説明

EGFRエクソン21L858R遺伝子多型検出用プライマー及びその用途

【課題】EGFR(上皮増殖因子レセプター)エクソン21の多型を簡便且つ高感度に検出可能なプライマー及びその用途を提供する。
【解決手段】特定塩基配列の塩基を含む領域を鋳型として増幅可能であると共に、10〜50塩基長である下記P1オリゴヌクレオチド及びP2オリゴヌクレオチドをそれぞれ少なくとも1種含むEGFRエクソン21 L858Rの遺伝子変異を検出するための多型検出用プライマーセット:(P1)特定塩基配列に相補的な塩基がCであるオリゴヌクレオチドであって、前記P2オリゴヌクレオチドのTm値と比較して高いTm値を示すか、又は前記P2オリゴヌクレオチドよりも1塩基以上長いオリゴヌクレオチド、及び、(P2)特定塩基配列の塩基に相補的な塩基がAであるオリゴヌクレオチド、及び当該プライマーセットを用いてEGFRエクソン21の多型を検出する多型検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGFRエクソン21L858R遺伝子多型検出用プライマー及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
上皮増殖因子レセプター(EGFR)は、肺癌において重要な役割を果たすと考えられている。EGFRの機能抑制を目的とする薬剤が、肺癌治療の分野で用いられている。このような薬剤としては、非小細胞肺癌患者の治療に用いられているゲフィチニブ又はエルロチニブ等のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤が知られている。これらの薬剤については、肺癌の他に腺癌への適用が試みられている。しかしながら、ある範囲の患者では、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤の効果が充分に得られないことがある。また別の範囲の患者では、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対して初期には反応があるものの、次第に薬剤の効果が期待された以上に上がらなくなることがある。
このため、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤を使用するに際して、その効果を予測するために予測因子の探索が試みられ、EGFR遺伝子変異が重要な因子であることが見出されてきた。このような予測因子として、EGFRエクソン20のコドン790における変異(T790M)(特許文献1、非特許文献1)、エクソン18のコドン719における変異(G719X)などが知られている(非特許文献1)。
【0003】
なかでも、EGFRエクソン21のコドン858におけるロイシンからアルギニンへの変異(EGFRエクソン21L858R)は、ゲフィチニブの腫瘍縮小効果が高くなると考えられている変異である。肺癌におけるこのEGFRの変異割合は45%程度と高いため、投薬前の予測因子として重要である。
EGFRエクソン21L858Rを検出する技術としては、ダイレクトシークエンス法による検出(非特許文献2)又は、SMAP(SMart-Abplification Process) 法による検出方法(非特許文献3)が知られている。
【0004】
一方、簡便に且つ、感度と信頼性に優れた変異検出方法としては、変異型プライマーと野生型(正常型)プライマーとを同一の反応系で用いて、変異型塩基を有する核酸配列を優先的に増幅させることを含む変異検出方法が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−529532号公報
【特許文献2】国際公開第2010/001969号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Cancer Research, Vol.66, No.16, 2006, pp. 7854-7858
【非特許文献2】J. Clin. Oncology, Vol 23, No 11 (April 10), 2005: pp. 2513-2520
【非特許文献3】Clin Cancer Res 2007;Vol.13(17) September 1, 2007: pp.4974-4983
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、実際に検査で用いられる試料は血漿又は血清由来の可溶性のDNAが用いられており、このようなDNAからの変異検出では高い特異性が要求されている。上記のダイレクトシークエンス法の場合、一般に、特異性は10%程度と言われており、可溶性DNAからの変異検出を行うには充分に高い特異性とは言えない。一方、SMAP法は、感度の点では充分とも言えるが、プライマー等の材料の設計が容易ではなく、実際の操作が複雑である。
本発明は上記課題を意図してなされたものである。本発明は、EGFRエクソン21の多型を簡便且つ高感度に検出可能なプローブ及びその用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下のとおりである。
[1]配列番号1の172792番目の塩基を含む領域を鋳型として増幅可能であると共に、塩基配列が10〜50塩基長である下記P1オリゴヌクレオチド及びP2オリゴヌクレオチドをそれぞれ少なくとも1種含むEGFRエクソン21の多型を検出するための多型検出用プライマーセット:
(P1)配列番号1に示す塩基配列の172792番目の塩基に相補的な塩基がCであるオリゴヌクレオチドであって、前記P2オリゴヌクレオチドのTm値と比較して高いTm値を示すか、又は前記P2オリゴヌクレオチドよりも1塩基以上長いオリゴヌクレオチド、及び、
(P2)配列番号1に示す塩基配列の172792番目の塩基に相補的な塩基がAであるオリゴヌクレオチド。
[2] 前記P1オリゴヌクレオチド及びP2オリゴヌクレオチドの少なくとも一方は、配列番号1の172792番目の塩基の塩基に相補的な塩基以外の位置に、配列番号1に示す塩基配列と相補的でない塩基を少なくとも1つ有する[1]に記載の多型検出用プライマーセット。
[3] 前記P1オリゴヌクレオチド及びP2オリゴヌクレオチドの少なくとも一方は、配列番号1の172792番目の塩基に相補的な塩基以外の位置に、配列番号1に示す塩基配列と相補的でない塩基を有し、当該相補的でない塩基が、オリゴヌクレオチド鎖の5’末端に位置する連続した2〜10塩基の付加配列である[1]又は[2]に記載の多型検出用プライマーセット。
[4] 前記P1オリゴヌクレオチド及び前記P2オリゴヌクレオチドの少なくとも一方は、配列番号1の172792番目の塩基に相補的な塩基以外の位置に、配列番号1に示す塩基配列と相補的でない塩基を少なくとも1つ有し、当該相補的でない塩基が、オリゴヌクレオチド鎖中に配置された1塩基又は連続した2〜20塩基のミスマッチ塩基である[1]〜[3]のいずれかに記載の多型検出用プライマーセット。
[5] 前記P1オリゴヌクレオチド及び前記P2オリゴヌクレオチドの少なくとも一方は、配列番号1に示す塩基配列の172792番目の塩基に相補的な塩基を、3’末端側から1〜3番目のいずれかの位置に有する[1]〜[4]のいずれかに記載の多型検出用プライマーセット。
[6] 前記P1オリゴヌクレオチドのTm値が、前記P2オリゴヌクレオチドのTm値より0.1℃〜20℃高い[1]〜[5]のいずれかに記載の多型検出用プライマーセット。
[7] 前記P1オリゴヌクレオチド及びP2オリゴヌクレオチドの鋳型となる配列番号1に示す塩基配列の領域よりも5’末端側となる領域に対する相補配列に相補的なプライマーを更に含む[1]〜[6]のいずれかに記載の多型検出用プライマーセット。
[8] 配列番号2〜配列番号11で示されるP1オリゴヌクレオチドの少なくとも1つと、配列番号12〜配列番号21で示されるP2オリゴヌクレオチドの少なくとも1つを含む[1]〜[7]のいずれかに記載の多型検出用プライマーセット。
[9] 前記[1]記載のP1オリゴヌクレオチドのみからなるEGFRエクソン21の多型を検出するための多型検出用プライマー。
[10] 配列番号1の172792番目の塩基に相補的な塩基以外の位置に、配列番号1に示す塩基配列と相補的でない塩基を少なくとも1つ有する[9]記載の多型検出用プライマー。
[11] 配列番号1の172792番目の塩基を相補する塩基以外の位置に、配列番号1に示す塩基配列と相補的でない1つ以上の塩基を有し、前記相補的でない塩基が、オリゴヌクレオチド鎖の5’末端に位置する連続した3〜10塩基の付加配列及びオリゴヌクレオチド鎖中に配置された1塩基又は連続した2〜20塩基のミスマッチ塩基の少なくとも一方である[9]又は[10]記載の多型検出用プライマー。
[12] 配列番号1に示す塩基配列の172792番目に相補的な塩基を、3’末端側から1〜3番目のいずれかの位置に有する[9]〜[11]のいずれかに記載の多型検出用プライマー。
[13] (I) 核酸試料と、前記P1オリゴヌクレオチド及び前記P2オリゴヌクレオチドを含む[1]〜[8]のいずれかに記載の多型検出用プライマーセットとを接触させ、前記核酸試料中の核酸配列を鋳型として増幅を行うこと、(II) EGFRエクソン21の多型を検出可能な多型検出用プローブ及び、前記増幅により得られた一本鎖増幅核酸配列を接触させて、該一本鎖増幅核酸配列と該プローブとのハイブリッドを得ること、(III) 前記ハイブリッドを含む試料の温度を変化させて、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づくシグナルの変動を測定すること、(IV) 前記シグナルの変動に基づいてハイブリッドの解離温度であるTm値を評価すること、及び、(V) 前記Tm値に基づいて、EGFRエクソン21L858Rの存在またはEGFRエクソン21L858Rを有する核酸配列の存在比を評価することと、を含む、EGFR遺伝子における多型検出方法。
[14] 前記増幅を行うことと前記ハイブリッドを得ることを同時に行う[13]のいずれかに記載の多型検出方法。
