説明

DNA配列変異の検出

【課題】 遺伝分析のためにDNAマーカーとして一般的に用いられる変異型全てに適用しうる一般的な方法を提供する。
【解決手段】 分析方法であって、規定の位置のヌクレオチドを含むポリヌクレオチド標的、および支持体に固定されたオリゴヌクレオチドプローブであって、該標的に対して相補的であり且つ該規定の位置でまたはその近くで終結する該プローブを与え;そして (a)該標的を該プローブと一緒にインキュベートして二重鎖を形成し、 (b)該二重鎖を、該標的に対して相補的な標識オリゴヌクレオチドと一緒に連結反応条件下でインキュベートし、そして (c)該標的中の規定の位置での点突然変異を示すものとして(b)の連結反応を監視する工程を行うことを含む上記方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
序論
DNA配列の変異の検出は、最新の遺伝分析における多数の用途の基本を成している。それは、連鎖分析においてヒト系統の疾患遺伝子または動物および植物育種プログラムでの経済的に重要な特色を追跡するのに用いられるし、それは、法医学および実父確定検査で用いられるフィンガープリント法の基本を成しているし[クロウツァク(Krawczak)およびシュミトク(Schmidtke),1994年]、それは、生物学的におよび臨床的に重要な遺伝子の突然変異を発見するのに用いられている[クーパー(Cooper)およびクロウツァク,1989年]。DNA多型の重要性は、それを検出し且つ測定するために開発された多数の方法によって強調されている[コットン(Cotton),1993年]。これらの方法の大部分は、配列変異を検出するのに、二つの分析法の内の一つ、ゲル電気泳動または分子再会合に依存している。これらの強力な方法にはそれぞれ欠点がある。ゲル電気泳動は、極めて高い分解能を有し、そして特に、連鎖分析およびフィンガープリントで用いられるミニ−およびミクロサテライトマーカーの変異の検出に有用であり、それは、ヒトのおよそ10種類の遺伝疾患の原因であることが現在知られている多数の突然変異を引き起こすトリプレット反復で見られる変異を分析するのに用いられる方法でもある[ウィルムス(Willems),1994年]。その大きな成功および広範囲にわたる使用にもかかわらず、ゲル電気泳動を自動化するのは難しいことが判っており、データ収集を自動化するシステムでさえも、手動ゲル調製を必要とし、しかも試料を手で充填するので、試料を混同しやすい。連続読取電気泳動装置は高価であり、しかも手動分析は技術的に多くを要求するので、その使用は、高い処理量がある専門の研究室に限られている。更に、フラグメント寸法を測定する場合の難しさは結果についての厳密な統計分析の妨げになっている。
【0002】
対照的に、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションは、自動化および定量分析に役立っているが[サザン(Southern)ら,1992年]、多数の反復中での小さい僅かな変化は、かろうじて検出できるシグナル強度変化しか生じないので、それは、ミクロ−およびミニサテライト中の反復数の変異の分析に充分に適していないし、そして当然ながら、同一試料中の二つの対立遺伝子を区別することは、それぞれが一つの強度測定値を与えるので不可能であろう。このように、対立遺伝子の多数の異なった組合わせは、同じシグナルを生じると考えられる。現在のハイブリダイゼーション法は、点突然変異、すなわち、塩基置換欠失および挿入のために、DNAの変異を分析するのにはるかによく適し、そのために、野生型および突然変異配列の両方を認識する対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)を設計することが可能である[コナー(Conner)ら、1983]。したがって、全ての可能な遺伝子型を比較的簡単な検査で検出することは理論上可能である。しかしながら、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションの使用において実際に生じる問題は、ある場合に、再会合の範囲が誤対合塩基対によってわずかしか影響されないことである。
本発明
本発明は、遺伝分析のためにDNAマーカーとして一般的に用いられる変異型全てに適用しうる一般的な方法を記載する。それは、対合と非対合との二重鎖の相違を増加させ且つ同時に、何時またはどの反応が起こったかを示す標識を付ける方法を提供する酵素反応と一緒に、好ましい実施態様においては固体支持体に固定されているオリゴヌクレオチドに対する配列特異的ハイブリダイゼーションを組合わせる。二つの酵素反応、DNA依存性DNAポリメラーゼによる鎖延長およびDNAリガーゼによるDNA鎖結合は、延長または結合地点のまたはその付近の配列の完全な対合に依存する。本発明者が示すように、これらの酵素を配列特異的オリゴヌクレオチドと一緒に用いて標的配列の変異を検出することができるいくつかの方法がある。
【0003】
いずれの場合も、分析される配列、すなわち標的配列は、核酸分子として入手できるであろうし、そして例えば、ポリメラーゼ連鎖反応によって製造されたDNA分子でありうる。しかしながら、それらの方法は、このように製造されたDNAの分析に限定されない。いずれの用途においても、標的配列は、最初に、好ましくは固体支持体に固定されているオリゴヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションによって捕捉され、それらオリゴヌクレオチドは、例えば、記載通りに現場(in situ)で合成してよいし[マスコス(Maskos)およびサザン,1992年]、またはそれらは、予め合成された後にその表面に結合してもよい[クラプコ(Khrapko)ら,1991年]。
【0004】
本発明の一つの態様において、新規性は、固体支持体に固定された基質またはプライマーと組合わせた酵素の利用から生じる。更に別の新規性は、DNAリガーゼおよびポリメラーゼを用いて、タンデム反復配列の多数の単位が異なる配列変異体を区別することができるという知見を利用している。この知見は、タンデム反復配列がどのレジスターにおいても二重鎖を形成することができるので意外であり、例えば、理論上、長さ変異体は、たとえ2本の鎖が異なった数の反復単位を含む場合でも、それらの末端で対合する二重鎖を形成することができる。本発明者は、固定されたオリゴヌクレオチドと共にこの方法の適用を実証するが、この反応を用いて液相中のVNTR(可変数タンデム反復)配列を分析した後、ゲル電気泳動などのいくつか他の分析方法を行うことができることは明らかなはずである。
【0005】
