EGFR遺伝子の多型検出用プローブ、増幅用プライマーおよびその用途
【課題】EGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子について、異なる多型を、簡便且つ優れた信頼性で判別可能な、多型検出用プローブ、増幅用プライマーおよびその用途を提供する。
【解決手段】蛍光標識オリゴヌクレオチドを、多型検出用プローブとして使用する。特定の塩基配列において、以下の塩基配列において相補的な配列を有し、特定のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド。塩基番号251〜261を含む11〜50塩基長、塩基番号257〜261を含む5〜50塩基長、塩基番号104〜112を含む9〜50塩基長、塩基番号104〜119を含む16〜50塩基長、塩基番号136〜145を含む10〜50塩基、塩基番号259〜264を含む6〜50塩基、塩基番号258〜262を含む5〜50塩基、塩基番号249〜264を含む16〜50塩基、塩基番号257〜264を含む8〜50塩基。
【解決手段】蛍光標識オリゴヌクレオチドを、多型検出用プローブとして使用する。特定の塩基配列において、以下の塩基配列において相補的な配列を有し、特定のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド。塩基番号251〜261を含む11〜50塩基長、塩基番号257〜261を含む5〜50塩基長、塩基番号104〜112を含む9〜50塩基長、塩基番号104〜119を含む16〜50塩基長、塩基番号136〜145を含む10〜50塩基、塩基番号259〜264を含む6〜50塩基、塩基番号258〜262を含む5〜50塩基、塩基番号249〜264を含む16〜50塩基、塩基番号257〜264を含む8〜50塩基。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGFR遺伝子の多型検出用プローブ、増幅用プライマーおよびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor:EGFR)は、上皮成長因子(EGF)のチロシンキナーゼ型受容体である。EGFRは、多くの固形癌で高頻度に発現し、その過剰発現は癌の悪性度や予後と関連することが知られている。そこで、例えば、EGFRのチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR−TKI)であるゲフィチニブ等が、癌治療薬として使用されている。しかしながら、患者の中には、ゲフィニチブによる腫瘍縮小効果が向上する場合があれば、ゲフィチニブに耐性を示し、治療効果が得られない場合もある。そして、近年、このような薬剤に対する感受性が、EGFRの変異と関連することが明らかになっている(非特許文献1、2)。
【0003】
前記変異は、例えば、EGFRの790番目および858番目における置換変異、EGFR遺伝子のエクソン19における欠失変異等が知られている(非特許文献1、2)。前記790番目における変異は、EGFRの790番目のアミノ酸であるトレオニン(T)がメチオニン(M)に置換された変異であり、配列番号21に示すEGFR遺伝子の部分配列においては、347番目の塩基シトシン(c)がチミン(t)に置換されている。前記858番目における変異は、EGFRの858番目のアミノ酸であるロイシン(L)がアルギニン(R)に置換された変異であり、配列番号1に示すEGFR遺伝子の部分配列においては、261番目の塩基チミン(t)がグアニン(g)に置換されている。前記EGFR遺伝子のエクソン19における欠失変異は、前記エクソン19において、連続した数塩基〜十数塩基が欠失した変異であり、配列番号2に示すEGFR遺伝子の部分配列においては、例えば、112〜164番目の塩基のいずれかが欠失している。したがって、EGFR遺伝子における、この変異の有無(多型)を検出すれば、治療前に、ゲフィチニブに対する感受性を評価できるため、より効率的なテーラーメイド癌治療が可能となる。
【0004】
他方、遺伝子の多型を検出する方法は、様々な方法が報告されており、例えば、PCR−RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism)法等があげられる。
【0005】
しかしながら、前記PCR−RFLP法は、手間がかかり増幅産物が飛散し、2回目の別の反応に混入するおそれがある。このような問題から、多型の検出を自動化し難いという問題もある。
【0006】
このような問題から、近年、遺伝子多型の検出方法として、融解曲線分析(Tm分析)を利用した検出が行われている。これは、検出目的の遺伝子多型を含む検出対象配列に相補的なプローブを用いて、検出試料の標的一本鎖DNAと前記プローブとのハイブリッド(二本鎖DNA)を形成させ、このハイブリッド形成体に加熱処理を施して温度上昇に伴うハイブリッドの解離(融解)を吸光度等のシグナル測定により検出し、この検出結果に基づいてTm値を決定することによって目的多型の有無を判断する方法である。Tm値は、ハイブリッド形成体の相同性が高い程高く、相同性が低い程低くなる。このため、目的多型を含む検出対象配列とそれに相補的なプローブとのハイブリッド形成体について予めTm値(評価基準値)を求めておき、検出試料の標的一本鎖DNAと前記プローブとのTm値(測定値)を測定し、測定値が評価基準値と同じであれば、標的DNAに目的多型が存在すると判断でき、測定値が評価基準値より低ければ、標的DNAに目的多型が存在しないと判断できる。
【0007】
「Tm値」とは、二本鎖核酸が解離する温度(解離温度:Tm)であって、一般に、260nmにおける吸光度が、吸光度全上昇分の50%に達した時の温度と定義される。即ち、二本鎖核酸、例えば、二本鎖DNAを含む溶液を加熱していくと、260nmにおける吸光度が上昇する。これは、二本鎖DNAにおける両鎖間の水素結合が加熱によってほどけ、一本鎖DNAに解離(DNAの融解)することが原因である。そして、全ての二本鎖DNAが解離して一本鎖DNAになると、その吸光度は加熱開始時の吸光度(二本鎖DNAのみの吸光度)の約1.5倍程度を示し、これによって融解が完了したと判断できる。Tm値は、この現象に基づき設定される。
【0008】
しかしながら、このようなTm解析を利用した検出方法は、少なくとも一塩基の違いをTm値によって判断するため、複数の遺伝子多型を有する場合には、1つのサンプルを解析するにも多大な労力を伴う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】PLoS Medicine、2005年、Vol.2、No.3、p.225−235
【非特許文献2】Journal of Clinical Oncology、2005年、Vol.23、No.11、p.2513−2520
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような理由から、EGFR遺伝子の多型の検出は、例えば、前記疾患の治療法の選択において非常に重要である。そこで、本発明は、EGFR遺伝子について、一塩基が異なる多型を、簡便且つ優れた信頼性で判別可能な多型検出用プローブおよび多型検出方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の多型検出用プローブは、EGFRの遺伝子変異を検出することの可能なプローブであって、下記P1、P3、P5〜P7およびP15〜P18から選択される少なくとも1種の蛍光標識オリゴヌクレオチドからなることを特徴とする。
(P1)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号251〜261を含む11〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号251に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P3)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜261を含む5〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号257に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P5)配列番号2に示す塩基配列において、塩基番号104〜112を含む9〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号112に相同的な塩基がチミンであり、塩基番号104に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P6)配列番号2に示す塩基配列において、塩基番号104〜119を含む16〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号119の塩基がG以外の塩基に置換されており、塩基番号104に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P7)配列番号3に示す塩基配列において、塩基番号136〜145を含む10〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号145に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P15)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号259〜264を含む6〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、前記塩基より3’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜262を含む5〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、前記塩基より5’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P17)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号249〜264を含む16〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、前記塩基より5’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P18)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜264を含む8〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、前記塩基より3’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
【0012】
本発明の多型検出方法は、EGFR遺伝子における多型の検出方法であって、本発明のプローブを用いることを特徴とする。
【0013】
本発明の判定方法は、本発明の方法によりEGFR遺伝子における多型を検出する工程、および、多型の有無に基づいてEGFR-TKIに対する耐性または薬効を判定する工程を含むことを特徴とする、EGFR-TKIに対する耐性またはEGFR-TKIの薬効の判定方法である。
【0014】
本発明のキットは、EGFR遺伝子における多型を検出するための試薬キットであって、本発明のプローブを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明のプライマーは、EGFRの遺伝子変異を検出することの可能なプライマーであって、下記P8〜P13から選択される多型検出用プライマーである。
(P8)233番目の塩基Cを3’末端とし、配列番号1に相同的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P9)284番目の塩基Gに相補的な塩基Cを3’末端とし、配列番号1に相補的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P10)290番目の塩基Gに相補的な塩基Cを3’末端とし、配列番号1に相補的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P11)95番目の塩基Gを3'末端とし、配列番号2に相同的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P12)73番目の塩基Cを3'末端とし、配列番号2に相同的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P13)155番目の塩基Gに相補的な塩基Cを3'末端とし、配列番号2に相補的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
【発明の効果】
【0016】
本発明の多型検出方法によれば、本発明の多型検出用プローブを使用することによって、例えば、EGFR遺伝子の多型を、簡便且つ優れた信頼性で判別できる。具体的には、例えば、試料中に、目的の多型が野生型であるEGFR遺伝子と変異型であるEGFR遺伝子とが共存している場合であっても、野生型と変異型の多型を、簡便且つ優れた信頼性で検出できる。また、本発明のプライマーによれば、例えば、EGFR遺伝子の多型を含む領域を、特異的に増幅できる。このように、本発明によれば、EGFR遺伝子の多型を、簡便且つ優れた信頼性で増幅および判別できることから、例えば、検出結果を、前述のような疾患の治療法の選択等に反映できる。例えば、ゲフィニチブ等のEGFR−TKIに対する耐性または薬効を判定できる。なお、本発明は、例えば、医療分野に関わらす、生化学等の広い分野におけるEGFR遺伝子の多型検出に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施例1における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明の実施例2における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の実施例4における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明の実施例5−1における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の実施例5−2における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の実施例5−3における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図7】図7は、比較例1における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図8】図8は、比較例2における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例3−1における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図10】図10は、実施例3−2における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図11】図11は、実施例3−3における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図12】図12は、比較例3における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において、遺伝子の多型とは、例えば、変異により生じた、一つまたは複数の遺伝子座における多様性をいう。前記変異は、例えば、置換、欠失、挿入および付加があげられる。
【0019】
EGFR遺伝子として、配列番号1、2および21に示す部分配列は、例えば、それぞれ、以下に示すGenBankアクセッションNo.に登録されている。
(配列番号1)
NT_033968
4848624〜4849033番目の塩基配列
(配列番号2)
NT_033968.6
4831717番目〜4832003番目の塩基配列
(配列番号21)
NG_007726
167001番目〜168020番目の塩基配列
【0020】
本発明において、EGFR遺伝子における検出目的の多型とは、例えば、以下の多型である。
配列番号1に示すEGFR遺伝子の部分配列において261番目の塩基(k)の多型
配列番号2に示すEGFR遺伝子の部分配列において104〜133番目の少なくともいずれかの塩基の多型
配列番号2に示すEGFR遺伝子の部分配列において130〜164番目の塩基の少なくともいずれかの多型
配列番号21に示すEGFR遺伝子の部分配列において347番目の塩基(y)の多型
【0021】
以下、配列番号1の前記多型を「EGFRエクソン21 858多型」といい、配列番号2の前記多型を「EGFRエクソン19多型」といい、配列番号21の前記多型を「EGFR790多型」という。前記多型は、それぞれ、野生型、変異型が存在する。前記各多型について、野生型のEGFR遺伝子を、野生型遺伝子、変異型のEGFR遺伝子を、変異型遺伝子という。
【0022】
前記配列番号1における261番目の塩基(k)の多型は、野生型がチミン(t)であり、変異型がグアニン(g)である。野生型の場合、EGFRの858番目のアミノ酸はロイシン(L)となり、変異型の場合、EGFRの858番目のアミノ酸はアルギニン(R)となる。
【0023】
本発明において、「EGFRエクソン21 L858R」との表現は、EGFR遺伝子のエクソン21における変異であって、コドン858における変異がアミノ酸としてロイシンからアルギニンへの変異であることを意味する。また、本発明において、「EGFRエクソン21の変異型」との表現は、「EGFRエクソン21 L858R」を意味する。本発明におけるEGFRエクソン21の塩基配列は、GenBankアクセッションNo.NT_033968における4848624〜4849033番目を意味し、EGFRエクソン21 L858Rの変異は、GenBankアクセッションNo.NT_033968におけるに示す塩基配列の4848884番目の塩基が「T(チミン)」から「G(グアニン)」への変異をいう。
【0024】
前記配列番号2の104〜164番目の塩基の多型は、例えば、下記表1に示す多型があげられる(Journal of Clinical Oncology、2005年、Vol.23、No.11、p.2513−2520参照)。下記表1において、多型1は、野生型である。下記多型1の塩基配列は、配列番号2における104〜164番目のオリゴヌクレオチドに対応する。下記表1において、多型2〜18は、配列番号2の112〜164番目の領域において、少なくともいずれかの塩基が欠失した変異型(エクソン19欠失変異)である。中でも、下記多型2〜17は、配列番号2の122〜132番目の領域において、少なくともいずれかの塩基が欠失しており、具体的には、前記112〜140番目の領域において、複数の塩基が欠失した変異型である。下記多型18は、配列番号2の137〜151番目の塩基が欠失した変異型である。下記表1の多型2〜18において、「−」は、多型1に対応する部位の塩基が欠失していることを示す。
【0025】
【表1】
【0026】
EGFR遺伝子において、前記二カ所の多型のうち少なくとも一つが前述のような変異型であれば、例えば、ゲフィニチブ等のEGFR−TKIに対する耐性が高い可能性があると判断できる。
【0027】
前記配列番号21の347番目の塩基(y)は、野生型がシトシン(c)であり、この場合、EGFRの790番目のアミノ酸はトレオニン(T)となる。変異型は、チミン(t)であり、この場合、EGFRの790番目のアミノ酸はメチオニン(M)となる。EGFR遺伝子において、この多型が前述のような変異型であれば、例えば、ゲフィニチブ等のEGFR−TKIに耐性を示す可能性があると判断できる。
【0028】
本発明において、「相同性を有する配列」は、特定の塩基配列に対して、例えば、80%以上の相同性を有する配列が好ましい。前記相同性は、例えば、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、100%である。すなわち、本発明において、相同性を有する配列は、前記特定の塩基配列からなる配列(相同性100%)でもよいし、前記特定の塩基配列について、1塩基以上が置換、欠失、挿入および/または付加された配列(例えば、相同性が80%以上100%未満)でもよい(以下、同様)。前述した前記多型が発生する部位、すなわち、センス鎖における部位およびそれに相補的なアンチセンス鎖における部位を、「検出部位」といい、前記検出部位を含み、前記多型検出用プローブがハイブリダイズ可能な領域を、「ハイブリダイズ領域または検出配列」という。前記検出部位が野生型である検出配列を、「野生型検出配列」、検出部位が変異型である検出配列を、「変異型検出配列」ともいう。
【0029】
本発明において、前記EGFR858多型(t/g)を検出するためのプローブを、「EGFR858用プローブ」、前記エクソン19多型を検出するためのプローブを、「エクソン19用プローブ」、前記EGFR790多型(c/t)を検出するためのプローブを、「EGFR790用プローブ」ともいう。また、前記検出配列において、前記変異型検出配列より、前記野生型検出配列に対して、より強くハイブリダイズするプローブを、「野生型プローブ」という。一方、前記検出配列において、前記野生型検出配列より、前記変異型検出配列に対して、より強くハイブリダイズするプローブを、「変異型プローブ」という。「ハイブリダイズする強さ」は、例えば、Tm値の関係、具体的には、プローブと野生型検出配列とのTm値および前記プローブと変異型検出配列とのTm値について、両Tm値の高低の関係により表すことができる。すなわち、前記野生型プローブは、例えば、野生型検出配列とのTm値が、変異型検出配列とのTm値より、高い値を示すプローブである。一方、前記変異型プローブは、変異型検出配列とのTm値が、野生型検出配列とのTm値より、高い値を示すプローブである。
【0030】
前記高い値を示すとは、例えば、各Tm値におけるピークの違いが検出可能であればよく、具体的には、前記各Tm値の差が3℃以上であることが好ましく、より好ましくは4℃以上であり、さらに好ましくは5℃以上であり、前記各Tm値の差の上限は何ら制限されず、例えば、30℃である。
【0031】
本発明において、EGFR遺伝子における増幅領域は、例えば、EGFR遺伝子のセンス鎖における領域でもよいし、それに対応するアンチセンス鎖における領域でもよいし、両方であってもよい。
【0032】
本発明において、塩基配列の末端とは、塩基配列の5’側および3’側の最も端の塩基を意味する。また、5’末端領域とは、塩基配列の5’末端から数塩基の領域であり、3’末端領域とは、塩基配列の3’末端から数塩基の領域である。前記数塩基とは、例えば、末端から1塩基〜10塩基である。本発明において、塩基配列の末端からZ番目の塩基(Zは正の整数)とは、末端の塩基を1番目とした順番である。
【0033】
<多型検出用プローブ>
(1)EGFR858用プローブ
本発明の多型検出用プローブは、前述のように、EGFR exon21 L858Rの遺伝子変異を検出することの可能なプローブであって、下記P1、P3およびP15〜P18の少なくとも1種の蛍光標識オリゴヌクレオチドからなることを特徴とする。
(P1)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号251〜261を含む11〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号251に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P3)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜261を含む5〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号257に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P15)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号259〜264を含む6〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、前記塩基より3’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜262を含む5〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、前記塩基より5’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P17)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号249〜264を含む16〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、前記塩基より5’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P18)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜264を含む8〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、前記塩基より3’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
【0034】
前記P1、P3およびP15〜P18のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、前記EGFR858多型(t/g)を検出するためのプローブ、すなわち、前記EGFR858用プローブである。これらのプローブは、例えば、配列番号1に示す塩基配列において、261番目の塩基の置換変異の有無を検出するためのプローブである。
【0035】
前記P1、P3およびP15〜P18の各オリゴヌクレオチドは、例えば、EGFR遺伝子のセンス鎖と相補的であり、前記センス鎖とのハイブリダイゼーションにより、前記多型を確認できる。前記P1のオリゴヌクレオチドにおいて、配列番号1の261番目の塩基(tまたはg)に相補的な(対応する)塩基は、アデニン(a)またはシトシン(c)である。前記P1のオリゴヌクレオチドにおいて、前記塩基がアデニン(a)であるオリゴヌクレオチドを、「P1−wt」ともいい、前記塩基がシトシン(c)であるオリゴヌクレオチドを、「P1−mt」ともいう。前記P1−wtは、EGFR858変異型の検出配列より、EGFR858野生型の検出配列に強くハイブリダイズするため、EGFR858用野生型プローブといえる。前記P1−mtは、EGFR858野生型の検出配列より、EGFR858変異型の検出配列に強くハイブリダイズするため、EGFR858用変異型プローブといえる。これらのオリゴヌクレオチドが、前記EGFR遺伝子の検出配列のうち、EGFR858野生型の検出配列またはEGFR858変異型の検出配列のいずれと強くハイブリダイズするかによって、EGFR遺伝子の多型を検出できる。
【0036】
前記P3のオリゴヌクレオチドは、例えば、EGFR遺伝子のセンス鎖と相補的であり、前記センス鎖とのハイブリダイゼーションにより、前記多型を確認できる。前記P3のオリゴヌクレオチドにおいて、配列番号1の261番目(tまたはg)に相補的な(対応する)塩基は、アデニン(a)またはシトシン(c)である。前記P3のオリゴヌクレオチドにおいて、前記塩基がアデニン(a)であるオリゴヌクレオチドを、「P3−wt」ともいい、前記塩基がシトシン(c)であるオリゴヌクレオチドを、「P3−mt」ともいう。前記P3−wtは、EGFR858変異型の検出配列より、EGFR858野生型の検出配列に強くハイブリダイズするため、EGFR858用野生型プローブといえる。前記P3−mtは、EGFR858野生型の検出配列より、EGFR858変異型の検出配列に強くハイブリダイズするため、EGFR858用変異型プローブといえる。これらのオリゴヌクレオチドが、前記EGFR遺伝子の検出配列のうち、EGFR858野生型の検出配列またはEGFR858変異型の検出配列のいずれと強くハイブリダイズするかによって、EGFR遺伝子の多型を検出できる。
【0037】
前記P1のオリゴヌクレオチド(3T-EGFR-858-R2)は、前述のように、11〜50塩基長であり、好ましくは、11〜40塩基長であり、より好ましくは、11〜30塩基長であり、さらに好ましくは、12〜20塩基長である。前記P3のオリゴヌクレオチド(3T-EGFR-858-R1)は、前述のように、5〜50塩基長であり、好ましくは、10〜40塩基長であり、より好ましくは、10〜30塩基長であり、さらに好ましくは、12〜20塩基長である。
【0038】
前記各オリゴヌクレオチドにおいて、前記標識物質により標識化される部位は、特に制限されず、例えば、5’末端領域または3’末端領域であることが好ましく、より好ましくは5’末端または3’末端である。また、後述するように、前記オリゴヌクレオチドにおいて、前記標識物質により標識化される塩基は、例えば、シトシン(c)またはグアニン(g)であることが好ましい。前記標識物質は、例えば、塩基を直接標識化してもよいし、前記塩基を含むヌクレオチド残基のいずれかの部位を標識することによって、前記塩基を間接的に標識化してもよい。
【0039】
前記P1のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号251に相補的な(対応する)塩基を、3’末端から数えて1〜3番目の位置に有することが好ましい。前記オリゴヌクレオチドにおける「塩基番号251に相補的な(対応する)塩基」とは、前記オリゴヌクレオチドと配列番号1の塩基配列とをアライメントした際に、配列番号1の塩基配列における251番目の塩基(g)に相補的な塩基(c)を意味する。具体的に、塩基番号251に相補的な塩基は、P1のオリゴヌクレオチドにおいて、cで表わされる。
【0040】
前記P1のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号251に相補的な塩基を3’末端に有することが好ましい。
【0041】
前記P1−mtは、例えば、配列番号7に示されるオリゴヌクレオチド、前記P1−wtは、例えば、配列番号8に示されるオリゴヌクレオチドがあげられる。
5'-ttggcccgcccaaaatc-3' (配列番号7)(3T-EGFR-858-R2)
5'-ttggccagcccaaaatc-3' (配列番号8)
【0042】
前記P3のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号257に相補的な(対応する)塩基を3’末端から数えて1〜3番目の位置に有することが好ましい。前記オリゴヌクレオチドにおける「塩基番号257に相補的な(対応する)塩基」とは、前記オリゴヌクレオチドと配列番号1の塩基配列とをアライメントした際に、配列番号1の塩基配列における257番目の塩基(g)に相補的な塩基(c)を意味する。具体的に、塩基番号257に相補的な塩基は、P3のオリゴヌクレオチドにおいて、cで表わされる。
【0043】
前記P3−wtは、例えば、配列番号12〜14に示されるオリゴヌクレオチドがあげられ、前記P3−mtは、例えば、配列番号9〜11に示されるオリゴヌクレオチドがあげられる。
5'-cagtttggccagccc-3' (配列番号12)
5'-ctgtttggccagccc-3' (配列番号13)
5'-ccgtttggccagccc-3' (配列番号14)
5'-cagtttggcccgccc-3' (配列番号9)(3T-EGFR-858-R1)
5'-ctgtttggcccgccc-3' (配列番号10)
5'-ccgtttggcccgccc-3' (配列番号11)
【0044】
前記P15のオリゴヌクレオチドは、例えば、下記P15-1〜P15-5のオリゴヌクレオチドがあげられる。
(P15-1)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号235〜264を含む30〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号235に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P15-2)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号239〜264を含む26〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号239に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P15-3)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号244〜264を含む21〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号244に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P15-4)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜264を含む7〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号258に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P15-5)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号259〜264を含む6〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号259に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
【0045】
前記P16のオリゴヌクレオチドは、例えば、下記P16-1〜P16-10のオリゴヌクレオチドがあげられる。
(P16-1)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜263を含む6〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号263に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16-2)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜262を含む5〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号262に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16-3)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜271を含む14〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号271に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16-4)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜274を含む17〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号274に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16-5)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜275を含む18〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号275に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16-6)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜276を含む19〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号276に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16-7)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜278を含む21〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号278に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16-8)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜280を含む23〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号280に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16-9)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜281を含む24〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号281に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16-10)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜284を含む27〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号284に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
【0046】
前記P17のオリゴヌクレオチドは、例えば、下記P17-1〜P17-4のオリゴヌクレオチドがあげられる。
(P17-1)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号236〜264を含む29〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、塩基番号236に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P17-2)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号241〜264を含む24〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、塩基番号241に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P17-3)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号247〜264を含む18〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、塩基番号247に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P17-4)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号249〜264を含む16〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、塩基番号249に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
