説明

EP4受容体リガンドとしてのチオフェンカルボキサミド誘導体

本発明は、EP4介在性の疾患又は症状、例えば急性及び慢性の疼痛、変形性関節症、リウマチ様関節炎、がん及び緑内障の治療のために有用な、EP4受容体リガンド、アンタゴニスト又はアゴニストとしての、式I及びIIのチオフェンカルボキサミド誘導体に向けたものである。医薬組成物及び使用方法もまた含まれる。(式I及びII)。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロスタグランジンE介在性疾患を治療するための化合物及び方法、及びその特定の医薬組成物に関する。本発明は、PGE受容体のEP4サブタイプのリガンド、アンタゴニスト、又はアゴニストである新規化合物に向けたものである。E型プロスタグランジンの疼痛及び炎症作用のアンタゴニストである本発明化合物は、NSAID及びアヘン剤とは構造的に異なる。
【背景技術】
【0002】
3つの総説論文が、プロスタノイド受容体のキャラクタリゼーション及び治療的関連性、並びに最も一般的に使用される選択的アゴニスト及びアンタゴニストについて記載している:フォルコ(Folco)、サムエルソン(Samuelsson)、マクラウフ(Maclouf)、及びヴェロ(Velo)編、「エイコサノイド:バイオテクノロジーから治療応用まで(Eicosanoids:From Biotechnology to Therapeutic Applications)」、プレナム・プレス(Plenum Press)、ニューヨーク、1996年、第14章、p.137−154;「ジャーナル・オブ・リピド・メディエーターズ・アンド・セル・シグナリング(Journalof Lipd Mediators and Cell Signaling)」、1996年、第14巻、p.83−87;及び、「プロスタグランジンズ・アンド・アザー・リピド・メディエーターズ(Prostaglandins and Other Lipid Mediators)」、2002年、第69巻、p.557−573。
【0003】
したがって、選択的なプロスタグランジンリガンド、アゴニスト、又はアンタゴニストは、プロスタグランジンE受容体のどのサブタイプが考慮されるかに依存して、従来の非ステロイド抗炎症剤と同様の抗炎症性、解熱性及び鎮痛性の特性を持ち、加えて、血管ホメオスタシス、再生、胃腸機能及び骨代謝に影響を及ぼす。これらの化合物は、無差別なシクロオキシゲナーゼ阻害剤であるNSAIDのメカニズムベースのいくつかの副作用を誘導するのをおさえる能力を有している。特に、当該化合物は、胃腸毒性を軽減する可能性、腎性副作用を軽減する可能性、出血時間を減少させる効果、そしてアスピリン感受性喘息患者において喘息発作を誘発するのを減少させる可能性を有すると考えられる。
【0004】
「ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(The Journal of Clinical Investigation)」(2002年、第110巻、p.651−658)において、研究は、マウスにおいてコラーゲン抗体注入により誘導される慢性炎症が、主としてPGE受容体のEP4サブタイプにより媒介されることを示唆している。特許出願公開 WO96/06822(1996年3月7日)、WO96/11902(1996年4月25日)、及びEP752421−A1(1997年1月8日)は、プロスタグランジン介在性疾患の治療において有用であるものとして化合物を開示している。
【0005】
本発明は、PGE受容体のEP4サブタイプのリガンド、アンタゴニスト、又はアゴニストである新規化合物に向けたものである。当該化合物はそれ故、EP4受容体により媒介される疾患又は症状、例えば急性及び慢性の疼痛、変形性関節症、リウマチ様関節炎、がん及び緑内障の治療のために有用であり得る。
【発明の概要】
【0006】
発明の要旨
本発明は、EP4介在性の疾患又は症状、例えば急性及び慢性の疼痛、変形性関節症、リウマチ様関節炎、がん及び緑内障の治療のために有用な、EP4受容体リガンド、アンタゴニスト又はアゴニストとしてのチオフェンカルボキサミド誘導体に向けたものである。医薬組成物及び使用方法もまた含まれる。
【0007】
発明の詳細な記載
本発明は、式I又は式II:
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、
X及びYは、独立して、N及びC(R11)からなる群より選択され、ここで、各R11は、独立して、水素、ハロ及びC1−4アルキルからなる群より選択され;
Bは、−C(R)(R)−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−C(R)(R)−C(R)(R)−、−O−C(R)(R)−、−S−C(R)(R)−、−S(O)−C(R)(R)−及び−SO−C(R)(R)−からなる群より選択され;
Cは、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択されるか、又はアリール若しくはヘテロアリールの縮合類似体であり、各々は、R10から独立して選択される1から3個の置換基で置換されていてもよく;
Eは、−C(O)OH、−C(O)OC1−4アルキル、テトラゾリル及び
【0010】
【化2】

【0011】
からなる群より選択され、ここで、Rは、C1−4アルキル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択されるか、又はアリール若しくはヘテロアリールの縮合類似体であり、ここで、アリール及びヘテロアリール、又はその縮合類似体は、R10から独立して選択される1から3個の置換基で置換されていてもよく;
からRは、独立して、H、ハロ、−O−R12、C1−6アルキル及びC3−6シクロアルキルからなる群より選択され、かつ、RとR、RとR、及びRとRの1つ以上のペアは、それらが結合する炭素原子と一緒になって3から5員までの単環式シクロアルキル環を形成してもよく、そして、RとR、又はRとRが一緒になって、カルボニルを形成してもよく;
は、ハロ、ヒドロキシ及びC1−4アルキルからなる群より選択され、
10は、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、C1−4フルオロアルキル、C1−4アルコキシ、C1−4チオアルコキシ及びC1−4フルオロアルコキシからなる群より選択され、そして
各R12は、H、C1−4アルキル、C3−6シクロアルキル及びヘテロシクリルからなる群より選択される]
の化合物の属、又は式I若しくは式IIの化合物の薬学的に許容され得る塩を包含する。
【0012】
この属の中で、本発明は、式IIの化合物である第1の亜属を包含する。
【0013】
前記第1の亜属の中で、本発明は、式IIの化合物である第1のクラスを包含し、
ここで、
Bは−CH−であり;
CはR10で置換されていてもよいフェニルであり;
Eは−C(O)OH、−C(O)OC1−4アルキル及びテトラゾリルからなる群より選択され;
はH又はメチルであり;
はハロであり;
及びRはHであり;
は存在せず;かつ
10はクロロ及びCFからなる群より選択される。
【0014】
またこの属の中で、本発明は、式Iの化合物である第2の亜属を包含する。
【0015】
該第2の亜属の中で、本発明は、式Iの化合物である第2のクラスを包含し、
ここで、
X及びYはC(R11)であり、ここで、各R11は、独立して、水素、ハロ及びC1−4アルキルからなる群より選択される。
【0016】
該第2のクラスの中で、本発明は、式Iの化合物である第1のサブクラスを包含し、ここで、
Bは−CH−であり;
CはR10で置換されていてもよいフェニルであり;
Eは−C(O)OH、−C(O)OC1−4アルキル及びテトラゾリルからなる群より選択され;
はH又はメチルであり、かつRはHであるか、又はR及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってシクロプロピル環を形成し;
は存在せず;
10はクロロ及びCFからなる群より選択される。
【0017】
また該第2のクラスの中で、本発明は、各R11がクロロである、式Iの化合物である第2のサブクラスを包含する。
【0018】
該第2のサブクラスの中で、本発明は、式Iの化合物である第1のグループを包含し、
ここで、
Bは−CH−であり;
CはR10で置換されていてもよいフェニルであり;
Eは−C(O)OH、−C(O)OC1−4アルキル及びテトラゾリルからなる群より選択され;
はH又はメチルであり、かつRはHであるか、又はR及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってシクロプロピル環を形成し;
は存在せず;
10はクロロ及びCFからなる群より選択される。
【0019】
前記第1のグループの中で、本発明は、式Iの化合物である第1のサブグループを包含し、ここで、R10は、Bの結合に対しメタ−又はパラ−位においてフェニル基上に置換されている。
【0020】
また該第2のクラスの中で、本発明は、各R11がメチルである、式Iの化合物である第3のサブクラスを包含する。
【0021】
該第3のサブクラスの中で、本発明は、式Iの化合物である第2のグループを包含し、
ここで、
Bは−CH−であり;
CはR10で置換されていてもよいフェニルであり;
Eは−C(O)OH及びテトラゾリルからなる群より選択され;
はH又はメチルであり、かつRはHであるか、又はR及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってシクロプロピル環を形成し;
は存在せず;
10はクロロ及びCFからなる群より選択される。
【0022】
該第2のグループの中で、本発明は、式Iの化合物である第2のサブグループを包含し、ここで、R10は、Bの結合に対しメタ−又はパラ−位においてフェニル基上に置換されている。
【0023】
該第2のサブグループの中で、本発明は、R10がCFであり、かつBの結合に対しパラ−位においてフェニル基上に置換されている、式Iの化合物を包含する。
【0024】
本発明はまた、以下の表:
【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

【0031】
【化9】

【0032】
から選択される化合物、又は上記化合物のいずれかの薬学的に許容され得る塩を包含する。
【0033】
本発明はまた、その薬学的に許容され得る塩がナトリウム塩である、上記表から選択される化合物も包含する。
【0034】
本発明はまた、以下の表:
【0035】
【化10】

【0036】
【化11】

【0037】
から選択される化合物も包含する。
【0038】
本発明はまた、式I又は式IIの化合物を、1つ以上の生理学的に許容され得る担体又は賦形剤と混合してなる医薬組成物も包含する。
【0039】
本発明はまた、ヒト又は霊長類の医薬における使用のための、式I又は式IIの化合物、又はその薬学的に許容され得る誘導体も包含する。
【0040】
本発明はまた、EP4受容体により媒介される症状を患っているヒト又は動物患者を治療する方法であって、式I又は式IIの化合物の有効量を、該患者へ投与することを含んでなる方法も包含する。
【0041】
本発明はまた、EP4受容体により媒介される症状の治療用の治療薬製造のための、式I又は式IIの化合物の使用も包含する。
【0042】
定義
以下の略号は、表示した意味を有する:
DHP = 3,4−ジヒドロ−2H−ピラン
DMAP = 4−ジメチルアミノピリジン
DMSO = ジメチルスルホキシド
EDCI = 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩
HATU = O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム=ヘキサフルオロホスフェート
NBS = N−ブロモスクシンイミド
NCS = N−クロロスクシンイミド
PPTS = ピリジニウム=p−トルエンスルホネート
PTSA = p−トルエンスルホン酸
TFA = トリフルオロ酢酸
TMSCl= クロロトリメチルシラン
【0043】
「アルキル」、並びに接頭語「alk」をもつ他の基、例えばアルコキシ、アルカノイルは、直鎖又は分枝鎖か、又はそれらの組合せであってもよい炭素鎖を意味する。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−及びtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルなどを包含する。
【0044】
「フルオロアルキル」は、1つ以上の水素原子がフッ素原子により置換されている、上記に定義されたアルキルを意味する。
【0045】
「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有しており、かつ直鎖又は分枝鎖か、又はそれらの組合せであってもよい炭素鎖を意味する。アルケニルの例は、ビニル、アリル、イソプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、1−プロペニル、2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニルなどを包含する。
【0046】
「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含有し、かつ直鎖又は分枝鎖か、又はそれらの組合せであってもよい炭素鎖を意味する。アルキニルの例は、エチニル、プロパルギル、3−メチル−1−ペンチニル、2−ヘプチニルなどを包含する。
【0047】
「シクロアルキル」は、各々が3から10個の炭素原子を有する、単環式又は二環式の飽和炭素環を意味する。シクロアルキルの「縮合類似体」は、アリール又はヘテロアリール基に縮合した単環式の環を意味し、ここで、結合点は非芳香族部分にある。シクロアルキル及びその縮合類似体の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、テトラヒドロナフチル、デカヒドロナフチル、インダニルなどを包含する。
【0048】
「アルコキシ」は、指示された数の炭素原子を有する、直鎖又は分枝したアルコキシ基を意味する。例えば、C1−6アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシなどを包含する。
【0049】
「チオアルコキシ」は、−O−基が−S−で置換されている、上記に定義したアルコキシを意味する。
【0050】
「シクロアルコキシ」は、シクロプロピルオキシのように、酸素原子に結合した、上記に定義されたシクロアルキルを意味する。
【0051】
「フルオロアルコキシ」は、1個以上の水素原子がフッ素原子により置換されている、上記に定義したアルコキシを意味する。
【0052】
「アリール」は、炭素原子のみを含有する、単環又は二環式の芳香環を意味する。アリールの「縮合類似体」は、単環式シクロアルキル又は単環式ヘテロシクリル基に縮合したアリール基を意味し、ここで、結合点は芳香族部分にある。アリール及びその縮合類似体の例は、フェニル、ナフチル、インダニル、インデニル、テトラヒドロナフチル、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾピラニル、1,4−ベンゾジオキサニルなどを包含する。
【0053】
「ヘテロアリール」は、N、O及びSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、各環が5から6の原子を含有する、単環又は二環式の芳香環を意味する。ヘテロアリールの「縮合類似体」は、単環式シクロアルキル又は単環式ヘテロシクリル基に縮合したヘテロアリール基を意味し、ここで、結合点は芳香族部分にある。ヘテロアリールの例は、ピロリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラニル、トリアジニル、チエニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、フロ(2,3−b)ピリジル、キノリル、インドリル、イソキノリルなどを包含する。
【0054】
「ヘテロシクリル」は、N、S及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する、芳香族ではない、単環若しくは二環式の飽和環、又は部分不飽和な単環式の環を意味し、当該環の各々は、3から10個の原子を有し、ここで、結合点は炭素又は窒素上であり得る。ヘテロシクリルの「縮合類似体」は、アリール又はヘテロアリール基に縮合した単環式ヘテロ環を意味し、ここで、結合点は非芳香族部分にある。「ヘテロシクリル」及びその縮合類似体の例は、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、2,3−ジヒドロフロ(2,3−b)ピリジル、ベンゾオキサジニル、テトラヒドロヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ジヒドロインドリルなどを包含する。この用語はまた、芳香族ではない部分不飽和単環式の環、例えば、窒素を介して結合した、2−若しくは4−ピリドン、又はN−置換−(1H,3H)−ピリミジン−2,4−ジオン(N−置換ウラシル)も包含する。
【0055】
「ハロゲン」及び「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を包含する。
【0056】
光学異性体−ジアステレオマー−幾何異性体−互変異性体
式I及び式IIの化合物は、1つ以上の不斉中心を有し、したがってラセミ体及びラセミ混合物、単一エナンチオマー、ジアステレオ混合物及び個々のジアステレオマーとして生じ得る。本発明は、式I及び式IIの化合物の全てのかかる異性体型を包含するものとする。
【0057】
本明細書に記載されたある化合物は、オレフィン二重結合を含有しており、かつ、他に指定されない限り、E及びZ双方の幾何異性体を包含するものとする。
【0058】
本明細書に記載されたある化合物は、水素の結合点を異にして存在してもよく、互変異性体と呼ばれる。かかる例は、ケト−エノール互変異性体として知られる、ケトン及びそのエノール型であってよい。個々の互変異性体、並びにその混合物は、式I及び式IIの化合物の内に包含される。
【0059】
式I及び式IIの化合物は、例えば、適当な溶媒、例えばMeOH又はEtOAc、又はそれらの混合物から、分別結晶によりジアステレオ異性体のエナンチオマーペアへ分離され得る。そのようにして得られたエナンチオマーペアは、例えば光学活性アミンを分割剤として使用することによるか、又はキラルHPLCカラム等の通常の手段により、個々の立体異性体へ分離され得る。
【0060】
別法として、一般式I又は式IIの化合物の任意のエナンチオマーは、立体特異的合成により、光学的に純粋な出発物質、又は構造の分かっている試薬を使用して取得され得る。
【0061】

