説明

DNAマイクロアレイチップ

【課題】 反応空間内のDNA非結合対と反応させる溶液を効果的に流動させて、反応空間内の溶液の滞留を防止し、DNA非結合対と溶液との反応時間を大幅に短縮する。
【解決手段】 主面にDNA非結合対15を配置する平板状のスライドガラス11と、スライドガラス11と所定間隔だけ隔てて主面側に設けた平板状のカバーガラス13とを有する。DNA非結合対15の配置領域を囲繞するような開口を設け、所定間隔厚さの平板状部材からなるパッキン12を、スライドガラス11とカバーガラス13との間で挟持し、スライドガラス11とカバーガラス13とを、これらの相対的位置関係がずれないようにケース14により固定して、DNAマイクロアレイチップ10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、DNAマイクロアレイチップに関し、特に、ハイブリダイゼーション用の反応溶液(ハイブリ溶液)が供給されるDNAマイクロアレイチップに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来のDNAマイクロアレイチップを図6に示す。図6に示すように、従来のDNAマイクロアレイチップは、DNA非結合対102が配置されたスライドガラス101が、第1のカバー103および第2のカバー104に挟持されて構成される。また、第1のカバー103と第2のカバー104とは、Oリング105を介して閉成されている。なお、第1のカバー103と第2のカバー104とは、固定ねじ106により四隅が固定されている。また、第2のカバー104には、スライドガラス101におけるDNA非結合対102の配置領域の外側の部分に、開口部104a,104bが形成されている。
【0003】
このDNAマイクロアレイチップ100を用いたハイブリダイゼーション工程(以下、ハイブリ工程)は、スライドガラス101と第2のカバー104との間の空間に、ハイブリ溶液が供給されることにより実行される。
【0004】
具体的には、ハイブリ工程において、第2のカバーガラス104が上方に向けられ、2つの開口部104a,104bのうちの一方の開口部104aからハイブリ溶液が供給される。この際、他方の開口部104bから、余剰なハイブリ溶液がやや溢れるまで供給される。これにより、第2のカバー104とスライドガラス101との反応空間がハイブリ溶液によって満たされる。
【0005】
このように第1のカバー103とスライドガラス101との間にハイブリ溶液が満たされた状態になった後、このDNAマイクロアレイチップ100を振動させたり揺動させたりすることによって、ハイブリ溶液とDNA非結合対102との反応が促進される。
【特許文献1】特開2003−57236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のDNAマイクロアレイチップを用いてハイブリ工程を行う場合、DNA非結合対102とハイブリ溶液とを反応させるのに、約16〜24時間という非常に長い時間が必要であった。
【0007】
このような長時間を要するハイブリ工程に関して、本発明者が鋭意検討を行って得た知見によれば、DNAマイクロアレイチップ100を振動させたり揺動させたりしても、第1のカバー102とスライドガラス101との間の部分、すなわち反応空間内のハイブリ溶液は、現実的にあまり流動していない。そのため、反応空間内において、ハイブリ溶液が滞留してしまう部分が存在し、反応を促進させる効果が低いだけでなく、部分的に反応むらが生じてしまっていた。
【0008】
そこで、本発明者の鋭意検討により、反応空間内に溶液を強制的に流動させる方法が考えられた。ところが、本発明者がこの方法を上述した従来のDNAマイクロアレイチップに適用したところ、反応空間内において実際に溶液を流動させるのが困難であることがわかった。
【0009】
したがって、この発明の目的は、反応空間内におけるDNA非結合対と反応させる溶液を効果的に流動させてその滞留を防止することができ、これによって、DNA非結合対と溶液との反応時間を大幅に短縮できるとともに、DNA非結合対と溶液との部分的な反応むらが生じるのを防止して、これらの反応効率の向上を図ることが可能な、溶液供給に用いられるDNAマイクロアレイチップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、この発明は、
主面にDNA非結合対が配置される平板状の第1のガラスと、
第1のガラスに対して所定間隔を隔てて主面側に設けられる平板状の第2のガラスと、
