説明

DNA検出用ナノチューブセンサー装置

【課題】特定の標的DNA配列を高感度で迅速に検知する。
【解決手段】ナノチューブ装置は、標的DNA配列用電子センサーとして設計させる。ナノチューブのフィルムは、基板140上の電極を覆うように沈着される。単鎖DNA溶液を、標的DNA配列に対して相補的になるように調製する。このDNA溶液を電極が覆われるように付着させ、乾燥後、付着物を基板から除去する(但し、電極間の領域を除く)。得られる構造体は、対置する電極間のナノチューブに直接的に接触する所望のDNA配列鎖を保有し、標的DNA鎖の存在に対して電気的に応答するセンサーを構成する。ssDNAプローブをナノチューブセンサー装置へ結合させるリンカー基を用いる別のアッセイ態様も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のDNA配列用センサーであって、DNAハイブリッド形成の電子的変換器としてナノチューブを具備する該センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願のクロス・レファレンス
この出願は、米国特許法35U.S.C.119(e)に従って、米国仮出願第60/604293号(出願日:2004年8月24日)及び米国仮出願第60/629604号(出願日:2004年11月19日)に基づいて優先権を主張する出願であり、これらの出願の明細書に開示された内容も本願明細書の一部を成すものである。
【0003】
また、この出願は、米国仮特許出願第60/349670号(出願日:2002年1月16日)に基づいて優先権を主張する米国特許出願第10/345783号(出願日:2003年1月16日)[発明の名称:機能化ナノ構造体を用いる生物学的/化学的作因の電子的検知;公開番号:2003−0134433]の一部継続出願として優先権を主張する出願であり、これらの出願の明細書に開示された内容も本願明細書の一部を成すものである。
【0004】
さらに、この出願は、米国仮特許出願第60/424892号(出願日:2002年11月8日)に基づいて優先権を主張する米国特許出願第10/704066号(出願日:2003年11月7日)[発明の名称:ナノチューブの使用に基づく生体分子の電子的検知;公開番号:2004−0132070(公開日:2004年7月8日)]の一部継続出願として優先権を主張する出願であり、これらの出願の明細書に開示された内容も本願明細書の一部を成すものである。
【0005】
従来技術の説明
ポリヌクレオチド中の塩基配列は遺伝情報をコードするので、これらの配列の解読性は生物工学の多くの進歩に寄与している。この研究によって、医療条件に関連する多くの重要な配列が確認されている。例えば、BRCA遺伝子は、通常は乳癌で患う女性の体内に存在する。医療的検査において、このような関連性を利用する目的で、特定の重要な配列が発現するかどうかを調べるために組織試料を走査する多くの技術が開発されている。これらの技術は、コスト高で、遅く、複雑であるために日常的な医療検査に適用するには不適当であるという難点がある。
【0006】
一般にこれらの技術は、ポリヌクレオチドがハイブリッドを形成するという傾向に依存する。溶液中の短鎖DNA(ssDNA)の鎖は、ssDNA中の各々の塩基と対を形成する反対塩基を含む相補鎖DNA(cDNA)と容易に結合する。この結合の結果、二重鎖DNA(dsDNA)が形成される。dsDNAは加工処理によってssDNAから分離することができる。従って、特定の標的配列を走査するためには、実験者はプローブ配列として適当なcDNAを提供する。標的配列が試料中に存在するときには、標的ssDNAはプローブssDNAとハイブリッドを形成してdsDNAを生成する。このハイブリッド形成はいくつかの方法によって検知することができる。
【0007】
この場合の第1の問題点は、このハイブリッド形成を検知するための多くの方法には、ハイブリッド形成前に試料中のssDNAを変性させる過程が含まれるということに起因する。ssDNAに対して蛍光分子を結合させることがしばしばおこなわれている。標識(label)として知られているこのような分子は光学的機器(例えば、顕微鏡及び分光器等)によるssDNAの検知を可能にする。標識化は、ハイブリッド形成後のDNA試料を検知するために利用されている。標的配列が標識化試料中に存在するときには、標識化されたssDNAは標識化されたdsDNAに組み込まれので、該dsDNAは光学的機器を用いて検知することが可能となる。光学的検知法の利用により、上記方法は簡便なものとなるが、DNAを標識化する化学反応はコスト高で長時間を要する。標識化を必要としない検知法は、日常的な医療検査に対するDNA走査法の有用性を著しく増大させるであろう。
【0008】
第2の問題点は、伝統的な検知法の感度が低いことに起因する。この種の方法の一部の方法は低濃度のDNAに対して感度を示すが、該方法においては、絶対数として多数のDNA分子を必要とする。医療的用途においては、通常は僅かな細胞のみが入手できるにすぎないため、試料中に存在する標的配列のDNA分子は僅かである。この問題は、標的DNAの量を百万倍増幅させることができるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の利用によって改良されている。しかしながら、標識化法の場合と同様に、PCRは複雑な化学反応であるために、検査に要するコストが高くなり、また、時間もかかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このため、当該分野においては、特定の標的DNA配列を高感度で迅速に検知できる技術であって、標識化やPCRを利用しない技術が要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ポリヌクレオチドの特定の標的配列を検出する電子センサー装置であって、ポリヌクレオチドと反応して検出素子として作用するナノ構造素子(例えば、単層及び/又は多層カーボンナノチューブ(carbon nanotube)及び/又は該ナノチューブを含有する連結性網状構造体)を具備する該電子センサー装置に関する。以下に詳述する特定の実施例においては、ナノ構造素子はカーボンナノチューブ、特にカーボンナノチューブがランダムに配列した網状構造体を含有する。これらの実施例においては、該ナノチューブは、検出前に、ssDNAプローブ配列の吸着によって改質される。DNAの標識化は不要である。さらに本発明は、該電子センサー装置の使用方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ここで用いる「ナノ構造体(nanostructure)」という用語は、少なくとも1つの次元が100nmよりも小さく、グラファイト様化学結合を有する結晶性物質から成る少なくとも1つのシートを含有する構造体を意味する。このような構造体としては、特に限定的ではないが、単層ナノチューブ、二層ナノチューブ、多層ナノチューブ及びオニオン状構造体等が例示される。このような結晶性物質の化学的成分としては、特に限定的ではないが、炭素、窒化硼素、二硫化モリブデン及び二硫化タングステンが例示される。
【0012】
簡単化のために、以下に詳述する実施例に含まれるナノ構造体は「ナノチューブ」と呼ぶ。実施態様においては、1又は複数のカーボンナノチューブを含む態様が好ましく、また、1又は複数の単層ナノチューブを含む態様がより好ましい。別の態様においては、本発明の技術的思想を逸脱することなく、ナノ構造センサー中に別のナノ構造体を含有させてもよい。
【0013】
ここで用いる「ナノチューブ網状体(nanotube network)」という用語は、基板上の特定の領域内に配置されたナノチューブのフィルムを意味する。ナノチューブのフィルムは、基板上において該基板に対して実質上平行に配置された少なくとも1つのナノチューブを含有する。このようなフィルムは、相互に平行に配向された多くのナノチューブを含有していてもよい。あるいは、該フィルムはランダムに配向された多くのナノチューブを含有していてもよい。また、該フィルムは基板の選択された領域内に配置された少数のナノチューブを含有していてもよく、また、該フィルムは基板の選択された領域内に配置された多数のナノチューブを含有していてもよい。基板の領域内に配置されるナノチューブの数は、網状構造体の密度と呼ばれる。好ましくは、該フィルムはランダムに配向された多数のナノチューブを含有し、その密度は、電流が網状構造体の特定の領域の一方の側から他方の側へ向かって該網状構造体を通過して(例えば、ナノチューブとナノチューブの接点を経由して)流れるのに充分に高い値にする。
【0014】
基板は、一般的には電気絶縁性表面を含む平坦な物体である。基板の化学的組成としては、特に限定的ではないが、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、ポリイミド及びポリカーボネート等が例示される。本明細書に記載の多くの実施例において、基板は、酸化ケイ素、SiO、及びSiN等をシリコンウェファー又はシリコンチップ上に存在する1又は複数の層、フィルム又は塗膜を含む。
【0015】
ナノチューブ網状体は、伝統的なリソグラフィーを用いる化学蒸着(CVD)法、溶剤懸濁沈着法及び真空蒸着法等によって調製してもよい。この点に関しては、下記の文献を参照されたい:米国特許出願第10/177929号明細書(該明細書はWO2004/040671に対応する);同第10/280265号明細書;同第10/846072号明細書;L.フーら、ナノ・レターズ(2004年)、第4巻、第12号、第2513〜2517頁(「透明な導電性カーボンナノチューブ網状体におけるパーコレーション」)。これらの文献の開示内容も本明細書の一部を成すものである。
【0016】
ナノ構造体素子(例えば、ナノチューブ網状体)の特性は、接触子(contact)を用いて測定してもよい。接触子は、ナノチューブ網状体のようなナノ構造体素子と電気的に接続するように配置させた導電性素子を含む。例えば、接触子は、基板の表面上へ直接的に配置させてもよく、あるいは、ナノチューブ網状体上に配置させてもよい。ナノチューブ網状体を流れる電流は、ナノチューブ網状体の特定の領域内において該網状体と電気的に接続させた少なくとも2個の接触子を用いて測定してもよい。
【0017】
本発明の一部の実施態様においては、ゲート電極又は対電極と呼ばれる付加的な導電性素子が配置される。即ち、該導電性素子は、ナノ構造体素子(例えば、少なくとも1つのナノチューブ)とは電気的に接続せず、ケート電極とナノ構造体素子との間に電気的キャパシタンスが存在するように配置される。
【0018】
好ましい実施態様においては、ゲート電極は、酸化ケイ素の下方の基板内の導電性平面である。この種のナノチューブ電子装置としては、特に下記の文献に記載されているものが例示される:米国特許出願第10/656898号(出願日:2003年9月5日)及び同第10/704066号(出願日:2003年11月7日)(該出願は、US2004/0132070として公開された)。これらの文献の記載内容も本明細書の一部を成すものである。ナノチューブの抵抗、インピーダンス、相互コンダクタンス及びその他の特性は、選定されるか又は可変性のゲート電圧の影響下で測定してもよい。
【0019】
別の好ましい態様においては、ゲート電極は、ナノチューブ構造体と接触した導電性液体と接触する導電性素子である。この態様例は、特に次の文献に記載されており、該文献の開示内容も本明細書の一部を成すものである:ブラッドリーら、Phys. Rev. Lett.、第91巻、第218301頁(2003年)。
【0020】
別の態様においては、電圧を1又は複数の接触子に印加することによって、対電極又はゲート電極に対するナノチューブ網状体中に電場が誘発されるので、網状体のキャパシタンスを測定してもよい。1又は複数のチャンネル相互コンダクタンス特性を測定するための別の又は付加的なセンサー信号として、ゲート電極に対するチャンネルのキャパシタンスを測定するのに適当な回路部品を用いることによって、ナノ構造のチャネル(例えば、ナノチューブ網状体)を有するトランジスターの電源(及び/又はドレイン)及びゲート電極を使用するのが簡便である。キャパシタンス又はその他の特性の測定を最適化するように設定される別の態様も、本発明の技術的思想を逸脱することなく可能である。
【0021】