用語「薬学的に許容され得る塩」は、無機又は有機塩基、及び無機又は有機酸を含む、薬学的に許容され得る非毒性の塩基又は酸から調製される塩を指す。無機塩基から誘導される塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン塩、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などを包含する。特に好適であるのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムの塩である。薬学的に許容され得る有機非毒性塩基から誘導される塩は、第一級、第二級及び第三級アミンの塩;天然産置換アミンを含む置換アミンの塩;環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂を含み、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩が挙げられる。
【0062】
本発明化合物が塩基性である場合、塩は、無機及び有機酸を含む、薬学的に許容され得る非毒性の酸から調製され得る。かかる酸は、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などを包含する。特に好適であるのは、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸及び酒石酸である。
【0063】
本明細書で用いる場合、式I及び式IIの化合物に対する言及はまた、薬学的に許容され得る塩も包むものとすることが理解されよう。
【0064】
有用性
本発明化合物は、EP4受容体のリガンドであり、したがってEP4受容体のアンタゴニスト又はアゴニストとして有用であり、そしてこの受容体により媒介される疾患又は症状を治療するための有用性がある。
【0065】
EP4受容体に結合するその能力に鑑み、本発明化合物は、該化合物がアンタゴニストであるか、又はアゴニストであるかに依存して、1つ以上の以下の疾患の治療において有用である。
【0066】
PGE受容体のEP4サブタイプのアンタゴニストである本発明化合物は、急性及び慢性疼痛、変形性関節症、リウマチ様関節炎及びがんのような疾患又は症状の治療のために有用である。
【0067】
本発明化合物は、鎮痛剤として有用である。例えば、それらは、疾患修飾及び関節構造保存の特性を含む慢性関節痛(例えば、リウマチ様関節炎、変形性関節症、リウマチ性脊椎炎、痛風性関節炎及び若年性関節炎)の治療;筋骨格痛;腰及び頸部疼痛;捻挫及び挫傷;神経障害性疼痛;交感神経依存性疼痛;筋炎;がん及び線維筋肉痛に付随する疼痛;片頭痛に付随する疼痛;インフルエンザ又は他のウイルス感染症、例えば感冒に付随する疼痛;リウマチ熱;機能性腸疾患、例えば非潰瘍性消化不良、非心臓性胸痛及び過敏性腸症候群に付随する疼痛;心筋虚血に付随する疼痛;術後疼痛;頭痛;歯痛;及び、月経困難症の治療において有用である。
【0068】
本発明は、神経障害性疼痛の治療において有用である。神経障害性疼痛症候群は、ニューロン損傷に続いて発生し得るものであり、結果として生じる疼痛は、元の損傷が治癒された後であっても、数か月又は数年間継続することがある。ニューロン損傷は、末梢神経、背根、脊髄又は脳のある領域に生じ得る。神経障害性疼痛症候群は、伝統的に、それらを突如引き起こした疾患又は事象に従って分類される。神経障害性疼痛症候群は、糖尿病性神経障害;坐骨神経痛;非特異的腰部疼痛;多発性硬化症性疼痛;線維筋痛症;HIV関連神経障害;ヘルペス後神経痛;三叉神経痛;及び物理的外傷、切断、がん、毒素又は慢性炎症性の症状からの結果として生じる疼痛を包含する。これらの症状は、治療することが難しく、いくつかの薬剤が限られた効能をもつことは知られているが、完全なペインコントロールはめったに達成されることはない。神経障害性疼痛の症状は、驚くほど雑多であり、自発性の、速い、刺すような痛み、又は継続する灼熱痛としてしばしば記載される。さらに、正常な非疼痛性知覚、例えば「しびれてピリピリする感覚(ピンズ・アンド・ニードルズ)」(知覚障害及び感覚異常)、接触に対する感度増加(知覚過敏)、無害な刺激後の疼痛性知覚(動的、静的、又は熱的アロディニア)、有害な刺激に対する感度増加(熱性、寒冷、機械的痛覚過敏)、刺激除去後の継続的な痛覚(痛覚異常過敏)、又は選択的感覚経路の不在又は欠損(痛覚鈍麻)がある。
【0069】
本発明化合物はまた、炎症の治療において、例えば、皮膚症状(例えば、日焼け、火傷、湿疹、皮膚炎、乾癬);眼性疾患、例えば緑内障、網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎及び眼組織に対する急性損傷(例えば、結膜炎);肺疾患(例えば、喘息、気管支炎、肺気腫、アレルギー性鼻炎、呼吸窮迫症候群、愛鳥家病、農夫肺、COPD);胃腸管疾患(例えば、アフタ性潰瘍、クローン病、アトピー性胃炎、varialoforme胃炎、潰瘍性大腸炎、小児脂肪便症、限局性回腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、胃小腸逆流症);臓器移植;炎症性の要素をもつ他の症状、例えば、血管疾患、片頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、スクレロドーマ(sclerodoma)、重症筋無力性(myaesthenia gravis)、多発性硬化症、サルコイドーシス(sorcoidosis)、ネフローゼ症候群、ベーチェット病、多発性筋炎、歯肉炎、心筋虚血、発熱、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎、腱炎、滑液包炎及びシューグレン症候群の治療において有用である。
【0070】
本発明化合物はまた、免疫疾患、例えば自己免疫疾患、免疫不全症又は臓器移植の治療においても有用である。本発明化合物はまた、HIV感染の潜伏期間を増やすことにおいても有効である。
【0071】
本発明化合物はまた、血小板機能異常(例えば、閉鎖性の血管症)の治療において有用である。
【0072】
本発明化合物はまた、利尿作用をもつ薬剤の調製のためにも有用である。
【0073】
本発明化合物はまた、インポテンス又は勃起機能低下の治療において有用である。
【0074】
本発明化合物はまた、異常な骨代謝又は吸収により特徴づけられる骨疾患、例えば、骨粗鬆症(特に閉経後骨粗鬆症)、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、骨パジェット病、骨溶解、骨転移を伴う、又は伴わない悪性高カルシウム血症、リウマチ様関節炎、歯周炎、変形性関節症、骨痛、骨減少症、がん悪液質、結石症(calculosis)、結石症(lithiasis)(特に尿路結石症)、固形がん、痛風及び強直性脊椎炎、腱炎及び滑液包炎の治療において有用である。さらなる側面においては、本発明化合物は、骨吸収を阻害すること、及び/又は、骨再生を促進することにおいて有用であり得る。
【0075】
本発明はまた、NSAID及びCOX−2阻害剤の、血行力学的副作用を弱めることにおいても有用である。
【0076】
本発明化合物はまた、心臓血液疾患、例えば、高血圧又は心筋虚血(myocardiac ischemia);機能性又は器質性の静脈不全;静脈瘤治療;痔;及び動脈圧の著しい低下に付随するショック状態(例えば、敗血症性ショック)の治療においても有用である。
【0077】
本発明化合物はまた、神経変性疾患及び神経変性、例えば、痴呆、特に変性性痴呆(老人性痴呆、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病及びクロイツフェルト−ヤコブ病、ALS、運動ニューロン疾患を含む);血管性痴呆(多発梗塞性痴呆を含む);並びに頭蓋内占拠性病変に付随する痴呆;外傷;感染及び関連症状(HIV感染を含む);代謝;毒素;無酸素症及びビタミン欠乏症;加齢に付随する軽度認知障害、特に加齢に伴う記憶障害の治療においても有用である。
式I及び式IIの化合物はまた、卒中、心停止、肺バイパス、外傷性脳損傷又は脊髄損傷などに続く、神経保護の処置において、及び神経変性の治療においても有用である。本発明化合物はまた、卒中及び多発性硬化症の治療に有用である。
【0078】
本発明化合物はまた、耳鳴りの治療においても有用である。
【0079】
本発明化合物はまた、依存症誘発剤に対する依存を予防又は低減することにおいて、或いは、依存症誘発剤に対する耐性又は逆耐性を予防又は低減することにおいても有用である。依存症誘発剤の例は、オピオイド(例えば、モルヒネ)、CNS抑制薬(例えば、エタノール)、神経刺激薬(例えば、コカイン)及びニコチンを包含する。
【0080】
本発明化合物はまた、I型糖尿病の合併症(例えば、糖尿病性細小血管症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、黄班変性症、緑内障)、ネフローゼ症候群、再生不良性貧血、ブドウ膜炎、川崎病及びサルコイドーシスの治療においても有用である。
【0081】
本発明化合物はまた、腎機能障害(腎炎、特にメサンギウム増殖性糸球体腎炎、腎炎症候群)、肝機能障害(肝炎、肝硬変)、胃腸機能不全(下痢)及び結腸がんの治療においても有用である。
【0082】
本発明化合物はまた、新生物を、かかる治療又は予防を必要とする患者において、治療又は予防するために有用である。用語「治療」は、新生物の増殖、拡散又は転移の、部分的又は完全な阻害、並びに、疼痛、食欲不振又は体重減少を含む、新生物細胞及び/又は新生物に付随する症状の部分的又は完全な破壊を包含する。この用語はまた、化合物の、別の化学療法の増感剤としての使用も包含する。用語「予防」は、リスクのある個体において、臨床的に顕性な新生物の発症を完全に防止すること、又は新生物の前臨床的に顕性な段階の発症を防止することの、いずれかを包含する。またこの定義により包含されることを意図するのは、悪性細胞の発現を防止すること、又は、前癌細胞の悪性細胞への進行を停止又は逆転させることである。このことは、新生物の発症のリスクにある者の予防的治療を包含する。用語、治療のための「患者」は、既知の新生物の任意の1つをもつ任意のヒト又は哺乳動物患者を包含し、かつ好ましくはヒト患者である。予防方法については、患者は任意のヒト又は動物患者であり、かつ好ましくは、新生物を獲得するリスクにあるヒト患者である。患者は、発がん物質への暴露に起因するリスクにあってもよく、遺伝的に新生物をもつ素因を与えられている、などでもよい。
【0083】
用語「新生物」は、良性及びがん性双方の、腫瘍(tumor)、腫瘍(growth)及びポリープを包含する。したがって、本発明化合物は、扁平上皮乳頭腫、基底細胞腫、移行上皮乳頭腫、腺腫、ガストリノーマ、胆管細胞腺腫、肝細胞腺腫、尿細管腺腫、膨大細胞腫、グロムス腫瘍、色素細胞母班、線維腫、粘液腫、脂肪腫、平滑筋腫、横紋筋腫、良性奇形腫、血管腫、骨腫、軟骨腫、及び髄膜腫を含む、良性の、腫瘍(tumor)、腫瘍(growth)及びポリープを治療又は予防するために有用である。本発明化合物はまた、扁平上皮癌、基底細胞癌、移行上皮癌、腺癌、悪性ガストリノーマ、胆管細胞癌、肝細胞癌、腎細胞癌、悪性黒色腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、悪性奇形腫、血管肉腫、カポジ肉腫、リンパ管肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、悪性髄膜腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫及び白血病を含む、癌性の、腫瘍(tumor)、腫瘍(growth)及びポリープを治療又は予防するために有用である。本明細書では、「新生物」は、脳腫瘍、骨癌、上皮細胞由来の新生物(上皮癌)、基底細胞癌、腺癌、胃腸がん、例えば、口唇がん、口腔がん、食道がん、小腸がん及び胃がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、膀胱がん、膵臓がん、卵巣がん、子宮頚がん、肺がん、乳がん及び皮膚がん、例えば扁平上皮(squamus)細胞及び基底細胞がん、前立腺がん、腎細胞癌、及び、全身の上皮、間充織又は血液細胞に影響を及ぼす他の既知のがんを包含する。本発明化合物は、任意の上記のがんの治療又は予防に有用である。本発明化合物は、以下の細胞タイプの、良性及びがん性の、腫瘍(tumor)、腫瘍(growth)及びポリープの治療又は予防に有用である:扁平上皮、基底細胞、移行上皮、腺上皮、G細胞、胆管上皮、肝細胞、尿細管上皮、メラノサイト、線維性結合組織、心臓骨格、脂肪組織、平滑筋、骨格筋、生殖細胞、血管、リンパ管、骨、軟骨、髄膜、リンパ球様細胞及び造血細胞。本化合物は、家族性腺腫様ポリープ症(FAP)を含む、腺腫様ポリープをもつ患者を治療するために使用できる。さらに、本化合物は、FAPのリスクにある患者において、ポリープの形成を防止するために使用できる。好ましくは、本発明化合物は、以下のがんの治療又は予防に有用である:結腸直腸、食道 胃、乳房、頭頸部、皮膚、肺、肝臓、胆嚢、膵臓、膀胱、子宮内膜 子宮頚部、前立腺、甲状腺及び脳。
【0084】
治療について言及する場合、他に明確に指定しない限り、確立された症状の治療、及び予防的治療の双方を包含することが理解されるべきである。
【0085】
本発明のEP4アゴニストは、眼高圧症、緑内障、黄斑浮腫、黄斑変性症を治療するため、網膜及び視神経先端の血液速度を増大するため、網膜及び視神経の酸素量力を増大するため、神経保護作用を与えるため、又はそれらの組合せのために有用である。本発明のEP4アゴニストはまた、制限されることなく、骨粗鬆症、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、パジェット病、異常に増加した骨回転、歯周病、歯牙喪失、骨折、リウマチ様関節炎、人工関節周囲骨溶解、骨形成不全、転移性骨疾患、悪性の高カルシウム血症及び多発性骨髄腫を含む、異常な骨吸収に関連した疾病状態又は症状の治療にも有用である。
【0086】
用量範囲
式I又は式IIの化合物の、予防用又は治療用の用量の大きさは、治療されるべき症状の性質及び重さにより、また用いる式I又は式IIの特定の化合物、及びその投与経路によって、もちろん異なり得る。用量はまた、個々の患者の年齢、体重、及び応答によっても異なり得る。一般に、日用量範囲は、単回用量又は分割用量で、哺乳動物のkg体重当たり、約0.001mgから約100mgまで、好ましくは、kg当たり0.01mgから約50mg、かつ最も好ましくは、kg当たり0.1mgから約10mgの範囲内にある。一方、ある場合には、これらの範囲外の投薬量を使用することが必要であり得る。
【0087】
静脈内投与用の組成物を用いる場合の使用においては、適当な投薬量範囲は、1日当たり、kg体重当たり、式I又は式IIの化合物を約0.01mgから約25mgまで(好ましくは、0.1mgから約10mgまで)である。
【0088】
経口用組成物を用いる場合の使用においては、適当な投薬量範囲は、例えば、1日当たり、kg体重当たり、式I又はIaの化合物を約0.01mgから約100mgまで、好ましくは、kg当たり約0.1mgから約10mgまでである。
【0089】
舌下投与用組成物を用いる場合の使用においては、適当な投薬量範囲は、1日当たり、kg体重当たり、式I又は式IIの化合物を0.01mgから約25mgまで(好ましくは、0.1mgから約5mgまで)である。
【0090】
医薬組成物
本発明の別の側面は、式I又は式IIの化合物と、薬学的に許容され得る担体とを含んでなる医薬組成物を提供する。医薬組成物における場合、用語「組成物」は、活性成分と、担体を構成する不活性成分(薬学的に許容され得る賦形剤)とを含んでなる生成物、並びに、任意の2つ以上の成分の結合、錯体形成又は凝集から、或いは1つ以上の成分の解離から、或いは、1つ以上の成分の別のタイプの反応又は相互作用から、結果として直接又は間接的に生じる任意の生成物を包含することを意図している。したがって、本発明の医薬組成物は、式I又は式IIの化合物と、付加的な活性成分、及び薬学的に許容され得る賦形剤を混合することにより製造される任意の組成物を包含する。
【0091】
哺乳動物、特にヒトに対し、本発明化合物の有効な投薬量を提供するため、任意の適当な投与経路を用いてよい。例えば、経口、舌下、直腸内、局所、非経口、眼、経肺、経鼻などを使用してもよい。剤形は、錠剤、トローチ、分散物、懸濁物、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エアロゾルなどを包含する。
【0092】
本発明の医薬組成物は、式I又は式IIの化合物を、活性成分として、又はその薬学的に許容され得る塩として含んでなり、かつまた、薬学的に許容され得る担体、及び、任意で他の治療成分を含有してもよい。用語「薬学的に許容され得る塩」は、無機塩基又は酸、及び有機塩基又は酸を含む、薬学的に許容され得る非毒性の塩基又は酸から調製される塩を指す。
【0093】
当該組成物は、経口、舌下、直腸内、局所、非経口(皮下、筋肉内及び静脈内を含む)、眼(点眼)、経肺(エアロゾル吸入)、又は経鼻投与に適した組成物を包含するが、任意の所与の症例における最適な経路は、治療されている症状の性質及び重さに依存し、かつ活性成分の性質に依存し得る。それらは単位剤形の形態で便利に与えられてよく、かつ薬学の技術分野における任意の周知の方法により調剤されてもよい。
【0094】
吸入による投与には、本発明化合物は、加圧パック又はネブライザーからエアロゾルスプレーを提供する形態で便利に送達される。本化合物はまた、調剤される粉末として送達されてもよいし、粉末組成物は、吸入剤粉末吸入器装置の助けにより吸入してもよい。吸入用の好ましい送達系は、定量噴霧式吸入(MDI)エアロゾルであって、これは、適当な噴射剤、例えばフルオロカーボン又は炭化水素中の式I又は式IIの化合物の懸濁物又は溶液として製剤してもよく、また、乾燥噴霧式吸入(DPI)エアロゾルであって、これは、付加的な賦形剤を用いるか、又は用いない、式I又は式IIの化合物の乾燥粉末として製剤してもよい。
【0095】
式I又は式IIの化合物の適当な局所用製剤は、経皮装置、エアロゾル、クリーム、軟膏、ローション、粉剤などを包含する。
【0096】
実際の使用においては、式I及び式IIの化合物は、混和物中の活性成分として、慣用の薬学の調合技術に従い、薬学的担体と混合可能である。該担体は、投与、例えば経口又は非経口(静脈内を含む)のために所望される剤形に依存して、広く多様な形態をとってよい。経口用剤形のための組成物の調製においては、例えば懸濁液、エリキシル及び溶液のような経口用液体製剤の場合には、例えば水、グリコール、油、アルコール、着香剤、保存剤、着色剤など;或いは、例えば粉末、カプセル及び錠剤のような経口用固形製剤の場合には、デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などのような担体といった、任意の通常の薬学的媒介物を用いてよく、液体製剤よりも固形経口製剤の方が好ましい。その投与の容易さの故に、錠剤及びカプセルが、最も有利な経口用単位剤形に相当し、この場合、固形の薬学的担体が当然使用される。所望であれば、錠剤を、標準的な水性又は非水性の技術によりコートしてもよい。
【0097】
上記に示した一般的な財形に加えて、式I及び式IIの化合物はまた、制御放出性の手段及び/又は送達装置、例えば、米国特許第3,845,770;3,916,899;3,536,809;3,598,123;3,630,200、及び4,008,719号に記載されたものにより投与してもよい。
【0098】
経口投与に適した本発明の医薬組成物は、個別の単位、例えば、各々が予め決められた量の活性成分を粉末又は顆粒として含有する、カプセル、カシェ剤又は錠剤として、或いは、水性液体、非水性液体中、水中油型エマルジョン又は油中水型の液体エマルジョン中の、溶液又は懸濁液として与えられてもよい。かかる組成物は、任意の調剤法により製剤されてよいが、全ての方法は、活性成分を1つ以上の必須の成分を構成する担体と組合せていく工程を包含する。一般に、該組成物は、活性成分を、液体担体又は超微粒子固形担体、又は双方と、均一に及び均質に混合することに調剤し、次いで、必要であれば生成物を所望の製剤に造形する。例えば、錠剤は、圧縮又は成形により、任意で1つ以上の副成分と共に製剤してもよい。圧縮錠剤は、適当な機器において、粉末又は顆粒といった流動性の形態にある活性成分を、任意で結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、界面活性剤又は分散剤と混合して圧縮することにより製剤してもよい。成形錠剤は、不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末化された化合物の混合物を、適当な機器において成形することにより製し得る。望ましくは、各錠剤は、約1mgから約500mgまでの活性成分を含有し、そして各カシェ剤又はカプセルは、約1から約500mgまでの活性成分を含有する。
【0099】
併用療法
式I及び式IIの化合物は、式I及び式IIの化合物がそれに対し有用である疾患又は症状の、治療/予防/抑制又は改善において使用される、他の薬剤と組合せて使用してもよい。かかる他の薬剤は、それらが一般に使用される経路及び量において、式I又は式IIの化合物と同時に、又は連続的に投与してもよい。式I又は式IIの化合物を、1つ以上の他の薬剤と同時に用いる場合、かかる他の薬剤を、式I又は式IIの化合物に加えて含有する医薬組成物が好ましい。したがって、本発明の医薬組成物は、式I又は式IIの化合物に加えて、1つ以上の他の活性成分も含有するものを包含する。別々に、又は同じ医薬組成物中で投与される、式I又は式IIの化合物と組合せてもよい他の活性成分の例は、制限されることなく、COX−2阻害剤、例えばセレコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、バルデコキシブ又はパレコキシブ;5−リポキシゲナーゼ阻害剤;NSAID、例えばジクロフェナク、インドメタシン、ナブメトン又はイブプロフェン;ロイコトリエン受容体アンタゴニスト;DMARD、例えばメトトレキセート;アデノシンA1受容体アゴニスト;ナトリウムチャンネル遮断薬、例えばラモトリジン;NMDA受容体モジュレーター、例えばグリシン受容体アンタゴニスト;ガバペンチン及び関連化合物;三環系抗うつ剤、例えばアミトリプチリン;ニューロン安定化抗てんかん薬;モノアミン取込み阻害剤、例えばベンラファキシン;オピオイド鎮痛薬;局所麻酔薬;5HTアゴニスト、例えばスマトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、フロバトリプタン、アルモトリプタン又はリザトリプタンのようなトリプタン類;EP1受容体リガンド;EP2受容体リガンド;EP3受容体リガンド;EP1アンタゴニスト;EP2アンタゴニスト及びEP3アンタゴニストを含む。本化合物を他の治療薬と組合せて使用する場合、当該化合物は、任意の便利な経路により、連続的に、又は同時に投与してもよい。
【0100】
したがって、本発明は、さらなる側面において、式I又は式IIの化合物、又はその薬学的に許容され得る誘導体を、さらなる治療薬又は薬剤と一緒に含んでなる組合せを提供する。
【0101】
上記に言及した組合せは、医薬製剤の形態での使用のために便利に与えられてよく、したがって、上記に定義した組合せを、薬学的に許容され得る担体又は賦形剤と一緒に含んでなる医薬製剤は、本発明のさらなる側面を含んでなる。かかる組合せの個々の成分は、別々か又は組合せた医薬製剤中で、連続的又は同時に投与してよい。
【0102】
式I又は式IIの化合物の、第2の活性成分に対する重量比は、変更してもよく、また各成分の有効用量に依存し得る。一般には、各々の有効用量が用いられ得る。したがって、例えば、式I又は式IIの化合物をNSAIDと組合せる場合、NSAIDに対する式I又は式IIの化合物の重量比は、一般に約1000:1から約1:1000まで、好ましくは約200:1から約1:200までの範囲であり得る。式I又は式IIの化合物と、他の活性成分との組合せもまた、一般には上記の範囲内であろうが、各々の場合に、各活性成分の有効用量を用いるべきである。
【0103】
生物活性を測定するためのアッセイ
式I又は式IIの化合物は、以下のアッセイを用いて試験して、インビトロ及びインビボにおけるそのプロスタノイドアンタゴニスト又はアゴニスト活性を、またその選択性を測定することができる。示されたプロスタグランジン受容体活性は、DP、EP、EP、EP、EP、FP、IP、及びTPである。
【0104】
ヒト胎児腎(HEK)293(ebna)細胞系におけるプロスタノイド受容体の安定な発現
完全長のコーディング配列に相当するプロスタノイド受容体cDNAを、哺乳動物発現ベクターの適当な部位へサブクローンし、HEK293(ebna)細胞内へトランスフェクトした。個々のcDNAを発現しているHEK293(ebna)細胞を、選択下に増殖し、2−3週間の増殖後に、クローニングリング法を用いて個々のコロニーを単離し、続いてクローン細胞系へ拡張した。
【0105】
プロスタノイド受容体結合アッセイ
トランスフェクトしたHEK293(ebna)細胞を、培養液中に維持し、収穫し、プロテアーゼ阻害剤の存在下に細胞を溶解した後、分画遠心分離により膜を調製して、受容体結合アッセイに使用する。プロスタノイド受容体結合アッセイ(DP1、DP2(CRTH2)、EP1、EP2、EP3−III、EP4、FP、IP、及びTPについて)を、1mM EDTA、2.5−30mM 二価カチオン及び適当な放射リガンドを含有する、10mM MES/KOH(pH6.0)(EP、FP及びTP)、又は10mM HEPES/KOH(pH7.4)(DP及びIP)中で行なう。合成化合物は、ジメチルスルホキシド中で添加し、これを全てのインキュベーションにおいて1%(v/v)にて一定に維持する。反応は、膜タンパク質の添加により開始する。非特異結合は、10μMの対応する非放射性プロスタノイドの存在下に測定する。インキュベーションは、室温又は30℃において、60−90分間行ない、急速濾過により終了する。特異結合は、全結合から非特異結合を引き算することにより計算する。各リガンド濃度において残留した特異結合を計算し、S字状の濃度−反応曲線を構築するため、リガンド濃度の関数として表わす。化合物の結合親和性は、等式 Ki=InPt/1+[放射リガンド]/Kd (ここで、Kdは、放射リガンド:受容体相互作用の平衡阻害定数であり、そしてInPtは、用量−反応曲線の変曲点である)から平衡阻害定数(Ki)を計算することにより測定する。
【0106】
以下の化合物を、EP4受容体について上記の結合アッセイにおいて試験し、示された活性を実証した。
【0107】
【化12】