一つの態様において、本発明は、分析方法であって、規定の位置のヌクレオチドを含むポリヌクレオチド標的、および支持体に固定されたオリゴヌクレオチドプローブであって、該標的に対して相補的であり且つ該規定の位置でまたはその近くで終結する該プローブを与え;そして (a)該標的を該プローブと一緒にインキュベートして二重鎖を形成し、 (b)該二重鎖を、該標的に対して相補的な標識オリゴヌクレオチドと一緒に連結反応条件下でインキュベートし、そして (c)該標的中の規定の位置での点突然変異を示すものとして(b)の連結反応を監視する工程を行うことを含む上記方法を提供する。
【0006】
本発明のもう一つの態様において、本発明は、分析方法であって、可変数タンデム反復部分および隣接部分を有するポリヌクレオチド標的、並びに該標的の反復部分および隣接部分に対して相補的な部分を有するオリゴヌクレオチドプローブを与え;そして (a)該標的を該プローブと一緒にインキュベートして二重鎖を形成し、 (b)該二重鎖を、標識オリゴヌクレオチドおよび/または少なくとも一つの標識ヌクレオチドと一緒に鎖延長条件下でインキュベートし、そして (c)該標的の可変数反復部分の長さを示すものとして鎖延長を監視する工程を行うことを含む上記方法を提供する。
【0007】
ポリヌクレオチド標的は、プローブが支持体に固定されている場合は溶液で与えられ、DNAまたはRNAであってよい。このポリヌクレオチド標的を、オリゴヌクレオチドプローブとハイブリッド形成させる。オリゴヌクレオチドという用語は、ここでは、ポリメラーゼおよびリガーゼ酵素によって一般的に用いられるプライマーおよび基質の一般用語として用いられる。しかしながら、その用語は、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の残基から成る短いまたは中程度の長さの一本鎖、そして更には、ポリヌクレオチドと通常称されるより長い鎖を含めた、酵素の基質として役立つ物質を全て包含する幅広い意味で用いられる。
【0008】
プローブは、支持体に対して、好ましくは、共有結合によって、そして好ましくは、5′または3′末端ヌクレオチド残基によって固定されうる。オリゴヌクレオチドプローブのアレイ(array)は、間隔をおいた場所に、例えば、誘導体化ガラス表面またはシリコンマイクロチップの表面上、或いは個々のビーズ上に固定されうる。
【0009】
もう一つの態様において、本発明は、可変配列を有するポリヌクレオチド標的を分析するためのオリゴヌクレオチドのアレイ(array)であって、成分オリゴヌクレオチドそれぞれが、(i)該標的の予想される変異体を含めた、該標的に対して相補的な配列を含み、そして(ii)(a)標的との二重鎖形成を可能にし且つ(b)該オリゴヌクレオチドの配列が該標的の可変配列に対合する場合にのみ鎖延長を可能にする化学方向で固体支持体に固定されている上記オリゴヌクレオチドのアレイを提供する。
【0010】
もう一つの態様において、本発明は、可変数タンデム反復配列を有するポリヌクレオチド標的を分析するためのオリゴヌクレオチドのセットまたはアレイであって、成分オリゴヌクレオチドそれぞれが、(i)該反復配列のすぐ隣の該標的の一部分に対して相補的な配列を含み、(ii)該標的の反復配列に対して相補的で且つ該標的中に予想される多数の反復を有する配列を含み、そして(iii)(a)標的との二重鎖形成を可能にし且つ(b)該オリゴヌクレオチド中の反復数が、該標的中の反復数と等しいかまたはそれより少ない場合にのみ鎖延長を可能にする方式で立体配置されている上記オリゴヌクレオチドのセットまたはアレイを提供する。
【0011】
もう一つの態様において、本発明は、オリゴヌクレオチドのアレイであって、異なったオリゴヌクレオチドが異なった場所を占有し且つそれぞれのオリゴヌクレオチドが、共有結合によってそれを支持体に固定する3′ヌクレオチド残基およびリン酸化されている5′ヌクレオチド残基を有する上記オリゴヌクレオチドのアレイを提供する。
【0012】
本発明は、更に、支持体の異なった場所に固定された異なったオリゴヌクレオチドのアレイを製造する方法であって、支持体に固定された第一中間体オリゴヌクレオチドおよび溶液中の第二中間体オリゴヌクレオチド、並びに該第一および第二中間体オリゴヌクレオチド両方に対して相補的である第三オリゴヌクレオチドを与え、該第一および第二中間体オリゴヌクレオチドと一緒に該第三オリゴヌクレオチドの二重鎖を形成し、そして該第一中間体オリゴヌクレオチドを該第二中間体オリゴヌクレオチドと連結する工程;並びに該支持体の異なった場所に固定されたオリゴヌクレオチドを用いて該工程を反復することを含む上記方法を提供する。
【0013】
添付の図面が引用され、ここにおいて、図1〜6はそれぞれ、本発明による方法を例示する一連の工程図である。
図1は、単一塩基伸長による点突然変異の検出を示す。
【0014】
図2は、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションおよび鎖延長による点突然変異の検出を示す。
図3Aは、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドに対する標識連結反応による点突然変異の検出を示す。
【0015】
図3Bは、様々に標識された対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドのライブラリーに対する連結反応による点突然変異の検出を示す。
図4Aは、対立遺伝子変異体に対する標識の連結反応による可変数タンデム反復部の分析を示す。
【0016】
図4Bは、対立遺伝子変異体に対する標識の連結反応による可変数タンデム反復部の分析を示す。
図5は、標識された鎖延長による可変数タンデム反復の測定を示す。
【0017】
図6は、標識の連結反応と、その後の鎖延長による可変数タンデム反復の分析を示す。
詳細な説明
点突然変異の検出
I.固定されたプライマーの単一塩基特異的伸長
この応用において、固定されたオリゴヌクレオチドは、標的配列中の可変塩基から一つ前の塩基の位置で終結する(図1)。例えば、蛍光標識で標識されたヌクレオチド前駆体三リン酸またはジデオキシリボヌクレオチド三リン酸を、相補的塩基を包含するために特異的鋳型を必要とする核酸合成酵素の存在下で加える。DNAポリメラーゼの場合、標識塩基は、その前駆体塩基が標的配列中の塩基に対して相補的である場合にのみデオキシリボヌクレオチド前駆体から取り込まれるであろう。したがって、突然変異体は負の結果を与えるであろう。
II.固定されたASOからの鎖延長 この場合、固定されたオリゴヌクレオチドは、標的配列中の可変塩基に対して相補的である塩基中で終結する。標識された前駆体ヌクレオシド三リン酸およびポリメラーゼを加える。重合は、プライマーの最後の塩基が標的中の可変塩基に対して相補的である場合にのみ起こる(図2)。したがって、突然変異体は負の結果を与えるであろう。