第1のガラスと第2のガラスとの間に挟持され、第1のガラス上のDNA非結合対の配置される領域を囲繞可能な開口が形成されているとともに、所定間隔の厚さの平板状部材からなるパッキンとを有する
ことを特徴とするDNAマイクロアレイチップである。
【0011】
この発明において、典型的には、第2のガラスに複数の開口部が形成され、複数の開口部が、第1のガラス上のDNA非結合対が配置される領域の外側に対応する位置に設けられ、複数の開口部のうちの一部の開口部が、DNA非結合対の配置される領域の一方の側に形成されているとともに、一部の開口部と異なる他の開口部が、一方の側に対してDNA非結合対の配置領域を挟んだ反対側に形成されている。
【0012】
この発明において、好適には、第2のガラスに第1の開口部と第2の開口部とが形成され、第1の開口部および第2の開口部が、第1のガラス上のDNA非結合対が配置される領域の外側に対応する位置、かつ、DNA非結合対が配置される領域を挟んだ位置に形成されている。
【0013】
また、この発明において、典型的には、平板状の第1のガラスは、スライドガラスであり、平板状の第2のガラスは、カバーガラスである。そして、この発明において、好適には、第2のガラスであるカバーガラスとパッキンとは一体成形されている。
【0014】
この発明において、典型的には、第2のガラスに形成された開口部は、ハイブリ溶液供給装置において用いられるディスポーザルチップの先端を挿入可能に構成され、ディスポーザルチップを介して第2のガラスを押圧することにより、第2のガラスおよびディスポーザルチップによってDNA非結合対を反応空間内で密封する。
【0015】
このように構成することにより、ディスポーザルチップによって、反応空間を強固に密閉することができるので、反応空間内部にハイブリ溶液を急速に流動させることができる。そのため、未反応のハイブリ溶液と未反応のDNA非結合対との接触確率を大幅に増加させることができるようになるので、反応確率を増加させることができ、これに伴って、ハイブリ溶液とDNA非結合対との反応時間を短縮することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によるDNAマイクロアレイチップによれば、DNA非結合対と反応用溶液とを反応させるための反応空間を、パッキンの形状によって規定することができるので、従来に比して、反応空間の体積を減少させることができる。そのため、反応空間内におけるDNA非結合対と反応させる溶液を効果的に流動させることができ、その滞留を防止することができるので、DNA非結合対と反応用溶液との反応時間を大幅に短縮することが可能になるとともに、反応むらの発生を防止して、反応効率の向上をも図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、以上の発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の一実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
【0018】
図1に、この発明の一実施形態によるハイブリ溶液供給装置1の構成例を示す。図1に示すように、ハイブリ溶液供給装置1は、入力部2a,表示部2bおよび記憶部2cと接続された制御部2、第1のシリンジポンプ3、第2のシリンジポンプ4、ポンプ駆動モータ5,6および、駆動回路7,8を有して構成されている。
【0019】
制御部2は、ハイブリ溶液供給装置1のそれぞれの回路を制御するための情報処理部である。なお、記憶部2cに記憶されたプログラム(ソフトウェア)に基づいて、制御部2からそれぞれの回路に制御信号を供給することにより、種々の制御が実行される。なお、この一実施形態による制御方法、すなわち溶液供給方法については後述する。また、入力部2aは、外部から情報を入力可能なものである。表示部2bは、制御の状態を表示するためのものである。記憶部2cは、プログラムなどを格納したり、必要な情報データを記憶したりするためのものである。
【0020】
また、ポンプ駆動モータ5,6は、それぞれ第1のシリンジポンプ3および第2のシリンジポンプ4に接続されて、これらを駆動させるものである。また、駆動回路7,8は、記憶部2cに記憶され制御部2により実行されるプログラムに基づいて、ポンプ駆動モータ5,6の駆動を制御するためのものである。すなわち、ハイブリ溶液供給装置1において、第1のシリンジポンプ3と第2のシリンジポンプ4とは、制御部2によって独立して制御される。
【0021】
