説明

ECUの筐体

【課題】実装基板に直接に樹脂モールドを行っても、実装部品に損傷を与えることがないとともに、軽量で堅固なECUの筐体を提供する。
【解決手段】車載ECU1の筐体3は、実装基板2をモールドした発泡樹脂3aと、発泡樹脂の外側にモールドされた樹脂筐体3bとを備える。軽量で成形性に富む樹脂である発泡樹脂によって実装基板をモールドするので、軽量なECUの筐体が得られるとともに、実装部品が損傷を受けることがない。また、発泡樹脂の外側に樹脂筐体がモールドされていることによって、ECUの筐体は堅固である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載されるECUの筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載パーツの各種制御を行うECU(Electronic Control Unit)が多数備えられるようになった。これら車載ECUの筐体としてPBT(polybutylene terephthalate:ポリブチレンテレフタレート)等の樹脂が多く使用されている。
図3に、ECUの一例としてのECU101の断面構成を示す。ECU101の組み立てにおいては、実装基板102がネジ104で締結されるなどして筐体103に組み付けられる。実装基板102は、回路基板102aに1つ以上の回路素子102bおよびコネクタ102cが実装された構成である。
【0003】
上記のように実装基板を組み付けるのに手間が掛かることや、樹脂成型の都合上から筐体の形状が制限されることでECUの占有体積が思うように小さくならないといった不都合を解消する手法も存在する。
【0004】
図4は、このような手法により作製されたECU111の断面構成を示している。
ECU111が備える筐体113は、実装基板102に直接に樹脂モールドを行って形成される。この場合には、回路素子102bやコネクタ102cなどの実装部品の表面を柔らかい樹脂が覆う程度に成型が行われる。
【0005】
また、特許文献1には、ケース内に樹脂が充填されている筐体が開示されている。特許文献2には、ECU基板を樹脂でモールドし、ECUケースに収容する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−170788号公報
【特許文献2】特開2007−320460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図4に示す構成の筐体113では、樹脂が柔らかいために車載ECUの筐体として耐久性のあるものが得られない。この筐体113には実装基板102の組み付けの手間を省くことができるという長所があるが、この手法は多数の背反があるためにあまり実施されていない。例えば、ブラケットの取り付けや外形を作ることで重くなるといった欠点を生ずる。一方、PBT等の樹脂は一般的に高温・高圧での射出成型で形成される。従って、図4のように回路素子102bやコネクタ102cが実装された実装基板102に対して直接に成型を行おうとすると、上記射出成型時の条件に見合う耐熱性や耐圧性を備えていない実装部品が損傷を受けてしまう。
【0008】
また、ECUの搭載を考慮した筐体の外形を成そうとすると、PBT等では樹脂量が多くなって質量が大きくなりすぎてしまう。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであり、実装基板に直接に樹脂モールドを行っても、実装部品に損傷を与えることがないとともに、軽量で堅固なECUの筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るECUの筐体は、実装基板をモールドした発泡樹脂と、前記発泡樹脂の外側にモールドされた樹脂筐体とを備えている。
【0011】
また、前記実装基板上で放熱が必要な部位を覆う前記発泡樹脂は、他の部位を覆う前記発泡樹脂よりも薄くてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成によれば、軽量で成形性に富む樹脂である発泡樹脂によって実装基板をモールドするので、軽量なECUの筐体が得られるとともに、実装部品が損傷を受けることがない。また、発泡樹脂の外側に樹脂筐体がモールドされていることによって、ECUの筐体は堅固である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るECU筐体の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係るECU筐体の構成を示す断面図である。
【図3】従来技術を示すものであり、ECU筐体の構成を示す断面図である。
【図4】従来技術を示すものであり、ECU筐体の他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について図1および図2を用いて説明すれば以下の通りである。
