説明

EFMR(女性に限られた癲癇及び精神遅滞)の診断方法及び治療方法

プロトカドヘリン19(PCDH19)タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患、特にEFMR(女性に限られた癲癇及び精神遅滞)の診断のための方法及びキットを提供する。さらに、かかる疾患の素因の同定のための方法及びキット、並びに、かかる疾患の保因者を同定するための対象者のスクリーニング方法、並びに、PCDH19欠損又はPCDH19タンパク質機能改変の治療又は予防のための方法及びキットも提供する。さらに、完全PCDH19オープンリーディングフレーム(ORF)に相当するヌクレオチド配列及びアミノ酸配列、非機能的PCDH19 mRNA又は改変PCDH19 mRNAをコードする変異配列が、野生型又は変異型PCDH19ORFヌクレオチド配列を有する形質転換細胞及び非ヒトトランスジェニック動物と共に記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、完全プロトカドヘリン19(PCDH19)オープンリーディングフレーム(open reading frame、ORF)に相当するヌクレオチド配列及びアミノ酸配列、並びに、ヒト対象者におけるPCDH19タンパク質の欠損又は機能改変に関連する疾患、特にEFMR(女性に限られた癲癇及び精神遅滞(Epilepsy and Mental Retardation limited to Females))をもたらしうる非機能的若しくは改変PCDH19 mRNA又は非機能的若しくは改変PCDH19タンパク質をコードする変異ヌクレオチド配列に関する。
[参照による組み込み]
【0002】
本特許出願は、以下の出願から得られる優先権を主張する:
・「治療化合物」と題された2008年1月4日出願の米国特許出願第61/010176号。
かかる出願の内容全体が、ここに参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
X染色体上の変異により引き起こされる遺伝性疾患は一般に、保因男性に症状が現れ、保因女性に症状が現れないことにより特徴付けられる。EFMR(女性に限られた癲癇及び精神遅滞)は対照的に、保因男性に症状が現れずに女性が発症する、珍しいX連鎖疾患である(Ryan SG et al., 1997)。EFMRは、認知障害及び幼少期(6カ月〜36カ月)の癲癇発作開始により特徴付けられる稀有な疾患である。かかる表現型は女性に限られる一方で、男性には症状が現れないようであり、男性の認知機能は正常で癲癇発作も男性には生じない。
【0004】
本明細書に記載の研究より前には、EFMRの原因は知られておらず、EFMRの発病は以前はいかなる特定の遺伝的素因にも帰されていなかった。本明細書に記載の研究によってここに、プロトカドヘリン19(PCDH19)遺伝子がEFMRの原因として同定される。
【0005】
737個のX連鎖遺伝子の体系的なリシークエンシングにより、EFMRに罹患している互いに血縁関係のない7つの親族において、PCDH19遺伝子における7つの異なる変異が同定された。これら変異のうち5つにより中途終止コドンが導入され、ナンセンス変異依存分解(non-sense mediated decay、NMD)プロセスにより分解される非機能的PCDH19 mRNAをもたらす。残り2つの変異はミスセンス変異であることが特定されており、カルシウム結合を損なうことで、PCDH19タンパク質の接着性に影響している可能性が高い。
【0006】
PCDH19は、癲癇及び精神遅滞に関与する初めてのカドヘリンである。本明細書に記載の発現分析が、正常神経細胞発達におけるPCDH19の役割を示している。関連する男性特異的ヒト遺伝子であるプロトカドヘリン11Y(PCDH11Y)を通して、臨床的に疾患を発症することから伝達男性(すなわち保因男性)を救う、表現型レスキュー機序があると推測されている(Blanco P et al., 2000)。かかる機序は、EFMRにおいて観察される注目すべき遺伝様式と整合的である。
【0007】
本明細書に記載の研究により、完全PCDH19オープンリーディングフレーム(ORF)に相当するヌクレオチド配列及びアミノ酸配列が、非機能的PCDH19 mRNA又は非機能的PCDH19タンパク質をコードする変異配列と共に同定された。これらの配列は、癲癇及び精神遅滞等の、PCDH19タンパク質欠損又は機能改変と関連する疾患、特にEFMRと関係することが示される。さらに、PCDH19欠損遺伝子型の男性保因者は、男性特異的プロトカドヘリンPCDH11Yにより疾患表現型からレスキューされることが示された。
【0008】
完全PCDH19ORFの同定及び病態を引き起こすヌクレオチド配列の変異の同定により、PCDH19タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の診断方法、かかる疾患の素因の同定方法、かかる疾患の保因者を同定するスクリーニング方法、並びに、PCDH19欠損の治療薬又は予防薬が提供される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Ryan SG, Chance PF, Zou CH, Spinner NB, Golden JA, Smietana S. Epilepsy and mental retardation limited to females: an X-linked dominant disorder with male sparing. Nature Genet 17, 92-95 (1997).
【非特許文献2】Blanco P, Sargent CA, Boucher CA, Mitchell M, Affara NA. Conservation of PCDHX in mammals; expression of human X/Y genes predominantly in brain. Mamm Genome 11, 906-14 (2000).
【発明の概要】
【0010】
したがって、第1の態様において本発明は、機能的プロトカドヘリン19(PCDH19)タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の診断方法、又は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の素因の評価方法、又は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の保因者を同定するスクリーニング方法を提供し、これら方法は以下のステップを含む:
(i)対象者からの適切な生物学的試料において、PCDH19タンパク質機能欠失又はPCDH19タンパク質機能改変を検出するステップ。
【0011】
第2の態様において本発明は、機能的プロトカドヘリン19(PCDH19)タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の診断キット、又は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の素因の評価キット、又は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の保因者を同定するためのスクリーニングキットを提供し、これらキットは、以下のもののうち1又は2以上を含む:PCDH19タンパク質若しくはポリペプチドと、又は、その断片若しくは変異体と、特異的に結合する抗体又はその断片;及び、PCDH19タンパク質若しくはポリペプチドを、又は、その断片若しくは変異体をコードするポリヌクレオチド分子と、高ストリンジェンシー条件下で特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブ/プライマー分子。
【0012】
第3の態様において本発明は、対象者におけるPCDH19タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変の治療における、以下のものの使用を提供する:配列番号1に記載の完全プロトカドヘリン19(PCDH19)オープンリーディングフレーム(ORF)ヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性(sequence identity)を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子であって、前記ヌクレオチド配列が、配列番号1に記載の完全PCDH19ORFヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子によりコードされる、機能的PCDH19タンパク質若しくはポリペプチドを、又は、その機能的断片若しくは機能的変異体をコードするヌクレオチド配列である、ポリヌクレオチド分子。
【0013】
第4の態様において本発明は、対象者におけるプロトカドヘリン19(PCDH19)タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変の治療方法又は予防方法を提供し、これら方法は以下のステップを含む:
(i)前記対象者に、以下のものを投与するステップ:配列番号1に記載の完全プロトカドヘリン19(PCDH19)オープンリーディングフレーム(ORF)ヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子であって、前記ヌクレオチド配列が、機能的PCDH19タンパク質若しくはポリペプチドを、又は、その機能的断片若しくは機能的変異体をコードするヌクレオチド配列である、ポリヌクレオチド分子;配列番号1に記載の完全PCDH19ORFヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子によりコードされる、機能的PCDH19タンパク質若しくはポリペプチド、又は、その機能的断片若しくは機能的変異体;並びに/或いは、PCDH19タンパク質機能欠失を補完する薬剤;任意で、薬学的に許容可能な担体と組み合わされる。
【0014】
第5の態様において本発明は、対象者における機能的プロトカドヘリン19(PCDH19)タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変を治療可能な薬剤を提供する。
【0015】
第6の態様において本発明は、機能的プロトカドヘリン19(PCDH19)タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変を治療可能な薬剤の同定方法を提供し、かかる方法は以下のステップを含む;
(i)配列番号1に示されるPCDH19ORFヌクレオチド配列の変異配列を含むポリヌクレオチド分子を有する細胞又は動物を提供するステップ;
(ii)被検物質を前記細胞に接触させる、又は、被検物質を前記動物に投与するステップ;及び
(iii)前記細胞又は動物における応答を対照応答と比較するステップ。
【0016】
第7の態様において本発明は、第6の態様の方法における使用のためのキットを提供し、かかるキットは、配列番号1に示されるプロトカドヘリン19(PCDH19)ORFヌクレオチド配列の変異配列を含むポリヌクレオチド分子を有する1又は2以上の細胞又は動物を含む1又は2以上の容器及び/又は入れ物と共に、方法操作の指示書を含む。
【0017】
第8の態様において本発明は、機能的プロトカドヘリン19(PCDH19)タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変を治療可能な薬剤を同定するためのキットを提供し、かかるキットは以下のものを含む;
(i)配列番号1に示されるPCDH19ORFヌクレオチド配列の変異配列を含むポリヌクレオチド分子を有する細胞又は動物;及び、任意で、
(ii)配列番号1に示される完全PCDH19ORFヌクレオチド配列の野生型を含むポリヌクレオチド分子を有する対照細胞又は動物であって、前記野生型が機能的PCDH19タンパク質若しくはポリペプチドを、又は、その機能的断片若しくは機能的変異体をコードする、対照細胞又は動物。
【0018】
第9の態様において本発明は、配列番号1に記載の完全プロトカドヘリン19(PCDH19)ORFヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含む単離されたタンパク質若しくはポリペプチド、又は、その機能的断片若しくは変異体を提供する。
【0019】
第10の態様において本発明は、配列番号1に記載の完全プロトカドヘリン19(PCDH19)ORFヌクレオチド配列又はその相補配列と、少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。
【0020】
第11の態様において本発明は、第10の態様のポリヌクレオチド分子で形質転換された細胞を提供する。
【0021】
第12の態様において本発明は、第10の態様のポリヌクレオチド分子を含む非ヒト動物を提供する
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1が示すのは、本明細書に記載の研究において評価された7つのEFMR親族の家系図である。それぞれの親族においてEFMRの原因となっている、PCDH19遺伝子の特定の変異が、かかる変異の位置を示す対応する配列クロマトグラムセクションと共に示される。EFMRを発症している女性は黒丸で示されており、保因男性は四角の中に小さな丸で示されている。
【図2】図2が示すのは、PCDH19タンパク質の概要図であり、シグナルペプチド、細胞外カドヘリン(extracellular cadherin、EC)、膜貫通(transmembrane、TM)領域、及び細胞質(cytoplasmic、CM)ドメインが示されている。EFMR親族に見出される変異の相対位置も示されている。
【図3】図3が示すのは、ヒトPCDH19を他種のPCDH19オルソログ及び他のヒトプロトカドヘリンと部分的に配列比較したものである。V441E(上パネル)及びN557K(下パネル)という2つのミスセンス変異の影響を受けた残基の高度保存が、長方形のボックスにより示されている。カルシウムイオン結合酸性残基もまた、両配列比較に対して括弧で示されている。
