説明

EL発光シート

【課題】 外力に対する耐久性が高く、製造が容易で歩留まりも高く、製造コストを安価にすることができるEL発光シートを提供する。
【解決手段】 透光性のフイルム10の一方の面に、透明導電ペーストを塗布してなる前面電極層20と、EL発光層30と、誘電絶縁層35と、背面電極層40とをこの順番に設けてEL発光部50を構成する。前面電極層20からは前面引き出し用導電層11を引き出し、背面電極層40からは背面引き出し用導電層45を引き出す。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、EL発光シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、携帯電話機や各種リモコン装置などの入力操作部分には、暗所における視認性を得るために、自ら発光するエレクトロルミネッセンス(以下「EL」という)発光シートが利用されている。
【0003】EL発光シート70は、例えば図9に示すようにPET(ポリエチレンテレフタレート)製のフイルム80の一方の面全体にITO(酸化インジウム錫)膜を蒸着したものを用意し、前記ITO膜を前面電極81としてこの前面電極81の下にEL発光部83を設けて構成され、例えばその下にメンブレンスイッチ板100を配置し、一方フイルム80の上にモールド樹脂製のキートップ90を配置してスイッチ構造として使用する。
【0004】ここで前記EL発光部83は、具体的には前記前面電極81の上に蛍光体層と誘電体層と背面電極層とレジスト層とを積層することで構成されている。
【0005】またメンブレンスイッチ板100は、2枚のPET製のフイルム101,103をスペーサ105を介して積層しスペーサ105に設けた開口部107において一対の接点パターン109,111を対向して配置し、さらにフイルム101上にドーム形状のクリック板113を取り付けて構成されている。
【0006】そして前記前面電極81とEL発光部83中の背面電極層間に所定の交流電圧を印加すると、EL発光部83中の蛍光体層全体が面発光してキートップ90を明るく照光する。一方キートップ90を押圧すればフイルム80が押圧されて撓み、クリック板113が反転して一対の接点パターン109,111間がオンする。
【0007】しかしながら上記従来のEL発光シート70においては、前面電極81としてフイルム80に蒸着したITO膜を使用していたので、以下のような問題点があった。
【0008】■前面電極81はもろく、キートップ90による打撃、屈曲に耐えることができず、その耐久性に問題があった。
【0009】このためキートップ90による直接打撃を避け、フイルム80のキートップ90が押圧する部分に貫通孔を設けて貫通孔の周囲にリング状にEL発光部83を設ける方法も考えられる。しかしながらこの方法によると最も重要なキートップ90の中央部分を照光することができず、輝度ムラが生じ、照光効率が低下するという問題があった。
【0010】■ITO膜付きのフイルムは高価な上に傷み易く、取り扱いが難しいので製造コストが高くなってしまう。
【0011】■ITO着膜欠陥やITO非着膜領域があり、歩留まりが低下する。
【0012】■EL発光部83の部分及びEL発光部83から引き出されて引き出し回路となる部分以外の部分のITO膜は不用なのでこれをエッチング除去するか、或いは前記不要部分の上を絶縁する必要があるが、そうすると工数・コストがかさんでしまう。特に不要部分の上を絶縁処理した場合は、浮遊容量や不要な発光を引き起こして電力の損失につながる恐れがある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、外力に対する耐久性が高く、製造が容易で歩留まりも高く、製造コストを安価にすることができるEL発光シートを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するため本発明にかかるEL発光シートは、透光性のフイルムの一方の面の発光しようとする部分に、透明導電ペーストを塗布してなる前面電極層と、EL発光層と、誘電絶縁層と、背面電極層とをこの順番に設けてEL発光部を構成したことを特徴とする。