説明

DPFシステム

【課題】排気管インジェクタの製造バラツキや経年劣化による噴射量の変化が生じても、適切な排気噴射量でDPF再生できるDPFシステムを提供する。
【解決手段】DOC23の入口および出口側に設けられ、DPF強制再生時のDOC入口温度およびDOC出口温度を検出する温度センサ26,27と、DPF強制再生時の排気ガス流量を測定して排気ガスSV比を決定するSV比決定手段29と、温度センサ26,27の検出値とSV比決定手段29の決定値とが入力され、それら値が理論発熱領域内にあるか否かを判定する発熱領域判定部31を有すると共に、温度センサ26,27の検出値とSV比決定手段29の決定値とが理論発熱領域内にあるときに、排気管インジェクタ24の実噴射量の低下量を診断する実噴射量診断部32を有するインジェクタ診断手段30と、を備えたDPFシステム10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディーゼルエンジンの排気ガスから粒子状物質をDPFで捕集し、これを排気管噴射により燃焼除去するDPFシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼルエンジンの排気ガスからPM(Particulate Matter;粒子状物質)を浄化するためのDPF(Diesel Particulate Filter)装置の開発が行われている。また、排気ガス中のNOxを浄化するためのLNT(Lean NOx Trap)触媒の開発が行われている。このような排気ガス浄化装置を排気管に接続したDPFシステムでは、浄化装置の浄化効率が低下したときに、排気ガスに未燃燃料を添加して、これを排気管に設けられたDOC(Diesel Oxidation Catalyst;酸化触媒)で酸化燃焼させ、高温の排気ガスでDPFに堆積したPMを燃焼除去(DPF強制再生)したり、LNT触媒をリッチ還元することが行われる。
【0003】
この未燃燃料を排気ガスに添加する手段として、エンジン筒内のオイル希釈が発生せず、燃料添加時でもEGR(Exhaust Gas Recirculation)制御を掛けることができ、昇温に要する燃料消費量を低く抑えることができる排気管噴射が注目されている。排気管噴射は、排気管に設けた排気管インジェクタから未燃燃料を排気ガスに添加する方法である(例えば、特許文献1,2参照)。また排気管噴射は、LNT触媒をリッチ還元する際に、エンジンの燃焼と関係なく排気ガスの空燃比リッチ制御を行うことができる。
【0004】
排気管噴射を用いるDPFシステムでは、PM燃焼およびリッチ還元を安定的に行うべく、排気管インジェクタからの排気噴射量の流量バラツキを小さくすることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4417878号公報
【特許文献2】特許第4561467号公報
【特許文献3】特開2010−121514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の排気管インジェクタの流量バラツキの原因に、インジェクタの製造バラツキや、経年劣化による閉塞がある。これらが大きくなると、排気ガス温度による噴射量のフィードバック(FB)制御を行ったとしても、補正限界を超えて排気噴射量が不安定となり、安定した温度制御が出来なくなる可能性が大きくなる。
【0007】
その結果、排気ガス温度が不安定になり、DPF再生が不十分となる可能性がある。また、LNT触媒のリッチ還元に使用する場合、リッチ還元時の還元剤量がばらついて、NOx還元不良やHCスリップを生じる可能性もある。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、排気管インジェクタの製造バラツキや経年劣化による噴射量の変化が生じても、適切な排気噴射量でDPF再生できるDPFシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、排気管インジェクタから燃料を噴射し、これをDOCで酸化燃焼させてDPFに堆積したPMを燃焼除去するDPF強制再生を行うDPFシステムにおいて、前記DOCの入口および出口側に設けられ、DPF強制再生時のDOC入口温度およびDOC出口温度を検出する温度センサと、DPF強制再生時の排気ガス流量を測定して排気ガスSV比を決定するSV比決定手段と、前記温度センサの検出値と前記SV比決定手段の決定値とが入力され、それら値が理論発熱領域内にあるか否かを判定する発熱領域判定部を有すると共に、前記温度センサの検出値と前記SV比決定手段の決定値とが前記理論発熱領域内にあるときに、前記排気管インジェクタの実噴射量の低下量を診断する実噴射量診断部を有するインジェクタ診断手段と、を備えたものである。
