説明

ECG記録装置及びその利用方法

【課題】安価に大量生産することができ、病院、診療所又は他のECGを設備した医療施設の外部での大規模利用を可能にする改善された使い易い可搬型非歩行型の触覚感知式ECG記録器を提供する。
【解決手段】装置(100)は、ECG記録時に患者の両手(118)と係合可能な一対の隔設された触覚感知式電極(117)及びECG記録の開始状態及び終了状態を知らせる少なくとも1個のインジケータ灯(119)を設けた台(104)に蝶番式で連結されたカバー(102)を含んでいる。回路(124)が、電極(117)及び状態インジケータ灯(119)に電気的に接続されており、電極(117)に触れた患者からのECG信号を受け取って記憶するプロセッサ(126)及びメモリ(127)を含んでいる。カバー(102)は、記録装置を折り畳んだ閉じた配置にして、記憶されたECG信号を遡及的に解析するための場所へ返却するための予め印刷された郵送情報(107)を掲げた外側面(105)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、診断心臓病学の分野に関し、さらに具体的には、診察室、診療所又は病院から遠隔の場所において患者の心電図(ECG)データに関わる情報を患者から収集することが可能な可搬型で非侵襲型の記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓の内部の電気的不安定性の結果として生ずる失神(突然の意識不明)及び不整脈(異常律動)は、生体の患者において診断医が観察するのに特に問題がある。これらの事象は、持続時間が短く、突然発症し、また予兆が殆どないまま極く稀に起こる場合がある。検出又は治療を行なわないで不整脈が長く続くほど深刻な恒久的損傷の可能性が高まって心不全及び発作の可能性を生ずるため、不整脈の早期診断は極めて重要である。延長QT症候群(LQTS)、ウォルフ−パーキンソン−ホワイト症候群及びブルガダ症候群を含めた幾つかの不整脈関連の疾患は遺伝的なものであり、またLQTSは、幾つかの医薬品を用いることにより後天的に発症する場合もある。不整脈の問題を診断するための臨床的に重要な方法は、心臓の電気的活動を監視する心電図(ECG)を利用するものである。典型的には、電気誘導(リード)を体表の特定の場所に載置して、心臓の脱分極及び分極から生ずる電気的活動を各々のリードによって記録する。1回の心サイクルの間に、心電図はP波、QRSコンプレクス及びT波で構成された特徴的な波形を発生し、これらの波を慎重に解析して、診断を下したり、薬物療法のような治療の効力を評価したりする。
【0003】
一旦、初期ECGが現場設置の非歩行型(non-ambulatory)心電計を有する診察室、診療所又は他の医療施設で取得されれば、ECG記録器は一般的には、患者からの心電計データの可搬型の収集を行なうように設計される。続いて、これらの可搬型装置による記録を用いて、患者の日常生活の活動、又は感情的若しくは身体的に高揚した状態によって生ずる心臓の電気的活動の異常を検出する。かかる記録装置には2種類の形式がある。第一の形式は、収集されたデータを収集段階の完了後に解析する遡及型記録システムである。第二の形式は、データを記録しながら解析する実時間システムである。いずれの形式でも、ECG信号は典型的には、電極の間に取り付けられて患者の体表の様々な点の間を走る複数のリード、及び患者の首、ウェスト又は手首の周囲に装着される付設のユニットを介して受信される。これら可搬型歩行可能型モニタの大半は、嵩張っていて患者の日常生活の支障になる。患者の処方遵守は必ずしも信頼に足らず、利用時の一般的な問題となっている。また、身体に装着されるリード形式の可搬型モニタの問題として、付随する皮膚刺激が堪え難いことがある。シャワー浴、入浴又はその他の水を掛ける動作には取り外しが必要とされ得る。このようなリード形式依存のモニタからの結果は、患者の体表での様々な多数の電極の配置に依存して区々になる場合もある。
【特許文献1】米国特許第6244462号
【特許文献2】米国特許第6701183号
