DNAウイルスのマイクロRNA及びその阻害方法
【課題】ウイルスのマイクロRNAを同定し、また、現在公知、又は将来公知となるウイルスのマイクロRNAの機能を解明する手助けとなり得る、新規な材料及び方法を提供すること。また、マイクロRNAの、RNAの分解を誘導、又は重要なタンパク質をコードするmRNAからの翻訳の抑制をする機能を利用し、DNAウイルスのマイクロRNAにより誘導される標的mRNAの分裂又は翻訳抑制を阻害する新規な分子を提供すること。
【解決手段】本発明は、DNAウイルスのマイクロRNAの配列を含む単離された核酸分子に関する。他の実施態様において、本発明は、単離された一本鎖のDNAウイルスのマイクロRNA分子及びアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子に関する。更なる実施態様において、本発明は、単離されたマイクロRNPに関する。本発明は更に、細胞内のマイクロRNA活性の阻害方法を提供する。
【解決手段】本発明は、DNAウイルスのマイクロRNAの配列を含む単離された核酸分子に関する。他の実施態様において、本発明は、単離された一本鎖のDNAウイルスのマイクロRNA分子及びアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子に関する。更なる実施態様において、本発明は、単離されたマイクロRNPに関する。本発明は更に、細胞内のマイクロRNA活性の阻害方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る発明は、米国国立衛生研究所の基金(助成金番号R01−GM068476−01)に基づき行われたものである。本発明に関する権利の一部はアメリカ合衆国政府に帰属する。
【0002】
本願は、米国特許出願番号10/968,821(出願日2004年10月19日)の一部継続出願であり、左記は米国特許出願番号10/925,363(出願日2004年8月2日)の一部継続出願であり、左記は米国特許出願番号10/819,098(出願日2004年4月5日)の一部継続出願である。前記米国特許出願番号10/925,363、10/819,098及び10/968,821の明細書の全ての内容は、本発明において援用される。
【背景技術】
【0003】
マイクロRNAは、約22ヌクレオチドの小分子のRNAである。このマイクロRNA分子は、配列特異的な様式にて、多様な生物において遺伝子発現を制御する機能を有する。
【0004】
多様な生物において見られる、siRNA及びマイクロRNAのような二本鎖RNA(dsRNA)により媒介されるRNAサイレンシングは、RNAウイルスに対する固有の免疫反応の一部であり、また転移可能な要素である。また、そのような宿主における防御反応を逆に阻害する反応も、例えば植物ウイルスまた昆虫のフロックハウスウイルスなどにおいて確認されている。これらのウイルスは、例えばdsRNA結合タンパク質などのインヒビターを発現し、宿主細胞のRNAサイレンシング機構を妨害する。
【0005】
例えば、マイクロRNAは、標的遺伝子のmRNAの3’側のノンコーディング領域に部分的にハイブリダイズした後に翻訳をブロックすることが報告されている。前記マイクロRNAの標的となる遺伝子は未だ解明すべき部分が残されている。しかしながら、マイクロRNAは多様な疾病や症状を発症させることを示唆する証拠が揃いつつある。例えば、ショウジョウバエのマイクロRNAは、アポトーシスに関連する遺伝子を標的としていることが明らかとされ、またB細胞慢性リンパ性白血病は、二つのマイクロRNAの欠失が関与していることが明らかとされている。
【0006】
しかしながら、今日まで、哺乳動物のウイルスによりコードされるマイクロRNAの存在は、これまで報告されていなかった。したがって、哺乳動物のウイルスのマイクロRNAの同定、及び、もし存在する場合にはその生物学的機能を解明することにより、新規抗ウイルス薬の開発にとって有用な知見が得られると考えられる。
【非特許文献1】Bartel、Cell,2004,116,281−297
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上に鑑み、本発明の課題は、ウイルスのマイクロRNAを同定し、また、現在公知、又は将来公知となるウイルスのマイクロRNAの機能を解明する一助となり得る、新規な材料及び方法を提供することである。
【0008】
また、マイクロRNAの、RNAの分解を誘導、又は重要なタンパク質をコードするmRNAからの翻訳の抑制をする機能を利用し、DNAウイルスのマイクロRNAにより誘導される、標的mRNAの分裂又は翻訳抑制を阻害する新規な分子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの実施態様において、本発明は、DNAウイルスのマイクロRNAの配列を含む単離された核酸分子に関する。
【0010】
他の実施態様において、本発明は、単離された一本鎖のDNAウイルスのマイクロRNA分子に関する。前記分子は、最少で10の部分、最多で50の部分を分子骨格上に含み、前記分子骨格は骨格単位を含んでなる。各部分は骨格単位に結合している塩基を含み、そこにおいて少なくとも10の隣接する塩基がDNAウイルスのマイクロRNA分子中の塩基配列と同一の配列(前記塩基対の30%までがゆらぎ塩基対であり、かつ前記隣接する塩基の10%までが付加、欠失、変異又はそれらの組み合わせである場合を除く)を有し、前記隣接する部分のうち、デオキシリボヌクレオチドの骨格単位を含むものが50%を超えない、分子であることを特徴とする。
【0011】
更なる実施態様において、本発明は単離された一本鎖のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子に関する。前記アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子は、分子骨格上に最少で10の部分、最多で50の部分を有し、前記分子骨格は骨格単位を含む。前記の各部分は、骨格単位に結合している塩基を含み、各塩基は相補的な配列とワトソン−クリック塩基対を形成し、そこにおいて、少なくとも10の隣接する塩基がDNAウイルスのマイクロRNA分子中の塩基配列と相補的な配列(前記塩基対の30%までがゆらぎ塩基対であり、かつ前記隣接する塩基の10%までが付加、欠失、変異又はそれらの組み合わせである場合を除く)を有し、前記隣接する部分のうち、デオキシリボヌクレオチドの骨格単位を含むものが50%を超えず、前記分子がマイクロRNP活性を阻害することができる、分子であることを特徴とする。
【0012】
更なる実施態様において、本発明は、細胞内のマイクロRNP活性の阻害方法に関する。前記マイクロRNPはDNAウイルスのマイクロRNA分子を含み、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子が一本鎖のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子中の塩基配列に相補的な塩基配列を含む。前記方法は、最少で10の部分、最多で50の部分の配列を分子骨格上に含む一本鎖のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子を細胞に導入する工程を含み、前記分子骨格が骨格単位を含み、各部分が骨格単位に結合する塩基を含み、各塩基が相補的な塩基とワトソン−クリック塩基対を形成し、ここにおいて、前記アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の少なくとも10の隣接する塩基が前記DNAウイルスのマイクロRNAと相補的であり(30%までの前記塩基がゆらぎ塩基対により置換され、少なくとも前記の10の部分の10%までが付加、欠失、変異又はその組み合わせである場合を除く)、前記隣接する部分のうち、デオキシリボヌクレオチドの骨格単位を含むものが50%を超えない、方法であることを特徴とする。
【0013】
その他の実施態様において、本発明は、DNAウイルスに感染した哺乳動物の患者を治療する方法である。前記方法は、前記哺乳動物にアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子を導入する工程を含む。
【0014】
他の実施態様において、本発明は、DNAウイルスのマイクロRNA分子の配列を含む単離された核酸分子を含む、単離されたマイクロRNPに関する。
【0015】
更なる実施態様において、本発明は、単離された一本鎖のDNAウイルスのマイクロRNA分子を含む、単離されたマイクロRNPに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の発明者は鋭意研究の結果、DNAウイルスによりコードされるマイクロRNAを発見した。ゆえに、一つの実施態様において、本発明は、単離された一本鎖のDNAウイルスのマイクロRNA分子に関する。
【0017】
マイクロRNA分子は、先行技術(例えば非特許文献1)により公知である。前記論文は本発明において援用されている。その分子はゲノム上の染色体位置から派生し、特異的なマイクロRNA遺伝子から産生される。
【0018】
成熟型のマイクロRNA分子は、その前駆体転写物がプロセシングを受け、それによりヘアピン構造をとる。前記ヘアピン構造は典型的にはダイサーとして知られる酵素の働きにより分裂し、それにより一組のマイクロRNAデュプレックスを生じさせる。詳細は非特許文献1を参照のこと。
【0019】
通常、マイクロRNAデュプレックスの二本鎖のうちの一本が、マイクロRNA−リボ核タンパク質複合体(マイクロRNP)中にパッケージングされる。例えば、ヒト細胞中のマイクロRNPにはまた、eIF2C2タンパク質や、Gemin3及びGemin4などのヘリカーゼが含まれる。
【0020】
未修飾のDNAウイルスのマイクロRNA分子
一つの実施態様において、本発明は、DNAウイルスのマイクロRNA配列又はDNAウイルスのヘアピン状前駆配列を含む単離された核酸分子に関する。前記DNAウイルスのマイクロRNA又はヘアピン状前駆体の配列に加え、前記核酸分子は一つ又は複数の追加的なヌクレオチドを含めてもよい。いかなるヌクレオチドを加えることも可能である。追加するヌクレオチドの数には上限は存在しない。望ましくは約500ヌクレオチド以下、より望ましくは約300ヌクレオチド以下が、前記DNAウイルスのマイクロRNA配列又はヘアピン状前駆配列に追加される。一つの実施態様において、前記DNAウイルスのマイクロRNAは、ヘアピン状前駆配列のフラグメントの一部である。
【0021】
前記DNAウイルスのマイクロRNAは、例えば組換えベクターなどのベクターに挿入することができる。望ましくは、DNAウイルスのマイクロRNAを含むそのような組換えベクターを構築するために、DNAウイルスのマイクロRNA配列を含む前記ヘアピン状前駆配列は、前記ベクター中に挿入される。詳細は、例えばChenら、Science 2004,303:83−86を参照のこと。
【0022】
前記組換えベクターは、プラスミド、コスミド又はファージ等、いかなる組換えベクターであってもよい。組換えベクターは一般に、複製開始点を有する。前記ベクターは、例えばアデノウイルスベクター又はアデノ−随伴ウイルス(AAV)ベクターのようなウイルスのベクターであってもよい。詳細は、例えばLedley、Pharmaceutical Research,1996,13:1595−1614、及びVermaら、Nature,1997,387:239−242を参照のこと。
【0023】
前記ベクターは更に、例えば薬剤耐性マーカーのような選択マーカー、又はβ−ガラクトシダーのような検出可能なマーカーを含むことができる。
【0024】
前記DNAウイルスは当業者に公知のいかなるDNAウイルスであってもよい。前記DNAウイルスは哺乳動物細胞に感染するものが望ましい。哺乳動物の例としてはイヌ、ネコなどの実験動物、ウシ、ウマ又はヒツジなどの家畜、ラット、マウス、ウサギなどの実験動物、サルやヒトなどの霊長類が挙げられる。
【0025】
前記DNAウイルスは一本鎖又は二本鎖のDNAウイルスであってもよい。一本鎖及び二本鎖のDNAウイルスの例は、表4に列挙のとおりである。
【0026】
一つの実施態様において、前記DNAウイルスはエプスタイン・バーウイルス(EBV)である。EBVのマイクロRNA及びそれに対応するヘアピン状前駆配列の例は、表1に示すとおりである。他の実施態様において、前記DNAウイルスはカポジ肉腫関連ヘルペスウイルスであり、またそれはヘルペスウイルス8(KSHV)としても知られている。KSHVのマイクロRNA及びそれに対応するヘアピン状前駆配列の例は、表2に示すとおりである。
【0027】
他の実施態様において、前記DNAウイルスはサイトメガロウイルス(HCMV)である。HCMVマイクロRNA及びそれに対応するヘアピン状前駆配列の例は、表3に示すとおりである。
【0028】
望ましい実施態様において、前記核酸分子はDNAウイルスのマイクロRNA配列又はヘアピン状前駆配列を含む。他の望ましい実施態様において、前記核酸分子は表1に示すDNAウイルスのマイクロRNA配列又はヘアピン状前駆配列のいずれか一つを含む。更に他の実施態様において、前記核酸分子は表2に記載のDNAウイルスのマイクロRNA配列又はヘアピン状前駆配列のいずれか一つを含む。更なる実施態様において、前記核酸分子は表3に記載のDNAウイルスのマイクロRNA配列又はヘアピン状前駆配列のいずれか一つを含む。
【0029】
前記の単離されたDNAウイルスのマイクロRNA分子の配列は、DNA又はRNA分子のいずれでもよい。表1から3に示す核酸分子の配列は、ウラシル塩基を有することが明らかとなっている。ウラシル塩基は、未修飾のRNA分子中に生じる。本発明はまた、未修飾のDNA分子も含む。前記未修飾のDNA分子の塩基配列は、未修飾のDNA分子中で前記ウラシル塩基がチミン塩基に置き換わっていることを除き、未修飾のRNA分子と同一である。
【0030】
(表1):EBVマイクロRNA及びヘアピン状前駆配列
【表1】
太字は成熟型マイクロRNA配列を、イタリックは、マイクロRNAの非機能の鎖に対応する低量の配列を示す。
【0031】
(表2):KSHVマイクロRNA及びヘアピン状前駆配列
【表2】
太字は、成熟型マイクロRNA配列を示す。
【0032】
(表3):HCMVマイクロRNA及びヘアピン状前駆配列
【表3】
太字は、成熟型マイクロRNA配列を示す。
【0033】
(表4):一本鎖及び二本鎖のDNAウイルス
【表4】
【0034】
DNAウイルスのマイクロRNA分子のアナログ
他の実施態様において、本発明は、上記のDNAウイルスのマイクロRNA又はヘアピン状前駆体のアナログに関するものであり、それらは表1から3に記載の配列を含む。この実施態様において、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、最低10の部分、望ましくは最低13の部分、より望ましくは最低15の部分、更に望ましくは最低18の部分、最も望ましくは最低21の部分を含む。
【0035】
前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、最高で50の部分、望ましくは最高40の部分、より望ましくは最高30の部分、更に望ましくは25の部分、最も望ましくは20の部分を含む。上記の最低数及び上記の最高数とのいかなる組み合わせも適用可能である。
【0036】
各部分は、骨格単位に結合している塩基を含む。本願明細書においては、塩基とは、DNA又はRNA中に存在するいずれか一つの核酸塩基のことを指す。前記塩基は、プリン又はピリミジンであってもよい。プリン塩基の例としては、アデニン(A)及びグアニン(G)が挙げられる。ピリミジン塩基の例としては、チミン(T)、シトシン(C)及びウラシル(U)が挙げられる。前記部分の各塩基は、相補的な塩基とワトソン−クリック塩基対を形成している。
【0037】
本発明におけるワトソン−クリック塩基対とは、例えばアデニン及びチミン(A−T)、アデニン及びウラシル(A−U)、並びにシトシン及びグアニン(C−G)の塩基同士の水素結合による相互作用のことを指す。前記アデニンは、塩基対を弱めることなく、2,6−ジアミノプリンと置換することができる。
【0038】
前記骨格単位は、安定的に塩基と結合でき、オリゴマーの鎖を形成することができる分子単位であれば、いかなるものも適用可能である。適用可能な骨格単位は当業者には公知である。
【0039】
例えば、適用可能な骨格単位としては、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドに存在する糖リン酸基、チオリン酸デオキシリボース基、N’3−N’5ホスホロアミダートデオキシリボース基、2’O−アルキル−リボースリン酸基、2’−O−アルキル−アルコキシリボースリン酸基、メチレン架橋を含むリボースリン酸基、2’−フルオロリボースリン酸基、モルフォリノホスホロアミダート基、シクロヘキセン基、トリシクロリン酸基、及びアミノ酸分子が挙げられる。
【0040】
望ましくは、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、一つ以上の部分を含み、それによりヌクレアーゼ耐性の増加が得られる。そのような分子は、一つ以上の部分を含み、それはヌクレアーゼによって認識されない。したがって、前記分子の前記ヌクレアーゼ耐性は、未修飾のリボヌクレオチド、未修飾のデオキシリボヌクレオチド又はその両方のみを含む配列と比較し、増加する。そのように修飾された部分については公知であり、例えば、Kurreckら、Eur.J.Biochem.270,1628−1644(2003)により参照することができる。
【0041】
前記ヌクレアーゼ耐性は、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ又はその両方に対するもののいずれも可能である。前記エキソヌクレアーゼは、3’→5’エキソヌクレアーゼ又は5’→3’エキソヌクレアーゼのいずれであってもよい。3’→5’ヒトエキソヌクレアーゼの例としては、PNPTl、Werner症候群ヘリカーゼ、RRP40、RRP41、RRP42、RRP45及びRRP46が挙げられる。5’→3’エキソヌクレアーゼの例としては、XRN2及びFEN1が挙げられる。エンドヌクレアーゼの例としては、Dicer、Drosha、RNAe4、リボヌクレアーゼP、リボヌクレアーゼH1、DHP1、ERCC−1及びOGG1が挙げられる。エキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼの両方の活性を有するヌクレアーゼの例としては、APE1及びEXO1が挙げられる。
【0042】
修飾された部分を、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子のいかなる位置に設置することもできる。例えば、DNAウイルスのマイクロRNA分子を3’→5’エキソヌクレアーゼから保護するため、前記分子はその3’末端に一つ以上の修飾された部分を有することが可能で、少なくとも二つの修飾された部分を3’末端に有するのが望ましい。前記分子を5’→3’エキソヌクレアーゼから保護するのが望ましい場合は、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は一つ以上の修飾された部分を、望ましくは少なくとも二つの修飾された部分をその分子の5’末端に有するのがよい。また、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、少なくとも一つ、望ましくは少なくとも二つの修飾された部分を、その分子の5’と3’末端の間に設置し、エンドヌクレアーゼに対する分子の耐性を増加させるのがよい。また望ましくは、少なくとも約10%、より望ましくは少なくとも約25%、更に望ましくは少なくとも約50%、また更に望ましくは少なくとも約75%、最も望ましくは約95%の部分が修飾されるのがよい。一つの実施態様において、前記部分の全てがヌクレアーゼ耐性である。
【0043】
他の実施態様において、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、一つ以上の修飾されたデオキシリボヌクレオチド部分を有する。適用可能な、修飾されたデオキシリボヌクレオチド部分については当業者に公知である。
【0044】
修飾されたデオキシリボヌクレオチド部分の適用可能な例としては、チオリン酸デオキシリボヌクレオチド部分が挙げられる。図1中の構造式1を参照のこと。チオリン酸デオキシリボヌクレオチド部分を含むDNAウイルスのマイクロRNA分子は、一般にはチオリン酸(PS)DNAと呼ばれている。それに関しては、例えば、Eckstein、Antisense Nucleic Acids Drug Dev.10,117−121(2000)を参照のこと。
【0045】
修飾されたデオキシリボヌクレオチド部分の他の適用可能な例としては、N’3−N’5ホスホロアミダートデオキシリボヌクレオチド部分か挙げられる。図1中の構造式2を参照のこと。ホスホロアミダートデオキシリボヌクレオチド部分を含むオリゴヌクレオチド分子は、一般にホスホロアミダート(NP)DNAと呼ばれている。それに関しては、例えば、Gryaznovら、J.Am.Chem.Soc.116,3143−3144(1994)を参照のこと。
【0046】
他の実施態様において、前記分子は一つ以上の修飾されたリボヌクレオチド部分を含む。適用可能な、修飾されたリボヌクレオチド部分については当業者に公知である。
【0047】
修飾されたリボヌクレオチド部分の適用可能な例は、その2’位置で置換されたリボヌクレオチド部分である。前記2’位置における置換基は、例えば、炭素数C1からC4のアルキル基であってもよい。前記C1からC4のアルキル基は、飽和又は不飽和であっても良く、また直鎖状又は分岐型であってもよい。C1からC4のアルキル基の幾つかの例としては、エチル、イソプロピル及びアリール基が挙げられる。前記の望ましいC1のC4アルキル基は、メチル基である。図1中の構造式3を参照のこと。その2’位置をC1からC4のアルキル基で置換されたリボヌクレオチド部分を含むオリゴリボヌクレオチド分子は、一般には2’−O−(C1−C4アルキル)RNA、例えば2’−O−メチルRNA(OMeRNA)と呼ばれる。
【0048】
修飾されたリボヌクレオチド部分の2’位置における置換基の他の適用可能な例は、(炭素数C1からC4のアルコキシ)−(炭素数C1からC4のアルキル基)である。前記C1からC4のアルコキシ(アルキルオキシ)及びC1からC4のアルキル基は、上記のアルキル基のいかなるものを含めてもよい。前記の望ましいC1からC4のアルコキシ−C1からC4のアルキル基は、メトキシエチル基である。図1中の構造式4を参照のこと。一つ以上のリボヌクレオチド部分を含むオリゴヌクレオチド分子であり、その2’位置をC1からC4のアルコキシ−C1からC4のアルキル基で置換された分子は、2’−O−(C1からC4のアルコキシ−C1からC4のアルキル基)RNA、例えば2’−O−メトキシエチルRNA(MOE RNA)と呼ばれる。
【0049】
修飾されたリボヌクレオチド部分の他の適用可能な例は、2’−酸素原子と4’−炭素原子との間でメチレン架橋を有するリボヌクレオチドである。図1中の構造式5を参照のこと。リボヌクレオチド部分を含むオリゴリボヌクレオチド分子であり、2’−酸素原子と4’−炭素原子との間でメチレン架橋を有する分子は、一般にロックされた核酸(LNA)と呼ばれる。それに関しては、例えば、Kurreckら、Nucleic Acid Res.30,1911−1918(2002);Elayadiら、Curr.Opinion Invest.Drugs 2,558−561(2001);Orumら、Curr.Opinion MoI.Ther.3,239−243(2001);Koshkinら、Tetrahedron 54,3607−3630(1998);Obikaら、Tetrahedron Lett.iP,5401−5404(1998)を参照のこと。ロックされた核酸は、Proligo社(Paris,France and Boulder,Colorado,USA)から購入可能である。