導電性素子はナノチューブセンサーの電気的特性を観測するための電気回路への接続子を提供する。適当ないずれの電気的特性をセンサーの感度の基礎としてもよく、このような特性としては、電気抵抗、伝導度、電流、電圧、キャパシタンス、トランジスターのオン電流、トランジスターのオフ電流、及びトランジスターの限界電圧等が例示される。当業者であれば、その他の電気的特性を容易に観察し、測定することができる。従って、上記の例示した電気的特性は、測定できる装置特性の種類を限定することを意味するものではない。
【0022】
好ましい実施態様においては、ナノチューブセンサー装置はトランジスターを含む。トランジスターは最大の電導度、即ち、所定範囲のゲート電圧を用いて測定された最も大きな電導度、及び最少の電導度、即ち、所定範囲のゲート電圧を有いて測定された最も小さな電導度を有する。トランジスターは、最大電導度と最小電導度との比であるオン−オフ比を有する。高感度の化学センサーを製造するためには、ナノチューブトランジスターのオン−オフ比は、好ましくは1.2よりも大きな値であり、より好ましくは2よりも大きな値であり、最も好ましくは10よりも大きな値である。
【0023】
例えば、図1に、ナノチューブ電子装置におけるゲート電圧(+10V〜−10V)の関数としての電導度曲線を例示する。約−5V未満のゲート電圧においては、「オン」曲線部分101に比較的高い電導度が発生し、また、約0Vよりも大きなゲート電圧においては、「オフ」曲線部分102に比較的低い電導度が発生する。この装置の場合のオン−オフ比は約100である。
【0024】
本明細書で使用する「DNA」という用語はポリヌクレオチドを意味する。ポリヌクレオチドとしては、特に限定的ではないが、デオキシリボ核酸、リボ核酸、メッセンジャーリボ核酸、転移リボ核酸及びペプチド核酸が例示される。ポリヌクレオチドの明確な特徴は、核酸の鎖と塩基の配列であり、各々の塩基は核酸に化学的に結合し、また、各々の塩基は適合配列(matching sequence)上で適当な塩基と対を形成する。
【0025】
当業者であれば、これらの明確な特徴を有するポリヌクレオチドのその他の変形誘導体を調製することができる。従って、「単鎖DNA」(以下においては、「ssDNA」で表示する)はデオキシリボ核酸、リボ核酸又はその他の前記のポリヌクレオチドの単鎖であってもよい。「相補DNA」(以下においては、「cDNA」で表示する)は、既に言及した単鎖配列に対して相補的な単鎖配列である前記のポリヌクレオチドのいずれの鎖であってもよい。
【0026】
特定の実施態様においては、本発明は、ナノチューブ網状体、1又は複数の接触子、及び該ナノチューブに接触するssDNAを具備するナノチューブセンサー装置を提供する。ナノty−ブと接触するssDNAを調製するためには、複数の方法が利用可能である。1つの実施態様においては、次の文献に記載されている方法に従って、溶液状態のssDNAを懸濁液状態のナノチューブと混合する:M.ツェングら、ネイチャー・マテリアルズ、2003年、第2号、第338頁〜第342頁。得られる溶液は、ssDNA鎖で覆われたナノチューブを含有する。この溶液を基板上に流延させることによって、ssDNAで被覆されたナノチューブを該基板上へ沈着させる。ナノチューブを配置させた後、リソグラフィーと金属沈着の標準的な技術を用いて接触子を調製する。好ましい実施態様においては、ナノチューブ網状体を基板上に配置させ、次いで接触子を調製する。得られる電子装置を、ssDNAを含有する溶液と接触させる。溶液を除去することによって、ssDNAは、基板を被覆することなく、ナノチューブ網状体を被覆する。
【0027】
特定の実施態様においては、ssDNAが、介在するリンカー分子を用いることなく、ナノチューブに直接的に接触する装置が提供される。さらに、ssDNAはナノチューブと接触するが、ナノチューブと接触しない基板上の領域とは接触しない。
【0028】
特定のセンサー装置中のssDNAは、特定の標的配列のためのcDNAになるように選択してもよい。標的配列は、センッサー装置によって検出されるべき塩基配列である。標的配列用のcDNAは、プローブ(probe)配列として知られている。標的配列が特定されたならば、プローブ配列を有する一定量のDNAを入手しなければならない。特定配列を有するDNAの合成及び所定の配列に対して相補的なDNAの合成に関しては種々の技術が知られている。当業者であれば、これらの技術に関する知識を有している。所望の標的配列に対して特異的なプローブを調製するのに適当なcDNA又はその他のポリヌクレオチドは、バイオテクノロジー工業に関連する既知の商業的製造業者から一般的に入手することができる。
【0029】
センサー装置は、試料ssDNAを含有する溶液にナノチューブ網状体を接触させることによって使用してもよい。網状体は、ハイブリッド形成がおこなわれるのに充分に長い時間にわたって該溶液と接触させるべきである。この接触時間は、試料DNAの濃度、該溶液の量、室内の温度、溶液のpH、及びその他の可変要因によって左右される。当業者であれば、DNAのハイブリッド形成に対するこれらの可変要因の効果について精通しており、適当な接触時間、溶液の組成、温度及びその他のハイブリッド形成に関連する条件を過度の実験を伴うことなく選定することができる。
【0030】
センサー装置の種々の使用法について開示する。
1つの実施態様においては、センサー装置の最初の測定は、基板の絶縁体の下方に存在する導電性平面によって印加されるゲート電圧を変化させることによっておこなわれる。次いで、網状体を、試料ssDNAを含有する溶液と上記の時間にわたって接触させる。該溶液を除去した後、基板が実質的に乾燥するために充分な時間にわたって放置する。この放置時間は、乾燥過程を促進する措置を講ずることによって短縮させることができる。例えば、乾燥空気を基板上へ吹き付けてもよい。基板が乾燥した後、ゲート電圧を変化させることによって、センサー装置の測定を再度おこなう。得られる測定結果を最初の測定結果と比較することによって、dsDNAが存在するかどうかを確認する。
【0031】
別の実施態様においては、網状体を純水と接触させることによって基準となるデータを得る。センサー装置の最初の測定は、基板の絶縁体の下方に存在する導電性平面によって印加されるゲート電圧を変化させることによっておこなわれる。次いで、網状体を、純水中に試料DNAを含有する溶液と接触させる。試料DNAが標的DNAを含有する場合には、ハイブリッド形成が経時的におこなわれ、得られるセンサー装置の測定結果は最初の測定結果に比べて変化する。
【0032】
さらに別の実施態様においては、網状体を純水と接触させることによって基準となるデータを得る。センサー装置の最初の測定は、基板の絶縁体の下方に存在する導電性平面によって印加されるゲート電圧を変化させることによっておこなう。次いで、網状体を、ハイブリッド形成を促進するように、温度、pH及び溶解種等の点で調整された緩衝液中に試料DNAを含有する溶液と接触させる。ハイブリッド形成を所定時間おこなった後、網状体を洗浄することによって、ハイブリッド形成しなかったDNAとその他の付着物を除去してもよい。洗浄後、網状体を純水と再度接触させ、測定を再度おこなう。試料DNAが標的DNAを含有する場合には、このDNAのハイブリッド形成によって、最初の測定に比較して特徴的で測定可能な変化がセンサー装置内にもたらされる。
【0033】
さらにまた別の実施態様においては、ハイブリッド形成のために使用した緩衝液と同じ緩衝液中において、基準となる測定をおこなう。次いで、網状体を、ハイブリッド形成用緩衝液中に試料DNAを含有する溶液に接触させる。ハイブリッド形成をおこなった後、測定を繰り返す。試料DNAが標的DNAを含有する場合には、このDNAのハイブリッド形成によって、最初の測定に比較して特徴的で測定可能な変化がセンサー装置内にもたらされる。
【0034】
他の実施態様においては、網状体を導電性液体と接触させる。好ましくは、導電性液体は、生理学的液体に対して適当な緩衝液である。最も好ましくは、導電性液体はリン酸塩緩衝液(PBS)である。センサー装置の最初の測定は、導電性液体と接触する導電性素子によって印加されるゲート電圧を変化させることによっておこなわれる。次いで、網状体を、同じ伝導性液体中に試料DNAを加えた溶液に接触させる。網状体を該溶液に接触させている間に、ゲート電圧を変化させることによってセンサー装置の測定をおこなう。試料DNAが標的DNAを含有する場合には、ハイブリッド形成は経時的におこなわれ、センサー装置について得られた測定結果は、最初の測定結果に比較して変化する。
【0035】
さらにまた別の実施態様においては、電子センサーシステムは、基板を有するセンサープラットホーム、1又は複数の電極、少なくとも1つの電極に電気的に接続する基板に隣接して配置されるナノ構造体素子、及び該電極に接続されると共にセンサープラットホームの1又は複数の電気的特性を測定するように設定された電子的測定用回路部品を具備する。この電子的センサーシステムは、センサープラットホームと作動可能な状態で結合する少なくとも1つの検出プローブを具備する。該プローブは、(a)センサープラットホームと関連して配置されたリンカー基であって、ナノ構造体素子、基板及び電極から選択される1又は複数の部材に接続された該リンカー基、(b)被検体(ポリヌクレオチド)に対して結合親和性を有する検出生体分子、及び(c)リンカー基と検出生体分子との間の結合連結部を具有する。
【0036】
検出生体分子は、ポリヌクレオチドに対して選択的親和性を有する種を含んでいてもよい。このような種としては、相補ポリヌクレオチド、転写因子及び/又は転写プロモータ、合成変種及びこれらの類似体等が例示される。好ましい実施態様においては、検出生体分子は、被検体(ポリヌクレオチド)のヌクレオチド標的配列に対して少なくとも部分的に相補的な少なくとも1つのヌクレオチド配列を有する検出ポリヌクレオチドを含む。詳述する実施例においては、センサーシステムによって、標的配列の少なくとも部分的なハイブリッド形成による被検体(ポリヌクレオチド)とプローブとの結合によって影響を受ける特性が測定される。
【0037】
前記の全てのセンサーの実施態様におけるポリヌクレオチドのハイブリッド形成の発生、速度及び特異性が種々の条件に左右されることに留意すべきである。各々のハイブリッド形成過程においては、dsDNAの結合エネルギーは厳密な技術によって測定することができる。このような測定は、温度を増加させるか、又は緩衝液を、例えば、水酸化ナトリウム等に変更することによっておこなうことができる。
【0038】
付加的な厳密な対照は、ハイブリッド形成媒体の種々のイオン性成分(例えば、ナトリウムイオン又はマグネシウムイオン等)を含有していてもよい。あるいは、又は、さらに、ハイブリッドの形成前、形成中及び/又は形成後において、センサーの素子(例えば、ナノチューブ網状体)に電圧を印加することによって、ポリヌクレオチドの挙動に影響を及ぼしてもよい。例えば、cDNAのようなポリヌクレオチドはホスフェートに基づく骨格を有しており、該骨格は、一般的にはハイブリッド形成媒体中においてはイオン化されており、局在化された負電荷を保有する。選択的に帯電したセンサー素子は、例えば、対応する完全に整合化したプローブの対応するハイブリッドに対してSNP−不整合化プローブのハイブリッドを不安定化させるために、例えば、インキュベーション中又はすすぎ処理中において、牽引性又は反発性の厳密な調節因子を付与するために使用してもよい。
【0039】
厳密な変化をさせることによって、完全または不完全な相補塩基対と鎖との結合を差別化することが可能である。厳密な過程に応答してナノチューブの電気的特性が変化することによって、特に、単一塩基の不整合(SNP)の差別化が可能となる。当業者であれば、標的配列の完全なハイブリッド形成と不完全なハイブリッド形成に対する感度の選択度を得るために、本発明によるセンサーの特定の実施態様の操作を適合させるように、ハイブリッド形成の条件を変化させることができる。
【0040】
例えば、特定の対立遺伝子に対して同型のDNA試料と該対立遺伝子に対して異型の他の比較試料とを区別するためのアッセイにおいては、ハイブリッド形成の厳密な条件を、例えば、温度を変化させることにより調整することによって、同型試料と異型試料との間において明確に異なる装置の測定応答が得られるようにしてもよい。
【0041】
本発明の特徴を有する各々のセンサーの実施態様においては、これらのセンサーはアレイ(array)(例えば、複数の異なる標的DNAフラグメントに対して機能化されたトランジスターセンサーのアレイ)として構築させてもよい。これに関しては、下記の文献を参照されたい:米国特許出願第10/388701号(特許公報US2003−0175161)(発明の名称:ナノ構造体装置アレーの検出感度の修正)。この文献の記載内容も本明細書の一部を成すものである。
