説明

EL表示装置及びそれを用いたデジタルカメラ

【課題】 撮像素子で撮影した被写体画像を表示するモニタ装置に適用可能なEL表示装置を提供するとともに、モニタ装置の大型化を実現するとともに、カメラの各種スイッチの操作性を改善したデジタルカメラを提供する。
【解決手段】 撮像素子で撮像した被写体画像を表示するモニタ装置9を備えるデジタルカメラであって、モニタ装置9をELディスプレイ10とスイッチ基板11とで構成し、カメラ本体1の後面のほぼ全領域にわたって配設し、ELディスプレイ10の表面を押圧してスイッチ動作をさせる。カメラ本体を小型化してもモニタ画面は小さくならず、撮像スルー画像や再生像が見やすくなる。モニタ装置の表示を利用して各種操作用のスイッチを構成するのでスイッチの配列に余裕ができ、スイッチ接片を弾性変形してオン・オフ動作させることでクリック感が得られてスイッチ操作性を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はEL(エレクトロルミネッセンス)表示装置と、当該EL表示装置をモニタ装置として構成したデジタルカメラに関し、特に被写体画像を表示するモニタ装置の大型化を図ったデジタルカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在提供されているデジタルカメラのモニタ装置としてLCD(液晶表示装置)が用いられている。このモニタ装置はカメラの後面に配設されるが、カメラの後面にはモニタ装置を見ながら操作する各種スイッチが配設されるため、モニタ装置の表示画面はこれらスイッチと干渉しない領域に配設せざるを得ず、画面面積を大きくすることには限界がある。特に近年では、カメラサイズの小型化が進められているためモニタ装置の表示面積を大きくするのはますます難しくなっている。そのため、モニタ装置に表示される被写体画像のフレーミングや撮影した画像のピントを確認することが難しい。また、モニタ装置に各種の設定画面を表示して例えばモード設定を行うように構成しているが、文字が小さくて見にくく、設定操作が難しいものになっている。
【0003】
このような問題に対し、いわゆるタッチパネルを利用することが考えられる。例えば、特許文献1では、携帯電話機の入力装置として、EL(エレクトロルミネッセンス)装置とタッチパネルとを積層して配置し、EL装置の表面を指等で押圧して下層のタッチパネルをスイッチ動作させるようにした入力装置が提案されている。この入力装置を用いれば、EL装置に表示する文字等を大きく表示することができ、モード設定等の各種設定操作の容易化が可能になる。
【特許文献1】特開2005−63413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は入力装置であり、タッチパネルのスイッチ機能に対応した表示を行うのに限られている。そのため、特許文献1の技術をデジタルカメラに適用した場合には、各種の設定の操作性を改善することができるようになり、またEL装置で各種スイッチを構成することでスイッチが占有する面積を低減することが可能になり、その分モニタ装置を大型化する上では有利になる。しかしながら、特許文献1の入力装置に被写体画像を表示することはできないため、少なくとも入力装置を配設する領域には依然としてモニタ装置を配設することができず、モニタ装置をカメラの後面の全領域にわたるまで拡大し、カメラを小型化する一方でモニタ装置を大型化することは困難である。また、特許文献1の入力装置ではEL装置の表面に指等で触れてタッチパネルをスイッチ動作させる際に、タッチパネルにクリック感が得られないため、スイッチが動作したことを指で感じることができず、接触が不十分でスイッチが動作しない場合もあり、撮影者が不安を感じてしまうこともある。
【0005】
