説明

DNAマイクロアレイの保存方法及びバイオアッセイ用キット

【課題】核酸プローブとして搭載するポリヌクレオチドが、温度や光等の影響により経時的に劣化せず、長期間保存可能なDNAマイクロアレイの保存方法を提供する。
【解決手段】 DNAマイクロアレイに配置されている核酸プローブを、電解質溶液に接触させ保存することにより、DNAマイクロアレイの品質を長期間、安定に保持することができる。このような保存方法は、特に、複数の貫通孔を有し、それらの貫通孔にゲルが保持されており、ゲルには核酸プローブが保持されているDNAマイクロアレイに好適に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリダイゼーションによる核酸の検出に使用するバイオアッセイ用基盤を含むキット及びバイオアッセイ用基盤の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子解析のツールとして、近年様々なデバイスが開発されている。その代表的なデバイスの一つに、DNAマイクロアレイがある。DNAマイクロアレイとは、遺伝子の塩基配列と相補の配列をもつDNA断片を基盤上に規則正しく配列固定化し、遺伝子由来の核酸塩基とハイブリダイゼーション反応を基盤上で行うことにより、遺伝子の発現解析や多型解析等を行う有用なデバイスである。それは、遺伝子研究用途等の学術研究を中心に既に実用化されている。DNAマイクロアレイとしては、フォトリソグラフィー技術を利用して直接DNAを基盤上に合成することにより得られるマイクロアレイ(特許文献1、特許文献2)、スライドグラス上にDNAをピン等でスポッティングすることにより得られるマイクロアレイ(非特許文献1)等が知られている。また、電気化学的にDNAを基盤に固定化することにより得られるマイクロアレイ(特許文献3、特許文献4)、中空繊維を3次元に配列固定して製造することにより得られる貫通孔型のDNAマイクロアレイ(特許文献5)等も知られている。
【0003】
これらのDNAマイクロアレイは、遺伝子に関連するDNA情報を微小な基盤上へ高集積化することが可能である。従来の解析方法であるノーザンブロッドあるいはドットブロッドハイブリダイゼーション等に比べ、遺伝子発現等の情報を1度の解析から大量に得ることが出来る。よって、医療、農業、水産、食品、環境等様々な分野で、核酸検出用ツールとして、応用が研究、検討されている。特に医療分野では、疾病に関する個人差、疾病の予兆を遺伝子レベルで迅速に見つける診断、疾病の進行具合、手術後予後の診断などの応用に期待が高まっている。
【0004】
診断、検査用途に用いられるデバイスは、結果が出るまでの時間(迅速性)や操作の簡便性、並びに品質保持が重要視される。特に診断・検査分野で使用する場合、定常的に大量の試料を処理する必要のあるため、常に一定量のデバイスを保管、確保されている必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現在のDNAマイクロアレイは、核酸プローブとして搭載するポリヌクレオチドが、温度や光等の影響により経時的に劣化する。またグラスアレイタイプのDNAマイクロアレイでは、ガラス基盤表面にプローブ固定化のためのコーティングがされているが、湿度等の影響から長期間保管しておくと、コーティング面に剥離が生じる。従って、長期間、保存する際は、温度、湿度、遮光が適切な保存環境を選ぶ必要がある。このようなことから、DNAマイクロアレイの品質を保存期間中維持させるために、保存温度を室温以下に保ち、遮光性のある包装材や保存ケースに保存し、更にはデシケーター内に保存して湿気を遮断する等の対処がなされているのが現状である。しかも、このような保存条件でも、DNAマイクロアレイの品質保持期間は1ヶ月〜2ヶ月程度である。
【0006】
現状での品質保持期間は、DNAマイクロアレイにより大量の試料を処理する診断や検査用デバイスとして実用化するためには、十分とはいい難く、核酸プローブが安定に維持出来るための保存方法の確立が実用上の重要な課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは、DNAマイクロアレイ(以下、マイクロアレイと称する場合もある)の品質を長期間保持できる方法を検討した結果、マイクロアレイに固定化されている核酸プローブに安定化因子を接触させることにより、核酸プローブの安定性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、DNAマイクロアレイに配置されている核酸プローブを、電解質溶液に接触させることを含むDNAマイクロアレイの保存方法、である。