【0042】
当業者によるナノチューブセンサー装置のより完全な理解並びに該装置のさらに別の利点及び目的の実現は、以下の好ましい実施態様の詳細な説明を参酌することによっておこなわれる。
【0043】
添付図面を簡単に説明する。
図1は、ナノチューブトランジスター装置に関する例示的な電導度曲線を示す模式図である。
図2は、ナノチューブのランダムな網状構造体を用いたナノチューブセンサーに関する例示的な形態を示す模式図である。
図3は、図2に示す例示的なナノチューブセンサーの模式的な断面図である。
図4は、実施例Aに記載の本発明によるナノ電子センサーの製造法の例示的な工程を示すフローチャートである。
図5は、本発明によるポリヌクレオチドの検出方法の例示的な段階を示すフローチャートである。
図6は、3つの環境下におけるナノチューブ電子装置に関するゲート電圧の関数としての電導度を示すチャートであり、これに関しては、後述の好ましい実施態様の詳細な説明においてさらに記載する。
【0044】
図7Aは、ピレン−DNA接合体を用いる機能化処理及びcDNAを用いる処理に付した後の実施例Bに記載のセンサーの装置特性を示す。
図7Bは、ピレン−DNA接合体を用いる機能化処理、SNP−DNAを用いる処理及びcDNAを用いる処理に付した後の実施例Bに記載のセンサーの装置特性を示す。
図8Aは、本発明の特定の観点による実施態様であって、センサーに結合させた検出プローブを使用する例示的なDNAアッセイの実施態様を示す。
図8B〜図8Fは、本発明の特定の観点による実施態様であって、電子活性なインカレーター(incalator)を使用する別のDNAアッセイの実施態様を示す。
図9A〜図9Dは、本発明の特定の観点による実施態様であって、増幅基を使用する別のDNAアッセイの実施態様を示す
図9E及び図9Fは、本発明の特定の観点による実施態様であって、センサーに検出プローブを結合させる抗体−抗原結合を使用する別のDNAアッセイの実施態様を示す。
図10A〜図10Dは、本発明の特定の観点による2つの別の構造を有するセンサーであって、検出プローブがナノチューブのようなナノ構造体に結合した該センサーを示す。
図11A〜図11Cは、本発明の特定の観点による2つの別の構造を有するセンサーであって、検出プローブがセンサー基板に結合した該センサーを示す。
図12A及び図12Bは、本発明の特定の観点による2つの別の構造を有するセンサーであって、検出プローブがセンサー電極に結合した該センサーを示す。
【0045】
以下においては、本発明の好ましい実施態様についてさらに詳細に説明する。
特定の実施態様においては、標的DNA配列を検出するナノチューブセンサー装置が提供される。この装置は、標的DNAの標識化を必要とせず、標的DNAの存在に対して電子的に応答する。以下の詳細な説明においては、同じ素子を示す数字は、1又は複数の図面に表れる同じ素子を示すために用いられる。
【0046】
図2及び図3において、本発明によるナノチューブDNAセンサー100は、適当な基板140、例えば、縮退的にドープしたシリコンウェーハを具有していてもよい。その他の基板には、例えば、他の半導体、又はセラミック若しくはポリマー等の絶縁性基板が包含される。基板140は、当該分野において知られているように、酸化ケイ素フィルム180を用いて不働態化されていてもよい。
【0047】
所望により、ゲート電極170は、基板の下層中に形成され、適当な導体175を介して接点176へ接続されていてもよい。あるいは、基板は、絶縁層(例えば、SiO層等)によって被覆された導電性基材(例えば、ドープ化ケイ素等)を含有していてもよい(この場合、導電性基材は回路へ接続されて、ゲート電極又は対電極として機能する)。
【0048】
図示する実施例においては、ランダムに配列されたナノチューブの網状体120はケイ素基板140の上部に配置され、また、該装置は、網状体120の上部に配置された交互配置部を有する一対の接点101及び110を具有する。該網状体は該接点対の間に導電性溝を提供する。一般的には長方形の領域130の外側の基板140は、ナノチューブ網状体120からは実質的に開放されている。
【0049】
別の実施態様においては、基板に隣接して配置された1若しくは複数のナノチューブが含まれており、該ナノチューブは1若しくは複数の接点と電気的に接続する。いくつかの実施態様においては、大部分の又は全てのナノチューブは一対の隣接接点対間へ電導状態で延びていてもよい。
【0050】
しかしながら、図示する実施例においてランダムに配置されて相互に連絡されたナノチューブの網状体120においては、全ての又は大多数のナノチューブが1若しくは複数の電極と電気的に接触している必要はない。ナノチューブ間の接点は、網状体を経由する電流若しくは電荷の伝送を可能にする導電性路を提供してもよい。
【0051】
図示する実施例においては、接点101及び110は網状体120の上部に配置される。あるいは、接点を基板140の上部に配置させ、網状体120を接点上に形成させてもよい。
【0052】
1若しくは複数の接点101及び110を配置させてもよく、該接点は、所望により、当該分野において知られているように、不働態被覆層180を有していてもよい。例えば、接点101及び110は1若しくは複数の金属層(例えば、チタン層及び金層等)を具有していてもよい。
【0053】
接点101及び110は、一般的に長方形の領域130の上部に配置された複数の交互配置部を具有していてもよい。この交互配置構造は、接点間のナノチューブフィルムに接触させることができる接点の表面積を増加させる点で有利である。接点の別の配置構造、例えば、いずれかの所望の形態を有する適当な平行ラビリンス(labyrinth)又は対置する接点間にセンサー領域を提供するその他の配置構造であってもよい。領域130の長方形の形態は単なる例示であって、該領域はいずれかの所望の形態を有していてもよい。接点101及び110は、電界効果トランジスター用の電源又はドレイン電極として機能するような構造を有していてもよく、あるいは、抵抗型センサー又は容量型センサーへの接続部材として機能するような構造を有していてもよい。特定の実施態様においては、単一の接点(例えば、101)を用いて、ゲート電極又はその他の対電極に対する網状体120のキャパシタンス又は電界を誘導させることによって、センサー信号を提供するようにしてもよい。
【0054】
接点(101及び110)及び基板140の該接点間以外の部分は遮断材160によって保護してもよい。例えば、エポキシ樹脂又はその他の適当なポリマー材料若しくは樹脂材料を沈着させて遮断層を形成させ、次いで対置する接点101及び110の間の領域部の遮断層をエッチング等によって除去してもよい。
【0055】
複数の単鎖DNA分子150は、いずれかの適当な方法(例えば、以下に説明する方法等)によってナノチューブ膜上に配置させてもよい。該DNA分子は、ナノチューブ膜中のナノチューブへ直接的に付着させてもよく、あるいは該ナノチューブ膜中のナノチューブに近接する基板140の上部に載置させてもよい。別の態様においては、DNA分子を、ナノチューブ膜とDNAとの間の介在物上に配置させてもよい。しかしながら、DNAは、ssDNA鎖と相補ssDNA鎖との間の反応がセンサー100の測定された電気的特性に影響を及ぼすようにするために、ナノチューブ膜へ充分に近接して配置させるべきである。
【0056】
本発明の1つの実施態様においては(実施例A参照)、ssDNAは、介在リンカー分子を使用することなく、ナノチューブと直接的に接触する。さらに、ssDNAはナノチューブと接触するが、ナノチューブと接触しない基板領域とは接触しない。ssDNA分子150は、ナノチューブ膜120の上部以外の基板(140)領域から除去してもよい。
【0057】
特定のセンサー装置中のssDNAは、特定の標的配列に対してcDNAになるように選択される。標的配列は、センサー装置によって検出されるべき塩基配列である。標的配列用のcDNAはプローブ配列として知られている。標的配列が規定されたならば、プローブ配列を有する相当量のDNAを入手しなければならない。規定された配列を有するDNA、及び所定の配列に対して相補的なDNAを合成するためには、種々の技術が知られている。当業者であれば、この種の技術に関する知識を有している。さらに、cDNAは、しばしば市販品として入手することができる。
【0058】
センサー100と同様の複数のナノチューブセンサーを単一の基板上に平行状態で形成させた後、各センサーを分離させてもよいことに留意すべきである。分離される装置は、当該分野において知られているようなチップキャリヤー(chip carrier)中に組み込んだ後、常套の電子工学装置と一体化させることによって、標的となるポリヌクレオチドの検出を可能にする有用な測定装置を製造してもよい。異なる配列に感知する多重センサーを電子装置中に組み込むことによって、種々のポリヌクレオチソ配列を同時に検出できるようにしてもよい。本明細書の開示内容に従って、いずれかの慣用技術を用いることによって、検出機器用の適当な電子工学装置を製造してもよい。
【0059】
図4は、特定のDNA配列用の電子センサーを製造するための方法400における例示的な工程を示す。工程410〜490までは、いずれの操作順におこなってもよい。
【0060】
工程410において、ゲート電極は基板(例えば、不動態化ケイ素若しくはその他の半導性基板)又はセラミックやポリマー材料等の半導性基板の上部に形成させてもよい。該電極は金属又はその他の導電性材料を含有していてもよく、また、該電極は、当該分野において知られている写真印刷法とリフトオフ(lift-off)法、又はその他の適当な方法によって形成させてもよい。特定の態様においては、ゲート電極は、適当な回路に接続されたバルク状のケイ素基板ウェーハ材料を含有する。
【0061】
工程420において、基板(及びゲート電極が含まれるときには、埋設されたゲート電極)は不動体化層又は絶縁層、例えば、当該分野において知られているような酸化ケイ素層によって被覆されてもよい。
【0062】
工程440においては、1又は複数のナノチューブが、対置する各々の接点と電気的に接続した状態で基板中に配置される。例えば、基板140は、先に言及した米国特許出願第10/177929号に記載されているようにして、ランダムに網状配置されたカーボンナノチューブによって被覆されてもよい。あるいは、接点間にナノチューブを形成させるために当該分野において知られているその他の方法を使用してもよい。得られるナノチューブは特定の様式で配置させてもよく、あるいはランダムに配置させてもよい。ランダム配置の場合には、ナノチューブは、少なくとも1つの経路を介して対置する接点を連結する連結ナノチューブによる網状構造体を提供すべきである。ナノチューブは、対置する接点間以外の領域においては、いずれかの適当な方法(例えば、プラズマエッチング法)によって、基板から除去すべきである。
【0063】
工程430において、一対の対置する接点(例えば、電源とドレイン電極)を基板上に形成させてもよい。接点はナノチューブの上方に配置させてもよく、あるいはナノチューブと基板の間に配置させてもよい。例えば、チタン接点を形成させ、写真印刷法とリフトオフ法を用いて該接点を金層で被覆することによって対置接点を形成させてもよい。このような接点は、いずれかの所望の形態を有する中間領域上に配置される複数の交互配置部分を含んでいてもよい。
【0064】
工程450において、所望により、遮断材から成る層を該接点上に配置させてもよい。当該分野においては、種々のポリマーと樹脂が知られており、これらは適当な遮断材を含有していてもよい。本発明の1つの実施態様においては、エポキシ被覆材を使用してもよい。遮断材は基板の特定の領域のみに適用してもよく、あるいは、遮断材を基板全体に適用した後、センサーの操作領域(例えば、接点間領域)に対応する領域から遮断材を除去してもよい。遮断材によって電気絶縁性を付与し、これによって、導電性流体と接触したときの短絡を防止してもよく、あるいは、環境に曝されることからセンサーを保護してもよい。遮断材は、他の物質(特に限定的ではないが、ナノチューブ及びDNA分子を含む)の沈着を制御するために役立ててもよい。いずれの数の遮断層を使用してもよい。
【0065】
