説明

DOPO誘導体難燃剤

本発明は、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(DOPO)から誘導される、ハロゲンを含まない新規の難燃剤に関する。本発明は、ハロゲンを含まない、DOPOから誘導される難燃剤のポリマーにおける使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(DOPO)から誘導される、ハロゲンを含まない新規の難燃剤に関する。本発明は、ハロゲンを含まない、DOPOから誘導される難燃剤のポリマーにおける使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、物質の類としてのポリマーは可燃性である。ポリマーが可燃性であるために、熱可塑性ポリマーおよび熱硬化性ポリマー、例えば、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ樹脂およびポリウレタンは、多くの適用に対して難燃剤の使用を必要とする。典型的には、ハロゲン化化合物、より具体的には、ポリ臭素化芳香族化合物は、ポリマー中の難燃性添加剤として使用されてきている。これらの製品が着火される時に、これらの製品が、炎の中で生じる気相ラジカル反応を防ぐことは一般に認められている。これにより、ハロゲン化難燃剤は、異なる種類のポリマー物質のための、非常によく使用される添加剤になっている。しかし、最近15年程度の間に、ハロゲン化難燃剤は、生態系への懸念から監視下に置かれてきた。現時点では、難燃剤産業は、有機リン系難燃剤などの、より環境に優しいとされる難燃剤に変える必要に迫られている。
【0003】
ポリマーに難燃性を与える先行技術の中で、多種多様の有機リン化合物が示されてきている。リン含有難燃剤の大部分は、蒸気相と凝縮相との反応、ポリマーの炭化促進、およびチャー形成の組み合わせを通して難燃活性を与える。しかし、通常、有機リン系難燃性物質を使用することに関連する問題がある。障害の1つの原因はポリマー類の処理に関し、これは、高温、潜在的には210℃を超える温度、しばしば、310〜350℃程度の高さを必要とする場合が多い。残念ながら、難燃剤は分解または副反応に関与する場合が多く、好ましくない特性を基剤ポリマーまたはポリマー系に与える。他の難燃剤は、処理条件下で非常に蒸発しやすく、処理中に効果的に保持されない。
【0004】
それゆえに、熱および加水分解に安定で、かつ高温のポリマー処理に耐えることができる新しい難燃剤を開発することが望ましい。
【0005】
日本の特開平11(1999)−106619、特開2001−270993(P2001−270993A)および特開2002−193985(P2002−193985A)は、難燃剤として有用な、DOPOから誘導される化合物を開示した。しかし、これらの出願のいずれも、本発明の化合物を生成しなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、次式:
【0007】
【化1】

を有する、難燃剤に有用な化合物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、次式:
【0009】
【化2】