[15] [13]又は[14]の記載の多型検出方法によりEGFR遺伝子における多型を検出すること、及び、前記検出結果に基づいてEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する耐性又はEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の薬効を評価すること、を含むEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の評価方法。
[16] 配列番号2〜配列番号11で示されるP1オリゴヌクレオチド及び、配列番号12〜配列番号21で示されるP2オリゴヌクレオチドのいずれかである[13]又は[14]の多型検出用方法に用いられる多型検出用プライマー。
[17] [1]〜[8]のいずれか記載のプライマーセットを含むEGFR遺伝子における多型を検出するための試薬キット。
[18] さらに、EGFRエクソン21 L858Rを検出可能なプローブを含む[17]記載の試薬キット。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、EGFRエクソン21の多型を簡便且つ高感度に検出可能なプライマー及びその用途を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(A)は核酸混合物の融解曲線の一例であり、(B)は核酸混合物の微分融解曲線の一例である。
【図2】検量線の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施例にかかるプライマーセットを用いて得られた変異含量0%の核酸混合物の融解曲線である。
【図4】本発明の実施例にかかるプライマーセットを用いて得られた変異含量0.1%の核酸混合物の融解曲線である。
【図5】本発明の実施例にかかるプライマーセットを用いて得られた変異含量0.3%の核酸混合物の融解曲線である。
【図6】本発明の実施例にかかるプライマーセットを用いて得られた変異含量1%の核酸混合物の融解曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[プライマーセット]
本発明のプライマーセットは、配列番号1の172792番目の塩基を含む領域を鋳型として増幅可能であると共に、塩基配列が10〜50塩基長である下記P1及びP2オリゴヌクレオチドであるEGFRエクソン21の多型を検出するための多型検出用プライマーセットである:
(P1)配列番号1に示す塩基配列の172792番目の塩基に相補的な塩基がCであるオリゴヌクレオチドであって、前記P2オリゴヌクレオチドのTm値と比較して高いTm値を示すか、又は前記P2オリゴヌクレオチドよりも1塩基以上長いオリゴヌクレオチド、及び、
(P2)配列番号1に示す塩基配列の172792番目の塩基に相補的な塩基がAであるオリゴヌクレオチド。
【0012】
前記プライマーセットは、EGFRエクソン21の多型を検出するために用いられる配列番号1に示す塩基配列の172792番目の塩基がCであるP1オリゴヌクレオチド即ち、変異型プライマーと、配列番号1に示す塩基配列の172792番目の塩基に相補的な塩基がAであるP2オリゴヌクレオチド、即ち、野生型プライマーとを、Tm値がP1オリゴヌクレオチドの方がP2オリゴヌクレオチドよりも高い相対関係又は、P1オリゴヌクレオチドの方がP2オリゴヌクレオチドよりも1塩基以上長い相対関係を有するプライマーセットとして有する。これらの2種のオリゴヌクレオチドを、プライマーとして一反応系で使用することにより、簡便且つ高感度にEGFRエクソン21の多型を検出することができる。
【0013】
本発明において「EGFRエクソン21 L858R」とは、EGFR遺伝子のエクソン21における変異であって、コドン858における変異がアミノ酸としてロイシンからアルギニンへの変異であることを意味する。また本発明において「EGFRエクソン21の多型」とは、「EGFRエクソン21L858R」を意味する。EGFRエクソン21の塩基配列とは、GeneID:1956、GenBankアクセッションNo.NC000007(バージョン:NC000007.13)の55086724〜55275030の配列(配列番号1)を意味する。本発明においてEGFRエクソン21 L858Rの変異とは、配列番号1に示す塩基配列の172792番目の塩基が「T(チミン)」から「G(グアニン)」への変異をいう。
本明細書では、配列番号1に示す塩基配列の172792番目の位置を、特に「変異部位」という。また、本明細書において「鋳型核酸配列」とは、核酸増幅を行う際にプライマーが鋳型としてアニーリングする配列番号1に示す塩基配列の一部を意味する。
【0014】
本発明において、「Tm値」とは、二本鎖核酸が解離する温度(解離温度:Tm)であって、一般に、260nmにおける吸光度が、吸光度全上昇分の50%に達した時の温度と定義される。即ち、二本鎖核酸、例えば、二本鎖DNAを含む溶液を加熱していくと、260nmにおける吸光度が上昇する。これは、二本鎖DNAにおける両鎖間の水素結合が加熱によってほどけ、一本鎖DNAに解離(DNAの融解)することが原因である。そして、全ての二本鎖DNAが解離して一本鎖DNAになると、その吸光度は加熱開始時の吸光度(二本鎖DNAのみの吸光度)の約1.5倍程度を示し、これによって融解が完了したと判断できる。Tm値は、この現象に基づき設定される。
【0015】
本明細書において「工程」との語には、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本明細書における数値範囲の表示は、当該数値範囲の下限値として表示される数値を最小値として含み、当該数値範囲の上限値として表示される数値を最大値として含む範囲を示す。
組成物中のある成分の量について言及する場合において、組成物中に当該成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に別途定義しない限り、当該量は、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
以下、本発明について説明する。
【0016】
[プライマーセット]
本発明におけるプライマーセットは、少なくとも1種の変異型プライマーのP1オリゴヌクレオチドと少なくとも1種の野生型プライマーのP2オリゴヌクレオチドで構成される。
P1オリゴヌクレオチドは、配列番号1の172792番目(変異部位)の塩基を含む領域を鋳型として増幅を行うことが可能であると共に、塩基配列が10〜50塩基長であり、配列番号1に示す塩基配列の172792番目の塩基に相補的な塩基がCであるオリゴヌクレオチドである。
P2オリゴヌクレオチドは、配列番号1の172792番目(変異部位)の塩基を含む領域を鋳型として増幅を行うことが可能であると共に、塩基配列が10〜50塩基長であり、配列番号1に示す塩基配列の172792番目の塩基に相補的な塩基がAであるオリゴヌクレオチドである。
【0017】
P1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドとは、Tm値の点で、P1オリゴヌクレオチドの方が高いという相関関係又は、塩基長の点でP1オリゴヌクレオチドの方が長いという相関関係を有することが必要である。これにより、P1オリゴヌクレオチドの方がP2オリゴヌクレオチドよりも全体として鋳型核酸配列に対する親和性が高くなり、鋳型核酸配列に対する結合性が高くなる。この結果、P1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドとをプライマーとして用いて核酸増幅を行う際、同一反応系で用いた場合に、P1オリゴヌクレオチドによる増幅が優先的に行われることになり、変異型のEGFRエクソン21の多型を簡便に感度よく検出することができる。
Tm値に関する相関関係と塩基長に関する相関関係とは、いずれか一方の相関関係が満たされていればよく、これらの両方が満たされていてもよい。
【0018】
P1オリゴヌクレオチドの方が高いTm値を有する場合には、P1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドとのTm値の差は、特に制限されないが、例えば、0.1℃以上20℃以下が好ましく、より好ましくは0.1℃以上10℃以下であり、特に好ましくは0.1℃以上5℃以下である。この範囲であれば、例えば、擬陽性を抑制できる。本明細書におけるTm値とは、100%相補的な塩基配列同士からなるハイブリッドのTm値を意味する。
【0019】
GC含量の調節によってTm値を調節する場合、例えば、GC含量が相対的に高い程、Tm値を相対的に高く設定できる。P1オリゴヌクレオチドのGC含量を、P2オリゴヌクレオチドよりも高く設定することが好ましい。また、プライマーの長さとGC含量との両方によって、Tm値を設定することもできる。これらの他にも、例えば、RNAアナログであるLNA、ペプチド核酸であるPNA、架橋化核酸であるBNA等を含む配列にすることで、例えば、これらを含まない配列よりも、Tm値を相対的に高く設定できる。
【0020】
また、P1オリゴヌクレオチドの方が、P2オリゴヌクレオチドよりも1塩基以上長い場合には、鋳型となる配列に対して高い親和性を示す。このため、P1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドとでは、P1オリゴヌクレオチドによる増幅が優先的に行われる。
【0021】
上記のTm値に関する相対関係又は塩基長に関する相対関係は、前記P1オリゴヌクレオチド及びP2オリゴヌクレオチドの少なくとも一方を、配列番号1の172792番目の塩基に相補的な塩基以外の位置に、配列番号1に示す塩基配列と相補的でない塩基を少なくとも1つ有するオリゴヌクレオチドとすることによって、達成されることが好ましい。これにより、例えば、配列上の構成によってこれらの相関関係を調整可能に構築することができる。
なお、このような変異部位以外の相補的でない塩基の、オリゴヌクレオチドにおける挿入又は追加位置、塩基数、塩基の種類、等を選択することによって、当該オリゴヌクレオチドのTm値又は塩基長を調整することが可能であるため、当該塩基はP1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドのいずれに配置されてもよく、双方に配置されてもよい。