【0108】
プロスタノイド受容体アゴニスト及びアンタゴニストアッセイ
HEK−293(ebna)−hEP4細胞における細胞内cAMP蓄積の刺激を測定する、全細胞セカンドメッセンジャーアッセイは、受容体リガンドがアゴニストであるか又はアンタゴニストであるかを測定するために行われる。細胞を収穫し、25mM HEPES、pH7.4を含有するHBSS中に再懸濁する。インキュベーションは、0.5mM IBMX(ホスホジエステラーゼ阻害剤、バイオモル(Biomol)より入手)を含有する。試料を37℃で10分間インキュベートし、反応を終了し、次いでcAMPレベルを測定する。リガンドを、ジメチルスルホキシド中で添加し、これを全てのインキュベーションにおいて1%(v/v;アゴニスト)又は2%(v/v;アンタゴニスト)にて一定に維持する。アゴニストについては、セカンドメッセンジャー反応をリガンド濃度の関数として表わし、EC50値及び最大反応の双方を、PGEスタンダードに比較して計算する。アンタゴニストについては、リガンドがアゴニスト反応を阻害する能力を、PGEアゴニストのそのEC70に相当する濃度での存在下に、用量−反応曲線を実行することにより測定する。IC50値は、PGE誘導活性の50%を阻害するために必要なリガンドの濃度として計算する。
【0109】
ラット足浮腫アッセイ
この方法は、チャン(Chan)ら(ザ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー・アンド・エクスペリメンタル・セラピューティクス(J.Pharmacol.Exp.Ther.)、1995年、第274巻、p.1531−1537)により記載されたものと同様である。
【0110】
カラギーナンによりラットにおいて誘導される急性炎症性痛覚過敏
この方法は、ボイス(Boyce)ら(「ニューロファーマコロジー(Neuropharmacology)」、1994年、第33巻、p.1609−1611)において記載されたものと同様である。
【0111】
ラットにおけるアジュバント誘発関節炎
雌のルイスラット(体重〜146−170g)を計量し、耳にマークを付し、群に割り当て(関節炎を誘発しなかったネガティブコントロール群、ビヒクルコントロール群、1mg/kgの合計1日用量でインドメタシンを投与したポジティブコントロール群、及び0.10−3.0mg/kgの合計1日用量で試験化合物を投与した4つの群)、体重が各群内で等しくなるようにする。各々が10匹のラットからなる6つの群に、0.1mLの軽油(アジュバント)中の0.5mgのマイコバクテリウム・ブチリカム(Mycobacterium butyricum)を後肢内に注射し、ネガティブコントロール群のラット10匹には、アジュバントを注射しなかった。体重、対側の肢体積(水銀置換式プレチスモグラフィーにより測定)、及び側面X線像(ケタミン(Ketamine)及びキシラジン(Xylazine)麻酔下に取得)を、事前(1日目)及び、アジュバント注射後21日目に測定し、第1肢体積を、事前(1日目)及びアジュバント注射後の4及び21日目に測定する。ラットは、X線像及びアジュバント注射のため、0.03−0.1mLの、ケタミン(87mg/kg)及びキシラジン(13mg/kg)の組合せを筋内注射して麻酔する。X線像は、両後肢について、0日目及び21日目に、ファキシトロン(Faxitron)(45kVp、30秒間)及びコダック(Kodak)X−OMAT TLフィルムを用いて作成し、自動現像機で現像する。X線像を、実験処理について盲検化された研究者により、軟及び硬組織における変化について評価する。以下のX線像の変化を、重さによって数的に等級分けする:軟組織( issue)体積の増加(0−4)、関節窩の狭窄又は拡大(0−5) 軟骨下侵食(0−3)、骨膜反応(0−4)、骨溶解(0−4)、亜脱臼(0−3)、及び変性性関節症(0−3)。特定の基準を用いて、各X線像変化について、重さの数的等級を確立する。肢当たりの最大可能なスコアは、26であった。合計1日用量0.1、0.3、1、及び3mg/kg/日の試験化合物、1mg/kg/日の合計1日用量のインドメタシン、又はビヒクル(滅菌水中0.5%メトセル)を、1日2回経口投与し、アジュバントの注射後に開始して、21日まで続ける。化合物は毎週調製し、使用まで暗中で冷蔵し、投与直前にボルテックスで混合する。
【0112】
本発明を、以下の合成法及び実施例により、さらに説明する。
【0113】
合成の方法
【0114】
【化13】