を有する、難燃性添加剤に有用な化合物に関する。
【0010】
式Iの化合物は、この化合物を作るのに用いられる反応に由来する少量の不純物を含む可能性があることは留意すべきである。これらの不純物は、触媒、溶媒、他の反応生成物、未反応のDOPOおよび他の反応物などの成分を含み得る。
【0011】
本発明は、ポリマーおよび式Iの難燃性添加剤を含む難燃性ポリマー組成物にも関する。
【0012】
難燃性ポリマー組成物に用いられ得るポリマーには、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリエーテル類、ポリケトン類、ポリアミド類、ポリ塩化ビニル類、天然ゴム類および合成ゴム類、ポリウレタン類、ポリスチレン類、ポリ(メタ)アクリレート類、フェノール樹脂類、ポリベンゾオキサジン、ポリアセタール類、ポリアクリロニトリル類、ポリブタジエン類、ポリスチレン類、ポリイミド類、ポリアミドイミド類、ポリエーテルイミド類、ポリフェニルスルフィド類、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート類、セルロース、セルロース誘導体類、シアン酸エステル類、ポリフェニレンエステル類、ポリブタジエン樹脂類、ブタジエン−スチレン樹脂類、ブタジエン−ジビニルベンゼン−スチレン樹脂類、エポキシ変性ポリブタジエン樹脂類、アクリルアセテートまたはビニルアセテートの接着剤類、カルボキシル末端ブタジエン−アクリロニトリル共重合体類、フェニレンエーテル類、無水マレイン酸を接合したブタジエン−スチレン共重合体類、無水マレイン酸変性4−メチル−1ペンテン樹脂類、マレイン酸化1−ブテン−エチレン共重合体類、ビニルベンジルエーテル化合物から誘導される樹脂類、エポキシ樹脂類またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、これらのポリマー類は、ポリ
エステル類、フェノール樹脂類、フェノールトリアジンノボラック類、クレゾールトリアジンノボラック類、トリアジンフェノールエポキシノボラック類、トリアジンクレゾールエポキシノボラック類、ポリアミド類、ポリウレタン類、ポリスチレン、エポキシ樹脂類またはそれらの混合物である。
【0013】
別の実施形態は、この難燃性組成物が、熱安定剤類、光安定剤類、紫外線吸収体類、酸化防止剤類、帯電防止剤類、防腐剤類、接着促進剤類、充填剤類、色素類、染料類、潤滑剤類、離型剤類、発砲剤類、殺菌剤類、可塑剤類、加工助剤類、酸スカベンジャー類、染料類、色素類、核形成剤類、湿潤剤類、分散剤類、共力剤類、無機充填剤類、(ガラス繊維、ガラス薄片、炭素繊維、または金属繊維などの)補強剤類、(チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、またはケイ酸カルシウムなどの)ウィスカー類、無機充填剤類および他の難燃性添加剤類、防煙剤類およびそれらの混合物などの少なくとも1種類の従来の添加剤をさらに含む場合である。
【0014】
式Iの化合物と共に使用され得る他の難燃性添加剤には、ポリリン酸アンモニウム、メラミン、リン酸メラミン、シアヌル酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、グアニジンおよびピペラジンのリン酸誘導体類ならびにシアヌル酸誘導体類、ホスファゼン化合物、ポリホスファゼン類、酸化アンチモン、シリカ、タルク、ハイドロタルサイト、ホウ酸塩、水酸化アルミニウム(ATH)などの水和アルミナ、ベーマイト、酸化ビスマス、酸化モリブデン、またはこれらの化合物と亜鉛、アルミニウムおよび/もしくはマグネシウムの酸化物または塩との混合物などの窒素含有共力剤類が含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
難燃剤としてポリマーに加えられる式Iの化合物の量は、広範囲にわたって変化してもよい。通常、100重量%のポリマーあたり、約0.1〜約100重量%の式Iの化合物が使用される。好ましくは、100重量%のポリマーあたり、約0.5〜約70重量%の式Iの化合物が使用されるか、または100重量%のポリマーあたり、約2〜約50重量%の式Iの化合物が使用される。
【0016】
好ましくは、式Iの化合物を、このポリマーと結合する前に、粉砕するか、または製粉する。粉砕または製粉した後のd50粒径は、約15μm未満、または約10μm未満、または約5μm未満、または約3μm未満または約2μm未満である。このd50粒径は、さらに、約100nm〜800nmなどの1μm未満であり得る。d50粒径は粒径の中央値であり、これらの粒子の半分がこの値を超え、かつこれらの粒子の半分がこの値を下回る。任意の適切な製粉または粉砕の技術は、例えば、ジェットミルを使用し得る。
【0017】
好ましくは、d50粒径が約2μmを超え、その結果、この化合物がポリマーとより均一に混合され得る時、式Iの化合物が単峰性の粒径分布を有することも好ましい。
【0018】
粒径の中央値を測定するために、Coulter LS−230計数器またはその同等物を、その少容量のモジュールと共に用いる。製造業者の作業指示書に従う。もう一つの方法として、堀場製作所のレーザー光散乱装置(例えば、Horiba LA900 モデル7991)またはその同等物を用いることができる。この手順は、典型的には、使用前に脱イオン水で洗浄し、乾燥させたきれいなアルミニウムカップに、約0.01g〜約0.015gの範囲の量の試料を量り入れることを含む。オートサンプラ装置は、0.4mLの1%トリトンX−100界面活性剤および超音波処理を用いて、0.05gの試料を水中に分散させる。この懸濁液は計測用セル中を循環し、そこで、この粉末粒子がレーザー光のビームを散乱する。この装置内の検出器は、散乱した光の強度を測定する。この装置内のコンピューターは、かかる測定値から粒径の平均値、平均粒径および粒径分布を計算する。
【0019】
追加量のポリマー基質と混合される、本発明の式Iの化合物を含むポリマーのマスターバッチは、さらに高濃度の式Iの化合物、例えば、100重量%のポリマーあたり、約10〜約1000重量%、または約25〜約500重量%、または約25〜約250重量%の式Iの化合物を含み得る。
【0020】
あるいは、難燃性ポリマー組成物中の式Iのリン化合物の量が選択されることにより、この組成物は、この組成物の全重量に基づいて、約0.1重量%〜約10重量%、または約1.0重量%〜約7重量%、または約1.2重量%〜約5重量%、または約1.5重量%〜約4重量%のリン含有量を含むであろう。
【0021】
式Iの化合物と組み合わせて使用され得る特定のポリマー類は以下のものである:
A.ポリフェニレン酸化物類、ポリフェニレン硫化物類、およびこれらのポリマーと(高衝撃ポリスチレン、EPDMのゴムとの共重合体類、ならびにポリフェニレン酸化物とポリアミド類およびポリエステル類との混合物などの)ポリスチレングラフトポリマー類またはスチレン共重合体類との混合物。
B.一方に末端ヒドロキシル基および他方に(ポリイソシアヌレートを含む)脂肪族または芳香族ポリイソシアネート類を有するポリエーテル、ポリエステルまたはポリブタジエン、ならびにそれらの前駆体から誘導されるポリウレタン類。
C.ジアミン類およびジカルボン酸類から誘導されるコポリアミド類、および/または(ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド6/6、ポリアミド6/10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリ−2,4,4−トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミドまたはポリ−m−フェニレンイソ−フタルアミドなどの)アミノカルボン酸類もしくは対応するラクタム類から誘導されるコポリアミド類、ならびにそれらと(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールもしくはポリテトラメチレングリコールなどの)ポリエーテルとの共重合体類を含むポリアミド類。
D.ジカルボン酸およびジアルコールから誘導されるポリエステル類、および/または(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチロール−シクロヘキサンテレフタレートおよびポリヒドロキシベンゾエート類、ならびに(ヒドロキシル末端基を有するポリエーテル類から誘導される)ブロック−コポリエーテル−エステル類などの)ヒドロキシカルボン酸類もしくは対応するラクトン類から誘導されるポリエステル類。
E.ポリスチレンおよびスチレンのグラフト共重合体類、例えば、ポリブタジエン上のスチレンおよびアクリロニトリル、ポリブタジエン上のスチレンおよびアルキルアクリレートもしくはアルキルメタクリレート、エチレン/プロピレン/ジエン三元重合体上のスチレンおよびアクリロニトリル、ポリアクリレートもしくはポリメタクリレート上のスチレンおよびアクリロニトリル、アクリレート/ブタジエン共重合体上のスチレンおよびアクリロニトリル、ならびにそれらと(スチレンまたはα−メチルスチレンと、ジエンまたはアクリル誘導体との)ランダム共重合体との混合物、例えば、ABS、MBS、ASAまたはAESの三元重合体として知られるスチレンの三元重合体。
