説明

DNA変異原性ダメージの修復

UV誘発性DNA変異原性ダメージから皮膚を保護する方法であって、1またはそれ以上のエクオル、デヒドロエクオル、イソフラブ−3−エンおよびイソフラバン化合物を皮膚的に許容される担体と混合して投与することを含む方法が記載されている。皮膚癌の形成を防止する方法も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明はエクオル、デヒドロエクオルならびにイソフラブ−3−エンおよびイソフラバン化合物のDNA変異原性ダメージの修復の促進における使用に関する。
【0002】
(従来技術)
メタロチオネイン(MT)は、DNAダメージ物質、例えばUVRに応答して合成または過剰に発現される蛋白である(Hansenら、1997)。動物および組織培養での実験では大抵、高線量の放射線を用いてMTを誘発させており、これらの結果をヒトでの低レベルまたはUVRに繰返し暴露した場合に当てはめることは困難である(Caiら、1999)。MTの誘導的合成は低線量のUVRの暴露に対する適応反応と関連付けられる機構の一つとして考えられており、高レベルのMTは、おそらく、皮膚にあるROSを取り除くことを介して、UVRからの保護と関係しているようである(Hanadaら、1992)。その上、MT=IおよびIIノックアウトマウスにて明らかにされるように、MTはUVRの細胞介在応答に対する免疫抑制作用に拮抗する保護と関連付けられる(Reeveら、2000)。UVRは、p53を光伝導させると同時に、角化細胞および真皮線維芽細胞にて免疫組織化学的に検出可能なMTを誘発し、このことはこれらの蛋白系が機能において保護的かつ優待的であることを示唆する。MTはUV暴露の2時間後から真皮線維芽細胞にて検出可能である(Ansteyら、1996)。
【0003】
エクオル、デヒドロエクオル、イソフラブ−3−エンおよびイソフラバン化合物およびそれら化合物の製法が、出典明示により本明細書の一部とされる、同時係属の国際特許出願PCT/AU03/00427およびWO98/08503に記載されている。
皮膚に暴露されたUVはDNAにダメージをもたらし、発癌を引き起こす可能性がある。ヒトにおいて最も一般的な腫瘍が基底細胞癌(BCC)であり、つづいて扁平上皮癌(SCC)であって、稀なものとして悪性黒色腫が挙げられる。
【0004】
この度、出願人は、本発明の化合物が、皮膚に塗布された場合に、皮膚、特に放射線照射された皮膚の基底層にてメタロチオネインの産生向上をもたらすことを見出した。
上記したように、メタロチオネインはUV暴露に付された皮膚のDNA変異原性ダメージの修復に影響を及ぼしてその修復を容易にする。
本発明によれば、エクオル、デヒドロエクオル、イソフラブ−3−エンおよびイソフラバン構造物の、UV暴露に伴うDNA変異原性ダメージから皮膚を保護するための使用が提供される。
【0005】
もう一つ別の態様において、エクオル、デヒドロエクオル、イソフラブ−3−エンおよびイソフラバン構造物の、皮膚、特に皮膚の基底層にてメタロチオネインを過剰に発現させるための使用が提供される。
本発明のもう一つ別の態様によれば、UV誘発のDNA変異原性ダメージから皮膚を保護する方法であって、1またはそれ以上のエクオル、デヒドロエクオル、イソフラブ−3−エンまたはイソフラバン化合物を皮膚的に許容される担体と混合して含有する組成物を皮膚に塗布することを含む方法が提供される。
【0006】
イソフラブ−3−エンおよびイソフラバン化合物は、その医薬上許容される塩および誘導体を含め、一般式(II):
【化1】

【0007】
[式中
、R、RおよびRは独立して水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、OS(O)R10、CHO、C(O)R10、COOH、CO10、CONR1112、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルコキシアリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロまたはハロであるか、あるいは
【0008】
およびRは上記したとおりであり、RおよびRはそれらの結合する炭素原子と一緒になって
【化2】

