説明

DNA写真撮影のための分子ビーコン

本発明は、白黒写真撮影技術の原理を用いる被分析物の検出方法および該方法を実施するための試薬キット、さらに、PCRの必要性を回避する用途において、ナノモル濃度範囲(フェムトモル)で生物学的に関連する配列を検出するためのこの新しい技術の適用に関する。遺伝子診断およびプロテオミクス領域における多様な用途にとって好適であるこの方法を最適化するためのさらに多くの方法が存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白黒写真撮影の原理を用いる被分析物のための検出方法および該方法を実施するための試薬キットに関する。この新しい技術を適用して、PCRの必要性を回避する用途において、ナノモル濃度範囲で生物学的に関係する核酸配列を検出することができる。この方法は、遺伝子診断およびプロテオミクス領域における多様な用途にとって好適である。
【背景技術】
【0002】
序論
オリゴヌクレオチド、DNA、RNAおよびタンパク質などの生体材料を検出することができる迅速で単純な診断アッセイのための、医学的、科学的および非科学的社会における大きな必要性が存在する。今日利用可能な方法は、高価な装置および技術を必要とし、それらは専ら専門分野の使用者に適している。DNA検出の場合、ポリメラーゼ連鎖反応[1](PCR)または同等の標的増幅方法が、その信頼性および感度(5〜10個のDNA分子)のために依然として最も広く用いられている。いくつかの場合、これらの方法は、特異性の点で欠点を示し、また高価な多成分アッセイを必要とする。蛍光法、化学発光法、電気化学法、放射活性法などの複雑な技術、またはナノ粒子などの精巧材料を用いる直接的検出方法が最近開発された[2-8]。これらの新しいアッセイは、ピコ、フェムトおよびアトモル濃度範囲でも、選択されたオリゴヌクレオチドを検出することができるが、それらの適用には、特定の科学的背景が必要であり、従って、この方法を高度に専門化された研究室に限定している。
【0003】
いかなる特定の科学的背景もなしにDNAおよびRNAを検出するための新規手法は、これらの種類の診断を多様な用途に拡張するための画期的結果である。この提唱された方法は、感染性物質およびバイオテロリズム物質に対する試験または遺伝子検査、腫瘍学、研究などのヒトでのin vitro診断の分野をカバーするはずである。本発明の目的は、精巧で高価な器具を用いることなくこれらの分野の全てのための使いやすい方法を開発することである。
【0004】
写真用紙の照射またはハロゲン化銀結晶を含む乳濁液への照射は、潜像としてAg4核を生成する[9]。これらのクラスターは、その後の還元的現像プロセスにより選択的に拡大される。この現像工程を、元のシグナル(潜像)の1011倍の増幅として認めることができる。そのような乳濁液または紙の感度は、「固有の感度(intrinsic sensitivity)」と呼ばれ、ハロゲン化銀により吸収される波長に限定される。分光増感と呼ばれるプロセスは、乳剤粒子に吸着された分光増感剤と呼ばれる色素を用いて、より長い波長の可視スペクトルに対する感度を誘導する[10]。シアニン、メロシアニンおよびピナシアノール色素は、これまで用いられている分光増感剤の大部分を構成するが、シアニンがこの用途のための最良のクラスの色素として認識される以前には、多くの他の分子が写真撮影において用いられていた[11]。
【0005】
PCT/EP2006/004017は、専門的な研究室の必要性なしに、かつ非常に単純な方法で、専門家でない使用者にとっても多くの分野で利用しやすい、感度の高いDNA検出方法を開示している。この方法に従って、オリゴヌクレオチドまたはDNA二本鎖を、写真撮影技術において用いられる光増感剤を用いて標識する。この標識されたオリゴヌクレオチド(ODN)を含む溶液を、写真用紙上にスポットする。分光増感を用いなくても、この方法により、写真用紙の照射および現像後に、ピコモル濃度の感度(300アトモル)での標識DNAの検出が可能になる。
【発明の開示】
【0006】
本発明者らは、例えば、写真用紙または任意の他の光感受性媒体などの感光性媒体への、光増感基およびクエンチャー基を担持するリポーター分子、例えば、リポーター核酸分子の適用を伴う実験を行った。被分析物の非存在下では、光増感基はクエンチングされる。例えば、前記リポーター分子は、近い空間的関係において分子の末端上またはその近くに光増感基およびクエンチャー基を有するヘアピン構造を有してもよい。リポーター分子がヘアピン構造として存在するとき、光増感基はクエンチングされる(公知の分子ビーコン技術に従う)。かくして、無傷のヘアピン構造を有するリポーター分子は、光増感媒体に光を照射する場合、感作を行うことができない。被分析物の存在下で、ヘアピン構造は破壊される。被分析物は、相補的核酸鎖、またはヘアピン構造を切断する酵素、またはヘアピンに結合し、かくして該構造を破壊するタンパク質であってよい。光増感基は、クエンチャー基から分離されており、かくして、光感作することができる。この場合、光の照射は、写真撮影媒体の感作を誘導し、かくして、被分析物の検出をもたらす。
【0007】
本発明は、サンプル中の被分析物を検出するための方法であって、以下の工程:
(i)サンプルを提供する工程、
(ii)光増感基または光増感基およびクエンチャー基を導入するためのハンドル基を含むリポーター分子であって、検出しようとする被分析物の非存在下で該光増感基がクエンチングされる前記分子を、提供する工程、
(iii)光増感基のクエンチングが被分析物の存在下で少なくとも部分的に減少するか、または終結する条件下で、前記サンプルと前記リポーター分子とを接触させる工程、