F.エポキシ樹脂類は、エポキシ樹脂成分および架橋(硬化剤)成分の重付加反応によって調製される合成物である。用いられるエポキシ樹脂成分は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂のポリグリシジルエーテル類およびクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂のポリグリシジルエーテル類、フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸のポリグリシジルエーテル類、ならびにトリメリット酸のポリグリシジルエーテル類、芳香族アミンのN−グリシジル化合物類および複素環窒素塩基のN−グリシジル化合物類、ならびに多価脂肪族アルコールのジグリシジル化合物類およびポリグリシジル化合物類などの芳香族ポリグリシジルエーテル類である。用いられる硬化剤は、ジシアンジアミド(DICY)、フェノールノボラック類、クレゾールノボラック類、トリエチレンテトラミン、アミノエチルピペラ
ジンおよびイソホロンジアミン、ポリアミドアミン類などのポリアミン、多塩基酸類もしくはそれらの無水物、例えば、無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物またはフェノール類である。架橋も、2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、ベンジルジメチルアミン(BDMA)などの適切な触媒または促進剤を用いる重合の影響を受ける可能性がある。
G.ポリカーボネート類
【0022】
ポリエステル類、フェノール樹脂類、ポリアミド類、ポリウレタン類、ポリスチレン樹脂類およびエポキシ樹脂類が特に適切である。
【0023】
式Iの難燃性添加剤は、溶液混合および溶融混合などの様々な混合技術によってポリマーの中に組み入れられ得る。溶融混合装置の例として、2軸押出機、単軸押出機、バンバリーミキサー、回転ミキサー、練り混ぜ装置などが挙げられる。溶融混合温度は、用いられている樹脂によって決まり、約100℃〜約400℃の範囲内にある。溶融混合のために押出機を用いる時、場合によっては、押出されるものは小さなダイスの穴を抜け出て、溶融組成物の撚糸、水浴を通過することによって冷却される。場合によっては、押出し温度は、難燃性添加剤が溶解するほど十分に熱くはない。冷却された鎖をペレット化することができる。これらのペレットを用いて、成形品を作ることができる。場合によっては、成形前にこの組成物を乾燥させる必要がある。さらなる技術は、完成したポリマー顆粒または粉末に難燃剤を加え、直接この混合物を加工し、プラスチック製品を提供することである。
【0024】
本発明の難燃性樹脂組成物からプラスチック製品を生成するのに用いられる方法は、特に制限されることはなく、一般に用いられる任意の方法を使用してもよい。かかる方法の例として、射出成形、ブロー成形、シート成形、押出し成形、シート形成、引き抜き成形、フィラメントワインディング、熱成形、回転成形、樹脂トランスファー成形、手による吹き付け、および手積みならびにラミネーションが挙げられる。
【0025】
特に、前述の難燃剤を用いてプリプレグを形成してもよく、かつ/またはエポキシ化合物で積層してもよい。プリント配線板のプリプレグおよび積層板を形成するための典型的な手順は、以下のような操作を含む:
A)エポキシ化合物を有する前述の難燃剤を含む製剤などのエポキシ含有製剤を、溶媒および硬化剤または重合剤、ならびに任意選択で、上記の他の従来の添加剤と共に製剤化する。この製剤を、回転、液浸、噴霧、他の周知の技術および/もしくはそれらの組み合わせによって基質に塗布するか、または基質の中に含浸させる。この基質は、繊維、フリース、布、または織物の材料、例えば、典型的には、ガラス繊維もしくは紙を含む織物の繊維マットもしくは不織の繊維マットの形態の無機補強剤もしくは有機補強剤である。
B)含浸基質は、このエポキシ製剤中の溶媒を取り除き、任意選択で、このエポキシ製剤を部分的に硬化するのに十分な温度で加熱することによって「B段階化」となり、その結果、室温まで冷却した含浸基質を手で触って乾燥を感じるようにし、容易に扱うことができる。この「B段階化」ステップは、通常、90℃〜240℃の温度で、かつ1分〜15分の時間で実行される。B段階化で生じる含浸基質を「プリプレグ」と呼ぶ。この温度は、組成物については100℃、電気用積層板については130℃〜200℃が最も一般的である。
C)電気用積層板が望ましい場合、プリプレグの1枚以上のシートを、銅はくなどの導電体の1枚以上のシートに積み重ねるか、またはそれとの交代層に横たえる。
D)この樹脂が硬化し積層板を形成するのに十分な時間、横たえたシートに高温高圧で圧力をかける。この積層ステップの温度は、通常、100℃〜240℃の間であり、ほとんどの場合、165℃〜200℃の間である。この積層ステップは、100℃〜150℃の間の第1段階および165℃〜200℃の間の第2段階などの2つ以上の段階で実行し
てもよい。この圧力は、通常、50N/cm〜500N/cmの間である。この積層ステップを、通常、1分〜200分の時間、ほとんど場合、45分〜120分の間で実行する。この積層ステップを、任意選択で、(例えば、連続積層工程において)短時間高温で実行してもよく、(例えば、低エネルギープレス工程において)長時間低温で実行してもよい。
E)任意選択で、得られた積層板、例えば、銅張り積層板を、高温周囲圧力で、一時の間加熱することによって後処理をしてもよい。この後処理の温度は、通常、120℃〜250℃の間である。この後処理は、通常、30分〜12時間の間である。
F)導電性のプリント回路を、この銅張り積層板に適用する場合が多い。
【0026】
典型的には、上記のステップAのエポキシ樹脂用の溶媒は、2−ブタノンまたはメチルエチルケトン(MEK)などのケトンである。しかし、これらの製剤を形成するために、通常使用されている、任意の他の適切な種類の溶媒を使用することができる。このような他の溶媒の例として、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、2−メトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、キシレンおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
これらの積層板を用意するのに用いられ得る硬化剤または重合開始剤は、この薬剤が難燃性エポキシ組成物中のエポキシ樹脂の重合を助ける限り、特定の硬化剤または重合開始剤に限定されない。
【0028】
重合開始剤の例として、メタンスルホン酸、塩化アルミニウム、塩化スズ、トリフルオロボロンエチルアミン複合体、トリフルオロボロンエチルエーテル複合体などのカチオン重合開始剤、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、アゾビス−イソブチロニトリルなどのラジカル重合開始剤、メトキシカリウム、トリエチルアミン、2−ジメチルアミノフェノールなどの陰イオン性重合開始剤などおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0029】
前述のエポキシ硬化剤には、当業者に周知の任意の薬剤が含まれる。例として、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、ジシアンジアミド、フェノール/ホルムアルデヒドノボラック、クレゾール/ホルムアルデヒドノボラック、ビスフェノールAノボラック、ビフェニル−、トルエン−、キシレン−、もしくはメシチレン−変性フェノール/ホルムアルデヒドノボラック、アミノトリアジンノボラック、クレゾール/ホルムアミド/アミノトリアジンノボラック、フェノール/ホルムアミド/アミノトリアジンノボラックまたはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
用いられ得る硬化剤の量は、リン含有エポキシ樹脂中の未反応のエポキシ基のモル当量に対するこの硬化剤中の硬化性官能基のモル当量に基づく。したがって、硬化剤の量は、リン含有エポキシ樹脂中の未反応のエポキシ基の当量に基づき、約0.1当量〜約10当量または約0.3当量〜約5当量、または約0.7当量〜約2当量であり得る。
【0031】
重合開始剤は、硬化エポキシ樹脂の全重量に基づき、約0.01重量%〜約10重量%、または約0.05〜約5%、または約0.1重量%〜約2重量%の範囲の濃度で加えられ得る。
【0032】
硬化温度は、一般に、約25℃〜約250℃、または約70℃〜約240℃、または約150〜約220℃の間で実行され得る。
【0033】
さらに、エポキシ硬化剤促進剤も用いて、このエポキシ組成物の硬化を促進してもよい。これらのエポキシ硬化剤促進剤は、イミダゾール類に基づく場合が多い。このようなエポキシ硬化剤促進剤の例として、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,2,4,5−テトラメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(4,6−ジアミノ−s−トリアジニル−2−エチル)−2−フェニルイミダゾールまたはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
フェノールノボラック類を硬化剤として使用する時、このエポキシ硬化剤促進剤を、使用する硬化剤の重量に基づき、約0.0001重量%〜約5重量%、または約0.01〜約3%、または約0.1重量%〜約2重量%、または約0.15重量%〜約1重量%の範囲の濃度で加えてもよい。高濃度の促進剤を、DICY、ジシアンジアミドなどの異なる硬化剤と共に使用してもよく、その際、促進剤の濃度は、硬化剤の重量に基づき、より典型的には、5〜25重量%の範囲にある。
【0035】
一般に、約25℃〜約250℃の間、もしくは約70℃〜約240℃の間、または約150℃〜約220℃の間の硬化温度で実行され得る。
【0036】
反応手順
本発明は、次式:
【0037】
【化3】