また前記前面電極層からは前面引き出し用導電層を引き出し、一方前記背面電極層からも背面引き出し用導電層を引き出したことを特徴とする。前記EL発光部は、前記フイルム上に複数個設けられ、それぞれに接続された前面引き出し用導電層同士を接続すると共に、それぞれに接続された背面引き出し用導電層同士を接続し、前面引き出し用導電層と背面引き出し用導電層とは交差しないようにフイルム上に這いまわされていることを特徴とする。また前記フイルム上に設けた複数のEL発光部の間には、それぞれを仕切るスリットを設けたことを特徴とする。また前記前面電極層は、透明導電酸化物と樹脂バインダーとを必須要素とする透明導電ペーストを塗布によって形成することで構成されていることを特徴とする。また前記透明導電酸化物は酸化インジウム錫と導電性酸化亜鉛の混合物、若しくは導電性酸化亜鉛の単体であることを特徴とする。また前記透明導電ペーストは、ブロックイソシアネート化合物を含有することを特徴とする。また本発明にかかるEL発光シートは、透光性のフイルムの一方の面に、波長変換用蛍光顔料を含む前面電極層と、EL発光層と、誘電絶縁層と、背面電極層とをこの順番に設けてEL発光部を構成したことを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1〜図7は本発明を用いて構成しようとするEL発光シート(1枚のフイルム上に複数のEL発光部を設けた構造のもの)の1例の製造方法を示す図である。
【0016】即ちまず図1に示すように大きな寸法の透光性のある絶縁性のフイルム10を用意し、その上に前面引き出し用導電層11を印刷形成する。ここでフイルム10としては何らITO膜等が形成されていない通常のPET(ポリエチレンテレフタレート)製フイルム等を使用する。
【0017】また前面引き出し用導電層11は、銀ペーストを印刷することによって構成されている。この銀ペーストは基板上にスクリーン印刷される配線パターン用の通常の銀ペーストである。前面引き出し用導電層11には、下記するEL発光部50となる部分に接続される給電部13と給電部13から引き出される引出し部15とを具備しており、各給電部13には凹部14が形成されている。引き出し部15は各給電部13に接続されて引き出され、その端部を端子部17としている。
【0018】次に図2に示すように前記各給電部13の凹部14の部分に略長楕円形状(もちろん他の形状であっても良い)に透明導電ペーストを塗布することによって前面電極層20を形成する。前面電極層20の外周は前記凹部14の内周縁に接続される。凹部14の内周縁に接続するようにしたのは、前面電極層20は抵抗値が高いので前面電極層20の各部への供給電圧をできるだけ均一にして光ムラが生じないようにするためである。前面電極層20を形成するための透明導電ペーストは、透明導電酸化物と樹脂バインダーとを必須要素とするペーストであり、この実施形態ではさらにブロックイソシアネート化合物を含有させている。
【0019】ここで透明導電酸化物としては通常、酸化インジウム錫(ITO)の粉末が用いられるが、この実施形態の場合は、ITOの粉末と導電性酸化亜鉛の粉末の混合物、若しくは導電性酸化亜鉛の粉末単体を用いることとした。もちろん場合によってはITOの粉末単体を用いてもよい。
【0020】また前記ブロックイソシアネート化合物とは、分子内に活性基であるNCO基が2つ以上存在し、夫々をフェノールやオキシム等でマスクし安定化したものである。マスクしたフェノールやオキシム等は加熱により解離しNCO基が活性化することにより反応が開始する。ブロックイソシアネート化合物にはTDI系とHDI系がある。
【0021】このブロックイソシアネート化合物は、その化学的作用(前記活性化されたイソシアネートの活性基が有機物の残存官能基(例えば−OH,−COOH)に結合することによって密着する作用)によって、被着体、特に有機物(例えばPETフイルムや、印刷塗布膜等)の表面に対する密着性が改善し、密着性不足に起因するトラブルの発生を防止できる。
【0022】次に図3に示すように前面電極層20の上に、高誘電率樹脂と溶剤と電界発光型蛍光体粉よりなるペースト組成物を塗布・乾燥することでEL発光層30を形成する。