【0022】
P1オリゴヌクレオチドの長さを長くするために塩基を追加する場合には、P1オリゴヌクレオチドにおいて、上記の変異部位よりも5’末端側に追加することが好ましく、P1オリゴヌクレオチドの、鋳型核酸配列に相補的な領域よりも5’末端に追加することがより好ましい。これにより、例えば擬陽性を抑制することができる。
P1オリゴヌクレオチドをP2オリゴヌクレオチドよりも長く設定する場合、両者の長さの差は、特に制限されない。1塩基〜20塩基であり得、好ましくは1塩基〜10塩基であってもよく、より好ましくは1塩基〜5塩基であってもよい。
P1オリゴヌクレオチドの長さを長くするために追加される塩基は、配列番号1に示す塩基配列に相補的であってもよく、対応しないものであってもよい。配列番号1に示す塩基配列に相補的でない塩基の場合には、後述する付加配列に連続していてもいなくてもよい。
【0023】
各オリゴヌクレオチドが「配列番号1の172792番目の塩基を含む領域を鋳型として増幅を行うことが可能である」とは、該オリゴヌクレオチドをPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)などの増幅反応におけるプライマーとして使用した場合に、該オリゴヌクレオチドが変異部位を含む所定の領域にアニールして、変異部位を含む配列に相補的な配列を増幅し得ることを意味する。従って、各オリゴヌクレオチドは、配列番号1に示す塩基配列に対して、変異部位を含む所定の領域に特異的にアニールできればよく、完全に相補的な配列であってもよいし、部分的に相補的な配列、又は、部分的に非相補的な塩基(ミスマッチ塩基)を有する配列であってもよい。ミスマッチ塩基とは、G−C、A−T以外の核酸塩基ペアを意味し、具体的には、G−G、G−A、G−T、A−A、A−C、C−T、C−C、T−Tのペアのことである。
例えば、上述したTm値における関係又は塩基長における関係を妨げない限り、各オリゴヌクレオチドは、後述するように、部分的に相補的な配列又は部分的にミスマッチ塩基を有する配列であることが好ましい。このような配列を用いた場合には、例えば、変異の検出感度を高めると共に擬陽性を低く抑制できる。
【0024】
各オリゴヌクレオチドの長さは、塩基長として10〜50であればよく、上述したTm値における関係又は塩基長における関係を妨げない限り、15〜40であることが好ましく、18〜25であることがより好ましい。この範囲の長さであれば、例えば検出感度を高め、かつ擬陽性を効果的に抑制できる。この塩基長は、各オリゴヌクレオチドの他の構造上の特徴に併せて適宜調整することが可能である。
【0025】
変異部位以外の相補的でない塩基としては、オリゴヌクレオチド鎖の5’末端に位置する連続した2〜10塩基の付加配列としてもよい。このような付加配列を設けることによって、例えば、検出感度を高くする又は擬陽性を抑制できる。
P1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドにそれぞれ付加され得る付加配列は、上述の通り、配列番号1に示す塩基配列と相補的でない3〜10塩基であってもよく、4〜9塩基であることが好ましく、5〜7塩基であることがより好ましい。この付加配列を5’末端に有することによって、例えば、感度を向上させると共に、各オリゴヌクレオチドが互いの鋳型核酸配列にアニールすることを効果的に抑制されて、又は増殖効率を高くすることができる。また、付加配列をこの範囲の長さにすることで、例えば、擬陽性を抑制でき、又は増幅効率を高めることができる。
【0026】
付加配列は、P1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドにおいて、同一の長さであっても異なる長さであってもよく、同一の配列であっても異なる配列であってもよいが、異なる配列が好ましい。付加配列を構成する塩基配列としては、特に制限はないが、GC含量が40〜60%程度であることが好ましい。このGC含量の範囲とすることによって、例えば、変異型又は野性型配列の増幅効率を維持することができる。またP1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドの双方に付加配列を付加する場合には、P1オリゴヌクレオチドの付加配列のGC含量を高くすることが好ましい。この場合には、変異型配列の検出感度を高くすることができる。
【0027】
P1オリゴヌクレオチドは、その3’領域に、EGFRエクソン21L858Rの変異部位に対して相補的な塩基として、変異部位に対する相補的な塩基(「C」)を有すればよい。P1オリゴヌクレオチドでは、3’末端の1番目〜3番目のいずれかの塩基が、変異部位の塩基に対して相補的な塩基であることが好ましい。この変異部位の塩基に対する相補的な塩基をこのような位置に配置することによって、例えば、検出感度を高くする又は擬陽性を抑制できる。なお、本明細書において、3’末端の1番目の塩基とは、3’末端の塩基であり、3’末端の3番目の塩基とは、3’末端の塩基を1番目として、5’方向に向って3番目の塩基を意味する。
【0028】
一方、P2オリゴヌクレオチドは、その3’領域に、EGFRエクソン21L858Rの変異部位に対して相補的な塩基として、野生型の塩基に対する相補的な塩基(「A」)を有すればよい。P2オリゴヌクレオチドでは、3’末端の1番目〜3番目のいずれかの塩基が、変異部位の塩基に相補的な塩基であることが好ましい。この変異部位の塩基に対する相補的な塩基をこのような位置に配置した場合には、例えば、検出感度を高くする又は擬陽性を抑制できる。
【0029】
P1オリゴヌクレオチド及びP2オリゴヌクレオチドにおける上記の変異部位に相補的である塩基の3'末端からの距離(位置)は、同一であってもよく、異なってもよい。P1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドにおける変異部位に対する塩基の位置は、同一であることが好ましい。変異部位に対する塩基の位置をP1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドとで同一とした場合には、例えば、検出感度を高くする又は擬陽性を抑制できる。
【0030】
変異部位以外の相補的でない塩基としては、オリゴヌクレオチド鎖中に配置された1塩基又は、連続した2〜20塩基のミスマッチ塩基としてもよい。このようなミスマッチ塩基を導入することによって、例えば、検出感度を高くする又は擬陽性を抑制できる。
このようなミスマッチ塩基の総数は、それぞれのオリゴヌクレオチドを構成する塩基の配列によって異なるが、10個以下であることが好ましく、5個以下であることがより好ましく、3個以下であることが更に好ましい。この程度のミスマッチ塩基の数であれば、例えば、検出感度を高くする又は擬陽性を抑制できるという利点を有する。
【0031】
また、このようなミスマッチ塩基は、上述した変異部位の位置よりも5’末端側に配置することが好ましく、中でも、変異部位の位置よりも5’末端側に3番目〜7番目のうち少なくとも1つの塩基を、前記ミスマッチ塩基に設定することが好ましく、変異部位の位置よりも5’末端側に3〜5番目の塩基をミスマッチ塩基に設定することがより好ましい。この位置であれば、例えば、検出感度を高くする又は、擬陽性を抑制できる。
【0032】
P1オリゴヌクレオチド及びP2オリゴヌクレオチドが共にミスマッチ塩基を有する場合、P1オリゴヌクレオチド上のミスマッチ塩基の位置とP2オリゴヌクレオチド上のミスマッチ塩基の位置とは互いに対応しない位置であることが好ましい。ミスマッチ塩基の位置は互いに異なっていればよく、好ましくは、1塩基〜6塩基離れた位置に設定することができ、より好ましくは2塩基〜3塩基離れた位置に設定することができる。また、例えば、P1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドの双方がミスマッチを有する場合、P1オリゴヌクレオチドにおけるミスマッチ塩基の位置の方がP2オリゴヌクレオチドにおけるミスマッチ塩基の位置よりも3’末端側にあることが好ましい。このようなP1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドにおけるミスマッチ塩基の位置関係とした場合には、例えば擬陽性を抑制することができる。
なお、ミスマッチ塩基の種類としては、配列番号1に示す塩基配列に対応していない塩基であればよく、特に制限はないが、一般に、比較的結合力が弱い「A」又は「T」であることが好ましい。「A」又は「T」とすることによって、例えば、擬陽性を抑制することができる。
【0033】
なお、EGFRエクソン21における変異部位周辺には、検出対象となる多型とは無関係の多型が存在するため、必要に応じて、この検出対象外の部位の塩基について、P1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドの双方に、無関係な多型に基づく影響を無効化するための変異を追加してもよい。このような塩基を、本明細書では、「無効化変異」とする。
【0034】
上述した付加配列は、P1オリゴヌクレオチド及びP2オリゴヌクレオチドの双方に設けてもよく、いずれか一方に設けてもよい。また上述したミスマッチ塩基は、P1オリゴヌクレオチド及びP2オリゴヌクレオチドの双方に設けてもよく、いずれか一方に設けてもよい。
【0035】
本発明における多型検出用プライマーセットは、上述の通り、P1オリゴヌクレオチド及びP2オリゴヌクレオチドを少なくとも1種ずつ含むものであればよく、上述したP1オリゴヌクレオチド及びP2オリゴヌクレオチドにおけるTm値の関係又は塩基長の関係が全体として損なわれない限り、いずれか一方又はこれら双方を、2種以上含むものであってもよい。
【0036】
本発明におけるP1オリゴヌクレオチドの一例を表1に示し、P2オリゴヌクレオチドの一例を表2に示す。なお、表1及び表2中「A」又は「T」は、ミスマッチ塩基を意味し、5’末端側の大文字アルファベットは付加配列を意味する。表1及び表2における各3’末端側が、変異部位の塩基である。また、表1及び表2中「(a)」は無効化変異を意味する。なお、Tm値は、MeltCalc(登録商標)で計算した値である。
