説明

DNA及びRNAに対する化学架橋形成のための4−ビニルピリミジンヌクレオシド誘導体

【課題】DNA及びRNAを標的とする化学的遺伝子制御、及び核酸を素材とする材料の化学的架橋のための、4−ビニルピリミジンヌクレオシド、そのスルフィド保護体及びスルフォキシド誘導体の提供。
【解決手段】次式で表される、4−ビニルピリミジン誘導体、又はそのビニル基のスルフィド保護体。この化合物は、DNA及びRNAに対する化学架橋(クロスリンク)形成に利用できる。(式中、Xは、又はオリゴヌクレオチドであり;Yは、ジメチルトリチル基、又はオリゴヌクレオチドである。)該化合物は、RNAのクロスリンク剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
DNA及びRNAに対する化学架橋形成のための4−ビニルピリミジンヌクレオシド、そのスルフィド保護体及びスルフォキシド誘導体に関する。本発明は、DNA及びRNAを標的とする化学的遺伝子制御、及び核酸を素材とする材料の化学的架橋のために有用である。
【背景技術】
【0002】
DNA及びRNAに対する化学架橋(クロスリンク)形成は、遺伝子発現阻害効率を高めたり、反応点に点変異を誘起するために、生化学的な研究に利用されている。また、最近では、20〜25塩基長の短い2本鎖siRNAや一本鎖RNA(micro-RNA, miRNA)の機能を阻害や促進に利用できる可能性が高まっている。また、人工的な長いDNAを用いて複雑な構造体を形成する材料の安定化剤として利用も考えられている。
【0003】
従来、核酸の架橋形成には、光照射によってクロスリンクを形成するソラーレン誘導体や、光連結性核酸(例えば、特許文献1〜3及び5)が利用されてきた。しかしながら、クロスリンク核酸を生体内で使用する場合には、長時間の照射による正常細胞のDNAの損傷や組織表面でしか利用ができない重大な欠点があり、外的な活性化刺激の必要のないクロスリンクの開発が望まれている。
【0004】
2-Amino-6-vinylpurineヌクレオシド誘導体は光照射を必要とせずシトシン塩基特異的なクロスリンクを形成する(非特許文献1及び2)。細胞内における塩基選択性や配列特異性についても検討されている(非特許文献3〜5)。この2-amino-6-vinylpurine構造は、アミンやチオール類化合物と非特異的な結合を形成するため、生体内での有効性に問題があったが、ビニル基のスルフィド誘導体又はスルフォン誘導体を組み込んだ人工核酸の利用により、細胞内での阻害効率と選択性が高まることが報告されている(特許文献4)。
本例以外に安定な前駆体を活性化させクロスリンクを形成させる方法としては化学的酸化剤を用いる方法が報告されるなど、安定前駆体を生体内でも期待できる化学反応で活性化して効果的なクロスリンクを形成させる考え方が一般化してきている。
【0005】
しかしながら、2-amino-6-vinylpurineもその他のクロスリンク剤も、その化学的反応性は必ずしも高いものではなく、光照射を必要としない化学架橋剤としては、さらに反応性の高い分子の基本構造の開発が不可欠となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-139594号公報
【特許文献2】特開2001-345398号公報
【特許文献3】特開2002-179696号公報
【特許文献4】特開2001-206896号公報
【特許文献5】WO2009/128266A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】F. Nagatsugi, K. Uemura, S. Nakashima, M. Maeda, S. Sasaki, Tetrahedron Lett. 1995, 36, 421
【非特許文献2】F. Nagatsugi, K. Uemura, S. Nakashima, M. Maeda, S. Sasaki, Tetrahedron, 1997, 53, 3035
【非特許文献3】F. Nagatsugi, et al., J. Am. Chem. Soc., 1999, 121, 6753-6754.
【非特許文献4】T. Kawasaki, et al., J. Org. Chem., 2005, 70, 14-23.
【非特許文献5】M. M. Ali, et al., Angew. Chem. Int. Ed., 2006, 45, 3136-3140.
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、チミジン及び2’-デオシキウリジンから新たに合成した4−ビニルピリミジンヌクレオシド体、(5-methyl- 及び5-H-4-vinylpyrimidine-2-one-1-yl)-β-D-2'-deoxyribose、及びそれらのビニル基をスルフィド保護体等で安定化した誘導体に関するものである。
【0009】
本発明は、以下を提供する:
[1] 次式:
【0010】
【化1】

【0011】
で表される、化合物(式中、
R1は、H、C1〜12アルキル、又はC1〜12アリールであり;
R2は、H、OH、又はC1〜12アルコキシであり;
Xは、H、水酸基保護基、又は5〜22塩基長のオリゴヌクレオチドであり;
Yは、H、水酸基保護基、又は2〜8残基長のオリゴヌクレオチドである。)。
[2] Xが、5〜22塩基長のオリゴヌクレオチドであり;
Yが、2〜8残基長のオリゴヌクレオチドである人工核酸である、[1]に記載の化合物。
[3] R1が、H、又はメチルであり;
R2が、Hである、[2]に記載の人工核酸。
[4] 次式:
【0012】
【化2】