【0023】次に図4に示すようにEL発光層30と前面電極層20の全体を覆うように、高誘電率樹脂と溶剤と高誘電率無機粉(例えばチタン酸バリウム)よりなるペースト組成物を塗布・乾燥することで誘電絶縁層35を形成する。
【0024】次に図5に示すように例えばカーボンペーストや銀ペースト(又は両者を2層に)を印刷・乾燥することで背面電極層40を形成する。これによってEL発光部50が完成する。
【0025】次に図6に示すように各背面電極層40の外周縁に接続するように背面引き出し用導電層45を例えば銀ペーストを印刷・乾燥することで形成する。この銀ペーストは基板上にスクリーン印刷される配線パターン用の通常の銀ペーストである。背面引き出し用導電層45は各背面電極層40に接続されて引き出され、その端部を端子部47としている。前面引き出し用導電層11と背面引き出し用導電層45とは交差しないようにフイルム10上で這いまわされている。なお図示はしないがさらにこのフイルム10上にはその全面にレジスト層が印刷され、前記各印刷層が保護される。
【0026】そして図7に示すようにその外形をカットすると同時に各EL発光部50となる部分の外周を仕切るように貫通するスリット55を設ければ、この実施形態にかかるEL発光シート60が完成する。図8は図7に示すA‐A線における要部拡大概略断面図(但し各部材の厚みは実際よりもかなり厚く記載している)である。
【0027】そして端子部17と端子部47間に所定の交流電圧を印加すれば、各前面電極層20と背面電極層40間に交流電圧が印加され、EL発光層30の面全体が発光する。発光した光は透明な前面電極層20とフイルム10とを透過してフイルム10のEL発光部50を設けていない側の面(図8の部分B)を明るく照らし出す。
【0028】ところでこのEL発光シート60は、図7R>7,図8に示すものを裏返して、例えば前記図9に示すようにフイルム10側の上にキートップ90を、反対面側にメンブレンスイッチ板100を配置してスイッチ構造を構成して使用される。即ちキートップ90によってEL発光部50の部分が押圧される構造である。
【0029】しかしながら本発明にかかるEL発光部50は外力に対して強く、耐久性があるので、このような使用方法を行っても何ら問題ない。即ち本発明においては、前面電極層20として樹脂ベースの柔軟な透明導電ペーストを塗布したものを用いているので、耐衝撃性(耐打撃性、耐屈曲性)が高い。なお他のEL発光層30と誘電絶縁層35と背面電極層40も樹脂ベースなので、同様に耐衝撃性がある。つまり従来は前面電極層20として蒸着によって形成したITO膜を用いていたので柔軟性がなく、例え他の層に柔軟性があっても耐衝撃性が低かったが、本発明のように構成することでこれが改善できたのである。
【0030】特に本実施形態においては前面電極層20にブロックイソシアネート化合物を含有せしめたので、前述のようにフイルム10に対する密着強度が増し、さらに耐衝撃性が向上する。
【0031】このようにEL発光部50は外力に対して強いので、EL発光部50をキートップ90によって直接押圧する位置に設けることができ、キートップ90全体を輝度のムラなく照光でき、照光効率も良くできる。
【0032】また本発明によれば、上記作用・効果の他に、以下のような作用・効果をも発揮する。即ちITO膜を蒸着していない安価な通常のフイルム10を用いているため、コストを低くでき、また前述したITO膜に起因する欠陥・トラブルが回避できる。
【0033】また透明な前面電極層20を必要な部分のみに設けることができるので、材料も無駄にならずエッチングも不要で工数・製造コストの低減化が図れる。またフイルム10の前面電極層20を設けない部分を、本実施形態のように前面引き出し用導電層11や背面引き出し用導電層45の這いまわしに利用するなど、他の各種目的に利用できる。
【0034】さらに前面引き出し用導電層11と背面引き出し用導電層45とは交差しないようにフイルム10上に這いまわされているので、両者間の絶縁工程などが不要で、絶縁不足による不具合が回避でき、工数も削減される。