【0047】
前記P18のオリゴヌクレオチドは、例えば、下記P18-1〜P18-5のオリゴヌクレオチドがあげられる。
(P18-1)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜264を含む8〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、塩基番号264に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P18-2)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜265を含む9〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、塩基番号265に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P18-3)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜269を含む13〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、塩基番号269に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P18-4)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜272を含む16〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、塩基番号272に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P18-5)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜279を含む23〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、塩基番号279に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
【0048】
本発明のEGFR858用プローブは、例えば、プローブの両端の塩基がシトシンであり、前記両シトシンが蛍光標識されているプローブでもよい。このようなプローブは、例えば、下記P19の蛍光標識オリゴヌクレオチドがあげられる。
(P19)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜274を含む18〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号257に対応する塩基および塩基番号274に対応する塩基がシトシンであり、前記両シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
【0049】
前記P15〜P19のオリゴヌクレオチドは、特に示さない限り、例えば、前記P1およびP3の各オリゴヌクレオチドに関する説明等を援用できる。例えば、各オリゴヌクレオチドにおける標識化部位は、前述のようにシトシン残基が好ましく、前記P15、P16およびP19は、例えば、配列番号1におけるグアニンに対応するシトシン残基が好ましく、前記P17およびP18は、例えば、配列番号1におけるシトシン残基が好ましい。
【0050】
P15のオリゴヌクレオチドの塩基長の下限は6塩基長であり、好ましくは16塩基長である。P16のオリゴヌクレオチドの塩基長の下限は5塩基長であり、好ましくは、6塩基長であり、さらに好ましくは18塩基長である。P17のオリゴヌクレオチドの塩基長の下限は16塩基長であり、好ましくは20塩基長である。P18のオリゴヌクレオチドの塩基長の下限は8塩基長であり、好ましくは20塩基長である。前記P15〜P19の各オリゴヌクレオチドの塩基長の上限は50塩基長であり、好ましくは40塩基長であり、さらに好ましくは30塩基長である。
【0051】
前記P15〜P19のオリゴヌクレオチドについて、以下に、それぞれの配列の具体例をあげる。下記配列において、目的の多型部位に対応する塩基は、例えば、野生型でも変異型でもよい。具体的に、前記P15、P16およびP19は、例えば、配列において、前記塩基をm(aまたはc)で表わすことができ、前記P17およびP18は、例えば、配列において、前記塩基をk(tまたはg)で表わすことができる。なお、本発明は、これらの配列には制限されない。
【0052】
P15-1(配列番号72)
5'-gccCgcccaaaatctgtgatcttgacatgc-3' (3T-EGFR-858-R4)
P15-2(配列番号73)
5'-gccCgcccaaaatctgtgatcttgac-3' (3T-EGFR-858-R5)
P15-3(配列番号74)
5'-tggccCgcccaaaatctgtgatc-3' (3T-EGFR-858-R6)
P15-4(配列番号75)
5'-agcagtttggccCgcc-3' (3T-EGFR-858-R7)
P15-5(配列番号76)
5'-acccagcagtttggccCgc-3' (3T-EGFR-858-R8)
【0053】
P16-1(配列番号77)
5'-ccCgcccaaaatctgtga-3' (3T-EGFR-858-R9)
P16-2(配列番号78)
5'-cCgcccaaaatctgtgat-3' (3T-EGFR-858-R10)
P16-3(配列番号79)
5'-cagtttggccCgcccaaaatct-3' (3T-EGFR-858-R11)
P16-4(配列番号80)
5'-cagcagtttggccCgcccaaaa-3' (3T-EGFR-858-R12)
P16-5(配列番号81)
5'-ccagcagtttggccCgcccaaaa-3' (3T-EGFR-858-R13)
P16-6(配列番号82)
5'-cccagcagtttggccCgcccaaaa-3' (3T-EGFR-858-R14)
P16-7(配列番号83)
5'-cacccagcagtttggccCgcccaa-3' (3T-EGFR-858-R15)
P16-8(配列番号84)
5'-cgcacccagcagtttggccCgccc-3' (3T-EGFR-858-R16)
P16-9(配列番号85)
5'-ccgcacccagcagtttggccCgcc-3' (3T-EGFR-858-R17)
P16-10(配列番号86)
5'-cttccgcacccagcagtttggccCgcc-3' (3T-EGFR-858-R18)
【0054】
P17-1(配列番号89)
5'-catgtcaagatcacagattttgggcGggc-3' (5T-EGFR-858-F1)
P17-2(配列番号90)
5'-caagatcacagattttgggcGggc-3' (5T-EGFR-858-F2)
P17-3(配列番号91)
5'-cacagattttgggcGggccaaa-3' (5T-EGFR-858-F3)
P17-4(配列番号92)
5'-cagattttgggcGggccaaa-3' (5T-EGFR-858-F4)
【0055】
P18-1(配列番号94)
5'-atcacagattttgggcGggc-3' (3T-EGFR-858-F6)
P18-2(配列番号95)
5'-atcacagattttgggcGggcc-3' (3T-EGFR-858-F7)
P18-3(配列番号96)
5'-attttgggcGggccaaac-3' (3T-EGFR-858-F8)
P18-4(配列番号97)
5'-attttgggcGggccaaacTgc-3' (3T-EGFR-858-F9)
P18-5(配列番号98)
5'-ggcGggccaaacTgctgggtgc-3' (3T-EGFR-858-F10)
【0056】
P19-1(配列番号88)
5'-cagcagtttggccCgccc-3' (35T-EGFR-858-R21)
【0057】
(2)エクソン19用プローブ
本発明のエクソン19用プローブは、前述のように、EGFR exon19 deletionの遺伝子変異を検出することの可能なプローブであって、下記P5〜P7から選択される少なくとも1種の蛍光標識オリゴヌクレオチドからなることを特徴とする。
(P5)配列番号2に示す塩基配列において、塩基番号104〜112を含む9〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号112に相同的な塩基がチミンであり、塩基番号104に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P6)配列番号2に示す塩基配列において、塩基番号104〜119を含む16〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号119の塩基がG以外の塩基に置換されており、塩基番号104に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P7)配列番号3に示す塩基配列において、塩基番号136〜145を含む10〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号145に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
【0058】
前記P5〜P7のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、前記エクソン19多型を検出するためのプローブ、すなわち、前記エクソン19用プローブである。
【0059】
前記P5〜P7のオリゴヌクレオチドは、例えば、EGFR遺伝子のアンチセンス鎖と相補的であり、前記アンチセンス鎖とのハイブリダイゼーションにより、前記多型を確認できる。
【0060】
前記P5のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号2の104〜112番目の塩基が野生型である場合、前記塩基が欠失変異した変異型である場合よりも、前記検出配列に強くハイブリダイズする。したがって、前記P5のオリゴヌクレオチドが、前記EGFR遺伝子の検出配列のうち、前記野生型または変異型のいずれに対して、より強くハイブリダイズするかによって、EGFR遺伝子のエクソン19多型、すなわち、エクソン19野生型(前記表1の多型1)であるか、エクソン19変異型(前記表1の多型2〜17)であるかを検出できる。以下、前記P5のオリゴヌクレオチドからなるプローブを、エクソン19用野生型プローブという。
【0061】
前記P6のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号2の104〜119番目の塩基が野生型である場合、119番目の塩基を除いて、検出配列に強くハイブリダイズする。したがって、P6のオリゴヌクレオチドが、前記EGFR遺伝子の検出配列に対して、より強くハイブリダイズするか否かによって、EGFR遺伝子のエクソン19多型、すなわち、エクソン19野生型(前記表1の多型1)であるか、エクソン19変異型(前記表1の多型2〜15および17)であるかを検出できる。以下、前記P6のオリゴヌクレオチドからなるプローブを、エクソン19用変異型(sub)プローブという。
【0062】
前記P7のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号2の137〜151番目の塩基が欠失変異した変異型である場合、前記塩基が欠失変異していない野生型である場合よりも、前記検出配列に強くハイブリダイズする。したがって、P7のオリゴヌクレオチドが、前記EGFR遺伝子の検出配列のうち、前記野生型または変異型のいずれに対して、より強くハイブリダイズするか否かによって、EGFR遺伝子のエクソン19多型、すなわち、エクソン19野生型(前記表1の多型1)であるか、エクソン19変異型(前記表1の多型18)であるかを検出できる。以下、P7のオリゴヌクレオチドからなるプローブを、エクソン19用変異型(del)プローブという。
【0063】
前記P5のオリゴヌクレオチド(5FL-EGFR-EX19-F2)は、前述のように、9〜50塩基長であり、好ましくは、20〜40塩基長であり、より好ましくは、25〜35塩基長であり、さらに好ましくは、10〜30塩基長である。前記P6のオリゴヌクレオチド(5T-EGFR-EX19-No19-F2-3)は、前述のように、9〜50塩基長であり、好ましくは、20〜40塩基長であり、より好ましくは、25〜35塩基長であり、さらに好ましくは、10〜30塩基長である。前記P7のオリゴヌクレオチド(3T-EGFR-EX19-No18-F1)は、前述のように、10〜50塩基長であり、好ましくは、10〜30塩基長であり、より好ましくは、12〜30塩基長であり、さらに好ましくは、15〜20塩基長である。
【0064】
前記各オリゴヌクレオチドにおいて、前記標識物質により標識化される部位は、特に制限されず、例えば、5’末端領域または3’末端領域であることが好ましく、より好ましくは5’末端または3’末端である。また、後述するように、前記オリゴヌクレオチドにおいて、前記標識物質により標識化される塩基は、例えば、シトシン(c)またはグアニン(g)であることが好ましい。前記標識物質は、例えば、塩基を直接標識化してもよいし、前記塩基を含むヌクレオチド残基のいずれかの部位を標識することによって、前記塩基を間接的に標識化してもよい。
【0065】
前記P5のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号104に相同的な塩基を5'末端から数えて1〜3番目の位置に有することが好ましく、前記P6のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号104に相同的な塩基を5'末端から数えて1〜3番目の位置に有することが好ましい。前記オリゴヌクレオチドにおける「塩基番号104に相同的な塩基」とは、配列番号2の塩基配列における104番目の塩基(c)に相同的な塩基(c)を意味する。具体的に、塩基番号104に相同的な塩基は、P5およびP6のオリゴヌクレオチドにおいて、cで表わされる。前記P7のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号145に相同的な塩基を3'末端から数えて1〜3番目の位置に有することが好ましい。前記オリゴヌクレオチドにおける「塩基番号145に相同的な塩基」とは、配列番号3の塩基配列における145番目の塩基(c)に相同的な塩基(c)を意味する。具体的に、塩基番号145に相同的な塩基は、P7のオリゴヌクレオチドにおいて、cで表わされる。
【0066】
前記P5のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号104に相同的な塩基を5'末端に有することが好ましく、前記P6のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号104に相同的な塩基を5'末端に有することが好ましく、前記P7のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号145に相同的な塩基を3'末端に有することが好ましい。
【0067】
前記P5のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号5に示されるオリゴヌクレオチドがあげられる。
5'-cccgtcgctatcaaggaattaagagaagc-3' (配列番号5)(5FL-EGFR-EX19-F2)
【0068】
前記P6のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号4に示されるオリゴヌクレオチドがあげられる。
5'-cccgtcgctatcaagtaattaagagaagcaaca-3'(配列番号4)(5T-EGFR-EX19-No19-F2-3)
【0069】
前記P7のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号6に示されるオリゴヌクレオチドがあげられる。
5'-agcaacaaaggaaatc-3' (配列番号6)(3T-EGFR-EX19-No18-F1)
【0070】
本発明において、前記P1、P3、P5〜P7およびP15〜P19のオリゴヌクレオチドは、前述のものには限定されず、それぞれ、例えば、下記(a)または(b)のオリゴヌクレオチドの意味も含む。
(a)前記P1、P3、P5〜P7およびP15〜P19のいずれかのオリゴヌクレオチドに相同性を有する配列を有し、前記P1、P3、P5〜P7およびP15〜P19の前記いずれかのオリゴヌクレオチドと同程度の作用(例えば、プローブとしての結合能)を示すオリゴヌクレオチド
(b)前記P1、P3、P5〜P7およびP15〜P19のいずれかのオリゴヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、前記P1、P3、P5〜P7およびP15〜P19の前記いずれかのオリゴヌクレオチドと同程度の作用(例えば、プローブとしての結合能)を示すオリゴヌクレオチド
【0071】
前記ハイブリダイズは、例えば、各種ハイブリダイゼーションアッセイにより検出できる。前記ハイブリダイゼーションアッセイおよびストリンジェントな条件は、例えば、Sambrookら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第3版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd Ed.)」〔(Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)〕等に記載されている方法および条件を採用できる。
【0072】
本発明において、前記P1、P3、P5〜P7およびP15〜P19のオリゴヌクレオチドは、前述のように、例示列挙した前記配列のいずれかに相同性を有する配列を有するオリゴヌクレオチドでもよい。前記相同性は、例えば、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、100%である。本発明のプローブは、例えば、前記オリゴヌクレオチドからなるプローブでもよいし、前記オリゴヌクレオチドを含むプローブでもよい。
【0073】
前記プローブは、例えば、天然核酸で構成されてよく、非天然核酸で構成されてよい。前記天然核酸は、例えば、DNAまたはRNAがあげられる。前記非天然核酸は、例えば、Bridged Nucleic Acid(BNA:LNA(Locked Nucleic Acid)ともいう)等の架橋化核酸、またはPNA(ペプチド核酸)等があげられる。前記プローブは、例えば、前記非天然核酸により構成されることで、検出対象配列に対してハイブリダイズする能力を向上できるため、例えば、プローブの配列を短く設計できる。前記LNAにより構成されるプローブと前記検出対象配列とのTm値の予測は、例えば、EXIQON社のホームページ(http://www.exiqon.com/oligo-tools)等で計算できる。
【0074】
前記蛍光標識オリゴヌクレオチドは、例えば、前記標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、且つ、前記標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少するかまたは増加するものがあげられる。また、前記蛍光標識オリゴヌクレオチドは、例えば、前記標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、前記標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少するものがあげられる。
【0075】
前記蛍光色素は、特に制限されず、例えば、蛍光団等の蛍光物質等があげられる。前記蛍光色素は、例えば、フルオレセイン、リン光体、ローダミン、ポリメチン色素誘導体等があげられ、市販の蛍光色素は、例えば、Pacific Blue(登録商標、モレキュラー・プローブ社製)、BODIPY FL(登録商標、モレキュラー・プローブ社製)、FluorePrime(商品名、アマシャムファルマシア社製)、Fluoredite(商品名、ミリポア社製)、FAM(登録商標、ABI社製)、Cy3およびCy5(商品名、アマシャムファルマシア社製)、TAMRA(登録商標、モレキュラー・プローブ社製)等があげられる。前記蛍光色素の検出条件は、特に制限されず、例えば、使用する蛍光色素の種類により適宜決定できるが、例えば、Pacific Blueは、検出波長450〜480nm、TAMRAは、検出波長585〜700nm、BODIPY FLは、検出波長515〜555nmで検出できる。このような蛍光標識オリゴヌクレオチドを使用すれば、例えば、シグナルとして蛍光を検出し、シグナル値として蛍光強度を測定することにより、蛍光強度の変動から、ハイブリダイズと解離とを容易に確認できる。
【0076】
多型検出用プローブには、標識が付されている標識化プローブであることが検出の効率性の観点から好ましい。標識化プローブにおける標識物質の具体例としては、例えば、蛍光色素および蛍光団が挙げられる。前記標識化プローブの具体例としては、例えば、蛍光色素で標識され、単独で蛍光を示し且つハイブリッド形成により蛍光が減少(例えば、消光)するプローブが好ましい。
【0077】
このような蛍光消光現象(Quenching phenomenon)を利用したプローブは、一般に、蛍光消光プローブと呼ばれる。中でも、前記プローブは、オリゴヌクレオチドの3’領域(例えば、3’末端)もしくは5’領域(例えば、5’末端)の塩基が蛍光色素で標識化されていることが好ましく、標識化される前記塩基は、シトシン(C)であることが好ましい。この場合、前記標識化プローブがハイブリダイズする検出目的配列において、前記標識化プローブの末端塩基Cと対をなす塩基もしくは前記対をなす塩基から1〜3塩基離れた塩基がグアニン(G)となるように、前記標識化プローブの塩基配列を設計することが好ましい。このようなプローブは、一般的にグアニン消光プローブと呼ばれ、いわゆるQProbe(登録商標)として知られている。このようなグアニン消光プローブが検出目的配列にハイブリダイズすると、蛍光色素で標識化された末端のCが、前記検出目的配列におけるGに近づくことによって、前記蛍光色素の発光が弱くなる(蛍光強度が減少する)という現象を示す。このようなプローブを使用すれば、シグナルの変動により、ハイブリダイズと解離とを容易に確認できる。また、前記標識物質は、例えば、通常、ヌクレオチドのリン酸基に結合できる。
【0078】
本発明のプローブは、例えば、3’末端にリン酸基が付加されてもよい。変異の有無を検出するDNA(標的DNA)は、PCR等の遺伝子増幅法によって調製することができ、この際、本発明のプローブを遺伝子増幅反応の反応液中に共存させることができる。このような場合に、プローブの3’末端にリン酸基を付加させておけば、プローブ自体が遺伝子増幅反応によって伸長することを十分に防止できる。また、3’末端に前述のような標識物質を付加することによっても、同様の効果が得られる。
【0079】
なお、QProbeを用いた検出方法以外にも、公知の検出様式を適用してもよい。このような検出様式は、Taq−man Probe法またはRFLP法などを挙げることができる。
【0080】
前記蛍光色素は、特に制限されず、例えば、フルオレセイン、リン光体、ローダミン、ポリメチン色素誘導体等があげられ、市販の蛍光色素は、例えば、BODIPY FL(商標、モレキュラー・プローブ社製)、FluorePrime(商品名、アマシャムファルマシア社製)、Fluoredite(商品名、ミリポア社製)、FAM(ABI社製)、Cy3およびCy5(アマシャムファルマシア社製)、TAMRA(モレキュラープローブ社製)等が挙げられる。複数のプローブに使用する蛍光色素の組み合わせは、例えば、異なる条件で検出できればよく、特に制限されず、例えば、Pacific Blue(検出波長450〜480nm)、TAMRA(検出波長585〜700nm)およびBODIPY FL(検出波長515〜555nm)の組み合わせ等が挙げられる。
【0081】
<多型検出方法>
本発明の多型検出方法は、EGFR遺伝子の多型を検出する方法であって、前記検出配列とハイブリダイズするプローブを使用することを特徴とする。
【0082】
なお、本発明の多型検出方法は、本発明の多型検出用プローブを使用することが特徴であって、その他の構成や条件等は、以下の記載に制限されない。本発明は、例えば、医療分野の他、診断および治療方法を除く分野におけるEGFR遺伝子の多型検出に適用できる。
【0083】
本発明の多型検出方法は、例えば、下記(A)工程および(B)工程を含む。
(A)前記多型を検出する被検核酸と本発明の多型検出用プローブとを含む反応系の温度を変化させ、前記被検核酸と前記多型検出用プローブとのハイブリッド形成体の融解状態を示すシグナル値を測定する工程
(B)前記温度変化に伴う前記シグナル値の変動から、前記被検核酸における前記多型を決定する工程
【0084】
前記(A)工程において、前記本発明の多型検出用プローブは、例えば、いずれか一種類を使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。使用する前記多型検出用プローブの種類は、例えば、検出目的の多型に応じて適宜決定できる。
【0085】
前記(A)工程において使用する前記多型検出用プローブは、少なくとも一種類が、本発明の多型検出用プローブであればよい。前記プローブの種類は、例えば、EGFR遺伝子における検出目的の多型に応じて、適宜決定できる。本発明においては、例えば、EGFR858多型のみを検出してもよいし、エクソン19多型のみを検出してもよいし、両方の多型を一つの反応系で検出することもできる。また、前記EGFR858多型およびエクソン19多型の少なくとも一方と、その他の多型とを、一つの反応系で検出することも可能である。前記その他の多型は、特に制限されず、例えば、EGFR遺伝子のEGFR790多型等があげられる。
【0086】
前記EGFR858多型のみを検出する場合、前記本発明の多型検出用プローブの中でも、前記EGFR858用プローブを使用することが好ましい。前記EGFR858用プローブは、例えば、EGFR858用野生型プローブでもよいし、EGFR858用変異型プローブでもよいし、両方を併用してもよい。
【0087】
前記エクソン19多型のみを検出する場合、前記本発明の多型検出用プローブの中でも、前記エクソン19用野生型プローブ、前記エクソン19用変異型(sub)プローブおよび前記エクソン19用変異型(del)プローブの少なくともいずれか一種類を使用することが好ましい。前記エクソン19用野生型プローブを使用することにより、例えば、エクソン19多型が、エクソン19野生型(前記多型1)か、エクソン19変異型(前記多型2〜多型17)かを検出でき、前記エクソン19用変異型(sub)プローブを使用することにより、例えば、エクソン19野生型(前記多型1)か、エクソン19変異型(前記多型2〜15、17)かを検出でき、前記エクソン19用変異型(del)プローブを使用することにより、例えば、エクソン19野生型(前記多型1)か、エクソン19変異型(前記多型18)かを検出できる。本発明において、前記エクソン19用野生型プローブ、前記エクソン19用変異型(sub)プローブおよび前記エクソン19用変異型(del)プローブのいずれを用いてもよいし、前記多型1か、前記多型2〜18かを判断できることから、2種類以上を併用してもよい。プローブの組み合わせは、特に制限されず、例えば、P5とP7との組み合わせが、多型1〜18の18種類を検出可能であり、P6とP7との組み合わせが、多型16を除く17種類を検出可能であり(P5は自己消光するが、P6は自己消光しない)、P5単独が、多型18を除く17種類を検出可能であり、P6単独が、多型16、18を除く16種類を検出可能であり(P5は自己消光するが、P6は自己消光しない)、P7単独が、多型18のみの1種類を検出可能であり、好ましい。
【0088】
本発明は、前記EGFR858用プローブと、前記エクソン19用プローブとを併用することが望ましい。本発明のプローブは、前述のように、優れた信頼性で多型を検出できるため、例えば、一つの反応液において、前記EGFR858用プローブと、前記エクソン19用プローブとを使用しても、前記EGFR858多型と、エクソン19多型とを、それぞれ特異的に検出可能である。前記エクソン19用プローブは、前述のように、前記エクソン19用野生型プローブと、前記エクソン19用変異型(sub)プローブおよび前記エクソン19用変異型(del)プローブとを併用することが好ましい。
【0089】
本発明は、例えば、さらに、前記EGFR790の多型を検出してもよく、前記EGFR858の多型および/またはエクソン19の多型と同時に検出することが好ましい。「同時に検出」とは、例えば、同じ一つの反応系を用いた検出の意味を含む。この場合、本発明は、前記両プローブ以外に、さらに、前記EGFR790用プローブを併用してもよい。
【0090】
前記EGFR790用プローブは、特に制限されず、例えば、下記(P14)のオリゴヌクレオチドからなるプローブがあげられる。
(P14)塩基長が14〜50塩基長であり、配列番号21に示す塩基配列において、334番目の塩基(g)を5’末端とするオリゴヌクレオチドに相補的な塩基配列又は前記相補的な配列に相同性を有する塩基配列からなり、347番目の塩基に対応する塩基がグアニンまたはアデニンであり、334番目に対応する塩基がシトシンであるオリゴヌクレオチド
【0091】
前記(P14)のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、例えば、配列番号21に示す塩基配列において、347番目の塩基の置換変異の有無を検出するためのプローブである。前記(P14)のオリゴヌクレオチドは、例えば、EGFR遺伝子のセンス鎖と相補的であり、前記センス鎖とのハイブリダイゼーションにより、前記多型を確認できる。前記(P14)のオリゴヌクレオチドにおいて、配列番号21の347番目に対応する相補的な塩基は、rで表され、前記rは、グアニン(g)およびアデニン(a)である。rがグアニン(g)である前記オリゴヌクレオチドは、EGFR790変異型の検出配列より、EGFR790野生型の検出配列に強くハイブリダイズするため、EGFR790用野生型プローブといえる。rがアデニン(a)である前記オリゴヌクレオチドは、EGFR790野生型の検出配列より、EGFR790変異型の検出配列に強くハイブリダイズするため、EGFR790用変異型プローブといえる。これらのオリゴヌクレオチドが、前記EGFR遺伝子の検出配列のうち、EGFR790野生型の検出配列またはEGFR790変異型の検出配列のいずれと強くハイブリダイズするかによって、EGFR遺伝子の多型を検出できる。前記(P14)のオリゴヌクレオチドは、3’末端がシトシンとなる。
【0092】
前記(P14)のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号22に示されるオリゴヌクレオチドがあげられ、この塩基配列において、rは、前述の通りである。前記オリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば、EGFR790用変異型プローブである、配列番号23に示されるオリゴヌクレオチド、およびEGFR790用野生型プローブである、配列番号24に示されるオリゴヌクレオチドがあげられる。
5'-tgagctgcrtgatgaggtgcac-3' (配列番号22)
5'-tgagctgcatgatgaggtgcac-3' (配列番号23)(3T-EGFR-T790M-mt-R3)
5'-tgagctgcgtgatgaggtgcac-3' (配列番号24)
【0093】
本発明において、前記P14のオリゴヌクレオチドは、前述のように、例示列挙した前記配列のいずれかに相同性を有する配列を有するオリゴヌクレオチドでもよい。前記相同性は、例えば、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、100%である。
【0094】
前記(A)工程において、前記多型検出用プローブを二種類以上併用する場合、例えば、各プローブが、異なる標識物質を有する標識プローブであることが好ましい。前記異なる標識物質は、例えば、検出条件の異なる標識物質があげられる。
【0095】
本発明において、前記被検核酸は、一本鎖核酸でもよいし、二本鎖核酸でもよい。前記被検核酸が前記二本鎖核酸の場合、例えば、後述するように、前記(A)工程において、前記反応系を加熱して、二本鎖の前記被検核酸を解離させる工程を含むことが好ましい。前記二本鎖核酸を一本鎖核酸に解離することによって、例えば、本発明の多型検出用プローブと前記一本鎖核酸とがハイブリダイズしやすくなる。
【0096】
本発明において、前記被検核酸は、例えば、試料中に元来含まれる核酸でもよいし、検出精度を向上できることから、前記核酸を鋳型核酸として、核酸増幅法により増幅させた増幅産物でもよい。前記増幅産物は、例えば、前記試料中のDNAを鋳型とした増幅産物でもよい。また、前記被検核酸は、例えば、前記試料中のトータルRNA、mRNA等のRNAからRT−PCR(Reverse Transcription PCR)により合成したcDNAでもよいし、前記cDNAを鋳型とした増幅産物でもよい。前記増幅産物は、例えば、前記検出配列を含む領域の増幅産物であることが好ましい。前記検出配列は、前記検出部位として、例えば、前記EGFR858多型の検出部位のみを含んでもよいし、前記エクソン19多型の検出部位のみを含んでもよい。また、前記検出部位として、前記EGFR858多型と前記エクソン19多型とを含んでもよい。また、前記検出部位として、さらに、前述のEGFR790多型を含んでもよい。
【0097】
本発明の多型検出方法は、例えば、前記被検核酸が前記増幅産物の場合、例えば、さらに、前記鋳型核酸から前記増幅産物を生成する工程を含んでもよい。前記増幅産物の生成工程は、例えば、前記(A)工程に先立って行ってもよいし、前記(A)工程において、行ってもよい。
【0098】
前記被検核酸が前記増幅産物の場合、前記(A)工程において、例えば、予め調製した増幅産物を用いて、本発明の多型検出用プローブと前記増幅産物とを含む反応系を準備してもよいし、本発明の多型検出用プローブの存在下、前記反応系において、前記鋳型核酸から前記増幅産物を生成し、前記多型検出用プローブと前記増幅産物とを含む反応系を準備してもよい。
【0099】
前記核酸の増幅法は、特に制限されず、例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)法、TMA(Transcription−Mediated Amplification)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法等があげられ、中でも、PCR法が好ましい。なお、前記増幅法の条件は、特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。
【0100】
前記鋳型核酸からの前記増幅産物の生成には、例えば、EGFR遺伝子における検出目的の多型を含む配列を増幅することの可能なプライマーを使用することが好ましい。
【0101】
前記プライマーによる増幅領域は、特に制限されず、検出目的の多型に応じて適宜設定できる。すなわち、検出目的の多型が前記EGFR858多型の場合、前記増幅領域は、例えば、前記EGFR858多型の検出部位を含む領域、すなわち、配列番号1の塩基配列において261番目の塩基を含む領域が好ましい。具体的には、EGFR遺伝子の配列番号1に示す塩基配列におけるP1、P3およびP15〜P19の少なくとも一つのオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列を含む領域が好ましい。また、検出目的の多型が前記エクソン19多型の場合、前記増幅領域は、例えば、前記エクソン19多型の検出部位を含む領域、すなわち、配列番号2の塩基配列において112〜151番目の塩基を含む領域が好ましい。具体的には、配列番号2に示す塩基配列におけるP5〜P6のオリゴヌクレオチドおよび配列番号3に示す塩基配列におけるP7のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つが、ハイブリダイズする配列を含む領域が好ましい。また、検出目的の多型が前記EGFR858多型および前記エクソン19多型である場合、前記増幅領域は、例えば、前記EGFR858多型の検出部位を含む領域と前記エクソン19多型の検出部位を含む領域との二領域でもよい。前記増幅領域は、さらに、例えば、前記EGFR790多型の検出部位を含む領域を含んでもよい。
【0102】
なお、前記プライマーの配列は、特に制限されず、例えば、前記検出部位を含む検出配列を増幅できればよく、前記検出配列およびその周辺配列等に応じて、従来公知の方法により適宜設定できる。前記プライマーの長さは、特に制限されず、一般的な長さに設定でき、例えば、10〜50塩基長があげられる。
【0103】
前記プライマーは、例えば、センス鎖を増幅するフォワードプライマー(以下、「Fプライマー」ともいう)およびアンチセンス鎖を増幅するリバースプライマー(以下、「Rプライマー」ともいう)のいずれか一方を使用できるが、両者を一対とするプライマーセットを使用することが好ましい。前記プライマーの一例として、以下に、本発明のプライマーを説明する。
【0104】
EGFRexon21 L858Rの遺伝子変異を検出するためのプライマーは、例えば、EGFR遺伝子の配列番号1に示す塩基配列におけるP1、P3およびP15〜P19の少なくとも一つのオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列を含む領域を増幅するためのプライマーがあげられ、具体例として、下記P8〜P10から選択される多型検出用プライマーがあげられる。
(P8)233番目の塩基Cを3’末端とし配列番号1に相同的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P9)284番目の塩基Gに相補的な塩基Cを3’末端とし配列番号1に相補的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P10)290番目の塩基Gに相補的な塩基Cを3’末端とし配列番号1に相補的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
【0105】
前記P8のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号15に記載のオリゴヌクレオチドがあげられ、前記P9のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号17記載のオリゴヌクレオチドがあげられ、前記P10のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号16記載のオリゴヌクレオチドがあげられる。