【0037】
【表1】



【0038】
【表2】



【0039】
これらのP1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドとは、それぞれTm値などに基づいて選択されて、用いられる。なお、上記配列のうち、Mt−R2及びWt−R1は、いずれも変異部位を除き配列番号1の相補配列の塩基配列と同一であって所定の塩基長のオリゴヌクレオチドであり、それ以外は、いずれも変異部位以外に配列番号1の相補配列の塩基配列と相同的でない塩基(ミスマッチ塩基)を少なくとも1つ有するオリゴヌクレオチドである。
P1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドの組み合わせとしては、例えば、以下の組み合わせが挙げられる。中でも、同一長さの付加配列と、異なる位置のミスマッチ塩基を共に含むNo.5〜No.7の組み合わせが、例えば感度及び擬陽性出現の抑制などの観点から好ましい。
【0040】
【表3】



【0041】
本発明の多型検出用プライマーセットは、変異プライマーであるP1オリゴヌクレオチドと野生型プライマーであるP2オリゴヌクレオチドの他に、配列番号1の塩基配列中におけるP1オリゴヌクレオチドまたはP2オリゴヌクレオチドの鋳型核酸配列よりも5’末端側の領域に対する相補配列に相補的なプライマー(Fプライマー)を更に含んでもよい。
P1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドは共に、配列番号1に示す塩基配列に対して、所謂リバース側のプライマーを構成する。このため、Fプライマーは、所謂フォワード側のプライマーを構成し、P1オリゴヌクレオチド及びP2オリゴヌクレオチドに対する対のプライマーとして作用する。
【0042】
Fプライマーは、検出目的の前記塩基部位とは異なる領域にアニーリングするプライマーであるため、前記塩基部位が変異型であるか正常型であるかに関わらず、鋳型核酸を増幅できる。これにより、Fプライマーを共存させることで、鋳型核酸の本来の配列を維持した増幅産物をあわせて得ることができ、より一層、変異検出の信頼性を向上することができる。
【0043】
Fプライマーの長さは、特に制限されないが、通常、10〜50塩基であることが好ましく、より好ましくは15〜40塩基であり、特に好ましくは16〜35塩基である。また、Fプライマーは、P1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドがアニーリングする鋳型核酸配列における変異部位よりも5’側の領域に対する相補配列にアニーリングできればよく、その配列は特に制限されず、従来公知の一般的なプライマーの設計方法に従って設計できる。
【0044】
[多型検出用プライマー]
また、本発明におけるEGFRエクソン21多型検出用プライマーは、上述したプライマーセットにおける前記P1オリゴヌクレオチド及び前記P2オリゴヌクレオチドのいずれか一方のみを含むものである。このプライマーは、各オリゴヌクレオチドは、1種のみオリゴヌクレオチドを有してもよく、例えば、長さ、ミスマッチ塩基の位置、GC含量などが異なる2種以上のオリゴヌクレオチドを含むものであってもよい。
多型検出用プライマーとしてのP1オリゴヌクレオチド又はP2オリゴヌクレオチドについては、個々のオリゴヌクレオチドに関して前述した事項を、そのまま適用可能である。
【0045】
[多型検出方法]
本発明におけるEGFR遺伝子の多型検出方法は、(I) 核酸試料と、前記プライマーセットとを接触させ、前記核酸を鋳型として増幅を行うこと、
(II) EGFRエクソン21の多型を検出可能なプローブと、前記増幅により得られた一本鎖核酸とを接触させて、該一本鎖核酸と該プローブとのハイブリッドを得ること、
(III) 前記ハイブリッドを含む試料の温度を変化させて、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づくシグナルの変動を測定すること、
(IV) 前記シグナルの変動に基づいてハイブリッドの解離温度であるTmを評価すること、及び、
(V) 前記Tmに基づいて、EGFRエクソン21L858Rの存在を確認することまたはEGFRエクソン21L858Rを有する核酸配列の存在比を評価することと、
を含む。
本多型検出方法では、P1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドとを含む前記プライマーセットを同一試料に対して用いることにより、変異型配列を有する核酸が優先的に増幅される。増幅で得られた核酸は、検出用プローブを使用したハイブリダイゼーション工程並びに、Tm値による評価工程及び多型の評価工程に付される。これにより、試料中の核酸における変異型配列を有する核酸の割合が少量であっても、変異型配列を有する核酸が優先的に増幅され、感度よく変異型配列を有する核酸を検出し、多型の確認及び/又は評価を行うことができる。
【0046】
本多型検出方法において用いられる核酸試料は、鋳型となる核酸を含む試料であればよく、特に制限されない。例えば、生体試料由来の核酸を含む試料があげられる。前記生体試料としては、例えば、全血、口腔粘膜等の口腔内細胞、爪および毛髪等の体細胞、生殖細胞、喀痰、羊水、パラフィン包埋組織、尿、胃液、胃洗浄液等、ならびに、それらの懸濁波等があげられる。また、前述のように、生体試料由来の核酸を鋳型として核酸増幅法を行った反応液を核酸試料とし、前記反応液に含まれる増幅産物を鋳型核酸としてもよい。
【0047】
なお、試料は、例えば、目的の塩基部位が変異型および正常型のいずれを示すか不明である核酸を含む試料、変異型配列を有する核酸と正常型配列を有する核酸とを含むことが既知である試料、変異型配列を有する核酸と正常型配列を有する核酸とのいずれかを含む可能性のある試料等のいずれであってもよい。試料中の核酸、例えば、DNAやRNA等の核酸の由来は、制限されない。例えば、各種癌細胞等の細胞、ウィルス、ミトコンドリア等が挙げられる。特に前記方法は、変異型核酸と正常型核酸とを有する試料への適用が好ましい。例えば、白血病等の各種癌細胞等の生体試料、具体例としては、血液中に遊離する細胞等に適用することが好ましい。血液中に含まれる癌化した細胞には、変異型核酸を有する細胞と、正常型核酸を有する細胞とが含まれるため、このような細胞由来の核酸試料に対して、本多型検出方法を適用することは、要求される感度を実現できる点で、好ましい。なお、本発明において、試料の採取方法、核酸の調製方法等は、制限されず、従来公知の方法が採用できる。
【0048】
前述のような生体試料由来の核酸は、例えば、従来公知の方法によって、生体試料から単離できる。全血からのゲノムDNAの単離には、例えば、市販のゲノムDNA単離キット(商品名GFX Genomic Blood DNA Purification kit;GEヘルスケアバイオサイエンス社製)等が使用できる。
【0049】
鋳型となる試料中の核酸は、一本鎖でもよいし、二本鎖でもよい。鋳型核酸としては、例えば、DNA、および、トータルRNA、mRNA等のRNA等が挙げられる。また、鋳型核酸は、例えば、生体試料等の試料に含まれる核酸が挙げられる。試料中の核酸は、例えば、生体試料中に元来含まれている核酸でもよいが、例えば、変異検出の精度を向上できることから、生体試料中の核酸を鋳型として核酸増幅法により増幅させた増幅産物等があげられる。具体例としては、生体試料に元来含まれているDNAを鋳型として、核酸増幅法により増幅させた増幅産物や、生体試料に元来含まれているRNAから逆転写−PCR反応(RT−PCR:Reverse Transcription PCR)により生成させたcDNAを鋳型として、核酸増幅法により増幅させた増幅産物が挙げられる。これらの増幅産物を、本発明における鋳型核酸としてもよい。前記増幅産物の長さは、特に制限されないが、例えば、50〜1000塩基であり、好ましくは80〜200塩基である。
【0050】
増幅工程では、核酸を含有する試料と、プライマーセットとを接触させて、核酸試料中の核酸を鋳型とした核酸の増幅を行う。このとき、プライマーセット中のP1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドとは、同一の試料(同一の反応液)中で、それぞれ鋳型核酸配列にアニールし、核酸の増幅が開始される。
【0051】
増幅工程における核酸増幅法は、特に制限されず、例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、NASBA(Nucleic acid sequence based amplification)法、TMA(Transcription-mediated amplification)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法等が挙げられ、中でも、PCR法が好ましい。なお、核酸増幅法の条件は、特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。
【0052】
増幅工程において、増幅反応の反応系(例えば、反応液)における核酸試料の添加割合は、特に制限されない。具体例として、前記核酸試料が生体試料(例えば、全血試料)の場合、前記添加割合の下限が、例えば、0.01体積%以上であることが好ましく、より好ましくは0.05体積%以上、さらに好ましくは0.1体積%以上である。また、前記添加割合の上限も、特に制限されない。例えば、2体積%以下が好ましく、より好ましくは1体積%以下、さらに好ましくは0.5体積%以下である。
【0053】
また、後述する変異の検出において、例えば、標識化プローブを用いた光学的検出を行う場合、前記反応系における全血試料等の生体試料の添加割合は、例えば、0.1〜0.5体積%に設定することが好ましい。この範囲であれば、例えば、変性による沈穀物等の発生による影響を十分に防止でき、光学的手法による測定精度を向上できる。また、全血試料中の夾雑物によるPCRの阻害も十分に抑制されるため、増幅効率をより一層向上できることも期待される。
【0054】