【0050】
修飾されたリボヌクレオチド部分の他の適用可能な例は、フルオロ基により2’位置を置換されたリボヌクレオチドである。そのような2’−フルオロリボヌクレオチド部分は、当業者に公知である。2’−フルオロリボヌクレオチド部分を含む分子は一般に、本発明において2’−フルオロリボ核酸(FANA)と呼ばれる。図1の構造式7、またDamhaら、J.Am.Chem.Soc.120,12976−12977(1998)を参照のこと。
【0051】
他の実施態様において、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、アミノ酸残基に結合する一つ以上の塩基を含む。アミノ酸残基に結合する一つ以上の塩基を含む部分は、本発明において以下ペプチド核酸(PNA)部分と記す。そのような部分はヌクレアーゼ耐性であり、当業者に公知である。PNA部分を有する分子は一般にペプチド核酸と呼ばれる。図1中の構造式6、またNielson、Methods Enzymol.313,156−164(1999);Elayadiら、id.;Braaschら、Biochemistry 41,4503−4509(2002);Nielsenら、Science 254,1497−1500(1991)を参照のこと。
【0052】
アミノ酸はいかなるアミノ酸であってもよい。また、天然及び人工のアミノ酸を含む。天然アミノ酸にはすなわち、通常タンパク質中に存在する20の一般のアミノ酸、例えばアラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Glu)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)チロシン(Tyr)及びバリン(Val)が含まれる。
【0053】
上記の人工のアミノ酸としては、例えば、アルキル、アリール又はアルキルアリール基を含むアミノ酸である。アルキルアミノ酸の若干の実施例として、α−アミノブチル酸、β−アミノブチル酸、γ−アミノブチル酸、δ−アミノバレリン酸及びε−アミノカプロン酸が挙げられる。アリールアミノ酸の若干の実施例としては、オルト−、メタ−、パラ−アミノ安息香酸が挙げられる。アルキルアリールアミノ酸の若干の実施例としては、オルト−、メタ−、パラ−アミノフェニル酢酸及びγ−フェニルβ−アミノブチル酸が挙げられる。
【0054】
人工アミノ酸にはまた、天然アミノ酸の派生物も含まれる。前記天然アミノ酸の派生物には、例えば、一つ又は複数の化学基の付加した天然アミノ酸を含めることができる。
【0055】
例えば、一つ又は複数の化学基は、フェニルアラニン又はチロシン残基の芳香環の2’、3’、4’、5’若しくは6’の位置、又はトリプトファン残基のベンゼン環の4’、5’、6’若しくは7’の位置の一つ又は複数に付加させることができる。前記基としては、芳香族環に付加することができるいかなる化学基も使用することができる。そのような基の例としては、ヒドロキシル、炭素数C1−C4のアルコキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ニトロ、ハロ(すなわちフルオロ、クロロ、ブロモ又はヨード)又は分岐若しくは直鎖状の炭素数C1−C4のアルキル(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル又はt−ブチル)が挙げられる。
【0056】
人工アミノ酸の他の例としては、ノルバリン(Nva)、ノルロイシン(Nle)及びヒドロキシプロリン(Hyp)などを含む天然アミノ酸の派生物が挙げられる。
【0057】
前記アミノ酸は、同一であっても、又はそれぞれ異なる種類であってもよい。塩基は前記アミノ酸単位に、分子結合により付着する。前記分子結合の例としては、メチレンカルボニル、エチレンカルボニル及びエチル結合が挙げられる(Nielsenら、Peputide Nucleic Acid−Protocols and Applications,Horizon Scientific Press,pages 1−19;Nielsenら、Science 254:1497−1500)を参照。PNA部分のアミノ酸残基の一例としては、N−(2−アミノエチル)−グリシンが挙げられる。
【0058】
更に、PNA部分の例としては、シクロヘキシルPNA、レトロ−インベルソPNA、フォスフォンPNA、プロピオニルPNA及びアミノプロリンPNAが挙げられる。これらのPNA部分の詳細については、Nielsenら、Peputide Nucleic Acid −Protocols and Applications,Horizon Scientific Press,pages1−19の図5を参照のこと。前記Nielsenらの文献の7ページの図5は本発明において援用されている。
【0059】
PNAは、公知の方法、例えば修飾Fmoc又はtBocペプチド合成プロトコルにより化学的に合成することができる。前記PNAは多くの望ましい特性、例えば高い溶融温度(Tm)、核酸及び非荷電の分子骨格との高い塩基対の特異性を有する。更に、前記PNAは前記標的RNAにRNaceH感受性を与えず、また一般に良好な代謝安定性を有する。
【0060】
ペプチド核酸はまた、Applied Biosystems社(Foster City,California,USA)から購入可能である。
【0061】
追加的なヌクレアーゼ耐性部分は、当業者により公知である。例えば、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は一つ以上のモルフォリノホスホロアミダートヌクレオチド部分を含む。モルフォリノホスホロアミダートヌクレオチド部分を含む分子は一般にモルフォリノ(MF)核酸と呼ばれている。図1中の構造式8、及びHeasman、Dev.Biol.243,209−214(2002)を参照のこと。モルフォリノオリゴヌクレオチドは、Gene Tools LLC(Corvallis,Oregon,USA)から購入可能である。
【0062】
ヌクレアーゼ耐性部分の他の例において、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、一つ以上のシクロヘキセンヌクレオチド部分を含む。シクロヘキセンヌクレオチド部分を含む分子は、シクロヘキセン核酸(CeNA)と呼ばれる。図1の構造式10、及びWangら、J.Am.Chem.Soc.122,8595−8602(2000)、Verbeureら、Nucleic Acid Res.29,4941−4947(2001)を参照のこと。
【0063】
ヌクレアーゼ耐性部分の最終的な例において、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は一つ以上のトリシクロヌクレオチド部分を含む。トリシクロヌクレオチド部分を含む分子は一般的にトリシクロ核酸(tcDNA)と呼ばれる。図1中の構造式9、及びSteffensら、J.Am.Chem.Soc.119,11548−11549(1997)、Rennebergら、J.Am.Chem.Soc.124,5993−6002(2002)を参照のこと。
【0064】
他の実施態様において、前記分子の片側の末端、両末端及び/又はそれら末端の間にキャップ構造を施し、それにより前記DNAウイルスのマイクロRNAのアナログ又は上記本発明に係る未修飾の単離された核酸マイクロRNA分子の、ヌクレアーゼに対する耐性を増加させることが可能である。例えばエキソヌクレアーゼ及び/又はエンドヌクレアーゼに対する増加した耐性が望ましい。ヌクレアーゼ耐性を増加させるキャップ構造でいかなる公知のものも適用可能である。
【0065】
そのようなキャップの例としては、逆向きヌクレオチドキャップ及び化学修飾キャップが挙げられる。逆向きヌクレオチドキャップは5’及び/又は3’末端に付加することができる。また化学修飾キャップは前記分子の片側の末端、両末端及び/又はそれら末端の間に付加することができる。
【0066】
逆向きヌクレオチドキャップは核酸の3’→5’配列のことであり、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子又は単離された核酸マイクロRNA分子の5’及び/又は3’末端に結合するものである。前記逆向きのキャップ中におけるヌクレオチドの数は、それが前記がその標的mRNAに結合するのを妨害しない限りは、上限はない。いかなるヌクレオチドもヌクレオチドキャップにおいて使用することができる。通常は、前記ヌクレオチドキャップは約40ヌクレオチド長以下、望ましくは約30ヌクレオチド長以下、より望ましくは約20ヌクレオチド長以下、更に望ましくは約10ヌクレオチド長以下である。典型的には、前記逆向きヌクレオチドキャップは1ヌクレオチド長である。前記逆向きキャップに用いられる前記ヌクレオチドは、一般にはチミンであるが、アデニン、グアニン、ウラシル又はシトシンのような他のいかなるヌクレオチドも使用可能である。
【0067】
化学修飾キャップは、核酸のヌクレアーゼ耐性を増加させるための、あらゆる公知の化学基のことを指す。そのような化学修飾キャップの例としては、ヒドロキシアルキル基(アルキルヒドロキシド)又はアミノアルキル基(アルキルアミン)が挙げられる。ヒドロキシアルキル基はしばしばアルキルグリコシル基(例えばエチレングリコール)と呼ばれる。アミノアルキル基はしばしばアミノリンカーと呼ばれる。
【0068】
ヒドロキシアルキル基又はアミノアルキル基中の前記アルキル鎖は直鎖型又は分岐型のいずれでもよい。前記アルキル鎖中に存在する最小の炭素原子数は、1であり、望ましくは少なくとも2であり、より望ましくは少なくとも約3である。
【0069】
前記アルキル鎖に存在する最大炭素原子数は、約18、望ましくは約16、より望ましくは12である。典型的な前記アルキル基は、メチル、エチル及びプロピル基とを含む。前記アルキル基は、一つ以上の水酸基及び/又はアミノ基によって更に置換してもよい。
【0070】
アミノリンカーの幾つかを、表5に示す。表5にリストとして挙げられているアミノリンカーは、TriLink Biotechnologies社(San Diego,CA.)から購入可能である。
【0071】
(表5):TriLink Biotechnologies社のアミノリンカー
【表5】
【0072】
前記分子はまた、キメラのDNAウイルスのマイクロRNA分子でもよい。上記の部分のいかなるものの混合物を含むキメラ分子は公知であり、公知の方法により調製することができる。それに関しては、例えば、上記の引用文献、及びWangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,13989−13994(1999);Liangら、Eur.J.Biochem.269,5753−5758(2002);Lokら、Biochemistry 41,3457−3467(2002);Damhaら、J.Am.Chem.Soc.120,12976−12977(2002)を参照のこと。
【0073】
本発明の前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、少なくとも10、望ましくは少なくとも13、より望ましくは少なくとも15、更に望ましくは少なくとも20の隣接する塩基を含み、天然DNAウイルスのマイクロRNA分子の配列を有する。望ましい実施態様において、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、DNAウイルスのマイクロRNA分子の完全配列(例えば前記表1に示すDNAウイルスのマイクロRNA分子の配列のいずれか一つ)を含む。他の望ましい実施態様において、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、DNAウイルスのマイクロRNA分子の完全配列(例えば前記表2に示すDNAウイルスのマイクロRNA分子の配列のいずれか一つ)を含む。更に他の望ましい実施態様において、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、DNAウイルスのマイクロRNA分子の完全配列(例えば前記表3に示すDNAウイルスのマイクロRNA分子の配列のいずれか一つ)を含む。
【0074】
前記分子中の残りの塩基(もし存在すれば)は、上記の修飾された又は未修飾の部分であってもよい。一つの実施態様において、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、リボヌクレオチド部分又はデオキシリボヌクレオチド部分の一つ以上の部分を含む。
【0075】
分子中の部分の総数が50を超えない限りは、40を越えないいかなる数の部分、またいかなる塩基配列をも、隣接する塩基配列を含む上記部分に追加することが可能である。前記の追加的な部分は、前記隣接するの配列の5’末端、3’末端又は両末端に追加することが可能である。前記追加的な塩基は、前記DNAウイルスのマイクロRNAから派生したヘアピン状前駆体に存在する5’末端の塩基配列及び/又は3’末端の塩基配列を含むことができる。一つの実施態様において、前記ヘアピン状前駆配列は表1に示すいずれか一つのヘアピン状前駆配列又はそのフラグメントを含むことができる。他の実施態様において、前記ヘアピン状前駆配列は、表2に示すいずれか一つのヘアピン状前駆配列又はそのフラグメントを含むことができる。更に他の実施態様において、前記ヘアピン状前駆配列は表3に示すいずれか一つのヘアピン状前駆配列又はそのフラグメントを含むことができる。前記フラグメントは、少なくとも約10、望ましくは少なくとも約15、より望ましくは少なくとも約20ヌクレオチドをその5’末端及び/又は3’末端に有するいかなるヘアピン状前駆配列のフラグメントとすることができる。望ましくは前記ヌクレオチドの配列は、DNAウイルスのマイクロRNAが存在するヘアピン状前駆体内に存在するのが望ましい。
【0076】
上記の隣接する塩基において、塩基対の30%まで、ゆらぎ塩基対により置換することが可能である。本発明において、ゆらぎ塩基対とは、DNAウイルスのマイクロRNA分子の配列中において、1)シトシンをウラシルにより置換すること、又は2)アデニンをグアニンにより置換することのいずれかを指す。これらのゆらぎ塩基対は、一般的には、UG又はGUゆらぎと称する。表6は、DNAウイルスのマイクロRNA分子中における隣接する塩基の数、及びゆらぎ塩基対の最大数を示す。
【0077】
(表6):隣接する塩基の数、及びゆらぎ塩基対の最大数
【表6】
【0078】
更に、ゆらぎ塩基対に加え、前記隣接する塩基の10%まで、望ましくは5%までであれば付加、欠失、変異又はそれらの組み合わせを施すことが可能である。付加とは、隣接する配列中に、上記のいずれか一つの塩基を含む何らかの部分が挿入されることを指す。欠失とは、前記隣接する配列の何らかの部分が除去させることを指す。変異とは、前記隣接する配列中における塩基を含む部分が、上記のその他の塩基により置換されることを指す。
【0079】
前記付加、欠失又は変異は、前記隣接する配列、例えば隣接する配列の両末端又はDNAウイルスのマイクロRNA分子の隣接する配列内部のいかなる箇所においても生じうる。典型的には、前記付加、欠失又は変異は、その隣接する配列が例えば約10から約15部分長と比較的短いときは、その隣接する配列の末端にて生じる。その隣接する配列が16塩基長以上と比較的長いときは、その付加、欠失又は置換はその隣接する配列のいかなる部分においても生じうる。
【0080】
例えば、隣接する塩基が10から19塩基のときはゼロ又は一の隣接する塩基の付加、欠失又は置換、また隣接する塩基が20から23塩基のときは一又は二の付加、欠失又は置換が許容範囲である。
【0081】
更に50%未満、望ましくは30%未満の前記隣接する部分が、デオキシリボヌクレオチド骨格単位を含む。表7及び8は隣接する塩基の数及びデオキシリボヌクレオチド骨格単位の最大数を示す。
【0082】
(表7):デオキシリボヌクレオチド骨格単位を含む隣接部分の50%数
【表7】
【0083】
(表8):デオキシリボヌクレオチド骨格単位を含む隣接部分の30%数
【表8】
【0084】
他の実施態様において、前記ゆらぎ塩基対に加え、更に上記の付加、欠失及び変異により、天然のDNAウイルスのマイクロRNA配列中の位置11に相当する前記部分について付加、欠失又は変異が導入されてもよい。
【0085】
単離されたマイクロRNP
他の実施態様において、本発明は、上記の単離された核酸配列又は上記DNAウイルスのマイクロRNAのアナログのいずれかを含む、単離されたマイクロRNPの提供に関する。
【0086】
アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子
他の実施態様において、本発明は、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の提供に関する。前記アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子は、前記の単離された核酸DNAのマイクロRNA配列又はDNAウイルスのマイクロRNA分子のアナログ中の塩基配列と相補的であることを除けば、上記の単離された核酸配列、又は上記のDNAウイルスのマイクロRNAのアナログのいずれであってもよい。
【0087】
アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の配列の例を、表9、10及び11に示す。
【0088】
(表9):EBVのアンチ−マイクロRNA配列
【表9】
【0089】
(表10):KSHV8のアンチ−マイクロRNA配列
【表10】
【0090】
(表11):HCMVのアンチ−マイクロRNA配列
【表11】
【0091】
アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子は、DNAウイルスのマイクロRNA分子に関して上記した通り、修飾することができる。一つの実施態様において、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の前記隣接する部分は、対応するDNAウイルスのマイクロRNA分子と相補的である。アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の相補性の程度は、ゆらぎ塩基対あるいは付加、欠失及び変異に関する、DNAウイルスのマイクロRNA分子のアナログに関して上記した規制に従う。
【0092】
望ましい実施態様において、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子が未修飾の部分だけからなる場合、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子は、少なくとも10の塩基が隣接する塩基において一つ以上、DNAウイルスのマイクロRNAに対する非相補的な塩基を、及び/又は化学修飾キャップを含む。
【0093】
他の望ましい実施態様において、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の少なくとも10の隣接する塩基がDNAウイルスのマイクロRNA分子に対する完全に相補的な(すなわち100%)である場合、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子は、少なくとも10の隣接する塩基中に一つ以上の修飾された部分を含み、及び/又は化学修飾キャップを含む。
【0094】
更にもう一つの実施態様において、天然DNAウイルスのマイクロRNAの位置11に対応する位置のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の部分は、非相補的である。天然DNAウイルスのマイクロRNAの位置11に対応するアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の部分は、付加、欠失又は変異の導入を含む上記のいかなる手段によっても、上記の通り非相補的とすることができる。
【0095】
単離された分子
核酸分子、DNAウイルスのマイクロRNA分子又はアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子は、望ましくは単離された分子である。また、それは他の核酸を実質的に含まないことを意味する。実質的に他の核酸を含まない、とは、上記のような核酸分子、DNAウイルスのマイクロRNA分子、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子又はマイクロRNP分子が少なくとも約90%、望ましくは少なくとも約95%、更に望ましくは少なくとも約98%の純度で他の核酸を含まない状態を指す。
【0096】
望ましくは、前記分子は基本的に純粋である。また、それは前記分子が他の核酸のみならず、分子の合成及び単離において使用する他の材料も含んでいないことを意味する。合成において使用する材料とは、例えば酵素である。単離において使用する材料は、例えばゲル(例えばSDS−PAGE用)である。前記分子は、少なくとも約90%、望ましくは少なくとも約95%、更に望ましくは少なくとも約98%の純度で、他の核酸及び他の材料を含まない。
【0097】
使用
本発明のDNAウイルスのマイクロRNA分子及びアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子は、多数のin vitro、ex vivo及びin vivoにおける応用が可能である。
【0098】
例えば、本発明の前記マイクロRNA分子及び/又はアンチ−マイクロRNA分子は、マイクロRNAの機能を研究するために、細胞に導入することができる。前述のいかなるDNAウイルスのマイクロRNA分子及び/又はアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子も、それらの機能を研究するための細胞に導入することができる。
【0099】
一つの実施態様において、細胞内のマイクロRNAは、適切なアンチ−マイクロRNA分子によって阻害される。あるいは、細胞内のマイクロRNA分子の活性は、一つ又は複数の付加的なマイクロRNA分子を細胞に導入することによって強化することができる。マイクロRNAの機能は、細胞のマイクロRNAの活性の抑制及び/又は強化と関連する変化を観察することによって推定することができる。
【0100】
本発明の一態様において、本発明は、細胞内のマイクロRNP活性を阻害する方法に関する。細胞内のマイクロRNP活性を阻害する方法は、一本鎖のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子を細胞に導入することを含む。マイクロRNPは、DNAウイルスのマイクロRNA分子からなる。マイクロRNA分子は、一本鎖のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の塩基配列に相補的な配列からなる。
【0101】
いかなるアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子も、上記の規定を前提として、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNAがマイクロRNPに存在するDNAウイルスのマイクロRNAに相補的である限り、細胞内のマイクロRNP活性を阻害する方法で使うことができる。
【0102】