5'-aggaacgtactggtgaaaacaccgc-3' (配列番号15)(EGFR-L858R-F2)
5'-ttactttgcctccttctgcatggtattc-3' (配列番号16)(EGFR-L858R-R2)
5'-gcctccttctgcatggtattctttctc-3' (配列番号17)(EGFR-L858R-R1)
【0106】
また、EGFRexon19 deletionの遺伝子変異を検出するためのプライマーは、例えば、EGFR遺伝子の配列番号2に示す塩基配列におけるP5およびP6の少なくとも一方のオリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズする配列を含む領域、または、配列番号3に示す塩基配列におけるP7のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列を含む領域を増幅するためのプライマーがあげられ、具体例として、例えば、下記P11〜P13から選択される多型検出用プライマーがあげられる。
(P11)95番目の塩基Gを3'末端とし配列番号2に相同的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P12)73番目の塩基Cを3'末端とし配列番号2に相同的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P13)155番目の塩基Gに相補的な塩基Cを3'末端とし配列番号2に相補的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
【0107】
前記P11のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号18に記載のオリゴヌクレオチドがあげられ、前記P12のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号19記載のオリゴヌクレオチドがあげられ、前記P13のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号20記載のオリゴヌクレオチドがあげられる。
5'-gatcccagaaggtgagaaag-3' (配列番号18)(EGFR-EX19-F1)
5'-tctctctgtcatagggactc-3' (配列番号19)(EGFR-EX19-F2)
5'-gaaactcacatcgaggatttc-3' (配列番号20)(EGFR-EX19-R1)
【0108】
前記反応系において、前記プライマーの添加濃度は、特に制限されず、例えば、一種類のプライマーについて、例えば、0.1〜4μmol/Lであり、好ましくは、0.25〜1.5μmol/Lであり、特に好ましくは、0.5〜1μmol/Lである。また、FプライマーとRプライマーとを使用する場合、前記Fプライマー(F)とRプライマー(R)との添加割合(モル比F:R)は、特に制限されず、例えば、1:0.25〜1:4が好ましく、より好ましくは、1:0.5〜1:2である。
【0109】
前記(A)工程において、前記被検核酸に対する本発明の多型検出用プローブの添加割合(モル比)は、特に制限されず、検出シグナルを十分に確保できることから、1倍以下が好ましい。この際、前記被検核酸とは、例えば、野生型検出配列を含む核酸と変異型検出配列を含む核酸との合計でもよいし、野生型検出配列を含む増幅産物と変異型検出配列を含む増幅産物との合計でもよい。なお、被検核酸において、前記多型検出用プローブにより強くハイブリダイズする検出配列を含む核酸の割合は、通常、不明であるが、結果的に、前記多型検出用プローブの添加割合(モル比)は、より強くハイブリダイズする検出配列を含む核酸(前記検出配列を含む増幅産物)に対して20倍以下となることが好ましく、より好ましくは10倍以下、さらに、好ましくは5倍以下である。また、その下限は特に制限されず、例えば、0.001倍以上であり、好ましくは0.01倍以上であり、より好ましくは0.1倍以上である。前記被検核酸に対する本発明の多型検出用プローブの添加割合は、例えば、二本鎖核酸に対するモル比でもよいし、一本鎖核酸に対するモル比でもよい。
【0110】
前記反応系における本発明の多型検出用プローブの添加濃度は、特に制限されず、例えば、一種類の前記多型検出用プローブにつき、10〜1000nmol/Lの範囲となるように添加することが好ましく、より好ましくは20〜500nmol/Lである。
【0111】
本発明の多型検出方法を適用する試料は、特に制限されず、生体試料があげられる。前記生体試料の具体例は、例えば、全血、白血球細胞等の血球、骨髄、口腔粘膜等の口腔内細胞、爪や毛髪等の体細胞、生殖細胞、喀痰、羊水、パラフィン包埋組織、尿、胃液、胃洗浄液等があげられる。本発明において、前記試料の採取方法、前記試料からの被検核酸の調製方法等は、制限されず、従来公知の方法が採用できる。前記生体試料が全血の場合、前記反応系における前記全血の濃度は、例えば、0.01〜2体積%であり、好ましくは、0.05〜1.5体積%であり、より好ましくは、0.1〜1体積%である。また、前記生体試料が血清の場合、前記反応系における前記血清の濃度は、例えば、0.1〜20体積%であり、好ましくは、0.25〜15体積%であり、より好ましくは、0.5〜10体積%である。
【0112】
本発明の多型検出方法は、前述のような、いわゆるTm解析(融解曲線解析ともいう)に利用できる。ここで、Tm解析におけるTm値について説明する。例えば、二本鎖DNAを含む溶液を加熱していくと、260nmにおける吸光度が上昇する。これは、二本鎖DNAにおける両鎖間の水素結合が加熱によってほどけ、一本鎖DNAに解離(DNAの融解)することが原因である。そして、全ての二本鎖DNAが解離して一本鎖DNAになると、その吸光度は加熱開始時の吸光度(二本鎖DNAのみの吸光度)の約1.5倍程度を示し、これによって融解が完了したと判断できる。この現象に基づき、融解温度Tmとは、一般に、吸光度が、吸光度全上昇分の50%に達した時の温度と定義される。
【0113】
前記(A)工程において、前記被検核酸と前記多型検出用プローブとのハイブリッド形成体の融解状態を示すシグナルの測定は、前述したように、前記蛍光色素のシグナル測定を行うことが好ましい。前記標識プローブは、例えば、単独でシグナルを示し、且つハイブリッド形成によりシグナルを示さない標識プローブ、または、単独でシグナルを示さず、且つハイブリッド形成によりシグナルを示す標識プローブがあげられる。前者のようなプローブであれば、前記増幅産物とハイブリッド(二本鎖DNA)を形成している際にはシグナルを示さず、加熱により前記増幅産物から前記プローブが解離するとシグナルを示す。また、後者のプローブであれば、前記増幅産物とハイブリッド(二本鎖DNA)を形成することによってシグナルを示し、加熱により前記増幅産物から前記プローブが遊離するとシグナルが減少(消失)する。したがって、前記蛍光色素のシグナルを検出することによって、前記260nmにおける吸光度測定と同様に、ハイブリッド形成体の融解の進行ならびにTm値の決定等を行うことができる。前記蛍光色素のシグナル検出は、例えば、前記蛍光色素のシグナルに特有の条件で検出すればよく、前記条件は、例えば、励起波長、検出波長等があげられる。なお、前記標識プローブならびに前記蛍光色素については、前述のとおりである。
【0114】
次に、本発明の多型検出方法について、一例をあげて説明する。本例は、本発明の多型検出用プローブとして、蛍光色素で標識された標識プローブを使用し、前記多型検出用プローブの存在下、鋳型核酸からの増幅を行い、得られた増幅産物を、前記被検核酸とする例である。なお、本発明の多型検出方法は、本発明の多型検出用プローブを使用すること自体が特徴であり、その他の工程や条件については何ら制限されない。
【0115】
まず、前記生体試料からゲノムDNAを単離する。前記生体試料からのゲノムDNAの単離は、従来公知の方法によって行うことができる。具体例としては、例えば、市販のゲノムDNA単離キット(商品名GFX Genomic Blood DNA Purification kit;GEヘルスケアバイオサイエンス社製)等が使用できる。
【0116】
次に、単離したゲノムDNAを含む試料に標識プローブを添加して、反応液を調製する。前記標識プローブは、例えば、前述のように、QProbe(登録商標)が好ましい。
【0117】
前記標識プローブは、例えば、単離したゲノムDNAを含む試料に添加してもよいし、溶媒中でゲノムDNAと混合してもよい。前記溶媒は、特に制限されず、例えば、Tris−HCl等の緩衝液、KCl、MgCl2、MgSO4、グリセロール等を含む溶媒、PCR用の反応液等の増幅用反応液等、従来公知のものがあげられる。
【0118】
なお、前記標識プローブの添加のタイミングは、特に制限されず、例えば、増幅反応の前、途中または後に添加できる。中でも、例えば、添加のために前記反応液を外部環境に露出する必要がなく、また、前記増幅反応とシグナル値の測定とを、連続的に行うことが可能であるため、前記増幅反応前に前記反応液に添加することが好ましい。この場合、前記標識プローブは、前述のように、その3’末端が標識物質またはリン酸基で修飾されていることが好ましい。
【0119】
続いて、単離したゲノムDNAを鋳型として、前記標識プローブの存在下、PCR等の増幅法によって、目的の多型が発生する検出部位を含む配列を増幅させる。以下、増幅法としてPCRを例にあげて、本発明を説明するが、これには制限されない。また、PCRの条件は、特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。
【0120】
具体的には、前記ゲノムDNA、前記標識プローブおよび前記プライマーを含む前記反応液を用いて、PCRを行う。この反応液の組成は、特に制限されず、当業者であれば適宜設定できるが、例えば、前記ゲノムDNA、前記標識プローブおよび前記プライマーの他に、DNAポリメラーゼ等のポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸、緩衝液、各種触媒等があげられる。前記反応液における前記標識プローブおよび前記プライマーの添加割合は、特に制限されず、例えば、それぞれ前述の範囲があげられる。
【0121】
前記DNAポリメラーゼは、特に制限されず、例えば、従来公知の耐熱性細菌由来のポリメラーゼが使用できる。具体例としては、テルムス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来DNAポリメラーゼ(米国特許第4,889,818号および同第5,079,352号)(商品名Taqポリメラーゼ)、テルムス・テルモフィラス(Thermus thermophilus)由来DNAポリメラーゼ(WO 91/09950)(rTth DNA polymerase)、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)由来DNAポリメラーゼ(WO 92/9689)(Pfu DNA polymerase:Stratagenes社製)、テルモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来ポリメラーゼ(EP−A 455 430(商標Vent):New England Biolabs社製)等が商業的に入手可能であり、中でも、テルムス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来の耐熱性ポリメラーゼが好ましい。
【0122】
前記反応液におけるDNAポリメラーゼの添加割合は、特に制限されず、例えば、1〜100U/mLであり、好ましくは、5〜50U/mLであり、より好ましくは、20〜40U/mLである。なお、DNAポリメラーゼの活性単位(U)は、一般に、活性化サケ精子DNAを鋳型プライマーとして、活性測定用反応液中、74℃で、30分間に10nmolの全ヌクレオチドを酸不溶性沈殿物に取り込む活性が1Uである。前記活性測定用反応液の組成は、例えば、25mmol/L TAPS buffer(pH9.3、25℃)、50mmol/L KCl、2mmol/L MgCl2、1mmol/Lメルカプトエタノール、200μmol/L dATP、200μmol/L dGTP、200μmol/L dTTP、100μmol/L「α−32P」dCTP、0.25mg/mL活性化サケ精子DNAである。
【0123】
前記ヌクレオシド三リン酸は、通常、dNTP(dATP、dCTP、dGTP、および、dTTPまたはdUTP)があげられる。前記反応液中のdNTPの添加割合は、特に制限されず、例えば、0.01〜1mmol/Lであり、好ましくは、0.05〜0.5mmol/Lであり、より好ましくは、0.1〜0.3mmol/Lである。
【0124】
前記緩衝液は、例えば、Tris−HCl、Tricine、MES、MOPS、HEPES、CAPS等があげられ、市販のPCR用緩衝液や市販のPCRキットの緩衝液等が使用できる。
【0125】
また、前記反応液は、さらに、ヘパリン、ベタイン、KCl、MgCl2、MgSO4、グリセロール等を含んでもよく、これらの添加割合は、例えば、PCR反応を阻害しない範囲で設定すればよい。
【0126】
前記反応液の全体積は、特に制限されず、例えば、サーマルサイクラー等の使用する機器等に応じて適宜設定できるが、通常、1〜500μLであり、好ましくは10〜100μLである。
【0127】
つぎに、PCRを行う。前記PCRのサイクル条件は特に制限されず、例えば、(1)被検核酸である二本鎖DNAの一本鎖DNAへの解離、(2)前記一本鎖DNAへのプライマーのアニーリング、(3)ポリメラーゼ反応による前記プライマーの伸長は、それぞれ下記表2の条件が例示できる。また、サイクル数も特に制限されず、下記(1)〜(3)の3ステップを1サイクルとして、例えば、30サイクル以上が好ましい。前記サイクル数の合計の上限は、特に制限されず、例えば、100サイクル以下、好ましくは70サイクル以下、さらに好ましくは、50サイクル以下である。各ステップの温度変化は、例えば、サーマルサイクラー等を用いて自動的に制御すればよい。
【0128】
【表2】
【0129】
前記反応液における標識プローブの添加割合は、特に制限されず、例えば、前記標識プローブを10〜1000nmol/Lの範囲となるように添加することが好ましく、より好ましくは20〜500nmol/Lである。また、例えば、十分なシグナル値を確保できることから、前記反応液において、前記被検核酸に対する前記標識プローブのモル比は、例えば、1倍以下が好ましい。前記被検核酸に対する前記標識プローブの添加割合は、例えば、二本鎖核酸に対するモル比でもよいし、一本鎖核酸に対するモル比でもよい。
【0130】
次に、得られた増幅産物(二本鎖DNA)の解離、および、解離により得られた一本鎖DNAと前記標識プローブとのハイブリダイズを行う。これは、例えば、前記標識プローブの存在下、前記反応液の温度を変化させることで行える。この場合、前述のように、予め前記標識プローブを添加した前記反応液について、増幅反応を行った後、前記反応液を温度変化させることが好ましい。
【0131】
前記解離工程における加熱温度は、二本鎖の前記増幅産物を一本鎖に解離できる温度であれば特に制限されず、例えば、85〜95℃である。加熱時間も特に制限されず、通常、1秒〜10分であり、好ましくは1秒〜5分である。
【0132】
解離した一本鎖DNAと前記標識プローブとのハイブリダイズは、例えば、前記解離工程の後、前記解離工程における加熱温度を降下させることによって行うことができる。温度条件は、例えば、40〜50℃である。また、前記温度での処理時間は、特に制限されず、例えば、1〜600秒である。
【0133】
そして、前記反応液の温度を変化させ、前記増幅産物と前記標識プローブとのハイブリッド形成体の融解状態を示すシグナル値を測定する。具体的には、例えば、前記反応液(前記一本鎖DNAと前記標識プローブとのハイブリッド形成体)を加熱し、温度上昇に伴うシグナル値の変動を測定する。前述のように、グアニン消光プローブ、すなわち、末端のシトシン(c)が標識化されたプローブを使用した場合、一本鎖DNAとのハイブリダイズした状態では、蛍光が減少(または消光)し、解離した状態では、蛍光を発する。したがって、例えば、蛍光が減少(または消光)しているハイブリッド形成体を徐々に加熱し、温度上昇に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
【0134】
前記蛍光強度の変動を測定する際の温度範囲は、特に制限されず、開始温度は、例えば、室温〜85℃であり、好ましくは、25〜70℃であり、終了温度は、例えば、40〜105℃である。また、温度の上昇速度は、特に制限されず、例えば、0.1〜20℃/秒であり、好ましくは、0.3〜5℃/秒である。
【0135】
次に、前記シグナル値の変動を解析してTm値を決定する。具体的には、得られた蛍光強度から、各温度における単位時間当たりの蛍光強度変化量(−d蛍光強度増加量/dt)を算出し、最も低い値を示す温度をTm値として決定できる。また、単位時間当たりの蛍光強度増加量(d蛍光強度増加量/t)の最も高い点をTm値として決定することもできる。なお、前記標識プローブとして、蛍光消光プローブではなく、単独でシグナルを示さず且つハイブリッド形成によりシグナルを示すプローブを使用した場合には、反対に、蛍光強度の減少量を測定すればよい。
【0136】
前記Tm値は、例えば、従来公知のMELTCALCソフトウエア(http://www.meltcalc.com/)等により算出でき、また、最近接塩基対法(Nearest Neighbor Method)によって決定することもできる。
【0137】
そして、前記Tm値から、EGFR遺伝子の多型が、前記野生型であるか、前記変異型であるかを決定する。前記Tm解析において、野生型プローブは、前記変異型検出配列より前記野生型検出配列に対して、強くハイブリダイズする。このため、前記野生型プローブと前記野生型検出配列とのTm値は、前記野生型プローブと前記変異型検出配列とのTm値より高い値を示す。一方、変異型プローブは、前記野生型検出配列より前記変異型検出配列に対して強くハイブリダイズする。このため、前記変異型プローブと前記変異型検出配列とのTm値は、前記変異型プローブと前記野生型検出配列とのTm値より高い値を示す。前記プローブが検出配列に対して強くハイブリダイズするTm値(TmH)と、そのTm値(TmH)より低い値でプローブが検出配列にハイブリダイズするTm値(TmL)とを決定しておくことにより、前記検出配列が、前記野生型多型と、前記変異型多型とのいずれを含むかを決定できる。また、前記野生型プローブが前記野生型検出配列に対して強くハイブリダイズするTm値(TmH)を決定しておくことで、前記野生型プローブを用いて前記Tm値(TmH)より低いTm値(TmL)が得られた場合は、前記変異型検出配列であることが決定できる。一方、前記変異型プローブが前記変異型検出配列に対して強くハイブリダイズするTm値(TmH)を決定しておくことで、前記変異型プローブを用いて前記Tm値(TmH)より低いTm値(TmL)が得られた場合は、野生型検出配列であることが決定できる。
【0138】
例えば、前記プローブとして、変異型プローブを使用した場合、既定した変異型検出配列とのTm値(TmH)を示せば、多型は変異型、その既定したTm値(TmH)より低いTm値(TmL)を示せば、多型は野生型と判断できる。一方、例えば、前記プローブとして、野生型プローブを使用した場合、既定した野生型検出配列とのTm値(TmH)を示せば、多型は野生型、その既定したTm値(TmH)より低いTm値(TmL)を示せば、多型は変異型と判断できる。
【0139】
また、本発明においては、前述のように、前記多型検出用プローブを含む反応系の温度を上昇させて(ハイブリッド形成体を加熱して)、温度上昇に伴うシグナル変動を測定する方法に代えて、例えば、ハイブリッド形成時におけるシグナル変動の測定を行ってもよい。すなわち、前記多型検出用プローブを含む反応系の温度を降下させてハイブリッド形成体を形成する際に、前記温度降下に伴うシグナル変動を測定してもよい。
【0140】
具体例として、単独でシグナルを示し、且つハイブリッド形成によりシグナルを示さない標識プローブ(例えば、グアニン消光プローブ)を使用した場合、一本鎖DNAと前記標識プローブとが解離している状態では蛍光を発しているが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、前記蛍光が減少(または消光)する。したがって、例えば、前記反応液の温度を徐々に降下させて、温度下降に伴う蛍光強度の減少を測定すればよい。他方、単独でシグナルを示さず、且つハイブリッド形成によりシグナルを示す標識プローブを使用した場合、前記一本鎖DNAと前記標識プローブとが解離している状態では蛍光を発していないが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、蛍光を発するようになる。したがって、例えば、前記反応液の温度を徐々に降下させて、温度下降に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
【0141】
本発明は、前述のように、例えば、一つの反応系において、二種類以上の多型検出用プローブを使用できる。複数の多型検出用プローブを使用する場合、各プローブの添加のタイミングは、例えば、前述と同様であり、前記(A)工程に先立って、同時に添加することが好ましく、増幅反応を行う場合、増幅反応前に、同時に添加することが好ましい。
【0142】
複数のプローブは、例えば、前記EGFR858用プローブと前記エクソン19用プローブとの組み合わせがあげられ、具体的には、例えば、前記EGFR858用プローブと前記エクソン19用野生型プローブとの組み合わせ、前記EGFR858用プローブと前記エクソン19用変異型(del)プローブとの組み合わせ、前記EGFR858用プローブと前記エクソン19用野生型プローブと前記エクソン19用変異型(del)プローブとの組み合わせが例示できる。本発明においては、例えば、さらに、前記EGFR790用プローブを組み合わせてもよい。
【0143】
前記EGFR858多型およびエクソン19多型の二つを、一反応系で検出する際、例えば、前記EGFR858用プローブと前記エクソン19用プローブとを併用できる。この際、前記EGFR858用プローブと前記エクソン19用プローブは、前述のように、それぞれ異なる標識物質を有することが好ましい。そして、前記反応液の温度を変化させ、各標識物質の測定条件に応じてシグナルを検出することによって、それぞれのTm値を決定できる。
【0144】
また、前記EGFR858多型または前記EGFR790多型の検出には、それぞれ、例えば、目的の多型について、前記野生型プローブおよび変異型プローブを併用することもできる。この場合、例えば、完全に相補なマッチのハイブリッドのTmを示したのが、いずれのプローブであるかによって、前記多型の種類を決定することもできる。例えば、異なる標識物質を有する変異型プローブと野生型プローブとを使用した場合、変異型プローブについて、完全に相補なマッチハイブリッドのTm値を示せば、多型は変異型と判断でき、野生型プローブについて、完全に相補なマッチハイブリッドのTm値を示せば、多型は野生型と判断できる。
【0145】
また、本発明の多型検出方法は、例えば、EGFR遺伝子の多型を検出するための本発明の多型検出用プローブと、その他の遺伝子の多型を検出するためのプローブとを併用できる。本発明の多型検出用プローブと、その他の遺伝子を検出するためのプローブとを併用することによって、一つの反応系において、EGFR遺伝子を含む二種類以上の遺伝子の多型を検出できる。EGFR遺伝子の前記その他の多型は、特に制限されず、例えば、前述のEGFR790多型があげられる。
【0146】
<判定方法>
本発明の判定方法は、本発明の多型検出用プローブを用いた多型検出方法を行うことが特徴であり、その他の工程および条件は、何ら制限されない。また、多型によるEGFR-TKIに対する耐性または薬効の判定は、例えば、公知の基準に基づいて行うことができる。
【0147】
<試薬キット>
本発明の試薬キットは、EGFR遺伝子における多型を検出するための試薬キットであって、前記本発明のプローブを含むことを特徴とする。本発明の試薬キットは、本発明のプローブを含んでいればよく、その他の構成は何ら制限されない。本発明の試薬キットに含まれる本発明のプローブは、一種類でもよいし二種類以上であってもよく、組み合わせは、例えば、前述の通りである。本発明の試薬キットは、例えば、さらに、前述した本発明のプライマーを含むことが好ましく、プライマーの組み合わせは、特に制限されず、前述の通りである。本発明の試薬キットは、例えば、さらに、核酸増幅反応に必要な成分、使用説明書等を含んでもよい。
【0148】
<プライマー試薬>
本発明のプライマー試薬において、前記本発明のプライマーは、いずれか一種類でもよいし、二種類以上を含んでもよい。前記プライマーの種類は、例えば、目的の増幅領域に応じて適宜決定できる。前記EGFR858多型を含む検出配列を増幅する場合は、前記P8、P9およびP10のオリゴヌクレオチドからなるプライマーのうち少なくとも一つを含むことが好ましく、特に、前述の配列番号15、配列番号16および配列番号17に示すオリゴヌクレオチドからなる群から選択される少なくとも一つのプライマーを含むことが好ましい。また、前記エクソン19多型を含む検出配列を増幅する場合は、前記P11、P12およびP13のオリゴヌクレオチドからなるプライマーのうち少なくとも一つを含むことが好ましく、特に、前述の配列番号18、配列番号19および配列番号20に示すオリゴヌクレオチドからなる群から選択される少なくとも一つのプライマーを含むことが好ましい。本発明のプライマー試薬は、例えば、前記プライマーとして、前記P8のオリゴヌクレオチドと、P9またはP10のオリゴヌクレオチドと、P11またはP12のオリゴヌクレオチドと、P13のオリゴヌクレオチドとを含むことにより、前記EGFR858多型を含む検出配列および前記エクソン19多型を含む検出配列を増幅できる。また、前記プライマーの組み合わせは、前述のとおりに例示できるが、これには制限されない。
【0149】
<多型検出用試薬>
本発明の多型検出用試薬は、EGFR遺伝子の多型を検出するための試薬であって、本発明の多型検出用プローブを含むことを特徴とする。本発明においては、前述の本発明の多型検出用プローブを含むことが特徴であって、その他の構成や条件は何ら制限されない。なお、本発明の多型検出用試薬は、例えば、EGFR遺伝子の多型の検出に使用するプローブキットともいえる。
【0150】
前記多型検出用試薬は、例えば、前記多型検出用プローブを一種類含んでもよいし、二種類以上含んでもよく、検出目的の多型に応じて適宜決定できる。前記EGFR858多型のみを検出する場合は、例えば、前記EGFR858用プローブを含むことが好ましい。前記EGFR858用プローブは、例えば、EGFR858用野生型プローブでもよいし、EGFR858用変異型プローブでもよいし、両方を含んでもよい。また、前記エクソン19多型のみを検出する場合は、例えば、前記エクソン19用プローブを含むことが好ましい。前記エクソン19用プローブは、例えば、エクソン19用野生型プローブ、エクソン19用変異型(sub)プローブ、エクソン19用変異型(del)プローブのいずれか1種類でもよいし、2種類でもよいし、全てを含んでもよい。前記プローブの組み合わせは、前述のとおりに例示できるが、これには制限されない。
【0151】
<多型検出用試薬キット>
本発明のEGFR遺伝子多型検出用試薬キットは、EGFR遺伝子の多型の検出に使用する試薬キットであり、本発明のプローブを含むことを特徴とする。本発明の試薬キットにおいて、本発明のプローブは、一種類でもよいし二種類以上であってもよい。後者の場合、二種類以上のプローブは、混合された状態で含まれてもよいし、別個の試薬として含まれていてもよい。また、二種類以上の本発明のプローブが混合された状態で本発明のプローブキットに含まれる場合や、別個の試薬として含まれているが、例えば、使用時に同じ反応系で、各プローブと各検出対象配列とのTm分析を行う場合、各プローブは、別個の蛍光物質で標識化されていることが好ましい。このように蛍光物質の種類を変えることで、同じ反応系であっても、それぞれのプローブについての検出が可能になる。前記蛍光物質は、例えば、検出波長が異なる物質であることが好ましい。
【0152】
また、EGFR遺伝子多型検出用試薬キットは上記多型部位を含む配列(プローブがハイブリダイズする領域)を増幅するためのプライマーセットを含むものであってもよい。
【実施例】
【0153】
本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。
【0154】
[実施例1]
野生型プラスミドと、変異型プラスミドとの共存下で、Tm解析を行い、EGFR遺伝子のEGFR858多型を検出した。
【0155】
前記野生型プラスミドおよび変異型プラスミドとして、EGFR858野生型プラスミド(L858WT)と、EGFR858変異型プラスミド(L858R)とを準備した。前記EGFR858野生型プラスミド(L858WT)は、EGFR遺伝子の部分配列として、配列番号1の112番目から411番目のオリゴヌクレオチドが挿入されており、配列番号1の261番目の塩基(k)は、チミン(t)である。前記EGFR858変異型プラスミド(L858R)は、EGFR遺伝子の部分配列として、配列番号1の112番目から411番目のオリゴヌクレオチドが挿入されており、配列番号1の261番目の塩基(k)は、グアニン(g)である。これらのプラスミドを、以下に示す所定の割合で混合し、3種類の試料を調製した。前記試料は、1μLあたり、プラスミド250コピーとした。
【0156】
【表3】
【0157】
下記表4のPCR反応液50μLについて、全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(商標)IS−5310、アークレイ社製)を用いて、PCRおよびTm解析を行った。前記PCRは、95℃で1分処理した後、95℃1秒および58℃15秒を1サイクルとして50サイクル繰り返し、さらに、95℃で1秒、40℃で60秒処理した。そして、続けて、前記反応液を、温度の上昇速度を1℃/3秒として、40℃から75℃に加熱していき、検出波長585〜700nmにおける、経時的な蛍光強度の変化を測定し、Tm解析を行った。
【0158】
【表4】
【0159】
前記EGFR858用プライマーの配列を以下に示す。
Fプライマー (配列番号15)(EGFR-L858R-F2)
5'-aggaacgtactggtgaaaacaccgc-3'
Rプライマー (配列番号16)(EGFR-L858R-R2)
5'-ttactttgcctccttctgcatggtattc-3'
【0160】
前記EGFR858用プローブとして、下記配列のEGFR858用変異型プローブを使用した。下記EGFR858用変異型プローブは、EGFR858変異型のEGFR遺伝子のセンス鎖における変異型プローブであり、前記配列において、下線部の塩基が、EGFR858変異型に相補的な塩基である。前記EGFR858用変異型プローブは、3’末端を、蛍光色素TAMRAで標識化した。
EGFR用変異型プローブ (配列番号7)(3T-EGFR-858-R2)
5'-ttggcccgcccaaaatc-(TAMRA)-3'
【0161】
これらの結果を図1に示す。図1は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図1において、(A)はL858WT 100%、(B)はL858R 5%、(C)はL858R 10%の結果である。横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。なお、L858WTとEGFR858変異型プローブとのTm値は、55℃付近、L858RとEGFR858変異型プローブとのTm値は、64℃付近である。
【0162】
図1(A)に示すように、L858WT 100%は、L858WTのTm値でのみピークが確認された。一方、図1(C)に示すように、10%の変異型プラスミドを含むL858R 10%は、L858WTのTm値およびL858RのTm値の両方で、ピークが確認された。また、図1(B)に示すように、変異型プラスミドの含有量を5%に低下させたL858R 5%についても、L858WTのTm値およびL858RのTm値の両方で、ピークが確認された。
【0163】
[実施例2]
本例では、野生型人工核酸および変異型人工核酸のそれぞれに対して、Tm解析を行い、EGFR遺伝子のEGFR858多型を検出した。
【0164】
下記配列に示す、配列番号1における241番目〜290番目に相同なEGFR858野生型人工核酸(EGFR-L858R(WT)-F)およびEGFR858変異型人工核酸(EGFR-L858R(MT)-F)を調製した。以下の2つの配列において、下線部が配列番号1における261番目の塩基に該当する。各人工核酸を5μ/Lに調整して、試料とした。
EGFR-L858R(WT)-F(配列番号32)
caagatcacagattttgggctggccaaactgctgggtgcggaagagaaag
EGFR-L858R(MT)-F(配列番号33)
caagatcacagattttgggcgggccaaactgctgggtgcggaagagaaag
【0165】
下記表5の反応液25μLについて、全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(商標)IS−5310、アークレイ社製)を用いて、Tm解析を行った。前記Tm解析は、95℃で1秒、40℃で60秒処理した。そして、続けて、前記反応液を、温度の上昇速度を1℃/3秒として、40℃から75℃に加熱していき、検出波長585〜700nmにおける、経時的な蛍光強度の変化を測定した。
【0166】
【表5】
【0167】
下記EGFR858用変異型プローブは、EGFR858変異型のEGFR遺伝子のセンス鎖における変異型プローブであり、前記配列において、下線部の塩基が、EGFR858変異型に相補的な塩基である。前記EGFR858用変異型プローブは、3’末端を、蛍光色素TAMRAで標識化した。
EGFR858用変異型プローブ(配列番号9)(3T-EGFR-858-R1)
5'-cagtttggcccgccc-(TAMRA)-3'
【0168】
これらの結果を図2に示す。図2は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図2において、(A)はEGFR-L858R(WT)-F、(B)はEGFR-L858R(MT)-Fの結果である。横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。なお、EGFR-L858R(WT)-FとEGFR858変異型プローブとのTm値は、54℃付近、EGFR-L858R(MT)-FLとEGFR858変異型プローブとのTm値は、66℃付近である。
【0169】
図2(A)に示すように、EGFR-L858R(WT)-Fは、EGFR-L858R(WT)-FのTm値でのみピークが確認され、図2(B)に示すように、EGFR-L858R(MT)-Fは、EGFR-L858R(MT)-FのTm値でのみピークが確認された。
【0170】
[実施例3]
本例では、野生型オリゴヌクレオチドおよび変異型オリゴヌクレオチドについてTm解析を行い、EGFR遺伝子のexon19多型を検出した。BODIPY FLの検出波長は、520−555nm、TAMRAの検出波長は、585−700nmとした。
【0171】
(1)オリゴヌクレオチド
前記野生型および変異型オリゴヌクレオチドとして、下記表6に示すオリゴヌクレオチド1〜18を準備した。これらのオリゴヌクレオチドは、EGFR遺伝子のセンス鎖に相補的な配列である。下記オリゴヌクレオチド1は、野生型オリゴヌクレオチドであり、前記exon19の多型1を含むセンス鎖の部分配列に相補的である。下記オリゴヌクレオチド2〜18は、変異型オリゴヌクレオチドであり、それぞれ、前記exon19の多型2〜18を含むセンス鎖の部分配列に相補的である。下記表6に、各オリゴヌクレオチドについて、配列番号2の塩基配列における対応領域を示す。なお、△に続く塩基配列の範囲は、欠失部位である。下記表6における1〜18の配列は、それぞれ、配列番号49〜66に示す。
【0172】
【表6】
【0173】
(2)Tm解析
下記表7の反応液25μLについて、全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(登録商標)IS−5310、アークレイ社製)を用いて、Tm解析を行った。前記Tm解析は、95℃で1秒、40℃で60秒処理した。そして、続けて、前記反応液を、温度の上昇速度を1℃/3秒として、40℃から75℃に加熱していき、各蛍光色素に応じた検出波長における、経時的な蛍光強度の変化を測定した。また、ネガティブコントロールとして、試料5μLに代えて、蒸留水5μLを添加した反応液25μLについて、同様に蛍光強度の変化を測定した。
【0174】
【表7】
【0175】
(実施例3−1)
前記オリゴヌクレオチド1〜18を5μmol/Lに調整した。そして、前記オリゴヌクレオチド1が単独である試料1s、前記オリゴヌクレオチド1と前記オリゴヌクレオチド2〜18とを体積比1:4で混合した試料2m〜18mを、前記反応液の試料として使用した。
【0176】
前記exon19用プローブとして、下記配列のプローブを使用した。前記プローブは、野生型オリゴヌクレオチド1と完全に相補的な配列であり、前記プローブと前記野生型オリゴヌクレオチド1とのTm値は、74℃付近である。
exon19用野生型プローブ(配列番号5)(5FL-EGFR-EX19-F2)
5'-(BODIPY FL)-cccgtcgctatcaaggaattaagagaagc-3'
【0177】
これらの結果を図9に示す。図9は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図9において、(A)〜(Q)は、順に、前記試料1s、2m〜17mについて、蛍光色素を検出した結果であり、(R)は、ネガティブコントロールの結果である。各グラフにおいて、横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。
【0178】
また、Tm解析の結果として、各試料について、ピークの数、各ピークのTm値および前記各ピークのTm値と前記野生型オリゴヌクレオチド1のTm値(74℃)との差(Δ℃)を、下記表8に示す。下記表8および図9に示すように、野生型オリゴヌクレオチド1のみを含む試料1sは、野生型オリゴヌクレオチド1のTm値(74℃)でのみピークが確認された。一方、野生型オリゴヌクレオチド1および変異型オリゴヌクレオチド2〜17を含む試料2m〜17mは、それぞれ、2つのTm値でピークが確認された。すなわち、前記試料2m〜17mは、野生型オリゴヌクレオチド1とexon19用野生型プローブとのTm値と、それより低い温度との両方で、ピークが確認された。また、変異型オリゴヌクレオチド18を含む試料18については、野生型オリゴヌクレオチド1のTm値(74℃)でのみピークが確認され、それ以外の温度では、ピークが確認できなかった。
【0179】
【表8】
【0180】
(実施例3−2)
前記オリゴヌクレオチド1〜18を5μmol/Lに調整した。そして、前記オリゴヌクレオチド1が単独である試料1s、前記オリゴヌクレオチド1と前記オリゴヌクレオチド2〜18とを体積比1:4で混合した試料2m〜18mを、前記反応液の試料として使用した。