工程460においては、オリゴヌクレオチド(ssDNA)の溶液を調製してもよい。所望のssDNA(「プローブ配列」)は市販品から入手してもよく、あるいは当該分野における既知の方法によって合成してもよい。プロ−ブ配列の水溶液又は有機溶剤溶液は適当な濃度で調製してもよい。例えば、10−4M濃度の溶液は、オリゴヌクレオチド100,000ピコモルを純水(18MΩ)1000μLに溶解させることによって調製してもよい。ssDNAと相溶性のあるその他の溶剤を使用してもよい。ssDNAの沈着の前に、センサー装置の電気的特性を基準として適宜記録してもよい。
【0066】
工程470においては、オリゴヌクレオチド溶液は、センサー装置の活性領域130上に塗布してもよい。例えば、DNA溶液の液滴を領域130上のチップに置いてもよい。次いで、該溶液を乾燥させてキャリヤーを蒸発させることによって、ssDNAを無傷の状態で残存させてもよい。例えば、該チップを室温の加湿チャンバー内に乾燥するまで放置してもよい。次いで、チップを該チャンバーから取り出し、純水(18MΩ)ですすいだ後、乾燥窒素流で風燥させる。
【0067】
工程490においては、過剰のssDNAを除去してもよい。この除去処理は、上記のようなすすぎ処理と風乾処理によっておこなってもよい。過剰のssDNAが基板のその他の領域に付着しているときには、より強力な方法(例えば、エッチング法)を使用してもよい。あるいは、過剰のDNAは、それによってセンサーの操作が妨げられないときには、そのまま放置してもよい。
【0068】
センサー装置の電気的特性を再度測定し、上記の基準特性と比較してもよい。ssDNAが首尾よく沈着されるならば、電気的特性の変化が観測されるべきである。測定してもよい特性には、例えば、センッサーのゲート電圧、電導度、抵抗、又はこれらの組合せ、これらの特性若しくはその他の電気的特性に関連する曲線若しくはヒステリシス等が含まれる。
【0069】
図5は、本発明によるセンサー装置の使用方法500の例示的な工程を示す。センサーの使用法は、実質的には、試料ssDNAを含有する溶液をナノチューブの網状構造体に曝した後、センサーの電気的特性の変化を測定することからなる。工程510においては、試料は、当該分野において既知の方法によって調製される。例えば、DNAは、患者の細胞から溶解によって抽出してもよい。二重鎖DNAは、当該分野において既知の方法によってssDNAまで還元させるべきである。充分に多量のDNA試料が入手できる場合には、DNAの濃度を高めるためのPCR法の使用を回避することが可能である。本発明によるセンサーは、著しく少容量(例えば、100μL未満)の試料を用いて操作することができるので、場合によっては、PCR法の使用を省略してもよい。
【0070】
工程520においては、センサーは試料溶液に曝される。該溶液中でのセンサーの放置時間は、ナノチューブの網状構造体上の少なくとも1個のssDNA分子と溶液中の相補ssDNA分子との間にハイブリッド形成が発生するのに充分な時間にすべきである。この放置時間は、試料DNAの濃度、溶液の量、室内の温度、溶液のpH及びその他の変数によって左右される。当業者であれば、DNAのハイブリッド形成に対するこれらの変数の効果については熟知しているので、適当な放置時間を選定することができる。
【0071】
工程530においては、センサーの電気的応答が測定される。センサーの構造形態に応じて種々の異なる特性が利用可能である。1つの実施態様においては、基板の絶縁体の下部に存在する導電性平面によって印加されるゲート電圧を変化させることによって、センサー装置の最初の測定がおこなわれる。次いで、網状構造体を、前記の時間にわたって試料ssDNAを含有する溶液に曝した後、溶液を除去し、さらに、基板が実質的に乾燥するのに充分な時間にわたって放置する。この放置時間は、乾燥過程を促進する措置を講ずることによって短縮させてもよい。例えば、乾燥空気を基板上へ吹き付けてもよい。基板が乾燥したならば、ゲート電圧を変化させることによって、センサー装置の測定を再度おこなう。得られる測定結果を最初の測定結果と比較することによって、dsDNAの存在の有無を確認する。
【0072】
別の実施態様においては、網状構造体を純水に曝す。基板の絶縁体の下部に存在する導電性平面によって印加されるゲート電圧を変化させることによって、センサー装置の最初の測定がおこなわれる。次いで、網状構造体を、純水中に試料DNAを含有させた溶液に曝す。網状構造体が該溶液中に曝されている間に、ゲート電圧を変化させることによってセンサー装置の測定をおこなう。試料DNAが標的DNAを含有する場合には、ハイブリッド形成が経時的におこなわれ、センサー装置において得られる結果は、最初の測定結果と比較して変化する。
【0073】
さらに別の実施態様においては、網状構造体を導電性液体に曝す。好ましくは、導電性液体は、生理的液体に対して適当な緩衝液であり、最も好ましい導電性液体は燐酸塩緩衝液(PBS)である。導電性液体と接触する導電性素子によって印加されるゲート電圧を変化させることによって、センサー装置の最初の測定をおこなう。次いで、網状構造体を、同じ導電性液体中の試料DNA溶液に曝す。網状構造体が該溶液に曝されている間に、ゲート電圧を変化させることによってセンサー装置の測定をおこなう。試料DNAが標的DNAを含有している場合には、ハイブリッド形成が経時的におこなわれ、センサー装置について得られた測定結果は、最初の測定結果と比較して変化する。
【0074】
工程540においては、測定された電気的応答を標的種と相関させることによって、肯定的結果又は否定的結果が決定される。例えば、遺伝子試験においては、標的配列の存否が決定される。センサーと標的遺伝子との間の反応によれば、所定型のセンサーによって一定した再現性のある結果がもたらされるべきである。従って、同じ型のセンサーに対しては、肯定的な結果若しくは否定的な結果、及び信頼度は、特定のセンサーの応答と統計的な対照データとの比較に基づいてもよい。結果における信頼性は、多数のセンサーを同時に使用する多数の測定によって高めてもよい。
【実施例】
【0075】
実施例A
先に言及した米国特許出願第10/177929号に記載のようにして、一般的には前述の記載に従って、二酸化ケイ素膜を有する縮重的にドープ化したケイ素ウェーハを、ランダムな網状形態のカーボンナノチューブで被覆した。金接点(厚さ:120nm)で被覆したチタン接点(厚さ:30nm)を写真印刷法とリフトオフ法によって沈着させてパターンを形成させることによって、対置接点を形成させた。これらの接点の各々は、一般的には長方形状の領域にわたって配置された複数の交互配置部を含む。ランダムに配列されたナノチューブの網状構造体はケイ素基板上に亘って配置される。網状構造体中のナノチューブは、接点の交互配置部と電気的に接触する。接点の沈着後、一般的には長方形状の領域の外側のナノチューブを酸素プラズマエッチングによって除去し、残りのナノチューブの網状構造体を残存させる。一般的には交互配置された接点間に介在させたナノチューブの網状構造体と金属電極を交互に配置させて併用することによって、電極を横切って平行に接続された多数のナノチューブがもたらされる。
【0076】
ダイはウェーハから分離されて標準的な40−ピンのチップキャリヤー中に設置され、チップ上に交互配置されたワイヤとチップキャリヤー上の接点はワイヤによって連結される。パッケージ上のワイヤと接点のパッドはエポキシ樹脂によって被覆され、該樹脂は硬化される。このようにして調製されたパッケージ中のチップはアセトン、イソプロパノール及び脱イオン水を用いてすすいだ後、最後に純水(18MΩ)ですすいだ。
【0077】
オリゴヌクレオチド(5’−CCT AAT AAC AAT−3’)の10−4M溶液を、該オリゴヌクレオチド84500p mole を純水(18MΩ)(ナノピュア・インフィニティUVウォーターシステム社製)845μLに溶解させることによって調製した。前記のようにして調製したチップの測定を、絶縁体の下部の導電性面によって印加されたゲート電圧を変化させることによっておこなった。得られた曲線を図6において600で示す。DNA溶液20μLを含有する液滴をチップ上に載せた。このチップを、室温下の湿潤チャンバー内に12時間放置した。次いで、チップを湿潤チャンバーから取り出し、純水(18MΩ)ですすいだ後、乾燥窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。チップの測定は、ゲート電圧を変化させることによっておこなった。得られた曲線を図6において610で示す。この曲線は、センサーとして使用するために調製されたセンサー装置の特性を示す。この段階では、ナノチューブの網状構造体は、プローブ配列を有するssDNAと接触している。電子的測定に対するssDNA被覆層の効果によって、曲線610は曲線600の左側へシフトする。
【0078】
ナノチューブとプローブssDNAとの接触を証明するために、標識化したssDNAを用いてチップを調製した。標識化ssDNAは好ましい実施態様においては不必要であるが、ここでは証明のためにのみ説明する。オリゴヌクレオチド(5’−HS−(CH−CCT AAT AAC AAT−フルオレセイン−3’)の10−5M溶液(溶媒:18MΩ純水)を、レセプターDNA配列として調製した。チップをこの溶液中に一夜曝し、すすぎ処理に付した後、窒素ガスを用いて乾燥させた。このチップの光学蛍光顕微鏡写真を観察したところ、ナノチューブの網状構造体が存在する特定の領域のみに緑色のフルオレセイン標識が明るい領域として出現したが、基板のその他の領域には該標識は出現しなかった。このことは、レセプターDNA鎖がセンサーのナノチューブへ結合したことを証明する。
【0079】
次に、濃度が10−4Mの標的DNA、即ち、レセプターDNA鎖に対して相補的なオリゴヌクレオチド5’−ATT GTT ATT AGG−3の溶液を、該オリゴヌクレオチド132000p mole を純水(18MΩ)1320μLに溶解させることによって調製した。この溶液を用いて、標的DNAの希釈溶液(10−8M)を調製した。室温下の湿潤化チャンバー内において、チップをこの溶液の液滴(20μL)に1時間曝した。チップを該チャンバー内から取り出し、純水(18MΩ)ですすいだ後、乾燥窒素を吹き付けて乾燥させた。
【0080】
得られた曲線を図6において620で示す。この曲線は、プローブDNAと標的DNAによるハイブリッド形成の結果を示す。電子的測定における標的DNAのハイブリッド形成の効果により、曲線620は曲線600の右側へシフトした。
【0081】
実施例B
この実施例においては、単一塩基不整合DNAを検出するためのカーボンナノチューブ装置の非共有結合的な化学的機能化について説明する。
B−1:概要
本発明による1つの実施態様においては、ナノチューブセンサーは、単鎖DNA(ssDNA)によって機能化されたカーボンナノチューブ網状構造体電界効果トランジスター(「NTFET」又は「NTNFET」)を具備する。特定の実施態様においては、ssDNAは、カーボンナノチューブに非共有結合的に結合したポリマー及びポリ芳香族分子を介してNTFET装置に不動化させてもよい。相補的単鎖DNA(cDNA)及び単一塩基不適合単鎖DNA(sbmDNA)に対する電子的応答における有意差を測定してもよい。この例示的なセンサーは下記の構造、素子及び機能を含む。
【0082】
a)単数又は複数のカーボンナノチューブFET装置であって、少なくとも電源とドレイン電極との間に導電性溝が形成されるように配置された単一のナノチューブ及び/又はナノチューブの網状構造体を具備する該装置。
b)FET構造体はボトムゲート電極、及び/又は液状ゲート電極を具有していてもよい。
c)ポリマー及び/又は芳香族リンカー分子は非共有結合的にカーボンナノチューブに結合する。
d)ssDNAはリンカー分子と化学的に結合してプローブを形成する。
e)操作中においては、相補的なcDNAがセンサーに曝されると、該DNAはプローブとハイブリッドを形成し、これによって装置の電気的特性に測定可能な効果がもたらされる。
f)単一塩基不適合sbmDNAがセンサーに曝されると、該DNAはプローブとハイブリッドを形成し、これによって測定上異なった装置特性がもたらされる。
【0083】
NTNFET装置は、先行特許文献、特に米国特許出願第10/177929号、同第10/656898号及び同第10/704066号各明細書に記載されている手順に従って調製した。これらの特許文献の記載内容も本明細書の一部を成すものである。電流は、接点を用いて測定できる電気的特性である。接点は、基板上に配置されてもよい導電性素子を具有しており、該導電性素子はナノチューブの網状構造体と電気的に接続する。
【0084】