【特許文献1】米国特許第6730025号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、リード及び電極を体表に配置することを必ずしも必要としないで、患者の親指又は両手からの触覚感知式で動作する可搬型で非歩行型のECG監視及び記録装置が入手可能となっている。これらの最近の可搬型非歩行型装置は、実時間の結果を表示して、収集されたデータを他の場所へ転送する長期連続利用向けのモニタ/記録器として患者によって保持されるように設計されている。かかるECG結果表示設計は、従来技術を凌ぐ利点を提供するが、製造及び保守が高価格化する傾向にあり、従って大量利用に向けたものではない。実時間の結果の表示を必要とせず、手頃で、限定用途向けに設計され、収集されたECGデータの解析のために返却可能であり、使い捨て式のさらに基本的な形式の可搬型装置を考えることも重要である。
【0005】
安価で大人数の患者に直ちに需要のある形式の改善された可搬型非歩行型の触覚感知式ECGモニタ及び記録器の必要性の好例となる一つの筋書きは、新たな医薬品の投与に関わるものである。周知の通り、新薬は、化合物発見から最終的な認可まで厳格な評価工程を経るものであり、多年にわたる試験及び何百万ドルもの投資を必要とする。典型的には、新薬は、第I相、第II相及び第III相の臨床試験を通じて累進的なスクリーニングで評価される。薬物の第III相の承認の後にも、責任の関係から市販後調査とも呼ばれる第IV相の試験を実行する要望及び/又は必要が伴う。これら第IV相の試験は、新薬が第III相で殆ど問題点を呈さなくても、多数の患者に投与した場合に問題が発見されないという保証はないため必要とされる。この新薬追跡調査の極めて重要な要素は、主に薬物誘発の延長QT症候群(LQTS)の存在を探すために行なわれるECGの記録である。延長QT症候群は、心臓の電気系の異常を齎し、罹患者によっては極端に速い心律動を生じ易くなって突然の意識不明や急死を招き得る。延長QT症候群との名称は、ECGで測定されるQT区間に由来する。今日、試験を実行するためには、投薬を受けた患者は、実質的に大型のスタンドアロン型心電計を備えた診察室、診療所又は施設を再び訪れる必要がある。このことは、極めて時間浪費的であり、また数万人又は場合によっては数十万人に上る薬物監視下にある患者群では実行は高経費であり現実的でない。
【0006】
LQTSに加えて、致命的な不整脈を招き得る遺伝的条件又は継承条件である先天的LQTSを監視する関心も存在する。これらの不整脈はしばしば、ティーンエイジャーの子供たちが肉体を行使する(例えば水泳又はランニングを含む学校での運動競技を行なう)ときに生じ、しばしば致命的である。今日には利用可能でない態様で、若年のうちに心臓の問題を探すために運動選手及び他の生徒の極めて安価な集団スクリーニングを可能にする改善された可搬型ECG記録器が必要とされる。
【0007】
加えて、今日、各病院では感染制御の問題が存在している。MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)のような深刻な感染症の罹患者がECGを取得することを必要とする場合がある。現在、病院の心電計を用いて記録が行なわれている。しかしながら、記録の後には、記録装置をさらに他に用いる前に殺菌しなければならない。このことは、強力な洗剤を用いた細部の清浄化を必要とし、ECGリードを損傷したり、最終的に破壊したりする可能性がある。感染制御の問題に対処する代替的な可搬型ECG設計を考慮することが重要である。
【0008】
従って、安価に大量生産することができ、病院、診療所又は他のECGを設備した医療施設の外部での大規模利用を可能にする改善された使い易い可搬型で非歩行型の触覚感知式ECG記録器を提供することが望ましい。かかる可搬型ECG記録器は、特定の処方箋を受け取った患者への配布のための個人向け設計が可能であると共に、汎用的なスクリーニング目的に用いられる万人向け設計が可能でなければならない。また、1又は複数のECG記録を実際に表示するのではなく1又は複数のECG記録を読み取って記憶し、検討及び解析のために中央の研究所に容易に返却することのできる可搬型の軽量ECG装置を提供することが望ましい。理想的には、かかる設計は、限定用途を有し、一旦、収集されたECGデータの解釈を行なう施設へ返却されたら廃棄可能であるものとする。加えて、このECG記録器は、洗浄及び殺菌の必要なしに感染リスクの高い環境でも安全に用いられるように設計されていなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、心臓の問題を診断するのに用いられる可搬型限定用途心電図(ECG)記録装置に関するものである。