から選択される5員環を形成するか、
【0009】
およびRは上記したとおりであり、RおよびRはそれらの結合する炭素原子と一緒になって
【化3】

から選択される5員環を形成するか、または
【0010】
およびRは上記したとおりであり、RおよびRはそれらの結合する炭素原子と一緒になって
【化4】

から選択される5員環を形成し、
【0011】
、RおよびRは独立して水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、OS(O)R10、CHO、C(O)R10、COOH、CO10、CONR1112、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロまたはハロであり、
は水素、ヒドロキシ、アルキル、アリール、アミノ、チオ、NR1112、CONR1112、C(O)R13(R13は水素、アルキル、アリール、アリールアルキルまたはアミノ酸である)またはCO14(R14は水素、アルキル、ハロアルキル、アリールまたはアリールアルキルである)であり、
はアルキル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル、C(O)R13(R13は上記したとおりである)またはSi(R15(R15は、各々独立して、水素、アルキルまたはアリールである)であり、
【0012】
10は水素、アルキル、ハロアルキル、アミノ、アリール、アリールアルキル、アミノ酸、アルキルアミノまたはジアルキルアミノであり、
11は水素、アルキル、アリールアルキル、アルケニル、アリール、アミノ酸、C(O)R13(R13は上記と同じである)またはCO14(R14は上記と同じである)であり、
12は水素、アルキルまたはアリールであるか、あるいは
11およびR12はそれらの結合する窒素と一緒になってピロリジニルまたはピペリジニルを形成し、
線図「−−−」は単結合または二重結合、好ましくは二重結合を意味し、
Tは独立して水素、アルキルまたはアリールであって、
XはO、NR12またはS、好ましくはOである]
で示すことができる。
【0013】
エクオルは、R、R、R、R、R、RおよびRが水素であり、Rがヒドロキシであり、XがOであり、そして「−−−」が単結合である場合の式(II)の化合物に相当する。デヒドロエクオルは、R、R、R、R、R、RおよびRが水素であり、Rがヒドロキシであり、XがOであって、そして「−−−」が二重結合である式(II)の化合物に相当する。
【0014】
皮膚的に許容される担体およびローションは当該分野にて周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、Gennaro A.、第18版、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990、14921517頁に記載されている。皮膚科学的に許容されるいずれの担体も本発明の組成物に用いることができる。本明細書中で用いる場合の「皮膚科学的に許容される担体」とは、ビヒクル、希釈体、担体をいい、皮膚用の組成物における使用が知られている、アジュバント、添加物または賦形剤を含むこともできる。本発明の組成物として、クリーム、軟膏、溶液、スティック、ワイプ、クレンザーおよび/またはゲルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の化合物は適当な担体と単に混合、混和またはブレンドされ、皮膚への塗布に適する組成物を得ることができる。皮膚的に許容される担体は1またはそれ以上の日焼け防止剤を包含しうる。日焼け防止剤は紫外線を遮断するのに通常使用される物質を包含する。代表的な化合物として、シンナメート、PABA、サリチレートが挙げられる。例えば、オクチルメトキシシンナメートおよび2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(オキシベンゾンとしても知られている)を用いることができる。オクチルメトキシシンナメートおよび2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンは、各々、商品名:パーソル(Parsol)MCXおよびベンゾフェノン(Benzophenone)−3の下で市販されている。利用される日焼け防止剤の正確な量は希望する太陽のUV照射からの保護の程度に応じて変化しうる。
【0015】
好ましい態様において、1またはそれ以上の式(II)の化合物は化粧用製剤に処方される。化粧用処方の一例として、クリーム、ゲル、粉末、ペースト、ケーキなどが挙げられる。典型的には、かかる化粧品は「メイクアップ」および/またはファウンデーション(典型的には、皮膚を滑らかで平坦なものとし、着色化粧品の基剤として用いられる)ということもできる。
【0016】
式(II)の化合物は0.001%から100%まで、好ましくは0.1%から20%まで、最も好ましくは0.1%から10%w/wまでの量にて組成物に用いることができる。例えば、該組成物は、20マイクロモルないし400マイクロモルなどの1マイクロモルないし500ミリモルのエクオルまたは式(II)の他の化合物を含んでいてもよい。組成物の残りは、当該分野にて周知の1またはそれ以上の皮膚科学的に許容される担体および賦形剤を含むであろう。1またはそれ以上の化合物を組成物に利用することができる。エクオルとデヒドロエクオルが特に好ましい。太陽に曝される前に、間におよび/または後に、組成物を皮膚に局所投与してもよい。典型的には、約1と500mg/日の間の用量、2と100mg/日の間の用量が好ましい。
【0017】
本発明のもう一つ別の態様によれば、皮膚癌、例えば、基底細胞癌(BCC)、扁平上皮癌(SCC)および悪性黒色腫の形成を処理、改善または防止する方法であって、対象の皮膚に一般式(II)のエクオル、デヒドロエクオルまたはイソフラブ−3−エンまたはイソフラバン化合物を皮膚に塗布することを含む、方法が提供される。
もう一つ別の態様によれば、皮膚、例えば、皮膚の基底層にてメタロチオネイン生成を増加させる方法であって、1またはそれ以上のエクオル、デヒドロエクオルまたはイソフラブ−3−エンまたはイソフラバン化合物を、皮膚的に許容できる担体と一緒に皮膚に塗布することを含む、方法が提供される。
【0018】
出願人は本発明に係る化合物がさらにDNA修復を促進することを見出した。DNA修復の促進は、1またはそれ以上の、シクロブタンピリミジンダイマー(CPD)の修復速度の増加、P53の発現を減少させることによるDNA修復の促進、および/またはメタロチオネイン(MT)の形成の促進によるものである。
CPDの形成はUVR暴露の重大な致命的かつ変異原性の結果であると考えられる(Mitchellら、1989;Liardetら、2000)。動物実験により、表皮のCPD修復と皮膚発癌作用の間に逆の相関関係のあることが明らかにされた(Youngら、1996)。P53蛋白(TP53)はUV照射によるDNAダメージの後で発現する。P53は細胞のG1期からS期への進行を遮断し、かくしてダメージを受けたDNAの複製を妨げる、転写因子である(Campbellら、1993)。P53蛋白は腫瘍促進剤として作用しうる(Murpheyら、2001)。
【0019】
本発明を以下の実施例を用いて説明するが、これに限定されるものではない。
実施例1
エクオルのCPDの誘発に対する効果を、太陽光をシミュレートする紫外線照射(SSUV)に曝した無毛マウス(ヒト皮膚科学的研究のための標準的モデル)の皮膚にて試験した。SSUV後の種々の時点で、背部の皮膚を切り取り、標準的な固定培地(HistoChoice(登録商標)、Amersco Inc、Solon、Ohio、USA)に6時間固定し、処理してパラフィン包埋に付した。クエン酸抗原性復活およびH3抗−ピリミジンダイマー抗体を用いてピリミジンダイマーを免疫組織化学的に検出した。ダイマーポジティブ細胞の数を30フィールド/マウスにて40の倍率で手作業にて計数した。
エクオルローション(エクオルを20μMにて含有する)をSSUVを照射する前に7日間毎日塗布し、その後SSUVの1x3MEDで照射した場合、エクオルの効果はダイマーの初期の誘発を減少させ、24時間でのダイマーの数の減少から明らかなように(表1)、その修復速度を向上させることであった。
【0020】
【表1】

