで、アラビノースによって誘導されるとT7ファージ粒子上に異種ポリペプチドを提示するファージが産生されるように、前記のpBAD-tRNAAla /TAGを含むBLT5615への感染に、産物であるファージを使用することができる。これは、様々な異種ポリペプチドコード配列を含むATVファージのライブラリーを用いて実施することができる。
【0060】
実施例2
アンバー抑制によるファージディスプレイの誘導
2つの異なるcDNA配列を、アンバーコドンを含むATVファージ構築物に挿入した。これらのcDNAは、FK506結合タンパク質(FKBP)およびp38マイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼ(MAPK)をコードする。pBAD-tRNAAla /TAGを含むBL21細胞を対数期まで増殖させ、サプレッサーtRNAAla/TAGを発現させるために2つの異なる濃度のL-アラビノースを用いて30分間誘導した。誘導後、細胞に、gene 10コートタンパク質との融合体としてFKBPまたはp38 MAPKのいずれかをコードするcDNAインサートを含むATVファージを感染させた。結果として得られたファージタンパク質のウエスタンブロットの結果を図1に示す。図1から、L-アラビノースの非存在下では融合タンパク質の発現は全くといってよいくらい検出されないことがはっきりと分かる。使用した2種類の濃度のL-アラビノースの添加によって、融合タンパク質の発現がアラビノース濃度依存的に増大する。
【0061】
同様の結果が、図2のレーン1〜4に示すように、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(83kD)、MAPK10(85kD)、アデニル酸キナーゼ(66kD)、およびサイクリン依存性キナーゼインヒビター1A(55kD)をコードするcDNAインサートをファージ構築物に導入し、ファージ構築物をサプレッサー株(パネル1A)および非サプレッサー株(パネルB)において増殖させた時に見られた。示されたように、サプレッサー株においてファージを増殖させるとcDNAインサートが発現されるのに対して、非サプレッサー株において増殖させても発現は起こらない。
【0062】
実施例3
アラビノース濃度に対する抑制活性の依存性
対数期まで増殖させ、5つの異なる濃度(最終濃度0.2%〜0.002%)のL-アラビノースを用いて30分間誘導したBL21細胞に感染させるために、ATV-FKBPファージを使用した。同じ実験において、融合タンパク質の発現レベルを、同じFKBP cDNAを含むNovagenT7 10-3(高発現)株およびT7 1-1(低発現)ファージ株と比較した。ファージタンパク質のウエスタンブロット分析の結果を図3に示す。図3から、産生された融合タンパク質の量は、誘導に使用した漸増量のL-アラビノースによって増大することが分かる。ATV株において産生され、観察された融合タンパク質の濃度は、T7 1-1で観察されたものより高いが、T7 10-3ファージで観察されたものより低い。細胞培地に含まれるグルコース量を減らすことによって、ATV株を用いた発現をさらに高めることができる。グルコース濃度が低いほど、BADプロモーターの誘導が大きくなる。
【0063】
実施例4
ATVファージにおけるクローン収集物の改善
ATVファージが、異種ポリペプチドをコードする配列の変異率を小さくできることを図4に示す。6種類のタンパク質をコードするcDNAをNovagen10-3 T7株またはATVファージに導入し、その後、1回の増殖(growth)(繁殖(propagation))および発現を行った。10-3株またはATV株を使用した、変異cDNA配列に対する野生型cDNA配列の数を示す。6種類全てのcDNAについて、ATV株を使用した時には変異配列は観察されなかったが、10-3株では、6種類のcDNAのうち4種類について変異配列が観察された。特に、10-3ファージを使用した時に、CamK IVおよびグリセロールキナーゼをコードする全てのcDNAが変異したと観察された。
【0064】
特許、特許出願、および刊行物を含む本明細書に引用された参考文献は全て、以前に明確に組み入れられていてもいなくても、その全てが参照として本明細書に組み入れられる。
【0065】
今や、本発明は十分に説明されたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、かつ過度の実験なく、広範囲の等価なパラメータ、濃度、および条件の範囲内で本発明を実施できることが当業者に理解されるだろう。
【0066】