III.固定されたASOに対する標識配列の連結反応 この方法において、固定されたオリゴヌクレオチドは、標的配列中の可変位置で終結できるし、またはそれは、この位置の近くで終結できる。どちらの場合も、固定されたASOに対する標的のハイブリダイゼーションは、結合地点の塩基が充分に対合している場合にのみ、標識オリゴヌクレオチドを連結するための基質を生じるであろう(図3a)。したがって、連結反応を妨げるほど結合位置の近くにある突然変異体は、負の結果を与えるであろう。或いは、固定されたオリゴヌクレオチドは、可変位置の前の塩基で終結でき、この場合、連結反応は、可能な代わりの変異体それぞれに一つの標識オリゴヌクレオチドの混合物を用いて行うことができる。標識はそれぞれ、例えば、異なった発蛍光団で標識されるので、連結されたものは、変異体塩基を認識して識別しうると考えられる(図3b)。
アンカーVNTRSへの連結反応によるVNTR長さの分析
この応用において、「標識」オリゴヌクレオチドは、鋳型として作用して標識および固定されたオリゴヌクレオチドを一緒にもたらす標的のハイブリダイゼーション後に、固定されたオリゴヌクレオチドのセットに対して連結される。
【0018】
図4aにおいて、固定されたオリゴヌクレオチドは、三つの部分、すなわち、VNTRセットの全メンバーに共通であり、固体支持体に結合していて、そして可変部分に隣接した配列に対してハイブリッド形成する「アンカー」配列、変更可能な多数の反復配列単位、および遠位配列を含む。異なった多数の反復体で示されるそれぞれの対立遺伝子は、異なった固体支持体上にまたは同じ固体表面上の異なった場所に位置する。標的配列のハイブリダイゼーションは一連の二重鎖を生じるであろうし、その構造は、標的が含有する単位の数に依存する。その数が、固定されたオリゴヌクレオチドの数に対合するならば、その標的は、固定されたオリゴヌクレオチドの遠位配列に対して標識をハイブリッド形成させる時にその標識の末端と出会うであろう。その数が更に大きいかまたは更に小さい場合、二重鎖中にギャップが存在して、それが標識の連結反応を減少させるかまたは妨げるであろう。
【0019】
図4bにおいて、固定されたオリゴヌクレオチドは、二つの部分、すなわち、VNTRセットの全メンバーに共通であり且つ反復部分に隣接した配列に対してハイブリッド形成する「アンカー」配列、および変更可能な多数の反復配列単位を含む。異なった多数の反復体で示されるそれぞれの対立遺伝子は、異なった固体支持体上にまたは同じ固体表面上の異なった場所に位置する。標的配列のハイブリダイゼーションは一連の二重鎖を生じるであろうし、その構造は、標的が含有する反復単位の数に依存する(図4b)。その数が、固定されたオリゴヌクレオチドの数に対合するならば、後者は、標的配列中のその成分に対して標識をハイブリッド形成させる時にその標識の末端と出会い、そして標識の連結反応のための基質を形成するであろう。その数が更に大きいかまたは更に小さい場合、二重鎖中にギャップが存在して、それが標識の連結反応を減少させるかまたは妨げるであろう。
鎖延長によるVNTR長さの分析
VNTR中の反復単位の数は、最小限界の範囲内で異なることがあり、これらの場合、リガーゼを用いる上記の分析方法は適切であろうが、他の場合、例えば、多数のヒト遺伝病に関係したトリヌクレオチド反復体の場合、その変異は、この方法で分析するのにはあまりに大き過ぎることがある。多数のトリプレット反復体について、その変異は、患者の正常染色体のおよそ10〜50から1000を越えるまででありうる(表1)。このような多数の反復体をリガーゼ反応を用いて測定することは、非現実的であると考えられる。正常および突然変異体の対立遺伝子間の差が大きいこれらの場合、代替法は、標識された前駆体を重合酵素と一緒に用いて、反復単位の数を近似的に測定することである。その酵素は、DNA依存性DNAポリメラーゼなどのポリメラーゼかまたはリガーゼであってよい。前者の場合、ポリメラーゼによる酵素的伸長のための必要条件を満たすように、オリゴヌクレオチドをそれらの5′末端で固定する必要がある。固体支持体は、反復単位に隣接した配列に対して相補的なオリゴヌクレオチドアンカーを有し、例えば、その配列は、PCRによって試験配列を増幅するのに用いられるプライマーの一つの配列でありうる。アンカーに対する試験配列のハイブリダイゼーション後、反復インサートをポリメラーゼまたはリガーゼによってコピーして、標識された前駆体を取り込むことができる(図5)。取り込まれた標識の量は、反復単位の数に比例する。アンカー配列に対する標的の不完全ハイブリダイゼーションは、信頼できない低い測定値の反復数を与えると考えられる。この問題は、いくつかの可能な方法の一つで測定値を標準化することによって克服することができる。例えば、標的配列自体が図5で示されたように標識されている場合、その最終測定値は、2種類の標識、すなわち、標的および取り込まれた前駆体の比率であろう。
【0020】
或いは、トリプレット反復の場合、取り込みは、更に伸長するために失われた前駆体塩基が必要とされる配列中の地点で終結するであろうし、その場合、基本的反復単位のモノマーを重合させるのにリガーゼが用いられてきたが、これもまた、VNTRインサートの末端で終結するであろう。この点で、標識された「キャップ付」配列を、連結反応によって加えることができる。このような場合、測定値はキャップ対ポリマー標識の比率であろう。
連結反応および鎖延長の組合わせによるVNTR長さの分析
広範囲にわたって長さが異なりうるVNTRを分析する更に有力な方法は、標識された標識オリゴヌクレオチドに対する連結反応について最初に試験することであると考えられ、これは、異なった反復体長さを有する標的について既に記載された結果、すなわち、VNTR長さが、固定されたオリゴヌクレオチド中よりも標的中において長いかまたは短い場合の負の結果、およびそれらが同じである場合の正の結果を与えると考えられる。本発明者が完全まで行うことができることを示した連結反応に続いて、異なった長さの種類は、DNAポリメラーゼの基質として異なって挙動するであろう。反復数が、固定されたプローブのそれよりも少ないそれら標的は、基質として働かないであろう(図6c)。プローブと同数の反復を有する標的は、連結された標識が伸長を阻止するので、ポリメラーゼによって延長されないであろう(図6a)。伸長が起こる唯一の場合は、標的がプローブより長いものである(図6b)。ある限界までの異なったインサート数を有するプローブのアレイについて分析を行う場合、それらがプローブのアレイで示された寸法の範囲内であるという条件ならば、連結結果からの標的の反復数を明らかに示すものが存在するであろう。標的中に、この範囲より長いものが存在する場合、それは、ポリメラーゼ分析で示されるであろう。この試験は、いわゆる「動的突然変異」に関係したトリプレット反復、例えば、寸法範囲が約10〜1000である脆弱(fragile)X突然変異で見られるものについて特に有用であろう。これらの寸法種類全部を一つのアレイに適合させるのは難しいであろう。