【0021】
SSUV暴露直後(および5日間継続する)のエクオルの塗布は、照射した1日後で(23%の有意な減少)、2日で(42%の有意な減少、データを示さず)ダイマーの有意な減少をもたらした。
エクオルローション(20マイクロモル)をSSUV暴露の前7日間および暴露の後5日間塗布した場合、CPD数の減少は、対照群(ビヒクル単独)と比べて、直ちに、そして1、24および48時間後で自明であった(p<0.05;各々、CPDの数が54%、50%および26%減少した)。
【0022】
実施例2
UV照射の直後、4時間および6時間後に、エクオルを5人のボランティアの皮膚に塗布した。エクオル不含の対照となるローションも用いた。UV照射の24時間後に、皮膚の生検を採り、MTの生成を免疫組織化学的操作を用いて測定した。
【0023】
表2は基底表皮および表層真皮にてMTについてポジティブ染色を示した細胞の数を示す。基底表皮にある細胞のおよそ半分は本質的にベースラインにてMTを発現し、それに対してより表層側の表皮にある細胞はほとんどすべてMTを発現しなかった。2.5MED SSUVに暴露して24時間後に、エクオルで処理したセクションと、ベースローション(ビヒクル)中のDMSOで処理したセクションとの間では基底層の表皮におけるMTの発現には明らかな違いがあった。5人の参加者すべてで、MTの発現はエクオルで処理した皮膚にて高く、大きさにて+4%ないし+21%の範囲の違いがあった。
【0024】
【表2】

