説明

ELディスプレイ表示装置

【課題】光源の光を効率よく利用できる面発光体を利用して視野角依存性の少ない透明で多色表示可能なELディスプレイ表示装置を実現する。
【解決手段】絶縁性基板11の一面上に第1電極、第1絶縁層、発光層、第2絶縁層および第2電極を順次積層してなる積層体17を形成してなる透明EL素子10と、一方の面に微細な凹凸部31を有し他方の面を平滑面32にした透明な導光板33に対し、導光板33の近傍に配設された光源34から透明EL素子10の発光色とは異なる光を導入し平滑面32から導出する面発光体30とを備え、導光板34の平滑面32側が視認者P側に位置するように、透明EL素子10と面発光体30とが重ね合わされており、視認者P側に露出する面が、ノングレア加工を施すことにより視認者Pに向かって導出される光を散乱するノングレア加工面61となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EL(エレクトロルミネッセンス)ELディスプレイ表示装置に関し、特に白色などの多色表示が可能な透明EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、多色カラーや白色を表示するものとして、4色成分を持つEL素子に青色と赤色のフィルタを用いて多色や白色表示するカラーELディスプレイ装置(例えば、特許文献1参照)や透明EL素子と面発光素子とを重ね合わせることにより高輝度でかつ白色などを表現可能なEL表示装置(例えば、特許文献2参照)、さらには、上面に青色に発光するEL素子と下面に緑色と赤色を発光するEL素子により全色表示可能な薄膜EL表示装置(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【0003】
一方、液晶表示装置ではあるが、液晶セルと、一方の面に微細な凹凸部を有し他方の面を平滑面にした導光板と、該導光板の近傍に配設された冷陰極管等から成る光源と、反射部材とを備え、液晶セルの正面に、平滑面が液晶セル側に位置させた状態で導光板を配置すると共に、液晶セルの裏面、又は内側に、反射部材を配置させたものが提案されている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平5−283166号公報
【特許文献2】特開平11−8067号公報
【特許文献3】特開平1−142694号公報
【特許文献4】特開平11−109347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のうち前二者のものでは、青色フィルタやLED等の発光体をEL素子と重ねて配置する必要があるため、光学的に透明な表示装置を得ることができない。つまり、ELディスプレイ表示装置を通して、視認者側から装置後方に位置する物体を視認できるような透明な表示装置を得ることができない。
【0005】
また、3番目のものでは、光学的に透明な表示装置を得ることは可能であるが青色EL素子を用いているため、現状では、フルカラーや白色表示を行う場合に十分な輝度を得ることができず、また、複数のEL素子を使用する必要があるため製造コストが高くなるという欠点がある。
【0006】
これを解決するために、本発明者は、上記特許文献4に記載されている液晶表示装置において補助光源として用いられるフロントライトとしての面発光体と透明EL素子と重畳することを考えた。
【0007】
この面発光体は、上記特許文献4に記載されているような構造のものであり、光学的にほぼ透明な面発光体として設計されたものである。反射型液晶では、この面発光体をフロントライトとして液晶パネルと重ねることにより、周囲が暗い場合の補助光源として使用している。
【0008】
図6は、この面発光体30と透明EL素子10とを重ね合わせた本発明者の試作品の概略断面図である。
【0009】
透明EL素子10は、従来の一般的なものと同様であり、絶縁性基板11の一面上に、第1電極、第1絶縁層、発光中心を含む発光層、第2絶縁層および第2電極を順次積層してなる積層体17を設けたものであり、これら各部材が全て光透過性の材料からなるものである。
【0010】
また、面発光体30は、上記特許文献4に示されるように、一方の面に微細な凹凸部31を有し他方の面を平滑面32にした透明な導光板33、および、導光板33の近傍に配設され光源34を備え、光源34からの光Yを平滑面32から導出するものである。ここで、光源34は、透明EL素子10の発光色とは異なる発光色のものとし、多色表示を可能とする。
【0011】
そして、面発光体30における導光板33の平滑面32側が、ELディスプレイ表示装置の視認者P側に位置するように、透明EL素子10と面発光体30とを透明な接着剤50を介して重ね合わせ、これを試作品とした。また、この試作品においては、透明EL素子10、面発光体30を駆動させるために、それぞれ、EL駆動回路20、面発光体制御回路40を設けている。
【0012】
このように、本発明者が、面発光体30と透明EL素子10とを重畳させた試作品を検討したところ、この重畳による多色化の効果は確認できた。