【0009】
また、本発明は、DNAマイクロアレイを含むキットであって、DNAマイクロアレイと、電解質溶液と、それらを封入する容器を含み、容器内では、DNAマイクロアレイに配置されている核酸プローブが電解質溶液に接触するように、マイクロアレイが配置されているバイオアッセイ用キット、である。
【特許文献1】米国特許第5445934号明細書
【特許文献2】米国特許第5774305号明細書
【特許文献3】米国特許第5605662号明細書
【特許文献4】米国特許第6023302号明細書
【特許文献5】特許第3510882号公報
【非特許文献1】Science 270, 467-470(1995)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マイクロアレイを長期間、保存した場合でも、シグナル低下のない、安定したシグナル感度を保つプローブが配置されたマイクロアレイを提供することができる。また、本発明によりマイクロアレイの品質管理が容易となり、疾病の予知、診断の他菌の同定やSNPsなどの遺伝子解析用途に、一度に大量の利用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、実施形態の詳細について説明する。
【0012】
本発明は、DNAマイクロアレイに配置されている核酸プローブを、電解質溶液に接触させることを含むDNAマイクロアレイの保存方法、である。
【0013】
DNAマイクロアレイとは、遺伝子の塩基配列と相補の配列をもつDNA断片(核酸プローブ)を基盤上に規則正しく配列固定化し、遺伝子由来の核酸塩基とハイブリダイゼーション反応を基盤上で行うことにより、遺伝子解析又は診断等のアッセイに利用されるデバイスである。ここでDNAマイクロアレイとしては、複数の貫通孔を有し、それらの貫通孔にゲルが保持されており、ゲルには核酸プローブが保持されているDNAマイクロアレイが好ましい。このマイクロアレイの製造方法の一例としては、以下の1)〜4)の工程を含む製造方法が挙げられる。
【0014】
1)複数の管状体を、それらの管状体の長手方向が同一方向となるように3次元に配列し配列体を製造する工程。
【0015】
2)前記配列体を包埋し、ブロック体を製造する工程。
【0016】
3)核酸プローブを含むゲル前駆体重合性溶液を該ブロック体の各管状体に導入し、重合反応を行い、核酸プローブを含むゲル状物を管状体内に保持する工程。
【0017】
4)管状体の長手方向と交叉する方向で、切断してブロック体を薄片化する工程。
【0018】
核酸プローブとは、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)である。また、ペプチド核酸(PNA)等の核酸のアナログも含まれる。これらは合成されたものでも、生物体から調製されたものでも良い。
【0019】
電解質溶液とは、水中でイオン解離する電解質成分を含む溶液をいう。例えば、電気泳動用緩衝液として用いられるTBE緩衝液、種々化学分析用に用いられるpH緩衝液、バイオアッセイ実験等のハイブリダイゼーション用バッファー液などが挙げられる。好ましくは、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、NaH2PO4、HCl、NaOH、EDTAのうち、少なくも1種の成分を含む電解質溶液を使用する。より好ましくは、クエン酸ナトリウム塩及び塩化ナトリウムを含む電解質溶液を使用する。電解質溶液のpHは、中性領域(pH6〜8前後)が好ましく、pH7前後がより好ましい。また、保存期間中にpH変動が起こらないように、中性領域の緩衝液成分を使用するも可能である。
【0020】
以上の条件を満たす電解質溶液は、SSC溶液、SSPE溶液である。さらには、以下の組成を含む電解質溶液である。
【0021】
1)クエン酸三ナトリウム水和物 100mmol/L
2)塩化ナトリウム 100mmol/L
DNAマイクロアレイは、その核酸プローブが上述の電解質溶液に接触させた状態で保存される。上述の通り、核酸プローブは経時的に劣化が進行するため、接触させておく期間は、DNAマイクロアレイを製造してから、それをアッセイに供するまでが好ましい。また、接触は、DNAマイクロアレイに固定されている核酸プローブが電解質溶液と十分に接触していればよい。よって電解質溶液は、核酸プローブが固定された領域又はマイクロアレイ全体に満たされている状態が好ましい。
【0022】