また増幅反応の開始前に、反応系にさらにアルブミンを添加することが好ましい。このようなアルブミンの添加によって、例えば、沈殿物または濁りの発生による影響を、より一層低減でき、且つ、増幅効率もさらに向上することができる。
前記反応系におけるアルブミンの添加割合は、例えば、0.01〜2重量%の範囲であり、好ましくは0.1〜1重量%であり、より好ましくは0.2〜0.8重量%である。前記アルブミンとしては、特に制限されない。例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン、ラット血清アルブミン、ウマ血清アルブミン等が挙げられる。これらはいずれか1種類でもよいし2種類以上を併用してもよい。
【0055】
増幅工程における増幅について、PCR法を例にあげて説明するが、本発明は、これには制限されない。また、PCRの条件は、特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。例えば、WO2010/001969に開示されている条件及び方法を好ましく用いることができる。
【0056】
まず、鋳型核酸と前述の各種プライマーとを含むPCR反応液を調製する。前記PCR反応液における各種プライマーの添加割合は、特に制限されないが、変異型プライマー(P1オリゴヌクレオチド)は、例えば、0.01〜10μmol/Lとなるように添加することが好ましく、より好ましくは0.05〜5μmol/Lであり、特に好ましくは0.1〜1μmol/Lである。正常型プライマー(P2オリゴヌクレオチド)は、例えば、0.01〜10μmol/Lとなるように添加することが好ましく、より好ましくは0.05〜5μmol/Lであり、特に好ましくは0.1〜0.5μmol/Lである。変異型プライマー(P1)と野生型プライマー(P2)とのモル比(P1:P2)は、例えば、1:0.001〜1:10であることが好ましく、より好ましくは、1:0.01〜1:2であり、特に好ましくは、1:0.1〜1:1である。
このような各プライマーの添加割合及びプライマーの添加量比とした場合には、例えば、感度を高めることができ、また擬陽性を抑制することができる。
【0057】
変異型P1オリゴヌクレオチドと野生型P2オリゴヌクレオチドとに加えて、Fプライマーを併用する場合、Fプライマーは、例えば、0.01〜10μmol/Lとなるように添加することが好ましく、より好ましくは0.05〜5μmol/Lであり、特に好ましくは0.1〜1μmol/Lである。変異型プライマー(P1)とプライマー(F)とのモル比(P1:F)は、例えば、1:0.001〜1:10であることが好ましく、より好ましくは、1:0.01〜1:2であり、特に好ましくは、1:0.1〜1:1である。
このようなFプライマーの添加割合及びプライマーの添加量比とした場合には、例えば、感度を高めることができる。
【0058】
前記反応液における他の組成成分は、特に制限されず、従来公知の成分が挙げられ、その割合も特に制限されない。前記組成成分としては、例えば、DNAポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸(dNTP)等のヌクレオチドおよび溶媒等が挙げられる。前記反応液において、各組成成分の添加順序は何ら制限されない。
【0059】
前記DNAポリメラーゼとしては、特に制限されない。例えば、従来公知の耐熱性細菌由来のポリメラーゼが使用できる。具体例としては、テルムス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来DNAポリメラーゼ(米国特許第4,889,818号および同第5,079,352号)(商品名Taqポリメラーゼ)、テルムス・テルモフィラス(Thermus thermophilus)由来DNAポリメラーゼ(Wo91/09950)(rTth DNA polymerase)、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)由来DNAポリメラーゼ(WO92/9689)(Pfu DNA polymerase:Stratagene社製)、テルモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来DNAポリメラーゼ(EP0455430)(商標Vent:New England Biolabs社製)等が商業的に入手可能であり、中でも、テルムス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来の耐熱性DNAポリメラーゼが好ましい。
前記反応液中のDNAポリメラーゼの添加割合は、目的核酸を増幅する目的で当業界において通常用いられる割合であればよい。
【0060】
前記ヌクレオシド三リン酸としては、通常、dNTP(例えば、dATP、dGTP、dCTP、dTTPおよびdUTP等)が挙げられる。前記反応液中のdNTPの添加割合は、目的核酸を増幅する目的で当業界において通常用いられる割合であればよい。
溶媒としては、例えば、Tris−HCl、Tricine、MES、MOPS、HEPES、CAPS等の緩衝液が挙げられ、市販のPCR用緩衝液やPCRキットに付属の緩衝液等をそのまま使用すればよい。また、PCR反応液には、更に、グリセロール、ヘパリン、ベタイン、KCl、MgCl2、MgSO4等を含んでいてもよい。
【0061】
PCRは、(1)二本鎖核酸の一本鎖核酸への解離、(2)プライマーの鋳型核酸配列へのアニーリング、(3)ポリメラーゼによるプライマーからの核酸配列の伸長(ポリメラーゼ反応)の3工程を含む。各工程の条件は特に制限されない。解離工程では、例えば、90〜99℃、1〜120秒が好ましく、92〜95℃、1〜60秒がより好ましく、アニーリング工程では、例えば40℃〜70℃、1〜300秒が好ましく、50〜70℃、5〜60秒がより好ましく、また、伸長工程では、例えば、50〜80℃、1〜300秒が好ましく、50〜80℃、5〜60秒がより好ましい。サイクル数も特に制限されない。3工程を1サイクルとして、例えば、30サイクル以上が好ましい。上限は特に制限されない。例えば、合計100サイクル以下、好ましくは70サイクル以下、さらに好ましくは50サイクル以下である。各ステップの温度変化は、例えば、サーマルサイクラー等を用いて自動的に制御すればよい。
【0062】
ハイブリダイゼーション工程では、EGFRエクソン21の多型を検出可能なプローブと、増幅工程で得られた一本鎖増幅核酸とを接触させて、これらのハイブリッドが得られる。
ここで用いられるEGFRエクソン21の多型を検出可能なプローブは、配列番号1に示す塩基配列の172792番目の塩基(変異部位)に対応する塩基を含む領域の核酸配列、又は、この核酸配列に相補的な配列に対してハイブリダイズ可能な配列を有すればよい。
プローブの長さには、特に制限はないが、5〜50merであることが好ましく、10〜30merであることがより好ましい。プローブの長さがこのような範囲であれば、例えば検出感度を高めることができる。
【0063】
プローブには、変異部位の塩基に相補的な塩基が含まれていれば特に制限はない。変異部位の塩基に相補的な塩基が、プローブの5’末端から数えて4番目〜15番目に位置していることが好ましい。プローブにおける変異部位に対する塩基の位置がこのような位置であれば、例えば、検出感度を高めることができる。
【0064】
プローブの配列には、制限はない。プローブの配列における変異部位は、変異型に対応する塩基としてもよく、野生型に対応させた塩基としてもよい。多型検出用プローブの配列としては、変異型に対応した塩基を有する配列であることが好ましく、この変異部位の塩基を除いて、配列番号1に示す塩基配列と相補的な配列に対して、90%〜100%同じ配列であることがより好ましく、100%同一であることが特に好ましい。多型検出用プローブの配列を変異型に対応した塩基とすることによって、例えば、検出感度を高めることができる。
また、多型検出用プローブを増幅工程でプライマーと共に存在させて使用する場合には、DNAポリメラーゼの反応対象となってプローブ自体の伸長を予防するために、3’末端側に後述する蛍光標識が付加されているか、プローブの3’末端に更にリン酸基が付加されていることが好ましい。
【0065】
多型検出用プローブは、標識が付されている標識化プローブであることが検出の効率性の観点から好ましい。
標識化プローブにおける標識物質の具体例としては、蛍光色素および蛍光団が挙げられる。前記標識化プローブの具体例としては、蛍光色素で標識され、単独(相補配列にハイブリダイズしていないとき)で蛍光を示し且つハイブリッド形成(相補配列にハイブリダイズしているとき)により蛍光が減少(例えば、消光)するプローブが挙げられる。
【0066】
このような蛍光消光現象(Quenching phenomenon)を利用したプローブは、一般に、蛍光消光プローブと呼ばれる。前記プローブは、オリゴヌクレオチドの3’領域(例えば、3’末端)もしくは5’領域(例えば、5’末端)の塩基が蛍光色素で標識化されていることが好ましく、標識化される前記塩基は、シトシン(C)であることが好ましい。この場合、前記標識化プローブがハイブリダイズする検出目的配列において、前記標識化プローブの末端塩基Cと対をなす塩基もしくは前記対をなす塩基から1〜3塩基離れた塩基がグアニン(G)となるように、前記標識化プローブの塩基配列を設計することが好ましい。このようなプローブは、一般的にグアニン消光プローブと呼ばれ、いわゆるQ Probe (登録商標)として知られている。
このようなグアニン消光プローブが検出目的配列にハイブリダイズすると、蛍光色素で標識化された末端のCが、前記検出目的配列におけるGに近づくことによって、前記蛍光色素の発光が弱くなる(蛍光強度が減少する)という現象を示す。このようなプローブを使用すれば、シグナルの変動により、ハイブリダイズと解離とを容易に確認することができる。また、前記標識物質は、通常、ヌクレオチドのリン酸基に結合することができる。
【0067】
なお、Q Probeを用いた検出方法以外にも、公知の検出様式を適用してもよい。このような検出様式としては、Taq−man Probe法又はRFLP法などを挙げることができる。
【0068】