【0115】
【化14】

【0116】
【化15】

【0117】
【化16】

【0118】
【化17】

【実施例】
【0119】
実施例1
4−[1−({[5−クロロ−3−(3−クロロベンジル)−2−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸
【0120】
【化18】

【0121】
工程1:2−ブロモ−3−ヒドロキシメチルチオフェン
【0122】
【化19】

【0123】
THF(150mL)中の3−チオフェンメタノール(8.20g、71.8mmol)の溶液に対し、0℃において、水(10mL)を、続いて固体のN−ブロモスクシンイミド(12.8g、71.8mmol)を添加し、この溶液を室温で1時間攪拌した。殆どの溶媒を真空中で留去し、残渣をEtOAc中に再溶解し、水(3回)及び飽和食塩水で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して、所望の生成物を黄色がかった油として得た。この粗生成物を、さらなる精製なしに直接使用した。
【0124】
工程2:(2−ブロモ−5−クロロ−3−チエニル)メタノール
【0125】
【化20】

【0126】
THF(100mL)及び水(10mL)中の、実施例1、工程1で得た2−ブロモ−3−ヒドロキシメチルチオフェン(13.0g、67.3mmol)の溶液に対し、N−クロロスクシンイミド(9.88g、74.0mmol)を添加し、混合物を室温で5時間攪拌し、真空中で濃縮した。残渣を、上記のように処理して所望の生成物を得た。この粗生成物を、直接使用した。
【0127】
工程3:2−ブロモ−5−クロロチオフェン−3−カルバルデヒド
【0128】
【化21】

【0129】
ジクロロメタン(50mL)中のDMSO(2.10mL、29.7mmol)の溶液に対し、−78℃において、塩化オキサリル(1.90mL、26.8mmol)を滴下添加し、混合物をその温度で30分間攪拌した。これに対し、ジクロロメタン(25mL)中の、実施例1、工程2で得た(2−ブロモ−5−クロロ−3−チエニル)メタノール(4.50g、19.8mmol、クルード)をカニューレを介して添加し、得られた溶液を30分間攪拌した。トリエチルアミン(6.40mL、45.5mmol)を一度に添加し、混合物を−78℃で30分間攪拌し、そして空気中で徐々に温めた。この混合物を真空中で濃縮し、次いでエーテル中に再懸濁し、そして濾過した。濾液を真空中で濃縮して所望の生成物を得た。この粗生成物を、さらなる精製なしに直接使用した。
【0130】
工程4:(2−ブロモ−5−クロロ−3−チエニル)(3−クロロフェニル)メタノール
【0131】
【化22】

【0132】
THF/エーテル中の、実施例1、工程3で得た2−ブロモ−5−クロロチオフェン−3−カルバルデヒド(2.50g、11.1mmol)の溶液に対し、−78℃において、3−クロロフェニルマグネシウムブロミド(26.6mL、THF中0.5M)を2分間で添加し、混合物を−78℃で5分間攪拌し、飽和NHCl/水でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、そして濾過した。濾液を濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(10−20% EtOAc/ヘキサン)により精製して所望の生成物を得た。
【0133】
工程5:2−ブロモ−5−クロロ−3−(3−クロロベンジル)チオフェン
【0134】
【化23】

【0135】
ジクロロメタン中の、実施例1、工程4で得た(2−ブロモ−5−クロロ−3−チエニル)(3−クロロフェニル)メタノール(2.50g、7.40mmol)の溶液に対し、室温でトリフルオロ酢酸(5.70mL、74.0mmol)を加え(赤色溶液を形成)、続いてトリエチルシラン(5.91mL、37.0mmol)を添加し(赤色溶液が黄色に変化)、この混合物を室温で30分間攪拌し、そして濃縮した。残渣を、トルエンで共蒸発させ、次いで高真空下にポンプした。この粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(100%ヘキサン)により精製して、所望の生成物を無色の油として得た。
【0136】
工程6:5−クロロ−3−(3−クロロベンジル)チオフェン−2−カルボン酸
【0137】
【化24】

【0138】
THF中の、実施例1、工程5で得た2−ブロモ−5−クロロ−3−(3−クロロベンジル)チオフェン(1.56g、4.84mmol)の溶液に対し、−78℃でN下に、n−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン、2.13mL、5.32mmol)を滴下添加し、混合物を5分間攪拌した。過剰のCOガスを反応混合物中にバブルし、混合物を0℃に温め、1N HClでクエンチし、そしてEtOAcで抽出した。この粗生成物をエーテル/ヘキサンから結晶化して、所望の生成物を白色固体として得た。
【0139】
工程7ないし9は、(1S)−1−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]エタンアミニウムクロリドの調製を記載する。(R)−エナンチオマー及びラセミ体(±)は、以下の同じ手順に従って調製した。
【0140】
工程7:tert−ブチル=[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)エチル]カルバメート
【0141】
【化25】

【0142】
THF(500mL)中の、(S)−(−)−1−(4−ブロモフェニル)エチルアミン(アルファ・エイサー(Alfa Aesar)62.9g、314mmol、98%ee)の溶液に対し、0℃において、固体のジ−tert−ブチルジカルボネート(75.3g、345mmol)を、続いてトリエチルアミン(88.3mL、628mmol)を添加し、混合物を0℃で2時間攪拌し、そして真空中で濃縮した。このようにして得た灰白色の固体を、エーテル/ヘキサンで洗浄し、この固体を高真空下に乾燥して所望の生成物を得た。
【0143】
工程8:4−{(1S)−1−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]エチル}安息香酸
【0144】
【化26】

【0145】
THF(1.5L)/エーテル(300mL)中の、実施例1、工程7で得たtert−ブチル=[(1S)−1−(4−ブロモフェニル)エチル]カルバメート(91.7g、305mmol)の溶液に対し、−20℃において、メチルリチウム(エーテル中1.6M、229mL、366mmol)を添加し、混合物を徐々に0℃に温めて30分間攪拌し、次いで−72℃に冷却した(内部温度)。n−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、146mL、366mmol)を滴下添加し、混合物を−72℃で30分間攪拌した。過剰のCOガスを反応混合物内にバブルし(白色固体の形成)、次いで懸濁液を空気中で30分間温め、次に、これに対し18mLの酢酸を添加した。このスラリーを室温で1時間攪拌し、次いで濾過した。固体を収集し、酢酸(50mL)、酢酸エチル、及び水中に再溶解し、そして酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し、NaSOで乾燥し、そして濾過した。この粗生成物をエーテルで洗浄し、真空下に乾燥して所望の生成物を得た。
【0146】
工程9:(1S)−1−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]エタンアミニウムクロリド
【0147】
【化27】

【0148】
MeOH(175mL)中の、実施例1、工程8で得た4−{(1S)−1−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]エチル}安息香酸(48.0g、181mmol)の懸濁液に対し、室温において、クロロトリメチルシラン(116mL、905mmol)を添加し、懸濁液を室温で6時間攪拌した(透明な溶液となった)。この溶液を真空中で濃縮し、白色固体を得て、これをエーテルで粉砕し、そして濾過した。この白色固体を収集し、高真空下で乾燥して所望の生成物を得た。
【0149】
工程10:メチル=4−[1−({[5−クロロ−3−(3−クロロベンジル)−2−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]ベンゾエート
【0150】
【化28】

【0151】
実施例1、工程6で得た5−クロロ−3−(3−クロロベンジル)チオフェン−2−カルボン酸(200mg、0.696mmol)、及び実施例1、工程7ないし9に従って調製した(±)−1−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]エタンアミニウムクロリド(180mg、0.835mmol)のDMF中の溶液を0℃に冷却し、これに対し、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(317mg、0.835mmol)を、続いてN,N−ジイソプロピルエチルアミン(304μL、1.74mmol、2.5当量)を滴下添加した。この混合物を0℃で15分間攪拌し、水及びEtOAc/エーテルで希釈した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、乾燥し、そして濾過した。この粗生成物を、コンビ・フラッシュ(Combi Flash)クロマトグラフィーシステム(10−40%EtOAc/ヘキサンで15分間)により精製し、所望の生成物を白色固体として得た。
【0152】
工程11:4−[1−({[5−クロロ−3−(3−クロロベンジル)−2−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸
THF(1.5mL)及びメタノール(1.5mL)中の、実施例1、工程10で得たメチル=4−[1−({[5−クロロ−3−(3−クロロベンジル)−2−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]ベンゾエート(81.0mg、0.181mmol)、及びLiOH(0.9mL、水中1M)の混合物を、室温で一晩攪拌し、そして濃縮した。残渣を1N HClで希釈し、EtOAcで抽出した。有機層をNaSOで乾燥し、そして濾過した。濾液を真空中で濃縮し、所望の生成物を白色固体として得た。MS(−ESI):m/z 432.0(M−1)
【0153】
実施例2
5−クロロ−3−(3−クロロベンジル)−N−{1−[4−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]エチル}チオフェン−2−カルボキサミド
【0154】
【化29】

【0155】
工程1:5−クロロ−3−(3−クロロベンジル)−N−[1−(4−シアノフェニル)エチル]チオフェン−2−カルボキサミド
【0156】
【化30】

【0157】
実施例1、工程6で得た5−クロロ−3−(3−クロロベンジル)チオフェン−2−カルボン酸(230mg、0.801mmol)、4−(1−アジドエチル)ベンゾニトリル(146mg、0.848mmol)[市販の4−アセチルベンゾニトリルの還元後、トンプソン(Tompson)ら、「ザ・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.)」、1993年、第58巻、p.5886に従って調製した]、及びジフェニルジセレニド(549mg、1.76mmol)のアセトニトリル中の懸濁液に対し、室温でN下に、トリブチルホスフィン(217μL、0.881mmol、1.1当量)を滴下添加し(懸濁液は溶解、わずかに発熱性)、混合物を室温で6時間攪拌し、飽和NaHCOでクエンチし、そしてエーテルで抽出した。この粗生成物を、コンビ・フラッシュクロマトグラフィーシステム(10−40% EtOAc/ヘキサン)により精製し、所望の生成物を得た。
【0158】
工程2:5−クロロ−3−(3−クロロベンジル)−N−{1−[4−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]エチル}チオフェン−2−カルボキサミド
実施例2、工程1で得た5−クロロ−3−(3−クロロベンジル)−N−[1−(4−シアノフェニル)エチル]チオフェン−2−カルボキサミド(192mg、0.462mmol)、及びアジドトリブチルスズ(0.380mL、1.39mmol)のトルエン(1mL)中の混合物を、N下に、3時間加熱還流し、室温に冷却した。この粗生成物を、直接フラッシュクロマトグラフィー(2−10% PrOH/ヘキサン)により精製し、所望の生成物を白色固体として得た。MS(−ESI):m/z 456(M−1)
【0159】
実施例3
4−[(1S)−1−({[4−(3−クロロベンジル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸
【0160】
【化31】

【0161】
工程1:(4−ブロモ−3−チエニル)(3−クロロフェニル)メタノール
【0162】
【化32】

【0163】
3,4−ジブロモチオフェン(15.5g、64.1mmol)を、EtO(50mL)中のn−BuLi(ヘキサン中2.5M、25.6mL、64.1mmol)に対し、−78℃において滴下添加した。1.5時間後、ベージュ色の懸濁液に対し、3−クロロベンズアルデヒド(7.29mL、64.1mmol)を滴下添加した。得られた溶液を−78℃で1時間攪拌し、そして0℃に温めた。1時間後、反応物を25%NHOAc水溶液の添加によりクエンチした。水層をEtOAcで抽出し、合わせた有機物を水及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、そして濃縮して所望の生成物を淡黄色の油として得た。粗生成物を、さらなる精製なしに直接使用した。
【0164】
工程2:3−ブロモ−4−(3−クロロベンジル)チオフェン
【0165】
【化33】