を有する化合物を作る工程にも関し、塩基存在下で、式A
【0038】
【化4】

の化合物と、ジクロロエタンまたはジブロモエタンなどのジハロエタンとを反応させることを含む。
【0039】
用いられ得る1種類の塩基は、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属アミドおよび
アルカリ金属アルキルアミドなどのアルカリ金属塩基である。この塩基に対するアルカリ金属には、リチウム、ナトリウムおよびカリウムが含まれる。用いられ得る塩基の例として、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、リチウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、リチウムジイソプロピルアミドおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。カリウムt−ブトキシドおよびナトリウムメトキシドが好ましい。
【0040】
任意の適切な塩基の量が、本発明の工程で使用され得る。かかる適切な量には、式Aの化合物の量に基づき、約0.1〜約10当量、または約0.5〜約5当量が含まれる。
【0041】
この工程には、任意の溶媒も含まれ得る。かかる溶媒の例として、ヘプタン、ヘキサン、石油エーテル、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、アセトニトリル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルまたはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
この工程は、約−10℃〜約100℃の範囲の温度で行われ得る。
【0043】
上記の式Iの化合物を生成するのに使用される別の工程は、2010年、3月31日に出願され、表題が「Process for the Preparation of DOPO−Derived Compounds」である米国仮特許出願第61/319580号に見つけられ得、これは、参照により、その全体が本明細書に組込まれる。その工程において、DOPOは、約100℃〜約250℃の範囲の温度で、触媒存在下、エチレングリコールと反応する。用いられ得る触媒は、脱水反応および/またはアルブゾフ反応用の任意の適切な触媒である。一般的に適切な触媒は、アルキルハライド、アルカリハライド、アルカリ土類金属ハライド、遷移金属およびそれらのハライドまたはメチルp−トルエンスルホネート、エチルp−トルエンスルホネートなどの酸触媒である。アルブゾフ反応触媒が特に適切である。この工程は、任意選択で、溶媒、好ましくは、高沸点溶媒および任意の添加溶剤を使用してもよい。
【0044】
式Iの化合物の純度は、特に、難燃剤の適用において使用する時、約95%、約98%または約99%を超えるべきであることが好ましい。純度のレベルは、NMR分光法を用いることによって測定することができる。NMR分光法の当該技術者は、式Iの化合物の純度を測定する手順を進めることができる。
【0045】
式Iの化合物の純度を測定するのに使用され得る1つのNMR分光法の手順を以下で論じる。この手順は、観察される不純物に対する重量%標準化による純度の決定に適する。この手順は、クロロホルムに完全に溶解することができる式Iの試料に適する。あるいは、不溶性物質が存在する場合、この試料の純度は、リン酸トリメチルなどの内部標準に対して、1H−NMR分光法または31P−NMR分光法によって評価され得る。内部標準を用いる場合、適切なプレパルス遅延を用いて、所望の全ての核がさらなるRFパルスの前に平衡に戻ることができることを確実にする。
【0046】
試料調製:
実験台の上で、約500mgの試料をきれいなガラスバイアルに移し入れることによって、試料を調製してもよい。試料の重量を記録する必要はない。このバイアルに、テトラメチルシラン(TMS)を含む約1〜2mLのCDCl(>98%D)を加える。試料が完全に溶解するまで、蓋をして、ボルテックスシェーカー上で試料を振盪する。約1m
Lの上記の溶液を、きれいな、乾燥させた5mmNMR試験管に移す。逆ゲート付き13Cデカップリング(inverse gated 13C decoupling)実験を用いて、H NMRスペクトルを獲得する。以下のパラメーターは、約100ppm以上のレベルで存在する不純物の検出に適する。
【0047】
獲得パラメーター:
核:1H;パルスプログラム:zgig30;収集データポイント(TD):64k;スペクトル幅(SWH):約7000Hz:プレパルス遅延(D1):最低60秒(適切なプレパルス遅延を用いて、観察される全ての核が適切な緩和時間を有することを確実にする);獲得(NS):最低4スキャン(良好なシグナル対ノイズ比をもたらすのに十分なスキャン);ロック溶媒:CDCl3。
【0048】
過程、ショートカットとしてefpコマンドを用いて、以下のことを実行する:em(指数関数的増幅窓関数(exponential multiplication window function))、ft(フーリエ変換)、およびpk(位相補正)。必要であれば、スペクトルを手動で位相補正する。0.0ppmへのTMSピークの化学シフトを較正する。以下の処理パラメーターが適切である:SI:64k;線幅拡大(LB):0.2Hz。
【0049】
H−NMRスペクトル中の以下のピークを積分し、傾斜および各積分のバイアスに細心の注意を払う。
式Iの化合物(多重線、約8.2〜約7.6ppm、8H、H−Ar)、FW=458.4g/モル
DOPO(一重線、約8.6ppm、0.5H、H−P)、FW=216.2g/モル
パラキシレン溶媒(一重線、約7.1ppm、4H、H−Ar)、FW=106.2g/モル
エチレングリコール(一重線、約3.6ppm、4H、HCO)、FW=62.1g/モル
イソプロピルアルコール(IPA)(二重線、約1.2ppm、6H、HC−C)、FW=60.1g/モル
【0050】
スペクトルの解釈および計算:
式Iの化合物のH−NMRスペクトルは、以下のピークからなる:約8.0ppm〜約7.2ppmの一連の多重線は16個の芳香族プロトンを表し、約2.4ppmに中心のある多重線はエチレン架橋の4個のプロトンを表す。
次式を用いた各成分の標準化された重量%:
【0051】
[数1]
成分の重量%=(A1/B1×C1)×100/Σ(A1/B1×C1)+(A2/B2×C2)+・・・)
A=成分のピークの領域
B=成分のピークによって代表される核番号
C=成分のMW
【0052】
特に、エポキシ中で使用する時、有機塩基は難燃剤としての式Iの化合物の使用に悪影響を与える可能性があるので、式Iの化合物は、実質的にまたは完全に有機塩基を含まないのを好まれる。実質的に有機塩基を含まないということは、そのレベルが約10,000ppm未満、約1000ppm未満、約100ppm未満または約10ppm未満であることを意味する。式Iの化合物が実質的にまたは完全に有機塩基を含まない1つの方法は、この化合物を生成する反応においていかなる有機塩基も使用しない事である。必要で
あれば、有機塩基の量を決定する1つの方法はNMR分光法である。
【0053】
有機塩基は、塩基として作用する有機化合物である。有機塩基は、通常、しかしいつもではないが、プロトン受容体である。有機塩基は、通常、容易にプロトン化することができる窒素原子を含む。アミンおよび窒素含有複素環式化合物は、典型的には、有機塩基である。例として、ピリジン、メチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−エチルモルホリン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、ホスファゼンの塩基およびいくつかの有機カチオンの炭酸塩または水酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
DOPOは難燃剤としての式Iの化合物の使用に悪影響を与える可能性があるので、式Iの化合物は実質的に未反応のDOPOを含まないことが好ましい。実質的にDOPOを含まないということは、そのレベルが約50,000ppm未満、約20,000ppm未満、約10,000ppm未満、約1000ppm未満または約100ppm未満であることを意味する。DOPOを減少させる好ましい方法は、濾過前および/または濾過後に、水または(アルコール(例えば、イソプロパノール)、アルデヒドまたはケトン(例えば、アセトン)などの水混和性溶媒でこの生成物を洗浄することである。DOPOレベルは、NMR分光法を用いることによって測定してもよい。
【0055】
精製後に式Iの化合物中に残っている溶媒の量は、約1000ppm未満、約100ppm未満、または約50ppm未満であるべきであることが好ましい。溶媒の量は、NMR分光法を用いることによって測定してもよい。
【0056】
式Iの化合物中の溶媒の量を減少させる1つの方法は、約2〜24時間、約100℃〜170℃の温度での真空下または窒素掃引で乾燥することである。この化合物を粉砕または製粉する場合、例えば、温風ジェットミルにより、室温を超える温度で行い、揮発物をさらに減少させることが好ましい。
【0057】