【0013】
で表わされる化合物(式中、
R1は、H、C1〜12アルキル、又はC1〜12アリールであり;
R2は、H、OH、又はC1〜12アルコキシであり;
R3は、C1〜12アルキル、又はC1〜12アリールであり;
Xは、H、水酸基保護基、又はオリゴヌクレオチドであり;
Yは、H、水酸基保護基、又はオリゴヌクレオチドである。)。
[5] Xが、5〜22塩基長のオリゴヌクレオチドであり;
Yが、2〜8残基長のオリゴヌクレオチドである人工核酸である、[4]に記載の化合物。
[6] R1が、H、又はメチルであり;
R2が、Hであり、
R3が、-(CH2)7CH3、又はフェニルである[5]に記載の人工核酸。
[7] 次式:
【0014】
【化3】

【0015】
で表される化合物
[8] Xが、5〜22塩基長のオリゴヌクレオチドであり;
Yが、2〜8残基長のオリゴヌクレオチドである人工核酸である、[7]に記載の化合物。
[9] R1が、H、又はメチルであり;
R2が、Hであり、
R3が、-(CH2)7CH3、又はフェニルである[8]に記載の人工核酸。
[10] [3]、[6]又は[9]に記載の人工核酸とRNA又はDNAとを反応させ、人工核酸とRNA又はDNAとの間に化学架橋を形成してなる連結物を得る工程を含む、人工核酸-RNA連結物又は人工核酸-DNA連結物の製造方法。
[11] 人工核酸とRNAとを反応させ、人工核酸-RNA連結物を得る、[10]に記載の製造方法。
[12] 人工核酸と二本鎖DNAとを反応させ、人工核酸-日本鎖DNA連結物を得る、[10]に記載の製造方法。
[13] [3]、[6]又は[9]に記載の人工核酸とRNA又はDNAとを反応させ、人工核酸とRNA又はDNAとの間に化学架橋を形成させる工程を含む、RNA又はDNAの制御方法。
【発明の効果】
【0016】
これまで化学反応性分子を組み込んだ人工核酸ではクロスリンクの形成には数時間を要していた。本発明の特定の態様では、20分程度でほぼ100%に近い反応効率で、塩基特異的にクロスリング反応が進行する。
【0017】
本発明の特定の態様により、2本鎖DNAへのクロスリンク反応が可能であり、2本鎖のうちの一つの鎖に対して、配列特異的かつ塩基特異的に、速やかなクロスリンク反応が実現できる。
【0018】
光照射を必要としないクロスリンク分子のなかで、本発明の特定の態様は、高い反応性と選択性の点で、従来のクロスリンク剤より優れる。高い反応性は生体への利用においても核酸材料分野への応用においても大きな可能性を拓くものである。例えば、遺伝子発現のような生体内の現象は非常に迅速に進行するため、クロスリンク形成の速さや収率は、高い効果を得るために重要である。本発明の特定の態様により、従来の2-amino-6-vinylpurine誘導体に比べて、高い遺伝子発現阻害効果が期待できる。
【0019】
本発明の特定の態様においては、塩基選択性がきわめて高いため、がん遺伝子のように1塩基が変異した部位を特異的に標的化することができる。
本発明の特定の態様は、核酸材料分野において利用することにより、高次構造固定化を効果的に実現できる可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、新規なクロスリンク反応を提供する。本発明におけるクロスリンク反応の一態様を次に示す。
【0021】
【化4】

【0022】
本発明は、次式で表される、4−ビニルピリミジン誘導体、又はそのビニル基のスルフィド保護体である、化合物を提供する。
【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
式中:
R1は、H、C1〜12アルキル、又はC1〜12アリールであり;
R2は、H、OH、又はC1〜12アルコキシであり;
R3は、C1〜12アルキル、又はC1〜12アリールであり;
Xは、H、水酸基保護基、又はオリゴヌクレオチドであり;
Yは、H、水酸基保護基、又はオリゴヌクレオチドである。
【0027】
水酸基保護基としては、ジメチルトリチル(DMTr)、アセチル(Ac)、トリメチルシリル (TMS)、トリエチルシリル (TES)、tert-ブチルジメチルシリル(TBS又はTBDMS)、トリイソプロピルシリル (TIPS)、tert-ブチルジフェニルシリル (TBDPS)等の中から、当業者であれば適宜選択して用いることができる。
【0028】
本発明において、「アルキル」、「アルコキシ」又は「アリール」というときは、特に記載場合を除き、その脂肪族炭素鎖部分は直鎖状であっても分岐していてもよく、置換されていてもよい。置換は、特に記載した場合を除き、ハロ、ニトロ、シアノ、OH、OR7、5〜10員ヘテロサイクリル、C6〜10アリール、−S(O)nR7、及び−SO2NR7R8(nは0〜2の整数、R7、及びR8は、それぞれ独立にH又はC1〜6アルキル)からなる群から独立的に選択される1〜3個の置換基による置換を意味する。C1〜12アルキルは、炭素数が1〜12であるアルキルをいう。C1〜12アリールは、炭素数が1〜12であるアリールをいう。C1〜12アルコキシは、炭素数が1〜12であるアルコキシをいう。
【0029】
R1としての好ましい例は、H、又はメチルである。いずれの場合においても、R2としての好ましい例は、Hである。またいずれの場合においても、R3の好ましい例は、-(CH2)7CH3、又はフェニルである。
【0030】
本発明の一態様においては、式IIで表される化合物を使用する。
式IIで表わされる化合物の製造スキームを示す:
【0031】
【化8】