本発明の一部の実施態様においては、付加的な導電性素子(ゲート電極)が配置され、該電極は少なくとも1個のナノチューブとは電気的に接続せず、ゲート電極と少なくとも1個の該ナノチューブとの間には電気的キャパシタンスが存在する。1つの好ましい例示的な実施態様においては、ゲート電極は、酸化ケイ素の下部の基板内の導電性面である。この種のナノチューブ電子装置例は前記の米国特許出願第10/656898号及び同第10/704066号各明細書に記載されている。
【0085】
センサーNT装置は、標準的な、標準的な写真印刷法によって、例えば、100mmのウェーハ上に形成させてもよい。NTFET装置は、分散された鉄のナノ粒子(成長促進剤)とメタン/水素混合ガスを使用する900℃での化学蒸着法(CVD)によって成長させたSWNTを用いて製造してもよい。電気的リード線は、金層(厚さ:120nm)で被覆したチタン膜(厚さ:30nm)からナノチューブの上部へパターン状に形成させた。最初の電気的測定をおこなって装置の特性を確定した後、DNAの実験を実施する前に、基板をワイヤで連結させ、40−ピンCERDIPパッケージ内へ収納した。パッケージ上のワイヤと接点パッドはエポキシ樹脂で被覆し、該樹脂は硬化させた。DNAの実験は、一滴のDNA溶液を該パッケージ上へ滴下することによっておこなった。該パッケージは、該液滴の蒸発を防止するために水約100mLをいれたビーカーを保有する密封ジャー内に収容した。
【0086】
NTFET装置の電子的特性の測定、例えば、印加されたゲート電圧の関数としてのS/D電極間の電流の測定は同時測定システム(PMS)を用いておこなった。このシステムを使用する場合には、ナノチューブに基づく12個までのセンサーの装置特性を同時に測定することが可能である。32個の独立アナログ型スイッチから成る一組のスイッチはPCを介してデジタル方式で調整され、これによって、測定すべき接点はユーザーによって選択される。印加された電源−ドレインのバイアス及びゲート電圧はユーザーによって規定される(振幅、周波数、機能)。このシステムを用いることによって、装置の電導度は時間とゲート電圧の関数として測定することができる。
【0087】
B−2:調製手順
B−2.1 チップの調製
各々のチップを使用する前に、該チップをパッケージ処理に付し、次いでワイヤと接点をエポキシ樹脂で被覆し、該エポキシを硬化させた。該チップを噴射瓶からのアセトン、イソプロパノール、脱イオン水を用いてすすぎ、最後に規定された清浄化法に従って清浄処理に付し(以下のセクションB−2.2参照)、次いで初期のI−Vg曲線を得た。
【0088】
B−2.2 洗浄手順
パッケージ化チップを純水(18MW)の噴霧によって簡単に洗浄することによって表面上の検体を除去した。結晶皿内において、0.01Mの燐酸塩で緩衝化した塩溶液(pH:7.4/25℃)約50mlをチップ上に注いだ。該チップはオービタルシェーカー(orbital shaker)上で5分間洗浄し(速度設定値:6)、次いで溶液を廃棄した。さらに、チップは同様の操作により、18MWの水を用いて4回洗浄した。
【0089】
B−2.3 I−Vg曲線
チップ上の全ての装置についてI−Vg曲線(走査ゲート電圧に対してNTFET電流をプロットした曲線)を得たが、ここでは各々のチップの1つについてのみ示す。各々の場合に示す曲線は、各々のチップに関して得られた曲線の代表例であると考えるべきである。
【0090】
B−3 ピレン−標識化とDNA
B−3.1 ピレン単層の形成
パッケージ化チップ(この場合は、W517 26:21)を清浄化した後、初期のI−Vg測定をおこなった。N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を溶媒とするピレンブタン酸サクシンイミジルエステルの2.5mg/ml溶液を、該ピレン誘導体3.08mgDMF1.232mlに溶解させることによって調製した。この溶液50mlをチップの表面上に存在させ、該チップを、蒸発による液滴の発生を防止するために、DMFを含む開放容器を設置したチャンバーの内部において、室温下で2時間密封した。次いで、チップを取り出し、DMF、アセトン及びイソプロパノールを用いてすすいだ後、清浄化処理に付し(セクション2.2参照)、I−Vg曲線を得た。
【0091】
B−3.2 DNAの共有結合的結合
DNA−NH溶液20mlをチップの表面上に存在させ、次いで、該チップを、湿気を付与すると共に、蒸発による液滴の発生を防止するために、水を含む開放容器を設置したチャンバーの内部において、室温下で一夜密封した。チップを取り出し、洗浄手順に従って洗浄し、次いでI−Vg曲線を得た。
【0092】
B−4 DNAハイブリッド形成の検出
B−4.1 検出手順
DNAオリゴヌクレオチドの10−4M溶液を、燐酸塩で緩衝化した0.01M塩溶液(pH:7.4/25℃)で希釈化することによって、該オリゴヌクレオチドの10−6M溶液を調製した。このDNA溶液20mlを、セクションB−3に従ってDNA−ピレン層によって機能化させたチップの表面上に存在させた。該チップを、湿気を付与すると共に、蒸発による液滴の発生を防止するために、水を含む開放容器を設置したチャンバー内において、室温下で一夜密封した。チップを取り出し、洗浄処理に付した後、I−Vg曲線を得た。
【0093】
B−4.2 cDNA
チップ(W517 26:21)をセクションB−3に従って機能化させ、次いでセクションB−4.1に従って、cDNAを用いて処理した。
【0094】
図7AはI−Vg曲線を示すもので、該曲線は右側にシフトしており、このことは、当該装置が、共有結合的に結合したDNAとcDNAとのハイブリッド形成を検出できることを示す。該曲線の右側へのシフトは、二重鎖DNAを存在させた先の実験において観察されたシフトと一致する。
【0095】
B−4.3 SNP−DNA
セクションB−3に従って、チップ(W 517 26:24)を機能化させた後、セクションB−4.1に従って、SNP−DNAを用いて処理した。
【0096】
図7BはI−Vg曲線を示すもので、該曲線の右側へのシフト度はあまり大きくはない。このことは、当該装置に結合したDNAに対するSNP−DNAの部分的で不完全な結合に起因するか、又は、SNP−DNAが洗浄過程中に洗い流されることによると考えられる。何故ならば、この程度のシフト度はドリフトに関連することが示されているからである(これはナノチューブに吸着された水の非常に薄い層に起因すると考えられる)。いずれにしても、当該装置によってcDNAとSNPを区別できることは明らかである。
【0097】
B−4.4 SNP−DNA+cDNA
SNP−DNAを用いて予め処理したチップ(W 517 26:24)を、セクションB−4.1に従って、cDNAを用いて処理した。
【0098】
図7BはI−Vg曲線を示すもので、該曲線は右側へシフトしており、このシフトは、セクションB−4.2においてcDNAを用いたときに見られたシフトと類似する。このことは、SNP−DNAに曝された後のcDNAを当該装置によって検出できることを示す。SNP−DNAがセクションB−4.3において洗い流されないならば、cDNAはSNP−DNAと置換し、これによって、セクションB−4.2又は本明細書のその他の部分におけるハイブリッド形成に対して得られたデータと一致する結果がもたらされる。
【0099】
ナノスケールの電子装置であるNTFETは少量の核酸(RNA及びDNA)のリアルタイムでの監視と検出のために使用してもよい。DNAオリゴヌクレオチドのハイブリッド形成のアッセイに関しては、NTNFET装置を用いて少量の単鎖DNA(ssDNA)を検出することができる。このようなアッセイは、従来法に比べて迅速かつ高感度でおこなうことができ、また、例えば、DNA重複の必要なサイクル数を低減させるか、又はPCRを不要とする。
【0100】
2個のDNA鎖の間に単一の不適合塩基が存在するときには、ハイブリッド形成は発生するが、不適合に起因するキンク(kink)とのハイブリッド形成錯体の安定性は劣る。このような不適合は単一ヌクレオチドポリモフィズム(single nucleotide polymorphism;SNP)と呼ばれているが、該不適合は、ヒトゲノム(Human Genome)プロジェクトの結果として発見されたものである。SNPは市販の遺伝子テストのためのキー標的であって、NTNFET装置によって潜在的に同定することができる。
【0101】
実施例C
ナノ電子装置を用いるDNAアッセイ
本発明の特徴を有する多数の異なる例示的なDNA又はその他のポリヌクレオチドのアッセイ態様を図8〜図12に示す。以下において説明する構造と方法は例示的なものであって、他の実施態様においては、本明細書の別の部分に記載されている構造と方法を使用してもよい。異なる実施態様において、実質上類似の要素が含まれる場合には、各々の実施態様の説明において該要素を示すためには同じ参照番号を使用する。
【0102】
C−1 構造
図8〜図12に示すように、センサー10は、少なくとも1個のナノ構造体を有するプラットフォームを具備する。ナノ構造体としては、基板14に隣接して配置されと共に、少なくとも電源電極16とドレイン電極18との間に電気的に接続されるナノチューブ12が例示される。
【0103】
所望により、該装置は、少なくとも1個の付加的な電極、例えば、ナノチューブ12に隣接して配置されるゲート電極20を具備していてもよい。図示するゲート電極20は基板14に埋設されているが、別のNTFETセンサーの実施態様に関連して先に説明したように、別のタイプの電極(例えば、ボトムゲート電極、トップゲート電極及び/又は液状ゲート電極等)を別の設置方法で配設してもよい。
【0104】
図6〜9においては、電極16及び18と単純な末端接触様式で単一のナノチューブ12が模式的に示されているが、本発明の技術的思想を逸脱することなく、先に説明したようにして、別のナノ構造体の設置様式を採用してもよい。
【0105】
図10A及び図10Bは、別の構造体を模式的に示す。図10Aは、ナノチューブによって相互連結された複数の伝導体の「アイランド(island)」を示す。また、図10Bはナノチューブの網状構造体の一態様を示すもので、複数のナノチューブは、相互に連絡するナノチューブの網状体又は膜を形成し、これによって、電源電極とドレイン電極との間に導電性の溝がもたらされる。この種のナノチューブ膜においては、個々のナノチューブは電源電極とドレイン電極との間にスパンを必要とせず、また、導電性の溝は、相互に直列状に接続する複数のナノチューブを介して1又は複数の溝又は経路を含んでいてもよい。好ましくは、この種のナノチューブの網状体の密度及び/又は組成は、所望の伝導度とセンサー感度が得られるように、調整された化成(formation)及び/又は後化成の修正によって選択される。所望により、複数の電源及び/又は複数のドレイン電極、例えば、この種の電極が交互に噛み合う一連の電極を含んでいてもよい。ナノチューブ12は、電極の下部及び/又は側部及び/又は上部に配置させてもよい。
【0106】
ナノチューブ膜は基板上へ、例えば、ナノ分散触媒を仲介するCVD又は溶液沈着法等によって直接的に形成させてもよい。あるいは、ナノチューブ膜を別途に調製し、別の工程として、基板14上へ直接的又は膜キャリヤー層を含めて付着させてもよい。これらに関しては、前記の米国特許出願第10/177929号及び第10/846072号各明細書を参照されたい。基板14は硬質構造体(例えば、半導体ウェーハ、単結晶シリコン又は多結晶シリコン等)であってもよく、あるいは、可撓性体(例えば、ポリマー製のシートやウェブ等)であってもよいことに留意すべきである。ナノチューブ膜の一部は基板の一部から選択的に除去することによって、電極16と18との関連においてナノチューブ膜を調整してもよい。
【0107】
同様に、接点又は電極(16及び18)及び/又はゲート電極若しくは付加的電極を、ナノチューブ12の形成前若しくは形成後において沈着させるか、又は形成させてもよい。所望により、信号処理等のために、付加的な電子回路を基板14上においてセンサー10と一体的に形成させてもよい。センサー10と所望の素子の製造においては、集積電子回路の素子や層を製造するための既知の方法(例えば、CVD、真空蒸着、写真印刷、マスキング、化学的エッチング、スピンコーティング、基板のドーピング、基板の酸化物形成及び基板の窒化物形成等)を採用してもよい。
【0108】
同様に、図示するセンサーは、前述のようにして、センサーの集積アレイに含ませてもよい。所望により、他のセンサーとNTFETの態様(例えば、接点の不動態化、基板を被覆する誘電体及び/又は触媒保有層、及びナノ構造体状の疎水性被覆層等)に関連して先に説明したエンハンスメント(enhancement)とその他の素子を、以下において説明する態様に含めてもよいことに留意すべきである。