本発明の目的は、スイッチ動作を触感することが可能なEL表示装置と、このEL表示装置をモニタ装置として構成することでモニタ装置の大型化を実現したデジタルカメラを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、任意の画像を表示するように構成されたEL装置と、EL装置の内面に沿って配設され、EL装置の表面を押圧したときに動作するスイッチ手段を備え、スイッチ手段は弾性変形されて接点をオン・オフ動作させるスイッチで構成されていることを特徴とする。また、本発明は、撮像素子で撮像した被写体画像を表示するモニタ装置を備えるデジタルカメラであって、モニタ装置をEL表示装置で構成してカメラ本体の一面のほぼ全領域にわたって配設し、当該EL表示装置を前記EL表示装置で構成する。EL装置には被写体画像の他に各種モード情報やスイッチ手段の機能を示す表示を行うことも可能である。また、スイッチ手段は、例えば絶縁基板の表面にスイッチパッドが形成され、押圧されたときに弾性変形してスイッチパッドに接触するスイッチ片を有する構成とする。
【0007】
また、本発明は、カメラ本体にはいずれか一方を選択して有効にする2つのレリーズ釦が左右位置に設けられ、有効にされたレリーズ釦に対応してモニタ装置の表示形態を変更する構成としてもよい。この場合において、撮影者による利き腕設定が可能であり、当該利き腕設定によりいずれか一方のレリーズ釦を有効にすることを可能にする。例えば、右利き設定のときにはカメラ本体の背面から見て右側のレリーズ釦を有効にするとともにモニタ装置の表示面の右側にスイッチ手段の機能を表示し、左利き設定のときにはカメラ本体の背面から見て左側のレリーズ釦を有効にするとともにモニタ装置の表示面の左側にスイッチ手段の機能を表示する。あるいは、自分撮り撮影のときには左右のいずれかのレリーズ釦を有効にし、かつこれを表示する。また、各レリーズ釦には発光素子が設けられ、有効とされたレリーズ釦の発光素子を発光させる構成とする。あるいは、レリーズ釦はEL装置と、その内側に配設されたスイッチ手段とで構成され、有効にされたレリーズ釦側のEL装置がレリーズ釦表示を行う構成とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、EL表示装置を構成しているEL装置の表面を指で押圧してスイッチ手段のスイッチを動作させたときに、スイッチ手段の接点が弾性変形してオン・オフ動作するため、スイッチ動作が触感でき、確実なスイッチ動作が可能になる。また、モニタ装置の表示画面をカメラ本体の後面のほぼ全領域にわたって形成するのでカメラ本体を小型化してもモニタ画面が小さくなることはなく、撮像スルー画像による撮影フレーミングが容易になり、再生像のピントの確認が容易になる。さらに、モニタ装置の表示を利用して各種操作用のスイッチを構成するのでスイッチの配列に余裕ができ、スイッチ操作性を高めるとともにスイッチ機能を大きく表示して見易くすることができる。
【0009】
また、本発明によれば、左右にレリーズ釦を備えて、設定によりいずれかのレリーズ釦を有効にしているので、撮影者の利き腕に左右されず、しかも自分撮りの場合でも撮影時の操作性を改善するとともに、モード設定等の各種スイッチの操作性を向上することができる。この場合、有効となるレリーズ釦に対応させてモニタ装置の表示形態を変更させることで、モニタ装置で表示されるスイッチ機能の操作性を改善し、またスルー画像や再生画像が見易くなる。
【実施例1】
【0010】
次に、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1及び図2は本発明の実施例1のデジタルカメラを前方及び後方から見たそれぞれの外観斜視図である。実施例1のデジタルカメラはカメラ本体1の前面のほぼ中央位置に出没可能な撮影レンズ2が配設される。また、撮影レンズ2の上側には自分撮りミラー3とストロボ4が配設される。自分撮りミラー3は撮影者自身を撮影する際に自分撮りミラー3で反射される自身を確認することで撮影範囲を設定する際に利用するものである。また、前記カメラ本体1の上面にはメインスイッチ5、再生釦6、ディスプレイ表示釦7が配設され、これらの両側には左レリーズ釦8Lと右レリーズ釦8Rがそれぞれ配設される。ここで左レリーズ釦8Lと右レリーズ釦8Rはそれぞれカメラ本体1の後面側から見た左右を示している。これらの左レリーズ釦8Lと右レリーズ釦8Rは後述する設定によりいずれかのレリーズ釦を押下することにより撮影を可能とするものである。さらに、前記カメラ本体1の後面にはほぼ全面領域にわたって表示面を有するEL装置(ELディスプレイ)10と、このELディスプレイ10の内側に配設されて複数のスイッチSWを有するスイッチ基板11を含むEL表示装置として構成されたモニタ装置9が配設される。