前記蛍光色素としては、特に制限されないが、例えば、フルオレセイン、リン光体、ローダミン、ポリメチン色素誘導体等が挙げられる。市販の蛍光色素としては、例えば、BODIPY FL(商標、モレキュラー・プローブ社製)、FluorePrime (商品名、アマシャムファルマシア社製)、Fluoredite (商品名、ミリポア社製)、FAM(ABI社製)、Cy3およびCy5(アマシャムファルマシア社製)、TAMRA(モレキュラープローブ社製)等が挙げられる。複数のプローブに使用する蛍光色素の組み合わせは、例えば、異なる条件で検出できればよく、特に制限されないが、例えば、Pacific Blue (検出波長450〜480nm)、TAMRA(検出波長585〜700nm)およびBODIPY FL(検出波長515〜555nm)の組み合わせ等が挙げられる。
【0069】
また、前記プローブが、蛍光色素等の標識化物質で標識化された標識化プローブである場合、前記標識化プローブと同じ配列である未標識プローブを併用してもよい。これにより、例えば、検出する蛍光強度等のシグナル強度を調節することができる等の利点が得られる。この未標識プローブは、その3’末端にリン酸が付加されてもよい。
【0070】
多型検出用プローブの反応系への添加のタイミングは、特に制限されない。例えば、増幅反応前、増幅工程の開始時、増幅反応途中および増幅反応後のいずれであってもよい。増幅工程前又は増幅工程の開始時に添加することが、増幅反応とハイブリダイゼーションを連続的に行うことができるため好ましい。即ち、増幅を行うこととハイブリッドを得ることとは、同時に行うことが、例えば、処理効率の観点から好ましい。
反応系における多型検出用プローブの添加割合は、特に制限されない。例えば、前記プローブを10nmol/L〜400nmol/Lの範囲となるように添加することが好ましく、20nmol/L〜200nmol/Lであることがより好ましい。
【0071】
多型検出用プローブと、一本鎖増幅核酸とのハイブリッドを得るために適用されるハイブリダイゼーションの手法及び条件には、特に制限はない。二本鎖核酸を変性して一本鎖核酸にすること、一本鎖核酸同士をハイブリダイズすることを目的として当業界で既知の条件をそのまま適用すればよい。
例えば、解離における加熱温度は、前記増幅産物が解離できる温度であれば特に制限されないが、例えば、85℃〜95℃である。加熱時間も特に制限されないが、通常、1秒〜10分であり、好ましくは1秒〜5分である。また、解離した一本鎖核酸と多型検出用プローブとのハイブリダイズは、例えば、解離後、解離における加熱温度を降下させることによって行うことができる。温度条件は、例えば、40℃〜50℃である。
なお、ここで「一本鎖増幅核酸」の範囲には、試験対象となっている当初の核酸試料における一本鎖核酸も包含される。
【0072】
測定工程では、ハイブリッドを含む試料の温度を変化させて、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づくシグナルの変動を測定する。
前記増幅一本鎖核酸と多型検出用プローブとのハイブリッドの融解状態を示すシグナル値の測定は、260nmの吸光度測定でもよいが、標識物質のシグナル測定であることが好ましい。標識物質のシグナル測定とすることによって、例えば検出感度を高めることができる。
【0073】
標識化ブローブとしては、例えば、単独でシグナルを示し且つハイブリッド形成によりシグナルを示さない標識化プローブ、または、単独でシグナルを示さず且つハイブリッド形成によりシグナルを示す標識化プローブがあげられる。前者のようなプローブであれば、検出目的配列とハイブリッド(例えば、二本鎖DNA)を形成している際にはシグナルを示さず、加熱によりプローブが遊離するとシグナルを示す。また、後者のプローブであれば、検出目的配列とハイブリッド(例えば、二本鎖DNA)を形成することによってシグナルを示し、加熱によりプローブが遊離するとシグナルが減少(消失)する。したがって、この標識によるシグナルをシグナル特有の条件(吸収波長等)で検出することによって、前記260nmの吸光度測定と同様に、ハイブリッドの融解の進行の観察ならびにTm値の決定等を行うことができる。
【0074】
ハイブリッドの解離に基づくシグナルの変動は、反応液の温度を変化させて行う。例えば、前記反応液を加熱し、すなわち、前記一本鎖DNAと前記標識化プローブとのハイブリッドを加熱し、温度上昇に伴うシグナル値の変動を測定する。前述のように、例えば、末端のC塩基が標識化されたプローブ(グアニン消光プローブ)を使用した場合、一本鎖DNAとハイブリダイズした状態では、蛍光が減少(または消光)し、解離した状態では、蛍光を発する。したがって、例えば、蛍光が減少(または消光)しているハイブリッドを徐々に加熱し、温度上昇に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。なお、前記標識化プローブを使用する場合、前記シグナル値は、例えば、前記標識化プローブの標識物質に応じた条件で測定することができる。
【0075】
蛍光強度の変動を測定する際の温度範囲は、特に制限されないが、例えば、開始温度が室温〜85°Cであり、好ましくは25℃〜70℃であり、終了温度は、例えば、40〜105℃である。また、温度の上昇速度は、特に制限されないが、例えば、0.1℃〜20℃/秒であり、好ましくは0.3〜5℃/秒である。
【0076】
Tm値評価工程では、測定工程で得られたシグナルの変動を解析してTm値を決定し、評価する。具体的には、得られた蛍光強度から、例えば、各温度における単位時間当たりの蛍光強度変化量を算出する。変化量を(−d蛍光強度増加量/dt)とする場合は、例えば、最も低い値を示す温度をTm値として決定できる。また、変化量を(d蛍光強度増加量/t)とする場合は、例えば、最も高い点をTm値として決定することもできる。なお、標識化プローブとして、消光プローブではなく、単独でシグナルを示さず且つハイブリッド形成によりシグナルを示すプローブを使用した場合には、反対に、蛍光強度の減少量を測定すればよい。
【0077】
Tm値は、例えば、従来公知のMELTCALCソフトウエア(http:/www.meltcalc.com/)等により算出でき、また、隣接法(Nearest Neighbor Method)によって決定することもできる。
【0078】
多型評価工程では、決定されたTm値に基づいて、EGFRエクソン21L858Rの存在またはEGFRエクソン21L858Rを有する核酸配列の存在比を評価する。
Tm値測定工程で得られたTm値からは、EGFRエクソン21L858Rに相当する配列番号1に示す塩基配列の172792番目の塩基の種類、すなわち、変異型または野生型等の遺伝子型を決定する。Tm解析において、完全に相補であるハイブリッド(マッチ)は、―塩基が異なるハイブリッド(ミスマッチ)よりも、解離を示すTm値が高くなるという結果が得られる。したがって、予め、前記プローブについて、完全に相補であるハイブリッドのTm値と、一塩基が異なるハイブリッドのTm値とを決定しておくことにより、目的の塩基部位における遺伝子型を決定することができる。
【0079】
例えば、目的の塩基部位の塩基を変異型と仮定し、その変異型塩基を含む検出目的配列に相補的なプローブを使用した場合、形成したハイブリッドのTm値が、完全に相補なハイブリッドのTm値と同じであれば、目的塩基は変異型と判断できる。また、形成したハイブリッドのTm値が、―塩基異なるハイブリッドのTm値と同じ(完全に相補なハイブリッドのTm値より低い値)であれば、目的塩基は正常型と判断できる。また、両方のTm値が検出された場合には、例えば、変異型を示す核酸と、正常型を示す核酸とが共存すると決定できる。
【0080】
また、前述のように、前記プローブを含む反応液の温度を上昇させて、すなわち、ハイブリッドを加熱して、温度上昇に伴うシグナル変動を測定する方法に代えて、例えば、ハイブリッド形成時におけるシグナル変動の測定を行ってもよい。つまり、前記プローブを含む反応液の温度を降下させてハイブリッドを形成する際に、前記温度降下に伴うシグナル変動を測定してもよい。
【0081】
具体例として、単独でシグナルを示し且つハイブリッド形成によりシグナルを示さない標識化プローブ(例えば、グアニン消光プローブ)を使用した場合、一本鎖核酸と標識化プローブとが解離している状態では蛍光を発しているが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、前記蛍光が減少(または消光)する。したがって、例えば、前記反応液の温度を徐々に降下させて、温度下降に伴う蛍光強度の減少を測定すればよい。他方、単独でシグナルを示さず且つハイブリッド形成によりシグナルを示す標識化プローブを使用した場合、一本鎖DNAとプローブとが解離している状態では蛍光を発していないが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、蛍光を発するようになる。したがって、例えば、前記反応液の温度を徐々に降下させて、温度下降に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
【0082】
EGFRエクソン21における変異型及び野生型の核酸配列に存在比を定量的に測定するには、予め、変異型及び野生型それぞれの核酸配列を作製して得られた検量線を作成し、それに基づいてそれぞれの存在比を評価することが好ましい。
【0083】
検量線の作成の一例について以下に説明する。
まず、例えば、野生型の核酸Wtと変異型の核酸Mtとの2種類の核酸の存在比を各々異ならせた複数の核酸混合物を作製し、複数の核酸混合物の各々について、融解曲線解析装置を用いて融解曲線を得る。
図1(A)に、ある1つの核酸混合物の温度と吸光度または蛍光強度等の検出信号との関係で表された融解曲線、及び同図(B)に温度と検出信号の微分値との関係で表された融解曲線(微分融解曲線ともいう)を示す。この微分融解曲線からピークを検出することにより、核酸Wtの融解温度TmW及び核酸Mtの融解温度TmMを検出して、TmW及びTmMを含む温度範囲の各々を設定する。
【0084】
TmWを含む温度範囲ΔTWとしては、例えば、TmWとTmMとの間で検出信号の微分値が最小となる温度を下限、検出信号のピークの裾野に対応する温度を上限とする温度範囲を設定することができる。また、TmMを含む温度範囲ΔTMとしては、例えば、TmWとTmMとの間で検出信号の微分値が最小となる温度を上限、検出信号のピークの裾野に対応する温度を下限とする温度範囲を設定することができる。