式Iの化合物が、約5000ppm未満、約2000ppm未満、または約1000ppm未満の揮発物を包含することが好ましい。揮発物は、乾燥方法における損失を用いて測定してもよい。この方法は、メトラー・トレド社のHR73ハロゲン水分分析器を用いてもよい。本方法は、きれいな、重さを量ったアルミニウム容器に1g〜10gの間の試料を加え、これを水分平衡状態にある水分分析器に入れることを必要とする。このアルミニウム皿を取り除き、穏やかに振って、試料を広げる。この皿を取り換え、「開始」ボタンを押し、乾燥プログラムを開始する。この試料を、室温から200℃まで素早く加熱し、この試料が乾燥するまで等温を保つ。「乾燥」の条件は、重量変化が140秒につき1mgを超えて生じないことを必要とする。乾燥の損失は、100×(初期重量−最終重量)/初期重量としてこのシステムによって自動的に計算される。このプログラムが完了する時、重量%の損失結果を表示するであろう。
【0058】
式Iの化合物の融点のピークは、約245℃または約250℃を超えることが好ましい。融点のピークの決定について、示差走査熱量計(DSC)は、例えば、「TA Instruments Q200」分析器をその標準DSCセルと共に使用してもよい。このDSCは、ユーザー・インターフェースおよび運用システムコントロールを提供するPCと接続している。この温度スケールを、ガリウム、インジウム、鉛および亜鉛の標準試料の融点を用いて10℃/分で較正する。熱流動のスケールを、インジウムの融解熱を用いて較正する。ベースライン応答を、合成サファイアの熱容量標準物質を用いて約20℃/分で較正する。これらの較正の全ては、装置の製造業者の推奨手順に従って行われるべきである。
【0059】
これらの試料の測定を、金メッキのステンレス鋼のるつぼの中で、0℃〜400℃で、10℃/分で行う。この試料の熱流動と温度データを含む生データファイルを、測定中にPCのハードドライブに保存する。DSC測定が完了した後、この生データファイルを融解挙動について解析する。融解吸熱を積分し、推定される開始温度、ピーク温度および融解熱を得る。
【0060】
TA装置のソフトウェアを用いて、ピークの上下の温度点を選択することにより、融点のピークを決定する。試料が多重ピークを示す場合、融点の多重ピークを報告する。融点のピークは、特定の融解転移に対する吸熱の最大値である。ピークの最大値の決定は、ベースラインに対して、選択した限度内の最も遠い点を決定するために用いられる解析である。
【0061】
式Iの化合物の熱重量分析(TGA)により、難燃剤のほとんどの適用に対して、約245℃または約250℃を超える温度で、重量損失が5%であることも好ましい。この熱重量分析(TGA)は、「TA Instruments Q500」分析器で実行してもよい。TGAは、ユーザー・インターフェースおよび運用システムコントロールを提供するPCと接続している。この温度スケールを、アルメルおよびニッケル標準試料の保証されたキュリー温度を用いて較正する。微量てんびんを、保証された参照重量を用いて較正する。これらの較正の両方は、装置の製造業者の推奨手順に従って行われるべきである。10g〜12mgの試料を、白金試料皿の中で、窒素下、10℃/分で、室温から500℃まで加熱する。この試料の重量および温度データを含む生データファイルを、測定中にPCのハードドライブに保存する。TGA測定が完了した後、この生データファイルを、1%、2%、5%、10%および50%重量損失温度について解析する。
【0062】
式Iの化合物の全塩素または全臭素のレベルが、約1000ppm未満、約500ppm未満、もしくは約100ppm未満であることも好ましい。全塩素または全臭素のレベルを減少させる1つの方法は、塩素ベース又は臭素ベースの触媒もしくは溶媒を含めないで、上記のエチレングリコール反応手順を用いることである。
【0063】
全塩素または全臭素のレベルをシェニガー法により決定してもよい。この方法は、酸素に富む雰囲気中で、既知重量の試料を燃焼することを含む。遊離した塩素または臭素は、塩基性媒体中の亜ヒ酸ナトリウムで塩化物または臭化物に還元される。
【0064】
塩化物または臭化物の含有量を、銀電極(silver titrode electrode)を用いて、電位差滴定の終点まで硝酸銀で滴定し、終点を示すことによって決定する。自動電位差滴定装置は、動的なまたは一定のミリボルト滴定が可能なMetrohm 716もしくは736滴定装置、またはその同等物であり得る。この銀電極は、Metrohm6.0430.100電極(カタログ番号2094850−7)またはその同等物である。標準のテーパー継手ストッパーおよび白金担体を有するシェニガー(Schoeniger)燃焼フラスコ、およびThomas−Ogg酸素フラスコ赤外線点火装置(Arthur H.Thomas、製品番号6516−G10)を用いる。必要に応じて、ハロゲンプロジェクターランプ(モデルDFN/DFC 150W−125V)をThomas−Ogg酸素フラスコ赤外線点火装置の代わりに使用することができる。脱イオン水および蒸留水、イソプロピルアルコール、(濃硫酸と脱イオン水または蒸留水の等量から作られた)1:1硫酸溶液、(NaOH60g、As60gおよび水1Lを撹拌しながら一緒に混合することによって作られた)腐食性の亜ヒ酸塩溶液、0.1Nの標準化硝酸銀溶液、粉末ショ糖、乾燥圧縮酸素、ならびに蒸留水中の0.1%のメチルオレンジ指示薬溶液が、この手順で使用される化学物質である。
【0065】
固体試料を用いてシェニガー手順を実施することにおいて、折り目を付けた黒色の濾紙
上で、0.00001gまで正確に量った0.04〜0.08gの量の試料を、この濾紙の中に包み、Thomas−Ogg燃焼フラスコの白金試料ホルダーの中に入れた。試料が液体である場合、タールを塗った3番のゼラチンカプセルの中の、同じ正確さで量りとった0.04〜0.08gの量の試料に、およそ等量の粉末ショ糖を加え、このカプセルをThomas−Ogg燃焼フラスコの白金試料ホルダーの中に入れ、黒色の一片の濾紙をこのカプセルおよびこの白金試料ホルダーの間に挿入した。その後、以下のステップを行った:(a)この燃焼フラスコに、15mLの腐食性の亜ヒ酸塩溶液、3滴の水酸化アンモニウムを加える、(b)少なくとも2分間、このフラスコに酸素を十分に流す。シリコーングリースをこのストッパー/試料ホルダーに大量に塗布し、このフラスコの上部にホルダーを置き、少なくともさらに1分間流す。このフラスコをストッパーで栓をし、その上に、重量を量った試料を有する白金担体を取り付け、固定することで、逆さにした時に、このフラスコは気密性が保たれるようにする。このシリコーングリースを、全接合面の周りに連続シールを形成すべきである。隙間がある場合、さらにグリースを加える。(c)逆さにした燃焼フラスコをThomas−Ogg酸素フラスコ赤外線点火装置の中に入れ、点火装置と濾紙を整列させ、赤外線ランプをオンにし、この濾紙に着火することによってこの紙を燃やす。(d)この試料が燃焼するとすぐに、数回、このフラスコの内容物を回転させ、内壁をコーティングする。(e)最初の5分または6分の間は頻繁に、かつ最後の20分間は時々、このフラスコを振盪しながら、このフラスコを30分間静置させる。(f)この白金試料担体およびこのフラスコの内壁を、脱イオン水または蒸留水で完全にすすぐ。1ペレットのKOH、2滴のメチルオレンジ指示薬、および5〜6個の沸騰石を加える。沸騰させ、容積が約40〜50mLになるまで、過剰の水を蒸発させる。(g)このフラスコの内容物を、200mLの丈が高い形のビーカーに定量的に移す。試料の全容積およびすすぎの水は、およそ100〜120mLであるべきである。さらに2〜3回、10mLのIPAですすぐ。(h)磁気撹拌棒を落とし、このビーカーを磁器撹拌器上に置く。ピンク色の終点まで、10mLの1:1 HSOで酸性にする。この溶液がまだ黄色である場合、必要に応じ、ピンク色の終点に達するまで、1:1 HSOの5mLアリコートをさらに加える。酸が加えられるので、溶解していたCOは遊離される。(i)この試料に銀電極(silver titrode)を導入し、製造業者の指示書に従って、自動滴定装置上で、0.1または0.01NのAgNOで滴定する。(j)上記の全てのステップを通して、ブランクを実行し、この試料のみを省く。(k)塩化物または臭化物の重量%を計算する。
【0066】
[数2]
%Cl(またはBr)=(S−B)(N)(7.9904)/試料重量(g)
式中、Sはこの試料を滴定するのに必要とされる硝酸銀(mL)、Bはブランクを滴定するのに必要とされる硝酸銀(mL)、およびNは硝酸銀溶液の規定度である。
【0067】
全塩素または全臭素が約2,000ppm以上である場合、上記の方法は十分に機能する。全塩素または全臭素の含有量が約2,000ppm未満である場合、シェニガー燃焼法を用いることができるが、硝酸銀での滴定の代わりに、塩化物または臭化物の分析をイオンクロマトグラフィーによって行う。
【0068】
必要とされる装置には、電導度検出器を備えるDionex DX−500イオンクロマトグラフィーまたはその同等物、Dionex PeakNetクロマトグラフィーのデータ収集および処理システム、ならびにDionex IonPac(登録商標)AG11−HCガードカラム備えるDionex IonPac(登録商標)AS11−HCカラムが含まれる。
【0069】
このイオンクロマトグラフィーの操作条件には、(a)溶離液:EG40 KOH勾配、(b)流速:1.5mL/分、(c)注入量:25μL、(d)検出範囲:200μS
、(e)サプレッサー:ASRS−Ultra 4mm、(f)サプレッサー電流:100mA、および(g)再生:オートサプレッションリサイクルモードが含まれる。EG40運転条件は以下にまとめた通りである。
【0070】
【表1】