この装置は、折り畳んだ閉じた配置と折り畳みを開いたECG記録動作配置との間で可動である。記録装置は、台に蝶番式で連結されたカバーを含んでいる。カバー及び台の各々が、動作状態にあるときに患者側に露出される内側面を有する。カバーの内側面には、使用説明及び問診票が設けられている。台の内側面には、ECG記録時に患者の両手に係合可能である一対の隔設された触覚感知式電極が設けられている。台の内側面はさらに、ECG記録の開始状態及び終了状態を知らせる少なくとも1個のインジケータ灯を含んでいる。回路が、電極及び状態インジケータ灯に電気的に接続されており、電極に触れている患者からECG信号を受け取って記憶するためのプロセッサ及びメモリを含んでいる。記録されたECG信号は、記憶されたECG信号を遡及的に解析するために遠隔の場所へ送られる。
【0010】
好適実施形態では、カバーの内側面は、あらゆる患者にとって普遍的に理解可能である図解式使用説明を含んでいる。カバーの内側面はさらに、所望の言語で詳細なテキスト式使用説明を印刷した第一のカードと、患者からの健康情報及び人口統計情報を与える第二のカードとを収容して保持するホルダを含んでいる。台の内側面には、ECG記録中には両手を電極に保ち、ECG記録の完了に続いて問診票に記入することを患者に思い出させる図解式情報が掲げられている。上述の回路は好ましくは、台の内部に保持されるカードとして形成されている。回路はさらに、バッテリ、電極に接続されたリード、ユーザ・インタフェイス、及び取得インタフェイスを含んでおり、これら全てがプロセッサ及びメモリに相互接続されている。回路カードは、記憶されたECG信号を読み取る読み取りシステムに接続されるように構成されている内部コネクタを含んでいてよい。記憶されたECG信号は、所望があれば無線読み取りシステム等によって読み取られるように設計されている。台はまた、回路と連絡している入力コネクタを含んでいてよく、患者の身体の部分に配置されている電極に固定された少なくとも1本の補足的リードを収容するように構成されている。加えて、電極はまた、通信手段として用いられてもよい。台はまた、患者の両大腿部と係合可能な付加的な一対の隔設された触覚感知式電極が設けられている外側面を有していてもよい。台の内側面には、患者の血液標本を収納するための密封可能な血液受けを画定する凹みが形成されていてよい。好ましくは、記録装置は、患者に処方された投薬と共に提供される。この場合には、回路は、特定の処方薬に従って予めプログラムされている。カバーの外側面はまた、特定の患者を識別するバー・コードを含んでいる。カバーの外側面はさらに、装置を返却するための郵送料金前納印及び予め印刷された郵送情報を含んでいる。
【0011】
本発明はまた、心臓の問題についての患者の限定期間監視の方法を思量している。この方法は、折り畳んだ閉じた配置と折り畳みを開いた動作配置との間で可動である可搬型心電図(ECG)装置を設けるステップであって、装置は、台に蝶番式で連結されたカバーを有し、台は、少なくとも一対の隔設された電極、少なくとも1個の状態インジケータ灯、並びに電極及びインジケータ灯に接続されており、電極が触れられているときにECG信号を記録して記憶する給電されて働く回路を有している、設けるステップと、ECG記録が必要とされていることを意味する状態インジケータ灯によって、装置が折り畳みを開いた動作配置にあるときに患者に開始状態を示すステップと、患者の両手で電極に触れるステップと、患者が電極に触れているときにECG信号を収集して記憶するステップと、ECG信号が記録され終わったことを意味する状態インジケータ灯によって、患者に終了状態を示すステップと、記憶されたECG信号を解析のために遠隔の場所へ転送するステップとを含んでいる。
【0012】
この方法はさらに、記憶されたECG信号の解析に続いて装置を処分するステップを含んでいる。この方法において、装置にはさらに、患者の両大腿部と係合可能な付加的な一対の隔設された電極が設けられていてよく、電極に触れるステップは、両大腿部で触れるステップを含んでいる。この方法はまた、遠隔の場所への装置の返却に続いて、記憶されたECG信号の結果を患者に通知するステップを含んでいる。
【0013】