請求の範囲に関する実験的裏付け
DNAポリメラーゼおよぴリガーゼの性質
大部分のDNAポリメラーゼ、逆転写酵素、いくつかのDNA依存性RNAポリメラーゼおよびリガーゼは、長いDNA鎖に対してワトソン・クリック塩基対合によって結合している1個またはそれ以上のオリゴヌクレオチドを基質として用いることができる。ポリメラーゼの場合、オリゴヌクレオチドは、成長鎖の最初の塩基が加えられるプライマーとして用いられる。リガーゼの場合、2個のオリゴヌクレオチドは、その両方がDNA鎖と対になり且つ結合点のまたはその近くの塩基対が対合するという条件ならば結合される。これらの性質は、酵素をDNA配列変異の検出に有用にさせるものであり、特に、伸長または結合部位での特異的塩基対合の必要条件は、安定した二重鎖を形成するのに必要とされるオリゴヌクレオチドおよび標的配列間のワトソン・クリック対合によって既に与えらている配列相違を相補する。したがって、ハイブリダイゼーションだけによる相違は、1種類または複数の変異塩基がオリゴヌクレオチドの中央に近い場合に最も感受性であることが判明した。対照的に、酵素に関する相違は、変異ミス対合塩基が、伸長または結合が起こる末端に近い場合に最高である。総合すると、緊縮条件下のハイブリダイゼーションおよび酵素的伸長または結合は、どちらか単独よりも大きい相違を与え、そしていくつかの方法が、遺伝分析のためのこのシステム組合わせを利用するために開発されてきた[コットン,1993年の参考文献]。ハイブリダイゼーションおよび酵素反応は、通常、溶液中で行われ、その後、生成物を固体支持体上に捕捉するかまたは検出および/または測定のためにゲル電気泳動によって分離する。
【0021】
一つの実施態様において、ここで記載された発明は、固体表面に結合されたオリゴヌクレオチドを用いるので、混合相で作業する利点は、ハイブリダイゼーション、酵素的伸長または結合および検出の全工程にもたらされる。これは、大きな感受性および便宜を与える。多数の異なったオリゴヌクレオチドは、アレイにおいて一つの表面に結合させることができるので、それは、多数の異なった配列を一つの反応で一緒に分析することを可能にし、これはまた、全反応を同一条件下で行うことを確実にして、比較をより信頼できるものにする。
支持体結合オリゴヌクレオチド
オリゴヌクレオチドを固体支持体に結合させるために二つの異なった方法が開発され、それらは、現場で(in situ)合成することができるしまたは予め合成して支持体に結合させることができる。どちらの場合も、支持体結合オリゴヌクレオチドをハイブリダイゼーション反応において液相中のオリゴヌクレオチドと一緒に用いて二重鎖を形成することは可能であり、続いて、溶液中の過剰のオリゴヌクレオチドを洗い流すことができる。ハイブリダイゼーションは緊縮条件下で行うことができるので、充分に対合した二重鎖だけが安定である。酵素を用いる場合、オリゴヌクレオチドの化学方向は重要であり、ポリメラーゼは鎖の3′末端に塩基を加え、リガーゼは、5′末端でリン酸化されているオリゴヌクレオチドを、3′−OH基を有するものに対して結合する。固体支持体に対していずれかの末端によって固定されたオリゴヌクレオチドは、適当なホスホルアミダイト前駆体を用いることによって現場で(in situ)製造することができるし[ビューケージ(Beaucage)およびライア(lyer),1992年]、または予め合成されたオリゴヌクレオチドを適当な基によっていずれかの末端に固定することができる。本発明者は、ATPおよびポリヌクレオチドキナーゼを用いて現場で(in situ)オリゴヌクレオチドを5′末端にリン酸化できることを実証するであろうし、またはそれらは化学的にリン酸化することができる[ホーン(Horn)およびアーデア(Urdea),1986年]。
DNA修飾酵素の基質としての固定されたオリゴヌクレオチド
ここで考察される用途は、固体支持体に対して固定されたオリゴヌクレオチドが、DNAポリメラーゼおよびリガーゼによって触媒された反応に加わることができることを必要とする。
DNAポリメラーゼ
アミノ化ポリプロピレンに対してその5′によって結合したM13配列決定用プライマー5'-GTAAAACGACGGCCAGT-3’は、記載の通り合成された。M13DNAの溶液(一本鎖,複製型,0.1μl,200ng/μl)を、誘導体化ポリプロピレンの表面に対して二つの小スポットで適用した。3種類の非放射性デオキシリボヌクレオチド三リン酸、dATP、dGTP、TTP(各10μモル)、α32P−dCTP(10μCi)、Taq DNAポリメラーゼおよび適当な塩類を含有する溶液を、M13 DNAがスポットされた部分を含めた大きな面積のポリプロピレン上に適用した。そのポリプロピレンを蒸気飽和室中において37℃で1時間インキュベートした。次に、それを1%SDS中において100℃で1分間洗浄し、そして貯蔵リン光体スクリーンに対して1分間暴露し且つリン光映像機で走査した。DNAが適用された部分は、DNAが適用されなかったところの低バックグラウンドに対して、高レベルの放射能を示した。この実験は、固体支持体に固定されたオリゴヌクレオチドが、突然変異検出のためにこの酵素を用いる用途に必要とされるように、DNAポリメラーゼによるDNA依存性合成のプライマーとして作用しうることを示す。
【0022】
以下に記載の実験は、ポリヌクレオチドキナーゼおよびDNAリガーゼ両方を、固体支持体に固定されたオリゴヌクレオチドを修飾するのに用いることができることを示す。リン酸化オリゴヌクレオチドおよびリガーゼ反応を用いて配列変異を検出することができるいくつかの方法がある。
配列変異体のアレイを製造する方法
1.点突然変異のための対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド。
【0023】
好ましい実施態様には、固体支持体に固定されたオリゴヌクレオチドを用いることが不可欠であろう。支持体は、粒子、例えば、ガラス球または磁気ビーズの形をとることができる。この場合、反応は試験管内または微量滴定プレートのウェル内で行いうる。オリゴヌクレオチドを合成する方法も、予め合成されたオリゴヌクレオチドをこれらの材料に付着させる方法も知られている[スタール(Stahl)ら,1988年]。点突然変異を示すASOのアレイを製造する方法は、特許出願 PCT/GB89/00460号で並びにマスコスおよびサザン(1993)で記載された。
【0024】
本発明者は、更に、アレイ中の固体支持体に固定されたオリゴヌクレオチドが、分子ハイブリダイゼーションによってどのように野生型対立遺伝子から突然変異体を区別しうるかを実証した。
【0025】