本発明のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子は、宿主細胞のマイクロRNPのDNAウイルスのマイクロRNAと結合することによって、マイクロRNP活性を阻害することができる。マイクロRNP活性は、標的配列の裂開又は翻訳の抑制に関連する。前記標的配列は、DNAウイルスのマイクロRNAの塩基の配列に対して部分的に又は完全に相補的な、いかなる配列でもあってもよい。前記標的配列は、例えばウイルスの、又は宿主メッセンジャーRNAである。
【0103】
例えば、DNAウイルスは、宿主由来の標的配列に対する相補的なマイクロRNAを生じることができる。なお、前記標的配列は、宿主細胞がウイルスの感染に対する防御のために有益である。前記DNAウイルスのマイクロRNAは、マイクロRNPで包まれることにより、標的配列の前記有益な効果を阻害する。したがって、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の導入は、RNP活性を阻害して、このことによりウイルスからの危害を減らす。
【0104】
あるいは、宿主細胞は、ウイルスに有害である遺伝子を転写することによって、ウイルスの感染に対する防御を行うことができる。例えば、前記遺伝子は細胞のアポトーシスを誘導することができるため、前記の遺伝子はウイルスに有害である。宿主細胞によって転写される標的配列に対して相補的なDNAウイルスのマイクロRNAは、ウイルスに有益である。その理由は、DNAウイルスのマイクロRNA(マイクロRNP中に存在)が、宿主細胞のアポトーシスを阻害する能力を有するからである。したがって、DNAウイルスのマイクロRNA分子の導入は、細胞の生存を促進し、その結果感染も促進される。
【0105】
前記細胞は、特定のDNAウイルスによって感染されうるいかなる細胞であってもよい。特定のDNAウイルスによって感染する特定の細胞は、当業者にとって周知である。例えば、EBVが特異的にBリンパ球に感染することは、当業者にとって周知である。
【0106】
マイクロRNA分子又はアンチ−マイクロRNA分子は、当業者にとって公知のいかなる方法によっても、細胞に導入することができる。例えば、前記分子は、マイクロインジェクションのような方法により、直接細胞に注入することができる。あるいは、前記分子は、望ましくは輸送システムの補助を伴いながら細胞と接触することができる。
【0107】
使用可能な輸送システムには、例えば、リポソーム及び荷電した脂質が含まれる。リポソームは、通常それらの中心部の水相中にオリゴヌクレオチド分子をカプセル化する状態で存在する。荷電した脂質は一般に、それらの正反対の荷電の結果として、脂質−オリゴヌクレオチド分子複合体を形成する。
【0108】
これらのリポソーム−オリゴヌクレオチド分子複合体又は脂質−オリゴヌクレオチド分子複合体は、通常エンドサイトーシスによって細胞に取り込まれる。前記リポソーム又は荷電した脂質は一般にヘルパー脂質を含み、それによりエンドソーム膜を崩壊させ、オリゴヌクレオチド分子の放出が可能となる。
【0109】
マイクロRNA分子又はアンチ−マイクロRNAを細胞に導入する他の方法には、例えばデンドリマー、生分解性ポリマー、アミノ酸ポリマー、糖ポリマー及びオリゴヌクレオチド結合性ナノ粒子などの輸送手段の使用法が含まれる。加えて、貯蔵手段としてプルロニック(登録商標)のゲルを用い、長期間にわたるアンチ−マイクロRNAのオリゴヌクレオチド分子の輸送を可能にすることができる。上記方法は、例えば、Hughesら、Drug Discovery Today 6,303−315(2001);Liangら、Eur.J.Biochem.269 5753−5758(2002);Beckerら、In Antisense Technology in the Central Nervous System(Leslie,R.A.,Hunter,A.J.&Robertson,H.A.,eds),pp.147−157,Oxford University Pressに記載されている。
【0110】
マイクロRNA分子又はアンチ−マイクロRNA分子の特定の細胞に対するターゲッティングは、当業者にとって公知のいかなる方法にもよって実施することができる。例えば、前記マイクロRNA分子又はアンチ−マイクロRNA分子は、抗体又はリガンドとコンジュゲートし、細胞上のレセプターによって特異的に認識することができる。例えば、細胞がBリンパ球である場合、その抗体は、細胞レセプターCD19、CD20、CD21、CD23又はこれらのレセプタに対するリガンドとすることができる。
【0111】
他の実施態様において、本発明は、哺乳動物へのDNAウイルス感染を治療するための方法を提供する。前記方法は、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子を前記哺乳動物に導入することを含む。アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子は、従来技術において公知のいかなる方法によっても、哺乳動物に導入することができる。例えば、アンチ−DNA分子を細胞に導入するための上記の方法はまた、前記分子を哺乳動物に導入するために使用することができる。
【実施例1】
【0112】
材料及び方法
細胞系及びウイルス:
EBV陰性BL−41細胞及びEBV陽性BL41/95細胞(Torsteinsdottirら、Int.J.Cancer 1989、43:273に記載)を、10%のFBSを添加したRPMI 1640培地(GIBCO)にて培養した。EBNA−1に対する抗体を使用したウエスタンブロット分析によって、BL−41はEBVを含まず、BL41/95はEBVを含むことを確認した。EBVのマイクロRNA発現の分析のために、更にホジキンリンパ腫(HD)細胞のL540、HD−MY−Z(EBV陰性)及びRPMI 6666(EBV陽性)、バーキットリンパ腫(BL)細胞、ラモス(EBV陰性)、Ous及びMutu(EBV陽性)及び伝染性のB95−8ウイルス分子を産生するEBV陽性のマーモセット由来B95−8細胞を培養した。これらの細胞系もまた、10%のFBSを添加したRPMI 1640培地(GIBCO)にて培養した。KSHV陽性のBCBL1細胞系(レンヌら、Nat.med.1996、2:342−346に記載)を、10%のFBSを添加したRPMI 1640培地(GIBCO)にて培養した。KSHVの解析にあたり、ウイルスの複製を誘発するため、合計5×106のBCBL1細胞を20ng/mlのホルボール−12−テトラデカノエート−13−酢酸塩(TPA)によって誘導し、更にTPA処理の24、48及び72時間後にRNAを抽出した。ヒト包皮線維芽細胞を、10%のFCS、10U/mlのモロナル(moronal)及び10μg/mlの硫酸ネオマイシンを添加したMEM培地(GIBCO)で一次培養した。90%コンフルエントな細胞を、5PFU/細胞にてHCMVのVR1814系統により感染し、感染から通常約4−5日後の、細胞病理学的な効果が明瞭に観察できるときに、回収された。
【0113】
RNA調製、クローニング手順及びノーザンブロット分析:
全RNAの抽出は、Lagos−Quintanaら、Curr.Biol.2002,12:735に記載の方法により行った。また、RNAサイズの分画及びクローニング手順に関する記載も存在する。ノーザンブロット分析は、Lagos−Quintanaら、Curr.Biol.2002,12:735に記載の方法に従い、1レーンにつき30μg又は15μgのトータルRNAを添加し、前記マイクロRNA配列に相補的な、5’末端を32Pラベルされたオリゴデオキシヌクレオチドを使用した。EBVの解析において、tRNAのバンドを臭化エチジウムにて染色するか、あるいは32Pラベルされた5’GCAGGGGCCATGCTAATCTTCTCTGTATCGオリゴデオキシヌクレオチドをプローブとして使用して、U6snRNAのブロットをリプローブし、ゲルへの添加量が等しいことを確認した。ブロットを除去した後、数回リプローブした。ブロットの完全な除去は、前回のプローブした膜をリン光体イメージングすることによって確認した。
【0114】
小分子RNAのcDNAライブラリーのDNAシークエンシング:
細菌のコロニーを、予めウェル当たり20μlの滅菌水を添加した96ウェルプレートに添加し、それらを1:1の比率にて、10μlのPCRカクテル(後記)と混合して第2の96ウェルプレートに分注した(PCRカクテルの組成:2μlの10×Sigma JumpStart PCRバッファー、2μlの2mMデオキシヌクレオシド三リン酸塩混合液、10μMのM13ユニバーサル・リバースプライマーを各々0.4μl、1.35μlの1U/μl JumpStart REDAccuTaq DNAポリメラーゼ(シグマ社)及び4.85μlの水)。PCRのサイクルのプログラムは、94℃で1分30秒、その後94℃で30秒、57℃で30秒、72℃で3分30秒を30サイクルにて行った。その条件においては、プライマー及びデオキシヌクレオチドが大幅に減少するため、以降の、シークエンス前の浄化処理を省略することができる。PCR産物を30μlの水で希釈した後、そのうち3μlを、1μlの2.5×BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencingキット混合溶液、1.75μlの5×バッファー及び14.25μlの水からなる17μlのシークエンシングカクテルを含む96枚のウェルプレートのウェルに添加した。更に、シークエンス反応を、96℃にて10秒、50℃にて5秒、60℃にて4分のサイクルを25サイクルにて行った。得られた反応生成物を、50μlの100%エタノール/2μlの3M NaOAc(pH4.8)によって沈殿させ、得られたペレットを70%のエタノールによってリンスし、10μlのHi−Di Formamide(アプライドバイオシステム)を添加した後、94℃で10分間変性させ、サンプルをABI3730x1シークエンサーにアプライした。
【0115】
マイクロRNAの標的の予測:
最初に、Ensmart(Kasprzykら、Genome Res.2004,14:160)を使用してヒトのゲノムにおいて3’UTR配列として20,153の転写物を得、また、175の成熟型ヒトマイクロRNAの配列をRFAMマイクロRNAレジストリ(Griffiths−Jones、Nucleic Acids Res.,2004,32:D109)を得た。miRanda(Enrightら、Genome Biol,2003,5:RI,1)を用い3’UTR配列中のマイクロRNA結合配列を同定した。このスキャンにおける閾値は、S:90及びG:−17kcal/molであった。配列スコアの生データの90パーセンタイルの範囲内に存在するものを、マイクロRNAの標的の候補として選抜した。
【実施例2】
【0116】
EBVによりコードされるマイクロRNAの同定
ヘルペスファミリーに属する大型のDNAウイルスであり、特異的にヒトB細胞に感染するエプスタイン・バーウイルス(EBV)を解析した。潜在的にEBVに感染したバーキットリンパ腫細胞系から、小分子のRNAをクローニングした。驚くべきことに、クローニングした小分子RNAの4%がEBV(表12及び13)から生じることが明らかとなった。
【0117】
(表12):
非感染(−)DNAウイルス感染ヒト細胞株から調製した、小分子RNAのcDNAライブラリーの組成を示す。アノテーションは、GenBank(http://www.ncbi.nih.gov/GenBank/index.html)、ヒトtRNA配列のデータセット(http://rna.wustl.edu/GtRDB/Hs/Hs−seqs.html)、ヒトの及びマウスのsn/snoRNA配列のデータセット(http://mbcr.bcm.tmc.edu/smallRNA/Database)、マイクロRNAのデータベース(http://www.sanger.ac.uk/Software/Rfam/microRNA/)、マイクロRNAの予測(35)、及びUCSCからのHG16ヒトゲノムアセンブリのリピート要素アノテーション(http://genome.cse.ucsc.edu)からの情報に基づく。クローニングされた配列の総数は、表の最下行で括弧内に示される。最高2つの変異の許容範囲でヒトゲノムに位置するが、特定のタイプを割り当てられなかった配列は、「Not annotated」として分類した。また3以上の変異を有し、ゲノムにマッチしなかったものは、「Not matched」として分類した。
【表12】
a:snRNA、snoRNA及び他の公知の小分子の細胞質内ノンコーディングRNAを含む。
b:ウイルスの配列に係るアノテーションは、EBV B95−8(GenBank V01555)に基づく。
【0118】
(表13):
小分子のRNAの配列は、ウイルスの配列に由来した。小分子RNAの配列の位置は、上の表12において特定されるウイルスのゲノム配列と関連させて決定した。
【表13】
【0119】
大部分のEBV配列は一回以上クローニングし、クローニングしたRNAの側方に位置するゲノム配列の解析により、マイクロRNA遺伝子に特有の折り返し構造が示唆された。前記EBVマイクロRNAは、EBVゲノムの2つの領域において集まっている5つの異なるdsRNA前駆体から生じた(2A図s及びB)。
【0120】
EBVマイクロRNAは全て直ちにノーザンブロット法により検出可能であり、5つのマイクロRNAのうちの3つにおいて、約60ntの折畳み前駆体が含まれていた(図2C)。第1のマイクロRNAクラスターは遠いBcl−2ホモログをコードしているBHFR1遺伝子のmRNA中に位置していた。これらの3つのマイクロRNAを、以降miR−BFIRF1−1からmiR−BHRF1−3と称する。
【0121】
miR−BHFR1−1は、5’UTRに位置し、miR−BHFR1−2及び3は、BHRF1のmRNAの3’UTRに位置する。構造的に類似したマイクロRNA遺伝子の組織は、発現された配列タグのオープンリーディングフレームの側方に位置する若干の哺乳動物のマイクロRNAとして観察された。他のEBVマイクロRNAはBART遺伝子のイントロン領域においてクラスターを形成していた。それらを、以降miR−BART1及びmiR−BART2と称する。マイクロRNAが、RNAサイレンシング経路において標的mRNAを分解、又は翻訳を抑制することによって機能することから、宿主及び/又はウイルスの遺伝子発現に係る新規なウイルスの調節機構を発見したこととなる。
【実施例3】
【0122】
エプスタイン・バーウイルスによりコードされるマイクロRNAの標的配列の予測:
潜在的に細胞に感染しているEBVは3つの異なる潜伏段階(IからIII、図2A)において検出され、潜在的な遺伝子の様々なサブセットの発現:6つの核抗原(EBNA1、2、3A、B、C及びEBNA−LP)、3つの潜在的な膜タンパク質(LMP1、2A及び2B)、コーディング部分が未解明のBamHI A領域(BART/CST)からの、2つのノンコーディングRNA(EBER1及び2)及び転写物、によって特徴づけられる。
【0123】
潜伏段階IIIにおける全ての潜在的な遺伝子を発現するEBV細胞から、小分子RNAを単離した。EBVマイクロRNAの発現が、特定の潜伏段階と関係するか否かを明らかにするため、異なる潜伏段階において、不死化した細胞(ホジキンのリンパ腫(HD、潜伏段階II)、バーキットリンパ腫(BL)、潜伏段階I、ウイルス生産マーモセット由来サルリンパ球B95−8(潜伏段階III、細胞の3〜10%が溶菌段階に特有の抗原を発現している))におけるEBVマイクロRNA発現を確認した(図2D)。
【0124】
BARTマイクロRNAは、全ての潜伏段階において検出され、EBV感染の全段階の間、報告されているBARTの発現と一致した。しかしながら、BARTマイクロRNA発現は、ウイルスを生産しているマーモセット細胞系においては10倍多かった(図2D、レーン9、列5及び6)。これまでBARTの異なるスプライシングされた転写物からコード化されるタンパク質を識別する試みが幾つかなされたが、この領域の機能はこれまで未解明であった。本発明は、BART領域の機能解析の一助となろう。
【0125】
BHRF1マイクロRNAの発現パターンは、EBVの潜伏段階に依存している。段階II及びIIIの細胞系がBHRF1マイクロRNA(図2D、レーン5−6)を発現している一方で、段階Iにある2つのうち一つの細胞系のみでBHRF1マイクロRNA(図2D、レーン7、8)の発現が確認された。潜伏段階Iの細胞系は、EBNA1、EBER及びBARTのみを発現すると考えられる。
【0126】
段階II細胞系での発現と同様に、潜伏段階Iにある一つの細胞系におけるBHRF1領域に由来している転写物の発現は、公知の潜伏段階I/II Qpプロモーター(図2A)の上流に位置する新規な潜伏段階I/IIプロモーターの存在が示唆される。潜伏段階Iの新規な細分化は、潜伏段階IにあるBHRF1マイクロRNAを発現する細胞系を識別するために用いられると考えられる。
【0127】
BHRF1タンパク質は溶菌段階においてのみ検出されるにも関わらず、潜伏段階でのEBVの転写物の存在は、BHRF1領域がそれ以前に観察されることを物語るものである。また、BHRF1−1から3のマイクロRNAは、BHRF1タンパク質とともに溶菌段階の間に発現されることが示唆される。溶菌サイクルの間のBHRF1の高レベル転写は細胞マイクロRNA処理能力を上回り、未処理の転写物はその後翻訳されると考えられる。
【0128】
EBVマイクロRNAの標的を決定するために、DrosophilaマイクロRNAの標的の予測のために最近開発された計算方法を使用した(Enrightら、Genome Biol,2003,5:RI,1)。ほぼ20,000の非冗長なヒト3’UTR及びEBVのゲノム配列について、潜在的マイクロRNA結合部位を検索した。遺伝子機能アノテーションが利用できた上位のヒットを、表14にリストとして示す。大多数の予測された宿主細胞の標的は、ウイルスのマイクロRNAのための一つ以上の結合部位を有し、更にこれらのほぼ50%は、1又は幾つかの宿主細胞由来マイクロRNAの標的とされる。多数のマイクロRNA結合部位は、相乗効果を発揮し、非線形相関的にターゲッティング効果を増加させると考えられる。
【0129】
(表14から16):
EBVマイクロRNAの標的となる宿主細胞のmRNAの標的の予測を示す。HUGOによって推奨される遺伝子名を示し、遺伝子機能アノテーションはEnsembleから抜粋した。標的遺伝子(NS)の3’UTRに存在するマイクロRNA結合部位の数、及び目的部位予測(パーセンタイル)をランク付けするパーセンタイルスコアを示す。また、ヒトマイクロRNAが、推定のEBVのマイクロRNAに制御される標的と結合すると予測される場合、それは最後のカラムにおいて示される。ヒトマイクロRNA結合部位と予測される部位はまた、マウスのオーソログmRNAにおいて保存されている。
【表14】
【表15】
【表16】
【0130】
予測されたウイルスのマイクロRNA目標の幾つかは、細胞増殖及びアポトーシスの顕著なレギュレーターである。またそれは、感染した細胞の成長制御にとって重要であると考えられる。細胞増殖のマイクロRNA変調も、幾つかの悪性ガンとEBVの関連を検討するための新規な手掛かりを提供する。他の重要なグループのEBVマイクロRNA標的は、B細胞特異的ケモカイン及びサイトカインである。またそれは白血球の活性化及び/又は走化性にとって重要である。これらの遺伝子のダウンレギュレーションはおそらく、活性化した細胞障害性T細胞からEBV感染しているB細胞を回避させる機能を有するを考えられる。追加的な標的は、転写制御因子及びシグナル形質導入経路の構成要素を含み、それはEBVの溶菌段階及び潜伏段階の間の維持又は切替えにとって重要である。
【実施例4】
【0131】
EBVによりコードされるマイクロRNAであるmiR−BART2は、ウイルスによりコードされるDNAポリメラーゼBALF5を標的とする
EBVによりコードされるマイクロRNA(miR−BART2)のうちの一つは、ウイルスによりコードされたDNAポリメラーゼBALF5を低下させるための標的とすることができる(図3)。miR−BART2は、転写されたBALF5転写物のアンチセンスであり、したがって、BALF5の3’UTRと完全に相補的であり、このmRNAを分解することが可能である。同様に、miRBHRF1−2及び3のクラスターは、溶解遺伝子BFLF2(図2A)(機能が現在知られていない)をコードしている転写物と相補的である。ウイルスのマイクロRNAによる溶解遺伝子のダウンレギュレーションは、潜伏感染の開始及び維持に関与すると考えられる。
【実施例5】
【0132】
KSHVによりコードされるマイクロRNAの同定
様々なリンパ腫のカポージ肉腫関連のヘルペスウイルス(KSHV)の機能は十分に解明されている。KSHVマイクロRNAを同定するために、潜在的にKSHVに感染している体腔ベースのリンパ腫(BCBL)細胞系から小分子RNAをクローニングした。合計の21%まで(クローニングされた細胞マイクロRNAの34%)がクローニングされた小分子RNAであり、KSHV(表17及び18)に由来することを見出した。
【0133】
(表17):
配列アノテーションに基づき決定された、KSHVに感染したヒト細胞系から調製される小分子RNA cDNAライブラリーの組成(%)。アノテーションは、GenBank(http://www.ncbi.nih.gov/GenBank/index.html)、ヒトtRNA配列のデータセット(http://rna.wustl.edu/GtRDB/Hs/Hs−seqs.html)、ヒトの及びマウスのsn/snoRNA配列のデータセット(http://mbcr.bcm.tmc.edu/smallRNA/Database)、マイクロRNAのデータベース(http://www.sanger.ac.uk/Software/Rfam/microRNA/)、マイクロRNAの予測(35)、及びUCSCからのHG16ヒトゲノムアセンブリのリピート要素アノテーション(http://genome.cse.ucsc.edu)からの情報に基づく。クローニングされた配列の総数は、表の最下行で括弧において示される。最高2つの変異の許容範囲でヒトゲノムに位置するが、特定のタイプを割り当てられなかった配列は、「Not annotated」として分類された。ウイルスの配列のためのアノテーションは、KSHV BC−I(GenBank U75698)として公知のゲノム配列に基づく。
【表17】
【0134】
(表18):
KSHVに由来する小分子RNA配列。小分子RNAの配列の位置は、表17において特定されるウイルスのゲノム配列と関連して与えられる。
【表18】
【0135】
大部分のKSHV配列を一つ以上クローニングし、クローニングされたRNAの側方に位置しているゲノム配列の分析により、マイクロRNA遺伝子に特有の折り返し構造が示唆された。前記KSHVマイクロRNAは10の異なるdsRNA前駆体から生じ、全てKSHVゲノム(図4A及び4B)の同一の領域においてクラスターを形成していることを確認した。
【0136】
KSHVマイクロRNAは、miR−K1からmiR−K10と命名された。前記クラスターはKaposinという名称のタンパク質をコード化しているK12遺伝子のmRNA内に位置していた。またそれは若干の発癌性を有するものである。興味深いことに、miR−K1は、K12のコーディング配列中に位置する。これまでの報告では、K12符号化配列領域は複雑であり、KaposinA、B及びC(図4A)と呼ばれる幾つかのタンパク質をコードすることを示唆している。
【0137】
また、miR−K1において2つのアイソフォーム(すなわちmiR−K1a及びmiR−K1b)を同定した。それらは位置2(表19)において一つのヌクレオチドが異なる。MiR−K1aは、BCBL1細胞に存在するゲノム配列に対応する。MiR−K1bは、原発性滲出性リンパ腫(PEL)から単離された配列に由来すると考えられる。以上より、2つの異なるウイルスのゲノム又はそれに類するものは、BCBL1細胞系に存在していると考えられる。MiR−K2からmiR−K10は、K12をコード化している長い転写物のイントロン領域に位置し、そのプロモーターはORF72(図4A)の上流に位置する。