【0109】
C−2 検出プローブ
図8〜図10に示すように、センサーは検出プローブ(例えば、プローブ22)を具備しており、該プローブはリンカー基、例えば、リンカー26を具有し、該リンカーはナノチューブ12と連結し(好ましくは非共有結合的に連結する)、これによって、プローブをセンサー10と結合させる。cDNA24は、その1つの部位においてリンカー26と結合する(好ましくは共有結合的に結合する)。この場合、該cDNAも、リンカー26から外側へ延びる露出された相補塩基配列を有する。リンカーは、ナノチューブ12に対しては非共有結合的に結合すると共にcDNA24に対しては共有結合的に結合するような構造を有する分子又は基(例えば、ピレンのような芳香族分子及び/又はポリマー)であってもよい。
【0110】
リンカー基は1つよりも多くのcDNAと結合していてもよく、あるいは逆に、cDNAを、リンカーの特性とコンフォメーションに応じて、1つよりも多くのリンカー基へ結合させてもよい。例えば、分散型(distributed)ポリマー層を含むライナー基(liner group)は、該ポリマー層の異なる点に結合した複数のcDNA分子を有していてもよい。
【0111】
この点に関しては、この明細書の発明の概要に関する箇所において説明したdsDNA、ssDNA、cDNA及びその他のヌクレオチド種の定義に留意すべきである。
【0112】
別の特定の実施態様においては、cDNAは必ずしもデオキシリボースポリヌクレオチドである必要はなく、選択された標的配列との少なくとも部分的なハイブリッド形成をもたらすその他の標的特異性ポリヌクレオチド種(例えば、RNA、及び変性若しくは置換DNA等)を含んでいてもよい。
【0113】
同様に、標的「ssDNA」分子は必ずしも離散した完全変性デオキシリボースポリヌクレオチド鎖である必要はなく、RNA、dsDNA、部分的に変性されたdsDNA、及び粘着末端を有する種等を含んでいてもよい。この場合、標的分子は、プローブのcDNAとの少なくとも部分的なハイブリッド形成をもたらす標的ヌクレオチド配列を含む。
【0114】
図8Aに示す態様においては、標的塩基配列32とのハイブリッド形成によって、DNA30の単鎖フラグメントを検出するプローブ22が図示される。適当なセンサー回路(図8〜12においては図示せず)をセンサー10へ連結させることによって、DNA30のハイブリッド形成に対するセンサー10の電気的応答を、別のセンサーの実施態様に関連して先に説明した方法によって、検出及び/又は定量する。例えば、電源16とドレイン18との間の電導度はハイブリッド形成によって変化し、この変化が測定される。あるいは、NTFET DNAセンサーの実施態様においては、DNA30のハイブリッド形成は、ゲート電極20の電圧が選択された電圧の範囲内において変化するときに発生するセンサー10の装置特性のシフトをもたらす。ハイブリッド形成を検出するためには、センサー10の付加的な特性又は別の特性を測定してもよい。
【0115】
本発明の観点による特定の適用においては、cDNA 24と選択された標的配列の比較的完全なハイブリッド適合(hybrid match)並びに標的配列のこれとは対照的な部分的で不連続状及び/又はループ状ハイブリッド形成とを識別するためにセンサー10を使用してもよい。センサー10は、このハイブリッド形成現象に対して電気的に応答し、標的配列32に対するプローブcDNA 24のハイブリッド形成の程度及び/又は特徴を反映する信号特性をもたらす。例えば、対応するプローブ配列に対して単一の塩基不適合(sbmDNA)を有する配列の部分的なハイブリッド形成によってもたらされる信号は、完全な適合配列のハイブリッド形成を識別することができる。センサー10のこの機能によって、特に単一ヌクレオチドの多形現象(SNP)の特性がもたらされる。
【0116】
この点に関しては、ssDNAがRNAポリヌクレオチド、ヘテロ若しくは変性ポリヌクレオチド、プラスミド、ウイルス性フラグメント、二重鎖DNAフラグメント(例えば、結合末端又はプローブ22とのハイブリッド形成に対して得られる他の露出鎖標的部)、部分的にアニールされたdsDNAフラグメント又はオリゴヌクレオチド等であってもよいことに留意すべきである。
【0117】
本発明による例示的な方法においては、プローブ22は、選択された標的配列32に適合させるように調製してもよく、cDNAは既知の方法によって得られる。規定された配列を有するオリゴヌクレオチドの常套の合成法用の市販原料が入手可能であり、関連する配列は、多くの既知法(例えば、PCR、逆転写、及びプラスミド増幅等)によって入手し、変性させ、及び/又は増幅させることができる。この点に関しては、cDNAが、標的配列32(例えば、リンカー26へ結合させるために選択される尾部若しくは頭部、精製過程、増幅過程及び/又は加工過程のために選択される尾部若しくは頭部、及び所望による標識基等)に対して相補的なヌクレオチド配列を含んでいてもよいことに留意すべきである。次いで、cDNA 24を既知の反応と方法(例えば、ピレンのDNA−5’−アミンの形成)によってリンカー基26(例えば、ピレン)へ結合させることによってプローブ22を調製してもよい。
【0118】
予め調製したセンサーのプラットフォーム10を、例えば、プローブ22の溶液又は懸濁液を用いて処理してリンカー26をナノチューブ12に、例えば、ナノチューブ12のグラファイト格子に結合したピレン分子のπ−π堆積(stacking)によって結合させた後、洗浄と乾燥処理に付すことによって機能化させてもよい。次いで、機能化されたセンサー10は、試料媒体中に懸濁させた標的配列32を有する被検体であるssDNAを検出するために使用してもよい。適当な検量試験をおこなってもよい。この検量試験は、例えば、標的配列32を欠く既知のssDNAを含む同じ試料媒体にセンサー10を曝すことによっておこなうことができる。
【0119】
別の例示的な使用方法においては、予め調製したセンサー10のプラットフォームをリンカー基の材料26(例えば、cDNA 24の一部と反応するか又は結合するように選択されるポリマー)標的特異性cDNA 24を調製し、次いで、該cDNA 24の結合によりセンサー10を機能化させることによってプローブ22をその場で調製してもよい。
【0120】
本発明の観点による別のセンサーの態様(図示せず)においては、アレイセンサー系は間隔を置いて配置された複数のセンサー10を具備する。このアレイは前述のようにして予め調製されていてもよく、また、センサー10は、複数の異なるプローブ(各々のプローブは、特定の選択された標的配列に対して特異的なcDNAを有する)の1つによって別々に機能化されていてもよい。例えば、インクジェット型塗布法を使用することによって、予め設定された機能化パターンを有するアレイを処理してもよい。このような多機能化アレイを使用してもよく、これにより、複数の異なる標的DNA配列に関する試験を、単一の被検体試料媒体を用いて実質上同時におこなうことができる。
【0121】
既知の形態を有する信号処理回路を使用することによって、直列、並列又はいずれかの所望のパターンで配置された複数のセンサー10のアレイからの信号を処理してもよい。付属的な要素(例えば、ミクロ液体溜め、チャンネル、ニードル、バルブ、ポンプ及び/又はインジェクター等)をアレイの態様に含めてもよく、該態様によれば、制御されたセンサーの機能化、センサーの洗浄/再状態調整、及び/又は制御されたセンサーの検量等が可能となる。
【0122】
C−3 別のアッセイ態様
図8B及び図9は、本発明による別のアッセイ態様を示す。このうちの1又は複数の態様は、前述の態様の代わりに使用してもよく、あるいは該態様と併用してもよい。
【0123】
図8Bは、本発明の観点による別の実施態様を模式的に示すもので、電気的に活性なインターカレータ(intercalator)34が配置され、該インターカレータは試料媒体中に導入され、及び/又はハイブリッド形成後に別に導入される。インターカレータ34は、プローブ22−標的配列32との錯体のハイブリッド形成部(二重鎖領域)と連絡し、これによってセンサー10の測定された応答の増幅及び/又は修正がおこなわれ、また、ハイブリッド形成の測定及び/又は検出が促進される。
【0124】
図8C〜図8Fの構造に示すように、これらの実施態様には電気的に活性なインターカレータ(例えば、ダウノマイシン、メチレンブルー、Ir(bpy)(phen)等)及び溝バインダー(例えば、Ru(NH)Cl等)の使用又は併用が含まれる。
【0125】
図9Aは、本発明の観点による別のアッセイ態様を模式的に示す。この場合、ssDNA 30の第二の部位とハイブリッド形成するような形態を有する二次的な又はサンドイッチ状のプローブ40が使用される(サンドイッチ配列44)。このサンドイッチプローブ40は、サンドイッチ配列44に対して相補的な塩基配列を含む部分を有する第2のcDNA 42を含有する。cDNA 42は、増幅基46に対して好ましくは共有結合的に結合した部分を含む。この増幅基46は、検出プローブ22に対する標的配列32のハイブリッド形成に際してのセンサー10の信号応答の増幅又は修正のために使用される。増幅基46は、さらなる反応を伴うことなく、検出及び/又は定量が可能な信号をセンサー10にもたらす基又は標識であってもよい。あるいは、増幅基46は、他のプロモータ物質(例えば、化学的又は生化学的な基質等)とのさらなる反応によって検出及び/又は定量が可能な信号をセンサー10にもたらす基であってもよい。図9A〜図9Cに増幅基を例示する。
【0126】
図9Aに示すアッセイに関しては本発明の観点による多くの使用態様がある。例えば、下記の過程a)〜f)を含む使用態様が挙げられる:
a)センサー10のナノチューブ12へプローブ22を結合させ、
b)標的配列32を有する被検体ssDNAを含有すると推定される試料を用いてセンサー10を処理することによって、ssDNA 30が存在する場合には、これをプローブ22に結合させた後、洗浄処理をおこない、
c)選択された増幅基46を有するサンドイッチプローブ40を含有する溶液を用いてセンサー10を処理することによって、ssDNA 30が存在する場合には、これにサンドイッチプローブ40を結合させた後、洗浄処理をおこない、
d)選択された増幅基46に対して必要な場合には、別のプロモータ物質を含有する溶液を用いて処理し、
e)センサー10から信号を入手し、次いで
f)該信号を分析することによって、被検体であるssDNA 30の存在及び濃度を決定する。
【0127】
上記の過程a)〜f)は別の順序でおこなってもよい。例えば、過程c)は、過程b)の前におこなわれる被検体試料の処理の前処理であってもよい。同様に、付加的な検量過程を所望により種々の回数でおこなってもよい。洗浄過程は例示的なものであり、当業者であれば、本発明の技術的思想を逸脱することなく、過度の実験を伴わないで特定の用途に対して当該方法を容易に適合させるか、又は最適化することができ、これによって、複合汚染やその他のエラーの原因が回避される。
【0128】
特定の実施態様においては、サンドイッチ配列44は試料DNAフラグメント中に存在することが予想される共通の配列であってもよく、また、標的配列32は、試料中での存在が未知の被検体−特異的配列であってもよい。あるいは、プローブ46は、プローブ22の比較的高い標的−特異的結合性に比べて、試料DNAに対して相対的に非特異的な結合性を示すような構造形態を有していてもよい。この点に関して、プローブ46は、所望により、試料DNAに対する結合性を促進し、及び/又はプローブ22の望ましくないブロッキングを防止するような付加的な基を含んでいてもよい。
【0129】
特定の実施態様においては、増幅基46は、化学的又は生化学的基質との酸化/還元又はその他の反応をもたらすことによって、センサー10に対して検出可能な応答を示すような影響を及ぼすようなプロモータ又は触媒(例えば、酵素等)を含んでいてもよい。例えば、増幅基46はウレアーゼを含んでいてもよい。前記の過程d)には、結合したプローブが存在する場合には、尿素溶液を用いて処理することによってアンモニアと二酸化炭素を発生する過程が含まれていてもよく、これによって該溶液のpHが修正され、センサー10からの信号の検出可能な変化がもたらされる。使用してもよい別の酵素系としてはコリネステラーゼ、ペルオキシダーゼ(例えば、HRP等)及びグルコースオキシダーゼ等が例示される。増幅基46としては、さらにフェロセン、ナノ金属粒子及び標識(例えば、ナノ粒子及びタンパク質等)が例示される。
【0130】