(iv)必要に応じて、前記ハンドル基と、光増感基を含む反応パートナーとを反応させる工程、
(v)前記リポーター分子中のクエンチングされていない光増感基の存在下、マーカー基が感光性媒体中で形成される条件下で、該感光性媒体と接触させた前記リポーター分子を照射する工程、ならびに
(vi)前記マーカー基を検出する工程、
を含む、前記方法に関する。
【0008】
さらに、本発明は、サンプル中の被分析物を検出するための試薬キットであって、
a)光増感基または光増感基およびクエンチャー基を導入するためのハンドル基を含むリポーター分子であって、検出しようとする被分析物の非存在下で該光増感基がクエンチングされる、前記分子、
b)必要に応じて、光増感基を含むハンドル基のための反応パートナー、ならびに
c)クエンチングされていない光増感基の照射に際してマーカー基を形成する、感光性媒体、
を含む、前記キットに関する。
【0009】
本発明は、生物学的サンプル、例えば、臨床サンプル、環境サンプルまたは農業サンプル中での、被分析物、例えば、核酸または核酸結合タンパク質の高感度の検出を可能にする。好ましい用途としては、限定されるものではないが、遺伝的多様性、例えば、一塩基変異多型(SNP)の検出、殺虫剤もしくは薬剤への耐性、寛容性もしくは不容性、遺伝子型決定、例えば、生物の種もしくは株の検出、遺伝的に改変された生物もしくは株の検出、または病原体もしくは病害虫の検出、および疾患、例えば、遺伝子疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患もしくは感染症の診断が挙げられる。さらに好ましい用途は、ブランド保護のためのサンプル中の核酸の検出であって、農産物、食品、または高額品などの製品および/またはこれらの製品の包装が、例えば、限定されるものではないが、製造地、製造日、販売業者などの製品固有情報と共に符号化され、かつこの情報が上記の方法を用いて検出される、前記検出である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、被分析物の検出を含む。この検出は、定性的検出、例えば、分析しようとするサンプル中の被分析物、例えば、特定の核酸配列の存在または非存在の決定であってよい。しかしながら、本発明はまた、分析しようとするサンプル中の、被分析物、例えば、核酸配列の定量的検出も可能にする。定性的および/または定量的検出は、当業界で公知の方法に従う標識基の測定を含んでもよい。
【0011】
好ましくは、検出しようとする被分析物は、核酸、およびヌクレオシド結合分子、ヌクレオチド結合分子もしくは核酸結合分子、例えば、ヌクレオシド結合タンパク質、ヌクレオチド結合タンパク質もしくは核酸結合タンパク質から選択する。より好ましくは、該被分析物は、核酸、例えば、公知の技術、特に、ハイブリダイゼーション技術に従って検出することができる任意のタイプの核酸である。例えば、核酸被分析物を、DNA、例えば、二本鎖もしくは一本鎖DNA、RNA、またはDNA-RNAハイブリッドから選択することができる。核酸被分析物の特定例は、ゲノムDNA、mRNAまたはそれから誘導された生成物、例えば、cDNAである。
【0012】
好ましい実施形態においては、検出は、被分析物と、マーカー基がその中で形成され得る感光性媒体へのエネルギー転移を起こすことができるクエンチャー基および光増感基を含むリポーター分子とを含むことが疑われるサンプルの存在下で、感光性媒体を照射することを含む。被分析物の非存在下では、光増感基はクエンチングされる。被分析物の存在下では、光増感基のクエンチングは減少するか、または終結する。この場合、光増感基は、照射の際に感光性媒体中で、マーカー基、例えば、金属原子または金属原子クラスターの形成を誘導し得る。
【0013】
本発明の好ましい実施形態においては、リポーター分子は、分子ビーコン(MB)である[12]。分子ビーコンは、一本鎖ハイブリダイゼーションプローブ、例えば、ステムループ構造を形成する核酸または核酸類似体プローブである。このループは、標的配列に対して相補的であるプローブ配列を含んでもよく、そのステムは、プローブ配列のいずれかの側に位置する相補的アーム配列のアニーリングにより形成される。光増感剤、例えば、フルオロフォアを一方のアームの末端に共有結合させ、クエンチャーを他方のアームの末端に共有結合させる。分子ビーコンは、それらが溶液中で遊離している場合、蛍光を発しない。しかしながら、それらが標的配列を含む核酸鎖にハイブリダイズする場合、それらは明るい蛍光を発することができるコンフォメーションの変化を起こす。
【0014】
これらのプローブに用いられる多くの「フルオロフォア」およびクエンチャーは、白黒写真撮影において用いられる、分光増感剤[13]と同じ色素、例えば、シアニン、メロシアニンまたはピナシアノール色素である。MBの作用原理を以下のようにまとめることができる:標的の非存在下では、プローブは暗いが、これはそのステムが、電子を一時的に共有するほど非蛍光クエンチャーに非常に近い場所にフルオロフォアを配置し、フルオロフォアが蛍光を発する能力を消失させるからである。プローブが標的分子と遭遇するとき、それは、ステムハイブリッドよりも長く、より安定であるプローブ-標的ハイブリッドを形成する。プローブ-標的ハイブリッドの剛性および長さは、ステムハイブリッドの同時存在を妨げる。結果として、分子ビーコンは、ステムハイブリッドを分離させ、フルオロフォアおよびクエンチャーを互いに離れて移動させ、蛍光を回復させるという自然発生的コンフォメーション再構成を経験する。
【0015】