【0138】
更に、KSHVのマイクロRNAが溶菌サイクルの誘導に応じてそれぞれ制御されるか否かを解析した。BCBL1細胞は、複製可能なKSHVを保持する。TPA処理により、これらの細胞ではKSHV遺伝子発現の完全なプログラムが実行され、最終的にウイルスの複製及び成熟したビリオンの発散が行われる。
【0139】
TPA処理以後の幾つかの時点で全RNAを抽出し、ノーザンブロットによってKSHVのマイクロRNAの発現を確認した。miR−K1aのみ発現が前記処理により誘導されたが、イントロン領域のマイクロRNA(例えばmiR−K6及びmiR−K7)は影響を受けなかった(図5)。これは、miR−K1aとmiR−K2からK10では、由来する一次転写物が異なることを示唆する(図4A)。
【0140】
KSHVのゲノムにおけるマイクロRNAの同定は、ウイルスの発癌性特性を解明するための新規な手掛かりを提供する。
【0141】
(表19):
KSHVのマイクロRNAの成熟型及び前駆体型の配列を示す。それぞれ、太線は成熟型、下線は不機能、星印はmiR−K2及びmiR−K6としてクローニングされた部分を示す。
【表19】
【実施例6】
【0142】
HCMVによりコードされたマイクロRNAの同定
HCMVは、β−ヘルペスウイルスファミリーのユビキタスメンバーである。それらは、通常健常な児童及び成人がHCMVに感染しても症状が現れないが、先天性欠損症の主要な原因及び免疫不全症による死亡の重要な原因として残存すると言われている。
【0143】
HCMV臨床株VR1814に感染したヒト包皮線維芽細胞を溶菌させ、小分子RKAをクローニングした。HCMV感染細胞内のウイルスゲノム由来の小分子RNAを424種類クローニングした。それらのうち、171の配列は、一度クローニングし、ゲノムの全体にわたって分散していた。その他の253の配列は複数回クローニングし、その側方に存在するゲノム配列の分析により、マイクロRNA(表20及び21、並びに図6)に特有の構造の存在が示唆された。
【0144】
4つのマイクロRNAはゲノムのUL領域に位置し、5つのものはUS領域に由来していた。興味深いことに、5つのマイクロRNAすなわちmiR−UL3、miR−UL4、miR−US3、miR−US4及びmiR−US5は、周知のオープンリーディングフレーム(ORFs)に相補的な鎖上において転写される(図6A)。これらの5つのマイクロRNAは、EBVのmiR−BART2及びDNAポリメラーゼBALF5において前述したように、相補的な転写物の裂開に関係すると考えられる。UL114は、哺乳動物のウラシル−DNAグリコシラーゼのホモログであり、効率的なウイルスのDNA複製のために必要となることが示された。UL150は、HCMVの臨床株に存在するORFであり、実験室株には存在しない。
【0145】
その他の4つのマイクロRNAは、遺伝子間領域(miR−UL1、miR−US1及びmiR−US2)において又はイントロンの領域(miR−UL2)において位置する。miR−UL2がUL36のイントロン上に位置するという知見は興味深い。なお、それはカスパーゼ−8の活性化を抑制する、アポトーシスのインヒビターと言われている。
【0146】
(表20)
配列アノテーション(表19)に基づく、HCMV感染しているヒト細胞系から調製した小分子RNAのcDNAライブラリーの組成(%)を示す。ウイルスの配列のアノテーションは、HCMV FIX−BAC分離株VR1814(GenBank AC146907)に関する公知のゲノム配列に基づく。
【表20】
【0147】
(表21):
HCMVのマイクロRNAが成熟型及び前駆体型配列を示す。それぞれ、太線は成熟型、下線は不機能、星印はmiR−K2及びmiR−K6としてクローニングされた部分を示す。
【表21】
【0148】
完全に配列がアノテーションされた実験室株AD169(GenBank NC001347)を参照して位置を決定した。miR−UL4は、本発明で使用したFIX株とAD169株との間で保存されていないの唯一でHCMVのマイクロRNAである。UL150遺伝子の反対側に位置し、その前駆体は、公知のHCMVのFDC−BAC配列(GenBank AC146907)34630−34701(−)に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】図1は、本願明細書にて言及される修飾されたヌクレオチド単位を示す。Bは、アデノシン、シチジン、グアノシン、チミン又はウリジン、のいずれか一つの核酸塩基を指す。
【図2A】EBVは、マイクロRNAを発現する。(A)はEBVゲノムのセグメントを含むマイクロRNAの図である。潜在的な遺伝子を白い四角、溶解遺伝子を黒い四角、公知のノンコーディングRNAを青、新しく同定されたマイクロRNAを赤で示す。潜伏段階(I、II又はIII)にて活性なプロモーターは白いペナント、溶菌段階にて活性なプロモーターは黒いペナント、全ての段階で活性なプロモーターは灰色のペナントで示す。BART領域中のイントロンのセグメントは点線で、エキソンのセグメントは太い棒で示す。
【図2B】(B)は、EBVマイクロRNAの予測される折畳み前駆体を示す。成熟したマイクロRNAを赤で強調して示す。星印は、マイクロRNA−BHRF1−2鎖の反対側の鎖からクローニングされた低量の小分子RNAを示す。
【図2C】(C)は、感染してないBL−41、EBV感染BL41/95(+)細胞から単離された完全RNAを使用して行った、EBVマイクロRNAのノーザンブロットの結果を示す。また、ヒトmiR−16(表S1)の発現も参考のために解析した。成熟したマイクロRNA(miR)及びその折畳み前駆体(miR−L)の移動の位置を示す。膜へのブロッティング前に、ゲルへのアプライ量が等しいことを、臭化エチジウム染色によるtRNAバンドのモニターにより確認した。
【図2D】(D)は、様々なホジキン及びバーキットリンパ腫細胞系から単離された完全RNAを使用した、EBVマイクロRNAのノーザンブロットの結果を示す。EBV陽性群の線における各サンプルにおける潜伏段階を括弧内に示す。miRシグナルの下の数は、U6snRNAシグナルを使用した、ゲルへのアプライの際に正常化した後のBL41/95シグナルに対するシグナル強度を示す。
【図3】miR−BART2により誘導されるBALF5のmRNAの裂開の概略を示す。溶解遺伝子を黒い四角で、発現が見られなかった遺伝子を灰色(GenBankエントリー:VO1555)で示す。miR−BART2配列は、ヌクレオチド配列及びBALF5のmRNAのプロセシング部位との関係から位置づけられた。BALF5のmRNAの予測裂開位置は、マップ化された3.7kbプロセシング後の末端と同じであった。
【図4A】KSHVのマイクロRNAのゲノム位置及び折り返し構造を示す。(A)はKSHVマイクロRNAのゲノム位置を示す。黒い矢印は、ヘルペスウイルスにおいて保存されるオープンリーディングフレーム(ORF)、白い矢印はユニークなKSHVのORFを示す。繰り返し領域を、ORFの上に小さい黒い長方形として示す。クローニングされたマイクロRNAを点線で示す。K12転写物のための2つのプロモーターを黒い矢印として、K12の転写物を黒い線として、大きい転写物のイントロンの領域を破線として示す。厚い灰色の矢は、Kaposinタンパク質A、B及びCのORFを示す。
【図4B】(B)は、KSHVのマイクロRNAの折畳み前駆体を示す。クローニングされた成熟マイクロRNAは、赤で強調される。
【図5】KSHVのマイクロRNAは、溶菌サイクルの誘導に対応して制御される。TPA処理の後24、48及び72時間における、KSHV陰性(BJAB)細胞系及びBCBL1細胞から単離した全RNAを用いた、KSHVのmiR−K1a、miR−K6及びmiR−K7に関するノーザンブロットの結果を示す。
【図6A】HCMVのマイクロRNAのゲノム位置及び二次構造を示す。(A)は、HCMVゲノムのマイクロRNAを含有するフラグメントの図である。終端の繰り返しを、灰色の四角及び三角として示す。クローニングされたマイクロRNAを、赤い点線として示す。ゲノムの(+)−鎖にコードされるマイクロRNAを、ゲノムの上に示し、ゲノム(−)鎖に由来するそれを下に示す。矢印は、ウイルスのORFの方位を示す。
【図6B】(B)は、HCMVのマイクロRNAの予測された折り返し構造の前駆体を示す。クローニングされた成熟型マイクロRNAを赤で強調する。星印は、miR−UL1の鎖と反対側の鎖からクローニングされた低量の小分子RNAを強調するために用いた。
【技術分野】
【0001】
本願に係る発明は、米国国立衛生研究所の基金(助成金番号R01−GM068476−01)に基づき行われたものである。本発明に関する権利の一部はアメリカ合衆国政府に帰属する。
【0002】
本願は、米国特許出願番号10/968,821(出願日2004年10月19日)の一部継続出願であり、左記は米国特許出願番号10/925,363(出願日2004年8月2日)の一部継続出願であり、左記は米国特許出願番号10/819,098(出願日2004年4月5日)の一部継続出願である。前記米国特許出願番号10/925,363、10/819,098及び10/968,821の明細書の全ての内容は、本発明において援用される。
【背景技術】
【0003】
マイクロRNAは、約22ヌクレオチドの小分子のRNAである。このマイクロRNA分子は、配列特異的な様式にて、多様な生物において遺伝子発現を制御する機能を有する。
【0004】
多様な生物において見られる、siRNA及びマイクロRNAのような二本鎖RNA(dsRNA)により媒介されるRNAサイレンシングは、RNAウイルスに対する固有の免疫反応の一部であり、また転移可能な要素である。また、そのような宿主における防御反応を逆に阻害する反応も、例えば植物ウイルスまた昆虫のフロックハウスウイルスなどにおいて確認されている。これらのウイルスは、例えばdsRNA結合タンパク質などのインヒビターを発現し、宿主細胞のRNAサイレンシング機構を妨害する。
【0005】
例えば、マイクロRNAは、標的遺伝子のmRNAの3’側のノンコーディング領域に部分的にハイブリダイズした後に翻訳をブロックすることが報告されている。前記マイクロRNAの標的となる遺伝子は未だ解明すべき部分が残されている。しかしながら、マイクロRNAは多様な疾病や症状を発症させることを示唆する証拠が揃いつつある。例えば、ショウジョウバエのマイクロRNAは、アポトーシスに関連する遺伝子を標的としていることが明らかとされ、またB細胞慢性リンパ性白血病は、二つのマイクロRNAの欠失が関与していることが明らかとされている。
【0006】
しかしながら、今日まで、哺乳動物のウイルスによりコードされるマイクロRNAの存在は、これまで報告されていなかった。したがって、哺乳動物のウイルスのマイクロRNAの同定、及び、もし存在する場合にはその生物学的機能を解明することにより、新規抗ウイルス薬の開発にとって有用な知見が得られると考えられる。
【非特許文献1】Bartel、Cell,2004,116,281−297
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上に鑑み、本発明の課題は、ウイルスのマイクロRNAを同定し、また、現在公知、又は将来公知となるウイルスのマイクロRNAの機能を解明する一助となり得る、新規な材料及び方法を提供することである。
【0008】
また、マイクロRNAの、RNAの分解を誘導、又は重要なタンパク質をコードするmRNAからの翻訳の抑制をする機能を利用し、DNAウイルスのマイクロRNAにより誘導される、標的mRNAの分裂又は翻訳抑制を阻害する新規な分子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの実施態様において、本発明は、DNAウイルスのマイクロRNAの配列を含む単離された核酸分子に関する。
【0010】
他の実施態様において、本発明は、単離された一本鎖のDNAウイルスのマイクロRNA分子に関する。前記分子は、最少で10の部分、最多で50の部分を分子骨格上に含み、前記分子骨格は骨格単位を含んでなる。各部分は骨格単位に結合している塩基を含み、そこにおいて少なくとも10の隣接する塩基がDNAウイルスのマイクロRNA分子中の塩基配列と同一の配列(前記塩基対の30%までがゆらぎ塩基対であり、かつ前記隣接する塩基の10%までが付加、欠失、変異又はそれらの組み合わせである場合を除く)を有し、前記隣接する部分のうち、デオキシリボヌクレオチドの骨格単位を含むものが50%を超えない、分子であることを特徴とする。
【0011】
更なる実施態様において、本発明は単離された一本鎖のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子に関する。前記アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子は、分子骨格上に最少で10の部分、最多で50の部分を有し、前記分子骨格は骨格単位を含む。前記の各部分は、骨格単位に結合している塩基を含み、各塩基は相補的な配列とワトソン−クリック塩基対を形成し、そこにおいて、少なくとも10の隣接する塩基がDNAウイルスのマイクロRNA分子中の塩基配列と相補的な配列(前記塩基対の30%までがゆらぎ塩基対であり、かつ前記隣接する塩基の10%までが付加、欠失、変異又はそれらの組み合わせである場合を除く)を有し、前記隣接する部分のうち、デオキシリボヌクレオチドの骨格単位を含むものが50%を超えず、前記分子がマイクロRNP活性を阻害することができる、分子であることを特徴とする。
【0012】
更なる実施態様において、本発明は、細胞内のマイクロRNP活性の阻害方法に関する。前記マイクロRNPはDNAウイルスのマイクロRNA分子を含み、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子が一本鎖のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子中の塩基配列に相補的な塩基配列を含む。前記方法は、最少で10の部分、最多で50の部分の配列を分子骨格上に含む一本鎖のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子を細胞に導入する工程を含み、前記分子骨格が骨格単位を含み、各部分が骨格単位に結合する塩基を含み、各塩基が相補的な塩基とワトソン−クリック塩基対を形成し、ここにおいて、前記アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の少なくとも10の隣接する塩基が前記DNAウイルスのマイクロRNAと相補的であり(30%までの前記塩基がゆらぎ塩基対により置換され、少なくとも前記の10の部分の10%までが付加、欠失、変異又はその組み合わせである場合を除く)、前記隣接する部分のうち、デオキシリボヌクレオチドの骨格単位を含むものが50%を超えない、方法であることを特徴とする。
【0013】
その他の実施態様において、本発明は、DNAウイルスに感染した哺乳動物の患者を治療する方法である。前記方法は、前記哺乳動物にアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子を導入する工程を含む。
【0014】
他の実施態様において、本発明は、DNAウイルスのマイクロRNA分子の配列を含む単離された核酸分子を含む、単離されたマイクロRNPに関する。
【0015】
更なる実施態様において、本発明は、単離された一本鎖のDNAウイルスのマイクロRNA分子を含む、単離されたマイクロRNPに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の発明者は鋭意研究の結果、DNAウイルスによりコードされるマイクロRNAを発見した。ゆえに、一つの実施態様において、本発明は、単離された一本鎖のDNAウイルスのマイクロRNA分子に関する。
【0017】
マイクロRNA分子は、先行技術(例えば非特許文献1)により公知である。前記論文は本発明において援用されている。その分子はゲノム上の染色体位置から派生し、特異的なマイクロRNA遺伝子から産生される。
【0018】
成熟型のマイクロRNA分子は、その前駆体転写物がプロセシングを受け、それによりヘアピン構造をとる。前記ヘアピン構造は典型的にはダイサーとして知られる酵素の働きにより分裂し、それにより一組のマイクロRNAデュプレックスを生じさせる。詳細は非特許文献1を参照のこと。
【0019】
通常、マイクロRNAデュプレックスの二本鎖のうちの一本が、マイクロRNA−リボ核タンパク質複合体(マイクロRNP)中にパッケージングされる。例えば、ヒト細胞中のマイクロRNPにはまた、eIF2C2タンパク質や、Gemin3及びGemin4などのヘリカーゼが含まれる。
【0020】
未修飾のDNAウイルスのマイクロRNA分子
一つの実施態様において、本発明は、DNAウイルスのマイクロRNA配列又はDNAウイルスのヘアピン状前駆配列を含む単離された核酸分子に関する。前記DNAウイルスのマイクロRNA又はヘアピン状前駆体の配列に加え、前記核酸分子は一つ又は複数の追加的なヌクレオチドを含めてもよい。いかなるヌクレオチドを加えることも可能である。追加するヌクレオチドの数には上限は存在しない。望ましくは約500ヌクレオチド以下、より望ましくは約300ヌクレオチド以下が、前記DNAウイルスのマイクロRNA配列又はヘアピン状前駆配列に追加される。一つの実施態様において、前記DNAウイルスのマイクロRNAは、ヘアピン状前駆配列のフラグメントの一部である。
【0021】
前記DNAウイルスのマイクロRNAは、例えば組換えベクターなどのベクターに挿入することができる。望ましくは、DNAウイルスのマイクロRNAを含むそのような組換えベクターを構築するために、DNAウイルスのマイクロRNA配列を含む前記ヘアピン状前駆配列は、前記ベクター中に挿入される。詳細は、例えばChenら、Science 2004,303:83−86を参照のこと。
【0022】
前記組換えベクターは、プラスミド、コスミド又はファージ等、いかなる組換えベクターであってもよい。組換えベクターは一般に、複製開始点を有する。前記ベクターは、例えばアデノウイルスベクター又はアデノ−随伴ウイルス(AAV)ベクターのようなウイルスのベクターであってもよい。詳細は、例えばLedley、Pharmaceutical Research,1996,13:1595−1614、及びVermaら、Nature,1997,387:239−242を参照のこと。
【0023】
前記ベクターは更に、例えば薬剤耐性マーカーのような選択マーカー、又はβ−ガラクトシダーのような検出可能なマーカーを含むことができる。
【0024】
前記DNAウイルスは当業者に公知のいかなるDNAウイルスであってもよい。前記DNAウイルスは哺乳動物細胞に感染するものが望ましい。哺乳動物の例としてはイヌ、ネコなどの実験動物、ウシ、ウマ又はヒツジなどの家畜、ラット、マウス、ウサギなどの実験動物、サルやヒトなどの霊長類が挙げられる。
【0025】
前記DNAウイルスは一本鎖又は二本鎖のDNAウイルスであってもよい。一本鎖及び二本鎖のDNAウイルスの例は、表4に列挙のとおりである。
【0026】
一つの実施態様において、前記DNAウイルスはエプスタイン・バーウイルス(EBV)である。EBVのマイクロRNA及びそれに対応するヘアピン状前駆配列の例は、表1に示すとおりである。他の実施態様において、前記DNAウイルスはカポジ肉腫関連ヘルペスウイルスであり、またそれはヘルペスウイルス8(KSHV)としても知られている。KSHVのマイクロRNA及びそれに対応するヘアピン状前駆配列の例は、表2に示すとおりである。
【0027】
他の実施態様において、前記DNAウイルスはサイトメガロウイルス(HCMV)である。HCMVマイクロRNA及びそれに対応するヘアピン状前駆配列の例は、表3に示すとおりである。
【0028】
望ましい実施態様において、前記核酸分子はDNAウイルスのマイクロRNA配列又はヘアピン状前駆配列を含む。他の望ましい実施態様において、前記核酸分子は表1に示すDNAウイルスのマイクロRNA配列又はヘアピン状前駆配列のいずれか一つを含む。更に他の実施態様において、前記核酸分子は表2に記載のDNAウイルスのマイクロRNA配列又はヘアピン状前駆配列のいずれか一つを含む。更なる実施態様において、前記核酸分子は表3に記載のDNAウイルスのマイクロRNA配列又はヘアピン状前駆配列のいずれか一つを含む。
【0029】
前記の単離されたDNAウイルスのマイクロRNA分子の配列は、DNA又はRNA分子のいずれでもよい。表1から3に示す核酸分子の配列は、ウラシル塩基を有することが明らかとなっている。ウラシル塩基は、未修飾のRNA分子中に生じる。本発明はまた、未修飾のDNA分子も含む。前記未修飾のDNA分子の塩基配列は、未修飾のDNA分子中で前記ウラシル塩基がチミン塩基に置き換わっていることを除き、未修飾のRNA分子と同一である。
【0030】
(表1):EBVマイクロRNA及びヘアピン状前駆配列
【表1】
太字は成熟型マイクロRNA配列を、イタリックは、マイクロRNAの非機能の鎖に対応する低量の配列を示す。
【0031】
(表2):KSHVマイクロRNA及びヘアピン状前駆配列
【表2】
太字は、成熟型マイクロRNA配列を示す。
【0032】
(表3):HCMVマイクロRNA及びヘアピン状前駆配列
【表3】
太字は、成熟型マイクロRNA配列を示す。
【0033】
(表4):一本鎖及び二本鎖のDNAウイルス
【表4】
【0034】
DNAウイルスのマイクロRNA分子のアナログ
他の実施態様において、本発明は、上記のDNAウイルスのマイクロRNA又はヘアピン状前駆体のアナログに関するものであり、それらは表1から3に記載の配列を含む。この実施態様において、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、最低10の部分、望ましくは最低13の部分、より望ましくは最低15の部分、更に望ましくは最低18の部分、最も望ましくは最低21の部分を含む。
【0035】
前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、最高で50の部分、望ましくは最高40の部分、より望ましくは最高30の部分、更に望ましくは25の部分、最も望ましくは20の部分を含む。上記の最低数及び上記の最高数とのいかなる組み合わせも適用可能である。
【0036】
各部分は、骨格単位に結合している塩基を含む。本願明細書においては、塩基とは、DNA又はRNA中に存在するいずれか一つの核酸塩基のことを指す。前記塩基は、プリン又はピリミジンであってもよい。プリン塩基の例としては、アデニン(A)及びグアニン(G)が挙げられる。ピリミジン塩基の例としては、チミン(T)、シトシン(C)及びウラシル(U)が挙げられる。前記部分の各塩基は、相補的な塩基とワトソン−クリック塩基対を形成している。
【0037】
本発明におけるワトソン−クリック塩基対とは、例えばアデニン及びチミン(A−T)、アデニン及びウラシル(A−U)、並びにシトシン及びグアニン(C−G)の塩基同士の水素結合による相互作用のことを指す。前記アデニンは、塩基対を弱めることなく、2,6−ジアミノプリンと置換することができる。
【0038】
前記骨格単位は、安定的に塩基と結合でき、オリゴマーの鎖を形成することができる分子単位であれば、いかなるものも適用可能である。適用可能な骨格単位は当業者には公知である。
【0039】
