E1領域内の発現カセットと不活性化されたE2Bポリメラーゼを有するアデノウイルス発現ベクター
【課題】アデノウイルスE2B機能を部分的に欠失または全欠失し、かつE1領域に挿入された目的のタンパク質をコードする異種配列を含む発現カセットを有する組換えアデノウイルスベクターを提供する。
【解決手段】本発明は、アデノウイルスE2B機能の部分欠失または全欠失によって特徴付けられ、かつE1領域に挿入された目的のタンパク質をコードする異種配列を含む発現カセットを有する組換えアデノウイルスベクターを提供する。このようなベクターは複製能力のあるアデノウイルスの混入の発生を低減または排除するために設計される。さらにベクターの発現カセットは、異種配列の発現を増加させることができ、および/またはウイルスタンパク質の発現を低減させることができる1つ以上の調節エレメントを含み得る。ウイルスタンパク質の発現におけるこの減少はインビボで投与される場合のアデノウイルスベクターの細胞障害性および免疫原性を低減させる。
【解決手段】本発明は、アデノウイルスE2B機能の部分欠失または全欠失によって特徴付けられ、かつE1領域に挿入された目的のタンパク質をコードする異種配列を含む発現カセットを有する組換えアデノウイルスベクターを提供する。このようなベクターは複製能力のあるアデノウイルスの混入の発生を低減または排除するために設計される。さらにベクターの発現カセットは、異種配列の発現を増加させることができ、および/またはウイルスタンパク質の発現を低減させることができる1つ以上の調節エレメントを含み得る。ウイルスタンパク質の発現におけるこの減少はインビボで投与される場合のアデノウイルスベクターの細胞障害性および免疫原性を低減させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国特許法119条(e)の下での仮特許出願U.S.S.N.:60/750,012号(2005年12月12日出願)に対する優先権の利益を主張する。仮特許出願U.S.S.N.:60/750,012号の開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(1.発明の分野)
本発明は、アデノウイルスE2B機能の部分欠失または全欠失、およびE1領域に挿入された目的のタンパク質をコードする異種配列を含む発現カセットを有することによって特徴づけられる、組換えアデノウイルスベクターを提供する。このようなベクターは、複製能力のあるアデノウイルスの混入の発生を低減または排除するために設計される。さらに、ベクターの発現カセットは、異種配列の発現を増加させることができ、そして/またはウイルスタンパク質の発現を低減させることができる、調節エレメントを1つ以上含み得る。ウイルスタンパク質の発現におけるこのような低減は、インビボで投与した場合のアデノウイルスベクターの細胞障害性および免疫原性を低減させる。形質転換される産生宿主細胞および組換えタンパク質の生成法および遺伝子治療も、本発明の適用範囲内に含まれる。
【背景技術】
【0003】
(2.発明の背景)
組換えアデノウイルス(rAd)ベクターは、広範な組織および細胞の指向性、大型の発現カセットを収容する能力と高い形質導入効率、および休止細胞を感染させる能力を含む、遺伝子送達のための望ましい特徴を有する。アデノウイルスの極めて低い組み込み傾向は、挿入変異誘発および腫瘍形成性の活性化のリスクを最小限に抑えるために、さらなる安全策の面で有益である。ヒトアデノウイルスの多数の種々の血清型も、極めて異なる指向性を有する種々のウイルス鞘の選択を提供する。例えば、C群のウイルスは、肝臓または筋肉への感染性が極めて高く、D群は中枢神経系の細胞への、またはB群は造血系の細胞への感染性が極めて高い。さらに、アデノウイルスは、該ウイルスが高い比力価まで増殖し、拡張可能な製造プロセスが確立されている(非特許文献1;非特許文献2)ので医薬品開発に十分に適している。
これらの決定的な利点にもかかわらず、アデノウイルスベクターの応用の可能性は、依然として限定されている。これは、アデノウイルスベクターが標的組織内で発現されるウイルス遺伝子を含むという事実に起因している。直接毒性、カットオフ発現、組織の炎症(非特許文献3)、および細胞障害性Tリンパ球の攻撃が、最終的に感染細胞の破壊につながる結果となる。数多くの研究グループが、アデノウイルスベクターの免疫原性を低減させようと試みてきた。トランス活性化機能も有するE2領域およびE4領域は、ウイルスゲノムから排除され、かつヘルパー細胞株に移入された。しかしながら、ウイルスの力価の低減をさらに引き起こすこれらの変化が、インビボでの発現の持続時間を拡大させることができるかどうかは不確かなままである。この概念の必然的な延長として、ウイルス遺伝子が存在しないアデノウイルスベクターが近年開発された(非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8)。しかしながら、このようなベクターは、大規模な医薬品生産にはほとんど役に立たない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Huyghe,B.G.,Liu,X.,Sutjipto,S.,Sugarman,B.J.,Horn,M.T.,Shepard,H.M.,Scandella,C.J.,and Shabram,P.(1995a).Purification of a type 5 recombinant adenovirus encoding human p53 by column chromatography.In Hum Gene Ther,pp.1403−1416.
【非特許文献2】Shabram,P.W.,Giroux,D.D.,Goudreau,A.M.,Gregory,R.J.,Horn,M.T.,Huyghe,B.G.,Liu,X.,Nunnally,M.H.,Sugarman,B.J.,and Sutjipto,S.(1997a).Analytical anion−exchange HPLC of recombinant type−5 adenoviral particles.In Hum Gene Ther,pp.453−465.
【非特許文献3】Simon,R.H.,Engelhardt,J.F.,Yang,Y.,Zepeda,M.,Weber−Pendleton,S.,Grossman,M.,and Wilson,J.M.(1993).Adenovirus−mediated transfer of the CFTR gene to lung of nonhuman primates: toxicity study.Hum Gene Ther 4,771−780.
【非特許文献4】Hardy,S.,Kitamura,M.,Harris−Stansil,T.,Dai,Y.,and Phipps,M.L.(1997).Construction of adenovirus vectors through Cre−lox recombination.J Virol 71,1842−1849.
【非特許文献5】Kochanek,S.,Clemens,P.R.,Mitani,K.,Chen,H.H.,Chan,S.,and Caskey,C.T.(1996).A new adenoviral vector: Replacement of all viral coding sequences with 28 kb of DNA independently expressing both full−length dystrophin and beta−galactosidase.Proc Natl Acad Sci U S A 93,5731−5736.
【非特許文献6】Kumar−Singh,R.,and Chamberlain,J.S.(1996).Encapsidated adenovirus minichromosomes allow delivery and expression of a 14 kb dystrophin cDNA to muscle cells.Hum MoI Genet 5,913−921.
【非特許文献7】Mitani,K.,Graham,F.L.,Caskey,C.T.,and Kochanek,S.(1995).Rescue,propagation,and partial purification of a helper virus−dependent adenovirus vector.Proc Natl Acad Sci U S A 92,3854−3858.
【非特許文献8】Parks,R.J.,Chen,L.,Anton,M.,Sankar,U.,Rudnicki,M.A.,and Graham,F.L.(1996).A helper−dependent adenovirus vector system: removal of helper virus by Cre−mediated excision of the viral packaging signal.Proc Natl Acad Sci U S A 93,13565−13570.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(3.発明の要旨)
本発明は、アデノウイルスE2B機能の部分欠失または全欠失、かつE1領域に挿入された目的のタンパク質をコードする異種配列を含む発現カセットを有することによって特徴づけられる、組換えアデノウイルスベクターを提供する。このようなベクターは、複製能力のあるアデノウイルスの混入の発生を減少させるよう設計される。さらに、ベクターの発現カセットは、異種配列の発現を増加させることができ、そして/またはウイルスタンパク質の発現を低減させることができるエレメントを1つ以上含み得る。このようなウイルスタンパク質の発現の低減は、インビボで投与された場合のアデノウイルスベクターの細胞障害性および免疫原性を低減することを意図している。
【0006】
ベクターの発現カセットは、目的のタンパク質、またはその機能的な断片もしくは変異体をコードする異種配列(すなわち導入遺伝子)を含むように操作される。このような導入遺伝子は、治療的有用性を有する任意のタンパク質をコードする遺伝子、標的宿主細胞内の欠陥遺伝子(例えば、遺伝子欠陥に基づく病的状態の原因である遺伝子)を置換する遺伝子、ならびに/または癌、自己免疫疾患および/もしくは感染性疾患の処置において治療的有用性を有する遺伝子を含むが、これらに限定されない。形質転換された宿主細胞および組換えタンパク質の生成法および遺伝子治療も、本発明の範囲内に含まれる。
【0007】
発現カセットはさらに、ウイルスタンパク質の発現を低減させる一方、導入遺伝子の発現を増加させるよう設計されるさらなる核酸配列を1つ以上含み得る。例えば、発現カセットは、該カセットに隣接して見られる遺伝子の発現が活性化されるのを阻止するよう機能する「インスレーター配列」を含むように操作され得る。このように、インスレーター配列を発現カセットの3’末端に挿入することによって、発現カセットに隣接して見られるウイルス遺伝子の発現は、低いままのはずである。
【0008】
本発明のさらに別の実施形態において、発現カセットは、RNAのポリアデニル化および安定性を増強させることで知られている異種ポリA配列と置き換えたE1BポリA配列を有し得る。このような置換は、導入遺伝子の発現のレベルを増加させるという結果になり得る。利用され得るポリA配列は、当業者に周知のことであり、ウシ成長ホルモンポリA配列を含むが、これに限定されない。
【0009】
本発明のさらに別の実施形態において、発現カセットは、さらに哺乳類のヘパドナウイルス由来のもの等の転写後調節エレメント(PRE)を含み得る。このようなPRE配列としては、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)およびウッドチャック肝炎ウイルス(WHV)由来のものが挙げられる。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態において、発現カセットは、さらに、導入遺伝子の発現を増加させるために発現カセットの5’末端反復配列(LTR)に挿入されるイントロン配列を含み得る。本発明の実施で使用され得るイントロン配列は、当業者に周知である。このような配列は、公知のコンセンサススプライシング配列から生成され得る。
本発明はまた、組換えアデノウイルスベクターおよびこのような組換え体の使用を含む治療法(例えば、遺伝子治療関連、ワクチン接種等)を提供する。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
組換えアデノウイルスベクターであって、
(a)該アデノウイルスベクターのE1領域に挿入される発現カセットであって、
(i)目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む第1の核酸分子に作動可能に結合する調節エレメント;ならびに
(ii)インスレーター配列、E1BポリAシグナル配列と置き換えたポリAシグナル配列、および転写後調節エレメントからなる群から選択される1つ以上のエレメント
を含む、発現カセット;ならびに
(b)E2Bポリメラーゼを欠失させるかまたはE2Bポリメラーゼの活性を不活性化する変異、
を含む、ベクター。
(項目2)
前記発現カセットがさらに、CMVプロモーター、トリパータイトリーダー配列、WPRE配列、CTCF結合部位から選択される1つ以上の因子を含む、項目1に記載のベクター。
(項目3)
核酸配列がインターフェロンをコードする、項目1に記載のベクター。
(項目4)
前記インターフェロンがインターフェロンα2bである、項目3に記載のベクター。
(項目5)
前記発現カセットが、図5に示される発現カセットである、項目1に記載のベクター。
(項目6)
前記ベクターが、図6に示される配列を含む、項目1に記載のベクター。
(項目7)
ヒトアデノウイルス血清型5型に由来する、項目1に記載のベクター。
(項目8)
ヌクレオチド357から始まり、ヌクレオチド4030もしくは4050で終わる欠失、ヌクレオチド28,597から始まり、ヌクレオチド30,471で終わる欠失、およびヌクレオチド28,597から始まり、ヌクレオチド30,471で終わる欠失を含む、項目7に記載のベクター。
(項目9)
癌を処置するための方法であって、項目1に記載のベクターをこのような処置を必要とする被験体に投与することを含む、方法。
(項目10)
前記癌が膀胱癌である、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記ベクターが、約1×108粒子/mL〜約1×1012粒子/mLの間の範囲で投与される、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記ベクターが、約1×109粒子/mL〜約1×1011粒子/mLの間の範囲で投与される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記ベクターが、促進剤と併せて投与される、項目9に記載の方法。
(項目14)
前記促進剤がSYN−3である、項目13に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、T2VPベクターの構造の概略図である。図示のとおり、このベクターは、ウイルスのE1、E2B、およびE3の領域に欠失を含み、かつE1領域への導入遺伝子カセットの挿入を含む。導入遺伝子カセットは、CMVプロモーター、アデノウイルス5型トリパータイトリーダー、導入遺伝子に対して5’側の合成イントロン配列(すなわちrSEAP)、WPRE配列、BGHポリA配列、および合成インスレーター配列を含む。
【図2】図2は、T2VPに感染したKu−7膀胱細胞のSEAP発現と他のコントロールウイルスに感染したKu−7膀胱細胞のSEAP発現との比較を表す。インビトロでの試験は、コントロールベクターと比較して、SEAPの同等または増加した発現を実証する。
【図3】図3は、T2VPおよびRCCB(コントロール)の膀胱内送達後の尿のSEAP発現のインビボでの分析である。一例として、この実験は、ラットの膀胱へのT2VPの膀胱内投与が、標準的なE1欠失アデノウイルスであるRCCBと比べて、短縮した再投与時間で発現の持続期間を改善させたことを実証した。コントロールRCCBベクターのSEAP発現は、初回投与より再投与が約10倍低く、一方T2VPベクターの初回投与と再投与との間でレベルは同じままであった。麻酔下の雌Sprague−Dawleyラットに組換えアデノウイルス(500μL中約5×1010粒子)を膀胱内投与した。被験物質を膀胱内に約1時間保持し、ついで動物を排尿させ、回復させた。投与から24時間後に開始して時間を決めて尿のサンプルを回収し、ELISAによってSEAPに関して分析した。1回目の膀胱内投与後のSEAP濃度を黒塗り記号として示す(初回投与)。2回目の膀胱内投与(53日後)の後に測定したSEAP濃度を白塗り記号としてプロットする(53日目の再投与)。方法についてはConnor,et al.,2005に詳述される。
【図4】図4は、IACBベクターまたはrAdIFNベクターと比較したT8BFベクターの構造の概略図である(内容全体が参考として本明細書で援用される、Benedict,et al.,2004;Demers,et al.,2002a;Demers,et al.,2002b;Iqbal Ahmed,et al.,2001;米国特許第6210939号)。E2b領域と導入遺伝子カセットとの違いを示す。
【図5A】図5A〜Eは、T8BF由来の導入遺伝子カセットの特徴の配列および所在を提示する。
【図5B】図5A〜Eは、T8BF由来の導入遺伝子カセットの特徴の配列および所在を提示する。
【図5C】図5A〜Eは、T8BF由来の導入遺伝子カセットの特徴の配列および所在を提示する。
【図5D】図5A〜Eは、T8BF由来の導入遺伝子カセットの特徴の配列および所在を提示する。
【図5E】図5A〜Eは、T8BF由来の導入遺伝子カセットの特徴の配列および所在を提示する。
【図6A】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6B】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6C】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6D】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6E】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6F】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6G】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6H】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6I】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6J】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6K】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図7】図7は、IACBおよびT8BFからのインターフェロンα2bの発現のインビトロでの比較である。A549細胞を感染させ、感染から72時間後に分析した。図示のとおり、E1欠失を含むコントロールウイルスIACBと比較すると、インターフェロンα2bの発現の改善が観察された。
【図8】図8は、初回投与と62日目の再投与の両方におけるIACBおよびT8BFからのインターフェロンα2bの発現のインビボでの比較である。この例では、T8BF(丸)およびIACB(四角)のデータを、n=5(黒塗り記号)とn=6(白塗り記号)の2つの実験の平均値±SEとして示す。図3の説明文およびConnor,et al.,2005に記載されるように正常なラットに投与し、ヒトインターフェロンα2bをELISA法によって測定した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(5.発明の詳細な説明)
本発明は、とりわけ、アデノウイルスE2B遺伝子の部分欠失または全欠失、かつE1領域に挿入された目的のタンパク質をコードすることができる発現カセットを有するによって特徴づけられる、組換えアデノウイルスベクターを提供する。本発明のベクターは、治療的応用で使用され、そこでベクターは、治療用核酸(例えば遺伝子)を標的細胞のゲノムに発現させるため(すなわち遺伝子治療応用)に使用される。本発明のベクターは、広範な種類の治療用核酸を送達するために使用され得る。目的の治療用核酸としては、標的宿主細胞内の欠陥遺伝子(例えば、遺伝子欠陥に基づく病的状態の原因である遺伝子)を置換する遺伝子;癌、自己免疫疾患および/または感染性疾患の処置において治療的有用性を有する遺伝子などが挙げられる。
【0013】
本発明によれば、従来の当該技術分野の分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術が使用され得る。このような技術は、文献において説明される。例えば、Sambrook,Fritsch & Maniatis,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(本明細書中「Sambrook,et al.,1989」);DNA Cloning: A Practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985);Oligonucleotide Synthesis (M.J.Gait ed.1984);Nucleic Acid Hybridization (B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1985));Transcription And Translation (B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984));Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1986));Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,(1986));B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);F.M.Ausubel,et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(1994)を参照されたい。
【0014】
5.1 用語
本明細書で使用される場合、「アデノウイルス」という用語は、アデノウイルス科のウイルスを指す。「組換えアデノウイルス」という用語は、そのウイルスゲノムが従来の組換えDNA技術によって改変された細胞を感染させることができるアデノウイルス科のウイルスを指す。「組換えアデノウイルス」という用語はまた、キメラベクター(またはさらには多量体ベクター)、すなわち1種より多くのサブタイプ由来の相補的なコード配列を使用して構築されるベクターを含む。
【0015】
本明細書で使用される場合、「組換えアデノウルスベクター」という用語は、アデノウイルスヌクレオチド配列および必要に応じて1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含むベクター構築物を指す。好ましい実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、相同性をヘルパーアデノウイルスの核酸配列まで低減させたアデノウイルスヌクレオチド配列を含む。別の好ましい実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、複製欠損アデノウイルスをコードする。本実施形態によれば、組換えアデノウイルスベクターは、(例えば、1つ以上の変異をアデノウイルスゲノムに導入する(例えば、アデノウイルスタンパク質の1つ以上のコード領域に欠失を導入する)ことによって)変異アデノウイルスゲノムを含むように操作され得る。
【0016】