そして、第1のシリンジポンプ3および第2のシリンジポンプ4は、例えば空気などの気体を噴出可能に構成されているとともに、気体や液体などを吸引可能に構成されている。なお、以下の説明において、シリンジにより気体を噴出させるような圧力を加えることを「正圧を掛ける」といい、シリンジにより気体や液体を吸引するように減圧することを「負圧を掛ける」という。典型的には、「正圧を掛ける」場合、シリンジポンプ内の圧力は大気圧より大きい圧力となり、「負圧を掛ける」場合には、シリンジポンプ内の圧力は大気圧より小さい圧力となる。
【0022】
すなわち、第1のシリンジポンプ3および第2のシリンジポンプ4は、制御部2から供給される制御信号に応じて駆動回路7,8が制御され、ポンプ駆動モータ5,6が駆動されることにより、正圧を掛けたり負圧を掛けたりすることができるように構成されている。なお、正圧を掛けるとき(噴出状態)の圧力や、負圧を掛けるとき(吸引状態)の圧力は、それぞれハイブリ溶液の供給に応じて適宜調整可能であり、必要に応じて最適化される。
【0023】
次に、この発明の一実施形態によるハイブリダイゼーションが行われるDNA非結合対が配置されたDNAマイクロアレイチップについて説明する。図2に、このDNAマイクロアレイチップを示し、図3に、図2におけるIII−III線に沿った断面図を示す。
【0024】
図2および図3に示すように、この一実施形態によるDNAマイクロアレイチップ10は、スライドガラス11、パッキン12、開口部13a,13bが形成されたカバーガラス13およびケース14から構成されている。
【0025】
スライドガラス11は、その一面にDNA非結合対15を配置するための平板ガラスである。なお、図2においては、スライドガラス11の下面の4箇所にDNA非結合対が矩形状に配置されている例を示す。
【0026】
パッキン12は、平板状の部材から構成され、具体的には、平板状のラテックスから構成される。なお、材料としては種々の材料を利用可能であり、ラテックスに限定されるものではない。
【0027】
また、パッキン12は、スライドガラス11上のDNA非結合対15の配置領域を囲繞可能な形状を有するとともに、重ね合わせたときに、カバーガラス13の開口部13a,13bに重ならない形状に形成される。このように形成することにより、DNA非結合対15の配置領域を、パッキン12によって効果的に閉成することが可能となる。
【0028】
また、図3に示すように、パッキン12は、反応に用いられるハイブリ溶液を、スライドガラス11におけるDNA非結合対15の配置側に供給するための所定のクリアランスを維持するためのスペーサである。すなわち、パッキン12の厚さaは、カバーガラス13の内側の面とスライドガラス11のDNA非結合対15の配置面とのクリアランス(間隙a)に等しくなる。
【0029】
また、カバーガラス13とスライドガラス11との間におけるパッキン12により規定された空間は、後述するハイブリ溶液が供給されてDNA非結合対15と反応する反応空間となる。すなわち、パッキン12によって、カバーガラス13とスライドガラス11との間のクリアランスが規定されるとともに、DNA非結合対15との反応に供されるハイブリ溶液が供給される反応空間が規定される。
【0030】
カバーガラス13は、スライドガラス11の主面に配置されたDNA非結合対15を閉成するためのものである。なお、このカバーガラス13と上述のパッキン12とを一体に形成することも可能である。この場合、パッキン12とカバーガラス13とは、成形によりあらかじめ一体に形成される。
【0031】
また、図3に示すように、カバーガラス13に形成された2つの開口部13a,13bは、ハイブリ溶液を注入したり排出したりするための開口である。また、それぞれの開口部13a,13bには、それぞれ上述の第1のシリンジポンプ3および第2のシリンジポンプ4にチューブ等を介して先端に取り付けられるディスポーザブルチップ(以下、ディスポチップ(図2,3中図示せず))における吐出吸引側の先端を挿入可能に形成されている。
【0032】
ケース14は、カバーガラス13を固定しつつ位置決めをするための凹部が設けられ、この凹部の内側に開口が形成されている。この開口により、カバーガラス13の一面、すなわちハイブリ溶液が供給される側を、外部に露出させることができる。さらに、ケース14は、この一実施形態によるスライドガラス11とカバーガラス13とを固定するとともに、このDNAマイクロアレイチップ10を搬送したり移動したりする際に、これらのスライドガラス11とカバーガラス13との相対的位置関係がずれないようにするためのものである。
【0033】