【0032】
本発明の別の一態様においては、式I又は式IIIで表される化合物を使用する。
式I又は式IIIで表わされる化合物の製造スキームを以下に示す:
【0033】
【化9】

【0034】
なお、上記では、特定の態様の化合物の製造スキームについて説明したが、当業者であれば、本発明に含まれる他の化合物の製造を適宜設計し、実施することができる。
X及びYがオリゴヌクレオチドである場合、本発明においては、化合物全体を、「人工核酸」と称することがある。
【0035】
本発明においては、式I〜IIIで表わされる人工核酸を用いて、標的となるRNA又はDNAとの間で、クロスリンクを形成させることができる。
X及びYがオリゴヌクレオチドとする場合、それらのオリゴヌクレオチドの配列及び長さには特に制限はなく、架橋反応の標的とする塩基配列に対して相補的になるように適宜設定すればよい。しかしながら、標的核酸とハイブリダイズすることが可能な塩基長であることが好ましく、具体的には、Xは、5〜22塩基長であることが好ましく、8〜15塩基長であることがより好ましい。長さが、これより長い場合には標的核酸とのハイブリダイゼーションの効率が低下する傾向にあり、これより短い場合には非特異的な核酸とハイブリダイゼーションしやすい傾向にある。
【0036】
本発明の人工核酸は、標的RNA又はDNAにおいてクロスリンクしたい塩基(ウラシル又はチミンであることが好ましい。)に対して、相補する位置が4−ビニルピリミジンヌクレオシド、そのスルフィド保護体及びスルフォキシド誘導体となるように設計するが、4−ビニルピリミジンヌクレオシド等の位置は、人工核酸のオリゴヌクレオチド鎖の3'末端又は5'末端は好ましくなく、それらの末端から5番目くらいより内側が好ましい。したがって、Xが8〜15塩基長である場合は、Yは、2〜8塩基長であることが好ましく、3〜6塩基長であることがより好ましい。また、Yが8〜15塩基長である場合は、Xが、2〜8塩基長であることが好ましく、3〜6塩基長であることがより好ましいであろう。
【0037】
2本鎖DNAを標的とする場合には、人工核酸の配列は3本鎖DNAを形成することができるように設計するとよい。
本発明においては、標的となるRNA又はDNAは、種々の配列、長さ、由来のものであり得る。
【0038】
標的がRNAである場合、mRNAであってもmicro-RNAであってもよい。いずれの場合も、人工核酸の4−ビニルピリミジンヌクレオシド等と対となる位置に、U(ウラシル)、G(グアニン)又はA(アデニン)を有する。本発明の特定の態様においては、人工核酸は、Uへの反応性が特に高く、C(シトシン)への反応性は低い。
【0039】
高分子のRNA(例えば、アポリポタンパク質BのRNA)を対象としようとする場合、アルカリ性条件でのクロスリンク反応は、RNA鎖の切断を生じさせる可能性があることに留意するとよい。したがって、クロスリンク反応は、中性(例えばpH6.5〜7.5)で行なうことが好ましい場合がある。
【0040】
標的がDNAである場合、一本鎖であってもよく、二本鎖であってもよい。いずれの場合も、人工核酸の4−ビニルピリミジンヌクレオシド等と対となる位置に、T(チミン)、G(グアニン)又はA(アデニン)を有する。本発明の特定の態様においては、人工核酸は、Tへの反応性が特に高く、C(シトシン)への反応性は低い。
【0041】
標的DNAが二本鎖である場合、人工核酸との間で三本鎖を形成可能な配列を有することが好ましい。
標的となるRNA又はDNAは、標識基により標識することができ、それによりクロスリンク反応の追跡が容易となる。標識基は、蛍光基、ジゴキシゲニン、ジニトロフェニル基、放射性同位体を含む基、MRI造影剤、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ)、ビオチン、化学ルミネセンス基(化学反応中に光の放出により検出可能な標識)、抗体とすることができる。本発明で「蛍光基」というときは、特に記載した場合を除き、ある波長の電磁照射(光、X線等)を吸収し、吸収されたエネルギーをより長波長な放射線として再放射することができる基をいう。蛍光基には、フルオレセイン誘導体(FEM、フルオレセインイソチオシアネート(FITC))、テキサスレッド(TR;スルホローダミン)、ダンシル(Dns;(5-ジメチルアミノ)ナフタレン-1-スルホニル)、カルボシアニン(Cy3、Cy5、PE-Cy5)、DOXYL(N-オキシ-4,4-ジメチルオキサゾリジン)、PROXYL(N-オキシル-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン)、TEMPO(N-オキシル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)、ウンベリフェロン、ジニトロフェニル、アクリジン、クマリン、エリトロシン、ローダミン、テトラメチルローダミン、若しくは7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1-ジアゾール (NBD)、又はそれから誘導される基が含まれる。
【0042】
クロスリンク反応は、中性条件下(pH6.5〜7.5、好ましくはpH6.6〜7.2、より好ましくはpH6.7〜6.9)で実施することができる。また、酸性条件下(pH4.0〜6.0、好ましくはpH4.5〜5.5、より好ましくはpH4.8〜5.2)で実施することもできる。
【0043】
本発明により提供される人工核酸のうち、R1がC1〜12アルキルの一例であるメチルであるものは、反応が特に迅速である点で好ましい。一方、R1がHであるものは、塩基の選択性が高い点で好ましい。
【0044】
本発明の人工核酸は、人工核酸の配列を対象RNAに相補的に適宜設計することにより、配列特異的に、かつ位置特異的にクロスリンクを形成することができる。本発明により得られる人工核酸は、例えば、無細胞系、培養細胞系、生体内等において、目的のRNAとクロスリンクすることにより、RNAの機能の制御、特に機能の阻害に利用できる。人工核酸の配列を対象RNAに相補的に適宜設計することにより、配列特異的に、かつ位置特異的にクロスリンクを形成することができる。本発明の人工核酸は、RNAに関連した基礎研究のために、及び医薬として、期待できる。また、本発明により得られる人工核酸はオリゴヌクレオチドの配列を適宜設計することによってクロスリンクで構造を固定した核酸材料を効率的に製造するのに利用できる。
【実施例】
【0045】
[製造例1:化合物1(ピリミジンヌクレオシド体)から化合物4の調製]
【0046】
【化10】