【0015】
図1に、本実施形態に係るECU1の構成を示す。
ECU1は、実装基板2および筐体(ECUの筐体)3を備えている。
【0016】
実装基板2は、回路基板2aに1つ以上の回路素子2bとコネクタ2cとを含む部品が実装された構成である。筐体3は、発泡樹脂3aと樹脂筐体3bとを備えている。
【0017】
筺体3において、発泡樹脂3aは実装基板2をモールドしている。発泡樹脂3aによるモールド箇所は、少なくとも、回路素子2bのパッケージと、回路素子2bおよびコネクタ2cなどの実装部品から回路基板2aへと露出した導通箇所と、回路基板2a上の露出した導通箇所と、を埋め込むように設けられている。コネクタ2cのECU1の外部との接続箇所は、筐体3の外部に露出している。発泡樹脂として、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリオレフィン、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、ユリア樹脂、シリコーン、ポリイミド、メラミン樹脂などを使用することができる。
【0018】
当該発泡樹脂3aは、実装基板2に対して仮モールドによって筐体3のおおよそのボディ形状を決定するように成型されている。発泡樹脂は軽量であって、実装部品に損傷を与えない。なお、仮モールドに用いる樹脂には、発泡樹脂以外にも、軽量であって実装部品に損傷を与えない素材であれば適用することが可能である。すなわち、密度が低く、ある程度形状が保てる素材であればよい。
【0019】
また、樹脂筐体3bは、上記の仮モールドした発泡樹脂3aの外側に続けてモールドされた、本体筐体として使用可能な気密性を有する樹脂からなる。樹脂筐体の材質として、PBT(polybutylene terephthalate:ポリブチレンテレフタレート)、PPS(poly phenylene sulfide:ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂を用いることが可能である。
【0020】
このように、本実施形態に係る筐体3によれば、軽量かつ成形性に富む樹脂である発泡樹脂3aによって実装基板2をモールドするので、軽量なECU1の筐体が得られるとともに、実装部品が損傷を受けることがない。また、発泡樹脂3aの外側に樹脂筐体3bがモールドされていることによって、ECU1の筐体は堅固である。
【0021】
次に、図2に、本実施形態の変形例に係るECU11の構成を示す。図1と同じ部材には同じ符号が付されている。
ECU11は、実装基板2および筐体(ECUの筐体)13を備えている。
【0022】
筐体13は、発泡樹脂13aと樹脂筐体13bとを備えている。発泡樹脂13aおよび樹脂筐体13bの材質は図1の場合と同じでよい。
【0023】
実装基板2の回路素子2bである回路素子2b−xは、動作中の発熱が大きいために何らかの放熱対策が必要な素子である。発泡樹脂13aにより回路素子2b−xが埋め込まれると、断熱効果により十分な放熱が困難になる場合には、図2に示すように回路素子2b−xの上方の位置Xを発泡樹脂13aで仮モールドしないようにする。あるいは、仮モールドにおいて、表面形状を変えるように、位置Xの発泡樹脂13aを放熱対策が不要な他の部位よりも薄く形成する。樹脂筐体13bは、仮モールドの後に図1と同様にモールドされる。
【0024】
このように、筐体13によれば、実装基板2上で放熱が必要な部位を覆う発泡樹脂13aは、厚みゼロの場合も含めて、他の部位を覆う発泡樹脂13aよりも薄い。従って、図1の筐体3による効果に加えて、良好な放熱を施すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のECUの筐体は、例えば車両に小型軽量で耐久性を有するECUを搭載したい箇所に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1、11 ECU
2 実装基板
3、13 筐体(ECUの筐体)
3a、13a 発泡樹脂
3b、13b 樹脂筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ECUの筐体であって、
実装基板をモールドした発泡樹脂と、
前記発泡樹脂の外側にモールドされた樹脂筐体とを備えていることを特徴とするECUの筐体。
【請求項2】
前記実装基板上で放熱が必要な部位を覆う前記発泡樹脂は、他の部位を覆う前記発泡樹脂よりも薄いことを特徴とする請求項1に記載のECUの筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−70487(P2013−70487A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206265(P2011−206265)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】