次に、以上のように構成されたこの一実施形態によるハイブリ溶液供給装置1およびウェットセル型のDNAマイクロアレイチップ10を用いたハイブリ溶液の供給工程(ハイブリ工程)について説明する。図4に、ハイブリ工程においてDNAマイクロアレイチップ10にハイブリ溶液を供給するときの状態を示す。
【0034】
図4に示すように、この一実施形態においては、第1のシリンジポンプ3に、配管チューブ3bの一端が取り付けられ、他端に着脱可能な第1のディスポチップ3aが取り付けられている。同様に、第1のシリンジポンプ3と独立して制御される第2のシリンジポンプ4に、配管チューブ4bの一端が取り付けられ、他端に着脱可能な第2のディスポチップ4aが取り付けられている。
【0035】
また、上述したように第1のディスポチップ3aおよび第2のディスポチップ4aは、それらの吐出吸引側先端が、DNAマイクロアレイチップ10におけるカバーガラス13の開口部13a,13bにそれぞれ挿入可能に構成されているとともに、その内部に少量の液体を貯溜可能に構成されている。
【0036】
そして、ハイブリ工程においては、第1のディスポチップ3aおよび第2のディスポチップ4aの吐出吸引側先端を開口部13a,13bに挿入しつつ、カバーガラス13を押圧する。これにより、第1のディスポチップ3aおよび第2のディスポチップ4a自体による重量も加重されてカバーガラス13が押圧され、DNAマイクロアレイチップ10内の反応空間が、より一層強固に密閉される。
【0037】
また、第1のシリンジポンプ3の駆動に応じ、第1のディスポチップ3aの吐出側先端を通じて、スライドガラス11のDNA非結合対15の配置側の面とカバーガラス13との間のパッキン12により規定された空間内、すなわちDNAマイクロアレイチップ10内の反応空間に、ハイブリ溶液を注入したり、この反応空間内のハイブリ溶液や空気を吸引したりすることができるようになっている。同様に、第2のシリンジポンプ4の駆動に応じ、第2のディスポチップ4aの吐出側先端を通じて、反応空間内にハイブリ溶液を注入したり、この反応空間内のハイブリ溶液や空気を吸引したりすることができるようになっている。
【0038】
次に、以上のような状態で実行されるハイブリ溶液の供給方法について説明する。図5に、この一実施形態によるハイブリ工程のフローチャートを示す。
【0039】
図5に示すように、この一実施形態によるハイブリ工程においては、まず、ステップST1において、第1のディスポチップ3aが外された状態で、ディスポチップ内部にハイブリ溶液が供給され貯溜される。なお、供給されるハイブリ溶液の量、すなわちハイブリ溶液の使用量は、DNAマイクロアレイチップ10内の反応空間の体積(容量)に応じて決定される。
【0040】
そして、第1のディスポチップ3aは、内部に所定量のハイブリ溶液が溜められると、第1のシリンジポンプ3の配管チューブ3bの先端に取り付けられ、図4に示すように、開口部13aに挿入される。その後、ステップST2に移行する。
【0041】
ステップST2においては、まず、第1の供給プロセスとして、制御部2からの指示信号に基づいて駆動回路7が制御され、ポンプ駆動モータ5および第1のシリンジポンプ3が駆動されて正圧が掛けられると同時に、駆動回路8およびポンプ駆動モータ6が駆動され、第2のシリンジポンプ4が駆動されて負圧が掛けられる。
【0042】
これにより、開口部13aに挿入された第1のディスポチップ3aの先端を通じて、DNAマイクロアレイチップ10内の反応空間にハイブリ溶液が供給されるとともに、開口部13bに挿入された第2のディスポチップ4aを通じて、反応空間内の空気と供給されたハイブリ溶液の一部とが吸引される。
【0043】
そして、DNAマイクロアレイチップ10の反応空間内において、ハイブリ溶液は、カバーガラス13の開口部13aから開口部13bに向かって強制的に流動される。強制流動されたハイブリ溶液は、第2のディスポチップ4a内に貯溜される。その後、ステップST3に移行する。
【0044】
ステップST3においては、第2の供給プロセスとして、ステップST2とは反対に、制御部2からの指示信号に基づいて、第2のシリンジポンプ4により正圧が掛けられると同時に、第1のシリンジポンプ3により負圧が掛けられる。これにより、開口部13bに挿入された第2のディスポチップ4aを通じて、DNAマイクロアレイチップ10の反応空間にハイブリ溶液が供給されるとともに、開口部13aに挿入された第1のディスポチップ3aを通じて、反応空間内のハイブリ溶液が吸引される。そして、ハイブリ溶液は、DNAマイクロアレイチップ10の反応空間内を、開口部13bから開口部13aに向かって強制的に流動され、第1のディスポチップ3a内に貯溜される。