【0025】
注意:「ベースライン」とは、2.5MED SSUVに暴露する前に採取したパンチ生検から由来の皮膚セクションをいう。
「10分」とは、2.5MED SSUVに暴露して10分後に採取したパンチ生検から由来の皮膚セクションをいう。皮膚は200μMのベースローション(ビヒクル)中のDMSOまたはエクオルのいずれでも処理されなかった。
「DMSO」とは、2.5MED SSUVに暴露して24時間後に採取したパンチ生検から由来の皮膚セクションをいう。皮膚はベースローション(ビヒクル)中のDMSOで処理したグリッドからのものであった。
「エクオル」とは、2.5MED SSUVに暴露して24時間後に採取したパンチ生検から由来の皮膚セクションをいう。皮膚は200μMのエクオルで処理したグリッドからのものであった。
最近UV−に暴露した個体の基底および基底層直上の角化細胞におけるMT免疫反応性の増加はエクオルで処理された皮膚にて最も高かった。
【0026】
実施例3
実施例2からの5人のボランティアからの皮膚生検を免疫組織化学を用いてシクロブタンピリミジンダイマー形成について試験した。
表3はCPDに拮抗する抗体でポジティブに染色する細胞の数およびパーセントを表す。これらのデータは、予想どおり、2.5MEDを照射する前には、表皮には基本的にCPDポジティブ細胞はなかったことを示す。しかし、UV暴露の10分後にすべての関係者から採取した皮膚セクションでは、ポジティブ染色細胞の割合が36%(参加者N01DWHおよびN03PPA)から87%(参加者N14GBO)の範囲にある、高レベルのDNAダメージを示した。
UV暴露の24時間後に採取した皮膚セクションは、すべての対象にて、実質的に低レベルのCPDダメージを示した。5人の参加者のうち4人については、エクオルローションで処理した皮膚セクションは、ベースローション(ビヒクル)中のDMSOで処理した皮膚セクションよりもCPD−ポジティブ細胞が割合として少なかった。
【0027】
【表3】

【0028】
注意:「ベースライン」とは、2.5MED SSUVに暴露する前に採取したパンチ生検から由来の皮膚セクションをいう。「10分」とは、2.5MED SSUVに暴露して10分後に採取したパンチ生検から由来の皮膚セクションをいう。皮膚は200μMのベースローション(ビヒクル)中のDMSOまたはエクオルのいずれでも処理されなかった。
「DMSO」とは、2.5MED SSUVに暴露して24時間後に採取したパンチ生検から由来の皮膚セクションをいう。皮膚はベースローション(ビヒクル)中のDMSOで処理したグリッドからのものであった。
「エクオル」とは、2.5MED SSUVに暴露して24時間後に採取したパンチ生検から由来の皮膚セクションをいう。皮膚は200μMのエクオル含有のローションで処理したグリッドからのものであった。
【0029】
すべての参加者からのデータを集め、エクオルで処理した皮膚セクションは24時間でCPDのダメージは中程度に低いレベルであったことがわかる。
【0030】
実施例4
実施例2の5人のボランティアから由来の皮膚生検をUV照射後のP53染色について試験した。結果を表4に示す。
【表4】

