説明

EL駆動用インバータ装置

【課題】 従来のEL発光体の容量の減少に伴い駆動電圧を上昇させて劣化による明るさの低下を補正する従来のEL駆動用インバータ装置では、温度上昇により容量が減少したときにも駆動電圧が上昇し過電圧となって劣化を加速させる問題点を生じていた。
【解決手段】 本発明により、EL駆動用インバータ装置1には温度センサ3および制御回路が設けられ、EL発光体10の温度変化により生じる容量成分の変動に対しては、印加される周波数若しくは電圧に変化を生じないものとしたことで、温度センサー3を設けることで温度の要因によるに容量成分の減少分を検知し、この分には駆動電圧の上昇を生じないものとしてEL発光体10への過電圧の印加を防止し課題を解決するものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、EL発光体を点灯させるために用いられるEL駆動用インバータ装置に関するものであり、詳細には、EL発光体が使用時間の経過と共に輝度が低下していくのを、EL発光体の容量成分の減少で検出し、例えば印加電圧を増加させて輝度の低下を補償し寿命の延長を図れるようにしたEL駆動用インバータ装置に係るものである。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種のEL駆動用インバータ装置90の構成の例を示すものが図4であり、このEL駆動用インバータ装置90は、例えば矩形波で所定の周波数で発振し所定の電圧を出力する駆動回路91と、チョークコイル92と整流回路93とから構成されている。
【0003】そして、EL発光体80を駆動するときには、このEL発光体80と前記チョークコイル92とを直列に接続し、前記駆動回路91の出力に接続するものである。ここで、前記EL発光体80の特性としては、使用時間の経過と共に容量成分Cが減少して行き、この容量成分Cの減少と共に、略比例関係で輝度も低下していくものとなる。
【0004】そこで、図5に示すように前記チョークコイル92の誘導成分Lと、前記EL発光体80の容量成分Cとにより直列共振回路を形成させておけば、容量成分Cの減少に伴いEL発光体80に印加される電圧Velは、Vel=Q/C(但し、Q:共振値)なる式に従い上昇するものと成り、これにより輝度の変化を補償し、一定の明るさを維持するものとして、使用を可能とする時間の延長を図るものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記EL発光体80の容量成分Cの減少は、使用時間が経過したときのみに生じるものではなく、点灯時の自己加熱による温度上昇、或いは、周囲温度の影響などによっても生じる。但し、前記した使用時間の経過による容量成分Cの減少は永久的なものであるに対して、温度上昇による容量成分Cの減少は一時的なものであり、常温に戻れば容量成分Cは回復する。
【0006】即ち、使用時間の経過による容量成分Cの減少は劣化に起因するものであり、温度上昇による容量成分Cの減少は、EL発光体80が有する特性により生じるものであって劣化に起因するものではない。ではあるが、従来のEL駆動用インバータ装置90においては、劣化に起因する容量成分Cの減少であるか、特性に起因する容量成分Cの減少であるかの識別手段を持たないので、いずれの場合にも印加電圧が上昇するものとなり、過剰な電圧を印加するものとなって、EL発光体80を短命化させる問題点を生じていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記した従来の課題を解決するための具体的手段として、EL発光体の容量成分の減少に応じて前記EL発光体に印加される周波数または電圧を変化させ、前記容量成分の減少による輝度の低下を補償して成るEL駆動用インバータ装置において、前記EL駆動用インバータ装置には温度センサおよび制御回路が設けられ、前記EL発光体の温度変化により生じる容量成分の変動に対しては、印加される周波数若しくは電圧に変化を生じないものとしてあることを特徴とするEL駆動用インバータ装置を提供することで前記従来の課題を解決するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図1に符号1で示すものは本発明に係るEL駆動用インバータ装置であり、このEL駆動用インバータ装置1は、高周波電力をEL発光体10に供給する際に、EL発光体10の容量成分Cとチョークコイル2の誘導成分Lとで直列共振回路が形成され、前記EL発光体10の使用時間に伴うEL発光体10の容量成分Cの減少に応じて駆動電圧が上昇するように構成され、EL発光体10の劣化による輝度低下を補償するものとされているものである点は従来例のものと同様である。
【0009】ここで、本発明のEL駆動用インバータ装置1においては、従来例のEL駆動用インバータ装置と同じ構成とされた駆動回路1aに加えて、サーミスタなど温度センサ3と、この温度センサ3の出力を適宜に増幅し出力する増幅器4と、前記増幅器からの出力に応じて前記駆動回路1aの出力電圧を制御する制御回路5とを設けるものである。
【0010】前記温度センサ3は基本的には前記EL発光体10の温度を測定可能とするようにEL発光体10に密接する状態として取付けられている。但し、前記EL発光体10が屋外に設けられ、点灯による自己発熱よりも、太陽の直射による温度上昇など外的要因による温度上昇の比率が多いと認められるときには外気温度、筐体温度などを測定するものとしても良く、或いは、EL発光体10と外気温度など双方を測定できるものとしても良い。