【図4】図4が示すのは、様々なヒト脳組織におけるPCDH19及びPCDH11X/Yのノーザンブロット(Clontech Laboratories, Inc.社、米国カリフォルニア州マウンテンビュー)分析である。〜9.8kbのPCDH19転写産物の位置がアスタリスクにより示されており、一方でより小さい〜9.5kbのPCDH11X/Y mRNAの位置は矢印で示されている。括弧が示すのは、PCDH19プローブ又はPCDH19分解産物の非特異的結合である。
【図5】図5が示すのは、EFMR発症女性のヌクレオチド配列クロマトグラムのセクションであり、ゲノムDNA(gDNA)における253C>Tの変異の検出(上パネル)、線維芽細胞cDNAにおける変異配列の非存在(中パネル)、並びに、線維芽細胞をシクロヘキシミド処理した後の変異型及び野生型cDNA両方の存在(下パネル)を示している。変異の位置をボックスで囲んでいる。
【図6】図6が示すのは、交尾後15.5日目(a〜f)及び生後2日目(g〜l)のマウス中枢神経系(central nervous system、CNS)におけるPCDH19の発現である。(a、b)は隣接切片をそれぞれ、ヘマトキシリン及びエオシンで染色したもの、並びに、インサイチューでPCDH19に関して処理したものである。(c、d、e)は、bでボックスに囲われた領域のより高倍率の画像である。cにおける矢印は、皮質内でのPCDH19発現細胞を示す。eにおけるアスタリスクは、側脳室の背外側壁を示す。(g、h)は隣接切片をそれぞれ、ヘマトキシリン及びエオシンで染色したもの、並びに、インサイチューでPCDH19に関して処理したものである。(i)は、PCDH19発現を示す(hの)後方脳切片である。(j、k、l)は、(g、hそれぞれ)でボックスに囲われた領域のより高倍率の画像である。Cx/P、皮質板(cortical plate);Hn、海馬神経上皮(Hippocampal neuroepithelium);lv、側脳室(lateral ventricle);Th、視床(thalamus);Hy、視床下部(hypothalamus);icf、大脳半球間裂(intercerebral fissure);Ob、嗅球(olfactory bulbs);Ne、鼻上皮(nasal epithelium)。倍率バーは(a、b、f〜i)で200μMを表し、(c〜e;及びj〜l)で50μMを表す。
【図7】図7が示すのは、EFMRの遺伝の基礎をなすと予測される機序を図示化したものであり、かかる機序によりPCDH11Yは伝達男性におけるPCDH19変異を機能的にレスキューする。
【図8】図8が示すのは、様々な成人ヒト脳組織領域における、PCDH19(上パネル)、PCDH11Y(中パネル)、及びPCDH11X(下パネル)の発現プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は全般に、PCDH19タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の診断のための方法及びキット、かかる疾患の素因を同定するための方法及びキット、かかる疾患の保因者を同定するための対象者のスクリーニング方法、並びに、PCDH19欠損又はPCDH19タンパク質機能改変の治療又は予防のための方法及びキットに関する。本発明はまた、完全PCDH19ORFに相当するヌクレオチド配列及びアミノ酸配列、ヒト対象者においてPCDH19タンパク質欠損又は機能改変と関連する疾患の原因である非機能的PCDH19 mRNA(例えば、ナンセンス変異依存mRNA分解(NMD)プロセスにより分解されうるもの)若しくは改変PCDH19 mRNA又は非機能的PCDH19タンパク質若しくは改変PCDH19タンパク質をコードする変異配列、並びに、野生型又は変異型PCDH19ORFヌクレオチド配列を有する形質転換細胞及び非ヒトトランスジェニック動物に関する。
【0024】
したがって、第1の態様において本発明は、機能的プロトカドヘリン19(PCDH19)タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の診断方法、又は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の素因の評価方法、又は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の保因者を同定するためのスクリーニング方法を提供し、これらの方法は以下のステップを含む:
(i)対象者からの適切な生物学的試料において、PCDH19タンパク質機能欠失又はPCDH19タンパク質機能改変を検出するステップ。
【0025】
PCDH19欠損又はPCDH19タンパク質機能改変により生じる疾患は、癲癇及び/又は精神遅滞、特にEFMRを含む。したがって、好ましくは、第1の態様の方法は、EFMRの診断方法、EFMRの素因の評価方法、又はEFMRの保因者、特にEFMRの男性保因者のスクリーニング方法を提供する。特に好ましい方法には、EFMRの出生前診断又はスクリーニングが含まれる。
【0026】
以前にEFMRと診断されていない対象者の場合には、PCDH19タンパク質機能欠失又はPCDH19タンパク質機能改変の検出が、かかる検出のみで、又は、その他の検査と組み合わせて、対象者におけるEFMR診断のために用いられうる。以前にEFMRと診断されておらず、EFMRによる健康障害のいかなる兆候も示していない対象者には、PCDH19タンパク質機能欠失又はPCDHタンパク質機能改変の検出が、EFMRの素因又はEFMRの保因状態の評価に用いられうる。
【0027】
PCDH19タンパク質機能欠失又はPCDH19タンパク質機能改変の検出は、非機能的若しくは改変PCDH19 mRNA又は非機能的若しくは改変PCDH19タンパク質をコードする、或いは、PCDH19タンパク質発現減少を引き起こす(例えば、PCDH19遺伝子発現制御配列の変異等)、対象者のPCDH19ORFにおける変異配列の(例えば、対象者の遺伝子型決定による)検出を1又は2以上含みうる。簡便には、このことは、適切な生物学的試料内のPCDH19ヌクレオチド配列(又はその標的領域)を増幅し、しかる後に増幅産物を配列決定することにより達成されうる。好ましくは、PCDH19タンパク質機能欠失の検出は、例えば、カルシウムイオン結合部位内で、又は、それに隣接する部位(例えば、カルシウムイオン結合部位から20アミノ酸以内)で、カルシウムイオン結合を損なうようにアミノ酸置換を引き起こす変異配列、或いは、中途終止コドン(premature termination codon、PTC)を含む変異配列等の、対象者のPCDH19ORFの細胞外(EC)ドメインをコードする領域における変異配列の検出を含む。
【0028】
PCDH19タンパク質機能欠失又はPCDH19タンパク質機能改変の検出はまた、例えば、機能的PCDH19タンパク質又はポリペプチドのアッセイを実施することにより間接的に達成されてもよい。機能的PCDH19タンパク質又はポリペプチドを検出するアッセイは、好ましくは、対象者から採取された適切な生物学的試料中に存在するかかるタンパク質又はポリペプチドの相対量を決定するための、PCDH19タンパク質若しくはポリペプチドと、又は、その機能的断片若しくは機能的変異体と特異的に結合可能な抗体又はその断片の使用を含む。このことは、当業者によく知られたあらゆる方法(例えば、標準的なELISA法に基づく方法又は組織切片試料を用いたインサイチュー免疫蛍光法)の使用を含みうる。かかるものとして、機能的PCDH19タンパク質又はポリペプチドの相対量は、検出可能標識が直接結合されているか、さもなければ、検出可能標識が直接結合されている二次抗体又はその断片を介して検出される、特異的抗体又はその断片(すなわち、一次抗体)が結合したかかるタンパク質又はポリペプチドを定量的に検出することにより決定されうる。適切な検出可能標識には、発色団、蛍光団(例えば、フルオレセイン又はFITC)、放射標識(例えば、125I)、及びホースラディッシュペルオキシダーゼ等の酵素が含まれる。これらの標識は、(例えば、マイクロプレートリーダーによる、又は、フローサイトメーターの使用による)機能的PCDH19タンパク質又はポリペプチド検出工程の自動化又は部分的自動化を提供する、当業者によく知られた方法及びシステムにおいて用いられうる。一般に、機能的PCDH19タンパク質の相対量は、「正常試料」(例えば、正常な対象者から採取された等価な生物学的試料からの試料)に存在する量又は量の範囲との比較により決定される。
【0029】
機能的PCDH19タンパク質又はポリペプチドは、以下に示す完全PCDH19オープンリーディングフレーム(ORF)ヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性、好ましくは少なくとも85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を示すヌクレオチド配列によりコードされるものとして特徴付けられてもよい:
atggagtcgc tcctgctgcc ggtgctgctg ctgctggcca tactgtggac gcaggctgcc 60
gccctcatta atctcaagta ctcggtagaa gaggagcagc gcgccgggac ggtgattgcc 120
aacgtggcca aagacgcgcg agaggcgggc ttcgcgctgg acccccggca ggcttcagcc 180
tttcgcgtgg tgtccaactc ggctccacac ctagtggaca tcaatcccag ctctggcctg 240
ctggtcacca agcagaagat tgaccgtgat ctgctgtgcc gccagagccc caagtgcatc 300
atctcgctcg aggtcatgtc cagctcaatg gaaatctgcg tgataaaggt ggagatcaag 360
gacctgaacg acaatgcgcc cagtttcccg gcagcacaga tcgagctgga gatctcggag 420
gcagccagcc ctggcacgcg catcccgctg gacagcgctt acgatccaga ctcaggaagc 480
tttggcgtgc agacttacga gctcacgccc aacgagctgt tcggcctgga gatcaagacg 540
cgcggcgacg gctcccgctt tgccgaactc gtggtggaaa agagcctgga ccgcgagacg 600
cagtcgcact acagcttccg aatcactgcg ctagacggtg gcgacccgcc gcgcctgggc 660
accgttggcc ttagtatcaa ggtgaccgac tccaatgaca acaacccggt gtttagcgag 720
tccacctacg cggtgagcgt gccagaaaac tcgcctccca acacacccgt catccgcctc 780
aacgccagcg atccagacga gggcaccaac ggccaggtgg tctactcctt ctatggctac 840
gtcaacgacc gcacgcgcga gctctttcag atcgacccgc acagtggcct ggtcactgtc 900
actggcgctt tagactacga agaggggcac gtgtacgaac tggacgtgca ggctaaggac 960
ttggggccca attccatccc ggcacactgc aaggtcaccg tcagcgtgct ggacaccaat 1020
gacaatccgc cggtcatcaa cctgctgtca gtcaacagtg agcttgtgga ggtcagcgag 1080
agcgcccccc cgggctacgt gatcgccttg gtgcgggtgt ctgatcgcga ctcaggcctc 1140
aatggacgtg tgcagtgccg tttgctgggc aatgtgccct ttcgactgca ggaatatgag 1200
agcttctcca ctattctggt ggacggacgg ctggaccgcg agcagcacga ccaatacaac 1260
ctcacaattc aggcacgcga cggcggcgtg cccatgctgc agagtgccaa gtcctttacc 1320
gtgctcatca ctgacgaaaa tgacaaccac ccgcactttt ccaagcccta ctaccaggtc 1380
attgtgcagg agaacaacac gcctggcgcc tatctgctct ctgtgtctgc tcgcgacccc 1440
gacctgggtc tcaacggcag tgtctcctac cagatcgtgc cgtcgcaggt gcgggacatg 1500
cctgtcttca cctatgtctc catcaatccc aactcaggcg acatctacgc gctgcgatcc 1560
tttaaccacg agcagaccaa ggcgttcgaa ttcaaggtgc tggccaagga cggcggcctt 1620
ccctcactgc aaagcaacgc tacggtgcgg gtcatcatcc tcgacgtcaa cgacaacacc 1680
ccggtcatca cagccccacc tctgattaac ggcactgccg aggtctacat accccgcaac 1740
tctggcatag gctacctggt gactgttgtc aaggcagaag actacgatga gggcgaaaat 1800
ggccgagtca cctacgacat gaccgagggc gaccgcggct tctttgaaat agaccaggtc 1860
aatggcgaag tcagaaccac ccgcaccttc ggggagagct ccaagtcctc ctatgagctt 1920
atcgtggtgg ctcacgacca cggcaagaca tctctctctg cctctgctct cgtcctaatc 1980
tacttgtccc ctgctctcga tgcccaagag tcaatgggct ctgtgaactt gtccttgatt 2040
ttcattattg ccctgggctc cattgcgggc atcctctttg taactatgat cttcgtggca 2100