【0047】
アルゴン気流下、室温にて、無水アセトニトリルで共沸したチミジン(5 g, 20.64 mmol)の無水N, N-ジメチルホルムアミド(25 ml)溶液に、塩化tert-ブチルジメチルシラン(9.33 g, 61.92 mmol)、イミダゾール(7.03 g, 103.2 mmol)を加え、攪拌した。12時間後、反応液を酢酸エチルにて希釈し、飽和塩化アンモニウム水、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧下溶媒留去した。残渣をヘキサンと酢酸エチルにて再結晶を行い、化合物4(9.18 g, 94%)を白色結晶として得た。
【0048】
【数1】

【0049】
【化11】

【0050】
アルゴン気流下、0℃にて、無水アセトニトリルにて共沸した化合物4(0.5 g, 1.06 mmol)の無水ジクロロメタン(5 ml)溶液に、無水トリエチルアミン(0.59 ml, 4.25 mmol)、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロライド(642 mg, 2.12 mmol)、N, N-ジメチル-4-アミノピリジン(26 mg, 0.21 mmol)を加え、徐々に室温に戻しながら攪拌した。43時間後、反応液をクロロホルムにて希釈し、水、飽和食塩水にて洗浄、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(関東科学60N、ヘキサン:酢酸エチル=30:1)にて精製し、化合物5(0.73 g, 93%)を白色固体として得た。ヘキサンにより再結晶を行い、白色針状結晶を得た。
【0051】
【数2】

【0052】
【化12】

【0053】
アルゴン気流下、室温にて化合物5(2 g, 2.71 mmol)の1,4-ジオキサン:水=1:3(80 ml)溶液にテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム (312 mg, 0.27 mmol)、臭化リチウム(283 mg, 3.26 mmol)、炭酸カリウム(225 mg, 1.63 mmol)、2,4,6-トリビニルシクロトリボロキサン−ピリジン複合体(915 mg, 3.80 mmol)を加え、120℃にて加熱還流した。1時間後、反応液を室温に戻し、アセトニトリル(80 ml)、オクタンチオール(713μl, 4.07 mmol)を加え、室温にて攪拌させた。30分後、クロロホルムにて希釈し、水、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東科学60N、クロロホルム:メタノール=1:0→49:1)にて精製し、化合物6 (1.34 mg, 79% (mixture))を黄色油状物質として得た。
【0054】
【数3】

【0055】
【化13】

【0056】
アルゴン気流下、室温にて化合物6(0.43 g, 0.69 mmol)の無水テトラヒドロフラン(3 ml)溶液に、1Mフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム−テトラヒドロフラン溶液(1.45 ml, 1.45 mmol)を加え、攪拌した。25分後、減圧下溶媒留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東科学60N、クロロホルム:メタノール=1:0→10:1)にて精製し、化合物7(0.15 g, 56%)を黄色油状物質として得た。
【0057】
【数4】