本明細書で使用される場合、「アデノウイルス科」という用語は、ヒト、ウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ブタ、マウス、およびサルのアデノウイルス亜属を含むがこれらに限定されないマストアデノウイルス属の動物アデノウイルスを集合的に指す。特に、ヒトアデノウイルスは、A〜Fの亜属ならびにその個別の血清型を含む。A〜Fの亜属としては、ヒトアデノウイルス1型、2型、3型、4型、4a型、5型、6型、7型、7a型、7d型、8型、9型、10型、11型(Ad11AおよびAd11P)、12型、13型、14型、15型、16型、17型、18型、19型、20型、21型、22型、23型、24型、25型、26型、27型、28型、29型、30型、31型、32型、33型、34型、34a型、35型、35p型、36型、37型、38型、39型、40型、41型、42型、43型、44型、45型、46型、47型、48型、および91型が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書で使用される場合、「E1A遺伝子」および「E1B領域」とは、感染後に最初に転写される、アデノウイルスゲノムの前初期遺伝子を指す。例えば、E1Aコード領域は、ヌクレオチド560〜1542に及び、E1Bコード領域は、ヌクレオチド1714〜2242に及ぶ。本明細書で使用される場合、「E2B遺伝子」という用語は、140kDのDNAポリメラーゼをコードする、アデノウイルスゲノムの初期遺伝子を指す。E2領域はまた、ウイルスアセンブリー中に切断されて、DNAに共有結合されたまま55kDとなる末端タンパク質(80kD)の前駆体をコードする。E2Bコード領域は、アデノウイルス5型のヌクレオチド8367〜5197に及ぶ。完全なヒトアデノウイルス5型ゲノムのGenBank(登録商標)寄託物が入手可能であり、例えばAY339865およびAC000008を参照されたい。
【0018】
本明細書で使用される場合、「発現カセット」という用語は、異種コード配列の転写および翻訳を指示することができるヌクレオチド配列、ならびに発現されるべき異種コード配列を定義するために本明細書で使用される。発現カセットは、細胞内の上記異種コード配列によってコードされるタンパク質産物の発現を達成するために、異種コード配列に作動可能に結合される調節エレメントを含む。
【0019】
本明細書で使用される場合、核酸配列、アミノ酸配列および抗原と関連して「異種」という用語は、外来であってかつ特定のアデノウイルスと関連して天然では見いだされない、核酸配列、アミノ酸配列、および抗原を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「作動可能に結合される」という用語は、機能的な関係でのポリヌクレオチドエレメントの結合を指す。核酸配列が、別の核酸配列と機能的な関係に置かれるとき、それは「作動可能に結合されている」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーがコード配列の転写に影響を与える場合、そのプロモーターまたはエンハンサーはコード配列に作動可能に結合されている。作動可能に結合されるとは、結合されるヌクレオチド配列が、代表的には、近接していることを意味する。しかしながら、プロモーターから数キロベース離れており、かつイントロン配列が種々の長さであるとき、エンハンサーは一般的に機能するので、一部のポリヌクレオチドエレメントは、作動可能に結合され得るが、直接的に隣接されず、異なる対立遺伝子または染色体からトランスで機能することさえあり得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「調節エレメント」という用語は、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、インスレーター領域、サイレンシング領域、ポリアデニル化部位、イントロン配列、転写後調節エレメント等を指す。「プロモーター」という用語は、その従来の意味で使用され、コード配列の転写開始および転写速度を制御するヌクレオチド配列を指す。プロモーターは、RNAポリメラーゼが結合する部位を含み、また調節エレメント(例えば、リプレッサーまたは転写因子)の結合のための部位を含む。プロモーターは、天然に存在する場合もあれば、合成である場合もある。使用されるベクターがウイルスベクターであるとき、プロモーターは、そのウイルスにとって内因性であってもよく、または他の供給源由来であってもよい。特定の細胞型でのみ導入遺伝子の発現を可能にする、増強する、または促進するために、調節エレメントが配置されることも可能である。例えば、導入遺伝子が構成的に活性であるか、または一時的に制御される(一時的プロモーター)、外部の刺激に応えて活性化される(誘導性)、特定の細胞型または細胞状態で活性である(選択的)という、構成的プロモーター、一時的ウイルスプロモーター、または調節可能なプロモータープロモーターの制御下になるように、発現カセットを設計することが可能である。
【0022】
本明細書で使用される場合、「感染させる」という用語は、組換えアデノウイルスでの産生細胞の感染を促進するための条件下で補完する細胞株に組換えアデノウイルスを曝露することを意味する。複数コピーの所定のウイルスによって感染した細胞を補完するに際して、ウイルス複製およびビリオンのパッケージングのために必要な活性は、協同的である。従って、細胞がウイルスによって多重に感染する有意な可能性があるように、条件を調節することが好ましい。細胞内でウイルスの産生を増進させる条件の例は、感染段階での増加したウイルス濃度である。しかしながら、細胞につきウイルス感染の総回数は、度を超すこともあり得、細胞にとって毒作用がもたらされる可能性がある。従って、ウイルス濃度の感染を106〜1010の範囲で、好ましくは約109のビリオン/mLで維持するよう努力するべきである。化学薬品も、細胞株の感染性を高めるために使用され得る。例えば、本発明は、カルパイン阻害剤の包含によってウイルス感染性に対する細胞株の感染性を増加させる方法を提供する。本発明の実施に有用なカルパイン阻害剤の例としては、カルパイン阻害剤1(N−アセチル−ロイシル−ロイシル−ノルロイシナールとしても知られており、Boehringer Mannheimから市販されている)が挙げられるが、これに限定されない。カルパイン阻害剤1は、組換えアデノウイルスへの細胞株の感染性を増加させることが観察されている(例えば、全体が参考として本明細書で援用される、米国特許第7,001,770号を参照)。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ウイルスゲノムの複製が可能な条件下で培養する」という用語は、組換えアデノウイルスが細胞内で増殖することを可能にするように補完条件を維持することを意味する。各細胞によって産生されるウイルス粒子の数を最大にするために、条件を制御することが望ましい。従って、温度、溶存酸素、pH等の反応条件をモニターして制御することが必要である。CelliGen Plus Bioreactor(New Brunswick Scientific,Inc.44 Talmadge Road,Edison,NJから市販されている)等の市販されているバイオリアクターは、このようなパラメータのモニタリングおよび維持についての条件を有する。感染、トランスフェクション、および培養条件の最適化は、多少変化するが、ウイルスの効率的な複製および産生のための条件は、例えば、産生細胞株の公知の特性、ウイルスの特性およびバイオリアクターの種類を考慮して、当業者によって達成され得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「ヘルパーアデノウイルス核酸配列」という用語は、(i)感染性ビリオンへの組換えアデノウイルスベクターおよび/またはそのパッケージングの複製のウイルス機能を提供し、かつ(ii)測定可能な程度までウイルス粒子を複製も構築もしない、核酸配列を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「組換えアデノウイルス産生細胞株」、「組換えアデノウイルス補完細胞」、「組換えアデノウイルス補完細胞株」という用語は同義語であり、感染性ビリオンへの組換えアデノウイルスおよび/またはそのパッケージングの複製のウイルス機能を提供することによって組換えアデノウイルスを増殖することのできる細胞を意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「トランスフェクション」または「形質転換」という用語は、細胞への核酸の導入を意味する。導入されたDNAまたはRNAを受け取った宿主細胞は、「形質転換」されており、かつ「形質転換体」または「クローン」である。当該技術分野で極めて周知の形質転換方法の例としては、リポソーム送達、電気穿孔、CaPO4形質転換、DEAEデキストラン形質転換、マイクロインジェクションおよびウイルス感染が挙げられる。
【0027】
5.2 組換えアデノウイルス構築物
本発明の組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルスヌクレオチド配列および必要に応じて1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。好ましい実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、補完する細胞株のアデノウイルス核酸配列に対して低減した相同性を有するアデノウイルスヌクレオチド配列を含む。アデノウイルスヘルパー核酸配列と組換えアデノウイルスベクターの間の相同性の欠如は、ウイルスゲノムが組み換わって複製能力のあるアデノウイルスを生成する可能性を低減させる。好ましい実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは複製欠損アデノウイルスをコードする。本実施形態によれば、組換えアデノウイルスベクターは、(例えば、アデノウイルスゲノムに1つ以上の変異を導入する(例えば、アデノウイルスタンパク質のための1つ以上のコード領域に欠失を導入する)ことによって)変異アデノウイルスゲノムを含むように操作され得る。好ましくは、アデノウイルスゲノムの変異は、野生型アデノウイルスよりも低いレベルのアデノウイルスタンパク質の発現をもたらす。アデノウイルスタンパク質発現の減少は、被験体におけるアデノウイルスタンパク質への免疫応答を低減させる。
【0028】
特定の実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、E1を欠失した複製欠損アデノウイルスをコードし、E2Bポリメラーゼ機能が部分欠失または全欠失(好ましくは、全欠失)した変異したゲノムを含み、異種ヌクレオチド配列を含む。好ましい実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、複製欠損アデノウイルスをコードし、かつE1Aコード領域、E1Bコード領域、E2Bポリメラーゼコード領域が部分欠失または全欠失(好ましくは、全欠失)した変異したゲノムを含み、欠失したE1コード領域に異種ヌクレオチド配列を含む。
【0029】
本発明の一実施形態において、E2B領域の欠失は、非機能的DNAポリメラーゼの産生につながるのに十分な欠失を含む。本発明の好ましい実施形態において、E2B領域の欠失は、逆鎖上にウイルスタンパク質をコードする配列を保持する。本発明の実施で使用され得る変異としては、ヌクレオチド7274〜約7881のE2b欠失を含むがこれに限定されない(全体が参考として本明細書で援用される、Amalfitano,et al.,1998を参照)。本発明のさらに別の実施形態において、点変異は、E2Bコード領域に遺伝的に操作されることが可能であり、それによって機能的なアデノウイルスポリメラーゼ発現の低下という結果になる。本発明の特定の実施形態において、E2B遺伝子の開始コドンは、E2B mRNAの翻訳を回避し、それによってE2Bポリメラーゼ活性の機能を除去するよう変異されることが可能である。
【0030】
異種ヌクレオチド配列は、ゲノムの任意の領域(例えば、アミノ末端またはカルボキシ末端)に導入され得る。特定の実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、変異したアデノウイルスのゲノムのE1、E2B、またはE3コード領域等の欠失したアデノウイルスコード領域の1つに導入される。本発明の好ましい実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、変異したアデノウイルスのゲノムの欠失したE1コード領域に導入される。
【0031】
本発明によれば、組換えアデノウイルスベクターは、任意のアデノウイルス科由来もしくはアデノウイルス科の組み合わせから得たおよび/または誘導した、アデノウイルスゲノムまたはその一部を含む。好ましい実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、ヒトアデノウイルス科から得たおよび/または誘導した、アデノウイルスゲノムまたはその一部を含む。別の好ましい実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、ヒトアデノウイルス血清型2型または5型から得たおよび/または誘導した、アデノウイルスゲノムまたはその一部を含む。
【0032】
一実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、ヒトアデノウイルス血清型5型に由来し、E1a、E1b、およびタンパク質IX機能の欠失、ならびにE3領域(例えば、全体が参考として本明細書で援用される米国特許第6,210,939号および第5,932,210号を参照)およびE2b領域での欠失を含む。一例として、限定するものではないが、ヒトアデノウイルス血清型5型由来の組換えアデノウイルスベクターは、塩基対357〜塩基対約4050の欠失(例えば、塩基対360〜塩基対約4030までの間の欠失)、塩基対28,597〜塩基対約30,471までの間の欠失、および全体が参考として本明細書で援用される、Amalfitano,A.,et al.,(1998)に記載されるようなE2b領域での欠失を含むことが可能である。
【0033】
別の実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、ヒトアデノウイルス血清型5型に由来し、図6のアデノウイルスベクターに示されるのと同じアデノウイルス配列の欠失を含む。
【0034】
本発明は、変異したアデノウイルスゲノムに挿入される「発現カセット」を含む組換えアデノウイルス発現ベクターに関する。本明細書で使用される場合、「発現カセット」という用語は、異種コード配列の転写および翻訳を指示することのできるヌクレオチド配列ならびに発現されるべき異種コード配列として定義される。発現カセットは、細胞内で異種コード配列によってコードされるタンパク質産物の発現を達成するために、この異種コード配列に作動可能に結合された調節エレメントを含む。
【0035】
本発明の実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、組換えアデノウイルスベクター以外の供給源から得られる、および/または由来する。本発明によれば、異種ヌクレオチド配列は、所望の生物学的特性または活性を有する部分、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードし得る。
【0036】
特定の実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、サイトカイン、サイトカイン受容体、ホルモン、成長因子、または成長因子受容体等の生物学的応答調節物質をコードする。このような生物学的応答調節物質の非限定的な例としては、インターフェロン(IFN)−α、IFN−β、IFN−γ、インターロイキン(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−12、IL−15、IL−18、IL−23、エリスロポエチン(EPO)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、胸腺間質リンホポエチン(TSLP)、GM−CSF、TNFRSF18およびTNFSF18を含むTNFRおよびTNFRリガンドスーパーファミリーメンバーが挙げられる。好ましい実施形態において、ヌクレオチド配列は、インターフェロンα2b(例えば、全体が参考として本明細書で援用される、米国特許第6,835,557号を参照)等のインターフェロンをコードする。
【0037】
他の実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、抗体をコードする。さらに他の実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、キメラタンパク質または融合タンパク質をコードする。
【0038】
特定の実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、組換えアデノウイルスベクターが由来する種、亜群、または変異体以外のアデノウイルスの異なる種、亜群、または変異体に属するウイルスの抗原タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードする。特定の実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、病原性微生物から得たおよび/または由来する抗原タンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドをコードする。
【0039】
本発明のさらに別の実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、癌の治療遺伝子である。このような遺伝子は、リンパ球の抗腫瘍活性を増強する遺伝子、その発現産物が腫瘍細胞の免疫原性を強化する遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、毒素遺伝子、自殺遺伝子、多剤耐性遺伝子、アンチセンス配列等を含む。従って、例えば、本発明のアデノウイルスベクターは、細胞周期を調節する際に効果的なタンパク質の発現のための外来遺伝子(例えば、p53、Rb、もしくはマイトシン)、または細胞死を誘発する際に効果的なタンパク質の発現のための外来遺伝子(例えば、条件的自殺遺伝子チミジンキナーゼ)を含み得る。
【0040】
本発明によれば、組換えアデノウイルスベクターの異種ヌクレオチド配列が宿主細胞で発現されるべき場合、転写調節エレメント(プロモーター/エンハンサー配列とも呼ばれる)を供給するべきである。プロモーター/エンハンサー配列は、広範に活性であり得、または組織特異的であり得る。プロモーター/エンハンサー配列は、非アデノウイルス供給源由来であり得、またはアデノウイルスプロモーターであり得る。好ましい実施形態において、異種ヌクレオチド配列の発現を調節するために使用されるプロモーター/エンハンサー配列は、ヘルパーアデノウイルス核酸配列の発現を調節するプロモーター/エンハンサー配列と共有されない。本実施形態によれば、プロモーターは、当業者に公知の任意のプロモーターであり得る。例えば、プロモーターは、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、または誘導性プロモーターであり得る。本発明に従って使用され得るプロモーターの例としては、以下が挙げられる:SV40初期プロモーター(Benoist and Chambon,1981)、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復配列に含まれるプロモーター(Yamamoto,et al.,1980)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner,et al.,1981)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster,et al.,1982)、β−アクチンプロモーター、CMVプロモーター、SRαプロモーター、hFer/SV40プロモーター、Elf−1プロモーター、Tetプロモーター、エクジソンプロモーター、およびラパマイシンプロモーター。
【0041】
特定の実施形態において、アデノウイルスタンパク質をコードするヌクレオチド配列の発現を調節するために天然のプロモーターが利用される。別の実施形態において、タンパク質の発現を調節するために、発現されるタンパク質をコードするアデノウイルス遺伝子に固有でないプロモーター(すなわち、異種プロモーター)が利用される。特定の実施形態において、プロモーターは、構成的プロモーター(例えば、ウイルス、細胞、またはハイブリッドの構成的プロモーター)である。他の実施形態において、プロモーターは、誘導性プロモーターである。さらに他の実施形態において、プロモーターは、組織特異的プロモーターである。
【0042】
特定の実施形態においては、異種ヌクレオチド配列の発現を調節するために、CMVプロモーター、β−アクチンプロモーター、SRαプロモーター、またはhFer/SV40プロモーター等の構成的プロモーターを使用するのが望ましい。特定の他の実施形態においては、異種ヌクレオチド配列の発現を調節するために、RSVプロモーター、SV40プロモーター、またはElf−1プロモーター等の構成的プロモーターを使用するのが望ましい。さらに他の実施形態においては、アデノウイルスベクターの異種ヌクレオチド配列の発現を調節するために、Tetプロモーターまたはエクジソンプロモーター等の誘導性プロモーターを使用するのが望ましい。
【0043】
本発明のさらに別の実施形態において、誘導性プロモーターは、本発明のアデノウイルスベクターで使用され得る。これらのプロモーターは、追加の分子の存在下でのみ転写を開始する。誘導性プロモーターの例としては、β−インターフェロン遺伝子、熱ショック遺伝子、メタロチオネイン遺伝子から入手可能なもの、またはステロイドホルモン応答性遺伝子から入手可能なものが挙げられる。組織特異的発現は、遺伝子発現の分野で十分に特徴付けられており、これらのような組織特異的プロモーターおよび誘導性プロモーターは、当該技術分野で極めて周知である。外来遺伝子が標的細胞に導入された後にその外来遺伝子の発現を調節するために、これらの遺伝子は使用される。
【0044】
挿入された非アデノウイルスまたは異種ヌクレオチド配列の望ましい大きさは、ビリオンへの組換えアデノウイルスベクターのパッケージングを可能にする大きさに限定され、かつ保持されるアデノウイルス配列の大きさに依存する。ヒトアデノウイルスのゲノムは、約36キロ塩基対の長さである(Davison,et al.,2003によって長さが35938ヌクレオチドであると測定)。ビリオンにパッケージングされる組換えアデノウイルスの全体の大きさは、約37735ヌクレオチドの長さであるはずである(通常のゲノム長の約105%)。従って、挿入された異種ヌクレオチド配列の発現を最大限にするために、組換えアデノウイルスベクター内のアデノウイルスゲノムの付加的な部分(例えば、E3領域)を排除することが望ましいこともある。
【0045】
本発明の組換えアデノウイルスベクターへの外来遺伝子配列の挿入は、異種ヌクレオチド配列によるウイルスコード領域の完全置換もしくは部分置換によって、または異種ヌクレオチド配列をウイルスゲノムに添加することによってのいずれかで達成され得る。完全な置換は、PCRによる変異誘発(PCR−directed mutagenesis)を使用することによって最も良く達成されると思われる。手短に言えば、PCRプライマーAは、5’末端から3’末端に、独特の制限酵素部位(例えば、クラスIIS制限酵素部位(すなわち、特異的配列を認識するが、その配列の上流もしくは下流のDNAを切断する、「シフター」酵素));置換されるべき遺伝子のある領域に相補的な一続きのヌクレオチド;および異種ヌクレオチド配列のカルボキシ末端コード部分に相補的な一続きのヌクレオチドを含む。PCRプライマーBは、5’末端から3’末端に、独特の制限酵素部位;置換されるべき遺伝子に相補的な一続きのヌクレオチド;および異種遺伝子または非天然の遺伝子の5’コード部分に対応する一続きのヌクレオチドを含む。異種遺伝子もしくは非天然の遺伝子のクローン化コピーとこれらのプライマーを使用するPCR反応の後に、産物は、独特の制限酵素部位を使用して切り出されてクローン化され得る。クラスIIS酵素による消化および精製ファージポリメラーゼによる転写は、ここで、異種遺伝子挿入物もしくは非天然の遺伝子挿入物を有するウイルス遺伝子の非翻訳の正確な両端を含むRNA分子を作製する。別の実施形態において、バクテリオファージプロモーター配列、およびRNAテンプレートがクローニングなしで直接的に転写され得るようなハイブリッド遺伝子配列を含む二重鎖DNAを調製するために、PCRプライミング反応が使用され得る。