例えば、適用可能な骨格単位としては、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドに存在する糖リン酸基、チオリン酸デオキシリボース基、N’3−N’5ホスホロアミダートデオキシリボース基、2’O−アルキル−リボースリン酸基、2’−O−アルキル−アルコキシリボースリン酸基、メチレン架橋を含むリボースリン酸基、2’−フルオロリボースリン酸基、モルフォリノホスホロアミダート基、シクロヘキセン基、トリシクロリン酸基、及びアミノ酸分子が挙げられる。
【0040】
望ましくは、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、一つ以上の部分を含み、それによりヌクレアーゼ耐性の増加が得られる。そのような分子は、一つ以上の部分を含み、それはヌクレアーゼによって認識されない。したがって、前記分子の前記ヌクレアーゼ耐性は、未修飾のリボヌクレオチド、未修飾のデオキシリボヌクレオチド又はその両方のみを含む配列と比較し、増加する。そのように修飾された部分については公知であり、例えば、Kurreckら、Eur.J.Biochem.270,1628−1644(2003)により参照することができる。
【0041】
前記ヌクレアーゼ耐性は、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ又はその両方に対するもののいずれも可能である。前記エキソヌクレアーゼは、3’→5’エキソヌクレアーゼ又は5’→3’エキソヌクレアーゼのいずれであってもよい。3’→5’ヒトエキソヌクレアーゼの例としては、PNPTl、Werner症候群ヘリカーゼ、RRP40、RRP41、RRP42、RRP45及びRRP46が挙げられる。5’→3’エキソヌクレアーゼの例としては、XRN2及びFEN1が挙げられる。エンドヌクレアーゼの例としては、Dicer、Drosha、RNAe4、リボヌクレアーゼP、リボヌクレアーゼH1、DHP1、ERCC−1及びOGG1が挙げられる。エキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼの両方の活性を有するヌクレアーゼの例としては、APE1及びEXO1が挙げられる。
【0042】
修飾された部分を、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子のいかなる位置に設置することもできる。例えば、DNAウイルスのマイクロRNA分子を3’→5’エキソヌクレアーゼから保護するため、前記分子はその3’末端に一つ以上の修飾された部分を有することが可能で、少なくとも二つの修飾された部分を3’末端に有するのが望ましい。前記分子を5’→3’エキソヌクレアーゼから保護するのが望ましい場合は、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は一つ以上の修飾された部分を、望ましくは少なくとも二つの修飾された部分をその分子の5’末端に有するのがよい。また、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、少なくとも一つ、望ましくは少なくとも二つの修飾された部分を、その分子の5’と3’末端の間に設置し、エンドヌクレアーゼに対する分子の耐性を増加させるのがよい。また望ましくは、少なくとも約10%、より望ましくは少なくとも約25%、更に望ましくは少なくとも約50%、また更に望ましくは少なくとも約75%、最も望ましくは約95%の部分が修飾されるのがよい。一つの実施態様において、前記部分の全てがヌクレアーゼ耐性である。
【0043】
他の実施態様において、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、一つ以上の修飾されたデオキシリボヌクレオチド部分を有する。適用可能な、修飾されたデオキシリボヌクレオチド部分については当業者に公知である。
【0044】
修飾されたデオキシリボヌクレオチド部分の適用可能な例としては、チオリン酸デオキシリボヌクレオチド部分が挙げられる。図1中の構造式1を参照のこと。チオリン酸デオキシリボヌクレオチド部分を含むDNAウイルスのマイクロRNA分子は、一般にはチオリン酸(PS)DNAと呼ばれている。それに関しては、例えば、Eckstein、Antisense Nucleic Acids Drug Dev.10,117−121(2000)を参照のこと。
【0045】
修飾されたデオキシリボヌクレオチド部分の他の適用可能な例としては、N’3−N’5ホスホロアミダートデオキシリボヌクレオチド部分か挙げられる。図1中の構造式2を参照のこと。ホスホロアミダートデオキシリボヌクレオチド部分を含むオリゴヌクレオチド分子は、一般にホスホロアミダート(NP)DNAと呼ばれている。それに関しては、例えば、Gryaznovら、J.Am.Chem.Soc.116,3143−3144(1994)を参照のこと。
【0046】
他の実施態様において、前記分子は一つ以上の修飾されたリボヌクレオチド部分を含む。適用可能な、修飾されたリボヌクレオチド部分については当業者に公知である。
【0047】
修飾されたリボヌクレオチド部分の適用可能な例は、その2’位置で置換されたリボヌクレオチド部分である。前記2’位置における置換基は、例えば、炭素数C1からC4のアルキル基であってもよい。前記C1からC4のアルキル基は、飽和又は不飽和であっても良く、また直鎖状又は分岐型であってもよい。C1からC4のアルキル基の幾つかの例としては、エチル、イソプロピル及びアリール基が挙げられる。前記の望ましいC1のC4アルキル基は、メチル基である。図1中の構造式3を参照のこと。その2’位置をC1からC4のアルキル基で置換されたリボヌクレオチド部分を含むオリゴリボヌクレオチド分子は、一般には2’−O−(C1−C4アルキル)RNA、例えば2’−O−メチルRNA(OMeRNA)と呼ばれる。
【0048】
修飾されたリボヌクレオチド部分の2’位置における置換基の他の適用可能な例は、(炭素数C1からC4のアルコキシ)−(炭素数C1からC4のアルキル基)である。前記C1からC4のアルコキシ(アルキルオキシ)及びC1からC4のアルキル基は、上記のアルキル基のいかなるものを含めてもよい。前記の望ましいC1からC4のアルコキシ−C1からC4のアルキル基は、メトキシエチル基である。図1中の構造式4を参照のこと。一つ以上のリボヌクレオチド部分を含むオリゴヌクレオチド分子であり、その2’位置をC1からC4のアルコキシ−C1からC4のアルキル基で置換された分子は、2’−O−(C1からC4のアルコキシ−C1からC4のアルキル基)RNA、例えば2’−O−メトキシエチルRNA(MOE RNA)と呼ばれる。
【0049】
修飾されたリボヌクレオチド部分の他の適用可能な例は、2’−酸素原子と4’−炭素原子との間でメチレン架橋を有するリボヌクレオチドである。図1中の構造式5を参照のこと。リボヌクレオチド部分を含むオリゴリボヌクレオチド分子であり、2’−酸素原子と4’−炭素原子との間でメチレン架橋を有する分子は、一般にロックされた核酸(LNA)と呼ばれる。それに関しては、例えば、Kurreckら、Nucleic Acid Res.30,1911−1918(2002);Elayadiら、Curr.Opinion Invest.Drugs 2,558−561(2001);Orumら、Curr.Opinion MoI.Ther.3,239−243(2001);Koshkinら、Tetrahedron 54,3607−3630(1998);Obikaら、Tetrahedron Lett.iP,5401−5404(1998)を参照のこと。ロックされた核酸は、Proligo社(Paris,France and Boulder,Colorado,USA)から購入可能である。
【0050】
修飾されたリボヌクレオチド部分の他の適用可能な例は、フルオロ基により2’位置を置換されたリボヌクレオチドである。そのような2’−フルオロリボヌクレオチド部分は、当業者に公知である。2’−フルオロリボヌクレオチド部分を含む分子は一般に、本発明において2’−フルオロリボ核酸(FANA)と呼ばれる。図1の構造式7、またDamhaら、J.Am.Chem.Soc.120,12976−12977(1998)を参照のこと。
【0051】
他の実施態様において、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、アミノ酸残基に結合する一つ以上の塩基を含む。アミノ酸残基に結合する一つ以上の塩基を含む部分は、本発明において以下ペプチド核酸(PNA)部分と記す。そのような部分はヌクレアーゼ耐性であり、当業者に公知である。PNA部分を有する分子は一般にペプチド核酸と呼ばれる。図1中の構造式6、またNielson、Methods Enzymol.313,156−164(1999);Elayadiら、id.;Braaschら、Biochemistry 41,4503−4509(2002);Nielsenら、Science 254,1497−1500(1991)を参照のこと。
【0052】
アミノ酸はいかなるアミノ酸であってもよい。また、天然及び人工のアミノ酸を含む。天然アミノ酸にはすなわち、通常タンパク質中に存在する20の一般のアミノ酸、例えばアラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Glu)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)チロシン(Tyr)及びバリン(Val)が含まれる。
【0053】
上記の人工のアミノ酸としては、例えば、アルキル、アリール又はアルキルアリール基を含むアミノ酸である。アルキルアミノ酸の若干の実施例として、α−アミノブチル酸、β−アミノブチル酸、γ−アミノブチル酸、δ−アミノバレリン酸及びε−アミノカプロン酸が挙げられる。アリールアミノ酸の若干の実施例としては、オルト−、メタ−、パラ−アミノ安息香酸が挙げられる。アルキルアリールアミノ酸の若干の実施例としては、オルト−、メタ−、パラ−アミノフェニル酢酸及びγ−フェニルβ−アミノブチル酸が挙げられる。
【0054】
人工アミノ酸にはまた、天然アミノ酸の派生物も含まれる。前記天然アミノ酸の派生物には、例えば、一つ又は複数の化学基の付加した天然アミノ酸を含めることができる。
【0055】
例えば、一つ又は複数の化学基は、フェニルアラニン又はチロシン残基の芳香環の2’、3’、4’、5’若しくは6’の位置、又はトリプトファン残基のベンゼン環の4’、5’、6’若しくは7’の位置の一つ又は複数に付加させることができる。前記基としては、芳香族環に付加することができるいかなる化学基も使用することができる。そのような基の例としては、ヒドロキシル、炭素数C1−C4のアルコキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ニトロ、ハロ(すなわちフルオロ、クロロ、ブロモ又はヨード)又は分岐若しくは直鎖状の炭素数C1−C4のアルキル(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル又はt−ブチル)が挙げられる。
【0056】
人工アミノ酸の他の例としては、ノルバリン(Nva)、ノルロイシン(Nle)及びヒドロキシプロリン(Hyp)などを含む天然アミノ酸の派生物が挙げられる。
【0057】
前記アミノ酸は、同一であっても、又はそれぞれ異なる種類であってもよい。塩基は前記アミノ酸単位に、分子結合により付着する。前記分子結合の例としては、メチレンカルボニル、エチレンカルボニル及びエチル結合が挙げられる(Nielsenら、Peputide Nucleic Acid−Protocols and Applications,Horizon Scientific Press,pages 1−19;Nielsenら、Science 254:1497−1500)を参照。PNA部分のアミノ酸残基の一例としては、N−(2−アミノエチル)−グリシンが挙げられる。
【0058】
更に、PNA部分の例としては、シクロヘキシルPNA、レトロ−インベルソPNA、フォスフォンPNA、プロピオニルPNA及びアミノプロリンPNAが挙げられる。これらのPNA部分の詳細については、Nielsenら、Peputide Nucleic Acid −Protocols and Applications,Horizon Scientific Press,pages1−19の図5を参照のこと。前記Nielsenらの文献の7ページの図5は本発明において援用されている。
【0059】
PNAは、公知の方法、例えば修飾Fmoc又はtBocペプチド合成プロトコルにより化学的に合成することができる。前記PNAは多くの望ましい特性、例えば高い溶融温度(Tm)、核酸及び非荷電の分子骨格との高い塩基対の特異性を有する。更に、前記PNAは前記標的RNAにRNaceH感受性を与えず、また一般に良好な代謝安定性を有する。
【0060】
ペプチド核酸はまた、Applied Biosystems社(Foster City,California,USA)から購入可能である。
【0061】
追加的なヌクレアーゼ耐性部分は、当業者により公知である。例えば、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は一つ以上のモルフォリノホスホロアミダートヌクレオチド部分を含む。モルフォリノホスホロアミダートヌクレオチド部分を含む分子は一般にモルフォリノ(MF)核酸と呼ばれている。図1中の構造式8、及びHeasman、Dev.Biol.243,209−214(2002)を参照のこと。モルフォリノオリゴヌクレオチドは、Gene Tools LLC(Corvallis,Oregon,USA)から購入可能である。
【0062】
ヌクレアーゼ耐性部分の他の例において、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、一つ以上のシクロヘキセンヌクレオチド部分を含む。シクロヘキセンヌクレオチド部分を含む分子は、シクロヘキセン核酸(CeNA)と呼ばれる。図1の構造式10、及びWangら、J.Am.Chem.Soc.122,8595−8602(2000)、Verbeureら、Nucleic Acid Res.29,4941−4947(2001)を参照のこと。
【0063】
ヌクレアーゼ耐性部分の最終的な例において、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は一つ以上のトリシクロヌクレオチド部分を含む。トリシクロヌクレオチド部分を含む分子は一般的にトリシクロ核酸(tcDNA)と呼ばれる。図1中の構造式9、及びSteffensら、J.Am.Chem.Soc.119,11548−11549(1997)、Rennebergら、J.Am.Chem.Soc.124,5993−6002(2002)を参照のこと。
【0064】
他の実施態様において、前記分子の片側の末端、両末端及び/又はそれら末端の間にキャップ構造を施し、それにより前記DNAウイルスのマイクロRNAのアナログ又は上記本発明に係る未修飾の単離された核酸マイクロRNA分子の、ヌクレアーゼに対する耐性を増加させることが可能である。例えばエキソヌクレアーゼ及び/又はエンドヌクレアーゼに対する増加した耐性が望ましい。ヌクレアーゼ耐性を増加させるキャップ構造でいかなる公知のものも適用可能である。
【0065】
そのようなキャップの例としては、逆向きヌクレオチドキャップ及び化学修飾キャップが挙げられる。逆向きヌクレオチドキャップは5’及び/又は3’末端に付加することができる。また化学修飾キャップは前記分子の片側の末端、両末端及び/又はそれら末端の間に付加することができる。
【0066】
逆向きヌクレオチドキャップは核酸の3’→5’配列のことであり、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子又は単離された核酸マイクロRNA分子の5’及び/又は3’末端に結合するものである。前記逆向きのキャップ中におけるヌクレオチドの数は、それが前記がその標的mRNAに結合するのを妨害しない限りは、上限はない。いかなるヌクレオチドもヌクレオチドキャップにおいて使用することができる。通常は、前記ヌクレオチドキャップは約40ヌクレオチド長以下、望ましくは約30ヌクレオチド長以下、より望ましくは約20ヌクレオチド長以下、更に望ましくは約10ヌクレオチド長以下である。典型的には、前記逆向きヌクレオチドキャップは1ヌクレオチド長である。前記逆向きキャップに用いられる前記ヌクレオチドは、一般にはチミンであるが、アデニン、グアニン、ウラシル又はシトシンのような他のいかなるヌクレオチドも使用可能である。
【0067】
化学修飾キャップは、核酸のヌクレアーゼ耐性を増加させるための、あらゆる公知の化学基のことを指す。そのような化学修飾キャップの例としては、ヒドロキシアルキル基(アルキルヒドロキシド)又はアミノアルキル基(アルキルアミン)が挙げられる。ヒドロキシアルキル基はしばしばアルキルグリコシル基(例えばエチレングリコール)と呼ばれる。アミノアルキル基はしばしばアミノリンカーと呼ばれる。
【0068】
ヒドロキシアルキル基又はアミノアルキル基中の前記アルキル鎖は直鎖型又は分岐型のいずれでもよい。前記アルキル鎖中に存在する最小の炭素原子数は、1であり、望ましくは少なくとも2であり、より望ましくは少なくとも約3である。
【0069】
前記アルキル鎖に存在する最大炭素原子数は、約18、望ましくは約16、より望ましくは12である。典型的な前記アルキル基は、メチル、エチル及びプロピル基とを含む。前記アルキル基は、一つ以上の水酸基及び/又はアミノ基によって更に置換してもよい。
【0070】
アミノリンカーの幾つかを、表5に示す。表5にリストとして挙げられているアミノリンカーは、TriLink Biotechnologies社(San Diego,CA.)から購入可能である。
【0071】
(表5):TriLink Biotechnologies社のアミノリンカー
【表5】
【0072】
前記分子はまた、キメラのDNAウイルスのマイクロRNA分子でもよい。上記の部分のいかなるものの混合物を含むキメラ分子は公知であり、公知の方法により調製することができる。それに関しては、例えば、上記の引用文献、及びWangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,13989−13994(1999);Liangら、Eur.J.Biochem.269,5753−5758(2002);Lokら、Biochemistry 41,3457−3467(2002);Damhaら、J.Am.Chem.Soc.120,12976−12977(2002)を参照のこと。
【0073】
本発明の前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、少なくとも10、望ましくは少なくとも13、より望ましくは少なくとも15、更に望ましくは少なくとも20の隣接する塩基を含み、天然DNAウイルスのマイクロRNA分子の配列を有する。望ましい実施態様において、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、DNAウイルスのマイクロRNA分子の完全配列(例えば前記表1に示すDNAウイルスのマイクロRNA分子の配列のいずれか一つ)を含む。他の望ましい実施態様において、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、DNAウイルスのマイクロRNA分子の完全配列(例えば前記表2に示すDNAウイルスのマイクロRNA分子の配列のいずれか一つ)を含む。更に他の望ましい実施態様において、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、DNAウイルスのマイクロRNA分子の完全配列(例えば前記表3に示すDNAウイルスのマイクロRNA分子の配列のいずれか一つ)を含む。
【0074】
前記分子中の残りの塩基(もし存在すれば)は、上記の修飾された又は未修飾の部分であってもよい。一つの実施態様において、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子は、リボヌクレオチド部分又はデオキシリボヌクレオチド部分の一つ以上の部分を含む。
【0075】
分子中の部分の総数が50を超えない限りは、40を越えないいかなる数の部分、またいかなる塩基配列をも、隣接する塩基配列を含む上記部分に追加することが可能である。前記の追加的な部分は、前記隣接するの配列の5’末端、3’末端又は両末端に追加することが可能である。前記追加的な塩基は、前記DNAウイルスのマイクロRNAから派生したヘアピン状前駆体に存在する5’末端の塩基配列及び/又は3’末端の塩基配列を含むことができる。一つの実施態様において、前記ヘアピン状前駆配列は表1に示すいずれか一つのヘアピン状前駆配列又はそのフラグメントを含むことができる。他の実施態様において、前記ヘアピン状前駆配列は、表2に示すいずれか一つのヘアピン状前駆配列又はそのフラグメントを含むことができる。更に他の実施態様において、前記ヘアピン状前駆配列は表3に示すいずれか一つのヘアピン状前駆配列又はそのフラグメントを含むことができる。前記フラグメントは、少なくとも約10、望ましくは少なくとも約15、より望ましくは少なくとも約20ヌクレオチドをその5’末端及び/又は3’末端に有するいかなるヘアピン状前駆配列のフラグメントとすることができる。望ましくは前記ヌクレオチドの配列は、DNAウイルスのマイクロRNAが存在するヘアピン状前駆体内に存在するのが望ましい。
【0076】
上記の隣接する塩基において、塩基対の30%まで、ゆらぎ塩基対により置換することが可能である。本発明において、ゆらぎ塩基対とは、DNAウイルスのマイクロRNA分子の配列中において、1)シトシンをウラシルにより置換すること、又は2)アデニンをグアニンにより置換することのいずれかを指す。これらのゆらぎ塩基対は、一般的には、UG又はGUゆらぎと称する。表6は、DNAウイルスのマイクロRNA分子中における隣接する塩基の数、及びゆらぎ塩基対の最大数を示す。
【0077】
(表6):隣接する塩基の数、及びゆらぎ塩基対の最大数
【表6】
【0078】
更に、ゆらぎ塩基対に加え、前記隣接する塩基の10%まで、望ましくは5%までであれば付加、欠失、変異又はそれらの組み合わせを施すことが可能である。付加とは、隣接する配列中に、上記のいずれか一つの塩基を含む何らかの部分が挿入されることを指す。欠失とは、前記隣接する配列の何らかの部分が除去させることを指す。変異とは、前記隣接する配列中における塩基を含む部分が、上記のその他の塩基により置換されることを指す。
【0079】
前記付加、欠失又は変異は、前記隣接する配列、例えば隣接する配列の両末端又はDNAウイルスのマイクロRNA分子の隣接する配列内部のいかなる箇所においても生じうる。典型的には、前記付加、欠失又は変異は、その隣接する配列が例えば約10から約15部分長と比較的短いときは、その隣接する配列の末端にて生じる。その隣接する配列が16塩基長以上と比較的長いときは、その付加、欠失又は置換はその隣接する配列のいかなる部分においても生じうる。
【0080】
例えば、隣接する塩基が10から19塩基のときはゼロ又は一の隣接する塩基の付加、欠失又は置換、また隣接する塩基が20から23塩基のときは一又は二の付加、欠失又は置換が許容範囲である。
【0081】
更に50%未満、望ましくは30%未満の前記隣接する部分が、デオキシリボヌクレオチド骨格単位を含む。表7及び8は隣接する塩基の数及びデオキシリボヌクレオチド骨格単位の最大数を示す。
【0082】
(表7):デオキシリボヌクレオチド骨格単位を含む隣接部分の50%数
【表7】
【0083】
(表8):デオキシリボヌクレオチド骨格単位を含む隣接部分の30%数
【表8】
【0084】
他の実施態様において、前記ゆらぎ塩基対に加え、更に上記の付加、欠失及び変異により、天然のDNAウイルスのマイクロRNA配列中の位置11に相当する前記部分について付加、欠失又は変異が導入されてもよい。
【0085】
単離されたマイクロRNP