【0045】
その後、ステップST4に移行して、DNAマイクロアレイチップ10内のDNA非結合対15のハイブリ溶液との反応が終了した否かが判断される。
【0046】
その結果、反応が終了していない場合には、ステップST2における第1の供給プロセスおよびステップST3における第2の供給プロセスが順次実行される。これらの第1の供給プロセスおよび第2の供給プロセスは、DNA非結合対15とハイブリ溶液との反応が終了するまで、繰り返し実行される。
【0047】
そして、この反応が終了した段階で、ステップST5に移行する。この段階において、DNA非結合対15との反応に供しなかったハイブリ溶液は、第1のディスポチップ3a内に貯溜されている。そのため、第1のディスポチップ3aを配管チューブ3bから取り外すことにより、反応に供しなかったハイブリ溶液を回収することが可能となる。なお、必要に応じて、第2のディスポチップ4a内に溶液を貯溜させた状態で取り外すことによって、溶液を回収するようにしてもよい。
【0048】
以上説明したように、この一実施形態によるハイブリ溶液供給装置および溶液供給方法によれば、一方のシリンジポンプ3,4によって正圧を掛けてDNAマイクロアレイチップ10の反応空間内にハイブリ溶液を供給すると同時に、他方のシリンジポンプ4,3によって負圧を掛けて反応空間内の気体や液体を吸引し、反応空間内でハイブリ溶液を強制的に流動させていることにより、反応空間内におけるDNA非結合対15とハイブリ溶液とを接触させて、反応確率を増加させることができるので、反応時間を短縮することができ、これによってハイブリ工程に要する時間の短縮を図ることができる。
【0049】
また、シリンジポンプ3,4の配管チューブ3b,4bの先端に、それぞれ着脱可能なディスポチップ3a,4aを取り付け、2つの供給プロセスを交互に繰り返すことによって、ハイブリ溶液を交互に貯溜させるようにしていることにより、最終的にDNA非結合対15との反応に供しなかったハイブリ溶液が貯溜されているディスポチップを取り外すことによって、このハイブリ溶液を回収することができるので、高価なハイブリ溶液も無駄なく回収することが可能となる。
【0050】
また、図7に示す従来のDNAマイクロアレイチップにおける反応空間は、第2のカバー104とスライドガラス101との間で、かつスライドガラス101が収納される凹部が形成された第1のカバー103により規定された空間である。反応空間を規定するための重要な数値は、図7中、第2のカバー104とスライドガラス101のDNA非結合対102側の主面との間隙aである。
【0051】
ところが、従来のDNAマイクロアレイチップ100における反応空間の間隙aは、第1のカバー103における凹部の深さcとスライドガラス101の厚さbとの差、すなわち、a=c−bとして得られる大きさである。これらのスライドガラス101の厚さbや第1のカバー103の凹部の深さcは、間隙aに比して寸法が大きく、さらに製造時における寸法誤差も大きい。そして、従来のDNAマイクロアレイチップ100においては、大きな寸法誤差が間隙aの大きさに2重に影響を及ぼすため、反応空間の体積を精度良く規定することが困難である。
【0052】
また、DNA非結合対102と反応させるためにハイブリ溶液を供給する場合においても、第1のカバー103の凹部にスライドガラス101を収め、このスライドガラス101と第2のカバー104との間の空間にハイブリ溶液を供給する必要がある。この場合、ハイブリ溶液は、少なくとも、スライドガラス101の主面の面積と間隙aとの積に相当する量が必要である。
【0053】
この場合、スライドガラス101の主面の面積が比較的大きいため、必要となるハイブリ溶液の量も多くなる。そのため、反応空間内においてハイブリ溶液を流動させるためには、大きなエネルギーが必要となるので、反応空間内においてハイブリ溶液が流動しにくくなる。ハイブリ溶液が流動しにくくなると、結果的に反応空間内においてハイブリ溶液が滞留してしまう部分が生じることになる。
【0054】
これに対し、この一実施形態によるDNAマイクロアレイチップ10によれば、DNA非結合対15が配置されたスライドガラス11とカバーガラス13とが、平板状でDNA非結合対15の配置領域を囲繞するようにリング状に形成された厚さaのパッキン12を介して閉成される構成である。そのため、パッキン12の厚さaによってスライドガラス11とカバーガラス13との間の間隔を規定することができ、囲繞している部分、すなわちDNA非結合対の配置領域を包含する大きさの開口の部分によって、反応空間の広さ(面積)を規定することができる。これにより、DNAマイクロアレイチップ10内の反応空間の体積を容易に規定することができ、スライドガラスの主面の面積より小さい面積を規定することで足りる。