図9Eは、本発明の観点によるアッセイの別の実施態様を模式的に示す。このアッセイ態様においては、サンドイッチプローブ40及びssDNA 30は、一般的には、図9Aに関連して説明したものと類似する。
【0131】
しかしながら、図9Eに示す実施態様においては、検出プローブ50は拘束基(tether group)57及び対応する検出基(detector group)53を含んでおり、これらの基は相互に連結するか、又は結合する。拘束基57は、拘束種(この場合には、抗体56)に接続されたリンカー58を含む。検出基53は、拘束基−適合性種に結合されたcDNAを含む。この場合、抗原54は、レセプター又は抗体56の結合部位へ結合するような構造形態を有するエピトープを含むように選択される。
【0132】
例えば、図9Eに示すように、抗原54はビオチンを含んでいてもよく、また、抗体56はストレプタビジンを含んでいてもよい。別の実施態様(図示せず)においては、配置様式は図9Eに示す場合と逆であってもよい。例えば、抗原はリンカーへ連結させてもよく、また、抗体はcDNAへ連結させてもよい。拘束基と拘束基−結合性種を組み合わせる別の態様を採用してもよい。この場合、拘束基と拘束基−結合性種は、相互に容易に連結するか、又は結合することによって自己集合化検出プローブ50を形成するように選択される。
【0133】
一般的には、拘束基57と検出基53は別々に調製してもよいことに留意すべきである。例えば、拘束基57を含む部分的に機能化させたセンサーのプラットフォームを調製し、検出基53を含まない状態で供給して保存してもよい。このようなサブアセンブリーは、ポリヌクレオチド(例えば、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼ等)を特異的に分解させる物質や条件に対する損傷性を有さない。従って、この実施態様は、標的−特異性cDNAを含まないセンサーアセンブリー(即ち、比較的一般的なセンサー)を予め調製した後、試料の測定時又は測定直前に拘束基へ簡便な方法(自己集合又は簡単な反応による方法)で連結又は結合することが可能な多数の異なる標的−特異性検出基のいずれか1つの検出基を導入することが望ましいような用途に対して特に適している。迅速で強力な選択的抗原−抗体結合反応は、拘束基/拘束基−適合系の好ましい態様である。
【0134】
図9Eに示す拘束基/拘束基−適合系は、本発明の観点による別の実施態様(例えば、類似の利点をもたらす図8〜図9Dに示す実施態様)と併用してもよい。同様に、特定のセンサー10は、拘束基/拘束基−適合系の1つよりも多くの組合せを用いて機能化させてもよい。この場合、各々の検出基は選択された同型のcDNAを有する。特定の交差反応性が要求される特定の用途においては、1種よりも多くのcDNAを特定のセンサーに使用してもよい。しかしながら、より一般的には、センサーは、最大の標的選択性がもたらされるように設定される。
【0135】
さらに、自己集合性の拘束基/拘束基−適合系は、複数のセンサーに結合させた拘束基を用いて比較的一般的なセンサーアレイを予め調製できるという点において、本発明の観点によるセンサーアレイの実施態様において特に有用である。次いで、センサーアレイのパターン化された標的−特異性機能化を完全にするために、異なる標的−特異性検出基の選択されたパターンを既知の方法(例えば、マルチ化又は自動化ピペット系を用いる方法又は「インクジェット」法)によって適用する。
【0136】
C−4 別のセンサー集成装置
図10A及び図10Bは、「島状」センサー70及び「ナノチューブ網状」センサー72をそれぞれ示すもので、いずれも本発明の特定の観点による実施態様である。これらの態様は、図8及び図9に示すアッセイ態様に対して一般的に適用される。ナノ構造体12(この場合は単一壁のカーボンナノチューブである;「SWCNT」又は省略して「NT」で表示する)は電源電極16及びドレイン電極18と電気的に接続する。1つの実施態様72においては、複数のナノチューブ12は電源電極16とドレイン電極18との間において相互に連結する網状構造体を形成する。リンカー基76は、cDNA鎖74をナノチューブ12と連結させてもよい。ssDNA鎖78は、cDNA鎖74の近傍まで拡散してもよい。
【0137】
図10C及び図10Dは、cDNA鎖74とナノチューブ12との連結がリンカー基76の作用によることを模式的に示す。図10Cに例示するように、有機基76(例えば、ピレン)はcDNA74等へ共有結合的に結合し、また、図10Dに例示するように、反応性ポリマー基76’はcDNA74等へ共有結合的に結合する。両方の基がcDNA74等へ共有結合的に結合してもよい。
【0138】
図11A及び図11Bは別のセンサー構造体80及び82を示す。この場合、cDNA84は基板14’(例えば、ケイ素ウェーハを被覆する二酸化ケイ素層等)の表面上へ化学的結合(例えば、共有結合)を介して結合する。図11Cは、一連の工程(工程1〜3)に示すように、既知の反応体と方法を採用することによってcDNA84を基板14へ結合させるための一連の工程を含む別の結合法を示す。ssDNA88及びcDNA84とのハイブリッド形成はそれぞれセンサー80又は82の電気的特性に影響を及ぼし、これによって、一般的には前述の種々のアッセイ態様の場合に類似する検出信号をもたらす。
【0139】
図12A及び図12Bは別のセンサー構造体90及び92を示す。この場合、cDNA94は電極又は接点16’及び18’の表面上へ、既知の反応体と方法によって化学的結合(例えば、共有結合等)を介して結合する(例えば、cDNAの5’末端におけるDNA−5’−チオールの形成による結合)。電極は裸電極であってもよく、あるいは酸化表面又は被覆表面を有する電極であってもよい。あるいは、cDNA94はポリマーリンカー基等によって接点16’及び18’へ結合してもよい。ssDNA98及びcDNA94とのハイブリッド形成はそれぞれセンサー90又は92の電気的特性に影響を及ぼし、これによって、一般的には前述の種々のアッセイ態様の場合に類似する検出信号をもたらす。
【0140】
C−5 別の分離と精製
ナノチューブ装置10の近傍においてゲノムDNAから標的DNAを分離するためには、当該分野において知られている種々の標識基を使用してもよい。例えば、ゲノムDNAから標的DNAを付加的な工程として分離するためには、標識(例えば、ナノ粒子、タンパク質等)を使用してもよい。あるいは、このような分離に対しては、磁気ビーズ又は抗体を使用してもよい。本発明の観点による特定の実施態様においては、予備的な測定試料DNAの精製及び/又は分離(segregation)等は、統合した試料の加工/測定系の一部として、センサー又はアレイの実施態様におけるセンサーアレイに近接しておこなわれ、また、このような操作には磁気的制御及び/又は静電的制御等が含まれていてもよい。所望により、マイクロプロセッサー又はコンピュータを組み入れることによって、試料DNAの精製及び/又は分離並びに試料の検出及び測定を制御して調整してもよい。
【0141】
以上の記載において、ナノチューブセンサー装置の好ましい実施態様について説明したが、当業者には明らかなように、これらの装置系に係る特定の利点は得られている。また、本発明の範囲と技術的思想の範囲内において、上記の実施態様の種々の修正、改良及び変更等をおこなってもよい。以上の本発明は、特許請求の範囲の記載によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】ナノチューブトランジスター装置に関する例示的な電導度曲線を示す模式図である。
【図2】ナノチューブのランダムな網状構造体を用いたナノチューブセンサーに関する例示的な形態を示す模式図である。
【図3】図2に示す例示的なナノチューブセンサーの模式的な断面図である。
【図4】実施例Aに記載の本発明によるナノ電子センサーの製造法の例示的な工程を示すフローチャートである。
【図5】本発明によるポリヌクレオチドの検出方法の例示的な段階を示すフローチャートである。
【図6】3つの環境下におけるナノチューブ電子装置に関するゲート電圧の関数としての電導度を示すチャートである。
【図7A】ピレン−DNA接合体を用いる機能化処理及びcDNAを用いる処理に付した後の実施例Bに記載のセンサーの装置特性を示す。
【図7B】ピレン−DNA接合体を用いる機能化処理、SNP−DNAを用いる処理及びcDNAを用いる処理に付した後の実施例Bに記載のセンサーの装置特性を示す。
【図8A】本発明の特定の観点による実施態様であって、センサーに結合させた検出プローブを使用する例示的なDNAアッセイの実施態様を示す。
【図8B】本発明の特定の観点による実施態様であって、電子活性なインカレータを使用する別のDNAアッセイの実施態様を示す。
【図8C】本発明の特定の観点による実施態様であって、電子活性なインカレータを使用する別のDNAアッセイの実施態様の構成成分を示す。
【図8D】本発明の特定の観点による実施態様であって、電子活性なインカレータを使用する別のDNAアッセイの実施態様の構成成分を示す。
【図8E】本発明の特定の観点による実施態様であって、電子活性なインカレータを使用する別のDNAアッセイの実施態様の構成成分を示す。
【図8F】本発明の特定の観点による実施態様であって、電子活性なインカレータを使用する別のDNAアッセイの実施態様の構成成分を示す。
【図9A】本発明の特定の観点による実施態様であって、増幅基を使用する別のDNAアッセイの実施態様を示す。
【図9B】本発明の特定の観点による実施態様であって、増幅基を使用する別のDNAアッセイの実施態様の構成成分を示す。
【図9C】本発明の特定の観点による実施態様であって、増幅基を使用する別のDNAアッセイの実施態様の構成成分を示す。
【図9D】本発明の特定の観点による実施態様であって、増幅基を使用する別のDNAアッセイの実施態様の構成成分を示す。
【図9E】本発明の特定の観点による実施態様であって、センサーに検出プローブを結合させる抗体−抗原結合を使用する別のDNAアッセイの実施態様を示す。
【図9F】本発明の特定の観点による実施態様であって、センサーに検出プローブを結合させる抗体−抗原結合を使用する別のDNAアッセイの実施態様の構成成分を示す。
【図10A】本発明の特定の観点による2つの別の構造を有するセンサーであって、検出プローブがナノチューブのようなナノ構造体に結合した該センサーを示す。
【図10B】本発明の特定の観点による2つの別の構造を有するセンサーであって、検出プローブがナノチューブのようなナノ構造体に結合した該センサーを示す。
【図10C】本発明の特定の観点による2つの別の構造を有するセンサーであって、検出プローブがナノチューブのようなナノ構造体に結合した該センサーを示す。
【図10D】本発明の特定の観点による2つの別の構造を有するセンサーであって、検出プローブがナノチューブのようなナノ構造体に結合した該センサーを示す。
【図11A】本発明の特定の観点による2つの別の構造を有するセンサーであって、検出プローブがセンサー基板に結合した該センサーを示す。
【図11B】本発明の特定の観点による2つの別の構造を有するセンサーであって、検出プローブがセンサー基板に結合した該センサーを示す。
【図11C】本発明の特定の観点による2つの別の構造を有するセンサーであって、検出プローブがセンサー基板に結合した該センサーを示す。
【図12A】本発明の特定の観点による2つの別の構造を有するセンサーであって、検出プローブがセンサー電極に結合した該センサーを示す。
【図12B】本発明の特定の観点による2つの別の構造を有するセンサーであって、検出プローブがセンサー電極に結合した該センサーを示す。
【符号の説明】
【0143】
10 センサー
12 ナノチューブ
14 基板
16 電源電極
18 ドレイン電極
20 ゲート電極
22 プローブ
24 cDNA
26 リンカー
30 ssDNA
32 標的配列
34 インターカレータ
40 サンドイッチプローブ
46 増幅基
50 検出プローブ
53 検出基
56 抗体
57 拘束基
58 リンカー
70 島状センサー
72 ナノチューブ網状センサー
74 cDNA鎖
76 リンカー基
78 ssDNA鎖
80 センサー構造体
82 センサー構造体
84 cDNA
88 ssDNA
90 センサー構造体
92 センサー構造体
94 cDNA
98 ssDNA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構成要素i)〜iv)を具備するポリヌクレオチド検出用ナノチューブセンサー:
i)基板、
ii)該基板上に配置された第1ナノチューブ、