【0046】
本発明の組換えアデノウイルスベクターに異種ヌクレオチド配列を挿入するとき、異種ヌクレオチド配列のコード配列の末端と下流遺伝子のコード配列の開始部との間の遺伝子間領域は、所望の効果を達成するために改変され得る。本明細書で使用される場合、「遺伝子間領域」という用語は、1つの遺伝子の停止シグナルと次の下流のオープンリーディングフレームのコード配列の開始コドン(例えばAUG)との間のヌクレオチド配列を指す。遺伝子間領域は、遺伝子の非コード領域(すなわち、遺伝子の転写開始部位とコード配列の開始部(AUG)との間)を含み得る。この非コード領域は、一部のウイルス遺伝子には天然に存在する。
【0047】
本発明の一実施形態において、「インスレーター」と呼ばれる配列が、異種ヌクレオチド配列の下流の遺伝子間領域で、発現カセットに挿入され得る(Di Simone,et al.,2001;Martin−Duque,et al.,2004a;Pluta,et al.,2005;Puthenveetil,et al.,2004;Qu,et al.,2004;Rincon−Arano and Recillas−Targa,2004;Takada,et al.,2000)。このようなインスレーターの挿入は、野生型と比べて、アデノウイルスタンパク質の低下した発現をもたらす可能性があり、これはアデノウイルスベクターの免疫原性および毒性を低減する際に有用である。本発明の実施で使用され得るインスレーター配列は、当業者には周知であり、例えば、βグロビン遺伝子座の高感受性領域4(HS4)を含む。HS4座は、レトロウイルス(Emery,et al.,2002;Jakobsson,et al.,2004;Pannell and Ellis,2001;Yannaki,et al.,2002;Yao,et al.,2003)およびアデノウイルスベクターでも使用されてきた(Cheng,et al.,2004;Martin−Duque,et al.,2004b;Steinwaerder and Lieber,2000;Ye,et al.,2003)。クロマチン再配列およびブロッキング活性による遺伝子発現の制御の原因となるHS4座の領域は、転写調節因子CTCFに起因すると考えられてきた(Bell,et al.,1999;Dunn and Davie,2003;Dunn,et al.,2003;Emery,et al.,2002;Farrell,et al.,2002;Jakobsson,et al.,2004;Kanduri,et al.,2002;Lewis and Murrell,2004;Lutz,et al.,2000;Mukhopadhyay,et al.,2004;Pannell and Ellis,2001;Recillas−Targa,et al.,2002;Saitoh,et al.,2000;Szabo,et al.,2002;Thorvaldsen,et al.,2002;Valadez−Graham,et al.,2004;Yannaki,et al.,2002;Yao,et al.,2003;Yusufzai and Felsenfeld,2004;Yusufzai,et al.,2004;Zhang,et al.,2004;Zhao and Dean,2004)。本発明の一実施形態において、βグロビン遺伝子座の高感受性部位4からCTCF結合部位のヘッドからテイルまでの4コピーを含むインスレーターは、インスレーターとして使用され得る。別の実施形態においては、他の合成インスレーター配列(Bell,et al.,2001;Brasset and Vaury,2005;Zhao and Dean,2004)も使用され得る。
【0048】
本発明のさらに別の実施形態において、E1BポリAシグナル配列は、異種遺伝子のポリアデニル化およびRNA安定化を増大させる異種ポリA配列によって置換され得る。ポリアデニル化およびRNA安定化のこのような増大は、異種遺伝子産物のより効率的な発現をもたらし得る。本発明の非限定的な実施形態において、ポリAシグナル配列は、以下のコンセンサス配列AATAAAまたはAATTAAを含有する配列を含む。本発明の実施形態において、ポリA配列は、SV40ウイルス等のウイルス由来であり得る。本発明の特定の実施形態において、E1BポリA配列は、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列(Xu,et al.,2002;Youil,et al.,2003)によって置換され得る。BGHポリA配列は、既存の市販のプラスミドからPCRによって得られ得る。
【0049】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明の組換えアデノウイルスは、導入遺伝子発現を増大させるよう機能する転写後調節エレメント(PRE)を含み得る。例えば、ウッドチャック肝炎PRE(Donello,et al.,1998)、B型肝炎ウイルスPRE(Huang and Yen,1994)、または単純ヘルペスPRE(Liu and Mertz,1995)を含むこのようなエレメントは、異種遺伝子の下流位置で発現カセットに挿入される(Appleby,et al.,2003;Breckpot,et al.,2003;Brun,et al.,2003;Glover,et al.,2002;Glover,et al.,2003;Gropp,et al.,2003;Mangeot,et al.,2002;Robert,et al.,2003;Schwenter,et al.,2003;Werner,et al.,2004;Xu,et al.,2003;Yam,et al.,2002;Zufferey,et al.,1999)。
【0050】
本発明はまた、発現カセットが異種遺伝子の5’非翻訳領域へ操作されたイントロン配列を含むように操作される組換えアデノウイルスを提供する(Choi,et al.,1991;Hermening,et al.,2004;Lee,et al.,1997;Xu,et al.,2002;Xu,et al.,2003)。本発明の実施で使用されるべきイントロン配列は、例えば、必要なコンセンサススプライシングシグナルを取り込むプライマーを使用するPCRを使用して既知のコンセンサススプライシング配列から生成され得る。イントロン配列は、5’スプライス供与体部位、および分岐点配列と3’スプライス受容体AG部位とを含む3’スプライス領域を含む。3’スプライス領域は、さらにポリピリミジントラクトを含み得る。RNAスプライシングで使用される5’スプライス供与体部位および3’スプライス領域のコンセンサス配列は、当該技術分野で周知である(Moore,et al.,1993,The RNA World,Cold Spring Harbor Laboratory Press,pp.303−358を参照)。さらに、5’スプライス供与体部位および3’スプライス領域として機能する能力を維持する改変されたコンセンサス配列は、本発明の実施で使用され得る。手短に言えば、5’スプライス部位のコンセンサス配列は、AG/GURAGU(ここで、A=アデノシン、U=ウラシル、G=グアニン、C=シトシン、R=プリン、および/=スプライス部位)である。3’スプライス部位は、次の3つの別々の配列エレメントからなる:分岐点もしくは分枝部位、ポリピリミジントラクト、および3’コンセンサス配列(YAG)。哺乳類における分岐点コンセンサス配列は、YNYURAC(Y=ピリミジン、N=任意のヌクレオチド)である。下線をしたAは、分枝形成部位である。ポリピリミジントラクトは、分岐点とスプライス受容体部位の間に位置し、分岐点の効率的な利用および3’スプライス部位の認識のために重要である。ジヌクレオチドAUから始まりジヌクレオチドACで終わる他のプレメッセンジャーRNAイントロンは同定されており、U12イントロンと呼ばれる。スプライス受容体/供与体配列として機能するU12イントロン配列ならびに任意の追加の配列も、本発明の発現カセットを作製するために使用され得る。
【0051】
本発明のさらに別の実施形態において、発現カセットの5’非翻訳領域は、アデノウイルストリパータイトリーダーを含む。
【0052】
一実施形態において、発現ベクターは、1つ以上の異種ヌクレオチド配列、CMVプロモーター、トリパータイトリーダー配列、合成イントロン、WPRE配列、ポリA領域、およびCTCF結合部位を含む。一例として、限定するものではないが、本発明の組換えアデノウイルスベクターは、図5に示す発現カセットを含み得る。
【0053】
挿入された異種ヌクレオチド配列の発現は、タンパク質またはmRNAの発現レベルを含むがこれらに限定されない種々の指標によって決定されることが可能であり、以下のアッセイの非限定的な例によって測定され得る:免疫染色法、免疫沈降法および免疫ブロット法、酵素結合免疫吸着アッセイ、核酸検出(例えば、サザンブロット分析、ノーザンブロット分析、ウェスタンブロット分析)、レポーター遺伝子の使用(例えば、タンパク質発現を観察するために目的の異種遺伝子と同じ方法でウイルスゲノムに組み込まれる、緑色蛍光タンパク質(GFP)もしくは強化緑色蛍光タンパク質(eGFP))、またはこれらの組み合わせ。これらのアッセイを実施する手順は、当該技術分野で周知である(例えば、テキスト全体が参考として本明細書で援用される、Flint,et al.,PRINCIPLES OF VIROLOGY,MOLECULAR BIOLOGY,PATHOGENESIS,AND CONTROL,2000,ASM Press pp 25−56を参照)。
【0054】
例えば、発現レベルは、培養中の細胞を本発明の組換えアデノウイルスに感染させ、続いて異種ヌクレオチド配列の遺伝子産物に特異的な抗体を使用して、例えばウェスタンブロット分析もしくはELISAによってタンパク質の発現のレベルを測定するか、または異種配列に特異的なプローブを使用して、例えばノーザンブロット分析によってRNA発現のレベルを測定することによって決定され得る。同様に、異種配列の発現レベルは、動物モデルを感染させ、この動物モデルで本発明の組換えウイルスの異種ヌクレオチド配列から発現されたタンパク質のレベルを測定することによって決定され得る。タンパク質レベルは、感染した動物から組織試料を採取し、次いで、組織試料を、異種配列の遺伝子産物に特異的な抗体を使用する、ウェスタンブロット分析もしくはELISAにかけることによって測定され得る。さらに、動物モデルを使用する場合、異種配列の遺伝子産物に対してこの動物によって産生される抗体の力価は、ELISAを含むがこれに限定されない、当業者に公知の任意の技術によって決定され得る。
【0055】
本発明によれば、大量の組換えアデノウイルスベクターを得るために、組換えアデノウイルスベクターは、例えば、細菌プラスミドまたはバクテリオファージの一部として微生物中で増殖され得る。
【0056】
5.4 組換えアデノウイルスの産生
本発明によれば、組換えアデノウイルス(好ましくは、組換え複製欠損アデノウイルス)は、組換えアデノウイルスベクターおよびヘルパーアデノウイルス核酸配列を使用して適切な細胞型を共トランスフェクト(co−transfect)することによって生成され得る。同時トランスフェクションは、DEAEデキストラン法(McCutchan and Pagano,1968)によって、リン酸カルシウム手順(Graham and van der Eb,1973)によって、またはマイクロインジェクション、リポフェクション、および電気穿孔を含むがこれらに限定されない当該技術分野で公知の任意の他の方法によって実施され得る。トランスフェクションで使用される組換えアデノウイルスベクターおよびヘルパーアデノウイルス核酸配列の量は、106細胞あたり約0.2〜10μgのDNAであるが、種々のDNA構築物および細胞型によって異なり得る。トランスフェクションに好適な細胞としては、HeLa細胞、293−D22細胞、A549細胞、HCT−15細胞、IGROV−1細胞、U87細胞、およびW162細胞が挙げられるがこれらに限定されないアデノウイルス感染が可能な任意の細胞株が挙げられる。
【0057】
あるいは、組換えアデノウイルス(好ましくは、組換え複製欠損アデノウイルス)を生成するために、組換えアデノウイルス補完細胞株は、組換えアデノウイルスベクターをトランスフェクションされることも可能である。特定の実施形態において、本発明は、細胞株中でのウイルスゲノムの複製を許容する条件下で、組換えアデノウイルスベクターでトランスフェクションされた、細胞株を補完する組換えアデノウイルスを培養することを含む組換えアデノウイルスの生成法を提供する。ここで、この細胞株は、以下を含む:(a)アデノウイルスE1Aタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む第1の核酸分子;(b)アデノウイルスE1B−55Kタンパク質(および好ましくは、アデノウイルスE1B−19Kタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含まない)をコードするヌクレオチド配列を含む第2の核酸分子;および(c)アデノウイルスE2Bポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む第3の核酸分子。
【0058】
本発明の非限定的な実施形態において、E1A、E1B、およびE2Bポリメラーゼを発現するように操作され、かつ米国特許出願第60/674,488号および米国特許出願公開第2006/0270041号(その開示が参考として本明細書で援用される)に記載されるSL0006形質転換細胞株は、本発明の組換えアデノウイルスを増殖させるために使用され得る。SL0006細胞株は、ブダペスト条約に基づきアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC),10801 University Blvd.,Manassas,VA,20110−2209,USAに、ATCC受入番号PTA−6663で寄託されている。
【0059】
本発明の組換えアデノウイルスは、任意の適切な方法によって生成されることが可能であり、その方法の多くは当該技術分野で公知である(例えば、Berkner and Sharp,1983;Berkner and Sharp,1984;Brough,et al.,1992を参照)。本発明の好ましい実施において、組換えアデノウイルスは、ヒトアデノウイルス科に由来する。本発明の好ましい実施形態において、組換えアデノウイルスは、ヒトアデノウイルス血清型2型または5型に由来する。
【0060】
本発明の好ましい実施において、生成される組換えアデノウイルスは、E1Aコード領域、E1Bコード領域、およびE2Bポリメラーゼコード領域が部分欠失または全欠失(好ましくは全欠失)している、変異したゲノムを含む複製欠損アデノウイルスであり、かつE1領域に1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。
【0061】
本発明の別の実施形態において、組換えアデノウイルスは、複製欠損アデノウイルスであり、E1Aコード領域、E1Bコード領域、E2Bポリメラーゼコード領域、およびE3コード領域が部分欠失または全欠失(好ましくは全欠失)している、変異したゲノムを含み、かつ欠失したE1コード領域に1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。
【0062】
本発明の別の実施形態において、組換えアデノウイルスは、複製欠損アデノウイルスであり、E1Aコード領域、E1Bコード領域、E2Bポリメラーゼコード領域、およびE4コード領域が部分欠失または全欠失(好ましくは全欠失)している、変異したゲノムを含み、かつ欠失したE1コード領域に1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。
【0063】
本発明の別の実施形態において、組換えアデノウイルスは、複製欠損アデノウイルスであり、E1Aコード領域、E1Bコード領域、E2Bポリメラーゼコード領域、E3コード領域、およびE4コード領域が部分欠失または全欠失(好ましくは全欠失)している、変異したゲノムを含み、かつ欠失したE1コード領域に1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。
【0064】
本発明の好ましい組換えアデノウイルスは、組換えアデノウイルス産生細胞中にアデノウイルスDNA配列との相同性が低減したウイルスDNA配列を含み、それはウイルスゲノムが細胞DNAと組み換わってRCAを生成する可能性を低減させる。
【0065】
特定の実施形態において、組換えアデノウイルスの量は力価測定(titrate)される。培養物中のアデノウイルスの量を力価測定することは、当該技術分野で公知の技術によって実施され得る。特定の実施形態において、ウイルス粒子の濃度は、Shabram,et al.,1997bに記載されるリソースQアッセイによって決定される。本明細書で使用される「溶解(lysis)」という用語は、ウイルス含有細胞の破裂を指す。溶解は、当該技術分野で周知の種々の手段によって達成され得る。例えば、哺乳類細胞は、低圧力(100〜200psi差圧)条件下で、均質化によって、マイクロフルイダイゼーションによって、または従来の凍結融解方法によって、溶解され得る。外来性の遊離DNA/RNAは、DNAse/RNAseを使用する分解によって除去され得る。
【0066】
ウイルス含有細胞は凍結され得る。ウイルスは、ウイルス含有細胞および培地から採取され得る。一実施形態において、ウイルスは、ウイルス含有細胞および培地の両方から同時に採取される。特定の実施形態において、ウイルスを産生する細胞および培地は、例えば、米国特許第6,146,891号に記載されるように、ウイルス含有細胞を溶解すること、浄化しなければウイルスの精製を妨げる培地の細胞残屑を浄化することを同時に行う条件下で直交流精密ろ過にかけられる。
【0067】
本明細書で使用される「採取する」という用語は、培地から組換えアデノウイルス含有細胞を収集することを意味し、培地からの組換えアデノウイルスの収集も含み得る。これは、分画遠心分離またはクロマトグラフィー手段等の従来の方法によって達成され得る。この段階で、採取した細胞は貯蔵される場合もあれば、組換えウイルスを単離するために溶解または精製によってさらに処理される場合もある。貯蔵のためには、採取された細胞は、生理的pHでもしくはほぼそのpHで緩衝化され、−70℃で凍結されるべきである。
【0068】
ウイルスはまた、ウイルス含有細胞および培地から別々に採取され得る。ウイルス含有細胞は、分画遠心分離等の従来の方法によって培地から別々に収集され得る。採取した細胞は、凍結貯蔵される場合もあれば、ウイルスを遊離させるために溶解によってさらに処理される場合もある。ウイルスは、クロマトグラフィー手段によって培地から採取され得る。外来性の遊離DNA/RNAは、BENZONASE(American International Chemicals,Inc.)等のDNAse/RNAseを使用する分解によって除去され得る。
【0069】
ウイルスの採取物はさらに、例えば、米国特許第6,146,891号、同第6,544,769号、および同第6,783,983号に記載されるように、限外ろ過または接線流ろ過等の方法によってウイルスを濃縮するために処理され得る。
【0070】
本明細書で使用される場合、「回収する」という用語は、溶解した産生細胞から、および必要に応じて上清培地からの、組換えウイルス粒子の実質的に純粋な集団の単離を意味する。本発明の細胞培養物中で生成されるウイルス粒子は、当該技術分野で一般的に知られている任意の方法によって単離および精製され得る。クロマトグラフィー等の従来の精製技術、または示差密度勾配遠心法が使用され得る。例えば、ウイルス粒子は、塩化セシウム勾配精製;カラムもしくはバッチクロマトグラフィー;ジエチルアミノエチル(DEAE)クロマトグラフィー(Haruna,et al.,1961;Klemperer and Pereira,1959;Philipson,1960);ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー(米国特許出願公開第2002/0064860号);ならびにソフトゲル(例えばアガロース)を含む均質な架橋した多糖等、大きい「スルーポア」を有する灌流クロマトグラフィー樹脂を含む合成ポリマーに基づくマクロポーラスポリマー、タンパク質とより迅速に相互作用するように設計されたテンタクル(触手)を有する「テンタクル構造」吸収剤(例えばフラクトゲル)、およびソフトゲルの高容量と複合材料の剛性を利用する、剛性シェル中のソフトゲルに基づく物質(例えばセラミックハイパーD(登録商標)F)(Broschetti,1994;Rodrigues,1997)等の他の樹脂を使用するクロマトグラフィーによって精製され得る。本発明の好ましい実施において、ウイルスは、Shabram,et al.,米国特許第5,837,520号(1998年11月17日発行)に記載されるように、Huyghe,et al.,1995bのプロセスに実質的に従って、カラムクロマトグラフィーによって精製される。また、開示が参考として本明細書で援用される、米国特許第6,2661,823号を参照されたい。
【0071】
ウイルスを産生する組換えアデノウイルス産生細胞株は、当該技術分野で公知の任意の好適な容器で培養され得る。例えば、細胞は増殖され、感染した細胞はバイオジェネレーターまたはバイオリアクターで培養され得る。通常、「バイオジェネレーター」または「バイオリアクター」は、一般的に0.5リットル以上の容量のステンレス鋼製またはガラス製で、攪拌システム、CO2ガスの流れを注入するためのデバイス、および酸素添加デバイスを備える培養タンクを意味する。一般的に、これは、pH、溶存酸素、温度、タンク圧力または培養物の特定の生理化学的パラメータ(例えば、グルコースもしくはグルタミンの消費または乳酸イオンもしくはアンモニウムイオンの産生)等のバイオジェネレーターの内部パラメータを測定するプローブを備えている。pH、酸素、および温度のプローブは、これらのパラメータを永久に調節するバイオプロセッサに接続される。他の実施形態において、容器は、スピナーフラスコ、回転ボトル、振盪フラスコ、またはフラスコ内に機械的攪拌を提供するスターラーバーが付いたフラスコである。別の実施形態において、容器は、ウェ−ブバイオリアクター(WAVE Biotech[米国ニュージャージー州ブリッジウォーター])である。
【0072】
組換えアデノウイルスは、本発明の組換えアデノウイルス産生細胞株で増殖され得る。ウイルスは、細胞を培養し;必要に応じて細胞に新たな増殖培地を加え;細胞にウイルスを接種し:接種した細胞をインキュベートし;必要に応じて播種した細胞に新たな増殖培地を加え;および必要に応じて細胞および培地からウイルスを採取することによって生成され得る。一般的に、Shabram,et al.,1997bに記載されるように、リソースQカラムを使用する高性能液体クロマトグラフィー等の従来の方法によって決定した場合に、ウイルス粒子の濃度がプラトーに達し始めるときに、採取を実施する。
【0073】