【0055】
したがって、パッキン12の形状を調整することによって、反応空間の体積(容量)を容易に調整可能になるとともに、反応空間を必要最小限にすることが可能となり、従来に比して反応空間を大幅に縮小することができるので、供給させて流動させるハイブリ溶液の量を従来に比して大幅に減少させることが可能となる。そのため、反応空間内においてハイブリ溶液を流動させやすくなることにより、反応空間内におけるハイブリ溶液の滞留を抑制することができるので、反応確率を増加させて反応時間の短縮を図ることができるとともに、部分的に反応むらが生じることを防止することができ、全体的な反応効率の向上を図ることができる。
【0056】
以上、この発明の一実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明の一実施形態によるハイブリ溶液供給装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の一実施形態によるDNAマイクロアレイチップを示す分解斜視図および斜視図である。
【図3】図2に示すDNAマイクロアレイチップのIII−III線に沿った断面図である。
【図4】この発明の一実施形態によるハイブリ工程におけるディスポチップとDNAマイクロアレイチップとの使用状態を示す図である。
【図5】この発明の一実施形態によるハイブリ溶液供給方法を説明するためのフローチャートである。
【図6】従来技術によるDNAマイクロアレイチップを説明するための分解斜視図である。
【図7】従来技術によるDNAマイクロアレイチップを説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ハイブリ溶液供給装置
2 制御部
2a 入力部
2b 表示部
2c 記憶部
3 第1のシリンジポンプ
3a 第1のディスポチップ
3b,4b 配管チューブ
4 第2のシリンジポンプ
4a 第2のディスポチップ
5,6 ポンプ駆動モータ
7,8 駆動回路
10 チップ
11,101 スライドガラス
12 パッキン
13 カバーガラス
13a,13b,104a,104b 開口部
14 ケース
15 DNA非結合対
100 DNAマイクロアレイチップ
102 DNA非結合対
103 第1のカバー
104 第2のカバー
105 Oリング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面にDNA非結合対が配置される平板状の第1のガラスと、
上記第1のガラスに対して所定間隔を隔てて上記主面側に設けられる平板状の第2のガラスと、
上記第1のガラスと上記第2のガラスとの間に挟持され、上記第1のガラス上の上記DNA非結合対の配置される領域を囲繞可能な開口が形成されているとともに、上記所定間隔の厚さの平板状部材からなるパッキンとを有する
ことを特徴とするDNAマイクロアレイチップ。
【請求項2】
上記第2のガラスに複数の開口部が形成され、
上記複数の開口部が、上記第1のガラス上の上記DNA非結合対が配置される領域の外側に対応する位置に設けられ、
上記複数の開口部のうちの一部の開口部が、上記DNA非結合対の配置される領域の一方の側に形成されているとともに、上記一部の開口部と異なる他の開口部が、上記一方の側に対して上記DNA非結合対の配置領域を挟んだ反対側に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のDNAマイクロアレイチップ。
【請求項3】
上記第2のガラスに第1の開口部と第2の開口部とが形成され、
上記第1の開口部および上記第2の開口部が、上記第1のガラス上のDNA非結合対が配置される領域の外側に対応する位置、かつ上記DNA非結合対が配置される領域を挟むような位置に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のDNAマイクロアレイチップ。
【請求項4】
上記カバーガラスと上記パッキンとが一体成形されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のDNAマイクロアレイチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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