説明

EGCGおよびリコペン含有経口組成物

(−)−エピガロカテキンガレート(EGCG)とリコペンとの組み合わせを含む組成物であって、EGCGとリコペンとの比が100:1〜1:1の範囲にあることを特徴とする組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、太陽光による皮膚の老化(光老化)を防止するための(−)−エピガロカテキンガレート(EGCG)およびリコペンを特定の比率で含有する経口組成物に関する。
【0002】
皮膚が慢性的に紫外線に曝されると、影響を受けた皮膚の部位に過角化症、ケラチノサイト形成不全症および真皮弾性線維症などの表皮および真皮の損傷を引き起こし、臨床的には光線性もしくは日光性角化症として現れる。皮膚の光損傷および光老化の分子レベルのメカニズムは広範な研究の主題であった。紫外線はあらゆる種類の上皮細胞成長因子およびサイトカイン受容体を活性化させる(リッティー(Rittie)およびフィッシャー(Fisher)2002)。このリガンド非依存性の受容体活性化は、転写因子AP−1を刺激するために集束する多数の下流シグナル伝達経路を誘起する。AP−1により上方制御される遺伝子に、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)ファミリーメンバーがある。
【0003】
したがって、MMPはとりわけ太陽の紫外線照射による皮膚の損傷の原因であり、皮膚の色合いや弾力性に影響を及ぼし、早期老化に繋がる。MMPは皮膚の細胞外マトリックス中のコラーゲンやエラスチンを分解する。MMPの発現および活性が増加すると、コラーゲンタンパク質分解が加速され、コラーゲン発現の減少と相俟って皮膚の弾性線維症や皺を発生させる(ベルネブルク(Berneburg)2003)。その症状としては、皮膚のガサガサ感、皺、斑状の色素沈着、弛みおよび色不良が挙げられる。
【0004】
MMPは、最も重要かつ十分に研究された光老化関連遺伝子の一つである。したがって、光老化に関する食品成分の保護能力を確立するために、それらのUVA誘起によるMMP抑制効果を研究することは非常に重要である。(−)−エピガロカテキンガレート(EGCG)は、各種の皮膚コラゲナーゼを抑制する食品化合物の一つである(リー(Lee)ら、2005)。ベータカロテン―プロビタミンAカロテノイド―もまた、UVA誘起によるコラゲナーゼを抑制することが知られている(ベルツ(Wertz)ら、2004)。他方、非プロビタミンAダイエタリーカロテノイド―リコペン―は、UVA誘起によるMMP1を一層増加させることが報告されている(オフォード(Offord)ら、2002)。この増加はビタミンEとの組み合わせにおいてのみ防止された。
【0005】
したがって、皮膚の太陽光により誘起される老化(光老化)を防止する活性成分を提供することが本発明の目的であった。
【0006】
驚いたことに、EGCGとリコペンの相乗的な組み合わせによって、特に、EGCGとリコペンを100:1〜1:1の範囲の混合比で含有する経口組成物によって、本発明の目的が達成されることがわかった。
【0007】
EGCGとリコペンの組み合わせが、UVA誘起によるMMP1の抑制に優れた相乗的活性を示し、それにより老化防止/皺防止の効果を発揮することは、当業者に予想できることではなかった。リコペンとEGCGの相乗的組み合わせは、実際に太陽/UV光に曝される数日から数週間前に与えられた場合にも、光老化を防止する。それは、強い太陽光への曝露、すなわち日光浴の直前、日光浴の間およびその後に摂取した場合でも、保護する。
【0008】
用語「EGCG]は、本明細書で使用されるとき、(−)−エピガロカテキンガレートおよび/またはその誘導体の1種以上(例えば、エステル化形態、グリコシド、硫酸塩)を意味する。特に好ましくは、(−)−エピガロカテキンガレートそれ自身である。
【0009】
本発明の好ましい実施形態において使用されるEGCGは、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より一層好ましくは少なくとも92%、特に好ましくは少なくとも94%の純度を有する。また、例であり、かつ好ましくもある、米国特許第6,383,392号明細書、欧州特許第1103550号明細書、米国特許出願第10/246112号明細書および欧州特許第1077211号明細書に記載のいずれかの方法で得られるような、その全量を基準にして少なくとも80%(好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より一層好ましくは少なくとも92%、特に好ましくは少なくとも94%)の量のEGCGを含有する水性緑茶抽出物が、特に好ましい。ガロカテキンガレート、カテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、ガロカテキンおよびエピカテキンなどの他のポリフェノールおよびカテキンは、緑茶抽出物の全重量を基準にして重量%以下であることが好ましい。ガロカテキンガレートの量が2.5重量%以下で、かつ/またはエピカテキンガレートの量が5重量%以下(好ましくは3重量%以下)であるとより好ましい。
【0010】
本発明においては、それぞれ緑茶抽出物の全重量を基準にして、緑茶抽出物中のカフェインの量が2.5重量%以下、好ましくは0.1重量%以下で、かつ/または没食子酸の量が0.1重量%以下であることが有利である。
【0011】
本明細書で使用されるとき、用語「リコペン」は、全てのEおよびZ立体異性体を含む。あるいはまた、多量のリコペンを含有するトマト抽出物も使用することができる。
【0012】