本発明のもう一つの観点では、特定の処方薬の服用と組み合わせて行なわれる心臓の問題についての患者の限定期間監視の方法を提供する。この方法は、処方薬が投与されるときに、患者に可搬型特定個人向け心電図(ECG)装置を提供するステップであって、装置は折り畳んだ閉じた配置と折り畳みを開いた動作配置との間で可動であり、装置は、台に蝶番式で連結されたカバーを有し、台は、少なくとも一対の隔設された電極、少なくとも1個の状態インジケータ灯、並びに電極及びインジケータ灯に接続されており、電極が触れられているときにECG信号を記録して記憶する給電されて働く回路を有し、回路は、特定の処方薬に従ってプログラムされている、提供するステップと、ECG記録が必要とされていることを意味する状態インジケータ灯によって、装置が折り畳みを開いた動作配置にあるときに患者に開始状態を示すステップと、患者の両手で電極に触れるステップと、患者が電極に触れているときにECG信号を収集して記憶するステップと、ECG信号が記録され終わったことを意味する状態インジケータ灯によって、患者に終了状態を示すステップと、記憶されたECG信号を解析のために遠隔の場所へ転送するステップとを含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図面は、本発明を実施するのに現状で思量される最良の態様を示す。
【0015】
図面について説明する。図1は、好ましくは診察室、診療所又は他のECGを設備した施設から遠隔の場所で、患者によってECG波形を監視して記録するのに用いられる可搬型、非歩行型で非侵襲型の心電図(ECG)記録装置100を示す。記録装置100は、薬局又は他の系列小売店等で、任意の適当なクロージャ部材10によって常態では折り畳んだ状態に保たれたパッケージとして供給される。記録装置100は、平坦な台104に、背面骨材103等によって蝶番式で連結された平坦なカバー102を含んでいる。カバー102及び台104の両方が、ボール紙、発泡材又はプラスチックのような軽量で剛性の材料で構築されており、同様の寸法及び形状に形成されている。好適実施形態では、カバー102及び台104は両方とも矩形であり、例示的な幅は8インチで長さは11インチである。折り畳んだ状態では、パッケージの厚みは典型的には、1インチ未満である。
【0016】
さらに理解されるように、記録装置100は封筒に入れずに郵送できる郵便物として設計されており、カバー102は、返却先住所106、郵送先住所107、郵便料金納付済み印108、及び装置100を受け取った患者を識別するのに用いることのできるバーコード109を掲げた外側面105を有する。図3は、カバー102の外側面105をさらに詳細に示しており、一旦、クロージャ101が開かれて装置100が折り畳みを開いた動作状態になったときの記録装置100の底面図を示している。
【0017】
図2に示すように、ECG記録装置100が折り畳みを開いた状態になったら、患者は、背面骨材103で分割された折り畳まれていた背カバー102の内側面110と、台104の内側面111とを見る。
【0018】
内側面110の一方の側すなわち左側には、患者に装置100の使用法を案内する一組の普遍的に理解可能な図解式使用説明112が掲げられている。内側面110の反対側すなわち右側は、閉じた各辺114によって全体的に画定されているポケット又はホルダ113を有する。ホルダ113は典型的には、上端が開いており、フィードバック・カード又は問診票115、及び装置100を操作するためのさらに詳細な説明カード116を収容して保持している。ホルダ113の上端が密閉されていてもよい。フィードバック・カード115(図4)は具体的には、記録装置100の供給と共に患者に処方された投薬に基づいて患者に回答させる一連の健康に関する質問及び人口統計的質問を備えるように設計されている。詳細な説明カード116(図5)は、図解式使用説明112をさらに正確に説明したものであり、特定の患者に特有の言語で書かれていてよい。
【0019】