atcaagtgca agcgagacaa caaagagatc cggacctaca actgcagtaa ttgtttaacc 2160
atcacttgtc tcctcggctg ttttataaaa ggacaaaaca gcaagtgtct gcattgcatc 2220
tcggtttctc ccattagcga ggagcaagac aaaaagacag aggagaaagt gagcctaagg 2280
ggaaagagaa ttgctgagta ctcctatggg catcaaaaga aatcaagcaa gaagaaaaaa 2340
atcagtaaga atgacatccg cctggtaccc cgggatgtgg aggagacaga caagatgaac 2400
gttgtcagtt gctcttccct gacctcctcc ctcaactatt ttgactacca ccagcagacg 2460
ctgcccctgg gctgccgccg ctctgagagc actttcctga atgtggagaa ccagaatacc 2520
cgcaacacca gtgctaacca catctaccat cactctttca acagccaggg gccccagcag 2580
cctgacctga ttatcaacgg tgtgcctctg cctgagactg aaaactattc ttttgactcc 2640
aactacgtga atagccgagc ccatttaatc aagagcagct ccaccttcaa ggacttagag 2700
ggcaacagcc tgaaggatag tggacatgag gagagtgacc aaactgacag tgagcatgat 2760
gtccagcgga gcctgtattg tgatactgct gtcaacgatg tgctgaacac cagtgtgacc 2820
tccatgggat ctcagatgcc tgatcatgat cagaatgaag gatttcattg ccgggaagaa 2880
tgccggattc ttggccactc tgacaggtgc tggatgcccc ggaaccccat gcccatccgt 2940
tccaagtccc ctgagcatgt gaggaacatc atcgcgctgt ctattgaagc tactgctgct 3000
gatgtcgagg cttatgacga ctgcggcccc accaaacgga ctttcgcaac ctttgggaaa 3060
gatgtcagcg accacccggc tgaggagagg cctaccctga aaggcaagag gactgtcgat 3120
gtgaccatct gcagccccaa ggtcaacagc gttatccggg aggcaggcaa tggctgtgag 3180
gcgattagcc ctgtcacctc ccccctccac ctcaagagct ctctgcccac caagccttcc 3240
gtgtcttaca ccattgccct ggctccccca gcccgtgatc tggagcagta tgtcaacaat 3300
gtcaacaatg gccctactcg tccctctgaa gctgagcccc gtggagctga tagcgagaaa 3360
gtcatgcatg aggtcagccc cattctgaag gaaggtcgca acaaagagtc ccctggtgtg 3420
aagcgtctga aggatatcgt tctctaa 3447
(配列番号1)。
【0030】
より好ましくは、機能的PCDH19タンパク質又はポリペプチドは、以下のアミノ酸配列を含むことにより特徴付けられる:
MESLLLPVLLLLAILWTQAAALINLKYSVEEEQRAGTVIANVAKDAREAGFALDPRQASA 60
FRVVSNSAPHLVDINPSSGLLVTKQKIDRDLLCRQSPKCIISLEVMSSSMEICVIKVEIK 120
DLNDNAPSFPAAQIELEISEAASPGTRIPLDSAYDPDSGSFGVQTYELTPNELFGLEIKT 180
RGDGSRFAELVVEKSLDRETQSHYSFRITALDGGDPPRLGTVGLSIKVTDSNDNNPVFSE 240
STYAVSVPENSPPNTPVIRLNASDPDEGTNGQVVYSFYGYVNDRTRELFQIDPHSGLVTV 300
TGALDYEEGHVYELDVQAKDLGPNSIPAHCKVTVSVLDTNDNPPVINLLSVNSELVEVSE 360
SAPPGYVIALVRVSDRDSGLNGRVQCRLLGNVPFRLQEYESFSTILVDGRLDREQHDQYN 420
LTIQARDGGVPMLQSAKSFTVLITDENDNHPHFSKPYYQVIVQENNTPGAYLLSVSARDP 480
DLGLNGSVSYQIVPSQVRDMPVFTYVSINPNSGDIYALRSFNHEQTKAFEFKVLAKDGGL 540
PSLQSNATVRVIILDVNDNTPVITAPPLINGTAEVYIPRNSGIGYLVTVVKAEDYDEGEN 600
GRVTYDMTEGDRGFFEIDQVNGEVRTTRTFGESSKSSYELIVVAHDHGKTSLSASALVLI 660
YLSPALDAQESMGSVNLSLIFIIALGSIAGILFVTMIFVAIKCKRDNKEIRTYNCSNCLT 720
ITCLLGCFIKGQNSKCLHCISVSPISEEQDKKTEEKVSLRGKRIAEYSYGHQKKSSKKKK 780
ISKNDIRLVPRDVEETDKMNVVSCSSLTSSLNYFDYHQQTLPLGCRRSESTFLNVENQNT 840
RNTSANHIYHHSFNSQGPQQPDLIINGVPLPETENYSFDSNYVNSRAHLIKSSSTFKDLE 900
GNSLKDSGHEESDQTDSEHDVQRSLYCDTAVNDVLNTSVTSMGSQMPDHDQNEGFHCREE 960
CRILGHSDRCWMPRNPMPIRSKSPEHVRNIIALSIEATAADVEAYDDCGPTKRTFATFGK 1020
DVSDHPAEERPTLKGKRTVDVTICSPKVNSVIREAGNGCEAISPVTSPLHLKSSLPTKPS 1080
VSYTIALAPPARDLEQYVNNVNNGPTRPSEAEPRGADSEKVMHEVSPILKEGRNKESPGV 1140
KRLKDIVL 1148
(配列番号2)。
【0031】
他方で、PCDH19タンパク質機能欠失を検出するアッセイは、例えば、野生型PCDH19タンパク質又はポリペプチドとその非機能的変異体とを識別可能な抗体又はその断片の使用を含んでいてもよい。このことにより、対象者から採取された生物学的試料中に存在するPCDH19タンパク質又はポリペプチドが特定の形であると同定されてもされなくてもよい。
【0032】
さもなければ、PCDH19タンパク質機能欠失を検出するアッセイは、対象者から採取された適切な生物学的試料中の、機能的PCDH19タンパク質又はポリペプチドをコードするメッセンジャーRNA(messenger RNA、mRNA)の相対量を決定することを含んでいてもよい。タンパク質又はポリペプチドをコードするmRNAの相対量は、ノーザンブロット法(参照試料との比較による)、及び、PCR法に基づくmRNA定量法(例えば、検出可能標識に結合されたプライマーを用いたRT‐PCR法の使用)を含む、当業者によく知られたどの方法により決定されてもよい。一般に、タンパク質又はポリペプチドをコードするmRNAの相対量は、「正常試料」(例えば、正常対象者から採取された等価な生物学的試料からの試料)に存在する量又は量の範囲との比較により決定される。
【0033】
より好ましくは、PCDH19タンパク質機能欠失の検出は、配列番号2に示されるPCDH19アミノ酸配列の非機能的変異体をコードする変異配列を検出することを含む。前記変異配列は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列に関して、以下のどの1又は2以上のヌクレオチド変化を含んでいてもよい:1322T>A、253C>T、2012C>G、2030_2031insT、1671C>G、357delC、及び1091_1092insC。かかるヌクレオチド変化の検出方法は、高ストリンジェンシー条件下での、適切なオリゴヌクレオチドプローブ/プライマー分子の、適切な生物学的試料中に存在する変異配列とのあらゆるハイブリダイゼーションを検出するステップを含んでいてよい。高ストリンジェントな条件は、当技術分野においてよく知られており、典型的には高温(すなわち、高アニーリング温度)及び低イオン強度(すなわち、低塩濃度、特にMgCl、KCl、及びNaClの低濃度)により特徴付けられる。したがって、高ストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーションの状況(すなわち、プローブハイブリダイゼーション、PCR増幅等)に応じて変化してもよい。本発明の目的のためには、「高ストリンジェントな条件」なる用語は、プローブハイブリダイゼーションに適用可能な条件を指すものとして理解されるべきである(例えば、以下の条件を0.2× SSC(30mM NaCl、3mMクエン酸ナトリウム)及び0.1%SDS中で使用:(1)洗浄のために低イオン強度及び高温、例えば、15mM NaCl/1.5mMクエン酸ナトリウム/0.1%NaDodSOを50℃で使用;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤、例えば、50%(vol/vol)ホルムアミドを、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%フィコール、0.1%ポリビニルピロリドン、750mM NaClを含むpH6.5の50mMリン酸ナトリウム緩衝液、75mMクエン酸ナトリウムと共に、42℃で使用;又は(3)50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mMクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%硫酸デキストランを42℃で使用)。本発明の変異配列の検出に有用なオリゴヌクレオチド分子は、例えば、プローブ又はプライマー配列としての使用に適していてもよい。典型的には、かかるオリゴヌクレオチド分子は、10個〜50個のヌクレオチドからなり、より好ましくは、約15個〜30個のヌクレオチドからなる。好ましくは、かかるヌクレオチド分子は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列若しくはその相補配列、又は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列に1又は2以上の上述のヌクレオチド変化(すなわち、1322T>A、253C>T、2012C>G、2030_2031insT、1671C>G、357delC、及び1091_1092insC)を組み込んだもの若しくはその相補配列に由来する。
【0034】
PCDH19タンパク質機能欠失又はPCDH19タンパク質機能改変の検出ステップに関して、対象者から採取される適切な生物学的試料は、例えば、上皮試料、塗沫試料、血液試料、糞便試料、尿試料、又は口腔試料を含む、組織生検及び組織固定切片(例えば、ホルマリン固定又はパラフィン包埋)又はそこから調製される固定細胞試料から選択されてもよい。かかる試料は、例えば、細胞、タンパク質、ポリペプチド、ポリヌクレオチド分子、オリゴヌクレオチド分子、又はその断片、又はこれらの要素を含む分画を、部分的に又は完全に精製又は単離するための、濾過方法、分離方法、又は抽出方法等により前処理されてもよい。
【0035】
第2の態様において本発明は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の診断キット、又は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の素因の評価キット、又は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の保因者を同定するためのスクリーニングキットを提供し、これらキットは以下のものを1又は2以上含む:PCDH19タンパク質若しくはポリペプチドと、又は、その断片若しくは変異体と、特異的に結合する抗体又はその断片;及び、PCDH19タンパク質若しくはポリヌクレオチドを、又は、その断片若しくは変異体をコードするポリヌクレオチド分子と、高ストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブ/プライマー分子。
【0036】
かかるキットは、例えば、前記抗体若しくはその断片及び/又は前記オリゴヌクレオチドプローブ/プライマー分子を含む1又は2以上の容器又は入れ物と共に、方法操作の指示書及び、任意で、その後に、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患を診断するための、又は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク機能改変と関連する疾患の素因を評価するための、又は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の保因者を同定するための指示書を含んでいてもよい。
【0037】
好ましくは、前記抗体又はその断片は、配列番号2に記載のPCDH19アミノ酸配列と少なくとも70%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含むタンパク質又はポリペプチドと結合する。さらに、好ましくは、前記オリゴヌクレオチドプローブ/プライマー分子は、配列番号1に記載の完全PCDH19ORFヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子とハイブリダイズする。
【0038】