本発明においては、EGCGとリコペンとの比が100:1〜1:1の範囲、好ましくは50:1〜3:1の範囲、最も好ましくは25:1〜5:1の範囲にあることが有利である。
【0013】
本発明においては、その1日当たりの有効量(「1日投与量」)が下記に示す範囲となるように活性成分を投与することが有利である。したがって、1日投与量を全て1度に(1回の投与で)投与しても、あるいは複数回の投与で与えてもかまわない。
【0014】
EGCG:体重約70kgのヒトの1日投与量:50〜600mg、体重約70kgのヒトの好ましい1日投与量:150〜300mg。
【0015】
リコペン:体重約70kgのヒトの1日投与量は、40mg、好ましくは25mgを超えないようにすべきであり、体重約70kgのヒトの1日量は、0.1〜40mgとすることが有利であり、0.5〜25mgとすることがより好ましい。
【0016】
組成物を経口投与用に錠剤、カプセル、顆粒または粉末の形態で調製する場合、担体としてラクトース、サッカロース、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、デンプン、デキストリンおよび/またはマルトデキストリン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムおよび/またはリン酸水素カルシウム、カオリン、結晶性および/または微結晶性セルロース、並びに/あるいはケイ酸などの賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、グルコース溶液、デンプンおよび/または加水分解デンプン溶液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、セラック、メチルセルロース、エチルセルロース、リン酸カルシウムおよび/またはポリビニルピロリドンなどのバインダー;乾燥デンプン、クロスカルメロース、クロスポビドン、アルギン酸ナトリウム、寒天末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプンおよび/またはラクトースなどの分解剤;ステアリン酸、カカオバターおよび/または水素化オイルなどの分解防止剤;4級アンモニウム塩基および/またはラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収剤;グリセロールおよび/またはデンプンなどの保湿剤;デンプン、ラクトース、カオリン、ベントナイトおよび/またはコロイダルシリカなどの吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末および/またはポリエチレングリコールなどの潤滑剤;サッカロース、オレンジの皮、クエン酸および/またはコハク酸などを使用することができる。
【0017】
組成物を錠剤の形態で調製する場合、これらは通常のコーティング材で被包した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチンコーティング錠、腸溶性コーティング錠、フィルムコーティング錠、二重コーティング錠、多層コーティング錠などとして提供することができる。カプセルは、本発明の化合物を上で例示した各種担体またはこの分野の最先端の技術によるものと混合し、その混合物を硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセルなどに充填することによって調製される。
【0018】
本発明の組成物には、例えば、バランスのとれた良好な栄養を維持するため、あるいは、ある食物では欠乏する必須栄養素を十分な量で得るために、マルチビタミンおよびミネラルの補給剤を加えることができる。マルチビタミンおよびミネラルの補給剤は、病気の予防や、生活パターンおよび糖尿病で往々にしてよく見られる不適切な食生活から来る栄養の損失および欠乏を防ぐためにも有用である。
【0019】
本発明の組成物は、食物または飲料物の組成物とすることができる。飲料物としては、例えば、スポーツドリンク、エネルギードリンクもしくは他のソフトドリンク、または他の任意の適切な飲料調製品が挙げられる。
【0020】
スポーツドリンクは、スポーツ選手の水分補給と同時に、電解質、糖および他の栄養素を補給する飲料である。スポーツドリンクは、通常、アイソトニック、すなわち、ヒトの体と同じ割合の栄養素を含有している。
【0021】
エネルギードリンクは、(合法の)興奮剤、ビタミン(特にビタミンB)および/またはミネラルを含有し、飲んだ人に爆発的な活力を与えることを意図した飲料である。よく使用される成分としては、カフェイン、ガラナ(ガラナ植物から得られるカフェイン)および/またはタウリン、各種形態の朝鮮人参、マルトデキストリン、イノシトール、カルニチン、クレアチン、グルクロノラクトン、コエンザイムQ10および/またはイチョウ葉エキスが挙げられる。糖、またはグルコースを高濃度で含有するものがあり、一方では糖アルコールおよび/またはシクラミン酸Caまたはアスパルテームなどの人工甘味料で全体的にまたは部分的に甘味を付けたものもある。そのような飲料の多くは、風味および/または色が付けられている。
【0022】
ソフトドリンクはアルコールを含まない飲料である。一般に、この用語は冷たい飲料にのみ使用される。ホットチョコレート、茶およびコーヒーは、ソフトドリンクとはみなさない。この用語は、本来、炭酸飲料のみを指すものであり、今でも広くそのように使用されている。
【0023】
組成物が次の食品の1つの形態で調製される場合、組成物中のEGCG量およびリコペン量は次表に示す範囲から選択されると、本発明においては有利である。
【0024】
【表1】