【0011】
図3(a)は前記モニタ装置9の図2のA−A線に相当する箇所の拡大断面図である。モニタ装置9、すなわちEL表示装置は前述のように表面側のELディスプレイ10と、その内側の下層に配設されたスイッチ基板11とで構成される。スイッチ基板11は絶縁基板111の表面に所要の銅箔パターンでドーナツ状のスイッチパッド112及びその中心位置に配されたスイッチパッド113と、図には表れない回路パターンが形成されるとともに、スイッチパッド112上に半円弧状に湾曲して配設された導電性バネ材からなるスイッチ片114で構成されたスイッチSWが構成されている。前記スイッチ片114はスイッチパッド113上を跨ぐようにして周辺部がスイッチパッド112に電気的及び機械的に接続されており、図3(b)に示すように、ELディスプレイ10の表面を指F等で押圧して内側に弾性変形させるこことによりスイッチ片114の中央部分を表面側から押圧して弾性変形させ、その中央部分をスイッチパッド113に接触させることでスイッチSWをオンさせるものである。このスイッチSWはスイッチ基板11の複数の所要箇所に配設されており、この実施例1のモニタ装置9では、図2に示したように、カメラ本体1の背面のモニタ装置9の領域内の左右各領域に横2列、縦4列にスイッチSWが配設されている。
【0012】
前記ELディスプレイ10はフルカラーELディスプレイとして構成されており、全体として若干の可撓性のあるシート状に形成され、基板側フィルム101と裏面側フィルム102との間にEL部103を挟んだ構成である。図4(a)はその一部の拡大断面図であり、基板側フィルム101は不透明な樹脂フィルムで構成され、表面側フィルム102は透明な樹脂フィルムで構成される。例えば、厚さが75μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート),PES(ポリエーテルサルフォン),PAr(ポリアリレート),PC(ポリカーボネート)等の不透明及び透明な樹脂フィルムで構成される。
【0013】
EL部103は、R(赤色),G(緑色),B(青色)の各画素104を平面マトリクス配列したものである。図4(b)に画素104の一部を拡大図示するように、前記表面側フィルム102の裏面上に防湿バリア膜111が形成され、その上にITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウム錫)からなる25〜100 nmの膜厚の透明な基板側電極112が所要パターンに形成され、その上に各画素に対応して絶縁層113、発光層114、絶縁層115が形成される。さらにその上にIZO(Indium Zinc Oxide :酸化インジウム亜鉛)電極からなる25〜100 nmの膜厚の透明な表面側電極116、防湿バリア層117が形成されたものである。前記各絶縁層113,115は0.2 〜0.3 μmの膜厚の二酸化シリコン膜が用いられ、前記防湿バリア膜111,117は同程度の膜厚の窒化シリコン膜が用いられる。発光層114は0.5 〜1μmの厚さであり、無機ELとして構成したときには赤色画素にCaS:Eu,ZnS:Sm等、緑色画素にZn:Tb等、青色画素にSrS:Ce,CaGa24:Ce等が用いられる。また、有機ELとして構成したときには赤色画素にEu(DBM)3(Phen)(Eu錯体)、緑色画素にAlq(8−キノリノラトアルミニウム錯体)、青色画素にDPVBi(ジスチリル誘導体)が用いられる。
【0014】