【0071】
必要な化学物質は、(a)17.8メガオーム−cm以上の比電気抵抗を有する脱イオン水である。
【0072】
品質管理の標準化のために、標準溶液「B」を以下のように調製した:濃縮した塩化物または臭化物の標準溶液(1,000μg/mL)を、0.329gの塩化ナトリウムまたは臭化ナトリウムを100mLの容量フラスコに量り入れ、脱イオン水で必要量まで希釈し、十分混合することによって調製する。これは標準溶液「A」である。塩化物または臭化物の較正標準溶液「B」を、100μLの濃縮した塩化物または臭化物の標準溶液を100mLの容量フラスコにピペットで量り入れ、脱イオン水で必要量まで満たし、十分混合することによって調製する。これが、塩化物または臭化物として1μg/mLの標準溶液「B」を提供する。後者の塩化物または臭化物の較正標準溶液の2アリコートを、2重の解析のために、それぞれのオートサンプラバイアルに添加する。
【0073】
使い捨てピペットを用いて、全てをすすいだ後、1アリコートの試料を燃焼容器から除去し、GHP Polyproの注射器フィルターを通して濾過する。(i)25μLの濾過した試料をイオンクロマトグラフィーに注入し、上記の操作条件を用いて解析する。
【0074】
用いた計算は以下の通りである:
a)本方法は、それぞれの標準溶液「B」の二重の注入から計算される応答係数を用いる。この応答係数は、次式を用いて計算する:
【0075】
[数3]
RF=ピークの面積(2回の注入)の平均/標準濃度(μg/mL)
b)各試料のテスト走行用の塩化物または臭化物のピークの面積を、次式に従って、ブランク中の塩化物または臭化物のピークの面積に対して補正する:
【0076】
[数4]
−A=A
(式中、Aは試料のピークの面積であり、Aはブランクのピークの面積であり、Aは試料の補正したピークの面積である。)
c)各試料調製についての塩化物または臭化物の補正した面積を用いて、次式を用いて、この試料中の塩化物または臭化物の全濃度を決定する:
【0077】
[数5]
ppm Cl(またはBr)=A×V/RF×W
(式中、Aはこの試料の補正した面積であり、RFは塩化物または臭化物の応答係数であり、Wはグラムで表される試料の量であり、Vはこの水溶液の全量である。)
【0078】
以下の実施例が本発明を説明する。しかし、本明細書に十分に記載され、特許請求の範囲で列挙される本発明は、以下の実施例の詳細によって限定されることを意図しないことは理解されるべきである。
【0079】
実施例1
6H−ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスホリン、6,6’−(1,4−エタンジイル)ビス−、6,6’−ジオキサイド
【0080】
【化5】