【0166】
CHCl(1mL)中の、実施例3、工程1で得た(4−ブロモ−3−チエニル)(3−クロロフェニル)メタノール(144mg、0.474mmol)に対し、0℃において、連続して、トリエチルシラン(303μL、1.90mmol)を迅速に、そしてTFA(364μL、4.74mmol)を滴下添加した。30分後、反応物を濃縮乾固し、残渣をCHCl中に溶解し、そして5%NaHCO水溶液で洗浄した。水層をCHClで抽出し、合わせた有機物を水及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、そして濃縮した。粗生成物をシリカゲル上で精製して(トルエン/ヘキサン 5:95)、所望の生成物を無色の油として得た。
【0167】
工程3:4−(3−クロロベンジル)チオフェン−3−カルボン酸
【0168】
【化34】

【0169】
実施例3、工程2で得た3−ブロモ−4−(3−クロロベンジル)チオフェン(6.22g、21.6mmol)を、実施例1、工程6と同様の条件下に反応させ(THFの代わりにEtOを溶媒として使用した)、所望の生成物を灰白色の固体として得て、これをさらなる精製なしに直接使用した。
【0170】
工程4:メチル=4−[(1S)−1−({[4−(3−クロロベンジル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]ベンゾエート
【0171】
【化35】

【0172】
実施例3、工程3で得た4−(3−クロロベンジル)チオフェン−3−カルボン酸
(380mg、1.50mmol)を、実施例1、工程10と同様の条件下に、実施例1、工程9で得た(1S)−1−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]エタンアミニウムクロリドと反応させた。シリカゲルでのクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン 40:60ないし95:5)の後、所望の生成物を白色固体として得た。
【0173】
工程5:4−[(1S)−1−({[4−(3−クロロベンジル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸
実施例3、工程4で得たメチル=4−[(1S)−1−({[4−(3−クロロベンジル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]ベンゾエート(100mg、0.242mmol)を、実施例1、工程11と同様の条件下に反応させ、所望の生成物を白色固体として得た。MS(−ESI):m/z 398(M−1)
【0174】
実施例4
4−[(1S)−1−({[5−ブロモ−4−(3−クロロベンジル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸
【0175】
【化36】

【0176】
工程1:メチル=4−[(1S)−1−({[5−ブロモ−4−(3−クロロベンジル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]ベンゾエート
【0177】
【化37】

【0178】
N−ブロモスクシンイミド(43.0mg、0.242mmol)を、1:1のCHCl/AcOH(1.2mL)中の、実施例3、工程4で得たメチル=4−[(1S)−1−({[4−(3−クロロベンジル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]ベンゾエート(50.0mg、0.121mmol)に対し添加した。16時間後、反応物を、5%NaHCO水溶液へ徐々に注入した。水層をCHClで抽出し、合わせた有機物を5%NaHCO水溶液、飽和Na、及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、そして濃縮した。この粗生成物を、コンビ・フラッシュクロマトグラフィーシステム(15分間で、0−2% EtOAc/CHCl)により精製し、所望の生成物を褐色の固体として得た。
【0179】
工程2:4−[(1S)−1−({[5−ブロモ−4−(3−クロロベンジル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸
実施例4、工程1で得たメチル=4−[(1S)−1−({[5−ブロモ−4−(3−クロロベンジル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]ベンゾエート(25.0mg、0.0507mmol)を、実施例1、工程11と同様の条件下に反応させた。1:1のEtOAc/ヘキサン中での、粗生成物の粉砕の後、所望の生成物を灰白色の固体として得た。MS(−APCI):m/z 476(M−1)
【0180】
実施例5
4−[(1S)−1−({[2,5−ジブロモ−4−(3−クロロベンジル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸
【0181】
【化38】

【0182】
工程1:メチル=4−[(1S)−1−({[2,5−ジブロモ−4−(3−クロロベンジル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]ベンゾエート
【0183】
【化39】

【0184】
N−ブロモスクシンイミド(43.0mg、0.242mmol)を、DMF(1mL)中の、実施例3、工程4で得たメチル=4−[(1S)−1−({[4−(3−クロロベンジル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]ベンゾエート(50.0mg、0.121mmol)に対し添加した。50℃で20時間後、反応物を、1:1の飽和NaHCO/水へ注入した。水層をEtOAcで抽出し、合わせた有機物を水及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、そして濃縮した。この粗生成物を、コンビ・フラッシュクロマトグラフィーシステム(15分間で、0−2% EtOAc/CHCl)により精製し、所望の生成物を白色固体として得た。
【0185】
工程2:4−[(1S)−1−({[2,5−ジブロモ−4−(3−クロロベンジル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸
実施例5、工程1で得たメチル=4−[(1S)−1−({[2,5−ジブロモ−4−(3−クロロベンジル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]ベンゾエート(27.0mg、0.0472mmol)を、実施例1、工程11と同様の条件下に反応させた。1:9のEtOAc/ヘキサン中での、粗生成物の粉砕の後、所望の生成物を白色固体として得た。MS(−APCI):m/z 554(M−1)
【0186】
実施例6
メチル=4−[(1S)−1−({[2,5−ジクロロ−4−(3−クロロベンジル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]ベンゾエート
【0187】
【化40】

【0188】
工程1:2,5−ジクロロ−4−(3−クロロベンジル)チオフェン−3−カルボン酸
【0189】
【化41】

【0190】
N−クロロスクシンイミド(4.46g、33.4mmol)を、AcOH(40mL)中の、実施例3、工程3で得た4−(3−クロロベンジル)チオフェン−3−カルボン酸
(4.02g、15.9mmol)に対し添加した。110℃で2時間後、溶媒をトルエン(3回)で共蒸発させた。残渣を、CHCl(250mL)及び水(100mL)の間に分配した。有機層を水(2回)及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、そして濃縮した。この粗生成物をシリカゲル上でのクロマトグラフィー(20:80ないし30:70 EtOAc/ヘキサン、0.5%AcOHを含有)により精製し、所望の生成物をベージュ色の固体として得た。
【0191】
工程2:メチル=4−[(1S)−1−({[2,5−ジクロロ−4−(3−クロロベンジル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]ベンゾエート
実施例6、工程1で得た2,5−ジクロロ−4−(3−クロロベンジル)チオフェン−3−カルボン酸(1.90g、5.91mmol)を、実施例1、工程10と同様の条件下に、実施例1、工程9で得た(1S)−1−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]エタンアミニウムクロリドと反応させた。この粗生成物を、コンビ・フラッシュクロマトグラフィーシステム(20分間で、2−5% EtOAc/トルエン)により精製し、所望の生成物を白色固体として得た。MS(−APCI):m/z 480(M−1)
【0192】
実施例7
4−[(1S)−1−({[2,5−ジクロロ−4−(3−クロロベンジル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸
【0193】
【化42】

【0194】
実施例6、工程2で得たメチル=4−[(1S)−1−({[2,5−ジクロロ−4−(3−クロロベンジル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]ベンゾエート(2.11g、4.37mmol)を、実施例1、工程11と同様の条件下に反応させた。この粗生成物を、EtO中で粉砕し、所望の生成物を白色固体として得た。MS(−APCI):m/z 466(M−1)
【0195】
実施例8
4−{(1S)−1−[({2,5−ジクロロ−4−[(3−クロロフェニル)(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)メチル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]エチル}安息香酸
【0196】
【化43】

【0197】
工程1:(4−ブロモ−2,5−ジクロロ−3−チエニル)(3−クロロフェニル)メタノール
【0198】
【化44】

【0199】
THF(18mL)中の3,4−ジブロモ−2,5−ジクロロチオフェン(2.00g、6.43mmol)の溶液に対し、−78℃において、n−BuLi(ヘキサン中2.5M、2.57mL、6.43mmol)を滴下添加した。30分後、3−クロロベンズアルデヒド(0.732mL、6.43mmol)を、この黄色の溶液に滴下添加した。得られた溶液を−78℃で30分間攪拌し、0℃に温めた。30分後、反応物を25%NHOAc水溶液の添加によりクエンチした。水層をEtOAcで抽出し、合わせた有機物を水及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、そして濃縮した。この粗生成物をシリカゲル上でのクロマトグラフィー(50:50ないし80:20 CHCl/ヘキサン)により精製し、所望の生成物を淡黄色の油として得た。
【0200】
工程2:2−[(4−ブロモ−2,5−ジクロロ−3−チエニル)(3−クロロフェニル)メトキシ]テトラヒドロ−2H−ピラン
【0201】
【化45】

【0202】
ピリジニウム=p−トルエンスルホネート(74.0mg、0.293mmol)を、CHCl(12mL)中の、実施例8、工程1で得た(4−ブロモ−2,5−ジクロロ−3−チエニル)(3−クロロフェニル)メタノール(1.09g、2.93mmol)及び3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(2.67mL、29.3mmol)に対し添加した。3.5時間後、反応混合物をCHClで希釈し、5%NaHCO水溶液、水、及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、そして濃縮した。この粗生成物を、コンビ・フラッシュクロマトグラフィーシステム(20分間で、30−50% CHCl/ヘキサン)により精製し、所望の生成物を無色のゴムとして得た。
【0203】
工程3:2,5−ジクロロ−4−[(3−クロロフェフェニル)(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)メチル]チオフェン−3−カルボン酸
【0204】
【化46】

【0205】
実施例8、工程2で得た2−[(4−ブロモ−2,5−ジクロロ−3−チエニル)(3−クロロフェニル)メトキシ]テトラヒドロ−2H−ピラン(334mg、0.731mmol)を、実施例1、工程6と同様の条件下に反応させた(THFの代わりにEtOを溶媒として使用した;1N HClの代わりに25%NHOAc水溶液で反応をクエンチした)。この粗生成物を、シリカゲル上でのクロマトグラフィー(50:50 EtOAc/ヘキサン、0.25%AcOHを含有)により精製し、所望の生成物を白色の泡沫として得た。
【0206】
工程4:メチル=4−{(1S)−1−[({2,5−ジクロロ−4−[(3−クロロフェニル)(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)メチル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]エチル}ベンゾエート
【0207】
【化47】

【0208】
実施例8、工程3で得た2,5−ジクロロ−4−[(3−クロロフェフェニル)(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)メチル]チオフェン−3−カルボン酸を、実施例1、工程10と同様の条件下に、実施例1、工程9で得た(1S)−1−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]エタンアミニウムクロリドと反応させた。この粗生成物をコンビ・フラッシュクロマトグラフィーシステム(20分間で、2−8% EtOAc/トルエン)により精製し、所望の生成物を白色の泡沫として得た。
【0209】
工程5:4−{(1S)−1−[({2,5−ジクロロ−4−[(3−クロロフェニル)(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)メチル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]エチル}安息香酸
実施例8、工程4で得たメチル=4−{(1S)−1−[({2,5−ジクロロ−4−[(3−クロロフェニル)(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)メチル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]エチル}ベンゾエート(21.3mg、0.0365mmol)を、実施例1、工程11と同様の条件下に反応させた。反応混合物を25%NHOAc水溶液で中和した(1N HClによる酸性化の代わりに)。所望の生成物を白色の泡沫として得て、さらなる精製なしに使用した。MS(−APCI):m/z 566(M−1)
【0210】
実施例9
4−{(1S)−1−[({2,5−ジクロロ−4−[(3−クロロフェニル)(ヒドロキシ)メチル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]エチル}安息香酸
【0211】
【化48】

【0212】
工程1:メチル=4−{(1S)−1−[({2,5−ジクロロ−4−[(3−クロロフェニル)(ヒドロキシ)メチル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]エチル}ベンゾエート
【0213】
【化49】

【0214】
p−トルエンスルホン酸一水和物(6.00mg、0.0338mmol)を、MeOH(2mL)中の、実施例8、工程4で得たメチル=4−{(1S)−1−[({2,5−ジクロロ−4−[(3−クロロフェニル)(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)メチル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]エチル}ベンゾエート(197mg、0.338mmol)に対し添加した。1.5時間後、反応混合物を5%NaHCO水溶液でクエンチし、そしてEtOAcで抽出した。合わせた有機物を5%NaHCO水溶液、水、及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、そして濃縮した。この粗生成物を、コンビ・フラッシュクロマトグラフィーシステム(20分間で、2−8% EtOAc/トルエン)により精製し、所望の生成物を無色のゴムとして得た。
【0215】
工程2:4−{(1S)−1−[({2,5−ジクロロ−4−[(3−クロロフェニル)(ヒドロキシ)メチル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]エチル}安息香酸
実施例9、工程1で得たメチル=4−{(1S)−1−[({2,5−ジクロロ−4−[(3−クロロフェニル)(ヒドロキシ)メチル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]エチル}ベンゾエート(49.0mg、0.0982mmol)を、実施例1、工程11と同様の条件下に反応させた。反応混合物を25%NHOAc水溶液で中和した(1N HClによる酸性化の代わりに)。所望の生成物を灰白色の泡沫として得て、さらなる精製を行わなかった。MS(−ESI):m/z 482(M−1)
【0216】
実施例10
4−[(1S)−1−({[2,5−ジクロロ−4−(3−クロロベンゾイル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸
【0217】
【化50】

【0218】
工程1:メチル=4−[(1S)−1−({[2,5−ジクロロ−4−(3−クロロベンゾイル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]ベンゾエート
【0219】
【化51】

【0220】
デスマーチン・ペルヨージナン(114mg、0.268mmol)を、CHCl(1.5mL)中の、実施例9、工程1で得たメチル=4−{(1S)−1−[({2,5−ジクロロ−4−[(3−クロロフェニル)(ヒドロキシ)メチル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]エチル}ベンゾエート(89.0mg、0.178mmol)に対し添加した。17時間後、この懸濁液を、7当量のNaを含有する20mLの飽和NaHCOに注入して10分間攪拌し、この後に透明な層を得た。水層をCHClで抽出し、合わせた有機物を5%NaHCO水溶液、水、及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、そして濃縮した。この粗生成物を、コンビ・フラッシュクロマトグラフィーシステム(20分間で、2−8% EtOAc/トルエン)により精製し、所望の生成物を白色固体として得た。
【0221】
工程2:4−[(1S)−1−({[2,5−ジクロロ−4−(3−クロロベンゾイル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]安息香酸
実施例10、工程1で得たメチル=4−[(1S)−1−({[2,5−ジクロロ−4−(3−クロロベンゾイル)−3−チエニル]カルボニル}アミノ)エチル]ベンゾエート(73.0mg、0.147mmol)を、実施例1、工程11と同様の条件下に反応させた。反応混合物を25%NHOAc水溶液で中和した(1N HClによる酸性化の代わりに)。この粗生成物を、シリカゲル上でのクロマトグラフィー(35:65のEtOAc/ヘキサン、0.25%AcOHを含有)により精製し、所望の生成物を灰白色の固体として得た。MS(−APCI):m/z 480(M−1)
【0222】
実施例11
メチル=4−{(1S)−1−[({2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]エチル}ベンゾエート
【0223】
【化52】