【0058】
【化14】

【0059】
アルゴン気流下、0℃にて、無水アセトニトリルと無水ピリジンで共沸した化合物7(35 mg, 0.088 mmol)の無水ジクロロロメタン(0.7 ml)溶液にチオアニソール(103μl, 0.878 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(153μl, 0.878 mmol)、ジメトキシトリチルクロリド(44.7 mg, 0.132 mmol)を加え攪拌した。1時間後、酢酸エチルにて希釈し、水、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒留去した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(富士ゲルFL60D、クロロホルム:メタノール=49:1→20:1)にて精製し、化合物8(39.5 mg, 64%)を黄色泡状固体物質として得た。
【0060】
【数5】

【0061】
【化15】

【0062】
アルゴン気流下、0℃にて、無水アセトニトリルで共沸した化合物8(220 mg, 0.314 mmol)の無水ジクロロメタン(1.5 ml)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(328μl, 1.88 mmol)を加え攪拌した。30分後、2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイト(210μl, 0.941 mmol)を加え攪拌した。1時間30分後、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水を加えて反応を止め、酢酸エチルにて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、減圧下溶媒留去した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(富士ゲルFL60D、ヘキサン:酢酸エチル=3:1→2:1→1:1→1:2)にて精製し、得られた物質をヘキサンにより再沈殿を行い、化合物9(149 mg, 53%)を白色泡状固体物質として得た。
【0063】
【数6】

【0064】
【化16】

【0065】
アルゴン気流下、室温にて、無水アセトニトリルで2回共沸した2’-deoxyuridine (3.04 g, 13.3 mmol)をdry DMF (18 mL)に溶解し、TBDMSCl (tertbutyldimethylsilylchloride, 6.02 g, 40.0 mmol)、次にimidazole (4.53 g, 66.6 mmol)を加え、室温で23時間攪拌した。反応液をAcOEt (40 mL)で希釈し飽和NH4Cl水、飽和食塩水の順番で洗浄し、有機層をNa2SO4で乾燥後、減圧留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフ(関東化学60N, CHCl3-MeOH=9:1)で精製し、化合物10を粘性油状物質として得た(6.0g, yeild 99 %)。このものはさらに精製せず、次の反応に用いた。
【0066】
【数7】

【0067】
【化17】

【0068】
化合物10(5.36 g, 11.7 mmol)をdry CH3CNで2回共沸、真空乾燥し、dry CH2Cl2(50 mL)に溶解し、アルゴン雰囲気化TEA (6.54 mL, 47.0 mmol), TPSCl (7.11 g, 23.5 mmol)、DMAP (0.287 g, 2.35 mmol)をこの順番に加え、0℃から室温で5時間攪拌した。反応液をCH2Cl2 (100 mL)で希釈し精製水、飽和食塩水の順番で洗浄し(各段階で1回目分液後CH2Cl250mL×2で水層を抽出)、有機層をNa2SO4で乾燥後、減圧留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフ(関東化学60N, Hexane-AcOEt=30:1→10:1→5:1)で精製し、化合物11を粘性油状物質として得た(6.48g, yeild 75.4%)。
【0069】
【数8】

【0070】
【化18】

【0071】
化合物11 (210.8 mg, 0.292 mmol)をH2O:1,4-dioxane=1:3 (8 mL)に溶解し、アルゴン雰囲気下Pd(PPh3)4 (33.9 mg, 0.0292 mmol)、LiBr (30.7 mg, 0.350 mmol)、K2CO3 (29.3 mg, 0.210 mmol)、2,4,6-trivinylcyclotriboroxane pyridine complex (71.1 mg, 0.294 mmol)の順に試薬を加え、120℃でreflux。45分間攪拌した後、加熱をやめ反応液を室温に戻した。室温に戻した反応液にdry CH3CN (8 mL)を加え、アルゴン雰囲気化 C8H17SH (76.5μL, 0.441 mmol)を加え、30分間室温にて攪拌した。反応液をCHCl3 (24 mL)で希釈し精製水、飽和食塩水の順番で洗浄し、有機層をNa2SO4で乾燥後、減圧留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフ(関東化学60N, CHCl3-MeOH=1:0→49:1→5:1)で精製し、化合物12を油状物質として得た (159.6mg)。
【0072】
【数9】

【0073】
【化19】

【0074】
化合物12(mixture, 41.3 mg)をdry THF (0.4 mL)に溶解し、アルゴン雰囲気化 TBAF 1M in THF (101μL, 101 mmol)( Na2SO4で乾燥)を加え、10分間室温にて攪拌した。反応液をCHCl3で希釈し後処理せずに反応液を直接カラムクロマトグラフ(関東化学60N, CHCl3-MeOH=1:0→20:1→10:1→0:1)で精製し、化合物13を油状物質として得た(11.2 mg, yeild over 3 step 39.1%)。
【0075】
【数10】