【0081】
【表2】

【0082】
半分覆った4首の5L反応器に、追加の漏斗、熱電対、機械撹拌機および窒素フローを取り付けた。この反応器を、t−ブトキシカリウム(tBuOK)(230g、2.05モル)および溶媒として1.5Lの無水DMSOで満たした。均一溶液になるまで、この混合物を室温で撹拌した。この溶液を10℃まで冷却し、DOPO(423g、1.96モル)を9個の少量分(1個分あたり50〜60g)に加え、この反応温度を30℃未満で保持した。125mlの追加の漏斗の中のジクロロエタン(92g、0.93モル)を、上記の溶液に1時間ゆっくりと加えた。この反応を50℃まで1時間加熱した。この反応を10℃まで冷却し、水(3L)を加えた。このスラリーを濾過し、この湿ったケーキを水、アセトンおよび酢酸エチルで洗浄し、532gの湿った粗物質を得た。この粗物質をMeCN/エタノール/H2O(5320ml、v:v:v=1:1:0.5)で還流し、ゆっくり5℃まで冷却した。この白色個体を粗いフリット漏斗(fritted funnel)に通して濾過し、80℃で8時間、真空オーブン中で乾燥させ、乾燥白色粉
末を得た(260g、収率68重量%、純度99.4重量%、融点253〜269℃)。31P−NMR(162MHz,CDCl):δ36.45,36.25ppmおよびH−NMR(400MHz,CDCl):δ7.95(d,J=8Hz,2H,ArH),7.88(d,J=8Hz,2H,ArH),7.79−7.69(m,4H,ArH),7.48(dd,J=7.2Hz,14.4Hz,2H),7.37(dd,J=7.2Hz,7.2Hz,2H,ArH),7.29−7.24(m,2H,ArH),7.16(d,J=12Hz,2H,ArH),2.31(m,4H)ppm。
【0083】
実施例2
エポキシ積層板における6H−ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスホリン、6,6’−(1,4−エタンジイル)ビス−、6,6’−ジオキサイド(リン含有量4%)の使用
一般に、高度な樹脂、硬化剤および促進剤の原液を、全て別々に調製および保管し、実験を容易にする。15重量%の2−ブタノン(MEK)を含む85重量%のフェノールエポキシノボラック樹脂溶液であるDEN(登録商標)438−EK85をダウケミカル社から入手した。Durite SD−1702ノボラック硬化剤をHexion社から入手した。50重量%のSD−1702を50重量%MEK溶媒に溶解させることによって、ノボラック樹脂溶液を調製した。
【0084】
13.5重量%のリンを含む実施例1の難燃剤(6H−ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスホリン、6,6’−(1,4−エタンジイル)ビス−、6,6’−ジオキサイド)を、コーヒー豆用グラインダーを用いて粉砕し、約6μmのd50までDOPO化合物の粒径(2峰性分布)を減少させ、その後、このポリマーと結合させた。85重量%DEN438溶液6.30g、50重量%のSD−1702溶液6.30g、難燃剤3.59g、2−フェニルイミダゾール促進剤0.006g(MEK50mL中に2−PhIを0.277g含む約1.1mlの溶液)を混合することによって、4重量%のリンを含む難燃性樹脂の混合物を調製した。促進剤に対するノボラックの割合は約525であった。この難燃剤はこの樹脂溶液に不溶性であったが、ホットゲルプレート(hot gel plate)と接触させると、高温で完全に溶解した。約0.5〜1mLのこの樹脂混合物を、約162〜164℃の熱加硫プレート(Thermo−electric社)に加えた。舌圧子を縦半分に割り、この舌圧子の半分を用いて、剛性が顕著になるまでホットプレート上でこの樹脂を動かし、その後、繊維形成が終わるまでこの舌圧子の平坦部でこの樹脂を持ち上げた。樹脂の「繊維」がこの樹脂混合物からもはや引っ張ることができなくなり、エポキシの「ネバネバがなくなった」時点で決まるゲル化時間は4分43秒であった。
【0085】
8オンスの広口ガラス瓶の中で、85重量%のDEN438溶液63.14g、50重量%のSD−1702溶液63.00g、難燃剤35.92gおよび2−フェニルイミダゾール促進剤0.060gを加えることによって、4.0重量%のリンを含むより大きい難燃性樹脂ワニスを調製した。MEK30gをこの樹脂溶液にさらに加えた。約15分間6,000ppmで撹拌する高せん断ミキサーを用いて、この樹脂混合物を完全に混合した。
【0086】
大きなロールから11インチ×11インチの四角の織物ガラス繊維(BGF Industries社の643仕上がりの7628ガラス(7628 glass with 643 finish))を切断し、この布の上端および下端に木の支持体(長さ12インチ、幅1インチおよび厚さ1/16インチ)をホッチキスで留めた。この木の支持体は、B段階のオーブン中でこの布をつるすために、一端にペーパークリップを挿入するための穴を隅に含んでいた。A段階のもの、または樹脂ワニスをこの布の裏表に塗った。ペーパークリップをほどき、1つの木の支持体の両方の穴に挿入した。樹脂が浸透した布を、実
験室のドラフトの中でアルミニウム支持体から垂れ下げ、約1分間ぬれたまま干し、(170℃まで)余熱し、強制換気したBlue Mオーブン(Lab Safety Supply社、General Signal社の一団)の中で3分50秒間つるした。10インチ×10インチのシートサイズを減少させることにより、B段階化のプリプレグの端を取り除いた。このシートを5インチ×5インチの4枚のシートに切断し、重量を量った後、2層のPacothaneリリースフィルム(Insulectro Corp)および2シートプレート(厚さ1/8インチ、四角いサイズの12インチ×12インチ)の間に4層のプリプレグを積み重ねた。1時間、5,000psigの加熱プレス内で積層板を形成した。得られた積層板は、厚さが0.034インチであり、45重量%の樹脂を含み、加圧成形中に13重量%の樹脂があふれ出た。ダイヤモンドのこぎりを用いて、0.5インチ幅の5枚の試験片をこの積層板から切断し、この試験片の端を紙やすりでなめらかにした。Atlas UL−94燃焼チャンバーを用いるASTM D3801−06によって、これらの試験片の引火性を調べた結果、全5つの試験片上の2か所の着火について、全燃焼時間32秒のV−0等級になった。
【0087】
実施例3
エポキシ積層板における6H−ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスホリン、6,6’−(1,4−エタンジイル)ビス−、6,6’−ジオキサイド(リン含有量3%)の使用
一般に、高度な樹脂、硬化剤および促進剤の原液を、全て別々に調製および保管し、実験を容易にする。15重量%の2−ブタノン(MEK)を含む85重量%のフェノールエポキシノボラック樹脂溶液であるDEN(登録商標)438−EK85をダウケミカル社から入手した。Durite SD−1702ノボラック硬化剤をHexion社から入手した。50重量%のSD−1702を50重量%MEK溶媒に溶解させることによって、ノボラック樹脂溶液を調製した。
【0088】
13.5重量%のリンを含む実施例1の難燃剤(6H−ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスホリン、6,6’−(1,4−エタンジイル)ビス−、6,6’−ジオキサイド)を、コーヒー豆用グラインダーを用いて粉砕し、約6μmのd50までDOPO化合物の粒径(2峰性分布)を減少させ、その後、このポリマーと結合させた。85重量%DEN438溶液126.3g、50重量%のSD−1702溶液126.0g、難燃剤48.8g、2−フェニルイミダゾール促進剤0.12gを混合することによって、3.0重量%のリンを含む難燃性樹脂の混合物を調製した。促進剤に対するノボラックの割合は、約525であった。この難燃剤はこの樹脂溶液に不溶性であったが、ホットゲルプレートと接触させると、高温で完全に溶解した。約0.5〜1mLのこの樹脂混合物を、約162〜164℃の熱加硫プレート(Thermo−electric社)に加えた。舌圧子を縦半分に割り、この舌圧子の半分を用いて、剛性が顕著になるまでホットプレート上でこの樹脂を動かし、その後、繊維形成が終わるまでこの舌圧子の平坦部でこの樹脂を持ち上げた。樹脂の「繊維」がこの樹脂混合物からもはや引っ張ることができなくなり、エポキシの「ネバネバがなくなった」時点で決まるゲル化時間は4分22秒であった。MEK70gをこの樹脂溶液にさらに加えた。約15分間6,000ppmで撹拌する高せん断ミキサーを用いて、この樹脂混合物を完全に混合した。
【0089】
大きなロールから11インチ×11インチの四角の織物ガラス繊維(BGF Industries社の643仕上がりの7628ガラス(7628 glass with 643 finish))を切断し、この布の上端および下端に木の支持体(長さ12インチ、幅1インチおよび厚さ1/16インチ)をホッチキスで留めた。この木の支持体は、B段階のオーブン中でこの布をつるすために、複数の端にペーパークリップを挿入するための穴を隅に含んでいた。A段階のもの、または樹脂ワニスをこの布の裏表に塗った。ペーパークリップをほどき、1つの木の支持体の両方の穴に挿入した。樹脂が浸透した布を
、実験室のドラフトの中でアルミニウム支持体から垂れ下げ、約1分間ぬれたまま干し、(170℃まで)余熱し、強制換気したBlue Mオーブン(Lab Safety Supply社、General Signal社の一団)の中で3分30秒間つるした。10インチ×10インチのシートサイズを減少させることにより、B段階化のプリプレグの端を取り除いた。このシートを5インチ×5インチの4枚のシートに切断し、重量を量った後、2層のPacothaneリリースフィルム(Insulectro Corp)および2シートプレート(厚さ1/8インチ、四角いサイズの12インチ×12インチ)の間に4層のプリプレグを積み重ねた。1時間、5,000psigの加熱プレス内で積層板を形成した。得られた積層板は、厚さが0.037インチであり、45重量%の樹脂を含み、加圧成形中に3重量%の樹脂があふれ出た。ダイヤモンドのこぎりを用いて、0.5インチ幅の5枚の試験片をこの積層板から切断し、この試験片の端を紙やすりでなめらかにした。Atlas UL−94燃焼チャンバーを用いるASTM D3801−06によって、これらの試験片の引火性を調べた結果、全5つの試験片上の2か所の着火について、全燃焼時間56秒のV−1等級になった。どの1つの燃焼も10秒を超えなかった。
【0090】
比較実施例4
難燃剤を含まないDEN438ノボラックエポキシ樹脂からの積層板の調製
一般に、高度な樹脂、硬化剤および促進剤の原液を、全て別々に調製および保管し、実験を容易にする。15重量%の2−ブタノン(MEK)を含む85重量%のフェノールエポキシノボラック樹脂溶液であるDEN(登録商標)438−EK85をダウケミカル社から入手した。Durite SD−1702ノボラック硬化剤をHexion社から入手した。50重量%のSD−1702を50重量%MEK溶媒に溶解させることによって、ノボラック樹脂溶液を調製した。
【0091】
85重量%DEN438溶液113.64g、50重量%のSD−1702溶液113.40g、および2−フェニルイミダゾール促進剤0.0705gを400mLの使い捨てプラスチックのビーカーに入れて混合することによって、難燃剤を含まない樹脂混合物を調製した。促進剤に対するノボラックの割合は、約804であった。約0.5〜1mLのこの樹脂溶液を、約162〜164℃の熱加硫プレート(Thermo−electric社)に加えた。舌圧子を縦半分に割り、この舌圧子の半分を用いて、剛性が顕著になるまでホットプレート上でこの樹脂を動かし、その後、繊維形成が終わるまでこの舌圧子の平坦部でこの樹脂を持ち上げた。樹脂の「繊維」がこの樹脂混合物からもはや引っ張ることができなくなり、エポキシの「ネバネバがなくなった」時点で決まるゲル化時間は5分30秒であった。
【0092】
大きなロールから12インチ×12インチの四角の織物ガラス繊維(CS−718仕上がりのJPS 7628繊維ガラス布巾を切断し、この布の上端および下端に木の支持体(長さ12インチ、幅1インチおよび厚さ1/16インチ)をホッチキスで留めた。この木の支持体は、B段階のオーブン中でこの布をつるすために、一端にペーパークリップを挿入するための穴を複数の隅に含んでいた。A段階のもの、または樹脂ワニスをこの布の裏表に塗った。ペーパークリップをほどき、1つの木の支持体の両方の穴に挿入した。樹脂が浸透した布を、実験室のドラフトの中でアルミニウム支持体から垂れ下げ、約1分間ぬれたまま干し、(170℃まで)余熱し、強制換気したBlue Mオーブン(Lab
Safety Supply社、General Signal社の一団)の中で4分10秒〜4分30秒の間の時間つるした。10インチ×10インチのシートサイズを減少させることにより、B段階のプリプレグの端を取り除いた。このシートを5インチ×5インチの4枚のシートに切断し、2層のPacothaneリリースフィルム(Insulectro Corp)および2シートプレート(厚さ1/8インチ、四角いサイズの12インチ×12インチ)の間に4層のプリプレグを積み重ねた。1時間、5,000psi
gの加熱プレス内で積層板を形成した。得られた積層板は、厚さが0.034インチ〜0.036インチの間であり、44重量%〜46重量%の間の樹脂を含み、加圧成形中1重量%〜18重量%の樹脂があふれ出た。ダイヤモンドのこぎりを用いて、0.5インチ幅の5つの試験片をこの積層板から切断し、この試験片の端を紙やすりでなめらかにした。Atlas UL−94燃焼チャンバーを用いるASTM D3801−06によって、これらの試験片の引火性を調べた結果、5つの試験片の全セットにおいて燃焼率を得た。
【0093】
積層板の特性評価
リン含有量4%を有する実施例2の積層板およびリン含有量3%を有する実施例3の積層板の難燃剤および熱的特性を、以下で表1に示す比較実施例4と比較した。積層板の引火性(UL−94評価)を、Atlas UL−94燃焼チャンバーを用いるASTM D3801−06によって検査した(V−0が最も高い可能性がある等級である)。重量損失の熱重量分析を上記のように行い、窒素中のTGAの速度上昇は10℃/分であった。
【0094】
以下の違いを有し、窒素中における昇降温として20℃/分を用いて、積層板Tg測定を、IPC法IPC−TM−650(方法2.4.25c)に記載の測定と同様に行った。定温の保留温度は、DEN−438樹脂に基づく積層板については200℃、NPCN−703に基づく積層板については220℃および燃焼剤を含まないNPCN−703樹脂に基づく積層板については250℃であった。TA装置のソフトウェア分析器を用いて、ガラス転移温度を決定した。場合によっては、第3のスキャンを行い、第1、第2および第3のスキャンの間でΔTgを決定した。穴鋸を用いて穴を開け、標準アルミニウムDSC皿の中に適合する、つり合いのとれたサイズの積層板試料ディスクを穴をあけて出した。この皿に適合するようにこの試料の端を優しく磨き、この積層板の最も傷をうけていない表面を、この皿の底と直面するように置いた。この試料重量(約40〜50mg)を記録し、プランジャープレスを用いて試料皿の蓋を加え、この皿を蓋で密封した。空の密封した皿を参考プラットホームに加えた。
【0095】
【表3】