【0224】
工程1:3,4−ジブロモ−2,5−ジメチルチオフェン
【0225】
【化53】

【0226】
N−ブロモスクシンイミド(92.0g、516mmol)を装入した2Lの丸底フラスコを、アルミニウムホイルで囲って暗いフード内で殆どの昼光をマスクする。窒素下で熱電対を用いて、600mLの1,2−ジクロロエタンを添加した後、この懸濁液を、室温で、25mLの1,2−ジクロロエタン中の、2,5−ジメチルチオフェン(ランカスター(Lancaster))(27.6g、246mmol)により一度に処理する。温度を、約10分間で50℃まで上げ、橙色の懸濁液の色が薄まる。90分後、この懸濁液のHPLC分析は、出発物質の完全な消費と、無視できるほど少量のモノブロモ物質とを示す。1Lのヘキサンを添加して、反応物を15分間攪拌する。沈澱を濾過して捨てる。濾液を減圧下に濃縮し、残渣を240mLのテトラヒドロフラン中に取る。得られた溶液を、18mLのN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(ランカスター(Lancaster))で処理し、45分間攪拌する。この濁った溶液を、1.2Lのジエチルエーテル及び500mLの1N塩酸と一緒に、分液漏斗に移す。相を分離し、有機層を500mLの1N塩酸で洗浄する。相を分離し、濁った有機層を、焼結ガラス製漏斗上で300gのシリカゲルを通して丸底フラスコ内に移し、約150mLの酢酸エチルでこのガラス器具をすすぐ。透明な溶液を減圧下に濃縮し、所望の化合物をベージュ色の固体として得る。
【0227】
工程2:(4−ブロモ−2,5−ジメチル−3−チエニル)[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノール
【0228】
【化54】

【0229】
ジエチルエーテル(1L)及びテトラヒドロフラン(80mL)の混合物中の、実施例11、工程1で得た、激しく混合した3,4−ジブロモ−2,5−ジメチルチオフェン(53.2g、197mmol)の溶液に対し、窒素下で−74℃において、n−ブチルリチウム(1.6M/ヘキサン、123mL、197mmol)を、シリンジを用いて徐々に添加し、内部温度を−70℃と−74℃の間に維持するようにする。反応物を、さらに30分間攪拌する。30mLのジエチルエーテル中の、p−トリフルオロメチルベンズアルデヒド(27.0mL、200mmol)の溶液を、3分間にわたり添加する。反応物を5分間攪拌する。冷浴を除去し、溶液を15分間、温めながら攪拌した。これを5mLのメタノールで、次いで300mLの1N塩酸でクエンチし、そして30分間攪拌した。相を分離させる。有機層を飽和食塩水(200mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮して、所望の化合物を淡黄色の油として得る。
【0230】
工程3:3−ブロモ−2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]チオフェン
【0231】
【化55】

【0232】
500mLのジクロロメタン中の、実施例11、工程2で得た(4−ブロモ−2,5−ジメチル−3−チエニル)[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノール(74.0g、200mmol)及びトリエチルシラン(130mL、800mmol)の溶液に対し、窒素下で0℃において、トリフルオロ酢酸(155mL、2.00mmol)を添加し、内部温度を1と4.5℃の間に維持するようにする。減圧下に殆どの揮発物を除去し、得られた溶液を、エーテル(1L)及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と水との混合物(500mL)に注ぐ。相を分離させる。有機層を飽和食塩水(200mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、そして減圧下に濃縮する。残渣を希釈し、かつトルエンから2回濃縮する(300mL)。残渣を二等分し、ヘキサンで希釈し(各部分30mLで)、そして各部分を、コンビ・フラッシュクロマトグラフィーシステム(100%ヘキサンで5分間、次いで、21分間で5%酢酸エチル/95%ヘキサンとする による精製のため、330gのシリカゲルにかけ、所望の生成物を無色の液体として得る。
【0233】
工程4:2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]チオフェン−3−カルボン酸
【0234】
【化56】

【0235】
n−BuLi(ヘキサン中2.5M、68.3mL、0.171mmol)を、EtO(650mL)及びTHF(350mL)の混合物中の、実施例11、工程3で得た3−ブロモ−2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]チオフェン(54.2g、0.155mmol)の溶液に対し、−78℃において滴下添加した。得られた赤褐色の溶液を、同温度で45分間攪拌した。過剰のCOガスを反応混合物中にバブルし(約15分間)、得られた橙色の溶液を、0℃に温めるのに先立ち、−78℃に1時間維持した。この温度において30分後、1.5Lの飽和NHCl水溶液を添加した。水層を1N HClでpH3に酸性化し、そしてEtOAc(2回)で抽出した。合わせた有機物を水(2回)及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、そして濃縮した。黄色の固形残渣を、250mLの10:90のEtOAc/ヘキサン中で19時間スウィッシュした。得られた混合物を濾過し、固体を、10:90のEtOAc/ヘキサン及びヘキサンで連続してすすぎ、次いで乾燥した。所望の生成物を白色固体として得た。
【0236】
工程5:メチル=4−{(1S)−1−[({2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]エチル}ベンゾエート
ジメチルホルムアミド(50mL)中の、実施例11、工程4で得た2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]チオフェン−3−カルボン酸(4.36g、1当量)、及び実施例1、工程9で得た(1S)−1−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]エタンアミニウムクロリド(3.29g、1.10当量)の溶液に対し、HATU(5.65g、1.07当量)を一度に添加する。2分間の攪拌の後、ジイソプロピルエチルアミン(6.0mL、2.5当量)を一度に添加し、原料の酸を完全に消費するまで反応物を攪拌した。反応物を、半飽和炭酸水素ナトリウム(400mL)に注ぎ、白色の懸濁液を30分間激しく攪拌した。固体を濾過により収集し、水で洗浄し、この間をブフナー上で行ない、乾燥し、シリカゲル上でのクロマトグラフィー(2:98ないし10:90 EtOAc/CHCl)により精製して、所望の生成物を白色固体として得た。MS(+APCI):m/z 476(M+1)
【0237】
実施例12
4−{(1S)−1−[({2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]エチル}安息香酸
【0238】
【化57】

【0239】
THF(305mL)及びMeOH(152mL)中の、実施例11、工程5で得たメチル=4−{(1S)−1−[({2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]エチル}ベンゾエートの溶液(5.68g、11.9mmol)を、LiOH(水中1N,35.8mL、35.8mmol)で、室温で44時間、そして50℃で3.5時間処理した。溶液を室温に冷却し、1N HCl(38.2mL、3.2当量)を添加した。350mLの揮発物を真空中で除去し、残渣に対し800mLの水を添加して、得られた懸濁液を19時間攪拌した。固体を濾過により収集し、水ですすぎ、乾燥した。所望の生成物を白色固体として得た。MS(−APCI):m/z 460(M−1)
【0240】
実施例13
ナトリウム=4−{(1S)−1−[({2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]エチル}ベンゾエート
【0241】
【化58】

【0242】
EtOH(50mL)、THF(15mL)及び水(15mL)の混合物中の、実施例12で得た4−{(1S)−1−[({2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]エチル}安息香酸(1.70g、3.68mmol)の溶液に対し、NaOH(水中1N、3.68mL、3.68mmol)を添加した。10分後、この溶液を濃縮乾固し、残渣を高真空下で乾燥して、所望の生成物を灰白色の固体として得た。MS(−APCI):m/z 460(M−23)
【0243】
実施例14
2,5−ジメチル−N−{1−[4−(2H−テトラゾール−5−イル)フェニル]シクロプロピル}−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]チオフェン−3−カルボキサミド
【0244】
【化59】

【0245】
工程1:4−(1−アミノシクロプロピル)ベンゾニトリル
【0246】
【化60】

【0247】
ジクロロメタン中の1,4−ジシアノベンゼン(3.30g、25.8mmol)の溶液に対し、チタン(IV)イソプロポキシド(7.56mL、25.8mmol)を、続いてエチルマグネシウムブロミド(エーテル中3M、15.5mL、46.4mmol)を滴下添加し(発熱性、1当量の試薬添加後にガス発生)、そして混合物を室温で45分間攪拌した。三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(5.71mL、46.4mmol)を添加し、混合物を室温で2時間攪拌し、NHCl及びHClでクエンチし、そして分離させた。水相をエーテルで1回洗浄し、次いで、10N NaOHでpHを9ないし10に調整した(沈殿形成)。この混合物を、セライトを通して濾過し、ケークを水/EtOAcで洗浄した。相を分離させ、水相をEtOAcで抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、そして真空中で濃縮して、所望の生成物を粘着性の油として得て、これを−20℃で固化した。この粗生成物を、さらなる精製なしに直接使用した。
【0248】
工程2:N−[1−(4−シアノフェニル)シクロプロピル]−2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]チオフェン−3−カルボキサミド
【0249】
【化61】

【0250】
実施例11、工程4で得た2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]チオフェン−3−カルボン酸(286mg、0.910mmol)を、実施例1、工程10と同様の条件下に、実施例14、工程1で得た4−(1−アミノシクロプロピル)ベンゾニトリル(144mg、0.910mmol)と反応させた。この粗生成物を、コンビ・フラッシュクロマトグラフィーシステム(20分間で、2−5% EtOAc/CHCl)により精製し、所望の生成物を淡黄色の固体として得た。
【0251】
工程3:2,5−ジメチル−N−{1−[4−(2H−テトラゾール−5−イル)フェニル]シクロプロピル}−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]チオフェン−3−カルボキサミド
トルエン(2.5mL)中の、実施例14、工程2で得たN−[1−(4−シアノフェニル)シクロプロピル]−2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]チオフェン−3−カルボキサミド(174mg、0.383mmol)の懸濁液に対し、アジドトリブチルスズ(317μL、1.15mmol)を添加し、混合物を還流温度で加熱した。20時間後、こうして得た溶液を室温に冷却し、そしてAcOH(365μL)を添加した。不均一な混合物を4時間攪拌し、沈澱した固体を濾過により収集し、トルエン及びヘキサンで連続してすすぎ、次いで乾燥して、所望の生成物を灰白色の固体として得た。MS(−APCI):m/z 496(M−1)
【0252】
実施例15
ナトリウム=5−(4−{1−[({2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}フェニル)テトラゾール−2−イド
【0253】
【化62】

【0254】
EtOH(3mL)中の、実施例14、工程3で得た2,5−ジメチル−N−{1−[4−(2H−テトラゾール−5−イル)フェニル]シクロプロピル}−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]チオフェン−3−カルボキサミド(150mg、0.301mmol)の懸濁液を、NaOH(水中1.0N、301μL、0.301mmol)で処理した。こうして得た溶液を濃縮乾固した。残渣に水(20mL)を添加した。混濁した溶液を、ドライアイス及びアセトンの浴中で凍結し、凍結乾燥して、所望の生成物を灰白色の綿毛状の固体として得た。MS(−APCI):m/z 496(M−23)
【0255】
実施例16
4−{1−[({2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}安息香酸
【0256】
【化63】

【0257】
工程1:1−(4−カルボキシフェニル)シクロプロパンアミニウムクロリド
【0258】
【化64】

【0259】
実施例14、工程1で得た4−(1−アミノシクロプロピル)ベンゾニトリル(576mg、3.64mmol)及び6N HCl(12mL)の混合物を、還流温度で40時間加熱し、室温に冷却し、そして濃縮乾固して、所望の生成物をベージュ色の固体として得た。この粗生成物を、さらなる精製なしに使用した。
【0260】
工程2:1−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]シクロプロパンアミニウムクロリド
【0261】
【化65】

【0262】
MeOH(10mL)中の、実施例16、工程1で得た1−(4−カルボキシフェニル)シクロプロパンアミニウムクロリド(4.17mmol)を、HCl(ジオキサン中4M、104μL、0.417mmol)の存在下に、還流温度で16時間加熱し、そして室温に冷却した。この混合物を濃縮乾固し、残渣をEtOAcとリン酸緩衝液(pH10)との間で分配した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、そして濃縮した。残渣をジオキサン(10mL)中に溶解し、そして過剰のHCl(ジオキサン中4M)を添加した。この混合物を、次に濃縮乾固し、所望の生成物を褐色の固体として得た。この粗生成物を、さらなる精製なしに使用した。
【0263】
工程3:メチル=4−{1−[({2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}ベンゾエート
【0264】
【化66】

【0265】
実施例11、工程4で得た2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]チオフェン−3−カルボン酸(275mg、0.87mmol)を、実施例11、工程5と同様の条件下に、実施例16、工程2で得た1−[4−(メトキシカルボニル)フェニル]シクロプロパンアミニウムクロリド(167mg、0.86mmol)と反応させた。粗生成物を、コンビ・フラッシュクロマトグラフィーシステム(20分間で、2−5% EtOAc/CHCl)により精製し、所望の生成物を白色固体として得た。
【0266】
工程4:4−{1−[({2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}安息香酸
実施例16、工程3で得たメチル=4−{1−[({2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}ベンゾエート(172mg、0.353mmol)を、実施例1、工程11と同様の条件下に反応させた。粗固体を10:90のEtOH/ヘキサン中でスウィッシュし、懸濁液を濾過した。得られた固体を10:90のEtOH/ヘキサンで、次にヘキサンですすぎ、そして乾燥して所望の生成物を白色固体として得た。MS(−ESI):m/z 472(M−1)
【0267】
実施例17
ナトリウム=4−{1−[({2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}ベンゾエート
【0268】
【化67】

【0269】
EtOH(5mL)中の、実施例16、工程4で得た4−{1−[({2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}安息香酸(112mg、0.236mmol)の溶液を、NaOH(水中1.0N、236μL、0.236mmol)で処理し、その後、沈澱を形成した。こうして得た混合物を濃縮乾固した。残渣に水(15mL)を添加した。得られた非常に細かい懸濁液を、ドライアイス及びアセトンの浴中で凍結し、凍結乾燥して、所望の生成物を白色の綿毛状の固体として得た。MS(−APCI):m/z 472(M−23)
【0270】
実施例18
2,5−ジメチル−N−[(1S)−1−(4−{[(メチルスルホニル)アミノ]カルボニル}フェニル)エチル]−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]チオフェン−3−カルボキサミド
【0271】
【化68】