本発明は、その閉じた形態および開いた形態でのMBの蛍光測定値と、写真用紙上で検出される相対シグナルとの相関を検証する。この技術は、分子ビーコンに基づくDNA写真撮影技術(MBDP)と呼ばれる。
【0016】
分子ビーコンリポーター分子の長さは、好ましくは15〜100ヌクレオチドであり、より好ましくは、20〜60ヌクレオチドである。分子ビーコン分子は、DNAもしくはRNAなどの核酸、または核酸類似体から選択することができる。リポーター分子、例えば、分子ビーコン分子を、標準的な手順に従って製造することができる。
【0017】
前記サンプルは、検出しようとする被分析物を含みうる任意のサンプルであってよい。例えば、該サンプルは、農業サンプル、例えば、保存されているか、または加工された、植物材料および/もしくは植物が生長する場所に関連する材料を含むサンプルなどの生物学的サンプルであってよい。一方、前記サンプルは、臨床サンプル、例えば、特にヒト起源の、組織サンプルまたは血液、血清、血漿などの体液サンプルであってもよい。さらなるタイプのサンプルとしては、限定されるものではないが、環境サンプル、土壌サンプル、食品サンプル、法医学的サンプル、またはブランド保護のために試験される高額品に由来するサンプルが挙げられる。
【0018】
その高い感度のため、本発明の方法は、増幅することなく直接的に被分析物を検出するのに好適である。本発明に従って、微量の被分析物でさえ、例えば、0.1 ng以下、好ましくは、0.01 ng以下、より好ましくは1 pg以下、さらにより好ましくは0.1 pg以下、さらにより好ましくは、0.01 pg以下および最も好ましくは、0.001 pg以下の、例えば核酸も、増幅することなく測定することができる。
【0019】
本発明の方法の高い感度は、ピコモル濃度範囲の被分析物の検出を可能にし、ゼプトモル濃度範囲の被分析物を検出することさえ可能である。ゼプトモル濃度範囲のでの分析は、1個のDNA分子の検出を可能にする。
【0020】
本発明の好ましい実施形態においては、例えば、特定の配列を有する核酸を、サンプル中の他の核酸配列から識別するか、または特定の核酸配列に結合することができるポリペプチドを、サンプル中の他のポリペプチドから識別することを特徴とする、被分析物の配列特異的検出を行う。そのような配列特異的検出は、好ましくは検出しようとする核酸配列をリポーター分子と結合させるための配列特異的ハイブリダイゼーション反応を含む。
【0021】
この検出は、例えば、結合生成物が感光性媒体上に存在してもよいサンプルまたはサンプルアリコートを、例えば、スポッティング、ピペッティングなどにより移動させることによって、被分析物と光増感基を含むリポーター分子とを、感光性媒体に接触させることを含む。照射の際に、金属(例えば、銀)核などのマーカー基が、光増感基の非存在下ではなくその存在下で、感光性媒体中にて形成されるように、光増感基から感光性媒体へのエネルギー移動が起こる。必要に応じて、マーカー基を、写真撮影技術に従って、現像手順、例えば、化学的または光化学的現像手順に供することができる。感光性媒体は、マーカー基、例えば、金属核を形成することができる任意の固相支持体または任意の支持された材料であってよい。好ましくは、感光性媒体は、支持材料上の光感受性用紙または光感受性乳濁液もしくはゲルなどの光感受性媒体である。より好ましくは、感光性媒体は、写真用紙などの写真媒体である。選択マーカー基形成が光増感基の存在下で起こる条件(例えば照射光の波長および/または強度などの条件)下で、照射を行う。好ましくは、媒体の感度に応じて、赤外線および/または長波長可視光線を用いて照射を行う。照射波長は、可視光線については、例えば、500 nm以上、520 nm以上、540 nm以上、560 nm以上、580 nm以上、または赤外線については、700 nm〜10μmであってよい。
【0022】
光増感基は、エネルギー転移、例えば、感光性媒体、すなわち、写真用紙などの写真媒体への、光エネルギーの転移を起こすことができる。光増感基を、公知の蛍光および/または色素標識基、例えば、シアニンに基づくインドリン基、キノリン基、例えば、Cy5もしくはCy5.5などの市販の蛍光基から選択することができる。
【0023】
クエンチャー基は、光増感基から感光性媒体へのエネルギー転移をクエンチすることができる基である。好ましくは、クエンチャー基は、光エネルギーの転移をクエンチすることができる。クエンチャー基を、公知のクエンチャー基、例えば、参照により本明細書に組み入れられるものとする参考文献[12-16]に記載のような、分子ビーコンリポーター分子において知られたクエンチャー基から選択することができる。
【0024】
特定の実施形態においては、リポーター分子は、ハンドル基、すなわち、好適な反応パートナー、すなわち、上記基の1つを含む化合物との反応により、光増感基を導入するための基を、含んでもよい。好ましい実施形態においては、ハンドル基は、クリック官能性基、すなわち、クリック官能基と反応パートナー(この反応パートナーは光増感基を含む)の間の環式結合、例えば、ヘテロ環式結合が形成される付加環化反応において好適な反応パートナーと反応し得る基から、選択する。そのようなクリック反応の特に好ましい例は、1,2,3-トリアゾール環の形成をもたらすアジド基とアルキン基の間の(3+2)付加環化である。かくして、光増感基を、アジドもしくはアルキンハンドル基と、対応する反応パートナー、すなわち、相補的アルキンもしくはアジド基およびさらに光増感基を含む反応パートナーとの、クリック反応を実施することにより生成することができる。
【0025】