【0010】
前記実噴射量診断部は、前記DOCの出入口温度差と前記排気ガス流量とから前記DOCの実発熱量を算出して積算すると共に、前記排気管インジェクタの指示噴射量から前記DOCの理論発熱量を算出して積算し、前記実発熱量および理論発熱量の積算値から、前記排気管インジェクタの実噴射量の低下量を診断するようにされると良い。
【0011】
前記インジェクタ診断手段は、前記診断された実噴射量の低下量に基づいて、前記排気管インジェクタの指示噴射量を補正するようにされると良い。
【0012】
前記インジェクタ診断手段は、前記診断された実噴射量の低下量に基づいて前記排気管インジェクタの指示噴射量を補正する補正係数を設定し、その補正係数が予め設定された故障判定閾値を超えるとき、前記排気管インジェクタの故障を検知するようにされると良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、排気管インジェクタの製造バラツキや経年劣化による噴射量の変化が生じても、適切な排気噴射量でDPF再生できるDPFシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のDPFシステムの構成を示す概略図である。
【図2】本発明のDPFシステムの動作を示す流れ図である。
【図3】DOCの理論発熱領域および発熱係数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好適な実施の形態について図面に基づき説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態のDPFシステムの構成を示す概略図である。
【0017】
本実施の形態のDPFシステム10はターボチャージャ11を搭載しており、エアクリーナ12から吸入される空気はターボチャージャ11のコンプレッサ13で圧縮されると共に吸気通路14に圧送され、吸気通路14に接続された吸気マニホールド15からエンジンEに供給される。吸気通路14には、エンジンEへの空気量を調節するための吸気バルブ16が設けられる。
【0018】
エンジンEから排出される排気ガスは排気マニホールド17からターボチャージャ11のタービン18に流入すると共にタービン18を駆動させ、排気管19に排気される。
【0019】
このDPFシステム10は、吸気マニホールド15と排気マニホールド17とを接続するEGR管20と、EGR管20を通過する排気ガスを冷却するためのEGRクーラ21と、排気マニホールド17から吸気マニホールド15へ還流させる排気ガス量を調節するためのEGRバルブ22と、を備え、排気ガスの一部を吸気側へ還流させてエンジンアウトのNOx量を低減させるEGR制御を行う。
【0020】
排気管19にはDOC23が配設され、そのDOC23の上流側の排気管19には排気管インジェクタ24が、下流側の排気管19には排気ガスからPMを捕集するためのDPF25が設けられる。なお、本発明では排気管19に接続する排気ガス浄化装置をDPF25に限定するものではなく、例えばDPF25以外にもLNT触媒やHC−SCR(HydroCarbon-Selective Catalytic Reduction)装置などを排気管に設けることができる。
【0021】
さらに排気管19には、DOC23の入口側(上流側)および出口側(下流側)に、DOC入口温度TentおよびDOC出口温度Tdocを検知する温度センサ26,27が設けられる。
【0022】
エンジンE、吸気バルブ16、EGRバルブ22、排気管インジェクタ24、温度センサ26,27はECU(Electronical Control Unit;電子制御装置)28と接続される。ECU28は温度センサ26,27からの信号が入力されると共に、エンジンEの運転、吸気バルブ16およびEGRバルブ22の開度、排気管インジェクタ24の排気管噴射等を制御する。この他にも、ECU28には車両に搭載される各種センサ(吸入空気量を検出するMAF(Mass Air Flow)センサなど)からの信号が入力されたり、DOC23の故障診断(OBD診断(On-Board Diagnostics))などを行ったりする。
【0023】
このDPFシステム10では、DPF25に堆積したPMが一定量以上となったとき、エンジンEを制御してエンジンアウトの排気ガス温度を上昇させると共に、排気管インジェクタ24から燃料を噴射し、この燃料をDOC23で燃焼させて排気ガス温度を更に上昇させ、高温の排気ガスでPMを燃焼除去するDPF強制再生が行われる。
【0024】
このとき、排気管インジェクタ24の噴射量が製造バラツキや経年劣化によって低下すると、排気ガス温度が安定せずDPF再生が出来なくなる虞がある。