本発明の組換えアデノウイルス産生細胞株で増殖させた組換えアデノウイルス(例えば、E1AとE1Bのコード領域の欠失を含み、かつ異種ヌクレオチド配列を含むアデノウイルス、あるいはE1A、E1B、およびE2Bのポリメラーゼコード領域の欠失を含み、かつ異種ヌクレオチド配列を含むアデノウイルス、E1A、E1B、E2B、およびE3のコード領域の欠失を含み、かつ異種ヌクレオチド配列を含むアデノウイルス、あるいはE1A、E1B、E2Bのポリメラーゼコード領域の欠失、E3とE4のコード領域の欠失を含み、かつ異種ヌクレオチド配列を含むアデノウイルス)により生成されるタンパク質も、単離および精製され得る。タンパク質、ポリペプチド、およびペプチドは、塩析沈澱もしくはアルコール沈澱、親和性クロマトグラフィー、分取ディスクゲル電気泳動、等電点電気泳動法、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相HPLC、ゲルろ過、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィーおよび分配クロマトグラフィー、ならびに向流分配を含むがこれらに限定されない標準方法によって精製され得る。このような精製方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、”Guide to Protein Purification”,Methods in Enzymology,Vol.182,M.Deutscher,Ed.1990,Academic Press,New York,NYに開示される。
【0074】
5.5 組換えアデノウイルスの有用性
本発明の組換えアデノウイルスは、目的のタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを発現させるためにインビトロで使用され得る。本発明の組換えアデノウイルスはまた、遺伝子治療でも使用され得る。組換えアデノウイルスは、インビボでのまたはエキソビボでの遺伝子治療で使用され得る。インビボでの遺伝子治療については、組換えアデノウイルスは、被験体に直接投与される。エキソビボでの遺伝子治療については、細胞は、インビトロで組換えアデノウイルスに感染させられ、次いで感染した細胞は、被験体に移植される。特定の実施形態において、組換えアデノウイルスは、インビボで直接投与され、目的のタンパク質が発現される。
【0075】
一実施形態において、本発明は、治療用タンパク質をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む本発明の組換えアデノウイルスベクターの治療有効量を被験体に投与することを含む癌の処置のための方法を含む。治療用タンパク質をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む本発明の組換えアデノウイルスベクターは、腫瘍内または膀胱内の投与を含むがこれらに限定されない当該技術分野で公知の任意の送達方法を使用して、任意の癌組織または器官に送達され得る。これらの方法によって処置され得る癌の例としては、膀胱および上気道、外陰部、頚部、膣もしくは気管支の癌腫;腹膜の局所転移性腫瘍;気管支肺胞癌腫;胸膜転移性癌腫;口腔および扁桃の癌腫;上咽頭、鼻部、喉頭、食道、胃、卵巣、前立腺、結腸および直腸、胆嚢、もしくは皮膚の癌腫;または黒色腫もしくは白血病等の血液癌が挙げられるが、これらに限定されない。一例として、限定するものではないが、インターフェロンα2bをコードする発現カセットを含む本発明の組換えアデノウイルスは、膀胱癌の処置において使用され得る。一実施形態において、図6に示される組換えアデノウイルスベクターは、膀胱癌を処置するために本明細書に記載される方法で使用される。
【0076】
治療用タンパク質をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む本発明の組換えアデノウイルスベクターの治療有効量の非限定的な例は、約1×108粒子/mL〜約1×1012粒子/mLの間、または約1×109粒子/mL〜約1×1011粒子/mLの間の範囲である。一実施形態において、図6に示される組換えアデノウイルスベクターは、膀胱癌の被験体に約1×108粒子/mL〜約1×1012粒子/mL、または約1×109粒子/mL〜約1×1011粒子/mLの範囲で投与される。
【0077】
別の実施形態において、細胞は、組換えアデノウイルスを感染させられ、得られた組換え細胞が、被験体に投与される。得られた組換え細胞は、当該技術分野で公知の種々の方法によって被験体に送達され得る。組換え体の血球(例えば、造血幹細胞または造血前駆細胞)は、好ましくは静脈内に投与される。使用上想定される細胞の量は、所望の効果、患者の状態等に依存し、当業者によって決定され得る。本発明によれば、組換えアデノウイルスに感染され得るいかなる細胞も、遺伝子治療のためのものとなり得る。非限定的な例としては、上皮細胞(例えば呼吸上皮細胞)、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋細胞、肝細胞、血球(Tリンパ球、Bリンパ球、単球、貪食細胞、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球等)、および種々の幹細胞もしくは前駆細胞(特に、例えば骨髄、臍帯血、末梢血、胎仔肝等から採取されるような、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞)が挙げられる。好ましい実施形態において、遺伝子治療のために使用される細胞は、被験体に対して自家である。組換え細胞が遺伝子治療で使用される実施形態において、組換えアデノウイルスのゲノムによってコードされるタンパク質は、細胞またはそれらの子孫によって発現されることが可能であり、この組換え細胞は、次いで、治療効果のためにインビボで投与される。
【0078】
本発明の組換えアデノウイルスは、被験体を免疫するために使用され得る。例えば、組換えアデノウイルスは、組換えアデノウイルスによってコードされる異種抗原に対する抗体を生成するために使用され得る。被験体を免疫するために使用されるべき組換えアデノウイルスの量および免疫スケジュールは、当該技術分野の熟練した医師によって決定され、かつ被験体の免疫応答および抗体力価を参照することによって投与される。
【0079】
組換えアデノウイルスによる免疫によって抗原に対して生成される抗体は、診断免疫アッセイ、受動免疫療法、および抗イディオタイプ抗体の生成で使用され得る。生成された抗体は、当該技術分野で公知の標準的な技術(例えば、免疫親和性クロマトグラフィー、遠心分離、沈澱等)によって単離され得、そして診断免疫アッセイで使用され得る。抗体はまた、治療および/または疾患進行をモニターするために使用され得る。数例を挙げれば、組換えアデノウイルス免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイ、および免疫電気泳動アッセイ等の技術を使用する競合アッセイ系および非競合アッセイ系を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で公知の任意の免疫アッセイ系がこの目的で使用され得る。
【0080】
本発明の組換えアデノウイルスは、受動免疫療法で使用する抗体を生成するために使用することが可能であり、この受動免疫療法では、異種抗原に対して予め形成された抗体の投与によって、被験体の短期的な保護が達成される。本発明の組換えアデノウイルスによって生成される抗体はまた、抗イディオタイプ抗体の生成においても使用され得る。そして次に、抗イディオタイプ抗体は、最初の抗原に結合する抗体の亜集団を生成するために、免疫で使用され得る(Jerne,1974;Jerne,et al.,1982)。
【0081】
ある実施形態において、組換えアデノウイルスを使用した免疫によって産生される抗体は、改変されてから被験体に投与される。例えば、抗体はヒト化されおよび/または親和性が成熟され得る。
【0082】
5.6 組換えアデノウイルスを投与する組成物および方法
本発明は、本発明の方法によって生成される組換えアデノウイルス(好ましくは、複製欠損組換えアデノウイルス)を含む組成物を包含する。好ましい実施形態において、組成物は、被験体への投与に好適な薬学的組成物である。
【0083】
本発明の薬学的組成物は、有効量の組換えアデノウイルス、および薬学的に許容されるキャリアを含む。特定の実施形態において、「薬学的に許容される」という用語は、動物、より具体的にはヒトでの使用を連邦政府もしくは州政府の規制機関により承認されるか、または米国薬局方もしくは、他の一般的に認識される薬局方に記載されることを意味する。「キャリア」という用語は、薬学的組成物と共に投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはベヒクルを指す。特に注射可能な溶液に関して、生理食塩水およびブドウ糖水溶液およびグリセリン水溶液も、液体キャリアとして使用され得る。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレ−ト、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤等の形態を採り得る。これらの組成物は、坐剤として製剤化され得る。経口製剤は、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的キャリアを含み得る。適切な薬学的キャリアの例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載される。このような組成物は、患者への投与に適切な形態を提供するために、好適な量のキャリアと共に有効量の組換えアデノウイルス(好ましくは精製された形で)を含有する。処方物は、投与様式に適合するべきである。
【0084】
特定の障害または病態の処置に効果的である本発明の薬学的組成物の量は、障害または病態の性質に依存し、かつ標準的な臨床技術によって決定され得る。さらに、インビトロでのアッセイは、最適な用量範囲を同定するのに役立てるために、必要に応じて使用され得る。処方物で使用される正確な用量はまた、投与経路、疾患または障害の重篤度に依存し、実施者の判断および各患者の状況によって決定されるべきである。有効用量は、インビトロまたは動物モデルでの試験系から導かれる用量応答曲線から外挿され得る。
【0085】
治療用タンパク質をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む本発明の組換えアデノウイルスベクターの治療有効量の非限定的な例は、約1×108粒子/mL〜約1×1012粒子/mLの間、または約1×109粒子/mL〜約1×1011粒子/mLの間の範囲である。
【0086】
一例として、限定するものではないが、被験体における表在性膀胱癌の処置のために、約100mLの容積中のインターフェロンα2bをコードする約1×1010粒子/mL〜約1×1012粒子/mL、最も好ましくは、約1×1011粒子/mLの用量を含む処置コースが、約1時間にわたって膀胱内に滴下注入される。一例として、限定するものではないが、別の処置コースは、約100mL容積中のインターフェロンα2bをコードする1×1010粒子/mL〜約1×1012粒子/mL、最も好ましくは、約1×1011粒子/mLの用量の約1時間にわたる膀胱内滴下注入、その後の第1の用量から7日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内または連日の実質的に同等の第2の用量を含み得る。各処置コースは、疾患の進行経過によって、反復可能である。膀胱癌の処置のために膀胱内に投与される組換えベクターの場合、処置コースの間に少なくとも14日間、より好ましくは約30日間、最も好ましくは約90日間の間隔を置くと、最適なインターフェロン遺伝子発現が通常観察される。
【0087】
組成物の投与方法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口の経路が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の薬学的組成物は、任意の簡便な経路によって、例えば、注入もしくはボーラス注射によって、上皮表層もしくは粘膜表層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸管粘膜等)を通した吸収によって投与され得、そして他の生物活性薬剤と共に投与され得る。投与は、全身または局所であり得る。さらに、本発明の薬学的組成物を任意の好適な経路により肺に導入することが望ましいこともある。経肺投与は、例えば、吸入器もしくは噴霧器、およびエアゾール化剤を使用する処方の使用によって使用され得る。
【0088】
特定の実施形態において、治療を必要とする領域に本発明の薬学的組成物を局所的に投与することが望ましいこともある。これは、例えば、外科手術時の局所注入、局所適用(例えば、外科手術後の創傷被覆材と併せて)により、注射により、カテーテルにより、坐剤により、またはインプラントにより達成されることが可能であるがこれらに限定されず、このインプラントは、シアラスティック膜等の膜、または繊維を含む多孔性、非多孔性、またはゼラチン質の材料である。一実施形態において、投与は、悪性腫瘍または腫瘍性組織もしくは前腫瘍性組織の部位(または前部位)での直接注射により行われ得る。別の実施形態において、投与は膀胱内投与であり得る。
【0089】
別の実施形態において、薬学的組成物は、制御放出系で送達され得る。一実施形態においては、ポンプが使用され得る(Buchwald,et al.,1980;Langer,1983;Saudek,et al.,1989;Sefton,1987)。別の実施形態においては、ポリマー材料が使用され得る(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984);(Langer and Peppas,1983);(During,et al.,1989;Howard,et al.,1989;Levy,et al.,1985を参照)。さらに別の実施形態において、制御放出系は、組成物の標的(すなわち肺)のすぐ近くに配置されることが可能であり、従って、全身用量のうちの一部のみが必要となる(例えば、Goodson,1984,in Medical Applications of Controlled Release,supra,vol.2,pp.115−138を参照)。他の制御放出系は、Langer,1990によるレビューで考察される。
【0090】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、本発明の方法で生成される組換えアデノウイルス(好ましくは、複製欠損組換えアデノウイルス)および好適な賦形剤を含む、ワクチンまたは免疫組成物である。ワクチン組成物を導入するために多数の方法が使用され得、これらの方法としては、鼻腔内、気管内、口腔、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、および皮下の経路が挙げられるが、これらに限定されない。アデノウイルスの自然な感染経路を介して組換えアデノウイルスワクチン組成物を導入することが好ましいこともある。
【0091】
治療用タンパク質をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む本発明の組換えアデノウイルスベクターの治療有効量の非限定的な例は、約1×108粒子/mL〜約1×1012粒子/mLの間、または約1×109粒子/mL〜約1×1011粒子/mLの間の範囲である。
【0092】
いくつかの実施形態において、例えばインターフェロン等の治療用タンパク質をコードする核酸の標的細胞(例えば癌細胞等)への移入を促進する促進剤と併せて組換えアデノウイルスベクターを投与することが望ましいこともある。このような送達促進剤の例としては、洗浄剤、アルコール、グリコール、界面活性物質、胆汁酸塩、ヘパリン拮抗薬、シクロオキシゲナーゼ阻害薬、高張食塩液、および酢酸塩が挙げられる。アルコールとしては、例えば、エタノール、N−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、アセチルアルコール等の脂肪族アルコールが挙げられる。グリコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ならびにグリセロールおよびチオグリセロール等の他の低分子量グリコールが挙げられる。酢酸、グルコン酸、および酢酸ナトリウム等の酢酸塩は、送達促進剤のさらなる例である。1M NaClのような高張食塩液も、送達促進剤の例である。タウロコレート、タウロデオキシコール酸ナトリウム、デオキシコレート、ケノデオキシレート、グリココール酸、グリコケノデオキシコール酸等の胆汁酸塩、および硝酸銀等の他の収斂薬が使用され得る。硫酸プロタミン等の第4級アミンのようなヘパリン拮抗薬も使用され得る。遺伝子導入を促進させるために、陰イオン性、陽イオン性、双性イオン性、および非イオン性の洗浄剤も使用され得る。典型的な洗浄剤としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:タウロコレート、デオキシコレート、タウロデオキシコレート、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、Zwittertgent 3−14洗浄剤、CHAPS (3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオール]−1−プロパンスルホン−エート水和物)、Big CHAP、Deoxy Big CHAP、Triton−X−100洗浄剤、C12E8、オクチル−B−D−グルコピラノシド、PLURONIC−F68洗浄剤、Tween 20洗浄剤、およびTWEEN 80洗浄剤(CalBiochem Biochemicals)。特に好ましい促進剤および方法は、それぞれ教示内容全体が参考として本明細書で援用される、Engler,et al.,米国特許第6,312,681号(2001年11月6日発行)、Engler,et al.,米国特許第6,165,779号(2000年12月26日発行)、およびEngler,et al.,米国特許第6,392,069号(2002年5月21日発行)に記載される。本発明の実施に有用な特に好ましい促進剤は、米国特許第6,392,069号の式IのSyn3と呼ばれる化合物である。本発明の実施に有用なさらなる促進剤としては、国際特許公開第2004/108088号の化学式II、III、IV、およびVの化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩を含むが、これらに限定されない。一例として、限定するものではないが、促進剤はベクターと同時に投与され得るか、またはベクターの投与前に投与され得る。
【0093】
本発明の組成物および方法は、単独で、または従来の化学療法薬もしくは処置レジメンと併用して実施され得る。このような化学療法薬の例としては、プリン合成の阻害剤(例えば、ペントスタチン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、メトトレキサート)もしくはピリミジン合成の阻害剤(例えば、パラ、アザルビン(azarbine))、リボヌクレオチドのデオキシリボヌクレオチドへの転換の阻害剤(例えば、ヒドロキシ尿素)、dTMP合成の阻害剤(5−フルオロウラシル)、DNA損傷剤(例えば、放射線、ブレオマイシン、エトポシド、テニポシド、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、アルキル化剤、マイトマイシン、シスプラチン、プロカルバジン)、ならびに微小管機能の阻害剤(例えば、ビンカアルカロイドおよびコルヒチン)が挙げられる。化学療法の処置レジメンは、主として放射線治療などの腫瘍細胞を切断するよう設計された非化学的手順を指す。これらの化学療法薬は、別々に投与される場合もあれば、同時投与のために本発明の処方物に含まれる場合もある。本発明はまた、表在性膀胱癌の場合にBCG等の従来の免疫療法の処置レジメンと併用して実施され得る。本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が限定されないものとする。実際に、本明細書に記載される改変に加えて、本発明の種々の改変が、前述の説明から当業者に明らかになるであろう。このような改変は、添付の特許請求の範囲に含まれるものとして意図される。
【0094】
特許、特許出願、刊行物、製品説明、およびプロトコールは、本出願全体を通して引用され、これらの開示内容は、全体が参考として本明細書で援用される。
【0095】
【表1−1】
【0096】
【表1−2】
【0097】
【表1−3】
【0098】
【表1−4】
【0099】
【表1−5】
【0100】
【表1−6】
【0101】
【表1−7】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国特許法119条(e)の下での仮特許出願U.S.S.N.:60/750,012号(2005年12月12日出願)に対する優先権の利益を主張する。仮特許出願U.S.S.N.:60/750,012号の開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(1.発明の分野)
本発明は、アデノウイルスE2B機能の部分欠失または全欠失、およびE1領域に挿入された目的のタンパク質をコードする異種配列を含む発現カセットを有することによって特徴づけられる、組換えアデノウイルスベクターを提供する。このようなベクターは、複製能力のあるアデノウイルスの混入の発生を低減または排除するために設計される。さらに、ベクターの発現カセットは、異種配列の発現を増加させることができ、そして/またはウイルスタンパク質の発現を低減させることができる、調節エレメントを1つ以上含み得る。ウイルスタンパク質の発現におけるこのような低減は、インビボで投与した場合のアデノウイルスベクターの細胞障害性および免疫原性を低減させる。形質転換される産生宿主細胞および組換えタンパク質の生成法および遺伝子治療も、本発明の適用範囲内に含まれる。
【背景技術】
【0003】
(2.発明の背景)
組換えアデノウイルス(rAd)ベクターは、広範な組織および細胞の指向性、大型の発現カセットを収容する能力と高い形質導入効率、および休止細胞を感染させる能力を含む、遺伝子送達のための望ましい特徴を有する。アデノウイルスの極めて低い組み込み傾向は、挿入変異誘発および腫瘍形成性の活性化のリスクを最小限に抑えるために、さらなる安全策の面で有益である。ヒトアデノウイルスの多数の種々の血清型も、極めて異なる指向性を有する種々のウイルス鞘の選択を提供する。例えば、C群のウイルスは、肝臓または筋肉への感染性が極めて高く、D群は中枢神経系の細胞への、またはB群は造血系の細胞への感染性が極めて高い。さらに、アデノウイルスは、該ウイルスが高い比力価まで増殖し、拡張可能な製造プロセスが確立されている(非特許文献1;非特許文献2)ので医薬品開発に十分に適している。
これらの決定的な利点にもかかわらず、アデノウイルスベクターの応用の可能性は、依然として限定されている。これは、アデノウイルスベクターが標的組織内で発現されるウイルス遺伝子を含むという事実に起因している。直接毒性、カットオフ発現、組織の炎症(非特許文献3)、および細胞障害性Tリンパ球の攻撃が、最終的に感染細胞の破壊につながる結果となる。数多くの研究グループが、アデノウイルスベクターの免疫原性を低減させようと試みてきた。トランス活性化機能も有するE2領域およびE4領域は、ウイルスゲノムから排除され、かつヘルパー細胞株に移入された。しかしながら、ウイルスの力価の低減をさらに引き起こすこれらの変化が、インビボでの発現の持続時間を拡大させることができるかどうかは不確かなままである。この概念の必然的な延長として、ウイルス遺伝子が存在しないアデノウイルスベクターが近年開発された(非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8)。しかしながら、このようなベクターは、大規模な医薬品生産にはほとんど役に立たない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Huyghe,B.G.,Liu,X.,Sutjipto,S.,Sugarman,B.J.,Horn,M.T.,Shepard,H.M.,Scandella,C.J.,and Shabram,P.(1995a).Purification of a type 5 recombinant adenovirus encoding human p53 by column chromatography.In Hum Gene Ther,pp.1403−1416.