【0035】フイルム10上に設けた複数のEL発光部50の間に、それぞれを仕切るスリット55を設けたので、各EL発光部50が夫々独立可動し易くなる。従ってこの実施形態のようにEL発光シート60をキートップのバックライト用として用いた場合、キートップの動作を円滑にすることができる。
【0036】ところで発光する光の色彩を所定の色彩の光に変更したい場合は、前面電極層20を構成する透明導電ペースト中に波長変換用蛍光顔料を混合すれば良い。ここで波長変換用蛍光顔料とは、一旦光を吸収して別な波長の光を放出する性質を有する染料物質を、核となる粉末などに付着又は含浸させたものである。
【0037】前記従来例においては、ITO膜がフイルムに予め蒸着されていたのでこのITO膜自体に顔料を混合することはできず、従ってEL発光層30の部分に波長変換用蛍光顔料を混合させていた。そうするとEL発光層30を構成する電界発光型蛍光体粉がITO膜側に密着している部分は元の光の色彩のままITO膜側に放射されるので、この結果色彩にムラが生じる。なおこれを防止するためには波長変換用蛍光顔料層を別に設ける方法もあるが、この場合は工数が増えてしまう。これに対して本願実施形態の場合は、EL発光層30から発した光が全て波長変換用蛍光顔料を有する前面電極層20内を通過するので、色変換効率が良く、色ムラがなく色純度も高く、輝度の低下が少ない。また前面電極層20が波長変換用蛍光顔料層を兼ねるので、これを別に設ける必要もない。
【0038】次に上記実施形態において、前面電極層20を構成する透明導電酸化物としてITOと導電性酸化亜鉛の混合物、若しくは導電性酸化亜鉛の単体を用いた場合は、ITOの着色現象を軽減でき、色調選択範囲を拡大できる。即ち透明導電酸化物としてITOのみを用いた場合、前面電極層20はITO自体の色(モスグリーン)で着色されるため、波長変換用蛍光顔料を用いても色調選択範囲が狭くなる。これに対して導電性酸化亜鉛はほぼ白色なのでITOの着色現象を軽減でき、色調選択範囲を拡大できるのである。
【0039】〔実施例1〕以下本発明を適用した実施例1を説明する。製造するのは前記図1〜図8に示すEL発光シート60である。
【0040】まずPETフイルム(フイルム10)に銀導電ペースト(市販)をスクリーン印刷、焼成して前面引き出し用導電層11を設ける。次いで市販のITOペーストにTDI系ブロックイソシアネート(商品名”バーノックD−500”大日本インキ化学工業社製)をペースト全体量の1%(添加量は適宜増減可)加えたものを、スクリーン印刷、焼成して透明な前面電極層20とする。その後EL素子用蛍光体ペースト(高誘電率樹脂、溶剤、電界発光型蛍光体粉で構成、EL発光層30になる)と、誘電体ペースト(高誘電率樹脂、溶剤、チタン酸バリウムで構成、誘電絶縁層35になる)と、カーボン導電ペースト(背面電極層40になる)と、銀導電ペースト(背面引出し用導電層45になる)と、保護レジスト(市販絶縁レジスト)とをこの順にスクリーン印刷で塗布乾燥し、これを図7に示すように型抜きし、EL発光シート60とした。このEL発光シート60を図9に示すEL発光シート70の代わりにキースイッチのバックライトとして図9に示すものと同様に組み込み、EL発光部50(図9の83の部分に相当する)を通電点灯状態としたままキートップ90の反復押し下げ(オンオフ)試験を行った。その結果100万回押し下げてもEL発光部50に断線消灯、その他機械的電気的破壊は起こらなかった。
【0041】〔比較例1〕ITO蒸着膜付きのPETフイルムのITO膜上にEL素子用蛍光体ペースト、誘電体ペースト、カーボン導電ペースト、銀導電ペースト、保護レジストを上記実施例1と同様にスクリーン印刷で塗布・乾燥し、これを型抜きし、キースイッチのバックライトとして図9に示すものと同様に組み込み、通電点灯状態としたままキートップ90の反復押し下げ試験を行った。その結果50万回押し下げた時点で押圧される部分の一部に断線消灯部分が見られた。
【0042】〔実施例2〕実施例1の透明な前面電極層20を、市販のITOペーストに波長変換用蛍光顔料(商品名”FA45J(レモンイエロー)”若しくは”FA43(赤色)”シンロイヒ社製)を適量加えた後、TDI系ブロックイソシアネート(商品名”バーノックD−500”大日本インキ化学工業社製)をペースト全体量の1%加え、スクリーン印刷、焼成して構成した以外は実施例1と同一の方法で、キースイッチのバックライトとした。その結果、XYZ系色度座標における色度値が実施例1のものより夫々の波長変換用蛍光顔料固有の値の方向へシフトし、所定の着色効果が得られ、しかも微視的(接近して見ること)な色別れ現象は起こらず均一な色彩の発光が得られた。