なお、温度範囲ΔTW及び温度範囲ΔTMは、同一の幅(例えば、10℃)または異なる幅(例えば、温度範囲ΔTWが10℃、温度範囲ΔTMが7℃)となるように設定してもよい。また、温度範囲ΔTW及び温度範囲ΔTMは、それぞれの融解温度TmからプラスX℃、マイナスX℃の幅(X℃は例えば15℃以内、望ましくは10℃以内)というように設定してもよい。
【0085】
次に、温度範囲ΔTW及び温度範囲ΔTMの各々について、微分融解曲線の温度範囲の下限に対応する点と上限に対応する点とを通る直線と微分融解曲線とで囲まれた面積(図1(B)の斜線部分)を求める。面積の求め方の一例として、具体的に以下のように求めることができる。温度Tにおける検出信号の微分値をf(T)とし、温度Tにおけるベース値をB(T)として、下記(1)式により求める。
【0086】
面積S={f(Ts+1)−B(Ts+1)}+{f(Ts+2)−B(Ts+2)}
+・・・+{f(Te−1)−B(Te−1)} ・・・(1)
ただし、Tsは各温度範囲における下限値、Teは上限値である。また、各温度Tにおけるベース値B(T)は、下記(2)式により求まる値であり、検出信号に含まれるバックグラウンドレベルを表すものである。このベース値を検出信号の微分値から減算することにより、検出信号に含まれるバックグラウンドの影響を除去する。
【0087】
B(T)=a×(T−Ts)+f(Ts) ・・・(2)
ただし、a={f(Te)−f(Ts)}/(Te−Ts) である。
【0088】
上記(1)式及び(2)式に従って、各核酸混合物について、温度範囲ΔTWにおける面積SW及び温度範囲ΔTMにおける面積SMを求め、面積比と各核酸混合物の存在比との関係を表す検量線を作成する。例えば、横軸に存在比(核酸混合物の総量に対する核酸Mtの割合)をとり、縦軸に面積比(SM/SW)をとった検量線とすることができる。図2に、横軸に存在比(核酸混合物の総量に対する核酸Mtの割合)をとり、縦軸に面積比(SM/SW)をとった検量線の一例を示す。なお、面積比はSW/SMで定めてもよい。
【0089】
実際の試料を用いて得られた融解曲線と微分融解曲線から面積比を算出し、上記のようにしてあらかじめ作成した検量線に基づいて、実際の試料中に含まれる多型を有する塩基配列の存在比を決定することができる。
【0090】
また、野生型及び変異型の各ピークの存在に従って存在比を計算することができるが、単にピークの存在を確認することによって、EGFR遺伝子における多型の存在(有無)を評価してもよい。
【0091】
[EGFRチロシンキナーゼ阻害剤の評価方法]
本発明のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の評価方法は、前記多型検出方法によりEGFR遺伝子における多型を検出すること(遺伝子多型検出工程)、及び、前記検出結果に基づいてEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する耐性又はEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の薬効を評価すること(薬効評価工程)、を含む。
前記多型検出方法では、本発明におけるEGFRエクソン21の多型を検出するための多型検出用プライマーセットを用いて、感度よく且つ簡便にEGFRエクソン21L858Rを検出するので、EGFRエクソン21におけるこの多型に基づいてEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の評価を感度よく且つ簡便に行うことができる。
【0092】
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤の評価方法における遺伝子多型検出工程については、上述したEGFR遺伝子における多型検出方法に関して記述した内容をそのまま適用することができる。
EGFRチロシンキナーゼは、EGFRエクソン21における多型によって反応性が異なることが知られている。具体的には、EGFR遺伝子が野生型である場合には、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤による腫瘍縮小効果が期待できると評価することができる。
このように、前記EGFRチロシンキナーゼ阻害剤の評価方法を適用することによって、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤の効果に対する予測を、信頼性高く且つ簡便に行うことができる。
【0093】
[キット]
本発明のEGFR遺伝子における多型を検出するためのキットは、前記P1オリゴヌクレオチド及びP2オリゴヌクレオチドを含むプライマーセットを含む。
このキットには、EGFR遺伝子における多型を簡便にかつ感度よく検出するために使用可能な上述したプライマーセットが含まれるので、EGFR遺伝子における多型の検出をより簡便に行うことができる。
【0094】
プライマーセットを構成するP1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドとは、異なる容器に含まれていてもよく、同一の容器に含まれていてもよい。なお、本明細書における「異なる容器」とは、P1オリゴヌクレオチドとP2オリゴヌクレオチドとが非接触状態を維持できるように区分けされたものであればよく、必ずしも、独立して取扱い可能な個別の容器でなくてもよい。
【0095】
本キットには、P1オリゴヌクレオチド及びP2オリゴヌクレオチドの鋳型核酸配列よりも5’末端側の領域に対する相補配列に相補的なプライマー、即ち、Fプライマーを更に含んでもよい。このFプライマーについては、前述したFプライマーに関する事項をそのまま適用することができる。これにより、より感度欲EGFR遺伝子における多型を検出するためのプライマーをキットに含むことができるので、感度よい多型の検出をより簡便に行うことができる。
Fプライマーは、プライマーセットとは、異なる容器に含まれていてもよく、同一の容器に含まれていてもよい。
【0096】
本キットには、EGFRエクソン21の多型を検出可能な多型検出用プローブを更に含んでもよい。この多型検出用プローブについては、前記多型検出用プローブに関する事項をそのまま適用することができる。これにより、被検体試料における多型検出を行う際、プライマーセットによる核酸増幅と、プローブによる検出とを同時に又は連続して簡便に行うことができる。
多型検出用プローブは、プライマーセットとは、異なる容器に含まれていてもよく、同一の容器に含まれていてもよい。
【0097】
本キットには、上記の他に、増幅に必要なポリメラーゼ等の試薬又は緩衝液、ハイブリダイズのために必要な試薬又は緩衝液、検体試料を希釈するための希釈剤等を含んでもよい。更に、本キットには、キットに含まれる又は、追加的に含むことが可能な各種の試薬に関する使用説明書等を含むことが好ましい。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」又は「%」は質量基準である。
【0099】
<評価例1>
[実施例1]
EGFRエクソン21の多型を検出するために、配列番号1の172643〜172941番目の塩基配列で、172792番目の塩基がGまたはTである塩基配列を含むプラスミドを、上記塩基配列以外の部位で制限酵素処理し、リニアライズしたものを準備した。得られたプラスミド、即ち、配列番号1に示される塩基配列の172792番目の塩基が「G」である変異型プラスミド(以下、「mt」という)と、配列番号1に示される塩基配列の172792番目の塩基が「T」である野生型プラスミド(以下、(以下、「wt」という)を、所定の割合で混合し、複数の核酸試料を調製した。この複数の核酸試料におけるmt含有割合は、それぞれ、3%、1%及び0%とした。
【0100】
EGFRエクソン21の多型を検出するために、配列番号1に示される配列の172792〜172807番目に相補的な配列であって、172792番目の塩基に相補的な塩基として「C」を含む配列に対する変異型プライマー(以下、「Mtプライマー」という)mt−R2(表1又は表5参照)と、配列番号1に示される配列の172792〜172807番目に相補的な配列であって、172792番目の塩基に相補的な塩基として「A」を含む配列に対する野生型プライマー(以下、(以下、「Wtプライマー」という)wt−R1(表2又は表5参照)を準備した。
【0101】
チューブ内に、表4に示すように、核酸試料1μL(2×104 copies/test)と、Mtプライマー及びWtプライマーとを含む各PCR反応液24μLとを添加し、サーマルサイクラー(商品名Mastercycler ep gradient S、eppendorf社製)を用いてPCRを行った。PCRは、95℃で60秒処理した後、95℃1秒及び60℃15秒を1サイクルとして50サイクル繰り返した。
【0102】
さらに、前記PCR反応液が入ったチューブを、i−densy(アークレイ社製)に移し、95℃1秒、40℃で60秒処理した後、続けて温度の上昇速度1℃/3秒で40℃から75℃まで加熱し、その間の経時的な蛍光強度を測定しTm解析を行った。蛍光色素としてTAMRAを用いたので、励起波長は520nm〜555nm、検出波長は585nm〜700nmで蛍光強度の変化を測定した。
【0103】
【表4】



【0104】
プローブには、配列番号1の172782〜172798番目の配列を認識し、3’末端に標識を有する3T−EGFR−858−R2(ttggccCgcccaaaatc-(TAMRA):配列番号22。「C」は変異部位の塩基に相補的な塩基)を用いた。Fプライマー(フォワードプライマー)としては、配列番号1の172739〜172764番目の配列に対応するEGFR−L858R−F2(aggaacgtactggtgaaaacaccgc:配列番号23)を用いた。鋳型核酸としては、EGFRエクソン21の野生型DNA(ロッシュ社製、ヒトゲノム)と、プラスミド(mtを1%又は3%の割合で混合したもの)を用いた。
【0105】