【0181】
前記exon19用プローブとして、下記配列のプローブを使用した。前記プローブは、変異型オリゴヌクレオチド18と完全に相補的な配列であり、前記プローブと前記変異型オリゴヌクレオチド18とのTm値は、58℃付近である。
exon19用変異型(del)プローブ(配列番号6)(3T-EGFR-EX19-No18-F1)
5'-agcaacaaaggaaatc-(TAMRA)-3'
【0182】
これらの結果を図10に示す。図10は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図10において、(A)〜(R)は、順に、前記試料1s、2m〜18mについて、蛍光色素を検出した結果である。各グラフにおいて、横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。
【0183】
また、Tm解析の結果として、各試料について、ピークの数、各ピークのTm値および前記各ピークのTm値と前記変異型オリゴヌクレオチド18のTm値(58℃)との差(Δ℃)を、下記表9に示す。下記表9および図10に示すように、変異型オリゴヌクレオチド18を含む試料18mは、変異型オリゴヌクレオチド18のTm値(58℃)でのみピークが確認された。一方、野生型オリゴヌクレオチドのみを含む試料1sは、ピークが検出されなかった。また、変異型オリゴヌクレオチド18以外のオリゴヌクレオチドを含む試料2m〜17mは、それぞれ、試料18mより低い温度でピークが確認された。
【0184】
【表9】
【0185】
(実施例3−3)
前記オリゴヌクレオチド1〜18を5μmol/Lに調整し、それぞれを単独で、前記PCR反応液の試料(1s〜18s)として使用した。
【0186】
前記exon19用プローブとして、下記配列のプローブを使用した。前記プローブは、配列番号1における塩基番号119の塩基がtであることを除いて、野生型オリゴヌクレオチド1と、相補的な配列であり、前記プローブと前記野生型オリゴヌクレオチド1とのTm値は、67℃付近である。
exon19用変異型(sub)プローブ(配列番号4)(5FL-EGFR-EX19-No19-F2-3)
5'-(BODIPY FL)-cccgtcgctatcaagtaattaagagaagcaaca-3'
【0187】
これらの結果を図11に示す。図11は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図11において、(A)〜(Q)は、順に、前記試料1s〜17sについて、蛍光色素を検出した結果であり、(R)は、ネガティブコントロールの結果である。各グラフにおいて、横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。
【0188】
Tm解析の結果として、各試料について、ピークの数、各ピークのTm値および前記各ピークのTm値と前記野生型オリゴヌクレオチド1のTm値(67℃)との差(Δ℃)を、下記表10に示す。下記表10および図11に示すように、野生型オリゴヌクレオチド1のみを含む試料1sは、野生型オリゴヌクレオチド1のTm値(67℃)でのみピークが確認された。一方、変異型オリゴヌクレオチド2〜15および17のみを含む試料2s〜15sおよび17sは、それぞれ、野生型オリゴヌクレオチド1のTm値より低い温度で、ピークが確認された。また、変異型オリゴヌクレオチド16または18のみを含む試料16sおよび18sについては、ピークが確認できなかった。
【0189】
【表10】
【0190】
[比較例3]
前記オリゴヌクレオチド1〜18を5μmol/Lに調整し、それぞれを単独で、前記反応液の試料1s〜18sとして使用した。
【0191】
前記exon19用プローブとして、下記配列のプローブを使用した。前記プローブは、野生型オリゴヌクレオチド1と強くハイブリダイズする配列であり、前記プローブと前記野生型オリゴヌクレオチド1とのTm値は、72℃付近である。
exon19用野生型プローブ (配列番号28)(5FL-EGFR-EX19-WT-F1)
5'-(BODIPY FL)-caaggaattaagagaagcaacatctccg-3'
【0192】
これらの結果を図12に示す。図12は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図12において、(A)〜(R)は、順に、前記試料1s〜18sについて、蛍光色素を検出した結果である。各グラフにおいて、横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。また、Tm解析の結果として、各試料について、最も大きなピークのTm値および前記ピークのTm値と前記野生型オリゴヌクレオチド1のTm値(72℃)との差(Δ℃)を、下記表11に示す。
【0193】
図12に示すように、試料1sは、野生型オリゴヌクレオチド1のみを含むにも関わらず、ピークに肩が見られるため、野生型オリゴヌクレオチドか変異型オリゴヌクレオチドかを判別することができなかった。また、変異型オリゴヌクレオチド2〜18のみを含む試料2s〜18sについても、複数のピークが確認された。さらに、試料2s〜18sは、下記表11に示すように、最も大きなピークを示すTm値が、前記野生型オリゴヌクレオチド1のTm値とほとんど差がみられなかった。
【0194】
【表11】
【0195】
[実施例4]
本例では、野生型プラスミドと、変異型プラスミドとの共存下で、Tm解析を行い、EGFR遺伝子のexon19多型を検出した。
【0196】
EGFR遺伝子の部分配列として、前記表6のオリゴヌクレオチドが挿入されたプラスミドを準備した。具体的には、前記野生型オリゴヌクレオチド1が挿入されたexon19野生型プラスミド(ex19WT)、前記変異型オリゴヌクレオチド2が挿入されたexon19変異型プラスミド2(ex19mt2)、前記変異型オリゴヌクレオチド4が挿入されたexon19変異型プラスミド4(ex19mt4)および変異型オリゴヌクレオチド6が挿入されたexon19変異型プラスミド6(ex19mt6)を準備した。これらのプラスミドを、下記表12に示す所定の割合で混合し、4種類の試料を調製した。前記試料は、1μLあたり、プラスミド250コピーとした。
【0197】
【表12】
【0198】
下記表13のPCR反応液50μLについて、全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(登録商標)IS−5310、アークレイ社製)を用いて、検出波長を、520〜555nmおよび585〜700nmとした以外は、前記実施例1と同様にして、PCRおよびTm解析を行った。
【0199】
【表13】
【0200】
前記exon19用プライマーの配列を以下に示す。また、前記exon19用プローブは、前記実施例3のexon19用野生型プローブおよびexon19用変異型(del)プローブを使用した。
Fプライマー (配列番号18)(EGFR-EX19-F1)
5'-gatcccagaaggtgagaaag-3'
Rプライマー (配列番号20)(EGFR-EX19-R1)
5'-gaaactcacatcgaggatttc-3'
exon19用野生型プローブ(配列番号5)(5FL-EGFR-EX19-F2)
5'-(BODIPY FL)-cccgtcgctatcaaggaattaagagaagc-3'
exon19用変異型(del)プローブ(配列番号6)(3T-EGFR-EX19-No18-F1)
5'-agcaacaaaggaaatc-(TAMRA)-3'
【0201】
これらの結果を図3に示す。図3は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図3において、(A)はex19WT 100%、(B)はex19mt2 5%、(C)はex19mt4 5%、(D)はex19mt6 5%の結果である。横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。なお、ex19WTとexon19用野生型プローブとのTm値は、68℃付近であり、ex19mt2、ex19mt4およびex19mt6とexon19用変異型(del)プローブとのTm値は、ex19WTとexon19用変異型(del)プローブとのTm値よりも低い温度であり、それぞれ、51℃、59℃、60℃である。
【0202】
図3(A)に示すように、ex19WT 100%は、ex19WTのTm値でのみピークが確認された。一方、図3(B)〜(D)に示すように、野生型プラスミドおよび変異型プラスミドを含む試料では、2つのTm値でピークが確認された。すなわち、図3(B)〜(D)に示すように、それぞれ、野生型ex19WTとexon19用野生型プローブとのTm値と、それよりも低い温度との両方で、ピークが確認された。このように、本実施例のFプライマー、Rプライマーおよびexon19用プローブを用いれば、野生型と変異型の多型とが混在する場合であっても、野生型と変異型とを区別して、exon19多型を検出可能であることがわかった。
【0203】
[実施例5]
本例では、野生型プラスミドと、変異型プラスミドとの共存下で、Tm解析を行い、EGFR遺伝子のEGFR858多型を検出した。Pacific Blueの検出波長は、445−480nm、BODIPY FLの検出波長は、520−555nm、TAMRAの検出波長は、585−700nmとした。
【0204】
(実施例5−1)
前記実施例1の3種類の試料(L858WT 100%、L858R 5%およびL858R 10%)を準備した。前記試料は、1μLあたり、プラスミド250コピーとした。
【0205】
下記表14のPCR反応液50μLについて、全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(登録商標)IS−5310、アークレイ社製)を用いて、PCRおよびTm解析を行った。前記PCRは、95℃で1分処理した後、95℃1秒および60℃30秒を1サイクルとして50サイクル繰り返し、さらに、95℃で1秒、40℃で60秒処理した。そして、続けて、前記反応液を、温度の上昇速度を1℃/3秒として、40℃から75℃に加熱していき、各プローブの蛍光色素に応じた検出波長における、経時的な蛍光強度の変化を測定し、Tm解析を行った。
【0206】
【表14】
【0207】
前記各FプライマーおよびRプライマーの配列を以下に示す。
(EGFR858用プライマー)
Fプライマー (配列番号15)(EGFR-L858R-F2)
5'-aggaacgtactggtgaaaacaccgc-3'
Rプライマー (配列番号17)(EGFR-L858R-R1)
5'-gcctccttctgcatggtattctttctc-3'
(exon19用プライマー)
Fプライマー (配列番号19)(EGFR-EX19-F2)
5'-tctctctgtcatagggactc-3'
Rプライマー (配列番号20)(EGFR-EX19-R1)
5'-gaaactcacatcgaggatttc-3'
(EGFR790用プライマー)
Fプライマー (配列番号25)(EGFR-T790M-F2)
5'-tccaggaagcctacgtgatggccag-3'
Rプライマー (配列番号26)(EGFR-T790M-R1)
5'-ccaatattgtctttgtgttcccggacatagtc-3'
【0208】
前記EGFR858用プローブとして、TAMRAに代えて、Pacific Blueで標識化した前記実施例1と同じ配列のEGFR858用変異型プローブ(配列番号7)を用いた。前記exon19用プローブとして、前記実施例3のexon19用野生型プローブ(配列番号5)を用いた。また、前記EGFR790用プローブとして、下記配列のプローブを使用した。下記EGFR790用変異型プローブは、EGFR790変異型のEGFR遺伝子のセンス鎖における検出配列に強くハイブリダイズするプローブであり、前記配列において、下線部の塩基が、EGFR790変異型に相補的な塩基である。前記EGFR790用変異型プローブは、3’末端を、蛍光色素TAMRAで標識化した。
EGFR858用変異型プローブ (配列番号7)(3PB-EGFR-858-R2)
5'-ttggcccgcccaaaatc-(Pacific Blue)-3'
exon19用野生型プローブ (配列番号5)(5FL-EGFR-EX19-F2)
5'-(BODIPY FL)-cccgtcgctatcaaggaattaagagaagc-3'
EGFR790用変異型プローブ (配列番号23)(3T-EGFR-790M-mt-R3)
5'-tgagctgcatgatgaggtgcac-(TAMRA)-3'
【0209】
これらの結果を図4に示す。図4は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図4において、(A)はL858WT 100%、(B)はL858R 5%、(C)はL858R 10%の結果であり、それぞれ、EGFR858用変異型プローブのPacific Blueを検出した結果である。横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。なお、L858WTとEGFR858変異型プローブとのTm値は、51℃付近であり、L858RとEGFR858変異型プローブとのTm値は、61℃付近である。
【0210】
図4(A)に示すように、L858WT 100%は、L858WTのTm値でのみピークが確認された。一方、図4(C)に示すように、10%の変異型プラスミドを含むL858R 10%は、L858WTのTm値およびL858RのTm値の両方で、ピークが確認された。また、図4(B)に示すように、変異型プラスミドの含有量を5%に低下させたL858R 5%についても、L858WTのTm値およびL858RのTm値の両方で、ピークが確認された。
【0211】
(実施例5−2)
本例では、前記試料として、下記3種類の試料を用い、検出波長を525〜555nmとした以外は、前記実施例5−1と同様にして、PCRおよびTm解析を行い、EGFR遺伝子のexon19多型を検出した。
【0212】
前記試料は、前記実施例4の前記exon19野生型プラスミド(ex19WT)およびexon19変異型プラスミド6(ex19mt6)を、以下に示す所定の割合で混合して調製した。前記試料は、1μLあたり、プラスミド250コピーとした。
【0213】
【表15】
【0214】
これらの結果を図5に示す。図5は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図5において、(A)はex19WT 100%、(B)はex19mt6 5%、(C)はex19mt6 10%の結果であり、それぞれ、exon19用野生型プローブのBODIPY FLを検出した結果である。横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。なお、ex19WTとexon19用野生型プローブとのTm値は、68℃付近であり、ex19mt6とexon19用野生型プローブとのTm値は、59℃付近である。
【0215】
図5(A)に示すように、ex19WT 100%はex19WTのTm値でのみピークが確認された。一方、図5(C)に示すように、10%の変異型プラスミドを含むex19mt6 10%は、ex19WTのTm値およびex19mt6のTm値の両方で、ピークが確認された。また、図5(B)に示すように、変異型プラスミドの含有量を5%に低下させたex19mt6 5%についても、ex19WTのTm値およびex19mt6のTm値の両方で、ピークが確認された。
【0216】
(実施例5−3)
本例では、前記試料として、下記3種類の試料を用い、検出波長を585−700nmとした以外は、前記実施例5−1と同様にして、PCRおよびTm解析を行い、EGFR遺伝子のEGFR790多型を検出した。
【0217】
前記野生型プラスミドおよび変異型プラスミドとして、EGFR790野生型プラスミド(T790WT)と、EGFR790変異型プラスミド(T790M)とを準備した。前記EGFR790野生型プラスミド(T790WT)は、EGFR遺伝子の部分配列として、配列番号21の197番目から496番目のオリゴヌクレオチドが挿入されており、配列番号21の347番目の塩基(y)は、シトシン(c)である。前記EGFR790変異型プラスミド(T790M)は、EGFR遺伝子の部分配列として、配列番号21の197番目から496番目のオリゴヌクレオチドが挿入されており、配列番号21の347番目の塩基(y)は、チミン(t)である。これらのプラスミドを、以下に示す所定の割合で混合し、3種類の試料を調製した。前記試料は、1μLあたり、プラスミド250コピーとした。
【0218】
【表16】
【0219】
これらの結果を図6に示す。図6は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図6において、(A)はT790WT 100%、(B)はT790M 5%、(C)はT790M 10%の結果であり、それぞれ、EGFR790用変異型プローブのTAMRAを検出した結果である。横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。なお、T790WTとEGFR790用変異型プローブとのTm値は、60℃付近であり、T790MとEGFR790用変異型プローブとのTm値は、66℃付近である。
【0220】
図6(A)に示すように、T790WT 100%はT790WTのTm値でのみピークが確認された。一方、図6(C)に示すように、10%の変異型プラスミドを含むT790M 10%は、T790WTのTm値およびT790MのTm値の両方で、ピークが確認された。また、図6(B)に示すように、変異型プラスミドの含有量を5%に低下させたT790M 5%についても、T790WTのTm値およびT790MのTm値の両方で、ピークが確認された。
【0221】
[比較例1]
本例では、前記EGFR858用プローブとして、下記EGFR858用野生型プローブを用いた以外は、前記実施例2と同様にして、EGFR遺伝子のEGFR858多型を検出した。
【0222】
下記EGFR858野生型プローブは、EGFR858野生型のEGFR遺伝子のセンス鎖における検出配列に強くハイブリダイズするプローブであり、前記配列において、下線部の塩基が、EGFR858野生型に相補的な塩基である。前記EGFR858用野生型プローブは、5’末端を、蛍光色素Pacific Blueで標識化した。
EGFR858用野生型プローブ (配列番号27)(5PB-EGFR858861WT-R1)
5'-(Pacific Blue)-ccagcagtttggccagc-3'
【0223】
これらの結果を図7に示す。図7は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図7において、(A)はEGFR-L858R(WT)-F(配列番号32)、(B)はEGFR-L858R(MT)-F(配列番号33)、(C)はEGFR-L858R(WT)-F(配列番号32)とEGFR-L858R(MT)-F(配列番号33)を1:1の割合で混合した試料の結果である。横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。
【0224】
図7(A)に示すように、L858WT 100%は、68℃でのみピークが確認され、図7(B)に示すように、L858R 100%は、71℃でのみピークが確認された。しかし、両ピークの温度の差は3℃であり、その差が小さかった。また、図7(C)に示すように、EGFR-L858R(WT)-F(配列番号32)とEGFR-L858R(MT)-F(配列番号33)の混合試料は、71℃で、L858WTとL858Rのピークが重なり、両者を検出し分けることができなかった。このように、EGFR858野生型の検出ピークと、EGFR858変異型の検出ピークとが接近するため、例えば、野生型と変異型とが混在する場合、正確な検出が困難である。
【0225】
[比較例2]
本例では、4種類の試料を用い、前記exon19用プローブとして、下記exon19用野生型プローブを用い、検出波長を520〜555nmとした以外は、前記実施例3と同様にして、EGFR遺伝子のexon19多型を検出した。なお、前記試料として、前記実施例3のオリゴヌクレオチド1、2、4および6を5μmol/Lに調整し、前記オリゴヌクレオチド1単独の試料1、前記オリゴヌクレオチド1と前記オリゴヌクレオチド2、4または6とを体積比1:5で混合した、試料2、試料4および試料6を調製した。
【0226】
下記exon19用野生型プローブは、exon19野生型のEGFR遺伝子のアンチセンス鎖における検出配列に強くハイブリダイズするプローブであり、前記配列において、下線部の塩基が、exon19野生型に相補的な塩基である。前記exon19用野生型プローブは、5’末端を、蛍光色素BODIPY FLで標識化した。
exon19用野生型プローブ (配列番号28)(5FL-EGFR-EX19-WT-F1)
5'-(BODIPY FL)-caaggaattaagagaagcaacatctccg-3'
【0227】
これらの結果を図8に示す。図8は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図8において、前記exon19用野生型プローブを使用した結果であり、(A)は試料1、(B)は試料2、(C)は試料4、(D)は試料6の検出結果である。横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。なお、オリゴヌクレオチド1とexon19用野生型プローブとのTm値は、71℃付近、オリゴヌクレオチド2とexon19用野生型プローブとのTm値は、71℃付近、オリゴヌクレオチド4とexon19用野生型プローブとのTm値は、49℃付近、オリゴヌクレオチド6とexon19用野生型プローブとのTm値は、71℃付近である。
【0228】
図8(A)に示すように、野生型オリゴヌクレオチド1のみを含む試料1は、オリゴヌクレオチド1のTm値でのみピークが確認された。また、図8(C)に示すように、野生型オリゴヌクレオチド1および変異型オリゴヌクレオチド4を含む試料4は、野生型オリゴヌクレオチド1のTm値と、変異型オリゴヌクレオチド4のTm値との両方で、ピークが確認された。しかしながら、図8(B)および(D)に示すように、野生型オリゴヌクレオチド1と変異型オリゴヌクレオチド2または6とを含む試料2および6は、野生型オリゴヌクレオチド1のTm値ではピークが確認されたが、各変異型オリゴヌクレオチドのTm値では、ピークが確認されなかった。
【0229】
[実施例6]
本例では、下記表17に示すプローブを使用し、下記野生型人工核酸および変異型人工核酸のそれぞれに対して、Tm解析を行った以外は、実施例2と同様の方法で、EGFR遺伝子のEGFR858多型を検出した。なお、下記表17において、配列番号71および配列番号87に示すプローブは、本発明のプローブには該当しないプローブである。
【0230】
配列番号1における217番目〜306番目に相同なEGFR858野生型人工核酸(配列番号67:EGFR-L858R(WT)-F90)およびEGFR858変異型人工核酸(配列番号68:EGFR-L858R(MT)-F90)を調製した。以下の2つの配列において、下線部の塩基が配列番号1における261番目の塩基に該当する。各人工核酸を5μmol/Lに調製して、858野生型試料および858変異型試料とした。
EGFR-L858R(WT)-F90(配列番号67)
actggtgaaaacaccgcagcatgtcaagatcacagattttgggctggccaaactgctgggtgcggaagagaaagaataccatgcagaagg
EGFR-L858R(MT)-F90(配列番号68)
actggtgaaaacaccgcagcatgtcaagatcacagattttgggcgggccaaactgctgggtgcggaagagaaagaataccatgcagaagg
【0231】
Tm解析において、各プローブについて、前記野生型試料とのTm値および前記変異型試料とのTm値を測定し、その差(ΔTm)を算出した。そして、その算出値から、下記評価基準に従って、各プローブが、EGFR858の野生型および変異型を判別できるか否かを評価した。これらの結果を、下記表17にあわせて示す。
(評価基準)
○ :ΔTmが3℃以上であり、野生型と変異型とを有効に判別可能
× :ΔTmが3℃未満であり、野生型と変異型とを有効に判別不可
【0232】
【表17】
【0233】
前記表17に示すように、実施例の各プローブは、野生型試料および変異型試料のいずれに対しても、1つのピークが確認され、前記野生型試料とのTm値よりも、前記変異型試料とのTm値が、3℃以上高い値を示した(ΔTm≧3℃)。一方、比較例のプローブは、野生型試料および変異型試料のいずれに対しても、1つのピークが確認されたが、ΔTmが3℃未満であった。このことから、実施例のプローブによれば、例えば、野生型検出配列と変異型検出配列とが共存する際に、両者を有効に判別できることがわかった。
【0234】
[実施例7]
本例では、下記表18に示すプローブを使用し、下記野生型人工核酸および変異型人工核酸のそれぞれに対して、Tm解析を行った以外は、実施例2と同様の方法で、EGFR遺伝子のEGFR858多型を検出した。なお、下記表18において、配列番号93に示すプローブは、本発明のプローブに該当しないプローブである。
【0235】
配列番号1における217番目〜306番目に相補的なEGFR858野生型人工核酸(配列番号69:EGFR-L858R(WT)-R90)およびEGFR858変異型人工核酸(配列番号70:EGFR-L858R(MT)-R90)を調製した。以下の2つの配列において、下線部の塩基が配列番号1における261番目の塩基に該当する。各人工核酸を5μmol/Lに調製して、EGFR858野生型試料および858変異型試料とした。
EGFR-L858R(WT)-R90(配列番号69)
ccttctgcatggtattctttctcttccgcacccagcagtttggccagcccaaaatctgtgatcttgacatgctgcggtgttttcaccagt
EGFR-L858R(MT)-R90(配列番号70)
ccttctgcatggtattctttctcttccgcacccagcagtttggcccgcccaaaatctgtgatcttgacatgctgcggtgttttcaccagt
【0236】
Tm解析において、各プローブについて、前記野生型試料とのTm値および前記変異型試料とのTm値を測定した。そして、前記実施例6と同様にして、各プローブを評価した。これらの結果を、下記表18にあわせて示す。
【0237】
【表18】
【0238】
前記表18に示すように、実施例の各プローブは、野生型試料および変異型試料のいずれに対しても、1つのピークが確認され、前記野生型試料とのTm値よりも、前記変異型試料とのTm値が、3℃以上高い値を示した(ΔTm≧3℃)。一方、比較例のプローブは、野生型試料および変異型試料のいずれに対しても、1つのピークが確認されたが、ΔTmが3℃未満であった。このことから、実施例のプローブによれば、例えば、野生型検出配列と変異型検出配列とが共存する際に、両者を有効に判別できることがわかった。
【0239】
以上の実施例1〜7および比較例1〜3の結果より、これらの実施例におけるFプライマー、Rプライマーおよびプローブを用いれば、例えば、野生型と変異型の多型とが混在する場合であっても、野生型と変異型とを区別して、EGFR遺伝子のEGFR858多型、exon19多型およびEGFR790多型を検出可能であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0240】
本発明の多型検出方法によれば、本発明の多型検出用プローブを使用することによって、例えば、EGFR遺伝子の多型を、簡便且つ優れた信頼性で判別できる。具体的には、例えば、試料中に、目的の多型が野生型であるEGFR遺伝子と変異型であるEGFR遺伝子とが共存している場合であっても、野生型と変異型の多型を、簡便且つ優れた信頼性で検出できる。また、本発明のプライマーによれば、例えば、EGFR遺伝子の多型を含む領域を、特異的に増幅できる。このように、本発明によれば、EGFR遺伝子の多型を、簡便且つ優れた信頼性で増幅および判別できることから、例えば、検出結果を、前述のような疾患の治療法の選択等に反映できるため、本発明は、医療分野等において極めて有用といえる。なお、本発明は、例えば、医療分野に関わらす、生化学等の広い分野におけるEGFR遺伝子の多型検出に適用できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGFR遺伝子の多型検出用プローブ、増幅用プライマーおよびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor:EGFR)は、上皮成長因子(EGF)のチロシンキナーゼ型受容体である。EGFRは、多くの固形癌で高頻度に発現し、その過剰発現は癌の悪性度や予後と関連することが知られている。そこで、例えば、EGFRのチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR−TKI)であるゲフィチニブ等が、癌治療薬として使用されている。しかしながら、患者の中には、ゲフィニチブによる腫瘍縮小効果が向上する場合があれば、ゲフィチニブに耐性を示し、治療効果が得られない場合もある。そして、近年、このような薬剤に対する感受性が、EGFRの変異と関連することが明らかになっている(非特許文献1、2)。
【0003】
前記変異は、例えば、EGFRの790番目および858番目における置換変異、EGFR遺伝子のエクソン19における欠失変異等が知られている(非特許文献1、2)。前記790番目における変異は、EGFRの790番目のアミノ酸であるトレオニン(T)がメチオニン(M)に置換された変異であり、配列番号21に示すEGFR遺伝子の部分配列においては、347番目の塩基シトシン(c)がチミン(t)に置換されている。前記858番目における変異は、EGFRの858番目のアミノ酸であるロイシン(L)がアルギニン(R)に置換された変異であり、配列番号1に示すEGFR遺伝子の部分配列においては、261番目の塩基チミン(t)がグアニン(g)に置換されている。前記EGFR遺伝子のエクソン19における欠失変異は、前記エクソン19において、連続した数塩基〜十数塩基が欠失した変異であり、配列番号2に示すEGFR遺伝子の部分配列においては、例えば、112〜164番目の塩基のいずれかが欠失している。したがって、EGFR遺伝子における、この変異の有無(多型)を検出すれば、治療前に、ゲフィチニブに対する感受性を評価できるため、より効率的なテーラーメイド癌治療が可能となる。
【0004】
他方、遺伝子の多型を検出する方法は、様々な方法が報告されており、例えば、PCR−RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism)法等があげられる。
【0005】
しかしながら、前記PCR−RFLP法は、手間がかかり増幅産物が飛散し、2回目の別の反応に混入するおそれがある。このような問題から、多型の検出を自動化し難いという問題もある。
【0006】
このような問題から、近年、遺伝子多型の検出方法として、融解曲線分析(Tm分析)を利用した検出が行われている。これは、検出目的の遺伝子多型を含む検出対象配列に相補的なプローブを用いて、検出試料の標的一本鎖DNAと前記プローブとのハイブリッド(二本鎖DNA)を形成させ、このハイブリッド形成体に加熱処理を施して温度上昇に伴うハイブリッドの解離(融解)を吸光度等のシグナル測定により検出し、この検出結果に基づいてTm値を決定することによって目的多型の有無を判断する方法である。Tm値は、ハイブリッド形成体の相同性が高い程高く、相同性が低い程低くなる。このため、目的多型を含む検出対象配列とそれに相補的なプローブとのハイブリッド形成体について予めTm値(評価基準値)を求めておき、検出試料の標的一本鎖DNAと前記プローブとのTm値(測定値)を測定し、測定値が評価基準値と同じであれば、標的DNAに目的多型が存在すると判断でき、測定値が評価基準値より低ければ、標的DNAに目的多型が存在しないと判断できる。
【0007】
「Tm値」とは、二本鎖核酸が解離する温度(解離温度:Tm)であって、一般に、260nmにおける吸光度が、吸光度全上昇分の50%に達した時の温度と定義される。即ち、二本鎖核酸、例えば、二本鎖DNAを含む溶液を加熱していくと、260nmにおける吸光度が上昇する。これは、二本鎖DNAにおける両鎖間の水素結合が加熱によってほどけ、一本鎖DNAに解離(DNAの融解)することが原因である。そして、全ての二本鎖DNAが解離して一本鎖DNAになると、その吸光度は加熱開始時の吸光度(二本鎖DNAのみの吸光度)の約1.5倍程度を示し、これによって融解が完了したと判断できる。Tm値は、この現象に基づき設定される。
【0008】
しかしながら、このようなTm解析を利用した検出方法は、少なくとも一塩基の違いをTm値によって判断するため、複数の遺伝子多型を有する場合には、1つのサンプルを解析するにも多大な労力を伴う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】PLoS Medicine、2005年、Vol.2、No.3、p.225−235
【非特許文献2】Journal of Clinical Oncology、2005年、Vol.23、No.11、p.2513−2520
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような理由から、EGFR遺伝子の多型の検出は、例えば、前記疾患の治療法の選択において非常に重要である。そこで、本発明は、EGFR遺伝子について、一塩基が異なる多型を、簡便且つ優れた信頼性で判別可能な多型検出用プローブおよび多型検出方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の多型検出用プローブは、EGFRの遺伝子変異を検出することの可能なプローブであって、下記P1、P3、P5〜P7およびP15〜P18から選択される少なくとも1種の蛍光標識オリゴヌクレオチドからなることを特徴とする。
(P1)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号251〜261を含む11〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号251に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P3)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜261を含む5〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号257に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P5)配列番号2に示す塩基配列において、塩基番号104〜112を含む9〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号112に相同的な塩基がチミンであり、塩基番号104に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P6)配列番号2に示す塩基配列において、塩基番号104〜119を含む16〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号119の塩基がG以外の塩基に置換されており、塩基番号104に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P7)配列番号3に示す塩基配列において、塩基番号136〜145を含む10〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号145に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P15)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号259〜264を含む6〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、前記塩基より3’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜262を含む5〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、前記塩基より5’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P17)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号249〜264を含む16〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、前記塩基より5’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P18)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜264を含む8〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、前記塩基より3’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
【0012】
本発明の多型検出方法は、EGFR遺伝子における多型の検出方法であって、本発明のプローブを用いることを特徴とする。
【0013】
本発明の判定方法は、本発明の方法によりEGFR遺伝子における多型を検出する工程、および、多型の有無に基づいてEGFR-TKIに対する耐性または薬効を判定する工程を含むことを特徴とする、EGFR-TKIに対する耐性またはEGFR-TKIの薬効の判定方法である。
【0014】
本発明のキットは、EGFR遺伝子における多型を検出するための試薬キットであって、本発明のプローブを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明のプライマーは、EGFRの遺伝子変異を検出することの可能なプライマーであって、下記P8〜P13から選択される多型検出用プライマーである。
(P8)233番目の塩基Cを3’末端とし、配列番号1に相同的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P9)284番目の塩基Gに相補的な塩基Cを3’末端とし、配列番号1に相補的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P10)290番目の塩基Gに相補的な塩基Cを3’末端とし、配列番号1に相補的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P11)95番目の塩基Gを3'末端とし、配列番号2に相同的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P12)73番目の塩基Cを3'末端とし、配列番号2に相同的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P13)155番目の塩基Gに相補的な塩基Cを3'末端とし、配列番号2に相補的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