【0013】
しかし、図6に示されるように、透明EL素子10の光Rは視野角依存性は少ないものの、面発光体30の光Yの視野角依存性が大きく、特定の方向からしか多色化された光が視認できないことが明らかとなった。
【0014】
図7は、上記フロントライトとして用いられる面発光体30の光取り出しの様子を模式的に示す図である。この図7に示されるように、面発光体30は、光源34からの光取り出し効率を最大にするため、導光板33の鉛直方向に対して光Yを取り出すように設計されている。
【0015】
そのため、面発光体30の光Yの視野角依存性は大きいものとなっている。ちなみに、上記特許文献4のように、液晶のフロントライトとして用いる場合は、この取り出した光を、反射板を兼ねた拡散板で拡散させるため問題にならない。
【0016】
また、この面発光体30における視野角依存性を減らすために、図8に示されるように、凹凸部31の設計を変更して光源34からの光Yを取り出す方向にランダム性を持たせることが考えられる。
【0017】
しかし、この用にした場合、導光板33の平滑面32での全反射により、面発光体30からの光Yの取り出し効率が大幅に落ちてしまうことが考えられ、さらに、図8中の矢印に示されるように、斜め方向に取り出された光は、透明EL素子10を透過する際の界面での全反射のため、いっそう取り出し効率が低下してしまう。
【0018】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、光源の光を効率よく利用できる面発光体を利用して視野角依存性の少ない透明で多色表示可能なELディスプレイ表示装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、本発明は、透明EL素子(10)と面発光体(30)とを備えるELディスプレイ表示装置であって、面発光体(30)における導光板(34)の平滑面(32)側が当該ELディスプレイ表示装置の視認者側に位置するように、透明EL素子(10)と面発光体(30)とを重ね合わせ、当該ELディスプレイ表示装置における視認者側に露出する面を、ノングレア加工を施すことにより視認者に向かって導出される光を散乱するノングレア加工面(61)としたことを特徴とする。
【0020】
それによれば、互いに発光色は異なるものの共に透明な透明EL素子(10)と面発光体(30)とを重ね合わせることで、透明で白色を含めた多色表示を可能とし、また、方向性を持った面発光体(30)からの光をノングレア加工面(61)にて散乱して導出できるため、結果的に、光源の光を効率よく利用できる面発光体を利用して視野角依存性の少ない透明で多色表示可能なELディスプレイ表示装置を実現することができる。
【0021】
ここで、透明EL素子(10)における第2電極(16)側と、面発光体(30)における導光板(33)の平滑面(32)側とが対向するように、透明EL素子(10)と面発光体(30)とを重ね合わせ、ノングレア加工面(61)は、透明EL素子(10)における絶縁性基板(11)の一面とは反対側の他面側に設けたものにできる。
【0022】
また、透明EL素子(10)における絶縁性基板(11)の一面とは反対側の他面側と、面発光体(30)における導光板(33)の平滑面(32)側とが対向するように、透明EL素子(10)と面発光体(30)とを重ね合せ、透明EL素子(10)における第2電極(16)側に透明絶縁性部材(70)を設け、ノングレア加工面(61)は、透明絶縁性部材(70)における視認者側に露出する面側に設けたものにできる。
【0023】
また、透明EL素子(10)における絶縁性基板(11)の一面とは反対側の他面側と、面発光体(30)における導光板(33)の凹凸部(31)側の面とが対向するように、透明EL素子(10)と面発光体(30)とを重ね合わせ、ノングレア加工面(61)は、面光体(30)における導光板(33)の平滑面(32)側に設けたものにしてもよい。
【0024】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るELディスプレイ表示装置S1の概略断面構成を示す図であり、図2は、このELディスプレイ表示装置S1における透明EL素子10の詳細な断面構成を模式的に示す概略断面図である。
【0027】
まず、透明EL素子10について、図2を参照して説明する。この透明EL素子10は、電気絶縁性を有する絶縁性基板11の一面上に、第1電極12、第1絶縁層13、発光中心を含む発光層14、第2絶縁層15、第2電極16を順次積層して構成されている。ここで、第1電極12〜第2電極16までの積層部分を積層体17とする。
【0028】
そして、透明EL素子10を構成するこれら各部11〜16は、全て、光透過性を有する材料によって構成されている。各部11〜16の材料としては、一般的な透明EL素子に用いられる材料が挙げられる。
【0029】