Tm解析によって、プローブの蛍光値の変化量を示すグラフを得た。Tm値は実測値より求め、解析の開始・終了温度はTm値の±5℃として、面積解析法により解析して、下記の式に従って、面積比としての変異型増幅産物と野生型増幅産物の存在比率を求めた。結果を表5に示す。
面積比=(mtの鋳型とプローブが結合・解離することにより得たピークの面積)/(Wtの鋳型とプローブが結合・解離することにより得たピークの面積)
【0106】
実施例2〜8
変異型プライマーと野生型プライマーを表5に示される組み合わせに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜8のプライマーセットによる多型検出を行った。結果を表5に示す。
比較例1
野生型プライマーを使用せず、変異型プライマーのみを用いて処方を水の量で調整した以外は、実施例1と同様にして多型検出を行った。結果を表5に示す。
【0107】
【表5】



【0108】
表5に示されるように、変異型プライマーのみを用いた多型検出よりも、塩基長又はTm値が異なる変異型プライマーと野生型プライマーの双方を一反応系で用いた多型検出の方が、変異0%、1%及び3%をそれぞれ含有量依存的に検出可能であり、本実施例のプライマーセットを用いることによって、核酸試料中の多型、即ち、EGFRエクソン21L858Rを高い感度で検出可能であることがわかる。
特に、付加配列に加えてミスマッチ変異も有する変異型プライマーを、野生型プライマーと共に用いることによって(実施例5〜7)、mt0%における擬陽性を抑えることができ、EGFRエクソン21L858Rの検出において、感度に加えて擬陽性抑制も良好であることがわかる。
【0109】
<評価例2>
実施例5のプライマーセットを用いて、mt0%、0.1%、0.3%及び1%の試料に対する多型検出を行った。
実施例1で作成した各プラスミド混合物を鋳型核酸として、鋳型核酸5,000コピー/μL(20,000copy/test)のものを使用し、かつ、実施例5のプライマーセットを用いた。全自動SNPs検査装置(i−densy、アークレイ社製)と、DNAポリメラーゼを含有するi−densy Pack UNIVERSAL(アークレイ社製)を用いてPCR及びTm解析を行った。PCR反応条件及びTm解析条件は、評価例1と同様としてTm値解析を行った。Tm値解析により得られたグラフを図3〜6に示す。なお、図3〜図6において縦軸は蛍光強度の温度微分値、横軸は温度をそれぞれ示す。
図3〜図6に示されるように、実施例5のプライマーセットを用いて多型検出を行うと、60℃付近の変異型のピークがmt含有量に応じた大きさのピークとして確認できる。従って、実施例5のプライマーセットを用いることによって、mt含量1%以下であっても変異型の存在比に応じた感度で多型を検出することができることがわかる。
【0110】
このように本発明によれば、簡便に且つ高感度にEGFRエクソン21における多型を検出することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の172792番目の塩基を含む領域を鋳型として増幅可能であると共に、塩基配列が10〜50塩基長である下記P1オリゴヌクレオチド及びP2オリゴヌクレオチドをそれぞれ少なくとも1種含むEGFRエクソン21の多型を検出するための多型検出用プライマーセット:
(P1)配列番号1に示す塩基配列の172792番目の塩基に相補的な塩基がCであるオリゴヌクレオチドであって、前記P2オリゴヌクレオチドのTm値と比較して高いTm値を示すか、又は前記P2オリゴヌクレオチドよりも1塩基以上長いオリゴヌクレオチド、及び、
(P2)配列番号1に示す塩基配列の172792番目の塩基に相補的な塩基がAであるオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記P1オリゴヌクレオチド及びP2オリゴヌクレオチドの少なくとも一方は、配列番号1の172792番目の塩基に相補的な塩基以外の位置に、配列番号1に示す塩基配列と相補的でない塩基を少なくとも1つ有する請求項1記載の多型検出用プライマーセット。
【請求項3】
前記P1オリゴヌクレオチド及びP2オリゴヌクレオチドの少なくとも一方は、配列番号1の172792番目の塩基に相補的な塩基以外の位置に、配列番号1に示す塩基配列と相補的でない塩基を有し、当該相補的でない塩基が、オリゴヌクレオチド鎖の5’末端に位置する連続した2〜10塩基の付加配列である請求項1又は請求項2記載の多型検出用プライマーセット。
【請求項4】
前記P1オリゴヌクレオチド及び前記P2オリゴヌクレオチドの少なくとも一方は、配列番号1の172792番目の塩基に相補的な塩基以外の位置に、配列番号1に示す塩基配列と相補的でない塩基を少なくとも1つ有し、当該相補的でない塩基が、オリゴヌクレオチド鎖中に配置された1塩基又は連続した2〜20塩基のミスマッチ塩基である請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の多型検出用プライマーセット。
【請求項5】
前記P1オリゴヌクレオチド及び前記P2オリゴヌクレオチドの少なくとも一方は、配列番号1に示す塩基配列の172792番目の塩基に相補的な塩基を、3’末端側から1〜3番目のいずれかの位置に有する請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の多型検出用プライマーセット。
【請求項6】
前記P1オリゴヌクレオチドのTm値が、前記P2オリゴヌクレオチドのTm値より0.1℃〜20℃高い請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の多型検出用プライマーセット。
【請求項7】
前記P1オリゴヌクレオチド又はP2オリゴヌクレオチドの鋳型となる配列番号1に示す塩基配列の領域よりも5’末端側となる領域に対する相補配列に相補的なプライマーを更に含む請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の多型検出用プライマーセット。
【請求項8】
配列番号2〜配列番号11で示されるP1オリゴヌクレオチドの少なくとも1つと、配列番号12〜配列番号21で示されるP2オリゴヌクレオチドの少なくとも1つを含む請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の多型検出用プライマーセット。
【請求項9】
請求項1記載のP1オリゴヌクレオチドのみからなるEGFRエクソン21の多型を検出するための多型検出用プライマー。
【請求項10】
配列番号1の172792番目の塩基に相補的な塩基以外の位置に、配列番号1に示す塩基配列と相補的でない塩基を少なくとも1つ有する請求項9記載の多型検出用プライマー。
【請求項11】
配列番号1の172792番目の塩基を相補する塩基以外の位置に、配列番号1に示す塩基配列と相補的でない1つ以上の塩基を有し、前記相補的でない塩基が、オリゴヌクレオチド鎖の5’末端に位置する連続した3〜10塩基の付加配列及びオリゴヌクレオチド鎖中に配置された1塩基又は連続した2〜20塩基のミスマッチ塩基の少なくとも一方である請求項9又は請求項10記載の多型検出用プライマー。
【請求項12】
配列番号1に示す塩基配列の172792番目の塩基に相補的な塩基を、3’末端側から1〜3番目のいずれかの位置に有する請求項9〜請求項11のいずれか1項記載の多型検出用プライマー。
【請求項13】
(I) 核酸試料と、前記P1オリゴヌクレオチド及び前記P2オリゴヌクレオチドを含む請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の多型検出用プライマーセットとを接触させ、前記核酸試料中の核酸配列を鋳型として増幅を行うこと、
(II) EGFRエクソン21の多型を検出可能な多型検出用プローブ及び、前記増幅により得られた一本鎖増幅核酸を接触させて、該一本鎖増幅核酸と該プローブとのハイブリッドを得ること、
(III) 前記ハイブリッドを含む試料の温度を変化させて、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づくシグナルの変動を測定すること、
(IV) 前記シグナルの変動に基づいてハイブリッドの解離温度であるTm値を評価すること、及び、
(V) 前記Tm値に基づいて、EGFRエクソン21L858Rの存在またはEGFRエクソン21L858Rを有する核酸配列の存在比を評価することと、
を含む、EGFR遺伝子における多型検出方法。
【請求項14】
前記増幅を行うことと前記ハイブリッドを得ることを同時に行う請求項13記載の多型検出方法。
【請求項15】
請求項13又は請求項14記載の多型検出方法によりEGFR遺伝子における多型を検出すること、及び、
前記検出結果に基づいてEGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する耐性又はEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の薬効を評価すること、
を含むEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の評価方法。
【請求項16】
配列番号2〜配列番号11で示されるP1オリゴヌクレオチド及び、配列番号12〜配列番号21で示されるP2オリゴヌクレオチドのいずれかである請求項13又は請求項14記載の多型検出用方法に用いられる多型検出用プライマー。
【請求項17】
請求項1〜請求項8のいずれか1項記載のプライマーセットを含むEGFR遺伝子における多型を検出するための多型検出用キット。
【請求項18】
さらに、EGFRエクソン21 L858Rを検出可能なプローブを含む請求項17記載の多型検出用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−105645(P2012−105645A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235784(P2011−235784)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】