iii)該第1ナノチューブと電気的に接続する少なくとも1つの導電性素子、及び
iv)該第1ナノチューブと作動可能な状態で結合した少なくとも1つの単鎖DNA分子であって、相補性標的DNA鎖と相互作用して該ナノチューブセンサーの電気的特性を変化させるように設定された該単鎖DNA分子。
【請求項2】
少なくとも1つの単鎖DNAが第1ナノチューブへ直接的に結合された請求項1記載のナノチューブセンサー。
【請求項3】
第1ナノチューブが、単層ナノチューブ、二層ナノチューブ、多層ナノチューブ及びオニオン状ナノチューブから成る群から選択される請求項1記載のナノチューブセンサー。
【請求項4】
第1ナノチューブが、次の群から選択される少なくとも1つの素子を含有する請求項1記載のナノチューブセンサー:
炭素、硼素、窒化硼素、窒化炭素硼素、ケイ素、ゲルマニウム、窒化ガリウム、酸化亜鉛、リン化インジウム、二硫化モリブデン、及び銀。
【請求項5】
第1ナノチューブが単層カーボンナノチューブを含有する請求項1記載のナノチューブセンサー。
【請求項6】
少なくとも1つの導電性素子が、金属、炭素及び導電性ポリマーから成る群から選択される少なくとも1種の物質を含む電極を含有する請求項1記載のナノチューブセンサー。
【請求項7】
ナノチューブセンサーの電気的特性が少なくとも1つの第1ナノチューブのキャパシタンスであり、また、ナノチューブセンサーが、該キャパシアンスの測定を可能にするように設定された対電極をさらに含有する請求項1記載のナノチューブセンサー。
【請求項8】
少なくとも1つの導電性素子が少なくとも2つの導電性素子を含有し、これらの導電性素子が金属電極を含有する請求項1記載のナノチューブセンサー。
【請求項9】
導電性素子が第1ナノチューブと物理的に直接的に接触する請求項8記載のナノチューブセンサー。
【請求項10】
ナノチューブに近接させたゲート電極をさらに含有する請求項8記載のナノチューブセンサー。
【請求項11】
導電性素子間の連結部に隣接するセンサーの領域を覆う抑制剤層をさらに含有する請求項8記載のナノチューブセンサー。
【請求項12】
ナノチューブが、2つの導電性素子間の基板上に配置された2次元ナノチューブの網状構造体をさらに含有する請求項8記載のナノチューブセンサー。
【請求項13】
ナノチューブの網状構造体が、ランダムに配向された複数のカーボンナノチューブを含有する請求項12記載のナノチューブセンサー。
【請求項14】
2つの導電性素子が、一対の相互に噛み合わされた電極を含有する請求項12記載のナノチューブセンサー。
【請求項15】
少なくとも1つの単鎖DNAが、2次元のナノチューブの網状構造体上に分布された複数の同一のDNAレセプター鎖をさらに含有する請求項12記載のナノチューブセンサー。
【請求項16】
複数の同一のDNAレセプター鎖が、2次元のナノチューブ網状構造体のナノチューブへ直接的に結合された請求項15記載のナノチューブセンサー。
【請求項17】
下記の工程i)〜iii)を含むナノ電子センサーの製造方法:
i)ナノチューブのフィルムを、基板上に配置させた電極上へ配向させ、
ii)標的DNA配列に対して補体となるように設定された単鎖DNAの溶液を、基板上へ沈着させ。次いで
iii)該溶液を乾燥させることによって、単鎖DNAの沈着物を基板上に形成させる。
【請求項18】
単鎖DNAの沈着物を、電極間の領域以外の基板から除去する工程をさらに含む請求項17記載の方法。
【請求項19】
基板上に、電極として導電性沈着物を沈着させる工程をさらに含む請求項17記載の方法。
【請求項20】
電極の沈着工程が、複数の相互に噛み合うフィンガーを有する電極を設定する過程を含む請求項19記載の方法。
【請求項21】
電極間の領域上で作動するように設定されたゲート電極を形成させる工程をさらに含む請求項17記載の方法。
【請求項22】
電極間領域以外の基板から、単鎖DNA沈着物を除去する工程をさらに含む請求項21記載の方法。
【請求項23】
沈着工程前に、電極を遮断材で被覆する工程をさらに含む請求項17記載の方法。
【請求項24】
水に溶解させたオリゴヌクレオチドを含有する単鎖DNA溶液を調製する工程をさらに含む請求項17記載の方法。
【請求項25】
以下の過程i)及びii)を含む、特定の標的ポリヌクレオチド配列の検出方法:
i)導電性電極間の領域内に配置された少なくとも1つのナノチューブに付着させた標的ポリヌクレオチド配列に対して相補性のポリヌクレオチドを含有するナノ電子センサーに被検溶液を接触させ、次いで
ii)該接触段階中に、ナノ電子センサーの少なくとも1つの電気的特性を測定する。
【請求項26】
接触過程が、電界効果トランジスターを具有するナノ電子センサーへ溶液を接触させる過程をさらに含む請求項25記載の方法。
【請求項27】
測定過程が、ゲート電圧を含む少なくとも1つの電気的特性を測定する過程を含む請求項26記載の方法。
【請求項28】
測定過程中に測定された電気的特性を、該測定過程前に測定された対応する特性と比較する過程をさらに含む請求項25記載の方法。
【請求項29】
下記の構成要素a)〜c)を具備する、標的ポリヌクレオチド用電子センサーシステム:
(a)少なくとも1つの電気的特性を有する少なくとも1つのセンサープラットホームであって、下記の要素i)〜iii)を具有する該センサープラットホーム:
i)基板、
ii)基板に隣接して配置された少なくとも1つの電極、及び
iii)基板に隣接して配置された少なくとも1つのナノ構造素子であって、電極と電気的に接続された該ナノ構造素子;
(b)センサープラットホームに作動可能な状態で接続された少なくとも1つの検出プローブであって、下記の要素i)〜iii)を具有する該検出プローブ:
i)センサープラットホームに接続して配置されたリンカー基であって、ナノ構造素子、基板及び電極のうちの1又は複数の要素に連結された該リンカー基、
ii)被検ポリヌクレオチドに対して結合親和性を示す検出生体分子、
iii)リンカー基と生体分子との間の結合連結部;
(c)電極に接続された電子測定回路であって、センサープラットホームの少なくとも1つの電気的特性を測定するように設定された該電子測定回路。
【請求項30】
検出生体分子が、ポリヌクレオチド、転写因子及び転写プロモータから成る群から選択される請求項29記載の電子センサーシステム。
【請求項31】
検出生体分子が、被検ポリヌクレオチドのヌクレオチド標的配列に対して少なくとも部分的に相補的である少なくとも1つのヌクレオチド配列を有する検出ポリヌクレオチドを含有する請求項29記載の電子センサーシステム。
【請求項32】
センサープラットホームに作動可能な状態で接続された少なくとも1つの検出プローブが、標的配列の少なくとも部分的なハイブリッド形成によって該プローブが被検ポリヌクレオチドと結合したときに、少なくとも1つの電気的特性に影響を及ぼすように設定された請求項31記載の電子センサーシステム。
【請求項33】
(a)少なくとも1つの電極が、間隔をおいて基板に隣接して配置された少なくとも2つの電極を含み、各々の電極がナノ構造素子と電気的に接続し、該ナノ構造素子が電極間に少なくとも1つの伝導性溝を形成し、(b)少なくとも2つの電極が電子測定回路に接続され、センサープラットホームの少なくとも1つの電気的特性を測定するように設定された請求項32記載の電子センサーシステム。
【請求項34】
ナノ構造素子が、相互に連結された多数の単層カーボンナノチューブを含有する網状構造体を含む請求項32記載の電子センサーシステム。
【請求項35】
ナノ構造素子に隣接して配置されると共に電子測定回路へ接続されたゲート電極をさらに具備し、該電子測定回路が、センサープラットホームの少なくとも1つの電気的特性の測定中にゲート電極に対して選択的に少なくとも1ボルトのバイアスをかけるように設定された請求項32記載の電子センサーシステム。
【請求項36】
リンカー基と検出ポリヌクレオチドとの間の結合連結部が、少なくともリンカー基と検出ポリヌクレオチドとの間の化学結合を含む請求項32記載の電子センサーシステム。
【請求項37】
リンカー基と検出ポリヌクレオチドとの間の結合連結部が、少なくともリンカー基と検出ポリヌクレオチドとの間の共有結合を含む請求項36記載の電子センサーシステム。
【請求項38】
リンカー基が、ナノ構造体と非共有結合的に相互作用するように設定された芳香族化合物を含む請求項37記載の電子センサーシステム。
【請求項39】
リンカー基と検出ポリヌクレオチド分子との間の結合連結部が、リンカー基に結合した少なくとも1つの拘束基及び検出ポリヌクレオチドに結合した少なくとも1つの拘束基−適合性基を含有し、該拘束基と拘束基−適合性基(これらは集合的に拘束種という)が、該拘束基と拘束基−適合性基との間の自己集合した結合連結部を増大させる相互親和性を有する請求項32記載の電子センサーシステム。
【請求項40】
少なくとも1つの拘束種が非生体分子を含有する請求項39記載の電子センサーシステム。
【請求項41】
少なくとも1つの拘束種が生体ポリマーを含有する請求項39記載の電子センサーシステム。
【請求項42】
少なくとも1つの拘束種が、天然に存在する生体ポリマーと実質的に同等な合成ポリマーを含有する請求項39記載の電子センサーシステム。
【請求項43】
少なくとも1つの拘束基が、リンカー基に結合した抗体を含有し、少なくとも1つの拘束基−適合性基が、検出ポリヌクレオチドに結合した対応する抗原を含有し、該拘束基と拘束基−適合性基との間の相互親和性が、抗原のエピトープに対する抗体結合部位の親和性を含む請求項39記載の電子センサーシステム。
【請求項44】
少なくとも1つの拘束基が、リンカー基に結合したMHCレセプターを含有し、少なくとも1つの拘束基−適合性基が、検出ポリヌクレオチドに結合した対応する結合性ペプチドを含有し、該拘束基と拘束基−適合性基との間の相互親和性が、対応するペプチドに対するMHCレセプター親和性を含む請求項39記載の電子センサーシステム。
【請求項45】
少なくとも1つの拘束基が、リンカー基に結合したほ乳類の細胞表面レセプターを含有し、少なくとも1つの拘束基−適合性基が、検出ポリヌクレオチドに結合した対応するレセプターの特異的結合性リガンドを含有し、該拘束基と拘束基−適合性基との間の相互親和性が、対応するリガンドに対する該細胞表面レセプターの親和性を含む請求項39記載の電子センサーシステム。
【請求項46】
少なくとも1つの拘束基が、リンカー基に結合したビロン・ホスト付着促進性表面基及び/又はビロン・エンドサイトーシス促進性表面基を含有し、少なくとも1つの拘束基−適合性基が、検出ポリヌクレオチドに結合した対応するほ乳類の細胞表面レセプターを含有し、該拘束基と拘束基−適合性基との間の相互親和性が、対応するビロン表面基に対するほ乳類の細胞表面レセプターの親和性を含む請求項39記載の電子センサーシステム。
【請求項47】
拘束基結合性種及び拘束基−適合性基結合性種の付着順序を逆転させ、少なくとも1つの拘束基を検出ポリヌクレオチドに結合させ、少なくとも1つの拘束基−適合性基がリンカー基に結合された請求項39記載の電子センサーシステム。
【請求項48】
1又は複数の拘束種が合成物質である請求項39記載の電子センサーシステム。
【請求項49】
該システムが複数の該センサーをさらに含有し、また、2以上の複数のセンサーに関して、異なる標的特異性cDNAプローブの選択された複合パターンの自己集合を可能にするために、複数のセンサーの内の異なるセンサーが、明確に異なる相互結合親和性を有する複数の拘束種対を含有する請求項39記載の電子センサーシステム。
【請求項50】
センサープラットホームの電気的特性が、少なくともナノ構造素子のキャパシタンスであり、また、該キャパシタンスの測定を可能にするように設定された対電極をさらに具備する請求項39記載の電子センサーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【公開番号】特開2012−247432(P2012−247432A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−175154(P2012−175154)
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【分割の表示】特願2007−530178(P2007−530178)の分割
【原出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(504468470)ナノミックス・インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】