【発明の効果】
【0016】
本発明の多型検出方法によれば、本発明の多型検出用プローブを使用することによって、例えば、EGFR遺伝子の多型を、簡便且つ優れた信頼性で判別できる。具体的には、例えば、試料中に、目的の多型が野生型であるEGFR遺伝子と変異型であるEGFR遺伝子とが共存している場合であっても、野生型と変異型の多型を、簡便且つ優れた信頼性で検出できる。また、本発明のプライマーによれば、例えば、EGFR遺伝子の多型を含む領域を、特異的に増幅できる。このように、本発明によれば、EGFR遺伝子の多型を、簡便且つ優れた信頼性で増幅および判別できることから、例えば、検出結果を、前述のような疾患の治療法の選択等に反映できる。例えば、ゲフィニチブ等のEGFR−TKIに対する耐性または薬効を判定できる。なお、本発明は、例えば、医療分野に関わらす、生化学等の広い分野におけるEGFR遺伝子の多型検出に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施例1における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明の実施例2における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の実施例4における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明の実施例5−1における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の実施例5−2における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の実施例5−3における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図7】図7は、比較例1における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図8】図8は、比較例2における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例3−1における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図10】図10は、実施例3−2における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図11】図11は、実施例3−3における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【図12】図12は、比較例3における、反応液のTm解析の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において、遺伝子の多型とは、例えば、変異により生じた、一つまたは複数の遺伝子座における多様性をいう。前記変異は、例えば、置換、欠失、挿入および付加があげられる。
【0019】
EGFR遺伝子として、配列番号1、2および21に示す部分配列は、例えば、それぞれ、以下に示すGenBankアクセッションNo.に登録されている。
(配列番号1)
NT_033968
4848624〜4849033番目の塩基配列
(配列番号2)
NT_033968.6
4831717番目〜4832003番目の塩基配列
(配列番号21)
NG_007726
167001番目〜168020番目の塩基配列
【0020】
本発明において、EGFR遺伝子における検出目的の多型とは、例えば、以下の多型である。
配列番号1に示すEGFR遺伝子の部分配列において261番目の塩基(k)の多型
配列番号2に示すEGFR遺伝子の部分配列において104〜133番目の少なくともいずれかの塩基の多型
配列番号2に示すEGFR遺伝子の部分配列において130〜164番目の塩基の少なくともいずれかの多型
配列番号21に示すEGFR遺伝子の部分配列において347番目の塩基(y)の多型
【0021】
以下、配列番号1の前記多型を「EGFRエクソン21 858多型」といい、配列番号2の前記多型を「EGFRエクソン19多型」といい、配列番号21の前記多型を「EGFR790多型」という。前記多型は、それぞれ、野生型、変異型が存在する。前記各多型について、野生型のEGFR遺伝子を、野生型遺伝子、変異型のEGFR遺伝子を、変異型遺伝子という。
【0022】
前記配列番号1における261番目の塩基(k)の多型は、野生型がチミン(t)であり、変異型がグアニン(g)である。野生型の場合、EGFRの858番目のアミノ酸はロイシン(L)となり、変異型の場合、EGFRの858番目のアミノ酸はアルギニン(R)となる。
【0023】
本発明において、「EGFRエクソン21 L858R」との表現は、EGFR遺伝子のエクソン21における変異であって、コドン858における変異がアミノ酸としてロイシンからアルギニンへの変異であることを意味する。また、本発明において、「EGFRエクソン21の変異型」との表現は、「EGFRエクソン21 L858R」を意味する。本発明におけるEGFRエクソン21の塩基配列は、GenBankアクセッションNo.NT_033968における4848624〜4849033番目を意味し、EGFRエクソン21 L858Rの変異は、GenBankアクセッションNo.NT_033968におけるに示す塩基配列の4848884番目の塩基が「T(チミン)」から「G(グアニン)」への変異をいう。
【0024】
前記配列番号2の104〜164番目の塩基の多型は、例えば、下記表1に示す多型があげられる(Journal of Clinical Oncology、2005年、Vol.23、No.11、p.2513−2520参照)。下記表1において、多型1は、野生型である。下記多型1の塩基配列は、配列番号2における104〜164番目のオリゴヌクレオチドに対応する。下記表1において、多型2〜18は、配列番号2の112〜164番目の領域において、少なくともいずれかの塩基が欠失した変異型(エクソン19欠失変異)である。中でも、下記多型2〜17は、配列番号2の122〜132番目の領域において、少なくともいずれかの塩基が欠失しており、具体的には、前記112〜140番目の領域において、複数の塩基が欠失した変異型である。下記多型18は、配列番号2の137〜151番目の塩基が欠失した変異型である。下記表1の多型2〜18において、「−」は、多型1に対応する部位の塩基が欠失していることを示す。
【0025】
【表1】
【0026】
EGFR遺伝子において、前記二カ所の多型のうち少なくとも一つが前述のような変異型であれば、例えば、ゲフィニチブ等のEGFR−TKIに対する耐性が高い可能性があると判断できる。
【0027】
前記配列番号21の347番目の塩基(y)は、野生型がシトシン(c)であり、この場合、EGFRの790番目のアミノ酸はトレオニン(T)となる。変異型は、チミン(t)であり、この場合、EGFRの790番目のアミノ酸はメチオニン(M)となる。EGFR遺伝子において、この多型が前述のような変異型であれば、例えば、ゲフィニチブ等のEGFR−TKIに耐性を示す可能性があると判断できる。
【0028】
本発明において、「相同性を有する配列」は、特定の塩基配列に対して、例えば、80%以上の相同性を有する配列が好ましい。前記相同性は、例えば、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、100%である。すなわち、本発明において、相同性を有する配列は、前記特定の塩基配列からなる配列(相同性100%)でもよいし、前記特定の塩基配列について、1塩基以上が置換、欠失、挿入および/または付加された配列(例えば、相同性が80%以上100%未満)でもよい(以下、同様)。前述した前記多型が発生する部位、すなわち、センス鎖における部位およびそれに相補的なアンチセンス鎖における部位を、「検出部位」といい、前記検出部位を含み、前記多型検出用プローブがハイブリダイズ可能な領域を、「ハイブリダイズ領域または検出配列」という。前記検出部位が野生型である検出配列を、「野生型検出配列」、検出部位が変異型である検出配列を、「変異型検出配列」ともいう。
【0029】
本発明において、前記EGFR858多型(t/g)を検出するためのプローブを、「EGFR858用プローブ」、前記エクソン19多型を検出するためのプローブを、「エクソン19用プローブ」、前記EGFR790多型(c/t)を検出するためのプローブを、「EGFR790用プローブ」ともいう。また、前記検出配列において、前記変異型検出配列より、前記野生型検出配列に対して、より強くハイブリダイズするプローブを、「野生型プローブ」という。一方、前記検出配列において、前記野生型検出配列より、前記変異型検出配列に対して、より強くハイブリダイズするプローブを、「変異型プローブ」という。「ハイブリダイズする強さ」は、例えば、Tm値の関係、具体的には、プローブと野生型検出配列とのTm値および前記プローブと変異型検出配列とのTm値について、両Tm値の高低の関係により表すことができる。すなわち、前記野生型プローブは、例えば、野生型検出配列とのTm値が、変異型検出配列とのTm値より、高い値を示すプローブである。一方、前記変異型プローブは、変異型検出配列とのTm値が、野生型検出配列とのTm値より、高い値を示すプローブである。
【0030】
前記高い値を示すとは、例えば、各Tm値におけるピークの違いが検出可能であればよく、具体的には、前記各Tm値の差が3℃以上であることが好ましく、より好ましくは4℃以上であり、さらに好ましくは5℃以上であり、前記各Tm値の差の上限は何ら制限されず、例えば、30℃である。
【0031】
本発明において、EGFR遺伝子における増幅領域は、例えば、EGFR遺伝子のセンス鎖における領域でもよいし、それに対応するアンチセンス鎖における領域でもよいし、両方であってもよい。
【0032】
本発明において、塩基配列の末端とは、塩基配列の5’側および3’側の最も端の塩基を意味する。また、5’末端領域とは、塩基配列の5’末端から数塩基の領域であり、3’末端領域とは、塩基配列の3’末端から数塩基の領域である。前記数塩基とは、例えば、末端から1塩基〜10塩基である。本発明において、塩基配列の末端からZ番目の塩基(Zは正の整数)とは、末端の塩基を1番目とした順番である。
【0033】
<多型検出用プローブ>
(1)EGFR858用プローブ
本発明の多型検出用プローブは、前述のように、EGFR exon21 L858Rの遺伝子変異を検出することの可能なプローブであって、下記P1、P3およびP15〜P18の少なくとも1種の蛍光標識オリゴヌクレオチドからなることを特徴とする。
(P1)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号251〜261を含む11〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号251に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P3)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜261を含む5〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号257に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P15)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号259〜264を含む6〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、前記塩基より3’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜262を含む5〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、前記塩基より5’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P17)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号249〜264を含む16〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、前記塩基より5’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P18)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜264を含む8〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、前記塩基より3’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
【0034】
前記P1、P3およびP15〜P18のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、前記EGFR858多型(t/g)を検出するためのプローブ、すなわち、前記EGFR858用プローブである。これらのプローブは、例えば、配列番号1に示す塩基配列において、261番目の塩基の置換変異の有無を検出するためのプローブである。
【0035】
前記P1、P3およびP15〜P18の各オリゴヌクレオチドは、例えば、EGFR遺伝子のセンス鎖と相補的であり、前記センス鎖とのハイブリダイゼーションにより、前記多型を確認できる。前記P1のオリゴヌクレオチドにおいて、配列番号1の261番目の塩基(tまたはg)に相補的な(対応する)塩基は、アデニン(a)またはシトシン(c)である。前記P1のオリゴヌクレオチドにおいて、前記塩基がアデニン(a)であるオリゴヌクレオチドを、「P1−wt」ともいい、前記塩基がシトシン(c)であるオリゴヌクレオチドを、「P1−mt」ともいう。前記P1−wtは、EGFR858変異型の検出配列より、EGFR858野生型の検出配列に強くハイブリダイズするため、EGFR858用野生型プローブといえる。前記P1−mtは、EGFR858野生型の検出配列より、EGFR858変異型の検出配列に強くハイブリダイズするため、EGFR858用変異型プローブといえる。これらのオリゴヌクレオチドが、前記EGFR遺伝子の検出配列のうち、EGFR858野生型の検出配列またはEGFR858変異型の検出配列のいずれと強くハイブリダイズするかによって、EGFR遺伝子の多型を検出できる。
【0036】
前記P3のオリゴヌクレオチドは、例えば、EGFR遺伝子のセンス鎖と相補的であり、前記センス鎖とのハイブリダイゼーションにより、前記多型を確認できる。前記P3のオリゴヌクレオチドにおいて、配列番号1の261番目(tまたはg)に相補的な(対応する)塩基は、アデニン(a)またはシトシン(c)である。前記P3のオリゴヌクレオチドにおいて、前記塩基がアデニン(a)であるオリゴヌクレオチドを、「P3−wt」ともいい、前記塩基がシトシン(c)であるオリゴヌクレオチドを、「P3−mt」ともいう。前記P3−wtは、EGFR858変異型の検出配列より、EGFR858野生型の検出配列に強くハイブリダイズするため、EGFR858用野生型プローブといえる。前記P3−mtは、EGFR858野生型の検出配列より、EGFR858変異型の検出配列に強くハイブリダイズするため、EGFR858用変異型プローブといえる。これらのオリゴヌクレオチドが、前記EGFR遺伝子の検出配列のうち、EGFR858野生型の検出配列またはEGFR858変異型の検出配列のいずれと強くハイブリダイズするかによって、EGFR遺伝子の多型を検出できる。
【0037】
前記P1のオリゴヌクレオチド(3T-EGFR-858-R2)は、前述のように、11〜50塩基長であり、好ましくは、11〜40塩基長であり、より好ましくは、11〜30塩基長であり、さらに好ましくは、12〜20塩基長である。前記P3のオリゴヌクレオチド(3T-EGFR-858-R1)は、前述のように、5〜50塩基長であり、好ましくは、10〜40塩基長であり、より好ましくは、10〜30塩基長であり、さらに好ましくは、12〜20塩基長である。
【0038】
前記各オリゴヌクレオチドにおいて、前記標識物質により標識化される部位は、特に制限されず、例えば、5’末端領域または3’末端領域であることが好ましく、より好ましくは5’末端または3’末端である。また、後述するように、前記オリゴヌクレオチドにおいて、前記標識物質により標識化される塩基は、例えば、シトシン(c)またはグアニン(g)であることが好ましい。前記標識物質は、例えば、塩基を直接標識化してもよいし、前記塩基を含むヌクレオチド残基のいずれかの部位を標識することによって、前記塩基を間接的に標識化してもよい。
【0039】
前記P1のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号251に相補的な(対応する)塩基を、3’末端から数えて1〜3番目の位置に有することが好ましい。前記オリゴヌクレオチドにおける「塩基番号251に相補的な(対応する)塩基」とは、前記オリゴヌクレオチドと配列番号1の塩基配列とをアライメントした際に、配列番号1の塩基配列における251番目の塩基(g)に相補的な塩基(c)を意味する。具体的に、塩基番号251に相補的な塩基は、P1のオリゴヌクレオチドにおいて、cで表わされる。
【0040】
前記P1のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号251に相補的な塩基を3’末端に有することが好ましい。
【0041】
前記P1−mtは、例えば、配列番号7に示されるオリゴヌクレオチド、前記P1−wtは、例えば、配列番号8に示されるオリゴヌクレオチドがあげられる。
5'-ttggcccgcccaaaatc-3' (配列番号7)(3T-EGFR-858-R2)
5'-ttggccagcccaaaatc-3' (配列番号8)
【0042】
前記P3のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号257に相補的な(対応する)塩基を3’末端から数えて1〜3番目の位置に有することが好ましい。前記オリゴヌクレオチドにおける「塩基番号257に相補的な(対応する)塩基」とは、前記オリゴヌクレオチドと配列番号1の塩基配列とをアライメントした際に、配列番号1の塩基配列における257番目の塩基(g)に相補的な塩基(c)を意味する。具体的に、塩基番号257に相補的な塩基は、P3のオリゴヌクレオチドにおいて、cで表わされる。
【0043】
前記P3−wtは、例えば、配列番号12〜14に示されるオリゴヌクレオチドがあげられ、前記P3−mtは、例えば、配列番号9〜11に示されるオリゴヌクレオチドがあげられる。
5'-cagtttggccagccc-3' (配列番号12)
5'-ctgtttggccagccc-3' (配列番号13)
5'-ccgtttggccagccc-3' (配列番号14)
5'-cagtttggcccgccc-3' (配列番号9)(3T-EGFR-858-R1)
5'-ctgtttggcccgccc-3' (配列番号10)
5'-ccgtttggcccgccc-3' (配列番号11)
【0044】
前記P15のオリゴヌクレオチドは、例えば、下記P15-1〜P15-5のオリゴヌクレオチドがあげられる。
(P15-1)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号235〜264を含む30〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号235に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P15-2)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号239〜264を含む26〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号239に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P15-3)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号244〜264を含む21〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号244に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P15-4)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜264を含む7〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号258に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P15-5)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号259〜264を含む6〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号259に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
【0045】
前記P16のオリゴヌクレオチドは、例えば、下記P16-1〜P16-10のオリゴヌクレオチドがあげられる。
(P16-1)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜263を含む6〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号263に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16-2)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜262を含む5〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号262に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16-3)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜271を含む14〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号271に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16-4)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜274を含む17〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号274に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16-5)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜275を含む18〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号275に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16-6)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜276を含む19〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号276に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16-7)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜278を含む21〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号278に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16-8)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜280を含む23〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号280に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16-9)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜281を含む24〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号281に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16-10)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜284を含む27〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号284に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
【0046】
前記P17のオリゴヌクレオチドは、例えば、下記P17-1〜P17-4のオリゴヌクレオチドがあげられる。
(P17-1)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号236〜264を含む29〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、塩基番号236に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P17-2)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号241〜264を含む24〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、塩基番号241に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P17-3)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号247〜264を含む18〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、塩基番号247に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P17-4)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号249〜264を含む16〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、塩基番号249に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
【0047】
前記P18のオリゴヌクレオチドは、例えば、下記P18-1〜P18-5のオリゴヌクレオチドがあげられる。
(P18-1)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜264を含む8〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、塩基番号264に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P18-2)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜265を含む9〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、塩基番号265に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P18-3)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜269を含む13〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、塩基番号269に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P18-4)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜272を含む16〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、塩基番号272に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
(P18-5)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜279を含む23〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、塩基番号279に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
【0048】
本発明のEGFR858用プローブは、例えば、プローブの両端の塩基がシトシンであり、前記両シトシンが蛍光標識されているプローブでもよい。このようなプローブは、例えば、下記P19の蛍光標識オリゴヌクレオチドがあげられる。
(P19)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜274を含む18〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号257に対応する塩基および塩基番号274に対応する塩基がシトシンであり、前記両シトシンが蛍光標識で標識されているオリゴヌクレオチド
【0049】
前記P15〜P19のオリゴヌクレオチドは、特に示さない限り、例えば、前記P1およびP3の各オリゴヌクレオチドに関する説明等を援用できる。例えば、各オリゴヌクレオチドにおける標識化部位は、前述のようにシトシン残基が好ましく、前記P15、P16およびP19は、例えば、配列番号1におけるグアニンに対応するシトシン残基が好ましく、前記P17およびP18は、例えば、配列番号1におけるシトシン残基が好ましい。
【0050】
P15のオリゴヌクレオチドの塩基長の下限は6塩基長であり、好ましくは16塩基長である。P16のオリゴヌクレオチドの塩基長の下限は5塩基長であり、好ましくは、6塩基長であり、さらに好ましくは18塩基長である。P17のオリゴヌクレオチドの塩基長の下限は16塩基長であり、好ましくは20塩基長である。P18のオリゴヌクレオチドの塩基長の下限は8塩基長であり、好ましくは20塩基長である。前記P15〜P19の各オリゴヌクレオチドの塩基長の上限は50塩基長であり、好ましくは40塩基長であり、さらに好ましくは30塩基長である。
【0051】
前記P15〜P19のオリゴヌクレオチドについて、以下に、それぞれの配列の具体例をあげる。下記配列において、目的の多型部位に対応する塩基は、例えば、野生型でも変異型でもよい。具体的に、前記P15、P16およびP19は、例えば、配列において、前記塩基をm(aまたはc)で表わすことができ、前記P17およびP18は、例えば、配列において、前記塩基をk(tまたはg)で表わすことができる。なお、本発明は、これらの配列には制限されない。
【0052】
P15-1(配列番号72)
5'-gccCgcccaaaatctgtgatcttgacatgc-3' (3T-EGFR-858-R4)
P15-2(配列番号73)
5'-gccCgcccaaaatctgtgatcttgac-3' (3T-EGFR-858-R5)
P15-3(配列番号74)
5'-tggccCgcccaaaatctgtgatc-3' (3T-EGFR-858-R6)
P15-4(配列番号75)
5'-agcagtttggccCgcc-3' (3T-EGFR-858-R7)
P15-5(配列番号76)
5'-acccagcagtttggccCgc-3' (3T-EGFR-858-R8)
【0053】
P16-1(配列番号77)
5'-ccCgcccaaaatctgtga-3' (3T-EGFR-858-R9)
P16-2(配列番号78)
5'-cCgcccaaaatctgtgat-3' (3T-EGFR-858-R10)
P16-3(配列番号79)
5'-cagtttggccCgcccaaaatct-3' (3T-EGFR-858-R11)
P16-4(配列番号80)
5'-cagcagtttggccCgcccaaaa-3' (3T-EGFR-858-R12)
P16-5(配列番号81)
5'-ccagcagtttggccCgcccaaaa-3' (3T-EGFR-858-R13)
P16-6(配列番号82)
5'-cccagcagtttggccCgcccaaaa-3' (3T-EGFR-858-R14)
P16-7(配列番号83)
5'-cacccagcagtttggccCgcccaa-3' (3T-EGFR-858-R15)
P16-8(配列番号84)
5'-cgcacccagcagtttggccCgccc-3' (3T-EGFR-858-R16)
P16-9(配列番号85)
5'-ccgcacccagcagtttggccCgcc-3' (3T-EGFR-858-R17)
P16-10(配列番号86)
5'-cttccgcacccagcagtttggccCgcc-3' (3T-EGFR-858-R18)
【0054】
P17-1(配列番号89)
5'-catgtcaagatcacagattttgggcGggc-3' (5T-EGFR-858-F1)
P17-2(配列番号90)
5'-caagatcacagattttgggcGggc-3' (5T-EGFR-858-F2)
P17-3(配列番号91)
5'-cacagattttgggcGggccaaa-3' (5T-EGFR-858-F3)
P17-4(配列番号92)
5'-cagattttgggcGggccaaa-3' (5T-EGFR-858-F4)
【0055】
P18-1(配列番号94)
5'-atcacagattttgggcGggc-3' (3T-EGFR-858-F6)
P18-2(配列番号95)
5'-atcacagattttgggcGggcc-3' (3T-EGFR-858-F7)
P18-3(配列番号96)
5'-attttgggcGggccaaac-3' (3T-EGFR-858-F8)
P18-4(配列番号97)
5'-attttgggcGggccaaacTgc-3' (3T-EGFR-858-F9)
P18-5(配列番号98)
5'-ggcGggccaaacTgctgggtgc-3' (3T-EGFR-858-F10)
【0056】
P19-1(配列番号88)
5'-cagcagtttggccCgccc-3' (35T-EGFR-858-R21)
【0057】
(2)エクソン19用プローブ
本発明のエクソン19用プローブは、前述のように、EGFR exon19 deletionの遺伝子変異を検出することの可能なプローブであって、下記P5〜P7から選択される少なくとも1種の蛍光標識オリゴヌクレオチドからなることを特徴とする。
(P5)配列番号2に示す塩基配列において、塩基番号104〜112を含む9〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号112に相同的な塩基がチミンであり、塩基番号104に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P6)配列番号2に示す塩基配列において、塩基番号104〜119を含む16〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号119の塩基がG以外の塩基に置換されており、塩基番号104に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P7)配列番号3に示す塩基配列において、塩基番号136〜145を含む10〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号145に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
【0058】
前記P5〜P7のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、前記エクソン19多型を検出するためのプローブ、すなわち、前記エクソン19用プローブである。
【0059】
前記P5〜P7のオリゴヌクレオチドは、例えば、EGFR遺伝子のアンチセンス鎖と相補的であり、前記アンチセンス鎖とのハイブリダイゼーションにより、前記多型を確認できる。
【0060】
前記P5のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号2の104〜112番目の塩基が野生型である場合、前記塩基が欠失変異した変異型である場合よりも、前記検出配列に強くハイブリダイズする。したがって、前記P5のオリゴヌクレオチドが、前記EGFR遺伝子の検出配列のうち、前記野生型または変異型のいずれに対して、より強くハイブリダイズするかによって、EGFR遺伝子のエクソン19多型、すなわち、エクソン19野生型(前記表1の多型1)であるか、エクソン19変異型(前記表1の多型2〜17)であるかを検出できる。以下、前記P5のオリゴヌクレオチドからなるプローブを、エクソン19用野生型プローブという。
【0061】
前記P6のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号2の104〜119番目の塩基が野生型である場合、119番目の塩基を除いて、検出配列に強くハイブリダイズする。したがって、P6のオリゴヌクレオチドが、前記EGFR遺伝子の検出配列に対して、より強くハイブリダイズするか否かによって、EGFR遺伝子のエクソン19多型、すなわち、エクソン19野生型(前記表1の多型1)であるか、エクソン19変異型(前記表1の多型2〜15および17)であるかを検出できる。以下、前記P6のオリゴヌクレオチドからなるプローブを、エクソン19用変異型(sub)プローブという。
【0062】
前記P7のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号2の137〜151番目の塩基が欠失変異した変異型である場合、前記塩基が欠失変異していない野生型である場合よりも、前記検出配列に強くハイブリダイズする。したがって、P7のオリゴヌクレオチドが、前記EGFR遺伝子の検出配列のうち、前記野生型または変異型のいずれに対して、より強くハイブリダイズするか否かによって、EGFR遺伝子のエクソン19多型、すなわち、エクソン19野生型(前記表1の多型1)であるか、エクソン19変異型(前記表1の多型18)であるかを検出できる。以下、P7のオリゴヌクレオチドからなるプローブを、エクソン19用変異型(del)プローブという。
【0063】