電解質溶液と核酸プローブとの接触を確実に行うためには、容器内にそれらを封入し、接触状態を保つことが好ましい。即ち、本発明は、DNAマイクロアレイを含むキットであって、DNAマイクロアレイと、電解質溶液と、それらを封入する容器を含み、容器内では、DNAマイクロアレイに配置されている核酸プローブが電解質溶液に接触するように、マイクロアレイが配置されているバイオアッセイ用キット、である。
【0023】
ここで、容器の形態としては、核酸プローブと電解質溶液が接触するように、電解質溶液と核酸プローブが容器内に封入できるものであれば特に制限はない。例えば、図1に示す、密封できる袋状の容器である。袋状の容器は、ナイロン、ポリエチレンなどの熱融着樹脂製の袋が好ましい。水蒸気の蒸発等を防ぐ点で、水蒸気透過性の低い材料、すなわちナイロンがより好ましい。また、水蒸気透過性の高い材料であっても、例えばフッ化ビニリデン等の水蒸気透過を防ぐ皮膜で被覆することにより利用することができる。封入方法としては、熱融着により熱シールする方法が挙げられる。
【0024】
また容器の形態としては、石英、ガラス等の無機材料、プラスチック等の樹脂材料からなる箱状物が挙げられる。この場合、封入方法としては、蓋等による密封による方法が挙げられる。なお、箱状物は、上述の袋状容器と同様、その壁面等に水蒸気透過を防止する被覆等の処置を施してもよい。
【実施例】
【0025】
以下、実施例で実施形態の詳細について説明する。なお、DNAマイクロアレイの長期保存による品質安定性評価は、高温環境下に一定期間、その対象物を置き、その経時的機能低下を調べることにより実施した。
【0026】
<実施例1>
(1)DNAマイクロアレイの調製
<核酸プローブの調製>
核酸プローブとしては、以下に記載した配列情報(配列番号1〜29)をもつ5‘末端ビニル化核酸(65mer)を用いた。これら核酸は、以下の方法により合成した。
【0027】
まず、配列番号1〜29のオリゴヌクレオチドをDNA自動合成装置により合成した。合成の際、最終段階で、アミノリンクTM(PEバイオシステムズ社製)を該オリゴヌクレオチドに反応させ、次いで脱保護操作を行うことにより、各オリゴヌクレオチドの末端にアミノヘキシル基が導入された5’-O-アミノヘキシルオリゴヌクレオチドを調製した。
【0028】
次いで、それらオリゴヌクレオチドに、無水メタクリル酸を反応させ、5’末端ビニル化オリゴヌクレオチドを調製した。
【0029】
配列番号1(YAL005C)
gaaggagttgcaagacattgccaacccaatcatgtctaagttgtaccaagctggtggtgctccag
配列番号2(YDR012W)
tgctatcagaccagctggccaagctactcaaaagcgtactcacgttttgaagaagaacccattga
配列番号3(YDR418W)
ggtagaactttggcttccgttactaaggaaattttgggtactgctcaatctgtcggttgtcgtgt
配列番号4(YKL217W)
gcttccacgattgagacacagttagctgatagatacccattagaaagagatgcctctggtgctgt
配列番号5(YKR097W)
tggttcttcctacgtatctggtggtaaacgttgcccattgaagtacacaagggccattctggatt
配列番号6(YLR249W)
gtctacgtcgaacacgacattgatggtactcactctgacacttccgtcttggatttcgttttcga
配列番号7(YLR377C)
cggtcaacgatcgcggagagagaatcttggatttggtgccaagtcatatccatgacaaatcttct
配列番号8(YML028W)
ttgggcccaatcaacattccattgttggctgacaccaaccactctttgtccagagactatggtgt
配列番号9(YNL209W)
acttcaaggctgaattcaagaagaagactggtttggacatctccgacgatgccagagctttgaga
配列番号10(YOL039W)
gtcggtatcgaaatcgaagacgaaaaggtttcctccgttttgtccgctttggaaggtaagtctgt
配列番号11(M12481)
tccatgacaactttggtatcgtggaaggactcatgaccacagtccatgccatcactgccacccag
配列番号12(M29618)agcgtcctggctccagttggaacactttcctgagatgcacttacttctcagcttctgcgatcaga