【0031】
注意:「ベースライン」とは、2.5MED SSUVに暴露する前に採取したパンチ生検から由来の皮膚セクションをいう。
「10分」とは、2.5MED SSUVに暴露して10分後に採取したパンチ生検から由来の皮膚セクションをいう。皮膚は200μMのベースローション(ビヒクル)中のDMSOまたはエクオルのいずれでも処理されなかった。
「DMSO」とは、2.5MED SSUVに暴露して24時間後に採取したパンチ生検から由来の皮膚セクションをいう。皮膚はベースローション(ビヒクル)中のDMSOで処理したグリッドからのものであった。
「エクオル」とは、2.5MED SSUVに暴露して24時間後に採取したパンチ生検から由来の皮膚セクションをいう。皮膚は200μMのエクオルで処理したグリッドからのものであった。
【0032】
予想どおり、いずれの参加者についても2.5MEDで照射する前に表皮にはP53を発現する細胞は本質的に存在しなかった。同様に、UVに暴露した10分後の参加者より採取した皮膚セクションは、文献によれば、取るに足らないレベルのP53を示した。
UVに暴露した24時間後に摂取した皮膚セクションは、対象すべてにおいて、実質的に高いレベルのP53を示した。上面および/または基底表皮でのP53発現のパーセントはエクオルで処理した対象の5人のうち4人で減少した。例えば、N13PDOおよびN14GBOの対象において、P53染色のパーセントはビヒクル対照と比較して有意に(一般に50%以上)減少した。
【0033】
結論
これらの実験にて評価される生物指標は、(UV誘発のDNA変異性ダメージと直接関連する)皮膚癌とのその生物学的関連に基づいて選択された。
現在では、UV誘発の酸化ダメージが皮膚癌の潜在的に重要な原因となる要素であると認識されている。MTは、UV暴露に応答して特異的に誘発される抗酸化特性を有する分子である。この実験により、エクオル(式(II)の別の化合物も同様であると考えられる)で処理したヒトの皮膚は、ベースローションで処理した皮膚よりもより多くのMTを誘発するという一貫した証拠が見出された。
CPDはUV照射に暴露した後の分子ダメージの初期のインジケータであり、修復されないと、皮膚細胞のDNAにて固定されている変異をもたらす。かくして、暴露後の処理の一の作用機序はこれらの病変の修復率を上昇させることである。ここで行われた実験はCPD修復が局所的エクオル組成物および式(II)の1またはそれ以上の化合物を含有する他の組成物により向上されうることを示唆する。
【0034】
P53は一般に表皮の皮膚癌にて変異される重要な調節遺伝子であるのは明らかである。さらには、正常な皮膚細胞にて、P53はUV暴露後にアップレギュレートされ、DNAダメージが修復されるまで細胞分裂を防止する。エクオルはこの実験にてP53の発現を調節し、5人の対象のうち4人についてP53を発現する上面表皮または基底表皮における細胞の数を減少させた。
【0035】
この明細書および特許請求の範囲全体を通して、特に記載しない限り、「含む」なる語あるいは「その単数形」または「その動名詞」などの変形は、所定の数または工程あるいは一群の数または工程を含むニュアンスであり、他の数または工程または一群の数または工程を排除するものでないことが理解されよう。
本明細書における従来技術に関連する参考文献は、その従来技術がオーストラリアでの常識の一部を形成すると承認または何らかの形態の示唆をするものではなく、そのように取り上げるべきものではない。
【0036】
関連文献
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Berne, B., J. Ponten and F. Ponten (1998). "Decreased p53 expression in chronically sun-exposed human skin after topical photoprotection." Photodermatology, Photoimmnunology & Photomedicine 14(5-6): 148-53.
Cai, L., M. Satoh, C. Tohyama and M. G. Cherian (1999). "Metallothionein in radiation exposure: its induction and protective role." Toxicology 132(2-3): 85-98.
Campbell, C., A. G. Quinn, B. Angus, P. M. Farr and J. L. Rees (1993). "Wavelength specific patterns of p53 induction in human skin following exposure to UV radiation." Cancer Research 53(12): 2697-9.
Hanada, K., T. Baba, I. Hashimoto, R. Fukui and S. Watanabe (1992). "Possible role of cutaneous metallothioncin in protection against photo-oxidative stress--epidermal localization and scavenging activity for superoxide and hydroxyl radicals." Photodermatology, Photoimmunology & Photomedicine 9(5): 209-13.
【0037】
Hansen, C., E. Ablett, A. Green, R. A. Stunn, I. S. Dunn, D. P. Fairlie, M. L. West and P. G. Parsons (1997). "Biphasic response of the metallothionein promoter to ultraviolet radiation in human melanoma cells." Photochemistrv & Photobiology 65(3): 550-5.
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【0038】
Reeve, V. E., N. Nishimura, M. Bosnic. A. E. Michalska and K. H. Choo (2000). "Lack of metallothionein-I and -II exacerbates the immunosuppressive effect of ultraviolet B radiation and cis-urocanic acid in mice." Immunology 100(3): 399-404.
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
UV誘発性DNA変異原性ダメージから皮膚を保護する方法であって、式(II):
【化1】