台104の内側面111には、一対の隔設された触覚感知式乾式電極117が設けられている。これらの電極117は、ECG読み取り時には患者の左右の手118の4本ずつの指によって触れられる。少なくとも1個の状態インジケータ灯119が内側面111に含まれており、特定のECG読み取りの状態についての普遍的に認識可能な指標を患者に与える。図示の例では、多数の別個の読み取りが必要とされることを意味するような幾つかのインジケータ灯119が存在している。好適実施形態では、各々のインジケータ灯119は、読み取り時に色を変化させる。例えば、読み取りの初回について「5」に示されているインジケータ灯119は、ECG読み取りを行なう準備ができたことを示す緑を示す。患者の両手118は電極117に置かれて、灯119が初回のECG読み取りの終了を示す赤に変わるまでこの位置に保たれる。残りのECG読み取りについての灯119も同じく動作して、説明カード116、及び/又は薬物処方に添えられた患者に対する具体的な指示に含まれるさらに詳細な情報に従って、次回の読み取りを行なうのは何時になるかを患者に指示する。図解式説明120が、内側面111の電極117と電極117との間に掲げられており、電極117から両手118を上げてよい時刻に特定のインジケータ灯119が赤になるまで、電極117に両手118を保っておくことを患者に思い出させる。内側面111に掲げられたさらにもう一つの図解式説明121は、ECG読み取りの完了後に問診票又はフィードバック・カード115に記入するように患者に指示するリマインダ灯122を含んでいてよい。
【0020】
図1に最も分かり易く示されているように、台104の内部には、電力、電極117及び灯119への所要の相互接続、並びにECGデータを記録するのに十分なメモリを提供する回収可能型回路カード124を収容して保持するスロット123が形成されている。回路カードは好適実施形態では、特定の患者及び当該患者の薬物療法についてプログラムされている。回路カード124は、患者のECG読み取り(1又は複数)を解析する特定の場所に郵便又は同様の運搬者によって装置が返却された後に、装置100から取り外すことが可能である。
【0021】
図6は、回路カード124のブロック図を示しており、回路カード124は、メモリ127を有しておりユーザ・インタフェイス(UI)128と連絡する中央処理ユニット(CPU)126に相互接続されたバッテリのような電源125を含んでいる。右手リード129及び左手リード130が電極117に接続されている。電極117を介して患者から送られる全ての電気的データが、ディジタル情報へ変換されて、要素125〜130に電気的に連絡している取得インタフェイス(取得I/F)131によってメモリ127に記憶される。回路カード124にはまた、内部コネクタ132が選択随意で設けられていてよく、一旦、装置が中央の解析場所へ返却されたら、内部コネクタ132において読み取りシステムを装置100に接続することができる。このコネクタ132はさらに、所望のECG読み取り数をプログラムしたり、又は人口統計情報若しくは追跡情報のような追加情報をダウンロードしたりするモードで用いることもできる。理想的には、このコネクタ132は、装置100への実際の物理的接続を要求する必要がなくなるように、「近距離通信」のような技術を具現化していてもよい。物理的接続の代わりに、収集されたECGデータは、IF装置又はRF装置等によって読み出すことができる。感染制御の関係では、収集されたECGデータを収めた装置100は、殺菌プラスチック袋に封入した後に、IF装置又はRF装置を用いて、保護された装置100を走査することにより安全に読み取ることができる。
【0022】
装置100の拡張版では、台104の外側面133が、装置100を患者の膝に置いたときに患者の左右の両大腿部の上部に接触して付加的な読み取りを供給するようにした付加的な一対の隔設された乾式触覚感知式電極134を含んでいる。装置100が代替的に患者の両大腿部の間に配置され得るように、電極134は台104の両側面(点線で示す)まで横方向に延在していてもよい。この拡張版では、電極134は、回路カード124に結合される付加的なリードを有する。
【0023】
さらに他の選択随意の考慮点として、密封可能な血液受けのための小さい凹み135を、指から血液を抜き取る小さいピン(図示されていない)と共に設けるものがある。かかる特徴によって、不整脈異常を診断するのに有用な遺伝子試験を可能にすることができる。加えて、回路カード124へのさらにもう1個のコネクタ点を設けるために、台104の内部にさらにもう1個の入力コネクタ136を設けてもよく、この場合には、付加的な使い捨てリード(図示されていない)を設けたケーブルを所望に応じて取り付けて、患者の身体に取り付けることができる。さらに多くのリードを設けると、ブルガダ症候群のようなさらに多くの形式の不整脈状態のスクリーニングが可能になる。さらに進んだ応用では、検査プロトコルに基づいてECG読み取りを行なう時刻が来たときにブザー音を鳴らすように装置100を予めプログラムすることができる。このためには、ブザー又はスピーカのような小型の音声再生装置を台104に挿入することが必要である。