【0025】
組成物が錠剤またはカプセルの形態で調製される場合、組成物中のEGCG量およびリコペン量は次表に示す範囲から選択されると、本発明においては有利である。
【0026】
【表2】

【0027】
[実施例]
[実施例1]
[UV−A誘起によるマトリックスメタロプロテアーゼ−1発現の抑制に対する相乗的効果]
抗生物質/抗真菌剤、2mML−グルタミンおよび7.5%牛胎児血清を加えた、グルタミンを含まないEMEM(アール最少必須培地)を用い、37℃/5%COで、一次ヒト皮膚線維芽細胞を培養し、100%密集度にまで増殖させた。照射48時間前に細胞に所望の化合物を加え、EMEM(AB/AM、L−グルタミンおよび2%FCS含有)中で予備インキュベートを行った。24時間後、培地を物質(新たに調製)を含む新鮮な培地に交換した。照射のために培地を除去し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で6回洗浄後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に交換した。その後、プレートを30J/cmのUVA1に曝露した。UVA1の出力は約150mW/cmとした。照射後、細胞マイクロプレート中のリン酸緩衝生理食塩水を物質(新たに調製)を含む培養培地(+7.5%FCS)に交換し、細胞をCOインキュベータ中でさらに24時間インキュベートした(MMP−1測定)。培養培地を除去し、細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗い、プレート全体を液体窒素中で凍結させた。RNeasy Total RNA Kits(キアゲン(Qiagen)、ヒルデン(Hilden);ドイツ(Germany))を使用して全RNAを分離した。RNA濃度を260/280での光計測により測定した。全RNA(75ng)のアリコットを、RT−PCR用SuperscriptTMIII First−Strand合成システムを使用してcDNA合成に供した。各化合物について2つのサンプルを分析した。PCR反応を、SYBR Green(登録商標)PCR Master Mix(アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)、ダルムシュタット(Darmstadt)、ドイツ)を使用し、Opticon 1(MJ Research、ウォルサム(Waltham)、マサチューセッツ州(MA)、米国(USA))により行った。リアルタイムPCRのコントロール細胞と処理細胞の相対的発現の比較には、2(−delta delta C(T))法を使用した。
【0028】
結果を表1に要約する。非照射細胞(示さず)で検出されたレベルに較べて、UV−A処理によってMMP−1 RNAは〜10倍増加した。EGCGおよびリコペンは、この発現をそれぞれ13%および65%減少させた。一方、物質を組み合わせると、UV−A誘起によるMMP−1発現は完全に抑制された。このことは、観察された抑制と予測された抑制(各化合物単独の値の合計)との間に正の値(すなわち22%)の開きがあったことから、EGCGおよびリコペンがMMP−1の調節に対して相乗効果を発揮することを意味している。
【0029】
【表3】