第3の態様において本発明は、対象者におけるPCDH19タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変の治療における、以下のものの使用を提供する:配列番号1に記載の完全プロトカドヘリン19(PCDH19)オープンリーディングフレーム(ORF)ヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子であって、前記ヌクレオチド配列が、機能的PCDH19タンパク質若しくはポリペプチドを、又は、その機能的断片若しくは機能的変異体をコードするヌクレオチド配列であるポリヌクレオチド分子;或いは、配列番号1に記載の完全PCDH19ORFヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子によりコードされる、機能的PCDH19タンパク質若しくはポリペプチド、又は、その機能的断片若しくは機能的変異体。
【0039】
好ましくは、前記ヌクレオチド配列は、配列番号1に記載の完全PCDH19ORFヌクレオチド配列と少なくとも85%の配列同一性を示し、さらに好ましくは、少なくとも95%の配列同一性を示す。
【0040】
より好ましくは、前記機能的PCDH19タンパク質又はポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む。
【0041】
明瞭性を期して述べるなら、本明細書で言及されるヌクレオチド配列同一性及びアミノ酸配列同一性のパーセントレベルは、Blosum62行列を用いたEMBL‐EBI高速フーリエ変換を用いた多重アラインメント(Multiple Alignment Using Fast Fourier Transform、MAFFT)ツール(http://www.ebi.ac.uk/mafft/)及び標準デフォルト設定により計算される「一致パーセント(match percentage)」を意味するものとして理解されるべきである。
【0042】
本明細書で用いられる「機能的断片」なる用語は、配列番号2に示される完全PCDH19アミノ酸配列を含むタンパク質又はポリペプチドと実質的に等価な生物学的活性を示す断片を指すものとしてとして理解されるべきである。
【0043】
アミノ酸配列に関して本明細書で用いられる「変異体」なる用語は、配列番号2に示される対応する完全アミノ酸配列(又は場合によってその一部)と高レベルの配列同一性を示すアミノ酸配列を含むが、かかる完全アミノ酸配列に由来するタンパク質又はポリペプチド(すなわち、配列番号2に示される完全PCDH19アミノ酸配列を含むタンパク質又はポリペプチド)の生物学的活性にいかなる有意な改変ももたらさない、さもなければ、生物学的活性の増加又は減少をもたらす(例えば、変異体は、生物学的活性を増加又は減少させる、1又は2以上のアミノ酸置換、付加、又は欠失、或いは、アミノ酸配列の付加又は欠失を含んでいてもよい)、かかる完全アミノ酸配列における1又は2以上の変異を含む、タンパク質若しくはポリペプチド又はその断片を指すものとして理解されるべきである。したがって、増加又は減少した生物学的活性を有する変異体は「機能的変異体」とみなされうる一方で、生物学的活性を有しない又は最小限の生物学的活性のみを有する変異体は、「非機能的変異体」とみなされうる。生物学的活性のいかなる有意な改変ももたらさない変異は、保存アミノ酸置換を含んでいてもよい。代表的な保存アミノ酸置換を、以下の表1に記載する。想定されている特定の保存アミノ酸は以下の通りである:G、A、V、I、L、M;D、E;N、Q;S、T;K、R、H;F、Y、W、H;及び、P、Nα‐アルキルアミノ酸。
【0044】
【表1】

【0045】
第4の態様において本発明は、対象者におけるプロトカドヘリン19(PCDH19)タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変の治療又は予防方法を提供し、前記方法は以下のステップを含む:
(i)以下のものを、任意で薬学的に許容可能な担体と組み合わせて、前記対象者に投与するステップ:配列番号1に記載の完全プロトカドヘリン19(PCDH19)オープンリーディングフレーム(ORF)ヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子であって、前記ヌクレオチド配列が、機能的PCDH19タンパク質若しくはポリペプチドを、又は、その機能的断片若しくは機能的変異体をコードするヌクレオチド配列であるポリヌクレオチド分子;配列番号1に記載の完全PCDH19ORFヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子によりコードされる、機能的PCDH19タンパク質若しくはポリペプチド、又は、その機能的断片若しくは機能的変異体;並びに/又は、PCDH19タンパク質機能欠失を補完する薬剤。
【0046】
好ましくは、かかる方法は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む機能的PCDH19タンパク質若しくはポリペプチド、又は、その機能的断片若しくは機能的変異体を投与することを含む。
【0047】
或いは、又はさらに、かかる方法は対象者におけるPCDH19機能欠失を補完する薬剤を投与することを含む。好ましくは、かかる薬剤は、他のプロトカドヘリン/カドヘリンタンパク質、又は、その機能的断片若しくは機能的変異体等の、PCDH19機能を補完するタンパク質又はポリペプチドである。好ましい補完薬剤の1例として、PCDH11Yが挙げられる。
【0048】
第4の態様の方法が、細胞全体又は組換え送達媒体(例えば、ウイルスベクター)の投与を含んでいてもよいと想定されている。適切なポリヌクレオチド分子送達ベクターには、本発明のポリヌクレオチド分子の染色体への組込みに適したもの(例えば、レトロウイルスベクター)、又は、単純にポリヌクレオチド分子の非組込み発現に適したもの(例えば、プラスミドベクター)が含まれる。代わりに、PCDH19タンパク質若しくはポリペプチド、又は、その機能的断片若しくは機能的変異体をコードするポリヌクレオチド分子の投与には、「裸DNA」の細胞への送達のための、当業者によく知られたあらゆる方法及び/又は薬剤が含まれてよい(例えば、リポソーム、リポプレックス、ポリプレックス、金微粒子、及びマンノースへの結合等)。
【0049】
第5の態様において本発明は、対象者における機能的プロトカドヘリン(PCDH19)タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変を治療可能な薬剤を提供する。
【0050】
第5の態様に照らして好ましい薬剤には、以下のものが含まれる:配列番号1に記載の完全PCDH19ORFヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性、好ましくは、少なくとも85%の配列同一性、さらに好ましくは、少なくとも95%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子;或いは、配列番号1に記載の完全PCDH19ORFヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性、好ましくは、少なくとも85%の配列同一性、さらに好ましくは、少なくとも95%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子によりコードされる機能的PCDH19タンパク質若しくはポリペプチド、又は、その機能的断片若しくは機能的変異体。最も好ましくは、かかる薬剤は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むPCDH19タンパク質又はポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子;或いは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む機能的PCDH19タンパク質又はポリペプチドである。
【0051】
さらに好ましい薬剤には、単離された又は組換え発現したPCDH11Yタンパク質若しくはポリペプチド、又は、その機能的断片若しくは機能的変異体が含まれる。PCDH19又はPCDH11Yのホモログ、アナログ、オルソログ、又は模倣体もまた適切でありえ、実際のところこれらは、例えば、インビボでの安定性、安全性、及び毒性、並びに、薬学的許容可能性等の、治療剤としての使用のためのさらなる望ましい特徴を有しうる。PCDH19又はPCDH11Yの好ましいホモログ、アナログ、オルソログ、又は模倣体の、望ましい特徴に照らした選択は、当業者によく知られた方法により容易に決定されうる。
【0052】
第5の態様に照らして特に好ましい薬剤は、EFMR治療、又は、EFMRの素因を有する対象者に対する予防処置を提供可能な薬剤である。
【0053】
第5の態様の薬剤は、薬学的に許容可能な担体と共に投与されること、並びに/或いは、あらゆる適切な薬学的/獣医学的組成物又は投与形態(例えば、経口投与、口腔内投与、鼻腔内投与、筋内投与、及び静脈内投与のための組成物)へと製剤されることも可能である。典型的には、かかる組成物又は投与形態は、EFMR治療に有効な量、又は、EFMRの素因を有する対象者への予防の提供に有効な量で対象者へと投与され、したがって、1日当たり薬剤約0.01μg/kg体重〜約100μg/kg体重で、より好ましくは、1日当たり薬剤約0.05μg/kg体重〜約25μg/kg体重で与えられてもよい。適切な組成物は、最も有効な結果を達成する必要に応じて、1日1回投与、1日複数回投与、又は制御放出若しくは持続放出が意図されていてもよい。
【0054】
第6の態様において本発明は、機能的プロトカドヘリン19(PCDH19)タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変を治療可能な薬剤の同定方法を提供し、前記方法は以下のステップを含む;
(i)配列番号1に示されるPCDH19ORFヌクレオチド配列の変異配列を含むポリヌクレオチド分子を有する細胞又は動物を提供するステップ;
(ii)被検物質を前記細胞に接触させる、又は、被検物質を前記動物に投与するステップ;及び
(iii)前記細胞又は動物における応答を対照応答と比較するステップ。
【0055】
第6の態様の方法は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変により引き起こされる疾患の治療を提供可能な薬剤、又は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変の予防処置を提供可能な薬剤を同定してもよい。
【0056】
かかる方法のステップ(iii)に言及されている対照応答は、被検物質に曝露されない前記細胞又は動物において検出されるベースライン応答を含んでいてもよく、代わりに、かかる対照応答は、正常又は野生型完全PCDH19ORFヌクレオチド配列を有する細胞又は動物における、被検物質への曝露後の応答であってもよい。
【0057】
被検物質は、例えば、民間の物質ライブラリー、又は、公的にアクセス可能な物質ライブラリー(例えば、クイーンズランド化合物ライブラリー(the Queensland Compound Library)(Griffith University、豪州クイーンズランド州ネイサン)や分子ライブラリー低分子レポジトリ(the Molecular Libraries Small Molecule Repository)(NIH Molecular Libraries、米国メリーランド州ベセスダ)から供給されうる、既知及び新規の化合物、合成物、及び他の物質から選択されてもよい。したがって被検物質は、タンパク質、ポリペプチド、若しくはペプチド(例えば、組換え発現PCDH19若しくはPCDH11Yタンパク質又はポリペプチド、或いは、その機能的断片又は機能的変異体)、又は、その模倣体(いわゆるペプトイド及びレトロインベルソペプチド(retro-inverso peptides)を含む)を含んでいてもよいが、より好ましくは有機低分子、特に、「薬らしさ」に関するLipinskiのルールオブファイブ(Lipinski's Rule of Five)に従う、又は、それに実質的に従う小有機分子を含む(Lipinski, CA et al., 2001)。被検物質はまた、既知又は新規の化合物の構造分析に基づいて選択されてもよく、さもなければ、PCDH19又はPCDH11Y結合部位、特にカルシウムイオン結合部位のさらなる構造分析に従って設計されてもよい。
【0058】
第6の態様の方法を、多数の被検物質のハイスループットスクリーニングに適するものとしてもよい。
【0059】
前記細胞又は動物における応答を対照応答と比較するステップは、1又は2以上の標準的結合アッセイフォーマット(例えば、ELISA法に基づくアッセイ又は競合法に基づくアッセイ)を用いて実施されてもよい。好ましくは、被検物質は、例えばカルシウムチャンネル受容体等への結合の検出を可能とするため、容易に検出可能な標識(例えば、蛍光色素又は放射性同位体)により標識される。活性の変化はかかるアッセイにおいて、好ましくは(例えば、マイクロプレートリーダーによる、又は、フローサイトメーターの使用による)検出工程の自動化又は部分的自動化を提供する、分光光度測定的、蛍光測定的、熱量測定的、又は化学発光的な手段を含む標準的方法を用いることにより観察されてもよい。
【0060】
動物における応答を対照動物(すなわち、正常又は野生型完全PCDH19ORFヌクレオチド配列を有する動物)と比較するステップには好ましくは、前記動物における病態の同定、特に、疾患の神経学的指標の分析が含まれる。
【0061】
第7の態様において本発明は、第6の態様の方法における使用のためのキットを提供し、前記キットは、配列番号1に示されるプロトカドヘリン19(PCDH19)ORFヌクレオチド配列の変異配列を含むポリヌクレオチド分子を有する1又は2以上の細胞又は動物を含む1又は2以上の容器及び/又は入れ物と共に、方法操作の指示書を含む。
【0062】
第8の態様において本発明は、機能的プロトカドヘリン19(PCDH19)タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変を治療可能な薬剤を同定するためのキットを提供し、前記キットは以下のものを含む;
(i)配列番号1に示されるPCDH19ORFヌクレオチド配列の変異配列を含むポリヌクレオチド分子を有する細胞又は動物;及び、任意で、