【0025】
そこで本実施の形態に係るDPFシステム10では、DPF強制再生時の排気ガス流量Vを測定して排気ガスSV比を決定するSV比決定手段29と、排気管インジェクタ24の指示噴射量Qreq、DOC入口温度Tent、DOC出口温度Tdoc、排気ガスSV比が入力され、排気管インジェクタ24の実噴射量の低下量を診断するインジェクタ診断手段30と、がECU28に搭載される。
【0026】
さらにインジェクタ診断手段30は、DOC入口温度Tentおよび排気ガスSV比が理論発熱領域内にあるか否かを判定する発熱領域判定部31と、DOC入口温度Tentおよび排気ガスSV比が理論発熱領域内にあるときに、排気管インジェクタ24の実噴射量の低下量を診断する実噴射量診断部32と、を有する(なお、理論発熱領域Rについては後述する)。
【0027】
SV比決定手段29は、MAFセンサの入力値(吸入空気量)および筒内インジェクタの噴射指示値から排気ガス流量Vを測定し、排気ガスの排気ガスSV比(DOC23の体積に対する排気ガス流量Vの比)を決定するようにされる。
【0028】
インジェクタ診断手段30の発熱領域判定部31は、DOC入口温度Tentおよび排気ガスSV比が、理論発熱領域R内にあるか否かを判定するように構成される。理論発熱領域Rとは、排気管インジェクタ24から添加された燃料がDOC23で完全燃焼するときの排気ガス条件であり、予めDPFシステム10の試験運転により求められる。
【0029】
図3は、DPFシステム10の試験運転により求めた理論発熱領域Rと、排気ガス温度(DOC入口温度Tent)および排気ガスSV比との関係を表すものである。DOC入口温度Tentが低く、排気ガスSV比が高い条件では、排気管噴射した燃料は完全燃焼できず、発熱係数(排気噴射量に対する発熱量)は低くなる。他方、DOC入口温度Tentが高く、かつ、排気ガスSV比が低い条件では、排気管噴射された燃料が完全燃焼し、発熱係数が1(すなわち、理論発熱量)となる。本実施の形態のDPFシステム10では、DOC入口温度Tentが250℃以上約323℃以下、排気ガスSV比が0以上25000以下である範囲を、理論発熱領域Rとした。ただし本発明は理論発熱領域Rの設定態様を特に限定するものではなく、DOC23の特性やDPFシステム10の構成に合わせて適宜設定可能である。
【0030】
インジェクタ診断手段30の実噴射量診断部32は、発熱領域判定部31によりDOC入口温度Tentおよび排気ガスSV比が上述の理論発熱領域R内にあると判定されたとき、排気管インジェクタ24の指示噴射量Qreq、DOC出入口温度差ΔT(すなわち、DOC出口温度TdocとDOC入口温度Tentの温度差)、排気ガス流量Vから、排気管インジェクタ24の実噴射量の低下量を診断する。
【0031】
ここで、実噴射量診断部32が実噴射量の低下量を診断する方法について詳細に説明する。
【0032】
まず実噴射量診断部32は、SV比決定手段29が測定している排気ガス流量Vを読込み、DOC出入口温度差ΔT[K]、排気ガス流量V[Kg/s]、排気ガス比熱[J/Kg*K](定数)より、DOC23の実発熱量C1[J/s]を算出する。
実発熱量C1[J/s]=DOC出入口温度差ΔT[K]*排気ガス流量V[Kg/s]*排気ガス比熱[J/Kg*K]
【0033】
算出した実発熱量C1を積算して、実発熱量C1の積算値J1を算出しておく。
【0034】
これと同時に、軽油の低位発熱量38.2[MJ/L]と排気管インジェクタ24の指示噴射量Qreq[L]より理論発熱量C2を算出し、これを積算して理論発熱量C2の積算値J2を算出しておく。
理論発熱量C2[J/s]=軽油の低位発熱量38.2[MJ/L]*指示噴射量Qreq[L]
【0035】
実噴射量診断部32は、排気ガス条件が理論発熱領域R内にあるときに、実発熱量C1および理論発熱量C2の積算値J1,J2を算出するが、本来この領域では、DOC23上では理論発熱量C2を得られるはずである。よってDOC23や排気管インジェクタ24に故障がなければ、上記の実発熱量C1は理論発熱量C2に近い値となるはずである。
【0036】
しかし、排気管インジェクタ24の噴射指示値と実値に乖離があった場合(すなわち、排気管インジェクタ24の製造バラツキや経年劣化により実噴射量が指示噴射量Qreqから低下している場合)、実発熱量C1は理論発熱量C2より低くなる。例えば排気管インジェクタ24の詰まりにより、噴射指示値に対し実値が70%しか無い場合、70%の発熱量となる。
【0037】