【非特許文献2】Shabram,P.W.,Giroux,D.D.,Goudreau,A.M.,Gregory,R.J.,Horn,M.T.,Huyghe,B.G.,Liu,X.,Nunnally,M.H.,Sugarman,B.J.,and Sutjipto,S.(1997a).Analytical anion−exchange HPLC of recombinant type−5 adenoviral particles.In Hum Gene Ther,pp.453−465.
【非特許文献3】Simon,R.H.,Engelhardt,J.F.,Yang,Y.,Zepeda,M.,Weber−Pendleton,S.,Grossman,M.,and Wilson,J.M.(1993).Adenovirus−mediated transfer of the CFTR gene to lung of nonhuman primates: toxicity study.Hum Gene Ther 4,771−780.
【非特許文献4】Hardy,S.,Kitamura,M.,Harris−Stansil,T.,Dai,Y.,and Phipps,M.L.(1997).Construction of adenovirus vectors through Cre−lox recombination.J Virol 71,1842−1849.
【非特許文献5】Kochanek,S.,Clemens,P.R.,Mitani,K.,Chen,H.H.,Chan,S.,and Caskey,C.T.(1996).A new adenoviral vector: Replacement of all viral coding sequences with 28 kb of DNA independently expressing both full−length dystrophin and beta−galactosidase.Proc Natl Acad Sci U S A 93,5731−5736.
【非特許文献6】Kumar−Singh,R.,and Chamberlain,J.S.(1996).Encapsidated adenovirus minichromosomes allow delivery and expression of a 14 kb dystrophin cDNA to muscle cells.Hum MoI Genet 5,913−921.
【非特許文献7】Mitani,K.,Graham,F.L.,Caskey,C.T.,and Kochanek,S.(1995).Rescue,propagation,and partial purification of a helper virus−dependent adenovirus vector.Proc Natl Acad Sci U S A 92,3854−3858.
【非特許文献8】Parks,R.J.,Chen,L.,Anton,M.,Sankar,U.,Rudnicki,M.A.,and Graham,F.L.(1996).A helper−dependent adenovirus vector system: removal of helper virus by Cre−mediated excision of the viral packaging signal.Proc Natl Acad Sci U S A 93,13565−13570.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(3.発明の要旨)
本発明は、アデノウイルスE2B機能の部分欠失または全欠失、かつE1領域に挿入された目的のタンパク質をコードする異種配列を含む発現カセットを有することによって特徴づけられる、組換えアデノウイルスベクターを提供する。このようなベクターは、複製能力のあるアデノウイルスの混入の発生を減少させるよう設計される。さらに、ベクターの発現カセットは、異種配列の発現を増加させることができ、そして/またはウイルスタンパク質の発現を低減させることができるエレメントを1つ以上含み得る。このようなウイルスタンパク質の発現の低減は、インビボで投与された場合のアデノウイルスベクターの細胞障害性および免疫原性を低減することを意図している。
【0006】
ベクターの発現カセットは、目的のタンパク質、またはその機能的な断片もしくは変異体をコードする異種配列(すなわち導入遺伝子)を含むように操作される。このような導入遺伝子は、治療的有用性を有する任意のタンパク質をコードする遺伝子、標的宿主細胞内の欠陥遺伝子(例えば、遺伝子欠陥に基づく病的状態の原因である遺伝子)を置換する遺伝子、ならびに/または癌、自己免疫疾患および/もしくは感染性疾患の処置において治療的有用性を有する遺伝子を含むが、これらに限定されない。形質転換された宿主細胞および組換えタンパク質の生成法および遺伝子治療も、本発明の範囲内に含まれる。
【0007】
発現カセットはさらに、ウイルスタンパク質の発現を低減させる一方、導入遺伝子の発現を増加させるよう設計されるさらなる核酸配列を1つ以上含み得る。例えば、発現カセットは、該カセットに隣接して見られる遺伝子の発現が活性化されるのを阻止するよう機能する「インスレーター配列」を含むように操作され得る。このように、インスレーター配列を発現カセットの3’末端に挿入することによって、発現カセットに隣接して見られるウイルス遺伝子の発現は、低いままのはずである。
【0008】
本発明のさらに別の実施形態において、発現カセットは、RNAのポリアデニル化および安定性を増強させることで知られている異種ポリA配列と置き換えたE1BポリA配列を有し得る。このような置換は、導入遺伝子の発現のレベルを増加させるという結果になり得る。利用され得るポリA配列は、当業者に周知のことであり、ウシ成長ホルモンポリA配列を含むが、これに限定されない。
【0009】
本発明のさらに別の実施形態において、発現カセットは、さらに哺乳類のヘパドナウイルス由来のもの等の転写後調節エレメント(PRE)を含み得る。このようなPRE配列としては、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)およびウッドチャック肝炎ウイルス(WHV)由来のものが挙げられる。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態において、発現カセットは、さらに、導入遺伝子の発現を増加させるために発現カセットの5’末端反復配列(LTR)に挿入されるイントロン配列を含み得る。本発明の実施で使用され得るイントロン配列は、当業者に周知である。このような配列は、公知のコンセンサススプライシング配列から生成され得る。
本発明はまた、組換えアデノウイルスベクターおよびこのような組換え体の使用を含む治療法(例えば、遺伝子治療関連、ワクチン接種等)を提供する。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
組換えアデノウイルスベクターであって、
(a)該アデノウイルスベクターのE1領域に挿入される発現カセットであって、
(i)目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む第1の核酸分子に作動可能に結合する調節エレメント;ならびに
(ii)インスレーター配列、E1BポリAシグナル配列と置き換えたポリAシグナル配列、および転写後調節エレメントからなる群から選択される1つ以上のエレメント
を含む、発現カセット;ならびに
(b)E2Bポリメラーゼを欠失させるかまたはE2Bポリメラーゼの活性を不活性化する変異、
を含む、ベクター。
(項目2)
前記発現カセットがさらに、CMVプロモーター、トリパータイトリーダー配列、WPRE配列、CTCF結合部位から選択される1つ以上の因子を含む、項目1に記載のベクター。
(項目3)
核酸配列がインターフェロンをコードする、項目1に記載のベクター。
(項目4)
前記インターフェロンがインターフェロンα2bである、項目3に記載のベクター。
(項目5)
前記発現カセットが、図5に示される発現カセットである、項目1に記載のベクター。
(項目6)
前記ベクターが、図6に示される配列を含む、項目1に記載のベクター。
(項目7)
ヒトアデノウイルス血清型5型に由来する、項目1に記載のベクター。
(項目8)
ヌクレオチド357から始まり、ヌクレオチド4030もしくは4050で終わる欠失、ヌクレオチド28,597から始まり、ヌクレオチド30,471で終わる欠失、およびヌクレオチド28,597から始まり、ヌクレオチド30,471で終わる欠失を含む、項目7に記載のベクター。
(項目9)
癌を処置するための方法であって、項目1に記載のベクターをこのような処置を必要とする被験体に投与することを含む、方法。
(項目10)
前記癌が膀胱癌である、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記ベクターが、約1×108粒子/mL〜約1×1012粒子/mLの間の範囲で投与される、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記ベクターが、約1×109粒子/mL〜約1×1011粒子/mLの間の範囲で投与される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記ベクターが、促進剤と併せて投与される、項目9に記載の方法。
(項目14)
前記促進剤がSYN−3である、項目13に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、T2VPベクターの構造の概略図である。図示のとおり、このベクターは、ウイルスのE1、E2B、およびE3の領域に欠失を含み、かつE1領域への導入遺伝子カセットの挿入を含む。導入遺伝子カセットは、CMVプロモーター、アデノウイルス5型トリパータイトリーダー、導入遺伝子に対して5’側の合成イントロン配列(すなわちrSEAP)、WPRE配列、BGHポリA配列、および合成インスレーター配列を含む。
【図2】図2は、T2VPに感染したKu−7膀胱細胞のSEAP発現と他のコントロールウイルスに感染したKu−7膀胱細胞のSEAP発現との比較を表す。インビトロでの試験は、コントロールベクターと比較して、SEAPの同等または増加した発現を実証する。
【図3】図3は、T2VPおよびRCCB(コントロール)の膀胱内送達後の尿のSEAP発現のインビボでの分析である。一例として、この実験は、ラットの膀胱へのT2VPの膀胱内投与が、標準的なE1欠失アデノウイルスであるRCCBと比べて、短縮した再投与時間で発現の持続期間を改善させたことを実証した。コントロールRCCBベクターのSEAP発現は、初回投与より再投与が約10倍低く、一方T2VPベクターの初回投与と再投与との間でレベルは同じままであった。麻酔下の雌Sprague−Dawleyラットに組換えアデノウイルス(500μL中約5×1010粒子)を膀胱内投与した。被験物質を膀胱内に約1時間保持し、ついで動物を排尿させ、回復させた。投与から24時間後に開始して時間を決めて尿のサンプルを回収し、ELISAによってSEAPに関して分析した。1回目の膀胱内投与後のSEAP濃度を黒塗り記号として示す(初回投与)。2回目の膀胱内投与(53日後)の後に測定したSEAP濃度を白塗り記号としてプロットする(53日目の再投与)。方法についてはConnor,et al.,2005に詳述される。
【図4】図4は、IACBベクターまたはrAdIFNベクターと比較したT8BFベクターの構造の概略図である(内容全体が参考として本明細書で援用される、Benedict,et al.,2004;Demers,et al.,2002a;Demers,et al.,2002b;Iqbal Ahmed,et al.,2001;米国特許第6210939号)。E2b領域と導入遺伝子カセットとの違いを示す。
【図5A】図5A〜Eは、T8BF由来の導入遺伝子カセットの特徴の配列および所在を提示する。
【図5B】図5A〜Eは、T8BF由来の導入遺伝子カセットの特徴の配列および所在を提示する。
【図5C】図5A〜Eは、T8BF由来の導入遺伝子カセットの特徴の配列および所在を提示する。
【図5D】図5A〜Eは、T8BF由来の導入遺伝子カセットの特徴の配列および所在を提示する。
【図5E】図5A〜Eは、T8BF由来の導入遺伝子カセットの特徴の配列および所在を提示する。
【図6A】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6B】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6C】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6D】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6E】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6F】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6G】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6H】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6I】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6J】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図6K】図6A〜Kは、インターフェロンα2bの配列を含む導入遺伝子カセット(ヌクレオチド365から開始;図5を参照)を含むT8BFアデノウイルスベクターの全長配列を示す。
【図7】図7は、IACBおよびT8BFからのインターフェロンα2bの発現のインビトロでの比較である。A549細胞を感染させ、感染から72時間後に分析した。図示のとおり、E1欠失を含むコントロールウイルスIACBと比較すると、インターフェロンα2bの発現の改善が観察された。
【図8】図8は、初回投与と62日目の再投与の両方におけるIACBおよびT8BFからのインターフェロンα2bの発現のインビボでの比較である。この例では、T8BF(丸)およびIACB(四角)のデータを、n=5(黒塗り記号)とn=6(白塗り記号)の2つの実験の平均値±SEとして示す。図3の説明文およびConnor,et al.,2005に記載されるように正常なラットに投与し、ヒトインターフェロンα2bをELISA法によって測定した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(5.発明の詳細な説明)
本発明は、とりわけ、アデノウイルスE2B遺伝子の部分欠失または全欠失、かつE1領域に挿入された目的のタンパク質をコードすることができる発現カセットを有するによって特徴づけられる、組換えアデノウイルスベクターを提供する。本発明のベクターは、治療的応用で使用され、そこでベクターは、治療用核酸(例えば遺伝子)を標的細胞のゲノムに発現させるため(すなわち遺伝子治療応用)に使用される。本発明のベクターは、広範な種類の治療用核酸を送達するために使用され得る。目的の治療用核酸としては、標的宿主細胞内の欠陥遺伝子(例えば、遺伝子欠陥に基づく病的状態の原因である遺伝子)を置換する遺伝子;癌、自己免疫疾患および/または感染性疾患の処置において治療的有用性を有する遺伝子などが挙げられる。
【0013】
本発明によれば、従来の当該技術分野の分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術が使用され得る。このような技術は、文献において説明される。例えば、Sambrook,Fritsch & Maniatis,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(本明細書中「Sambrook,et al.,1989」);DNA Cloning: A Practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985);Oligonucleotide Synthesis (M.J.Gait ed.1984);Nucleic Acid Hybridization (B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1985));Transcription And Translation (B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984));Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1986));Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,(1986));B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);F.M.Ausubel,et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(1994)を参照されたい。
【0014】
5.1 用語
本明細書で使用される場合、「アデノウイルス」という用語は、アデノウイルス科のウイルスを指す。「組換えアデノウイルス」という用語は、そのウイルスゲノムが従来の組換えDNA技術によって改変された細胞を感染させることができるアデノウイルス科のウイルスを指す。「組換えアデノウイルス」という用語はまた、キメラベクター(またはさらには多量体ベクター)、すなわち1種より多くのサブタイプ由来の相補的なコード配列を使用して構築されるベクターを含む。
【0015】
本明細書で使用される場合、「組換えアデノウルスベクター」という用語は、アデノウイルスヌクレオチド配列および必要に応じて1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含むベクター構築物を指す。好ましい実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、相同性をヘルパーアデノウイルスの核酸配列まで低減させたアデノウイルスヌクレオチド配列を含む。別の好ましい実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、複製欠損アデノウイルスをコードする。本実施形態によれば、組換えアデノウイルスベクターは、(例えば、1つ以上の変異をアデノウイルスゲノムに導入する(例えば、アデノウイルスタンパク質の1つ以上のコード領域に欠失を導入する)ことによって)変異アデノウイルスゲノムを含むように操作され得る。
【0016】
本明細書で使用される場合、「アデノウイルス科」という用語は、ヒト、ウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ブタ、マウス、およびサルのアデノウイルス亜属を含むがこれらに限定されないマストアデノウイルス属の動物アデノウイルスを集合的に指す。特に、ヒトアデノウイルスは、A〜Fの亜属ならびにその個別の血清型を含む。A〜Fの亜属としては、ヒトアデノウイルス1型、2型、3型、4型、4a型、5型、6型、7型、7a型、7d型、8型、9型、10型、11型(Ad11AおよびAd11P)、12型、13型、14型、15型、16型、17型、18型、19型、20型、21型、22型、23型、24型、25型、26型、27型、28型、29型、30型、31型、32型、33型、34型、34a型、35型、35p型、36型、37型、38型、39型、40型、41型、42型、43型、44型、45型、46型、47型、48型、および91型が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書で使用される場合、「E1A遺伝子」および「E1B領域」とは、感染後に最初に転写される、アデノウイルスゲノムの前初期遺伝子を指す。例えば、E1Aコード領域は、ヌクレオチド560〜1542に及び、E1Bコード領域は、ヌクレオチド1714〜2242に及ぶ。本明細書で使用される場合、「E2B遺伝子」という用語は、140kDのDNAポリメラーゼをコードする、アデノウイルスゲノムの初期遺伝子を指す。E2領域はまた、ウイルスアセンブリー中に切断されて、DNAに共有結合されたまま55kDとなる末端タンパク質(80kD)の前駆体をコードする。E2Bコード領域は、アデノウイルス5型のヌクレオチド8367〜5197に及ぶ。完全なヒトアデノウイルス5型ゲノムのGenBank(登録商標)寄託物が入手可能であり、例えばAY339865およびAC000008を参照されたい。
【0018】
本明細書で使用される場合、「発現カセット」という用語は、異種コード配列の転写および翻訳を指示することができるヌクレオチド配列、ならびに発現されるべき異種コード配列を定義するために本明細書で使用される。発現カセットは、細胞内の上記異種コード配列によってコードされるタンパク質産物の発現を達成するために、異種コード配列に作動可能に結合される調節エレメントを含む。
【0019】