配列番号13(NM008084) gacatttccctgcaggattacattgcagtgaaggagaagtatgccaagtacctccctcacagtgc
配列番号14(NM009093) gcttctaggcggactatgacttagttgcgttacaccctttcttgacaaaacctaacttgcgcaga
配列番号15(NM010863)
aagcccgcctccaccaactcagatgacgtccgtgatgagaaggtcaaggtgttgaaatgcatctc
配列番号16(NM011296) gctacacatatagcccgtaaagctgtggaattggacttggttcctgggaggagccccatctctgt
配列番号17(NM011341) gacctttcatacagggcagccacaccttgtccctgtaccacctcttcctgaatacggaggaaaag
配列番号18(NM013556)
tcgtgtgtccgtggaaccagtcctagccgcgtgtgacagtcttgcattctgtttgtctcgtgggg
配列番号19(NM013614)
tgtttgtggacctggagcccactgtggtcgatgaagtgcgcacaggaacctataggcagctcttc
配列番号20(NM015799)ctatgccaacacagtgttgtctggtggtaccaccatgtacccaggcattgctgacaggatgcaga
配列番号21(M33197) agtttgctgacaccatcaagcagctgcagcagaatacatacactcctcgtgaggctggatctcaa
配列番号22(U03090) cgtggatctgacgtgccgcctggagaaacctgccaagtatgatgacatcaagaaggtggtgaagc
配列番号23(U14970) gccagtgcttccggcagtacgcgaaggacataggcttcattaagttggactaagcgaccttgaat
配列番号24(X00351) ctcaaggagggttcagaagcggctagtaaaggggactttctcttcagcagtgaccacctgattga
配列番号25(X03674) aggatgtgaaggatgggaagtacagccaggttctggccaacggtctagacaacaagctgcgtgag
配列番号26(X59268) caagtacagtgagttcttcaccggcagcaagctcatggactatgcccgcaacgtgcatgaagagt
配列番号27(X60221) gacttgctcgagatgtcatgaaggagatgggaggccatcacattgtggccctctgtgtgctcaag
配列番号28(AF016365) tttgggatgtctttgtgagagtagggttggcaccaatgcagtatggaaggctaggagatgggggg
配列番号29(AF005392) tgcaatgctggtgcgccatattttctcagtgtggttgtcatgccgttgcttacccagaaagcggt
<中空繊維束薄片の製造>
図2に示す配列固定器具を利用して中空繊維束を製造した。なお、図中のx、y、zは直交の3次元軸であり、x軸は繊維の長手方向と一致する。
【0030】
まず、直径0.32mmの孔が、孔の中心間距離を0.42mmとして、縦横各12列で合計144個設けられた厚さ0.1mmの多孔板2枚を準備した。これらの多孔板を重ね合わせて、そのすべての孔に、ポリカーボネート中空繊維(三菱エンジニアリングプラスチック社製 カーボンブラック1質量%添加)を1本づつ、通過させた。
【0031】
X軸方向に各繊維に0.1Nの張力をかけた状態で2枚の多孔板の位置を移動させて、中空繊維の一方の端部から20mmの位置と100mmの位置の2ヶ所に固定した。即ち、2枚の多孔板の間隔を80mmとした。
【0032】
次いで、多孔板間の空間の周囲3面を板状物で囲った。このようにして上部のみが開口状態にある容器を得た。
【0033】
次に、この容器の上部から容器内に樹脂原料を流し込んだ。樹脂としては、ポリウレタン樹脂接着剤(日本ポリウレタン工業(株)ニッポラン4276、コロネート4403)の総重量に対し、2.5質量%のカーボンブラックを添加したものを使用した。25℃で1週間静置して樹脂を硬化させた。次いで多孔板と板状物を取り除き、中空繊維束を得た。
【0034】
ゲル充填中空繊維配列体の製造次に、表1に示す質量比で混合した単量体及び開始剤を含むゲル前駆体重合性溶液を調製した。
【表1】