好ましくは、前記リポーター分子は、核酸分子、より好ましくは、一本鎖核酸分子である。本発明に従う用語「核酸」は、特に、リボヌクレオチド、2'-デオキシリボヌクレオチドもしくは2',3'-ジデオキシリボヌクレオチドに関する。ヌクレオチド類似体は、糖もしくは主鎖を改変したヌクレオチド(特に、核酸中に酵素的に組み込むことができるヌクレオチド類似体)から選択することができる。好ましい糖改変ヌクレオチドにおいては、リボース糖の2'-OHもしくはH-基を、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2もしくはCN(式中、RはC1-C6アルキル、アルケニルもしくはアルキニルであり、ハロはF、Cl、BrもしくはIである)から選択される基により置換する。リボース自体を、シクロペンタンもしくはシクロヘキセン基などの他の炭素環式またはヘテロ環式5もしくは6員基により置換することができる。好ましい主鎖改変ヌクレオチドにおいては、ホスホ(トリ)エステル基を、改変された基、例えば、ホスホロチオエート基またはH-ホスホン酸基により置換することができる。さらに好ましいヌクレオチド類似体としては、モルホリノ核酸、ペプチド核酸もしくは固定された核酸(locked nucleic acid)などの核酸類似体の合成のための構成要素(building block)が挙げられる。
【0026】
好ましい実施形態においては、本発明の方法および試薬キットを、農業用途に用いる。例えば、本発明は、植物、植物病原体、またはウイルス、細菌、菌類もしくは昆虫などの植物病害虫に由来する核酸の検出にとって好適である。さらに、本発明は、植物もしくは植物部分、植物病原体もしくは昆虫などの植物病害虫において、遺伝的多様性、例えば、SNPを検出するのに好適である。
【0027】
さらなる用途は、除草剤、殺真菌剤もしくは殺虫剤への耐性、寛容性もしくは不寛容性、例えば、生物もしくは生物の集団中の菌類、昆虫もしくは植物における耐性、寛容性もしくは不寛容性の、検出またはモニタリングである。本発明はまた、迅速な遺伝子型決定、例えば、菌類、昆虫、もしくは植物の種もしくは株の迅速な検出および/または分化にとっても好適である。さらに、株、例えば、菌類、昆虫もしくは植物の生物もしくは株について、遺伝的に改変された生物の検出および/または分化が可能である。
【0028】
本発明の方法は、植物または種子の検出および特性評価にとって特に好適である。特に、本発明の方法またはそれに適合させた試験キットもしくは試験紙を用いることにより、製造業者に関して、製品のタイプに関して、および製品に含まれる化合物または内容物に関して、製品、例えば、植物または種子を分析することができる。特に、被分析物がどこから来たか、特に、どの製造業者から来たかを検出することができる。野生型、例えば、植物の野生型との小さい差異または偏差でさえ、本発明に従う方法により検出することができるため、この分析が可能である。さらに、本発明に従う方法を用いて、被分析物が遺伝子操作されているかどうか、およびその程度を検出することができる。さらに、被分析物が特定の耐性遺伝子を含むかどうか、または被分析物が遺伝子操作に起因する別の特徴を含むかどうかを検出することができる。そのような改変は、1または2個の塩基の置換のみを含むことが多い。しかし、そのような小さい改変でさえも、本発明に従う方法を用いて検出することができる。本発明に従う方法は、製品自体を特徴づけること、すなわち、それが小麦、菜種、コメなどであるかどうかを調べることを可能にする。最終的には、資源含量またはむしろ特定の作用物質の含量を定めることができる。例えば、菜種中の油含量または乾燥ストレスに対して抵抗する遺伝子の存在を決定することができる。従って、本発明に従う方法を、製品の特性、特に、製品の約束された特性の制御およびモニタリングに用いることができる。そのような用途は、医薬品においてだけでなく、栄養素の分野において特に有用である。本発明に従う方法を用いて、植物の起源およびその実際の特性に関して、農家により生産され流通する植物を評価することができる。
【0029】
特に好ましいのは、製品または製品の特性の制御および割り振りを可能にする、試験キットまたは試験紙である。
【0030】
本発明の高い感度のため、病原体の早期の診断が可能であり、すなわち、病原体の存在の最初の兆候前の診断が可視的である。これは、その存在を視覚的に認識することができる前にそれを検出する場合には、大豆さび菌(ファコスポラ・パチリジ(Phakospora pachyrizi))もしくは他の病原体、例えば、ブルメリア・グラミニス(Blumeria graminis)、セプトリア・トリチシ(Septoria tritici)もしくは卵菌綱(Oomycetes)、または制御がちょうど可能である他の病原体の診断にとって特に重要である。
【0031】
さらに、本発明は、病原体、例えば、ヒト病原体または家畜もしくはペット動物の病原体に由来する核酸の検出のための、例えば、ヒト医学または獣医学における、医学的、診断的および法医学的用途にとって好適である。特に、例えば、ウイルスまたは細菌を検出することができる。
【0032】
さらに好ましい用途としては、ヒトにおける遺伝的多様性、例えばSNPの検出、または薬剤耐性、寛容性もしくは不寛容性またはアレルギーの検出が挙げられる。さらに、本発明は、障害、アレルギーおよび不寛容性の素因またはリスク増加と関連する突然変異を決定するための、遺伝子型決定、特にヒトの遺伝子型決定にとって好適である。また、本発明を用いて、遺伝的に改変された生物もしくは株、細菌もしくはウイルスの生物もしくは株だけでなく、遺伝的に改変された家畜動物などの検出にも用いることができる。本発明は、疾患、例えば、遺伝子疾患、アレルギー疾患、自己免疫疾患または感染症の迅速な診断にとって特に好適である。