他の実施態様において、本発明は、上記の単離された核酸配列又は上記DNAウイルスのマイクロRNAのアナログのいずれかを含む、単離されたマイクロRNPの提供に関する。
【0086】
アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子
他の実施態様において、本発明は、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の提供に関する。前記アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子は、前記の単離された核酸DNAのマイクロRNA配列又はDNAウイルスのマイクロRNA分子のアナログ中の塩基配列と相補的であることを除けば、上記の単離された核酸配列、又は上記のDNAウイルスのマイクロRNAのアナログのいずれであってもよい。
【0087】
アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の配列の例を、表9、10及び11に示す。
【0088】
(表9):EBVのアンチ−マイクロRNA配列
【表9】
【0089】
(表10):KSHV8のアンチ−マイクロRNA配列
【表10】
【0090】
(表11):HCMVのアンチ−マイクロRNA配列
【表11】
【0091】
アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子は、DNAウイルスのマイクロRNA分子に関して上記した通り、修飾することができる。一つの実施態様において、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の前記隣接する部分は、対応するDNAウイルスのマイクロRNA分子と相補的である。アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の相補性の程度は、ゆらぎ塩基対あるいは付加、欠失及び変異に関する、DNAウイルスのマイクロRNA分子のアナログに関して上記した規制に従う。
【0092】
望ましい実施態様において、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子が未修飾の部分だけからなる場合、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子は、少なくとも10の塩基が隣接する塩基において一つ以上、DNAウイルスのマイクロRNAに対する非相補的な塩基を、及び/又は化学修飾キャップを含む。
【0093】
他の望ましい実施態様において、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の少なくとも10の隣接する塩基がDNAウイルスのマイクロRNA分子に対する完全に相補的な(すなわち100%)である場合、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子は、少なくとも10の隣接する塩基中に一つ以上の修飾された部分を含み、及び/又は化学修飾キャップを含む。
【0094】
更にもう一つの実施態様において、天然DNAウイルスのマイクロRNAの位置11に対応する位置のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の部分は、非相補的である。天然DNAウイルスのマイクロRNAの位置11に対応するアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の部分は、付加、欠失又は変異の導入を含む上記のいかなる手段によっても、上記の通り非相補的とすることができる。
【0095】
単離された分子
核酸分子、DNAウイルスのマイクロRNA分子又はアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子は、望ましくは単離された分子である。また、それは他の核酸を実質的に含まないことを意味する。実質的に他の核酸を含まない、とは、上記のような核酸分子、DNAウイルスのマイクロRNA分子、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子又はマイクロRNP分子が少なくとも約90%、望ましくは少なくとも約95%、更に望ましくは少なくとも約98%の純度で他の核酸を含まない状態を指す。
【0096】
望ましくは、前記分子は基本的に純粋である。また、それは前記分子が他の核酸のみならず、分子の合成及び単離において使用する他の材料も含んでいないことを意味する。合成において使用する材料とは、例えば酵素である。単離において使用する材料は、例えばゲル(例えばSDS−PAGE用)である。前記分子は、少なくとも約90%、望ましくは少なくとも約95%、更に望ましくは少なくとも約98%の純度で、他の核酸及び他の材料を含まない。
【0097】
使用
本発明のDNAウイルスのマイクロRNA分子及びアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子は、多数のin vitro、ex vivo及びin vivoにおける応用が可能である。
【0098】
例えば、本発明の前記マイクロRNA分子及び/又はアンチ−マイクロRNA分子は、マイクロRNAの機能を研究するために、細胞に導入することができる。前述のいかなるDNAウイルスのマイクロRNA分子及び/又はアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子も、それらの機能を研究するための細胞に導入することができる。
【0099】
一つの実施態様において、細胞内のマイクロRNAは、適切なアンチ−マイクロRNA分子によって阻害される。あるいは、細胞内のマイクロRNA分子の活性は、一つ又は複数の付加的なマイクロRNA分子を細胞に導入することによって強化することができる。マイクロRNAの機能は、細胞のマイクロRNAの活性の抑制及び/又は強化と関連する変化を観察することによって推定することができる。
【0100】
本発明の一態様において、本発明は、細胞内のマイクロRNP活性を阻害する方法に関する。細胞内のマイクロRNP活性を阻害する方法は、一本鎖のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子を細胞に導入することを含む。マイクロRNPは、DNAウイルスのマイクロRNA分子からなる。マイクロRNA分子は、一本鎖のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の塩基配列に相補的な配列からなる。
【0101】
いかなるアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子も、上記の規定を前提として、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNAがマイクロRNPに存在するDNAウイルスのマイクロRNAに相補的である限り、細胞内のマイクロRNP活性を阻害する方法で使うことができる。
【0102】
本発明のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子は、宿主細胞のマイクロRNPのDNAウイルスのマイクロRNAと結合することによって、マイクロRNP活性を阻害することができる。マイクロRNP活性は、標的配列の裂開又は翻訳の抑制に関連する。前記標的配列は、DNAウイルスのマイクロRNAの塩基の配列に対して部分的に又は完全に相補的な、いかなる配列でもあってもよい。前記標的配列は、例えばウイルスの、又は宿主メッセンジャーRNAである。
【0103】
例えば、DNAウイルスは、宿主由来の標的配列に対する相補的なマイクロRNAを生じることができる。なお、前記標的配列は、宿主細胞がウイルスの感染に対する防御のために有益である。前記DNAウイルスのマイクロRNAは、マイクロRNPで包まれることにより、標的配列の前記有益な効果を阻害する。したがって、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の導入は、RNP活性を阻害して、このことによりウイルスからの危害を減らす。
【0104】
あるいは、宿主細胞は、ウイルスに有害である遺伝子を転写することによって、ウイルスの感染に対する防御を行うことができる。例えば、前記遺伝子は細胞のアポトーシスを誘導することができるため、前記の遺伝子はウイルスに有害である。宿主細胞によって転写される標的配列に対して相補的なDNAウイルスのマイクロRNAは、ウイルスに有益である。その理由は、DNAウイルスのマイクロRNA(マイクロRNP中に存在)が、宿主細胞のアポトーシスを阻害する能力を有するからである。したがって、DNAウイルスのマイクロRNA分子の導入は、細胞の生存を促進し、その結果感染も促進される。
【0105】
前記細胞は、特定のDNAウイルスによって感染されうるいかなる細胞であってもよい。特定のDNAウイルスによって感染する特定の細胞は、当業者にとって周知である。例えば、EBVが特異的にBリンパ球に感染することは、当業者にとって周知である。
【0106】
マイクロRNA分子又はアンチ−マイクロRNA分子は、当業者にとって公知のいかなる方法によっても、細胞に導入することができる。例えば、前記分子は、マイクロインジェクションのような方法により、直接細胞に注入することができる。あるいは、前記分子は、望ましくは輸送システムの補助を伴いながら細胞と接触することができる。
【0107】
使用可能な輸送システムには、例えば、リポソーム及び荷電した脂質が含まれる。リポソームは、通常それらの中心部の水相中にオリゴヌクレオチド分子をカプセル化する状態で存在する。荷電した脂質は一般に、それらの正反対の荷電の結果として、脂質−オリゴヌクレオチド分子複合体を形成する。
【0108】
これらのリポソーム−オリゴヌクレオチド分子複合体又は脂質−オリゴヌクレオチド分子複合体は、通常エンドサイトーシスによって細胞に取り込まれる。前記リポソーム又は荷電した脂質は一般にヘルパー脂質を含み、それによりエンドソーム膜を崩壊させ、オリゴヌクレオチド分子の放出が可能となる。
【0109】
マイクロRNA分子又はアンチ−マイクロRNAを細胞に導入する他の方法には、例えばデンドリマー、生分解性ポリマー、アミノ酸ポリマー、糖ポリマー及びオリゴヌクレオチド結合性ナノ粒子などの輸送手段の使用法が含まれる。加えて、貯蔵手段としてプルロニック(登録商標)のゲルを用い、長期間にわたるアンチ−マイクロRNAのオリゴヌクレオチド分子の輸送を可能にすることができる。上記方法は、例えば、Hughesら、Drug Discovery Today 6,303−315(2001);Liangら、Eur.J.Biochem.269 5753−5758(2002);Beckerら、In Antisense Technology in the Central Nervous System(Leslie,R.A.,Hunter,A.J.&Robertson,H.A.,eds),pp.147−157,Oxford University Pressに記載されている。
【0110】
マイクロRNA分子又はアンチ−マイクロRNA分子の特定の細胞に対するターゲッティングは、当業者にとって公知のいかなる方法にもよって実施することができる。例えば、前記マイクロRNA分子又はアンチ−マイクロRNA分子は、抗体又はリガンドとコンジュゲートし、細胞上のレセプターによって特異的に認識することができる。例えば、細胞がBリンパ球である場合、その抗体は、細胞レセプターCD19、CD20、CD21、CD23又はこれらのレセプタに対するリガンドとすることができる。
【0111】
他の実施態様において、本発明は、哺乳動物へのDNAウイルス感染を治療するための方法を提供する。前記方法は、アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子を前記哺乳動物に導入することを含む。アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子は、従来技術において公知のいかなる方法によっても、哺乳動物に導入することができる。例えば、アンチ−DNA分子を細胞に導入するための上記の方法はまた、前記分子を哺乳動物に導入するために使用することができる。
【実施例1】
【0112】
材料及び方法
細胞系及びウイルス:
EBV陰性BL−41細胞及びEBV陽性BL41/95細胞(Torsteinsdottirら、Int.J.Cancer 1989、43:273に記載)を、10%のFBSを添加したRPMI 1640培地(GIBCO)にて培養した。EBNA−1に対する抗体を使用したウエスタンブロット分析によって、BL−41はEBVを含まず、BL41/95はEBVを含むことを確認した。EBVのマイクロRNA発現の分析のために、更にホジキンリンパ腫(HD)細胞のL540、HD−MY−Z(EBV陰性)及びRPMI 6666(EBV陽性)、バーキットリンパ腫(BL)細胞、ラモス(EBV陰性)、Ous及びMutu(EBV陽性)及び伝染性のB95−8ウイルス分子を産生するEBV陽性のマーモセット由来B95−8細胞を培養した。これらの細胞系もまた、10%のFBSを添加したRPMI 1640培地(GIBCO)にて培養した。KSHV陽性のBCBL1細胞系(レンヌら、Nat.med.1996、2:342−346に記載)を、10%のFBSを添加したRPMI 1640培地(GIBCO)にて培養した。KSHVの解析にあたり、ウイルスの複製を誘発するため、合計5×106のBCBL1細胞を20ng/mlのホルボール−12−テトラデカノエート−13−酢酸塩(TPA)によって誘導し、更にTPA処理の24、48及び72時間後にRNAを抽出した。ヒト包皮線維芽細胞を、10%のFCS、10U/mlのモロナル(moronal)及び10μg/mlの硫酸ネオマイシンを添加したMEM培地(GIBCO)で一次培養した。90%コンフルエントな細胞を、5PFU/細胞にてHCMVのVR1814系統により感染し、感染から通常約4−5日後の、細胞病理学的な効果が明瞭に観察できるときに、回収された。
【0113】
RNA調製、クローニング手順及びノーザンブロット分析:
全RNAの抽出は、Lagos−Quintanaら、Curr.Biol.2002,12:735に記載の方法により行った。また、RNAサイズの分画及びクローニング手順に関する記載も存在する。ノーザンブロット分析は、Lagos−Quintanaら、Curr.Biol.2002,12:735に記載の方法に従い、1レーンにつき30μg又は15μgのトータルRNAを添加し、前記マイクロRNA配列に相補的な、5’末端を32Pラベルされたオリゴデオキシヌクレオチドを使用した。EBVの解析において、tRNAのバンドを臭化エチジウムにて染色するか、あるいは32Pラベルされた5’GCAGGGGCCATGCTAATCTTCTCTGTATCGオリゴデオキシヌクレオチドをプローブとして使用して、U6snRNAのブロットをリプローブし、ゲルへの添加量が等しいことを確認した。ブロットを除去した後、数回リプローブした。ブロットの完全な除去は、前回のプローブした膜をリン光体イメージングすることによって確認した。
【0114】
小分子RNAのcDNAライブラリーのDNAシークエンシング:
細菌のコロニーを、予めウェル当たり20μlの滅菌水を添加した96ウェルプレートに添加し、それらを1:1の比率にて、10μlのPCRカクテル(後記)と混合して第2の96ウェルプレートに分注した(PCRカクテルの組成:2μlの10×Sigma JumpStart PCRバッファー、2μlの2mMデオキシヌクレオシド三リン酸塩混合液、10μMのM13ユニバーサル・リバースプライマーを各々0.4μl、1.35μlの1U/μl JumpStart REDAccuTaq DNAポリメラーゼ(シグマ社)及び4.85μlの水)。PCRのサイクルのプログラムは、94℃で1分30秒、その後94℃で30秒、57℃で30秒、72℃で3分30秒を30サイクルにて行った。その条件においては、プライマー及びデオキシヌクレオチドが大幅に減少するため、以降の、シークエンス前の浄化処理を省略することができる。PCR産物を30μlの水で希釈した後、そのうち3μlを、1μlの2.5×BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencingキット混合溶液、1.75μlの5×バッファー及び14.25μlの水からなる17μlのシークエンシングカクテルを含む96枚のウェルプレートのウェルに添加した。更に、シークエンス反応を、96℃にて10秒、50℃にて5秒、60℃にて4分のサイクルを25サイクルにて行った。得られた反応生成物を、50μlの100%エタノール/2μlの3M NaOAc(pH4.8)によって沈殿させ、得られたペレットを70%のエタノールによってリンスし、10μlのHi−Di Formamide(アプライドバイオシステム)を添加した後、94℃で10分間変性させ、サンプルをABI3730x1シークエンサーにアプライした。
【0115】
マイクロRNAの標的の予測:
最初に、Ensmart(Kasprzykら、Genome Res.2004,14:160)を使用してヒトのゲノムにおいて3’UTR配列として20,153の転写物を得、また、175の成熟型ヒトマイクロRNAの配列をRFAMマイクロRNAレジストリ(Griffiths−Jones、Nucleic Acids Res.,2004,32:D109)を得た。miRanda(Enrightら、Genome Biol,2003,5:RI,1)を用い3’UTR配列中のマイクロRNA結合配列を同定した。このスキャンにおける閾値は、S:90及びG:−17kcal/molであった。配列スコアの生データの90パーセンタイルの範囲内に存在するものを、マイクロRNAの標的の候補として選抜した。
【実施例2】
【0116】
EBVによりコードされるマイクロRNAの同定
ヘルペスファミリーに属する大型のDNAウイルスであり、特異的にヒトB細胞に感染するエプスタイン・バーウイルス(EBV)を解析した。潜在的にEBVに感染したバーキットリンパ腫細胞系から、小分子のRNAをクローニングした。驚くべきことに、クローニングした小分子RNAの4%がEBV(表12及び13)から生じることが明らかとなった。
【0117】
(表12):
非感染(−)DNAウイルス感染ヒト細胞株から調製した、小分子RNAのcDNAライブラリーの組成を示す。アノテーションは、GenBank(http://www.ncbi.nih.gov/GenBank/index.html)、ヒトtRNA配列のデータセット(http://rna.wustl.edu/GtRDB/Hs/Hs−seqs.html)、ヒトの及びマウスのsn/snoRNA配列のデータセット(http://mbcr.bcm.tmc.edu/smallRNA/Database)、マイクロRNAのデータベース(http://www.sanger.ac.uk/Software/Rfam/microRNA/)、マイクロRNAの予測(35)、及びUCSCからのHG16ヒトゲノムアセンブリのリピート要素アノテーション(http://genome.cse.ucsc.edu)からの情報に基づく。クローニングされた配列の総数は、表の最下行で括弧内に示される。最高2つの変異の許容範囲でヒトゲノムに位置するが、特定のタイプを割り当てられなかった配列は、「Not annotated」として分類した。また3以上の変異を有し、ゲノムにマッチしなかったものは、「Not matched」として分類した。
【表12】
a:snRNA、snoRNA及び他の公知の小分子の細胞質内ノンコーディングRNAを含む。
b:ウイルスの配列に係るアノテーションは、EBV B95−8(GenBank V01555)に基づく。
【0118】
(表13):
小分子のRNAの配列は、ウイルスの配列に由来した。小分子RNAの配列の位置は、上の表12において特定されるウイルスのゲノム配列と関連させて決定した。
【表13】
【0119】
大部分のEBV配列は一回以上クローニングし、クローニングしたRNAの側方に位置するゲノム配列の解析により、マイクロRNA遺伝子に特有の折り返し構造が示唆された。前記EBVマイクロRNAは、EBVゲノムの2つの領域において集まっている5つの異なるdsRNA前駆体から生じた(2A図s及びB)。
【0120】
EBVマイクロRNAは全て直ちにノーザンブロット法により検出可能であり、5つのマイクロRNAのうちの3つにおいて、約60ntの折畳み前駆体が含まれていた(図2C)。第1のマイクロRNAクラスターは遠いBcl−2ホモログをコードしているBHFR1遺伝子のmRNA中に位置していた。これらの3つのマイクロRNAを、以降miR−BFIRF1−1からmiR−BHRF1−3と称する。
【0121】
miR−BHFR1−1は、5’UTRに位置し、miR−BHFR1−2及び3は、BHRF1のmRNAの3’UTRに位置する。構造的に類似したマイクロRNA遺伝子の組織は、発現された配列タグのオープンリーディングフレームの側方に位置する若干の哺乳動物のマイクロRNAとして観察された。他のEBVマイクロRNAはBART遺伝子のイントロン領域においてクラスターを形成していた。それらを、以降miR−BART1及びmiR−BART2と称する。マイクロRNAが、RNAサイレンシング経路において標的mRNAを分解、又は翻訳を抑制することによって機能することから、宿主及び/又はウイルスの遺伝子発現に係る新規なウイルスの調節機構を発見したこととなる。
【実施例3】
【0122】
エプスタイン・バーウイルスによりコードされるマイクロRNAの標的配列の予測:
潜在的に細胞に感染しているEBVは3つの異なる潜伏段階(IからIII、図2A)において検出され、潜在的な遺伝子の様々なサブセットの発現:6つの核抗原(EBNA1、2、3A、B、C及びEBNA−LP)、3つの潜在的な膜タンパク質(LMP1、2A及び2B)、コーディング部分が未解明のBamHI A領域(BART/CST)からの、2つのノンコーディングRNA(EBER1及び2)及び転写物、によって特徴づけられる。
【0123】
潜伏段階IIIにおける全ての潜在的な遺伝子を発現するEBV細胞から、小分子RNAを単離した。EBVマイクロRNAの発現が、特定の潜伏段階と関係するか否かを明らかにするため、異なる潜伏段階において、不死化した細胞(ホジキンのリンパ腫(HD、潜伏段階II)、バーキットリンパ腫(BL)、潜伏段階I、ウイルス生産マーモセット由来サルリンパ球B95−8(潜伏段階III、細胞の3〜10%が溶菌段階に特有の抗原を発現している))におけるEBVマイクロRNA発現を確認した(図2D)。
【0124】
BARTマイクロRNAは、全ての潜伏段階において検出され、EBV感染の全段階の間、報告されているBARTの発現と一致した。しかしながら、BARTマイクロRNA発現は、ウイルスを生産しているマーモセット細胞系においては10倍多かった(図2D、レーン9、列5及び6)。これまでBARTの異なるスプライシングされた転写物からコード化されるタンパク質を識別する試みが幾つかなされたが、この領域の機能はこれまで未解明であった。本発明は、BART領域の機能解析の一助となろう。
【0125】
BHRF1マイクロRNAの発現パターンは、EBVの潜伏段階に依存している。段階II及びIIIの細胞系がBHRF1マイクロRNA(図2D、レーン5−6)を発現している一方で、段階Iにある2つのうち一つの細胞系のみでBHRF1マイクロRNA(図2D、レーン7、8)の発現が確認された。潜伏段階Iの細胞系は、EBNA1、EBER及びBARTのみを発現すると考えられる。
【0126】
段階II細胞系での発現と同様に、潜伏段階Iにある一つの細胞系におけるBHRF1領域に由来している転写物の発現は、公知の潜伏段階I/II Qpプロモーター(図2A)の上流に位置する新規な潜伏段階I/IIプロモーターの存在が示唆される。潜伏段階Iの新規な細分化は、潜伏段階IにあるBHRF1マイクロRNAを発現する細胞系を識別するために用いられると考えられる。