本発明のためには、同様の方法を用いてASOのオリゴヌクレオチドアレイを生じうると考えられるが、それらを酵素の基質として用いうるためには、それらを修飾する必要があり、連結反応のためには、5′末端をリン酸化する必要がありうるし、ポリメラーゼによる伸長のためには、固体支持体に対してオリゴヌクレオチドをそれらの5′末端によって結合する必要があるであろう。
2.突然変異の部分を走査するためのアレイ。
【0026】
点突然変異のための遺伝子またはゲノムの比較的短い部分を走査することは、しばしば望ましく、例えば、嚢胞性線維症を引き起こすCFTR遺伝子中で、多数の異なった部位を突然変異させ、同様に、p53腫瘍サプレッサー遺伝子を、多数の部位で突然変異させることができる。配列中の可能な部位全てを調べる必要がある多数のオリゴヌクレオチドは、有効な組合わせ法によって製造することができる[サザンら,1994年]。プロトコルの変更は、標的配列中の全ての部位の突然変異を探すように、このようなアレイを酵素と一緒に用いることを可能にしうると考えられる。
3.VNTR。
【0027】
最も一般的に用いられるVNTRは、極めて短い単位、典型的には、モノ〜テトラヌクレオチドの反復体である。しかしながら、別の種類であるミニサテライトがあり、そこでの反復単位は幾分更に長く、最大20またはそれ以上のヌクオチドまである。短い反復体は、化学合成を用いて製造することができ、多数の反復単位を有するインサートの場合、反復単位を反応体として用いた合成経路を用いることは、それらを一度に1塩基ずつ増やしていくよりもむしろ経済的であると考えられ、このような方法は、化学合成によってポリヌクレオチドを製造するのに用いられてきた。興味を引く別の方法は、モノマー単位を連結することによって反復単位を形成することであり、それらは、ある方法が重合を阻止するように一端を遮断しうると判っているならば、段階的に、一度に1単位ずつ加えうると考えられ、例えば、オリゴヌクレオチド構成単位は、ヒドロキシル基によって終結されることができ、次に、それを連結反応後にリン酸化するので、その単位は次の単位のアクセプターになり、モノマーは、光分解性基などの分解性基によって保護されたリン酸基を有していてよく、それは連結反応後に除去されて、引続き連結反応を可能にすることができる[ピライ(Pillai),1980年]。第二の別の方法は、ミニサテライトのような更に長い単位に特に好ましいと考えられ、クローン化されたかまたは酵素的に増幅された分子を固体支持体に対して結合することであろう。例えば、それぞれの変異体配列は、プライマーの一つにビオチニル化オリゴヌクレオチドを用いて、PCRによって増幅させうる。次に、この基で開始する鎖を、ストレプトアビジン被覆面に付着させ、そして他の鎖を融解によって除去しうる[スタールら,1988年]。
実施例1
VNTRアレイに対する連結反応による長さ多型の分析の実証
アンカー配列が5'-tgtagtggtgtgatcaaggc-3’であるVNTRのアレイを、図4bで記載のように製造した。その反復単位は、5'-cttt-3’であり、N=4〜10のアンカー反復体Nの型の配列変異体の約3mm幅ストリップを、ポリプロピレンのシート表面上のストリップとして製造した。合成は、3′−デオキシリボホスホルアミダイトを用いて行われたが、この化学方向は、ポリプロピレンに対して3′末端によって固定されたオリゴヌクレオチドおよび遊離5′ヒドロキシル基を生じる。連結反応のための基質を生じるために、オリゴヌクレオチドのアレイを有するポリプロピレンのストリップ(3mmx18mm)を、4mM ATPおよびポリヌクレオチドキナーゼ77.6単位と、供給者の指示による緩衝液およびMg++を一緒に含有する溶液0.5ml中に浸漬することによって、このOH基をリン酸化した。その反応を37℃で6時間放置し、そのストリップを取出し且つ沸騰水中に浸漬して、ポリヌクレオチドキナーゼを殺した。標的配列は、アレイオリゴヌクレオチドの要素に対して並びに連結標識5′−アンカー−反復体10−標識および5′−アンカー−反復体5−標識に対して相補的であり、それらを、ポリヌクレオチドキナーゼおよび33P−γ−ATPを用いて5′末端に標識された標識5'-gtggtcactaaagtttctgct-3'、熱リガーゼ(500単位)並びに供給者の指示による緩衝液および塩類を含有する95℃まで予熱された溶液0.5mlに対して加えた。ポリプロピレンストリップを熱溶液中に浸漬した後、それを68℃まで冷却し、そしてこの温度で16時間放置した。そのポリプロピレンストリップを取出し、そして25%ホルムアミド中に95℃で5分間入れ、同じ温度の水中で洗浄し、乾燥させ、そして貯蔵リン光スクリーンに暴露し、そこから放射能映像を集めた。結果は、アレイの大部分でバックグラウンドに近い計数を示し、アンカー−反復体5およびアンカー−反復体10についての計数は、アレイ中の隣接セルでの計数の5倍より大であった。この実験は、標的中の反復数がアレイ中の対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド中のそれと対合する場合にのみ、リガーゼが反復配列の長さ変異を区別することができ且つ最適連結反応を与えることを示している。したがって、ヘテロ接合体中の2種類の対立遺伝子変異体を検出することは、容易に可能なはずである。
【0028】
連結反応および/または重合は、オリゴヌクレオチドがその5′末端によって固定されている場合に可能である。オリゴヌクレオチドは、3′ジメトキシトリチル基を有するデオキシリボホスホルアミダイトおよび5′ホスホルアミダイト(逆ホスホルアミダイト)を用いて現場で(in situ)合成することができる、連結反応に必要なリン酸塩は標識オリゴヌクレオチドによって与えられるので、固定されたポリヌクレオチドを連結反応検定のためにリン酸化する必要はない。
実施例2
VNTR長さの分析
VNTRのアレイを、図4Bで記載のように、5′末端によって固定されたオリゴヌクレオチドと共に製造した。反復単位は5'ttcaであり、アンカー配列は 5'cttatttccctcaであった。N=4〜8であるアンカー−反復体Nの型の配列変異体の6mm幅ストリップを、「逆」ホスホルアミダイトモノマーを用いてポリプロピレンのシート表面上で製造した。
連結反応による分析
アレイのストリップ(30mmx2mm)を、600ピコモルの標的オリゴヌクレオチド5'cacagactccatgg(tgaa)6tgagggaaataag、1.4ピコモルのオリゴ5'ccatggagtctgtg(ポリヌクレオチドキナーゼおよび33PγATPを用いてその5′末端に標識された)並びに供給者の指示による緩衝液および塩類の溶液中に浸漬し、その全容量は293μlであった。その溶液を65℃まで加熱し、そしてTthDNAリガーゼ7μlを加えた。次に、その反応を37℃まで冷却し、そしてその温度で18時間放置した。反応溶液から取出した後のストリップを、T.E.緩衝液中で洗浄し、吸収乾燥させ、そして貯蔵リン光スクリーンに暴露し、そこから放射能映像を得た。結果は、標的配列が、アレイの隣接セル中の更に短いおよび更に長い配列に対するよりも高い収率で正しい配列に対して連結したことを示した。