[式中
、R、RおよびRは独立して水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、OS(O)R10、CHO、C(O)R10、COOH、CO10、CONR1112、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルコキシアリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロまたはハロであるか、あるいは
およびRは上記したとおりであり、RおよびRはそれらの結合する炭素原子と一緒になって
【化2】

から選択される5員環を形成するか、
およびRは上記したとおりであり、RおよびRはそれらの結合する炭素原子と一緒になって
【化3】

から選択される5員環を形成するか、または
およびRは上記したとおりであり、RおよびRはそれらの結合する炭素原子と一緒になって
【化4】

から選択される5員環を形成し、
、RおよびRは独立して水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、OS(O)R10、CHO、C(O)R10、COOH、CO10、CONR1112、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロまたはハロであり、
は水素、ヒドロキシ、アルキル、アリール、アミノ、チオ、NR1112、CONR1112、C(O)R13(R13は水素、アルキル、アリール、アリールアルキルまたはアミノ酸である)またはCO14(R14は水素、アルキル、ハロアルキル、アリールまたはアリールアルキルである)であり、
はアルキル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル、C(O)R13(R13は上記したとおりである)またはSi(R15(R15は、各々独立して、水素、アルキルまたはアリールである)であり、
10は水素、アルキル、ハロアルキル、アミノ、アリール、アリールアルキル、アミノ酸、アルキルアミノまたはジアルキルアミノであり、
11は水素、アルキル、アリールアルキル、アルケニル、アリール、アミノ酸、C(O)R13(R13は上記と同じである)またはCO14(R14は上記と同じである)であり、
12は水素、アルキルまたはアリールであるか、あるいは
11およびR12はそれらの結合する窒素と一緒になってピロリジニルまたはピペリジニルを形成し、
線図「−−−」は単結合または二重結合、好ましくは二重結合を意味し、
Tは独立して水素、アルキルまたはアリールであって、
XはO、NR12またはS、好ましくはOである]
で示される1またはそれ以上の化合物(その医薬上許容される塩および誘導体を含む)を皮膚科学的に許容される担体と混合して含有する組成物を皮膚に局所的に投与することを含む方法。
【請求項2】
1またはそれ以上の式(II)で示される化合物がエクオルおよびデヒドロエクオルを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
皮膚癌の形成を防止する方法である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
皮膚癌が基底細胞癌、扁平上皮癌および悪性黒色腫から選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
一またはそれ以上のシクロブタンピリミジンダイマーの修復速度の増加、メタロチオネインの形成の促進およびP53発現の減少によって、皮膚をUV−誘発の変異原性ダメージから保護する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
UV暴露の前に、間におよび/または後に、組成物を投与する、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
UV暴露の前に、組成物を投与する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
UV暴露の前および後に組成物を投与する、請求項6記載の方法。
【請求項9】
組成物が20マイクロモルないし500ミリモルの式(II)の化合物を含む、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
式(II):
【化5】