【0033】
さらに、本発明は、例えば、研究目的のために、遺伝子の機能および/または発現を検出するのに好適である。
【0034】
さらなる実施形態は、ブランド保護のための、例えば、植物保護用製品、医薬品、化粧品およびファインケミカル(例えば、ビタミンおよびアミノ酸)のような高額品などの製品においてコード化された特定の情報を検出するための本方法の使用であり、飲料製品、燃料製品、例えば、ガソリンおよびディーゼル、消費家電製品にマークを付けることができる。さらに、これらの製品および他の製品の包装にマークを付すことができる。この情報は、製品および/または製品の包装中に組み込まれた核酸または核酸類似体によりコードされる。この情報は、製造業者がどこであるか、製造場所、製造日および/または販売業者に関するものであってよい。本発明を用いて、製品特異的なデータの迅速な検出を実行することができる。サンプルを、製品のアリコートから調製した後、該サンプル中の核酸によりコードされた情報の存在を検出することができる1種または数種の配列特異的官能化ハイブリダイゼーションプローブと接触させることができる。
【0035】
本発明はまた、栄養素の分野にとっても好適である。例えば、飼料の分野においては、動物栄養物、例えば、トウモロコシに、プロピオン酸などの保存剤を大量に補給する。本発明の方法を適用することにより、保存剤の添加を減少させることができる。さらに、本発明の方法を用いる遺伝学解析により、個体の特定の栄養素を利用する能力の予測が可能になる(ニュートリゲノミクス)。
【実施例】
【0036】
1. 材料および方法
前記概念およびその妥当性を証明するために、本明細書では単純に標的(T)と呼ぶ、細菌エルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)に関連するオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)配列(5'-AGCCACGCCTCAAGGG-3')を選択した。この配列は、バイオテロリズムおよび細菌戦用途にとって重要であり、文献[14]において既に研究されている。具体的には、本発明者らは、エルシニア・ペスティスの16S rRNA遺伝子から作製されたアンプリコンに結合した分子ビーコンを設計した。本発明者らは、エルシニア・ペスティス標的Tを標的とするように設計された市販のMB1を用いることを選択した。非改変オリゴヌクレオチドT'を、Tと相補的になるように、かつ必要に応じてそれを捕捉するように設計した。この配列は、用いられた色素ならびにその吸収および放出波長と共に、図3中に報告されている。
【0037】
Cy3色素は、実際に白黒写真撮影技術において用いられる色素の一つであり、黒穴で示すクエンチャーBHQ2はCy3に対する97%の良好なクエンチング効率を有する[13]。種々のバッファーがこの研究において用いられてきたが、それらの一覧をここに報告する:
H = 1 M Tris-HCl pH 8, 100 mM MgCl2 H5 = 1M 酢酸Na
H1 = 1 M Tris-HCl pH 8, 400 mM MgCl2, 150 mM KCl H6 = 1M クエン酸三Na
H2 = 900 mM NaCl, 90 mM クエン酸Na H7 = 1M テトラホウ酸Na
H3 = 1 M KH2PO4 H8 = 1M K2CO3
H4 = 1 M 蟻酸Na。
【0038】
本発明者らは最初に、蛍光分光計(Jasco Fluorescence Spectrometer F-750)を用いて、その標的を同定するMB1の能力を試験した。MB1は、5 mMを超える塩濃度の存在下で、過剰のTにハイブリダイズする。本発明者らは、最小の塩濃度を含む溶液を用いて最良の結果を得るために、様々な濃度を用いて上記の様々なハイブリダイゼーションバッファーおよび塩を試験した。この塩濃度は実際に、写真用紙の増感プロセスに影響する。MB1の蛍光挙動は、一般的には、文献[15]に報告されたデータと一致していた。ここで、本発明者らは、様々な操作条件において本発明者らのMBの蛍光分析のいくつかの例を報告する。
【0039】
典型的なMBDP実験においては、1μLの被分析物溶液を写真用紙上に置く。溶媒の蒸発および用紙の樹脂中へのサンプルの浸透を、室温でゆっくりと(30〜60分)、または写真用紙を40℃未満の温かい表面に入れて急速に(1〜5分)、達成することができる。後者の方法は、改善された感度により強調される通り、写真用紙中へのサンプルの吸収を改善するようである。ハロゲン化銀表面に吸着された色素だけが増感剤として有効であることは注目に値する[11]。Ilfospeed RC Deluxe (Ilford)を、写真用紙として用いた。
【0040】
一度、1μLの液滴が写真用紙中に吸収されたら、それに550 nmのカットオフフィルターおよび0.5 OD密度フィルターを通して白色光を照射した。写真用紙の現像を、標準的かつ市販の溶液を用いて達成した。手順全部を、暗室中で行った。これらの実験において用いた標準的な暗室に含まれない唯一の器具は、サンプルの沈着のためのマイクロピペットおよび蛍光分光計からなる。
【0041】
2. 結果および考察
2.1 予備実験