実施例3
連結反応および重合による分析
実施例2からのアレイのストリップ(30mmx2mm)を、200ピコモルの標的オリゴヌクレオチド5'cacagactccatgg(tgaa)6tgagggaaataag、200ピコモルのオリゴ5'ccatggagtctgtg(5′末端に化学的にリン酸化された)と、供給者の指示による緩衝液および塩類を含む溶液に対して加え、その全容量は243μlであった。その溶液を85℃まで加熱し、そして37℃まで30分間にわたって冷却した。TthDNAリガーゼ7μlを加え、そしてその反応混合物を34℃で17時間加熱した。ストリップを取出し、そして8mMのDTT、3.3ピコモルの32PαdTTP、13単位のシークエナーゼバージョン2.0並びに供給者の指示による緩衝液および塩類の溶液に対して加えた。全容量は250μlであった。37℃で3時間加熱した後、ストリップを反応溶液から取出し、TE緩衝液中で洗浄し、吸収乾燥させ、そして貯蔵リン光スクリーンに暴露し、そこから放射能映像を得た。結果は、反復体が等しい長さであるかまたは標的の反復長さより大きい場合のアレイの部分でバックグラウンドと等しい計数を示し、アレイの反復長さが標的の反復長さより短い場合は、それらの部分でのシグナルの20倍であった。
実施例4
重合による分析
種類のポリメラーゼ分析を、リポーターヌクレオチドが選択された場合に行って、一つの場合には正しい反復長さを識別し、そしてもう一つの場合には更に短い反復長さを識別した。これは、反復配列が4種類全部より少ない塩基を含む場合に可能になる。
【0029】
前者の場合、反復配列中に存在し且つ隣接配列中の最初の塩基とは異なる塩基を選択する。後者の場合、塩基は、反復体に存在しない隣接配列中の最初の塩基に対して相補的であるように選択される。
実施例2からのアレイのストリップ(30mmx2mm)を、供給者の指示の1.09倍濃度の緩衝液および塩類中500ピコモルの標的オリゴヌクレオチド 5'cacagactccatgg(tgaa)6tgagggaaataagの溶液に対して加え、その全容量は275μlであった。その溶液を75℃まで5分間加熱し、そして37℃まで25分間にわたって冷却した。その溶液を取出し、そして3.3ピコモルの32PαdCTP、5μlの1MのDTT、13単位のシークエナーゼバージョン2.0および水に対して加えて、最終容量を295μlとした。この溶液をアレイに加え、そして37℃で15時間40分間加熱した。ポリプロピレンストリップを取出し、水中で洗浄し、そして貯蔵リン光スクリーンに暴露した。結果は、より短い配列よりも正しい配列で5倍大きく且つより長い反復と比較して正しい配列で2倍の計数を示した。
【0030】
アレイの同様のストリップ(30mmx2mm)を、供給者の指示の1.09倍の緩衝液および塩類中500ピコモルの標的オリゴヌクレオチド5'cacagactccatgg(tgaa)6tgagggaaataagの溶液に対して加え、その全容量は275μlであった。その溶液を75℃まで5分間加熱し、そして37℃まで25分間にわたって冷却した。その溶液を取出し、そして3.3ピコモルの32PαdTTP、5μlの1MのDTT、13単位のシークエナーゼバージョン2.0および水に対して加えて、最終容量を295μlとした。この溶液をアレイに加え、そして37℃で15時間40分間加熱した。ポリプロピレンストリップを取出し、水中で洗浄し、そして貯蔵リン光スクリーンに暴露した。結果は、正しく且つより長い反復長さよりも、より短いアレイ配列で4.5倍大きい計数を示した。
実施例5
連結反応によるVNTR分析
実施例1で記載されたのと同様の実験において、標的としてヒトfes/fps遺伝子座配列を用いてアレイを生成した。アンカー配列 5'agagatgtagtctcattctttcgccaggctgg 3’は、それがヒトゲノムDNA中に存在しているように、fes/fpsミクロサテライト(EMBL受託番号 X06292 M14209 M14589)の反復体atttに対する実際の隣接配列であった。10反復対立遺伝子を示し且つ33P標識5′隣接配列(5'g gag aca agg ata gca gtt c 3')を連結した標的オリゴヌクレオチドを用い、そして上記と同様の実験を行って、アンカー−反復体10セルについて得られた放射能は、アレイ中の隣接セルでのそれの10倍を越えた。
実施例6
固体支持体に結合したオリゴヌクレオチドの段階的連結反応の実証
アミノ化ポリプロピレンに対して3′末端によって結合したプライマーオリゴデオキシヌクレオチド -5'PO4 gta aaa cga cgg cca gt 3’を、記載の通り合成し且つリン酸化した。この材料の正方形(2mmx2mm)小片を、鋳型オリゴヌクレオチド5'tcg ttt tac cgt cat gcg tcc tct ctc 3'(250nM)および保護されたリゲーター(ligator)オリゴヌクレオチド 5'NB PO4cgc atg acg 3'(NBは、光分解性o−ニトロベンジル誘導体に基づく保護基である)(250nM)および33P標識エクステンダー(extender)オリゴヌクレオチド 5'gag aga gga 3’と一緒に標準連結反応用緩衝液中に入れた。リゲーターオリゴヌクレオチドのNB保護リン酸基は、従来、連結反応に加わることができないことが示されている。NB基はまた、紫外線によって除去されて充分に機能性のリン酸基を残すことが示されている。この混合物に対して、サームス・サーモフィルス(thermus thermophilus)DNAリガーゼ(アドバンスド・バイオテクノロジーズ(Advanced Biotechnologies))25uを加え、そして反応を室温で6時間インキュベートとした。次に、混合物を紫外線で照射し(室温20分間)、そして更に12時間インキュベートした。次に、そのポリプロピレンパッチを30%ホルムアミドを用いて95℃で5分間洗浄し、そして貯蔵リン光スクリーンに対して24時間暴露し且つリン光映像機で走査した。そのパッチは、同様の方式であるが中心の「リゲーター」オリゴヌクレオチドを加えることなく処理されたパッチよりも50倍高い放射性レベルを示した。リン酸化されたリゲーターオリゴヌクレオチドを用いる同様の実験において、同様の量の放射性エクステンダーオリゴヌクレオチドは、第三のポリプロピレン/オリゴヌクレオチドプライマー正方形に対して共有結合した状態になった。
実施例7
固体支持体に結合した対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドに対する連結反応による点突然変異分析の実証