本明細書で使用される場合、核酸配列、アミノ酸配列および抗原と関連して「異種」という用語は、外来であってかつ特定のアデノウイルスと関連して天然では見いだされない、核酸配列、アミノ酸配列、および抗原を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「作動可能に結合される」という用語は、機能的な関係でのポリヌクレオチドエレメントの結合を指す。核酸配列が、別の核酸配列と機能的な関係に置かれるとき、それは「作動可能に結合されている」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーがコード配列の転写に影響を与える場合、そのプロモーターまたはエンハンサーはコード配列に作動可能に結合されている。作動可能に結合されるとは、結合されるヌクレオチド配列が、代表的には、近接していることを意味する。しかしながら、プロモーターから数キロベース離れており、かつイントロン配列が種々の長さであるとき、エンハンサーは一般的に機能するので、一部のポリヌクレオチドエレメントは、作動可能に結合され得るが、直接的に隣接されず、異なる対立遺伝子または染色体からトランスで機能することさえあり得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「調節エレメント」という用語は、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、インスレーター領域、サイレンシング領域、ポリアデニル化部位、イントロン配列、転写後調節エレメント等を指す。「プロモーター」という用語は、その従来の意味で使用され、コード配列の転写開始および転写速度を制御するヌクレオチド配列を指す。プロモーターは、RNAポリメラーゼが結合する部位を含み、また調節エレメント(例えば、リプレッサーまたは転写因子)の結合のための部位を含む。プロモーターは、天然に存在する場合もあれば、合成である場合もある。使用されるベクターがウイルスベクターであるとき、プロモーターは、そのウイルスにとって内因性であってもよく、または他の供給源由来であってもよい。特定の細胞型でのみ導入遺伝子の発現を可能にする、増強する、または促進するために、調節エレメントが配置されることも可能である。例えば、導入遺伝子が構成的に活性であるか、または一時的に制御される(一時的プロモーター)、外部の刺激に応えて活性化される(誘導性)、特定の細胞型または細胞状態で活性である(選択的)という、構成的プロモーター、一時的ウイルスプロモーター、または調節可能なプロモータープロモーターの制御下になるように、発現カセットを設計することが可能である。
【0022】
本明細書で使用される場合、「感染させる」という用語は、組換えアデノウイルスでの産生細胞の感染を促進するための条件下で補完する細胞株に組換えアデノウイルスを曝露することを意味する。複数コピーの所定のウイルスによって感染した細胞を補完するに際して、ウイルス複製およびビリオンのパッケージングのために必要な活性は、協同的である。従って、細胞がウイルスによって多重に感染する有意な可能性があるように、条件を調節することが好ましい。細胞内でウイルスの産生を増進させる条件の例は、感染段階での増加したウイルス濃度である。しかしながら、細胞につきウイルス感染の総回数は、度を超すこともあり得、細胞にとって毒作用がもたらされる可能性がある。従って、ウイルス濃度の感染を106〜1010の範囲で、好ましくは約109のビリオン/mLで維持するよう努力するべきである。化学薬品も、細胞株の感染性を高めるために使用され得る。例えば、本発明は、カルパイン阻害剤の包含によってウイルス感染性に対する細胞株の感染性を増加させる方法を提供する。本発明の実施に有用なカルパイン阻害剤の例としては、カルパイン阻害剤1(N−アセチル−ロイシル−ロイシル−ノルロイシナールとしても知られており、Boehringer Mannheimから市販されている)が挙げられるが、これに限定されない。カルパイン阻害剤1は、組換えアデノウイルスへの細胞株の感染性を増加させることが観察されている(例えば、全体が参考として本明細書で援用される、米国特許第7,001,770号を参照)。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ウイルスゲノムの複製が可能な条件下で培養する」という用語は、組換えアデノウイルスが細胞内で増殖することを可能にするように補完条件を維持することを意味する。各細胞によって産生されるウイルス粒子の数を最大にするために、条件を制御することが望ましい。従って、温度、溶存酸素、pH等の反応条件をモニターして制御することが必要である。CelliGen Plus Bioreactor(New Brunswick Scientific,Inc.44 Talmadge Road,Edison,NJから市販されている)等の市販されているバイオリアクターは、このようなパラメータのモニタリングおよび維持についての条件を有する。感染、トランスフェクション、および培養条件の最適化は、多少変化するが、ウイルスの効率的な複製および産生のための条件は、例えば、産生細胞株の公知の特性、ウイルスの特性およびバイオリアクターの種類を考慮して、当業者によって達成され得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「ヘルパーアデノウイルス核酸配列」という用語は、(i)感染性ビリオンへの組換えアデノウイルスベクターおよび/またはそのパッケージングの複製のウイルス機能を提供し、かつ(ii)測定可能な程度までウイルス粒子を複製も構築もしない、核酸配列を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「組換えアデノウイルス産生細胞株」、「組換えアデノウイルス補完細胞」、「組換えアデノウイルス補完細胞株」という用語は同義語であり、感染性ビリオンへの組換えアデノウイルスおよび/またはそのパッケージングの複製のウイルス機能を提供することによって組換えアデノウイルスを増殖することのできる細胞を意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「トランスフェクション」または「形質転換」という用語は、細胞への核酸の導入を意味する。導入されたDNAまたはRNAを受け取った宿主細胞は、「形質転換」されており、かつ「形質転換体」または「クローン」である。当該技術分野で極めて周知の形質転換方法の例としては、リポソーム送達、電気穿孔、CaPO4形質転換、DEAEデキストラン形質転換、マイクロインジェクションおよびウイルス感染が挙げられる。
【0027】
5.2 組換えアデノウイルス構築物
本発明の組換えアデノウイルスベクターは、アデノウイルスヌクレオチド配列および必要に応じて1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。好ましい実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、補完する細胞株のアデノウイルス核酸配列に対して低減した相同性を有するアデノウイルスヌクレオチド配列を含む。アデノウイルスヘルパー核酸配列と組換えアデノウイルスベクターの間の相同性の欠如は、ウイルスゲノムが組み換わって複製能力のあるアデノウイルスを生成する可能性を低減させる。好ましい実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは複製欠損アデノウイルスをコードする。本実施形態によれば、組換えアデノウイルスベクターは、(例えば、アデノウイルスゲノムに1つ以上の変異を導入する(例えば、アデノウイルスタンパク質のための1つ以上のコード領域に欠失を導入する)ことによって)変異アデノウイルスゲノムを含むように操作され得る。好ましくは、アデノウイルスゲノムの変異は、野生型アデノウイルスよりも低いレベルのアデノウイルスタンパク質の発現をもたらす。アデノウイルスタンパク質発現の減少は、被験体におけるアデノウイルスタンパク質への免疫応答を低減させる。
【0028】
特定の実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、E1を欠失した複製欠損アデノウイルスをコードし、E2Bポリメラーゼ機能が部分欠失または全欠失(好ましくは、全欠失)した変異したゲノムを含み、異種ヌクレオチド配列を含む。好ましい実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、複製欠損アデノウイルスをコードし、かつE1Aコード領域、E1Bコード領域、E2Bポリメラーゼコード領域が部分欠失または全欠失(好ましくは、全欠失)した変異したゲノムを含み、欠失したE1コード領域に異種ヌクレオチド配列を含む。
【0029】
本発明の一実施形態において、E2B領域の欠失は、非機能的DNAポリメラーゼの産生につながるのに十分な欠失を含む。本発明の好ましい実施形態において、E2B領域の欠失は、逆鎖上にウイルスタンパク質をコードする配列を保持する。本発明の実施で使用され得る変異としては、ヌクレオチド7274〜約7881のE2b欠失を含むがこれに限定されない(全体が参考として本明細書で援用される、Amalfitano,et al.,1998を参照)。本発明のさらに別の実施形態において、点変異は、E2Bコード領域に遺伝的に操作されることが可能であり、それによって機能的なアデノウイルスポリメラーゼ発現の低下という結果になる。本発明の特定の実施形態において、E2B遺伝子の開始コドンは、E2B mRNAの翻訳を回避し、それによってE2Bポリメラーゼ活性の機能を除去するよう変異されることが可能である。
【0030】
異種ヌクレオチド配列は、ゲノムの任意の領域(例えば、アミノ末端またはカルボキシ末端)に導入され得る。特定の実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、変異したアデノウイルスのゲノムのE1、E2B、またはE3コード領域等の欠失したアデノウイルスコード領域の1つに導入される。本発明の好ましい実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、変異したアデノウイルスのゲノムの欠失したE1コード領域に導入される。
【0031】
本発明によれば、組換えアデノウイルスベクターは、任意のアデノウイルス科由来もしくはアデノウイルス科の組み合わせから得たおよび/または誘導した、アデノウイルスゲノムまたはその一部を含む。好ましい実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、ヒトアデノウイルス科から得たおよび/または誘導した、アデノウイルスゲノムまたはその一部を含む。別の好ましい実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、ヒトアデノウイルス血清型2型または5型から得たおよび/または誘導した、アデノウイルスゲノムまたはその一部を含む。
【0032】
一実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、ヒトアデノウイルス血清型5型に由来し、E1a、E1b、およびタンパク質IX機能の欠失、ならびにE3領域(例えば、全体が参考として本明細書で援用される米国特許第6,210,939号および第5,932,210号を参照)およびE2b領域での欠失を含む。一例として、限定するものではないが、ヒトアデノウイルス血清型5型由来の組換えアデノウイルスベクターは、塩基対357〜塩基対約4050の欠失(例えば、塩基対360〜塩基対約4030までの間の欠失)、塩基対28,597〜塩基対約30,471までの間の欠失、および全体が参考として本明細書で援用される、Amalfitano,A.,et al.,(1998)に記載されるようなE2b領域での欠失を含むことが可能である。
【0033】
別の実施形態において、組換えアデノウイルスベクターは、ヒトアデノウイルス血清型5型に由来し、図6のアデノウイルスベクターに示されるのと同じアデノウイルス配列の欠失を含む。
【0034】
本発明は、変異したアデノウイルスゲノムに挿入される「発現カセット」を含む組換えアデノウイルス発現ベクターに関する。本明細書で使用される場合、「発現カセット」という用語は、異種コード配列の転写および翻訳を指示することのできるヌクレオチド配列ならびに発現されるべき異種コード配列として定義される。発現カセットは、細胞内で異種コード配列によってコードされるタンパク質産物の発現を達成するために、この異種コード配列に作動可能に結合された調節エレメントを含む。
【0035】
本発明の実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、組換えアデノウイルスベクター以外の供給源から得られる、および/または由来する。本発明によれば、異種ヌクレオチド配列は、所望の生物学的特性または活性を有する部分、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードし得る。
【0036】
特定の実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、サイトカイン、サイトカイン受容体、ホルモン、成長因子、または成長因子受容体等の生物学的応答調節物質をコードする。このような生物学的応答調節物質の非限定的な例としては、インターフェロン(IFN)−α、IFN−β、IFN−γ、インターロイキン(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−12、IL−15、IL−18、IL−23、エリスロポエチン(EPO)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、胸腺間質リンホポエチン(TSLP)、GM−CSF、TNFRSF18およびTNFSF18を含むTNFRおよびTNFRリガンドスーパーファミリーメンバーが挙げられる。好ましい実施形態において、ヌクレオチド配列は、インターフェロンα2b(例えば、全体が参考として本明細書で援用される、米国特許第6,835,557号を参照)等のインターフェロンをコードする。
【0037】
他の実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、抗体をコードする。さらに他の実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、キメラタンパク質または融合タンパク質をコードする。
【0038】
特定の実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、組換えアデノウイルスベクターが由来する種、亜群、または変異体以外のアデノウイルスの異なる種、亜群、または変異体に属するウイルスの抗原タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードする。特定の実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、病原性微生物から得たおよび/または由来する抗原タンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドをコードする。
【0039】
本発明のさらに別の実施形態において、異種ヌクレオチド配列は、癌の治療遺伝子である。このような遺伝子は、リンパ球の抗腫瘍活性を増強する遺伝子、その発現産物が腫瘍細胞の免疫原性を強化する遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、毒素遺伝子、自殺遺伝子、多剤耐性遺伝子、アンチセンス配列等を含む。従って、例えば、本発明のアデノウイルスベクターは、細胞周期を調節する際に効果的なタンパク質の発現のための外来遺伝子(例えば、p53、Rb、もしくはマイトシン)、または細胞死を誘発する際に効果的なタンパク質の発現のための外来遺伝子(例えば、条件的自殺遺伝子チミジンキナーゼ)を含み得る。
【0040】
本発明によれば、組換えアデノウイルスベクターの異種ヌクレオチド配列が宿主細胞で発現されるべき場合、転写調節エレメント(プロモーター/エンハンサー配列とも呼ばれる)を供給するべきである。プロモーター/エンハンサー配列は、広範に活性であり得、または組織特異的であり得る。プロモーター/エンハンサー配列は、非アデノウイルス供給源由来であり得、またはアデノウイルスプロモーターであり得る。好ましい実施形態において、異種ヌクレオチド配列の発現を調節するために使用されるプロモーター/エンハンサー配列は、ヘルパーアデノウイルス核酸配列の発現を調節するプロモーター/エンハンサー配列と共有されない。本実施形態によれば、プロモーターは、当業者に公知の任意のプロモーターであり得る。例えば、プロモーターは、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、または誘導性プロモーターであり得る。本発明に従って使用され得るプロモーターの例としては、以下が挙げられる:SV40初期プロモーター(Benoist and Chambon,1981)、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復配列に含まれるプロモーター(Yamamoto,et al.,1980)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner,et al.,1981)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster,et al.,1982)、β−アクチンプロモーター、CMVプロモーター、SRαプロモーター、hFer/SV40プロモーター、Elf−1プロモーター、Tetプロモーター、エクジソンプロモーター、およびラパマイシンプロモーター。
【0041】
特定の実施形態において、アデノウイルスタンパク質をコードするヌクレオチド配列の発現を調節するために天然のプロモーターが利用される。別の実施形態において、タンパク質の発現を調節するために、発現されるタンパク質をコードするアデノウイルス遺伝子に固有でないプロモーター(すなわち、異種プロモーター)が利用される。特定の実施形態において、プロモーターは、構成的プロモーター(例えば、ウイルス、細胞、またはハイブリッドの構成的プロモーター)である。他の実施形態において、プロモーターは、誘導性プロモーターである。さらに他の実施形態において、プロモーターは、組織特異的プロモーターである。
【0042】
特定の実施形態においては、異種ヌクレオチド配列の発現を調節するために、CMVプロモーター、β−アクチンプロモーター、SRαプロモーター、またはhFer/SV40プロモーター等の構成的プロモーターを使用するのが望ましい。特定の他の実施形態においては、異種ヌクレオチド配列の発現を調節するために、RSVプロモーター、SV40プロモーター、またはElf−1プロモーター等の構成的プロモーターを使用するのが望ましい。さらに他の実施形態においては、アデノウイルスベクターの異種ヌクレオチド配列の発現を調節するために、Tetプロモーターまたはエクジソンプロモーター等の誘導性プロモーターを使用するのが望ましい。
【0043】
本発明のさらに別の実施形態において、誘導性プロモーターは、本発明のアデノウイルスベクターで使用され得る。これらのプロモーターは、追加の分子の存在下でのみ転写を開始する。誘導性プロモーターの例としては、β−インターフェロン遺伝子、熱ショック遺伝子、メタロチオネイン遺伝子から入手可能なもの、またはステロイドホルモン応答性遺伝子から入手可能なものが挙げられる。組織特異的発現は、遺伝子発現の分野で十分に特徴付けられており、これらのような組織特異的プロモーターおよび誘導性プロモーターは、当該技術分野で極めて周知である。外来遺伝子が標的細胞に導入された後にその外来遺伝子の発現を調節するために、これらの遺伝子は使用される。
【0044】
挿入された非アデノウイルスまたは異種ヌクレオチド配列の望ましい大きさは、ビリオンへの組換えアデノウイルスベクターのパッケージングを可能にする大きさに限定され、かつ保持されるアデノウイルス配列の大きさに依存する。ヒトアデノウイルスのゲノムは、約36キロ塩基対の長さである(Davison,et al.,2003によって長さが35938ヌクレオチドであると測定)。ビリオンにパッケージングされる組換えアデノウイルスの全体の大きさは、約37735ヌクレオチドの長さであるはずである(通常のゲノム長の約105%)。従って、挿入された異種ヌクレオチド配列の発現を最大限にするために、組換えアデノウイルスベクター内のアデノウイルスゲノムの付加的な部分(例えば、E3領域)を排除することが望ましいこともある。
【0045】
本発明の組換えアデノウイルスベクターへの外来遺伝子配列の挿入は、異種ヌクレオチド配列によるウイルスコード領域の完全置換もしくは部分置換によって、または異種ヌクレオチド配列をウイルスゲノムに添加することによってのいずれかで達成され得る。完全な置換は、PCRによる変異誘発(PCR−directed mutagenesis)を使用することによって最も良く達成されると思われる。手短に言えば、PCRプライマーAは、5’末端から3’末端に、独特の制限酵素部位(例えば、クラスIIS制限酵素部位(すなわち、特異的配列を認識するが、その配列の上流もしくは下流のDNAを切断する、「シフター」酵素));置換されるべき遺伝子のある領域に相補的な一続きのヌクレオチド;および異種ヌクレオチド配列のカルボキシ末端コード部分に相補的な一続きのヌクレオチドを含む。PCRプライマーBは、5’末端から3’末端に、独特の制限酵素部位;置換されるべき遺伝子に相補的な一続きのヌクレオチド;および異種遺伝子または非天然の遺伝子の5’コード部分に対応する一続きのヌクレオチドを含む。異種遺伝子もしくは非天然の遺伝子のクローン化コピーとこれらのプライマーを使用するPCR反応の後に、産物は、独特の制限酵素部位を使用して切り出されてクローン化され得る。クラスIIS酵素による消化および精製ファージポリメラーゼによる転写は、ここで、異種遺伝子挿入物もしくは非天然の遺伝子挿入物を有するウイルス遺伝子の非翻訳の正確な両端を含むRNA分子を作製する。別の実施形態において、バクテリオファージプロモーター配列、およびRNAテンプレートがクローニングなしで直接的に転写され得るようなハイブリッド遺伝子配列を含む二重鎖DNAを調製するために、PCRプライミング反応が使用され得る。
【0046】
本発明の組換えアデノウイルスベクターに異種ヌクレオチド配列を挿入するとき、異種ヌクレオチド配列のコード配列の末端と下流遺伝子のコード配列の開始部との間の遺伝子間領域は、所望の効果を達成するために改変され得る。本明細書で使用される場合、「遺伝子間領域」という用語は、1つの遺伝子の停止シグナルと次の下流のオープンリーディングフレームのコード配列の開始コドン(例えばAUG)との間のヌクレオチド配列を指す。遺伝子間領域は、遺伝子の非コード領域(すなわち、遺伝子の転写開始部位とコード配列の開始部(AUG)との間)を含み得る。この非コード領域は、一部のウイルス遺伝子には天然に存在する。
【0047】