前記P5のオリゴヌクレオチド(5FL-EGFR-EX19-F2)は、前述のように、9〜50塩基長であり、好ましくは、20〜40塩基長であり、より好ましくは、25〜35塩基長であり、さらに好ましくは、10〜30塩基長である。前記P6のオリゴヌクレオチド(5T-EGFR-EX19-No19-F2-3)は、前述のように、9〜50塩基長であり、好ましくは、20〜40塩基長であり、より好ましくは、25〜35塩基長であり、さらに好ましくは、10〜30塩基長である。前記P7のオリゴヌクレオチド(3T-EGFR-EX19-No18-F1)は、前述のように、10〜50塩基長であり、好ましくは、10〜30塩基長であり、より好ましくは、12〜30塩基長であり、さらに好ましくは、15〜20塩基長である。
【0064】
前記各オリゴヌクレオチドにおいて、前記標識物質により標識化される部位は、特に制限されず、例えば、5’末端領域または3’末端領域であることが好ましく、より好ましくは5’末端または3’末端である。また、後述するように、前記オリゴヌクレオチドにおいて、前記標識物質により標識化される塩基は、例えば、シトシン(c)またはグアニン(g)であることが好ましい。前記標識物質は、例えば、塩基を直接標識化してもよいし、前記塩基を含むヌクレオチド残基のいずれかの部位を標識することによって、前記塩基を間接的に標識化してもよい。
【0065】
前記P5のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号104に相同的な塩基を5'末端から数えて1〜3番目の位置に有することが好ましく、前記P6のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号104に相同的な塩基を5'末端から数えて1〜3番目の位置に有することが好ましい。前記オリゴヌクレオチドにおける「塩基番号104に相同的な塩基」とは、配列番号2の塩基配列における104番目の塩基(c)に相同的な塩基(c)を意味する。具体的に、塩基番号104に相同的な塩基は、P5およびP6のオリゴヌクレオチドにおいて、cで表わされる。前記P7のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号145に相同的な塩基を3'末端から数えて1〜3番目の位置に有することが好ましい。前記オリゴヌクレオチドにおける「塩基番号145に相同的な塩基」とは、配列番号3の塩基配列における145番目の塩基(c)に相同的な塩基(c)を意味する。具体的に、塩基番号145に相同的な塩基は、P7のオリゴヌクレオチドにおいて、cで表わされる。
【0066】
前記P5のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号104に相同的な塩基を5'末端に有することが好ましく、前記P6のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号104に相同的な塩基を5'末端に有することが好ましく、前記P7のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号145に相同的な塩基を3'末端に有することが好ましい。
【0067】
前記P5のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号5に示されるオリゴヌクレオチドがあげられる。
5'-cccgtcgctatcaaggaattaagagaagc-3' (配列番号5)(5FL-EGFR-EX19-F2)
【0068】
前記P6のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号4に示されるオリゴヌクレオチドがあげられる。
5'-cccgtcgctatcaagtaattaagagaagcaaca-3'(配列番号4)(5T-EGFR-EX19-No19-F2-3)
【0069】
前記P7のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号6に示されるオリゴヌクレオチドがあげられる。
5'-agcaacaaaggaaatc-3' (配列番号6)(3T-EGFR-EX19-No18-F1)
【0070】
本発明において、前記P1、P3、P5〜P7およびP15〜P19のオリゴヌクレオチドは、前述のものには限定されず、それぞれ、例えば、下記(a)または(b)のオリゴヌクレオチドの意味も含む。
(a)前記P1、P3、P5〜P7およびP15〜P19のいずれかのオリゴヌクレオチドに相同性を有する配列を有し、前記P1、P3、P5〜P7およびP15〜P19の前記いずれかのオリゴヌクレオチドと同程度の作用(例えば、プローブとしての結合能)を示すオリゴヌクレオチド
(b)前記P1、P3、P5〜P7およびP15〜P19のいずれかのオリゴヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、前記P1、P3、P5〜P7およびP15〜P19の前記いずれかのオリゴヌクレオチドと同程度の作用(例えば、プローブとしての結合能)を示すオリゴヌクレオチド
【0071】
前記ハイブリダイズは、例えば、各種ハイブリダイゼーションアッセイにより検出できる。前記ハイブリダイゼーションアッセイおよびストリンジェントな条件は、例えば、Sambrookら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第3版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd Ed.)」〔(Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)〕等に記載されている方法および条件を採用できる。
【0072】
本発明において、前記P1、P3、P5〜P7およびP15〜P19のオリゴヌクレオチドは、前述のように、例示列挙した前記配列のいずれかに相同性を有する配列を有するオリゴヌクレオチドでもよい。前記相同性は、例えば、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、100%である。本発明のプローブは、例えば、前記オリゴヌクレオチドからなるプローブでもよいし、前記オリゴヌクレオチドを含むプローブでもよい。
【0073】
前記プローブは、例えば、天然核酸で構成されてよく、非天然核酸で構成されてよい。前記天然核酸は、例えば、DNAまたはRNAがあげられる。前記非天然核酸は、例えば、Bridged Nucleic Acid(BNA:LNA(Locked Nucleic Acid)ともいう)等の架橋化核酸、またはPNA(ペプチド核酸)等があげられる。前記プローブは、例えば、前記非天然核酸により構成されることで、検出対象配列に対してハイブリダイズする能力を向上できるため、例えば、プローブの配列を短く設計できる。前記LNAにより構成されるプローブと前記検出対象配列とのTm値の予測は、例えば、EXIQON社のホームページ(http://www.exiqon.com/oligo-tools)等で計算できる。
【0074】
前記蛍光標識オリゴヌクレオチドは、例えば、前記標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、且つ、前記標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少するかまたは増加するものがあげられる。また、前記蛍光標識オリゴヌクレオチドは、例えば、前記標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、前記標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少するものがあげられる。
【0075】
前記蛍光色素は、特に制限されず、例えば、蛍光団等の蛍光物質等があげられる。前記蛍光色素は、例えば、フルオレセイン、リン光体、ローダミン、ポリメチン色素誘導体等があげられ、市販の蛍光色素は、例えば、Pacific Blue(登録商標、モレキュラー・プローブ社製)、BODIPY FL(登録商標、モレキュラー・プローブ社製)、FluorePrime(商品名、アマシャムファルマシア社製)、Fluoredite(商品名、ミリポア社製)、FAM(登録商標、ABI社製)、Cy3およびCy5(商品名、アマシャムファルマシア社製)、TAMRA(登録商標、モレキュラー・プローブ社製)等があげられる。前記蛍光色素の検出条件は、特に制限されず、例えば、使用する蛍光色素の種類により適宜決定できるが、例えば、Pacific Blueは、検出波長450〜480nm、TAMRAは、検出波長585〜700nm、BODIPY FLは、検出波長515〜555nmで検出できる。このような蛍光標識オリゴヌクレオチドを使用すれば、例えば、シグナルとして蛍光を検出し、シグナル値として蛍光強度を測定することにより、蛍光強度の変動から、ハイブリダイズと解離とを容易に確認できる。
【0076】
多型検出用プローブには、標識が付されている標識化プローブであることが検出の効率性の観点から好ましい。標識化プローブにおける標識物質の具体例としては、例えば、蛍光色素および蛍光団が挙げられる。前記標識化プローブの具体例としては、例えば、蛍光色素で標識され、単独で蛍光を示し且つハイブリッド形成により蛍光が減少(例えば、消光)するプローブが好ましい。
【0077】
このような蛍光消光現象(Quenching phenomenon)を利用したプローブは、一般に、蛍光消光プローブと呼ばれる。中でも、前記プローブは、オリゴヌクレオチドの3’領域(例えば、3’末端)もしくは5’領域(例えば、5’末端)の塩基が蛍光色素で標識化されていることが好ましく、標識化される前記塩基は、シトシン(C)であることが好ましい。この場合、前記標識化プローブがハイブリダイズする検出目的配列において、前記標識化プローブの末端塩基Cと対をなす塩基もしくは前記対をなす塩基から1〜3塩基離れた塩基がグアニン(G)となるように、前記標識化プローブの塩基配列を設計することが好ましい。このようなプローブは、一般的にグアニン消光プローブと呼ばれ、いわゆるQProbe(登録商標)として知られている。このようなグアニン消光プローブが検出目的配列にハイブリダイズすると、蛍光色素で標識化された末端のCが、前記検出目的配列におけるGに近づくことによって、前記蛍光色素の発光が弱くなる(蛍光強度が減少する)という現象を示す。このようなプローブを使用すれば、シグナルの変動により、ハイブリダイズと解離とを容易に確認できる。また、前記標識物質は、例えば、通常、ヌクレオチドのリン酸基に結合できる。
【0078】
本発明のプローブは、例えば、3’末端にリン酸基が付加されてもよい。変異の有無を検出するDNA(標的DNA)は、PCR等の遺伝子増幅法によって調製することができ、この際、本発明のプローブを遺伝子増幅反応の反応液中に共存させることができる。このような場合に、プローブの3’末端にリン酸基を付加させておけば、プローブ自体が遺伝子増幅反応によって伸長することを十分に防止できる。また、3’末端に前述のような標識物質を付加することによっても、同様の効果が得られる。
【0079】
なお、QProbeを用いた検出方法以外にも、公知の検出様式を適用してもよい。このような検出様式は、Taq−man Probe法またはRFLP法などを挙げることができる。
【0080】
前記蛍光色素は、特に制限されず、例えば、フルオレセイン、リン光体、ローダミン、ポリメチン色素誘導体等があげられ、市販の蛍光色素は、例えば、BODIPY FL(商標、モレキュラー・プローブ社製)、FluorePrime(商品名、アマシャムファルマシア社製)、Fluoredite(商品名、ミリポア社製)、FAM(ABI社製)、Cy3およびCy5(アマシャムファルマシア社製)、TAMRA(モレキュラープローブ社製)等が挙げられる。複数のプローブに使用する蛍光色素の組み合わせは、例えば、異なる条件で検出できればよく、特に制限されず、例えば、Pacific Blue(検出波長450〜480nm)、TAMRA(検出波長585〜700nm)およびBODIPY FL(検出波長515〜555nm)の組み合わせ等が挙げられる。
【0081】
<多型検出方法>
本発明の多型検出方法は、EGFR遺伝子の多型を検出する方法であって、前記検出配列とハイブリダイズするプローブを使用することを特徴とする。
【0082】
なお、本発明の多型検出方法は、本発明の多型検出用プローブを使用することが特徴であって、その他の構成や条件等は、以下の記載に制限されない。本発明は、例えば、医療分野の他、診断および治療方法を除く分野におけるEGFR遺伝子の多型検出に適用できる。
【0083】
本発明の多型検出方法は、例えば、下記(A)工程および(B)工程を含む。
(A)前記多型を検出する被検核酸と本発明の多型検出用プローブとを含む反応系の温度を変化させ、前記被検核酸と前記多型検出用プローブとのハイブリッド形成体の融解状態を示すシグナル値を測定する工程
(B)前記温度変化に伴う前記シグナル値の変動から、前記被検核酸における前記多型を決定する工程
【0084】
前記(A)工程において、前記本発明の多型検出用プローブは、例えば、いずれか一種類を使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。使用する前記多型検出用プローブの種類は、例えば、検出目的の多型に応じて適宜決定できる。
【0085】
前記(A)工程において使用する前記多型検出用プローブは、少なくとも一種類が、本発明の多型検出用プローブであればよい。前記プローブの種類は、例えば、EGFR遺伝子における検出目的の多型に応じて、適宜決定できる。本発明においては、例えば、EGFR858多型のみを検出してもよいし、エクソン19多型のみを検出してもよいし、両方の多型を一つの反応系で検出することもできる。また、前記EGFR858多型およびエクソン19多型の少なくとも一方と、その他の多型とを、一つの反応系で検出することも可能である。前記その他の多型は、特に制限されず、例えば、EGFR遺伝子のEGFR790多型等があげられる。
【0086】
前記EGFR858多型のみを検出する場合、前記本発明の多型検出用プローブの中でも、前記EGFR858用プローブを使用することが好ましい。前記EGFR858用プローブは、例えば、EGFR858用野生型プローブでもよいし、EGFR858用変異型プローブでもよいし、両方を併用してもよい。
【0087】
前記エクソン19多型のみを検出する場合、前記本発明の多型検出用プローブの中でも、前記エクソン19用野生型プローブ、前記エクソン19用変異型(sub)プローブおよび前記エクソン19用変異型(del)プローブの少なくともいずれか一種類を使用することが好ましい。前記エクソン19用野生型プローブを使用することにより、例えば、エクソン19多型が、エクソン19野生型(前記多型1)か、エクソン19変異型(前記多型2〜多型17)かを検出でき、前記エクソン19用変異型(sub)プローブを使用することにより、例えば、エクソン19野生型(前記多型1)か、エクソン19変異型(前記多型2〜15、17)かを検出でき、前記エクソン19用変異型(del)プローブを使用することにより、例えば、エクソン19野生型(前記多型1)か、エクソン19変異型(前記多型18)かを検出できる。本発明において、前記エクソン19用野生型プローブ、前記エクソン19用変異型(sub)プローブおよび前記エクソン19用変異型(del)プローブのいずれを用いてもよいし、前記多型1か、前記多型2〜18かを判断できることから、2種類以上を併用してもよい。プローブの組み合わせは、特に制限されず、例えば、P5とP7との組み合わせが、多型1〜18の18種類を検出可能であり、P6とP7との組み合わせが、多型16を除く17種類を検出可能であり(P5は自己消光するが、P6は自己消光しない)、P5単独が、多型18を除く17種類を検出可能であり、P6単独が、多型16、18を除く16種類を検出可能であり(P5は自己消光するが、P6は自己消光しない)、P7単独が、多型18のみの1種類を検出可能であり、好ましい。
【0088】
本発明は、前記EGFR858用プローブと、前記エクソン19用プローブとを併用することが望ましい。本発明のプローブは、前述のように、優れた信頼性で多型を検出できるため、例えば、一つの反応液において、前記EGFR858用プローブと、前記エクソン19用プローブとを使用しても、前記EGFR858多型と、エクソン19多型とを、それぞれ特異的に検出可能である。前記エクソン19用プローブは、前述のように、前記エクソン19用野生型プローブと、前記エクソン19用変異型(sub)プローブおよび前記エクソン19用変異型(del)プローブとを併用することが好ましい。
【0089】
本発明は、例えば、さらに、前記EGFR790の多型を検出してもよく、前記EGFR858の多型および/またはエクソン19の多型と同時に検出することが好ましい。「同時に検出」とは、例えば、同じ一つの反応系を用いた検出の意味を含む。この場合、本発明は、前記両プローブ以外に、さらに、前記EGFR790用プローブを併用してもよい。
【0090】
前記EGFR790用プローブは、特に制限されず、例えば、下記(P14)のオリゴヌクレオチドからなるプローブがあげられる。
(P14)塩基長が14〜50塩基長であり、配列番号21に示す塩基配列において、334番目の塩基(g)を5’末端とするオリゴヌクレオチドに相補的な塩基配列又は前記相補的な配列に相同性を有する塩基配列からなり、347番目の塩基に対応する塩基がグアニンまたはアデニンであり、334番目に対応する塩基がシトシンであるオリゴヌクレオチド
【0091】
前記(P14)のオリゴヌクレオチドからなるプローブは、例えば、配列番号21に示す塩基配列において、347番目の塩基の置換変異の有無を検出するためのプローブである。前記(P14)のオリゴヌクレオチドは、例えば、EGFR遺伝子のセンス鎖と相補的であり、前記センス鎖とのハイブリダイゼーションにより、前記多型を確認できる。前記(P14)のオリゴヌクレオチドにおいて、配列番号21の347番目に対応する相補的な塩基は、rで表され、前記rは、グアニン(g)およびアデニン(a)である。rがグアニン(g)である前記オリゴヌクレオチドは、EGFR790変異型の検出配列より、EGFR790野生型の検出配列に強くハイブリダイズするため、EGFR790用野生型プローブといえる。rがアデニン(a)である前記オリゴヌクレオチドは、EGFR790野生型の検出配列より、EGFR790変異型の検出配列に強くハイブリダイズするため、EGFR790用変異型プローブといえる。これらのオリゴヌクレオチドが、前記EGFR遺伝子の検出配列のうち、EGFR790野生型の検出配列またはEGFR790変異型の検出配列のいずれと強くハイブリダイズするかによって、EGFR遺伝子の多型を検出できる。前記(P14)のオリゴヌクレオチドは、3’末端がシトシンとなる。
【0092】
前記(P14)のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号22に示されるオリゴヌクレオチドがあげられ、この塩基配列において、rは、前述の通りである。前記オリゴヌクレオチドの具体例としては、例えば、EGFR790用変異型プローブである、配列番号23に示されるオリゴヌクレオチド、およびEGFR790用野生型プローブである、配列番号24に示されるオリゴヌクレオチドがあげられる。
5'-tgagctgcrtgatgaggtgcac-3' (配列番号22)
5'-tgagctgcatgatgaggtgcac-3' (配列番号23)(3T-EGFR-T790M-mt-R3)
5'-tgagctgcgtgatgaggtgcac-3' (配列番号24)
【0093】
本発明において、前記P14のオリゴヌクレオチドは、前述のように、例示列挙した前記配列のいずれかに相同性を有する配列を有するオリゴヌクレオチドでもよい。前記相同性は、例えば、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、100%である。
【0094】
前記(A)工程において、前記多型検出用プローブを二種類以上併用する場合、例えば、各プローブが、異なる標識物質を有する標識プローブであることが好ましい。前記異なる標識物質は、例えば、検出条件の異なる標識物質があげられる。
【0095】
本発明において、前記被検核酸は、一本鎖核酸でもよいし、二本鎖核酸でもよい。前記被検核酸が前記二本鎖核酸の場合、例えば、後述するように、前記(A)工程において、前記反応系を加熱して、二本鎖の前記被検核酸を解離させる工程を含むことが好ましい。前記二本鎖核酸を一本鎖核酸に解離することによって、例えば、本発明の多型検出用プローブと前記一本鎖核酸とがハイブリダイズしやすくなる。
【0096】
本発明において、前記被検核酸は、例えば、試料中に元来含まれる核酸でもよいし、検出精度を向上できることから、前記核酸を鋳型核酸として、核酸増幅法により増幅させた増幅産物でもよい。前記増幅産物は、例えば、前記試料中のDNAを鋳型とした増幅産物でもよい。また、前記被検核酸は、例えば、前記試料中のトータルRNA、mRNA等のRNAからRT−PCR(Reverse Transcription PCR)により合成したcDNAでもよいし、前記cDNAを鋳型とした増幅産物でもよい。前記増幅産物は、例えば、前記検出配列を含む領域の増幅産物であることが好ましい。前記検出配列は、前記検出部位として、例えば、前記EGFR858多型の検出部位のみを含んでもよいし、前記エクソン19多型の検出部位のみを含んでもよい。また、前記検出部位として、前記EGFR858多型と前記エクソン19多型とを含んでもよい。また、前記検出部位として、さらに、前述のEGFR790多型を含んでもよい。
【0097】
本発明の多型検出方法は、例えば、前記被検核酸が前記増幅産物の場合、例えば、さらに、前記鋳型核酸から前記増幅産物を生成する工程を含んでもよい。前記増幅産物の生成工程は、例えば、前記(A)工程に先立って行ってもよいし、前記(A)工程において、行ってもよい。
【0098】
前記被検核酸が前記増幅産物の場合、前記(A)工程において、例えば、予め調製した増幅産物を用いて、本発明の多型検出用プローブと前記増幅産物とを含む反応系を準備してもよいし、本発明の多型検出用プローブの存在下、前記反応系において、前記鋳型核酸から前記増幅産物を生成し、前記多型検出用プローブと前記増幅産物とを含む反応系を準備してもよい。
【0099】
前記核酸の増幅法は、特に制限されず、例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)法、TMA(Transcription−Mediated Amplification)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法等があげられ、中でも、PCR法が好ましい。なお、前記増幅法の条件は、特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。
【0100】
前記鋳型核酸からの前記増幅産物の生成には、例えば、EGFR遺伝子における検出目的の多型を含む配列を増幅することの可能なプライマーを使用することが好ましい。
【0101】
前記プライマーによる増幅領域は、特に制限されず、検出目的の多型に応じて適宜設定できる。すなわち、検出目的の多型が前記EGFR858多型の場合、前記増幅領域は、例えば、前記EGFR858多型の検出部位を含む領域、すなわち、配列番号1の塩基配列において261番目の塩基を含む領域が好ましい。具体的には、EGFR遺伝子の配列番号1に示す塩基配列におけるP1、P3およびP15〜P19の少なくとも一つのオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列を含む領域が好ましい。また、検出目的の多型が前記エクソン19多型の場合、前記増幅領域は、例えば、前記エクソン19多型の検出部位を含む領域、すなわち、配列番号2の塩基配列において112〜151番目の塩基を含む領域が好ましい。具体的には、配列番号2に示す塩基配列におけるP5〜P6のオリゴヌクレオチドおよび配列番号3に示す塩基配列におけるP7のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つが、ハイブリダイズする配列を含む領域が好ましい。また、検出目的の多型が前記EGFR858多型および前記エクソン19多型である場合、前記増幅領域は、例えば、前記EGFR858多型の検出部位を含む領域と前記エクソン19多型の検出部位を含む領域との二領域でもよい。前記増幅領域は、さらに、例えば、前記EGFR790多型の検出部位を含む領域を含んでもよい。
【0102】
なお、前記プライマーの配列は、特に制限されず、例えば、前記検出部位を含む検出配列を増幅できればよく、前記検出配列およびその周辺配列等に応じて、従来公知の方法により適宜設定できる。前記プライマーの長さは、特に制限されず、一般的な長さに設定でき、例えば、10〜50塩基長があげられる。
【0103】
前記プライマーは、例えば、センス鎖を増幅するフォワードプライマー(以下、「Fプライマー」ともいう)およびアンチセンス鎖を増幅するリバースプライマー(以下、「Rプライマー」ともいう)のいずれか一方を使用できるが、両者を一対とするプライマーセットを使用することが好ましい。前記プライマーの一例として、以下に、本発明のプライマーを説明する。
【0104】
EGFRexon21 L858Rの遺伝子変異を検出するためのプライマーは、例えば、EGFR遺伝子の配列番号1に示す塩基配列におけるP1、P3およびP15〜P19の少なくとも一つのオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列を含む領域を増幅するためのプライマーがあげられ、具体例として、下記P8〜P10から選択される多型検出用プライマーがあげられる。
(P8)233番目の塩基Cを3’末端とし配列番号1に相同的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P9)284番目の塩基Gに相補的な塩基Cを3’末端とし配列番号1に相補的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P10)290番目の塩基Gに相補的な塩基Cを3’末端とし配列番号1に相補的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
【0105】
前記P8のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号15に記載のオリゴヌクレオチドがあげられ、前記P9のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号17記載のオリゴヌクレオチドがあげられ、前記P10のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号16記載のオリゴヌクレオチドがあげられる。
5'-aggaacgtactggtgaaaacaccgc-3' (配列番号15)(EGFR-L858R-F2)
5'-ttactttgcctccttctgcatggtattc-3' (配列番号16)(EGFR-L858R-R2)
5'-gcctccttctgcatggtattctttctc-3' (配列番号17)(EGFR-L858R-R1)
【0106】
また、EGFRexon19 deletionの遺伝子変異を検出するためのプライマーは、例えば、EGFR遺伝子の配列番号2に示す塩基配列におけるP5およびP6の少なくとも一方のオリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズする配列を含む領域、または、配列番号3に示す塩基配列におけるP7のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列を含む領域を増幅するためのプライマーがあげられ、具体例として、例えば、下記P11〜P13から選択される多型検出用プライマーがあげられる。
(P11)95番目の塩基Gを3'末端とし配列番号2に相同的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P12)73番目の塩基Cを3'末端とし配列番号2に相同的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P13)155番目の塩基Gに相補的な塩基Cを3'末端とし配列番号2に相補的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
【0107】
前記P11のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号18に記載のオリゴヌクレオチドがあげられ、前記P12のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号19記載のオリゴヌクレオチドがあげられ、前記P13のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号20記載のオリゴヌクレオチドがあげられる。
5'-gatcccagaaggtgagaaag-3' (配列番号18)(EGFR-EX19-F1)
5'-tctctctgtcatagggactc-3' (配列番号19)(EGFR-EX19-F2)
5'-gaaactcacatcgaggatttc-3' (配列番号20)(EGFR-EX19-R1)
【0108】
前記反応系において、前記プライマーの添加濃度は、特に制限されず、例えば、一種類のプライマーについて、例えば、0.1〜4μmol/Lであり、好ましくは、0.25〜1.5μmol/Lであり、特に好ましくは、0.5〜1μmol/Lである。また、FプライマーとRプライマーとを使用する場合、前記Fプライマー(F)とRプライマー(R)との添加割合(モル比F:R)は、特に制限されず、例えば、1:0.25〜1:4が好ましく、より好ましくは、1:0.5〜1:2である。
【0109】
前記(A)工程において、前記被検核酸に対する本発明の多型検出用プローブの添加割合(モル比)は、特に制限されず、検出シグナルを十分に確保できることから、1倍以下が好ましい。この際、前記被検核酸とは、例えば、野生型検出配列を含む核酸と変異型検出配列を含む核酸との合計でもよいし、野生型検出配列を含む増幅産物と変異型検出配列を含む増幅産物との合計でもよい。なお、被検核酸において、前記多型検出用プローブにより強くハイブリダイズする検出配列を含む核酸の割合は、通常、不明であるが、結果的に、前記多型検出用プローブの添加割合(モル比)は、より強くハイブリダイズする検出配列を含む核酸(前記検出配列を含む増幅産物)に対して20倍以下となることが好ましく、より好ましくは10倍以下、さらに、好ましくは5倍以下である。また、その下限は特に制限されず、例えば、0.001倍以上であり、好ましくは0.01倍以上であり、より好ましくは0.1倍以上である。前記被検核酸に対する本発明の多型検出用プローブの添加割合は、例えば、二本鎖核酸に対するモル比でもよいし、一本鎖核酸に対するモル比でもよい。
【0110】
前記反応系における本発明の多型検出用プローブの添加濃度は、特に制限されず、例えば、一種類の前記多型検出用プローブにつき、10〜1000nmol/Lの範囲となるように添加することが好ましく、より好ましくは20〜500nmol/Lである。
【0111】
本発明の多型検出方法を適用する試料は、特に制限されず、生体試料があげられる。前記生体試料の具体例は、例えば、全血、白血球細胞等の血球、骨髄、口腔粘膜等の口腔内細胞、爪や毛髪等の体細胞、生殖細胞、喀痰、羊水、パラフィン包埋組織、尿、胃液、胃洗浄液等があげられる。本発明において、前記試料の採取方法、前記試料からの被検核酸の調製方法等は、制限されず、従来公知の方法が採用できる。前記生体試料が全血の場合、前記反応系における前記全血の濃度は、例えば、0.01〜2体積%であり、好ましくは、0.05〜1.5体積%であり、より好ましくは、0.1〜1体積%である。また、前記生体試料が血清の場合、前記反応系における前記血清の濃度は、例えば、0.1〜20体積%であり、好ましくは、0.25〜15体積%であり、より好ましくは、0.5〜10体積%である。
【0112】
本発明の多型検出方法は、前述のような、いわゆるTm解析(融解曲線解析ともいう)に利用できる。ここで、Tm解析におけるTm値について説明する。例えば、二本鎖DNAを含む溶液を加熱していくと、260nmにおける吸光度が上昇する。これは、二本鎖DNAにおける両鎖間の水素結合が加熱によってほどけ、一本鎖DNAに解離(DNAの融解)することが原因である。そして、全ての二本鎖DNAが解離して一本鎖DNAになると、その吸光度は加熱開始時の吸光度(二本鎖DNAのみの吸光度)の約1.5倍程度を示し、これによって融解が完了したと判断できる。この現象に基づき、融解温度Tmとは、一般に、吸光度が、吸光度全上昇分の50%に達した時の温度と定義される。
【0113】
前記(A)工程において、前記被検核酸と前記多型検出用プローブとのハイブリッド形成体の融解状態を示すシグナルの測定は、前述したように、前記蛍光色素のシグナル測定を行うことが好ましい。前記標識プローブは、例えば、単独でシグナルを示し、且つハイブリッド形成によりシグナルを示さない標識プローブ、または、単独でシグナルを示さず、且つハイブリッド形成によりシグナルを示す標識プローブがあげられる。前者のようなプローブであれば、前記増幅産物とハイブリッド(二本鎖DNA)を形成している際にはシグナルを示さず、加熱により前記増幅産物から前記プローブが解離するとシグナルを示す。また、後者のプローブであれば、前記増幅産物とハイブリッド(二本鎖DNA)を形成することによってシグナルを示し、加熱により前記増幅産物から前記プローブが遊離するとシグナルが減少(消失)する。したがって、前記蛍光色素のシグナルを検出することによって、前記260nmにおける吸光度測定と同様に、ハイブリッド形成体の融解の進行ならびにTm値の決定等を行うことができる。前記蛍光色素のシグナル検出は、例えば、前記蛍光色素のシグナルに特有の条件で検出すればよく、前記条件は、例えば、励起波長、検出波長等があげられる。なお、前記標識プローブならびに前記蛍光色素については、前述のとおりである。
【0114】
次に、本発明の多型検出方法について、一例をあげて説明する。本例は、本発明の多型検出用プローブとして、蛍光色素で標識された標識プローブを使用し、前記多型検出用プローブの存在下、鋳型核酸からの増幅を行い、得られた増幅産物を、前記被検核酸とする例である。なお、本発明の多型検出方法は、本発明の多型検出用プローブを使用すること自体が特徴であり、その他の工程や条件については何ら制限されない。
【0115】
まず、前記生体試料からゲノムDNAを単離する。前記生体試料からのゲノムDNAの単離は、従来公知の方法によって行うことができる。具体例としては、例えば、市販のゲノムDNA単離キット(商品名GFX Genomic Blood DNA Purification kit;GEヘルスケアバイオサイエンス社製)等が使用できる。
【0116】
次に、単離したゲノムDNAを含む試料に標識プローブを添加して、反応液を調製する。前記標識プローブは、例えば、前述のように、QProbe(登録商標)が好ましい。
【0117】
前記標識プローブは、例えば、単離したゲノムDNAを含む試料に添加してもよいし、溶媒中でゲノムDNAと混合してもよい。前記溶媒は、特に制限されず、例えば、Tris−HCl等の緩衝液、KCl、MgCl2、MgSO4、グリセロール等を含む溶媒、PCR用の反応液等の増幅用反応液等、従来公知のものがあげられる。
【0118】
なお、前記標識プローブの添加のタイミングは、特に制限されず、例えば、増幅反応の前、途中または後に添加できる。中でも、例えば、添加のために前記反応液を外部環境に露出する必要がなく、また、前記増幅反応とシグナル値の測定とを、連続的に行うことが可能であるため、前記増幅反応前に前記反応液に添加することが好ましい。この場合、前記標識プローブは、前述のように、その3’末端が標識物質またはリン酸基で修飾されていることが好ましい。
【0119】
続いて、単離したゲノムDNAを鋳型として、前記標識プローブの存在下、PCR等の増幅法によって、目的の多型が発生する検出部位を含む配列を増幅させる。以下、増幅法としてPCRを例にあげて、本発明を説明するが、これには制限されない。また、PCRの条件は、特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。
【0120】
具体的には、前記ゲノムDNA、前記標識プローブおよび前記プライマーを含む前記反応液を用いて、PCRを行う。この反応液の組成は、特に制限されず、当業者であれば適宜設定できるが、例えば、前記ゲノムDNA、前記標識プローブおよび前記プライマーの他に、DNAポリメラーゼ等のポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸、緩衝液、各種触媒等があげられる。前記反応液における前記標識プローブおよび前記プライマーの添加割合は、特に制限されず、例えば、それぞれ前述の範囲があげられる。
【0121】
前記DNAポリメラーゼは、特に制限されず、例えば、従来公知の耐熱性細菌由来のポリメラーゼが使用できる。具体例としては、テルムス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来DNAポリメラーゼ(米国特許第4,889,818号および同第5,079,352号)(商品名Taqポリメラーゼ)、テルムス・テルモフィラス(Thermus thermophilus)由来DNAポリメラーゼ(WO 91/09950)(rTth DNA polymerase)、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)由来DNAポリメラーゼ(WO 92/9689)(Pfu DNA polymerase:Stratagenes社製)、テルモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来ポリメラーゼ(EP−A 455 430(商標Vent):New England Biolabs社製)等が商業的に入手可能であり、中でも、テルムス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来の耐熱性ポリメラーゼが好ましい。
【0122】
前記反応液におけるDNAポリメラーゼの添加割合は、特に制限されず、例えば、1〜100U/mLであり、好ましくは、5〜50U/mLであり、より好ましくは、20〜40U/mLである。なお、DNAポリメラーゼの活性単位(U)は、一般に、活性化サケ精子DNAを鋳型プライマーとして、活性測定用反応液中、74℃で、30分間に10nmolの全ヌクレオチドを酸不溶性沈殿物に取り込む活性が1Uである。前記活性測定用反応液の組成は、例えば、25mmol/L TAPS buffer(pH9.3、25℃)、50mmol/L KCl、2mmol/L MgCl2、1mmol/Lメルカプトエタノール、200μmol/L dATP、200μmol/L dGTP、200μmol/L dTTP、100μmol/L「α−32P」dCTP、0.25mg/mL活性化サケ精子DNAである。
【0123】
前記ヌクレオシド三リン酸は、通常、dNTP(dATP、dCTP、dGTP、および、dTTPまたはdUTP)があげられる。前記反応液中のdNTPの添加割合は、特に制限されず、例えば、0.01〜1mmol/Lであり、好ましくは、0.05〜0.5mmol/Lであり、より好ましくは、0.1〜0.3mmol/Lである。
【0124】
前記緩衝液は、例えば、Tris−HCl、Tricine、MES、MOPS、HEPES、CAPS等があげられ、市販のPCR用緩衝液や市販のPCRキットの緩衝液等が使用できる。