【0127】
BHRF1タンパク質は溶菌段階においてのみ検出されるにも関わらず、潜伏段階でのEBVの転写物の存在は、BHRF1領域がそれ以前に観察されることを物語るものである。また、BHRF1−1から3のマイクロRNAは、BHRF1タンパク質とともに溶菌段階の間に発現されることが示唆される。溶菌サイクルの間のBHRF1の高レベル転写は細胞マイクロRNA処理能力を上回り、未処理の転写物はその後翻訳されると考えられる。
【0128】
EBVマイクロRNAの標的を決定するために、DrosophilaマイクロRNAの標的の予測のために最近開発された計算方法を使用した(Enrightら、Genome Biol,2003,5:RI,1)。ほぼ20,000の非冗長なヒト3’UTR及びEBVのゲノム配列について、潜在的マイクロRNA結合部位を検索した。遺伝子機能アノテーションが利用できた上位のヒットを、表14にリストとして示す。大多数の予測された宿主細胞の標的は、ウイルスのマイクロRNAのための一つ以上の結合部位を有し、更にこれらのほぼ50%は、1又は幾つかの宿主細胞由来マイクロRNAの標的とされる。多数のマイクロRNA結合部位は、相乗効果を発揮し、非線形相関的にターゲッティング効果を増加させると考えられる。
【0129】
(表14から16):
EBVマイクロRNAの標的となる宿主細胞のmRNAの標的の予測を示す。HUGOによって推奨される遺伝子名を示し、遺伝子機能アノテーションはEnsembleから抜粋した。標的遺伝子(NS)の3’UTRに存在するマイクロRNA結合部位の数、及び目的部位予測(パーセンタイル)をランク付けするパーセンタイルスコアを示す。また、ヒトマイクロRNAが、推定のEBVのマイクロRNAに制御される標的と結合すると予測される場合、それは最後のカラムにおいて示される。ヒトマイクロRNA結合部位と予測される部位はまた、マウスのオーソログmRNAにおいて保存されている。
【表14】
【表15】
【表16】
【0130】
予測されたウイルスのマイクロRNA目標の幾つかは、細胞増殖及びアポトーシスの顕著なレギュレーターである。またそれは、感染した細胞の成長制御にとって重要であると考えられる。細胞増殖のマイクロRNA変調も、幾つかの悪性ガンとEBVの関連を検討するための新規な手掛かりを提供する。他の重要なグループのEBVマイクロRNA標的は、B細胞特異的ケモカイン及びサイトカインである。またそれは白血球の活性化及び/又は走化性にとって重要である。これらの遺伝子のダウンレギュレーションはおそらく、活性化した細胞障害性T細胞からEBV感染しているB細胞を回避させる機能を有するを考えられる。追加的な標的は、転写制御因子及びシグナル形質導入経路の構成要素を含み、それはEBVの溶菌段階及び潜伏段階の間の維持又は切替えにとって重要である。
【実施例4】
【0131】
EBVによりコードされるマイクロRNAであるmiR−BART2は、ウイルスによりコードされるDNAポリメラーゼBALF5を標的とする
EBVによりコードされるマイクロRNA(miR−BART2)のうちの一つは、ウイルスによりコードされたDNAポリメラーゼBALF5を低下させるための標的とすることができる(図3)。miR−BART2は、転写されたBALF5転写物のアンチセンスであり、したがって、BALF5の3’UTRと完全に相補的であり、このmRNAを分解することが可能である。同様に、miRBHRF1−2及び3のクラスターは、溶解遺伝子BFLF2(図2A)(機能が現在知られていない)をコードしている転写物と相補的である。ウイルスのマイクロRNAによる溶解遺伝子のダウンレギュレーションは、潜伏感染の開始及び維持に関与すると考えられる。
【実施例5】
【0132】
KSHVによりコードされるマイクロRNAの同定
様々なリンパ腫のカポージ肉腫関連のヘルペスウイルス(KSHV)の機能は十分に解明されている。KSHVマイクロRNAを同定するために、潜在的にKSHVに感染している体腔ベースのリンパ腫(BCBL)細胞系から小分子RNAをクローニングした。合計の21%まで(クローニングされた細胞マイクロRNAの34%)がクローニングされた小分子RNAであり、KSHV(表17及び18)に由来することを見出した。
【0133】
(表17):
配列アノテーションに基づき決定された、KSHVに感染したヒト細胞系から調製される小分子RNA cDNAライブラリーの組成(%)。アノテーションは、GenBank(http://www.ncbi.nih.gov/GenBank/index.html)、ヒトtRNA配列のデータセット(http://rna.wustl.edu/GtRDB/Hs/Hs−seqs.html)、ヒトの及びマウスのsn/snoRNA配列のデータセット(http://mbcr.bcm.tmc.edu/smallRNA/Database)、マイクロRNAのデータベース(http://www.sanger.ac.uk/Software/Rfam/microRNA/)、マイクロRNAの予測(35)、及びUCSCからのHG16ヒトゲノムアセンブリのリピート要素アノテーション(http://genome.cse.ucsc.edu)からの情報に基づく。クローニングされた配列の総数は、表の最下行で括弧において示される。最高2つの変異の許容範囲でヒトゲノムに位置するが、特定のタイプを割り当てられなかった配列は、「Not annotated」として分類された。ウイルスの配列のためのアノテーションは、KSHV BC−I(GenBank U75698)として公知のゲノム配列に基づく。
【表17】
【0134】
(表18):
KSHVに由来する小分子RNA配列。小分子RNAの配列の位置は、表17において特定されるウイルスのゲノム配列と関連して与えられる。
【表18】
【0135】
大部分のKSHV配列を一つ以上クローニングし、クローニングされたRNAの側方に位置しているゲノム配列の分析により、マイクロRNA遺伝子に特有の折り返し構造が示唆された。前記KSHVマイクロRNAは10の異なるdsRNA前駆体から生じ、全てKSHVゲノム(図4A及び4B)の同一の領域においてクラスターを形成していることを確認した。
【0136】
KSHVマイクロRNAは、miR−K1からmiR−K10と命名された。前記クラスターはKaposinという名称のタンパク質をコード化しているK12遺伝子のmRNA内に位置していた。またそれは若干の発癌性を有するものである。興味深いことに、miR−K1は、K12のコーディング配列中に位置する。これまでの報告では、K12符号化配列領域は複雑であり、KaposinA、B及びC(図4A)と呼ばれる幾つかのタンパク質をコードすることを示唆している。
【0137】
また、miR−K1において2つのアイソフォーム(すなわちmiR−K1a及びmiR−K1b)を同定した。それらは位置2(表19)において一つのヌクレオチドが異なる。MiR−K1aは、BCBL1細胞に存在するゲノム配列に対応する。MiR−K1bは、原発性滲出性リンパ腫(PEL)から単離された配列に由来すると考えられる。以上より、2つの異なるウイルスのゲノム又はそれに類するものは、BCBL1細胞系に存在していると考えられる。MiR−K2からmiR−K10は、K12をコード化している長い転写物のイントロン領域に位置し、そのプロモーターはORF72(図4A)の上流に位置する。
【0138】
更に、KSHVのマイクロRNAが溶菌サイクルの誘導に応じてそれぞれ制御されるか否かを解析した。BCBL1細胞は、複製可能なKSHVを保持する。TPA処理により、これらの細胞ではKSHV遺伝子発現の完全なプログラムが実行され、最終的にウイルスの複製及び成熟したビリオンの発散が行われる。
【0139】
TPA処理以後の幾つかの時点で全RNAを抽出し、ノーザンブロットによってKSHVのマイクロRNAの発現を確認した。miR−K1aのみ発現が前記処理により誘導されたが、イントロン領域のマイクロRNA(例えばmiR−K6及びmiR−K7)は影響を受けなかった(図5)。これは、miR−K1aとmiR−K2からK10では、由来する一次転写物が異なることを示唆する(図4A)。
【0140】
KSHVのゲノムにおけるマイクロRNAの同定は、ウイルスの発癌性特性を解明するための新規な手掛かりを提供する。
【0141】
(表19):
KSHVのマイクロRNAの成熟型及び前駆体型の配列を示す。それぞれ、太線は成熟型、下線は不機能、星印はmiR−K2及びmiR−K6としてクローニングされた部分を示す。
【表19】
【実施例6】
【0142】
HCMVによりコードされたマイクロRNAの同定
HCMVは、β−ヘルペスウイルスファミリーのユビキタスメンバーである。それらは、通常健常な児童及び成人がHCMVに感染しても症状が現れないが、先天性欠損症の主要な原因及び免疫不全症による死亡の重要な原因として残存すると言われている。
【0143】
HCMV臨床株VR1814に感染したヒト包皮線維芽細胞を溶菌させ、小分子RKAをクローニングした。HCMV感染細胞内のウイルスゲノム由来の小分子RNAを424種類クローニングした。それらのうち、171の配列は、一度クローニングし、ゲノムの全体にわたって分散していた。その他の253の配列は複数回クローニングし、その側方に存在するゲノム配列の分析により、マイクロRNA(表20及び21、並びに図6)に特有の構造の存在が示唆された。
【0144】
4つのマイクロRNAはゲノムのUL領域に位置し、5つのものはUS領域に由来していた。興味深いことに、5つのマイクロRNAすなわちmiR−UL3、miR−UL4、miR−US3、miR−US4及びmiR−US5は、周知のオープンリーディングフレーム(ORFs)に相補的な鎖上において転写される(図6A)。これらの5つのマイクロRNAは、EBVのmiR−BART2及びDNAポリメラーゼBALF5において前述したように、相補的な転写物の裂開に関係すると考えられる。UL114は、哺乳動物のウラシル−DNAグリコシラーゼのホモログであり、効率的なウイルスのDNA複製のために必要となることが示された。UL150は、HCMVの臨床株に存在するORFであり、実験室株には存在しない。
【0145】
その他の4つのマイクロRNAは、遺伝子間領域(miR−UL1、miR−US1及びmiR−US2)において又はイントロンの領域(miR−UL2)において位置する。miR−UL2がUL36のイントロン上に位置するという知見は興味深い。なお、それはカスパーゼ−8の活性化を抑制する、アポトーシスのインヒビターと言われている。
【0146】
(表20)
配列アノテーション(表19)に基づく、HCMV感染しているヒト細胞系から調製した小分子RNAのcDNAライブラリーの組成(%)を示す。ウイルスの配列のアノテーションは、HCMV FIX−BAC分離株VR1814(GenBank AC146907)に関する公知のゲノム配列に基づく。
【表20】
【0147】
(表21):
HCMVのマイクロRNAが成熟型及び前駆体型配列を示す。それぞれ、太線は成熟型、下線は不機能、星印はmiR−K2及びmiR−K6としてクローニングされた部分を示す。
【表21】
【0148】
完全に配列がアノテーションされた実験室株AD169(GenBank NC001347)を参照して位置を決定した。miR−UL4は、本発明で使用したFIX株とAD169株との間で保存されていないの唯一でHCMVのマイクロRNAである。UL150遺伝子の反対側に位置し、その前駆体は、公知のHCMVのFDC−BAC配列(GenBank AC146907)34630−34701(−)に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】図1は、本願明細書にて言及される修飾されたヌクレオチド単位を示す。Bは、アデノシン、シチジン、グアノシン、チミン又はウリジン、のいずれか一つの核酸塩基を指す。
【図2A】EBVは、マイクロRNAを発現する。(A)はEBVゲノムのセグメントを含むマイクロRNAの図である。潜在的な遺伝子を白い四角、溶解遺伝子を黒い四角、公知のノンコーディングRNAを青、新しく同定されたマイクロRNAを赤で示す。潜伏段階(I、II又はIII)にて活性なプロモーターは白いペナント、溶菌段階にて活性なプロモーターは黒いペナント、全ての段階で活性なプロモーターは灰色のペナントで示す。BART領域中のイントロンのセグメントは点線で、エキソンのセグメントは太い棒で示す。
【図2B】(B)は、EBVマイクロRNAの予測される折畳み前駆体を示す。成熟したマイクロRNAを赤で強調して示す。星印は、マイクロRNA−BHRF1−2鎖の反対側の鎖からクローニングされた低量の小分子RNAを示す。
【図2C】(C)は、感染してないBL−41、EBV感染BL41/95(+)細胞から単離された完全RNAを使用して行った、EBVマイクロRNAのノーザンブロットの結果を示す。また、ヒトmiR−16(表S1)の発現も参考のために解析した。成熟したマイクロRNA(miR)及びその折畳み前駆体(miR−L)の移動の位置を示す。膜へのブロッティング前に、ゲルへのアプライ量が等しいことを、臭化エチジウム染色によるtRNAバンドのモニターにより確認した。
【図2D】(D)は、様々なホジキン及びバーキットリンパ腫細胞系から単離された完全RNAを使用した、EBVマイクロRNAのノーザンブロットの結果を示す。EBV陽性群の線における各サンプルにおける潜伏段階を括弧内に示す。miRシグナルの下の数は、U6snRNAシグナルを使用した、ゲルへのアプライの際に正常化した後のBL41/95シグナルに対するシグナル強度を示す。
【図3】miR−BART2により誘導されるBALF5のmRNAの裂開の概略を示す。溶解遺伝子を黒い四角で、発現が見られなかった遺伝子を灰色(GenBankエントリー:VO1555)で示す。miR−BART2配列は、ヌクレオチド配列及びBALF5のmRNAのプロセシング部位との関係から位置づけられた。BALF5のmRNAの予測裂開位置は、マップ化された3.7kbプロセシング後の末端と同じであった。
【図4A】KSHVのマイクロRNAのゲノム位置及び折り返し構造を示す。(A)はKSHVマイクロRNAのゲノム位置を示す。黒い矢印は、ヘルペスウイルスにおいて保存されるオープンリーディングフレーム(ORF)、白い矢印はユニークなKSHVのORFを示す。繰り返し領域を、ORFの上に小さい黒い長方形として示す。クローニングされたマイクロRNAを点線で示す。K12転写物のための2つのプロモーターを黒い矢印として、K12の転写物を黒い線として、大きい転写物のイントロンの領域を破線として示す。厚い灰色の矢は、Kaposinタンパク質A、B及びCのORFを示す。
【図4B】(B)は、KSHVのマイクロRNAの折畳み前駆体を示す。クローニングされた成熟マイクロRNAは、赤で強調される。
【図5】KSHVのマイクロRNAは、溶菌サイクルの誘導に対応して制御される。TPA処理の後24、48及び72時間における、KSHV陰性(BJAB)細胞系及びBCBL1細胞から単離した全RNAを用いた、KSHVのmiR−K1a、miR−K6及びmiR−K7に関するノーザンブロットの結果を示す。
【図6A】HCMVのマイクロRNAのゲノム位置及び二次構造を示す。(A)は、HCMVゲノムのマイクロRNAを含有するフラグメントの図である。終端の繰り返しを、灰色の四角及び三角として示す。クローニングされたマイクロRNAを、赤い点線として示す。ゲノムの(+)−鎖にコードされるマイクロRNAを、ゲノムの上に示し、ゲノム(−)鎖に由来するそれを下に示す。矢印は、ウイルスのORFの方位を示す。
【図6B】(B)は、HCMVのマイクロRNAの予測された折り返し構造の前駆体を示す。クローニングされた成熟型マイクロRNAを赤で強調する。星印は、miR−UL1の鎖と反対側の鎖からクローニングされた低量の小分子RNAを強調するために用いた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNAウイルスのマイクロRNAの配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項2】
前記マイクロRNAが、ベクターに挿入されている、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
前記DNAウイルスのマイクロRNAが、ヘアピン状前駆配列の一部又はそのフラグメントである、請求項1記載の単離された核酸分子
【請求項4】
前記ヘアピン状前駆配列が、ベクターに挿入されている、請求項3に記載の単離された核酸分子。
【請求項5】
前記核酸分子が、DNA分子である、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項6】
前記核酸分子が、RNA分子である、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項7】
前記核酸分子が、DNAウイルスのマイクロRNAから構成される、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項8】
前記核酸分子が、実質的に前記DNAウイルスのヘアピン状前駆配列から構成される、請求項3に記載の単離された核酸分子。
【請求項9】
前記DNAウイルスのマイクロRNAが、表1中の配列のいずれか一つである、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項10】
前記DNAウイルスのマイクロRNAが、表2中の配列のいずれか一つである、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項11】
前記DNAウイルスのマイクロRNAが、表3中の配列のいずれか一つである、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項12】
前記DNAウイルスのヘアピン状前駆配列が、表1中の配列のいずれか一つである、請求項3に記載の単離された核酸分子。
【請求項13】
前記DNAウイルスのヘアピン状前駆配列が、表2中の配列のいずれか一つである、請求項3に記載の単離された核酸分子。
【請求項14】
前記DNAウイルスのヘアピン状前駆配列が、表3中の配列のいずれか一つである、請求項3に記載の単離された核酸分子。
【請求項15】
分子骨格上に最少で10の部分、最多で50の部分を有し、前記分子骨格は骨格単位を含み、各部分は骨格単位に結合している塩基を含む単離された一本鎖のDNAウイルスのマイクロRNA分子であって:
少なくとも10の隣接する塩基がDNAウイルスのマイクロRNA分子中の塩基配列と同一の配列(その塩基対の30%までがゆらぎ塩基対であり、かつ前記隣接する塩基の10%までが付加、欠失、変異又はそれらの組み合わせである場合を除く)を有し、
前記隣接する部分のうち、デオキシリボヌクレオチドの骨格単位を含むものが50%を超えない、分子。
【請求項16】
表1に記載のDNAウイルスのマイクロRNA配列のいずれか一つを有する、請求項15に記載の分子。
【請求項17】
表2に記載のDNAウイルスのマイクロRNA配列のいずれか一つを有する、請求項15に記載の分子。
【請求項18】
表3に記載のDNAウイルスのマイクロRNA配列のいずれか一つを有する、請求項15に記載の分子。
【請求項19】
更に、DNAマイクロRNAが派生するヘアピン状前駆体に存在する塩基配列を、その5’末端及び/又は3’末端に含む、請求項15に記載の分子。
【請求項20】
前記ヘアピン状前駆体が、表1に記載のヘアピン状前駆配列のいずれか一つ又はそのフラグメントである、請求項19に記載の分子。
【請求項21】
前記ヘアピン状前駆体が、表2に記載のヘアピン状前駆配列のいずれか一つ又はそのフラグメントである、請求項19に記載の分子。
【請求項22】
前記ヘアピン状前駆体が、表3に記載のヘアピン状前駆配列のいずれか一つ又はそのフラグメントである、請求項19に記載の分子。
【請求項23】
前記DNAウイルスが、哺乳動物のDNAウイルスである、請求項15に記載の分子。
【請求項24】
前記哺乳動物のDNAウイルスが、ヒトDNAウイルスである、請求項23に記載の分子。
【請求項25】
前記ヒトDNAウイルスが、エプスタイン・バーウイルスである、請求項24に記載の分子。
【請求項26】
前記ヒトDNAウイルスが、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(ヘルペスウイルス8)である、請求項24に記載の分子。
【請求項27】
前記ヒトDNAウイルスがサイトメガロウイルスである、請求項24に記載の分子。
【請求項28】
前記分子が、増加したヌクレアーゼ耐性により修飾されている、請求項15に記載の分子。
【請求項29】
分子骨格上に最少で10の部分、最多で50の部分を有し、前記分子骨格は骨格単位を含み、各部分は骨格単位に結合している塩基を含み、各塩基は相補的な配列とワトソン−クリック塩基対を形成する、単離された一本鎖のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子であって:
少なくとも10の隣接する塩基がDNAウイルスのマイクロRNA分子中の塩基配列と相補的な配列(その塩基対の30%までがゆらぎ塩基対であり、かつ前記隣接する塩基の10%までが付加、欠失、変異又はそれらの組み合わせである場合を除く)を有し、
前記隣接する部分のうち、デオキシリボヌクレオチドの骨格単位を含むものが50%を超えず、
前記分子はマイクロRNP活性を阻害することができる、分子。
【請求項30】
前記DNAウイルスのマイクロRNA分子が、表1に記載の配列のいずれか一つである、請求項29に記載の分子。
【請求項31】
前記DNAウイルスのマイクロRNA分子が、表2に記載の配列のいずれか一つである、請求項29に記載の分子。
【請求項32】
前記DNAウイルスのマイクロRNA分子が、表3に記載の配列のいずれか一つである、請求項29に記載の分子。
【請求項33】
前記分子中の前記部分が、前記マイクロRNAの位置11に対応する位置において非相補的である、請求項29に記載の分子。
【請求項34】
前記隣接する部分の5%までが、前記DNAウイルスのマイクロRNA中の前記隣接する塩基配列に非相補的である、請求項29に記載の分子。
【請求項35】
非相補的な部分が、付加、欠失、変異又はそれらの組み合わせである、請求項34に記載の分子。
【請求項36】
表9に記載のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA配列のいずれか一つを有する、請求項29に記載の分子。
【請求項37】
表10に記載のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA配列のいずれか一つを有する、請求項29に記載の分子。
【請求項38】
表11に記載のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA配列のいずれか一つを有する、請求項29に記載の分子。
【請求項39】
少なくとも一つの前記部分が、デオキシリボヌクレオチドである、請求項29に記載の分子。
【請求項40】
前記デオキシリボヌクレオチドが、修飾されたデオキシリボヌクレオチド部分である、請求項39に記載の分子。
【請求項41】
前記修飾されたデオキシリボヌクレオチドが、チオリン酸デオキシリボヌクレオチド部分である、請求項40に記載の分子。
【請求項42】
前記修飾されたデオキシリボヌクレオチドが、N’3−N’5ホスホロアミダートデオキシリボヌクレオチド部分である、請求項40に記載の分子。
【請求項43】
少なくとも一つの前記部分が、リボヌクレオチド部分である、請求項29に記載の分子。
【請求項44】
少なくとも一つの前記部分が、修飾されたリボヌクレオチド部分である、請求項43に記載の分子。
【請求項45】
前記修飾されたリボヌクレオチドが、2’の位置で置換されている、請求項44に記載の分子。