そこで実噴射量診断部32は、算出した実発熱量C1および理論発熱量C2の積算値J1,J2から、排気管インジェクタ24の実噴射量の低下量を診断する。本実施の形態では、実噴射量の低下量を、理論発熱量C2の積算値J2に対する実発熱量C1の積算値J1の比(つまり、J1÷J2)として評価する。本発明は、実発熱量C1および理論発熱量C2の積算時間について特に限定するものではなく、適宜設定可能であるが、診断中(積算中)にDOC入口温度Tentおよび排気ガスSV比が理論発熱領域R外となるときには、誤診断を防ぐべく直ちに診断を中断するようにされる。
【0038】
またインジェクタ診断手段30は、実噴射量診断部32が診断した実噴射量の低下量から、排気管インジェクタ24の噴射量を補正する補正係数fを設定し、排気管インジェクタ24の噴射量を補正するようにされる。より具体的には、実噴射量の低下量の逆数(すなわち、「理論発熱量C2の積算値J2」÷「実発熱量C1の積算値J1」)を補正係数fに設定し、この補正係数fを排気管インジェクタ24の指示噴射量Qreqに乗算して、実噴射量が増加するように補正を行う。ただし、本発明は指示噴射量Qreqの補正方法を特に限定するものではなく、例えば、より補正の精度を上げる為、数回のDPF強制再生で診断しながら徐々に指示噴射量Qreqの補正を行っても良い。
【0039】
さらにインジェクタ診断手段30は、補正係数fが予め設定される故障判定閾値Fmalよりも大きくなったとき、排気管インジェクタ24の故障を検知するように構成される。故障を検知したインジェクタ診断手段30は、排気管インジェクタ24の洗浄や交換をドライバに促すべく、車両のキャビン内に設けられる警告灯を点灯させるなどすると良い。本発明は、故障判定閾値Fmalの設定値を特に限定するものではなく、DOC23および排気管インジェクタ24の特性や、DPFシステム10の構成に合わせて適宜変更可能である。
【0040】
なお、実発熱量C1の低下は、DOC23の触媒機能の低下が原因となる場合もあるため、本実施の形態の実噴射量診断部32は、ECU28で行われているDOC23のOBD診断から、DOC23が正常であるとされた場合にのみ、実噴射量の低下量を診断するものとする。
【0041】
次に、このDPFシステム10の動作について図2を用いて説明する。
【0042】
DPF強制再生中、DPFシステム10が備えるSV比決定手段29およびインジェクタ診断手段30は、以下の動作を繰り返すようにされる。
【0043】
先ずステップS21において、SV比決定手段29は、ECU28から読み込んだMAFセンサおよび筒内インジェクタの噴射指示値を基に排気ガス流量Vを測定すると共に、この測定値から排気ガスSV比を決定し、ステップS22に進む。
【0044】
次にステップS22では、インジェクタ診断手段30の発熱領域判定部31が、温度センサ26からの入力値(DOC入口温度Tent)およびSV比決定手段29の決定値(排気ガスSV比)が、理論発熱領域R内にあるか否かを判定する。DOC入口温度Tentおよび排気ガスSV比が理論発熱領域R内にあるときには、実噴射量の低下量を診断すべくステップS23に進む。他方、DOC入口温度Tentおよび排気ガスSV比が理論発熱領域R内にないときには、実噴射量の低下量を診断できないので、ステップS21にリターンする。
【0045】
ステップS23では、インジェクタ診断手段30が、ECU28が行っているDOC23のOBD診断から、DOC23が正常であるか否かを判断する。DOC23が正常でない場合、実噴射量の低下量は診断不能であるので、ステップS21にリターンする。他方、DOC23が正常であると判断したときには、実噴射量の低下量を診断すべく、ステップS24に進む。
【0046】
ステップS24では、インジェクタ診断手段30の実噴射量診断部32が、排気管インジェクタ24の指示噴射量Qreq、DOC入口温度Tent、DOC出口温度Tdoc、SV比決定手段29が測定している排気ガス流量Vから、DOC23の実発熱量C1および理論発熱量C2を算出して積算し、これら実発熱量C1および理論発熱量C2の積算値J1,J2から、実噴射量の低下量(J1÷J2)を診断する。
【0047】
その後ステップS25において、インジェクタ診断手段30は、実噴射量診断部32が診断した実噴射量の低下量から補正係数fを設定し、これを指示噴射量Qreqに乗算した値で排気管インジェクタ24から排気管噴射させる。本実施の形態では、補正係数fを実噴射量の低下量の逆数(すなわち、「理論発熱量C2の積算値J2」÷「実発熱量C1の積算値J1」)に設定する。
【0048】