【0024】
本発明はさらに、装置100を返送する必要なしに、中央受け取り拠点に戻すように記録されたECGデータを伝送することを思量している。従って、さらに他の選択随意の考慮点としては、台104に、音声結合型の伝送を可能にするスピーカ137を設けることがある。この形態では、利用者は自分の電話から電話番号をダイヤルし、スピーカ137の上に電話の送話口を配置して、記録されたデータが通常の音声周波数で変調されて中央受け取り拠点において判断されるようにする。もう一つの形態では、電話用ジャックを付加して、装置100をジャックに挿すと、装置が予めプログラムされている電話番号にダイヤルして中央拠点に戻すようにディジタル伝送を可能にすることが想到される。代替的には、インターネットを介して予めプログラムされている中央拠点に戻すようにECGデータをネットワーク転送することを可能にするネットワーク接続を加えることもできる。さらに、データは、装置100においてデータの伝送時に選択随意で暗号化され得る。
【0025】
基本的な装置100の好ましい用法では、薬局等から処方箋を受け取った患者は、患者の薬物療法に基づき定められた間隔で所定の一組のECG読み取りを要求するように予めプログラムされている可搬型ECG記録装置100を同時に与えられる。装置100は、家庭で、又は診察室、診療所若しくは心電計を備えたその他施設から遠隔のその他の場所で、患者によって用いられるようになっている。装置100を開封すると、患者はフィードバック・カード115及び詳細使用説明カード116をホルダ113から取り出して検討する。利用者用説明書は、参照番号112において図解でまとめられており、常に患者の目に触れる。ECGを採取する準備ができたら、患者は台104の底部を自分の膝の上に配置して、電極117に両手118の指を配置する。状態インジケータ灯(1又は複数)119は、読み取りが終わるまで緑を示し、赤に変わる。これにより、患者に電極117から両手118を離してフィードバック・カード115に記入するように促す。記入したカード115はホルダ113に再び配置される。後の所要の全ての読み取りが完了したら、記録装置100全体をクロージャ部材101によって閉じる。次いで、装置100全体は、カバー102の外側面105が封筒に入れずに郵送できる郵便物の設計となっているので、国内郵便等によって中央の解析場所へ返却される。患者には、装置100が受け取られたことを自動的に通知することができる。次いで、回路カード124に記憶されたECGデータは、読み取られて解析されて、患者及び医師に、結果についての助言を与える。一旦、ECGデータが読み取られたら、装置100全体を廃棄する。
【0026】
代替的には、又は以上に加えて、ECGデータを読み取って装置100をプログラムするシステムはまた、ECG記録を実行することを患者に思い出させるように適当な日数を置いて患者を呼び出すようにプログラムされていてもよい。この選択肢では、患者は、セキュリティを完備したウェブサイトに登録する必要がある。ウェブサイトに登録すると、患者は人口統計情報及び健康に関する情報、並びにフィードバック・カード115に書かれた質問への回答を入力することが可能になる。
【0027】
付加的なリード又は他の改変を有する装置100は、改変を説明した使用説明カード116を有し得る。
【0028】
処方薬と共に用いられるものとしてECG記録装置100を記載したが、装置は入手し易いものであるため、装置を小売店で販売して個々の消費者がECGを取得することを可能にし、このECGを用いてアレルギーによって生ずるもののような他の問題についてのスクリーニングを行なってもよいことを理解されたい。装置100は、スクリーニングを可能にするように学校及び地域に提供することができ、また保険評価及び他の応用にも有用であり得る。
【0029】
このように、本発明は、可搬型、非歩行型で非侵襲型の使い捨て式ECG記録装置100を提供し、装置100は特に、処方された薬物での療法を受けている患者に対し単純な態様で与えられてこの患者によって操作されるように設計され得る。この装置は、大規模利用のために極めて低経費で大量生産されるように設計されており、遡及的にデータを読み取ることを意図しており、所有者を特定することもできるし万人向けにすることもできる。この装置の包装は、ECG記録を解析して患者に報告する中央の場所への返却のために一体形成されている。この装置は、清浄化及び殺菌の必要なしに危険性の高い環境でも安全に用いることができる。