本例では、絶縁性基板11は透明なガラス基板11からなり、第1電極12および第2電極16は、ITO(Indium Tin Oxide)膜、第1絶縁層13および第2絶縁層15は、Al23層とTiO2層とを交互に積層したAl23/TiO2積層構造膜(以下、ATO膜と称する)からなる。
【0030】
また、本例では、発光層14は、発光中心としてのマンガンもしくはテルビウムを微量添加した硫化亜鉛からなっている。ここで、発光層14における発光中心を変更することにより、透明EL素子10の発光色を変更することができる。
【0031】
また、本例の透明EL素子10では、第1電極12は、図2中の左右方向に延びるストライプ状に多数形成され、第2電極16は、第1電極12とは直交する方向、すなわち図2中の紙面垂直方向に延びるストライプ状に多数形成されている。
【0032】
そして、これら両電極12、16が交差したところの部分が、画素18として構成されるが、ここでは、上記したようなストライプ状の両電極12、16によって、画素18はマトリクス状に配置されている。
【0033】
また、図1、図2に示されるように、この透明EL素子10を駆動させるためのEL駆動回路20が設けられている。このEL駆動回路20により、第1電極12と第2電極16との間に交流電圧が印加され、画素18が発光するようになっている。
【0034】
本例の透明EL素子10の製造プロセスについて、以下に説明する。ガラス基板11上に、第1電極12として光学的に透明であるITO膜をスパッタ法により形成する。ITO膜の透過率は70%以上とし、シート抵抗は10Ω/□以下となるように膜厚を250nm以上に設定する。さらにこのITO膜について、フォトリソ工程によりストライプ状に加工する。
【0035】
第1電極12の上に、第1絶縁膜13としてATO膜をALE(AtomicLayer Epitaxy)法により形成する。このALE法によるATO膜の形成は、一般的なものであり詳細は省略するが、例えば、Al23層の原料ガスとして三塩化アルミニウムと水を用い、TiO2層の原料として四塩化チタンと水を用い、Al23層と酸化チタン層とを交互に形成するものである。
【0036】
ここで、例えば、Al23層、TiO2層それぞれ1層当たりの膜厚を5nmとして、それぞれ30層ずつ積層する。なお、ATO膜の最上層および最下層は、Al23層とすることが好ましい。
【0037】
ALE法により原子層オーダで膜を形成する場合、1層当たりの膜厚が0.5nm未満では絶縁体として機能せず、1層当たりの膜厚が100nmを超える場合は積層構造による耐電圧向上効果が低下してしまう。したがって、1層当たりの膜厚は0.5nm〜100nmの範囲に設定することがよく、好ましくは1nm〜10nmの範囲に設定することが望ましい。
【0038】
次に、第1絶縁膜13の上に発光層14として、ZnS(硫化亜鉛)を母体材料とし、発光中心としてMンガン)を添加したZnS:Mnよりなる薄膜を蒸着法によって形成する。
【0039】
すなわち、所定の化学量論的組成の蒸着ペレットを作成し、そこに電子ビームを照射して成膜する。このZnS:Mnの膜厚は好ましくは500nm〜1000nmの範囲に設定するとよい。このZnS:Mnを発光層14として用いた透明EL素子10は、オレンジ色に発光する。
【0040】
続いて、第2絶縁層15を第1絶縁層13と同様にALE法で形成する。そして最後に第2電極16を第1電極12と同様にスパッタ法でITO膜を成膜したのち、フォトリソ工程により第1電極12と交差するように、ストライプ状に加工する。
【0041】
このように形成した透明EL素子10において、EL駆動回路20に接続し、第1電極12と第2電極16に交流電圧を印加すると、上記画素18が発光する。そして、透明EL素子10を形成する各材料は光学的に透明であるため、この透明EL素子10は透明な表示器となる。
【0042】
また、図1に示されるように、本ELディスプレイ表示装置S1においては、この透明EL素子10における積層体17の表面側すなわち透明EL素子10における第2電極16側には、面発光体30が設けられている。
【0043】
この面発光体30は、上記特許文献4に示されるものと同様のものであり、その詳細説明は同文献に譲り、ここでは、簡単に述べることとする。
【0044】
面発光体30は、一方の面に微細な凹凸部31を有し他方の面を平滑面32にした透明な導光板33、および、導光板33の近傍に配設され光源34を備え、光源34からの光を平滑面32から導出するものである。
【0045】
具体的に、導光板33は、アクリル樹脂などの透明な材料よりなり、光透過性を有する。また、光源34は、例えばLED(発光ダイオード)などよりなり、導光板33の端面に設置されている。そして、導光板33は、図1中の矢印Yに示されるように、端面から導入された光源34の光を、凹凸部31にて反射させ平滑面32側へ導出するようにプリズム加工されている。
【0046】
また、導光板33の凹凸部31側の面には、図1に示されるように、当該凹凸部31間に平坦部35が設けられているが、これは、導光板33の厚さ方向における光透過性すなわち面発光体30の光透過性を良好に確保するためである。