このELディスプレイ10は基板側電極112と表面側電極116との間に所要の電圧を印加して発光層に高電界を印加することにより発光層114がそれぞれ発光して赤色光、緑色光、青色光を出射する。したがって、所望の画素を選択して発光させることで、ELディスプレイ10において所望のカラーパターン(カラー画像)を表示させることが可能である。また、両電極112,116間に電圧を印加しないときにはELディスプレイ10は透明な状態となるが、基板側フィルムが不透明であるためELディスプレイ10の内側の前記スイッチ基板11が表面側から露見されることはない。
【0015】
前記左右の各レリーズ釦8L,8Rは、図5(a)に図1のB−B線拡大断面図を示すように、スイッチ基板81に光透過性の樹脂材で釦体82を形成し、その一端部に設けた易変形部83によりカメラ本体1の上飾り1aに支持している。この釦体82の表面は前記上飾り1aに設けた開口1bから露出させて撮影者が押下できるように構成される。また、スイッチ基板81は前記モニタ装置9のスイッチ基板11と同様に構成されており、絶縁基板811上に形成されたスイッチパッド812,813と円弧状のスイッチ片814とで構成される。さらに、釦体82の下面には前記スイッチ片814を覆うように別のスイッチパッド816上に一端支持された導電性のバネ材からなる第2スイッチ片815が当接されている。また、釦体82の直下のスイッチ基板81には所要の色で発光するLED(発光ダイオード)84が搭載されている。
【0016】
このレリーズ釦では、図5(b)に示すように、釦体82を指Fで半分だけ押下したときに第2スイッチ片815を弾性変形して下方に撓めてスイッチ片814に接触してスイッチパッド816と812を導通させてオン状態となり、測光スイッチとして動作する。さらに、図5(c)に示すように、釦体82を押下して全押しすると、第2スイッチ片815と共にスイッチ片814が弾性変形して下方に撓められてスイッチパッド813に接触してスイッチパッド812と813を導通させてオン状態となり、レリーズスイッチとして動作する。また、LED84が発光したときにはその光は釦体82を透過してカメラの上方から視認できるようになっている。
【0017】
図6は実施例1のカメラのブロック構成図である。撮影レンズ2で結像された被写体像をシャッタ202で絞り、光学ローパスフィルタ203を通して撮像したCCD素子等で構成される撮像素子201からの撮像信号はアンプ(AMP)204で増幅され、A/D変換器205においてデジタルの画像信号に変換される。このデジタル画像信号は信号処理回路206においてカラープロセス処理やガンマ補正等の所定の信号処理が施され、圧縮回路207において圧縮され、あるいは圧縮されることなくVRAM(画像メモリ)208に書き込まれる。前記撮像素子201は、CPU200がクロックジェネレータ209を介してCCDドライバ210を制御することによって、撮像時における撮像素子201での蓄積時間を設定することが可能にされている。
【0018】
前記CPU200は被写体を撮像する際には撮像素子201で撮像した撮像信号に基づいてAF(自動焦点)駆動機構211を制御する。また、シャッタ・絞り駆動機構212を制御してシャッタを兼用している前記絞り202を制御する。また、撮影レンズ2の焦点距離を変化させるズーム機構213を制御する。さらに、前記ストロボ4を発光させるストロボ制御部214を制御する。また、前記撮像素子201の撮像信号を利用して露出制御部215を制御し、露出を測定する。また、前記ELディスプレイ10を駆動して被写体画像や所定の表示パターンの表示を行うためのEL駆動回路216が設けられており、前記再生釦6やディスプレイ表示釦7が操作されたときにCPU200はEL駆動回路216を動作させてELディスプレイ10での表示を行うことが可能とされている。
【0019】
前記CPU200には、メインスイッチ5の操作情報と、左右の各レリーズ釦8L,8Rの押し込みにより動作される測光スイッチとレリーズスイッチのスイッチ情報と、再生釦6及びディスプレイ表示釦7の各操作情報が入力される。また、前記モニタ装置9を構成しているスイッチ基板11のスイッチ情報が入力可能とされている。なお、実施例1ではディスプレイ表示釦7を所定時間だけ押し続けるとモニタ装置9はモード設定メニュー表示となり、表示されたメニューによりスイッチSWを操作することでモニタ装置9に表示されたモードへのモード設定が可能に構成されている。