【0043】〔比較例2〕比較例1のEL素子用蛍光体ペーストに、実施例2と同様の波長変換用蛍光顔料を適量加え、スクリーン印刷、焼成した以外は比較例1と同一の方法でキースイッチのバックライトとした。その結果、巨視的(遠くから見ること)には実施例2と同様の着色効果は得られたが、微視的には電界発光型蛍光体粉の部分とバインダー樹脂(高誘電率樹脂からなる部分)の部分とで色別れ現象が見られた。
【0044】次に図10は本発明を用いて構成しようとするEL発光シートの他の例の製造方法を示す図である。なお前記図1〜図7に示す実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0045】この実施形態の場合、まず図10(a)に示すようにフイルム10の上に略長楕円形状(他の形状でも良い)に透明導電ペーストを塗布することによって前面電極層20を形成する。この前面電極層20の場合、その外周の一部(下記する前面引出用導電層11に接続する部分)が外周から突出して接続部20aを形成している。
【0046】次に図10(b)に示すように前面電極層20の上に前記実施形態と同じ方法でEL発光層30を形成し、次に図10(c)に示すようにEL発光層30の全体を覆うように誘電絶縁層35を形成し、次に図10R>0(d)に示すように背面電極層40を形成し、これによってEL発光部50を完成する。
【0047】そして図10(e)に示すように背面電極層40に接続する背面引き出し用導電層45と、前面電極層20の接続部20aに接続する前面引き出し用導電層11とを同時に印刷形成し、さらに図示はしないがこのフイルム10上の全面にレジスト層を印刷し、図10(f)に示すようにその外形とスリット55を設ければ、この実施形態にかかるEL発光シートが完成する。このように構成すれば、前面引き出し用導電層11と背面引き出し用導電層45とが同時に印刷できるので、前記図1〜図7に示す実施形態に比べて印刷工程をさらに減らすことができる。このように構成できるのは、前面電極層20の外周に突出する接続部20aを設け、これに前面引き出し用導電層11を接続するように構成したからである。
【0048】
【発明の効果】以上詳細に説明したように本発明によれば以下のような優れた効果を有する。
■前面電極層を透明導電ペーストを塗布することで形成したので、外力に対して耐衝撃性(耐打撃性、耐屈曲性)が高い。このように耐衝撃性が高いので、例えばEL発光部をキートップ等の押圧部材によって直接押圧することもでき、その場合押圧部材全体を輝度のムラなく照光でき、照光効率も良くできる。
【0049】■特に前面電極層にブロックイソシアネート化合物を含有せしめた場合は、さらに耐衝撃性が向上する。
【0050】■ITO膜を蒸着していない通常のフイルムを用いているため、コストが低く、またITO膜に起因する欠陥・トラブルが回避できる。
【0051】■透明な前面電極層を必要な部分のみに設けることができるので、材料の無駄にならずエッチングも不要で工数・製造コストの低減化が図れる。またフイルムの前面電極層を設けない部分を、前面引き出し用導電層や背面引き出し用導電層の這いまわしに利用するなど、他の各種目的に利用できる。
【0052】■前面引き出し用導電層と背面引き出し用導電層とは交差しないようにフイルム上に這いまわすことができるので、両者間を絶縁するための絶縁層の塗布工程などが不要で、また絶縁不足による不具合が回避でき、工数も削減される。
【0053】■フイルム上に設けた複数のEL発光部の間に、それぞれを仕切るスリットを設けた場合は、各EL発光部が夫々独立可動し易くなる。従ってEL発光シートをキートップ等の押圧部材のバックライトとして用いた場合、押圧部材の動作を円滑にすることができる。