本発明の一実施形態において、「インスレーター」と呼ばれる配列が、異種ヌクレオチド配列の下流の遺伝子間領域で、発現カセットに挿入され得る(Di Simone,et al.,2001;Martin−Duque,et al.,2004a;Pluta,et al.,2005;Puthenveetil,et al.,2004;Qu,et al.,2004;Rincon−Arano and Recillas−Targa,2004;Takada,et al.,2000)。このようなインスレーターの挿入は、野生型と比べて、アデノウイルスタンパク質の低下した発現をもたらす可能性があり、これはアデノウイルスベクターの免疫原性および毒性を低減する際に有用である。本発明の実施で使用され得るインスレーター配列は、当業者には周知であり、例えば、βグロビン遺伝子座の高感受性領域4(HS4)を含む。HS4座は、レトロウイルス(Emery,et al.,2002;Jakobsson,et al.,2004;Pannell and Ellis,2001;Yannaki,et al.,2002;Yao,et al.,2003)およびアデノウイルスベクターでも使用されてきた(Cheng,et al.,2004;Martin−Duque,et al.,2004b;Steinwaerder and Lieber,2000;Ye,et al.,2003)。クロマチン再配列およびブロッキング活性による遺伝子発現の制御の原因となるHS4座の領域は、転写調節因子CTCFに起因すると考えられてきた(Bell,et al.,1999;Dunn and Davie,2003;Dunn,et al.,2003;Emery,et al.,2002;Farrell,et al.,2002;Jakobsson,et al.,2004;Kanduri,et al.,2002;Lewis and Murrell,2004;Lutz,et al.,2000;Mukhopadhyay,et al.,2004;Pannell and Ellis,2001;Recillas−Targa,et al.,2002;Saitoh,et al.,2000;Szabo,et al.,2002;Thorvaldsen,et al.,2002;Valadez−Graham,et al.,2004;Yannaki,et al.,2002;Yao,et al.,2003;Yusufzai and Felsenfeld,2004;Yusufzai,et al.,2004;Zhang,et al.,2004;Zhao and Dean,2004)。本発明の一実施形態において、βグロビン遺伝子座の高感受性部位4からCTCF結合部位のヘッドからテイルまでの4コピーを含むインスレーターは、インスレーターとして使用され得る。別の実施形態においては、他の合成インスレーター配列(Bell,et al.,2001;Brasset and Vaury,2005;Zhao and Dean,2004)も使用され得る。
【0048】
本発明のさらに別の実施形態において、E1BポリAシグナル配列は、異種遺伝子のポリアデニル化およびRNA安定化を増大させる異種ポリA配列によって置換され得る。ポリアデニル化およびRNA安定化のこのような増大は、異種遺伝子産物のより効率的な発現をもたらし得る。本発明の非限定的な実施形態において、ポリAシグナル配列は、以下のコンセンサス配列AATAAAまたはAATTAAを含有する配列を含む。本発明の実施形態において、ポリA配列は、SV40ウイルス等のウイルス由来であり得る。本発明の特定の実施形態において、E1BポリA配列は、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル配列(Xu,et al.,2002;Youil,et al.,2003)によって置換され得る。BGHポリA配列は、既存の市販のプラスミドからPCRによって得られ得る。
【0049】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明の組換えアデノウイルスは、導入遺伝子発現を増大させるよう機能する転写後調節エレメント(PRE)を含み得る。例えば、ウッドチャック肝炎PRE(Donello,et al.,1998)、B型肝炎ウイルスPRE(Huang and Yen,1994)、または単純ヘルペスPRE(Liu and Mertz,1995)を含むこのようなエレメントは、異種遺伝子の下流位置で発現カセットに挿入される(Appleby,et al.,2003;Breckpot,et al.,2003;Brun,et al.,2003;Glover,et al.,2002;Glover,et al.,2003;Gropp,et al.,2003;Mangeot,et al.,2002;Robert,et al.,2003;Schwenter,et al.,2003;Werner,et al.,2004;Xu,et al.,2003;Yam,et al.,2002;Zufferey,et al.,1999)。
【0050】
本発明はまた、発現カセットが異種遺伝子の5’非翻訳領域へ操作されたイントロン配列を含むように操作される組換えアデノウイルスを提供する(Choi,et al.,1991;Hermening,et al.,2004;Lee,et al.,1997;Xu,et al.,2002;Xu,et al.,2003)。本発明の実施で使用されるべきイントロン配列は、例えば、必要なコンセンサススプライシングシグナルを取り込むプライマーを使用するPCRを使用して既知のコンセンサススプライシング配列から生成され得る。イントロン配列は、5’スプライス供与体部位、および分岐点配列と3’スプライス受容体AG部位とを含む3’スプライス領域を含む。3’スプライス領域は、さらにポリピリミジントラクトを含み得る。RNAスプライシングで使用される5’スプライス供与体部位および3’スプライス領域のコンセンサス配列は、当該技術分野で周知である(Moore,et al.,1993,The RNA World,Cold Spring Harbor Laboratory Press,pp.303−358を参照)。さらに、5’スプライス供与体部位および3’スプライス領域として機能する能力を維持する改変されたコンセンサス配列は、本発明の実施で使用され得る。手短に言えば、5’スプライス部位のコンセンサス配列は、AG/GURAGU(ここで、A=アデノシン、U=ウラシル、G=グアニン、C=シトシン、R=プリン、および/=スプライス部位)である。3’スプライス部位は、次の3つの別々の配列エレメントからなる:分岐点もしくは分枝部位、ポリピリミジントラクト、および3’コンセンサス配列(YAG)。哺乳類における分岐点コンセンサス配列は、YNYURAC(Y=ピリミジン、N=任意のヌクレオチド)である。下線をしたAは、分枝形成部位である。ポリピリミジントラクトは、分岐点とスプライス受容体部位の間に位置し、分岐点の効率的な利用および3’スプライス部位の認識のために重要である。ジヌクレオチドAUから始まりジヌクレオチドACで終わる他のプレメッセンジャーRNAイントロンは同定されており、U12イントロンと呼ばれる。スプライス受容体/供与体配列として機能するU12イントロン配列ならびに任意の追加の配列も、本発明の発現カセットを作製するために使用され得る。
【0051】
本発明のさらに別の実施形態において、発現カセットの5’非翻訳領域は、アデノウイルストリパータイトリーダーを含む。
【0052】
一実施形態において、発現ベクターは、1つ以上の異種ヌクレオチド配列、CMVプロモーター、トリパータイトリーダー配列、合成イントロン、WPRE配列、ポリA領域、およびCTCF結合部位を含む。一例として、限定するものではないが、本発明の組換えアデノウイルスベクターは、図5に示す発現カセットを含み得る。
【0053】
挿入された異種ヌクレオチド配列の発現は、タンパク質またはmRNAの発現レベルを含むがこれらに限定されない種々の指標によって決定されることが可能であり、以下のアッセイの非限定的な例によって測定され得る:免疫染色法、免疫沈降法および免疫ブロット法、酵素結合免疫吸着アッセイ、核酸検出(例えば、サザンブロット分析、ノーザンブロット分析、ウェスタンブロット分析)、レポーター遺伝子の使用(例えば、タンパク質発現を観察するために目的の異種遺伝子と同じ方法でウイルスゲノムに組み込まれる、緑色蛍光タンパク質(GFP)もしくは強化緑色蛍光タンパク質(eGFP))、またはこれらの組み合わせ。これらのアッセイを実施する手順は、当該技術分野で周知である(例えば、テキスト全体が参考として本明細書で援用される、Flint,et al.,PRINCIPLES OF VIROLOGY,MOLECULAR BIOLOGY,PATHOGENESIS,AND CONTROL,2000,ASM Press pp 25−56を参照)。
【0054】
例えば、発現レベルは、培養中の細胞を本発明の組換えアデノウイルスに感染させ、続いて異種ヌクレオチド配列の遺伝子産物に特異的な抗体を使用して、例えばウェスタンブロット分析もしくはELISAによってタンパク質の発現のレベルを測定するか、または異種配列に特異的なプローブを使用して、例えばノーザンブロット分析によってRNA発現のレベルを測定することによって決定され得る。同様に、異種配列の発現レベルは、動物モデルを感染させ、この動物モデルで本発明の組換えウイルスの異種ヌクレオチド配列から発現されたタンパク質のレベルを測定することによって決定され得る。タンパク質レベルは、感染した動物から組織試料を採取し、次いで、組織試料を、異種配列の遺伝子産物に特異的な抗体を使用する、ウェスタンブロット分析もしくはELISAにかけることによって測定され得る。さらに、動物モデルを使用する場合、異種配列の遺伝子産物に対してこの動物によって産生される抗体の力価は、ELISAを含むがこれに限定されない、当業者に公知の任意の技術によって決定され得る。
【0055】
本発明によれば、大量の組換えアデノウイルスベクターを得るために、組換えアデノウイルスベクターは、例えば、細菌プラスミドまたはバクテリオファージの一部として微生物中で増殖され得る。
【0056】
5.4 組換えアデノウイルスの産生
本発明によれば、組換えアデノウイルス(好ましくは、組換え複製欠損アデノウイルス)は、組換えアデノウイルスベクターおよびヘルパーアデノウイルス核酸配列を使用して適切な細胞型を共トランスフェクト(co−transfect)することによって生成され得る。同時トランスフェクションは、DEAEデキストラン法(McCutchan and Pagano,1968)によって、リン酸カルシウム手順(Graham and van der Eb,1973)によって、またはマイクロインジェクション、リポフェクション、および電気穿孔を含むがこれらに限定されない当該技術分野で公知の任意の他の方法によって実施され得る。トランスフェクションで使用される組換えアデノウイルスベクターおよびヘルパーアデノウイルス核酸配列の量は、106細胞あたり約0.2〜10μgのDNAであるが、種々のDNA構築物および細胞型によって異なり得る。トランスフェクションに好適な細胞としては、HeLa細胞、293−D22細胞、A549細胞、HCT−15細胞、IGROV−1細胞、U87細胞、およびW162細胞が挙げられるがこれらに限定されないアデノウイルス感染が可能な任意の細胞株が挙げられる。
【0057】
あるいは、組換えアデノウイルス(好ましくは、組換え複製欠損アデノウイルス)を生成するために、組換えアデノウイルス補完細胞株は、組換えアデノウイルスベクターをトランスフェクションされることも可能である。特定の実施形態において、本発明は、細胞株中でのウイルスゲノムの複製を許容する条件下で、組換えアデノウイルスベクターでトランスフェクションされた、細胞株を補完する組換えアデノウイルスを培養することを含む組換えアデノウイルスの生成法を提供する。ここで、この細胞株は、以下を含む:(a)アデノウイルスE1Aタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む第1の核酸分子;(b)アデノウイルスE1B−55Kタンパク質(および好ましくは、アデノウイルスE1B−19Kタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含まない)をコードするヌクレオチド配列を含む第2の核酸分子;および(c)アデノウイルスE2Bポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列を含む第3の核酸分子。
【0058】
本発明の非限定的な実施形態において、E1A、E1B、およびE2Bポリメラーゼを発現するように操作され、かつ米国特許出願第60/674,488号および米国特許出願公開第2006/0270041号(その開示が参考として本明細書で援用される)に記載されるSL0006形質転換細胞株は、本発明の組換えアデノウイルスを増殖させるために使用され得る。SL0006細胞株は、ブダペスト条約に基づきアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC),10801 University Blvd.,Manassas,VA,20110−2209,USAに、ATCC受入番号PTA−6663で寄託されている。
【0059】
本発明の組換えアデノウイルスは、任意の適切な方法によって生成されることが可能であり、その方法の多くは当該技術分野で公知である(例えば、Berkner and Sharp,1983;Berkner and Sharp,1984;Brough,et al.,1992を参照)。本発明の好ましい実施において、組換えアデノウイルスは、ヒトアデノウイルス科に由来する。本発明の好ましい実施形態において、組換えアデノウイルスは、ヒトアデノウイルス血清型2型または5型に由来する。
【0060】
本発明の好ましい実施において、生成される組換えアデノウイルスは、E1Aコード領域、E1Bコード領域、およびE2Bポリメラーゼコード領域が部分欠失または全欠失(好ましくは全欠失)している、変異したゲノムを含む複製欠損アデノウイルスであり、かつE1領域に1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。
【0061】
本発明の別の実施形態において、組換えアデノウイルスは、複製欠損アデノウイルスであり、E1Aコード領域、E1Bコード領域、E2Bポリメラーゼコード領域、およびE3コード領域が部分欠失または全欠失(好ましくは全欠失)している、変異したゲノムを含み、かつ欠失したE1コード領域に1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。
【0062】
本発明の別の実施形態において、組換えアデノウイルスは、複製欠損アデノウイルスであり、E1Aコード領域、E1Bコード領域、E2Bポリメラーゼコード領域、およびE4コード領域が部分欠失または全欠失(好ましくは全欠失)している、変異したゲノムを含み、かつ欠失したE1コード領域に1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。
【0063】
本発明の別の実施形態において、組換えアデノウイルスは、複製欠損アデノウイルスであり、E1Aコード領域、E1Bコード領域、E2Bポリメラーゼコード領域、E3コード領域、およびE4コード領域が部分欠失または全欠失(好ましくは全欠失)している、変異したゲノムを含み、かつ欠失したE1コード領域に1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。
【0064】
本発明の好ましい組換えアデノウイルスは、組換えアデノウイルス産生細胞中にアデノウイルスDNA配列との相同性が低減したウイルスDNA配列を含み、それはウイルスゲノムが細胞DNAと組み換わってRCAを生成する可能性を低減させる。
【0065】
特定の実施形態において、組換えアデノウイルスの量は力価測定(titrate)される。培養物中のアデノウイルスの量を力価測定することは、当該技術分野で公知の技術によって実施され得る。特定の実施形態において、ウイルス粒子の濃度は、Shabram,et al.,1997bに記載されるリソースQアッセイによって決定される。本明細書で使用される「溶解(lysis)」という用語は、ウイルス含有細胞の破裂を指す。溶解は、当該技術分野で周知の種々の手段によって達成され得る。例えば、哺乳類細胞は、低圧力(100〜200psi差圧)条件下で、均質化によって、マイクロフルイダイゼーションによって、または従来の凍結融解方法によって、溶解され得る。外来性の遊離DNA/RNAは、DNAse/RNAseを使用する分解によって除去され得る。
【0066】
ウイルス含有細胞は凍結され得る。ウイルスは、ウイルス含有細胞および培地から採取され得る。一実施形態において、ウイルスは、ウイルス含有細胞および培地の両方から同時に採取される。特定の実施形態において、ウイルスを産生する細胞および培地は、例えば、米国特許第6,146,891号に記載されるように、ウイルス含有細胞を溶解すること、浄化しなければウイルスの精製を妨げる培地の細胞残屑を浄化することを同時に行う条件下で直交流精密ろ過にかけられる。
【0067】
本明細書で使用される「採取する」という用語は、培地から組換えアデノウイルス含有細胞を収集することを意味し、培地からの組換えアデノウイルスの収集も含み得る。これは、分画遠心分離またはクロマトグラフィー手段等の従来の方法によって達成され得る。この段階で、採取した細胞は貯蔵される場合もあれば、組換えウイルスを単離するために溶解または精製によってさらに処理される場合もある。貯蔵のためには、採取された細胞は、生理的pHでもしくはほぼそのpHで緩衝化され、−70℃で凍結されるべきである。
【0068】
ウイルスはまた、ウイルス含有細胞および培地から別々に採取され得る。ウイルス含有細胞は、分画遠心分離等の従来の方法によって培地から別々に収集され得る。採取した細胞は、凍結貯蔵される場合もあれば、ウイルスを遊離させるために溶解によってさらに処理される場合もある。ウイルスは、クロマトグラフィー手段によって培地から採取され得る。外来性の遊離DNA/RNAは、BENZONASE(American International Chemicals,Inc.)等のDNAse/RNAseを使用する分解によって除去され得る。
【0069】
ウイルスの採取物はさらに、例えば、米国特許第6,146,891号、同第6,544,769号、および同第6,783,983号に記載されるように、限外ろ過または接線流ろ過等の方法によってウイルスを濃縮するために処理され得る。
【0070】
本明細書で使用される場合、「回収する」という用語は、溶解した産生細胞から、および必要に応じて上清培地からの、組換えウイルス粒子の実質的に純粋な集団の単離を意味する。本発明の細胞培養物中で生成されるウイルス粒子は、当該技術分野で一般的に知られている任意の方法によって単離および精製され得る。クロマトグラフィー等の従来の精製技術、または示差密度勾配遠心法が使用され得る。例えば、ウイルス粒子は、塩化セシウム勾配精製;カラムもしくはバッチクロマトグラフィー;ジエチルアミノエチル(DEAE)クロマトグラフィー(Haruna,et al.,1961;Klemperer and Pereira,1959;Philipson,1960);ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー(米国特許出願公開第2002/0064860号);ならびにソフトゲル(例えばアガロース)を含む均質な架橋した多糖等、大きい「スルーポア」を有する灌流クロマトグラフィー樹脂を含む合成ポリマーに基づくマクロポーラスポリマー、タンパク質とより迅速に相互作用するように設計されたテンタクル(触手)を有する「テンタクル構造」吸収剤(例えばフラクトゲル)、およびソフトゲルの高容量と複合材料の剛性を利用する、剛性シェル中のソフトゲルに基づく物質(例えばセラミックハイパーD(登録商標)F)(Broschetti,1994;Rodrigues,1997)等の他の樹脂を使用するクロマトグラフィーによって精製され得る。本発明の好ましい実施において、ウイルスは、Shabram,et al.,米国特許第5,837,520号(1998年11月17日発行)に記載されるように、Huyghe,et al.,1995bのプロセスに実質的に従って、カラムクロマトグラフィーによって精製される。また、開示が参考として本明細書で援用される、米国特許第6,2661,823号を参照されたい。
【0071】
ウイルスを産生する組換えアデノウイルス産生細胞株は、当該技術分野で公知の任意の好適な容器で培養され得る。例えば、細胞は増殖され、感染した細胞はバイオジェネレーターまたはバイオリアクターで培養され得る。通常、「バイオジェネレーター」または「バイオリアクター」は、一般的に0.5リットル以上の容量のステンレス鋼製またはガラス製で、攪拌システム、CO2ガスの流れを注入するためのデバイス、および酸素添加デバイスを備える培養タンクを意味する。一般的に、これは、pH、溶存酸素、温度、タンク圧力または培養物の特定の生理化学的パラメータ(例えば、グルコースもしくはグルタミンの消費または乳酸イオンもしくはアンモニウムイオンの産生)等のバイオジェネレーターの内部パラメータを測定するプローブを備えている。pH、酸素、および温度のプローブは、これらのパラメータを永久に調節するバイオプロセッサに接続される。他の実施形態において、容器は、スピナーフラスコ、回転ボトル、振盪フラスコ、またはフラスコ内に機械的攪拌を提供するスターラーバーが付いたフラスコである。別の実施形態において、容器は、ウェ−ブバイオリアクター(WAVE Biotech[米国ニュージャージー州ブリッジウォーター])である。
【0072】
組換えアデノウイルスは、本発明の組換えアデノウイルス産生細胞株で増殖され得る。ウイルスは、細胞を培養し;必要に応じて細胞に新たな増殖培地を加え;細胞にウイルスを接種し:接種した細胞をインキュベートし;必要に応じて播種した細胞に新たな増殖培地を加え;および必要に応じて細胞および培地からウイルスを採取することによって生成され得る。一般的に、Shabram,et al.,1997bに記載されるように、リソースQカラムを使用する高性能液体クロマトグラフィー等の従来の方法によって決定した場合に、ウイルス粒子の濃度がプラトーに達し始めるときに、採取を実施する。
【0073】