【0076】
【化20】

【0077】
化合物13(347.2 mg, 0.903 mmol)をdry CH3CNで2回、dry pyridineで1回共沸後真空乾燥し、dry CH2Cl2 (7.5 mL)に溶解し、thioanisole (1.06 mL, 9.03 mmol,Na2SO4で乾燥)、diisopropylethylamine (1.61 mL, 9.03 mmol)、DMTrCl (4,4'-Dimethoxytrityl chloride, 458.9 mg, 1.35 mmol)加え、室温で1時間45分攪拌した。反応液をAcOEt (40 mL)で希釈し精製水、飽和食塩水の順番で洗浄し、有機層をNa2SO4で乾燥後、減圧留去した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフ(富士シリシアFL60D, CHCl3-MeOH=1:0→150:1→99:1→20:1)で精製し、化合物14を泡状物質として得た(490.1 mg, yeild 79.0%)。
【0078】
【数11】

【0079】
【化21】

【0080】
化合物14(271.1 mg, 0.395 mmol)をdry CH3CNで2回後真空乾燥し、dry CH2Cl2 (4 mL)に溶解し、diisopropylethylamine (422.7 μL, 2.37 mmol)を加え、0℃で20分攪拌した。20分後、amidite reagent (2-Cyanoethyl diisopropylchlorophosphoramidite, 264.1 μL, 1.18 mmol, dry CH2Cl2 1mL中)を加え、0℃で1時間攪拌した。反応液をsat. NaHCO3 (30 mL)で希釈し、AcOEt (30 mL)×3で抽出し、有機層をまとめNa2SO4で乾燥後、減圧留去した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフ(富士シリシアFL60D, Hexane-AcOEt=3:1→2:1→1:1)で精製し、さらにHexaneで再沈殿を2回行ない(-78℃)、化合物15を油状物質として得た(247.6 mg, yeild 70.1 %)。
【0081】
【数12】

【0082】
[実施例1:化合物9からDNA1の調製]
【0083】
【化22】

【0084】
DNA自動合成装置に化合物9の無水アセトニトリルを装填し、合成装置の操作法に従い、DNA1に組み込んだ。固相単体を1 mMオクタンチオールを含んだ28 % NH4OH溶液(0.5 mL)に加え室温で1時間反応させた。反応液にTEA-AcOHを加えて停止し、HPLCによりDNA1を単離した。HPLC条件Column, nacalai 5C18-AR-II, A 0.1 M TEAA, B CH3CN, B 10 % to 30% /20 min, 30% to 100% /25 min linear gradient, 3 mL/min, monitored at 254 nm. 23分付近のピークを単離し、DNA1の5’-DMTr保護体を得た。DMTr-DNA1 を5% AcOHに溶解し、室温で5分反応させDMTr基を脱保護した。反応液にTEAを加えて中和後、DMTr-OHをエーテルで洗浄して除去し、凍結乾燥しDNA1を得た。MALDI-TOF/MS (m/e) found 4882.92, 4883.82 calcd for [DNA1-H]-1.
[実施例2:DNA1からDNA2, DNA3及びDNA4の調製]
【0085】
【化23】

【0086】
【化24】

【0087】
【化25】

【0088】
DNA1をMilliQ水に溶かし260nmにおけるUV吸収により濃度を決定した。DNA1(50 μM)の25 mM K2CO3溶液 (pH 10) にMMPP(250 μM)を加えて室温で45分間反応させDNA1のスルフォキシド体DNA2に変換した。MALDI-TOF/MS (m/e) found 4892.02, 4899.81 calcd for [DNA2-H]-1。この溶液にNaOH (0.5 M)を加えて室温で5分間反応させた後、AcOHを加えて中和し、DNA3を合成した。MALDI-TOF/MS (m/e) found 4737.39, calcd 4737.71 for [DNA3-H]-1. DNA3の溶液(10 μM 最終濃度)にMiliQ水、MES緩衝液(pH7),ベンゼンチオール(アセトニトリル溶液、50 μM 濃度)を加えて室温で10分間反応させ、DNA4を得た(MALDI-TOF/MS (m/e) found 4846.93, calcd 4847.72 for [DNA4-H]-1)。
【0089】
【化26】

【0090】
[実施例3:化合物15からDNA5の調製]
【0091】
【化27】

【0092】
DNA自動合成装置に化合物9の無水アセトニトリルを装填し、合成装置の操作法に従い、DNA1に組み込んだ。固相単体を0.045 M K2CO3と0.01 Mオクタンチオールのdry MeOH溶液(0.5 mL)に加え室温で1時間反応させた。反応液にTEA-AcOHを加えて停止し、HPLCによりDNA4-DMTr保護体を単離した。HPLC条件Column, nacalai 5C18-AR-II, A 0.1 M TEAA, B CH3CN, B 10 % to 40 %/20 min, 40% to 100 %/30 min linear gradient, 3 mL/min, monitored at 254 nm. 23分付近のピークを単離し、DNA5-DMTr保護体を得た(MALDI-TOF/MS (m/e) found 5167.80, calcd 5170.94 for [DMTr-DNA4-H]-1)。
【0093】
DMTr-DNA5 を5% AcOHに溶解し、室温で5分反応させDMTr基を脱保護した。反応液にTEAを加えて中和後、DMTr-OHをエーテルで洗浄して除去し、凍結乾燥しDNA5を得た(MALDI-TOF/MS (m/e) found 4866.82, calcd 4869.81 for [DNA1-H]-1)。
【0094】
[実施例4:DNA5からDNA6, DNA7及びDNA8の調製]
【0095】
【化28】