【0054】■前面電極層に波長変換用蛍光顔料を混合した場合は、EL発光層から発された光が全て波長変換用蛍光顔料を有する前面電極層内を通過するので、色変換効率が良く、色ムラがなく色純度も高く、輝度の低下が少ない。また前面電極層が波長変換用蛍光顔料層を兼ねるので、この層を別に設ける必要もない。
【0055】■前面電極層を構成する透明導電酸化物としてITOと導電性酸化亜鉛の混合物、若しくは導電性酸化亜鉛の単体を用いた場合は、ITOの着色現象を軽減又は防止でき、色調選択範囲を拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を用いたEL発光シートの製造方法を示す図である。
【図2】本発明を用いたEL発光シートの製造方法を示す図である。
【図3】本発明を用いたEL発光シートの製造方法を示す図である。
【図4】本発明を用いたEL発光シートの製造方法を示す図である。
【図5】本発明を用いたEL発光シートの製造方法を示す図である。
【図6】本発明を用いたEL発光シートの製造方法を示す図である。
【図7】完成したEL発光シート60を示す図である。
【図8】図7に示すA‐A線における要部拡大概略断面図である。
【図9】EL発光シートを用いて構成したスイッチ構造を示す概略断面図である。
【図10】本発明を用いたEL発光シートの他の例の製造方法を示す図である。
【符号の説明】
10 フイルム
11 前面引き出し用導電層
13 給電部
15 引出し部
17 端子部
20 前面電極層
30 EL発光層
35 誘電絶縁層
40 背面電極層
45 背面引き出し用導電層
47 端子部
50 EL発光部
55 スリット
60 EL発光シート
90 キートップ
100 メンブレンスイッチ板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 透光性のフイルムの一方の面の発光しようとする部分に、透明導電ペーストを塗布してなる前面電極層と、EL発光層と、誘電絶縁層と、背面電極層とをこの順番に設けてEL発光部を構成したことを特徴とするEL発光シート。
【請求項2】 前記前面電極層からは前面引き出し用導電層を引き出し、一方前記背面電極層からも背面引き出し用導電層を引き出したことを特徴とする請求項1記載のEL発光シート。
【請求項3】 前記EL発光部は、前記フイルム上に複数個設けられ、それぞれに接続された前面引き出し用導電層同士を接続すると共に、それぞれに接続された背面引き出し用導電層同士を接続し、前面引き出し用導電層と背面引き出し用導電層とは交差しないようにフイルム上に這いまわされていることを特徴とする請求項2記載のEL発光シート。
【請求項4】 前記フイルム上に設けた複数のEL発光部の間には、それぞれを仕切るスリットを設けたことを特徴とする請求項1又は2又は3記載のEL発光シート。
【請求項5】 前記前面電極層は、透明導電酸化物と樹脂バインダーとを必須要素とする透明導電ペーストを塗布によって形成することで構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の内の何れか1項記載のEL発光シート。
【請求項6】 前記透明導電酸化物は酸化インジウム錫と導電性酸化亜鉛の混合物、若しくは導電性酸化亜鉛の単体であることを特徴とする請求項5記載のEL発光シート。
【請求項7】 前記透明導電ペーストは、ブロックイソシアネート化合物を含有することを特徴とする請求項1乃至6の内の何れか1項記載のEL発光シート。
【請求項8】 透光性のフイルムの一方の面に、波長変換用蛍光顔料を含む前面電極層と、EL発光層と、誘電絶縁層と、背面電極層とをこの順番に設けてEL発光部を構成したことを特徴とするEL発光シート。

【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図10】
image rotate


【公開番号】特開2001−185366(P2001−185366A)
【公開日】平成13年7月6日(2001.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−367419
【出願日】平成11年12月24日(1999.12.24)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】