【0030】
本発明として看做される主題を具体的に指示して明確に請求した冒頭の特許請求の範囲の範囲内にあるものとして、様々な代替構成及び実施形態が思量される。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明を具現化したECG記録装置を折り畳んだ閉じたパッケージとして示す遠近図である。
【図2】折り畳みを開いた動作状態の図1の記録装置の上面図である。
【図3】図2の底面図である。
【図4】ECG読み取りを採取した後に患者によって記入されて返却されるフィードバック・カードの図である。
【図5】使用説明カードの図である。
【図6】記録装置に用いられる回路のブロック図である。
【符号の説明】
【0032】
100 ECG記録装置
101 クロージャ部材
102 カバー
103 背面骨材
104 台
105 カバーの外側面
106 返却先住所
107 郵送先住所
108 郵便料金前納印
109 バーコード
110 カバーの内側面
111 台の内側面
112 図解式説明
113 ホルダ
114 閉じた辺
115 フィードバック・カード
116 詳細説明カード
117 電極
118 両手
119 状態インジケータ灯
120 図解式説明
121 図解式説明
122 リマインダ灯
123 スロット
124 回路カード
125 電源
126 CPU
127 メモリ
128 ユーザ・インタフェイス
129 右手リード
130 左手リード
131 取得インタフェイス
132 内部コネクタ
133 台の外側面
134 大腿部電極
135 凹み
136 入力コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳んだ閉じた配置と折り畳みを開いた心電図(ECG)記録動作配置との間で可動である心臓の問題を診断するための可搬型限定用途の心電図(ECG)記録装置(100)であって、
台(104)に蝶番式で連結されたカバー(102)であって、該カバー(102)及び前記台(104)の各々が、前記動作状態にあるときに患者側に露出される内側面(110、111)を有し、前記カバー(102)の前記内側面(110)には、使用説明(116)及び問診票(115)が設けられており、前記台(104)の前記内側面(111)には、ECG記録時に前記患者の両手(118)に係合可能である一対の隔設された触覚感知式電極(117)、並びに前記ECG記録の開始状態及び終了状態を知らせる少なくとも1個のインジケータ灯(119)が設けられている、カバー(102)と、
前記電極(117)及び前記状態インジケータ灯(119)に電気的に接続されており、前記電極(117)に触れている前記患者からECG信号を受け取って記憶するためのプロセッサ(126)及びメモリ(127)を含んでいる回路(124)と、
前記記憶されたECG信号を解析のために遠隔の場所へ転送する手段(107、137)と、
を備えた心電図(ECG)記録装置(100)。
【請求項2】
前記カバー(102)は、前記記録装置(100)を前記折り畳んだ閉じた配置にして前記記憶されたECG信号を遡及的に解析する前記場所に返却するための予め印刷された郵送情報(107)を掲げた外側面(105)を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記カバー(102)の前記内側面(110)は、あらゆる患者にとって普遍的に理解可能である図解式使用説明(112)を含んでいる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記カバー(102)の前記内側面(110)は、所望の言語で詳細なテキスト式使用説明を印刷した第一のカード(116)と、前記患者からの健康情報及び人口統計情報を与える第二のカード(115)とを収容して保持するホルダ(113)をさらに含んでいる、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記台(104)の前記内側面(111)には、前記ECG記録中には両手(118)を前記電極(117)に保ち、前記ECG記録の完了に