(ii)配列番号1に示される完全PCDH19ORFヌクレオチド配列の野生型を含むポリヌクレオチド分子を有する対照細胞又は動物であって、前記野生型が機能的PCDH19タンパク質若しくはポリペプチドを、又は、その機能的断片若しくは機能的変異体をコードする、対照細胞又は動物。
【0063】
第7又は第8の態様のキットはさらに、前記変異細胞又は動物における応答を対照応答と(例えば、被検物質により引き起こされるものとして)比較するための手段、応答(例えば、PCDH19の接着性又は変異細胞又は動物においてカルシウムイオン結合が損なわれていること)を検出するための手段、及び、例えば、被検物質、及び、例えば洗浄緩衝液、安定化緩衝液、又は他の試薬等を含む、当業者によく知られた他の構成要素を含んでいてもよい。
【0064】
第9の態様において本発明は、配列番号1に記載の完全プロトカドヘリン19(PCDH19)ORFヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含む単離されたタンパク質若しくはポリペプチド、又は、その機能的断片若しくは変異体を提供する。
【0065】
本明細書において用いられる「単離された」なる用語は、タンパク質若しくはポリペプチド、又は、その機能的断片若しくは変異体との関連で用いされた際や、ポリヌクレオチド分子との関連で用いされた際には 、細胞全体、その成分、並びに/或いは、外来タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、及び核酸分子等の他の外来性の細胞物質又は生体物質を基本的に含まない形の、タンパク質、ポリペプチド、機能的断片、変異体、又はポリペプチド分子を指すものとして理解されるべきである。かかるものとして、本発明の単離されたタンパク質、ポリペプチド、機能的断片、変異体、又はポリヌクレオチド分子は、(重量で)10%を決して超えない外来性の細胞物質又は生体物質を含む調製物で存在していてもよく、当業者によく知られたいかなる方法により調製されてもよい。
【0066】
好ましくは、タンパク質又はポリペプチドは、配列番号2に示される完全PCDH19アミノ酸配列と少なくとも75%の配列同一性を示し、細胞外カドヘリン(EC)ドメインに相当するアミノ酸配列と少なくとも65%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
【0067】
より好ましくは、タンパク質若しくはポリペプチド、又は、その機能的断片若しくは変異体は、配列番号2に示される完全PCDH19アミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性、さらに好ましくは、少なくとも95%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。最も好ましくは、タンパク質又はポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む。
【0068】
第9の態様の好ましい実施形態において、本発明は、1又は2以上のアミノ酸変異を含む、配列番号2に示されるアミノ酸配列の変異体、好ましくは非機能的変異体を提供する。特に好ましくは、かかる変異体内に含まれる変異には、配列番号2に示されるアミノ酸配列に対する以下の変化から選択される1又は2以上のアミノ酸変異が含まれる;V441E、Q85X、S671X、L667fsX717、N557K、I119fsX122、及びP364fsX375。
【0069】
単離されたタンパク質又はポリペプチド、その機能的断片又は変異体は、生物全体に由来する組織(例えば、生検組織)、培養組織(例えば、培養線維芽細胞)、又は他の組換え発現系から単離されてもよい。これには、イオン交換、クロマトグラフィー、電気泳動、等電点電気泳動、吸着クロマトグラフィー、ペーパークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、透析、限外濾過、ゲル電気泳動、ゲル濾過、及び超遠心分離を含む、タンパク質又はポリペプチドを単離するための、当業者によく知られたいかなる方法が関与していてもよい。
【0070】
本発明の組換えタンパク質又はポリペプチド、その機能的断片又は変異体を発現させるための適切な技術は、当業者によく知られており、例えば、適切な宿主細胞(例えば、CHO細胞及びBL21細胞)を用いて適切な発現ベクター又はカセットから組換えHisタグ付加PCDH19を発現させるための技術を含む。しかるのち、Hisタグ付加発現産物は、アフィニティークロマトグラフィーを用いて(例えば、Ni‐NTAカラム(Qiagen Inc製、米国カリフォルニア州バレンシア)を用いて)容易に単離されうる。機能的断片が提供されるべき場合には、単離された組換えタンパク質又はポリペプチドは、タンパク質分解酵素(例えば、トリプシン)を用いて切断されてもよい。
【0071】
本発明のタンパク質、ポリペプチド、変異体、又は、特に機能的断片は、任意で融合タンパク質等の合成タンパク質又はポリペプチドへと組み込まれてもよい。融合タンパク質は、製造又はダウンストリームプロセシングを助ける成分を含んでいてもよい(例えば、タンパク質、ポリペプチド、その機能的断片又は変異体は、分泌シグナルペプチド又はアフィニティー精製タグ等と結合されていてもよい)。
【0072】
第10の態様において本発明は、配列番号1に記載の完全プロトカドヘリン19(PCDH19)ORFヌクレオチド配列又はその相補配列と、少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。
【0073】
好ましくは、ポリヌクレオチド分子は、配列番号1に示される完全PCDH19ORFヌクレオチド配列と少なくとも85%の配列同一性、より好ましくは95%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含む。最も好ましくは、ポリヌクレオチド分子は、配列番号1に示されるヌクレオチド配列を含む。
【0074】
本発明のポリヌクレオチド分子は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を、又は、その機能的断片若しくは変異体を含むタンパク質又はポリペプチドをコードしてもよい。さもなければ代わりに、本発明のポリヌクレオチド分子は、非機能的PCDH19 mRNA(例えば、NMDプロセスによりにより分解される、中途終止コドンを含むmRNA)又は改変PCDH19 mRNAをコードしてもよい。本発明のポリヌクレオチド分子の他の例として挙げられるのは、配列番号1に示される完全PCDH19ORFヌクレオチド配列の10個〜50個の連続するヌクレオチド、より好ましくは、約15個〜30個の連続するヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドプローブ/プライマー分子である。
【0075】
ポリヌクレオチド分子が、配列番号1に示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性、好ましくは85%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも95%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含む場合には、かかるポリヌクレオチド分子は、例えば、DNAコードにおける縮重ゆえに、コードされるタンパク質又はポリペプチドにおいて有意な改変をもたらさない些細な変化においてのみ、或いは、特定の系における発現を高めるために(すなわち、好ましいコドン使用頻度に従うために)必要である些細な変化においてのみ、そのヌクレオチド配列と異なりうるということが好まれる。さらに、さもなければ、かかるポリヌクレオチド分子は、生物学的活性の増加又は減少を示す、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質又はポリペプチドの変異体(例えば、細胞外カドヘリン(EC)ドメインに1又は2以上のアミノ酸変異を含み、カルシウムイオン結合が損なわれることにより接着性の減少を示す変異体)をコードすることが好まれる。実際に、第10の態様の実施形態において本発明は、細胞外カドヘリン(EC)ドメインに1又は2以上のアミノ酸置換、付加、又は欠失を含み、カルシウム結合が損なわれることにより接着性の減少を示す変異体、好ましくは非機能的変異体をコードするポリヌクレオチド分子を提供する。かかるポリヌクレオチド分子によりコードされる特に好ましい変異には、配列番号2に示されるアミノ酸配列に対する1又は2以上の以下の変化が含まれる;V441E、Q85X、S671X、L667fsX717、N557K、I119fsX122、及びP364fsX375。配列番号1に示される完全PCDH19ORFヌクレオチド配列に関して、かかるアミノ酸配列変化の原因となる変異は、それぞれ以下の通りでありうる;1322T>A、253C>T、2012C>G、2030_2031insT、1671C>G、357delC、及び1091_1092insC。
【0076】
本発明のポリヌクレオチド分子は、適切な発現カセット又はベクターへとかかるポリヌクレオチド分子をクローニングし、しかるのちにかかる発現カセット又はベクターを適切な宿主細胞へと導入することを伴う組換え方法によって、コードされるタンパク質若しくはポリペプチド、又は、その機能的断片若しくは変異体を発現させるために用いられてもよい。適切な発現ベクターは、マルチクローニングサイト、検出タグ(例えば、グルタチオン‐S‐トランスフェラーゼ(glutathione-S-transferase、GST)又は緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein、GFP))、ダウンストリーム精製のためのタグ(例えば、ヒスチジンタグ(His))、リンカー、及び融合配列等の機能的配列を含んでいてもよい。
【0077】
第11の態様において本発明は、第10の態様のポリヌクレオチド分子で形質転換された細胞を提供する。
【0078】
ポリヌクレオチド分子は、配列番号1に示されるPCDH19ORFヌクレオチド配列の変異配列を含み、そのことにより、非機能的若しくは改変PCDH19mRNA、非機能的PCDH19タンパク質、又は改変機能を有するPCDH19タンパク質をコードするか、さもなければ、PCDH19タンパク質発現の減少を引き起こすポリヌクレオチド分子であってもよく、或いは、かかる変異配列の相補配列を含むポリヌクレオチド分子であってもよい。
【0079】
ポリヌクレオチド分子はまた、アンチセンスRNA、リボザイム、DNAザイム、又はPCDH19を標的とする干渉RNA分子(例えば、siRNA)からなるか、又は、それらをコードしていてもよい。
【0080】
形質転換細胞は、細菌細胞、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞から選択されてもよい。かかる細胞は、直接取込み、形質導入、f‐接合(f-mating)、又はエレクトロポレーションを含む、当業者によく知られたいかなる方法を用いて形質転換されてもよい。形質転換ポリヌクレオチド分子は、非組込みの形(例えば、非組込みプラスミド発現ベクター)で維持されてもよく、又は代わりに、形質転換細胞のゲノムに組み込まれてもよい。
【0081】
形質転換細胞は、当業者にとって容易に明らかな様々な形で応用されうるのであり、特に、本発明の単離された組換えタンパク質若しくはポリペプチド、又は、その機能的断片若しくは変異体の作製に用いられうる。
【0082】
形質転換細胞が、PCDH19タンパク質又はポリペプチド、その機能的断片又は変異体の製造及び収集が意図されるものである場合、組換え産物の発現は、例えば、タンパク質若しくはポリペプチド、その機能的断片若しくは変異体の直接検出のための、又は、発現タグ(例えば、Hisタグ)の検出のための、ウェスタン免疫ブロットアッセイにより決定されうる。
【0083】
第12の態様において本発明は、第10の態様のポリヌクレオチド分子を有する非ヒト動物を提供する。
【0084】
ポリヌクレオチド分子は、配列番号1に示されるPCDH19ORFヌクレオチド配列の変異配列を含み、そのことにより、非機能的若しくは改変PCDH19 mRNA、非機能的PCDH19タンパク質、又は改変機能を有するPCDH19タンパク質をコードするか、さもなければ、PCDH19タンパク質発現の減少を引き起こすポリヌクレオチド分子であってもよく、或いは、かかる変異配列の相補配列を含むポリヌクレオチド分子であってもよい。
【0085】
ポリヌクレオチド分子はまた、アンチセンスRNA、リボザイム、DNAザイム、又はPCDH19を標的とする干渉RNA分子(例えば、siRNA)からなるか、又は、それらをコードしていてもよい。
【0086】
ポリヌクレオチド分子は、好ましくは、動物組織を通じて均一に組み込まれる。キメラ動物が提供される場合には、ポリヌクレオチド分子は、好ましくは、動物の神経組織細胞に存在する。
【0087】
ポリヌクレオチド分子は、当業者によく知られたいかなる形質転換又は遺伝子組換えの方法によって動物へと導入されてもよい。かかる形質転換方法には、DNAトランスフェクション(エレクトロポレーション、リポソーム融合若しくはプロトプラスト融合、又はマイクロインジェクションを介する)、ウイルス送達ベクター(すなわち、アデノウイルスベクター及びレトロウイルスベクター等の、ゲノムへの組込みを容易にするベクター)に感染させること、又はランダム変異導入法とそれに続くスクリーニングによる所望の変異の選択を介することが含まれる。しかしながら、本発明の動物は一般に、好ましくは、マイクロインジェクション法により作製される。結果としてもたらされるトランスジェニック動物の遺伝的均一性を保証するため、マイクロインジェクションは、好ましくは、1細胞期胚に当業者によく知られたあらゆる方法により実施される。好ましいトランスジェニック動物には、齧歯目動物、特にマウス及びラットが含まれる。
【0088】
第11の態様の動物は、当業者にとって容易に明らかな様々な形で応用されうるのであり、特に、PCDH19タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変を補完する潜在的薬剤のスクリーニングのための方法又はキットにおける使用のための、インビトロ又はインビボ疾患モデルとしての使用に用いられうる。