【0272】
THF(5mL)及びDMF(2.5mL)の混合物中の、実施例12で得た4−{(1S)−1−[({2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]エチル}安息香酸(200mg、0.433mmol)の溶液に対し、メタンスルホンアミド(52.0mg、0.542mmol)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(166mg、0.866mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(66.0mg、0.542mmol)を連続して添加した。混合物を室温で一晩攪拌し、酢酸でクエンチした。10分後、この混合物を水で希釈し、1N HCl及びEtOAcの間で分配した。有機層を、1N HCl(2回)及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥し、そして濃縮した。残渣を、コンビ・フラッシュクロマトグラフィーシステム(13分間で、50% THF/CHCl)により精製し、所望の生成物を白色固体として得た。MS(−APCI):m/z 537(M−1)
【0273】
実施例19
2,5−ジメチル−N−[(1S)−1−(4−{[(フェニルスルホニル)アミノ]カルボニル}フェニル)エチル]−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]チオフェン−3−カルボキサミド
【0274】
【化69】

【0275】
実施例12で得た4−{(1S)−1−[({2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]エチル}安息香酸(200mg、0.433mmol)を、実施例18と同様の条件下に、ベンゼンスルホンアミド(85.0mg、0.542mmol)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(166mg、0.866mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(66.0mg、0.542mmol)で処理した。この粗生成物を、コンビ・フラッシュクロマトグラフィーシステム(25% THF/CHClで5分間、次に50%で5分間)により精製し、所望の生成物を白色固体として得た。MS(−APCI):m/z 599(M−1)
【0276】
本発明を例示する化合物が以下の表に示されており、これらを上記記載の方法に従って作成した。
【0277】
【化70】

【0278】
【化71】

【0279】
【化72】

【0280】
【化73】

【0281】
【化74】

【0282】
【化75】

【0283】
【化76】

【0284】
実施例31
4−{1−[({2,5−ジメチル−4−[4−(トリフルオロメチル)ベンジル]−3−チエニル}カルボニル)アミノ]シクロプロピル}安息香酸ジエチルアミン塩
【0285】
【化77】

【0286】
工程1− シクロプロパン化
【0287】
【化78】

【0288】
機械的攪拌機、熱電対、窒素注入口及び冷却浴を具備した、視覚的に清浄な100Lの5頸丸底フラスコに、ニトリル−エステル(2.60Kg、1.00当量)及びトルエン(40L、15mL/g)を装入した。この混合物を、2−プロパノール及びドライアイスで満たした冷却浴を用いて−25℃に冷却した。この溶液に対し、Ti(OiPr)(4.73L、1.00当量)を5分間にわたり添加した。エチルマグネシウムブロミド(10.5L、2.0当量)を、反応混合物の温度を−25℃と−13℃の間に保ちながら、2時間にわたり添加した。この混合物を、−20℃で30分間熟成した。三フッ化ホウ素ジエチルエーテル(4.09L)を、反応混合物の温度を−24℃と−8℃の間に保ちながら、40分間にわたり添加した。この混合物を、−20℃で30分間熟成し、次いでHPLCにより変換を測定して、93%であることを示した。反応物を、HClの添加によりクエンチした。この反応混合物に対し、20L(7.5mL/g)の3N HClを徐々に添加し(30分間にわたり)、39℃の発熱を生じた(発熱 −16℃→+23℃)。有機層を抽出器に移し、次いで残りのHCl(20L、7.5mL/g)をフラスコに添加してアミン塩を溶解した。10分間の攪拌の後、水層を抽出器に移した。この混合物を10分間攪拌し、次いで層を分離させた。水層をトルエン(13L、5mL/g)で洗浄した。水層を、2−Me−THF 2×10mL/g(2×26L)、及び2×5mL/g(2×13L)で抽出した。合わせたMe−THF層を、3N NaOH(26L、10mL/g)で洗浄し、層分離に先立ち、このNaOH溶液のpHを10NのNaOH(1.6L)を用いてpH9に調整した。有機層を飽和食塩水(13L、5mL/g)で洗浄した。シクロプロピルアミンの分析収率を、Me−THF層について、その濃縮に先立ち測定し、43.2%(1.334Kg)であることを示した。水層への損失は、3.8%(bellow)であった。
【0289】
工程2− シクロプロイルアミン、メタンスルホン酸塩形成
【0290】
【化79】

【0291】
機械的攪拌機、熱電対、窒素注入口及び冷却浴を具備した、視覚的に清浄な100Lの5頸丸底フラスコに、シクロプロピルアミン(2.63Kg、1.00当量)及びTHF(32L、12mL/g)を装入した。この溶液に対し、MsOH(1.00L、1.12当量)をTHF(4.0L、1.5mL/g)溶液として、2時間にわたり添加した。最初の10分間の添加の後、シード(500mg)を添加して結晶化を開始した。溶液を室温で15時間攪拌した。この懸濁液を濾過し、少量の母液ですすいだ。塩を、冷THFで2回洗浄し(2×8L、2×3mL/g)、次いでフリット上で3時間乾燥した。塩を、真空オーブン内で、最初は30℃で20時間、次いで50℃で60時間乾燥した。
得られた物質の収量は、3.93Kgであり、これは94.4%wtであった(収率=92.9%)。母液に対する損失は、8.2g(0.3%)であった。
【0292】
工程3− メタンスルホン酸塩破壊
【0293】
【化80】

【0294】
機械的攪拌機、熱電対及び窒素注入口を具備した、視覚的に清浄な160Lの5頸抽出器に、MsOH塩14(3.85Kg、1.00当量)及びiPAc(39L、10mL/g)を装入した。この溶液に対し、2M KPO(19L、5mL/g)を添加した。溶液を室温で2時間攪拌して塩を完全に破壊し、懸濁液中に何ら固体が残らないようにした。層を分離させた。有機層を水(19L、5mL/g)で1回、そして飽和NaCl溶液(19L、5mL/g)で1回洗浄した。シクロプロピルアミンの分析収率を、iPAc溶液について調べ、2.445Kg(98.8%)であることを示した。水層に対する損失は0.1%未満であった。iPAc層をロータリーエバポレーター(rotavap)で濃縮し、10LのTHFで(Swich)した。
【0295】
工程4− 酸塩化物形成及びフリーデル・クラフツアシル化
【0296】
【化81】

【0297】
視覚的に清浄な100Lの5頸丸底フラスコに、機械的攪拌機、還流用コンデンサー、内部温度プローブ、窒素注入口を具備し、そして、20リットルの5N NaOHを満たしたスクラバーに連結した。このフラスコに、クロロベンゼン、安息香酸及び塩化オキサリルを装入し、次に、蒸気浴により、内部温度が50℃に達するまで加熱した。次いでDMFを滴下添加した。
【0298】
DMFの添加に際し、激しいガス発生が見られた。20分後、蒸気浴を止め、反応物を45−50℃の内部温度に維持した。1時間後、濁った反応混合物をアリコートのHPLCによりアッセイし、酸の96%が酸塩化物1aとなったことを示した。
【0299】
内部温度が22℃に低下した後、反応器に対しジメチルチオフェンを一度に、続いて塩化チタン(IV)を1時間にわたり、添加漏斗から添加した。
【0300】
塩化チタン(IV)の添加の間、最大36℃までの内部温度の上昇が見られた。粗混合物を一晩で室温に冷却した。
【0301】
視覚的に清浄な160リットルの抽出器に、1N HClを装入した。この抽出器内に、粗反応混合物を激しく攪拌しながら移した(内部温度プローブは、反応混合物温度が22℃から34℃まで変化することを示した)。5分間の激しい攪拌の後に、相を分離させた。有機層(底部)を除去し、水層をヘプタンで逆抽出した。有機層を合わせ、半飽和食塩水で洗浄し、次いで20ミクロンのフィルターを通して、機械的攪拌機を具備しかつバッチ濃縮機に連結した視覚的に清浄な100Lの丸底フラスコ内に濾過した。溶媒を減圧下に除去して、薄褐色の油を得た。
【0302】
この物質を15.61kgの薄褐色の油に濃縮した後、アリコートをHPLC分析に移し、この物質が、52.77wt% ケトンであること、又は8.24kg、92.4%の分析収率であることを測定した。
【0303】
工程5− 臭素化
【0304】
【化82】

【0305】
視覚的に清浄な100Lの5頸丸底フラスコに、機械的攪拌機、添加漏斗、内部温度プローブ、窒素注入口を具備し、そして、20リットルの5N NaOHを満たしたスクラバーに連結した。このフラスコに、ケトン、クロロベンゼン、及び塩化亜鉛を装入し、次いで、外部の氷水浴により、内部温度が16℃に達するまで冷却した。臭素を添加漏斗に装入し、次いで1時間にわたり添加した。
【0306】
内部温度は、臭素の添加の間に、最大26℃まで上昇することを観察した。添加の完了後、この混合物を15分間激しく攪拌した。
【0307】
視覚的に正常な160リットルの抽出器に、1N HClを装入した。この抽出器内に、粗反応混合物を激しく攪拌しながら移した(内部温度プローブは、反応混合物温度が22℃から34℃まで変化することを示した)。5分間の激しい攪拌の後に、相を分離させた。有機層(底部)を除去し、水層をヘプタンで逆抽出した。有機層を合わせ、半飽和食塩水で洗浄し、次に、機械的攪拌機を具備しかつバッチ濃縮機に連結した視覚的に清浄な100Lの丸底フラスコ内に移した。40Lのヘプタンで洗浄し、溶媒を減圧下に除去して、薄褐色の油を得た。
【0308】
この物質を10.29kgの薄褐色の油に濃縮した後、アリコートをHPLC分析に移し、この物質が、80.0wt% ブロモケトンであること、又は8.35kg、93.6%の分析収率であることを測定した。
【0309】
工程6− 還元
【0310】
【化83】

【0311】
視覚的に清浄な100Lの5頸丸底フラスコに、機械的攪拌機、添加漏斗、内部温度プローブ、窒素入口及び出口を具備した。このフラスコに、ブロモケトン、トリエチルシラン及びジクロロメタンを装入し、次いで、外部のイソプロパノール/CO浴により、内部温度が−1℃に達するまで冷却した。塩化チタン(IV)を添加漏斗に装入し、次いで1時間にわたり添加した。
【0312】
内部温度は、塩化チタン(IV)の添加の間に、最大30℃まで上昇することを観察した。発熱は、添加の完了後も続き、最大内部温度43℃まで0.5時間にわたり続いた。この混合物をさらに2時間攪拌し、この間に温度は8℃まで低下した。
【0313】
視覚的に正常な160リットルの抽出器に、1N HClを装入した。この抽出器内に、粗反応混合物を激しく攪拌しながら移した(内部温度プローブは、反応混合物温度が22℃から34℃まで変化することを示した)。5分間の激しい攪拌の後に、相を分離させた。有機層(底部)を除去し、水層をヘプタンで逆抽出した。有機層を合わせ、水で洗浄した。
【0314】
この機械的攪拌機を具備した視覚的に清浄な100Lの丸底フラスコ内に、粗有機相を、40L2回で移し、4kgのシリカ上で攪拌した。1時間の攪拌の後、この物質をガラスフリット上で濾過し、ヘプタン(5L)で洗浄した。濾過された粗有機物を次に、視覚的に清浄な100Lの丸底フラスコ内に移し、バッチ濃縮機へ連結した。溶媒を、減圧下に、加熱しながら、40Lのトルエン洗浄で、続いて40Lのヘプタン洗浄で除去し、薄褐色の油を得た。この反応フラスコに、ヘプタン(40L)及びシリカゲル(8kg)を添加し、材料を窒素下に72時間攪拌した。スラリーをガラスフリット上で濾過し、ヘプタン(15L)で洗浄した。濾過した粗有機物を、次に視覚的に清浄な100Lの丸底フラスコ内に移し、バッチ濃縮機へ連結した。溶媒を、減圧下に、加熱しながら除去し、薄褐色の油を得た。
【0315】
この物質を、8.31kgの薄褐色の油に濃縮した後、アリコートをHPLC分析に移し、この物質が、36.30wt%ブロモアルケンであること、又は3.02kg、37.6%の分析収率であることを測定した。
【0316】
この工程における低い収率は、還元産物の重合化によるものであった。この望ましくない副反応は、臭素化の工程からの残留クロロベンゼンの量を、<1%まで注意深く低下させることにより回避できた。このことは、ケトン還元に向けて溶媒を1,2−ジクロロエタンに切り換えるに先立ち、粗臭素化混合物をトルエンで洗浄することにより達成された。この反応を、1Kgスケールで、このプロトコールを用いて再度実行し、84%の収率で進行した。
【0317】
工程7− 金属−ハロゲン交換及び酸形成
【0318】
【化84】

【0319】
視覚的に清浄な50Lの5頸丸底フラスコに、機械的攪拌機、添加漏斗、内部温度プローブ、窒素入口及び出口を具備した。このフラスコに、ブロモアルカン、テトラメチルエチレンジアミン及びMTBEを装入し、次いで、外部のイソプロパノール/CO浴により、内部温度が−65℃に達するまで冷却した。nBuLiを添加漏斗に装入し、次いで1時間にわたり添加した。
【0320】
内部温度は、nBuLiの添加の間に、最大−58℃まで上昇することを観察した。この混合物をさらに0.5時間攪拌し、この間に温度は−62℃まで低下した。
【0321】
ガス状COを、1.5時間にわたり反応混合物中にバブルした。16ゲージの、長さ100cmのニードルを使用して、試薬を反応混合物の表面下に確実に送達した。
【0322】
COの添加の間に、内部温度は最大−54℃まで上昇することを観察した。1.5時間後、内部温度は−60℃まで低下し、この粗混合物からアリコートを取った。HPLC分析は、〜85%のCOの取込み(対 還元)を示した。
【0323】
冷却浴を、内部温度が−25℃に達するまで温水浴で置換え;次いで1N HClを反応器に添加した。5分間激しく攪拌した後、二相溶液を、激しく攪拌しながら、視覚的に清浄な100Lの抽出器に移した。5分間の激しい攪拌の後、相を分離させた。水層(底部)を除去し、有機層を収集した。水層をMTBE(6L)で逆抽出した。有機相を合わせ、0.5N KOH(13.0L)で、激しく攪拌しながら5分間処理した。層を分離させた後、水層を収集した。有機相を、0.5N KOH(6.5L)で再抽出し、そして水層を収集した。有機相の除去の後、合わせた水層を抽出器に戻し、これにMTBE(23L)も装入した。二相溶液を、6N HCl(1.25L)の添加によりpH〜1まで酸性化し、この二相の溶液を10分間激しく攪拌した。
【0324】
層を分離させた後、有機層を収集し、半飽和食塩水(13L)で洗浄した。粗有機物質をロータリーエバポレーター(rotovap)上で真空濃縮し、ヘプタン(10L)で洗浄して、黄色の固体を得た(〜4.5kg)。
【0325】
この粗固体を、機械的攪拌機、内部温度プローブ、窒素入口及び出口を具備した、視覚的に清浄な25Lの丸底フラスコに装入した。このフラスコに、粗酸及びヘプタンを装入し、次いで外部の氷/水浴により、内部温度が2℃に達するまで冷却した。スラリーを6時間激しく攪拌し、次いでガラスフリット上で濾過し、冷ヘプタン(1.25L)で洗浄した。フィルターケークを、ハウスバキュームにより、窒素下に一晩乾燥した。淡黄色の固体を真空オーブンに移し、50℃で24時間乾燥した。
【0326】
全1.22kgの乾燥した黄色の固体を収集した。HPLC分析は、この物質が87wt%酸であること、又は1.06kg、79%の分析収率であることを示した。
【0327】
工程8− アミド化/加水分解
【0328】
【化85】