Tris-HCl(pH 8, 10 mM)およびMgCl2(1 mM)を含む水中に1μLのMB1を含めた溶液を調製した。この溶液の1バッチに、大過剰のT(10μL)を添加した。バッチ、およびTの溶液(10μM)のみが存在するバイアル(10 mM Tris-HCl pH 8, 1 mM MgCl2)の双方を最大80℃まで5分間温めた後、ゆっくりと冷却した。全てのサンプルを、蛍光分光計により、および並行して3種の溶液のそれぞれの1μL(+ハイブリダイゼーションバッファーを含む参照溶液)を市販の写真用紙にスポットすることにより、分析した。
【0042】
この最初の実験の結果を、図5に示す。これらの条件下では、スポット3におけるMB1(1μM溶液の1μL=1 pmol)の閉じた形態と、スポット4においてMB1がT(1:10)とアニーリングした開いた形態とを区別することが既に可能である。スポット3は同様に弱い陽性シグナルを与えるが、これは、この最初の実験において用いられた高い濃度、および色素の非定量的クエンチングに起因するものである。実際、低い温度でも、その閉じた形態(蛍光分光計により検出可能)でのMB1の残留蛍光シグナルが存在する(図4のa)。スポット1および5は参照であり、その白色(偽陰性)は、任意の増感剤(色素)を加えない標的T(10μM溶液の1μL=10 pmol)と比較したスポット2の態様とは対照的である。参照スポットの白色態様は、参照溶液(10 mM Tris-HCl pH 8, 1 mM MgCl2)中に存在する塩化物アニオンと、写真用紙の銀陽イオンとの相互作用に起因するものでありうる。実際、任意のCy3標識されたODNの濃度が0.05μM未満である場合、これらの条件(高いCl-濃度)を用いて、本発明者らは、陰性の白色シグナルを検出することができる。この濃度を上回る場合は、標識されたODNの色素に起因する用紙の分光増感は、その塩の陰性効果をしのぐ。未標識のODNは、高濃度については弱い偽陽性結果を与える。この実験証拠に照らせば、標的Tの溶液と比較してスポット2を説明することができる。
【0043】
そのような容易な実験を用いて、本発明者らは、分子ビーコン原理が10ピコモルのTを検出するDNA写真撮影技術に適用可能であることを検証した。その後、本発明者らは、シグナル/バックグラウンド比およびピコモル未満(<10-12モル)の標的の検出に対してこの方法の適用可能性を拡張するための多くの他のパラメーターを改善する様々な条件を調べた。
【0044】
2.2 600フェムトモルの標的Tの検出
図6(表1)に示される実験の黒色スポットは、以前の実験ほど強い強度ではない。しかしながら、この実験の解釈を、蛍光分光計の並行使用により達成した。この分解の欠如は、サンプルの低濃度および上記の塩効果に起因するものである。この実験のレーンAにおいて、本発明者らは、ハイブリダイゼーションの役割に基づきそのプロセスの可逆性を立証した。一度、MB1がその標的Tにアニーリングしたら(表1のA4および図6)、T'の反対鎖を加えることによりそのように生成されるシグナルを「スイッチオフ」することができる(A5)。この鎖は、MB1と競合してTにハイブリダイズする。T/T'ハイブリダイゼーションは、用いられた大過剰のT'により、また熱力学的要因(MB1は安定なヘアピンを形成することができる)により、T/MB1ハイブリダイゼーションよりも好まれるであろう。A6においては、蛍光分光計中の混合物の蛍光および写真用紙上のスポットは、Tの添加により回復する。T/T'ハイブリダイゼーションにより形成された未標識DNAは、ここで用いた1.2μMの高濃度でも、写真用紙に陰性スポット(A7)を与える。
【表1】

【0045】
[MB]=0.1μM;[T]=0.6μM(6倍過剰)。T'=(5'-CCCTTGAGGCGTGGCT-3')Tの反対鎖。
【0046】
図6のレーンBにおいては、MB1濃度は最初の実験におけるものよりも10倍低い。Tを、6倍過剰で用い、バッファー濃度を5 mMのTris-HCl pH 8および0.5 mMのMgCl2に減少させた。そのような実験条件においては、0.6μMの濃度でスポットB4中に存在する標的Tを検出することが依然として可能である。かくして、このアッセイを用いて、600フェムトモルのTを検出した。ここで、スポットB7およびB8を参照として用いる。それらは、それぞれ1μMおよび0.1μMの濃度の市販のCy3標識されたODN(Cy3-ODN)のバッファー溶液(5 mM Tris-HCl pH 8および0.5 mM MgCl2)からなる。スポットB8の強度が、スポットB4の強度と同等、さらにより弱い場合さえあることは注目に値する。B8においては、写真用紙は、様々なODNにとって信頼性のある濃度依存的様式で、標識されたODNの存在を示す。Cy3-ODNは実際、塩の非存在下で照射および現像について同じ条件を用いた場合、同じ濃度でより強いシグナルを与える(すなわち、図6のB8 対 図7のB3を参照)。
【0047】
2.3 様々なハイブリダイゼーションバッファーのスクリーニング
様々なバッファーおよび塩を試験して、写真用紙上で最小の塩効果を示すMB1とTとのハイブリダイゼーションを達成した。この目的のために用いた選択されたバッファーの一覧を、材料および方法の節に見出すことができる。これらのバッファーはいずれも、MBDP適用のためのバッファーHを用いて既に達成された性能を改善しなかったが、それらの多くは、蛍光によりモニターされた良好なハイブリダイゼーション特性を示す(図4)。いくつかの例を、レーンAに報告する(図7、表2)。
【表2】

【0048】
[MB]=0.2μM;[T]=0.6μM(3倍過剰)。* + 5μL H;** + 5μL H6;*** + 3μL H3 + 10 μL H6。# + 30μL H3。
【0049】