【0096】
【化29】

【0097】
【化30】

【0098】
DNA5をMilliQ水に溶かし260nmにおけるUV吸収により濃度を決定した。DNA5(50 μM)の25 mM K2CO3溶液 (pH 10) にMMPP(250 μM)を加えて室温で45分間反応させDNA5スルフォキシド体DNA6に変換した。MALDI-TOF/MS (m/e) found 4883.23, calcd 4885.8 for [DNA6-H]-1.この溶液にNaOH (0.5 M)を加えて室温で5分間反応させ、DNA7を合成した(MALDI-TOF/MS (m/e) found 4720.50, calcd 4723.68 for [DNA6-H]-1)。
【0099】
DNA7の溶液(10 μM 最終濃度)にMiliQ水、MES緩衝液(pH7),ベンゼンチオール(アセトニトリル溶液、50 μM 濃度)を加えて室温で10分間反応させ、DNA8を得た(MALDI-TOF/MS (m/e) found 4832.31, calcd 4833.71 for [DNA4-H]-1)。
【0100】
[実施例5:ビニルピリミジン誘導体によるRNAクロスリンク反応]
【0101】
【化31】

【0102】
DNA3及びDNA7(5 μM)を5’末端をFAMで標識した相補的なRNAオリゴマー(1 μM)と共にインキュベートし、クロスリンク反応性の評価を行った。反応はpH 8、pH 7及びpH 5の50mM MES-100 mM NaCl緩衝液中37℃で行い、一定時間後にホルムアミドを加えて反応を停止させ、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分析を行った。ゲルの蛍光を測定し、遅い泳動度で観測されるクロスリンク付加体と泳動度の速いRNA鎖を定量して収率を求めた。
【0103】
pH 7における結果を下図に示す。
【0104】
【化32】

【0105】
DNA3のクロスリンク反応はpH 7で20分以内に終了し、非常に高い反応性を示した(下段左)。DNA7は1時間以内に反応が終了した(上段及び下段右)。DNA3及びDNA7ともウラシルに対して高い選択性を示し、塩基選択性はDNA7がより優れていた。
【0106】
[実施例6:スルフィド誘導体によるRNAクロスリンク反応]
スルフォキシド誘導体DNA2及びDNA6を用い、RNAクロスリンク反応を行った。実験条件は実施例5に準じた。
【0107】
【化33】

【0108】
これらの反応では、反応速度が遅く、塩基選択性も低下したが、クロスリンク反応が進行することが示された。
【0109】
【化34】

【0110】
[実施例7: DNAクロスリンク反応の塩基選択性]
ビニル誘導体DNA3及びDNA7について、1本鎖DNAとのクロスリンク反応を行った。実験条件は実施例5に準じた。
【0111】
【化35】

【0112】
その結果、ビニル誘導体DNA3及びDNA7の1本鎖DNAとのクロスリンク反応も、実施例5のRNAが基質である場合と同様に進行し、チミジン選択性を示した。
【0113】
【化36】

【0114】
ビニル誘導体DNA3及びDNA7の1本鎖DNAとのクロスリンク反応もRNA基質と同様に進行し、チミジン選択性を示した。
[実施例8: RNAクロスリンク反応の位置選択性]
DNA3とDNA7のビニルピリジン体の相補的な位置に反応性の低いシトシン塩基を有し、その3’側又は5’側にずれた位置に反応性のウラシル塩基を有するRNA基質を用いて、クロスリンク反応を行った。実験に用いた基質の塩基配列の詳細を下図に示した。実験条件は実施例5に準じた。
【0115】
【化37】

【0116】
その結果、DNA3とDNA7いずれも場合もウラシルが相補的な位置にあるときに高い反応性を示し、1塩基でもずれた場合には反応性は大きく低下しており、高い位置選択性が示された。
【0117】
【化38】

【0118】
[実施例7:2本鎖DNAに対するクロスリンク反応]
3’末端をFAMで標識したピリミジン鎖と非標識のプリン鎖とからなる2本鎖DNA、及び5’末端をFAMで標識したプリン鎖と非標識のピリミジン鎖とからなる2本鎖DNAを用い、FAMで標識したDNA鎖のクロスリンク反応を検討した。
【0119】
【化39】