本発明は、本発明の特定の態様に関連して説明されたが、さらなる変更が可能なことが理解されるだろう。本願は、本発明の原理に一般的に従い、かつ本発明が属する当技術の範囲内の公知の実施または通常の実施に入り、前記の必須の特徴に適用できるような本開示からの逸脱を含む、本発明の任意の変化、使用、または適合を含むことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種ポリペプチドをコードする配列に作動可能に連結されている終止コドンを含む配列に作動可能に連結されているファージ表面タンパク質をコードする配列に作動可能に連結されている第1のプロモーターおよび/または調節領域を5'→3'方向に含む、第1の核酸分子を含むファージ由来核酸構築物、ならびに第2の誘導性プロモーターおよび/または調節領域が、該終止コドンに対応するサプレッサーtRNAをコードする配列に作動可能に連結されているサプレッサー構築物を含む、発現系。
【請求項2】
構築物が、改変されたファージゲノムである、請求項1記載の系。
【請求項3】
ゲノムがT7ファージゲノムである、請求項2記載の系。
【請求項4】
第1のプロモーターおよび/または調節領域が、ファージ由来核酸構築物を調製するのに用いられるファージに内因性のものである、請求項1記載の系。
【請求項5】
第1のプロモーターおよび/または調節領域がT7プロモーターである、請求項1記載の系。
【請求項6】
第2の誘導性プロモーターおよび/または調節領域がアラビノースBADプロモーターおよびaraC調節遺伝子である、請求項1記載の系。
【請求項7】
終止コドンを含む配列が、酵素切断部位をコードする配列をさらに含む、請求項1記載の系。
【請求項8】
ファージ表面タンパク質が、溶菌性ファージのファージコートタンパク質、繊維状バクテリオファージのgene IIIキャプシドタンパク質、繊維状ファージのgene VIIIキャプシドタンパク質、およびバクテリオファージλのキャプシドDタンパク質(gpD)から選択される、請求項1記載の系。
【請求項9】
溶菌性ファージのファージコートタンパク質がλ、T4、およびT7から選択される、請求項8記載の系。
【請求項10】
ファージコートタンパク質がT7に由来する、請求項9記載の系。
【請求項11】
ファージコートタンパク質がgene 10によりコードされる、請求項10記載の系。
【請求項12】
サプレッサー構築物が、クロラムフェニコール耐性をコードする発現可能な配列をさらに含む、請求項1記載の系。
【請求項13】
終止コドンがUAG、UAA、およびUGAから選択される、請求項1記載の系。
【請求項14】
終止コドンがUAGである、請求項13記載の系。
【請求項15】
サプレッサーtRNAがtRNAAlaまたはtRNAGluである、請求項1記載の系。
【請求項16】
サプレッサーtRNAがtRNAAlaである、請求項1記載の系。
【請求項17】
以下の段階を含む、試験化合物と相互作用するポリペプチドを同定する方法:
請求項1記載の系を細胞に導入し、異種ポリペプチドをコードする配列の発現を誘導し、該ポリペプチドを、該細胞により産生されたファージ粒子の表面に提示させる段階;
該ファージ粒子と該試験化合物とを接触させる段階;および
該ポリペプチドの提示によるファージ粒子と該試験化合物との相互作用を検出することによって、該ポリペプチドが該試験化合物と相互作用することを確かめる段階。
【請求項18】
細胞が大腸菌細胞である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
細胞がBL21の誘導体である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
細胞がBLT5615である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
以下の段階を含む、試験化合物と相互作用するポリペプチドを同定する方法:
請求項3記載の系を細胞に導入し、異種ポリペプチドをコードする配列の発現を誘導し、該ポリペプチドを、該細胞により産生されたファージ粒子の表面に提示させる段階;
該ファージ粒子と該試験化合物とを接触させる段階;および
該ポリペプチドの提示によるファージ粒子と該試験化合物との相互作用を検出することによって、該ポリペプチドが該試験化合物と相互作用することを確かめる段階。
【請求項22】
以下の段階を含む、試験化合物と相互作用するポリペプチドを同定する方法:
請求項5記載の系を細胞に導入し、異種ポリペプチドをコードする配列の発現を誘導し、該ポリペプチドを、該細胞により産生されたファージ粒子の表面に提示させる段階;
該ファージ粒子と該試験化合物とを接触させる段階;および
該ポリペプチドの提示によるファージ粒子と該試験化合物との相互作用を検出することによって、該ポリペプチドが該試験化合物と相互作用することを確かめる段階。
【請求項23】
以下の段階を含む、試験化合物と相互作用するポリペプチドを同定する方法:
請求項6記載の系を細胞に導入し、異種ポリペプチドをコードする配列の発現を誘導し、該ポリペプチドを、該細胞により産生されたファージ粒子の表面に提示させる段階;
該ファージ粒子と該試験化合物とを接触させる段階;および
該ポリペプチドの提示によるファージ粒子と該試験化合物との相互作用を検出することによって、該ポリペプチドが該試験化合物と相互作用することを確かめる段階。
【請求項24】
以下の段階を含む、試験化合物と相互作用するポリペプチドを同定する方法:
請求項11記載の系を細胞に導入し、異種ポリペプチドをコードする配列の発現を誘導し、該ポリペプチドを、該細胞により産生されたファージ粒子の表面に提示させる段階;
該ファージ粒子と該試験化合物とを接触させる段階;および
該ポリペプチドの提示によるファージ粒子と該試験化合物との相互作用を検出することによって、該ポリペプチドが該試験化合物と相互作用することを確かめる段階。
【請求項25】
以下の段階を含む、試験化合物と相互作用するポリペプチドを同定する方法:
終止コドンがUAGであり、サプレッサーtRNAがtRNAAlaである請求項1記載の系を細胞に導入し、異種ポリペプチドをコードする配列の発現を誘導し、該ポリペプチドを、該細胞により産生されたファージ粒子の表面に提示させる段階;
該ファージ粒子と該試験化合物とを接触させる段階;および
該ポリペプチドの提示によるファージ粒子と該試験化合物との相互作用を検出することによって、該ポリペプチドが該試験化合物と相互作用することを確かめる段階。
【請求項26】
ポリペプチドをコードする配列を単離する段階をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項27】
単離がPCR増幅によって行われる、請求項26記載の方法。
【請求項28】
単離が、ポリペプチドをコードする配列を別の核酸分子に直接サブクローニングすることによって行われる、請求項26記載の方法。
【請求項29】
ポリペプチドをコードする配列を単離する段階をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項30】
単離がPCR増幅によって行われる、請求項29記載の方法。
【請求項31】
単離が、ポリペプチドをコードする配列を別の核酸分子に直接サブクローニングすることによって行われる、請求項29記載の方法。
【請求項32】
ポリペプチドをコードする配列を単離する段階をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項33】
単離がPCR増幅によって行われる、請求項32記載の方法。
【請求項34】
単離が、ポリペプチドをコードする配列を別の核酸分子に直接サブクローニングすることによって行われる、請求項32記載の方法。
【請求項35】
ポリペプチドをコードする配列を単離する段階をさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項36】
単離がPCR増幅によって行われる、請求項35記載の方法。
【請求項37】
単離が、ポリペプチドをコードする配列を別の核酸分子に直接サブクローニングすることによって行われる、請求項35記載の方法。
【請求項38】
ポリペプチドをコードする配列を単離する段階をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項39】
単離がPCR増幅によって行われる、請求項38記載の方法。
【請求項40】
単離が、ポリペプチドをコードする配列を別の核酸分子に直接サブクローニングすることによって行われる、請求項38記載の方法。
【請求項41】
ポリペプチドをコードする配列を単離する段階をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項42】
単離がPCR増幅によって行われる、請求項41記載の方法。
【請求項43】
単離が、ポリペプチドをコードする配列を別の核酸分子に直接サブクローニングすることによって行われる、請求項41記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−50444(P2012−50444A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210341(P2011−210341)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【分割の表示】特願2004−527717(P2004−527717)の分割
【原出願日】平成15年8月1日(2003.8.1)
【出願人】(511139165)ディスカバーエクス コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】