この特定の事例において、本発明者らは、0.2μMの濃度のMB1および3倍過剰量のTを用いた。このわずかに過剰量のTは、A3およびA4(図7)に示されるように効率的なハイブリダイゼーションにとって十分であり、蛍光モニタリングにより確認された。スポットA6およびA7は、サンプル混合物中の様々な塩の存在に起因して、シグナルを与えない。
【0050】
レーンC(図7)においては、水のみを含む参照溶液およびバッファーを、ハイブリダイゼーション実験に用いられるのと同じ濃度でスポットする。いくつかのバッファーは、塩化物イオンの非存在下でも写真用紙と相互作用する。一部の場合には、図7のC8中のH8およびC9中のH6に関して陽性の結果を検出することさえ可能である。表2および図7中のレーンBは、既に言及された参照Cy3-ODNである。ここで、このODNを単純に水に溶解し、それを10μMから100 fMまでの連続希釈液としてスポットする。本発明者らは、本発明者らの実験において用いられた塩の性質およびその濃度が、本発明の方法の感度に強く影響し得ると結論付けた。
【0051】
3. 結論
本発明は、白黒写真撮影技術の原理を用いて生体分子を検出するための新規方法を記載する。ピコモル濃度の感度レベルを、大規模な最適化を行わずに達成することができる。この技術は、DNAの高度に特異的なハイブリダイゼーション特性に基づくものである。予備実験は、この技術が使いやすく、高価でないが、それを用いて驚くべき結果が既に達成できていることを示している。今までのところ、上記の市販の写真用紙および本明細書に記載の条件を用いる本発明者らの検出限界は、分析する溶液1μLあたり、600フェムトモルの標的Tである。この限界は、用いた塩および写真用紙の性質に依存し、様々な色素および様々な光源を用いることにより、調節されうる。ナノモル濃度範囲(フェムトモルの標的)での選択されたDNA配列の検出は、そのような容易で迅速な方法については驚くべき結果である。
【0052】
これらのプローブの特異性は文献[16]中でよく確立されているため、様々なMBを同時に用いて様々な標的を検出することができる。MBは実際、一塩基変異多型(SNP)試験および同様に様々な標的の多重検出[17]において適用されている。固定された核酸に基づくMB(LNA-MB)[18]中と同様のMB構造の報告された改変、またはスーパークエンチャー[19]もしくは金クエンチャー[17]を有するMBに関しては色素/クエンチャー対の報告された改変は、これらのMBを、多くの用途のための完全な候補とする。さらに、多くのMBが既に吸収された特有の写真用紙ストリップを設計することは可能であろう。それぞれのMBについて様々な光源(または様々なフィルター)を用いることにより、様々な特定の標的を同時に検出することができるであろう。さらに、多重改変されたMBを設計し、それを本発明者らの研究室で開発されたDNAのクリック-化学官能化[20]を用いて合成することができ、かくして、モジュール方式および実用的様式で特定のMBの利用可能性を劇的に増加させることができる。
【0053】
本出願で引用された書類の内容は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0054】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、分子ビーコンの作用原理を示す。a)ヘアピンのループ領域にアニーリングした標的によるもの(上)と、温度、変性試薬またはssDNA結合タンパク質によるもの(下)という、MBのヘアピン構造を変性させる2種の異なる経路。b)その開いた形態(上の線)および閉じた形態(下の線)でのMBの典型的な蛍光/温度スペクトル。
【図2】図2は、MB、MBDPに基づくDNA写真撮影技術の作用原理の模式図を示す。MBが標的Tとアニーリングしている分析する混合物のみが、写真用紙中に黒色スポットとして陽性シグナルを与える。閉じた形態のMBは、写真用紙上にシグナルをもたらさない。
【図3】図3は、MB1、T、T'およびCy3-ODNの図示およびそれらの配列を示す。左側に、典型的な色素の吸収波長および放出波長を挙げる。
【図4a】図4は、蛍光分光計の測定値(570 nmでの放出)を示す。a)下の方の曲線は、25℃〜85℃での0.2μMのMB1のスペクトルであり、一方、赤色の曲線は、同じ溶液への1.2μMのTの添加後のスペクトルである。
【図4b】図4は、蛍光分光計の測定値(570 nmでの放出)を示す。b)0.2μMのMB1および様々なハイブリダイゼーションバッファーを含む溶液への1.2μMのTの添加の、蛍光放出時間獲得。
【図5】図5は、2つの典型的な写真実験のスキャナー再現を示す。aおよびbにおいて、参照レーンでは、Cy3標識されたODNが10μM〜100 fMの連続希釈液としてスポットされる。a'およびb'においては、MBDP実験と比較した拡張を報告している。スポット1および5=ハイブリダイゼーションバッファー;スポット2=10μM T;スポット3=1μM MB1;スポット4=MB1 + T (1:10)。
【図6】図6は、現像後の写真用紙のスキャナー再現を示す。用いたサンプルは表1に挙げている。
【図7】図7は、現像後の写真用紙のスキャナー再現を示す。用いたサンプルは表2に挙げている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の被分析物を検出する方法であって、
(i)サンプルを提供する工程、
(ii)光増感基または光増感基およびクエンチャー基を導入するためのハンドル基を含むリポーター分子であって、検出しようとする被分析物の非存在下で該光増感基がクエンチングされる前記分子を、提供する工程、