【0035】
次に、プローブ核酸を含むゲル前駆体重合性溶液をデシケーター内に設置した。デシケーター内を減圧状態にしたのち、中空繊維束の繊維束が固定されていない一方の端部をこの溶液中に浸漬した。デシケーター内に窒素ガスを封入し、中空繊維の中空部にキャプチャープローブを含むゲル前駆体重合性溶液を導入した。次いで、容器内を70℃とし、3時間かけて重合反応を行った。
【0036】
このようにしてプローブ核酸がゲル状物を介して中空繊維の中空部に保持された中空繊維束を得た。
【0037】
次に得られた中空繊維束を、ミクロトームを用いて繊維の長手方向と直交する方向でスライスし、厚さ0.5mmの薄片シート(DNAマイクロアレイ)を50枚得た。
【0038】

(2)標識ラベル化cDNA溶液(検体液)の調製
次にハイブリダイゼーションに用いる標的核酸分子を含む、検体液の調製を以下の手順に従って行った。なお、本手順はマイクロアレイ1枚に対する調製量である。
【0039】
まず、200μlのマイクロチューブに表2に示す成分を加え、70℃で5分間静置した。
【表2】

【0040】
更に以下の表3に示す成分を順次加え、42℃で50分間、次いで70℃で更に5分間静置した。
【表3】

【0041】
上記の試薬は、Atlas TM Power Script TM Fluorescent Labelimg Kit (Clontech #K1860-1)[ベクトン・ディッキンソンアンドカンパニー社製]に包含されているものを使用した。
【0042】
次に0.5μlのRnaseHを更に加え37℃で15分間静置した。
【0043】
次に0.5μlの0.5M EDTA、2μlのQick Clean Resin を加え、Voltexで1分間処理した後、22um Spin-Filterに入れて、遠心分離機で処理した(14000RPM、1分間)。
【0044】
次に処理後の通過液分をエタノール沈殿処理して、沈殿物を2×Fluorecent labeling
Buffer 10μlに溶解した後、Cy3 Monofunctional reactive dye (アマシャムバイオサイエンス社製)10μlを加えて30分間静置した。
【0045】
次にQlAquick PCR purification Kit (QIAGEN #28104) [キアゲン社製]で精製し、エタノール沈殿濃縮した後、水で希釈して、20μlの蛍光標識ラベル化cDNA溶液(検体液)を得た。
【0046】
なお、Quick Clean Resin、Spin-Filter、2×Fluorescent labeling bufferは、Atlas TM Power Script TM Fluorescent Labelimg Kit (Clontech #K1860-1)[ベクトン、ディッキンソンアンドカンパニー社製]に包含されているものを使用した。
【0047】

(3)DNAマイクロアレイの保存試験1
SSC溶液で保存したマイクロアレイの熱安定性の評価を行った。
【0048】
まず、保存溶液として20×SSC溶液(Ambion社製)を希釈して、6×SSC溶液を250ml準備した。下記に6×SSCの組成を表4に示す。
【表4】

【0049】
次に6×SSC溶液をサンプル瓶に小分けし、(1)で製造したDNAマイクロアレイ3枚を、先に小分けしたビンに入れ、保存液に浸漬させた。サンプル瓶を密封し、表5に示した各温度条件(A〜C)で7日間、DNAマイクロアレイを保存した。
【表5】

【0050】
(4)DNAマイクロアレイのハイブリダイゼーション
次に(3)で保存したDNAマイクロアレイを、以下の手順でハイブリダイゼーション操作を行った。
【0051】
まず、表6に示す組成のハイブリ液を調製した。
【表6】