5′塩基だけが異なる4種類の固定されたASO 5'(gcaまたはt)ag aga gga 3’を、アミノ化ポリプロピレンに結合した3′とともに、上記のように合成した。リン酸化は上記の通り行われ、そしてそれぞれのASOを有するポリプロピレンの4個の正方形を、標準連結反応用緩衝液中に、相補的標的オリゴヌクレオチド 5'tcc tct ctc cgt cat gcg tat cgt tca at 3'(250nM)と一緒に入れた。33P標識リゲーターオリゴヌクレオチド 5'cgc atg acg 3'(10nM)およびサームス・サーモフィルスDNAリガーゼ(100u)を加えた後、その混合物を37℃で18時間インキュベートとした。標的オリゴヌクレオチドに対して充分に相補的であったASOは、標識リゲーターの連結反応によって、非相補的ASOよりも100倍大きい放射能を得たことが判った。
実施例8
DNA連結反応特異性の実証
TThDNAリガーゼの特異性を評価するモデル実験において、リゲーターおよびエクステンダーデオキシオリゴヌクレオチドを、オリゴヌクレオチド鋳型に対するハイブリダイゼーションおよびDNAリガーゼによる連結反応によって互いに連結した。
【0031】
鋳型オリゴヌクレオチド 5'tcc tct ctc cgt cat gcg tat cgt tca at3'(250nM)、リン酸化された33P標識エクステンダーオリゴヌクレオチド 5'PO4 gag aga gga 3'(10nM)およびリゲーター配列 5'gca gta cg 3'(250nM)を、標準連結反応用緩衝液中で、DNAリガーゼ25uと一緒に混合した。この混合物を35℃でインキュベートした。この混合物の試料を取出し、そしてホルムアルデヒドを15分、30分、60分、120分および240分に加えることによって反応を停止させた。連結および非連結生成物を、20%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離した。そのゲルをリン光スクリーンに対して18時間暴露し且つリン光映像機で走査した。次に、反応の連結対非連結生成物の相対比率を測定した。エクステンダー配列の50%は、リゲーター配列に対して30分以内に連結された。比較すると、30分後にリゲーター 5'gca tga ag 3'を用いる同様の実験では、エクステンダー配列の1%だけが連結された状態になった。
【0032】
Taqポリメラーゼ、サーモシークエナーゼ(Thermosequenase)、T4 DNAリガーゼおよび大腸菌(E.coli)DNAリガーゼなどの他のポリメラーゼおよびリガーゼもまた、上記に記載されたのと同様の実験において有用であることが示された。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、単一塩基伸長による点突然変異の検出を示す。
【図2】図2は、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションおよび鎖延長による点突然変異の検出を示す。
【図3A】図3Aは、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドに対する標識連結反応による点突然変異の検出を示す。
【図3B】図3Bは、様々に標識された対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドのライブラリーに対する連結反応による点突然変異の検出を示す。
【図4A】図4Aは、対立遺伝子変異体に対する標識の連結反応による可変数タンデム反復部の分析を示す。
【図4B】図4Bは、対立遺伝子変異体に対する標識の連結反応による可変数タンデム反復部の分析を示す。
【図5】図5は、標識された鎖延長による可変数タンデム反復の測定を示す。
【図6】図6は、標識の連結反応と、その後の鎖延長による可変数タンデム反復の分析を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析方法であって、規定の位置のヌクレオチドを含むポリヌクレオチド標的、およびアレイの形態で支持体の異なる位置に固定された2以上の異なるオリゴヌクレオチドプローブであって、その各々が標的の予測される変異体を含む標的に対して相補的であり且つ前記規定の位置でまたはその近くで終結するプローブを用意し;そして
(a)標的をプローブと一緒にインキュベートして二重鎖を形成し、
(b)二重鎖を、(i)標的に対して相補的な標識オリゴヌクレオチドと一緒に連結反応条件、および/または(ii)少なくとも一つの標識ヌクレオチドと一緒に鎖延長条件下でインキュベートし、そして
(c)標的中の規定の位置での点突然変異を示すものとして工程(b)の連結反応または鎖延長によるプローブへのヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの付加を監視する
工程を行うことを含む上記方法。
【請求項2】
分析方法であって、規定の位置のヌクレオチドを含むポリヌクレオチド標的、および支持体に固定された1のオリゴヌクレオチドプローブを用意し、このときプローブは標的に対して相補的であり且つ前記規定の位置の一塩基前で終結するものであり;そして
(a)標的をプローブと一緒にインキュベートして二重鎖を形成し、
(b)二重鎖を、(i)標的の予測される変異体を含む標的に対して相補的な標識オリゴヌクレオチドと一緒に連結反応条件、および/または(ii)標的の予測される変異体に相補的な少なくとも一つの標識ヌクレオチドと一緒に鎖延長条件下でインキュベートし、そして
(c)標的中の規定の位置での点突然変異を示すものとして工程(b)の連結反応または鎖延長によるプローブへのヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの付加を監視する
工程を行うことを含む上記方法。
【請求項3】
分析方法であって、可変数タンデム反復部分および隣接部分を有するポリヌクレオチド標的、並びにアレイの形で支持体の異なる場所に固定された2以上の異なるオリゴヌクレオチドプローブであって、その各々が標的の反復部分および隣接部分に対して相補的な部分を有するオリゴヌクレオチドプローブを用意し;そして
(a)標的を該プローブと一緒にインキュベートして二重鎖を形成し、
(b)二重鎖を、(i)標的に対して相補的な標識オリゴヌクレオチドと一緒に連結反応条件、および/または(ii)少なくとも一つの標識ヌクレオチドと一緒に鎖延長条件下でインキュベートし、そして
(c)標的の可変数反復部分の長さを示すものとして工程(b)の連結反応または鎖延長によるプローブへのヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの付加を監視する