【0089】
さらなる態様において本発明は、第9の態様のタンパク質又はポリペプチド、その機能的断片又は変異体と特異的に結合する抗体又はその断片を提供する。
【0090】
適切な抗体には、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体が含まれる。適切な抗体断片には、Fab断片及びF(ab´)断片等の抗体の酵素的切断により作製される断片、並びに、単一鎖Fv(scFv)断片等の組換え抗体断片が含まれる。
【0091】
抗体又はその断片は、例えば、野生型PCDH19タンパク質(すなわち、配列番号2に示される完全PCDH19アミノ酸配列を含む)と、その変異体とを、特に、その非機能的変異体とを識別可能であってもよい。したがって、本発明は、配列番号2に示される完全PCDH19アミノ酸配列の変異体と特異的に結合する抗体又はその断片にまで及ぶ。
【0092】
以下の実施例及び添付の図面により、本発明を以下にさらに説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
[実施例]
[材料と方法]
【実施例1】
【0093】
患者と親族の詳細
女性に限られた癲癇及び精神遅滞(EFMR)に罹患する構成員を有する7つの親族の人々が認められた。親族1〜4の医学的詳細はScheffer IE et al. (2007) に記載されている。親族5は、姉妹の1人が小児癲癇発作及びアスペルガー症候群を有し、彼女の姉妹が癲癇及び軽度の知能障害を有するためスクリーニングされた。親族6及び親族7の構成員の医学的詳細は、別に記載されている(Juberg RC and Hellman CD, 1971; Fabisiak K and Erickson RP, 1990; and Ryan SG et al., 1997)。
【実施例2】
【0094】
ノーザンブロッティング
ヒト脳(MTN)ブロットII及びV(Clontech Laboratories社より取得)を、製造者による説明書に従ってハイブリダイズした。検出アッセイには、ヒトPCDH19ORFのヌクレオチド2884〜3257を含むプローブ(NCBI受託番号921478)を使用した。かかるプローブを作製するために用いたプライマーは以下の通りである:
フォワードプライマー‐5'CCGGATTCTTGGCCACTCTGAC3'(配列番号3);及び
リバースプライマー‐5'CAATGGTGTAAGACACGGAAG3'(配列番号4)。
【0095】
かかる374bpプローブを、Mega primeDNA標識システム(GE Healthcare社製、米国ニュージャージー州ピスカタウェイ)を用いて、放射性α32P‐dCTP(Perkin Elmer社製、米国マサチューセッツ州ウォルサム)で標識した。
【実施例3】
【0096】
RT‐PCR分析
RNeasyミニキット(Qiagen社製、豪州ヴィクトリア州ドンカスター)を用いて線維芽細胞から完全RNAを抽出し、DNase I(Qiagen社製)で処理した。2μgのRNAを、1μgのランダムヘキサヌクレオチドでプライムし、製造者による説明書に従ってSuperscript IIを用いて90分間42℃で逆転写した(Invitrogen Corporation社製、米国カリフォルニア州カールズバッド)。反応効率を、遍在的に発現するESD遺伝子に特異的なプライマーを用いてPCRでテストした(Saviozzi et. al., 2006)。cDNAを、TaqDNAポリメラーゼ(Roche社製、スイス、バーゼル)及び特異的単一鎖DNAプライマーで35サイクル(変性、94℃で30秒間;アニーリング、プライマーの各ペアの特異的Tmで30秒間;伸長、72℃で30秒間)増幅した。PCR産物を、アガロースゲル電気泳動で分離し、UV下での可視化のため、1%エチジウムブロマイドで染色した。
【実施例4】
【0097】
組織培養‐初代皮膚線維芽細胞株
各対象者の上腕から切除された3mm皮膚生検組織を細断し、組織培養フラスコへと移した。生検組織を、20%ウシ胎仔血清(FCS)を加えたRPMI培地(さらに4mM L‐グルタミン、0.017mg/mlベンジルペニシリンを補充)で培養し、37℃、5%COで成育させた。確立後に線維芽細胞を、10%FCSを加えたRPMI中(上記の補充物を含む)で培養した。
【実施例5】
【0098】
皮膚線維芽細胞株のシクロヘキシミド処理
初代線維芽細胞を、10%FCSを加えたRPMI中に1x10/cm播種し、50μg/mlシクロヘキシミド(Sigma-Aldrich Co製、米国ミズーリ州セントルイス)と共に、又は、培地のみで、6時間インキュベートした。線維芽細胞を、滅菌細胞スクレーパー(Techno Plastic Products AG社製、スイス、トラザーディンゲン)を用いて収集し、その後、上記の完全RNA抽出及びcDNA作製のための逆転写前に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で一度洗浄した。
【実施例6】
【0099】
マウスのインサイチューハイブリダイゼーション分析
c57xCBAF1マウスの交尾後15.5日目(days postcoital、dpc)の胚頭部及び解剖された生後2日目(postnatal day 2、P2)の脳を、4%パラホルムアルデヒド中で4℃で固定し、30%スクロース中で凍結保護し、最適切削温度(optimal cutting temperature、OCT)で凍結した。16μM切片のインサイチューハイブリダイゼーションを、以前に記述された通り調製されたジゴキシゲニン標識化PCDH19アンチセンスRNAプローブ(Gaitan Y and Bouchard M, 2006)を用いて、以前に記述された通り実施した(Wilson LD et al., 2005)。全部で3つの新生仔及び2つの胚を分析し、代表切片を記録した。コントロールセンスプローブを利用したネガティブコントロールにはいかなるシグナルも検出されなかった。画像はZeiss社製Axiophot顕微鏡で撮影し、Adobe社製Photoshop CS(登録商標)を用いて編集及び最低限の処理(色及び明暗の調整)を施した。
【実施例7】
【0100】
半定量RT‐PCR
遺伝子発現プロファイルを、polyA+RNAから調製された第1鎖cDNAを含むRapid-Scan Gene Expression Human Brain cDNAパネル(Origene Technologies, Inc社製、米国メリーランド州ロックビル)を用いて作製した。かかるcDNAパネルでは、cDNAの4‐logの希釈系列により、半定量分析が可能である。かかるプロファイルを、約1ngの第1鎖cDNAを含むパネルから得た。PCRプライマーのペア;
X‐RT4F2‐5' GTA ACA AGT GTA CCT GGT ATG GAC T 3'(配列番号5)及び
X‐RT5R2‐5' TCA ACC TTT ACT TTC ATC ACG 3'(配列番号6)を、PCDH11X配列を増幅して683bpの産物をもたらすのに用い、プライマーペア;
Y‐RT4F‐5' TAC AAC AAA CTG TCA CAA GTG TTT 3'(配列番号7)及び
Y‐RT5R2‐5' TCA ACC TTT ACT TTC ATC ACA 3'(配列番号8)を、PCDH11Yを増幅して681bpの産物をもたらすのに用いた。プライマー;
WLF‐5' AAC CAG AAT ACC CGC AAC AC 3'(配列番号9)及び
WLR‐5' CTG CAG ATG GTC ACA TCG AC 3'(配列番号10)を、PCDH19を増幅して626bpの産物をもたらすのに用いた。
【0101】
PCDH19産物を増幅するのに用いられたPCR条件には、94℃で3分間の初期工程が含まれ、その後に94℃で30秒間、60℃で30秒間、及び72℃で2分間が35サイクル続く。PCDH11X及びPCDH11Y産物を、Hotstar Taq(Qiagen社製)を用いて、Hotstarの推奨サイクル条件(94℃で15分間の後、[94℃で30秒間、60℃で30秒間、72℃で1分間]が10サイクル続き、その後[94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間]を30サイクルの後、72℃で10分間が続く)に従い増幅した。
【実施例8】
【0102】
GenBank受託番号
入手可能な場合には、ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の一部を、GenBankライブラリーにアクセスして得た。これら配列に相当する受託番号は、以下の通りである:
不完全ヒトPCDH19 mRNA 受託番号NM_020766.1;
不完全ヒトPCDH19タンパク質 受託番号NP_065817.1;及び
完全ヒトPCDH19 mRNA及びタンパク質 受託番号GenBank EF676096。
【0103】
GenBankライブラリーには以下のURLからアクセスできる;
NCBI:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/、又は、Ensembl:http://www.ensembl.org/。
【0104】
ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、Sambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, Vol 1, 2, 3 (1989) に記載の標準的なジデオキシ鎖終結シークエンシング法(di-deoxy chain termination sequencing methods)により決定された。
[結果と考察]
【実施例9】
【0105】
遺伝的連鎖分析及びEFMR遺伝子の同定
EFMRを有する単一の大規模なアメリカ人親族を記述した先行研究(Juberg RC and Hellman CD, 1971; Fabisiak K and Erickson RP, 1990; and Ryan SG et al., 1997)の追跡研究として、EFMRの遺伝パターン、親族構成員の電気臨床的特徴、及びEFMR原因遺伝子の局在に基づいて、4つの新たなEFMR親族を同定した(Scheffer IE et al., 2004; Scheffer IE et al., 2007)。
【0106】
全部で7つのEFMR親族の家系図が作成され、発症女性及び伝達男性の特徴的な遺伝パターンが示された(図1)。親族内でのさらなる連鎖分析により、各親族における疾患条件は一貫してXq22に局在することが示された。
【0107】
EFMR遺伝子は、3つの親族の発端者において、リシークエンシングされたVEGAとしてアノテートされた737個のX染色体遺伝子から同定された。すべての3つの親族において、それぞれのX染色体が、プロトカドヘリン19(PCDH19)変異(X)をコードしており、かかる変異がEFMR臨床表現型と共分離することが見出された。PCDH19遺伝子は、Xq22(Ensembl)に位置することが知られていた(Ryan SG et al., 1997)。各親族の発症女性において検出されたPCDH19変異の配列クロマトグラムの一例が、家系図と共に図1に示される。
【0108】
親族構成員の配列分析により、親族3のPCDH19遺伝子における単一ナンセンスヌクレオチド変化2012C>G(残基S671X)が示された一方で、親族1及び2は、最初はいかなる変化も示さなかった(図1)。他の736の遺伝子がスクリーニングされた3つの家族において、その他の有害なヌクレオチド変化は同定されなかった。引き続いて行われた、アノテートされたPCDH19オープンリーディングフレーム(ORF)(受託番号NM_020766.1)の比較配列分析により、それが不完全なものであることが明らかとなった。このことから、さらにPCDH19ORFのN末端1.5kbのシークエンシングが動機付けられた。
【0109】
親族構成員のN末端シークエンシングにより、親族1においてミスセンス変化である1322T>A(残基V441E)、親族2においてナンセンス変化である253C>T(残基Q85X)、親族4においてフレームシフト変化と推定される2030_2031insT(残基L667fsX717)が同定された。未報告のアイルランド人EFMR親族(親族5)の発症女性のN末端PCDH19領域もまたシークエンシングされ、結果としてフレームシフト変化である375delC(残基I119fsX122)が同定された。アメリカ人の大規模EFMR親族(親族6)のPCDH19N末端領域がリシークエンシングされ、結果としてさらなるフレームシフト変異である1091_1092insC(残基P364fsX375)が同定された(Juberg RC and Hellman CD, 1971; Fabisiak K and Erickson RP, 1990; Ryan SG et al., 1997)(図1)。最後に、アミノ酸置換N557Kをコードするヌクレオチド変化1671C>Gが親族7において同定された。
【0110】
配列比較により、親族構成員間のサイレントヌクレオチド変化がさらに同定され、位置番号6(G>A)、348(G>A)、402(C>A)、1137(C>T)、1627(C>T)、及び1683(G>A)に位置特定された(頻度は表2に示す)。
【0111】
【表2】

【0112】
ヒトPCDH19アミノ酸配列を、他のヒトPCDH配列及び他種のPCDH19オルソログと部分的に配列比較することにより、2つのミスセンス変異、V441E及びN557Kによる影響を受けた残基の、他種との間及び他の機能的に類似したタンパク質との間での高度保存が示された(図3)。V441E変異は親族1に観察され、N577K変異は親族7に観察された。
【0113】
したがって、PCDH19ORFヌクレオチド変化は評価された7つのEFMR親族のすべてにおいて同定された。7つのヌクレオチド変化のすべてが、各EFMR親族における臨床表現型と共分離し、X連鎖精神遅滞(X-linked mental retardation、XLMR)を有すると推定される親族の250人の男性発端者、又は、750の対照X染色体においては同定されなかった。PCDH19変異の位置は、2つのミスセンス変異の位置及び保存を示す配列比較と併せて、一層、PCDH19変異がEFMRの原因であることを示す。
【実施例10】
【0114】