【請求項46】
2’位置における置換基が、炭素数C1からC4のアルキル基である、請求項45に記載の分子。
【請求項47】
前記アルキル基がメチル基である、請求項46に記載の分子。
【請求項48】
前記アルキル基がアリール基である、請求項46に記載の分子。
【請求項49】
前記2’の位置における置換基が、アルコキシ(炭素数C1からC4)−アルキル(炭素数C1からC4)基である、請求項45に記載の分子。
【請求項50】
前記アルコキシ(炭素数C1からC4)−アルキル(炭素数C1からC4)基が、メトキシエチル基である、請求項49に記載の分子。
【請求項51】
前記修飾されたリボヌクレオチドが、2’−酸素原子及び4’−炭素原子との間のメチレン架橋を有する、請求項44に記載の分子。
【請求項52】
少なくとも一つの前記部分がペプチド核酸である、請求項29に記載の分子。
【請求項53】
少なくとも一つの前記部分が2’−フルオロリボヌクレオチド部分である、請求項29に記載の分子。
【請求項54】
少なくとも一つの前記部分がモルフォリノホスホロアミダートヌクレオチド部分である、請求項29に記載の分子。
【請求項55】
少なくとも一つの前記部分がトリシクロヌクレオチド部分である、請求項29に記載の分子。
【請求項56】
少なくとも一つの前記部分がシクロヘキセンヌクレオチド部分である、請求項29に記載の分子。
【請求項57】
前記分子が、ヌクレアーゼに対する耐性を増加させるための一つ以上の修飾された部分を含む、請求項29に記載の分子。
【請求項58】
前記ヌクレアーゼがエキソヌクレアーゼである、請求項57に記載の分子。
【請求項59】
前記分子が、一つ以上の修飾された部分を5’末端に含む、請求項58に記載の分子。
【請求項60】
前記分子が、少なくとも二つの修飾された部分を5’末端に含む、請求項58に記載の分子。
【請求項61】
前記分子が、一つ以上の修飾された部分を3’末端に含む、請求項58に記載の分子。
【請求項62】
前記分子が、少なくとも二つの修飾された部分を3’末端に含む、請求項58に記載の分子。
【請求項63】
前記分子が、一つ以上の修飾された部分を5’末端に含み、一つ以上の修飾された部分を3’末端に含む、請求項58に記載の分子。
【請求項64】
前記分子が、少なくとも二つの修飾された部分を5’末端に含み、少なくとも二つの修飾された部分を3’末端に含む、請求項58に記載の分子。
【請求項65】
前記分子が、ヌクレオチドキャップを5’末端、3’末端又はその両方に含む、請求項58に記載の分子。
【請求項66】
前記分子が、化学修飾キャップを5’末端、3’末端又はその両方に含む、請求項58に記載の分子。
【請求項67】
前記ヌクレアーゼがエンドヌクレアーゼである、請求項29に記載の分子。
【請求項68】
前記分子が、一つ以上の修飾された部分を5’末端と3’末端の間に含む、請求項67に記載の分子。
【請求項69】
前記分子が、化学修飾キャップを5’末端と3’末端の間に含む、請求項67に記載の分子。
【請求項70】
前記部分の全てがヌクレアーゼに耐性である、請求項29に記載の分子。
【請求項71】
細胞内のマイクロRNP活性を阻害する方法であり、前記マイクロRNPがDNAウイルスのマイクロRNA分子を含み、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子が一本鎖のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子中の塩基配列に相補的な塩基配列を含み、前記方法が最少で10の部分、最多で50の部分の配列を分子骨格上に含む一本鎖のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子を細胞に導入する工程を含み、前記分子骨格が骨格単位を含み、各部分が骨格単位に結合する塩基を含み、各塩基が相補的な塩基とワトソン−クリック塩基対を形成する方法であって:
前記アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の少なくとも10の隣接する塩基が前記DNAウイルスのマイクロRNAと相補的(30%までの前記塩基がゆらぎ塩基対により置換され、少なくとも前記の10の部分の10%までが付加、欠失、変異又はその組み合わせである場合を除く)であり、
前記隣接する部分のうち、デオキシリボヌクレオチドの骨格単位を含むものが50%を超えない、方法。
【請求項72】
前記DNAウイルスのマイクロRNA分子が、表1に記載の配列のいずれか一つを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記DNAウイルスのマイクロRNA分子が、表2に記載の配列のいずれか一つを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記DNAウイルスのマイクロRNA分子が、表3に記載の配列のいずれか一つを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項75】
前記アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子が、表9に記載の配列のいずれか一つを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項76】
前記アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子が、表10に記載の配列のいずれか一つを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項77】
前記アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子が、表11に記載の配列のいずれか一つを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項78】
アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子中の前記部分が、前記マイクロRNAの位置11に対応する位置において非相補的である、請求項71に記載の方法。
【請求項79】
前記DNAウイルスが哺乳動物のDNAウイルスである、請求項71に記載の方法。
【請求項80】
前記哺乳動物がヒトである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記ヒトDNAウイルスがエプスタイン・バーウイルスである、請求項71に記載の方法。
【請求項82】
前記ヒトDNAウイルスがカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(ヘルペスウイルス8)である、請求項71に記載の方法。
【請求項83】
前記ヒトDNAウイルスがサイトメガロウイルスである、請求項71に記載の方法。
【請求項84】
DNAウイルスに感染した哺乳動物の患者を治療する方法であり、前記方法が、前記哺乳動物に請求項29に記載のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子を導入する工程を含む、方法。
【請求項85】
請求項1に記載の単離された核酸分子を含む、単離されたマイクロRNP。
【請求項86】
請求項15に記載の単離された一本鎖のDNAウイルスのマイクロRNA分子を含む、単離されたマイクロRNP。
【請求項1】
DNAウイルスのマイクロRNAの配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項2】
前記マイクロRNAが、ベクターに挿入されている、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
前記DNAウイルスのマイクロRNAが、ヘアピン状前駆配列の一部又はそのフラグメントである、請求項1記載の単離された核酸分子
【請求項4】
前記ヘアピン状前駆配列が、ベクターに挿入されている、請求項3に記載の単離された核酸分子。
【請求項5】
前記核酸分子が、DNA分子である、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項6】
前記核酸分子が、RNA分子である、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項7】
前記核酸分子が、DNAウイルスのマイクロRNAから構成される、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項8】
前記核酸分子が、実質的に前記DNAウイルスのヘアピン状前駆配列から構成される、請求項3に記載の単離された核酸分子。
【請求項9】
前記DNAウイルスのマイクロRNAが、表1中の配列のいずれか一つである、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項10】
前記DNAウイルスのマイクロRNAが、表2中の配列のいずれか一つである、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項11】
前記DNAウイルスのマイクロRNAが、表3中の配列のいずれか一つである、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項12】
前記DNAウイルスのヘアピン状前駆配列が、表1中の配列のいずれか一つである、請求項3に記載の単離された核酸分子。
【請求項13】
前記DNAウイルスのヘアピン状前駆配列が、表2中の配列のいずれか一つである、請求項3に記載の単離された核酸分子。
【請求項14】
前記DNAウイルスのヘアピン状前駆配列が、表3中の配列のいずれか一つである、請求項3に記載の単離された核酸分子。
【請求項15】
分子骨格上に最少で10の部分、最多で50の部分を有し、前記分子骨格は骨格単位を含み、各部分は骨格単位に結合している塩基を含む単離された一本鎖のDNAウイルスのマイクロRNA分子であって:
少なくとも10の隣接する塩基がDNAウイルスのマイクロRNA分子中の塩基配列と同一の配列(その塩基対の30%までがゆらぎ塩基対であり、かつ前記隣接する塩基の10%までが付加、欠失、変異又はそれらの組み合わせである場合を除く)を有し、
前記隣接する部分のうち、デオキシリボヌクレオチドの骨格単位を含むものが50%を超えない、分子。
【請求項16】
表1に記載のDNAウイルスのマイクロRNA配列のいずれか一つを有する、請求項15に記載の分子。
【請求項17】
表2に記載のDNAウイルスのマイクロRNA配列のいずれか一つを有する、請求項15に記載の分子。
【請求項18】
表3に記載のDNAウイルスのマイクロRNA配列のいずれか一つを有する、請求項15に記載の分子。
【請求項19】
更に、DNAマイクロRNAが派生するヘアピン状前駆体に存在する塩基配列を、その5’末端及び/又は3’末端に含む、請求項15に記載の分子。
【請求項20】
前記ヘアピン状前駆体が、表1に記載のヘアピン状前駆配列のいずれか一つ又はそのフラグメントである、請求項19に記載の分子。
【請求項21】
前記ヘアピン状前駆体が、表2に記載のヘアピン状前駆配列のいずれか一つ又はそのフラグメントである、請求項19に記載の分子。
【請求項22】
前記ヘアピン状前駆体が、表3に記載のヘアピン状前駆配列のいずれか一つ又はそのフラグメントである、請求項19に記載の分子。
【請求項23】
前記DNAウイルスが、哺乳動物のDNAウイルスである、請求項15に記載の分子。
【請求項24】
前記哺乳動物のDNAウイルスが、ヒトDNAウイルスである、請求項23に記載の分子。
【請求項25】
前記ヒトDNAウイルスが、エプスタイン・バーウイルスである、請求項24に記載の分子。
【請求項26】
前記ヒトDNAウイルスが、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(ヘルペスウイルス8)である、請求項24に記載の分子。
【請求項27】
前記ヒトDNAウイルスがサイトメガロウイルスである、請求項24に記載の分子。
【請求項28】
前記分子が、増加したヌクレアーゼ耐性により修飾されている、請求項15に記載の分子。
【請求項29】
分子骨格上に最少で10の部分、最多で50の部分を有し、前記分子骨格は骨格単位を含み、各部分は骨格単位に結合している塩基を含み、各塩基は相補的な配列とワトソン−クリック塩基対を形成する、単離された一本鎖のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子であって:
少なくとも10の隣接する塩基がDNAウイルスのマイクロRNA分子中の塩基配列と相補的な配列(その塩基対の30%までがゆらぎ塩基対であり、かつ前記隣接する塩基の10%までが付加、欠失、変異又はそれらの組み合わせである場合を除く)を有し、
前記隣接する部分のうち、デオキシリボヌクレオチドの骨格単位を含むものが50%を超えず、
前記分子はマイクロRNP活性を阻害することができる、分子。
【請求項30】
前記DNAウイルスのマイクロRNA分子が、表1に記載の配列のいずれか一つである、請求項29に記載の分子。
【請求項31】
前記DNAウイルスのマイクロRNA分子が、表2に記載の配列のいずれか一つである、請求項29に記載の分子。
【請求項32】
前記DNAウイルスのマイクロRNA分子が、表3に記載の配列のいずれか一つである、請求項29に記載の分子。
【請求項33】
前記分子中の前記部分が、前記マイクロRNAの位置11に対応する位置において非相補的である、請求項29に記載の分子。
【請求項34】
前記隣接する部分の5%までが、前記DNAウイルスのマイクロRNA中の前記隣接する塩基配列に非相補的である、請求項29に記載の分子。
【請求項35】
非相補的な部分が、付加、欠失、変異又はそれらの組み合わせである、請求項34に記載の分子。
【請求項36】
表9に記載のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA配列のいずれか一つを有する、請求項29に記載の分子。
【請求項37】
表10に記載のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA配列のいずれか一つを有する、請求項29に記載の分子。
【請求項38】
表11に記載のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA配列のいずれか一つを有する、請求項29に記載の分子。
【請求項39】
少なくとも一つの前記部分が、デオキシリボヌクレオチドである、請求項29に記載の分子。
【請求項40】
前記デオキシリボヌクレオチドが、修飾されたデオキシリボヌクレオチド部分である、請求項39に記載の分子。
【請求項41】
前記修飾されたデオキシリボヌクレオチドが、チオリン酸デオキシリボヌクレオチド部分である、請求項40に記載の分子。
【請求項42】
前記修飾されたデオキシリボヌクレオチドが、N’3−N’5ホスホロアミダートデオキシリボヌクレオチド部分である、請求項40に記載の分子。
【請求項43】
少なくとも一つの前記部分が、リボヌクレオチド部分である、請求項29に記載の分子。
【請求項44】
少なくとも一つの前記部分が、修飾されたリボヌクレオチド部分である、請求項43に記載の分子。
【請求項45】
前記修飾されたリボヌクレオチドが、2’の位置で置換されている、請求項44に記載の分子。
【請求項46】
2’位置における置換基が、炭素数C1からC4のアルキル基である、請求項45に記載の分子。
【請求項47】
前記アルキル基がメチル基である、請求項46に記載の分子。
【請求項48】
前記アルキル基がアリール基である、請求項46に記載の分子。
【請求項49】
前記2’の位置における置換基が、アルコキシ(炭素数C1からC4)−アルキル(炭素数C1からC4)基である、請求項45に記載の分子。
【請求項50】
前記アルコキシ(炭素数C1からC4)−アルキル(炭素数C1からC4)基が、メトキシエチル基である、請求項49に記載の分子。
【請求項51】
前記修飾されたリボヌクレオチドが、2’−酸素原子及び4’−炭素原子との間のメチレン架橋を有する、請求項44に記載の分子。
【請求項52】
少なくとも一つの前記部分がペプチド核酸である、請求項29に記載の分子。
【請求項53】
少なくとも一つの前記部分が2’−フルオロリボヌクレオチド部分である、請求項29に記載の分子。
【請求項54】
少なくとも一つの前記部分がモルフォリノホスホロアミダートヌクレオチド部分である、請求項29に記載の分子。
【請求項55】
少なくとも一つの前記部分がトリシクロヌクレオチド部分である、請求項29に記載の分子。
【請求項56】
少なくとも一つの前記部分がシクロヘキセンヌクレオチド部分である、請求項29に記載の分子。
【請求項57】
前記分子が、ヌクレアーゼに対する耐性を増加させるための一つ以上の修飾された部分を含む、請求項29に記載の分子。
【請求項58】
前記ヌクレアーゼがエキソヌクレアーゼである、請求項57に記載の分子。
【請求項59】
前記分子が、一つ以上の修飾された部分を5’末端に含む、請求項58に記載の分子。
【請求項60】
前記分子が、少なくとも二つの修飾された部分を5’末端に含む、請求項58に記載の分子。
【請求項61】
前記分子が、一つ以上の修飾された部分を3’末端に含む、請求項58に記載の分子。
【請求項62】
前記分子が、少なくとも二つの修飾された部分を3’末端に含む、請求項58に記載の分子。
【請求項63】
前記分子が、一つ以上の修飾された部分を5’末端に含み、一つ以上の修飾された部分を3’末端に含む、請求項58に記載の分子。
【請求項64】
前記分子が、少なくとも二つの修飾された部分を5’末端に含み、少なくとも二つの修飾された部分を3’末端に含む、請求項58に記載の分子。
【請求項65】
前記分子が、ヌクレオチドキャップを5’末端、3’末端又はその両方に含む、請求項58に記載の分子。
【請求項66】
前記分子が、化学修飾キャップを5’末端、3’末端又はその両方に含む、請求項58に記載の分子。
【請求項67】
前記ヌクレアーゼがエンドヌクレアーゼである、請求項29に記載の分子。
【請求項68】
前記分子が、一つ以上の修飾された部分を5’末端と3’末端の間に含む、請求項67に記載の分子。
【請求項69】
前記分子が、化学修飾キャップを5’末端と3’末端の間に含む、請求項67に記載の分子。
【請求項70】
前記部分の全てがヌクレアーゼに耐性である、請求項29に記載の分子。
【請求項71】
細胞内のマイクロRNP活性を阻害する方法であり、前記マイクロRNPがDNAウイルスのマイクロRNA分子を含み、前記DNAウイルスのマイクロRNA分子が一本鎖のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子中の塩基配列に相補的な塩基配列を含み、前記方法が最少で10の部分、最多で50の部分の配列を分子骨格上に含む一本鎖のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子を細胞に導入する工程を含み、前記分子骨格が骨格単位を含み、各部分が骨格単位に結合する塩基を含み、各塩基が相補的な塩基とワトソン−クリック塩基対を形成する方法であって:
前記アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子の少なくとも10の隣接する塩基が前記DNAウイルスのマイクロRNAと相補的(30%までの前記塩基がゆらぎ塩基対により置換され、少なくとも前記の10の部分の10%までが付加、欠失、変異又はその組み合わせである場合を除く)であり、
前記隣接する部分のうち、デオキシリボヌクレオチドの骨格単位を含むものが50%を超えない、方法。
【請求項72】
前記DNAウイルスのマイクロRNA分子が、表1に記載の配列のいずれか一つを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記DNAウイルスのマイクロRNA分子が、表2に記載の配列のいずれか一つを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記DNAウイルスのマイクロRNA分子が、表3に記載の配列のいずれか一つを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項75】
前記アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子が、表9に記載の配列のいずれか一つを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項76】
前記アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子が、表10に記載の配列のいずれか一つを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項77】
前記アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子が、表11に記載の配列のいずれか一つを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項78】
アンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子中の前記部分が、前記マイクロRNAの位置11に対応する位置において非相補的である、請求項71に記載の方法。
【請求項79】
前記DNAウイルスが哺乳動物のDNAウイルスである、請求項71に記載の方法。
【請求項80】
前記哺乳動物がヒトである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記ヒトDNAウイルスがエプスタイン・バーウイルスである、請求項71に記載の方法。
【請求項82】
前記ヒトDNAウイルスがカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(ヘルペスウイルス8)である、請求項71に記載の方法。
【請求項83】
前記ヒトDNAウイルスがサイトメガロウイルスである、請求項71に記載の方法。
【請求項84】
DNAウイルスに感染した哺乳動物の患者を治療する方法であり、前記方法が、前記哺乳動物に請求項29に記載のアンチ−DNAウイルスのマイクロRNA分子を導入する工程を含む、方法。
【請求項85】
請求項1に記載の単離された核酸分子を含む、単離されたマイクロRNP。
【請求項86】
請求項15に記載の単離された一本鎖のDNAウイルスのマイクロRNA分子を含む、単離されたマイクロRNP。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【公表番号】特表2008−500817(P2008−500817A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507392(P2007−507392)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/011232
【国際公開番号】WO2005/097205
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(591197334)ザ ロックフェラー ユニバーシティ (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/011232
【国際公開番号】WO2005/097205
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(591197334)ザ ロックフェラー ユニバーシティ (9)
【Fターム(参考)】
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