本発明の組換えアデノウイルス産生細胞株で増殖させた組換えアデノウイルス(例えば、E1AとE1Bのコード領域の欠失を含み、かつ異種ヌクレオチド配列を含むアデノウイルス、あるいはE1A、E1B、およびE2Bのポリメラーゼコード領域の欠失を含み、かつ異種ヌクレオチド配列を含むアデノウイルス、E1A、E1B、E2B、およびE3のコード領域の欠失を含み、かつ異種ヌクレオチド配列を含むアデノウイルス、あるいはE1A、E1B、E2Bのポリメラーゼコード領域の欠失、E3とE4のコード領域の欠失を含み、かつ異種ヌクレオチド配列を含むアデノウイルス)により生成されるタンパク質も、単離および精製され得る。タンパク質、ポリペプチド、およびペプチドは、塩析沈澱もしくはアルコール沈澱、親和性クロマトグラフィー、分取ディスクゲル電気泳動、等電点電気泳動法、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相HPLC、ゲルろ過、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィーおよび分配クロマトグラフィー、ならびに向流分配を含むがこれらに限定されない標準方法によって精製され得る。このような精製方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、”Guide to Protein Purification”,Methods in Enzymology,Vol.182,M.Deutscher,Ed.1990,Academic Press,New York,NYに開示される。
【0074】
5.5 組換えアデノウイルスの有用性
本発明の組換えアデノウイルスは、目的のタンパク質、ポリペプチド、およびペプチドを発現させるためにインビトロで使用され得る。本発明の組換えアデノウイルスはまた、遺伝子治療でも使用され得る。組換えアデノウイルスは、インビボでのまたはエキソビボでの遺伝子治療で使用され得る。インビボでの遺伝子治療については、組換えアデノウイルスは、被験体に直接投与される。エキソビボでの遺伝子治療については、細胞は、インビトロで組換えアデノウイルスに感染させられ、次いで感染した細胞は、被験体に移植される。特定の実施形態において、組換えアデノウイルスは、インビボで直接投与され、目的のタンパク質が発現される。
【0075】
一実施形態において、本発明は、治療用タンパク質をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む本発明の組換えアデノウイルスベクターの治療有効量を被験体に投与することを含む癌の処置のための方法を含む。治療用タンパク質をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む本発明の組換えアデノウイルスベクターは、腫瘍内または膀胱内の投与を含むがこれらに限定されない当該技術分野で公知の任意の送達方法を使用して、任意の癌組織または器官に送達され得る。これらの方法によって処置され得る癌の例としては、膀胱および上気道、外陰部、頚部、膣もしくは気管支の癌腫;腹膜の局所転移性腫瘍;気管支肺胞癌腫;胸膜転移性癌腫;口腔および扁桃の癌腫;上咽頭、鼻部、喉頭、食道、胃、卵巣、前立腺、結腸および直腸、胆嚢、もしくは皮膚の癌腫;または黒色腫もしくは白血病等の血液癌が挙げられるが、これらに限定されない。一例として、限定するものではないが、インターフェロンα2bをコードする発現カセットを含む本発明の組換えアデノウイルスは、膀胱癌の処置において使用され得る。一実施形態において、図6に示される組換えアデノウイルスベクターは、膀胱癌を処置するために本明細書に記載される方法で使用される。
【0076】
治療用タンパク質をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む本発明の組換えアデノウイルスベクターの治療有効量の非限定的な例は、約1×108粒子/mL〜約1×1012粒子/mLの間、または約1×109粒子/mL〜約1×1011粒子/mLの間の範囲である。一実施形態において、図6に示される組換えアデノウイルスベクターは、膀胱癌の被験体に約1×108粒子/mL〜約1×1012粒子/mL、または約1×109粒子/mL〜約1×1011粒子/mLの範囲で投与される。
【0077】
別の実施形態において、細胞は、組換えアデノウイルスを感染させられ、得られた組換え細胞が、被験体に投与される。得られた組換え細胞は、当該技術分野で公知の種々の方法によって被験体に送達され得る。組換え体の血球(例えば、造血幹細胞または造血前駆細胞)は、好ましくは静脈内に投与される。使用上想定される細胞の量は、所望の効果、患者の状態等に依存し、当業者によって決定され得る。本発明によれば、組換えアデノウイルスに感染され得るいかなる細胞も、遺伝子治療のためのものとなり得る。非限定的な例としては、上皮細胞(例えば呼吸上皮細胞)、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋細胞、肝細胞、血球(Tリンパ球、Bリンパ球、単球、貪食細胞、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球等)、および種々の幹細胞もしくは前駆細胞(特に、例えば骨髄、臍帯血、末梢血、胎仔肝等から採取されるような、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞)が挙げられる。好ましい実施形態において、遺伝子治療のために使用される細胞は、被験体に対して自家である。組換え細胞が遺伝子治療で使用される実施形態において、組換えアデノウイルスのゲノムによってコードされるタンパク質は、細胞またはそれらの子孫によって発現されることが可能であり、この組換え細胞は、次いで、治療効果のためにインビボで投与される。
【0078】
本発明の組換えアデノウイルスは、被験体を免疫するために使用され得る。例えば、組換えアデノウイルスは、組換えアデノウイルスによってコードされる異種抗原に対する抗体を生成するために使用され得る。被験体を免疫するために使用されるべき組換えアデノウイルスの量および免疫スケジュールは、当該技術分野の熟練した医師によって決定され、かつ被験体の免疫応答および抗体力価を参照することによって投与される。
【0079】
組換えアデノウイルスによる免疫によって抗原に対して生成される抗体は、診断免疫アッセイ、受動免疫療法、および抗イディオタイプ抗体の生成で使用され得る。生成された抗体は、当該技術分野で公知の標準的な技術(例えば、免疫親和性クロマトグラフィー、遠心分離、沈澱等)によって単離され得、そして診断免疫アッセイで使用され得る。抗体はまた、治療および/または疾患進行をモニターするために使用され得る。数例を挙げれば、組換えアデノウイルス免疫アッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」免疫アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイ、および免疫電気泳動アッセイ等の技術を使用する競合アッセイ系および非競合アッセイ系を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で公知の任意の免疫アッセイ系がこの目的で使用され得る。
【0080】
本発明の組換えアデノウイルスは、受動免疫療法で使用する抗体を生成するために使用することが可能であり、この受動免疫療法では、異種抗原に対して予め形成された抗体の投与によって、被験体の短期的な保護が達成される。本発明の組換えアデノウイルスによって生成される抗体はまた、抗イディオタイプ抗体の生成においても使用され得る。そして次に、抗イディオタイプ抗体は、最初の抗原に結合する抗体の亜集団を生成するために、免疫で使用され得る(Jerne,1974;Jerne,et al.,1982)。
【0081】
ある実施形態において、組換えアデノウイルスを使用した免疫によって産生される抗体は、改変されてから被験体に投与される。例えば、抗体はヒト化されおよび/または親和性が成熟され得る。
【0082】
5.6 組換えアデノウイルスを投与する組成物および方法
本発明は、本発明の方法によって生成される組換えアデノウイルス(好ましくは、複製欠損組換えアデノウイルス)を含む組成物を包含する。好ましい実施形態において、組成物は、被験体への投与に好適な薬学的組成物である。
【0083】
本発明の薬学的組成物は、有効量の組換えアデノウイルス、および薬学的に許容されるキャリアを含む。特定の実施形態において、「薬学的に許容される」という用語は、動物、より具体的にはヒトでの使用を連邦政府もしくは州政府の規制機関により承認されるか、または米国薬局方もしくは、他の一般的に認識される薬局方に記載されることを意味する。「キャリア」という用語は、薬学的組成物と共に投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはベヒクルを指す。特に注射可能な溶液に関して、生理食塩水およびブドウ糖水溶液およびグリセリン水溶液も、液体キャリアとして使用され得る。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレ−ト、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤等の形態を採り得る。これらの組成物は、坐剤として製剤化され得る。経口製剤は、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的キャリアを含み得る。適切な薬学的キャリアの例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載される。このような組成物は、患者への投与に適切な形態を提供するために、好適な量のキャリアと共に有効量の組換えアデノウイルス(好ましくは精製された形で)を含有する。処方物は、投与様式に適合するべきである。
【0084】
特定の障害または病態の処置に効果的である本発明の薬学的組成物の量は、障害または病態の性質に依存し、かつ標準的な臨床技術によって決定され得る。さらに、インビトロでのアッセイは、最適な用量範囲を同定するのに役立てるために、必要に応じて使用され得る。処方物で使用される正確な用量はまた、投与経路、疾患または障害の重篤度に依存し、実施者の判断および各患者の状況によって決定されるべきである。有効用量は、インビトロまたは動物モデルでの試験系から導かれる用量応答曲線から外挿され得る。
【0085】
治療用タンパク質をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む本発明の組換えアデノウイルスベクターの治療有効量の非限定的な例は、約1×108粒子/mL〜約1×1012粒子/mLの間、または約1×109粒子/mL〜約1×1011粒子/mLの間の範囲である。
【0086】
一例として、限定するものではないが、被験体における表在性膀胱癌の処置のために、約100mLの容積中のインターフェロンα2bをコードする約1×1010粒子/mL〜約1×1012粒子/mL、最も好ましくは、約1×1011粒子/mLの用量を含む処置コースが、約1時間にわたって膀胱内に滴下注入される。一例として、限定するものではないが、別の処置コースは、約100mL容積中のインターフェロンα2bをコードする1×1010粒子/mL〜約1×1012粒子/mL、最も好ましくは、約1×1011粒子/mLの用量の約1時間にわたる膀胱内滴下注入、その後の第1の用量から7日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内または連日の実質的に同等の第2の用量を含み得る。各処置コースは、疾患の進行経過によって、反復可能である。膀胱癌の処置のために膀胱内に投与される組換えベクターの場合、処置コースの間に少なくとも14日間、より好ましくは約30日間、最も好ましくは約90日間の間隔を置くと、最適なインターフェロン遺伝子発現が通常観察される。
【0087】
組成物の投与方法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口の経路が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の薬学的組成物は、任意の簡便な経路によって、例えば、注入もしくはボーラス注射によって、上皮表層もしくは粘膜表層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸管粘膜等)を通した吸収によって投与され得、そして他の生物活性薬剤と共に投与され得る。投与は、全身または局所であり得る。さらに、本発明の薬学的組成物を任意の好適な経路により肺に導入することが望ましいこともある。経肺投与は、例えば、吸入器もしくは噴霧器、およびエアゾール化剤を使用する処方の使用によって使用され得る。
【0088】
特定の実施形態において、治療を必要とする領域に本発明の薬学的組成物を局所的に投与することが望ましいこともある。これは、例えば、外科手術時の局所注入、局所適用(例えば、外科手術後の創傷被覆材と併せて)により、注射により、カテーテルにより、坐剤により、またはインプラントにより達成されることが可能であるがこれらに限定されず、このインプラントは、シアラスティック膜等の膜、または繊維を含む多孔性、非多孔性、またはゼラチン質の材料である。一実施形態において、投与は、悪性腫瘍または腫瘍性組織もしくは前腫瘍性組織の部位(または前部位)での直接注射により行われ得る。別の実施形態において、投与は膀胱内投与であり得る。
【0089】
別の実施形態において、薬学的組成物は、制御放出系で送達され得る。一実施形態においては、ポンプが使用され得る(Buchwald,et al.,1980;Langer,1983;Saudek,et al.,1989;Sefton,1987)。別の実施形態においては、ポリマー材料が使用され得る(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984);(Langer and Peppas,1983);(During,et al.,1989;Howard,et al.,1989;Levy,et al.,1985を参照)。さらに別の実施形態において、制御放出系は、組成物の標的(すなわち肺)のすぐ近くに配置されることが可能であり、従って、全身用量のうちの一部のみが必要となる(例えば、Goodson,1984,in Medical Applications of Controlled Release,supra,vol.2,pp.115−138を参照)。他の制御放出系は、Langer,1990によるレビューで考察される。
【0090】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、本発明の方法で生成される組換えアデノウイルス(好ましくは、複製欠損組換えアデノウイルス)および好適な賦形剤を含む、ワクチンまたは免疫組成物である。ワクチン組成物を導入するために多数の方法が使用され得、これらの方法としては、鼻腔内、気管内、口腔、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、および皮下の経路が挙げられるが、これらに限定されない。アデノウイルスの自然な感染経路を介して組換えアデノウイルスワクチン組成物を導入することが好ましいこともある。
【0091】
治療用タンパク質をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む本発明の組換えアデノウイルスベクターの治療有効量の非限定的な例は、約1×108粒子/mL〜約1×1012粒子/mLの間、または約1×109粒子/mL〜約1×1011粒子/mLの間の範囲である。
【0092】
いくつかの実施形態において、例えばインターフェロン等の治療用タンパク質をコードする核酸の標的細胞(例えば癌細胞等)への移入を促進する促進剤と併せて組換えアデノウイルスベクターを投与することが望ましいこともある。このような送達促進剤の例としては、洗浄剤、アルコール、グリコール、界面活性物質、胆汁酸塩、ヘパリン拮抗薬、シクロオキシゲナーゼ阻害薬、高張食塩液、および酢酸塩が挙げられる。アルコールとしては、例えば、エタノール、N−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、アセチルアルコール等の脂肪族アルコールが挙げられる。グリコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ならびにグリセロールおよびチオグリセロール等の他の低分子量グリコールが挙げられる。酢酸、グルコン酸、および酢酸ナトリウム等の酢酸塩は、送達促進剤のさらなる例である。1M NaClのような高張食塩液も、送達促進剤の例である。タウロコレート、タウロデオキシコール酸ナトリウム、デオキシコレート、ケノデオキシレート、グリココール酸、グリコケノデオキシコール酸等の胆汁酸塩、および硝酸銀等の他の収斂薬が使用され得る。硫酸プロタミン等の第4級アミンのようなヘパリン拮抗薬も使用され得る。遺伝子導入を促進させるために、陰イオン性、陽イオン性、双性イオン性、および非イオン性の洗浄剤も使用され得る。典型的な洗浄剤としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:タウロコレート、デオキシコレート、タウロデオキシコレート、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、Zwittertgent 3−14洗浄剤、CHAPS (3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオール]−1−プロパンスルホン−エート水和物)、Big CHAP、Deoxy Big CHAP、Triton−X−100洗浄剤、C12E8、オクチル−B−D−グルコピラノシド、PLURONIC−F68洗浄剤、Tween 20洗浄剤、およびTWEEN 80洗浄剤(CalBiochem Biochemicals)。特に好ましい促進剤および方法は、それぞれ教示内容全体が参考として本明細書で援用される、Engler,et al.,米国特許第6,312,681号(2001年11月6日発行)、Engler,et al.,米国特許第6,165,779号(2000年12月26日発行)、およびEngler,et al.,米国特許第6,392,069号(2002年5月21日発行)に記載される。本発明の実施に有用な特に好ましい促進剤は、米国特許第6,392,069号の式IのSyn3と呼ばれる化合物である。本発明の実施に有用なさらなる促進剤としては、国際特許公開第2004/108088号の化学式II、III、IV、およびVの化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩を含むが、これらに限定されない。一例として、限定するものではないが、促進剤はベクターと同時に投与され得るか、またはベクターの投与前に投与され得る。
【0093】
本発明の組成物および方法は、単独で、または従来の化学療法薬もしくは処置レジメンと併用して実施され得る。このような化学療法薬の例としては、プリン合成の阻害剤(例えば、ペントスタチン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、メトトレキサート)もしくはピリミジン合成の阻害剤(例えば、パラ、アザルビン(azarbine))、リボヌクレオチドのデオキシリボヌクレオチドへの転換の阻害剤(例えば、ヒドロキシ尿素)、dTMP合成の阻害剤(5−フルオロウラシル)、DNA損傷剤(例えば、放射線、ブレオマイシン、エトポシド、テニポシド、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、アルキル化剤、マイトマイシン、シスプラチン、プロカルバジン)、ならびに微小管機能の阻害剤(例えば、ビンカアルカロイドおよびコルヒチン)が挙げられる。化学療法の処置レジメンは、主として放射線治療などの腫瘍細胞を切断するよう設計された非化学的手順を指す。これらの化学療法薬は、別々に投与される場合もあれば、同時投与のために本発明の処方物に含まれる場合もある。本発明はまた、表在性膀胱癌の場合にBCG等の従来の免疫療法の処置レジメンと併用して実施され得る。本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が限定されないものとする。実際に、本明細書に記載される改変に加えて、本発明の種々の改変が、前述の説明から当業者に明らかになるであろう。このような改変は、添付の特許請求の範囲に含まれるものとして意図される。
【0094】
特許、特許出願、刊行物、製品説明、およびプロトコールは、本出願全体を通して引用され、これらの開示内容は、全体が参考として本明細書で援用される。
【0095】
【表1−1】
【0096】
【表1−2】
【0097】
【表1−3】
【0098】
【表1−4】
【0099】
【表1−5】
【0100】
【表1−6】
【0101】
【表1−7】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図6I】
【図6J】
【図6K】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図6I】
【図6J】
【図6K】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−16359(P2012−16359A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−231172(P2011−231172)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【分割の表示】特願2008−545678(P2008−545678)の分割
【原出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(399025284)カンジ,インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231172(P2011−231172)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【分割の表示】特願2008−545678(P2008−545678)の分割
【原出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(399025284)カンジ,インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】
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