【0120】
2本鎖DNA(1 μM)とDNA3(5 μM)をインキュベートし、クロスリンク反応性の評価を行った。反応はpH 7及びpH 5の50mM MES-100 mM NaCl-10 mM MgCl2緩衝液中、30℃で行い、一定時間後にホルムアミドを加えて反応を停止させ、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分析を行った。ゲルの蛍光を測定し、遅い泳動度で観測されるクロスリンク付加体と泳動度の速いRNA鎖を定量して収率を求めた。
【0121】
その結果、3本鎖形成が可能なpH 5において、かつプリン鎖中にアデニンがある配列でのみクロスリンク反応が起こり、高い選択性で3本鎖形成クロスリンク反応が起こることが確認された。この場合も反応は30分以内に終了した。
【0122】
【化40】

【0123】
このクロスリンク反応は、プリン鎖にアデニン、ピリミジン鎖にチミンの組み合わせでのみ観測され、またFAM標識プリン鎖を用いた場合にのみ、クロスリンクバンドが観測された。これらは、ビニル化ピリミジン誘導体が3本鎖中でプリン鎖中のアデニンと効果的に接近し、選択的なクロスリンク反応が起こっているとことを示している。
[実施例8: DNAクロスリンク付加体の構造決定]
実施例7のチミジンとのクロスリンク2本鎖を単離し、酵素加水分解(BAP (bacterial alkaline phosphatase、VPDE (venome phosphodiesterase, BAP buffer, 37℃)を行い、生成したヌクレオシドをHPLC(Column: Shiseido C18, 4.6x250 mm; solvents: A, 50 mM HCOONH4, B CH3CN, linear gradient B 10% to 15%/20 min, monitored at 254 m )で成分を分析した。
【0124】
【化41】

【0125】
クロスリンク反応においては、酸性中(50mM MES-100 mM NaCl buffer, pH 5)とアルカリ性中(carbonate-1 M NaCl buffer, pH 8.0)では付加体の構造が違うことが分かった。HPLCによる比較ではアルカリ性中の付加体は標準物質Aと一致することが分かった。なお、標準物質Aは別途モノマーから合成したものでHMBC相関からN4-クロスリンク体であることが明らかとなった。一方、酸性中での生成物は、もう一つの可能性であるO4-クロスリンク体かあるいは、それを中間体とする構造変異体であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式:
【化1】

で表される、化合物(式中、
R1は、H、C1〜12アルキル、又はC1〜12アリールであり;
R2は、H、OH、又はC1〜12アルコキシであり;
Xは、H、水酸基保護基、又は5〜22塩基長のオリゴヌクレオチドであり;
Yは、H、水酸基保護基、又は2〜8残基長のオリゴヌクレオチドである。)。
【請求項2】
Xが、5〜22塩基長のオリゴヌクレオチドであり;
Yが、2〜8残基長のオリゴヌクレオチドである人工核酸である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R1が、H、又はメチルであり;
R2が、Hである、請求項2に記載の人工核酸。
【請求項4】
次式:
【化2】

で表わされる化合物(式中、
R1は、H、C1〜12アルキル基、又はC1〜12アリール基であり;
R2は、H、OH、又はC1〜12アルコキシであり;
R3は、C1〜12アルキル、又はC1〜12アリールであり;
Xは、H、水酸基保護基、又はオリゴヌクレオチドであり;
Yは、H、水酸基保護基、又はオリゴヌクレオチドである。)。
【請求項5】
Xが、5〜22塩基長のオリゴヌクレオチドであり;
Yが、2〜8残基長のオリゴヌクレオチドである人工核酸である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
R1が、H、又はメチルであり;
R2が、Hであり、
R3が、-(CH2)7CH3、又はフェニルである請求項5に記載の人工核酸。
【請求項7】
次式:
【化3】

で表される化合物
【請求項8】
Xが、5〜22塩基長のオリゴヌクレオチドであり;
Yが、2〜8残基長のオリゴヌクレオチドである人工核酸である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
R1が、H、又はメチルであり;
R2が、Hであり、
R3が、-(CH2)7CH3、又はフェニルである請求項8に記載の人工核酸。
【請求項10】
請求項3、6又は9に記載の人工核酸とRNA又はDNAとを反応させ、人工核酸とRNA又はDNAとの間に化学架橋を形成してなる連結物を得る工程を含む、人工核酸-RNA連結物又は人工核酸-DNA連結物の製造方法。
【請求項11】
人工核酸とRNAとを反応させ、人工核酸-RNA連結物を得る、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
人工核酸と二本鎖DNAとを反応させ、人工核酸-日本鎖DNA連結物を得る、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項3、6又は9に記載の人工核酸とRNA又はDNAとを反応させ、人工核酸とRNA又はDNAとの間に化学架橋を形成させる工程を含む、RNA又はDNAの制御方法。

【公開番号】特開2013−31395(P2013−31395A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168737(P2011−168737)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本薬学会 第131回年会(静岡) 発表要旨「RNAを標的とした高反応性クロスリンク核酸の開発」
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】