【0030】
[実施例2]
[長期の老化防止用錠剤]
[組成]
【0031】
【表4】

【0032】
[調製]
RedivivoTM(リコペン)10%CWS/S−TG、TEAVIGOTMTG、凝集ラクトース、微結晶セルロース、二酸化ケイ素およびクロスポビドンを適当な容器に入れ、タンブラーミキサーにより20分間混合した。ステアリン酸マグネシウムを1mmの篩を通して加え、この組成物を再び2分間混合した。
【0033】
この粉末を、Korsch XP1タブレットプレス(パンチサイズ17×7.87mmの楕円形)により錠剤に圧縮した。
【0034】
春、すなわち日光曝露が増大する少なくとも2ヶ月前から、1日1錠を摂取し、シーズンを通して維持する。
【0035】
[実施例3]
[老化防止促進用インスタントドリンク]
[組成]
【0036】
【表5】

【0037】
[調製]
全ての成分を500μmの篩で篩う。粉末を適当な容器に入れタンブラーブレンダーで少なくとも20分間混合する。35gの粉末を使用し、水を加えて1リットルの飲料とする。
【0038】
1回分の即席ドリンク240m当たり50mgのEGCGおよび5mgのリコペンを、インスタントドリンクは含んでいる。
【0039】
大量のまたは日光浴の途中およびその後で、1日3回までの摂取が推奨される。
【0040】
[実施例4]
[基本の老化防止を持続させるためのミント]
[組成]
【0041】
【表6】

【0042】
[調製]
TEAVIGOTMTG、redivivoTM10%CWS/S−TG、アスコルビン酸微細顆粒、ソルビトール、芳香剤、甘味料およびPEG6000をドラムに仕込み、タンブラーミキサーで10分間混合する。ソルビトールおよび二酸化ケイ素を1mmの篩に通して別のドラムに入れ、10分間混合する。2つの粉末混合物を合わせ、再び10分間混合する。ステアリン酸マグネシウムを1mmの篩を通して加え、この組成物を再び2分間混合した。
【0043】
この粉末を、Korsch XP1タブレットプレス(パンチサイズ8mmの円形)により錠剤に圧縮した。
【0044】
1日に5個までのミントが推奨される。
【0045】
TEAVIGOTM、TEAVIGOTMTGおよびredivivoTM10%CWS/S−TG:DSM Nutritional Productsの商品;
TablettoseTM80:Brenntag N.V.の商品;
AerosilTM200:Degussaの商品
PolyplasdoneTMXL10:ISPの商品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(−)−エピガロカテキンガレート(EGCG)とリコペンの組み合わせを含む組成物であって、EGCGとリコペンとの比が100:1〜1:1の範囲にあることを特徴とする組成物。
【請求項2】
EGCGとリコペンとの比が50:1〜3:1の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
EGCGとリコペンとの比が25:1〜5:1の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
組成物が経口消費に適したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物が飲料であることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
組成物が乳製品であることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
組成物が菓子であることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物の、太陽光により誘起されるコラゲナーゼを抑制するための使用。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物の、太陽光により誘起されるコラーゲンおよびエラスチンの分解を低減するための使用。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物の、太陽光により誘起される皺および皮膚の老化を防止および/または低減するための使用。

【公表番号】特表2010−513348(P2010−513348A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541851(P2009−541851)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010947
【国際公開番号】WO2008/074434
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】