[式中
、R、RおよびRは独立して水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、OS(O)R10、CHO、C(O)R10、COOH、CO10、CONR1112、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルコキシアリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロまたはハロであるか、あるいは
およびRは上記したとおりであり、RおよびRはそれらの結合する炭素原子と一緒になって
【化6】

から選択される5員環を形成するか、
およびRは上記したとおりであり、RおよびRはそれらの結合する炭素原子と一緒になって
【化7】

から選択される5員環を形成するか、または
およびRは上記したとおりであり、RおよびRはそれらの結合する炭素原子と一緒になって
【化8】

から選択される5員環を形成し、
、RおよびRは独立して水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、OS(O)R10、CHO、C(O)R10、COOH、CO10、CONR1112、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロまたはハロであり、
は水素、ヒドロキシ、アルキル、アリール、アミノ、チオ、NR1112、CONR1112、C(O)R13(R13は水素、アルキル、アリール、アリールアルキルまたはアミノ酸である)またはCO14(R14は水素、アルキル、ハロアルキル、アリールまたはアリールアルキルである)であり、
はアルキル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル、C(O)R13(R13は上記したとおりである)またはSi(R15(R15は、各々独立して、水素、アルキルまたはアリールである)であり、
10は水素、アルキル、ハロアルキル、アミノ、アリール、アリールアルキル、アミノ酸、アルキルアミノまたはジアルキルアミノであり、
11は水素、アルキル、アリールアルキル、アルケニル、アリール、アミノ酸、C(O)R13(R13は上記と同じである)またはCO14(R14は上記と同じである)であり、
12は水素、アルキルまたはアリールであるか、あるいは
11およびR12はそれらの結合する窒素と一緒になってピロリジニルまたはピペリジニルを形成し、
線図「−−−」は単結合または二重結合、好ましくは二重結合を意味し、
Tは独立して水素、アルキルまたはアリールであって、
XはO、NR12またはS、好ましくはOである]
で示される1またはそれ以上の化合物(その医薬上許容される塩および誘導体を含む)の皮膚科学的に許容される担体との混合における、UV暴露に伴うDNA変異原性ダメージから皮膚を保護するための局所用組成物を製造するための使用。
【請求項11】
1またはそれ以上の式(II)で示される化合物がエクオルおよびデヒドロエクオルを含む、請求項10載の使用。
【請求項12】
皮膚癌の形成を防止する方法である、請求項10記載の使用。
【請求項13】
皮膚癌が基底細胞癌、扁平上皮癌および悪性黒色腫から選択される、請求項12記載の使用。
【請求項14】
一またはそれ以上のシクロブタンピリミジンダイマーの修復速度の増加、メタロチオネインの形成の促進およびp53発現の減少によって、皮膚をDNA変異原性ダメージから保護する、請求項10記載の使用。
【請求項15】
UV暴露の前に、間におよび/または後に、組成物を投与する、請求項10ないし14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
UV暴露の前に、組成物を投与する、請求項15記載の使用。
【請求項17】
UV暴露の前および後に組成物を投与する、請求項15記載の使用。
【請求項18】
組成物が20マイクロモルないし500ミリモルの式(II)の化合物を含む、請求項10ないし17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
式(II)の化合物のUV暴露に伴うDNA変異原性ダメージから皮膚を保護するための使用。
【請求項20】
組成物が化粧用または日焼け防止用組成物を含む、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
組成物が化粧用または日焼け防止用組成物を含む、請求項10ないし19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
上記した式(II)の1またはそれ以上の化合物を皮膚的に許容される担体または賦形剤と一緒に含む、化粧用または日焼け防止用組成物。
【請求項23】
メイクアップまたはファウンデーション組成物を含む、請求項22記載の化粧用組成物。

【公表番号】特表2006−501252(P2006−501252A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−533066(P2004−533066)
【出願日】平成15年9月5日(2003.9.5)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001152
【国際公開番号】WO2004/022023
【国際公開日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(505081076)ノボジェン・リサーチ・プロプライエタリー・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】NOVOGEN RESEARCH PTY LTD
【Fターム(参考)】