次いでステップS26では、インジェクタ診断手段30が、補正係数fと故障判定閾値Fmalとを比較し、排気管インジェクタ24の故障判定を行う。補正係数fが故障判定閾値Fmal以下であるとき、排気管インジェクタ24の故障を検知することなく動作を終了する。他方、補正係数fが故障判定閾値Fmalを超えるときにはステップS27に進み、排気管インジェクタ24の故障を検知して動作を終了する。なお補正係数fは、排気管インジェクタ24の洗浄若しくは交換を行った後、オペレータによりリセットされる。
【0049】
なお、実噴射量の低下量を診断中にDOC入口温度Tentおよび排気ガスSV比が理論発熱領域R外となった場合には、誤診断を防ぐべく直ちに診断を中断して動作を終了するようにされる。
【0050】
以上要するに、本実施の形態に係るDPFシステム10は、DOC入口温度Tentおよび排気ガスSV比が理論発熱領域R内にあるときに限り、排気管噴射によるDOC23の実発熱量C1を算出し、DOC23の理論発熱量C2(すなわち、軽油の理論発熱量)に対する比率(発熱係数)を求めて、排気管インジェクタ24の実噴射量の低下量を診断すると共に、排気管インジェクタ24の故障判定を行うようにされる。
【0051】
このようにされることで、簡便な構造で追加コストを発生させることなく、排気管インジェクタ24の実噴射量の診断や、故障判定を正確に行うことが可能である。
【0052】
また本実施の形態では、診断した実噴射量の低下量に基づき、排気管インジェクタ24の指示噴射量Qreqを増加補正するようにされる。
【0053】
これにより、排気管インジェクタ24の製造バラツキや経年劣化による噴射量の変化が生じても、DPF強制再生時の温度安定性や、LNT触媒のリッチ還元の安定性を確保することができる。
【0054】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0055】
上記実施の形態では、DPF強制再生中に実噴射量の低下量を診断するため、診断の結果に応じて指示噴射量Qreqを迅速に補正できるが、例えば、インジェクタ診断手段30は、理論発熱領域R内での実発熱量C1および理論発熱量C2の積算をDPF強制再生の終了まで継続し、DPF強制再生が終了した後に診断を行うようにされても良い。このようにされると、DPF強制再生中に受けた外乱による診断への影響を少なくでき、より精度良く診断および補正を行うことができる。
【符号の説明】
【0056】
10 DPFシステム
23 DOC
24 排気管インジェクタ
26 温度センサ(入口側)
27 温度センサ(出口側)
29 SV比決定手段
30 インジェクタ診断手段
31 発熱領域判定部
32 実噴射量診断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気管インジェクタから燃料を噴射し、これをDOCで酸化燃焼させてDPFに堆積したPMを燃焼除去するDPF強制再生を行うDPFシステムにおいて、
前記DOCの入口および出口側に設けられ、DPF強制再生時のDOC入口温度およびDOC出口温度を検出する温度センサと、
DPF強制再生時の排気ガス流量を測定して排気ガスSV比を決定するSV比決定手段と、
前記温度センサの検出値と前記SV比決定手段の決定値とが入力され、それら値が理論発熱領域内にあるか否かを判定する発熱領域判定部を有すると共に、前記温度センサの検出値と前記SV比決定手段の決定値とが前記理論発熱領域内にあるときに、前記排気管インジェクタの実噴射量の低下量を診断する実噴射量診断部を有するインジェクタ診断手段と、
を備えたことを特徴とするDPFシステム。
【請求項2】
前記実噴射量診断部は、前記DOCの出入口温度差と前記排気ガス流量とから前記DOCの実発熱量を算出して積算すると共に、
前記排気管インジェクタの指示噴射量から前記DOCの理論発熱量を算出して積算し、 前記実発熱量および理論発熱量の積算値から、前記排気管インジェクタの実噴射量の低下量を診断する請求項1記載のDPFシステム。
【請求項3】
前記インジェクタ診断手段は、前記診断された実噴射量の低下量に基づいて、前記排気管インジェクタの指示噴射量を補正する請求項1又は2記載のDPFシステム。
【請求項4】
前記インジェクタ診断手段は、前記診断された実噴射量の低下量に基づいて前記排気管インジェクタの指示噴射量を補正する補正係数を設定し、その補正係数が予め設定された故障判定閾値を超えるとき、前記排気管インジェクタの故障を検知する請求項1〜3いずれかに記載のDPFシステム。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−127301(P2012−127301A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280888(P2010−280888)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】