(iii)光増感基のクエンチングが被分析物の存在下で少なくとも部分的に減少するか、または終結する条件下で、前記サンプルと前記リポーター分子とを接触させる工程、
(iv)必要に応じて、前記ハンドル基と、光増感基を含む反応パートナーとを反応させる工程、
(v)前記リポーター分子中のクエンチングされていない光増感基の存在下、マーカー基が感光性媒体中で形成される条件下で、該感光性媒体と接触させた前記リポーター分子を照射する工程、ならびに
(vi)前記マーカー基を検出する工程、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記被分析物を、核酸、およびヌクレオシド結合分子、ヌクレオチド結合分子または核酸結合分子から選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
検出しようとする被分析物が、DNAおよびRNAから選択される核酸である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルが生物学的サンプルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルが農業サンプル、栄養サンプルまたは臨床サンプルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記検出を、増幅を用いずに直接実行する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記検出を、増幅工程と組み合わせて実行する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
リポーター分子が核酸分子である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ハンドル基が、アジド基およびアルキン基から選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記アジド基を、光増感基を含む反応パートナーのアルキン基とクリック反応を実施することにより反応させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アルキン基を、光増感基を含む反応パートナーのアジド基とクリック反応を実施することにより反応させる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記光増感基が蛍光色素基から選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記光増感基がシアニンに基づくインドリン基およびキノリン基から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記感光性媒体が、金属核を形成することができる金属原子またはイオンを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記金属がAgである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記感光性媒体が、写真用紙などの光感受性用紙または光感受性乳濁液または支持材料上のゲルである、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記照射工程(v)を、長波長の可視光線および/または赤外線を用いて実行する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
サンプル中の被分析物を検出するための試薬キットであって、
(a)光増感基または光増感基およびクエンチャー基を導入するためのハンドル基を含むリポーター分子であって、検出しようとする被分析物の非存在下で該光増感基がクエンチングされる、前記分子、
(b)必要に応じて、光増感基を含むハンドル基のための反応パートナー、ならびに
(c)クエンチングされていない光増感基の照射に際してマーカー基を形成する、感光性媒体、
を含む、前記キット。
【請求項19】
前記リポーター分子が、感光性媒体上に含浸させた試薬として存在する、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法における、請求項18または19に記載の試薬キットの使用。
【請求項21】
農業用途、医学用途、診断用途および法医学的用途、遺伝子の機能および/もしくは発現の検出、ブランド保護、または特に飼料分野における栄養的用途のための、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法または請求項18もしくは19に記載の試薬キットの使用。
【請求項22】
遺伝子操作により改変された被分析物を検出するための、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
遺伝的に改変された生物の生成物である被分析物を検出するための、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−534044(P2009−534044A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506990(P2009−506990)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003696
【国際公開番号】WO2007/128430
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】