【0020】
以上の構成のデジタルカメラにおける撮影フローを図7のメインフローチャートと図8のサブフローチャートを参照して説明する。電池室に電池が挿入されて電池蓋が閉じると(S101,S102)、CPU200は内蔵カウンタのカウント値NをN=0に設定する(S103)。メインスイッチ5がオンされたことを確認すると(S104)、カウント値NをN=N+1とする(S105)。そして、カウント値を判定し(S106)、カウント値がN=1のときには、撮影者に「利き腕設定」を行わせる(S107)。このときにはモニタ装置9は強制的に「利き腕設定」表示となり、撮影者は「右利き」あるいは「左利き」のいずれかを設定する。ステップS106においてカウント値NがN≧2のときには既に「利き腕設定」が行われているのでステップS107は行わない。
【0021】
「利き腕設定」が完了すると、モード設定を含む初期設定用の各種入力操作が行われる(S108)。この入力操作では、例えば、ステップS107において「右利き」に設定されたときには、モニタ装置9の撮影モード設定画面は図9(a)のように、モニタ装置9の画面の左領域にメニューが表示され、右領域に複数のスイッチSWにそれぞれ規定されるスイッチ機能が表示される。これらのスイッチ機能の表示はスイッチ基板11に配設した各スイッチSWに対応する位置であり、撮影者は表示された機能位置の画面、すなわちELディスプレイ10の表面を図3(b)に示したように押圧することで下層に配設されているスイッチ基板11のスイッチSWをオン動作させることができ、各種設定が可能になる。したがって、右利きの撮影者が右手でスイッチ操作を行うのに有利になる。また、ステップS107において「左利き」に設定されたときには、撮影モード設定画面は図9(b)のように、モニタ装置9の画面の右領域にメニューが表示され、左領域に各スイッチのスイッチ機能が表示される。この場合は左利きの撮影者が左手でスイッチ装置を行うのに有利になる。
【0022】
また、ステップS107において「利き腕設定」が行われたときには、CPU200は右利きに設定されたときには右レリーズ釦8RのLED84を発光するとともに、以降は右レリーズ釦8Rの測光スイッチとレリーズスイッチを有効とするようにカメラを設定する。これにより、撮影者は発光された右レリーズ釦8Rが有効であることを認識し、右手でカメラを持って右レリーズ釦を用いて撮影を行うことが可能になる。左利きに設定されたときには左レリーズ釦8LのLED84を発光し、以降は左レリーズ釦8Lの測光スイッチとレリーズスイッチを有効とするようにカメラを設定する。
【0023】
次いで、CPU200は「利き腕設定」の設定を確認すると(S110)、「自分撮り設定」が行われているか否かを判断する(S111)。この「自分撮り設定」はステップS108における入力操作時に設定する。この「自分撮り設定」が行われていないときは設定をそのままとするが、「自分撮り設定」が行われたときにはCPU200は左右のレリーズ釦8L,8Rに対する設定を変更する。すなわち、右レリーズ釦8Rを有効にする設定が行われていたときには、左レリーズ釦8LのLED84に発光を切り替えるとともに、以降は左レリーズ釦8Lの測光スイッチとレリーズスイッチを有効とするように設定を変更する(S112)。これにより、撮影者は左レリーズ釦8Lが有効であることを認識し、右手で保持したカメラを自分に向けて構え、右手で左レリーズ釦8Lを操作しての撮影が可能になる。逆に、左レリーズ釦8Lを有効にする設定が行われていたときには、右レリーズ釦8RのLED84に発光を切り替えるとともに、以降は右レリーズ釦8Rの測光スイッチとレリーズスイッチを有効とするように設定を変更する(S112)。これにより、撮影者は右レリーズ釦8Rが有効であることを認識し、左手で保持したカメラを自分に向けて構え、左手で右レリーズ釦8Rを操作しての撮影が可能になる。しかる後、CPU200は、メインスイッチがオフされていないことを確認した上で(S113)、撮像フローS114を実行する。
【0024】