PCDH19変異とレット症候群又は自閉症との関係。PCDH19変異がまた、EFMRと類似した表現型を有する疾患の発症にも寄与するかどうかを決定するため、原因が未知で特定されていないレット症候群又は自閉症を発症する対象者を、PCDH19の変異に関してテストした。
【0115】
レット症候群は、EFMRと類似した表現型を呈することが知られている、女性に特異的な疾患である。2つのレット関連遺伝子、MECP2及びCDKL5の変異が陰性であったレット症候群と見られる46人の女性が調査された。レット症候群コホートにはヌクレオチド変化が見出されず、PCDH19変異が通常はレット症候群に寄与する可能性が低いことを示唆する。
【0116】
自閉症の特徴がEFMR発症女性によく見られることから、自閉症及び癲癇発作を発症している55人の女性からなるコホートが、PCDH19の変化に関してスクリーニングされた。このコホートにおいて変異が存在しなかったことは、PCDH19変異が自閉症に対しても通常は寄与しないことを示唆する。
【実施例11】
【0117】
PCDH19遺伝子の特徴
6つのエキソンからなるPCDH19遺伝子の完全3.477kbORFはアノテートされている(GenBank受託番号EF676096)。完全長のプロセシングされたPCDH19 mRNAは9.765kb長であり、このことは、成人ヒト脳の様々な領域に由来する男性及び女性のmRNAを混合したものに対してPCDH19特異的プローブを用いた、約9.8kbの転写物サイズを示したノーザンブロット分析により確認された(図4、PCDH mRNAはアスタリスクで示されている)。PCDH19エキソン2は、選択的にスプライシングされることが見出された(結果は図示せず)。
【0118】
PCDH19は、カドヘリンスーパーファミリー内のプロトカドヘリン(PCDH)δ2サブクラスに属する、1148アミノ酸からなるタンパク質をコードする。PCDH19タンパク質には、シグナルペプチド、6つの細胞外カドヘリン(EC)リピート、膜貫通(TM)ドメイン、並びに、保存されたCM1及びCM2を有する細胞質領域が含まれる。図2には概要図が示されており、PCDH19タンパク質のシグナルペプチド、細胞外カドヘリンドメイン(EC1、EC2、EC3、EC4、EC5、及びEC6を含む)、膜貫通ドメイン(TM)、及び細胞質(CM1及びCM2)ドメインに関して、各親族のPCDH19アミノ酸配列変化の位置を図示している。同定された7つのEFMR変異のすべてが、大きな細胞外ドメイン内に局在していた。
【0119】
PCDH19の生物学的役割は知られていない;しかしながら、PCDHファミリーのメンバーは主に神経系に発現しており、神経細胞結合の確立及びシナプス膜におけるシグナル伝達に関与していると想定されている(Wu Q and Maniatis T, 1999; Yagi T and Takeichi M, 2000)。
【0120】
図3に示されるヒトPCDH及び他種のPCDH19オルソログの部分的な配列比較により、2つのミスセンス変異、V441E(上パネル)及びN557K(下パネル)の影響を受けた残基の高度保存が示される。N557K変異は、EC5ドメイン内の不変異体アスパラギン(N)残基に影響を与える(図2)。古典的カドヘリンのEC1の対応アスパラギン残基(例えば、N‐カドヘリンのN100;Patel SD et al., 2006)及びプロトカドヘリンのEC1の対応アスパラギン残基(例えば、CNR/PcdhαのN101;Morishita H et al., 2006)は、EC1ドメインのカルシウムイオン結合及び接着機能に不可欠である。したがって、PCDH19陰性細胞及びPCDH19野生型細胞による組織モザイクは、細胞間伝達を混乱させ、臨床的にはEFMRとして発症すると予測される。位置番号441のバリン残基(図2のEC4、又は、対応残基であるN‐カドヘリンのEC1のV96;Patel SD et al., 2006;又は、対応残基であるCNR/PcdhαのEC1のV97;Morishita H et al., 2006)もまた高度に保存されており(図3)、カルシウム結合部位(両配列比較に対する括弧で示される)にきわめて近接する。したがって、2つのミスセンス変異、V441E及びN557Kは、PCDH19機能欠失をもたらすと予測される。
【0121】
したがって、両方のPCDH19ミスセンス変異体が、カルシウム接合を損なうことによってPCDH19接着機能に悪影響を及ぼすと予測される。7つのPCDH19変異それぞれと関連する臨床表現型が類似することを考慮すると、それらすべての変異を機能欠失変異として提示するのは合理的である。
【実施例12】
【0122】
変異PCDH19 mRNA転写物の安定性
PCDH19変異253C>T、Q85X(親族2)及び2012C>G、S671X(親族3)は、中途終止コドン(PTC)をPCDH19 mRNAに導入する。かかるPTCを含むmRNAは、通常はNMD監視複合体により認識され、効率的に分解される(Maquat LE, 2004)。PCDH19変異253C>T、Q85X(親族2)及び2012C>G、S671X(親族3)の帰結を、それらの各mRNAの安定性に関して、RT‐PCRで生検患者から収集された初代皮膚線維芽細胞におけるPCDH19 mRNAを検出することにより検査した。
【0123】
図5が示すのは、親族2のEFMR発症女性に由来する配列クロマトグラムであり、ゲノムDNA(gDNA)(上パネル)における253C>T、Q85X変異の検出、線維芽細胞cDNAにおける変異配列の非存在(中パネル)、並びに、線維芽細胞のシクロヘキシミド処理後の変異体及び野生型cDNA両方の存在(下パネル)を示している。シクロヘキシミドは、パイオニアラウンド(pioneer round)の翻訳及びNMDがもたらされることを阻害する。同様の結果が親族3のEFMR発症構成員(2012C>G変異、S671X)から収集された組織に見出された(データは示されていない)。皮膚線維芽細胞のシクロヘキシミド処理によるNMDの阻害は、PTC変異を含むmRNAを保存することが見出された。
【0124】
変異PCDH19 mRNAの非存在がX染色体不活性化のゆがみの結果でないことを確証するため、入手可能な各発症女性の血液及び皮膚線維芽細胞培養物から単離されたDNAにおけるランダムなX染色体不活性化が評価された(データは示されていない)。X染色体不活性化のゆがみの非存在は、刊行されているデータと一致する(Ryan SG et al., 1997; Scheffer IE et al., 2007)。
【0125】
結果が示すのは、親族2及び親族3におけるPTC変異が、NMDによるmRNA除去をもたらすということである。親族4に見出される2030_2031insT(残基L667fsX717)の変異、親族5に見出される375delC(残基I119fsX122)の変異、及び親族6に見出される1091_1092insC(残基P364fsX375)の変異もまた、それらそれぞれのPTCを含むmRNAのNMD分解の結果として、機能的mRNAの完全欠損をもたらすと予測される。
【実施例13】
【0126】
発生中の脳におけるPCDH19発現
発生中のマウスCNSにおけるPCDH19発現を検討するため、胚組織(交尾後15.5日目(dpc))及び生後2日目の組織のPCDH19 mRNAのインサイチューハイブリダイゼーション分析が行われた。図6が示すのは、15.5dpc(図6a〜図6f)及びP2(図6g〜図6l)の発生中のマウスCNSにおけるPCDH19発現である。図6a及び図6bが示すのは、隣接切片をそれぞれ、ヘマトキシリン及びエオシンで染色したもの、並びに、インサイチューでPCDH19に関して処理したものである。PCDH19 mRNAは胚前脳において広範かつ対称的なパターンで発現し、多くの場合皮質(CxP、皮質板)内、視床(Th)内、及び視床下部(Hy)内の分散した細胞集合に局在していた。側脳室(lv)及び海馬神経上皮(Hn)にもまた発現が示された。図6c、図6d、及び図6eが示すのは、図6bでボックスに囲われた領域のより高倍率の画像である。図6cの矢印は、皮質内のPCDH19発現細胞を示す。皮質では、発現は皮質板に限られ、大脳半球間裂(icf)へと内側に延びていた(図6d)。図6eのアスタリスクは、側脳室の背外側壁を示し、側脳室の背外側壁と隣接する神経節隆起にもまた強い発現が検出された。
【0127】
この段階で海馬での発現は、予定海馬における側脳室の内側端では観察されなかった(図6b及び図6e)。しかしながら、引き続いて行われた前脳前側切片の分析により、鼻腔の上皮層(以前の報告と一致(Gaitan Y and Bouchard M, 2006))及び嗅球におけるPCDH19発現が明らかとなった(図6f参照、嗅球はObで、鼻上皮はNeで示される)。
【0128】
図6g及び図6hが示すのは、隣接切片をそれぞれ、ヘマトキシリン及びエオシンで染色したもの、並びに、インサイチューハイブリダイゼーションによりPCDH19 mRNAに関して処理したものである。図6iが示すのは、図6hに示された脳切片の後側に位置する脳切片であり、それぞれPCDH19 mRNA発現を示している。図6j、図6k、及び図6lが示すのはそれぞれ、図6g及び図6hでボックスに囲われた領域の、より高倍率の画像である。
【0129】
生後2日目、PCDH19発現は皮質及び視床の分散した領域に維持されていたが、胚脳と異なり、海馬にも発現が観察された(図6g、図6h、及び図6i)。皮質では、発現は第II層から第IV層に広がる細胞帯に限られ(図6j及び図6kに矢印で示される)、一方で最も顕著なPCDH19シグナルは、海馬のCA1及びCA3領域に観察された(図6h及び図6l)。
【0130】
前のノーザンブロット分析(図2)と一致して、PCDH19転写物は脳梁を含む白質路には検出されなかった(図6h)。これらのデータは併せて、PCDH19が、発生中の皮質及び海馬を含む胚脳並びに成体脳の両方において広範な発現を有することを示しており、ヒトにおけるこの遺伝子の変異が認知障害と関連するという発見と一致する。
【実施例14】
【0131】
観察された疾患遺伝パターンの機序
EFMR親族家系図の分析により、7つのEFMR親族内に、EFMRと診断されていない2人の絶対保因女性(親族6、個人III.2及び親族7、個人IV.15)がいることが示され、疾患の浸透率(penetrance)が不完全であることが示された。PCDH19変異を同定した後、EFMRに観察される注目すべき遺伝パターンに関して、機序の説明が追求された。
【0132】
Ryan SG et al., 1997により検討された仮説の一つは、女性における変異タンパク質の野生型タンパク質に対する優性阻害効果が、女性に限られた表現型の発現の原因であるかもしれないと示唆する。本実施例では、発症女性及び保因男性において変異PCDH19 mRNAがNMDにより除去されることが示され(図2及び示されていないデータ)、このことは優性阻害仮説と一致する。しかしながら、伝達男性をEFMR表現型からレスキューするY染色体上の補完遺伝子に関するある代替仮説(Ryan SG et al., 1997)を検討する中で、ヒトY染色体上にはPCDH19パラログが存在しない一方で、Xq22とのX‐Y相同ブロック内に関連プロトカドヘリン遺伝子PCDH11Yが存在することに着目した。PCDH11Y遺伝子は、チンパンジーとヒトの分岐後にXqからの転移により生じたと考えられており(Lambson B et al., 1992; Page DC et al., 1984)、したがって、PCDH11Y遺伝子はヒトの男性にのみ見出される。
【0133】
PCDH19及びPCDH11X/Yのノーザンブロット分析を、ヒトの小脳、大脳皮質、髄質、脊髄、後頭極、前頭葉、側頭葉、被殻、扁桃体、尾状核、脳梁、海馬、視床、及び全脳組織について実施した。図6cが示すのは、PCDH19転写物の存在(アスタリスクで示されている、約9.8kbバンド)及びPCDH11X/Y mRNAの存在(矢印で示されている、約9.5kbバンド)である。図8もまた、ヒト成人の前頭葉、側頭葉、小脳、海馬、黒質(substantial nigra)、尾状核、扁桃体、視床、視床下部、脳橋、髄質、及び脊髄におけるPCDH19、PCDH11X、及びPCDH11Yの発現プロファイルを示している。プロトカドヘリンファミリーの他のメンバーの多くと同じように(Kim SY et al., 2007)、PCDH19、PCDH11Y、及びPCDH11Xはヒト脳に発現している。PCDH11X及びPCDH11Yは高い配列類似性を示し、ヌクレオチドレベルで98.1%同一、アミノ酸レベルで98.3%同一であり(Blanco P et al., 2000)、脳領域において類似した発現プロファイルを示す(Blanco P et al., 2000及び図8)。しかしながら、PCDH11X及びPCDH11Yは、それらのORF配列の5´末端及び3´末端で配列多様性が生じ、異なる形で調節され、脳におけるそれらの発現領域にわずかな違いが見られる(Blanco P et al., 2000)。したがって、PCDH11X及びPCDH11Yが異なる機能を進化させたということはありうる。
【0134】
配列比較が示すのは、PCDH11X及びPCDH11Yの両方の細胞外カドヘリン(EC)ドメインが、PCDH19のECドメインとある程度の類似性を有するということである;それは、PCDH19のECドメインと、同じPCDHd2サブクラスのメンバー(PCDH‐8、10、17、及び18)との間に見られるよりも高いレベルの類似性である。
【0135】
PCDH11XとPCDH11Yとの間の高度の配列同一性及び発現パターンの重複は、PCDH11Xが女性におけるPCDH19機能欠失変異を補完し、PCDH11X及びPCDH11Yの両方が男性におけるPCDH19変異を補完するという仮説に裏付けを提供する。
【0136】
PCDH11Yの独自に進化した機能は、このタンパク質がPCDH11Xよりも大きくPCDH19変異のレスキューを提供することを可能としたかもしれず、このことは、EFMRを発症する女性よりも症状が現れない男性保因者の頻度が大きいことに理論的根拠を提供する。
【0137】
EFMR遺伝の背景にある機序として提示したものを図示化したものが、図7に描かれている。PCDH19遺伝子はXq22.1に位置し、現在ではEFMR変異を抱えると知られている。X染色体及びY染色体の相同領域内には2つのかなり類似したPCDH遺伝子、X染色体上のPCDH11X及びY染色体上のPCDH11Yが存在する。本明細書に提供されている結果が示すのは、PCDH11Yが伝達男性においてPCDH19変異を機能的にレスキューするかもしれず、一方で女性においてPCDH11Xはレスキューを行うことができず、EFMR表現型が女性に限られることを説明する。