【0096】
実施例5
ジェットミルを用いたエポキシ積層板における6H−ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスホリン、6,6’−(1,4−エタンジイル)ビス−、6,6’−ジオキサイド(リン含有量3%)の使用
このポリマーと結合する前に、ジェットミルを用いて、約1.4μmのd50までDOPO化合物の粒径をさらに減少させたことを除いて、実施例3で概要を述べた手順に従った。Atlas UL−94燃焼チャンバーを用いるASTM D3801−06によって、これらの試験片の引火性を調べた結果、全5つの試験片上の2か所の着火について、全燃焼時間45秒のV−0等級になった。どの1つの燃焼も10秒を超えなかった。360℃、381℃および404℃におけるTGA温度重量損失は、それぞれ、1%、2%および5%重量損失であった。このポリマーと混合する前に、このDOPO化合物の粒径をさ
らに減少させることによって、引火性評価が実施例3より改善されたことをこの実施例は示す。
【0097】
実施例6〜17
エポキシ積層板における6H−ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスホリン、6,6’−(1,4−エタンジイル)ビス−、6,6’−ジオキサイドの使用
40重量%の2−ブタノン(MEK)を含む、60重量%のo−クレゾールノボラックタイプのエポキシ樹脂(Nan Ya NPCN−703)溶液をフェノールノボラックエポキシ樹脂の代わりに用い、いくつかの実施例において、シリカおよび/またはポリリン酸メラミン(BASF社のMelapur200(M−200))を樹脂混合物中で使用したことを除いて、実施例5で使用した手順を用いて、実施例6〜17の積層板を生成した。これらの結果を以下の表2に示した。
【0098】
【表4】

【0099】
ポリリン酸メラミンがガラス転移温度(Tg)を顕著に増加させ、これは高温安定性またはより高い熱安定性のポリマーの適用に使用され得ることをこれらの結果は示す。シリカを組込むと、V−0等級を保有し、リンを1.8重量%含む製剤が得られる。
【0100】
本明細書または本発明の特許請求の範囲の化学名または化学式によって表される成分は、単数形で表されようと、複数形で表されようと、それらが存在すると確認された後に、
化学名または化学型(例えば、別の成分、溶媒など)によって表される別の物質と接触させる。化学変化、化学変換および/または化学反応は、本開示に従って要求される条件下で、特定の成分を結合させた当然の結果であるので、どんな化学変化、化学変換および/または化学反応が、得られた混合物もしくは溶液中で起きるかということは重要ではない。従って、成分は、所望の操作を行うことに関連して、または所望の組成物を形成する際、結合させられる構成要素であると分かる。下記の特許請求の範囲が、現在時制(「含む」、「である」など)で物質、成分および/または構成要素を表したとしても、本開示に従って1個以上の他の物質、成分および/または構成要素と最初に接触させた、混ぜたまたは混合した時点の直前に存在していた物質、成分または構成要素について言及する。上で述べたように、本開示に従って、当該技術者が実施する場合、物質、成分または構成要素を接触させる、混ぜるまたは混合する操作の過程において、化学反応または化学変換を通してその元のアイデンティティが失われた可能性があるという事実は実際の関心事ではない。
【0101】
本明細書に記載の本発明および特許請求の範囲は、本明細書に開示される特定の実施例および実施形態が本発明のいくつかの態様の実例として意図されるので、特定の実施例および実施形態の範囲に限定されるものではない。任意の同等の実施形態は、本発明の範囲内にあると意図される。実際、前述の記載から、本明細書に示され、記載される改良に加えて、本発明の様々は改良が当業者に明らかになるであろう。このような改良は、添付の特許請求の範囲に入ることも意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式を有する化合物:
【化1】

【請求項2】
実質的に有機塩基を含まない、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
未反応のDOPO濃度が約50,000ppm未満である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
溶媒濃度が約1,000未満である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
純度のレベルが約95重量%を超える、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
約245℃を超える温度におけるTGA重量損失が5%である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
融点のピークが約245℃を超える温度にある、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
全ての塩素または臭素の濃度が約1000ppm未満である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
50の粒径が約15ミクロン未満である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
高分子および請求項1に記載の化合物を含む難燃性ポリマー組成物。
【請求項11】
前記ポリマーがポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリエーテル類、ポリケトン類、ポリアミド類、ポリ塩化ビニル類、天然ゴム類および合成ゴム類、ポリウレタン類、ポリスチレン類、ポリ(メタ)アクリレート類、フェノール樹脂類、ポリベンゾオキサジン、ポリアセタール類、ポリアクリロニトリル類、ポリブタジエン類、ポリスチレン類、ポリイミド類、ポリアミドイミド類、ポリエーテルイミド類、ポリフェニルスルフィド類、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート類、セルロース、セルロース誘導体類、シアン酸エステル類、ポリフェニレンエステル類、ポリブタジエン樹脂類、ブタジエン−スチレン樹脂類、ブタジエン−ジビニルベンゼン−スチレン樹脂類、エポキシ変性ポリブタジエン樹脂類、アクリルアセテートまたはビニルアセテートの接着剤類、カルボキシル末端ブタジエン−アクリロニトリル共重合体類、フェニレンエーテル類、無水マレイン酸をグラフトしたブタジエン−スチレン共重合体類、無水マレイン酸変性4−メチル−1ペンテン樹脂類、マレイン酸化1−ブテン−エチレン共重合体類、ビニルベンジルエーテル化合物から誘導される樹脂類、エポキシ樹脂類またはそれらの混合物である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリマーがポリエステル、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、エポキシ樹脂またはそれらの混合物である、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリマーがポリエステルまたはポリアミドである、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリマーがフェノール樹脂またはエポキシ樹脂であり、前記組成物が硬化剤またはポリマー開始剤(polymer initiation agent)をさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
有機もしくは無機の強化物質および請求項14に記載の組成物を含むプリプレグまたは積層板。
【請求項16】
前記化合物の量が、100重量%のポリマーあたり、約0.1〜約100重量%である、請求項10に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物の有機リン含有量が、前記組成物の全重量に基づき、約0.1重量%〜約10重量%である、請求項10に記載の組成物。
【請求項18】
熱安定剤類、光安定剤類、紫外線吸収体類、酸化防止剤類、帯電防止剤類、防腐剤類、接着促進剤類、充填剤類、色素類、染料類、潤滑剤類、離型剤類、発砲剤類、殺菌剤類、可塑剤類、加工助剤類、酸スカベンジャー類、染料類、色素類、安定剤類、発砲剤類、核形成剤類、湿潤剤類、分散剤類、共力剤類、無機充填剤類、補強剤類、ウィスカー類、無機充填剤類、他の難燃性添加剤類、防煙剤類またはそれらの混合物をさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項19】
ポリリン酸メラミンをさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項20】
シリカをさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項21】
式I:
【化2】

の化合物を調製する工程であって、
塩基存在下で、式A
【化3】

の化合物と、ジハロエタンとを反応させることを含む工程。
【請求項22】
前記塩基が、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、リチウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、リチウムジイソプロピルアミドまたはそれらの混合物である、請求項21に記載の工程。

【公表番号】特表2012−527469(P2012−527469A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511982(P2012−511982)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/035359
【国際公開番号】WO2010/135398
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(594066006)アルベマール・コーポレーシヨン (155)
【Fターム(参考)】