この撮像フローS114は、図8に示すように、露出制御部215において測光を行い(S201)、次いで撮像素子201で撮像した被写体画像に基づくコントラスト法によりAF駆動機構211を駆動して焦点合わせを行う(S202)。そして、撮像素子201で撮像した被写体画像のスルー画像をモニタ装置9のELディスプレイ10に表示する(S203)。このとき、CPU200はカメラが「右利き」に設定されているときには、図10(a)のように、モニタ装置9の背面から見て左側の領域にスルー画像TVを表示し、右側の領域に各種操作スイッチの表示、ここではズーム機構のテレ、ワイド、及びストロボの各表示を行う。これらの表示はスイッチ基板11に配設した各スイッチSWに対応する位置であることは言うまでもない。したがって、撮影者はカメラを保持している右手の親指等でズーム操作やストロボ操作を行うことが可能になる。この表示を利用して撮影者がズーミング操作を行うことで、ズーム機構213のズーム設定が行われ、モニタ装置9での被写体画像の表示は設定された焦点距離でのスルー画像となる(S204)。また、カメラが「左利き」に設定されているときには、図10(b)のように、モニタ装置9の背面から見て右側の領域にスルー画像TVを表示し、左側の領域にズーム機構のテレ、ワイド、及びストロボの各操作スイッチの表示を行う。したがって、撮影者はカメラを保持している左手の親指等でズーム操作やストロボ操作を行うことが可能になる。
【0025】
しかる上で、有効にされたレリーズ釦8R又は8Lが半押されると測光スイッチがオンするため、CPU200は測光を行い(S205)、およびAFコントラスト法による焦点合わせ(S206)を行い、絞り値とシャッタ速度を決定する(S207)。次いで、当該レリーズ釦8R又は8Lが全押しされると(S208)、CPU200は撮像素子201で撮像した被写体の撮像信号から画像を得る処理を行い、同時に撮像した被写体画像をモニタ装置9に表示する(S209)。さらに得られた画像のデータをメモリに記録する(S210)。記録された画像は再生釦6を操作することでモニタ装置9に表示することが可能である。その後は、図7のフローにおいて、メインスイッチ5の状態を判断し(S115)、メインスイッチ5がオンであるときにはステップS108に戻る。
【0026】
このように、実施例1のデジタルカメラでは、モニタ装置9の表示画面をカメラ本体1の後面のほぼ全領域にわたって形成しているので、カメラ本体1を小型化しても表示画面が小さくなることはなく、モニタ装置9に表示された被写体の撮像スルー画像による撮影フレーミングが容易になり、また再生像のピントの確認が容易になる。また、モニタ装置9の表示を利用してスイッチ基板11の各スイッチSWを種々のスイッチ機能に割り当てることができるので、多種類のスイッチを少ない数のスイッチで構成でき、スイッチの配列に余裕ができ、スイッチ操作性を高めることができる。特に、ELディスプレイ10の表面を指で押圧して凹ませることでスイッチ基板11のスイッチSWを構成しているスイッチ片114を弾性変形してオン・オフ動作させるので、スイッチ片114を弾性変形した際に触感としてクリック感が得られることになり、撮影者はスイッチ動作が確実に行われたことを確認することができ、誤操作の発生を未然に防止するとともに安心感を与えることができる。また、同時にスイッチ機能の表示を大きくして見易くすることができる。さらに、実施例1では、左右にレリーズ釦8L,8Rを備えて、設定によりいずれかのレリーズ釦を有効にしているので、撮影者の利き腕に左右されず、しかも自分撮りの場合でも撮影時の操作性を改善するとともに、モード設定等の各種スイッチの操作性を向上することができる。
【0027】
実施例1では「利き腕設定」及び「自分撮り設定」に基づいて有効となるレリーズ釦を設定しているが、これらの設定を行うことなく、撮影者が左右のレリーズ釦8L,8Rのいずれか一方を押した時点でCPU200が当該押下されたレリーズ釦が左右のいずれかであるかを認識し、認識したレリーズ釦での撮影操作に対応した形態でモニタ装置9に被写体画像や複数のスイッチの各機能の表示を行うようにしてもよい。これにより、右利きあるいは左利きのいずれの場合、あるいは自分撮りの場合でも撮影を好適に行うことが可能になる。