【0138】
本明細書において特徴づけられた7つのPCDH19変化すべての機能欠失、それら変化の対照染色体における非存在、X染色体上の他所における潜在的病原変異体の証拠の非存在、及びmRNA研究により、同定されたPCDH19変異がEFMRの原因であることが決定的に示される。完全PCDH19ORFに相当するヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の同定により、EFMR及び機能的PCDH19タンパク質欠損と関連する類似疾患の診断薬及び治療薬の開発が提供される。さらに、PCDH11YによるPCDH19レスキュー機序と考えられるものの解明により、PCDH19タンパク質欠損と関連する疾患の代替治療薬の同定及び開発の可能性が提供される。
【0139】
特徴付けられた7つのEFMR変異すべてが大きな細胞外ドメインに位置し、これら変異のうち5つが、それらそれぞれのPTCを含むmRNAのNMD分解の結果としての、完全機能欠失変異と予測される。残り2つのミスセンス変異、V441E及びN557Kは、PCDH19機能欠失をもたらすと予測される。機能欠失は、PCDH19接着性の欠如によりカルシウムイオン結合が損なわれた結果かもしれない。したがって、遺伝的及び機能的標的が、PCDH19タンパク質欠損と関連する疾患の診断方法、かかる疾患の素因の同定方法、及び、かかる疾患の保因者を同定するためのスクリーニング方法、並びに、PCDH19タンパク質欠損と関連する疾患の治療において治療的使用の可能な候補物質をスクリーニングするための方法及びキットにおける使用のために提供される。
【0140】
以上の詳細な説明において本発明の方法の好ましい実施形態が記述されたとはいえ、本発明は開示された実施形態に限られず、本発明の範囲を出ることなく、数多くの再構成、修正、及び置換が可能であることが理解される。
【0141】
本明細書を通じて、「含む」なる用語、又は「含み」若しくは「含んだ」等の語形変化形は、物であろうが工程であろうが、述べられた要素、又は、物であろうが工程であろうが、述べられた要素の集合を含むが、物であろうが工程であろうが、その他のいかなる要素、又は、物であろうが工程であろうが、その他のいかなる要素の集合も排除しないことを示すものと理解される。
【0142】
本明細書において言及された刊行物はすべて、本明細書に参照により組み込まれる。本明細書に含まれた書類、文書、資料、図案、又は記事等に関するあらゆる議論が、本発明の文脈を提供する目的でのみなされたものである。これらの文献の一部又は全部が豪州又は他の場所に本願の各請求項の優先日よりも前に存在していたからという理由で、それが先行技術基盤の一部を形成するということ、或いは、本発明に関係する技術分野において共有される一般的知識であったということを認めることになるとは、理解されるべきではない。
【0143】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能的プロトカドヘリン19(PCDH19)タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の診断方法、又は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19機能改変と関連する疾患の素因の評価方法、又は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の保因者を同定するためのスクリーニング方法であって、以下のステップを含む方法:
(i)対象者からの適切な生物学的試料において、PCDH19タンパク質機能欠失又はPCDH19タンパク質機能改変を検出するステップ。
【請求項2】
PCDH19タンパク質が、配列番号1に記載の完全PCDH19オープンリーディングフレーム(ORF)ヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列によりコードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
疾患が、癲癇及び/又は精神遅滞により特徴付けられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
疾患が、EFMR(女性に限られた癲癇及び精神遅滞)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(i)が、PCDH19タンパク質の細胞外(EC)ドメインをコードするPCDH19遺伝子領域における変異配列を検出することを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
変異配列が、以下のヌクレオチド配列変化のうち1つ又は2つ以上を含む、請求項5に記載の方法:1322T>A、253C>T、2012C>G、2030_2031insT、1671C>G、357delC、及び1091_1092insC。
【請求項7】
機能的プロトカドヘリン19(PCDH19)タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の診断キット、又は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の素因の評価キット、又は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の保因者を同定するためのスクリーニングキットであって、以下のもののうち1又は2以上を含むキット:PCDH19タンパク質若しくはポリペプチドと、又は、その断片若しくは変異体と、特異的に結合する抗体又はその断片;及び、PCDH19タンパク質若しくはポリペプチドを、又は、その断片若しくは変異体をコードするポリヌクレオチド分子と、高ストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブ/プライマー分子。
【請求項8】
抗体若しくはその断片及び/又はオリゴヌクレオチドプローブ/プライマー分子を含む1又は2以上の容器又は入れ物と共に、方法操作の指示書及び、任意で、その後に、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患を診断するための、又は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の素因を評価するための、又は、機能的PCDH19タンパク質欠損若しくはPCDH19タンパク質機能改変と関連する疾患の保因者を同定するための指示書をさらに含む、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
対象者におけるPCDH19タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変の治療における、以下のものの使用:配列番号1に記載の完全プロトカドヘリン19(PCDH19)オープンリーディングフレーム(ORF)ヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子であって、前記ヌクレオチド配列が機能的PCDH19タンパク質若しくはポリペプチド、又はその機能的断片若しくは機能的変異体をコードするポリヌクレオチド分子;或いは、配列番号1に記載の完全PCDH19ORFヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子によりコードされる、機能的PCDH19タンパク質若しくはポリペプチド、又はその機能的断片若しくは機能的変異体。
【請求項10】
機能的PCDH19タンパク質又はポリペプチドが、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
以下のステップを含む、対象者におけるプロトカドヘリン19(PCDH19)タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変の治療方法又は予防方法:
(i)対象者に以下のものを、任意で薬学的に許容される担体と組み合わせて投与するステップ:配列番号1に記載の完全プロトカドヘリン19(PCDH19)オープンリーディングフレーム(ORF)ヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子であって、前記ヌクレオチド配列が機能的PCDH19タンパク質若しくはポリペプチド、又はその機能的断片若しくは変異体をコードするポリヌクレオチド分子;或いは、配列番号1に記載の完全PCDH19ORFヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子によりコードされる、機能的PCDH19タンパク質若しくはポリペプチド、又は、その機能的断片若しくは機能的変異体;並びに/又は、PCDH19機能を補完する薬剤。
【請求項12】
ステップ(i)が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む機能的PCDH19タンパク質又はポリペプチドを投与することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
対象者における機能的プロトカドヘリン19(PCDH19)タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変を治療可能な薬剤。
【請求項14】
以下のステップを含む、機能的プロトカドヘリン19(PCDH19)タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変を治療可能な薬剤の同定方法:
(i)配列番号1に示されるPCDH19ORFヌクレオチド配列の変異配列を含むポリヌクレオチド分子を有する細胞又は動物を提供するステップ;
(ii)被検物質を前記細胞に接触させる、又は、被検物質を前記動物に投与するステップ;及び
(iii)前記細胞又は動物における応答を対照応答と比較するステップ。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において使用するためのキットであって、配列番号1に示されるプロトカドヘリン19(PCDH19)オープンリーディングフレーム(ORF)ヌクレオチド配列の変異配列を含むポリヌクレオチド分子を有する1又は2以上の細胞又は動物を含む1又は2以上の容器及び/又は入れ物と共に、方法操作の指示書を含むキット。
【請求項16】
以下を含む、機能的プロトカドヘリン19(PCDH19)タンパク質欠損又はPCDH19タンパク質機能改変を治療可能な薬剤を同定するためのキット:
(i)配列番号1に示されるPCDH19オープンリーディングフレーム(ORF)ヌクレオチド配列の変異配列を含むポリヌクレオチド分子を有する細胞又は動物;及び、任意で、
(ii)配列番号1に示される完全PCDH19ORFヌクレオチド配列の野生型を含むポリヌクレオチド分子を有する対照細胞又は動物であって、前記野生型が機能的PCDH19タンパク質若しくはポリペプチド、又は、その機能的断片若しくは機能的変異体をコードする、対照細胞又は動物。
【請求項17】
配列番号1に記載の完全プロトカドヘリン19(PCDH19)オープンリーディングフレーム(ORF)ヌクレオチド配列と少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含む、単離されたタンパク質若しくはポリペプチド、又はその機能的断片若しくは変異体。
【請求項18】
配列番号2に示される完全PCDH19アミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の単離されたタンパク質若しくはポリペプチド、又は、その機能的断片若しくは変異体。
【請求項19】
アミノ酸配列がカルシウム結合部位内又はカルシウム結合部位から20アミノ酸以内のアミノ酸置換を含む、請求項17又は18に記載の変異体。
【請求項20】
アミノ酸置換がV441E、Q85X、S671X、L667fsX717、N557K、I119fsX122、及びP364fsX375から選択される、請求項17又は18に記載の変異体。
【請求項21】
配列番号1に記載の完全プロトカドヘリン19(PCDH19)オープンリーディングフレーム(ORF)ヌクレオチド配列又はその相補配列と、少なくとも70%の配列同一性を示すヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項22】
ヌクレオチド配列がPCDH19タンパク質の細胞外(EC)ドメインをコードする領域に1又は2以上の変異を含む、請求項21に記載の分子。
【請求項23】
ヌクレオチド配列が以下の変異のうち1又は2以上を含む、請求項22に記載の分子:1322T>A、253C>T、2012C>G、2030_2031insT、1671C>G、357delC、及び1091_1092insC。
【請求項24】
請求項21〜23のいずれかに記載のポリヌクレオチド分子で形質転換された細胞。
【請求項25】
請求項21〜23のいずれかに記載のポリヌクレオチド分子を有する非ヒト動物。
【請求項26】
請求項17〜20のいずれかに記載のタンパク質又はポリペプチド、その機能的断片又は変異体と特異的に結合する抗体又はその断片。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−509080(P2011−509080A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540991(P2010−540991)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000008
【国際公開番号】WO2009/086591
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(510184667)メドベット サイエンス ピーティーワイエルティーディー (1)
【氏名又は名称原語表記】MEDVET SCIENCE PTY LTD
【Fターム(参考)】