【0329】
機械的攪拌機、熱電対、窒素注入口、冷却浴及びNaOHスクラバーを具備した、視覚的に清浄な100Lの5頸丸底フラスコに、チオフェン酸(91%wtで2.95Kg=2.68Kg、1.00当量)及びTHF(16L、6mL/g)を装入した。DMF(6.64mL、1%mol)を添加した。この溶液に対し、塩化オキサリル(897mL、1.20当量)を、室温で30分間にわたり添加した。塩化オキサリルの添加の間に、10℃の発熱を認めた(温度は17℃から27℃に上昇した)。この混合物を室温で2時間熟成し(変換99.9%)、次に、溶媒及び過剰の塩化オキサリルを、バッチ濃縮機を用いて除去した。残渣をTHF(20L)で洗浄した。残渣をTHF(27L、10mL/g)中に溶解し、溶液を3℃に冷却した。この溶液に対し、ヒューニッヒ塩基(2.24L、1.50当量)を添加した。シクロプロピルアミン(1.88Kg、1.15当量)をTHF溶液(5L、2mL/g)として、30分間にわたり、この溶液に添加した。20℃の発熱を観察した(温度 7℃→27℃)。この混合物を30分間熟成した。アミド−エステルへの変換は、99.8%であった。この溶液に対し、MeOH(4mL/g、10.7L)及び4N LiOH(7.47L、3.5当量)を添加した。14℃の発熱を観察した(温度 17℃→31℃)。混合物を55℃に加熱し、この温度で1.5時間保持した。アミド−酸の変換は、99.5%であった。この混合物を22℃に冷却し、反応を2N HCl(19L、7mL/g)の添加によりクエンチした。バッチ濃縮機を用いて有機溶媒を除去し、20LのMe−THFで洗浄した。残渣(HCl中の懸濁液としての)を、Me−THF(54L、20mL/g)中に溶解した。二相混合物を抽出器に移し、層を分離した。水層を、Me−THF(13L、5mL/g)で逆抽出した。合わせた有機層を水(13L、5mL/g)で洗浄した。化合物の分析収率を、有機層について、その濃縮に先立ち測定し、88.0%(3.56Kg)であることを示した。水層への損失は、0.1%未満であった。
【0330】
工程9− EtNH塩形成
【0331】
【化86】

【0332】
一連のアミド化/加水分解で得たMe−THF溶液を、ソルカ・フロック(Solka Floc)のパッド(1.20Kg)を通し、4LのTHFですすいだ。濾液を、機械的攪拌機、熱電対、窒素注入口、加熱蒸気浴及びバッチ濃縮機を具備した、視覚的に清浄な100Lの5頸丸底フラスコに移した。溶媒を減圧下に除去し、残渣をTHF(30L)で洗い流した。残渣をTHF(21L、6mL/g)中に懸濁し、この懸濁液にEtNH(1.18L、1.52当量)を添加した。6℃の発熱を観察した(21℃→27℃)。塩をTHF中に溶解した。この混合物を室温で1時間熟成し、冷水を使用して溶液を22℃に冷却した。実施例31のシード(30.0g)を添加し、混合物を1時間熟成した。MTBE(25L)を、2時間にわたり添加し、次いで、この懸濁液を室温で13時間熟成した。混合物を3℃に冷却し、さらなるMTBE(13L、4mL/g)を1時間にわたり添加した。母液への損失を調べ、〜22%であることを示した。MTBE(2×7L、2×2mL/g)を1時間にわたり添加し、混合物を1.5時間熟成し、次にこの混合物を濾過した。ケークを1×7LのMTBE/THF(2/1)及び2×7LのMTBEですすいだ。全濾過に5時間を要した。ケークを、フリット上で62時間、窒素下に乾燥した。化合物Aを、60℃の真空オーブン内で20時間乾燥した。実施例31の収量は、ベージュ色の固体として3.76Kg(92%)であった。HPLCによるこの物質の純度は、97.8APCであった。H NMRは、〜3%molのMTBEの存在を示した。
【0333】
工程10− 精製
【0334】
【化87】

【0335】
実施例31(3.67Kg)の塩を、Me−THF(30L)及び1N HCl(20L、6N HCl溶液から調製)の混合物に添加し、懸濁液を、完全に溶解するまで(35分間)室温で攪拌した。層を分離し、有機層を水で2回(20L及び10L)洗浄した。有機層を、機械的攪拌機、熱電対、窒素注入口、加熱蒸気浴及びバッチ濃縮機を具備した、視覚的に清浄な100Lの5頸丸底フラスコに移した。溶媒を減圧下に除去し、残渣をTHF(20L)で洗い流した。
【0336】
残渣をTHF(60L)中に溶解し、この溶液を、蒸気浴を用いて60℃に温めた。(L)−リジン(1.20Kg、1.09当量)の水溶液(9.5L)を2分間にわたって添加し、続いてEtOH(1.26L)を添加した。この混合物を、冷水及び氷の上で、40分間にわたり22℃に冷却した。混合物を室温で15時間熟成し、次いで濾過し、3×3LのTHFですすぎ、フリット上で1時間乾燥した。
【0337】
化合物9.リジン塩を、Me−THF(30L)及び1N HCl(20L、12N及び6NのHCl溶液から調製)の混合物に添加し、懸濁液を、完全に溶解するまで(40分間)室温で攪拌した。層を分離し、有機層を水で2回(20L及び10L)洗浄した。有機層を、インラインフィルタ―を通して、機械的攪拌機、熱電対、窒素注入口、加熱蒸気浴及びバッチ濃縮機を具備した、視覚的に清浄な100Lの5頸丸底フラスコに移した。溶媒を減圧下に除去し、残渣をTHF(20L)で洗い流した。
【0338】
この残渣をTHF(14L、6mL/g)中に懸濁し、EtNH(624mL、0.90当量)を懸濁液に添加した。混合物を22℃で30分間熟成し、実施例31のシード(24.0g)を添加し、そしてこの混合物を1時間熟成した。MTBE(24L)を2時間にわたり添加し、次いで懸濁液を室温で1時間熟成した。MTBE(5L、2mL/g)を30分間にわたり添加した。混合物を30分間熟成し、次いで混合物を濾過した。ケークを、1×7LのMTBE/THF(2/1)、及び2×5L MTBEですすいだ。全濾過に4時間を要した。ケークを、フリット上で8時間、窒素下に乾燥した。実施例31の塩を、60℃の真空オーブン内で20時間乾燥した。実施例31の収量は、ベージュ色の固体として2.78Kg(75%)であった。HPLCによるこの物質の純度は、98.7APCであった。H NMRは、〜1.7%molの残留THFの存在を示した。
【0339】
別法の実施例31
【0340】
【化88】

【0341】
工程1− 4−(trifluoromethbenzyl)アルコールによるフリーデル・クラフツアルキル化
【0342】
【化89】

【0343】
ベンジルアルコールをDCE(1.2mL)中に溶解し、2,5−ジメチルチオフェンを、続いてMsOH及びFeClを添加した。混合物を55℃に温め、16時間熟成した。反応を、NHCl溶液の添加によりクエンチした。混合物をMTBEで抽出し、有機層をMTBEで1回逆抽出し、有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮した。分析収率(HPLC標準に比較して)は、278mg(70%)であった。
【0344】
工程2−イソシアネート形成
【0345】
【化90】

【0346】
ホスゲンをDCM(40mL)中に希釈し、0℃に冷却し、そしてシクロプロピルアミン及びEtNのDCM(10mL)溶液を、60分間にわたり添加した。この混合物を室温に温め、10分間熟成した。この混合物を1N HCl及び飽和食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、そして濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(10−>30% EtOAc/ヘキサン)により精製し、3.67gのイソシアネートを得た。
【0347】
工程3− エステルを形成するための12のフリーデル・クラフツアミド化
【0348】
【化91】

【0349】
チオフェンフラグメントをDCE(1.5mL)中に希釈し、イソシアネートを、続いてFeClを添加した。70℃まで15分間温めた後、混合物を飽和NHCl及び2−MeTHFの間に分配した。有機層を飽和食塩水で洗浄した。この有機層を、83mgの所望の生成物(66%)においてアッセイした。
【0350】
実施例31は、先に記載したように、エステル8から合成可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I又は式II:
【化1】

[式中、
X及びYは、独立して、N及びC(R11)からなる群より選択され、ここで、各R11は、独立して、水素、ハロ及びC1−4アルキルからなる群より選択され;
Bは、−C(R)(R)−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−C(R)(R)−C(R)(R)−、−O−C(R)(R)−、−S−C(R)(R)−、−S(O)−C(R)(R)−及び−SO−C(R)(R)−からなる群より選択され;
Cは、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択されるか、又はアリール若しくはヘテロアリールの縮合類似体であり、各々は、R10から独立して選択される1から3個の置換基で置換されていてもよく;
Eは、−C(O)OH、−C(O)OC1−4アルキル、テトラゾリル及び
【化2】

からなる群より選択され、ここで、Rは、C1−4アルキル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択されるか、又はアリール若しくはヘテロアリールの縮合類似体であり、ここで、アリール及びヘテロアリール、又はその縮合類似体は、R10から独立して選択される1から3個の置換基で置換されていてもよく;
からRは、独立して、H、ハロ、−O−R12、C1−6アルキル及びC3−6シクロアルキルからなる群より選択され、かつ、RとR、RとR、及びRとRの1つ以上のペアは、それらが結合する炭素原子と一緒になって3から5員の単環式シクロアルキル環を形成してもよく、そして、RとR、又はRとRが一緒になって、カルボニルを形成してもよく;
は、ハロ、ヒドロキシ及びC1−4アルキルからなる群より選択され、
10は、ハロ、シアノ、C1−4アルキル、C1−4フルオロアルキル、C1−4アルコキシ、C1−4チオアルコキシ及びC1−4フルオロアルコキシからなる群より選択され、そして
各R12は、H、C1−4アルキル、C3−6シクロアルキル及びヘテロシクリルからなる群より選択される]の化合物、又は式I若しくは式IIの化合物の薬学的に許容され得る塩。
【請求項2】
式IIである請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Bが−CH−であり;
CがR10で置換されていてもよいフェニルであり;
Eが−C(O)OH、−C(O)OC1−4アルキル及びテトラゾリルからなる群より選択され;
がH又はメチルであり;
がハロであり;
及びRがHであり;
が存在せず;かつ
10がクロロ及びCFからなる群より選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
式Iである請求項1記載の化合物。
【請求項5】
X及びYがC(R11)であり、ここで、各R11が独立して、水素、ハロ及びC1−4アルキルからなる群より選択される、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
Bが−CH−であり;
CがR10で置換されていてもよいフェニルであり;
Eが−C(O)OH、−C(O)OC1−4アルキル及びテトラゾリルからなる群より選択され;
がH又はメチルであり、かつRがHであるか、又はR及びRが、それらが結合する炭素原子と一緒になってシクロプロピル環を形成し;
が存在せず;かつ
10がクロロ及びCFからなる群より選択される、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
各R11がクロロである、請求項5記載の化合物。
【請求項8】
Bが−CH−であり;
CがR10で置換されていてもよいフェニルであり;
Eが−C(O)OH、−C(O)OC1−4アルキル及びテトラゾリルからなる群より選択され;
がH又はメチルであり、かつRがHであるか、又はR及びRが、それらが結合する炭素原子と一緒になってシクロプロピル環を形成し;
が存在せず;
10がクロロ及びCFからなる群より選択される、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
10が、Bの結合に対しメタ−又はパラ−位においてフェニル基上に置換されている、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
各R11がメチルである、請求項5記載の化合物。
【請求項11】
Bが−CH−であり;
CがR10で置換されていてもよいフェニルであり;
Eが−C(O)OH及びテトラゾリルからなる群より選択され;
がH又はメチルであり、かつRがHであるか、又はR及びRが、それらが結合する炭素原子と一緒になってシクロプロピル環を形成し;
が存在せず;かつ
10がクロロ及びCFからなる群より選択される、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
10が、Bの結合に対しメタ−又はパラ−位においてフェニル基上に置換されている、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
10が、CFであり、かつBの結合に対しパラ−位においてフェニル基上に置換されている、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
以下の表:
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

から選択される、請求項1記載の化合物、又は上記化合物のいずれかの薬学的に許容され得る塩。
【請求項15】
薬学的に許容され得る塩がナトリウム塩である、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
以下の表:
【化10】

【化11】

から選択される、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
請求項1記載の化合物を、1つ以上の生理学的に許容され得る担体又は賦形剤と混合してなる医薬組成物。
【請求項18】
ヒト又は霊長類の医薬における使用のための請求項1記載の化合物、又はその薬学的に許容され得る誘導体。
【請求項19】
EP4受容体により媒介される症状を患っているヒト又は動物患者を治療する方法であって、請求項1記載の化合物の有効量を、該患者へ投与することを含んでなる方法。
【請求項20】
EP4受容体により媒介される症状の治療用の治療薬製造のための、請求項1記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2010−500293(P2010−500293A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523120(P2009−523120)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001404
【国際公開番号】WO2008/017164
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(305042057)メルク フロスト カナダ リミテツド (99)
【Fターム(参考)】