【実施例2】
【0028】
図11は実施例2のデジタルカメラを前側から見た斜視図であり、実施例1と同一部分には同一符号を付してある。この実施例2では、左右の各レリーズ釦8L,8RをELディスプレイとスイッチとで構成し、ELディスプレイによってレリーズ釦の有効性を表示したものである。すなわち、図12は図11のC−C線に沿う拡大断面図であり、この図では左レリーズ釦8Lの釦体の代わりにELディスプレイ10を配設し、ELディスプレイ10の直下には実施例1のレリーズ釦と同様なスイッチ基板81を配設して左レリーズ釦8Lを構成した例を示している。ELディスプレイ10は上飾り1aの開口1b内に嵌合状態に支持している。スイッチ基板81については実施例1の図5と同じ符号を付してある。すなわち、スイッチパッド812,813,816を設けた絶縁基板811上に導電性バネ材からなるスイッチ片814を設け、その上に設けた第2スイッチ片815をELディスプレイ10の基側フィルムに接触させたものである。第2スイッチ片815とスイッチ片814とで測光スイッチが構成され、スイッチ片814とスイッチパッド813とでレリーズスイッチが構成される。
【0029】
この実施例2では、左右のレリーズ釦8L,8RのいずれかのELディスプレイ10を選択した上で発光させ、あるいは所要の表示を行うことにより、発光あるいは表示されたELディスプレイ10をレリーズ釦として機能させることができる。発光あるいは表示されたELディスプレイ10を指等で押圧することで、図5に示したように第2スイッチ片815が弾性変形され、さらにスイッチ片814が弾性変形されることで測光スイッチ、レリーズスイッチをオンさせることができる。このようにすることで、実施例1のレリーズ釦の釦体82とLED84をELディスプレイ10で兼用した構成にでき、構成が簡略化できる。このとき、ELディスプレイ10を指で押圧して凹ませるとスイッチ基板81の第2スイッチ片815とスイッチ片814を順次弾性変形させてスイッチ動作させるので、測光スイッチ及びレリーズスイッチのいずれの操作時にもクリック感を得ることができ、確実なスイッチ操作が可能になる。また、この実施例2ではレリーズ釦として有効でない側のELディスプレイの表示を適宜に変更することで、当該レリーズ釦を一時的に他の機能のスイッチ釦として機能させることも可能である。
【0030】
実施例2のデジタルカメラでも、モニタ装置の表示画面をカメラ本体の後面のほぼ全領域にわたって形成でき、カメラ本体を小型化してもモニタ画面が小さくなることはなく、撮像スルー画像による撮影フレーミングが容易になり、再生像のピントの確認が容易になる。また、モニタ装置の表示を利用して各種操作用のスイッチを構成することでスイッチの配列に余裕ができ、スイッチ操作性を高めるとともにスイッチ機能を大きく表示して見易くすることができる。この場合でもスイッチのクリック感が得られることは言うまでもない。さらに、左右にレリーズ釦を備えて、設定によりいずれかのレリーズ釦を有効にしているので、撮影者の利き腕に左右されず、しかも自分撮りの場合でも撮影時の操作性を改善するとともに、モード設定等の各種スイッチの操作性を向上することができる。特に、有効となるレリーズ釦をELディスプレイにより表示するので、有効なレリーズ釦を確実に確認することができ、シャッターチャンスを逃がすようなこともない。
【0031】
以上の実施例では、本発明のEL表示装置をレンズシャッタ式のデジタルカメラに適用したが、モニタ装置の大型化を図ることを目的とするものであればデジタル一眼レフカメラにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1のデジタルカメラを前方から見た斜視図である。
【図2】実施例1のデジタルカメラを後方から見た斜視図である。
【図3】図2のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図4】ELディスプレイの拡大断面図である。
【図5】図1のB−B線に沿う拡大断面図である。