工程を行うことを含む上記方法。
【請求項4】
ポリヌクレオチド標的が、可変数タンデム反復部分および二つの隣接部分を有し、そして工程(b)において、標識オリゴヌクレオチドを二重鎖のプローブ鎖に対して連結させる請求項3記載の方法。
【請求項5】
ポリヌクレオチド標的が、可変数タンデム反復部分および二つの隣接部分を有し、そして工程(b)において、二重鎖のプローブ鎖を、標識ヌクレオチドの付加によって鎖延長させる請求項3記載の方法。
【請求項6】
工程(b)で酵素を用いる請求項1〜5の何れか1項記載の方法。
【請求項7】
酵素がポリメラーゼまたはリガーゼである請求項6記載の方法。
【請求項8】
酵素がDNAポリメラーゼ、逆転写酵素、またはRNAポリメラーゼである請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
酵素がTaqポリメラーゼ、サーモシークエナーゼ、T4 DNAリガーゼまたは大腸菌DNAリガーゼである請求項8記載の方法。
【請求項10】
プローブが共有結合によって固定されている請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
プローブが5’または3’ヌクレオチドを介して固定されている請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
プローブが誘導体化ガラス表面上またはシリコンマイクロチップの表面上またはプロピレンの間隔をおいた場所に固定されている請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
プローブが個々のビーズに固定されている請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
標識オリゴヌクレオチドまたはヌクレオチドが蛍光標識されている請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
工程(c)より前に標識ヌクレオシド三リン酸が付加される請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ヌクレオシド三リン酸がデオキシヌクレオシド三リン酸である請求項15記載の方法。
【請求項17】
可変配列を有するポリヌクレオチド標的を分析するためのオリゴヌクレオチドのアレイであって、成分オリゴヌクレオチドそれぞれが、(i)該標的の予想される変異体を含めた、該標的に対して相補的な配列を含み、そして(ii)遊離3’−OH基および/または5’−リン酸基を有し、そして(iii)(a)標的との二重鎖形成を可能にし且つ(b)該オリゴヌクレオチドの配列が該標的の可変配列に対合する場合にのみ連結反応または鎖延長を可能にする方向で固体支持体に固定されている上記オリゴヌクレオチドのアレイ。
【請求項18】
可変数タンデム反復配列を有するポリヌクレオチド標的を分析するためのオリゴヌクレオチドのアレイであって、成分オリゴヌクレオチド各々が、固相支持体に固定されており、そして(i)反復配列のすぐ隣の該標的の一部分に対して相補的な配列を含み、(ii)遊離3’−OH基および/または5’−リン酸基を有し、(iii)標的中の予想される幾つかの反復を含む標的の反復配列に対して相補的な配列を含み、そして(iv)(a)標的との二重鎖形成を可能にし、且つ(b)オリゴヌクレオチド中の反復数が、該標的中の反復数と等しいかまたはそれより少ない場合にのみ連結反応または鎖延長を可能にするように配置されている上記オリゴヌクレオチドのアレイ。
【請求項19】
成分オリゴヌクレオチド各々が、(iv)(b)オリゴヌクレオチド中の反復数が標的中の反復数と等しい場合にのみ連結反応によって、またはオリゴヌクレオチド中の反復数が標的中の反復数より少ない場合にのみ重合によって鎖延長を可能にするように配置されている請求項18に記載のアレイ。
【請求項20】
プローブが共有結合によって固定されている請求項18または19記載のアレイ。
【請求項21】
プローブが5’または3’ヌクレオチドを介して固定されている請求項18〜20のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項22】
プローブが誘導体化ガラス表面上またはシリコンマイクロチップの表面上またはプロピレンの間隔をおいた場所に固定されている請求項18〜21のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項23】
プローブが個々のビーズに固定されている請求項18〜21のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項24】
プローブが現場で合成される請求項18〜23のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項25】
プローブが予め合成される請求項18〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
異なるオリゴヌクレオチドが異なる位置を占有し且つオリゴヌクレオチド各々が、それを介して共有結合によってオリゴヌクレオチド各々が支持体に固定されている3’ヌクレオチド残基およびリン酸化されている5’ヌクレオチド残基を有するオリゴヌクレオチドプローブのアレイ。
【請求項27】
支持体の異なる位置に固定された異なったオリゴヌクレオチドプローブのアレイを製造する方法であって、支持体に固定された第一中間体オリゴヌクレオチドおよび溶液中の第二中間体オリゴヌクレオチド、並びに第一および第二中間体オリゴヌクレオチド両方に対して相補的である第三オリゴヌクレオチドを用意し、第一および第二中間体オリゴヌクレオチドと一緒に第三オリゴヌクレオチドの二重鎖を形成し、そして第一中間体オリゴヌクレオチドを第二中間体オリゴヌクレオチドと連結する工程;並びに支持体の異なる位置に固定されたオリゴヌクレオチドを用いて工程を反復することを含む上記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−246897(P2006−246897A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137603(P2006−137603)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【分割の表示】特願平8−530113の分割
【原出願日】平成8年4月9日(1996.4.9)
【出願人】(506131008)オックスフォード・ジーン・テクノロジー・アイピー・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】