【0052】
次いで調製した溶液を94℃で2分間加熱した後、37℃まで冷却し、ハイブリ液とした。
【0053】
次に保存条件毎にDNAマイクロアレイを1枚につき、ハイブリパックを1枚用意し、上記で調製したハイブリ液(100μl)および各保存条件のDNAマイクロアレイ1枚をそれぞれパックに入れ、熱融着でシールし、密封した。
【0054】
次にこのハイブリパックをインキュベーター内に入れ、37℃で17時間ハイブリダイゼーション反応を行った。
【0055】
(5)ハイブリダイゼーション反応後の洗浄操作
まず、洗浄バッファー液として、2×SSC/0.2% SDS溶液20mlを2セットおよび2×SSC溶液20mlを1セット円筒ケースにそれぞれ入れ、45℃に設定した恒温槽に入れ、45℃に保温しておいた。次にインキュベーターからハイブリパックを取り出し、マイクロアレイを取り出し、先の操作であらかじめ45℃にしておいた2×SSC・0.2% SDS溶液20mlの入った円筒ケースに浸漬させ、45℃に保温して20分間静置した。
【0056】
次に、45℃にしておいた新たな2×SSC・0.2% SDS溶液20mlの入った円筒ケースに入れ替えて、さらに45℃で20分間静置した。
【0057】
最後に、45℃にしておいた2×SSC溶液20mlの入った円筒ケースに入れ替えて、45℃で10分間静置した。
【0058】
(6)DNAマイクロアレイのハイブリダイゼーションシグナルの検出
洗浄を施した各条件のマイクロアレイ3枚を、それぞれ水を入れたシャーレに完全に浸漬させて、固定し、冷却CCDカメラ蛍光顕微鏡でハイブリダイゼーションシグナルを検出した。結果を図3(a)(b)及び表5に示した。
【0059】
保存液として、6×SSC溶液を使用した保存条件では、65℃で7日間後でもシグナル強度に変化は特に認められなかった。また、シグナル強度の経時変化をシグナル強度低下率として、条件毎に集計した結果を表7に記載した。表5のシグナル強度低下率の値は、各スポットの蛍光シグナル強度を条件毎にシグナル強度低下率を算出し、そのスポット値の平均値にしたものである。保存液を6×SSCにした条件では、4℃、37℃、65℃の何れの条件においてもシグナル強度の低下は認めらなかった。
【表7】

【0060】
<比較例1>
SSC溶液で保存したマイクロアレイの熱安定性の評価を比較するために対象として、純水を滅菌処理した滅菌水を保存液として用いた以外は実施例1と同様の操作を行なった。結果を図4(a)(b)及び表6に示した。
【0061】
滅菌水を保存液とした場合は、65℃で7日間後のシグナルに顕著な低下が目視レベルで認められた(図4参照)。また、シグナル強度の経時変化をシグナル強度低下率として、各条件に集計した結果を表8に記載した。保持温度を高くするにつれ、シグナル強度の低下傾向が見られ、65℃では著しく低下していた。
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のバイオアッセイ用キットの形態例に関する図
【図2】繊維配列体を製造する配列固定治具の図
【図3−a】ハイブリダイゼーション検出画像(保存液;6×SSC)
【図3−b】Cy3シグナル強度比較(保存液;6×SSC)
【図4−a】ハイブリダイゼーション検出画像(保存液;滅菌水)
【図4−b】Cy3シグナル強度比較(保存液;滅菌水)
【符号の説明】
【0063】
11・・・・孔
21・・・・多孔板
31・・・・中空繊維
41・・・・板状物
【配列表フリーテキスト】
【0064】
配列番号1:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号2:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号3:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号4:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号5:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号6:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号7:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号8:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号9:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号10:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号11:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号12:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号13:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号14:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号15:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号16:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号17:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号18:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号19:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号20:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号21:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号22:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号23:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号24:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号25:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号26:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号27:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号28:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA
配列番号29:5’-O-アミノヘキシル化合成DNA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNAマイクロアレイに配置されている核酸プローブを、電解質溶液に接触させることを含むDNAマイクロアレイの保存方法。
【請求項2】
DNAマイクロアレイが、複数の貫通孔を有し、それらの貫通孔にゲルが保持されており、ゲルには核酸プローブが保持されているものである、請求項1記載の保存方法。
【請求項3】
DNAマイクロアレイを含むキットであって、DNAマイクロアレイと、電解質溶液と、それらを封入する容器を含み、容器内では、DNAマイクロアレイに配置されている核酸プローブが電解質溶液に接触するように、マイクロアレイが配置されているバイオアッセイ用キット。



【図1】
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【図2】
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【図3−a】
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【図3−b】
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【図4−a】
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【図4−b】
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【公開番号】特開2006−189307(P2006−189307A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−967(P2005−967)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】