【0125】
また、前記反応液は、さらに、ヘパリン、ベタイン、KCl、MgCl2、MgSO4、グリセロール等を含んでもよく、これらの添加割合は、例えば、PCR反応を阻害しない範囲で設定すればよい。
【0126】
前記反応液の全体積は、特に制限されず、例えば、サーマルサイクラー等の使用する機器等に応じて適宜設定できるが、通常、1〜500μLであり、好ましくは10〜100μLである。
【0127】
つぎに、PCRを行う。前記PCRのサイクル条件は特に制限されず、例えば、(1)被検核酸である二本鎖DNAの一本鎖DNAへの解離、(2)前記一本鎖DNAへのプライマーのアニーリング、(3)ポリメラーゼ反応による前記プライマーの伸長は、それぞれ下記表2の条件が例示できる。また、サイクル数も特に制限されず、下記(1)〜(3)の3ステップを1サイクルとして、例えば、30サイクル以上が好ましい。前記サイクル数の合計の上限は、特に制限されず、例えば、100サイクル以下、好ましくは70サイクル以下、さらに好ましくは、50サイクル以下である。各ステップの温度変化は、例えば、サーマルサイクラー等を用いて自動的に制御すればよい。
【0128】
【表2】
【0129】
前記反応液における標識プローブの添加割合は、特に制限されず、例えば、前記標識プローブを10〜1000nmol/Lの範囲となるように添加することが好ましく、より好ましくは20〜500nmol/Lである。また、例えば、十分なシグナル値を確保できることから、前記反応液において、前記被検核酸に対する前記標識プローブのモル比は、例えば、1倍以下が好ましい。前記被検核酸に対する前記標識プローブの添加割合は、例えば、二本鎖核酸に対するモル比でもよいし、一本鎖核酸に対するモル比でもよい。
【0130】
次に、得られた増幅産物(二本鎖DNA)の解離、および、解離により得られた一本鎖DNAと前記標識プローブとのハイブリダイズを行う。これは、例えば、前記標識プローブの存在下、前記反応液の温度を変化させることで行える。この場合、前述のように、予め前記標識プローブを添加した前記反応液について、増幅反応を行った後、前記反応液を温度変化させることが好ましい。
【0131】
前記解離工程における加熱温度は、二本鎖の前記増幅産物を一本鎖に解離できる温度であれば特に制限されず、例えば、85〜95℃である。加熱時間も特に制限されず、通常、1秒〜10分であり、好ましくは1秒〜5分である。
【0132】
解離した一本鎖DNAと前記標識プローブとのハイブリダイズは、例えば、前記解離工程の後、前記解離工程における加熱温度を降下させることによって行うことができる。温度条件は、例えば、40〜50℃である。また、前記温度での処理時間は、特に制限されず、例えば、1〜600秒である。
【0133】
そして、前記反応液の温度を変化させ、前記増幅産物と前記標識プローブとのハイブリッド形成体の融解状態を示すシグナル値を測定する。具体的には、例えば、前記反応液(前記一本鎖DNAと前記標識プローブとのハイブリッド形成体)を加熱し、温度上昇に伴うシグナル値の変動を測定する。前述のように、グアニン消光プローブ、すなわち、末端のシトシン(c)が標識化されたプローブを使用した場合、一本鎖DNAとのハイブリダイズした状態では、蛍光が減少(または消光)し、解離した状態では、蛍光を発する。したがって、例えば、蛍光が減少(または消光)しているハイブリッド形成体を徐々に加熱し、温度上昇に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
【0134】
前記蛍光強度の変動を測定する際の温度範囲は、特に制限されず、開始温度は、例えば、室温〜85℃であり、好ましくは、25〜70℃であり、終了温度は、例えば、40〜105℃である。また、温度の上昇速度は、特に制限されず、例えば、0.1〜20℃/秒であり、好ましくは、0.3〜5℃/秒である。
【0135】
次に、前記シグナル値の変動を解析してTm値を決定する。具体的には、得られた蛍光強度から、各温度における単位時間当たりの蛍光強度変化量(−d蛍光強度増加量/dt)を算出し、最も低い値を示す温度をTm値として決定できる。また、単位時間当たりの蛍光強度増加量(d蛍光強度増加量/t)の最も高い点をTm値として決定することもできる。なお、前記標識プローブとして、蛍光消光プローブではなく、単独でシグナルを示さず且つハイブリッド形成によりシグナルを示すプローブを使用した場合には、反対に、蛍光強度の減少量を測定すればよい。
【0136】
前記Tm値は、例えば、従来公知のMELTCALCソフトウエア(http://www.meltcalc.com/)等により算出でき、また、最近接塩基対法(Nearest Neighbor Method)によって決定することもできる。
【0137】
そして、前記Tm値から、EGFR遺伝子の多型が、前記野生型であるか、前記変異型であるかを決定する。前記Tm解析において、野生型プローブは、前記変異型検出配列より前記野生型検出配列に対して、強くハイブリダイズする。このため、前記野生型プローブと前記野生型検出配列とのTm値は、前記野生型プローブと前記変異型検出配列とのTm値より高い値を示す。一方、変異型プローブは、前記野生型検出配列より前記変異型検出配列に対して強くハイブリダイズする。このため、前記変異型プローブと前記変異型検出配列とのTm値は、前記変異型プローブと前記野生型検出配列とのTm値より高い値を示す。前記プローブが検出配列に対して強くハイブリダイズするTm値(TmH)と、そのTm値(TmH)より低い値でプローブが検出配列にハイブリダイズするTm値(TmL)とを決定しておくことにより、前記検出配列が、前記野生型多型と、前記変異型多型とのいずれを含むかを決定できる。また、前記野生型プローブが前記野生型検出配列に対して強くハイブリダイズするTm値(TmH)を決定しておくことで、前記野生型プローブを用いて前記Tm値(TmH)より低いTm値(TmL)が得られた場合は、前記変異型検出配列であることが決定できる。一方、前記変異型プローブが前記変異型検出配列に対して強くハイブリダイズするTm値(TmH)を決定しておくことで、前記変異型プローブを用いて前記Tm値(TmH)より低いTm値(TmL)が得られた場合は、野生型検出配列であることが決定できる。
【0138】
例えば、前記プローブとして、変異型プローブを使用した場合、既定した変異型検出配列とのTm値(TmH)を示せば、多型は変異型、その既定したTm値(TmH)より低いTm値(TmL)を示せば、多型は野生型と判断できる。一方、例えば、前記プローブとして、野生型プローブを使用した場合、既定した野生型検出配列とのTm値(TmH)を示せば、多型は野生型、その既定したTm値(TmH)より低いTm値(TmL)を示せば、多型は変異型と判断できる。
【0139】
また、本発明においては、前述のように、前記多型検出用プローブを含む反応系の温度を上昇させて(ハイブリッド形成体を加熱して)、温度上昇に伴うシグナル変動を測定する方法に代えて、例えば、ハイブリッド形成時におけるシグナル変動の測定を行ってもよい。すなわち、前記多型検出用プローブを含む反応系の温度を降下させてハイブリッド形成体を形成する際に、前記温度降下に伴うシグナル変動を測定してもよい。
【0140】
具体例として、単独でシグナルを示し、且つハイブリッド形成によりシグナルを示さない標識プローブ(例えば、グアニン消光プローブ)を使用した場合、一本鎖DNAと前記標識プローブとが解離している状態では蛍光を発しているが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、前記蛍光が減少(または消光)する。したがって、例えば、前記反応液の温度を徐々に降下させて、温度下降に伴う蛍光強度の減少を測定すればよい。他方、単独でシグナルを示さず、且つハイブリッド形成によりシグナルを示す標識プローブを使用した場合、前記一本鎖DNAと前記標識プローブとが解離している状態では蛍光を発していないが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、蛍光を発するようになる。したがって、例えば、前記反応液の温度を徐々に降下させて、温度下降に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
【0141】
本発明は、前述のように、例えば、一つの反応系において、二種類以上の多型検出用プローブを使用できる。複数の多型検出用プローブを使用する場合、各プローブの添加のタイミングは、例えば、前述と同様であり、前記(A)工程に先立って、同時に添加することが好ましく、増幅反応を行う場合、増幅反応前に、同時に添加することが好ましい。
【0142】
複数のプローブは、例えば、前記EGFR858用プローブと前記エクソン19用プローブとの組み合わせがあげられ、具体的には、例えば、前記EGFR858用プローブと前記エクソン19用野生型プローブとの組み合わせ、前記EGFR858用プローブと前記エクソン19用変異型(del)プローブとの組み合わせ、前記EGFR858用プローブと前記エクソン19用野生型プローブと前記エクソン19用変異型(del)プローブとの組み合わせが例示できる。本発明においては、例えば、さらに、前記EGFR790用プローブを組み合わせてもよい。
【0143】
前記EGFR858多型およびエクソン19多型の二つを、一反応系で検出する際、例えば、前記EGFR858用プローブと前記エクソン19用プローブとを併用できる。この際、前記EGFR858用プローブと前記エクソン19用プローブは、前述のように、それぞれ異なる標識物質を有することが好ましい。そして、前記反応液の温度を変化させ、各標識物質の測定条件に応じてシグナルを検出することによって、それぞれのTm値を決定できる。
【0144】
また、前記EGFR858多型または前記EGFR790多型の検出には、それぞれ、例えば、目的の多型について、前記野生型プローブおよび変異型プローブを併用することもできる。この場合、例えば、完全に相補なマッチのハイブリッドのTmを示したのが、いずれのプローブであるかによって、前記多型の種類を決定することもできる。例えば、異なる標識物質を有する変異型プローブと野生型プローブとを使用した場合、変異型プローブについて、完全に相補なマッチハイブリッドのTm値を示せば、多型は変異型と判断でき、野生型プローブについて、完全に相補なマッチハイブリッドのTm値を示せば、多型は野生型と判断できる。
【0145】
また、本発明の多型検出方法は、例えば、EGFR遺伝子の多型を検出するための本発明の多型検出用プローブと、その他の遺伝子の多型を検出するためのプローブとを併用できる。本発明の多型検出用プローブと、その他の遺伝子を検出するためのプローブとを併用することによって、一つの反応系において、EGFR遺伝子を含む二種類以上の遺伝子の多型を検出できる。EGFR遺伝子の前記その他の多型は、特に制限されず、例えば、前述のEGFR790多型があげられる。
【0146】
<判定方法>
本発明の判定方法は、本発明の多型検出用プローブを用いた多型検出方法を行うことが特徴であり、その他の工程および条件は、何ら制限されない。また、多型によるEGFR-TKIに対する耐性または薬効の判定は、例えば、公知の基準に基づいて行うことができる。
【0147】
<試薬キット>
本発明の試薬キットは、EGFR遺伝子における多型を検出するための試薬キットであって、前記本発明のプローブを含むことを特徴とする。本発明の試薬キットは、本発明のプローブを含んでいればよく、その他の構成は何ら制限されない。本発明の試薬キットに含まれる本発明のプローブは、一種類でもよいし二種類以上であってもよく、組み合わせは、例えば、前述の通りである。本発明の試薬キットは、例えば、さらに、前述した本発明のプライマーを含むことが好ましく、プライマーの組み合わせは、特に制限されず、前述の通りである。本発明の試薬キットは、例えば、さらに、核酸増幅反応に必要な成分、使用説明書等を含んでもよい。
【0148】
<プライマー試薬>
本発明のプライマー試薬において、前記本発明のプライマーは、いずれか一種類でもよいし、二種類以上を含んでもよい。前記プライマーの種類は、例えば、目的の増幅領域に応じて適宜決定できる。前記EGFR858多型を含む検出配列を増幅する場合は、前記P8、P9およびP10のオリゴヌクレオチドからなるプライマーのうち少なくとも一つを含むことが好ましく、特に、前述の配列番号15、配列番号16および配列番号17に示すオリゴヌクレオチドからなる群から選択される少なくとも一つのプライマーを含むことが好ましい。また、前記エクソン19多型を含む検出配列を増幅する場合は、前記P11、P12およびP13のオリゴヌクレオチドからなるプライマーのうち少なくとも一つを含むことが好ましく、特に、前述の配列番号18、配列番号19および配列番号20に示すオリゴヌクレオチドからなる群から選択される少なくとも一つのプライマーを含むことが好ましい。本発明のプライマー試薬は、例えば、前記プライマーとして、前記P8のオリゴヌクレオチドと、P9またはP10のオリゴヌクレオチドと、P11またはP12のオリゴヌクレオチドと、P13のオリゴヌクレオチドとを含むことにより、前記EGFR858多型を含む検出配列および前記エクソン19多型を含む検出配列を増幅できる。また、前記プライマーの組み合わせは、前述のとおりに例示できるが、これには制限されない。
【0149】
<多型検出用試薬>
本発明の多型検出用試薬は、EGFR遺伝子の多型を検出するための試薬であって、本発明の多型検出用プローブを含むことを特徴とする。本発明においては、前述の本発明の多型検出用プローブを含むことが特徴であって、その他の構成や条件は何ら制限されない。なお、本発明の多型検出用試薬は、例えば、EGFR遺伝子の多型の検出に使用するプローブキットともいえる。
【0150】
前記多型検出用試薬は、例えば、前記多型検出用プローブを一種類含んでもよいし、二種類以上含んでもよく、検出目的の多型に応じて適宜決定できる。前記EGFR858多型のみを検出する場合は、例えば、前記EGFR858用プローブを含むことが好ましい。前記EGFR858用プローブは、例えば、EGFR858用野生型プローブでもよいし、EGFR858用変異型プローブでもよいし、両方を含んでもよい。また、前記エクソン19多型のみを検出する場合は、例えば、前記エクソン19用プローブを含むことが好ましい。前記エクソン19用プローブは、例えば、エクソン19用野生型プローブ、エクソン19用変異型(sub)プローブ、エクソン19用変異型(del)プローブのいずれか1種類でもよいし、2種類でもよいし、全てを含んでもよい。前記プローブの組み合わせは、前述のとおりに例示できるが、これには制限されない。
【0151】
<多型検出用試薬キット>
本発明のEGFR遺伝子多型検出用試薬キットは、EGFR遺伝子の多型の検出に使用する試薬キットであり、本発明のプローブを含むことを特徴とする。本発明の試薬キットにおいて、本発明のプローブは、一種類でもよいし二種類以上であってもよい。後者の場合、二種類以上のプローブは、混合された状態で含まれてもよいし、別個の試薬として含まれていてもよい。また、二種類以上の本発明のプローブが混合された状態で本発明のプローブキットに含まれる場合や、別個の試薬として含まれているが、例えば、使用時に同じ反応系で、各プローブと各検出対象配列とのTm分析を行う場合、各プローブは、別個の蛍光物質で標識化されていることが好ましい。このように蛍光物質の種類を変えることで、同じ反応系であっても、それぞれのプローブについての検出が可能になる。前記蛍光物質は、例えば、検出波長が異なる物質であることが好ましい。
【0152】
また、EGFR遺伝子多型検出用試薬キットは上記多型部位を含む配列(プローブがハイブリダイズする領域)を増幅するためのプライマーセットを含むものであってもよい。
【実施例】
【0153】
本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。
【0154】
[実施例1]
野生型プラスミドと、変異型プラスミドとの共存下で、Tm解析を行い、EGFR遺伝子のEGFR858多型を検出した。
【0155】
前記野生型プラスミドおよび変異型プラスミドとして、EGFR858野生型プラスミド(L858WT)と、EGFR858変異型プラスミド(L858R)とを準備した。前記EGFR858野生型プラスミド(L858WT)は、EGFR遺伝子の部分配列として、配列番号1の112番目から411番目のオリゴヌクレオチドが挿入されており、配列番号1の261番目の塩基(k)は、チミン(t)である。前記EGFR858変異型プラスミド(L858R)は、EGFR遺伝子の部分配列として、配列番号1の112番目から411番目のオリゴヌクレオチドが挿入されており、配列番号1の261番目の塩基(k)は、グアニン(g)である。これらのプラスミドを、以下に示す所定の割合で混合し、3種類の試料を調製した。前記試料は、1μLあたり、プラスミド250コピーとした。
【0156】
【表3】
【0157】
下記表4のPCR反応液50μLについて、全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(商標)IS−5310、アークレイ社製)を用いて、PCRおよびTm解析を行った。前記PCRは、95℃で1分処理した後、95℃1秒および58℃15秒を1サイクルとして50サイクル繰り返し、さらに、95℃で1秒、40℃で60秒処理した。そして、続けて、前記反応液を、温度の上昇速度を1℃/3秒として、40℃から75℃に加熱していき、検出波長585〜700nmにおける、経時的な蛍光強度の変化を測定し、Tm解析を行った。
【0158】
【表4】
【0159】
前記EGFR858用プライマーの配列を以下に示す。
Fプライマー (配列番号15)(EGFR-L858R-F2)
5'-aggaacgtactggtgaaaacaccgc-3'
Rプライマー (配列番号16)(EGFR-L858R-R2)
5'-ttactttgcctccttctgcatggtattc-3'
【0160】
前記EGFR858用プローブとして、下記配列のEGFR858用変異型プローブを使用した。下記EGFR858用変異型プローブは、EGFR858変異型のEGFR遺伝子のセンス鎖における変異型プローブであり、前記配列において、下線部の塩基が、EGFR858変異型に相補的な塩基である。前記EGFR858用変異型プローブは、3’末端を、蛍光色素TAMRAで標識化した。
EGFR用変異型プローブ (配列番号7)(3T-EGFR-858-R2)
5'-ttggcccgcccaaaatc-(TAMRA)-3'
【0161】
これらの結果を図1に示す。図1は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図1において、(A)はL858WT 100%、(B)はL858R 5%、(C)はL858R 10%の結果である。横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。なお、L858WTとEGFR858変異型プローブとのTm値は、55℃付近、L858RとEGFR858変異型プローブとのTm値は、64℃付近である。
【0162】
図1(A)に示すように、L858WT 100%は、L858WTのTm値でのみピークが確認された。一方、図1(C)に示すように、10%の変異型プラスミドを含むL858R 10%は、L858WTのTm値およびL858RのTm値の両方で、ピークが確認された。また、図1(B)に示すように、変異型プラスミドの含有量を5%に低下させたL858R 5%についても、L858WTのTm値およびL858RのTm値の両方で、ピークが確認された。
【0163】
[実施例2]
本例では、野生型人工核酸および変異型人工核酸のそれぞれに対して、Tm解析を行い、EGFR遺伝子のEGFR858多型を検出した。
【0164】
下記配列に示す、配列番号1における241番目〜290番目に相同なEGFR858野生型人工核酸(EGFR-L858R(WT)-F)およびEGFR858変異型人工核酸(EGFR-L858R(MT)-F)を調製した。以下の2つの配列において、下線部が配列番号1における261番目の塩基に該当する。各人工核酸を5μ/Lに調整して、試料とした。
EGFR-L858R(WT)-F(配列番号32)
caagatcacagattttgggctggccaaactgctgggtgcggaagagaaag
EGFR-L858R(MT)-F(配列番号33)
caagatcacagattttgggcgggccaaactgctgggtgcggaagagaaag
【0165】
下記表5の反応液25μLについて、全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(商標)IS−5310、アークレイ社製)を用いて、Tm解析を行った。前記Tm解析は、95℃で1秒、40℃で60秒処理した。そして、続けて、前記反応液を、温度の上昇速度を1℃/3秒として、40℃から75℃に加熱していき、検出波長585〜700nmにおける、経時的な蛍光強度の変化を測定した。
【0166】
【表5】
【0167】
下記EGFR858用変異型プローブは、EGFR858変異型のEGFR遺伝子のセンス鎖における変異型プローブであり、前記配列において、下線部の塩基が、EGFR858変異型に相補的な塩基である。前記EGFR858用変異型プローブは、3’末端を、蛍光色素TAMRAで標識化した。
EGFR858用変異型プローブ(配列番号9)(3T-EGFR-858-R1)
5'-cagtttggcccgccc-(TAMRA)-3'
【0168】
これらの結果を図2に示す。図2は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図2において、(A)はEGFR-L858R(WT)-F、(B)はEGFR-L858R(MT)-Fの結果である。横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。なお、EGFR-L858R(WT)-FとEGFR858変異型プローブとのTm値は、54℃付近、EGFR-L858R(MT)-FLとEGFR858変異型プローブとのTm値は、66℃付近である。
【0169】
図2(A)に示すように、EGFR-L858R(WT)-Fは、EGFR-L858R(WT)-FのTm値でのみピークが確認され、図2(B)に示すように、EGFR-L858R(MT)-Fは、EGFR-L858R(MT)-FのTm値でのみピークが確認された。
【0170】
[実施例3]
本例では、野生型オリゴヌクレオチドおよび変異型オリゴヌクレオチドについてTm解析を行い、EGFR遺伝子のexon19多型を検出した。BODIPY FLの検出波長は、520−555nm、TAMRAの検出波長は、585−700nmとした。
【0171】
(1)オリゴヌクレオチド
前記野生型および変異型オリゴヌクレオチドとして、下記表6に示すオリゴヌクレオチド1〜18を準備した。これらのオリゴヌクレオチドは、EGFR遺伝子のセンス鎖に相補的な配列である。下記オリゴヌクレオチド1は、野生型オリゴヌクレオチドであり、前記exon19の多型1を含むセンス鎖の部分配列に相補的である。下記オリゴヌクレオチド2〜18は、変異型オリゴヌクレオチドであり、それぞれ、前記exon19の多型2〜18を含むセンス鎖の部分配列に相補的である。下記表6に、各オリゴヌクレオチドについて、配列番号2の塩基配列における対応領域を示す。なお、△に続く塩基配列の範囲は、欠失部位である。下記表6における1〜18の配列は、それぞれ、配列番号49〜66に示す。
【0172】
【表6】
【0173】
(2)Tm解析
下記表7の反応液25μLについて、全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(登録商標)IS−5310、アークレイ社製)を用いて、Tm解析を行った。前記Tm解析は、95℃で1秒、40℃で60秒処理した。そして、続けて、前記反応液を、温度の上昇速度を1℃/3秒として、40℃から75℃に加熱していき、各蛍光色素に応じた検出波長における、経時的な蛍光強度の変化を測定した。また、ネガティブコントロールとして、試料5μLに代えて、蒸留水5μLを添加した反応液25μLについて、同様に蛍光強度の変化を測定した。
【0174】
【表7】
【0175】
(実施例3−1)
前記オリゴヌクレオチド1〜18を5μmol/Lに調整した。そして、前記オリゴヌクレオチド1が単独である試料1s、前記オリゴヌクレオチド1と前記オリゴヌクレオチド2〜18とを体積比1:4で混合した試料2m〜18mを、前記反応液の試料として使用した。
【0176】
前記exon19用プローブとして、下記配列のプローブを使用した。前記プローブは、野生型オリゴヌクレオチド1と完全に相補的な配列であり、前記プローブと前記野生型オリゴヌクレオチド1とのTm値は、74℃付近である。
exon19用野生型プローブ(配列番号5)(5FL-EGFR-EX19-F2)
5'-(BODIPY FL)-cccgtcgctatcaaggaattaagagaagc-3'
【0177】
これらの結果を図9に示す。図9は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図9において、(A)〜(Q)は、順に、前記試料1s、2m〜17mについて、蛍光色素を検出した結果であり、(R)は、ネガティブコントロールの結果である。各グラフにおいて、横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。
【0178】
また、Tm解析の結果として、各試料について、ピークの数、各ピークのTm値および前記各ピークのTm値と前記野生型オリゴヌクレオチド1のTm値(74℃)との差(Δ℃)を、下記表8に示す。下記表8および図9に示すように、野生型オリゴヌクレオチド1のみを含む試料1sは、野生型オリゴヌクレオチド1のTm値(74℃)でのみピークが確認された。一方、野生型オリゴヌクレオチド1および変異型オリゴヌクレオチド2〜17を含む試料2m〜17mは、それぞれ、2つのTm値でピークが確認された。すなわち、前記試料2m〜17mは、野生型オリゴヌクレオチド1とexon19用野生型プローブとのTm値と、それより低い温度との両方で、ピークが確認された。また、変異型オリゴヌクレオチド18を含む試料18については、野生型オリゴヌクレオチド1のTm値(74℃)でのみピークが確認され、それ以外の温度では、ピークが確認できなかった。
【0179】
【表8】
【0180】
(実施例3−2)
前記オリゴヌクレオチド1〜18を5μmol/Lに調整した。そして、前記オリゴヌクレオチド1が単独である試料1s、前記オリゴヌクレオチド1と前記オリゴヌクレオチド2〜18とを体積比1:4で混合した試料2m〜18mを、前記反応液の試料として使用した。
【0181】
前記exon19用プローブとして、下記配列のプローブを使用した。前記プローブは、変異型オリゴヌクレオチド18と完全に相補的な配列であり、前記プローブと前記変異型オリゴヌクレオチド18とのTm値は、58℃付近である。
exon19用変異型(del)プローブ(配列番号6)(3T-EGFR-EX19-No18-F1)
5'-agcaacaaaggaaatc-(TAMRA)-3'
【0182】
これらの結果を図10に示す。図10は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図10において、(A)〜(R)は、順に、前記試料1s、2m〜18mについて、蛍光色素を検出した結果である。各グラフにおいて、横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。
【0183】
また、Tm解析の結果として、各試料について、ピークの数、各ピークのTm値および前記各ピークのTm値と前記変異型オリゴヌクレオチド18のTm値(58℃)との差(Δ℃)を、下記表9に示す。下記表9および図10に示すように、変異型オリゴヌクレオチド18を含む試料18mは、変異型オリゴヌクレオチド18のTm値(58℃)でのみピークが確認された。一方、野生型オリゴヌクレオチドのみを含む試料1sは、ピークが検出されなかった。また、変異型オリゴヌクレオチド18以外のオリゴヌクレオチドを含む試料2m〜17mは、それぞれ、試料18mより低い温度でピークが確認された。
【0184】
【表9】
【0185】
(実施例3−3)
前記オリゴヌクレオチド1〜18を5μmol/Lに調整し、それぞれを単独で、前記PCR反応液の試料(1s〜18s)として使用した。
【0186】
前記exon19用プローブとして、下記配列のプローブを使用した。前記プローブは、配列番号1における塩基番号119の塩基がtであることを除いて、野生型オリゴヌクレオチド1と、相補的な配列であり、前記プローブと前記野生型オリゴヌクレオチド1とのTm値は、67℃付近である。
exon19用変異型(sub)プローブ(配列番号4)(5FL-EGFR-EX19-No19-F2-3)
5'-(BODIPY FL)-cccgtcgctatcaagtaattaagagaagcaaca-3'
【0187】
これらの結果を図11に示す。図11は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図11において、(A)〜(Q)は、順に、前記試料1s〜17sについて、蛍光色素を検出した結果であり、(R)は、ネガティブコントロールの結果である。各グラフにおいて、横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。
【0188】
Tm解析の結果として、各試料について、ピークの数、各ピークのTm値および前記各ピークのTm値と前記野生型オリゴヌクレオチド1のTm値(67℃)との差(Δ℃)を、下記表10に示す。下記表10および図11に示すように、野生型オリゴヌクレオチド1のみを含む試料1sは、野生型オリゴヌクレオチド1のTm値(67℃)でのみピークが確認された。一方、変異型オリゴヌクレオチド2〜15および17のみを含む試料2s〜15sおよび17sは、それぞれ、野生型オリゴヌクレオチド1のTm値より低い温度で、ピークが確認された。また、変異型オリゴヌクレオチド16または18のみを含む試料16sおよび18sについては、ピークが確認できなかった。
【0189】
【表10】
【0190】
[比較例3]
前記オリゴヌクレオチド1〜18を5μmol/Lに調整し、それぞれを単独で、前記反応液の試料1s〜18sとして使用した。
【0191】
前記exon19用プローブとして、下記配列のプローブを使用した。前記プローブは、野生型オリゴヌクレオチド1と強くハイブリダイズする配列であり、前記プローブと前記野生型オリゴヌクレオチド1とのTm値は、72℃付近である。
exon19用野生型プローブ (配列番号28)(5FL-EGFR-EX19-WT-F1)
5'-(BODIPY FL)-caaggaattaagagaagcaacatctccg-3'
【0192】
これらの結果を図12に示す。図12は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図12において、(A)〜(R)は、順に、前記試料1s〜18sについて、蛍光色素を検出した結果である。各グラフにおいて、横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。また、Tm解析の結果として、各試料について、最も大きなピークのTm値および前記ピークのTm値と前記野生型オリゴヌクレオチド1のTm値(72℃)との差(Δ℃)を、下記表11に示す。
【0193】
図12に示すように、試料1sは、野生型オリゴヌクレオチド1のみを含むにも関わらず、ピークに肩が見られるため、野生型オリゴヌクレオチドか変異型オリゴヌクレオチドかを判別することができなかった。また、変異型オリゴヌクレオチド2〜18のみを含む試料2s〜18sについても、複数のピークが確認された。さらに、試料2s〜18sは、下記表11に示すように、最も大きなピークを示すTm値が、前記野生型オリゴヌクレオチド1のTm値とほとんど差がみられなかった。
【0194】
【表11】
【0195】
[実施例4]
本例では、野生型プラスミドと、変異型プラスミドとの共存下で、Tm解析を行い、EGFR遺伝子のexon19多型を検出した。
【0196】
EGFR遺伝子の部分配列として、前記表6のオリゴヌクレオチドが挿入されたプラスミドを準備した。具体的には、前記野生型オリゴヌクレオチド1が挿入されたexon19野生型プラスミド(ex19WT)、前記変異型オリゴヌクレオチド2が挿入されたexon19変異型プラスミド2(ex19mt2)、前記変異型オリゴヌクレオチド4が挿入されたexon19変異型プラスミド4(ex19mt4)および変異型オリゴヌクレオチド6が挿入されたexon19変異型プラスミド6(ex19mt6)を準備した。これらのプラスミドを、下記表12に示す所定の割合で混合し、4種類の試料を調製した。前記試料は、1μLあたり、プラスミド250コピーとした。
【0197】
【表12】
【0198】
下記表13のPCR反応液50μLについて、全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(登録商標)IS−5310、アークレイ社製)を用いて、検出波長を、520〜555nmおよび585〜700nmとした以外は、前記実施例1と同様にして、PCRおよびTm解析を行った。
【0199】
【表13】
【0200】
前記exon19用プライマーの配列を以下に示す。また、前記exon19用プローブは、前記実施例3のexon19用野生型プローブおよびexon19用変異型(del)プローブを使用した。
Fプライマー (配列番号18)(EGFR-EX19-F1)
5'-gatcccagaaggtgagaaag-3'
Rプライマー (配列番号20)(EGFR-EX19-R1)
5'-gaaactcacatcgaggatttc-3'
exon19用野生型プローブ(配列番号5)(5FL-EGFR-EX19-F2)
5'-(BODIPY FL)-cccgtcgctatcaaggaattaagagaagc-3'
exon19用変異型(del)プローブ(配列番号6)(3T-EGFR-EX19-No18-F1)
5'-agcaacaaaggaaatc-(TAMRA)-3'
【0201】
これらの結果を図3に示す。図3は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図3において、(A)はex19WT 100%、(B)はex19mt2 5%、(C)はex19mt4 5%、(D)はex19mt6 5%の結果である。横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。なお、ex19WTとexon19用野生型プローブとのTm値は、68℃付近であり、ex19mt2、ex19mt4およびex19mt6とexon19用変異型(del)プローブとのTm値は、ex19WTとexon19用変異型(del)プローブとのTm値よりも低い温度であり、それぞれ、51℃、59℃、60℃である。
【0202】
図3(A)に示すように、ex19WT 100%は、ex19WTのTm値でのみピークが確認された。一方、図3(B)〜(D)に示すように、野生型プラスミドおよび変異型プラスミドを含む試料では、2つのTm値でピークが確認された。すなわち、図3(B)〜(D)に示すように、それぞれ、野生型ex19WTとexon19用野生型プローブとのTm値と、それよりも低い温度との両方で、ピークが確認された。このように、本実施例のFプライマー、Rプライマーおよびexon19用プローブを用いれば、野生型と変異型の多型とが混在する場合であっても、野生型と変異型とを区別して、exon19多型を検出可能であることがわかった。
【0203】
[実施例5]
本例では、野生型プラスミドと、変異型プラスミドとの共存下で、Tm解析を行い、EGFR遺伝子のEGFR858多型を検出した。Pacific Blueの検出波長は、445−480nm、BODIPY FLの検出波長は、520−555nm、TAMRAの検出波長は、585−700nmとした。
【0204】
(実施例5−1)
前記実施例1の3種類の試料(L858WT 100%、L858R 5%およびL858R 10%)を準備した。前記試料は、1μLあたり、プラスミド250コピーとした。
【0205】
下記表14のPCR反応液50μLについて、全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(登録商標)IS−5310、アークレイ社製)を用いて、PCRおよびTm解析を行った。前記PCRは、95℃で1分処理した後、95℃1秒および60℃30秒を1サイクルとして50サイクル繰り返し、さらに、95℃で1秒、40℃で60秒処理した。そして、続けて、前記反応液を、温度の上昇速度を1℃/3秒として、40℃から75℃に加熱していき、各プローブの蛍光色素に応じた検出波長における、経時的な蛍光強度の変化を測定し、Tm解析を行った。
【0206】
【表14】
【0207】
前記各FプライマーおよびRプライマーの配列を以下に示す。
(EGFR858用プライマー)
Fプライマー (配列番号15)(EGFR-L858R-F2)
5'-aggaacgtactggtgaaaacaccgc-3'
Rプライマー (配列番号17)(EGFR-L858R-R1)
5'-gcctccttctgcatggtattctttctc-3'
(exon19用プライマー)
Fプライマー (配列番号19)(EGFR-EX19-F2)
5'-tctctctgtcatagggactc-3'
Rプライマー (配列番号20)(EGFR-EX19-R1)
5'-gaaactcacatcgaggatttc-3'
(EGFR790用プライマー)
Fプライマー (配列番号25)(EGFR-T790M-F2)
5'-tccaggaagcctacgtgatggccag-3'
Rプライマー (配列番号26)(EGFR-T790M-R1)
5'-ccaatattgtctttgtgttcccggacatagtc-3'
【0208】
前記EGFR858用プローブとして、TAMRAに代えて、Pacific Blueで標識化した前記実施例1と同じ配列のEGFR858用変異型プローブ(配列番号7)を用いた。前記exon19用プローブとして、前記実施例3のexon19用野生型プローブ(配列番号5)を用いた。また、前記EGFR790用プローブとして、下記配列のプローブを使用した。下記EGFR790用変異型プローブは、EGFR790変異型のEGFR遺伝子のセンス鎖における検出配列に強くハイブリダイズするプローブであり、前記配列において、下線部の塩基が、EGFR790変異型に相補的な塩基である。前記EGFR790用変異型プローブは、3’末端を、蛍光色素TAMRAで標識化した。
EGFR858用変異型プローブ (配列番号7)(3PB-EGFR-858-R2)
5'-ttggcccgcccaaaatc-(Pacific Blue)-3'
exon19用野生型プローブ (配列番号5)(5FL-EGFR-EX19-F2)
5'-(BODIPY FL)-cccgtcgctatcaaggaattaagagaagc-3'
EGFR790用変異型プローブ (配列番号23)(3T-EGFR-790M-mt-R3)
5'-tgagctgcatgatgaggtgcac-(TAMRA)-3'
【0209】
これらの結果を図4に示す。図4は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図4において、(A)はL858WT 100%、(B)はL858R 5%、(C)はL858R 10%の結果であり、それぞれ、EGFR858用変異型プローブのPacific Blueを検出した結果である。横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。なお、L858WTとEGFR858変異型プローブとのTm値は、51℃付近であり、L858RとEGFR858変異型プローブとのTm値は、61℃付近である。