【0047】
ここで、光源34は、透明EL素子10の発光色とは異なる発光色のものとし、透明EL素子10の発光色との混色による多色表示を可能とする。例えば、光源34を構成する発光ダイオードの種類を変えることで、光源34の発光色を変更できる。また、光源34は、面発光体制御回路40により、オンオフや輝度調整が可能となっている。
【0048】
そして、本ELディスプレイ表示装置S1においては、図1に示されるように、面発光体30における導光板33の平滑面32側が、ELディスプレイ表示装置の視認者P側に位置するように、透明EL素子10と面発光体30の導光板33とが重ね合わせられ、透明なエポキシ系樹脂などよりなる光硬化性の接着剤50を介して接着されている。
【0049】
ここでは、透明EL素子10における第2電極16側と、面発光体30における導光板33の平滑面32側とが対向するように、接着剤50を介して透明EL素子10と面発光体30とが重ね合わされている。
【0050】
そして、このELディスプレイ表示装置S1においては、図1の上方側すなわち透明EL素子10における絶縁性基板11の一面とは反対側の他面側、すなわち絶縁性基板11における積層体17の形成されていない面側から、視認者Pの視認が行われるようになっている。
【0051】
ここにおいて、図1に示されるように、本実施形態では、一面がノングレア加工面61となっている透明なフィルム60が、そのノングレア加工面61を視認者P側に露出させた状態となるように、透明EL素子10における絶縁性基板11の他面に対して貼り付けられている。
【0052】
このフィルム60は、例えばポリエステルなどの透明な樹脂フィルムの表面に、ノングレア加工を施したノングレアフィルムである。ノングレア加工とは、例えば上記樹脂フィルムの表面に透明なガラス粒子などを吹き付けて凹凸を付けたものであり、それによって形成されたノングレア加工面61では、光が散乱するようになっている。
【0053】
このようなフィルム60としては、例えば、株式会社きもと社製のKBフィルムなどが挙げられる。そして、本実施形態では、このようなフィルム60を設けることにより、ELディスプレイ表示装置S1における視認者P側に露出する面が、視認者Pに向かって導出される光を散乱するノングレア加工面61として構成されている。
【0054】
このような本実施形態のELディスプレイ表示装置S1においては、上述したように、互いに異なる発光色を持つ透明EL素子10からの光と面発光体30からの光とが混色されることにより、透明で白色を含めた多色表示が可能となる。
【0055】
図3は、本実施形態のELディスプレイ表示装置S1の作用効果を示す図である。ここで、面発光体30において、光源34からの光を効率よく導光板33から取り出すためには光源34の光を導光板33に対してほぼ垂直な方向に反射できるような形状に凹凸部31を設計する必要がある。
【0056】
これは、鉛直方向に反射しない形状に凹凸部31を設計した場合、凹凸部31で反射した光は再度平滑面32で反射されてしまう割合が増加し、外部への取り出し効率が大幅に低下するためである。ただし、このような形状の導光板33を備えた面発光体30は大きな視野角依存性をもつ。
【0057】
しかしながら、本実施形態においては、ELディスプレイ表示装置S1における視認者P側に露出する面は、ノングレア加工を施したノングレア加工面61となっているため、視認者Pに向かって導出される光は、ノングレア加工面61にて散乱される。
【0058】
つまり、図3中の矢印に示されるように、視認者P側に向かって特定の方向にそろえられた光は、ノングレア加工面61で散乱されることにより光の方向性が失われ、その結果として面発光体30の視野角依存性は大きく改善される。これは、ノングレア加工面61には微細な凹凸が施されているため、この凹凸での散乱により透過光を散乱し、透過光をぼけさせる効果があるためである。
【0059】
一方、透明EL素子10においては、その発光に方向性がないため視野角依存性がなく、ノングレア加工面61で散乱されたとしてもその見栄えに影響はほとんどない。
【0060】
以上のような効果から、本実施形態によれば、光源の光を効率よく利用できる面発光体を利用して視野角依存性の少ない透明で多色表示可能なELディスプレイ表示装置を実現することができる。
【0061】
なお、ノングレア加工面61の散乱率を上げることにより、面発光体30の視野角依存性をより小さくすることが可能であるが、ELディスプレイ表示装置S1の透過率が低下する。したがって、この散乱率はELディスプレイ表示装置に要求される透明度の度合によって決定される。
【0062】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係るELディスプレイ表示装置S2の概略断面構成を示す図である。本実施形態は、上述した実施形態に対して、ノングレア加工面61の位置、および、透明EL素子10と面発光体30との重ね合わせの形態を変更したところが相違する。