【図6】実施例1のデジタルカメラのブロック構成図である。
【図7】動作を説明するためのメインフローチャートである。
【図8】サブフローチャートである。
【図9】モニタ装置におけるメニュー表示の一例を示す図である。
【図10】モニタ装置におけるスルー画像の表示の一例を示す図である。
【図11】実施例2のデジタルカメラを前方から見た斜視図である。
【図12】図11のC−C線に沿う拡大断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 カメラ本体
5 メインスイッチ
6 再生釦
7 ディスプレイ表示釦
8L,8R レリーズ釦
9 モニタ装置
10 ELディスプレイ
11 スイッチ基板
SW スイッチ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の画像を表示するように構成されたEL(エレクトロルミネッセンス)装置と、前記EL装置の内面に沿って配設され、前記EL装置の表面を押圧したときに動作するスイッチ手段を備え、前記スイッチ手段は弾性変形されて接点をオン・オフ動作させるスイッチで構成されていることを特徴とするEL表示装置。
【請求項2】
撮像素子で撮像した被写体画像を表示するモニタ装置を備えるデジタルカメラであって、前記モニタ装置をEL表示装置で構成してカメラ本体の一面のほぼ全領域にわたって配設し、前記EL表示装置を請求項1に記載のEL表示装置で構成したことを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項3】
前記EL装置は前記被写体画像の他に各種モード情報や前記スイッチ手段の機能を示す表示を行うことを特徴とする請求項2に記載のデジタルカメラ。
【請求項4】
前記スイッチ手段は絶縁基板の表面にスイッチパッドが形成され、押圧されたときに弾性変形してスイッチパッドに接触するスイッチ片を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のデジタルカメラ。
【請求項5】
前記カメラ本体にはいずれか一方を選択して有効にする2つのレリーズ釦が左右位置に設けられ、有効にされたレリーズ釦に対応して前記モニタ装置の表示形態を変更することを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のデジタルカメラ。
【請求項6】
撮影者による利き腕設定が可能であり、当該利き腕設定によりいずれか一方のレリーズ釦を有効にすることを特徴とする請求項5に記載のデジタルカメラ。
【請求項7】
右利き設定のときにはカメラ本体の背面から見て右側のレリーズ釦を有効にするとともにモニタ装置の表示面の右側にスイッチ手段の機能を表示し、左利き設定のときにはカメラ本体の背面から見て左側のレリーズ釦を有効にするとともにモニタ装置の表示面の左側にスイッチ手段の機能を表示することを特徴とする請求項6に記載のデジタルカメラ。
【請求項8】
自分撮り設定のときには右側又は左側のいずれかのレリーズ釦を有効にするとともに、有効にしたレリーズ釦を表示することを特徴とする請求項6に記載のデジタルカメラ。
【請求項9】
前記各レリーズ釦には発光素子が設けられ、有効とされたレリーズ釦の発光素子を発光させることを特徴とする請求項7又は8に記載のデジタルカメラ。
【請求項10】
前記レリーズ釦はEL装置と、その内側に配設されたスイッチ手段とで構成され、有効にされたレリーズ釦側のEL装置がレリーズ釦表示を行うことを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載のデジタルカメラ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−36492(P2007−36492A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214991(P2005−214991)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】