【0210】
図4(A)に示すように、L858WT 100%は、L858WTのTm値でのみピークが確認された。一方、図4(C)に示すように、10%の変異型プラスミドを含むL858R 10%は、L858WTのTm値およびL858RのTm値の両方で、ピークが確認された。また、図4(B)に示すように、変異型プラスミドの含有量を5%に低下させたL858R 5%についても、L858WTのTm値およびL858RのTm値の両方で、ピークが確認された。
【0211】
(実施例5−2)
本例では、前記試料として、下記3種類の試料を用い、検出波長を525〜555nmとした以外は、前記実施例5−1と同様にして、PCRおよびTm解析を行い、EGFR遺伝子のexon19多型を検出した。
【0212】
前記試料は、前記実施例4の前記exon19野生型プラスミド(ex19WT)およびexon19変異型プラスミド6(ex19mt6)を、以下に示す所定の割合で混合して調製した。前記試料は、1μLあたり、プラスミド250コピーとした。
【0213】
【表15】
【0214】
これらの結果を図5に示す。図5は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図5において、(A)はex19WT 100%、(B)はex19mt6 5%、(C)はex19mt6 10%の結果であり、それぞれ、exon19用野生型プローブのBODIPY FLを検出した結果である。横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。なお、ex19WTとexon19用野生型プローブとのTm値は、68℃付近であり、ex19mt6とexon19用野生型プローブとのTm値は、59℃付近である。
【0215】
図5(A)に示すように、ex19WT 100%はex19WTのTm値でのみピークが確認された。一方、図5(C)に示すように、10%の変異型プラスミドを含むex19mt6 10%は、ex19WTのTm値およびex19mt6のTm値の両方で、ピークが確認された。また、図5(B)に示すように、変異型プラスミドの含有量を5%に低下させたex19mt6 5%についても、ex19WTのTm値およびex19mt6のTm値の両方で、ピークが確認された。
【0216】
(実施例5−3)
本例では、前記試料として、下記3種類の試料を用い、検出波長を585−700nmとした以外は、前記実施例5−1と同様にして、PCRおよびTm解析を行い、EGFR遺伝子のEGFR790多型を検出した。
【0217】
前記野生型プラスミドおよび変異型プラスミドとして、EGFR790野生型プラスミド(T790WT)と、EGFR790変異型プラスミド(T790M)とを準備した。前記EGFR790野生型プラスミド(T790WT)は、EGFR遺伝子の部分配列として、配列番号21の197番目から496番目のオリゴヌクレオチドが挿入されており、配列番号21の347番目の塩基(y)は、シトシン(c)である。前記EGFR790変異型プラスミド(T790M)は、EGFR遺伝子の部分配列として、配列番号21の197番目から496番目のオリゴヌクレオチドが挿入されており、配列番号21の347番目の塩基(y)は、チミン(t)である。これらのプラスミドを、以下に示す所定の割合で混合し、3種類の試料を調製した。前記試料は、1μLあたり、プラスミド250コピーとした。
【0218】
【表16】
【0219】
これらの結果を図6に示す。図6は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図6において、(A)はT790WT 100%、(B)はT790M 5%、(C)はT790M 10%の結果であり、それぞれ、EGFR790用変異型プローブのTAMRAを検出した結果である。横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。なお、T790WTとEGFR790用変異型プローブとのTm値は、60℃付近であり、T790MとEGFR790用変異型プローブとのTm値は、66℃付近である。
【0220】
図6(A)に示すように、T790WT 100%はT790WTのTm値でのみピークが確認された。一方、図6(C)に示すように、10%の変異型プラスミドを含むT790M 10%は、T790WTのTm値およびT790MのTm値の両方で、ピークが確認された。また、図6(B)に示すように、変異型プラスミドの含有量を5%に低下させたT790M 5%についても、T790WTのTm値およびT790MのTm値の両方で、ピークが確認された。
【0221】
[比較例1]
本例では、前記EGFR858用プローブとして、下記EGFR858用野生型プローブを用いた以外は、前記実施例2と同様にして、EGFR遺伝子のEGFR858多型を検出した。
【0222】
下記EGFR858野生型プローブは、EGFR858野生型のEGFR遺伝子のセンス鎖における検出配列に強くハイブリダイズするプローブであり、前記配列において、下線部の塩基が、EGFR858野生型に相補的な塩基である。前記EGFR858用野生型プローブは、5’末端を、蛍光色素Pacific Blueで標識化した。
EGFR858用野生型プローブ (配列番号27)(5PB-EGFR858861WT-R1)
5'-(Pacific Blue)-ccagcagtttggccagc-3'
【0223】
これらの結果を図7に示す。図7は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図7において、(A)はEGFR-L858R(WT)-F(配列番号32)、(B)はEGFR-L858R(MT)-F(配列番号33)、(C)はEGFR-L858R(WT)-F(配列番号32)とEGFR-L858R(MT)-F(配列番号33)を1:1の割合で混合した試料の結果である。横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。
【0224】
図7(A)に示すように、L858WT 100%は、68℃でのみピークが確認され、図7(B)に示すように、L858R 100%は、71℃でのみピークが確認された。しかし、両ピークの温度の差は3℃であり、その差が小さかった。また、図7(C)に示すように、EGFR-L858R(WT)-F(配列番号32)とEGFR-L858R(MT)-F(配列番号33)の混合試料は、71℃で、L858WTとL858Rのピークが重なり、両者を検出し分けることができなかった。このように、EGFR858野生型の検出ピークと、EGFR858変異型の検出ピークとが接近するため、例えば、野生型と変異型とが混在する場合、正確な検出が困難である。
【0225】
[比較例2]
本例では、4種類の試料を用い、前記exon19用プローブとして、下記exon19用野生型プローブを用い、検出波長を520〜555nmとした以外は、前記実施例3と同様にして、EGFR遺伝子のexon19多型を検出した。なお、前記試料として、前記実施例3のオリゴヌクレオチド1、2、4および6を5μmol/Lに調整し、前記オリゴヌクレオチド1単独の試料1、前記オリゴヌクレオチド1と前記オリゴヌクレオチド2、4または6とを体積比1:5で混合した、試料2、試料4および試料6を調製した。
【0226】
下記exon19用野生型プローブは、exon19野生型のEGFR遺伝子のアンチセンス鎖における検出配列に強くハイブリダイズするプローブであり、前記配列において、下線部の塩基が、exon19野生型に相補的な塩基である。前記exon19用野生型プローブは、5’末端を、蛍光色素BODIPY FLで標識化した。
exon19用野生型プローブ (配列番号28)(5FL-EGFR-EX19-WT-F1)
5'-(BODIPY FL)-caaggaattaagagaagcaacatctccg-3'
【0227】
これらの結果を図8に示す。図8は、温度上昇に伴う蛍光強度の変化を示すTm解析のグラフである。図8において、前記exon19用野生型プローブを使用した結果であり、(A)は試料1、(B)は試料2、(C)は試料4、(D)は試料6の検出結果である。横軸は、測定時の温度(℃)を示し、縦軸は蛍光強度の変化(以下、「蛍光変化量」ともいう)を示し、単位は「d蛍光強度増加量/dt」(dF/dt)とした。なお、オリゴヌクレオチド1とexon19用野生型プローブとのTm値は、71℃付近、オリゴヌクレオチド2とexon19用野生型プローブとのTm値は、71℃付近、オリゴヌクレオチド4とexon19用野生型プローブとのTm値は、49℃付近、オリゴヌクレオチド6とexon19用野生型プローブとのTm値は、71℃付近である。
【0228】
図8(A)に示すように、野生型オリゴヌクレオチド1のみを含む試料1は、オリゴヌクレオチド1のTm値でのみピークが確認された。また、図8(C)に示すように、野生型オリゴヌクレオチド1および変異型オリゴヌクレオチド4を含む試料4は、野生型オリゴヌクレオチド1のTm値と、変異型オリゴヌクレオチド4のTm値との両方で、ピークが確認された。しかしながら、図8(B)および(D)に示すように、野生型オリゴヌクレオチド1と変異型オリゴヌクレオチド2または6とを含む試料2および6は、野生型オリゴヌクレオチド1のTm値ではピークが確認されたが、各変異型オリゴヌクレオチドのTm値では、ピークが確認されなかった。
【0229】
[実施例6]
本例では、下記表17に示すプローブを使用し、下記野生型人工核酸および変異型人工核酸のそれぞれに対して、Tm解析を行った以外は、実施例2と同様の方法で、EGFR遺伝子のEGFR858多型を検出した。なお、下記表17において、配列番号71および配列番号87に示すプローブは、本発明のプローブには該当しないプローブである。
【0230】
配列番号1における217番目〜306番目に相同なEGFR858野生型人工核酸(配列番号67:EGFR-L858R(WT)-F90)およびEGFR858変異型人工核酸(配列番号68:EGFR-L858R(MT)-F90)を調製した。以下の2つの配列において、下線部の塩基が配列番号1における261番目の塩基に該当する。各人工核酸を5μmol/Lに調製して、858野生型試料および858変異型試料とした。
EGFR-L858R(WT)-F90(配列番号67)
actggtgaaaacaccgcagcatgtcaagatcacagattttgggctggccaaactgctgggtgcggaagagaaagaataccatgcagaagg
EGFR-L858R(MT)-F90(配列番号68)
actggtgaaaacaccgcagcatgtcaagatcacagattttgggcgggccaaactgctgggtgcggaagagaaagaataccatgcagaagg
【0231】
Tm解析において、各プローブについて、前記野生型試料とのTm値および前記変異型試料とのTm値を測定し、その差(ΔTm)を算出した。そして、その算出値から、下記評価基準に従って、各プローブが、EGFR858の野生型および変異型を判別できるか否かを評価した。これらの結果を、下記表17にあわせて示す。
(評価基準)
○ :ΔTmが3℃以上であり、野生型と変異型とを有効に判別可能
× :ΔTmが3℃未満であり、野生型と変異型とを有効に判別不可
【0232】
【表17】
【0233】
前記表17に示すように、実施例の各プローブは、野生型試料および変異型試料のいずれに対しても、1つのピークが確認され、前記野生型試料とのTm値よりも、前記変異型試料とのTm値が、3℃以上高い値を示した(ΔTm≧3℃)。一方、比較例のプローブは、野生型試料および変異型試料のいずれに対しても、1つのピークが確認されたが、ΔTmが3℃未満であった。このことから、実施例のプローブによれば、例えば、野生型検出配列と変異型検出配列とが共存する際に、両者を有効に判別できることがわかった。
【0234】
[実施例7]
本例では、下記表18に示すプローブを使用し、下記野生型人工核酸および変異型人工核酸のそれぞれに対して、Tm解析を行った以外は、実施例2と同様の方法で、EGFR遺伝子のEGFR858多型を検出した。なお、下記表18において、配列番号93に示すプローブは、本発明のプローブに該当しないプローブである。
【0235】
配列番号1における217番目〜306番目に相補的なEGFR858野生型人工核酸(配列番号69:EGFR-L858R(WT)-R90)およびEGFR858変異型人工核酸(配列番号70:EGFR-L858R(MT)-R90)を調製した。以下の2つの配列において、下線部の塩基が配列番号1における261番目の塩基に該当する。各人工核酸を5μmol/Lに調製して、EGFR858野生型試料および858変異型試料とした。
EGFR-L858R(WT)-R90(配列番号69)
ccttctgcatggtattctttctcttccgcacccagcagtttggccagcccaaaatctgtgatcttgacatgctgcggtgttttcaccagt
EGFR-L858R(MT)-R90(配列番号70)
ccttctgcatggtattctttctcttccgcacccagcagtttggcccgcccaaaatctgtgatcttgacatgctgcggtgttttcaccagt
【0236】
Tm解析において、各プローブについて、前記野生型試料とのTm値および前記変異型試料とのTm値を測定した。そして、前記実施例6と同様にして、各プローブを評価した。これらの結果を、下記表18にあわせて示す。
【0237】
【表18】
【0238】
前記表18に示すように、実施例の各プローブは、野生型試料および変異型試料のいずれに対しても、1つのピークが確認され、前記野生型試料とのTm値よりも、前記変異型試料とのTm値が、3℃以上高い値を示した(ΔTm≧3℃)。一方、比較例のプローブは、野生型試料および変異型試料のいずれに対しても、1つのピークが確認されたが、ΔTmが3℃未満であった。このことから、実施例のプローブによれば、例えば、野生型検出配列と変異型検出配列とが共存する際に、両者を有効に判別できることがわかった。
【0239】
以上の実施例1〜7および比較例1〜3の結果より、これらの実施例におけるFプライマー、Rプライマーおよびプローブを用いれば、例えば、野生型と変異型の多型とが混在する場合であっても、野生型と変異型とを区別して、EGFR遺伝子のEGFR858多型、exon19多型およびEGFR790多型を検出可能であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0240】
本発明の多型検出方法によれば、本発明の多型検出用プローブを使用することによって、例えば、EGFR遺伝子の多型を、簡便且つ優れた信頼性で判別できる。具体的には、例えば、試料中に、目的の多型が野生型であるEGFR遺伝子と変異型であるEGFR遺伝子とが共存している場合であっても、野生型と変異型の多型を、簡便且つ優れた信頼性で検出できる。また、本発明のプライマーによれば、例えば、EGFR遺伝子の多型を含む領域を、特異的に増幅できる。このように、本発明によれば、EGFR遺伝子の多型を、簡便且つ優れた信頼性で増幅および判別できることから、例えば、検出結果を、前述のような疾患の治療法の選択等に反映できるため、本発明は、医療分野等において極めて有用といえる。なお、本発明は、例えば、医療分野に関わらす、生化学等の広い分野におけるEGFR遺伝子の多型検出に適用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGFRの遺伝子変異を検出することの可能なプローブであって、下記P1、P3、P5〜P7およびP15〜P18から選択される少なくとも1種の蛍光標識オリゴヌクレオチドからなることを特徴とする多型検出用プローブ。
(P1)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号251〜261を含む11〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号251に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P3)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜261を含む5〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号257に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P5)配列番号2に示す塩基配列において、塩基番号104〜112を含む9〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号112に相同的な塩基がチミンであり、塩基番号104に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P6)配列番号2に示す塩基配列において、塩基番号104〜119を含む16〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号119の塩基がG以外の塩基に置換されており、塩基番号104に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P7)配列番号3に示す塩基配列において、塩基番号136〜145を含む10〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号145に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P15)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号259〜264を含む6〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、前記塩基より3’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜262を含む5〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、前記塩基より5’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P17)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号249〜264を含む16〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、前記塩基より5’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P18)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜264を含む8〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、前記塩基より3’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
【請求項2】
P1のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号251に対応する塩基を3’末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P3のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号257に対応する塩基を3’末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P5のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号104に相同的な塩基を5'末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P6のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号104に相同的な塩基を5'末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P7のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号145に相同的な塩基を3'末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P15のオリゴヌクレオチドは、前記蛍光色素で標識されたシトシンを3’末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P16のオリゴヌクレオチドは、前記蛍光色素で標識されたシトシンを5’末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P17のオリゴヌクレオチドは、前記蛍光色素で標識されたシトシンを5’末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P18のオリゴヌクレオチドは、前記蛍光色素で標識されたシトシンを3’末端から数えて1〜3番目の位置に有する請求項1記載のプローブ。
【請求項3】
P1のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号251に対応する塩基を3’末端に有し、
P3のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号257に対応する塩基を3’末端に有し、
P5のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号104に相同的な塩基を5'末端に有し、
P6のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号104に相同的な塩基を5'末端に有し、
P7のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号145に相同的な塩基を3'末端に有し、
P15のオリゴヌクレオチドは、前記蛍光色素で標識されたシトシンを3’末端に有し、
P16のオリゴヌクレオチドは、前記蛍光色素で標識されたシトシンを5’末端に有し、
P17のオリゴヌクレオチドは、前記蛍光色素で標識されたシトシンを5’末端に有し、
P18のオリゴヌクレオチドは、前記蛍光色素で標識されたシトシンを3’末端に有する請求項1記載のプローブ。
【請求項4】
前記蛍光標識オリゴヌクレオチドは、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、且つ、前記標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少するかまたは増加する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項5】
前記蛍光標識オリゴヌクレオチドが、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、前記標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少する、請求項4記載のプローブ。
【請求項6】
P1のオリゴヌクレオチドの塩基長が11〜30で、P3およびP5〜7のオリゴヌクレオチドの塩基長が10〜30塩基であり、P15のオリゴヌクレオチドの塩基長が16〜30塩基であり、P16のオリゴヌクレオチドの塩基長が18〜30塩基であり、P17のオリゴヌクレオチドの塩基長が20〜30塩基であり、P18のオリゴヌクレオチドの塩基長が20〜30塩基である請求項1〜5のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項7】
前記プローブが、融解曲線分析用のプローブである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項8】
EGFR遺伝子における多型の検出方法であって、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプローブを用いることを特徴とする方法。
【請求項9】
さらに、EGFR exon20 T790Mの多型を検出することを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
請求項8または9記載の方法によりEGFR遺伝子における多型を検出する工程、および、多型の有無に基づいてEGFR-TKIに対する耐性または薬効を判定する工程を含む、EGFR-TKIに対する耐性またはEGFR-TKIの薬効の判定方法。
【請求項11】
EGFR遺伝子における多型を検出するための試薬キットであって、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプローブを含むキット。
【請求項12】
さらに、EGFR exon20 T790Mの多型を検出するプローブを含む、請求項11記載のキット。
【請求項13】
さらに、EGFR遺伝子の配列番号1に示す塩基配列におけるP1、P3およびP15〜P18の少なくとも一つのオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列を含む領域、配列番号2に示す塩基配列におけるP5およびP6の少なくとも一方のオリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズする配列を含む領域、または、配列番号3に示す塩基配列におけるP7のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列を含む領域を増幅するためのプライマーを含む、請求項11記載のキット。
【請求項14】
さらに、EGFR exon20 T790Mの多型を検出するプローブを含む、請求項13記載のキット。
【請求項15】
EGFRの遺伝子変異を検出することの可能なプライマーであって、下記P8〜P13から選択される多型検出用プライマー。
(P8)233番目の塩基Cを3’末端とし、配列番号1に相同的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P9)284番目の塩基Gに相補的な塩基Cを3’末端とし、配列番号1に相補的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P10)290番目の塩基Gに相補的な塩基Cを3’末端とし、配列番号1に相補的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P11)95番目の塩基Gを3'末端とし、配列番号2に相同的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P12)73番目の塩基Cを3'末端とし、配列番号2に相同的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P13)155番目の塩基Gに相補的な塩基Cを3'末端とし、配列番号2に相補的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
【請求項1】
EGFRの遺伝子変異を検出することの可能なプローブであって、下記P1、P3、P5〜P7およびP15〜P18から選択される少なくとも1種の蛍光標識オリゴヌクレオチドからなることを特徴とする多型検出用プローブ。
(P1)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号251〜261を含む11〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号251に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P3)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜261を含む5〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、塩基番号257に対応する塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P5)配列番号2に示す塩基配列において、塩基番号104〜112を含む9〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号112に相同的な塩基がチミンであり、塩基番号104に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P6)配列番号2に示す塩基配列において、塩基番号104〜119を含む16〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号119の塩基がG以外の塩基に置換されており、塩基番号104に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P7)配列番号3に示す塩基配列において、塩基番号136〜145を含む10〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号145に相同的な塩基がシトシンであり、前記シトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P15)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号259〜264を含む6〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、前記塩基より3’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P16)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号258〜262を含む5〜50塩基長の塩基配列に相補的な配列を有し、塩基番号261に対応する塩基がアデニンまたはシトシンであり、前記塩基より5’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P17)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号249〜264を含む16〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、前記塩基より5’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
(P18)配列番号1に示す塩基配列において、塩基番号257〜264を含む8〜50塩基長の塩基配列を有し、塩基番号261に相同的な塩基がチミンまたはグアニンであり、前記塩基より3’側に位置するシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド
【請求項2】
P1のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号251に対応する塩基を3’末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P3のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号257に対応する塩基を3’末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P5のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号104に相同的な塩基を5'末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P6のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号104に相同的な塩基を5'末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P7のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号145に相同的な塩基を3'末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P15のオリゴヌクレオチドは、前記蛍光色素で標識されたシトシンを3’末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P16のオリゴヌクレオチドは、前記蛍光色素で標識されたシトシンを5’末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P17のオリゴヌクレオチドは、前記蛍光色素で標識されたシトシンを5’末端から数えて1〜3番目の位置に有し、
P18のオリゴヌクレオチドは、前記蛍光色素で標識されたシトシンを3’末端から数えて1〜3番目の位置に有する請求項1記載のプローブ。
【請求項3】
P1のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号251に対応する塩基を3’末端に有し、
P3のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号257に対応する塩基を3’末端に有し、
P5のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号104に相同的な塩基を5'末端に有し、
P6のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号104に相同的な塩基を5'末端に有し、
P7のオリゴヌクレオチドは、蛍光色素で標識された塩基番号145に相同的な塩基を3'末端に有し、
P15のオリゴヌクレオチドは、前記蛍光色素で標識されたシトシンを3’末端に有し、
P16のオリゴヌクレオチドは、前記蛍光色素で標識されたシトシンを5’末端に有し、
P17のオリゴヌクレオチドは、前記蛍光色素で標識されたシトシンを5’末端に有し、
P18のオリゴヌクレオチドは、前記蛍光色素で標識されたシトシンを3’末端に有する請求項1記載のプローブ。
【請求項4】
前記蛍光標識オリゴヌクレオチドは、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、且つ、前記標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少するかまたは増加する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項5】
前記蛍光標識オリゴヌクレオチドが、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、前記標的配列にハイブリダイズしたときに蛍光強度が減少する、請求項4記載のプローブ。
【請求項6】
P1のオリゴヌクレオチドの塩基長が11〜30で、P3およびP5〜7のオリゴヌクレオチドの塩基長が10〜30塩基であり、P15のオリゴヌクレオチドの塩基長が16〜30塩基であり、P16のオリゴヌクレオチドの塩基長が18〜30塩基であり、P17のオリゴヌクレオチドの塩基長が20〜30塩基であり、P18のオリゴヌクレオチドの塩基長が20〜30塩基である請求項1〜5のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項7】
前記プローブが、融解曲線分析用のプローブである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項8】
EGFR遺伝子における多型の検出方法であって、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプローブを用いることを特徴とする方法。
【請求項9】
さらに、EGFR exon20 T790Mの多型を検出することを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
請求項8または9記載の方法によりEGFR遺伝子における多型を検出する工程、および、多型の有無に基づいてEGFR-TKIに対する耐性または薬効を判定する工程を含む、EGFR-TKIに対する耐性またはEGFR-TKIの薬効の判定方法。
【請求項11】
EGFR遺伝子における多型を検出するための試薬キットであって、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプローブを含むキット。
【請求項12】
さらに、EGFR exon20 T790Mの多型を検出するプローブを含む、請求項11記載のキット。
【請求項13】
さらに、EGFR遺伝子の配列番号1に示す塩基配列におけるP1、P3およびP15〜P18の少なくとも一つのオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列を含む領域、配列番号2に示す塩基配列におけるP5およびP6の少なくとも一方のオリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズする配列を含む領域、または、配列番号3に示す塩基配列におけるP7のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列を含む領域を増幅するためのプライマーを含む、請求項11記載のキット。
【請求項14】
さらに、EGFR exon20 T790Mの多型を検出するプローブを含む、請求項13記載のキット。
【請求項15】
EGFRの遺伝子変異を検出することの可能なプライマーであって、下記P8〜P13から選択される多型検出用プライマー。
(P8)233番目の塩基Cを3’末端とし、配列番号1に相同的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P9)284番目の塩基Gに相補的な塩基Cを3’末端とし、配列番号1に相補的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P10)290番目の塩基Gに相補的な塩基Cを3’末端とし、配列番号1に相補的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P11)95番目の塩基Gを3'末端とし、配列番号2に相同的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P12)73番目の塩基Cを3'末端とし、配列番号2に相同的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
(P13)155番目の塩基Gに相補的な塩基Cを3'末端とし、配列番号2に相補的な10〜50塩基のオリゴヌクレオチド
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−105646(P2012−105646A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237880(P2011−237880)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
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