【0063】
図4に示されるように、本実施形態のELディスプレイ表示装置S2では、上記図1に示される表示装置S1に比べて、透明EL素子10を上下反対にしたものである。
【0064】
すなわち、透明EL素子10における絶縁性基板11の一面とは反対側の他面側と、面発光体30における導光板33の平滑面32側とが対向するように、透明EL素子10と面発光体30とが重ね合わされている。
【0065】
そして、透明EL素子10における第2電極16側(図2参照)すなわち透明EL素子10における積層体17の表面に、透明絶縁性部材としてのカバーガラス70が設けられている。ここでは、このカバーガラス70は、透明EL素子10の積層体17に対して、透明な接着剤50を介して貼り合わせられている。
【0066】
そして、このカバーガラス70における透明EL素子10とは反対側の面には、ノングレア加工面61を有するフィルム60が貼り付けられている。つまり、本実施形態では、ノングレア加工面61は、カバーガラス70における視認者P側に露出する面側に設けられたものとなっている。
【0067】
こうして、本実施形態においても、透明EL素子10と面発光体30とを重ね合わせることで、透明で白色を含めた多色表示を可能とし、また、面発光体30からの光をノングレア加工面61にて散乱して導出できるため、光源の光を効率よく利用できる面発光体を利用して視野角依存性の少ない透明で多色表示可能なELディスプレイ表示装置S2を実現することができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記第1実施形態の表示装置に比べて、面発光体30とノングレア加工面61との距離がカバーガラス70の厚さだけ長くなる。ノングレア加工面61によるぼけ具合は、ノングレア加工面61と面発光体30との距離が長くなるほど大きくなるため、本実施形態は、上記第1実施形態よりもノングレア加工面61での散乱による効果が高くなる。
【0069】
また、この場合、面発光体30と透明EL素子10との間は、例えば高粘性のシリコーンオイルのように空気よりも屈折率の大きな材料を介在させると、面発光体30から取り出される光や面発光体30から透明EL素子10へ入射する光の反射率を低減し、より効率よく光源34の光を取り出すことができる。
【0070】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態に係るELディスプレイ表示装置S3の概略断面構成を示す図である。本実施形態は、上述した各実施形態に対して、ノングレア加工面61の位置、および、透明EL素子10と面発光体30との重ね合わせの形態を変更したところが相違する。
【0071】
図5に示されるように、本実施形態のELディスプレイ表示装置S3では、上記図1に示される表示装置S1が視認者P側に透明EL素子10を設けていたのに対し、面発光体30を視認者P側すなわち前方側とし、透明EL素子10を視認者Pとは反対の後方側に配置したものである。
【0072】
ここでは、透明EL素子10における絶縁性基板11の一面とは反対側の他面側と、面発光体30における導光板33の凹凸部31側の面とが対向するように、透明EL素子10と面発光体30とが重ね合わされている。
【0073】
本実施形態では、透明EL素子10における第2電極16側(図2参照)すなわち透明EL素子10における積層体17の表面に、上記同様のカバーガラス70が、透明な接着剤50を介して貼り合わせられており、ここでは、このカバーガラス70は積層体17を保護している。
【0074】
そして、ノングレア加工面61は、面発光体30における導光板33の平滑面32側に設けられている。ここでは、導光板33の平滑面32に、上記同様のノングレア加工面61を有するフィルム60が、ノングレア加工面61を視認者P側に向けた状態で貼り付けられている。
【0075】
こうして、本実施形態においても、光源の光を効率よく利用できる面発光体を利用して視野角依存性の少ない透明で多色表示可能なELディスプレイ表示装置S3を実現することができる。
【0076】
また、本実施形態では、光源34からの光を効率よく取り出すためには、上記第2実施形態とは異なり、導光板33と透明EL素子10との間には、高粘性のシリコーンオイルなどの高屈折率材料を介在させないほうが好ましい。
【0077】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、ノングレア加工面61は、ノングレア加工されたフィルム60を、透明EL素子10の絶縁性基板11やカバーガラス70あるいは面発光体30の導光板33に貼り付けることにより、表示装置に設けられたが、それ以外の方法でノングレア加工面を形成してもよい。
【0078】
例えば、上記各実施形態において、視認者P側に露出する面が、透明EL素子10の絶縁性基板11やカバーガラス70あるいは面発光体30の導光板33である場合、これらの部材における視認者P側に露出する面に、直接、エッチングや物理的加工を施すことでノングレア加工面を形成してもよい。