【0011】そして、前記温度センサ3の出力は図2に示すように増幅器4により適宜に増幅が行なわれで制御回路5に向けて出力が行なわれる。この出力を受けた制御回路5は温度センサ3に高温が検出されたときには、前記駆動回路1a内にある振巾設定回路を調整するなどして、EL発光体10に対する印加電圧を適宜に低下させる方向として制御を行なうものとされている。尚、前記制御回路5は前記増幅器4の出力に応じて前記駆動回路1aをしてEL発光体10に印加される周波数を変化させるものであっても良い。
【0012】次いで、上記の構成とした本発明のEL駆動用インバータ装置1の作用および効果について説明を行なう。例えばEL発光体10の点灯が行なわれた直後の状態において、温度センサ3に格別の温度上昇が検出されていないときには、前記制御回路5は駆動回路1aに対する電圧制御は行なわず、従って、EL駆動用インバータ装置1は設定電圧を出力する。
【0013】このときに既にEL発光体10に容量成分Cの減少を生じているものであれば、その容量成分Cの減少はEL発光体10の劣化に起因するものであるので、前記チョークコイル2との直列共振作用によりEL発光体10への印加電圧は上昇し、前記した劣化による輝度低下は補償されるものとなる。
【0014】そして、点灯の継続による温度上昇などによりEL発光体10の容量成分Cに更なる減少を生じると、前記した直列共振作用によりEL発光体10に対する印加電圧は更に上昇するものとなるが、このときには、温度センサ3に温度上昇も検出されるので、制御回路5は駆動回路1aに対し電圧制御を行わせ、EL駆動用インバータ装置1としての出力電圧を低下させ、温度上昇に起因するEL発光体10の容量成分Cの減少に対してはEL発光体10に対する印加電圧を上昇させないものとする。
【0015】従って、本発明によれば温度上昇によるEL発光体10の容量成分Cの減少に対しては、このEL発光体10に対する印加電圧の上昇を生じることがなく、よって、EL発光体10は定格よりも過大な電力により駆動されることはなくなる。よって、EL発光体10は過大な駆動電圧が印加されたことによる寿命の短命化を生じることがなく、長寿命化が図れるものとなる。
【0016】図3は、本発明の構成としたEL駆動用インバータ装置1の作用、効果を従来例との比較で示すグラフであり、従来例の輝度曲線Sが使用開始後の初期の状態では定格を超える度合いが著しく、それにより比較的に速い時期に劣化を生じているのに対し、本発明の輝度曲線Tにおいては、定格を超える度合いが少なく、よって、より長い寿命が得られるものとなっている。
【0017】この長寿命化が図れるものとなる作用、効果は、例えばEL発光体10が屋外に設置されるものであり、太陽の直射光など外部要因が加算され、著しい温度上昇を生じる機会が多いEL発光体10に対して格別に顕著な効果が現われるものとなるのである。
【0018】尚、上記の説明は、駆動電圧の制御を行なうときの例で説明したが、EL発光体10を構成する蛍光体は刺激の回数、即ち、周波数によっても明るさが増減すると共に、同様に寿命への影響も受けるものであるので、温度上昇による容量成分Cの減少を生じた場合、周波数を減少させて明るさを調整することでも目的を達することができるものとなる。
【0019】
【発明の効果】以上に説明したように本発明により、EL駆動用インバータ装置には温度センサおよび制御回路が設けられ、EL発光体の温度変化により生じる容量成分の変動に対しては、印加される周波数若しくは電圧に変化を生じないものとしてあるEL駆動用インバータ装置としたことで、従来は寿命による要因以外である温度上昇によってもEL発光体は容量成分の減少を生じるものであるので駆動電圧は上昇するものとなり、EL発光体に定格以上の過大な電圧が印加され寿命の短命化が促進されていたのを、温度センサー設けることで温度の要因によるに容量成分の減少分を検知し、この温度の要因による減少分には駆動電圧の上昇を生じないものとすることで過剰電圧の印加を防止し、以てEL発光体の寿命を本来の特性まで延長することを可能とし、性能の向上、信頼性の向上などに極めて優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るEL駆動用インバータ装置の実施形態を示す略示的な回路図である。
【図2】 同じ実施形態の要部を示す回路図である。
【図3】 同じ実施形態の作用を示すグラフである。
【図4】 従来例を示す略示的な回路図である。
【図5】 EL発光体の駆動状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1……EL駆動用インバータ装置
1a……駆動回路
2……チョークコイル
3……温度センサ
4……増幅器
5……制御回路
10……EL発光体
C……容量成分
L……誘導成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】 EL発光体の容量成分の減少に応じて前記EL発光体に印加される周波数または電圧を変化させ、前記容量成分の減少による輝度の低下を補償して成るEL駆動用インバータ装置において、前記EL駆動用インバータ装置には温度センサおよび制御回路が設けられ、前記EL発光体の温度変化により生じる容量成分の変動に対しては、印加される周波数若しくは電圧に変化を生じないものとしてあることを特徴とするEL駆動用インバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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