続いて前記問診票(115)に記入することを前記患者に思い出させる図解式情報(120)が掲げられている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記回路は、前記台(104)の内部に保持されたカード(124)として形成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記回路は、バッテリ(125)、前記電極(117)に接続されたリード(129、130)、ユーザ・インタフェイス(128)、及び取得インタフェイス(131)をさらに含んでおり、これら全てが前記プロセッサ(126)及び前記メモリ(127)に相互接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
心臓の問題についての患者の限定期間監視の方法であって、
(a)折り畳んだ閉じた配置と折り畳みを開いた動作配置との間で可動である可搬型心電図(ECG)装置(100)を設けるステップであって、該装置(100)は、台(104)に蝶番式で連結されたカバー(102)を有し、前記台(104)は、少なくとも一対の隔設された電極(117)、少なくとも1個の状態インジケータ灯(119)、並びに前記電極(117)及び前記インジケータ灯(119)に接続されており、前記電極(117)が触れられているときにECG信号を記録して記憶する給電されて働く回路(124)を有している、設けるステップと、
(b)ECG記録が必要とされていることを意味する前記状態インジケータ灯(119)により、前記装置(100)が前記折り畳みを開いた動作配置にあるときに前記患者に開始状態を示すステップと、
(c)前記患者の両手(118)で前記電極(117)に触れるステップと、
(d)前記患者が前記電極(117)に触れているときに前記ECG信号を収集して記憶するステップと、
(e)前記ECG信号が記録され終わったことを意味する前記状態インジケータ灯(119)により、前記患者に終了状態を示すステップと、
(f)前記記憶されたECG信号を解析のために遠隔の場所へ転送するステップと、
を備えた方法。
【請求項9】
特定の処方薬の服用と組み合わせて行なわれる心臓の問題についての患者の限定期間監視の方法であって、
(a)前記処方薬が投与されるときに、前記患者に可搬型特定個人向け心電図(ECG)装置(100)を提供するステップであって、前記装置(100)は折り畳んだ閉じた配置と折り畳みを開いた動作配置との間で可動であり、前記装置(100)は、台(104)に蝶番式で連結されたカバー(102)を有し、前記台(104)は、少なくとも一対の隔設された電極(117)、少なくとも1個の状態インジケータ灯(119)、並びに前記電極(117)及び前記インジケータ灯(119)に接続されており、前記電極(117)が触れられているときにECG信号を記録して記憶する給電されて働く回路(124)を有し、該回路(124)は、前記特定の処方薬に従ってプログラムされている、提供するステップと、
(b)ECG記録が必要とされていることを意味する前記状態インジケータ灯(119)により、前記装置(100)が前記折り畳みを開いた動作配置にあるときに前記患者に開始状態を示すステップと、
(c)前記患者の両手(118)で前記電極(117)に触れるステップと、
(d)前記患者が前記電極(117)に触れているときに前記ECG信号を収集して記憶するステップと、
(e)前記ECG信号が記録され終わったことを意味する前記状態インジケータ灯(119)により、前記患者に終了状態を示すステップと、
(f)前記記憶されたECG信号を解析のために遠隔の場所へ転送するステップと、
を備えた方法。
【請求項10】
前記記憶されたECGデータを転送する前記ステップは、前記カバー(102)に、前記装置(100)を前記閉じた配置にして前記遠隔の場所へ返却するための予め印刷された郵送情報(105)を掲げるステップを含んでいる、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−175499(P2007−175499A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349662(P2006−349662)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】