【0079】
また、本発明では、面発光体における導光板の平滑面側が、当該ELディスプレイ表示装置の視認者側に位置するように、透明EL素子と面発光体とを重ね合わせてなるELディスプレイ表示装置において、視認者側に露出する面がノングレア加工面となっていればよく、ノングレア加工面の位置や、透明EL素子と面発光体との重ね合わせの形態としては、上記した各実施形態以外にも種々の形態が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1実施形態に係るELディスプレイ表示装置の概略断面図である。
【図2】図1中の透明EL素子の概略断面図である。
【図3】第1実施形態のELディスプレイ表示装置の作用効果を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るELディスプレイ表示装置の概略断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るELディスプレイ表示装置の概略断面図である。
【図6】面発光体と透明EL素子とを重ね合わせた本発明者の試作品の概略断面図である。
【図7】面発光体の光取り出しの様子を模式的に示す図である。
【図8】面発光体の凹凸部にランダム性を持たせた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
10…透明EL素子、11…絶縁性基板、12…第1電極、13…第1絶縁層、
14…発光層、15…第2絶縁層、16…第2電極、17…積層体、18…画素、
30…面発光体、31…面発光体の凹凸部、32…平滑面、33…導光板、
34…光源、60…フィルム、61…ノングレア加工面、
70…透明絶縁性部材としてのカバーガラス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板(11)の一面上に第1電極(12)、第1絶縁層(13)、発光中心を含む発光層(14)、第2絶縁層(15)および第2電極(16)を順次積層してなり、前記の各部材が全て光透過性の材料からなる透明EL素子(10)と、
一方の面に微細な凹凸部(31)を有し他方の面を平滑面(32)にした透明な導光板(33)、および、前記導光板(33)の近傍に配設され前記透明EL素子(10)の発光色とは異なる発光色の光源(34)を有し、前記光源(34)からの光を前記平滑面(32)から導出する面発光体(30)と、を備えるELディスプレイ表示装置であって、
前記面発光体(30)における前記導光板(34)の前記平滑面(32)側が、当該ELディスプレイ表示装置の視認者側に位置するように、前記透明EL素子(10)と前記面発光体(30)とが重ね合わされており、
当該ELディスプレイ表示装置における前記視認者側に露出する面は、ノングレア加工を施すことにより前記視認者に向かって導出される光を散乱するノングレア加工面(61)となっていることを特徴とするELディスプレイ表示装置。
【請求項2】
前記透明EL素子(10)における前記第2電極(16)側と、前記面発光体(30)における前記導光板(33)の前記平滑面(32)側とが対向するように、前記透明EL素子(10)と前記面発光体(30)とが重ね合わされており、
前記ノングレア加工面(61)は、前記透明EL素子(10)における前記絶縁性基板(11)の前記一面とは反対側の他面側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のELディスプレイ表示装置。
【請求項3】
前記透明EL素子(10)における前記絶縁性基板(11)の前記一面とは反対側の他面側と、前記面発光体(30)における前記導光板(33)の前記平滑面(32)側とが対向するように、前記透明EL素子(10)と前記面発光体(30)とが重ね合わされており、
前記透明EL素子(10)における前記第2電極(16)側には透明絶縁性部材(70)が設けられており、
前記ノングレア加工面(61)は、前記透明絶縁性部材(70)における前記視認者側に露出する面側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のELディスプレイ表示装置。
【請求項4】
前記透明EL素子(10)における前記絶縁性基板(11)の前記一面とは反対側の他面側と、前記面発光体(30)における前記導光板(33)の前記凹凸部(31)側の面とが対向するように、前記透明EL素子(10)と前記面発光体(30)とが重ね合わされており、
前記ノングレア加工面(61)は、前記面発光体(30)における前記導光板(33)の前記平滑面(32)側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のELディスプレイ表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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